トイレを洋式に変更するのも介護保険に係る住宅改修の対象になる介護保険で住宅が改修できる――。こう聞いても、介護経験のない方は、ピンと来ないかもしれません。ただ、介護が必要な家族がいると、日常生活において切実な問題に必ず直面します。被介護者が自分で行えることの範囲を広げたり、少しでも介護をしやすくしたりするため、住まい改造に着手するケースは実は多いのです。すでに要介護認定を受けていれば、ケアマネージャーからも情報が得られますので、介護保険を利用して住宅改修を実施している人は少なくありません。今回は住宅改修の観点から、介護保険制度をみてみましょう。○介護保険における住宅改修とは介護保険は「自宅に手すりを取り付ける」など、要介護者らがより住みやすいよう住宅を改修するにあたり、一定の費用を支給してくれます。必要な書類(住宅改修が必要な理由書など)を添えて申請書を提出し、工事完成後に費用発生の事実がわかる書類(領収書など)を提出すると、実際の住宅改修費の大部分が償還払いで支給されるという仕組みです。実際に利用するとなった場合、どのような改修が制度の対象となるのか、その詳細を知りたいですよね。以下に具体例をまとめましたので参考にしてください。(1)手すりの取り付け(2)段差の解消(※)(3)滑りの防止および移動の円滑化などのための床または通路面の材料の変更(※)(4)引き戸などへの扉の取り替え(5)洋式便器などへの便器の取り替え(6)その他、それらの住宅改修に付帯して必要となる住宅改修※屋内における段差解消、床材の変更および手すりの取り付けなどの工事、玄ポーチの工事、玄関から道路までの(建物と一体ではない)屋外での工事も住宅改修などが対象高齢になるとどのような配慮が必要となるかを知っておけば、住まいをリフォームしたり、リノベーションしたりするときに参考になります。今は手すりが必要でなくても、壁の下地に手すり用の補強を入れておくだけで、後々より簡単に手すりが取り付けられます。また、高齢者への配慮は幼い子どもへの配慮にも通じるものがあります。核家族世帯の方も、こういった住宅改修における知識を知っておいて損はありませんよ。なお、やむを得ない事情がある場合には、上述の(1)から(6)に係る工事が完成した後に住宅改修に関する申請をすることができます。○支給額と申請手順をチェック住宅改修に係る支給限度基準額は20万円で、一般的には範囲内でかかった費用の1割が自己負担となります。すなわち、最大で18万円が支給される計算になります。この20万円という金額は「要支援」「要介護」の区分に関わらず定額です。また、「一人につき生涯20万円まで」が原則ですが、要介護状態区分が重くなったとき(3段階上昇時)や転居をした場合は、再度20万円までの支給限度基準額が可能となります。申請をする手順も確認しておきましょう。STEP1: 住宅改修についてケアマネージャーなどに相談STEP2: 申請書類または書類の一部提出・確認STEP3: 施工STEP4: 住宅改修費の支給申請・決定申請をするにあたり必要なのは「支給申請書」「住宅改修が必要な理由書」「工事費見積書」「住宅改修後の完成予定の状態がわかるもの(写真または簡単な図を用いたもの)」となります。実は、私の実家も介護保険を利用してリフォームしました。築40年程度の古い家だったため、トイレは和式で家の中に手すりもありませんでした。高齢で足腰が弱った父のため、私が設計してケアマネージャーと相談しつつ改修しました。住宅改修におけるケアマネージャーのサポートは助かりますし、頼りになる存在です。ただ、補助があるとはいえ、税金を活用するわけですので、適正な価格になるようにいくつかの会社から見積もりを取ることをお勧めします。※写真と本文は関係ありません○■ 筆者プロフィール: 佐藤章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2018年04月18日*画像はイメージです:介護離婚(かいごりこん)とは、簡単に言うと夫の親(義親)の介護に嫌気がさし離婚してしまうことです。離婚を決意するほど疲れる原因として、義理の親との関係が悪く義親の介護をしたいと思えない・夫や夫の兄弟姉妹が介護にまったく協力してくれない・貢献しても労わってもらえないなどが問題になっているようです。このあたりの問題について、高島総合法律事務所の理崎智英先生に伺いました。 ■介護離婚に発展する3つの理由介護離婚は精神的なストレスが根本的な原因です。ここでは、ストレスになる3つの理由を紹介します。◆義親と仲が良くないから精神的にも肉体的にも辛い介護は愛情がないとできません。優しくされたことがなく、恩や情を感じない相手への介護はとても苦痛でしょう。また、離婚に発展しなくても、うつなどの精神病になってしまったり、虐待までしてしまったりする可能性があります。◆兄弟姉妹が介護に協力してくれないから『長男の嫁=義親の介護をしなくてはいけない』という暗黙の了解があることも少なくないでしょう。そうなってしまうと、まだ介護が必要でなくてもプレッシャーですし、「他の兄弟(姉妹)がすればいいのに!」と理不尽に感じてしまいますよね。◆介護をしているのに感謝してもらえないから一生懸命に介護しているのに義親や夫・夫の兄弟姉妹からまったく感謝されないと、介護を続けようという気持ちにはなりませんよね。介護は感謝されるためにすることではありませんが、自分の時間を削ったり、やりたいことを我慢したりしているので感謝や気遣いをしてほしいものですよね。 ■そもそも義親の介護責任は誰にある?夫が長男であったり義親と同居したりしている場合、義親でも妻が介護しなくてはいけないように感じますよね。しかし、妻に介護する義務はありません。その理由として、民法第877条1項の扶養義務者を定めた記述が挙げられます。直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。(引用:民法第877条1項)理崎先生)ここには『直系血族は』と記載されているため、直系血族ではない妻には、原則として、義親の扶養義務はありません。介護を拒否しても法的には問題にならないのです。もっとも、『特別の事情』がある場合には、例外的に『親族』である妻にも義親を扶養する義務が発生する場合があります(民法877条2項)。ただし、『特別の事情』は、扶養義務を負担させることが相当とされる程度の経済的対価を得ているとか、高度の道義的恩恵を得ている等の場合に限定して認められるものですので(大阪家裁昭和50年12月12日審判)、基本的には、妻が義親の扶養義務を負うことはないと理解してよいでしょう。 *取材対応弁護士: 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚・男女問題を多数取り扱っている。)*取材・文:編集部【画像】イメージです最近話題の介護離婚って…?何が問題?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。最近話題の介護離婚って…?何が問題?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
2018年03月31日「介護におけるケアマネジャー(以下・ケアマネ)の存在はとても重要です。実際、よいケアマネか悪いケアマネかで、要介護者とその家族の精神的、金銭的負担は大きく変わってくるんです」 そう語るのは、All Aboutガイドの介護アドバイザー・横井孝治さん。ケアマネ(介護支援専門員)の主な仕事は、介護保険制度において介護を必要とされる人のためにケアプラン(介護サービス計画書)の作成や介護サービスの調整・管理、訪問介護、通所介護、施設介護サービス……などなど、いまの介護は、ほぼ100%といっていいほどケアマネを通して行われている。 つまり、彼らは要介護者とその家族の介護生活をマネジメントする、大切なパートナー。これから親の介護を始める人にとって、よいケアマネを選ぶことが、介護において必要不可欠なのだ。 そこで、ケアマネで失敗しないための3つのポイントを横井さんにアドバイスしてもらった。 【1】ケアマネの所属事業所リストを入手する 「ケアマネの多くは、居宅介護支援事業所や介護サービス提携事業者、特別養護老人ホーム、介護療養型医療施設などに所属している人がほとんどです。市区町村の介護保険課や地域包括支援センターに行けば、ケアマネが所属している事業所のリストをもらうことができますから、まずはそこから始めましょう」(横井さん・以下同) 【2】ケアマネの評判を聞いてまわる 「いちばんよいのは、知り合いから“口コミ”で紹介してもらうパターンです。たとえば、友人や知人にホームヘルパーをしている人がいれば、介護のプロから見てよいケアマネを教えてもらうことができます。また、実際に介護保険サービスを利用している人に話を聞いてみるのもいい。同じ地域でサービスを利用している人から得られる“生の声”は非常に参考になります」 そういう知り合いがいない場合、「かかりつけの病院」にたずねてみよう。 「大きな病院の場合、ソーシャルワーカー、小さなクリニックなどの場合は、主治医や看護師に評判のいいケアマネはいないかを相談してみること。多くの場合、医療との連携を得意とするケアマネや介護事業者を教えてもらうことができるはずです」 【3】電話でケアマネの事業所と話してみる ある程度ケアマネ候補を絞ったら、所属先の事業所に電話をかけてみよう。そのとき、“介護サービスのことは何もわからないので、一から教えてほしい”と伝えるのが重要だという。 「自分にとっていちばんわかりやすく、丁寧に対応してくれたケアマネであれば、実際に依頼することになってからも、介護の相談をする際の対応に期待が持てますから」 電話を通して候補3〜5人絞り込んだら、次は実際に面談を行う。 「面談の際、重要なのは『所属する事業所以外の介護サービスも説明してくれるか』です。面談前に、そこの事業所ではどんなサービスをやっているのか、あらかじめ下調べしておくといいですね。たとえば、ショートステイのサービスをやっていない場合、わざと“ショートステイも使ってみたいのですが?”と聞いてみるんです」 横井さんによると、事業所にないサービスを希望した場合、ケアマネの対応はだいたい2つに分かれるそうだ。 1つは、「よいショートステイを知っているので今度資料を持ってきます」と、希望を受け入れてくれるパターン。もう1つは、「うちの訪問介護だけで十分ですよ」と、理由を説明せずに利用者を納得させようとするパターン。 「後者は当然ダメですが、前者が必ずしもいいとは限りません。本当にショートステイが必要な場合、その説明をきちんとしてくれるケアマネが、本当に信頼できる人なんです」 たとえば、「お宅のお母さんは、会ってお話ししてみたところ、人見知りのような気がします。家族でない人たちと一緒に泊まって何日も暮らしたら、大変なストレスになります。まず住み慣れた家にヘルパーさんが来て帰っていくという訪問介護サービスに慣れてもらう。紹介はいつでもできるので、それから考えませんか」というように、経験に基づいたアドバイスをくれる人だと、信頼度もぐんと上がるという。
2018年03月23日深刻な高齢化、かさむ介護費。国の方針もあり、在宅介護が重要視されている。「自宅で介護」を望む人が多いのも事実だが、いくらかかるのだろうかーー。 「国は現在、『地域包括ケアシステム』を推進しており、今後『施設介護』から『在宅介護』の流れが強まるでしょう」 そう日本の超高齢社会の未来を予測するのは、『介護施設&老人ホームのさがし方・選び方』(サンライズパブリッシング)の著者で、介護施設コンサルタントの齋藤直路さん。65歳以上の人口は現在、3,000万人を超えており、2042年には約3,800万人でピークを迎える。介護の需要が今後ますます増加することは火を見るよりも明らかだ。 しかし施設での介護は、高額な資金が必要になる。また、在宅介護は家族の負担も大きく、介護疲れによる虐待や、介護離職に端を発する貧困など、問題も山積。一方で、頼れる家族のいない独居老人も多いのが実情だ。 そこで現在、国は「地域包括ケアシステム」(前出)を推進している。住まいを中心に、日常生活圏内で病院、介護施設、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどが、さまざまな支援や介護、医療、サービスを一体的に提供するものだ。地域のなかで安心して介護や医療などが受けられるシステム作りだという。 「介護を受ける側にとっても、在宅介護のメリットは大きい。たとえば、トランスファーショックといって、自宅とは遠く離れた施設に住むことで、環境の違いに戸惑い、近所との交流が途絶える寂しさを感じる。結果、活動量が低下して、認知機能の衰えが出てしまうこともあるのです」(齋藤さん) 実際、内閣府の調査でも、「介護を受けたい場所」は、「自宅」と答えた人が全体の34.9%という結果が出ている(平成24年「高齢者の健康に関する意識調査」)。今後、ますます重要性が高まる在宅介護。 それでは実際に終生、在宅介護をすることで、どのくらいのお金がかかるのか。代表的なケースを、介護施設コンサルタント業務をする「スターパートナーズ」の垰和宏さんに、シミュレーションしてもらった。 ケースでは、介護保険自己負担1割で算出。単純に介護度の利用限度額ではなく、現実的に使用される介護費用を想定している。介護用のベッドの費用や、バリアフリーの改築費用などは含まれていない。 また、将来の平均寿命が現在の87歳(女性)よりも5年ほど延びることを想定し、92歳(93歳の誕生日の前日)で亡くなったと仮定している。 ■段階的に介護度が上がっていったケース 一人暮らしのCさんは、買い物や風呂掃除など不便を感じ始めて、84歳のときに地域包括支援センターに相談。