財産を相続する際に、遺族間で揉めてしまう場合があります。子どもの1人が実家の敷地に住宅を建てている場合は特にその可能性が高くなります。相続で揉めないために、親が元気なうちにやっておくことがあります。父親:死亡母親:実家の敷地の土地所有者子どもA:実家の敷地に自分名義で家を建てた、かつ母親の財産を2分の1ずつ均等に相続する権利を有する子どもB:母親の財産を2分の1ずつ均等に相続する権利を有するという場合どんなことをすれば、トラブルを未然に防ぐことができるか考えてみましょう。■ 1.なぜトラブルが起こるのかmidori / PIXTA(ピクスタ)両親のうちの片方が亡くなる「一次相続」で、生存している母親が土地を相続する場合は、子ども同士のトラブルは起こりませんが、その後、母親が亡くなったときの「二次相続」で、遺産分割を巡り兄弟姉妹間のトラブルに発展する可能性があります。Aは母親名義であった土地に家を建てているので、土地を自分名義にしたいと思うのが自然ですが、母親の相続財産が土地しかないとき、法定相続に従うと土地はAとBの共有名義になります。土地を子どもAとBが共有する形で相続すると、やがて困ったことが起こります。子どもAにとっては、自分の家が建っている土地を自由にできません。子どもBにとっても、土地を売却して換金するにはAの承諾が必要ですし、そもそもAの家が建っている土地に買い手は現れないでしょう。Bにとって固定資産税がかかるだけの不要な財産となってしまいます。■ 2.トラブル回避のための予防策はhoriphoto / PIXTA(ピクスタ)トラブル回避のためには、母親が元気なうちに行動を起こす必要があります。親が亡くなったとき、兄弟姉妹間のトラブルがなく、円滑に遺産分割が進み、遺族が納得して相続する方法について、生前に親が子どもに提案するのがベストです。親の意識が足りない場合は子どものほうから働きかけましょう。2-1 事前に母親から子どもA、Bに意思を伝えるbee / PIXTA(ピクスタ)事前の親子間の合意形成をすれば、トラブルを未然に防げます。母親から、AとBに対して、事前に「家を建てているAに、将来自分の土地を相続させたい」という自分の考えを明確に伝え、互いに納得してもらいましょう。AとBには母親の財産を均等に相続する権利があるものの、相続時に当事者間で合意できれば、実際にはどのような分け方をしても構わないからです。しかし、生前の合意には法的拘束力がありません。実際に母親が亡くなった後に、Bが自分の権利を主張しはじめた場合は、トラブルになります。2-2子どもBに土地と同じ価値の財産を準備するAとBには、母親の財産を2分の1ずつ均等に相続する権利があるため、AとBに相続させる財産をあらかじめ特定しておく方法があります。そのために、母親は生前に遺言を書いておくべきです。Aに相続させたい土地の価値と同様の財産をBが相続できるように遺言に書いておくのです。2-3母親が遺言で子どもBの相続する権利を縮小させるテラス / PIXTA(ピクスタ)Aに相続させたい土地の価値と同等の財産を、Bに準備できない場合でも、母親が遺言を書けば、Aが土地を相続できる権利を取得させることはできます。しかし、「遺留分」という法律のために権利をまったくなくすことはできません。この家族構成の場合、Bの遺留分は母親の財産の4分の1となります。そのため母親が、最低限全財産の4分の1を子どもBに相続させ、土地1,000万円を含めその他の財産をAに相続させる内容の遺言を書けば、土地を確実にAに渡すことができます。ただし、母親が亡くなったあとのAとBの関係が悪化する可能性があることは否めません。2-4どの方法でも話がまとまらない場合は、代償分割を母親が亡くなった後、AとBが協議をして、代償分割という方法を使えば、Aが土地を相続することが可能です。代償分割とは、相続人のうちの一人または数人が不動産などの現物の資産を相続し、他の相続人に代償金(または代償財産)を支払うことで遺産を分け合う方法です。たとえば、1,000万円の土地をAが相続し、あとでAからBに500万円の代償金を支払います。こうすることで、結果的にはAとBが公平に相続したことになります。母親が元気なうちに話がまとまらない場合はこの方法を選択するのもよいでしょう。■ 3.まとめpixelcat / PIXTA(ピクスタ)土地を取得するための費用がかからないと、実家の敷地に住宅を建てる人は将来的に兄弟と揉める可能性があります。親が元気なうちは、土地を親から無償で借りる形になり、問題はありませんが、親が死亡した後にトラブルが起きる可能性があります。残された子どもたちにわだかまりが残らないように、家族全員で相続について話し合うようにすることをおすすめします。宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー(AFP)/家族信託コーディネーター吉井希宥美
2019年08月10日40年ぶりに「相続」に関する法律が改正され、一部を除き今月から施行されている。相続は「富裕層の問題」と思いがち。だが、裁判所に持ち込まれた相続事件の、実に3分の1が遺産1,000万円以下(’17年・最高裁判所)。“争続”を避けるため、早めの準備が必要だ。ただ小さな思い違いで、取り返しのつかない事態を招くことも。そこで経済ジャーナリストの荻原博子さんが、相続の落とし穴を解説してくれた――。【1】息子の妻も寄与分を請求できるこれまで、いくら介護を支えても息子の妻などに相続権はありませんでしたが、今後は貢献に応じた「特別寄与料」が請求できます。これが大きく報道されたため、期待する方も多いでしょうが、特別寄与料が法定相続人1人分より多いとは思えません。相続財産の1割程度と考えておきましょう。【2】自筆遺言書を法務局で保管自筆遺言書には紛失や隠匿、偽造などの不安がありましたが、法務局保管であれば安心でしょう。ただ死亡届を出したら自動的に、「遺言状があるよ」と連絡が入るわけではありません。家族が遺言書の存在を知らなければ、預けただけで開封されない可能性も。遺言書の存在や保管場所を、必ず家族に伝えておきましょう。【3】仏具は相続対象ではないが……相続税はすべての財産にかかるのではなく、墓地や墓石、仏壇仏具などは相続税がかかりません。以前は、これを“抜け道”として、純金製の仏具や骨とう価値の高い仏像などを子孫に残す方もいましたが、今ではNG。税務署に税逃れと判断されます。【4】借地なら「借地権」を相続借地に故人名義の家がある場合、土地は他人のものだから相続には関係ないと思う方が多いでしょう。しかし、借地には「借地権」があり、相続財産に含まれます。借地権は、借地年数にもよりますが土地の相続税評価額の6~7割が一般的。都心だと地価が数億円、借地権も億単位というケースもあります。早めに専門家にご相談を。【5】賃貸住まいに思わぬ費用が故人が賃貸住まいなら、荷物をすべて撤去し、借りる前の状態に原状回復して、賃貸契約を解除するまで賃貸料が必要です。家財の処分を遺品整理業者に依頼すると、広さによりますが2DKで10万~25万円かかります。【6】相続税は10カ月以内に現金で相続税がかかるのは、相続財産が、3,000万円+600万円×法定相続人の数を超えた場合です。法定相続人が妻と子2人なら、4,800万円が判定ライン。まずは、相続財産を計算してみましょう。相続税を払う方は、故人の死後10カ月以内に現金払いが原則。自宅など換金しづらい財産が多い方は、生命保険の活用も一手です。生命保険の死亡保険金は、現金で支給されるうえ、500万円×法定相続人の数以内は相続税がかからないからです。「相続財産は持ち家だけ」という家族が、“争続”に発展することも少なくありません。親が元気なうちに、相続の話を始めたいものです。
2019年07月19日ご両親が亡くなるなど、相続はいつか必ず経験するものです。人生の中で何度も経験するものではありませんので、何から手を付けてよいか分からなくなってしまうものです。いざというときに慌てないように、まずは相続手続きの全体の流れを解説していきます。■ 1.相続の開始(相続人の死亡)makaron* / PIXTA(ピクスタ)1-1死亡届の提出(相続発生後7日以内)相続は人の死亡で開始します。人が亡くなった場合、まず死亡届を役所に提出しなければなりません。届け出をする役場は、亡くなった方の本籍地、死亡地、届け出をする方の所在地を管轄するいずれかの市区町村役場です。1-2「死体埋火葬許可証」がないとお葬式はできないmakaron* / PIXTA(ピクスタ)死亡届を出す際「死亡診断書」「死体検案書」のどちらかが必要になります。死亡診断書は病院で亡くなった場合または死亡理由が明らかな場合に医師が作成します。死亡検案書はそれ以外の場合に死亡の事実が確認された後に作成されます。これらが役所に受理されると「死体埋火葬許可証」が発行され、はじめてお葬式を行うことができます。■ 2. 遺言書などの確認(目安:初七日)CORA / PIXTA(ピクスタ)死亡の手続きが一通り終了したら、お葬式の手配をするのと同時に遺言書を遺品の中から探します。亡くなった人が住んでいた家のほか、貸金庫を借りていた場合などは、その中に保管されているケースが多いようです。2-1遺言書には3種類ある遺言書には、亡くなった人が自ら書いた自筆証書遺言のほか、公証役場にて作成する公正証書遺言や秘密証書遺言というものがあります。いずれも最新の日付のものが有効となります。自筆証書遺言の場合は家庭裁判所にて「検認手続き」が必要になるため、勝手に開封しないようにしましょう。2-2保険、年金関係の確認をする遺言書を探すのに加えて社会保険や生命保険などの保険関係や年金関係の手続きも確認します。関係機関の窓口を尋ねるか電話で問い合わせをし、亡くなった事実を伝え、その後どのような手続きをすべきかを確認します。■ 3.相続財産、相続人の調査(目安:四十九日)相続財産と相続人の調査を合わせて行います。これらを行うことは、適切な遺産分割を行うため、または相続税申告を行うために必ず行います。遺産の額や内容が分からないと正確な相続税の申告ができず、過少申告してしまうと加算税を課されることになります。3-1相続財産の調査kai / PIXTA(ピクスタ)相続財産の調査対象となるのは、不動産、預貯金、株式、投資信託、公社債、生命保険金のほか現金、ゴルフ場の会員権、骨董品などの動産などが該当します。宝石などの貴金属も相続財産です。3-2相続人の特定相続人の特定は、被相続人の現在の戸籍(除籍)謄本を取得することから始まります。これですべての相続人が分からない場合、死亡時からさかのぼって出生したときの戸籍までを順番に取得します。本籍の移動が伴う場合、複数の役所で謄本を取得する必要があります。「婚姻」「離婚」「養子縁組」などの身分事項から前妻との間に子供がいないか、養子や養親がいないかなどを確認し、知らない相続人がいたら、その相続人が被相続人の死亡時に生存していることを確認します。すでに亡くなっていた場合は相続関係が変わってきますので注意が必要です。■ 4.相続放棄をする(目安:相続後3~4か月)akiyoko / PIXTA(ピクスタ)相続において、プラスの遺産だけ引き継ぐことはできません。相続とは亡くなった人の財産をまるごと引き継ぐという制度です。相続放棄をしないまま期限が過ぎると、相続することを承認したとみなされます(=単純承認)。4-1手続きを放置すると単純承認とみなされる相続した財産を処分(消費、売却など)したときも単純承認したとみなされます。一度単純承認したとみなされると、期限が過ぎる前であっても以後放棄することはできません。相続放棄には家庭裁判所での手続きが必要です。この手続きは3か月を目途に行いましょう。4-2放棄により相続人が変わる夫が亡くなった場合、妻と子の相続放棄によって、夫の父と母に相続権が移ります。このことがあまり知られていないため、トラブルになることが多くあります。妻と子が相続放棄する場合、手続きをする前から意思表示しておかないと、父母や兄弟に迷惑がかかりますのでよく話し合っておきましょう。相続放棄による相続権の移動は、法定相続人の相続範囲である兄弟姉妹までとなっています。■ 5.遺産分割協議(目安:相続後4~10か月)Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)遺産分割協議とは、相続人全員で被相続人(亡くなった人)の遺産の分け方を決める「話し合い」のことです。遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行います。話し合いで決まった内容を書面におこしたものが「遺産分割協議書」です。5-1協議はなるべく早く行うトラブルを起こさず協議を終えるには、できるだけスピーディーに行うことがポイントです。様々な書類には、全相続人の実印が必要だからです。例えば、株などは換金のタイミングを逃せば大損する可能性があり、賃貸不動産を所有していた場合は、相続が発生した翌日から遺産分割協議が成立するまでの賃貸収入は、相続人全員に法定相続分での配分を求められるケースが多く、厄介です。5-2協議はやり直しがきかない遺産分割はやり直しができません。そのため、一歩間違うと、税金を余分に支払ったり、身内でトラブルになったりしかねません。さらに、法律改正が近年行われ、税金の計算はさらに複雑になっています。相続人だけでなく、ファイナンシャルプランナーや税理士などの専門家を交えて行うのも1つの手です。■ 6.不動産や預貯金などの解約・名義変更(目安:相続後4~10か月)Graphs / PIXTA(ピクスタ)不動産がある場合は遺産分割協議書にのっとり、名義変更を行います。単独の名義もあれば、複数の人の共有名義になることもあります。貯金や証券の名義変更も一緒に行いましょう。6-1預貯金の名義変更被相続人が死亡すると、被相続人名義の口座は凍結されて入出金が一切できなくなってしまいます。この凍結は自動的に解除されることはありません。相続人等の預貯金を相続した人が解除の手続きを行わない限り、そのお金は使えませんので手続きを行いましょう。必要書類がたくさんあるので、予め問い合わせておくのがベターです。6-2不動産の名義は単独にするのがおすすめ不動産を売却する際には、共有者(相続人の相続人等)全員の遺産分割協議が必要です。法律上は、自分の持ち分だけ売却することも可能ですが、現実的にはかなり難しくなります。そのため、不動産の共有名義はあまりおすすめできません。■ 7.相続税の申告(目安:相続後4~10か月)相続財産が一定額を超える場合は、相続税の申告と納付を行います。納付が必要な場合は相続が発生してから10か月以内に行う必要があります。相続税の申告が必要なのは、納付すべき相続税の金額がある相続人です。相続税の特例を利用して相続税がかからない場合でも、特例を利用するために相続税の申告は必要なケースがあるので注意が必要です。7-1相続財産は「時価」で評価相続財産の「評価額」を算定する際の原則は時価主義と言われるものです。取得後の価値の上下は考慮されません。ゴルフ会員権を500万円で購入後、相続発生時に100万円になっていたら、評価額は100万円とみなされます。7-2土地の評価方法では時価ではない不動産の場合は「路線価方式」という計算方法で算定されます。間違いやすいのですが、実勢価格や、公示価格、固定資産税の評価額とは異なります。目安としては「実勢価格の8割程度」と言われることが多いようです。また「小規模宅地」や「貸家建付地」などの特例があり、実勢価格に比べて相続の評価額が安くなるので、相続税対策に不動産を購入する人が多くいます。■ 8.まとめこのように相続には細かなタイムスケジュールが設定されているため、期限を過ぎてしまうと取り返しがつかなくなってしまううえ、かなり多くの手続きが必要となります。揃えておく書類もたくさんあります。これらの流れをフローチャートにして、1つ1つチェックしていくとよいでしょう。流れをしっかりと押さえて、相続が発生したときに慌てないようにしましょう。
