リドリー・スコット監督の最新作『オデッセイ』が、トロント映画祭で世界プレミアされた。原作は、アンディ・ウィアーが書いたSF小説。宇宙飛行士マーク(マット・デイモン)は、火星への視察旅行中、悪天候のため死亡したと思われ、仲間は彼を残して地球に向かう。だが、実は彼は死んでいなかった。それを伝える手段も閉ざされた上、基地に残された食品の量は限られている。そんな中、マークは、火星にジャガイモを植えるという試みをしつつ、地球と連絡を取ろうとする。その他の写真映画は、ほぼデイモンのひとり芝居。だが、公式会見でデイモンは、そのことに不安はなかったと語った。「脚本がすばらしかったし、途中で、地上や(マークを残して飛び去った)宇宙船のシーンも出てくる。最初から最後まで僕が出づっぱりで観客を退屈させる、ということにはならないだろうと思ったよ。万一、そういう状態になったら、僕以外の人たちのシーンをより頻繁に入れて、変化をつければいいわけだしね」(デイモン)。ウィアーは今作で作家デビューを果たした新人小説家。自分が書いた小説が、米大手出版社から発行されただけでなく、時を待たずして映画化されたという事実を、本人はまだ信じられないでいる。「そうする必要はいっさいないのに、脚本家のドリュー・ゴダードは僕の意見を常に聞いてくれたんだ。自分の小説が映画化されるにあたって、不安なんていっさいなかったよ。僕にとっては、すべてが喜びだった」(ウィアー)。デイモンは『インターステラー』でも宇宙飛行士役を経験している。「無重力の中、浮いている状態を演じる場面では、ワイヤが使われるけれども、顔のクローズアップとわかっている時には、ワイヤを使わず、自分で“浮いている”フリをさせられることがある。それは、やっている時、かなりばからしく感じられるんだ。天才監督による、大型予算をかけた傑作でも、現場では子供が自分の部屋で遊んでいるようなことが展開されていたりするんだよ」(デイモン)。『オデッセイ』は来年2月日本公開。『オデッセイ』2016年2月 TOHOシネマズ スカラ座他全国ロードショー文:猿渡由紀
2015年09月14日三菱航空機は9月2日、10月後半に初飛行を行う開発中の次世代リージョナルジェット機MRJ(Mitsubishi RegionalJet)に関して、開発状況と飛行試験の実施内容を発表した。飛行試験機の初号機による初飛行は、県営名古屋空港(愛知県豊山町)および周辺空域で約1時間の飛行を予定している。初飛行の実施日に関しては、9月末を目途に初飛行を実施する週を公表し、初飛行実施の1日前に翌日実施する旨を公表するとしている。初飛行までの作業としては、9月下旬までに全機地上試験・データ確認・機体点検を実施し、10月中旬までに走行試験を行い、10月後半で初飛行となる。初飛行までの手続きとして、社内審査会において安全性が認められた後に国交省の飛行前審査会を受審し、また、社内審査会において飛行許可取得に必要な提出文書を審査・事前確認を行う。そののちに、MRJの型式証明取得活動の一環として飛行試験を実施するために法令に基づく飛行許可を国交省から取得する。機体に関しては、静強度試験において主翼上曲げて胴体与圧等の試験を完了し、構造強度の面において初飛行が安全に行えることを確認している。また、初飛行の際は基本特性(上昇、下降、左右への旋回)の確認を主目的としている。そのため、可動部のうち脚とフラップは固定し、逆推力装置は作動させない。初飛行以降は、飛行領域拡大のために試験のフォードバック改修を計画的に実施することを予定している初飛行に対して三菱航空機は、「関係各機関との連携も含め安全を確認した上で、万全の体制で飛行試験を実施する」としている。(c)2015 MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES, LTD. All Rights Reserved.
2015年09月02日●宇宙行きはゴールではなく夢に向けた第一歩宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2015年8月26日、金井宣茂(かない・のりしげ)宇宙飛行士を、国際宇宙ステーション(ISS)の第54/55次長期滞在搭乗員に任命したと発表した。出発は2017年11月ごろ、滞在期間は約半年間が予定されている。それを受け、8月27日には記者会見が行われ、宇宙飛行士になろうと思ったきっかけや、このミッションに向けた意気込みなどが語られた。金井さんはISSでどのような活動を行うのか。そしてそれに対する意気込み、また自身を「"もぐり"の宇宙飛行士」と呼ぶ理由、さらに金井さんの後の、日本の有人宇宙活動について、見ていきたい。金井宇宙飛行士に関連する記事・【インタビュー】ISS長期滞在が決定した金井宇宙飛行士が語る - 宇宙旅行が当たり前になるためにロケット以外で重要なものとは・【レポート】海底から火星を見据えて - JAXAの金井宣茂 宇宙飛行士が語った宇宙へのリハーサル・JAXAの金井宣茂宇宙飛行士、ISS第54次/55次長期滞在搭乗員に決定○「宇宙行きはゴールではなく夢に向けた第一歩」金井さんは1976年生まれで、現在38歳。2002年に海上自衛隊に入隊し、医師の資格を有する幹部自衛官(医官)を務めた。金井さんは特に、水に潜って作業を行う隊員(潜水員)の健康管理を専門とする、潜水医学の医師(潜水医官)でもあった。そんな中、JAXAは2008年3月31日に、新しい日本人宇宙飛行士を募集すると発表した。それまでの宇宙飛行士が「日本人が宇宙に行くこと」や、「日本人がスペース・シャトルを使ったミッションを行うこと」を目的として選ばれたのに対して、このときは「国際宇宙ステーション搭乗宇宙飛行士」、つまりISSで働き、その利用によって新しい成果を生み出す飛行士を選ぶことを目的としていた。これに金井さんは応募し、厳しい選考を経て、2009年の2月に宇宙飛行士候補者の補欠として選ばれ、同年9月には正式に採用されることになった。同期には、現在ISSに長期滞在している油井亀美也(ゆい・きみや)宇宙飛行士や、2016年6月に打ち上げ予定の大西卓哉(おおにし・たくや)宇宙飛行士がいる。医師から選ばれたのは向井千秋さん、古川聡さんに次ぐ3人目、また自衛隊出身は油井さんに次ぐ2人目となった。宇宙飛行士候補者に選ばれた後、2009年からは油井さんや大西さん、また米航空宇宙局(NASA)とカナダ宇宙庁の宇宙飛行士候補者らと共に、宇宙飛行士になるための訓練が始まった。そして、2年後の2011年に、ISS搭乗資格をもつ宇宙飛行士として正式に認定され、さらにそれ以降も、実際に宇宙へ飛び立つ日を目指し、米国やロシア、日本で訓練を積み重ねていた。そしてついに、それが叶う日が決まったのである。金井さんは記者会見で、「私の夢は、より宇宙が身近になり、まるで海外旅行に行けるような感覚で、誰でも宇宙旅行を楽しめるような時代が来ることです。それを実現するために活躍したいと思っています。今回、宇宙飛行という大任を受けましたが、これは自分にとってゴールではなく、その先の夢に向かって進むための第一歩であると考えています」と語った。○滞在期間は半年間、さまざまな実験を予定現在の予定では、金井さんは2017年の11月ごろに、地球を出発し、ISSの第54/55次長期滞在員として約6カ月間にわたって滞在。ISSの運用や科学実験を行うことになっている。往路、復路ともに、ロシアのサユース宇宙船に搭乗する予定となっている。また2016年1月からは、打ち上げに向けて、サユース宇宙船への搭乗や、ISSの長期滞在に必要な訓練を開始するという。ISS滞在中に、金井さんが具体的にどのような実験を行うのかは、まだこれから決められることになっているが、金井さんは医師であり、また潜水医学の専門家でもあることから、JAXAでは医学や医療に関する実験への貢献を大いに期待しているという。たとえば「きぼう」の大きな利用テーマのひとつに「健康長寿社会の貢献」というものがある。宇宙空間では、筋肉の老化や骨の密度の減少が、地上より速く進むことがわかっており、その研究によって、日本が直面している高齢化社会への、何らかの貢献ができないかということが考えられている。金井さんがこのテーマに関する研究を行うことは大いに考えられる。また、打ち上げまで時間が十分にあることから、「金井さんならでは」のミッションも考えていきたいという。記者会見で金井さんは、次のように期待を語った。「現在『きぼう』では、ダークマターの謎を追う実験や、生きたマウスを飼育して、そのまま地球に持ち帰る実験、また超小型衛星の放出などを行っていますが、これらは『きぼう』を造っていた段階では、まったく想像していなかった新しいアイディアだったり、夢物語だったりしたものが、現実になったものです。私のミッションは2年後。2年後になると、宇宙産業だけではなく、他の産業からもたくさんの研究者が宇宙に参入してきたり、より低価格に、より手軽で、よりスピーディに宇宙空間を使うような動きがさらに加速していると思います。今現在、世界中の誰もが想定していないようなおもしろい実験、最先端の科学を切り拓くような実験が、2017年には待っていると思います。それに向けて全力疾走でがんばりたいと思います」。○"もぐり"の宇宙飛行士にしてネモ船長ところで、金井さんのように、潜水医学を専門としているお医者さんの間では、初対面の人に「私、"もぐり"の医者なんです」と自己紹介するという、伝統的なギャグがあるのだという。もちろん、この場合の「もぐり」の本当の意味は、ブラック・ジャック先生のような「モグリ」ではなく、「潜り」のことである。そこで金井さんは、それに引っ掛けて、自身を「"もぐり"の宇宙飛行士」と呼び、会場の笑いを誘った。また、金井さんは宇宙飛行士の仲間たちから、「NEMO」(「ニーモ」、もしくは「ネモ」)というコール・サインで呼ばれているという。これは、ジュール・ヴェルヌの名作『海底二万里』や『神秘の島』に登場する潜水艦「ノーチラス号」のネモ船長、また『ファインディング・ニモ』に登場するクマノミの「ニモ」(ネモ船長に由来)にちなんでおり、金井さんが潜水医学の専門家であることから名付けられたのだとされる。ちなみに、金井さんは今年7月20日から8月2日にかけて、米フロリダ州の沖にある海底実験室「アクエリアス」で、NASA極限環境ミッション運用訓練に参加したが、この訓練がNASA Extreme Environment Mission Operationsの頭文字から「NEEMO」(「ニーモ」)と呼ばれていることから、関係者の間では「NEMO in NEEMO」(ニーモの中にニーモ(ネモ)がいる)というギャグが流行ったという。"もぐり"の宇宙飛行士であり、現代のネモ船長でもある金井宇宙飛行士が、ISSでどんな活躍を見せてくれるのか。それはきっと『海底二万里』と同じぐらい、あるいはそれ以上におもしろく、驚異に満ちた冒険譚になるに違いない。●日本人宇宙飛行士と、日本の有人宇宙活動の未来○金井さんがサユースに乗る最後の日本人宇宙飛行士に?ところで、金井さんはもしかすると、サユース宇宙船に搭乗する最後の日本人宇宙飛行士になるかもしれない。2011年にスペース・シャトルが引退して以来、NASAは新型宇宙船が完成するまでのつなぎとして、ロシアからサユース宇宙船の搭乗権を購入し続けており、そこにNASAの宇宙飛行士を乗せて飛ばしている。また、金井さんを始め、これまでサユースに搭乗した日本人宇宙飛行士の搭乗権も、このNASAがロシアから購入した分の中から割り当てられている。しかし現在のところ、NASAは2018年の打ち上げ分までしか購入していないため、2017年11月に地球を出発し、2018年の春ごろに帰還する金井さんが、サユース宇宙船に乗る最後の日本人宇宙飛行士になる可能性がある。なお2017年には、米国の民間企業2社(ボーイング社とスペースX社)が開発している新型の宇宙船が完成し、NASAやJAXA、欧州宇宙機関(ESA)やカナダ宇宙庁などの宇宙飛行士は、サユースではなく、この新型宇宙船によって打ち上げられる予定となっている。つまり、金井さんの次に飛ぶ日本人宇宙飛行士は、この民間の新型宇宙船に乗りこむことになる可能性が高い。