2022年2月21日 12:23
【 『ファイトソング』感想6話】どんな人生でも持っていけるもの・ネタバレあり
感情までも繰り込んだ偽装恋愛は、さながらリアリティショーを再度フィクションに折りなおしてドラマにしたような、複雑な入れ子の箱を見ている気分になってくる。
遊園地のデートでも、耳の病気を抱えている花枝はジェットコースターには乗れない。
乗れない理由は明かさずに、春樹ひとりをジェットコースターに送り出し、自分は隣に座っている想像をしながら一人ベンチで待っている。
そんな花枝の切なさと、ひとりぼっちのジェットコースターで、恋人の不在をロールプレイングして感情を学ぶ春樹のときめきが交錯する。
「世界の無理解ってこういうことだって、思った」
さすがにミュージシャンである。春樹が自分の中に得た感情を矢継ぎ早に語る言葉は、豊かで艶やかだ。
だが、春樹のそんな感情の高まりに対して、花枝は引きずられるのを恐れるように半歩引く。
「ありがとうございます。いい、思い出を(頂きました)」
これは恋のまねごとだよと、それとなく知らせる言葉ですっと引いてしまうのである。
確かに一見、木皿花枝はタフなヒロインである。
体育会系で、努力によって自分が更なる高みに到達できると信じている。言い訳はしない。