2019年06月07日相続が発生したときに、心配になるのが相続税ではないでしょうか?相続税は、場合によっては大きな負担になることがありますが、財産を相続しても相続税がかからないこともあります。今回は、相続税発生の有無を分ける基礎控除の額について説明します。基礎控除額の計算方法を理解しておき、生前の相続対策などに役立てていただければ幸いです。相続税の基礎控除は相続人の数で変わる!相続税発生の基準となるのが、基礎控除です。相続税の基礎控除の意味や基礎控除の金額を計算する方法を知っておきましょう。相続税がかかるケースとは相続税は、相続や遺贈により財産を取得した人に課税される税金です。相続税がかかるかどうかは、相続の規模によって変わります。亡くなった人(被相続人)が残した財産が一定規模以上の場合、その相続で財産を取得した人に相続税がかかるしくみです。相続税の基礎控除とはその相続が、相続税がかかる規模かどうかを判断する基準となるのが基礎控除です。基礎控除は、相続税だけでなく贈与税や所得税にもありますが、課税対象から無条件で差し引きできる金額になります。相続税は、相続税の課税対象となる財産の合計額(課税価格の合計額)から基礎控除額を差し引きした課税遺産総額をもとに計算します。課税価格の合計額が基礎控除額以下の場合には、相続税はかかりません。基礎控除額は、相続税の非課税枠ということになります。相続税の基礎控除の計算式相続税の基礎控除は、次の計算式で計算します。基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数相続税の基礎控除は、2015年1月に改正により引き下げられました。2014年12月以前に発生した相続については、次の計算式で計算します。(旧)基礎控除額=5,000万円+1,000万円×法定相続人の数相続税の基礎控除の早見表相続税の基礎控除額は、相続人数によって変わります。たとえば、相続人が1人の場合、相続税の基礎控除額は3,600万円ですから、被相続人の残した財産の額が3,600万円を超える場合には相続税がかかります。一方、財産の額が3,600万円を超えない場合、すなわち3,600万円以下の場合には、相続税はかかりません。相続税の基礎控除額を超えているなら早急に遺産分割が必要被相続人の残した財産が相続税の基礎控除額を超えている場合には、相続開始を知った時から10か月以内に相続税の申告が必要です。相続税の申告をする前提として、遺産分割を終わらせなければなりません。基礎控除額を超えており相続税がかかるケースでは、速やかに遺産分割協議を終わらせるようにしましょう。10か月以内に遺産分割が終わらない場合でも、法定相続人が法定相続分で財産を取得したものとして、期限内の申告が必要になります。相続税の基礎控除の「法定相続人」とは?相続税の基礎控除は法定相続人の数によって変わりますが、ここでいう「法定相続人」には民法上の法定相続人すべてが含まれるわけではありません。相続税における法定相続人のカウントの仕方を知っておきましょう。法定相続人に含まれる養子の数には制限がある民法上、養子には実子と同様の相続権があります。子は第1順位の相続人ですから、養子を増やせば法定相続人を増やすことができます。しかし、相続税の基礎控除を計算するときには、養子を全員法定相続人としてカウントできるわけではありません。養子については、次のようなルールがあります。被相続人に実子がいる場合…養子は1人までしか法定相続人に含めることができません。被相続人に実子がいない場合…養子は2人までしか法定相続人に含めることができません。養子を実子とみなす場合相続税の基礎控除の計算においては、次の場合には養子であっても実子とみなします。特別養子縁組により養子となった場合配偶者の連れ子を養子にした場合代襲相続人でもある養子(孫を養子にしており、子が亡くなっている場合)相続放棄した相続人も法定相続人に含める民法上、相続放棄すれば最初から相続人でなかった扱いになり、法定相続人ではなくなります。しかし、相続税の基礎控除の計算では、相続放棄をした人も法定相続人としてカウントします。相続放棄をした人がいても、基礎控除額が減ってしまうことはありません。生命保険金がある場合の相続税の基礎控除は?財産を相続するのではなく、生命保険金として受け取った場合には、一部が非課税になることをご存じでしょうか?相続の際に、生命保険金がある場合の相続税の計算方法や基礎控除との関係を知っておきましょう。生命保険金を受け取っても相続税がかかることがある被相続人が亡くなったことにより、生命保険金(死亡保険金)を受け取ることがあります。生命保険金は、民法上の相続または遺贈により取得した財産ではありません。しかし、生命保険金は、みなし相続財産として、相続税の課税対象になります。生命保険金には非課税枠がある相続税の計算において、生命保険金には基礎控除とは別の非課税枠が設けられています。生命保険金の非課税枠は、次の計算式で計算します。500万円×法定相続人の数たとえば、法定相続人が3人の場合、生命保険金は1,500万円まで非課税です。相続人が受け取った生命保険金が1,000万円の場合には、全額非課税になります。もし相続人が受け取った生命保険金が2,000万円なら、500万円のみが課税対象になります。生命保険に加入すれば、相続税の課税対象になる財産を減らすことができます。相続税対策として、財産を現金や預金で残すのではなく、生命保険に加入することは、有効な方法の1つです。生命保険金の非課税枠を計算する際の「法定相続人」とは?相続税において、生命保険金の非課税枠を計算する際の「法定相続人」には、民法上の法定相続人全員が含まれるわけではありません。養子の数について制限があり、相続放棄をした人も「法定相続人」の数に含めることは、基礎控除の場合と同様です。非課税になるのは相続人が受け取った生命保険金だけ生命保険金について、非課税の恩恵が受けられるのは、相続人が受け取ったもののみになります。相続人以外が受け取った生命保険金は、非課税にはなりません。相続放棄をした人が受け取った生命保険金も、非課税枠には含めないことになっています。たとえば、相続放棄をした人が1,000万円の生命保険金を受け取った場合、法定相続人の人数に関係なく、1,000万円全額が課税対象になります。生命保険金がある場合の計算例相続税がかかるかどうかは、課税対象になる財産から生命保険金の非課税分を差し引きした金額が、基礎控除額以下であるかどうかで判断します。たとえば、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円です。被相続人の残した財産額が6000万円で、そのうち相続人が受け取った生命保険金が2,000万円の場合、生命保険金については1,500万円が非課税になりますから、相続税の課税対象になる財産額(課税価格の合計額)は4,500万円です。つまり、このケースでは課税価格の合計額は基礎控除額以下であるため、相続税はかからないことになります。基礎控除の計算方法まとめ相続財産の額が基礎控除額を超えていれば、相続税がかかります。基礎控除額は法定相続人の数によって変わりますが、法定相続人の数はほぼ変えることができません。相続対策としては、相続財産の額を減らすことが有効です。生前贈与をしたり、生命保険に加入したりすることで、課税対象になる相続財産の額を減らせることがあります。相続税が心配なら、あらかじめ対策をしておきましょう。
2019年05月16日親が亡くなったときなどに、財産を相続するケースは多いでしょう。財産を相続できるだけならよいですが、相続税の負担は心配なはずです。相続税がどれくらいになるのかを計算するため、相続税の税率を知りたいという人も多いと思います。今回は、相続税の税率や計算方法について説明しますので、参考にしてください。相続税の税率とは?まず、大前提として知っておいていただきたいのは、相続税は、所得税のように所得の額に税率をかけて計算するものではないということです。相続税の税率を知っても、相続税は計算できません。相続税にも税率と呼ばれているものはありますが、相続税の税率は計算の過程で使うものです。相続税の計算方法は、やや複雑です。以下、相続税計算方法について説明しますので、大まかな流れを理解しておいてください。相続税の計算方法相続税は、次のような流れで計算します。手順1. 「課税価格の合計額」を出すまずは、「課税価格の合計額」を出します。「課税価格の合計額」とは、相続税のかかる財産の額を合計したものから、相続税のかからない非課税財産(仏壇・仏具など)及び被相続人の債務・葬式費用を差し引きしたものです。相続税のかかる財産とは、以下のものになります。ア本来の相続財産民法上の相続または遺贈により取得した財産です。イみなし相続財産生命保険金や死亡退職金になります。ただし、生命保険金も死亡退職金も、それぞれ「500万円×法定相続人の数」までは非課税です。ウ相続開始前3年以内の生前贈与財産相続の際に財産を取得した人が、被相続人から相続開始前3年以内にも生前贈与を受けていた場合、その生前贈与財産も相続税の課税対象になります。エ相続時精算課税による生前贈与財産相続時精算課税を選択して生前贈与された財産は、相続税の課税対象になります。つまり、「課税価格の合計額」は次のようになります。課税価格の合計額=ア+イ+ウ+エ-(非課税財産+債務+葬式費用)手順2. 「課税遺産総額」を出す相続税には、手順1で算出した「課税価格の合計額」から必ず差し引きできる「基礎控除額」があります。相続税の「基礎控除額」は、次の計算式で計算します。基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数「課税遺産総額」とは、「課税価格の合計額」から基礎控除額を控除したものです。この「課税遺産総額」に対して相続税がかかることになります。「課税価格の合計額」が「基礎控除額」よりも少ない場合には、「課税遺産総額」はマイナスになりますから、相続税はかかりません。課税遺産総額=課税価格の合計額-基礎控除額手順3. 各相続人の「仮の相続税額」を出す手順2で算出した「課税遺産総額」を法定相続人が法定相続分で取得する形で仮に分けます。その上で、各相続人の取得額に対応する「仮の相続税額」を出します。各相続人の「仮の相続税額」は、財産の取得額に税率をかけて計算します(下記「相続税の税率表」参照)。手順4. 「相続税の総額」を出す手順3で計算した各相続人の仮の相続税額を合計し、「相続税の総額」を出します。手順5. 財産を取得した人の「実際の相続税額」を出す手順4で計算した「相続税の総額」を、実際に財産を取得した人(相続人及び受遺者)に取得額に応じて割り振る形で、「実際の相続税額」を出します。相続税の税率の意味相続税は、相続した財産額に税率をかけて出すものではありません。1つの相続が発生すると、財産をどう分けるかに関係なく、「相続税の総額」が決まります。「相続税の総額」を取得額に応じて按分することでそれぞれの人の実際の相続税額が決まります。相続税は「相続税の総額」を按分して出す相続税を出すときには、相続した財産額が基準になるのではなく、「相続税の総額」が基準になります。たとえば、親が亡くなったときに1,000万円を相続したとしても、それだけでは相続税額がいくらになるかはわかりません。相続税の金額を求めるには、その相続の「相続税の総額」を知る必要があります。自分が相続した財産額だけでなく、相続の全体像を知らなければ、相続税の額は出せないのです。税率は相続税の計算の過程で便宜上使うもの相続税の税率は、相続税算出の基礎になる「相続税の総額」を算出する過程で使います。「相続税の総額」は、各相続人の「仮の相続税額」を合計したものです。相続税の税率は、「仮の相続税額」を出すときに使います。なお、ここで税率を使って算出された「仮の相続税額」は、「実際の相続税額」とは異なります。相続税の税率表「仮の相続税額」を出すときに使う相続税の税率表(速算表)は、次のとおりです。なお、下記の表は平成27年1月1日以降の相続・遺贈に関して適用するものです。平成26年12月31日以前の相続・遺贈については別の表を使いますが、今回は省略します。「仮の相続税額」を出すときには、課税遺産総額を法定相続分に応じて分けたときの取得金額を上記の速算表にあてはめ、次の計算式で計算します。仮の相続税額=法定相続分に応じた取得金額×税率ー控除額相続税の税率表のどこにあてはめるかは、法定相続分に応じた取得金額によって決まります。ちなみに、現金や株など相続した財産の種類によって税率が変わることはありません。相続税の税率表は、計算の便宜のための速算表です。控除額というのも、あくまで計算のために使う金額なので、特に意味はありません。仮の相続税は子供でも税率は同じ「仮の相続税」を出すために、相続税の税率表にあてはめるときには、年齢は関係ありません。子供であっても、法定相続分に応じた取得金額のところにあてはめます。相続税の計算例上の手順2までで算出した課税遺産総額が9,000万円と仮定します。法定相続人が、被相続人の妻、長男、次男の計3名の場合、法定相続分は妻2分の1、長男及び次男は各4分の1ですから、法定相続分に応じた取得金額は次のようになります。妻:9,000万円×1/2=4,500万円長男:9,000万円×1/4=2,250万円次男:9,000万円×1/4=2,250万円この金額を上記の速算表にあてはめて、各相続人の「仮の相続税額」を出すと、次のようになります(手順3)。妻:4,500万円×20%-200万円=700万円長男:2,250万円×15%-50万円=287万5,000円次男:2,250万円×15%-50万円=287万5,000円仮の相続税額をもとに計算した「相続税の総額」は、次のとおりです(手順4)。700万円+287万5,000円+287万5,000円=1,275万円なお、実際にも法定相続分どおりに遺産分割した場合、1,275万円を法定相続分で分けることになりますから、各相続人の実際の相続税額は次のようになります(手順5)。妻:1,275万円×1/2=637万5,000円長男:1,275万円×1/4=318万7,500円次男:1,275万円×1/4=318万7,5000円※妻については配偶者の税額軽減が受けられるため、相続税の負担は0円となります。上の計算結果を見ればわかるとおり、「実際の相続税額」は、税率表を使って出した「仮の相続税額」とは異なります。相続税の税率表を使っても、実際の相続税の額を出せるわけではありませんので、注意しておきましょう。相続税の税率や計算方法まとめ相続税の金額は、相続した財産に税率をかけても出せません。相続税の金額を把握したい場合には、手順を踏んで計算する必要があります。相続税の計算は複雑ですから、よくわからない場合には税理士に相談しましょう。