要介護認定調査等を経て、要介護1と認定された。それからは週2回ずつの通所介護、訪問介護の生活になった。 ところが86歳で脳梗塞に。偶然、近くに住む娘夫婦が遊びに来ていたため、早期に発見され大事には至らなかったが、一部まひが残り、要介護2に上がった生活を2年続けた。 そして要介護3の2年、要介護4の3年間は、家族の支援もあって在宅介護を継続したが、平日はほぼ毎日、訪問介護か通所介護、家族の介護負担軽減のため短期入所を組み合わせた。最終的に92歳で、老衰のため自宅で生涯を終えた。 Cさんの場合、介護費用は当初、要介護1ということもあり、訪問介護と通所介護を合わせても月額約1万730円ほどだった。しかし、要介護3に引き上げられると短期入所費用も加わり、介護費用は月額約2万6,930円に、要介護4では月額約3万800円までに跳ね上がった。 「介護度が上がるたびに、介護費用も高額化します」(垰さん) 【Cさんの自己負担額】 <84〜85歳・要介護1>訪問介護:約3,840円/月通所介護:約6,890円/月 <86〜87歳・要介護2>訪問介護:約5,320円/月通所介護:約8,820円/月 <88〜89歳・要介護3>訪問介護:約8,820円/月通所介護:約1万1,110円/月短期入所:約7,000円/月 <90〜92歳・要介護4>訪問介護:約1万1,930円/月通所介護:約1万2,370円/月短期入所:約6,500円/月 84歳から92歳までの9年間で合計:234万8,880円〈内訳:(3,840円+6,890円)×24カ月+(5,320円+8,690円)×24カ月+(8,820円+1万1,110円+7,000円)×24カ月+(1万1,930円+1万2,370円+6,500円)×36カ月〉 前出の齋藤さんは、在宅介護の注意点を次のように語る。 「数千万円かかる施設介護に比べて、一見、安価なイメージを持ってしまいますが、在宅介護は、施設のようなナースコールや、24時間の見守りはありませんから、家族の負担は大きいです。当然ながら、家賃や食事が別途かかることも、忘れてはいけません」(齋藤さん)
2018年03月14日「国は現在、『地域包括ケアシステム』を推進しており、今後『施設介護』から『在宅介護』の流れが強まるでしょう」 そう日本の超高齢社会の未来を予測するのは、『介護施設&老人ホームのさがし方・選び方』(サンライズパブリッシング)の著者で、介護施設コンサルタントの齋藤直路さん。65歳以上の人口は現在、3,000万人を超えており、2042年には約3,800万人でピークを迎える。介護の需要が今後ますます増加することは火を見るよりも明らかだ。 しかし施設での介護は、高額な資金が必要になる。 「民間の有料老人ホームは、入居一時金だけで数百万円単位のまとまったお金が必要なケースも多く、生涯の支払い総額が2,000万~3,000万円にもなります」(齋藤さん・以下同) しかし、在宅介護は家族の負担も大きく、介護疲れによる虐待や、介護離職に端を発する貧困など、問題も山積。一方で、頼れる家族のいない独居老人も多いのが実情だ。 そこで現在、国は「地域包括ケアシステム」(前出)を推進している。住まいを中心に、日常生活圏内で病院、介護施設、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどが、さまざまな支援や介護、医療、サービスを一体的に提供するものだ。地域のなかで安心して介護や医療などが受けられるシステム作りだという。 「介護を受ける側にとっても、在宅介護のメリットは大きい。たとえば、トランスファーショックといって、自宅とは遠く離れた施設に住むことで、環境の違いに戸惑い、近所との交流が途絶える寂しさを感じる。結果、活動量が低下して、認知機能の衰えが出てしまうこともあるのです」 実際、内閣府の調査でも、「介護を受けたい場所」は、「自宅」と答えた人が全体の34.9%という結果が出ている(平成24年「高齢者の健康に関する意識調査」)。今後、ますます重要性が高まる在宅介護。在宅ではどのような介護が受けられるのか。齋藤さんが解説してくれた。 【1】訪問介護 自力での家事が困難になったり、入浴の介助が必要になったときに、ヘルパーに自宅に来てもらい、サービスを受けること。 「一人暮らしの要介護高齢者にとって、洗濯や掃除、買い物など生活援助も頼める、ありがたいサービスです。食事や入浴、排せつなどの介助で体が触れ合うこともあるので、ヘルパーの人柄も重視しなくてはなりません」 通常、日中がサービス時間となるが、早朝や深夜も対応してくれる事業者もあるという。 【2】通所介護 「デイサービスともいわれ、通所介護施設で、1日をリハビリやレクリエーション、入浴などをして過ごします。もともとは家族の介護負担を減らすために始まったサービスです」 一般的な通所介護は、朝の9~10時に自宅へ送迎車が迎えに来るところから始まる。 「サービスを利用していることを近所に知られたくないという人もいるため、車体に施設名が書いていない、普通の乗用車を利用するなど、工夫している事業所もあります」 施設に到着後は、体操をしたり、入浴の介助を受ける。 「単に入浴するだけでなく、家族では判断しづらい床ずれや栄養状態までチェックしてくれます」 昼食は自費で700~800円ほど。最近は、食事内容も充実してきているという。午後は昼寝をしたり、レクリエーション、リハビリの時間となる。 「リハビリでは歩行訓練や転倒防止訓練、認知機能の予防改善(学習療法、音楽療法)などが受けられます。それぞれの施設の特徴を知って、自分に合った場所を選びましょう」 帰宅は16時くらいになる。 【3】短期入所 2日~1週間ほどの短期間、施設に入って介護を受けること。ショートステイともいわれる介護サービス。 「在宅介護生活は、介護する家族にとっても大きなストレスや疲労を伴います。家族が介護から解放され、ゆっくり過ごして英気を養う(レスパイトケア)ためにも利用されます」 施設によって料金は異なる。 「介護保険で定められた利用料に、施設独自の居住費、食費や生活費が合算されます」 【4】小規模多機能型居宅介護 以上(1)~(3)のサービスを1つの事業所で受けられる、介護業界において、もっとも新しい形態のサービス。 「利用料金は定額制(例・要介護2で約1万5,000円)とわかりやすい。ケアマネジャーの判断で、利用内容と頻度が決められます。訪問から通所、短期入所まで一事業所で依頼できるので、内部のスタッフの連携も取れているところが利点でしょう」
2018年03月14日深刻な高齢化、かさむ介護費。国の方針もあり、在宅介護が重要視されている。「自宅で介護」を望む人が多いのも事実だが、いくらかかるのだろうか――。 「国は現在、『地域包括ケアシステム』を推進しており、今後『施設介護』から『在宅介護』の流れが強まるでしょう」 そう日本の超高齢社会の未来を予測するのは、『介護施設&老人ホームのさがし方・選び方』(サンライズパブリッシング)の著者で、介護施設コンサルタントの齋藤直路さん。65歳以上の人口は現在、3,000万人を超えており、2042年には約3,800万人でピークを迎える。介護の需要が今後ますます増加することは火を見るよりも明らかだ。 しかし施設での介護は、高額な資金が必要になる。また、在宅介護は家族の負担も大きく、介護疲れによる虐待や、介護離職に端を発する貧困など、問題も山積。一方で、頼れる家族のいない独居老人も多いのが実情だ。 そこで現在、国は「地域包括ケアシステム」(前出)を推進している。住まいを中心に、日常生活圏内で病院、介護施設、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどが、さまざまな支援や介護、医療、サービスを一体的に提供するものだ。地域のなかで安心して介護や医療などが受けられるシステム作りだという。 「介護を受ける側にとっても、在宅介護のメリットは大きい。たとえば、トランスファーショックといって、自宅とは遠く離れた施設に住むことで、環境の違いに戸惑い、近所との交流が途絶える寂しさを感じる。結果、活動量が低下して、認知機能の衰えが出てしまうこともあるのです」(齋藤さん) 実際、内閣府の調査でも、「介護を受けたい場所」は、「自宅」と答えた人が全体の34.9%という結果が出ている(平成24年「高齢者の健康に関する意識調査」)。今後、ますます重要性が高まる在宅介護。 それでは実際に終生、在宅介護をすることで、どのくらいのお金がかかるのか。代表的なケースを、介護施設コンサルタント業務をする「スターパートナーズ」の垰和宏さんに、シミュレーションしてもらった。 それぞれのケースでは、介護保険自己負担1割で算出。単純に介護度の利用限度額ではなく、現実的に使用される介護費用を想定している。介護用のベッドの費用や、バリアフリーの改築費用などは含まれていない。 また、将来の平均寿命が現在の87歳(女性)よりも5年ほど延びることを想定し、92歳(93歳の誕生日の前日)で亡くなったと仮定している。 ■自立度が高いまま自宅での生活を継続したケース 5年前に夫に先立たれ、一人暮らしをしていたAさんだが、85歳を迎えたころから、加齢の影響により日常生活で不便を感じることが増えた。 知人の勧めで介護認定の調査を受けたところ、要支援2に。週に2回ずつ、掃除や買い物などの家事サポートのため、要支援者のための訪問介護である「介護予防訪問介護」(月の負担額は約2,400円と、リハビリ目的で「介護予防通所介護」(同3,400円)を利用。 その1年後、86歳のときに要介護1に上がってしまったが、ケアプランは大きく変えず(訪問介護で月約3,840円、通所介護で月6,890円)継続。身体の衰えはあったものの、自宅での生活を続け、93歳を迎える前日、自宅で亡くなった。 「このケースのように、要介護になっても比較的自立した生活をし続ける方も少なくありません」(垰さん・以下同) 【Aさんの自己負担額】 <85歳・要支援2>介護予防訪問介護(II):約2,400円/月介護予防通所介護:約3,400円/月 <86~92歳・要介護1>訪問介護:約3,840円/月通所介護:約6,890円/月 85歳から92歳までの8年間で合計:97万920円〈内訳:(2,400円+3,400円)×12カ月+(3,840円+6,890円)×84カ月〉 ■脳卒中で医療が必要なケース 子どもたちが独立し、夫と2人で暮らしていたBさん。お互い元気が取りえだったが、夫は85歳を過ぎたころから身体機能の低下を実感。86歳で要支援2と判定されてからは、週に2回、通所介護でリハビリを受けた。 1年後、87歳で脳卒中を患い、状況は一変した。一命はとりとめたものの、退院後もまひは残ってしまい、要介護3に引き上げられた。高齢のBさんにとって、1人で要介護3の夫を介護することは困難で、1週間のうち通所介護を2~3回と、短期入所を組み合わせて利用し、週に1日は、脳卒中後の夫の療養生活管理のため、自宅の訪問看護にあてた。 「訪問介護と訪問看護は、別ものです。訪問看護は主に看護師などが自宅に来て、医師の指示のもと、医療や看護面でのサポートをします」 徐々に夫の活動量は低下し、1年後には要介護4、その3年後に要介護5に上がり、92歳で死亡した。 「脳卒中などのライフイベントがあると、当ケースのように、月のほとんどを通所介護と短期入所にあてることになります」 【Bさんの自己負担額】 <86歳・要支援2>介護予防通所介護:約3,400円/月 <87歳・要介護3>訪問看護:約4,210円/月通所介護:約1万1,110円/月短期入所:約1万1,610円/月 <88~90歳・要介護4>訪問看護:約4,940円/月通所介護:約1万2,370円/月短期入所:約1万3,490円/月 <91~92歳・要介護5>訪問看護:約6,500円/月通所介護:約1万3,530円/月短期入所:約1万3,780円/月 85歳から92歳までの7年間で合計:228万4,200円〈内訳:(4,210円+1万1,110円+1万1,610円)×12カ月+(4,940円+1万2,370円+1万3,490円)×36カ月+(6,500円+1万3,530円+1万3,780円)×24カ月〉 「当ケースでは228万4,200円と算出されましたが、さらに訪問医療が必要となれば、医療費や薬代も加算されます」
