くらし情報『「男らしさ」に縛られていないと男は弱くて無責任なのか? - 『フレンチアルプスで起きたこと』』

2015年7月15日 19:00

「男らしさ」に縛られていないと男は弱くて無責任なのか? - 『フレンチアルプスで起きたこと』

そのせいで残りの4日間、地獄のような気まずさと不和を味わう一家の様子を、この映画はシュールで残酷なコメディとして描く。

トマスは最初、妻子を置いて逃げた事実を、すっとぼけて「なかったこと」にしようとする。「ああ、君の解釈では、僕が逃げたってことになってるんだね。うん、そこは見解の違いだな、アハン?」みたいなクールな態度を気取り、やりすごそうとするのだ。それが、ますますエバの怒りを買って、関係をこじらせていく羽目になる。

おそらく彼は、嘘をついて妻を論破してやろうなどとは決して思っていない。誰よりもトマス自身が、「父親たるもの、いざというときは家族を命がけで守るものだ」という「男らしさ」を内面化し、自分に課していたのだろう。

だから、その「いざというとき」に、自分だけ助かろうと本能的に逃げてしまった「男らしくない俺」を、自分で受け入れ、許すことができないのである。


とはいえ、トマスが最初から潔く「ごめん、逃げちゃった!」と素直に謝っていればエバが許してくれたかというと、それも雲行きが怪しい。

彼女もまた、夫に対して無意識に「男らしさ」「父親らしさ」を期待していたのに裏切られたという被害者意識があるし、「私はその場にとどまって子供たちを守った"母親らしい"女である(あんたと違ってね!)」

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