「女性の場合、大豆製品を種類多く摂取する人ほど、そうでない人に比べて、心筋梗塞や脳梗塞といった循環器疾患のリスクが34%、全死亡リスクが14%低くなる――」今年3月、このような調査結果が国立がん研究センターから報告された。40~69歳の男女約8万人を20年近くにわたって追跡調査(コホート研究)したものだ。この研究を実施した大妻女子大学家政学部食物学科公衆栄養研究室の小林実夏教授は、研究内容についてこう説明する。「調査では、対象者が133種類の食材を、1日に何種類摂取しているかを算出し、死亡リスクとの関連を調べました。魚、肉、野菜、果物、大豆食品などの個別の食品群についても同様の検討を行いました。男性は果物を、女性は大豆食品を種類多く摂取するほど死亡リスクの低下が見られました。特に循環器疾患については顕著でした」国立がん研究センター、社会と健康研究センター予防研究部部長の井上真奈美さんは、このような早死のリスクを下げる食品について、次のように話す。「これまで数多くの大規模調査を行ってきて『これさえ食べておけば大丈夫』という食品は存在しません。しかし、健康に影響をどう及ぼすかが、わかってきた食品も少しずつあります。まだ断定できるものは少ないのですが、大豆食品、緑茶、コーヒーは、その効果が明らかになってきています。野菜、果物も健康に何らかのよい影響のある食品だと推測しています」死亡リスクを下げるには抗酸化、抗炎症作用の働きが必要不可欠というのは、お茶の水健康長寿クリニック院長の白澤卓二先生だ。「がん、心筋梗塞、脳梗塞など死亡リスクを高める疾患の原因は、細胞の慢性炎症であるということがわかっています。加齢や酸化ストレスなどで細胞の炎症が進行すると、血管が弾力を失って硬くなり、心筋梗塞や脳梗塞の原因ともなる動脈硬化を引き起こすことになります。血管の硬直を防ぎ、弾力性を持たせること、また血中のコレステロールを抑えて血流をスムーズにすることが重要なのですが、それには抗酸化作用や抗炎症作用のある食品を取る必要があるのです。たとえば、ビタミンA、C、Eに含まれる抗酸化成分は酸化ストレスや細胞の炎症を抑える働きがあり、ビタミンB群は細胞のストレス耐性を上げてくれます。また、食物繊維には腸の働きを活性化させ、腸内環境を整える働きもある。野菜や果物には、こうした栄養素が多く含まれるものが多いのです」さらに、野菜、果物には副次的な作用もあるのだとか。「野菜や果物を取る人ほど幸福感が高い状態が保てるということがわかっています。野菜や果物には“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンなどの脳内物質を分泌する働きを持つものも多く、それも病気を遠ざける要因のひとつになっているのではないかと推測しています」(白澤先生)これまでに世界中でさまざまな食材の疾患との因果関係が調査研究されている。健康増進、疾病予防に働くと認められている食品をピックアップした。食材を選ぶときの参考にしてほしい。■死亡リスクを下げる食品リスト(監修:白澤卓二)【なす】病気:動脈硬化、心疾患、高血圧効能:なすにはカリウム、ビタミンC、ビタミンB6が含まれている。特に皮の部分に多く含まれるポリフェノールのアントシアニンには抗酸化作用があるので皮をむかずに食べたい。アントシアニンが心疾患のリスクを34%下げるという報告がある。カリウムの働きで血圧抑制作用も期待できる。【セロリ】病気:がん、動脈硬化、高脂血症効能:「セロリに含まれるアピゲニンという成分に細胞の抗炎症作用があるといわれています。またルテオリンには抗がん作用が働くという疫学調査もあります。食物繊維が腸の働きを整えてくれるだけでなく、セロリの葉の部分には血液をサラサラにする栄養素が含まれていて、コレステロールの低下や動脈硬化の予防に」(白澤先生)【にんにく】病気:心臓病、脳卒中、動脈硬化、がん(胃がん、結腸がん、食道がん、すい臓がん、乳がん)効能:アリルスルフィドという成分にがんの発現予防、生成抑制作用があることがわかっている。にんにくを摂取すると結腸がん、前立腺がんのリスクが約50%低下するという報告がある。米国国立癌研究所(NCI)もにんにくを抗がん特性のある野菜と認めている。血液サラサラ効果もあり、心臓病や脳卒中の予防にも効果が。【しょうが】病気:脳卒中、心疾患、がん(肺がん、大腸がん)、糖尿病効能:しょうがに含まれる活性化合物がインスリンと代謝の改善につながるという報告が。血糖値の上昇を抑え、血液をサラサラにする作用も。「抗炎症作用、消化促進の働きが、大腸がんの予防に期待されています。唐辛子と一緒に使うと唐辛子の発がん性が相殺され、肺がんの発生率が減少したという実験結果も」(白澤先生)【ターメリック(うこん)】病気:脳卒中、がん(肺がん、乳がん、皮膚がん、胃がん、すい臓がん)、心疾患、高血圧効能:ターメリックに含まれるクルクミンというポリフェノールには抗酸化・抗炎症作用があり、代謝異常や自己免疫不全疾患の治療効果がわかっている。肝臓のダメージをサポートする働きも。「肺がん、乳がん、皮膚がん、胃がんのがん細胞の成長を妨げる効果のほか、すい臓がんや前立腺がん、骨肉腫の予防効果が期待されています」(白澤先生)【シナモン】病気:糖尿病、高コレステロール効能:シナモンに含まれるプロアントシアニジンという成分が、インスリンの分泌を促し、糖質の代謝を促す働きがある。シナモンの含まれたスパイスを取った人から抗酸化作用の上昇が13%認められ、インスリンの反応が20%低下したという研究結果がある。【ナッツ類(くるみ、アーモンド、ピーナツ)】病気:心疾患、脳卒中、動脈硬化、糖尿病、肥満、高血圧、がん効能:くるみはナッツ類の中でもオメガ3脂肪酸を最も多く含む。コレステロール値や中性脂肪値を下げ、動脈硬化を防ぐ。αリノレン酸により冠動脈疾患の予防効果が期待できるとされている。2型糖尿病の発症リスクが33%減になるという報告も。ナッツをよく食べる人は心臓病などを含めた総死亡率が低いことも報告されている。【りんご】病気:高コレステロール、脳卒中、心臓発作、がん(乳がん)効能:りんごにはビタミンや食物繊維が豊富に含まれている。英国の研究では、1日1個のりんごを食べる人は脳卒中や心臓発作のリスクを下げることがわかっている。別の研究では、りんごを含む白い果実の摂取が多い人は、脳卒中リスクが52%低かったという結果も。りんごのフロレチンが乳がんの予防を示したデータもある。【ぶどう】病気:がん(乳がん、胃がん、大腸がん、すい臓がん、肝臓がん、皮膚がん、白血病)、心疾患、脳卒中、動脈硬化効能:ぶどうにはカリウム、ビタミン類のほか、レスベラトロールが豊富に含まれている。「レスベラトロールには血栓を予防する働きがあり、心臓病患者に与えたところ心臓内皮の機能改善が見られたという研究結果があります。また、ケルセチンにはがん細胞の抑制、成長を防ぐ働きがあるという報告もあります」(白澤先生)【チョコレート】病気:脳卒中、心疾患、高血圧、がん(乳がん、胃がん、大腸がん、すい臓がん)効能:原料のカカオにはミネラルや食物繊維が豊富。レスベラトロールの含有量はワインの約1.6倍。カカオバターの主成分のステアリン酸には血中コレステロールを下げる働きがある。ココアを1日2.25グラム摂取するグループは0.5グラム未満のグループに比べ心血管系のリスクが4割減、脳卒中の危険度が4割程度減少したという報告も。
2019年07月25日「女性の場合、大豆製品を種類多く摂取する人ほど、そうでない人に比べて、心筋梗塞や脳梗塞といった循環器疾患のリスクが34%、全死亡リスクが14%低くなる――」今年3月、このような調査結果が国立がん研究センターから報告された。40~69歳の男女約8万人を20年近くにわたって追跡調査(コホート研究)したものだ。この研究を実施した大妻女子大学家政学部食物学科公衆栄養研究室の小林実夏教授は、研究内容についてこう説明する。「調査では、対象者が133種類の食材を、1日に何種類摂取しているかを算出し、死亡リスクとの関連を調べました。魚、肉、野菜、果物、大豆食品などの個別の食品群についても同様の検討を行いました。男性は果物を、女性は大豆食品を種類多く摂取するほど死亡リスクの低下が見られました。特に循環器疾患については顕著でした」国立がん研究センター、社会と健康研究センター予防研究部部長の井上真奈美さんは、このような早死のリスクを下げる食品について、次のように話す。「これまで数多くの大規模調査を行ってきて『これさえ食べておけば大丈夫』という食品は存在しません。しかし、健康に影響をどう及ぼすかが、わかってきた食品も少しずつあります。まだ断定できるものは少ないのですが、大豆食品、緑茶、コーヒーは、その効果が明らかになってきています。野菜、果物も健康に何らかのよい影響のある食品だと推測しています」死亡リスクを下げるには抗酸化、抗炎症作用の働きが必要不可欠というのは、お茶の水健康長寿クリニック院長の白澤卓二先生だ。「がん、心筋梗塞、脳梗塞など死亡リスクを高める疾患の原因は、細胞の慢性炎症であるということがわかっています。加齢や酸化ストレスなどで細胞の炎症が進行すると、血管が弾力を失って硬くなり、心筋梗塞や脳梗塞の原因ともなる動脈硬化を引き起こすことになります。血管の硬直を防ぎ、弾力性を持たせること、また血中のコレステロールを抑えて血流をスムーズにすることが重要なのですが、それには抗酸化作用や抗炎症作用のある食品を取る必要があるのです。たとえば、ビタミンA、C、Eに含まれる抗酸化成分は酸化ストレスや細胞の炎症を抑える働きがあり、ビタミンB群は細胞のストレス耐性を上げてくれます。また、食物繊維には腸の働きを活性化させ、腸内環境を整える働きもある。野菜や果物には、こうした栄養素が多く含まれるものが多いのです」さらに、野菜、果物には副次的な作用もあるのだとか。「野菜や果物を取る人ほど幸福感が高い状態が保てるということがわかっています。野菜や果物には“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンなどの脳内物質を分泌する働きを持つものも多く、それも病気を遠ざける要因のひとつになっているのではないかと推測しています」(白澤先生)これまでに世界中でさまざまな食材の疾患との因果関係が調査研究されている。健康増進、疾病予防に働くと認められている食品をピックアップした。食材を選ぶときの参考にしてほしい。■死亡リスクを下げる食品リスト(監修:白澤卓二)【大豆食品】病気:がん(乳がん、前立腺がん)、脳梗塞、心筋梗塞効能:国立がん研究センターのコホート研究では「1日3杯以上味噌汁を飲む人は1杯未満の人に比べて乳がんの発生率が40%少ない」という結果が。大豆に含まれるイソフラボンに乳がんの予防効果があると考えられる。大豆をよく食べる女性グループの脳梗塞のリスクは36%、心筋梗塞のリスクは45%低いことがわかっている。【緑茶】病気:がん(胃がん)、動脈硬化、心疾患、脳梗塞効能:緑茶に含まれる茶カテキンに、がん細胞の増殖を抑制する働きがある。カフェインは血管内皮の修復を促し、血管を健康に保つ。国立がん研究センターのコホート研究では、1日5杯以上緑茶を飲む女性は、1杯未満と比べて胃がんリスクが3割減、心疾患死亡リスクが37%減。脳梗塞のリスクも2割程度減という報告がある。【コーヒー】病気:がん(子宮体がん、肺がん、大腸がん)、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、糖尿病、高血圧効能:コーヒーに含まれるクロロゲン酸が活性酸素の働きを抑え、抗炎症作用・抗酸化作用に。カフェインには血管内皮の機能を改善し、脂肪燃焼作用も。コホート研究では、飲まない人と比べてコーヒー1日1杯以上で脳出血リスクが2~3割減、子宮体がんリスクに関しては1日1~2杯で4割、3杯以上で6割減という報告がある。【青魚(イワシ、アジ、サンマ、サバ)】病気:がん(すい臓がん、乳がん)、心疾患、脳出血、動脈硬化効能:コホート研究では、青魚に含まれるDHAを多く摂取する人は、すい臓がんのリスクが最大30%低下したという研究結果が。すい臓がんは慢性炎症が関係していると考えられており、青魚に多く含まれるDHA、EPAが、免疫調節作用を持ち、抗炎症作用に働くといわれる。また、中性脂肪やコレステロールを減少する働きも。【柑橘類】病気:がん(口腔がん、食道がん、胃がん、肺がん)、心疾患、脳卒中効能:柑橘類に含まれるビタミンCが体内の抗酸化作用を促し、免疫力も高める働きをする。国立がん研究センターのコホート研究では、柑橘類の摂取の多い人は、少ない人より循環器疾患のリスクが20%低いという報告がある。オレンジ色をつくるβカロテンには抗酸化作用も。温州みかんには肝臓の疲労回復を促す作用が。【玄米】病気:がん(大腸がん)、心臓病、脳卒中、2型糖尿病効能:玄米に含まれる食物繊維が血液をサラサラに、ミネラルは血糖値の急激な上昇を抑える働きが。十分な食物繊維を取っている人は脳卒中のリスクは22%減、大腸がんのリスクは16%減。心疾患のリスクが30%減になるという報告が。米国の調査では玄米をよく食べる人の糖尿病発症リスクは36%低かったという報告がある。【酢】病気:糖尿病、高血圧効能:酢は穀物や果実を発行させてできた発酵食品。酢の成分の酢酸には代謝の促進と、脂肪の分解を促進する働き、塩分の取りすぎを防ぐ働きがある。1日大さじ1杯のお酢を12週間飲んだ人は内臓脂肪・腹囲が減少したという研究報告や、血圧の高めの人が酢を6週間飲むと正常域に下がったという研究結果などが多数ある。【そば】病気:心筋梗塞、脳卒中、動脈硬化効能:食物繊維、ミネラルのほか、ルチンとビタミンB群が豊富。そばのルチンが高血圧の抑制をし、血管内皮を丈夫にするという研究報告がある。米国心臓学会では、食物繊維の多い全粒穀物を取ることが血中コレステロールを正常にし、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病のリスクを下げる可能性があるとしている。【海藻】病気:がん(大腸がん)、高血圧、糖尿病、心疾患、甲状腺疾患効能:海藻はミネラルとビタミンを豊富に含み、ケイ素というミネラルが血管壁の弾力性を保ち、血管内にコレステロールが付着するのを防ぐ。血中コレステロールを18%下げるという報告も。血糖値を抑える作用や抗酸化作用もある。海藻に含まれるアルギン酸にはナトリウムを排出し、フコイダンには抗がん作用がある。
2019年07月24日「女性の場合、大豆製品を種類多く摂取する人ほど、そうでない人に比べて、心筋梗塞や脳梗塞といった循環器疾患のリスクが34%、全死亡リスクが14%低くなる――」今年3月、このような調査結果が国立がん研究センターから報告された。40~69歳の男女約8万人を20年近くにわたって追跡調査(コホート研究)したものだ。この研究を実施した大妻女子大学家政学部食物学科公衆栄養研究室の小林実夏教授は、研究内容についてこう説明する。「調査では、対象者が133種類の食材を、1日に何種類摂取しているかを算出し、死亡リスクとの関連を調べました。魚、肉、野菜、果物、大豆食品などの個別の食品群についても同様の検討を行いました。男性は果物を、女性は大豆食品を種類多く摂取するほど死亡リスクの低下が見られました。特に循環器疾患については顕著でした」国立がん研究センター、社会と健康研究センター予防研究部部長の井上真奈美さんは、このような早死のリスクを下げる食品について、次のように話す。「これまで数多くの大規模調査を行ってきて『これさえ食べておけば大丈夫』という食品は存在しません。しかし、健康に影響をどう及ぼすかが、わかってきた食品も少しずつあります。まだ断定できるものは少ないのですが、大豆食品、緑茶、コーヒーは、その効果が明らかになってきています。野菜、果物も健康に何らかのよい影響のある食品だと推測しています」今回、大豆食品が挙がった理由として、大豆に含まれるイソフラボンの効果がある。イソフラボンは、女性ホルモンに似た構造をしていて乳がん予防の効果があると考えられているが、血中コレステロール、血圧、インスリン抵抗性を改善する効果も認められているという。さらに血液循環を促進するビタミンE、オメガ3脂肪酸も含まれており、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを下げる働きをしていると考えられている。味噌汁を1日3杯以上飲む人は、1杯未満の人と比べて乳がんになるリスクが40%低く、血圧を下げるのに有効だという結果も出ているという。「コーヒーには抗酸化作用やインスリン感受性改善作用、および脂肪燃焼の働きが明らかになっており、緑茶には循環器や呼吸器機能への働きが認められています」(井上さん)次に健康によい影響があると考えられているのが野菜と果物だ。今回の調査結果でも女性の場合、野菜が循環器疾患のリスクを23%下げていることがわかっている。緑黄色野菜は胃がん、ビタミンB6を含む食品は大腸がん、野菜に多く含まれるαカロテン、βカロテンは肝がん、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB1は心筋梗塞、野菜、果物は食道がんのリスクを低くするという調査結果がある。「しかし、ビタミンやミネラルといった野菜や果物に含まれる特定の栄養素が体にいいからといって、サプリメントで摂取すればいいというわけではありません。むしろ、サプリメントでリスクが上がったという報告もありますので注意が必要です。安易にサプリメントで栄養を取ろうとせず、食べ物から摂取することが重要です」(井上さん)
