作家養成スクール東京作家大学(学長:内村 宏幸、所在地:東京都渋谷区)は、本年創立10周年を迎えました。東京作家大学は、日本放送作家協会が協会の顔として幅広い活動を行ってきた故・市川 森一、故・藤本 義一、両名の名前を冠し、創造性と才能を育むべく、未来の新しい才能の発掘を目指して2015年春に設立しました。開校以来、約100講座数、受講者数は延べ3,000人を超え、各界で活躍をする講師陣のもと、さまざまな講義やイベントを通じて、小説、脚本、映像、ドラマなど、あらゆるジャンルの才能を育んできました。これまでに数多くの受講生が公募コンクールで受賞をしたり、作家デビューするなど多方面で活躍しています。これからも、創造性を刺激し、新たな才能を発掘するための努力を続けてまいります。また、5月の開校に向けて総合コースの新規受講生の募集も行っているほか、今秋には、自宅から独自の番組をネットラジオで放送する「おうちラジオ開局講座(仮称)」、落語のイロハから落語台本の創作の仕方を学ぶ「落語作家養成講座(仮称)」、酒場の魅力やニッチな情報を発信するクリエイターの養成を目指した「酒場マイスター養成講座(仮称)」など、時代のニーズにあったユニークな講座の開設も予定しています。今後も東京作家大学のこれからの10年にご期待ください。東京作家大学 創立10周年【受講生が受賞したコンクール(過去10年間の実績、一部抜粋)】●アンデルセンのメルヘン賞●藤本義一文学賞●日経小説大賞●LINEマンガ大賞●伊豆文学賞●創作ラジオドラマ大賞●ジュニア冒険小説大賞●西の正倉院 みさと文学賞●北日本文学賞 など【東京作家大学】所在地:東京都渋谷区道玄坂2-16-8 ビジネスヴィップ渋谷・道玄坂坂本ビル4F■お問い合わせ・受講申込み東京作家大学電話: 03-5459-2552受付: 11:00~19:00(日祝休)URL : 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2024年04月30日写真と映像の可能性に挑戦する創造的精神を支援することを目的として2002年に始まった東京都写真美術館の『日本の新進作家』展。将来性のある作家を紹介してきた同展の記念すべき第20回目となる展覧会が、10月27日(金)から2024年1月21日(日)まで開催される。今回は「見るまえに跳べ」をテーマに、不確かな時代を生き抜くための原動力を探る。21 世紀に入ってから、2001年のアメリカ同時多発テロ、2011年の東日本大震災、2020年に本格化した新型コロナウイルスの世界的感染拡大、そして2022年から今に続くロシアによるウクライナ侵攻など、日常を揺るがす大きな出来事が起こるなか、不安や迷い、そして深い孤独を感じずにはいられない人々のこわばった心をどう解きほぐすことができるのか。そう問いかける同展は、自らも孤独と向き合い、生きるための原動力の在処を写真作品によって示そうとする5人の作家を紹介するものだ。動物や昆虫、植物、オブジェやフィギュア、図版などを組み合わせたイマジネーション豊かな写真で独特の世界観を生み出す作家うつゆみこ。2016 年より、上野界隈に集まる人々を正面からとらえた〈路上〉シリーズを継続的に発表してきた淵上裕太(ふちかみ ゆうた)。新宿や横浜、大阪市西成区など、その街に通い詰めることでしか出会えない人々を独特の距離感で写した写真が強い存在感を放つ星玄人(ほし はると)。世界各国を旅し、幅広い分野で活動を展開しながら、写真、映像、インスタレーション、空間体験等によって表現の可能性を模索するビジュアルアーティスト夢無子(むむこ)。そして、真摯な眼差しで被写体の命と向き合い続け、2022年に出版された初の写真集『Helix』(出版・皆川明[minä perhonen] )も話題を呼んだ山上新平(やまがみ しんぺい)。5人それぞれに独自の手法をもつが、いずれも人とのつながりをたぐり寄せようとする作品によって観る者のかたくなな心を溶かし、人生の豊かさとは何かを思い出させてくれる力をもつ作家たちだという。前向きに歩む気持ちが込められた展覧会タイトル「見るまえに跳べ」も印象深い。<開催情報>『見るまえに跳べ 日本の新進作家 vol. 20』会期:2023年10月27日(金)~2024年1月21日(日)会場:東京都写真美術館 3階展示室時間:10:00~18:00、木金は 20:00 まで(入館は閉館30分前まで)休館日:月曜(祝日の場合開館翌平日休)、12月29日(金)~1月1日(月・祝)料金:一般700円、大学560円、高中・65歳以上350円※1月2日(火)、3日(水)、21日(日)は無料公式サイト:
2023年10月19日2018年に『じっと手を見る』、2019年に『トリニティ』が直木賞候補となった窪美澄さん。今年の7月には、短編集『夜に星を放つ』で第167回直木賞を受賞されました。現在、56歳の窪美澄さんは、どのような生活を送りながら、日々、どんな想いで執筆に取り組まれているのでしょうか。インタビュー3回目の今回は、窪さんの日ごろの生活ぶりを中心にお話を伺いました。★前回:「読者の方から、『この主人公、大嫌いです』と言われたことが(笑)」#窪美澄さんインタビュー 2ワインを飲んでから夕食の準備をするのが楽しみの一つ――小説を書くには相当なエネルギーが必要なのではないかと思います。デビューされたころは息子さんの学費を稼ぐことが一つのモチベーションになっていたそうですが、息子さんが独立された今、何が執筆のエネルギーになっているのでしょうか?窪さん小説というのは、なかなか手強い相手なんですね。特に長編は、作品を書くたびに小説と勝負しているような感覚になるんです。勝負ですから「負かしてやる!」という気持ちで書いているのですが、私の場合、「うまく書けたなぁ」と思えることは稀なんです。これからも続いていくその勝負が、一つのモチベーションになっているように思います。――心身ともに健やかに小説を書き続けていくために、日々、心がけていることを教えてください。窪さん私は昼間に活動する派なんですね。朝7時くらいに起きて、午前中に掃除、洗濯、食材の買い物などをして、午後1時ごろから仕事を始めます。夕方の6時か7時ごろに仕事を終えたらスイッチをオフにして、洗濯物を畳んだり、晩ご飯の用意をしたりします。仕事を離れたら、小説のことは意識的に頭に入れないようにしているんです。――執筆にお忙しい中で、日ごろの楽しみはどんなことなのでしょうか?窪さん週に一度か二度、気分の良い日は、仕事を終えたらワインを飲みます。小さなワイングラスにワインを注いでクッと飲んでから、自分だけの晩ごはんを作るんです。それがささやかな楽しみですし、良い気分転換にもなっています。――ちなみに、お料理はどんなものを作るのでしょうか?窪さん和食が多く、肉か魚の主菜に野菜のおかずと味噌汁が基本です。といっても、凝った料理ではなくて、肉も魚も野菜も調理法は煮るか焼くか蒸すかのいずれかで、バリエーションはあまりないです(笑)。――健康のために運動はなさっているのでしょうか?窪さん基本的には週に3回、ジムのような場所に通っています。ただ、直木賞受賞後は忙しくて生活が不規則になっていまして……。早く自分のペースに戻したいなって思っています。疲れたら“だらだら部屋”でだらだらする――窪さんは44歳のときにデビュー作『ふがいない僕は空を見た』を出版されました。女性の心身が揺らぎやすい時期を小説家として駆け抜けてきていらっしゃいますが、不調を感じたことはあるのでしょうか?窪さん実は私、更年期の症状がほとんどなかったんですね。だから、「このまま更年期症状を体験しないまま終わるのかな」と思っていたんです。でも、直木賞の受賞が決まって帝国ホテルに向かい、舞台袖で受賞会見を待っているときに背中を尋常ではない量の汗が流れ、「もしかして、更年期症状かも」と思いました。――その後も同じような症状はあったのでしょうか?窪さんいえ、そのときだけだったんです。あれは更年期というよりも、直木賞を受賞したことで体がびっくりした反応なのかもしれないですね。――更年期の年代は、疲れやすい、気力が湧かないといった漠然とした不調のようなものも現れやすいといわれています。窪さんにもそうした不調はありますでしょうか?窪さんもちろん、あります。疲れやすいですし、集中もできないです。でも、そのことをあまりネガティブに捉えることはなくて、「56歳だから仕方がないな」って思うようにしています。――ちなみに、疲れたときにはどんな対処をするのでしょうか?窪さん疲れたときには休みます。うちには“だらだら部屋”という部屋があるんです(笑)。――どんなお部屋なのでしょうか?窪さん和室に本棚3つと無印良品の“人をダメにするソファ”を置いています。「この部屋ではだらだらしてもいい」と自分で決めているんですね。だから、疲れるとその部屋に行って、人をダメにするソファでゴロゴロしながら動画を観たり本を読んだりして、だらだら過ごすんです。――集中できないときにすることも決まっているのでしょうか?窪さん立ち上がって、洗面所に行って手を洗いますね。なぜか水に触れると、小説の新しいアイデアが浮かんでくることが多いんです。――健康面で気になっていることがありましたら、教えてください。窪さん体重が徐々に増えていることでしょうか。早めになんとかしたいなぁと思っています。3つの欲しいものは“健康、仕事、お金”――2019年の『トリニティ』の刊行時のインタビューの際に、窪さんは物語の内容にからめた質問で、3つの欲しいものを“健康、仕事、お金”と答えていらっしゃいます。今、欲しい3つのものは何でしょうか?窪さんやっぱり、健康は欲しいですよね。仕事も欲しいしお金も欲しいので、答えは変わっていないですね(笑)。――直木賞を受賞されたことで、仕事とお金に関してはかなり万全の状態のように思えるのですが……。窪さんいえいえ、そんなことはないんです。ずっと危機感を持っていますし、「この先、小説が書けなくなったら、どうやって食べていけばいいのだろう」、「清掃のお仕事、いつからやることになるのかな」ってふと考えるときがあります。おそらく、今の小説家はみんな将来への不安を抱えていると思います。――たくさんのお話をお聞かせくださり、ありがとうございます。ウーマンカレンダーの読者に向けて、最後に改めて『夜に星を放つ』に関するメッセージをお願いします。窪さんこの世代の女性は、子育て中だったり、介護が始まろうとしていたりと、人生で一番忙しい時期を過ごしていると思うんです。それに、家族のことや人間関係で悩んでいる方も少なくないですよね。『夜に星を放つ』は、そうしたときの気分転換に読んでいただけたらうれしいです。寝る前などに一編ずつでも読んでいただければ、ふと心が穏やかになる瞬間が訪れるかもしれないですから。<窪美澄さんプロフィール>1965年東京都生まれ。2009年「ミクマリ」で女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞。受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10第1位、2011年本屋大賞第2位に選ばれる。同年、同書で山本周五郎賞を受賞。2012年『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞、2019年『トリニティ』で織田作之助賞を受賞。その他に『さよなら、ニルヴァーナ』、『よるのふくらみ』、『やめるときも、すこやかなるときも』、『じっと手を見る』、『私は女になりたい』、『朔が満ちる』など著書多数。<著書>『夜に星を放つ』窪美澄著/文藝春秋1400円+税著者/熊谷 あづさライター。1971年宮城県生まれ。埼玉大学教育学部卒業後、会社員を経てライターに転身。週刊誌や月刊誌、健康誌を中心に医療・健康、食、本、人物インタビューなどの取材・執筆を手がける。著書に『ニャン生訓』(集英社インターナショナル)。
