【ニュース】特別支援学校の教材を製品化したい!クラウドファンディングの取り組みが開始Upload By 発達ナビニュース道具で発達を支援する「トビラコ」は、発達に凸凹がある子どもを支援するツールをセレクトし、ネットで販売しています。今回、トビラコは、筑波大学附属大塚特別支援学校で先生が手づくりし活用していた教材を製品化しようとしています。それは、「特別支援学校で使われる教材こそ、質が高く、きちんとしたエビデンスが必要で、子どもが手にとりたくなるデザインであることが大切」だと考えているからです。Upload By 発達ナビニュース現在、この製品化への応援を、クラウドファンディングで募っているそう。目標金額は100万円!教材についてや、子どもたちが教材を使うことでどんな変化があったかなど、詳しくはこちら↓で紹介しています。トビラコ【映画】ダコタ・ファニングが自閉症の女の子を演じる「500ページの夢の束」Upload By 発達ナビニュースダコタ・ファニングが演じる自閉症のある少女ウェンディは「スター・トレック」が大好きでその知識なら誰にだって負けない。そんな彼女が「スター・トレック」の脚本コンテストに応募するためハリウッドまで旅に出るストーリーです。人生の目標のために、つまずきながらも彼女なりの一歩を踏み出す姿に勇気と感動をもらえます!【公開日】9月7日(金)【上映】東京・新宿ピカデリーほかで全国ロードショー※東京・大阪で各1回ずつ、視覚や聴覚などに過敏さをもつ人のための、センサーフレンドリーな上映も予定だそう。ページの夢の束 | キノフィルム【イベント】絵本ではじめてクラシック「そらコンサート」(東京都)Upload By 発達ナビニュースじっとしてなくても、大丈夫!第6回をむかえる「そらコンサート」は、親子で安心して音楽が楽しめます。ゆったりとした空間の中で絵本や手遊びを使って上質なクラシックデビューをしてみませんか?また「そらマーケット」も同時開催。不要になった絵本を使った無料のお買い物体験です。おもちゃのお金を使ったお買い物の練習もできます。Upload By 発達ナビニュース【対象】新生児~小学生(特に3~6歳程度)の子どもとその保護者の方【日時】10月13日(土) 10:15~11:30 (10:00受付開始)【場所】三茶しゃれなあどホール(世田谷区太子堂2-16-7 5階)【参加費】大人:1000円 / 小学生以下お子様:無料【申し込み】下記URLからお申し込みください【イベント】「第11回 日本フリースクール大会」(東京都)出典 : 不登校の子どもが通うイメージの「フリースクール」ですが、実は既存の学校とは違う、子ども中心の学びの場となっています。このイベントの1日目には「フリースクール」がどんな理念のもと、どのように活動しているのかを知り、不登校の子どもたちに必要な支援を考えるきっかけや、実際にフリースクールに通う子どもたちの声が聞けます。2日目では「学びとは何か」「フリースクールと進路」「世界のフリースクールとホームエデュケーション」「フリースクールのつくり方と運営」「適応指導教室との連携」「実践交流『他のフリースクールではどうなの?』」の6つのテーマにそってディスカッションを行ったり、子どもの多様な学びを考えるワークショップが開催されます。【日時】9月22日(土)13:00~16:30、23日(日)10:00~16:15【場所】東洋大学白山キャンパス(都営地下鉄三田線「白山」駅A1出口徒歩5分)【参加費】両日参加:8000円(9/14までの申込み&振込で6000円)、1日参加:5000円【内容】■9月22日(土)・基調講演「フリースクールとは何か」奥地圭子さん(NPO法人フリースクール全国ネットワーク代表理事、東京シューレ代表)・子どもシンポジウム「学校に行かなかったワケ、フリースクールに行ったワケ」司会:江川和弥さん(寺子屋方丈舎代表)、シンポジスト:フリースクールに通う子ども数名■9月23日(日)・テーマ別分科会・ワークショップ「子どもの多様な学びをつくろう」【申し込み】<氏名><お立場またはご所属><連絡先(電子メールまたは電話番号、FAX番号)><参加希望日程>をご明記のうえ、下記の電子メールまたはFAX・郵送にてお申し込みください。【問い合わせ】NPO法人フリースクール全国ネットワークTEL 03-5924-0525 E-mail:info@freeschoolnetwork.jp第11回日本フリースクール大会 | NPO法人フリースクール全国ネットワーク【イベント】「障がい者とその家族のための年金教室」(東京都)出典 : 障害年金の基本について、専門家である社会保険労務士の方がわかりやすい資料を用いて解説してくれる勉強会です。なかなか理解しようとしても難しい障害年金ですが、個別相談の時間も設けられ疑問が解消できる機会になっています。関心のある方、お困りの方は足を運んでみてはいかがでしょうか。【日時】9月17日(月・祝) 13:00~16:30 (12:30~開場)【場所】練馬区立区民・産業プラザ研修室1 (練馬区練馬1-17-1 Coconeri 3階)【参加費】障害者の方とその家族は無料(社労士などその他の方は、1000円)【内容】・当事者からのお話:東久留米市市議会議員 宮川豊史 さん・個別相談コーナー(申込み時に予約必須)【申し込み】電話・メールにて担当者までご連絡ください【問い合わせ】たまごの会年金教室担当:社会保険労務士 石井良美携帯:080-4953-2911 メール:nenkin.up@gmail.com
2018年09月03日これまでも様々な形で次世代を担う若きクリエイターの支援を行ってきた「ジョルジオ・アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」から、その支援の最新プロジェクト「ARMANI/LABORATORIO(アルマーニ/ラボラトリオ)」の詳細が発表。日本でも大ヒット中の『君の名前で僕を呼んで』のイタリア人監督ルカ・グァダニーノがその指揮をとる。本プロジェクト「アルマーニ/ラボラトリオ」は映画の世界に進むことを夢見る学生を支援するもので、第1シーズンは昨年11月に始動、その際は8名の若きクリエーターが選出された。彼らは定期的なレッスンを受け、今年2月のミラノコレクション期間中に完成作品『UNA GIACCA -A JACKET-』がお披露目。1着のジャケットを軸に時空を超えて展開されるストーリーは、短編映画としての高いクオリティが話題となった。今回、その注目プロジェクトの第2シーズンが立ち上がり、現在、参加クリエイターを募集中。応募は世界中から可能で、もちろん日本からの応募も可能となっている(応募フォームやレッスンは英語)。第2シーズンの指揮をとるのは、シチリア生まれの映画監督ルカ・グァダニーノ。現代社会の複雑さを切り取る鋭い目線と優れた美的感覚で、世界的に高い評価を得ており、『君の名前で僕を呼んで』は本年度アカデミー賞に作品賞、主演男優賞(ティモシー・シャラメ)など4部門にノミネート、最新作『Suspiria』(原題)にはダコタ・ジョンソンやクロエ・グレース・モレッツ、ティルダ・スウィントンらが出演する。これまでにヴェネツィア国際映画祭で審査員を務めた経験もあり、彼の代表作の1つ『ミラノ、愛に生きる』(ボルダー国際映画祭で最優秀作品賞を受賞)は、その名のとおりミラノを舞台とした作品で、ミラノへの強い愛を持つ人物として知られている。グァダニーノ監督以外に各分野のプロフェッショナルとして学生の指導にあたるのは、『胸騒ぎのシチリア』で監督と組んだデヴィッド・カイガニック/David Kaganich(脚本)ほか、Lucas Gath(撮影技術)、Walter Fasano(編集)、 Giulia Piersanti(衣装デザイン)、Fernanda Perez(メイクアップ)、Manolo Garcia(ヘアスタイル)といったメンバー。ジョルジオ・アルマーニ氏は、「映画はファッションのように、ビジュアルを駆使して私たちを魅了します。制作に関わる全ての人たちの仕事が最終結果に結びつく、究極のチームワークです。『アルマーニ/ラボラトリオ』は、映画業界のトップとして活躍するキープレーヤーたちの指導と支援を得て、生徒が一緒に作業を行う場です。この場のことを私は-フィルムアトリエ-と名付けたいと思います。今年は、イタリアや国際映画シーンで最もオリジナリティが高くエレガントな監督の1人であるルカ・グァダニーノとこのプロジェクトを行えることを非常に嬉しく思います」とコメント。また、グァダニーノ監督は「アルマーニ氏に最も敬意を表するのは、彼が彼の時代を作り上げてきたということです。今回、新世代の映画ファンをサポートする彼の熱い思いに心から共感し、私はこの招待状を喜んで受け入れました」とコメント。「優れた専門家をプロジェクトに参加させることで、非常に魅力あるチームを結成しました。今回は成長、アイデンティティ、女性の新しい世界、といったことをテーマに作品を作り上げます。そう、非常にアルマーニらしいキーワードをテーマに選んだのです」と、“いま”にふさわしいテーマを掲げている。(text:cinemacafe.net)■関連作品:君の名前で僕を呼んで 2018年4月27日よりTOHOシネマズシャンテほか全国にて公開© Frenesy, La Cinefacture
2018年07月05日通常学級から特別支援学級への転籍。クラスの子どもたちの反応は…?2年生から特別支援学級在籍になり、順調に通い始めた娘。本人もすっかり慣れているようでした。しかし、私が心配なのは、クラスの子の反応でした。Upload By SAKURA娘が通常学級で過ごしていた1年生の時は、準備が遅いことや、すぐ泣いてしまうこと、失敗をからかわれて、一部の子たちとのトラブルが絶えませんでした。クラスの子が直接私に、娘のことを言いに来ることもありました。そんなことがあったので、娘が通常学級から特別支援学級に行くことを、からかわれたりするんじゃないか…と気になっていたのです。学校側で子どもたちに話してくれたそんな気持ちを汲んだ学校側が配慮してくれました。Upload By SAKURA1年生の時には、娘が慣らしで支援学級に行く時に、担任の先生が前もってきちんとクラスの子に説明を。2年生になってからは、道徳の授業に、養護教諭の先生が特別支援学級について話す機会をつくってくれました。保護者にも伝えておきたい娘のこと私も、自分ができる行動が何かないかと考えました。そういえば、娘が特別支援学級に通うのを見た保護者の方が疑問に思うかもしれない。子どもに聞かれて、答えにくいかもしれない。保護者の方にもきちんと伝えておいたほうがいいんじゃないかな。そこで、2年生の最初の保護者会で、お話しすることにしました。娘の障害のこと、2年生から特別支援学級在籍になったこと、国語と算数の時間以外は、みんなと一緒に過ごさせてもらうこと…Upload By SAKURAドキドキしながら、顔をあげると、ポカンとする人…驚く人…黙ってうなずく人…。反応や表情は様々で、みんなどう反応したらいいかわからないような感じでした。それでも一度話しておくことで私が娘の特性を認めて、特別支援学級に通っている、決して悲観的ではないと伝わった方が、後々のためにいいと思ったのです。子どもたちの反応が変わった?2年生になり娘の新しい学校生活が始まって、私が一番驚いたのはクラスの子たちの変化でした。道徳の時間での説明のおかげで、子どもたちの意識も何らか変わったのでしょうか…娘が特別支援学級在籍になってから、お友達とのトラブルがほとんどなくなったのです。娘は普段、スクールバスで帰宅しますが、様子を見に行くために、週に何度かは学校まで迎えに行っています。学校へ着くと、私を見つけた子が声をかけてくれます。Upload By SAKURA更には別の子が、娘の手を引き、荷物を持つのを手伝ってくれ、私のところまで送り届けてくれます。「今日はあーさんね!絵を上手に描いてたよ!」や「体育頑張ってたよ!」と報告をしてくれます。さらに、1年生の時に娘と揉めることが多かった子たちが、娘をフォローする姿をたびたび見かけるようになりました。周りの理解とフォローが嬉しい!Upload By SAKURA子どもたちの優しさを感じるたび「いつもあーさんを助けてくれてありがとうね」と声をかけます。学校のイベントの際には、いつも助けてくれる子の保護者の方々にも、「いつも優しくしてもらってます、ありがとうございます。」とお礼を忘れないように心がけています。私たち親が娘の障害を認めていても、私たちだけでは、起こるすべてのことを乗り越えることはできません。周りの理解があって、助けてくれる…それが本当にありがたく、感謝の気持ちでいっぱいです。人は一人では生きていけない…発達障害がある娘はなおさらそうです。いつも周りの人たちに感謝の気持ちを忘れないように、これからの娘を応援していきたいと思います。
2018年07月04日父親として自閉症がある息子の子育てに向き合う出典 : もうすぐ父の日ということで、父親としての自分の思いや考えを振り返ってみました。母親の立場からは考え方や悩みの観点が違うこともあるかもしれません。父親なりのお話をできればと思います。私は自閉症児の父親として、心に決めていることがあります。息子の障害が分かった当時から想定していたこともあれば、日々の生活を過ごす中で見出した部分もあります。家族を持つ男性として「当たり前」のようなことも、障害という現実によって「当たり前」と思えなくなるケースもあるだろうと考えてお伝えします。自閉症児の父親として心に決めている3つのこと出典 : つ目は、自分から情報収集して自閉症をより理解することです。私の主な手段はテレビや本、WEBサイトやSNSです。本は図書館などで借りれば無料ですので、気兼ねなく情報収集ができます。WEBサイトでは、個人ブログの場合、療育の実体験や症状について知ることができます。また、発達障害などの専門サイトは日本の制度や社会情勢、新しい動向や特徴的な事例などもよくチェックしています。子どものために参考になることが多く、定期的に見るようにしています。情報を得ることがなく、「何も知らない状態」というのは、余計な不安を感じたり希望を見出せなくなったりしてしまうと考えています。私自身が、そうだったからです。3歳頃に自閉症と言われた当時の息子は、話すことはもちろん、目を合わせることもできない状態でした。そのまま容姿だけが年を重ねていくものだと考えてたため、将来の不安や成長しない(と思っている)ショックはとても大きなものでした。でも、情報を集めたことで少しずつ自閉症の全体像が見え、息子が成長することが分かって前向きになることができました。特に大きかった「発見」は、重度の自閉症でありながら小説家として活動をしている東田直樹さんを知ったことでした。東田さんは息子と同じように手をかざす、ジャンプする、急に動く、歌うなどの症状がありました。しかし、自らパソコンをタイピングして小説の執筆をするだけでなく、文字盤を利用してリアルタイムで人と会話をしていました。特徴的なケースかもしれませんが、当時の私には大きな希望でした。東田さんの姿を通して、わが子の自閉症という障害を理解し、受け入れることができたのだと思います。今後も年齢など息子のステージが変わるにつれて、初めての経験や知らないことが増えていくでしょう。意識的に自閉症やその周辺のことを知ろうとする努力を続けていきたいです。2つ目は、妻のことを意識して気に掛けることです。「夫なら当たり前だ」と思われるかもしれませんが、息子に障害があることが分かり、より意識が高くなりました。ただでさえ大変と言われる子育てです。障害があり、生きにくさを感じることがある子どもを育てていくのは、とても困難が多いだろうと診断された時に覚悟しました。特に考えたのは、精神的な負担です。私は仕事で外に出ていることが多いため、ずっと妻が中心となって子どもを見てくれています。息子と街中を移動する時の周りの視線、保育園や学校に行った時の先生の反応のほか、さまざまな場面で健常児との違いを感じて、落ち込んだり悲しくなることがあり得ると想定しました。そして、それらは実際に全て起こりました。そんな時は、仕事が立て込んでいたり、疲れていたとしても、妻の気持ちが落ち着けるようにできる限り話を聴く時間を取るようにしてきました。妻から話かけてくれることもありますし、明らかに気分が落ちている時はこちらから聞くようにしています。アドバイスや無理に共感するというよりはとにかく話を聴くことが大切。ひと通り話を聴いた後に、短期的に考えるのではなく少し長いスパンで考えてみる、今後(未来)の話をすることで良い形に転換できているのかなと思います。結果的に早く前向きになって、次のことを考えて行動することに繋がっています。また、息子の進学について悩んだ時などは、妻以上に妻のことを考えて発言をしました。息子の当時の状況(発達度合い)を考えた際、特別支援学校ではないところに進学すると、何かが「できない」状況が増えてしまうと考えていました。それにより息子が自尊心を失う可能性もありましたし、何より妻が「自分の教育が悪い」などと自己否定をして落ち込んでしまうことが一番の心配でした。妻が自信を無くしてしまったり、傷ついたりしてしまうと本人も辛いですし、息子もそれを感じ取って悲しい気持ちになるでしょう。もちろん、私も辛くなります。だから、できる限り元気にいて欲しいのが夫としての願いです。3つ目は息子の成長の可能性を探り、伸ばしてあげることです。息子は言葉を話すことが困難なタイプですので、発話がほとんどありません。診断された当時は、息子にこちらの話は通じておらず、コミュニケーションはできないものだと考えていました。しかし、息子と一緒に過ごす中で、彼には意思があり、状況や話を理解していることが分かってきました。教えたことを覚えたり、話したことを行動することが少しずつできるようになったからです。少しずつ自閉症を理解をしていく中で、「できるようになるためには、どうすればよいか?」と思うようになっていた私は、「『声』というアウトプット手段が難しいのであれば、他の手段を習得すればよい」と考えました。それから紙と鉛筆で文字を書く練習を始め、今ではパソコンのタイピングの練習をしています。文字にすれば1文で済んでしまう簡単な話ですが、実際は苦節2年程の時を経て今があります。そもそも鉛筆を握れないところから始まり、線をなぞれない、なぞれるようになっても時には完全に無視することがありました。息子の集中力が切れて1枚のプリントを終わらせるのに2時間かかる日も…。でも、諦めずに可能性を頼りに継続して進めてきたことにより、確実に前進しています。実際に息子がタイピングの練習をしている動画がこちらです。私も「タッチパネルの製品を使おう」と言ったり「好きな数字のタイピングから始めてみよう」「文字のタイピングの前にローマ字を覚えよう」という提案をしながら一緒に進めてきましたが、この練習を全面的に支えてくれたのは妻です。妻のひたむきさと息子自身の努力の成果なので、2人に本当に感謝しています。妻と息子が幸せであるために出典 : 私は、父親として妻や息子に幸せであって欲しいと願っています。そして、そのように導くことが使命だと思っています。これらは自閉症とは何ら関係はありません。今は私たち家族に自閉症という要素が入りましたが、それによって妻や息子が不幸になるものではなく、私たち家族がどのように行動するか?ということが少し変わっただけです。どのような状況下にあっても、まずは父親である私自身が自ら心に決めたことを、継続していくことが全てだと感じています。とはいえ実際には自分一人ではやり切れないことばかりです。妻や息子自身、周りの方の協力があって成り立つものですが、まずは紹介した3つのことを大切にしながら、父親としての使命を果たしていきたいと思います。
2018年06月14日2年生から特別支援学級に転籍する娘。大丈夫かな…?2年生から特別支援学級在籍になった娘。1年生の10月、慣らしのために特別支援学級へ行くと決まった時は、1日1時間だったこともあり、簡単な説明で済ませてしまった私…。Upload By SAKURA娘も深く考えていないような、あっさりとした返事でした。しかし2年生からは、「自分のクラス」が特別支援学級になります。通常学級での娘は交流という扱いになるので、出席番号も一番最後に変わります。色んな変化で娘が戸惑うかもしれない…。ちゃんと理解することは難しいとは思いますが、私は娘に、なぜ特別支援学級に行くのかを丁寧に説明しようと決めました。「こんな時、あるよね?」娘に説明してみたそこで私は娘に、こんな風に話をしました。Upload By SAKURAUpload By SAKURAなんとなくわかっただろうか…いよいよ特別支援学級での新学期がスタート!初日の感想はまさかの…?心配しながらも2年生になる初日の朝、娘を送り出しました。この日、私は放課後、娘を学校まで迎えに行きました。通常学級のホームルームと、特別支援学級のホームルームを終え、出てきた娘は、ちょっと疲れているように見えました。初日の感想を聞くと…Upload By SAKURA2つも教室があってすごい…!?なんとも前向きなその考え方に、脱帽しました。教室移動もバッチリ!対応できている娘に一安心娘は今、国語と算数の授業を支援学級で受け、他の時間は通常学級で過ごしています。Upload By SAKURA本人も「国語と算数は特別支援学級」という流れをきちんと把握し、時間になれば、教科書をもってクラスを移動するそうです。娘は、変化に対して柔軟に対応できていました。娘に伝えたい「特別支援学級にいる意味」より大切なこと私たちが、迷いに迷って決めた特別支援学級という選択。娘に受け入れてもらえないんじゃないかと心配もしていました。しかし娘は、私の予想以上に支援学級をすんなり受け入れてくれ、なじんでくれています。おそらく娘は、特別支援学級にいる意味を完全には理解していないと思います。何故ここにいるのか、自分は何が苦手なのか…親としては、自分の特性や苦手を知る上で、将来的にはある程度理解してほしいと思っています。特別支援学級はみんなは通わないけれど、あーさんが成長する過程で必要な場所…ここは後ろめたく思う場所ではないということも。でも、ちゃんとわかるのは今じゃなくていい。それより、伝えたいのは『いる意味』よりも大切な、娘に合う場所で『マイペースに、ゆっくり頑張ろう』ということ。Upload By SAKURA新しくスタートを踏み出した娘を、引き続きサポートしていきたいと思います。
2018年06月13日広汎性発達障害の娘が特別支援学級に通い始めた!小学校入学後に通常学級が合わなくなってきて、2年生からの特別支援学級への転籍が決定した娘。特別支援学級在籍のための手続きが無事終わったのは9月でした。あとは3月ごろ、教育委員会から最終決定の書面が届くのを待つのみとなりました。そして養護教諭の先生から提案され、翌月の10月から、娘は1日1時間だけ支援学級へ通い始めました。Upload By SAKURA娘は、支援学級に行くことをすんなり受け入れてくれました。娘は「楽しい!」と言ってるけど…実際どんな風に過ごしてる?特別支援学級の慣らしが始まって、初日から「楽しい」という娘の言葉を聞くことはできたのですが、肝心の雰囲気、勉強のやり方、周りの様子など、特別支援学級での授業の様子が気になります。ところが、娘に聞いてみたところ…Upload By SAKURAすぐに、担任の先生、養護教諭の先生にお願いしましたが、授業参観やそれ以外の都合がなかなか合わず…年が明けた1月、やっと念願の見学できることになったのです。特別支援学級での国語の授業を見学見学する授業の教科は選ぶことができたので、私たちは娘が苦手とする、国語の授業を見学することにしました。娘が座る机の前に、養護教諭の先生が座り、家庭教師のような状態。本読みする時は、先生がそばにいてくれるようです。Upload By SAKURA娘が読むのに疲れ、集中が切れてしまったと感じると、深呼吸させたり、背伸びをさせたり、気分転換させてくれています!選ぶことが難しい娘、先生の対応は…?この日のメインは調べ物の授業。通常学級で後日やるお題選びを、特別支援学級で決めておく、というものでした。娘は、選択が苦手。自分が興味のないことだとなおさら。とりあえずなんでもいいから決める、ということがなかなかできません。この時も、案の定、先生から『この中でどれにする?』と言われた娘は、なかなか選ぶことができません。Upload By SAKURA親としては、見ていてなんとも歯がゆい感じ。娘は、「ちょっと考える…」と言ったままフリーズ。しかし、先生は娘を焦らせることなく待ちます。「どうするのかな」と思いながら見ていると、しばらく待った先生はお題の中から2つ取り、娘に聞きました。Upload By SAKURA常に先生は娘に二択から選択させました。二択になった娘はすんなり決めることができ、最後に残った一つにお題が決まりました。これなら娘も選びやすい!娘に合わせる特別支援学級のやり方に感激!娘に合わせてくれたこのやり方に、私は感動!特別支援学級という場所で、本当に娘に合った方法を取ってくれるのかと、不安だった私ですが、見学をしたことで、私の不安は一気に吹き飛ばされました。ここでいい!いや…ここがいい!ここで学んだら、娘も伸びるかもしれない!Upload By SAKURA不安が希望に変わりました。娘は2年生から、この特別支援学級に在籍し、国語・算数の授業のみ、特別支援学級で受けています。そして、特別支援学級の担任は、見学の時に担当してくれた養護教諭の先生です。特別支援学級の担任と通常学級の担任の連携も取ってくれ、連絡もこまめに取ってくれます。一年生の時あんなに迷った進級先でしたが、私の選択は、今のところいい方向に行った気がしています。娘が笑顔で学校生活を送れるように、私も引き続きサポートして行きたいと思います。
2018年05月30日「正直、もう学校と波風立てたくない…」そんな私に喝を入れたパパの一言8月。進級問題に悩んだわが家でしたが、無事、主治医の先生から診断書を受け取り、学校に提出しました。次年度からの特別支援学級希望の手続きに移り、ようやく終わりが見えてきた時…主人が「最後にこっちの気持ちを話すから、先生に時間取ってもらって」と、担任の先生との面談を希望しました。「こっちがモヤモヤする思いは伝えないとダメ。それを先生たちがどうとらえるかは、わからないけど、 こういうことは言ってほしくない…ってことは伝えるべき」 と言う主人に私は、「え!言うの!? 波風立てないようにして!うまくやっていきたいもん!」 と猛反対。それを聞いた主人は呆れながら「あのなぁ…そういう問題じゃないの!これからあーさんのような子がきっと入学してくる。 その子たちのため、その子たちの親のためにも…言わなきゃいけないこともある。 俺たちがもうこれでいいから、いいや! 波風立てないように…じゃないんだぞ?俺たちが通った道は、後から通る人のために、少しでも歩きやすくするのが俺たちの役目だ!」と言いました。Upload By SAKURAこの時、私は主人の思いに胸をうたれました。同時に、自分のことしか考えてなかった自分が、とても恥ずかしくなりました。「嫌なら、俺だけでもいいよ?」と主人は言ってくれましたが、その思いに、納得した私は腹を決めました。そして、進級問題最後の面談に向かったのです。私の代わりに学校に伝えてくれた、モヤモヤするけど言いにくい気持ち面談では初め、担任の先生、同席した養護の先生から、決定事項の確認や次年度の説明がありました。話が終わると主人は、 「僕たちから、ちょっとお話してもいいですか?」 と言い、落ち着いた口調で、それでいてストレートに、今まで私が学校に対して思っていたことを話していきました。「夏休みの宿題の件ですが…やる前から、 "やらなくてもいい"というのは言わないでほしかったです。良かれと思っての気持ちも分かりますし、気にかけてもらってありがたいのですが…母親が頑張って必死にやってくれていますから、今のところ大丈夫です。 本当にできなかったときに、こちらから言いますので、その時は甘えさせてください」などと、私たちが今までモヤモヤしたこと、疑問に思っていたことを一つひとつ丁寧に伝えていきました。そして、最後に…「これから、発達障害のある子は増えていくと思います。今のクラスの子たちもきっと、中学、高校と進学して大人になっていく過程で、必ず出会うと思います。その時、あぁ、そういえば小学校の時にいたな?って、僕たちが今大人になって思うように思い出す。娘が、同級生たちの…経験の一つになれば嬉しいです。 娘は本当に純粋ないい子です。 あの子の良さを尊重しつつ、社会に出ていけるような状態にするのが、 僕たち親の役目だと思っています。先生もたくさんの子どもたちを一人で見られて、 本当に大変と思いますが、残りの1年生の間と、特別支援学級在籍になってから… 娘のこれからの成長のため、できる範囲で構いませんので、どうかご協力をお願いします」そう言うと、頭を下げました。そして、9月…特別支援学級進級の手続きはすべて終了しました。Upload By SAKURA進級問題は私たちだけじゃない!他の親子も通る凸凹道を歩きやすくこの主人の行動と言葉に驚きました。「わが子のためにできることはやる」だけではなく、これからの子どもたちのことを考える主人は、私の何歩も先を行っていたのです。今回の進級問題、振り返って見ると、一つひとつに大騒ぎして動揺していた私とは違い、いつも状況把握は、聞いた話のみだった主人。そんな主人は、一緒に考えてくれていても、きっと私の話を100%理解してはくれないだろうと内心思っていました。しかし、私のモヤモヤする思いも代わりに伝えてくれ、これから入学してくるだろう発達障害のある子と、その親御さんのことまで考える姿勢に、感動しました。今回の進級のことで、私たちの通ってきた道は…Upload By SAKURAもちろん、わが子の進路を決めるのに、簡単な道はないと思います。でも、少し距離の短くなる橋や、登りやすい階段…私たちが通っただけではそんな立派なものはできないかもしれないけど、川があったときに橋に使う材料ぐらいは、置いてあげられていたら嬉しいな(笑)辛かった進級・進学問題から学んだ今、できること偉そうかもしれませんが、娘の小学校入学、1年生、進級…と、経験した私たちが、進学・進級問題において今、振り返って言えることは、以下の4つです。「自分が(子どものために)どうしたいのかという思いを大切に」「子どもとそして自分が、笑顔になれる道を一番に考える」「周りの意見に流されない」「学校、地域のリサーチはしっかりと」周りの意見をたくさん聞くことも大事ですが、聞きすぎると自分の意見が消えてしまいます。そして、周りはそれぞれの立場で違うことを言うものだということも…「良かれと思って…」と、色んなことを言ってくる人がいるかもしれません。でも、「みんなが納得する答え」や「絶対に誰にも何も言われない判断」なんてないのではないでしょうか?もし、そんな場面に出会い迷ったら、自分がどうしたいのか…それを大切にしてほしいと思います。親御さんが悩んで悩んで、苦しみながら決めたことです。 その決断は「誰よりも優先されるものであってほしい」。少なくとも私は、そう思います。…と言っている私ですが、今選んだ道が、正解だったか、正解じゃなかったか、分かりません。それが分かるのは、ずーっと後だと思います。今信じることを、今できることを、選択する。 結局それしかないと思います。Upload By SAKURAこれで、私たちと娘が経験した進級問題はひとまず終わりです。このコラムが、少しでもお役に立てたら嬉しいです。最後まで読んでくれてありがとうございました。
