発達凸凹息子の中学受験、前回までのあらすじ2020年4月から私立中学に通うことになった長男。私立に進むのか、公立に進むのかに悩んだ小5、小6のころから入試までのあれこれをご紹介していきます。前回は、どのように志望校を決めたかについてご紹介しました。子どもの学校生活で大事にしたいことUpload By スガカズ前回は私立中学校に決めた理由や学校探しについてお話ししましたが、中学受験すると決めた小6の5月より半年以上前の、小5の10月から公立中学校選びもはじめていました。部活動体験や説明会は小6からですが、各中学校の希望者の内訳を小学5年生の10月に確認。通える4つの中学校のうち3つが受け入れ可能数を超えた申請だったようです。ただ、この中には「私立受験をする子ども」も含まれているため、なんだかんだ希望の中学校には通えると思いながらも、少し心配になったのは否定できません。小5の10月の時点では、まだどの公立中に通いたいかはっきりと決まっていなかったのですが、長男が小6になったころから、本人のためになる環境について深く考えました。校風、友達、家との距離などなど…どれも重要ですが、長男の学校生活に必要なのは「自分の居場所がある」ことだと思いました。そして長男にとっては、通級での時間が必要だろうと考えたのです。そのため公立中学校では、通級に通い続けられる環境にしようと決めました。受験勉強や私立中学校選びが本格的に始まったころに、長男に対して、公立中学校の話もしました。Upload By スガカズ本人との会話は「4つの学校の候補を減らしていく。減った候補から決める」という非常にざっくりとした内容でした。学習を定着させる時期だったので、勉強へのモチベーションが下がらない様に、公立中学校の話を必要以上にしないようにしていました。子どもは勉強をがんばり、親は学校選びをする…といった風に、役割を分けることに。とは言っても、公立中の部活体験や学校見学をしない事には話が進まないと思ったので、私立中学校に進学しない場合は公立中学校学校見学や部活体験は公立中学についても必要という事は本人に理解してもらいました。そして決めた中学校は…Upload By スガカズどうやら令和2年より4校全てで通級が受けられるようになるとの事でした(※見学した令和元年時点では、拠点校へ通級のために通う形でしたが、令和2年からは通学している学校に特別支援教室が設けられるようになるということ)。ですが、特別支援教室を新設する中学校は前例を聞くことができないため、見通しをつけづらい長男にとっては拠点校の特別支援教室で支援を受ける方が安心できそうだと感じました。実際に見学に行ってみると、設備が整っているし、特別支援教室の職員室があるので本人が相談をしやすい環境だと感じました。また、クラスの数も3クラスと、小学校と同じ数なので、比較的落ち着いて過ごせそうだと感じました。部活体験では在校生と話す機会がありましたし、特別支援教室の体験では、本人は落ち着いて行動できました。支援の先生方の進め方や話し方は穏やかで、大人しい長男に合っていそうでした。長男は「私立じゃなかった時、ここなら大丈夫そう」と言っていました。学校公開や説明会で事前に学校の様子を見ていたので、特に困る事もありませんでした。また、各中学校の希望者の内訳を見ても、A中学の立地から希望者が多くはない様で、希望通り通えそうでした。私立中学校に進学しなかった時のためにした事拠点校であるA校で特別支援教室の説明会があった時に、「中学受験をして入れなかった場合、4月から特別支援教室で支援を受けられるようにしたい」と相談しました。Upload By スガカズわが家は6月〜8月は私立中学校選びと塾に明け暮れた日々だったので、本格的に公立中学校選びをするまでに時間がかかってしまいました。(この辺りの時期は本当にドタバタでして、毎週何かしら学校、療育などの用事で私の仕事もセーブしました)2月の判定会議に向けて書類を準備しておけば、私立中学に合格せず、公立中に進学する場合でも間に合うとのことでした。Upload By スガカズこうして公立中学校が無事に決まりました。あとは前回決めた第1希望と第2希望の私立中学校どちらかに合格できるようにがんばるだけ…!なのですが…ADHDの子の勉強は、一筋縄ではいかないですよね。次回は、療育センターで言語の先生に支援していただいた受験対策についてお話しします。
2020年03月31日プロの「まね」をすることなんて簡単か?サッカー・ラクビー・野球・水泳・スケートなどのスポーツ選手、歌手、アイドル、ダンサーなど、活躍するプロたちを見て憧れを持つ人や子どもは多いでしょう。なかには、「自分もやってみたい。『まね』さえすれば自分にもすぐにできるだろう」と考える人もいるかもしれません。たとえば、歌などは聞いて「まね」して歌えば、誰でもそれらしく歌えそうな気がするものです。カラオケで歌ってみることも気軽にできますしね。じつは、学校の先生のなかにも、「まね」はすぐにできると思い込んでいる人がいます(※スポーツ選手や歌手などの「まね」ができると思っているということではありません)。どういうわけか、ほかの先生の授業を1回見ただけで、練習することなく「自分もすぐに『まね』して授業ができるはずだ」と思い込んでしまう先生が意外に多いようなのです。かくいう私も、かつてはそのひとりでした。私が所属している教育のサークル(先生たちが集まり、お互いに模擬授業などをして勉強するサークル)で、ある先生が録音していた授業を一度聞いただけで、ほかの先生方の前でやってみたことがあります。すぐに「まね」できると思ったからです。結果、まったく違うと言われてしまいました。言葉づかい、教える順序、間の取り方、抑揚、スピードなど、すべてが全然違うとのことでした。先ほどの歌の例に戻りましょう。カラオケでプロの歌を「まね」してみると、音程の取り方や抑揚のつけ方が意外に難しいと感じることがあると思います。このことは、自分が歌った歌を録音して聞いてみるとよくわかります。抑揚をつけたつもりが全然抑揚がなく、実際にはまったく「まね」できていなかったことに気づくのです。もちろん、素人で歌が上手な人もいないわけではありませんが……。ここまで読んで、「練習していないのだから、プロの『まね』が正確にできないのは当たり前だ!」と思った方もいるでしょう。ですが、先ほどから書いているように、「自分にもすぐできるかも」と思い込んでしまう人がいることは確か。「『まね』というものは本当はとても難しく、すぐにはできないのだ」というのは、意外と忘れがちなことなのかもしれません。これと同じことが、子どもの学習についても言えます。漢字にしろ計算にしろ、できるようになるためには練習が必要です。たとえ最初は「まね」から始めたとしても、「まね」さえすればいいのではなく、諦めずに練習を続けることが大切なのです。今回は、こうしたことを保護者が子どもにわからせるにはどうしたらいいのか、考えてみることにします。プロはどこかで「練習を継続」している冒頭に挙げたプロたちは、私たちの見えないところで練習を積んでいます。プロの華やかな活躍シーンというのは、絶えざる練習に裏打ちされたものであることがほとんどです。一例をご紹介しましょう。私は以前、劇団四季に13年間在籍して活躍された俳優の重野幸夫さんに、直接話を聞いたことがあります。重野さんが、劇団四季では定番のミュージカル『コーラスライン』に出演されたときのこと。劇中で45秒間だけ踊るダンスがあるのですが、この踊りだけを毎日、毎日、特訓したそうです。本番で演じる時間はわずか45秒なのに、1か月も2か月も、ずっとこの踊りを練習したのだとか。これができるようになってから、初めて歌などほかの練習をしたとおっしゃっていました。プロであっても、「ひとつだけのこと」を長い時間かけて練習しているということが分かります。子どもに「練習を継続すること」の大切さを教えるには?何事も、練習することなくいきなりできるようにはなりませんし、できるようになるには練習を継続しなくてはなりません。これは、プロになる・ならないに関係なく、毎日の学習をしていくうえでも必須のこと。大人でも忘れがちかもしれないこの事実を、子どもに理解させるのはなおのこと難しいものです。私もこれまでに、毎日の家庭学習をコツコツ継続できない子どもや、運動や勉強などができるようにならないからといってすぐに練習を諦めてしまう子どもを、たくさん見てきました。では、保護者は家庭でどのようにすれば、子どもに「練習を継続すること」の大切さを教えることができるでしょうか。方法1.「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやる」「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という有名な言葉があります。旧日本海軍連合艦隊司令長官を務めた山本五十六氏が述べた、人を統率する立場にある者が持つべき心得を説いたものです。これにならって、子どもに何かを練習させるとき、保護者は下記のようにしてみましょう。保護者が「やってみせる」やり方を「言って聞かせる」子どもにまねを「させてみる」指示したことを子どもが一度でもできたら、大げさに喜んで「ほめてやる」肝心なのは、4の「ほめてやる」です。子どもが一度でも「成功体験」できたなら、「練習したからできたんだよ」と励ましましょう。この声かけが、練習を続ける意欲につながります。ただ、何度練習しても成功できないこともありますよね。子どもがそんな状況に陥ってしまったときは、先に書いたように、「プロは本番のわずかな時間のために、何時間も何か月も練習しているんだ」と話して聞かせてみてください。また、「努力の壺」の話を聞かせるのもいいでしょう。これは、「見えない壺の中に、練習すればするだけ努力した力がたまる。壺が満杯になって努力があふれ出したときが、『できる』ようになるときなのだ」という訓話です。壺が努力でいっぱいになるまでは、何度練習してもうまくできないこともある。でも、突然うまくできるようになる時期が来る(「ブレークスルー」ともいいますね)。このことを子どもに教えておくといいと思います。いまご紹介した方法は、どのような練習にでも活用することができます。筆算の練習、習字でお手本そっくりに文字を書く練習、ボールを遠くまで投げる練習、自転車を転ばずに漕ぐ練習、1,000mを〇分以内で走る練習……。ぜひご家庭で実践してみてください。方法2. 勉強時間は「少しずつ増やす」ここからは、さらに具体的な例をいくつか挙げていきます。「1日たった30分の家庭学習でさえ、続ける努力ができない」。そんな子どものことでお困りでしたら、時間を毎日少しずつ増やすことを意識してみてください。漢字や計算などのワーク、習字、リコーダー、鍵盤ハーモニカ、なわとびなど、学習あるいは練習を30分続けるというのは、子どもにとってはけっこう大変なことです。大人は「たかが30分なのに」と思うかもしれませんが、子どもには意外と長い時間なのです。ですから、今日は10分だけ、明日は15分……など、時間を少しずつ伸ばしていくとよいでしょう。ちなみに家庭学習の目安は、1日トータルで「学年×10分」と言われることが多いようです。6年生であれば「6×10」で60分=1時間。こうしてみると、たとえば1年生が30分も家庭学習をできたら、3年生並みにできたということになります。また、初めのうちは机に向かわせるだけでいいとも言われています。勉強でなくても、「学年×10分」の間、机で好きなことをさせておけばいいでしょう。これで机に向かう習慣がつきます。この習慣がつけば、自然と毎日の学習に取り組みやすくなるはずです。ここでも、まずは短い時間から始めるということを忘れずに。方法3. 勉強の「レベルを下げる、量を減らす」「毎日のドリル学習や宿題を、子どもがやけに億劫がる」のでしたら、やらせる内容を簡単にしたり、量を減らしたりしましょう。まず、子どもがどうして毎日の勉強をそんなに嫌がるのか、理由を確かめます。私がかつて教えていたある塾で、宿題をまったくやってこない、持ってこない子がいました。「ちゃんとやって持ってこないとだめだろ!」と叱って改善するならいいのですが、問題のその子には、いくら言っても効き目がありませんでした。私はその子を見て、もしかしたら「問題がまったくわからないから解けない=宿題をやれない」のかもしれないと考えました。そこで、子どもたちに一律で宿題を出すのではなく、子どもの理解度に合わせて学習内容を改めてかみ砕いて教えたり、宿題のレベルを簡単なものにしたりしたのです。そうすると、全てではありませんが、少しは宿題をやってこられるようになりました。また、ドリル学習や宿題の量の多さがネックになっていそうな場合は、基本問題だけをやらせて応用問題は与えないとか、「今日は1枚、明日は2枚」といった具合に少ない量だけやらせるのがおすすめ。量はだんだん増やしていけばいいのです。家庭での自主学習であれば、保護者が子どもの様子をみてコントロールしてあげましょう。宿題であれば、塾や学校の先生に相談してみてください。宿題の内容や量を変えてもらえるかもしれません。もし、「公平さがなくなるからできない」と言われてしまっても、「このままではいつまでも宿題ができない。少しでも宿題に取り組ませたい」と伝えれば、わかってくれると思います。方法4. 「1歩ずつ着実に」答えに近づけさせる「答えが一発で出せず、諦めがち」な子どもには、1歩ずつ着実に答えに近づく方法を教えましょう。たとえば、割り算の筆算を勉強していると、商(割り算の答え)を1回ですぐに立てることができず、なかなか正解にたどり着けないことが嫌になって、途中で計算を諦めてしまう子がいます。じつはこれは、割り算の筆算の学習のなかで多くの子どもが躓くところ。立てた商が大きすぎたり小さかったりしてしまうのです。そんな子には、「すぐに商が立てられなくてもいい。時間がかかっても、正しい商を出せることが大切だ」と教えてあげましょう。このとき有効なのが、筆算に「×」をつけることを教えるというものです。この方法だと、時間はかかりますが、必ず正解にたどりつきます。(私が先輩教師から教わった方法です。私も実際に子どもにやらせ、効果を実感しました)以下がそのノートの例です。子どもには、「たくさん×を書けば書くほどできるようになる。×が多ければ多いほど一瞬で正解の商を出せるようになる」と話しておきましょう。そうすると、時間はかかっても×が増えることを喜びます。また、1回で商が立てられない子の中には、立てた商が違っていたとき、消しゴムで消してその上に別の商を重ねて書く子がいます。これの何が問題かというと、間違った商をしっかり消しきれないまま新たな商を書いてしまい、新しく書いた数字がいくつなのか読めなくなってしまうケースが多いということ。こうなると、いっそうわけわ分からなくなり、計算が嫌になってしまうのです。この点においても、筆算に「×」をつける方法では消しゴムを使わないので、数字がわからなくなるということはありません。混乱することなく、必ず正解にたどりつくことができますよ。***「練習を継続」することは、何かのプロを目指す場合に限らず、普段の学習においても同じように大切です。これを子どもに伝えるにはどうすればいいか、書いてきました。物事をコツコツ続けるのが苦手な子どもが、継続して勉強したり練習したりできるようになれば幸いです。(参考)池袋ミュージカル学院|講師紹介Wikipedia|山本五十六下野市教育情報ネットワーク「けやきネット」|努力の壺
2020年03月23日「勉強する」というと、みなさんはどういうスタイルをイメージするでしょうか。机に向かって教科書や問題集を広げる――。たしかにわかりやすい勉強のスタイルです。でも、それこそが勉強することだと考えて子どもに強いることが、子どもを勉強嫌いにしてしまっているとしたらどうですか?独自の授業スタイルで注目される「探究学舎」の代表である宝槻泰伸先生に、子どもの勉強法に関するアドバイスをもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)大人の働き方は変わるのに、子どもの勉強の仕方は変わらない時代が進むに伴って、これまでは価値があったもの、あたりまえだと思われていたものもそうではなくなることは珍しくありません。それこそ、時代の変化が激しいいまなら、その傾向はさらに強まっています。たとえば、働き方がそうでしょう。かつての企業の従業員たちは、企業のリーダーが決めた課題を解決するために、企業によって割り振られた仕事をなるべく要領よくこなしていました。それは、従業員を管理することを重視した軍隊的な労働環境だったといえるでしょう。でも、そういう働き方に対して多くの人が違和感を覚えるようになりました。そうして、いまは自由度が高い労働環境をデザインする時代に入ってきました。たとえば、フリーランスもそうですし、企業も勤務時間を自由にしたりフリーアドレス制にしたり、あるいはソファやハンモックを配置するなど、以前では考えられなかったオフィスも増えてきています。ところが、子どもたちが勉強する環境はどうでしょうか?いまも子どもたちは、何十年前の子どもたちとなんら変わらず、姿勢を正して机に向かい、教科書を開いて勉強することがよいとされています。大人の働き方はどんどん変化しているのに、子どもたちの勉強に関しては、かつてとまったく同じスタイルが正しいとされているのです。まずはそのあたりまえを疑ってみませんか?ずっとあたりまえとされてきた子どもの勉強スタイルを疑うみなさんも、仕事の最中にお菓子を食べて小腹を満たすこともあるでしょう。あるいは、仕事で必要な資格を取得するための勉強として、自宅のソファに寝っ転がってテキストを読むこともあるはずです。子どもだってそうしていい。ソファに寝っ転がってポテトチップスでもつまみながら勉強をしてもいいのです。しかも、教科書を使うことにこだわる必要もありません。子どもが夢中になって石ノ森章太郎の『マンガ日本の歴史』シリーズ(中央公論新社)を読んでいたら、それも立派な歴史の勉強であるはずです。また、みなさんもメディアを通じてGoogleなど最先端の企業のオフィスを見て、「いいなあ、こういうところで働きたいな」と思ったことがあるでしょう。それは、子どもの勉強にもいえるはずです。大人が、これまであたりまえとされてきた働き方を疑っていいのなら、子どもだってこれまであたりまえとされてきた勉強の仕方を疑ってもいい。そして、子どもが自分でやりたい方法で勉強することを、大人は認めてあげるべきだと思うのです。子どもの思考力を鍛える、おすすめ「なぞ解き教材」ではひとつ、わたしがおすすめする勉強法をお伝えしましょう。もちろん、これまでお伝えしてきたように、勉強法は子どもそれぞれでいいのですから、わたしがおすすめする勉強法を絶対にやらせるべきだというわけではありません。さて、そのおすすめの勉強法ですが、松丸亮吾くんの著書を子どもに与えるというものです。松丸くんは、有名なメンタリストのDaiGoさんの弟で、なぞなぞをつくるクリエイターです。その著書であるなぞ解き教材がじつに素晴らしい!たとえば、『東大松丸式 数学ナゾトキ 楽しみながら考える力がつく!』(ワニブックス)がそのひとつです。松丸くんがつくるなぞなぞのなにが素晴らしいかというと、とにかく考えたくなるし夢中になるし、答えられるととてもうれしくなるというところです。そんなクリエイティブななぞなぞをつくれる一種の才能を松丸くんは持っているのです。もちろん、著書に掲載されているなぞなぞは、ただのなぞなぞではありません。松丸くんは、「考えるという行為を楽しい行為にすること」をビジョンに掲げて活動している人です。だからこそ、著書に掲載されているなぞなぞも、解くことで思考力を鍛えられるものになっています。先に挙げた著書の帯を見てみると、「想像力、多角的思考力、発想力、試行錯誤力、説明力――勉強でも社会でも役立つ5つの力を鍛える!」とうたっています。これなら、「子どもに勉強を得意になってほしい」と願っている親にも響くのではないでしょうか(笑)。ただ、みなさんには、「子どもには絶対に学校の勉強を得意になってほしい」と願うような古い価値観はやはり捨ててほしいなと思っています。現代的にいえば、価値観をアップデートしてほしい。もちろん、学校の勉強を全否定する必要はありません。漢字の読み書きができないよりはできたほうがいいし、計算も正確にできたほうがいいでしょう。でも、それはベターであってマストではありません。そうして親が自らの価値観をアップデートした先に、従来の勉強の仕方などにはこだわらない、我が子にフィットする勉強法が見えてくるのではないでしょうか。『探究学舎のスゴイ授業 子どもの好奇心が止まらない! 能力よりも興味を育てる探究メソッドのすべて 元素編』宝槻泰伸 著/方丈社(2018)■ 「探究学舎」代表・宝槻泰伸先生 インタビュー記事一覧第1回:“勉強させずに”子どもを伸ばす! 「従来型の学習にこだわってはいけない」その訳は第2回:親がどんなに願っても勉強しない子どもの「学びへの好奇心」は、こうくすぐる!第3回:「勉強嫌い」は親の価値観が古いせいかも。寝転がってお菓子を食べながらでもいいんです【プロフィール】宝槻泰伸(ほうつき・やすのぶ)1981年5月25日生まれ、東京都出身。京都大学経済学部卒業。探究学舎代表。幼少期から「探究心に火がつけば、子どもは自ら学びはじめる」がモットーの型破りな父親の教育を受ける。高校を中退し京都大学に進学。ふたりの弟も同様に京都大学に進学。その後、5年の歳月をかけて、子どもたちが「わあ、すごい!」と驚き感動する世界にたったひとつの授業スタイルを開発。5児の父でもある。主な著書に『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』(徳間書店)、『とんでもオヤジの「学び革命」 「京大3兄弟」ホーツキ家の「掟破りの教育論」』(小学館)、『勉強嫌いほどハマる勉強法 子どもが勝手に学びだす!! 宝槻家のストーリー活用術』(PHP研究所)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年03月21日かつてないほど変化が激しい時代にあって、子どもたちが未来の社会で活躍するためには「探究する力」を身につけるべきだと主張するのが、独自の授業スタイルで注目される「探究学舎」の代表を務める宝槻泰伸先生。では、その探究する力を子どもに身につけさせるにはどうすればいいのでしょうか。宝槻先生は、「従来型のいわゆる勉強ができるようになってほしいと願う親の価値観を変えなければならない」といいます。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)「探究する力」を身につけるには、「好奇心」が重要これからの時代を生きる子どもたちが身につけておくべきもっとも大切な力が、自ら課題を見つけて自ら解決する「探究する力」だとわたしは考えています(インタビュー第1回参照)。では、どうすればその探究する力を身につけることができるのでしょうか?その答えは、「好奇心を伸ばす」こと。なぜなら、好奇心がなければ、探究のスタートを切ることすらできないからです。だとすると、今度は、「好奇心を伸ばすにはどうすればいいのか」という疑問を持った人も多いはずです。その答えを解説するため、縦軸と横軸で4つにわけられたマトリクスをイメージしてください。縦軸の要素は、「楽しい、快楽」と、その真逆の「不快」。横軸は「悪いこと」と「いいこと」です。子どもの周囲にあるあらゆるものは、このマトリクスのどこかに分類することができます。たとえば、「楽しくて悪いこと」というと、どんなものをイメージするでしょうか?子どもにとっては楽しくて、大人からすれば好ましく思えないこととなると、ゲームや漫画、YouTubeなどが挙げられるでしょう。そのように、子どもと親では、同じものに対しても向ける視線がそれぞれ異なります。なぜかというと、子どもは「楽しい、快楽」を感じられるものに強く反応し、親としては我が子には将来役に立つような「いいこと」をしてほしいと思うからです。一般的な学校の勉強なら、親にとっては「いいこと」だと思えても、たいていの子どもにとっては楽しく感じられない。そのため、親がどんなに勉強をしてほしいと願っても、子どもはなかなか勉強に興味を持ってくれないということになるのです。子どもには楽しく、親にとっては「やってほしい」と思えるものを与える子どもは、そもそも好奇心がくすぐられて熱中できるものにしか反応しない生きものです。子どもが夢中になっているものがあったとしたら、それは子どもにとって楽しいことで好奇心が満たされるものだと考えられます。でも、それらは漫画やゲームといった大人にとってよろこばしくないものということも多いでしょう。そこでどうすべきか?子どもにとっては「楽しい、快楽」と感じられ、親にとっては「いいこと」だと思えるものを与えることを考えるべきです。スポーツはその典型かもしれませんね。そして、その与えるものは、ノンフィクションでなければならないというのがわたしの考えです。フィクションの世界を夢中になってむさぼったとしても、人生を大きく変えることはできないのではないでしょうか。子どもたちは現実の世界を生きていくわけですから、現実の世界を楽しんで現実の世界に熱中したほうが、よりよい人生を歩めるようになるはずです。わたしが代表を務める「探究学舎」の場合なら、授業のテーマは宇宙、生命、元素、医療、数学、経済、歴史、芸術、ITとさまざま。でも、どれもノンフィクションのものです。それらに好奇心をくすぐられた子どもたちが驚き、感動することで、探究する力が伸びていくのだとわたしは信じています。親の価値観を変えるため、子どもの姿をしっかり見るそうはいっても、旧来の価値観を捨てきれない親も多いものです。どうしても、「学校の勉強もしっかりできるようになってほしい」と我が子に願ってしまう……。そういう自覚があるみなさんには、ぜひ子どもの姿をしっかりと見るようにしてほしいと思います。どんな親も、「子どもがよろこんでいる姿を見たい」というのが究極の願いであるはずです。一般的な学校の勉強とはちがうものだけれど、現実の世界に触れて我が子が目をキラキラと輝かせて、「もっと知りたい!」「もっとやってみたい!」という姿を見せてくれたとしたら、親の価値観は一気に変わるのではないでしょうか?