来年上演の三浦春馬と生田絵梨花が共演する日本初演のミュージカル「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド~汚れなき瞳~」から、三浦さんと生田さんが写るメインビジュアルと全キャストが発表された。1959年、ルイジアナ。脱獄した一人の「男(ザ・マン)」は命からがら、ある納屋に身を潜める。偶然彼を見つけた少女スワローは、彼をイエス・キリストの生まれ変わりだと信じ、「死んだお母さんにもう一度会いたい」とお願いする。その願いを打ち明けられたザ・マンは、汚れなき瞳を持つスワローに自分の本性を打ち明けることができず、キリストとして過ごすことになる。日々を過ごす中でスワローは、次第に彼の正体に気づき始め、2人は男を追う街の人々との騒動に巻き込まれていく…。「オペラ座の怪人」「キャッツ」など数々の傑作を生み出したミュージカル界の大巨匠アンドリュー・ロイド=ウェバーと、ミートローフやセリーヌ・ディオンなどにヒット曲を提供し、ソングライターの殿堂入りも果たしているジム・スタインマンがタッグを組んだ感動作「Whistle Down the Wind」。ウェストエンドにて1000回を超えるロングランを記録した本作が、今回白井晃演出で待望の日本初演!主演の脱獄犯「男(ザ・マン)」は、ミュージカル「キンキーブーツ」のドラァグクイーン役で第24回読売演劇大賞の杉村春子賞を受賞した三浦さん。ヒロインで「男(ザ・マン)」をイエス・キリストの生まれ変わりだと信じる無垢な少女・スワローは、「ロミオ&ジュリエット」「レ・ミゼラブル」など様々な舞台に出演する「乃木坂46」生田さんが演じる。ほかにも、スワローの幼なじみエイモス役を平間壮一と東啓介がWキャストで、エイモスのガールフレンド、キャンディ役を鈴木瑛美子とMARIA-EがWキャストで演じ、さらにスワローの父親ブーン役を福井晶一が演じる。そして今回、追加キャストには矢田悠祐、藤田玲、安崎求の出演が明らかになった。そのほか、12名のアンサンブルと総勢16名の子役キャストが作品を彩る。なお、一般前売りチケットは12月14日(土)よりスタート。先行抽選エントリーは11月26日(火)より、先行先着販売は12月8日(日)10時より開始。さらに、3月の東京を皮切りに、富山、福岡、愛知、大阪にて全国ツアーが行われる。ミュージカル「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド~汚れなき瞳~」キャスト男(ザ・マン):三浦春馬スワロー:生田絵梨花エイモス:平間壮一/東啓介(Wキャスト)キャンディ:鈴木瑛美子/MARIA-E(Wキャスト)ブーン:福井晶一矢田悠祐藤田玲安崎求高原碧那/谷岡杏春(Wキャスト)井伊巧/岡本拓真(Wキャスト)上野聖太岡田誠加藤潤一郷本直也長谷川開松村曜生柏木奈緒美多岐川装子ダンドイ舞莉花永石千尋三木麻衣子吉田華奈(男女五十音順)橋本星/佐藤誠悟谷口寛介/羽賀凪冴植松太一/佐田照河内奏人/工藤陽介福井美幸/山本花帆奈緒美クレール/モーガン ミディー種村梨白花/成石亜里紗日高麻鈴/宍野凛々子ミュージカル「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド~汚れなき瞳~」は2020年3月7日(土)~29日(日)日生劇場にて上演。※富山、福岡ほか全国ツアーあり(cinemacafe.net)
2019年10月04日現在公開中の伊坂幸太郎原作映画『アイネクライネナハトムジーク』より、三浦春馬演じる佐藤が多部未華子演じる紗季にプロポーズするシーンの裏側を映したメイキング映像が到着した。公開されたメイキング映像では、佐藤が紗季にプロポーズをするシーンが切り取られ、緊張のあまり指輪の箱の向きを間違えてしまう細かい部分も演じ切る三浦さん。そして「オッケー」の声がかかると、嬉しそうにガッツポーズをする場面も収められている。一方、プロポーズを受ける紗季の表情も捉えられている。また場面は変わり、バス停で佐藤と紗季が会話をする映画終盤のこちらも大事なシーンの裏側も公開。ここでは、三浦さんが多部さんと今泉力哉監督にシーンの提案をし、その提案に熱心にうなずく2人の姿が。今泉監督の「僕の仕事は役者の芝居を見ること。役者を信じ、芝居を信じることで、勝手に魅力的になっていくものを大事にしたい」という演出が垣間見える一幕となっている。『アイネクライネナハトムジーク』は全国にて公開中。(cinemacafe.net)■関連作品:アイネクライネナハトムジーク 2019年9月20日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開©2019「アイネクライネナハトムジーク」製作委員会
2019年10月01日編集さんからの「『貧窮問答歌』を描いてください」というむちゃ振りに端を発し、資料との格闘の果てに生まれた奈良時代の異文化交流コメディ『あをによし、それもよし』。その著者が石川ローズさん。「編集さんから送ってもらった資料に、当時の一般庶民の生活のイメージ図があったんです。家の中での生活の様子が“ミニマリストの家にそっくりだ!”と思ったのが、欲のない山上(やまがみ)誕生のきっかけですね」現代の物にあふれた暮らしに辟易している山上が、奈良時代にタイムスリップ。下級役人の小野老(おののおゆ)の家で居候しながら、当時なら当たり前のシンプルライフを堪能するというのが物語のベース。衣食住のギャップも面白いが、そこは奈良時代!歌と出世の関わりが興味深い。2巻では、大伴旅人(おおとものたびと)、藤原不比等(ふじわらのふひと)など実在の有名な貴族歌人も多数登場。意外な歌の才能を発揮していた山上は、ちょっとした誤解から山上憶良になって出世していったり、「小野妹子(おののいもこ)はおれのおじいちゃん」という老のつぶやきに驚いたり。異文化交流モノとしてだけでなく、人間関係ドラマとしての面白さも加速してきた。「歴史が苦手な人にも読んでいただきたいので、歴史上の出来事ではなく、人間を軸にストーリーを作っています。実際に日本の基礎が出来上がろうとしているカオティックな時代だと思っていますので、人間関係もかなりカオスになる予定です」それにしても、資料の読み込みや時代考証、建築物や衣装などを描く難しさ、さらに文脈にのっとったギャグも織り交ぜて…と、読む方は楽しくても、描くのはハードルが高そうな本作。「1話当たり平均3冊くらい新しい資料を読みます。なので書きたいネタが多すぎて、でもページ数的に使えないので泣く泣く捨てるはめになっています。しかし、私はミニマリスト。泣かずに捨てます。いや、むしろ喜んで捨てています。逆に!」そう、石川さんご自身も、ミニマルな生活を実践中なのだとか。「断捨離が趣味で財布に入っていたポイントカードをすべて捨てたこともあります。モノが減るほど、自分の時間が増えるのを実感しました。とはいえ山上ほどは極められないので、山上のセリフは自分の理想と願望の叫びですね(笑)」3巻では名前だけ有名な長屋王(ながやおう)との交流が深まる!?続きも楽しみ!『あをによし、それもよし』2ミニマルな生活を愛するあまり面倒くさい理屈をこねる山上。成り行きから、歌人・山上憶良になってしまう第2巻。増刊『グランドジャンプむちゃ』で連載中。集英社600円©石川ローズ/集英社いしかわ・ろーずマンガ家。長崎県出身。大学では美術史専攻。2012年、Web「やわらかスピリッツ」にて、「やわらかロック」でデビュー。世界史検定2級に落ちるほどの歴史好き。※『anan』2019年10月2日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年09月26日「嵐」チームとゲストチームが体感型ゲームで対戦するフジテレビ系「VS嵐」。その9月26日(木)今夜放送回に、俳優の三浦春馬が参戦。三浦さんはプラスワンゲストとして嵐とともに、声優の神谷浩史やものまねタレントのりんごちゃんら「チームいい声」と対戦する。今回「嵐」チームが対戦するのは、「機動戦士ガンダム00」「おそ松さん」などのアニメから『ハンガー・ゲーム』シリーズといった洋画吹き替えまで多彩に活躍、その声で多くのファンを魅了する神谷さん。お笑いコンビ「麒麟」で自身の低音ボイスを生かしたネタを披露、俳優としても連続テレビ小説「なつぞら」などに出演する川島明。武田鉄矢、大友康平、井上陽水らのものまねで大ブレイクしたりんごちゃん。『サカサマのパテマ』などのアニメ作品を中心に活躍する声優の藤井ゆきよ、「アンタッチャブル」山崎弘也、芸人と同時に数多くの番組MC、ドラマ、映画などへ出演する「キャイ~ン」天野ひろゆきといった“美声”が売りのメンバーで構成された「チームいい声」。この美声チームに対抗するために「嵐チーム」にプラスワンゲストとして加わってくれるのが、先日まで放送されたドラマ「TWO WEEKS」で娘のために逃走を繰り広げる主人公を演じ、多くの感動を巻き起こしたほか、同作の主題歌「Fight for your heart」でみせた美しい歌声と華麗なパフォーマンスも話題をさらった三浦さん。今回は超人気声優と超人気俳優が共演ということで、対決の合間に突然「チームいい声」が声優を務め、嵐と三浦さんが演技してのラブストーリーが繰り広げられ、スタジオが爆笑に沸く一幕も。“美声対決”の行方をお楽しみに。今夜プラスワンゲストとして参戦する三浦さんが主演する映画『アイネクライネナハトムジーク』はTOHOシネマズ 日比谷ほか全国で現在公開中。伊坂幸太郎の恋愛小説集を映画化した同作、3度目の共演となる多部未華子をヒロイン役に迎え、仙台を舞台に三浦さん演じる佐藤と多部さん演じる本間紗季の恋を軸に、不器用ながらも愛すべき人々のめぐり会いの連鎖を10年に渡り描いていく。また神谷さんは、高杉真宙、佐野岳、堀田真由、板垣瑞生ら若手俳優が出演し、江戸川乱歩の「少年探偵団」シリーズを原案に映画化される『超・少年探偵団NEO -Beginning-』で怪人二十面相の声を担当。同作は10月25日(金)より新宿バルト9、渋谷TOEIほか全国にて順次公開となる。「チームいい声」と「嵐」&三浦さんの対決が繰り広げられる「VS嵐」は9月26日(木)今夜19時~フジテレビ系で放送。(笠緒)
