私って発達障害?気づいたのは42歳の時でした。出典 : 子どもの発達障害の場合、まず親や周りが気づいて、子ども自身は何の検査をされているのかわからないまま、診断を受けることが多いと思います。診断を聞くのも受け入れるのもまず親で、そこからタイミングを図って告知するというのがよく見られる流れではないでしょうか。それに比べて大人の場合は、仕事や日常生活で「なんだか変だな。どうしてうまくいかないのだろう?ひょっとして『私って発達障害?』」と疑ったうえで、自分の意志で検査を受けることが多いと思います。私は娘がアスペルガー症候群と診断されてから2年後、42歳の時にコンビニでのバイト中にパニックを起こしたのがきっかけで、発達診断を受けることになりました。しかし、その結果を受け止め、自身のことを理解するまでの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。9年の付き合いの主治医の診断は・・・出典 : 当時の主治医は、それまで9年にわたって私を診察してきてくれた精神科の先生でした。でも、その主治医は発達検査の結果を見て「うーん、ヨーコさんが発達障害とは思えないんだけどなぁ」と言うだけでした。このままじゃらちが明かないと思った私は、同じ病院内にいる娘の主治医に事情を話して、検査結果を見てもらいました。ざっと目を通した先生は「ああ、アスペルガー症候群ですね」と言いました。その後、私の特性も説明してくれてとても納得したのですが、それを主治医に伝えても「そうかなぁ?」とまだ納得できない様子。私の主治医の先生は発達障害には詳しくない様子で、長い付き合いの間でも先生の口から「発達障害」という言葉を聞いたことがありませんでした。だから、今まで長い間見てきて私の様子から「発達障害とは思えない」と言ったのではないかと思っています。私はあきらめずに先生やカウンセラーに「こんな困りごとがあってずっと苦しかった」、「娘が診断を受けたときの説明がそのまま私に当てはまる」と訴え続けました。そして「精神障害者手帳を取りたい」と先生にお願いしたのです。その時出してもらった診断書を見ると「広汎性発達障害」という診断名が記載されていました。こうして私は診断書を得るところまでこぎ着けることができました。しかし私は、ちゃんとした診断の上で広汎性発達障害と言われたのか疑問を抱くことになりました。それは診断が出たとはいえ、発達障害に詳しくない先生からの診断であることと、半ば無理やり勝ち取った診断のように感じられたからです。私が「ちゃんとした診断」を求めたわけ出典 : ひとまず診断を受けた私は、仕事を辞め、障害者福祉を受けながら暮らしていく道を選ぶことにしました。そんなときに、相談支援員から気になる話を聞きました。ある病院に発達障害に詳しい医師がいて、その病院で発達検査を受けたら、ものすごく詳細な所見をもらえて、説明の時も自分の特性や向いている職業まで教えてくれるらしいというのです。私はその"完璧"とも言える診断にひどく心惹かれました。「広汎性発達障害」の診断は出ていたものの、改めて発達障害に詳しい医師にきちんと診てほしいと思っていたからです。それは、「あなたはこういう人ですよ」という自分に関する説明書が欲しかったからでもあります。それまでの人生は謎だらけでした。どうしてみんなのように友達と打ち解けて遊ぶことができるのか、どうして他の人は分からないことは適当にしておいたまま勉強していい成績をとれるのか。社会に出てからは、なぜ他の人は会社の方針に溶け込んで洗脳されたようにふるまえるのか、なぜ自分はみんなと同じように仕事ができないのか、なぜミスばかり繰り返してしまうのか…。私はなぜ、他の人と同じようにできないのかと何度何度も悩んだのです。ずっと苦しかった。ずっとさみしかった。その診断があれば、今までの謎が解けてこれからの人生が開けるかもしれないと思ったのです。そして、期待に満ちあふれてその病院に転院することしたのです。「こんなことまで聞かれるの!?」驚きながらも、その専門性に感動!出典 : その病院は今までとは違うところばかりでした。事前に渡される問診票では、ハイハイした月齢や喋りだした月齢など乳幼児期の様子も事細かく聞いてきます。「人の臭いや物の臭い、ものの見え方や感触や音に極端な興味を持つことが、これまでにありましたか?」など、0歳から5歳くらいまでの成育歴の質問が多いので、親に見せて聞きながら回答を書きこみました。病院に問診票を持っていくと、それを見ながら「何か好きな素材や逆にこれは受け付けないというものはありましたか?」「学校では得意・苦手な教科は何でしたか?」「忘れ物は多かったですか?」「臭いや光、味に敏感ですか?」「仲の良い友達はいますか」など次々と追加の質問を受けました。その答えを聞いた先生は納得したように頷き「今ついている診断で間違いないでしょう。それに加えて注意欠陥障害もあるでしょうね」と言われました。この診察に私は感銘を受けました。というのは、質問は自閉症の子どもに特有の症状について的確に尋ねられており、追加の質問でも問診の答えを確かめるように進めてゆくことが分かり、先生の専門性の高さに感心したからです。ただ正式な発達検査を受けることはできませんでした。これは発達検査に使われるWAIS-Ⅲは、一度受けたら次は2年間は空けなければいけない決まりがあるためです。療育手帳取得挑戦の際にすでにWAIS-Ⅲを受けたことがあった私は、この2年間のインターバルが経過していなかったのです。それでもなお、憧れの診断にこだわる私に、ソーシャルワーカーはこう言いました。「とことん気になる、知りたがるというのは、生きづらさにつながるアスペルガーの特性からきてると思う。憧れの診断書が手に入らなかったら次に何が欲しいの?」その問いは、私が医療に何を求めているのかを問うものでした。自分の説明書はやっぱり欲しいけれど、2年待たなければならないのはどうしようもない。その現実をこの問いで突きつけられたのです。このとき初めて前を向いて、いま困っていることを何とかしてもらうことが大事だと思うことができました。その上で私の答えは「今の心のしんどさをやわらげてほしい。発達障害であるという視点から二次障害の精神症状やうつの治療もしっかりしてほしい」でした。こうして、先生の専門性を信じてその病院に通い続けることを決めました。自分の特徴を知ることで、今までの謎が解けてゆくように出典 : 今は二次障害である精神症状やうつの治療を受けつつ、自分の困りごとの原因は何なのか、先生の解説で謎が解けていっている感じです。そして生きづらさの解消のため、それまで飲んでいた薬は大幅に見直され、ADHDの治療薬のストラテラを服用することに。新しい主治医を始め、ソーシャルワーカーなど理解ある人に関わってもらっているおかげで、自分の特性が生活や仕事のどんなところに影響を与えているのが理解することができるようになってきたのです。自身の弱点や、疲れ切ってキレてしまう前の予兆なども分かるようになり、意識して自分をコントロールすることできるようになったと感じています。診断を生かしていくために出典 : 発達障害の診断を受けたら、具体的な自分の特性をじっくりと説明してもらうことをお勧めします。そうすることで、今までの生きづらさの理由が氷解し、自分の特徴をしっかりと理解することができるはずです。その上で、医療や福祉の支援を受けて理解者・支援者を増やし、困っているときは助けてもらうことができれば、自分の直面した困難にくじけてしまうことも防げるはずです。繰り返しになりますが大切なのは、診断を受けっぱなしで終りではなく、自分の特徴を知り、より自分をコントロールできるようになることです。診断を受け、なにが自分の生きづらさを作っているのか。自分で工夫できるところはあるのか。どんなサポートを受けたらいいのか。それを知ることが、生きづらさの解消につながるのではないでしょうか。
2017年04月28日よく聞く、「小学校は別世界」という言葉出典 : 発達障害のある子どもを育てている親にとって、小学校入学というステージはとても不安なものだと思います。それまで楽しく遊んでいれば良かった幼稚園・保育園の頃と違い、学習という活動がメインとなるのが大きな理由でしょう。また、幼稚園や保育園では手厚い支援をしてもらい、とにかく褒めて育ててもらえていた状態だったお子さんにとって、集団のルールを守ることに重きが置かれている小学校では、息苦しさを感じることが多いのです。幼稚園・保育園ではのびのび楽しくやっていたのに、小学校に入ってから急に自信を失うようになって…というようなお話を、私は幾度となく発達障害児の保護者から聞いてきました。ですから、発達障害のある息子の小学校入学は私にとって緊張感が漂うものでもあったのです。今のところ、息子は小学校の先生たちに手厚く支援していただいているおかげで、毎日楽しく通っています。けれどもやはり、小学校生活のさまざまなことで混乱をしている様子。それは、幼稚園時代にはなかったことでした。トイレに行ってはいけない!?息子の混乱例えば、小学校から帰ってきた息子が、こんな相談をしてきたことがあります。「今日ね、授業中におしっこもらしそうになって。先生にトイレ行きたいです!って言ったんだ。そしたらね…」Upload By モビゾウ「『小学校ではトイレは休み時間に済ませましょう』って先生に言われたの。それなのにね…」Upload By モビゾウ「先生は休み時間に済ませましょうって言ったのに、『はい、じゃあ行ってらっしゃい』って言われたんだよ。意味が分からないでしょう?」なるほど、先生は「本当は休み時間に済ませるのがルールだけど、今日は特別に行ってもいいよ」ということを言いたかったのでしょう。けれども息子は、この「今日は特別に」という部分が先生の言葉から読み取れないのです。先生の言葉をそのまま理解するため、「行ってはいけない」「はい、行ってらっしゃい」という言葉を同時に言われたことに混乱してしまったのでした。Upload By モビゾウさらに息子は、「小学校ではトイレは休憩時間に済ませるってことは、授業中にお腹痛くなったり気持ち悪くなったりしてもトイレに行っちゃいけないのかあ。どうしようどうしよう。お腹痛くなったらどうしよう」と悩み始めたのです。息子の発達障害の特性の一つなのですが、言外の意味を読み取るのが苦手なだけではなく、思考が0か100の両極端に偏りやすいのです。息子は「トイレは休み時間に済ませましょう」という先生の一言を、「具合が悪くても、何があっても、授業中のトイレは我慢しなければならない」という風に、極端な形で解釈してしまうのでした。無数にある集団生活のルール。それを把握することの困難さ出典 : このように、小学校には集団生活を円滑に送るための無数のルールが散らばっています。さらに、そのルールには例外や変更が沢山あるのですが、発達障害児にはそれを把握することがなかなか難しいのですのびのび遊ぶこと、褒められることがメインだった幼稚園時代に比べて、小学校に入ると「こういうルールがあるからダメ」ということが増えていきます。発達障害児は、なんとなく周りとうまくやれる程度にルールを把握するということが苦手です。小学校が別世界というのはこういうことだったんだな、と毎日混乱する息子を見ながら、私もなんとなく理解できたのでした。
2017年04月20日息子のことをよく考えてくれる先生だったけど…Upload By モビゾウ発達障害のある息子は、苦手なことや、頑張ってもできないことがたくさんあります。また、聴覚や触覚などに過敏性があるため、教育の現場にいる先生方にはある程度の支援や配慮をお願いしなければなりません。ところが、一生懸命息子のことを考えてくださる先生が様々な支援や配慮をしてくれているにも関わらず、息子が激しい癇癪(かんしゃく)を起こしてばかりだった時期があります。私は、何かが息子のストレスになっているのだと感じてはいたものの、あの先生に支援して頂いているのだから…と思い、いろいろ詮索せずにいました。けれども、一生懸命息子を支援してくださる先生には、こんなセリフが多いことに気付いたのです。先生なりによく考えた結果の支援・配慮。でも…Upload By モビゾウ「たぶん、息子くんはこういうことはできませんよね」「大丈夫です、配慮します」「息子くんにはやらせないようにしますから、大丈夫ですよ!」この先生が「支援」や「配慮」をしてくださるたびに、息子の癇癪は増えていきました。「どうせ僕なんかダメなんだーーー」「どうせ僕はできないからもういい!!」この時期、何か行事があるたびに息子は酷く荒れました。行事では、負担にならないようにと、息子は常に端っこのほうに寄せられていました。光を当ててもらえる他のお友達に比べて、なぜ自分はいつも「たぶんできないから」と端っこに寄せられてしまうのか…。そういった扱いを受けるたびに、息子の自尊心はひどく傷つけられてきたようでした。そんなときの担任変更。だけど私は正直不安な気持ちに出典 : ある時期から別の先生が担任になることになりました。その先生に息子が発達障害であることを相談すると、「大丈夫、息子くんは能力があるから。からまった糸をほぐしてあげれば、必ずできる子だから」とおっしゃられていました。この言葉を聞いた時、正直私は不安になりました。息子を他の子どもたちと全く同列に扱って、負担をかけてしまうのではないかと思ったのです。けれどもそんな私の心配をよそに、その先生が担任になってから息子の態度はガラリと変わりました。他の先生の「支援」に触れてUpload By モビゾウその先生は、息子が苦手としていることに対して常に「こうしたらできるかもしれないよ」とヒントを与えてくださる方でした。息子もそのヒントをもとにやってみたら、できないと思っていたことができたり…ということが何度もあったようです。そして必ず、「大丈夫、君は出来る子だよ」と息子の能力を信じる言葉をかけてくださいました。あんなに「僕は出来ない子だ」と癇癪ばかり起こしていた息子が、行事のたびに「こんなことができるようになった」「こんなことが楽しかった」と話してくれるようになりました。毎日息子を見ている私にとって、その変化は目覚ましいもので、驚きを隠せませんでした。Upload By モビゾウそして最後の発表会。以前は端役をあてがわれてきた息子が主役を演じる姿がありました。舞台からは「僕は出来ない子なんかじゃない」という息子の言葉が聞こえてきそうでした。本当に必要な「支援」や「配慮」ってなんだろう?出典 : 息子の変化を見て分かったこと。それは、「支援」や「配慮」というのは「出来ないことをさせない」ということではないということです。「どうせ出来ないから」と言って苦手なことを免除してしまうのは、その子にとっての自信には決して繋がりません。「支援」や「配慮」とは、他の子とはちょっと違う教え方やお手伝いをすることで、発達障害児にとって難しいことを、少しでも楽に出来るようにしてあげることだと思います。「あ、なんだ、こうすれば少し楽にできる」と発見したとき、それが初めて子どもにとって「できた!」という自信に繋がっていくのだと感じています。
2017年04月13日生まれた時から、「障害」は私の特徴のひとつだったUpload By 和田 恵利菜「障害者」という言葉に私はこれまで親しみを感じながら生きてきました。他ならぬ自分自身が障害者と呼ばれる立場にあるからです。私は先天性の障害で、3歳の時から電動車いすを使用しています。歩くことはできませんし、握力も弱く、自分の腕を持ち上げることも出来ません。できないことは多くありますが、現在、私は障害を自分の特徴の一つだと思っています。私は小中高と地元の学校に通い、現在は大学で心理学を専攻しています。大学では比較的バリアフリーが進んでおり、友人や先生、ヘルパーの方の手を借りながらも、快適に生活ができています。しかし、小中学校、高校での生活は、物理的にも制度的にも困難に感じることが多くありました。9年間ずーっと1階の教室で過ごした、私の同級生電動車いすを使用する私にとって、最も大きな問題はやはり「移動」です。学校には多くの段差が存在し、当然、階段も使用しなければ学校生活を満足に送ることはできません。小学校、中学校では、小さな段差や階段に対しては、スロープをつけるなどの工事を行い、問題を解消してもらえました。しかし、私の地元にはエレベーターの設置がある公立学校は少なかったため、私の通っていた小中学校でもエレベーターを設置してもらうことはできませんでした。そこで対策として、私の学年の教室は常に1階に設置してもらうこととなりました。小学生から中学生までの9年間、私はずっと1階の教室で勉強をし、日々の学校生活を楽しんでいました。Upload By 和田 恵利菜私の在籍していた学校は小中一貫校で、周囲の友人も9年間ほとんど変わることがありませんでしたので、当然、私の同級生も9年間、1階の教室で過ごすことになったのです。そんな中、ある日私は「僕だって1階じゃなくて上の階の教室がよかった」という同級生の声を耳にしました。自分のために周りの人たちに我慢を強いているのではないか。はじめてそう気が付いた私は悲しく思い、同時にどうしたらよいのか分からなくなりました。そんなとき、私を救ってくれたのは「私は1階の教室も好きだし、気にならないよ」という友人の言葉でした。彼女にとっては何気ない言葉だったのだろうと思いますが、当時の私にとっては「私に合わせて変えた環境を、受け入れてくれる人もいるんだ」と感じることができた大切な言葉でした。私は、環境を工夫すれば「障害者は障害者でなくなる」と思っています。それは私のような身体障害だけではなく、全ての障害に当てはまることだと思います。Upload By 和田 恵利菜できないことは環境の工夫次第で、できるようになります。幼少期、児童期の私にとって、歩けないこと、腕がうまく動かないことは、劣等感を感じさせるものでした。自分が思うように行動できないもどかしさにイライラしたり、周囲の人に迷惑をかけてしまっていると罪悪感を感じたりすることもありました。しかし、小中学校、高校、大学と進学し、その都度、環境を工夫し、支援をしてもらう中で、私が学校で「できないこと」は減らせることを知りました。つまり、それぞれに適した工夫によって、身の回りの「障害」がなくなった瞬間に、障害者は障害者でなくなるのです。特にそれが顕著なのは、発達障害なのではないかと思います。「環境を整える」−かつて私が受けた支援は、発達障害の子どもたちにも必要なものだったUpload By 和田 恵利菜私は現在、放課後等デイサービスでアルバイトをしています。そこでは発達障害やその傾向のある小学生の勉強を見たり、一緒に遊んだりしています。子どもたちの中には、周囲に人がたくさんいる状況で集中して勉強することが難しかったり、自分の思いや考えを言葉で表現することが難しかったりする子もいます。どうやったら子どもたちが快適に過ごせるようになるのか、どうするのが子どもたちにとって最も良いのか、私も試行錯誤の毎日です。ですが、そんな中で気が付いたのは、環境を整えることができれば、彼らの可能性はぐんと広がるということです。集中が続かない子どもに対して、時間を細かく区切って活動する、仕切りを立てるなど一人で落ち着いて勉強に取り組める環境を作る、一度にすべての指示をせずにひとつずつ図示して伝える。全て本に載っていたり、講義で学習したりした、発達障害のある子どもたちに対する対応策の一例です。Upload By 和田 恵利菜これら全てを実践してみることはまだできていませんが、一部を実際に試してみると、一見できないと思っていたことが、簡単にできるようになる子どもたちがいました。特に指示をひとつずつ伝えるということは意識を持つだけで簡単に実践できるので、私は常に気を付けるようにしています。これらの対応策は、多くが「環境を整える」というものです。そして、私が学校で受けた支援も同じ「環境を整える」というものなのです。合理的配慮の広がりに向けて、当事者として声をあげたい困難の内容は、障害によってそれぞれだと思いますが、案外、解決方法は似ているのではないか。私はそう思います。個人の特性に合わせて環境を変えていくのに、個人の力だけでは限界があります。そこで私が注目したいのは「合理的配慮」です。合理的配慮とは、2016年4月に施行された障害者差別解消法において、障害の有無にかかわらず、全ての国民が互いを尊重し合いながら共生する社会の実現を目指して定められたもので、私は障害者一人ひとりの特性を踏まえた支援を行える可能性が広がったのではないかと考えています。Upload By 和田 恵利菜行政機関と民間事業者との義務の違いがあったり、配慮を実施する側の負担が大きすぎる場合など、全ての要望が実現するわけではありませんが、法律で障害者への配慮について定められたのは、大きな一歩だと思います。実際に、私は現在通っている大学に配慮の提供を申し出て、何度も話し合いを重ねてきました。また、自分が高校で受けた支援内容を行政機関に紹介したこともあります。私は、合理的配慮による可能性の広がりに期待を持っていますが、多くの人が快適に過ごせるようになるには、まだまだたくさんの課題があるようにも感じています。Upload By 和田 恵利菜例えば、要望通りの配慮が行われない場合や、配慮を申請し、実施するまでの手続きに長い時間がかかってしまう場合などは課題として挙げられるかもしれません。これら全ての課題を解決するには長い時間がかかるとは思いますが、私たち当事者ができることは、まず声をあげる、そして伝えることだと私は考えます。配慮を提供してくれる側に、何か伝える前から「私たちのことを分かって」「こちらの要望を察して」というのには無理があります。こちらの要望や状況を理解してもらうには、自分はどういう状況にあって、どういう配慮をしてほしいのか、適切に伝える必要があるのではないかと思います。目に見えない、言葉にならない障害に、周りの人たちはどんな”通訳”ができるだろう出典 : ここで、私がもうひとつの課題だと考えるのは、当事者本人が言葉を介して、自分の現状や意見を伝えることが難しい場合もあるということです。私の場合は、電動車いすを使用していて、段差や階段などの物理的障壁を解消する、トイレや移動の介助をするなど、要望は比較的目に見えやすく、想像のしやすい配慮だと思います。しかし、私はアルバイトで発達障害を持つ子どもたちを見ていて、言葉で適切にコミュニケーションをとるのが難しいと思える場合を目にし、代わりにそれを伝える役割の存在が必要なのではないかと感じました。それは保護者や友人、先生や同僚など、様々な可能性が考えられます。一人でも本人のことを理解し、それを周囲に伝えることができる人がいれば、当事者の生活はぐっと快適になり、社会に出ていくことができるようになるのではないでしょうか。障害者を取り巻く課題は、まだまだたくさんあります。環境の工夫だけではなくて、心のバリアフリーも進めていくことももちろん大切です。人はみんなそれぞれ異なった特徴を持っています。その特徴を生かして社会で暮らしていったり、反対にその特徴によって社会で生きにくくなったりします。それは障害を持っている人も持っていない人も同じです。それぞれの特徴や個性を、みんなが認め合い、障害者もそうでない人も互いに支え合いながら、共生できる。そんな社会になってほしいと私は願っています。私も自分の身近なところから、行動を起こしていきたいと思います。Upload By 和田 恵利菜
2017年04月07日「できること」を増やしたい!発達障害のある子どもを持つ親心出典 : 自分の子どもが発達障害だと診断を受けたならば…。「発達障害児でもできること」「発達障害児の発達を促すこと」を血眼になって探すのが、親心なのかもしれません。私もその1人でした。発達障害児を育てていると、どうしても出来ない部分ばかりが目についてしまいます。「協調運動ができない」「手先が不器用」「跳び箱やマット運動ができない」「字をマスの中におさまるように書けない」「きちんとした姿勢を維持できない」…他の子どもと並べては、「うちの子だけこんなこともできない…」と落ち込む日々が続いていました。「出来ることを褒めてあげて」と育児本には当たり前のように書いてあります。けれども、保育参観やちょっとした行事で「できない息子」を目の当たりにするたびに、「一体どこを褒めればいいんだろう…」という気持ちにすらなります。そんなとき、インターネットには心ひかれる文言が出典 : そんなどん底の気分になりながらも、「なんとか息子のできることを増やしたい」と思いネットを検索してみます。すると、キラキラときらめく言葉たちが並んでいるのです。「発達障害児向け○○!」「○○は発達障害児の発達を促してくれます!」「○○をすれば、発達障害は治る!!」こんな煌めくような魅力的な言葉たちが、私の親心をがっちり掴んでしまいました。「発達障害向け」の文言をみると居ても立っても居られなくなり、私はすぐに申し込みのメールを書き始めていました。それがどんな内容の習い事や塾であっても、息子に意思を確認することはありませんでした。これが原因で、私がしてしまった失敗を2つ、ご紹介します。出典 : ネットでの検索に取りつかれていたころ…私が一番に心惹かれてしまったのは、「発達障害を治す能力開発塾」でした。この「発達障害を治す」という触れ込みに惹かれてしまうのは私だけではなかったようで、中には新幹線や飛行機に乗って相談に訪れる人も後を絶たないそうです。ところが相談に伺ってみると、その塾の目標は「子どもを支援級に入れないこと」でした。私は当時、まだ小学校就学後のことまで考えてはいませんでした。その目標が果たして本当に適切かどうか、まだ分かっていなかったのです。その塾が何を目指しているのか、発達障害児がどう育っていくことを望んでいるのかという点について意見が合致しない場合は、私は入塾はやめたほうがいいと思いました。結果的に、入塾はお断りしました。「発達障害児向け」「発達障害が治る」という文言だけに飛びついてしまい、実態をきちんと把握していなかった失敗例です。出典 : 他にも、「これは発達障害児の発達に良い」「前頭前野の発達を促す」という言葉に、私は飛びついてしまいました。そんな私を突き動かしたのが、「乗馬は発達障害の発達に良い」「カヌーは発達障害児の発達に良い」という情報でした。私は息子を連れて、発達障害児を対象とした乗馬教室とカヌー教室に出かけました。その教室では他に参加する子どもたちもみんな同じように特性がある子どもたちだったため、息子だけが浮いてしまうこともないだろう…という期待もありました。ところが…。感覚が過敏な息子は、馬の臭いと大きさと肌触りにパニックです。泣いて泣いて暴れて暴れて、止まらなくなってしまいました。そんな息子を横目に、他のお子さんたちは悠々と馬に乗っています。カヌーはカヌーで、救命胴衣の感触にパニックになり大泣き。さらに、前日雨が降って川岸がぬかるんでいたのが嫌だったようで、足に泥がつくたびに大泣き。ここまで来て、こんなに息子を泣かせて、自分はいったい何がやりたかったんだろう…。私は帰りの車でため息しか出ませんでした。この教室以後、息子は馬が怖くなってしまい、今でも馬に近づけません。大切なのは、「発達障害児向け」ではなく「息子向け」だった出典 : 数え切れないほどの失敗を繰り返して、私が学んだのは、大切なのは「発達障害児向け」ではなく「息子向け」のものを選ぶことだということでした。いくら「発達障害児向け」と銘打ってあっても、息子に合った環境整備がされているとは限りません。いくらそのアクティビティ自体が発達障害児の発達に良いとしても、息子は盛大なパニックを起こし、それが失敗体験になってしまいました。逆に、発達障害児対象のアクティビティでなかったとしても、息子に合った環境整備がきちんとできていれば、息子は楽しくこなすことができます。成功体験につながることもあるでしょう。「発達障害児向け」「発達障害児の発達に良い」というのは、あくまでも理論的な話です。脳回路の話などが出てくると、どうしても飛びついてしまうのが親心。でも、理論と実践は違うのです。適切な環境整備と子どもに「やりたい」という気持ちが少しでもあれば、それが一番「その子の発達に良い」ことなのだということを忘れてはいけないのだと思います。