2022年10月02日2018年に『じっと手を見る』、2019年に『トリニティ』が直木賞候補となった窪美澄さん。今年の7月には、短編集『夜に星を放つ』で第167回直木賞を受賞されました。現在、56歳の窪美澄さんは、どのような生活を送りながら、日々、どんな想いで執筆に取り組まれているのでしょうか。インタビュー2回目の今回は、『夜に星を放つ』の収録作の執筆エピソードなどを伺いました。★前回:56歳のシンママが築き上げた世界観がすごい!直木賞受賞の報告LINEは息子にするも未読… #窪美澄さん 1「湿りの海」は読者の賛否が分かれる作品――4編目に収録されている「湿りの海」の主人公は、離婚した妻子への想いを断ち切れない37歳のバツイチの男性で、アマチュアの天文学者でもある画家が月の表面を描いた絵画“湿りの海”がモチーフとなっています。窪さん他の媒体で絵をテーマにしている連載があり、その執筆過程で“湿りの海”の絵を知りました。ただ、その連載では使えないなと思い、別の機会に取っておいたんです。今回の作品のご依頼を受けたときに、“湿りの海”の絵を使ってみようと思いました。――絵をきっかけに、どのように物語が立ち上がっていったのでしょうか。窪さん“湿りの海”の絵から、距離感を持って断絶されている人、というイメージが浮かんできたように思います。そこからさらに、月ほど遠いところにいる人たちに見捨てられてしまった男、という具体的な人物像が生まれていきました。――「湿りの海」は、読み進めるうちに、主人公の孤独感のようなものが胸に迫ってくる作品でした。窪さんありがとうございます。私自身、この小説は『夜に星を放つ』の5編の中で一番好きな作品で、ひとりの男性がどうにもならない距離感のようなものを抱えてあぜんとしている様子を描けてよかったなと思っているんです。でも、読者の方との交流会では、若い女性の読者さんから「この主人公、大嫌いです」と言われました(笑)。――なぜ、嫌われてしまうのでしょうか?窪さん先日、取材にいらした女子大生の方は彼のことを、バツイチの上に隣りの奥さんにもちょっかいを出す軽い男と捉えていたようです。主人公をイヤな男性に描いたつもりはないのですが、でも、「この人、嫌い」というのも読者の方の正常な反応ですから。特に若い世代の女性の方は、お付き合いをする対象と考えたときに主人公のような男性はあり得ない、ということなのかもしれないですね。窪さんの実体験から物語が立ち上がっていった――5編目の「星の随に」は、父親の再婚相手との関係に悩む小学生の男の子と高齢の女性との交流を描いた作品です。窪さんこの小説は私の実体験がモデルになっているんです。すでに新型コロナの流行が始まっていたころ、当時、住んでいたマンションのエントランスで小学生の男の子が泣いていたんですね。そのエントランスでは子どもが遊んでいることが多いので、初めは友だちと喧嘩でもしたのだろうと思っていたんです。でも、尋常ではない泣き方でしたし、彼はひとりだったんですね。どうしようかと迷ったのですが、思い切って声をかけてみたんです。そしたら、お父さんに叱られて部屋を出るように言われた、と言うんです。「どうして叱られたの?」と尋ねると「僕が騒ぐと赤ちゃんが泣いちゃうから」って、しゃくりあげて涙を流すんです。ずっとエントランスにいるわけにもいきませんし、「おばちゃんが一緒に行って謝ってあげるから、お部屋に戻ったほうがいいよ」って言ったんです。すると、彼は「僕のお母さんは隣りの駅に住んでるんだけど、なかなか会えないんだ」って、少しだけ身の上話を打ち明けてくれたんです。その話を聞いて、なるほどと思いました。この男の子の家は離婚家庭で、お父さんが再婚して新しいお母さんがいて、赤ちゃんが生まれて、でもなんとなく、家族がうまくいっていない。そんな気がしたんです。――窪さんは実際に男の子を部屋まで連れて行ったのでしょうか?窪さん玄関先でお父さんにお子さんをお渡ししました。とても若いお父さんで、リモートワーク中だったのか、非常に疲れている様子でした。その男の子とはそれきりなのですが、自分のしたことはあれでよかったのだろうかという想いがずっと頭の中にあり、なかなか決着がつかなかったんです。そうした想いがこの作品の始まりです。――小説の中には、小学生の男の子・想くんと交流をする高齢女性・佐喜子さんが「つらい思いをするのはいつも子どもだけれどもね。それでも、生きていれば、きっといいことがある」と語りかける場面があります。佐喜子さんの言葉には、窪さんの想いがにじみ出ているようにも感じられます。窪さん実はその後、男の子のお父さんを見かけたことがあるのですが、やっぱり疲れている様子だったんです。コロナ禍によって大人が余裕を奪われてしまい、そのしわ寄せが子どもにいっているように感じています。『夜に星を放つ』は穏やかな一冊――改めて振り返ってみると、『夜に星を放つ』はどのような一冊に仕上がったと捉えていらっしゃるのでしょうか?窪さん私のこれまでの本と比べると、穏やかな一冊に仕上がったように思います。というのも、収録されている作品を執筆している時期に、割と重めの連載を抱えていたんですね。だから、この本の短編に関しては穏やかなものを書こうと心に決めていたんです。――受賞時のインタビューで「短編を書くのに苦労している」という主旨のことをおっしゃっています。例えば、どのようなご苦労があるのでしょうか?窪さん短編は短い作品なので、簡単に書けると思われがちなんですね。でも実際は、長編と同じくらい気をつかうんです。短編は400字詰め原稿用紙で50枚~60枚程度のボリュームなのですが、この中で物語を始めて終わらせるというのは、難しい点の一つです。それに、枚数に制限があるので、登場人物の心理や生活ぶりなどを詳細に書き込むことができないんですね。どこまで情報をそぎ落としていくか、というのも難しい点です。――年表のようなものを作ったりもするのでしょうか?窪さん短編の場合は、年表を作ることはないですね。でも、登場人物に関しては、どのあたりの世代の人なのか、どこに住んでいるのか、普段何を食べているのか、といったことついては一応、設定をしています。――一つの短編を書き上げるまでにどれくらいの時間がかかっているのでしょうか?窪さん原稿に取りかかると5日くらいで書き上げるのですが、その前に下書きを書いたり、プロットのようなものを立てたりもしますから。3週間から4週間くらいはかかっているように思います。<窪美澄さんプロフィール>1965年東京都生まれ。2009年「ミクマリ」で女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞。受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10第1位、2011年本屋大賞第2位に選ばれる。同年、同書で山本周五郎賞を受賞。2012年『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞、2019年『トリニティ』で織田作之助賞を受賞。その他に『さよなら、ニルヴァーナ』、『よるのふくらみ』、『やめるときも、すこやかなるときも』、『じっと手を見る』、『私は女になりたい』、『朔が満ちる』など著書多数。<著書>『夜に星を放つ』窪美澄著/文藝春秋1400円+税著者/熊谷 あづさライター。1971年宮城県生まれ。埼玉大学教育学部卒業後、会社員を経てライターに転身。週刊誌や月刊誌、健康誌を中心に医療・健康、食、本、人物インタビューなどの取材・執筆を手がける。著書に『ニャン生訓』(集英社インターナショナル)。
2022年09月28日2018年に『じっと手を見る』、2019年に『トリニティ』が直木賞候補となった窪美澄さん。今年の7月には、短編集『夜に星を放つ』で第167回直木賞を受賞されました。現在、56歳の窪美澄さんは、どのような生活を送りながら、日々、どんな想いで執筆に取り組まれているのでしょうか。インタビュー1回目の今回は、『夜に星を放つ』の収録作品の成り立ちなどを中心にお話を伺いました。受賞後の1カ月間は目の回るような忙しさ――直木賞のご受賞、おめでとうございます。窪さんありがとうございます。――受賞会見では「まだ実感がない」ということをおっしゃっていましたが、改めて今のお気持ちをお聞かせください。窪さん受賞会見から賞の贈呈式まで1カ月ほどあったのですが、時間がピュンと飛んでいるような感覚でした。ありがたいことに、いろいろな媒体さんから取材のご依頼をいただいたりもしていまして、たくさんのことをこなしている間にあっという間に時間がたったという感じです。ですから正直なところ、いまだに「直木賞をいただいた」という実感が湧かないんです。――シングルマザーとして育て、独立なさった息子さんは、受賞に際してどのような反応をされていたのでしょうか?窪さん受賞が決まったときに息子にLINEでメッセージを入れたのですが、仕事の都合でずっと未読だったんです。夜になって再度、「直木賞をいただいたんだけど」とメッセージを送ったら、「えっ!?」という返事が3回ほど続きました。その後、「今、アドレナリンが出まくってすごいんじゃないの?」とメッセージが来たのですが、そんなことはなくて、私自身はすごく冷静だったんですね。息子も受賞を喜んでくれましたし、先日の贈呈式にも来てくれてうれしかったです。コロナ禍での経験が作品に生かされている――受賞作『真夜中に星を放つ』には5編の短編が収録されています。1編目の「真夜中のアボカド」の主人公は、コロナ禍にマッチングアプリで出会った恋人がいる女性です。窪さん私の年下世代の友人たちが、コロナ禍でマッチングアプリにハマり始めたんです。当時、コロナは今よりもずっと怖い存在でしたし、「この状況でマッチングアプリってどうなの?」って疑問に感じてもいました。でも、あるとき、ふと「コロナ禍でも人と触れ合いたい、人のぬくもりが欲しいと思うのも当然かもしれない」と思ったんですね。それ以来、マッチングアプリに肯定的になって友人たちの様子を見守っていたんです。「真夜中のアボカド」は、そうした中で思いついたお話です。――タイトルの“真夜中”にはどんな意味があるのでしょうか?窪さん少し前までは新型コロナに対して、今以上に緊張感がありましたよね。ソーシャルディスタンスに神経質になったりなど、緊張しながら仕事や生活をする中で、私自身、真夜中にちょっとだけ解放されるような感覚があったんです。そこから“真夜中”という言葉が出てきたように思います。――物語は、主人公が育てるアボカドの成長とともに進んでいきます。窪さん実際に、私がアボカドを育てているんです。小説家というのは非常に孤独に強い職業ですし、私自身もひとりでいるのは割と平気なほうなんです。ただ、さすがにコロナ禍が長引くにつれて物寂しい気持ちになったんですね。とはいえ、猫などの動物を飼うのは重く感じられて、植物を育てたいなって思ったんです。私はよく、朝食でアボカドを食べているので、その種を育ててみることにしました。――物語の中では、種から根が生えるなどアボカドの変化がつづられています。窪さんアボカドの種から根っこが出てきたり、双葉が生える様子を見ていると植物と共存しているような気持ちになりました。