「漫画を読ませるのは駄目だ」と考えている親なら、歴史や科学などをテーマにした漫画を子どもに与えてみてはどうでしょう。漫画はエンターテインメント性が高く、それこそ子どもにとっては「楽しい、快楽」と感じられるもの。そして、そのテーマが歴史や科学などだったら、親からすれば「いいこと」だと思えるものでしょう。そして、その漫画を与えられた子どもは目を輝かせて夢中になって読みふける――それこそが、探究する力を身につけるために子どもが自ら動きはじめた第1歩なのです。『探究学舎のスゴイ授業 子どもの好奇心が止まらない! 能力よりも興味を育てる探究メソッドのすべて 元素編』宝槻泰伸 著/方丈社(2018)■ 「探究学舎」代表・宝槻泰伸先生 インタビュー記事一覧第1回:“勉強させずに”子どもを伸ばす! 「従来型の学習にこだわってはいけない」その訳は第2回:親がどんなに願っても勉強しない子どもの「学びへの好奇心」は、こうくすぐる!第3回:「勉強嫌い」は親の価値観が古いせいかも。寝転がってお菓子を食べながらでもいいんです(※近日公開)【プロフィール】宝槻泰伸(ほうつき・やすのぶ)1981年5月25日生まれ、東京都出身。京都大学経済学部卒業。探究学舎代表。幼少期から「探究心に火がつけば、子どもは自ら学びはじめる」がモットーの型破りな父親の教育を受ける。高校を中退し京都大学に進学。ふたりの弟も同様に京都大学に進学。その後、5年の歳月をかけて、子どもたちが「わあ、すごい!」と驚き感動する世界にたったひとつの授業スタイルを開発。5児の父でもある。主な著書に『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』(徳間書店)、『とんでもオヤジの「学び革命」 「京大3兄弟」ホーツキ家の「掟破りの教育論」』(小学館)、『勉強嫌いほどハマる勉強法 子どもが勝手に学びだす!! 宝槻家のストーリー活用術』(PHP研究所)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年03月20日親としてぜいたくがいえるのなら、我が子には学校の勉強がしっかりできるようになってほしいものでしょう。でも、独自の授業スタイルが注目される「探究学舎」の代表である宝槻泰伸先生は、子どもたちが未来の社会で活躍するためには、「勉強する力よりもずっと大切な力がある」と語ります。その大切な力とは、「探究する力」なのだそう。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)一般的な勉強とはまったく異なる「探究学習」わたしが代表を務める「探究学舎」は、一般的な学習塾ではありません。扱うテーマは、宇宙、生命、元素、医療、数学、経済、歴史、芸術、ITなどさまざま。いわゆる、文科省が決めた5教科の枠組みに沿って子どもに知識を授けるということはしていないのです。それから、問題を解かせて知識や技能が身についているかどうかを評価することもしません。つまり、わかりやすくいえば、一般的な勉強をさせていないということです。そういった、一般の授業とはまったく異なる独自の授業によって目指しているのは、子どもの「探究する力」を伸ばすということに尽きます。その探究する力こそ、これからの時代を生きる子どもたちにとって大切になっていくものでしょう。では、探究する力とはどういうものでしょうか?わたしは、「自分の問いに対して自分の方法で自分の答えにたどりつく力」だと考えています。たとえば、米アップル社の共同設立者のひとりだったスティーブ・ジョブズは、「これからの時代に主流となるデバイスはどんなものか」と考え、自分なりの方法でiPhoneを生み出しました。それこそ、まさに探究による成果でしょう。一方、一般的な勉強はどういうものかというと、与えられた課題を解決するための力を身につけるトレーニングです。たしかにこれまでは、そういう力が重視されてきた時代でした。でも、時代は大きく変化しました。経済活動の変化により求められるようになった「探究する力」わたしが、これからの時代に探究する力が求められると考える理由は大きくふたつ。ひとつは、経済的な文脈による理由です。先に、与えられた課題を解決するための力がこれまでは必要とされてきたとお伝えしました。これまでの経済活動において、そういった力が求められてきたのです。かつての経済活動の主役は国家や企業でした。そして、そのリーダーが課題を決めていました。従業員は割り振られた仕事をできるだけ要領よくこなし、リーダーが決めた課題を組織によって解決してきたのです。それが、20世紀の経済原理です。だからこそ、従業員たちには与えられた課題を解決する力が求められ、その力を身につけるためにいわゆる勉強が有効だったわけです。でも、いまの経済活動はどうかというと、組織的な行動の成果としてのバリューだけではなく、個人的なクリエイティブ活動の成果によるバリューが直接市場に流通するようにもなってきています。いまは、さまざまなインフラが整備されたことにより、個人でアプリを開発することもできれば、ユーチューバーとして大金を稼ぐことも可能です。そう考えると、これからの経済活動のなかで活躍するには、クリエイティビティーを磨いていくことが必要となっていきます。それでは、クリエイティビティーをどうやって磨いていけばいいのでしょうか?わたしは、従来型の学校の授業や一般的な勉強ではそれは難しいと感じました。そうして、探究する力こそが重要だと考え、試行錯誤しながら独自の授業スタイルを構築してきたのです。働き方は「ライスワーク」から「ライフワーク」へこれからの時代に、探究する力が求められるとわたしが考えるもうひとつの理由は、個人主義的な文脈によるものです。人類は、その長い歴史を通じて自らの幸せを追求してきました。では、その幸せとはなにかといえば、基本的に「自由であること」ではないでしょうか。自由こそが、人間の幸せを支える非常に重要な要素であるはずです。ところが、これまでの労働には不自由なことがとても多かった。会社に決められた時間に出社し、決められた仕事をこなす……。そして、経営者に搾取される……。とうてい、自由とはいえませんよね。でも、昭和の時代には「生きるためには仕方ない、忍耐や努力も必要だ」という共通認識がありました。でも、平成から令和になり、時代はどんどん変化してきています。大企業に入社すれば安泰という時代は終わり、フリーランスで働く人も増えています。そのなかで、自分の自由と収入の折り合いをつけようと多くの人がチャレンジしている。それが、いまという時代です。要するに、飯を食うために働く「ライスワーク」から、自分を自由に表現するために働く「ライフワーク」に移行しつつあるのです。そして、その変化がもっと進んだ未来を生きる子どもたちは、いまのうちにどんな準備をしておけばいいのか?それこそ、自分の自由に従って好きなことをとことん探究していく学習なのではないでしょうか。『探究学舎のスゴイ授業 子どもの好奇心が止まらない! 能力よりも興味を育てる探究メソッドのすべて 元素編』宝槻泰伸 著/方丈社(2018)■ 「探究学舎」代表・宝槻泰伸先生 インタビュー記事一覧第1回:“勉強させずに”子どもを伸ばす! 「従来型の学習にこだわってはいけない」その訳は第2回:親がどんなに願っても勉強しない子どもの「学びへの好奇心」は、こうくすぐる!(※近日公開)第3回:「勉強嫌い」は親の価値観が古いせいかも。寝転がってお菓子を食べながらでもいいんです(※近日公開)【プロフィール】宝槻泰伸(ほうつき・やすのぶ)1981年5月25日生まれ、東京都出身。京都大学経済学部卒業。探究学舎代表。幼少期から「探究心に火がつけば、子どもは自ら学びはじめる」がモットーの型破りな父親の教育を受ける。高校を中退し京都大学に進学。ふたりの弟も同様に京都大学に進学。その後、5年の歳月をかけて、子どもたちが「わあ、すごい!」と驚き感動する世界にたったひとつの授業スタイルを開発。5児の父でもある。主な著書に『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』(徳間書店)、『とんでもオヤジの「学び革命」 「京大3兄弟」ホーツキ家の「掟破りの教育論」』(小学館)、『勉強嫌いほどハマる勉強法 子どもが勝手に学びだす!! 宝槻家のストーリー活用術』(PHP研究所)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年03月19日子どもに「意味までわからせる」ことの大変さ「2/5 ÷ 3/7」という計算問題の答えを出せる方は多いでしょう。「3/7」を逆数(分母と分子を入れ替えた分数)にして「7/3」にし、「2/5 × 7/3」として計算すればいいのです。ところでみなさんは、「どうして逆数をかけるのか」と聞かれたら、相手が「あっ、そういうことか!」と納得できるようにその理由を説明できるでしょうか。もちろん「できますよ」という方もいるでしょう。ですが多くの方は、「どうして分母と分子を逆にするのか」「どうして割り算なのにかけるのか」説明に困るのではないでしょうか。今の小学校の算数の教科書には、「どうして逆数をかけるのか」の説明が載っています。図などを交えながら、子どもに考えさせるようになっている教科書もあります。ですが実際は、この理由を小学生の子どもに考えさせたり教師が説明したりすることは、とても難しいこと。まじめな先生ほど、子どもに「意味までわからせよう」と頑張って説明するのですが、すぐに理解できる子ばかりではなく、多くの子がつまずいてしまうのです。じつは私も、分数の割り算で逆数をかける意味を子どもたちにわからせようとしたことが何度もありますが、成功したことはほとんどありません。先輩教師からは「教師が子どもに説明すればするほど、子どもはわからなくなるんだ!」とよく言われたものです。実際、子どもの様子を見ると、説明を聞けば聞くほど余計に混乱しているようでした。この例のように、子どもに意味までわからせようとすると多くの子どもが混乱しがちな学習内容は、ほかにもあります。代表的なのが、割合を求める学習です。中学・高校に進み数学を勉強するようになれば、さらに多く出てきます。それでも、子どもの勉強では常に「意味までわかる」ことを目指さなくてはいけないのでしょうか?今回は、「意味までわからせる」ことの意義について、考えてみたいと思います。「意味までわかる」状態がゴールになる学習の例学校では、意味がちゃんとわからないと次の学習に進めないことがあります。小学校2年生の例をあげてみましょう。一通り、九九の学習を終えたところで、次のような問題が出てきます。【問題】「5×3」になるもんだいを作りましょうかけ算の式は、「1当たり(1つぶん)の数×いくつぶん」だと教えます。(かけ算は反対にしても答えが同じなんだから順番なんてどうでもいいという人も意外に多くいますが、今の小学校では、このように教えることになっています。)「1当たりの数が先」ということまでわかっていない子は、正しい問題を作ることができません。誤った作問の例がこちらです。【間違い例】5人に3こずつあめをくばります。あめはぜんぶでいくつになるでしょう。この問題だと、「1当たり(1人ぶん)の数」は3ですから、かけ算の式は「3×5」になってしまいますね。正しい問題は、次のようなものになります。【正解例】5こずつ3人にあめをくばります。あめはぜんぶでいくつあればいいでしょう。これは、かけ算に出てくる最初の数字(「かけられる数」ともいいます)が1当たりの数を意味していることをちゃんとわかっていないとできない学習の例です。かけ算では、「できる(九九が言える)」だけでなく、「意味がわかる」こともゴールにしないといけない、というわけなのです。現実社会では「できる」がゴールになることが多い先に書いたように、小学校の学習では、意味がわかっていないとできない問題があることは確かです。となると、子どもには常に意味までわからせなければいけないようにも思えてきますよね。ですが、はたして本当にそうなのでしょうか。「わかる」と「できる」には次のような違いがあります。「わかる」:理由や理屈などを納得して理解していること「できる」:自分の力で何かを成し遂げられることこのどちらを目指すべきなのか考えるために、まずは現実社会での例をあげてみましょう。私にはかつて、「話し方教室」に通い、3分間スピーチの組み立て方や話し方などを勉強していた時期があります。授業時間は日曜日の朝から夕方まで。午前中には「話をどう組み立てればいいのか、そうするのはどうしてなのか」の理論を勉強しました。そして午後は、ほかの学生と講師の前で実際に3分間スピーチをするという実習の時間。「話し方教室」では、話し方の理論が「わかる」ようになるための勉強もしましたが、ゴールは3分間スピーチが「できる」ようになることでした。私の経験を、もうひとつ。一時期ミュージカル鑑賞に熱中していた私は、音痴で歌もダンスも全くできないのに、観るだけでは飽き足らず、実際に舞台の上に立ってみたくなりました。そこで、ミュージカル学校の面接を受けてどうにか入学許可をもらい、ミュージカルの歌と演技を学ぶことに。ここでも、やはりゴールは「できる(歌える・踊れる・演技ができる)」でした。「こうして歌えばいい」という理論だけわかっていてもダメ。よく言われる「畳の上の水泳」と同じ状態になってしまいます。「ダメでもともと」の挑戦であったとはいえ、ミュージカルは観客にみせるものですから、なおのこと「できる」がゴールでなければいけなかったのです。このように現実社会では、意味が「わかる」ことよりも、そのことをちゃんと「できる」ことのほうが求められます。もちろん、「意味がわかって、できる」のであれば一番よいのでしょうが、実際問題、日常生活の中には、意味がわからなくてもできてしまうことは多くあります。たとえば、テレビを見るとき、どうして映るのかわからなくても電源を入れさえすれば見ることはできます。自転車がなぜ動くのわからなくても、乗り方さえ身につければ乗ることができます。パソコンで文章を書くときだって、なぜ、キーボードを押すと文字が出てくるのかわかっていなくても文章を仕上げることができます。(現に今キーボードを打って文章を書いている私自身、パソコンで文字が書けることの仕組みなど、まったく知りません。)こうして見てみると、現実の世界では、多くのケースで「できる」がゴールになっているということがわかります。家庭でも「できる」をゴールにして教えよう日常生活では「できる」がゴールになることが多いとは言え、学校の勉強では「できる」だけではダメだとよく言われます。その一例が、先のかけ算の話ですね。ですが家庭の学習では、必ずしも「わかる」ことを目指さなくてもいい、と私は考えています。というのも、「わかる」ことに重きを置きすぎると、「わかっているのに、できない」という状態になりかねないからです。「わかっているのに、できない」とは、たとえば「先生から計算のやり方を聞いて“なるほど”とわかっても、いざ問題を前にしてみると解けない」「教科書を読んで“へえ、この漢字はこう読むんだ”とわかっても、何も見ずに書くことはできない」といったようなこと。まさに「知ってるけど、解けない・書けない」ということです。これでは明らかによくありませんよね。勉強では、わかりさえすればそれでいいのではなく、できないといけないのです。であれば、現実社会がそうであるように、家庭で子どもに勉強を教える際には、ひとまず「できる」をゴールにしてみてはいかがでしょうか。もちろん、「意味もわかるし、できる」ようになれば、それに越したことはありません。でも、最初から完璧に意味が分からなくても、「できる」をゴールにしていくうちに、「そういうことだったのか!」と「わかる」タイミングが訪れます。ではどうすれば子どもは「できる」ようになるのか。ここでは、国語の漢字と算数の計算問題を教えるときを例にして、家庭でできる「子どもが『できる』ようになる勉強の教え方」を簡単にご紹介します。すべて、先輩教師から教わった方法です。【漢字の書き取り】新出漢字を鉛筆で書く前に、ドリルなどのお手本の漢字を指でなぞる。ここで覚えてしまうぐらい、何度も指でなぞる。ドリルなどでなぞり書き用に薄く印刷されている文字を、鉛筆でなぞる。何も見ず、なぞらないでも書けるかどうか、確かめる。ここでは「できる(書ける)」をゴールにしているので、その漢字がどのようにしてできたかを「わかる」必要はありません。漢字の成り立ちの学習をすることもありますが、そのときのゴールと、漢字を書けるように学習するときのゴールは異なります。【計算問題】一通り問題を解き、答え合わせをする。間違えた問題にチェックを入れておく。1でチェックを入れた問題だけ、もう一度解き直し、答え合わせをする。間違えた問題にチェックを入れる。2でチェックを入れた問題だけ、再度解き直し、答え合わせをする。間違えた問題にはチェック。全問正解するまで、1~3を繰り返す。チェックがなくなれば、全部「できた」ことになります。これはどの教科、どんな学習でも使える方法です。***以前「日本地図があっという間に頭に入る!?【漢字】と【都道府県】の覚え方」で書いた都道府県の覚え方のように、「できる」ようになるための学習方法は、まだまだたくさんあります。ぜひ、今回ご紹介したことを、家庭で子どもに勉強を教えるときの参考にしてみてください。(参考)EDUPEDIA|「わかる」「できる」「身につく」「使える」の差サクセス塾|成功法則 ⑧『わかる』と『できる』は違う!!【自立学習応援塾】一進ゼミナール/ガウディア川越鯨井教室|「わかる」・「できる」の違い
2020年02月29日子どもはたくさんの可能性を秘めています。親が期待していたほど勉強や習い事の成果が出なかったり、一方で、親の期待以上の結果を出したりと、たとえわが子でもどんな得意不得意があるかわかりません。今回は、子どもが「これが好き!」と気づいたときに親がサポートできることや、秘められた能力を最大限に活かす環境づくりについて考えていきましょう。これからの時代、求められるのはどんなスキル?めまぐるしく時代が変化するなか、学校や社会で評価される基準も大きく変わってきています。これまでは、勉強やスポーツができて、コミュニケーション能力に長けているような万能型が評価されてきました。しかしこれからの時代は、「自分はこれが好き!」「これなら誰にも負けない!」といった、夢中になれるものを知っている子が可能性を広げて周囲からの評価を得られるケースが増えてくるでしょう。一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事の野上美希さんは、「大学入試に関しても、これからは認知能力を問うテストだけではなく、その子が生きてきた人生をプレゼンテーションして推薦で入学を勝ち取る、といったことも出てくるでしょう」と述べています。そうであるならば、親ができることは、子どもが好きなことに対して熱中できる環境づくりや、やる気をサポートする声かけなどが中心になるでしょう。ただし、子どもの能力を見出すために親が熱心になりすぎるのは少々問題があるようです。教育ジャーナリストのおおたとしまささんは、“子どもにどんな才能があるかわからないから”と、たくさんの習い事をさせようとする多くの保護者に対して、警鐘を鳴らしています。おおたとしまささんは、「本当に才能があることに対してなら、子ども自身が自分で反応し、『これをやってみたい!』と目を輝かせるはず」といいます。親はただ、その目の輝きを見逃さないように心がければいいのです。また、おおたとしまささんは、親が勝手に未来を予測し、子どもに対して「この力はつけておいたほうがいい」と押しつけることにも疑問を呈しています。今ならば、「グローバル化に向けて英語力は必須」「プログラミングを習わせないと時代に乗り遅れる」というようなケースですね。ここ10年でも、世の中はものすごいスピードで変化し続けているのだから、たった数年先の未来であっても正確に予測することなど誰にもできません。おおたとしまささんは、これからは「どんなに世の中が変化しても、周りの状況を観察し、どういったスキルが必要とされるかを判断する力。そして必要なものを自分で手に入れる力」が求められるといいます。脳に刺激を与えて子どもの可能性を伸ばす「ハマり体験」「後伸びする子どもとそうでない子どもの違いは、幼いときに“なにかに熱中した経験”があるかどうかです」そう述べるのは、中学受験のプロ・小川大介先生です。小川先生は、「後伸びする子どもはエネルギーにあふれていて、体力だけでなく、好奇心や自分の世界を深めていく心のエネルギーも強い」と指摘します。そのエネルギーを生み出すのが、“幼いときに好きなことを好きなだけやった経験”だというのです。ここで注意すべきは、「なにをするか」ではないということ。スポーツ、音楽、芸術など特定のジャンルで結果を出すことにこだわるのではなく、あくまでも「なにかに熱中する」という経験こそが、後伸びするエネルギーの源になるのです。東大生は「親から勉強しろと言われたことが一度もない」という人が多いといわれますが、彼らの脳を磨いたのは“子どものころのハマり体験”であることが徐々に明らかになっています。そして、共通するのは、子どもの“ハマり体験”を親が全力でサポートしていたということ。子どもがやりたいことを否定したり、「こっちのほうがいいんじゃない?」と誘導したりせず、子どもの意思を尊重して受け入れてあげることで、好奇心とやる気がぐんぐん伸びていったというわけです。東北大学加齢医学研究所教授の瀧靖之先生によると、好きなことにのめり込むと、「もっと知りたい」「もっとできるようになりたい」と、脳が新たな情報を求めるとのこと。つまり、なにかにじっくり取り組むのは、思考力を伸ばすなど脳にとっても非常に効果的なのです。そうはいっても、「子どもって飽きっぽいから、ハマってもすぐにやめちゃう」「最初はやる気を出すけど、結局長続きしないから意味ないのでは?」そう実感している親御さんも多いのではないでしょうか。瀧先生は、「もし途中で挫折したり、飽きてしまったりしても、ハマった経験は人生のどこかで必ず生きる」といいます。なぜなら、途中まで覚えた手順や失敗への反省も脳に記憶されるから。「これは自分には向いていない」と早い段階で気づくことができれば、次の可能性に向けて歩き出せます。子どもの「好き!」を伸ばすために親ができること全盲でありながらピアニストとして世界で活躍している辻井伸行さん。その母であるいつ子さんは、伸行さんが子どものころ、プロのピアニストにしようとは少しも考えたことがなかったといいます。しかし、生まれつき目が見えなくても「あれができない、これができない」と制限するのではなく、息子なりの感覚や世界観を豊かに広げることを心がけた結果、すばらしい才能を引き出すことができたのです。そのきっかけとなったのは、日常のささいな出来事でした。親子のコミュニケーションの一環として、家の中でいつも音楽を流していたといういつ子さん。伸行さんが生後8ヶ月を迎えたころ、ショパンの「英雄ポロネーズ」を聴かせたところ、腹ばいになりながら全身でリズムをとってバタバタと動き出す姿を目にします。息子の喜ぶ顔が見たくて毎日同じ曲を聴かせていると、次第にCDが傷つき音が出なくなりました。そこで、同じ曲が入ったCDを購入して聴かせたところ、伸行さんはまったく反応しなくなったのです。不思議に思ったいつ子さんは、以前のCDと見比べて、あることに気づきました。それは、最初に聴かせていたCDとは演奏者が違うこと。すぐに以前と同じ演奏者が演奏したものを買い直して聴かせると、伸行さんは再び足をバタバタさせて喜んだといいます。この瞬間に、いつ子さんの「まさか」は「確信」に変わりました。伸行さんの耳は、演奏者の違いを聴き分けていたのです。ここで「赤ちゃんだから飽きたのだろう」と諦めていたら、伸行さんの音楽の才能は埋もれたままだったかもしれません。もともと、伸行さんはほかの赤ちゃんに比べて、掃除機や洗濯機の音といった生活雑音に敏感だったことからも、優れた耳と音感の持ち主であることは明確でした。観察する際に気をつけたいのは、一見すると短所に見えてしまう特徴を、短所と決めつけて切り捨てないことです。それも含めて「我が子らしさ」ではないでしょうか。伸行の場合、生活雑音に対する反応が、まさにそれでした。「生活雑音に泣き止まない我が子の反応」こそが、将来のプロピアニスト・辻井伸行の原点だったのですから。(引用元:DIAMOND online|辻井伸行の母はどう息子の才能を見抜いたか)わが子をよく観察して、どんなものに反応するのか、何をしているときに目を輝かせるのか、楽しそうにしているのか、それらを見極めることができたら、子どもの能力を伸ばすきっかけになるかもしれません。■親の価値観を押しつけない!私たち親はつい「子どものため」と思って、最初から安全な道を用意してしまいます。しかしそれは、逆に子どもの可能性を狭め、潜んでいる才能や優れた能力を引き出すことを阻んでいるのです。親の人生と子どもの人生はまったく別のものであり、子ども自身がなにを好きになるか、どんなことに興味を持つかは、いくら親でも予測できません。これからの時代は、ますます多様な価値観を持つ人たちと関わる機会が増えます。前出の野上美希さんは、「自分とは違う価値観に出会って『これは違うんじゃないか』と思っても、自分の核となるもの(=自己肯定感)がないと、いい関係を築くことが難しい」といいます。「自分は自分であっていい」という自己肯定感は、自分のやりたいことを親が認めてくれている安心感なくして育まれないのです。■まずは子どもと一緒に楽しむことから前出の瀧靖之先生は、子どもの好奇心を「ハマり」に導くには、親が一緒に楽しむのが効果的だと述べています。子どもが宿題をしている横で、親も資格試験の勉強や仕事をすると子どもの宿題がはかどったり、親の影響でスポーツや音楽などに興味を抱いて、いずれそれが仕事になったりと、そのような例はいくらでもあります。たとえば、野球好きの父親に連れられて野球観戦するうちに「自分もやりたい!」と思ったり、母親と一緒におかし作りするのが習慣だったことからパティシエを目指したりする子は、身近にたくさんいるはず。まずは、親として最初のきっかけをつくってあげましょう。そして、より高度なレベルを求めてきたら、レッスンに通わせるなどのステップアップの支援をしてあげることをおすすめします。***どんな親でも、一度くらいは「うちの子、天才かも!」「将来プロになれるんじゃない!?」と心の中で感じたことがあるのではないでしょうか。ここで期待しすぎて、子ども以上に親が熱心になって無理をさせてしまうと、せっかくの「好き」が「大嫌い!」になってしまうことも。わが子に “キラリと光る才能” を見つけたとしても、親はあくまでもサポート役であることを忘れずに。(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|自己肯定感も勉強への姿勢も“熱中体験”の先で生まれるStudyHackerこどもまなび☆ラボ|才能さがしのための「たくさんの習い事」より、もっと大事にすべきことStudyHackerこどもまなび☆ラボ|“後伸び”する子としない子の違い。成長後に学力が急伸する幼少期の過ごし方洋泉社MOOK(2017),『子どもの脳を伸ばす 最高の勉強法』, 洋泉社.DIAMOND online|辻井伸行の母はどう息子の才能を見抜いたか
