自身の両親と、父と長く男女の関係にあった作家の瀬戸内寂聴さんがモデル。井上荒野さんの『あちらにいる鬼』は、愛というものの底知れなさを感じずにはいられない長編だ。一見スキャンダラスな三角関係。そこには不思議な絆が見え隠れ。「この小説を書く私のモチベーションの一つは、寂聴さんの父への思いにグッときたこと。もう一つは母は本当に幸せだったのかなという謎ですよね。想像するしかないけれど、母はどこかの時点で『この男をずっと捨てずにいよう』と決めたんだと思います。我慢していたのではなく、自分が決めた意志に従う。そういう強さがある人でした」最初は娘である自分の視点で書こうとしたが、それでは以前書いたエッセイ『ひどい感じ父・井上光晴』の続編にしかならない気がした。「ふと、妻と愛人、ふたりの視点でやってみたらどうかと思いついたんです。そんなことができるだろうかと自分でもひるんだほどですが、それくらいの挑戦がなければ書く意味がない。腹をくくりました」母がモデルである白木笙子と、寂聴さんがモデルである長内みはる。ふたりが交互に語るスタイルは、一種の心理小説のようでスリリングだ。「笙子のパートは、母からはもう話を聞けないので、自分の育った家の情景や母と一緒にいたときの記憶を思い出し、どういう気持ちだったかを想像しながら書きました。ふだんに近い書き方ですよね。一方、みはるのパートは、より想像するのが難しかったです。寂聴さんからお話はたくさんうかがったんですが、私にも語れなかったというか、ご本人もいまでもわからないような部分があるのではないかと思ったからです。父にはたくさん女性がいましたけれど、寂聴さんとの関係がいちばん長かったし深かった。それはやはり彼女が小説を書くからで、出家しなければ断ち切れない関係というのは本当だったろうと思います」作中では、笙子が夫・篤郎のいくつかの作品を代筆していたことも明かされる。書く女ふたりにはさまれた篤郎の心中はどんなものだったろうと、そんなことにも想像が膨らむ。「物語は、母の気持ちで締めようとは決めていました。『二度とこんな男の妻にはなりたくない』と思うかなあとかいろいろ迷ったんですが、やっぱりこれだろうなと」余韻の残る、圧巻の一文だ。いのうえ・あれの作家。2008年、『切羽へ』で直木賞受賞。’18年、織田作之助賞受賞作『その話は今日はやめておきましょう』など、著書、受賞歴多数。今年でデビュー30周年となる。『あちらにいる鬼』徳島での講演会が縁で、作家の白木篤郎と作家の長内みはるは深い仲に。それを知る篤郎の妻・笙子。複雑な愛はどこへ向かうのか。朝日新聞出版1600円※『anan』2019年4月10日号より。写真・水野昭子(井上さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年04月07日大好きなロリータファッションへの憧れを秘密にしている女子大生のマミ。同じアルバイト先に、周囲の目など気にせず毎日好きなおしゃれに身を包んでいる小澤が現れて…。“なりたい自分になれる”勇気が湧いてくるマンガ好きな服があるけれど、周囲から浮くのは怖い。そんな悩みを描いて共感を呼んでいる『着たい服がある』。その著者が、常喜寝太郎さん。「高校生くらいから服が好きでした。自分は着たい服を着てるだけなのに、周囲に受け入れてもらえなかったり、好きな女の子に振り向いてもらえなかったり。だから、マミの悲しさは、自分もよくわかるんです」2巻に入り、マミが育った環境などバックボーンが見えてくる。「マミがずっと会っていなかった父親に会う回があります。実は僕にも同じ経験があって。そのときの実感を、マミの気持ちに重ねました」そう、親子の葛藤あり、生き方をめぐる煩悶あり。ただのおしゃれピープルのためのマンガではない。「最初は『好きな服を着たい人の背中を押します』的な内容だったのですが、連載するに当たって、読者の心にもっと突き刺さるテーマを入れたいと担当さんとも徹底的に話し合いました。それで、マミが『自分らしさとは何か』を考え始める展開にしました。簡単には答えが出ない悩みだけれど、自分も友達のちょっとしたひとことで救われたりしたことがあるので、そういうメッセージを伝えていきたいです」ファッションにこだわりがある作品だけに、マミや小澤が着ている服の描き込みが超絶に繊細!「マミが着ているロリータ服は、実際に『BABY,THE STARS SHINE BRIGHT』の商品。家でトルソーに着せて、ディテールまでじっくり観察しながら描いています。時間はかかりますが、むしろ作画のモチベーションが上がるポイントです。一方、小澤の服は、自分でデザインしながら描いているフルオリジナルです」そのくらい服を愛している常喜さん。ご本人もとてもおしゃれだ。「ただ友人からは、『見た目は小澤っぽいけど、中身はマミだよね』と言われていますね(笑)」つねき・ねたろう滋賀県出身。2013年、ちばてつや賞第68回ヤング部門で準優秀新人賞を受賞し、デビュー。「日刊月チャン」で「不良がネコに助けられてく話」も同時連載中。『着たい服がある』2ロリータ服を着る勇気が持てたマミだが、母に理解されず再び意気消沈。だが、ゴスロリを着たカヤとの出会いがマミを変えていく。「Dモーニング」で連載中。講談社610円※『anan』2019年4月3日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年03月30日阿川せんりさんの『厭世マニュアル』は、殻に閉じこもっていたヒロインが周囲の人と関わることで“ありのままの自分”を肯定できるようになる物語だ。安易な成長を描かない作風でデビュー時から注目を集めたが、最新刊『ウチらは悪くないのです。』もまた、何者かにならなきゃいけない、恋愛くらいしなくちゃいけない、とがんじがらめになっている人にエールを贈るような一冊だ。熱血じゃない青春だって楽しいんだ。元気になれるアンチ青春ストーリー。「小説やマンガでは、自分には何もないと悩む主人公が夢中になれる何かに出合って成長する物語が王道。でも、私の中には『もし何にも出合えなかったらどうするんだい?』という素朴な疑問があります」主人公は、これといった趣味や特技がない〈あさくら〉。美人なのにおしゃれや恋愛には興味なし。彼女の楽しみといえば、昔からの友人である〈うえぴ〉と、スタバでおしゃべりすることくらい。大学2年の選択必修科目のクラスで〈あさくら〉に話しかけてきた〈さわみー〉のお節介で、一度会っただけの〈にさか君〉とつきあうことになるのだが…。一見そつがなく思える〈さわみー〉や〈にさか君〉も、実は不器用な人。〈あさくら〉や〈うえぴ〉との意外な接点も見つかり、彼女たちのこじれた青春が笑いと涙を誘う。「大人になってから『学生時代に、もっと青春しておけばよかった』と言う人がいるけれど、そんなふうに記憶を上書きする必要はあるのかなと。友人と一緒だった他愛ない時間とかが『それなりに楽しかった』なら思い出上等。そんな青春があってもいいじゃないかと思うんです」ちなみに、小説家志望で文芸サークル所属、コツコツ作品を書き続けている〈うえぴ〉は、阿川さんの青春と大いに重なる存在だとか。「〈コシミズ〉のように批判してくる人もいたけれど、私の作品を『好きだ』と言ってくれる人もいました。あのころ、その言葉をもっと素直に信じればよかったなと。なので、〈うえぴ〉には、信じてがんばってもらおうと思いました」阿川さんの描く人物はみな、少しやっかいな人たちに見えるが、「個人的には、すごく変わった人たちだとは思っていません。このぐらいのめんどうくささを抱えているのが普通だし、よくいる人たちの物語を素直に書いたらこうなった、という感じですね(笑)」あがわ・せんり1988年、北海道生まれ。作家。’15年、野性時代フロンティア文学賞を受賞した『厭世マニュアル』でデビュー。『森見登美彦リクエスト! 美女と竹林のアンソロジー』(光文社)にも寄稿。『ウチらは悪くないのです。』小説家志望の親友〈うえぴ〉とスタバで話すのが楽しみな〈あさくら〉。ある日、〈さわみー〉からボランティアサークルに勧誘され…。新潮社1450円※『anan』2019年3月27日号より。写真・土佐麻理子(阿川さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年03月26日うどんやそば、おにぎり、お好み焼きなどの具材として使う天かす。調理方法がワンパターンになっていませんか? 今回は、そんな天かすを使ったレシピをご紹介します。天かすと梅干しで作る炊き込みご飯。材料を混ぜこんで炊くだけの、とっても簡単な調理工程で風味豊かなご飯ができあがり。天かすを入れることで、食感や味に深みを増してくれます。隠し味の昆布茶が風味のアクセントに。包丁を使わず、用意した具材を入れたらあとは炊飯器におまかせという簡単レシピなのに、見栄えもバッチリ! 忙しいママにとって嬉しいレシピです。ぜひレシピを参考にして、天かすを使った料理のレパートリーを増やしてみてくださいね!■天かす入り梅ご飯調理時間 1時間 1人分 282 Kcalレシピ制作:E・レシピ<材料 4人分>お米 2合 酒 大さじ2 昆布茶 小さじ1梅干し 2個天かす 大さじ6白ゴマ 小さじ1.5<下準備>・お米は水洗いし、ザルに上げる。<作り方>1、炊飯器に洗ったお米、酒、昆布茶、分量外の水を普通に炊く水量線まで加える。梅干しをのせて天かすを加え、スイッチを入れて普通に炊く。2、炊き上がったら10分蒸らし、梅干しの種を取る。全体にサックリと混ぜ合わせる。器によそい、白ゴマを振る。ヒント! しゃもじで炊飯器の周りを1周し、すき間をあけ、しゃもじを底に入れて持ち上げるようにご飯をほぐせば余分な水分が飛び、ご飯がべたつきません。 コツ・ポイント ・お米の洗い方。ボウルにお米を計量し、たっぷりの水を入れ、混ぜずにすぐに水を流します。ひたひたまで水を入れて両手でお米をすくい取り、すり合わせるように軽くお米とお米を何回かこすります。にごった水を流し、蛇口から水を勢いよく加え、白濁しなくなるまでこれを何度か繰り返してザルに上げます。最初に入れる水が最もお米が吸収しやすいので、より良質な水を使う事をおすすめします。 天かすはリーズナブルに手に入るのも魅力的。家計に優しい食材を使って、おいしいご飯が作れるなんて一石二鳥ですね!※炊飯器の機種によっては米の炊飯以外の使用を禁じているものもあります。詳しくは、取扱説明書をチェックしてください。
