2022年6月26日 06:00
全盲の弁護士と音楽家の夫婦 子どもたちの笑顔は心に映って
協力しながら調理する大胡田さん家族
「響、テレビはいったん消してさ、お肉に塩、胡椒してくれない?」
それはある週末の、大胡田家の光景。
エプロン姿の父・誠さん(45)に呼ばれて、長男・響くん(9)が台所にやってきた。耳をそばだてるようにして、息子が隣に立ったことを確認すると、父は「はい、これ」と2つの調味料入れを手渡す。だが、大好きな野球中継を中断させられた小学4年生は、少しむくれた顔でそのうちの1つを突き返した。そして、少しぶっきらぼうにこう告げた。
「パパ、違うよ、これ塩じゃない」
そんな2人のやりとりを眺めていた長女・こころさん(11)が、すかさず口を挟む。
「パパ、せっかくだからさ、おいしいほうの塩、使おうよ」
娘の声に反応した父は「ん?おいしい塩?それってどこだっけ?」と、辺りをうかがうように首を左右に大きく振ってみせた。
すると今度は、隣の部屋から母・亜矢子さん(47)の大きな声が。
「ここちゃーん、お洋服の色、どっちがいいか見てーー」
小走りで母のもとへ向かう小学6年生。そして、スタイリストさながらの慣れた手つきで、2着のワンピースを母の胸元に当てた。