2019年05月08日ある日突然、長年慣れ親しんだ「自宅」に住めなくなるとしたら……。相続が発生するとそんな事態が実際に起こる場合があります。今回は、相続でなぜ「住まいを失う」場合があるのか、そして住まいを失わないために知っておきたい「配偶者居住権」についてお話しします。■ 相続が発生して「住まいを失う」場合とは?相続が発生することによって住まいを失う理由はさまざまです。cba / PIXTA(ピクスタ)例えば、相続税を支払うために自宅を売却するケースや、収入を得ていた配偶者(夫や妻)が亡くなってしまったため生活費が不足して自宅を売却し換金するケースなどが主なものですが、なかには相続トラブルによって自宅の処分を余儀なくされるケースもあります。下記にその例を挙げてみましょう。ケース1:夫が亡くなり、相続人が妻と子一人の場合で、自宅評価額2,000万円、預貯金3,000万この場合、妻と子の相続分はそれぞれ1/2となり、妻2,500万円、子2,500万円となります。妻が夫名義の自宅にそのまま住み続けていくためには自宅の所有権を得る必要があります。妻が相続する遺産の内訳を、自宅2,000万円、預貯金500万円とすれば妻はそのまま自宅に住み続けられますが、受け取れる預貯金が500万円では将来の生活費不足が心配になります。freeangle / PIXTA(ピクスタ)もちろん相続人同士の話し合い(遺産分割協議)で受け取る遺産の内訳を変えることもできますし、そもそも「遺産相続の割合」を変えることもできますが、親子間であってもさまざまな理由で話し合いがうまくいかない場合も少なくありません。遺産分割の協議がうまくいかない場合は結局、妻は将来の生活費のために自宅を売却しなければならない状況に陥ってしまいます。EKAKI / PIXTA(ピクスタ)ケース2:夫が亡くなり、相続人が妻と子二人の場合で、自宅評価額3,000万円、預貯金1,000万この場合、妻の相続分は1/2、子の相続分はそれぞれ1/4となり、妻2,000万円、子はそれぞれ1,000万円ずつとなります。妻は自宅への居住を希望しましたが、子二人が現金での相続を主張したため、妻は自宅の売却を余儀なくされ、妻と子二人はそれぞれ現金で遺産を相続することになりました。この場合も相続人同士の話し合いで法定相続によらない遺産の分割協議が可能ですが、相続人が増えることでその関係者(相続人の配偶者や家族等)も増えていきますので、トラブルになるケースも増えていきます。このような事態を回避・抑制するために生み出されたのが配偶者居住権なのです。■ 配偶者居住権とは?ray / PIXTA(ピクスタ)法務省HPの「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」によると、配偶者居住権とは「配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身又は一定期間、配偶者に建物の使用を認めることを内容とする法定の権利」としています。分かりやすい例でいうと、夫が亡くなったときに妻が一緒に住んでいた「夫名義の家」については、最長で妻が亡くなるまでの間、妻にその家を使用する権利を法律で認める、ということです。新設される権利なのでイメージしづらいですが、建物の権利を「負担付きの所有権」と「配偶者居住権」に分け、遺産分割協議の際や遺言書などによって、「配偶者が配偶者居住権を取得」し、「配偶者以外の相続人が負担付きの所有権」を取得することができる、といえば少し分かりやすいかもしれません。ABC / PIXTA配偶者居住権は、自宅に住み続けることができる権利ですが、完全な所有権とは違い、売買したり、自由に貸し出したりすることは出来ませんが、その分評価額を低く抑えることができます。先述した「ケース1」であれば、自宅評価額が2,000万円なので、これを「配偶者居住権1,000万円」と「負担付きの所有権1,000万円」に分けて妻と子がそれぞれ相続すれば、妻は自宅に住み続けられるうえに、預貯金3,000万円のうち1,500万円を受け取ることができ、その後の生活の安定を得ることができるようになるのです。■ 配偶者居住権を利用する場合の注意点残された配偶者の住居確保や生活安定を図るために新設される配偶者居住権ですが、利用する際には注意が必要です。まず、この改正民法が施行されるのは2020年の4月1日なので、現在は配偶者居住権を取得したり行使したりできません。また、配偶者居住権は遺産分割における選択肢の一つとして、若しくは被相続人(夫など)の遺言等によって配偶者(妻など)に配偶者居住権を取得させることができるようにするものであって、自然に備わるものではないことにも注意が必要です。※1Graphs / PIXTA(ピクスタ)配偶者居住権は残された配偶者が住まいを失わないための選択肢としては有用ですが、もちろん万能ではありません。相続が発生した場合においてトラブル回避のためにもっとも重要なのは、これまでも、そしてこれからも相続人同士の丁寧な話し合いに他ならないのです。【参考】※法務省民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)注※1配偶者居住権とともに新設される配偶者短期居住権(少なくとも6か月間の居住を保障)については配偶者が相続開始時に被相続人の建物に無償で居住していることで当然に成立するとされています。
2019年04月21日これから先、親が死亡したときの相続手続きが心配という人も多いのではないでしょうか?相続手続きを避けて通ることはできません。いつかは訪れるそのときのために、相続手続きの流れをしっておくことは大切です。ここでは、相続手続きの基本的な流れや注意点について説明しますので、参考にしてください。相続発生後に必要になる手続きの流れと手順とは?まずは、相続手続きの全体像を押さえておきましょう。相続手続きの基本的な流れ相続が起こった後の手続きの流れは、大まかには次のとおりです。1. 相続人・相続財産調査まず、相続人と相続財産を確定します。法定相続人として、把握している以外の人が出てくることもありますから、戸籍を取り寄せて調べます。相続財産については、何がどれだけあるかを明らかにし、遺産目録を作成しておくと良いでしょう。2. 遺産分割協議法定相続人全員で相続財産を分けるための話し合い(遺産分割協議)を行います。遺産分割協議で分け方が決まったら、遺産分割協議書を作成します。なお、亡くなった人(被相続人)が遺言書を残している場合には、遺言書に従って相続が行われますから、遺産分割協議は不要です。各財産を相続する人は、遺言書でわかりますから、すぐに3の各財産の相続手続きに入ることができます。3. 各財産の相続手続き遺産分割協議(または遺言書)にもとづき、不動産、預貯金、株式などの各財産を、被相続人名義から相続人名義に変更します。場合によっては必要になる相続手続き相続においては、次のような手続きが必要になることもあります。相続放棄の手続き相続放棄とは、相続しない旨の意思表示です。相続放棄をすれば、最初から相続人でなかった扱いになります。財産よりも借金が多く、相続したくないような場合には、相続放棄することも可能です。相続放棄は、相続開始を知ったときから3か月以内に家庭裁判所で行わなければなりません。期限を過ぎてしまうと、相続放棄ができなくなってしまいます。相続放棄について、詳しくは以下の記事をご参照ください。相続税の申告・納税手続き相続財産の額によっては、相続税がかかることがあります。この場合には、相続開始を知ったときから10か月以内に相続税の申告・納税手続きが必要です。相続財産の合計額が、次の計算式で算出される相続税の基礎控除額を超える場合には、相続した人に相続税が課税されます。基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数相続手続きで重要なのは遺産分割の手続き相続手続きのカギとも言えるのが、遺産分割になります。遺産分割とは相続財産分与の手続き遺産分割とは、相続財産(遺産)を各相続人に分与する手続きです。遺言書が残されている場合を除き、遺産分割が終わるまでは、遺産は相続人全員の共有ですから、相続人の1人が勝手に処分することもできません。遺産分割が終わらなければ、相続手続きが進められないことになります。遺産分割で争いになったら調停や審判を申し立て遺産分割は、相続人全員による遺産分割協議で分けるのが原則です。遺産分割するときには、基本的に法定相続分に応じて分けます。しかし、不動産のように分けにくいものもある上に、相続人同士の利害関係が対立し、もめてしまうことはよくあります。遺産分割協議で遺産の分け方が決まらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停や遺産分割審判を申し立てることが可能です。この場合には、裁判所で決着をつけることになります。財産別の相続手続きを知っておこう遺産分割(または遺言)で誰が何を相続するかが決まったら、いよいよ相続手続きです。主な財産の相続手続きの概略を知っておきましょう。不動産の相続手続き土地や建物、マンションなどの不動産の相続手続き(相続登記)は、法務局で行います。相続登記をすれば、不動産の名義が被相続人から相続人へと変更されます。相続登記の手続きをするときには、登記申請書と添付書類を法務局の窓口に提出します。添付書類としては、戸籍謄本のほか、遺産分割協議書、遺言による場合には遺言書、住民票、印鑑証明書などが必要です。不動産の相続手続きは自分ですることもできますが、相続のパターンにより必要書類が変わるなど、手続きは複雑です。不動産の相続手続きを自力でできない場合には、司法書士に依頼しましょう。預金の相続手続き銀行預金や郵便貯金(ゆうちょ)などの相続手続きは、金融機関ごとに行います。相続手続きの必要書類は各銀行で違います。遺産分割協議書によるか、遺言書によるかでも必要書類は変わりますので、事前に問い合わせてから用意しましょう。遺産分割協議書による場合、通常必要になるのは、各金融機関で用意されている相続手続依頼書兼同意書、戸籍謄本、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書です。株式の相続手続き上場株式の場合には証券会社で、非上場株式の場合には発行会社に問い合わせて、相続による名義変更の手続きをします。相続手続きに必要なものは、預金の場合と同様です。自動車の相続手続き自動車の相続手続きとしては、陸運局(運輸支局または自動車検査登録事務所)での移転登録申請が必要です。廃車にする場合や売却する場合でも、先に相続人名義に変更しなければなりません。相続手続きの注意点相続手続きをするときに注意しておくのは、次のような点になります。相続手続きで必要な書類は多い相続手続きをするときには、戸籍謄本を収集しなければなりません。相続手続きに必要な戸籍謄本は膨大な数にのぼることもあり、自分で集めようと思うとかなりの時間がかかってしまうことがあります。相続手続きでかかる時間や手間を考えると、専門家に依頼した方が安心です。何もかも自分でやろうとすれば手続きが進まないことがありますから、早い段階で弁護士などに相談しましょう。相続手続きには期限があるものもある相続手続きには、相続放棄や相続税申告のように期限があるものがあります。期限を過ぎてしまうと不利益を受けることになりますから、十分注意しておきましょう。なお、遺産分割や相続登記には、期限はありません。しかし、遺産分割が終わらないと法定相続で相続税の申告を行わなければならなかったり、相続登記をせずに放置していると次の相続が発生して手続きが複雑化したりします。相続手続きをせずに放置していても、デメリットが増えるだけです。相続発生後は、各種の手続きを速やかに終わらせるようにしましょう。相続手続きは弁護士等に依頼した方がいい?相続手続きは自分ですることもできますが、弁護士等の専門家に依頼することもできます。専門家に依頼するメリットを知っておきましょう。相続手続きを自分ですると時間がかかる相続手続きを自分ですることもできますが、慣れない人がやると、時間や手間がかかってしまいます。相続手続きをスムーズに終わらせるためには、専門家に任せるのがおすすめです。相続手続きを専門家に依頼した方がいいケース相続財産として不動産がある場合には、司法書士に依頼して相続登記の手続きをしてもらうとよいでしょう。司法書士には、相続登記の前提として、戸籍謄本の収集や遺産分割協議書の作成も依頼できます。遺産分割協議書の作成は、行政書士にも依頼することができます。相続人間で争いになることが予想されるなら、弁護士に相続手続きを依頼した方がよいでしょう。弁護士に依頼すれば、遺産分割協議の代理人になって他の相続人と交渉してもらえます。遺産分割協議が成立しない場合には、家庭裁判所に調停や審判を申し立ててもらうことも可能です。なお、相続税の申告がある場合には、税理士に手続きを依頼しましょう。相続の手続きまとめ相続手続きをするには、相続人や相続財産をはっきりさせてから、遺産分割協議をする必要があります。遺産分割協議が終われば、各財産の名義変更を行って、相続手続き完了です。遺産分割協議では相続人同士が争いになってしまうことがあります。相続手続きの際には必要書類も多くなるので、最初から弁護士等に依頼して手間を省くことも考えましょう。
2019年04月16日親や親戚が亡くなったときに頭を悩ませがちなのが相続。相続では財産だけでなく、借金も引き継いでしまいます。相続したくないなら、相続放棄ができますので、手続きをとるようにしましょう。本記事では、相続放棄の手続き方法や注意点についてご説明します。相続放棄とは?相続する権利は放棄できることを知っておこう相続人になっていても、相続しなくてすむようにしたいなら、相続放棄が必要です。相続放棄にはどういう意味があるのかを知っておきましょう。相続人になっていても相続放棄ができる人が亡くなったときには、民法上の相続人(法定相続人)が財産を相続します。けれど、相続人であれば必ず相続しなければならないわけではなく、相続する権利自体を放棄できる、相続放棄という制度があります。相続放棄をすれば、その相続に関しては、初めから相続人でなかったものとみなされます。たとえば、親が亡くなれば子供は通常相続人となりますが、相続放棄をすれば親の相続とは無関係になります。負の遺産があれば相続放棄することにメリットがある相続放棄をした方がいいのは、被相続人が借金を残している場合になります。相続では、不動産や預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金(負債)というマイナスの財産も引き継ぐからです。プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多ければ、一般には相続放棄した方がメリットになります。相続放棄はどこでする?やり方は?手続き方法と流れを押さえておこう相続放棄をするには、法律上定められた手続きをとる必要があります。何もせず放置していれば相続放棄はできなくなってしまいますから注意しておきましょう。相続放棄は家庭裁判所に対して行う相続放棄を行う場所は、家庭裁判所です。相続放棄をするには、相続開始を知ったときから3か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄の申述」をしなければなりません。相続放棄の申述と言っても、口頭で行うわけではなく、相続放棄申述書とその他の必要書類を提出して、書面で手続きすることになります。相続放棄の必要書類相続放棄する際には、次のような書類が必要になります。相続放棄申述書裁判所で用意されている書式に必要事項を記入します。書き方については、記入例を参考にしましょう。申述書には相続放棄の理由も記載しますが、関わりたくないという理由でもかまいません。被相続人の資産や負債の概略も記載します。被相続人の住民票除票または戸籍附票被相続人の最後の住所地がわかるものとして、住民票の除票または戸籍附票を用意します。戸籍謄本自らが相続人であることがわかる戸籍謄本一式を用意します。相続放棄の申立費用相続放棄申述の手数料として800円がかかるので、800円分の収入印紙を購入して申述書に貼っておきます。また、裁判所からの連絡用に使う郵便切手を事前に提出しなければならないので、切手の組み合わせや金額を裁判所に確認してから提出します。相続放棄の申立方法相続放棄の申述をする場合には、次のような方法があります。書類を裁判所の窓口に提出する方法相続放棄の必要書類一式を揃えて、家庭裁判所の家事事件受付係に提出します。提出時に申述書の控も一緒に差し出すと、控に受付印を押して戻してもらえます。その後は、裁判所からの連絡を待つことになります。相続放棄の手続きを郵送でする方法必要書類一式を家庭裁判所に郵送します。控と返信用封筒を同封しておけば、受付印を押したものを返送してもらえます。郵送の場合にも、書類提出後は、裁判所の連絡を待つことになります。相続放棄の手続きを代理でしてもらう方法相続放棄の手続きを本人以外がやる場合、代理人になれるのは弁護士になります。相続放棄申述書の作成は司法書士にも依頼できますが、司法書士に代理人になってもらうことはできません。相続放棄申述書提出後の流れ相続放棄申述書を提出した後の流れは、次のようになります。家庭裁判所から照会がある相続放棄の意思に間違いがないかどうかの確認のため、申述人宛に家裁から照会書が郵送されてきます。照会書と一緒に同封されているに回答書に必要事項を記入し、家裁に返送します。相続放棄申述受理通知書が届く家裁からの照会の後、相続放棄申述が正式に受理され、申述人宛に相続放棄申述受理通知書が郵送で届きます。債権者に通知書を見せるかコピーを渡すかすれば、被相続人の借金の支払いを逃れられるのが通常です。相続放棄申述受理証明書の請求債権者から相続放棄申述受理証明書を要求された場合、相続放棄申述受理通知書を紛失した場合などには、家庭裁判所に証明書の交付申請をします。相続放棄する場合の注意点相続放棄の手続きをするときには、次のような点に注意しておきましょう。相続放棄すれば財産も相続できない相続放棄をすれば借金を引き継がずにすみますが、財産を相続することもできません。相続放棄後に新たな財産がでてきても、一度行った相続放棄を撤回することはできないので、慎重に行う必要があります。相続放棄には期限がある相続放棄は相続開始を知ってから3か月以内の期間(熟慮期間)に行わなければなりません。熟慮期間を過ぎてしまうと、相続放棄はできなくなってしまいます。なお、当初の熟慮期間内であれば、期間伸長の申立ができます。相続財産がどれくらいあるか不明で、3か月以内に調査が終わりそうにない場合には、期間伸長の手続きをしておいた方がよいでしょう。相続放棄できないケースもある熟慮期間内であっても、相続放棄ができなくなるケースがあります。たとえば、相続人が相続財産の一部や全部を処分した場合には、法定単純承認といって相続を承認したことになってしまい、相続放棄はできません。相続放棄をする可能性があるなら、相続財産には手を付けないようにしましょう。相続放棄をすれば他の相続人に影響がある相続放棄をすると、他の相続人に影響を及ぼすことにも注意しておきましょう。相続放棄により、他の相続人の負担が増えたり、新たに相続人になる人が出てきて相続放棄が必要な人の範囲が広がったりすることがあります。たとえば、被相続人に借金があり、相続人が妻と子1人であるケースで、妻が相続放棄をすれば子だけで借金を負担しなければなりません。また、同じケースで妻も子も相続放棄をした場合、第2順位の相続人(直系尊属)が相続人となるため、第2順位の相続人も相続放棄が必要になってしまいます。第2順位の相続人がおらず、第3順位の相続人(兄弟姉妹)がいる場合も同様です。離婚していても子供は相続放棄が必要親が亡くなると子供は相続人になります。父母が離婚していても、親子関係は変わりません。離婚により離れた父親が借金を残して亡くなった場合でも、息子や娘は相続放棄しない限り借金の支払いを請求されることになります。未成年者の相続放棄には特別代理人が必要なことがある未成年の子が相続放棄をする場合、親権者との間に利益相反が起これば、親権者が法定代理人として相続放棄の手続きをすることができません。利益相反が起こる場合とは、次のようなケースです。親も子も相続人で、子だけが相続放棄をするケース複数の子がいる場合で、一部の子だけが相続放棄をするケース上記のようなケースでは、子のために特別代理人が必要です。相続放棄をする前に、家庭裁判所に申し立てをし、特別代理人を選任してもらわなければなりません。なお、親も子も相続放棄をする場合には、特別代理人は不要で、親が子の相続放棄の手続きができます。まとめ相続放棄は、通常は相続開始から3か月以内に行わなければなりません。うっかりしていると、相続放棄ができなくなってしまうことがありますので十分注意しておきましょう。なお、3か月を経過していても、当初被相続人に借金があることが全くわからなかった場合には、相続放棄できる可能性があります。3か月過ぎているとあきらめる前に、弁護士等に相談するのがおすすめです。
