こんにちは。子育て支援を専門にする臨床心理士の今井千鶴子です。子育て相談の中でたびたび話題となるトピックがあります。それは、“共感する心はどうやったら育つか?”というものです。そこで今回は、“共感性の育て方”について考えてみます。●共感とは何かはじめに少し専門的な話になりますが、実は、共感はさまざまな心理的な要素が集まっている心の働き だといわれています。それらの要素は、大きく分けると「認知的側面」と「感情的側面」です。ここでいう認知的側面とは、相手の立場に立ってモノを見たらどのように見えるかを分析・理解することを指します。そして感情的側面とは、他者が感じていることを自分自身の感覚のように感じることを指します。少し日常場面に置き換えて考えてみると、“注射を嫌がり泣き叫ぶ子ども”がいた場合、それを見て「怖い気持ちでいるんだろうな」というのが認知的側面であり、「自分自身も自然とつらい気持ちになる」というのが感情的側面だといえます。●共感の必要性これまでの研究から、共感の高い子どもほど他児への“援助行動”を行いやすいことがわかっています。また共感は、“道徳性”を高めたり、“攻撃性”をコントロールしたりすることも知られています。これらの知見が得られた理由としては、物事を相手の視点から捉えたり、他者の思いを自分のことのように感じたりする共感力があれば、相手を助けたいという気持ちになったり、自分がされて嫌なことを他者にしようとは思わなかったりするからだと考えられます。こうした背景からも、子どもの共感を育てることはとても重要視されています。ただし、共感の能力が強すぎると、人の感情や思いに振り回されてしまい 、自分らしく行動できないことも指摘されています。●共感力を育てるためにママができること共感に関する心の働きを可能にする土台には、“相手が見ているモノを相手の視点で見る”という物理的な視点から、“相手の気持ちに立って考える”という心理的な視点を自分に取り入れる“視点取得(してんしゅとく)”が重要になります。なぜなら、視点取得がうまく働かないと、自分の視点だけで考えてしまい、人が感じていることをうまく感じとれず、自己中心的な状態になってしまう恐れ があるからです。ですから、はじめはお子さんに「ママの目から見ると何が見えるかな?」という物理的な視点の移動(取得)を促し、その後は「ママは今、どんなことを考えているかわかるかな?」といった心理的な視点を取り入れていきましょう。特に、相手の立場からモノを見ることが少し苦手なお子さんには、相手の気持ちに立って考えることを促すことが大切です。たとえば、もし、お友達のおもちゃを奪い取ってしまったときには、まずは「ママが○○ちゃん(自分の子どもの名前)のおもちゃを急に取っちゃったら、どんな気持ちがする?」とその子の気持ちを確かめます。もし「嫌な気持ち」と返ってきたら、「お友達も同じ気持ちだったんじゃないかな?」とお友達の気持ちに気づける具体的な関わりをします。相手の立場からモノを見ることが苦手なお子さんにとっては、視点取得はたやすいことではありませんが、ひとつひとつの状況において丁寧かつ具体的にサポートしていくことで、“相手の立場に立って考える”という視点が少しずつ促されていくと思います。また、普段の遊びでも視点取得は鍛えられていきます。その代表的な遊びが“ごっこ遊び” です。ごっこ遊びでは、「ママはこう言うだろうな」「お姉ちゃんはこうするだろうな」など相手の視点に立つことが求められるからです。一方、ブルース・D・ペリーの『子どもの共感力を育てる』では、共感を育てる方法として“本の読み聞かせ”も有効だと言われています。ペリー(2012)は読み聞かせについて、『読者は登場人物の立場に身を置き、登場人物がうまくやればわがことのように喜び、その苦しみをわがことのように感じる』と述べています。これらのことは、私自身の子育て経験や子育て支援の現場からも感じます。多くの子どもは、楽しい物語のときは楽しそうに、悲しい物語のときには悲しそうに、登場人物の経験を自分と重ねあわせているように見えます。ペリー(2012)が言うように、“読書はまさに共感の練習”です。ただ一つママに知っておいてほしいことは、共感力が強いお子さんほど、登場人物の感情に巻き込まれてしまう傾向があるということです。ですから、悲しい物語などを題材に使うときは、お子さんの様子に十分配慮しながら 本を選んでいくことが大切です。また、就寝前は明るい気持ちでお子さんが眠れるように本を選んでいけたらいいですね。さらに、物語の主人公と現実世界の自分とは“別の人間”だということもしっかりと理解させるとよいでしょう。----------いかがでしたか?今回は“共感性の育て方”について考えてみました。お子さんの健やかな成長を心より応援しています!【参考文献】・『子どもの共感力を育てる』ブルース・D・ペリー、マイア・サラヴィッツ(著)●ライター/今井千鶴子(臨床心理士)●モデル/椎葉咲子(苺乃ちゃん、胡桃ちゃん)
2017年08月08日障害者総合支援法の自立支援給付とは?出典 : 障害者総合支援法が定めるサービスには、大きく「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2つの種類があります。自立支援給付は、利用するサービス費用の一部を行政が障害のある方へ個別に給付するものです。具体的には、障害に関する医療や福祉サービス、福祉用具(補装具)などの費用が給付されます。自立支援給付の基本的な運用ルールは、国(厚生労働省)が定めます。これに対し、地域生活支援事業は、国が一律に運用ルールを定めるのではなく、障害のある方がお住まいの各地域で運用ルールを定めて実施した方が実情に応じた対応を期待できる事業や、一般的な相談対応のように個別の給付には当たらない事業をまとめたものです。例えば1人では外出が困難な方への付き添いを提供する「移動支援」や、手話通訳者や要約筆談ができる人を派遣・設置する「コミュニケーション支援」といった事業が挙げられます。詳しい法律の概要やサービスの内容などは次のリンクを参考にしてください。この記事では、自立支援給付の利用申請方法・利用負担額を詳しく解説していきます。障害者総合支援法の給付サービスの申請方法出典 : 自立支援給付の利用手続きはサービスごとに申請方法が異なります。それぞれの申請方法を詳しくご紹介します。障害福祉サービスには「介護給付」と「訓練等給付」の2種類があり、それぞれ申請の流れが多少異なります。介護給付を希望する場合は障害のある方の生活環境を踏まえ、どのような支援をどの程度必要とするかといった度合いを測る「障害支援区分(以下、支援区分)認定」を受けることが必要になります。訓練等給付を希望する場合には原則として支援区分の認定は不要ですが、共同生活援助(グループホーム)を利用する場合には、支援区分認定が必要となります。支援区分は、7段階の区分に分かれ、もっとも支援の必要性が高い区分が「6」、以下「5・4・3・2・1」と続き、もっとも支援の必要性が低い場合は「非該当」となります。支援区分は7段階の区分に分かれ、もっとも支援の必要性が高い区分が「6」、以下「5・4・3・2・1」と続き、もっとも支援の必要性が低い場合は「非該当」となります。この支援の必要性の区分によって、支給されるサービスの時間に違いが出てきます。一部のサービスは支援区分が低いと利用できないこともあります。以下が申請からサービス利用までの流れです。1. 市区町村の障害福祉担当窓口へ申請申請の際には、状況に応じて障害者基礎年金1級の受給の有無や介護保険申請の状況などを聞かれる場合があります。2. 障害者支援区分認定調査市区町村の認定調査員による面接が行われ、全国共通の質問票から心身の状況に関する80項目と状況の調査が行われます。詳しくは次のリンクをご覧ください。参考:障害者総合支援法における「障害支援区分」の概要|厚生労働省3.一次判定認定調査の結果に基づき、コンピューター判定が行われます。4.二次判定一次判定の結果と状況調査、医師意見書などを踏まえ、市区町村が主催する、支援区分や特別な支給決定(必要とするサービス量が基準よりも多い支給決定など)を審議する「審査会」で二次判定が行われます。医師意見書とは、医師が申請した方の心身の状態、特別な医療などに意見を付すものです(市区町村が依頼します)。5.障害区分認定二次判定の結果に基づき、非該当、区分1~6の全7段階で支援区分認定が行われます。各サービスの区分ごとのサービス量は上記のリンクを参考にしてみてください。6.サービス利用意向の聴取・サービス等利用計画案の提出支援区分の認定と並行して、市区町村から福祉サービスの利用等に関する計画(サービス等利用計画、または障害児支援利用計画と呼びます)の案を提出するように求められます。サービス等利用計画案、障害児支援利用計画案は市区両村から指定された特定相談支援事業者、障害児相談支援事業所が作成しますが、申請者自身による作成も可能です(申請した方自身が作成する計画をセルフプランと呼びます)。7.支給決定支援区分や本人の状況、家族・家庭の状況、現在の困りごとや将来に向けた希望、福祉サービスの利用意向、サービス等利用計画案などを踏まえてサービスが支給決定され、受給者証が申請者に通知されます。8.サービス担当者会議申請した方が利用する全サービスの担当者(サービス管理責任者)が出席し、利用する方に適したサービス提供のあり方や、事業所ごとに作成する「個別支援計画」の方向性などについて話し合われます。9.支給決定時のサービス等利用計画の作成市区町村の支給決定やサービス担当者会議での案協議をもとに、最終的なサービス等利用計画を作成します。(セルフプランの場合には、8・9が省略されることがあります)10.サービスの利用開始申請した方はサービスを提供する事業所と利用契約を結び、サービスの利用を開始します。サービスの量や内容については、サービス利用開始後であっても必要に応じて見直すことができます。Upload By 発達障害のキホン自立支援医療には、育成医療・更生医療・精神通院医療があります。育成医療は身体障害のある子ども向け、更生医療は身体障害のある方向け、精神通院医療は精神疾患があって定期的に通院している方向けに、医療の給付を行うものです。利用手続きに関しては市区町村ごとに異なるため、最寄りの市区町村または都道府県窓口に問い合わせてください。申請の際には下記のような事項や持ち物が必要になります。育成医療: 申請書、所得が確認できる書類、医師の意見書など更生医療: 身体障害者手帳精神通院医療: 指定医療機関の中から通院先を決めておくこと車いすや義足、補聴器や白杖などの補装具を製作・修理する際に要する費用の給付を「補装具費」と呼びます。補装具費の給付を受けるためには、障害のある子どもの保護者または障害のある本人が、お住まいの市区町村に申請します。市区町村は医師の意見書による身体障害者更生相談所の判定・意見を依頼し、補装具の製作や修理が必要かどうか決定し、給付が認められると補装具費支給決定通知書、補装具費支給券が発行されます。その後、補装具業者と製作・修理の契約を結び、完成品を受け取るとともに利用者負担(原則1割負担)を支払うことになります。障害者総合支援法の自立支援給付、利用者負担額はいくら?出典 : 障害者総合支援法の障害福祉サービスを利用した際の利用者負担は、原則として「1割」です。ただし、世帯ごとの前年度所得に応じて負担額の月額上限が定められているため、その金額以上の自己負担は生じないことになっています。利用月額が0円に免除される場合もあります。特に、生活保護を受けている世帯や住民税が非課税の世帯については、利用者負担はありません。世帯の範囲には、障害がある大人の場合は利用する本人と配偶者が含まれ、本人と配偶者の前年度所得を参考に負担額を決定します。親の所得は本人の前年度所得には換算されないことになっています。障害がある子どもの場合は、保護者の属する住民基本台帳での世帯が範囲となります。月額上限負担額の目安として、下記を参考にしてみてください。■障害者の利用者負担・生活保護受給世帯・・・0円・市区町村民税非課税世帯・・・0円・前年度所得約300万円以上~約600万円以下の方・・・9,300円・前年度所得約600万円以上・・・37,200円以上が障害のある方に提供している障害福祉サービスの利用者負担額になります。ただし、サービス事業所やグループホームなどで発生する食費、光熱費、交通費などの生活費などは別途に自己負担となります。出典:障害者の利用者負担|厚生労働省出典:障害福祉サービスの利用について|厚生労働省自立支援医療の場合には、下記の条件に当てはまる方であれば、0円~20000円までの月額負担上限となります。下記の条件に当てはまらない場合は原則1割負担となっています。また、入院時の食事療養費又は生活療養費(いずれも標準負担額相当)については原則自己負担になります。・生活保護世帯・・・0円・市町村民税非課税世帯で本人収入が80万円未満・・・2500円・市町村民税非課税世帯で本人収入が80万円以上・・・5000円・市町村民税を33000円以上納めている・・・育成医療の経過措置5000円・市町村民税を33000円未満から23.5万円以下納めている・・・育成医療の経過措置10000円・市町村民税を23.5万円未満以上納めている高額治療継続者・・・20000円自立支援医療における利用者負担の基本的な枠組み補装具費の利用者負担額は原則1割です。ただし世帯の所得に応じて負担上限額が設定されています。・生活保護世帯・市町村民税非課税世帯・・・0円・それ以外の世帯・・・37,200円また、補装具費については障害者本人または世帯が一定所得以上(市町村民税所得割の最多納税者の納税額が46万以上)の場合、給付対象外となります。また、例えば補装具を購入すると世帯の所得状況によっては生活保護の対象になってしまう場合があります。それでは本末転倒ですので、その場合は利用者が負担する費用は生活保護の対象とならない範囲まで減免することになっています。出典:補装具の利用者負担|厚生労働省障害者総合支援法が定める、医療費や食費の免除・減免制度出典 : 障害者総合支援法では条件を満たした方に向けて、生活費や医療費など別途利用料金を超えてかかった費用を免除する制度があります。■障害のある人向けの費用免除と上限・療養介護を利用する場合は、医療費と食費の軽減措置があります・入所サービス、通所サービスを利用する場合、食費・光熱費実費負担に対して減免・軽減する制度があります・グループホームの利用者向けに家賃助成する制度があります■世帯での合算額が基準額を超える場合の高額障害福祉サービス給付費同一世帯に障害福祉サービスを利用する方が複数いる場合や障害児が障害者総合支援法と児童福祉法のサービスを利用している場合などに利用者負担の合計額が一定の額を超えるとき、高額障害福祉サービス給付費が支給され利用者負担額が軽減されます。費用免除や上限、高額障害福祉サービス費についての詳しい内容は次の資料を参考にしてみてください。障害福祉サービスの利用について|厚生労働省まとめ出典 : 障害者総合支援法の給付支援における申請方法は、サービスごとに異なります。また障害福祉サービスの中でも介護給付、訓練等給付によって異なるため、複雑に捉えがちです。とはいえ、ほとんどのサービスは市区町村の障害福祉担当窓口で所定の書類への記入や提出を行えば、その後はある程度まで役所がリードしてくれますから、大まかな仕組みを把握していれば問題ないでしょう。また利用者負担額についても、給付を受ける人や世帯の収入に応じて市区町村が設定しますので、細かいルールまで把握する必要はありません。実際の運用ルールは複雑な総合支援ですが、手続きなどで迷ったらお住まいの市区町村の障害福祉担当課や市区町村から委託されている基幹相談支援センターや委託相談支援事業所へ相談してみましょう。
2017年08月04日障害者総合支援法とは?出典 : 障害者総合支援法とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」の通称で、障害がある方もない方も住み慣れた地域で生活するために、日常生活や社会生活の総合的な支援を目的とした法律です。障害がある子どもから大人を対象に、必要と認められた費用の給付や貸与などの支援を受けることができます。制度の実施主体は市区町村、都道府県などの行政機関となります。参考:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律障害者総合支援法が定めるサービスには、大きく「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2つの種類があります。自立支援給付は、利用するサービス費用の一部を行政が障害のある方へ個別に給付するものです。具体的には障害に関する医療や福祉サービス、福祉用具(補装具)などの費用が給付されます。自立支援給付の基本的な運用ルールは、国(厚生労働省)が定めます。これに対し、地域生活支援事業は、国が一律に運用ルールを定めるのではなく、障害のある方がお住まいの各地域で運用ルールを定めて実施した方が実情に応じた対応を期待できる事業や、一般的な相談対応のように個別の給付には当たらない事業のことをまとめたものです。例えば1人では外出が困難な方への付き添いを提供する「移動支援」や、手話通訳者や要約筆談ができる人を派遣・設置する「コミュニケーション支援」といった事業が挙げられます。また、障害のある方の日中活動を支援する「地域活動支援センター」や、生活自立度が高い人へ住まいの場を提供する「福祉ホーム」などの運営も、地域生活支援事業の枠組みに含まれています。障害のある方の生活スタイルは地域によってさまざまですので、地域生活支援事業のサービス内容も都道府県・市区町村によって異なります。地域生活支援事業には、相談支援も含まれます。お住まいの地域で提供されているサービスにどんなものがあるのか?給付支援を受けたいけれど条件は満たしているのか?などといった福祉サービスの利用に関することから、一般的な生活上の相談まで、さまざまな相談に応えます。障害福祉サービスの 利用について|全国社会福祉協議会障害者総合支援法に基づくサービスの利用対象は以下のように定められています。障害者手帳がなくても、医師の診断書により障害や定められた疾患のあることが確認されれば、利用対象となるケースもあります。・身体障害者・・・身体に障害がある18歳以上の人で、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けている人・知的障害者・・・障害者福祉法にいう知的障害者のうち18歳以上の人・精神障害者・・・統合失調症、精神作用物質による急性中毒、またはその依存症、知的障害、精神病室などの精神疾患を持つ人(知的障害は除く)・発達障害者・・・発達障害があるため、日常生活や社会生活に制限がある18歳以上の人・難病患者・・・難病等があり、症状の変化などにより身体障害者手帳を取得できないが、一定の障害がある18歳以上の人・障害児・・・身体障害、知的障害、発達障害を含んだ精神障害がある児童、または難病等があり、一定の障害がある児童参考文献:遠山真世,二本柳覚,鈴木裕介/著『これならわかるすっきり図解障害者総合支援法』2014年 日経印刷/刊障害者総合支援法の自立支援給付で受けられる3つの給付サービス出典 : 自立支援給付には大きく障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)、自立支援医療、補装具という3つの給付があります。障害福祉サービスはさらに「介護給付」と「訓練等給付」の2類型へ分類されます。介護給付とは、障害があることで必要となる介護・介助サービス費用の一部を給付するものです。訓練等給付とは、就労に向けた訓練や福祉的な就労、安定した就労を支援するサービス、あるいはグループホームなど費用の一部を給付するものです。■介護給付・居宅介護(ホームヘルパー):食事や入浴、トイレなどの介助を提供します。・重度訪問介護:重度の肢体不自由や重度の障害のために常時の介護や見守り、外出支援などを必要とする方に、長時間の総合的な支援を提供します。・同行援護:視覚障害により自力での移動が難しい方に対して外出時の支援を提供します。・行動援護:行動障害があることで外出時などの支援が必要な方に対して、危険を避ける、先の見通しを立てる、コミュニケーションを仲立ちするなどの支援を提供します。・重度障害者等包括支援:最重度の障害(原則として障害支援区分が最重度の「6」であること)があり、常時の介護を必要としている方に対して、居宅介護や短期入所、生活介護など複数の介護サービスを組み合わせて提供します。・短期入所(ショートステイ): 障害のある方を介護している家族などの病気や所要、一時的な休養などのため、短期間、施設に入所するサービスを提供します。・療養介護:医療的ケアと介護を常に必要とする方に対して、医療機関などで医療サービスや介護、介助などをトータルに提供します。・生活介護: 日常的な介護や見守り、生活支援などを必要としている方(原則として障害支援区分「3」以上であること)に対して、日中の介護、介助や見守り支援を行うほか、創作的活動や生産活動、地域との交流活動などを提供します。・施設入所支援:重度の障害のある方(原則として障害区分「4」以上であること)に対して、施設内での夜間の介護、介助や見守り支援などを提供します。■訓練等給付・自立訓練: 障害のある方が地域で自立した生活を送ることができるよう、身体機能と生活能力の向上を目指した訓練を提供します。自立訓練には機能訓練と生活訓練の2種類があります。・就労移行支援: 一般企業での就労や、自ら企業することを希望する方に対して、就労や企業に必要な知識・能力の向上を図る訓練を提供しています。・就労継続支援: 一般企業などで働くことが難しい方に対して、福祉的な支援を受けながら働く場所を提供し、就労に向けた知識・能力の向上を目指す支援を提供します。就労継続支援には、雇用契約を結び最低賃金の支払いを原則とする「A型」と、雇用契約は結ばずに軽作業などを中心とする「B型」の2種類があります。・共同生活援助(グループホーム):標準的には5名程度(最大でも10名)の共同生活を行う住居において、相談や日常生活上の援助、食事や入浴、トイレなどの介護サービスを提供します。グループホームから一般住宅の生活に移行を目指す人を対象とした「サテライト型」もあります。自立支援医療とは、心身の障害の状態に対応した医療に対して、医療費の自己負担額を軽減する医療費の公費負担制度です。障害者自立支援法の成立以前はそれぞれ身体障害者福祉法に基づく「更生医療」、児童福祉法に基づく「育成医療」、精神保健福祉法に基づく「精神通院医療費公費負担制度(32条)」と、各個別の法律で規定されていました。これらを一元化した新しい制度として自立支援医療制度が創設されました。よって根拠となる法律はそれぞれの法律におきながらも、障害者総合支援法のもとで給付が行われるようになりました。給付には市区町村等で自立支援医療費支給の認定(支給認定)を受ける必要があります。・育成医療:身体障害のある子どもを対象に、障害を改善、軽減することで生活の能力を得ることが期待される治療に対して医療費の自己負担を軽減するものです。・更生医療:身体障害者を対象に、障害を改善、軽減することで生活の改善が期待される治療に対して医療費の自己負担を軽減するものです。・精神通院医療:精神疾患(てんかんを含む)の人を対象に、精神科の通院医療にかかる医療費の自己負担を軽減するものです。日常生活を円滑に送るために、身体の欠損や障害を負った身体機能を補完・代替する車いすや装具、義肢や補聴器、白杖などの用具に対して、補装具費(原則として、購入・修理費用の1割)を支給するものです。障害者総合支援法の地域生活支援事業は地域の実情に応じた支援を提供出典 : 地域生活支援事業は都道府県や市区町村が地域の実情に応じてさまざまなサービスや事業を実施するものです。住民に身近な市区町村で実施する地域生活支援事業には、外出時の付き添いを行う「移動支援」や、福祉用具を給付、貸与する「日常生活用具」、手話通訳や要約筆記を派遣する「意思疎通支援」、判断力が十分ではない人が成年後見人制度を利用しやすくするための「成年後見人支援事業」などがあります。地域生活支援事業には市区町村が主体の事業と都道府県が主体の事業があり、都道府県は人材育成や都道府県内の広域な事業を担うことになっています。Upload By 発達障害のキホン■市区町村事業・障害に対する理解促進・啓発・障害のある方や家族が自発的に行う活動の支援・相談支援事業・補助を受けなければ成年後見制度の利用が困難である方への費用助成・手話通訳者、要約筆談者などの派遣・設置・日常生活具の給付または貸付・手話奉仕員養成研修・移動支援事業・地域活動支援センターの設置・運営・福祉ホームの設置・運営・その他の日常生活又は社会生活支援など■都道府県事業発達障害や重症心身障害、高次脳機能障害など、支援に際して高い専門性や広域性が必要とされる障害について、相談に応じ、必要な情報提供を行っています。また手話通訳士や要約筆記者などの意思疎通ができる人材の育成を行っています。障害者総合支援法の相談支援事業は、困った時の強い味方出典 : 障害者総合支援法の下では、さまざまなサービスを組み合わせて支援プランをつくることができます。しかし、実際に利用するとなると、どのようなサービスがあって、自分はどれを受けられるのか、分からない点や不安な点が出てくると思います。その場合は、市区町村の障害福祉担当窓口や市区町村から委託された基幹相談支援センター、市区町村から指定を受けた特定相談支援事業所で相談支援を受けることができます。■基本相談支援障害がある方の福祉に関するさまざまな問題について、障害のある方や家族からの相談に応じ、必要な情報の提供、障害福祉サービスの利用のアドバイスなどを行うほか、成年後見人制度の利用など権利擁護のために必要な援助も行います。窓口は市区町村や市区町村から委託された基幹相談支援センター、市区町村から指定を受けた特定相談支援事業所になります。■計画相談支援・サービス利用支援障害福祉サービスなど申請を行う際に、障害のある方や家族から生活上の困りごとや将来の希望などをうかがい、サービス等利用計画の作成を行います。また福祉サービスを利用する際には、サービス事業者などと連絡調整を行います。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された指定特定相談支援事業者になります。・継続サービス利用支援支給決定されたサービスの利用状況の検証や生活上の状況確認(モニタリング)を行うとともに、サービス事業者などとの連絡調整を行い、必要に応じてサービス等利用計画の見直しをします。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された特定相談支援事業者になります。■地域相談支援・地域移行支援障害者支援施設等に入所している障害がある方や精神科病院に入院している精神障害のある方(原則として1年以上入院している方で、市区町村が必要と認める方)を対象に、地域生活へ移行するための支援計画の作成、生活環境が変わることへの不安の解消、外出への同行支援、住居確保、関係機関との調整などを行います。相談窓口は都道府県から指定された一般相談支援事業者になります。・地域定着支援居宅において単身で生活している障害のある方など、地域における安定した暮らしの実現に支援を必要とする方を対象に、常時の連絡体制の確保と、緊急時の対応などの支援を行います。相談窓口は都道府県から指定された一般相談支援事業者になります。■障害児相談支援障害児相談支援は児童福祉法を根拠に障害者総合支援法で実施しているサービスです。・障害児支援利用援助障害のある子どもが利用する障害児通所支援の申請を行う際に、障害児支援利用計画の作成を行います。また福祉サービスを利用する際には、サービス事業者などと連絡調整を行います。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された障害児相談支援事業者になります。・継続障害児支援利用援助支援決定されたサービスの利用状況の検証や生活上の状況確認(モニタリング)を行い、サービス事業者などとの連絡調整などを行い、必要に応じて障害児支援利用計画の見直しをします。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された障害児相談支援事業者になります。以上のように障害者総合支援法では、さまざまな相談に応えることができるよう体制を整えています。しかし、指定一般相談支援事業者、指定特定相談支援事業者、指定障害児相談支援事業者と言われても、どこに行って相談すれば良いのか、少々分かりにくいかもしれません。お住まいの市区町村のホームページなどで情報を得たり、または市区町村の障害福祉担当窓口や発達障害者支援センターなどへ問い合わせたりするとよいでしょう。障害がある子ども向けサービスは、児童福祉法で提供されます出典 : 障害のある子ども向けの各種福祉サービスは、児童福祉法に基いて提供されています。これは、平成24年の児童福祉法改正にあわせ、障害があっても「子ども」である以上は児童福祉の枠組みで支援すべきである、という理念を取り入れ、障害児だけが対象の福祉サービスを児童福祉法へ一元化したことによるものです。そのため、障害のある子どもについては、児童期に限定した福祉サービスは児童福祉法、児童も成人も対象となる福祉サービスは総合支援法が適用法令となります。もちろん、利用申請をして支援決定を受ければ、同時に両方のサービスを受けることができます。児童福祉法は子どもの支援に関する法律です。この法律における障害児福祉サービスの対象は障害のある18歳未満の子どもと定義されており、サービスは障害児通所支援と障害児入所支援の2つに分けることができます。支給決定の主体は、障害児通所支援が市区町村、障害児入所支援が都道府県となります。また、児童福祉法における「障害児」の規定には特に障害者手帳の所持が条件となっていないため、サービスの利用に当たり、手帳の有無は問われません。ただし、医師の診断書により障害があることを確認するケースはあります。■障害児通所支援障害児通所支援とは施設や事業所に通所して、日常生活や集団生活を送るために必要な能力を身につける支援を提供するサービスです。児童発達支援、医療型児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援の4種類があります。Upload By 発達障害のキホン詳しくは以下の記事、「障害児通所支援(児童発達支援・放課後等デイサービス)利用手順・施設選びのポイント・申し込み方法まとめ」を参考にしてみてください。■障害児入所支援障害児入所支援とは、療育などの必要性が認められた障害のある子どもを施設に入所させ、自立した生活を送ることができるよう支援するサービスです。障害のある子どもが入所できる施設は全国的にも限られているため、障害児入所支援については都道府県や大規模な政令指定都市などが所管する児童相談所が支給決定しています。障害児入所施設は医療機関を併設しているかどうかによって福祉型障害児入所施設と医療型障害児入所施設の2種類に分類されます。Upload By 発達障害のキホン障害児通所・入所支援を利用するには、通所受給者証または入所受給者証の交付を受ける必要があります。通所受給者証はお住まいの市区町村の福祉担当窓口・障害児相談支援事業所などに申請を行い、サービスの利用が認められ、支給決定を受けると取得できます。入所受給者証は各都道府県や政令指定都市などの児童相談所に申請し、サービスの利用が認められ、支給決定を受けると取得できます。それぞれ、受給者証が交付されたら、指定障害児通所事業所・入所施設などとサービスの利用契約を結ぶことができます。自治体ごとに申請方法が異なりますので、お住まいの地域に確認しましょう。詳しくは以下の記事、「【障害児通所・入所給付費】受給者証の取得方法、体験談まとめ」を参考にしてみてください。まとめ出典 : 障害者総合支援法では一人ひとりの障害特性や生活環境などを考慮しながら、本人に合ったサービスを提供しています。また平成30年に施行される法改正によって、よりきめ細やかなサービスの提供を図るため、障害福祉サービスを取り巻くさまざまな関係者との連携やサービスの質の向上、サービス内容の情報開示などの努力がなされます。以前と比べれば自分に合ったさまざまな支援を受けられるようになり、サービスが充実していけば家族の負担も少しずつ減ってくるでしょう。障害福祉サービスを取り巻く環境は着実に良い方向へと変化しているのではないでしょうか。また、障害のある子どもに関しては、障害者総合支援法だけでなく児童福祉法に基づくサービスなども並行して利用できます。さまざまな支援サービスを組み合わせるなど工夫し、上手に使うことで障害がある方とその家族の地域生活が充実していくことを期待したいところです。