ただ現在、予算不足などが原因で開発に遅れが出ており、また今後、開発中に問題などが発生することも考えると、2017年に間に合わない可能性は十分考えられる。そうなると、NASAはまたサユースの座席を購入せざるを得なくなるため、金井さんが最後ということにはならないかもしれない。○9年後のISS金井さんの宇宙飛行が決定したことで、現在の日本人宇宙飛行の中で、宇宙飛行を経験していない人はいなくなる。現在のところ、ISSは2020年まで運用されることが決まっているが、米国などはそれを2024年まで延ばすことを提案している。すでにロシアやカナダはこの提案に賛同しており、日本と欧州は2016年まで決定を先送りするとしている。仮に2024年まで運用を延長することになったとしても、金井さんが現在38歳ということを考えると、9年後でも十分に現役として活躍できる年齢だ。実際にJAXAは、2013年11月に、宇宙飛行士の新規採用を当面の間凍結する、と明言している。この当面、というのが、具体的にどれぐらいの期間を指すのかはわからない。もっとも、それはJAXA自身も知らないし、決められることでもない。現在の日本の宇宙開発は、内閣府の中に設置された「宇宙開発戦略本部」が取り仕切っており、また同様に内閣府に設置されている「宇宙戦略室」が、計画の企画や立案、調整を、そして「宇宙政策委員会」が審査や意見などを行っている。しかし現在、これらの中では有人宇宙計画の評価はあまり高くなく、今の段階で決まりつつあることといえば、コストを削減した上での「きぼう」の継続的な運用や、宇宙ステーション補給機「こうのとり」の改良ぐらいで、ISS"以降"の、日本の有人宇宙計画については、何も具体的なことは決められていない。金井さんの例にみるように、新しい宇宙飛行士を育成するには年単位の時間がかかり、さらに新しい有人宇宙計画を立てるのにはそれ以上の時間がかかる。ISSの運用終了まで長くともあと9年、残された時間は多くはない。○米欧は火星や小惑星へ、ロシア、中国は新宇宙ステーション建造ところで、他国はISS以後の世界を、どのように見据えているのだろうか。まず米国NASAは、かねてより月や火星、小惑星を有人探査を行う計画を進めており、現在はそのための新型宇宙船「オライオン」と、新型の超大型ロケット「スペース・ローンチ・システム」(SLS)の開発を行っている。オライオンは2014年12月に無人での試験飛行に成功し、2018年11月にはSLSの初打ち上げも兼ねて、月まで行って帰ってくる無人の試験飛行を行う予定を立てている。有人飛行は2021年以降に予定されており、月の近くまで運んできた小惑星に宇宙飛行士を送り込んで探査が行われる。そして2030年代には、火星への有人飛行が計画されている。また欧州は、この米国の計画に参加する意向を示しており、オライオン宇宙船の「サーヴィス・モジュール」と呼ばれる、エンジンやバッテリー、生命維持装置などが搭載されている部分の開発と製造は、欧州側が担うことになっている。これは計画の首根っこを押さえているのと同じであり、計画の内容などに対して、ある程度の口出しができる権利をもつ。一方ロシアは、ISSに結合されているロシア側のモジュールの中から、比較的新しいモジュールだけを分離して独立、さらにそこに新しいモジュールを結合させて、新しい宇宙ステーションを造る構想を持っている。ロシアが主導権を握る形にはなるものの、欧米にも参加を呼びかけてはおり、第2の国際宇宙ステーションのような存在になる可能性もある。また、その先には月の有人探査も視野に入れているという。ただ、ロシアは近年、宇宙産業の力が低下しており、また連邦予算も厳しい状況にあるため、今後計画がどうなるかはまだわからない。中国は2003年に「神舟五号」宇宙船によって有人宇宙飛行に成功し、2008年には「神舟七号」によって船外活動(宇宙遊泳)にも成功している。さらに2011年には、宇宙ステーション「天宮一号」の打ち上げにも成功し、無人の神舟宇宙船によるドッキング試験を経て、有人の「神舟九号」と「神舟十号」が訪れ、「天宮一号」の内部で科学実験などが行われるなど、ゆっくりとではあるが、着実に有人宇宙開発を進めている。そして現在は「天宮二号」の開発を進めると同時に、より大型の宇宙ステーション「天宮」の開発も進めており、2018年に最初のモジュールを打ち上げ、2022年以降に完成させる予定とされる。もし予定通り計画が進めば、2022年から2024年にかけて、宇宙にISSと「天宮」の、2つの大型宇宙ステーションが存在することになる。また、最近ESAは、中国との宇宙開発における協力体制を強化することを検討しており、たとえばESAの宇宙飛行士が「天宮」を訪れる、ということもあるかもしれない。その他、インドも独自の有人宇宙船の開発を進めており、2014年12月には無人でのサブオービタル(軌道に乗らない)飛行試験に成功している。いずれは実際に人を乗せ、地球をまわる軌道に打ち上げることが計画されている。また、イランも有人宇宙船の開発を進めており、数年のうちにサブオービタル飛行を行うとしている。○日本はどの選択を採るかこの状況の中で、まずロシアや中国の宇宙計画に参加することはまず考えられないし、ましてや、日本が独自に何らかの有人宇宙計画を立ち上げることも考えにくいため、米国と歩調を合わせるか、あるいは有人宇宙活動そのものを止めてしまうか、という選択肢しかないだろう。しかし前者の場合、欧州がオライオンのサーヴィス・モジュールの開発で、計画の根幹を握っているのと比べると、日本がこれから参加を表明したところで、貢献できる部分は少ない。たとえば「はやぶさ」のような無人探査機で、有人探査の露払いをすることなどは考えられるが、それは日本でなければできないことではない。また、そもそもミッションの内容からして、参加できる宇宙飛行士の人数はISSより少なくなるため、日本人宇宙飛行士が搭乗できる機会も必然的に少なくなる。そのため、貢献に見合うだけの利益が得られるかはわからない。参加するにしても、「どういう形で参加するのか」が重要となり、大きな議論となるだろう。たとえば年間何百億という予算を使いながら、アポロ計画以来初めて月に降り立つ宇宙船に、日本人宇宙飛行士が乗っていなければ、大きな批判を受けることになるかもしれない。毛利衛宇宙飛行士がスペース・シャトルで宇宙を飛んでから、今年で23年になる。以来、宇宙開発事業団(NASDA)、そして現在JAXAは、有人宇宙船を持たないながらも、有人宇宙活動に関する知見を着実に蓄積してきている。その実績をどう生かすのか。あるいは、捨ててしまうのか。選択のときが迫っている。国際宇宙ステーションを越え、月や火星、小惑星、そしてさらにその先の世界で挑みたいと夢見ている少年・少女たちは、今も日本中に大勢いるはずだ。たとえ困難な道でも、何らかの形で、彼らに夢を叶えるチャンスが訪れ、そして油井さんや大西さん、金井さんらの跡を継ぐ、新しい世代の宇宙飛行士が生まれることを切に願いたい。参考・・・・・
2015年09月01日三菱航空機は8月31日、開発中の次世代リージョナルジェット機MRJ(Mitsubishi RegionalJet)の飛行試験機初号機による初飛行を10月後半に実施することを発表した。飛行試験機の初号機は、県営名古屋空港(愛知県豊山町)および周辺空域で約1時間の飛行を予定している。初飛行の実施日に関しては、9月末を目途に初飛行を実施する週を公表し、初飛行実施の1日前に翌日実施する旨を公表するとしている。なお、8月4日に公表された開発の進捗では、飛行試験機の初号機は各種試験ならびにフィードバックを実施、2号機は全機の機能試験中、3号機は艤装作業中で一部機能試験を実施中、4号機は艤装作業中、5号機は翼胴結合作業中となっていた。飛行試験に関しては、初号機の初飛行に続き、2号機は2015年第4四半期に、3号機と4号機は2016年第1四半期に予定している。※写真は2015年8月4日に公表されたもの(c)2015 MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES, LTD. All Rights Reserved.
2015年09月01日●自衛隊時代に培った知識を宇宙に国際宇宙ステーション(ISS)第54/55次の長期滞在搭乗員に決定した金井宣茂宇宙飛行士は東京都生まれの38歳。同宇宙飛行士は、防衛医科大学校を卒業後、自衛隊呉病院などを経て、海上自衛隊 第一学術科学校 衛生課に所属し、2009年に日本人宇宙飛行士候補者として選抜された。自衛隊時代は潜水艦などに搭乗し、乗組員の精神状態を管理していたという。2年後に予定されているミッションに向けて意気込む金井宇宙飛行士に話しを伺った。○水中医学というユニークな経歴を宇宙へ持っていく-- このたびはISSへの長期滞在決定、おめでとうございます。金井宇宙飛行士が、宇宙飛行士を目指したきっかけは何だったのでしょうか?もともと子供の頃に宇宙に興味があったわけではなく、当時は毛利さんとか向井さんのミッションが取り上げられていて「スペースシャトルってすごいな」くらいに思っていたので、まさか自分が宇宙飛行士になるとは想像していませんでした。大人になって海上自衛隊で仕事をするうちに、水中医学という特殊な環境での医学運用やオペレーションのサポート作業をしていくと、それが有人宇宙飛行のミッションサポートや医学的問題に通じることが多い事に気づきまして、だんだん宇宙飛行という潜水とは全く違う世界に自分がこれまで勉強してきたことを持っていったら何か面白い仕事ができるんじゃないかなと感じ始めたところから宇宙飛行士を目指すようになりました。--そうすると自衛隊に入隊されてからある程度時間が経った後に宇宙飛行士を目指したということになりますが、目指し始めてからどれくらいの期間で実際に宇宙飛行士になれたのでしょうか?私は2005年から2006年にかけて半年ほど米海軍に勉強に行かせてもらっていて、日本に帰ってきたくらいから宇宙飛行士を目指そうということを決めて勉強をしたり情報集めたりしていました。それから2008年4月に宇宙飛行士の応募があって、タイムリーに「宇宙飛行士になってみませんか」という話が舞い込んできたわけです。本当にご縁がご縁を呼んで、いつの間にかこの場所にいるという感じです。--金井宇宙飛行士の場合はタイミングもかなり良かったということなんですね。宇宙飛行士になるにあたって訓練などで、自衛隊時代の経験が活きているなと感じますか?自衛隊で仕事をしていて良かったなと思うのは、集団生活が全然苦にならないとうことです。ほかには入隊したばかりの新人教育でわざと理不尽なことを言われたりなどしたことは、メンタル面での鍛錬につながったと感じます。--そういったご経験は宇宙飛行士の選抜でも有利に働いたのでしょうか?私は採用する立場ではないのでなぜ選ばれたのかはわからないですが、「私は普通の人では体験できないような経験をもっているので、この経歴を宇宙業界でうまく使ってください」ということをアピールしたので、ユニークな経歴という点を買っていただいたのかなとは感じています。○普通の人が宇宙に安心して行けるように--そのユニークなご経験についてもう少し詳しくお伺いさせてください。海上自衛隊時代は潜水艦乗組員の健康状態や精神状態をチェックされていたそうですが、これまでの宇宙飛行士の訓練の中で、潜水艦と共通する点はあるのでしょうか?(海上自衛隊時代は)将来に不安を抱いている若い幹部候補生の悩みを聞いたり、人間関係に悩みを抱いて船を降りたいという隊員の心理状況を確認して、配置を変わってもらったりといったことをやっていました。なので閉鎖環境でどういう気の持ちようでいたらいいのかとか、孤独になったり寂しくなったりしないためにどうしたら良いのかという知識や自分なりの対処法などは、過去に学んだものが使えているんじゃないかなと思います。--逆に宇宙と深海で違う部分はあるのでしょうか?宇宙がユニークなのは無重力ということで、無重力がゆえのいろいろな体の問題があります。例えば体液シフトといって、地上では体の下半身にたまっている体液が相対的に上半身に分布するので、顔がむくんだり、ずっと鼻づまりがしているような感じがしたり、ひどい人では頭が痛くなったりします。