2020年02月22日行動意欲がわいてくる&効率よく行動できる“物の位置”とはある行動に必要な物が近くにないと、その行動を起こす意欲はなかなかわかないものです。たとえば皆さんには、次のような経験(あるいは似たような経験)はないでしょうか。読書を習慣にしようと思ったが、本をクローゼットの中にしまい込んでいたため取り出すのが億劫で、結果的に、読書を習慣にするどころか本を読む気さえなくしてしまった。印刷室で会議のための書類を印刷しようとしたとき、書類の文字のミスに気づいたが、印刷室には修正ペンなどの文房具がなく、その場で修正できなかった。印刷室と自分の席が離れていて、修正するのも印刷するのも面倒くさくなってしまった。このように、一度は「行動しよう」と思ったのに、必要な物がなかったせいで「あとでいいや」「あとで探そう」なんて思ってしまい、その結果行動意欲を失ってしまったという経験は、一度や二度ではないでしょう。物の位置は、行動意欲だけでなく、作業の効率にも大きく関係します。私がそのことに気づけた経験を2つご紹介しましょう。1つ目の経験は、私がビジネスホテルに泊まったときのことです。朝食をとろうと会場に行ったところ、食事中の人はさほどいなかったのに、座れる席はほとんどありませんでした。その理由は、多くの席に前の人が食べ終えた食器がそのまま置いてあったから。従業員の女性が1人せわしなく動き回ってはいましたが、なかなか全部の食器が片付きません。私はその様子を見ながら、ファーストフード店にあるような食器の返却口があれば効率よく片付けができるのに、と考えていました。もう1つの経験は、出張先の福岡で路線バスに乗ったときのこと。降りるときに押すボタンの位置が、東京の路線バスとは違うことに気がつきました。私が普段利用する東京のバスでは、ボタンを押そうとするとき、ほかのお客さんの前に腕を伸ばさないと押せない場合があります。自分の位置からちょっと離れた場所にしかボタンがないケースも多いのです。しかし、福岡で私が乗ったバスでは、一人ひとり専用のボタンがあるくらいたくさんのボタンが設置されていました。これがとても便利で、効率よくボタンが押せていいものだなと大変感心しました。このように、必要な物が近くにあれば、すぐに行動できたり、行動がはかどったりします。つまり、効率よく行動できるということです。私たちは日頃からそのようなシーンを経験しているはずですし、言ってみれば当たり前のような話です。しかし、子どもの勉強道具について考えたとき、はたして皆さんは“置き場所”をきちんと意識できているでしょうか?子どもの勉強の効率は、“物の位置”しだいで激変するある学校の先生が言っていました。「私は、カバンの中でも何をどこに入れておくか決めている。そうすると、使いたいものがすぐに手に取れる。あれっ、ノートはどこに入れてたかな!?などと探さなくてもいい。探さなくていいから、仕事もはかどるのだ」と。これは、物の位置と仕事の効率の関係ですが、“子どもの勉強道具の位置”と“勉強の効率”においても同じことが言えるでしょう。たとえば、子どもがテレビを見ていて「○○ってどういう意味だろう?」と思ったときに、リビングのテーブルにいつも国語辞典があればすぐ調べられますよね。ですが、子ども部屋の本棚にしまってあったら、わざわざそこまで取りに行かなくてはいけません。時間がかかりますし、何より面倒ですから、いつの間にか調べる意欲をなくしてしまう、といったことも起きないとは限らないでしょう。国語辞典だけの話ではありません。テレビの教養番組やクイズ番組などで、よく日本や世界の地名、あるいは山や海、川の名前などが流れることがありますね。子どもに「それってどこにあるの?」とか「何県にあるのかな」などと聞かれたことはありませんか?そんなとき、テレビの近くやリビングの手の届きやすい位置に地図帳がおいてあれば、子どもと一緒にすぐ調べることができるでしょう。もし地図帳がすぐ近くになかったら、「あとで調べよう」とか「あとで子ども部屋に取りに行こう」なんて思いながら、いつの間にか調べようとしたことさえ忘れ、結局調べないままになってしまうことは多いものです。実際、小学生時代の私がそうでしたから。教育現場では“勉強道具の位置”が意外と意識されていない勉強道具を置く場所はこれほどまでに大切でありながら、じつは日本の教育現場では、そのことがあまり意識されていないケースが見受けられます。たとえばある塾では、2階の教室には黒板と机だけしかなく、辞書や参考書などは1階にまとめて置かれています。何かを調べたくなったとき、辞書類が2階の教室の後ろにでも置いてあれば、1階まで行くことなく、授業中でもすぐに調べることができるでしょう。また学校の場合は、図書室にまとめて置いてあったり、廊下の隅に置いてあったり、キャスターつきの本棚に置いてあったりと、学校によってさまざまな場所に置かれています。学校や塾にある辞書類は子どもたちが交代で使うものなので、どうしてもこういった共有スペースに置くことが多くなります。ですが一番いいのは、子ども一人ひとりの机の中に辞書を入れておくことです。それが難しければ、できるだけ子どもの近くに辞書を置いておきたいもの。せめて、学年の廊下ごとに本棚を設けていつでも辞書を手にとれるようにしておくべきです。そうでないと子どもは、辞書を使いたくてもいつも遠くまで取りに行かないといけないような環境に置かれてしまいます。それでは「あとでいいや」と調べることを後回しにしてしまいがちになります。調べる意欲そのものをなくしてしまうことにもなりかねません。しかし、勉強道具が近くにありさえすればそれでいいかというと、そういうわけでもありません。たとえば、日本の小学校の教室では、子ども一人ひとりの机の中に「道具箱」が入っています。もしくは「道具袋」といわれる袋を机の横にかけているかもしれません。これらは、はさみ、のり、ホッチキス、色鉛筆などを常に入れておくためのもの。これがあることで、いちいち色鉛筆などを家から持って来なくてもすぐに学校で使うことができます。学習の効率を上げられるというわけですね。ただ、この道具箱の中がぐちゃぐちゃになっていてはよくありません。必要なものがすぐに取り出せないからです。先生によっては、どこに何を入れておけばすぐに取り出せるのか考えさせたり、定期的に整理をさせたりすることもあるようです。そのような経験を通して、子どもは勉強道具の置き方と勉強効率との関係を、自然と学ぶことができます。もうひとつ、勉強道具の位置に関する興味深い話を紹介しましょう。それは、教室内の「掲示物」についての話です。日本では、教室の前面にある黒板には何も貼らないほうがいいと考える先生が多くいます。その理由は、授業中に掲示物に目が行ってしまい、授業に集中できなくなるから。ただし、日本地図や世界地図などは、教室の後ろの壁に貼られていることもあります。一方アメリカでは、黒板にも教室中の壁一面にも、多くの掲示物が貼られているそうです。これはさまざまな国の教育を視察している大学の先生から聞いた話なのですが、なんとテスト中にもその掲示物を見ていいようになっているとのこと。知りたいことがあればすぐに自分の席から調べることができる、まさに“効率よく勉強できる環境”が整っているといえます。やはり“勉強道具の位置”は、勉強の効率にも意欲にも大いに影響を与えるのですね。家庭での「勉強道具の最適な置き場所」とは?ここまで書いてきたことを踏まえると、子どもの学びへの意欲を高めたければ、勉強道具の位置が大切になるということが言えます。それは何も、勉強部屋を与えるという話ではないことはすでにおわかりいただけていることでしょう。重要なのは、必要なものが必要なときにいかにすぐ手に取れるかということ。そのために家庭ですべきこととして、国語辞典や地図帳はリビングに置くとよいということはすでにお伝えしたとおりですが、以下も提案しておきます。30cmの定規、鉛筆削り、赤青鉛筆などの文房具……机の引き出しの「決まった場所」に入れる図鑑、辞書類……引き出しに入れるか、机の横に置く九九の表、漢字ポスター、地図など……机からすぐ見える壁に貼るか、机にビニールマットを敷いて挟むもし、普段勉強に使う机に引き出しがない場合は、机のすぐ横に置き場所を設け、「この場所にこれを置く」というようなルールを子どもに決めさせましょう。机の「上」ではなく「横」です。机の上には何も置かないほうが作業がしやすく、勉強がはかどりますよ。また、九九の表やポスター類は、アメリカの学校にならっていつでも目にできる壁(または机のマット下)に。じつはこれは、私が学校の職員室の机や自宅の書斎で実践している方法です。物の置き場所が決まっていますし、椅子から立ち上がる必要もないので、子どもたちの学習指導に関するデスクワークがはかどり、仕事がスムーズに進みます。***上で提案したことはあくまで一例ですが、ご家庭の状況に合わせてぜひ実践してみてください。勉強道具をすぐに手に取ることができれば、いちいち集中力も途切れません。きっと意欲的に、かつ効率よく勉強できるようになるのではないでしょうか。今回は、勉強道具を置く場所が勉強の効率にも関わってくるということについて、解説してみました。ご参考になれば、幸いです。
2020年02月21日私の仕事は管理栄養士。娘の離乳食に関しては、「食についてある程度知識もあるし、育児本でばっちり勉強しているから大丈夫」と思っていました。しかし、これが失敗の連続で…。今回は知識があるからこそ「頭でっかち」だった私の離乳食体験談を書きたいと思います。準備万端!意気込んで離乳食をスタート娘が生後5か月と1週間のときに、離乳食を開始しました。事前に足を運んだ保健所の離乳食講座では、保健師や管理栄養士の先生方のアドバイスを大量にメモし、離乳食のレシピ本や育児雑誌の付録の冊子、ネット情報やインスタグラムもチェック。私自身は乳幼児向けの栄養指導経験はありませんでしたが、「食についてある程度知識もあるし、育児本でばっちり勉強しているから大丈夫」と楽観的に考えていました。つまり、これ以上にないくらいの準備万端な状態で、「いざスタート!」と意気込んでいたのです。離乳食に関するレシピ本や付録の冊子。何度も何度も読み込んで、ボロボロになっているものも…始めた途端、下痢を繰り返す毎日ところが、離乳食を始めた途端、娘の下痢が始まりました。小児科の先生からは「離乳食が始まると、消化器官が未発達の赤ちゃんにはよくあること」と言われ、大人でも飲みづらいような砂状のお薬を処方されました。それをどうにか飲ませるのですがなかなかよくならず、離乳食を食べると下痢するという状態を繰り返します。また、下痢でおしりがすぐ赤くなってしまうので、うんちをする度に娘のおしりをお湯で軽く洗い流すという作業を一日に何度もしなければなりませんでした。離乳食カレンダーと違うことに悩み、動揺…離乳食はスタートしたら、基本的には止めずに赤ちゃんの様子を診ながら続けていくことになっています。娘は4か月の間、離乳食初期から中期の食形態をゆっくりと進めていましたが、月齢の近い子ども達は、どんどん食べられるようになっていきます。私は、離乳食カレンダーをチェックしながら、書いてあるようなステップアップが図れないことに悩んでいました。「お友達はもう3回食に進んでいるんだ」と他の親子と比べて悩んだり、「離乳食の本に書いてある食材の形状は、今の娘にはまだ早すぎるのかな」と1人で抱えこみ…。悩みながら作った離乳食も、娘からそっぽを向けられることもしょっちゅうで、気持ちが落ち込むことが多くなっていきました。私自身が、もともと真面目でマニュアル人間な性格であることも災いし、育児本通りに進まないことにいっぱいいっぱいになっていたのだと思います。悩んでいた私に向けて、小児科の先生が言ったひとこと今思うと大げさな気もするのですが、当時の私は、「このまま娘がご飯を食べられなくなったらどうしよう」と、真剣に悩んでいました。そんなとき、いつものように娘のおなかの調子を診てもらうために小児科へ。そこで先生に離乳食について話をしたところ、「1歳で3食食べられるようになればいいよ!」とあっけらかんと言われたのです。当時は、重苦しい気持ちはすぐにはなくならず、この言葉に大いに励まされたというわけではなかったのですが、「もしかして私は1人で悩み過ぎていたのかな?」と、ようやく自身を客観的に見つめることができ、少しだけ気持ちがラクになったことを覚えています。頭でっかちな自分に気づき、娘の身体と向き合うことにその後、小児科の受診と服薬を続けながらも離乳食を続けました。娘が1歳に近づいた頃、私は「娘の消化器官は未発達で成長過程にいる、だから焦っても仕方がないんだ」と気づきました。知識があったために、「こうあるべき」ということが先行し、その「べき」に自分自身ががんじがらめになっていたのだということも。離乳食をスタートして、半年以上悩んできました。しかし改めて、大切なのは、マニュアル通りに進むことやほかの子どもの進み具合との差を見ることではなく、目の前の娘や身体の状態と向き合うことだと感じたのです。このことに自分自身がしっかりと納得できたのは、1歳の誕生日を過ぎた頃だったように思います。この間、離乳食の形状を無理に早めるようなことはしなかったものの、ひとりであたふたしてしまったこと、悩みすぎて食事の時間に笑顔がなくなっていたことを、娘に申し訳なく思っています。少しずつ、目の前の娘の身体の状態にきちんと向き合えるようになっていきましたひとりで悩まないことも重要です!結果的に、娘のおなかがゆるい体質は1歳過ぎまで続きましたが、その頃には3食食べるリズムを作れるようになりました。現在2歳9か月になり、「ほうれん草ヤダー」などとワガママも言いますが、基本的にはよく食べる子に成長しています。離乳食が進まない、食べない、食べながら遊んでしまうなど、離乳食初期から完了までの約1年半の間、悩みは尽きないですね。今回の経験で、離乳食奮闘中のママやパパに私が言えるのは、一人で抱えこまないでほしいということ。振り返ると、もっと早い段階で小児科の先生や保健所、支援センターの専門家に相談すれば良かったなと思います。そして、何より、マニュアルにとらわれ過ぎないでください。離乳食は基本的な指針はありますが、完全な形がありません。正直なところ、専門家も先輩ママも、人によってアドバイスの内容が異なります。つまり、親子それぞれのスタイルがあるということです。いろいろな人のいろいろなやり方を聞いて、試してみて、親子でやりやすい方法を見つけていってくださいね。<文・写真:ライターくりきともこ>
2020年02月14日思考力、判断力、表現力といった問題解決能力やコミュニケーション能力などこれからを「生き抜く」力。これからの「教育改革」ではこれまでのような知識偏重ではなく、知識をどう使うか、主体性を持って仲間と強調しながらやり遂げる力など、これまでの「頭の良い子」とは違った賢さが求められるようになります。中には「うちの子勉強好きじゃないんだよね」「なんか読解力が低い気が......」「スマホばっかりしているんですけど」とお悩みの保護者の皆さんもいるかと思います。ですが、そんな親が心配する行動や変化こそ子どもが伸びるサインなのだそう。サッカーでも勉強でも、子どもが伸びるためには親のかかわりが重要です。今回は、入塾テストなしで難関校に続々合格する塾の先生で、アスリートと学習教育に共通する「成長プロセス」の体系化にも取り組んでいる進学塾VAMOS代表・富永雄輔さんに、子どもの伸びしろを最大限伸ばすヒントが詰まった最新著書「それは子どもの学力が伸びるサイン!」(廣済堂出版)のからいくつかのヒントをいただくこの短期連載。今回は、保護者の関心も高い「習い事と塾の両立」についてお届します。「それは子どもの学力が伸びるサイン!」自分で決断できた子の方がモヤモヤがなく集中して取り組めるのです(写真は少年サッカーのイメージです)■習い事はいつ辞める?それとも続けた方が良いもの?こんにちは。私は東京・吉祥寺に本部を置く学習塾「VAMOS(バモス)」の経営者として、10年以上子どもたちの指導にあたってきた富永雄輔です。また、一方で日本サッカー協会登録仲介人として、サッカー選手のエージェント業務も行っています。私の塾では入塾テストを一切行っていませんが、ありがたいことに難関校と言われる学校に合格するお子さんたちが多くいらっしゃいます。そんなお子さんと親御さんのかかわりを見てきた経験から、子どもが気になる行動をしたときは、大人がそれを「サイン」とみなし、適切なタイミングでフォローしていけば、学力も思考力もぐっと伸びると実感しています。さて、受験のシーズンですね。毎年この時期が近づくと多くの保護者の方から寄せられる質問があります。「習い事と塾の両立について」の相談です。お子さんの受験が近づくと、保護者の方から「ほかの習い事はいつやめさせればいいか」「それとも続けたほうがよいのか」といった相談を受けることがよくあります。親としては、「スポーツも続けたほうが体力がついて、勉強にも集中できるのではないか」と思ったり、逆に、「習い事はさっさとやめるべきではないか」という心配も生まれてくるのでしょう。まず、無理に「文武両道」をめざす必要はまったくありません。本人が望んでないのに、親が「スポーツも塾もがんばりなさい」と無理強いするのはNGです。小・中学生はまだそこまで体力はありません。一方で、本人が両立できそうもないと感じているけど、その習い事は好きなので、悩んでいるケース。その場合は、たとえば、「2か月休めば、またチームに戻れるよ」とか「3か月後の試合には出られるように、コーチに話しておくから」とか、親が促すのがよいでしょう。受験が終われば再開できるとわかれば、本人は安心して受験に集中できます。このように本人が迷っているときは、優先順位は親がつけるのがベストです。■自分で決めた子の方が上手に切り替えられる。親が焦りすぎないで子どもが続けたがっている場合は?また、子どもが習い事を続けたいと思っているのに、親に習い事をストップさせられてしまった場合、モヤモヤしたまま、かえって勉強に集中できないケースもあります。そこは無理にやめさせたりはしないでください。「◯◯の大会が終わったら」などと自分自身でやめ時を決められた子や、「このまま両立するのは無理だな」といい意味であきらめられた子は、上手に気持ちを切り替えられます。夏休みが終わっても習い事をやめる気配が一向に見えないと、焦りはじめる親御さんも多いのですが、勉強のギアが一気に上がりはじめる受験直前の11月、12月あたりになると、習い事を一旦やめる決断をする子がほとんどです。中には、結局最後まで両立し続けて、限られた時間の中ですばらしい集中力を発揮し、よい結果をつかみとる子も珍しくはありません。仮に「第一志望校合格」の成功は手に入れられなかったとしても、好きなことに全力で取り組みながら受験にも挑んだ経験は長い目で見れば決してムダにはならないでしょう。そもそも、かんたんにやめる決断ができないほど、熱中できる何かがあるのは、とてもすばらしいことですから、その気持ちは十分に理解してあげていただきたいです。■子どもが無用なトラブルで傷つかないために事前リサーチも大事辞める時のゴタゴタでその後のつきあいが気まずくなったりしないためのリサーチや日頃のつきあいは大事です(写真は少年サッカーのイメージです)ただ、気をつけていただきたいのは、やめたいときに自由にやめにくい習い事もあることです。ここ数年、サッカーや野球、バスケットなどのチームスポーツに取り組んでいた子が、受験を理由にチームをやめようとしても、なかなかやめさせてもらえない話を耳にするようになりました。「1人でも欠けてしまうと試合に出られない」というチーム事情が絡む場合はさらに深刻で、慰留を振り切ってやめた結果、親子ともにその後のつきあいが気まずくなるケースもあります。やめる、やめないでトラブルになれば、子どもも傷ついてしまいますから、それを避けるためにも、野球やサッカーなどのチームに所属する場合は、やめやすいかどうかを事前にきちんと確認しておくと安心です。富永雄輔(とみなが・ゆうすけ)進学塾「VAMOS(バモス)」代表。京都大学を卒業後、東京・吉祥寺に幼稚園生から高校生まで通塾する進学塾「VAMOS」を設立。入塾テストを行わず、先着順で子どもを受け入れるスタイルでありながら、中学受験から高校受験、大学受験まで、毎年首都圏トップクラスの難関校合格率を誇る。少人数制の個別カリキュラムを組みながら、子供に合わせた独自の勉強法により驚異の合格率を実現して話題に。小さな学習塾ながら、論理的な学習法や、子供の自主自立を促し、自分で考える力の育成に効果的と、保護者から圧倒的な支持を集めている。日本サッカー協会登録仲介人として若手プロサッカー選手の育成も手がけ、アスリートと学習教育に共通する「成長プロセス」の体系化にも取り組んでいる。主な著書に『「急激に伸びる子」「伸び続ける子」には共通点があった!』(朝日新聞出版)、『東大生を育てる親は家の中で何をしているのか?』(文響社)、『男の子の学力の伸ばし方』『女の子の学力の伸ばし方』(共にダイヤモンド社)などがある。
2020年02月05日思考力、判断力、表現力といった問題解決能力やコミュニケーション能力などこれからを「生き抜く」力。小学生のお子さんがいらっしゃる保護者のみなさんは、2020年からの「教育改革」でもそれらが求められていることを実感されているのではないでしょうか。これまでのような知識偏重ではなく、知識をどう使うか、主体性を持って仲間と強調しながらやり遂げる力など、これまでの「頭の良い子」とは違った賢さが求められるようになるのです。中には「うちの子勉強好きじゃないんだよね」「なんか読解力が低い気が......」「スマホばっかりしているんですけど」とお悩みの保護者の皆さんもいるかと思います。ですが、そんな親が心配する行動や変化こそ子どもが伸びるサインなのだそう。サッカーでも勉強でも、子どもが伸びるためには親のかかわりが重要です。今回は、入塾テストなしで難関校に続々合格する塾の先生で、アスリートと学習教育に共通する「成長プロセス」の体系化にも取り組んでいる進学塾VAMOS代表・富永雄輔さんに、子どもの伸びしろを最大限伸ばすヒントが詰まった最新著書「それは子どもの学力が伸びるサイン!」(廣済堂出版)の中からいくつかのヒントをいただきました。数回に分けてお送りするのでお楽しみください。適切なフォローで学力や思考力など可能性が最大限に伸びるのです(写真は少年サッカーのイメージです)■親世代の「正解」が通用しない現代の子どもの伸ばし方こんにちは。私は東京・吉祥寺に本部を置く学習塾「VAMOS(バモス)」の経営者として、10年以上子どもたちの指導にあたってきた富永雄輔です。また、一方で日本サッカー協会登録仲介人として、サッカー選手のエージェント業務も行っています。私の塾では入塾テストを一切行っていませんが、ありがたいことに難関校と言われる学校に合格するお子さんたちが多くいらっしゃいます。そんなお子さんと親御さんのかかわりを見てきた経験から、子どもが気になる行動をしたときは、大人がそれを「サイン」とみなし、適切なタイミングでフォローしていけば、学力も思考力もぐっと伸びると実感しています。一方、長年塾を経営して、非常に強く感じるのは、子どもたちの様子がここ数年で急激に変わったことです。10年前の子どもと今の子どもは、まったく異質であると言っても過言ではありません。しかし、変わったのは子どもたちだけではなく、この10年の間に人々の生活や社会的な価値観や、学校教育そのものが激変しています。中でも、親御さんが特に感じるのは、インターネット社会、スマホ社会の到来ではないでしょうか?ネットの人口普及率は2005年末には70%を突破。その後、スマホの普及率は、2014年には全世代平均で60%台、2019年2月には80%台となりました。物心ついた頃には、まわりにスマホが当たり前にある――そんな世代こそ、私が近頃、塾で出会うようになった子どもたちです。変化の早いこの時代は、親と子の世代間ギャップが以前とはまるっきり次元が違うのです。このギャップこそが、今の親世代にさまざまな教育の悩みをもたらしています。なぜなら、自分たちが「これが正しい」「こうすべきだ」と教えられてきたことがまったく通用しないからです。また、共働きや、塾や習い事に毎日のように通う子も増えているため、親が子どもと接する時間は短くなってきています。そんな中、「うちの子は本当に大丈夫なのだろうか」と不安になることもあるでしょう。しかし、心配しないでください。親が心配になる子どもの行動や変化こそが、実は伸びる「サイン」です。このサインには、学力だけでなく、好奇心や自立心、思考力なども育まれるヒントが詰まっています。今の子どもたちが発するサインの本当の意味や、子どもを伸ばすための「チャンス」や「ピンチ」の生かし方、そしてスマホなどの「デジタルの生かし方」について解き明かしていきます。ピンチだと思っていたことが実はチャンスだったり、その逆だったりと意外な結果が見えてくるかもしれませんが、かつての常識は今や非常識、というくらいの変化が本当に起こっていることを受け入れていただきたいのです。■勉強は「よい会社に入るために」するものではないまず、お子さんが「勉強は何かになるためにするもの」と思っているのなら、それは違います。勉強する目的を、「自分の可能性を広げるため」とか「おもしろいことを言うためには最低限の知識がいるから」など、幅広い意味でとらえてほしいのです。