2019年09月26日芸術を極めるとは、かくも苦しいものなのか。至高の芸術のためなら何をしても許されるのか。芦沢央さんの『カインは言わなかった』は、激情と慟哭の嵐の中を駆け巡るような読み心地の傑作長編。芸術の名の下に翻弄される、声なき声がこだまするミステリー。「その世界のカリスマ的な人物に認められることだけがすべてだと思い込み、食らいつき、歪んだ執着を燃やしていく。そういう師弟関係の確執を描きたいと考えていました。その場合、勝ち負けがはっきり見えるスポーツよりも、芸術のように何が正解かがわからない世界の方が物語の舞台としてふさわしい。そう考え、コンテンポラリーダンスや絵画などのモチーフを決めていきました」天才の誉れ高い芸術監督の誉田規一、彼のカンパニーのダンサー藤谷誠と尾上和馬、誠の異父弟で画家の藤谷豪。芸術に生きる者たちとその周辺で見守る者たちのドラマだ。「本作のテーマを突き詰める上で、聖書のカインとアベルの話は構図が似ていると思ったんです。弟のものは受け入れられ、兄のものは顧みられもしなかった神への捧げもの。何がいけないのかわからないから、兄の葛藤は深い。そのイメージを重ねました」芸術をめぐりもう一つ書きたかったのは、表現と当事者性について。「作中では誉田は震災で妻を亡くしていて、当事者としての経験が彼の代表作『オルフェウス』の高評価にもつながっています。しかし『こういう経験があるからリアリティがある』というのは、経験と作品とが安易に結びつけられているわけで。それが評価にも関わっていくことへの違和感。私も考え続けています」もちろん、ミステリー要素もたっぷりだ。冒頭には、誰が誰に刃を振るったのか特定できない血まみれのシーン。物語が動き出した直後から、出てくる人物にはみな「あの人ならやりかねない」動機がある。この悲劇の真相を追って、一気読み必至。「私はプロットよりも、人物造型にこだわります。日常の暮らしぶりなど小さなシーンは特に丁寧に書き、本当はどういう人間なのだろうと探っていく。本作には一線を越えた人と越えなかった人がいます。その線はとても太くくっきりとしていて、越えるまでが遠い。だからこそ越えた/越えなかった人の差はどこにあるのかをとても大切に書きました」芦沢央『カインは言わなかった』芸術監督の誉田が率いる「HHカンパニー」。新作公演の主役・藤谷誠が、公演3日前に突如連絡不通になる。裏側では何が起きているのか。文藝春秋1650円あしざわ・よう作家。東京都生まれ。2012年、『罪の余白』で野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。『許されようとは思いません』『火のないところに煙は』など、話題作を次々に発表。※『anan』2019年9月25日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年09月23日海岸線に沿って並ぶ白沢(はくたく)市と蝦蟇倉(がまくら)市。その架空の街で起きる事件が3つの章に織り込まれ、終章は全体をくくる大きな謎解きへとつながる。道尾秀介さんの『いけない』は、カタルシスに満ちた技巧ミステリーだ。架空の街で絡み合ういくつもの事件。二読、三読したくなる面白さ。「本書の第1章にあたる『弓投げの崖を見てはいけない』は、もともとは競作アンソロジーのために書いた中編でした。けれど、自殺の名所になっている崖や死亡事故が多発しているトンネルがある海沿いの土地、生まれ変わりを信じている新興宗教など、舞台設定や道具立てが、僕にとっても魅力的でした。いつかあの世界観を膨らませて書いてみたいと思っていたんです」第1章は、蝦蟇倉東トンネルの前で起きたある残忍な事件から始まる。その遺族であり悲しみに沈む安見(やすみ)弓子のもとに十王還命会(じゅうおうかんめいかい)の宮下志穂や、蝦蟇倉警察署の隈島(くまじま)刑事が訪ねてくる。いまだ犯人逮捕に至らない事件をめぐって、物語は二転三転。第1章最大の謎は、死んだのは誰かだ。「被害者は誰だったのかという点で、地図がすごく重要になってくる。今回は全面的に改稿し、街の地図も描き直し、さらに写真にして、最後のページをめくった後ろに入れるアイデアが浮かびました。各章の最後にそれぞれ違う写真が入っています。読み終わったあとに出てくる写真によって、それまで見えていた事件の顔ががらりと変わるというのは、僕にとっても初めての試みだったので、書いている間中、ずっとわくわくと緊張がありました」第2章では、5歳のときに家族で日本にやってきた中国人の少年・珂(カー)が語り手。不思議な〈あいつ〉の気配を感じる珂は、文房具店で、違和感を覚える光景を目撃してしまう…。各章とも独立した中編として楽しめるが、人物同士の関わりなどが見えてくるにつれ、どんなエンディングが待ち受けているのだろうと、ページを繰る手は否応なくはやる。ちなみに、各章の最後に置かれている写真はラフから道尾さんが自作。写真撮影にも立ち会い、ヒントのさじ加減にもこだわったそう。「各事件の謎解きの面白さと、消化不良にならない程度の真相の開示。それを両立させるのが難しかったですね。読了後に『まだ秘密がありそうだ』と、2度、3度と読んでもらえたら最高にうれしいです」みちお・しゅうすけ作家。『向日葵の咲かない夏』でブレイクを果たし、2010年、『龍神の雨』で大藪春彦賞、『光媒の花』で山本周五郎賞、’11年、『月と蟹』で直木賞を受賞。今年はデビュー15周年。『いけない』4つの各章題は、すべて「てはいけない」の6文字で終わっているだけでなく、文字数もすべて揃っている。細やかな技巧性にもはっとする。文藝春秋1500円※『anan』2019年9月11日号より。写真・土佐麻理子(道尾さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年09月06日縁あって東京・新宿区のはずれにある木造の一軒家の2階に間借りすることになった矢部太郎さん。大家である上品なおばあさんとの交流を基にフィクション化したコミック『大家さんと僕』は瞬く間にベストセラーとなり、手塚治虫文化賞短編賞という大きな賞を受賞するほど高い評価も得た。だから、ファンはずっと首を長くして待っていたのだ、続編を!しかし、当の矢部さんは、もうこの物語の続きを描くことはできないと思っていたし、描かないつもりだったそう。「でも大家さんが入院したことで、描けば、大家さんが元気になる気がして…。また読んでもらえると思ったことは大きかったです」かくて、連載に描き下ろしも加えてできあがった『大家さんと僕 これから』は前作以上にドラマがある。大家さんの思い出話の中に重苦しい戦争体験が出てきたり、矢部さんと大家さんがおしゃべりする場所が家ではなく病院になってきたりと、切なくなってしまう場面も多い。「僕も大家さんも年を取らず、変わらない毎日を描くというやり方もあったと思うんですが、最初の本が、大家さんと出会い、近づいていく話でした。きちんとした続編にするなら、大家さんとの別れと感謝を描かなければと思ったんです」涙腺を刺激するコマはいくつもある。大家さんが矢部さんを〈血のつながらない親族〉と紹介する場面はそのひとつ。「大家さんは軽いユーモアのつもりだったと思いますよ。そういう洒落た言い回しをする人でしたから」もちろんシャンソンショーや伊勢丹などに連れだってお出かけしたり、一緒にお茶を飲んだり、おなじみのほっこりした日常もたくさん。「そういえば僕から誘ったことはなかった。誘えばよかったですね…。タピオカミルクティーとか飲んでみたかったかな。大家さんはグミが好きだったからハマった可能性もありますね(笑)」その大家さんのビジュアルは、このマンガの大きな魅力でもある。「小さくて、ふんわりした髪型で、メガネにしたいというのはあったんです。“かわいいおばあちゃん”で検索して、出てきた画像を基に考えました。ファッションは、美智子さまの写真集を参考にしました」併せて、ファンブック『「大家さんと僕」と僕』もおすすめ。ふたりの関係がなぜ多くの人の心に刺さるのか、その秘密が垣間見られる。右・『大家さんと僕 これから』1100円左・『「大家さんと僕」と僕』1000円豪華執筆陣による寄稿やイラスト、描き下ろしマンガなどを収録した番外編。(共に新潮社)©矢部太郎/新潮社やべ・たろう1997年にお笑いコンビ「カラテカ」結成。芸人としてだけでなく、舞台やドラマ、映画で俳優としても活躍。初めて描いた『大家さんと僕』がベストセラーとなり、一躍、時の人に。※『anan』2019年9月4日号より。写真・土佐麻理子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年08月30日三浦春馬、芳根京子、比嘉愛未、三浦貴大、高嶋政伸ら豪華俳優陣が出演する現在放送中のドラマ「TWO WEEKS」。今夜8月27日(火)放送の第7話を前に、三浦さんと芳根さんからコメントが到着した。三浦さん演じる殺人の濡れ衣を着せられた主人公・結城が、白血病の娘・はなの命を救うために挑む、2週間の逃亡劇を描く本作。先週放送の第6話ラストでは、柴崎(高嶋さん)と繋がる黒幕の正体が早穂子(黒木瞳)であることが明らかに。そして、いよいよ物語は今夜の第7話から第2章“逆襲編”に突入!ついに行動を共にすることになった結城と楓。宿敵・柴崎、黒幕・早穂子に立ち向かっていくが、警察、検察、柴崎一派、さらには病院で結城を待つすみれやはなを巻き込んだ策略と裏切りの数々が繰り広げられる。結城役の三浦さんは「敵対する登場人物たちの気持ちを揺さぶられるようなストーリーも描かれていく」と、後半戦を楽しむキーポイントを明かし、「それぞれの出演者の皆さんとの芝居のキャッチボールを僕自身も楽しみにしていますし、どんなシーンになるのかが見どころになるんじゃないかなと思います」とコメント。一方、母のような存在であった早穂子の裏の顔を知ることになった楓役の芳根さんは「ついに2人が共に反撃を始めます。それによって、視聴者の方には“散らばった点"に見えていた要素が一つに繋がっていきます。物語はここからさらにスピードがあがっていきますし、最後までこのドキドキ感や爽快感は失わずに進んでいきます」と今後の展開について説明し、さらに「第7話、めちゃくちゃ面白いです!」とアピールしている。第7話は、灰谷(磯村勇斗)が襲いかかり、デジカメは柴崎の手に渡ってしまう。一方、何者かが結城の友達を名乗り、はなの病室に柴崎が侵入。はなを利用されたと怒り心頭の有馬(三浦貴大)は、柴崎のオフィスへ向かうも、はなが確実に移植手術を受けられるよう、ある取引を持ちかけられる。そして、デジカメを奪われ対抗手段を失った結城は、楓に出頭すると告げる――というあらすじだ。「TWO WEEKS」は毎週火曜日21時~カンテレ・フジテレビ系にて放送。(cinemacafe.net)