かなりゆっくりなペースではあるのですが、気付くと大きくなっていて、今は50㎝くらいの高さにまで成長しています。“星”というテーマを自分の中で決めた作品――2編目の「銀紙色のアンタレス」は16歳の少年が主人公で、夏の終わりの寂しさや青春のはかなさがじんわりと伝わってきます。この物語は小説誌『オール讀物』2015年8月号の掲載と、少し前に書かれた作品です。窪さん『オール讀物』の1000号記念の号に掲載される作品のご依頼がありまして、発売時期が夏だったんですね。そこで、夏にまつわる少年の話を書こうと思ったんです。私が今まで書いてきたような性的な内容は一切省いて、ごく普通の夏の少年を書こう、と思いました。――“アンタレス”は夏の星の名前です。窪さん夏を代表するアイテムに何があるだろうと考える中で、夏の大三角などのアイデアが出てきまして、星をモチーフにすることにしました。それ以来、「『オール讀物』さんからご依頼をいただいた原稿には、全部、星を絡めて書こう」と自分の中で決めたんです。――少年が夏休みを一緒に過ごす“ばあちゃん”との場面には、思わず懐かしさを覚えてしまいます。窪さん私自身、おばあちゃんに育てられたようなところがありますし、すごくおばあちゃん子なんですね。だから、私の作品にはよくおばあちゃんが登場しますし、おばあちゃんのことは悪く書かないという傾向があるような気がしています。――3編目の「真珠星スピカ」は、いじめに遭う少女と亡くなった母親との不思議な同居生活を描いたお話です。窪さん中学生の女の子を主人公にしようと考えたときに、いじめのことは書いておきたいと思ったんです。でも、生々しいいじめのシーンを描くのではなく、ファンタジーにくるんだ形で書きたかったんですね。そこで、お母さんの幽霊を登場させることにしました。――中学生の女の子たちが「こっくりさん」をする場面にも、ある種の懐かしさを感じます。窪さんこの作品が掲載されたのは『オール讀物』の怪奇特集の号なんです。当時、たまたまこっくりさんに関する本を読んでいたこともあり、小説に取り入れることにしました。こっくりさんは私が十代のころに流行りましたが、今でも興味深いんですよね。<窪美澄さんプロフィール>1965年東京都生まれ。2009年「ミクマリ」で女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞。受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10第1位、2011年本屋大賞第2位に選ばれる。同年、同書で山本周五郎賞を受賞。2012年『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞、2019年『トリニティ』で織田作之助賞を受賞。その他に『さよなら、ニルヴァーナ』、『よるのふくらみ』、『やめるときも、すこやかなるときも』、『じっと手を見る』、『私は女になりたい』、『朔が満ちる』など著書多数。<著書>『夜に星を放つ』窪美澄著/文藝春秋1400円+税著者/熊谷 あづさライター。1971年宮城県生まれ。埼玉大学教育学部卒業後、会社員を経てライターに転身。週刊誌や月刊誌、健康誌を中心に医療・健康、食、本、人物インタビューなどの取材・執筆を手がける。著書に『ニャン生訓』(集英社インターナショナル)。
2022年09月25日サンライズパブリッシング株式会社(所在地:東京都渋谷区、代表取締役:西潟 洸徳、以下 サンライズパブリッシング)のプロデューサー・水野 俊哉の最新刊『富豪作家 貧乏作家 ビジネス書作家にお金が集まる仕組み』を、2022年7月30日に秀和システムより発売いたしました。富豪作家 貧乏作家 ビジネス書作家にお金が集まる仕組み「ビジネス書の著者になれば、本業のブランディングや集客に役立つ!」「出版は最高の自己投資になる!」確かに、それは事実です。でも、その一方でヒット率0.001%という厳しい世界なのも、出版業界の現実。本を出しさえすれば、誰でも成功できるわけではありません。実際には、出版をきっかけに富豪になった人がいる一方で、本を出しても上手にビジネスに結びつけられず貧乏なままの人もいます。【富豪作家とは】・締め切りなのに南の島でバカンス中。・自分専用の編集者、ライターがいる。・投資やビジネスで数千万円から数億円の売上がある。・本業で儲かっているから印税は別にいらない。・普段の足はテスラ、カイエン、マカン、ゲレンデなどの高級車。・本を書いたらさらに本業の収入が上がった。【貧乏作家とは】・締め切りに遅れがち。・担当編集者に頭が上がらない。・収入は良い時で平均的なサラリーマンくらい。・本を書くためにアルバイトなど他の仕事を掛け持ち中。・常に自転車か徒歩で移動。・夢はいつかはベストセラー作家に。あなたはどちらを目指しますか?13年間、作家・プロデューサーとしてビジネス書業界で活躍してきた著者が、富豪作家になる方法を教えます。▼目次富豪作家 貧乏作家 ビジネス書作家にお金が集まる仕組み 概要第1章 富豪作家、貧乏作家とは?第2章 富豪作家は○○である第3章 出版で人生が変わっちゃった人・水野俊哉の「富豪作家への道」第4章 富豪作家の秘密、教えます第5章 現代の富豪作家列伝▼水野俊哉 出版記念ウェビナー概要本書の出版を記念して以下日時にウェビナーイベントを開催します。水野 俊哉本人が富豪作家の秘密について、書籍には書けなかったこともお話しします。・開催日時(1)8月28日(日) 15:00~17:00(2)9月7日(水) 17:00~19:00・お申し込みフォーム ・お問い合わせMAIL: sunrise.pub.office@gmail.com 水野 俊哉出版記念ウェビナー▼水野俊哉(みずの・としや)プロフィール水野 俊哉1973年生まれ。作家、出版プロデューサー、経営コンサルタント、富裕層専門コンサルタント。複数の会社に出資するエンジェル投資家でもある。ベンチャー起業家、経営コンサルタントとして数多くのベンチャー企業経営に関わりながら、世界中の成功本やビジネス書を読破。近年は富裕層の思考法やライフスタイル、成功法則を広めるべく執筆活動をしている。現在は自ら立ち上げた出版社でクリニック経営者、オーナー経営者、不動産投資家などの出版及びプロモーションのアドバイスなどを行っており、その活動は「出版ブランディング×Web」のクロスメディア「パブリア」に詳しい。著書は、シリーズ10万部突破のベストセラーとなった『成功本50冊「勝ち抜け」案内』(光文社)の他、『今すぐ本を出しなさい ビジネスを成長させる出版入門』『ベストセラーの値段 お金を払って出版する経営者たち』(秀和システム)など多数。●「出版ブランディング×Web」のクロスメディア パブリア ▼『富豪作家 貧乏作家 ビジネス書作家にお金が集まる仕組み』概要発行 :秀和システム著者 :水野 俊哉発売日:2022年7月30日仕様 :四六版 280ページISBN :9784798067209価格 :本体1,650円(税込)Amazon : 楽天ブックス: ▼サンライズパブリッシング 会社概要会社名 : サンライズパブリッシング株式会社代表者 : 代表取締役 西潟 洸徳所在地 : 東京都渋谷区道玄坂1-12-1 渋谷マークシティW22階URL : 事業内容: 富裕層向けコンサルティング、出版事業、文化人タレントプロデュース、各種WEBサイト運営 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年08月16日嫌悪感すら抱いていた母親が突然、死んだ。40歳の珠美子は母親・園枝の死の謎を追うなかで、仲睦まじかったはずの両親の秘密や園枝と親密な関係の25歳の青年の存在を知っていく。母親として妻として、完璧な役割を果たしてきたはずの園枝が人生の最後に望んだものとは――。現代を生きる女性たちの孤独と光を描いた『主婦病』で多くの読者の心をつかんだ森美樹さんは、最新刊『母親病』で家族や母親のあり方に真正面から斬り込んでいます。インタビュー3回目は、母親病』の執筆秘話のほかに更年期の過ごし方についてもお聞きしました。★前回:複雑な家庭環境で育ち介護職の資格を持つ作家・森美樹さん。「『母親病』では自分の経験が役立ちました」#2『母親病』はハッピーエンドの物語であって欲しい――4話目の「家族の絆」は『母親病』の総まとめ的な位置づけです。この作品は雪仁の視点で物語が進んでいきます。森さん実は、当初は珠美子の視点の物語で終える予定だったんです。でも、1話目の「やわらかい棘」も珠美子視点でしたし、編集者さんからちょっとひねりを加えたほうがいいのではないかというアドバイスをいただき、丸っきり新しい作品を書きました。――園枝の死の裏側にあったものを知ることで、珠美子と雪仁は血縁にこだわらない家族の形に気付いたのだと感じました。森さん珠美子にしてみれば、自分が思っていた母親像が崩れることで初めて園枝の人間らしい一面を知ることができました。それは珠美子にとって良いことのような気がしています。――衝撃的なできごとが次々と起こる『母親病』ですが、ハッピーエンドの物語だったということでしょうか。森さんはい。そうあって欲しいと願っています。コロナ禍によって意識が変わり作品にも影響を与えた――『母親病』の完成までには、どれくらいの時間がかかっているのでしょうか?森さん編集者さんから「うそ偽りのない大人の恋愛小説を読ませていただきたい」とお話をいただき、企画がスタートしたのが3年ほど前です。当初は恋愛がメインの連作集にする予定でした。でも、その間に私の意識が変わったこともあり、血縁から逃れた家族の形というテーマに軸足が移ったような感覚です。――昨今のコロナ禍も森さんの意識に影響を与えたのでしょうか?森さん自分にとって本当に大切なものはなんなのかを考えてみたりとか、コロナ禍で明らかに意識が変わりましたね。――森さんにとっての、本当に大切なものとは?森さん母や夫を含め、今の家族です。それから、外出の機会が減って本当に大切な友だちとだけ連絡を取り合うようになり、良い意味で縁が減ってきたんですね。ですから、今ここにあるご縁を大切にしようとも思いました。――『ウーマンカレンダー』の読者世代には、『母親病』をどんなふうに読んでもらいたいと思っているのでしょうか?森さんどの年代にも大変さはあると思うのですが、私自身、女性の40代から50代というのは一番、体の変化が激しくて、かつ無理をしがちな年代だと実感しています。『母親病』を通して、子どもやご主人や親御さんよりも、まずは自分のことを大事にするという意識を持っていただければと思っています。更年期の年代は自分自身をいたわることが大切――森さん自身は、具体的にどんな体の変化を感じているのでしょうか?森さん年齢的に更年期に差しかかってきたこともあり、同世代の友だちと会うと「最近、やたらと暑いね」など、自分の不調の話になることが多いんです。でも、「暑いな」と感じても、「今、夏だから暑いんじゃない?」って思ってみたりとか。自分自身がちょっとラクになるような逃げ道を作ってあげるようにしています。――更年期の年代に、心身ともに元気に過ごすために心がけていることを教えてください。森さんヨガとピラティスは週に2回、続けています。あとは寝ることですね。ちょっと疲れを感じたら、寝るのが一番です。――ちなみに、疲れて眠って翌朝、寝坊してしまうこともありますか?森さんもちろん、あります。私には子どもがいないので、朝寝坊をしてもさほど支障はないのですが、世の中には寝坊をした自分に落ち込んでしまう女性もいらっしゃると思います。