2015年8月6日 07:00
今、男に求められるのは"普通"にしがみつく手を放す勇気 - 『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』
と呼びかけ、「立ち止まる勇気」を訴える本が登場した。昨年、『AERA』の「男がつらい」特集で一躍注目を集めた男性学の旗手・田中俊之氏による『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』(KADOKAWA)である。
本書で繰り返し述べられているのは、"普通"にとらわれ、しがみつくことの危うさと弊害だ。その"普通"の最たる例が、旧来の「男らしさ」とされてきた規範だろう。
男は競争に打ち勝って何事かを達成するのが"普通"、男は少々乱暴で不真面目で大雑把なくらいが"普通"、男は論理的で感情に流されないのが"普通"、男は正社員としてフルタイムで40年間勤め上げるのが“普通”、男は女をリードして口説き落とすのが"普通"、などなど……。
これらの「男らしさ」は、もはや古臭い時代遅れの規範であり、男性はそれを手放さない限り、多様に生きる人々を踏みつけ、自分自身の首をも絞めているのだということを、著者はひとつひとつ丁寧に諭していく。
この本はまさに、男性のための新しい道徳の教科書、人生の副読本として全男子に必読を課したい、男性視点でのジェンダー入門書と言えるだろう。男だって弱音を吐いて泣いてもいい、男は女性を性的魅力だけで評価しすぎている、男が若い女好きなのは"生物学的な"本能ではない、不妊は女性だけでなく男性が原因の場合もある、"草食系男子"はもともと揶揄ではなく褒め言葉だった……など、本書が男性読者に言い聞かせる内容は、聞く人が聞けば"今さら"であり、「いちからか? いちからせつめいしないとだめか?」