2019年03月13日『テルマエ・ロマエ』の大ヒットで、一躍人気マンガ家となったヤマザキマリさん。名が知られるにつれ、ヤマザキさんの破天荒な半生も話題になった。美術の勉強のため、17歳にして単身イタリアに渡ったことや、イタリア人の詩人と恋に落ち、シングルマザーとなったこと…。まるで“朝ドラ”規格外で心優しき母リョウコの生き方とは。ヤマザキさんのボーダーレスな生き方は、「この母にしてこの娘あり」を地で行く世界。そんなヤマザキさんの目を通して綴られた、母リョウコさんの一代記的な読み物『ヴィオラ母さん』が滅法面白い。「インタビューや講演などで自分の話が出てくると、『なぜそんな若さで、単身イタリアに行ったのですか』と尋ねられるんですね。きっかけは、母に行ってこいと提案され、14歳のときにヨーロッパを1か月くらい一人旅したことだと説明すると、今度は必ず『ヤマザキさんのお母さんてどういう人なんですか』と驚かれるんです。私の自伝的なマンガやエッセイなどにも登場するリョウコという女性のことを、一度まとめてみてもいいのかなと思いました」実際、リョウコさんは仰天のエピソードに事欠かない。やっと戦争の痛手から立ち上がりかけた昭和20~30年代に、女性が音楽の道で食べていこうというのも無謀なら、知り合いがひとりもいない札幌へ乗り込んで、交響楽団の演奏家になろうというのも無謀。子育てしながら、北海道各地へバンを運転して、子どもにバイオリンを教えに行くというのも向こう見ずすぎる。大自然が好きで、泳げないのに川に入っていって流され、ペット禁止の団地住まいなのに、拾ってきた犬を堂々と許可を求めて飼い始める。「母は、祖父母の影響もあって、小さな世界のルールなんて何ほどのものかという人。友達のお母さんとあまりに違うので、友達の家で“お母さんらしいお母さん”を観察するのが楽しみでした。リョウコさんには、母親とは、子育てとは、『こうあらねば』がなかった…というか、忙しくて考える暇もなかったのかもしれません(笑)」本書では少し触れられているだけだが、リョウコさんは、サウジアラビアに海外赴任していた再婚相手の母親と同居し、その夫と離婚後も義母と一緒に暮らす道を選ぶ。並外れて情に厚いのだ。「バイオリンを習いたいという子がいれば、バンを飛ばし、ほぼ無償で北海道中に教えに行っていました。その代わりに、季節の野菜だの海産物だのがしょっちゅう送られてくるので、『物々交換だ』なんて悦に入ってる。母はお金が必要だという概念が薄かったんですよね。生きている、それだけでうれしくてしかたがないという人なんです」そんな〈規格外〉の母の背中を見て育ったヤマザキさん。「私はたぶん母よりひどいですよ。『ここから先は行くな』と学校で注意をされたら、必ず行く。規則やルールがあるのは知っていても、その先にもっと面白いものがあるかもと思うと、自分を抑えられない」自らの生き方はもちろん、成人した息子さんの子育てについても、どこか母譲りな部分があったようだ。「海外へ引っ越した直後、息子は言葉もわからないと悩んでいたけれど、私は一緒に深刻にはならない。『それが楽しいんだって』と笑い飛ばしていました。生きていればみな絶対につらいことに直面するけれど、どんなときも笑っている母親は慰めになると思う。7歳にして花輪和一さんのマンガ『刑務所の中』を愛読していた息子ですから、好きなように生きてほしい、それだけですね」ヤマザキマリ1984年に渡伊。フィレンツェの美術学校で油絵と美術史を学ぶ。’97年にマンガ家デビュー、2010年に『テルマエ・ロマエ』でマンガ大賞など多数の賞に輝く。現在は日伊を行き来。『ヴィオラ母さん』御年86歳というリョウコさんの生い立ちや、夫と死別したのち、女手一つで2人の娘を育てていたころを、エッセイとコミックで振り返る。文藝春秋1300円※『anan』2019年3月13日号より。写真・土佐麻理子(ヤマザキさん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年03月08日原田ひ香さんの『DRY』。タイトルのこの一語に、物語のいくつもの鍵が込められている。この生き方しか知らないという女の言葉が重い。渾身の犯罪小説。執筆のきっかけは、ネットニュースで見た実在の事件だという。「加害者の娘は50代後半とかで、被害者の母親は70代。頭に血が上って衝動的に老親を刺してしまったというのは10代20代の子が起こすような未熟さを感じました。一方で、50にもなって親から些細なことでガミガミ言われたらきついだろうなぁと同情する部分もあったんです。それで妙に印象に残っていました」プロットをつめていく中で、加害者には娘がいて3世代の関係性を書くことや、家が袋小路のような閉鎖的な環境にあることなど、ディテールが決まっていった。不倫が原因で離婚した北沢藍は、事件を起こして収監されている母の孝子から、保釈を頼まれ、しぶしぶ力を貸してやる。金銭的な事情もあり、3世代同居を始めた藍だが、男にだらしない母やお金にうるさい祖母との生活は、想像以上に鬱憤がたまった。淀んだ空気が藍を蝕む。「そんな境遇もあって、藍は幼なじみの隣人・美代子と親しくなります。2代続きで介護をさせられていた美代子は、就職も結婚もできないまま40代になってしまった。美代子のようなヤングケアラーという存在に、私自身も関心がありました」やがて、藍は、美代子の家のおぞましい秘密を知ってしまう。「藍は美代子を同じ介護の問題を抱える友達と思えばこそ、踏み込みすぎないでいようという遠慮もします。そういう中で、藍が美代子の秘密に巻き込まれていくようにするにはどうしたらいいのか、自然な流れを作り出すのが難しかったですね」女性の貧困や介護など社会問題がモチーフになっているが、原田さんがつぶさに描くのは女性の心理だ。「本作は、先行の『ランチ酒』や『三千円の使いかた』のような作品と一見かけ離れているようですが、お金や家族の話という意味では地続きだと思っているんですね。藍や美代子が互いに関わる中で変わっていく、ギリギリを生きる女性たちのリアルにどこまで迫れるだろうと、『もっともっと』と編集さんに煽られるままに自分を鼓舞して(笑)ここまで書けた。できていなかったことができたような充足感はあります」『DRY』原田さんの小説らしく、つましい生活の中でもおいしい料理を工夫する藍や美代子。〈メンチカツの卵とじ〉などリメイク料理の描写も楽しい。光文社1600円はらだ・ひか1970年、神奈川県生まれ。シナリオライターとして活動後、2007年に「はじまらないティータイム」ですばる文学賞を受賞。『母親ウエスタン』『彼女の家計簿』など著書多数。※『anan』2019年2月27日号より。写真・土佐麻理子(原田さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年02月21日見た目は赤ちゃん、中身は有能なおっさん。部下たちのサポートを受けながらの武田本部長の日常を描いた、竹内佐千子さんの『赤ちゃん本部長』は、読まなきゃ損する傑作だ。ほんわかとした笑いに包みながらも、ジェンダーやセクシュアリティ、ハラスメントといった現代社会の問題に、切っ先鋭くモノ申している。社内での育児が前提なので、会社の仕様もそれに合わせて変化。「会社員生活をしたことがないため、社内の環境や上司部下の関係性などはほぼ想像です。でも私がイメージしていた“会社組織”は相当にホワイトだったみたいですね。『こんな会社で働きたい』とか『うちの上司に読ませたい』という読者の声に、私の方がびっくりでした。最初は社会的なメッセージを込めるつもりもなく、『大人が子どもになったら』という不思議な設定で描いたら面白そうだと思っただけなんですが」しかし、この設定の妙が功を奏す。無力で無垢な赤ちゃんの視点がフィルターとなり、凝り固まった社会通念や幅を利かせていた不寛容に気づかされるだけでなく、そうした空気が少しずつ変わっていくのが痛快だ。たとえば2巻では、結婚観や幸福観、ゲームなどのコンテンツについて前時代的な価値観を引きずっている営業二課の橘部長が登場。周囲の影響で、葛藤しながらも態度を軟化させていくさまが印象深い。一方、巻が進み、本部長の仰天のプライベートが明かされ始め、〈ザギンのチャンネーに会いたい〉と言うなどおっさん要素もましましに。「現実にも、おじさんって、赤ちゃんと似てませんか。妻や誰かにお世話してもらえないと生活できないような生態だったり、カツカレーのような脂っこいものが食べたいのに医者から止められていたり。食べられない理由は、『糖尿病だから』と『体が赤ちゃんだから』とで大きく違いますけど(笑)」赤ちゃん本部長のこれからが、気になってしかたがない!『赤ちゃん本部長』2朝起きたら赤ん坊になっていた47歳の武田本部長。愛妻家の坂井部長、ゲーマーとしての顔も持つ天野課長、実生活でもイクメンの平社員・西浦に世話され…。講談社700円たけうち・さちこマンガ家。東京都生まれ。2005年にデビュー。他の著作に『2DK』(既刊4巻)、『生きるために必要だから、イケメンに会いに行った。』などが。※『anan』2019年2月20日号より。写真・中島慶子取材、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年02月13日「カメ止め」(製作、公開開始は2017年)の愛称でブームを巻き起こした一本の映画『カメラを止めるな!』。その監督として一躍、時の人となった上田慎一郎さん。実は24歳で『ドーナツの穴の向こう側』という小説を処女出版していた。長らく絶版だったその作品が、著者あとがきを加えた新装版になって発売中。2018年破格の大ヒット映画の監督が書いた幻の処女出版が再刊行。物語は、18歳の女子高生・今井あやねの周辺に起きるちょっと不思議な出来事を追う形で進む。父親の死、母親との確執、恋や友情…。そんな現実を少しずらしてエンターテインメントに変える、上田さんらしいクリエイションが詰まった一冊だ。「10年以上前に書いたものなので、何もわかってないんだろうなと、かつての自分を軽く見ていたんです。でも再出版のために読み直してみたら、思ったよりずっといろいろ考えていたんだな、一行たりとも手を抜いてないな、と驚いたくらい」物語のカギになるのは〈トマンチキス〉〈炊飯器マラソン〉など思わず「何それ?」と引き込まれる言葉と短い解説。そこから連想されるイラストが添えられた、9つの章トビラだ。20代前半の上田さんが、親友や弟さんとオリジナルのポストカードを作り、手売りしていた頃に考えたものが本書の出発点になっている。