2018年05月16日長男は朝の子ども番組が大好き!でも困ったことが…自閉症の長男は朝が苦手です。イライラしてごはんをわざとこぼしたりするのでほとほと困り果てていたのですが、最近そんな長男に変化が現れはじめました。朝食中にたまたま観たNHKの朝の子ども向け番組がきっかけでした。長男は8時から始まるこの番組を楽しみにして毎朝すっきりと目覚めるようになったのです。Upload By シュウママ歌をうたったりクイズをしたり…長男はご機嫌です。ごはんもパクパク食べています。なあんだ、こんな簡単な解決方法があったのかと安堵しました。そうこうするうち番組は終わりに近づきました。見るとテレビに表示された時間は8時20分!早めにバス停に着くためにはもう家を出発しないといけません。私は長男に声をかけました。Upload By シュウママ「テレビを消すよ」そういうと長男はパニックを起こしました番組は8時25分まで。まだ途中なのですが、私はテレビの電源を切ろうとしました。その瞬間、長男は私からリモコンを奪い取って怒りはじめました。「ダメだよ。もうお家出る時間です」毅然と言ってみたのですが長男は「イヤ~」と泣き始め、てこでも動こうとしません。Upload By シュウママ結局テレビ画面の下に「終」という文字を確認した瞬間「おわり!」と自ら叫んですくっと立ち上がり、通学リュックを背負って玄関へと駆け出して行きました。そのまま私は、大急ぎで自転車をこいでバス停に向かったのですが着いた時間は発車時刻ちょうど。バスも同時に到着したので長男を自転車から降ろしたりするのに手間取って待たせてしまうことになってしまいました。Upload By シュウママ夫婦の会話を聞いていた次男が提案してくれたのはその後も長男は「終」という文字を確認しないと動こうとしない日々が続きました。学校からの通達では、予定時間の5分前にはバス停に着いているようにと指示されています。バスの後続の車にも迷惑がかかってしまうからです。このままではいつか遅刻する・・どうしたものかー私は夫に相談しました。すると夫から出た答えは「子ども番組を見せなきゃいいんじゃない?」でした。…まあそれができれば苦労はないんですがね。長男は朝、番組があることを知っているので、別のチャンネルに合わせるあるいは電源をオフにしてしまうと大きなパニックを起こすことは明白なのです。大人同士うーんうーんと唸っているとき双子の次男が「ちょっといいかな」と会話に割って入ってきました。「5分早く家を出ればいいだけだよね。なら、あらかじめ、今日の分をビデオに録画しておくんだよ。そして明日になったらさ~」Upload By シュウママそっ…そうかそうだよね。言われてみてなるほど!と思いました。夫の顔を見るとちょっと顔が赤らめながら「俺もそう言おうと思っていたんだよ!」と気づいていたけどあえて言わなかったんだよ、という大人の威厳をちらつかせようと必死になっていました。ちょっと恥ずかしい…。Upload By シュウママ自閉症のこだわりや特性、困りごとは家族みんなで考えて克服できるようにUpload By シュウママそうして次男の提案通りにやってみたところ大成功!(さすがに同じものだと飽きてしまうので毎日録画して新しいものを見せますが…)録画を見終わると長男はご機嫌で家を出ます。こうして朝の遅刻はなんとか免れることができるようになりました。次男、お手柄です!自閉症児を育てていれば、いろんな困難に直面することがでてくると思います。けれど、一つひとつの壁を、家族で乗り越えていくぞ!と思えた出来事でした。
2018年01月31日1. お子さんの就学先に悩む保護者の方へ出典 : 障害のあるお子さんを持つ保護者の方にとって、お子さんの就学先選びは非常に大きな決断になると思います。特別支援学校・特別支援学級・通級・通常学級と様々な選択肢がありますが、それぞれの仕組みや教育環境、メリットやデメリットを把握したうえで、今、お子さんにもっとも合う学校を選ぶことが大切です。この記事では、特別支援学級の対象となる障害や教育環境、通級・特別支援学校との比較、入学の方法から卒業後の進路などについて詳しく解説していきます。ぜひ就学先選びの参考にしてください。2. 特別支援学級ってどんなところ?出典 : 特別支援学級とは、障害のある子ども一人ひとりに応じた教育を行うため、小・中学校に設置された、障害種別ごとに編成された少人数の学級をいいます。学校教育法81条では、以下のように定められています。幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校及び中等教育学校においては、次項各号のいずれかに該当する幼児、児童及び生徒その他教育上特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対し、文部科学大臣の定めるところにより、障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育を行うものとする。○2 小学校、中学校、義務教育学校、高等学校及び中等教育学校には、次の各号のいずれかに該当する児童及び生徒のために、特別支援学級を置くことができる。一 知的障害者二 肢体不自由者三 身体虚弱者四 弱視者五 難聴者六 その他障害のある者で、特別支援学級において教育を行うことが適当なもの○3 前項に規定する学校においては、疾病により療養中の児童及び生徒に対して、特別支援学級を設け、又は教員を派遣して、教育を行うことができる。年の文部科学省の調査によりますと、特別支援学級に在籍している幼児児童生徒の数は187,100人で、幼児児童生徒全体に対する割合は1.2%です。ただし、高校で特別支援学級を設置している例はまだ見受けられず、在籍している生徒数も調査によると0人になっています。特別支援学級を設置している小学校の割合は76.6%、中学校は73.7%と、ほとんどの小・中学校が特別支援学級を設置しています。また、特別支援学級に在籍している幼児児童生徒の数、特別支援学級の数は、どちらもここ20年間は増加傾向にあり、そのニーズの高まりとともに小・中学校での支援体制の整備が進んでいます。文部科学省特別支援教育資料(平成27年度)【第1部集計編】3. 特別支援学級の対象となる障害の基準は?出典 : 特別支援学級は障害種別ごとに、知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱、弱視、難聴、言語障害、自閉症・情緒障害の7種類のの学級があります。特別支援学級の対象となる障害の程度は以下の通りです。知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通に軽度の困難があり日常生活を営むのに一部援助が必要で、社会生活への適応が困難である程度のもの補装具によっても歩行や筆記等日常生活における基本的な動作に軽度の困難がある程度のもの・慢性の呼吸器疾患その他疾患の状態が持続的または間欠的に医療又は生活の管理を必要とする程度のもの・身体虚弱の状態が持続的に生活の管理を必要とする程度のもの拡大鏡等の使用によっても通常の文字、図形等の視覚による認識が困難な程度のもの補聴器等の使用によっても通常の話声を解することが困難な程度のもの口蓋裂、構音器官のまひ等器質的又は機能的な構音障害のあるもの、吃音等話し言葉におけるリズムの障害のあるもの、話す、聞く等言語機能の基礎的事項に発達の遅れがあるもの、その他これに準じるもの(これらの障害が主として他の障害に起因するものではないものに限る。)で、その程度が著しいもの・自閉症又はそれに類するもので、他人との意思疎通及び対人関係の形成が困難である程度のもの・主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、社会生活への適応が困難である程度のもの文部科学省通知「障害のある児童生徒の就学について」これらの基準をもとに、最終的な就学先は、お住まいの市区町村で行われる就学相談を通して、保護者の方の意見を尊重しながら決定します。また、これらの基準より重い障害のあるお子さんは、多くの場合、特別支援学校の対象になります。以下の記事も参考にしてみてください。4. 通常の小・中学校でもきちんと支援を受けられるの?出典 : 通常の小・中学校でも、障害のある子どもに対して理解ある支援が受けられるのかどうかを心配されている保護者の方は多いのではないでしょうか。ここでは、障害のあるお子さんも保護者の方も安心して学校生活を送ることができる支援体制の例をご紹介します。「個別の指導計画」とは、障害のある子どもに指導を行うためのきめ細かい計画です。子どもの一人ひとりの教育的ニーズに対応して、指導目標や指導内容・方法を盛り込んであります。例えば、単元や学期、学年等ごとに作成され、それに基づいた指導が行われます。特に、後述する「自立活動」の指導は、この計画に基づいた内容になっています。「個別の教育支援計画」とは、進級・進学時の引継ぎ、他機関との連携を図るための計画をいいます。乳幼児期から学校卒業後までの一貫した長期的な計画である点が「個別の指導計画」との違いです。学校が中心となって、教育・福祉・医療・労働などの関係機関と連携し、保護者の意見とともに作成することなども求められています。通常の小・中学校でも、障害のある児童・生徒に対しては学校の教員と保護者とが一緒になってこの計画を作成し、学校と協力しながら適切な支援を受けることができるようになっています。独立行政法人国立特別支援教育総合研究所(4)個別の指導計画と個別の教育支援計画特別支援教育コーディネーターは、学校内や福祉・医療等の関係機関との間の連絡調整役として、あるいは保護者に対する相談の窓口として、校内の関係者や関係機関との連携協力の強化を図るための役割を担っており、学校内の教員が指名されています。つまり、特別支援教育コーディネーターは学校や担任の先生と保護者、専門機関とのパイプ役を果たしており、必要なときには相談できる体制になっています。また、小・中学校の教員は障害に対する専門的な知識を必ずしも持っているわけではありませんので、特別支援教育コーディネーターが担任に対する助言も行っています。5. 特別支援学級の教育環境出典 : では、特別支援学級のなかはどのような教育環境になっているのでしょうか。特別支援学級では、障害のあるお子さんが能力を最大限発揮して学習できるよう、様々な工夫がされています。また、障害のない通常の学級の子どもと触れ合う機会も設けられています。特別支援学級の上限定員は8人と定められています。少人数教育で、障害のある子ども一人ひとりのニーズに合わせた教育が受けられるようになっています。また、教室内は、子どもの実態に即して安全で過ごしやすい環境になるような工夫がされています。例えば、教室という多目的な空間に混乱してしまう子どもがいる場合、一つの場所では一つの活動が行われるような環境が作られます。自立活動とは、特別支援学校学習指導要領に定められている教育活動の一つです。障害による学習上または生活上の困難を改善・克服するための指導を行う目的で設けられています。「個別の指導計画」に基づいて子ども一人ひとりにあった指導目標が設定され、その目標を達成するような指導が行われます。例えば、身体の動きに困難のある子どもに対してはそれを改善するための指導が、コミュニケーションに不安のある子どもに対してはそれを支援するための指導が自立活動の時間に行われます。具体的な内容は子ども一人ひとりに合わせたものになっています。文部科学省特別支援学校学習指導要領解説自立活動編特別支援学級では、必要に応じて、各教科の目標・内容を下学年の教科の目標・内容に替えたり、各教科を知的障害特別支援学校の各教科に替えたりすることができます。これは通常の学級に所属している場合は受けることのできない大きなメリットです。小・中学校や特別支援学校の学習指導要領などには、障害のある子どもと障害のない子どもが活動を共にする機会を積極的に設けるよう示されています。これにより、障害のある子どもが通常の学級で障害のない子どもと触れ合うことができます。例えば、・朝の会や帰りの会を、同じ学年の通常の学級である「交流学級」で、通常の学級の子どもたちと一緒に過ごす・給食や体育、音楽の時間は通常の学級で活動するなど、通常の学級と特別支援学級を行き来するといった例があります。6. 障害種別ごとの教育内容出典 : 特別支援学級は小・中学校に設置された学級であるため、上述したような配慮を行う場合であっても、学校教育法に定める小学校及び中学校の目的・目標を達成するものである必要があります。特別支援学級においてもその教育目標を達成するために、障害の種別ごとに教育内容が工夫されています。知的障害特別支援学級における教育内容としては、・特別支援学校の学習指導要領を参考にしながら、子どもの知的発達の段階に合わせた目標、内容を選択し、教科学習の内容を決める・特別支援学校の学習指導要領に示されている「自立活動」の指導を行う・学校教育法施工規則に規定されている「領域・教科を合わせた指導」を行うという工夫がされています。「領域・教科を合わせた指導」とは、指導内容を教科別・領域別に分けない指導のことを言い、これが時間割に取り入れられています。具体的には以下のような授業があります。■日常生活の指導基本的生活習慣や集団生活をするうえで必要な内容■遊びの指導遊びを学習活動の中心に据えて、身体活動を活発にし,仲間とのかかわりを促し、意欲的な活動を育てていくもの■生活単元学習生活上の課題処理や問題解決のための一連の目的活動を組織的に経験することによって,自立的な生活に必要な事柄を実際的・総合的に学習するもの■作業学習作業活動を学習活動の中心に据え,児童生徒の働く意欲を培い,将来の職業生活や社会自立を目指して総合的に学習するもの。産業現場等における就業体験等を含め,学校卒業後の社会生活につなげるようにしていく。肢体不自由特別支援学級においては、通常の学級での授業のほかに、身体の動きや認知能力などの向上を目指した指導が行われています。また、子どもの個人差を考慮し、個別指導やグループ指導といった授業形態を積極的に取り入れたり、教材・教具の開発・工夫を行ったりするなどの配慮が行われています。さらに、通常の学級の子どもと運動会や給食の場を通じて一緒に活動するなど、社会性や集団へ参加する力を高めるための配慮もされています。また、子どもが可能な限り自らの力で学校生活が送ることができるよう、廊下やトイレに手すりを取り付けたり、便器を洋式にしたりするなどの配慮がされている学級が多いです。病弱・身体虚弱特別支援学級には、病院内と学校内の2つがあります。■病院内の特別支援学級入院中の病弱児のために、近隣の小学校や中学校を本校として、病院内に設けられている特別支援学級です。ここでは、病院の職員との連絡を密にしながら、健康状態の回復・改善等を図るための指導を行うとともに、各教科等の指導に当たっては内容の精選を行い、特に身体活動を伴う学習については、指導方法や教材・教具を工夫するなど、様々な配慮をしています。子どもの病状や発達段階に合わせて、子どもの学年に準じた教育課程、下学年・下学部適用の教育課程、特別支援学校(知的障害)の教育課程などが準備されます。■小・中学校内の特別支援学級入院を必要とせず家庭などから通学できる病弱・身体虚弱児のために、小学校や中学校の中に設けられている特別支援学級です。ここでは、通常の学級とほぼ同様の授業内容・授業時間を定められますが、子どもの病状や発達段階等に応じて下学年・下学部の教育内容が指導されることがあります。通常の学級の子どもとともに活動する機会を積極的に設け、家庭などとの連絡を密にしながら、健康状態の回復・改善や体力の向上を図るための指導もあわせて行われます。弱視特別支援学級では、原則として小学校や中学校と同様の学習指導が行われます。しかし、子どもの視覚障害の実態に合わせた少人数のクラス編制になっており、子ども一人ひとりの障害の状態や特性に応じて具体的な目標を設定し、特別な配慮や工夫をしながら指導が行われます。特に必要がある場合には、特別支援学校小学部・中学部学習指導要領を参考にして教育課程を編成することがあります。難聴特別支援学級でも、原則として小学校や中学校と同様の学習指導が行われますが、自立活動などが時間割に取り入れられることもあります。例えば語句・文・文章の意味理解やコミュニケーションの改善についてが自立活動の内容になります。また、聴覚活用のためにオージオメータや集団補聴器、発音・発語指導のための音声直視装置などの機器が用意されています。言語障害特別支援学級では、自立活動の時間として言語障害の状態の改善もしくは克服を目的とする指導が取り入れられています。また、国語や算数・数学など個別指導などでより手厚く行う必要があるものについては特別支援学級で行い、生活科、図画工作(美術)・体育科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間など集団の中で行うことがふさわしい教科等については、通常の学級で行うといった教室間の行き来をすることもあります。自閉症・情緒障害特別支援学級の授業内容は、通常の小・中学校の教育課程を基準にしながら、必要に応じて、特別支援学校学習指導要領を参考にして、学級や子どもの実態に応じて決定されます。また、自閉症や発達障害をもつ子どもが将来の社会生活に適応できるような指導が行われています。■日常生活習慣形成のための指導自閉症・情緒障害特別支援学級では、日常生活における生活習慣を身に付けるため、食事・排泄・衣服の着脱などの指導を学校生活の中で行います。子どもの発達段階を考慮し、例えば、食事領域では、「スプーンやフォークで食べる」「箸を使って食べる」「スプーンやフォーク、箸を使い分ける」「マナーを守って食べる」など、段階的に指導目標を立てていきます。■運動機能・感覚機能を高めるための指導運動発達や知覚の発達の基礎をつくり、情緒の安定や言語の発達、時間・空間の概念を形成するための指導です。自閉症などの子どもは、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚などの感覚刺激に対して、過敏性などの問題がある場合があります。これらの感覚知覚の問題が、日常の生活環境において不安や苦痛の原因となっていることもあるので、この対応には十分に配慮しながら、できるだけ不安を軽減できる環境を工夫し、改善に向けて指導していきます。■言葉の内容を理解するための指導人の声に注意を向ける、人の話を聞く、返事やあいさつをするなど社会生活に必要な態度を形成し、人とのかかわりを深めるための基礎をつくることが目的です。注意力や集中力を身に付け、言葉を理解するとともに、実際の生活に必要な言葉を適切に使用できるようにコミュニケーションの指導を行います。サイン、絵カード、写真、文字、ジェスチャー、表情などの手段を使って、必要最低限の相手とのやりとりができるようにしていきます。■人とのかかわりを深めるための指導人とのかかわりが苦手な子どもに対して、強引に他の子どもたちと一緒の集団活動に参加させることは、人とのかかわりの困難さを強くしてしまいがちです。そのため特別支援学級では、大人との一対一の関係の構築から始めて、少しずつ小集団の児童生徒との関係に広げていくようにしています。7. 特別支援学級と発達障害出典 : 発達障害がある子どもは知的障害特別支援学級か自閉症・情緒障害特別支援学級に在籍することになります。これは、子どもに知的障害があるかどうかによって異なります。文部科学省によると、特別支援学級に在籍している187,100人の子どもたちのうち、50.7%である94,821人が知的障害特別支援学級に、43.6%である81,624人が自閉症・情緒障害特別支援学級に在籍しています。このことから、特別支援学級に在籍する子どものうち90%以上が知的障害や発達障害をもつ子どもであることが分かります。8. 特別支援学級と、通級指導教室・特別支援学校との違いは?出典 : 特に義務教育が始まる小学校入学の前に、お子さんをどの教育環境で育てるか迷う保護者の方は多いと思います。障害のある子どもの教育環境として、通常の学級・通級指導教室・特別支援学級・特別支援学校の4つがあります。それぞれの対象となる障害の程度に明確な基準はありませんが、一般的に通級指導教室・特別支援学級・特別支援学校の順に障害の程度は軽くなります。Upload By 発達障害のキホン通級は、通常学級の学校に籍があり、通級指導の時間のみ通級指導教室に通います。通級指導教室が通常学級の学校にない場合は、通級指導教室がある他の学校に通級指導の時間のみ通います。また、担任は通常学級の先生が受け持ちます。Upload By 発達障害のキホン特別支援学級に通う場合は、特別支援学級が設置されている学校に籍を置きます。基本的に特別支援学級で授業を受けますが、体育や図画工作、給食の時間は通常学級の子どもたちと過ごすこともあります。担任は特別支援学級の先生が受け持ちます。Upload By 発達障害のキホン特別支援学校に通う場合は、通学する特別支援学校に籍をおきます。また、通級・特別支援学級は通常の教員免許のみでも受け持つことができますが、特別支援学校の教員は通常の教員免許に加え、特別支援学校の教員免許を取得しています。9. 通級・特別支援学級・特別支援学級のメリット・デメリット出典 : 教育システムの違いから、通級・特別支援学級・特別支援学校それぞれにメリット・デメリットがあります。お子さんの学校選びの参考にしてみてください。■通級・通常学級での子どもとコミュニケーションをとる機会が比較的多い・学習面で通常学級の授業が受けられる・必要なフォローを受けられる・通常学級から離れる時間が気分転換になることもある■特別支援学級・給食の時間や昼休みなどは通常学級での子どもとのコミュニケーションなどの経験ができる・発達・障害の程度に準じたカリキュラムで指導を受けられる・学校と相談しながら通常学級との行き来ができるようにもなる■特別支援学校・個々人の障害の程度に合わせたカリキュラムで、専門性を持った先生からきめ細かい指導が受けられる・高等部では職業教育が受けられる■通級・特別支援学級・在籍基準があいまい・すべての学校に通級指導教室や特別支援学級があるわけではなく、場合によっては遠くの学区に通学しなければならない・高校では通級制度はまだ整えられておらず、特別支援学級も設置されていないのが現状(ただし、2018年度から高校でも通級指導を始めるよう文部科学省が準備を進めている)・学級数や受け入れ可能人数などに地域差が大きい・通常学級との行き来がお子さんのストレスになることもある■特別支援学校・通常学級の子ども、同世代の子どもと触れあう機会が少ない・転学・転校は可能だが手続きが必要・障害の程度によっては入学できない可能性がある・特別支援学校高等部を卒業しても、通常の高卒資格は得られない(ただし大学入学資格を得ることはできる)・地域差、学校差がある10. 特別支援学級への入り方出典 : ■年中期~6月ごろ:情報収集お住まいの市区町村の教育委員会に問い合わせたり、ホームページを参照して、地域にある特別支援学校や、小学校の特別支援学級の有無などについて情報を集めましょう。地域によって異なりますが、4月から6月ごろにかけて、特別支援学級や特別支援学校などへの就学を検討している保護者向けに、教育委員会が就学についての説明会が行われる場合もあります。ここでは就学先として考えられる選択肢について、それぞれどのような支援や教育が受けられるか、今後の就学相談や就学先決定までの流れなどについて説明があります。保護者が情報収集や相談をしない場合もあるので、教育委員会では様々な機関と連携して特別支援学校への就学のニーズがある子どもの把握につとめます。教育委員会が幼稚園や保育園、園や発達支援センターや療育センターなどに調査票の作成を依頼したりする地域もあります。その場合、通常の学級・学校に就学することに不安があると思われるお子さんについて、園やセンターは保護者の了承を得て調査票を作成します。■7~9月ごろ:就学相談市区町村の教育委員会へ連絡し、就学相談を受けます。園やセンターの調査票がない場合は、ご自身で市区町村の教育委員会に問い合わせをしましょう。就学相談では、専門の就学相談員と保護者との面談(複数回のこともあります)を通して子どもにとって最適な就学先を決めます。子どもの状態を把握するための検査が行われたり、相談員がお子さんの在籍園・在籍校に赴いてお子さんの様子を確認することがあります。障害の状態、障害に基づく教育的ニーズ、保護者・専門家の意見、学校や地域の状況などを考慮して、就学指導委員会がお子さんにとって良いと思われる就学先を決定します。この決定に保護者の方が同意をすれば就学先が決定します。もし同意できない場合はその旨を教育委員会に申し立て、再度就学相談を受けることもできます。最終的には保護者の方の意向が尊重されます。就学相談では、子どもの状態を正確にしっかりと伝えることが大切です。医療機関で受けた診断書や療育手帳などがあれば持参することをおすすめします。■10~11月:就学時健康診断と小学校の選択就学時健康診断とは、小学校に入学する前に行われる健康診断のことであり、身体検査に加えて発達検査、知能検査等があります。お子さんの障害や発達の遅れについて、この健康診断によって初めて気づく場合があります。就学基準にお子さんが当てはまると思われる場合、就学相談・就学指導を受けることを教育委員会からすすめられます。就学相談で、特別支援学校、特別支援学級、通級、通常学級という選択肢の中からお子さんにとって最適と思われる就学先を決定します。小学校入学時は通常学級に在籍していた子どもが、その後特別支援学級に転籍する場合もあります。これには小・中学校の校内委員会が関係しています。校内委員会とは、子どもの状態に早期に気付き、適切な支援を行うために小・中学校に設置されたものです。その役割は以下の通りです。・学習面や行動面で特別な教育的支援が必要な子どもに早期に気付く。・特別な支援が必要な子どもの実態を把握し,担任の指導への支援方策を具体化する。・保護者や関係機関と連携して,個別の教育支援計画・個別の指導計画を作成する。・特別な支援が必要な子どもへの指導とその保護者との連携について,全教職員の共通理解を図る。また,そのための校内研修を推進する。・専門家チームに判断を求めるかどうかを検討する。※LD,ADHD,高機能自閉症の判断は教員が行うものではない・保護者相談の窓口となるとともに,理解推進の中心となる。こういった支援体制が小・中学校内にあるため、最初に通常学級に入学したお子さんでも、特別支援学級や通級での支援を受けることができます。小学校で特別支援学級に在籍していたお子さんが、中学校でも特別支援学級に在籍する場合、同じ学区域内であれば、特別支援学校や特別支援学級で行われた特別支援教育の内容は、小学校と中学校の先生、特別支援教育コーディネーターを通して引き継がれます。11. 中学校卒業後の進路出典 : 高等学校においては特別支援学級が設置されていないのが現状です。その理由としては、義務教育でないこと、入学試験など選抜があること、高等学校学習指導要領に特別支援学級に関する記述が少ないことなどがあげられます。ただし通級については2018年度から開始されるよう文部科学省が準備を進めています。高校における特別支援学級の整備が進んでいないことから、中学校卒業後のお子さんの進路を心配されている保護者の方も多いのではないでしょうか。文部科学省の報告によれば、中学校の特別支援学級を卒業した子どものうち、進学する子どもの割合は94.1%です。進学した子どもの中では63.4%が特別支援学校の高等部に進学しています。他の進路としては、教育訓練機関等が2%、就職が0.8%、社会福祉施設などへの入所・通所およびその他が3.0%となっています。このデータからわかるように、多くの子どもが特別支援学校高等部もしくは通常の高等学校に進学しています。文部科学省特別支援教育資料(平成27年度)【第1部集計編】12. まとめ出典 : 高校での整備が遅れていたり、全ての学校に特別支援学級があるわけではなかったりと課題はあるものの、特別支援学級は同世代の子どもたちと触れ合える機会があり、かつ子どもたちに合った支援を受けられる点で魅力的です。地域や学校によっても特別支援学級の雰囲気は異なるので、お子さん自身や学校の先生、かかりつけのお医者さんなどの周りの方や学校の先生、特別支援教育コーディネーターと相談しながら、お子さんの障害の程度や性格に合った就学先を選ぶのがよいのではないでしょうか。
2017年10月29日双子の兄弟が就学年齢に。長男は特別支援学校、次男は通常学校への入学が決定重度自閉症の長男は、比較的早い段階で特別支援学校への入学が決まっていました。そして我が家は双子であるため、同時に通常学校へ入学する次男の学校手続もしなければなりませんでした。忙しい日々でしたが、10月に長男の就学通知書が届いた時にはなんだか肩の荷がおりてほっとした気持ちになったものです。入学前の準備。支援学校のカバンはランドセル?それとも?Upload By シュウママそして11月も過ぎたころ、はっと気が付いたのは長男が学校に持っていくカバンのこと。次男はもちろんランドセルのつもりでしたが、長男はランドセルが必要だろうか――入学説明書にはこのカバンで!という明確な記載がなかったので、私は支援学校に問い合わせてみました。電話で丁寧に答えて下さった女性の返事は「特に規定はありませんよ」というものでした。Upload By シュウママこの言葉を聞いた私は、じゃあリュックでいいかな…と思い大きめの新しいリュックサックを長男のために、次男には同じ頃、ランドセルを購入しました。次男のランドセルをじっと見ていた長男に、母として想うことピカピカのランドセルを見て次男は嬉しそうでした。色は黒、ふち取りは赤、何日も前から次男が選んで注文しておいたものでした。入学式の前から次男はランドセルを背負い鏡を見て満足そうにしていました。そんな次男の姿を療育から帰ってきた長男がじっと見つめていました。Upload By シュウママ次男がランドセルを床に置いて遊びに行ってしまうと、長男はランドセルにそろりそろりと手を伸ばしました。どうしたのかな?と見ていると、長男はランドセルの肩ベルトに腕を通して背負おうとしました。けれど不器用で筋力のない長男は、うまく手が通せなかったのかごろりと前のめりになり床であごをごんっ!と打ち、大きな声で泣き出しました。Upload By シュウママ私は驚いて長男のあごをさすってやりました。もちろん長男は痛くて泣いているのでしょう。でもこの泣き声がまるで「僕もランドセル背負いたかった!」という長男の叫び声に聞こえてきました。私はランドセルにするか、リュックにするか、ほとんど逡巡せずに決めたことに対して申し訳ない気持ちになりました。当時、まだ言葉で意思の疎通ができなかった長男に、どちらかを選択させるという考えが私にはなかったのです。ごめんね…と私は長男に謝りました。Upload By シュウママ長男が入学。そこで目にしたのは…そしてひと月が過ぎ長男は支援学校に入学しました。ほどなく父兄の懇談会が長男の教室で行われました。私は同じクラスのお母さん達に挨拶しながら、何気なくロッカーに目をやりました。すると長男のリュックの入ったロッカーの隣りに、横長の形をしたランドセルがあることに気がつきました。Upload By シュウママ「横に長いランドセルってあるんですね」私はランドセルの子のお母さんに聞いてみました。障害児を育てる親に寄り添うランドセルがあったするとそのお母さんは微笑んで言いました。Upload By シュウママお子さんは足が悪いため、車椅子に取り付けやすいベルトがついていることと、沢山荷物が入るということが横型ランドセルを選んだ理由だそうです。最近は障害のある子ども用のランドセルも充実しており、多機能でいろんな色が選べるんだというお話でした。「何よりランドセルを背負った姿が見たかったから・・」お子さんを優しい目で見つめながら言われた気持ちが、私にはよく分かりました。障害のあるお子さんをお持ちなら親は何度も選択を強いられます。そしてそれはとても辛い選択です。普通学校の支援級ならランドセルが必要、でも支援学校なら必要ない――それもその一つです。けれど障害があっても背負えるランドセルもある。それは苦しみを少しだけ軽減してくれ、親心に寄り添ってくれる素敵なランドセルだなと、私もほわっと温かい気持ちになるお話でした。