2019年07月24日’16年2月、乳がんの治療で胸を全摘する手術を受けた女芸人だいたひかる(44)。抗がん剤治療を経て、現在はホルモン治療中。術後から丸3年が経過し、治療モードから通常モードに切り替えられる日が近づいていたのだが……。今年3月に本人のブログで再発を報告する記事がアップされた。’16年当時、本誌に初告白してくれた闘病の様子は、笑える“ネタ”満載で、さすが芸人と思わせてくれるものだった。一方、夫である小泉貴之さん(41)とのエピソードは、笑いの中にもじわりと感動して涙があふれてくるような、あたたかい“ネタ”ばかり。文字どおりの二人三脚で治療に取り組んでいた。再発という事実を受け、今、2人は何を思い、どう過ごしているのだろうか?■全摘した右胸に、がんが再発【2月13日】しこり発見だいた「1年に1回、精密検査をするんです。最初がいちばん緊張した’17年で、2回目が’18年。CTと、エコーとマンモグラフィーなどをやるんですが、3回目の今回、全摘したほうの右胸の肋骨と肋骨の間に4ミリのしこりがあるって言われました。細胞診とMRIでさらに詳しく検査しましょうって」小泉「再検査というのは嫌なものですから、『あれから3年たってるし、たとえ何もないと言われたとしても精密検査をリクエストしようと思ってたくらいだよ』って言いました。僕は落ち込んでいないということも伝えたかったので」【2月27日】検査結果は判別不能だいた「検査結果を聞きにいったら、5段階中3と言われました。五分五分で良性という意味なんですけど、良性だとしても、気持ち悪いじゃないですか。イボができたら取る感覚で、しこりも取ったほうがいいと思いました。すず(小泉さんのこと)は『歯石を取るようなもんだよ』って(笑)」■中落ち削られるマグロの気分だいた「切ることに、もはや抵抗はないですね。雑草と同じで、よくないもんが生えてきたらむしり取らないと」小泉「やっぱり1回目に全摘したことがよかったんだと思います。そう思えてるから、心配の種はまた手術で切り取ればいいと思えるんですよね」【3月6日】しこり切除手術だいた「日帰り手術なので、美容院感覚で切りにいってきました。全摘してるし、取るところなんかなさそうですよね。骨と骨の間の身をこそげ落として、中落ちにするみたいな手術ですよ。マグロの気持ちが初めてわかりました」小泉「しこりの周りの部分もちょっと多めに取りましたと先生に言われて、これで悪いところは全部ない、今自分たちの懸念点は全部ないはずだって思えました。あとは、しこり本体の病理検査結果を待つだけという状態でした」だいた「これ取りますんで、もう少し長生きさせてもらっていいですか、みたいな感覚。胸と引き換えに人生の飛距離を伸ばしてるっていうか(笑)。心配事を取り除けば、体はこの生活に慣れてくるので不自由はないです」【3月20日】検査結果が出るだいた「とにかく健康に気を使ってきたので、この3回目の検査がクリアできたらやりたいことがたくさんありました。1回目、2回目とクリアして、なんだかこのままイケる!という気がしていて……。『今年も検査、やっぱりやったほうがいいんですよね?』って先生に聞くくらい自覚症状がなかったので、本当に検査を飛ばしてたら危ないとこでした。抗がん剤をやっていたときでさえ、持ち前のやる気のなさが功を奏して、副作用のダルさをあまり感じなかったし(笑)。痛みもないし、具合の悪いことが一つもなくて元気そのものでしたからね。なので、しこりが見つかったときは……残念でしたね。さらに、切除したものの病理検査の結果は悪性で、それもやはり残念でした。全摘した側で再発する確率を聞いたら、10%以下だと言われました」小泉「言い方はちょっとあれですが、もしかしたら前回の手術で取り除けてなかったんじゃないか?という考えもあるかもしれません。全摘した右側に再発?って、多少疑問が生まれますよね。でも、後ろを振り返りたくないんですよね。今まで最善のことをやってきたという自信を糧に、次の治療にも向き合っていきたいんです」だいた「ほんとそう。治療方針が決まればそれに向かっていけばいい。腹はくくれているだけに、検査結果待ちの時間は苦痛でした」小泉「そうだね。検査、結果待ち、診察待ち、再検査、結果待ちって、それなりに日数がかかる。その間に病状悪化しちゃうんじゃ?と思うのは嫌な時間でした。あのタイムラグが今後短縮されていくといいなと思います」■放射線治療は、日サロ感覚腫瘍を摘出しているため、検査結果後は放射線治療を行うことに。彼女の場合は25回、手術した場所に放射線を当てて、がん細胞をたたくということになった。だいた「放射線治療は未経験だったので、ブログ読者の方のコメントにすごく勇気づけられました。すずに治療の解説をしてもらって、私としては焼き畑農業みたいなもんかなと理解したんですね。そしたら日焼けサロンみたいなものとコメントをくれた読者の方がいて。『日サロお疲れさまです』みたいな(笑)。たしかに吐き気もないし、とても楽な治療で、5月16日に修了しました」小泉「いちばんリスキーな術後3年間に何も問題がなければ、中断している不妊治療を始められるかもしれないと話していたんですね。本人も期待していたと思うんです。でも、通院を日サロだと言ったり、こうして強気で明るくいてくれるというところに、助けられている部分がすごくあります」
2019年07月20日男性と女性では病気になる時期や場所が異なる傾向があります。また、女性は出産というライフイベントがあり、30代~40代で女性特有の病気になる確率も上がるため、男性に比べて女性の方が入院のリスクが高いと言えます。一般に大黒柱の男性の生命保険が重視されがちですが、女性は働いていても家事をしていても基本的に家庭を支えているため、女性も男性と同じように生命保険でリスクに備える必要があります。今回は女性のリスクに備えるおすすめの生命保険をご紹介します。生命保険の基礎と選び方ここでは生命保険の基礎と女性に必要な生命保険の選び方を紹介します。生命保険の基礎で紹介する生命保険の種類と保険期間の知識があれば、生命保険をご自身で選べるようになります。また、女性は生命保険を選ぶ際に女性特有の病気に対して備えたほうがいい場合があります。ご自身に合った生命保険プランを自分で決め、万一に備えることは非常に重要です。生命保険の基礎と選び方生命保険には3つの種類と2つの保険期間があります。生命保険は死亡保険、医療保険、貯蓄性の高い保険の3つの種類を組み合わせて保険プランを作ります。一つの契約に3つの種類の保険が入っている商品もありますが、ご自身の希望に合うように組み合わせて、それぞれ単体で契約した方が保険料も安く保障が充実した保険プランを用意できます。また、死亡保険、医療保険、貯蓄性の高い保険それぞれ終身と定期の保険期間があるので、必要に応じて保険期間を変え、無駄のない保険プランを作成します。女性に必要な生命保険の選び方女性が生命保険を選ぶ際のポイントは、女性特有の疾病をカバーできる保険であるかどうかが重要です。代表的な女性特有の疾病は、乳がん、子宮筋腫、甲状腺の障害、分娩の合併症などが挙げられます。女性が生命保険を選ぶ際にはこれらのリスクに備えた保険であればより安心できます。乳がんのリスク女性がガンになる確率は30~40歳代で男性よりやや高く、50代では男女ともに増加し、60代以降は男性の方がガンになる確率が高くなります。女性の部位別のガンは、40代では乳がん、子宮がん、精巣がんが多く、年齢があがるとその割合は減少し、胃や大腸、肝臓などの消化器系のガンや肺がんの割合が増加します。子宮筋腫のリスク子宮筋腫は30代以上の女性の20~30%にみられる腫瘍です。子宮筋腫は悪性の腫瘍ではありませんが、月経量の増加と月経痛、月経以外の出血、腰痛などの症状の原因です。不妊や流産の原因になる場合もあります。治療法は、手術(子宮全摘出/筋腫核摘出)と投薬での治療があります。甲状腺障害のリスク甲状腺障害は40歳以上の女性の17%ほどの人にみられます。甲状腺障害の症状は、甲状腺の腫れ、動機、息切れ、手足の震え、多汗、体重減少、微熱、イライラ、下痢、月経不順などがあります。治療方法は内科的治療、外科的治療、放射線治療があります。分娩の合併症のリスク分娩の合併症には、切迫流・早産、糖代謝異常、妊娠高血圧症候群、胎盤位置異常、胎児発育不全、胎児機能不全などがあります。これら以外にも妊娠が原因だと考えられるさまざまな変化が母体には起きます。以前は妊娠による入院は保障の対象外とする保険商品が多くありましたが、近年は分娩の合併症などの妊娠に対する保障が厚い女性向けの商品が多く販売されるようになっています。女性におすすめする医療保険ランキングここからは以下を参考にして、女性におすすめする生命保険の医療保険ランキングを紹介します。現在、女性特有の病気に対して保障を厚くした女性向けのプランを販売している保険会社が多くあります。万一のときに女性が安心できる医療保険を選択してください。参考:週間ダイヤモンド2018年4/28・5/5合併特大号「保険を見直せ!」2018年 株式会社ダイヤモンド社参考:日経ホームマガジン 保険 最新ランキング 2018年 日経BP社参考:プロ100人が厳選!最新保険ランキング2018年下期2018年角川SSC5位東京海上日動あんしん生命「メディカルKit NEO(女性疾病保障特約付加)」4位損保ジャパン日本興亜ひまわり生命「女性のための入院保険フェミニーヌ」3位メットライフ生命「新終身医療保険Flexi S 女性専用タイプ」2位オリックス生命保険「医療保険 新CURE Lady」1位三井住友海上あいおい生命「新医療保険Aプレミア(女性疾病給付特約付加)」第5位東京海上日動あんしん生命「メディカルKit NEO(女性疾病保障特約付加)」第5位は東京海上日動あんしん生命の「メディカルKit NEO(女性疾病保障特約付加)」です。東京海上日動あんしん生命のメディカルKit NEOは保険料が安く、女性特有の疾病に関して必要最低限の保障を用意できるのが特徴です。上位の保険に比べると厚い保障ではありませんが、安心できる保険商品です。第4位損保ジャパン日本興亜ひまわり生命「女性のための入院保険フェミニーヌ」第4位は損保ジャパン日本興亜ひまわり生命の「女性のための入院保険フェミニーヌ」です。こちらは2014年に発売された保険ですが、3年毎に生存給付金(7.5~15万円)が受け取れるので、保険加入と貯蓄を同時にしたい女性に人気の商品です。[adsense_middle]第3位メットライフ生命「新終身医療保険Flexi S 女性専用タイプ」第3位はメットライフ生命の「終身医療保険Flexi S 女性専用タイプ」です。メットライフ生命の終身医療保険Flexi S 女性専用タイプの特徴は、女性特有の病気に手厚い保障、短期入院定額保障(入院日額の10倍)、七大疾病の入院は無制限になることなどが挙げられます。他の医療保険では基本保障で外される傾向にある「通院」がついているのも注目すべき点です。第2位オリックス生命保険「医療保険 新CURE Lady」第2位はオリックス生命の「医療保険 新CURE Lady」です。オリックス生命保険の医療保険 新CURE Ladyの特徴は、安い保険料とシンプルな保障です。ランクインしている他の医療保険と違い三大疾病や七大疾病無制限はないものの、女性特有の病気で入院の際は入院日額に5,000円上乗せされた保険金を受け取れます。特約を付加することで三大疾病や病気やケガの際に一時金を受け取ることができます。保険料を抑えたシンプルな医療保険を希望される方におすすめします。第1位三井住友海上あいおい生命「新医療保険Aプレミア(女性疾病給付特約付加)」第1位は三井住友海上あいおい生命の「新医療保険Aプレミア(女性疾病給付特約付加)」です。こちらの保険で注目したいのは、女性疾病給付特約です。女性特有の病気、女性に多い病気、ガンによる入院の際は入院10日目まで5万円、それ以降は入院日額5,000円、手術2.5~5万円(乳がん・子宮/卵巣摘出などの特定手術の際は15万円)、放射線治療1回につき5万円が、主契約の保障(入院日額5,000円、手術20万円など)が上乗せされて保険金を受け取れます。女性疾病給付特約以外にも八大疾病による入院は無制限、初期入院10日保障があるので保障が厚く安心できる医療保険です。女性におすすめの生命保険ランキングに関するまとめ女性特有の病気にはさまざまな疾病がありました。それらの病気に必ずかかるかどうかはわかりませんが、大切なことは将来のことを考えてそれに備えることです。女性特有の疾病に備えて、ご自身に必要な保障をカバーするように保険を組み合わせて生命保険を用意してください。
2019年06月07日断乳のタイミングに関しては我が家では大らかな考えで、次男ムッチは2歳半までおっぱいを吸っていました。でも末っ子アリッサの時は少し事情が違ったのです…。最後の子なので、アリッサも飽きるまで吸わせてやろうと思っていたのですけれど…今から4年前に突然のガン宣告。ママン当時はまだ30代半ばでした。 アリッサは当時1歳半。片言な言葉しか喋れませんでしたが、ママンの話はよく理解してくれているように見えました。「いたいのいたいのとんでいけ」幼いアリッサの当時の言葉が今も心に焼き付いています。この日を最後におっぱいを要求しなくなりました。当時のことを思い出すと「寂しい思いをさせたかな?」と思うこともありますが、今は元気になったママンに甘えてもらうことで埋め合わせをさせてもらっています。
2019年05月10日上の子が卒乳したタイミングで、初めて市の乳がん検診を受けました。その1カ月後、2人目の妊娠が判明。それと同時に乳がん検診の結果が届き、要検査をすすめられました。今回は、私が体験した妊娠中でも受けることができる検査などについてお伝えします。 卒乳と同時に乳がん検診前から一度は乳がん検診を受けておきたいと思っていましたが、上の子が授乳中ということもあり時期を考えていました。1歳半で卒乳したとき、ちょうど市の乳がん検診が受けられる年だったので、念のために受けることに。 30代のため触診・超音波検査のみでしたが、超音波検査でなんと「しこりの可能性がある」と診断を受けたのです。早めに病院を受診し、再検査をするようにすすめられました。 妊娠初期に精密検査をすることに要検査の通知が届いたときは妊娠8週。妊娠初期の流産のリスクを少しでも減らすために、妊娠12週を過ぎてからの検査をすすめられました。そして妊娠13週で受診し、妊娠初期のため超音波検査と触診をおこなうと、2〜3個のしこりが確認されたのです……。 しかし今のところ、針を刺して細胞の検査をする必要まではないとの診断でした。触って増えている感じがしたり、固くなっているようなら再受診してくださいとアドバイスを受けました。 通常は経過観察の場合、1年後に再受診なのですが、妊娠中のため乳腺の発達とともに進行が急速に進むおそれがあり、念のため半年ごとに経過観察をおこなうことになりました。 妊娠後期に2回目の検査妊娠9カ月のとき乳腺外科を再受診し、1回目と同様に超音波検査と触診のみをおこないました。結果は前回よりしこりの数が1〜2個増えていましたが、妊娠後期なので乳腺が発達していることが関係しているかもしれないとの診断でした。 今後出産を経て授乳していくと小さくなっていく場合もあるようで、また半年後に受診することになりました。 出産からその後の授乳期は…経過観察中だからといって日常生活で特に気をつけることも変わったこともなく、無事に妊娠38週で2人目を出産! 出産時も出産後の入院中も変わりはなく、普段通りの生活でした。 母乳育児においても赤ちゃんに影響はなく、母乳もよく飲んで順調に成長しています。出産して半年が経ったので、また乳腺外科を再受診しようと思っています。 妊娠中でしたので、不安になったりおなかの子に影響はないか心配でした。しかし再受診したことで、妊娠中でも赤ちゃんへの影響はないことがわかり一安心。やはり不安を抱き続けるよりも、しっかり検査することで悪化を防いだり、早期発見に繋がったりするのだと思います。要検査になったときは動揺しましたが、今は早めに自分の体について知ることができてよかったと思っています。著者:福山あかね一男一女の母。元幼稚園教諭、元保育園勤務。第二子出産を機に退職。自身の体験をもとに、妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆している。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