「当時、アメブロに〈奇妙な辞書を創るブログ『あっちの世界の辞書』〉をやっていました(現在も閲覧可能)。この世界の理屈には一応合致するようなリアリティを持たせながら、どこまで変わった出来事にできるか。そのさじ加減は意識しました。あやねは、不条理を淡々と受け入れてしまわず、いちいちツッコむタイプ。読者と同じ目線なので、置いてけぼりにならずにこの奇妙さを楽しんでもらえると思います」加えて、上田さんのストレートな感情がほとばしるような表現によって、心を揺さぶられる箇所が数多く。「女子高生の声を借りて自分がしゃべっているみたいな状況が、むず痒くもありましたけれど、半分は自分がそう信じたくて書いたところもありましたね。(ペンライトで)〈あたしはその「不安」の顔を見ることができない〉とか〈世界がどうあろうと、あたしはあたしのやるべきことをやるだけだ〉とか」注目監督の頭の中をのぞき見る感覚。読んで、眺めて、楽しめる。上田慎一郎illustlation 上田悠二『ドーナツの穴の向こう側』23歳のとき短編小説「パンダレモン」を執筆。それを書き直す形で本書を完成させ、24歳で出版。その作品を、ほぼ手直しなしで再刊行。星海社1000円うえだ・しんいちろう1984年生まれ、滋賀県出身。映画監督。中学生の頃から自主映画を制作、高校卒業後も独学で映画を学ぶ。初の劇場用長編映画『カメラを止めるな!』が空前の大ヒットに。※『anan』2019年1月23日号より。写真・水野昭子(上田さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年01月19日『パタリロ!』が単行本100巻目に到達。作者・魔夜峰央さんにお話を伺いました。祝・連載40周年、画業45周年!101巻に向けて、魅力をおさらい。単行本は100巻目に到達。魔夜峰央さんの『パタリロ!』は、少女マンガ界に金字塔を打ち立てた名作中の名作だ。下ぶくれで天才、私利私欲に走りがちなくせに人情に弱い、国王パタリロに加え、脇を固めるキャラクターたちも個性派揃い。「私が人と同じことをやるのが嫌いな性格なので、従来のマンガの主人公にはいないタイプにしようと腐心した結果だと思います。なお、パタリロは“ドラえもん”に似ているという方もいらっしゃるくらい赤ちゃん体型。人に警戒心を与えないのも美点かもしれません」マライヒやバンコランといった超美形の人物を軸としたロマンスにもうっとりするが、パタリロ殿下に振り回されつつも寄り添うタマネギ部隊に萌えるファンも。「キャラとして登場する以上、いずれなんらかの役割を果たすのはタマネギたちの宿命で、アイデアを拡げるためには格好の集団だったといえます。なかでもいちばんまともなのは、霊感青年44号だと思います」また、ストーリーには、ギリシャ神話やクトゥルー神話、耽美趣味、悪魔崇拝、オカルト、SF、性愛と、刺激が強めなモチーフを多用。ギャグは必ずあるのに、人の優しさや愛情、あるいは残酷さや身勝手さなどを描き、さまざまな感情を喚起させる物語の完成度にも脱帽する。「描けるものを描きたいように描いた結果としか言えないのですが、パタリロたちの活躍に任せていれば展開に悩むことはほぼないし、ギャグに至っては反射神経のみですね(笑)。ちなみに100巻では、98巻から始まった長編〈イカロスの羽〉が完結。101巻ではミーちゃんが走り回った舞台をパタリロが破壊的に駆け抜けます。どうぞお楽しみに」現在『パタリロ!』100巻発売、連載開始40周年を記念して、「パタリロ! 100Project」が進行中。まだまだ間に合う原画展、実写版映画が今年公開予定など、味わい尽くそう!明治大学米沢嘉博記念図書館では「魔夜峰央原画展」第4期:ミーちゃん特集を開催。1/18(金)~2/11(月)まで。入場無料。初のオフィシャルファンブック『パタリロ![トリビュート・ファンブック]』99.9も発売中。880円『パタリロ!』100巻ではミーちゃんが大活躍、懐かしキャラも多数登場。春に101巻が刊行予定。現在はエンタメアプリ「マンガPark」で連載中。白泉社429円©魔夜峰央/白泉社まや・みねおマンガ家。新潟県出身。〈永遠の28歳〉を自称、ミーちゃんの愛称で、しばしば作中にも登場する。他の代表作に「ラシャーヌ」や「アスタロト」が活躍するシリーズがある。※『anan』2019年1月23日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年01月18日三浦大知(31)が2月24日に東京・千代田区の国立劇場で開かれる「天皇陛下在位30年記念式典」にて、記念演奏すると発表された。三浦の国民的行事への参加に、ネットでは大きな反響を呼んでいる。各メディアによると今回三浦は、「歌声の響」を披露。天皇陛下が沖縄訪問時の思いを込めて作詞され、皇后陛下が作曲された楽曲だという。Twitterではファンからの驚きとともに、喜びの声が上がっている。《沖縄県出身の、MJに憧れて歌いはじめ、踊りはじめた小さな少年は、青年になってとうとう天皇陛下、皇后陛下の作られた楽曲を御本人達の前で歌い、舞い踊る事になりましたとさ。いや、すげえや》《天皇皇后両陛下はきっと、三浦大知くんの歌声が国民の心を少しでも和やかにしてくれるだろう、って。そんな風にお考えになっているんじゃないかと想像して今夜は眠りたいです》《驚きすぎて気持ちが成層圏を突破している》三浦は97年にパフォーマンスグループ・Folderのメンバーとしてデビュー。9歳にしてメインボーカルを務めていた。「当時から、その歌声はMISIAさん(40)といった数々の大物ミュージシャンから認められていました。ソロに転向してからも着実にステップアップし、17年には紅白歌合戦に初出場。昨年も出場し、30人のダンサーを引き連れたパフォーマンスで多くの視聴者を魅了しました。昨年12月にリリースした楽曲『Blizzard』のMVが、YouTubeで1,000万回再生を突破したばかり。そのタイミングでの今回の発表に、ファンは喜びもひとしおのようです」(音楽関係者)そのキャリアは20年以上。三浦はついに、国民的歌手としての階段を登りつめたようだ。
2019年01月17日三浦翔平(30)と桐谷美玲(29)夫妻が12月23日、都内のホテルで披露宴を行った。各スポーツ紙によると三浦はタキシード姿で、桐谷は白のウエディングドレス姿で登場。桐谷がキャスターを務めていた「NEWS ZERO」(日本テレビ系)をモチーフにしたVTRが流れるなど始終、和気あいあいとしていたという。「人望の厚いお2人ですから出席者も超豪華。佐藤健さん(29)や山田孝之さん(35)といった大活躍の俳優陣から、長谷部誠さん(34)や北島康介さん(36)といった一流アスリートも祝福していました」(ホテル関係者)各スポーツ紙によると、披露宴ではONE OK ROCK・Taka(30)が乾杯のあいさつをしていたという。Takaと三浦は、たびたび互いのSNSに登場。その仲はファンの間でもよく知られている。「山田親太朗さん(32)の紹介でTakaさんと三浦さんは出会ったそうで、今では親友同士。Takaさんは英語を猛勉強し、海外でも大活躍。そんな努力家なところが、三浦さんにとっても刺激となっているようです。Takaさんも2人の交際を側で見守ってきましたから、乾杯の挨拶ができて喜びもひとしおでしょうね」(芸能関係者)そんな関係が知られていることもあり、TwitterではTakaのファンからも《三浦翔平くんの結婚式の乾杯挨拶Takaってぇぇえええすばら》《Takaの乾杯のあいさつは心に響く言葉が沢山詰まってたんだろうな 改めておめでとうございます》と2人に祝福の声が上がっている。親友に見守られて、2人は新たな門出を迎えた――。
2018年12月24日『みつば通り商店街にて』は、タケミさんと商店街に集う人々との交流が四季の移ろいとともに描かれた、ほんわか下町情緒コミックだ。東京の下町にある〈あまり立派ではない〉商店街で、小料理屋コエドを始めたタケミさん。ワケありかと思いきや、〈わりと空(す)いてたから…〉と天然ぶりを見せるあたりも愛らしい。「私自身は人づきあいがドライな環境で育ったので、人間同士の距離は近いけど閉鎖的すぎない下町の空気に憧れがあるんです。そんな場所で、小料理屋でも開いて暮らしてみたいという、タケミさんの気持ちに乗っかる形で描きました」ウェブに1日1枚をアップするスタイルで連載。新聞の4コママンガのように、キャラクターたちがワイワイ動いていく世界ができたらいいなと思った、とオカヤイヅミさん。「ただし、表舞台のドタバタからこぼれてしまうような些細な出来事に自分は惹かれがちで、軸足はそちらにある感じです」たとえば、タケミさんは酉の市に出かけても、大声で三本締めされるのが苦手で小さな熊手しか買えない。「こういう場面で照れてしまうのはまんま自分ですね。テンションが高い領域に踏み込めない、はしゃげない(笑)。丸刈りの文学少年ヒサオくんも、『萌える』みたいなことが言えないタイプ。内に秘めてしまうオタク心がもやもやと発酵している期間って、好きですね」おしゃれな色みのオールカラー作品で、いつまでも眺めていたくなる。「当時はフルデジタルで描いていました。使う色も絞って、パレットに置いておき、先に背景の色とかを大胆に塗り分け、あとから人物の顔やフキダシ部分を白で抜いたり。いまは紙とペンなので、懐かしいです」『みつば通り商店街にて』5年ほど前の連載を書籍化。おしゃまなサヤちゃんは商店街の情報通、元スナック経営者のユフコさんは恋多き大家さん…気になる人物が多数登場。KADOKAWA980円©オカヤイヅミ/KADOKAWAマンガ家、イラストレーター。多摩美術大学卒。Webデザイナーとして勤務後、フリーに。『すきまめし』、『ものするひと』1~2巻ほか著書多数。装画や雑誌のカットなども手がける。※『anan』2018年12月26日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年12月20日連載時から大胆に改稿し、できあがった大長編『熱帯』は、森見登美彦さんご自身も“怪作”と言い切る、2018年の目玉と呼べる一冊だ。幻の本に魅入られた人々の「読む/書く」をめぐる冒険奇譚。作家の〈私〉は、ふと学生時代に出合った佐山尚一の『熱帯』という小説を思い出す。大切に読もうと思っていた〈私〉の元から忽然と消え、以来、図書館や古書店を探し歩いても見つからない謎の本。