2017年10月12日強度行動障害とは?出典 : 強度行動障害とは、人を傷つけたり物を壊したりするなど、周囲の人の暮らしに影響を及ぼす行動が高い頻度で起きるため、特別な支援を必要としている状態のことです。家庭で通常の子育てをしていても、かなり努力をしてもなかなか困難な状況が持続してしまいます。厳密には医学用語ではなく、行政・福祉において使われている用語です。1989年の行動障害児者研究会による報告書において、初めて「強度行動障害」という言葉が登場しました。この報告書では、以下のように定義されています。精神的な診断として定義される群とは異なり、直接的他害(噛みつき、頭突き等)や、間接的他害(睡眠の乱れ、同一性の保持等)、自傷行為等が通常考えられない頻度と形式で出現し、その養育環境では著しく処遇の困難なものであり、行動的に定義される群。家庭にあって通常の育て方をし、かなりの養育努力があっても著しい処遇困難が持続している状態。出典:特定非営利活動法人全国地域生活支援ネットワーク/監修『行動障害のある人の「暮らし」を支える: 強度行動障害支援者養成研修[基礎研修・実践研修]テキスト』中央法規出版2015年強度行動障害がある人は日本全国に約8,000人いると言われています。この中には知的障害のある人や自閉症スペクトラムのある人も多く、障害の特性と環境のミスマッチが行動の問題を引き起こしてしまうことがあるとされています。強度行動障害が起こる年齢は人それぞれですが、中でも中学生・高校生の時にこだわりや落ち着きのなさが目立つようになり、顕在化する場合が多いです。環境の変化によっては成人している方でも激しい行動が見られることもあります。障害がある人たちの中で激しい行動を起こしてしまう人に対し、専門的な支援を受けられるようにするために強度行動障害という言葉が使われています。障害特性に合った治療はもちろん、さまざまな福祉サービスと医療を組み合わせて、一人ひとりにあった支援を見つけていくことが大切だといえるでしょう。出典:強度行動障害リーフレット|厚生労働省強度行動障害の特徴出典 : 強度行動障害は自分や人を傷つけるなど激しい行動が特徴です。具体的には以下のような行動が挙げられます。・ひどい自傷爪を切る必要がなくなるほどの爪噛み、自分で顔を引っ掻く、膝や肘を壁に打ち付ける、変形してしまうほど頭部を叩くなどの行動をとります。・強い他傷周りの人に対し、噛みつく、殴る、叩く、髪を引っ張る、頭突きをするなど、相手が怪我をしかねないような行動をとります。・激しいこだわり気になるものがあると動くことができない、強く指示を出しても拒みとおすなど、周りが止めてもその行動をやめません。・激しい物壊しガラス、家具、ドア、茶碗、椅子、眼鏡などを壊し、その結果自分にも周りにも大きな危害を及ぼします。また服を破ってしまうなどの行動も含まれます。・睡眠の大きな乱れ昼夜が逆転していたり、寝床についていられず、人や物に危害を加えたりします。・食事関係の強い障害特定のものしか食べず体に異常をきたしている、食べられないものを口に入れる、椅子に座っていられず周りと一緒に食事できないなどが挙げられます。・著しい多動目を離すとじっとしていられず走り回ったり、ベランダの上など高く危険なところに上ったりします。・著しい騒がしさ大声を出したり、一度泣き始めると何時間も続いたりします。強度行動障害の原因出典 : 強度行動障害は、コミュニケーションの苦手さや感覚の過敏性といった障害特性に環境がうまく合ってないことにより、人や場に対する嫌悪感や不信感を高めてしまうことが原因です。特に重度の知的障害や自閉症スペクトラムがある人に発生すること多いと言われていますが、必ずしも障害の重さに関係があるわけではなく、特性と環境によっては、知的障害・発達障害の度合いが軽度の場合でも強度行動障害が見られることがあります。知的障害や自閉症スペクトラムがある人は、刺激や情報が分かりにくい独特な形で入ってきたり、伝えたいことを言葉ではない独特の表現や行動を通して伝えようとしたりする傾向があります。例えば、普段から身振りなど限られた手段でコミュニケーションをとっている、使える単語の幅が限られているなどが挙げられます。「分からない」ことに対する不安や不快感があってもそれがうまく「伝えられない」ことから、環境に対する嫌悪感や不信感が高まり、強度行動障害が起きると考えられています。強度行動障害は障害がある本人の困っているサインだと捉えて、本人の特性や周囲の環境などをきちんと把握し、行動の原因を探っていくことが大切です。参考:強度行動障害リーフレット|厚生労働省強度行動障害の判定基準出典 : 先述の通り、強度行動障害は医学的な診断名ではありません。そのため医師による診断基準ではなく、行政・福祉的な支援を行う上での判定基準があり、主に支援者の間で使われています。強度行動障害の種類や程度、頻度を評価することで、一人ひとりに合った支援につなげることが目的です。実際に支援対象者の基準として、以下に紹介するような判定基準項目が使われています。例えば行動援護は障害程度区分が3以上、行動関連項目の点数が8点以上の場合、支援を受ける対象となります。この章では強度行動障害の判定基準のうち、厚生労働省が定めている代表的なものをご紹介します。いずれも項目ごとに、得点を算出する仕組みになっています。1. 強度行動障害判定規準項目強度行動障害を「ひどく自分の体を叩いたり傷つけたりする等の行為」「激しいこだわり」といった項目において、行動の頻度と強度から評価するものです。11項目において、得点(1点・3点・5点)を付け、合計得点 が10点以上を強度行動障害と定義しています。現在は制度改正を受けながら、福祉型障害児入所施設において、強度行動障害児特別支援加算にかかる判定基準として使われています。参考:強度行動障害の評価基準等に関する調査について|厚生労働省2. 行動関連項目2014年度に開始された障害支援区分の認定調査項目のうちの「行動関連項目」は、行動援護、重度訪問介護、重度障害者等包括支援などの支給決定の基準点を算出するものです。突発的な行動、コミュニケーションなどの12項目において0~2点で評価し、10点以上が対象とされます。参考:行動援護、重度訪問介護、重度障害者包括支援などの支給決定などの基準点を算出するもの|熊本県障がい保健福祉ホームページ強度行動障害の支援について相談したい時は?出典 : 強度行動障害の支援について知りたい時は相談支援事業所などで相談できます。強度行動障害のある人の場合、自分自身で相談に行くことが困難な状態にあるため、通常、本人の家族・保護者が相談に行きます。相談支援事業所では、まず日常生活における本人や家族の困りごとについて、相談支援専門員によるヒアリングが行われます。そのうえで、困りごとを解決するためにどんな支援があると良いのかを一緒に考えます。場合によっては相談支援専門員とサービス事業所に見学に行くこともあるようです。また実際に支援を受けることになった場合、サービス等利用計画が必要になります。これはチームで1人を支援をする際、周りの人がそれぞれどのような役割を果たして支援をしていくのか、本人やご家族がどんな生活を記入したものです。この計画書を作るのも相談支援事業所なので、手続きや支援を受ける流れについて不安がある場合も、ここで聞くとよいでしょう。参考:相談支援事業所(計画相談支援)とは|就労移行支援事業所LITALICOワークス参考:障害のある人に対する相談支援について|厚生労働省強度行動障害に関係する支援サービス出典 : 障害者総合支援法の数ある支援のうち、強度行動障害がある方がよく利用する支援サービスについてご紹介します。・行動援護行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援護です。移動中の介護、衣服の着脱介護、排泄や食事などの介護を行います。・重度障害者等包括支援重度の障害者等に対し、居宅介護、同行援護、重度訪問介護、行動援護、生活介護、短期入所、共同生活介護、自立訓練、就労移行支援及び就労継続支援を包括的に提供します。・重度訪問介護居宅における生活全般を援助します。また移動時の支援や日常生活に関する相談および助言も行います。・施設入所支援主として夜間において、入浴、排泄及び食事等の介護、生活等に関する相談及び助言、その他の必要な日常生活上の支援を行います。・短期入所短期間の入所を必要とする障害者等につき、当該施設に短期間の入所をさせ、入浴、排泄及び食事その他の必要な保護を行います。・共同生活援助(グループホーム)地域で共同生活を営むのに支障のない障害者につき、主として夜間において、共同生活を営むべき住居において相談その他の日常生活上の援助を行います。どの支援を利用するか、どのように支援を組み合わせるかは人それぞれです。まずは相談支援専門員に相談しましょう。障害者総合支援法におけるその他の支援について知りたい方は、以下のページを参考にしてみてください。参考:障害福祉サービスの内容|厚生労働省強度行動障害のある人が支援を受けるまでの流れ出典 : この章では、相談支援事業所での相談後から支援を受ける流れについてご説明します。家族・保護者などが相談支援相談所での相談を行った後、強度行動障害のある本人に対して支援を行うことになった場合は、まずサービス等利用計画案を相談支援専門員と一緒に作成します。それを市町村に提出し、障害支援区分が認定されたうえで、サービスの種類・量が決定され、受給者証が発行されます。その後、サービス等利用計画が作成され、関係する事業所などが集まって会議が行われます。これは支援に関わる人どうしで役割を確認したり、情報を共有するためです。さらに市町村にもサービス等利用計画が提出されたうえで、サービスの利用が可能となります。いざサービスを開始する際には、サービスの利用が決定した事業所がサービス等利用計画をもとに個別支援計画を作成します。これは支援の内容、期間、目標など、支援に関する具体的なことが書かれている計画書です。さらに個別支援計画に加えて、支援手順書が作成される場合があります。これは本人に関わる支援者が共通の支援方法をとるための手順書です。強度行動障害がある人は支援者の接し方が少しでも違うと混乱するといったように、周りの人に影響を受けやすいため、支援方法を統一する必要があるからです。このように本人に関わるさまざまな人たちの間で情報共有がされ、一人ひとりに合った支援ができるような仕組みづくりがされています。強度行動障害の治療法出典 : 福祉サービスによって強度行動障害がある人の生活全般を支援し、そのうえで検査、薬物療法、入院治療などの医療を組み合わせることがあります。まずは本人の生活環境や過ごし方、周りの人たちの関わり方を工夫することが大切であり、そのうえで環境調整だけでは改善が見られない場合は、医療機関による治療が検討されます。以下が医療機関でできる治療法です。強度行動障害の治療は、一般的に精神科で3ヶ月以内の短期入院が行われるケースが多いです。入院治療において具体的にできることをご紹介します。・検査による身体状態の評価強度行動障害がある人は、じっとしていられないことが多く、外来では検査が受けづらい場合があります。入院をすれば普段できない検査ができ、さらに医師の診察を受けて、身体の状況を把握できます。・行動や情緒に対する状態評価施設や在宅での普段の様子を聞いても、かかりつけの病院が本人の様子を十分把握できない場合があります。強度行動障害は周りの環境が大きく関わる障害であり、診察室にいるときは日常生活と様子が異なることがあるからです。入院治療を行うことで、24時間の中で本人がどの程度激しい行動を起こすのか、情緒はどう変化するのか、病院側が把握できます。・環境変化によるこだわり行動などのリセット強度行動障害の特徴の一つであるこだわり行動を治すために、入院治療を行う場合があります。効果は人それぞれですが、外部や家庭の刺激をいったん減らすことで特別な治療を行わなくても改善する人もいます。入院期間が終わったらまた在宅や施設での生活に戻るため、他の支援機関などと連携を取りながら利用しましょう。・家族や施設スタッフのレスパイトレスパイトとは家族や支援者が一時的に休養をとるため、ケアを代替してもらうことを言います。また身の安全に関わる状態など周囲の人たちの負担が大きい時にも、緊急的に入院治療を行う場合もあります。退院の時期や退院後の在宅支援・施設での生活の調整を入院時から見据えて利用することが大切です。・行動療法環境による刺激のコントロールは入院環境の方が行いやすく、そのうえで退院後の生活を想定して、行動障害が出にくい活動やTEACCHなどのプログラムを導入します。強度行動障害の特徴である興奮やパニックなどの激しさを抑えたり、やわらげたりする目的で、薬物療法が行われることがあります。しかし薬物療法は本来の障害特性に有効なものではなく、あくまで強度行動障害の特徴である行動を少し抑えるためのものです。そのため、他の治療法と組み合わせて行います。ライフステージごとの強度行動障害に関係する支援出典 : 記事の前半でもご説明したように強度行動障害は中学生・高校生に多いですが、環境の変化によっては成人している方でも激しい行動が見られることもあります。強度行動障害が現れやすい年齢になる前にできる限り本人にとって適切な環境を整えること、また発生しやすい時期を見越して支援を組み立てていくことが大切です。この章ではライフステージごとの支援についてご紹介します。・幼児期児童発達支援における支援、幼稚園・保育所の支援、地域の療育事業を利用する方が多いです。障害受容への支援やそれに伴う情報提供・相談支援・親グループのカウンセリング等のペアレントトレーニングが行われます。またこの時期にはきょうだいが生まれるなど、本人よりも他の家族の要因により、支援が必要になる場合もあります。一時的に支援の補助をしてもらうために、「居宅介護事業」「移動支援事業」「短期入所事業」などを使うとよいでしょう。・学齢期強度行動障害のある人は特別支援学校に通うことが多いです。学校外の支援としては、「放課後デイサービス」「行動援護事業」「短期入所事業」が挙げられます。行動援護事業の判定が出ない場合には「居宅介護事業」または「移動支援事業」を使います。「行動援護事業」と「移動支援事業」の違いについては、以下の記事を参考にしてみてください。・成人期成人期の支援は、日中活動では訓練等給付として「就労継続支援事業B型」、介護給付の「生活介護事業」が、生活支援として「行動援護事業」「短期入所事業」が中心となります。地域生活を希望すれば施設入所支援でなく「共同生活介護(グループホーム)」を利用することもできます。まとめ出典 : 強度行動障害は知的障害や自閉症スペクトラムのある人たちに発生することが多く、障害の特性に対し環境が合わない時に起こります。「分からない」ことに対する不安や不快感があっても、「伝えられない」ため、人や場に対する嫌悪感や不信感を高めてしまうことが原因です。強度行動障害は、本人が困っているサインです。そのため、周りの人たちが特性や周囲の環境などをきちんと把握し、行動の原因を探っていくことが大切です。環境が変わるだけで、改善されるケースもあるからです。また、家庭での対処が難しい場合もありますので、家族で抱えこまず、それぞれに合った支援を見つけることも必要です。施設や病院など関わっているさまざまな人たちとこまめに連携をとり、本人と一緒になって強度行動障害と向き合っていきましょう。参考:強度行動障害リーフレット|厚生労働省参考:特定非営利活動法人全国地域生活支援ネットワーク/監修『行動障害のある人の「暮らし」を支える: 強度行動障害支援者養成研修[基礎研修・実践研修]テキスト』中央法規出版2015年
2017年09月25日避難行動要支援者って?災害時に避難しにくいのはどんな人?出典 : 地震や津波、水害などの災害が起きたとき、自力で避難が難しかったり、避難に際して特別な配慮が必要な場合があります。阪神淡路大震災や東日本大震災の時などにも、高齢者や障害のある方の中には自ら避難するのに何らかの困難を抱えた方も多くいました。たとえば以下のような人は一人では避難しにくいと考えられます。・視覚・聴覚障害があり、災害発生時に周りの状況の把握がむずかしい。災害情報が得にくい・高齢者・身体に障害がある人で、自力での避難が困難な人・知的障害や精神障害などがあり、地震や災害が起きた時に、どう行動したらよいかわからない障害のある人・重度心身障害者、人工呼吸器や温度調整が必要な人そのため、このような人を避難行動要支援者とし、名簿を作成してスムーズな支援ができるように平成25年6月、災害対策基本法が改正されました。またこれらの周知のため、今年(平成29年)パンフレットや事例集も作成されました。リーフレット「災害時に備えて今できること」|厚生労働省避難行動要支援者の避難行動支援に 関する事例集|内閣府災害対策基本法改正によりできた「避難行動要支援者名簿」の制度出典 : この法律で、市町村に避難行動要支援者名簿の作成が義務付けられました。簡単に言うと、上記のような一人では避難が困難な人が、災害時にサポートを受けられるように事前に登録しておくという制度です。自治体が特に支援が必要な人を把握するとともに、災害時にスムーズに支援ができるよう、消防機関や警察、民生委員などの避難支援に関係する人に情報が共有できるようにすることが定められました。名簿には個人情報が含まれるため、災害対策基本法で個人情報漏えい防止のための規定もあります。実際に名簿をつくり、運用するのは市町村です。具体的な支援や制度については、自治体によって異なる場合があるので、お住まいの市町村に問い合わせることをおすすめします。発達ナビのユーザーの皆さんの中には、療育手帳や精神障害者福祉手帳の取得時などに名簿への登録や、情報提供の同意などを求められる場合があるかもしれません。また、災害があったときに一人で避難することが難しそうだと感じている人もいるかもしれません。避難行動要支援者がどのような支援を受けられるのかを知り、必要に応じて名簿に登録することで、災害への備えの一つとしてはいかがでしょうか?災害対策基本法避難行動要支援者名簿の作成等に係る取組状況の調査結果どんな支援をしてくれる?出典 : ・避難のための情報伝達情報を得ることが難しい人のために、その人が情報を得やすい方法で災害情報を得られるようにサポートします。・避難支援災害時、避難行動を支援します。また、要支援者の特性に合わせた個別の避難計画の作成や防災訓練をする場合もあります。平常時も支援者による声かけや見守りにつなげておくことも含まれます。・安否確認名簿が災害時の安否確認に活用できます。・避難場所以降の避難行動要支援者への対応避難した後も、避難場所での支援者への引き継ぎがスムーズに行えることがあります。名簿への登録は?出典 : 災害対策基本法では、以下を避難行動要支援者と定め、市町村に把握と名簿の作成を義務付けています。当該市町村に居住する要配慮者のうち、 災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難する ことが困難な者であつて、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため 特に支援を要するもの具体的な対象者の範囲はお住まいの市町村によって異なります。以下に千葉市の場合をご紹介します。名簿に掲載される方65歳以上のひとり暮らしの方で、介護保険の要介護認定区分1・2の方、または要支援認定区分1・2に該当する方要介護認定区分3~5に該当する方次に該当する障害がある方視覚障害(1級又は2級)、聴覚障害(2級)、上肢機能障害(1級又は2級)、下肢機能障害(1級又は2級)、体幹機能障害(1級、2級又は3級)、乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害のうち上肢機能障害(1級又は2級)、乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害のうち移動機能障害(1級、2級又は3級)、呼吸器機能(1級)、小腸機能(1級)、精神障害(1級)、知的障害(AまたはⒶ)難病患者で身体障害者手帳1・2級の方及び小児慢性特定疾病等で療養負担過重患者の方制度の運用も自治体によって異なります。自分が名簿に登録されているか確認したいときや、定められた対象ではないが一人での避難が困難な場合などで、名簿への登録を希望するときはお住まいの自治体に問い合わせてください。制度の運用方法は市町村によって異なりますが、以下に大まかな流れをご紹介します。1. 市町村が支援が必要な人の情報を集め、避難行動要支援者名簿を作成します。避難行動要支援者名簿には、掲載者の氏名、生年月日、性別、住所、電話番号その他の連絡先、避難支援等を必要とする事由、その 他避難支援等の実施に必要な事項が掲載されます。参考:災害対策基本法49 条10 第 2 項2. 名簿情報を平時から支援者に提供していいか、確認がされ、問題なければ同意します。3. 同意した人の名簿情報が消防、警察、民生委員などの支援者に提供されます。4. 支援者が日常の声かけなどの見守りや避難訓練などの支援を行います。5. 災害時には市町村や支援者により避難行動に関する支援や安否確認などが行われます。個人情報が支援者に提供されることに不安を感じる人もいるかもしれません。災害対策基本法によって、避難行動要支援者名簿を提供した支援者には守秘義務が発生します。また各自治体で名簿情報の漏えいの防止のため必要な措置を講ずることも定められています。参考:避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針|内閣府名簿に登録がなくても避難行動に配慮が必要な人もいます出典 : 避難行動要支援者として名簿に登録していない人でも、災害時の避難に困難を抱える要配慮者の人がいます。たとえば発達障害のある人は、自閉症などの特性から、いつもと違うことに強い不安を感じたり、パニックになってしまうことがあります。学習障害がある場合、電光掲示板や掲示物などから情報を得るのが難しいかもしれません。障害が軽度で、名簿に登録していない人でも避難時に思わぬ困難が生じる可能性があることを覚えておきましょう。また外国の人は、日本語での緊急避難速報や避難誘導の声かけが理解できないかもしれません。このほかにも外見からは障害があることがわからない人もいます。もちろん妊娠している人や乳幼児、高齢者なども避難の際に配慮が必要です。全ての人が一人ひとり日ごろから、防災意識を持ち準備することが、地域に住むさまざまな人を災害から身を守ることにつながります。また災害時には、まず自分の身を守ることが第一ですが、周りに困っている人がいないかどうかにも目を配るように心がけたいですね。参考:要援護者の特性ごとの避難行動等の特徴|大阪市住吉区まとめ出典 : 避難行動要支援者というと、高齢者や身体に障害がある人をイメージすることが多いかもしれません。ですが、その他にも避難に際して支援が必要な人もいます。知的障害や精神障害のある方の中には非常時の状況判断が一人では難しい場合もあるでしょう。言語障害のある人は見た目からはわかりませんが、緊急事態を言葉で人に伝えることが難しい場合も考えられます。災害はいつ発生するかわかりません。まわりに様々な困難のある人がいること、そして災害が起きたときのことを想定して事前に対策をすることが、もしもの時の大きな備えとなります。避難行動要支援者名簿への登録はその一つです。行政や避難支援者に受けられる支援にはさまざまなものがあり、避難時のサポートだけでなく、もし避難生活がはじまっても引き継がれます。情報の共有をすることで、日ごろから地域の支援者ともつながりが持てます。また、名簿への登録がない人でも、避難時に支援を必要としている人がいるかもしれないことを心に留めておきましょう。
2017年09月01日特別支援学校で突然、投げかけられた質問8歳になる自閉症の長男は、小中高一貫の特別支援学校に通っています。その日は参観日。私は長男の教室を探しながら校内の渡り廊下を歩いていました。すると一人の少年が話しかけてきたのです。Upload By シュウママ振り向くと中学生くらいの少年が立っていました。彼は私の顔を見てにこりと笑い、好奇心に溢れた目で私の顔を見ると、大声で質問してきました。Upload By シュウママどう答えようか、戸惑っていたら・・突然のことで私もびっくりし《2010年、7月30日…えーっとどこにいたかな?》考えてみますが、当然覚えているわけがありません。どう答えようか戸惑っていると少年の大きな声が聞こえたのか、遠くからお母さんらしき女性が走ってきました。そして女性は少年に向きあうと諭すように言いました。Upload By シュウママそして私に対して「ごめんなさいね」と謝ってくださいました。「大丈夫ですよ。気になさらないで下さい」私もそう返したのですが、どうして少年がそんな質問を投げかけてきたのか気になっていました。すると私の表情を読んだのか、その女性は少年が持つある特性について話してくれたのです。カレンダー計算ができる少年「知らない人にも昔のことを聞いてまわるから困っているんだけど・・。この子はね、今まで起きた出来事、それから年号、日付、曜日にいたるまで全部記憶してるんです」女性はそう言うとため息をつきました。Upload By シュウママ私は驚きました。「凄いですね!私なんて昨日の献立すら忘れてしまうのに」半ば冗談めかして言うと、女性は顔を曇らせ「記憶と数字が結び付くのかしらね・・。とにかく数字の書いてあるものが大好きで、不思議なんだけど未来のカレンダーも頭に入ってるの」と話してくれました。女性が言うには、少年はサヴァン症候群だろうと医師から診断を受けているそうです。映画や本で聞いたことがあった「サヴァン症候群」=天才のイメージサヴァン症候群について、私は映画や本で見聞きしたことがありました。写真を少し見ただけで細部にいたるまで描きおこしたり、一度聞いただけの音楽を正確に再現したりといった、特定の分野にずば抜けた才能を発揮する天才ーそうイメージしていました。Upload By シュウママ長男にもそんな才能があればいいのにな…そんなことを思いながら「羨ましい能力ですね」と言いました。Upload By シュウママ女性は首を振りながら「《2006年3月、お母さんが僕を大声で叱った。とても恐かった》とかね、小さな頃のことでも全部覚えてて、今さら泣き出すのよ」とため息をつきました。「初めて家族で泊まったホテルのどこに何があった、窓の下には自動販売機があった。正確に覚えているの。こういう楽しい時のことだけ、記憶してくれればいいのに」そう女性は言うと、淋しそうに笑いました。この言葉がとても切なく響きました。母親は子どもに対して、いつも菩薩のような笑顔でいるわけにはいきません。時には鬼のような形相で叱りつけなくてはならない場面も出てきます。でもたいていの子どもは、その瞬間母親を恐いと思っても記憶は次第に薄れていき、新しい記憶が上書きされていくのでしょう。けれど、母親の怒った顔がいつまでも脳裏に焼きついて離れないとしたら――私は同じ母として、安易に羨ましいと言ったことに対して、何か申し訳ないような気持ちになってしまいました。サヴァン症候群だからこその生きづらさこの時の出来事が強烈に印象に残ったこともあり、私は「サヴァン症候群」について調べてみました。やはりあの女性が言っていた通り、サヴァン症候群であるがゆえの生きづらさが明確に記されており、改めて当事者がいかに大変であるかを知ることができました。その記事の中で印象的だった一文があります。私自身が漠然と思い描いていた、サヴァン症候群に関する認識ががらりと変わりました。詳しくはそちらを読んでいただければと思いますが、その記事の中の一文を引用させていただきますね。世間で天才と呼ばれる人であっても、一人の人間であるという、一見あたりまえのことを忘れないようにしたり、サヴァン症候群は多様性に富んでいることを理解したりすることが大切なのかもしれません。ずば抜けた才能があってもなくても、君が楽しく生きてくれたらそれでいいんだよずば抜けた能力を持っていてほしい、そしてその能力が仕事として活かされるならこの子は幸せになれる――発達障害があればなおさら、親はわが子の才能探しをしたくなるかもしれません。確かに驚異的な記憶力を持つことで趣味や仕事に結び付くことはあるかもしれない。けれど反面、楽しいことだけでなく悲しい記憶まで薄れずに保持しているということは、とても辛いことかもしれません。時の経過とともに悲しい出来事を忘れていけるからこそ、人は強く生きていけるのだから。傑出した能力や才能があるがゆえに、悩み苦しまなければいけないという側面が一方である。そのことを、今回の出来事で知ることができました。ずば抜けた才能はなくていいから、どうか長男が生きやすい人生を送れますように。Upload By シュウママ「お母さんの怒った顔、お願いだから全部忘れてね――」あの少年とお母さんを思い浮かべながら、そんなことをふっと思いました。
2017年08月31日発達支援施設とは?発達が気になるお子さんや、障害のあるお子さんを、ご家庭の中だけでサポートすることは容易なことではありません。そういった子どもたちのためにあるのが「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」などの発達支援施設です!児童福祉法では、障害児通所支援と呼ばれ、全国各地にある施設に直接通うことで、必要なサポートを受けることができます。原則的に、小学生未満の未就学の子どもが通うことができるのが児童発達支援、小学生~高校生の就学児童が通うことができるのが放課後デイサービスです。児童発達支援では、小学校就学前の子どもを主に対象とし、支援を受けることができる施設です。日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場を提供したりといった、多様な支援を目的としています。サービス・利用方法・費用・手続きの流れについては、以下の記事に詳しくまとめられています。放課後等デイサービスとは、障害のある就学児童(小学生・中学生・高校生)が学校の授業終了後や長期休暇中に通うことのできる施設です。放課後等デイサービスでは、生活力向上のためのさまざまなプログラムが行われています。トランポリン、楽器の演奏、パソコン教室、社会科見学、造形など習い事に近い活動を行っている施設もあれば、専門的な療育を受けることができる施設もあります。サービス・利用方法・費用・手続きの流れについては、以下の記事に詳しくまとめられています。どんな支援が受けられるの?児童発達支援や放課後等デイサービスにはさまざまなタイプがありますが、一部の施設では療育的なアプローチによる支援を受けられることもあります。ソーシャルスキルトレーニングをはじめ、さまざまな独自の療育プログラムが組まれている場合もあり、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など専門資格を保有しているスタッフがいる施設もあります。また、障害のある子どもにとって、児童発達支援や放課後等デイサービスは、家庭・学校(園)につぐ3つ目の居場所となります。子どもにあった施設を選ぶことができれば、親子ともども充実した時間を過ごすことができるはずです。発達支援施設を選ぶときのポイントは?お住まいの地域にどんな施設があるかは、保健センター、子育て支援センター、児童発達支援事業所、発達障害者支援センターや、市町村の窓口で確認することができることもあります。これらの窓口で、子どもの特性にあった施設について相談してみることも有効です。公共の相談窓口以外に、インターネット上で施設を探すこともできます。LITALICO発達ナビの「施設情報」では、全国の児童発達支援施設や放課後等デイサービスを、合わせて約15,000施設掲載しています。それぞれの施設の受け入れ状況や、サポートの内容も詳しくまとめられています。また、各施設のスタッフが自分たちで更新している写真付きのブログや、実際の利用者さんからの口コミ情報も合わせて見ることができます。さらに、発達ナビ上から24時間いつでも、空き状況の確認や教室見学などの問い合わせをすることが可能です。利用にかかる費用は?児童発達支援と放課後等デイサービスは障害児給付費の対象となるサービスです。通所受給者証を取得することで国と自治体から利用料の9割が給付され、1割の自己負担でサービスを受けることができます。生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯: 0円市町村民税課税世帯(年間所得がおおむね890万円以下の世帯): 4,600円上記以外(年間所得がおおむね890万円以上の世帯): 37,200円このほかにおやつ代などの食費や教材費などの実費が必要になる場合もあります。また、自治体により独自の助成制度があります。児童発達支援の利用にかかる費用について、詳しくはこちらのコラムの「児童発達支援施設の利用方法」の章にまとめられています。生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯: 0円市町村民税課税世帯(前年度の年間所得がおおむね890万円以下の世帯): 4,600円上記以外(前年度の年間所得がおおむね890万円以上の世帯): 37,200円原則一割負担ですが、前年度の年間所得によっては負担額が0円であったり、1割以上である場合もあります。施設によってはおやつ代や制作物の材料代などがかかるところがあります。これらに加え、自治体により独自の助成制度がある場合もあるので、行政の窓口に問い合わせてみましょう。放課後等デイサービスの利用にかかる費用について、詳しくはこちらのコラムの「放課後等デイサービスの利用方法」の章にまとめられています。施設の利用方法は?発達支援施設に通うためには「通所受給者証」が必要になります。通所受給者証はお住まいの市区町村の福祉担当窓口・障害児相談支援事業所などに申請を行うとで取得することができます。この通所受給者証があることで、自己負担1割でサービスを受けることができるのです。障害者手帳がなくても、通所受給者証があれば、「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」を利用できます。詳しい取得法や、申請の方法はこちらを参考にしてください。その他にも受けられるサービスはあるの?また、児童発達支援や放課後等デイサービス以外にも、受けられる支援があります。受けられる支援の詳細や申請方法はこちらにまとめられています。療育手帳・障害者手帳とは?障害者手帳とは、障害のある人が取得することができる手帳です。障害者手帳を取得することで、障害の種類や程度に応じてさまざまな福祉サービスを受けることができます。身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳などの種類があります。まとめサービス・支援は多岐にわたるため、すべてを把握できず戸惑うこともあるかと思います。そんなときは、早めに相談することで、一歩ずつ疑問を解決してゆきましょう。保健センター、子育て支援センター、児童発達支援事業所、発達障害者支援センターや、市町村の窓口に相談することで、次のステップが見えてくるかもしれません。また、児童発達支援事業所や放課後等デイサービスなどのスタッフも相談に乗ってくれるはずです。一人で抱え込まず、相談できる相手を見つけ、適切な支援につなげていくことが大切です。