2018年03月14日「親が施設入居を拒むケースで多いのは、A:環境の変化が怖い。B:高齢者介護施設に、“家族に見放された人が行く、陰気で寂しいところ”というネガティブなイメージがある。C:自分はまだしっかりとしており、自宅で暮らしていく能力があると思っている。といった3つなんです」 こう語るのは、生活総合情報サイト「All About」の介護アドバイザー・横井孝治さん。介護する側も高齢化していく時代ーー。老老介護で共倒れしないために、介護施設へ親を入居させることは、家族にとっても大事な決断だ。 だが、施設入居を拒否する親はたくさんいる。年を取れば取るほど、知らない場所に行くことや、知らない人に囲まれるのが不安で嫌になってしまう人が多いのだという。 「自宅が快適で過ごしやすいから出たくないというよりも、新たに違うことをやるのが嫌なのです。つまりいまの生活を変えたくないのです」 では、親はどうすれば納得して施設に入居してくれるのか。横井さんに、ぐずる親をうまく説得する『5つのステップ』を教えてもらった。 【ステップ1】まず、拒否する理由を探ることが大事 「施設入居を嫌がる原因がわからなくては、話を進めることは難しいです。それを知るには、まず親の話を聞くこと。家族が本人とじっくり話すことが肝心です。ですから、ふだんから親とコミュニケーションをとるようにしましょう」(横井さん・以下同) たとえ親と同居していない場合でも、親のホンネを探る方法はある。 「毎週1回、1分でも定期的に電話することを習慣づけたいですね。『元気?』『うん』といった会話を何回も重ねていくと、だんだん話すネタがなくなってきます。そうすると『こっちでこういうことがあったけど、そっちはどう?』と、エピソードを交えた日常的な会話が自然と増えてくる。そこから徐々に施設入居をぐずる理由を探っていくのです。先に挙げたA、B、Cどれに当てはまるのか、それとも当てはまらない別の理由なのかーー。まずは親を理解することが第一段階です」 【ステップ2】家から通うデイサービスで外出に慣れさせる 「私も母を施設に入居させる前に、3年ぐらいデイサービス(通所介護)を利用しました。そこで他人とどう過ごせるのか、状況を見極めたのです。ずっと自宅にいると、親の腰は重くなるいっぽうなので、施設入居への道のりは遠ざかってしまう。まずはデイサービスを利用して、家の外に出るクセをつけさせましょう」デイサービスすら嫌がってしまう場合は、「親のことを思って勧めている」と、ストレートに伝えてみること。その際「たまには私を休ませてよ!」と、自分の都合を押し付けるのはNG。「自分がいない間だけでも行ってもらえるとお互い安心できる」と伝えるのが効果的だという。 【ステップ3】施設がつらい、寂しい場所でないことを伝える 「デイサービスやショートステイに行ってみればわかりますが、施設は陰気で寂しいところではありません。イベントやレクリエーション、サークル活動、リハビリなどに力を入れているところも多くあります。それらを楽しむことで、充実した日々が送れることを親に伝えるのです。また、地域包括支援センターなどに相談して、親の趣味や雰囲気に合う施設を紹介してもらうこともできます」 デイサービスに慣れてきたら、「旅行気分で一泊してみよう」と、次はショートステイへと誘導して、外泊にも慣れさせていく。 「そのなかで、何か不満があれば、しっかりと聞いてあげましょう。“自分は常に親の味方である”と振る舞うことも重要です」 【ステップ4】入居を考えている施設の体験入居を利用する 「デイサービスやショートステイで少しずつ施設への抵抗感が薄れてきたら、パンフレットやホームページを見せながら、『ここって、リハビリにも力を入れているので、今よりもっと元気になれるかも』『カラオケや手芸のサークルがあるらしいから、友達が増えるかも』と、興味を引きそうなことを伝えて、見学へと誘い出してみましょう」 一緒に見学に行って、ある程度本人が気に入っているようであれば、「体験入居してみない?」と話してみる。 「本人が、『ここなら安心して暮らしていけそうだ』という実感が持てるように誘導してあげましょう」 【ステップ5】主治医やケアマネジャーなど、第三者から説得をしてもらう その1〜4を実践して、それでも親が入居をぐずってしまうこともあるだろう。 「そんなときは、親が信頼している人から説得してもらうのも効果的。なかでもずっとお世話になっている主治医、またはケアマネジャーから、自宅で暮らし続けていくことの危険性や、施設のよさ、実際に入居した患者たちが楽しく暮らしていることなどを伝えてもらうようにすると、親も話を聞いてくれやすいです」 さらに、親の交友関係などを把握していれば、親を説得する際に力になってくれるケースもあると横井さんは語る。 よく知っているつもりでも、意外と知らないのが親というもの。まずはキチンと知ってあげることが、自分にとっても介護生活でもストレスを最小限に抑えるために重要なようだ。
2018年02月22日いま介護をする側の家族たちから、注目を集めているのが“福祉車両”だ。介護の負担を大幅に軽減できる機能が備わった福祉車両の需要は、年々伸び続けている。なかでも、主婦をはじめとした女性に人気なのが、軽自動車の福祉車両。じつは各自動車メーカーから人気車種の福祉車両が続々発売されている。 「福祉車両は体の不自由な人のレベルによって選ぶのが基本です。介助などがあれば、車いすから助手席に移ることができて、ひざを曲げることができる場合は助手席スライドタイプがおすすめです」 こう語るのは、モータージャーナリストの佐藤篤司さん。助手席スライドタイプ福祉車両は、助手席が電動でスライドするので、車いすから容易に乗車できる。 「助手席のシートも斜めに低く下がるので、車いすから移動する際の負担も減ります。女性の方でもシートまでの介助が楽にできるはず」 そう話すのは、ダイハツ東京販売・総合営業企画部の阿部周平さん。助手席スライドタイプ福祉車両の中でも、ダイハツ『タントウェルカムシート」は、助手席側に、後部座席との間の柱がなく使い勝手は抜群だ。リモコンのボタンを押すと助手席のシートがスライドし、外側に自動的に出てくる。助手席はやや前に傾斜して出てくるので、車いすから助手席シートに移るのも簡単だ。車いすから立ち上がり、一歩横にずれるだけで、簡単に移ることができた。リモコンのボタンを再び押せば助手席のシートが元の位置に戻る。フロントドアを開くだけでも乗降は可能だが、後部のドアを開くと間口が広く使えて、乗降がよりスムーズになる。 前出の佐藤さんは、福祉車両の利点をこう語る。 「福祉車両はノーマルモデルよりも価格は高くなりますが、車両とオプション部品の消費税が免除となるので、ノーマルモデルとそれほど変わらない値段で購入できます。もともと軽自動車は燃費がよく、自動車税も安いので維持費が少なくてすむ。そのうえ、福祉車両であれば、自治体によって条件や金額が異なりますが、自動車税の減免、ガソリン代、高速代などの優遇サービスも受けられます。さらに、ボディがコンパクトで運転しやすいんです」(佐藤さん)
2018年02月04日「子どもや家族に迷惑をかけたくないから、将来は高齢者施設に――。そう考えている人は多いです。しかし、そのほとんどの人たちが、実際にどのくらいの総額費用がかかるのかイメージできず、不安をかかえていらっしゃいます」 こう話すのは、『介護施設&老人ホームのさがし方・選び方』の著書もある、齋藤直路さん。そこで今回、齋藤さんに数ある高齢者施設選びで、何を判断材料にすればいいかのチェックポイントを聞いた。 齋藤さんによる“よい施設の見分け方・選び方10カ条”は次のとおり。 【1】パンフレットでは決めず実際に施設見学する【2】入口で職員からの挨拶がある【3】個人情報の資料が他人の目につくところにない【4】職員同士が声を掛け合っている【5】忙しい食事時でも、入居者に目が行き届いている【6】個室が掃除され、洗濯物がたまっていない【7】ナースコールが鳴り続けていない【8】入居者の退所理由を聞き、理解しておく【9】最近1年の職員の離職率を聞く(15~16%が平均)【10】介護・看護・リハビリ関連の有資格者が多い まず、1のように、見学、体験入所は大前提だ。見学の際は、気持ちよく過ごせる施設なのか、2~7をチェックしておくことは重要。 「あえて忙しい食事時に見学に行くと、日常の本当の姿を見ることができます。職場の雰囲気を知るためにも、職員の服装が乱れていないか、職員同士がすれ違うとき声を掛け合っているのかをチェックしましょう」(齋藤さん・以下同) 施設スタッフから説明を受ける際は、8~10を聞くこと。 「退所理由を聞くのは、施設がどこまで面倒を見てくれるのかを確認するためです。多くは夜間に騒いでほかの入居者に迷惑をかけたり、医療的処置が必要になるなどが理由です。職員の離職率は平均して15~16%。これを大きく上回るようなら、人員不足で職員が疲弊、介護レベルが低下している可能性もあります」 後悔のないついのすみか選びには、この10カ条をお忘れなく!
2018年01月31日生活者の意識・実態に関する調査をおこなうトレンド総研は、このたび「介護の事前学習」をテーマにレポート。さらに、「1億総介護時代」を前にした「介護の事前学習」の重要性について、「介護ラボしゅう」代表の中浜崇之さんにお話を伺った。介護の知識があれば負担が軽減される介護職従事者以外で、介護関連の資格を持つ20~60代男女500名を対象に、「介護の事前学習」について調査を実施。「資格取得のための学習で得た知識は、在宅介護をする上で役に立つと思いますか?」と聞いたところ、86%と約9割が「そう思う」と回答し、大多数の人が、資格で得た知識は実際の介護現場でも役に立つと考えていることがわかった。さらに、「介護に関する知識があることで、在宅介護はラクになると思いますか?」という質問でも、71%が「そう思う」と回答。また、「具体的に何割程度ラクになると思うか」を聞くと、平均は「5割」に。介護の知識の有無で、負担は5割も軽減されるということになる。在宅介護を見据えた資格取得・学習にあたって重要なことまた、「在宅介護を見据えた資格取得・学習にあたって重要なこと」を聞くと、「座学だけでなく、実習もあるスクール・講座を選ぶ」(57%)が最も多い結果に。「介護現場の知識が豊富な講師が多いスクール・講座を選ぶ」(41%)、「初心者でもついていける学習フォロー体制があるスクール・講座を選ぶ」(39%)などの回答も上位にあがった。「介護ラボしゅう」代表の中浜崇之さんによると、資格取得を通じて介護の勉強をしておくことは、必要な知識を体系的に得ることで、肉体的・精神的な負担を軽減させられるのはもちろんのこと、今後の社会で必要とされるキャリアの選択肢を拡げるということにもつながるのだそう。介護系の資格としては、入門的な位置づけである「介護職員初任者研修」、介護職に就いた後さらなるキャリアアップを目指す方向けの「介護福祉士実務者研修」などがあるという。身近に介護が迫る家族がいるという方は特に、いざというときに慌てることのないよう、事前に知識を得て備えておくことをおすすめしたい。【参考】※トレンド総研
2018年01月24日「昨年末、利用者さんが『要介護3』から『要介護1』に格下げされました。うちの施設では、この半年で3人目。“認定更新”の審査が、厳しくなっているんです!」 関東エリアの介護施設で働く女性ケアマネジャーはこう訴える。要介護状態の重篤度を表す「要介護度」の認定は、原則1年ごとに行われる。この認定更新で、格下げされるケースが続出しているという。 「ある80代の女性は、2年前に“脊柱管狭窄症”で手術を受け、入院中に『要介護3』の認定を受けました。退院後、毎日自宅に訪問介護のヘルパーが入り、週に2回デイサービスでリハビリを受けていた。会話はそこそこで、歩行はつえをついてゆっくり歩ける程度。ところが、1年後の認定更新で一気に『要支援2』まで格下げされ、生活が一変したんです」(前出・ケアマネジャー) 「要支援2」になったこの女性は、介護保険支給額が大幅に減ったために、訪問介護が週3に減り、リハビリのサービスは受けられなくなった。 「それからすぐ、女性は歩行中に転倒し頭を強打。MRI検査したところ、脳が萎縮していることがわかり、再度自治体に要介護認定を申請して『要介護2』と認定されました。すでに認知症も進んでいたんです。いったいあの格下げは何だったのかと……」(前出・女性ケアマネジャー) 介護保険からの給付総額は、年々増え続けるいっぽうである。団塊の世代が75歳以上となる’25年には、20兆円を超えるとも……。そのため、国は介護区分を格下げすることで、給付額の負担を抑えようとしている--。そういう声が、いま介護の現場で広がっている。 そんなさなか、さらに要介護度の格下げに拍車をかける「改正介護保険法」が、4月1日から施行される。国は介護保険利用者の“自立支援”“重度防止化”というフレーズを掲げて、利用者の要介護度を格下げした自治体に対し、インセンティブの付与、つまり報奨金を出す制度をスタートさせる。じつはかなり危険な制度だと警鐘を鳴らすのは、生活情報サイト「All About」ガイドの介護アドバイザー・横井孝治さんだ。 「このインセンティブ制度は、利用者の要介護度を格下げし、負担額を減らすことを目的にしていることは明白です。4月以降、格下げは全国でより拍車がかかるでしょう。実際、高齢の利用者の心身の状態をよくして、元気にするということは楽なことではありません。それよりも“この人は元気な人です”と、格下げ認定したほうが楽。それで国から報奨金がもらえるわけですからね」(横井さん) 介護認定が格下げされれば、巨額の介護費用を負担したり、介護のための離職を強いられて、家族全員が困窮することも。実態を無視した格下げは、“介護地獄”を生み出すのだ。また8月からは一定以上の収入のある利用者の自己負担率が3割に引き上げられる。親の介護をしている家族にとって、次の認定更新で格下げを防ぐための手段はないのだろうか。 認定更新は、主治医の意見書と、自治体の認定調査員による利用者の面談によって一次判定が行われる。調査員が作成する調査票には特記事項という項目があり、認定調査員がそのときに感じた印象を書き込むようになっている。つまりどう判断するか、認定調査員の主観で決められるのだ。その後、介護認定審査会の二次判定で「要介護度」が決定する。 「必ず調査員との面談に家族が立ち会うこと。そして、ふだんからできるだけ夜間の行動や、問題行動を起こしたときのことを写真に残し、メモを作って調査員に渡す。“面談のときは元気でもふだんはこういうこともある”と、しっかり伝えることが重要です。さらに特記事項に必ず記載してもらえるように言うこと。うるさい家族だと思われるほうがいいんです。これからは利用者本人、その家族も理論武装しておかないと負けてしまいます。自治体は基本前提として“格下げ認定をしに来ている”という姿勢で面談に臨むことですね」(横井さん) 仮に格下げとなった場合、自治体に対して“区分変更申請”をすれば再調査を受けられる。さらに、情報公開請求をすれば、格下げ時の認定調査票を入手できるので、調査員がどのようにチェックしたか確認して、戦術を練ったうえで、再調査に臨もう。 もはや介護認定は受け取る時代ではなく、勝ち取る時代になったようだ!