2019年08月27日2017年、日本人初の「ベルリン国際映画祭テディ審査員特別賞」に輝いた『彼らが本気で編むときは、』をはじめ、『かもめ食堂』『めがね』など、ヒット映画を生み出してきた荻上直子さん。このたび、自らの脚本をもとに書き上げた小説が『川っぺりムコリッタ』だ。川沿いの風変わりなアパートに集う、優しくて不器用な人々の幸せ探し。誰とも関わらず、ひっそりと生きていくのだという虚無感を抱えたムショ帰りの山田。孤独な暮らしが始まるはずが、住まいを、昭和の匂いを漂わせた川沿いの「ハイツムコリッタ」に決めたことで、住人たちとの思いがけない出会いが生まれて…。「山田の人物像やストーリーのヒントは、いくつかのきっかけが重なったことでした。何年か前に見た、カフェ難民のドキュメンタリー。知人の孤独死を知ったことも大きかったですね。貧困、虐待、孤独死など、自分とは遠いものと思っていた事柄が、案外身近なことかもしれないと感じるようになったんです」「ムコリッタ」という風変わりな呼び名のアパートに住んでいるのはみなワケありな人々。大家の南さんはシングルマザー。場面緘黙(かんもく)症の子どもとふたり暮らしの溝口親子。なかでも、仕事らしい仕事もせず小さな畑で野菜を育てている隣人の島田は、厚かましいところはあるが、そのお節介ぶりが山田の救いになっていく。「いわゆる世間から落ちこぼれた状況にいると、互いによそよそしくて隣人が何をしているかもわからないという方が現実には多そうですが、私は『むしろこんな人情があったらいいな』と思ってしまう。私の映画がどこかファンタジックだと言われるのはそういうところかなと」また、山田は社会復帰早々、行政担当者から、ずっと会っていなかった父親の遺骨引き取りを打診される。死んだ父親に対する複雑な思いが、周囲とのつながりを経て少しずつ変わっていくのも読みどころだ。「脚本の場合は、登場人物の心理を多く語らず、むしろ彼らが何をするかで表現します。でも小説ではもっと彼らの心理を突き詰めねばならず、自分でもわかってなかった部分が発見できました。映画を撮るのはこれからなので、小説を書き上げたことで、撮る映画も何か変わった部分があるかもしれないです」涙腺をツンツン刺激してくるこの小説。映画でも絶対観たい!『川っぺりムコリッタ』 30歳の誕生日を刑務所で迎え出所してきた山田。就職先は、北陸の塩辛工場だ。崖っぷちにいる人々の温かな交流をユーモアを交えて描く。講談社1500円おぎがみ・なおこ映画監督。’94年に渡米し、南カリフォルニア大学大学院映画学科で映画制作を学ぶ。’04年、劇場デビュー作『バーバー吉野』でベルリン国際映画祭児童映画部門特別賞を受賞。※『anan』2019年8月28日号より。写真・土佐麻理子(荻上さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年08月23日三浦春馬が本日8月7日、シングル『Fight for your heart』をリリースする。三浦は幼少時より俳優として数々の作品に出演し、2007年には映画『恋空』で日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞。その後も俳優として多くの実績を残し『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』や『コンフィデンスマンJP』など多くの映画や話題作に出演してきた。さらにミュージカル作品での活躍も記憶に新しい。特に2016年に上演されたブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』での演技は舞台関係者からも絶賛され、それもあってか演目は再演が決まるほどの人気となった。そのためにニューヨークでシンディ・ローパーの専属トレーナーに指導を受けたのだという。歌手デビュー作となる『Fight for your heart』は自身が主演する現在放送中のドラマ『TWO WEEKS』(カンテレ・フジテレビ系)の主題歌。作曲はEXO、SHINeeなどをプロデュースするJeff Miyahara、作詞は三浦大知や安室奈美恵などに詞を提供している岡嶋かな多によるもの。高音域のサビを伸びやかに歌いあげたる三浦の声を聴くことができる。番組公式サイトには「ミュージカルなどでは挑戦したことがなかった歌い方、音域、フェイクを求められ、それに精一杯応えていくプロセスがとても刺激的で興奮しました。この曲を聴いていただくことがキッカケとなり、ドラマに関心を持ち、観てくださる方がいれば嬉しいです」と本人のコメントが掲載されている。■リリース情報三浦春馬『Fight for your heart』8月7日発売1. Fight for your heart2. YOU
2019年08月07日フジテレビで日曜深夜に放送されている「Lovemusic」。その8月4日(日)深夜放送回に、俳優で歌手としてもCDデビューを果たす三浦春馬がゲスト出演。三浦さんが森高千里、「アンジャッシュ」渡部建の2人のMCと繰り広げる音楽談義とは!?「ごくせん」や「ブラッディ・マンデイ」『君に届け』などがヒットしたことで若手俳優として大きな注目を集めると『永遠の0』では第38回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞するなど実力派へと成長。ドラッグクイーンを演じた舞台「キンキーブーツ」などその活動の幅は映像作品だけにとどまらずマルチな才能をみせる三浦さん。現在放送中の主演ドラマ「TWO WEEKS」では主題歌「Fight for your heart」を歌唱。ハイトーンボイスでこれまでにない魅力を放ち視聴者をざわめかせるなか、「FNSうたの夏まつり」では同曲を生歌唱。圧倒的なダンスと俳優ならではの表現力で見る者を驚愕の渦に巻き込み、放送後のSNSには興奮冷めやらぬツイートが溢れる事態となった。そんな三浦さんがトークパートで音楽愛を熱く語る。大ファンの「ゆず」との共演秘蔵映像や初めて買ったCDなど、“アーティスト”としての三浦さんの姿を垣間見られるチャンス。またデビュー15周年を迎えニューアルバム「いちご」を7月31日に発売したばかりの木村カエラが、アルバムに収録されているあいみょん作詞作曲による新曲「Continue」を披露する。三浦さんが主演、主題歌も担当するドラマ「TWO WEEKS」は、殺人の濡れ衣を着せられながら白血病の娘を救うために逃亡する主人公・結城大地を三浦さんが、結城が関わった事件で父を亡くし、その真実を求めて彼を追う新米検事・月島楓を芳根京子、結城の元恋人・青柳すみれを比嘉愛未、すみれの婚約者で結城を追い詰めていく刑事・有馬海忠を三浦貴大、結城を狙う殺し屋・灰谷を磯村勇斗、結城に罪を着せてきた悪徳実業家・柴崎要を高嶋政伸、楓を陰で支援する国会議員・久我早穂子を黒木瞳がそれぞれ演じる。ドラマ「TWO WEEKS」は毎週火曜21時~フジテレビ系で放送中。三浦さんが歌う主題歌「Fight for your heart」は8月7日(水)に発売。「Lovemusic」は8月4日(日)深夜24時30分~フジテレビで放送。(笠緒)
2019年08月04日三浦春馬が主演する火9ドラマ「TWO WEEKS」7月16日の初回放送の劇中で解禁された、三浦さん自身が歌唱する楽曲「Fight for your heart」が待望の配信スタート、MUSIC VIDEOも公開された。「TWO WEEKS」は三浦さん演じる殺人の濡れ衣を着せられた主人公・結城大地が、白血病の娘の命を救うため“2週間の逃亡劇”に挑むタイムリミットサスペンス。本作で自身初めてのドラマ主題歌を担当している。この楽曲には、「EXO」「SHINee」などをプロデュースするJeff Miyaharaが作曲、三浦大知や安室奈美恵などに詞を提供している岡嶋かな多が作詞。力強いピアノの旋律とストリングス、そして普段の芝居からは想像もつかない三浦さんのハイトーンボイスで、疾走感のある楽曲に仕上がっている。併せて、8月7日(水)発売の「Fight for your heart」の初回限定盤と通常盤のジャケット写真、アーティスト写真も公開され、“表現者”三浦春馬の新たな魅力を存分に感じ取れるビジュアルワークが完成。また、「Fight for your heart」のMUSIC VIDEOは、多忙なスケジュールの合間を縫って都内近郊のスタジオと廃墟ビルで撮影され、妖艶な歌唱シーンや三浦さん自身のアドリブが披露されたコンテンポラリーダンスにグイグイ惹き込まれる映像となっており、まさに真骨頂ともいえる映像美で構成されている。三浦春馬「Fight for your heart」は配信中、初回限定盤(CD+DVD+Photo Book)、通常盤(CD)は8月7日(水)よりリリース。「TWO WEEKS」は毎週火曜21時~カンテレ・フジテレビ系全国ネットにて放送中。(text:cinemacafe.net)
2019年07月17日「嵐」チームとゲストチームが体感型ゲームで対戦するフジテレビ系「VS嵐」の7月11日(木)放送回に、三浦春馬、芳根京子、三浦貴大、近藤公園、原沙知絵、高嶋政伸ら新火曜ドラマ「TWO WEEKS」キャスト陣が参戦。「嵐」チームと熱戦を繰り広げる。今回「TWO WEEKS」チームとして参戦するのは、『銀魂2』から「オトナ高校」まで幅広い役柄を演じる演技力と、「キンキーブーツ」でみせた抜群のステージングセンスで、俳優としての可能性を広げ続ける三浦春馬さん。連続テレビ小説「べっぴんさん」のヒロインに抜擢され大きな注目を浴び、昨年は『累 -かさね-』と『散り椿』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するなど急伸中の芳根さん。『進撃の巨人』『怒り』などの映画から「リバース」「高嶺の花」などのドラマまで多数の作品に出演、大河ドラマ「いだてん」も話題の三浦貴大さん。「獣になれない私たち」や『パンク侍、斬られて候』や、数々の舞台でも知られる近藤さん。「表参道高校合唱部!」「特捜9」シリーズなどの原さん、「先に生まれただけの僕」『響 -HIBIKI-』などの高嶋さんといった面々。今回は「クリフクライム」に春馬さんと貴大さんの“三浦コンビ”が挑み好プレーを見せる一方、「嵐」チームからは櫻井翔と松本潤の2人が挑戦。三浦コンビのプレーに触発(?)されテンションが上がる櫻井さんがまさかのプレーを披露。出演者一同大爆笑の番組名物“クリフクライム櫻井劇場”に注目。また今回は人気特別対決「擬音de嵐」も実施、白熱した対決を繰り広げる。新火曜ドラマ「TWO WEEKS」は三浦さんが殺人の濡れ衣を着せられながら白血病の娘を救うために逃亡する主人公・結城大地を演じるタイムリミットサスペンス。芳根さんが結城を追う新米検事・月島楓を、三浦貴大さんが結城を追い詰めていく刑事・有馬海忠を、近藤さんが東京地検・港南支部の検察事務次官・角田智一を、高嶋さんが悪徳実業家・柴崎要をそれぞれ演じるほか比嘉愛未が結城の元恋人・青柳すみれ役で、磯村勇斗が冷酷な殺し屋・灰谷役で出演する。火曜ドラマ「TWO WEEKS」は7月16日より毎週火曜日21時~カンテレ・フジテレビ系にて放送。※初回15分拡大「VS嵐」は7月11日(木)19時~フジテレビ系で放送。(笠緒)