そういう宇宙ならではの体の変化というものを自分で経験してみないとと思っています。宇宙にはこれまで限られた人しかいっていなくて、全てのデータがきちんと残っているわけではないし、昔は研究していなかったことが実は問題があるということがわかって、最近になって調べ始めたりしています。宇宙医学はまだ始まったばかりで、もっと色んな人が宇宙に行ってそこでどういうことが起きるのかを調べる必要があります。その始まりの部分に私は携わらせてもらっているので非常に面白いです。また、これは記者会見でも述べさせてもらったことなのですが、地球低軌道を色々な人に使ってもらうこと、もっと言うと海外旅行に行くような感覚で普通の人が宇宙空間に行って帰ってくることを考えると、「高血圧があるんだけど大丈夫なの?」「体に障害があるんだけどそれでも宇宙を楽しめるの?」と聞かれたときに「もちろんです!」と言えるだけの宇宙医学のバックグラウンドであったり安全な宇宙技術というものを先に進めたいと思っています。●「宇宙医学」は日本宇宙開発の強みとなり得る○アメリカとロシアは日本と違う感覚を持っている--宇宙旅行の実現というと、どうしてもロケットなどハードの部分が注目されがちですが、それを利用する人に対してのケアも重要なのですね。話は変わりますが、金井宇宙飛行士はソユーズロケットでISSへ飛び立つことになります。ロシアでは少し前に事故が続きましたが、同国の宇宙開発についてはどのような印象をお持ちでしょうか?宇宙飛行士の感覚としては非常に信頼感がある開発と言えますね。事故は続きましたが、それは有人ではないロケットでの事故でした。ロシアはそこを割り切っていて、全てのロケットを有人飛行と同じレベルでやろうと思うとすごいお金がかかってしまいます。(無人ロケットでは)そこまで求めずに、ある程度リスクは許容して安く、たくさん打ち上げると。逆に有人の方は多少お金がかかっても安全性をきちっとやります。特にソユーズは昔から使われている宇宙船で信頼性は高いと感じます。面白いのは米ロは失敗を悪いと思わないんですね。日本の場合は失敗すると大問題になりますが、彼らは「ロケットは難しいんだから落ちて当たり前でしょ」と、落ちても大丈夫なようなスケジューリングであったり安全管理をしています。もちろん、なぜ落ちたのかという点は厳しく追究して次に活かします。そういったところが合理的というか日本人とは違う感覚だなと感じますね。--日本と米ロでは宇宙開発に対する感覚の違いがあると。以前ある日本人宇宙飛行士の方が「アメリカの宇宙船は飛行機で、ロシアの宇宙船は潜水艦のようだ」と仰っていましたが、金井宇宙飛行士はそういった感覚はお持ちですか?空気清浄機であったり二酸化炭素を取らなきゃいけないとか、たしかに宇宙船と潜水艦ってテクノロジーの部分で似てますよね。またソユーズは信頼性の高い古典的な技術が使われているので、潜水艦でも使われている技術がソユーズでも使われていることも考えられます。あとソユーズには船長の足下に潜望鏡がついていて、それを覗きながらドッキングをします。そういった意味でも「ロシアの宇宙船は潜水艦のようだ」という比喩は面白いですね。○宇宙医学を日本宇宙開発の強みに--それでは最後のトピックについてお話を伺っていきたいのですが、医学分野のご出身という観点から、ISSでのミッション全体を通じて、どのようなことを期待していらっしゃいますか?宇宙開発は国際協調であると同時に国際競争でもあります。NASAとかロシアは組織の大きさであったり予算の多さでこれまで非常に良い仕事をどんどんやってきました。それ自体は非常に良い事なんですが、その中でJAXAが光っていくためには何をすれば良いのかと考えたときに、宇宙医学という分野で日本の強さを見せることができるのではないかと考えています。(宇宙医学という分野は)先輩宇宙飛行士の向井千秋さんが立ち上げて、古川さんが中心となって世界レベルの研究を推し進めようとしています。チームジャパンとして勝負していく中で、宇宙医学を宇宙飛行士としてサポートできれば良いなと思います。--「宇宙医学が日本の強みとなる」と仰るのはどのような技術が根拠となるのでしょうか?日本はタンパク結晶実験というのをスペースシャトルの時代から続けてきました。NASAもやっていたのですが、あまりうまくいかなかったので途中でやめてしまいました。日本だけが地道に続けてきて、それが今花開いてタンパクが実は筋ジストロフィーや歯周病の薬になるんじゃないかといった成果に結びつきつつあります。このノウハウは日本しか持っていないもので、この知見をもとにもっと効率良い方法でできないかというところを急ピッチで進めています。こうした強みを伸ばしていくということをやっていかなければならないと思います。また、マウスを宇宙へ連れて行って戻すという実験を油井さんが今やっていますが、2年後は宇宙でマウスの子供を作って、大人になってから地球へ戻すということができるかもしれません。ほ乳類は宇宙で生育できるのかということを検証するということは、月の周りにコロニーを作ってそこで人間が繁栄する、といった昔アニメで見たような世界が近い状況にあるということになって、そういう実験を担当するかもしれないと思うと非常に楽しみです。--2年後の科学技術の進歩によって可能性はさらに広がりますね。無重力って面白くて、例えばiPS細胞などでは3Dの臓器を作る上で重力が難しさを生んでしまっているところがあります。もし重力が無いことで機能する臓器をより手軽に作ることができれば、そのノウハウを重力下での臓器作成に活用できるかもしれません。アイデア次第で宇宙は色んなことに使えますので、より多くの研究機関を惹き付けるような営業活動もやっていかなければいけないと思います。実際、時代の流れとしてそういう方向に行っていますので、2年後いろいろな産業が宇宙に入ってくることで今では想像できないようなイノベーションが起こるんじゃないかなと期待しています。
2015年08月31日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月26日、金井宣茂宇宙飛行士を、国際宇宙ステーション(ISS)第54次/55次の長期滞在搭乗員に任命決定したと発表した。同宇宙飛行士は2017年11月頃にロシアのソユーズ宇宙船で打ち上げられ、約6カ月間ISSに滞在することになる。滞在中はフライトエンジニアとしてISSの運用や宇宙環境を利用した科学実験を担当する。今後は、ロシアのソユーズ宇宙船の搭乗およびISSの長期滞在に必要な訓練を来年1月から開始する予定だ。金井宇宙飛行士は、東京都生まれの38歳。防衛医科大学校医学科を卒業後、防衛医科大学校病院、自衛隊呉病院などを経て、海上自衛隊 第一術科学校 衛生課に所属。2009年に日本人宇宙飛行士候補者として選抜されたのち、2011年にISS搭乗宇宙飛行士として認定された。その後も、米国海底研究施設でのアメリカ航空宇宙局(NASA)極限環境ミッション運用(NEEMO)訓練に参加するなど、研鑽を重ねていた。今回の決定を受けて同宇宙飛行士は「これまで、NASAをはじめ世界中から高い評価を受けてきた日本人宇宙飛行士の先輩に引き続いて、このような重大な任務を任せていただいたことに誇りを感じるとともに、寄せられる大きな期待に応えるためには、これから2年あまりの訓練に臨むにあたり、相当な覚悟をもっていかなければならないと心を引き締めております。」とのコメントを発表している。
2015年08月27日ウェルクスはこのほど、「保育士の恋愛事情」に関する調査結果を発表した。調査は8月7日~20日、20代~50代の保育士の女性100名(平均年齢31.8歳)を対象に行われた。○「保育士は"モテる"」と実感した人、17%「付き合いたいと思う女性の職業」「結婚したいと思う女性の職業」といったランキングでは、毎年保育士が上位にランクインしている。そこでまず、保育士は"モテる"と実感したことがあるか尋ねたところ、「ある(17%)」「ない(55%)」「どちらとも言えない(28%)」と、意外にもモテる実感のある人は少数派となった。"モテる"と実感した人からは「保育士が来ると言うだけで、人数が集まると言われた。合コンで仕事を話したときの食いつきかたがすごい」(30代)、「友達の結婚式で 保育士ですって言っただけで男子の輪ができた」(30代)といったエピソードが寄せられたが、一方で「職業での食いつきはいいが、それだけで、最終は容姿でモテるかどうか決まる」(30代)、「女ばかりの職場なので、男性と出会う機会は少ないと思う。結婚していない上司(40~50代)がたくさんいる」(30代)など、案外"モテない"というコメントも目立った。○保育士という職業ステータスは役立つ?続いて、現在、恋人や配偶者がいるか尋ねた結果、57%が「いる」と回答。「今の恋人や配偶者とお付き合いするうえで、保育士という職業ステータスが役立っていると感じますか?」という問いに、半数以上が「いいえ(50%)」「むしろ弊害である(2%)」と、役立っていないと回答した。○出会いの場は「友人・知人の紹介」がトップ最後に、恋人や配偶者とはどこで知り合ったのか教えてもらったところ、「友人・知人の紹介(21人)」が1位に。次いで、現代らしく「SNS・インターネット(8人)」「合コン(6人)」と続き、「職場」と答えた人はわずか3人だった。女性の多い職場だけに、仕事での出会いは難しいことがうかがえる結果となった。
2015年08月26日8月19日に種子島宇宙センターからHII-Bロケット5号機により打ち上げられた宇宙ステーション(ISS)補給機「こうのとり」5号機(HTV5)は24日、ISSに到着し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の油井亀美也 宇宙飛行士が操作するISSのロボットアームによってキャプチャ(把持)された。ISSのロボットアームを操作して「こうのとり」をキャプチャしたのは、同宇宙飛行士が日本人としては初めてとなる。キャプチャに成功した油井宇宙飛行士は「宇宙開発の中では1つの小さな歯車だが、自分の仕事をしっかりできて、この瞬間だけは一等星並に輝けたかと思います。」とコメント。また、若田光一 宇宙飛行士がアメリカ航空宇宙局(NASA)のミッション管理センターでリード・キャプコムとして、油井宇宙飛行士をサポートした。「こうのとり」には食料や衣服、実験装置などの物資が搭載されており、物資を届けたあとはISSの不要品を積み込んでISSへ再突入する。
