2022年7月10日 06:00
高田馬場名物立ち食いそば屋が閉店に 女性店主供する天玉そばの味染みて
当時、近くの無認可保育園の園長先生から『まだ生後2カ月のしわしわの赤ちゃんを預けていったのは草野さんくらい』なんて言われたことも。
とにかく、6人の子供を食べさせるのに必死で、入学式と卒業式はなんとか出たけど、運動会や学芸会などの行事には行ったことはなかった。子供たちには、本当にすまなかったと今でも思ってます」
彩華さんの苦難は続いた。
「夫が42歳で胃がんで手術したときには、入院費などで貯金残高が700円になったことも。そのときも、『また明日から立ち食いそばで頑張るぞ』と自分に言い聞かせて、踏ん張りました」
一転、80年代半ばのバブルのころには、駅前の好立地に目をつけた業者から土地売買の誘いが。
「けっこう強引だったり、とんでもない金額を積まれたことも。でも、私は、父の教えがありましたから。お金はたくさん持っても使えば終わり。
しかし、店はどんだけ使い倒しても店として残る。きちんと商売すれば、ずっとお客さんを呼んでくれるものなんです。
まあ、うちは1杯何百円の商売ですから、バブルの恩恵は、ほとんどないも同然でしたが」
それ以上に、90年前後にバブルが弾けたときに、地道な商いの強さが立証された。