2018年01月19日「具体的な統計データはありませんが、格下げされた家族からの相談や悩みを聞くことが非常に増えました。実際、私の母親も『要介護3』から『要介護2』になりました」 そう語るのは、生活情報サイト「All About」ガイドの介護アドバイザー・横井孝治さん。要介護状態の重篤度を表す「要介護度」の認定は、原則1年ごとに行われる。この認定更新で、格下げされるケースが続出しているという。国や自治体は、要介護度を軽くすればするほど、負担する支給額を減らすことができるのだ。 「アルツハイマーと脳血管型認知症の2つの症状がある『要介護3』の80代の女性は見守りが必要でしたが、つえをついて歩ける状態でした。ところが、次の認定更新のときには車いすでの生活に。認知症の症状も悪くなっていたのですが、『要介護2』に格下げ認定されたんです。利用者の家族は納得がいきませんでしたが、認定が覆ることはなかった。このケースは意識的に下げたとしか思えなかった典型的な例です」(横井さん) 認定更新は、主治医の意見書と、自治体の認定調査員による利用者の面談によって一次判定が行われる。その後、介護認定審査会の二次判定で「要介護度」が決定するのだ。北陸エリアの介護関係者は、こう話す。 「『要介護2』のひとり暮らしの85歳の女性がいました。ふだんは、妄想や幻覚の症状があって、会話が飛んでしまうこともしばしば。しかし、調査員との面談のときは、たまたま状態がよく、そこそこ受け答えができた。その結果、『要支援2』に格下げされました。たった一度の面談で、決まってしまったのです」 調査員が作成する調査票には特記事項という項目がある。 「認定調査員がそのときに感じた印象を書きます。つまりどう判断するか、認定調査員の主観で決められるんです」(関東エリアの介護施設で働く女性ケアマネジャー) 要介護度に応じた支給限度基準額内で、利用者は1割~2割負担で介護サービスを受けられる。要介護度が格下げされると、その額も減らされてしまうのだ。 たとえば、前出の「要介護3」から「要支援2」に引き下げられた80代女性のケース。支給限度基準額は「要介護3」であれば月額26万9,310円(負担割合が1割の場合、自己負担額は2万6,931円)だが、「要支援2」に格下げされると月額10万4,730円(同1万473円)と半額以下になる。 もし、この女性が格下げ前と同じサービスを受けようとした場合、差額の約16万円を全額負担しなければならない。金銭的な余裕がない場合、これまで受けていた介護サービス(生活援助、身体介助など)が利用できなくなったり、回数を減らさざるをえない。利用者はもとより、家族にも負担がのしかかるのである。 東海エリアの介護事業所の責任者は次のように語る。 「格下げにより、施設を退所させられた男性は、自宅での介護を余儀なくされました。その結果、同居する娘さんが離職してお父さんの介護をすることに……。結局、格下げのシワ寄せは家族に降りかかるのです」
2018年01月19日将来、自分が介護されるときにそなえて、局部などの永久脱毛をしておきたい――そう考え、アンダーヘアなどを整える「介護脱毛」を始める中高年女性が急増しているという。 医療脱毛専門院「リゼクリニック」が40~50代女性を対象にした調査によると「第三者の介護を意識して、今のうちにワキや局部の永久脱毛をしたい」と答えた人は23%にも上った。従来、医療脱毛を受けるのは20~30代の女性が多かった。だが、リゼクリニック新宿院院長の大地まさ代先生によると、45歳以上の利用者数は’10年から’16年で約4.5倍にも伸びたという。 「45歳以上になると、自身が親の介護を経験して、『局部の手入れがすごく大変だった』『おむつ交換の際に手間がかかった』とアンダーヘアの煩わしさを実感する方が多いんです。局部は拭き方が雑だとムレたり、雑菌が繁殖して臭いがきつくなったりもします。自分が介護を受けるときには清潔にしておきたいし、介護者に迷惑をかけたくない、お嫁さんや若い介護士に汚いと思われたくないと考える方も少なくありません」 中高年になってから医療脱毛をする場合、注意点もある。 「レーザー脱毛は毛の黒いメラニン色素に反応して、毛を作り出す細胞を熱破壊することで、毛が生えてこないようにするため、白い毛には反応しません。レーザーが反応しなかった残りの毛は、針(医療用絶縁針脱毛)の強い電力で毛根組織を破壊することになります」 なかにはアンダーヘアに白い毛が出始めたので急いで来た、という人もいるという。ただ、白い毛さえなければ、レーザー脱毛に年齢制限はない。ちなみにリゼクリニックの施術最高齢は74歳だ。介護脱毛について、介護ジャーナリスト・介護福祉士でオールアバウトガイドの小山朝子さんにも聞いた。 「介護が必要になる75歳以上の後期高齢者になると、陰毛を含めた体の毛は自然に薄くなる人も多いようです。毛のトラブルというよりは、長時間おむつを着用することによるムレやかぶれ、寝たきりによる床ずれなど、皮膚トラブルのほうが多いですね。ただ、清拭(体を拭く)や排せつ介助を受けるのを恥ずかしいと思うのは、自然なこと。そうした人間の尊厳を守るためにも、介護をするスタッフも下の世話をする際にはタオルを1枚かぶせて、なるべく手早く、丁寧に作業するなどの気遣いをしています」
2017年08月12日「知的障害者施設」とはどんな施設?受けられる支援・サービスはどんなものがあるの?出典 : 知的障害のある人を対象とした施設を指す言葉として、「知的障害者施設」という一般名詞がしばしば使われていますが、実は現在、法律や制度上では「知的障害者施設」という公的施設は存在しません。そのため「知的障害者施設」と聞いて、思い浮かべるイメージは人によってばらつきがあります。障害者施設は大きく「通所支援」と「入所支援」の2つに分けられます。前者は、施設に通いながら支援やサービスを受ける施設と、後者は、施設への一定期間の滞在が必要な施設です。また、一つの施設で複数の施設の機能を兼ねている場合もあります。この記事では、知的障害のある方が利用できる施設にはどんなものがあるのか、それぞれの施設で受けられる支援やサービスをご紹介します。まずは、国で障害者に対する支援を定めている法律とのつながりをご紹介します。「障害者総合支援法」の前身である「障害者自立支援法」の施行により、福祉サービスの内容や名称が変わりました。それまでは、障害の種類(身体障害、知的障害、精神障害)ごとに行われていた福祉サービスがひとつの福祉サービスに統一されたのです。現在では、知的障害のある方のみのための施設というものがあるわけではなく、障害者総合支援法で定められている「障害者」の方々のための施設とサービスが運用されています。これらの法律の改正により障害者施設の名称も変更になりましたが、以前からの名称を変更せずに「知的障害者」を施設名に使用している場合もあります。それぞれの施設で受けられるサービスの内容は、障害者総合支援法によって決められています。福祉サービスの詳細や手続きについては以下の記事をご覧ください。また、18歳未満の障害者児童を対象にした支援は児童福祉法によって定められています。児童福祉法では、障害のある子どもたちの健やかな発育を支えるためにさまざまな支援が定められています。どのような施設でどのような福祉サービスが受けられるのか、具体的にご紹介します。子どもを対象とする知的障害者施設出典 : ・児童発達支援センター/児童発達支援事業所主に未就学の障害のある子どもの発達や生活自立などを支援します。ソーシャルスキルトレーニングなどの療育を行う施設や、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場としての機能のある施設もあります。お住まいの自治体によっても異なりますが、施設を利用できる条件に障害者手帳の有無は関係ない場合もあります。・放課後等デイサービス放課後等デイサービスとは、児童福祉法の中で定められている障害児通所支援のひとつです。種類は以下の2種類があります。小学生から高校生の就学児童が基本的な対象ですが、支援が継続して必要だと認められた場合は、20歳まで利用することができます。1.学習塾タイプ・・・学習面での支援を中心に行っている事業所もあります。2.預かりタイプ・・・学童保育のように、放課後の子どもに安心して楽しく過ごせる居場所を提供します。最近では、学習支援だけではなく、日常生活で必要になるソーシャルスキルなどを教える施設も増えてきました。放課後等デイサービスの中でも、実際に提供しているサービス内容に差がある場合もあります。お子さんが実際に通うかどうかを検討する際には、ぜひ一緒に施設に足を運んで、子どもの特性に合う施設かどうかを検討しましょう。さまざまな理由で保護が必要な障害児や、日常生活に関する障害児を対象に生活支援を行う施設が障害児入所施設です。知的障害に限らず、身体障害・精神障害・発達障害のある児童が対象になっています。さらに、この対象児童に手帳の有無は関係なく、児童相談所、医師等により療育の必要性が認められた児童が対象になります。障害者児入所施設には、医療型と福祉型の2種類があります。福祉型の施設では、保護、日常生活の指導、知識技能の付与に関する支援が受けることができ、医療型になるとそれらに、医師による治療が加わります。障害児支援について | 厚生労働省障害児入所支援 | 厚生労働省大人を対象とする知的障害者施設出典 : 大人を対象としている知的障害者施設で受けられる支援やサービスは大きく分けて2つです。1つ目は、食事や生活も含め自立した日常生活を送るために必要な訓練をうけることができる「訓練等給付」です。2つ目は施設に入所した際に主に夜間などに日常生活に関する支援や緊急の対応が必要になった場合に対応してもらえる「介護給付」があります。上記の2つの障害者福祉サービスのほかに、市町村にて障害者の方々の生活を支援・サポートを行う事業として、「地域生活支援事業」があります。この事業によって運営されている施設もあり、施設の名称や種類はさまざまです。いくつかのお支援やサービスを同じ施設は多機能型事業所と呼ばれています。施設名称から支援やサービスを判断することは難しいので、現在、自分に必要な支援やサービスを知ることが施設選びには重要になります。参考:厚生労働省サービスの体系・自立訓練(1)生活訓練障害者支援施設もしくは障害福祉サービス事業所などと呼ばれる施設で受けられる支援になります。入所施設を退所された方や、特別支援学校を卒業した方、継続した通所によって生活能力の向上のための支援が必要な方が対象になります。働くための第一歩をこのサービスで受けることが多いようです。簡単な作業やソーシャルスキルの練習などがあります。さらには、「自分らしい生活」を考えるためにヨガやダンスなどのプログラムを提供している施設もあります。自分にあった施設を選ぶことで、本人の自立につながるよりよい支援を受けることにつながります。(2)機能訓練知的障害と身体障害を合併している場合、リハビリなどの支援を受けることができます。それらの理学療法を含みながら本人の自立訓練を行うときには、この機能訓練を利用します。自宅で受けられる訪問サービスもあるので自身の症状にあわせてサービスを選ぶことができます。・地域活動支援センター職業訓練と地域との交流をメインとした施設がこの地域活動センターです。芸術品の作成などの文化的な創造活動などを行っている施設も多くあります。先ほど紹介した自立訓練や下記で紹介する就労支援を目的としているわけでなく、あくまでも相談支援やコミュニケーション活動を目的とした施設になります。・通所型生活介護自宅から通い、日中の入浴・排せつ・食事などの介護といった必要な日常生活上の支援や、創作的活動・生産活動の機会の提供のほか、身体機能や生活能力の向上のために必要な援助を行います。安定した生活を送るため、常時介護などの支援が必要な方を対象としており、障害支援区分が区分3以上(年齢が50歳以上の場合は、障害支援区分が区分2以上)に該当する場合利用できます。・日中一時支援普段、支援やサポートをしている方が何らかの理由で介助を行えなくなった場合に、一時的に預かってくれる支援があります。日中の時間を対象に行っているサービスです。年齢制限もなく、18歳以上でも利用することができます。詳しい受け入れ先の施設に関しては各市町村の窓口にお問い合わせください。参考:厚生労働省地域活動支援センターの概要参考:日中一時支援事業と児童デイサービス|厚生労働省・宿泊型自立訓練宿泊型自立訓練事業所は、障害者総合支援法に定められた自立訓練(生活訓練)の対象者のうち、日中、一般就労やほかの障害福祉サービスを利用している人を対象に、夜間の居住場所を提供します。この中には同じ敷地内の日中活動サービスを利用している人も含まれます。地域での自立した生活を目標に、食事や家事等の日常生活能力を向上するための訓練や、 日常生活に関する相談支援などを受けることができます。日中のサービスと併用すれば、昼夜を通して、自立に必要なさまざまなサポートを受けることができます。利用者ごとに、標準利用期間が決められていて、原則2年間(長期入院者等の場合は3年間)とされています。お住まいの市町村で利用者の現状に合わせて、施設の利用継続が可能かどうかが決められるので更新が必要になります。詳しくはお住まいの市町村の障害者福祉課などの窓口にお問い合わせください。・共同生活援助(グループホーム)日常生活に関する支援や訓練ではなく、入浴・食事などの介護や家事をしてもらいながら生活していく施設としてグループホームがあります。日中は地域の生活介護事業所を利用したり就労したりしながら、主に夜間の生活介護を受け、グループホームで暮らす人が多いようです。宿泊型自立訓練事業所と同じように、お住まいの市町村の障害者福祉課などの窓口にお問い合わせください。・施設入所支援主に夜間の生活介護の支援を行います。暮らしの場の提供、入浴、排せつ、食事、着替えなどの介助、食事の提供、生活等に関する相談、助言、健康管理などを行います。