2015年08月24日7月23日、油井亀美也宇宙飛行士ら3人の打ち上げ中継を、フロリダ沖の海底基地で見守る人たちがいた。金井宣茂JAXA宇宙飛行士を含む欧州、NASAの宇宙飛行士たちだ。「我々3人は油井飛行士と一緒にNASAで訓練を受けた同級生。宇宙に行くチャンスが身近に迫ってきているのを感じて、興奮した」と金井飛行士は笑顔で言った。7月20日(月)から14日間、金井飛行士らは海底基地で行われるNASAの訓練に参加した。「NEEMO(NASA Extreme Environment Mission Operations)」は国際宇宙ステーション(ISS)のリハーサルとも呼ばれる訓練で今回が20回目。ISSで長期滞在を行う宇宙飛行士のほとんどはこの海底訓練を経て宇宙に飛ぶ。NEEMO訓練に参加する宇宙飛行士たちは、アストロノート(宇宙飛行士)をもじってアクアノートと呼ばれる。なぜ、宇宙に行くために海底で訓練をするのだろう? ポイントは2つある。1つは環境が似ていること。海底20mにある基地アクエリアスは、さながら「海底にある宇宙ステーション」。幅3m×長さ約15m(「きぼう」日本実験棟船内実験室をやや細長くした大きさ)の基地内は空気で満たされシャツ姿で暮らせるが、空気や電力・通信など生命維持のための機能はすべて外部から供給されていて、常に安全を意識しなければならない。また簡単には外に出られない「隔離環境」であり緊張感を伴う点がISSと似ている。2つ目はその閉鎖環境を利用して、宇宙と同じようにミッション(任務)を行うこと。アクアノートたちのスケジュールは分刻みで決められている。さらに宇宙飛行中と同じように、海上にミッションコントロールセンター(管制室)が設けられ、管制官と密に交信しながら作業が行われていく。金井飛行士によると、今回のNEEMO訓練ではこの通信をわざと10分遅らせてやりとりしているという。「将来、火星に行くことを想定すると、火星との交信には往復で20分かかります。すぐに会話ができない中でどのようにミッションを効率的に行うか。10分のタイムラグでストレスがかかると同時に、知的好奇心が刺激されてさまざまなアイデアを仲間うちで話ながら進めています」(金井飛行士)。チームにはコマンダー(船長)役の宇宙飛行士がいる。様々なトラブルを乗り越えてチームワークやリーダーシップ、フォロワーシップを磨きながら、仕事を安全確実に行っていくことが、この訓練の大きな目的だ。○将来の火星探査を見据えて14日間の訓練中には、海底を火星と見立ててアクアノートたちが船外活動を行った。「NASAは急ピッチでISS後の話し合いをしています。小惑星や火星ミッションなどのアイデアが出ているが、具体的な技術について、何が将来の探査に必要なのか、NASAもまだ手探り状態と感じている」と金井飛行士は指摘する。たとえば重力の小さな小惑星や火星の衛星を探査する際、足場はどうするのか。磁気がなくコンパスが使えない火星でどうやってナビゲーションを行うのか、など実際に活動するために検証しなければならない課題は多い。海底の活動時、宇宙服に取り付ける錘の重さを変えることによって、火星に近い重力を作り出すことができる。アクアノートたちは「海底の火星」でさまざまなツールの作業性や手法を検証する。また、海底基地内ではITツールの検証も行った。たとえばメガネ型ウェアラブル端末。今回、金井飛行士は会見中にマイクロソフトの現実拡張ヘッドマウントディスプレイ「HoloLens」を見せ、「ISSや月のミッションを想定して作業性を評価している」と説明してくれた。宇宙飛行士が見た風景を地上の科学者も同じように見られるかもしれない、という可能性が広がるツールだ。元々、金井宣茂宇宙飛行士は、海上自衛隊のお医者さんで、ダイバーの健康管理も行っていた。アメリカで一年間、潜水医学を学んだ際、潜水医学のドクターが宇宙飛行士になった事実を知り、宇宙飛行士を目指すようになった。「自衛隊時代はサポート役で地上に残りダイバーの健康管理を確認する役目でした。実際に潜ってみてこんなに大変だったのかと新しい発見があった」と吐露する。NEEMO訓練初期にはチームワークで失敗ばかり。多国籍の仲間と一緒に仕事をする中で相手の嫌な面を見ていたが、訓練が進むにつれて、得意な面が見えるようになり、「今ではあうんの呼吸で仕事ができるようになった」という。「日本の強みは宇宙医学。力量と経験を高め、次世代の宇宙飛行士として将来の日本の宇宙開発を担っていきたい。」海底から宇宙をめざし、力強く抱負を語った。
2015年08月06日巨匠リドリー・スコット監督がメガホンをとり、類まれな演技力を誇るマット・デイモン主演で描く超大作『オデッセイ』。探査中の事故で火星に取り残された宇宙飛行士が、希望を捨てず生き延びようとあがく姿を描く本作の、オンライン限定の予告映像が解禁。オスカー俳優トム・ハンクスが、「マット・デイモンに嫉妬する」とツイートしていることが明らかとなった。本作でマット・デイモンが演じるのは、宇宙飛行士のマーク・ワトニー。火星での有人探査の最中に嵐に巻き込まれて死亡したと推測され、残りの乗組員は彼を置いて火星を去ってしまう。奇跡的に生き延びたワトニーは、わずか31日分の食料とともに、気温-55度、酸素ほとんどなし、水なし、通信手段なし、最大風速400km/時という過酷な環境に取り残される。次回の有人探査ミッションが火星にやって来るのは4年後。あらゆる現実が生存は不可能だと示しても、彼は決して生きる希望を捨てず…。解禁された予告映像では、極限状況でも人間性を失わず、科学を武器に生き残ろうとするワトニーの姿や、彼を置き去りにしてしまったことを悔やみ、救出しようとする乗組員メンバーの葛藤と友情を見ることができる。宇宙という特殊な状況下で巻き起こる緊急事態は、息を詰めて見守ってしまう緊迫感に満ちている一方、強靭な意志で絶望的な状況を乗り越えようとするワトニーに、見ているこちらが希望を与えられる見応え満点の映像となっている。異例のロングヒットとなったアンディ・ウィアーの小説「火星の人」を原作としている本作だが、先日、オスカー俳優トム・ハンクスが「アンディ・ウィアーの大傑作!マット・デイモンに嫉妬する!」と原作の画像と合わせてツイートしたことが話題になっており、マットにとっては『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』以来の、アカデミー賞「主演男優賞」ノミネートに早くも期待がかかっている。たったひとりの男の不屈の挑戦が、心揺さぶる“史上最大の奇跡”をたぐり寄せるアドベンチャー超大作『オデッセイ』。圧倒的なリアリティとスリルに満ちた本作の一片を、まずはこちらの予告編で体験してみて。『オデッセイ』は2016年2月よりTOHOシネマズ スカラ座ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年07月27日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7月23日、同日午前6時2分(日本時間、以下同)にカザフスタン・バイコヌール宇宙基地より打ち上げられた油井亀美也宇宙飛行士の搭乗するソユーズ宇宙船が、国際宇宙ステーション(ISS)に到着したと発表した。ソユーズ宇宙船は午前11時45分にISSとのドッキングに成功、午後1時56分にISSとソユーズ間のハッチが開けられた。これにより、約5カ月間を予定している油井宇宙飛行士のISS滞在がスタートしたことになる。同宇宙飛行士は滞在中に、「きぼう」日本実験棟で生命科学、物質・物理科学、宇宙医学などさまざまな実験に取り組むほか、8月16日に予定されている補給船「こうのとり」の打ち上げでは、ロボットアームを操作し「こうのとり」を把持する作業などを担当する。
2015年07月23日宇宙航空研究開発機構(JAXA)所属の油井亀美也 宇宙飛行士が搭乗したソユーズ宇宙船が7月23日6時2分(日本時間)、カザフスタン・バイコヌール宇宙基地より打ち上げられた。宇宙船は6時11分(日本時間)に地球の軌道上に入り、打ち上げは成功した。油井宇宙飛行士は、第44/45次長期滞在クルーとして国際宇宙ステーション(ISS)に約5ヶ月滞在し、フライトエンジニアとして、「きぼう」日本実験棟を含むISS各施設のシステム運用、日本および国際パートナーの科学実験をはじめとする宇宙環境の利用に重点をおいた活動などを行う。また、8月16日に種子島宇宙センターから打ち上げられる予定のISS補給機「こうのとり」5号がISSへドッキングする際に、ISSのロボットアームを操作して「こうのとり」を把持する操作を担当する。地球への帰還は12月22日頃を予定している。油井宇宙飛行士は5月27日に国際宇宙ステーション(ISS)へと向かう予定だったが、5月に発生したプログレス補給船による国際宇宙ステーション(ISS)へのドッキング断念を受けて延期されていた。
2015年07月23日国土交通省は7月14日、ドローンなどの無人航空機※における飛行空域や飛行方法を規制するため、航空法の一部を改正する法律案を閣議決定した。無人航空機は今後、様々な分野で活用されることで新たな産業・サービスの創出、そして、生活の利便や質の向上に資することが期待される一方で、落下事案が発生するなど安全面における懸念が高まりつつある。そのため、国際的な状況も踏まえた緊急的な措置として、基本的な飛行のルールを定めることが必要であるという背景から、今回の法律案が決定された。法律案では、「空港周辺など航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがある空域」「人または家屋の密集している地域の上空」では、国土交通大臣の許可なしに無人航空機を飛行することを禁止する。また、無人航空機を飛行させる際は、国土交通大臣の承認を受けた場合を除いて、「日中において飛行させること」「周囲の状況を目視により常時監視すること」「人または物件との間に距離を保って飛行させること」を守っての飛行を義務付ける。これらの飛行エリア・飛行方法に反した場合は罰金となる。なお、事故や災害時の公共機関等による捜索・救助等の場合は除外となる。今後については、技術の進歩や利用の多様化の状況等を踏まえ、関係者との十分な調整の上で無人航空機の機体の機能や操縦者の技量の確保、無人航空機を使用する事業の発展等を図るために、必要な措置を講じるとしている。※飛行機・回転翼航空機等で、人が乗ることができないもののうち、遠隔操作または自動操縦により飛行させることができるもの。超軽量のものなどを除く
2015年07月14日●星出宇宙飛行士も「まるで本物」と太鼓判宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2015年6月23日、筑波宇宙センター(茨城県つくば市)にある展示館「スペースドーム」をリニューアルした。スペースドームはJAXAで開発された人工衛星の試験モデルや、実物のロケット・エンジンなどが多数展示されており、宇宙ファンのみならず、家族連れや修学旅行生などでも賑わう人気のスポットだ。今回、開館から5周年を迎えたのに合わせ、展示物などが追加され、新たに生まれ変わることになった。今回は、オープン前日の6月22日に行われた内覧会の様子を、写真を交えてお伝えしたい。○スペースドームスペースドームは2010年にオープンし、実物のロケット・エンジンをはじめ、人工衛星や宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)の試験モデルなど、数多くの展示物が公開されており、現在までに約140万人もの来場者が訪れている人気の高いスポットだ。またオープン前日の22日には、報道関係者や日本宇宙少年団(YAC)の子供たちを招いての内覧会が行われた。筑波宇宙センターの今井良一所長は挨拶の中で「今年4月に、JAXAは国立研究開発法人になりました。国が一致団結して、世界のいろんな課題を解決していこういう考えの下でできたものです。それも踏まえ、この展示の中で、人工衛星やロケット、『きぼう』モジュールといったJAXAの取り組みが、宇宙開発という枠を超えて、社会や科学のいろんな課題にどう貢献していくのか、ということを見ていただければと思います。ぜひ楽しい宇宙体験をしていただければと思います」と語った。また、宇宙飛行士の星出彰彦さんも駆けつけ、子供たちに向けて「私も中学・高校時代は筑波の学校に通っていました。当時はもちろん『スペースドーム』はまだありませんでしたが、筑波宇宙センターには足しげく通い、本物を体験する機会がありました。この『スペースドーム』もロケット・エンジンや衛星など、本物のものがありますから、それに触れ、そして宇宙開発を感じてもらい、将来を背負っていって欲しいと思います」と語りかけた。今回のリニューアルでは、大きく3つの点が変わっている。○「きく」シリーズの試験モデルが大集合まずひとつは、人工衛星の展示エリアが一新されたことだ。筑波宇宙センターは実用衛星を多く生み出してきた場所であり、これまでも「ゆり」のプロト・フライト・モデル、また「きく7号」、「きく8号」、「こだま」、「いぶき」、「だいち」、そして「かぐや」の試験モデルなどが展示されていた。これらは地上で試験をする目的で造られたもので、実際に宇宙に行くことはなかったものの、衛星の大きさや機能などは実物とほぼ同じように造られているため、目の前にすると圧倒されるほどの迫力がある。そして今回のリニューアルでは、新たに「きく」、「きく3号」、「きく4号」の試験モデルが追加され、技術試験衛星「きく」シリーズの挑戦の歴史を、ほぼ実物に近い機体を目の当たりにしながら知ることができるようになった。星出飛行士は「これまで宇宙開発事業団(NASDA)、JAXAが開発し、実際に運用してデータを得てきた衛星の実物をお見せしています。