【知って得する!保険の基本】教育資金準備計画の死角
長女に届いた一通の手紙
長女の大学の費用をやっとのことで準備したF家であったが、伏兵は思わぬところからやってきた。
伏兵の名は、「国民年金」である。
平成3年4月から、学生であっても20歳になった時から国民年金への加入が義務付けられたのであるが、当時すでに大学を卒業し、社会人になっていた両親はそのニュースに接することもなく、日本年金機構から長女あてに届いた「国民年金被保険者資格取得届書」を見て、初めてその事実を知ったのであった。
1カ月15,590円(平成27年度)。
これが、これから長女が毎月支払っていく国民年金の金額だった。
長女の大学の費用をぎりぎり用意できたF家にとって、この金額は衝撃的であった。
F家の台所事情は、長女の学資保険だけでは大学入学時の費用を賄うことができず、たまたま同時期に満期を迎えた次女の学資保険の高校入学祝い金を流用してしのいだことから、その切迫度がうかがえる。
次女が公立高校を選んだことで、この「目的外使用」が可能となったわけであるが、今話題の祖父母等による「教育資金一括贈与」ではこのような目的外使用は許されない。
使い道に制限のない学資保険だからこそできた「荒業」であった。
いったいどうやって払うのか
「どうしよう……。」
ダイニングテーブルに置いた国民年金被保険者資格取得届書を前に、長女由里子(仮名)は途方に暮れてしまった。家計に余裕のないことは、由里子もよくわかっていた。
「バイトを増やそうか?」
由里子は力なくつぶやいた。実際は部活と授業のスケジュールがいっぱいで、いま以上にバイトに割ける時間はほとんどない。
「でも、15,590円も稼ごうと思ったら、だいぶ働かないとだめなんじゃないの?」
母も、由里子のスケジュールが過密であることはわかっていた。
「時給900円だとして、約17時間働かないといけないわよ。」
母が電卓で計算した数字を示しながら言う。
「17時間か~、それは厳しいかも……。」
由里子はため息をついた。
「バイトのために勉強がおろそかになったりしたら、何のために大学に行ったのかわからなくなるぞ。」