2019年05月04日がん検診といったら、なんでも受ければよしというものではない。技師の未熟さ、放射線被曝の危険、高齢者には命とりになることも――。「自治体の検診は無意味ではありません。ただ、そもそも検診は『スクリーニング検査』といって健康な人のなかから、がんが疑われる人を一定数すくいあげ、ふるいにかけるというのが本来の狙い。ですから100%もれなく拾い上げるわけではありません。それを承知したうえで、がん検診を受けることの利益と不利益を確認しておくこと。体への負担といった不利益のほうが大きくなる検査は、あえて受けない選択肢もあります」そう語るのは国立がん研究センター検診研究部部長・中山富雄氏。では、私たちは何を目安に検査を選択すればよいのだろう?そこで参考になるのが、厚労省が取りまとめた「受けたほうがいい」「受けなくていい」検診のガイドラインである。がん検診に適すると評価されている胃がん、大腸がん、肺がん、子宮頸がん、乳がんについて、中山氏を代表とする厚労省の「有効性評価に基づくがん検診ガイドライン」作成チームが、慎重に検討を重ねたうえで、対象者の適正年齢、推奨グレード(A~D、科学的根拠を検討中のI)、そして、受けることによる利益と不利益を定めたものである。「このガイドラインはなんでもかんでも受ければよし、とする風潮のがん検診にブレーキをかける意義もあります」(中山氏・以下同)A、Bはおおむね同じ評価で、有効性が高い。Cは受ける利益もあるがそれと同程度の不利益もある。Dは受ける利益がないと評価された検査。Iの評価となっている検査については科学的評価が定まっておらず、今後ランクアップしてAになる可能性もありえるものだ。中山氏とともに、ここでは「肺がん」「子宮頸がん」「乳がん」の検査を見ていこう――。【肺がん】胸部X線検査と喀痰検査はおおむね問題なく、1年に1度の検査が推奨されている。注意すべきは「CT」であると中山氏は警鐘を鳴らす。「人間ドックではCTは当然のように行われていますが、線量が多すぎることで放射線被曝の問題が生じます。世界中の流れでは非喫煙者には行うべきではないともいわれています」また、技師の技術不足も挙げられる。「施設によっては、技師が医療機器を扱い切れていないことが大問題です。体への負担を気にせず、放射線を大量に浴びせてしまうことがあるのです。大きな病院では線量を患者さんにきちっと提示するところもありますが、告知せずやりっぱなしの医療機関も多く、線量の提示は普及してはいません」内視鏡の場合、本人にしんどいという自覚があるが、CTを受ける場合は、どれだけ被曝しても自分ではわからないので、危険だ。「毎年受けるのは、かなり害がありますから慎重に。受けたとしても、その前にどのくらいの線量を使用するか確認しましょう」【子宮頸がん】細胞診は一定の利益が認められている。従来法、液状検体法のいずれも20歳以上なら、2年に1回受けることが目安となる。「世界でもっとも広く行われている検診なので推奨できます」子宮頸がんの原因となるウイルスHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染しているかどうかの検査については、いまは推奨グレードがIとなっているが、「推奨する」に改訂するかどうかの議論が進行中という。今後の行方に注目したい。【乳がん】40歳から74歳を対象としたマンモグラフィー単独法と、64歳までのマンモグラフィーと視触診の併用法については、「推奨する」としているが、そのほかの検診については「推奨しない」との結果。特に若い女性は乳腺のタイプによっては発見困難なこともある。「40歳未満の女性の乳房で、乳腺組織が多い場合を高濃度乳腺『デンスブレスト』といいます。こうしたタイプはマンモグラフィーでは全体的に白っぽく塊のように写ってしまい、がんがあっても発見しにくい、という難しさがあります」と、中山氏が解説するように、40歳未満の人についてのマンモグラフィーの単独法およびマンモグラフィーと視触診の併用法は推奨グレードはIとなっている。「今後、このタイプの乳腺の女性の検診についても検討を重ねる必要があります」超音波検査(エコー)については、読影技術によって診断結果にあまりにもばらつきがあるので、欧米諸国では、信頼性の低い検査とされている。
2019年03月27日「乳がん検診で受けた超音波(エコー)検査は5分で終わりました。その後『異常なし』の診断でしたが、本当に大丈夫でしょうか?」国立がん研究センター検診研究部部長・中山富雄氏のもとに、ある40代女性からこんな相談が寄せられた。中山氏は、「検査結果に信頼性はありません」と即答したという。検査結果が信頼できないとは!その真意を中山氏が語る。「超音波を懸命に実施しているのはアジアくらいで、欧米諸国の乳がん検診では採用されていません。超音波検査(エコー)は、検査技師の腕に委ねられていますが、超音波検査は、資格を持つ技師でも、機器を扱う指先のほんの1度の角度のぶれで、がんが映るか映らないかが決まってくるもので、職人芸の領域なんです。現状ではこの検査は、見落としのリスクが高すぎるとされ、実施は推奨されていません」(中山氏・以下同)乳房の超音波検査の認定試験は、2015年から始まっているという。そこで資格を得た医師や技師が、今後増えることを待つしかないのが現状だそうだ。「乳がんに限らず、がんというものは、毎年がん検診を受けていても発見されず、かなり進行してからようやく見つかることは珍しいことではありません。むしろ検診で異常なしだったからと油断して、自覚症状があっても受診に至らず、発見が遅れてしまうケースも多々あるのです」さらにこんなケースも――。2月末日、東京都杉並区の健診クリニックで肺がんを見落とされたと、70代の男性がクリニックと区を相手取り提訴。同クリニックでは昨年6月に、40代の女性患者が見落としにより死亡していたことが発覚、過去の胸部X線画像を精査したところ、44人に精密検査の必要があったことが報じられていた。提訴した男性は、このうちの1人であった。同事件の外部検証等委員会の委員にも名を連ねる中山氏は「あまりにずさんな医療機関がある」と嘆息し、こう説明する。「検診専門クリニックならば、検診に特化しているのだから、当然、X線の読影医の質は確保しているものと、検査を受ける人は思うでしょう。しかしこのケースは専門医の資格を持たない医師も診断・読影に従事し、かなりの数の見落としをしてしまったのです」自治体の検診であれば、「専門医」の資格取得者でなければならないという厳しい縛りがあるが、(任意で)私費で受ける検診クリニックや人間ドックには、そうした縛りがない。そこに落とし穴が潜んでいるのだと中山氏は言うのだ。「広告効果で多くの人を集めているから、というだけで医療機関を選ぶのはやめたほうがいいでしょう。受けるなら、気になる部位の専門医が所属しているのか、HPなどでプロフィールをよく確認して行くべきです」
2019年03月27日お笑い芸人のだいたひかる(43)が3月20日、自身のブログを更新。年に1度の精密検査で’16年に全摘手術を受けた右胸に4ミリのしこりが見つかり、乳がんが再発したことを報告した。2月のブログで4ミリのしこりが発見され、再検査になったことを明かしていた。この日は『検査結果』と題した記事で「検査結果は再発でした。全摘しても再発するのか……と皆さんの不安を煽りそうで嫌なのですが、全摘して再発する人はごく稀なケースなので、全摘した皆様ご心配なくです」と、読者を気遣いながら検査結果を明かした。今後は放射線治療などを行う予定だといい、「夫に説明してもらった結果……私が、『焼畑農業みたいなものかな?』と言ったら、夫が、『そう!』と言ったので……胸で焼畑農業をする予定が出来たという報告です」と夫とのやりとりをつづった。本誌が’18年6月にインタビューを行った際も、抗がん剤治療の副作用で髪の毛が抜け始めた当時を振り返り、「未練があるとウジウジしてしまうから、抜けそうな毛は自分で引き抜いていました。それよりも6カ月ほどして、うぶ毛のような髪の毛が生えてきたのを見た旦那が『地球の始まりみたいだ』と感動。いいものを見せられましたね(笑)」と語っていた。夫の存在がだいたの大きな支えになっているようだ。ブログの終わりには「1年に1回の細かい検査で4ミリという、小さい時点で見つけられた事を喜びとして、(今回見逃して1年後にどれ位になるか考えるとゾッとします)ガンはしつこいですが、ガンよりしつこく治療していこうと思います」と前向きな姿勢を見せている。読者からは「応援してます」「お互いに頑張りましょう」「負けないでください」「勇気をもらいます!」と応援のコメントが寄せられている。
2019年03月20日「すでにリンパ節への転移も2カ所あり、ステージ3Bの状態でしたので、小川恭弘先生(当時・高知大学医学部教授。現・同名誉教授、高知総合リハビリテーション病院院長)の所見では『余命3年』でした。’07年1月に検査を始め、3月から新治療にチャレンジしたんです」13年前に乳がんと診断された当時を振り返るのは、歴史時代作家クラブ賞を受賞した、時代小説家の藤原緋沙子さん(72)。その新治療「コータック(KORTUC)」を開始すると、がんは瞬く間に小さくなった。「3月中旬の3回目の注射で、5センチ大からわずか19ミリにまで縮小したんです。さらに1カ月後の4月には、腫瘍マーカーは健康な人と同じ数値に。そして5月30日の検査ではとうとう、リンパ節のものもすべて『消失しています』と。骨や肺に転移する前に、がんをゼロにできたことに、感謝以外ありませんでした」その後、10年以上たったいまも、藤原さんは「再発なし」で、精力的に執筆に励む毎日。転移がんをこれほど劇的に退治した新療法とは、どんな仕組みなのだろうか。小川さんが解説してくれた。「手術でがんを切除するのに比べて、放射線治療の効き目は『イマイチ』と思われていることに、40年前から疑問を持っていました。『放射線治療の効き目を高める(=増感)薬を開発しなければ』との思いで、マウス実験などで研究を重ね、がん細胞中で放射線を防御する『よろい』となっている『抗酸化酵素』を失活させる方法を発見したのが、’06年でした」小川さんが高知大学医学部教授時代に、研究に研究を重ね開発した「コータック」の作用のメカニズムは、次のようになる。「がん(=がん細胞の集団)が大きくなると、個々の細胞中の酸素が減って抗酸化酵素が増え、放射線治療効果は3分の1まで低下してしまいます。その抗酸化酵素を失活させ『よろい』を解くためには『過酸化水素』が必要で、かつ、その効果を持続させると同時に、注射の痛さを半減させるには『ヒアルロン酸』を混ぜるとよい。この増感剤(過酸化水素+ヒアルロン酸のコンビ)が放射線治療をフル(=3倍)にするのです」効果は大きいのに、とてもシンプルな構造の新治療法だ。こんなに画期的な開発なのに、昨年の本庶佑さんのノーベル生理学・医学賞受賞で注目された治療薬「オプジーボ」に比べて、まったくといえるほど認知されていないのはなぜだろう。日本もそうだが世界でもまだ、保険適用がされておらず、薬も商品化されていないというのだ。小川さんは少々困り顔で話す。「ええ、過酸化水素は市販の消毒液としてもおなじみの『オキシドール』のことです。それに『ヒアルロン酸』をまぜただけの薬では、1回分の原価が300円ほどにしかなりません。製薬会社は『利益にならない』と口をそろえるんです」だが小川さんは、あきらめず地道に研究を進めてきた。’06~’13年の臨床試験では、前出の藤原さんを含む乳がん患者70人にコータック注射をしたうち、69人が手術なしでがんが消滅し、5年生存率も100%を達成した。最近ようやく、薬事承認・保険適用に希望が見えてきたのだという。「チャールズ皇太子が理事長のがん専門病院『イギリス王立マーズデン病院』で、’17年2月から臨床治験が始まりました。安全性や有効性を段階的に確かめながら、イギリスで3年半から4年後には、医薬品として承認される可能性が出てきたんです。日本では欧米から約1年遅れて承認される例が多いため、コータックが“逆輸入”の形で薬事承認・保険適用されるまでに、5年くらい待つことになるでしょうか」しかし、今日現在で、日本でもコータック治療を受けられる病院や医療機関が、全国にあると小川さんは言う。「長崎県島原病院や、私の出身の高知大学、大阪医科大学、名古屋市立大学、東京放射線クリニックなど、すでに700症例以上で実施されています。コータックは、内視鏡やCTガイドなどを使用する注射方法で、あらゆる固形がん(かたまりをつくるがん)消滅に応用・適用が可能なんです。大学病院などは臨床試験として、コータックの部分は無償で行っているところもありますので、費用などは、問い合わせしてみてください」(小川さん)
2019年02月23日ある程度進行したがんに、威力を発揮している治療法がある。放射線治療の効果をより増す方法だ。転移もあった乳がんを患っていた作家が、「命を救われた」13年前の体験を語る。「59歳の冬、右の乳房のしこりに気づきました。夏から疲れやすく、肩こりもひどかったのですが、受診した産婦人科では触診のみで『乳腺炎でしょう』と。でもエコーとマンモグラフィーで『2センチのがん』とわかりました。セカンドオピニオンなどで検査針を刺しているうちにしこりは3センチほどに大きくなりました。医師に『命はどれくらいですか?』と聞いたとき、無言で笑ったのを見て『ああ、言えないくらいひどいんだ』と思ってがくぜんとしたんです」13年前に乳がんと診断された当時を振り返るのは、歴史時代作家クラブ賞を受賞した、時代小説家の藤原緋沙子さん(72)。だが、「ついに切除」という前夜、突然かかってきた電話で、「乳房温存」に希望が持てるように。「当時、高知大学医学部教授だった小川恭弘先生(現・同名誉教授、高知総合リハビリテーション病院院長)からの着信でした。知人の紹介で『私が開発した新しい治療法がありますので、やってみませんか?』とのお電話をくださった。そこに私は望みを託したんです」小川さんのいた高知大での検査時点で、さらに大きくなったがんは、5センチ大にもなっていたという。「すでにリンパ節への転移も2カ所あり、ステージ3Bの状態でしたので、小川先生の所見では『余命3年』でした。’07年1月に検査を始め、3月から新治療にチャレンジしたんです」その新治療「コータック(KORTUC)」を開始すると、がんは瞬く間に小さくなった。「3月中旬の3回目の注射で、5センチ大からわずか19ミリにまで縮小したんです。さらに1カ月後の4月には、腫瘍マーカーは健康な人と同じ数値に。そして5月30日の検査ではとうとう、リンパ節のものもすべて『消失しています』と。骨や肺に転移する前に、がんをゼロにできたことに、感謝以外ありませんでした」その後、10年以上たったいまも、藤原さんは「再発なし」で、精力的に執筆に励む毎日。転移がんをこれほど劇的に退治した新療法とは、どんな仕組みなのだろうか。小川さんが解説してくれた。「手術でがんを切除するのに比べて、放射線治療の効き目は『イマイチ』と思われていることに、40年前から疑問を持っていました。『放射線治療の効き目を高める(=増感)薬を開発しなければ』との思いで、マウス実験などで研究を重ね、がん細胞中で放射線を防御する『よろい』となっている『抗酸化酵素』を失活させる方法を発見したのが、’06年でした」小川さんが高知大学医学部教授時代に、研究に研究を重ね開発した「コータック」の作用のメカニズムは、次のようになる。「がん(=がん細胞の集団)が大きくなると、個々の細胞中の酸素が減って抗酸化酵素が増え、放射線治療効果は3分の1まで低下してしまいます。その抗酸化酵素を失活させ『よろい』を解くためには『過酸化水素』が必要で、かつ、その効果を持続させると同時に、注射の痛さを半減させるには『ヒアルロン酸』を混ぜるとよい。この増感剤(過酸化水素+ヒアルロン酸のコンビ)が放射線治療をフル(=3倍)にするのです」効果は大きいのに、とてもシンプルな構造の新治療法だ。だが日本もそうだが世界でもまだ、保険適用がされておらず、薬も商品化されていないという。しかし、今日現在で、日本でもコータック治療を受けられる病院や医療機関が、全国にあると小川さんは話す。「長崎県島原病院や、私の出身の高知大学、大阪医科大学、名古屋市立大学、東京放射線クリニックなど、すでに700症例以上で実施されています。コータックは、内視鏡やCTガイドなどを使用する注射方法で、あらゆる固形がん(かたまりをつくるがん)消滅に応用・適用が可能なんです。大学病院などは臨床試験として、コータックの部分は無償で行っているところもありますので、費用などは、問い合わせしてみてください」(小川さん)売れっ子作家の命を救った放射線増感療法、いざというときのために記憶しておこう。