ぜひ本物を感じていただければと思います」と語った。○オービタルビジョンもうひとつは「オービタルビジョン」と名付けられた、床面に大きな映像を映し出す装置が追加された点だ。ここではロケットが飛行する様子や、人口衛星の宇宙空間での動きがリアルに体験できるようになっており、「ロケットは打ち上げ後、どこへ向けて、どのようにして飛んでいくか」、また「人工衛星はどこを飛んでいて、何をしているのか」といったことを体験できる。星出飛行士も「足元にガーッと映像が出てきて、よい勉強になります」と語る。また、上映される映像は随時更新されていくとのことなので、今後にも期待したい。○「きぼう」実物大モデルがよりリアルにそして、JAXA曰く「一番の目玉」が、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の実物大モデルが、よりリアルなものに更新されたことだ。「きぼう」の実物大モデルはこれまでも展示されていたが、今回のリニューアルにより、昨年開催された「宇宙博2014」で展示されたものと入れ代わることになった。なお、これまで展示されていた方のモデルのうち、船内実験室については、石川県小松市にある「サイエンスヒルズこまつ」で展示されるという。星出飛行士は「実際に宇宙で組み立てて作業してきた私が言うのもなんですが、本当はこれが本物なんじゃないかと思うぐらい精巧にできています」と太鼓判を押す。また星出飛行士は、このモデルを造った方と会って話をしたところ、そのこだわりように驚いたという。「たとえば『ラベル』。いろんな実験装置やものをどこに置くかを示したり、識別をするために、手すりなどに番号を書いたラベルが付いているんですね。そのラベルの形や、貼られている場所や位置、さらには文字のフォントなどが、非常にリアルに作られています。しかも見えないところにあるものまで再現されています」。「そして『音声』。『きぼう』実物大モデルの中に入ると、若田宇宙飛行士が地上と交信をしている音声が流れていますが、これはあとで録音したものではなく、実際に若田飛行士が、『きぼう』の中から筑波宇宙センターやヒューストンのジョンスン宇宙センターと交信した、実際の肉声が使われています」。さらに、星出飛行士が驚いた点が2つあるという。まず「音」。ISSの中は、空調のファンや機械から出るノイズが聞こえるが、それが再現されているのだという。そして、空調のファンから出る「風」についても、出てくる場所などが忠実に再現されているのだという。星出飛行士は「そんなところまで再現しているのか、と驚きを持ちました。ぜひ『きぼう』の風を感じて欲しいと思います」と、その驚きを語った。展示館の見学にあたっては事前申し込みは必要なく、自由に見学することができる。休館日は毎週月曜日(祝日、夏休みなどの月曜日は開館)と、施設点検日、年末年始(12月29日~1月3日)。開館時間は10時から17時までとなっている。また展示館とは別に、「きぼう」を実際に運用している様子や、宇宙飛行士を養成するための施設なども見学できるツアーも用意されている。こちらはJAXAのウェブサイトから要申し込みとなる。これから夏休みも始まるので、ぜひ訪れてみてはいかがだろうか。●写真集
2015年07月06日『エクソダス:神と王』も記憶に新しいオスカー監督リドリー・スコットが、圧倒的演技派俳優マット・デイモンを主演に迎えた感動の超大作『オデッセイ』(原題:『The Martian』)の公開が2016年2月に決定し、全面にマットの微妙な表情が映る印象強いビジュアルが初お披露目された。火星での有人探査の最中、宇宙飛行士のマーク・ワトニー(マット・デイモン)は猛烈な嵐に巻き込まれ、死亡したと推測された。だが、奇跡的に生き延びていたワトニー。残りの乗組員は火星を去ってしまい、厳しい環境の惑星でたった一人取り残されたことに気づくも、彼は空気も水も通信手段もなく、わずかな食料しかない状況で、知恵と精神力、創意工夫の才能を発揮して4年後のNASAの救出まで生き延びようとする。2億2530万km離れた地球では、NASAと各国から集められた科学者たちが、彼を生還させるための努力を続ける一方、ワトニーのチーム乗組員は協力し、不可能とも言える大胆な救出ミッションを計画するが…!?原作は、Amazonでの自費出版から感動の輪が広がり、NYタイムズのベストセラーリストに長期間ランクインされた大ヒット小説。“長い旅”を意味する邦題の『オデッセイ』は登場人物の苦難や絶望、そして希望に縁取られた長い旅路の先を予想させている。監督を務めるのは、科学的視点とリアリティを追求したストーリーテラーであり、1作ごとに注目を集める巨匠リドリー・スコット。そして、彼とタッグを組むのは、『ボーン』シリーズや『オーシャンズ』シリーズと、不動の人気を確立したマット・デイモン。また、彼を救おうと奮起する船長メリッサ・ルイス役には『ゼロ・ダーク・サーティ』でゴールデングローブ賞「主演女優賞」に輝いたジェシカ・チャスティン。NASAの広報責任者役には『LIFE!』のクリスティン・ウィグと常に注目されるキャストが集結した。到着したポスタービジュアルには、「70億人が彼の還りを待っている。」というシンプルだが壮大なキャッチコピー。これは火星に取り残された1人の男を助け出そうとする仲間たち、そしてその勇気に呼応するように世界中が団結し、ワトニー救出のため心を1つにして「彼を地球に還したい」と願う思いが込められたストーリーを、端的に映し出すメッセージになっている。ビジュアルやキャッチコピーだけでもスケールの大きい物語を連想させる本作の続報をお楽しみに。『オデッセイ』は2016年2月よりTOHOシネマズ スカラ座ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年07月01日日本の民間人として初の国際宇宙ステーション(ISS)宇宙飛行士資格を取得予定のクリエイティブ・ディレクターの高松聡さんが、日本時間の6月22日午後4時に、今後の展開についてモスクワ市内のホテルで記者会見を行った。会見では、今年9月に予定していた宇宙船・ソユーズ号への搭乗を取り止め、引き続きロシア「星の街」で宇宙飛行士資格取得のための訓練を継続することを明かした。また、世界初の有人宇宙旅行を提供しているスペース・アドベンチャーズ社と「宇宙飛行士訓練契約」に加えて、「ISSへの宇宙飛行契約」の締結を発表。現在、スペース・アドベンチャーズ社と当契約を締結している民間人は、Googleの共同設立者であるセルゲイ・ブリン氏と高松さんの2人となり、ISS搭乗民間人としては、8人・9人目の快挙となる見通しだ。搭乗は、2年後から4年後になる予定。さらに会見では、ISS搭乗時に自身が実行する「宇宙を共有できるプロジェクト」についても発表。複数のプロジェクトを構想中と前置きしながらも、「宇宙から見る地球」の地上での再現と「宇宙から写真を撮影する」ことを地上で実現するという、2つのプランを明かした。地上で誰もが「リアルな宇宙体験」を共有できることを目標とし、16年から本格的にプロジェクトの構想、コラボレートするアーティスト・テクノロジスト・エンジニア・サイエンティスト・企業とのプラン化、機材選定、ソフトウェアの開発などを行う計画だ。高松さんは今回の決定について、「私がISSで実施しようと考えているアートプロジェクトを実現するには最先端のデバイス・テクノロジーとソフトウェア・テクノロジーが必要です。1カ月の検討の結果、本年9月のソユーズ打ち上げまでには、これらの準備を高いレベルで完了することはできないという最終結論に達しました。そして、十分な準備のあと、最適なタイミングでフライトを選択することにしました」と話している。高松さんは、電通を退社後、日本初の宇宙旅行代理店SPACE TRAVELを12年に設立。今年の1月からロシア「星の街」で宇宙飛行士訓練を開始した。「新しいタイプの宇宙飛行士」を目指すと話すように、自身のSNSで日々の訓練や生活の様子をリアルタイムで発信している。さらにこの日、これまで体験した訓練の様子を約40分間のビデオで初公開した。
2015年06月22日米航空宇宙局(NASA)は米国時間2015年6月8日、将来の火星探査機の着陸技術の試験機「LDSD」の、2回目となる飛行試験を実施した。これまでより大型の探査機を火星に着陸させるには、今までよりも大型のパラシュートや、まったく新しい減速装置が必要となる。LDSDはそうした技術の実証試験を行うために開発された。LDSDは約1年前の2014年6月28日に初の試験を行ったが、パラシュートの展開に失敗し、完璧とはいえない結果に終わっていた。今回はその雪辱戦となったが、今回もパラシュートの展開に失敗し、残念な結果となってしまった。第1回ではLDSDの概要について紹介した。今回は、2015年6月8日に実施された第2回の試験の顛末を見ていきたい。○雪辱に向けて2014年の試験はやや残念な結果に終わったが、米航空宇宙局(NASA)は2回目の試験に向けて、LDSDにいくつかの改良を加えた。まず、機体の側面から膨らむように展開される減速装置の「SIAD-R」(Supersonic Inflatable Aerodynamic Decelerator)は、2014年の試験で成功したことから、今回は新たに一回り大きな「SIAD-E」が搭載された。SIAD-Rの展開時の大きさは直径6mだったが、SIAD-Eは8mとなっており、より大きな減速効果が期待された。また展開方法も、SIAD-Rはガスを注入して膨らませる方式だったが、SIAD-Eはラム圧(空気抵抗の力を利用した圧力)を使って膨らませる方法を採用している。そして最大の違いは、2014年の試験で展開直後に破れてしまったマンモス・パラシュートだ。2014年の試験で使われたものは、パラシュートの頂点から布が放射状に広がる「ディスクセイル」と呼ばれる構造をしていたが、2015年の試験では「リングセイル」と呼ばれる、直径の異なるドーナツ状の布が同心円状に広がる構造に改良された。また強靭な繊維としておなじみのケヴラーもより多くパラシュートに編み込まれ、強度も増している。○Oh, Chute!第2回試験の実施日は2015年6月2日から12日の間に設定された。場所は前回と同じ、ハワイのカウアイ島にある米海軍が保有する太平洋ミサイル試射場が選ばれた。着水海域の天候不良で延期を繰り返したが、現地時間2015年6月8日7時45分(日本時間2015年6月9日2時45分)、ついにLDSDを積んだ気球が上空に向けて放たれた。気球は約2時間20分をかけて、高度約36kmまで上昇し、LDSDを分離した。直後、LDSDは機体を安定させるため、側面に装備された小さなロケット・モーターが噴射され回転をはじめた。さらにその直後、機体の下部に装備されたロケット・モーターに点火され、約1分をかけて高度約55kmまで一気に上昇した。最大速度はマッハ4にも達した。ロケット・モーターの燃焼が終わり、弾道軌道の頂点に差し掛かったところでSIAD-Eの展開が行われた。展開は成功し、降下する過程でマッハ2.4まで機体を減速させることに成功した。そして機体の上部から、折り畳まれた状態のパラシュートが、機体の進行方向の反対側へと引き出された。試験飛行にかかわる科学者や技術者をはじめ、NASA TVを通じて世界中の人々が見守る中、巨大パラシュートが開いた。しかし、パラシュートは一瞬で破れた。それはまるで2014年の試験の再現のようだった。映像を観察していた科学者のひとりが「Oh, Chute!」と思わず声を上げた。LDSDはそのまま高速で降下を続け、太平洋上に落下した。○実験は成功、2016年夏に再々挑戦試験から1日が経った米国時間6月10日午後(日本時間11日未明)、NASAは記者会見を開いた。NASAは、パラシュートの失敗にもかかわらず、実験としては成功と発表した。LDSD計画のプロジェクト・マネージャーを務めるマーク・アドラー(Mark Adler)氏は「実験としては成功だったといえる。ただ、パラシュートが過大な膨脹に耐えることができなかったことは明らかだ」と語った。「どのような科学実験でもそうだが、実験を行うことができ、データが得られ、またそこから何らかの結論が得られるのであれば、それは成功である」。