2019年07月11日海外でも読まれている日本の小説はハルキだけじゃない。国内出版社の努力によって、さまざまな小説が各国の言語に翻訳され、人気を博しているのです。今、日本の小説の翻訳版が海外で健闘している。昨年末には村田沙耶香さんの『コンビニ人間』が『ニューヨーカー』誌の「The Best Books of 2018」の一冊に選出、今年は横山秀夫さんの警察小説『64』がドイツ・ミステリ大賞海外部門で1位を獲得。両作品の版元・文藝春秋のライツビジネス部で海外への翻訳出版を手掛ける新井宏さんによると、「欧米圏で他国の小説への関心が高いのはまず、フランス。アメリカよりイギリスです。『64』もイギリス版が英国推理作家協会賞の翻訳小説に贈られるインターナショナル・ダガー賞にノミネートされたことで各国が興味を示しました。村田さんの場合は以前、短編が英国の文芸誌『GRANTA』に掲載されたことで関心を集めていました」アジア圏でも日本文学は人気で、多くの作品が中国、韓国、台湾などで翻訳されている。「海外では再販制度がない、出版社によって出す本のジャンルが違う、1作家1出版社が基本など、日本と出版システムが全く違う。そこを意識したスキームづくりをしてきました。日本のコンテンツは多様性があり質が高いので、まだまだ可能性はある。“記念出版”ではなくビジネスとして成功したいと思っています」『CONVENIENCE STORE WOMAN』SAYAKA MURATA$20(Grove Press)米雑誌『ザ・ニューヨーカー』が選ぶThe Best Books of 2018選出2016年の芥川賞受賞作。コンビニでのアルバイト歴が実に18年となる、古倉恵子、36歳。恋愛や結婚に興味はなく、仕事を愛し日常に満足しているが、周囲はその生き方に批判的で…。現代社会における生き方と価値観の模索がアメリカでも共感を呼んだ模様。『64』HIDEO YOKOYAMA28ユーロ(ATRIUM)ドイツミステリ大賞海外部門1位たった7日間しかなかった「昭和64年」に起きた少女誘拐殺人事件。時効が迫り、元刑事で今は警察の広報官の三上は再び事件と対峙する。警察組織、記者クラブなど日本特有の文化、風習が盛り込まれた推理小説が海外で高評価を獲得するのは嬉しい驚き。あらい・ひろし文藝春秋・ライツビジネス部。文芸編集部を経て現職。日本の小説を欧米で翻訳出版することは、作家にとって大きな夢。その実現のためのサポートをするのがライツ担当の仕事です。※『anan』2019年7月10日号より。写真・中島慶子取材、文・瀧井朝世、三浦天紗子(by anan編集部)
2019年07月08日舞台は、所属するスタッフが女性ばかりという〈ミツコ調査事務所〉。所長・山之内光子の、初恋相手を探すというアイデアで、評判を呼んでいる。1話め「エンゼル様」の依頼者は、30年以上音信不通だった知り合いを探したいという末期がんの人物。2話め「トムクラブ」の依頼者は、自分が所有していたマンションを買った男が犯罪に関わっていると疑い、素性を知りたがる。そんなワケありな人探しミステリーとして始まる『初恋さがし』。しかし、イヤミス女王の真梨幸子さんが書く小説が、それで終わるはずがない。ページが進むにつれ、じわじわゾワゾワと違和感が迫ってくる。「初恋って宝物のように思われているふしがありますが、はたから見れば、たいした思い出ではなかったり。ただ当人にとっては忘れがたい気持ちがするし、すみずみまで詳細に覚えているもの。だから、小説や映画でも何度も描かれてきましたが、甘酸っぱくてステキな話ばかりではないですよね。成就はしないし、暗澹たる思いを抱えて終わるのがほとんど。だから、イヤミスに似合うんじゃないかと思ったんです。考えてみれば私自身も、あれが初恋かもと思う相手が特撮ヒーロー『人造人間キカイダー』のジロー。2.5次元です。決して知られたくなかった秘密だったんですが、クラスの男の子たちにバレて、恥ずかしくて。いまもトラウマです。あ、初恋って初トラウマのことかもしれませんね(笑)」実際、依頼者の心にあるのは、懐かしさからくる思い出探しではない。「たとえば『エンゼル様』は、一種の復讐をもくろむ更年期世代の女性たちの物語ですし。私は更年期は第二の思春期だと思っているんです。ホットフラッシュなど体の不調が話題になりますが、気分の浮き沈みがあって、ふと母親とか元彼とか誰かに言われたイヤなことを思い出したりと、メンタルの不調も大きい。それでいて、知恵も財力もある年ごろなので、復讐しようと思えばできてしまう。思春期よりずっとやっかいで危険だな、と思います」7つある物語に、少なからずつながりがあるとわかってからはジェットコースター。緻密な設計図がありそうなのに、いつも登場人物が憑依して書かされている感覚で、結末もなりゆきまかせというのが驚きだ。「最初狂言回し的な役だったミツコの存在感がどんどん増していったのは、真犯人に私が乗っ取られたせいかも。イヤミスの真骨頂は、主役がひどい目にあうところですが、そのあたりのサプライズはちゃんと仕込んでいます。担当さんにも『だまされました』と言われて、快感でした」秋ぐらいには、前々から興味があったという法廷画家を主人公にした新刊が出る予定。「また、最近、日課として欠かさないのが、住宅情報サイト『スーモ』と事故物件の情報提供サイト『大島てる』の物件チェックですね。執筆前の儀式になってます(笑)。いずれは、不動産業界のダークな部分を絡めたイヤミスにも挑戦したいです」まり・ゆきこ1964年、宮崎県生まれ。作家。2005年、『孤虫症』でメフィスト賞を受賞。’11年に文庫化された『殺人鬼フジコの衝動』が大ベストセラーに。近著『ツキマトウ』ほか、著書多数。『初恋さがし』東京・高田馬場駅にほど近い〈ミツコ調査事務所〉のウリは〈初恋の人、探します〉。でもきょうも依頼人は一風変わった人探しをご希望で…。新潮社1600円※『anan』2019年6月19日号より。写真・土佐麻理子(真梨さん)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年06月14日古今東西の英雄や武将、芸術家など著名人たち923人の死にざまを、淡々と綴った山田風太郎の大著『人間臨終図巻』。長く読み継がれてきた稀代の奇書を、さらに楽しむためのマンガが登場。それが、サメマチオさんの『追読人間臨終図巻』だ。「原作本との出合いは中学2年のとき。高校生のいとこの文化祭のバザーで、衝動買いしたんです」タイトルから、偉人たちの伝記を恭しくまとめたものだろうと想像していたサメさんは一読して面食らう。「“臨終”とあるから、厳粛に人の死を取り扱った、もの寂しげな語り口かと思いきや、誰がどう死んだかの描かれ方があまりにさらりとしていたので、期待をちゃぶ台返しされたような気分でした(笑)。でも、死は重いもの、というのがそもそもステレオタイプな見方だったのかもしれない。いい意味での軽さに、目が啓かされたところがありました」サメさんの死生観にも大きく影響した作品をマンガにするに当たっては、迷いもあったという。「原作の魅力は、風太郎節ともいうべき文章の面白さが大きいんですね。マンガ化するのにヘタに言葉を抜粋したら、その世界観が壊れてしまう。再構築するためのコンセプトが何か必要だろうと思いました」それを考えながら、生年の時系列で人物を並べ直しているうちに、紀元前から昭和まで、時代ごとにくくるスタイルを思いつく。「原作は没年齢でカテゴライズしているので、若くして活躍した人と晩成型とでは歴史に名を残す位置にひらきが出ます。年代順に並べたことで意外な発見も多かった。たとえば伊藤博文と沖田総司は3歳しか年が違わないんですよね。そうやって歴史的評価を併せ、年代順に組み替えてみると、本編の面白さとは違った“追読”の意味が出てくるなと。そうした副読本的な意識で描いているので、人物や事件の歴史的背景など原作にはない情報も入れています。追読版では原作とは異なる読後感になるだろうと思いましたが、それはそれ。私のマンガをきっかけに、原作に返ってほしいという気持ちがあるので」山田風太郎の遺稿などを参考に、裏話なども織り込むつもりだったが、「風太郎先生はボツ原稿や資料のメモ書きをほぼ遺していなかった。そのあっさり加減は、さすが人間臨終図巻の著者の面目躍如ですね(笑)」『追読人間臨終図巻』I写真資料なども駆使し、歴史的人物の顔は似せるように意識。文芸誌『読楽』に現在も連載中で、923人の完結までに15年を要するという大プロジェクトだ。徳間書店1500円©サメマチオ/徳間書店サメマチオマンガ家。2010年、第1回ネクスト大賞を受賞した『マチキネマ』で鮮烈デビュー。近著に、OLのはつみが、仕事で得た臨時収入で、プチ贅沢体験をする『はつみ道楽』(宙出版)※『anan』2019年6月19日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年06月12日主演の三浦春馬をはじめ、芳根京子、比嘉愛未、三浦貴大、高嶋政伸、黒木瞳と豪華俳優陣が顔を揃える夏ドラマ「TWO WEEKS」から、ティザー映像が到着した。本作は、殺人の濡れ衣を着せられた三浦さん演じる主人公・結城大地が、白血病の娘の命を救うために挑む、2週間の逃亡劇を描くタイムリミットサスペンスドラマ。ほかにも、芳根さんが結城を追う新米検事、比嘉さんが結城の元恋人として出演する。すでにクランクイン済みで、現在順調に撮影中の本作。三浦さんが汗だくで駆け回り、飛び降り、絶体絶命の窮地に追い詰められるというスリリングなシーンが盛りだくさんだそうだ。放送に先駆けて今回到着したティザー映像は、殺人の濡れ衣を着せられた結城が、逃亡する姿が描かれている。「TWO WEEKS」(=14日間)をモチーフに制作された本映像。14からカウントダウンが進み、緊迫感ある仕上がりになっている。「TWO WEEKS」は7月16日より毎週火曜日21時~カンテレ・フジテレビ系全国ネットで放送。※初回15分拡大(cinemacafe.net)
