【『不適切にもほどがある!』感想 初回】宮藤官九郎は決して守りに入らない
では、ゆとり世代とひとくくりにされる世代の複雑さと苦悩を、『監獄のお姫さま』(2017年TBS系)では怒れる女たちの痛みと連帯を、『俺の家の話』(2021年TBS系)では老親の介護という悲しみと困難を。
そして今作で宮藤官九郎が掴もうとしているのは、コミュニケーションにおける配慮という、目に見えない『空気』である。
それは人と人の間に必要不可欠だけれども、無さすぎれば関係を壊し、有りすぎれば対話を硬直化して錆びつかせる。
その、安易に言語化できないものをエンタテインメントとして描きだすために、粗忽(そこつ)さすらも魅力に変えてみせる阿部サダヲの存在は必須である。
唯一無二の身体表現で鬱陶しい昭和の中年男に一匙ぶんのかわいげを加味している。
居酒屋の一幕、配膳ロボットが延々と炙りシメサバを運ぶ。
タッチパネルの誤入力がそのままノーチェックで通ってしまう不条理、さらにロボットが運んだ後で炙りにくるのはアルバイトという、不条理に不条理をたたみかける展開は、宮藤官九郎らしい怒濤の笑いと毒に満ちていて素晴らしかった。
さらにクライマックスのミュージカル仕立てのシーンに仰天しつつ、『木更津キャッツアイ』(2002年TBS系)