2017年08月29日障害者総合支援法の自立支援給付とは?出典 : 障害者総合支援法が定めるサービスには、大きく「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2つの種類があります。自立支援給付は、利用するサービス費用の一部を行政が障害のある方へ個別に給付するものです。具体的には、障害に関する医療や福祉サービス、福祉用具(補装具)などの費用が給付されます。自立支援給付の基本的な運用ルールは、国(厚生労働省)が定めます。これに対し、地域生活支援事業は、国が一律に運用ルールを定めるのではなく、障害のある方がお住まいの各地域で運用ルールを定めて実施した方が実情に応じた対応を期待できる事業や、一般的な相談対応のように個別の給付には当たらない事業をまとめたものです。例えば1人では外出が困難な方への付き添いを提供する「移動支援」や、手話通訳者や要約筆談ができる人を派遣・設置する「コミュニケーション支援」といった事業が挙げられます。詳しい法律の概要やサービスの内容などは次のリンクを参考にしてください。この記事では、自立支援給付の利用申請方法・利用負担額を詳しく解説していきます。障害者総合支援法の給付サービスの申請方法出典 : 自立支援給付の利用手続きはサービスごとに申請方法が異なります。それぞれの申請方法を詳しくご紹介します。障害福祉サービスには「介護給付」と「訓練等給付」の2種類があり、それぞれ申請の流れが多少異なります。介護給付を希望する場合は障害のある方の生活環境を踏まえ、どのような支援をどの程度必要とするかといった度合いを測る「障害支援区分(以下、支援区分)認定」を受けることが必要になります。訓練等給付を希望する場合には原則として支援区分の認定は不要ですが、共同生活援助(グループホーム)を利用する場合には、支援区分認定が必要となります。支援区分は、7段階の区分に分かれ、もっとも支援の必要性が高い区分が「6」、以下「5・4・3・2・1」と続き、もっとも支援の必要性が低い場合は「非該当」となります。支援区分は7段階の区分に分かれ、もっとも支援の必要性が高い区分が「6」、以下「5・4・3・2・1」と続き、もっとも支援の必要性が低い場合は「非該当」となります。この支援の必要性の区分によって、支給されるサービスの時間に違いが出てきます。一部のサービスは支援区分が低いと利用できないこともあります。以下が申請からサービス利用までの流れです。1. 市区町村の障害福祉担当窓口へ申請申請の際には、状況に応じて障害者基礎年金1級の受給の有無や介護保険申請の状況などを聞かれる場合があります。2. 障害者支援区分認定調査市区町村の認定調査員による面接が行われ、全国共通の質問票から心身の状況に関する80項目と状況の調査が行われます。詳しくは次のリンクをご覧ください。参考:障害者総合支援法における「障害支援区分」の概要|厚生労働省3.一次判定認定調査の結果に基づき、コンピューター判定が行われます。4.二次判定一次判定の結果と状況調査、医師意見書などを踏まえ、市区町村が主催する、支援区分や特別な支給決定(必要とするサービス量が基準よりも多い支給決定など)を審議する「審査会」で二次判定が行われます。医師意見書とは、医師が申請した方の心身の状態、特別な医療などに意見を付すものです(市区町村が依頼します)。5.障害区分認定二次判定の結果に基づき、非該当、区分1~6の全7段階で支援区分認定が行われます。各サービスの区分ごとのサービス量は上記のリンクを参考にしてみてください。6.サービス利用意向の聴取・サービス等利用計画案の提出支援区分の認定と並行して、市区町村から福祉サービスの利用等に関する計画(サービス等利用計画、または障害児支援利用計画と呼びます)の案を提出するように求められます。サービス等利用計画案、障害児支援利用計画案は市区両村から指定された特定相談支援事業者、障害児相談支援事業所が作成しますが、申請者自身による作成も可能です(申請した方自身が作成する計画をセルフプランと呼びます)。7.支給決定支援区分や本人の状況、家族・家庭の状況、現在の困りごとや将来に向けた希望、福祉サービスの利用意向、サービス等利用計画案などを踏まえてサービスが支給決定され、受給者証が申請者に通知されます。8.サービス担当者会議申請した方が利用する全サービスの担当者(サービス管理責任者)が出席し、利用する方に適したサービス提供のあり方や、事業所ごとに作成する「個別支援計画」の方向性などについて話し合われます。9.支給決定時のサービス等利用計画の作成市区町村の支給決定やサービス担当者会議での案協議をもとに、最終的なサービス等利用計画を作成します。(セルフプランの場合には、8・9が省略されることがあります)10.サービスの利用開始申請した方はサービスを提供する事業所と利用契約を結び、サービスの利用を開始します。サービスの量や内容については、サービス利用開始後であっても必要に応じて見直すことができます。Upload By 発達障害のキホン自立支援医療には、育成医療・更生医療・精神通院医療があります。育成医療は身体障害のある子ども向け、更生医療は身体障害のある方向け、精神通院医療は精神疾患があって定期的に通院している方向けに、医療の給付を行うものです。利用手続きに関しては市区町村ごとに異なるため、最寄りの市区町村または都道府県窓口に問い合わせてください。申請の際には下記のような事項や持ち物が必要になります。育成医療: 申請書、所得が確認できる書類、医師の意見書など更生医療: 身体障害者手帳精神通院医療: 指定医療機関の中から通院先を決めておくこと車いすや義足、補聴器や白杖などの補装具を製作・修理する際に要する費用の給付を「補装具費」と呼びます。補装具費の給付を受けるためには、障害のある子どもの保護者または障害のある本人が、お住まいの市区町村に申請します。市区町村は医師の意見書による身体障害者更生相談所の判定・意見を依頼し、補装具の製作や修理が必要かどうか決定し、給付が認められると補装具費支給決定通知書、補装具費支給券が発行されます。その後、補装具業者と製作・修理の契約を結び、完成品を受け取るとともに利用者負担(原則1割負担)を支払うことになります。障害者総合支援法の自立支援給付、利用者負担額はいくら?出典 : 障害者総合支援法の障害福祉サービスを利用した際の利用者負担は、原則として「1割」です。ただし、世帯ごとの前年度所得に応じて負担額の月額上限が定められているため、その金額以上の自己負担は生じないことになっています。利用月額が0円に免除される場合もあります。特に、生活保護を受けている世帯や住民税が非課税の世帯については、利用者負担はありません。世帯の範囲には、障害がある大人の場合は利用する本人と配偶者が含まれ、本人と配偶者の前年度所得を参考に負担額を決定します。親の所得は本人の前年度所得には換算されないことになっています。障害がある子どもの場合は、保護者の属する住民基本台帳での世帯が範囲となります。月額上限負担額の目安として、下記を参考にしてみてください。■障害者の利用者負担・生活保護受給世帯・・・0円・市区町村民税非課税世帯・・・0円・前年度所得約300万円以上~約600万円以下の方・・・9,300円・前年度所得約600万円以上・・・37,200円以上が障害のある方に提供している障害福祉サービスの利用者負担額になります。ただし、サービス事業所やグループホームなどで発生する食費、光熱費、交通費などの生活費などは別途に自己負担となります。出典:障害者の利用者負担|厚生労働省出典:障害福祉サービスの利用について|厚生労働省自立支援医療の場合には、下記の条件に当てはまる方であれば、0円~20000円までの月額負担上限となります。下記の条件に当てはまらない場合は原則1割負担となっています。また、入院時の食事療養費又は生活療養費(いずれも標準負担額相当)については原則自己負担になります。・生活保護世帯・・・0円・市町村民税非課税世帯で本人収入が80万円未満・・・2500円・市町村民税非課税世帯で本人収入が80万円以上・・・5000円・市町村民税を33000円以上納めている・・・育成医療の経過措置5000円・市町村民税を33000円未満から23.5万円以下納めている・・・育成医療の経過措置10000円・市町村民税を23.5万円未満以上納めている高額治療継続者・・・20000円自立支援医療における利用者負担の基本的な枠組み補装具費の利用者負担額は原則1割です。ただし世帯の所得に応じて負担上限額が設定されています。・生活保護世帯・市町村民税非課税世帯・・・0円・それ以外の世帯・・・37,200円また、補装具費については障害者本人または世帯が一定所得以上(市町村民税所得割の最多納税者の納税額が46万以上)の場合、給付対象外となります。また、例えば補装具を購入すると世帯の所得状況によっては生活保護の対象になってしまう場合があります。それでは本末転倒ですので、その場合は利用者が負担する費用は生活保護の対象とならない範囲まで減免することになっています。出典:補装具の利用者負担|厚生労働省障害者総合支援法が定める、医療費や食費の免除・減免制度出典 : 障害者総合支援法では条件を満たした方に向けて、生活費や医療費など別途利用料金を超えてかかった費用を免除する制度があります。■障害のある人向けの費用免除と上限・療養介護を利用する場合は、医療費と食費の軽減措置があります・入所サービス、通所サービスを利用する場合、食費・光熱費実費負担に対して減免・軽減する制度があります・グループホームの利用者向けに家賃助成する制度があります■世帯での合算額が基準額を超える場合の高額障害福祉サービス給付費同一世帯に障害福祉サービスを利用する方が複数いる場合や障害児が障害者総合支援法と児童福祉法のサービスを利用している場合などに利用者負担の合計額が一定の額を超えるとき、高額障害福祉サービス給付費が支給され利用者負担額が軽減されます。費用免除や上限、高額障害福祉サービス費についての詳しい内容は次の資料を参考にしてみてください。障害福祉サービスの利用について|厚生労働省まとめ出典 : 障害者総合支援法の給付支援における申請方法は、サービスごとに異なります。また障害福祉サービスの中でも介護給付、訓練等給付によって異なるため、複雑に捉えがちです。とはいえ、ほとんどのサービスは市区町村の障害福祉担当窓口で所定の書類への記入や提出を行えば、その後はある程度まで役所がリードしてくれますから、大まかな仕組みを把握していれば問題ないでしょう。また利用者負担額についても、給付を受ける人や世帯の収入に応じて市区町村が設定しますので、細かいルールまで把握する必要はありません。実際の運用ルールは複雑な総合支援ですが、手続きなどで迷ったらお住まいの市区町村の障害福祉担当課や市区町村から委託されている基幹相談支援センターや委託相談支援事業所へ相談してみましょう。
2017年08月04日障害者総合支援法とは?出典 : 障害者総合支援法とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」の通称で、障害がある方もない方も住み慣れた地域で生活するために、日常生活や社会生活の総合的な支援を目的とした法律です。障害がある子どもから大人を対象に、必要と認められた費用の給付や貸与などの支援を受けることができます。制度の実施主体は市区町村、都道府県などの行政機関となります。参考:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律障害者総合支援法が定めるサービスには、大きく「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2つの種類があります。自立支援給付は、利用するサービス費用の一部を行政が障害のある方へ個別に給付するものです。具体的には障害に関する医療や福祉サービス、福祉用具(補装具)などの費用が給付されます。自立支援給付の基本的な運用ルールは、国(厚生労働省)が定めます。これに対し、地域生活支援事業は、国が一律に運用ルールを定めるのではなく、障害のある方がお住まいの各地域で運用ルールを定めて実施した方が実情に応じた対応を期待できる事業や、一般的な相談対応のように個別の給付には当たらない事業のことをまとめたものです。例えば1人では外出が困難な方への付き添いを提供する「移動支援」や、手話通訳者や要約筆談ができる人を派遣・設置する「コミュニケーション支援」といった事業が挙げられます。また、障害のある方の日中活動を支援する「地域活動支援センター」や、生活自立度が高い人へ住まいの場を提供する「福祉ホーム」などの運営も、地域生活支援事業の枠組みに含まれています。障害のある方の生活スタイルは地域によってさまざまですので、地域生活支援事業のサービス内容も都道府県・市区町村によって異なります。地域生活支援事業には、相談支援も含まれます。お住まいの地域で提供されているサービスにどんなものがあるのか?給付支援を受けたいけれど条件は満たしているのか?などといった福祉サービスの利用に関することから、一般的な生活上の相談まで、さまざまな相談に応えます。障害福祉サービスの 利用について|全国社会福祉協議会障害者総合支援法に基づくサービスの利用対象は以下のように定められています。障害者手帳がなくても、医師の診断書により障害や定められた疾患のあることが確認されれば、利用対象となるケースもあります。・身体障害者・・・身体に障害がある18歳以上の人で、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けている人・知的障害者・・・障害者福祉法にいう知的障害者のうち18歳以上の人・精神障害者・・・統合失調症、精神作用物質による急性中毒、またはその依存症、知的障害、精神病室などの精神疾患を持つ人(知的障害は除く)・発達障害者・・・発達障害があるため、日常生活や社会生活に制限がある18歳以上の人・難病患者・・・難病等があり、症状の変化などにより身体障害者手帳を取得できないが、一定の障害がある18歳以上の人・障害児・・・身体障害、知的障害、発達障害を含んだ精神障害がある児童、または難病等があり、一定の障害がある児童参考文献:遠山真世,二本柳覚,鈴木裕介/著『これならわかるすっきり図解障害者総合支援法』2014年 日経印刷/刊障害者総合支援法の自立支援給付で受けられる3つの給付サービス出典 : 自立支援給付には大きく障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)、自立支援医療、補装具という3つの給付があります。障害福祉サービスはさらに「介護給付」と「訓練等給付」の2類型へ分類されます。介護給付とは、障害があることで必要となる介護・介助サービス費用の一部を給付するものです。訓練等給付とは、就労に向けた訓練や福祉的な就労、安定した就労を支援するサービス、あるいはグループホームなど費用の一部を給付するものです。■介護給付・居宅介護(ホームヘルパー):食事や入浴、トイレなどの介助を提供します。・重度訪問介護:重度の肢体不自由や重度の障害のために常時の介護や見守り、外出支援などを必要とする方に、長時間の総合的な支援を提供します。・同行援護:視覚障害により自力での移動が難しい方に対して外出時の支援を提供します。・行動援護:行動障害があることで外出時などの支援が必要な方に対して、危険を避ける、先の見通しを立てる、コミュニケーションを仲立ちするなどの支援を提供します。・重度障害者等包括支援:最重度の障害(原則として障害支援区分が最重度の「6」であること)があり、常時の介護を必要としている方に対して、居宅介護や短期入所、生活介護など複数の介護サービスを組み合わせて提供します。・短期入所(ショートステイ): 障害のある方を介護している家族などの病気や所要、一時的な休養などのため、短期間、施設に入所するサービスを提供します。・療養介護:医療的ケアと介護を常に必要とする方に対して、医療機関などで医療サービスや介護、介助などをトータルに提供します。・生活介護: 日常的な介護や見守り、生活支援などを必要としている方(原則として障害支援区分「3」以上であること)に対して、日中の介護、介助や見守り支援を行うほか、創作的活動や生産活動、地域との交流活動などを提供します。・施設入所支援:重度の障害のある方(原則として障害区分「4」以上であること)に対して、施設内での夜間の介護、介助や見守り支援などを提供します。■訓練等給付・自立訓練: 障害のある方が地域で自立した生活を送ることができるよう、身体機能と生活能力の向上を目指した訓練を提供します。自立訓練には機能訓練と生活訓練の2種類があります。・就労移行支援: 一般企業での就労や、自ら企業することを希望する方に対して、就労や企業に必要な知識・能力の向上を図る訓練を提供しています。・就労継続支援: 一般企業などで働くことが難しい方に対して、福祉的な支援を受けながら働く場所を提供し、就労に向けた知識・能力の向上を目指す支援を提供します。就労継続支援には、雇用契約を結び最低賃金の支払いを原則とする「A型」と、雇用契約は結ばずに軽作業などを中心とする「B型」の2種類があります。・共同生活援助(グループホーム):標準的には5名程度(最大でも10名)の共同生活を行う住居において、相談や日常生活上の援助、食事や入浴、トイレなどの介護サービスを提供します。グループホームから一般住宅の生活に移行を目指す人を対象とした「サテライト型」もあります。自立支援医療とは、心身の障害の状態に対応した医療に対して、医療費の自己負担額を軽減する医療費の公費負担制度です。障害者自立支援法の成立以前はそれぞれ身体障害者福祉法に基づく「更生医療」、児童福祉法に基づく「育成医療」、精神保健福祉法に基づく「精神通院医療費公費負担制度(32条)」と、各個別の法律で規定されていました。これらを一元化した新しい制度として自立支援医療制度が創設されました。よって根拠となる法律はそれぞれの法律におきながらも、障害者総合支援法のもとで給付が行われるようになりました。給付には市区町村等で自立支援医療費支給の認定(支給認定)を受ける必要があります。・育成医療:身体障害のある子どもを対象に、障害を改善、軽減することで生活の能力を得ることが期待される治療に対して医療費の自己負担を軽減するものです。・更生医療:身体障害者を対象に、障害を改善、軽減することで生活の改善が期待される治療に対して医療費の自己負担を軽減するものです。・精神通院医療:精神疾患(てんかんを含む)の人を対象に、精神科の通院医療にかかる医療費の自己負担を軽減するものです。日常生活を円滑に送るために、身体の欠損や障害を負った身体機能を補完・代替する車いすや装具、義肢や補聴器、白杖などの用具に対して、補装具費(原則として、購入・修理費用の1割)を支給するものです。障害者総合支援法の地域生活支援事業は地域の実情に応じた支援を提供出典 : 地域生活支援事業は都道府県や市区町村が地域の実情に応じてさまざまなサービスや事業を実施するものです。住民に身近な市区町村で実施する地域生活支援事業には、外出時の付き添いを行う「移動支援」や、福祉用具を給付、貸与する「日常生活用具」、手話通訳や要約筆記を派遣する「意思疎通支援」、判断力が十分ではない人が成年後見人制度を利用しやすくするための「成年後見人支援事業」などがあります。地域生活支援事業には市区町村が主体の事業と都道府県が主体の事業があり、都道府県は人材育成や都道府県内の広域な事業を担うことになっています。Upload By 発達障害のキホン■市区町村事業・障害に対する理解促進・啓発・障害のある方や家族が自発的に行う活動の支援・相談支援事業・補助を受けなければ成年後見制度の利用が困難である方への費用助成・手話通訳者、要約筆談者などの派遣・設置・日常生活具の給付または貸付・手話奉仕員養成研修・移動支援事業・地域活動支援センターの設置・運営・福祉ホームの設置・運営・その他の日常生活又は社会生活支援など■都道府県事業発達障害や重症心身障害、高次脳機能障害など、支援に際して高い専門性や広域性が必要とされる障害について、相談に応じ、必要な情報提供を行っています。また手話通訳士や要約筆記者などの意思疎通ができる人材の育成を行っています。障害者総合支援法の相談支援事業は、困った時の強い味方出典 : 障害者総合支援法の下では、さまざまなサービスを組み合わせて支援プランをつくることができます。しかし、実際に利用するとなると、どのようなサービスがあって、自分はどれを受けられるのか、分からない点や不安な点が出てくると思います。その場合は、市区町村の障害福祉担当窓口や市区町村から委託された基幹相談支援センター、市区町村から指定を受けた特定相談支援事業所で相談支援を受けることができます。■基本相談支援障害がある方の福祉に関するさまざまな問題について、障害のある方や家族からの相談に応じ、必要な情報の提供、障害福祉サービスの利用のアドバイスなどを行うほか、成年後見人制度の利用など権利擁護のために必要な援助も行います。窓口は市区町村や市区町村から委託された基幹相談支援センター、市区町村から指定を受けた特定相談支援事業所になります。■計画相談支援・サービス利用支援障害福祉サービスなど申請を行う際に、障害のある方や家族から生活上の困りごとや将来の希望などをうかがい、サービス等利用計画の作成を行います。また福祉サービスを利用する際には、サービス事業者などと連絡調整を行います。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された指定特定相談支援事業者になります。・継続サービス利用支援支給決定されたサービスの利用状況の検証や生活上の状況確認(モニタリング)を行うとともに、サービス事業者などとの連絡調整を行い、必要に応じてサービス等利用計画の見直しをします。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された特定相談支援事業者になります。■地域相談支援・地域移行支援障害者支援施設等に入所している障害がある方や精神科病院に入院している精神障害のある方(原則として1年以上入院している方で、市区町村が必要と認める方)を対象に、地域生活へ移行するための支援計画の作成、生活環境が変わることへの不安の解消、外出への同行支援、住居確保、関係機関との調整などを行います。相談窓口は都道府県から指定された一般相談支援事業者になります。・地域定着支援居宅において単身で生活している障害のある方など、地域における安定した暮らしの実現に支援を必要とする方を対象に、常時の連絡体制の確保と、緊急時の対応などの支援を行います。相談窓口は都道府県から指定された一般相談支援事業者になります。■障害児相談支援障害児相談支援は児童福祉法を根拠に障害者総合支援法で実施しているサービスです。・障害児支援利用援助障害のある子どもが利用する障害児通所支援の申請を行う際に、障害児支援利用計画の作成を行います。また福祉サービスを利用する際には、サービス事業者などと連絡調整を行います。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された障害児相談支援事業者になります。・継続障害児支援利用援助支援決定されたサービスの利用状況の検証や生活上の状況確認(モニタリング)を行い、サービス事業者などとの連絡調整などを行い、必要に応じて障害児支援利用計画の見直しをします。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された障害児相談支援事業者になります。以上のように障害者総合支援法では、さまざまな相談に応えることができるよう体制を整えています。しかし、指定一般相談支援事業者、指定特定相談支援事業者、指定障害児相談支援事業者と言われても、どこに行って相談すれば良いのか、少々分かりにくいかもしれません。お住まいの市区町村のホームページなどで情報を得たり、または市区町村の障害福祉担当窓口や発達障害者支援センターなどへ問い合わせたりするとよいでしょう。障害がある子ども向けサービスは、児童福祉法で提供されます出典 : 障害のある子ども向けの各種福祉サービスは、児童福祉法に基いて提供されています。これは、平成24年の児童福祉法改正にあわせ、障害があっても「子ども」である以上は児童福祉の枠組みで支援すべきである、という理念を取り入れ、障害児だけが対象の福祉サービスを児童福祉法へ一元化したことによるものです。そのため、障害のある子どもについては、児童期に限定した福祉サービスは児童福祉法、児童も成人も対象となる福祉サービスは総合支援法が適用法令となります。もちろん、利用申請をして支援決定を受ければ、同時に両方のサービスを受けることができます。児童福祉法は子どもの支援に関する法律です。この法律における障害児福祉サービスの対象は障害のある18歳未満の子どもと定義されており、サービスは障害児通所支援と障害児入所支援の2つに分けることができます。支給決定の主体は、障害児通所支援が市区町村、障害児入所支援が都道府県となります。また、児童福祉法における「障害児」の規定には特に障害者手帳の所持が条件となっていないため、サービスの利用に当たり、手帳の有無は問われません。ただし、医師の診断書により障害があることを確認するケースはあります。■障害児通所支援障害児通所支援とは施設や事業所に通所して、日常生活や集団生活を送るために必要な能力を身につける支援を提供するサービスです。児童発達支援、医療型児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援の4種類があります。Upload By 発達障害のキホン詳しくは以下の記事、「障害児通所支援(児童発達支援・放課後等デイサービス)利用手順・施設選びのポイント・申し込み方法まとめ」を参考にしてみてください。■障害児入所支援障害児入所支援とは、療育などの必要性が認められた障害のある子どもを施設に入所させ、自立した生活を送ることができるよう支援するサービスです。障害のある子どもが入所できる施設は全国的にも限られているため、障害児入所支援については都道府県や大規模な政令指定都市などが所管する児童相談所が支給決定しています。障害児入所施設は医療機関を併設しているかどうかによって福祉型障害児入所施設と医療型障害児入所施設の2種類に分類されます。Upload By 発達障害のキホン障害児通所・入所支援を利用するには、通所受給者証または入所受給者証の交付を受ける必要があります。通所受給者証はお住まいの市区町村の福祉担当窓口・障害児相談支援事業所などに申請を行い、サービスの利用が認められ、支給決定を受けると取得できます。入所受給者証は各都道府県や政令指定都市などの児童相談所に申請し、サービスの利用が認められ、支給決定を受けると取得できます。それぞれ、受給者証が交付されたら、指定障害児通所事業所・入所施設などとサービスの利用契約を結ぶことができます。自治体ごとに申請方法が異なりますので、お住まいの地域に確認しましょう。詳しくは以下の記事、「【障害児通所・入所給付費】受給者証の取得方法、体験談まとめ」を参考にしてみてください。まとめ出典 : 障害者総合支援法では一人ひとりの障害特性や生活環境などを考慮しながら、本人に合ったサービスを提供しています。また平成30年に施行される法改正によって、よりきめ細やかなサービスの提供を図るため、障害福祉サービスを取り巻くさまざまな関係者との連携やサービスの質の向上、サービス内容の情報開示などの努力がなされます。以前と比べれば自分に合ったさまざまな支援を受けられるようになり、サービスが充実していけば家族の負担も少しずつ減ってくるでしょう。障害福祉サービスを取り巻く環境は着実に良い方向へと変化しているのではないでしょうか。また、障害のある子どもに関しては、障害者総合支援法だけでなく児童福祉法に基づくサービスなども並行して利用できます。さまざまな支援サービスを組み合わせるなど工夫し、上手に使うことで障害がある方とその家族の地域生活が充実していくことを期待したいところです。