でも、そんな自分を許してあげて欲しいですね。少し前に“ポテサラ論争(総菜コーナーで子ども連れの女性が高齢男性から「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と言われたことをきっかけに、インターネットやSNS上で巻き起こった論争)”がありましたが、ポテトサラダを買ってもいいと思うんです。自分をいたわるためにも、手を抜けるところはじょうずに抜くことは大切だと思います。――最後に、今後の目標を教えてください。森さん自分の作品に対する感想はいろいろと見たり聞いたりしていまして、割と賛否が多いんですね。「気持ち悪い」「グロい」「生々しい」といった感想に落ち込んで、書くジャンルを変えようと思ったこともあるくらいです。でも、私の作風を好いてくださる読者の方もいらっしゃいますから。これからも貫いて書き続けていきたいと思っています。●プロフィール森美樹(50歳)1970年埼玉県生まれ。1995年、少女小説家としてデビュー。その後、5年間の休筆期間を経て、2013年「朝凪」(「まばたきがスイッチ」と改題)で、女による女のためのR-18文学賞を受賞。主な著書に受賞作を収録した『主婦病』、『私の裸』など、参加アンソロジーに『黒い結婚 白い結婚』がある。『母親病』森美樹著新潮社1850円(税別)★関連記事:肺腺がんを告白。青木さやかさんインタビュー#1「私自身は元気ですし、がんと言われることが不思議でした」★関連記事:2人の母を持つ女性作家・森美樹さんが最新刊『母親病』を語る。「私には実母と継母がいるんです」#1著者/熊谷 あづさライター。1971年宮城県生まれ。埼玉大学教育学部卒業後、会社員を経てライターに転身。週刊誌や月刊誌、健康誌を中心に医療・健康、食、本、人物インタビューなどの取材・執筆を手がける。著書に『ニャン生訓』(集英社インターナショナル)。
2021年09月17日嫌悪感すら抱いていた母親が突然、死んだ。40歳の珠美子は母親・園枝の死の謎を追うなかで、仲睦まじかったはずの両親の秘密や園枝と親密な関係の25歳の青年の存在を知っていく。母親として妻として、完璧な役割を果たしてきたはずの園枝が人生の最後に望んだものとは――。現代を生きる女性たちの孤独と光を描いた『主婦病』で多くの読者の心をつかんだ森美樹さんは、最新刊『母親病』で家族や母親のあり方に真正面から斬り込んでいます。インタビュー2回目は、ご自身の経験を踏まえて『母親病』に込めた想いなどをお聞きしました。★前回:2人の母を持つ女性作家・森美樹さんが最新刊『母親病』を語る。「私には実母と継母がいるんです」#1“介護職員初任者研修”の資格が執筆に役立った――2話目の「砂の日々」は、脳溢血の後遺症から半身不随となり認知症も患った園枝の夫と、園枝自身も世話になっていた訪問ヘルパーの平沼光世の視点で物語が進んでいきます。森さん家族ではなく第三者から見た園枝像を書きたかったんです。光世には中学生の娘がいるので、同じ娘を持つ母親として園枝とは対比的に描きたいとも思いました。――白黒のボーダーの服はお葬式を連想させるので避ける、使い捨て手袋をはじめ私物はすべて介護先から持ち帰るなど、介護にまつわる細部の描写がとてもリアルでした。森さん実は私、介護の資格を持っているんです。――どんな資格をお持ちなんですか?森さん今は資格名が変わって「介護職員初任者研修」になったのですが、私が取得した時は「ホームヘルパー2級」でした。――もともと介護に興味があったのでしょうか?森さんそれが、違うんです。10年以上前に失業していた時期があり、そのときに職業訓練校で無料で勉強ができることになりまして。パソコンに関する勉強をするつもりだったのですが、「パソコンの技術は自分でお金を払って勉強するかもしれない」と思い直したんですね。無料で勉強できるならまったく興味がない分野のことに取り組んでみようと思い、ホームヘルパー2級の勉強をしました。そのときの知識と経験がこの作品で役立ちました。空回りする登場人物に感情移入してしまう――光世は訪問ヘルパーという仕事柄なのか、良くも悪くも周囲の人間のことをよく見ている人だと感じました。森さん自分以外の人間に興味がある、光世みたいなタイプの人は世の中に意外といると思うんです。私自身、登場人物の中で一番、感情移入してしまうのは光世なんですよね。――光世のどんなところに感情移入するのでしょうか?森さん空虚な感じというか、空回っているようなところですね。「あ、わかるな」って思いつつも、かわいそうになってしまうんです。――森さん自身にも空回り感のようなものがあるのでしょうか?森さんこれは性分だと思うのですが、いろいろなことを想像しすぎて自分の首を絞めてしまうんですよね。例えば、メールの返事が来なかったりすると「嫌われているんじゃないか」と不安になったりとか。結局、嫌われていないということがわかるのですが、それまでの間にあれこれ考え過ぎて疲れてしまうんです。――「砂の日々」では、園枝の死因となるドクウツギと光世が関わる場面も登場します。森さん園枝が不審死を遂げたことで、現場では警察による捜査がおこなわれました。園枝の死を謎めいたものにするためには、光世とドクウツギの関係性を警察に気付かれないようにしなければなりません。そのための方法は編集者さんとかなり相談を重ねて考えました。ほかにも警察が登場する場面があるのですが、警察に関する情報というのは調べるのにも限界があるんですね。編集者さんにもいろいろと調べていただきましたし、足りない情報を補足するために最近の推理小説を読んだりもしました。作品に警察を登場させることの大変さを痛感しました。家族=血縁関係にこだわらなくてもいい――3話目の「花園」は園枝の視点の物語です。美しく生まれ育ち、エリートの男性と結婚して娘を授かり、理想的な家族を築いてきた園枝ですが、夫の介護をきっかけに夫婦関係が崩れ、自らの家庭像や母親像が内側から崩壊していきます。森さん実は最初に書いた作品の主軸は恋愛で、園枝は満ち足りた人生を送っていた女性だったんです。でも、編集者さんから「読者が共感するような悲しさや葛藤のようなものがあったほうがいいのでは?」というご意見をいただき、旦那さんとの関係を違うものに変えました。――理想的な夫婦の本来の姿が暴かれていく様子には、下世話な部分も含めて興味をそそられました。特に、夫の臨終間際のとある言動は衝撃的でした。森さん恐らく、そのできごとがあったからこそ、園枝は良い意味でも悪い意味でも糸が切れて、それまでの自分から解放されたのだと思います。――解放された園枝は、40歳も年下の雪仁とただならぬ関係になっていきます。森さん60代の園枝と20代の雪仁との恋愛は突飛なのではないかと思い、雪仁の年齢を30代半ばにした作品も書いてみたんです。でも、しっくりこなかったので、結局、元の年齢に戻しました。私は「花園」が『母親病』のメインだと思っているんです。――どのような部分をメインとお考えなのでしょうか?森さん家族というテーマでこの作品を見たときの、“家族”の捉え方です。私自身、家族=血縁関係という考え方にこだわらなくてもいいんじゃないかなと思っているんです。最終的に自分が好きな相手を選んで残りの人生を考えてもいい。今後、そういった関係の“家族”が増えてくるのではないかとも思っています。次回は更年期に差しかかっているという森さんの現在の想いや体調などについてうかがいます。●プロフィール森美樹(50歳)1970年埼玉県生まれ。1995年、少女小説家としてデビュー。その後、5年間の休筆期間を経て、2013年「朝凪」(「まばたきがスイッチ」と改題)で、女による女のためのR-18文学賞を受賞。主な著書に受賞作を収録した『主婦病』、『私の裸』など、参加アンソロジーに『黒い結婚 白い結婚』がある。『母親病』森美樹著新潮社1850円(税別)★関連記事:肺腺がんを告白。青木さやかさんインタビュー#1「私自身は元気ですし、がんと言われることが不思議でした」★関連記事:がんをきっかけに自分を見直した。青木さやかさんインタビュー#2「でもという言葉は使わなくなりました」★関連記事:パニック症や老化を告白。青木さやかさんインタビュー#3「明らかに30代後半よりも48歳の今のほうが元気です」著者/熊谷 あづさライター。1971年宮城県生まれ。埼玉大学教育学部卒業後、会社員を経てライターに転身。週刊誌や月刊誌、健康誌を中心に医療・健康、食、本、人物インタビューなどの取材・執筆を手がける。著書に『ニャン生訓』(集英社インターナショナル)。
2021年09月13日嫌悪感すら抱いていた母親が突然、死んだ。40歳の珠美子は母親・園枝の死の謎を追うなかで、仲睦まじかったはずの両親の秘密や園枝と親密な関係の25歳の青年の存在を知っていく。母親として妻として、完璧な役割を果たしてきたはずの園枝が人生の最後に望んだものとは――。現代を生きる女性たちの孤独と光を描いた『主婦病』で多くの読者の心をつかんだ森美樹さんは、最新刊『母親病』で家族や母親のあり方に真正面から斬り込んでいます。インタビュー1回目は、ご自身の複雑な家庭環境を含めた『母親病』の成り立ちについてお聞きしました。母親の見舞いをきっかけに物語のテーマが生まれた――最新刊の『母親病』は4つの作品からなる連作集です。1話目の「やわらかい棘」は、食品会社勤務の40歳の珠美子が不倫相手と過ごしている最中に、66歳の母親・園枝の訃報を知るところから始まります。園枝の死因は自殺なのか他殺なのか、胃の内容物に含まれていた有毒植物のドクウツギは園枝が自ら食したのか、彼女の死に動揺する25歳の雪仁と園枝は一体どんな関係なのか。1つの家族の崩壊と再生の物語でもあり、いくつもの謎が生じるミステリータッチの作品であるとも感じました。森さんこの作品を書く前に、私の母が股関節の手術をして入院していたことがあったんです。母は6人部屋に入院しており、私と姉は頻繁にお見舞いに行っていたんですね。同じようにご家族が病院にいらっしゃる方もいれば、誰もお見舞いに来られない方もいて、たった6人の小さなコミュニティの中でもいろいろな家族像があることを実感しました。そのときに生まれた感覚や想いが「やわらかい棘」の執筆につながりました。私は2013年に「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞してデビューしたのですが、受賞時のインタビューで「ミステリーを書いてみたい」と発言したんです。ミステリーの執筆にはずっと憧れがあり、今回、ほんのさわり程度なのですが挑戦してみました。物語のきっかけの1つは自身の複雑な家庭――「やわらかい棘」は、園枝の娘の珠美子の視点でお話が進んでいきます。森さん私は女姉妹で育ち、父は亡くなっていて母と娘だけの家族なんです。母とは女対女として言い合いになったこともありますし、息子と母親よりも、娘と母親のほうがドラマになりやすいかもしれないと思いました。――ちなみに、言い合いになることもあるというお母様とはどんな関係なのでしょうか。森さん実母は私が10歳のときに亡くなっているんです。今の母は実母が他界した1年後に父が再婚した相手なので、ちょっと複雑なところはあるかもしれないですね。――物語の中の園枝は、仕事に励む珠美子を「女は、旦那様に一生愛されるのが幸せなのよ」と誇らしげに諭し、「女であること以外の仕事なんて」と娘の生き方をうっすらと笑いながら否定する、いわゆる“毒親”ですよね。森さんそうです。園枝は美人ですし、男の人が抗えないような雰囲気のある女性です。