2017年08月04日障害者総合支援法とは出典 : 障害者総合支援法とは、障害のある方もない方も住み慣れた地域で生活するために、日常生活や社会生活の総合的な支援を目的とした法律です。正式名称は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」ですが、略して「障害者総合支援法」と呼ばれています。この法律に基づき、障害のある子どもから大人を対象に、必要と認められた福祉サービスや福祉用具の給付や支援を受けることができます。実施主体は主に市区町村、都道府県などの地方公共団体です。障害者総合支援法の概要|厚生労働省障害者総合支援法ができたわけ出典 : 障害者総合支援法が施行されるまでには、障害のある人が利用する福祉サービスの利用方法や負担額の決定方法を改正・改善してきた歴史があります。2003年3月まで、障害のある人が利用する福祉サービスの利用内容や利用できる量はすべて行政(都道府県や市区町村)が決定していました。これを措置制度といいます。しかし障害のある人の暮らしぶりを何から何まで行政が決定する仕組みには批判も多くありました。2000年には、高齢者が利用する福祉サービスについては原則として措置制度をやめて「介護保険制度」へ移行したことも受けて、支援費制度が導入されました。これは市区町村から福祉サービスの支給決定を受けた障害のある人が、サービスを提供する事業所を選択し、事業所との契約によって福祉サービスを利用する仕組み(利用契約制度)を取り入れており、大変に画期的なものでした。しかし、支援費制度の導入によりサービスの利用者が増加したこともあり、財源の確保が困難になったほか、地域ごとのサービス提供格差や障害種別(身体障害、知的障害、精神障害)間の格差が生じる問題が発生しました。(支援費制度は精神障害が対象外でした。)これらの問題を解決するために、、2005(平成17)年11月に「障害者自立支援法」が公布されました。しかし法律の理念がないことや、サービスの必要性を図る基準(障害程度区分)が障害特性を十分に反映していないなど、施行当初から問題が指摘されていました。特にそれまでは障害年金が収入の中心であれば自己負担なしだったところ、自立支援法では、サービス利用者に原則として1割の自己負担を設定しました。そのため、収入よりも自己負担額の方が多くなる人も出てしまい、サービスの利用を減らしたり控えたりするケースも発生しました。そこで2010年には自立支援法を改正し、1割の自己負担額を改め、以前のように利用者の収入に見合った自己負担(障害年金が収入の中心であれば自己負担なし)の設定となりました。さらにその後2013年には、「共生社会の実現」や「可能な限り身近な地域で必要な支援を受けられる」といった法の基本理念を定め、福祉サービスを利用できる障害者の範囲を見直して、難病がある方も対象にするなどの改正が行われ、現在の「障害者総合支援法」が成立したのです。なお、障害者総合支援法については、法の施行後3年が経過した時点で内容を見直すことになっており、2016年にさらなる法改正がなされています。改正された障害者総合支援法は平成30年(2018年)4月から施行されることになっています。 NET独立行政法人 福祉医療機構「障害者福祉制度解説」障害者自立支援法から障害者総合支援法改正への改善点4つのポイント出典 : 障害者自立支援法から障害者総合支援法への法改正が行われたことで、いくつかの改善点がありました。今回はその中でも主なポイントを4つご紹介しながら、障害者総合支援法の概要をご紹介します。法改正前の自立支援法では基本理念は設けられていませんでした。法改正によって、障害のある人を権利の主体と位置づける基本理念を定めました。基本理念の設定により、住み慣れた場所で可能な限り必要な支援が受けられることや、社会参加の機会の確保、どこで誰と暮らすかを選べるなど、障害のある人が保障されるべき権利がより明確に打ち出されたほか、障害の有無によって分け隔てられることのない「共生社会」を目指す方向性が示されました。障害者総合支援法の福祉サービスは、こうした理念に基づいて実施されることとなります。第一条の二 障害者及び障害児が日常生活又は社会生活を営むための支援は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、全ての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられることにより社会参加の機会が確保されること及びどこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと並びに障害者及び障害児にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資することを旨として、総合的かつ計画的に行わなければならない。支援費制度から自立支援法、そして障害者総合支援法という法制度の変遷は、支援対象となる人が見直されてきた歴史でもあります。かつて支援費制度下では、精神障害のある人は支援の対象ではありませんでした。それが自立支援法の成立によって支援の対象となりましたが、今度は発達障害のある人の位置付けが不明確であることが課題となり、2010年の自立支援法改正で発達障害も支援の対象であることが明確化されました。総合支援法ではこれまで支援が行き届かなった難病等の疾患のある人についても、支援対象者として新たに加わることとなり、サービスを受けられる方の範囲が広がりました。平成29年4月時点で、対象となる疾病は358疾病が対象になっています。詳しくは次の厚生労働省のサイトを参考にしてみてください。障害者総合支援法対象疾病(難病等)の見直しについて|厚生労働省自立支援法では、福祉サービスの利用に際し、障害の程度を測る指標を導入して、サービスの給付決定をしていました。これを「障害程度区分」と呼びます。ただ、主に日常生活行為が「できる」か「できない」かに着目して障害の程度を測っており、例えば食事が自分でできる/できないかだったり、排泄が自分でできる/できないかだったりで、できる項目が多ければ障害の程度は軽く、できない項目が多ければ障害の程度は重いという考え方が基本となっていました。しかし、一口に障害といっても、その実情は一人ひとりさまざまです。日常生活の中でも、自分でできるけれど時間がかかったり、自発的に行えなかったり、症状の調子が悪い時にはできなくなるなど、条件付きで「できる」という方もいます。どの程度生活に支障があるかは人によって異なりますし、「できる」「できない」で障害の程度を判断することは難しいのです。そこで障害者総合支援法では障害程度区分を改めて「障害支援区分」とし、障害のある人それぞれの生活環境を踏まえ、どのような支援をどの程度必要とするかといった度合いを測ることになりました。コンピュータによる一次判定とかかりつけ医の意見書、市区町村の審査会による二次判定によって、障害支援区分を認定することになっています。支援区分は7段階の区分に分かれ、もっとも支援の必要性が高い区分が「6」、以下「5・4・3・2・1」と続き、もっとも支援の必要性が低い場合は「非該当」となります。この支援の必要性の区分によって、支給されるサービスの時間に違いが出てきます。一部のサービスは支援区分が低いと利用できないことがあります。重度訪問介護とは、日常生活上で常に介護を必要とする方に対して、ヘルパーを長時間(最大で24時間)派遣し、訪問介護や身体的な介護や家事の援助、外出の付き添いや生活を送る上での相談や助言などを行う支援です。従来は身体障害者のなかでも重度の肢体不自由者のみが対象でしたが、その他の障害がある方でも提供されるようになりました。具体的には、重度の肢体不自由・知的障害・精神障害により重度の行動障害がある人(行動援護サービスに該当する程度の人)で、障害支援区分が「4」以上の人です。これにより、行動障害がある人も重度訪問介護を活用して一人暮らしするという選択肢が増えたといえます。障害者総合支援法の2本柱は、自立支援給付と地域生活支援事業障害者総合支援法のサービスは、大きく自立支援給付と地域生活支援事業の2種類があります。どちらも市区町村または都道府県が実施主体となっていますが、位置付けには違いがあります。自立支援給付は、国がサービスの類型や運用ルールを定めるもので、障害のある人が福祉サービスを利用した際に、行政が費用の一部を負担するものです。法律上は全体費用の「9割」を給付しますが、住民税が非課税の世帯であれば全額(10割)を給付します。一方、地域生活支援事業は、都道府県、市区町村が主体となって実施するもので、大まかな枠組みは国から示されていますが、サービスの類型や運用ルールは都道府県、市町村が定めています。障害のある方がお住まいの地域で自立した生活を送るために必要な支援のうち、地域の特性に応じて実施するサービスが位置付けられています。自立支援給付に位置付けられているサービスは、障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)、自立支援医療、相談支援事業、補装具の大きく4つです。たとえば障害福祉サービスでいえば、ヘルパーサービスや施設への通所・入所を利用するサービス、就労支援などが挙げられます。詳しくは以下の図をご覧ください。Upload By 発達障害のキホン地域生活支援事業として提供されるサービスには、障害のある人の外出に付き添う移動支援や、福祉用具である日常生活用具の給付または貸与、手話通訳や要約筆記を派遣する意思疎通支援、成年後見制度支援などが含まれます。地域生活支援事業の中には、市区町村が主体の事業と、都道府県が主体の事業があります。都道府県は手話通訳士などの人材育成や都道府県内の広域な事業を担い、市区町村は障害のある人に身近な自治体として、移動支援や日常生活用具の給付、貸与といった利用者にサービスを提供する役割を担っています。詳しい分類は以下の図をご覧ください。Upload By 発達障害のキホン障害者総合支援法は障害者手帳がなくても使える?利用対象は?出典 : 障害者総合支援法のサービスを使うためには、原則として障害者手帳が必要ですが、一部を除いて医師の診断書があれば手帳がなくても使うことができます。障害者総合支援法のサービス利用対象者は次のように定められています。・身体障害者・・・身体に障害がある18歳以上の人で、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けている人・知的障害者・・・障害者福祉法にいう知的障害者のうち18歳以上の人・精神障害者・・・統合失調症、精神作用物質による急性中毒、またはその依存症、知的障害、精神病質などの精神疾患を持つ人(知的障害は除く)・発達障害者・・・発達障害があるため、日常生活や社会生活に制限がある18歳以上の人・難病患者・・・難病等があり、症状の変化などにより身体障害者手帳を取得できないが、一定の障害がある18歳以上の人・障害児・・・身体障害、知的障害、発達障害を含んだ精神障害がある児童、または難病等があり、一定の障害がある児童参考文献:遠山真世,二本柳覚,鈴木裕介/著『これならわかるすっきり図解障害者総合支援法』2014年 日経印刷/刊ここからも分かるとおり、サービスを受給するために障害者手帳が必要なのは身体障害がある方のみになります。身体障害以外の障害がある方は、本人や家族の希望と医師の診断書があればサービスの利用申請を行うことができます。ただし、医師の診断書については、障害や病名が対象となるかどうかを確認するため、国際的に使われている病名分類コードの記載が必須となります。詳しい情報やサービスの受給を希望する方はお住まいの市区町村の障害福祉課担当窓口へお問い合わせください。平成30年施行の法改正において創設されるサービスなどを紹介します!出典 : ここまでご説明してきた障害者総合支援法ですが、「生活」と「就労」に対する支援をより一層充実させることを目標とした新サービスの創設や、既存のサービスをより充実させるための法改正が行われました。正式名称を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律」といい、障害者総合支援法と児童福祉法の一部が平成28年(2016年)に改正され、平成30年(2018年)に施行されます。児童福祉法のなかには18歳未満の障害児を対象とする支援が定められています。障害児が障害者総合支援法に基づいている障害福祉サービスを利用する場合もありますが、児童発達支援や放課後等デイサービス、保育所等訪問支援などは児童福祉法に根拠を置いています。今回の法改正では障害児への支援の拡充が盛り込まれました。そのため、今回は総合支援法とあわせて児童福祉法の一部改正についても説明していきます。■自立生活援助の創設現在、障害者支援施設やグループホーム入所・入居している方の中には、賃貸住宅などで一人暮らしを希望する方もいます。しかし知的障害や精神障害によって、生活能力に不安定さがあることなどで一人暮らしを選択できない方がいます。自立生活援助では本人の意思を尊重した地域生活を支援するため、一定期間にわたり定期的な巡回訪問を行い、食事や掃除、公共料金の滞納はないか、地域住民との関係は良好かなどの確認を行います。また定期的な訪問だけではなく、電話やメールなどで随時相談が行うことができるようになります。■就労定着支援の創設就労移行支援などを利用し一般企業へ就労した方で、就労に伴う環境の変化によって生活面に課題が生じてしまう方がいます。たとえば遅刻や欠勤の増加、身だしなみの乱れや業務中の居眠りなどの課題が環境の変化によって新たに生じるなどです。就労定着支援は就労定着支援事業所の方が職場・家族・関係機関への連絡調整を行ったり、職場や自宅に訪問し、生活リズムや体調などの指導や助言などを行ったりすることで、環境の変化に適応できるようサポートします。■重度訪問介護の訪問先の拡大重度訪問介護を利用している人が入院した際、普段利用していたヘルパーに支援をお願いすることが制度上できませんでした。またその人の特性やニーズに合った支援が入院先へ引き継げない場合もあり、利用者が困ってしまうことがありました。この改正によって、重度訪問介護を利用している方が入院中の医療機関においても、利用者の状態を熟知しているヘルパーを引き続き利用したり、そのニーズを的確に医療従事者に伝達したりなどの支援が利用できるようになります。■高齢障害者の介護保険サービスの円滑な利用障害福祉サービスと同様のサービスが介護保険法にある場合は、介護保険サービスの利用が優先されるようになっています。さらに高齢障害者が介護保険サービスを利用する場合、障害福祉制度と介護保険制度の利用者負担上限が異なるため、利用者負担(1割)が新たに発生する場合があります。またこれまで利用していた障害福祉サービス事業所とは別の介護保険事業所を利用しなければならないことがあるなどの課題が指摘されています。この改正によって、たとえば65歳になるまでの長期間にわたり障害福祉サービスを受けていた障害のある方、障害福祉サービスに相当する介護保険サービスを利用する場合、一定程度以上の障害支援区分の方や低所得者に対して、介護保険サービスの利用者負担が軽減されるような仕組みが設けられます。障害福祉サービス事業所が介護保険事業所としても機能しやすくするなどの見直しを行い、介護保険サービスがより円滑に利用できるようになります。■重症心身障害児などに対して訪問型の児童発達支援が創設障害児支援に関しては、複数の児童が集まる通所による支援が子どもの成長に望ましいと考えられていたため、これまで通所支援の充実を図ってきました。しかし現状では、重度の障害のため外出が著しく困難な障害児が発達支援を受けられません。そこで重症心身障害児などの居宅を訪問して発達支援を行うサービスが新たに創設されることになりました。■保育所等訪問支援の支援対象に乳児院と児童養護施設が追加保育所等訪問支援では、これまで保育所・幼稚園、放課後児童クラブ、小学校などに相談支援員が訪問していました。しかし乳児院や児童養護施設の入所者に占める障害児の割合は3割程度となっており、職員による支援に加えて、専門的な支援が求められているため、保育所等訪問支援の対象者を乳児院や児童養護施設の子どもたちにも拡大することになりました。■医療的ケア児に対する支援NICU(新生児特定集中治療室)などに長期入院後、引き続き人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要な障害児(以下:医療的ケア児)が増加しています。医療的ケア児が地域において必要な支援を円滑に受けることができるよう、地方公共団体は児童発達支援センター、障害福祉サービス事業所、特別支援学校などの福祉機関と、訪問看護ステーション、小児科診療所、地域小児科センターなどの医療機関と連携を図るために連絡調整を行う仕組みをつくることになりました。また医療的ケア児に対する支援については、すでに平成28年6月に施行されています。■障害児サービス提供体制の計画的な構築これまで市町村および都道府県に対して、障害福祉計画および都道府県障害福祉計画の作成を義務付けていました。法改正によって、障害児を対象にした障害児福祉計画および都道府県障害児福祉計画の作成を義務付けることになりました。また障害児相談支援の提供体制を整備し、障害児通所支援などの円滑な実施を確保するための仕組みも導入しました。障害児福祉計画は障害児通所支援や障害児相談支援の必要なサービス量の見込みを示すなどして、提供体制を確保していく努力を行うための計画であり、整備の指針になります。■補装具の貸与制度の追加補装具費は身体障害者の身体機能を補完・代替する補装具の「購入」に対して補助金が支給されていました。したがって、これまでは補装具本体の「貸与」はありませんでした。この改正によって障害児など成長に伴って短期間で補装具の交換が必要となる場合は「購入」を基本とする原則は維持したうえで、「貸与」が適切と考えられる場合には補装具本体の貸与が行われることになります。詳細は今度、関係者の意見を踏まえた上で検討されます。■障害福祉サービスの情報公表制度の創設障害福祉サービスなどを提供する事業所数が大幅に増加するなかで、利用者が個々のニーズに応じて良質なサービスを選択できるようにするとともに、事業者によるサービスの質の向上が重要な課題となっています。施設・事業者に対して障害福祉サービスの内容などを都道府県知事へ報告し、都道府県知事が報告された内容を公表する仕組みがつくられます。この情報をもとに利用したいサービスを提供している事業所を選択することができるようになります。■自治体による調査事務・審査事務の効率化障害者自立支援法の施行から10年が経ちました。障害福祉サービスなどの事業所数や利用者数は大きく増加しており、自治体による調査事務や審査事務の業務量が大幅に増加しています。この改正に伴い事務の一部を委託可能にするために必要な規定を整備することになりました。 たとえば、利用を検討している方に向けて利用審査に必要な質問や、関連文書の作成などを、許される範囲内で行政から委託された民間法人が担うことができるようになります。参考:「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び 児童福祉法の一部を改正する法律」について(経過) |厚生労働省まとめ出典 : 障害者総合支援法は障害の有無に関わらず、共に住み慣れた地域で暮らすことができる社会(共生社会)を実現するためにつくられた法律です。障害がある子どもから大人まで利用できる、自立支援給付や地域生活支援などのサービスがあります。また具体的にどんなサービスがあるのか、サービスを受けられる対象者に当てはまるかなどの相談に応える相談支援もあります。ただ、サービスも各地域によって特色がありますので、総合支援法の利用を検討中の方はお住まいの市区町村の担当窓口にお問い合わせください。障害者総合支援法は自立支援法を改正して生まれた法律です。しかし自立支援法時代からの課題が全て改善されたわけではありません。障害のある人の支援に関する法律は、今後も議論や改正を重ねながら、その時代や地域、利用者のニーズに適したサービスを提供していくことでしょう。
2017年07月31日日ごろからタクシーを使っている、という人はどのくらいいるでしょう。やむをえない状況や急を要するときに使うけれど、利用頻度はそれほど多くないという人のほうが多いのではないでしょうか。実は、タクシー会社には「子育て世代だからこそ役立つ」サービスを提供しているところがたくさんあります。今回は負担の多い子育てを楽に、そしてママも子どもも助かるタクシーサービスを3つ紹介しましょう!■365日24時間対応! いつ陣痛がきても怖くない「陣痛タクシー」タクシー会社が独自に展開しているサービスのなかに「陣痛タクシー」というものがあります。これは出産前に事前に自身の情報を登録しておくことで、陣痛時に病院まで迅速に送ってくれるサービスです。家族がいないときに陣痛がおきてしまった…。そんなとき、病院までの移動手段として有効なのがタクシーですよね。でも早く病院にいきたいのに配車の電話がつながらなかったり、出産予定の病院の場所をいちから教えなければならなかったりと手間どることもあります。陣痛タクシーでは、専用回線の先にオペレーターが365日24時間待機。あらかじめ、WEB上で予定日や出産予定の病院などを事前に登録しておくので、電話するだけで素早く病院に移動できます。料金も通常時のメーター料金(深夜・早朝は割増)にお迎え料金の410円を合わせたものとなっており良心的。定期健診や、先生にみてほしいときも利用できるので、妊娠中の心強い味方となってくれそうです。■年齢に合わせて使い分け可能! ストレスフリーな「子育てタクシー」一般社団法人全国子育てタクシー協会が主催する、子育てファミリーにやさしい「子育てタクシー」。地域の子育て応援団として協会指定の養成講座、および保育実習を修了したドライバーのみが、荷物の多い子連れ外出時の移動、子どもだけでの通園・通学・通塾の送迎などをサポートするサービスです。子どもの習いごとが夜遅くに終わるけれど、迎えにいけない…。そんなときでも保護者の代わりとなって子どもを迎え、指定の場所まで送り届けてくれるので働くママも大助かりです。利用の際は、自宅付近のタクシー会社をエリア検索し、該当するところに電話で問い合わせてみましょう(登録フォームが用意されている場合も)。子ども1人でタクシーにのる場合は、事前登録や打ち合わせが必要になることもあります。料金は基本的に通常のタクシー料金と迎車の料金を合わせたものですが、タクシー会社によっては乗務員指定の希望、チャイルドシートの有無などで料金が変動することも。問い合わせの際に、合わせて確認しましょう。■いつもは運転手のママやパパも楽ちん! 大人数の観光・レジャーに「ジャンボタクシー」「ジャンボタクシー」はワンボックス型やミニバン型など、6~9人乗りの車種を指定して利用できるタクシーのことです。たとえば、仲のいい家族同士のお出かけや、おじいちゃん・おばあちゃんなど親せきを連れた小旅行の足として便利です。旅行先でみんなの行きたい場所が違うときでも、ドライバーに場所さえ伝えれば効率よく回ってくれ、公共交通機関の時間を気にせず快適に過ごせます。運転のプロにお任せするので道に迷う不安もなく、普段は運転手役のママやパパも疲れることなく、一緒に旅行や観光を楽しめるのが大きな魅力です。運賃は通常のタクシーと同じ距離制になりますが、車種指定料金として500~2,000円が別途必要になる場合がありますので確認しましょう。ちょっとしたストレスを解消できる「進化タクシー」。知らないだけで、子育てに向いたサービスはまだまだあるのかもしれません。予定をたてるとき、緊急のとき、こうしたサービスをぜひ活用してみてくださいね。<参考サイト>・陣痛タクシー 日本交通 kmタクシー 東京無線タクシー 荏原交通 京王自動車 ・子育てタクシー 全国子育てタクシー協会 ・ジャンボタクシー 全国貸切バス予約センター 日の丸交通 ハロー・トーキョー
2017年07月22日臨床発達心理士とは?出典 : 臨床発達心理士とは、人の発達・成長・加齢に寄り添い、発達心理学等の専門的な知識を生かして健やかな育ちを支援する専門家です。また、赤ちゃんからお年寄り、子育て中の保護者や障害のある人など、幅広い世代、状況の人たちを支援対象としていて、人の生涯発達に関する臨床に携わる幅広い専門家に開かれた民間資格です。人は年齢を重ねていくなかで、自分自身や家族関係、友人関係、学校生活や就職などさまざまな悩みや問題に直面します。それらの問題は環境や時間の経過、またその時々の支援の在り方によっても変化していきます。したがって、生涯発達の中で出会うさまざまな問題の解決にあたっては、まず問題を正しく理解し、それに基づいて適切な支援を行う専門家が求められます。そこで誕生したのが「臨床発達心理士」の資格です。現在、「~心理士」「~カウンセラー」などの名がついた心理士の関連資格は70以上にものぼると言われています。そのうち「臨床」という名称を持つ資格はいくつかありますが、「発達」という名前が付いているのは臨床発達心理士だけです。つまり、さまざまな心理職のうち発達を専門とする資格ともいえるでしょう。参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編] 臨床発達心理士わかりやすい資格案内[第3版](金子書房.2017)参考:本郷一夫「臨床発達心理士の専門性と果たすべき役割」臨床発達心理士になるには?出典 : 「臨床発達心理士」資格は、学会連合資格「臨床発達心理士」認定運営機構が認定している民間資格です。臨床発達心理士の資格を取得するには、受験資格を満たしたうえで年に1度、9~12月にかけて行われる資格審査に合格しなければいけません。資格取得までの流れとしては、申請書類の購入、申請手続き、一次審査(書類/筆記/業績等)、二次審査(口述審査)、資格認定といったステップがあります。1. 発達心理学を中心とした心理学諸分野の科学的・理論的な知識2. 人間が実際に発達する場に関する社会的・実践的な知識3. 人間の発達をアセスメントし支援する臨床的な知識・技能これらを習得するための基礎となる学問領域は「発達心理学」または「発達心理学隣接諸科学」です。具体的には発達心理学、その他心理学、教育学、保育学、福祉学、小児科学、医学、看護学、リハビリテーション学、発達障害学、保健体育学、体育心理学、スポーツ健康科学、人間社会学、人間学、児童学、応用人間科学、コミュニケーション学、児童教育学社会学などです。2017年度から資格申請制度が新しくなり、申請タイプが5つにまとめられました。1. 発達心理学隣接諸科学の大学院修士課程在学中または終了後3年未満2. 臨床経験が3年以上あり、かつ発達心理学隣接諸科学の大学院を修了している3. 臨床経験が3年以上あり、かつ発達心理学隣接諸科学の学部を卒業している4. 大学や研究機関で研究職をしている5. 公認心理師を取得している変更点としては以下の2つがあげられます。・国家資格である「公認心理師」資格取得者が申請できること。・「公認心理師」資格が心理学系大学卒業以上を前提としていることから、発達心理学諸科学の大学や、短期大学や専門学校を卒業した人が申請できるタイプを廃したこと。ただし、公認心理師資格は2018年度以降習得可能であるため、経過措置として2019年度までは旧制度での申請も受け付けています。資格申請をするにあたって、自分の受けた教育歴と臨床発達支援に関する実践の経験年数に合わせて、以下に示す申請タイプの中から最も自分にあったタイプを適切に選びましょう。また、資格を取得すると、「日本臨床発達心理士会」に入会するとともに全国に20ある支部のどこかに所属することが義務づけられます。さらに、資格の有効期間は5年で資格更新をすることも義務付けられています。資格更新は、試験ではなく資格取得後に十分な研修を積んだか、高い専門性を保持することに努めたかがポイントに換算され審査されます。出典:資格取得までの流れ|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構出典:資格申請新制度のご案内|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構出典:資格更新ガイドライン|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編]わかりやすい資格案内(金子書房.2017)p18~41臨床発達心理士スーパーバイザーとは、臨床発達心理士になろうとしている人や臨床発達心理士になった人(スーパーバイジー)に対して、スーパービジョン(指導者から教育を受ける過程)を通して支援し、育成する役割を担う人のことです。申請要件は以下の3つになります。1. 臨床発達心理士の有資格者2. 臨床発達心理士資格取得後、5年以上関連する業務・活動を継続3. 臨床発達心理士資格を1回以上更新している出典:臨床発達心理士スーパーバイザーとは|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構臨床発達心理士はどのような人を支援するの?出典 : 臨床発達心理士は赤ちゃんから高齢者までの年代の人を対象として発達を支援する人の資格です。そのため、支援の対象はとても幅広いです。具体的に以下のようなケースが支援の対象となることが多いです。・新生児、乳幼児と保護者・自閉症スペクトラム、知的障害、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥・多動性障害)などの発達障害・知的障害の診断を受けた人・育児不安、虐待、不登校、引きこもりなどの現代的問題を抱える人・「気になる子」、障害の有無/グレーゾーンかの判断に対して悩みを持つ人・社会適応や成人期・老年期の悩みを持つ人臨床発達心理士の活躍の場と具体的な支援出典 : 「臨床発達心理士」資格のある人が特定の職場にいるわけではありません。