またNASAの宇宙技術ミッション局の責任者を務めるスティーヴ・ジョージック(Steve Jurczyk)氏も「私たちがレコーダーやメモリーからデータを取り出すことができれば、実験チームとしては今回の飛行における成功基準を満たしたと考える」と語った。また記者会見では、海上に落下したLDSDの機体が回収でき、高解像度の映像データを含む、多くの重要なデータが取り出せたことが明らかにされ、これによりパラシュートのより一層の改良に役立つと明言された。パラシュートの失敗原因については、現段階ではまだ調査中のため多くが語られることはなかったが、今回の実験の主任研究員を務めるイアン・クラーク(Ian Clark)氏は「暫定的なデータを見る限りでは、パラシュートは全開か、あるいはほぼ全開まで開いたことを示している。そこで抗力が大きくなった結果、破れたようだ」と語っている。「昨年は展開が始まってすぐに破れてしまったが、今年は完全に開くまで、パラシュートはほぼ無傷だったように見える。またより大きな抗力が生成されたことも確認できた。この2点はプラスの成果だ」。また会見では、将来の火星探査にとって、この新技術は必ず必要なものであるとも語られた。ジョージック氏によると「この新技術は、5t級の探査機を火星表面に降ろすことが可能だ」という。これまで火星に着陸した最も大きな探査機は「キュリオシティ」で、質量は約1tだった。つまりその5倍の質量の探査機を着陸させることが可能になるわけだ。さらにこの新技術を使うことで着陸精度も上げられるため、火星の山岳地帯など、これまでは探査機の着陸が困難だった地域にも降ろすことも可能になるという。また、有人火星探査では、着陸船はおよそ20tにもなることが予想されている。ジョージック氏は「有人着陸では、たとえばSIADのような膨張式の減速装置や、パラシュート、ロケットによる逆噴射といった、さまざまな技術の組み合わせが使われることになるだろう」と語った。なお、2016年の夏には、3回目となる試験飛行の実施が予定されている。これは今回の試験の結果にかかわらず、あらかじめ計画されていたことだ。アドラー氏によると「NASAとしては、それぞれの減速技術(SIADやパラシュートなど)について、実際の火星探査機に採用する前に、最低2回は試験に成功しなければならないとしている。SIADについてはそのハードルをクリアした。パラシュートについては、NASAは4回目の試験までにクリアすることを見込んでいる」と述べた。はたして3度目の正直となるか、来年の試験飛行に期待したい。
2015年06月11日米航空宇宙局(NASA)は米国時間2015年6月8日、将来の火星探査機の着陸技術の試験機「LDSD」の、2回目となる飛行試験を実施した。これまでより大型の探査機を火星に着陸させるには、今までよりも大型のパラシュートや、まったく新しい減速装置が必要となる。LDSDはそうした技術の実証試験を行うために開発された。LDSDは約1年前の2014年6月28日に初の試験を行ったが、パラシュートの展開に失敗し、完璧とはいえない結果に終わっていた。今回はその雪辱戦となったが、今回もパラシュートの展開に失敗し、残念な結果となってしまった。今回はLDSDの概要から今回の試験の顛末を、2回に分けて見ていきたい。○低密度超音速減速装置LDSDはLow Density Supersonic Deceleratorの頭文字から取られている。直訳すると「低密度超音速減速装置」、少し意訳すると「低密度の大気の中で、超音速のスピードから機体を減速させる装置」とでもなろうか。この低密度の大気というのは、火星の大気のことを指している。火星の大気は地球のそれと比べるととても希薄で約1/100程度、火星地表の気圧は地球の高度30km付近の成層圏の気圧と同じぐらいしかない。一方、火星の地表に探査機を着陸させるためには、パラシュートを使って減速しなければならない。実際、これまで火星に着陸した数多の探査機はみな、パラシュートを使って減速してきた。たとえばNASAは、1976年に火星着陸に成功した探査機「ヴァイキング」から、「マーズ・パスファインダー」や「マーズ・エクスプロレイション・ローヴァー」、「フィーニクス」、そして最新の「キュリオシティ」に至るまで、パラシュートの設計をほとんど変えずに使用し続けている。しかし、このヴァイキング由来のパラシュート技術は、能力的にキュリオシティぐらいの規模の探査機までにしか使うことができない。将来的に、今までより大型の探査機を着陸させようとした場合、あるいは有人火星探査を行おうとするならなおさら、これまで以上に大型の新しいパラシュートか、もしくはまったく新しい技術を使わなければ、十分に減速させることができない。希薄な大気の中を超音速で飛ぶ機体をどうやって減速させるのか。LDSDはその技術を試すために開発された。もちろん火星で試験するわけにはいかないので、試験場所は地球の成層圏が選ばれた。地球の成層圏が火星の地表近くの大気と似ているなら、そこで試験ができるではないか、という理屈だ。○NASAの空飛ぶ円盤LDSDはハンバーガーのような円盤状の本体を持ち、その見た目から「空飛ぶ円盤」などと呼ばれる。NASA自身も「flying saucer」と呼んでいるほどだ。この円盤部分の直径は4.7mで、内部には2種類の減速装置が搭載されている。また機体の下部には固体ロケット・モーターが装備されている。これらすべて含めた質量は3088kgになる。2種類の減速装置のうち、ひとつは「SIAD」(Supersonic Inflatable Aerodynamic Decelerator)と呼ばれる装置で、まるでライオンのたてがみのように、LDSDの側面からガスで膨らませる風船が飛び出す仕組みになっている。これにより大気にぶつかる面の表面積が大きくなるため、より大きな抵抗を受けることで減速しやすくなるわけだ。SIADにはSIAD-RとSIAD-Eという2種類があり、SIAD-Rの展開時にはLDSDの直径は6mに、SIAD-Eはさらに大きく8mにもなる。2014年の試験で使われたのはSIAD-R、今回の2015年の試験で使われたのはSIAD-Eだ。そしてもうひとつが、直径30mを超える巨大なパラシュートだ。ヴァイキングやキュリオシティの着陸時に使われたパラシュートの直径は約15mだったので、実に4倍もの面積にもなる。NASAでは「マンモス・パラシュート」などとも呼ばれていいる。SIADとマンモス・パラシュートは、2012年から2014年にかけて、風洞試験や、ロケット・モーターで加速する列車に搭載しての試験などが行われた。そして良好な結果が得られたことから、いよいよ実際に飛行試験が行われることになった。LDSDはまず、気球を使って高度36kmの上空まで運ばれる。そして気球から分離された後、小型のロケット・モーターで機体を回転させ、コマのように安定させる。続いて下部に装備している固体ロケットに点火し、一気に高度55km、成層圏のほぼ上端まで駆け上がる。速度は最大でマッハ4にも達する。試験はここからが本番だ。まずSIADを展開してマッハ2.5ほどにまで速度を落としたのち、巨大なパラシュートが展開される。そしてゆっくりと太平洋上に着水する。SIADとパラシュートの展開と、それらによる減速が実証できれば、この試験は成功となる。○2014年の試験LDSDの最初の試験は、今から約1年前の2014年6月28日、ハワイのカウアイ島にある米海軍が保有する太平洋ミサイル試射場を借りて行われた。現地時間8時45分(日本時間29日3時45分)にLDSDを吊るした気球が放出され、2時間20分後に高度37kmに到達した。そしてLDSDは気球から分離され、ロケット・モーターに点火し、目標の高度55kmに到達した。そしてSIAD-Rの展開に成功、LDSDはマッハ2.5まで速度を落とし、続いてパラシュートの展開が始まった。一瞬無事に開いたかに見えたが、しかし直後、無残にも引き裂かれるように破れてしまった。LDSDはそのまま太平洋上に落下したが、機体や内部の記録装置などはほぼ無傷で回収でき、次の試験に向けた改良に役立てられることになった。またNASAでは、初の飛行で貴重なデータが多数得られたことで、ミッション全体としては成功だったと発表している。とはいえ、パラシュートの展開ができなくては、実際の火星探査機に使うことはできない。NASAではパラシュートを中心に改良を加え、2015年の中ごろを目処に2回目の試験を行うこととした。(続く)
2015年06月10日ロシア連邦宇宙局は6月9日(現地時間)、油井亀美也宇宙飛行士が搭乗するソユーズ宇宙船(43S/TMA-17M)の打ち上げ目標日を7月23~25日と発表した。具体的な日程は後日決定される予定。油井宇宙飛行士は5月27日に予定されていた打ち上げで国際宇宙ステーション(ISS)へと向かう予定だったが、プログレス補給船による国際宇宙ステーション(ISS)へのドッキング断念を受けて延期されていた。同日の発表では今年12月までの打ち上げ計画が発表されており、油井宇宙飛行士の打ち上げの前に7月3日にプログレス補給船の打ち上げが行われることになる。今回発表された計画は以下の通り:7月3日:プログレス補給船(M-28M)(ソユーズUロケット)7月23日~25日:油井宇宙飛行士搭乗のソユーズ宇宙船(43S/TMA-17M)(ソユーズFGロケット)9月1日:ソユーズ宇宙船(TMA-18M)(ソユーズFGロケット)9月21日:プログレス補給船(M-29M)(ソユーズUロケット)11月21日:新型プログレス補給船(MS)(ソユーズ2.1aロケット)の最初の打上げ12月15日:ソユーズ宇宙船(TMA-19M)(ソユーズFGロケット)なお、これらの日程は今後、日本を含む参加国間で安全性などの確認をした上で正式に決定される。
2015年06月10日沖電気工業(OKI)は5月28日、空中音響技術を利用して飛行するドローンを探知する「ドローン探知システム」を開発し、6月1日より販売を開始すると発表した。同システムは、ドローンの飛行音を分析し、接近を探知するとともに、飛来する方位・仰角・距離を測定して通知することができる。最大探知距離は半径150m、探知範囲は水平350度、仰角±90度となっており、探知範囲は音響センサーの設置数と配置場所により広げることができる。価格は最小構成で300万円(税別・工事費別途)となっている。
2015年05月28日日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は5月18日、五光物流とUASインテグレーターであるブルーイノベーションの協力を得て、茨城県つくば市に「物流飛行ロボットつくば研究所(JUIDA 試験飛行場)」を開設すると発表した。JUIDAは、国際競争が激しい無人航空機の研究開発支援、人材育成を行うには、全国各地に開発機のテスト飛行や操縦者のトレーニングを行うための試験飛行場を用意することが重要と考え、JUIDAの全国第1号の試験飛行場として、「物流飛行ロボットつくば研究所」を開設したとしている。同研究所開設にあたって、五光物流が社有地を提供、管理業務を担うとともに、ブルーイノベーションが運営・技術協力を行う。利用対象は、「マルチコプター開発メーカー、研究機関」「商用マルチコプター操縦者」「JUIDA 理事会が適切と認めた個人または団体」となっている。利用条件は、現在、準備中とのこと。同日に行われたデモンストレーション飛行では、ブルーイノベーションと産業技術総合研究所とが協力して開発した新型のマルチコプターが用いられた。新型マルチコプターは従来のマルチコプターと比べ、積載重量が大幅に向上しているほか、飛行時間が延びているという。