その奇書をめぐり、物語は進んでいく。「単行本化に取りかかるタイミングで『千一夜物語』を初めて読んでみたんですね。200話ほどしかなかった原型が、勝手に付け加えられて増えたり、バージョン違いが生まれたりと、成り立ちも含めて面白いと思ったんです。最初は、’80年代の京都を舞台に、作中作である『熱帯』の内容や誕生の経緯を書くのだろうと考えていたのですが、影響を受けてどんどん膨らみ、“謎の本”についてより深く考えることになりました」〈この本を最後まで読んだ人間はいない〉等、噂を聞けば聞くほど、『熱帯』についても、著者の佐山尚一についても、知りたくなると同時に、よくもこんな風変わりな物語を思いつくものだと、作家としての森見さんを、謎多き作家・佐山尚一に重ねてみたくなる。「彼は、この世界のどこかに穴があって、その向こう側に心惹かれるような人物ではあるので、そのメンタリティは僕自身と重なる部分かもしれません。実は、佐山尚一は平凡なようでいて、ネットなどで調べても、同姓同名の人が全然引っかからなかった名前なんです。自分が作り出したことで、初めてこの世に出てきた存在だと思うと興味深いですね」登場人物たちが、読書とは何かと考察する丁々発止も楽しい。突き詰めていく場面も出てくる。たとえば、同じ小説を読んでも人によって解釈はいろいろなのに、みな同じ一冊を読んでいるといえるのだろうか。「そもそも『熱帯』という魔術的な小説のことを書かなくてはいけない。それに重ねて、読書についてや、断片的な妄想が小説という形になっていく自分の小説が生まれてくる過程を、小説にしようとも考えていました。複雑に考えすぎて、納得できる形になるまで試行錯誤の連続。担当編集さんは、書き終わらなかった別バージョンの『熱帯』を山のようにお持ちです(笑)」もりみ・とみひこ1979年、奈良県生まれ。京都大学大学院農学研究科修士課程修了。2003年、『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞、’07年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞を受賞。『熱帯』Amazonには佐山尚一の古書が用意され、作中の古書店「暴夜(アラビヤ)書房」プロジェクトも進行中。本好きの心をくすぐる仕掛けも。文藝春秋1700円※『anan』2018年12月19日号より。写真・土佐麻理子(森見さん)大嶋千尋(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年12月13日ののとはなというふたりの女性の、約30年にわたる絆を書簡形式で綴った『ののはな通信』が5月に。そして9月は、『愛なき世界』が。2018年は、三浦しをんさんの傑作長編が2冊刊行され、ファンにとっては当たり年だ。『愛なき世界』は、植物学の研究にいそしむ女子院生・本村紗英と料理人見習いの青年・藤丸陽太が淡い交流を深めていく恋愛小説といえるが、読みどころは“恋愛”だけにあらず。「東京大学大学院の塚谷裕一先生から『辞書作りが小説になるんだったら、きっと植物学の院生も小説になると思うんです』とお声がけをいただいたんです。研究室にお邪魔してみて感じたのは、先生や院生のみなさんの知りたい気持ちの強さです」作中に、本村がシロイヌナズナの細胞を光らせ、それを藤丸が顕微鏡でのぞき込む場面がある。「私も見せてもらったんですが、本当にキレイで宇宙みたいでした。ヒトも植物も同じ地球上でそれぞれが進化を遂げた結果、共通した仕組みも全然違うところも持っているけれど、同じように細胞は活動し、一生懸命生きている。そんな植物のことを彼らはもっと知りたいんだなとわかって、私はそんな彼らのことをもっと知りたくなったんです」本村がのめり込む葉っぱの発生遺伝子を調べる実験には、塚谷教授ら研究室のみなさんが全面的にバックアップ。研究者の日常なども参考にしたそう。好きな研究に打ち込みすぎて、本村と藤丸の恋模様など見えていない院生像も何だか好もしい。「でも、恋の空気に鈍感なのは、むしろ私なんですよ。周りは気がついているのに私だけわかっていなかったとか、よくあります(笑)」タイトルは、植物が〈愛なき世界〉を生きていることに由来する。「『植物には感情や思考がないのです』と言われたとき、はっとしたんですね。私たち人間はついつい人間の感覚に引き寄せて彼らの様子を解釈しようとしてしまうけれど、愛とか恋とか言わないと繁殖できない人間の方が、地球上では圧倒的少数派です。面白いのは、植物たちを研究している研究室の彼らは、めちゃめちゃ植物愛に溢れているということ。言葉で説明するならば、やはり世界は愛に溢れた場所だとしか言いようがないなぁと感じますね」『愛なき世界』青井秋さんの植物の挿画に、胞子や実験器具などが箔押しされた、うっとりするほど美しいカバーデザインにも注目!中央公論新社1600円みうら・しをん1976年、東京都生まれ。2006年、『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞、’12年、『舟を編む』で本屋大賞、’15 年、『あの家に暮らす四人の女』で織田作之助賞を受賞。※『anan』2018年11月28日号より。写真・土佐麻理子(三浦さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年11月26日女優の市川紗椰(31)が、ロックバンド“BST”を絶賛したことでなぜか炎上している。マニアックに趣味を突き詰めることで知られる市川。『週刊プレイボーイ』では「ライクの森」と題したコラムを連載中だ。11月26日号のコラムでは“BST”というロックバンドの魅力を熱弁。『市川紗椰が語る“BST”の魅力「韓流アイドルグループの陰に隠れている不運なバンドです」』というタイトルでヤフーニュースにも配信された。すると、コメント欄が荒れ模様となってしまったのだ。《被爆者を嘲笑する原爆Tシャツ。日本人として絶対に許せません。ファンの若い人達は少しは歴史を学んでみたら如何かと思います》《原爆を肯定する様なTシャツを、平気で意図的に着ていた事が問題である。日本人としては到底容認出来る行為ではない》コメント欄には韓国のアイドルグループ“BTS”への非難が並んだが、市川が絶賛したのは‘60~70年代に活躍したアメリカのロックバンド“Blood,Sweat&Tears”。略して“BST”だ。コラムでも市川自身が「防弾少年団という韓流アイドルグループの曲で同名のタイトルのものがある」「しかも、防弾少年団の略称が『BTS』だったりもするので、かなりややこしい」と、BSTとBTSが紛らわしいことも説明している。コメント欄では《かわいそうなくらいみんな勘違いしている…こっぱずかしい…》《記事を読まないでコメントしてる人多すぎ》と苦言を呈する声も上がっていた。
2018年11月24日一度読んだら、ずぶずぶとその魅力の沼にハマる平方イコルスンさんの世界。最新刊『うなじ保険』でも、既出作同様、女子高生や仲良しグループの休み時間や放課後、日常のちょっとした瞬間などが描かれている。しかし、最低限の状況説明しかされない中で、人物たちが放つキレのいいセリフがぴたりと決まり、よくある日常の印象ががらりと変わる。なかでも女子高生たちが古めかしい言葉遣いで小難しい理屈を振りかざす、セリフ回しの面白さは抜群だ。「セリフの内容については、自然と出てくるままに任せています。あとは、もっと無駄に語り続けたいところを自制したり、語らずに済ませたいところで説明せざるを得なかったり、というような工夫は必要になってきます。私が鑑賞する側になったときには、物語をその終わり方で評価しがちな性質なので、創作の際にもそこに重きを置いています」恋バナや思想ネタ、ホラーなど、テーマの守備範囲が広く、短い作品なのに展開が読めない。そんな独特の作品世界を彩るのが、〈山ぶり〉〈目も耳〉など内容とどこかズレた感覚で付けられたタイトルの妙だ。「題はほとんど毎回最後に決めていて、その作品の内容を通じて、一言であらわすとしたら何になるかということを考えて出します」手描きの斜線や横線、格子などを多用するタッチで、セリフの文字までが書き文字というのもすごい。「絵に関しては単純に、漫画を描き始めたときにスクリーントーンの使い方を知らなかったから、というところが大きいです。本当は線の少ない、すっきりした画面にも憧れがあるのですが、そもそも自身の画力や字にコンプレックスがあるため、拙い描線をごまかす意味でも線が多くなっているとか、ちょっといびつな字を書くとかが習い性になりました。吹き出しの配置については、どの作品もページ数が少なくて慌ただしいので、なるべく自分の思うようなテンポと順序で読んでもらえるように気をつけています」平方さんのマンガはよく「わからないけどすごくいい」と評される。「そういう評価がとても光栄というか、自分の目指しているものに近いと思われるので、嬉しいです。でも、具体的に言語化していただけるともっと嬉しいのも確かです」『うなじ保険』カップルを尾行調査することに情熱を傾ける女子高生・阿和&鳴見コンビの連作や、著者自身が特にお気に入りと語る「設置」「専用」は必読!白泉社800円©平方イコルスン/「楽園」/白泉社ひらかた・いこるすんマンガ家。同人活動を経て、2011年、白泉社『楽園 La Paradis』第5号で商業デビュー。’12年『成程』を刊行。『楽園』本誌&web増刊で連載中。※『anan』2018年11月28日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年11月22日グラビアアイドルの天木じゅんが11日、東京・新宿のブックファースト新宿店でカレンダー『天木じゅん 2019年カレンダー』(発売中 2,500円税抜き 発売元:トライエックス)の発売記念イベントを行った。アイドルグループ、仮面女子の元メンバーで現在はチャームポイントの95㎝のIカップバストを生かしたグラビアで大活躍の天木じゅん。そんな彼女の最新カレンダーは、B2サイズの8枚タイプで、自慢のIカップバストを大型ポスターで堪能できるものとなっている。胸元ガッツリのセクシー衣装を着用して取材に応じた天木は「前回のカレンダーは結構作り込んだモノでしたが、今回はグラビアの王道に仕上がり、年相応なモノになっていると思います。テーマがグラビアの"王道"なので、シンプルにやりました」と最新カレンダーを紹介。お気に入りを9~10月に掲載された透け感たっぷりのセクシーな白シャツを着用したカットをあげて「今回は色んな見せ方で胸を撮影しました。下乳が見えたりカップ付きのブラジャーで寄せたり三角ビキニがあったりしますが、このカットは一番開放的に脱いでいる感じだと思います。ちょっと本物の胸を見ている感じで撮ったので、一番エロいです」とセクシーアピールも、「透けちゃう感じだったので恥ずかしかったですね」と照れた。カレンダーのイベントということで、残り1カ月半となった2018年を振り返り、「今年は色んなお仕事をさせてもらいました。グラビアは相変わらずですが、お芝居のお仕事もさせてもらいましたのでバランスの良い1年だったと思います」と充実した表情。来る2019年は「グラビアも評価されてきたという感じなので、もっと皆さんに見てもらえるように撮り下ろしを増やし、最近変わったなと言われるようにしたいですね。お芝居も映画やドラマなど映像系に挑戦していきたいと思います」と意欲を見せた。また、最近ハマっているという麻雀についても言及。「来年はファンの方と麻雀イベントをやりたいですね」という天木に「麻雀の牌で隠すグラビアは?」と報道陣が提案すると「1個じゃ隠しきれない。3個で(笑)。いや、1個で大丈夫です!」と乗り気だった。