赤ちゃんから高齢者を対象として発達を支援する人のための資格であることから、資格を持つ人の活躍する場は多岐にわたります。以下では、支援対象の年代別に具体的な職場やどのような仕事をしているのかを紹介していきます。・新生児医療の場:育児不安の解消、愛着形成への援助など・保育所/幼稚園:保育者、保育カウンセラー、特別支援教育コーディネーターとしての業務など・家庭支援センター:親子広場スタッフ、子育て講座の講師、家庭相談スタッフなど・保育巡回相談:主に行政からの委託で保育所、幼稚園を巡回・乳児院/児童養護施設:カウンセリング、セラピーの実施など・保健所/保健センター:妊娠中に両親学級の講師やグループワークのスタッフ、乳幼児健診および発達が気になる子どものフォローなど・小中学校/高校/大学:教師として特別支援教育コーディネーターの業務など・スクールカウンセラー:校内相談業務、保護者支援、校内研修会講師など・教育委員会:教育相談、就職相談等の相談業務、心理検査の実施など・発達支援センター:障害児童やグレーゾーンの子どものアセスメント、相談、療育など・放課後デイサービス:指導員へのコンサルテーション、保護者支援など・学童保育所:指導員へのコンサルテーション、保護者支援など・学童相談室:大学等での学生相談室でのアセスメント・児童相談所:心理判定、相談、指導業務など・特別支援学校:教育のアセスメント、指導評価の実施、保護者支援、教育機関への巡回相談など・特別支援学級/通級指導教室/言葉の教室:教育のアセスメント、教育支援計画作成、校内特別支援コーディネーター業務など・障害者施設/作業所:セラピー、カウンセリング、家族支援など・高齢者施設:カウンセリング、セラピー、心理検査の実施など・企業:企業内相談業務、心理調査など・病院・クリニック(小児科・精神科・診療内科等):患者・保護者へのカウンセリング、患者へのセラピー、心理検査の実施など上記の職種以外に、臨床発達心理士以外の資格を保持しているひとは、職種の幅にも広がりがあります。臨床発達心理士の中には、他の資格や免許も有しながら職務に就いている場合も多いので、純粋に心理職として働いているケースばかりではありません。例えば、家庭裁判所で調査官として仕事をする人、震災時に現場に赴いて支援をする人、研究者として働く人の中にも、臨床発達心理士の資格を生かして仕事をしている人が多くいます。臨床発達心理士の視点を持って、両者の領域で培われた専門性を活かして活動しているのです。しかし、医師免許を有している場合でない限り、臨床発達心理士は医療行為全般(薬を用いた治療や障害かどうかの確定診断をすること)はできません。また医師にかかる場合は、健康保険が適用されますが、臨床心理士に相談する場合は基本的には健康保険が適用されません。参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編]わかりやすい資格案内[第3版](金子書房.2017)p89.90臨床発達心理士による発達障害に対するアセスメント出典 : 有効な支援を行うためには、その問題を解決するために情報を集め、それをもとにその人にあった支援の方法を計画していく必要があります。これをアセスメントと言います。ここでは、一つの例として発達障害の支援計画を立てるための代表的なアセスメントについて具体的に説明していきます。◇対象の支援ニーズに関する情報収集聞き取りや観察によって生育歴や育児についての情報や、発達の経過、現在の行動や状況など日常生活に関する情報を集め、支援ニーズを知ることから始まります。これは、保護者や保育者、家族などと共同で行うことが望ましいです。◇対象を取り巻く環境に関する情報収集園や施設に通っている場合は、それらの環境に関する情報を収集する必要があります。また、家庭環境や地域環境についての情報の収集も、支援を考える際に重要になっていきます。これらの情報をもとに問題の暫定的な把握をしたうえで、発達状態の情報を収集します。◇知能検査知能検査ではおもにIQ(知能指数)の値を指標とすることが多いです。従来は、精神年齢と生活年齢をもとにもとめる比例IQを用いることが多かったですが、最近では、同年代の平均との隔たりをもとにもとめる偏差IQが中心になってきています。知能検査を行う目的は認知発達の水準を科学的・客観的に評価することで、その人の得意分野、不得意分野を分析することです。知能検査の結果からわかるその人の得意、不得意分野から療法の方向性を決定するために使われます。代表的な知能検査に以下のようなものがあります。・ウェクスラー式知能検査・田中ビネー知能検査◇発達検査発達検査では日常生活や対人関係などにおける子どもの発達基準を数値で表したDQ(発達指数)を算出します。子どもが成長していくには、発達段階に適したアプローチが必要になります。そのため、発達段階を客観的に知るための手段として発達検査は使われます。ただし、発達指数の値だけで子どもの発達状態を判断をすることはありません。あくまでものさしの一つであり、発達検査から分かる能力のバランスや日常生活の様子などを総合して子どもの発達状態を把握します。代表的な発達検査には以下のようなものがあります。・新版K式発達検査・乳幼児精神発達診断法◇スクリーニング検査発達障害に関するスクリーニング検査は、どの精密検査を行うべきかの判断や潜在的な発達遅れや発達障害の可能性を検査するために行われます。スクリーニング検査は、たくさんある発達障害のうち、その子どもに当てはまる可能性がある障害を絞り込むためのものです。スクリーニング検査には網羅性が重要視されるため、正確性はそれほど高くはありません。仮に検査で陽性が出たとしても精密検査するかどうかの判断基準になるだけで、発達障害であることが確定するわけではないということに注意が必要です。スクリーニング検査は乳児健康診査、1歳6ヶ月健康診査、3歳児健康診査などの場でも活用されています。代表的なスクリーニング検査には以下のようなものがあります。・STRAW・M-チャート・ADHD-RS・LDI-R・PARS◇行動観察臨床発達心理士は言葉をかけた時の子どもの反応や、話し方、質問を正しく理解しているのかなどのさまざまな反応をできるだけ詳細に観察して、子どもの特徴やくせを見つけようとします。日常場面における観察だけでなく、臨床発達心理士が状況設定した場面における観察も行うこともあります。上記の生活情報と発達状態の情報をふまえて、それぞれの特徴にあった支援計画を立てていきます。本人に対する支援や保護者への支援だけでなく、施設との連携体制を確立させたり、担当保育者などへの支援計画を立てたりすることもあります。参考:藤崎 真知代「育児・保育現場での発達とその支援 (シリーズ臨床発達心理学) 」(ミネルヴァ書房.2002)p66-70臨床発達心理士と臨床心理士との違いは?出典 : これまでの説明にあるとおり、「臨床発達心理士」とは、赤ちゃんからお年寄り、子育て中の保護者や障害のある人など、幅広い世代、状況の人たちの発達・成長・加齢に寄り添い、人の健やかな育ちを支援する専門家です。それに対して、「臨床心理士」とは、同じ心理系の民間資格ですが、不登校や二次障害、精神障害などのこころの問題をかかえた人に対する心理療法や、こころの問題を予防するための研究にもとづいて、人のこころにアプローチする専門家です。つまり、得意とする支援対象やケースに違いがあります。しかし、どちらの資格も、医療・教育・保健・福祉分野においては活躍の場が同じこともあり、両方の資格を取得することでより広い視点でより広い職域において活躍することができます。支援を受ける人は、一人ひとりの発達の特徴に寄り添った支援をしてくれる専門家を見つけることが大切になってきます。出典:臨床心理士とは|日本臨床心理士資格認定協会臨床発達心理士と公認心理師出典 : いままでは、心理学系の国家資格はありませんでした。そのため近年、心理学系の国家資格をつくろうとする動きがありました。その結果、公認心理師法という法律が平成27年9月9日に成立して、9月16日に公布されました。公認心理師法は、公認心理師という国家資格を定めるとともに、国民の心の健康を増進させていくことを目的にした法律です。公認心理師法の大部分は公布の日から2年以内に施行されることになっています。厚生労働省によれば、平成29年9月15日までに施行される予定になっています。また、第1回国家試験は、平成30年までに実施する予定と発表されています。公認心理師はさまざまな分野にまたがる領域横断的な汎用性のある資格です。それに対して、臨床発達心理士は、臨床発達心理学・発達臨床支援の専門性を有する資格です。公認心理師の資格取得には以下のいずれかに該当する必要があります。1. 「公認心理師になるために必要な科目」を心理学関係の大学と大学院を出て修了する2. 大学で公認心理師になるために必要な科目を修めて卒業し、文部科学省令・厚生労働省令で定める施設で、規定の期間以上心理関係の仕事に従事するまた、公認心理師の職域としては、保健医療、福祉、教育、司法・法務・警察、産業・労働の5領域があげられています。この資格は、医師免許や法曹資格同様に、国家試験に合格し一度取得してしまえば終身その身分が保障されるという考えも多く、臨床発達心理士をはじめとした心理系の取得と併せて資格を取得する人が多くなることが予想されています。参考:公認心理師について|厚生労働省参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編]わかりやすい資格案内[第3版](金子書房.2017)p10-15まとめ出典 : 臨床発達心理士とは、人の発達・成長・加齢に寄り添い、発達心理学などの専門的な知識を生かして幅広い年代、状況の人たちの健やかな育ちを支援する専門家です。発達支援を必要としている方の困りごとにあった相談先や、サポートを受けられる場の選択肢のひとつとして、臨床発達心理士があるということを知っていただき、よりよい支援を受けられるきっかけになれば幸いです。また、資格制度の変更があったり、新しく公認心理師という国家資格が認定されたりと、手続きや選択が複雑に感じられますが、だからこそ今後より一層発達領域の専門資格として、臨床発達心理士の技能がとても重要な役割を担います。発達支援の仕事をしたいと考えている方が、その専門性の高さを活かしてご活躍されることを願います。
2017年07月12日こんにちは。子育て支援を専門にする臨床心理士の今井千鶴子です。子どもが年頃になると“教育”についての悩みが増えるママが多くいらっしゃいます。特に、お子さんのために“家庭学習教材”を取り入れているママからは、「教材をやらずにどんどんたまり困っている」「教材を続けるにはどうしたらいいのか」といったご相談が多く寄せられます。筆者自身も家庭学習教材を溜めこんでしまい、親を困らせていた一人であることを告白します(笑)。家庭学習教材を取り入れているなら、「勉強ができる子になってほしい」という思いがあると思います。おそらく“勉強ができる子”の先には「お子さんが将来好きな仕事に就けるように……」といった思いや、さらにいえば「お子さんの人生がよりよきものになるように……」といった親心もあるかと思います。“よりよき人生”というと少し大げさかもしれませんが……。これまでの心理学研究では、“将来の成功の原動力”について科学的に検討されています。そこで明らかにされた成功への原動力の1つに『GRIT(グリット:やり抜く力) 』があります。これは筆者自身のこれまでの経験や多くのお子さんに関わってきた経験からも実感できることです。もちろん桁外れの天才もいますが、ごくわずかの天才以外は、元々の能力にさほど変わりなく、“やり抜く力のあるなし”が将来の成功を大きく左右する ように感じます。逆にいうと、たとえ能力があったとしても“やり抜く力”がなければ、成功するチャンスを失ってしまうのです。話を戻しますと、家庭学習教材を続けることも、やり抜く力を育てる一歩になると思います。それでは、ママができる家庭学習教材を長続きさせるコツにはどんなものがあるのでしょうか。●「できた!」という成功体験を重ねる家庭学習教材を長続きさせるためには、とにかく“成功体験”を重ねていくことがポイントです。そのためには、お子さんの発達の状態に合った家庭学習教材を選ぶことが大切です。無理に難しすぎる内容をやるのはNG です。小学校教諭の杉渕鐵良先生も、著書『自分からどんどん勉強する子になる方法』の中で、“通信教育や市販のドリルが続かない理由”の1つとして、“難しい問題や解くのに時間のかかる問題が出てきたとき、とたんにやる気を失う”ことを述べています。子どもにとって「できる!」という体験は楽しいものです。楽しければ、親が止めてもやりたくなります。もちろん将来的には難しい問題に挑戦することも必要ですが、子ども自身が学ぶ楽しさを実感できるまでは、スラスラ解ける問題で成功体験を粘り強く重ねていく ことが大切なのです。もし、お子さんが教材をやらずにいたら、お子さんのレベルにあった教材かを確認してみましょう!●子どもが楽しく学ぶ環境を作る優秀なお子さんを育てたママの話を聞くと、「子どもが一人で夢中にやっていて、私はただそれを見守っていただけです」という言葉を耳にします。「子どもが一人で夢中になる」「見守るだけ」この状態は親にとっては理想的です。でも、その言葉を鵜呑みにしてはいけません(笑)。なぜなら、優秀なお子さんを育てたママのインタビューをよくよく分析すると、「一人で夢中にやっていた」という前段階には、ママが“お子さんの学ぶ意欲を引き出す環境”をしっかり作っているケースが多いからです。それでは、お子さんのやる気を引き出し、家庭学習教材を続けられるような環境作りにはどんなものがあるのでしょうか?筆者は、“親が一緒に取り組む” ことが大切だと感じます。“子どもがひとりで(勝手に)勉強をやるようになる”ことはまずありませんので、学習習慣がつくまでのあいだ、いかに親が関われるかがポイントとなります。具体的には、子どもが家庭学習教材を勉強する時間は、子どもの隣に座って一緒にやる、それがどうしても難しいなら子どもの見えるところにいることです。リビング学習も選択肢の1つだと思います。有名大学の学生の中にもリビング学習を実践していた割合が高いといわれています。また、先ほどもご紹介した杉渕鐵良先生の著書『自分からどんどん勉強する子になる方法』でも、子どもが勉強するかどうかは『親の関わり度合いにかかっている』と述べられています。そして、親は隣に座って、一緒に問題を解く(同じ問題を解く) ことをすすめられています。さらに、家庭学習教材をやるときは“楽しくやる”のもポイントです。お子さんががんばったときには、がんばりをたくさん認めましょう。また、勉強を終わらせるときは“楽しい気持ち”で終わらせましょう。そうすると、また次もやりたい気持ちが芽生えます(一所懸命やっていたにもかかわらず、最後は疲れてイライラしてしまうお子さんがいますが、とてももったいないことです)。そのためには、どのくらいの時間お子さんが集中して勉強できるかを正確に確認し、家庭学習教材の1回の量を調節する ことも忘れてはなりません。さらに、規則正しい生活をし、決まった時間に学ぶ習慣をつけることもポイントです。そうすると、子どもも、「○時からは勉強の時間だ」と思うようになります。このような“習慣の力”を借りることも大切になります。慣れるまではママも大変かもしれませんが、低学年のうちにこのような学習環境を整えておけば、後々親子ともに“楽”になります。家庭学習教材に取り組む(学ぶ)のが当たり前の環境づくりをぜひ意識してみましょう!----------いかがでしたか?今回は、ママができる家庭学習教材を長続きさせるコツをご紹介しました。本来学ぶことは楽しいものです。お子さんの学ぶ楽しさをどんどん伸ばしていきましょう!【参考文献】・『成功する子 失敗する子ーー何が「その後の人生」を決めるのか』ポール・タフ(著)・『自分からどんどん勉強する子になる方法』杉渕鐵良(著)・『頭のいい子に育つ!リビング学習&子どものモノ収納術』主婦の友社(編)●ライター/今井千鶴子(臨床心理士)●モデル/前田彩(桃花ちゃん)
2017年07月11日こんにちは。子育て支援を専門にする臨床心理士の今井千鶴子です。みなさんのお子さんは家でお手伝いを楽しんでしていますか?小さいお子さんほど、お手伝いを楽しむ傾向が強いといわれますが……そうはいっても、お手伝いをさせることをためらうママも多いのではないでしょうか。ミサワホームの調査でも、「自分でやった方が早い」「子どもが上手にできない」「教えるのが面倒」などの理由からお手伝いをさせていない親が多いと報告されています。私自身も、時間がないときや心に余裕がないときは「自分でやった方が早いな」とついつい思ってしまいます。ところが、これまでの研究や多くの子育て経験から、お手伝いには子どもの成長を支える大切な役割があることが指摘されています。私も含め“子どもの将来にとってお手伝いの経験は大切だ ”と考える専門家も多くいます。そこで今回は、お手伝いがもたらす3つのメリットをご紹介します。●(1)学習への影響実は、“お手伝いと学習”とのつながりが指摘されています。たとえば、花王の調査では、よくお手伝いをする子は勉強時間が長く、テレビの視聴時間が短い傾向にある ことが報告されています。この結果は、お手伝いをすることによって、“自分の役割を果たす力”や、“時間管理能力”が高まるためではないでしょうか。辰巳渚さんの著書『辰巳渚の頭のいい子が育つお手伝いの習慣』の中では、“お手伝いをすることで本当の学力が育つ ”といった内容が紹介されています(ちなみにここでいう本当の学力とは、集中力、好奇心、積極性などを指すようです)。また、山形大学の横山浩之教授も著書『保育士・幼稚園教諭・支援者のための乳幼児の発達からみる保育の“気づき”ポイント44』の中で、お手伝いが自発的にできない子どもは、小学校高学年以降の学力が苦しくなる ことを指摘しています。こう考えると、“塾などの習い事に行くためにお手伝いができない”という状況はむしろ本末転倒であるように感じます。集中力、好奇心、行動力などが乏しい状態で、塾で学ぶのは非効率かもしれません。お家でのお手伝いでこれらの資質が育てられるのであれば、子どものお手伝いを習慣化させることはメリットが大きいと思います。●(2)自己像への影響お手伝いは、自己像や将来のイメージにも影響することが報告されています。たとえば、国立青少年教育振興機構の調査では、お手伝いを多くする子ほど自己肯定感が高い傾向にある ことが指摘されています。このような結果が得られた理由の1つは、お手伝いをすることで親からほめられる体験が増えるためではないでしょうか。また、自分はやり遂げているという成功体験も大きな要因だと考えられます。お手伝いをすることは子どもにとって誇らしい行動であり、結果的に高いセルフイメージへとつながっていきます。もちろん、自己肯定感が高い子ほどよくお手伝いをしているという影響の方向性も考えられますが、双方向の影響性があると考えることの方が自然です。いずれにしても、「お手伝いをする」という行動は、子どものセルフイメージにプラスの影響を与えているといえそうです。また、花王の調査では、よくお手伝いをする子はあまり手伝わない子に比べて、将来の自分の家庭に対する明るいイメージ(例:将来よい父・母になれる、将来幸せな家庭がつくれる)を抱いていることが示唆されています。“自分で家事ができる”という自信や安心感がそういった明るいイメージをもたらしている可能性が考えられます。●(3)忍耐力や感謝する心が養える子どもにとって、お手伝いは遊びの延長です。ですから、小さいお子さんほどお手伝いに意欲的です。わが家も、最近長男から「お風呂掃除がしたい!」と志願されました。小学生になったら毎日決まったお手伝いをさせたいと考えていたので、それ以来長男にお風呂係をお願いしています。ただ、「楽しそう!」と思って始めたことでもさすがに毎日のこととなると面倒くさい日もあるようです(笑)。お風呂掃除のために、大好きな遊びを中断したり、疲れて動きたくないと感じたりする日もあるからです。ただ、それでも彼をお風呂掃除に突き動かしているのは、ほめられたいという単純な動機だけでなく、「自分がやらなきゃ」という使命感かもしれません。その様子をみていると、お手伝いを毎日続けることは、使命感や忍耐力を育む ことにもつながるように感じます。また、お手伝いをすることで、家事の大変さを理解し、やってもらって当たり前ではない“感謝の心”が育つ ことも息子の言動から感じます。私は、一番身近な家族だからこそ、お互いを思いやり、感謝しあって過ごしたいと思っています。ですから、思いやりの心や感謝の心が育てられることもお手伝いから得られる大きなメリットのように感じます。----------最後になりますが、お手伝いは、年齢が上がるごとにあまりしなくなる傾向があります。文部科学省の調査(全国学力・学習状況調査)では、小学校6年生の約2割が手伝いを「あまりしていない」もしくは「全くしていない」と答えています。さらに、中学3年生になると、手伝いを「あまりしていない」もしくは「全くしていない」と回答する子どもが約4割にも及ぶことがわかっています。年齢とともに自分でできることが増え、今後さらに自立への道を進んでいくにもかかわらず、年齢が上がるごとに家庭でのお手伝いをしなくなるのはどうなのかと疑問を感じます。家事を親まかせにすればするほど、自立した後に子どもは苦しむ傾向にあると思うからです。ですから、私たち親は、どうしたら子どもが楽しんでお手伝いができるか、あるいは年齢があがっても継続してお手伝いができるかを考えていくことが大切ではないでしょうか。いかがでしたか?今回はお手伝いがもたらす3つのメリットをご紹介しました。夏休みはお手伝いを始める絶好の機会です。まだお子さんがお手伝いをしていなかったら、ぜひチャレンジしてみませんか。【参考文献】・『辰巳渚の頭のいい子が育つ「お手伝いの習慣」ー面倒くさがる子をやる気にさせる言葉がけのツボ』辰巳渚・著・『保育士・幼稚園教諭・支援者のための乳幼児の発達からみる保育“気づき”ポイント44』横山浩之・著【参考リンク】・「子どもの行動特性調査<お手伝い>」の調査結果を公表 | ミサワホーム株式会社(PDF)()・「子供のお手伝い」調査 | 花王生活者研究センター(PDF)()・「青少年の体験・生活習慣と意識等の関係」青少年の体験活動等に関する実態調査(平成24年度調査)報告書 | 国立青少年教育振興機構(PDF)()・「3.質問紙調査の結果」平成20年度全国学力・学習状況調査【小学校】報告書 | 国立教育政策研究所(PDF)()・「3.質問紙調査の結果」平成20年度全国学力・学習状況調査【中学校】報告書 | 国立教育政策研究所(PDF)()●ライター/今井千鶴子(臨床心理士)●モデル/貴子(優くん、綾ちゃん)
2017年07月04日こんにちは。コソダテフルな毎日のちゅいママです。長男ちゅんたん(小3)・次男ゆいたん(年長)・三男ほーちゃん(年少)の3兄弟の母です。私たち夫婦は18の時に出会ってからというもののそんなに喧嘩をしたことがなく、結婚してからもしばらくはいたって平和に暮らしていました。が、子どもが生まれたらその関係が激変! 不満・不満・不満のオンパレード!長男が1歳ぐらいまでは口を開けば言い合いになってしまうような時期がありました。もっと育児に協力してほしいと何度も訴えましたが夫には響かず、むしろ「俺は精一杯やってる」と堂々としているぐらいでした。そんな小さな歪みが大きな溝になりつつあった時期。本気で夫のことを嫌いになりました。(今は良好な関係を保っているので夫を嫌いになりかけたということになるんでしょうが。)あれは長男のおむつはずしに挑戦中の頃。私ははじめてのトイレトレーニングでしたので手探り状態で、毎日自分なりに研究しては試行錯誤して、あの手この手で頑張っている最中でした。また、同時期にとある資格の勉強中で育児の合間を縫っては勉強に励んでいました。■夫のあるひと言で、ついに爆発!そんなある休日の午後。部屋で遊んでいる長男に、私がトイレにいこうと誘いの声をかけたんです。長男は「やだ」と言いましたが、私はせっかくトイレでおしっこができるようになってきたこのタイミングを逃したくなくて必死に説得していました。そして、その様子をすぐ横で見ていた夫がこう言ったんです。はぁ? 今、なんと??何を手伝うわけでもなく、ただ横でゴロゴロしていただけの夫に「かわいそう」と言われたことに、私は悔しさで震えました。よっぽどのことがなければ泣かない私も、このときばかりは堪えきれず隠れてこっそり泣きました。こんなはずじゃなかったのに…!!私が選んだ人生の伴侶はなんて性格が悪いんだ! とさえ思いました。トイレトレーニングにせよ資格の勉強にせよ、どちらも「そんなに頑張らなくても」「いいじゃん、資格取ったって何になるんだよ」となにかにつけ、引きずりおろそうとする後ろむきな言動が多かったんです。どうしてこの人は頑張ってる人を素直に応援できないんだろうか。私があなたにトイレトレーニングを手伝ってほしいと頼みましたか?私が資格の勉強に没頭して、家事や育児をおそろかにしましたか?子どもの面倒も、家のことも一生懸命やってるのに、どうして何ひとつ協力もしていないあなたに、何も知らないあなたに「かわいそう」だなんて言われないといけないんだ!!あまりにも悔しかった私はしばらく口をきかなかった後、夫にこう言い放ちました。あなたは一切子育てに口出しするな。と。何もやってないくせに文句を言うぐらいなら、金輪際育児に関わらないでくれと啖呵(たんか)を切りました。この子は私が育てるから、あなたはお金だけ稼いできてくれ! というぐらいにまで。がしかし、現実にはやはり私が一人で育てられるわけがありません。夫に頼らざるをえない場面だって出てくるんです。■そんな夫が「1泊2日の子守り」で…資格の試験日が2日連続だったため、私は試験会場の近くに宿泊することにし、長男は夫にお願いすることになりました。それまでろくに子育てしたことのなかった夫がいきなりまる2日間の子守り。でしたが…、長男は慎重派で無口な1才でしたので夫もこの子ひとりぐらい余裕だと思っていたんでしょう。私が出かける頃には余裕しゃくしゃくな様子でした。1日目の夜に電話したときには夫も「大丈夫大丈夫~~」と楽勝な感じで、私自身も拍子抜けしていました。ところが2日目の夕方、家に戻ってみると、ヨレヨレになった夫が泣きつくように出迎えてきました。あの強気な夫はいったいどこへ(笑)そして、一言、絞り出すようにこう呟きました。「仕事のほうがよっぽど楽」よっしゃぁぁーーー!!私はもちろん、心の中でガッツポーーーズ!!ですよ(笑)そうだ!思い知ったか! がははは!!と言いたいところでしたが、理性を保って堪えました。ゼェハァ。どうやら1日目は長男もめったに接しないパパに猫をかぶっていたようですが、2日目からは化けの皮をはいだようで見事に夫を疲れさせたようです。美容院に行く間だけとか、1日だけではおりこうちゃんにできていたのですが、パパと2人きりの夜を共にしてようやく本領を発揮したらしい。この日が、夫がようやく長男の、いや、子育ての現実を知った日でした(デビュー)。それまで言葉の端々に「子育てのどこが大変なの?」「専業主婦って暇でしょ?」とどこか家事と育児を下に見ていた夫が、この日以来、ぐっと子育ての大変さに共感を示してくれるようになりました。共感しようにも子育ての大変さを、我が子の本性を知らないから分からなかっただけ、だったんですね。一度は本気で嫌いになりかけた夫でしたが、こうして少しずつ少しずつお互いの苦労を分かりあい、譲りあい、徐々に徐々に成長してきたと思います。そのきっかけとして、1泊2日で夫に子どもを預けたことが、私たち夫婦の関係にとってもいいカンフル剤となりました。
2017年06月29日こんにちは。子育て支援を専門にする臨床心理士の今井千鶴子です。皆さんは「読みメン」という言葉を聞いたことはありますか?鳥取県立図書館のホームページによると、読みメンとは、“子どもに絵本を読む男性”のことを指します。今回は、パパの読み聞かせにスポットをあて、パパの読み聞かせから得られる2つのメリットをご紹介します。●パパの読み聞かせの実態厚生労働省の『父母の子どもとの接し方』に関する調査の中の「本や絵本の読み聞かせをする」という項目に対して、「よくしている」と答えたパパは8.2%でした。また、第一生命保険株式会社の『父親の子育てに関する調査』でも、「絵本を読み聞かせる」という項目に対して、「非常によくしている(した)」と答えたパパは7.8%でした。この2つの調査からは、読み聞かせをよくするパパは少ないことがうかがえます。●パパが読み聞かせをするメリット読み聞かせをよくするパパが少ない理由の1つとして、“パパがする子どもとの遊び=外遊び(からだを動かす遊び)”というイメージが強いことも関連しているのではないでしょうか。また、外遊びに対するママからの期待も高いといわれます。ですから、パパの気持ちの中には、子どもとの遊びとして外遊びのイメージはあっても、“本の読み聞かせをする”というイメージはあまりないのかもしれません。だからこそ、先ほどご紹介した読みメンのような啓蒙活動やパパの読み聞かせから得られるメリットを知ることが大切だと感じます。以下に、パパの読み聞かせから得られる2つのメリットをご紹介します。●(1)子どもと密な時間が過ごせるパパが子どもと接する時間は1日3時間ほどというデータもあります。子どもとの時間が十分にとれないと悩むパパも多いといわれます。仕事などでやむを得ない事情もあり、お子さんと接する時間(量)を増やすことは難しい場合もあるかと思います。ただそんな場合でも、“質”を高めることは可能です。父親による読み聞かせの実態を調査した研究(2016年、岩田英作・マユーあき・岡本千佳子・尾崎智子・内田絢子)でも、平日はお子さんと一緒に過ごす時間がほとんどないため、絵本の読み聞かせだけはしようと心がけている父親が紹介されています。そして、絵本の読み聞かせのよさとして、“短い時間で密にかかわることができること ”をあげられています。また、清水克彦さんは著書『頭のいい子が育つパパの習慣』の中で、『父親が読み聞かせれば、母親が読み聞かせる3倍の効果がある』と述べています。そして、父親の読み聞かせが効果的な理由の1つに、“父親が仕事で疲れて帰宅していることを理解しているので、そんな父親が読み聞かせをしてくれたことに(子どもが)自分への強い愛情を感じること ”をあげています。このように、たとえ子どもと接する時間は少なくても、親子で絵本を楽しむことで絆を深めることができると思います。●(2)1つの絵本をさまざまな観点から捉えることができる“子どもが父親と母親に求めることには違いがある”とする主張もあります。たとえば、父親に抱きかかえられた子どもは心拍数と呼吸数が“増加”し、母親に抱きあげられた子どもは心拍数と呼吸数が“減少”するというデータもあります。この現象を、読み聞かせの状況にあてはめて考えると、同じ本を読む場合でも、パパが読む場合とママが読む場合では子どもの捉え方に違いがみられる可能性があります。特に、『三びきのやぎのがらがらどん』や、『めっきらもっきらどおんどん』などの迫力のある絵本は、パパが読むことで臨場感が増し、子どものドキドキ、ワクワクをより一層引き出すことができる と思います(興奮しすぎると眠れなくなってしまいますので、読む時間帯には十分注意をしましょう:笑)。また、お子さんにとっては、絵本に対するパパとママの着眼点(例:強調する部分・説明の仕方)の違いも興味深いところだと思います。わが家の場合も、私が読む場合と主人が読む場合では、ストーリーに対する説明の仕方がだいぶ違います。そのことによって、子どもたちは新たな視点に気づくことができ、絵本を何倍も楽しんでいるようにみえます。このように、パパが読み聞かせに参加することで、1つのストーリーに対してさまざまな観点からみる力や表現力、そして想像力などを育むことが期待できるのではないでしょうか。----------いかがでしたか?今回はパパの読み聞かせから得られる2つのメリットをご紹介しました。読み聞かせは“心の栄養”ともいわれます。お子さんの心にたくさんの栄養を注いでいきましょう!【参考文献】・『頭のいい子が育つパパの習慣』清水克彦・著・岩田英作・マユーあき・岡本千佳子・尾崎智子・内田絢子(2016)父親による読み聞かせの実態島根県立大学短期大学部松江キャンパス研究紀要,55,113-121【参考リンク】・読みメンになろう! | 鳥取県立図書館()・「子育ての意識:父母の子どもとの接し方」第6回21世紀出生児縦断調査結果の概況 | 厚生労働省()・父親の子育てに関する調査 | 第一生命保険株式会社(PDF)()●ライター/今井千鶴子(臨床心理士)●モデル/貴子(優くん、綾ちゃん)