2017年08月04日障害者総合支援法とは出典 : 障害者総合支援法とは、障害のある方もない方も住み慣れた地域で生活するために、日常生活や社会生活の総合的な支援を目的とした法律です。正式名称は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」ですが、略して「障害者総合支援法」と呼ばれています。この法律に基づき、障害のある子どもから大人を対象に、必要と認められた福祉サービスや福祉用具の給付や支援を受けることができます。実施主体は主に市区町村、都道府県などの地方公共団体です。障害者総合支援法の概要|厚生労働省障害者総合支援法ができたわけ出典 : 障害者総合支援法が施行されるまでには、障害のある人が利用する福祉サービスの利用方法や負担額の決定方法を改正・改善してきた歴史があります。2003年3月まで、障害のある人が利用する福祉サービスの利用内容や利用できる量はすべて行政(都道府県や市区町村)が決定していました。これを措置制度といいます。しかし障害のある人の暮らしぶりを何から何まで行政が決定する仕組みには批判も多くありました。2000年には、高齢者が利用する福祉サービスについては原則として措置制度をやめて「介護保険制度」へ移行したことも受けて、支援費制度が導入されました。これは市区町村から福祉サービスの支給決定を受けた障害のある人が、サービスを提供する事業所を選択し、事業所との契約によって福祉サービスを利用する仕組み(利用契約制度)を取り入れており、大変に画期的なものでした。しかし、支援費制度の導入によりサービスの利用者が増加したこともあり、財源の確保が困難になったほか、地域ごとのサービス提供格差や障害種別(身体障害、知的障害、精神障害)間の格差が生じる問題が発生しました。(支援費制度は精神障害が対象外でした。)これらの問題を解決するために、、2005(平成17)年11月に「障害者自立支援法」が公布されました。しかし法律の理念がないことや、サービスの必要性を図る基準(障害程度区分)が障害特性を十分に反映していないなど、施行当初から問題が指摘されていました。特にそれまでは障害年金が収入の中心であれば自己負担なしだったところ、自立支援法では、サービス利用者に原則として1割の自己負担を設定しました。そのため、収入よりも自己負担額の方が多くなる人も出てしまい、サービスの利用を減らしたり控えたりするケースも発生しました。そこで2010年には自立支援法を改正し、1割の自己負担額を改め、以前のように利用者の収入に見合った自己負担(障害年金が収入の中心であれば自己負担なし)の設定となりました。さらにその後2013年には、「共生社会の実現」や「可能な限り身近な地域で必要な支援を受けられる」といった法の基本理念を定め、福祉サービスを利用できる障害者の範囲を見直して、難病がある方も対象にするなどの改正が行われ、現在の「障害者総合支援法」が成立したのです。なお、障害者総合支援法については、法の施行後3年が経過した時点で内容を見直すことになっており、2016年にさらなる法改正がなされています。改正された障害者総合支援法は平成30年(2018年)4月から施行されることになっています。 NET独立行政法人 福祉医療機構「障害者福祉制度解説」障害者自立支援法から障害者総合支援法改正への改善点4つのポイント出典 : 障害者自立支援法から障害者総合支援法への法改正が行われたことで、いくつかの改善点がありました。今回はその中でも主なポイントを4つご紹介しながら、障害者総合支援法の概要をご紹介します。法改正前の自立支援法では基本理念は設けられていませんでした。法改正によって、障害のある人を権利の主体と位置づける基本理念を定めました。基本理念の設定により、住み慣れた場所で可能な限り必要な支援が受けられることや、社会参加の機会の確保、どこで誰と暮らすかを選べるなど、障害のある人が保障されるべき権利がより明確に打ち出されたほか、障害の有無によって分け隔てられることのない「共生社会」を目指す方向性が示されました。障害者総合支援法の福祉サービスは、こうした理念に基づいて実施されることとなります。第一条の二 障害者及び障害児が日常生活又は社会生活を営むための支援は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、全ての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられることにより社会参加の機会が確保されること及びどこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと並びに障害者及び障害児にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資することを旨として、総合的かつ計画的に行わなければならない。支援費制度から自立支援法、そして障害者総合支援法という法制度の変遷は、支援対象となる人が見直されてきた歴史でもあります。かつて支援費制度下では、精神障害のある人は支援の対象ではありませんでした。それが自立支援法の成立によって支援の対象となりましたが、今度は発達障害のある人の位置付けが不明確であることが課題となり、2010年の自立支援法改正で発達障害も支援の対象であることが明確化されました。総合支援法ではこれまで支援が行き届かなった難病等の疾患のある人についても、支援対象者として新たに加わることとなり、サービスを受けられる方の範囲が広がりました。平成29年4月時点で、対象となる疾病は358疾病が対象になっています。詳しくは次の厚生労働省のサイトを参考にしてみてください。障害者総合支援法対象疾病(難病等)の見直しについて|厚生労働省自立支援法では、福祉サービスの利用に際し、障害の程度を測る指標を導入して、サービスの給付決定をしていました。これを「障害程度区分」と呼びます。ただ、主に日常生活行為が「できる」か「できない」かに着目して障害の程度を測っており、例えば食事が自分でできる/できないかだったり、排泄が自分でできる/できないかだったりで、できる項目が多ければ障害の程度は軽く、できない項目が多ければ障害の程度は重いという考え方が基本となっていました。しかし、一口に障害といっても、その実情は一人ひとりさまざまです。日常生活の中でも、自分でできるけれど時間がかかったり、自発的に行えなかったり、症状の調子が悪い時にはできなくなるなど、条件付きで「できる」という方もいます。どの程度生活に支障があるかは人によって異なりますし、「できる」「できない」で障害の程度を判断することは難しいのです。そこで障害者総合支援法では障害程度区分を改めて「障害支援区分」とし、障害のある人それぞれの生活環境を踏まえ、どのような支援をどの程度必要とするかといった度合いを測ることになりました。コンピュータによる一次判定とかかりつけ医の意見書、市区町村の審査会による二次判定によって、障害支援区分を認定することになっています。支援区分は7段階の区分に分かれ、もっとも支援の必要性が高い区分が「6」、以下「5・4・3・2・1」と続き、もっとも支援の必要性が低い場合は「非該当」となります。この支援の必要性の区分によって、支給されるサービスの時間に違いが出てきます。一部のサービスは支援区分が低いと利用できないことがあります。重度訪問介護とは、日常生活上で常に介護を必要とする方に対して、ヘルパーを長時間(最大で24時間)派遣し、訪問介護や身体的な介護や家事の援助、外出の付き添いや生活を送る上での相談や助言などを行う支援です。従来は身体障害者のなかでも重度の肢体不自由者のみが対象でしたが、その他の障害がある方でも提供されるようになりました。具体的には、重度の肢体不自由・知的障害・精神障害により重度の行動障害がある人(行動援護サービスに該当する程度の人)で、障害支援区分が「4」以上の人です。これにより、行動障害がある人も重度訪問介護を活用して一人暮らしするという選択肢が増えたといえます。障害者総合支援法の2本柱は、自立支援給付と地域生活支援事業障害者総合支援法のサービスは、大きく自立支援給付と地域生活支援事業の2種類があります。どちらも市区町村または都道府県が実施主体となっていますが、位置付けには違いがあります。自立支援給付は、国がサービスの類型や運用ルールを定めるもので、障害のある人が福祉サービスを利用した際に、行政が費用の一部を負担するものです。法律上は全体費用の「9割」を給付しますが、住民税が非課税の世帯であれば全額(10割)を給付します。一方、地域生活支援事業は、都道府県、市区町村が主体となって実施するもので、大まかな枠組みは国から示されていますが、サービスの類型や運用ルールは都道府県、市町村が定めています。障害のある方がお住まいの地域で自立した生活を送るために必要な支援のうち、地域の特性に応じて実施するサービスが位置付けられています。自立支援給付に位置付けられているサービスは、障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)、自立支援医療、相談支援事業、補装具の大きく4つです。たとえば障害福祉サービスでいえば、ヘルパーサービスや施設への通所・入所を利用するサービス、就労支援などが挙げられます。詳しくは以下の図をご覧ください。Upload By 発達障害のキホン地域生活支援事業として提供されるサービスには、障害のある人の外出に付き添う移動支援や、福祉用具である日常生活用具の給付または貸与、手話通訳や要約筆記を派遣する意思疎通支援、成年後見制度支援などが含まれます。地域生活支援事業の中には、市区町村が主体の事業と、都道府県が主体の事業があります。都道府県は手話通訳士などの人材育成や都道府県内の広域な事業を担い、市区町村は障害のある人に身近な自治体として、移動支援や日常生活用具の給付、貸与といった利用者にサービスを提供する役割を担っています。詳しい分類は以下の図をご覧ください。Upload By 発達障害のキホン障害者総合支援法は障害者手帳がなくても使える?利用対象は?出典 : 障害者総合支援法のサービスを使うためには、原則として障害者手帳が必要ですが、一部を除いて医師の診断書があれば手帳がなくても使うことができます。障害者総合支援法のサービス利用対象者は次のように定められています。・身体障害者・・・身体に障害がある18歳以上の人で、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けている人・知的障害者・・・障害者福祉法にいう知的障害者のうち18歳以上の人・精神障害者・・・統合失調症、精神作用物質による急性中毒、またはその依存症、知的障害、精神病質などの精神疾患を持つ人(知的障害は除く)・発達障害者・・・発達障害があるため、日常生活や社会生活に制限がある18歳以上の人・難病患者・・・難病等があり、症状の変化などにより身体障害者手帳を取得できないが、一定の障害がある18歳以上の人・障害児・・・身体障害、知的障害、発達障害を含んだ精神障害がある児童、または難病等があり、一定の障害がある児童参考文献:遠山真世,二本柳覚,鈴木裕介/著『これならわかるすっきり図解障害者総合支援法』2014年 日経印刷/刊ここからも分かるとおり、サービスを受給するために障害者手帳が必要なのは身体障害がある方のみになります。身体障害以外の障害がある方は、本人や家族の希望と医師の診断書があればサービスの利用申請を行うことができます。ただし、医師の診断書については、障害や病名が対象となるかどうかを確認するため、国際的に使われている病名分類コードの記載が必須となります。詳しい情報やサービスの受給を希望する方はお住まいの市区町村の障害福祉課担当窓口へお問い合わせください。平成30年施行の法改正において創設されるサービスなどを紹介します!出典 : ここまでご説明してきた障害者総合支援法ですが、「生活」と「就労」に対する支援をより一層充実させることを目標とした新サービスの創設や、既存のサービスをより充実させるための法改正が行われました。正式名称を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律」といい、障害者総合支援法と児童福祉法の一部が平成28年(2016年)に改正され、平成30年(2018年)に施行されます。児童福祉法のなかには18歳未満の障害児を対象とする支援が定められています。障害児が障害者総合支援法に基づいている障害福祉サービスを利用する場合もありますが、児童発達支援や放課後等デイサービス、保育所等訪問支援などは児童福祉法に根拠を置いています。今回の法改正では障害児への支援の拡充が盛り込まれました。そのため、今回は総合支援法とあわせて児童福祉法の一部改正についても説明していきます。■自立生活援助の創設現在、障害者支援施設やグループホーム入所・入居している方の中には、賃貸住宅などで一人暮らしを希望する方もいます。しかし知的障害や精神障害によって、生活能力に不安定さがあることなどで一人暮らしを選択できない方がいます。自立生活援助では本人の意思を尊重した地域生活を支援するため、一定期間にわたり定期的な巡回訪問を行い、食事や掃除、公共料金の滞納はないか、地域住民との関係は良好かなどの確認を行います。また定期的な訪問だけではなく、電話やメールなどで随時相談が行うことができるようになります。■就労定着支援の創設就労移行支援などを利用し一般企業へ就労した方で、就労に伴う環境の変化によって生活面に課題が生じてしまう方がいます。たとえば遅刻や欠勤の増加、身だしなみの乱れや業務中の居眠りなどの課題が環境の変化によって新たに生じるなどです。就労定着支援は就労定着支援事業所の方が職場・家族・関係機関への連絡調整を行ったり、職場や自宅に訪問し、生活リズムや体調などの指導や助言などを行ったりすることで、環境の変化に適応できるようサポートします。■重度訪問介護の訪問先の拡大重度訪問介護を利用している人が入院した際、普段利用していたヘルパーに支援をお願いすることが制度上できませんでした。またその人の特性やニーズに合った支援が入院先へ引き継げない場合もあり、利用者が困ってしまうことがありました。この改正によって、重度訪問介護を利用している方が入院中の医療機関においても、利用者の状態を熟知しているヘルパーを引き続き利用したり、そのニーズを的確に医療従事者に伝達したりなどの支援が利用できるようになります。■高齢障害者の介護保険サービスの円滑な利用障害福祉サービスと同様のサービスが介護保険法にある場合は、介護保険サービスの利用が優先されるようになっています。さらに高齢障害者が介護保険サービスを利用する場合、障害福祉制度と介護保険制度の利用者負担上限が異なるため、利用者負担(1割)が新たに発生する場合があります。またこれまで利用していた障害福祉サービス事業所とは別の介護保険事業所を利用しなければならないことがあるなどの課題が指摘されています。この改正によって、たとえば65歳になるまでの長期間にわたり障害福祉サービスを受けていた障害のある方、障害福祉サービスに相当する介護保険サービスを利用する場合、一定程度以上の障害支援区分の方や低所得者に対して、介護保険サービスの利用者負担が軽減されるような仕組みが設けられます。障害福祉サービス事業所が介護保険事業所としても機能しやすくするなどの見直しを行い、介護保険サービスがより円滑に利用できるようになります。■重症心身障害児などに対して訪問型の児童発達支援が創設障害児支援に関しては、複数の児童が集まる通所による支援が子どもの成長に望ましいと考えられていたため、これまで通所支援の充実を図ってきました。しかし現状では、重度の障害のため外出が著しく困難な障害児が発達支援を受けられません。そこで重症心身障害児などの居宅を訪問して発達支援を行うサービスが新たに創設されることになりました。■保育所等訪問支援の支援対象に乳児院と児童養護施設が追加保育所等訪問支援では、これまで保育所・幼稚園、放課後児童クラブ、小学校などに相談支援員が訪問していました。しかし乳児院や児童養護施設の入所者に占める障害児の割合は3割程度となっており、職員による支援に加えて、専門的な支援が求められているため、保育所等訪問支援の対象者を乳児院や児童養護施設の子どもたちにも拡大することになりました。■医療的ケア児に対する支援NICU(新生児特定集中治療室)などに長期入院後、引き続き人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要な障害児(以下:医療的ケア児)が増加しています。医療的ケア児が地域において必要な支援を円滑に受けることができるよう、地方公共団体は児童発達支援センター、障害福祉サービス事業所、特別支援学校などの福祉機関と、訪問看護ステーション、小児科診療所、地域小児科センターなどの医療機関と連携を図るために連絡調整を行う仕組みをつくることになりました。また医療的ケア児に対する支援については、すでに平成28年6月に施行されています。■障害児サービス提供体制の計画的な構築これまで市町村および都道府県に対して、障害福祉計画および都道府県障害福祉計画の作成を義務付けていました。法改正によって、障害児を対象にした障害児福祉計画および都道府県障害児福祉計画の作成を義務付けることになりました。また障害児相談支援の提供体制を整備し、障害児通所支援などの円滑な実施を確保するための仕組みも導入しました。障害児福祉計画は障害児通所支援や障害児相談支援の必要なサービス量の見込みを示すなどして、提供体制を確保していく努力を行うための計画であり、整備の指針になります。■補装具の貸与制度の追加補装具費は身体障害者の身体機能を補完・代替する補装具の「購入」に対して補助金が支給されていました。したがって、これまでは補装具本体の「貸与」はありませんでした。この改正によって障害児など成長に伴って短期間で補装具の交換が必要となる場合は「購入」を基本とする原則は維持したうえで、「貸与」が適切と考えられる場合には補装具本体の貸与が行われることになります。詳細は今度、関係者の意見を踏まえた上で検討されます。■障害福祉サービスの情報公表制度の創設障害福祉サービスなどを提供する事業所数が大幅に増加するなかで、利用者が個々のニーズに応じて良質なサービスを選択できるようにするとともに、事業者によるサービスの質の向上が重要な課題となっています。施設・事業者に対して障害福祉サービスの内容などを都道府県知事へ報告し、都道府県知事が報告された内容を公表する仕組みがつくられます。この情報をもとに利用したいサービスを提供している事業所を選択することができるようになります。■自治体による調査事務・審査事務の効率化障害者自立支援法の施行から10年が経ちました。障害福祉サービスなどの事業所数や利用者数は大きく増加しており、自治体による調査事務や審査事務の業務量が大幅に増加しています。この改正に伴い事務の一部を委託可能にするために必要な規定を整備することになりました。 たとえば、利用を検討している方に向けて利用審査に必要な質問や、関連文書の作成などを、許される範囲内で行政から委託された民間法人が担うことができるようになります。参考:「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び 児童福祉法の一部を改正する法律」について(経過) |厚生労働省まとめ出典 : 障害者総合支援法は障害の有無に関わらず、共に住み慣れた地域で暮らすことができる社会(共生社会)を実現するためにつくられた法律です。障害がある子どもから大人まで利用できる、自立支援給付や地域生活支援などのサービスがあります。また具体的にどんなサービスがあるのか、サービスを受けられる対象者に当てはまるかなどの相談に応える相談支援もあります。ただ、サービスも各地域によって特色がありますので、総合支援法の利用を検討中の方はお住まいの市区町村の担当窓口にお問い合わせください。障害者総合支援法は自立支援法を改正して生まれた法律です。しかし自立支援法時代からの課題が全て改善されたわけではありません。障害のある人の支援に関する法律は、今後も議論や改正を重ねながら、その時代や地域、利用者のニーズに適したサービスを提供していくことでしょう。
2017年07月31日民間の発達障害支援施設はどう選べばいいの?専門家に聞きました。発達に凸凹がある子どもの保護者にとって「どんな民間の支援サービスや学習塾を選んだらよいか」は頭を悩ませるテーマのひとつ。長年、特別支援教育の第一人者として活動を行ってきた大南英明先生に、民間の発達障害支援サービスの種類や選ぶ際に気をつけるべきこと、早期療育の意義などをお伺いしました。Upload By 福井万里【プロフィール】大南 英明全国特別支援教育推進連盟理事長1937年生まれ。公立小・中学校教諭、養護学校教諭を経て、東京都教育委員会指導主事に就任。文部省初等中等教育局特殊教育課教科調査官、東京都教育庁指導部心身障害教育指導課長、都立青鳥養護学校長を経て、98年帝京大学文学部教育学科教授に就任。2003年4月から帝京大学文学部教育学科長を兼任。2005年帝京大学小学校初代校長。2008年帝京大を定年退任、放送大学客員教授。人権擁護推進審議会委員。民間の発達障害支援サービスにはどんな種類が?一般の学習塾も有力な選択肢出典 : ー民間による発達障害支援サービスはどんな種類があるのですか。発達障害支援をする民間サービスというと、大きく分けて、2つの大きな流れがあろうかと思います。・発達障害児への支援を専門として受け入れる療育施設・発達障害児の受け入れをうたっていない一般向け学習塾前者の発達障害児向け専門の事業者は、バックに大学などの専門機関がある場合もあり、担当の指導員だけでは難しい場面には心理の専門家に相談できる仕組みなど、システムや組織が非常にうまくできている傾向があります。例えば、東京未来大学がバックにある三幸学園や、社内に研究所があり専門家の監修体制も敷いているLITALICOジュニア、武蔵野東学園(自閉症児の積極的受け入れを実施)と提携してカリキュラムを作った四谷学院には、発達障害のある子どもに合った専門的なカリキュラムやプログラムがあります。見落としがちなのは、後者である、看板に発達障害児の受け入れを銘打っていない学習塾です。ーそれは盲点ですね。実際、こうした学習塾の中には、30年以上前から現場レベルでさまざまな障害のある子どもの受け入れに取り組んできている施設もあるのです。 そういう施設は、最初は知的障害への支援が主でしたが、近年は発達障害への対応力も高めてきており、私自身どう指導していけばよいか相談にのってきました。独自のノウハウを学習塾ごとにためていっており、コマーシャルやプログラムなどには「発達障害」という言葉はでてこなくとも、今読めば発達障害のある子どもの学びをも想定しているとわかる内容になっています。ーどんなカリキュラムで学習塾が受け入れをしているのですか。障害児と障害のない子どもの内容を分けずに、同じプログラムでステップを細かくして指導しています。今もおそらく障害児を受け入れているとは言っていないけれど、受け入れている学習塾はあると思われます。そういうところは、口コミで広がっているのではないでしょうか。具体例としては、自学でのプリント学習を中心とする学習塾では、実質的には障害児の受け入れをしてきたと思います。療育用のプログラムで指導する民間サービスと、同じプログラムで障害がある子を受け入れる学習塾、この2つの種類の存在が頭にあるといいですね。ー他の種類はあるのでしょうか。最近は中間型も存在します。個人指導や個別指導をしている学習塾で、看板に小さく「学習障害やADHDなどの発達障害のある子どもも受け入れます」などと書いてある事業者です。本当に適切な指導ができるかは確認が必要ですが、わざわざ電車に乗って遠くに行かなくても、身近なところでそういう塾を利用するのも1つの方法だと思います。外からは見えにくい療育施設の質、市町村の無料相談で専門家の積極的活用を出典 : ー発達障害児の受け入れを明記していない学習塾でも、自分の子どもに合うプログラムであれば魅力的な選択肢になると思います。ですが、明示的な情報なしに、わが子に合った学習塾を探すのは難しそうです。障害のある子の親の集まりなどら得られる口コミが参考になります。そういう集まりに参加すると「あそこにいくと、子どもにあったプログラムで良かった」などの声をきけると思います。もうひとつは、自分で判断しないで専門家に相談して確認するといった手もあります。インターネットでも自分で様々な情報を集めることが出来ますが、即断せず、第三者の意見を参考にすることが大切です。ー相談できない専門家が身近にいない場合は、どうしたらよいでしょう。そういうときは、各市町村で実施している発達相談窓口の無料相談がよいと思います。相談する側には臨床心理士などの専門家が担当しているケースが多いです。公の機関なので、特定の施設の相談はできないかと思いますが、「こういう内容のプログラムの学習支援塾を探したのだけど、わが子の特性にあっているか?」などの聞き方は大丈夫です。子どもが3歳ぐらいの小さい時期からでも、相談にのってもらえます。無料で利用できる市区町村の相談機関は、大いに活用するとよいのではないでしょうか。ーなるほど、それは参考になりますね。発達障害のある子どもを受け入れてくれるかどうかも重要ですが、それ以上に気になるのは、実際の指導の質です。民間業者の質はどのようなところから決まってくるのでしょうか。民間事業者の質といった意味では、人、つまりよい指導者がいるかどうかに左右されます。良い指導者が多いところは、その施設の実績として結果がでているはずです。Upload By 福井万里ーよい指導者を探すには、どうしたらよいとお考えですか。一番は、さきほどお話した、お母さん同士の口コミだと思います。コマーシャルだけでは、推し量れない部分です。また、公の機関にも相談してみるといいでしょう。子どもに向くか向かないかは別の問題ですが、悪い情報がはいっているケースなどは、公の機関は意外に情報を持っているので、聞いてみるといいと思います。ただ、その子どもに合わなかった特定のケースの場合もあります。聞ける場合は、苦情の内容も聞き、お子さんの特性に照らし合わせて判断するとよいのではないでしょうか。ー悪い情報が入っているところが、悪い施設とは限らないのですね。そうです。話題になっている業者というのは、いいにつけ悪いにつけきちんとした指導をしています。しかし、ひとつのサービス機関がすべての子どもに合うようになるのは不可能です。コマーシャルや広告などでは、たいてい、どんな子にでも合う指導ができるかのように宣伝されがちです。一方で、口コミなどで伝わる悪い情報というのも、色々工夫はしたけれどやはりその子には合っていなかった、という可能性があります。幅広く展開すればするほど、合わない子もでてきます。そこを加味して冷静に判断するとよいと思います。発達障害のある子どもを受け入れる事業者の側にも、子どもを預かって指導をするわけですから大きな責任がありますが、一方で保護者の側も、施設の見学などの際には自分の子どもの様子をなるべく詳しく説明し、その子とその施設のプログラムや指導が合っているのかどうか、自分でもよく吟味することが大切です。「1対1の個別指導」=良い指導とは限らない出典 : ー次にお聞きしたいのは、指導の方法についてです。保護者の立場からすると、やはり個別指導の方が、自分の子どもの特性にあった対応をしてくれそうに思えます。1対1の個別指導だから良い、ということではなく、お子さんの特性にあった“個別の”指導プログラムを提供できるかどうかが重要です。たとえば、LD(学習障害)でもディスグラフィア(書字障害)とディスレクシア(読字障害)では、困り事が違います。読むことが苦手な子なのに、読むプログラムが多いと困ってしまいます。ですから、個別指導とうたっているところでも、どういう指導内容なのかが大事になってきます。また、1対1の個別指導の方が質が高いというイメージを持たれるかもしれませんが、複数の生徒がいたほうが、緊張感がほぐれて取り組みやすくなる子どももいます。どうしても友だちがいると気が散ってしまう子は別の方法を考えるとして、教えられる子ども側から見ると、生徒が複数の方が精神的に負担が少ないケースもあります。特に、先生と生徒が1対1の個別指導で、相性がよくない先生にあたったときに、子どもにとっては悲劇になります。やっている中で合わなそうであれば、替えてもらう勇気が必要だと思います。相性の問題は、生徒が複数のときはあまり表面化しませんが、1対1になると途端に難しくなってきます。1対1の個別指導の落とし穴だと思います。見学時には教室設備も観察を。子どもが落ち着けないのは、環境要因のケースも少なくない出典 : ー他に民間事業者を選ぶときに、気をつける観点はありますか。学ぶ環境にも目をむける必要があります。設備というと、最新の施設がよいと思われがちですが、そうではなく、子どもが安心する設備に工夫してくれているかです。例えば、天井が高いのが落ち着かないお子さんであれば、布をはって天井を低くすれば、落ち着きますよね。ガラス張りがたくさんあったら、普通の家ではないので、イヤだと思う子どももいます。そういう場合はカーテンをします。どの子にもあった設備をつくるのは難しいですが、あまりお金をかけない工夫ひとつで環境はつくれます。環境について、配慮や相談にのってくれるかどうかも大事なポイントだと思います。ーなるほど。落ち着かない理由を、「障害だから落ち着かない」と言ってしまっているケースをよく聞きます。でもその子が落ち着く環境を作ると、その子は落ち着けるわけですよね。落ち着かない原因が何なのかを見つけることだと思います。ー落ち着かない原因を探ってくれる雰囲気があるところがよい施設なのですね。そうです。ですから、最初のプログラムではすぐに具体的な学習指導などに入らずに、子どもの反応を確認して、もし落ち着いていなければ、何が原因なのかを考えてくれるところがいいですね。いつまでも落ち着かない、指示が入らないというのが、障害のためだと考えてしまったら、そこでストップしまい、子どもの可能性の芽が摘まれてしまいます。子どもの生活スタイルから、民間サービスに何を求めるかを整理しよう出典 : ーカリキュラムについてはどのように選んだらよいでしょうか?その学習施設で何を得たいのか、その子の一日や一年における、その時間の位置づけを考えることが大事です。他にどこにも通えていない子がその学習施設にいくのであれば、他人と触れ合う場所がここしかないので、そこで学ぶことが大事になってきます。しかし、5日間学校に通っている子が、プラスアルファとして通うのであれば、体力、集中力、思考力など総合して、何をどれくらいの時間学んだら良いのか、振り返る必要があります。ー親自身が、要望を整理する必要がありそうですね。そうです。親自身が要望を整理し、「こういうことを望んでいるがそれがかなえられるか?」と聞くことが必要です。また、子どもの成長に対してフィードバックされるような仕組みがあると、より好ましいですね。どんな子も先生が自分のことを褒めているということは、必ずわかります。フィードバックされた親が喜んでいるとさらに子どもは頑張ります。ー他には、どんな観点が必要でしょうか?子どもの興味関心を見極め、子どもが本当に楽しんで取り組んでいるかが大事です。それに合った課題やプログラムを提供するところがいいです。その上で、もう少し欲張ると、家へ帰ってもそこで学んだことを課題として出してもらえるといいですね。同じ課題や教材教具がむずかしければ、「家にある似たもので学習できますよ」とヒントをくれるような場所がいいです。施設での学習時間は限られているので、家庭で関心をもっている内容を毎日できるとなると、ものすごくよいでしょう。ー子どもが楽しんで取り組めているかが重要なんですね。子どもも意外に義務感があって、「ここにきたらこれをやらないといけない」などと考えています。興味も関心も意欲もないのだけど、お母さんに「ちゃんとやりなさいよ」と言われたら、頑張ってやったりするのです。ですが、子ども一人ひとりの関心事や困り事を観察して、楽しみながら取り組ませてくれるところが、真の個別対応です。そういう取り組みができる民間サービスを探すとよいのではないでしょうか。良い指導には、正しい「厳しさ」が重要。見学の際は子どもと指導員の関わり方の確認をUpload By 福井万里ー厳しい指導をするところは、避けたほうがよいのでしょうか。これも、一概に「厳しい」「優しい」と区分けすることはおすすめしません。子どもはある意味、厳しい指導を求めている場合があります。褒められてばかりや、やさしいことばかりしていたら、子どもは興味関心をもちません。そう簡単には達成できないレベルでありつつも、子どもが持ちこたえて乗り越えられるような、絶妙な課題設定ができる指導者がよいでしょう。レベルを段差で例えると、階段は登れないけれど、細分化してレベルアップするスロープ状なら登れる子もいます。その場合は、スロープを作ってくれるような取り組ませ方をしてくれる指導者がよいと思います。座っていられない子に、歩いていいよと放置してしまったら、子どもの姿勢は育ちません。求められる「厳しさ」というのは、強制的に指導するのではなく、子どもが出来ないことを出来るようにしっかり取り組めるようにする指導です。子どもに合わせてしまう指導が現在多いですが、できるようになるためのハードルを作る、正しい「厳しさ」が大事なのではないでしょうか。ー施設を選ぶという観点から考えると、そういう指導者はどうしたら見分けられますか。社会のルールを守るのは障害のある子どもたちも同じです。親が施設を選ぶときは、放置されている子がいないところをみてみるとよいです。動いている子がいても、担当の先生がちゃんと見て、フォローしているのであれば、野放しではありません。教室を見学する際には、他のクラスも見させてもらえるようであれば、その点をみてみるといいと思います。また、他のクラスを見学できなくても、下駄箱ひとつとっても指導が行き渡っているか確認できます。きちんと靴を揃えているかなど、見られる場所はあります。ー大南先生が感じる、民間の発達障害支援サービスの課題は何でしょうか?放課後等デイサービスは、単価が安いので資格がある人が少ない傾向にあります。本来は単価をあげて資格がある人が入ってくる方がよいのでしょう。質の底上げを狙って、厚労省はガイドラインを作りました。ですが、そのガイドラインは、普通の学習施設にとっては、自由度のあるカリキュラムが作りづらくなっているという課題もあります。また、送迎など親への支援を手厚くする一方、子どもも一人ひとりにあったカリキュラムや支援が手薄になるところも多くあります。利用する子ども一人ひとりに寄り添った支援が一番大事なので、そこを見失わないでほしいと願っています。早期療育の利点は「誤った学習や習慣」を未然に防ぎやすいこと出典 : ー大南先生は幼少期の療育についてはどのような考えをお持ちですか。早期の療育にはどのような効果があるのでしょう。比較的学習成果が出るのが早いことや、「誤った学習や習慣」を未然に防ぎやすいことは、早期領域の意義だと言えるでしょう。たとえば、その子に合った指導や支援を受けていないまま6〜8歳になった発達障害の子どもたちが、ちゃんと座れるようになるのにはそこから2〜3ヶ月かかります。それが、幼児の間から指導を始めると、すぐに自分で椅子を動かして座っていられるようになります。そういう状態から小学校で受け入れられれば、その2〜3ヶ月が必要ないことになります。ー早期療育の効果がでやすいのは、なぜでしょうか。まだ、子どもの中に誤った習慣や学習が定着しきっていないからだと思います。例えば、紙があったらぐちゃぐちゃにすることを一度学んでしまうと、紙があるのを見ればなんでもぐちゃぐちゃにしてしまうようになります。しかし、最初から紙をぐちゃぐちゃにしないように教えたり、ぐちゃぐちゃにしていい紙はこれですと教えたりすれば、幼児はよけいな学習をしなくてすみます。ー年齢を重ねたあとに療育をする場合は、どうすればよいですか。人はいくつになっても成長するので、いつから療育を始めても手遅れということはないです。ご家族も本人も大変にはなりますが、どこの時点からでも、人は成長できます。でも、年齢があがればあがるほど、間違った学習が増えてしまいます。そうなると、間違った学習を訂正していくことが、大変になってきます。ですから、子どもの発達障害がわかった時点から、やれることはやっておくことを強くおすすめします。担任、民間サービス、親の3者の連携が、子の発達を促進する出典 : ー民間サービスを利用する際に、小学校の担任の先生と共有する必要はありますか。支援サービスを利用していることを、学校に言いたくないという親もいらっしゃると思います。でも、先程もうしあげたように、支援サービスにどのような位置づけで通わせるのかが大事になってきます。学校で精力を使い果たして疲れ切っていて、支援サービス先で集中できないケースや、学校と支援サービスで内容が重複して飽きてしまっているケースもあります。子どもの抱えている困りごとの解決が、学校と支援先と連携しないとわからないこともあります。親と担任の先生、支援サービスの支援者の3者の連携が、子どもの成長によい影響を及ぼすのだと思います。ー小学校の先生方は、民間サービスの利用に理解があるのでしょうか。子どもの困り事を協力して解決していきたいと、関心をもっている教師はたくさんいます。だから、教師の意欲を見極めた上で、相談していけるとよりよい環境になるでしょう。学校でも取り入れてくれるケースもあります。学校は教科書を消化しないといけないという逃げ口上がありますが、工夫をしようと思えばできることはいっぱいあるのではないでしょうか。現在、小中学校では民間学習塾と連携して、教師の研修をしているところもあります。民間の発達障害支援サービスとも今後連携して、教員を指導ができるとよいと感じます。地域全体で発達障害児教育を盛り上げていくための秘訣は?出典 : ー大南先生は墨田区の社会福祉事業団に50年近く携わってきたそうですが、地域ぐるみで発達障害支援が盛り上がるポイントは何でしょうか。障害がある人たちのニーズを、その地域で公表できる雰囲気があるかだと思います。「何をバカいってるんだ」という地域だったらニーズを公表できません。下町である墨田区は昔から公表できる雰囲気がありました。実際、1953年という早い時期から、墨田区では全国に先駆けて特別支援学級を作ることができました。ーニーズが言える雰囲気づくりの他に、どういう方々が動いたのでしょうか。ニーズが公表できて、中心的に動く人たちがいて、サポートする人たちがいて成り立ちました。そして教育委員会が動いて継続しています。教育委員会を巻き込めるかどうかが、ポイントのひとつです。23区には学校卒業後の余暇活動のボランティアがあります。ただ、充実しているところとそうでないところの格差はありますね。ー余暇活動のボランティアとはどんな内容で、どういう方が携わっていますか。日曜日などにお茶やスポーツなどの余暇活動をサポートする活動です。区民ボランティアも100人くらい登録していただいています。ボランティア講座などを開いて、継続してボランティアに関われるよう工夫しています。高齢者の方のなかには、技能があっても、「お金はいらないからやらせてくれないか」という人が結構いらっしゃいます。眠っている市民の力がもっと活用できるといいなと感じます。ー民間の療育教室でも、地域の商店街との交流が盛んな事例があるようです。放課後に地域の方々が見守るような仕組みができるといいですね。実例を公表していくと、広がりやすいのではないでしょうか。障害がある子をもつ保護者の方々も、そういう雰囲気のある地域は、通いやすくなります。教室を通うこと自体後ろめたさを感じている保護者もいらっしゃいます。それを払拭できるのは地域の雰囲気づくりです。そして、地域の結びつきが深くないと、要望、つまりニーズを伝えづらいですよね。ー最後に発達ナビの読者へ一言をよろしくお願いします。まず第一に、お子様の好きなこと、得意なこと、興味のあることを見つけていただき、一緒に楽しんだり、ほめたりして、お子様を認めることが大切です。「子どもを知る、理解する」ことの第一歩です。お子様の気になること、課題は、保護者の方々の悩みの種になることが多いと思います。しかし、できないこと、課題のない子どもは、どこにもいないことも事実です。お子様のことで悩みをどこへ持ち込めばよいのか、そのことで悩まれることもあろうかと思います。公立の相談機関をまず尋ねることをお勧めします。公立の相談機関が近くにない場合には、NPO法人等が運営する相談機関を訪ねてはいかがでしょうか。それから具体的な指導、支援をしている教室等へ出向かれれば、お子様にふさわしい場所に巡り合えることにつながると思います。そして、お子様の一日のスケジュールを考えて、無理のない、お子様に背伸びをさせない場所と時間を選ぶことをお勧めします。
