出産育児一時金を申請しよう! 申請の条件や受給方式別の申請方法
出産にまつわる出費は大きなもの。もらえる給付金はきっちりともらいたいですよね。しかし、「私ってもらえるの?」「申請の手続きが複雑で、ちゃんとできるかしら……」「いつから手続きを始めればいいの?」と不安に思うことも多いものです。
そこでここでは、「出産育児一時金」に注目。受給の3つの方法と、それぞれの申請方法についてまとめました。
出産育児一時金とは?支給額は?
出産育児一時金とは、産前産後の検診費用や、出産に必要な費用などの経済的負担を軽減するために支給される給付金です。
加入している健康保険(協会けんぽや組合保険、国民健康保険など)に申請をすると、出産人数に応じて、1人につき基本額42万円(2018年現在)を支給。この金額は、平均的な出産費用の大部分をまかなえる額です。
また、加入している健康保険によっては、金額の上乗せ(付加給付)がある場合があります。
なお、42万円のうち1万6千円は、出産時の医療事故による赤ちゃんの脳性麻痺に保険金が支払われる「産科医療補償制度」の掛け金です。そのため、制度に加入していない医療機関で出産した場合には、出産育児一時金は40万4千円となります。
出産育児一時金の申請条件は?
出産育児一時金を申請できるのは、次の2つの条件を満たす人です。
- 妊娠4カ月(85日)を超えて出産をした(流産・早産・死産・人工妊娠中絶含む)
- 健康保険の加入者または加入者の被扶養者
また、外国人でも、会社員として働いていて健康保険に加入している場合、上の条件を満たせば申請可能。国民健康保険の場合は、加入者が1年以上在留している、もしくは1年以上の滞在が市区町村役場に許可されていれば、申請できます。
会社を退職した場合の出産育児一時金の申請
会社を退職して加入していた保険の資格を喪失しても、次の条件を満たせば元の保険に申請して、給付を受けられます。
- 資格喪失日の前日(退職日)までに被保険者期間が継続して1年以上ある
- 退職日の翌日から6カ月以内に出産した
上の条件を満たしていて、退職後に夫の扶養に入った場合、どこの健康保険から給付を受けるかを選ぶことになります。
出産育児一時金の受給方法
出産育児一時金の受給方法は、次の3つです。
- 直接支払制度
- 受取代理制度
- 産後申請方式
それぞれお金の流れや、誰がいつ申請するのかといった点が異なります。一般的には直接支払制度での受給になることが多いのですが、場合によっては他の方法を利用することになります。それぞれの制度の概要や申請方法を、事前に確認しておきましょう。
直接支払制度の概要と申請方法
直接支払制度とは、医療機関と被保険者の合意のもと、各健康保険から医療機関へ出産費用が直接支払われる制度です。
以前は分娩費用を全額窓口で支払ったうえで、後から出産育児一時金を請求する必要がありました。しかし、直接支払制度が導入されたことにより、窓口では一時金の金額を超えた費用のみを支払えばよくなり、現金の支出が少なくなりました。
直接支払制度を導入していない医療機関もあるため、事前に直接支払制度に対応しているかどうかの確認が必要です。
直接支払制度の申請方法
直接支払制度を利用する場合、健康保険への申請は必要ありません。
次の手続きだけで支給を受けることができます。
- 被保険者証(保険証)の提示
- 医療機関が提示する合意書へのサイン
合意書の内容はおおむね次のようなものです。
- 医療機関が妊産婦に代わって出産育児一時金の請求を行うこと
- 妊産婦に代理請求の手数料は発生しないこと
- 分娩費用が出産育児一時金の金額を超えたときは差額を窓口で支払うこと
- 出産費用が出産育児一時金の金額を下回った場合、妊産婦は差額の請求ができること
- 帝王切開の場合、出産育児一時金を手術費用にも充当すること
直接支払制度で出産費用が出産育児一時金の金額を下回った場合、差額が申請できます。
申請方法
出産の翌日より2年間
必要なもの
- 出産費用の領収書・明細書(写し)
- 直接支払制度の合意書(写し)
- 印鑑
- 振込み先口座が分かるもの(預金通帳など)
など
そのほか、申請先や申請のタイミングによって必要な書類が異なります。事前に申請先に確認しましょう。
受取代理制度の概要と申請方法
医療機関が直接支払制度に対応していない場合などに、あらかじめ医療機関に出産育児一時金の受取りを委任する制度。
この制度を利用することにより、直接支払制度と同じように、窓口では分娩費用と出産育児一時金との差額のみを支払えばよくなります。
受取代理制度の申請方法
医療機関の同意を得たうえで、各健康保険に事前申請する必要があります。
代理受取制度では、分娩費用が出産育児一時金を下回った際、差額は自動的に指定口座に振り込まれます。
申請期間
出産予定日の2カ月前から(申請先によっては1カ月前から)
申請方法
申請書は各保険や自治体のホームページなどからダウンロードできます。
出産予定日がわかる書類(母子健康手帳の写しなど)
産後申請方式の概要と申請方法
出産費用を一旦窓口で支払い、後日出産育児一時金が指定口座に振り込まれる制度が「産後申請方式」です。
医療機関が直接支払制度や受取代理制度に対応していない場合、医療機関へカードや現金で直接支払いをしたい場合などに利用できます。
また、渡航中に海外で出産した場合などにも、産後支払い方式の申請を行います(ケースによって必要なものは異なります)。
産後支払方式の申請方法申請方法
- 被保険者証(保険証)
- 出産費用の領収書
- 医療機関等から交付される合意文書(※直接支払制度にかかる代理契約が医療機関との間に締結されていない旨の明記が必要)
- 印鑑
- 振込先口座が分かるもの(預金通帳など)
そのほか、海外で出産した場合など、ケースによって必要なものが異なります。
まとめ
出産育児一時金は妊娠4カ月目以降の出産で、健康保険の加入者や加入者の被扶養者であれば申請可能。要件を満たせば、退職した方や外国人でも制度を利用できます。
受給方法は「直接支払制度」「代理受取制度」「産後支払制度」の3種類。自分が利用する制度を理解して申請手続きを行いましょう。
出産1人につき42万円が支給されますから、出産育児一時金をきちんと受給できれば、出産時の経済的な負担がぐっと軽くなりますよ。
参考:
全国健康保険協会『子どもが生まれたとき』
新潟市出産育児一時金
厚生労働省『出産育児一時金の支給額・支払方法について』
厚生労働省『産科医療補償制度について』
全国健康保険協会『Q6:会社を退職しましたが、退職後に出産した場合でも在職中の健康保険での被保険者出産育児一時金を申請できますか』