2019年06月12日栗本薫名義で主に小説を、中島梓名義では評論やエッセイなどを手がけ、生涯で400冊以上の著作を発表した。2019年はそんな彼女の没後10年、彼女の代表作にして世界最長の物語『グイン・サーガ』(正篇130巻、外伝22巻、著者の逝去により未完)誕生から40年という節目に当たる。その偉業や素顔を知れる2冊『世界でいちばん不幸で、いちばん幸福な少女』と『栗本薫と中島梓世界最長の物語を書いた人』が立て続けに刊行された。夫であり、元担当編集者で、天狼プロダクション代表。彼女の最大の理解者だった今岡清さんは、「ほかに類がないといえば、中島梓という人ほど類のない人はいないと思います」と振り返る。「1時間に400字詰め20枚の原稿を書き、ときには長編1冊を1週間足らずで仕上げました。それもSF、ファンタジー、ミステリー、時代小説、ハードボイルド、評論などジャンルも多岐にわたります。音楽に手を染めてからは、ミュージカルの挿入歌を含めれば恐らく400曲は作曲もしていたと思います。それだけを見れば希有な才能に恵まれた成功者に見えることでしょう。ところが、日常生活は精神的な葛藤にさいなまれ続けて、それから脱するために苦闘しているという人でもありました。成功者の評伝ではなく、私の奥さん、中島梓/栗本薫がこんな人であったという思い出を綴った本です」尽きない泉のような才能を持ちながら、日常生活では繊細すぎ、また摂食障害などに苦しんだ女性を、心から愛していたことが伝わってくる。里中高志さんは大学1年で『グイン・サーガ』に出合い、傾倒したそう。熱意で出版許可にこぎつけ、3年の月日をかけて取材、執筆した。「家族、同級生、元恋人、編集者、舞台関係者……各人の知る彼女の姿は、みな少しずつ違っています。その証言の数々と、膨大な著作からの引用を積み重ねるのは、広大な浜辺の砂から神殿を作っていくような、果てのない作業でした」なかでも、常に自分の居場所探しをしていたような孤独感を持ち続けたことに触れていたのは印象的だ。「これだけの時間を費やしても、まだまだ私が迫れなかった彼女の内なる宇宙があったかもしれませんが、それでも、いまの私にできた精一杯です。アンアンを読む若い女性たちにも、自らの夢を全力で追い求め、こんなにも濃密な人生を送った人がいたことを知ってほしいと思います。現実よりも美しい世界が、人々の想像の中に存在するのでは……。彼女はいつまでも、そんな夢見がちなすべての人たちの味方なのですから」ファンはもちろん、彼女を知らなかった人も、きっと夢中になるはず。敬愛する妻を見守り続けた夫からの長いラブレター。『世界でいちばん不幸で、いちばん幸福な少女』今岡 清共に暮らし始めたころから死別するまで、主に結婚生活について綴ったエッセイ。彼女の心の中の赤ちゃんを拾い上げ、ふたりで育てたような結婚だったと綴っている。早川書房1500円著者の生涯を知りたいならまずはこちらがおすすめ。『栗本薫と中島梓世界最長の物語を書いた人』里中高志幼少期から最晩年までを、時代の変遷とともに追う。母親に対する複雑な思いが創作や人生にどう影響したかなど知られざる一面に驚き、作品を読む目も変わるかも。早川書房1900円くりもと・かおる/なかじま・あずさ本名は今岡純代。1953年生まれ、東京都出身。早稲田大学卒業後、執筆活動に入る。他の代表作に『魔界水滸伝』(正伝20巻、外伝4巻)、ミステリー作品「伊集院大介」シリーズなど。2009年死去。※『anan』2019年6月12日号より。写真・中島慶子取材、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年06月11日自分の性が突如、変わってしまう。そんな究極の変化に向き合う主人公の心理をていねいに追っていく日暮キノコさんの『個人差ありマス』。とにかく先が気になるコミックだ。「こうした性転換モノは10代のラブコメ的な世界ではあるけれど、30代既婚の社会人が主人公のは見たことないぞ、好きなエロも織り込めるぞ、と気づきました(笑)。せっかくの週刊誌連載なので、頭で難しく考える前にやってみようと」100均チェーンの商品企画部で働く磯森晶と、2歳年上の妻・苑子は、結婚5年目ですでにどこか冷めた関係。それを寂しく思っていた晶は、ある晩、九死に一生を得る。同時に世界でもめずらしい〈異性化体質〉であることが判明。苑子のサポートで、化粧や下着など不慣れな「女性の日常」を始めるが、晶自身は、女ふたりで再出発することとなった結婚生活にも心が揺れていて…。ところが2巻では、さらに仰天の出来事が!夫婦という共同体に、セックスや子作りなど性の問題が、ますます複雑に立ちはだかる。ちなみに、LGBTをめぐる空気は実社会でも変わりつつあるものの、なおデリケートな問題。だが本書では、とても温かく描かれている。「性的マイノリティについて問題提起しようと始めたわけではなく、あくまでエンタメとして楽しんでもらえれば。理解があっても当事者の気持ちを完全に体現することはできないので、LGBTの方々と実際にお話しさせていただき、どういう表現なら失礼に当たらないかなど腐心しています。前向きな物語にしていきたいと思っています」その取材や、描くことを通してなお強くなった思いがある。「私自身、可愛い女の子とお食事して楽しくお話ししたいな、という気持ちもあるんですね。名前が付くほどの感情ではないけれど、男や女である前に『ひとりの人間じゃん』と思うし惹かれる相手に性別って関係ない。性別でくくって話されると逆に『一緒くたにしないで』と反発したくなることもあります。それくらい性は多種多様だし、個人差あります、なんじゃないかと思うんです」『個人差ありマス※』2脳出血から奇跡的に生還した32歳の磯森晶は、体が〈異性化〉してしまったことにとまどう。そのとき妻で作家の苑子は…。『モーニング』で連載中。講談社610円※マスはに斜線ひぐらし・きのこ神奈川県出身。別冊フレンド新人まんが大賞の佳作を受賞し、2005年にデビュー。少女誌で活躍した後、青年誌での初連載『喰う寝るふたり 住むふたり』が話題に。※『anan』2019年6月5日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年06月01日若手女優・芳根京子が、三浦春馬主演の夏ドラマ「TWO WEEKS」でヒロインを務めることが決定。三浦さんとの共演は、女優デビューとなった「ラストシンデレラ」以来、本格的な共演は初めてとなる。本作は、三浦さん演じる殺人の濡れ衣を着せられた主人公・結城大地が、白血病の娘の命を救うために挑む“2週間の逃亡劇”を描いたタイムリミットサスペンス。■芳根京子、父の復讐に燃える…「べっぴんさん」でヒロインに抜擢され、その後は『心が叫びたがってるんだ。』『累 -かさね-』「海月姫」などに出演、篠原涼子の娘役で出演する『今日も嫌がらせ弁当』がもうすぐ公開を控える芳根さん。今回彼女が演じるのは、大学卒業後すぐに司法試験に合格した秀才で、テキパキと仕事をこなす反面、おっちょこちょいな部分もある新米検事の月島楓。8年前の殺人未遂事件がきっかけで父親を亡くし、家庭を壊された楓。検事となり、仕事をこなしながら、事件の黒幕に復讐するため、独自に捜査を進めている。しかし、楓のスパイとして黒幕に迫った協力者が変わり果てた姿で発見。遺体発見現場に居合わせたのは結城大地。結城が逃亡したとの知らせを聞いた楓は、事件の担当検事に名乗り出る。本作では、逃亡する結城とは別に、楓の視点からも描かれていく。■「感じたままの感情を出していこう」今回が検事役初挑戦となる芳根さんは「今までの私のイメージに無い表情をたくさん見せられたら」と話し、様々な面を見せる役どころについて「楓は私より年上の25歳ですが、監督からは『大人びた演技でなく等身大でやってください』とおっしゃっていただきました。楓にとって受け入れられなかったり、信じられないことがたくさん起きる中で、感じたままの感情を出していこうと思います。検事というお仕事の責任を感じながらも背伸びし過ぎず、『正義って何だろう?』と自分の中で問いながら演じていきたいと思います」と意気込み。また物語の印象を「どんどん先が気になる」と言い、「『結城が娘を救うために逃亡する』という話を軸に、それぞれがどういう行動を起こすのか、私自身も楽しみです」とコメント。デビュー作以来の共演となる三浦さんについては「デビュー作は自分の中ですごく大事で大きな存在で、そのときご一緒した三浦さんともっと近い役で共演できることがすごくうれしいです」と喜び、「結城と楓は、最初は別々に動きますが、徐々に一緒のシーンも増えていくと思いますのでたくさんコミュニケーションを取らせてもらえたらなと思います」と語っている。■あらすじ人生に希望を持たず、毎日をただ刹那的に過ごしている結城大地(三浦春馬)の前に、かつて人生で唯一心の底から愛していながらある出来事により一方的に別れを告げた女性が現れる。そして彼女から、結城との娘を産んでいたこと、そして、“はな”という名の8歳になるその娘が白血病であることを告げられる。はなを前に、父親としての愛おしさを覚える結城。幸運にもドナーに適合したことで、再び自分が生きる意味を見いだす。一方、月島楓(芳根京子)はかつて父親を死に追いやった8年前の事件の黒幕に復讐するため、検事の道に進んだ現在も独自に捜査を進めていた。そんな中、楓のスパイとして黒幕に迫った協力者が変わり果てた姿で見つかる。逮捕されたのは、遺体発見現場にいた結城だった。はなの手術まで2週間。このままでは骨髄移植手術を行えないと考えた結城は、娘の命を救うため決死の逃亡に身を投じる…。「TWO WEEKS」は7月、毎週火曜日21時~カンテレ・フジテレビ系全国ネットで放送予定。(cinemacafe.net)