2019年04月12日相続に関する法制度が、今年1月から段階的に変わっている。じつに40年ぶりとなる大改正により、高齢化社会に対応したルールが順次導入されていくことに。相続問題に詳しい行政書士の竹内豊さんは“妻の権利の拡大”に注目する。「夫の死後、妻が1人で生きていく時間は長いので、今回は“残された妻”を保護するための改正が多いのが特徴です。自宅に住み続けるための権利や、介護の貢献によって相続人に金銭を請求できる権利など、妻の権利が広がることになります」また、要介護だった義理の親が亡くなったとき、息子の妻(あるいは娘の夫)がどれだけ介護で貢献したとしても、嫁(婿)には相続の権利はなく、財産を得ることはできなかった。相続コーディネーターで、「夢相続」代表の曽根恵子さんは次のように語る。「義父母が『どうにか嫁にも財産を残したい』と思ったら、これまでは養子縁組で息子の嫁を『娘』にするか、あるいは遺言書で財産を残すしか方法はなかったので、ほかの親族から『なぜ私よりもあの人に多く遺産を渡すのか』と、“争族”の火種になりやすく、積極的に残そうという人はあまりいませんでした」そんな“介護をした人”の貢献が金銭面で報われるようになる制度も施行される。だが、「相続」についてはわからないことも多い。そこでトラブルになりがちなケースと、最近増えている相談事例を竹内さんと曽根さんが解説してくれた。【Q1】ビットコインなど仮想通貨は相続財産になるの?「仮想通貨は金融商品なので、相続財産に含まれます。資産はほかに、不動産(土地、建物)、預貯金、株式や投資信託、車、貴金属、ゴルフ会員権などが含まれます。生命保険の死亡保険金(保険料負担者である夫が死んで妻が受取人の場合)は相続財産として課税の対象になります」(曽根さん)【Q2】エンディングノートは遺言書の代わりになるの?「故人の意思が反映されていても、法律の形式でないと遺言書とはみなされません。ただし、財産の洗い出しや銀行口座の暗証番号、ID・パスワードを書き残してもらうために活用できるので、記録しておくことは有効です」(竹内さん)【Q3】老親に「相続」の話を切り出すときの注意点は?「相続が繊細な問題であるだけに親に切り出せないという人が多いのが現実です。そんなときは親が主役となる老後のテーマとして『介護になったらどうしたいのか』『お葬式やお墓はどうしたいのか』といった話をしながら、財産について確認すると自然な流れで話が引き出せるかもしれません。ほかのきょうだいがいれば一緒に話し合いをすると、“争族”を防げるでしょう」(曽根さん)【Q4】認知症になった親の財産はどうやって分けるの?「明確に認知症と診断されると、遺言書を作成することはできません。ただし、意思疎通できる能力があり、意思確認ができれば作れる場合もあります。有効な遺言書がなければ、相続人同士が遺産分割協議で決めることになります」(曽根さん)【Q5】遺産分割協議書に使う印鑑は「認め印」でいいの?「『実印』が必要です。実印とは、住民登録をしている自治体に登録した印鑑のことをいい、実印として用いるためには市役所など自治体の窓口で『印鑑登録』を行ったうえで『印鑑証明書』を発行してもらいます。遺産分割協議を経て故人の銀行口座を解約するためには実印と印鑑証明書が必要なケースが多いので、用意しておくと確実です」(竹内さん)
2019年03月17日相続に関する法制度が、今年1月から段階的に変わっている。じつに40年ぶりとなる大改正により、高齢化社会に対応したルールが順次導入されていくことに。相続問題に詳しい行政書士の竹内豊さんは“妻の権利の拡大”に注目する。「夫の死後、妻が1人で生きていく時間は長いので、今回は“残された妻”を保護するための改正が多いのが特徴です。自宅に住み続けるための権利や、介護の貢献によって相続人に金銭を請求できる権利など、妻の権利が広がることになります」’16年厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、主たる介護者は「配偶者」が25.2%と最も多く、次いで「子」(21.8%)、「子の配偶者」(9.7%)となっている。要介護だった義理の親が亡くなったとき、息子の妻(あるいは娘の夫)がどれだけ介護で貢献したとしても、嫁(婿)には相続の権利はなく、財産を得ることはできなかった。相続コーディネーターで、「夢相続」代表の曽根恵子さんは次のように語る。「義父母が『どうにか嫁にも財産を残したい』と思ったら、これまでは養子縁組で息子の嫁を『娘』にするか、あるいは遺言書で財産を残すしか方法はなかったので、ほかの親族から『なぜ私よりもあの人に多く遺産を渡すのか』と、“争族”の火種になりやすく、積極的に残そうという人はあまりいませんでした」そんな“介護をした人”の貢献が金銭面で報われるようになるのが、今年7月1日から施行される「特別の寄与の制度」。たとえば、長男の妻が「私は義母の介護を頑張ってきたので、お金をください」と、権利を主張すれば、夫やそのきょうだいたち(相続人)は真剣に向き合う義務が生じる。たとえば、母が亡くなったとき、遺産の預貯金3,000万円は長男と長女で2分の1ずつ相続するところ、母の介護をしたのは、主に長男の妻だったとすると、妻は、長男と長女に「寄与料」を請求することができる。「寄与料の金額の目安などまだ詳細は決まっていませんが、妻が寄与料を請求して、相続人である長男と長女が拒否をしたら、家庭裁判所に持ち込み話し合いで決めることができます」(曽根さん・以下同)介護にかかわった労力を金額に換算するのは難しく、まだ算定方法は決まっていないが、「介護にかけた時間×都道府県が定めた最低賃金」を計算して請求することが有力視されている。曽根さんの試算では「少なくとも数百万円程度は請求できるのではないか」とみているそうだ。「妻側が請求する金額によっては、ひと悶着起こることもありえます。介護を行う際には、相続人同士でルールを決めて、情報を共有することが大事です。また、現在介護をしている人は、かかった時間や、通院などで病院に付き添った際に立て替えたお金などを介護ノートにこまめに記録として残しておくようにしましょう」介護の様子をスマホの写真に撮って家族で情報共有するなど、便利なツールを使いこなそう。
2019年03月16日相続に関する法制度が、今年1月から段階的に変わっている。じつに40年ぶりとなる大改正により、高齢化社会に対応したルールが順次導入されていくことに。相続問題に詳しい行政書士の竹内豊さんは“妻の権利の拡大”に注目する。「夫の死後、妻が1人で生きていく時間は長いので、今回は“残された妻”を保護するための改正が多いのが特徴です。自宅に住み続けるための権利や、介護の貢献によって相続人に金銭を請求できる権利など、妻の権利が広がることになります」残された家族が相続をめぐって争わないために、「遺言書」を書いておきたいが、「家族が仲よしだから」「面倒だから家族に任せる」などと書かない人が多い。相続コーディネーターで、「夢相続」代表の曽根恵子さんは次のように語る。「夫が亡くなって妻と子どもたちが相続するときには、妻を中心に意見がまとまりやすいのですが、子ども同士で親の財産を相続するときは、ささいなことでもトラブルになりがちです。それを防ぐためにも、遺言書を残すなどの対策が必要になります」一般的によく利用される遺言には「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2つがあり、公証役場に足を運んで、口述しながら公証人が作成する「公正証書遺言」は、遺産の規模によって金額は異なるが、専門家のアドバイスを受けてから作成して、そのまま預かってもらうと20万円程度の費用がかかってしまう。これに対して「自筆証書遺言」は、作成代はゼロだが、財産目録のすべてを直筆で書くうえ、自分で保管しなければならないので、偽造や破棄、隠蔽などの恐れがあり、「遺言を書いても執行されないで、遺品回収業者がタンスの引出しから見つけた」などという話もあるほど。今年1月13日からこの「自筆証書遺言」のハードルが下げられた。「遺言書の添付する財産目録だけは手書きで作成しなくてもよくなり、パソコンの作成や、通帳のコピーも添付できるようになりました。1枚ずつ署名と押印は必要ですが、高齢者たちにとって作成の手間が大幅に省けるようになったのは大きいです」(曽根さん・以下同)父親の遺産を子どもたちで相続する際、「法定相続分どおりに分けるのは不公平だ」と、考える場合がある。たとえば、《長年同居して父の身の回りの世話をし続けてきた長女夫婦に自宅3,000万円と預貯金1,000万円を残して、遠方に住む長男は生命保険金の受取人に指名しておきたい》、というときには、遺言書が必要になってくる。「特にきょうだい同士で離れて暮らす家族は『親をそそのかして自分の都合のいいように遺言を書かせた』といって、離れて暮らすきょうだいからクレームがつくことも。親の看取り方を話し合う過程で、亡くなったあとの話をするなど、ふだんからきょうだい間で話し合っておくといいでしょう」また「自筆証書遺言」を、法務局で預かる制度が来年7月10日からスタートする。財産を残す人の意思を確実に反映するためにも併せて活用したい。
2019年03月16日相続に関する法制度が、今年1月から段階的に変わっている。じつに40年ぶりとなる大改正により、高齢化社会に対応したルールが順次導入されていくことに。相続問題に詳しい行政書士の竹内豊さんは“妻の権利の拡大”に注目する。「夫の死後、妻が1人で生きていく時間は長いので、今回は“残された妻”を保護するための改正が多いのが特徴です。自宅に住み続けるための権利や、介護の貢献によって相続人に金銭を請求できる権利など、妻の権利が広がることになります」大改正の目玉の1つが、来年4月にスタートする『配偶者居住権の創設』。夫が亡くなり、妻と息子2人が財産を相続する場合、現行の制度では、妻が自宅に住み続けたいと願ってしまうと、生活が成り立たなくなったり、反対に追い出されたりしてしまうことさえあった。相続コーディネーターで、「夢相続」代表の曽根恵子さんが解説する。「たとえば、3,000万円の自宅と預貯金3,000万円を残して夫が亡くなったとします。相続する割合(法定相続分)は妻が2分の1、2人の子どもで2分の1になるので、妻が『これまでどおりに自宅に住み続けたい』と望み、3,000万円の自宅を相続してしまうと、預貯金は子どもたちが相続することになります。すると妻は預貯金が受け取れず、手元の現金が不足することで生活が成り立たなくなるケースがあったので、夫に先立たれた妻が安心して生活できるように『配偶者居住権』が来年4月1日から施行されます」(曽根さん・以下同)施行後は自宅を「居住権」と「負担付き所有権」に分ける。居住権と所有権をそれぞれ50%と仮定すると、妻の居住権が1,500万円となるので、預貯金は妻と子どもたちでそれぞれ1,500万円ずつ配分され、妻も現金を得ることができる。「所有権の配分は相続人の間で決めます。居住権については、現時点では妻の年齢が若いほど高くなる評価方法が検討されています。高齢の妻ほど、居住権の金額が少なくなるということは、それだけ受け取れる現金が増えるので、居住権の活用は、終の住処と考える70歳以上の妻にとってメリットが大きくなるといえます」ただし注意点も。「配偶者居住権」を選択すると、妻が死ぬまで自宅で住み続けられるが、その一方で、売却しづらくなるのだ。「たとえば妻が後日『自宅を売却したお金で介護施設に入りたい』と言い出したら、所有権を持つ子どもの同意がないと簡単には売却できません。また毎年、自宅にかかる固定資産税は所有者に請求がいきますので、子どもたちが『所有権』を取得したら子どもたちが支払うことになります」「配偶者居住権」を選択したことで新たに生じる負担を確認するとともに、「いつまで自宅に住み続けるか」といったことも含め、家族で話し合っておくことが大切だ。
2019年03月15日相続に関する法制度が、今年1月から段階的に変わっている。じつに40年ぶりとなる大改正により、高齢化社会に対応したルールが順次導入されていくことに。相続問題に詳しい行政書士の竹内豊さんは“妻の権利の拡大”に注目する。「夫の死後、妻が1人で生きていく時間は長いので、今回は“残された妻”を保護するための改正が多いのが特徴です。自宅に住み続けるための権利や、介護の貢献によって相続人に金銭を請求できる権利など、妻の権利が広がることになります」「相続法」40年ぶり大改正のポイントは次のとおり。「施行年月日」「名称」「内容」をチェックしよう。■2019年1月13日【自筆証書遺言の方式緩和】遺言書に添付する財産目録は手書きに限られていたが、パソコンでの作成やコピーの添付が認められることになった。■2019年7月1日【婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置】婚姻期間が20年以上の夫婦は、夫(妻)から生前贈与をされても、その金額は相続税にカウントされない。【預貯金の払戻し制度の創設】亡くなった後、故人の預金口座からお金を引き出すことはできなかったが、一定額のお金を引き出せるようになる。【特別の寄与の制度の創設】妻(夫)が義父母の介護をしていたら、義父母が亡くなった後、妻(夫)は法定相続人に対して、金銭を請求できる。【遺留分制度の見直し】相続財産が主に不動産しかない場合、相続人がほかの相続人から遺留分を請求されると、不動産を分けるしかなかったが、改正後は現金で解決できるようになる。■2020年4月1日【配偶者居住権の創設】妻が自宅を相続すると、現金などを受け取れなくなる恐れがあったが、ほかの財産も受け取れるようになる。■2020年7月10日【法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設】自分で書いた自筆証書遺言を法務局で預かってもらえるようになる。「昔は長男が家督を継ぐのが当たり前だと思っていたので、ほかのきょうだいから異論は出にくい状況でしたが、今は核家族化が進み、相続に関する情報もあふれているので、次男、三男、女のきょうだいでも権利を主張するようになった。今回の改正を最大限活用するためにも、最新情報をチェックして、事前に備えておきましょう」(竹内さん)