2017年03月30日構音障害とは?出典 : 人は、下顎(したあご)・舌・唇・軟口蓋(なんこうがい)などを動かし、声の通る道の形を変えることで話しことばを生み出します。この、話しことばを生み出す過程を「構音」と言います。「構音」は、一般的には「発音」と呼ばれています。ことばの発達は、一定の決まった順序でおおむね進んでいきます。同様に、構音の発達にも順序性があり、年齢に応じた発達段階があります。以下、発音を獲得する年齢のおおまかな目安です。2~3歳代:ア・イ・ウ・エ・オ、タ・テ・ト、パ行、マ行、ヤ行、ン3~4歳代:カ行、ガ行、ナ行、チ、チャ行、ダ・デ・ド、ハ行、ワ4~6歳代:サ行、ザ行、ツ、バ行、ラ行出典 : 「構音障害」とは、同じ発達年齢の人が正しく発音できる音を習慣的に誤って発音している状態を指します。もちろん、幼い子どもたちはうまく発音できないことばがあります。周囲のお子さんと比べて多少不明瞭な発音があっても、身近な人とであればコミュニケーションを図ることができている場合「問題はない」と思われることもあるでしょう。ですが、その発音がうまくいかない背景に、発音に関わる器官や発達を支えるものに何らかの課題が隠れている可能性があります。また、成長するとともに、発音がうまくいかないことで地域や集団におけるコミュニケーションや学習に支障をきたしてしまったり、自信を無くしてしまったりすることがあります。発音の誤りや不明瞭さの原因は一人ひとり異なるため、背景を丁寧に探る必要があります。そして、適切なアドバイスや治療、指導を受けることで改善する可能性が広がります。そのため、早期に専門機関に相談し、専門家のサポートを受けることが大切になってくるのです。「構音障害」は発達障害や知的発達の遅れなどを合併している場合もありますが、本記事では合併の場合を除いた純粋な構音障害について述べていきます。構音障害の原因による分類出典 : 構音障害には、原因が特定できる場合と、そうでない場合があります。特に子どもの構音障害の場合、様々な要因が重なり合っていることが多くあります。◇器質性構音障害生まれつき、あるいは事故や病気など後天的な理由により、唇・舌・口蓋(こうがい)・顔面などの形に問題があり、うまく発音ができない場合をいいます。・口蓋裂・口唇裂・口唇口蓋裂先天性異常のひとつで、日本では500人~600人に1人の頻度で発現します。口蓋とは口腔内の上の部分、口唇とはくちびるをさします。乳幼児から就学時までの期間中に何度か手術を施し、同時にことばの指導を行うことで、現在では80%以上が正常構音を獲得できると言われています。・舌小帯(ぜっしょうたい)短縮症先天性異常のひとつで、口腔底から舌の下面へ走っている小帯(舌の裏側のスジ)が舌の先に近く付着していて、舌の動かしづらさがある状態です。保険適応で手術や訓練をすることができ、多くの場合、正常構音を確立できると言われています。出典:「口蓋裂・構音障害」日本聴能言語士協会講習会実行委員会(共同医書出版社)・その他の器質性構音障害器質性構音障害には、鼻咽腔閉鎖不全症や口腔腫瘍等による発語器官の切除後に生じるものなどもあります。◇運動性構音障害脳卒中や頭部外傷、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ジストニアなど、神経や筋に病変が生じることにより、話すことに必要な運動機能が障害される場合をいいます。構音障害だけではなく、声やリズム・速さ・アクセント・イントネーションの異常を併発することもあります。◇聴覚性構音障害聴覚の障害により、正しい構音を獲得することが難しい場合を、聴覚性構音障害という場合があります。器質性構音障害には、鼻咽腔閉鎖不全症や口腔腫瘍等による発語器官の切除後に生じるものなどもあります。参考:「口蓋裂・構音障害」日本聴能言語士協会講習会実行委員会(共同医書出版社)◇機能性構音障害構音にかかわる器官の形態、神経や筋、聴力に問題が見出されない、また、その他の疾患や障害が無いにもかかわらず構音に問題がある場合、機能性構音障害に分類されます。主に幼児期にみられます。自然治癒が望めない場合も、早期に指導・訓練を受けることで改善する可能性が広がります構音障害なのかな?と思ったら専門家に相談を出典 : 構音障害は、成長とともに自然に治る場合もありますが、気になる場合は園や学校の先生、子育て支援センターや児童発達支援センターなどの専門機関に相談してみましょう。言語聴覚士(ST)などの専門家に相談できる場合があります。また、言語聴覚士協会のホームページから言語聴覚士のいる施設を検索することができるので参考にしてください。参考:こども発達支援センター杉並区参考:(社)日本言語聴覚士協会ホームページ全国の施設検索医師などに、ことばの問題を相談することもできます。受診できる病院の科は以下の通りです。・小児科・耳鼻咽喉科・脳神経外科・神経内科・形成外科・リハビリテーション科・言語外来を設置している各科構音障害の原因は様々であり、医師や言語療法士などが相談や検査などを行い一人ひとりの背景を探り、それに応じた対処法がみつかることもあります。参考:国立特別支援教育総合研究所「子どものことばについて相談すると、一体どんなことを聞かれるんだろう」と不安に思う親御さんが多いと思います。気がかりなことやお子さんの様子をメモに書いておくなど、事前に準備しておくと良いかもしれません。ここでは例として、耳鼻科の言語外来で言語聴覚士が行う聞き取りや検査項目をあげます。1.生育歴などの聞き取りこれまでの育ちや現在の様子についてお聞きします。大きな病気やけがなどの有無、身体やことば・発音の発達はどのようであったか、現在のお喋りやコミュニケーションの様子、本人の自覚などと合わせて、親御さんが心配していること・気がかりなこともお聞きします。2.構音検査お子さんの構音の状態を捉えるために、検査を行います。3.その他の検査・聴力検査:聴力に問題はないか・構音にかかわる器官の形態や運動をみる検査:鼻・唇・舌・歯・顎・喉などの形や動きをみる・言語発達の検査:ことば・コミュニケーション発達の検査、発達検査や知能検査の言語性課題など上記のような、構音検査以外の検査も行われます。4.鑑別診断構音障害といえるのかどうか、また、他の疾患や障害(知的障害・ことばの遅れ・聴覚障害など)の有無を判断します。以上のような聞き取りや検査を行うことで背景や原因を探り、その後の対応を見極めます。参考:「新版構音検査」参考:「子どもの発音とことばのハンドブック」山崎祥子/著(芽ばえ社)構音障害かなと思ったら、アドバイスはどこでもらえるの?言語聴覚士とは?出典 : ことばや構音については、診断の有無にかかわらず、言語聴覚士(ST)と呼ばれる専門家からアドバイスや指導を受けることができます。言語聴覚士は、一人ひとりに合わせたやり方で、ことばや構音の育ちをサポートしてくれます。家庭での接し方や、本人の気持ちを尊重しながら楽しくできる練習方法へのアドバイスも期待できます。発達ナビの以下のリンクを参考になさってください。言語聴覚士がいる施設出典 : ◇公的機関のサービス・教育・療育施設子どもの場合、「ことばの教室」などと呼ばれる小学校などの通級指導教室や特別支援学級、特別支援学校、児童発達支援などの療育機関などで言語療法を受けられる場合もあります。園や学校に相談するか、自治体に問い合わせましょう。健診や就学前健診で個別に相談できる場合もあるようです。その後、面談や審査など、所定の手続きに従います。地域によっても制度が異なりますので、お住まいの自治体に問い合わせましょう。・医療機関主治医の指示により言語聴覚士のアドバイスや指導を受ける際、健康保険が適用される場合があります。医療機関に問い合わせてみましょう。・福祉施設施設・地域によって異なりますので、各施設や自治体の定める手続きをとります。大人の構音障害の場合、訪問リハビリテーションなど介護保険の適用になる場合もありますので、福祉窓口、ケースワーカーや民生委員に相談してもよいでしょう。◇民間の教室などことばに関する指導を行う民間の教室です。利用する場合は、施設に直接申し込みを行います。発音を育てるために家庭でできること出典 : 家庭での生活や遊びのなかで、お子さんの様子を観察し、楽しく練習する機会を作りましょう。◇構音器官をどのように使っているか構音に関わる器官は、ことばを話す以外にも使われています。例えば・息を吸う、吐く・息を吹きかける・口を開ける、閉じる・噛む・なめる・のみこむなどがあげられます。これらの様子を観察してみましょう。周囲のお子さんと比べてうまくいかない、力が入らない、あるいはどこかに力が入りすぎる場合は、その様子を記録しておくと良いでしょう。口を閉じる練習・いろいろなものを噛む練習・息を長く吹く練習などが有効な場合と、余計な力を取り除くためまずはリラクゼーションの練習が必要な場合とがあります。お子さんによって取り組むと良い動作が違うため、これまでの記録とともに専門家に相談し、アドバイスをもらいましょう。◇音への意識を高める、聴く力を育てる遊びを通じて、音に注目する力、音に耳を傾ける力を育てましょう。・しりとりしりとりは効果的なあそびです。ルールの理解が難しい場合は、絵や写真、ひらがなやマス目などを手がかりとして見せながら、無理ない範囲で一緒にやってみましょう。「さかな」「なす」「すいか」「からす」などの絵カードや文字カードを用意します。カードを指しながら「さかな」と言った後、「な・な・な…」と言いながら次に続くカードを探すのも良い方法です。・かるたかるたも、音への意識を高める遊びです。正しい札を選んだあとに、1文字ずつ指をさしながら一緒にゆっくりと文章を読んでみるのも良いかもしれません。・じゃんけんすごろくサイコロの代わりにじゃんけんを使ってすごろくをします。グーで勝ったなら「ぐ・り・こ」、チョキなら「ち・よ・こ・れ・い・と」、パーなら「ぱ・い・な・つ・ぷ・る」と言いながら1文字ずつ進みます。大きな紙にスタートとゴールを描き、その間をマス目でつないだすごろくを親子でするのも良いでしょう。階段を使って、勝った人が出した手に応じて1段ずつ進むゲームもあります。◇コミュニケーション手段の確保構音の獲得や改善に効果的な方法を探る一方で、「自分の思いを伝える」という機会を確保することも大切です。話しことばに限らず、表情や視線、ジェスチャーや指さし、写真や絵、文字や記号などあらゆる手段を使って伝えたい思いを相手に伝える経験を積み重ねることは、コミュニケーションの力を育むうえで不可欠です。まとめ出典 : 構音を獲得するまでには、様々なステップがあります。お子さんの構音の育ちにつまずきがあると感じられる場合、言語聴覚士など専門家にアドバイスや支援を得ることが近道といえます。周囲よりも構音の育ちが遅いと、親御さんもお子さんも焦りや苛立ちを感じるかもしれません。「それは違うでしょ!○○って言いなさい」と指摘し言い直させてしまうこともあるかもしれませんが、それだけでは喋ることそのものを嫌いにさせてしまう可能性があります。上手に発音することだけではなく、様々な人と関わりコミュニケーションすることが楽しいと感じられるような工夫も取り入れながら、成長を応援する姿勢も大切かもしれません。専門家と相談しながら、実践できる方法を探り、取り組んでみましょう。参考:「子どもの発音とことばのハンドブック」山崎祥子/著(芽ばえ社)参考:井出歯科医院
2017年03月24日特別なニーズにもこたえる、通信制サポート校「しんあい高等学院」って?出典 : 今春から大阪府大阪市に設立される通信制サポート校「しんあい高等学院」。日本でもまだ珍しい発達障害のある子どもたちの受け入れに特化した通信制サポート校です。これまでの通信制サポート校と、一体どのような違いがあるのでしょうか。しんあい高等学院/明蓬館SNEC 大阪・玉造入学試験には作文と心理検査結果の提出、そして子どもと保護者それぞれの面談があります。事前に障害特性・認知特性・学習特性などを見極めたもとで授業カリキュラムを作成していきます。入学前から生徒ひとり一人のニーズを見極め、万全な受け入れ態勢を作っています。もし心理検査を受けたことがない場合は、見学や入学相談とあわせて専門職員による検査を受けることも可能です。SNEC(スペシャルニーズ・エデュケーションセンター)とは、特別支援教育のための通信制サポートシステムです。このシステムは、「自閉症の僕が飛び跳ねる理由」で有名な東田直樹さんや、学習障害の理解を広げる活動を行っている講演家の南雲明彦さんなど社会で活躍している人たちを輩出した、福岡県にある明蓬館高等学校の日野校長によって発案されました。専門職員による面談・心理検査を通じ、入学前の検査結果をもとに個別のニーズにあわせて支援・指導計画を作成し、学習面を中心に身辺自立や人とのかかわり方、就労観など将来を見据えた訓練を含めてサポートをしていきます。また、進級にともなう試験も点数評価だけでなく各自にあわせた提出課題をつくることで着実に学習の定着をおこなっていけるようにしているのも特徴です。学習環境に関しても、通信制なので年1回(4日間)のスクーリング以外はサポート校への通学と自宅学習を自由に選ぶことができます。ひとクラスで一斉授業を行うのではなく、本人の望む環境で課題に集中することができる点は魅力的です。ただ高校に通うのではなく、それぞれの個性を生かせるような教育を目指しているのです。東田直樹オフィシャルウェブサイト南雲明彦オフィシャルウェブサイトそして何より注目したいのは、高校には臨床心理士・社会福祉士・特別支援の知識を持つ専門スタッフが常駐している点。学力面だけでなく生活支援もあわせたサポートを目的として動いてくれるので、思春期特有の問題があったとしてもすぐに相談できるところが魅力的です。気になる卒業後の進路もしっかりとバックアップする体制をつくっています。大学や専門学校への進学支援はもちろんのこと、就労の際は連携先の企業とのインターンシップ制度を用意していたり就労継続支援へつなぐこともできるようになっているのです。明蓬館高等学校品川・御殿山SNEC(スペシャルニーズ・エデュケーションセンター)学院長にインタビューしました学校を運営するのは法人事業で福祉に15年携わってきた真田明子学院長。今回、発達障害に特化した通信制サポート校を開設するに至った経緯について、発達ナビ編集部がインタビューを行いました。Upload By 発達ナビニュース―なぜ「しんあい高等学院」を設立しようとお考えになったのでしょうか?真田明子さん(以下、真田さん):わたしたちは15年間、福祉事業に携わってきました。2006年からは児童デイサービスを開始し発達障害のお子様や親御様と接する機会が増える中で、高校以降の進路があまり用意されてない現状に気付いたんです。そんなとき、明蓬館高等学校のSNECを知り、ぜひ関西でも同じような高校が作れないかと思いたちました。―これまで関西にはSNECのような発達障害のお子さんをサポートするような高校はなかったのですか?真田さん:実は、関西は全国で比べても通信制高校が多い地域なんです。発達障害や不登校のお子様は自然と通信制高校に進学する流れができていたので問題があまり表面化しなかったんですね。ですがその裏で、進学後に最後まで通えずまた不登校になってしまったというケースも、多く発生していたのです。その大きな要因は、お子様の障害ケースに合わせられる専門家がおらず、適切なサポートを受けられなかったからではないかと推測しています。―だから、SNECサポートシステムの通信制サポート校の設立が必要だったんですね。真田さん:そうですね。しんあい高等学院には、臨床心理士や社会福祉士などの専門資格を保有した職員を常に配置しています。教育面だけでなく生活面のサポートも行っており、お子様が困っていればすぐにこちらからフォローを入れられるようにしています。―とても手厚いサポートが受けられるようになっているんですね。なぜ、ここまで万全のサポート体制を敷いているのでしょうか?真田さん:SNECサポートシステムを考案した明蓬館高等学校の日野校長から、以前こう言われました。「多感な思春期こそ大切にしなくてはならない」と。10代に受けた考えや環境は後々大きな影響を及ぼします。この時期をしっかりサポートすることにより生徒たちが安心して社会に出られるようにしたい、と。この考えに非常に感銘を受けまして、本校でもその精神を大切にするため発達障害に詳しい専門スタッフをおくようになりました。今後も本校のように遠隔授業を用いてサポートできるような通信制サポート高校が全国に広がり、より多くの支援を必要としている子どもたちに届けばと考えております。これからの新しい通信制サポート校のカタチに期待出典 : 真田学院長にインタビューした際、このようなこともおっしゃられていました。「海外では不登校という概念自体がない国もあるんです。」学校に通うということ自体を目的とせず、どういう学び方ができるかを本質的に探っていくという考え方が根付いていれば、子どもが「不登校」かどうかを問題とする必要もなくなるのでしょう。しんあい高等学院のように「それぞれの発達にあわせた学び方」を掲げる高校が全国に広がり、新しい学びの選択肢として定着していけば、子どもたちの進路にも新しい道が開けていくのではないでしょうか。しんあい高等学院、入学についての詳細はこちら
2017年03月23日うちの学校の支援級、わが子に合ってる…?出典 : 「支援級か、通常級か…迷ってるけど、どうやって判断すればいいの?」「うちの子が通う学校の支援級、どんな環境だろう?どういうところを気にしたらいいの?」現在、希望者急増で過渡期にある、特別支援学級(以下、支援級)をめぐる状況は様々です。情報を探すと、「うちの子も是非お願いしたい!」と思える素晴らしい支援級もあれば、残念ながら、現場の事情が追いつかずに、十分な理解や子どもに合った対応が得られない支援級もあるようです。支援級をご検討の際には、実際に、お子さんが通う「その」支援級がどうなのか、自分の目で確かめてみることが必要です。長男が自ら通常級から支援級への転籍を希望した際、私はまず、特別支援コーディネーターの先生の案内で、実際にクラスを見学させて頂き、事前に疑問な点、不安な点の詳しいご説明をお願いし、長男本人も見学・体験させて頂きました。それでも、後から「もっと早く確認しておけば良かった」と思ったことも少なからずありました。そこで、支援級を選択する前に「確認してよかったこと」「確認しておけばよかったこと」の、判断のポイントを、あくまで「うちの経験上」ではありますが、楽々かあさんこと、大場美鈴がお伝えします。支援級見学の際にぜひ確認しておきたい!4つのポイント出典 : 長男が通っている支援級は、身体・知的に障害のあるお子さんのクラスと、長男のように、大きな知的・言葉の遅れの心配はないものの、発達障害の傾向のある子が中心となる、情緒級に分かれています。学校によっては、どの障害の状態のお子さんも一緒のクラスになる場合もあります。その場合でも、個別に学習内容を調節して頂ける場合はいいのですが、そうでない場合、お子さんに学習面での理解力がある程度あっても、学習内容や課題が簡単過ぎるケースがあります。そうなると本人の理解度とのミスマッチが起こり、その支援級がその子の力を伸ばせる環境とは言いがたくなる可能性があります。逆に情緒級がある場合も、その子の学習の進度に合わせた課題でない場合もあります。本人の能力や理解度に合わせた学習ができるかどうかは、よく確認しておきたいポイントの一つです。万が一合わない場合でも、先生と学習内容を調整して頂けるか、相談の余地があるかどうか、見極めておいたほうがいいでしょう。また、基本的に支援級の成績表は、「国語は漢字ドリルをがんばり、丁寧に漢字を書けるようになりました」というような、言葉による表現がされることが多いようです。特に将来的に、中学受験の可能性がある場合には、念のため希望した際には通常級と同じ評価で対応可能かどうか、確認しておいたほうがいいでしょう。(中学受験の際、全ての学校で成績表の提出が必須という訳ではないようですが、一部の入試日程や推薦、A.O.入試の場合などには、成績表のコピーの提出が必要になる場合があります。)出典 : 次に気をつけたいのは、今のところ、すべての支援級の担任の先生が、特別支援教育の知識・経験が豊富であるとは限らない、ということです。支援級の担任には、特別な資格などは必須ではなく、今まで通常級で担任してきた先生が、急に支援級を受け持つ場合も多いようです。長男の今年の担任も、長年通常級を受け持ったベテランの先生ですが、支援級の担任は人生初でした。ただし私は、支援に詳しくない先生=子どもにとって良くない先生、とは限らないと思っています。確かに、凸凹のある子に伝わりやすい方法を多く知っている先生なら心強いと思います。しかし、詳しい先生1人に負担がかかり過ぎてしまったり、クラスの他のお子さんの状況などによって、少人数であっても十分に子ども一人ひとりを見ることができない…など、先生お一人の力では解決できない現場の事情がある場合もあります。そのため支援に対する知識・経験の有無で、一概には判断できないと思います。もし、先生が支援に詳しくないからと、あからさまに保護者が落胆してしまうと、それが子どもや先生にも伝わって、その後の信頼関係に影響が出てしまうかもしれません。私は、知識・経験の有無よりも、・先生が子どもを肯定的に見ようとしてくれるか・子どもに合わせた指導をしてくれるか・親の話に耳を傾ける余力があるかのほうが大事だと思っています。しかし、見学の時点で気持ちよく応対してくれた先生に会えたとしても、翌年に我が子を担任してくれるとは限らないというのは注意したい点です。通常級に比べれば、支援級の先生は比較的長く同じクラスを担当することが多いようですが、異動がないわけではありません。また、大変残念なことながら、今まで毎年のように支援級の補助教員や介助員の先生が、年の途中で1人、2人とお辞めになってしまうことも、私は学校のお便りで度々知らされてきました。厳しい現場の現実があるように感じます。出典 : 人事異動がある先生方と違い、子どもたちは比較的同じメンバーでともに支援級で過ごすことが多いです。もちろん、入学や卒業、転籍などによる入れ替わりはありますが、クラス替えもなく、ほぼ同じメンバーで何年間も過ごすことになります。支援級は、学年を越えて、多種多様な子ども達の集まりとなるため、それが合う子、合わない子がいると思います。支援級の低学年のお子さんは、かなり自由気ままな印象がしたりで、見慣れてないと「これで大丈夫かしら…」と少々不安に感じられるかもしれません。そういう時は、何年もその環境で過ごしてきた、高学年のお子さんの様子が参考になると思います。その子なりに落ち着いていたり、交流級に意欲的に参加している様子が見られれば、その支援級の環境がプラスに働いていると受け取ってもいいのではないかと私は思っています。また、掲示物が破れっぱなしになっていないか、といった備品の様子、ロッカーに分かりやすいマークなどの工夫があるか、といった教室環境も、その支援級が安定しているかの参考になると思います。(ちなみに私は、教室の備品の乱れが放置されている場合、先生に余裕がなく、かなりお疲れ気味…というシグナルだと受け取っています。)出典 : 私が見学した時、1クラス6~7名と聞いていた支援級の情緒クラスには、いつも低学年の2~3人のお子さんしかいませんでした。他のお子さんは「交流級」に行っているのだそうです。長男の学校の場合、大抵は学年が上がるほど交流級で過ごす時間が増えていき、最終的に通常級に移籍する子も多いそうです。ご家庭で「いずれは、できれば通常級へ」と希望している場合には、交流級の活用状況は要チェックです(また、そもそも支援級から通常級への転籍が可能かどうか、よく確認しておく必要がある学校もあるようです)。交流級の活用状況は学校によって様々です。長男の小学校はかなり積極的なほうだと思います。後に担任の先生からその理由を伺うと、「年々、支援級への希望者が増えているので、◯太郎くんのように、交流級の授業に意欲がでてきたお子さんは、どんどん”卒業”して、通常級に戻って頂けると助かります」…とのこと。なかなか厳しい内情もうかがえます。とはいえ交流級を充分に活用できている学校は、通常級の子達も支援級の子に日頃から馴染んでおり、支援級”卒業”後も、比較的クラスに溶け込みやすいのではないかと思います。交流級の活用については、見学時、私はあまり気にしていませんでした。でも今思うと、重要なポイントだったと思います。どんな状況の支援級も、本人が体験してみるのがイチバン!出典 : 見学をする際には、参観日のようなよそ行きの状態ではなく、支援級のありのままの状態を子ども本人が、できるだけ何回も見られるほうがベターです。長男が普通級から支援級へ転籍する前に、私は長男本人が何度も支援級を見学・体験できるよう、お願いしました。でも見学を予定していたある日、突然見学がキャンセルになったことがありました。先生によると、「今日は、落ち着けてないお子さんがいたので、見学は中止させて頂きました。また日を改めて、予定を調整させて下さい」とのこと。それを聞いて、私はこう言いました。「是非、そういう時も本人に見せてください。ご迷惑になるようでしたら、廊下からでも構いませんので。支援級は、皆が落ち着いている時もあれば、そうでない時もあることを、本人が十分知って、納得したうえで転籍したいです。」支援級は、長男と同じように、あるいはそれ以上に、特別な配慮・支援を必要とするお子さんの集まりです。当然のことながら、少人数とはいえ、いつもクラス全体が落ち着いているとは限りません。そんな支援級で過ごすイメージを本人が持てると、入級後の環境の変化にもついていき易いと思います。長男の場合は実際に何度も授業を見学させて頂き、給食の時間を支援級の子達と一緒に過ごしたり、といった機会を作って頂きました。すると、「今日はすんごい泣いてる子もいたよ」「一年の子が途中で教室出てっちゃった」なんて言うときもありました。私は「支援級はそういう時もあるよ。それでもいい?」と聞きましたが、長男は「それでもいい。支援級に行く」と決心は変わりませんでした。「うちの」支援級には良いところも、そうでないところもあることを、十分納得の上で転籍をした私達。結果的にこの一年は、長男の成長のプラスになりました。実際に自分の目で確かめて、後悔のない選択を出典 : 長男の先生からの話にもありましたが、近年、支援級を希望する子どもが急増している傾向があります。なかなか現場がそれに追いつけないという裏事情もあり、全てが保護者の希望どおり、理想どおりという訳にはいかない場合も、多いかと思います。それでも、事前にメリット・デメリットを良く比較検討し、納得のゆくまで説明をして頂き、実際に自分の目で確かめて、体験して、自分たちの意思で決められれば、後悔するリスクを減らすことができます。学校生活でお子さんが自信をつけてゆける、プラスの選択ができるよう、祈っています。Upload By 楽々かあさん大場美鈴(著), 汐見稔幸(監修), 『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』ポプラ社, 2017年