障害者総合支援法では日中の生活介護と別のサービスですが、同じ施設で生活介護、自立訓練または就労移行支援の対象者に対し、日中活動とあわせて、一体的に夜間のサービスを行う事業所が多いようです。・短期入所日中一時支援では日中のみでしたが、短期入所の場合は夜間でも必要な支援や介護を受けることができます。介護者の休息にもなる一面もあるので、様々な事情を踏まえた上で一度短期入所を利用することも可能です。参考:地域相談支援(地域移行支援・地域定着支援)の利用者数実績等 | 厚生労働省知的障害の方が受けられる仕事に関する支援には、本人の特性を生かすために職場に近い環境で自立訓練などを行ったり、職場を見つけ働き始めてからも周りの方からの理解を得るための支援が含まれています。就労支援の対象者は障害のある65歳未満の方で、就労を希望されている方になります。「障害者総合支援法」における就労支援は大きく分けて就労継続と就労移行の2つがあります。働くために必要な知識や能力を養ったり職場体験を行うのが就労移行支援です。就労移行支援を利用したけれども就労に繋がらなかった場合は、就労継続支援サービスを利用することによって、福祉事業所で仕事をすることができます。・就労移行支援事業所就労移行支援の利用者は、就労移行支援事業所に通所してサービスを利用します。そこでは、スタッフとともに個別の支援計画を作成し、働くために必要な知識・能力を身につけるトレーニングや、その人に合った職場探しのサポート、就労後の職場定着までのアフターケアなどを受けることができます。詳しくは以下の記事をご参照ください。・就労継続支援A型/B型事業就労継続支援A型とは支援を受けながら、施設と利用者で雇用契約を福祉作業所と結び働くことを指します。就労継続支援B型は、就労移行支援や就労継続支援A型の利用経験をした上で、年齢や体力の面で雇用が困難な方を対象としたサービスです。施設との雇用契約は結びませんが、生産性にこだわらず自分のペースで働くことができます。サービスの体系|厚生労働省それぞれの「知的障害者施設」に関する申請方法出典 : すべての施設において、市区町村に申請を行うことが必要です。受けたい支援に関する相談や申請に関する相談などを行える窓口として「障害者相談支援センター」が設置されている市区町村もあります。相談者の悩みに応じて支援計画を考えてもらうこともできるので、一人で悩まずに専門家に相談しましょう。障害者児対象の施設は以下の記事をご参照ください。その他の施設は障害者福祉サービスに含まれますので以下の記事をご参照ください。それぞれの「知的障害者施設」にかかる費用出典 : これまで紹介してきた施設は一定の金額を負担すれば、すべての必要な支援を受けることができます。年収によって負担する額は決められています。グループホームなどの特定の施設を利用する場合には負担額が変更になる場合もあるので、自身が利用したい施設とサービスにかかる費用をそれぞれの市町村の窓口で確認することをおすすめします。障害者の利用者負担|厚生労働省障害者福祉:障害児の利用者負担|厚生労働省まとめ出典 : 法律の改正によって変更された施設の名称が、世間一般には浸透していないことも多く、施設の名前から利用できるサービスを想像することが難しいこともあります。子どもの成長に合わせて、利用できる施設も変わりますし、必要になるサービスも変わっていきます。本人に必要な支援は医師からの診断などで知ることができますが、必要な支援を正しく行ってくれる施設を見つけることも重要になります。施設を見つける際には、本人がどんな支援やサービスを必要としているかを考え、お住まいの自治体の福祉担当窓口で受けられる支援・サービスを確認することをおすすめします。支援・サービスごとに施設がまとめられている場合が多いので探す手間が省けることもあるかと思います。実際に必要な支援を受けられる施設を探し、利用するまでの道のりは大変なときもあるかもしれません。周りの方や市町村の窓口にも相談しながらよりよい支援を見つけることにつなげていただければと思います。
2017年07月13日「両親の介護について取材依頼をいただくと、お答えできる場かどうか、かなり慎重に考えます。メディアで取り上げる介護って、どうしても必要以上に過酷や悲惨といったイメージづけをされがちなので。今回は『女性自身』さんの熱意に根負けしました(笑)」 そう話すのは、アナウンサーの渡辺真理さん(50)。’90年、TBSに入社『モーニングEye』『筑紫哲也NEWS23』と、同局の看板番組のキャスターを歴任した後、フリーに転身。さまざまな人気番組で活躍してきた。一方、私生活では’98年、父親(’14年に他界)、続いて母親を自宅で介護する生活を、現在まで続けている。 「もちろん、大変じゃないなんて言うつもりはないんです。実際に介護されるご家族の方が消耗し、困窮される場合もあるわけですから。ただ、放送する側にいる身としては、過酷さだけをクローズアップするのはある意味キャッチーかもしれないけれど、抵抗があるのも事実で。できれば、まず介護される側の気持ちをくみたいですよね。がんばって生きてきた人生の終盤、どなたも好んで介護生活に入られるわけでないから、興味本位でその生活を晒すことになったり、介護=過酷のひと言で片づけるのは個人的に嫌です。一方で、親世代って昭和の律義さと高度経済成長を築いたガッツを併せ持つ人たち。いつもどこかで社会の役に立ちたいと願っていて、子どもくらいの年齢のヘルパーさんに『ありがとう。ごめんなさいね、大丈夫?』と毎日聞いたりします。だから、私たち世代としてはそんな介護される側の願いをくみつつ、実情を伝えてこれからに生かしていかないと。実際に、介護の現場で働く方たちには相当なシワ寄せがいっているのも事実です。介護保険スタートから17年たちますが、制度として成熟していない現状をスピード感をもって改善していく必要性は感じています」 渡辺さんは現在、実家を増改築した横浜市内の二世帯住宅で暮らしている。2階が彼女と、’08年に結婚したフジテレビ勤務の夫の住まい。そして、もとの実家である1階で、母親が療養生活を送っている。 「一日のスケジュールですか?特筆していただくようなことは何もなくて、申し訳ないのですけど(笑)。今はデイリーの番組に参加していないので日によってまちまちですが、平日は朝6時過ぎに起きて母の様子を見て、主人を送っていって、犬や猫たちの世話をして。そのあと、自分の仕事に向かいます。要介護5の母には泊まり込みのヘルパーさんがついていてくれるので補い合いながら家事をします。職業柄、仕事中に親に何かあったとしても立ち会えない覚悟はしていますし、親自身「何かあっても仕事をやり遂げなさい」と怒るタイプではありますが(笑)。できるだけこまめに近くにいたいな、と。アナウンサーになってからレギュラーの番組をずっと受け持てていることは本当に恵まれていて幸運だと思いながら、今は泊りがけなど家族との時間を妨げる仕事は控えています。来た球は全部、打つ!って仕事の姿勢も好きで家計上も楽ですが、精神的に落ち着いて臨めないと仕事に対しても失礼になりますし。遅く結婚した主人が、今はとにかく私の親と一緒にいよう!と同居を決断してくれたことには何よりも感謝していて、助かっています」 母親は現在、要介護5。歩行もままならない状態だが、「母を見てると、人の体ってすごいと改めて実感します」と渡辺さんは語る。 「繊細だけど強くもあって、絶妙のバランスのうえに成り立っているんだ、と。免疫力が低下すると風邪など炎症が起きやすくなって、点滴で水分を補給するとむくみが出てしまうなど、心配は尽きません。でも、体が利かなくなって、もどかしくてつらいのは母自身。父のこと(介護)でも誰よりがんばってきた母だから、今の生活を少しでも楽しく感じてもらえるよう、一回でも多く笑ってもらえるよう、家族としては力の見せどころです(笑)」
2017年06月30日超高齢化社会といわれる現代の日本。なかでも深刻化しているのが、「介護」の問題です。認知症を患っている人や、身体的な問題から寝たきりとなった人を介護するのは、労力と精神力を必要とするため、「介護する側」が疲弊してしまい、自暴自棄になるケースが増えています。自分の直接的な家族なら我慢することもできますが、姑など義理の親への介護については、血のつながりがないだけに、納得のいかないものを抱えている人がいることも多いようです。「死後、遺産だけでも自分が手にしたい」と考えるのも、下世話かもしれませんが、当然のことでしょう。しかし、義理の娘には「相続権がない」という話もあるようで、遺産を受けとることができるのか否か気になります。さらに遺書が残っている場合についても、どうなるのか不明瞭です。真偽を確かめるべく、三宅坂総合法律事務所の伊東亜矢子弁護士にお聞きしました。Q.介護をしていた義父母が亡くなった……相続する権利は発生する?*画像はイメージです:発生しません。故人が遺書を残している場合は取得することができますが、全額を受け取ることはできない可能性があります。「相続人は“子”ですので、義理の娘には相続権は発生しません。遺書を残している場合それに従って財産を取得することはできますが、兄弟姉妹以外の相続人には遺留分(※)があります。 ※(遺留分の帰属及びその割合)第千二十八条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。一 直系尊属のみが相続人である場合被相続人の財産の三分の一二 前号に掲げる場合以外の場合被相続人の財産の二分の一 したがって“義理の娘に全財産を遺贈する”という遺言があっても、他の相続人から遺留分相当額については自分が受け取る権利があるという請求を受ける可能性があります」(伊東弁護士)一生懸命介護している義理の娘には、されている側も「何かを残したい」と思うはずですが、法律上遺産を相続することはできません。どうしても義理の娘に遺産を残したい場合は、予め遺書に「義理の娘に財産を遺贈する」と記し、残すようにしておくと良いでしょう。この場合に、後の紛争をできるだけ避けるため、法定相続人に対する遺留分相当額についてはあらかじめ当該法定相続人に相続させる旨の遺言を残しておくことも考えられます。具体的には専門家へご相談頂くのがよいと思われます。 *取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*kikuo / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月17日「介護保険関連の改正法が5月26日に成立しました。今回の改正の柱は、所得の高い高齢者の介護サービス利用料を、現行の『2割負担』から『3割負担』に引き上げることです。来年8月から実施されます」 そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。介護保険制度は’00年、1割の自己負担で介護サービスを利用できる公的保険として始まった。介護サービスの利用者は、当初149万人だったが、’15年には511万人と約3.4倍に増加。また、介護にかかる総費用も、’00年の3兆6,000億円から’15年には10兆4,000億円と、2.9倍に増加している(’16年・厚生労働省)。 「そんななか、’15年8月から『2割負担』が導入されました。年金収入だけで280万円以上ある比較的所得の高い方などが対象で、介護保険加入者の約20%にあたります。それから2年で、今度は『3割負担』の導入が決まりました。対象は、年金収入だけの単身世帯では344万円以上など“現役並みの収入”の方で、約12万人が該当します」 実際の負担額について、「要介護5」で、現役並みの収入があるAさんを例に、荻原さんが解説してくれた。 「Aさんが、介護保険を要介護5の限度額いっぱいまで利用したとします。支払いは、1割負担のときは約3万6,000円でした。これが、2割負担になって約7万2,000円。さらに、3割負担になると約10万8,000円に増えます。いくら所得が高くても、3割負担は厳しいと思います。しかし実は、『高額介護サービス費制度』(以下・高額介護制度)という、負担を抑える仕組みがあります」 これは、介護サービスの利用料に一定の限度額を設け、それを超えた分は返金される制度だ。収入によって5つの区分があり、それぞれの限度額が決まっている。 「先ほどのAさんの場合、月の限度額は4万4,400円です。とすると、現在の2割負担でも限度額を超えていますから、返金を受け取れます。3割負担になっても、高額介護制度の限度額は同じなので、毎月の自己負担額は変わりません。また、高額介護制度は、同じ世帯であれば合算できます。高齢の夫婦世帯などにはありがたい制度ですから、覚えておきましょう。このように、3割負担が導入されても、あわてる必要がない方が多いと思います。ただし、高額介護制度の利用には申請が必要です」 家計にとって影響が大きい高額介護制度だが、その限度額は、今年8月から一部、引き上げられる。 「引き上げの対象は、“現役並み所得”の次の区分である“一般的な所得”の方です。住民税が課税されていて(年金のみの収入で280万円以上など)、現役並みに達しない方(単身世帯で年収383万円未満など)が対象です。月の限度額は3万7,200円から、4万4,400円に上がります(一部、緩和措置あり)。毎月の負担が7,200円増えると、対策が必要な方もいるでしょう。ただ、介護サービスを減らすと、生活が維持できなくなることもありますので、慎重に考えてください。医療費も多い方は、医療費と介護費を合算して『高額介護合算療養費制度』が利用できるかもしれません。お住いの自治体にご相談を」
