2022年7月10日 06:00
高田馬場名物立ち食いそば屋が閉店に 女性店主供する天玉そばの味染みて
「苦渋の決断、断腸の思いでした。それは、言っておきたい。私の夢は、18年前から一緒にカウンターに立っている四女に店を引き継ぐこと。さらにはその娘、つまりは孫娘へと。
だって、男の人は会社勤めすれば生活も安定するけど、女の人生は何が起きるかわからないでしょう。私がそうだったから。だから娘や孫に、生活の安定のよりどころとして、この店を残したかった。
弟が継いだ父の寿司屋もなくなりますが、やっぱり私の中には両親に申し訳ないという思いが強いんです。
そんなプレッシャーもあったんでしょうね、6月2日に突然腸閉塞になって、自分で救急車を呼んで10日間入院しました。でも、そのことで踏ん切りがついたのも本当なんです」
彩華さんの入院を機に、品川区の大井町でそば屋「彩彩」を営むご主人が、自分の店を休んで、吉田屋の閉店まで手伝ってくれることになった。
「お母さん。長い間、ご苦労さま」
病院のベッドの上から閉店の決意を告げたとき、ご主人はこんな言葉で労ってくれたという。
「それを聞いて、46年ぶりに、ようやく重たい肩の荷から解き放たれた気がしました」
■ただそばを一杯一杯作り続けただけだが、その姿を見てくれていた人は確かにいた
「7月末でうちが閉店すると、もう8月には、この区画ごと取り壊されるなんて周囲の人は言いますが、私自身は、この先のことは聞かされていません」