2017年03月13日触覚・味覚・聴覚過敏のある息子。歯医者はつらいことのオンパレードで…出典 : 発達障害の子どもを持っていると、病院通いに精神的にかなり消耗する親御さんが多いのではないでしょうか。「何をされるか分からない」という状況に極度の不安を感じる子も多いですし、待ち時間に動き回ってしまう子もいるでしょう。うちの息子の場合、そのあたりのことは予告を繰り返すことでだいぶ楽になりました。ただやはりどうしようもないのは感覚の過敏さの問題です。内科や発達外来などは特に恐怖心もない息子ですが、歯科に対する恐怖心だけはどうしても消えません。それは、息子を悩ます触覚過敏・味覚過敏・聴覚過敏が、歯医者さんではフル稼働してしまうところにあります。Upload By モビゾウ息子は特に口周辺や首周りの感覚が過敏です。歯茎にも過敏性があるため、歯医者さんの使う電動の歯ブラシは拷問のようだと言います。また、「お口あーん」と言われて顎を触られた瞬間に「うわああああ、くすぐったい!!!助けて~!!」と絶叫です。また、子ども用に人工的な味をつけてあるフッ素がとても苦手です。口に入った途端に吐きそうになってしまい、しばらく治療がストップしてしまいます。シーラント治療(歯の溝を埋めて虫歯になりにくくする)はもっと最悪です。使う薬剤が酸っぱいのです。息子は嘔吐寸前になってしまい、結局治療を最後まで出来ませんでした。聴覚過敏があるので、電動ブラシの音や周りの患者さんを治療するときの音もダメです。ういぃぃぃぃん…という音に、「脳が削られる~~助けて~~」と叫びます。聴覚過敏の息子には、本当に音が脳にダイレクトに響くのでしょう。感覚過敏のつらさを、歯医者さんになかなか理解してもらえない…傷つく息子の自尊心けれども、どんなに「この子は発達障害があります」と歯医者さんに説明しても、こういった感覚の問題まで理解できる歯医者さんはなかなかいません。息子は大騒ぎするたびに叱られ、あるときなどは「僕は何歳??6歳でしょう??6歳でこんなに大声で騒いで暴れる子なんていないよ!?」と怒られてしまいました。息子の自尊心はズタズタです。「少しは我慢しなさい!!!」と言われては、息子は帰りの車で涙をポロポロと流すのでした。Upload By モビゾウドクターショッピングの繰り返し。そこには親の意地もあり…出典 : 「虫歯になったらもっと治療が大変になる…なんとかして虫歯になるのは防がなければ…」そういう思いから、私は定期的に歯医者さんに通う習慣は息子につけさせておきたいと思っていました。ところが、どこの歯医者さんに行っても、息子は耐えきることができません。息子は大騒ぎ、歯医者さんは汗まみれ、クタクタになっている歯医者さんの姿を見ると、もう一度行こうという気持ちにはとてもなれませんでした。私はママ友の話を聞いたり、ホームページを見たりしながら、ドクターショッピングを繰り返しました。受付に電話をかけ、「発達障害があるのですが」と何度も何度も説明しました。けれどもどうしてもうまくいかなかったのです。心身障害児専門歯科というものがあることは知っていました。けれども、私は近隣の歯科でなんとかしたい…という気持ちがありました。場所が遠かったのもありますが、「支援と配慮があれば、息子は『普通の子ども用の歯科』でなんとかなるはずだ…」そんな奇妙な意地が私にあったのです。けれども、ドクターショッピングを繰り返したところで、息子の歯医者さんに対する恐怖心も増幅していくばかりでした。フッ素やシーラントで吐きそうになったこと、先生に触られてくすぐったくて騒いだら叱られたこと、次第に息子にとって歯医者さんは「嫌なことをされて叱られる場所」になっていきました。そのうちに、歯医者さんと聞くだけで「やだっ!!!」と叫ぶようになってしまったのです。ようやく障害児専門歯科に行くことを決意!実際に見てみると、驚きの連続だった奇妙な意地を張り続けてドクターショッピングを繰り返していた私ですが、就学児健診で「上の歯で怪しいのが一本ありますねえ。早めに歯科に行って診てもらってくださいね」と言われ、もう気分がガックリとなってしまいました。「この子には歯医者さんはもう無理だよ…」「わたし、歯医者さん探すの疲れたよ」というくたびれはてた私の心の声が聞こえてきました。そしてようやく、「もうこれが最後の賭けだ…。障害児の専門歯科に行ってみよう」と決心したのです。当日、なんとか息子を説得して障害児(者)専門歯科に連れていきました。先生が息子の顎を触った瞬間、息子がいつもどおり「くすぐったい!!!」と叫びました。そのときに先生が、「あ、感覚過敏があるんだね~。感覚過敏があるのは、顎だけかな?首とかも嫌?」と聞いてきたのです。Upload By モビゾウこの質問に、私も息子も呆気にとられました。今まで必ず、「何言ってるの!!我慢しなさい!」と言われてきたからです。そして先生は、息子の顎を十秒ぐらいぎゅーっと押しました。「これ、脱感作療法っていいます。ぎゅーっと長いこと触れていると、感覚過敏が和らいでいくのよ。分かる?」私は、思わず涙が出そうになりました。息子もこのやり取りで、一気に先生に信頼を置くようになりました。感覚の過敏さは我慢できるものではない、そう分かってくれているというだけで、息子にとっては安心感があったのでしょう。その後、「フッ素とシーラントの味は味覚過敏で受け付けません」と私が言ったところ、先生はフッ素を何種類か持ってきてくれました。Upload By モビゾウそして、「りんご味、ブドウ味、チョコレート味のフッ素があるよ。お口に入れても大丈夫なのはどれかしら?好きなのを選んでね」と聞いてくれました。すると息子は、「チョコレート味のフッ素なら大丈夫。僕、毎日チョコレート味のキシリトールを食べてるから」と言いました。さらに息子にとって拷問だった電動ブラシによる歯のブラッシングも、「何秒なら耐えられるか、自分で設定してくれる?」と先生から言われました。息子は、「5秒なら耐えられます」と言い、いつものように大騒ぎせずに治療が終了しました。歯医者さんは、「発達障害の子には、こういう風に自分のハードルを自分で設定することが大事なんです。ここまでならできる、って自分で決めさせるんです。そうしたら、ちゃんとできるんですよ」とおっしゃいました。これは歯科治療に限らず、発達障害児の子育て全般に使える方法だと思います。歯医者さん克服が、息子の成功体験につながった!Upload By モビゾウいつも歯医者さんに行くと、「僕はどうせ」としくしく泣いていた息子でしたが、このときは自分から「次の予約取る」「ずっとここにする」と言ってくれました。帰宅してからも、今までダメだったフッ素がちゃんと塗れたこと、電動ブラシが我慢できたことをずっと誇らしげに話してくれました。息子にとって、歯科治療が成功体験になったのです。このときは、「とにかく普通の子のための歯医者さんで頑張らせたい」という意地で、親子ともに苦しんでいたことを反省しました。もっと早く、専門の先生にたどり着いていれば、息子があんなに苦しむこともなかったのにと。場所が少し離れていても、歯医者さんとの精神的な距離はグンと近くなりました。なによりも息子が、自分で次の予約を取ると言ってくれたのですから。
2017年03月09日臨床心理士さんの元で、発達障害児の追体験!目からウロコだったその内容とは出典 : 先日、「発達障害の子どもに対する大人の関わりのポイント」についての講演会情報を見つけたので、聴講に行ってきました。保育園や幼稚園での発達相談や巡回を行っている臨床心理士の先生が、現場での体験を元にお話ししてくださいました。そこで私たちは、「発達障害児の気持ちを会場の皆さんも追体験してみましょうか。体験して想像してみなければ、子どもへの支援を考えることも難しくなってしまいますから」とおっしゃり、いくつかの実験を始めました。これまで、ブカブカの手袋をはめて細かい作業をしたり、全ての音が一斉に聞こえる動画を見て、「発達障害児の世界」を体感したことはありました。けれども、今回の講演ではこのような感覚の問題ではなく、「こういう風に目標を設定してもらえると楽になるよ」ということが分かる実験をしてもらいました。これがとても分かりやすく、私にとっては目から鱗でした。「頑張れ!頑張れ!」がうとましい…それを痛感した体験Upload By モビゾウ突然ですが、上の写真のように、手を逆に組んで、ひっくり返してみてください。この状態で、隣の人から「この指を動かして」「次はこっちの指を動かして」「次はこっち」「はいこっち」と横から矢継ぎ早に指示を出されたとします。隣から指示する人は、さらに「頑張れ!」「できるよ!」「はい頑張れ!」「よくできた!ハイ次!」と叱咤激励します。実際にやってみると分かるのですが、途中でどの指を動かしているのか全く分からなくなってきます。ゆっくりと順番に指示されていればなんとかできますが、「次!」「はい次これね!」「次!」と言われているうちに、段々と頭が混乱してくるのです。そして明らかに混乱している頭で必死に指を動かしているときに、隣から「頑張れ!頑張れ!」「できるよ!」という掛け声をかけられ続けると、非常にうとましく感じられます。プレッシャーになるのです。「もういいから、黙ってて、少し私のペースでやらせてくれ!」というイライラした気持ちになってきます。そのとき私はハッとしました。自分は、同じことを息子にやっている…。不器用な息子がもたもたと課題に取り組んでいると、私は隣から「はい次!」「頑張れ!」「できる、君ならできるよ!」と矢継ぎ早に言っていることに気付いたのです。この体験は、まさにそんな発達障害児の気持ちを追体験するためのものだったのです。キャパシティを超えた目標を設定されると、人はどうなる?出典 : 次にこんな実験です。発達検査でもよくやるかもしれません。数字の復唱をさせられました。講師の方が「4925」と言うと、会場の聴衆も元気に「4925」と復唱します。楽勝です。みんな7桁ぐらいまでは割とサラッと復唱できました。ところが、講師の方が突然18桁の数を言いました。「385025960324850256 はいどうぞ!」すると驚いたことに、私も他の聴衆も「3850…」以降が言えなくなってしまいました。これを聞いて講師の方が言いました。「みなさん、さっきまで7桁ぐらいまで楽に覚えられていたのに、4桁しか言えませんでしたね。つまり、キャパシティを超えてしまうと、今まで出来ていたことすら出来なくなってしまうんです。これは発達障害児に関しても同じことが言えます。右肩上がりの発達を望んではいけないんです。今何ができるか、それを見極めていかなきゃいけないんです。その子のキャパシティを超える発達を望むと、それまで出来ていたことすら出来なくなるんです。」これは、衝撃的な体験でした。私を含め、多くの親にとって、発達障害児が大きく成長する瞬間というのは喜ばしいものです。そして喜ばしい気持ちのままに、子どもに「もっと頑張ろう」「こんなに出来たんだからまだまだ出来るよ!」と次のステップを提示してしまうことがあります。けれども、子どもたち一人一人に違ったキャパシティがあることを、その都度考えていかなければならないのだと思います。折れない心をつくるのは、キャパシティに合った目標出典 : その他にも沢山の体験があったのですが、それらの体験から学んだことは、1. その子に合ったハードルを設定する2. その子自身にハードルを設定させるようにする3. 苦労をさせて出来るようにさせるのではなく、「楽」という気持ちを作る4. 気持ちが折れないような配慮をして、「これならできるかも」を沢山作ってあげるということでした。血と汗が滲むような努力をしなければできないことをやらせるのではなく、「これなら自分でも出来るかも」という気持ちになれる適切なハードルを設定すること。これの積み重ねが、折れない心を作る自信へと繋がるのだと思います。
2017年03月02日知的障害者向けの療育手帳、発達障害の私は取得できないの?出典 : 現在、発達障害者のためだけの独自の手帳制度はありません。発達障害者のための法律は、2005年にやっと「発達障害者支援法」が施行されました。ですが手帳制度は定められていません。そのため、知的障害者に発行される療育手帳か、精神障害者保健福祉手帳がその代わりになっているというのが実情です。少し、療育手帳と精神障害者保健福祉手帳の制度について調べてみました。療育手帳は、1960年に施行された「知的障害者福祉法」には記述がなかったのです。1973年9月に当時の厚生省が出した通知「療育手帳制度について」に基づいて、各都道府県知事(政令指定都市の長)が知的障害と判定した人に発行するようになりました。それ以前にも独自に療育手帳を発行していた自治体もあったそうですが、1973年までは国の法律に基づいた制度ではなかったのですね。精神障害者保健福祉手帳は、1995年(平成7年)に改正された精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)に基づいて、各都道府県知事(政令指定都市の長)が発行しています。私は、「発達障害で、実際にかなり生活や仕事で困難を感じているのになぜ療育手帳を取ることができないのか?」という疑問を抱いていました。療育手帳では受けられても、精神障害者保健福祉手帳では受けられないサービスもありますし(特に交通関係のサービスは療育手帳の方が手厚いです)。そして「それなら実際に取得のチャレンジをしてみよう」と決心したのです。大人になってから療育手帳を取るには、どんな手続きが必要?出典 : 大人になってから療育手帳を取るためには、まず市役所等の障害福祉課に申し込む必要があります。申し込んでからしばらくして日時を指定されて、市役所の職員から成育歴や現在の生活の状況などの聞き取りが 約1時間ありました。そして、「取れてB2(一番軽度)ですね。また都道府県の指定機関で検査を受けてもらうので、日時が決まったら連絡します」と言われました。役所での聞き取りから約1カ月後、都道府県の指定機関から連絡がありました。そのときに「子どもの頃のことを聞かせてほしいのでご両親に同行してもらってください」と言われました。父はもう亡くなっているので母にお願いしました。けっこうな歳なので申し訳なかったですが。しかも「そんな昔のこと覚えてない」って言われますし。けっこう不安な気持ちになりました。ちなみに親が高齢で足を運べない場合は、電話での聞き取りになるそうです。親がいない場合はどうなるんでしょうね…?検査を受けた結果は、手帳の取得は…出典 : 検査の流れは、午前中に2時間かけて私はWAIS-Ⅲを受け、その間に母は別の部屋でチェックシートに回答し、それを心理士さんが見ながら追加で質問をいろいろと受けるというものでした。WAIS-Ⅲは途中で休憩をはさみながらも2時間少々で終わりました。心理士さんはとても手慣れていて、検査のベテランという印象でしたね。お昼過ぎに母と合流し、20分間待って母と私を担当した心理士さんたちによる結果の見通しと所見の説明がありました。結果から言うと、「療育手帳の支給はできません」でした。理由はわたしのIQが100を超えていたこと、成育歴に特に問題もなく、大学に進学したことがトドメになったようです。療育手帳の審査ではふたつのことを見るそうです。1.検査でIQを計る2.成育歴で、18歳までに知的障害の状態であったかどうかどちらでもダメだったわけですね。心理士さんにズバリと聞いてみました。「私みたいな知的に問題のない発達障害の人が検査に来ることってよくあるんですか?」すると「はい、けっこう多いケースです。やはり手帳を取っていただくことはできませんが」と答えてくれました。この日も何組もの親子が検査を受けに来ていました。検査を受けに来る人はとても多く、忙しい状態が続いているそうです。WAIS-Ⅲの所見も簡単ではありましたが、説明してくれました。もう少し詳しい所見がきけるのかと思っていましたが、分析する時間もほとんどなかったでしょうし仕方がないのかなと感じました。最後に、精神障害者保健福祉手帳で受けられるサービスについての案内がありました。発達障害に関する啓発パンフレットも、親子に1セットずつくれました。WAIS-Ⅲの結果レポートは、頼めば切手代だけで自宅まで郵送してもらえました。私は医師に提出するためにお願いしました。判定基準は都道府県によって異なります出典 : 療育手帳の判定基準は都道府県によってかなり異なります。甥が発達障がいのため、療育手帳の交付申請をしたが、知能指数が基準の75より1高い76であるという理由で却下された。社会生活に適応できないのに、手帳が交付されないことに納得できない。知能指数が高い発達障がい者も療育手帳の交付を受けられるようにしてほしい。私が住む県では、知能指数が高い自閉症などの発達障がい者には、交付基準に該当しないとして交付されないが、他の県や政令市では交付されている例があると聞いた。療育手帳の交付に当たっては、全国の発達障がい者が平等に手帳の交付が受けられるよう、交付基準を統一してほしい。どこに住んでいるのかによって、判定基準が大きく異なるというのは制度として大きな問題があると思いました。必要な人が手帳を取れる世の中に出典 : 今回の経験で感じたのは、「発達障害の生きづらさはIQで測れるものではないのに、どうして『実生活でどれだけ困難を感じているか』ということを考慮してくれないのだろう」というむなしさでした。そして、療育手帳の基準の地域差が公的文書で問題になっているのに、事務的に振り分けられることの理不尽さを感じました。大人の発達障害は今までほとんど理解されることはありませんでした。少しずつ社会も変わろうとはしていますが、現実としては「努力してもできない」「なまけているのではない」ということも理解されず、SOSを出したくてもうまく福祉につながれない人が多いと思うのです。発達障害が社会的に認知されるためにも、そして発達障害のために生きづらい人が顔をあげてイキイキと生きていくためにも、手帳を必要とする人には公正にスムーズに手帳が手に入る世の中になってほしいと思います。そして、発達障害者のための手帳ができることを心より願っています。
2017年02月24日発達障害があると「生きづらい」?出典 : 歳の発達障害の息子を育てていると、ごく当たり前のように「この子が生きづらくないように」と考えている自分がいます。「生きづらさ」という言葉は、発達障害児を育てていると頻繁に見聞きするものではないでしょうか。大人になっても「生きづらさ」を感じている人は沢山います。発達障害でなくても「生きづらさ」を感じている人は沢山います。でもやはり、発達障害の息子を見ていると、私はいつも「この子は生きづらいだろう」と感じてしまうのです。そして、「どうやったらこの子の生きづらさが取り除けるだろう」とそればかり考えています。では一体、発達障害児の「生きづらさ」って何なのでしょうか。発達障害特有の困難さは、支援で克服できることも増えてきた出典 : 息子には発達障害児特有の様々な困難があります。言葉の使い方が変わっているのでお友達に不思議がられたり、お友達の輪に入るのが好きではなかったり、聴覚や触覚が過敏だったり、運動が苦手だったり、手が不器用だったり…。これらの困難のために、息子は集団の中で様々な苦労をしているようですが、それは息子が自己肯定感を落とす直接的な原因になっていないようなのです。今は、支援方法がかなり確立されています。運動が苦手だったり、手先が不器用だったりしても、先生方や私たち親の工夫次第で結構頑張れてしまうようです。例えば息子は運動会で足が遅いことをずっと気に病んでいましたが、今は発達障害児専門のスポーツ支援の本などが結構出ています。先生方はそれに基づいて、息子に走り方の指導をしてくださいました。おかげで、運動が苦手なことで息子がひどく落ち込むようなことはありません。また、気にして見ていると、発達障害児向けの学習支援グッズなども沢山発売されています。私はそのようなグッズを探して購入したり、自分で作ってみたりしました。ですから、息子が手先の不器用さでひどく生きづらさを感じているようなことはありませんでした。また、私も幼稚園の先生も決して息子に友達の輪に入ることを強制しませんでした。周りが「この子はこういう子だ」と淡々としていれば、本人はそれほど気に病まないのです。運動や手先の不器用さなどについては支援で克服できることは結構多く、それが即息子の「生きづらさ」に繋がるわけではないように思いました。では何が「生きづらさ」につながっているのだろう。私が息子を見ていて気付いたこと出典 : けれども、どんなに支援をして息子の困難を取り除いても、私はやっぱり「この子は生きづらいだろうなあ」と感じてしまう瞬間があるのです。それは何かといえば、息子の「認知のズレ」です。例えば、息子とのやり取りで以下のようなことが毎日のように起こります。・誰かが息子の言ったことが可愛くて笑った。→「僕のことをバカにして笑っただろう」と激怒orパニック。・何かについて「ダメだよ」と注意された。→ 「この人は僕を嫌っている」と激怒。・何かの問題が難しくて解くことができなかった。→「僕はどうしようもないバカなんだ」と落ち込んで立ち直れない。・先生に「これはいけないよ」と注意される→「僕はいつも先生に叱られているダメな奴だ」と思う。・誰かが息子をからかう。→「みんなが自分を嫌っている」と落ち込む。このように、息子には認知のズレがあり、物事を過度に一般化したり、そうかと思えば突然自責の念にかられたりするところがあります。また、物事を白黒極端に捉える傾向もあり、「え?どうしてそんな風に考えちゃうの??」ということが頻繁にあります。その思考を助長するのが、相手に否定語で何か言われたり、ちょっと笑われたりということなのです。「認知のズレ」は支援することが難しい。私が息子に接するときに心がけていること出典 : 息子の生きづらさの根本的な原因について考えたとき、この「認知のズレ」が大きいのではないかと思うのです。そして、こういった認知のズレは、支援することがとても難しいです。手の不器用さや学習上の困難などは、支援グッズを使いながらなんとか解決の糸口を見つけ出すことができました。けれども、「認知のズレ」だけは、長い時間かけて手探りで修正していくしかないのです。支援グッズを使うでもなく、支援方法が確立しているでもない。私たち親ができることは、ただただ失敗したり落ち込んだりしている子どもに辛抱強く語りかけていくことだけです。だからこそ、認知のズレは親にとっても子ども本人にとっても「生きづらさ」へとつながっていくのかもしれません。けれども、だからこそ、発達障害の子には、なるべく大きな失敗をしないように環境調整をすることに意味があるのだと思います。私は息子の生きづらさを知ったうえで、人間関係や学習などで大きな失敗をさせない、挫折をさせない、本人が乗り越えられるハードルをうまく設定しながら成功体験を増やすことに集中しています。なかには、それは過保護だという人もいます。けれども、認知にズレがあるからこそ、ひとたび大きな挫折でボッキリと折れてしまうと、それを立て直すのに大変な労力がいるのです。また息子の場合、大きな失敗をすることで、他者への不要な憎しみや恨みが長いこと心に残ります。大きな失敗や挫折の体験は、発達障害の子どもの生きる糧にはなりづらいと私は思います。私は失敗を乗り越えさせることに力を振り絞ることよりも、成功体験を積ませることに力を使っていきたいです。発達障害の子どもにとって、小さな成功体験の積み重ねが心の体力になっていきます。心の体力があれば、多少の認知のズレがあっても、自分で態勢を立て直すことができるはずです。認知のズレそのものを修正するために躍起になるよりも、小さな成功体験を増やしていくことに重点を置いていくほうが、親も前向きに取り組むことができるのではないでしょうか。生きづらさは、心の体力で克服できるものだと私は信じています。