もし私と同世代だったら、友だちにはなりたくないタイプですね。その娘の珠美子は母親に対するコンプレックスを跳ね返すような形で、今風の合理的な生き方をしているように思います。不倫はしていますが相手に貢ぐようなことはないですし、堅い会社に勤めて生活の基盤もしっかりしていますから。母となった女性は“母親としてのポリシー”を持っている――園枝が「家と身なりを整えて、常に子どもの自慢でいることよ」と母親としての役割を堂々と語る場面では、自分の価値観に固執するしかない女性の怖さや悲しみのようなものが垣間見えたような気がします。森さん「家と身なりを整えて、常に子どもの自慢でいること」は、園枝の母親としてのポリシーだと思うんです。――母親としてのポリシーというのは、森さん自身の体感や経験から生まれたものなのでしょうか?森さん私の今の母が父と結婚したとき、母は初婚で出産が可能な年齢だったんですね。でも、姉と私のために子どもを産まなかったと聞いたことがあるんです。まぁ、聞かされた方としては複雑な心境ではあるのですが……。振り返ってみると、それが母のポリシーというか覚悟だったのかもしれません。私は残念ながら母になったことがないのですが、母親になると自分の中に芯のようなものができるのかもしれないですね。――園枝の死因とされるドクウツギという植物の存在も強烈です。森さん園枝の死には毒物を使おうと思い、身近にある毒物を調べまくり、その中から一番、ビジュアルが良くて毒素が強いものを選びました。その時期は図書館で毒物のことをずっと調べていたので、何か事件が発生したら疑われるだろうなと冷や冷やしていました(苦笑)。次回は複雑な家庭環境で育った森さんのお話をうかがいます。●プロフィール森美樹(50歳)1970年埼玉県生まれ。1995年、少女小説家としてデビュー。その後、5年間の休筆期間を経て、2013年「朝凪」(「まばたきがスイッチ」と改題)で、女による女のためのR-18文学賞を受賞。主な著書に受賞作を収録した『主婦病』、『私の裸』など、参加アンソロジーに『黒い結婚 白い結婚』がある。『母親病』森美樹著新潮社1850円(税別)★関連記事:肺腺がんを告白。青木さやかさんインタビュー#1「私自身は元気ですし、がんと言われることが不思議でした」★関連記事:がんをきっかけに自分を見直した。青木さやかさんインタビュー#2「でもという言葉は使わなくなりました」★関連記事:パニック症や老化を告白。青木さやかさんインタビュー#3「明らかに30代後半よりも48歳の今のほうが元気です」著者/熊谷 あづさライター。1971年宮城県生まれ。埼玉大学教育学部卒業後、会社員を経てライターに転身。週刊誌や月刊誌、健康誌を中心に医療・健康、食、本、人物インタビューなどの取材・執筆を手がける。著書に『ニャン生訓』(集英社インターナショナル)。
2021年09月10日現代アートにおける、若手作家の登竜門的美術展『VOCA展』。今年は『VOCA展 2021 現代美術の展望-新しい平面の作家たち』として、2021年3月30日(火)まで、東京・上野の森美術館で開催されている。『VOCA展』が若手作家の登竜門と言われる理由は、40歳以下の作家を全国の美術館学芸員などが推薦し、その作家たちが平面作品の新作を発表する、という点だ。さらにユニークなのは、厚さ20cm以内であれば、絵画、写真、映像、インスタレーションなど、どんな平面作品でも出品可能ということ。これまでにやなぎみわ、蜷川実花、清川あさみ、山口晃などが、受賞者に名を連ねている。コロナ禍ながら、本年度は30組の作家が出品。5人の選考委員によってVOCA賞他が選出され、展覧会の前日には授賞式が行われた。登壇した作家は、VOCA賞を受賞した尾花賢一のほか、鄭梨愛、水戸部七絵、岡本秀、弓指寛治の5人。尾花は「自分が制作を進める上で、どんな場所で展示されるかが大きなモチベーション」と語り、まずは美術館のある上野という土地について調べることから始めたという。そして知った上野の明るさと暗がり、さらに過去と現在をもひとつの作品の中に存在させることで、観る者にさまざまなことを訴え、考えさせる。VOCA奨励賞受賞の鄭は、コロナ禍における制作を「大変厳しいものだった」と振り返る。「さらに今の情勢抜きでは制作出来なかった」と語る彼女の作品は、韓国から日本に渡ってきた祖父母の姿を5枚の布に写し出し、それらを重ねることで祖父母の生きてきた時間、さらには人間の死生観までも表現する。同賞受賞の水戸部は、「コロナ禍においてSNSに流れる世界のニュースを絵日記として描いた作品」と説明。絵の具を非常に厚く塗り重ねた重量感のある作品で、平面作品とは思えないほどの圧倒的なパワーを放つ。VOCA佳作賞を受賞したのは岡本と弓指のふたり。さらに岡本は大原美術館賞も受賞したが、「他の作品を見ると全然慢心していられない」と姿勢を正す。しかし襖とその先の世界という奥行きを平面で見せてしまうその作品は、本展の中でも唯一無二だ。弓指は、新型コロナをイメージし縫いつけたというジャケット姿で登壇。本人の明るいキャラクターは一瞬作品そのままにも思えるが、実はそこに描かれているのは、満蒙開拓民たちの悲しい歴史だ。タブーから目をそらさない、弓指の強い意志を印象づけた。現代アートの今後を知る上でも、見逃して欲しくない美術展である。取材・文:野上瑠美子
2021年03月12日2020年12月21日、芥川賞作家の羽田圭介さんが、俳優の中神円さんと結婚したことが分かりました。中神さんはTwitterを更新し、結婚について報告をしています。小説家の羽田圭介と結婚しました。結婚のことを周囲にあまり伝えていなかったこともあり、今朝は多くのお祝いの言葉をいただきました。私からの報告の言葉としましては日刊スポーツさんに記載の通りです。今後も宜しくお願い致します! — 中神円 (@1yen2yen3yen) December 21, 2020 ネット上では「驚いた!どうぞお幸せに」「素敵なニュースですね。おめでとうございます」など、2人の結婚に祝福の声が多数上がりました。羽田さんは2015年に小説『スクラップ・アンド・ビルド』で芥川賞を受賞。中神さんは数々の映画やドラマ、CMなどに出演しています。結婚後も、さらなる活躍に目が離せませんね。羽田さん、中神さん、おめでとうございます![文・構成/grape編集部]
2020年12月21日変化を見せる、2020年代の色香論。語ってくれたのは、作家の鈴木涼美さん。色香とは、人を惹きつけ、魅了する力のこと。それは人と人とのコミュニケーションの中に生まれ、存在するものだ、と鈴木さんは語ります。“弱さや未熟が色香”の時代は終焉。会えない世界でその概念は変化する。「色香を感じる第一歩は、“記憶に残る人であること”だと思うんです。下品な喩えですが、例えば、かつてはエロ本、今だとエロ動画などを見て男性は自慰行為をするわけですが、そこで目にした“エロい女性”が記憶に残るかといったら、たぶん残らないでしょう。それはたぶん、“記号としてのエロ”であり、即物的なもの。一方、色香というのはもっとメモラブルな何かで、相手と関わる中で生まれ、そして感じるもの。特に現代においては、人や社会に対して心や態度が開いているコミュニケーション上手な人のほうが、相手の記憶に刻まれ、ふと“あの人って…”と心をドキッとさせる確率が高くなっている気がしています」色気や色香=性欲という公式はもちろん成り立つが、決してそれだけではなく、色気の解釈が広がっている、とも。「かつて色気といえば、それのみ、という時代もあり、その一方で女性にとっては、人としての魅力と色気がイコールにならないことが、長年のジレンマでした。日本の男性が求める女性像は、学歴があったり、才能があったり、仕事ができるといった女性の真逆、つまり弱くて未熟なほうが色っぽいと考える、という事実は、今でも根強くあります。つまり今までの日本の女性は、人としての成長を取るか、色気を取るか、その選択を迫られていたんです。ただようやく社会が成熟し、才能や自信を持つことが人としての魅力を作り、結果的にそれが色香に繋がるという考え方に、女性主体で是正されつつあるのを、徐々にですが感じます。仕事か色気かの二択ではなく、好きな生き方をし、自分らしい色香を持つ。日本の女性が少しずつでもそう思えるようになったのは、大きな進歩です」弱さに色気を感じるということ自体は、2020年の今も変わらない。でも弱いだけでは、もはや武器にはならない。「以前から、弱さが人としての隙になり、“守ってあげたい”と思わせ人を惹きつける、といわれますが、できない、わからないというような“100%の無垢や未熟さ”に色気を感じる人は、大人の社会では減ってきている。それよりも、強い女性や、社会的にある程度の地位にいるような人が見せる“完璧じゃない何か”のような弱さこそが、これからは色気として作用すると思います」色香は、形ではない空気のような存在。目に見えないゆえに感じ取るものといわれるが、コロナ禍で人と直接会う機会が減る中、その概念にも変化が?「家に籠もれば籠もるほど、社会に開いている部分が減りますし、電話やメール、ビデオ会議などを通じたコミュニケーションでは、“雰囲気や空気による伝播”は皆無なので、すべてを言葉で判断するしかない。この状況が続くとしたら、言葉の力を持っている人がコミュニケーション上手になりますし、結果、色香を感じさせられるのでは、と思います」すずき・すずみ1983年生まれ、東京都出身。AV女優、新聞社勤務を経て作家デビュー。著書に『すべてを手に入れたってしあわせなわけじゃない』(小社刊)などが。※『anan』2020年11月25日号より。イラスト・micca(by anan編集部)
2020年11月19日作家・中山七里が唯一映像化を望まなかった(!?)小説「作家刑事毒島」がテレビ東京系にてドラマ化が決定。テレビ東京で初主演を務める佐々木蔵之介が、作家刑事に扮する。出版プロデューサーを名乗っていた百目鬼二郎(コトブキツカサ)という男が刺殺体で発見された。警視庁捜査一課の警部・麻生と犬養隼人と共に現場に来た新入り刑事・高千穂明日香は初めての事件現場に気合が入る。被害者の元勤め先の出版社で聞き込みをすると、新人賞の審査を巡り、百目鬼に「殺してやる」などと書かれた脅迫状が送られていたことが明らかに。そこで犬養が高千穂を向かわせたのは“出版業界にめっぽう強い”というある男のところ。それが売れっ子作家・毒島真理。実は元捜査一課の優秀な刑事だったという。高千穂は毒島の毒舌やこだわりに戸惑いながらも、事件の捜査を共に進めることに…。佐々木蔵之介が演じる主人公・毒島真理は、現役のベストセラー作家でありながら元捜査一課の刑事。その経歴を生かし、若手刑事を指導する刑事技能指導官という特殊な肩書を持つ男だ。刑事時代はえげつないほど饒舌に容疑者を追い込んでいき、落ちなかった犯人は一人もいないとの伝説を持っているとか。毒島は、新川優愛演じる新入り刑事の高千穂明日香と事実上バディを組み、出版業界で巻き起こる連続殺人事件の捜査に乗り出ていく。ほかにも、女流作家・羽衣サヤ役の遊井亮子、長年作家を目指す“ワナビ”只野英郎役に塚地武雅、高千穂の先輩刑事・犬養隼人役の徳重聡、そして高千穂・犬養の上司・麻生警部役の吹越満と実力派が脇を固める。<原作者・中山七里に一問一答>Q:作家刑事毒島シリーズがドラマ化されるにあたっての思いをお聞かせください。A:この原作だけは映像化されたくなかった(横溝正史か)。Q:毒島というキャラクターを佐々木蔵之介さんが演じることについての印象はいかがですか?A:虫も殺さないような善人面という設定なので、原作者として文句の付け所がありません。Q:作家業界の独特な世界が描かれていますが、リアルな部分もあるのでしょうか?A:殺人事件以外はほぼリアル、というか、かなり希釈しています。Q:ファンや視聴者へメッセージをお願いいたします。A:歪んだ性格の犯罪者と更に歪んだ性格の刑事の対決をお楽しみください。月曜プレミア8「作家刑事 毒島真理」は11月30日(月)20時~テレビ東京系にて放送。(cinemacafe.net)
