2015年8月6日 07:00
今、男に求められるのは"普通"にしがみつく手を放す勇気 - 『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』
土台が腐っているから建て直せと言われても、すでに30年建て増しに建て増しを重ねたそれなりに立派な家がそびえてしまっているから、やっかいでタチが悪いのだ。
だからといって、もちろん「男のほうがつらい」などと思ってはいけない。男女に関して、どちらがつらい、どちらが悪いという二元論は、泥沼の水掛け論にしかならないと本書も警告している。
大切なのは、「男だから」「女だから」という思考停止に逃げ込まず、「自分」はどう感じるのかという感情と向き合い、外から「そう思わされている」だけの規範に縛られていないか、常に内省することだ。
「多様性を認める」とは、全ての人を愛することではなく、価値観の違う人にも敬意を持って、適切に距離を取ることだと著者は説く。結局、それは“普通”と違う他人を許すと同時に、"普通"なれない自分自身を許し、受け入れ、愛することにもつながるだろう。
ぶっさんと違い、2015年を死なずに生き延びてしまった私たちは、心の野球ボールの文字を"普通"ではなく、一刻も早く"多様"と書き換えるべきなのだ。
<著者プロフィール>
福田フクスケ
編集者・フリーライター。
『GetNavi』(学研)