2017年06月27日子育ての情報はたくさんあふれていますが、限られた時間の中で、何から手をつけていいのかわからず悩むママは少なくありません。特に働くママは、なかなか子どもと向き合う時間が取れず、「子どもをしっかり育てたい。でも、時間がない!」という焦りを感じてしまうのではないでしょうか。任意団体「大切にしたいこと。」主宰であり、NPO法人「孫育てニッポン」の代表でもあるぼうだあきこさんは、産後ママの応援団長として、各地でママの気持ちをラクにする講演をされています。ご自身も働きながら2人の男の子を育てたぼうださんに、「子どもと向き合う時間がない」と焦るママたちの心がラクになる子育てのヒケツを聞きました。「大切なこと」3つで、自分だけの子育て軸を作る!子どものために、あれもこれも取り入れようとすると、どれも中途半端になってしまい、罪悪感がわいたり、疲れ果てたりしますよね。ぼうださんは、「自分が子育てで大事にしたい、小さな3つのことを『子育て軸』として続けるだけで十分です。軸が決まれば、情報に不必要に振り回されることもなくなります」。その軸は、どうすれば決めることができるのでしょうか。「まずは、子育てで大切にしたいことを、思いつく限りたくさん書き出してみてください。そして、その中から、絶対に大切にしたいことを3つだけ選んでください。大げさなことではなくて、毎日必ず行う行動でできることにしてください」。ちなみに、ぼうださんが子育てで大切にしていたことのトップ3は下記。1.朝ごはんには、あたたかい汁物を出して、家族で食べる2.家族が出かけるときは、必ず「行ってらっしゃい」と言いながら見送る3.手をつないで歩く確かに、どれも特別なことではなく、日常のとても小さなことですね。「食う、寝る、遊ぶ、を通じて体と心を整えることを大切にしたい」という、ぼうださんらしい選択です。子どもと一緒の朝を大切にできれば100点!?ぼうださんは、生活を朝型に整え、朝を大事にする子育てをおすすめしています。「夜は、みんな疲れていますから、ぐうたらでいいのです。朝、きちんと起きて、みんなそろって朝ごはんを食べることで、子どもの体調もわかりますし、毎日同じように1日がスタートすることで、子どもの気持ちも落ち着きます。また、塾などで子どもが忙しくなると夕食を一緒に食べることは難しくなりますから、幼少期から、”朝だけは必ず家族一緒”という生活習慣を作っておくことは大事です」。そして、ぼうださんは、「朝ごはんを一緒に食べて、『行ってらっしゃい』と見送ることができれば、それだけで母親としての1日は100点です」と言います。「それでも、まだ時間と気持ちの余裕があるようなら、絵本を読むなど、3分程度でできることを追加してもいいですね」。車と自転車を降りて、手をつなごう!ぼうださんが、3つ目に大切にしていたことは、手をつなぐこと。何でもないようなことですが、「手をつなげるのは、歩いているときだけなんですよ」という言葉にドキリ。ぼうださんは、保育園や幼稚園の送り迎えや、子どもと一緒の買い物などは、車や自転車ではなく、手をつないで歩くことをすすめているそうです。「歩いて15分のところを、車に乗ったら5分に短縮できますね。それによって、子どもとの時間が短縮され、家にいる時間が長くなります。でも、多くの母親は、家では『子どもと向き合う母親』としての役割ではなく、『家事をする家政婦』としての役割が増えてしまいます。忙しい日々の生活の中で、『母親である時間』をうまく作り出すためにも、移動時間を短縮するのではなく、子どもと手をつないで歩く時間にしてみては?」。手をつなぐことの利点は、親子の絆を深めるだけではないそうです。「車が近づいてきたり、横断歩道で立ち止まったりするとき、母親は子どもの手をギュッと握りますよね。その感覚によって、子どもは体で危険を感じることができるのです」。さらに、母子で歩きながら、近所の人にあいさつをしたり、商店街で買い物をしたりすることで、まわりの大人に覚えてもらえるので、災害時なども心強いそうです。自分の子育て軸は、心理的なお守りとなるぼうださんは、子育てで、自分が大切にしたいことが決まれば、夫婦で共有すること、書いて壁などに貼っておくことをすすめています。そうすると、例えば、「洗濯物も干したい、でも、ちょうど子どもが出かけようとしている」という状況のときに、迷わず洗濯物を置いて、子どもを見送ることができるとか。そして、「とにかく自分が決めたことを守っていれば、『これだけはやっているから大丈夫』という自信にも、心理的なお守りにもなります」。ぼうださんが子育てで大切にしていることは、「それだけでいいの?」と拍子抜けするほど当たりまえのことのようでもあり、意識しないと疎かになりがちなことでもありますね。自分なりの3つの子育て軸、改めて考えてみたくなりました。ぼうだあきこさんブログ法人 孫育て・ニッポン(理事長:ぼうだあきこさん)にっぽんネウボラネットワーク研究所(副代表:ぼうだあきこさん)<文:フリーランス記者鯰美紀>
2017年06月23日こんにちは。子育て支援を専門にする臨床心理士の今井千鶴子です。皆さんは、子育てを漢字一文字で表すとしたら、どんな漢字が浮かびますか?『株式会社バンダイ』の調査では、トップ5は「愛」「楽」「忍」「喜」「学」でした。このアンケート結果が示すように、子育てをしていると楽しみや喜びを感じる一方、我慢や学びもあると思います。今日は、親が子育ての手法を学ぶ『ペアレントトレーニング』についてご紹介します。●ペアレントトレーニング(通称:ペアトレ)とは?ペアトレとは、親が子育ての知識とスキルを学ぶトレーニングです。ペアトレでは、子どものさまざまな行動に対してどう対応したらよいのかを学ぶことができます。プログラムの内容は、対象や手法によってさまざまですが、多くのプログラムで共通していることがあります。それは、次の視点です。・子どもの好ましくない行動に気づき、それを減らしていく・子どもの好ましい行動に気づき、それを伸ばしていく子育てをしていると、好ましくない行動を減らすことばかりに目が向きがちですが、実は、“好ましい行動をいかに伸ばすか”という視点が重要 です。好ましい行動のレパートリーが増えると、自然と好ましくない行動は減少していきます。これまでの研究から、ペアトレに参加することで子どもの気になる行動の改善だけでなく、親のストレス低減も報告されています。親のストレスが低減した理由は、子どもに対する適切な対応を学ぶことによって、子どもの行動が変化し、子育てが楽になったためとも推測されています。●子どもの好ましい行動を伸ばすためにできることお子さんの好ましい行動を伸ばすためには、“ほめる”ことも大切です。子どものいいところ(好ましい行動)を伸ばすための“ほめのコツ”を2つご紹介します。●(1)結果ではなくプロセスをほめるアメリカの心理学者ドゥエックは、能力を褒められた子(例:頭がいいね)よりも努力を褒められた子(例:粘り強く頑張ったね)の方が、やる気が高く、後の成績が高くなることを指摘しています。努力をほめられた子は、失敗しても「努力が足りない」と考え、失敗を乗り越えるためにチャレンジしやすい ことがわかっています。●(2)子どもに「どうやったらそんなにうまくできるの?」と質問してみる大人から“驚かれる”ことによって自信を高めるお子さんもいます。また、小学校低学年ごろまでの子どもの多くは、“どうやったらうまくいったか”をあまり意識していないと言われます。そのため、ママが「どうやったらそんなにうまくできるの?」と質問し、うまくいった方法を子ども自身が自覚できるように促す とよいでしょう。そうすることで、次の機会も子どもにとって望ましい結果が得られる可能性が高まります。----------一方、叱るときのコツですが、支援現場では“太く、短く、端的に ”を合言葉としています。長々と叱っては、本質が見えなくなります。もちろん、嫌味やダブルバインドもNGです。また、小さいお子さんの場合は視点取得が未発達のため、「相手の気持ちに立って考えてごらん」という言葉がけは通じにくいものです。“太く、短く、端的に”をポイントに、ママはお子さんに伝わりやすい言葉を選んでいきましょう!●叱ることが逆効果となるケースがあるママに注目されたいという思いが強すぎて、わざとママをイライラさせる行動をとってしまうお子さんもいます。ママが叱れば叱るほど、望ましくない行動(ママをイライラさせる行動)がエスカレートする場合は、ママが叱ることがお子さんにとっての“ご褒美”となっている可能性もあります。この場合、叱ることは意味をなしていません。今回のようなケースへの対応についてペアトレの発想から考えてみると、好ましくない行動を叱るのではなく、“好ましい行動をしているとき”をあえて狙ってほめる のです(ママをイライラさせる行動を1日中していることはないはずです。親子で楽しく過ごせている時間にたくさんほめましょう)。“叱られる”ということも“褒められる”ということも、お子さんにとってはママからの注目を得ていることに変わりません。そうであるなら、双方が気持ちよく過ごせる方を選択してみませんか。----------いかがでしたか?今回はペアトレのエッセンスをご紹介しました。何かの参考になれば嬉しいです。【参考リンク】・バンダイ子どもアンケートレポートVol.134~子育てを「漢字一文字」で表すと何ですか?~ | 株式会社バンダイ(PDF)()●ライター/今井千鶴子(臨床心理士)●モデル/椎葉咲子(苺乃ちゃん、胡桃ちゃん)
2017年06月20日こんにちは。子育て支援を専門にする臨床心理士の今井千鶴子です。お子さんはどんな遊びが好きですか?ある調査では、幼児が最も好きな遊びとして“ごっこ遊び”が報告されています。わが子も毎日のように恐竜ごっこやお医者さんごっこをして遊んでいます。このように、子どもたちに大人気のごっこ遊びですが、実は子どもの成長にとっても“最強の遊び” といえます。ただ、そうはいっても「ごっこ遊びを一緒にするのがつらい」というママの声もよく耳にします。ママがごっこ遊びをつらいと感じる理由はさまざまですが、“ごっこ遊びの様子からお子さんの成長に気づく”という視点をもつことで、ごっこ遊びへの意識がガラリと変わることもあります。そこで今回は、ごっこ遊びにスポットをあて、ごっこ遊びからお子さんの成長に気づくための2つのポイントをご紹介します。●(1)見立て遊び初めは、実物さながらのおもちゃを使って遊んでいた子どもも、発達が進むにつれて、“身の回りにある別のもの”を本物に見立てて遊ぶようになります。たとえば、戦いごっこといえば、初めのうちはウルトラマンや怪獣のフィギュアを用いて遊んでいた子どもも、次第に身の回りにある別のもの(例:スマホはウルトラマン、ペンは怪獣など)にその役割を与えて遊ぶようになります。ママから見ると、スマホとペンが戦っているわけですが、子どもの心の中ではウルトラマンと怪獣が戦っています。このような身の回りにある別のものに役割を与えられるようになった子どもは、“表象”を理解している といえます。このような力は、子どもがさまざまな抽象的概念を理解するうえで役立つ ことがわかっています。そう考えると、実物さながらのおもちゃをたくさん与えるよりも、ある時期がきたら“見立て遊び”ができる環境を意識することも大切なのかもしれません。●(2)視点取得ごっこ遊びで役柄を演じるときには、“視点取得(してんしゅとく)”という相手の視点に立ち理解する ことが求められます。「ママだったら、こうするな」「パパだったら、こう言うな」など、相手の視点に立つことで、人の気持ちがわかるようになっていきます。また、お子さんが一人二役を演じている場面を見たことはありませんか?実は、このようなおもちゃなどに役柄を与え、1人が2つ以上の役割を演じることはすごいこと なのです!この遊びは、たくさんの視点取得を使いながら、それを切り替えたり、ストーリーを作ったりしながら進めていくので、状況や文脈を客観的に理解する力を育てます 。さらに、役柄を演じるときには、子どもがその役柄をどのように認識しているかもわかります。たとえば、母親役をしている女の子が、怒ってばかりいる母親を演じている場合は、普段から母親をそのような視点で認識していることを伺い知ることもできます。「ごっこ遊びから家庭の様子がわかる」とも言われるほどです。この話を聞くたびに私も親として気をつけなければ……と思います(笑)。この他にも、ごっこ遊びが言葉の発達や感情の豊かさにつながることも指摘されています。このことからも、ごっこ遊びが子どもの成長にとって大切な遊びであることがわかるのではないでしょうか。----------いかがでしたか?今回は、ごっこ遊びにスポットをあて、ごっこ遊びの様子からお子さんの成長に気づくためのポイントをご紹介しました。すべてのお子さん、そしてママが笑顔あふれる毎日を過ごされますよう心より願っています!【参考リンク】・村田光範,内山聖,岡田知雄,加賀谷淳子,本田悳,松岡優幼児が行っている遊びの種類に関する調査.厚生省心身障害研究「小児期からの総合的な健康づくりに関する研究」効果的な運動及び体力向上の方策に関する研究,平成9年度報告書,15-18, 1998.(PDF)()●ライター/今井千鶴子(臨床心理士)●モデル/NANAMI(RIRIAちゃん)
2017年06月13日テーマは「家族支援」−第10回教育実践フォーラム開催!Upload By LITALICOニュース2017年7月23日(日)の13時より、東京・品川の立正大学にて、子どもの発達と家族支援をテーマとしたイベント、「教育実践フォーラム」が開催されます。登壇者は、家族支援研究の第一人者である立正大学心理学部の中田洋二郎教授、鳥取大学大学院の井上雅彦教授ほか、教育と家族支援に携わる研究者、実践者、保護者の方々。「障害のない社会をつくる」をビジョンに、児童発達支援事業や就労支援事業などを展開する株式会社LITALICOが主催し、教育を取り巻く課題と実践、未来の展望を考える「教育実践フォーラム」。2012年の初回企画から数えて、今年で10回目の開催となります。第10回のテーマは「家族支援」。子どもの発達が気になる家族に対する有効な支援方法として行われている「ペアレントトレーニング」の最新の実践・研究動向を取り上げながら、子どもと向き合う保護者たちがどんな困難や悩みを抱えているのか、保護者に対して学校の先生たちや専門家はどのような支援をすべきか、登壇者や来場者の皆さまと一緒に考えていきます。第10回教育実践フォーラム専門家と保護者、それぞれの立場から語る「ペアレントトレーニング」の意義フォーラムの基調講演は、家族支援の第一人者として、長らくペアレントトレーニングの研究と実践を積み重ねてこられた立正大学心理学部教授の中田洋二郎先生。子どもの「困った」行動を分析・修正し、より良い行動を促すペアレントトレーニングは、これまで子どもの養育に悩み苦しんできた保護者の方々にとって、具体的な問題への対応方法を習得し、自信を取り戻す手段として有効だと言われています。一方で、子どもの困難や障害に対する理解を深め、自分自身の行動を変化させていくことは、保護者の方々にとって新たな不安や負担にもつながる可能性があります。ペアレントトレーングが成功し、子どもも、保護者も過ごしやすい環境を作るためには、専門家が単なる技法の伝授にとどまるのではなく、子どもの障害への保護者の認識の変容過程を踏まえ、保護者が孤立しないための配慮や支援が必要になります。中田先生の講演では、保護者の障害認識のあり方などペアレントトレーニングを実施する上で支援者が理解しておくべきことについてお話いただき、家族支援とは何かを会場の皆さんと一緒に考えていきます。Upload By LITALICOニュース中田 洋二郎立正大学心理学部教授専門は発達臨床心理学、発達障害の家族支援。東京都立の知的障害児通園施設の心理判定員を務めた後、国立精神・神経センター精神保健研究所 思春期精神保健研究室長、福島大学大学院教育学研究科教授を経て現職。臨床心理士。基調講演のあとは、専門家・保護者それぞれの立場からペアレントトレーニングについて語るパネルディスカッションです。モデレーターは、鳥取大学大学院教授の井上雅彦先生です。Upload By LITALICOニュース井上雅彦鳥取大学大学院 教授/LITALICO研究所所長(アドバイザー)応用行動分析学を理論的基盤として障害や不適応状態について「環境」と「個人」両方向からの心理的支援や教育を研究。ペアレントトレーニングシステムなどの支援プログラムの開発をはじめ、著書も多数。パネリストは、東京・江戸川区の「まめの木クリニック」にてペアレントトレーニングを実践されている臨床心理士の庄司敦子先生、LITALICOジュニアでのペアレントトレーニングの作成・研修・実施を担当する井田美紗子の2名。それぞれの現場での取り組みが発表されます。中田洋二郎先生は基調講演に引き続きメインコメンテーターとして登壇。また、実際にペアレントトレーニングを受けたことのある保護者の方にもコメンテーターとしてご登壇いただき、ペアレントトレーニングを受けてよかったこと、フォローアップの要望なども含めたペアレントトレーニングのニーズをお話いただきます。7/23(日)教育実践フォーラム詳細開催日時: 7月23日(日) 13:00~17:50(12:30~受付)定員:500名参加費:無料(事前申込制)対象:小学校~高等学校、幼稚園、保育施設の職員、スクールカウンセラーなど、子どもの教育や医療・福祉・行政機関など子どもの支援に関わられている方その他、子どもの発達が気になる保護者の方、教育や発達支援について研究している方など、ご興味のある方はどなたでもお申し込み・ご参加いただけます。会場:立正大学 品川キャンパス 石橋湛山記念講堂(東京都品川区大崎4-2-16)アクセス:「大崎駅」より徒歩5分「五反田駅」より徒歩5分「大崎広小路駅」より徒歩1分お問い合わせ:03-5704-7361(地域教育相談室 岡野)※お申込みは下部ボタンのお申込みフォームよりお願いいたします。お申し込み締め切り:7月22日(土)13:00まで主催:株式会社LITALICO(LITALICOジュニア)12:30~受付開始13:00~開会挨拶&LITALICOの家族支援について(20分)13:20~ペアレントトレーニングの有効性に関する研究報告(20分)13:40~中田洋二郎先生による基調講演(120分)15:40~質疑応答&休憩(15分)15:55~パネルディスカッション(100分)17:35~質疑応答、閉会挨拶、インフォメーション(15分)17:50~教材・展示コーナー自由閲覧(20分)学校や幼稚園、保育園の先生やカウンセラーの方々、子どもの発達が気になり、ペアレントトレーニングに関心がある保護者の方々をはじめ、「家族支援」にご関心がある方はどなたでもご参加いただけます。たくさんの方のご来場をお待ちしております!※2017年6月13日追記:満席のためフォーラムの申し込みは締め切りました。たくさんのお申し込みありがとうございました。残念ながら今回ご参加いただけなかった方も、次回以降のイベント情報をお待ちいただければ幸いです。第10回教育実践フォーラムジュニアペアレントトレーニング
2017年06月09日きっかけは「異才発掘プロジェクトROCKET」中邑賢龍先生のお話出典 : きっかけは、息子と参加した「異才発掘プロジェクトROCKET」のセミナーでの中邑賢龍先生のお話でした。「おこづかい制なんてものはやめた方がいい、何も働いていないのにお金なんか渡すからダメになる」というような内容。それまで、小学生は100円ずつアップで5年生なら500円、中学生からは1,000円ずつアップで2年生なら2,000円という父親が決めた定額制のおこづかいだった我が家。5月1日になり、いつものように父親がおこづかいを渡したところで、息子が中邑先生のお話を持ち出しました。「そのやり方ダメだってよ」と、息子が話を始めたので、私も「お手伝いした分あげることにしよっか」と提案。娘もそれでいいと言い、父親もそれならと、我が家のおこづかい定額制は廃止で可決しました。我が家の新しいおこづかい制度出典 : これまで毎月500円もらっていた娘と、5,000円もらっていた息子。1回のお手伝いでいくらのおこづかいを渡すかが争点となりました。1回10円だと娘は1日に2回手伝いをすれば1か月に500円を超えるけれど、息子は1ヶ月に500回もおてつだいをしなければ今までのようにはおこづかいをもらえない。「オレは別にお金いらないからいいよ」と息子が言うものの、1回10円はさずかに安すぎるだろうという話になりました。「1回50円にする?」と私が投げかけると「高すぎない?」と夫。「でも、お兄ちゃんは100回手伝わないと今までのようにはもらえないよ…」そこで、とりあえずおてつだい1回で1ポイントのポイント制にして、1ポイント=50円で良いかは今後の状況によって変更も有りにしようということで新制度はスタートとなりました。我が家だけの通貨単位出典 : そして、ポイント制の発足だけでは終わらないのが我が家。「ポイント」というのが面白くないということで、新しい単位を決めようという流れに…様々な案が出ましたが、我が家はみんなイニシャルがSNなので1SN(スン)という通貨にすることにしました。「お手伝い1回1SNね」「えー、何でも1回1SN?」「簡単なのはイージーとかすればいいじゃん」また、学校になかなか行けない息子と、やはり時々何かしらで休んでしまう娘。「学校に行きたくない時に行ったら?」考えた結果、学校に行くことにもSNを与えることにしました。様々な意見?質問?が飛び交って、決まったことを整理すると下のように。・お手伝い(ハード)3SN・〃(ノーマル)2SN・〃(イージー)1SN・学校に行きたくないけど自力で行く3SN・〃送ってもらう2SN・〃遅れて行く1SN「デノミが起こるかもしれないよ」と、夫からデノミについての説明もありつつ、こうして我が家の小さな経済活動がスタートしたのです。デノミネーション(英: denomination)とは、通貨の単位を表す言葉である。日本語においては、それを切り下げる、もしくは切り上げることとして使われることもある。国内の全ての資産と負債に対して行われる。インフレーションなどにより、通貨金額の桁数表示が大きくなると経済活動に支障をきたすので、その解決のために行われる。デノミと省略されることが多い。息子と娘、新制度になってどうなった?Upload By SONO娘は元々お金が好きで、物欲は低いものの好きなものをたまに買うためにおこづかいを貯めていました。いつものようにお手伝いをしては、「今の何SN?」と表に書き込んでいました。息子の方は、欲しいものもめったになく、お金も要らないと言っていたので、やはり消極的。手伝いを頼んだタイミングが良ければ手伝ってくれるものの、記録もうっかり忘れたりする始末。「後でやるわ」と言ってお菓子を食べながらゴロゴロする姿を見て、わたしは新たなシステムを追加することにしました。働かざるもの食うべからず?息子に効果てきめんだった追加の制度出典 : 新たなシステム、それは家で食べるおやつもSNで購入する制度です。現在1SN=50円なので、100円のお菓子が2SNで買えることになります。小袋のお菓子などは50円分ずつに袋分けをして「1SN」と書いたシールを張りました。また、娘が面倒だと言うので、ホワイトボードに表を作り、マグネットで1SN、2SN、5SN、10SNなど貼れるようにしました。この新たなシステムは、息子にはピッタリだったようで、SNを得てお菓子を買うために自発的に動くようになりました。「わー、すごい。言われなくても手伝うなんて、楽チンやわ。自発ポイント1SN追加するわ。」思わず言った追加ポイントに、お菓子とSNを交換しながら追加SNの分を嬉しそうにホワイトボードに貼る息子。娘のSNが増えすぎておこづかいが高すぎになるのではと夫は心配していましたが、現金に換金できるSNは定額制の時とあまり変わらなそうです。息子は現金収入はなくなりそうですが、それはそれで本人も求めていないので今のところはいいでしょう。家庭内通貨の導入で良かったこと出典 : 私としては、買っても買ってもすぐになくなっていたお菓子もあまり減らなくなり、お手伝いは気持ちよくしてもらえて、何だかとても満足です。息子はやはり学校に行けず、娘も行きたくない時は行かないのですが、息子の笑顔は増えた気がします。労働の対価を得ること、得たもので欲しいものを手に入れることというのは、人間にとって大切な活動なのだと感じました。お金について学ぶ機会にもなり、手伝うことが増えて経験にもなっているので、この仕組みはできるだけ長く続けていけたらと思います。
2017年06月04日こんにちは。子育て支援を専門にする臨床心理士の今井千鶴子です。みなさんは、お子さんの“誕生月”を気にされたことはありますか?今回は、“早生まれ”と“遅生まれ”に分けて、それぞれのお子さんを育てるときに気をつけたいポイントをご紹介します。●早生まれの場合ちょっと昔の話ですが、某有名私立の小学校が設立されたときから数年、入学試験のお手伝いをしたことがあります。当時は子どもがいなかったので(結婚もしていませんでした)、入試が誕生月ごとに行われていることにとても驚いた覚えがあります。誕生月ごとにグループ化された子どもたちをいろんな試験が行われている教室へ誘導する係でしたが、生まれ月によって子どもの発達に“差”を感じました。もちろん個々の子ども自身の差はありますが、一般的には、早生まれの子は遅生まれの子に比べて、体格や体力、学力などで引けを取る傾向にあります (ちなみに、小学校入試に関しては、早生まれが不利にならないように考慮されている学校も多いかと思います)。実は、私自身も早生まれですし、息子2人も早生まれです。これは、私自身の経験ですが……小学1年生の成績は惨憺たるものでした。もちろん、早生まれでも成績の良いお子さんはいますが、早生まれのお子さんは遅生まれのお子さんに比べて、私のように勉強の初期でつまずいてしまう傾向が多々あります。ですから、早生まれのお子さんがいるママには、これから紹介することを気にかけて、お子さんを健やかに成長させてほしいと思います。まず、多くのお子さんは「自分は早生まれだから成績が悪かった」とは考えません。それよりも、「成績が悪いのは自分の“能力”が低いから」と思いがちです。その結果、「自分はバカだから勉強してもできない」「自分は足が遅いから頑張っても仕方がない」などと考えてしまうこともあります。そんなときは、ママからお子さんに“早生まれ”のことをわかりやすく説明してみてもいいでしょう。また、早生まれに対するママの意識が乏しいと、早い時期から「この子は勉強(運動)ができない」と決めつけてしまうこともあります。ママはそういった決めつけを絶対にしない ようにしてください。さらに、早生まれのお子さんがいるママにオススメしたいのは、お子さんが“楽しく学ぶ“土台を作ることです。これは月齢による差を気にすることなく今から取り組めることです。例えば、読み聞かせを習慣にすることによって、「これはなんだろう?」「もっと調べてみたい!」といったお子さんの学ぶ意欲を育てることができます。この“楽しく学ぶ力”を育てておくことは、目先の成績(結果)だけにとらわれることなくお子さんが“意欲的に学ぶ”という原動力になります。心理学者として言えることは、意欲さえあれば、学びは必ず実る ということです。それは、多くの偉人たちがさまざまなハンデを抱えていても、家族の支えで自信を持ち続けていたエピソードからも知ることができます。また、先生の中には誕生月をあまり意識されていない方もいます。もし、お子さんの様子で気がかりなことを伝えるときには、「早生まれだから、少し○○が難しいかもしれません」といった早生まれであることを知らせる“枕詞”をつける のもオススメです。そうすることで、先生からお子さんの発達に寄り添ったサポートをしてもらえる可能性が高まります。ちなみに、小学校高学年ごろには月齢による差は見られにくくなることがわかっています。ですから、ママも気持ちを楽にして、発達の差が見られにくくなるまでのあいだ、いかに“お子さんの自信を失わせないか”を考えていきましょう!●遅生まれの場合先ほども述べたように、特に小さいうちは、1年で大きく成長します。早生まれの子が産まれたころにはすでに歩き出しているお子さんもいるほどです。このような運動面だけでなく、生活面などにおいても、遅生まれのお子さんは「自分はできる」と思える環境に置かれやすくなります。この点は遅生まれの強みだと思います。しかし、遅生まれのお子さんの場合は気をつけなければいけないこともあります。それは、“周囲からの過剰な期待 ”です。もちろん、期待はお子さんにとってプラスの面をもつのですが、お子さんが“負担を感じる”期待はNGです。例えば、「4月生まれなのに、そんなこともできないの」「3月生まれの○○くんはできるのに……」といった言葉かけです。このような月齢と絡めた言葉かけや、誰かとの比較による言葉かけはお子さんの自信を奪うことがあります。傷ついた自信を回復するために、自分ができることを過剰に自慢し、友だちを傷つけてしまう子もいます。また、特別な努力をしなくても、小さいころから優秀な成績をおさめてきた遅生まれのお子さんの場合、月齢による差が見られにくくなる時期に成績が落ち込んだときには、人一倍自信を失う こともあります。こうしたことを防ぐためには、遅生まれのお子さんにも小さいころから“努力すればできる”ことを根気よく伝えていくことが大切ではないでしょうか。----------いかがでしたか。今回は早生まれ・遅生まれのお子さんを育てるときに気をつけたいことを紹介しました。ここではあくまで一般論を述べてきましたが、発達には個人差があります。ですから、目の前のお子さんの発達に寄り添い、ゆったりとした気持ちで成長を見守ることが大切だと感じます。すべてのお子さんが幸せに、そして個性豊かな力を発揮できることを心から願っています。【参考リンク】・誕生日と学業成績・最終学歴川口大司・森啓明 | 日本労働研究雑誌(PDF)()●ライター/今井千鶴子(臨床心理士)●モデル/椎葉咲子(苺乃ちゃん、胡桃ちゃん)