2018年11月11日フードライター・平野紗季子さんの「MY STANDARD GOURMET」。今回は『麺散(めんちらし)』の、ちく玉天(冷)です。9月頃、原宿で働くファッション系の人々が突然うどんの写真をSNSにアップし始めた。どうやら『麺散』という店がキャットストリートの裏手にオープンしたらしい。仕掛けるのは「en one tokyo」。原宿界隈のイベントや企画といえば真っ先に名の挙がるクリエイティブエージェンシーだ。そんな彼らの最新コンテンツがうどん(?!)で、内装は衝撃的(行けばわかる)で、しかもこれらのポップな文脈からは想像できないほどおいしいのだから、一体この店何なんだ?と興味を持たずにはいられなかった。「原宿のど真ん中に、あえて、毎日でも来たくなるような店を作りたかったんです」と、ディレクターの岡田茂さん。一回きりの話題性で持ちきりの街だからこそ、繰り返し通いたくなる店を。そのためには「安くてうまいこと」が重要な条件だったという。「製麺には讃岐うどんの名店、新宿『うどん 慎』で修業を積んだ麺職人を迎え、打ちたて・切りたて・茹でたての“3たて”を徹底してます。出汁も天然真昆布ベースの飲み干せるほどうまい関西風を追求しているんです」。その本気度はたしかに一杯のうどんに宿り、みるみるリピーターを増やしているが、「“麺散でいいや”って思ってもらえる店になりたいんです」と、当の岡田さんは謙虚で真摯な姿勢を崩さず、だからこそ、街に長く愛される未来が目に見えるようだった。ひらの・さきこ1991年生まれ。フードライター。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)。ちく玉天(冷)¥800。ごま油の香り広がる揚げたて天ぷらもスター級。昼休憩なしの通し営業もありがたすぎるし、夜にはつまみメニューの充実する飲み屋に変貌します(締めは焼うどんがおすすめ!)。「麺散」店頭のキッチンカー『ONE』ではだし巻きドッグを販売している。東京都渋谷区神宮前6-13-7TEL:03・6427・989811:30~23:30(うどんは22:30LO)日曜休※『anan』2018年11月14日号より。写真・清水奈緒取材、文・平野紗季子(by anan編集部)
2018年11月10日オーブンの天板って、どこに置いていますか?棚の中にしまうにしても大きいですし、使うときに物をかき分けて天板を取り出す、なんてことありませんか?そこで思い出したのがセリアのアイアンバー。セリアのアイアンバーだけでできる、オーブンの天板置き場をDIYをご紹介します。■ セリアのアイアンバーでつくるオーブンの天板置き場【事前チェック編】我が家の天板は、直接オーブンの上に置いちゃっていました。実はこれ、NGです。熱を逃がすために少しだけ、隙間を開けておかなければなりません。でも、しまうのが面倒で、ついつい出しっぱなしにしてしまうんですよね。収納場所として目をつけたのは、オーブンの上部にある隙間。大体25cmはあります。いくら放熱のためとはいえ、こんなにスペースは必要ないはずです。隙間があるから物を置きたくなる!ですので、あえてこのスペースを有効利用してみます。用意したのはセリアのアイアンバー。お世話になっている方も多いのではないでしょうか?今回使うのは、バーが横に3本あるタイプを2つ使います。ネジは8本必要です。オーブンの真上に取り付けてみます。バーを2本平行に取り付けて、天板が入る間隔を開け、バーの隙間に天板の持ち手を引っかけて収納しようと思います。ここで必ず事前に確認しておきたいことがあります。天板の両端が、アイアンバーに引っかかるかどうかはもちろんですが、アイアンバーの隙間に天板の奥行きが収まるかどうか。これによって、セリアのアイアンバーが使えるかどうかと、実際に天板を取り出す時の隙間の調整が必要かどうかが決まります。天板がアイアンバーにすっぽりと入るなら、天板が収まる最小のスペースで良いのですが、天板が入らない場合はアイアン同士を少し離すなどして、取り外す時に天板を傾けられるスペースを確保しなくてはなりません。■ 簡単10分!オーブンの天板(角皿)置き場を作る!【DIY編】設置位置はしっかり寸法を測ると一番正確で良いのですが……、今回はだいたいの位置で取り付けました。ここでお役立ちなのが養生テープ。いきなりネジを打つのは恐いので、養生テープを貼ったり剥がしたりしながらベストな位置を見定めます。これなら何度でもやり直しが可能ですよ。養生テープをつけたままネジを打ち始めても大丈夫です。ただし、ネジを完全に打ち込みきる前に外しましょう。そうしないと、ネジ頭と板の間にテープのカスが残ってしまいます。まずはアイアンバーを1つ貼り付けて、天板を置いて確認しながらスペースを確保。その後にもう一つのアイアンバーを取り付けると失敗しにくいですよ。これで完成です!ネジ打ちに慣れた人なら、10分ほどで出来ます。それではさっそく天板を収納してみましょう。どうでしょう?遠目に見ても、スッキリ収納できたと思いませんか?オーブンレンジの上にも、充分に放熱出来るだけのスペースが確保されています。天板は重みもありますし、強度が少し心配ですが、かなりガッチリとつきました。天板を置いた時のバランスをうまく設置できたなら、地震が起きても大丈夫そう。取り外すときはこんな感じ。天板の片側をアイアンの隙間に潜り込ませます。アイアンを壁際に寄せすぎてしまうと、天板が壁にぶつかるので注意が必要です。いかがでしたか?キッチンラックが木製で、クギ打ちできそうなお宅なら、簡単にセリアのアイアンを取り付けできます。天板のホコリが気になるならば、上段2つに天板を置くと、ホコリをかぶりにくくなりますよ。天板置き場にお困りでしたら、ぜひお試しください。
2018年10月21日映画化され、原作ともども大ヒットとなった『クレイジー・リッチ・アジアンズ』。その邦訳を担当した山縣みどりさんにお話を伺いました。究極に大切なのは、愛かお金か家族か。アジア版「SATC(セックス・アンド・ザ・シティ)」がいま熱い。15世紀後半、まだ欧米の統治下にあったマレーシアやシンガポールなど東南アジア各地に渡り、その地に根づいた中華系移民の末裔を「プラナカン」と呼ぶ。アジアの政財界で多大な影響力を発揮し、富を築いてきた一部の富裕層一族が、本書の主な登場人物たち。世界各国に高級物件を所有し、自家用ジェットで社交やチャリティに飛び回る。そんな家柄の御曹司とは知らずにニックと恋に落ちたレイチェルは、セレブ界のハードな洗礼を受けるはめに。映画化もされ、欧米ではアジア版「SATC」とも呼ばれ、原作ともども大ヒットとなった。その邦訳を担当したのが、山縣みどりさん。「ニックの一族は〈クレイジー・リッチ〉と呼ばれる格式高い名家です。富をひけらかす新興財閥とは一線を画す、アジア版ロスチャイルド家のような設定ですね。実は、著者のケビン・クワンはそうした血筋の出で、幼いころから自身が育った環境が創作のベースにあるそうです」軸になっているのは、レイチェルとニックによる王道のラブストーリー。ふたりは熱烈に愛し合っているが、ニックの母親のエレノアは、家柄を重んじるあまり、レイチェルにキツく当たる。「若いニックはエレノアとは違う考えの持ち主。ジェネレーションギャップや見えない階級の壁など、新旧の価値観の対立も読みどころです」アストリッドは、結婚をめぐり名門出身女性ならではの悩みを持ち、ペク・リンは、自立する道を突き進む。女性の描かれ方も多様だ。「共感できる脇役に注目して読むのも一興だと思います」また、作中に登場する固有名詞やその注釈などによって、彼らの絢爛豪華なライフスタイルや、愛用のブランドなどを知ることもできる。「レストランや高級ブランドなどの名前に、実在するものが頻出するので、これまであまり知ることのなかったプラナカンの超富裕層の生活を、リアルに感じてもらえるかも。ただし、ミシュランなどには載らない会員制クラブのレストランだとか、日本ではまだ紹介されたことがない知る人ぞ知る有名ブランドも多くて、翻訳する過程では、その確認やリサーチがひと苦労でしたね(笑)」実は本書は三部作になっているのだそう。続きも読みたい!『クレイジー・リッチ・アジアンズ』上・下ケビン・クワン 著山縣みどり 訳29歳のレイチェルは、学者仲間で、ハンサムで優しいニックと交際中。彼が桁外れにリッチな出自とは知らなかったがために、大騒動に。竹書房各1400円やまがた・みどりライター、翻訳家。小誌や『ELLE』などで記事の翻訳やインタビュー、映画評を手がける。著書に『恋と幸せのヒントがたくさんつまった恋愛STYLE BOOK』がある。※『anan』2018年10月24日号より。写真・土佐麻理子(山縣さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年10月20日スピリチュアル界のレジェンド山川紘矢さん、山川亜希子さん。その山川夫妻、心の旅30年。そこからお二人が見出した、幸せになるためにやるべきこととは?自分を大切に。人のためになることをする。そして人生を楽しむ!極意ともいえるメッセージに耳を傾けよう。