2019年03月15日相続に関する法制度が、今年1月から段階的に変わっている。じつに40年ぶりとなる大改正により、高齢化社会に対応したルールが順次導入されていくことに。相続問題に詳しい行政書士の竹内豊さんは“妻の権利の拡大”に注目する。「夫の死後、妻が1人で生きていく時間は長いので、今回は“残された妻”を保護するための改正が多いのが特徴です。自宅に住み続けるための権利や、介護の貢献によって相続人に金銭を請求できる権利など、妻の権利が広がることになります」大改正の目玉の1つが、来年4月にスタートする『配偶者居住権の創設』。「たとえば親子が不仲で、夫の死後に子どもたちが法定相続分どおりの金額を要求したら、妻は子どもが相続する分の現金を別途調達しなければならず、自宅を売却したお金で渡す、ということもありました。その不安を解消するため、住む権利である『居住権』が新設されます」(竹内さん・以下同)また相続財産が自宅など不動産がメインの場合、分割の仕方をめぐってトラブルになりやすい。自分以外の相続人から最低限の遺産を手にできる「遺留分」を請求されると、土地の所有権を分ける場合もあった。今年7月1日に「遺留分制度の見直し」が施行されると、土地を相続した人が、遺留分を請求した相続人に現金で渡すという選択肢も明文化される。ほかに、相続税の面で妻の負担が軽減される改正も。「結婚20年以上の夫婦については、夫から妻へ生前贈与された自宅を相続税の課税対象に含まない『婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置』が設けられます。ただし、婚姻期間には事実婚は含まれないので注意が必要です」’16年厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、主たる介護者は「配偶者」が25.2%と最も多く、次いで「子」(21.8%)、「子の配偶者」(9.7%)となっている。義理の両親の介護を無償でしてきた夫の妻は一定数いるが、どれだけ尽くしても法定相続人になれないため、相続で財産を受け取ることはできなかった。「特別の寄与の制度の創設」で、妻が相続人に金銭を請求できるようになる。さらに、葬式等を取り仕切る際に知っておきたいのが、「預貯金の払戻し制度の創設」。家族の死後、故人の銀行口座は凍結され、現金の出し入れがいっさいできなくなる。葬儀費用の支払いなどでまとまった現金をすぐに用意するのが困難なケースも少なくない。「現行の相続法では、相続人の間で遺産分けについて話し合いをする『遺産分割協議』が終了し、相続人全員の署名と実印が押された『遺産分割協議書』などを持って各金融機関で手続きをしてからでないと、故人の口座から現金を引き出すことはできません。亡くなった時点で銀行口座に残っているお金は相続財産になるので、仮に引き出すことができたとしても、後日もめることもあります。『預貯金の払戻し制度』が始まることで、遺産分割協議の前でもほかの相続人の同意なく単独で、故人の預金口座から一定額を引き出すことができるようになります」家庭裁判所の判断がなくても「一定額」であれば引き出せる。その金額は、預貯金額の3分の1に法定相続分の割合を乗じた数(ただし、同一の金融機関に対して150万円が限度)となる。やはり残された家族が相続をめぐって争わないために、「遺言書」を書いておきたいが、「家族が仲よしだから」「面倒だから家族に任せる」などと書かない人が多い。今年1月に始まった「自筆証書遺言の方式緩和」は、遺言書作成のハードルが引き下げられた。「遺言書の本文と同様に、添付する『財産目録』は手書きに限られていましたが、パソコンでの作成や、貯金通帳のコピーなどの添付が認められるようになりました」また、自分で書いた遺言も、自分で保管しなければならず、後に「遺品を整理していたときに仏壇の引出しから見つかった」などと、故人の思いが反映されないことがあった。「法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設」がスタートすれば、市区町村にある法務局が自筆証書遺言を預かってくれるようになる。紛失や改ざん、破棄などのトラブルも防止できる。「昔は長男が家督を継ぐのが当たり前だと思っていたので、ほかのきょうだいから異論は出にくい状況でしたが、今は核家族化が進み、相続に関する情報もあふれているので、次男、三男、女のきょうだいでも権利を主張するようになった。今回の改正を最大限活用するためにも、最新情報をチェックして、事前に備えておきましょう」
2019年03月15日いま、1,500万円までは教育費を一括で生前贈与しても非課税になるって知っていた?今年3月で見直されてしまうこの制度。じつはうまく使えば、相続税を大きく減らすことができるんです。「現在、孫や子どもへの教育資金を贈与する場合、1,500万円まで非課税という特例があります。しかし、この特例は今年の3月末で、見直されるんです」そう解説してくれたのは、円満相続税理士法人代表で相続専門税理士の橘慶太さん。’13年4月に始まった教育資金一括贈与の特例。現在、使うことができる代表的な5つの“特例”、「教育資金贈与の特例」「結婚・子育て資金贈与の特例」「住宅取得資金贈与の特例」「夫婦間贈与の特例」「相続時精算課税の特例」のひとつで、子・孫が30歳になるまで、用途を教育費に限って贈与できる。高齢者の資産を若い世代に移すことで、世代間格差を是正しようというのが教育資金一括贈与の特例の“建て前”だが、じつはこれ、相続税の節税にも効果がある。「相続税は財産が大きくなればなるほど、税率も高くなる累進課税です。だから、生前贈与であらかじめ財産を減らせば、相続税も減らすことができますが、贈与税の基礎控除額は年間110万円まで。これを超えた額には贈与税がかかってしまいます。1,500万円を贈与しようと思えば、贈与の対象が20歳以上で366万円、20歳以下の場合は450万5,000円の贈与税がかかります。でも、この特例を使えば、贈与税はゼロ。つまり、即効性のある節税対策ができるのです」(橘さん)ただし、使用の条件は厳しい。「これは、30歳未満の子どもや孫の教育資金として使うなら非課税となる制度。信託銀行などに専門口座を開設し、教育資金として使われた証拠になる領収書を提出しなければいけません」(橘さん)ここでいう教育資金とは、幼稚園や学校、職業訓練学校の入学金や授業料。さらにPTA会費、修学旅行費、ユニホーム代もOK。塾や水泳教室、自動車学校などの習い事代、寮費用も含まれる。「ただし、留学費用としての渡航費はOKだけど、ホームステイ代はダメ。学校に直接支払われるものは、1,500万円まで非課税だが、業者などに支払うものは500万円までなど、細かいルールがあるので、気を付けなければなりません。領収書の提出を忘れると、教育費用として加算されないので注意が必要です」(橘さん)また、30歳までに使い切れなかった場合、残額に贈与税がかかることに。使途は教育費に限るうえに、お金の管理は孫や子ども名義の専用口座で行わないといけないなど、制限が多いこの制度。祖父母から孫に一括贈与する場合、親世代は恩恵をあまり受けていないように感じるかもしれない。『残念な相続』(日本経済新聞出版社)の著書などがある税理士の内藤克さんは利点をこう語る。「親世代にとっては、教育費が浮いたぶんを、ローン返済や貯蓄などに使えるわけです。つまり、祖父母から孫にお金が移動しているように見えて、実質的に自分たちがもらっているのと同じ(笑)。親の生前に確実に確保しておくという意味でも、特例を使うのはアリかもしれません」(内藤さん)また、橘さんも、ある条件のもとであれば、有効な制度だと語る。「死期が近くて、いますぐ相続税を減らしたい人には有効です。それから、『そのつど、教育費を払うね』と約束していても、子育て、孫育ては長期間。その間に、もし認知症になれば贈与が認められなくなりますので、元気なうちに確実に渡すため、制度を利用するという考え方もあるでしょう」ただし、この制度は今年3月末で終わってしまう、現国会で審議されている「2019年度税制改正」で、2年延長される見込みだが、子や孫の所得の上限ができるなど、やや制限される。「子や孫の年間所得が1,000万円を超えると、制度は使えなくなりますが、これに引っかかる人はなかなかいないはず。また、祖父母が贈与してから3年以内に亡くなって、その時に孫が23歳以上であれば、その時点で口座に残っている残高が相続税の対象となるように。相続税対策で始めても、すぐに祖父母が亡くなってしまったら、無意味になることも考えられます」(橘さん)これらの制限が適用されるのは、本年度の4月1日以降に契約した人。制限を避けようと思えば、3月末までの契約が必要だ。銀行で申し込んでから、すべての手続きに2~3週間はかかるが……。「『申込み基準』のため、ギリギリ3月末でもセーフ。でも、駆け込み需要も増えているので3月中旬には決断を」(信託銀行職員)とはいえ、相続税の節税目的なら、年間110万円の基礎控除の範囲内で、毎年贈与を行うのが“王道”だ。通常の贈与であれば、贈与されたお金の使途が問われることはない。さらに、贈与税を払ったほうが“お得”なケースもあるという。「ちょうど、資産の額が、相続税の税率が切り替わる境目にある場合、贈与税を払ってでも資産を減らしたほうが得になることもあります。ただし、非常に複雑な計算が必要なので、税理士などの専門家に相談したほうが安全です。現在は人生100年時代。行きすぎた贈与をすると、贈与した側が将来困窮する懸念もあります。さらに、偏った生前贈与で不平等が生じて、相続トラブルに発展することも」(内藤さん)生前贈与のご利用は計画的に!
2019年03月04日もしも、あなたが実家を相続したらどうしますか?相続税の納付金は決して少ない額ではありませんので、マイホームを購入するどころではなくなってしまいます。相続税の課税範囲を実質的に拡大した2015年度以降、「我が家は自宅しかないから相続税は納めなくていい」と思っていたのに相続税を申告しなくてはいけなくなったケースが増えています。とくに、都市部に不動産を保有している世帯への影響が大きくなりました。東京国税局によると、税制改正の翌年(2016年)は、相続税課税割合は12.8%と、相続が発生した人のおよそ7人に1人が課税対象となりました。■ 自分は長生きすると思っている親なら、課税の可能性アリかみぞー / PIXTA(ピクスタ)税制改正前は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」までが非課税でしたが、2015年の改正で「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に変更されました。夫婦と子ども2人の4人家族で夫が亡くなった場合、基礎控除額は8,000万円から4,800万円に縮小されてしまうのです。4,800万の控除額になると、都市部に自宅があり、預貯金や株式、保険などの金融資産をある程度持っていれば、一般的な家庭でも申告の可能性があります。近年は、長寿化に備えて老後のための金融資産を用意している人が増えています。「自分が長生きするから金融資産を残そう」と努力している親を持っている人は、自分は相続税を納付する可能性があると考えたほうがよいでしょう。■ 小規模宅地の特例と配偶者控除で納付金ゼロの可能性がある白熊 / PIXTA(ピクスタ)申告をしても、相続税の納付はせずに済むケースがあります。「配偶者の税額軽減」と「小規模宅地等の特例」という特例制度を使うのです。配偶者には、法定相続分、もしくは1億6,000万円のどちらか大きい金額までは相続税が免除される制度があります。「小規模宅地等の特例」とは、被相続人が暮らしていた住まいや、経営していた店など事業用の不動産、もしくは貸し出していたマンションなどの土地の相続税評価額を80%軽減できる制度です。HAKU / PIXTA(ピクスタ)「小規模宅地等の特例」敷地面積や被相続人との続柄などで一定の要件を満たした場合に限り適用されますが、要件は複雑です。被相続人が暮らしていた自宅の場合、評価減されるのは敷地面積100坪(330平方メートル)までで、誰が相続するのかも要件になります。夫が亡くなった家の場合、その家で同居していた妻や子どもが相続する場合は、80%軽減の対象になりますが、実家から独立してマイホームを購入した息子が相続すると、特例は使えず、土地の相続税評価額がそのまま課税対象になるのです。つまり、マイホームを購入してから実家を相続すると、控除額が少なくなってしまいます。■ 相続税納付を避けたいなら、生前に財産目録の作成をNOBU / PIXTA(ピクスタ)相続時に税の納付を避けたいならば、自分の親に、財産目録の作成をお願いしておくのが賢明です。どのくらいの財産を持っているかは、親が亡くなってからでは調査に時間がかかり、遺産分割協議の期限(10か月)があっという間に過ぎてしまいます。財産の整理を生前にしておいてもらえば、万が一相続が発生した際、残された家族の負担は軽くなります。また、目録をもとに、課税対象額を試算することが可能です。小規模宅地の特例を使わなくても済むことがあらかじめ分かっていれば、安心してマイホームを購入することもできます。小規模宅地等の特例には細かな要件が多いため、試算の際には、税理士などの専門家に助言を受けることをオススメします。■ まとめ吉野秀宏 / PIXTA(ピクスタ)「相続の準備はお金持ちのするもの」と思っている人が、いまだ少なくありません。しかし、上記のように相続税の申告・納付の可能性は誰にでもあるのです。親や自分が亡くなったとき、どのように相続の手続きが進められるのかを、生前に十分検討しておくことが必要です。Writernista/ファイナンシャルプランナー(AFP)吉井希宥美
2019年01月03日生命保険で受け取る死亡保険金で相続税対策ができるのはご存じですか?もちろん死亡保険金には税金がかかりますが、ほとんど心配しなくていい金額です。今回は生命保険で相続税対策を行い、受け取る保険金にかかる税金の心配が必要なくなる話をご紹介します。死亡保険を受け取った時の相続税死亡保険金を受け取った時に心配なのは相続税ですが、死亡保険金は残された家族の生活を支える資金になるため税制上の優遇があり、所得税や贈与税などのように高額な税率ではありません。ここでは、死亡保険金を受け取った時にかかる実際の相続税をみていきます。実際はあまり心配しなくていい死亡保険金の相続税死亡保険金で受け取るお金にも税金がかかりますが、死亡保険金に対する相続税を心配する必要はほとんどありません。そのことを2015年以降に相続があった場合を例にみていきます。(2014年12月31日以前の相続は計算式が異なります。)夫、妻、子1、子2の4人家族で、保険契約者兼被保険者である夫が亡くなり、夫の保有財産が1,000万円、死亡保険金が4,000万円だった場合、相続税を支払う必要はありません。また、民法で定められた相続人のことを法定相続人といいますが、法定相続人が3名の場合、死亡保険金1500万以上でかつ死亡保険金を含めた相続財産が6,300万円を超えなければ税務署への申告義務は発生しません。(他にも法定相続人が何人なのか、誰が相続するのかで課税対象の金額は変わってきます。)下表は相続税額早見表です。配偶者と子が2人の家庭は1億円相続しても315万円の相続税です。相続人が配偶者や子ではなく孫や他人の場合はこのようにいきませんが、家族のために死亡保障を用意する場合は死亡保険金の相続税や通常の相続税は心配しなくていいことがわかります。注1. 遺産を相続人が法定相続分により相続した場合の相続税額(1万円未満を四捨五入)。注2. 遺産の総額は、基礎控除を差し引く前の課税価格の合計額。注3. 相続税額の計算上、配偶者の税額軽減のみ適用し、未成年者控除などの税額控除は考慮していない。死亡保険金にかかる相続税死亡保険金には非課税限度額があり、非課税限度額は以下の式で計算します。500万円 × 法定相続人= 非課税限度額前項の例の家族の場合は、500万円 × 3人(妻、子1、子2)=1,500万円が、死亡保険金から非課税枠として差し引かれます。ですから、4,000万円の死亡保険金で法定相続人が3人いる場合に実際課税される金額は、2,500万円です。(以下計算式)死亡保険金4,000万円-非課税分1,500万円(500万円 × 3人)=2,500万円各相続人にかかる課税金額は以下の式で計算します。この式をもとに課税される生命保険の金額を算出すると、妻の課税される生命保険の金額は1250万円、子の課税金額はそれぞれ700万円ですが、後述する相続税の非課税枠内におさまるので相続税を支払う必要はありません。相続税で控除される項目生命保険は税制上の優遇が受けられる商品ですが、生命保険を相続対策に役立てるためには相続税に関する知識も知っておく必要があります。以下に相続税で控除される項目をご紹介します。生命保険非課税限度額前項で紹介しましたが、死亡保険金には非課税限度額があり、法定相続人の人数分の金額が死亡保険金から差し引かれた金額が課税対象金額となります。