2017年05月30日民間の発達障害支援施設はどう選べばいいの?専門家に聞きました。発達に凸凹がある子どもの保護者にとって「どんな民間の支援サービスや学習塾を選んだらよいか」は頭を悩ませるテーマのひとつ。長年、特別支援教育の第一人者として活動を行ってきた大南英明先生に、民間の発達障害支援サービスの種類や選ぶ際に気をつけるべきこと、早期療育の意義などをお伺いしました。Upload By 福井万里【プロフィール】大南 英明全国特別支援教育推進連盟理事長1937年生まれ。公立小・中学校教諭、養護学校教諭を経て、東京都教育委員会指導主事に就任。文部省初等中等教育局特殊教育課教科調査官、東京都教育庁指導部心身障害教育指導課長、都立青鳥養護学校長を経て、98年帝京大学文学部教育学科教授に就任。2003年4月から帝京大学文学部教育学科長を兼任。2005年帝京大学小学校初代校長。2008年帝京大を定年退任、放送大学客員教授。人権擁護推進審議会委員。民間の発達障害支援サービスにはどんな種類が?一般の学習塾も有力な選択肢出典 : ー民間による発達障害支援サービスはどんな種類があるのですか。発達障害支援をする民間サービスというと、大きく分けて、2つの大きな流れがあろうかと思います。・発達障害児への支援を専門として受け入れる療育施設・発達障害児の受け入れをうたっていない一般向け学習塾前者の発達障害児向け専門の事業者は、バックに大学などの専門機関がある場合もあり、担当の指導員だけでは難しい場面には心理の専門家に相談できる仕組みなど、システムや組織が非常にうまくできている傾向があります。例えば、東京未来大学がバックにある三幸学園や、社内に研究所があり専門家の監修体制も敷いているLITALICOジュニア、武蔵野東学園(自閉症児の積極的受け入れを実施)と提携してカリキュラムを作った四谷学院には、発達障害のある子どもに合った専門的なカリキュラムやプログラムがあります。見落としがちなのは、後者である、看板に発達障害児の受け入れを銘打っていない学習塾です。ーそれは盲点ですね。実際、こうした学習塾の中には、30年以上前から現場レベルでさまざまな障害のある子どもの受け入れに取り組んできている施設もあるのです。 そういう施設は、最初は知的障害への支援が主でしたが、近年は発達障害への対応力も高めてきており、私自身どう指導していけばよいか相談にのってきました。独自のノウハウを学習塾ごとにためていっており、コマーシャルやプログラムなどには「発達障害」という言葉はでてこなくとも、今読めば発達障害のある子どもの学びをも想定しているとわかる内容になっています。ーどんなカリキュラムで学習塾が受け入れをしているのですか。障害児と障害のない子どもの内容を分けずに、同じプログラムでステップを細かくして指導しています。今もおそらく障害児を受け入れているとは言っていないけれど、受け入れている学習塾はあると思われます。そういうところは、口コミで広がっているのではないでしょうか。具体例としては、自学でのプリント学習を中心とする学習塾では、実質的には障害児の受け入れをしてきたと思います。療育用のプログラムで指導する民間サービスと、同じプログラムで障害がある子を受け入れる学習塾、この2つの種類の存在が頭にあるといいですね。ー他の種類はあるのでしょうか。最近は中間型も存在します。個人指導や個別指導をしている学習塾で、看板に小さく「学習障害やADHDなどの発達障害のある子どもも受け入れます」などと書いてある事業者です。本当に適切な指導ができるかは確認が必要ですが、わざわざ電車に乗って遠くに行かなくても、身近なところでそういう塾を利用するのも1つの方法だと思います。外からは見えにくい療育施設の質、市町村の無料相談で専門家の積極的活用を出典 : ー発達障害児の受け入れを明記していない学習塾でも、自分の子どもに合うプログラムであれば魅力的な選択肢になると思います。ですが、明示的な情報なしに、わが子に合った学習塾を探すのは難しそうです。障害のある子の親の集まりなどら得られる口コミが参考になります。そういう集まりに参加すると「あそこにいくと、子どもにあったプログラムで良かった」などの声をきけると思います。もうひとつは、自分で判断しないで専門家に相談して確認するといった手もあります。インターネットでも自分で様々な情報を集めることが出来ますが、即断せず、第三者の意見を参考にすることが大切です。ー相談できない専門家が身近にいない場合は、どうしたらよいでしょう。そういうときは、各市町村で実施している発達相談窓口の無料相談がよいと思います。相談する側には臨床心理士などの専門家が担当しているケースが多いです。公の機関なので、特定の施設の相談はできないかと思いますが、「こういう内容のプログラムの学習支援塾を探したのだけど、わが子の特性にあっているか?」などの聞き方は大丈夫です。子どもが3歳ぐらいの小さい時期からでも、相談にのってもらえます。無料で利用できる市区町村の相談機関は、大いに活用するとよいのではないでしょうか。ーなるほど、それは参考になりますね。発達障害のある子どもを受け入れてくれるかどうかも重要ですが、それ以上に気になるのは、実際の指導の質です。民間業者の質はどのようなところから決まってくるのでしょうか。民間事業者の質といった意味では、人、つまりよい指導者がいるかどうかに左右されます。良い指導者が多いところは、その施設の実績として結果がでているはずです。Upload By 福井万里ーよい指導者を探すには、どうしたらよいとお考えですか。一番は、さきほどお話した、お母さん同士の口コミだと思います。コマーシャルだけでは、推し量れない部分です。また、公の機関にも相談してみるといいでしょう。子どもに向くか向かないかは別の問題ですが、悪い情報がはいっているケースなどは、公の機関は意外に情報を持っているので、聞いてみるといいと思います。ただ、その子どもに合わなかった特定のケースの場合もあります。聞ける場合は、苦情の内容も聞き、お子さんの特性に照らし合わせて判断するとよいのではないでしょうか。ー悪い情報が入っているところが、悪い施設とは限らないのですね。そうです。話題になっている業者というのは、いいにつけ悪いにつけきちんとした指導をしています。しかし、ひとつのサービス機関がすべての子どもに合うようになるのは不可能です。コマーシャルや広告などでは、たいてい、どんな子にでも合う指導ができるかのように宣伝されがちです。一方で、口コミなどで伝わる悪い情報というのも、色々工夫はしたけれどやはりその子には合っていなかった、という可能性があります。幅広く展開すればするほど、合わない子もでてきます。そこを加味して冷静に判断するとよいと思います。発達障害のある子どもを受け入れる事業者の側にも、子どもを預かって指導をするわけですから大きな責任がありますが、一方で保護者の側も、施設の見学などの際には自分の子どもの様子をなるべく詳しく説明し、その子とその施設のプログラムや指導が合っているのかどうか、自分でもよく吟味することが大切です。「1対1の個別指導」=良い指導とは限らない出典 : ー次にお聞きしたいのは、指導の方法についてです。保護者の立場からすると、やはり個別指導の方が、自分の子どもの特性にあった対応をしてくれそうに思えます。1対1の個別指導だから良い、ということではなく、お子さんの特性にあった“個別の”指導プログラムを提供できるかどうかが重要です。たとえば、LD(学習障害)でもディスグラフィア(書字障害)とディスレクシア(読字障害)では、困り事が違います。読むことが苦手な子なのに、読むプログラムが多いと困ってしまいます。ですから、個別指導とうたっているところでも、どういう指導内容なのかが大事になってきます。また、1対1の個別指導の方が質が高いというイメージを持たれるかもしれませんが、複数の生徒がいたほうが、緊張感がほぐれて取り組みやすくなる子どももいます。どうしても友だちがいると気が散ってしまう子は別の方法を考えるとして、教えられる子ども側から見ると、生徒が複数の方が精神的に負担が少ないケースもあります。特に、先生と生徒が1対1の個別指導で、相性がよくない先生にあたったときに、子どもにとっては悲劇になります。やっている中で合わなそうであれば、替えてもらう勇気が必要だと思います。相性の問題は、生徒が複数のときはあまり表面化しませんが、1対1になると途端に難しくなってきます。1対1の個別指導の落とし穴だと思います。見学時には教室設備も観察を。子どもが落ち着けないのは、環境要因のケースも少なくない出典 : ー他に民間事業者を選ぶときに、気をつける観点はありますか。学ぶ環境にも目をむける必要があります。設備というと、最新の施設がよいと思われがちですが、そうではなく、子どもが安心する設備に工夫してくれているかです。例えば、天井が高いのが落ち着かないお子さんであれば、布をはって天井を低くすれば、落ち着きますよね。ガラス張りがたくさんあったら、普通の家ではないので、イヤだと思う子どももいます。そういう場合はカーテンをします。どの子にもあった設備をつくるのは難しいですが、あまりお金をかけない工夫ひとつで環境はつくれます。環境について、配慮や相談にのってくれるかどうかも大事なポイントだと思います。ーなるほど。落ち着かない理由を、「障害だから落ち着かない」と言ってしまっているケースをよく聞きます。でもその子が落ち着く環境を作ると、その子は落ち着けるわけですよね。落ち着かない原因が何なのかを見つけることだと思います。ー落ち着かない原因を探ってくれる雰囲気があるところがよい施設なのですね。そうです。ですから、最初のプログラムではすぐに具体的な学習指導などに入らずに、子どもの反応を確認して、もし落ち着いていなければ、何が原因なのかを考えてくれるところがいいですね。いつまでも落ち着かない、指示が入らないというのが、障害のためだと考えてしまったら、そこでストップしまい、子どもの可能性の芽が摘まれてしまいます。子どもの生活スタイルから、民間サービスに何を求めるかを整理しよう出典 : ーカリキュラムについてはどのように選んだらよいでしょうか?その学習施設で何を得たいのか、その子の一日や一年における、その時間の位置づけを考えることが大事です。他にどこにも通えていない子がその学習施設にいくのであれば、他人と触れ合う場所がここしかないので、そこで学ぶことが大事になってきます。しかし、5日間学校に通っている子が、プラスアルファとして通うのであれば、体力、集中力、思考力など総合して、何をどれくらいの時間学んだら良いのか、振り返る必要があります。ー親自身が、要望を整理する必要がありそうですね。そうです。親自身が要望を整理し、「こういうことを望んでいるがそれがかなえられるか?」と聞くことが必要です。また、子どもの成長に対してフィードバックされるような仕組みがあると、より好ましいですね。どんな子も先生が自分のことを褒めているということは、必ずわかります。フィードバックされた親が喜んでいるとさらに子どもは頑張ります。ー他には、どんな観点が必要でしょうか?子どもの興味関心を見極め、子どもが本当に楽しんで取り組んでいるかが大事です。それに合った課題やプログラムを提供するところがいいです。その上で、もう少し欲張ると、家へ帰ってもそこで学んだことを課題として出してもらえるといいですね。同じ課題や教材教具がむずかしければ、「家にある似たもので学習できますよ」とヒントをくれるような場所がいいです。施設での学習時間は限られているので、家庭で関心をもっている内容を毎日できるとなると、ものすごくよいでしょう。ー子どもが楽しんで取り組めているかが重要なんですね。子どもも意外に義務感があって、「ここにきたらこれをやらないといけない」などと考えています。興味も関心も意欲もないのだけど、お母さんに「ちゃんとやりなさいよ」と言われたら、頑張ってやったりするのです。ですが、子ども一人ひとりの関心事や困り事を観察して、楽しみながら取り組ませてくれるところが、真の個別対応です。そういう取り組みができる民間サービスを探すとよいのではないでしょうか。良い指導には、正しい「厳しさ」が重要。見学の際は子どもと指導員の関わり方の確認をUpload By 福井万里ー厳しい指導をするところは、避けたほうがよいのでしょうか。これも、一概に「厳しい」「優しい」と区分けすることはおすすめしません。子どもはある意味、厳しい指導を求めている場合があります。褒められてばかりや、やさしいことばかりしていたら、子どもは興味関心をもちません。そう簡単には達成できないレベルでありつつも、子どもが持ちこたえて乗り越えられるような、絶妙な課題設定ができる指導者がよいでしょう。レベルを段差で例えると、階段は登れないけれど、細分化してレベルアップするスロープ状なら登れる子もいます。その場合は、スロープを作ってくれるような取り組ませ方をしてくれる指導者がよいと思います。座っていられない子に、歩いていいよと放置してしまったら、子どもの姿勢は育ちません。求められる「厳しさ」というのは、強制的に指導するのではなく、子どもが出来ないことを出来るようにしっかり取り組めるようにする指導です。子どもに合わせてしまう指導が現在多いですが、できるようになるためのハードルを作る、正しい「厳しさ」が大事なのではないでしょうか。ー施設を選ぶという観点から考えると、そういう指導者はどうしたら見分けられますか。社会のルールを守るのは障害のある子どもたちも同じです。親が施設を選ぶときは、放置されている子がいないところをみてみるとよいです。動いている子がいても、担当の先生がちゃんと見て、フォローしているのであれば、野放しではありません。教室を見学する際には、他のクラスも見させてもらえるようであれば、その点をみてみるといいと思います。また、他のクラスを見学できなくても、下駄箱ひとつとっても指導が行き渡っているか確認できます。きちんと靴を揃えているかなど、見られる場所はあります。ー大南先生が感じる、民間の発達障害支援サービスの課題は何でしょうか?放課後等デイサービスは、単価が安いので資格がある人が少ない傾向にあります。本来は単価をあげて資格がある人が入ってくる方がよいのでしょう。質の底上げを狙って、厚労省はガイドラインを作りました。ですが、そのガイドラインは、普通の学習施設にとっては、自由度のあるカリキュラムが作りづらくなっているという課題もあります。また、送迎など親への支援を手厚くする一方、子どもも一人ひとりにあったカリキュラムや支援が手薄になるところも多くあります。利用する子ども一人ひとりに寄り添った支援が一番大事なので、そこを見失わないでほしいと願っています。早期療育の利点は「誤った学習や習慣」を未然に防ぎやすいこと出典 : ー大南先生は幼少期の療育についてはどのような考えをお持ちですか。早期の療育にはどのような効果があるのでしょう。比較的学習成果が出るのが早いことや、「誤った学習や習慣」を未然に防ぎやすいことは、早期領域の意義だと言えるでしょう。たとえば、その子に合った指導や支援を受けていないまま6〜8歳になった発達障害の子どもたちが、ちゃんと座れるようになるのにはそこから2〜3ヶ月かかります。それが、幼児の間から指導を始めると、すぐに自分で椅子を動かして座っていられるようになります。そういう状態から小学校で受け入れられれば、その2〜3ヶ月が必要ないことになります。ー早期療育の効果がでやすいのは、なぜでしょうか。まだ、子どもの中に誤った習慣や学習が定着しきっていないからだと思います。例えば、紙があったらぐちゃぐちゃにすることを一度学んでしまうと、紙があるのを見ればなんでもぐちゃぐちゃにしてしまうようになります。しかし、最初から紙をぐちゃぐちゃにしないように教えたり、ぐちゃぐちゃにしていい紙はこれですと教えたりすれば、幼児はよけいな学習をしなくてすみます。ー年齢を重ねたあとに療育をする場合は、どうすればよいですか。人はいくつになっても成長するので、いつから療育を始めても手遅れということはないです。ご家族も本人も大変にはなりますが、どこの時点からでも、人は成長できます。でも、年齢があがればあがるほど、間違った学習が増えてしまいます。そうなると、間違った学習を訂正していくことが、大変になってきます。ですから、子どもの発達障害がわかった時点から、やれることはやっておくことを強くおすすめします。担任、民間サービス、親の3者の連携が、子の発達を促進する出典 : ー民間サービスを利用する際に、小学校の担任の先生と共有する必要はありますか。支援サービスを利用していることを、学校に言いたくないという親もいらっしゃると思います。でも、先程もうしあげたように、支援サービスにどのような位置づけで通わせるのかが大事になってきます。学校で精力を使い果たして疲れ切っていて、支援サービス先で集中できないケースや、学校と支援サービスで内容が重複して飽きてしまっているケースもあります。子どもの抱えている困りごとの解決が、学校と支援先と連携しないとわからないこともあります。親と担任の先生、支援サービスの支援者の3者の連携が、子どもの成長によい影響を及ぼすのだと思います。ー小学校の先生方は、民間サービスの利用に理解があるのでしょうか。子どもの困り事を協力して解決していきたいと、関心をもっている教師はたくさんいます。だから、教師の意欲を見極めた上で、相談していけるとよりよい環境になるでしょう。学校でも取り入れてくれるケースもあります。学校は教科書を消化しないといけないという逃げ口上がありますが、工夫をしようと思えばできることはいっぱいあるのではないでしょうか。現在、小中学校では民間学習塾と連携して、教師の研修をしているところもあります。民間の発達障害支援サービスとも今後連携して、教員を指導ができるとよいと感じます。地域全体で発達障害児教育を盛り上げていくための秘訣は?出典 : ー大南先生は墨田区の社会福祉事業団に50年近く携わってきたそうですが、地域ぐるみで発達障害支援が盛り上がるポイントは何でしょうか。障害がある人たちのニーズを、その地域で公表できる雰囲気があるかだと思います。「何をバカいってるんだ」という地域だったらニーズを公表できません。下町である墨田区は昔から公表できる雰囲気がありました。実際、1953年という早い時期から、墨田区では全国に先駆けて特別支援学級を作ることができました。ーニーズが言える雰囲気づくりの他に、どういう方々が動いたのでしょうか。ニーズが公表できて、中心的に動く人たちがいて、サポートする人たちがいて成り立ちました。そして教育委員会が動いて継続しています。教育委員会を巻き込めるかどうかが、ポイントのひとつです。23区には学校卒業後の余暇活動のボランティアがあります。ただ、充実しているところとそうでないところの格差はありますね。ー余暇活動のボランティアとはどんな内容で、どういう方が携わっていますか。日曜日などにお茶やスポーツなどの余暇活動をサポートする活動です。区民ボランティアも100人くらい登録していただいています。ボランティア講座などを開いて、継続してボランティアに関われるよう工夫しています。高齢者の方のなかには、技能があっても、「お金はいらないからやらせてくれないか」という人が結構いらっしゃいます。眠っている市民の力がもっと活用できるといいなと感じます。ー民間の療育教室でも、地域の商店街との交流が盛んな事例があるようです。放課後に地域の方々が見守るような仕組みができるといいですね。実例を公表していくと、広がりやすいのではないでしょうか。障害がある子をもつ保護者の方々も、そういう雰囲気のある地域は、通いやすくなります。教室を通うこと自体後ろめたさを感じている保護者もいらっしゃいます。それを払拭できるのは地域の雰囲気づくりです。そして、地域の結びつきが深くないと、要望、つまりニーズを伝えづらいですよね。ー最後に発達ナビの読者へ一言をよろしくお願いします。まず第一に、お子様の好きなこと、得意なこと、興味のあることを見つけていただき、一緒に楽しんだり、ほめたりして、お子様を認めることが大切です。「子どもを知る、理解する」ことの第一歩です。お子様の気になること、課題は、保護者の方々の悩みの種になることが多いと思います。しかし、できないこと、課題のない子どもは、どこにもいないことも事実です。お子様のことで悩みをどこへ持ち込めばよいのか、そのことで悩まれることもあろうかと思います。公立の相談機関をまず尋ねることをお勧めします。公立の相談機関が近くにない場合には、NPO法人等が運営する相談機関を訪ねてはいかがでしょうか。それから具体的な指導、支援をしている教室等へ出向かれれば、お子様にふさわしい場所に巡り合えることにつながると思います。そして、お子様の一日のスケジュールを考えて、無理のない、お子様に背伸びをさせない場所と時間を選ぶことをお勧めします。
2017年05月15日こんにちは。子育て支援を専門にしている臨床心理士の今井千鶴子です。新年度ですね。ママと離れ、初めての集団生活がスタートしたお子さんも多いのではないでしょうか。「私が一緒じゃなくて大丈夫かしら?」と、ハラハラドキドキされているママもいらっしゃると思います。臨床心理士としてたくさんの子どもたちを見ていると、すぐに集団生活にとけこむ子もいれば、ゆっくり時間をかけて慣れていく子もいます。ゆっくり時間をかけて慣れていくお子さんの中には、登園時「ママと一緒じゃなきゃイヤ」と不安を見せるお子さんもいます(専門的には『分離不安』とよばれます)。今日はそんなお子さんに対し、ママが気をつけたい4つのポイント についてご紹介します。●(1)ママが一緒に動揺しない「子どもが母親とすんなり離れられないのは、親子のあいだに十分な信頼関係が築けていないから」といった子育てに関する意見を目にすることがあります。また、そのような情報を知ったママから「子どもが私とうまく離れられないのは、私の育て方が悪かったからでしょうか?」などと相談を受けることもあります。それに対する私の考えは、「たとえ親子のあいだに十分な信頼関係が築けていてもすんなり離れられない子もいる」というものです。お子さんにトラブルが起きると“母子関係の問題”ばかりに原因があるとされがちですが、それ以外の要因にもしっかりと目を向けること が大切だと私は考えています。お子さんに「ママと一緒じゃなきゃイヤ!!」と訴えられると、たいていのママは動揺すると思います。でも、ママが真っ先にやるべきことは、子育てへの自信をなくすことではなく“冷静”になることです。たとえママが自信をなくし不安や心配を感じても、お子さんには何のメリットもありません。むしろ、ママの不安がお子さんに伝わり、お子さんはますますママから離れることがつらくなってしまいます 。そのため、ママはピンチなときこそ冷静になり、これから紹介することなどを参考にして対応を考えていきましょう。●(2)園での過ごし方を確認たとえママと十分な信頼関係が築けていても、一日を過ごす場所に“居心地の悪さ”を感じているならばお子さんはママから離れたがらないと思います。むしろ、ママとのあいだに信頼関係が築けていればいるほど、居心地の悪い場所よりもママの近くにいたいと思うのではないでしょうか。お子さんがママから離れるのを嫌がっているときは、居心地が悪い原因を子どもの目線 から探してみましょう。先生に心を開いていますか?仲の良いお友達はいますか?一方、お子さんが園に通いたくなるサポートもしていきたいところです。たとえば、ママから先生にお子さんの得意なことや好きなことを伝えることで、園でその活動を行ったときにフォローしてもらえる可能性 があります。ぬり絵が好きなお子さんだったら、“先生にぬり絵をほめられる”ことがきっかけで園を「楽しい場」と感じられるようになることもあります。先生にお子さんの良さを伝えることをためらうママもいますが、お子さんの良さを誰よりも知っているのはママではないでしょうか。ママから見たお子さんの良さを先生に知っていただくことで、ポジティブな視点でお子さんを見守っていただける機会が増える と私は思っています。ママにはお子さんの一番の応援団になってほしいと思います。●(3)“安心”の経験を重ねるお子さんの中には、曖昧な状況が苦手な子もいます。たとえば、登園直後、園によっては”自由遊び”の状況になっていることがあります。ママと離れた後、何をしたらいいのかわからず困ってしまう ため、離れたくない子もいます。そういうお子さんの場合には、可能であれば先生(同じ先生ならなおよい)に迎えに来てもらいましょう。先生に迎えに来てもらうことで不安な状況(曖昧な状況)を避けることができ、ママとすんなり離れられる子もいます。曖昧な状況で遊ぶことが苦手なお子さんも、何度も“安心”を経験することで次第に自分なりの遊び方を見つけられるようになると思います。そして、最終的には先生が迎えに来なくても平気になることが多いです。まずは、お子さんにとっての安心の経験を重ねていくことを最優先に考えましょう。また、ママと離れた後、泣いている(不安を感じている)時間や行動についても確認しましょう。たとえば、ひと口に“ママと離れた後に泣いている”状況といっても、5分泣き続けているのと、1時間泣き続けているのでは対応は変わってきます。5分後には気分を切り替えて遊び始めるようならそれほど心配はないでしょう。1時間泣き続けている状況が数か月続く場合は、不安だけではない原因があることも考えられます ので、児童心理などに詳しい専門家にアドバイスをもらうと良いと思います。●(4)登園前にできること緊張の強いお子さんの場合は、登園前にからだを動かしてみるのもオススメです。なぜなら、からだの緊張が緩むと心の緊張も緩む からです。もし園まで歩ける距離なら、親子で歩いて登園してみるのもいいですね。園に着くころには少し緊張がほぐれていることでしょう。また、登園前はママの気持ちもリラックスさせましょう。「今日はすんなりバイバイできるかしら?」などと考えていると、お子さんにもその不安が伝わってしまいますし、口が裂けてもそのようなことを伝えてはいけません(初期の段階ではプレッシャーになります)。「大丈夫」「なんとかなる」とお子さんを信じて笑顔を心がけましょう。また、少しでもお子さんの成長が見られたら、「今日の○○くん、カッコよかったよ」「○○ちゃん、がんばったね。先生もがんばったって言っていたよ」など、お子さんのがんばりを必ず認め 、自信を与えていきましょう。絶対にNGなのは、“みんなができることだし、できて当たり前”という態度です。誰かとの比較ではなく、お子さんの中の成長に目を向けていけるといいですね。----------いかがでしたか?今日は登園時「ママと一緒じゃなきゃイヤ」と不安を見せるお子さんに対してママが気をつけたいことをご紹介しました。お子さんにとって楽しい園生活になることを心から応援しています。●ライター/今井千鶴子(臨床心理士)●モデル/大上留依(莉瑚ちゃん)
2017年04月18日「ふるさと納税」と呼ばれる制度をご存じでしょうか?この制度は税制を通じてふるさとに貢献するための制度であり、この制度をより利用しやすくするために平成27年には「ワンストップ特例制度」が新設されました。今回は、ふるさと納税に関する概要とワンストップ特例制度について解説していきます。■ふるさと納税の仕組みは?ワンストップ特例制度って何だろう?ふるさと納税は自治体への寄付に関する制度です。自治体に寄付をした場合に、この制度が適用されると税金の一部(所得税と住民税)が控除されます。対象となる金額は、自己負担額である2,000円を除いた寄付金額の全額です。例えば、あなたが自治体に対して50,000円の寄付をしたとしましょう。自己負担額は一律2,000円なので、ふるさと納税の対象は「50,000円-2,000円=48,000円」となります。この48,000円分の税金が、所得税と住民税から控除される仕組みです。では、ふるさと納税はどのような目的で整えられた制度なのでしょうか?ふるさと納税ができた背景には、日本の現代社会が大きく関係しています。現代の日本では、若年層が地方から都会へと移り住むケースが少なくありません。そうなると、地方出身の方は育った自治体に対して恩返しをすることが難しいため、その問題を解決するためにふるさと納税は制度として整えられました。ふるさと納税では、自分が生まれた街以外への寄付も対象とされています。そのため、学生時代に数年暮らした自治体や配偶者の故郷など、様々な自治体を積極的に応援しやすくなりました。ふるさと納税を通して寄付をした資金は、自治体ごとに少し異なります。各自治体が寄付金の使い道や考え方などをホームページで公表しているので、興味を持った方は一度確認してみてはいかがでしょうか?そのような情報を調べることで、応援したくなる自治体が見つかるかもしれません。【税制改革でふるさと納税はどう変わった?】平成27年の税制改革によって、ふるさと納税は以下の2点が変更されました。・ふるさと納税枠が拡大された・ワンストップ特例制度が新設されたふるさと納税枠は従来の2倍ほどに拡大され、控除対象となる金額が拡大されました。これにより、以前に比べて選んだ自治体をさらに応援しやすくなったと言えます。ワンストップ特例制度についても、ふるさと納税を利用しやすくなるために新設された制度と言えます。控除を受けるためには確定申告が必要になるケースが多いですが、この制度の新設により一定の条件を満たすことで確定申告は不要となりました。つまり、控除を受けるために余計な手間を発生させないための制度です。では、具体的にどのような条件を満たせば、確定申告が不要になるのでしょうか?主な条件としては以下の3つが挙げられます。・寄付をする自治体が5つ以下・サラリーマンなど、確定申告をする必要がない方・申告特例申請書を寄付をした自治体に提出した方上記の中で間違えやすいポイントとしては、寄付をする自治体の数です。ワンストップ特例制度は1年間の寄付が対象となりますが、同じ自治体に何回か寄付をした場合でも、寄付をした自治体は1つとして数えられます。■従来は確定申告が必要だった?ワンストップ特例制度が導入される前は、ふるさと納税には確定申告が必要でした。サラリーマンのように確定申告が必要ない方であっても、ふるさと納税で控除を受けるには確定申告で所定の手続きをする必要がありました具体的には、以下のような手順で控除申請が行われていました。【STEP1】証明書類を用意するふるさと納税を行うと、寄付したことを証明する書類が発行されます。自治体ごとに具体的な必要書類は異なりますが、多くの自治体では確定申告時にこの証明書類が必要です。【STEP2】確定申告書を作成する確定申告については、寄付をした翌年の3月15日までに行う必要がありました。それまでに確定申告書を作成し、税務署や役所などに提出をすることで控除の申請となります。本来確定申告をする必要がない方にとって、上記の手続きは面倒なものです。中には、この手続きによって「ふるさと納税を諦めた…」という方もいることでしょう。元々確定申告の必要がある方にとっては大きな手間ではありませんが、必要がないサラリーマンなどにとっては大きな手間と負担です。そこで導入されたのが、前述でもご紹介したワンストップ特例制度です。この制度の導入により手続きが簡略化され、上記の手続きをしなくても控除を受けられるようになりました。「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を提出する必要はありますが、控除に必要なほかの書類や情報に関しては、この制度を利用することで自治体側がそろえてくれます。確定申告書を作成する場合と比べると、手間や負担を大きく抑えられる方法と言えるでしょう。では、このワンストップ特例制度が導入されたことで、ふるさと納税の実績はどのように変化したのでしょうか?平成27年度の実績を見ると、この制度が導入されたことで状況が変わったことが確認できます。・受入額は約1,653億円であり、前年の約4.3倍・受入件数は約726万件であり、前年の約3.8倍(総務省:ふるさと納税に関する現況調査結果)上記の結果を見ると、ふるさと納税の利用は今後ますます増加する可能性があると言えるでしょう。