2017年02月23日・ 【第1回】発達障害の子育てに「療育」よりも大切なこと ・ 【第2回】発達障害の子どもが、充実した人生を送るために必要なこと ・ 【第3回】発達障害の子育てを「辛い、苦しい」と感じたら のつづきです。「発達障害」をもっと理解するために必要なことを、『療育なんかいらない!』の著者であり、独自の理論で放課後デイサービスを展開する「アイム」の佐藤典雅さんにインタビュー。今回は、「発達障害の子育てを楽しむコツ」についてお話を伺った。佐藤典雅(さとう・のりまさ)さん川崎市で発達障害の子どもをサポートする放課後デイサービス「アインシュタイン放課後」「エジソン放課後」を運営している、(株)アイムの代表。自身の自閉症の息子さんの療育のために、息子さんが4歳の時に渡米して、ロサンゼルスで9年間過ごす。前職は、ヤフー・ジャパンのマーケティング、東京ガールズコレクションとキットソンのプロデューサーという異色の経歴の持ち主。福祉という範囲を超えた目線で、自身の息子さんの成長を見守りながら、発達障害児が社会で幸せに生きるための道を広げる挑戦をしている。著書: 『療育なんかいらない!』 (佐藤典雅・著/小学館 ¥1,296 税込)※放課後デイサービス(= 放課後デイ):6~18歳までの障害のある子どもが放課後や学校休業日に利用できる、就学時向けの福祉サービスのこと。■子どもの障害は親のせいではありません―― この連載もいよいよ最終回。いろいろ伺ってきましたが、ずばり、佐藤さんが思う発達障害の子育てを楽しむコツって何でしょうか?佐藤典雅さん(以下、佐藤さん): まず、親自身がハッピーであること、充実した楽しい人生を送ることです。人が他人を幸せにするのは無理。幸せって自分が作り出す状態だから。状態である以上、自分で作り出すしかないんですよ。―― 子どもの障害に対して、親は自分の人生すべてを捧げるべきという風潮がありますよね。そういう中、親は自分のことを優先しにくいのかもしれませんね。佐藤さん: でも、親が療育に必死になって、「子どもには充実した人生を送ってほしい」ってボロボロな状態になっていたら、それを見た子どもがうれしいわけがないよね? こんなの、子どもにとっては重荷でしかない。―― 自分を犠牲にしてまでがんばってしまうのは、もしかしたらお母さんは「自分に責任があったのでは?」と感じてしまうからかもしれません。「妊娠中に無理したのが良くなかったのかな?」とか「早くから預けて働いたのがいけなかったのかな?」とか、いろいろ考えて自分を責めてしまうのかもしれません(※)。※もちろん発達障害の原因にそんな根拠はありません。佐藤さん: 子どもの障害は親のせいではありませんよ。僕は、それぞれの人にはそれぞれの生まれ持った宿命と人生があるのだと思っています。そして、その子どもが自分の人生の使命をまっとうできるようにサポートするのが親の役割。後は、親自身が自分の人生を楽しむのが、親の仕事だと思っています。―― 障害者の親って他の保護者より制限があるように思えるのですが、人生を楽しむことってできるのでしょうか?佐藤さん: 大切なのは、子どもに障害があろうがなかろうが、いかに、自分が今の状態を楽しめるか? なんですよ。お母さんが自分の人生を謳歌していれば、子どももその姿を見ていて楽しくなるでしょう。もちろん、普通の子育てより大変なことは多いですよ。でも、地獄で幸せになれない人は、天国にいっても絶対幸せになれませんから!―― どういう意味でしょうか?佐藤さん: 地獄で「暑い、暑い」って言ってる人は、天国に行けったら、絶対「暇だ~、なんかつまんない~」とか言い出すから。―― おもしろい考えですね(笑)。また、お母さんが生き生きとするためには、お父さんの存在も欠かせませんよね?佐藤さん: もちろんです。でも、残念ながら、うちの放課後デイに親子が面談にやってくる時、夫婦そろって来られるのは一割以下。平日の昼間、お父さんは仕事だから仕方がないにしても、お母さんの話からお父さんの存在が見えない家庭が多いのです。―― 療育センターなんかでも、付き添いはお母さんばっかりですものね。佐藤さん: 父親がちゃんと関わってくれないと、母親のストレスは2倍になります。日々の小さいことまでフォローする必要はないのかもしれないけど、重要なことには決断を下し、時々、お母さんの頭の中を整理してあげてほしいと思います。それに、話を聞いていると、お父さんの意見は結構合理的で的を得ているんですよ。なので、お母さんたちも、もう少し素直にお父さんの意見を聞いてあげてほしいと思います。■先輩お母さんとつながろう。人脈をどんどん広げよう―― 旦那が一緒になって考えてくれる、それだけでお母さんは十分心強いと思います。あと、私が心強かったのは、同じ悩みを持つお母さん仲間とのつながりです。佐藤さん: ただ、療育センターでは同じ年頃の子どもを持つ親同士でしか接点がないよね? 特に、就学前は一番不安な時期だし、子どもの先の姿が想像できない。だから、同世代だけで集まると不安を交換しあって、不安だけが増幅してしまうという難点もあります。―― 確かに。いつも同じメンバーで、ぐるぐると同じ話になってしまいがちなところもありましたね。佐藤さん: 一番有効なのは、発達障害をもつ未就学児のお母さんは、同じ発達障害を持つ中学生の親から話を聞くこと。すでにいろいろ経験してきたお母さんたちは、いろいろな情報を持っているので役立つアドバイスをくれます。わが子の将来のイメージもつかみやすいので、お母さんもあんまりパニックにならないですむ。違う世代とつながりを持つことをおすすめします。―― でも、なかなか違う世代とつながる機会がないのですが……。佐藤さん: うちの放課後デイに遊びにいらっしゃい! いろんな先輩お母さんがいるから。みんな仲が良くて、よくバーベキューやクリスマスパーティーしたり、頻繁に交流会をしていますよ!ただ、おもしろいんだけど、うちのお母さんたちが集まっても、みんな誰も子どもの話をしないんですよ。子どもそっちのけで、爆笑トークで盛り上がってるの(笑)。でも、これこそが健全な姿だと思うわけ。―― みなさん、佐藤さん同様、笑い飛ばす力を持っているんですね!佐藤さん: 発達障害の子育てをする親は、特に、開かれた視点で物事をみつめなおす必要があります。療育に通うのに夢中になっていると、気づいたら、接するのは療育センターの先生か学校の先生かママ友だけになってしまいますよ。意識的に努力して、開かれたマインドをもっておかないと。―― 人脈もどんどん広げるべきなんですね。佐藤さん: 例えば、子どもが興味のある業種に人脈を作って、その企業にインターンできるようにするとか、どうでしょう? うちの長女は将来ゲームクリエイターになりたいと言っているので、僕はプロが使うAdobeのフォトショップを覚えさせたり、夏休みは友達の会社でインターンさせたりしています。もちろん、中学生だからたいしたことはできないんだけど、興味ある業界で普段接することのない大人と過ごすことができるのは刺激的でしょう。それができたのは、僕に人脈があったから。―― なるほど! 子どもの興味があることにつながる人脈力か……。佐藤さん: 世の中にはいろんな人います。いろんな人と会って話して、どんどん外の世界に出て行ってほしい。自分の親とか同じ学校とか、同じマンションとか、同じ世帯年収とか、そういう狭い世界だけでみて、こうあるべきだと決めつけないでほしい。臨機応変に考えられるように、いろいろな情報収集をしてほしいと思います。 ■運命を受け入れることも、大切―― ところで、ここの子どもたちはとても自由に寛いでいますね(取材中の様子を見ながら)。図鑑に没頭している子もいれば、ボール遊びをしている子もいるし、寝ている子もいれば、カラオケで熱唱している子もいる(笑)。佐藤さん: 僕は、自分の放課後デイを「川崎のNASA」と呼んでいます。なぜなら、発達障害の子は宇宙人みたいなものだから。僕の役割は地球側の外交官みたいなもので、彼らの地球滞在が充実したものとなるように努めること。そして、いつか彼らが宇宙船に乗って地上に降りてきた時に、「あの時はありがとう」と言ってくれればいいな、と妄想しています(笑)。―― その妄想、素敵です(笑)。佐藤さん: 発達障害はガンダムのニュータイプみたいなもんで、既成概念の外にいる子どもたちなのだから、親の方も子どもに常識を求めるのはナンセンス。期待すればするほどドツボにはまるだけ。そしてもっというと、親自身も「こうあるべき」「こう育つべき」っていう規制概念の呪縛から出る必要があります。―― そう考えると、発達障害の子どもたちは、親に、子育てで忘れがちな、とても大切なことを教えてくれているのかもしれませんね……。佐藤さん: ちょっと話それるけど、みんなよく「結婚して幸せになりたい」とか言うじゃない? でも、結婚したって離婚する人もいるし、結婚は幸せを保証するものじゃない。「結婚すれば老後がさみしくない」っていう人もいるけど、うちのお祖母ちゃんはお祖父ちゃんが早く死んじゃったから、30年間ひとりだったわけ。結婚はさみしくない老後も保証しない。つまり、人生は何が起こるかわからない。だから、一生懸命人生の方程式を作ったって無駄なんですよ。―― では、どこを目指したらいいのでしょうか?佐藤さん: 死ぬときに本人が充実した人生だったと納得して死ねるか、そこしかないと思うんです。だから、子どもに障害があっても、お母さんは自分の人生を思いっきり生きるべきなんですよ! ―― 「やりたいことがあったなら、とりあえずやっておけ!」と?佐藤さん:そう。そして、運命というのか宿命というのかわからないけど、ある程度、受け入れることも重要だと思っています。自分にそういうカードがまわってきたということは、巡り合わせだと。―― 佐藤さんがまったくの異業種から福祉の世界に入ったのも、運命なのですね。佐藤さん: 福祉が大嫌いだった僕が、今福祉の世界で仕事をしているのも、きっと何か理由があるから(笑)。だとしたら、グダグダ文句言ってないでしっかりやりきろう、と。今目の前のことをやりきらないと、次のステージは見えてきません。それに、僕は一生福祉の世界で生きていくつもりはないので、せめて「他の福祉施設よりも結果を出してから辞めてやる!」と思っています(笑)。長時間にわたり、自身の熱い思いをしゃべり倒してくれた、佐藤さん。時に、厳しい指摘もあったが、ユーモアたっぷりの話しぶりで、発達障害の子育ての凝り固まった偏見や閉塞感を気持ちよくブチ壊し、勇気を与えてくれた。そして、著者は何より、佐藤さんのポジティブな姿勢と、常に息子さんの幸せな人生を考え、全力で取り組んでいる行動力に深い感銘を受けた。「この子なりの楽しい生き方ってなんだろう?」「この子が充実した人生を送るために、親として何ができるだろうか?」発達障害の子育てで、本当に親が悩むべきところは、そこにあるはずだ(もちろん、普通の子育てだって変わらない)。そして、大切なことは「子育てを楽しむ」ということを、常に忘れないでいたい。取材・文・撮影/まちとこ出版社 【大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界】 全4回・ 【第1回】発達障害の子育てに「療育」よりも大切なこと ・ 【第2回】発達障害の子どもが、充実した人生を送るために必要なこと ・ 【第3回】発達障害の子育てを「辛い、苦しい」と感じたら ・ 【第4回】発達障害の子育てを楽しむコツ
2017年02月18日知的障害とは出典 : 知的障害とは、発達期までに生じた知的機能障害により、認知能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態を指します。厚生労働省は知的障害を以下のように定義しています。知的障害は精神遅滞とも表される、知的発達の障害です。知的機能や適応機能に基づいて判断され、知能指数により分類されます。様々な中枢神経系疾患が原因となるため、正しい診断を受けて、早期に治療・療育・教育を行う必要があります。本人のみならず、家族への支援もかかせない発達障害のひとつです。知的障害(ID: Intellectual Disability)は、医学領域の精神遅滞(MR: Mental Retardation)と同じものを指し、「知的発達の障害」を表します。すなわち「1. 全般的な知的機能が同年齢の子どもと比べて明らかに遅滞し」「2. 適応機能の明らかな制限が」「3. 18歳未満に生じる」と定義されるものです。中枢神経系の機能に影響を与える様々な病態で生じうるので「疾患群」とも言えます。知的障害を引き起こす原因はさまざまです。病気や障害の合併症としてあらわれることもあり、その症状や知的障害の程度、苦手なことも一人ひとり異なります。また、よく学習障害(LD)と同じ障害だと思われがちですが、学習障害は知的発達に遅れがない発達障害です。知的障害は「知的機能(IQ)」の数値のみによって診断がくだされるという印象がありますが、「適応機能」という日常生活能力、社会生活能力、社会的適応性などの能力を測る指数とも合わせて診断が下されます。アメリカ知的障害・発達障害学会(AAIDD)では、適応能力を知的機能と別に考え、適応機能の程度を実生活に必要なサポートの大きさによって定義することを提案しています。適応能力をアセスメントするため、日本でもVineland-Ⅱ適応行動尺度やASA旭出式社会適応スキル検査、S-M社会生活能力検査など、評価ツールも活用されるようになってきています。このように、現在では知的機能だけではなく知的障害のある人の適応能力を重視し、支援を行っていこうという流れになりつつあります。家庭においても子ども一人ひとりの適応能力を伸ばしたり、より生活しやすいように環境調整をすることで、日常生活の困りごとを減らしていくことが大切です。参考文献:Intellectual Disability: Definition, Classification, and Systems of Supports (11th Edition)(AAIDD,2010)知的障害の子どもの生活における4つの困難とは出典 : 知的障害のある子を育てる場合、どのような困りごとがあるのでしょうか?知的障害の場合、個人差が大きいため症状や苦手なことは人それぞれですが、以下に共通してみられることの多い困りごとをご紹介します。注意力が散漫で、今行っている作業に集中できないこともあります。また、落ち着きがなかったり、人の言うことを集中して聞くのが難しいこともあります。知的障害のある人は、記憶していられる量が比較的少ないと言われています。そのため一度に複数のことを伝えても、一部しか覚えていられなかったり、長期間覚えているのが難しかったりします。知的障害の程度によっても異なりますが、学校の授業についていくのが難しかったり、書類の意味がわからない、お金の計算がわからないなど、覚えられないことで日常生活で困ってしまうこともあります。一度聞いただけでは忘れてしまうが何回か絵カードを見れば覚えられるなど、その子がどれくらい覚えていられるか、どうしたら覚えやすいかといった記憶の特徴も一人ひとり異なります。知的障害のある子どもは、自分の身の周りにある具体物を基本として外界を認識する傾向があります。そのため、時間や数といった概念的なものごとの理解や、いま目の前にないものを頭のなかで考えることが難しい場合があります。たとえば「静かに」と伝えても話し続けてしまう子が多くいます。静かに、という抽象的な注意では「何をしたらいいのか」が分かりにくく、結果的に手持ち無沙汰でまた歌い始めたり話し始めてしまう場合が多いです。言葉という概念が理解することがなかなか難しく、言葉がスムーズに覚えられない場合があります。知的障害のある子どもの中には、言葉の遅れが目立ったり、自分の気持ちを上手く言えずに手を出してしまう子もいます。知的障害の子どもへの接し方は?子育てのコツ7選出典 : 知的障害のある子どもへの接し方で基本となるのは、以下の3つのステップです。1.成功しやすい指示を出す子どもにとってわかりやすく、具体的な指示を出します。課題はスモールステップで難しくない、興味があるものだと取り組みやすく、成功を実感しやすくなります。2.行動子どもがやってみて、できない場合は少し待ってから成功に導くための適度なサポートをします。失敗体験をさせないこともポイントです。3.ほめる「できた」ときにほめることで、子どもは「いいことをした」「うまくできた」と感じます。この成功体験を繰り返すことで、習慣化し、さまざまなことが身につきます。さらに具体的なコツを以下にご紹介します。知的障害のある子どもは、目に見えないことや抽象的なことを理解するのが苦手な場合もあります。そんな時は、絵や写真などの視覚的情報を用いて伝えると理解しやすくなるかもしれません。例えば、物のしまってある場所を覚えられないとき、引き出しにアイテムの写真を貼ってあげるのも一つの工夫になります。また、手順が覚えられないときには絵カードを使うのもおすすめです。出典 : 知的障害の子どもの中には、曖昧な表現が苦手な子もいます。できるだけ抽象的な表現や曖昧な表現は避けて具体的な手順や方法を伝えることも大切です。記憶しておくことが苦手な場合は紙に書いて壁に貼っておくなどの方法もよいでしょう。その場合、絵や写真で理解できる、文字が読める、簡単な文章が読めるなど、本人の発達に合わせて伝える工夫をしましょう。複雑な状況判断を求めるよりも、パターンを繰り返してある程度覚える方が得意なお子さんもいます。何かを習得してもらいたいときは、スモールステップで一つずつ伝え、パターンを繰り返すとよいでしょう。少しずつ、パターンを学ぶことで比較的記憶に結びつきやすく、何度も繰り返すことで定着していきます。お金や時間といった生活や自立に必要なスキルは生活の中で根気よく教えていきましょう。その際に分かりやすいルールを設けることも覚えやすさにつながります。大切なことは、ルールを設けるのに終始せず、「ルールを守ったから上手にできた!」という経験を多く積んでいくことです。また、コミュニケーションの場面でも、気持ちを伝えるフレーズをいくつかパターンで学ぶという方法があります。気持ちが一杯いっぱいになっている時に、あれこれ考えるのは大人でも難しいことです。「そういうこというのやめて」「僕のだから返して」など短めの文章でいくつか引き出しを持てるといいかもしれません。伝えてもわかってもらえない場合には先生に相談する、など次の方法までパターンで学べるとより良いでしょう。次第に自分が経験したことであれば、その経験を通してものごとを理解したり考えるなどできるようになります。そのような体験を積むことで、認識できる世界を広げていきましょう。出典 : 知的障害のある子どもの中には運動の発達の遅れから、手先が極端に不器用な子もいます。作業療法など訓練をしてもよいですが、練習をするときは、日々の生活を通して、日常的に手先を使うのもおすすめです。その際も、スモールステップに分けて子ども自身がやりやすい方法で、「できた」を実感できるようにすることが大切です。服の脱ぎ着なども大きなボタンとボタンホールの服を用意して、ボタンが難しい場合は最初の一つだけはずす、など、目標をちょっと頑張ればできることにするとよいでしょう。できないこと全てできるまで練習する、など過度な練習にならないようにします。出典 : 子どもに成功体験を味わって自信をつけてもらうことが大切です。できたことは、明確に褒めることを意識していきましょう。「靴下は上手にはけたけど、ズボンはもっと頑張らないとダメだね」など、褒められたのか注意されたのか曖昧では「できた!これで合ってるんだ!」と確信を持ちにくくなってしまいます。一つ一つできたものから子どもにとってわかりやすい表現と態度で、きちんと伝えて褒めてあげましょう。できたら「ごほうびシール」を貼るなど、視覚的なものを使う「トークンエコノミー」という方法もおすすめです。できないこと、苦手なことに目をむけてばかりいると、子どもも「僕はなんにもできないんだ」と自信を無くしてしまうかもしれません。夢中になれることや、得意なことを見つけたら存分に取り組める環境を用意したり、思い切り褒めてあげましょう。「できることがある」「これは大丈夫!」という気持ちは、苦手に取り組んでいける自信にも繋がっていくのではないでしょうか。例としては、知的障害の子どもに限りませんが、欲しいものを与えないとひっくり返って大泣きしたりしてしまう子どももいます。根負けしてお子さんの望みを受け入れるしかない場面もあるでしょう。しかし、何度かそのような経験をすると、今後の生活でもかんしゃくを起こせば要求がかなえられる、と誤って学んでしまいます。例えば、お菓子がほしいとねだっている時。対処法として、事前に「今日はお菓子は買わないよ」と伝えておきましょう。しかし、事前によく約束しても、いざ目の前にお菓子があれば欲しくなってしまうものです。そこで、次の対処法としては、買い物リストを子どもに渡し、かごに入れる役割を任せたり夢中になって取り組める仕事をお願いしましょう。ただ、どんな対処法をとっても、思い通りにならない状況に泣き出してしまうこともありますよね。その時は、泣くことに対して叱ったりする前に、「そうだよね、欲しかったんだよね」と一言共感するというのも大切です。出典 : 適応能力を上げるためにできることとして、子どもの能力をトレーニングするだけでなく、環境をやりやすいように整えたり、さまざまな便利なツールを使うことで「できる」を増やすという方法もあります。集中力がない場合はおもちゃを勉強部屋から片づけるなどの集中しやすい環境を作ったり、タイマーやスケジュールを利用して一つの作業を短時間で切り替えるなどの工夫をするのもいいでしょう。また、今はさまざまな便利なツールがサポートしてくれます。たとえば、かつては電車に乗る、ということも、行き先を路線図から探して窓口で切符を現金で買い、駅員さんに切符を切ってもらうという複雑な能力が必要でした。現在はスマートフォンの音声機能とアプリを使えば経路と乗り場を教えてくれますし、ICカードがあればタッチするだけで改札を通れます。こういった補助ツールを積極的に使うことで適応度を上げ、社会的経験値を上げていくことができるのです。スマートフォンの地図アプリや録音機能をメモ代わりに使ったり、デジカメでメモをとるなど、本人がやりやすくなるツールを積極的に使いましょう。知的障害のある子どもの教育面でのポイントは?出典 : 知的障害がある子どもが受けることのできる特別支援教育には、知的障害特別支援学校、知的障害特別支援学級があります。これらの特別支援教育では、知的障害児に応じた教育課程編成や適切な教科書での学習ができます。通常学級に所属した場合も、困りごとに応じた合理的配慮を受けられるように相談してみると良いでしょう。できたら通常の学級で…そうお考えの方もいらっしゃると思います。学校に入ってからの経験は子どもにとって非常に大切です。学級規模にもよりますが一般的に通常の学級はクラスの人数も多く、障害の特性に合わせたきめ細やかな支援が受けにくい場合があるかもしれません。一方、支援級の中では出会える友達も人数に限りがあるかもしれません。それぞれのメリット・デメリットや、実際に進学する学区・学校ではどのような支援が行われているかを確認することをお勧めします。学びの場を選ぶときは医師や専門家の意見を聞くことはもちろん、子ども本人とも相談を重ねることも考慮しながら、子どもにとって学びやすい環境を選ぶのが大切です。どのクラスに進学しても、学校の先生に協力してもらうことが大切です。例えば、席替えでは静かで気が散りにくい前列にしてもらう、教室移動が苦手な場合は一声かけてもらうなど工夫をお願いしてみましょう。また先生に家庭での取り組みや、今伸ばしているところ、伸びてきたところなどを知っておいてもらうことで、子ども本人の過ごしやすさも変わるかもしれません。家庭の中だけで取り組み続けると、親御さんに負担が大きいだけではなく子どもが誤った学習をしてしまうこともあるかもしれません。療育指導の場を使って子どもの成長を促すだけではなく、家庭での取り組みを一緒に検討したり、園や学校との連携を検討するのも一つです。療育に限らず、地域の資源を上手く活用していくことはとても大切な視点といえるでしょう。就学前の場合は児童発達支援が、小学校入学から18歳までは放課後等デイサービスなどの通所支援など、公的支援を受けることもできます。発達ナビ地域情報|地域の施設情報が検索できるコーナーです知的障害のある子どもの子育てに悩んだらサポートを出典 : 子どもへの接し方を変えるだけで改善できることはたくさんあります。ですが、子育てをしていると、悩むことやつらいことがあるのは当然です。最初からうまくいくことばかりではありませんし、周囲に気を使ったり、子どもの様子に気を配ったり、体力的にも精神的にも毎日へとへとになるパパ・ママも少なくないでしょう。これでいいのか、子育てに自信がなくなることもあるかもしれません。家庭の中だけで頑張り続けると、疲れてしまいます。親御さん自身が、疲れて辛くなってしまわないよう、児童相談所や専門機関に相談したり、療育センターや親の会など同じ悩みを持つ方に出会える場所を使うのも一つです。専門家の意見だけでなく、親同士の繋がりの中からもより良い方法や工夫の発見があるかもしれません。ぜひ、一人で抱え込まず周囲の人を頼ってください。子育て全般に言えることでもありますが、そんな時は、親御さんが一人で抱え込まないことがなにより大切です。公的支援をはじめ、さまざまなサポートがありますのでご紹介します。◇専門機関に相談する地域の子育て支援センターや児童発達支援センター、児童相談所などでは、子どものことや子育てについて、気軽に相談ができます。必要があれば医療機関や療育施設などの専門家を紹介してくれます。また児童精神科や小児神経科に相談したり、療育を受けることで、子どもの特性がわかり、対処法を教えてもらえます。知的障害のある人向けに専門の相談ができる制度もあります。・知的障害者相談員…知的障害者と保護者の相談に応じ、指導、助言など、必要な援助を行う民間の協力者です。電話や訪問で家庭での接し方を相談したり、必要な関係機関との連絡などのサポートをしてくれます。サポートを受けたい場合はお住まいの自治体の福祉担当窓口に問い合わせてください。・ペアレントメンター…ペアレントメンターとは、親による親のための相談者を意味します。カウンセリングの研修を受けた同じ障害のある子どもを育てた経験のある先輩の保護者が当事者目線で相談に乗ってくれます。地域によって導入されているかどうかは異なりますが、お住まいの自治体の障害者発達支援センターなどで紹介してもらえますのでお問い合わせください。◇親の会に参加する知的障害の家族を対象とした家族会やサポートグループが全国にあります。親の会は障害のある子どもを持つ親同士がつながり、障害について学んだり情報交換をしていく活動です。また、発達ナビのQ&Aコーナーやコミュニティでも、子育ての悩みを相談することができます。同じ経験をした人の話を聞いたり、具体的なアドバイスを聞いたりすれば、見通しがもてるでしょう。誰かにつらい気持ちを話すだけでも、気持ちが楽になり、一人で悩みを抱え込まずにすみます。◇ペアレントトレーニングを受けるペアレントトレーニングとは、親が子どもとのより良いかかわり方を学びながら、日常の子育ての困りごとを解消し、楽しく子育てができるよう支援する、パパ・ママ向けのプログラムです。子どもをのばすほめ方、環境調整の仕方、指示の出し方、行動の教え方などを具体的に学べます。◇レスパイトケアで意識的に休息をとるがんばりすぎて、余裕がなくなっているときは、リフレッシュが必要です。育児を軽減するサポートを利用するなどして、自分の時間をつくりましょう。児童発達支援、放課後等デイサービスの中には預かり型の支援サービスもあります。また、障害児を受け入れているファミリーサポートもあります。一時的預かりのサービスを行っている地域もあります。地域の福祉相談窓口などで相談してみてください。ペアレントメンター研究会知的障害者相談員全国の育成会|全国手をつなぐ育成会連合会あなたの子育てに関する疑問や悩みを質問してみましょう!|発達ナビQ&A地域の児童発達支援・放課後デイサービスを検索|発達ナビ地域情報ポイントをつかんで、お子さんの良い部分を伸ばしてあげましょう出典 : 今回、知的障害の子どもに対する子育てのコツや困ったときの対処法をお伝えしました。知的障害の子どもを目の前に、「どうしてうちの子はできないんだろう」と思ってしまうこともあるかもしれません。できないことばかり目がいってしまう時も、できることを見つけて「できてるね」と子どもに伝え、一緒によろこぶことから始めてみてはどうでしょうか。できることを増やすことは心の面でもとても大切で、不登校やうつ病など二次障害の予防にも繋がるといわれています。また、自分だけで考えるのが難しい場合は、療育指導などの専門家の支援を受けることも大切です。一人ひとりの個性や環境によって対処法も様々で、こうすれば必ず上手くいくという方法はありません。周りの力を借りたり、相談しながら進んでいけるといいでしょう。