2015年05月19日2015年5月6日の朝。数多くのロケットを宇宙に送り出してきた、米国フロリダ州のケイプ・カナヴェラル空軍ステーションの発射台に、少し変わった機体が鎮座していた。高さは7.2mほどと、ロケットにしては小さく、また卵のように丸っこい、かわいらしい姿をしている。米東部夏時間9時ちょうど(日本時間22時ちょうど)、その機体の側面から炎が噴き出し、空高く舞い上がった。機体は大きな弧を描きながら大西洋に向けて飛行し、パラシュートを開いて海上に着水した。この機体こそ、今や時代の寵児となっている、米スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)社が開発している新型の有人宇宙船「ドラゴンV2」である。飛行時間はわずか1分39秒と短いものであったが、新世代の宇宙船の姿を見せ付ける、印象的なものであった。○ドラゴンV2ドラゴンV2はスペースX社が開発中の有人宇宙船で、今のところ2016年に無人での初飛行を、2017年に有人飛行を目指している。正式名称はドラゴン・ヴァージョン2で、略してドラゴンV2、もしくはドラゴン2、またあるいはクルー・ドラゴン、ドラゴンライダーなどとも呼ばれている。最大7人の宇宙飛行士を乗せ、国際宇宙ステーション(ISS)との往復が可能なように造られており、またいずれは火星への飛行や、さらには火星の地表への着陸も可能になるという。スペースX社はすでに、同じドラゴンという名前を持つ無人補給船を開発しており、これまでに8回、水や食料、実験機器などの補給物資をISSに送り届けている。米航空宇宙局(NASA)では、ISSへの物資の輸送を民間の会社に担わせる取り組みを続けており、ドラゴン補給船はそうした流れの中で開発され、物資の補給もNASAとの間で結ばれた商業契約に基づいて行われている。つまるところスペースX社は「宇宙の宅配会社」のような役目を担っている。NASAではまた、物資だけではなく、宇宙飛行士の輸送も民間企業に担わせる取り組みも進めており、これまでに数社に開発資金を援助して、提案や設計、開発などを競わせ、その中から米航空宇宙大手のボーイング社の宇宙船「CST-100」と、そしてスペースX社のドラゴンV2が選ばれた。両社はさらに多くの開発資金をNASAから受け取り、現在も開発に取り組んでいる。順調に進めば、CST-100は2017年中に無人飛行と有人飛行を、一方のドラゴンV2は、2016年12月に無人飛行を、そして2017年に有人飛行を実施する予定だ。○打ち上げ中断システム今回のドラゴンV2の飛行は、「打ち上げ中断システム」の試験を目的としたものだった。打ち上げ中断システム(Launch Abort System)、もう少し崩していうと脱出システムは、宇宙船を載せたロケットに問題が生じた際に、搭乗している宇宙飛行士を脱出させる役割を持つ。例えば、発射台の上で打ち上げを待つロケットが突如爆発したとすると、その炎はすぐに宇宙船を包み込むことになり、とても宇宙飛行士が宇宙船のハッチから逃げ出すような暇はない。また飛行中にロケット・エンジンが止まったり爆発したりしても、やはり逃げ出す暇はない。そもそも飛行中の速度や高度を考えると、外に脱出すること自体がほぼ不可能だ。そこで、米国最初の有人宇宙船「マーキュリー」や、月に行った「アポロ」、またソヴィエト・ロシアの「サユース」、そして昨年試験打ち上げに成功した、NASAが開発中の「オライオン」では、強力なロケット・エンジンを使って、宇宙船ごとロケットから引き剥がすという方法が採用されている。このシステムは宇宙船の先端に装着されており、その姿がまるで塔のように見えることから「アボート・タワー」や「エスケイプ・タワー」とも呼ばれている。その内部には固体のロケット燃料が充填されており、万が一の際には自動、もしくは手動で即座に点火され、打ち上げロケットから宇宙船を急速に引き剥がす。そして宇宙船は、そのまま通常の帰還と同じようにパラシュートを開いて地上や海上に着地する。ミッションは失敗だが、少なくとも宇宙飛行士の命は救うことができる。打ち上げが成功し、脱出システムが不要になれば、そのまま積んでいても単なる重荷でしかないため、投棄される。映画『アポロ13』でも、トム・ハンクスさん演じるジム・ラヴェル船長がスイッチを押してアボート・タワーを分離し、「もう必要ない!」と言う場面がある。これまで、脱出システムが試験以外で、つまり実際の脱出目的で使用されたのは、1983年9月26日のサユースT宇宙船の事故のときのみだ。このときは打ち上げ準備中の事故でロケットから火災が発生し、爆発したものの、そのわずか2秒前に脱出システムが起動、2人の宇宙飛行士を乗せたサユースTは爆発から辛くも逃れることができ、宇宙飛行士の命を救った。ただ、脱出システムは万能というわけではなく、あくまでも脱出できる可能性を高めることしかできない。サユースTの脱出劇でも、宇宙飛行士は命こそ助かったものの、ひどい打撲を負ったと記録されている。大事には至らなかったそうだが、打ち所が悪ければ宇宙飛行士としての道を絶たれることもあっただろう。また、アポロ宇宙船の脱出システムは、サターンVロケットとの組み合わせにおいては「あくまで気休め」のようなものであったという証言があり、特にロケットの離昇から2分半の間は、脱出システムによって無事に脱出することは、ほぼ不可能であったという。ちなみに、アボート・タワー形式の脱出システムはすべての宇宙船に搭載されたわけではない。ソ連最初の宇宙船である「ヴァストーク」や、米国の2人乗り宇宙船「ジェミニ」では、戦闘機のように座席だけが射出されるシステムが使われた。ソ連の「ヴァスホート」宇宙船にいたっては、脱出システム自体がなかった。これはヴァスホートが、1人乗りのヴァストークを無理やり3人乗りに改造した宇宙船であり、脱出システムを搭載する余裕がなかったためだ。また、米国のスペース・シャトルも脱出する術は限られていた。例えば打ち上げ時には、そのまま滑空してケネディ宇宙センターの滑走路に降りるとか、あるいは大西洋を越えた欧州やアフリカ大陸にある滑走路に降りるとか、あるいはそのままいったん軌道に乗り、適当なタイミングで帰還するといった策が用意されていた。しかし、打ち上げ直後の固体ロケット・ブースターが燃焼している段階では脱出する手段は一切なかった。1986年のスペース・シャトル「チャレンジャー」の事故は、まさにこの固体ロケット・ブースターが燃焼している段階で起きている。帰還時には、機体側面のハッチから外に飛び出してパラシュートで降りる(つまり機体を放棄する)という脱出方法は用意されていたが、これは大気圏を再突入後に水平飛行をしている段階という、ごく限られた条件下でしか使えない方法だった。ちなみに、この脱出方法は、クリント・イーストウッドさんが監督・主演を務めた映画『スペース・カウボーイ』で描かれており、見たことのある人も多いかもしれない。これまでの有人宇宙開発は、こうしたあまり安全ではない宇宙船と、宇宙飛行士の勇気と覚悟、そして犠牲によって創られてきた。もちろん、絶対に安全な宇宙船を造ることは不可能ではあるが、しかし今後も有人宇宙開発を継続し、いつかは他の惑星の探査や移住にまで挑もうとするのなら、少なくともこれまでより格段に安全な宇宙船は必要不可欠となる。今回初飛行したドラゴンV2が装備する脱出システムは、これまでどんな宇宙船にも採用されたことのないもので、史上最も先進的で、そしておそらく最も安全なものである。(次回は5月20日に掲載予定です)
2015年05月18日リース・ウィザースプーンが、女性宇宙飛行士を主人公にした映画『Pale Blue Dot(原題)』に主演することになった。オリジナル脚本で長い間、遠くから地球を見ていた宇宙飛行士は、戻ってきた時に現実に馴染めないというコンセプトにもとづくストーリーらしい。監督は決まっていない。ウィザースプーンは、プロデューサーも兼任する。その他の情報ウィザースプーンは、昨年『ゴーン・ガール』や、ウィザスプーンをオスカー候補に導いた『わたしに会うまでの1600キロ』などをプロデュースし、成功を納めた。しかし、やはりプロデュースと主演を兼任した現在北米公開中の『Hot Pursuit(原題)』は、失敗に終わっている。次は、アレクサンダー・ペイン監督の『Downsizing(原題)』の撮影に入る予定。共演はマット・デイモン、ニール・パトリック・ハリスら。『わたしに会うまでの1600キロ』8月28日(金)TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー文:猿渡由紀
2015年05月14日ロシア連邦宇宙局は5月12日(現地時間)、プログレス補給船による国際宇宙ステーション(ISS)へのドッキング断念を受けて、5月27日に予定していたソユーズ宇宙船の打ち上げを延期すると発表した。延期となった打ち上げにはISS第44次/第45次長期滞在クルーに任命されている油井亀美也 宇宙飛行士が搭乗する予定だった。新しい打ち上げ予定日時は7月下旬を目標としているという。プログレス補給船は、4月28日に行われた打ち上げで制御不能の状態に陥り、5月8日に大気圏に突入して消滅したばかりで、油井飛行士が参加するミッションへの影響が懸念されていた。
2015年05月13日ユニットコムは11日、先端が宇宙飛行士の形をしたLEDライト「K224 Star Light」を、パソコン工房の通販サイト内雑貨店「Nantena」にて発売した。価格は税込971円。K224 Star LightはUSB接続のLEDライト。宇宙飛行士のヘルメットのシールドを上げると点灯し、下げると消灯する。硬めで自由に曲げられる素材のUSBケーブルを採用する。宇宙飛行士部分の大きさはW74×H60×D60mmで、USBケーブルの長さは125mm。本体の重量は68g。
2015年05月11日エアバス(本社: 仏トゥールーズ)は4月30日、シンガポール航空と共同で設立する飛行訓練施設「エアバス・アジア・トレーニング・センター(AATC)」の建設が開始されたことを発表した。シンガポールに新設されるこの訓練センターは2016年第一四半期に開業する予定で、エアバス機全機種のタイプ・レーティング訓練やリカレント訓練を提供する。訓練センターはシンガポールの法人企業としてエアバスが55%、シンガポール航空が45%を出資。9,250平方メートルの広さを持つ最先端の訓練センターは、セレター・エアロスペース・パークに位置し、トゥールーズやマイアミ、北京に置かれている訓練施設に続き、世界で4番目のエアバス飛行訓練センターとなる。最終的に施設には合計で8基のフルフライト・シミュレーター(A350 XWBが4基、A380が1基、A330が1基、A320が2基)が設置される。また、大規模な教室設備も備え、年間1万人以上の訓練生に訓練コースを提供できるようになる。新設される訓練センターの開業に先立ち、現在はチャンギ空港近くにあるシンガポール航空の訓練センターで一時的に訓練コースを提供している。その施設にはA380のシミュレーターを1基とA330のシミュレーターを2基備え、訓練センターの教官は始め、エアバスとシンガポール航空から迎え、その後は新たな雇用を行う予定となっている。訓練センターは合計で約50人の教官と25人のサポートスタッフの雇用を見込んでいる。エアバスは、トゥールーズ、マイアミ、北京の飛行訓練センターを置くほか、ハンブルクとバンガロールにエンジニアリングおよびメンテナンス訓練センターを設置。また、他会社と契約を結び、そこの施設でエアバスの訓練コースを提供している。AATCはアジア太平洋地域の航空会社からの訓練生を歓迎しており、AATCが提供する全ての訓練コースは、トゥールーズ、マイアミ、北京の訓練センターと同一のものとなる。
2015年04月30日マルチコプターや空撮装置などを手がけるDJI japanは、小型無人飛行機が首相官邸の敷地内に落下した事件を受け、同社製品の飛行禁止区域に「総理官邸」「皇居周辺」を追加した。同社の公式Facebookで告知した。同社製品はGPSシステムで管理され、現状では「空港周辺」での離陸ができないようになっている。今回、22日に発生した総理官邸へのドローン侵入事件を受け、「総理官邸」「皇居周辺」を飛行禁止区域として追加。半径1km以内では離陸できない仕様とした。従来機種についてはアプリ更新のタイミングで追加される。同社はFacebook記載以外の情報について、現段階では答えられないとしている。