2017年06月09日少子高齢化が進むなか、介護のために生活スタイルを変えざるをえない人たちが増えている。介護を理由に会社を辞めた「介護離職者」は、年間10万人ほどもおり、その8割が女性というのが現状だ(総務省「就業構造基本調査」’12年)。 「共働き世帯が増えていますが、夫か妻、どちらかの親が要介護状態になると、妻のほうが介護の担い手になるために、会社を辞めてしまうケースが多いのでしょう。しかし、介護費用がかかるうえに、収入は減るわけですから、貯金を取り崩さざるをえなくなります。もともと少なかった収入がさらに減り、持ち家があるため生活保護も申請できずと、八方塞がりになるケースもよくあるそうです。特化した調査はまだ行われていないので、数字は明確になっていませんが、“介護破産者”そして“介護破産予備軍”は確実に増えていると思います」 そう話すのは、淑徳大学総合福祉学部教授の結城康博さん。結城さんは、危機に直面した人々の実情を『介護破産』(KADOKAWA)として出版したばかり。実はその共著者であるジャーナリストの村田くみさんも“介護破産寸前”まで追い込まれた経験があるという。40代の村田さんは、いわゆる“おひとりさま”で、’08年からは実母の介護をしている。 「介護が始まったとき、母はまだ要介護2でしたので、利用できるサービスも限られており、実費で利用しなくてはいけないサービスもかなりありました。私は大手新聞社で週刊誌記者をしていましたが、介護のために離職したため、フリーランスになり、収入は不安定に……。それでも母のために、有料の介護サービスを使い続けていたら、一時期は貯金残高が30万円ほどになってしまったのです。まさに介護破産一歩手前で、貯金通帳を手にぼうぜんとしたこともあります」(村田さん) その後、村田さんの経済状況は好転したそうだが、なかには介護のためにホームレスになってしまったケースもあるのだ。 現在は任意団体「反貧困ネットワーク埼玉」などで、生活困窮者たちからの相談を受けている高野博昭さん(61)がそうだった。高野さんは、大手百貨店の正社員として働き、年収1,200万円を得ていたという。だが、咽頭がんを患う父の面倒を見るために退職したあたりから人生が急変する。父の逝去後は、母の介護も始まり、再就職した会社も業績が不安定で、賃金も未払いが続いたという。母も亡くなり、最低限の葬式を出したところで、預貯金が底をついた。家賃を2カ月滞納したために、家主に追い出され、公園で寝泊まりするように……。 「その後、支援団体に保護されました。3年ほど生活保護を受けていましたが、団体職員として採用されたことで自立できました。いまは電話相談員として、生活困窮者の悩みを伺っていますが、親の介護で疲れ切っている人からの相談は年々増えています。電話をかけてくる人たちのほとんどが崖っぷちの状態です」(高野さん) 親のために離職したものの、その後、再就職がうまくいかず、困窮状態に……。介護離職が介護破産の入口になっているという構造も見えるが、離職前に相談している人は多くはないという。 5月17日に『東京新聞』が、介護離職にまつわる調査結果を報じている。調査は、みずほ情報総研が実施したもので、介護を理由に正社員から離職した人たちに「離職直前に介護と仕事の両立について誰かに相談しましたか」と、質問したところ、半数近い47.8%が「誰にも相談しなかった」と回答したというのだ。みずほ情報総研・チーフコンサルタントの羽田圭子さんはこう語る。 「現在は介護休暇・介護休業やさまざまな介護サービスがあり、両立できる可能性が広がっています。介護に直面したら、まずは勤務先や市町村に相談してください。また貴重な人材である社員の離職を食い止めるには、企業でも日ごろから自社の両立支援制度や介護保険について社員に情報提供することが重要です」(羽田さん) 実際に離職を思いとどまり、介護破産を免れた人たちには身近な人に相談していたケースも多いという。 「10年後には50歳以上の10人に1人以上が、親の介護に直面することになります。会社の制度を知らなかったり、行政のサービスについて知らなかったりと、情報不足は介護破産の大きな原因の1つです。実際に介護が始まる前から、情報収集を行っておくべきでしょう」(前出・結城さん)
2017年06月01日内閣府が行った「高齢者の健康に関する意識調査」(平成24年・対象は全国60歳以上の男女)で、《介護を受けたい場所》は男性の約4割、女性の約3割が“自宅”を希望している。国も’25年に向けて、病院のベッド数を15万床削減し、数十万人を自宅などで介護してもらう方向に舵を切っている。 デイサービス、デイケア、小規模多機能型居宅介護……。聞いたことはあっても詳しく理解していない人が多いというのが介護サービス。だが、知識不足は自らの首を絞める結果になるという。 「受けられるはずの介護サービスを逃している人があまりに多い。動けなくなってからリハビリを開始しても、後悔が残るはずです」 こう語るのは、くらしとお金の学校代表理事・長沼和子さん。在宅介護では、“そのとき”最適な選択をすることが重要だという。そこで、『後悔しない 高齢者施設・住宅の選び方』著者の岡本典子さん、『介護施設&老人ホームのさがし方・選び方』の著者で介護施設コンサルタントの齋藤直路さんに、在宅での介護サービスを選ぶポイントを教えてもらった。 【1】まず自宅の改修から検討を 「玄関前にスロープや手すりを設置するなど、自宅を改修する場合、上限額20万円までなら介護保険が使えますので、自己負担額は1割(一定収入以上は2割)ですみます。まずは体の状態、家の動線を理解しているケアマネジャーに相談してください。そのうえで市町村役場に申請し、登録業者を選んで改修工事を依頼します」(岡本さん) 【2】多様な居宅サービスを駆使 日常生活が可能なものの、やや困難が生じてきたら、通所介護(デイサービス)だ。 「自宅まで送迎車が来て、一日を入浴や体操、リハビリ、昼食やレクリエーションを楽しむというもの。だいたい朝9時くらいから16時くらいまで過ごします。高齢者のための“学校”のようなイメージ」(齋藤さん) ここで見てほしいのは、スタッフのケアだという。 「ご飯を食べさせてくれる、着替えを手伝ってくれる施設ばかりが“親切”だと思わないように。よい施設は、運動機能が落ちないように過剰なサポートはしません」 リハビリが必要なら、リハビリのサービスを強化している通所・訪問リハビリテーション(デイケア)施設の利用が効果的だ。 「理学療法士や作業療法士、管理栄養士がおり、歩行機能の改善や、筋肉向上、栄養指導をするために通います」 【3】早朝・夜間対応の訪問介護も 独力で家事ができない、入浴に介助が必要な要支援以上の独居者であれば、ヘルパーに自宅に来てもらう訪問介護が利用できる。 「元気な同居家族がいる場合はサービス提供が認められないこともありますが、入浴の介助などは慣れていないと難しいのでケアマネジャーに相談を」(齋藤さん) サービスの提供時間は8〜18時くらいまでが一般的だが、早朝や夜間対応をしてくれる事業所もある。 【4】要介護3でも在宅が可能に 要介護3以上で認知症の診断があれば、デイサービス、訪問看護、そしてショートステイ(短期間の入所)を同時に提供してくれる、小規模多機能型居宅介護が選択肢に。 「要介護2以下でも利用できますが、現実的には、利用者の多くが要介護3以上の認知症の方です」(齋藤さん) 要介護3以上で高い頻度で介護が必要な人のために、増加していくとみられているのが定期巡回・随時対応型だ。 「自宅にいながら、専用の機器で連絡するとオペレーターにつながり、必要に応じてヘルパーが派遣され、毎晩決まった時間での巡回もある。自宅で施設と同様のサービスが受けられます」 【5】訪問診療・看護で自宅看取り 「いま訪問診療や往診、訪問看護が受けられる地域が増えてきています。自宅での看取りシステムが進んでいるといえます」(岡本さん) 注意したいのは主治医の存在を家族に知らせておくこと。 「治療しても病状改善が望めない場合、約9割の人が、延命治療はせずに自然に任せた死を迎えたいと希望するといいます。しかし、要介護者の容体が悪化したとき、家族が主治医の存在を知らなければ、主治医を飛び越して救急車を呼んでしまい、意思に反した延命治療を受けてしまう可能性があります」 必ず家族間の情報共有を図っておくべきだろう。
2017年04月17日「日本はすでに超高齢社会。今後は、ケアが必要な高齢者を抱える家族がどんどん増えていくと思われます。ときにその家族は大きな負担を強いられます。若い世代が、親の介護のために会社を辞めなければならないというケースもあるでしょう。このような時代を生き抜くためには、介護に関する環境設備の知識も、必要になってくると思います」 こう警鐘を鳴らすのは、今回「介護に優しい街」ランキングを監修した、データ分析のスペシャリスト、住環境アナリストの堀越謙一さんだ。 いま親の介護・看護を理由に年間約10万人もの離職者がいることをご存じだろうか。厚生労働省「雇用動向調査」(’15年)によると、離職者が多い年齢層は、男女ともに45〜54歳。まさに“働き盛りの世代”が、毎年介護を理由に仕事を辞めているという現状がある。 「安倍政権は“介護離職ゼロ”の政策を掲げていますが、それを日本中で実現できるのは随分先の話でしょう。家族が要介護になったときにどこに住んでいれば安心なのか。そして親の世話をしながら、安心して働けるのはどこなのか−−。それは現役世代が、最も知りたい情報なのではないでしょうか。そこで今回、国の統計データをもとにしながら、首都圏、都市部の11都府県、約400エリアの市区を対象に、就業率、介護施設数といった指標をたてて集計し、順位をつけてみました」 集計結果から見えてきたのは、財政力や地理的条件も大きな判断要素になるということ。本誌記者は、ランキング上位のエリアを実際に歩いて見て回り、自治体の高齢支援担当者に話を聞いた。 「なぜ都筑区が全国1位に選ばれたのか……。本当にわれわれにも、コレだという明確な理由がわからないんです」と満面の笑みで話してくれたのは、横浜市都筑福祉保健センター高齢・障害支援課長の星信行さん。 本誌分析による「介護に優しい街」ランキングで堂々1位に選ばれたのが神奈川県横浜市都筑区。実は、横浜市18区の中では高齢者が最も少ない区でもある。横浜市全体(18区)の平均年齢が45歳なのに対し、都筑区は40.7歳。つい最近までは平均年齢が30代だったというから、高齢者がいかに少なかったかがわかる。 現在、都筑区内にある特別養護老人ホーム(特養)の数は6つ、介護老人保健施設(老健)は7つある。 都筑区は、’14年に区制20周年を迎えたばかりのニュータウン。区役所がある市営地下鉄「センター南」駅周辺には、ショッピングモールをはじめ、建設中のものも含めてマンションがあちこちに建てられている。さらに、駅からすぐの場所に大型の有料老人ホームが点在していた。 「特養や老健は市の計画に則って建てられますが、民間の有料老人ホームは各事業者さんの判断。そこに“市場性”があるということではないでしょうか。高齢者ご自身から“都筑区に住みたい”と希望されるケースも多いと聞いています」 実際、都筑区に転入する65歳以上の高齢者の数は、ほかの区より多いという。働きながらの親の介護を想定すれば、ある程度の介護施設数が確保されていて、しかも現役世代にとっても住みやすい街となれば、確かに優位。さらに横浜中心部、都心へのアクセスもよいエリアであれば、ベストな選択の1つとなるだろう。 「都筑区はニュータウンですから一般のマンションも次々に建設されています。この街に住み始めた若い世代から、心配だから近くに越してきてほしいと両親に提案するパターンもあると思います。役所の窓口に来られる方のなかには、もちろん『子どもをこの街に呼び寄せたい』という相談もあるのですが、そういった“近くで別々に”という形を望まれているご家族も増えていますね」 都筑区は、将来の介護も含めた“選択肢の多い”街だと言えるかもしれない。
2017年04月05日「今いる施設にもそう長くはいられないので、次の入居先を探しているのですが。今日も散歩のあとに施設の方と『なかなかいいところがなくてね』なんて話していたところです」 2月初旬の穏やかに晴れた日に憔悴しきった表情でそう話すのは、フジテレビの須田哲夫アナウンサー(69)。定年後も嘱託アナウンサー兼解説委員として、『新報道2001』の司会を担当。現役で活躍している。 須田アナは現在、施設の近所に妻と同居。2人の子供はすでに独立している。弟と協力して母の介護と仕事の両立を進める日々だ。認知症の母親(92)が入所する施設から出てきた須田アナにインタビューしたのは、昨年9月。自宅の母親の着替えを洗濯して届けに来る彼のことを、施設関係者は“日本一の孝行息子”と呼んでいた。 それから5カ月。須田アナの母親は、まだ同じ施設に入所していた。この日も彼は昼11時ごろに施設に現れ、実母を車椅子に乗せると近所を散歩。20分ほどで施設に戻ってきた。 「母も少し認知症が進んではいますが、この施設にも慣れて状態が安定しているんですよ。今日も会ったら『早起きしちゃって。お昼にはもう眠いわ』なんて笑いながら言う朗らかな表情を見ているとね……。この施設を出て行くことが母にとって本当にいいことなのかって考えてしまいますよ」 須田アナの母親が入所しているのは、公立の介護老人保健施設。本来ならこの介護老人保健施設の入所期間は、3カ月と定められている。施設関係者はこう語る。 「この施設は、介護保険でかかる費用がかなり賄えます。須田さんの自己負担は食費などで月10万円ほど。もう入所して1年になりますので、今月末にも退所していただく予定です。須田さんには次の施設に移ってもらうか、自宅で見てもらうようお願いしています」 「心苦しいのですが、いつまでもいていただくというわけにはいかない」と関係者はすまなそうに話す。実際、冒頭どおり須田アナも他の施設などを見学して回っているという。 「本当にいろいろ回りましたよ。民間の有料老人ホームも行きましたが、都心で僕がすぐに介護に行きやすい立地となると、とんでもない金額がかかる。手ごろな金額で雰囲気のある老人ホームというと、どうしても地方になってしまうんです」 高齢者向け入居施設利用のアドバイスを行う、ニュー・ライフ・フロンティアの中村寿美子さんは「仕事の関係で都心から離れられない須田アナにとって、資金だけではなく、立地の問題も大きい」と指摘する。 「都心で民間の老人ホームに入ろうと思えば、さほど豪華ではない、いわゆる普通の施設でも月に40万や50万円の覚悟は必要です。いわゆる“特養”と呼ばれる特別養護老人ホームは公的施設ですので一時金もかからず安いのですが、全国に50万人も入所待ちの方がいます。特に開発余地がない都心部では新規開設が困難で、2年待ち以上が当たり前です」 このままだと須田アナは自宅で面倒をみる選択肢しか残されていないように見えるが……。 「自宅でキチンと介護されている方も世の中にはたくさんいますから、なかなか言いにくいのですが、僕もまだ仕事をしていますし、ずっと家に居られるわけじゃない。そうじゃなくても、介護というのは24時間のものですからね。常にキチンと見ていられるわけじゃない。そうなるとやっぱり自宅では難しいというのが本音です。今後、(母が)どうなるのか考えると、不安ですよ。不安でしょうがないですね」 須田アナも来年は70歳。老々介護の問題は待ったなしだ。日本の介護施設の“貧困”ぶりは目を覆うばかり。須田アナの問題は、私たちにとって決して他人事ではない。