非課税限度額は以下の式で計算します。500万円 × 法定相続人= 非課税限度額生命保険非課税限度額は、法定相続人である「子」が相続を放棄した場合は非課税限度額を計算するうえで法定相続人に含んでいいとされていますが、法定相続人である「配偶者」が相続を放棄した場合は法定相続人の人数には含みません。また、相続を放棄した相続人が死亡保険金を受け取る際には相続人とみなされず、非課税金額の適応を受けられません。基礎控除相続税には基礎控除があり、以下の式で計算します。3,000万円+600万円×法定相続人数夫が死亡した場合、妻と子1、子2がいる場合、3,000万円+600万円×3人=4,800万円が課税対象相続財産から控除されます。(2014年12月31日までに相続があった場合の基礎控除額は5,000万円+1,000万円×法定相続人数で計算します。)配偶者控除配偶者の相続税額から、以下の式で計算した額が控除されます。相続税の総額 ✕(①②のいずれか少ない額 / 課税価格の合計額)①課税価格の合計額 ✕ 法定相続分と1億6,000万円のどちらか多い額②配偶者が実際に取得した課税価格この配偶者控除があるので、配偶者については1億6,000万円までは実質非課税であり、1億6,000万円を超えた場合も法定相続分の範囲内におさまれば非課税です。債務控除相続では、プラスの財産の他に、借金などのマイナスの財産も一緒に相続します。債務控除では、被相続人が死亡した時に確実にあったとされる債務(マイナスの財産)は相続財産から差し引くことができます。差し引くことができるのは、死亡した被相続人の借金や未払い利息、医療費未払い分、税金の未納分、葬式費用などです。相続対策としての生命保険生命保険を相続対策として利用すると、前項で死亡保険金を受け取った時のように税制優遇される場合が多くあります。以下に相続対策としての生命保険のメリットをご紹介します。受け取りがスムーズ被相続人が死亡した場合、生命保険の場合は、保険会社に申請すると一週間ほどで死亡保険金が支払われます。受取人指定をしてあるのでスムーズに短期間で保険金を受け取れます。一方で、銀行に預金していた場合、被相続人の銀行口座はいったん凍結されます。そして、相続手続きが済んだら口座のお金を動かせます。相続手続きには相続人ごとに必要書類を用意するので手続きには時間がかかります。名指しでお金を残せる相続する場合には、遺言書や遺産分割協議が必要ですが、生命保険で受取人を指定すると特定の人にお金を残せます。また、受取人を指定してある死亡保険金は、相続人が最低限の遺産を確保するために設けられた「遺留分」の対象には含まれません。死亡保険金で受け取ったお金は受取人固有の相続財産になり、もっと遺産が欲しい他の相続人からの遺留分請求の対象にならないため、相続人同士のトラブルを避けることができます。銀行よりも利回りがいい商品がある貯蓄性の高い保険商品で死亡保障を用意し、被保険者が死亡するまで解約しない場合、銀行の利回りよりもいい利息で資産運用できます。資金に余裕があり、解約しないことが前提なら、貯蓄性の高い生命保険の商品を選択するのもいいかもしれません。まとめこれまで「死亡保険を受け取った時の相続税」「相続税で控除される項目」「相続対策としての生命保険」をみてきました。生命保険で受け取る死亡保険金の相続税はあまり心配しなくていいことがわかりました。そして、生命保険だと誰にいくら残すのかを最初に決めるので、遺産相続争いは起こりにくく、相続税の心配もほとんどないメリットがありましたね。残された家族の生活を守るために、生命保険で相続対策をとられてはいかがですか?[showsns]
2018年12月20日国税庁のデータでは、家庭裁判所への相続関係の相談件数は10年で約2倍に増えている。「家裁の相続に関する裁判のデータでは、3割が1,000万円以下の財産をめぐる争いです。逆に、5,000万円以上の財産の争いは約2割。つまり、相続では、金額が少ないほどモメることが多い。そこでは嫁やきょうだいの配偶者が口を出し、露骨に金銭を求めたりして骨肉の争いになりがち。残された家族が、平穏に暮らしていくためにも、親が1人になったら遺言書を残してもらうべきです」そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。とはいえ、まず遺言書を親に書かせるのが至難の業というのが実情だ。「『遺言書を書いて』と親に詰め寄るのは逆効果。『縁起が悪い』『早く死ねというのか』などと、へそを曲げられるのがオチ。それより、お盆の墓参りのタイミングなどで、『うちのお墓も古くなっちゃったわね。この先、どうする?』とソフトな話題から入っていくのがいいと思います」500件以上の相続トラブルを扱ってきた大竹夏夫弁護士はこう語る。「日本には遺言書を残すという文化が浸透していないのが、根本の問題。遺言書については、相続争いなどデメリットばかりが注目されますが、“人生の棚卸しになる”“作ったあとは自分も家族もスッキリする”といったメリットが多い。遺言に関する本やセミナーに参加してもらうなど、子は親に対して、書く“きっかけ”を作ってあげるというスタンスが大切だと思います」親がその気になったら、いよいよ遺言書の作成だが、法律文書だけに、うっかりミスやたったひとつの記入漏れで無効になる場合もある。そこで、トラブルになりにくい遺言書の基本的な書き方を、大竹弁護士が解説してくれた。【親が元気なうちに書く】「認知症の疑いがある人が遺言書を書く場合は、本人に判断能力があることを証明するために、医師の立ち会いが必要になることも。意思が明確なうちに書いてもらいましょう。意思が明確でないと、不動産の売却などの行為もできなくなる場合があります」(大竹弁護士・以下同)【残す額は割合を指定する】「財産は貯金なのか、不動産なのか。金額まできっちりと書くべき。預金などは、作成後に使われて額が変動する場合もありますから、『預貯金のうち2分の1は長男に、2分の1は長女に』と割合を指定する書き方がベターな場合も」【日付や押印は必須】「多いのが、『2018年8月』まで書いてあるのに、最後の『◯日』がない場合。きっと、あとで書こうと思って空欄にしていたのでしょうが、日付、署名、押印のどれかひとつが欠けても無効となります。金融機関も、認めません。ただし印鑑は、実印でなくても認印でもオッケーです」【墓守りの指定もする】お墓や仏壇などは相続財産にはならないが、「祭祀財産」といって、地域の慣習などで家族の誰かが引き継ぐもの。「しかし昨今、押し付け合ったりトラブルになるケースが多い。これも事前に話し合って誰が引き継ぐか、遺言書で指定しましょう」【トラブル回避のカギ「付言」】法律では認められないことを、遺言書に付言として書き加えることができる。「長年の介護への感謝など、なぜ財産をその人物に残したいのか理由を書き加えておく。付言があることで、ほかの家族が納得してトラブルを防ぐことにつながります」
2018年08月04日将来に対する不安の影響なのか、相続トラブルが増えているという。国税庁のデータでは、家庭裁判所への相続関係の相談件数は10年で約2倍に。「家裁の相続に関する裁判のデータでは、3割が1,000万円以下の財産をめぐる争いです。逆に、5,000万円以上の財産の争いは約2割。つまり、相続では、金額が少ないほどモメることが多い。そこでは嫁やきょうだいの配偶者が口を出し、露骨に金銭を求めたりして骨肉の争いになりがち。残された家族が、平穏に暮らしていくためにも、親が1人になったら遺言書を残してもらうべきです」こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。遺言書は大きく分けて、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2タイプがある。自筆証書遺言は、自分で書く遺言書。最も一般的で、紙と筆記用具、印鑑があれば作成できる。公正証書遺言は、全国に約300カ所ある公証役場にいる公証人に作ってもらう遺言だ。「自筆証書遺言は、筆跡でモメたり、書き換えられたり、見つからなかったりと、あとあとトラブルになることも。たとえば『一郎』に1本線を加えて『二郎』にしてしまったり、家庭裁判所で遺言書を開封し、内容が適正かを審査する『検認』という手続きが必要だという事実もあまり知られていません。しかも、検認には4〜5カ月かかることも」そう話すのは、500件以上の相続トラブルを扱ってきた大竹夏夫弁護士。遺言書の改ざんでは、こんなケースもあったという。「3人姉妹が相続するケースで、遺言書には自筆で、ずっと親の介護をしていた三女に多くの財産が与えられるように書かれていた。その内容を知った姉2人が、母親を連れ去って遺言書を勝手に書き直し、姉のひとりと同居を始めた。これは拉致とか誘拐みたいな乱暴な行為ですが、姉2人が『私たちが母の面倒を見るため』といえば、肉親の間のことなのでどうしようもないんです」(大竹弁護士)家族間の争いを心配し、遺言書を書いても隠しておく人も多いそう。「親が死んでも遺言書が見つからずに、財産を法律にのっとって処理したあとになって、整理屋さんが仏壇の裏で発見した、などということもあります」(大竹弁護士)遺言書が完成したあとの保管場所は重要になる、貸金庫や弁護士に託してもいいだろう。「大事なのは親の死後、残された家族が、財産はどこにあるかを把握していること。遺言書だけでなく、株券や土地の権利書、生命保険の書類、そして現金も、なるべく1カ所に保管しておくべき。親がタンス預金をした揚げ句、死後に、そのお金があったことすらわからなくなるような事態は避けたい。そのためにも、親に小さな家庭用の金庫を買ってあげて、『大切なものはここに入れるようにしようね』と、ふだんから習慣にしておくべき。銀行の貸金庫は、年間の借り賃が1万5,000円程度なので利用を考えてもいいでしょう」(荻原さん)弁護士に託した場合はどうなるのだろう。「うちの弁護士事務所でも、お預かりした遺言書は、きちんと耐火金庫に保管しています。遺言を書いたことさえ言いたくない親がいるのは事実ですが『将来に僕たちきょうだいが争わないために』と説得して、遺言の保管場所や、金庫のカギの在りかなどは相続者が知っておくべきです」(大竹弁護士)トラブルを回避し、より安心できるのが公正証書遺言だ。「公正証書遺言は、作成までに3万〜10万円の費用や、3カ月程度の期間が必要なことも。金銭の支払いに関しては裁判所へ持参すれば執行できますし、検認の必要もありません。20年間は役場で保管されるので、改ざんや行方不明になる心配もないでしょう」(大竹弁護士)公証人という第三者が介在して、記述内容のチェックをしてもらえる安心感もある。それでも心配なときは、相続のプロに相談を。「財産の種類が複雑だったり、相続人が多いときなど、弁護士や司法書士、行政書士に相談してください」(大竹弁護士)お金の問題だけではない。しっかりした遺言状があることで、残された家族の安定した生活につながる。荻原さんはこう語る。「どんなに仲のよかったきょうだいも、相続で裁判沙汰にまでなれば、ほとんどが絶縁状態になります。遺言は、家族が平和に暮らすよう、親が子どもたちに残す人生最後の愛のメッセージです」
2018年08月04日遺言を残すことは義務ではありません。しかし、相続トラブルを防ぐ・特定の人に相続させるためには、遺言書を作成しておいたほうがよいケースがあります。 残された家族、親族が争う光景は見たくありませんよね?相続トラブルが起きやすいケースを確認しておきましょう。 この記事は、法律事務所アルシエンの武内 優宏先生に監修いただきました。 こんなケースでは遺言を残しておこう相続に備え、生前に行える対策として最も一般的なのが遺言ですが、夫婦の間に子供がいない場合は、特に遺言を残しておいたほうがよいかもしれません。 夫婦間に子供がいない場合、遺産は配偶者が全額相続すると思うかもしれません。しかし、実際は配偶者と亡くなった方の親か兄弟姉妹で分割することになります。 配偶者と亡くなった方の親が相続する場合、法定相続の割合は配偶者が3分の2、親が3分の1です。 配偶者と亡くなった方の兄弟姉妹が相続する場合、法定相続の割合は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となります。 法定相続分での分割でお互いに納得できれば問題ありませんが、不満があればトラブルになってしまうでしょう。もし相続人同士の仲が悪ければ、自分に都合がよいように分割しようとするかもしれません。 相続人同士の仲が悪くなくても、配偶者が亡くなって悲しんでいるなか、血がつながっていない配偶者の親族と遺産分割協議をしなければならないということは、かなりの精神的な負担になります。 また、法定相続分以上の金額を誰かに相続させる場合や、法定相続人ではない方に遺産を相続させたい場合にも遺言は役立ちます。 とはいえ、兄弟姉妹以外の法定相続人には、遺留分という最低限の遺産を取得できる割合が保障されていますので、この金額を侵害した遺産分割はおすすめしません。 遺言は遺言書で残しましょう遺言があれば、残された家族・親族間のトラブルを防げる可能性がありますが、家族に遺産分割の方法を伝えておくだけではいけません。遺言どおりに遺産を分割してほしい場合には、法的に有効な遺言書を作っておきましょう。遺言書には以下の3種類があります。自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言よくある一般的な遺言書のイメージは自筆証書遺言でしょう。しかし、ただ遺言内容を記載するだけでは足りず、形式に則って書く必要があります。自筆証書遺言を書く際のポイントは以下のとおりです。自筆で書く(パソコンはNG)消すことができない筆記具で書く相続財産や相続人は具体的に書く書いた日を明記する署名、押印をするせっかく遺言書を残しても、無効となってしまっては意味がないので、書き方には気を付けたいですね。もし、自身で遺言書を書くのが不安であれば、お金はかかりますが公正証書遺言を残すとよいでしょう。 公正証書遺言は、公証役場で遺言内容を公証人に伝え書いてもらうという方法で、遺言書に不備があり無効となることは通常はありません。しかし、作成の際に数万円の費用がかかってしまいます。 秘密証書遺言は、本人以外の方が内容を知らない状態で公証役場に保管します。遺言の存在自体は証明できますが、内容の保証まではされないので注意してください。 残された家族が遺産相続でもめないようにするためには、遺言を残しておきたいですね。しかし、遺言は誰かに口頭で伝えておくといった形ではなく、遺言書を作成して残さないといけないので気を付けましょう。 *記事監修弁護士:法律事務所アルシエン武内 優宏先生(H19年弁護士登録(東京弁護士会)。法律事務所アルシエン共同代表パートナー、終活カウンセラー協会監修。遺言・相続、中でも「おひとりさま」の法律問題に力を入れている。中小企業の法律問題も多く取扱っており、東京都中小企業振興公社において、法務セミナー講師を勤めている。)*取材・文:アシロ編集部【画像】イメージです*EKAKI / PIXTA(ピクスタ)遺言をのこしたほうがいいケースって?遺言書の正しい書き方はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。遺言をのこしたほうがいいケースって?遺言書の正しい書き方はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