夫妻が考える幸せになるためのアクション7つのうち、今回は4つをご紹介します。笑う「誰でも笑うと楽しくなります。健康にもなります」(紘矢さん)近年、笑いがもたらす健康効果への期待は高まるばかり。血糖値の上昇を抑える、免疫力を高めるなどの身体的な効果だけでなく、心の傷が癒される、ストレス耐性ができるなど精神面での効果もわかってきた。「エレベーターに乗り合わせた人と目が合って、にこっと笑顔を交わすだけでも、幸せな気分になりませんか?笑いヨガのように体を使うのもより効果があります。『やったーやったー、イエー!!』と腕も振り上げ、にっこり笑ってみましょう」(亜希子さん)信頼できるパートナーや仲間など、誰かと一緒に笑い合うことも、お二人は推奨する。人生を楽しむことを基点にすると、明るくて笑顔の多い人とつき合う方が自分もハッピーなはず。瞑想する世界的にも注目が集まっている、瞑想の幸福パワー。なぜ瞑想をするといい変化が表れるのか。「現代社会では、まったく音のない空間や時間帯というのは意外にないものです。瞑想の目的は、いわば脳内にそういう空の状態を作り出すこと。最初はいろいろな雑念などに惑わされますが、訓練すれば、頭の中が空白になる瞬間が生まれるはず。いつも忙しく切り替わっていた脳内がクリアになると、心の揺れ、ブレがなくなり、自分に自信が生まれてきます」(亜希子さん)世界には、さまざまな瞑想法があるが、自分に合ったものを取り入れてもいいし、自己流でもOKだ。「5分間目を閉じて、心静かに深い呼吸をするだけでもいい。これなら電車の中ででもできますね」(紘矢さん)集う「スピリチュアル的にいえば、ひとりでいる時間は心を磨くときで、寂しくないという考え方もあります。それでも人は、本当の孤独の中では幸せになれないものです。LINEやメール、SNSなどを使って繋がることもできる時代ですが、やはり直接集まる場を作って、お互いの笑顔を見ることが、心を満たしてくれると思います。私たち夫婦も、ヨガの会やダンスの会など仲間が集う場を定期的に作っていますが、その都度、いい仲間に囲まれている幸福を実感します」(紘矢さん)一緒に歌う。踊る。心を許せる友との繋がりは、助け合いや学び合い、情報交換の場にもなる。「若い人たちに広がるシェアという考え方は、すばらしいですね。いいものを共有し合う体験は、きっと心に刻まれると思います」(亜希子さん)極める好きなことにひたすら取り組めること以上に、幸せなことはない。「自分が本当に心惹かれるものを探し、それをどんどん深めていきましょう。料理でも写真でもスポーツでも、一生懸命にやっていれば楽しいし、仲間も集まってきます。得意なものができてくると、それは必ず世の中の役に立ちます。好きを極めることは、生きるすべてに繋がります」(紘矢さん)好奇心が長続きせず、次から次へと興味の対象が移ってしまうのであれば、それもよし。直感に従って進むうちに“これ”というものに出合える。「仕事を極めてみるのもいいでしょう。『事務職だし…』などと卑下せず、何を聞かれても答えられるくらいのプロフェッショナルになれば、自分がこの世で与えられた役割を果たしていると思えるはず」(亜希子さん)山川紘矢さん・山川亜希子さんこれまで多くの心の本を翻訳、日本に紹介してきたスピリチュアル界のレジェンド。セミナー、ダンスの会、読書会などイベントも精力的に行う。※『anan』2018年10月17日号より。イラスト・Margraph取材、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年10月16日『アウト・オン・ア・リム』『聖なる予言』など精神世界のベストセラーを翻訳し日本に紹介するかたわら、『引き寄せの極意』『受け入れの極意』などを執筆。30年以上にわたり、幸せになるためのメッセージを発信してきた山川紘矢さん、亜希子さんご夫妻。その集大成として見出した幸せになるための行動とは。「幸せになるには、何でも好きなことをすればいいんです。なかでも、歌って、踊って、笑って…。自分を楽しませ、自分のエネルギーを活性化してくれるこれらの行動を私たち夫婦は習慣にしていますが、それだけで心はいつも平和。体は健康。幸せな人生だと感じることができます」(紘矢さん)とはいえ、お二人も、自分の本当の気持ちを大切にし、好きなように生きていいのだと気づくまでには、時間がかかったそう。「そもそも日本人はマジメすぎて、最近まで、楽しむよりも“ねばならぬ”で生きている人が多かったように思います。そう考えると、いまの若者たちは義務と“快”とのバランスのとり方が上手だなと感心しますね。ボランティアなどを率先してやるのも、『人のためと言いつつ、実は自分が幸せになれる』と、無意識にわかっているからでしょうね」(亜希子さん)人のために何かをすると自尊心が満たされ、自信や落ち着きに繋がる。人との壁が取り払われ、これまで以上に、人とうまくつき合えるようになる。だが、自分をおろそかにしてまで、世のため人のために尽くすのは本末転倒。自分を大切にすることが、周囲を巻き込んで幸せになるための大前提だ。「幸せじゃない人は大抵、『自分が嫌い、自分を許せない』と、自分に対してとても厳しいですね。そういうタイプは他人にもきつく当たる。自分をもう少し褒めてあげれば、意識が変わって、人にも優しくなれますよ」(紘矢さん)亜希子さんも「誰かのために」を、難しく考えなくていいと語る。「例えば、いつも自分用に作っていたお弁当を、ついでに誰かのために作ってあげる。思わず相手が喜ぶ顔を想像しませんか?お裾分けしてあげたり、手紙を書いて送ったり小さなことでいい。人のためにしていることが、結局は自分の喜びでもあるとわかるはず」夫妻が考える幸せになるためのアクション7つのうち、今回は3つをご紹介。楽しむ幸せになるためのルールはとてもシンプルだと、紘矢さんは言う。「そのとき、その瞬間に、自分自身のたましいが『楽しい』『うれしい』と思うことをするだけです。その瞬間が続けば、自分は幸せで、周囲にも幸せな人ばかりが集まってきます」意識すべきなのは、“いまここ”に集中する、プレゼンスな生き方だ。「過去に囚われて生きたり、未来を憂えて生きたりしないこと。いまに生きる気持ちを大切にすれば、楽しむことが上手になります」(亜希子さん)例えば、食事をするときは五感をフルに使って味わい、仕事をしているときや誰かとおしゃべりしているときなどは、楽しいその時間に没頭する。「他人の評価に踊らされることも、自分を犠牲にしてまで何かをすることも、禁物です」(紘矢さん)歌う紘矢さん曰く、日本語は音の一つ一つに“言霊”が宿っているので、好きな歌を歌うだけで元気が出てくる。「それ以上におすすめしたいのが、『あわの歌』です。歌詞に自分流の節や曲をつけて、思うままに歌ってみてください。パワーのある歌詞を音読するだけでも神様が喜ぶので、開運に繋がります」「あわの歌」の言葉の並びなど歌詞を分解すると、日本語の成り立ちに関わっているという研究者もいるらしい。「歌は、祝詞や、マントラのような祈りの言葉に通じます。神社など聖なる場所で歌うのもいいですね。“ありがとう”という言葉は強いエネルギーを持っているのですが、紹介する2つの歌はそれ以上の高い波動を発しています。唱えるだけでその場のエネルギーが整っていくのです」(亜希子さん)踊る人前で踊るのは恥ずかしいと思っている人もいるかもしれないが、踊ることそのものが多幸感をもたらすことは、科学的にも証明されている。「どんな文明においても神と祭り事は結びついています。特に踊りは神様への奉納の意味もあるので、古代から人々は踊っていました」(亜希子さん)踊りというと、バレエや日舞など型があるものをイメージしがちだが、自由に体を動かして、リズムを取るだけでいい“自由ダンス”でも、十分に踊る楽しさは得られる。「踊っているうちに頭でっかちな状態から解放され、無心になります。すると、自分が囚われていた思い込みが何だったのかなど、多くの気づきが生まれます。モヤモヤが取れれば心が開き、自由になれる。踊ることは、幸せになるための端的な方法です」(紘矢さん)山川紘矢さん・山川亜希子さんこれまで多くの心の本を翻訳、日本に紹介してきたスピリチュアル界のレジェンド。セミナー、ダンスの会、読書会などイベントも精力的に行う。※『anan』2018年10月17日号より。イラスト・Margraph取材、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年10月14日妊娠出産の光と影を描いて反響を呼んだ『透明なゆりかご』。その著者である沖田×華さんの新刊『お別れホスピタル』は、終(つい)の住処(すみか)としての終末期医療がテーマだ。またも、命とは何か、人生とは何か、を考えさせる力作と、早くも話題に。「知り合いのナースをはじめ、いろんな方から、終の住処となった病棟で繰り広げられる、患者さんたちの個性の強いエピソードを聞いていたので、以前から描いてみたいと考えていました。患者さんそれぞれの“人生の最期を、この病院で迎えることになったわけ”を描けば、その人の人生のドラマが浮かび上がってくるのではないかと思ったんです」余命わずかなのに、死んでいくとは思えないようなパワフルな患者さんがいたり、家族と和解できないままお別れのときを迎える患者さんがいたり…。一話一話がリアルで、読む側の死生観をも揺さぶってくる。「私自身は終末期病棟で働いた経験こそありませんが、やはり看護師経験があることは描く上で大きいですね。そのベースがあるから、院内でこういうことはあり得るだろう、こんなことは起きないだろうといった、エピソードやディテールに対する価値判断ができるのだと思います」本作のヒロイン・辺見さんが働く△×病院の別館には、回復が見込めない患者ばかりがいる。〈陰では“ゴミ捨て場”と呼ばれている〉という一文は衝撃的だ。「実際にナースの知り合いから聞いた言葉です。強い印象が残っていて、作中で使いました」その辺見さんは、以前もターミナルケアを行う病院で働いていたらしいことがわかる。「『透明な~』のときより主人公の年齢を上げて、中堅看護師にしたのは、それなりのスキルや経験を持った看護師ならではの悩みや葛藤、人間関係を描きたかったからです。『結婚や人生をどうするか。家族との関係をどうするか』といった、辺見さんくらいの年ごろの女性が持つであろう漠然とした将来の不安なども、回が進めば描きたいですね。