そのためには、親が「何かになるために、勉強しなさい」とはあまり言わないほうがいいですね。たとえば、「よい会社に入るために」とか「医者になるために」などと言いすぎてはいけません。お子さんが「eスポーツのプレイヤーになりたい」「ユーチューバーになりたい」などと言い出した場合、親はどうしたらよいかわからないでしょう。しかし、それは、親世代がかつて抱いていた「サッカー選手になりたい」「歌手になりたい」という夢と同じようなイメージで捉えるほうがいいと思います。「スポーツ選手になりたい」という夢は健全で、「ユーチューバーやeスポーツのプレイヤーになりたい」という夢はバカバカしいというのは、子どもの価値観からすると納得できません。ユーチューバーやeスポーツのプレイヤーとして、億単位で稼ぐ人たちは大きな話題となりますが、当然ながらそのような人はほんのひと握りです。そういう意味でもスポーツ選手と状況は似ています。その域に達するためには、ある程度の生まれもった才能と、それこそ血のにじむような努力が必要なのです。そのような努力が必須だと、小学校高学年以上の子どもであれば知っていてもいいでしょう。結局、プロスポーツ選手にしろ、ユーチューバーにしろ、eスポーツプレイヤーにしろ、十分な稼ぎを得られるレベルにまで到達できる確率は低いのです。つまり、食べていけない確率のほうが明らかに高いわけですから、そのことだけに集中するリスクは計り知れないという事実も、小学校高学年くらいになったら、しっかり子どもに理解させるべきです。■スポーツや社会で必要な「賢さ」を身につけるための基礎学力は重要サッカーでも海外で活躍したいと思ったら語学の勉強が必要です(写真は少年サッカーのイメージです)もちろん、「スポーツ選手」や「ユーチューバー」「eスポーツプレイヤー」いう夢を描くこと自体を否定する必要はありません。低いとは言っても、それを実現させる可能性もあります。激動する時代を生き抜くために欠かせないのは、できるだけ多くの将来の選択肢です。さまざまな「勉強」をしていれば、選択肢は確実に増えます。だから今、何をめざしているとしても、子どもたちに基礎学力は身につけてほしいのです。スポーツ選手も、ユーチューバーも、eスポーツプレイヤーも、学歴が不要な職業だからと言って、これからの時代も「賢さ」は必須です。そのための基礎学力が重要であることも子どもに伝えましょう。ユーチューバーやスポーツ選手にあこがれる子が、勉強にやる気が出るちょっとしたワザとしては、高学歴のユーチューバー(ネット検索すると複数出てきます)、英語をしゃべれるサッカーの吉田麻也選手や野球の菊池雄星選手、大学受験の一般入試とサッカーを両立させた岩政大樹選手の存在を子どもに教えるとよいでしょう。また、eスポーツでは東大出身の選手がめざましい活躍をしています。学歴自体の価値が下がっている今、「いい大学、いい会社に行くために勉強しなさい」というだけでは、もう子どもには通じません。富永雄輔(とみなが・ゆうすけ)進学塾「VAMOS(バモス)」代表。京都大学を卒業後、東京・吉祥寺に幼稚園生から高校生まで通塾する進学塾「VAMOS」を設立。入塾テストを行わず、先着順で子どもを受け入れるスタイルでありながら、中学受験から高校受験、大学受験まで、毎年首都圏トップクラスの難関校合格率を誇る。少人数制の個別カリキュラムを組みながら、子供に合わせた独自の勉強法により驚異の合格率を実現して話題に。小さな学習塾ながら、論理的な学習法や、子供の自主自立を促し、自分で考える力の育成に効果的と、保護者から圧倒的な支持を集めている。日本サッカー協会登録仲介人として若手プロサッカー選手の育成も手かげ、アスリートと学習教育に共通する「成長プロセス」の体系化にも取り組んでいる。主な著書に『「急激に伸びる子」「伸び続ける子」には共通点があった!』(朝日新聞出版)、『東大生を育てる親は家の中で何をしているのか?』(文響社)、『男の子の学力の伸ばし方』『女の子の学力の伸ばし方』(共にダイヤモンド社)などがある。
2020年01月28日「子ども部屋」とはどんな場所でしょうか?子どもが寝たり、好きな遊びに没頭したり、それから勉強をする場所――。すぐに思い浮かぶのはそんなところかもしれません。しかし、2010年に上梓した著書『わが子を天才に育てる家』(PHP研究所)が高く評価された一級建築士の八納啓創さんは、「子ども部屋には、もっと大きな役割がある」といいます。子どもにとって、子ども部屋にはどんな存在意義があるのかを教えてもらいます。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)アメリカの子ども部屋は、自立を促す訓練をする場所いまでこそ日本の家にもあたりまえのように子ども部屋がありますが、そうなったのは1950年代以降のことです。敗戦後、アメリカのライフスタイルに憧れた日本に、当時最新のアメリカの間取りが入ってきました。それは、リビングとダイニングとキッチンがあって、個室が並んでいるもの。その個室を、アメリカではベッドルームと呼びます。つまり、アメリカでの子ども部屋は、勉強をする部屋などではなく本来的に寝室なのです。みなさんも、アメリカの映画やドラマのなかで、まだ生まれたばかりの赤ん坊が寝室にひとりで寝かされている描写を見たことがあるでしょう。それは「ピューリタン思想」の影響です。その誕生の地であるヨーロッパでは、ピューリタン思想は迫害されました。そのため、ピューリタン思想を持つ人々がアメリカに渡ったという歴史があります。ピューリタン思想とはどういうものかというと、「人間は生まれながらにしてひとりの個人として尊重されるべき」という思想です。そのため、アメリカでは生まれたばかりの子どもにもひとつの部屋を与えるわけです。そして、その個室はただの寝室ではありません。「子どもの自立を促すための訓練をする場所」なのです。たとえば、その空間を自分で片づけたり掃除をしたりする整理整頓能力や、どこにどの家具を置いてカーテンはどんな色にするかといったインテリア構築能力を鍛える。また、リビングやダイニングで家族と過ごしたあとで個室に戻ると、ひとりでいることの寂しさを体感する。そのようにして、子どもの自立を促すことが、アメリカにおける個室が持つ本質なのです。日本で偶然生まれた「子ども部屋で勉強する」習慣ところが、日本にはそういった思想は抜け落ちて個室がある間取りだけが入ってきた。そのため、個室をどう使えばいいのかわからず、当初は夫婦の寝室として使われていただけでした。そのうち、高度経済成長時代になると、「子どもをいい大学に行かせよう」という高学歴至上主義のムーブメントが起きました。親は子どもにしっかり勉強をさせたい。でも、仕事を終えて帰ってきたお父さんはビールを飲みながらテレビでプロ野球中継を観たい。そんな場所で子どもに勉強をさせるのは忍びないということで、自分たちの寝室を子どもに与えて勉強をさせた。さらに、1950年代後半に日本で学習机が生まれたことも相まって、日本では子どもは子ども部屋で勉強するという習慣が根づいたわけです。そう考えると、ここ数十年で偶然できあがったような歴史の浅い習慣を疑問視してみることも大切です。リビングやダイニングで勉強することが子どもにさまざまな力を与えてくれることはすでにお話したとおりです(インタビュー第2回参照)。だとしたら、子ども部屋は、やはりアメリカ式の自立を促すための訓練をする場所と認識を改めるのがいいのではないでしょうか。でも、とくに都市部に住んでいて子どもの数が多いという場合には、子どもそれぞれに個室を与えることができないということもあるでしょう。あるいは、子どもが高校生くらいになってふたり部屋や4人部屋の寮制の学校に行かせるといった場合もあります。そういう部屋では自立を促す訓練ができないのかというと、そうではありません。複数人で部屋を共有する寮がそうであるように、同じ部屋であっても自分のエリアを持つことができればいいのです。きょうだいのあいだでも、「ここはあなたの場所だよ」と決めてあげて、そのエリアを自分でコントロールできるようにするのです。個室を通じて、自由と責任をセットで教えるもちろん、与えっぱなしではいけません。先に述べたように、個室や自分のエリアは、整理整頓能力とインテリア構築能力といった力を身につけさせるための場所です。でも、とにかくものを出したら出しっぱなし、すぐに散らかしてしまう子どももいるでしょう。そのとき、親が片づけてしまっては、それらの力を構築するチャンスを奪うことになってしまいます。加えて重要なのは、自由になる空間を手に入れることは、責任が発生することでもあるということ。それを子どもにも認識させてほしいのです。たとえば、親子で話し合ったうえで、「自分の部屋を散らかして3回叱られたら、個室は没収」というふうに子ども本人にルールを決めさせる。自由と責任をセットで与えるわけです。自由とは、なんでも好き勝手にしていいということではありません。なぜなら、自由には必ず責任が伴うからです。その、社会に出たときにとても大切なルールを、子どもの頃から個室の扱い方を通じて学ばせることが大切です。『なぜ一流の人は自分の部屋にこだわるのか?』八納啓創 著/KADOKAWA(2015)■ 一級建築士・八納啓創さん インタビュー記事一覧第1回:子どもの人格形成への影響力大!リビングとダイニングが極めて重要な場であるわけ第2回:一級建築士が語るリビング学習のメリット。「子ども部屋で勉強」ではなぜいけないの?第3回:「日本の子ども部屋」に欠けている大事な思想。子どもの個室が持つ本質的な役割とは第4回:子どもが賢く育つ家はどうつくる?一級建築士がアドバイスする家とインテリアの使い方(※近日公開)【プロフィール】八納啓創(やのう・けいぞう)1970年6月15日生まれ、兵庫県出身。一級建築士。株式会社G proportionアーキテクツ代表取締役。「孫の代に誇れる建築環境をつくり続ける」を100年ビジョンに、一般建築ではデザイン性と省エネ性能、快適性を追究。住宅設計では、「笑顔があふれる住環境の提供」をコンセプトに、年齢層は20代から80代、会社員から経営者、作家など幅広い層の住宅や施設設計に携わる。また、現在では、これまで携わってきた公共・商業建築設計の経験と住環境ノウハウを生かして、商業建築プロジェクトや建物環境再生による商業施設の活性化プロジェクト等にもかかわっている。著書に『「住んでいる部屋」で運命は決まる! 心も空間も、スッキリさせる方法』(三笠書房)、『住む人が幸せになる家のつくり方』(サンマーク出版)、『わが子を天才に育てる家』(PHP研究所)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年01月17日「東大生の8割がリビング学習をしていた!」といった見出しの記事を読んだことがある人も多いでしょう。2010年に上梓した著書『わが子を天才に育てる家』(PHP研究所)が高く評価された一級建築士の八納啓創さんも、リビングやダイニングで子どもに勉強させることをすすめるひとりです。でも、ただ単にリビングやダイニングで勉強させればいいというわけではないようです。リビング学習、ダイニング学習が持つメリットと注意点を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)もともとなかった、子どもが子ども部屋で勉強する習慣いま、「リビング学習やダイニング学習が学習効果を上げる」といったことがいわれますが、ただ単にリビングやダイニングで子どもに勉強をさせればいいわけではありません。その本質的な答えは、「親のそばがいい」ということ。その象徴が、親、とくに母親がいることが多いリビングやダイニングというだけなのです。子どもは、親のそばでお絵描きや宿題をやりたがるものですよね。なぜなら、親のそばにいることで得られる安心感と、自分がやっていることを親に見てもらいたいという気持ちによってモチベーションが保たれているからです。みなさんも、あたりまえのように「勉強は子ども部屋でやるもの」と思っているかもしれませんが、そもそもその習慣が根づいたのはここ数十年の話。いわゆる学習机が日本で生まれたのは1950年代後半です。それまでは、他の先進国も含めて、子ども部屋に学習机を置いて子どもに勉強をさせるという習慣はなかったのです。でも、先に述べたように、宿題も子どもは親のそばでやりたがります。そのとき、親が「せっかく学習机があるんだから」と、子ども部屋で宿題をさせようとしたとします。すると、子どもは「勉強=ひとりきりでやらないといけないもの」と考えてしまう。勉強はつまらなくてつらいものと認識して、勉強に対する興味や熱意を失ってしまうのです。人とのかかわり、喧騒のなかで勉強をする重要性勉強も子どもは親のそばでやりたがるというのは、「人とつながっていたい」という人間の本能なのでしょう。そう考えると、親がいるリビングやダイニングで勉強することこそが自然であって、子ども部屋にこもってひとりで勉強することは不自然ともいえます。しかも、その後の人生を考えてみても、人とかかわりながら必要な勉強や仕事をできることが重要です。社会に出たあと、果たして本当にひとりきりでできる仕事はどれくらいあるでしょうか?仕事をして対価を得る以上、必ず他者とかかわることになる。そう思えば、将来、社会でスマートに生きていける社会性を持った人間に子どもを育ててあげるためにも、リビングやダイニングで家族とかかわりながら勉強をさせることが重要だとおわかりになるかと思います。また、リビング学習やダイニング学習には、喧騒に対する耐性をつけるという効果もあります。とくに子どもにきょうだいがいるような場合なら、弟や妹が大きな声を上げて遊んでいるような状況で勉強をするということもある。似たようなことは、社会に出たあとにも多いのではないでしょうか。オフィスの隣の席では先輩が大声で電話をしていてる。上司に呼ばれれば、すぐに仕事の手を休めて駆けつけないといけない。そういったなかでも、自分がやるべき仕事に集中できる必要があります。そういう力、喧騒に対する耐性が、リビングやダイニングで勉強する経験によって培われるのです。もし、いつも静かな子ども部屋でだけ勉強していたとしたら、どうでしょうか。その子が大人になったとき、他人がたくさんいるオフィスの喧騒のなかでは仕事に集中できないということになってしまうでしょう。このことは、大学入試などの受験のときにもいえます。試験がはじまってまわりから聞こえるカリカリという鉛筆の音が気になって、実力の半分も発揮できないといった受験生もいるのです。リビング&ダイニング学習の注意点あれこれそう考えれば、子どもの性格にもよりますが、基本的にはリビングやダイニングでの勉強がベースと考え、子ども部屋で勉強するのは特別な場合だけと考えていいでしょう。みなさんにも、本当に集中しないといけない仕事は、静かな場所で誰にも邪魔されずにやりたいということもあるでしょう。子どもの勉強もそれと同じことだと考えるべきです。とはいえ、リビング学習やダイニング学習を子どもにさせるにはいくつか注意点もあります。まずは、発達障害の傾向がある子どもの場合です。そういう子は、リビングやダイニングなどまわりにものが多い環境では、すぐに気が散ってしまいます。そのため、机のうえにパーテーションのような仕切りをつくって、勉強に集中できる環境をつくってあげてください。そういう状況でも、顔を起こせばお母さんやきょうだいがそばにいてコミュニケーションを取れますから、リビング学習やダイニング学習の効果はしっかり得ることができます。また、照明にも注意が必要。ダイニングは料理が美味しそうに見えるように、リビングはリラックスできるようにと、照明は暗く設定されていることがほとんど。そのため、調光機能のある照明にしたりスタンドライトを置いたりして、子どもの目に悪影響を与えないようにしてあげてください。それから、椅子にも要注意です。学習机の場合は天板の高さを調節できますが、一般的なダイニングテーブルはそうではありません。大人用の椅子を使わせては、姿勢は悪くなりますし、勉強にも集中できません。そこで、「ストッケ」というブランドの製品など、足を乗せる板も座面も高さを調節できる椅子を用意しましょう。そして、なにより親がリラックスしておくことが大切です。とくに綺麗好きな母親の場合、ダイニングテーブルに消しゴムかすが散らかったりすると、ついイライラしてしまうもの。でも、「そんなに散らかして!」なんて叱ってしまっては、子どもは萎縮してしまいますし、「ここで勉強したら駄目なのかな」と思ってしまう。そうしないためにも、汚してもいい子ども専用のカウンターテーブルを用意するなどして、穏やかに子どものそばにいてあげてください。子どもにとって、勉強に対する最大のモチベーションは、大好きなお父さんやお母さんがよろこぶ顔を見たいという気持ちなのですから。『なぜ一流の人は自分の部屋にこだわるのか?』八納啓創 著/KADOKAWA(2015)■ 一級建築士・八納啓創さん インタビュー記事一覧第1回:子どもの人格形成への影響力大!リビングとダイニングが極めて重要な場であるわけ第2回:一級建築士が語るリビング学習のメリット。「子ども部屋で勉強」ではなぜいけないの?第3回:「日本の子ども部屋」に欠けている大事な思想。子どもの個室が持つ本質的な役割とは(※近日公開)第4回:子どもが賢く育つ家はどうつくる?一級建築士がアドバイスする家とインテリアの使い方(※近日公開)【プロフィール】八納啓創(やのう・けいぞう)1970年6月15日生まれ、兵庫県出身。一級建築士。株式会社G proportionアーキテクツ代表取締役。「孫の代に誇れる建築環境をつくり続ける」を100年ビジョンに、一般建築ではデザイン性と省エネ性能、快適性を追究。住宅設計では、「笑顔があふれる住環境の提供」をコンセプトに、年齢層は20代から80代、会社員から経営者、作家など幅広い層の住宅や施設設計に携わる。また、現在では、これまで携わってきた公共・商業建築設計の経験と住環境ノウハウを生かして、商業建築プロジェクトや建物環境再生による商業施設の活性化プロジェクト等にもかかわっている。著書に『「住んでいる部屋」で運命は決まる! 心も空間も、スッキリさせる方法』(三笠書房)、『住む人が幸せになる家のつくり方』(サンマーク出版)、『わが子を天才に育てる家』(PHP研究所)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年01月16日授業中は床にゴロン!気が向いたときしか勉強しなかった息子Upload By かなしろにゃんこ。ADHDと広汎性発達障害がある息子のリュウ太は小学校では勉強らしい勉強をやらずにきました。なにせ授業中は廊下が友だちでゴロンですから、やってもいいかな~♪と気分がのったときだけ授業を受けるという気ままな子です。そんな状態ですから、中学に進んでなんでも自主的!に行うことを求められるようになると、勉強についていくことができなくなっていきました。テスト勉強ももちろんほとんどやらず、テストで平均点を取ることも難しくなりました。テスト前、「勉強しなさいよ」と声をかけると、部屋の中から「今やってるよ!」と返事が返ってきていました...が、本当はやっていなかったと思います(笑)周囲は受験対策を始める時期...うちの子のやる気スイッチが見つからない(涙)Upload By かなしろにゃんこ。中1のときだけ理科担当の担任の先生がテスト前に朝の特別授業をしてくれたので理科だけは平均点を獲得しましたが、他の教科はボロボロですよ…あはははは…(涙)テスト前に息子は「寝る間も惜しんで勉強しないといけないなんてオレにはムリ!勉強はやらない!」と”勉強を一生懸命やらない宣言”をしやがりまして、以後本気で勉強に向き合うことを避けていました。とは言っても、中2の冬頃になると周りは少しずつ高校受験の準備をはじめます。一緒に遊んでいた子も塾に通いはじめるし、家庭教師をつける子もいたり...うちも受験前に何もしないのはさすがにマズイだろうと家庭教師や英会話教室なども挑戦しましたが、やる気スイッチが発動しなくてどれも長続きしませんでした。勉強が面白くないのは先生の教え方が悪い、教材がわかりにくいなどと難癖をつけ...やる気がないときは全身の力が抜けて床に寝転がり、数時間充電しないと何もできず...好きなことでは記憶力が良くても、その他のことでは短期記憶も苦手で...Upload By かなしろにゃんこ。塾に通わせようにも、こんな息子の特性を理解してもらわないと授業にもならないので、大手の素晴らしい個別指導塾でもダメなんじゃないかしら?どうやって受験対策をしたらいいのやら...と悩んでいました。そこで地域の先輩ママに相談したところ、個人宅で小さな塾をしている方が近くにいることを知りました。息子の同級生のママが先生をしている塾でした。Upload By かなしろにゃんこ。落ち着きのない子でも見てくれるというので、見学に行って息子が発達障害であることや特性を話して相談したら、「それでも大丈夫ですよ!本当は男の子は小学校5年生から受験の準備をはじめたほうが受験問題をきちんと理解できるようになるんですけど、受験までにやれるところまで頑張りましょう!」と言ってくださり、通ってみることになりました。救世主は意外にも近くに...!Upload By かなしろにゃんこ。その個人塾は、息子にはぴったりの塾でした。静かな場所だとそわそわしてしまい、誰かと話したくなってしまう息子。授業中に他の子に話しかけてしまうことが度々あったのですが、個人塾の先生はそんな息子の特性に合わせ、プリントをする間はイヤホンで音楽を聴いて良いという特例のルールを設けてくれました。Upload By かなしろにゃんこ。それに、何かやらかしたときに感情的に話す息子に対して、先生は落ち着いた口調で必要なことを短く言葉にして伝えてくれる方だったので、イライラした気持ちが打ち消されていったと息子は言います。力を力で返すのではなく吸収してくれるような先生で、息子にぴったりでした。あぁこの塾があって良かった、ADHDの気性の荒い子でもなんとかなった!と思えました。テスト前は臨時で授業を開いてくれたり、塾をさぼっていないか親が確認できるようにメールもいただけたりして、親子でなにかと助かりました。親も子もストレスフルな受験期...理解ある先生にお任せできてよかったUpload By かなしろにゃんこ。おかげで苦手感があった数学に自信がついてきて、その後、車の整備士を目指すための専修高校に進んだ息子は、必須の数学を学ぶ際に挫けないですんだようです。大手の有名塾にも憧れましたが、息子には個人塾が合っていたのかもしれません。いろいろ悩みましたが、口コミから息子にぴったりのところに出会えて、本当によかったなと思います。今は発達障害がある子を専門にみてくれる塾もできてきました。いい塾が増えましたね♡反抗期の子どもと受験のアレコレでぶつかって疲れる毎日です。親子だけでどうにかしようとせず、理解のある先生にお任せすることで心の負担が軽減できました。