2019年02月23日「がん患者の登録が’16年に施行されて初めて全数調査。これまでよりも正確で詳細ながん患者の実態分析が可能です。ランキングに一喜一憂することなく、この調査結果から浮かび上がる、がん予防のヒントを見つけ出すことが重要です」そう語るのは、国立がん研究センター「全国がん登録」室長の松田智大医師。厚生労働省が1月17日に公表した「’16年がん患者数」は、すべてのがん患者を追跡する「全国がん登録」のデータを初めて集計・分析したもの。この調査結果で見えてくるのが「女性のがんが少ない県」である。「全国がん登録」に調査に関わっている松田先生が続ける。「がんのリスクを減らし、かつ科学的根拠が示されている健康習慣は『禁煙、節酒、食生活、身体運動、適正体重の維持』の5つ。これらに加えて“がんになりにくい地域”には、それなりの食生活や生活習慣が隠されているのです」女性のがんが少ない都道府県ランキングトップ10は次のとおり(人口10万人あたりのがん罹患者数)。【第1位】愛知県・321.9人【第2位】山口県・327.2人【第3位】群馬県・328.3人【第4位】山形県・330.9人【第5位】岡山県・331.2人【第6位】長野県・331.4人【第7位】沖縄県・332.7人【第8位】栃木県・333.8人【第9位】静岡県・335.0人【第10位】島根県・336.8人※厚生労働省「がん登録2016年速報」より作成この“がんにならない県” ランキングで第1位になった愛知県にはどんな秘密があるのだろう。愛知県がんセンター研究所の松尾恵太郎医師が語る。「愛知県の女性の場合、がんのリスクを上げる喫煙率や飲酒率では、全国平均を大きく下回っています。また、肥満が比較的少ないのも重要なこと。厚生労働省の調査でも肥満率は全国の平均より下にあります。また、年間のスポーツ行動者率は全国6位。つまり体を動かす習慣を持つ人も多いのです。さらに県内の女性に、がんが少ない要因は、乳がんになる人が少ないことです」たしかに「全国がん登録」の最新のデータによると、愛知県女性の乳がんの罹患率は7.5%(’16年累積罹患率10万人あたり)で全国トップ3に入る低さ。愛知県が乳がんの罹患を抑えている背景とは?松尾先生が分析する。「乳がんは、乳腺が女性ホルモンにさらされ続けることによって発症リスクが上がります。妊娠中は分泌が止まるため、女性ホルモンにさらされない期間が生じます。そんな機会が多い方が、乳がんの罹患リスクを下げます。実は愛知県は人口が多い割に婚姻率が高く、また若くして結婚している女性が多いのが特徴。妊娠回数も多いことが予想され、乳がんの罹患率を下げることに寄与している可能性もあります」愛知県の婚姻率は全国3位(’16年総務省統計局調べ)。ちなみに「女性のがんが少ない県」第2位、山口県の女性の平均結婚年齢は28.6歳(’15年人口動態統計)。日本でもっとも早婚の県のひとつである。愛知県の県庁所在地・名古屋市では、喫茶店文化が花開いていることで知られている。名古屋市の喫茶代は1世帯あたり年間1万2,945円(’14~’16年平均、総務省調査)と全国2位だ。名古屋学芸大学健康・栄養研究所の下方浩史所長は次のように語る。「そんな喫茶店の多くで提供されるのはボリュームたっぷりのモーニングサービス。その背景には、愛知県民に朝食をしっかり取る習慣が根づいていることがあるでしょう。朝から良質なタンパク質などをしっかり食べれば、体内時計が整います。体内時計が正しく動くことは、がんの増殖を抑える効果があるともいわれているのです。喫茶店は、愛知県に住む女性たちにとっての社交場。友人とのおしゃべりは、がんの発症要因と考えられるストレスの発散にも。また大いに笑う楽しい会話は免疫力を高め、がん細胞を消滅させるナチュラルキラー細胞を増やしてくれるのです」また、愛知県といえば、トヨタを筆頭に、デンソー、ブラザー工業など大企業が多い。そんな企業の福利厚生が、がんになりにくい県をつくっていると、下方所長。「従業員ばかりではなく、家族の健康にも配慮する、古きよき日本の文化が残っている企業が多く、主婦の健診や人間ドックの補助金が出ることも。そのように健康を意識する機会が増えれば、食生活や生活を変えるきっかけにもなるでしょう」(下方所長)
2019年02月01日厚労省が新たに発表したがん罹患率の調査結果は、これまでのものよりさらに正確な数字だといわれるが、がん患者が少ない地域の“生活スタイル”をのぞいてみると驚きの共通点が見えてきた――。「がん患者の登録が’16年に施行されて初めて全数調査。これまでよりも正確で詳細ながん患者の実態分析が可能です。ランキングに一喜一憂することなく、この調査結果から浮かび上がる、がん予防のヒントを見つけ出すことが重要です」そう語るのは、国立がん研究センター「全国がん登録」室長の松田智大医師。厚生労働省が1月17日に公表した「’16年がん患者数」は、すべてのがん患者を追跡する「全国がん登録」のデータを初めて集計・分析したもの。この調査結果で見えてくるのが「女性のがんが少ない県」である。「全国がん登録」に調査に関わっている松田先生が続ける。「がんのリスクを減らし、かつ科学的根拠が示されている健康習慣は『禁煙、節酒、食生活、身体運動、適正体重の維持』の5つ。これらに加えて“がんになりにくい地域”には、それなりの食生活や生活習慣が隠されているのです」女性のがんが少ない都道府県ランキングトップ10は次のとおり(人口10万人あたりのがん罹患者数)。【第1位】愛知県・321.9人【第2位】山口県・327.2人【第3位】群馬県・328.3人【第4位】山形県・330.9人【第5位】岡山県・331.2人【第6位】長野県・331.4人【第7位】沖縄県・332.7人【第8位】栃木県・333.8人【第9位】静岡県・335.0人【第10位】島根県・336.8人※厚生労働省「がん登録2016年速報」より作成この“がんにならない県”ランキングで第1位になった愛知県にはどんな秘密があるのだろう。そして、上位に入っている県にはどんな共通点があるのだろうか?愛知県がんセンター研究所の松尾恵太郎医師が語る。「愛知県の女性の場合、がんのリスクを上げる喫煙率や飲酒率では、全国平均を大きく下回っています。また、肥満が比較的少ないのも重要なこと。厚生労働省の調査でも肥満率は全国の平均より下にあります。また、年間のスポーツ行動者率は全国6位。つまり体を動かす習慣を持つ人も多いのです」また、愛知県といえば八丁味噌や三河味噌などの豆味噌が食卓を彩ることが多いが……。「愛知県民は味噌汁以外だけでなく味噌カツや味噌煮込みうどん、どて煮など調味料として豆味噌を多用していることは重要なポイントです。蒸した大豆を味噌玉にして、こうじに仕込んでつくる豆味噌には、女性ホルモンと似た働きをする大豆イソフラボンが豊富。それが乳がんの発症を防ぐ効果があると考えられています」(松尾先生)発酵食品である豆味噌の抗酸化力に注目しているのが、椙山女学園大学の江崎秀男教授(管理栄養学)。「2年以上熟成させる豆味噌には褐色の色素『メラノイジン』が多く含まれ、米味噌や麦味噌と比較しても抗酸化作用が強いのが特徴。体を酸化させて細胞や遺伝子を傷つけてがんを発生させる、活性酸素を除去する働きがあるのです。また『メラノイジン』には、糖尿病を予防する機能も。がんの発症リスクを2~3割上げるといわれるのが糖尿病です。実は愛知県は、糖尿病による死亡率がもっとも低い県です」豆味噌だけではない。愛知県では、生産量の多い酢、みりん、醤油などバラエティ豊かな発酵食品がそろっていることも忘れてはならない。発酵食品といえば「女性のがんが少ない県」で第3位に入っている群馬県は「乳酸菌飲料」の年間消費額が全国平均の2倍近くで、全国トップクラス。腸内環境を整え、免疫力を高める効果がある発酵ライフも大切なようだ。愛知県の年間日照時間は2168時間(総務省統計局調べ)で全国第2位。この日照時間の長さとがんとの関係に注目しているのは、名古屋学芸大学健康・栄養研究所の下方浩史所長だ。「愛知県が、全国でも有数の日照時間が長い地域であることはあまり知られていません。日光を浴びると体内でビタミンDが生成されます。食物から摂取するよりも、日を浴びるだけで効果的にビタミンDが活性化されます。骨格の形成に関与することがわかっているビタミンDですが、最近では免疫機能を高め、肝臓がん、肺がん、乳がんなどの予防効果があることもわかっています」ちなみに、群馬県も1年間の快晴日数46日で全国2位と、共通している部分といえる。がんの予防には、野菜の多い食生活が欠かせないが、実は愛知県は、カゴメの調査によると1人あたりの1日の野菜平均摂取量は99.5グラムで全国ワーストだ。「愛知では共働きで働いている人が多いこともあり、お総菜を買って食べたり、外食の機会が多かったりすることで、野菜の摂取量が低いのかもしれません。しかし、トマトやキャベツなどの日本有数の産地である濃尾平野があり、親戚や知人には農業関係者がいる人も。そこから新鮮な野菜をもらうなど、統計には出てこない“摂取量”もあるはずです。海に面した愛知は新鮮な魚介類や海藻なども豊富。そんな豊かな食の環境もがんの発症を抑えていると考えています」(江崎教授)農業王国の群馬県の野菜産出額は愛知県に次ぐ第6位。ふぐで有名な下関で知られる山口県は、豊かな海に囲まれている。ここにもなにかしらのヒントがありそうだ。最後に、松尾先生が言う。「日本人の2人に1人がなるがんは、私たちにとって身近な病気です。がんのリスクを下げる生活習慣や食などを複合的に、そして地道な取り組みをコツコツ積み重ねることが近道なのです」
2019年02月01日「訪れるどんな子どもにも、楽しんでもらえるように」。仕事体験テーマパーク・カンドゥーでのスタッフ研修Upload By 発達ナビ編集部仕事体験テーマパーク「カンドゥー」は、3歳から15歳のお子さんが、モデルや警察官、パイロットをはじめ、約30種類の仕事を体験できる施設。日々、たくさんのお子さんが遊びに来ますが、その中には障害や病気のある子もいます。また特別支援学校や特別支援学級の校外学習の場として利用されることもあります。こうした中、「訪れる子どもたちに楽しんでもらいたい」と考えながらも、障害特性ゆえの困りごとに対して、どんな関わり・サポートをすればよいのかわからずに悩むスタッフも少なくありませんでした。そこで、発達障害をより深く理解し、多様な子どもたちが安心・安全に楽しめるような関わり方を身につけられるよう、スタッフ向けの研修を実施しました。研修には、現場で実際にお子さんたちと接するスタッフを中心に約50名が参加。講義だけでなく、グループワークやロールプレイを通して、「こんなとき、どんな風に関わったらいいのか」を体感していきました。2018年7月に研修が行われてから約半年後となる12月下旬、編集部は再びカンドゥーを訪れ、カンドゥーの安武覚さん(イオンモールキッズドリーム合同会社職務執行者副社長)と研修を受けたスタッフを取材しました。Upload By 発達ナビ編集部「私自身にとって、発達障害はとても身近に存在しています。1年数か月前にカンドゥーに着任したとき、“どんな子どもたちも無理なく楽しめる場にしたい”と強く思い、研修を企画しました」と語る、安武さん。カンドゥーでは、複数の子どもたちがグループとなり、一緒にお仕事を体験します。ですが、発達障害がある子にとって一斉指示を聞いて行動することの難しさや、パニックになってしまった場合に、「もっとソフト面で対応できることがあるのではないか」と考えたのがきっかけでした。Upload By 発達ナビ編集部では、実際に研修を行って、スタッフはどんなふうに受け止め、意識やサービスはどのように変わったのでしょうか?そこで、研修に参加したスタッフに話を伺いました。「研修を受ける前までは、“ハンディ”があるお子さんにどう対応したらいいのか戸惑うこともありました。でも研修で、“ハンディではなく特性”があるんだ、と考えられるようになりました」という添野さん。「暗いところが苦手、初めての場所が苦手など、お子さんによって感じ方や苦手なことは違います。研修をきっかけに、お子さん一人ひとりの状況を見て『なにか苦手なことがありますか?』など、お子さんや保護者の方に確認することが増えました。以前は、マニュアルにないことをやってもいいのかな?と迷う場合もありましたが、そういう迷いがなくなりました。たとえば、ファッションショーのお仕事ではお子さんに衣装を選んでもらいますが、お話するのが得意ではないお子さんの場合、着たい衣装を口では伝えるのが難しかったので、指差しで選択しやすいような環境をつくり、希望を伝えてもらうなどしました」大家さんも、研修を受けて、自信をもって対応ができるようになったと言います。「私は、ラジオ局のスタッフをすることも多いのですが、ラジオ番組の台本は文章量も多く、言葉遣いも丁寧です。文字を読んだり、音読するのが難しいお子さんの場合は、無理に台本通りに読んでもらわず、簡単なセリフにアレンジしたり、(スタッフが台本の)文字を指さしながら、ゆっくり読んでもらったりします。一言でもセリフが言えると、ラジオ番組の様子を録音したCDに声が残るので、記念にもなりますから」また、お話が苦手なお子さんへ、スタッフがどのように声かけするかによって、一緒に参加しているほかのお子さんの受け止め方も変わるとも感じているそう。「みんなが大らかに楽しめるよう、引っ張っていけるスタッフでありたいと思います」安武さんはこのようなスタッフの様子に、驚いたそう。「スタッフは、決められたタイムスケジュールの中で進行し、各企業の理念や魅力も伝えるというミッションがあります。その中で、一人ひとりに寄り添おうと自発的に考えられる柔軟性を持っていることに改めて気づかされました。研修を受ける前から持っていた寄り添う姿勢を、 “自発的に動いていいんだ”“お子さんそれぞれのちがいに寄り添っていいんだ”と、研修を受けたことで背中を押すことができたのではないかと感じました」ただ、スタッフ全員が研修を受けられたわけではないし、個人差もあるという安武さん。研修の内容を他のスタッフにシェアしたり、こんなときはどうすればいいの?とスタッフの間で聞く機会が増えたりという変化が生まれ、少しずつ変わってきているという実感があるそうです。2019年度も、研修などの機会をつくり、ソフト面での配慮をより充実させていきたいと、語ってくださいました。一人ひとり違う個性を、認め合える企業へ。ミュゼプラチナムの社員研修Upload By 発達ナビ編集部2018年度、ミュゼプラチナムにおいて、社員向け研修を複数回実施しました。研修の対象は、ブロック長やマネージャー、店長など、現場をまとめるリーダー的な社員。研修では、発達障害についての知識を深めるだけでなく、障害の有無に関わらず、相手の立場に立って考えることの大切さを感じられるワークなども行いました。そして、さまざまなお客さまへの関わりかたや、スタッフ同士のコミュニケーション、チームワークについて考え、学ぶ機会として研修を活用いただきました。Upload By 発達ナビ編集部ミュゼプラチナムは全国で177店舗の美容脱毛専門サロンを展開、社員数は4,200人以上。障害者雇用にも積極的で、さまざまな障害がある90人以上のスタッフが全国の店舗で働いています。研修を企画した柳沼さんは、「障害の有無に関わらず、人は一人ひとり違うのだということを意識し、『なんでできないの?』と相手に矢印を向けるのではなく、『相手に伝わるためには自分はどういう風に話したり伝えたりすればいいのか』と自分に矢印を向けてほしいと考え、研修を導入した」と言います。Upload By 発達ナビ編集部渋谷店の店長をつとめていたときに研修を受けたという杉村さん(現在は本社勤務)は、「お客さまへのお話の仕方、接し方などを指導するときに、こうしなさいと一方的に伝えるのではなく、『自分がお客さまだったらどう思う?』とスタッフ自身に考えてもらえるようにしました。信頼関係が築けるようになると、私の伝えたいことを理解してもらえるようになり、スタッフが結果を出せるようになってきました。もともとスタッフ自身に吸収力があったので、自信がついてどんどん伸びていけたのだと思います。それを見て、店舗の他のスタッフも『すごいね、どう伝えたの?』と関心を持ってくれたり、意識してくれるようになりました。その相乗効果で、店舗のチームワークがぐっとアップしたと感じました」。チームワークが上がった店舗では、スタッフ同士でも相手をねぎらう言葉が飛び交うようになったのだそう。スタッフはインカムをつけて業務を行っていますが、インカム越しに頻繁に「ありがとう」を言うようになり、店舗のよい雰囲気はお客さまにも自然と伝わっていったそうで、お褒めの言葉をいただくことも増えました。お客さまやスタッフに対しても、「一方的に自分の思いや考えを押しつけるのではなく、相手の立場に立って考える」。これは、ミュゼプラチナムが創業当時から大切にしてきたことです。社員数も増えていく中、その信念に改めて立ち戻ろうと導入した研修は、その狙い通りに参加した社員一人ひとりの中に浸透したようです。どんな人も、「ちがい」を認め合い、相手の立場を考えて行動できるようになったら、社会の中にある障害は、きっとなくなっていく――こうした取り組みがあちこちで行われるようになったら、どんな人も、より暮らしやすい社会につながっていくのではないかと感じられました。Upload By 発達ナビ編集部ミュゼプラチナムは、多くの女性に支えられている企業だからこそ、もっと女性が活躍できる社会にするための活動を行っています。ピンクリボン活動や、女性特有疾病の理解・予防を促すセミナーの開催などを、ミュゼハッピープロジェクト(MUSEE Happy Project)」として実施しています。その一環として行っている「乳がん啓発」では、各地で啓発イベントを行うほか、全国の店舗で乳がん検診体験を実施しています(毎月1回、店舗を巡回して実施)。通いなれた店舗で超音波検診を体験することで検診へのハードルも下がり、早期発見にもつながります。また、子宮頸がん啓発のための冊子も作成し、無料配布しているそうです。2019年よりテスト的にスタートする洋服のリサイクルは、店舗にリサイクルボックスを設置。実施店舗を順次増やしていく予定だそう。障害者雇用においても、働きやすい職場環境づくりなどこれまでの取り組みが評価され、東京都産業労働局が主催する「平成30年度障害者雇用エクセレントカンパニー賞」を受賞したそうです。社会に必要なこと・大切なことを積極的に取り組んでいこうという会社の姿勢があるからこそ、社員研修でのスタッフへの浸透も早く、チームワーク向上にも役立ったのではないかと、改めて感じました。参考:ミュゼプラチナムのCSR | ミュゼプラチナム2019年、障害のない社会を目指しての取り組みを、もっと進化させていきますLITALICOは、「障害は社会にある」と考え、どんな人も暮らしやすい社会となるよう、さまざまな企業の皆さまとともに取り組みを行っています。これからも研修や商品・サービス開発、イベント実施など、より幅広い企業の皆さまとのさまざまな取り組みを通して、一人ひとりのちがいを認め合い、支え合える「障害のない社会」を実現していきたいと考えています。2019年3月26日(火)には、「子育てフェスタ」も開催。専門家による講演やワークショップのほか、発達が気になるお子さんの生活に役立つ商品やサービスに取り組む企業の皆さまのブースなども予定しています。仕事体験テーマパーク「カンドゥー」の体験プログラムも「子育てフェスタ」に出張予定です!発達の気になるお子さんたちにも分かりやすく参加しやすい体験プログラムを特別にご用意いただくことになりました。ぜひご来場ください!撮影/近藤 誠、鈴木江美子