2017年05月15日支援級って、実際どうなの?出典 : 「支援級って、実際どうなの?」「どんな雰囲気で、何をやってるところなの?」…と、特別支援学級という「未知の世界」が気になっているお母さんも多いかと思います。うちの長男は、発達障害に気づかずに通常学級で入学し、4年生まで過ごしました。そして、5年生になった時、自分の意思で支援級に転籍。さらに今年の4月からは、また通常級に戻る予定でいます。今まで繰り返しお伝えして来た通り、本当に支援級を巡る状況は千差万別です。これは「あくまで一例」ではありますが、長男と私が経験した「うちの」支援級ルポを、楽々かあさんこと、大場美鈴がお伝えします。うちの支援級の1日の流れ出典 : まず、朝の風景から。うちの支援級の登下校は、お母さんが付き添って歩いたり、車で送り迎えをしていたりする場合が多いです。我が家では、行けるときは登校班で歩いてゆき、不安定な時期や、行事などで心身の負担が大きな時期は、車で送って行きます。うちの学校の支援級は2クラス。身体・知的障害のあるお子さんのクラス(以下、A組)と、長男が在籍していた、主に発達障害の傾向のあるお子さんが中心となる、情緒クラス(以下、B組)に分かれています。通常級の出席番号とは違い、支援級のそれぞれの子には「専用カラー」が決められています。下駄箱やロッカーには、名前と共に、その子カラーのテープが貼られて目印になっているのです。そこに靴を入れて、クラスに向かいます。うちの支援級は、一階の保健室近くに配置されていて、普通級とはやや離れています。逆に、職員室、1年生のクラスとは同じフロアです。登校すると、子ども達はその日の予定を確認します。スケジュールボードに、それぞれの子の時間割がマグネットで並べられています。時間割はそれぞれの子で違うものになっています。教科によって支援級で過ごしたり、交流級に行ったり、運動場や音楽室に行ったりと、けっこう移動が多いです。交流級というのは、通常級のクラスでの授業・活動に参加することです。「協力学級」「親学級」などとも呼ばれています。B組在籍の子どもは、全部で6人程ですが、B組の教室に常時いるのは2〜3人。なかには1日中交流級で過ごす子もいます。A組、B組の子達が揃うのは給食の時間。机を全部くっつけて、2クラス合同で先生方も一緒に食べています。その様子は、カオスと言っても過言ではないくらい賑やかです。両クラスの最上級生である、A組の6年生の男の子は人気者。下の学年のお子さん達が慕って、おんぶをせがんだり、給食を配ってあげていたりと、微笑ましい様子も見られます。下校時刻は、それぞれの学年に準じたものになっています。上級生になるほど、6時間目の授業も増え、クラブ活動などもあります。低学年の子達が下校する6時間目には長男と先生のマンツーマンになることも多く、学習が捗るようです。チームで子ども達を見守る、先生達出典 : 支援級の担任は、A組はしっかりした女性の先生、B組はベテランの男性の先生です。そして、それぞれのクラスに副担任の先生がつきます。介助員さんも、両クラス合わせて常時2~3名が学校にいる感じで、主に身体介助の必要なお子さんのお世話や、交流級に行っている子の付き添いなどをして下さっています。子ども1人当たりの大人の数が多く、チームで手厚く見守って頂けます。とはいえ、クラスに不安定になっているお子さんがいる時には、複数の先生がその子にかかりきりになる状況などもありました。そして、支援級の担任の先生は、前回の記事でもお伝えしましたが、必ずしも、支援に詳しいとは限りません。長男のクラスの担任の先生は定年間近の大ベテランの先生でしたが、4月の時点では支援について、ほとんど何もご存知ではありませんでした。ですが、「お母さん達のほうがお詳しいでしょうから…」と、親の話を一人ひとり、謙虚に丁寧に聴いて下さり、私は本当に頭の下がる思いでした。その姿を見て、私は「あ、大丈夫だな」と思いました。先生は多少のことには動じないタイプで、個性の強い子ども達に忍耐強くつき合って下さり、長男も信頼している様子で、私は安心して見ていることができました。知識・経験以前に、先生自身が安定していること、子どもと基本的な信頼関係が築けることが、私はまず必要なように思います。そして、その子に合わせたり、親の話に耳を傾けてくれる姿勢があれば、例え支援に対する知識・経験が十分ではなくとも、次第に「プロ」になって下さるように思えます。気になる学習内容は…?出典 : うちの支援級の学習内容は、その子の進度に合わせたプリント学習です。プリントは本当にオーソドックスな問題を、教科書の順に添ってひたすら取り組むような形です。私は支援の本にあるような手作り教具やICT機器などをジャンジャン使って、体感的な授業がそれぞれの子に行われる様子を夢見ていたので、正直、やや肩すかしでした。それでも、通常級の一斉授業のスピードについていけず、ノートも取らずにぼーっと過ごしていた時に比べれば、私にはずっと有意義な時間のように感じられました。算数は、長男がつまづいている九九や、筆算の手順など、何学年も前のところから戻ってスタートし、少人数の環境の中、自分のペースでじっくり取り組んでいました。国語は、学習内容はほぼ理解できるものの、漢字がどうしても出て来ないので、学習補助用のiPadを持ち込んで辞書アプリで調べながら進めました。ただ慣れて来ると、プリント中心の学習はつまらなくなったのか、苦手科目以外のプリントに落書きが増えてきました。その時は先生に相談して、もう少し学習内容を調整して頂けるようお願いをしました。課題のレベルは「大体できるけど、定着してないこと」から「やや難しいけれど、なんとかできそうなこと」くらいが、その子にちょうど良い学習レベルだと思います。長男は「やさし過ぎる」「難し過ぎる」ものは、どちらも集中できないようです。長男の場合は、パソコンなど興味の強い科目から交流級で参加し始め、体育や図工などの実技教科、2学期には理科・社会も…というように、長男の様子をみながらこまめに連携し、徐々に交流級を増やして頂きました。そして算数もマイペースにコツコツとプリントに取り組み続けた結果、学年相応まで進めることができ、3学期には、全科目交流級での授業になりました。通常級でできてしまった大きな段差を、支援級で長男自身のステップで徐々に上がっていったことにより、学習への自信がついたのです。異年齢・多種多様!支援級の子ども同士の様子は…?Upload By 楽々かあさん休み時間、B組(発達障害の傾向のあるお子さんが中心となるクラス)の男の子達は、手作りカードゲームなどをして楽しく遊んでいました。時折、通常級の次男も、支援級に顔を出して、一緒に遊んでいたようです。次男曰く「エアコン、効いてるんだよね~」とのこと。体温調節が身体の機能的に苦手なお子さんもいるため、うちの両支援級はエアコンが完備されています。転籍前、精神面の凸凹差の大きな長男は、通常級の同年齢のお子さん達と、やや話が合わないようでもありました。でも、異年齢で多種多様なお子さんの集まる支援級では、年下のお子さんと気が合ったり、年配の先生方とたくさん雑談できるので気が楽だったようです。とはいえ、B組の子同士の関係は、仲のいいときはすごく良いけど、ちょっとしたきっかけで大げんかするという、ジェットコースター式。気持ちを言葉で伝えたり、妥協することが苦手な子が多いため、実際の所、衝突事故も多かったです。でも、その中で長男は、「ゆずってあげる」「合わせてあげる」ことの大切さに少しずつ気づけたようにも思います。また、B組では長男は一番年長。クラスのお子さん達をまとめたり、お手本になる役割も与えられました。それよって学校での「居場所」ができたようです。支援級で過ごしたことは、長男の心の成長にも大きなプラスになったように思います。支援級に移ったことを、通常級の子たちはどう受け止める…?出典 : 交流級に行くことで、支援級と普通級を行き来していた長男は、通常級の先生の目から見てもさほど違和感なく溶け込んでいたようです。また、支援級にいても、運動会などの行事では今までクラスメイトだった通常級の子達と一緒でした。運動会の組み体操も林間学校での野外活動も、支援級の先生方に見守られながら、不安に思うことをひとつひとつクリアしながら参加しました。少しだけハードルを下げたり、大人が見守ってあげたりすることで、皆と一緒にできることはたくさんあると思います。長男が支援級に移った時は、それまでと態度が変わった子もいました。長男に対して以前より距離を置く子もいれば、かえって優しくなった子もいるし、何も変わらない子もいました。でもさまざまな機会を通して、一緒に過ごすことで、普通級の子達も支援級の子たちに慣れていきます。多感な年頃の子達の間には、お互いに取り扱いが難しい面も少なくありません。さらに、空気を読めなかったり、集団の中で目立つ行動を取ってしまう長男にとって、コミュニケーションのハードルが高いであろうと思う部分は今でもあります。それでも長男は、6年生に進級したら、居心地良さそうにしていた支援級を卒業して、皆と同じクラスに戻ると言います。私は、支援級に転籍したときのように、長男に通常級の良い点、そうでない点の両方を伝えましたが、今回も長男の決意は変わりませんでした。そこには、好奇心の強い彼にとって今の成長に必要な刺激があるのかもしれません。また、合理的に物事を判断する長男にとって、考えられるデメリットを上回る何かを、今は感じているのかもしれません。子どもの成長と学び方は、一律一様ではないのだから…。ここまで3回に渡り、私達親子の実際の体験から、支援級と通常級の間にある選択肢、支援級を検討する際の判断のポイント、そして、うちの支援級の実際の様子をお伝えして来ました。支援級は本当に千差万別で、私には「うちの」支援級が標準的かどうかも分かりません。でも、具体的な情報が開かれてゆくことで、もっと支援級が身近で気軽に感じられる場所になってほしい、と私は願っています。また、支援級と通常級、それぞれにメリット・デメリットがあり、私にはどちらがいいとも言えません。でも、通常級にいる子達にとっても、長男が5年生を過ごした支援級を「別世界」と感じてるわけではないと感じています。そして、一つだけ確かなことは、日々成長する子どもたちによって、その個性の発達のスピードやその子に合った学び方は、一律一様ではない、ということです。これは長男の今までの育ち方と、興味関心のあり方を見守って来た私が、実感として思うことです。柔軟に、臨機応変に、その子に合った学び方が、どんなお子さんにも安定して提供される日が、なるべく早く来ることを、同時代を生きる子を持つ一母親として、私は願ってやみません。Upload By 楽々かあさん大場美鈴(著), 汐見稔幸(監修), 『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』ポプラ社, 2017年
2017年04月10日特別支援教室とは?出典 : 特別支援教室は、発達障害のある子どもたちをはじめとした個別のニーズに対応し、より適切で効果的な教育を行うために、小・中学校への導入が予定されている設備・制度です。文部科学省は、特別支援教室構想を掲げ、それに伴い全国各地でモデル事業が行なわれてきました。とりわけ、2016年4月からは、東京都内の小学校で本格的な導入が始まりました。具体的な導入計画については、後に詳しく説明します。2005年以降、文部科学省は「インクルーシブ教育」の推進に力を入れてきました。インクルーシブ教育(または単にインクルージョン)とは、障害の有無にかかわりなく子どもたちに教育をするという理念・制度・実践をいいます。インクルーシブ教育では、障害のある子どもたちが、単に障害のない子どもたちと同じ学校に通うだけでなく、本当の意味で他の子どもたちと同じ教育を受けるということが目指されています。こうした教育を実現するためには、障害のある子どもだけが「特別なニーズ」を持っているという考えを見直し、「すべての子どもに等しく教育をし、その中でニーズのある子どもには適切に対応する」ことが重要です。たとえ障害のある子どもたちが通常校に通っているとしても、障害のない子どもたちから区別され、普段から別の教室で勉強しているなら、それは同じ教育を受けているとは言えない、これがインクルーシブ教育の基本的な考え方です。文部科学省の特別支援教室構想も、その一環として位置づけられています。文部科学省は、発達障害の診断を受けていない子どもたちの中にも、実際には「特別なニーズ」とされてきた個別のニーズを持つ子どもたちが少なくないのではないかと考えています。そして、そうしたニーズに気づき適切な教育をするために、また、その他の子どもたちが発達障害をよりよく理解できる環境を作るために、特別支援教室の導入を進めています。参考: 中央教育審議会「特別支援教育を推進するための制度の在り方について(答申)」(2005年12月)特別支援教室という制度では、「障害のある子ども」と「障害のない子ども」を分けて支援するのではなく、必要に応じて誰にでも支援やサポートを提供します。これは、「障害のある子どもが障害に応じて支援を受ける」という、特別支援学級や「通級による指導」のスタンスとは大きく違うものです。参考:Frank Bowe, Making Inclusion Work (Upper Saddle River, NJ: Pearson, 2005).参考:Gary Thomas and Andrew Loxley, Deconstructing Special Education and Constructing Inclusion, 2nd ed. (Open University Press, 2007).参考:高橋純一、松﨑博文「障害児教育におけるインクルーシブ教育への変遷と課題」『人間発達文化学類論集』19号(2014年)13–26ページ特別支援教室って、どんな制度?出典 : 全国に先駆けて東京都の小学校で特別支援教室が2016年4月から順次導入されています。ここでは東京都の小学校におけるモデル事業をもとに、特別支援教室が実際にはどのような制度なのかを説明します。特別支援教室とは、情緒障害や発達障害のある子どもたちを中心に、教育の場でサポートを必要とする子どもたちにサポートを提供しようとする制度です。基本的には、現在の「情緒障害等通級指導学級」(以下「通級」とする)を置き換えるものだとされています。ただし、「通級」には、情緒障害や発達障害以外の障害(吃音や難聴など)に関連したサポートを行うものもあります。ここで紹介する特別支援教室は、主に情緒障害や発達障害に関連した制度ですので、それ以外の「通級」までまとめて特別支援教室に置き換わるわけではないことに注意が必要です。特別支援教室の最大の特徴は、子どもたちが普段通っている学校でそのまま支援を受けられるということです。これまでは、障害のある子どもたちが特別な支援・サポートを受ける際に、普段通っている学校とは別の学校の「通級」に通ったり、特別支援学級や特別支援学校に籍を置く必要がある場合も少なくありませんでした。しかし、特別支援教室は各小学校にそれぞれ導入されます。2つの学校に通う必要がなくなることで、特別支援教育を受ける子どもたちの負担が軽くなることが期待されています。また、特別支援学級や特別支援学校でのサポートまでは必要としない通常学級に在籍する子どもが、個別のニーズに合わせて弾力的な支援が受けやすくなると考えられます。特別支援教室で教える内容は、基本的には情緒障害等通級指導学級(通級)と同じです。つまり、子どもの障害に応じて、障害の状態に応じて「自立活動」や「教科の補充指導」などが、それぞれに合った方法で指導されます。特別支援教室で指導を受けられるのは、情緒障害や発達障害のあるお子さんです。東京都は、対象として通常学級での学習におおむね参加できる「高機能自閉症・アスペルガー症候群」「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」「学習障害(LD)」を挙げています。例えば高機能自閉症・アスペルガー症候群の子どもがコミュニケーションを取るのが苦手な場合、ロールプレイなどで適切な会話を学んだり、相手の気持ちを考えるなどの指導が行われます。また、学習障害がある場合、自分に合った学習方法を習得するための指導なども行われます。現在のところ、それ以外の障害(吃音や難聴など)に関連して「通級」に通っているお子さんについては、特別支援教室での指導は想定されていません。出典 : 特別支援教室に携わる人として、「巡回指導教員」「特別支援教室専門員」「臨床発達心理士等」という役割が新たに定められました。「通級」の担当教員は、役割の名前が「巡回指導教員」に変わります。巡回指導教員は、「通級」と同じように特別支援教室で子どもに指導をするほか、在籍する通常教室の担任と密に連携し、特別支援教育を受ける子どもだけでなく子どもが在籍するクラスでも連携して支援を行い、担任に助言をします。「特別支援教室専門員」は、特別支援教室の導入によって新しく配置されます。非常勤の職員で、特別支援教育で必要になる教材を作ったり、対象となる子どもの行動を記録したりします。新たに「臨床発達心理士等」も巡回することになります。「臨床発達心理士」「特別支援教育士」「学校心理士」の資格を持っている人が子どもの行動観察を行い、障害の状態を把握し、巡回指導教員や担任教員に専門的な指導を行います。東京都教育委員会「東京都公立学校特別支援教室専門員について」特別支援教室のメリットとデメリットは?「通級」と比べると?出典 : 保護者にとって最も気になるのが、既存の「通級」から何が変わるのか、また何が変わらないのかということではないでしょうか。ここでは、メリット・デメリットとともに説明します。「通級」が地域の拠点校にのみ設置されたのに対し、特別支援教室は各学校にそれぞれ設置されることが予定されています。つまり、これまでであれば、通級による指導を受けるために定期的に別の学校に出向く必要があったのに対し、これからは普段通っている学校で同じような指導を受けることができるようになります。Upload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホン2つの制度の違いは、基本的にはこの点に尽きます。たったこれだけの違いですが、「通級」から特別支援教室に変わることのメリットやデメリットは、必ずしも小さなものではありません。以下ではそれをいくつか紹介します。特別支援教室は、そもそもインクルーシブ教育を推進するための構想です。そのため、特別支援教室のメリットは、何といっても日本の教育をインクルーシブなものに変えるという点にあります。つまり、障害のある子どもたちと障害のない子どもたちが、それぞれに必要なサポートを受けつつ、基本的に分け隔てなく教育を受けることができる、そのような社会の実現に向けた第一歩が、この特別支援教室なのです。しかし、障害のある子どもたちや、その親御さんにも、直接的なメリットがあります。それは、これまでの「通級」とは違い、普段通っている学校でそのままサポートを受けられるということです。子どもにとっては別の学校に通う負担が減り、また障害に関連したサポートをする先生と、クラスの担任の先生との連携が、「通級」の場合よりも一層密になることが期待されます。しかし、特別支援教室にはデメリットや課題も指摘されています。まず、これまでの「通級指導学級」と同じ水準のサポートが特別支援教室で提供されるのかどうか、必ずしも明らかではありません。というのも、各学校に特別支援教室を導入するためには、これまでよりも明らかに多くのスタッフが必要です。加えて、特別支援教室では、将来的には「障害」の有無にかかわらず子どもたちの支援・サポートを行うことを目標としています。裏を返せば、これまでと同様に限られた資源の中で、これまでよりも多くの子どもたちにサポートをしようとしています。つまり、もしスタッフが十分に増えないまま特別支援教室を導入すれば、少ないスタッフでより多くの子どもを支援することになり、サポートの質が低下するおそれがあります。このことから「障害のある子ども」としてこれまで特別に支援を受けてきた子どもたちに対して、従来の特別支援教育が提供してきたサポートの質が保たれなくなるのではないか、と懸念する声もあります。もう一つ、重要な点があります。特に変化が苦手な自閉傾向がある子どもたちにとって、サポート環境が変わるということそのものが重大な出来事となりえます。この観点から見ると、特別支援教室という制度の良し悪しとは別に、制度の移行にスムーズに適応できるような仕組みについて考えていくことが求められます。特別支援教室とその他の制度との違いは?出典 : 障害のある子どもの学びの場は、今までご紹介してきた特別支援教室や「通級」だけではありません。日本の制度では、代表的なものに「特別支援学校」や「特別支援学級」があります。これらの制度は、それぞれどのように違うのでしょうか?特別支援学校とは、かつて「盲学校」「聾学校」「養護学校」と呼ばれていた学校で、現在でも学校名にこうした言葉がついている場合があります。一部の例外を除いて、基本的には障害のある子どもたちだけが学ぶ学校です(一部に、障害のない子どもたちが学ぶ学級を併置した「併置校」も存在します)。また、学校数自体が少ないので、寄宿舎がある特別支援学校もあります。特別支援学校では、特別支援学校学習指導要領に従い、その他の学校で教えられる教科に加えて、それとは異なる特有の教科が教えられます。こうした教科の多くは、学校を卒業した後に就く職業に関連した、職業訓練的な性格の強いものです。また、教える先生の資格という面から見ても、特別支援学校で教える先生は「特別支援学校教諭」という、一般の学校の先生とは異なる免許を持っています。特別支援教室と特別支援学校の最大の違いは、そもそも通う学校が違うという点です。これは比較的わかりやすい違いでしょう。ところで、自閉症・発達障害・学習障害などがある子どもたちを対象とする特別支援学校はあるのでしょうか。基本的には、現在のところありません。ただし、お子さんに別の障害がある場合には、その障害に応じて特別支援学校に通うことができるでしょう。たとえば、視覚障害と発達障害があるお子さんや、知的障害が合併した発達障害のあるお子さんのような場合です。特別支援学級は、かつては「特殊学級」と呼ばれていました。現在でも、関連条文から「81条学級」と呼ばれることがあります。(以下では「特別支援学級」に統一します。)特別支援学級は、一般の小中学校に置かれます(制度上は高校にも設置できますが、実例は多くありません)。多くの場合、障害の種類ごとに分かれ、学校ごとに「あすなろ学級」「なかよし学級」など様々な名前がついています。お子さんが特別支援学級で教育を受ける場合、その学校の通常学級ではなく特別支援学級に在籍することになります。そして、特別活動などを除き、通常学級の子どもたちとは違う教室で授業を受けることになります。制度上は、特別支援学級での教育は一般の小中学校と同じ学習指導要領に則った教育ですが、子どもの実態に応じて特別支援学校を参考にしたカリキュラムが組まれることもあります。先生の資格という面から見ると、特別支援学級で教える先生に求められる資格は、「特別支援学校教諭」ではなく「小学校教諭」や「中学校教諭」です。特別支援教室と特別支援学級の最大の違いは、お子さんがどの教室に所属するかです。特別支援教室の場合は、お子さんは通常学級に在籍し普段は他の子どもたちと同じ授業を受けつつ、必要に応じて別の教室で別の教育を受けることになります。これに対して特別支援学級の場合は、お子さんは特別支援学級に在籍し、別の教室で別の授業を受けることが基本となります。出典 : 最も違いがわかりにくいのが、特別支援教室と「情緒障害等通級指導教室」の違いではないでしょうか。情緒障害等通級指導教室は、「通級指導教室(情緒障害等)」「通級教室」「通級学級」などと書かれる場合が見られますが、どれも制度上は同じものです。以下ではまとめて「通級」と呼ぶことにします。先に説明したように、「通級」には、吃音や難聴のある子どもたちへのサポートを行うものもあります。通級と特別支援教室は、どちらの制度も、お子さんが障害のない子どもたちと同じ学校の同じ教室で学びつつ、必要に応じて別の教育を受けるという点で共通しています。どちらの制度も、特別支援学校(障害のない子どもたちとは別の学校に通う)とも、特別支援学級(障害のない子どもたちと同じ学校に通うけれども、普段から別教室で学ぶ)とも、大きく違う制度です。その上で、「通級」と特別支援教室の最大の違いは、その「別の教育を受ける」教室がどこにあるかです。「通級」の場合には、お子さんは別の教育を受けるために普段とは違う学校に出向く必要がありました。これに対し、特別支援教室は各学校に設置されますので、「通級」とは異なり別の学校に行く必要がありません。現在、特別支援教室は導入に向けたモデル事業が行われている段階で、その形態や指導内容についてはまだ研究や検討が行われています。そのため、自治体や学校によって、今回ご紹介した東京都の特別支援教室とは違う方法で導入されていたり、今後導入される可能性もあります。また、横浜市は、2004年に「横浜市障害児教育プラン」を定め、独自に先駆的な特別支援教育を進めてきました。その中で「特別支援教室」という言葉を使っています。しかし、この「特別支援教室」は、名称は同じでも文部科学省が推進する「特別支援教室」(この記事で説明しているもの)と必ずしも同じではありません。具体的な説明は省きますが、横浜市の「特別支援教室」は文部科学省の「特別支援教室」よりも少し狭い概念だと考えていただければよいでしょう。どのように特別支援教室が導入されているか、また今後導入されるかはそれぞれお住まいの地域によって異なるので注意が必要です。横浜市特別支援教育推進会議「「特別支援教室」の展開方策などについて 」(2006年8月)特別支援教室を利用するために必要なことは?出典 : 一例として、東京都中央区の事例を紹介します。ただし、実際に必要な手続きは自治体ごとに異なりますので、詳しくは学校や各自治体の担当者にお問い合わせください。まず、すでに「通級」を利用されていて新年度も継続して指導を受けたい場合です。この場合は、原則そのまま移行しますので、特別な手続きは必要ありません。新年度も継続して指導を受けたいという旨を、在籍校の担任教員や通級指導教員にご相談ください。次に、まだ「通級」を利用されていない場合についてです。新年度に新たに入学する子どもについては、就学相談でご相談ください。それ以外の子ども(すでに学校に通っており、新たに特別支援教育を受けようと考えの場合)については、在籍校の担任教員にご相談ください。このように、特別支援教室で指導を受けるためにまずすべきことは、新入生の場合は就学相談、それ以外の場合は担任教員への相談だといえます。繰り返しになりますが、具体的な手続きにつきましては学校や各自治体にお問い合わせください。特別支援教室|東京都中央区特別支援教室の今後は?出典 : 最後に、特別支援教室構想の展望について簡単にご紹介します。東京都の小学校では、モデル事業として特別支援教室の導入が既に始まっています。都の計画では、平成28年度以降、準備の整った市区町村から順次導入され、平成30年度までには全ての市区町村に特別支援教室が設置されることとなっています。これに対して、中学校への特別支援教室の導入は、まだ始まっていません。都の計画では、平成30年度以降、準備の整った市区町村から順次導入され、平成33年度までには全ての市区町村に特別支援教室が設置されることとなっています。東京都以外に目を向けると、いくつかの自治体では特別支援教室の導入に向けた動きが見られます。しかし、それらの動きは、基本的にはまだ本格化していません。東京都のモデル事業にならった特別支援教室が全国的な制度となるかどうかは、まだ未知数だといえます。東京都教育委員会「東京都特別支援教育推進計画(第二期)・第一次実施計画――共生社会の実現に向けた特別支援教育の推進」(2017年2月)まとめ出典 : 特別支援教室は、インクルーシブ教育を実現するための制度として、長年の構想を経てようやく実現に向かいつつある制度です。今後の展望にはまだ不確定な面が多くありますが、これから少しずつ、障害のある子どもたちが少ない負担で適切な教育を受けられる制度として確立していくことでしょう。既に「通級」で指導を受けられている場合はもちろん、そうでない場合でも、また「障害」という診断の有無にかかわらず、少しでもお子さんにとってメリットがあるとお考えであれば、一度担任の先生や各自治体に相談されることをおすすめします。
