2021年9月13日 23:05
複雑な家庭環境で育ち介護職の資格を持つ作家・森美樹さん。「『母親病』では自分の経験が役立ちました」#2
家族=血縁関係にこだわらなくてもいい
――3話目の「花園」は園枝の視点の物語です。美しく生まれ育ち、エリートの男性と結婚して娘を授かり、理想的な家族を築いてきた園枝ですが、夫の介護をきっかけに夫婦関係が崩れ、自らの家庭像や母親像が内側から崩壊していきます。
森さん実は最初に書いた作品の主軸は恋愛で、園枝は満ち足りた人生を送っていた女性だったんです。でも、編集者さんから「読者が共感するような悲しさや葛藤のようなものがあったほうがいいのでは?」というご意見をいただき、旦那さんとの関係を違うものに変えました。
――理想的な夫婦の本来の姿が暴かれていく様子には、下世話な部分も含めて興味をそそられました。特に、夫の臨終間際のとある言動は衝撃的でした。
森さん恐らく、そのできごとがあったからこそ、園枝は良い意味でも悪い意味でも糸が切れて、それまでの自分から解放されたのだと思います。
――解放された園枝は、40歳も年下の雪仁とただならぬ関係になっていきます。
森さん60代の園枝と20代の雪仁との恋愛は突飛なのではないかと思い、雪仁の年齢を30代半ばにした作品も書いてみたんです。でも、しっくりこなかったので、結局、元の年齢に戻しました。