ここから飛び降りよう、とか。でも、遺体を父に見られるのも嫌で。早く家から出るしかない、と」
高校卒業と同時に、就職先も決めず家を飛び出し、大阪に出た。紹介された美容室で雇ってもらい、美容師の道を歩むことになる。’90年、同い年の男性と、20歳で結婚。22歳で長男を、25歳で長女を出産する。
「子どもを持って、やっと、<この子たちのために死んだらあかん>と思えるようになりました」
出産を機に、家族で香川に戻ったゆかりさん。実家の近所に住んでいた。
「父の顔は見たくなかったけど、母には会いたくて。表面上は父とも普通に接していました。はたから見れば、仲のいい家族に見えたでしょうね」
しかし、31歳のとき、ゆかりさんはうつ病になってしまう。父親から受けた性虐待のトラウマが原因だった。夫婦関係にもすれ違いが生じ、離婚。先が見えない不安を抱えて、母にこう打ち明けたことがある。
「いまだに父の行為が頭から離れなくて、つらさから抜け出せない」
すると母は、初めて知ったかのようにショックを受け、涙ながらにこう言った。
「そんなことがあったのね。
いま、お父さんは仕事で大事なプロジェクトを抱えているから、数年待って。