また、辺見さんは“自立したナース”という設定なので、働く女性としての理想的なあり方も見せていければ…と考えています」『お別れホスピタル』彼氏も親友もいないけど、ちくわとたまごという愛猫2匹に癒されて、日々がんばっている32歳の中堅看護師・辺見さん。看取りの現場で起きていることは…。小学館591円©沖田×華/小学館おきた・ばっかマンガ家。富山県出身。自身の発達障害を題材にした作品を発表、多くの読者の支持を得る。本作のほか「こんなに毎日やらかしてます。」「透明なゆりかご」を連載中。※『anan』2018年10月17日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年10月11日2016~’17年に、立て続けにエリート大学生らによる性暴力事件が報道されたのを覚えているだろうか。姫野カオルコさんの『彼女は頭が悪いから』は、そんな暴行事件のひとつ、東大生による集団わいせつ事件に着想を得て書かれた。読者自身の倫理観や価値観を映し出す、恐るべきミラー小説。「最初にラジオのニュースで聞いたときから、直感的にこれまで見聞きしてきた事件とはどこか違うと違和感を覚えました」姫野さんは、自分なりに報道等で事件を調べるとともに、裁判の傍聴にも出向いた。同じくこの事件について取材を重ねていたフリーライターの高橋ユキさんから話を聞いたりもしたという。結局、取材開始から出版まで、2年近くを要した。「事件そのものは、すでに法廷で裁かれており、細かい事情まで知らない私があれこれ言うことではありません。性衝動では説明できないような事件が起きたという結果の報道から、こうであったかもしれないという、自分にも多くの人の中にもある醜さを考えたいと思いました」のちに被害者となる神立美咲は、横浜の平凡な家庭で育ち、普通の女子大に進学した。加害者となる竹内つばさは、東京の一等地の公務員宿舎に住まいがあるような家庭で何不自由なく成長し、東大生となった。「私なりの調査から推測した女性像、男性像です。美咲は『ま、いっか』とその場の空気に流されてしまう女性で、つばさは東大ブランドを万能だと勘違いしているような男性」物語のほとんどは、美咲やつばさがどうやって育ってきたかに割かれており、それがわいせつ事件の背後に潜む、現代社会や市井の人々の歪んだ倫理観や価値観を際立たせる。「この作品に出てくるのは、加害者もその家族もSNSユーザーもイヤな人たちばかり。その中の誰に、どんな物言いに嫌悪感を覚えるかで、自分がどういう人間かが見えてきます。見たくないのに、できてしまったおできは鏡で見ずにはいられないですよね。そんなミラー小説と呼べるような作品になりました」問題作にふさわしいエンディングは、最初から決めていたのだろうか。「展開も含め、作者の意図が介在する余地がなかったですね。登場人物たちがみな自分で語りだし、行動し……、私はそれをただ書き留めていただけのような気がします」姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』カバー絵に、身分格差のある悲劇的な恋愛を描いたといわれるジョン・エヴァレット・ミレイの「木こりの娘」が使われているのも印象的。文藝春秋1750円ひめの・かおるこ1958年、滋賀県生まれ。2014年、『昭和の犬』で直木賞受賞。エッセイにも卓抜した才能を発揮。著作に『近所の犬』『純喫茶』ほか。※『anan』2018年10月3日号より。写真・大嶋千尋インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年09月27日初老に差しかかった個性派俳優・海馬五郎は、フランスの一風変わった文化賞の授賞式に出席するため、パリ行きを決意。それがトホホな道行きになっていく松尾スズキさんの『もう「はい」としか言えない』。同じく海馬五郎の語りで、幼少時より自意識でがんじがらめになっていた自らの生い立ちをたどる「神様ノイローゼ」。松尾ワールドにどっぷり浸る快感!“本人成分たっぷり”の2編を収録。読み進めるうちに、じわじわ気づくはずだ。「これ、かなり私小説的なんじゃ?」。松尾スズキさんも「僕の分身みたいな存在」と認める海馬五郎を主人公に据えた2編をカップリング。最新刊『もう「はい」としか言えない』が面白いのなんの。「『少年水死体事件』と名づけて新聞連載していた随筆にフィクションを加味して書き直したのが『神様ノイローゼ』。自意識と妄想でこんがらがっていた子ども時代の自分の話です。いままでインタビューなどでもしゃべってきたことなんですが、一度体系づけてまとめておこうと思ったんですね。もうこれを読んで、わかってくれと。僕という人間のマニュアルです」末恐ろしいほどシニカルで、冷めた思考の五郎少年。子どもが苦手だという松尾さんだが、作中に見る、あんな記憶があればさもありなん。「あいつらは自由にやってるくせに、いざ攻撃されると子どもという鎧に逃げ込むんですよ。僕もそういうガキでした(笑)」表題作もまた、松尾さんに起きた実際のエピソードや、周囲から聞いたリアルな悩みを投入してできた作品だという。道に迷いやすいという五郎のキャラもご本人と同じらしい。「でも迷ってる時間って自由だなと思うんですね。自分がどこにいるのかもわからずさまよえば、誰にも捕まえられない。究極の自由でしょう。僕が表現をやっているのも、結局は自由になりたいからだと思います。現実に対して感じている違和感を笑いに変えて、既成の価値観から逃れたい。僕の小説はドタバタしていると評されることが多いけれど、僕の中ではそれがリアルなので、そう言われるのは心外なんですよ」息苦しいルールを押し付けられていた五郎は逡巡の末、自由欲しさに、通訳を同行させるならと苦手な外国行きを承諾。しかし通訳となる斎藤聖の紹介者が、彼を〈少し新しいタイプの人間〉と説明していたわけを、五郎は行く先々で味わうことになる。「日仏ハーフの聖君が出てきた途端に、五郎がこの子によってもっと混乱に陥れられることがわかって、話に弾みがついてしまいました(笑)」自由に焦がれに焦がれた先で五郎を待っていた事態を見届けてほしい。『もう「はい」としか言えない』 妻に浮気がバレた海馬五郎。離婚回避のための誓約に汲々としていた彼は、わらにもすがる気持ちで「エドゥアール・クレスト賞」の授賞式へ旅立つ。表題作が3度めの芥川賞ノミネートとなる。文藝春秋1450円まつお・すずき1962年生まれ、福岡県出身。今年、旗揚げから30周年を迎えた「大人計画」主宰。12/18~SPIRALで「30祭」開催。作家、演出家、俳優、映画監督とマルチに活躍。※『anan』2018年9月5日号より。写真・土佐麻理子(松尾さん)大嶋千尋(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年09月02日モデルの紗栄子が1日、さいたまスーパーアリーナで開催された「マイナビ presents 第27回 東京ガールズコレクション 2018 AUTUMN/WINTER」(以下TGC)に出演した。今回、“8歳の天才ドラマー”として話題のよよかが、全国大会3年連続金賞を受賞している京華学園のマーチングバンドとコラボレーション。その豪華コラボ演奏の中、紗栄子は赤×黒のチェック柄のドレスで登場した。そして、オーラを放ちながらランウェイを歩き、先端では演奏に合わせて軽やかなダンスを披露した。紗栄子は、よよかのドラムに「びっくりしちゃって。息子が同い年なんですけど、トンもたたけない」と感心。MCの小藪千豊は「ウエスト細いですね。ビビるわ」と紗栄子のウエストの細さに驚き、共にMCを務めた田中みな実アナウンサーも「細いですねえ」とそのスタイルに魅了されていた。TGCは、「日本のガールズカルチャーを世界へ」をテーマに2005年8月から年2回開催されている国内最大規模のファッションイベント。27回目となる今回は「FOREVER GIRLS(女の子の“カワイイ”は永遠!)」をテーマに、女の子の“好き”を詰め込み、未来へ続くTOKYOの最先端トレンドを発信。ファッションショーをはじめ、アーティストライブやスペシャルステージなどを展開し、会場には約3万2,700人の観客が詰めかけた。撮影:宮川朋久
2018年09月01日身悶えするほど面白い、キャラクター愛炸裂コミック『おじさんはカワイイものがお好き。』。その著者が、ツトムさんだ。小路課長こと小路三貴(おじみつたか)は、会社では、頼りになると評判のデキる上司。子どものころからカワイイものに目がないのに、素直に公言できない40歳のイケメンバツイチである。大好きな犬のキャラクター<パグ太郎>を心置きなく愛でたい!でも誰にも知られたくない!かくして、秘密死守のため、小路課長のドタバタな日常が展開する。「“おじさん”と呼ばれる年齢だけれどスーツが似合って気配り上手。小路課長には、周りにいそうでいない、理想を詰め込みました」萌えポイントは、シュッとしている大人の渋さと、パグ太郎を愛でる時の可愛らしさとのギャップ。「なので、スーツの着こなしや、自然なたたずまいはステキに描きたいですね。個人的には、袖をまくった時に見える手首や、スラックスのすそから見える靴下足首とかも好きなので、そういうディテールには特に神経を使います。また、私のような絵柄で、白目やトホホ顔などの変顔を描く作家さんは少ないように思うので、あえて多く入れています」小路課長がそれほどまでに入れ込む、パグ太郎の可愛らしさをどう表現するかも重要だ。「ボストンテリアとパグを飼っています。マスコットを描くならどちらかをモデルに!と決めていたので、さほど迷わずああいうフォルムができあがりました。考えてみると、昔から、バーバパパやムーミンが好き。彼らのしもぶくれ感といいますか、もったりした感じ……、たまりません(笑)。なのでパグ太郎の土台はそのあたりが影響してるのかな、と」小路課長の目下の悩みは、ひとり暮らしの部屋が見つかるまで同居することになった大学生の甥っ子・真純くんや、会社で一方的に小路課長をライバル視し、くってかかってくる同僚・鳴戸課長の存在。彼らによって、しばしばカワイイもの好きがバレそうになる窮地に陥るが、それを切り抜ける機転の利いたアイデアとコメディとのバランスに思わず噴き出し、つい小路課長のピンチを期待してしまう。1巻の終わりには、小路課長と同じビルで働いているという河合ケンタが意味深に登場。彼は小路課長とどんなふうに関わっていくのか、ますますこの先が楽しみだ。「自分が犬グッズをつい買ってしまうようになるなんて、ペットを飼うまでは思っていませんでした。なので、そういう熱愛対象に出合っていない方も、これからそういうものに出合ったらきっと……と思って描いています。疲れている時も、読んだらくすくす笑って息抜きができる、そんな作品にしていきたいですね」『おじさんはカワイイものがお好き。』コラボカフェに出かけたり、ガチャを引いたり。推しキャラのいる小路課長は毎日が充実。カバーをめくると、おまけの4コマまんがとあとがきが。フレックスコミックス600円©ツトム/COMICポラリス©フレックスコミックスツトム大阪府出身のマンガ家。2008年にデビューし、現在はwebコミック「COMICポラリス」で「おじさんはカワイイものがお好き。」を連載中。9月15日に待望の2巻が発売予定。※『anan』2018年8月29日号より。写真・大嶋千尋インタビュー、文・三浦天紗子