ワンストップ特例制度を活用することで、余計な手間を減らしつつ好きな自治体に貢献することができ、控除というメリットも得られます。興味を持った方は、一度好きな自治体への寄付を検討してみてはいかがでしょうか?■こんな場合には要注意!ワンストップ特例制度が適用されないケースがある?ワンストップ特例制度には条件が備わっているので、ふるさと納税をしたからと言って必ずしも利用できるわけではありません。では、実際にどのようなケースに該当すると、ワンストップ特例制度が適用されないのでしょうか?以下で詳しく見ていきましょう。【その1】確定申告が元々必要な方ふるさと納税をしなかったとしても、元々確定申告が必要な方は多く見られます。そのような方については、基本的にワンストップ特例制度が適用されることはありません。確定申告が元々必要な方としては、以下のケースなどが挙げられます。・年収が2,000万円を超えているサラリーマン・給与所得が一ヶ所ではなく、複数の企業などから給与が支払われている方・事業所得がある方・不動産所得がある方・副業や投資をしている方確定申告が必要な方は確定申告時に寄付の証明書類を用意しておき、ふるさと納税の控除申請をきちんと行うようにしましょう。【その2】寄付をした自治体の数が多い場合前述でご紹介しましたが、ワンストップ特例制度を利用するには寄付をする自治体を5つまでに抑えなくてはなりません。寄付をした自治体が6つを超えると、確定申告をしなければ寄付した金額は控除がされないので注意が必要です。【その3】その他の還付申告を伴う方ふるさと納税以外にも、還付申告が必要になる制度はいくつか見受けられます。そのような制度を利用する方は、確定申告をしなければふるさと納税の控除を受けることができません。還付申告が必要なほかの制度としては、医療費控除や住宅ローン控除などが挙げられるでしょう。なお、住宅ローン控除については2年目から確定申告が必要ないケースもあります。住宅ローン控除は複数年に及ぶケースが一般的ですが、2年目以降は年末調整で処理がされるので、サラリーマンの方などは確定申告をする必要がありません。ただし、1年目については確定申告が必ず必要になるので、ワンストップ特例制度は適用されないことを覚えておきましょう。■「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」提出後の注意点申告特例申請書を提出した場合であっても、以下のケースに該当する場合は確定申告が必要になる可能性があります。以下でご紹介するケースを確認し、自分が該当していないかをきちんと確かめた上で行動をするようにしましょう。【ケースその1】その年の年収が2,000万円を超えた場合ひとつの勤務先に勤めているサラリーマンであっても、年収が2,000万円を超えると年末調整の対象ではなくなります。つまり、翌年の3月に確定申告をする必要性が生じてくるので、ワンストップ特例制度が利用できません。昇給などにより年収が変化しそうな方は、2,000万円を超えないかどうか事前に確認しておくことが望ましいでしょう。【ケースその2】その年の途中から収入源が増えた場合その年の途中から収入源が増えた場合も、確定申告が必要になるので注意が必要です。雇用形態が変更になった方や、不労収入がある方などは特に意識しておきましょう。【ケースその3】急な病気やけがで多くの医療費がかかった場合急な病気やけがで医療費がかかると、医療費控除の対象に含まれることがあります。ふるさと納税の控除に加えてこの医療費控除も受けたい場合には、確定申告できちんと控除申請をしなければなりません。このようなケースで確定申告を怠ると、「ワンストップ特例制度は利用できるものの医療費控除は適用されなかった」といった状況に陥る可能性があるので注意してください。■ワンストップ特例制度の申し込みは?提出期限はある?ここまでワンストップ特例制度の概要についてご紹介してきましたが、そもそもこの制度を利用するためにはどのような手順で申し込むのでしょうか?以下では、ワンストップ特例制度の申し込み方をステップに分けて解説していきます。【STEP1】申告特例申請書を郵送してもらう前述でもご紹介しましたが、ワンストップ特例制度の申し込みには申告特例申請書が必要になります。しかし、この申告特例申請書は必ずしも郵送されるものではありません。ふるさと納税を希望する場合は、各自治体の払込取扱票に記載をした上で寄付を行います。この払込取扱票に申告特例申請書の欄があるので、必ず「申請書送付を希望する」の欄にチェックを入れるようにしましょう。この欄にチェックを入れることで、自治体から申告特例申請書が郵送されてきます。もしチェックを入れ忘れた場合、待っていても自宅に申請書が届かなかった場合などは、各自治体のホームページから申請書をダウンロードすることが可能です。【STEP2】申告特例申請書を提出する申告特例申請書を手に入れたら、案内などに従いながら必要事項を記入していきます。必要事項をすべて記入し終わったら、ふるさと納税で寄付をした自治体に返送をしましょう。【STEP3】受領されれば完了返送した申告特例申請書が自治体に受領されれば、申し込みは完了となります。申請にはある程度の時間がかかり、記入漏れがあるとさらに手間が発生してしまうので、ワンストップ特例制度の申し込みは早めに行うことが大切です。【2016年以降はマイナンバーも必要!】2016年以降からは申請時にマイナンバーの記載が必要になりました。申請書にマイナンバーの記入欄があるので、自分のマイナンバーを確認した上できちんと記入するようにしましょう。また、マイナンバーに加えて本人確認書類が必要になる点も忘れてはいけません。本人確認書類については、以下のものを用意しておきましょう。・個人番号カードを持っている場合個人番号カードの表面と裏面をそれぞれコピーしたものが必要です。・通知カードしか持っていない場合通知カードのコピーに加えて、顔写真が貼られている本人確認書類のコピーが必要です。具体的なものとしては、運転免許証やパスポートなどが挙げられます。・通知カードを無くしてしまった場合マイナンバーが記載されている住民票の写しに加えて、運転免許証やパスポートなどのコピーが必要です。ワンストップ特例制度の申請は1年中受け付けていますが、提出の期限があります。税金の計算は毎年1月~12月までの期間に基づき行われるので、申請書類の提出はふるさと納税をした翌年の1月10日までであり、この期日までに自治体に到着することが必要となります。この期限を過ぎてしまうと、ふるさと納税ワンストップ特例制度の適用を受けることができなくなるため注意してください。■まとめ今回は、ふるさと納税とワンストップ特例制度についてご紹介してきました。ワンストップ特例制度の開始により、サラリーマンでも利用しやすくなったふるさと納税。この機会に地方創生への想いも込めて、ふるさとへの恩返しやお世話になった地域への貢献の方法として、ふるさと納税を利用してみてはいかがでしょうか?
2017年04月18日新年度になると「またいやいや期が来たんです!」とか「最近、おもらしするようになって…」など、お母さんから相談を受けることがあります。その正体は「新年度へのプレッシャー」かもしれません。そんな時、パパとママの声がけの方法次第で子どもはよりプレッシャーを感じてしまう場合も。そこで、そんな時どうしたらいいのか、対処法をお伝えします。イヤイヤ気はリラックスしている証拠でもあるこの時期になると保育士たちは次年度のクラス担任との引き継ぎを行い、1年間の計画を立てます。担任にとっても3月は1年間の集大成で、完璧な状態で新担任に引き渡したいと考えてしまいます。そのため「もうすぐ○○組のお兄さん、お姉さんになるんでしょう」といった言葉がけをついしてしまうのです。そんな言葉を受け、子どもたちは「お兄ちゃん、お姉ちゃんになるために」と保育園にいるあいだ頑張っています。保育園にいるあいだ緊張状態が続くため、お母さんの顔をみると緊張の糸がほぐれワガママやイヤイヤな態度を取ってしまうのです。緊張が続くと「おもらし」や「どもり」の原因にお母さんが会社で頑張っているように子どもたちも保育園でプレッシャーと戦っています。帰宅後、「お兄さん、お姉さんになるんでしょう」とつい言ってしまうことで、家でも保育園と同じように緊張するようになります。緊張している状態が長く続くのは、子どもにとって極度のストレスにつながります。その結果「おもらし」や「どもり」といった症状が出るようになります。そういった症状を防ぐために、イヤイヤやわがままな態度が出たときは「そっか、保育園で今日も頑張ったんだね~」と優しく声をかけ抱きしめてあげましょう。もし「おもらし」や「どもり」が始まっていたらもし既に「おもらし」や「どもり」が始まっていたら、否定や注意をするのは一旦やめることをおすすめします。この2つは注意を受けて「なおそう」と思うことで酷くなることが多いので、離れているあいだ頑張っていることを認めてあげることが大切です。オムツが取れていてもオムツをはかせよう睡眠中は日中の緊張感から開放されるためおもらしをすることがあります。そういったおもらしの相談を受けたときは、体を暖かくしてあげることとオムツをはかせることをすすめています。オムツをはかせるとなると「せっかくトイレトレーニングを頑張ったのに」という反応をするお母さんがいますが、何よりも大切なのは子どもの精神面です。大人は長年おもらしをしていないので、おもらしをしたときの気持ちを忘れてしまっていますが、トイレを失敗してしまった罪悪感と怒られる恐怖、そして睡眠不足など良いことは1つもありません。そのため一時的にオムツをすることは安心感を子どもに与えることができます。ただし、その際に忘れてはいけないポイントがあります。大切なのは子ども自信に判断させること単にオムツをはかせればよいということではなく、子どもに「オムツをはく」という決断をさせることが大切です。そのためには責めるような言葉がけではなく気持ちよく決断できるような言葉がけが必要になります。例えばこんな言葉がけをしてみてはいかがでしょうか。「最近おもらししちゃうことがあるね。夜すっきり眠れないと元気に保育園でお友達と遊べないから、久しぶりにオムツはいてみる? ずっとじゃなくておもらしが無くなるまでちょっとはいてみない?」こういった言葉がけで子どもが「はく!」と返事をしたらオムツをはかせて寝かせましょう。「はかない!」といったら子どもの気持ちを尊重してあげることが大切です。オムツは単なる応急処置そして、起床時オムツにおしっこが出ていなかったときは、ちょっとだけ褒めてあげてください。目一杯褒めてしまうと、子どもの頭のなかでオムツにおしっこがでていなかった→褒めてもらえる→今日もオムツをして寝よう!という思考になってしまうからです。おもらしが減ってきたら「そろそろオムツやめても大丈夫そうだね!」と子どもに聞いてみてください。もしオムツを続けたいという反応が返ってきたらカレンダーをみて「さよなら」する日にちを決めましょう。どもりは気持ちの焦り。大人はどう対応すればいい?言葉がどもってしまうのは、焦っている証拠です。家族に対して何かを訴えようと一生懸命になることでどもってしまいます。どもりが出たときは否定をするのではなく「ママがちゃんとお話聞いてあげるからゆっくりお話してごらん」と時間をとってお話を聞いてあげるようにしてください。「おもらし」や「どもり」が出たら必ず先生に伝えようストレスがたまったときに出る症状は「おもらし」や「どもり」だけでなく「あくび」や「チック症」などさまざまです。普段と違う様子が伺えるときは、必ず先生に相談しましょう。中でも「チック症」や「どもり」は、お友達からからかわれてしまう原因にもなるので、保育中の子どもの精神面を守ってあげるためにも報告するのが大切です。報告することによってきっと担任の先生からお子さんに合った対応方法を話し合えるきっかけになると思います。
2017年04月17日保育所不足、待機児童問題、少子化問題の解決をめざすために2015年4月からスタートしている『子ども・子育て支援新制度』ですが、この制度によって具体的には何がどう変わったのでしょうか? 保育料や認定区分、認定こども園などの施設、制度の問題点などについて、改めて詳しく解説します。そもそも『子ども・子育て支援新制度』って何? 『子ども・子育て支援新制度』とは、「『量』と『質』の両面から子育てを社会全体で支え」るためにつくられた制度です(内閣府『子ども・子育て支援新制度 なるほどBOOK』より引用)。2012年に成立した「子ども・子育て支援法」「認定こども園法の一部改正」「子ども・子育て支援法及び認定こども園法の一部改正法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」という子ども・子育て関連3法をベースとして、2015年4月から施行されました。基本的に、実施する主体は市町村です。国は財政面でそれをサポートしています。そのため、自治体によって支援や事業の内容はことなります。また、2016年度からは子育て支援をする企業へのサポート(企業内保育施設への補助金など)もプラスされました。2014年度から8%に引き上げられた消費税の増収分が、この制度の財源にあてられています。「社会全体で支える」というのはそういうわけです。新制度のポイント1:1号~3号認定とは? ここからは、より身近な視点から新制度のポイントを解説します。ママたちにとってどんな影響があり、何がどう変わったのでしょうか? まずは新制度でスタートした「認定区分」について。お子さんが通える施設や保育料・保育時間にも関わるので、しっかり理解しておきましょう。新制度では、幼稚園や保育所などを利用したい場合、お住まいの市町村から「利用認定」を受ける必要があります。認定は、お子さんの年齢と保護者の状況によって以下のように「1号・2号・3号」に分けられています。・1号(教育標準時間認定):保育を必要とする事由のない、3~5歳の子ども・2号(保育認定):保育を必要とする事由のある、3~5歳の子ども・3号(保育認定):保育を必要とする事由のある、0~2歳の子どもこのうち、「保育を必要とする事由」とは、保護者自身の就労・求職活動・就学・疾病、妊娠・出産(産前産後2ヶ月)、同居親族の介護などのことです。新制度のポイント2:保育時間について「保育認定」である2号と3号は、保護者の状況によって保育時間が2つに区分されます。基本的には、両親ともにフルタイム勤務の場合「保育標準時間」認定となり、1日最長11時間まで追加料金なしで利用できます。両親もしくはどちらかがパートタイム勤務の場合は「保育短時間」認定となり、1日最長8時間までの利用となります。ただし、たとえば11時間の範囲内であっても、利用する保育所が設定している「通常保育時間」(施設によりますが、7時30分~18時くらいが一般的)の範囲を超える場合は、別途「延長保育料」を支払う必要があるので注意してください。詳しくはそれぞれの施設や市町村に確認しましょう。新制度のポイント3:認定こども園と地域型保育お子さんを預ける施設については、新制度の目玉として「認定こども園制度の改善」と「地域型保育の新設」の2つが挙げられます。■認定こども園とは? 認定こども園とは、保育所と幼稚園を一体化した施設です。2006年からスタートしていましたが、幼稚園と保育所で管轄省庁や財源がバラバラであるなど制度面で問題が多く、当初期待されたほど普及しませんでした。そこで今回の新制度では、認可・指導を一本化するなど制度面を改善しました。保護者にとっても、たとえば「保育認定」を受けたお子さんについては園ごとの個別申し込みではなく、認可保育所と同じように市町村を通じ一括で申し込めるなど、仕組みがわかりやすくなっています。■地域型保育とは? 「地域型保育」とは、0~2歳のお子さんを対象とした、保育所よりも小規模(20人未満)の施設のことです。こうした施設はこれまで認可外扱いでしたが、新制度では認可施設となりました。具体的には、「保育ママ(家庭的保育)」「小規模保育」「事業所内保育」「居宅訪問型保育」の4タイプがあります。新制度のポイント4:認定区分と利用できる施設の関係は? 新制度では、ポイント1の認定区分によって、利用できる施設が決まっています。・1号認定:幼稚園または認定こども園(1日4時間程度)・2号認定:保育所または認定こども園(夕方までの保育のほか、園によっては延長保育も)・3号認定:保育所または認定こども園または地域型保育(夕方までの保育のほか、園によっては延長保育も)ただし、共働き世帯でも幼稚園に通わせたい場合は1号認定を受けることができます。また、新制度に移行しない私立幼稚園やプレスクールなどは認定を受ける必要がありません。新制度のポイント5:保育料はどう変わった? 新制度導入後耳にしたのが「保育料が上がった」という不満の声です。実際のところ、保育料は上がったのでしょうか?結論からいうと、ほとんどの場合、大きな値上がりにはなっていません。それではなぜ「上がった感」があったのかというと、これには保育料の計算方法が変わったことが関係しています。新制度では、世帯の所得額に応じて国が定めた上限金額の範囲内で、市町村が保育料を定めています。2014年度までは世帯の「前年の所得税額」を基準に算定していましたが、2015年度からは「住民税の所得割課税額」が基準になりました。住民税は前年の所得をベースとしてその年の6月に確定するので、新制度が導入された2015年度は9月に保育料の切り替えがありました。4月~8月までは2013年の所得を基準とし、9月以降は2014年度の所得を基準にした保育料となったわけです。そのため、新制度開始から8月までの間は「保育料が高い!」と感じた方が多かったのかもしれません。新制度では低所得(年収360万円未満相当)の世帯やひとり親世帯、多子世帯への負担軽減もあります。たとえば2号・3号認定なら、第1子が未就学児の場合は所得額に関係なく第2子の保育料が半額、第3子以降は無料になります。低所得のひとり親世帯は、第1子の保育料が半額、第2子以降は無料です。また、幼稚園については、これまでは園ごとに一律の保育料を支払ったあとで「就園奨励費」という所得に応じた給付がおこなわれる仕組みでした。これが新制度に移行した園では、保育料そのものが市町村ごとに定める所得に応じた負担額に変更されています。子ども・子育て支援新制度の問題点とは? 施行から2年が経った『子ども・子育て支援新制度』ですが、いくつか問題点もあります。最大の問題点は、新制度下でも待機児童問題がいまだに深刻なことでしょう。2016年には『新語・流行語大賞』の候補に「保育園落ちた日本死ね」がノミネートされ話題になりました。待機児童問題の原因としては、慢性的な保育所不足にくわえて、新制度での解決策として期待されていた認定こども園や地域型保育が、当初の想定ほど増えていないことなどが挙げられます。さらに前提として、保育士不足という問題があります。施設を増やしたところで、保育士が足りないのです。新制度でも「職員の賃金改善」として3~4%の上乗せが実施されましたが、まだまだ十分とはいえません。2017年4月からは政府がさらに2%の賃金上乗せを実施するなど、ようやく「保育士の待遇改善」に本腰が入れられるようになってきたのが現状です。東京都では、2017年4月からさらに月額21,000円の賃金の上乗せを実施するなど、対策を進めています。まずは子育て世代が新制度をしっかり理解して『子ども・子育て支援新制度』にはこのように課題があるものの、行政が子育て支援政策に力を入れつつあることは事実です。新制度は市町村が主導するため、地域差が出やすいという問題点がありますが、市町村は私たちの声を反映しやすい身近な存在でもあります。まずは私たち子育て世代がこうした制度や取り組みをしっかり理解して、意思表示をしていくことが大切でしょう。【参照サイト】 制度の概要|内閣府 子ども・子育て支援新制度 なるほどBOOK(平成28年4月改訂版)|内閣府 認定こども園に関するQ&A|内閣府
2017年04月14日「ふるさと納税」という言葉を耳にしたことはありませんか?このふるさと納税は、上手に利用すればサラリーマンでも節税対策をすることができる魅力的な制度と言えます。ただし、より効果的にふるさと納税を利用するためには、「ワンストップ特例制度」についても理解を深めておく必要があるでしょう。そこで今回は、ふるさと納税とワンストップ特例制度について解説していきます。■ふるさと納税はどんな制度?「ふるさと納税」と聞くと故郷に税金を納めるように聞こえますが、正しくは「ふるさと納税=自治体への寄付金」のことです。では、そんなふるさと納税はどのような目的があって整えられた制度なのでしょうか?現代では地方で生まれ育った子どもが、進学や就職を機に都会へ引っ越すケースが多く見られます。そのまま都会での生活に慣れて、都会で結婚をして長期間住み続けることも珍しくはありません。そうなると、その人は都会に対して地方税などを納めることになります。サービスに関しても都会のものを利用することになるでしょう。そのような方でも子どもの頃は、生まれ育った故郷のサービスを受けていたはずです。しかし、大人になってから都会へ移り住むことになると、故郷に対して税金を納めたりサービスの対価を支払ったりすることができません。これは自治体にとってはマイナス要因であり、本人にとっても「地元に貢献できない」といったデメリットが発生します。そこで整えられた制度がふるさと納税です。ふるさと納税では自分が選んだ地方自治体へ寄付をすることで、寄付をした金額の一部が税金控除の対象となります。所得税と住民税が安くなるので、この制度が整えられたことで積極的に寄付をしやすくなりました。寄付の対象となる自治体は自由に選べるので、生まれ育った自治体以外にも学生時代に過ごした街、自分の子どもが住んでいる街などに寄付をしても控除を受けることは可能です。ふるさと納税はこのような制度なので、「地方創生」という大きな役割も担っています。控除の対象となるのは自己負担額(2,000円)を除く寄付金の全額なので、人によっては節税対策としても活用できるでしょう。その上、自治体によってはふるさと納税をすることで、趣向を凝らした返礼品を受け取ることもできます。【寄付先は情報収集をしてから選んでみよう!】日本全国の自治体は、ふるさと納税に関する目的や寄付金の使い道などをホームページ上で公表しています。そのため、「寄付金が何に使われるか分からないから…」と悩む必要はありません。また、中にはふるさと納税を行う本人が、寄付金の使い道を選択できる自治体も見られます。そのような自治体を選べば、納得できる形で寄付をすることができるでしょう。ふるさと納税の寄付先は、情報収集をしてから選んでも遅くはありません。きちんと情報収集をしてから自治体を選べば、不本意な形で寄付をしてしまうことは防げるでしょう。■寄付金額の上限は?全額控除になるふるさと納税額の目安上記ではふるさと納税の概要をご紹介しましたが、必ずしも全額控除を受けられるわけではありません。例えば年間で50,000円の税金を納めている場合、それ以上の控除を受けることは難しいでしょう。納めた税額以上の控除を受けることは基本的にできないので、その点には注意が必要です。では、全額控除になる寄付金額は具体的にどれぐらいなのでしょうか?納税者の年収や家族構成により目安は異なりますが、以下ではいくつかのモデルケースをご紹介いたします。【その1】ふるさと納税を行うサラリーマンの給与収入が300万円の場合・独身または共働き夫婦では28,000円・共働きで高校生の子供が1人では19,000円・共働きで大学生の子供が1人では15,000円・共働きで大学生と高校生の子供2人では7,000円・配偶者に収入がなく高校生の子供が1人では19,000円・配偶者に収入がなく大学生の子供が1人では11,000円【その2】ふるさと納税を行うサラリーマンの給与収入が500万円の場合・独身または共働き夫婦では61,000円・共働きで高校生の子供が1人では49,000円・共働きで大学生の子供が1人では44,000円・共働きで大学生と高校生の子供2人では36,000円・配偶者に収入がなく高校生の子供が1人では49,000円・配偶者に収入がなく大学生の子供が1人では40,000円・配偶者に収入がなく大学生と高校生の子供2人では28,000円【その3】ふるさと納税を行うサラリーマンの給与収入が700万円の場合・独身または共働き夫婦では108,000円・共働きで高校生の子供が1人では86,000円・共働きで大学生の子供が1人では83,000円・共働きで大学生と高校生の子供2人では75,000円・配偶者に収入がなく高校生の子供が1人では86,000円・配偶者に収入がなく大学生の子供が1人では78,000円・配偶者に収入がなく大学生と高校生の子供2人では66,000円【その4】ふるさと納税を行うサラリーマンの給与収入が1,000万円の場合・独身または共働き夫婦では176,000円・共働きで高校生の子供が1人では166,000円・共働きで大学生の子供が1人では163,000円・共働きで大学生と高校生の子供2人では153,000円・配偶者に収入がなく高校生の子供が1人では166,000円・配偶者に収入がなく大学生の子供が1人では157,000円・配偶者に収入がなく大学生と高校生の子供2人では144,000円上記で紹介したモデルケースは、住宅ローン控除などほかの控除を受けていないサラリーマンの例です。年金収入だけの人や事業所得者、その他の控除を受けているサラリーマンの人などは上限額が異なる場合があるため注意してください。あくまでも目安としての年間上限額のため、実際の金額はお住まいの自治体に問い合わせることが大切です。■ふるさと納税の寄付金控除を受けるための手続きふるさと納税の寄付金控除は、原則として確定申告をしなければ受けられません。では、具体的にどのような手順で確定申告をすれば良いのでしょうか?以下で詳しく解説していきます。【STEP1】寄附金受領証明書を受け取るふるさと納税で寄付をすると、寄付先の自治体から「寄附金受領証明書」と呼ばれる書類が届きます。この書類は確定申告時に必要になるので、必ず無くさないように保管しておきましょう。自治体によっては、専用振込用紙の払込控が受領証になる場合もあります。【STEP2】受領証明書を添付して確定申告をする受領証明書を受け取ったら、確定申告書の指定された箇所にその証明書を貼り付けましょう。その後、確定申告書に必要事項を記入して提出をすれば手続きは完了です。この手続きにおいて注意するべきポイントは、確定申告の「期日」です。控除を受けたい場合には、寄付をした翌年の3月15日までに確定申告を行う必要があるので必ず忘れないようにしましょう。上記の手続きが完了すると、所得税と住民税が以下のように控除されます。・所得税…寄付をした年の所得税から還付される・住民税…寄付をした翌年6月以降分の税額が減額されるなお、国税庁が提供している「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、画面の案内に従って各項目を入力していくだけで簡単に確定申告書を作成できます。「確定申告書の作り方が分からない…」と悩んでいる方は、このようなサービスを積極的に活用してみましょう。確定申告書の提出については、お住まいの地域を管轄する税務署に郵送または持参するか、e-Tax(電子申告)を利用して申告する方法があります。ただし、e-Taxでの申告には事前の手続きが必要になるので注意してください。■ワンストップ特例制度によりサラリーマンは確定申告が不要になる場合も!上記ではふるさと納税による控除を受けるために、確定申告が必要になるとご紹介しました。しかし、実は一定の条件を満たすことで確定申告が不要になるケースがあります。それが「ワンストップ特例制度」と呼ばれる制度です。この制度が平成27年に新設されたことにより、多くの方がふるさと納税を利用しやすくなりました。平成27年から納税枠が約2倍に拡大されて、控除の範囲が広がった点も私たちにとっては嬉しいポイントです。例えば、元々確定申告をする必要がない方にとっては、確定申告の手間が増えることは負担です。「控除が少額なら行っても仕方ない…」と感じていた方も、中にはいるかもしれません。しかし、以下の条件を満たすサラリーマンの方であれば、ふるさと納税により寄付をしても確定申告なしで控除を受けられるようになりました。・ふるさと納税をした自治体が1年間に5つ以内の方・年収が2,000万円未満、副収入を得ていないなど、元々確定申告をする必要がない方上記の条件を満たしている方は、所定の手続きを済ませることでワンストップ特例制度が適用され、確定申告をしなくても控除対象になります。では、この制度の適用を受けるにはどのような手続きが必要になるのでしょうか?【ワンストップ特例制度で必要な手続き】ワンストップ特例制度の手続きでは、以下の書類が必要になります。・ワンストップ特例申請書(寄附金税額控除に係る申告特例申請書)・本人確認書類のコピーなど寄付をした自治体に対して、上記2つの書類を郵送することで手続きができます。なお、2017年3月現在ではマイナンバーの記載も必要になったので、マイナンバーが分かる書類もきちんと用意しておきましょう。この手続きを済ませると、自治体同士で納税者の情報が共有されて自動的に税金が減額されることになります。確定申告の手間を一気に省けるので、ふるさと納税を検討している方はワンストップ特例制度の利用も考えてみましょう。ただし、上記の申請を行った後に住所などが変更になった場合は、さらに手続きが必要になるので注意しておきましょう。このようなケースでは、寄付をした翌年の1月10日までに「申告特例申請事項変更届出書」を寄付先の自治体に提出をする必要があります。■ワンストップ特例制度の申し込み期限ふるさと納税のワンストップ特例制度は、1月~12月までいつでも申し込むことが可能です。ただし、所得税などの控除は1年単位で適用されるので、年をまたぐと前年分の申請ができなくなる可能性があります。寄付をする場合には、早めにワンストップ特例制度も申請しておきましょう。なお、年末に申請をする場合には特に注意が必要となります。申請から受領まではある程度の日数がかかりますし、自治体によっては12月の早い段階で受付を締め切ることもあります。各自治体で締め切りは異なるので、必ず寄付先の自治体に関する情報は事前に調べておきましょう。また、ふるさと納税の期限に関しても注意が必要です。受領証明書に記載されている受領日が12月31日を過ぎると、その年の控除申請ができなくなる恐れがあります。その場合は翌年分として扱われますが、節税対策としてふるさと納税の利用を検討している方は注意するべきポイントでしょう。なお、受領日の扱いは以下のように送金方法によって異なります。・クレジットカードの場合…決済が完了した日・銀行振り込みや払込取扱票による支払い…指定口座に支払いした日・現金書留…自治体が受領した日上記の送金方法による違いも意識しながら、ふるさと納税やワンストップ特例制度を上手に使いこなすようにしましょう。これらの制度を上手に活用すれば、節税対策をしながら社会貢献もできるはずです。■まとめ今回は確定申告不要でサラリーマンでも簡単に利用できる、ふるさと納税のワンストップ特例制度についてご紹介してきました。いかがでしたでしょうか?ふるさと納税のワンストップ特例制度を上手に利用すれば、サラリーマンでも節税対策をすることができます。また、ふるさと納税を通して故郷やお世話になった地域に貢献することもできます。今回ご紹介した内容を参考にして、みなさんもふるさと納税を利用してみてはいかがでしょうか?
