【『大奥』感想 最終話】冨永愛と風間俊介 夫婦ならざる男女の死と「名君の世」の終焉
を次世代に継げるようになった今、ようやく自分も半分引き取ってやれるという心持ちだったのではないか。
その主君の愛に対し「私が信さまの政を見ていたかったからでございます」と、どこまでもそれは自分の欲であり責任であったと久通は涙とともに返す。
主従が互いに想いあう深い愛情が、胸が締め付けられるように切なかった。
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その吉宗の死をもって、ドラマ10『大奥』のシーズン1としての物語は一度幕を閉じる。
母である吉宗を失おうとするその時、家重(三浦透子)が泣きながら縋った「私をおいていかないでくださいませ」はドラマのみで描かれたセリフである。
全てにおいて優れた偉大な親を持ち、劣等感にさいなまれながら、それでも深い思慕をねじれるように抱いて生きている娘の悲痛な叫びだった。
伝染病と戦う国の舵取りは、家重と彼女を補佐する田沼意次(當真あみ)に引き継がれた。
そして、死の間際に現代と一瞬繋いだ「この国は滅びぬ」という吉宗の最後の言葉は、苦悩しながら模索し続ける為政者たちと、たくましく生きる民衆の力があれば、国は潰(つい)えないという確信なのだろう。
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そして同時に現代の私たちもまた、人口が減り続けていくこの国で諦めずに滅びぬ道を模索していくのだという、作り手がドラマに託した願いでもあると思う。