2019年05月28日俳優・三浦春馬には、10代も30代を目前にしたいまも変わらないイメージがある。爽やかさ、誠実さ、色っぽさ、無邪気さ…。それらを手放すことなく三浦さんが追い求めているのは「多面性」だと言う。この日のインタビューでも何度となく「多面性」「多面的」という言葉が聞こえてきた。“天才恋愛詐欺師”ジェシーのキャラクターとは?そんな三浦さんが、映画『コンフィデンスマンJP ーロマンス編ー』で演じるのは、天才恋愛詐欺師のジェシー。長澤まさみさんの演じる美しきコンフィデンスウーマンのダー子と過去に恋仲だった!?というワケありキャラクターだ。「僕は映画からの参加だったので、ドラマで3~4か月間ともに過ごしてきたクルーのなかに入っていく緊張感は確かにありました。ですが、田中(亮)監督とはドラマ『ラスト・シンデレラ』でご一緒していますし、長澤(まさみ)さんをはじめキャスト陣に温かく迎えてもらえたので、すっと現場に入ることができました」映画は“ロマンス編”と銘打たれ、ダー子の元恋人(!?)として、また今回の標的となる香港マフィアの女帝ラン・リウを狙う詐欺師として、2人の女性を翻弄させる。そう、三浦さんの演じるジェシーが“ロマンス編”のロマンスを担っているのだ。田中監督からは色気のある甘い演技を求められたそうで、劇中には『ゴースト ニューヨークの幻』のろくろを回すシーンなど、こちらが赤面してしまうようなシーンがいくつも登場する。しかしながら「僕、そういうシーンでもぜんぜん照れないんですよね」と三浦さん。照れない理由とは──。「『ラスト・シンデレラ』で鍛えられた、というのはあります(笑)。田中監督が何を求めているのか、多分このシーンの甘さはこういう感じで、こういうイメージなんだろうな…というのは、これまでの仕事で掴めていると思うので。ただ、今回は最後にどんでん返しがあって、甘いだけじゃない、ジェシーのファニーな一面も見せることができた。そこにすごくやり甲斐を感じました」ジェシーの多面性がどんなものなのかは映画を観てのお楽しみだが、撮影現場でもファニーな一面は話のネタとして盛り上がったそう。さっきのジェシーの表情がどうだったとか、甘いセリフを言っているときとそうじゃないときのギャップが面白いとか、俳優同士で会話が弾んだことが「嬉しかった」のだと笑みがこぼれる。詐欺師というだけでも多面的で演じ甲斐があるのに、そこに“天才”と“恋愛”がプラスされるのだから、かなり奥深いキャラクターであることは間違いない。そもそも天才恋愛詐欺師をどう構築していったのだろう。キーワードは「音で遊ぶ」「カリスマ性を意識する」ことだった。「たとえば、ジェシーが(詐欺師として)相手の気持ちを揺らすうえでの大切な言葉=甘くささやくようなセリフには通常よりも低音を入れてみたり、音で遊ぶというのもひとつの方法でした。あとはジェシーのカリスマ性。人はどういうところに、どういう瞬間にカリスマ性を見いだすのか?という海外の論文(研究資料)があると友人から教えてもらって、そういった資料から、話し方、振る舞い方、視線の投げ方を学んで、撮影に臨みました」新しい世界に触れることで多面性が増すそうやってジェシーという多面性を持ったキャラクターを演じたことによって、俳優・三浦春馬の演技はどう広がったのだろうか。「月並みな表現ですが、演じられるキャラクターの幅が広がったことで、(最近は)多面的な役をいただけるようになりました。20代半ばの頃から、よりヒューマンな役を演じたい、よりユーモアのある役を演じたい、コメディに挑戦したいと思うようになって。周りの人たちの協力があって、こうして色々な役に挑戦させてもらえている、機会をいただけていることが本当に嬉しい。いま、仕事がすごく楽しいんです。ジェシー役も大きな財産になりました」この日、撮影を担当したカメラマンが「ひとつひとつの動きすべてが絵になりますね」と言っていたが、そう感じるのは、三浦さんの格好良さはさることながら、エネルギーが満ちてあふれているからでもあって。実際、ここ数年の三浦さんは新しいことにチャレンジし続けている。『銀魂2 掟は破るためにこそある』では念願の悪役に挑み、舞台「キンキーブーツ」ではドラァグクイーンを演じ、NHK紀行番組「世界はほしいモノにあふれてる」ではMCを務め、雑誌の連載では日本の伝統や文化に触れる旅を続けている。新しい世界に触れることで、三浦さんの多面性はどんどん増し、どんどん輝く。「MCや雑誌の連載は、俳優以外のことに挑戦することで人間的な成長に繋がったらいいな、という思いから始めた企画でした。一度きりの人生、何でもやってみたくて。でも、中心にあるのは俳優で、この先もずっと俳優でありたい。というのも、“アイドルの三浦春馬”を演じている俳優の三浦春馬という考え方をすると、映画やドラマ、舞台以外でも何にでもなれるというか、俳優の捉え方次第でいろいろなことに挑戦できると思うんです」大事なことはどんな環境にも飛び込んでいける大胆さ29歳にして芸歴22年。好きこそものの上手なれと言うが、この人は、本当に演じることが好きなのだろう。20代半ばで多面性を求めたということは、おそらくその前に、自分はこのままでいいのだろうか…という葛藤が生まれ、悩んだ時期もあるはず。それを乗り越えて「いま、仕事が楽しい」と言い切れるって、素敵じゃないか!そして「どんな30代になるのか想像はつかないけれど、日本での仕事を大切にしながら海外の仕事も視野に入れていきたい。ワクワクしています」と、少し前のめりになって話す言葉は熱を帯びていた。「僕は、石橋を叩いて渡るというよりも飛び込んでしまう、そういうキャラクター性が強かったと思うんです。でも、20代半ばになると慎重さが出てきた。それはそれで大人になるために大事なことではあるけれど、やっぱり飛び込む大胆さは大事で、失いたくない。自信を持ってどんな環境にも飛び込んでいけるようになるには、日常生活や経験、学び、そういったことから目を逸らさないことなんですよね。…と言っても、逸らしたくなる時もありますけど(笑)。逸らさないコツは、自分と向きあい、自分を理解することかな。それから(成長するために)人を頼る、助けてもらう、それもありなんだって最近学びました」。その柔軟さもまた三浦さんを多面的に輝かせている。取材を終えて部屋を後にするとき「楽しみにしていた企画が動き出したので、それを丁寧にやっていったら、また何か見えてくると思うんです。今年はいろいろと動き出すので、楽しみにしていてください!」と真っ直ぐに微笑んだその表情は、何とも色っぽくて、吸い込まれそうで、天才恋愛詐欺師役に選ばれたのはこういうことなのだと改めて納得した。ええ、新しい企画、もちろん楽しみにしていますとも!(text:Rie Shintani/photo:You Ishii)■関連作品:コンフィデンスマンJP 2019年5月17日より全国東宝系にて公開©2019「コンフィデンスマンJP the movie」製作委員会
2019年05月21日怪談専門文芸誌『幽』で連載されていた作品を中心に、書き下ろしなどを加えた8編を収録。どれもぞくっとさせられる怖いお話でもあるけれど、その恐怖の源流は、霊魂や呪詛などではなく、もっと日常に横たわっている“ふつう”のものではないか。そんな気持ちにさせられるのが、『くらやみガールズトーク』だ。女性たちが人生で感じてきた違和感。突き詰めたら、ホラーな社会でした。著者は、『わたし、定時で帰ります。』で話題の朱野帰子さん。「有名な幽霊話といえば、四谷怪談や番町皿屋敷…、女性が化けるお話が多いですよね。考えてみれば、どの時代でも虐げられてしまうのが女性。そのどろどろとした暗い思いをストレートに吐き出せば、怖い物語になると思っていました。ただ、それがジェンダーの問題とつながったことに、私もちょっと驚きました」女の子らしさや娘らしさの呪縛に囚われた女性の物語「鏡の男」や、結婚したら妻が夫の名字に変わるのが普通だと言う夫や家族、社会の価値観に苦しむ「花嫁衣装」などにそういった面が表れる。「私自身は、男女ともに就職氷河期に見舞われた世代。そもそも差別されていることで被害者のようにふるまうことにも抵抗があります。けれど、これまで疑問に思いながらも、妥協してきた部分や抑圧してきた部分が意外にあったのだな、孤独だったなという気持ちが、書きながらわき上がってきたんですね。実際、女性の方が就職、結婚、出産とライフステージの変化も、それに合わせて変わるよう強いられることも多い。それだけに澱も溜まるのかなと」だが、ヒロインたちのダークな心情がつぶさに描かれながら、各編の最後には小さな希望が灯るような読後感が本書の魅力だ。なかでも、朱野さん自身の出産体験を元に書かれた一編「獣の夜」は、主人公が人間から離れていくほどに崇高さを備えていくようで、揺さぶられる。「実際に産んで育ててみると、自分が自然の一部になって、もう死んで土に還ったみたいな、命は次に移ったみたいな感覚になったんですよね。死が悪い意味で出てくる箇所もありますが、死ぬって、一度それまでの自分を全部捨てて楽になるという変化もあると思うんです」暗闇を抱えていたっていいんだよと、がんばっている女性たちを慰撫してくれるような短編集だ。『くらやみガールズトーク』嫉妬、コンプレックス、憎悪など、自分の黒い本音をのぞき見た女性たちが、ふと気持ちを切り替える瞬間を描く。共感たっぷりの8編。KADOKAWA1400円あけの・かえるこ2009年、『マタタビ潔子の猫魂』でダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞。現在放送中のドラマ原作『わたし、定時で帰ります。』の続刊『わたし、定時で帰ります。ハイパー』も好評。※『anan』2019年5月22日号より。写真・土佐麻理子(朱野さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年05月16日子どもから大人まで幅広い人々を魅了する、当代一流の絵本作家のひとり、ヨシタケシンスケさん。ゆるかわな絵のタッチも、思いがけない角度から切り込む発想も、親近感が湧いて愛でずにはいられないヨシタケさんの絵本たち。このたび、著者初となるイラストエッセイ集『思わず考えちゃう』が刊行された。ゆるかわスケッチとエッセイの中に、新感覚のヨシタケ流哲学が見え隠れ。「講演会などで、“常日頃から手帳に描いているスケッチを、手元カメラでスクリーンに映し出してもらい、そのイラストに対してコメントする”というようなことをよくやっていたんです。それをテーマごとにまとめてみたのがこの本です」だが、イラストのほっこり加減とは裏腹に、コペルニクス的転回が起きそうな鋭い名アドバイスが並んでいる。やる気を出す方法として〈もう明日やるよ。すごくやるよ。っていう言葉を三回唱えてから寝る〉。仕事に対して〈できないことをそのままにするっていう覚悟の決め方(略)もあるんじゃないか〉等々、目からウロコ。「いまの社会でメジャーな前向きな考え方やものの言い方にこそ、やる気を鼓舞される方もいると思うんです。ただ、7~8割の人がそう考えていても、2~3割の人はきっとそう思えなくて、世の中の隅っこで悶々としている。じゃあ、陽が当たらない意見側の僕みたいな人間は、どんな言葉ならほっとするのだろう。やる気が出るのだろう。そんな自分に対する言い訳や負け惜しみを集めた本でもあって(笑)。