2020年10月26日ふいに聞こえてきたセリフから妄想を展開する、劇作家の根本宗子さん。今回の妄想主役は「女性看護師さん」です。今年最後となる舞台『今、出来る、精一杯。』の稽古がはじまりました。この作品は自分の車椅子時代の話を書いたり、当時の実体験をそのまんま書いていたり、かなり自伝的な要素が強いお芝居で、過去2度上演しているんですが、久々にまたこの戯曲と向き合い、当時の気持ちを思い出してえぐられる毎日です。向き合っている作品によって生活ががらりと変わるとまではいかないのですが、「わー!いえーい!!」みたいな作品やっている時は、元気モリモリ!たくさん食べよう!となるし、「うおりゃー」と地の底から這い上がるような精神力で創る芝居の時は20代前半みたいな暮らしに戻ったりと、生活にも変化が多少あるため、今回は何となく家にこもって悶々と考える日々が続いています。ベッドからなるべく出たくないみたいな気持ちになるかなあとも思っていたんですけど、とにかく稽古が楽しくて、さらにそこに清竜人さんの音楽があり、大変贅沢な稽古時間を送らせてもらっています。ヘビー級の台本を扱っているが、幸せな気持ちだから、いい人について考えてみた。この間持病の検診に行った時の看護師さんが「レントゲン、気をつけて行って来てくださいね」と優しく言ってくれた。妄想スイッチオン!(尊敬スイッチです、今回)看護師さんという職業は本当に大変な仕事です。私が入院していた病院ではわがままを言って看護師さんを困らせるおばあちゃんや、看護師さんのおしりとか触る困ったおじいちゃんなどがいました。それでも笑顔でうまく対応していく看護師さんの能力や人間力、本当にすごいです。もちろん患者さんは病気と闘ってますから、当たり前でしょと思われるかもですが、それだけでは飲み込めないいろんなことが、看護師さんたちにはあるはずで。今回の看護師さんも、めちゃくちゃ病院混んでいるし、クレーマーも多いのに、すべての人に同じように接するマリアみたいな看護師さんで。私は些細なことでイライラしてる自分の小ささが悲しくなりました。はー、常に笑顔でいたいもんだ!ねもと・しゅうこ1989年、東京都生まれの劇作家。月刊「根本宗子」第17号『今、出来る、精一杯。』を12月に新国立劇場中劇場で上演。※『anan』2019年11月27日号より。(by anan編集部)
2019年11月21日東京都写真美術館では、日本・ポーランド国交樹立100周年を記念して、東欧の文化大国ポーランドの1970年代以降の美術を、女性作家と映像表現のあり方に注目して紹介する展覧会「しなやかな闘い ポーランド女性作家と映像 1970年代から現在へ」を8月14日から10月14日まで開催する。カロリナ・ブレグワ 《嗚呼、教授!》 2018年 Courtesy of the artist20世紀のポーランド美術史・映画映像史は、数多くの男性の名によって語られてきた。しかし、ベルリンの壁崩壊後いっきに東側に流れ込んできたグローバル経済の波に参画し、EU加盟も果たした21世紀のポーランドにおいて、女性たちによる多くの表現が、特に映像表現の領域で存在感を放っている。と同時に、これまで十分に語られてこなかった、女性作家の映像を用いた表現の先駆例について再検証しようという流れが生まれている。展覧会「しなやかな闘い ポーランド女性作家と映像 1970年代から現在へ」は、ポーランド国内外の研究者やキュレーター、関連機関との連携交流を通じて、ポーランドの1970年代からの美術の歩みを、その時代背景をふまえながら新たな視点で読み解く。そして、世代を異にする女性アーティストたちが、自身のおかれた社会環境を見つめ、それぞれの表現方法で発信する術を、いかに見出してきたかをたどる、きわめて意欲的な展覧会だ。アンナ・クテラ 《対話》 1974年 Courtesy of the artistみどころの一つは、ポーランド女性作家が選んだ「アート」という闘いかた。世界的に広まった#MeTooや日本の#KuTooなど、女性に関する問題は、いまも日常的に身近なところで起こっている。ポーランドでは伝統的な慣習が大切にされ、女性には「良き母」「良き妻」「良き娘」そして、「良き働き手」であることが理想として求められてきた。また、東欧と西欧の格差による差別や、多様な性への偏見といった根深い問題もあり、これらは時に、女性たちの自己実現を難しくしてきた。このような目に見えないさまざまな問題と向き合うために、ポーランドの女性作家たちは、社会のなかで自分らしく生きるための術として、「アート」を必要とした。彼女たちが挑む、しなやかな闘いかたは、性別を越えて、私たちに、社会のなかで自分らしく生き抜くためのアイディアと希望を与えてくれるはずだ。ズザンナ・ヤニン 《闘い》 2001年 Courtesy of Zuzanna Janin Studio and lokal_30, Warsaw実験的な映像表現にも注目したい。1970年代、世界ではヴィデオ・カメラを使った映像が、絵画や彫刻、映画とも異なる新しい分野の芸術として頭角を表した。本展では1970年代から約50年にわたる、ポーランド女性作家の映像表現の変遷を一望することができる。冷戦下の共産圏を生きたパイオニア世代から、グローバル化した現代のデジタル世代に共通する実験精神は、誰もが気軽に動画を撮影・発信できる時代のいまだからこそ、新鮮な驚きをもたらしてくれるだろう。カロル・ラヂシェフスキ 《カロルとナタリアLL》 2011年 Courtesy of the artist and BWA Warszawa, Warsawまた本展は、東京都写真美術館が、出品アーティストのみならず、現地ポーランドで活躍する気鋭の研究者、キュレーターを始めとする多くの人々との交流の成果として、実現するもの。作品のほぼすべてが日本初公開となり、これまでとは異なる新たな切り口で、ポーランドの同時代美術と映像表現の変遷を紹介する。会期中には関連イベントも多数開催。8月15日には、出品アーティストによるリレートークが開催。講演会は、8月18日に「ポーランド美術とフェミニズム(仮)」、8月31日に「クリティカル・アート潮流の中で(仮)」が開催される。【展覧会情報】しなやかな闘い ポーランド女性作家と映像 1970年代から現在へ会期:8月14日~10月14日会場:東京都写真美術館 地下1階展示室時間:10:00~18:00 ※木・金は20:00まで、入館は閉館30分前まで料金:一般500(400)円、学生400(320)円、中高生・65歳以上250(200)円※( )は20名以上の団体料金、小学生以下、都内在住・在学の中学生および障害者手帳をお持ちの方とその介護者は無料、第3水曜日は65歳以上無料※8月15日~8月30日の木・金17:00~21:00はサマーナイトミュージアム割引(学生・中高生無料、一般・65歳以上は団体料金)、9月16日(敬老の日)は65歳以上無料、10月1日は都民の日につき入場無料休館日:月曜日(ただし、月曜日が祝日、振替休日の場合、翌火曜日休館)
2019年07月23日展覧会「しなやかな闘い ポーランド女性作家と映像 1970年代から現在へ」が、2019年8月14日(水)から10月14日(月・祝)まで東京都写真美術館にて開催される。文化大国ポーランドの女性作家による映像作品にフォーカス数多くの男性の名によって語られてきた20世紀のポーランド美術史・映画映像史。ベルリンの壁崩壊後の21世紀のポーランドにおいては、女性たちによる映像表現が存在感を放っている。「しなやかな闘い ポーランド女性作家と映像 1970年代から現在へ」は、女性作家と映像表現のあり方にフォーカスを当て、東欧の文化大国であるポーランドの1970年代以降の美術を紹介する展覧会。会場には、世代の異なる24組のアーティストによる25の映像作品を展示。女性作家たちが、自身の置かれた社会環境から、いかにしてそれぞれの表現方法で発信する術を見出してきたかをたどっていく。なお、本展で紹介する作品は、ほぼすべてが日本初公開となる。フィルムを使った1970年代ビデオ・カメラを使う機会が限られていた1970年代、フィルムを使った表現方法が試みられていた。1975年に国際的なフェミニスト運動に加わったナタリア・LLは、ポーランドの作家による初のフェミニスト作家の展覧会「女性たちの芸術(Women’s Art)」を企画・開催したことで知られている。ビデオ・カメラなど新たな技術を駆使した1990年代民主化を果たした1990年代には、ビデオ・カメラをはじめとする新しい映像技術を使った表現がつぎつぎと誕生。それらを駆使した人間性の闇の部分に迫り作品によって露にする社会批評的な表現を意味する「クリティカル・アート」の潮流があらわれていく。カタジナ・コズィラの《罰と罪》では、単に暴力を批判するだけでなく、誰にでも潜在し得る理由なき破壊衝動を描きだしている。表現の豊かさが特徴の2010年代以降2010年代以降には、カロリナ・ブレグワによる《嗚呼、教授!》といった自分自身がカメラの前に立ってアクションする「セルフィー」や、日常を非日常に置き換える「発想の転換」など、映像表現としての豊かさにも創意を傾けた作品が次々と登場。民主化以降の若手世代の作品もまた、社会や人間の暗部までを鋭く暴き出す「批判精神」や、既存のシステムやメディアを利用して表現をする「ハッキング」など、民主化以降に生まれた若手世代のしなやかな批評性が特徴の作品も紹介。ネット上の投稿動画を想起させるアンナ・ヨヒメク&ディアナ・レロネクの《ディレクトレシィ(女性館長)》は、直截な言葉で次々と投げかけられる、「改革案」の形をとった挑発的な映像作品だ。【詳細】しなやかな闘い ポーランド女性作家と映像 1970年代から現在へ会期:2019年8月14日(水)~10月14日(月・祝)会場:東京都写真美術館 地下1階展示室住所:東京都目黒区三田1丁目13-3開館時間:10:00~18:00(木・金は20:00まで)※入館は閉館30分前まで。ただし8月15日(木)~8月30日(金)の木・金曜日はサマーナイトミュージアム期間につき21:00まで開館。休館日:毎週月曜日(ただし月曜日が祝日・振替休日の場合、翌火曜日休館)観覧料:一般500(400)円/学生400(320)円/中高生・65歳以上250(200)円※( )は20人以上の団体料金。小学生以下、都内在住・在学の中学生および障害者手帳持参者とその介護者は無料。第3水曜日は65歳以上無料。※8月15日(木)~8月30日(金)の木・金曜日17:00~21:00はサマーナイトミュージアム割引。(学生・中高生無料、一般・65歳以上は団体料金)※9月16日(月・祝)敬老の日は65歳以上無料、10月1日(火)は都民の日につき入場無料。※各種割引の併用は不可。