2017年01月30日なかなか周囲に理解されない子どもたち。そんな子どもたちの気質とは出典 : かつて東京都内の中学校で、心障学級・通級情緒障害児学級などを受け持っていた森薫(もりかおる)先生。2012年には、通信制高校等のためのシンクタンク『学びリンク総合研究所』の所長に就任され、非行や不登校で悩む当事者・家族への支援を行っています。森先生は、周囲の人からなかなか理解されることがない子どもたちに特有の気質を「スペシャルタレント気質」と名付けました。今回は、「スペシャルタレント気質」な子どもたちに対する森先生の考え方や、そんなお子さんの子育てへの思いを伺います。発達障害ではなく、特別な才能を持ったスペシャルタレント出典 : ―発達障害のある子どもたちや、集団生活に馴染めず引きこもりや登校拒否になってしまった子どもたちのことを「スペシャルタレント」と呼ぶ理由について教えてください。日本で発達障害という名前が世の中に広まり始めたのは、1995年頃のことでした。当時、中学校の教師をしていた私は発達障害に関する様々な勉強会に参加しましたが、どうしても“障害”という呼び方に抵抗があったのです。発達に偏りがある子どもたちは人に合わせることが苦手です。しかし、誰よりも優れた“ひらめき”と“こだわり””豊かな五感力”を持っていました。こういった才能を伸ばしていくためには、その子たちに合った学びの場が必要であると思い、通信制高校の立ち上げに参加しました。そして、これまでに私が関わってきた特別な才能を持つ子どもたちに尊敬の意を込め、彼らの特別な気質を「スペシャルタレント(”ST”)」と呼ぶことにしたのです。―こだわりが強かったり、人とは違う感受性を持っている子どもたちの特徴を、障害ではなく、彼らの良さとして捉えたのですね。集団生活に馴染めない子どもたちは、「困った子」として捉えられがちです。そして、発達障害という見方により、その子の足りないところばかりに着目してしまいます。学校の先生が「困った子」という見方をすれば、生徒たちも同じような目線でその子のことを見るのは当然です。こうしていじめが始まり、スペシャルタレントの子どもたちは学校に居場所を失ってしまうのです。教育現場にいる教師や支援者がこの子たちを、素晴らしい才能の持ち主としてリスペクトできたら、いじめは起こらないでしょう。現在の日本の教育は同質化を求めるあまり、バランスよく育っていない子は否定的に捉えられてしまいます。こういった構造的な問題がある限り、学校はスペシャルタレント気質の子どもたちにとって、居心地の悪い場所でしかないのです。シンプルなコミュニケーションが、才能を育てる鍵出典 : ―スペシャルタレントの子どもたちが、困っていることはどんなことですか?彼らは思春期を迎える頃になると、一生懸命周りの友達に合わせようと努力します。しかし、必死で気を遣ってついていこうとしても、安心できる場所を見つけることができません。学校の中では「そんなこともできないの?」といった言葉もいじめに直結します。空気が読めない、人並みにできない、コミュ障だなどと言われ続ければ、どんどん自己肯定感が低くなっていきます。―みんな同じ方向を向くことを求められる場では否定され、その結果、いじめや登校拒否に繋がっていくということですね。スペシャルタレントの子どもたちは、複雑なコミュニケーションが苦手です。特に同級生とのコミュニケーションは、実はとても複雑で難しいのです。例えば、相手が年上であれば敬語だけを使えばよく、コミュニケーションの仕方はシンプルですよね。しかし、同級生となるとそうはいきません。親しさによって丁寧な言葉を使ったり使わなかったり、距離の取り方も一人ひとり微妙に違います。そして、同級生は協力する仲間であると同時に、競争する相手でもあります。気持ちの切り替えが難しい子にとって、同級生との関係づくりは非常に厳しいものなのです。自分の生活の場をなるべくクリアに保ちたいと感じるスペシャルタレントの子にとって、曖昧で分かりづらいコミュニケーションは不安を煽るものであり、合わせようと努力をすることはとてもしんどいことなのです。―なるほど…そんなスペシャルタレントの子どもたちに合ったコミュニケーションが出来る環境はあるのでしょうか。年上や年下の人と関わることのできる場所に連れていってあげると、シンプルなコミュニケーションだけ求められるので、スペシャルタレントの子は安心して関係作りができるでしょう。もしくは、海外留学をすることもおすすめです。例えば英語圏では、日本ほど間柄によって呼び方を変えたり敬語を使ったりする必要がありません。友人でも年長者でも小さな子でも、ファーストネームで呼び合えば良いのですから。自分の意思表示も“Yes”“No”の二択で求められます。日本のように気を遣って言葉を選ぶ必要はありません。さらに欧米では、人といかに違っているかが逆に評価されます。みんなが個性的で他人と変わった能力の持ち主だからこそ、素晴らしい芸術や技術が生まれるのではないでしょうか。たとえば、“変人国家”なんて呼ばれるイタリアでは、人と変わっていることが当たり前で、その変わった人々によって優れた芸術やファッション、映画、音楽が数多く生み出されています。これは、人とは違う特別な才能をリスペクトし合ってきた証拠ですね。合言葉は「あ・し・た・あ・お・う・よ」出典 : ―学校での関わりに悩む、スペシャルタレント気質の子どもたちに対して、家族はどんなことができるでしょうか?お子さんが学校でいじめに遭ったり不登校になったりすると、お母さんたちは不安になると思います。しかし、子どもたちの豊かな才能に目を向けて、不安ではなくわが子の「ファン」になってあげてください。家族みんなが、その子の応援団になるのです。私のところに相談にいらっしゃるお母さんたちに対して、「あ・し・た・あ・お・う・よ」という言葉を紹介しています。「あいしている」「しあわせ」「たのしい」「ありがとう」「おかげさま」「うれしい」「よかった」この言葉を、お子さんにたくさんかけて、抱きしめてあげてください。すると、お子さんのエネルギーはみるみる回復していきますよ。―子どもがパニックになった時や、自傷行為をする時はどうしたら良いですか?自傷行為をしていたら、そのことを否定せず黙って抱きしめてあげてください。自傷行為は、うまく自分の思いが伝わらないという負の感情が蓄積して起こるものです。突然起こるものではありません。まずはしっかりとお子さんの気持ちに向き合い、丁寧に受け止めてあげることが大切です。大好きなお母さんに否定されることほど悲しいことはありません。通常、私たちは5歳くらいからの出来事を記憶していると言いますが、スペシャルタレントの子どもたちは記憶力が良いため2~3歳頃から記憶をしているようです。そのため、親に否定された経験も明確に覚えているのです。パニックが長時間続くこともほとんどありません。物を壊したり怪我をしたりしない限りは、止めずに見守ってあげましょう。落ち着いてから、「暴れるほど悲しかったんだね」と受け止めてあげてください。Upload By 佐藤 愛美(ライター)―自傷行為やパニックが起こっても、否定の言葉をぶつけるのではなく、まず子どものことを受け止める。とても大切だと思います。でも、お母さんたちが「子育てを正しくやらなければ」というプレッシャーに日々さらされていると、難しいですよね。そうですね。かつての日本には地域の中にたくさんの子どもたちがいて、未婚の若い女性でも子守り体験を通して将来のリハーサルをする機会が多かったのです。お母さんのお乳が出なければ地域の人が代わりにお乳を与えてくれたし、産後すぐに働きに出ても、おじいちゃんやおばあちゃんが子守りをしてくれるのが当たり前でした。そのため、現在のようにお母さんが子育ての責任をすべて一人で背負うことはなかったのです。この時代は、「子どもなんて少し変わっていて当たり前」と思われていたし、思春期の早い時期に社会に出ることが多く、18歳まで同級生の集団の中に身を置く必要もありませんでした。思春期のストレスも少なくて済んだのではないでしょうか。スペシャルタレントの気質を持った人たちも、周りに合わせることなくのびのびと生活できていたんです。しかし現在は、社会全体が評価主義によって動いています。小さい頃から偏差値や内申点で評価され、高学歴が求められ、大企業に就職する人々がエリートと呼ばれています。子育てすら、自分を評価するための材料になってしまっているのです。お母さんたちは人並みに育児ができなければ評価されず、公園デビューをする時もマニュアルが必要になっています。このような社会背景の中で、集団に馴染めない子どもを育てるのは非常に苦しいことでしょう。頑張り屋さんのお母さんは、自分で自分にOKを言おう出典 : ―評価主義社会の中に立たされたお母さんたちは、どうしたら心の余裕を持って子育てができるでしょうか。私は、相談に来たお母さんたちにまずこう言います。「よく頑張ってきましたね、お母さん。本当に頑張り屋さんですね」評価主義社会の中で認めてもらおうと必死になってきたお母さんたちは、「頑張っているね」という言葉をずっと求めているんです。しかし、大人になってしまうとなかなか褒めてもらえる機会はありませんよね。だから、「I am OK!」と自分で自分を褒めてあげることが大切です。洗濯物の干し方がうまい、畳み方なんか最高!って。自分はこんなふうに頑張っている、こんな良いところがあると、自分に「OK」を与えてあげてください。すると子どもに対しても「あ・し・た・あ・お・う・よ」の言葉を与えられるようになります。―お母さん自身が、まず自分に「OK」を…大切な視点ですね。一方で一つ気になるのが、スペシャルタレントと呼ぶと、「天才児」のようなニュアンスで捉える人もいるのではないかということです。そうなってしまうとやはり評価主義の中でプレッシャーに感じるお母さんも出てくるような…優れた才能を持っている子はたくさんいますが、「天才児」というニュアンスとは少し違いますね。私は面談の中でよく保護者に対して「この子が何をしている時がいちばん幸せそうでしたか?」と聞いています。すると、これまでの我が子の姿を思い返しながら、絵を描くことや人形を作ること、小さい頃はダンスに興味を持っていたなど、色々な話が出てきます。実はこれが、未来に繋がる資源(リソース)なんです。中には「うちの子には何も才能がない!」と嘆く方もいます。しかし、一つの物事にとことんこだわり、嘘がつけなくて優しいという素晴らしい資源にもっと気づいてほしいのです。この気質はスペシャルタレントの子だけが持った、特別な才能ではないでしょうか。不登校児が学校生活に戻らなくても良いルート作りを目指して出典 : ―スペシャルタレントの子どもたちが個性を伸ばせる進路には、どのようなものがありますか。不登校の子がいちばん苦しむのは、「いつかは学校に戻らなければいけない」というプレッシャーです。学校の先生も、スクールカウンセラーも、教育相談所も、そして親ですら彼らが早く学校へ戻るように促します。この子たちは、心身ともにぼろぼろになりながらやっとの思いで学校を抜け出したのに、こんなに辛い要求はありません。今の日本に必要なのは、“学校に戻らなくても良いルートづくり”なのではないかと私は考えています。具体的には、家庭でパソコンやタブレットを使って勉強ができるホームスクールや、通信制の高校、フリースクール、そして先ほども紹介した、海外留学が当たり前に選べるようになるといいですね。―スペシャルタレント気質を持った子が大人になった時、自分の特性を活かせる仕事に辿り着くためには、周囲の大人はどんなサポートをすれば良いでしょうか。その子たちの個性を潰さず、スペシャルタレントとして尊重することです。現在活躍しているスポーツ選手の多くが「小さい頃に自分のやりたいことをやらせてくれたから今がある」と語っています。普通科の学校や目の前の成績ばかりに囚われることなく、その子が夢中になれるものを一緒に発見し、色々な体験をさせてあげてください。苦手なことを人並みにしようと何十年も努力するより、自分の得意なことを活かして活躍したほうが幸せではないでしょうか。苦手なことは、他の人に任せたり手伝ってもらったりしても良いのです。私が今、老眼鏡を使って文字を読んでいるように、便利な道具を使えばできるようになることもあります。Upload By 佐藤 愛美(ライター)―最後に、森先生が今後取り組んでいきたいと考えていることがありましたら、教えてください。スペシャルタレントの子どもたちと一緒に農業体験ができる場所づくりをしていきたいと考えています。田んぼで自由に走り回り、泥を投げ合い、ありのままの自分を認めてもらえる場所です。農業をしている大人の手伝いをし、自分の得意なことや不得意なことに向き合っていく中で、自分に対する肯定感を育めるのではないでしょうか。親や教師が“普通の”進路に固執せず、可能性を広げる場所を作ってあげることで、この子たちの活躍の幅はきっと広がるはずです。―ありがとうございました。集団生活を苦手とする子どもたちの気質を「神様からもらったプレゼント」と言う森先生。苦手を克服する従来の教育から、得意なところを伸ばす新たな教育へのシフトを目指し、一人ひとりが自分を大好きになれる場所づくりが進んでいます。(佐藤愛美)Upload By 佐藤 愛美(ライター)『未来に輝け! スペシャルタレントの子どもたち 不登校・ひきこもりの解決方法』2013年、学びリンクUpload By 佐藤 愛美(ライター)『子どもと夫を育てる 「 楽妻楽母」力‐不登校・引きこもり・夫婦のすれ違い、すべて解決!‐』 2015年、学びリンク
2017年01月26日子どもの発達障害診断が終わった直後、「お母さんも、あるね」出典 : 8年前に、子どもを連れて初めて精神科を訪れた日のことでした。予約時に「受診日には母子手帳を持ってくるように。」と言われていたのに、言われていたことすら忘れてしまい、母子手帳を持参しませんでした。子どもの診察が終わり、子どもには発達障害があると診断をした次の瞬間、病院の先生が私に言いました。「お母さんも、あるね」そしてこう続けました。「息子さんと貴女は似てところが沢山あるでしょう?お母さんもありそうだから、診察受けてみたらどう?お薬も出すよ。楽になるよ。」あまりに軽々しく言う先生の言葉を信用できずにいました。当時の私には、「楽になるよ。」と言う言葉が悪魔の囁きにすら聞こえたのです。発達障害の診断を受けることは、「逃げ」だと思っていた出典 : 子どもたちが発達障害と診断を受けて、通院しながらお薬飲んでいるのを見ると、私は羨ましく思う気持ちが生まれ、「私も子ども達のお薬を飲んでみたい」と何度も思いました。私は幼少期から忘れ物や宿題忘れが酷く、先生にきつく叱られた時には「明日は必ず忘れ物しないようにしよう。宿題は必ずやろう。」と決意するのですが、帰宅すると宿題の存在自体を忘れたり、さらには学校に勉強道具の忘れ物をする始末。数学や社会なども、教科書の文字全部が飛び込んでくる感じがして、どうしても覚えるということができませんでした。結婚して家事をするようになって困ったのは、片付けられないこと。1つのことに集中して片付ける、ということがどうしてもできませんでした。1番困ったのは鍋に火をかけたまま忘れること。いったい何度鍋の中身を真っ黒に焦がしたか分かりません。他にも財布をなくす、鍵をなくす、保険証をなくす、いろいろありました。探し物をするだけでクタクタに疲れてしまう日々でした。それなのに受診を拒んだのは、「私には診断が必要ない」、「診断を受けるのは、頑張ることから逃げることだ」という風に思えてしまったから。本当は、日常生活にたくさんたくさん困っていた。私は、それを認めたくなかったんだと思います。それでも、子ども達のカウンセリングを通じて少しづつ自分を知っていきました。子ども達が成長し、子育ての手が少しづつ離れてくると、ようやく自分と向き合ってみようかな?と思うようになってきました。そこである日、思い切って精神科での検査を受けてみることにしたのです。「忘れ物をするのは、あなたのせいじゃないんだよ」精神科で受けたのは、特性を見るための様々なテストです。そこで再確認したのは「私って覚えておくことが本当に苦手なんだな。」ということでした。次に感じたのは「子ども達はこんなしんどい検査を受けてたんだな。」ということ。子どもが経験した事を私も体験する事ができて嬉しく思いました。そして、私を検査した心理士さんからは心強い言葉を沢山いただけました。出典 : 心理士さん「あなたは人当たりやさしく気を使えるので、周りと上手くやっていけるタイプ。でも、本当の気持ちを言えているかは疑問。言いたい事を言えるようにしていきましょう。でも、自分の中に入ってくる情報が多過ぎるので、どうしても抱え込んでしまいがちになります。うまく休養をとっていきましょう。湧き上がるやりたいという衝動は、創造性が豊かということです。それからあなたのような人は、アイデアがポンポン出てくるあまり、あれもやりたいこれもやりたいとやり過ぎる傾向があります。そういう人は、なんでも自分でやろうとするのではなく、プロデュース業を仕事にすると良いです。貴女の創造性と人との関わりは素晴らしいところです。その素晴らしいところは消す必要はないですよ。ただ、少し荷を下ろす必要はあると思います。5つあるとしたら、3つにするとか。少し整理すると良いでしょう。忘れ物することは貴女のせいじゃないからね。そこは周りに助けてもらいましょう。後は周りに気持ちを伝えられるように、頼ったり甘えたりできるように、少し言葉を工夫して伝えていきましょう。自分が思う自分と、周りが思う貴女とでは、大きなギャップがあるように思います。そのギャップが、少し人間関係を難しくしてるようです。でも、お子さんを通して自分と向き合ってきて、おおよそ私から言われる事が予想できているようですから、今回のことは『あぁ、やっぱりそうか』と納得するのではないでしょうか?今回、テストを受けて自分と向き合うと決めたことは良いことですよ。それと、処理能力が遅いのもあり、仕事を失敗しないように丁寧にしようとすることで仕事の能率が悪くなりやすいようです。苦手なことはどんどん人に委ねていきましょう。」などなど…私の特性を説明するだけでなく、その活かし方まで伝えてくださる方でした。後は、日常生活での具体的な対応の仕方や言葉遣いの工夫なども教えてくれました。カウンセリングでの言葉を聞きながら「あぁそっか!そう言えばいいのか!」と納得しました。知ることって大事だと再確認できました。1番安堵したのは「忘れ物をするのは貴女のせいじゃないからね。」という言葉。努力だけでは乗り越えられないものがあると分かり安心しました。今回の心理士からの言葉から、やりたいという衝動が多い末っ子の「学校がつまらない」という言葉を意味を初めて理解しました。末っ子にとっては、自分の衝動性を満足させるものが学校にはなかったのだということに、初めて気付きました。自分の特性を知ることは、子ども達の発達障害の特性を理解するのにも良い参考材料となったのでした。診断を受けても変わらないもの出典 : テストの結果とその後の医師の診断から、私も子ども達と同じように発達障害があることが分かりました。結果が出たとして、私という存在は変わりませんし、これからも変わりません。変わるとしたら社会の目かもしれません。でも、今回の結果から、分かった事を利用して生活を豊かに過ごすことはできます。苦手を少し楽に過ごす工夫もしやすくなりました。得意なことはより自信を持って進んでいけます。診断を受けるまで長い年月がかかりましたが、今は勇気を出してテストを受けてみて良かったなと思っています。
2017年01月26日こんにちは。NPO法人Collable(コラブル)の山田小百合です。私たちは障害があってもなくても、遊んだり学んだりできる環境づくりに挑戦しているNPO法人です。多様な人たちが集う場において、関係性をケアするという視点で、活動を行っています。先日の記事では、さまざまな反響をいただきましてありがとうございました。一つひとつ読ませていただきました。法人 CollableCollableが生まれて3年ほどですが、活動を始めるに至る経緯について、お話する機会を多くいただくようになりました。そのときによく話すのが、自分の家族のことです。今日は私が育ってきた家庭環境について、少し書かせていただこうと思います。私には年子の兄と3つ下の弟がいますが、実はどちらも知的障害と自閉症を併せ持っています。現在は父と母と一緒に暮らし、福祉事業所に通う日々を過ごしています。今となっては私自身が東京に暮らすようになったので、彼らと会うのは年2回の帰省のときくらいですが、変わらず元気にしているようです。家族がなかよくしていられるのは、両親のタフで楽観的な性格(?)が影響しているのかもしれません。とはいえ、それなりに考えたり悩んだり、時を経て今気づいたりすることもあるので、そんな経験をみなさんと共有できたらと思っています。障害のある子のきょうだいに多いのは、「面倒見がよいしっかりした子」出典 : 障害のある子どものきょうだいである子は、少し考え方が大人びていて、振る舞いも実年齢から数歳上に見えることが多いなと感じます。Collableのワークショップにも、きょうだいの子が一緒に参加してくれることがありますが、ファシリテーターが説明をする時間に静かに座って待っていたり、落ち着きのないきょうだいに声をかけたりと、しっかりもののお兄さんお姉さん(年が下であっても)です。例えば、自分の障害のあるきょうだいがトイレに中座したときに「どこにいったの?」と心配そうに質問をしてきたり、言葉が明瞭ではない子が何かを言ったとき「『これ作ったよ』だって。」と何を言ったか教えてくれたりもします。いろんな施設の方にきいても、きょうだいの子はしっかりしていると言う方が多くいます。振り返ってみても、自分自身もそんな子でした。「さゆりちゃんはしっかりしてて偉いわね」と、もはや言われ慣れてしまうわけです。おそらくそれは、兄弟が自分より少しできないことを程よく手伝う塩梅を理解して振る舞っていたりとか、弟がパニックになっているときに黙ってそこにいて待っているとか、そういう経験を日常に重ねていったからかもしれません。きょうだいは福祉や特別支援教育の勉強をしてきているわけではありません。それにもかかわらず、肌感覚として自分のきょうだいをどのようにサポートすれば良いか体得していくことが多いので、「しっかりしている」と見られやすいのかもしれませんね。きょうだいで「同じ場所に通える」のはやっぱり嬉しい出典 : 私が幼稚園に通っていた歳のころは、兄と同じ地元の幼稚園に通うことができて、幼稚園のお友達や先生たちにはとても良くしてもらっていました。ただし結果として、私が兄と同じ幼稚園に通えたのは1年のみ。私が年中に上がる頃に、兄は別の保育園に移ることになったからです。兄が別の園に移ることは、その保育園からの要望だったようです。そこから母が市内の園を訪問しては、受け入れてくれるところを探していたことを、おぼろげながらに覚えています。「よそのお家は兄弟が同じ場所に通うのに、なぜか自分の兄弟は同じ学校や園に通えない」という経験をするので、ちょっぴり寂しい気持ちにもなります。兄が特別支援学校に通ってからも、「交流及び共同学習」の時間に交流校として自分の学校に来ていたときは少し誇らしげでもありました。自分の兄弟のことを知ってもらえる機会が学校という場でもあったので、頻度は人それぞれですが、同じ学校環境の中に少しでもいられるときは嬉しいものです。Collableのワークショップでも、「兄弟で遊びに来れるところがないので」と来てくださるご家庭もいます。親も子も、根本的には同じ場所にいられることに喜びを感じるものなのかもしれません。きょうだいのことは大切。だけどやっぱり、どこか寂しい出典 : 同じ場所にいれば嬉しいし、困っていれば面倒も見る、大切な存在。しかし、矛盾するようですが、そのような境遇にある障害児のきょうだいだからこその寂しさもあるように思います。自分自身を振り返ってみても、同じ場所で遊んでいたとき、親や先生は手のかかる兄と弟に目を向けている、というのは日常茶飯事。自分が大人に見てもらいたいと思う瞬間に誰も見てくれていない、という経験も重ねてきました。だけど、そこで我慢をしていると、「いい子にしていてえらい」と褒められるので、「兄弟のことを必要なときに手助けしながら、親を困らせないことがいいことだ」と、一種の刷り込みのような状態になっていたような気もします。私の場合はおかげである日突然、感情が爆発してしまうような経験もありました。「なんでそんなにご機嫌ななめなの!」と怒られても、理由がうまく言えずにいましたが、よくよく考えると、自分の要望には目を向けてもらえないという小さな積み重ねが影響していたのかも、と当時を思い返しました。障害のある子も、そのきょうだいも、家族みんなが健康であるために出典 : 今日の記事は、知的障害のお兄ちゃんと一緒に活動に参加してくれた、とあるワークショップ参加者の女の子のことを思い浮かべながら書きました。ワークショップに来てくれた彼女に、ちょっかいを出すお兄ちゃん。そしてそれに何も言わずにただじっとしている様子に、「たくましいな」と思いつつ、「どこかで我慢をしてそうだ」と思った瞬間でもありました。お母さんも、当然ながらお兄ちゃんのことに常に目がいき、いつも不安げな様子が印象的でした。その子に出会ってから、昔、障害のある弟がいる友人が、「お母さんがいつも家で抱え込んでるから私ががんばらなきゃ」と思いつつ、苦しい胸の内を話してくれたことが一層鮮明に思い出されました。Collableが「障害がある子もない子も」というコンセプトを大切に活動をしてきた背景には、こうしたきょうだいの複雑な気持ちも受け止めながら、遊びの場を作りたいという気持ちも込められています。「障害があってもなくても、きょうだいどちらのことも見てるよ」という関係を、丁寧に作っていく場でもありたいと願っています。一見しっかりしているきょうだいは、どこかで自覚のない「我慢」を積み重ねているかもしれず、それが一見「しっかり者にみえる」状態なのかもしれません。障害があってもなくても、こどもたちが毎日心も体も元気でいられるためには、やっぱり家族の存在が大きいなと思っています。お父さんお母さんには笑顔でいてほしい。一方で親御さんにも我慢も無理もしてほしくない。親御さんの不安な気持ちを少しでも和らげられるよう、貢献したいなと思い、今日も活動をしています。
2017年01月19日お喋りな息子は、「コミュニケーションができている」と思っていた出典 : 息子の発達障害を疑い、初めて発達相談に行った日。私の相談を聞いていた臨床心理士さんから、開口一番に言われたこと、それは「息子さん、お母さんと視線が合いますか?」でした。私は咄嗟に「目ですか?合ってますよ!」と言いました。それは、息子が2歳にしては年齢不相応なほどよく喋る子であったこと、そして私は息子ときちんとコミュニケーションしているという自信があったからです。よく喋っているから、息子がどこを見ているかについては感知していなかったのだと思います。けれども、ある日ふと、息子は1人で好き勝手なことを喋っているだけで、私の目を全く見ていなかったことに気付いたのでした。療育で始まった「目を合わせる練習」。一体どんなことをするの?出典 : その後、息子の支援は発達相談から療育に繋がりました。療育では毎回、さりげなく息子が視線を合わせる働きかけをしていました。息子が目で追うおもちゃを、先生が自分の目元に持っていったり、何かができたときに先生の顔を見ると褒めたりを繰り返してくれました。次第に、息子が人に何か働きかける際、相手と視線を合わせることが増えていきました。息子と視線が合うようになって初めて、「ああ、これまでこんな風に目線が合うことってなかったな」と私は気付いたのでした。視線が合うようになって何が助かったかというと、息子がこちらの表情を見るようになったことです。コミュニケーションを成立させるためには、相手が喋っている、ムッとしている、笑っている…といった、細かい表情から状況を読み取っていく必要があります。息子は「人の気持ちがわからない」訳ではなく、「人の顔を見ていないから、相手の気持ちとそぐわないことをやってしまう」ようでした。目を合わせる回数が増えるにつれ、一方的に相手にまくしたてるような行動が減っていきました。目が合うようになった息子の、新たな問題出典 : 息子と視線が合うようになり、小さな幸せを感じていた私でしたが、今度はまた新たな問題が生じたのです。それは息子が、人の目を至近距離からジーーーっと見つめ、視線が外せなくなったことでした。相手が小さな子どもであれば、背丈も同じぐらいですから、当然怖がります。相手を覗き込むようにジーーーーっと見つめて喋る息子は、みるみるうちに他の子どもたちから変な子扱いされるようになってしまいました。相手と目を合わせること自体が息子にとっては大変なことでしたが、今度は目線の外し方と適度な距離が分からなくなってしまったのです。発達障害児にとって、視線を合わせるとはどういうことなのか?出典 : 相手を覗き込んで話すことで、周りのお友達みんなに嫌がられ、本人も少しずつ「何か違う」と気付いていったようです。相手との適切な距離感を学ぶため、話すときに相手とどのくらい離れればいいのか?適度な距離を取る練習をしました。距離が取れれば、多少相手をジッと見てしまっても、そこまで違和感はありません。成長した現在でも、息子は肉体的・精神的負担が大きくなって疲労が溜まってくると、全く視線が合わなくなります。行事の練習が続くとき、初めての人と話をするとき、様々な刺激でイライラしているとき、私は息子の視線がフラフラと泳いでいくことに気付きました。この点から、視線が合うかどうかは、体調や心理状態のバロメータになっています。発達障害児にとって「視線を合わせる」ことは、気持ちに余裕がないとできないことなのですね。視線を合わせる(そして視線を外す)こと1つであっても、努力して頑張ってやっていることだということを忘れてはいけないな…と思います。