2018年03月29日そろそろ相続の話をしなくてはならないけれど、なかなか親に切り出しにくい……と、思っている方も決して少なくありませんよね。しかし「いつかは」と思いながら話すチャンスを逃してしまい、いざその時がきて、兄弟間で揉めてしまった……という、いわゆる相続ならぬ“争族(そうぞく)”になってしまったというお話もあります。とくに、親に介護が必要になり、兄弟間で“介護をした人”と“しなかった人”がいる場合には、揉める要因にもなりやすいようです。では、そういったトラブルを未然に防ぐためには、いったいどうすればいいのでしょうか。今回は、兄弟姉妹間でのトラブルを未然に防ぐために、知っておきたい相続への備えをご紹介します。親に公正証書で遺言を残してもらうと安心親の遺言があれば、兄弟間でのトラブルを未然に防ぐ方法のひとつになります。あらかじめ、誰に何を相続するのかを親に決めてもらい、その内容を文書で残しておいてもらうと、いざその時が訪れても、親の意向に沿って進めていくこともできます。ただし、遺言は公証役場でつくる「公正証書」で残しておくほうが確実なものの、そこまでしている家族は、まだまだ少ないようです。日本公証人連合会によれば、平成28年の遺言公正証書作成件数は10万5,350件とのこと。まだまだ件数としては、そこまで多くありません。公正証書と自筆による遺言の違いは公正証書による遺言も、自筆で書いて家に置いておく遺言も、どちらも「遺言」であることには変わりませんが、その性質にはやや違いがあります。公正証書公正証書による遺言は、遺言の要件や方式を満たしているものとなるので、後日の争いが少なくなります。また、遺言者が亡くなったあとに行う家庭裁判所の検認手続きが不要なので、相続が速やかに行えるメリットがあります。ただし、公証役場に出向かなくてはならない手間がかかります。自筆遺言自筆による遺言は、まず遺言としての要件を満たしているかも重要です。すべて自筆で書かれている必要があり、日付や記名がなされている必要があります。ただし、公正証書と異なり、相続が発生したときには家庭裁判所の検認を受けてからでないと遺言の効力が発生しないので、相続手続きに時間がかかる場合もあります。作成時には、ペンと朱肉さえあれば自宅で作成できるので、最も手軽な遺言書の作成方法です。弁護士や司法書士、行政書士に相談を兄弟間の相続トラブルを未然に防ぐためには、専門家の助言を受けながら準備をするのが、最も確実な方法です。自筆の遺言を作成してもらっても、要件を満たしていなければ「無効」になることもあるので、注意が必要です。「兄弟間で話し合っておけば足りる」と思っている人もいるのですが、いざ相続が発生した際には、兄弟間の意見だけでなく、その妻や夫の意見によって、もともと決めていた話し合いの内容が反故(ほご)にされるリスクもあります。また、あらかじめ話し合っていた財産以外の財産が出てきた場合に、その財産をどちらがもらうのか、で揉めるケースもあります。いざというときに兄弟間のトラブルを防ぎたい場合には、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家にあらかじめ相談しておくほうが賢明と言えるでしょう。法律で相続の割合は定められているものの、実務になると揉めてしまう話も決して珍しくありません。なかなか相続の話を家族間で出しにくい、という方も多いのですが、帰省などで親族が集まるときに「うちはどうする?」と話しておく心がけは、後々のトラブルを防ぐためにも有効です。仲がいいうちに将来を見据えた行動に移せるかどうかも、相続ならぬ“争族”にならないためには、必要な行動と言えるでしょう。争族・・・遺産相続などをめぐって争う親族。また、その争いのこと。争続。
2017年12月30日はじめに相続と聞くと、一見お金などの財産を受け取れるのかと思いがちですが、実は負の財産を相続するケースも少なくありません。たとえば親が自営業をしていて、その会社の借金を背負う・・・・などといったケースが挙げられます。自分の知らないところで借金を作って、突如、その返済を強いられてはたまったものではありませんよね。こんな場合に、あなたならどうしますか?相続は法律の一種であるため、私たちのような一般人は詳しく知らないのではないかと思います。たとえば上記のケースでいえば、借金を放棄することもできるのですが、コレを知らずに損をした人もいるといった事例が多くあります。(相続放棄)。最近では不動産に関する相続が話題となっていますが、今回は相続の種類についてご紹介していきます。それではさっそくみていきましょう。相続の種類3つ相続の方法には主に3つあります。単純承認相続発生時に、被相続人の財産に加えてすべての権利・義務を相続人が包括的に引き継ぐことを単純承認といいます。注目すべき点は財産部分で、これはプラスの財産(資産)もマイナスの財産(借金などの負債)もすべて受け継ぐということです。限定承認プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ方式のことをいいます。この方式はマイナスの財産(借金)の金額が、プラスの財産より明らかに多い場合や、発覚していない借金が残っている場合などに有効です。つまりこの方式を採用することで、マイナスの財産が後からわかったとしても、プラスの財産の範囲内でしか相続しなくて済むのです。たとえば資産3000万円(プラスの財産)があり、後から4000万円の借金が発覚したとしても、資産3,000万円の範囲でのみ、借金を返済すればよいということになります。相続放棄プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がない方式のことをいいます。相続放棄を行う選択する状況としては、◆プラスの財産(資産)とマイナスの財産(負債)を確認したうえで、マイナスの財産(負債)の方が多い場合や◆マイナスの財産(負債)でも、特に残しておきたい財産が無い場合に相続放棄は有効的といえます。また限定承認ができなかった場合にも、利用することができます。限定承認を行うには、法定相続人全員の意思統一が必要であり、法定相続人がひとりでも限定承認に反対すれば、限定承認制度を使用することはできません。この場合に、相続放棄を行うというのもひとつの手といえます。限定承認と相続放棄の違い限定承認と相続放棄の共通ポイントと異なるポイントがあります。共通するポイントポイント:借金などのマイナスな財産を判別する「熟慮期間がある」借金などのマイナスな財産を判別する期間が設けられています。そのため、法律では「相続の開始を知った日から3か月以内に相続する旨を、被相続人の住所地の家庭裁判所(以下、家庭裁)に相続する旨を申述する」必要があります。異なるポイント【限定承認】「全員」でこれ(家庭裁への申述)を行う限定承認では、相続人全員が共同でこれを行う必要があります。誰かひとりが「イヤだ」といえば、これを行うことはできません。この点には十分注意しておきましょう。【相続放棄】「個人」でこれ(家庭裁への申述)を行う相続放棄は、相続人が個人で相続するかどうかを決めることができます。ただし、これも上記で述べたように家庭裁への申述を行わない限り、相続を放棄することはできません。意外とこれを知らない人が多いので、注意が必要です。まとめ相続の種類には3つあり、その中でも「限定承認」と「相続放棄」には共通点と相違点があることを説明しました。上記2つのどちらかを選択するには家庭裁への申述が必要であり、これを知る人は実に少ないのです(そもそも相続放棄があることなどを知る人も少ない)。相続放棄を知らず、何億といった莫大な借金を背負って人生がメチャクチャになった人もいます。一見、利益を得るであろう相続。しかしその仕組みを「知っているか知らないか」が、今後の人生を大きく左右する分かれ道になることを覚えておくと良いかもしれません。
2017年12月24日マンションなどの不動産は購入するほかにも、相続によって思いがけず手に入ることがあります。譲り受ける資産がある方は、事前にしっかりと知識を身につけておきたいものです。今回は、相続したマンションの売却を検討されている方へ、知っておきたい気をつけるべきポイントをご紹介します。相続したマンションは売却したほうがいい?売却のメリット相続によって手に入れたマンション。移り住むのも選択肢の1つですが、すでにマイホームをお持ちの方であれば、処分の方法を考えなければなりません。マンションを売却するメリットとしては、コストの削減が挙げられます。いつか住むかもしれない、いつか誰かが使ってくれるかもしれない……。そのような考えから、当分の間はそのままにしておこうと考える方もいるでしょう。しかし、マンションを含む固定資産は、所有しているだけで税金が課せられてしまい、放っておくのは得策とはいえません。また、所有しておくには固定資産税のほか、管理費もかかってしまいます。管理を怠ることでマンションの価値が下がってしまうことを考えると、住まないのにマンションを所有し続けるには大きなリスクがあるのです。相続したマンションを売却するならここに気をつけて!相続したマンションを売ると決めたら、次のことに気をつけましょう。【マンションの名義を確認】相続したマンションを売却したい場合、まずはマンションの名義人を亡くなった方から相続した方へ変更する必要があります。この名義変更を「相続登記」といいますが、相続登記を行って初めて、売却などの処分が自由にできるようになります。【売買契約書を確認】次に、マンション購入時の売買契約書を探しましょう。売買契約書などの取得費用を明確にできる資料があれば、場合によっては後に説明する売却時の税金をゼロにすることが可能です。契約書が手元にない場合でも売却はできますが、その際は取得費用を概算で計算するため、支払うべき税金が高くなる傾向にあります。【信頼できる不動産会社を見つける】不動産会社によってマンションの査定価格は大きく変動しますが、査定価格=売却価格となるわけではありませんし、最も高い査定額を提示する不動産会社がいい会社であるとも限りません。必ず複数の会社に相談し、担当者から直接説明を受けましょう。マンションの価格を無料査定してみる相続したマンションを売却する際にかかる費用は?不動産を売却する際には、次のような費用が発生します。・相続登記費用弁護士や司法書士などの専門家に依頼する際に支払う費用です。相続登記は法律知識のない一般の方にはわかりづらいことも多いので、専門家に依頼すると安心です。・不動産仲介手数料不動産仲介手数料は、売買の仲介に入ってもらう不動産会社に払う費用です。マンションの売買価格に応じて上限が決められています。・税金マンションを売却した際に売却益が出た場合は、譲渡所得に対して所得税と住民税が課せられます。譲渡所得は次の式により算出します。譲渡所得=譲渡収入-譲渡費-取得費譲渡収入とは、売却により購入者から支払ってもらった金額、つまり、マンションの売却価格を指します。譲渡収入は売却代金が未払いでも、マンションを引き渡した年に計上されることになっています。譲渡費は、相続登記費用などマンション売却時にかかった諸経費、取得費はマンションを購入した際に支払った取得代金とそれにともなう諸費用です。取得費は、もともとのマンション所有者であった故人がマンションを購入したときの費用を受け継ぐものであり、相続で取得したからといってゼロにはなりません。また、「相続税の取得費加算の特例」があるので、相続税として支払った金額の一部を費用に計上することができます。ただし、この特例は、「故人が死亡したときから3年10ヶ月以内に売却したとき」のみ適用されるという条件に注意しましょう。あるいは、相続を受けたマンションにもともと住んでいたのであればマイホーム特例が受けられるので、特別控除が可能です。税率はマンションの所有年数に応じて異なり、所有期間も取得費同様、故人が購入したときから算出します。所有期間が5年を超えると税率が安くなりますが、一方で土地の悪意ある転売を防ぐため、所有期間が5年以内の場合は税率が高くなります。なお、所有期間が10年を超えると、さらに税率が安くなる特例が受けられます。・そのほかの費用そのほか、契約書作成時の印紙税や、売却にともなってリフォームなどが必要な場合は、それらの費用もかかります。まとめ相続で所有した物件の売却は手続きが煩雑で、税金についてもよく考えなければなりません。期限が定められているものもあり、手続きを放っておくと思わぬ損を被る可能性もあります。この機会にぜひ一度、相続で得たマンションの処分方法についてしっかりと調べてみましょう。まずはマンションの価格を無料査定してみる
2017年11月12日*画像はイメージです:近年、「終活」という言葉がクローズアップされてきていますが、それに従って、自分の財産の整理や相続について計画をする人が増えているように感じます。そのような人が、自分の死後の財産をどのように残すかを決めるために、どのような方法があるかを考えた場合、真っ先に思い浮かぶのは、遺言書ではないでしょうか。しかしながら、遺言は場合によっては記載通りに遺産が継承されないこともあるのです。どういったことなのか解説していきたいと思います。 ■遺言は無視される?日本における相続では、民法で法定相続分という割合が決まっており、相続人の間で、この法定相続分に従って、亡くなった人(法律用語で「被相続人」といいます)の遺産を分割するのが原則です。ただし、遺産分割は、被相続人の財産の死後における処遇を決めるものですので、被相続人の意思を反映させるべきとも考えられています。その意思表示の方法が「遺言」です。法律上、遺言は、相手方の受領を必要としない相手方の無い単独行為であるとされています。要するに、遺言をした人が死亡すると、原則として、受け取る相続人の意思にかかわらず、遺言に書かれた内容どおりに財産が承継されるということです。ただし、 判例上、相続人の間で、被相続人が残した遺言の内容と異なった遺産分割協議を行うことは禁止されないとされています。「遺言は無視されちゃうの?何で?」と思うかもしれませんが、財産の承継を指定された相続人において、遺産を受け取りたくないという場合もあります。例えば、親が実家の土地建物を長男に継いでほしいと思い、これを長男に相続させるという遺言を残していたけれども、長男は実家を出ており、自分の家も所有してるため、実家に戻る予定はないというような場合です。このような場合に、長男が引き継がなければならないとすると、長男は「自分は住まないし、維持費用もかかるので、実家を売却して手放したい」などと考えることも十分にありえます。もし、他の兄弟が承継して実家を残してくれるというのであれば、遺言にこだわらずに、他の兄弟に承継してもらったほうが、実家は残るので、そのほうがかえって被相続人の意思にも適うという見方もできます。このような考えもあり、相続人が遺言と異なる遺産分割の合意をすることは認められていて、その場合は、結果として、被相続人が思い描いたような財産承継がなされないということになります。遺言を残す側からしたら、遺言が守られない場合があるということに納得がいかないかもしれません。しかし、財産を残したい被相続人の側だけでなく、もらう側の相続人にも立場や事情があります。 ■相続対策よりも…遺言を残すことを考えている人にとっては、自分の遺志をしっかり残すということが、なによりも大事かもしれません。しかし、その前に、遺志を受け取る側の迷惑になっていないかをよく考えたり、いざ自分が亡くなってしまった後に、受け取る側の相続人に迷惑だと思われないように、生きているうちに家族・親族としっかりコミュニケーションをとっておくということを忘れないようにしてほしいです。当たり前のことのように思われるかもしれませんが、コミュニケーション不足による親族間のトラブルは少なくありませんし、お金の問題ですから解決も難しいです。問題が大きくなってしまうと疎遠・絶縁となってしまったというケースも珍しくはありません。普段からのコミュニケーションを大切にしているという前提があってこそ、われわれ弁護士の専門的な助言が、遺言を残したい方の想いを実現するためにより役立ってくるのだと思っています。 *著者:千屋全由(丸の内ソレイユ法律事務所の弁護士。企業関係の相談・紛争処理から貸金返還や交通事故等の損害賠償請求といった個人の法的トラブルまで、様々な案件に携わっている)【画像】イメージです*EKAKI / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月25日「相続に関する民法規定の見直しが検討されています。古い民法の規定を、今の時代に合った内容に変えようとする動きです。来年の国会で議論される予定ですから、注目しておきましょう。いっぽう、相続税はすでに’15年1月から、引き上げられています。課税対象者は’14年の4.4%から、’15年には8%に増加しました(国税庁調査)」 そう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。とはいえ、約9割の人が相続税とは無縁。「たいした財産がないから相続の心配なんて必要ない」と思う人が多いのでは。 「ですが実は、相続でもめるのは遺産が少ない家庭が多いのです。裁判所に持ち込まれ、調停成立した相続事案のうち、32%が遺産1,000万円以下です。遺産5,000万円以下まで含めると、全体の約8割を占めます(’15年度・裁判所調査)」 親戚が集まるお盆は、相続を話し合うには絶好のチャンスだという。そこで、“争族”に陥らないように、少しずつ話し合っておくべきポイントを、荻原さんが解説してくれた。 【1】資産をまとめる 「元気な親に、面と向かって相続の話を持ち出しづらい方は、親の資産をまとめて保管することから始めましょう。親は、複数の銀行預金通帳や保険証券、自宅の権利書などを持っています。また、貴金属や子どもに内緒の金融資産などもあるかもしれません。親が亡くなった後、それらを探し出すだけでもひと苦労。『盗難にあうと危険だから』と説得して、金融機関の貸金庫の利用を勧めましょう。資産の中身を聞かなくても、一括して保管していれば、もしものときに役立ちます」 【2】親の意向を聞いておく 「相続について世間話ができそうなら、それとなく意向を聞いておくことが大切です。たとえば、持ち家はついのすみかとして住み続けたいのか。あるいは、自宅を売って老人施設への入居を考えているのかなど。元気なうちに聞けば、意向に沿った形で、早めに対策をたてられます」 【3】先祖のお墓問題 「先祖のお墓についても、ぜひ相談してください。お墓が遠方の故郷にある場合などは、親の代で、お墓の引越し問題を解決してもらうととても助かります。子ども世代は、新しいお墓について情報を集めるなど、サポートしましょう」 【4】「財産は土地だけ。相続税を払う現金がない」場合 「広い土地を所有している、あるいは都心にある持ち家の土地が高騰している場合などは、相続税を納付するケースもあるでしょう。相続税は原則、死後10カ月以内に現金で納付します。現金がすぐに用意できない方も多いので、課税対象者は早めからの準備が必要です」 実の親子といえども、なかなか言い出しづらい相続問題。親が若くて元気なうちから、長期計画でゆっくり進めていこう。
