黒沢清、映画監督の“本当の仕事”「オリジナルは理想だがリスキー」
●前田敦子は他のメンバーと「全然違う」
原作に頼らず、果敢にオリジナリティを追求する「オリジナル映画の担い手たち」。インタビュー連載の第9回は、前田敦子が主演を務める映画『旅のおわり世界のはじまり』(6月14日公開)でメガホンを取った黒沢清監督の真髄に迫る。前田演じるテレビリポーター・葉子は、“幻の怪魚”を探すウズベキスタンロケに臨みながらも夢と現実の狭間で葛藤し、彼女を取り巻くスタッフたちも、予定通りに進まない異国ロケにいらだちを募らせ始める。数々のオリジナル作を手掛けてきた黒沢監督は、どのような思いでこのスタッフ心理を描いていったのか。そこには、「本当の仕事」の矜持と、「オリジナル映画の恐怖」が深く関係していた。
○■「テーマ」が先にあることはない
――日本とウズベキスタン合作映画のオファーで、プロデューサーからは「物語は自由」と言われたそうですね。
具体的な条件は、「ウズベキスタンで撮る」「どこかでナヴォイ劇場を入れてほしい」の2つぐらいでした。とは言っても、ウズベキスタンの文化に深く根ざした物語を考えるのは、とてもじゃないけど時間が足りない。
日本で詳しい資料が手に入らなかったので、現地で取材すると何カ月……何年もかかるかもしれない。