2017年02月15日ニュースなどでご存知の方も多いと思いますが、2017年1月から改正育児介護休業法(育介法)が施行されることになります。育児休業・介護休業を取得できる従業員の範囲が拡大したことも大きいですが、特にインパクトが強いのは介護休業の取得方法でしょう。改正前と改正後では介護休業の取得方法はどのように変わったのでしょうか?Q.法改正によって何が変わった?*画像はイメージです:介護休暇を「3回」に分けて取得できるようになりました。改正前の育介法では介護休業は1回きり(最大93日間)しか取得することしかできませんでした。ただ、介護を行うにあたっては急な対応を要するもの(直接的な介護だけでなく介護施設の申し込み手続きなど)が複数回発生するため、1回きりしか取得できない介護休業は使い勝手の悪い制度でした。しかし、改正後は取得日数の上限こそ最大93日間と変わらないものの、1回きりではなく通算して93日間を3回に分けて取得できるようになりました。分散して介護休業を取得できるようになったことにより、93日という限られた日数をより効果的に活用してもらうことが期待されています。とはいえ、仕事と介護を両立するためには取得日数が分散できるようになっただけではまだまだ不十分であると言えるでしょう。介護離職を減らすためにも今後の更なる制度改革に期待したいところです。 *取材・文:ライター松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。【画像】イメージです*EKAKI / PIXTA(ピクスタ)
2017年01月07日いまや介護は誰でも避けては通れない問題。平成27年の厚生労働省の調査では、85歳以上の60.3%は介護が必要な状態であることがわかっています。家族の介護には多額の費用が発生しますが、それだけでなく、介護する側が仕事を辞めたり、休職したりせねばならず、収入が減ってしまうこともあります。このような状態で徐々に家計が圧迫され、「介護破産」に陥るケースも近年増えているといいます。収入が減っても住宅ローンなどは払い続けなくてはならないため、事前にきちんと資金計画をしていないと、後で取り返しのつかないことになってしまうかもしれません。そこで目を通しておきたいのが、『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本』(太田差惠子著、翔泳社)。介護が必要になった場合の施設の選び方から、かかるお金、契約についてまでが具体的に説明されています。今回は本書のなかから、施設入居を計画する際に知っておくべきポイントをご紹介します。■1:親が「100歳になるまで」を想定して計画する高齢者施設に入居するにあたって必要な費用は、大きく分けて「入居一時金(前払金)」「月々必要な料金(居住費・食費・サービス費など)」「その他の費用(医療費・生活用品・小遣いなど)」「予備費」となります。入居一時金は無料~1億円、月額費用は5~40万円と施設によってかなり幅があるため、「いくらかかるか」というより「いくらかけられるのか」という視点で検討していく必要があります。資金計画を立てる際は、親が100歳まで生きると想定して計算します。入居一時金などのまとまったお金は貯蓄から、月々の支払いは年金などの収入から支払うのが基本です。たとえば、1,000万円貯蓄があるAさん(80歳)の場合、一時金200万円、緊急の出費に備えた予備費を200万円とすると残りは600万円になります。100歳まであと20年間生きるとすると、年間で使えるお金は30万円で、月額にすると25,000円。毎月10万円の年金があるとすると、12万5,000円までは支払えるということになります。まずは早い段階で、親の貯蓄と毎月の収入を把握しましょう。資産状況がわからないまま施設探しをすると、あとあとやりくりができなくなってしまう恐れがあります。■2:月額利用料の他にかかる費用にも注意する特別養護老人ホームや老人保険施設など、介護保険で入れる「介護保険施設」では、おむつ代や食事用エプロン代など細かなものまで介護費に含まれています。しかし、介護付き有料老人ホームなどの民間施設の場合、おむつ代は原則有料。持ち込みをした場合でも廃棄料金が必要になる施設もあります。通院への付き添いや買い物代行なども費用がかかります。また、民間施設入居中に病院に入院する場合、食費以外は継続して支払わなくてはいけません。このような状況になると「施設費用」と「入院費用」が二重にかかり、厳しい状況になります。そのため、あらかじめ予備費をとっておかなくてはいけません。■3:利用料金に合ったサービスかどうか確認する民間施設の利用料金を大きく左右するのは、「立地」「設備」「人件費」の3つ。一般不動産と同様、立地条件のよいところは施設料金も高くなる傾向があります。建物についても新築は割高で、中古物件をリノベーションした施設は割安になっています。共用施設の広さや豪華さも注意したいところです。また、人員体制も確認しましょう。国の指定基準は要介護者3名に対して職員1名となっていますが、民間施設では2.5:1や2:1となっているところもあります。また、介護職員よりも看護職員の方が人件費が高くなるため、看護師が24時間体制で常駐する施設では利用料金が高くなります。比較検討する際は、なにが必要でなにが必要ではないのかをしっかり見極めることが大切です。■4:自分自身も年金生活になる可能性を想定する親の貯蓄や年金で費用が十分にまかなえない場合、子からの支援が必要になることもあります。しかし、現在は働いていて収入が十分にある人でも、将来は年金生活になるということを意識しておかなくてはいけません。自分自身が介護される身になった、もしくは先に自分が亡くなってしまった場合は次の世代に大きな負担をかけることになってしまいます。親の支援をする場合は、子の生活設計も考え、できる範囲で行うことが大切です。■5:「共倒れ」になる前に生活保護も視野に入れる介護疲れで、共倒れ寸前のような状態になると「お金はあとでなんとかなるはず」と考えて、とにかく施設入居の契約をしてしまう人がいます。しかしこれは危険。途中で経済状況が厳しくなり、施設を退去しなくてはならない事態に追い込まれることもあります。それを回避するには、まず担当のケアマネージャーに相談し、在宅のままショートステイを連続30日間利用する、3ヶ月間老人保健施設に入居してもらうなど一時的に親と離れ、冷静に考える期間をもうけましょう。親の経済状況がかなりひっ迫している場合は、親に生活保護を申請することも一案です。施設の月額利用料を生活保護の「生活扶助」「住宅扶助」で賄える可能性があります。実際生活保護を受けながら、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅で生活している例も珍しくありません。*介護にかかる費用は施設によって大きく異なるので、資料などを取り寄せてしっかりと比較検討することが大切。親が元気なうちはまだまだ大丈夫と思いがちですが、元気なうちだからこそ、しっかりと話し合っておきたいですね。(文/平野鞠) 【参考】※太田差惠子(2016)『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本』翔泳社※介護や支援が必要な人の割合はどれくらい?-公益財団法人 生命保険文化センター
2016年08月02日いま、多くの人が親の老後に不安を感じている時代。実際、オウチーノ総研が20~49歳までの男女741人に「親の介護について考えているか、不安はあるか」アンケート調査したところ、不安を感じている人は81.0%もいるとの結果が出ています。なかでも親の認知症介護は、誰にとっても他人事では片づけられない問題ですよね。だからこそ参考にしたいのが、きょうご紹介する『医者は知らない! 認知症介護で倒れないための55の心得』(工藤広伸著、廣済堂出版)です。著者は、介護ブログ「40歳からの遠距離介護」で生計を立てながら、家族の介護をしているという人物。40歳のとき、祖母(要介護3)が子宮頚がんで余命半年と宣告されたことを契機に介護離職。現在も、認知症が発覚した母(要介護1)とのダブル介護を行っているのだそうです。つまり本書では、そんな経験から得た認知症介護のノウハウを明かしているわけです。本書によると、介護には「魔の3大ロック」といわれるものがあるのだとか。身体を拘束する「フィジカルロック」、薬で抑えつける「ドラッグロック」、言葉で圧力をかける「スピーチロック」がそれ。その一方、著者を含めた介護者も、実はいろいろなものに「ロック」されているのだといいます。■介護の魔の3大ロック(1)マネーロックまずは「マネーロック」。住宅、教育ローンなど固定された支出が多くなり、金銭的に身動きが取れない状態を指した、著者の造語。というのも認知症介護をしていると、想定外の手術、施設への入所、リフォーム費用など、突然の出費が多いものなのだそうです。(2)タイムロック次にタイムロック。本来の意味は「時計錠」ですが、これも著者の造語。勤務時間がキッチリ決まっていて、通勤時間も2時間かかるなど、日常が「自由度のないタイムスケジュールになってしまっている状態」を指すものです。「認知症の人が徘徊して警察に呼ばれてしまった」「下の世話に1時間以上かかってしまった」「デイサービスに行きたくないといいだした」など、介護をしていると予想外のトラブルが発生することになります。そんなとき、仕事に行けなくなってしまったりしたら、そのフラストレーションを認知症患者本人にぶつけてしまうことになったりもするとか。つまり、それはタイムロックが原因だということ。ちなみに著者の場合は、祝業をフリーランスにしたため、タイムロックはほとんどないのだといいます。お母さんの妄想に30分以上つきあうこともあるそうですが、イライラしていないので気持ちに余裕があるのだそうです。それは、とても大切なことであるはず。つまり介護をするにあたっては、なんらかのかたちでタイムロックから自分を解き放つことが必要なのでしょう。(3)常識ロックそして最後は常識ロック。これは介護者が、「まわりのみんながそうしている」という意識から、自らをロックしてしまうことを指すのだといいます。少しわかりにくいかもしれませんが、「みんなすべて自分の手で介護している。他人に頼るなんてもってのほか」という“常識”にとらわれすぎている介護者が、本当に多いというのです。もしかしたら、日本では家事も育児もすべて自分でやる人が多いという現実が、介護にも影響しているのかもしれない。著者はそう分析しています。また、崩れつつあるとはいえ、「介護は女性がするのが当たり前」という幻想もいまだ根強いのだとか。しかし、介護をアウトソーシングしてなにがいけないのでしょうか?そんな疑問を投げかけている著者も、週2回のデイサービス、ゴミ捨てなどの訪問介護、週1回の訪問リハビリ、隔週での訪問看護など、アウトソーシングをしているといいます。■自分の手で解除しようまた、「介護でタイムロックされている人は大変な思いをしているから偉い」と尊敬され、自分の時間をつくり出そうとしている人は尊敬されないというのも不思議な話だと著者。たしかに私たちは苦労を尊敬の対象にしがちですが、そういうものではないはずです。だからこそ、そういった「常識ロック」を自分の手で解除すべきだと著者は主張します。そうすれば、介護の幅が広がり、孤独からも解放されるというのです。アウトソーシングしていると親戚から文句をいわれることもあるでしょうが、大切なのは「介護者が主体的であること」だからです。見るべき方向は「世間やみんな」ではなく、認知症の人ご本人、そして介護者自身。認知症の人ご本人には「介助」が、介護者には「ロックの解除」が必要だといいます。*当然のことながら、介護には、つらく苦しいものというイメージがあります。たしかに、それは事実なのでしょう。しかし本書の魅力は、著者がそういった被害者意識とは別の場所にいることです。「わたし自身、認知症介護は4年目に突入しました。もちろん、悩みはあります。しかし、思ったほど悩みは深くなく、『しれっと』介護ができています。『しれっと』とは、何ごともないかのような状態のことです」(「はじめに」より)この記述からもわかるとおり、決して悲観的ではないのです。だからこそ本書を読んでみれば、絶望的なものとして語られがちな認知症介護を、もう少し広い視野で眺めることができるようになるはずです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※工藤広伸(2016)『医者は知らない! 認知症介護で倒れないための55の心得』廣済堂出版