2017年08月18日*画像はイメージです:相続はお金や土地といった大きな資産が動くので、トラブルになりやすいと言われています。元々は仲の良かった兄弟や親族も、相続のトラブルが原因で不仲になるケースは数えきれないほど存在しています。さて、今回は、母親が遺産の全てを長男に相続させるという内容の遺言を作成して死亡したが、遺言作成時、母親が認知症にかかっていた場合について解説してみたいと思います。遺産を相続できなかった二男としては、当該遺言は無効だと主張して、法定相続分どおりに遺産を相続することはできるのでしょうか。 ■遺言書作成の際には「遺言能力」が必要法律上有効に遺言を書くためには、遺言者に「遺言能力」が備わっている必要があります(民法961条~963条)。遺言能力とは、自分の書いた遺言によってどのような効果が発生するのかを理解し、判断することができる能力のことです。 ■認知症の程度や遺言の内容によって有効性は異なる軽い認知症に過ぎない場合には、遺言の内容を理解し、自分が書いた遺言によってどのような効果が発生するのかを理解したり、判断したりすることが可能な場合もあるでしょう。そのため、認知症だからといってストレートに遺言能力が否定されるわけではなく、遺言能力が認められるか否かは、認知症の程度によってケースバイケースということになります。さらに、一言に遺言といっても、今回のように「遺産を全て相続させる」という簡単なものから、相続人が複数いて財産も多数ある複雑なものまで千差万別です。簡単な内容であれば、認知症の程度が多少重くても、遺言の内容について理解することが可能な場合があるので、遺言能力が認められる場合があります。逆に、複雑な内容であれば、認知症の程度が軽くても、遺言の内容を全て理解することが困難な場合があるので、遺言能力が認められない場合もあります。 以上のとおり、認知症の方が書いた遺言の有効性は、認知症の程度と遺言内容(内容の複雑さ)によってケースバイケースで決まるということになります。 *著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)【画像】イメージです*Chinnapong / Shutterstock
2017年03月14日歌手プリンスさんの遺産を巡り、新たな2人の相続人候補が現れたようだ。相続人を名乗る1人目のノーマン・イエイツ・カーテンズさんは今年4月に亡くなったプリンスさんの養子であると話しており、それを証明した遺書があること記した書類を遺言検認裁判所に提出した。ノーマンさんはプリンスさんが自分のために700万ドル(約7億5,400万円)の遺産を残していると主張しているが、現在その遺書がどこにあるか職員たちに話すことはできないとしている。また、もう1人のレジーナ・ソレンソンさんは、プリンスさんの異母兄弟であると主張しているとTMZが報じている。プリンスさんは遺書を残していなかったことから妹タイカ・ネルソンが相続財産管理人になっており、プリンスさんの残した遺産は推定3億ドル(約320億円)といわれている。タイカは自身の半分血のつながった兄弟たちアルフレッドとオマーと今年4月、ミネソタ州でプリンスさんの遺産についての話し合いを行ったが、タイカが葬儀にアルフレッドを呼ばないという決断を下したことにアルフレッドが腹を立て、2時間の話し合いはけんかで終了してしまったようだ。タイカの兄弟たちは、タイカが遺産を多くを受け取る権利があると思っていると感じたといわれている。ミネソタ州の法律では、6人のプリンスさんの兄弟たちは平等に遺産を受け取る権利が与えられるという。プリンスさんの家族たちは、現在もペイズリー・パークにあるプリンスさんの自宅に保管されていた何百万ドルもの価値があると言われるプリンスさんの未公開の作品を含めた全ての遺産を巡り、争いを繰り広げているところだ。(C)BANG Media International
2016年06月08日2015年から相続税が増税されました。基礎控除額の切り下げにより、相続税を納めなくてはならない人が増え、最高税率が50%から55%に引き上げられたのです。土地や建物などの資産を保有する富裕層はもとより、これまで「相続税なんて他人事」ですませていた一般市民も、今後は税金対策で頭を悩ませることになります。■相続税の可能性は誰にでもありうること相続税は2014年までは「5,000万円+1,000万円×相続人の数」を下回っていれば、相続税はかからないようになっていました。たとえば、相続人が被相続人(亡くなった人)の奥さんと子ども一人だけなら、「5,000万円+1,000万円×2人=7,000万円」以下なら相続税はかからなかったわけです。7,000万円というと、あとちょっとで「億万長者」のラインを超えるので、かなりの資産額になります。つまり、これまでは対象者が少なかったのです。しかし、2015年からこれが一転し、「3,000万円+600万円×相続人の数」を下回っていないと相続税は納めなればならないことになったのです。先ほどの例で考えてみると、「3,000万円+600万円×2人=4,200万円」。土地と住宅で合わせて3,000万円、そして投資信託や株、預貯金で1,200万円を故人が持っているケースは、団塊世代が相続の対象となる今後は少なくないでしょう。相続税をとられすぎないようにするには、なるべく相続する財産のトータルの金額が「3,000万円+600万円×相続人」となるようにしておくことがポイント。そのためには贈与税の制度を利用し、税金がかからないようにして生前に贈与をしておくべきでしょう。おもな手法は次のとおり。■相続税をとられすぎないようにする方法(1)毎年110万円以内の贈与を子や孫にしておく~暦年贈与課税制度の活用暦年贈与課税制度では、1年間あたりの贈与の金額が110万円以内なら税金がかからないことになっています。そのため、預貯金や有価証券、宝石類などについては、この枠内で毎年少しずつ贈与をしていくとよいでしょう。ただし、注意点が2つあります。一つ目は、きちんと毎年「贈与契約書」を作成し、贈与の事実をきちんとつくっておくこと。贈与は基本的に、贈与する側とされる側の両方が「あげます」「もらいます」とお互いに確認し合っていることが条件となります。そして日本では口約束はほとんど認められず、文書の証拠が圧倒的に効果的。そのため、お金や贈与財産そのものも、子や孫に渡すだけでなく、毎年きちんと正式な贈与契約書を作成しておくことが必要になるのです。なお、「贈与の申告書は契約書の代わりになる」という風説を耳にすることがありますが、あくまでも申告書は税務上のものでしかなく、民法上の契約書の代わりにはならないので注意しましょう。また、「名義預金はバレない」という都市伝説を聞くこともありますが、これはウソ。相続時、不自然なお金の流れがあればすぐに目をつけられます。さらに、2018年からはじまるマイナンバーと銀行口座等の紐づけが本格化すれば、名義預金は一網打尽。バレた場合には、贈与税だけでなく、さらに無申告加算税など重いペナルティが課されることになります。生前贈与の効果を法的に発するためにも、形式的にも実質的にも、きちんと贈与の証拠を残しておきましょう。二つ目は、相続開始時、つまり、贈与者が死亡した場合には、そのときからさかのぼって3年以内に贈与された財産は、税務上、相続財産としてカウントされるということ。民法上は贈与であっても、相続税の計算上の対象となってしまうということです。そのため、贈与は親世代が高齢になってからではなく、なるべく若いうちにはじめておくことが賢明です。(2)トータル2,500万円までは贈与税ゼロ!~相続時精算課税制度の活用相続時精算課税制度は、親や祖父母がその子や孫に対し、生前中に贈与しても総額2,500万円までは非課税となる生前贈与の制度。2,500万円という金額は、暦年贈与課税制度を20回繰り返してもまだ余るくらい大きな額。土地や建物などについては、この制度を利用して贈与するのも対策のひとつとなります。ただし、この制度の活用にも注意点があります。ひとつは、いったんこの制度を選択したら、同じ贈与者・受贈者の間ではもう暦年課税制度は使えなくなってしまうこと。もうひとつは、贈与額が2,500万円を超えたら、一律20%の税率がかかってしまうことです。この二つの制度を上手に活用して、相続税がかからないようにしてみましょう。(3)教育資金や結婚・子育て資金の信託贈与をしておこう~贈与信託の活用相続対策として注目したいのは、教育資金や結婚・子育て資金の非課税贈与制度の利用です。「祖父母や両親から子や孫へ贈与する」という点では通常の贈与と同じなのですが、この制度については直接相手に贈与するのではなく、信託銀行などの金融機関の口座を通すのが特徴。具体的には次のようになっています。<教育資金の一括贈与制度(非課税)>・1,500万円まで非課税で贈与することが可能・1,500万円のうち、500万円までの枠については、学校以外の塾やおけいこごと、資格受験のための通学費用などでも利用可能・受贈者が30歳未満であることが条件<結婚・子育て資金の一括贈与制度(非課税)>・1,000万円までは非課税で贈与することが可能・1,000万円のうち、300万円が結婚資金として利用可能な上限額・受贈者側が20歳以上50歳未満であることが条件現役世代で一番お金がかかり、かつ収入のない時期に親や祖父母から贈与を受けられれば、相続税の節約だけでなく、よい形で子どもの自立や将来を応援することになります。これはぜひとも活用すべき。ただし、いくつか注意点もあります。・受贈者側が条件となる年齢の上限に達してしまった場合や、死亡した場合に口座に未利用の残高があったときは、その残高については通常の贈与税の対象となること・贈与者が死亡した場合に、その時点で口座残高があるときは、その残高は相続税の対象となること・この制度の期限は現時点で平成31年3月31日までとなっていることそのため、それぞれの家庭の事情を鑑みて、ムダなく利用できるかどうかをあわせて考えてながら計画をたてるとよいでしょう。*相続は、財産額が少なければ少ないほど争いになりやすいもの。財産が少ないがゆえに「ウチは関係ない」と思いこんでいるため、生前に対策を立てていないからです。同時に、「相続=死について語るなんて不謹慎」という体裁のブロックが強いため、いい出したくても家族の空気を乱したくなくていい出せないという事情もあります。一方、財産のある富裕層は、相続争いの可能性を理解しているため、あえて空気を乱すリスクを冒してでも、きちんと家族内で話合い、こういった制度を上手に活用しながら生前に対策をたてているのです。残された家族が末永く協力し合い、かつ、しこりを残さないためには、あえて「人間はいずれ必ず死ぬ」という事実と向き合い、冷静にきちんと話し合い、生前に対策をたてておいたほうがよいでしょう。(文/税理士・鈴木まゆ子)
2016年05月31日【女性からのご相談】実家の相続について相談です。まだ親は元気で、両親とも実家に暮らしています。子どもは二人の妹と私の三姉妹です。私と妹一人は結婚していて、もう一人の妹は独身ですが、3人とも家は出ています。母は、独身の妹に実家をあげるつもりだと言っています。実家は株もやりませんし、貯金は年金二人暮らしで使い切りそうなため、そんなに残らないと思います。実家は郊外の住宅街にある一軒家です。こういった場合、相続税がかかるのでしょうか。●A. 小規模宅地の減額特例で課税価格を80%引き下げることができます。ご相談ありがとうございます。ファイナンシャルプランナーの常磐麗奈です。ご両親のご自宅を相続する場合の相続税がどうなるかというご相談ですね。ご両親のうちどちらかがお亡くなりになった場合は残された方がお住まいになるので、まだ問題ないのですが、その後、子どもが相続する際に問題が出てきます。●相続の基本ご両親のうちどちらかがお亡くなりになった場合の相続税は、配偶者の税額軽減の適用と、小規模宅地の減額特例により、相続税はほぼかからない仕組みになっています。残された方も亡くなった場合は、親族が家を取得します。この場合、小規模宅地の減額特例 による相続税評価額の減額が使えると、相続税の課税価格が家の評価額から80%引いた金額になるのです。●小規模宅地の減額特例とは小規模宅地の減額特例とは、相続または遺贈により取得した、被相続人(亡くなった方)または被相続人と生計を一にする親族の居住用宅地のうち、330m2までの部分は、通常評価額から80%減額できます。この特例を受けるには、以下の要件のどれかを満たす必要があります。(1)被相続人と同居の配偶者であること(2)被相続人と同居の親族(単身赴任も可)で相続税の申告期限までその土地を保有かつ居住している場合(3)被相続人に配偶者や同居している親族がおらず、相続開始前3年以内に賃貸住宅に住んでいる場合で、相続税の申告期限まで相続した宅地を保有している場合相談者様の妹さんの場合、賃貸住宅に住んでいれば(3)の要件に当てはまりますので、小規模宅地の減額特例が使えます(持ち家に住まわれている場合は該当なしとなります)。よって、妹さんが相続した場合、相続税の課税価格を80%引き下げることができます 。●まとめただし、この後子ども3人で自宅をどう分けるかが、もめるポイントとなってきます。小規模宅地の減額特例を使うと、即座に自宅を売却して現金化して分けることができません (特例を使うには申告期限まで保有することが要件)。よって、ご両親の財産に余裕があれば、残り二人を受取人にした生命保険に加入したり、遺言代用信託等を利用して、残り二人が受け取る金額を指定しておくなど、もめないようにする工夫をしておいてもらうとよいでしょう。また、相続したものの固定資産税や維持費がかかるので負担だということもありますので、あらかじめ家の費用はご両親に聞いておくとよいでしょう。【参考リンク】・小規模宅地等の特例 | 国税庁()●ライター/常磐麗奈(ファイナンシャルプランナー)
2016年03月22日オールパートナーズが運営する相続ポータルサイト「オール相続」は21日、「もし5,000万円の財産を相続したらどうする?」と題したアンケート調査の結果を発表した。○現金の相続、使い方は「貯金」が半数以上同調査では、突然3,000万円の価値のある不動産と2,000万円の現金を家族や第三者から相続した場合の使い方について、アンケートを実施。2,000万円の現金を相続した場合については、「貯金する」が半数以上の59%で最も多く、次いで「投資する」が17%、「ローン返済」が13%、「わからない」が7%、「使う」が4%となった。一方、3,000万円の不動産を相続した場合については、「賃貸経営にする」が48%でトップ。以下、「売却する」が33%、「わからない」が11%、「自分が住む」が8%と続いた。不動産と預金、両方合わせての場合の最も多い回答は「不動産は賃貸経営、現金は貯金」、2位は「不動産は売却、現金は貯金」、3位は「不動産は賃貸経営、現金は投資」となった。同社は「賃貸経営で毎月定期的に収入を得つつ、貯金もある程度保有しておく」という使い方が、今回の回答者にとって「一番安定した理想の状態」のようだとしている。調査期間は2016年1月13~20日、調査方法はインターネット、有効回答は30~70代の個人100人。
2016年01月21日