もしこれを読んで救われたとか共感したと思う誰かがいるのならそれはうれしいし、何よりそう描くことで、僕自身が救われたいんだと思いますね」日常のスケッチを始めたのは大学時代。社会人1年目に、ノートを手のひらサイズのシステム手帳に変更して以来、こつこつ描き溜めたものがすでに約80冊ある。コピックというサインペンの0.3mmを愛用。できあがりの絵のサイズは数cm四方と、驚くほど小さい。「“描いておかないと忘れてしまいそうなくらいどうでもいいこと”が、何を描くかの基準のひとつです。自分の気分を盛り上げるためだけに描いていたものが、他の人にも喜んでもらえるというのは不思議な感覚。人生何があるかわからないものだなあと、我ながら面白いです」『思わず考えちゃう』どうでもいいことの中にその人らしさは宿り、ときに哲学も生まれる。イラスト100点以上収録、描き下ろしのスケッチ解説エッセイ付き。新潮社1000円1973年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。絵本デビュー作『りんごかもしれない』で一躍注目を集め、話題に。MOE絵本屋さん大賞第1位をはじめ、受賞歴多数。※『anan』2019年5月15日号より。写真・土佐麻理子(ヨシタケさん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年05月12日幻想的でありながら、リアルな手触りを感じる世界を描き出し、デビュー時から高い評価を得ていた金子薫さん。『壺中に天あり獣あり』の主人公は〈言葉によって造られる迷宮のなか〉を彷徨っている光。光が幽閉されているのは、廊下の延長も無限なら部屋の数も無限だという、極めて広大なホテルのような場所だ。迷宮から脱出する希望を持ってはいけないと自らを戒めつつ、同時に希望を抱いて行動してしまう。そんな矛盾のスパイラルが永遠に続くかと思われた矢先、光は10階建ての有限のホテルが建っているホールに足を踏み入れる。「観念的、抽象的に書いてしまう部分もあるけれど、物や場所、手作業をするときの体の動かし方などは、『そこにある』と自分で信じられるくらい具体的に細かく描写します。実在していなくても、言葉を積み重ねてそこに一つの世界を作ってみようというのは、僕の思考の型みたいなもの。ホテルの中にホテルがあるということを思いついたときに、やっと、これで最後まで書けるかなと」無機質で均質な空間が、無限を連想させると感じた、と金子さん。「頭の隅には、数学者のヒルベルトが考えた無限ホテルのパラドックス(無限ホテルに“満室”の札があっても、1号室の客を2号室に、2号室の客を4号室に、n号室の客を2n号室に、という具合に移動させれば、無限に奇数号の部屋が空き、新たに無限の客を泊められることになる)がありました。思えばカフカの『失踪者』でも、主人公はアメリカを放浪し、ホテルに職を得ています」光は、無限の迷宮の存在を忘れるためにこのホテルを切り盛りし、全知の世界を構築しようと考えるが…。「光のそういう感覚は、僕もよくわかります。何でも作っているとき、計画しているときがいちばん楽しくて、実現してしまえば、そこにとどまることはできない。また次の夢を見てしまうものじゃないでしょうか。僕にとっては小説の執筆もそう」独特の作風は、誰からの影響なのか。好きな作家を尋ねると、「高校時代に中島らもとか好きでした。最近『裸のランチ』を再読したらすごく面白くて。あの頃、バロウズやケルアックに入れ込んでたのを思い出しました。僕の作品とはあまり結びつきませんね(笑)」かねこ・かおる1990年、神奈川県生まれ。2014年に『アルタッドに捧ぐ』で文藝賞を受賞し、デビュー。’18年に『わたくし、つまりnobody賞』、および『双子は驢馬に跨がって』で野間文芸新人賞を受賞。『壺中に天あり獣あり』美酒佳肴にあふれた、現世の別世界を意味する「壺中の天地」。その言葉と連接する美しい世界が、著者の緻密な描写によって眼前にそびえ立つ。講談社1600円※『anan』2019年5月1日-8日合併号より。写真・土佐麻理子(金子さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年05月04日新興文芸の胎動が聞こえてきた大正末期。東京で新雑誌『文藝春秋』が産声を上げたのと同じ年、大阪では小山内薫が率いるプラトン社が『苦楽』の創刊に着手。永美太郎さんの『エコール・ド・プラトーン』は、そのプラトン社に集う文士たちの群像劇だ。だが、最初に浮かんだアイデアは、少し違っていたそう。「女性マンガが好きなんです。時代を遡って掘っていくうちに、大正時代の少女雑誌の挿絵や挿絵画家たちに興味が湧いて、そんなマンガを描いてみたいと思ったものの、さすがにテーマがニッチすぎる(笑)。その世界の隣に近代文学があり、こちらの切り口からいこうと思いました」1巻で活躍するのは、川口松太郎と直木三十五。さらに、芥川龍之介や谷崎潤一郎、菊池寛など、のちに文豪と呼ばれる作家たち。岡本かの子や夫の一平、少年時代の太郎なども登場する。「文芸史や大正の文壇については好きでなんとなく読んでいたんですが、連載が決まってから改めて調べ直しました。ネームを組み立てていくうちに『こういうエピソードがあったらいいのに』とアンテナを立てておくと、新しい発見があったりする。ただ『たくさん調べました』というだけの表現はマンガとして面白くないので、史実に忠実でありつつも、肉付けやさじ加減には腐心しています」永美さんが仰ぎ見ている作家のひとりが、故・杉浦日向子。「師匠でもある山田参助さんともよく話していたんですが、杉浦さんって作中のセリフを生み出す達人なんですよね。彼女のマンガのように、作品のムードにハマる印象的な言葉を見つけられるかも勝負です」舞台がレトロな分、作画も苦労が尽きない。たとえば当時の生活描写や着物の描き方。「着物姿とか、実は正確に描けたからといって絵として決まらないんですね。日本髪や着物が美しく見える角度も、当時の美的感覚とともに絵に織り込めたらいいなと思っているので、ネットで見つけた資料や郷土資料などを頼りにしています。ちなみに、本作を描くようになってから、自分でも着物を着るようになりました。また、著名な文豪たちの顔は、教科書などでよく知られている分、リアリティとデフォルメの加減が難しい。さっぱりした線が好きなのですが、軽すぎる絵柄になると史実の重みが薄れてしまうので、説得力を持たせるタッチはどういうものだろうと。試行錯誤は続いています」岩田専太郎ら挿絵画家たちの物語が始まる2巻の刊行が待ち遠しい。『エコール・ド・プラトーン 1』新雑誌の創刊に関わる文士たち。編集者として活躍した後、第1回直木賞受賞者となる川口松太郎を軸に、熱き交流が描かれる。リイド社720円©永美太郎/リイド社ながみ・たろう1984年生まれ、兵庫県出身。京都造形芸術大学卒。書店員、山田参助氏のアシスタントを経て本作が初連載。大正~昭和初期の群像劇を描くことは10年来の悲願だったとか。※『anan』2019年5月1日-8日合併号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年05月02日谷崎由依さんの『藁(わら)の王』は、小説好きな人なら、読んで多くの読者と語り合いたくなるような長編だ。語り手は、著作は1冊あるものの、書けなくなった作家であり、大学で文芸創作を教えている〈わたし〉。同僚や学生たちとの交流をきっかけに、書くことや読むことの意味をあらためて考え始め、創作の深い森へと分け入っていく。「私も大学で教える前は、主人公と同じように小説を書いたり翻訳したり、家に引きこもる毎日でした。ところが否応なく人や社会と接する生活に変わったら、思うことが増えて…。そのときどきの雑感のようなものをとりあえず残しておこうと、少し文学的な表現でメモを取りました。あとで読み返してみると、思った以上に、自分にとって大切なことが書かれていて、いっそこれを小説にするべきなのではないかと。その感覚が出発点ですね」谷崎さん自身と主人公の人物像とは、あえて近いままにした。「私小説ではないけれど、作者=語り手という読まれ方をしても構わないと思ったんですよね。当時、テジュ・コールの『オープン・シティ』(新潮社)など、自分の経験を、何重ものフィクションのオブラートに包まずに生のリアリティで世界を描き出す作品に出合い、そこに可能性を感じたということもあります。なのでこの小説では、意図的に主人公の職業を変えず、別の名前をつけたりもせず、フィクションに見せかける努力を放棄しました。とはいえ、学生たちのことはそのまま書けないので、エピソードを加工したりつなぎ合わせたり、虚構に落とし込んでいます」モチーフになっているのは、森だ。「私も院生たちのリクエストで、授業でフレイザーの『金枝篇』を読んだことがあるんです。その作中に出てくる森の王と金枝の伝説、敷地内に木々が多い大学という場所、言の葉や想念の森など、いくつもの森のイメージが重なって、物語が立ち上がってくる感じがありました」〈幸せになるために、小説を書いてはいけないんでしょうか〉〈先生なら、わかりますよね〉等々、学生たちがぶつけてくる率直な問いかけや詰問に、〈わたし〉はたじろぎ、ふさわしい言葉を探そうともがく。それは同時に、〈わたし〉が長い間彼方に押しやっていた記憶をふいに蘇らせるものでもあった。なかでも、教え子の袴田マリリと魚住エメルの近すぎる関係によって、〈わたし〉は己の学生時代へと引き戻される。さらに、週末婚状態の夫との不安定な関係もあり、〈わたし〉は自分自身を見つめ直さざるを得なくなる。表題作の他、3つの短編を収録。「短編は、ふと浮かんだ言葉やイメージから書き始めることが多いですね。『鏡の家の針』は子どもの目線で書いてみようという試みがあったし、『枯草熱』や『蜥蜴』は身体性や、感覚を積み重ねて書くことで何かを浮かび上がらせたいと思いました。小説執筆における私なりの冒険が、それぞれに何か入っています」たにざき・ゆい作家、翻訳家、近畿大学准教授。2007年、「舞い落ちる村」で文學界新人賞を受賞し、作家デビュー。’19年3月に、『鏡のなかのアジア』で芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。『藁の王』表題作に描かれる、カフカの『掟の門』の話やサリンジャーの印象深いエピソード、リルケが遺した箴言など、文学トリビアも楽しい。新潮社1800円※『anan』2019年4月17日号より。写真・土佐麻理子(谷崎さん)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年04月14日本のプロ3人が教えてくれた美意識を高めたい、と願う人のための本。