2019年01月28日女性保険は、医療保険のように、入院を伴う病気やけがをした場合に保険金が支払われるタイプの生命保険ですが、乳房にかかる病気や子宮にかかる病気といった女性特有の疾病に対して保障に厚みのある特徴があります。こちらは、筆者個人の見解ですが、ライフプランの相談や現在加入している生命保険の見直し相談をしておりますと、20代や30代といった若い女性が、医療保険ではなく女性保険を選んで加入している傾向が多くなっていると率直に感じています。これは、女性疾病が、若い年代から発症してしまうリスクがあることから、それに対する心配を軽減し事前対策をするといった意図があると見ることもできそうです。そこで本記事では、女性保険の必要性を中心に、基本的な特徴から将来のライフプランまで女性保険の必要性を幅広く考えていきたいと思います。女性保険の基本的な特徴一般に、女性保険は、医療保険に比べて保険料が高く設定されておりますが、これは、女性疾病と呼ばれる乳がんや子宮頸がんなどといった、女性特有の病気にかかってしまった場合に保障が上乗せされる特徴があるためです。以下、大まかなイメージとなりますが、たとえば、女性保険に加入している場合と医療保険に加入している場合で、肺がんにかかった場合と乳がんにかかった場合の保障イメージを比較してみます。上記は、仮に、がんで入院した場合に1日あたり5,000円の入院給付金を受け取ることができるといったイメージで作成しておりますが、女性保険に加入している場合で、女性疾病にかかった場合は、通常保障される5,000円に上乗せされて入院給付金が受け取れるといったものが女性保険の特徴です。(金額は仮のものです)このように考えますと、女性保険とは、医療保険に女性疾病の特約が付加されている保険と捉えることもできるのですが、はたして、女性保険は本当に加入する必要があるのでしょうか?女性保険は本当に必要?多くの女性の方からお叱りを受けてしまうかもしれませんが、筆者個人としては、女性保険に加入することは反対で、医療保険で十分であると考えています。女性は、男性に比べて若い内から女性特有のがんなど、いわゆる女性疾病と呼ばれるリスクが高いことは統計データでも公開されており、心配になる気持ちは十分理解しています。しかしながら、筆者が感じている女性保険に反対の理由を少し考えていただければ、もしかしたら将来のライフプランにお役立ていただける部分もあるのではないかと率直に感じているのも確かです。加入に反対する理由①医療保険でも女性疾病は保障の対象になる女性保険に加入することに反対である1つ目の理由は、男女が共通して加入することができる医療保険でも女性疾病は保障の対象になるためです。上記のように、女性疾病にかかった場合に保障が上乗せされる特徴のあるものが女性保険の特徴でしたが、女性疾病に限定して保障を上乗せさせる理由がどこにあるのでしょうか?たとえば、入院して医療費が高額となった場合に申請することによって適用できる高額療養費制度は、女性疾病であるかを問わず、共通して制度の適用対象になります。仮に、高額療養費制度が女性疾病であるか否かによって保障のされ方が異なるのであれば、加入を検討する余地が十分あると思われますが、どのような病気であったとしても、公的健康保険の対象となる医療費は、高額療養費制度の対象です。そのため、女性疾病に限定して保障を上乗せする必要性が見当たらないのではと筆者は感じています。加入に反対する理由②いつ、どのような病気になるのかわからない(女性疾病にかかるかわからない)女性保険に加入することに反対である2つ目の理由は、いつ、どのような病気になるのかわからない(女性疾病にかかるかわからない)ためです。そもそも、女性保険に加入するということは、医療保険に加入するよりも高い保険料を負担して女性疾病に対する保障の備えを確保していることになりますが、女性疾病にかからなければ、女性保険に加入している恩恵が受けられません。そのため、女性保険に加入して多くの保険料を支払うよりであれば、医療保険の保障を厚くして保険料を支払う方が、どのような病気にかかったとしても、手厚い保障が受けられることになるため合理的なのではないかと思うわけです。女性保険は反対ですが、女性が自分の保険を持つことは大賛成これまで筆者個人が感じていることをお伝えさせていただきましたが、女性保険に加入するにしても医療保険に加入するにしても、女性が自分の保険を持つことはとても大切だと感じています。女性が自分の保険を持つというのは、女性保険や医療保険に加入する女性自身が、保険契約者であり、被保険者であり、保険金受取人であるということです。なぜ、女性が自分の保険を持つことが大切であるかと言いますと、保険契約者が抱える権利や義務が大きく関係しているからです。保険契約者の権利と義務とは保険契約者とは、保険契約をした保険料を支払う義務や住所変更などの各種届出をする義務を負っている方のことを言いますが、併せて、以下のような権利を保険契約者は持っています。保険金や給付金を請求する権利現在加入している契約を変更したり解約したりすることができる権利保険契約者や保険金受取人を変更する権利たとえば、保険契約者が夫で妻が被保険者の女性保険や医療保険に加入している場合で、万が一、離婚をした場合を想定します。離婚をしたことによって、妻は、前妻にあたるわけでありますから、通常、引き続き前妻を被保険者とした女性保険や医療保険の保険料を前夫が支払っていくことは考えられません。つまり、保険契約が解約されることによって、前妻はこれまであった女性保険や医療保険の保障を失ってしまうことにつながります。専業主婦でも自分の保険を持つことができます専業主婦の方は、収入が無いといった理由から女性保険や医療保険に加入することができないと思われている方もおられますが、これは大きな間違いで、専業主婦であったとしても、自分の保険を持つことができます。実際のところ、専業主婦と言っても、自宅で家事全般をする専業主婦もいれば、夫の扶養の範囲内でパート勤務に出かけて、家事を両立されている専業主婦もおられます。いずれにしましても、専業主婦は、自分の保険を持つことができますので、女性保険や医療保険に加入する場合は、保険契約者・被保険者・保険金受取人をすべてご自身にした自分の保険を持つことをおすすめします。根拠や具体的な考えのない小さな保障設定は厳禁専業主婦が女性保険や医療保険に加入する上で、たとえば、収入が低いからといった理由や収入が無いからといった理由で小さな保障のものへ加入することは厳禁です。女性保険や医療保険に加入する目的は、病気やけがで入院した場合などにおける医療費負担の経済的な補填でありますから、収入の高低や有無に関わらず、家計の負担にならないような保障を確保しておくことが重要なのです。そのため、根拠や具体的な考えのない小さな保障設定をするのは注意するように心掛けておきましょう。まとめ女性保険は、女性疾病にかかった場合に保障が上乗せされる特徴がある保険ですが、加入前は、いま一度、女性保険の特徴を再確認した上で、本当に必要なものであるかどうかを考えることがとても大切です。ご自身にとって必要と言える保険は、周りの人がどのように感じていようがまったく関係の無いことでありますから、筆者が女性保険に反対の立場であったとしても、将来のライフプランや心配を回避できるのであれば加入されることは決して間違いではないと思います。仮に、女性保険の必要性を感じ、実際に加入する場合は、自分の保険を持つことも視野に入れた保険契約をできる限り行っておくようにしたいものです。
2019年01月02日今や世帯加入率が62.8%(注)となっているがん保険。生命保険を検討する際の保険種類として、その認知度は高くなっています。しかし、一方で「本当にがん保険って必要なの?不要ではないの?」という疑問をいだく方もいらっしゃるようです。今回は具体的なケース(がん保険に入らなかった場合と、がん保険に入っていた場合)を設定して、がん保険が必要なのか不要なのかをどのように考えればよいかをわかりやすく説明していきたいと思います。注:生命保険文化センター「平成30年度 生命保険に関する実態調査」がん保険に入らなかった場合には?それでは早速、ある具体的な人物像を設定して、がん保険に入らなかった場合と入っていた場合とを比較していきます。まずはがん保険に入らなかった場合を考えてみましょう。人物像を設定30歳女性のAさんは独身の会社員(年収400万円)で一人暮らしをしています。このAさんが、がん保険に入っていないまま、5年後の35歳の時に会社の健康診断で再検査をすすめられ、病院で乳がんとの診断を受けたとしましょう。入院後乳房温存手術を行い、1週間入院後に退院となりました。その後5週間にわたって放射線療法を受けたと仮定します。公的医療制度と自己負担額は?皆さまご存知の通り、がん保険に入っていなかったとしても公的な医療制度があります。今回のAさんの場合では、この公的な医療制度はどのように適用されて、Aさんの自己負担はどのぐらいになるのかを確認していきましょう。まず、Aさんに対する治療費総額はどれぐらいになるでしょうか?乳がんの専門学会でのデータをもとに試算すると以下の通りとなります。乳房温存手術で1週間入院:75万円放射線療法で5週間通院:47万円上記の治療費合計122万円はあくまで総額であり、皆さんが負担する金額ではありません。公的な医療制度が適用されて、皆さんの負担は通常この治療費総額の3割となります。自己負担額の治療費をあらためて示すと以下の通りで合計37万円となります。乳房温存手術で1週間入院:23万円放射線療法で5週間通院:14万円さらに、高額療養費制度というものがあり、1ヶ月の自己負担額は、80,100円+(267,000円を超えた額)×1%が限度となります。今回は入院後6週間が経過したケースですが、仮に1ヶ月間で37万円の自己負担額であったとすると、自己負担額は81,100円程度となります。がん保険に入っていない場合のまとめ以上の通り今回Aさんが、がんに罹患して治療する際にかかる自己負担額を確認してきました。がん保険に入っていなかったとしても、こうした負担額をまかなえる貯蓄があればとりあえずの対処は大丈夫ということになります。ただし気をつけていただきたい点があります。今回のケースでは、公的保険の適用外となる治療がありませんでしたが、先進医療といわれる治療を行った場合は、公的医療が適用されないため、全額自己負担となります。例えば身体への負担が少なく乳房等の切除を避けたいと考えて量子線治療という先進医療を選択した場合、276万円という全額自己負担の治療費がかかることあります。(注)また治療費以外にも差額ベッド代といわれる入院代の追加費用や病院での食事代、入退院や通院でのタクシー代などの費用が別途かかることは押さえておきたいところです。(注)生命保険文化センター「ひと目でわかる生活設計情報」しかし逆にいえば、こうしたもしもの時の貯蓄が無く、がん保険にも入っていない場合は、経済的に苦しい状態になる可能性が残ってしまうのです。がん保険に入っていた場合には?それでは次に、がん保険に入っていた場合を考えてみましょう。人物設定先程と同じ30歳女性のAさんに登場していただきましょう。このAさんが、30歳でがん保険に加入していて、5年後の35歳の時に会社の健康診断で再検査をすすめられ、病院で乳がんの診断を受けたとしましょう。その後の経過は先程と同じと考えます。このAさんが加入していたがん保険を設定しましょう。アクサダイレクト生命のがん終身に入っており、保障内容は以下の通りだったとします。もちろんこの保障内容で実際に加入することが出来ます。アクサダイレクト生命がん終身・保険期間:終身・保険料払込期間:終身・月払保険料:3,600円がん保険の給付金が支払われるAさんが入っているがん保険から、どれぐらいの給付金が支払われるでしょうか?今回の治療で支払われる給付金は以下の通りです。がん診断給付金で200万円がん入院給付金で14万円(7日間×2万円)がん手術給付金で10万円退院後療養給付金で10万円合計すると234万円となります。がん保険の保険料負担を考えておくこれに対して、Aさんの治療費の自己負担は先程の保険に入っていなかった場合と同じく8万円程度となりますが、出費はそれだけではありません。35歳にまるまでの5年間、がん保険に加入していたのですから、その保険料の負担を考慮に入れなければいけません。この負担額は毎月3600円×5年(60ヶ月間)であり約22万円となります。最初のがん保険に入っていなかった場合と平等に比較するためには、この保険料負担も入れて考える必要があるのです。自己負担額8万円程度に支払保険料の22万円を合わせて30万円の負担に対して、234万円の給付金の支払いがある、ということになります。がん保険に入っている場合のまとめこれまで確認してきた通り、がん保険に入っていた場合は、がん治療の自己負担額を十分まなかえる給付金が支払われることがわかりました。しかしながら一方で毎月がん保険の保険料は支払う必要があり、さきほどのAさんのケースでは、5年間で22万程度の負担が発生することになります。加えて5年後にがんになるとは限りませんので、10年後、15年後かもしれませんし、逆に1年後かもしれません。10年後、15年後にがんになった場合は、そこまでの支払保険料は2倍、3倍になりますし、60歳、70歳まで保険を継続することになれば、30年、40年の保険料負担になるのです。なお、今回のAさんが加入していた商品のように保険料払込免除特約(注)があれば、がんになった以降の保険料の負担はなくなります。以上のことも考慮にいれてがん保険の必要性を考えると良いでしょう。(注)保険料払込免除特約とは?がん保険は、がんの診断で保険金を受け取った後も、保険自体は消滅せずに継続となります。そうすると本来は保険料をその後も支払う必要があるわけですが、保険料払込免除特約が付帯している保険は、その後の保険料支払いが免除されるわけです。これはがんに罹患した人にとってはとても有難い制度です。まとめ今回は、「がん保険は本当に必要なの?不要ではないの?」といわれる素朴な疑問を出発点として、がん保険に入っていた場合と入っていなかった場合とを比較することで、がん保険が必要か不要かを考えるヒントにしていただきました。がん保険に入っていない場合には、当然ながら公的な医療制度で保障される範囲をこえた治療費の自己負担額を貯蓄しておくことが必要となります。一方でがん保険に入っている場合には、そうした自己負担額をがん保険の給付金で手当てすることが可能ですが、そのがん保険の保険料(費用)を毎月支払い続ける必要があります。がん保険が必要か不要かを判断する際は、「がんになった時にどれぐらいの自己負担となり、それを貯蓄で支払えるかを考える。」または「自己負担をがん保険の給付金で手当てするために保険料はどれぐらいなら支払うのかを考える。」こうした両面から検討することが重要なのです。