2016年07月17日最近、「親の介護のため仕事を辞めざるをえなくなり、生活が苦しい」とか、「両親の介護費用のために貯蓄が減ってしまった」という話を聞くことがあります。自分たちの介護にかかるお金の準備をするより先に、両親の介護にかかるお金が心配だという方も少なくないでしょう。しかし実際問題として、介護の費用はどのくらいかかるのでしょうか?今回はみなさんの気になる疑問を解明していきたいと思います。■公的介護保険から保障を受けられる!公益財団法人 生命保険文化センターが、「年代別人口に占める要支援・要介護認定者の割合」というデータを発表しています。これによると、日本人が老後の介護状態になる確率は、80~84歳では29.9%、85歳以上で60.3%。確率は75歳をすぎたあたりから急速に上がりはじめます。平均寿命が女性86.41歳、男性79.94歳(2012年)という世界一の長寿国に生まれ育った私たち。人生の最終コーナーのあたりで、どうしても介護状態になる確率が高くなるようです。介護にかかる費用については、国の公的介護保険が導入されたため、介護保険の対象サービスを受けた場合の自己負担は1割で済むようになりました(2015年8月より一定収入以上の方は2割)。つまり居宅サービスを例にとると、もっとも多く介護サービスを受けることができる要介護5の人でも、自己負担の上限金額は36,065円というわけです。さらに、健康保険の高額療養費制度と同様介護保険にも「高額介護サービス費」という制度があり、一般世帯の場合であれば、37,200円を上限としてそれ以上自己負担が増えないようになっています。ただ、介護の状態や環境によっては、支給限度を超えたサービスが必要になる場合もあり、それは全額実費となってしまいます。すると、次に気になるのは実費がいくらになるのか、ですよね?これについては、同じく公益財団法人 生命保険文化センターの「介護保険からの給付と自己負担額(1ヶ月分)」にある介護費用例からイメージできるようになっています。あくまで例ですが、月額サービスの利用合計金額が277,070円(訪問看護40,700円、訪問介護85,360円、デイケア100,360円、ショートステイ25,650円、福祉用具貸与25,000円)で、要介護度別の支給限度額(本事例は要介護3)が269,310円。つまり、277,070円から269,310円をひくと7,760円になるので、7,760円の自己負担があるということになります。■本当に毎月25万円以上もかかるのかこう見てみると、「それほど介護費用がかかるのか?」という疑問が生まれますよね。介護の話になると「施設に入れば毎月25万円以上はかかる」というような話をよく聞きます。しかし、これは「有料老人ホーム」に入所した場合なのです。同じ施設でも「特別養護老人ホーム」であればこんなに費用はかかりません。ただし東京をはじめ各地とも、「特別養護老人ホーム」は定員がいっぱい。順番待ちも相当な人数です。つまり、ここに介護の問題があるわけです。「介護が必要な両親がいる。でも費用の安い施設は定員がいっぱいで入れない。かといって高額な有料老人ホームに入れることはできない。結果、自宅で介護をせざるをえない」こんな図式なのです。自宅で介護となれば、働き方にも制限が出る場合があります。そのため収入が減り、生活苦という悪循環に陥るのです。近年は、10万円台で入所できる有料老人ホームも増えてきました。10万円台であれば、両親の年金を考慮すると多少の負担で預けられるかもしれません。親の年金受給額を早めに把握し、有料老人ホームの情報にもアンテナを張っておくことお勧めします。(文/ファイナンシャルプランナー・岡崎充輝) 【参考】※介護や支援が必要な人の割合はどれくらい?-公益財団法人 生命保険文化センター※介護保険制度の改正について-神奈川県ホームページ※実際にかかる介護費用はどれくらい?-公益財団法人 生命保険文化センター
2016年04月27日こんにちは。医療カウンセラーのyoshiです。介護保険を利用したいが、具体的にどのようなことから始めれば良いのか分からない、という人は少なくありません。極端なことを言ってしまえば、 何も分からない状況であっても市役所の“介護保険を担当してくれる窓口” に相談をすれば、手順を教えてくれます。この窓口を見つけることができなければ、市役所の総合受付に尋ねればすぐに場所を教えてくれるはずです。できるだけスムーズに手続きをしておきたい人は、少し詳細を知っておくと便利です。●介護保険を申請する手順申請→調査→一次判定→二次判定市役所の介護保険担当窓口に申請をすれば、そこで申請自体は終わりになります。そもそも申請に必要な書類がわからないという場合、書類が欲しいということを窓口で伝えれば必要な書類を手に入れることは可能です。※年齢、状態によって必要な書類は変わってきますが、1から全て説明をしないと書類をもらえないことはなく、年齢、申請をしようとする理由などを説明できれば、適した書類を受け取ることは可能です。必要になる書類として要介護・要支援認定申請書というものがありますが、ここには、主治医の氏名や医療機関などを記入していきます。ここで、「主治医なんかいない、どうすればいいの……?」と大きな疑問を感じてしまう人がいるかもしれません。介護保険を利用していく場合には、主治医の診断が必要になりますが、いない場合には市町村が決める主治医に診断をしてもらい、氏名を記入してもらうため、あらためて主治医を見つけていく必要はありません 。この後、調査、判定があるのですが、自分で行動を起こしていくのは、ほとんどの場合“申請”までとなります。意外と感じてしまうかもしれませんが、調査から判定に関しては、専門家が進めていくことがほとんどです。----------ただ、最後に注意しておきたいのが“判定結果に納得できない場合”です。この場合には、再度自分で、あるいは被保険者になる人の関係者が行動を起こしていく必要があります。納得できない場合には、不服申し立てができることを知っておくと良いでしょう。【参考リンク】・サービス利用までの流れ | 厚生労働省()●ライター/yoshi
2016年03月11日こんにちは。医療カウンセラーのyoshiです。介護保険を利用していくときの基本になる存在として、“ケアプラン”があります。これは介護保険を利用する人の状況を調査し、綿密に決めていくものであり、サービスの利用範囲を決めていくもの になります。基本的にケアマネージャーが作成をしていきますが、実はケアプランは個人で作ってしまうこともできます。ただこの場合、サービス利用料や単価についての知識が必要であり、それらを調べながら作成をするため専門知識がないとなかなか難しいのが現実です。個人で作れるメリットとしては、ケアプランの内容を全て把握できる、風通しの良い介護保険を利用することができる、などがあります。●要支援と要介護でのケアプラン要支援というのは、比較的症状が安定していて身体的状況もそれなりに良い状態であり、介護状態になってしまうことを予防する意味 も持っています。このような支援のケアプランは、地域包括センターと連携をして作っていきます。要介護の人の場合、施設を利用する場合には施設のケアマネージャーなどとプランを作っていくことになり、在宅サービスの場合には居宅介護支援事業者と契約をしてケアプランを作成していきます。●ケアプランは介護を必要とする人のためのもの要注意点として、最後に説明をしておきます。ケアプラン作成のときに起きてしまいがちな問題としては、“ケアプランがただのスケジュールのようになってしまう”ということです。これは分かりやすく言ってしまうと、支援をする人のためのスケジュールということになります。介護を必要とする人、またはその家族の意見や状態がうまく反映されていない状況のケアプランは、作成されても十分な支援を受けることができない ことにつながります。具体的に言ってしまうと、介護内容が具体的になっておらず、曖昧なもの、または不可能なものなどです。必ず内容をケアマネージャーの人に説明してもらい、家族や介護を必要とする人が納得できるケアプランを作ってもらう必要があります。介護保険のサービスに関するトラブルとして、ケアプランの内容に関するトラブルというのは決して少なくありません。【参考リンク】・地域包括支援センターの手引きについて | 厚生労働省()●ライター/yoshi
2016年03月09日こんにちは。医療カウンセラーのyoshiです。介護保険制度というのは社会的にも定着してきている現代ですが、「そもそも介護保険制度って何なのか」ということがよくわからない人もいると思います。高齢者が増えてきている日本においては、 非常に重要な制度であることは理解しておくといいでしょう。介護保険制度を理解していく上で重要になるのが、“保険者 ”“被保険者 ”“制度を利用したサービス ”になります。保険者は、主に国や市町村と考えておいて問題はありません。被保険者は、第1号保険者(65歳以上の人)、第2号保険者(40歳以上65歳未満の医療保険加入者)になります。制度を利用したサービスというのは、特定の介護施設や介護サービスなどになります。被保険者と保険者の関係は、被保険者から保険者に向けての保険料の支払いや介護保険の申請になり、保険者から被保険者に向けて保険証の交付や申請に対する認定ということになります。被保険者と制度を利用したサービスの関係は、サービスの提供と利用料の支払いになります。そして保険者と制度を利用したサービスの関係性は、保険者から介護報酬の支払いを受けるという関係になります。この3つの関係が成り立つことで、介護保険制度は社会的に機能していることになります。●介護保険制度の複雑な面は“制度によるサービス”が影響介護保険制度を利用していく場合、被保険者と保険者の関係というのはわかりやすいことが多いのですが、“制度によるサービス”に対して理解が難しくなってしまうことがあります。それは、“制度によるサービス”に関する施設やサービスが多種多様にあり、似たような名前になってしまっていることが多いからです。これを理解していくためには、ある程度、専門的な知識が必要になります。“制度によるサービス”で迷ってしまった場合、頼りになるのがケアマネージャーであり、このケアマネージャーを探したいと思った場合、市区町村の窓口 に相談をするか、地域包括支援センター という場所に相談をすることになります。【参考リンク】・介護保険制度の概要 | 厚生労働省()●ライター/yoshi
2016年03月08日こんにちは。医療カウンセラーのyoshiです。今回は介護保険の保険料について紹介をしていきます。介護保険は制度的にも知名度的にも大変有名になりました。介護保険を利用することで、通常負担しなければいけない費用を、1割負担にすることができるなど、大きなメリットがあります。しかし、意外と関心を持たれることが少ない部分として、保険料があります。保険料はどのようなものになっているのか、介護保険はどのような財源になっているのかということを知っておく必要はあります。●介護保険の財源介護保険は、国、都道府県、市区町村などの負担が50%、保険者による保険料が50%を占めることになります。そのため、直接保険料として意識をするのは、保険者による保険料50% になります。保険者には、第1号保険者と、第2号保険者がおり、それぞれ条件や保険料が異なります。非常に分かりやすく言ってしまうと、第1号保険者は65歳以上の人が対象になり、保険料は所得や年金の受給額によって変わってきます。第2号保険者は、40歳以上65歳未満の人で、特定の疾患などを抱えている人が対象になります。第2号保険者の場合、国民健康保険による保険料の支払い、または医療保険ごとによって決められた、利率と給与などによって額が決まってきます。●保険料は住んでいる市町村によって変わってくるため確認が必須保険料というのは、所得などが絡んでくるため、支払う金額は人によって変わってきます。また、市町村などの規定の影響も受けることになるため、できれば無関心でいるよりもしっかりと保険料を把握しておいたほうが良いです。第1号保険者の場合、年金の受給額が一定以下である場合、自分で市役所のほうに納めていく必要が出てきます(通常は自動的に差し引かれることがほとんどです)。自分で納める場合に、金額について疑問を感じた場合、市役所などに確認を取ってみると良いでしょう 。保険料についての詳細を知ることができるはずです。【参考リンク】・「介護保険」の基礎知識 | 知るぽると(金融広報中央委員会)()●ライター/yoshi
2016年03月05日こんにちは。医療カウンセラーのyoshiです。介護用品を利用しようと思い、情報を集めたものの、いざ利用しようとしたときに、誰かに相談をしたいと思うことはないでしょうか。そのときに、誰に相談をすれば良いのかというのが、いまいちよく分からないものです。介護用品の情報は見つけられても、相談についての情報が見つからない場合はあるものです。●まずはリハビリの専門職に介護用品について相談する場合、介護保険を利用していればケアマネージャーを通せば良いのですが、利用していない場合、リハビリの専門職に相談をしてみましょう。リハビリ科のある病院 などであれば、受付をしていることもあります。また、より気軽に相談できる場所としては、“福祉機器展示コーナー”があります。地域の展示コーナーなどを利用すれば、介護用品についての相談を受け付けてくれる場合や、そこから専門機関につなげていくことができる場合もあります。また展示コーナーということで、どのような福祉機器があるのかを知ることができるので、用具に対する理解を深めることもできます。●より手軽に相談をしていきたい場合より手軽に、確実に相談をしていきたい場合、介護用品を扱っている、レンタルなどを行っている会社に相談をする方法があります。レンタル業などを行っている会社であれば、ほぼ必ず相談も受けつけているものです。ただ、この際、多種多様な会社があるため、どの会社を利用していくのかをよく検討していく必要はあります。・身体機能 などを考慮して、用具を選んでいきたい場合には「リハビリ職への相談」・どのような用具 があるのかを知りつつ気軽に相談をしたい場合には「福祉機器展示コーナー」・レンタルや、介護保険 を利用していきたいと思っている場合には「介護用品を扱っている会社」を選択していくと良いでしょう。上記のどこか1つで相談することで、他の2つと効率よくつながっていくこともあるため、一番相談したいことは何であるのかを考えて、相談をすると良いです。【参考リンク】・はじめての福祉機器の選び方・使い方 | 保健福祉広報協会()●ライター/yoshi
2016年03月04日