力強く生きる女性の姿や言葉が綴られた、品格を高められる作品たち。自分の生き方や美学と向き合い、アップデートしたい人のための必読書です。花田菜々子さんおすすめ『おんなのことば』(茨木のり子)「詩中のどの言葉も、自分を律し、自分の意志で力強く生き抜けと言ってくれているようで背筋が伸び、愉快でワクワクもします。力強く明るい詩がある一方で、早くに亡くなった夫を思い出して深い愛を綴っている詩もある。両者を比べると、“本当に美しい生き方とは何か”という答えが立ち上がってくるようで、心が震えます」「自分の感受性くらい」「わたしが一番きれいだったとき」「聴く力」など、詩人・茨木のり子の名だたる詩を網羅。傲慢になる大人たちに対して警鐘を鳴らす、渾身の代表作。童話屋1500円瀧井朝世さんおすすめ『ののはな通信』(三浦しをん)「ものすごく大きな経験(恋愛)をしてしまった後に人はどう生きるのか。それが、二人の女性の生き方を通して浮かび上がってくるものがありました。たとえ離れていたとしても、大切だと思える誰かがいると、それが生きる希望になること、人はいくつになっても人生を切り開いていくことができる、ということを教えてくれます」ミッション系のお嬢様学校に通う、クールで毒舌な野々原茜(のの)と天真爛漫な牧田はな。二人は親友となるが、ののははなに友情以上の気持ちを抱くようになる。KADOKAWA1600円三浦天紗子さんおすすめ『ノーラ・ウェブスター』(コルム・トビーン、栩木伸明・訳)「専業主婦から働く母へ、ノーラが少しずつ変化していくディテールが素晴らしい。久しぶりに職場復帰をするにあたり努力で自分の存在意義を作り、夫がいい顔をしないのでやめていた歌を歌い、新しい人間関係を築き、子どものために一人で学校に乗り込む。それでも、ときおりにじむ孤独。気高く生きるお手本のような主人公です」夫を亡くし、子どもを抱えて20年ぶりに元の職場に再就職したノーラ。同僚の嫌がらせにもめげず、自己を立て直し、生きる喜びを発見していくさまを丹念に描く。新潮社2400円※『anan』2019年4月17日号より。写真・内山めぐみ取材、文・重信 綾(by anan編集部)
2019年04月10日自身の両親と、父と長く男女の関係にあった作家の瀬戸内寂聴さんがモデル。井上荒野さんの『あちらにいる鬼』は、愛というものの底知れなさを感じずにはいられない長編だ。一見スキャンダラスな三角関係。そこには不思議な絆が見え隠れ。「この小説を書く私のモチベーションの一つは、寂聴さんの父への思いにグッときたこと。もう一つは母は本当に幸せだったのかなという謎ですよね。想像するしかないけれど、母はどこかの時点で『この男をずっと捨てずにいよう』と決めたんだと思います。我慢していたのではなく、自分が決めた意志に従う。そういう強さがある人でした」最初は娘である自分の視点で書こうとしたが、それでは以前書いたエッセイ『ひどい感じ父・井上光晴』の続編にしかならない気がした。「ふと、妻と愛人、ふたりの視点でやってみたらどうかと思いついたんです。そんなことができるだろうかと自分でもひるんだほどですが、それくらいの挑戦がなければ書く意味がない。腹をくくりました」母がモデルである白木笙子と、寂聴さんがモデルである長内みはる。ふたりが交互に語るスタイルは、一種の心理小説のようでスリリングだ。「笙子のパートは、母からはもう話を聞けないので、自分の育った家の情景や母と一緒にいたときの記憶を思い出し、どういう気持ちだったかを想像しながら書きました。ふだんに近い書き方ですよね。一方、みはるのパートは、より想像するのが難しかったです。寂聴さんからお話はたくさんうかがったんですが、私にも語れなかったというか、ご本人もいまでもわからないような部分があるのではないかと思ったからです。父にはたくさん女性がいましたけれど、寂聴さんとの関係がいちばん長かったし深かった。それはやはり彼女が小説を書くからで、出家しなければ断ち切れない関係というのは本当だったろうと思います」作中では、笙子が夫・篤郎のいくつかの作品を代筆していたことも明かされる。書く女ふたりにはさまれた篤郎の心中はどんなものだったろうと、そんなことにも想像が膨らむ。「物語は、母の気持ちで締めようとは決めていました。『二度とこんな男の妻にはなりたくない』と思うかなあとかいろいろ迷ったんですが、やっぱりこれだろうなと」余韻の残る、圧巻の一文だ。いのうえ・あれの作家。2008年、『切羽へ』で直木賞受賞。’18年、織田作之助賞受賞作『その話は今日はやめておきましょう』など、著書、受賞歴多数。今年でデビュー30周年となる。『あちらにいる鬼』徳島での講演会が縁で、作家の白木篤郎と作家の長内みはるは深い仲に。それを知る篤郎の妻・笙子。複雑な愛はどこへ向かうのか。朝日新聞出版1600円※『anan』2019年4月10日号より。写真・水野昭子(井上さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年04月07日大好きなロリータファッションへの憧れを秘密にしている女子大生のマミ。同じアルバイト先に、周囲の目など気にせず毎日好きなおしゃれに身を包んでいる小澤が現れて…。“なりたい自分になれる”勇気が湧いてくるマンガ好きな服があるけれど、周囲から浮くのは怖い。そんな悩みを描いて共感を呼んでいる『着たい服がある』。その著者が、常喜寝太郎さん。「高校生くらいから服が好きでした。自分は着たい服を着てるだけなのに、周囲に受け入れてもらえなかったり、好きな女の子に振り向いてもらえなかったり。だから、マミの悲しさは、自分もよくわかるんです」2巻に入り、マミが育った環境などバックボーンが見えてくる。「マミがずっと会っていなかった父親に会う回があります。実は僕にも同じ経験があって。そのときの実感を、マミの気持ちに重ねました」そう、親子の葛藤あり、生き方をめぐる煩悶あり。ただのおしゃれピープルのためのマンガではない。「最初は『好きな服を着たい人の背中を押します』的な内容だったのですが、連載するに当たって、読者の心にもっと突き刺さるテーマを入れたいと担当さんとも徹底的に話し合いました。それで、マミが『自分らしさとは何か』を考え始める展開にしました。簡単には答えが出ない悩みだけれど、自分も友達のちょっとしたひとことで救われたりしたことがあるので、そういうメッセージを伝えていきたいです」ファッションにこだわりがある作品だけに、マミや小澤が着ている服の描き込みが超絶に繊細!「マミが着ているロリータ服は、実際に『BABY,THE STARS SHINE BRIGHT』の商品。家でトルソーに着せて、ディテールまでじっくり観察しながら描いています。時間はかかりますが、むしろ作画のモチベーションが上がるポイントです。一方、小澤の服は、自分でデザインしながら描いているフルオリジナルです」そのくらい服を愛している常喜さん。ご本人もとてもおしゃれだ。「ただ友人からは、『見た目は小澤っぽいけど、中身はマミだよね』と言われていますね(笑)」つねき・ねたろう滋賀県出身。2013年、ちばてつや賞第68回ヤング部門で準優秀新人賞を受賞し、デビュー。「日刊月チャン」で「不良がネコに助けられてく話」も同時連載中。『着たい服がある』2ロリータ服を着る勇気が持てたマミだが、母に理解されず再び意気消沈。だが、ゴスロリを着たカヤとの出会いがマミを変えていく。「Dモーニング」で連載中。講談社610円※『anan』2019年4月3日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年03月30日阿川せんりさんの『厭世マニュアル』は、殻に閉じこもっていたヒロインが周囲の人と関わることで“ありのままの自分”を肯定できるようになる物語だ。安易な成長を描かない作風でデビュー時から注目を集めたが、最新刊『ウチらは悪くないのです。』もまた、何者かにならなきゃいけない、恋愛くらいしなくちゃいけない、とがんじがらめになっている人にエールを贈るような一冊だ。熱血じゃない青春だって楽しいんだ。元気になれるアンチ青春ストーリー。「小説やマンガでは、自分には何もないと悩む主人公が夢中になれる何かに出合って成長する物語が王道。でも、私の中には『もし何にも出合えなかったらどうするんだい?』という素朴な疑問があります」主人公は、これといった趣味や特技がない〈あさくら〉。美人なのにおしゃれや恋愛には興味なし。彼女の楽しみといえば、昔からの友人である〈うえぴ〉と、スタバでおしゃべりすることくらい。大学2年の選択必修科目のクラスで〈あさくら〉に話しかけてきた〈さわみー〉のお節介で、一度会っただけの〈にさか君〉とつきあうことになるのだが…。一見そつがなく思える〈さわみー〉や〈にさか君〉も、実は不器用な人。〈あさくら〉や〈うえぴ〉との意外な接点も見つかり、彼女たちのこじれた青春が笑いと涙を誘う。「大人になってから『学生時代に、もっと青春しておけばよかった』と言う人がいるけれど、そんなふうに記憶を上書きする必要はあるのかなと。友人と一緒だった他愛ない時間とかが『それなりに楽しかった』なら思い出上等。そんな青春があってもいいじゃないかと思うんです」ちなみに、小説家志望で文芸サークル所属、コツコツ作品を書き続けている〈うえぴ〉は、阿川さんの青春と大いに重なる存在だとか。「〈コシミズ〉のように批判してくる人もいたけれど、私の作品を『好きだ』と言ってくれる人もいました。あのころ、その言葉をもっと素直に信じればよかったなと。なので、〈うえぴ〉には、信じてがんばってもらおうと思いました」阿川さんの描く人物はみな、少しやっかいな人たちに見えるが、「個人的には、すごく変わった人たちだとは思っていません。このぐらいのめんどうくささを抱えているのが普通だし、よくいる人たちの物語を素直に書いたらこうなった、という感じですね(笑)」あがわ・せんり1988年、北海道生まれ。作家。’15年、野性時代フロンティア文学賞を受賞した『厭世マニュアル』でデビュー。『森見登美彦リクエスト! 美女と竹林のアンソロジー』(光文社)にも寄稿。『ウチらは悪くないのです。』小説家志望の親友〈うえぴ〉とスタバで話すのが楽しみな〈あさくら〉。ある日、〈さわみー〉からボランティアサークルに勧誘され…。新潮社1450円※『anan』2019年3月27日号より。写真・土佐麻理子(阿川さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年03月26日