2017年01月19日中2の息子の甘え方=母にハグを求める!?出典 : アスペルガー症候群の息子は現在中学2年生。知的な遅れもなく、言語も達者。コミニケーションに問題を抱えながらも通常学級で学んでいます。身長は両親を追い越し、170センチを超えています。そんな年頃の息子ですが、思春期によくある反抗的な態度は一切なく、それどころか母親の私にべったり。さすがに「抱っこして」とは言いにくいのでしょうか、ときどき「ハグして」と言ってきます。こんな中学生をみなさんはどう思いますか?大きすぎてもはや抱き上げる事はできないので、やや引き気味な気持ちを抑え、膝枕をしたりマッサージをしたり、私はなるべく息子の要求に応えています。そこまでして私が息子の「ハグ」に応える理由、そこには母親としてちょっと切実な気持ちがあるのです。実はとってもドライだった息子。愛情を求めるようになったのは小4の頃でした出典 : 今でこそ、素直に母親に甘えてくる息子ですが、幼い頃の息子は今と全く違いました。むしろ私に対してドライな子どもに見えました。抱っこを求めることも後追いもなく、迷子になっても泣くことすらしない息子を前に、母親としての自信を失いかけたことも。弟が生まれた時期に、入院するほど大きく体調を崩したこともありましたが、それでも抱っこを求めることは、ほとんどありませんでした。その後、パニックを頻発するようになり、自分の感情を泣いて暴れるという形で出す変化はありましたが、甘えてくることはありませんでした。息子の方から私に抱っこを求めてくるようになったのは、息子が4年生になった頃です。6歳年下の弟にやきもちを焼き、私の膝の上に割り込んできたり、もっと自分を見て欲しいというアピールをしたり、それはまるで遅れてやってきた赤ちゃん返りの様でした。年齢にそぐわない、しかもあまりの変貌ぶりに戸惑いもありました。しかし、やっと出てきた息子の要求に、戸惑いつつも私は受け入れることにしたのです。赤ちゃん返りした息子を見て実感した、母としての喜び出典 : 息子はなぜ急に、赤ちゃん返りしたのでしょうか?私はこれまでの子育てを振り返り、あることに気付きました。発達障害と診断された当時、会話はできても自分の気持ちを言葉にできなかった息子。その頃、パニックを起こしては体調を崩していました。今思えば、抱えきれない心の重荷が言葉にできず、ストレスが体に出ていたのかもしれません。当時を思い出すたび、感情を上手く表現できない子どもの苦痛は計り知れず、辛かっただろうなと思います。たとえ赤ちゃん返りという、親にとって厄介なものでも、表現できるって素晴らしいことなのですね。大きくなった息子が抱っこを求めてきたとき、赤ちゃんのようにわがままを言い出したとき、戸惑いつつもようやくお母さんとして認められたような気がしました。そしてゆっくりではあるけれど、息子が発達していることを実感できたのです。発達障害児が愛着を求める過程がゆっくりなのは、自分の気持ちを表現できるまでに、時間がかかるからなのかもしれません。そして、愛着形成は子どもだけでなく、子どもに必要とされる安心感を得るため、お母さんにとっても必要不可欠なものだと痛感したのです。そもそも愛着って何?出典 : そもそも愛着とは一体何なのでしょうか?以前、講演で児童精神科医の佐々木正美先生は、愛着についてこう仰いました。「信頼できる特別なひとりの人(愛着を持つ相手)に対して、子ども自身が『自分はこの人に、無条件で永遠に愛される』という確信を持てること」私はこの「無条件で永遠に」という説明に、ストンと腑に落ちるものがありました。そして、「先生が言われるこの確信こそが愛着の正体なのではないか?」と、思ったのです。良い子だから、勉強ができるから、容姿が優れているから、女の子(もしくは男の子)だから…という、条件がつけられた時点で、本当の意味の「愛着」からは遠ざかってしまう。愛着とは、命そのものを育むような、原始的でありながら崇高な愛情が形成するものと言えるのかもしれません。中2の息子がハグを求める理由、それは発達障害児の愛着形成プロセスにありました出典 : では、「大きな息子とのハグ」と愛着はどう関係しているのでしょうか?答えは発達障害にあるのだと思います。この点に関して、児童精神科医の杉登志郎先生は著書に、「発達障害の子どもは愛着の形成がゆっくりな傾向にあり、8~9歳くらいから愛着を求め始めるケースが多く、ここで愛着の形成を確立できるか出来ないかで、予後が大きく違う。」と書かれています。また「しっかりと甘えさせて母親はじめ家族との対人関係が安定すると、孤立型から受動型、または積極奇異から受動型へ対人関係の変化が認められる」とも。実際息子は、典型的な積極奇異型のアスペルガー症候群でしたが、中学生になった頃から家族以外の人との対人関係にも改善の兆しが見えていることから、年齢に関わらず充分に甘えさせてあげることの重要性を実感しています。参考書籍:発達障害の子どもたち (講談社現代新書) (杉登志郎著)参考書籍:発達障害の豊かな世界(日本評論社)(杉山 登志郎著)ちょっと変わってても気にしない!これが私たち親子の愛着形成スタイル出典 : 息子は今も愛着表現を求めますが、彼との間に「愛着形成」が確立されつつあることを実感しています。過去にあったような、母親としてのいたたまれない気持ちは姿を消し、お互いを理解し合えていること、少しくらいの行き違いでは揺るがない親子関係を感じています。それは、優れた面をお互いに認め合うと言うよりは、お互いの短所に対して譲り合うような感じです。発達障害児の精神発達はゆっくりで、精神年齢の目安は実年齢の2/3歳と聞きます。そう考えてみると、息子は体は大きくても精神年齢は10歳未満です。とすれば、まだまだ抱っこを求めてもおかしくはない…そう自分に言い聞かせながら、今日も大きな体を「ハグ」しています。「無条件で永遠に続く愛情」を、息子が実感できるまで。かかりつけの児童精神科医に、「発達障害のある子は、実年齢より3割幼いと思って向き合ってください」とのアドバイスをもらったことがあります。(LITALICO発達ナビ「「年齢より3割幼いと思ってね」医師の言葉通り息子を見守るも…」より)
2017年01月16日子どもの特性にもいろいろありますが…Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子悩みの尽きない障害児の子育て。その中でも大きな決断となるのが…出典 : 障害がある子どもの親は、たくさんの不安を抱えています。周りの子どもたちとの成長の違いが気になったり、友達との接し方にハラハラしたり、親亡き後のことが心配になったり…。周りに協力者や理解者がいなくて、親自身が孤独を感じる場合もあります。そんな中、子どもの困りごとの解決のため、親は様々な決断を強いられます。今回はその中でも特に親が悩む決断の1つ「服薬」についてのお話です。娘が二次障害になったきっかけは「いじめ」や「からかい」だった出典 : 私には発達障害の診断が出ている高校生の娘がいます。娘は物をすぐに失くしたり、何度も同じ間違いを繰り返したりします。手先は不器用、計算も苦手ですが、興味があることには並外れた記憶力と集中力を発揮します。家族や親しい人とはよく喋る反面、他人とは上手くコミュニケーションをとることができません。受動型のADD(注意欠陥障害)の特性を持っているので、困っていることが見過ごされやすいタイプです。娘は小学校高学年の時に、学校で冷やかしやいじめの対象になったことがありました。その頃の娘はよくイライラし、自宅で物を投げては壊したり、弟に当たったりしていました。後からわかりましたが、娘は二次障害に陥っていたのです。発達障害ということに気づかなかったり、気づいていても適切なサポートを受けられずにいると、周囲に理解されず叱咤や非難を受けたり、失敗体験を積み重ねるなどして、本人の自尊心ややる気が失われ、新たな障害が生じることがあります。これを、いわゆる「二次障害」ともいいます。いじめへの対応に奔走した日々出典 : このままではいけないと思った私は、色々なところに相談をしました。以前から通っていた療育センターや病院、スクールカウンセラーや特別支援コーディネーターの先生…。新たに発達障害専門の塾や家庭教師も探しました。娘の障害の理解のために第三者にも立ち会って頂き、校長先生との話し合いもしました。いじめへの対応と環境改善の具体例を示すため、それまで学校との連携がなかった療育センターのスタッフさんに学校訪問もしてもらいました。娘自身も専門家によるSST(ソーシャルスキルトレーニング)を受け始めました。SSTでは、●イライラした原因やその後どうしたかを書き留める●言葉で表現できない気持ちを絵で表現する●スポーツで体を動かすなど感情のコントロールの方法やストレスの発散方法を学びました。ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは、人が社会で生きていくうえで必要な技術を習得するための訓練のことです。それでも辛そうな娘の様子を見て、医師から処方されたのが「お薬」だった出典 : 学校の環境は徐々に改善されていきましたが、いじめや冷やかしが陰で行われることもあり、家での娘のイライラはまだ続いていました。しばらくして、娘の状況を知った担当医から、ごく少量のお薬が娘に処方されました。「好きで暴れている訳ではない。自分でも嫌だ。でも抑えられない。」そう訴える、娘の辛い気持ちを汲んでの処方でした。「何よりも環境を整えることが大切です。お薬はとても少量の処方です。幼児が飲む量ですよ。」処方の際、私達親子は医師からこう説明を受けました。娘はその薬を「イライラ止めのお薬」と呼んで、毎日服用しました。その後も、娘が少しでもストレスなく過ごせるよう、私はスケジュールボードを利用したり、不要なものに目隠しをしたりするなど、環境作りを積極的に行ってきました。娘を理解し、寄り添ってくれる指導者に出会ったこともあり、彼女のイライラは徐々に減っていき、お薬は10ケ月で服用を終えたのでした。使ってみて気づいた、お薬との付き合い方出典 : 一口にお薬と言っても種類、飲む量、飲み方(頓服など)様々あります。また、発達障害で処方されるお薬には、種類や人によって「合う」「合わない」があるかと思います。副作用で眠くなったり、食欲が落ちたり、逆に過食気味になることもあるかもしれません。でも、服薬することで本人や家族の困り感が減り生活の質が向上するのであれば、そのメリットはとても大きいと私は考えます。合う薬に出会うまでは様々なSSTを試すのと同様で、医師の指導の下、あきらめずに探すのも1つだと思います。子どもが大きくなると、服用したときの調子の良さ・悪さが本人にもわかってきます。親亡き後のことも考えると、本人の意思を尊重した病院との付き合い方を考えていくことも、きっと大切になってくるでしょう。また、成長と共に合う薬の種類が変わったり、適量が変わったりすることもあるでしょう。どれも「成長の証」と考え、その時々で臨機応変に対応する柔軟さも、親には必要なのだと思います。あふれる情報の中で、何をどう受け取るのか?冷静さを持って選びたい出典 : 服薬に不安を抱いたとき、まずは医師等の専門家にとことん相談してみましょう。また、親御さんを悩ませる原因の1つに、インターネットの普及も関係していると思います。良い情報も悪い情報も玉石混交で、誰もが簡単に手に入るようになりました。他方SNSでは、周囲に同じ境遇の友達や家族がいなくても、同じ悩みを共有したり励まし合ったりして、元気をもらうことができます。不安な時や悩んでいる時こそ、その情報が正確かそうでないかを冷静に見極め、全てが自分の子どもに当てはまるわけではないということを念頭に置きつつ。その情報を試してみるか、参考までに留めておくのかをしっかりと考えることが、大切なのだと思います。
2017年01月15日海外の介助犬は働き者!?こんなにあった、たくさんの役割出典 : 皆さんは「介助犬」と聞くと、どんな仕事をする犬を思い浮かべますか?日本だと、目の見えない人や耳の聞こえない人の手助けをする「盲導犬」や「聴導犬」が一般的な介助犬だと思います。ですが、実は海外ではさらに多様な用途で、介助犬が利用されています。以下は海外にいる介助犬の種類です。●盲導犬●聴導犬●自閉症児向け介助犬●歩行介助犬●心のサポートの介助犬●発作予知/介助犬●重度アレルギー者のためのアレルゲン探知犬この中にある「自閉症児向け介助犬」は、自閉症児の持つ感覚的な困難さを和らげ、パニック/癇癪などのときに、ケアできるように訓練された犬です。今回は、この自閉症児向け介助犬について、海外の事例をご紹介したいと思います。自閉症児向け介助犬のお仕事を、海外の事例からご紹介出典 : 「4 Paws for Ability」Autism Assistance Dog(自閉症児向け介助犬)上記URLの「4 Paws for Ability」は、子ども向け介助犬養成・派遣団体としては、アメリカ最大の組織です。リンク先には、自閉症児向け介助犬の活用事例が書かれています。●睡眠障害のある子の睡眠導入睡眠障害のある子の側で眠り、安心させます。介助犬のおかげで、長い間家族を苦しめた自閉症児の睡眠障害が改善した例があるようです。●外出時の安全確保自閉症児がふと親元から離れてしまい、それが取り返しのつかない事故につながることがあります。そんなとき、注意が必要な状況で犬は止まるようしつけられており、犬の動きに従って子どももいったん止まります。これにより、親が子どもの安全をしっかり管理することができます。また、万が一子どもが脱走してしまった場合、犬は追跡するよう訓練を受けています。●人間同士には見せない深い関わりをもたらす自閉症児は周囲の人(クラスメイトや家族)と、なかなか深い関わりができないことが多いです。しかし、不思議なことに犬が相手であれば心を開き、良い友達となることが多いのだそうです。犬は自閉症児に安らぎと信頼関係を教えてくれます。出典 : 「 The Huffington Post」Here’s How A Dog Can Help Stop An Aspergers Meltdown( アスペルガーの子を介助犬が落ち着かせている事例)また、「The Huffington Post」では癇癪を起こすアスペルガー症候群の子どもを、介助犬が落ち着かせる様子についての記事を紹介しています。過度の刺激や予期せぬ出来事などでパニックになった自閉症児が泣き止まないとき、大きなモフモフとした介助犬がパニックを起こした子どもの体に寄り添い、ときには上からギュッと圧迫します。自閉症児は身体を圧迫すると落ち着くことが多く、訓練された犬に上から圧を加えられることにより、パニックが早めに収束することがあるようです。出典 : of Having an Autism Assistance Dog(介助犬を飼うことのメリット)上記ページでは、介助犬のおかげで自閉症児の言語能力が著しい発達を見せた、という事例も紹介されています。そのため、言語療法のセッションには犬も同伴するようにしたそうです。もっと知って広まって欲しい、いろんな介助犬のこと出典 : 犬や猫を抱っこしていると癒される…とはよく言われますが、自閉症児には「癒し」以上の様々な効果が、事例として紹介されていました。自閉症児向け介助犬のことを知り、我が家でも発達障害の息子のために犬を飼い始めました。残念ながら、自宅で飼う小さな愛玩犬ですので、特別な訓練をされているわけではありません。息子が大きな声を出したり、ぎゅっと抱きついたりするのは犬にとっては少し怖いようで、息子を見るとさっさと逃げてしまいます。ただ、息子がパニックを起こしてぎゃーぎゃーと泣いているときには、どこからともなく寄ってきて、息子の顔をぺろぺろと舐め始めます。子どもはパニックを起こしているとき、とても孤独です。息子はよく言います。「みんな困っているのもわかっている、でも自分じゃパニックを止められない」と。そんなとき犬が息子に寄り添って顔を舐め続けてくれる…それだけでも、犬を飼って良かったかなと私は思っています。自閉症児向けの介助犬を普及させるためには、訓練ができる人材やノウハウが必要です。日本ではまだまだ盲導犬や聴導犬以外の介助犬についてはあまり知られていませんが、自閉症児向けに訓練された介助犬というのが広がっていったら良いなあと思います。
2017年01月12日■未熟児養育医療制度とは?生まれてきた赤ちゃんが「未熟児」や「低出生体重児」だった場合など、医師が入院療養が必要だと認めた赤ちゃんが、全国の「指定養育医療機関」で治療を受けた場合、その医療費を助成する制度。■未熟児養育医療制度でもらえる金額は、いくら?費用の全部、または一部(地域によっては保護者の所得に応じて一部自己負担金がかかる場合もある)を負担してもらえる。■未熟児養育医療制度でもらえる人は、どんな人?この制度が適用される赤ちゃんは、「出生時の体重が2000g以下の場合」または、または下記のような場合などだ。●未熟児養育医療制度で助成の対象となる乳児 (例)1) 運動不安・けいれんがあるものなど2) 体温が34度以下3) 呼吸器・循環器系(強度のチアノーゼがあるなど)4) 黄疸(おうだん)(生後数時間以内に現れるか、異常に強い黄疸のあるもの) など■未熟児養育医療制度の手続きの概要医師に養育医療意見書をもらい、書類審査を受ける出生届を出した後、医師に養育医療意見書をもらうケースによっては、出生届を出す前に、手続きが開始することもある。未熟児養育医療給付申請書、世帯調査書は自分で書き、自治体によっては扶養者の所得を証明する書類(源泉徴収票のコピーや確定申告書)と一緒に未熟児養育医療の申請をし、書類審査に通ると利用できる。■コラム:未熟児養育医療制度を利用した私の実感「生まれた子が、未熟児だった」というのは、ママにとっては結構ショックな出来事。じつは、私にも経験がある。次男・三男が双子なため、二人とも早産で極小未熟児だったのだ。「ちゃんと産んであげられなくてごめん!」と、出産直後は相当自分を責め、大きな挫折感だった。 退院は一緒にできず、双子が入院している病院に搾乳を届ける日々。未熟児は文字通り「未成熟な状態で生まれた児」なので、当初はトラブルも多かった(生後半年で入院6回)。「障害が残る可能性は通常の10倍」と言われ、生後1年半、生まれた病院で生育の経過をチェックしてもらう「経過観察」にも通った。…と、いろいろあったが、あれから12年。極小未熟児で生まれた双子は、何の遜色もない普通の小学校6年生となった(現在、やや肥満気味ですらある)。「出産当初はショックだったけれど、過ぎてみればそれも懐かしい思い出」という現在の私の実感を伝えておきたい。■未熟児養育医療制度 DATA※この記事は2016年11月末現在の法令・情報に基づいて書いています。(監修:ファイナンシャルプランナー 畠中雅子/文:楢戸ひかる)
2017年01月10日眠いのに眠れないという皆さん、入眠障害という言葉を知っていますか?日本人の約3割は入眠障害だと言われています。入眠障害を抱えている方は他の睡眠障害を併発している場合が多く、病院へ行くときにはかなり入眠障害が酷くなってしまう場合が多いのが特徴です。入眠障害について、原因と対処方法、試してみてほしい方法などを紹介します。目次■ 入眠障害とは■ 入眠障害の症状■ 入眠障害の原因■ 入眠障害の対策とアドバイス(診断前)■ 入眠障害の対策とアドバイス(診断後)■入眠障害とは悩みや考え事などないのに自然な眠りに入れない状態(消灯から2時間以上)が週に3回以上あり、それが3か月以上連続で続いている場合を入眠障害といいます。入眠障害は中々自分自身で自覚するのが難しいこともあり多くの人が人知れず悩んでいる状況です。病院で治療が必要なのは、寝入りが悪いために以下のような事が続く場合です。睡眠不足が連続で2週間以上続く睡眠が足りていないため、仕事や生活に支障をきたす昼間の生活に睡眠不足が支障をきたす他の人から見て昼間の生活が支障をきたしていると指摘される入眠障害など睡眠に関する悩みで多いのが、「自分は本当に入眠障害なのだろうか?このくらいで病院に行ったらおかしいと思われるのではないか」ということです。■入眠障害の症状入眠障害の症状は外の睡眠障害の症状と違うのが特徴的です。しかし、入眠障害+他の睡眠障害という方もいらっしゃいますので、以下の症状に少しでも当てはまる方は最寄りの内科か精神科・心療内科へ行くことをおすすめします。消灯から2時間経っても寝付けない(注意:ただし、通常は既に1時間以上経てば入眠が困難であると不快感を感じ始めます。)ある時期から寝入りがかなり悪くなった悩みなどを消灯まで引きずっていないコーヒーや飲酒などの刺激物などを取っていないのに眠れない体は疲れているのに眠れそうで眠れない何かで寝入り際に起きてしまうとまた眠るのが難しくなってくる仕事やスポーツなど体を動かしたり頭を使うようなことがあり疲れていても眠りに入れないちなみに私はこれらの症状すべてが当てはまります。また、些細な隣の部屋からの話し声や外を走っている車のエンジン音なども寝入り際に気になると次に寝入るのが難しくなってしまいます。>>眠れないときの病院選び・治療ガイド■入眠障害の原因では一体、入眠障害の原因は何なのでしょうか?大きな原因は次の8つが考えられます。1.頭が興奮しすぎている私たちの体は自律神経(交感神経・副交感神経)と呼ばれる2つの神経のグループが交互にリーダーになり、私たちの行動がコントロールされています。◎交感神経:活発に活動したり興奮状態の時はこの神経のグループがリーダーとなり私たちを動かしてくれます。(例:興奮する、目が覚める、やる気の状態)◎副交感神経:睡眠や消化活動などに体が落ち着いた場合にリーダーになるグループです。(例:トイレに行きたくなる、お腹が空く、眠くなる、やる気がなくなる、落ち着く)入眠障害の原因は、「体が疲れているのに頭が興奮しているため眠りを呼び起こさない」というのが第一の原因だと言われています。2.性格や遺伝気質交感神経の働きとも関係が出てきますが、性格的に交感神経がリーダーになりやすい人や、遺伝気質的に(親戚にそのような人が多い)興奮しやすい気質などを持っている場合は、他の人よりも興奮が収まりにくく中々眠りにはいれません。3.寝入る前の体温が高すぎる/低すぎる寝入る直前は体温が少し下がっています。しかし熱帯夜などを思い浮かべてくださると分かりやすいと思いますが、体温が眠る前にも関わらず高いと眠りに入りにくい傾向があります。ちなみに以下のような状態の時に起こりやすくなります。高温のお風呂が好き寝る部屋が暑い体を寝る直前に温めすぎる(*注意:適度に温めるのは寝入るために良いことですが、やりすぎて温めすぎるのは却って入眠を困難にしてしまいます。)厚着や布団などを多くかけすぎる反対に寒すぎるこのように極端な環境だと寝入りに入るタイミングを逃してしまう場合が多いです。4.寝入るのに適切な環境でないお子さんが小さい場合や、眠る時間帯が違う人が一緒に暮らしていると起こりやすい原因です。また、いびきや歯ぎしり、寝言なども気になってしまう人には原因になりやすいです。その他にも、以下のようなことがあると眠りにくいです。眠っている時にPCやベッドサイドのライトが目に入ってくる夜中に帰ってくる人が近所にいる大学生など人が多く集まる場所が近くにある5.昼間あまり活発に動いていない/動きすぎている昼間一人で家に居る人や、事務の仕事の人などは体を動かさずにPCのモニターなどだけを見ている作業が多くなります。そうすると、体があまり疲れずに夜になっても寝入りが難しくなります。反対に、一日中走り回ったり立ち仕事で絶えず体を動かす人も体が疲れすぎて眠りにすんなり入れないことがあります。6.昼間の刺激物(カフェイン飲料やカカオなど)の過剰摂取昼間にカフェインが多く含まれたコーヒーやお茶などを飲むと中々交感神経と副交感神経が交代してくれず、眠りに入れなくなります。また、チョコレートや辛い香辛料などが好きな人も夜までそれらで興奮された脳の状態が残ってしまい、寝入りが難しくなってしまいます。7.ショックな映像やショックな出来事が身近に起こったショックを受けることを聞いたり、人から直接批判されたりすると精神面で軽く落ち込み(へこむ状態)それが寝入りを悪くさせている可能性もあります。自分では気にしていないようでも、無意識に心の奥底で傷ついている場合があります。また、身近でなくてもショッキングな出来事や映像などを見てしまうと、代理トラウマといって自分が直に受けていないのにそのショックを受けた状態(トラウマ状態)になってしまいます。8.持病の薬やサプリメント以下の薬やサプリメントは交感神経に働きかけるため入眠困難になる場合もあります。(個人差あり)気分を高揚させるような薬(抗うつ剤、抗パーキンソン病の薬)カフェイン栄養ドリンク高血圧の薬気管支拡張剤など呼吸器系の薬ステロイド抗生物質咳止めの薬など★可能性のある病気上記の8つ以外の原因に、病気によって入眠困難になる場合も考えられます。そのような場合には、必ず以下のポイントに注視してみてください。例1.心臓や肺が悪い場合入眠困難+息苦しい、咳が出る、むくみがでるなど例2.鬱などの精神的な場合入眠困難+外に出る気がしない、気分が落ち込む、やる気が出ないなど(ベッドから出れない)例3.腎臓病や肝臓病の場合入眠困難+肌の色(指で押すと黄色くなる)や肌の痒み・赤み、尿の色の変化(茶色や黒色など)、急にお腹だけ膨れてきた、生活できないほどの疲労感や倦怠感などこの他にも、糖尿病や慢性的な病気、または自己免疫性症候群やアトピー性皮膚炎などの持病がある人は入眠困難になりやすいです。■入眠障害の対策とアドバイス(診断前)重要なのは以下の3つのことです。1.内科か心療内科・精神科の専門機関にかかる一番重要なことは、まずは内科や心療内科など専門機関にかかり、適切な診断を受けることだと思います。もし、入眠困難だけでしたら入眠困難を治すように努力すればいいですし、他の病気が原因で2次的に入眠困難が起こっているようでしたら、その元になっている病気を先に治すという風に、早めに診断されれば早めに対処でき短時間で解決する場合も多いからです。>>眠れないときの病院選び・治療ガイド2.持病を治す持病があればそれをしっかりと治してみて、それでも入眠困難があるかどうか確かめてください。3.自己判断をしない自己判断で安易に市販の睡眠薬などを飲むのは根本的な解決になっていません。■入眠障害の対策とアドバイス(診断後)入眠困難などの睡眠障害と診断されたら、まずは医師の治療内容に従ってみましょう。医師は治療マニュアルに沿って治療を行います。日本睡眠学会が定める治療マニュアルは、日本人の体質に一番適した治療法です。何ができるのか分からない時は、まずは身近な物から目を向けてみて下さい。例えば、以下のようなものもおすすめです。寝る前には少し頭を冷やして足元を温める:副交感神経に変わり安いです消灯の1時間前には全てのITツールを遮断する(PC,スマホ、タブレットなど):脳を興奮させないようにしますストレッチなどで体をほぐす:血行が良くなり筋肉がほぐれるので寝入りが楽になりますノンカフェインの暖かいお茶を飲む:体温が上がり血糖値も少し上がるので(正常の範囲内です)空腹感がまぎれます呼吸を少し意識して遅くする:副交感神経に変わりやすくなります肌に触れる素材はコットンなど柔らかい素材にかえる寝る前の儀式(羊を数えたり、白湯を飲んだり)など習慣をつける参考文献URL:日本睡眠学会治療マニュアル <筆者プロフィール>ニックネーム:benichanカリブ海で内科医師をしています。最新機器がない島で最低限の技術で工夫して患者さんを診察しています。自分自身も入眠障害型の不眠症なので、皆さんと一緒に問題を解決していきたいと思っています。日本の医療技術は先進国の中でも高い技術を誇っていますので、その技術の恩恵を利用しない手はありません!不眠を改善し、朝までぐっすり眠りましょう!