2017年03月30日学校によって異なりますが、持ち込んではいけないものを定められている学校も多く、中には携帯電話の持ち込みを禁止している学校も存在します。最近では、防犯のために携帯電話を持たせるべきだといった議論もあるようで、持ち込みはOKだけれども使用は禁止にしているといった学校もあるようです。さて、このような持ち込み禁止のものですが、生徒の持ち込みが発覚した場合、先生がその物品を没収することもあるようですが、先生には生徒の持ち物を没収する権利はあるのでしょうか?今回は先生にはどんな権利があるのかについて解説していきたいと思います。*画像はイメージです:■先生の懲戒権で可能学校教育法11条は、校長及び教員が児童、生徒、学生に懲戒を行うことができると定めています。法律では、懲戒権としてどこまで具体的な行為が可能かまでは明記されていません。しかし、生徒らの権利を制限する結果をもたらす懲戒権を認めた法律の趣旨は、校内秩序を維持し、教育目的の実現を図ることにあるので、このような懲戒権の存在目的からすれば、当然、教師の懲戒権には一定の限界があることになります。例えば、生徒の身体に対する懲戒行為については、特に禁止される体罰との区別の関係で、文科省が許される範囲についてガイドラインを示しています。これに対し、生徒の所有物を没収するという懲戒行為は、特にガイドラインなどがないようですが、懲戒権の存在趣旨から、学校教育指導に必要な範囲で、かつ、没収の態様、生徒の不利益等を勘案して相当な範囲に限り適法と考えられます。 ■処分はNGの可能性あり学校現場で行われる持ち物没収は、ほとんどの場合、在学中もしくは登校中に一時的に教師が取り上げて預かることをしているのみで、預かった生徒の所有物を学校側が勝手に処分することはありません。校則で持ち込み使用を禁止しているものを没収(一時預かり)することは、少なくとも在学中もしくは登校中に限っては、教育指導に必要であり、生徒の被る不利益も校則違反の制裁としてやむを得ない範囲にとどまっているといえ、懲戒権の行使として適法と考えられます。これに対し、例えば持ち込み禁止・使用禁止の生徒の携帯やゲーム機を預かるだけでなく、学校側が勝手に処分してしまうことは、生活指導として過剰といえ、懲戒権の範囲を超える可能性があります。ただし、タバコやお酒といった未成年禁制品は、学校外でも法律で禁止されている以上、教育指導として処分まで許されると考えてもよいでしょう。下校時間になったから返還、というわけにはいきません。また、没収の態様は、生徒にきちんと告知して取り上げるのが原則です。体育の授業中に生徒不在の教室の荷物の中からこっそり抜き取ることは、そうしないと校則違反の物を発見できない特段の事情がない限り、懲戒権行使の方法として相当性を欠き、違法とされる可能性があります。 ■懲戒権を超えた場合の責任懲戒権を超える没収があった場合は、損害賠償の他、窃盗罪の責任に問われる可能性があります。ただし、教育現場で行われている没収(一時預かり)が懲戒権の範囲を超える事例はほとんどありませんので、生徒学生の皆さんは若気の至りで先生に向かって無駄な抵抗を試みるのではなく、将来のためにも先生のいうことを素直に聞きましょう。 *この記事は2015年2月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)【画像】イメージです*よっし / PIXTA(ピクスタ)
2017年03月26日うちの学校の支援級、わが子に合ってる…?出典 : 「支援級か、通常級か…迷ってるけど、どうやって判断すればいいの?」「うちの子が通う学校の支援級、どんな環境だろう?どういうところを気にしたらいいの?」現在、希望者急増で過渡期にある、特別支援学級(以下、支援級)をめぐる状況は様々です。情報を探すと、「うちの子も是非お願いしたい!」と思える素晴らしい支援級もあれば、残念ながら、現場の事情が追いつかずに、十分な理解や子どもに合った対応が得られない支援級もあるようです。支援級をご検討の際には、実際に、お子さんが通う「その」支援級がどうなのか、自分の目で確かめてみることが必要です。長男が自ら通常級から支援級への転籍を希望した際、私はまず、特別支援コーディネーターの先生の案内で、実際にクラスを見学させて頂き、事前に疑問な点、不安な点の詳しいご説明をお願いし、長男本人も見学・体験させて頂きました。それでも、後から「もっと早く確認しておけば良かった」と思ったことも少なからずありました。そこで、支援級を選択する前に「確認してよかったこと」「確認しておけばよかったこと」の、判断のポイントを、あくまで「うちの経験上」ではありますが、楽々かあさんこと、大場美鈴がお伝えします。支援級見学の際にぜひ確認しておきたい!4つのポイント出典 : 長男が通っている支援級は、身体・知的に障害のあるお子さんのクラスと、長男のように、大きな知的・言葉の遅れの心配はないものの、発達障害の傾向のある子が中心となる、情緒級に分かれています。学校によっては、どの障害の状態のお子さんも一緒のクラスになる場合もあります。その場合でも、個別に学習内容を調節して頂ける場合はいいのですが、そうでない場合、お子さんに学習面での理解力がある程度あっても、学習内容や課題が簡単過ぎるケースがあります。そうなると本人の理解度とのミスマッチが起こり、その支援級がその子の力を伸ばせる環境とは言いがたくなる可能性があります。逆に情緒級がある場合も、その子の学習の進度に合わせた課題でない場合もあります。本人の能力や理解度に合わせた学習ができるかどうかは、よく確認しておきたいポイントの一つです。万が一合わない場合でも、先生と学習内容を調整して頂けるか、相談の余地があるかどうか、見極めておいたほうがいいでしょう。また、基本的に支援級の成績表は、「国語は漢字ドリルをがんばり、丁寧に漢字を書けるようになりました」というような、言葉による表現がされることが多いようです。特に将来的に、中学受験の可能性がある場合には、念のため希望した際には通常級と同じ評価で対応可能かどうか、確認しておいたほうがいいでしょう。(中学受験の際、全ての学校で成績表の提出が必須という訳ではないようですが、一部の入試日程や推薦、A.O.入試の場合などには、成績表のコピーの提出が必要になる場合があります。)出典 : 次に気をつけたいのは、今のところ、すべての支援級の担任の先生が、特別支援教育の知識・経験が豊富であるとは限らない、ということです。支援級の担任には、特別な資格などは必須ではなく、今まで通常級で担任してきた先生が、急に支援級を受け持つ場合も多いようです。長男の今年の担任も、長年通常級を受け持ったベテランの先生ですが、支援級の担任は人生初でした。ただし私は、支援に詳しくない先生=子どもにとって良くない先生、とは限らないと思っています。確かに、凸凹のある子に伝わりやすい方法を多く知っている先生なら心強いと思います。しかし、詳しい先生1人に負担がかかり過ぎてしまったり、クラスの他のお子さんの状況などによって、少人数であっても十分に子ども一人ひとりを見ることができない…など、先生お一人の力では解決できない現場の事情がある場合もあります。そのため支援に対する知識・経験の有無で、一概には判断できないと思います。もし、先生が支援に詳しくないからと、あからさまに保護者が落胆してしまうと、それが子どもや先生にも伝わって、その後の信頼関係に影響が出てしまうかもしれません。私は、知識・経験の有無よりも、・先生が子どもを肯定的に見ようとしてくれるか・子どもに合わせた指導をしてくれるか・親の話に耳を傾ける余力があるかのほうが大事だと思っています。しかし、見学の時点で気持ちよく応対してくれた先生に会えたとしても、翌年に我が子を担任してくれるとは限らないというのは注意したい点です。通常級に比べれば、支援級の先生は比較的長く同じクラスを担当することが多いようですが、異動がないわけではありません。また、大変残念なことながら、今まで毎年のように支援級の補助教員や介助員の先生が、年の途中で1人、2人とお辞めになってしまうことも、私は学校のお便りで度々知らされてきました。厳しい現場の現実があるように感じます。出典 : 人事異動がある先生方と違い、子どもたちは比較的同じメンバーでともに支援級で過ごすことが多いです。もちろん、入学や卒業、転籍などによる入れ替わりはありますが、クラス替えもなく、ほぼ同じメンバーで何年間も過ごすことになります。支援級は、学年を越えて、多種多様な子ども達の集まりとなるため、それが合う子、合わない子がいると思います。支援級の低学年のお子さんは、かなり自由気ままな印象がしたりで、見慣れてないと「これで大丈夫かしら…」と少々不安に感じられるかもしれません。そういう時は、何年もその環境で過ごしてきた、高学年のお子さんの様子が参考になると思います。その子なりに落ち着いていたり、交流級に意欲的に参加している様子が見られれば、その支援級の環境がプラスに働いていると受け取ってもいいのではないかと私は思っています。また、掲示物が破れっぱなしになっていないか、といった備品の様子、ロッカーに分かりやすいマークなどの工夫があるか、といった教室環境も、その支援級が安定しているかの参考になると思います。(ちなみに私は、教室の備品の乱れが放置されている場合、先生に余裕がなく、かなりお疲れ気味…というシグナルだと受け取っています。)出典 : 私が見学した時、1クラス6~7名と聞いていた支援級の情緒クラスには、いつも低学年の2~3人のお子さんしかいませんでした。他のお子さんは「交流級」に行っているのだそうです。長男の学校の場合、大抵は学年が上がるほど交流級で過ごす時間が増えていき、最終的に通常級に移籍する子も多いそうです。ご家庭で「いずれは、できれば通常級へ」と希望している場合には、交流級の活用状況は要チェックです(また、そもそも支援級から通常級への転籍が可能かどうか、よく確認しておく必要がある学校もあるようです)。交流級の活用状況は学校によって様々です。長男の小学校はかなり積極的なほうだと思います。後に担任の先生からその理由を伺うと、「年々、支援級への希望者が増えているので、◯太郎くんのように、交流級の授業に意欲がでてきたお子さんは、どんどん”卒業”して、通常級に戻って頂けると助かります」…とのこと。なかなか厳しい内情もうかがえます。とはいえ交流級を充分に活用できている学校は、通常級の子達も支援級の子に日頃から馴染んでおり、支援級”卒業”後も、比較的クラスに溶け込みやすいのではないかと思います。交流級の活用については、見学時、私はあまり気にしていませんでした。でも今思うと、重要なポイントだったと思います。どんな状況の支援級も、本人が体験してみるのがイチバン!出典 : 見学をする際には、参観日のようなよそ行きの状態ではなく、支援級のありのままの状態を子ども本人が、できるだけ何回も見られるほうがベターです。長男が普通級から支援級へ転籍する前に、私は長男本人が何度も支援級を見学・体験できるよう、お願いしました。でも見学を予定していたある日、突然見学がキャンセルになったことがありました。先生によると、「今日は、落ち着けてないお子さんがいたので、見学は中止させて頂きました。また日を改めて、予定を調整させて下さい」とのこと。それを聞いて、私はこう言いました。「是非、そういう時も本人に見せてください。ご迷惑になるようでしたら、廊下からでも構いませんので。支援級は、皆が落ち着いている時もあれば、そうでない時もあることを、本人が十分知って、納得したうえで転籍したいです。」支援級は、長男と同じように、あるいはそれ以上に、特別な配慮・支援を必要とするお子さんの集まりです。当然のことながら、少人数とはいえ、いつもクラス全体が落ち着いているとは限りません。そんな支援級で過ごすイメージを本人が持てると、入級後の環境の変化にもついていき易いと思います。長男の場合は実際に何度も授業を見学させて頂き、給食の時間を支援級の子達と一緒に過ごしたり、といった機会を作って頂きました。すると、「今日はすんごい泣いてる子もいたよ」「一年の子が途中で教室出てっちゃった」なんて言うときもありました。私は「支援級はそういう時もあるよ。それでもいい?」と聞きましたが、長男は「それでもいい。支援級に行く」と決心は変わりませんでした。「うちの」支援級には良いところも、そうでないところもあることを、十分納得の上で転籍をした私達。結果的にこの一年は、長男の成長のプラスになりました。実際に自分の目で確かめて、後悔のない選択を出典 : 長男の先生からの話にもありましたが、近年、支援級を希望する子どもが急増している傾向があります。なかなか現場がそれに追いつけないという裏事情もあり、全てが保護者の希望どおり、理想どおりという訳にはいかない場合も、多いかと思います。それでも、事前にメリット・デメリットを良く比較検討し、納得のゆくまで説明をして頂き、実際に自分の目で確かめて、体験して、自分たちの意思で決められれば、後悔するリスクを減らすことができます。学校生活でお子さんが自信をつけてゆける、プラスの選択ができるよう、祈っています。Upload By 楽々かあさん大場美鈴(著), 汐見稔幸(監修), 『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』ポプラ社, 2017年
2017年03月13日アイドルグループ・AKB48のチームBが11日、東京・秋葉原のAKB48劇場で「東日本大震災復興支援特別公演~誰かのためにプロジェクト2017~」を行った。公演の終盤に、夜に同劇場で公演を行うHKT48のメンバーを呼び込み、一緒に「掌が語ること」と「誰かのために」を歌唱。6年前、震災が起きた14時46分には、震災にて犠牲になられた方々に哀悼の意を表し、メンバーが公演を観覧中のファンとともに黙とうした。渡辺麻友は「あの日あの時の気持ちを思い出して歌を歌って、黙とうを捧げさせていただきました」と話し、「私たちの支援活動は微力かもしれませんが、何かに繋がればいいなという希望と思いを込めて、これからも続けていきたいと思います」と思いを伝えた。柏木由紀は、今月4日の復興支援ライブを振り返って「私は福島県に訪問させていただいたのですが、幼稚園児や小学生のお客さんが多数来てくださいました。6年前の2011年のクリスマスに訪問した時に、その時に会った福島県の子供達と『また来るね』って話をしていたので、そのときの約束を果たせたのがすごくうれしかったです」とコメント。「みんなが歌などで元気になってくれるので、私たちにもできる事があるんだな、まだまだ続けていきたいなと思いました」と決意を述べた。公演後には、劇場ロビーにて義援金の募金が行われたほか、チャリティTシャツも販売。これらは復興支援に役立てられる。この日は、全国の各劇場で「東日本大震災復興支援特別公演~誰かのためにプロジェクト2017~」を開催。NMB48は、地元・大阪の京セラドームで「『誰かのために』プロジェクト What can I do for someone? in 京セラドーム大阪」を行った。(C)AKS
2017年03月11日特別支援学校に通う息子が、将来「働く」ということ出典 : こんにちは。『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』著者の立石美津子です。私には、知的な遅れを伴う自閉症の息子がいます。現在、特別支援学校高等部に通う1年生です。特別支援学校高等部のカリキュラムは、一般的な高等学校とは少し異なります。国語や数学と言った教科学習だけでなく、入学直後から3年後の就労に向けて必要な知識、技能、態度についての学習が中心になります。それに加えて、木工、農園芸、食品加工、ビルクリーニングなどの作業学習も行われます。今回は、障害のある子どもが「働く」とはどういうことなのか、働くことで得られる喜びとは何なのか考えてみました。知的な遅れがある自閉症の息子。その人生の先にあるものは出典 : お子さんが特別支援学校の高等部を卒業した先輩ママが、ある日こんなことを呟いていました。「18歳までは“学校”という障害があっても守られた環境のなかで、先生や友達と一緒に充実した毎日を送っていた。でも卒業後は朝から夕方まで作業所でナッツをビニール袋に詰める作業をしている。わが子はこれで幸せなんだろうか…?」「猛暑の中で、来る日も来る日も公園のトイレ清掃。わが子の人生は、これでよかったのだろうか…」この話を聞いた私は、息子が支援学校を卒業してから1日中、袋詰めの作業をしている姿を想像しました。そして…こんなこと言ってはいけないのかもしれませんが…「なんのためにこれまで一生懸命育ててきたんだろう」と悲しい気持ちになってしまいました。誕生したときの喜び、診断されたあとのショック、療育に必死に通った過去の日々が蘇り……。どんなに一生懸命学校に通わせたり、療育をして本人に出来ること増やしたとしても、その先にあるのは結局ひたすら単純作業をこなす人生なのかもしれない、そう考えてしまいました。授業参観で、ひたすら単純作業を行う息子を見て。浮かんでしまった正直な気持ちUpload By 立石美津子昨年の7月に、息子が通う高等部の授業見学に行きました。知的障害の度合いが重度の子は「園芸班」「ホームサービス班」「工芸班」「紙工芸班」に、中度・軽度の子は「事務班」「接客班」「清掃班」「食品加工班」「施設管理班」に分かれて、将来の就労に向けての訓練を受けていました。施設班のグループの生徒達は猛暑のなか、ほうきの毛束についたゴミをひたすらとる作業をしていました。これを“けがき”と呼ぶそうです。(私はそんな言葉があることを初めて知りました)接客班の生徒達はテーブルを囲んで輪になり、一人ずつテーブルを拭く練習をしていました。私語禁止のなか、左端から右端、上から下とロボットのようにテーブルを拭いている子は「よくできました」と先生に言われ、丸く拭いた子は「やり直しです」と注意されます。息子は事務班でしたが、ネクタイをしめながら、同じ紙を3時間大型カッターで切る訓練を受けていました。Upload By 立石美津子人として生まれ、 15 歳まで義務教育を受け、高等部で職業訓練を受けて…。社会からたくさんの恩恵をもらったぶん、息子も働いて社会に恩返しするのが望ましいのでしょう。また息子が将来自立するためにも、働くための技能を身につける必要があります。特別支援学校という設備の整った恵まれた環境で、息子に合った訓練を受けられることは幸せなことです。そういう意味で息子は充実した高校生活を送れていると思います。しかし頭でそれを分かってはいながらも、延々と同じ作業を続ける息子の姿を見ていたら涙が出てきました。「普通の子に産まれていたら、もっと楽しい変化のある充実した高校生活なんだろうな…」という気持ちが正直に、浮かんできました。他のママも「ちょっとショックだった」とこぼしていました。働く喜びは、息子自身が決めるものそれでも気を取り直して授業参観の日の夕方、帰宅した息子に「事務班でのお仕事の練習、すごーくがんばっていたね」と褒めてやりました。すると、「カッティング上手になったから綺麗に切れた」と嬉しそうに自信満々にこんなのを見せてくれました。Upload By 立石美津子Upload By 立石美津子そして、息子の様子を見て気がつきました。「そうだ。『こんな作業つまらないだろうな』『苦痛だろうな』 『こんな簡単な作業しかできないなんて不憫だ』なんて感じてしまうのは、健常者である私の奢った感情だったんだ」私がどう思っていようと、何も関係がないのです。息子さえ「この作業が楽しい」と感じていれば、それが息子の働く喜びなのです。公園清掃だって箱折り作業だって、工賃が1万円以下の仕事だって、それが本人の適性に合っていてやりがいを感じていれば、「それが最高の仕事なのだ」と思いました。仕事や職業に感じる価値ややりがいを決めるのは私ではなく、本人なのです。Upload By 立石美津子そんなことを考えながらも、心のどこかでは、「ああ、どんどん年齢を重ねないで欲しい。就労のことなんか考えないでいられたらなあ~。ずっとかわいい子どもでいて欲しいなあ」「温かい先生に見守られている学校のような居場所が、 18 歳以降もあったらいいなあ」と思うのでした。これって、親のエゴなんでしょうか?皆さんはどう思いますか?出典 :
2017年03月05日総務省による、発達障害者の支援に関する実態調査。その結果は?出典 : 年1月20日、総務省は、文部科学省と厚生労働省に対し、発達障害者支援に関する行政評価と監視の結果に基づく勧告を行いました。この調査は、保育所・学校現場を含む、都道府県・市町村における発達障害者支援の実態を初めて調査したものとなります。前回の記事では、早期発見に関する実態の調査報告と総務省の勧告内容についてお伝えしました。今回の記事では、発達障害がある子どもへの支援状況と情報の引継ぎに関する調査・勧告内容についてご紹介します。発達障害児に対する支援「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」とは出典 : 発達障害を含む障害のある児童生徒の指導について、学校等では、児童生徒それぞれに「個別の教育支援計画」(以下「支援計画」)と「個別の指導計画」(以下「指導計画」)を「必要に応じ」作成し、指導と支援を行っていくこととされています。(4) 関係機関との連携を図った「個別の教育支援計画」の策定と活用特別支援学校においては、長期的な視点に立ち、乳幼児期から学校卒業後まで一貫した教育的支援を行うため、医療、福祉、労働等の様々な側面からの取組を含めた「個別の教育支援計画」を活用した効果的な支援を進めること。また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の教育支援計画」を策定するなど、関係機関と連携を図った効果的な支援を進めること。(5) 「個別の指導計画」の作成特別支援学校においては、幼児児童生徒の障害の重度・重複化、多様化等に対応した教育を一層進めるため、「個別の指導計画」を活用した一層の指導の充実を進めること。また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の指導計画」を作成するなど、一人一人に応じた教育を進めること。特別支援教育の推進について(通知)なお、2016年の改正発達障害者支援法においても、発達障害児が年齢及び能力に応じ、かつその特性を踏まえた十分な教育を受けられるようにするために必要な措置として、これらの支援計画及び指導計画の作成を推進することが具体的に明示されています。法律第六十四号(平二八・六・三) ◎発達障害者支援法の一部を改正する法律支援計画や指導計画、実際にどれくらい作成されているの?その効果は?出典 : しかし支援計画に関していうと、必ずしも発達障害のある児童全員に作成されていないのが現状のようです。この度の総務省の調査で調査対象となった111の保育園および幼小中高校において、発達障害児(発達障害が疑われる児童生徒を含む)は計2,431人でした。そのうち支援計画作成が「必要」と判断された児童生徒は829人であり、さらにそのうち支援計画を作成済みの児童生徒は690人でした。支援計画作成が「必要」と判断されたものの、未作成の生徒が139人いることが明らかになりました。未作成の理由としては、教員の業務が多忙で作成する時間の確保が困難であるため、保護者の同意が得られないため、などとされています。また、支援計画作成が「必要」と判断する範囲に関して、111の調査対象のうち19の保育園および幼小中高校では、医師の診断がある児童生徒のみなど、計画の作成対象をかなり限定した範囲にとどめている例がみられました。そしてこうした計画作成対象が限定されていたことの結果として、支援計画や指導計画が作成されていなかった生徒の中には、不登校等の二次障害が生じている例がみられたとのことです。問題行動の度合いが高くない生徒には支援計画及び指導計画を作成することとしていないため、発達障害の診断を受けているにもかかわらず、両計画とも作成されず、結果として、学習障害等で授業についていけずに、平成22年度から26年度までの間に、不登校4人、休学1人、退学1人が発生した。一方、調査した保育所及び学校において、支援計画又は指導計画を作成したことにより、特別支援学校など関係機関による助言や保護者との連携等が図られ状態が改善するなど効果的な支援が行われている例が30事例みられました。総務省は文部科学省と厚生労働省に対し、保育所及び学校において、一律の基準によって支援計画及び指導計画の作成対象を限定するのではなく、個々の児童生徒の特性や状態を踏まえ、支援が必要な児童生徒に対して着実に作成されるよう、作成対象とすべき児童生徒についての考え方を示すことを勧告しました。継続的な支援のために欠かせない、進学先等への情報の引き継ぎ。しかし現状は…出典 : 支援計画や指導計画の作成だけでなく、支援の前提となる子どもに関する情報の引き継ぎ共有も重要です。こうした情報共有の実態についても調査がなされました。具体的には、・乳幼児健診の結果として発達障害の疑いがあるとする情報を保育所へ渡す取り組み・保育所や幼稚園で作成された支援計画等に適宜資料の追加等を行った上で、障害のある児童生徒等に関する情報を一元化し、支援計画や相談支援ファイル等として小・中学校等に引き継ぐ取り組みなど、関係機関同士の情報の引き継ぎ・共有が十分ではないという勧告がなされています。しかし、情報共有が十分に進まない背景には、個人情報保護の観点からの障壁もあるようです。そのことが明らかになったのは、調査対象となった31市町村が実施した乳幼児健診結果の引き継ぎ状況の調査からです。平成26年度に実施した乳幼児健診の結果の、進学先(保育所、幼稚園等)への引き継ぎ状況をみると、30市町村で「引継ぎを行うこと」という方針を立てているものの、個人情報保護の観点から、保護者の同意が得られた場合であって、保育所等から情報提供の依頼があった児童のみ引き継ぐとしている自治体が14市町村にのぼりました。つまり、半数近くの市町村では、保育所等からの働きかけがなければ引継ぎが行われない状況であるということです。調査した市町村の中には、乳幼児健診の結果の進学先への引継ぎ時における保護者の同意取得については、次のような取組を行っている例がみられたとのことです。乳幼児健診の問診票の中に、健診結果等について、保育所等の関係機関と連絡を取り合う場合がある旨をあらかじめ記載し、これに同意するか同意しないかを選択させることとしている。児童が幼稚園に入園する前に、心配事のある保護者に「保護者との連携シート」の記載を依頼しており、同シートにより、幼稚園が保健師等の関係機関等から情報を入手する旨の同意を得ている。また、乳幼児健診の結果が引き継がれなかったことにより、対応が困難になった例もみられたとのことです。市外からの転入により入所した児童について、転出元の市町村での乳幼児健診結果(発達障害の疑いあり)を把握できなかったため、支援計画の作成、個別の配慮、小学校への引継ぎ等を行わなかったところ、小学校で集団行動になじめない状況となり、急遽支援が必要となった歳児健診及び3歳児健診で紹介された親子教室において、軽度な知的障害を伴う発達障害の疑いを指摘されたが、それらの結果が、入園先の幼稚園に伝わらず、児童の知的障害の把握が遅れた。その結果、児童は、特別支援学級へ入級したが、知的学級ではなく、自閉・情緒学級へ入級することとなり、児童に対する教育的配慮や課題設定を行うのに数箇月要した同様に、進学の際や転校の際における引き継ぎの不備も指摘されており、総務省は厚生労働省に対して、市町村に乳幼児健診の結果等の進学先への引継ぎの重要性を周知し、積極的な引継ぎを促進することを勧告しました。他にも総務省は、厚生労働省と文部科学省に対して、保育所・幼稚園から大学・就労先までの各段階において、発達障害児に対する必要な支援内容等が文書により適切に引き継がれるような呼びかけを行なっています。都道府県、市町村、都道府県教育委員会及び市町村教育委員会に対しては、・具体例を挙げて支援内容の引き継ぎを周知すること・支援計画及び指導計画については、引継ぎまでの適切な保存・管理を求めるとともに、具体的な引継方法を提示し、確実に引き継がれるよう徹底を図ることを勧告しました。「切れ目のない支援」を実現するための課題は出典 : 情報の引き継ぎは、切れ目のない支援を推進する上で不可欠だと言われています。そして文部科学省でも障害のある子どもに対して小学校から高校まで一貫した支援ができるよう、進学先の学校へも引き継げる「個別カルテ(仮称)」の作成を学校に義務付ける方針を固め、推進しています。また逆に保育所から専門機関に相談するようすすめられる場合もあるようです。現在、4歳の男の子を持っていますが、引越しして、2ヶ月前ほどから、転園した先の、保育園の先生から、落ち着きがなく、みんなと一緒のことができない、話す単語が少ない、との指摘を受けて、療育センターに問い合わせをするように、言われました。保育園で発達障害を疑われました。3歳1ヶ月の男児です。保育センターの心理相談の結果、問題はなさそうでした。しかしモヤモヤと心配が晴れず、何か息子のためにできることはないかなと焦っています。親や支援者が発達障害をどう理解するか、そして個人情報保護や当事者、家族の不安に配慮する仕組みの構築が、実際に切れ目のない支援を実現するためには必要なのではないでしょうか。
2017年01月30日普通級から特別支援学級へと転学した長男。過ごしやすさはどう変化した?出典 : 小5の長男には、自閉症スペクトラム・ADHD・学習障害の診断が出ています。就学相談では普通学級を勧められて小学校へ入学しました。ところが学年が上がるごとに学習障害に苦しめられ、学校に行くことができなくなった長男。いろいろ悩みましたが夫婦で話し合った結果、今年の2学期から知的障害対象の特別支援学級に転学しました。長男が現在通っている支援学級では、3人の担任と4人の介助員とで、1年生から6年生まで十数人の子どもたちを指導しています。授業では、学年ごと3、4人の少人数指導で、1人ひとりの実態と目標に合わせた課題の提示をしてくれるので、今まで授業のスピードについて行けず、わからなくても聞くこともできずに、ただ授業時間を耐えていた長男にとっては、やっと「学べる」授業を受けられるようになったのではないかと思います。生活面では、朝学習と朝の会から始まる規則正しいスケジュールで時間にもゆとりがあり、スケジュール変更や慌ただしいことが苦手な長男にとっては、過ごしやすいようです。また、友達と遊ぶことが大好きな長男に、新しい学校で友達ができるのか?楽しく遊べるようになるのだろうか?という不安もありました。今は同じ学年の交流学級には行かず、支援級だけで学習や生活をしています。その中で、下級生の面倒をよく見るので慕われているらしく、6年生のお兄さんとは意気投合し、放課後お互いの家で遊ぶほど仲良くなることができました。先生方のフォローなどがきっと行き届いていることもあるのでしょうが、すぐにみんなと仲良くなれて、休み時間には楽しく遊ぶ毎日を送れていること、本当に良かったと胸をなでおろしています。それでも、悩みや不安は尽きなくて…出典 : 彼の特性に合ったカリキュラムにはなったけれど、長男本人にとっても、以前より学校生活は楽になったのかな…?私たち親にとっては、それが何より気になるところです。家での様子は、以前に比べて穏やかになったと感じています。イライラして当たり散らしたり、自分を責めて大泣きしたりすることは減ってきました。それでもたまに、「学校いやだな~」「今日も疲れちゃったよ…」という言葉を長男から聞くたびに、「なんで?何があったの?何がまだ辛いの?」とビクビクしてしまう私がいます。支援級に移ってもまだ毎日が辛いなら、後はどうしてあげたらいいの?わからない…。また、将来のことを夫婦で話し合うたびに、「支援級に移ったことで、長男が将来やりたいことができなくなったらどうしよう…」という弱音を吐いてしまいます。今まで辛そうな長男をずっと見てきたので、親の私が少し過敏になっているのかもしれません。そんなある日、長男が自ら語ってくれた現在の心境出典 : そんなある日のことでした。大好きなハンバーガーショップでニコニコとお昼を食べていた長男が、私と2人きりになったとき、急に話し始めました。長男「お母さんあのね…、今ね、毎日楽しいな~と思えるんだ。大変なこともあるけど、前より楽になった感じ。」私は急に話し出した長男にビックリしましたが、笑顔で「うんうん」と聞くことにしました。長男「そうだな~…小さい頃の僕に戻った感じかな。いろんなことが楽しいって思えるし、嫌なことがあっても、まあいっかって思えるんだ。幼稚園の年中さんぐらいからね、僕ずっと辛かったんだ。グラグラする吊り橋にずっと乗ってるみたいで、いつかヒモがブチっと切れるんじゃないかって、怖かった。今思えば、1番辛かったのが、3年生の頃だったな。色んなことがワーッて僕を襲ってきて、どうしたらいいのかわからなかった。今はね、大丈夫だなって、思えるんだよ。」私たちの選択は適切だった。長男に、そう励まされた気がして…出典 : 私はただ笑って、彼の頭を優しくなでていました。次男がそのとき席に戻って来なかったら、たぶん泣いていたでしょう。長男は、幼児の頃から自分が抱えている辛さを自覚していたのでしょう。でも、上手に表現できなかったし、助けを求めることもできなかった。ただただ「幼稚園行きたくない、学校行きたくない。」と言って泣くことしかできない彼に、当時の私は「わがまま言わないの!」と理解してあげられなかった…。どれほど絶望的で救いがなく、辛い毎日だったのか…。その頃の気持ちを客観的に捉え、今こうして表現できる長男に本当に驚きました。そして、今を「楽しい!」と笑顔で話してくれた長男に、私の方が救われたような気がしたのでした。夫婦で思い出したのは、子育てで最も大切なことだった出典 : ちょうどその日の翌日、夫が嬉しそうに私に話しかけてきました。たまたま通勤途中に長男の学校を通りかかったところ、支援級のみんなで朝マラソンをしている長男に会ったそうです。友だちと笑顔で話したり、じゃれあったり…本当に楽しそうだったとのこと。夫「俺、思い出したんだよ。長男は小さい時、あんなふうに底抜けに楽しそうな笑顔をする子だったよね。長いことあんな笑顔見ていなかった気がするけど、そういえば最近また見られるようになったと思わない?」ああ…支援級に移って、あの子は本当に良かったんだ。やっと心底、そう思えるようになった瞬間でした。不安は尽きない。それでも「楽しい!」と思える日々が、きっと将来への道につながっている出典 : それでも、将来への不安はやはりあります。彼が幸せな大人になるための道を、これからも親子で真剣に模索していかなくてはならないし、支援級にいたことで辛い思いをすることが、今後出てくるかもしれません。それでも、今を「楽しい!」と言って、前を向いて生きていける。本来、長男が持っている明るさや優しさを活かし、伸ばすことができる。そんな長男なら、きっと困難にぶつかっても乗り越え、自分の道を前へと進んで行けるんじゃないか…。今の彼を見ると、そう思えるのです。私たち親にできることは、彼が「楽しい!」と思える毎日を過ごせるよう、環境を整えていくこと。そして、困難にぶつかったときに、「一緒にいるよ」と伝えて、共に乗り越えていくこと。これからも揺らぐことはあると思いますが、改めて親として彼を支え、見守っていきたいと思います。