2018年08月23日セックスは誰からも教わらないし、誰に見せるものでもない。そもそも正解がわからない。だからこそ、思い込みや誤解、コンプレックスや不満、焦燥感などがあふれている。二村ヒトシさんは、AV監督でありながら、女性の琴線に触れる恋愛論を発信。二村さんが語る、いいセックスをするために必要なこととは。いいセックスをするためには、パートナーと“共犯関係”を築くべきだと、僕は思います。めくるめくセックスに憧れる人は多い。ですが時に女性は、愛させるため、あるいは愛してもらっていることを確認するために、セックスを使ってしまうことがあります(男性にもそういう人はいますが、もっと凡庸な“自分がモテることを証明するために、たくさん女性を口説いてただヤルだけの男”もいます)。そういう人たちは、じつはセックス以外の目的のためにセックスをしている。でも、カラダや社会的スペックや表面的な優しさをエサにして、恋愛ゲームの勝ち負けにこだわったり、モテや交際や結婚という“承認”のためにするセックスには、最良のオーガズムは訪れません。セックスが楽しいのは、セックスが“やばいこと”だからです。パートナーと密室で行う悪徳の儀式だから、最高の興奮を味わえる。でもそのことに罪悪感を抱いてはいけない。だから愛する相手との共犯意識が必要なんです。浮気や不倫を勧めてるわけじゃありませんよ(笑)。ただ、結婚したり周囲公認の恋人となって、セックスが悪いことじゃなくなると、ドキドキもなくなり、本来の甘美な背徳感が失われてしまうでしょう?世間から憧れられるキラキラなカップルが、じつはセックスレスという現象はとても多いんです。けれど、同じ一人の“愛するパートナー”と豊かなセックスをし続ける方法はあります。社会的な体面を忘れて、あなたと彼だけの個人的な、お互いが満たされるような欲望に溺れることです。男は案外、いいセックスは社会的なものではないということをわかっています。というのも僕らはオナニーするとき、自分には隠されたレイプ願望があるとか、逆にエロいお姉さんから誘惑されたいとか、興奮するオカズによって自分の欲望を具体的に知ることになるから。女性の中にもそれを知ってる人はいるけれど、「オラオラ系の男に強引にされるのがいい」とか「彼を感じまくらせてみたい」とか妄想することはあっても、そんな欲求を恥ずかしがりながらパートナーにちゃんと伝えられる女性は(とくに若い女性には)少ない。それはたぶん親から受けた「女の子は性に対して真面目じゃなきゃいけない、奥手じゃないといけない」という呪いのせい。その呪いが、女性にとっても“自分を解放できる時間”であるべきセックスを、中途半端なものにしているんです。そんな時間を持てるからこそ日常を続けていけるのに。社会の通念として、女性は受け身な性です。その分、女性は自分の欲望に向かい合わずに成長し、積極的になろうとしても、女性として許される範囲の「まともさ」を志向がちです。しかし人間がセックスに求めているのは、“無我”=個がなくなることです。あなたと私しかいない場所で、蕩(とろ)けて、いまだけの存在になる。「変性意識状態」と呼ばれる、エゴのコントロールが利かなくなるような一種のトランス状態です。どちらかが一方的に奉仕するのではなく、ふたりが溶けあって、あなたの“やりたいこと”が彼の“してほしいこと”になり、彼の欲望があなたの欲望になる。それがマッチングです。性愛の快楽は、手に手を取って共犯となり一緒に社会の外に出られるふたりにしか得られないのです。にむら・ひとし1964年、東京都生まれ。著書・共著に『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(イースト・プレス)、『オトコのカラダはキモチいい』(角川文庫)、『どうすれば愛しあえるの幸せな性愛のヒント』(KKベストセラーズ)ほか多数。※『anan』2018年8月15・22日号より。インタビュー、文・三浦天紗子写真・Getty Images(by anan編集部)
2018年08月19日朝吹真理子さん7年ぶりの新刊だ。「『きことわ』を書き終わって、次回作の打ち合わせをするときには、『TIMELESS』という言葉はもう浮かんでいました。同時に、酒井抱一の『秋草鶉図』の中に不思議な距離感で並んでいる男女のイメージもあったのですが。そこがどこなのか、いつのことなのかがわからない。自分で紡いだ言葉を何度も読むことにより、次の1行が押し出されていく感覚で小説を書いているので、3~4行書いては戻って書き直すの繰り返し。6年そんな感じでした」誰かを愛しいと思ったことのない女性〈うみ〉は、高校の元同級生で被爆者の子孫であることを恐れている〈アミ〉と、恋愛感情も性的な関係もないままに結婚する。やがてふたりは交配し、生まれてきた子どもをアオと名付けた。その後アミは姿を消す。アオは、うみや祖母の芽衣子、血のつながらない姉のこよみ、うみや芽衣子の仕事関係の知り合いで奈良に住む桃さんや初子さんらと交流しながら17歳になっていた。江戸時代に江姫が火葬された場所から、南海トラフ地震が起きた2035年まで、浮かび上がっては沈んでいく、たくさんの人生と記憶と出来事。その物語構造は、朝吹さんが好きだという俵屋宗達の水墨画「蓮池水禽図」のイメージと重なる。「蓮の花が咲いて枯れるまでの時間の流れ、つまり違う時間に起きた場面を、同じ絵の空間の中に配置する“異時同図法”という手法で描かれているんです」2部構成をとる本書は、前半はうみの、後半はアオの語りで進む。風変わりな家族のサーガのようでいて、むしろ実に人間的な、温かな寄り添い合いにも見えるのだ。「うみは現代社会のルールでは薄情に映るかもしれませんが、人間の縁を血縁だとかでは縛らない人。生まれ変わるならクラゲになりたいと言ううみの心情を私なりに察すると(笑)、こんな家族のかたちも自然な流れだったように思うんです。クラゲは自分の力で泳ぐのではなく大きい海流に乗って漂うだけ。なんとなく吹き寄せられて集まり、また離れてもいい。その流れの中で交配の時期なら生殖し、個体としてはいずれ死ぬ。それはクラゲに限らず、やわらかな肉体をもった生き物の“ほがらかな宿命”という気がするんです」『TIMELESS』小説は、自分の中から湧き上がる感情やテーマを探すというより「これまで作られてきた芸術作品への応答のような気持ち」で書く、と朝吹さん。新潮社1500円あさぶき・まりこ作家。2011年「きことわ」で芥川賞受賞。エルメスの展覧会と連動し、物語「彼女と」を書き下ろす。ご希望の方は全国のエルメスブティックへ。なくなり次第終了。※『anan』2018年8月15・22日号より。写真・土佐麻理子(朝吹さん)大嶋千尋(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年08月17日マンガの目利きも、BL好きも、巷のマンガファンも、口々に絶賛。それが、鶴谷香央理さんの『メタモルフォーゼの縁側』だ。老婦人と女子高生が織りなす、何かに夢中になれる幸せな時間。「BLで何か描きたいと提案したら、担当さんが、じゃあ主人公は老婦人と高校生とか年齢差のあるふたりでどうですか、というアイデアを出してくれました」かくて決まった主人公が、75歳の寡婦・市野井雪と、17歳の隠れ腐女子の高校生・佐山うらら。ふたりがBLコミックを介して育む、年の差を超えた友情は……。アウトラインを説明すればこうなるが、もっとも心を射抜かれるのは、好きなものを素直に好きと言い合える幸福感や高揚感が、清々しく温かく繊細に描かれているところ。「ひとりぼっちの者同士が出会い、変わっていくさまをテーマにしようと思ったんです。雪さんにもうららちゃんにも一応、家族や友人知人はいるわけですが、心情的には『何となく自分はひとりぼっちだ』と思っている。そういう人って案外多い気がするんですね。だからこそ、好きなものを存分に語り合うちょっとした会話の中で、本当に心が通ったような気持ちになれたらすごく満たされますよね。そんな空気感をマンガで描けたらいいなと思ったんです」ご自身も、うららのように、好きなものに、内向きだったころが。「高校時代、BLにしても、私は好きなんだけれど、自分の趣味をどういうふうにさらけ出していいかわからなくて、素直に表現することにはためらいがありました。友達もちゃんといたんですが、同時に、同世代とうまくつき合うのって難しいなと感じてもいました」そんなモヤモヤ感描写がリアル。ちなみに、雪がうららをお茶に誘うところから、ふたりの交流は深まっていくのだが、「あれは私のひとつの憧れのようなものかもしれません。雪さんまではいかずとも、もう少し大人になったら、好きという思いにいろいろ素直になれるのかもしれないなと(笑)」うららのイマドキな家庭環境や、「うらっち」「つむっち」と呼び合う幼なじみ・紡や、彼の彼女との関係も、気になるところ。「BLもそうですが、恋愛も考えだすと何が何やらな感じで(笑)。模索しながら描いています」『メタモルフォーゼの縁側』タイトルは「けもの」(シンガーソングライター青羊(あめ)のソロプロジェクト)の楽曲「めたもるセブン」から着想。変化を自然に受け止める心を表現。KADOKAWA780円つるたに・かおり1982年生まれ。マンガ家。本書が初めてのコミックス。web「LIKE THIS」にて「don’t like this」を連載。なお、今秋にはコミックス第2巻を発行の予定。※『anan』2018年8月15・22日号より。写真・大嶋千尋(本)インタビュー、文・三浦天紗子©鶴谷香央理/KADOKAWA(by anan編集部)
2018年08月14日