2020年01月14日文・レシピ写真/栄養士・幼児食インストラクター笠井奈津子構成/岩川 悟子どもの発達過程において、食の影響は計り知れないはじめまして、栄養士・幼児食インストラクターの笠井奈津子です。「子どもの好き嫌いが多いのは、わたしの料理が下手だからですよね?」「子どもがよく風邪をひくのは、栄養が足りていないのでしょうか?」「普段の生活で落ち着きがないのは、食事が乱れているからでしょうか?」わたしのところには、子どもの食に悩むお母さんたちがたくさん相談にきます。言うまでもなく、子どもの体と脳は食べたものでつくられます。食事から摂取する栄養は、間違いなく子どもの体と脳の発達を担うもの。それが十分にわかっているから、お母さんたちは日々の食事づくりに悩みます。せっかくつくったごはんを食べてもらえなくてイライラしたり、子ども優先で自分の食事は後回しにしたり……なんてことは誰しもが経験していることはでないでしょうか。1児の母であるわたし自身も、もちろん経験済みです。子どもの発達の過程において、食の影響は計り知れません。集中力を上げるのも、免疫力を上げるのも、体力をつけるのも、そのベースには栄養が不可欠。ですが、ライフスタイルの変化とともに食生活が乱れているのは、いまや大人だけではありません。「高コレステロール」や「肥満」の子どもたちが増え、生活習慣病予備軍とされる子も増えています。それに、「うちの子どもは太っていないから大丈夫」とも言い切れません。日本では「痩せ」の子どもも多く、疲れやすいとか、学力が伸びないといったことの背景には、鉄が不足している可能性もあります。ここまで書いたように、食は生活の重要な一部です。でも、頑張りすぎてしまったら、お母さんたちの大事な睡眠時間や生活、仕事にも支障が出ます。最低限のポイントをおさえながら、食と生活のバランスを上手に取っていただきたいなと思います。朝ごはんをルーティン化することも一手たとえば、今回のテーマとなる朝ごはんがそう。「毎日同じものではいけない」と頑張っていたり、それに疲れ「もうパンと牛乳だけでいいや……」となったりしていませんか?書店に行けば、朝ごはんの内容が書かれたものだけでもたくさんのレシピ本があります。もちろんインターネット上にも情報があふれていますよね。選択肢が多いぶん、朝ごはんですら頭を悩ませてしまうもの。でも、料理は「つくる時間」だけではなく、「献立を考える」「買い物をする」という工程にも時間がかかります。ですから、時間との戦いになる朝は、思い切ってルーティン化するのもひとつの手ですよ。我が家のルーティンは次のようなものです。〈和食の場合〉ごはん+味噌汁+納豆/鮭/しらす/卵料理(単品もしくは組み合わせ)+温野菜+果物〈洋食の場合〉食パン+卵料理(チーズ、ソーセージ、ヨーグルトなどはその日次第)+温野菜+果物+牛乳ポイントは、朝も必ずタンパク質を摂取すること。「脳へのエネルギー補給で炭水化物をなにかしら食べさせればOK」と思われがちですが、朝からしっかり体温を上げるために、または、筋肉をつくる、鉄の大きな補給源としてもタンパク質が必要だからです。朝は忙しくてパンかおにぎりの二択という方は、ツナ缶を常備しておいて、パンの上にチーズと一緒にのせてトーストしたり、前夜にゆで卵を仕込んでおいたりして、なにかしらタンパク質を足すといいでしょう。朝から野菜もしっかりとれるとベストですが、子どもが小さいと朝は特に気分のムラがあって思うように食べ進めてくれないこともあるはずです。お味噌汁に入れたらなんでも食べてくれるという場合は、メインになるくらい具沢山にするといいでしょうし、ビタミン補給は果物を食べれば良しというくらいの気構えでもいいと思います。また、朝の洗い物があまり増えないように、納豆は深みのあるカップ入りのものにして廃棄しやすくしたり、魚はくっつかないシートを敷いて焼いたりと、できるだけ手間を省く導線を整えることもポイントです。ルーティンになると完成形がわかっているので、夫や子どもに盛り付けや配膳をお願いするということもしやすくなります。「ダメなものはダメ」と言える勇気も必要日々の食事(栄養)と同じくらい大事なのは、大人になったときに困らない食習慣をつくることです。将来、「お腹が満たされればなんでもいい」「お菓子を食事代わりにする」なんてことにならないように、子どもたちが食への興味関心を持てるような食事時間も大切です。そのためには、「急かしたり怒ったりしながら食べさせる」「ひとりで食べさせる」「朝から殺気だって支度をする」というような「食卓の戦場化」は避けたいものです。そして、子どもが将来ダイエットなどで悩まないように、食事と飲み物・嗜好品には一線をひきましょう。たとえば、「バターやジャムを毎朝のパンに添えるのは控える」「ジュースを買い置きしない」などです。食が細いと親は心配になって、パンをお菓子みたいに食べやすくアレンジしたり、せめてジュースや牛乳くらい飲ませようとしたりしがちですが、それで満たされてしまって食事をおろそかにするというパターンに陥っている子も少なからずいます。これでは栄養不足。子どもが本来持っている力を発揮できないばかりか、血糖値を上げようとアドレナリンやノルアドレナリンが分泌されることで興奮したり、感情コントロールが難しくなったりします。とはいえ、いきなり食事量を増やしたり、内容を思いっ切り変えたりというのも難しいもの。まずは、今回ご紹介するレシピのように、甘いだけのパンから、食事パンへの移行をはじめましょう。甘い朝食や夕食前のお菓子など、大人になったときに困る食習慣をつくってしまうことは避けるべき。おやつの時間以外にもおやつを欲しがるようになると、結果として食事量そのものが減ってしまうものです。「お菓子を食べるからごはんが食べられなくなるのよ!」などと怒るよりも前に、そうならなくていい環境を親が率先してつくってあげましょう。そして、要求に対して、「ダメなものはダメ」とはっきり言っていいと思います。子どもが小学生くらいになると、「パパが食べないから僕(わたし)も食べない」などと親の食べ方を真似するようになります。ダイエット目的などで朝ごはんを抜かれる方もいらっしゃると思いますが、朝ごはんを含めて3度の食事を規則正しくとることは、1日の血糖値を安定させて、太りにくい体や集中できるコンディションをつくります。子どもが元気に体を動かして遊び、または勉強にも集中できるように、ぜひご家族で朝ごはんを見直してみてください。レシピ◆のせて焼くだけ!和風チーズトースト【材料】全粒粉パン1枚スライスチーズ1枚海苔適宜しらす適宜ごま適宜【作り方】パンにそのほかの食材を好きな順に重ね、いつも通りトーストしたらできあがり【主な食材に含まれる栄養素】全粒粉パン……糖質をエネルギーにかえるために欠かせないビタミンB1を通常の白いパンより多く含むスライスチーズ……カルシウムやビタミンAの補給もできるタンパク源海苔……不足しがちな食物繊維を手軽に補給しらす……カルシウムの吸収を助けるビタミンDも多く含むごま……血中コレステロールの上昇をおさえる不飽和脂肪酸を多く含む■ 栄養士・幼児食インストラクター 笠井奈津子さん 連載記事一覧第1回:子どもが食べやすく、親の準備もしやすい。勉強に集中できる「良質な朝ごはん」のつくり方第2回:“タンパク質不足”に要注意。子どもの頭をよくしてくれる、実は身近な「ブレインフード」(※近日公開)第3回:脳を発達させる食材といえば、やっぱりコレ!苦手な子でも食べやすくなる、魚の調理法(※近日公開)第4回:「子どもの集中力がない」それ、おやつのせいかも?甘いお菓子が脳に良くない理由とは(※近日公開)
2019年12月25日子どもにはしっかり勉強をしてほしい――。ほとんどの親が持つ願望だと思います。ただ、その願望は実際には空回りしてしまうことも多いもの。常日頃、多くの子どもたちと接している一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事の野上美希先生は、「勉強にしっかり取り組む子どもにするためにも、まずは子どもが好きなことを目一杯やらせることが大切」とアドバイスをしてくれました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)好きなことを通じて学ぶ楽しさを知ることが最重要親として、子どもに勉強の大切さを理解してほしいと願うのは当然でしょう。でも、子どもにただ「勉強は大事だよ、勉強しなさい」といったところで勉強をしてくれる子どもは、そうはいないはず。子どものときに「きちんと勉強していい大学に入ったほうがいい」なんていわれても全然ピンとこないことは、自分が子どもだった頃を想像すればすぐに理解できるのではないでしょうか。そこで大切となるのは、やはり子どもが好きなことと勉強をつなげてあげることでしょう。ゲームが好きな子どもだったら、ゲームと勉強をつなげてあげる。いまなら、ゲーム感覚でできるさまざまな勉強アプリがあります。そういったものをやらせてみるのもひとつの手ですよね。2019年にはラグビーのワールドカップが大きな話題を集めました。もし、子どもがラグビーに興味を持ったのなら、そこから勉強に展開してみるのです。たとえば、日本代表の対戦相手が南アフリカに決まったときに子どもと一緒に地図で南アフリカを探してみたり、どんな国なのかを調べたりするのです。そうするなかで、子どもが楽しみを見出してラグビーを通じて自発的にいろいろなことを調べて学びはじめることが理想的なかたちでしょう。それは、学校での勉強とは少しちがうものかもしれません。でも、いろいろなことを調べて知識が広がることを楽しいと思えることこそが、学校での勉強にも通じる学びの姿勢をかたちづくっていくはずです。勉強することの大切さなんて、大人でもわかっていない人は少なくないでしょう。そんなことを無理やり頭でわからせようとしても無理というものです。子ども自身が体験を通じて知識を得ることの楽しさを知る――そういうことが大切なのではないでしょうか。むかしとちがい、個性を問われる時代になりつつあるもちろん、子どもにきちんと勉強してほしいと思う、つい学力主義に走ってしまう保護者の気持ちもわかります。そういう親御さんの多くは、人生を学力によって勝ち抜いてきた人でしょう。だからこそ、「学力は裏切らない」という思考が強く刷り込まれ、その人たちのアイデンティティーをつくっているのです。でも、いまとむかしとは時代がちがいます。大学入試にしても、2020年には大きな改革が行われます。これまでの認知能力を問うテストではなく、その子が生きてきた人生をプレゼンテーションして推薦で入学を勝ち取るといったことも出てきます。そう考えると、それこそ子どもの好きなことをきちんと見つけて、熱中させてあげることが大切なのではないでしょうか。それは個性を伸ばすといういい方もできるはずです。そういう意味では、アスペルガー症候群やADHD(注意欠陥多動性障害)もひとつの個性といえます。じつは、たくさんの子どもたちと接するなかで、そういった特徴を持つ子どもこそ将来は大物になるのではないかと感じることも少なくないのです。アスペルガー症候群の子の、ひとつの遊びだけをひたすらずっと続けられるという特徴からは、学者のようななにかを突き詰めていくような仕事への適性があると考えられます。ADHDの子のいろいろなことを並行して休みなくやれる力は、経営者に必要な力といえるでしょう。もちろん、そういった特徴を持つ子どもたちの親には、大変なことがたくさんあるはずです。でも、なるべくその個性が育つ芽を摘まずに見守って伸ばしてほしいと思うのです。これからのグローバル化社会に重要となる自己肯定感さて、これからはただの学力ではなく、子どもが好きなことや個性を伸ばすべきだと述べましたが、わたしのなかで「これだけはきちんと伸ばしてあげてほしい」と思うものがあります。それは、「自己肯定感」です。いまの日本は、グローバル化や少子高齢化がどんどん進んでいます。労働力不足が叫ばれるなか、外国人とも一緒に仕事をすることがあたりまえになっていくでしょう。外国人とチームを組んで、自分が持っているものとはちがう多様な価値観を受け入れ、しっかりと仕事を成功に導いていけるのか――そういう力が求められるはずです。そうなったとき、もし自己肯定感を持てていなかったとしたら……?自分とは異なる価値観に出会って、「これはちがうんじゃないか」と思うようなこともやらなければならないとき、自分に核となる部分がないとすごくつらいのではないでしょうか。そして、その核になるものこそ、「自分は自分であっていい」という揺るぎない気持ち、すなわち自己肯定感だと思うのです。そして、その自己肯定感を育むためにも、子どもが好きなことを見つけて、それを親が認めてあげることが大切です。親としては、その好きなことが勉強になったら安心なのでしょうけれど、そうではない場合が多いでしょう。そのときも、その好きなことを目一杯やっていくことを親が認めることが、子どもの自己肯定感という人生の土台をつくることになるはずです。■一般社団法人キッズコンサルタント協会■ 一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事・野上美希先生インタビュー一覧第1回:子どもの順応性は親が思う以上に高い。「申し訳ない」という気持ちは不要です第2回:「小1の壁」を乗り越えるために――子どもの言葉の裏にある本心とは?第3回:放課後や長期休みに「非認知能力」を高めよう。学童でさまざまな経験を第4回:自己肯定感も勉強への姿勢も“熱中体験”の先で生まれる【プロフィール】野上美希(のがみ・みき)1977年3月21日、千葉県出身。一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事。東北大学工学部卒業後、日本総合研究所にてコンサルティング、事業企画、採用、営業と多岐にわたる経験をした後、株式会社マイナビで人材紹介事業部の立ち上げに従事。営業部長として複数の部下をマネジメント。その後、自身の妊娠を機に久我山幼稚園の運営に携わり、産後母の孤独を解消すべく、子育てひろば開設を皮切りに、働く母の支援のため、幼児教育をベースとした民間学童や6つの認可保育園を開設。また、民間学童指導員資格であるキッズコンサルタント資格を認定する一般社団法人キッズコンサルタント協会を立ち上げ、代表理事を務めている。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年12月22日どうもこんにちは、のばらです!今年小学校に入学した我が家の次女。学校には毎日そりゃもう楽しく通ってるわけですが、宿題や家庭学習などは「身に付いている」と言うには程遠く…母に何度も何度も言われて、しぶしぶ机に向かう毎日。そんな次女がどうすれば勉強に前向きに取り組めるのか、母も色々と考えてみました。そうです。我が家の作戦A…それは「学校ごっこ」!!とくに自分が先生役の時なんかは張り切ってどんどん問題出してくれるので、答え合わせと称して本人にもしっかり計算させるのです。次女としてはあくまで遊びのつもりなので、気付かないうちに二桁の計算や繰り上がり、繰り下がりの計算などが手を使わずできるようになっていたりして、母はありがたい限りです。…まぁおそらく姉妹を動かすのは「妹になんて負けない」「お姉ちゃんに絶対勝つ」というライバル心だったりするのでお互い相乗効果で高みを目指してがんばってくれ…っ!
2019年12月06日我が家は子どもの勉強については、そこまで積極的ではありません。私自身が特に際立った学力も才能もないのに、子どもにあれこれ求めるのは悪いなぁと…(苦笑)そして何より、私はどうやら人に教える事がどうも苦手みたいです…。自分では根気よく説明しているつもりなんですけど、よく母から「教え方がキツイ!!」と叱られています(汗) 子どもにはできるだけ楽しく丁寧にわかりやすく学習してほしいのに、私のせいで学ぶことが嫌いになってしまう可能性が…(滝汗) そんなピンチを救ってくれたのは幼児通販教材でした。とにかく楽しく覚えていこう作戦!!長女は2歳の頃から受講していますが、DVDや絵本や付録といった子どもが好きそうなツールから楽しく学習しています。お風呂の中でも使える教材がたくさん用意されていて、湯船に浸かって取っ替え引っ替え遊んでいるうちに、お手伝いや社会の基本ルールを理解していきました。ひらがなについては、おそらくお気に入りの絵本を何度も繰り返し読んでいるうちにストーリーを暗記して、そこから「このセリフはこの文字なんだな」と照らし合わせていったようです。…といっても、幼児が食いつくのは擬態語や擬音語ばかりですが…(苦笑)こちらとしてはしっかりと読み聞かせたくてイライラすることもありましたが、娘にとってはそれこそが言葉に興味を持つ大切な過程だったのかもしれません。「できる喜び」がさらなるやる気に!?ひらがなが読めるようになったのが嬉しい長女は、街の看板や標識を読んだり、教材のおもちゃとひたすら会話をしています。こうして遊び感覚でどんどん学習していく楽しさを身につけてくれればいいなぁ。あまり娘の学習のサポートを熱心にしているとは言い難いママだけど、長女からしりとりなどお勉強になる遊びに誘われたら、なるべく付き合ってあげるようにしています。とりあえず長女については自発的にお勉強していくのを見守るスタイルで、もし助けが必要になったらいつでも協力したいと思っています。そして今生後7ヶ月の次女は……お姉ちゃんが頼もしい先生になっているからママの出番ナシ!!次女は嬉しそうにお姉ちゃんの授業を聞いています(笑)二人とも、これからも楽しく色んなことを覚えていってね。
2019年11月21日学校から出される宿題や家庭学習。「なかなかやる気が出ない」「勉強してくれない」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。口うるさく言わなくても、自主的にやってほしい! というのが親心。わが家でも、テレビやゲームに夢中で、宿題がおろそかになっていた時期がありました。小学1年生の息子が進んで勉強するようになった理由とは?きっかけはメディア利用のルールを考えたこと学校で、家庭の生活リズムを整える週間があり、テレビやゲームの時間を家庭内で決めることになっていました。これまでわが家には「テレビやゲームは1日○時間まで」などきっちりしたルールがなかったので、どのようにしようか悩んでいました。ちょうどそのとき読んでいた本に、乙武洋匡さんの子どもの頃の学習エピソードが紹介されていました。乙武さんのお父さんが決めた学習ルールは、「勉強した時間分ゲームをしていい」というもの。ゲームが大好きだった乙武さんは、その分勉強を頑張ったそうです。「なるほど! これなら息子にもあいそう」と思い、メディアルールについて息子に提案しました。時間にするとわざとゆっくり勉強しそうだったので、「プリント1ページにつき、テレビかゲーム10分」と、子どもと話し合ってルールを決めました。好きなことのためなら勉強も頑張れる早速「1ページにつき10分」の学習ルールを取り入れたところ、息子にぴったりハマったようで、宿題では足りず、通信教育の教材を利用して自主学習もするようになりました。休日の朝も「今日はこの番組とこの番組が見たいから、何ページやる」と、テレビを見たい時間から逆算して勉強量を決めるなど、計画性も生まれました。ルールがあるおかげで「お母さんに言われたから勉強している」と、ネガティブな感覚ではなく、たとえテレビのためだとしても「好きなことのために勉強するんだ」と自分の意思で勉強に取り組めているのは良かったです。続けるために大切なことは?自主的に勉強するようになったとはいえ、気が抜けると勉強せずにテレビやゲームをしていることも。そんな時は、「あれ? もう宿題終わったんだ?」「テレビを見るには何をしないといけないの?」と、あくまで自分から勉強に向かうように声がけしています。学習ルールを決めるポイントは、子どもと一緒に決めること。一方的に決めて押し付けてしまうと、子どもは納得できず、ルールを守る気持ちが薄れてしまいます。この機会に、親子で学習ルールについて話し合ってみてはいかがでしょう。<文・写真:ライター三浦麻耶>
2019年11月11日娘が2歳になってすぐ、1日10分の「お勉強タイム」を作ることにしました。勉強といっても数字やひらがなを覚えるようなものではなく、子どもの指の器用さや集中力アップが目的で始めたものです。そこで活躍したのがダイソーのおけいこシリーズやシール、ぬりえ。思った以上に子どもの成長に役立った商品とこの数か月の娘の成長ぶりを紹介したいと思います。文房具もダイソーで調達!まず、ダイソーで探したのが勉強に必要な文房具。筆箱・鉛筆・消しゴムはすでに持っていたので、鉛筆削り・スタンプ・クレヨンを購入しました。鉛筆削りは色々な種類がありましたが、娘の手でも扱いやすい小ぶりのものをチョイス。鉛筆の先が減ってきたら、娘が自分で鉛筆削りを使って削ります。2歳児にとって鉛筆削りを上手に使うのは難しく、最初のうちは苦労しました。しかし、何度か繰り返しやっているうちに少しだけですが、自分で削れるようになりました。スタンプはやり終えた教材と勉強した日の証としてカレンダーに押しています。使い始めた頃はスタンプの位置がズレてしまっていましたが、今では上手に押せるようになり、小さいことながら娘の成長を感じられました。娘もスタンプを押すのが楽しいようで、勉強をするモチベーションにもなっています。シール、めいろ、ぬりえの種類が豊富!ダイソーには「ひらがな」「かず」などの教材もありますが、2歳くらいの子どもには遊び感覚でできる「シール」「めいろ」「ぬりえ」がおすすめです。小さいシールを上手にはがして狙いどおりの場所に貼るという作業は意外に指先の器用さが求められ、集中力も必要です。左は開始当初、同じ場所にシールを重ねて貼っています。右は3か月くらい経ち、食品をテーブルに配置するなど意味のある貼り方ができるようになりましたダイソーのシールブックには色々な種類がありますが、子どもが慣れないうちはシールが大きめの「かおアートブック」シリーズがいいかもしれません。上達してきたら細かいシールがたくさん付いている「シールブック」シリーズがおすすめです。めいろやぬりえは子どもの運筆練習に役立ちます。娘が初めてめいろに挑戦した時は線をなぞるということが理解できないようでした。数か月経った今ではシンプルなめいろであればクレヨンで上手になぞれるようになり、より難しいめいろができるように日々練習しています。「繰り返し」がポイント!100円だから気軽わが家では娘が幼稚園から帰ってきておやつを食べ終えた後、お勉強タイムをすることにしています。毎日決まったタイミングで行うことで勉強が習慣づき、今では娘自ら「お勉強する!」と言ってくれるようになりました。教材から新しい言葉を学ぶことも多いように思います。1日に使う教材はシール・めいろ・ぬりえのうち2種類で、それぞれ最低でも1ページが目標。「りんごのシールはどこにあるかな?」「キャラクターの口をクレヨンで塗ってみようか」といったように、こちらからお題を出す形で行っています。そして、最後にカレンダーにスタンプを押して終了するのがルール。毎日同じテーブルで、必ず椅子に座って勉強することも大事にしています。シールやめいろなどの教材は、書店で買うと1000円以上する商品もあるので、ダイソーで100円で買えるのはありがたいものです。娘を見ていて分かったのは、同じことの繰り返しが成長に繋がるということ。100円なら同じ商品を何度でも買って試すことができるので、小さい子どもの教材としては最適です。手頃な値段で気軽に始めることができるので、ぜひダイソーの勉強グッズをチェックしてみてくださいね。<文・写真:ライター奥汐紀>
2019年10月12日「◯歳までに勉強させないと手遅れになる!?」「脳の発達には◯◯がオススメ!」——子どもの教育に関する情報は、育児アプリやブログ、SNSなどで、いつでもどこでも大量に得られる時代です。それらで得たすべての情報を鵜呑みにし、ひとつひとつノルマのように実践してはいませんか?このように、親が子どもの教育に関して完璧に行なおうとする「100点満点の教育」は、子どもの成長を邪魔してしまう可能性があることをご存知でしょうか。今回は、「100点満点の教育」を目指してはいけない2つの理由についてお話しします。「100点」を目指してはいけない理由1:過度な期待が子どもを苦しめる「100点満点の教育」を目指す背景には、「自分が“よい親”にならなくては」という思いと、「我が子を“よい子”に育てたい」という願いがあると考えられます。その思いと願いを叶えるために、自分のやりたいこと・欲しいものは我慢し、子どものことを最優先に行動する——そんな親の姿を、子どもはしっかり見ています。そして、子どもはそんな親の期待に応えようと努力します。たとえば、学習面で期待されていると思えば、テストでよい成績が取れるよう自ら机に向かい、一生懸命勉強するでしょう。しかし、その目的は、「自分の目標を達成すること」ではなく、「親の期待に応えること」になってしまいがちです。そうすると、親の目を気にしすぎて情緒不安定になってしまったり、頑張りすぎて途中で燃え尽きてしまったりすることも。青山学院大学教育人間科学部教授で小児科医の古荘純一氏は次のように説明しています。親の要求や期待に応え続けるということは、子どもにとって、本来の自分を否定され続けることに他なりません。そうした経験を積み重ねると、子どもは精神に変調を来しやすくなります。児童や思春期の子どもというのは、実は精神疾患を最も発症しやすい時期。すぐに異変が出なかったとしても、精神疾患を発症する下地がつくられます。すると、進学や就職など、環境が激変するタイミングなどで変化に対応できなくなり、不安障害やうつ病を発症してしまう、といったことは少なくありません(引用元:日経DUAL|親の過剰な期待子に取り返しつかない弊害もたらす)さらに、将来的には、親の敷いたレールの上しか歩けなくなったり、逆に親の期待に反発する生き方を選んだりしてしまうこともあります。つまり、親が子どものためによかれと思ってしたことが、結果的に子ども自身を苦しめたり、親子関係を悪くしてしまったりする可能性があるのです。「100点」を目指してはいけない理由2:親のストレスが子どもに悪影響“100点満点の教育”を目指していても、必ずしもうまくいくとは限りません。子どもの教育によさそうなことをあれこれ実践してみても、子どもがそれに対応できず嫌がったり、親自身が手いっぱいになってしまったりして、筋書きどおりにいかないこともあるでしょう。それが、完璧主義な親にとってはストレスとなってしまうことがあります。特に、自分の子育てが他人からどう思われているかを気にすると自信がなくなり、ストレスが増すという説も。また、他人のブログやSNSを見て、自分と比較してしまうタイプの人も要注意です。最近では、下記のような研究結果が発表されています。In my lab’s research on new parents, we found that mothers showed less confidence in their parenting abilities when they were more worried about what other people thought about their parenting. The popularity of social media has likely exacerbated this phenomenon because parents can look at what other parents are doing – even in ostensibly private moments – and judge themselves in comparison. In fact, recent research has linked greater Facebook use to feelings of depression due to the way individuals tend to compare themselves to others.(私の研究所が保護者に関して行なった研究によると、自分の子育てが他人からどう思われているか気にするほど、自分の子育てに自信をなくすことがわかりました。SNSの普及がこの状況を悪化させたと思われます。なぜなら、ほかの保護者たちが何をしているのか、明らかにプレイベートな場面でも見ることができるようになったため、他人との比較で自分を評価してしまうようになったからです。事実、最近の研究では、Facebookの頻繁な利用と抑うつ感に因果関係があることがわかっています。自分と他人を比べてしまうことが原因です。)(引用元:THE CONVERSATION|Worrying about being a perfect mother makes it harder to be a good parent※和訳は筆者が補った)親のストレスは、子どもにも悪影響を与えます。イライラしているとき、子どもの変化に気づかなかったり、子どもに適切な対応ができなくなったりした経験のある方は少なくないでしょう。子どものためを思っての行動がストレスになって、自分のことも子どものことも苦しめていては元も子もありませんよね。60点くらいでいい! 我が子に合わせた教育をとはいえ、「100点満点の教育」を目指さずに、子どもを賢い子に育てることはできるのでしょうか。東大卒のお母さんたちが集まる同窓組織「東大ママ門」が行なった調査によれば、東大卒のお母さんたちが育った家庭の教育方針で最も多かったのは、「教育熱心」でも、「しつけに厳しい」でもなく、「放任主義」「自由に/好きなようにやらせてくれた」という回答でした。つまり、親がつきっきりで勉強を見たり、あれもこれもと先回りして与えたりする家庭でなくても、賢い子は育つということです。また、いつも親が先回りしているようでは、お子さんが将来「指示待ち人間」にもなりかねません。行動科学の専門家であり株式会社ネットマン代表取締役社長の永谷研一氏は次のように述べています。「親の思い通りに動くことが大切なのか、自分で考えて動ける人間に育てることが大切なのか、改めて考えてみましょう」(引用元:AERA dot.|「時間管理力」が子どもの人生を変える!親が意識すべきたった3つのこと)永谷氏いわく、これからの時代は仕事において単純作業が減るため、複数のタスクをこなす時間管理能力が求められるようになっていくそう。親としては、「○○が脳に良い」「1日○時間勉強したほうが良い」といった情報を耳にすれば、あれもこれもと全てやらせたくなってしまうもの。しかし、何から何まで実践して「100点満点の教育」を目指しても、結果的に子どものためにならないことも多いのです。大切なのは、子どものことをよく見て、その子に合わせて取捨選択すること。たとえば、「ピアノが脳に良い」という情報を耳にしても、自分の子どもがピアノに興味を示さなければ無理にやらせる必要はありません。「脳に良い」と言われているものは、習い事や家庭教育、食材などさまざまなジャンルごとにたくさん存在します。その中から子どもに合いそうなものだけを選んで取り入れれば良いのです。「100点満点の教育」を目指すことは親にとっても子どもにとっても負担になります。「60点くらいで良い」と少し肩の力を抜いてみてはいかがでしょうか。***大切なのは、世間一般の“よい親”になることではなく、子どもにとっての“よい親”になることです。子どもの教育に関する情報を調べるのもすばらしいことですが、時々は、その時間の一部を、子ども自身と向き合う時間に変えてみてはいかがでしょうか。もしかしたら、本当に必要な情報が得られるかもしれませんよ。(参考)THE CONVERSATION|Worrying about being a perfect mother makes it harder to be a good parent東洋経済ONLINE|珍種?「東大女子」はいかにして育ったか日経DUAL|親の過剰な期待子に取り返しつかない弊害もたらすAERA dot.|「時間管理力」が子どもの人生を変える!親が意識すべきたった3つのこと