2018年12月24日女性の体が変化していく40代。健康に不安を抱える年代だが、どこでどんな検査を受けたらいいのか迷う女性は多い。そこで本誌は、40代以上の女医50人に、緊急アンケート。「40代以上の女性が受けておくべき検査」を調査。がんを早期発見するためには、どんな検査が必要なのか、部位ごとに見ていこう。大腸に次いで、女性で2番目に“がん死”が多いのは肺がん。アンケート結果で気になったのは、「まずはエックス線検査をすすめるが、見落としも多い」という回答が散見されたことだ。たしかに、河北健診クリニック(東京都)で肺がんの見落としがあったニュースは記憶に新しい。大阪府摂津市のマツイ医院院長・大林きよ子先生は、見落としの可能性についてこう説明する。「胸部エックス線検査では、小さいがんは見えづらいので、正直言って見落としも多い。ただ、毎年受けることで、ちょっとした変化に気づき、見落としが防げます。より詳細に見るにはCT検査がおすすめですが、被ばく量がエックス線より多い。リスクの高い肺がん家系の方や喫煙者は、1~2年に1度CT検査を受けるのがベストです」女性のがん罹患数ではトップの乳がんは、40代後半から50代前半で罹患率のピークがくる。仙台市のせんだい総合健診クリニック院長の石垣洋子先生は、次のように語る。「乳がんは、治るがんにもかかわらず、日本の乳がん検診受診率は国際的にも最低レベルで、不幸にも命を落とす方が出てしまうのが残念です」アンケートでも、女医の多くが、乳がん検査は「1~2年に1度受けてほしい」と回答。超音波検査を推奨する医師が多かった。岡山市・淳風会健康管理センターの斧澤克乃先生も超音波検査をすすめる。「マンモグラフィーでは、脂肪の少ない“高濃度乳腺”の方は、がんが判別しづらいのです。日本人女性の約8割は高濃度乳腺といわれているので、乳房の大きい方に多い脂肪性乳腺以外は、超音波検査のほうが適しています(乳房超音波検査は、自治体検診にはないのでオプション)。まれに超音波検査で写らないがんもあるので、超音波検査は毎年受けて、マンモグラフィーは、数年に1度受けると安心です」子宮頸がんは30代後半から40代前半に、子宮体がんは、40歳から急増し55歳で罹患率がピークに。アンケートでも、多数の女医が、「子宮頸がん・体がんともに、1~2年に1度は細胞診検査を受けたほうがよい」と回答。「子宮頸がんは、2年以上放置したら子宮の筋層の奥まで進行して入院治療が必要となってしまいますが、2年以内であれば、診察台の上で異型細胞だけをパチンと切除して終わり。前がん状態のうちに取りきれてしまうのです。細胞が直接採取できる検査なので、必ず受けてほしい」(斧澤先生)20人の女医が「毎年受けたほうがよい」と回答した超音波による卵巣がん検査は、自治体の“がん検診”では対象になっていない。「子宮がん検査を受けるときに、オプションで子宮・卵巣の超音波検査を付けると、卵巣がんの可能性もわかります」(斧澤先生)
2018年12月23日婦人科検診で受けられる検査は?ひとことで、婦人科検診といっても、受ける病院や人間ドックによって検査内容は様々です。なので、検診を申し込む前に、どのような検査内容が含まれているのかを事前にチェックしておく必要があります。一般的には・子宮頸がん検査・内診・子宮体がん検査・乳がん検査が挙げられます。 婦人科検診は何歳から受けられるの? 婦人科検診は、何歳から受けるべきという基準は特にありません。いつでも婦人科を受診することは可能ですし、自治体などでは30歳を過ぎると1年に1回程度、子宮がん、乳がんなどの検診を受けることができます。婦人科の病気と言ってもいろいろあります。内科などと同じく、症状が現れてからの受診でも治る病気がほとんどですが、がんなど、症状が出てからでは遅すぎる病気については、定期的に検査をしておくほうがよいでしょう。 婦人科の選び方と予約方法 どんな病院を選んだらいいの?インターネットで検索して評判の良い病院、家や通勤途中にある病院、一度電話で問い合わせして対応の良い病院、女医さんのいる病院など…。選ぶ基準は人それぞれですね。特に気をつけたいのは、乳房の検査をしたいときです。子宮や卵巣の検査は婦人科ですが、乳房の検査は、基本的に外科だということを覚えておくとよいでしょう。婦人科でも乳がん検診をしてくれるところもあるので、事前に確認することをおすすめします。また、最近では、乳房を専門に見てくれる乳腺外来も増えているので、そちらを探してみるのもおすすめです。 予約の仕方は?受けたい検査をしてくれる病院を見つけたら、まず電話やネットで予約。そのときに気をつけたいのは、月経日です。時期によっては受けられない場合があるので、あらかじめチェックしておきましょう。 婦人科検診当日の準備。必要なもの、服装は? 必要なものは?保険証、費用は忘れないようにしましょう。クレジットカードが使えないところもありますので、予約の段階で、あらかじめ費用などと合わせてチェックしておくとよいですね。 診察費はいくらくらいなの?・STD(性感染症)を疑って受診した場合自己負担額は6,000円~11,000円ほどです。内訳としては、だいたい以下の通り。初診料:保険適用3割負担で800~1000円ほど検査費用:4,000~9,000円ほど薬代:1000円前後自費診療の場合は、総額で15,000~20,000円ぐらいが相場となります。 ・子宮頸がん、子宮体がん検診の費用自治体からの公費検診であれば、無料から、2,000円程度の自己負担が一般的です。また、自費診療の場合は、各機関によって異なりますが、子宮頸がん検査のみで、3,500円~6,000円程度というケースが多いようです。 服装は脱ぎ着しやすいもので検診の当日は脱ぎ着しやすい服装で向かいましょう。診察台では下着を脱ぐ場合もあるので、パンツスタイルより長めのスカートが◎!検査着を用意してくれている病院もあるので、事前に確認してみましょう。 なるべくナチュラルな状態でメイクはせずに、すっぴんに近い方が、顔色の状態が分かりやすく貧血などの症状もわかるのでベターです。 婦人科検診でわかる病気 婦人科にかかわる病気には、以下のものが挙げられます。・乳がん・HPV(ヒトパピローマウイルス)または子宮頸(けい)がん・子宮体がんが挙げられます。それでは、それぞれの検査の内容について解説していきましょう。 乳がんの検査について 乳がんってどんな病気?乳がんとは、乳房組織に発生する悪性腫瘍のこと。妊娠・出産経験のない人の方がなりやすく、30代でも発症する病気です。乳がんは、早期発見し、治療を開始すれば完治が可能な病気。ですので、乳がん検診は定期的に受けることが大切です。 乳がん検査の方法は?乳がん検診は上半身裸で行います。基本的な流れは以下の通り。【視診】↓両側の乳房をくまなく観察します。↓【触診】しこりを探します。↓【医療機器による検査】マンモグラフィーか超音波検査のどちらかを合わせて行います。施設によっては、マンモグラフィーと超音波検査を両方とも行うところもあります。それぞれの方法に一長一短はありますが、一般に、40代より上の年齢ならマンモグラフィー、40代より下の年齢ならエコーが推奨されます。 マンモグラフィーとは?検査って痛いの?マンモグラフィーとは、乳房専用のレントゲン検査を行う装置のこと。マンモグラフィーは乳房を上下に挟んで一枚、さらに挟んだ状態で斜めにねじって一枚撮影する方法が一般的です。欧米人のように乳房にボリュームのある方は挟みやすく、挟まれる痛みもそれほどありませんが、東洋人は比較的乳房のボリュームがなく、特にやせて乳房の小さい方は挟みにくいので、多少挟まれる痛みがあると思います。しかし、個人差はありますが我慢できる程度の痛みですので、さほど心配はないでしょう。 HPV・子宮頸がんの検査について 子宮頸がんってどんな病気?子宮にできる悪性の腫瘍(しゅよう)のうち、子宮の入り口にできるものを子宮頸がんと呼びます。子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)という病原体のうち、高リスク型HPV感染により発症します。このHPV はほとんどが性行為による感染とされていて、約80%の女性が一生のうちに一度はHPVに感染するといわれています。 HPV・子宮頸がん検査の方法と流れ・HPV高リスク型HPV感染を調べます。検査室でおりものを採取し、ウイルスの有無を判定します。子宮頸部の細胞診と同時にHPV検査も行うこともあります。医師にしてもらう他、自己採取で検査する方法もあります。自分で膣の中に綿棒を入れて、おりものを採取する方法です。ただ、自分で綿棒を入れるほうが怖いということであれば、医師に採取してもらいましょう。また、自宅などで自分で採取した子宮頸部の細胞を郵送し、検査してもらうサービスもあります。 ・子宮頸がん一般的に次のような流れで検査します。病院によって異なる場合があります。【問診】↓【視診】下着を取って内診台へと向かい、医師が子宮、おりものなどの状態を目で診ていきます。↓【内診(触診)】医師が直接、膣内に指を入れ、腫れ、しこり、その他の異常がないかを確認します。↓【細胞診】クスコという器具を膣に入れて中を広げ、子宮の入り口をブラシで擦って細胞を採取します。クスコは様々な大きさのものがありますが、一番小さいものだと人差し指くらいです。性行為の経験がなく不安な方は、受診の際に初めて検診を受けることを伝え、一番細いクスコを使ってもらえるよう、あらかじめ相談しておくといいでしょう。細胞診でがんが疑われる場合は、さらに精密検査を行います。 子宮体がんの検査について 子宮体がんってどんな病気?子宮にできる悪性の腫瘍のうち、子宮体部(内膜)にできるものを子宮体がんと呼びます。子宮の入り口に発生する子宮頸がんとは性質が異なります。症状としては不正出血、おりものの増加などがあり、子宮体がんになる前段階から見られることがありますので、月経の不順と簡単に片づける前に疑いを持ってみましょう。逆に子宮体がんになってからも自覚症状が全くない場合もあるので、早期発見には定期的な検診がもっとも重要です。ただし、自治体や会社などで行われる検診は、頸がんの検診だけのことが多く、体がんを発見するのは困難です。また、月経不順は子宮体がんだけでなく、ほかの病気の兆候であることも多いので、繰り返しになります、「体質だから」と簡単にとらえずに、積極的に婦人科の診察を受けることをおすすめします。 触診や機械での内診は、絶対に必要なの?検診には、視診、指での触診の他、「プローブ」という細長い超音波器具を膣に入れる経膣エコーの検査を受けることがあります。ただし、膣内に器具を入れることに抵抗があるようであれば、検査の際に「経膣エコーの代わりに腹部エコーかCT/MRIで検査してほしい」と話してみてください。受診前に問い合わせをしたり、かかりつけのお医者さんに、この点を記載した紹介状を書いてもらったりするのもよいでしょう。 子宮体がんの検査方法と流れ一般的に次のような流れで検査します。病院によって異なる場合があります。【問診】↓【視診】医師が性器周辺、膣内、分泌物のチェックをします。↓【内診(触診)】子宮や卵巣の状態を、腟から指を入れて調べます。肛門から指を入れ、直腸やその周囲に異常がないかを調べることもあります。↓【細胞診】子宮口から細い器具を挿入し細胞を採取し、検査します。分泌物や子宮細胞の検査結果はだいたい一週間後くらいかかります。細胞診でがんが疑われる場合は、さらに精密検査を行います。 わかれば怖くない!婦人科検診に行ってみよう 子宮頚がんと乳がんは一番早期発見しやすいがんであり、早期発見すれば、命を救うことはもちろん、子宮や乳房を温存する治療法も選択できます。また、がん以外でも、子宮筋腫や卵巣のう腫などの病気であれば20代でも多く見られることがあります。様々な婦人科の病気を早期に発見するためにも、若いうちから定期的に検診を受けたり、異常を感じたらすぐに受診することが大切です。怖がらないで、ぜひ検診を受けてくださいね。 wellfyより
2018年12月11日この時期になると、 忘年会などでお酒を飲む機会が増える女性も多いのでは?お酒はコミュニケーションを円滑にするツールにもなりますが、女性のカラダは男性よりもアルコールの影響を受けやすいことが知られています。女性がお酒を飲むことで起こり得る3つのリスクについて解説します。女性のカラダがもともとお酒に弱い理由体内の水分量を表す水分率は、男性で55~65%、女性は45~60%と女性の方が少なめです。 この体水分率が少ないとお酒を飲んだときに血液中のアルコール濃度が高くなってしまいます。飲酒量が同じでも、血液中のアルコール濃度は女性の方が高くなりやすいということになります。また、女性は男性よりも肝臓自体が小さいため、男性よりアルコール処理能力が弱いということも分かっています。これらの要因によって、女性は急性アルコール中毒や肝硬変を引き起こすリスクが高くなる傾向があります。(※1)お酒の飲み過ぎが女性にもたらす3つのリスク1.乳がんの発症リスクが上がる乳がんになる日本人女性は年々増加していて、2012年には年間6万人以上が乳がんと診断されています。欧米型の食生活・太り過ぎ・出産数の減少などが、近年の乳がん患者数の増加の主な原因とされていますが、アルコールの摂り過ぎも乳がんを発生させる原因のひとつです。さらに、飲酒量と比例して乳がんの発生率が高くなることは確実とされており、注意が必要です。(※2)(※3)2.骨粗鬆症になるリスクが上がる骨の代謝バランスが崩れ、骨折しやすくなった状態を骨粗鬆症といいます。多量の飲酒は、骨を作る骨芽細胞の活性を抑え、カルシウムを吸収する消化器官の働きを低下させてしまいます。アルコールを摂り過ぎる状態が続くと、骨密度の減少が加速して骨粗鬆症に陥りやすくなります。(※1)(※3)3.赤ちゃんの健康を害する妊娠中の女性が飲酒をすると、お腹の赤ちゃんに悪い影響を与えます。胎児性アルコール症候群(FAS)になると、生まれてくる赤ちゃんの体重減少・脳の障害などの症状がみられるケースがあります。赤ちゃんを守るためにも、妊娠中の飲酒は控えるのがベストです。また、母乳での育児期間の飲酒も要注意。というのは、飲んだお酒が赤ちゃんに移行してしまい、悪影響を及ぼすからです。授乳中は極力お酒を控えるようにしましょう。 近年では、アルコール依存症の女性が増加しています。主な原因のひとつにストレスが挙げられますが、お酒でストレス解消をするのではなく、趣味や打ち込めるスポーツなど、別のストレス解消法を探すことが大切です。お酒は適量をカシコク楽しむようにしたいものですね。 【参考】(※1)e-ヘルスネット〈〉(最終閲覧日2016/11/03)(※2) 全国がん罹患モニタリング集計国立がん研究センター がん対策情報センター 2016年3月76ページ〈〉(最終閲覧日2016/11/03)(※3)乳房再建ナビ〈〉(最終閲覧日2016/11/03)(※4)e-ヘルスネット〈〉(最終閲覧日2016/11/03)(※5)e-ヘルスネット〈〉(最終閲覧日2016/11/03) 【執筆者】衞藤敬子/管理栄養士コントラクトフードサービス大手(株)グリーンハウスに入社、社員食堂のメニュー提案や栄養指導業務を経て、2009年「あすけん」に参加。アドバイス作成やサービス開発に携わる傍ら、年間150件以上の栄養指導やプロアスリート選手の食事サポート、セミナーなどを実施。現在はフリーランスに転向し、幅広く活躍。
2018年12月02日「最終的に温存手術を選ばず全摘の決断をしたのは、理屈ではなく体の中でがんがものすごい速さで育っていくのを感じたからです」エネルギッシュに報道の現場を飛び回っていたある日、右胸にしこりを見つけた。社会人2年目の春だった。絶望に打ちひしがれながらも、家族や医師、同僚に支えられて、日本テレビ報道局社会部記者の鈴木美穂さん(35)は、徐々に前を向けるように。闘病を経験している記者として、がんとともにありながらも、希望の持てる生き方を伝えたいと模索してきた。いま夫という家族を得て、鈴木さんは新たなチャレンジに歩みだそうとしている――。’06年4月、鈴木さんは日本テレビに入社。面接時からドキュメンタリー志望と伝えていた彼女だったが、希望どおり、報道局へと配属された。入社1年目のAD時代から、自らネタを見つけては企画書を提出して、ニュース番組内での放送を実現。さらに1年後には、若手の皇室担当としてベテラン記者に交じり夜討ち朝駆けで、ハードながら充実した日々を送っていた。右胸のしこりに気づいたのは、そんな24歳の春だった。’08年5月2日、乳がんと検査結果を告げられる。「結婚も、出産もしないまま、私は死ぬのか。健康優良児で、親族にも一人もがんはいませんでしたから、『なんで私なの?』と、かつてないほどひどく混乱しました」女性の11人に1人がかかるといわれる乳がん。鈴木さんのがんは進行が早く、当時は再発リスクも高いといわれていた。“HER2陽性”タイプだった。「死にたくない」という一心で、最良と思える治療を求めて、病院をまわった。そんななか出会ったのが、取材で懇意になった医師が紹介してくれた国際医療福祉大学三田病院・乳腺センター長の吉本賢隆先生(70・現よしもとブレストクリニック院長)だった。「がんになって最もつらかったのは、未来が見えないことでした。私の未来の可能性を一緒に考えてくれた吉本先生に主治医になってもらおうと決めました」5月21日、右乳房の全摘出手術を行った結果、ステージ3の乳がんで、リンパへの転移も判明。抗がん剤治療が始まり、副作用で全身の脱毛が始まる。この苦境を支えたのが、24時間交代で付き添ってくれた家族であり、要所で治療の様子を撮影してくれた職場の仲間だった。「先輩ディレクターの『美穂はいつか自分の体験を伝えたくなるときがくるから』という提案がきっかけで、ときには家族もカメラを回してくれました。私自身、『がんになった自分だからできることがある』と信じていたというより、正直、当時はそうでも思わないと気力を維持できなかった」ちょうどHER2陽性タイプに効果のある分子標的薬が開発されたことも味方した。放射線など「治療のフルコース」を経て、8カ月の休職後、職場復帰を果たす。仕事に復帰することで不安が少しまぎれてはいたが、同じ悩みを語り合える場が欲しかった。「当時は、報道でもがん患者にはモザイクをかけるような時代。特に若いがん患者の情報は少なかったんです。同じ体験をした人たちに会いたいと思いました」’09年夏、仲間を集めて、35歳以下の若年性がん患者の団体「STAND UP!!」を立ち上げた。がん告知から5年目を迎えた’13年には、ヨガなどがん患者のためのワークショップを主催する「Cue!」をスタートさせて講演なども行い、海外のがん関連の会議にも積極的に参加。「完治まで10年といわれる乳がんですから、5年目は“折り返し”のイメージ。講演では『励まされました』という人がいて頑張ろうと思うんですが、同時に自分の体験を思い出してつらくなり、落ち込むということの繰り返しでした」しかし、国内外の患者らとの交流のなかで、少しずつ前向きな気持ちが大きくなっていく。「患者が、がんになった直後から立ち寄れて、欲しい情報も得られる常設の場が必要だと、より痛感するようになりました。日本では、治療法はもちろん仕事や恋愛、結婚、出産などの悩みを吐き出したり共有できる場所がなかったんです」そして思った。「だったら、自分で作ろう!」と。「がん患者が集える場所をつくろうと、両親も巻き込んで、一緒に不動産会社めぐりをしていました。世田谷に約8,000万円の一軒家の物件を見つけ、生涯ローンを組む寸前までいっていたんです」そんな矢先の、発症から6年目の’14年春、ウィーンでがんに関する国際会議に出席した鈴木さんは「マギーズセンター」と出合い、「これだ!」と衝撃を受ける。イギリス人の造園家のマギーさんが乳がんになったとき、「患者や家族が安らぐと同時に専門家に気軽に相談できる場所を」と、’96年にスコットランドのエディンバラに設立した施設。「早速、パソコンで“マギーズ”とカタカナで検索したら3件だけヒットして、そのすべてに“秋山正子”の名がありました」すぐに新宿区で「暮らしの保健室」を主宰する看護師の秋山正子さん(68)のもとへ、都のモデル事業の取材として駆けつけた。秋山さんは、当時のことをこう語る。「インタビューが終わるころには、『一緒にやりましょう』と手を取り合っていて。医療関係の人材確保は私、土地建物の資金面や広報は鈴木さんという互いに補い合える協力関係ができて、一気に計画は加速しました」’16年10月10日、「第二のわが家」をコンセプトに、がんにまつわるさまざまな相談が無料という画期的な施設「マギーズ東京」がオープンした。そんな鈴木さんは次のステップに踏み出そうとしている。「根っこにあるのは、私の原体験としてのがん闘病ですが、今後は病気に関するサポートに限らず、生きづらさや困難を抱える人たちを、そっと包み込む寛容な社会をつくっていきたい。そのために必要と思えば、場や商品づくりや、記者のときと同様に情報発信もしていきたい」