2015年04月23日●有人火星探査の実現を目指して2015年3月28日から、国際宇宙ステーション(ISS)で、2人の宇宙飛行士による1年間の宇宙長期滞在が始まった。ISSの長期滞在は半年間が通例となっており、1年にもおよぶ滞在は史上初めてのことだ。このミッションに挑むのは、ロシア連邦宇宙庁(ロスコスモス)所属のミハイール・カルニエーンカ宇宙飛行士と、米航空宇宙局(NASA)所属のスコット・ケリー宇宙飛行士の2人。彼らは第43~46次長期滞在員として2016年3月までISSに滞在し、長期にわたる宇宙空間での生活が、人体にどのような影響を与えるかを調べることになっている。将来、人類が火星や小惑星、さらに先の星々に向けて旅立つとき、年単位の宇宙滞在は避けては通れない道だ。今回のミッションはそんな未来に実現に向けた、大きな一歩となる。○1年間の宇宙滞在カルニエーンカ宇宙飛行士とケリー宇宙飛行士の2人は、ロスコスモス所属のギナジィ・パーダルカ宇宙飛行士と共にサユースTMA-16M宇宙船に乗りこみ、カザフスタン時間2015年3月28日1時42分(日本時間2015年3月28日4時42分)に、カザフスタン共和国にあるバイカヌール宇宙基地の1/5発射台、通称「ガガーリン発射台」から旅立った。彼らを乗せたサユースFGロケットは順調に飛行し、打ち上げから約9分後に地球を回る軌道に入った。そして打ち上げから約6時間後の日本時間10時33分に、国際宇宙ステーション(ISS)のポーイスク・モジュールに到着した。すでにISSには、2014年11月24日から、テリー・バーツ宇宙飛行士(NASA、コマンダー)、アントーン・シュカープリラフ宇宙飛行士(ロスコスモス、フライト・エンジニア)、そしてサマンサ・クリストフォレッティ宇宙飛行士(欧州宇宙機関(ESA)、フライト・エンジニア)の3人が搭乗しており、ここに今回打ち上げられた3人が合流し、ISSは6人体制での運用となる。ISSの長期滞在期間は、おおよそ4か月から6か月間が通例となっている。これまでで最長の滞在記録は、2006年9月18日から2007年4月21日まで滞在したミハイル・チューリン宇宙飛行士とマイケル・ロペス-アレグリア宇宙飛行士による215日間で、今回のカルニエーンカ、ケリー宇宙飛行士のように、1年間も滞在するのはISSにとって史上初のことだ。これまで、連続で宇宙に滞在し続けた世界最長の記録は、1994年1月9日から1995年3月22日の437日間、ロシアの宇宙ステーション「ミール」に滞在したヴァレーリィ・パリャコーフ宇宙飛行士が持っている。2位は1998年8月13日から1999年8月28日の379日間にわたってミールに滞在したシルゲーイ・アヴデーイフ宇宙飛行士、3位は1987年12月21日から1988年12月21日のちょうど1年間滞在したヴラジーミル・チトーフ宇宙飛行士とムサー・マナーラフ宇宙飛行士だ。カルニエーンカ、ケリー宇宙飛行士が、今回のミッションで厳密に何日間滞在するのかはまだ決まっていないが、ちょうど1年間ならチトーフ、マナーラフ宇宙飛行士の記録に並ぶことになり、もし1日でも伸びるようなら、記録が塗り替えられることになる。○有人火星探査に向けて今回のミッションは、長期間の宇宙滞在が人間の体にどのような影響を与えるのかを調べることが目的とされる。将来、人類が火星や小惑星、さらに先の星々に向けて旅立つとき、年単位の宇宙滞在は避けては通れない道だ。どういうミッション内容かにもよるが、例えば有人火星探査であれば、500日間は宇宙船に乗って宇宙を航行する必要があると想定されている。これまでの研究で、人間が長期間宇宙に滞在すると、視力が落ちたり、筋肉が萎縮したり、また骨量が減少したりすることがわかっている。また、それには個人差があることもわかっている。しかし、そうした衰えがどの程度まで進行するのか、またそれは防いだり、進行を遅らせたりすることができるのか、といったことについては結論が出ていない。つまり人間の体が、火星や、さらにその先の星への飛行に耐えられるかどうかは、まだわかっていないのだ。今回のミッションでは、宇宙滞在中の2人の睡眠パターンの調査や、頭蓋骨の内部の圧力の変化の調査、代謝の変化を通じたストレスや免疫機能の調査、運動活動を通じた身体機能の調査、体にいる微生物の調査などが実施され、地球への帰還後もさらに調査が続けられるという。なお、ISSには常に緊急帰還用にサユース宇宙船が係留してあるため、万が一体に何かが起きたとしても、すぐに地球に帰ることは可能だ。また、ケリー宇宙飛行士にはマーク・ケリー氏という一卵性双生児の兄弟がおり、2人のDNAを比べることで、宇宙と地球上での変化の違いなども調べられるという。余談だが、マーク・ケリー氏は元宇宙飛行士で、スペースシャトルで4回飛行した経験を持っている。●宇宙滞在の合計日数の世界記録も更新○パーダルカ宇宙飛行士は世界記録を更新今回のミッションではもうひとつ、パーダルカ宇宙飛行士による宇宙滞在の合計日数の世界記録も作られる予定だ。現時点での合計日数の世界記録保持者はシルゲーイ・クリカリョーフ宇宙飛行士で、6回の宇宙飛行で計803日滞在している。2位はアリキサーンドル・カレーリ宇宙飛行士の759日、3位はシルゲーイ・アヴデーイフ宇宙飛行士の747日だ。パーダルカ宇宙飛行士はこれまで4回の宇宙ミッションを行い、宇宙滞在日数を合計すると710日で第4位の記録だが、今回のミッションで約半年間宇宙に滞在するため、これらの記録をごぼう抜きにし、1位になることになる。また、クリカリョーフ宇宙飛行士とアヴデーイフ宇宙飛行士はすでに宇宙飛行士を引退しており、カレーリ宇宙飛行士は引退こそしていないがもう高齢なため、おそらく当分の間、パーダルカ宇宙飛行士の記録が抜かれることはないだろう。○宇宙旅行者枠の復活今回の1年間の宇宙滞在によって、副次的に宇宙旅行者の飛行機会が訪れることになった。宇宙旅行者とは文字通り、国の代表である宇宙飛行士としてではなく、宇宙飛行に掛かるお金を自分で負担し、旅行者として宇宙に行く人のことだ。ロシアは、サユース宇宙船の座席を販売することで外貨を稼ぐという試みを行っており、また米国のスペース・アドヴェンチャーズ社という会社が仲介人となって、これまでに実業家のデニス・チトー氏や、ゲーム・クリエイターのリチャード・ギャリオット氏、「シルク・ドゥ・ソレイユ」の創設者ギー・ラリベルテ氏など、これまでに7人が宇宙旅行者としてISSに行っている。だが、ISSの6人体制が始まったことや、またスペースシャトルが引退したことで、販売できる座席の余裕がなくなり、2009年を最後に中断されていた。ISSは現在6人体制で運用されているが、6人の宇宙飛行士を一度に打ち上げるのではなく、3人の宇宙飛行士を6か月ごとに、3か月ずらして打ち上げることで維持されている。ある3人の宇宙飛行士が打ち上げられれば、そのときすでにISSには3人の宇宙飛行士が滞在しており、合流後6人で運用される。その3か月後に先に滞在していた3人が地球に帰還すると、直後に新しい3人の宇宙飛行士が打ち上げられ、ISSはまた6人体制になる、の繰り返しだ。だが、今回はその3人のうち、2人が1年もの間滞在し続けるため、2席分の空きが生じることになり、パーダルカ宇宙飛行士は1人で帰還しなければならなくなってしまう。そこで今回は変則的に、まずサユースTMA-16Mの帰還の前にサユースTMA-18Mを打ち上げ、一時的にISSを9人体制にし、その直後にサユースTMA-18MでISSにやってきたうちの2人と一緒に、パーダルカ宇宙飛行士がサユースTMA-16Mで帰還するという運用が行われることになっている。この場合、サユースTMA-18MでISSにやってくるうちの2人の宇宙滞在が約2週間ほどしかないが、ここに今回が初の宇宙飛行となる新人のアンドレアス・モゲンセン宇宙飛行士と、宇宙旅行者として参加する、世界的歌手のサラ・ブライトマン氏が充てられていることになった。新人と旅行者にとって2週間はちょうど良い、というわけだ。現在サラ・ブライトマン氏は、ロシアのモスクワの郊外にある、通称「星の街」と呼ばれる宇宙飛行士の訓練センターで、宇宙飛行に向けた訓練などを行っている。宇宙旅行者は、ただ単にサユースに乗るというわけにはいかず、厳しい身体検査や、宇宙飛行の理論からサユース宇宙船の仕組みや構造の学習、地上の設備や航空機を使った訓練などを受けなければならないためだ。○付記: 今後のISSへの宇宙飛行士の飛行予定以下に、今後カルニエーンカ、ケリー宇宙飛行士が帰還するまでの、ISSへの宇宙飛行士の飛行予定を一覧にまとめた。名前の横は(所属機関、サユース宇宙船での役目)を示す。なお、日付は現時点での予定であり、今後延期される可能性がある。・サユースTMA-16M打ち上げ(2015年3月27日)ギナジィ・パーダルカ(ロスコスモス、コマンダー)ミハイール・カルニエーンカ(ロスコスモス、フライト・エンジニア)スコット・ケリー(NASA、フライト・エンジニア))・サユースTMA-15M帰還(2015年5月11日)アントーン・シュカープリラフ(ロスコスモス、コマンダー)サマンサ・クリストフォレッティ(ESA、フライト・エンジニア)テリー・バーツ(NASA、フライト・エンジニア)・サユースTMA-17M打ち上げ(2015年5月26日)アレーク・カノネーンカ(ロスコスモス、コマンダー)油井亀美也(JAXA、フライト・エンジニア)チェル・リングリン(NASA、フライト・エンジニア)・サユースTMA-18M打ち上げ(2015年9月1日)シルゲーイ・ヴォールカフ(ロスコスモス、コマンダー)アンドレアス・モゲンセン(ESA、フライト・エンジニア)サラ・ブライトマン(宇宙旅行者)・サユースTMA-16M帰還(2015年9月11日)ギナジィ・パーダルカ(ロスコスモス、コマンダー)アンドレアス・モゲンセン(ESA、フライト・エンジニア)サラ・ブライトマン(宇宙旅行者)・サユースTMA-17M帰還(2015年11月5日)アレーク・カノネーンカ(ロスコスモス、コマンダー)油井亀美也(JAXA、フライト・エンジニア)チェル・リングリン(NASA、フライト・エンジニア)・サユースTMA-19M帰還(2015年11月20日)ユーリィ・マレーンチェンカ(ロスコスモス、コマンダー)ティモシー・ピーク(ESA、フライト・エンジニア)ティモシー・コプラ(NASA、フライト・エンジニア)・サユースTMA-18M帰還(2016年3月)シルゲーイ・ヴォールカフ(ロスコスモス、コマンダー)ミハイール・カルニエーンカ(ロスコスモス、フライト・エンジニア)スコット・ケリー(NASA、フライト・エンジニア)
2015年04月13日三菱重工業(三菱重工)と三菱航空機は4月10日、次世代リージョナルジェット機(MRJ)の開発および量産準備状況を公表した。発表によると、現在は静強度試験や飛行試験2号機以降の製造が進められており、2015年4~6月を予定していた初飛行の時期ついては、9~10月に見直した。初飛行の計画を見直した理由は各種地上試験による検証結果とそのフィードバックに万全を期すためだという。一方、生産計画に変更はない模様で、今後は各種飛行試験を集中的に実施するとともに、量産機の製造を加速することで2017年第2四半期の初号機納入につなげていくした。MRJは70~90席クラスの次世代民間旅客機で、現在までに407機を受注している(うち確定223機)。一部で「3月に何らかのトラブルで一定期間、試験を中断したとみられる」と報道されたが三菱重工は「試験用治具の調整等に時間を要したことは事実ですが、トラブルにより中断したものではありません。」と否定していた。
2015年04月10日三菱重工業は三菱航空機が開発を進めている「MRJ」(三菱リージョナルジェット)に関して4月9日、報道されている初飛行延期が三菱重工業および三菱航空機によって発表されたものでないことをコメントした。あわせて、「3月に何らかのトラブルで一定期間、試験を中断したとみられる」という一部報道については、試験用治具の調整等に時間を要しているものの、トラブルにより試験を中断したものではないとしている。MRJのスケジュールについては、初飛行の具体的日程も含め、製造・試験状況を踏まえて検討を進めており、本日の4月10日に三菱重工業および三菱航空機から発表される。
2015年04月10日