2019年09月06日学校の宿題や塾、習い事などで忙しい小学生。自学自習の時間を確保しづらいという子も少なくありません。親としても、「睡眠はしっかりとらせたい」「家族のコミュニケーション時間は削りたくない」と考えると、どう指導していいか迷うところ。しかし、成績のよい子たちは、しっかり時間を確保して効率よく勉強しています。それも、睡眠や食事の時間を削っているわけではないようです。では、いったいいつ勉強すればいいのでしょうか。今回は、勉強したことが身につきやすい「学習のゴールデンタイム」についてご紹介します。成績のよい子は時間を上手に使っているベネッセ教育総合研究所が、中学生の成績上位層・下位層の勉強時間を調査した結果によると、21時過ぎに勉強する子が多いのは上位層・下位層も共通でした。しかし成績上位層は、夕方・早朝に勉強する比率が下位層に比べてやや高いよう。つまり、成績が良い中学生は、夜だけでなく朝や夕方の時間帯もうまく使って勉強しているのです。宿題以外の勉強に注目すると、成績にかかわらずピークの時間帯は21時45分である。しかし、成績が上位の中学生には行為者率のピークが2回あり、17時15分~18時30分に宿題以外の勉強をしている比率が10%を超える。早朝4時、7時30分に家で勉強している比率も成績上位のほうがわずかに高い。(引用元:ベネッセ教育総合研究所|放課後の生活時間調査-子どもたちの24時間)さらに同調査では、「時間を無駄に使っていると感じるか」という問いを成績別に行なっています。これに対し、「あまりあてはまらない」「まったくあてはまらない」と答えた成績上位層は41.2%、成績下位層は33.2%。成績がよい中学生のほうが、「時間を有効活用している」と考えている傾向にあると言えるでしょう。朝は「考える」勉強では、どの時間帯に勉強すると効果的なのでしょうか。じつは、どんな勉強にも適しているオールマイティーな時間帯というのはありません。「この勉強なら、この時間帯」「この時間帯なら、この勉強」というように、それぞれ相性があるのです。脳科学者の茂木健一郎氏によると、朝の時間は、脳科学的に「ゴールデンタイム」と言えるそう。特に、算数の問題を解いたり、文章を書いたり、テキストを読んで知識を深めたりといった、創造性を発揮する勉強に適しているようです。「私たちは日中の活動を通して、目や耳からさまざまな情報を得ています。その情報は大脳辺縁系の一部である海馬に集められ、短期記憶として一時的に保管されます。その後に、大脳皮質の側頭連合野に運ばれますが、この段階では記憶は蓄積されているだけです。それが睡眠をとることで、記憶が整理され長期記憶へと変わります。すると朝の脳は前日の記憶がリセットされるため、新しい記憶を収納したり、創造性を発揮することに適した状態になります。この脳の仕組みが、朝の時間がゴールデンタイムだと言われる理由です」(引用元:PHP Online 衆知|脳科学者が勧める「朝時間」の使い方)茂木氏いわく、朝は最も効率良く脳が動く時間なのだそう。頭を働かせなければならない勉強は、朝のうちに済ませたほうが良さそうですね。夕方・夜は「暗記」がベスト一方、夜の時間は暗記ものの勉強に最適です。特に、人の記憶は睡眠により定着するため、寝る直前の時間帯に勉強するのが最適と言えます。東京大学大学院薬学系研究科准教授の池谷裕二氏は、次のように述べています。しかし就寝前の1~2時間というのは、記憶の質を高め、ひらめきを与える睡眠というバックアップ装置が付いた、きわめて学習効率が良い時間帯なのです。まさに、記憶のゴールデンタイムといえます。(中略)勉強ならやはり記憶を要する科目が向いていると思います。地理や歴史、生物、あるいは英単語などがおすすめです。(引用元:PRESIDENT Online|「寝る前1時間」は勉強のゴールデンアワー)暗記科目は、就寝1〜2時間前から勉強を始めると良いでしょう。また、勉強したあとにはすぐに眠るとより効果的なのだとか。勉強後にスマートフォンなどをいじってしまうと、余計な情報が入ってきて、せっかく勉強した内容が定着しない恐れがあるのだそう。「スマートフォンは夕食前まで」とルールを決めたり、お子さんが勉強を始めたらリビングのテレビは消したりと、勉強を終えたあとのお子さんが誘惑にかられず眠れるようサポートしてあげましょう。加えて、夕食前の時間帯も、暗記ものの勉強にぴったりです。これは、人間の本能によるものだと言われています。人間はやはり動物なので、動物としての本能から脳の一日のリズムが出来上がっていると考えるのが自然です。そう考えるならば、生きていくうえでの最重要課題は食料の確保です。そのため、狩りなどで食料を確保するときに一番脳がよく働いてくれる状態にあることが必要だったはずです。生存本能というのはとても強いものなので、現代になっても脳の働きのリズムだけが残ったというわけです。ということは、空腹になっている時間帯を中心に考えることによって脳がよく働く時間帯がわかるということです。(引用元:DIAMOND Online|脳が働く最強の時間帯は2つある)夕食前・寝る前と時間を分けて暗記科目を学習すると、脳科学的に効率が良いようですね。勉強以外の時間の使い方も大切朝は考える勉強、夜は暗記ものと分けて勉強することで、効率良く学習できることがわかりました。加えて、より効果を高めるには、勉強以外の時間の使い方にも工夫が必要です。当然ですが、ずっと暗い部屋に引きこもって勉強ばかりするのは、お子さんの精神面においても勉強面においても良くありません。脳科学者の和田秀樹氏は、「1日最低30分は日の光に当たったほうがいい」と述べています。和田氏は「光を浴びるのも、おすすめです。受験生は部屋にこもるケースが多いが、1日最低30分は日の光に当たった方がいい。そうするとうまくメラトニンが出て、睡眠の質が上がる。実は蛍光灯の光もいいんです。暗い部屋ではなく、リビングルームのような明るいところで勉強した方が効率的です」と語る。(引用元:NIKKEI STYLE|入試1カ月前からは朝型学習にダイエットは禁物)朝と夜はしっかり勉強し、日中は思いっきり外で遊んで日光を浴びることが大切ですね。***こうした生活リズムを定着させるには、「習慣化」が必要不可欠です。実際、成績のよい子の多くは、決まった時間に勉強したり遊んだりしています。まずは、親子で話し合い、「毎日、朝食前と夕食前の30分間勉強しよう」など、勉強や遊びの時間ルールを決めましょう。その際は、いきなり完璧を目指すのではなく、少しずつ習慣にしていくのがおすすめです。時間を効率的に使うことは、成績アップだけでなく、将来的には仕事の効率化やプライベートの充実化にも役立ちます。今のうちから、親子一緒に最適な生活リズムを作ってみてはいかがでしょうか。(参考)ベネッセ教育総合研究所|放課後の生活時間調査(ダイジェスト版)ベネッセ教育情報サイト|成績の良い子は夕方や早朝の時間を使うのが上手!ベネッセ教育情報サイト|英単語の暗記が楽になる!ニガテな人向け脳科学暗記法STUDY HACKER|勉強に使わないなんて損!東大生が『夜寝る前の30分』を英単語学習にあてて感じた、驚きの効果。STUDY HACKER|「眠いから無理」はもう卒業!脳に最高な “朝型勉強” を続けるための3つのルールPHP Online 衆知|脳科学者が勧める「朝時間」の使い方DIAMOND Online|脳が働く最強の時間帯は2つあるNIKKEI STYLE|入試1カ月前からは朝型学習にダイエットは禁物All About|「朝勉強」のススメ~朝は勉強のゴールデンタイム~Hugkum|小学生の勉強時間はどのくらい?勉強を習慣化するおすすめ勉強法を大公開!ダイヤモンド・オンライン|「暗記は寝る前」は、もはや当たりまえ。その後の行動が記憶の定着を左右するPRESIDENT Online|「寝る前1時間」は勉強のゴールデンアワー
2019年08月31日やらなくても理解できているうちは、勉強など二の次でいい――そう思っていると、あっという間に学習内容が難しくなり、スピードもアップして「何を勉強していいかわからない」「勉強するのが嫌だ」ということになりかねません。子どもが自ら勉強するようになるには、低学年あるいは入学前からの学習習慣がカギになります。「勉強は毎日するもの」と早い段階で脳に刷り込まれている子は、高学年になってもきちんと習慣として身についているので、自主的に勉強を続けることができるのです。今回は、高学年になってから慌てないために、「学習習慣を身につけるコツ」について紹介します。気づいたらついていけなくなっていた……なんてことも小学校低学年で習う内容はまだまだ簡単で、取りたてて復習に力を入れずとも理解できてしまうものも多いでしょう。そのため、家で勉強しなくても学習内容は身についているし、「高学年になって必要に迫られたら、自分で勉強するだろう」と楽観的に考えている親御さんも多いかもしれません。ところが、中学年の頃から抽象的な内容の学習が増え、突然勉強が難しく感じられるようになっていきます。たとえば、算数でいえば、これまで「リンゴが5個あり、2個食べました」のように日常生活に当てはめて具体的にイメージできる問題が主だったものが、突然「がい数」や「角度」といったイメージしづらい問題が増えるのがこの時期。そして高学年になると、理解できていない部分を家庭学習で補うことが苦痛になり、学習習慣が身についていない子は、勉強から遠ざかってしまうのです。また、ベネッセ教育総合研究所が全国の小学校4年生から中学校2年生までの子どもと保護者を対象に行なった実態調査から、学習習慣に対する親子の認識の差が明らかになっています。「小中学生の学びに関する実態調査速報版 2014」によると、小学生の約6割は、「親に言われなくてもコツコツ勉強できている」と感じているよう。一方で、小学生の保護者の46.7%が「子どもの学習に関する悩みや気がかり」に「学習習慣」を挙げています。「子どもは充分に学習していると感じていても、親の目から見ると不十分」というケースが多いようです。放っておくだけでは子どもの学習習慣はなかなか身につかないといえそうですね。早いうちから「勉強は毎日するもの」という意識づけをすることが、学習習慣を身につけるうえで大切なのです。学習習慣を身につけるコツ1:学習時間は短めに教育者の陰山英男先生は、幼いうちの家庭学習は短期集中型をすすめています。陰山先生いわく、小学校低学年までは、学習時間が長いほど成績が下がる傾向にあるのだそう。「週に一度、長くても30~40分、時間が取れない場合には10~15分でも十分です。それに加えて、1日に5分ずつくらい親と子どもで集中して何かをやる癖をつける。読書、音読、宿題をより丁寧にやるのでも良いので、集中力が高まったものを下げないうちに、迅速にやる。すると時間は短くても、子どもの能力は上がります」(引用元:マナビコ|【陰山英男先生に聞く】子どもを勉強嫌いにさせてしまう親の特徴とは?)また、勉強するタイミングも習慣化することが大切です。「学校から帰ったらまず宿題。それから遊ぶ」といった時間固定タイプでもいいですし、「家に帰ってきたら、18時の夕飯までに30分勉強する」といった所要時間確保タイプでもいいでしょう。夕飯の後は大人もくつろぎたい時間ですから、なるべく親子でゆったり過ごせるように、夕飯の前に学習を済ませておけるとお互いのストレスになりません。もしくは、早寝早起きを実践して、朝学習で勉強するのもおすすめです。学習習慣を身につけるコツ2:子どもに合った勉強場所をチョイス「リビングで勉強をすると学力が上がる」「東大生の多くがリビングで勉強していた」という話を聞いたことがある方は多いことでしょう。もちろん、リビングで勉強するだけで賢くなるわけではありませんが、リビングで勉強することにはいろいろなメリットがあります。小学校入学前から低学年のうちは、自分の部屋でひとりになることを怖がる子も多いもの。風で窓がガタガタ鳴ったり、物音がしたりするだけで、「おばけかな」「誰かいるんじゃないか」と不安になってしまう子もたくさんいます。しかし、リビングで学習すれば、一緒にいる家族の気配に安心できますし、物音で不安になって集中力が削がれることもありません。加えて、リビングという空間自体、人間が集中しやすい場所でもあります。ウェブサイト「中学受験情報局『かしこい塾の使い方』」主任相談員の小川大介さんは、次のように述べています。なぜなら、どういうときに人間が集中しやすいかというと、「リラックスできる空間にいて、かつ適度な緊張感と安心感がある」ときだからです。それは、まさにリビングです。一方、自分ひとりの空間である勉強部屋は、あくまでも自分だけの世界ですから緊張感はなく、集中力も下がりやすい場所だと考えることができる。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|“リビング学習でかしこくなる” は勘違い。東大生がリビングで勉強する本当の理由)このように、リビングは勉強にぴったりの場所なのです。もちろん、兄弟が多い家庭はリビングだと騒がしすぎる場合もありますし、人によって勉強のスイッチが入りやすい場所はそれぞれですから、一概には言えません。「絶対にリビング」とこだわる必要はなく、子どもにとってベストな環境を選ばせてあげることが大切ですね。学習習慣を身につけるコツ3:声かけのサポート学校から帰ってきてのんびりくつろいでいる子どもに、「勉強はいったいいつするの?」「早くやりなさい」という声かけは逆効果です。私たち大人が子どもの頃を思い出してもおわかりの通り、できていないことを責められるような声のかけ方では、やる気は起きにくいもの。まずは子どもに共感してあげましょう。子どもが「今日は暑くてやる気が出ないなあ」「今日は体育で疲れたから勉強したくないなあ」などと言ったときには、「こんな暑い日に勉強なんてしたくないよね」「疲れてるときに勉強なんて大変だよね」と共感してあげるのです。教育評論家の親野智可等氏いわく、子どもはそれだけで「わかってくれた」と安心するそう。一度は共感してあげてから、頃合いを見計らって「そうは言っても勉強しないとね。半分だけでもやってみたら?」と優しく声をかけることで、素直に勉強を始めやすくなるのだとか。子どもにとって勉強が苦にならないようにするためには、ガミガミ言うのではなく、子どもの立場に立ってサポートすることが大切ですね。***小学校低学年までに、勉強が習慣化していると、高学年あるいは中学生になってからコツコツ学習することが苦になりません。習慣化に大切なのは「楽しく、少しずつ」です。大人が先へ先へと急き立てるのではなく、子どもがペースをつかむまでは焦らず見守ることも大切です。(参考)PRESIDENT ONLINE|自ら机に向かう子の親が欠かさない習慣SHINGA FARM|学習習慣の基礎は幼児期からの“TO DOリスト”にあり!ベネッセ教育総合研究所|小中学生の学びに関する実態調査速報版 [2014] 2 学習態度・学習習慣ベネッセ教育情報サイト|伸び続けていくための学習習慣とは?マナビコ|【陰山英男先生に聞く】子どもを勉強嫌いにさせてしまう親の特徴とは?日経DUAL|親野智可等やっぱり子どもは褒めるに限るこどもまなびラボ|“リビング学習でかしこくなる” は勘違い。東大生がリビングで勉強する本当の理由東洋経済|大流行「リビング学習」は”諸刃の剣”であるこどもまなびラボ|「10歳の壁」ではなくて「10歳の飛躍」!親が我が子の10歳をもっと面白がるべき理由ベネッセ教育情報サイト|小学生の宿題、親の関わり方【前編】子どもの意欲を引き出す言葉と方法
2019年08月29日子どもの幼稚園選び、何を基準に考えますか。わが家の娘は好奇心旺盛で、なにごとにも前向きな性格。そんな娘に合った幼稚園を探していた時、「3年間でできるだけ多くの経験ができる」幼稚園に出合いました。そこには、専任の先生が体育、英会話、音楽、絵画造形、コンピューター、科学あそびなどを指導するカリキュラムがありました。今回は、娘の幼稚園の特徴とともに、入園から卒園までに感じた思いがけない成長についてお話しします。逆上がりは年中でできるように娘が通った幼稚園は、その名前をほかの園ママに言うと「あのお勉強系の幼稚園ね」と言われる幼稚園。毎日のカリキュラムがしっかりと組まれていて、子どもたちはそれに取り組んでいくのですが、中には親が「それはまだ難しいのでは?」と思うようなことも。たとえば、「逆上がり」。娘の園では、年中クラスでできる子どもが約8割、卒園までにはほとんどの子どもができるようになります。娘も年中の終わり頃になると、「逆上がりができるようになりたいな」と言うようになりました。体育の専任教諭は全国展開するスポーツクラブから派遣されていて、自分の背の高さにあった鉄棒や足台を使って逆上がりの練習が始まります。中には「将来フェアリージャパンに入りたい」と話すくらい運動神経抜群の子もいて、娘は、そういうお友達に逆上がりのお手本を見せてもらいながら、逆上がりのコツをつかんだようです。逆上がりができた子はカラー帽子をひっくり返し、応援団やお手本担当になります。カラー帽子が白くなるとかっこいい!という憧れが園児たちの頑張りを引き出していたようでした。ネイティブの先生による英会話指導娘の幼稚園ではネイティブの先生が教えてくれる英会話の時間がありました。耳で聞こえた音をそのまま発話するので、ABCの歌も子どもたちは私より上手に歌います。How are you?の返事も Fineだけではなく、SleepyやHappyなど、自分の今の感情を表す言葉を習い、表現豊かだなという印象がありました。卒園までには、名前や年齢、どこの国に暮らしているかなど、簡単な自己紹介ができるくらいになります。春休みにタイに旅行した際、日本料理が恋しくなった子どものために、最終日はすき焼き店でディナー。そんなに混んでいなかったためか、タイ人のウェイトレスさんがどこから来たの?何歳?と娘に聞いてきました。普段は恥ずかしがりな娘が、堂々と幼稚園で習った英語で答えた時、娘の成長を感じることができました。年長さんはコンピューターや科学あそびも年長になるとコンピューターや科学あそびというカリキュラムも始まります。お泊まり会、サッカー・ドッヂボール大会など年長さんだけの行事もあり、年長さんになったらできるという憧れをもつのも、子どもたちの意欲につながっていました。運動会の組体操も音楽会の歌や演奏も、父兄が感動するレベルまで仕上げてくることに、本当に驚きました。いろいろなカリキュラムが盛りだくさんなので、それに対して「詰め込み教育」など揶揄(やゆ)する声もあるかもしれませんが、その幼稚園に通う親から見ると、子どもがどれも楽しそうに取り組んでいるのが印象的でした。柔軟な幼児期だからこそ、「勉強」ではなく「楽しいことの一環」として体育、英会話、音楽、絵画造形、コンピューター、科学あそびに取り組めたのだと思います。それが身につくかどうかは、その後の取り組み方で変わってくると思いますが、一度経験したことで、次に遭遇した時の抵抗感はないような気がしています。園長先生が卒園式で「失敗を恐れず、新しいことに挑戦してみてください」と話をされましたが、この幼稚園でのいろいろな経験により娘は、「身のまわりにはたくさん楽しいことがある」、「知らないことを知るのは楽しい」、「できないことができるようになると自信につながる」など、多くを学ぶことができたと思います。これから園を選ぶママの選択肢のひとつになると嬉しいです。空気砲で遊ぶ科学あそび<文・写真:ライターふたえにじ>
2019年08月23日電車に乗るとテンションが上がる子、踏切を横切る電車に目がくぎ付けになる子、プラレールで何時間も遊び続ける子——。こうした「電車好き」なお子さんは、多いですよね。なかには、「こんなに好きすぎて大丈夫かしら?」と、保護者が心配するレベルのお子さんもいるようです。読者のみなさんのなかにも、心当たりのある方はいらっしゃるのではないでしょうか。そんな「電車好き」のお子さんがいるご家庭に朗報です。「電車好きな子どもはかしこくなる」という説があるのだそう。今回は、電車と知育の関係についてご紹介しましょう。電車への興味が、かしこさの土台を築く「電車好きな子どもはかしこくなる」と提唱するのは、福山市立大学教育学部准教授の弘田陽介氏です。弘田氏は、著書『電車が好きな子はかしこくなる鉄道で育児・教育のすすめ』(交通新聞社)のなかで、電車が好きな子どもがかしこくなる理由を、教育学・心理学の視点から解説しています。そのひとつが、「認知能力」の向上です。「認知能力」とは、大まかにいえば「IQ」などで測ることのできる知的能力のことです。弘田氏によれば、車両の形や色、路線名、駅名といったさまざまな情報があふれる電車の世界は、「認知能力」を高めるのに最適な環境なのだといいます。「例えば、英単語の暗記や百マス計算などの単純作業は、暗記や計算そのものよりも、この機械的な訓練を通して知性を働かせていることに意味がある。鉄道を介して、駅名や漢字、路線図を覚えることも同じこと。覚えたものが役立つというよりも、むしろ幼いときから知性を働かせ、記憶するトレーニングを積んでいたことが、将来、勉強するうえで大きな力になっていくのです」(引用元:NIKKEI STYLE|鉄道が子どもの成長に必要な理由 )もうひとつが、「非認知能力」の向上です。「非認知能力」とは、人と協力したり、目標に向かって努力したり、感情をコントロールしたりといった、IQなどでは測ることのできない能力のこと。2017年3月に改訂された「学習指導要領」に組み込まれるなど、これからの時代に不可欠のスキルだといわれています。弘田氏によれば、電車に愛着を持つことや、電車好きを応援してくれる親であれば、趣味を共有して親への愛着をより深めること、友だちと電車のおもちゃ遊びを楽しんで思いやりや協調性を高めることなどが、この「非認知能力」を向上させるのだそう。このように、電車への興味が、自然と「認知能力・非認知能力」の両方をトレーニングし、かしこさの土台を築くことにつながっているのです。知育につながる「鉄道」を利用した「新幹線学」がアツい最近、「新幹線学」という学問が人気を博していることをご存じですか? 子どもたちの学力を伸ばすと言われている鉄道のひとつである「新幹線」をさらに教材として活用したものです。新幹線学は、新幹線そのものについて学ぶだけの学問ではありません。たとえば、新幹線の走行写真に写った景色から「湖が写っているよ!」「新幹線は浜名湖の近くを通るよ!」「じゃあ、静岡県だ」と、場所を推測したり、LED照明導入による消費電力の削減率を答えたり、ほかの乗り物とCO2の排出量を比べたり、新幹線の頭の形が変化した理由を考えたり……。と、学習テーマは驚くほど多岐に渡ります。地理や、科学、環境問題といった子ども達が敬遠しがちな難しい内容でも、新幹線を題材にすると子ども達が目を輝かせて勉強するのだそう。新幹線学の教材構成を担当した玉川大学教職大学院の谷和樹教授は、「集中できない」「コミュニケーションが苦手」といった子どもたちでも、新幹線学であれば授業に集中できると言います。こんな面白そうな授業なら、大人でも受けてみたいですよね。電車好きのお子さんは特に、新幹線学を利用して勉強してみるのは得策ではないでしょうか?JR東海が運営する「リニア・鉄道館」のホームページでは、新幹線学の教材をダウンロードできます。かるたなどの簡単なものから、小学低学年・中学年・高学年の学年別教材、中学生向けの教材まで、幅広い年代に向けた教材が揃っています。ご家庭で、親子で楽しみながら、鉄道を使った勉強にトライしてみてはいかがでしょう。「楽しく学べる!鉄道教材」はこちら。電車好きな子どもにぴったりの知育本「電車好き」にぴったりの知育本も、多数出版されています。うまく活用すれば、より高い知育効果が期待できるかもしれません。口コミ評価の良い本をピックアップしてご紹介しましょう。『JR私鉄全線 地図でよくわかる 鉄道大百科』(JTBパブリッシング)日本全国の全駅、全路線が掲載された鉄道百科です。鉄道のしくみやあゆみ、車両の種類など、鉄道の基本情報もわかりやすく解説されています。特長は、路線地図がすべて正縮尺で掲載されていること。また、各都道府県の県庁所在地や特産物なども紹介されており、鉄道地図を通して地理が学べます。白梅学園大学学長で東京大学名誉教授の汐見稔幸氏も推薦されている一冊です。『図鑑漢字ドリル小学1~6年生鉄道』(学研プラス)鉄道の知識とともに、漢字を身につけることができる新感覚のドリルシリーズです。鉄道図鑑の解説文を穴うめしていく形で問題を解いていきます。この一冊で、小学校6年間で習う漢字1026字がすべて網羅できるのが特長。また、それぞれ何年生で習う漢字かわかるようになっているので、学年を問わず始めることができ、先取り学習も総復習もやりやすいのも魅力のひとつです。***最後に、電車好きな子どもの能力アップを知育本以上に支えることができるものをご紹介します。それは、保護者である読者の皆さんです。子どもが興味を持ったり、発見したりしたものを親が認めることで、子どもの能力はどんどん伸びていきます。ぜひ、子どもと一緒に電車の世界を楽しんでみてくださいね!(参考)いこーよ|子どもの鉄道好きは知育に効果あり…!?ダ・ヴィンチニュース|「電車が好きな子」はかしこくなる! なぜ鉄道は“最強ツール”なのか?NIKKEI STYLE|鉄道が子どもの成長に必要な理由すくコム|世界で注目される非認知的能力って?ならいごとキッズ|子供の知的能力を伸ばす!『新幹線学』とは?東洋経済オンライン|教育現場を変革する「新幹線学」とは何なのかJR東海|リニア・鉄道館Amazon|JR私鉄全線 地図でよくわかる 鉄道大百科 (こども絵本)Amazon|図鑑漢字ドリル小学1~6年生鉄道 (毎日のドリル×学研の図鑑LIVE)