2017年04月13日支援級って、実際どうなの?出典 : 「支援級って、実際どうなの?」「どんな雰囲気で、何をやってるところなの?」…と、特別支援学級という「未知の世界」が気になっているお母さんも多いかと思います。うちの長男は、発達障害に気づかずに通常学級で入学し、4年生まで過ごしました。そして、5年生になった時、自分の意思で支援級に転籍。さらに今年の4月からは、また通常級に戻る予定でいます。今まで繰り返しお伝えして来た通り、本当に支援級を巡る状況は千差万別です。これは「あくまで一例」ではありますが、長男と私が経験した「うちの」支援級ルポを、楽々かあさんこと、大場美鈴がお伝えします。うちの支援級の1日の流れ出典 : まず、朝の風景から。うちの支援級の登下校は、お母さんが付き添って歩いたり、車で送り迎えをしていたりする場合が多いです。我が家では、行けるときは登校班で歩いてゆき、不安定な時期や、行事などで心身の負担が大きな時期は、車で送って行きます。うちの学校の支援級は2クラス。身体・知的障害のあるお子さんのクラス(以下、A組)と、長男が在籍していた、主に発達障害の傾向のあるお子さんが中心となる、情緒クラス(以下、B組)に分かれています。通常級の出席番号とは違い、支援級のそれぞれの子には「専用カラー」が決められています。下駄箱やロッカーには、名前と共に、その子カラーのテープが貼られて目印になっているのです。そこに靴を入れて、クラスに向かいます。うちの支援級は、一階の保健室近くに配置されていて、普通級とはやや離れています。逆に、職員室、1年生のクラスとは同じフロアです。登校すると、子ども達はその日の予定を確認します。スケジュールボードに、それぞれの子の時間割がマグネットで並べられています。時間割はそれぞれの子で違うものになっています。教科によって支援級で過ごしたり、交流級に行ったり、運動場や音楽室に行ったりと、けっこう移動が多いです。交流級というのは、通常級のクラスでの授業・活動に参加することです。「協力学級」「親学級」などとも呼ばれています。B組在籍の子どもは、全部で6人程ですが、B組の教室に常時いるのは2〜3人。なかには1日中交流級で過ごす子もいます。A組、B組の子達が揃うのは給食の時間。机を全部くっつけて、2クラス合同で先生方も一緒に食べています。その様子は、カオスと言っても過言ではないくらい賑やかです。両クラスの最上級生である、A組の6年生の男の子は人気者。下の学年のお子さん達が慕って、おんぶをせがんだり、給食を配ってあげていたりと、微笑ましい様子も見られます。下校時刻は、それぞれの学年に準じたものになっています。上級生になるほど、6時間目の授業も増え、クラブ活動などもあります。低学年の子達が下校する6時間目には長男と先生のマンツーマンになることも多く、学習が捗るようです。チームで子ども達を見守る、先生達出典 : 支援級の担任は、A組はしっかりした女性の先生、B組はベテランの男性の先生です。そして、それぞれのクラスに副担任の先生がつきます。介助員さんも、両クラス合わせて常時2~3名が学校にいる感じで、主に身体介助の必要なお子さんのお世話や、交流級に行っている子の付き添いなどをして下さっています。子ども1人当たりの大人の数が多く、チームで手厚く見守って頂けます。とはいえ、クラスに不安定になっているお子さんがいる時には、複数の先生がその子にかかりきりになる状況などもありました。そして、支援級の担任の先生は、前回の記事でもお伝えしましたが、必ずしも、支援に詳しいとは限りません。長男のクラスの担任の先生は定年間近の大ベテランの先生でしたが、4月の時点では支援について、ほとんど何もご存知ではありませんでした。ですが、「お母さん達のほうがお詳しいでしょうから…」と、親の話を一人ひとり、謙虚に丁寧に聴いて下さり、私は本当に頭の下がる思いでした。その姿を見て、私は「あ、大丈夫だな」と思いました。先生は多少のことには動じないタイプで、個性の強い子ども達に忍耐強くつき合って下さり、長男も信頼している様子で、私は安心して見ていることができました。知識・経験以前に、先生自身が安定していること、子どもと基本的な信頼関係が築けることが、私はまず必要なように思います。そして、その子に合わせたり、親の話に耳を傾けてくれる姿勢があれば、例え支援に対する知識・経験が十分ではなくとも、次第に「プロ」になって下さるように思えます。気になる学習内容は…?出典 : うちの支援級の学習内容は、その子の進度に合わせたプリント学習です。プリントは本当にオーソドックスな問題を、教科書の順に添ってひたすら取り組むような形です。私は支援の本にあるような手作り教具やICT機器などをジャンジャン使って、体感的な授業がそれぞれの子に行われる様子を夢見ていたので、正直、やや肩すかしでした。それでも、通常級の一斉授業のスピードについていけず、ノートも取らずにぼーっと過ごしていた時に比べれば、私にはずっと有意義な時間のように感じられました。算数は、長男がつまづいている九九や、筆算の手順など、何学年も前のところから戻ってスタートし、少人数の環境の中、自分のペースでじっくり取り組んでいました。国語は、学習内容はほぼ理解できるものの、漢字がどうしても出て来ないので、学習補助用のiPadを持ち込んで辞書アプリで調べながら進めました。ただ慣れて来ると、プリント中心の学習はつまらなくなったのか、苦手科目以外のプリントに落書きが増えてきました。その時は先生に相談して、もう少し学習内容を調整して頂けるようお願いをしました。課題のレベルは「大体できるけど、定着してないこと」から「やや難しいけれど、なんとかできそうなこと」くらいが、その子にちょうど良い学習レベルだと思います。長男は「やさし過ぎる」「難し過ぎる」ものは、どちらも集中できないようです。長男の場合は、パソコンなど興味の強い科目から交流級で参加し始め、体育や図工などの実技教科、2学期には理科・社会も…というように、長男の様子をみながらこまめに連携し、徐々に交流級を増やして頂きました。そして算数もマイペースにコツコツとプリントに取り組み続けた結果、学年相応まで進めることができ、3学期には、全科目交流級での授業になりました。通常級でできてしまった大きな段差を、支援級で長男自身のステップで徐々に上がっていったことにより、学習への自信がついたのです。異年齢・多種多様!支援級の子ども同士の様子は…?Upload By 楽々かあさん休み時間、B組(発達障害の傾向のあるお子さんが中心となるクラス)の男の子達は、手作りカードゲームなどをして楽しく遊んでいました。時折、通常級の次男も、支援級に顔を出して、一緒に遊んでいたようです。次男曰く「エアコン、効いてるんだよね~」とのこと。体温調節が身体の機能的に苦手なお子さんもいるため、うちの両支援級はエアコンが完備されています。転籍前、精神面の凸凹差の大きな長男は、通常級の同年齢のお子さん達と、やや話が合わないようでもありました。でも、異年齢で多種多様なお子さんの集まる支援級では、年下のお子さんと気が合ったり、年配の先生方とたくさん雑談できるので気が楽だったようです。とはいえ、B組の子同士の関係は、仲のいいときはすごく良いけど、ちょっとしたきっかけで大げんかするという、ジェットコースター式。気持ちを言葉で伝えたり、妥協することが苦手な子が多いため、実際の所、衝突事故も多かったです。でも、その中で長男は、「ゆずってあげる」「合わせてあげる」ことの大切さに少しずつ気づけたようにも思います。また、B組では長男は一番年長。クラスのお子さん達をまとめたり、お手本になる役割も与えられました。それよって学校での「居場所」ができたようです。支援級で過ごしたことは、長男の心の成長にも大きなプラスになったように思います。支援級に移ったことを、通常級の子たちはどう受け止める…?出典 : 交流級に行くことで、支援級と普通級を行き来していた長男は、通常級の先生の目から見てもさほど違和感なく溶け込んでいたようです。また、支援級にいても、運動会などの行事では今までクラスメイトだった通常級の子達と一緒でした。運動会の組み体操も林間学校での野外活動も、支援級の先生方に見守られながら、不安に思うことをひとつひとつクリアしながら参加しました。少しだけハードルを下げたり、大人が見守ってあげたりすることで、皆と一緒にできることはたくさんあると思います。長男が支援級に移った時は、それまでと態度が変わった子もいました。長男に対して以前より距離を置く子もいれば、かえって優しくなった子もいるし、何も変わらない子もいました。でもさまざまな機会を通して、一緒に過ごすことで、普通級の子達も支援級の子たちに慣れていきます。多感な年頃の子達の間には、お互いに取り扱いが難しい面も少なくありません。さらに、空気を読めなかったり、集団の中で目立つ行動を取ってしまう長男にとって、コミュニケーションのハードルが高いであろうと思う部分は今でもあります。それでも長男は、6年生に進級したら、居心地良さそうにしていた支援級を卒業して、皆と同じクラスに戻ると言います。私は、支援級に転籍したときのように、長男に通常級の良い点、そうでない点の両方を伝えましたが、今回も長男の決意は変わりませんでした。そこには、好奇心の強い彼にとって今の成長に必要な刺激があるのかもしれません。また、合理的に物事を判断する長男にとって、考えられるデメリットを上回る何かを、今は感じているのかもしれません。子どもの成長と学び方は、一律一様ではないのだから…。ここまで3回に渡り、私達親子の実際の体験から、支援級と通常級の間にある選択肢、支援級を検討する際の判断のポイント、そして、うちの支援級の実際の様子をお伝えして来ました。支援級は本当に千差万別で、私には「うちの」支援級が標準的かどうかも分かりません。でも、具体的な情報が開かれてゆくことで、もっと支援級が身近で気軽に感じられる場所になってほしい、と私は願っています。また、支援級と通常級、それぞれにメリット・デメリットがあり、私にはどちらがいいとも言えません。でも、通常級にいる子達にとっても、長男が5年生を過ごした支援級を「別世界」と感じてるわけではないと感じています。そして、一つだけ確かなことは、日々成長する子どもたちによって、その個性の発達のスピードやその子に合った学び方は、一律一様ではない、ということです。これは長男の今までの育ち方と、興味関心のあり方を見守って来た私が、実感として思うことです。柔軟に、臨機応変に、その子に合った学び方が、どんなお子さんにも安定して提供される日が、なるべく早く来ることを、同時代を生きる子を持つ一母親として、私は願ってやみません。Upload By 楽々かあさん大場美鈴(著), 汐見稔幸(監修), 『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』ポプラ社, 2017年
2017年04月10日こんにちは。子育て支援を専門にしている臨床心理士の今井千鶴子です。子育てをしていると、“子どもとTVの問題”について悩んでしまうママはたくさんいます。そこで今回は、子育てにおけるTVのメリットとデメリットについて考えてみたいと思います。●子育てにおけるTVのデメリット●(1)長時間のTV視聴による発達の遅れ乳幼児のころにTVを見せ続けることは、脳の発達を考えるとあまりオススメできません。乳幼児の能力開発をする人の中には、「たくさんの刺激にふれることで脳が発達するためTVを見せるのは良い」と言う人もいますが、十分な科学的根拠があるのか疑問を感じます。発達認知科学の観点から考えると、たくさんの刺激にふれることは悪くはないのかもしれませんが、「子どもの発達段階にあった刺激なのか」「脳の疲労について考えなくていいのか」という点は慎重に議論すべきです。たとえば、“子どもがゲームに夢中になりやめられない”という状態をイメージしてください。脳が疲労しているにも関わらず、時にイライラしながらゲームを続ける子もいます。これは刺激が強いために生じている現象 だといえます。また、子どもは自分で自分の行動をコントロールしにくいため、刺激に触れ続けていることで“心地よい集中力”とは別の状態に陥ってしまうことがあります。一般的に子どもの集中力はとても短いので、一定時間を超えると、何も考えずにボーっとTVを見てしまいがちです。したがって、TVを見せる際にはあらかじめ視聴時間を設定し、長時間見せないこと が大切です。『日本小児科医会「子どもとメディア」対策委員会』は、乳幼児期からのメディア(例:TV・ビデオ・TVゲームなど)漬けの生活によって、結果的に心身の発達の遅れや歪みが生じた事例があることを指摘しています。そして、“2歳までのテレビ・ビデオ視聴を控えること”をはじめとする5つの具体的提言を発表しています。●(2)ネガティブな「気持ち」「行動」「ことば」TVとひと口に言っても、さまざまなタイプの番組があります。TV番組の中には、暴力的な映像や残虐な映像も含まれています。これまでの心理学の研究では、暴力映像を見た後には、子どもたちに不快な気持ちが生じやすく、乱暴な行動をマネしやすいことが報告されています。また、最近よく言われているのは、テレビを通じた“言葉の獲得”です。子どもには「使わせたくない言葉」や「聞かせたくない言葉」がありますが、これらの言葉は、日常生活よりもTVの中で知ることが多い と言われています。子どもの健全な成長を考えると、“視聴時間”だけを気にするのでなく、お子さんに見せる“視聴内容”もしっかり選ぶことが大切です。●子育てにおけるTVのメリット●(1)ママの時間を確保できる一日中お子さんと過ごしていると「息がつまってしまう」と感じるママも少なくありません。子育て中はどうしても子ども中心の生活になります。期間限定のことだとわかっていても、つらく感じてしまうこともあるのではないでしょうか。そんなママにとっては、たとえ短い時間であっても“ホッとできる時間”があるだけで心が楽になることもあるでしょう。先ほども述べたように、TVを見せることにはデメリットが伴います。そのため、真面目なママほど、TVを見せること(見せてきたこと)に罪悪感を感じてしまうかもしれません。理想を言うならば、私もできる限り子どもにはTVを見せない方がいいと思っています。ただし、それはTVを見なくても親子が笑顔で過ごせる条件のある場合です。たとえTVを見せていなくても、ママが心の余裕をなくしイライラしているのなら、その方が子どもの心の発達に悪い影響を与える のではないかと私は思います。もちろん、連日長時間TVに子守りをさせておくのはNGですが、ママの心と体の状態に合わせて、TVの放映内容も考えながら“調整”していくことも大切なことだと感じます。●(2)TVの登場人物がモデルになるTVのデメリットのところで、“乱暴な行動をマネしやすい”と書きましたが、良い行動も映像を見てマネしやすいことが知られています。映像の中の同世代の子どもが、歯を磨く、トイレに行く、食事するということができていると、自分もやってみようかなとやる気が高まるお子さんも多い です。良いお手本が登場するTVは、言葉では説明しにくいときなどに強い味方になってくれるツールとなります。●(3)友達とTVを通じた会話ができるTVの内容を知ることで友だちとの会話がはずみます。特に、はやりのものに関しては、知らないと友だちとの会話に入れないこともあります。また、TVの世界には、「動き」と「音」が巧みに盛り込まれています。字が読めない時期の子どもたちにとっては、わかりやすく説明してくれるTVは貴重な情報源にもなり、お子さんの興味・関心が広がることもあります 。恐竜好きの息子たちも、図鑑だけでは理解できなかった知識をDVDから学び、さらに興味を広げています。ただし、好きなものを好きなだけ見せるというのはNGです。場面を区切って見せたり、話しかけながら視聴したりするなど工夫が必要です。大好きな映像であっても、ボーっとするまで見せないように、子どもの様子を見ながらTVをうまく使っていきましょう!----------いかがでしたか?今日はTVのメリット・デメリットについて紹介しました。TVには一長一短がありますが、上手に付き合い、楽しく育児ができるといいですね!【参考リンク】・「子どもとメディア」の問題に対する提言 | 日本小児科医会()●ライター/今井千鶴子(臨床心理士)●モデル/藤本順子(風悟くん)
2017年04月04日*画像はイメージです:など性的少数者のカップルを公的に認める「同性パートナーシップ制度」が6月から札幌市でも導入されることになりました。4月に導入される予定を2カ月延期しての導入となります。延期の理由は市民への周知期間を設けるためだそうですが、たしかに当事者ではない人にとっては、この制度がどのようなものなのか、イメージしづらいかもしれません。制度が持つ法的効力など、桜丘法律事務所の大窪和久弁護士に伺いました。 ■法的効力はない!?結婚とは別物札幌市の同性パートナーシップ制度と同様の制度は、2015年に東京都渋谷区が全国で初めて導入したのを皮切りに、世田谷区、三重県伊賀市、兵庫県宝塚市、沖縄県那覇市で実施されています。このように導入自治体が増えつつある同性パートナーシップ制度ですが、これは結婚とはどのように違うのでしょうか?「結婚をすることにより、民法に基づき夫婦間において様々な効力が生じます。夫婦間において親族関係が生じますし、同居の義務および扶養の義務も負うことになります。他方、同性パートナーシップは自治体の条例に基づいて同性のパートナーについてその関係を認める書面を自治体が発行するというものですが、民法上の効力が生じるものではありません」(大窪弁護士)憲法や民法によってその条件や権利などが定められている結婚とは違い、同性パートナーシップ制度には、法的な効力はないのです。結婚と同じ制度だと勘違いする方も多そうですが、法的には別物の制度と考えてよいでしょう。 ■制度による民間企業への影響それでは、法的効力がない同性パートナーシップ制度には何の意味もないのでしょうか?税制、保険、医療現場、相続などの面で夫婦が持つ権利と同じような権利を持つことは許されないのでしょうか?「前述の通り、婚姻と異なり民法上の効力が生じるものではありませんので、夫婦と同等の権利があるわけではありません。親族関係も生じず財産の相続をするということにもなりません。また税制上控除が認められるということもありません。もっとも、同性のパートナーであるという証明はなされるので、これを受けて民間の事業者がパートナー向けのサービスを行うということはありうると思います」(大窪弁護士)現段階では、同性パートナーとして認められても法的な保障は期待できません。しかし、制度施行をきっかけに民間や自治体のサービスが拡大する事例はすでにいくつもあります。例えば、ドコモでは渋谷区での制度施行をきっかけに、家族割サービスを同性パートナーにも認めるようになりました。また、同性パートナーを保険金の受取人として認める生命保険会社も増えてきました。 ■導入自治体は今後も増える?なぜこのような制度が必要とされ、導入自治体が増えているのでしょうか?「同性の法律婚は現在認められておりませんが、現実には同性でパートナーとなっている人は沢山いらっしゃいます。しかし、パートナーであることについて社会的に認められてきていないことから、住宅で同居することを断られてしまうであるとか、病院の面会を断られてしまうという弊害があります。法律婚という形は現在とることはできなくても、パートナーとして行政が認めることでそうした弊害を解消するということは必要です。現在導入自治体は一部ですが、同性パートナーシップ制度があるからその自治体に転入するという人も増えておりますので、今後導入自治体は増えていくのではないかと思います」(大窪弁護士)千葉市では、結婚や事実婚をしている職員に認めている休暇制度を同性パートナーを持つ職員にも認めるよう就業規則が改正されました。同様の制度を持つ企業も増えています。自治体による同性パートナーシップ制度導入に加え、民間企業のサービス範囲の拡大、雇用者の権利拡大など、性的少数者を取り巻く環境は少しずつ不便や実質的な不平等を減らす向かう方向に変化しているのです。 *取材対応弁護士:大窪和久(桜丘法律事務所所属。2003年に弁護士登録を行い、桜丘法律事務所で研鑽をした後、11年間、いわゆる弁護士過疎地域とよばれる場所で仕事を継続。地方では特に離婚、婚約破棄、不倫等の案件を多く取り扱ってきた。これまでの経験を活かし、スムーズで有利な解決を目指す。)*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)【画像】イメージです*Syda Productions / Shutterstock
2017年03月31日特別支援教室とは?出典 : 特別支援教室は、発達障害のある子どもたちをはじめとした個別のニーズに対応し、より適切で効果的な教育を行うために、小・中学校への導入が予定されている設備・制度です。文部科学省は、特別支援教室構想を掲げ、それに伴い全国各地でモデル事業が行なわれてきました。とりわけ、2016年4月からは、東京都内の小学校で本格的な導入が始まりました。具体的な導入計画については、後に詳しく説明します。2005年以降、文部科学省は「インクルーシブ教育」の推進に力を入れてきました。インクルーシブ教育(または単にインクルージョン)とは、障害の有無にかかわりなく子どもたちに教育をするという理念・制度・実践をいいます。インクルーシブ教育では、障害のある子どもたちが、単に障害のない子どもたちと同じ学校に通うだけでなく、本当の意味で他の子どもたちと同じ教育を受けるということが目指されています。こうした教育を実現するためには、障害のある子どもだけが「特別なニーズ」を持っているという考えを見直し、「すべての子どもに等しく教育をし、その中でニーズのある子どもには適切に対応する」ことが重要です。たとえ障害のある子どもたちが通常校に通っているとしても、障害のない子どもたちから区別され、普段から別の教室で勉強しているなら、それは同じ教育を受けているとは言えない、これがインクルーシブ教育の基本的な考え方です。文部科学省の特別支援教室構想も、その一環として位置づけられています。文部科学省は、発達障害の診断を受けていない子どもたちの中にも、実際には「特別なニーズ」とされてきた個別のニーズを持つ子どもたちが少なくないのではないかと考えています。そして、そうしたニーズに気づき適切な教育をするために、また、その他の子どもたちが発達障害をよりよく理解できる環境を作るために、特別支援教室の導入を進めています。参考: 中央教育審議会「特別支援教育を推進するための制度の在り方について(答申)」(2005年12月)特別支援教室という制度では、「障害のある子ども」と「障害のない子ども」を分けて支援するのではなく、必要に応じて誰にでも支援やサポートを提供します。これは、「障害のある子どもが障害に応じて支援を受ける」という、特別支援学級や「通級による指導」のスタンスとは大きく違うものです。参考:Frank Bowe, Making Inclusion Work (Upper Saddle River, NJ: Pearson, 2005).参考:Gary Thomas and Andrew Loxley, Deconstructing Special Education and Constructing Inclusion, 2nd ed. (Open University Press, 2007).参考:高橋純一、松﨑博文「障害児教育におけるインクルーシブ教育への変遷と課題」『人間発達文化学類論集』19号(2014年)13–26ページ特別支援教室って、どんな制度?出典 : 全国に先駆けて東京都の小学校で特別支援教室が2016年4月から順次導入されています。ここでは東京都の小学校におけるモデル事業をもとに、特別支援教室が実際にはどのような制度なのかを説明します。特別支援教室とは、情緒障害や発達障害のある子どもたちを中心に、教育の場でサポートを必要とする子どもたちにサポートを提供しようとする制度です。基本的には、現在の「情緒障害等通級指導学級」(以下「通級」とする)を置き換えるものだとされています。ただし、「通級」には、情緒障害や発達障害以外の障害(吃音や難聴など)に関連したサポートを行うものもあります。ここで紹介する特別支援教室は、主に情緒障害や発達障害に関連した制度ですので、それ以外の「通級」までまとめて特別支援教室に置き換わるわけではないことに注意が必要です。特別支援教室の最大の特徴は、子どもたちが普段通っている学校でそのまま支援を受けられるということです。これまでは、障害のある子どもたちが特別な支援・サポートを受ける際に、普段通っている学校とは別の学校の「通級」に通ったり、特別支援学級や特別支援学校に籍を置く必要がある場合も少なくありませんでした。しかし、特別支援教室は各小学校にそれぞれ導入されます。2つの学校に通う必要がなくなることで、特別支援教育を受ける子どもたちの負担が軽くなることが期待されています。また、特別支援学級や特別支援学校でのサポートまでは必要としない通常学級に在籍する子どもが、個別のニーズに合わせて弾力的な支援が受けやすくなると考えられます。特別支援教室で教える内容は、基本的には情緒障害等通級指導学級(通級)と同じです。つまり、子どもの障害に応じて、障害の状態に応じて「自立活動」や「教科の補充指導」などが、それぞれに合った方法で指導されます。特別支援教室で指導を受けられるのは、情緒障害や発達障害のあるお子さんです。東京都は、対象として通常学級での学習におおむね参加できる「高機能自閉症・アスペルガー症候群」「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」「学習障害(LD)」を挙げています。例えば高機能自閉症・アスペルガー症候群の子どもがコミュニケーションを取るのが苦手な場合、ロールプレイなどで適切な会話を学んだり、相手の気持ちを考えるなどの指導が行われます。また、学習障害がある場合、自分に合った学習方法を習得するための指導なども行われます。現在のところ、それ以外の障害(吃音や難聴など)に関連して「通級」に通っているお子さんについては、特別支援教室での指導は想定されていません。出典 : 特別支援教室に携わる人として、「巡回指導教員」「特別支援教室専門員」「臨床発達心理士等」という役割が新たに定められました。「通級」の担当教員は、役割の名前が「巡回指導教員」に変わります。巡回指導教員は、「通級」と同じように特別支援教室で子どもに指導をするほか、在籍する通常教室の担任と密に連携し、特別支援教育を受ける子どもだけでなく子どもが在籍するクラスでも連携して支援を行い、担任に助言をします。「特別支援教室専門員」は、特別支援教室の導入によって新しく配置されます。非常勤の職員で、特別支援教育で必要になる教材を作ったり、対象となる子どもの行動を記録したりします。新たに「臨床発達心理士等」も巡回することになります。「臨床発達心理士」「特別支援教育士」「学校心理士」の資格を持っている人が子どもの行動観察を行い、障害の状態を把握し、巡回指導教員や担任教員に専門的な指導を行います。東京都教育委員会「東京都公立学校特別支援教室専門員について」特別支援教室のメリットとデメリットは?「通級」と比べると?出典 : 保護者にとって最も気になるのが、既存の「通級」から何が変わるのか、また何が変わらないのかということではないでしょうか。ここでは、メリット・デメリットとともに説明します。「通級」が地域の拠点校にのみ設置されたのに対し、特別支援教室は各学校にそれぞれ設置されることが予定されています。つまり、これまでであれば、通級による指導を受けるために定期的に別の学校に出向く必要があったのに対し、これからは普段通っている学校で同じような指導を受けることができるようになります。Upload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホン2つの制度の違いは、基本的にはこの点に尽きます。たったこれだけの違いですが、「通級」から特別支援教室に変わることのメリットやデメリットは、必ずしも小さなものではありません。以下ではそれをいくつか紹介します。特別支援教室は、そもそもインクルーシブ教育を推進するための構想です。そのため、特別支援教室のメリットは、何といっても日本の教育をインクルーシブなものに変えるという点にあります。つまり、障害のある子どもたちと障害のない子どもたちが、それぞれに必要なサポートを受けつつ、基本的に分け隔てなく教育を受けることができる、そのような社会の実現に向けた第一歩が、この特別支援教室なのです。しかし、障害のある子どもたちや、その親御さんにも、直接的なメリットがあります。それは、これまでの「通級」とは違い、普段通っている学校でそのままサポートを受けられるということです。子どもにとっては別の学校に通う負担が減り、また障害に関連したサポートをする先生と、クラスの担任の先生との連携が、「通級」の場合よりも一層密になることが期待されます。