2016年12月30日発達障害を自覚していなかった私が、障害者雇用で働くことを決意する出典 : 私は幼少期に学習障害の診断を受けていましたが、その事実を自分が知ることはありませんでした。大人になって就職すると、作業の指示をうまく理解できない、上司の指示を誤解してしまうなどさまざまな壁にぶつかり、自分に発達障害があることがわかりました。しかし当時の私は医師の診断を受け入れず、「健常者」として生きることを選びました。その後、仕事はうまくいかず、私は解雇されてしまいます。私は旅を通して自分自身を見つめなおし、ようやく「障害者」として生きる決意を固めたのです。今回は、障害者雇用で働き始めた私が、過去を振り返りながら今思うことをお話したいと思います。自分自身が障害を受け入れた決意を話すと、両親の反応は…出典 : 私が両親に「障害者として生きる」という決意を伝えたとき、両親はやんわりと反対しました。無理もない話だとは思います。解雇されたとはいえ、今まで健常者だと思っていた自分の子どもが障害者になるのです。あまり表面に出していませんでしたが、混乱や嫌だと思う気持ちは少なからずあったようです。もちろん、障害特性を理解し、健常者枠で就職するという選択肢もありました。しかし私の場合は「4年近く健常者として働いたが、どう頑張っても成果を出せなかった」という紛れもない事実がありました。この事実の前に、議論の余地はありませんでした。また、発達障害についても改めて調べ直したところ、「単純作業が苦にならない」という、働く上で強みになる特性が私にもあることを知りました。そこで「発達障害を個性として受け入れ、その個性を最大限活かして働く」という方針を決めました。前職の仕事では作業中に細かな仕様変更が度々発生し混乱していたため、作業内容の変更が頻繁に起きないであろう事務職の仕事を希望する事にしました。障害者雇用での再出発、しかし現実は厳しく…出典 : 発達障害を受け入れて生きることを決めてからは、通院を再開し、ウイングル(2016年8月1日に「LITALICOワークス」に改名)の就労支援事業所や、あではで会という発達障害の当事者達が助け合う集まりへ通い、発達障害に対する理解を深めつつ再就職の活動に取り組み始めました。私がウイングルを選んだのは、模擬就労という実際の職場に似せた環境で職業訓練を受けることが出来たためです。実際、習うより慣れる方が向いていた私は順調にスキルアップをしていきました。私は訓練での評価も良かったので、4ヶ月もすれば就職先は決まるだろうと思っていました。しかし実際には、面接どころか書類選考すら通過せず4ヶ月が過ぎてしまいました。上手く行かないのはなぜだろうかと思っていたとき、新聞である記事を読みました。その記事には大手転職斡旋会社へ寄せられる障害者求人の内、9割以上が身体に障害のある方を対象にしたものだということが書かれていました。つまり多くの企業は、障害の種類を理由に私の雇用を断っている可能性があったのです。とても残念で悲しいことでしたが、憤ってどうにかなるわけではないので、焦らずに就労訓練で自分を鍛えつつチャンスを待ちました。その甲斐もあって、無事、一般企業の事務職へ再就職することが出来ました。ちなみに現在では、身体障害者以外を対象にした求人も増えてきているそうです。障害者雇用で働きはじめ、今は生き生きと暮らせている出典 : 再就職してから約3年が経過した今、前職とは違って楽しみながら働いています。入社当初は非正規雇用での採用でしたが、順調に成果を出して行き、やがて作業の1つを担当として任されました。さらに作業担当になってから数ヶ月後、私の担当作業は重要な作業として注目されるようになりました。一般社員・役職者を問わず数十名の方を率いて、作業の人頭指揮を執るという経験もしました。前職の頃では到底成し得なかったでしょう。しかし、自分の発達障害を知り、受け入れた後は、その特性を最大限活かせるように準備を整えて挑みました。その結果、十分な成果を出すことができました。今では正社員に昇格し、メンバーに作業指示を出す立場になりました。しかし、仕事上のコミュニケーションに関するトラブルは、前職のときほど問題にはならないものの、常に付きまとっています。その際は外部の支援者を頼っています。自身の障害を受け入れて約3年。いま、振り返って思うこと出典 : 私が障害者雇用で安定して働くことができている理由としては、●自分の障害特性を含めて自己分析を納得するまで行い、自分の強みを最大限発揮できる職種を選んだ●入社時に、障害特性上配慮が必要なことと、得意なことを上司に伝えた●出来ないと思ったことでも、「配慮や手助けがあれば自分で出来ないか」を考えたことが挙げられると思います。特に、ただ「出来ない」とだけ伝えてしまうと印象が良くないため、代わりに強みになることや、出来るようになる方法を考え伝えるようにしていました。ここで1つお断りしておきたいのは、”私の場合は”障害者枠で就職したほうが、良い結果が出せただけということです。障害のある人全員が、障害者枠で入社するのが最善とは限らないと思います。残念ながら障害者を受け入れる職場環境などが整っていない職場も依然として多くあります。そのため、障害を隠して就職するのも選択の1つなのかもしれません。ただ、障害の特性のためにどうしても苦手になってしまう仕事や不利になる部分について、会社から理解を得られるとは限りません。障害を隠すにしろ明かすにしろ、自身の障害特性を十分に把握して対策を考えておくことが必要でしょう。また、就職してから職場に馴染めるまでは、障害者の就労移行支援を行っている事業者など、外部の支援者が必要だと思います。少なくとも会社と重要な交渉をするとき、1人ではどうしても不利になるということを覚えておいて下さい。「発達障害」という障害の困難さ。だからこそ、「自分を知る」努力を続けたい出典 : 一般的に「障害」というと、ハンデとなる部分が目に見えたり、症状をある程度明確に言葉で表現出来るものが多いと思います。しかし、発達障害はパッと見で分かることは無く、症状も多種多様な組合せがあり、診断名と明確に紐付けることはできません。私はこのことが、「発達障害」という障害の最大のハンデだと思っています。例えば、私の場合「できない」と思っていたことでも、条件がそろえば出来ることもあれば、その逆もあります。それを見た上司は、私に何ができて何ができないのか、その判断を誤解してしまうことがあるのです。いったん納得出来るまで自己分析を行った私ですが、自分を知ることに終わりは無いと感じています。何故なら生活環境や人間関係が変化することで、今までは無かった問題が表れるためです。また、自分を知ることで事前に周囲とのトラブルを避けられるだけでなく、自分の強みが見つかることもあります。後から来る人たちを思うことで、先へと進んでいける出典 : 近年ようやく発達障害は世間に認知されつつありますが、私達が歩む道は未だに困難なものです。例えば2016年7月26日に発生した相模原の殺傷事件。この事件に対する一部の人々の反応から「障害への偏見」という氷山の一角を改めて感じました。ですが研究者やLITALICOを始めとした民間の支援者、そして発達障害の当事者、先を行く皆さんは道を少しずつ踏み固めて整備し、後から来る者の手助けをしてくれています。正直、私は書くことが大の苦手です。しかし、私が伝えることで少しでも誰かの助けになり、少しずつ社会が良い方向へ変わっていく事を願って、今後も書き続けて行きたいと思います。障害特性とも相まって遅筆な私ですが、これからもまた困難を乗り越えたらここで発信したいと思います。これで今回のお話は終わりです。最後までお付き合い下さりありがとうございます。みなさんの先行きが明るいことを願っております。
2016年12月22日子どもが学校に通っているときに悩ましいこと出典 : 発達障害児の子育てで悩むことの1つに、学校や先生とどう付きあっていけば、子どもが安心して通えるのか?という悩みがあると思います。私は先日、ちょうどこの悩みを取り上げたテレビ番組を視ていました。12月2日に放映されたNHK・Eテレ「ウワサの保護者会~子どもの発達障害Part3学校とのつき合い方」です。ご覧になった方も多いのではないでしょうか。番組では、学校との関係に悩むたくさんの保護者の声が紹介されていました。その中で代表的だったのが「学校が子どもの発達障害を正しく理解してくれない」というもの。理解のない先生に叱られ続け、学校に行けなくなってしまったお子さんの話や、逆に「障害がある」と決めつけて子どもの悪いところばかりを指摘する先生のお話が紹介され、そこには「学校への不信感」が強く表れていました。でも子どもが安心してのびのびと学校生活を送るためには、「先生が悪い!」と責めるだけ、あきらめるだけで終わらせるわけにはいきませんよね。先生になんとか理解してもらうには、協力してもらうには、どうしたらいいのでしょうか? Eテレ「ウワサの保護者会」14年前、私も教員だった。まだ発達障害そのものが知られていなかった頃…出典 : この番組を見て、自分が教員だった頃のことを思い出しました。今から14年ほど前は、まだ「ADHD」「発達障害」などという言葉は教育現場でさえほとんど知られていない時代です。私が受け持っていたクラスに「ADHD」の診断を受けた男の子がいました。4月の家庭訪問でその子のお母さんから「これ読んでください!」とある本を渡されたのです。それは、当時出版されたばかりの『のび太・ジャイアン症候群』という本でした。お母さんからはその他に、子どもの特性と一緒に「このように配慮してほしい」とたくさんの説明を受けましたが、小学校に赴任したばかりの新米教師だった私は正直、いっぱいいっぱいでした。特性や配慮事項についてはなんとなく認識しましたが、さすがに本を読む余裕はありませんでした。その子に対し、あまり手をかけてあげられなかったのが、今とても悔やまれます。新版 ADHD のび太・ジャイアン症候群 司馬 理英子 (著)両者の立場がわかるからこそ、できることがあるはず出典 : 私は元教員という立場と、発達障害児の母という両方の立場を経験し、両者の葛藤や考えがわかるようになりました。その経験を生かし、自分が母として学校の先生と関わっていくとき、心がけていたことをご紹介したいと思います。一番最初にしたことは「まずは先生に感謝を伝えること」でした。教員経験があるからわかるのかもしれませんが、先生は想像以上に多忙です。子どもの指導だけではなく、大量の事務仕事や様々な会議に追われています。そのため、まず親としてそのことに感謝し、労わりの言葉を先生には伝えていました。また、ほんの小さなことでも子どもの成長が見られたら、それを先生に伝えて「ありがとうございます!」と感謝しました。たとえその成長が直接先生の指導と関係なくても、子どもの成長は先生にとっても嬉しく、親に感謝されたら尚更だと思うのです。それが、「この子をもっと伸ばしてあげよう」という、教師のやる気につながることも多いのです。出典 : 感謝を伝えた上で、「この子はこのようなところがあるので、このような配慮をして頂けるとありがたいです。」ということを丁寧にお願いしていきました。その際には、病院や教育相談でこのようなアドバイスを受けたので、と、親の主観ではなく専門的な知見からのお願いであることを強調していました。そして、家で用意できるものは用意します、など、学校任せではなく家庭でも最大限の努力をしました。もちろん、全員の先生が、子どもの特性や配慮事項を理解してくれた訳ではありません。宿題への配慮を「みんなと同じでないと困るので」と断られたこともあります。それでも、このような先生への対応を続けていったことで、いつでも話ができ、できる範囲での配慮をして下さる関係を、保ち続けることができました。先生と親は、共に子どもを見守っていく同志でありたい出典 : 最後に、「ウワサの保護者会」の中で、面白い!と思ったエピソードがあります。あるお母さんが子どものことで朝の7時半に学校に電話をしたら、ちょうど担任の先生が出たとのこと。その先生も子育て中だと知っていたので「朝早くから大変ですね~」と言ったのだそうです。そうしたら、その先生が「そうなんですよ~!」と、いつもの声と違った素の声で返してきたのだとか。それ以来、そのお母さんと先生はフランクにお話ができるような気さくな関係になれたのだそうです。先生に、子どもに寄り添ってもらいたい、と思ったらまずはこちらが先生に寄り添ってみる。「子どもを見守っていく」という同じ目標に向かって協力する同志になるためには、先生と人間的な心のつながりを持てるよう、関係を築くところから始めるのも、1つの方法なのですね。子どもを守るためには、先生と保護者とで一緒に考えていくことが大事!番組もそう言っていましたが…保護者だけではなく、学校や先生方にも、子どもや保護者に寄り添おう、一緒に考えよう、という姿勢になっていってほしいと願います。
2016年12月19日子どもの遊びでよくあるトラブル。夢中になるのはわかるけど…Upload By モンズースー子どもはおもちゃなど同じ種類の物を規則的に並べる遊びが好きですよね。発達の遅れのある子の中には特にこの遊びが好きな子が多いと聞きます。そんな発達の遅れのある子ども達が集まる場所で、毎回のように起こっていたトラブルが「並べる」と「積む」の争いでした。このブロック、どこの遊び場でも見かけるのですが、部屋に入るとまずこれを並べる子がいつも現れるのです。彼らは全部のブロックを並べたいのですが、我が家の長男を含む数人の子は「積む」遊びが好きなので別の場所から積んでいってしまいす。長男たちの目標は全部のブロックを上に積むこと。最初は相手の行動が見えていないのでお互いのブロックを崩しては並べたり積んだりを繰り返すのですが、なかなか完成せず途中で自分と違う行動の相手に気づきバトルに…。人数が多いと「積む派」と「並べる派」とで乱闘…なんてこともありました。年齢が上の子を見ていると、相手の考えを少し理解できるようになり、譲ったり言葉で交渉したりすることもできるようです。我が家の長男はまだ言葉での交渉が苦手で、相手の考えを理解できても自分の考えを変えられず、争ってしまう時もあります。しかし、人と自分の考えが違うことに気づき、どうすればいいのか考えられるようになった分、少しづつ成長しているのかな…と思いました。そんな経験も、長男にとっては大切な勉強なのだと思います。
2016年12月16日軽度知的障害とは?出典 : 軽度知的障害とは、発達期までに生じた知的機能の障害により、知的発達が実年齢よりも低い知能指数(IQ)50~69の水準にとどまり、適応能力は正常またはやや遅れがある状態を指します。ことばや抽象的な内容の理解に遅れがみられることがありますが、身の回りのことはほとんど一人で行うことができます。学業面では遅れを感じることもありますが、年齢を重ねながら考える力を身につけられます。よって幼少期には気づかれにくく、小学校高学年~中学生までの間に軽度知的障害と分かる場合もあります。またストレスなどによる二次障害や自閉症スペクトラム障害などの合併症を伴っていることもあり、二次障害や合併症の方が目立って表出しているケースもあります。なお発達期とはおおむね18歳までを指し、それ以降に事故や病気などで知的機能の低下が発症しても、知的障害および軽度知的障害とは言いません。現在の精神医学書で使われている知的障害の定義は、アメリカ精神遅滞協会が提唱した定義を参考にしていることが多くなっています。以下はアメリカ精神遅滞協会が定めた定義です。知的障害は、知的機能および適応行動(概念的、社会的および実用的な定期追うスキルで表される)の双方の明らかな制約によって特徴づけられる能力障害である。この能力障害は、18歳までに生じる (AAMR,2002)知的障害は、染色体異常を原因とするダウン症のように出生後にすぐ診断できる疾病に合併する場合もあれば、自閉症のように生後すぐには診断できない障害に合併することもあります。出典:ICD-10精神および行動の障害-DCR研究用診断基準 新訂版 (2008)|中根 允文知能指数とは人の知能の基準を数値化したものです。ここでいう知能(IQ)とは、いわゆる学力ではなく、目的に沿って合理的に考え、効率的に環境を処理する総合的な能力のことをいいます。IQ90~109が平均の知能指数であり、そこからどのくらい高いか・低いかと考えます。軽度知的障害のある人は、概ね知能指数(IQ)が50~69にとどまると考えられています。適応能力とは身辺の自立(食事・着替え・排泄など)や家事、社会的な対人関係の構築、読み書き・コミュニケーションなど日常生活や社会生活上における全般的な能力のことを指します。能力の測定は、自分の強み・弱みを理解するために行います。出典:主な心理・発達検査の種類と特徴・WISC-Ⅲの概要出典:ICD-10精神および行動の障害-DCR研究用診断基準 新訂版 (2008)|中根 允文Upload By 発達障害のキホンこの図は知的障害の程度・区分を示した図です。横軸に「日常生活能力水準」、縦軸に「知能指数(IQ)」の程度を表しています。日常生活能力水準がaに近づくほど自立した生活が難しく、dに近づくほど自立した生活ができることを表します。同様にⅠに近づくほどIQが低く、IVに近づくほどIQが高くなります。知的機能が低かったとしても日常生活への適応能力が高ければ、ひとつ軽度の程度で判断されることがあります。IQ36~50の方でも生活能力が高ければ軽度知的障害に含まれます。一方で、IQ51~70の方でも日常生活への適応能力が低い場合は、中度知的障害に含まれる場合もあるということです。このように、知的障害は知的機能検査だけで判断されるわけではなく、知的機能と適応機能の2つが評価された上で診断が下されます。またこの程度を分類する方式は、療育手帳を取得する際にも用いられています。療育手帳については8章で詳しく説明していきます。軽度知的障害の原因って?出典 : 知的障害の原因は一つではなく、原因不明の知的障害の人も多いとされています。原因解明の研究が進んでいますが、現段階では内的原因と外的原因に分類することができるといわれています。内的原因とは遺伝子や染色体の異常など、子どもが先天的にもつ原因のことをいいます。病気や外傷など脳障害をきたす疾患で、これらの合併症として知的障害が一緒に起きることを病理的要因と呼びます。この中にはてんかんや脳性まひなどのほか、ダウン症などの染色体異常による疾病も含まれます。軽度知的障害および知的障害の原因の約8割が出生前に発生していることが分かっており、以下のような疾病があげられます。・ダウン症・多因子性疾患・てんかん・脳性まひなどまた、中には特に疾病名などがなくても内的原因によって知能水準が知的障害の範囲内にあるといった場合もあり、生理的要因と呼んで区別されます。外的原因とは出生前後に起こった事故や養育環境などによる外的な要因が、原因となることをいいます。具体的には出生前に母体を通じて感染症や薬物・アルコールなどの大量摂取などにより、子どもに影響を及ぼす場合があります。中には軽度知的障害だけでなく、発育の遅れや中枢神経に何らかの異常をきたす恐れもあります。また出産時のトラブルでの頭蓋内出血、出生後の感染症への感染、交通事故などによって意識を失うほどの頭部外傷が原因になることもあります。このことを環境要因と呼びます。・感染症・出産時、出産後に起こった頭部の外傷・出産時のトラブルなど出典:知的障害のことがよくわかる本軽度知的障害の特徴の現れ方出典 : 軽度知的障害は知的機能と適応能力にやや遅れがあるものの、身の回りのこと(食事・洗面・着衣・排泄など)は自分で行うことができます。空間・時間・数量の認識に特徴はありますが、自ら学び取る力もあり、経験を重ねることで得られる知識や学びは広がります。軽度知的障害の方は空間・時間・数量の認識にどのような特徴があるのでしょうか。順番に説明していきます。◆空間の認識:「今いる場所」「何度か行った場所」「行ったことがない場所」と、自分と空間の関係を分類した場合、軽度知的障害の方は、自分が行ったことのない場所でも、その場所が存在していることを理解することできます。知的障害があると、目に見えないものや、抽象的な概念を理解することは苦手と言われていますが、軽度知的障害の場合はある程度はその概念を理解することもできるといえるでしょう。◆時間の認識:時計を見て「ご飯を食べる時間」「寝る時間」「学校へ行く時間」などと、時間帯とやるべきことを関連づけて理解できます。また過去や未来という概念も理解できます。一方で、時間の長さを計ったり、何時間後は何時になるという計算などになると、とまどうことがあります。しかし、トレーニングを積むことである程度は解消できるようになります。◆数量の認識:「100円玉2枚で飲み物を買うことができる」というように、自分の経験と結びつけて理解することができます。おつりがいくらになるかなど、細かい計算を瞬時に行うことは難しいですが、足し算や引き算などのトレーニングを積むことによってある程度のスピードでできるようになります。軽度知的障害がある子どもは、自分が経験してきたことを元に物事を理解していきます。認識できる世界を広げていくためには、さまざまな経験をすることが重要です。知的障害がある子どもは言葉の遅れ、物事を記憶することが苦手といわれています。言葉の遅れに関しては、「言葉」という概念を認識するまでに時間がかかるために生じます。言葉を認識するためには、経験の一つ一つを「言葉」として理解できるように工夫するとよいといわれています。例えば料理を一緒にしていたら「料理をする」「キャベツをとる」「野菜を切る」「煮込む」など、実際に経験しながら、具体的な物や行動の名前を覚えていきます。また物事を記憶しておくことも苦手です。記憶には「短期記憶」と「長期記憶」が存在しますが、短気記憶を繰り返し思い出すことにより、長期記憶として蓄えられていくと言われています。軽度知的障害があっても、身のまわりのことは年齢を追うごとに問題なく発達します。しかし、上に述べたような空間や時間の認識に特徴があるため、周りからは学習面やコミュニケーション面で遅れがあると感じられるようになります。よって経験の範囲を超えた知的な要求が増える小学校高学年~中学生の頃に障害があることに気づくことが多い傾向があります。出典:知的障害のことがよくわかる本軽度知的障害の診断基準と検査方法出典 : 軽度知的障害の確定診断は臨床診断と各種検査の結果によって総合的に診断されます。医療機関を受診した際の臨床的な診断として、生育歴と行動観察について聞き取りを行います。■生育歴産まれてから今までの社会性や対人コミュニケーション、言葉の発達、幼稚園・保育園での様子や1歳半健診・3歳児健診での様子などをヒアリングします。発達面で知的障害の疑いがありそうか、発達にどんな特性がありそうかなどを見立てていきます。■行動観察遊びの空間で子どもを遊ばせ、それを注意深く観察することと保護者の方へのインタビューに基づいて行われます。知能検査では主に田中ビネー知能検査とウェクスラー式知能検査によってIQを計測します。また2歳未満の子どもの場合や医師から必要と認められた場合は新版K式発達検査などの発達検査を受けることもあります。適応能力の検査ではvineland-II(ヴァインランド)がよく使われています。■田中ビネー知能検査 V(ファイブ)2歳から成人まで受けることができます。就学する5~6歳の年齢にフォーカスをあて、特別な配慮が必要かどうかを判断するための「就学児版田中ビネー知能検査V(ファイブ)」という検査もあります。子どもが興味を持てるように、検査に使われる道具が工夫されています。日常生活において必要な知能と、学習する上において必要な知能の2つを測定します。■ウェクスラー式知能検査ウェクスラー式知能検査は、年齢ごとに3つのテストに分類されます。・幼児(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月)→WPPSI・学生児(5歳から16歳11ヶ月)→WISC・成人(16歳〜)→WAISIQが求められるだけでなく、脳の発達具合を下位検査を用いて導出し、総合的に判断することができます。■新版K式発達検査年齢において一般的と考えられる行動や反応と、対象児者の行動や反応が合致するかどうかを評価する検査です。検査は、「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。検査結果としては、この3領域の「発達指数」と「発達年齢」が分かります。検査者は検査結果だけでなく、言語反応、感情、動作、情緒などの反応も記録し、総合的に判断します。■vineland-II(全年齢)0歳から92歳の幅広い年齢帯で、同年齢の一般の人の適応行動をもとに、発達障害や知的障害、あるいは精神障害の人たちの適応行動の水準を客観的に数値化する検査です。対象者にどんな特性があるのかを評価してくれます。また教育や福祉分野の個別支援計画の立案はVinelandの評価に基づいて行われることがあります。その他にも適応能力の検査として、以下の検査がよく使われています。・ASA旭出式社会適応スキル(幼児〜高)・S-M社会生活能力検査(乳幼児〜中学生)軽度知的障害の疑いを感じたら?出典 : 自分の子どもには軽度知的障害があるかもしれない、と疑問を持った場合、いきなり専門医を自分で探すのは難しいですよね。まずはお住まいの地域にある身近な相談機関や窓口に行ってみましょう。子どもか大人かによって、相談先が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童相談所・発達障害者支援センターなど【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業生活支援センター・相談支援事業所など先に挙げたような知能検査は、児童相談所などで無料で受けられる場合もありますし、相談機関では、知的障害のことだけでなく子どもの発達全般について相談することも可能です。自宅の近くに相談機関がない場合には、電話での相談にものってくれることがあります。軽度知的障害ならではの戸惑いや合併症などの悩みって?出典 : ここでは、軽度知的障害ならではの戸惑いや合併症などについて考えていきます。軽度知的障害は幼少期に気づかれにくく、概ね小学校高学年~中学生の時期に気づかれることが多いとされています。また障害の症状が基となって様々なトラブルを誘発し、ストレスによる二次障害や合併症を起こすことがあります。■軽度知的障害を受け入れることへの本人・保護者の戸惑い思春期に発覚することが多い障害であるがゆえに、本人や保護者が障害を受け入れることに戸惑いを感じることがあります。勉強についていけなかったり、対人関係が上手くいかなかったりなど、本人が「どうしてだろう?」と悩み、場合によっては相談もできずに自尊感情が低下することがあります。また、保護者も子どもに対しての接し方や周囲の理解や環境のつくり方、また子どもの将来のことなどの不安要素によって戸惑いを感じることがあります。息子の経歴を簡単に記載します。小学校、中学校、高校ではただただ勉強が出来ない程度の子供と思っていましたが高校卒業時に就職活動、卒業試験、普通免許の取得等の活動をしていましたが思うようにいかずに精神的におかしくなり、引きこもるようになりました。また、持病にてんかんをもっており、発作の回数が増えて主治医に相談したところ、専門の病院を紹介され、診察を受けたところ、18才で初めて知的障害であることがわかりました。■周囲への理解をどうやって得ていく?思春期に障害が明らかになるケースでは、以前から症状がありながらも診断を受けていなかったケースと、はじめて症状が明らかになってきたケースがあります。前者の場合は、症状がある程度みられていたため家族・親戚や学校なども、それぞれで既に本人に合わせた対応をしていることもあります。改めて話し合い、接し方や合理的配慮を考えていく必要があります。一方で後者のケースの場合は、一から周囲への理解を仰がなければならないため、「何からどうすればいいのか分からない」など、戸惑うことがあります。■二次障害や合併症が原因で問題行動が起きているとき軽度知的障害は、その特性が基となって周囲とのコミュニケーションが上手くいかないことや、不適合な環境やストレスなどが原因となって問題行動を起こしたり、行動障害や反抗挑戦性障害などの二次障害が引き起こされる可能性があります。問題行動とは周りの人を困惑させる行為のことをいいます。例えば自傷行為、徘徊、他人への攻撃、喧嘩を仕掛ける、あるいは不登校やひきこもりなどがあります。場合によっては軽度知的障害の症状よりも二次障害の症状が目立って表出する場合もあるため、問題行動の根幹原因を見極め、調整や変更などを行うことが求められます。軽度知的障害との向き合い方・学校等での配慮のポイント出典 : ■軽度知的障害との向き合い方保護者をはじめ本人にとっても、軽度知的障害を受け入れるには時間が必要です。無理に急いで受け入れようと焦っても心理的な負担になりかねません。一般的にゆっくり段階を追って障害を受容していくと言われています。最初のうちはショックや葛藤が生じることがありますが、本人や周囲の人が、それぞれのペースで身体的・社会的・心理的に障害を受け入れていくまで、焦らず時間をかけて関わり合うことが大切です。困った時は発達障害者支援センターや専門医など、専門家に頼りながら落ち着いた対応を心がけましょう。■合理的配慮という観点合理的配慮とは障害のある人が障害のない人と平等に人権を享受し行使できるよう、一人ひとりの特徴や場面に応じて発生する障害・困難さを取り除くための、個別の調整や変更のことです。2016年4月1日に施行された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(通称、「障害者差別解消法」)により、行政機関や事業者には、障害のある人に対する合理的配慮を可能な限り提供することが求められるようになりました。本人を取り巻く周辺の人が合理的配慮を考える上での重要なポイントは、「その人が具体的にいつ、どんな場面で困っているのか」「その困りごとを解消するための適切な配慮は何か」の2点です。これらを踏まえながら学校や職場などの合理的配慮を検討・実施することが大切です。合理的配慮に関しては次のリンクを参考にしてみてください。■問題行動の背後にある原因の探り、解決を目指していく問題行動をとる子どもを「困った子だ」といって疎んじたり叱ったりするのではなく、その子ども自身が何に「困っている子」なのか、その子が問題行動をとらざるを得ない原因は何なのかを理解しようとすることが大切です。問題行動をとる子ども自身、その行動がよくない行動だということ理解している場合も少なくありません。それでもなお、数少ない自己主張の方法のひとつとしてその行動をとっていたり、心理的・身体的なストレスからその行動に移ってしまう場合があるのです。カウンセリングを通して子どもをケアしたり、学校・家庭の環境をもう一度見直すことなど、解決に向けた方法を探っていきましょう。軽度知的障害でも療育手帳は取得できるの?申請方法もご紹介します出典 : 療育手帳とは知的障害者に発行される障害者手帳で、知的障害のある方が一貫した療育・援護を受けられるよう、さまざまな制度やサービスの利用をしやすくすることを目的にしています。・おおむね18歳以前に知的機能障害が発症し、それが持続している。・標準化された知的検査によって測定された知能指数(IQ)が75以下。(70以下に規定している自治体もある)・日常生活に支障が生じているため、医療、福祉、教育、職業面で特別の援助を必要とする。上記の目安に従い、18歳未満は児童相談所、18歳以上は知的障害者更生相談所において知的障害と判定された方に対して交付されます。療育手帳制度の概要(厚生労働省)障害の程度などによって、交付される療育手帳の区分がわかれ、受けられるサービスの適用範囲が違ってきます。各自治体が判定基準に基づいて、知能検査による知能指数(IQ)と日常生活能力などから、知的障害の程度を総合的に判断し、療育手帳の区分を決定しています。軽度・中度・重度・最重度といったように知的障害でも4つの程度に分けられます。その分け方に関しては1章で図を用いながら紹介しました。療育手帳の区分は基本的に重度「A」と重度以外の中・軽度「B」の2つの区分にわけられますが、自治体によって区分の分け方もより細かく区分している場合などがあり、さまざまです。より細かい区分は自治体によって、また本人の年齢によって変わりますが、おおよそ以下の基準を目安に判定されています。ただし、これらは判定基準の一部分について例示したものであり、最終的には自治体の独自の基準によって区分が決められます。■重度(A)・最重度・重度■軽度(B)・中度・軽度(B/B2/4度など)療育手帳の区分について(自治体別一覧)/東京大学大学院経済学研究科READ療育手帳を申請に関する細かい点はお住まいの自治体によって異なりますので、申請される際には福祉担当窓口にお問い合わせください。■申請に必要な書類・療育手帳交付申請書:自治体の福祉事務所・福祉担当窓口、またはPDFのダウンロードや郵送での取り寄せができる場合もあります。・写真:サイズなど規定が決まっている場合があるので確認しましょう。その場で撮影してくれる自治体もあるようです。・印鑑・その他添付書類:通知表、成績証明書、医師による診断書などが必要な自治体もあります。詳しい申請の流れは以下の記事をご参照ください。まとめ出典 : 軽度知的障害がある方は日常生活を送る上では支障はなく、学校での授業など知的能力を問われる場合にならないと分からないことがあります。ですので、多くの方は小学校高学年~中学生の時に症状が明らかになります。学校の勉強に追いつけない、友達とのコミュニケーションが上手くいかない、友達関係も上手くいかないなど、年齢を追うごとに自然と困難な場面に出会うことが多くなるのも一種の特徴です。学校で受けた、そういったストレスが家庭で爆発してしまうケースもあります。また、その逆のケースもありえることです。軽度知的障害があっても、本人の認知特性に合った学習機会をつくれば、言葉や計算の力を伸ばしていくことができます。具体的な経験を積める機会を増やしたり、時間や空間などの概念は本人の経験に結びつけて説明をするなど、自信を持って理解や行動ができるような支援を行なっていきましょう。