2019年08月16日息子が通っているのは、お勉強がまったくない、いわゆるのびのび系の幼稚園。とても楽しく通っているのですが、勉強の経験がないまま小学校に入学することに不安を感じ、年長さんになる前に算数と国語を教えてくれる勉強系の習い事を始めることにしました。キャパオーバー!習い事で親子とも時間に追われる日々にすでにスイミングと片道1時間近くかかる英語教室に週1回づつ通い、降園後の公園遊びは欠かさない息子。ここに週に2回通う勉強系の習い事を入れてみたら…本当に時間がない!習い事の送迎と家事を両立させるために、その日の習い事の準備を持って幼稚園に迎えに行き、降園後に習い事に直行、スキマ時間で公園遊びをさせるように。また、晩御飯は子どもが幼稚園へ行っている間に準備をし、余った時間で掃除や洗濯などの家事をこなすようにしていたのですが、自分の時間がない生活にヘトヘトに。1か月も経たずにこのスケジュールは無理かもしれないと考えるようになりました。どの習い事も大好きな息子のために頑張りたいと思っても、常に時間に追われるスケジュールにすっかり疲れてしまい、イライラして子どもに当たっては、反省して落ち込むようになってしまいました。また、子どもも週4日の習い事は疲れるようで、習い事の帰りに寝てしまい、家に着いても起きないことも…。幼稚園のママ友に相談してみたところ、年長になるとみんな習い事のやりくりに苦戦しているそう。中には、その日の晩御飯は外食と決めて、1日に2つ掛け持ちするツワモノも。また、きょうだいがいると習い事も増えて送迎が大変なので、きょうだいで同じ習い事しかさせていないというママもいました。そして、口をそろえて言うのが、子どもがやりたい習い事、親がやらせたい習い事を全部やっているとキリがないということと、時間とお金がとても足りないということ。理想と現実に悩んでいるのは、みんな同じようでした。習い事を減らすことを決意現状に悩みながらも、ハードなスケジュールをこなしていたのですが、無理がたたったのか、私の体調不良が続くようになってしまいました。夫婦で相談した結果、私が体調をくずしてまで習い事を続けることより、親子ともに毎日楽しく元気に過ごせることの方が大事だという結論になり、習い事の整理をすることに。家から遠くて、送迎に関して一番の負担になっていた英語教室を辞めることにしました。息子は、先生とも教室とも、とても相性が良かっただけに苦渋の決断でした。辞めた後、英語教室のことを思い出しては「また先生に会いたいなあ」と呟く息子を見て、大人の都合で習い事に通わせたり、辞めさせたりとつらい思いをさせてしまったことを後悔。今後は習い事の無理なスケジュールを組むのはやめようと誓いました。送迎のいらないオンライン英会話に挑戦してみることに1歳半から続けてきた英語の勉強をどうするかを考えずに英語教室を辞めてしまったわが家。まずは家でドリルなどを使って勉強をしてみたのですが、私がうまく教えることができず、あっという間に挫折してしまいました。けれど、ここで辞めてしまうのはもったいないので、送迎がない勉強法は何かないかと探していたら、子ども向けのオンライン英会話があることを知り、始めてみることに。最初は、パソコンを使って知らない人と英語で話すということに拒否反応を示した息子。これで英語が嫌いになっては元も子もないので、教材を使うコースではなく、フリートークのコースを選択。数回目のレッスンで、最近ハマっている「マインクラフト」というゲームにとても詳しい男性の先生と出会い、あっという間に仲良くなりました。パソコンを通じての会話だと、直接顔を合わせて話すのと違い、会話が広がりにくいのではと少し心配していたのですが、「マインクラフト」という共通の話題のおかげで、まったく問題なし。むしろ、相手にどうやったら上手に伝えられるかを息子が工夫するようになり、英語力がグッと向上しました。なお、契約したオンライン英会話の先生は全員フィリピン人。英語が母国語ではないので、発音が不安だったのですが、人によって多少ばらつきはあるものの、訛りはほぼ気にならないレベルでした。話すことが好きなのに一人っ子の息子は、大好きな「マインクラフト」の話ができることが嬉しいようで、ヒマさえあれば「レッスンの予約とって!」というように。私は送迎がなくなり、息子がレッスンを受けている時間を家事に使えるようになったことで、普段の生活が格段にラクになりました。さらに、通っていた英語教室よりオンライン英会話のレッスンの方が費用が半額近く安く、結果的に教育費も抑えることができました。お気に入りのおもちゃのカタログを見ながら先生とフリートーク保育園ママに聞くと、保育園に通っていると習い事に通うのは時間的に難しいので、タブレット学習やオンラインを使っているママが多いそう。小学校に入学したり、引っ越したりして環境が変わっても続けられるのがメリットと話していました。実際にオンライン英会話を使ってみて、手軽さと充実さ、コスパの良さに驚いたので、個人的には、これからもっと自宅で出来るオンラインや通信教育などの勉強法が増えてくるのではないかと思っています。でも、スポーツなど、実際に通わないと学ぶことが難しい習い事がたくさんあるのも事実。小学生ママに聞くと、小学生になっても習い事の送迎は親が付き添うことが多いそう。習い事の送迎を卒業するのは当分先になりそうですが、今後も無理せず親子で楽しく習い事と付き合っていきたいと思います。<文・写真:ライター芳賀千歳>========読者限定RIZAPトライアルモニター募集中!「シェイプアッププログラム」を4万9800円(4回・税別)でお試し。さらにモニター謝礼として1万円のキャッシュバック!さらにモニター終了者から抽選でクオカード3000円分を100人にプレゼント。さらに本コースへの入会金5万円無料。店舗により受け入れ制限がかかる場合が想定されますのでお早めにお申し込みください。申し込みはこちら ⇒申し込み〆切:2019年8月31日(土)
2019年08月03日運動も勉強も習い事も、はじめるには早いに越したことはない!と思ってしまいがち。けれども、子どもの発達段階を考慮して教育を進めないことには、子どもにとっても親にとっても、かえって負担になってしまいます。ここでは、4歳〜7歳の幼児期から小学校入学までの時期の子どもの発達と学び、そして親が意識しておきたいことについてご紹介します。ただし、年齢についてはあくまでもひとつの目安ですので、興味関心や刺激を与えるヒントとしてご覧いただければと思います。■4歳―親子の会話で語彙力アップ【4歳頃の子ども】自分が成し遂げたことは自慢し、大人にほめてもらおうとする4歳。「ママみて!」「すごいでしょ」といったアピールが増えてくる時期です。語彙数は1500を超え、長い文章を使い、もののありかを説明するときは位置を示す言葉を使ったり、所有関係を表す言葉も使い分けます。【教育のヒント】言葉をどんどん吸収する4歳の子とは、それまで以上に「親子の会話」を楽しむことが何よりの知育になります。大人の語彙力が子どもの言葉の数に大きな影響を与えるといっても過言ではないでしょう。下記のように、ものの名前を単純に教えるような一方的な言葉かけではなく、より丁寧な表現をして会話を楽しむようにしてみましょう。×「鳥さんだよ」→〇「かわいいスズメさんがいるよ。エサを探しているのかな」×「風が強いね」→〇「ゴォーッと強い風が吹いているね、飛ばされちゃいそう!」また、4歳頃になると「子どものためになる習い事をさせなければ!」と考える親御さんも多いようですが、無理強いは禁物。イヤイヤ通ったところで、思ったような成果は出ないものです。4歳くらいの時期なら、子どもがその場所に「行ったら楽しい」と思えているかどうかを基準にするとよいでしょう。先生や周りの子どもたちと楽しい時間が過ごせるのであれば通わせ、浮かない顔をしている子に「何歳までに始めないと……」と親が焦りながら無理強いしても、かえって苦手意識を持たせることになってしまいます。■5歳—遊びから想像力や自制心を学ぶ【5歳頃の子ども】集団生活に慣れ、ルールのある遊びやゲームを楽しめるようになってくる5歳。語彙数が2,000程度にまで増えているため、ジョークを言ったり、物語を語ったりして、大人を楽しませてくれることも。また、この頃になると、物の名前だけでなく、“その言葉の意味” や “文脈の中での使い方” を質問することがあります。これは「言葉には明確な意味と比喩的な意味がある」ということを理解しているからです。【教育のヒント】言葉の持つ意味を理解しはじめる5歳くらいの子。「ごっこあそび」も好きな年頃ですが、これには、ことば(セリフ)やもの(おもちゃ)を巧みに使い、状況や社会的なできごとを他者と演じることで、想像力や自制心を学ぶ重要な役割があります。また、ごっこあそびに伴う子どもの空想ドラマは、貪欲に知識を吸収させるチャンスだと、教育コーチングオフィスSaita Coordination代表で(財)生涯学習開発財団認定コーチの江藤真規さんは言います。たとえば以下のように、親も一緒になって子どもの好奇心を上手に利用して自然に学びを増やすのもよいでしょう。《ごっこあそびで「テーブルマナー」を知る》お姫さまごっこで「お姫さま、きょうはナイフとフォークでお食事をしてみましょう」と誘ってみます。たとえおもちゃのカトラリーでも、扱い方が自然と上達していくのがわかるはずです。《ごっこあそびで「文字の練習」をする》学校ごっこの先生役になったら「さあ、ノートに名前を書いてみよう!」と促し、生徒役になったら「先生!『山』ってどう書くんですか?」と子どもに聞けば、一生懸命調べたり覚えたりしようとします。もちろん、ごっこあそびの最中で「そうじゃないでしょ!」などと叱るようなことがあってはいけません。「こうするともっと素敵なお姫さまね」「◯◯くん、書けるようになったね!」などと褒めながら、あくまでも遊びのなかで、さりげなく教えてあげるのがよいでしょう。■6歳—日常生活の工夫で学習の土台づくり【6歳頃の子ども】児童期の入り口に立つ6歳。この頃には、物語の展開を構成する起承転結がわかるようになったり、時間の概念を獲得したり、また、文字や数などの知的な活動への興味も芽生え始めます。自分や友だちの名前、街の看板などの文字を読んだり、エンピツで文字を書いたりする子どもも出てきます。【教育のヒント】小学校入学前後は特に、先取り学習に励む親子などに影響を受けて焦ってしまったりしがちですが、お手伝いやふだんの生活のなかで学びをつかみ取れることもたくさんあります。たとえば算数なら、小学校入学前に15くらいまで数えられれば数の概念はしっかり頭に入っているので、それ以上は無理に教えなくても大丈夫、と『IQがみるみる伸びる0歳から6歳までの遊び方・育て方』(廣済堂出版)の著者であり祖川幼児教育センター園長の祖川泰治さんは言います。普段の生活のなかでのちょっとした工夫で、楽しく学習の土台づくりをしていきましょう。《おやつで算数を学ぶ》無味乾燥な数字の足し算や引き算よりも、体で実感する算数が大切な時期。お菓子を一列に並べ、「今日は右から5つまで食べよう」と言ってみたり、「ママは3つ、◯◯ちゃんは2つ、全部でいくつかな?」などと聞いてみましょう。クイズのように楽しみながら大好きなおやつを食べるとなれば、子どももごきげんで答えてくれるはずです。《買い物で算数を学ぶ》お菓子やおもちゃをねだる子どもに、たとえば「100円よりも安いものならば買っていいよ」と言えば、必死になって探すはず。なんとなくでも数の概念がわかるようになり、百の位にも親しみが出てきます。そのうち足し算を覚えたら、複数の値段を合算して100円になるように選ぶこともできるようになります。《看板で文字を学ぶ》街中で、看板の文字の当てっこクイズをしたり、「“A” という字を見つけてみよう!」と、知っている文字を探し歩いたり。子どもには先入観がないからこそ、難しい漢字だろうと英字だろうと関係なく、多くの文字を学びとろうとします。《お手伝いでものの名前を学ぶ》子どもは「ごはん」や「コップ」などの身近なものの名詞は知っていても、意外と「お玉」や「しゃもじ」などの名詞は知らず「ごはんをよそうやつ」なんて表したりします。お手伝いをしてもらうときにも、「ママがお玉で味噌汁を注ぐから、お椀を運んでくれる?」というように会話におり込んでみるといいでしょう。知っている言葉が増えることは自信にもつながります。■7歳—決まった時間で生活リズムを身に付ける【7歳頃の子ども】授業や宿題がどういうものかわかるようになり、勉強をすることに少しずつ慣れてくる7歳前後。脳の回路が発達し始め、判断力や記憶力も、急速に高まっていきます。本格的に学習を開始するのに適した時期です。【教育のヒント】この頃に基本的な生活習慣を時間によって決めておくと、体内リズムも作られ、勉強の習慣づけもしやすくなります。朝起きて、朝ごはんを食べ、学校に行き、おやつを食べ、習い事に行き、夜ごはんを食べ、宿題をして、お風呂に入り、寝る、というような基本的な生活を、できるだけ決まった時間に行なうようにするといいと、江藤真規さんは言います。時間が決まっていれば、無理なくその行動に移ることができます。自然と気持ちが動くので、抵抗が少ないのです。当たり前の基本的生活習慣がリズミカルに整っていることは、子どもの体内リズムを作る上でも大変役立ちます。また、基本的な生活のペースがきちんとできていれば、その他の用事を組み込むことも簡単です。自分が自由に使える時間帯がはっきりするからです。しかも、その組み込んだ用事にも比較的抵抗なくとりかかれるので、大きな時間の節約になります。同じ時間に同じことをする、この単純な習慣が、大きな時間を作り出す源となるのです。(引用元:江藤真規(2009) ,『勉強ができる子の育て方』,ディスカヴァー・トゥエンティワン.)目安となる時間を決めておけば、たとえば8時頃お風呂に入ったら、ベッドに入る9時までは自由時間!というように、生活にも楽しみやメリハリがついてきます。おすすめは、親も子どもと一緒の時間帯に行動すること。家庭内の計画も立てやすくなり、子どももよりスムーズに生活習慣を身につけられるようになるはずです。***年齢を目安にまとめてみましたが、大切なのはこどもの個性や適性です。しっかりと向き合いながら、その子に合ったペースで学びの基礎を育んでいけるといいですね。文/酒井絢子(参考)江藤真規(2009) ,『勉強ができる子の育て方』,ディスカヴァー・トゥエンティワン.祖川泰治(2015) ,『小学校前の3年間にできること、してあげたいこと』,すばる舎.内田伸子 (2017) ,『子どもの見ている世界誕生から6歳までの「子育て・親育ち」』,春秋社.デズモンド・モリス(2010) ,『デズモンド・モリス子どもの心と体の図鑑』,柊風舎.公益財団法人母子衛生研究会赤ちゃん&子育てインフォ|Part2 赤ちゃんの発育発達と親子あそび4歳頃の子ども公益財団法人母子衛生研究会赤ちゃん&子育てインフォ|Part2 赤ちゃんの発育発達と親子あそび5歳頃の子ども公益財団法人母子衛生研究会赤ちゃん&子育てインフォ|Part2 赤ちゃんの発育発達と親子あそび6歳頃の子ども
2019年08月01日ついつい口に出てしまう「勉強しなさい!」という言葉。いくら繰り返したところで子どもがやる気を出すようにならないのはわかっていても、黙っていられない!という親御さんはきっと少なくないはず。しかし、主体的に学習する姿勢が子どもに身についていれば、自ら考え行動できるはず。したがって、「勉強しなさい」という声がけは、そもそも必要なくなります。では、どうすれば子どもの主体性を引き出すことができるのでしょうか?勉強の強制は逆効果!?「勉強しなさい!」と机に向かうことを強要し続けると、学年が上がるほど、いわゆる「馬の耳に念仏」に。すると、ますます親のイライラは募り、子どもは「ウザい」と感じるようになり、主体的な勉強からはさらに遠ざかっていくばかり……。そのような悪循環に陥るのを防ぐためにも、なるべく早い段階から「勉強しなさい」という言葉を避ける必要がありそうです。つまり、勉強は強制するのではなく習慣化するよう心がけるのが、伸びる子を育てるポイントになります。実は、成績の良い子ほど親から「勉強しなさい!」と言われていません。良い成績をおさめることができている子は、小学生のころから親にガミガミ言われなくても学習する習慣がついているのです。私の経営する学習塾でも、成績が良い生徒には、「親に言われる前にやる」タイプが多く、彼らは自分で考え、前向きな気持ちで勉強を楽しんでいます。(引用元:安村知倫(2017) ,『子どもの成績を「伸ばす親」と「伸ばせない親」の習慣』, 明日香出版社.)また、東大生の6割は「勉強しなさい」と言われたことがないといいます。彼らは、子ども時代に自主性・主体性を重視した教育を受けてきたおかげで、「好きなことに思いっきり没頭できた」のではないかと言うのは、東北大学加齢医学研究所教授で医学博士の瀧靖之氏。脳は、「好き」「興味がある」とポジティブなレッテルが貼られた情報ならば、思考が深まり、しっかり理解して記憶するようになるそう。「勉強しなさい」「やらなくちゃダメでしょ」などといったネガティブな声かけでは勉強が楽しいものだと感じることができず、拒絶するようになってしまうのも無理はありません。まずは行動を認める声がけをそうはいっても、いつまでも机に向かおうとしない子どもを黙って見過ごすことはできないですし、放っておいても進歩は望めません。まずは現在進行形で子どもの行動を認める言葉かけをするとよいと、学習コンサルタントでステージメソッド塾代表の西角けい子さんは言います。たとえば、宿題をしているときに「宿題、頑張っているね」と、声をかけてみましょう。これは宿題や勉強に限らず、ごはんを食べているときに「おいしそうに食べているね」、ゴロゴロしているときに「疲れているみたいね」といった、子どもの「いま」に対する共感の言葉がけを心がけると、家の雰囲気もよくなり子ども自身も親から行動を認めてもらえると感じるようになり、自信につながってきます。「宿題をやらなくちゃだめでしょ!」「今やろうと思ってたんだよ!」と言い合うような、怒る親とふてくされる子どもという悪しき構図からひとまず抜け出す簡単な方法です。また、「褒めて伸ばす」とはよく言いますが、テストの点を褒めたり成績を褒めたりするのももちろんですが、まずは途中の頑張りを認めて褒めてあげることも大切です。誰が見てもわかるような成果がなくても、姿勢よく机に向かっている、字を丁寧に書いている、難しい問題も投げ出さずに取り組んでいる、というような努力の過程の具体的な部分に注目し、「頑張っているね」「いいね!」と声をかけてあげましょう。これは、いちばん身近にいる親だからこそできること。小さな努力を認められ褒められて育つ子は、やる気も出て、その積み重ねで大きな成果を生むはずです。強制ではなく、きっかけづくりを子どもの「いま」を認め、さらにはテストの結果などがんばった面を評価することができたら、次に、わかっていない部分を親子で確認し合います。そこで親が「こんなふうに勉強してみたら」と提案するなどして、子どもが自分に合った勉強の仕方を発見するきっかけを作ってあげることが、勉強への姿勢を変えていくコツ。勉強して賢くなることが実感できれば、子どもは面白がってそれに打ち込むようになります。例えば練習を重ねて50メートル走のタイムがどんどん早くなったり、あるいはピアノが上手に弾けるようになったりするのと同様、勉強することで賢くなるのは、誰にとっても快感なのだから。賢くなり、難しい問題が解けるようになると、子どもなりに手ごたえを感じてくれるものなのです。(引用元:松永暢史 (2007) ,『子どもを親より賢くする本子どもを賢くする親は、ここが違う!』, PHP研究所.)子どもよりも少しだけ上のレベルの目標を設定し、「この目標を達成させるためにはどうしたらいいと思う?」と声をかけ、一緒に目標を達成するための方法や段取りを考えます。ただし、一緒に考えているようで最終的に親が「こうしなさい」と決めてしまうのはNG。あくまでも、学ぶのは子ども自身。本人から「こういう方法があると思う」という考えを引き出すことが大切です。それによって成果を得ることができれば、自ら勉強に取り組む姿がみられるようになるはずです。子ども主導で勉強時間を決めておくしかし、まずは大前提として、宿題や勉強に取り組む「時間」を生活の中に作らなくてはなりません。そこで親が「夕食前に1時間は勉強するようにしなさい!」と押しつけても、子どものモチベーションは続きません。自分で決めさせて実行させるほうが、子どもの責任感も育つというのは、チャイルドコーチングアドバイザーで桜ゼミナール塾長の安村知倫氏。子ども主導で、平日の何時から何時は宿題、何曜日の何時から何時は理科の復習、といったようなスケジュールを決めさせるのです。まずは、1週間のうちで時間が決まっている行動を書き出し、空白時間を見つけ、そこに勉強時間を設定していきます。ただし、空白時間には勉強だけでなく遊び時間もしっかり組み込み、勉強内容は最終的に子ども自身が決めるとよいといいます。効率的なスケジュールを組むことができれば、親は決まった時間に「そろそろ時間だね」と声をかける程度で済むようになるはずです。これは学習面だけでなく、健康で規則正しい生活を送るためにも有効な手段といえますが、親の協力も不可欠。できるだけスケジュールに沿った時間に子どもが夕食や入浴を済ませられるよう、生活の土台となる部分は崩さないようにしていけるといいですね。努力の「見える化」がさらなるやる気を引き出すさらに安村知倫氏は、子どもが自分で努力したことを「見える化」すると効果的だといいます。壁かけカレンダーを用意して、学校の宿題を含めたその日の家庭学習がきちんとできたら、カレンダーに◯をつけていく。学校のプリントを見直ししたら、ひとつの箱に入れていく。漢字練習や計算などの自学ノートを終わったら、同じ場所に積み上げていく。カレンダーに◯が並んだり、箱にプリントがたまったり、ノートが積み重なったりしていけば、頑張った証拠が目に見えることで満足感が得られ、さらなるやる気を引き出すことができるのです。この「見える化」した部分を親も一緒に喜ぶようにすれば、ますます効果的かもしれません。前述しましたが、親だからこそ知ることができる努力の過程を見逃さないことが大切です。テストや試験の「結果が全て」ではなく、それまでの努力が大切で尊いものだとわかっている子どもは、学習習慣が自ずと身につき、いずれ成績に反映されることでしょう。***家事や仕事を「頑張りなさい」と言われるよりも、「頑張っているね」と言われたほうがモチベーションを保てるのは、大人も同じ。何かを「やりなさい」と言われると逆効果になることが多いのは、振り返ってみれば合点が行くのではないでしょうか。「勉強しなさい!」を封印することができれば、親も子も少しずつ良い方向へ変わっていくはずです。文/酒井絢子(参考)こどもまなび☆ラボ|「勉強しろ」は逆効果!統計でわかった、親が本当にやるべき3つのことベネッセ 教育情報サイト|「勉強しなさい」よりも効果的!?な、子どもの学習意欲を高める関わり方PRESIDENT Online|自ら机に向かう子の親が欠かさない習慣「勉強しなさい」と言わない理由SankeiBiz|「勉強しなさい」は逆効果勉強嫌いな子を変貌させた家庭の特徴安村知倫 (2017) ,『子どもの成績を「伸ばす親」と「伸ばせない親」の習慣』, 明日香出版社.明光2020教育改革室 (2018) ,『開始5分の「振り返り」から子どもの学力はぐ〜んと伸びる!』, 主婦の友社.西角けい子 (2010) ,『子どもの成績は、お母さんの言葉で9割変わる!−−普通の子が次々日本一になったニシカド式勉強法』, ダイヤモンド社.小林公夫 (2009) ,『「勉強しろ」と言わずに子どもを勉強させる法』, PHP研究所.江藤真規 (2009) ,『勉強ができる子の育て方』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.汐見稔幸 (2007) ,『親子のハッピーコミュニケーション』, 岩崎書店.瀧靖之 (2018) ,『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える究極の子育て「賢い子」は図鑑が育てる』, 講談社.松永暢史 (2007) ,『子どもを親より賢くする本子どもを賢くする親は、ここが違う!』, PHP研究所.