しかし、特別支援教室にはデメリットや課題も指摘されています。まず、これまでの「通級指導学級」と同じ水準のサポートが特別支援教室で提供されるのかどうか、必ずしも明らかではありません。というのも、各学校に特別支援教室を導入するためには、これまでよりも明らかに多くのスタッフが必要です。加えて、特別支援教室では、将来的には「障害」の有無にかかわらず子どもたちの支援・サポートを行うことを目標としています。裏を返せば、これまでと同様に限られた資源の中で、これまでよりも多くの子どもたちにサポートをしようとしています。つまり、もしスタッフが十分に増えないまま特別支援教室を導入すれば、少ないスタッフでより多くの子どもを支援することになり、サポートの質が低下するおそれがあります。このことから「障害のある子ども」としてこれまで特別に支援を受けてきた子どもたちに対して、従来の特別支援教育が提供してきたサポートの質が保たれなくなるのではないか、と懸念する声もあります。もう一つ、重要な点があります。特に変化が苦手な自閉傾向がある子どもたちにとって、サポート環境が変わるということそのものが重大な出来事となりえます。この観点から見ると、特別支援教室という制度の良し悪しとは別に、制度の移行にスムーズに適応できるような仕組みについて考えていくことが求められます。特別支援教室とその他の制度との違いは?出典 : 障害のある子どもの学びの場は、今までご紹介してきた特別支援教室や「通級」だけではありません。日本の制度では、代表的なものに「特別支援学校」や「特別支援学級」があります。これらの制度は、それぞれどのように違うのでしょうか?特別支援学校とは、かつて「盲学校」「聾学校」「養護学校」と呼ばれていた学校で、現在でも学校名にこうした言葉がついている場合があります。一部の例外を除いて、基本的には障害のある子どもたちだけが学ぶ学校です(一部に、障害のない子どもたちが学ぶ学級を併置した「併置校」も存在します)。また、学校数自体が少ないので、寄宿舎がある特別支援学校もあります。特別支援学校では、特別支援学校学習指導要領に従い、その他の学校で教えられる教科に加えて、それとは異なる特有の教科が教えられます。こうした教科の多くは、学校を卒業した後に就く職業に関連した、職業訓練的な性格の強いものです。また、教える先生の資格という面から見ても、特別支援学校で教える先生は「特別支援学校教諭」という、一般の学校の先生とは異なる免許を持っています。特別支援教室と特別支援学校の最大の違いは、そもそも通う学校が違うという点です。これは比較的わかりやすい違いでしょう。ところで、自閉症・発達障害・学習障害などがある子どもたちを対象とする特別支援学校はあるのでしょうか。基本的には、現在のところありません。ただし、お子さんに別の障害がある場合には、その障害に応じて特別支援学校に通うことができるでしょう。たとえば、視覚障害と発達障害があるお子さんや、知的障害が合併した発達障害のあるお子さんのような場合です。特別支援学級は、かつては「特殊学級」と呼ばれていました。現在でも、関連条文から「81条学級」と呼ばれることがあります。(以下では「特別支援学級」に統一します。)特別支援学級は、一般の小中学校に置かれます(制度上は高校にも設置できますが、実例は多くありません)。多くの場合、障害の種類ごとに分かれ、学校ごとに「あすなろ学級」「なかよし学級」など様々な名前がついています。お子さんが特別支援学級で教育を受ける場合、その学校の通常学級ではなく特別支援学級に在籍することになります。そして、特別活動などを除き、通常学級の子どもたちとは違う教室で授業を受けることになります。制度上は、特別支援学級での教育は一般の小中学校と同じ学習指導要領に則った教育ですが、子どもの実態に応じて特別支援学校を参考にしたカリキュラムが組まれることもあります。先生の資格という面から見ると、特別支援学級で教える先生に求められる資格は、「特別支援学校教諭」ではなく「小学校教諭」や「中学校教諭」です。特別支援教室と特別支援学級の最大の違いは、お子さんがどの教室に所属するかです。特別支援教室の場合は、お子さんは通常学級に在籍し普段は他の子どもたちと同じ授業を受けつつ、必要に応じて別の教室で別の教育を受けることになります。これに対して特別支援学級の場合は、お子さんは特別支援学級に在籍し、別の教室で別の授業を受けることが基本となります。出典 : 最も違いがわかりにくいのが、特別支援教室と「情緒障害等通級指導教室」の違いではないでしょうか。情緒障害等通級指導教室は、「通級指導教室(情緒障害等)」「通級教室」「通級学級」などと書かれる場合が見られますが、どれも制度上は同じものです。以下ではまとめて「通級」と呼ぶことにします。先に説明したように、「通級」には、吃音や難聴のある子どもたちへのサポートを行うものもあります。通級と特別支援教室は、どちらの制度も、お子さんが障害のない子どもたちと同じ学校の同じ教室で学びつつ、必要に応じて別の教育を受けるという点で共通しています。どちらの制度も、特別支援学校(障害のない子どもたちとは別の学校に通う)とも、特別支援学級(障害のない子どもたちと同じ学校に通うけれども、普段から別教室で学ぶ)とも、大きく違う制度です。その上で、「通級」と特別支援教室の最大の違いは、その「別の教育を受ける」教室がどこにあるかです。「通級」の場合には、お子さんは別の教育を受けるために普段とは違う学校に出向く必要がありました。これに対し、特別支援教室は各学校に設置されますので、「通級」とは異なり別の学校に行く必要がありません。現在、特別支援教室は導入に向けたモデル事業が行われている段階で、その形態や指導内容についてはまだ研究や検討が行われています。そのため、自治体や学校によって、今回ご紹介した東京都の特別支援教室とは違う方法で導入されていたり、今後導入される可能性もあります。また、横浜市は、2004年に「横浜市障害児教育プラン」を定め、独自に先駆的な特別支援教育を進めてきました。その中で「特別支援教室」という言葉を使っています。しかし、この「特別支援教室」は、名称は同じでも文部科学省が推進する「特別支援教室」(この記事で説明しているもの)と必ずしも同じではありません。具体的な説明は省きますが、横浜市の「特別支援教室」は文部科学省の「特別支援教室」よりも少し狭い概念だと考えていただければよいでしょう。どのように特別支援教室が導入されているか、また今後導入されるかはそれぞれお住まいの地域によって異なるので注意が必要です。横浜市特別支援教育推進会議「「特別支援教室」の展開方策などについて 」(2006年8月)特別支援教室を利用するために必要なことは?出典 : 一例として、東京都中央区の事例を紹介します。ただし、実際に必要な手続きは自治体ごとに異なりますので、詳しくは学校や各自治体の担当者にお問い合わせください。まず、すでに「通級」を利用されていて新年度も継続して指導を受けたい場合です。この場合は、原則そのまま移行しますので、特別な手続きは必要ありません。新年度も継続して指導を受けたいという旨を、在籍校の担任教員や通級指導教員にご相談ください。次に、まだ「通級」を利用されていない場合についてです。新年度に新たに入学する子どもについては、就学相談でご相談ください。それ以外の子ども(すでに学校に通っており、新たに特別支援教育を受けようと考えの場合)については、在籍校の担任教員にご相談ください。このように、特別支援教室で指導を受けるためにまずすべきことは、新入生の場合は就学相談、それ以外の場合は担任教員への相談だといえます。繰り返しになりますが、具体的な手続きにつきましては学校や各自治体にお問い合わせください。特別支援教室|東京都中央区特別支援教室の今後は?出典 : 最後に、特別支援教室構想の展望について簡単にご紹介します。東京都の小学校では、モデル事業として特別支援教室の導入が既に始まっています。都の計画では、平成28年度以降、準備の整った市区町村から順次導入され、平成30年度までには全ての市区町村に特別支援教室が設置されることとなっています。これに対して、中学校への特別支援教室の導入は、まだ始まっていません。都の計画では、平成30年度以降、準備の整った市区町村から順次導入され、平成33年度までには全ての市区町村に特別支援教室が設置されることとなっています。東京都以外に目を向けると、いくつかの自治体では特別支援教室の導入に向けた動きが見られます。しかし、それらの動きは、基本的にはまだ本格化していません。東京都のモデル事業にならった特別支援教室が全国的な制度となるかどうかは、まだ未知数だといえます。東京都教育委員会「東京都特別支援教育推進計画(第二期)・第一次実施計画――共生社会の実現に向けた特別支援教育の推進」(2017年2月)まとめ出典 : 特別支援教室は、インクルーシブ教育を実現するための制度として、長年の構想を経てようやく実現に向かいつつある制度です。今後の展望にはまだ不確定な面が多くありますが、これから少しずつ、障害のある子どもたちが少ない負担で適切な教育を受けられる制度として確立していくことでしょう。既に「通級」で指導を受けられている場合はもちろん、そうでない場合でも、また「障害」という診断の有無にかかわらず、少しでもお子さんにとってメリットがあるとお考えであれば、一度担任の先生や各自治体に相談されることをおすすめします。
2017年03月30日こんにちは。子育て支援を専門にしている臨床心理士の今井千鶴子です。もうすぐ新年度です!大人にとっても子どもにとっても、新年度は新たな出会いが多い時期です。社会心理学の理論の中には、『最初の印象が後の印象までを支配してしまう』と述べられているものがあります。その最初の印象に影響する代表的なものが“挨拶”ではないでしょうか。挨拶は簡単そうに思われがちですが、「子どもが上手に挨拶できない」というママからの悩みは意外と多いものです。今回は、お子さんが楽しく挨拶するための4つのコツをご紹介します。●(1)挨拶の“大切さ”を話しあってみる挨拶が苦手なお子さんの中には、“なぜ挨拶をするのか”ということについて納得しておらず、その必要性を感じていない子がいます。挨拶をする理由(意味)が理解できたり、納得できたりすると、エンジンがかかる子もいます。世界共通で行われている挨拶ですが、実は挨拶をする“本当”の理由は明確ではありません。しかし、挨拶の“大切さ”を伝えることはできます。たとえば、「(小さな声で)おはよう」と言う挨拶と、「(大きな声で)おはよう」と言う挨拶をお子さんに見せ、「どっちが元気だった?」や「どっちが好き?」などと質問してみましょう。そして、お子さんの答えから、「挨拶って何ですると思う?」と話題を広げてみるといいと思います。お子さんたちが考える理由はさまざまですが、本当の理由などないのですから、親子が納得できる理由を考えて実践できればいい と思います。●(2)焦らず少しずつ成功体験を重ねる挨拶と一言でいっても、行動科学からすると、実はさまざまな段階(行動)に分けられます。たとえば、“目(顔)を相手に向ける”、“会釈する”、“笑顔を作る”、”小さい声を出す”、“大きな声を出す”などいくつかの段階に分けることができます。心理学的には、“少し頑張ったらできる”くらいの目標がちょうどよい とされています。なぜなら、初めから完璧な挨拶を求めすぎると、途中で挫折しやすくなるからです。もし、声を出して挨拶をするのが苦手なお子さんだったら、まずは「目(顔)を相手に向けて軽く会釈をしよう」など、過度の負担がかかりすぎない段階からスタートしてみましょう(お子さんと相談し、チャレンジできそうな内容かどうかを確認しましょう)。焦らず少しずつ成功体験を重ねることがポイントです。そして、チャレンジしたときにはお子さんの頑張りをしっかりと認めましょう。もしかしたら、お子さんが一番喜ぶのは、挨拶した相手から「上手に挨拶できるね」などと褒められることかもしれません。ただ、残念ながらそういう機会は少ないと思います。そんなときはママから「(挨拶の相手が)笑顔になっていたね」「○○ちゃんが挨拶するのを(挨拶した相手が)すごいなっていう顔で見ていたよ」「○○ちゃんが元気に挨拶するのを見て、ママまで元気が出たよ」など、挨拶した結果を子どもに伝えてみる のもいいですね!そのようなママからの言葉がお子さんの挨拶へのモチベーションや自信へとつながっていくと思います。●(3)挨拶のレパートリーを増やす挨拶が大切なことはわかっていても、“いつ”“どんなこと”を言ったらいいのかわからないお子さんもいます。そんなお子さんとは、場面ごとにどんな挨拶をしたらよいのか話し合ってみましょう。たとえば、「朝(昼・夜)はどんな挨拶をする?」「友達の家に遊びに行くときにはどんな挨拶をする?」「職員室に入るときにはどんな挨拶をする?」など、お子さんが経験しやすい場面をクイズ形式で考えてみましょう。特に不安が強いお子さんや恥ずかしがり屋のお子さんの場合には、ママやパパと事前に作戦会議をしたり、実際に練習したり することで、自信を持って挨拶できると思います。●(4)ママやパパが挨拶のモデルとなるいくらママがお子さんに「挨拶しようね」と言っても、ママ自身が挨拶をしていなければ、お子さんの挨拶行動は身につきません。挨拶ができる子になってほしいなら、まずはママが率先して明るい挨拶を心がけましょう。また、意外な盲点としては“パパ”の存在があります。たとえママが明るい挨拶を心がけていても、パパが挨拶をしなかったり、適当にしたりしていては挨拶の大切さは伝わりません。子どもは何より“矛盾”を嫌う存在 ですので、一貫して素晴らしい挨拶を心がけましょう。家族みんなで気持ちのいい挨拶をしていれば、「挨拶っていいな」と自然に思えるはずです。さらに、ママやパパ以外にも、お友達や絵本、アニメなどのキャラクターをお手本のモデルとして紹介するのもおすすめです。----------いかがでしたか?今回はお子さんが楽しく挨拶するための4つのコツをご紹介しました。明るく挨拶をして、楽しい新年度をスタートさせましょう!●ライター/今井千鶴子(臨床心理士)●モデル/前田彩(桃花ちゃん)
2017年03月28日うちの学校の支援級、わが子に合ってる…?出典 : 「支援級か、通常級か…迷ってるけど、どうやって判断すればいいの?」「うちの子が通う学校の支援級、どんな環境だろう?どういうところを気にしたらいいの?」現在、希望者急増で過渡期にある、特別支援学級(以下、支援級)をめぐる状況は様々です。情報を探すと、「うちの子も是非お願いしたい!」と思える素晴らしい支援級もあれば、残念ながら、現場の事情が追いつかずに、十分な理解や子どもに合った対応が得られない支援級もあるようです。支援級をご検討の際には、実際に、お子さんが通う「その」支援級がどうなのか、自分の目で確かめてみることが必要です。長男が自ら通常級から支援級への転籍を希望した際、私はまず、特別支援コーディネーターの先生の案内で、実際にクラスを見学させて頂き、事前に疑問な点、不安な点の詳しいご説明をお願いし、長男本人も見学・体験させて頂きました。それでも、後から「もっと早く確認しておけば良かった」と思ったことも少なからずありました。そこで、支援級を選択する前に「確認してよかったこと」「確認しておけばよかったこと」の、判断のポイントを、あくまで「うちの経験上」ではありますが、楽々かあさんこと、大場美鈴がお伝えします。支援級見学の際にぜひ確認しておきたい!4つのポイント出典 : 長男が通っている支援級は、身体・知的に障害のあるお子さんのクラスと、長男のように、大きな知的・言葉の遅れの心配はないものの、発達障害の傾向のある子が中心となる、情緒級に分かれています。学校によっては、どの障害の状態のお子さんも一緒のクラスになる場合もあります。その場合でも、個別に学習内容を調節して頂ける場合はいいのですが、そうでない場合、お子さんに学習面での理解力がある程度あっても、学習内容や課題が簡単過ぎるケースがあります。そうなると本人の理解度とのミスマッチが起こり、その支援級がその子の力を伸ばせる環境とは言いがたくなる可能性があります。逆に情緒級がある場合も、その子の学習の進度に合わせた課題でない場合もあります。本人の能力や理解度に合わせた学習ができるかどうかは、よく確認しておきたいポイントの一つです。万が一合わない場合でも、先生と学習内容を調整して頂けるか、相談の余地があるかどうか、見極めておいたほうがいいでしょう。また、基本的に支援級の成績表は、「国語は漢字ドリルをがんばり、丁寧に漢字を書けるようになりました」というような、言葉による表現がされることが多いようです。特に将来的に、中学受験の可能性がある場合には、念のため希望した際には通常級と同じ評価で対応可能かどうか、確認しておいたほうがいいでしょう。(中学受験の際、全ての学校で成績表の提出が必須という訳ではないようですが、一部の入試日程や推薦、A.O.入試の場合などには、成績表のコピーの提出が必要になる場合があります。)出典 : 次に気をつけたいのは、今のところ、すべての支援級の担任の先生が、特別支援教育の知識・経験が豊富であるとは限らない、ということです。支援級の担任には、特別な資格などは必須ではなく、今まで通常級で担任してきた先生が、急に支援級を受け持つ場合も多いようです。長男の今年の担任も、長年通常級を受け持ったベテランの先生ですが、支援級の担任は人生初でした。ただし私は、支援に詳しくない先生=子どもにとって良くない先生、とは限らないと思っています。確かに、凸凹のある子に伝わりやすい方法を多く知っている先生なら心強いと思います。しかし、詳しい先生1人に負担がかかり過ぎてしまったり、クラスの他のお子さんの状況などによって、少人数であっても十分に子ども一人ひとりを見ることができない…など、先生お一人の力では解決できない現場の事情がある場合もあります。そのため支援に対する知識・経験の有無で、一概には判断できないと思います。もし、先生が支援に詳しくないからと、あからさまに保護者が落胆してしまうと、それが子どもや先生にも伝わって、その後の信頼関係に影響が出てしまうかもしれません。私は、知識・経験の有無よりも、・先生が子どもを肯定的に見ようとしてくれるか・子どもに合わせた指導をしてくれるか・親の話に耳を傾ける余力があるかのほうが大事だと思っています。しかし、見学の時点で気持ちよく応対してくれた先生に会えたとしても、翌年に我が子を担任してくれるとは限らないというのは注意したい点です。通常級に比べれば、支援級の先生は比較的長く同じクラスを担当することが多いようですが、異動がないわけではありません。また、大変残念なことながら、今まで毎年のように支援級の補助教員や介助員の先生が、年の途中で1人、2人とお辞めになってしまうことも、私は学校のお便りで度々知らされてきました。厳しい現場の現実があるように感じます。出典 : 人事異動がある先生方と違い、子どもたちは比較的同じメンバーでともに支援級で過ごすことが多いです。もちろん、入学や卒業、転籍などによる入れ替わりはありますが、クラス替えもなく、ほぼ同じメンバーで何年間も過ごすことになります。支援級は、学年を越えて、多種多様な子ども達の集まりとなるため、それが合う子、合わない子がいると思います。支援級の低学年のお子さんは、かなり自由気ままな印象がしたりで、見慣れてないと「これで大丈夫かしら…」と少々不安に感じられるかもしれません。そういう時は、何年もその環境で過ごしてきた、高学年のお子さんの様子が参考になると思います。その子なりに落ち着いていたり、交流級に意欲的に参加している様子が見られれば、その支援級の環境がプラスに働いていると受け取ってもいいのではないかと私は思っています。また、掲示物が破れっぱなしになっていないか、といった備品の様子、ロッカーに分かりやすいマークなどの工夫があるか、といった教室環境も、その支援級が安定しているかの参考になると思います。(ちなみに私は、教室の備品の乱れが放置されている場合、先生に余裕がなく、かなりお疲れ気味…というシグナルだと受け取っています。)出典 : 私が見学した時、1クラス6~7名と聞いていた支援級の情緒クラスには、いつも低学年の2~3人のお子さんしかいませんでした。他のお子さんは「交流級」に行っているのだそうです。長男の学校の場合、大抵は学年が上がるほど交流級で過ごす時間が増えていき、最終的に通常級に移籍する子も多いそうです。ご家庭で「いずれは、できれば通常級へ」と希望している場合には、交流級の活用状況は要チェックです(また、そもそも支援級から通常級への転籍が可能かどうか、よく確認しておく必要がある学校もあるようです)。交流級の活用状況は学校によって様々です。長男の小学校はかなり積極的なほうだと思います。後に担任の先生からその理由を伺うと、「年々、支援級への希望者が増えているので、◯太郎くんのように、交流級の授業に意欲がでてきたお子さんは、どんどん”卒業”して、通常級に戻って頂けると助かります」…とのこと。なかなか厳しい内情もうかがえます。とはいえ交流級を充分に活用できている学校は、通常級の子達も支援級の子に日頃から馴染んでおり、支援級”卒業”後も、比較的クラスに溶け込みやすいのではないかと思います。交流級の活用については、見学時、私はあまり気にしていませんでした。でも今思うと、重要なポイントだったと思います。どんな状況の支援級も、本人が体験してみるのがイチバン!出典 : 見学をする際には、参観日のようなよそ行きの状態ではなく、支援級のありのままの状態を子ども本人が、できるだけ何回も見られるほうがベターです。長男が普通級から支援級へ転籍する前に、私は長男本人が何度も支援級を見学・体験できるよう、お願いしました。でも見学を予定していたある日、突然見学がキャンセルになったことがありました。先生によると、「今日は、落ち着けてないお子さんがいたので、見学は中止させて頂きました。また日を改めて、予定を調整させて下さい」とのこと。それを聞いて、私はこう言いました。「是非、そういう時も本人に見せてください。ご迷惑になるようでしたら、廊下からでも構いませんので。支援級は、皆が落ち着いている時もあれば、そうでない時もあることを、本人が十分知って、納得したうえで転籍したいです。」支援級は、長男と同じように、あるいはそれ以上に、特別な配慮・支援を必要とするお子さんの集まりです。当然のことながら、少人数とはいえ、いつもクラス全体が落ち着いているとは限りません。そんな支援級で過ごすイメージを本人が持てると、入級後の環境の変化にもついていき易いと思います。長男の場合は実際に何度も授業を見学させて頂き、給食の時間を支援級の子達と一緒に過ごしたり、といった機会を作って頂きました。すると、「今日はすんごい泣いてる子もいたよ」「一年の子が途中で教室出てっちゃった」なんて言うときもありました。私は「支援級はそういう時もあるよ。それでもいい?」と聞きましたが、長男は「それでもいい。支援級に行く」と決心は変わりませんでした。「うちの」支援級には良いところも、そうでないところもあることを、十分納得の上で転籍をした私達。結果的にこの一年は、長男の成長のプラスになりました。実際に自分の目で確かめて、後悔のない選択を出典 : 長男の先生からの話にもありましたが、近年、支援級を希望する子どもが急増している傾向があります。なかなか現場がそれに追いつけないという裏事情もあり、全てが保護者の希望どおり、理想どおりという訳にはいかない場合も、多いかと思います。それでも、事前にメリット・デメリットを良く比較検討し、納得のゆくまで説明をして頂き、実際に自分の目で確かめて、体験して、自分たちの意思で決められれば、後悔するリスクを減らすことができます。学校生活でお子さんが自信をつけてゆける、プラスの選択ができるよう、祈っています。Upload By 楽々かあさん大場美鈴(著), 汐見稔幸(監修), 『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』ポプラ社, 2017年
2017年03月13日こんにちは、保育士ライターのyossyです。書籍やドラマの『嫌われる勇気』で話題になった“アドラー心理学”。近年、「アドラー式子育て」という言葉もよく聞かれるようになりました。どのような子育て法なのでしょうか。メリットとともにご紹介します。●『嫌われる勇気』で注目されるようになったアドラー心理学アドラーというのは、オーストリア出身の心理学者・精神科医です。有名な『嫌われる勇気』の著者(古賀史健氏との共著)でもある岸見一郎氏は、『子どもをのばすアドラーの言葉子育ての勇気』のなかで、『子育ての目標は“自立”である』と述べています。そのためには下記の3つがポイントになるそうです。・子どもが自分で決められる・子どもが自分自身の価値を決められる・自己中心性から脱却するアドラー式子育てを実践すると、上記のようなメリットが得られるということですね。どれも、社会で人として強く生きていくために重要なことです。また、子どもとの関係性に悩んでいる場合は、関係性がよくなるケースも多い ようです。●叱る子育てとも、褒める子育てとも違う親は、ついつい「子どものため」という言葉を言い訳にして叱ってしまいがちですね。そんな子育て法はよくない、ということで、近年は褒める子育てがよく注目されています。アドラー式子育てにおいても、叱ることは即効性はあるが、結局親が怖いから行動をやめているだけ。長期的にみれば子どもの行動を変えられないことから、有意ではない、としています。しかし、褒めるのも違う のだそうです。褒めることで気分はよくなりますが、人間、いつも褒められるべき状況におかれるわけではありません。また、一生褒めてくれる人がそばにいるわけでもありませんね。●“子どものため”は本当に子どものため?あらかじめ子どもの行動を決めてしまったり、親の言うことを無理に聞かせようとしたりすることは、本当に子どものためでしょうか。また、褒めているとき、子どもに対して上から目線で接していないでしょうか。子どもと対等な目線で話をするように心がけることが、子育ての大事なポイントになるそうです。体罰など、もってのほかですね。子どもに介入せず、でも放任はせず、「いつでも援助する用意はあるよ」と寄り添う のがアドラー式です。普段の勉強や、進学、習い事、友人関係などで決断を迫られたとき、あるいは問題が起きたとき、決めるのは子ども自身。親は先回りして考えてしまうでしょうが、子どもの人生なので、“我が事”として考えすぎないことが大切です。例えば、子どもが勉強をしないときに、「勉強しなさい」と言うのは踏み込みすぎ。勉強についてどうしたほうがいいのか対等に話し合うことや、そもそも勉強が楽しいものであるということを子どもと共有することが大切だというわけです。そして、「勉強する」という意思表示を子どもがしたら、親は本当に信じてあげるのです。----------子どもはいずれ親から自立し、自分の力で生きて行かなくてはいけません。アドラー式子育ては、頭では理解できても実践が難しいと感じる部分も多いでしょう。まずは、頭ごなしに叱るのをやめることから始めてみてはいかがでしょうか。【参考文献】・『子どもをのばすアドラーの言葉子育ての勇気』岸見一郎・著●ライター/yossy(フリーライター)●モデル/赤松侑里(さゆりちゃん)
2017年03月09日エムティーアイ運営の健康情報サービス「ルナルナ」はこのほど、シンクパールと共同で実施した「職場での婦人科検診制度について」の調査結果を発表した。同調査は2月18・19日、20~50代以上の女性1万1,676名を対象にインターネットで実施したもの。初めて婦人科検診を受けたきっかけについて聞くと、「自治体からのお知らせ・クーポン」(34.7%)が最も多く、次いで「自分の職場の健康診断」(24.1%)となった。最近では著名人の乳がんや子宮頸がんなどの婦人科疾患発症が話題になっているが、そういった報道によって自身の意識や行動に変化はあったか尋ねたところ、41.2%が「自分の健康について考えるようになった」と回答した。33.5%は「実際に検診に行った」と答えている。次に、20~50代以上の働く女性を対象に、自身の職場に婦人科検診を受けられる制度はあるか聞くと、「ない」が45.4%で、「自分の職場にある」(39.7%)を上回った。職業別でみると、「自分の職場にある」が半数を超えたのは正社員(51.4%)のみで、その他は検診制度がない人が多いことがわかった。「自分の職場」もしくは「家族の職場」に婦人科検診を受診できる制度があると回答した人に、実際に受けている検診の種類について尋ねたところ、乳がん検診は自己負担あり・なしに関わらず約30%が受けていることがわかった。子宮頸がん検診も、自己負担なし35.8%・自己負担あり30.2%で受診率は3割を超えている。職場に婦人科検診を受けられる制度がないと回答した人に、もし職場に受けられる制度があった場合に活用したいか尋ねると、58.2%が「自己負担がないなら受けたい」、33.1%が「自己負担があっても受けたい」と答えた。合わせると、9割以上の人が受診したいと回答している。
2017年03月02日