2021年11月22日 19:09
【『最愛』感想 6話】約束の成就が別離の時である痛み・ネタバレあり
それは刑事としてはありうべからざる方向性で、既に上司の山尾(津田健次郎)からはそのスタンスに疑念を持たれ始めている。
数週かけて次第に刑事として立ち位置が悪くなる大輝の状況をじりじりと積み上げていくあたりも、油断のならない脚本だと思う。この歪みもまた後半のストーリーに影響するのかもしれない。
二人の尽力で、優は不起訴になり梨央の元に戻ってくる。長い間離れ離れになっていた姉と弟はようやく再会して、物語は一段落となるかに見える。
そして、事件が解決に向かうからこそ、本来は出会うことのなかったはずの、社会的にはセレブである梨央と刑事である大輝には別れの時がくる。
互いが互いの人生に存在していては、それぞれの立場を悪くすると悟っている。
15年前の白川での夜、告白に応えられないままだった抱擁、現在の信号待ちで抱きしめられなかった手のひら。
その抱擁の記憶だけで一生を生きていけそうな数秒間、吉高由里子の淡いため息のはかなさに魅入る。
そして、普段滅多に声を張らない役柄の男が「勝手に決めんな」と感情を剥き出しにした瞬間に溢れ出る色気は、これぞ松下洸平であるなと感じ入る瞬間だった。