2018年6月23日 09:00
ヒット中『空飛ぶタイヤ』は、「自分語りを極力排した」 脚本家の意図
赤松とホープ自動車の狩野(岸部一徳)は最後まで会うことはありません。最終的な闘いは刑事の高幡と狩野です。別軸で闘っていた井崎(高橋一生)を赤松は存在すら知りません。でもそれこそが巨大な敵と闘うリアリティにあふれていて、赤松にとって本当の敵は、顔が見えないのです。
主人公なんだから赤松と狩野が最後は直接対決しよう、などという物語のための決着は最初から考えませんでした。敵は顔が見えないけれども、どこかで顔の見えない誰かが自分なりの方法で共に闘ってくれているシーンが物語を豊かにしてくれていると思いました。多くの登場人物がこの物語には必要なのです。必要ならば描いていくしかありません。
シークエンスでいろんな人物をさばきながら、うねるように観客を巻き込むことだけを考えました。それでも脚本は140枚近くになり、本木監督の職人ような的確な演出がなければ2時間ではおさまらなかったでしょう。
○原作の精神に則ったラストシーン
――原作では描かれなかったラストシーンを入れたのはなぜでしょうか?
赤松がホープ自動車の人間で接するのはほぼ沢田(ディーン・フジオカ)だけです。彼には最初、沢田=ホープ自動車に見えている。