2018年11月19日エネルギッシュに報道の現場を飛び回っていたある日、右胸にしこりを見つけた。社会人2年目の春だった。絶望に打ちひしがれながらも、家族や医師、同僚に支えられて、日本テレビ報道局社会部記者の鈴木美穂さん(35)は、徐々に前を向けるように。闘病を経験している記者として、がんとともにありながらも、希望の持てる生き方を伝えたいと模索してきた――。「いちばん最初は3月でした。シャワーを浴びていて、ふと右胸のしこりに気付くんです」’06年4月、鈴木さんは日本テレビに入社。面接時からドキュメンタリー志望と伝えていた彼女だったが、希望どおり、報道局へと配属された。入社1年目のAD時代から、自らネタを見つけては企画書を提出して、ニュース番組内での放送を実現。さらに1年後には、若手の皇室担当としてベテラン記者に交じり夜討ち朝駆けで、ハードながら充実した日々を送っていた。右胸のしこりに気づいたのは、そんな24歳の春だった。「残念ながら、悪いものが写っていました。乳がんの可能性が高い。仕事をしている場合じゃないです」’08年5月2日。検査結果を告げられると、母親が駆けつけるまで病院前で、体育座りで泣き続けた。「結婚も、出産もしないまま、私は死ぬのか。健康優良児で、親族にも一人もがんはいませんでしたから、『なんで私なの?』と、かつてないほどひどく混乱しました」女性の11人に1人がかかるといわれる乳がん。鈴木さんのがんは進行が早く、当時は再発リスクも高いといわれていた。“HER2陽性”タイプだった。「死にたくない」という一心で、最良と思える治療を求めて、病院をまわった。「セカンドオピニオンならぬセブンスオピニオンで、私は7人の医師の意見を聞きました。なかには『2年後(の生存)は難しいだろう』と言う先生もいました。テレビでよく見かけるベテラン医師は、私が持参した画像を見た途端、『後輩の医師に担当させるから』と。その先生を私に紹介した先輩は、『治る見込みのある患者しか診ないということか』と憤慨していましたね」24歳の彼女は、子どもを持ちたいと願っていたが、ほとんどの医師が「そんなことを言ってる場合じゃない。治療優先」と取り合ってくれなかった。そんななか出会ったのが、取材で懇意になった医師が紹介してくれた国際医療福祉大学三田病院・乳腺センター長の吉本賢隆先生(70・現よしもとブレストクリニック院長)だった。「どこの病院に行っても、将来の出産を考えて、抗がん剤による生殖機能のダメージなどを軽減するホルモン治療だけは続けて」吉本先生はこう言って、赤ちゃんを抱っこした母親の写真がびっしりと貼られた、1枚のパネルを見せてくれた。「お母さんになった患者さんの写真を集めるのが、僕の趣味(笑)。いずれ、あなたの写真ももらうから。しっかり治療して、仕事も、結婚も、出産もしてください」最後にはまっすぐ目を見て――。「鈴木さん。がんだからって、幸せになることを諦めないで」先生のこの言葉を聞いて、告知以来、初めて人前で号泣した。「がんになって最もつらかったのは、未来が見えないことでした。私の未来の可能性を一緒に考えてくれた吉本先生に主治医になってもらおうと決めました」5月21日、右乳房の全摘出手術を行った結果、ステージ3の乳がんで、リンパへの転移も判明。「最終的に温存手術を選ばず全摘の決断をしたのは、理屈ではなく体の中でがんがものすごい速さで育っていくのを感じたからです」しかし、本当につらい闘病生活はこれからだった。「抗がん剤治療が始まり、副作用で全身の脱毛が始まると、毎晩、天国へゆく夢を見るほどの絶望感にさいなまれました」この苦境を支えたのが、24時間交代で付き添ってくれた家族であり、要所で治療の様子を撮影してくれた職場の仲間だった。「先輩ディレクターの『美穂はいつか自分の体験を伝えたくなるときがくるから』という提案がきっかけで、ときには家族もカメラを回してくれました。私自身、『がんになった自分だからできることがある』と信じていたというより、正直、当時はそうでも思わないと気力を維持できなかった」ちょうどHER2陽性タイプに効果のある分子標的薬が開発されたことも味方した。放射線など「治療のフルコース」を経て、8カ月の休職後、職場復帰を果たす。「最初は時短勤務からで、カツラ着用での出勤でした。電車に乗るだけで疲れて、優先席に座っていて『若いのに』と非難されたことも。がんは外見ではわかりません。ひどい孤独感を感じました」仕事に復帰することで不安が少しまぎれてはいたが、同じ悩みを語り合える場が欲しかった。「当時は、報道でもがん患者にはモザイクをかけるような時代。特に若いがん患者の情報は少なかったんです。同じ体験をした人たちに会いたいと思いました」’09年夏、仲間を集めて、35歳以下の若年性がん患者の団体「STAND UP!!」を立ち上げた。がん告知から5年目を迎えた’13年には、ヨガなどがん患者のためのワークショップを主催する「Cue!」をスタートさせて講演なども行い、海外のがん関連の会議にも積極的に参加。’16年10月10日には、「第二のわが家」をコンセプトとした、がんにまつわるさまざまな相談が無料という画期的な施設「マギーズ東京」をオープンさせた。イノベーションについて学ぶ社外の勉強会で出会ったのが、のちにパートナーとなる濱松誠さん(35)。がん告知から8年が過ぎた春だった。初めて2人で会ったカフェで、いきなりパソコンを開き仕事を始めた濱松さんに、鈴木さんは機嫌を損ねるどころか心を動かされた。「この人、私に合う!自分に似てるな、と。あと、私もずっと同じことをしていたんだなって(笑)」結婚願望のなかった濱松さんに、まずは3カ月間お付き合いしてみるという“仮契約”での交際を申し出たのも鈴木さんだった。「私が、病気がコンプレックスだと打ち明けると、彼は、『僕も父親不在の家で育ったというコンプレックスがある。人は、誰でも表には見えなくても何かしら事情を抱えているものだよ』と。人の痛みがわかる人だと思いました」仮契約中に濱松さんから正式な交際申し込みがあったのが、’16年9月。そして今年9月1日、2人は結婚式を挙げた。乳がんにとって、告知から10年は完治の一つの目安だ。濱松さんは言う。「命さえあれば何でもトライできるというのも、僕自身、彼女に教わりました。たぶんテレビを通じて見える彼女の姿は、秒刻みでニュースを読む、仕事ができる女性報道記者。でも、家庭ではけっこうフニャフニャの姿を見せていますよ(笑)」共に歩むパートナーも得て、鈴木さんは次のステップに踏み出そうとしている。「根っこにあるのは、私の原体験としてのがん闘病ですが、今後は病気に関するサポートに限らず、さまざまな生きづらさや困難を抱える人たちを、そっと包み込む寛容な社会をつくっていきたい。そのために必要と思えば、場や商品作りや、記者のときと同様に情報発信もしていきたい。そのヒントを得るために、まずは1年くらいかけて、彼と世界をめぐってきます」10年間のがん経験をエネルギーに変えて、新たな希望を探すため鈴木さんは旅立つ。
2018年11月19日「今回の検査結果では、乳がんのリスク値がやや高めでした。これをもって即、がんがあると判断するわけではありませんが、精密検査で確定診断を受けることをお勧めします。専門科のある医療機関へ紹介状を書きますよ」記者が受けた検査結果をもとに、丁寧に解説してくれるのは大泉中央クリニック院長の砂村眞琴氏。2週間前、記者が受けたのは「サリバチャッカー」という検査だ。砂村氏が開発した、わずか0.2~0.4ミリリットルの唾液でがんのリスクを判定するというもの。検査室の長机には梅干しの入った瓶が置かれている。「自然の唾液が必要なので、香りだけ嗅いで、唾液が上がってくるのを待ちましょう」と看護師さん。酸っぱい香りに誘われ、ある程度唾液が口にたまったら、太めのストローでつるっと垂らす――。唾液を収めた容器を看護師さんに手渡し、検査終了。採取した唾液はフリーザーで冷凍され、クール便で衛生検査センターに送られ解析される。体への負担もゼロというこの検査は、慶應義塾大学先端生命科学研究所と東京医科大学発の医療ベンチャー「サリバテック社」が開発。同社のCEOであり、東北大学で長く消化器外科手術に従事した砂村氏が、’10年から「体に負担の少ない検査法を開発したい」と、ヒトの体から出る「代謝物質」である唾液に着目。治験を経て、’17年に実用化となった。検査の鍵となるのは、がん患者から出る、「ポリアミン類」という特異的な物質でスペルミン、スペルミジンなどだ。それら8種類の物質の濃度から最新AI(人工知能)がリスク解説するのがこの検査の特徴である。「自覚症状の出にくい膵がんも、早期の段階で発見できる可能性があります」(砂村氏)結果は、膵臓・大腸・乳腺・肺・口腔の5つのがんそれぞれについて、0~1までのリスク値を算出。ABCDでリスクを示し、CDと判定されれば専門科で精密検査を受けるよう勧められる。さて、記者の検査結果では、大腸がんはB、肺がんはAと判定されたが、乳がんはCであったことから、冒頭のように、砂村先生から「何年も検査を受けていないのなら、これをきっかけに受けたほうが」とアドバイスをいただいた。現在全国20カ所の医療機関で検査でき、費用は2万~4万円(税抜き)程度であるが、今後、検査を受けられる医療機関が広がり、多くの人に利用してもらうことで、1万円以下に価格を下げていきたいという。「身体的な負担や、面倒くさいということで、長年検診から足が遠のいている方に活用してほしい。簡易検査にありがちな検査しっぱなしを避けるため、この検査後のフォローをする医療機関も増やしています」(砂村氏)
2018年10月28日ここ最近、よく話題に挙がる「男性はげたを履かせてもらっている」説。今夏発覚した東京医科大学の不正入試問題では、男子学生に加点するいっぽうで、女子学生は減点していたことが明らかになった。平成も終わろうとしているこの時代に、「男性にげた」どころか、いまだに女性というだけで「逆げた」を履かされる残念なニッポン。そんな「逆げた」の存在について考えるときに見過ごせないのが、女性にだけ訪れるアレ――。そう「生理」だ。女性活躍がしきりに叫ばれるいっぽうで、「出産」という生命の一大イベントと密接に関わる「生理」は、「逆げた」の大きな要因になっているにもかかわらず、なぜかタブー視され続けている。あまりに身近な存在のため女性自身も無自覚になりがちだが、その苦労を女性が「自己責任」であるかのように背負わされ、男性は「知らなくて当たり前」とされるのはいったいなぜ?改めて考えると「シンプルに不思議」!これからの時代に、女性はもちろん、男性も知っておきたい「生理」のこと。「生理は小さなお産です。それだけの産みの苦しみを、女性は毎月味わっているといえるでしょう」そう話すのは、成城松村クリニックの松村圭子院長。月経自体は生理現象とはいえ、女性の健康を左右するエストロゲンと深く関係する。生理にともなう“健康リスク”への意識を高めよう。■月経回数が多いこと自体がリスク現代女性が抱える「生理問題」の根幹となるのが、昔と比べ生涯の月経回数が激増していること。「もちろん個人差はありますが、戦前ぐらいまでは、女性の生涯月経回数は50回程度でした。これは、初潮が来るとほどなく結婚し、8人、9人と子どもを産むことが『普通』だったため。妊娠中と、授乳中の多くは月経がないので、たくさん子どもを産めばそれだけ月経回数は減少。子宮や卵巣を休ませる期間も長かったといえます。いっぽう現代女性の生涯月経回数はなんと400回以上!昔に比べて発育がよくなり、初潮が低年齢化していることと、晩婚・少子化がその理由です」(松村院長・以下同)まずは、女性の月経回数が昔に比べ激増していることそのもののリスクについて、松村院長は次のように語る。「卵巣にある卵胞が裂けて卵子が排出されることを『排卵』といいますが、妊娠しないとこれが繰り返されることになり、卵巣がんの発症リスクが高まります。また、子宮内膜に似た組織が子宮以外の場所でエストロゲンに反応し、増殖や出血を繰り返す病気を子宮内膜症といいますが、こちらは月経回数と発生頻度が正比例。さらに、月経が多い=エストロゲンに長期間さらされることで子宮体がんのリスクも上昇するほか、子宮筋腫や乳がんもエストロゲン依存の病気として知られています。そして、これらの病気の多くは、乳がんをのぞき、生理不順や重い生理痛、不正出血などの症状を伴うもの。『たかが生理』と侮っていると、大病を見逃す危険性があることを、まずは理解してください」■若い女性の極端な痩せ志向が生理不順につながる次に、外見に敏感な若い女子ほど気をつけてほしいのが過度なダイエット。「とくに体が未成熟な10代では体が飢餓状態となり、生命維持に直接関係のない『妊娠機能』からストップしてしまいます。生理不順や無月経となるほか、放置すれば不妊につながることも。20代以上も例外ではありませんが、成長期はとくに注意が必要です」■20代から子宮内膜症に要注意本来なら生理も安定してくるはずの20代。不順なら、何かしらの問題を抱えている可能性もある。「現代人なら、出産を経験していない限り、20代後半ですでに150回以上の月経を経験している計算になり、子宮内膜症の発症リスクは十分高くなっています。いっぽうで自分の生理に無頓着で、初潮はおろか、最終月経がいつだったかさえ把握していないという方も少なくありません。これでは診断に支障をきたしますので、面倒であっても、生理のサイクルはきちんと記録しましょう」■無理がたたってくる30代30代ともなると体に無理がきかなくなってくるが、月経を繰り返したことによるエストロゲンの影響もさらに蓄積してくるころだ。「子宮内膜症のリスクが引き続き高いのはもちろん、子宮の良性腫瘍である子宮筋腫のリスクも増加。さらに、ストレスによるPMS(月経前症候群)にも、かかりやすくなるといえるでしょう」■プレ更年期がはじまる40代生理自体はまだあるものの、妊娠率がガクッと下がるのがアラフォー。これは、「出産のタイムリミット」に直面する時期でもある。「そのため、あせりや不安など、精神的なゆらぎが原因で更年期のような不調を訴える人も。周りと比べず、自分の人生で『快』と思えることは何かを、しっかり見つめるようにしましょう」■更年期以降は年相応の美しさをそしていよいよ訪れる更年期。子宮体がんのリスクはこのあたりで増加する。他方、エストロゲンが激減することに伴う不調の多くはホルモン補充療法などでカバーできるが、何よりも「受け入れることが大切です」と松村院長。「私自身も更年期に入りましたが、まったく不調はないんです。それは、たぶん私が『若さ』に固執していないから(笑)。閉経に伴う喪失感からうつ病になってしまう人もいますが、閉経以降も長生きできるようになった今だからこそ、次のステージを楽しまなくちゃ」女性に履かされる究極の逆げた、「生理」。でも、女性もそれを履きこなし、男性がその足元を少しでも支えることができたなら。互いの人生の足取りは、きっともっと軽やかになるはず!