2016年12月15日発達障害で働いている人はどのくらいいる?出典 : 発達障害とは、先天的な脳機能障害によって、発達に何らかの遅れや偏りなどの症状が、通常低年齢において発現する障害です。日本における発達障害の定義は平成16年に制定された発達障害者支援法によって定められており、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の基準に準拠しています。発達障害者支援法における発達障害の定義は以下になります。この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。そもそも発達障害のある大人が日本にどのくらいいるか、はっきりした統計的なデータはありません。文部科学省の2012年の調査によると、通常学級に在籍する児童・生徒の中で発達障害の特徴を示す子どもは全体の約6.5%、つまり約15人に1人の割合でという結果になりました。これは、診断を受けている人の数ではありませんが、障害の傾向のある人まで含めると、社会の中にもかなりの数の発達障害のある人がいることを示唆しています。発達障害がある人の中には成人して特性を生かした職業に就いたり、能力にあう職業を選び、雇用されている人もたくさんいます。2011年の障害者職業総合センターの調査によると、- 障害者を積極的に雇用している特例子会社105社のを対象にしたアンケートで、特例子会社で働く療育手帳(知的障害のある方が取得する手帳)所有者が1798人、精神障害者保健福祉手帳を所有している人が198人いて、両者の中で発達障害があると把握されている人は203人という報告があります。ですが、発達障害のある人の中には療育手帳や精神障害者保健福祉手帳を取得していない人や、障害を開示しないで働いている発達障害の人が多いと考えられます。そのため、実際にはより多くの発達障害のある方が、様々な仕事に携わり、様々な職場で働いていると言えるでしょう。出典:「 発達障害者の企業における就労・定着支援の現状と課題に関する調査研究」(2011年)|障害者職業総合センターHP大人の発達障害、いつ診断された?きっかけは?Upload By 発達障害のキホン発達障害は発達期(~18歳)に発症するとされていますが、障害に気づくタイミングはそれぞれです。子どものころから診断結果が出ている人や、大人になってから何かをきっかけに診察を受け、気づいたという人もいます。母は私が小さい時から「おかしい」と思っていました。小学1年生の時、担任に「学習障害」を相談しましたが「違う」と言われ、中学でも担任に相談しましたが違うと言われました。私自身も、小学生の時点で自分の「変さ」には気づいていました。辛かったです。でも、「発達障害」という言葉自体なく診断されませんでした。近年、発達障害が広く知られるようになってきましたが、かつてはあまり理解を得られず、見過ごされていた人も多いようです。大人になって発達障害に気づくきっかけになるのは、例えば仕事上のミスや、社会人として生活する上で人間関係がうまく築けないなどの悩みなどです。これらのストレスからうつ病などの二次障害を発症し、精神科などを受診して発達障害に気づく人も少なくありません。ですが、大人になってからでも専門家の支援を受けることで自分の特性に気づけたり、対処法を学ぶことは十分にできます。もちろん、日常で問題や障害を感じずに社会に適応している発達障害の人もいますし、現在発達障害の根本的な治療法もないため、必ずしも診断を受けなければいけないわけではありません。私は13年前にうつ病と診断され、6年後に双極性障害と再診断されました。現在は双極性障害2型とパーソナリティー障害が病名になっています。解離性障害で入院していた時期もあり、過去10人以上の医師に診てもらいましたが誰1人私の「発達障害の可能性」を指摘しませんでした。今までのどの診断名も自分にしっくり合わず間にあわせ的な違和感を感じていた私が自ら調べた結果、「根底にあるのは発達障害で双極性障害その他はその二次障害である」という結論にたどり着き、医師にそれを相談したところ診断に「発達障害疑いあり」が加わりました。このように大人になってから新たに発達障害だと医師から診断されることもあります。大人になってからでも、なんらかの困りごとに直面したり、疑いを持った場合はまず専門機関に相談しましょう。発達障害者支援センター・一覧検診で子供の発達障害の疑いを指摘されたことをきっかけに、自分もWISC検査と診察を受け、自閉症スペクトラムグレーゾーンと診断されました。お子さんの発達障害をきっかけに、自分の障害に気付いた方もいるようです。大人の発達障害、特性に合った仕事・難しい仕事は?出典 : 注意欠陥/多動性障害(ADHD) の人の特徴は、集中力が長時間保てなかったり、落ち着きがない、物忘れをしがちといった行動が目立つため、周囲からやる気がないというような誤解を受けがちです。仕事上では、不注意から同じミスを何度もしてしまうこともあります。また「臨機応変に対応を」と言われ、本人は工夫したつもりが、やりすぎてしまい相手の意図とそぐわないことをしてしまうこともあるかもしれません。しかし、一方ではアイデア力、行動力や独特の感性を発揮し、営業職や企画・開発などで評価され活躍している人もいます。ADHDの人全員に当てはまるわけではありませんが、一般的にミスが絶対に許されないような作業などは不向きともいえます。一方で、ADHDのある人は以下のような強みがある人も多いのです。・興味のあることに対して情熱を持ち、高い集中力を発揮する・アイデアが豊富で、固定概念にとらわれず自由に考えられる・行動力がある・素晴らしいひらめきをすることができる・独特の感性をもち、考えることができるなどどちらかというと、芸術家・音楽家やデザイナー、CGアニメーター、ゲームソフトやコンピューターソフトの製作者、研究・開発者などクリエイティブな仕事が向いています。また行動力を活かしセールスマン・営業職や起業家・企業家として活躍する人もいます。自分の特性に合った職業に就くことができれば、注意欠陥/多動性障害(ADHD) の人も強みを活かして活躍しやすくなります。時間や仕事のリズムにも自由度が高く、うっかりミスも取り返しがつくような、新しいアイデアや変化を問う仕事が向いています。自閉症やアスペルガー症候群などを含む、広汎性発達障害(PDD)・自閉症スペクトラム(ASD)の人は、相手の気持ちや場の空気を読んだり、コミニュケーションをとるのが苦手ということが多いです。また、イレギュラーなことやはじめての経験にスムーズに対応するのが難しいこともあります。これらはあくまで傾向にしかすぎず、全ての広汎性発達障害の人がこの特徴に当てはまるわけではありません。併存する知的障害の重さや一人一人の特性にもよりますが、対人関係が苦手な人は接客業はストレスが多いでしょう。現場で臨機応変な対応が求められる職業は向いていないかもしれません。広汎性発達障害の人の中には、こだわりを持ち、パターン化されたものを好む人が傾向としては多いそうです。そのため、同じ作業を繰り返すルーティンワークで強みを発揮する場合があります。一度仕事のやり方を覚えると効率よくこなす人も多く、職場で高評価を受ける人も多いのです。また、自分にしかわからないような強いこだわりを持っているので、研究や創作などでは群を抜いた能力を発揮することも多いのです。具体的にはデザイン関係の仕事やプログラマー、コンピュータ関連の仕事で力が発揮できると思われます。集中力があり、普通の人では集中力をきらしてしまうような細かい仕事もコツコツと続けることができ、物事を深く追求したりルールに基づいて整理・分析したりするエンジニアや研究者といった仕事、校正者や職人などの特殊技能を必要とする仕事などに向いています。学習障害は、能力の凸凹や特性の偏りが多く、苦手なことにかなり個人差がある障害です。そのため、向いている仕事、向いていない仕事も人によって様々であると言えます。本人の特性を理解し、得意な分野を活かせる仕事につけることが理想ですね。向いていない仕事は一概には言えませんが、苦手な業務が多い仕事内容だと、困難な場面も増え、ストレスを感じることも多くなるかもしれません。一方、別の手段で代替できたり、職場の理解や協力があれば乗り越えられる可能性も大いにあります。たとえば、算数障害(ディスカリキュリア)のある人の場合、日々、多くの計算が業務に必要な仕事は苦手かもしれません。ですが、計算機で解決できる場合もあります。同じ小売業でも、暗算が苦手な場合、お釣りを計算しなければいけないお店の会計業務は向いていないと言えますが、バーコードを読み取るだけのレジであれば、問題ないこともあるでしょう。また、書字障害のある人は、文字を書く業務が苦手かもしれませんが、パソコンでタイプしてプリントすればよいこともあります。読字障害のある人も、音声読み上げソフトを使用したり、録音することで困難が解消できることもあります。苦手な分野を避けることは働き続ける上で大切ですが、テクノロジーや手段を替え工夫することでうまくいくこともあるので、「この仕事は無理」と決めつけてしまう前に検討するのがよいでしょう。実際に、様々な障害特性を乗り越えて作家、映画監督、発明家、俳優など様々な職業で活躍している人もいます。障害特性と向き合いつつも、自分が希望する仕事に目を向ける、という進路も選択肢の一つかもしれません。人のストーリー|発達ナビ大人の発達障害、仕事の探し方は?Upload By 発達障害のキホン発達障害に関する就労支援は、現在、よりよい対応体制を整えている状態です。特別支援学校などでは、卒業後に就職できる企業の紹介もあります。通常学級でも高校、大学ともに進路指導の先生に相談することも可能です。まず、最寄りのハローワークでの相談をおすすめします。障害者雇用の窓口もあるので、そこでご自身の発達障害の特性について伝え、仕事を探していること、仕事をする上で不安に感じていることなどの相談をすることができます。障害者を対象とする障害者合同就職面接会などの情報を得ることもできます。障害者向けの支援を希望しない場合でも、ハローワークできめ細やかな相談・支援を実施してくれます。適職があれば求人に応募してもよいでしょう。「若年者コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」として、発達障害などでコミュニケーションに困難を抱えている場合の支援も行っており、不安がある場合には、発達障害者支援センターや医師との連携をとってもらうことができます。適職を自分では探すことが難しい場合には、適職を探す方法や調べてもらえるところも紹介してもらえます。就職に不安をかかえている場合には、就労移行支援という方法で就職をすることもできます。これは障害者総合支援法に基づいた支援で、就労移行支援事業所が各都道府県や政令都市の認可を受けて民間が運営しています。この就労移行支援は手帳を取得していなくても医師の診断書や意見書など、支援の必要性を示す情報があれば利用することができます。まずは最寄のハローワークや就労移行支援事業所に連絡をとってみましょう。ハローワークでは、発達障害のある人が就職された場合、その事業主に対して助成を行う「発達障害者雇用開発助成金」という制度を設けています。他にも「障害者トライアル雇用奨励金」という短期間の施行雇用を行い、仕事に慣れることで実際の雇用につなげる制度もあります。詳しい情報は以下のリンクを確認してください。実際に働いてみると仕事が想像していた仕事内容と大きく異なった、と離職を希望される場合も少なくありません。仕事を探す際には、似たような職種で職務経験を積んでいく方法や、希望の会社でまず一定期間働くことが可能なのか、聞いてみる方法もいいでしょう。より自分の得意・不得意を理解し、どの仕事ならこなせるか、やりがいを持てるかどうかを把握するヒントになるかもしれません。発達障害者支援センターでも「就労支援」を行っています。本人や家族からのあらゆる相談ができ、必要に応じた施設や医療機関の紹介もしてくれます。就労に関しては特性や障害の状況に適正な就労先を紹介してくれたり、雇用後にも個人の必要に応じて支援を行ってくれます。発達障害者支援法第3章第14条に基づき、都道府県・指定都市に設置されています。就職後も相談に乗ってほしい場合はジョブコーチによる支援を受けることもできます。これは、就職後、職場にジョブコーチが出向き、職場でうまく仕事をしていくための支援をしてくれる制度です。若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム発達障害者支援センター・一覧参考:障害者就業・生活支援センター療育手帳や精神障害者福祉手帳を取得している場合はいわゆる「障害者雇用制度」の対象となります。・手帳所持者を事業者が雇用した際の、障害者雇用率へのカウントの対象となり、障害者雇用枠での就職ができる・障害者職場適応訓練を受けられるなど、就職への支援が受けられます。実際に障害者雇用制度を利用して就労する人の数は年々増加しています。ですが、希望している職種や企業が障害者雇用枠で募集しているとは限らないこと、賃金などの面で希望と合わないこともあるでしょう。一般の求人に応募したい場合などには、手帳を持っているからといって必ずしもこの制度を利用しなくてもよいですし、手帳取得者であることを報告する義務はありません。制度を利用するかどうか、よく考え、支援機関などと連携し、相談しながら進めていくとよいでしょう。障害者雇用対策|厚生労働省障害者雇用対策|厚生労働省大人の発達障害、会社や同僚へ開示・報告はした方がいいの?自身に発達障害があることを職場に伝えた方が良いかどうか、迷う方が多いのではないでしょうか?会社へ障害があるということを報告するかどうかは、一人ひとりの状況によるので一概には決められません。診断のみでは雇用上「障害」としては認められない現状があることも考慮したほうがよいでしょう。そのため診断とともに障害者手帳を取得しているかどうかでその意味合いが変わってくる場合もあります。一般就労をしている場合、会社に報告するか否かは、障害に理解のある会社であるかどうか、報告することで仕事をしやすくなるかなどを考慮して決めた方が良いと言われています。会社に報告する人が多くなってきていることは事実ですが、周りや会社には報告しないことを選択している人も少なくありません。一方、報告することによって周りからの理解が得られ、離職率が低下するということも考えられます。報告した際のメリットとしては、サポートを受けやすくなったり、フォローしてもらえるようになるということがまず挙げられます。また業務の相談もしやすくなると思いますし、以前より職場環境を快適に感じることにつながるかもしれません。2016年4月に障害者差別解消法が施行され、不当な差別的取扱いを行ってはいけないこと、企業や行政はできる範囲で合理的配慮を行う努力義務があることが定められました。このため、職場でも合理的配慮をお願いしやすくなりました。しかし中には偏見を持ったり、あまり障害に対して理解をしてくれない人がいないとは限りません。発達障害について詳しい知識のある人は少ないので、仕事上での困難や起こりうる問題と、要望などを伝えるようにしましょう。また、障害があるという報告をする場合は人を選んで報告し、仕事のどういうところで具体的にフォローが必要かを伝えるのが良いと思います。デリケートな問題ですので、迷ったら自分だけで決めずに、発達障害者支援センターなどの専門機関に相談することをおすすめします。一方で、発達障害を開示・報告した場合でも、職場や周囲に偏見が無理解があれば、職場で差別・虐待を受けてしまう可能性もゼロではありません。こうした深刻なケースでは、本人から周りに助けを求めるのが難しい場合もあるので、周囲の人が虐待に気づいた場合、各市町村の障害者虐待防止センターなどの専門機関に虐待の存在を知らせましょう。本人からの申告も可能性です。またこの虐待は就業場に限らず家庭内の虐待も含みます。障害者虐待防止センターに虐待を相談すると、支援・指導を受けることができ、問題の糸口を探す手伝いをしてくれます。強制的に仕事や家族から隔離されたりすることはありませんので、安心して相談することができます。発達障害の仕事での困りごと・よくあるミスと対処法出典 : 発達障害のある人の中には、社会的な「暗黙のルール」というものに気づきにくいという特性も持っている方も多く、周りの人が忙しくしている時や、助けを必要としている状況に気づかず、手伝うことができない場合があります。また決められたこと以外のイレギュラーなことが苦手な特性のある場合、指示をされないと動かない・自分の仕事が終わったら他のことは何もしようとしない、などと周りから見られてしまうことがあります。【対処方法】具体的な指示があると動きやすいという特性を伝え、「具体的に今時点で何を手伝ってほしいのか」指示してもらうようにします。その仕事を終えたら、次の仕事をまた具体的に指示してもらうようにします。複数の仕事を同時に並行して行うことや、脳と体の複数部を同時に動かすことが苦手なこともあります。一つの業務の間には、わずかな時間でも休憩を挟み、終わった仕事に対して評価をしてから、次の仕事をするといった工夫をするとよいでしょう。時間の管理が苦手で、遅刻しがだったり、仕事の手順が就労時間で計画できない場合があります。スケジュールの調節、優先順位だけでなく、仕事に対して熱心に取り組んではいても、こだわりが強すぎて自分の納得いくまで作業を終わらせることができずに、納期が守れないといったこともあります。【対処方法】仕事の完成度が高いことも重要だが、納期を守ることも大切だということを理解しましょう。「納期」とはなにか、具体的にして再確認し、作業のスケジュールを「見える化」すると良いでしょう。またスケジュールは自分だけでなく、複数の人に管理してもらうなどがあります。具体的には以下のような工夫をするとよいでしょう。・作業内容を細分化して書き出し、それを見えるように張り、作業終了目標時間の5分前にアラームをセットする。・終わった作業にはチェックをし、終わった作業への充実感を感じられるようにする。・仕事の計画や優先順位を決めることが苦手な場合、スケジュールをほかの人に管理してもらい、ひとつの仕事を終えたら、次の仕事を具体的に指示してもらうようにする。周りが気になってしまって、やるべき仕事に対しても集中力が続かない場合があります。また、興味がない仕事の場合、会議中などの大事な席でも居眠りしてしまうことも。頼まれていたことを忘れてしまったり、集中力が続かないことが原因で、仕事がスムーズに終わらなかったり、やる気のないような印象を与えてしまい、接客などで様々なトラブルを起こしてしまうことも少なくありません。【対処方法】怠けているという訳でもなく、集中力が続かないという特性を持っている場合は、周りの人に自分の特性を説明し、理解してもらえるようにつとめます。何か別の考えごとをしているな、と感じたら、声をかけてもらえるようお願いしてみましょう。他のことを考えはじめたことに気付いてもらい、今やるべきことがあるのに他のことを考えてミスしてしまうのを防ぐためです。指示を忘れないようにメモの習慣をつけましょう。集中力低下時の居眠り防止には、睡眠不足にならないように心がけることも大切です。またデスクワークなどで気が散ってしまうときは、集中できるよう環境調整をすることも効果的です。デスク周りを片づけて集中できるようにしたり、聴覚過敏がある場合は相談してイヤーマフなどの使用許可をお願いするのもよいでしょう。「想像力の障害」や「コミュニケーション能力の障害」により、敬語の使い方が困難な場合もあります。本人が正しいと思って使っていた言葉使いが、仕事の上では失礼にあたったということに気づけないことがあります。また距離感をうまくつかめないという特性もあり、近くにいるのに声のボリュームが大きすぎて相手を驚かせてしまうこともあります。【対処方法】自分中心の話ばかりでなく、相手が話しているときは意識的に相づちをうつようにするとよいでしょう。場所やその場の雰囲気、相手に合った会話の内容や態度、表情などを意識するということを、ひとつずつクリアしていくようにします。相手のお世辞を正直に受け止め過ぎてしまうことがあるので、注意しましょう。まとめ出典 : 参考:『発達障害者と働く』(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)発達障害のある人が就業する場合、多少の困難はもちろんつきものです。職場の方から偏見を受けたり誤解されてしまうこともあります。発達障害は、一見して外からは見えにくいため、他人には障害があることが理解されにくい場合があります。自分でも自覚が少なく、仕事ができないと他人と比べて落ち込むこともあるかもしれません。しかし、自分の障害特性を理解することで適切な支援も受けられますし、必要な配慮を周囲の人に伝えやすくなります。発達障害だということを職場に告白し理解してもらうのは勇気のいることですが、仕事の円滑さやストレス軽減のための手段のひとつであるとも言えます。仕事がスムーズにいかないのは、本人の能力不足や怠け心があるというのではありません。今勤務している職場環境を改善したり、適職を見つけることのできる相談機関が全国にありますし。それによってサポートを受けながら、働きやすい仕事の環境で継続的に働いていくことも可能なのです。深呼吸し、ひとつずつ課題をクリアしていくように、業務の手順や対人関係の工夫を身につけていきましょう。自信をもって働ける職場環境をつくったり、より適切な職場を見つけたりすることで、仕事や生活全体の充実が得られるようになるでしょう。頑張り過ぎず、自分のペースでいられる時間を持つことで、バランスをとっていきましょう。参考:法令データ提供システム「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」2012年
2016年12月15日周囲でよく耳にしていた「家で暴れる発達障害児」。その実態とは出典 : 発達障害児を育てている親たちからよく聞く困りごとの1つに「子どもが家で暴れて困る」というものがあります。更に、その暴力暴言の標的は母親であることが多いです。私も何度か子どもの暴力で悩む母親と話をしたことがあります。そのお母さんの手には、引っかき傷やあざが沢山ありました。全部、発達障害の子どもからの暴力による傷だと言います。ところがその、「家で暴れる子ども」に外出先で会うと、(変な表現ですが)とてもそんな風には見えない「普通の子」であることが多いのです。お母さんや兄弟姉妹とも、外ではとても穏やかに接していることが多く、公共の場で見る態度はとても模範的です。「こんないい子がどうして…」という場合がほとんどです。だからこそ、悩む母親が多いようです。体中に傷をつけられている状態なのに、周囲からは「こんなにいい子なのに」「普通じゃない?」「信じられない」という言葉をかけられることが多いからです。一体なぜ、子どもたちは家の中と外とで態度がこんなに違うのでしょうか?息子にも現れ始めた、暴力・暴言。やはり周囲にはなかなか理解してもらえず…出典 : 歳になってから落ち着きが出てきた我が家の息子。発達障害と診断された頃は、家で癇癪を起こしては何時間も泣きわめき、それはそれは大変でした。しかし最近は癇癪のコントロールも上手になり、感情を爆発させることが少なくなってきました。何よりも社会性が伸び、幼稚園でもしっかりと人間関係を構築し始めました。しかし、息子のこの「社会性の伸び」と相反するように、私に対する暴力・暴言が始まったのです。毎日毎日、「このバカヤロー!」「うっせぇ」「くそボケ!」と、びっくりするような言葉が息子の口から飛び出します。少しでも気に食わないことがあると、拳を振り上げ私にかかってきます。6歳であっても、このような暴力・暴言は身に応えます。出典 : ところが息子は、園や習い事など公共の場では、実に手のかからない「模範的な子」なのです。このため私の悩みは、どこにも理解してもらえませんでした。以前幼稚園の遠足で、息子が私のことを拳で叩きまくっているところを、たまたま先生が見かけたことがあります。先生はびっくりして、「○○くん、お母さん痛いでしょう。どうしたの!?」と止めに入りました。「いつもこんな感じです…」と私が言うと、先生は「信じられない…普段は本当にみんなに優しいんですよ…」と目を丸くしていたのを覚えています。どうして母親にだけ暴言・暴力が現れるのだろう出典 : 発達障害児の母親に対する暴力・暴言はなぜ現れるのでしょうか。外で頑張っているから家で爆発している、という意見もよく聞きます。だから母親は受け止めてあげるべきだとも言われます。けれども、徐々に身体が大きくなっていく子どもの暴力・暴言を全て受け止めきれるほど、母親は強いものではありません。限界があります。発達障害児は人間に対してもこだわりを持つことがあります。息子は小さい頃、物にこだわりがありましたが、それが思い通りに動かなかったり壊れたりすると、よく癇癪を起こしていました。そのこだわりが、人間にも向き始めているのでは…?つまり、母親に対する暴力・暴言は「母親こだわり」なのかもしれません。そして、思い通りに動かない母親に対して、癇癪を起こしている気がします。それが、暴力・暴言という形で出ているのだと私は思っています。けれども、母親は発達障害児の「お気に入りの物」ではありません。暴力・暴言を受け続ければ、母親といえども壊れます。極端な態度を少しでも緩和させるには出典 : 息子の様子を日々見ていて感じるのは、「発達障害児の暴力・暴言を、声かけ1つで変えていくのはとても難しい」ということです。このため、母親への内向きのこだわりをなくそうと努力するのではなく、外向きのベクトルを増やしていく必要があると思います。家庭の外でも、自分の気持ちが言えたり、自分を受け入れてくれる場所をたくさん持っておくこと。そうすることで、母親を思い通りにしたいというこだわり行動は、少しずつ薄れていくのではないかと私は信じています。外で常に模範的な態度をとることは、決して理想的ではないと思うのです。それがストレスとなり、内向きのこだわりをますます強めてしまっている可能性があります。外では模範的、内では暴力・暴言という極端な態度が、その子の基本行動になってしまわぬよう、外でも自分を崩すことのできる相手を増やしていくことが必要かもしれない、そう思うのです。
2016年12月15日子どもは甘いものやハンバーグが大好き! と思ったら大間違い!? もちろん個人差はあるけれど、意外と渋い味が好きだったりします。そこで今回は、あまり子どもらしくない食の好みをママたちに調査。変わったものが好きなのは、ウチだけじゃなかった!?■「納豆」は意外と人気!大人でも苦手な人が多い「納豆」ですが、これを好きな子どもは意外と多いようです。・「パックからそのまま食べたがるほど納豆が大好き。食欲がないときでも、納豆のパックを見ればテンションが上がる」(28歳・2歳児のママ)・「納豆のネバネバが楽しいみたい。遊び食べにならないように注意しています」(33歳・3歳児のママ)・「納豆が好きすぎて、お弁当に入れてほしいと駄々をこねられたことも…」(36歳・6歳児のママ)ニオイや食感は、大きくなるほど苦手意識を感じやすくなるものです。先入観のないうちから与えておけば、素直に受け入れやすいのかもしれませんね。■「おつまみ」メニューが好き!いわゆる「おつまみ」系のメニューは大人好みの味付けが多いですが、これを好きだという子どもも少なくありません。・「小さいころから塩辛が大好きで、『ごはんにピンクのやつをのせて』とねだられます。将来は飲兵衛になりそう…」(40歳・小学2年生のママ)・「うちの子は枝豆が好き。夫のおつまみに出しても、気づくと全部食べてしまう」(41歳・小学5年生のママ)・「メンマが好きな息子は、ラーメン店でも待ち時間におつまみ用のメンマを欲しがる」(31歳・小学3年生のママ)・「梅干が好きなのはうちの子だけだと思っていたけど、友だちの子も大好物だと聞いて驚いた」(36歳・小学2年生のママ)・「ファミリー向けの居酒屋に行ったとき、試しにもつ煮込みを食べさせたらハマってしまった」(40歳・小学3年生のママ)子どもがママやパパと同じものを食べたがることはありますよね。大人がおいしそうに食べる姿を見て、子どもも興味を持ったのかもしれません。 ■食通顔負けの子も!舌が肥えているのか、なかなか通な好みを持つ子どもいます。・「息子たちは小さいころから、サケの皮やサンマのはらわたも残さず食べます。身をふっくら、皮をパリッと焼く、新鮮な素材を選ぶなど、工夫すれば子どもも食べやすいのでは?」(45歳・中学3年生と小学6年生のママ)こうした「大人舌」をもつ子どもなら、食事作りも楽になりそう。でも、ママとしては考えてしまうこともあるようで…。・「子どものいる家庭への手土産といえばケーキが定番だけど、うちの子は和菓子が好き。いただいたケーキを見てがっかりすることがあるのでヒヤヒヤする」(34歳・5歳児のママ)・「小さいころから食材や調理法にこだわって、大人と同じような食事をさせてきました。好き嫌いもなく何でも食べますが、ファストフードやファミレスは苦手。外食の選択肢が少なくなるのでちょっと面倒」(39歳・小学5年生のママ)食の好みが大人に近くても、いいことばかりとはいえないようです。とはいえ、味覚は幼少期に決まるといいますし、好みを決めつけないことで味覚が豊かに育つかもしれません。
2016年12月13日