2017年01月23日特別支援教育就学奨励費とは?出典 : 特別支援教育就学奨励費とは、お子さんが特別支援学校や特別支援学級などに通っている場合に、学校で使う勉強道具から通学費、給食費などに必要な費用の一部を、国や地方自治体が補ってくれるというサービスです。文部科学省ではこの制度を以下のように定義しています。障害のある幼児児童生徒が特別支援学校や小学校・中学校の特別支援学級などで学ぶ際に、保護者が負担する教育関係経費について、家庭の経済状況などに応じ、国及び地方公共団体が補助する仕組みです。なお、平成25年度より、通常の学級で学ぶ児童生徒(学校教育法施行令第22条の3に定める障害の程度に該当)についても補助対象に拡充しています。つまり義務教育において、障害のあるお子さんを持つ保護者の方の負担が軽くなるよう、国や地方公共団体が経済的な補助をしていこうと考えられたのがこの制度なのです。特別支援学校や特別支援学級に在籍しているお子さんだけでなく、普通の学級で学んでいるお子さんでも障害の程度によっては支援が受けられるということですが、具体的にはどのような子ども、家庭が対象となっているのでしょうか?特別支援教育就学奨励費の支援対象となる人出典 : 上記の文部科学省の規定によると、この事業の対象となるのは以下の2つのどちらかに当てはまる子どもとなっています。なお通っている学校が私立でも公立でも、この制度を利用することが可能です。1.特別支援学校、特別支援学級に通っている2.サービスを提供する市町村にある小学校または中学校に在学しており、学校教育法施行令第22条の3に定める障害の程度に当てはまる障害がある学校教育法施行令が定める障害の程度については、以下のページから見ることが可能です。磐田市「特別支援教育就学奨励費について」ただし上の条件に当てはまっていても、生活保護や要保護児童生徒援助費補助金などを受けている場合は対象外となります。なお自治体によっては、通常学級に通われるお子さんへの支援を認めるために事前に教育相談をする必要がある場合もあります。参考:学校教育法施行令参考:練馬区「就学奨励費」参考:札幌市「特別支援教育就学奨励費」特別支援教育就学奨励費ではどんな支援が受けられるの?出典 : では、この制度では何に対しての費用が補助対象となるのでしょうか?文部科学省の取り決めによると、下のようなものが対象として挙げられています。対象とする経費は、通学費、給食費、教科書費、学用品費、修学旅行費、寄宿舎日用品費、寝具費、寄宿舎からの帰省費などがあります。この中には入学時に必要なランドセルや制服なども含まれています。実際に支給を受けられるのは小・中学在学中ですが、入学前に購入したものも含まれるので、申請する場合を考えてレシートや領収書を取っておくと良いでしょう。特別支援教育就学奨励費の支給額ってどのくらい?出典 : 実際の支給額は、保護者の経済的な負担の重さによって異なります。負担が大きいほどより多くの補助を受けられるシステムになっているのです。今回は東京都の場合を例にとってご説明します。東京都では保護者の収入額に応じて支弁区分というものが定められています。支弁とは支給されるものが金銭であるときに使われる言葉であり、支弁区分とは、支給の程度を定めるために振り分けられる段階のようなものです。支弁区分は子どもが施設等に入所している場合を除いて3つに分けられ、それぞれに応じて補助の割合が決まっています。支弁区分に応じた補助の割合は、下のようになっています。第1段階(収入額が生活保護基準の1.5倍未満)→全額補助第2段階(収入額が生活保護基準の1.5倍から2.5倍)→半額補助第3段階(収入額が生活保護基準の2.5倍以上)→補助なし自治体によっては3段階でも半額になるものがあるなど、補助の程度はさまざまです。ではこの1~3段階の収入額は、具体的にはどのように定められているのでしょうか。東京都では、下のような額を目安として世帯の状況が判断されています。Upload By 発達障害のキホン※ここでの「収入」とは、前年1年間(平成27年1月1日から同年12月31日まで)の世帯全員の総所得金額(給与所得のみの場合は給与所得控除後の額)を合計した額のことを差します。出典:東京都教育委員会「就学奨励事業のお知らせ」特別支援教育就学奨励費の申請方法出典 : 毎年春頃になると、学校からこの奨励費に関する案内がきます。受け取った案内に従い、必要な書類を学校指定の期限までにご提出ください。東京都では、必要な書類が以下の4つとなっています。ただし段階の程度や受給の有無によっても、必要な書類が変わってきます。購入した際のレシートや領収書がある場合は添付します。1.就学奨励費受給調書 - 就学奨励費の受給申請に必要な書類です。2.交通調書 - 交通費又は帰省費の受給申請に必要な書類です。3.支払金口座振替依頼書(新規・変更用) - 就学奨励費の振込支給に必要な書類です。4.住民税関係書類 - 「課税(非課税)証明書」特別支援教育就学奨励費の支給方法出典 : 東京都では、奨励費を支給する際に「金銭支給」と「現物支給」の2つの方法を取っています。「金銭支給」とは、実際に必要となる費用を口座振り込みや現金によって支給してもらうというものです。一方で「現物支給」とは、直接必要な額を受け取るのではなく、本当であればかかる費用を、代わりに負担してもらうというものです。たとえば、給食費を学校から納付してもらったり、修学旅行にかかる費用を学校から業者に支払ってもらったりするというのがこの現物支給です。参考:東京都教育委員会まとめ出典 : 今回は基本的に東京都の例を挙げながらご説明しましたが、この制度の詳細は地方自治体によって大きく異なります。ご利用を考えている際は、ぜひお住まいの地方自治体や、在学している、またはする予定の学校にお問い合わせください。障害があると、通院や薬だけでなく療育などいろいろな場面でお金がかかりますよね。また発達障害のあるお子さんをお持ちの方には、お子さんがすぐに物をなくしたり壊したりしてしまうということから、経済的な負担を感じている方もいるかもしれません。この特別教育就業支援奨励費は、そんな経済的な負担を少しでも軽くするために支援してくれるサービスです。今お子さんが学校に通っているという方も、来年度から学校に通い始めるという方も、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
2016年12月21日ことばの教室ってどんなところ?出典 : 小学校や中学校には、子どものさまざまな障害や困難に合わせた支援を行う、通級指導教室や特別支援学級が設置されています。「ことばの教室」とは、そのなかでも言語に障害のある子ども向けに設置された、通級指導教室と特別支援学級の通称です。また、ことばの教室は、「言語障害通級指導教室」、「言語障害特別支援学級」と呼称されたり、地域によっては「ことばときこえの教室」と呼ばれ、言語障害の支援と聴覚障害の支援が両方受けられる場所もあります。それは、言語を獲得し、言葉を発するのに聴覚(きこえ)が重要な役割をはたすためです。どちらか片方に障害があると、もう片方にも問題が生じる場合も多く、言葉を発することと聴覚に対する困りごとを同時に支援していく必要があります。通級指導教室や特別支援学級として設置されていることばの教室では、言語障害のある子どもへの支援を行っています。例えば言葉のおくれ、吃音(きつおん)などの話し言葉におけるリズムや声を出すための器官に障害がある構音障害に対して支援が行われます。また、障害の改善以外にも言葉に関する教科(例えば、国語、英語、音楽、算数、数学)の指導も行っています。通級指導教室とは、おおむね通常の学級の授業についていけるが、通常の学級の中で一部、特別な支援を必要とする子どもを対象に設置されている少人数教室です。通級指導教室に通う子どもは通常の学級に籍を置き、学習したり、給食を食べたりと通常学級でほとんどの時間を過ごします。そして、週に数時間、障害に合わせた個別の支援を受けるために通級指導教室へ通います。Upload By 発達障害のキホン一方、特別支援学級とは心身に障害があったり、発達に遅れがあったり、より手厚い指導・支援をより多くの時間必要とする子どもを対象に設置されている少人数学級です。特別支援学級へ通学する場合は、籍は特別支援学級に置きます。そして、体育や生活、道徳、課外活動をはじめ、一部の授業を通常学級の子どもと一緒に受けることが通例です。Upload By 発達障害のキホンどんな子どもがことばの教室に通うの?出典 : 言語障害のある子どもがことばの教室へ通います。言語障害と一口にいってもさまざまな種類があります。ここでは医学的言語障害ではなく、ことばの教室が対象としている言語障害について説明していきます。言語障害とは、話すため・言葉の発声のために必要な一連の動きに障害があることを言います。例えば、人は話す時にまず、頭の中で話す内容を考え、文章にします。次に音を出すための筋肉に脳から信号が出され肺による空気量の調節や声帯筋が運動し音がでます。次に音を声として発する鼻や口、舌の動きが調節され声となります。声は耳の聴覚によって感じられ、そして脳で言葉を言葉として理解します。言葉を話し、人とコミュニケーションをとるためには上記のような発声に関わる機能だけでなく、思考や社会性の発達、心理的問題や自己観の形成も深く関わってきます。そのため、言語障害は話すことに必要な器官の障害というだけでなく、話すことまた聞くことに問題がある障害を指します。ことばの教室は、言語障害のある子どもを対象にしていますが、通級指導教室と特別支援学級で、その対象が少し違います。ではどのように違うのでしょう。参考書籍:ピーター・B.デニシュ (著), エリオット・N.ピンソン (著)『話しことばの科学―その物理学と生物学』東京大学出版会/刊通級指導教室のことばの教室も、特別支援学級のことばの教室も以下のような子どもが対象となります。1. 唇の断裂(口蓋裂)や、音を発声させる器官(構音器官)のまひなどによる機能的障害のある子ども例) 声が鼻にかかったり、鼻に抜けてしまう。”さかな”の発音が”たかな”になってしまうようにサ行やカ行がうまく発音できないなど。2.b吃音などの話し言葉におけるリズム障害のある子ども例) ”きんぎょ”を”き、ききんぎょ”と言葉を繰り返してしまったり、”き...んぎょ”など言葉が詰まってしまうなど。3. 話す、聞くなど言語機能の基礎的事項に発達の遅れがあり、言葉の順序や表現に偏りのある子ども4. その他に上記のような障害に当てはまる子ども5. 言語障害の原因が上記でなく、他に原因がある子ども■「通級指導教室」のことばの教室に通う場合通級指導教室へ通う子どもは、多くの時間を通常の学級で過ごします。つまり、通常級に籍をおきながら、支援が必要な課題(ある特定の困りごとや、その困りごとから来る学習上の問題)だけを改善するために通級指導教室へ通い、そのほかの授業や活動は通常の学級で行います。そのため、通常の学級での集団行動や教員からの指示の聞き取りがある程度できる子どもに向いているでしょう。■「特別支援教室」のことばの教室に通う場合特別支援学級へ通う子どもは、逆に大半の時間を少人数の特別支援学級で過ごします。通級指導教室に通う子どもは一部の困りごとに対して支援を受けますが、特別支援学級に通う子どもは、困りごとへの支援に加え、国語や算数、社会などさまざまな教科の授業をうけます。特別支援学級に通うのは、通級指導教室に通う子どもに比べて、個別の支援の必要性が比較的大きい子どもです。また、通常の学級が1クラス35~40人に対し、特別支援学級は8人と少人数の編成です。ですので、落ち着いた環境で心理的な安定を保ちながら指導を受けたい子どもに向いているでしょう。ことばの教室で受けられる支援は?出典 : ことばの教室ではさまざまな支援や教育を受けることができます。通級指導教室と特別支援学級で共通した支援もあれば、異なる支援もあります。それらの点について詳しく説明していきます。通級指導教室や特別支援学級では、個別指導計画と個別の教育支援計画を作成してもらうことができます。個別指導計画とは、子ども一人ひとりの困りごとや障害に合わせ、各教科の学習や、集団行動・生活の指導目標や指導内容・方法を示した計画です。この指導計画に基づき、さまざまな教員・関係者が共有し連絡を取り合いながら指導・支援が行われます。具体的には、担任の教員を中心に保護者や、特別支援教育コーディネーター、専門家といったさまざまな人が、子どもの障害の状態や課題、優先事項などを話し合い作成します。一方、個別の教育支援計画は、個別指導計画より長期的な視点に立ち、学校のみならず、家庭や余暇活動も含めて、具体的な支援の計画を示した計画書です。医療、教育、または福祉、就職などさまざまな機関に引き継がれ、一貫した支援が受けられるようになります。通級指導教室では、子ども一人ひとりの言語に関する困りごとを改善するための支援が受けられます。一方、特別支援教室では、言語に関する困りごとの改善とともに、言語障害を考慮しながら各教科の授業を手厚く行います。具体的にどんな支援かご説明していきます。■通級指導教室では?通級指導教室では、学習の遅れや補充をするのではなく、子ども一人ひとりの困りごとに合わせた教育や指導が行われています。言語障害があるために学習が進まない場合には、学習指導も行われます。例えば次のような指導が行われます。・発音に誤りのある子ども正しい発音を身につける練習、音を聞き分ける練習、唇や舌の動きをよくする練習、コミュニケーションの力を育てる指導などが行われます。・吃音のある子ども吃音について正しく理解する学習、吃音の友達と出会ったり、気持ちを話し合ったりする学習(グループ指導)、発達・認知面の力を育てる指導、コミュニケーションの力を育てる指導などが行われます。・言語発達遅滞のある子ども子どもの実態に合った教材を使って言語理解・表出する力を育てる指導、発達の評価、コミュニケーションの力を育てる指導などが行われます。国立特別支援教育総合研究所■特別支援学級では?特別支援学級では、通常学級で過ごす交流学級という時間もありますが、特別支援学級に通う子どもは多くの時間を特別支援学級で学びます。子ども一人ひとりの困りごとに合わせた指導・支援はもちろんのこと、各教科の学習についても指導や支援が行われます。たとえば、国語や算数ではどのような支援が受けられるのでしょうか。・国語読むことに対する支援として、言葉の意味や概念の理解を深めるために絵や写真を使いながら話したり、動作を実際にやってみて説明したりします。また、辞書を活用し、意味を調べ自分でまとめた辞書を作ったりすることもあります。聞くことに対する支援では、話す内容についてそのポイントや重要な部分をあらかじめ説明し、子どもが聞き取るべき部分がわかるようにします。書くことや話すことに対しての支援は、教員との会話のなかで実際に子どもが体験したことを口頭で文章化したり、作った文章をさらに書き起こしてみたりするなどの練習が行われます。・算数文章題などを解くとき、文章の内容や意図を理解することが難しい場合があります。そのような場合は、単語の意味を確かめたり、図や絵を通して理解を促していきます。また、類似の問題に繰り返し取り組んだり、逆に類似の問題を作ってみることで理解をより深めていきます。ことばの教室のクラス編成はどうなっているの?出典 : ■通級指導教室通級指導教室ではほとんどの場合一対一で指導が行われます。ですが集団の中での困りごとやコミュニケーションでの困りごとがある場合は集団で行われることがあります。■特別支援学級特別支援学級ではクラス定員は8人までと決まっています。ですので少人数学級で授業を受けられます。ことばの教室にはいろいろな人が関わっています出典 : ことばの教室では、通級指導教室や特別支援学級の教員だけでなく、保護者、医療スタッフなどさまざまな人が子どもの教育、指導、支援に関わっています。通級指導教室でも特別支援学級でも、必要に応じて、口腔外科医、言語聴覚士、歯科衛生士などの専門家から正しい発音の基礎となる口腔の状態について助言を受けることができます。一方で、保護者や教員は、通級指導教室と特別支援学級では子どもとの関わり方が少し違います。保護者通級指導教室の場合、多くは保護者が付き添いをし、時には一緒に授業に参加することもあります。一方、特別支援学級の場合は、保護者が希望しない限り一緒に授業を受けたりすることはありません。しかし、通級指導学級も特別支援学級もお住まいの学区以外の学校へ行く場合は保護者の送り迎えが必要となります。教員通級指導教室の場合、担任の教員と指導の教員が異なるため、連絡ノート交換、指導報告等を通して、子どもへの共通理解を図ってゆきます。一方、特別支援学級では担任の教員が指導を行う場合が多いので一貫した支援が受けられます。ことばの教室にはどうやって入るの?出典 : 未就学児で来年度からことばの教室を検討している場合未就学児で来年度からことばの教室を検討している場合、就学相談に行く必要があります。就学相談とは、通級指導教室や特別支援学級を含めた特別支援教育を受けるためにお住まいの教育委員会と話し合いの場をもうけ、子どもにとって最適の学びの場を考える機会です。一般的に就学相談は早い地域で幼稚園・保育園の年長の春から、遅くとも秋ごろには始まります。就学相談については、お住まいの教育委員会の窓口まで問い合わせてみましょう。就学していて言語障害が気になり、ことばの教室を検討している場合まずは担任の教員に相談してみましょう。そこから教育相談をすすめられたり、特別支援教育コーディネーターを紹介してもらったりします。そして、一般的にはことばの教室の指導員の方などと面談をし通学の必要性が検討されます。まとめ出典 : ことばの教室では言語障害のある子どものサポートをしています。言語障害といってもさまざまな困りごとや課題を抱える子どもがいます。通級指導教室と特別支援学級の特徴をとらえながら、子ども一人ひとりにあった学びの場を考えてみましょう。
2016年12月15日それまでなんとか小学校に通っていた長男。3年生になったとたん、授業が変わり…出典 : 小学校入学直後から「学校いかれへん!」となった長男も、支援級の先生のサポートを受け、2年生からはずいぶん授業に参加できるようになってきました。しかし、小3の1学期からまた「学校に行きたくない」と主張するようになりました。付き添ってよく観察してみると、・授業の内容・授業のスタイル・支援の体制こうした進級に伴う3つの変化が絡み合った結果、ストレスが起きている様子でした。自分の意見を自覚できるようになったのはいいけれど、しんどさは変わらず出典 : 授業内容の変化で1番大きかったのが、じっくり考える問題が増えたことです。例えば算数では「筆算」がその1つ。パッと答えが出るものは得意なのですが、こつこつ積み上げ、答えを出していくことが苦手だという特性があるのです。授業のスタイルもそれに伴い班で話し合うグループワークの比重が大きくなりました。社会の「みんなで学校周辺の地図を作ろう」という単元では、それぞれが調べてきたものを持ち寄り、1枚の大きな紙に書きこんでいきます。「ここはもうちょっと北じゃない?」「違うよ」と、意見が合わないとイライラし「じゃあ、もう知らない!」やめてしまう長男。2年生の時は、あまり周りを見ずに主張していた面もあったのですが、3年生になると「自分がいたら地図作りが進まない」と廊下に出るようになりました。出典 : 自分の意見がはっきり自覚できるようになってきた影響は国語にも現れました。例えば「朝食を摂ると元気になれる」という説明文では、「朝食を摂っても学校に来たらしんどくなるよ!」ということが気になって、落ち着いて取り組めません。また、ホームルームのテーマが「運動会に向けて」の時では、みんなが「どうやったら心を1つにしたダンスができるか」と話し合っているときに、そもそも「どうして運動会をするの?ぜんぜん楽しみじゃない」という思いが抑えきれないのです。みんなの前で本音は言えないということがわかっているので、やっぱり廊下に出ることになります。ホームルームではまとめプリントに意見を書いて提出するという形での参加となりました。支援体制の変化も原因の1つだった。自立を促したい気持ちはあったけれど…出典 : 年生の時はずっと支援級の先生が付いてくださったので、私は登校後、「よろしくお願いします」と帰ることができました。授業でふと疑問に思ったことも、支援の先生にすぐ聞く事ができていたので、集中ができず授業が嫌になりかけても、面白く盛り上げつつ気持ちが途切れないようにしてくださっていたのでしょう。しかし、3年生になると支援級の先生がもう1人別の学年のお子さんと掛け持ちになり、教室にいてくださる時間が半分になりました。その結果、「できない」「わからない」があっても自分で判断して行動する必要が増えますが、1人で考えていると「やらない」方向にいってしまったようです。教室に入れない長男をそのままにして立ち去りにくいことが増え、そうこうしているうちにズルズルと付き添う日も増えてきました。知的なデコボコは大きくても、「遅れ」として見えにくい場合「中学年になったら自立の方向へ」というのは慣例であり、また予算の都合も仕方ないと思いますが、「うーん、やはり1人で過ごすことは時期尚早だったか…」と痛感したのです。それでも学びたい気持ちはあるようで…長男の「やりたい!」を引き出してくれたのは幼虫観察だった出典 : とうとうある日、好きなはずの理科も嫌と言いだしました。「どうして蝶の幼虫の観察をしないの?班で1匹、しかも学校にいる時間だけの観察なんてつまらない」というのがこのときの原因でした。とはいえ、幼虫の生態は気になっていた長男。ある日のこと、自宅の庭にやってきた幼虫を見つけ、「飼ってみようかな」と言いだしたのです。私はその一言を聞き、すかさずOKを出しました。その後、旅行にも持っていくほど熱心に観察していた長男。写真を撮り、羽化するまで自宅で飼いました。観察してわかった生態はレポートにしてまとめ、先生に見せました。「すごく面白かった。さなぎになる前に1回だけ液体を出すの、1番びっくりした!」と報告していました。好きなことは思い切りやりたいタイプの長男。風の実験では「本音では、器具が壊れるほどやり倒したい」。植物を育てるのも「種まきから種取りまでやりたい」。こうした好奇心は、教科書に載っていようが載っていまいが関係なしです。この子には、みんなとは違うやり方で学ぶのが合っているのだな…ということが、よりハッキリ見えてきました。好きなことから学ぶスタイル。それは「学校を使った」家庭学習!出典 : 学校は、こうして発見した長男の学習意欲を発揮する場となりました。たとえば、学習した内容をプリントにして持っていき、学校の先生に報告して「家族以外の人から知識を得る」「コミュニケーション力を伸ばす」機会にしてみるのです。これについて先生方はありがたいことに、「面白いことやってるね」と言って下さることが多いです。「学校に来てもしんどいねん!」とハッキリ口に出す長男に対し、交流級の先生はがっちり受け止めるタイプなので「そうか。まあでも、1日に1回は顔を出して、今やってることを教えてよ」と言います。「どうやったら学校で過ごせるか、一緒に考えていきましょう」とふんわり、でもあきらめずにいてくれるのが支援級の先生。掃除や給食など、集団行動での振る舞いは学校でなければ学びにくいことだと、私自身も感じています。そんなわけで、なんだかんだ言いながらぼちぼち通学も続けています。出典 : 学校に行っても授業に入りにくいときは、廊下においてある机で、できそうなことをやります。みんなが今どんなことをやっているかを知るというのも、学習を進めるエンジンとして活用しています。このスタイルは、学校を「使いながら」の家庭学習と言えるかもしれません。弱みと強みは表裏一体。最近の口ぐせは「学校いらん」から「どうしてみんなは『普通に』授業を受けられるんだろう?」に変わってきました。周りが見えるようになってきたのは成長だと思います。学年が進むにつれ、授業も長男も更に変わっていくはずです。支援の体制をどう希望、提案していくかも含め、多くの人を巻き込みながら、できるだけ楽しくやるようにしていきたいと思います。
2016年11月23日4月からの就学先、親子の願い通り特別支援級に決定!でも周りの反応は…出典 : 我が家の娘は来年から小学生になります。就学先を決める就学相談の結果、「特別支援学級固定制が望ましい」との判定を受け取りました。娘はもともと、「人が少ないクラスがいい」と強く希望していました。私は娘の兄が過ごしていた通常学級を例に出しながら、・支援学級は、通常学級とは違った形の少人数のクラスだということ・支援学級でも、通常学級で一緒に過ごす機会などもあることなどを何度も聞かせ、意思の確認を行っていました。希望通りの結果になり、娘もホッとした様子でした。しかし私たちが喜んでいる一方で、特別支援学級へ就学になったことを周囲の人に伝えると、中には「え?!そうなの…(お気の毒に)」といった感じの反応をもらうことが何度かありました。どうも「特別支援学級に行く」ということは、「みんなと一緒では勉強についていけないかわいそうな子」というイメージでとらえられているようです。特に娘の場合は、「そんな風には見えないのにそれまた何で?」「やっていけそうなのに、どうしてわざわざそんな所に入れるの?」と疑問に思われているようでした。確かに一見すると問題なさそうに見える娘。でも本人に希望を聞いてみると出典 : 確かに娘は一見何の問題も「無さそうに見える」タイプかもしれません。発達検査の数字を見ると、大きな凸凹がありますが総合値は107と知的能力は平均的です。生活面も自分のことは自分でそれなりにできていますし、問題がないというよりむしろしっかりしているように見えます。たぶん、就学相談で私が特に何も言わなければ、通常学級への就学が決まっていたことでしょう。でも、そんな娘に、どんな学校に行きたいか聞いたときのことです。私「どんな学校がいい?」娘「人が少なくて、静かな学校がいい。」私「どうして人が少ないほうがいいの?」娘「だって、うるさいと疲れるでしょ?それに、お友達がいっぱいだったら困っても先生に言えない。」私「そうなんだねー。あと、先生が『〇〇してください。』って言ったときはどうかな?言われたとおりにできそう?」娘「んー。私は言われたことと違うことをしたり、何を言われたか分からなかったりするでしょ?いっぱい人がいたら教えてもらえなくて嫌だ。…ねえママ、いっぱいって何人くらい?幼稚園のクラスより多いの?」私「30人とか、35人とかかな?今のクラスより多いねぇ。」娘「人が少ないクラスは?」私「多くても多分8人くらいかな。」娘「8人!?そんなら絶対少ないクラスの方がいい!」迷いがなかったわけではない。それでも「娘を支援級に」と考えた理由出典 : 娘は、自分が大勢の中にいるとき、時には一対一でも指示が受け取りにくいことやうるさいのが苦手なことなど、自分がどんなことに困っているのかを幼いながらも自覚していたのです。私はそんな娘を頼もしく思いましたし、こうして一緒に確認することができたのは、私が支援級を希望する大きな動機にもなりました。私はそんな彼女が出来るだけ楽しく、心を壊すことなく通学できるということを最優先に考えました。そして娘が個性を持ったまま伸び伸びと成長するためには、通常級は厳しい環境になるというのが私の結論でした。娘は独特な感性を持っていると同時に、とても繊細な一面があります。ちょっとユニークな彼女が周りに溶け込めなかったとき、その自覚と感情などが言葉に繋がって、私に伝えられるようになったときはもう傷は相当深いものになることや、ちょっとしたことが二次障害に直結するだろうということは、私も主治医も予想するに難くありません。もちろん私も決して迷いがなかったわけではありません。「考えすぎかも」「過保護で心配性すぎかしら」と思ったこともありました。支援級だと送り迎えが必要だったり、自立活動などの時間が入るため勉強が遅れがちになるであろうことや、中学でも支援級だと内申がつかない可能性なども耳にします。それでも私が「娘を支援級に入れたい」と思ったのは、そこが娘にとって一番居心地のいい環境だと考えたからです。大切なのは、「子どもにとって」一番過ごしやすく、能力を最大限発揮できる環境を選択するということだと思います。子どもにとって過ごしやすい環境であれば、それだけトラブルや問題を回避することができ、親のストレスもそのぶん減らせるのではないでしょうか。支援級や支援学校に入ることは、本当に「かわいそうなこと」なのだろうか?出典 : おそらく私と同じように色々な心配をし、さまざまな葛藤や思いの中をグルグルと彷徨いながら、たくさんの考えを経て就学や進路を決めている保護者の方はたくさんいると思います。これだけの思いを経て出した選択なのに、「支援級」や「通級」「支援学校」などに通うことは本当に「かわいそうなこと」なのでしょうか?残念ながら、周囲の方々の中には「支援級」「通級」というものをご存じない方や、正しく理解していない方もまだまだ多数いらっしゃるかと思います。私も、私の親世代の方にはなかなかどういうものかを伝えることができず、最終的に「昔でいう障害児学級みたいなものだよ。」と説明したことがあります。でもそうすると「この子たちは『障害児』ではないでしょう?昔はこんな子いっぱいクラスにいたのに…」などとまた一から堂々巡りの説明に疲れてしまいました。他にも、その必要性を感じていながら我が子を支援学級や支援学校にへ入れることをためらい、家族の理解も得られず、ひとり我が子や学校と向き合い続けてる方もいらっしゃるでしょう。私のように周りの反応にモヤモヤしてしまったり、凹むこともあるかもしれません。ですが、それぞれに考え抜いて出した結論に、自信を持って良いと思うのです。私たちの結論や期待に十分沿えることができる教育環境であって欲しいのはもちろん、通級・支援級・支援学校に対する正しい理解や認識が広まり、子どもたちが、そしてその親たちが何の引っかかりもなく当たり前の選択としてそれらを選べる社会であってほしいと思います。
2016年11月06日