2019年07月21日距離も時間も虚実すら超えた世界を見せてくれる「本」。芥川賞作家の上田岳弘さんと、直木賞作家の島本理生さんが読んできた好きな海外文学作品と、その向こうに広がる世界を語り合います。海外文学を読み始めた頃。島本:小さい頃は海外の児童文学も読んでいましたが、大人向けの海外文学を読み始めたのは中学生の頃ですね。カポーティの『遠い声 遠い部屋』などが好きで、そこからジョン・アーヴィングやカート・ヴォネガットといったアメリカ文学を読むようになりました。日本とは違う土地の広さとか匂い、空気を感じさせるものや、乾いた文体が好きでした。上田:僕は中高生の頃に趣味で海外のファンタジーを読んでいましたが、大学生の時に村上春樹さんが訳したり影響を受けている海外小説を読み始めるというベタな人間で、僕もヴォネガットやカポーティ、フィッツジェラルドを読みましたね。そういえば、春樹さんの『風の歌を聴け』に、デレク・ハートフィールドって作家が出てくるじゃないですか。島本:出てきましたね。上田:彼の作品も読んでみたくて探したら、そんな作家は実在しないっていう(笑)。島本:私も、そういう作家が本当にいるんだって思っていました。上田:あれは、あの頃の文系少年少女がハマるトラップですね(笑)。僕はそれから大学生の時に作家になるために勉強しようと思って、体系的に200冊くらい読んだんです。その時にベーシックなものとしてシェイクスピアやドストエフスキー、ミラン・クンデラなどを読みました。島本:海外のものが多かったんですか?上田:そうですね。夏目漱石も読みましたが海外小説が多かったです。性格的に世界史と日本史だったら世界史を選ぶタイプですし。日本は世界の一部なので、グローバルスタンダードというか、読書も世界の基準に合わせたほうがいいんじゃないかなと思っていました。あまり文体の研究とか今の日本文学に何が起きているかは気にしなかった。今も読むのは海外文学が7割です。島本:上田さんの小説には海外文学の雰囲気があるなと思っていました。少し重力が違うというか、自由な感じがして私、スペインに行く飛行機の中で上田さんの『私の恋人』を読んだんです。それがもう、しっくりきて、それこそ作中の世界の果てまで一緒に行ったような気がしました。上田:ありがとうございます。島本:私自身は海外小説と国内小説の割合は半々くらい。でも文体を学ぶのは海外小説が多かったです。日本の近代文学は私小説が多いですが、私は個人の内面よりも情景描写を書きたくて。それこそ一時はカポーティのような潮騒とかの比喩を書きたくて「さざ波のように」って表現をかなり使いました(笑)。上田:サガンの『悲しみよ こんにちは』は読みました?島本:はい。でも私、サガンよりもマルグリット・デュラスのほうが好きなんですよね…。上田:僕、仕事の必要があって最近読み返したんです。あれって、アラフォーの恋愛を17歳の女の子の目線で描いているじゃないですか。19~20歳で読んだ時は少女の視点で読んだけれど、今読むと40歳のほうの目線になるので、大人たちが打算込みでいろいろやっているのがわかる。17歳からは今の僕もこんなふうに見られているのかな、って怖くなりました(笑)。島本:確かに私も昔、100%少女の視点で読んだので、今読むと感じ方が変わるかもしれない。上田:サガンよりもデュラスが好きというのは?島本:昔読んだ時はサガンの主人公はただ生意気だなと思って。デュラスは同じ恋愛を書くにしても、絶望して達観した中に情熱や官能を秘めている。基本的に恋愛ものは絶望があるものが好きです。上田:絶望のある恋愛もの…。自分好みの海外恋愛小説。島本:上田さんの『私の恋人』もそうですけれど、男の人が一方的に女の人を追いかける話も好きで、アンナ・カヴァンの『氷』は、氷の壁が迫ってくる世界で、超法規的な手段を使って地の果てまで好きな少女を捜しに行っては、フラれてすごすご帰る話。設定の大胆さとリアリティとのバランスが不思議な一冊です。グレアム・グリーンの『情事の終り』は嫉妬深い作家が、自分を振った女性に他の男ができたと思って調べ始める。信仰が絡んでくる話なんですが、キリスト教と恋愛小説の親和性って高いなと感じて、自分も宗教と恋愛というものを書いてみたくなりました。上田:フランスのミシェル・ウエルベックやイギリスのイアン・マキューアンは読みます?この二人は僕にとって、淀んだヨーロッパの2大巨頭なんです。西洋文化はこの500年くらいのトレンドですけれど、今はもう煮詰まっている。その問題を書いている二人ですね。ウエルベックのほうが露悪的で原始的で欲望に忠実。たとえば『服従』はヨーロッパがイスラムのマネーや文化に服従していく話なんですよ。島本:難しいけど面白そう。上田:マキューアンの『土曜日』なんかは、脳神経外科医が認知症の母親をシステマティックに面倒を見たりする様子や、テロの脅威が描かれていく。彼らの作品のように“現実ってこうですよね”と突きつけてくるものが僕は好きだし、影響を受けていると思います。『遠い声 遠い部屋』著:トルーマン・カポーティ訳:河野一郎590円(新潮文庫)『ティファニーで朝食を』などで知られる、戦後のアメリカ文学を代表する作家が、23歳の時に書いたデビュー作。父を捜すためにアメリカ南部を訪れた少年を主人公にして、繊細なその心の内や街の風景を、鮮烈な比喩を用いながら綴った半自伝的小説。『悲しみよ こんにちは』著:フランソワーズ・サガン訳:河野万里子490円(新潮文庫)フランスの女性作家、サガンが18歳の時に発表したデビュー作。17歳のセシルが父と彼の愛人と過ごすコート・ダジュールの別荘にやってきた亡き母の友人、アンヌ。はじめは彼女を慕うセシルだが、父を取られると感じて反発、やがてある計画を思いつく…。『氷』著:アンナ・カヴァン訳:山田和子900円(ちくま文庫)著者はイギリスの小説家で、SFや幻想文学の色の強い作品で知られる。異常気象で寒波が押し寄せるなか、一人の男が異様な執着心で一人の少女を捜し求める。冷たくも美しい氷のイメージの中で、幻想と現実を交錯させながら描き出すディストピア小説。『情事の終り』著:グレアム・グリーン訳:上岡伸雄670円(新潮文庫)第二次大戦直後のロンドン。小説家のモーリスは、知人のヘンリーから妻のサラが浮気をしているのではと相談される。実は以前、モーリスはサラと不倫関係にあり、彼は一方的に別れを告げられた身。サラの今の浮気相手を知ろうと調べ始めるのだが…。『服従』著:ミシェル・ウエルベック訳:大塚 桃920円(河出文庫)センセーショナルな作品を発表し続けるフランスの現代作家の長編。舞台は2022年、極右政党を倒して穏健派のムスリム政党が政権を握ったフランス。文学教授の「ぼく」は、パリを去ることにするが…。テロ、移民といった現実問題を盛り込んだ予言的な作品。うえだ・たかひろ作家。1979年、兵庫県生まれ。2013年「太陽」で新潮新人賞受賞。’15 年『私の恋人』で三島由紀夫賞、今年『ニムロッド』で芥川賞受賞。新作は世界文学的大作『キュー』。しまもと・りお作家。1983年、東京都生まれ。2001年に『シルエット』で群像新人文学賞優秀作に入選。’03年『リトル・バイ・リトル』で野間文芸新人賞、’18年『ファーストラヴ』で直木賞受賞。※『anan』2019年7月10日号より。写真・小笠原真紀取材、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2019年07月05日作家・柴崎友香さんがチョコレートにまつわるエッセイを書き下ろしました。以下、『チョコレートのある世界』の全文です。なぜ、チョコレートだけが特別なのだろう。甘くておいしいものはたくさんあって、そのたくさんの中で、チョコレートはいつも特別だ。わたしには、チョコレートをとっておく癖がある。箱の中に、一つだけ。最後の一つを、食べてしまうのには、勇気がいる。深みのある褐色の、あの小さな一粒がいつまでもそこにあったらこのしあわせが続くのに、と思ってしまう。ところでわたしは、甘いものはそんなに得意ではない。「そんなに」というところが重要で、きらいではない。「好き」と言ってしまうと、とっても甘いのをたくさん食べられることになるが、そうではなくて、ちょっと甘いくらいのを、少し食べる。それが幸福を感じる時間だ。それもできれば、苦みや渋みのあるものといっしょに。お茶とかお酒とか。チョコレートは、甘いけど、苦い。その甘さと苦さの合わさったところ、同時に味わえるところに、限りない豊かさがある。チョコレートは融けるから、メインの季節は冬だということになっていて、空気がだんだん冷えて夜が長くなってくると、いつもと違うよそゆきのチョコレートにたくさん会える。気取って装飾品みたいに並んでいたり、ちょっとユーモアのある動物や身近なものをかたどっていたり、それが工夫を凝らした夢みたいな箱に入って届けられる。いろんな種類が詰められた箱をいただいたりすると、わたしはまず解説の小さな紙を熟読する。最初はまずシンプルなの、次は少し変わったフレーバーの、それから、と食べる順番に迷いに迷う時間さえ楽しい。好きなお茶を濃いめに淹れて、一粒一粒、それぞれの苦さと甘さに、驚いたりうっとりしたり。自分で辞書を作るなら「贅沢」の項目にこの時間のことを書こう、と思うくらいだ。宝石なみにきらきらしたチョコレートの一方で、毎日の時間に染み込んだ、地元の友だちみたいに気楽に付き合えるのもやっぱりチョコレートだったりする。スーパーやコンビニで売っている、定番の板チョコ、駄菓子的なチョコバー、毎シーズン出現する新商品。銀紙をわざと無造作に剥いて、ぱきっときれいに割れるとうれしい。いちご味にも弱くて、パステルピンクと焦茶色の組み合わせは何回食べても子供のころのもっとも無邪気な楽しい時間をすぐによみがえらせてくれる。パフェやパンケーキにかけるチョコレートソースになると、悪友的な存在感さえある。子供みたいに手や顔をべたべたにして食べたい誘惑にかられたりもする。ずっしり重みがあるチョコレートケーキも忘れてはならない。さんざんおいしいごはんを食べて満腹なのに食後のデザートを選ぶとき、よりによってあのほとんど黒に近い密度の高い一切れを選んでしまうのはなぜなのか。しかし運ばれて来たそれは、選択が正しかったことを毎回必ず実感させてくれるのだ。家にいるときは甘いものはたまにしか食べないのだけど、仕事をしているあいだは違う。特に小説が佳境にさしかかって、ここでがんばろう、というときに、いちばん「効く」のはチョコレートだ。ひとかけら口に入れると、充電という言葉がふさわしいくらい、そのほろ苦い甘い塊が融けて体内に入っていくのが感じられる。普段ならほんの二、三かけでじゅうぶんなのに、仕事をしているときはついつい、食べてしまう。脳がエネルギーを欲してるのだなあ、と思う。その疲労感も、チョコレートのためにある気もする。チョコレートだけが。ゆったりした憧れも、懐かしさも、ちょっとうしろめたい快楽も、繰り返しの毎日の中の小さな楽しみも、みんな味わわせてくれる。チョコレートだけがいつも特別だから、わたしは箱の中に一粒、そのしあわせを取っておきたくなる。しばさき・ともか作家。1973年、大阪府生まれ。2000年『きょうのできごと』でデビュー。近著に『つかのまのこと』(KADOKAWA)、『公園へ行かないか?火曜日に』(新潮社)など。’18年は、著書『寝ても覚めても』の映画化も話題となった。※『anan』2019年1月23日号より。写真・枦木 功(nomadica)スタイリスト・岡尾美代子撮影協力・AWABEES(by anan編集部)