2018年10月22日「免疫チェックポイント阻害剤の誕生は、世界のがん医療に大きなインパクトを与えました。さらに開発の基礎となる研究をされた本庶佑先生が、ノーベル賞を受賞したことで、その効果が報じられています。しかし“万人に効く”“夢の新薬”ととらえるのは、時期尚早です」新薬への過大な期待に警鐘を鳴らすのは、医療ガバナンス研究所理事長で、内科医の上昌広さんだ。免疫チェックポイント阻害剤のメカニズムについて、上さんが解説してくれた。「がん細胞など、体内の異物はキラーT細胞というリンパ球が攻撃します。しかしがん細胞は賢く、T細胞とくっつくことで、攻撃する信号を止めてしまうのです。新薬は、この結合を阻害し、キラーT細胞が、がん細胞を追跡、攻撃するよう働きかけるのです。がんを直接攻撃するという、これまでの手術・放射線・抗がん剤とは一線を画す、まったく新しい概念で、第4のがん治療といわれています」(上さん)こうした構造を利用して脚光を浴びたのが、’14年に発売されたオプジーボだ。「当初は皮膚がんの一種、悪性黒色腫に対して承認されましたが、間もなく、肺がんの中でも8~9割を占める非小細胞肺がんに保険適用が広がりました」(上さん)慶應義塾大学医学部先端医科学研究所所長の河上裕さんが、効果を表すデータについてこう語る。「肺がんにおいて既存の治療では予後が悪い場合も多かったのですが、免疫チェックポイント阻害剤によって、その16%の患者さんが、5年間生存しています」(河上さん)発売当初は1年で3,500万円もした薬代も、対象者が増えたために、1,000万円まで値下げされている。現在は、効果が確認された6種類の阻害剤が承認を受け、対象となるがんや、患者の状態により、公的保険が利用可能。支払う費用の上限を設定している高額療養費制度もあるので、患者の自己負担額を抑えられる。承認を受けているのは肺がんや腎臓がん、悪性黒色腫など約10種類。しかし、広い部位で治療が進められており、大腸が、乳がんは治験も最終段階だ。国内で承認されている免疫チェックポイント阻害剤の「実力とリスク」は次のとおり(薬名はすべて販売時のもの)。■「オプジーボ」【保険適用のがんの種類】悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、胃がん、悪性胸膜中皮腫。【近い将来、保険適用になりうるがん】食道がん、大腸がん、卵巣がんなど。■「キイトルーダ」【保険適用のがんの種類】悪性黒色腫、非小細胞肺がん、ホジキンリンパ腫、尿路上皮がん。【近い将来、保険適用になりうるがん】乳がん、大腸がん、食道がんなど。■「ヤーボイ」【保険適用のがんの種類】悪性黒色腫、腎細胞がん。【近い将来、保険適用になりうるがん】胃がん、食道がんなど。■「バベンチオ」【保険適用のがんの種類】メルケル細胞がん。【近い将来、保険適用になりうるがん】胃がんなど。■「テセントリク」【保険適用のがんの種類】非小細胞肺がん。【近い将来、保険適用になりうるがん】小細胞がん、肝細胞がん、乳がんなど。■「イミフィンジ」【保険適用のがんの種類】非小細胞肺がん。【近い将来、保険適用になりうるがん】膀胱がん、肝臓がん、卵巣がんなど(他剤との併用)。■6種類の免疫チェックポイント阻害剤に考えられる副作用間質性肺疾患、心筋炎、消化管穿孔などの命に関わるようなケースも起こりうる薬剤もある。皮膚炎(かぶれや水ぶくれ、粘膜のただれ)、甲状腺炎(多汗、動悸、浮腫)、重篤な大腸炎(下痢、血便)など、自己免疫反応が起こることがある。「乳がんに関しては、これまで治療が難しかったトリプルネガティブ乳がんという種類であっても、10%ほどの患者さんに効果が表れているという報告もあります」(河上さん)治験データを集積して申請されれば「通常、半年~1年で承認される」(上さん)というから、この1~2年で一気に対象者が増える可能性があるのだ。だからこそ今後、この“夢の薬”に冷静な目が必要だと、前出の2人は語る。まず、注意しなければならないのは、同じ薬剤を使っても、効かない患者のほうが多いということだ。「奏効率と言いますが、6つの阻害剤でがんが見えなくなる、もしくは大きさが30%以上縮小した率は、肺がんで20%弱、悪性黒色腫で20%程度です」(河上さん)たとえば、オプジーボの添付文書には《切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌》《根治切除不能又は転移性の腎細胞癌》などと書かれている。がんの進行度によっても、使用できる人が厳密に定められている。「現状では、万人が受けることができず、患者さんのがんの性質、免疫体質、腸内細菌や喫煙の有無などの環境因子も関係して治療効果が決まっていきます」(河上さん)そして、先述したように“危険な副作用を伴う薬”であることも、知らなくてはならない情報なのだ。「“免疫”と聞くと、自分の体内にあるものだから、副作用が少ないと感じてしまいがちですが、そんなことはありません。主に、自己免疫疾患のような症状が代表的です。甲状腺機能が低下して疲労感が増したり、粘膜がただれたり、発疹ができることも報告されています。肝機能障害、腎機能障害、脳炎、1型糖尿病なども注視しなければなりません」(上さん)間質性肺疾患や心筋炎など、場合によっては死に至る副作用を引き起こすこともある。「それも“まれ”なレベルではなく、阻害剤を使った患者さんの10%以上に、重篤なケースを含めた比較的強い副作用が起こっています」(河上さん)まだまだ課題は山積している免疫チェックポイント阻害剤だが、これからのがん治療に新たな光をもたらす薬剤であることは間違いない。
2018年10月18日「免疫チェックポイント阻害剤の誕生は、世界のがん医療に大きなインパクトを与えました。さらに開発の基礎となる研究をされた本庶佑先生が、ノーベル賞を受賞したことで、その効果が報じられています。しかし“万人に効く”“夢の新薬”ととらえるのは、時期尚早です」新薬への過大な期待に警鐘を鳴らすのは、医療ガバナンス研究所理事長で、内科医の上昌広さんだ。免疫チェックポイント阻害剤のメカニズムについて、上さんが解説してくれた。「がん細胞など、体内の異物はキラーT細胞というリンパ球が攻撃します。しかしがん細胞は賢く、T細胞とくっつくことで、攻撃する信号を止めてしまうのです。新薬は、この結合を阻害し、キラーT細胞が、がん細胞を追跡、攻撃するよう働きかけるのです。がんを直接攻撃するという、これまでの手術・放射線・抗がん剤とは一線を画す、まったく新しい概念で、第4のがん治療といわれています」(上さん)こうした構造を利用して脚光を浴びたのが、’14年に発売されたオプジーボだ。「当初は皮膚がんの一種、悪性黒色腫に対して承認されましたが、間もなく、肺がんの中でも8~9割を占める非小細胞肺がんに保険適用が広がりました」(上さん)慶應義塾大学医学部先端医科学研究所所長の河上裕さんが、効果を表すデータについてこう語る。「肺がんにおいて既存の治療では予後が悪い場合も多かったのですが、免疫チェックポイント阻害剤によって、その16%の患者さんが、5年間生存しています」(河上さん)発売当初は1年で3,500万円もした薬代も、対象者が増えたために、1,000万円まで値下げされている。現在は、効果が確認された6種類の阻害剤が承認を受け、対象となるがんや、患者の状態により、公的保険が利用可能。支払う費用の上限を設定している高額療養費制度もあるので、患者の自己負担額を抑えられる。承認を受けているのは肺がんや腎臓がん、悪性黒色腫など約10種類。しかし、広い部位で治療が進められており、大腸が、乳がんは治験も最終段階だ。「乳がんに関しては、これまで治療が難しかったトリプルネガティブ乳がんという種類であっても、10%ほどの患者さんに効果が表れているという報告もあります」(河上さん)治験データを集積して申請されれば「通常、半年~1年で承認される」(上さん)というから、この1~2年で一気に対象者が増える可能性があるのだ。だからこそ今後、この“夢の薬”に冷静な目が必要だと、前出の2人は語る。まず、注意しなければならないのは、同じ薬剤を使っても、効かない患者のほうが多いということだ。「奏効率と言いますが、6つの阻害剤でがんが見えなくなる、もしくは大きさが30%以上縮小した率は、肺がんで20%弱、悪性黒色腫で20%程度です」(河上さん)たとえば、オプジーボの添付文書には《切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌》《根治切除不能又は転移性の腎細胞癌》などと書かれている。がんの進行度によっても、使用できる人が厳密に定められている。「現状では、万人が受けることができず、患者さんのがんの性質、免疫体質、腸内細菌や喫煙の有無などの環境因子も関係して治療効果が決まっていきます」(河上さん)まだまだ課題も山積している。「平均して2週間に1回の点滴投与となりますが、治療を終了する時期に関しての判定基準も、まだ定まっていません。さらに今後は、効く人、効かない人を判定する検査の研究、効果が高められるような併用薬の組み合わせのデータも、積み上げていかなければならないのです」(河上さん)とは言え、免疫チェックポイント阻害剤は、これからのがん治療に新たな光をもたらす薬剤であることは間違いない。実際、より効果を高めるための研究は、確実に前進しているが、まだ発展途上の治療法でもあるのだ。
2018年10月18日「痛すぎてもう受ける気にならない……」「被ばくの心配が……」。乳がん検診の重要性が叫ばれるなか、X線マンモグラフィが抱える問題は多い。しかし、それらを一気に解決してくれる、世紀の大発明が!「微弱な電波を出す発信機を使い、乳房の表面を軽くなぞるようにスキャンするだけで、乳房の中を立体的に3次元画像で映し出します。従来のX線マンモグラフィでは見えなかったがんも、この検査器を使えば、はっきり見ることができるんです」こう語るのは、世界初の乳がん画像診断システム「マイクロ波マンモグラフィ」を開発した神戸大学の木村建次郎教授(39)。乳がん検診でおこなうX線マンモグラフィは、撮影時に乳房を板で挟むため、「信じられないくらい痛かった」という声が多く上がっていた。さらに、X線による被ばくのリスクもあるため、定期的にマンモグラフィ検診を受けたいという女性は減少傾向にある。厚生労働省は40歳以上の女性を対象に、2年に1回乳がん検診を受けるように呼び掛けているが、’16年に同省が実施した国民生活基礎調査によると、受診率は全国で44.9%と、半分以下にとどまっているのが現状だ。しかし、木村教授のチームが開発した「マイクロ波マンモグラフィ」は、乳房表面をなぞるだけなので、検診による痛みはない。さらに、乳房に当てる電波は携帯電話の1,000分の1以下、つまり被ばくの心配もないという。革新的な技術なのだ。「乳房は、乳腺と脂肪、そして乳房を支える靱帯で構成されています。乳腺と靱帯が多く密集している『高濃度乳房』の場合、X線を遮断してしまうため、がんを見つけることが困難とされていました。その『高濃度乳房』を貫通することができるのがこのマイクロ波。がん組織に当たった瞬間跳ね返されるので、数秒でがん組織を立体画像で映し出すことができます」マイクロ波マンモグラフィで特筆すべきは、そのがん検出の精度。木村教授は、本誌記者に、従来のX線マンモグラフィとマイクロ波マンモグラフィでの撮影結果を見せてくれた。どちらも、「高濃度」とされている同じ人物の乳房を撮影したものだ。X線で撮影すると、乳房全体が白く写ってしまう。がん組織も同じように白く写るため、“雪山で白うさぎを探すがごとく”と言われるほど、高濃度乳房の人のがんは見落とされやすかった。しかも、日本人女性の約4割が高濃度乳房に当てはまるとされている。しかし、マイクロ波で撮影したものは、がん組織が黒い影としてハッキリ写っているのがわかる。「反射して散らばったマイクロ波から、物体の形を導く計算式を世界で初めて解明しました。そしてその数学的理論と、高い周波数のマイクロ波を発生させて観測する高度な半導体技術を合わせて完成したのが、この検査機器なのです。これまでに、神戸大病院などの4つの医療機関で、『高濃度乳房』のがん患者や健康な人ら約250人を対象に臨床研究を重ねました。その結果、年齢、乳房のタイプに関係なく、高い確率で乳がんを検出できることがすでに実証されています」
2018年10月18日「微弱な電波を出す発信機を使い、乳房の表面を軽くなぞるようにスキャンするだけで、乳房の中を立体的に3次元画像で映し出します。従来のX線マンモグラフィでは見えなかったがんも、この検査器を使えば、はっきり見ることができるんです」こう語るのは、世界初の乳がん画像診断システム「マイクロ波マンモグラフィ」を開発した神戸大学の木村建次郎教授(39)。乳がん検診でおこなうX線マンモグラフィは、撮影時に乳房を板で挟むため、「信じられないくらい痛かった」という声が多く上がっていた。さらに、X線による被ばくのリスクもあるため、定期的にマンモグラフィ検診を受けたいという女性は減少傾向にある。厚生労働省は40歳以上の女性を対象に、2年に1回乳がん検診を受けるように呼び掛けているが、’16年に同省が実施した国民生活基礎調査によると、受診率は全国で44.9%と、半分以下にとどまっているのが現状だ。しかし、木村教授のチームが開発した「マイクロ波マンモグラフィ」は、乳房表面をなぞるだけなので、検診による痛みはない。さらに、乳房に当てる電波は携帯電話の1,000分の1以下、つまり被ばくの心配もないという。革新的な技術なのだ。「乳房は、乳腺と脂肪、そして乳房を支える靱帯で構成されています。乳腺と靱帯が多く密集している『高濃度乳房』の場合、X線を遮断してしまうため、がんを見つけることが困難とされていました。その『高濃度乳房』を貫通することができるのがこのマイクロ波。がん組織に当たった瞬間跳ね返されるので、数秒でがん組織を立体画像で映し出すことができます」早期発見で9割以上が治るといわれる乳がんだが、毎年、世界中で52万人以上、日本だけでも1万4,000人以上が亡くなっている。「毎年、全世界で乳がんになる人は167万人以上いるといわれています。マイクロ波マンモグラフィが、実用化されて世界中で使われるようになると、これまで見つからなかった乳がん患者も含め、その数は瞬間的に500万人、600万人と膨れ上がるでしょう。それでも、早期発見が可能になることで、将来乳がんで亡くなる人はゼロになると信じています」木村教授は、国に認可されるのに3年、世界中に普及するまで5~6年かかるだろうと予測している。たとえ普及に10年かかったとしても、20年後には乳がんで死亡する人が激減する計算だ。このマイクロ波マンモグラフィは乳がん患者だけでなく、医療現場からの期待も大きい。「たとえば、高濃度乳房の人に抗がん剤を試した場合、X線マンモグラフィでは、どのように変化しているかを追うことは困難です。超音波エコーを使っても、乳房内の奥深いところまではどうなっているのかわからないでしょう。マイクロ波マンモグラフィなら立体的な位置がはっきりと見えるため、1カ月に1回、定期的に撮影すれば、どのがん組織がどう縮んでいっているかを完全にモニターできるんです。がんの進行度がはっきりとわかるため、手術をいますべきかそうでないか、どういう治療がふさわしいのか、という判断を医師がしやすくなるのではないでしょうか」さらに、乳房の表面をなぞるだけの作業なので、誰がやっても同じ画像が出せるという利便性も。「うちのスタッフ20人にやらせたら、みんな同じ画像を100%出すことができました。X線を使わないので、放射線取扱主任者の資格が要りません。極端な話、病院以外の場所、たとえば駅などの公共施設に置いて、会社帰りに女性同士でやることだってできるんです。ただし、画像を見ての判断は、専門の医師にしてもらう必要がありますが」少しでも早く実用化され、全世界の女性の命を救うために、この機械が活躍する日を期待したい。
2018年10月18日日本人の2人に1人がかかる「がん」。今年9月上旬、国立がん研究センター(東京都中央区)が初めて公表した「がん患者の3年生存率」は、71.3%で、乳がんはステージ1では100%、乳がん全体でも95.2%となった。「かんの摘出手術をしたとしても入院期間は短くなり、通院しながら抗がん剤治療を受けるケースも増えてきました。“がん”と宣告されても、治療をすれば社会復帰できる時代になりましたので、慌てて仕事を辞めないこと。医療費の支払いという経済的な負担が伴いますので、治療を金銭面で支えてくれる公的制度を知っておくと安心できます」そうアドバイスするのは、『大図解届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)の著者で社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さん。そこで、がんなど病気にかかったときの、経済的負担を支える制度について教えてもらった。■払い過ぎた税金が戻ってくる1月から12月までに自己負担した医療費が10万円(または所得の5%)以上かかった場合、確定申告をすると、10万円を超えた分が所得から差し引かれる「医療費控除」が受けられる。計算方法は、「1年間に医療費として支払った額」から高額療養費の給付や医療保険の給付金など「補てんされる額」を引き、さらに「10万円」を引くと医療費控除の額になり、税率に応じて税金が還付される。たとえば、医療費控除の30万円の人が、所得税の税率が10%だった場合、3万円が還付される計算になる。通院の交通費、医師の処方による医薬品は医療費控除の対象になるが、疲労回復のためのマッサージ代は対象外など、細かく分かれているので国税庁のホームページを参考にしよう。なお、専業主婦の妻ががんになった場合は、夫が加入する保険の被扶養者なので高額療養費制度、付加給付は利用できる。会社勤めしていないので傷病手当金はもらえないが、障害年金は夫が会社員の場合は、妻は「第3号被保険者」として国民年金に加入しているので障害基礎年金がもらえる。夫が自営業の場合は、専業主婦の妻自身も国民年金に加入しているので障害基礎年金を受け取れる。医師は医療費や使える制度について教えてくれるわけではない。そんなとき、病院内の「医療ソーシャルワーカー」や、全国400以上あるがん診療連携拠点病院にある「がん相談支援センター」では、社会福祉士や看護師らが、生活面での相談に乗ってくれる。気になること、わからないことはそのままにしないで、何でも聞いてみよう。
2018年10月17日日本人の2人に1人がかかる「がん」。今年9月上旬、国立がん研究センター(東京都中央区)が初めて公表した「がん患者の3年生存率」は、71.3%で、乳がんはステージ1では100%、乳がん全体でも95.2%となった。「かんの摘出手術をしたとしても入院期間は短くなり、通院しながら抗がん剤治療を受けるケースも増えてきました。“がん”と宣告されても、治療をすれば社会復帰できる時代になりましたので、慌てて仕事を辞めないこと。医療費の支払いという経済的な負担が伴いますので、治療を金銭面で支えてくれる公的制度を知っておくと安心できます」そうアドバイスするのは、『大図解届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)の著者で社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さん。そこで、がんなど病気にかかったときの、経済的負担を支える制度について教えてもらった。■働くことが困難になったら病気やケガによって仕事や生活が制限されるようになった場合、現役世代の人でも年金がもらえる制度が「障害年金」。目、聴覚、手足などの障害、精神障害のほかに、呼吸器、心臓、腎臓、血液の疾患、糖尿病、そしてがんなど内臓疾患の人でももらえる。「たとえば、直腸がんを患い手術を受けて人工肛門にした、咽頭がんで摘出手術をした人などは、障害年金の対象の可能性があります」国民年金から支給される「障害基礎年金」、厚生年金から支給される「障害厚生年金」があり、もらうためには初めて医師の診断を受けた日(初診日)に65歳未満で、初診日から1年6カ月経過した日に要件を満たす障害がある、といった条件がある。また、国民年金の被保険者は市区町村、厚生年金の被保険者は年金事務所で手続きをして、医師の診断書が必要になる。「障害の等級は1級から3級まであり、障害基礎年金の1級は年額97万4,125円(’18年度)、2級は77万9,300円(同)になっています。自営業の人は、妻と(高校卒業していない)子の3人家族の場合、1級と認定されると年119万8,425円、2級は100万3,600円になります。それに対して、会社員は月収30万円とすると、1級は年221万225円、2級は185万7,900円と、2倍近くの年金がもらえます」障害年金の認定は、目に見えて体の機能が変わった場合だけでなく、がん治療による倦怠感や麻痺、しびれ、貧血、下痢など客観的にわかりにくい内部障害の場合にも該当する可能性があるので、「もらえないかも」と1人で勝手に判断しないこと。主治医に「障害年金を申請したい」と話したうえで、仕事や生活に支障をきたしていることを具体的に伝えてみよう。
2018年10月17日