2019年07月14日春休み。進級に伴って変化する環境に息子が適応できるのか、不安を抱える私。そんなある日、息子が1枚のチラシを差し出した担任・N先生の寄り添いに心を動かされたこともあり、3年生の後期が終わるあと1週間のところで、通学を始めた息子。とはいえ、学校で起こる不便や不快感など、根本的な問題が解決したわけではない。そして転出により児童数が減少したため、新学年からは2クラスが統合されて1クラスになるという。全校生徒の顔をなんとなく把握できるような、田舎の小さな小学校だ。「教室に見たことない子がいる」というようなことはないだろうが、1つの教室で過ごす人数が変わることで、人間関係はもちろん、室内に響く音声が、聴覚過敏もある息子の耳にどう響くかも変わってくるだろう。となると、これまでとは違った問題が発生する可能性もある。本人も不安があるのか、「新学期になったら、また毎日行けるか分からない」と言っている。まあ、考えてみたらここまでが余りにも順調すぎたのだ。本人だって「いきなり毎日最初から最後まで、というのはできないかもしれない」と言いながら、3年生のラスト1週間の毎日、始業から終業までを学校で過ごすのには、かなりのエネルギーを要しただろう。短い春休みの間で、身心両面のリカバーができるかどうかは分からない。仕切り直しだと考えて、過度な期待をせず様子を見ることにした。そんな構えで春休みを迎えようとした私に、息子が1枚の紙を差し出した。「これ、行ってきてもいいかな」それは小学校で行われている、放課後と週末のレクリエーション会の予定表だった。息子が通う小学校では毎週水曜日の放課後と土曜日の午前中、地域ボランティアの方と提携して行われるレクリエーションの時間が設けられている。会場は校舎の中。その春休み特別企画として、プログラミング体験講座が開催されるのだとか。そのころ息子は、いくつかの要素を組み合わせてオリジナルゲームを簡単に作れる、という携帯ゲーム機のソフトに夢中になっていて、それをきっかけにプログラミングに興味を示していた。何年か前に私は障害者向けの就業研修で、プログラミング言語のJavascriptを学んではいたが、きれいさっぱり忘れてしまっていたし、覚えていたとして(あと、JavaScriptが最新ではないことはさておいても)、彼の興味を引きつけるように教える自信は一切持ち合わせていない。レクリエーションでは、現役のSE兼プログラマーの方が、小学生が楽しく、分かりやすく学べるように指導してくださるようだ。徒歩で出かけられる場所で、しかも無料である。反対する理由はない。「いいじゃんいいじゃん、行ってきなよ!」「レクリエーション、3年生は対象外だったの!?」冷や冷やしながら迎えに行くと、満足そうに微笑む息子。なぜ?当日息子は冷えたルイボスティーを自分で水筒に詰め、張り切って出かけた。レクリエーションが終了するお昼近くなったら迎えに行くから、と息子の後ろ姿に声をかけ、私は仕事の作業に取りかかった。合間にふと「今ごろ楽しんでいるかな」と、レクリエーションのスケジュール表に目を向けた私はすぐさまフリーズ。そこにははっきりと「対象:4年生~6年生※3年生以下は見学」と印字されているではないか。そのときはまだ3月、息子は3年生なのだ。プログラミングを体験したくてわくわくで出かけた息子が、「3年生だから、見学ね」と言われてその状況を受け入れられるだろうか。そこで不満とともに「自分も参加させろ」と申し立てるようなタイプではないが、かなりのフラストレーションを募らせることは想像に難くない。(こりゃもしかしたら途中で帰ってくるかもしれないな…)などとぼんやり考えながら作業を再開したが、昼近くなっても帰宅する気配はない。意外にも見学を楽しんでいるのか。私は、身支度をして小学校へと向かった。待合室になっている教室で待機して、どれくらい経ったころだろうか、「お待たせしてすみません!みんなで盛り上がってしまって、ついつい長くなってしまいました!」と、レクリエーション担当の教員・K先生と、参加した児童たちが戻ってきた。もちろん、息子もおり、満足そうに微笑んでいる。「ごめん、私、チラシの説明をよく読んでいなくて…」「あ、それなんだけどね」私の言葉を受けてこちらを見上げた息子は、K先生に向き直った。「あの、本当は対象外なんですけど、見学になる参加者が息子さん1人で。ほかの児童たちも“ハルくんならきっとできるよ”と言うので、一緒に参加してもらったんです」「そうなんだよ!上級生のみんなが仲間に入れてくれたんだよ!それで、分かりにくいところは教えてくれてね!マイコン制御のロボットを(プログラミングで)操作したんだけど、あまり上手くできなくてもみんなが“最初からこんなふうにできるなんてすごいよ!”ってさあ!」K先生が説明してくださったあと、息子は目を輝かせながら、何があって、それがいかに楽しかったり嬉しかったのかを早口でまくし立てた。私が心配するまでもなく、息子は充実した時間を過ごしていたのだった。K先生にお礼を申し上げて帰ろうとしたら、K先生がこうおっしゃった。「息子さん、いろいろ学校が不便をかけて、ずっとお休みをしていたので、楽しんでもらえるか心配だったんですけど…プログラミングやものづくりが得意で大好きなのでしょうね、いきいき楽しそうに取り組んでいましたよ」私はもう一度お礼を申し上げ、息子とともに学校をあとにした。「今日から新学期だよ!」やりたいことが見つかった息子は、ランドセルを揺らしながら学校へさて、気づけば4月。まもなく新学期に突入というある朝、朝食を終えて食器洗いやらなんやらをしている私を尻目に、息子がなにやら慌ただしい。「どしたの?今日なんかあんの?」「なんかあんの?じゃないよ!今日から新学期だよ!!」新学期、間もなくではなく完全に突入していた。数日前に支度はしてあったものの、「また毎日行けるか分からない」という息子の言葉が頭に残っていたからか、私は完全に油断し日付の感覚がおかしくなっていた。「お、おう。そうだった、ごめんごめん」「のん(私の呼び名)が忘れちゃダメでしょう。じゃ、行ってきます!」息子は笑いながら靴を履き、「うおおおお!小学4年生!!!」という雄叫びとともに、集団登校の集合場所へ走り去って行ったのだった。完全に、予想外の光景である。もちろん、登校すると想定していなかったわけではない。とはいえ、約1年半の不登校生活を過ごし、1週間登校をしたものの、春休みをはさんで「また毎日行けるか分からない」と懸念していた9歳児が「うおおおお!小学4年生!!!」という雄叫びを上げながら学校に向かう姿なんぞ、誰が想像するものか。「のんが小学生のころには、コンピューター室ってあった?」春休みのレクリエーションを終えてからの帰り道、同じ小学校の卒業生でもある私に、息子は聞いた。「ないない。30年以上前は、こんなにコンピューターが普及していなかったもん。PCなんて、学校にも家にもなかったよ」「ふーん…コンピューター室が学校にあるのは知ってたけど、今日初めて入ったよ。楽しかった。でね、またプログラミング教室をレクリエーションの会でもやるし、学校でも、まあ毎日だったりしょっちゅうは無理かもしれないけど、PCを使ってプログラミンクとか、いろいろ勉強できるんだって!」普段、私が使用しているスペックの低いPCをたまにいじる程度しかできなかった息子は、比較的新しくてスペックの高いPCを、時間の限り思う存分使用できたことが本当に嬉しかったようだ。「携帯ゲーム機でオリジナルゲームを作るのも楽しかったけどさ…自分が入力した文字や数字が言葉になって伝わって、ロボットが作動したり、静止画だと思っていたものが動画になるってすごいよ!だから、すぐでなくてもいいから、ああいう勉強をしていきたいなって思ったんだよね」話しながら進む息子の足取りは、まるでステップを踏むように軽やかだった。「また毎日学校に行けるかは分からないけど、これからも勉強はしていきたいなって思う」私に向けているとも、ひとりごととも取れるような口調で、息子がつぶやいていたのを思い出す。「やりたいことがあるっていうのは、外野があれこれいう言葉より心に響くもんだね…」ランドセルを揺らして駆けていく息子の背中を眺めながら、今度は私がベランダでつぶやいていた。児童数が増えたことに伴う困難なども、特別支援学級の利用で万事解決!ではなかった…しかし、やはりというべきか、問題が浮上した。元々黒板にチョークで文字を書くカツカツという音が息子は苦手だったのだが、教室内にいる児童数が増えたことで、音の響き方がますます苦痛に感じられるようになったらしい。加えて、「班ごとで相談」という場面では、大声ではないとはいえ、たくさんの話し声が耳に届いてしまい、「自分の班の人の声を聞き取るのも大変だし、頭がちゃんと働かなくなる感じがする」と訴えた。在籍は通常学級のままではあるが、様子を見て特別支援学級の利用も可能であるという話を、以前校長先生から聞いている。特別支援学級では黒板とチョークは使わずにホワイトボードで授業を進めるらしいし、人数だってかなり少ない。今息子が抱えている困難は、解決すると思われる。そこで息子に「どうする?特別支援学級で授業を受けてみる?」と問うてみたところ、「是非そうしたい」と返ってきた。私は連絡帳を開き、息子が感じている困難と、特別支援学級での授業を希望しているということを、担任の先生に宛てて書いた。息子が連絡帳を持参したその日に担任の先生から電話をいただき、いくつかの授業を特別支援学級で受けることになった。2つの教室を行き来することで不快感が軽減され、快適に学習できるようになった息子は、毎日嬉しそうに登校。帰宅したらすぐ友達の家に出向いて一緒に宿題をしたり遊ぶなど、「本当にあなたは少し前まで不登校だった人なのですか?」と疑いたくなるほど、いきいきと過ごしていた。「特別支援学級は嫌な音がしないから、勉強も楽しくできるんだよ。休み時間に中庭や体育館でみんなと遊ぶのも楽しい。土日にのんとどこかに出かけるのも楽しいけど、今はそれと同じくらい学校が楽しいんだ!」などと申し、ゴールデンウィークの10連休については「半分でいいのに」とぼやいていたほど、学校が大好きになっていた。これで万事解決、めでたしめでたし…で、収まれば良かった。収まってほしかった。ゴールデンウィークが終了し、私の仕事が忙しくなってきたある日の午後、息子はえらく憤慨した様子で学校から帰宅した。「もうやだ!また学校行くのが嫌になって来たよ!!」えっ、ちょっと待って、今の時期に家にいられると困る…とうっかりこちらの都合による本音が出そうになったが、息子だって辛いことがあったのだから、とぐっと堪え、「どうした?何かあった?」とだけ、どうにか口にできた。この前まであんなに楽しそうだったのに、何があったんだ…。<第3回に続きます>
2019年07月08日国語はもちろん、算数や理科などあらゆる教科を勉強する際にも重要とされる「言葉の力」。子どもの「言葉の力」を伸ばすためにはどうすればいいのでしょうか。お話を聞いたのは、屈指の名門校、麻布中学・高校の国語教諭である中島克治先生です。まずは、「おしゃべりな子どもと無口な子どものちがい」についてのお考えから話してもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)ドリル学習では「言葉の力」はなかなか伸びない我が子が、まわりの子と比べて無口だと心配になってしまう親もたくさんいると思います。でも、ありていにいってしまえば、それは「個性」ということなのです。親がどんなにおしゃべりでも子どもは無口になることもあるし、その逆もある。同じような育て方をしても兄弟姉妹でちがいはありますし、親のアプローチいかんで子どもが多弁になったり寡黙になったりといったことはないのではないかとわたしは考えています。子どもには親とはまったく別の人格が備わっていて、おしゃべりであれ無口であれ、それはその子の「個性」なのです。そうとらえれば、「なんとか子どもの言葉を増やそうと努力しているのに……」と、頭を悩ますというような呪縛から解放されることになるはずです。とはいえ、おしゃべりか無口かということとは別に、「言葉の力」を身につけておくことはあらゆる勉強をするにあたって重要となります。そう考える教育熱心な親であれば、子どもにドリル学習などをさせているかもしれません。でも、ドリル学習にはあまり意味がないとわたしは考えています。子どもからすればドリル学習はやらされる、仕方なくやる受け身の側面が強いものです。しかも、紙の上での学習ということで、どうしても現実世界に応用しづらいものであるため、学習した内容の定着率も良くありません。たとえ勉強した直後には身についても、1カ月、1年といった時間が経つと内容がすっぽりと抜け落ちてしまうのです。単なるドリル学習というものは、どうしてもただ覚えること、テストでいい点を取ることに重点が置かれます。そういう学習で得た知識は、子どもにとって「生きた知識」にはならないのです。親との共通体験が子どもの学習を補強していくでは、「生きた知識」としての言葉の力をどのように伸ばしてあげればいいのでしょうか。その方法は、「実生活のなかでの親とのコミュニケーション」です。たとえば、親子で植物園に出掛けたときに、以前に図鑑で見たことのある花が咲いているのを発見したとします。そして、「これ、前に図鑑で見たよね?」「どんな花だっけ?」といった会話をする。すると、実体験のなかで実物と言葉がぴたっと結びついていくので自然に言葉が子どもの頭に入っていくのです。親に教えてもらったとか、親の質問に答えられてうれしかったとか、具体的な場面のなかでの親との共通体験が学習を補強し、そのときに得た言葉はしっかりと子どもの頭に刻まれます。共通体験といっても、わざわざどこかに出掛けて特別な体験をしなければならないということはありません。それこそ家庭での日常的な会話でもできることです。会話の内容も天気のことでもご飯のことでもいいし、幼稚園や小学校での出来事、親子それぞれが観たテレビ番組の感想をいってもいい。そういった親とのコミュニケーションを通じて、子どもは満足したり、安心したり、うれしく感じたりといったポジティブな体験とともに感受性を高めながら言葉を覚えていくのです。子どもに知識をただ詰め込もうとしても、身につくものではありません。喜怒哀楽などの気持ちが伴わなければ、学習したことが子どもの糧にならないからです。たとえば、子どもがはじめて真っ赤な美しい夕焼けを見たとき、「綺麗」という言葉を知らなくとも子どもの心はすでに震えています。そして、そばにいる親が「綺麗だね」とつぶやいた。自分の心の震えと「綺麗」という言葉が重なり合う。そんな言葉を忘れるわけがありません。親子のコミュニケーションにおける3つの注意点子どもとコミュニケーションを取る際の注意点もお伝えしておきます。ひとつは、子どもから「これ、なに?」というふうに質問をされたときに、すぐには答えないほうがいいということ。答えられることでもあえて答えず、「なんだろうね?」「うちに帰ったら調べてみようか」というふうに答えるのです。どういうことかというと、子どもに立ち止まる時間を与えるということです。そうすることにより、子どもは手探りで考えることになる。その時間が、その後の学習で得た知識の定着を高めることになります。次の注意点は、子どもの言葉を頭から否定しないということ。子どもは大人が忘れてしまったような感覚を持っていて、大人が考えもしなかった側面から考えることもあるものです。大人になってしまった親からすれば、子どもの言葉が間違っていると思っても否定してはいけません。また、子どもの言葉に親が本当に驚かされることもあるでしょう。そういうときは否定せずに「そんなふうに考えるんだね」といったリアクションをしたり、素直に驚きを伝えたりしましょう。子どもからすれば、自分より言語能力が長けていると思っている親にちょっと先んじることができたという優越感を得ます。その優越感によって、子どもは言葉に対してよりポジティブにかかわっていくようになるのです。そして最後のアドバイスとしては、なにより親自身が子どもとのコミュニケーションを楽しむことが大切だということ。子どもは「教えてもらっている」と思うと受け身になってしまい、学びに対する積極性を失います。でも、親自身が楽しんでいれば、それは親が子に教えるという姿勢ではありませんよね。子どもも親の楽しむ姿勢に引っ張られてコミュニケーションを楽しむようになる。そうして、親子のコミュニケーションによって言葉を得る効果も高まるわけです。『本物の読解力をつけることばパズル 入門編』中島克治 著/小学館(2019)■ 麻布中学・高校国語科教諭・中島克治先生 インタビュー一覧第1回:子どもの「言葉の力」を伸ばすには?名門麻布の国語教師が説く“親の心得3か条”第2回:先取り学習はこんなに危険。「した子」の成績が「しなかった子」に抜かれるのはなぜ?(※近日公開)第3回:麻布中高の国語教師が断言。「絵本の読み聞かせ」の教育効果はやっぱり絶大だった!(※近日公開)第4回:我が子に“読書好き”になってほしいなら。ぜひ身につけさせたい「読み癖」とは(※近日公開)【プロフィール】中島克治(なかじま・かつじ)1962年生まれ、東京都出身。麻布中学・高校を経て東京大学文学部卒業。東京大学大学院博士課程修了。現在、私立麻布学園麻布中学・高校国語科教諭。『本物の読解力をつけることばパズル 初級編』(小学館)、『一生役立つ! 子どもの本当の読解力をグッと引き出す方法』(PHP研究所)、『1話5分! 12歳までに読みたい名作100』(新星出版社)、『小学生クロスワードBOOK 1・2・3年生』(星雲社)、『本物の国語力をつけることばパズル 中級編』(小学館)、『本物の国語力をつけることばパズル 入門編』(小学館)、『本物の国語力をつけることばパズル 初級編』(小学館)、『夏目漱石ほか文豪名著 書き写しノート』(朝日新聞出版)、『小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚』(小学館)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月24日ムスメちゃんとオコメちゃん
うちの家族、個性の塊です
夫婦・子育ていまむかし