2015年7月15日 19:00
「男らしさ」に縛られていないと男は弱くて無責任なのか? - 『フレンチアルプスで起きたこと』
と言われてしまうのではないか、という強迫観念が捨てられないから、男の自意識はやっかいなのである。
「男らしくない」ことを、自分で認められない(許せていない)せいで、自己肯定できないまま卑屈になったり、「どうせ女は強くてリードしてくれる男が好きなんだろ」とやっかんだりしてしまう。真綿で自分の首を絞めていく負の思考スパイラルに、男性は陥りがちなのだ。
そして、まさにそんな男性にこそ見てもらいたいのが、7月4日から公開中の映画『フレンチアルプスで起きたこと』である。
○「男らしくない自分」を受け入れられない父親の苦悩
この映画は、そこそこエグゼクティブな中流階級のスウェーデン人一家が、フレンチアルプスに5日間のスキー旅行にやってきたところから始まる。夫のトマスと妻のエバは、一見、友達のように対等で仲睦まじい理想の夫婦だ。
ところが2日目、スキー場が人工的に発生させた雪崩が、予想外に大きくなってしまいテラスを襲ったことから、家族に亀裂が走る。雪崩自体は事故未満のちょっとしたハプニング程度で済むのだが、このとき身の危険を感じたトマスは、とっさにエバと2人の子供を置いて、さっさとひとりだけ逃げてしまうのである。