2019年01月16日ふいに聞こえてきたセリフから妄想を展開する、劇作家の根本宗子さん。今回の妄想主役は「妄想させてくれないふたり」です。ファミレスで隣の席に座っていた、23歳のギャルと25歳のギャル男のカップル。12月20日に開幕した『愛犬ポリーの死、そして家族の話』。台本を手直しするため、久しぶりにファミレスで半日くらい過ごした。昼食と夕食を同じファミレスでとるくらい長時間滞在したので、気づいたら隣の席が5回転くらいしてた。最後に隣になったカップルの会話が本当に凄まじ過ぎた。ギャル「妹がデキ婚するかもしれないけど、しないかもしれない」から始まり、ギャル「あんたといても先が見えない」とデキ婚話から自分達のこの先まで話が広がっていった。彼氏のギャル男のほうは呑気に食べている。彼女の怒りは増すばかり。ギャル「あんたどんだけ食べるの?話聞いてんの?」「結婚」というかなり深刻な話題中もオムライスをばくばく食べ、その後パンケーキを食べ、唐揚げを食べ、スープを飲み、さらにアイスを食べると言い出すギャル男。妄想スイッチオン!一向に黙らないこの二人。妄想スイッチを入れたいセリフがたくさん出てくるのに全然スイッチを押させてくれない。しかもずっと聞いているのに、何故その話からその話に展開したのかが全く理解できない。さっきまで結婚について怒っていたギャルは、「サーティワンに行きたい」と言い出すし、それなのに、ギャル男はファミレスでアイスを頼んでいる。この二人の会話はどんな終わりを迎えるのだろう。最後まで聞いていると、ギャル「サーティワンでソルベ食べて、TSUTAYAで映画借りて、それ観て1時までに寝るよ。わかった?行くよ」という一言で二人はファミレスを出て行った。なんだろうこの掴めなさ…。そして、私はずっとこのカップル、彼氏をひもだと思っていた。しかし違ったのだ、ファミレスで4000円近く食べた会計は全て彼氏が彼女がトイレに行ってる間に支払い、それに対して彼女はしっかりと「ありがとね」とにっこり微笑みお礼を言っていた。ちゃんとしている二人だ。ねもと・しゅうこ1989年、東京都生まれの劇作家。月刊「根本宗子」公演『愛犬ポリーの死、そして家族の話』が、下北沢・本多劇場で上演中。※『anan』2019年1月2・9日号より。(by anan編集部)
2019年01月08日原美術館で19年前に開催し大きな反響を呼んだ、世界的に注目されるフランスの女性現代美術作家・ソフィ カル(Sophie Calle)の個展「限局性激痛」を、フルスケールで展示する再現展『「ソフィ カル―限局性激痛」 原美術館コレクションより』を、2019年1月5日から3月28日まで、原美術館にて開催する。Sophie Calle Exquisite Pain, 1984-2003 © Sophie Calle / ADAGP, Paris 2018 and JASPAR, Tokyo, 2018同展は日本の美術館におけるカルの初個展として開催され、会期終了後、全出品作品がコレクションに加えられた。「限局性激痛」とは、医学用語で身体部位を襲う限局性(狭い範囲)の鋭い痛みや苦しみを意味し、カル自身の失恋体験による痛みとその治癒を、写真と文章で作品化したもの。人生最悪の日までの出来事を、最愛の人への手紙や写真で綴った第一部と、不幸話を他人に語り、代わりに相手の最も辛い経験を聞くことで自身の心の傷を少しずつ癒していく様子を美しい写真と刺繍で綴った第二部で構成されている。Photo : Jean-Baptiste Mondino見知らぬ人々を自宅へ招き、自分のベッドで眠る様子を撮影したものにインタビューを加えた「眠る人々」(1979年)や、ヴェネツィアのホテルでメイドをしながら、宿泊客の部屋の様子を撮影した「ホテル」(1981年)、拾ったアドレス帳に載っていた人物にその持ち主についてのインタビューを行い、日刊紙リベラシオンに連載した「アドレス帳」(1983年)など、常に論争を巻き起こしている彼女の作品。90年代の「本当の話」や「ヴェネツィア組曲」などの初期の代表作を制作する一方で、「盲目の人々」(1986年)から始まった盲人に焦点を当てたシリーズにおいて、美術の根幹に関わる視覚・認識についての深い考察を行っている。また、カルの生き方に感銘を受けたポール オースター(Paul Auster)が、彼女を小説「リヴァイアサン」の登場人物マリア ターナーのモデルとしたことをきっかけに、逆にカルがターナーを演じた作品「ダブル・ゲーム」(1998年)を発表するなど、その活動は現代美術の枠組みを超えて広く注目を集めている。「ソフィ カル―限局性激痛」1999-2000年 原美術館での展示© Sophie Calle / ADAGP, Paris 2018 and JASPAR, Tokyo, 2018日本滞在が契機となって誕生した作品「限局性激痛」は、日本で最初に発表したいという作家の希望を受けて1999年の原美術館での展覧会のためにまず日本語版が制作され、その後フランス語や英語版も世界各国で発表された。フランス語版は、ポンピドゥー国立近代美術館での大個展(2003 - 2004年)に出品された後、同館コレクションに加わった。「限局性激痛」第二部で特徴的なのは、テキストが全て刺繍でつづられている点。「見本と寸分違わず刺繍できる凄腕の職人がフランスにいる」という作家の情報を受けて、当初、日本語のテキストをフランスで手刺繍してもらう予定だったが、新潟にある刺繍工場の方と偶然にも幸福な出会いがあり、まずは膨大な量の日本語版の機械刺繍が完成した。生地は作家こだわりの麻布をベルギーから取り寄せ、作家も出来栄えに大いに満足。その結果、フランス語版と英語版も新潟で制作。ソフィ作品の命ともいえるテキストは、コピーライターの竹内桃子が、原文にあるニュアンスを取り込みながら日本語版テキストを完成させた。「ソフィ カル―限局性激痛」1999-2000年 原美術館での展示© Sophie Calle / ADAGP, Paris 2018 and JASPAR, Tokyo, 2018また15年間封印されていた思い出の品々、例えば行動を記録した手書きのメモ、地図、ポラロイドやコンタクトプリント、(中国の)紙幣、そしてあってはいけない某ホテルの鍵など、全てひとまとめにしまわれていた第一部で被写体となった品々は、作品制作を決めた作家がこれを開封し、メモや記憶をたよりに必要に応じてその地を再訪するなどして、数年をかけてこのシリーズ作品が完成。第二部で、自らの最もつらい体験をカルの失恋体験と交換した相手の中には、哲学者やアーティストもおり、同館にて2012年に個展を開催したフランスの現代美術作家、ジャン=ミシェル オトニエル(Jean-Michel Othoniel)も実はその一人だ。会期中の2月1日には、原美術館のザ・ホールにて、アーティスト・トーク(作家来日予定)が開催。詳細は決まり次第、原美術館ウェブサイトにて掲載。日曜日と祝日には、学芸員によるギャラリーガイドを実施。ザ・ミュージアムショップでは、フランス語版『Douleur Exquise』を、ショップ限定の和訳テキストを付録として販売する。また、緑ゆたかな庭に展示された作品を眺めながら、季節感あふれる菓子や食事、ドリンクを楽しめる館内のカフェ ダールでは、開催中の展覧会にあわせた「イメージケーキ」(755円)を提供する。会期中、都内2箇所でもソフィ カルの個展を同時開催。2019年2月2日から3月5日にギャラリー小柳にて「ソフィ カル «Parce Que »(なぜなら)」が、2月2日から3月11日にはペロタン東京にて「ソフィ カル «Ma mère, mon chat, mon père, dans cet ordre. »(私の母、私の猫、私の父、この順に。)」が開催され、作家も来日する予定。自身の人生をさらけ出し、他人の人生に向き合うカルの制作に触れてみては。【展覧会情報】「ソフィ カル―限局性激痛」 原美術館コレクションより会期:2019年1月5日〜3月28日会場:原美術館住所:東京都品川区北品川4-7-25休館日:月曜日(1月14日、2月11日は開館)、1月15日、2月12日時間:11:00〜17:00(水曜日は20:00まで、入館は閉館時刻の30分前まで)料金:一般1,100円、大高生700円、小中生500円※原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生の入館無料、20名以上の団体は1人100円引
2018年12月06日ふいに聞こえてきたセリフから妄想を展開する、劇作家の根本宗子さん。今回の妄想主役は「頼ませてくれない人」です。先日、月一で行っている「根本宗子の面談室」というトークイベントのゲストに、仲良しの女優、趣里ちゃんが来てくれまして。主演映画の『生きてるだけで、愛。』公開直前ということもあり、その後『オールナイトニッポン0』にも来てくれて最高に盛り上がりまして。イベントとラジオの間、1時間くらい空き時間ができたので、二人で中華を食べたんですよ。前にもここに書いたと思うんですが、私と趣里ちゃん、信じられないくらいの量を食べるんですね。二人ともお酒を飲まないせいもあり本当に食べるのが好きで、いろいろ食べたいわけなんです。どれだけ食べるかというと、バーミヤンで二人で10品程、総額7000円くらい食べるわけですね。ファミレスですよ?ドリンクバーですよ?そんな私たちが、この日、中華をやらかしまして(二人の中で、たくさん食べることを「やらかす」と呼んでます)。ラーメンを一人1つずつ頼んで、さらにチャーハン、青菜炒め、白身魚あんかけ、餃子、と注文を続けていると、「ん?全然多いよ?」とお店のおばちゃん、うちらの注文をストップ。妄想スイッチオン!この人は私たちの敵、「頼ませてくれない人」だ。いや、わかるよ。「お前ら絶対残すだろ??女二人だろ??もったいないだろーが!!」と思われているわけなんですよね。私たちはちらっと目を合わせ、目で会話を始めるわけですね。趣里「でたよ、頼ませてくれない人だよ、これ」私「ね。食欲、全然舐められてます、私たち」趣里「え?いけるよね?」私「全然いけるよ?なんならもう1つくらいやるよ?」趣里「だよね?」私「え、どうする?せーので言う?」趣里「オッケー」二人は同時に店員さんに向かって口を開きました。「全然食べれますんで!」はい。意思疎通バッチリです。そしてペロリと食べ、趣里ちゃんは食後にタピオカまで食べました。気持ちがいいね!!ねもと・しゅうこ1989年、東京都生まれの劇作家。月刊「根本宗子」公演『愛犬ポリーの死、そして家族の話』が、12月20日より下北沢・本多劇場でスタート。※『anan』2018年11月28日号より。(by anan編集部)
2018年11月21日伊藤丈浩さんによる作品。色、柄、フォルムが美しいポットやカップ&ソーサー。 巧みな職人技術で魅せる、現代を代表するスリップウェア/伊藤丈浩さん それまで“柄もの”があまり得意ではなく、うつわは無地のシンプルなものばかりを選んできた筆者が、初めて柄ものに惹かれたのが、伊藤さんの作品でした。英国発祥の伝統的な技法である「スリップウェア」という言葉を知ったのも、伊藤さんの作品がきっかけでした。 独学でスリップウェアを習得したという伊藤さんは、2006年に益子で独立。以来その人気は拡大し、全国各地で個展を開催するまでに。 繊細で緻密、時にダイナミックな模様が描かれた作品は、いつまででも眺めていられる“美術品”と言っても過言ではありません。それはまるでテキスタイルのようでもあり、高度な職人技術に唸らされます。そして伝統技法を用いながらも、古臭さをまったく感じず、とても現代的な空気をまとっています。うつわに料理を盛り付ければ、一皿がぐっと格上げされ、食卓が華やぎます。スリップウェアに限らず、マグカップやピッチャーなどはフォルムも美しいので、植物を生けたり、ただ飾っておいたりするだけでもインテリアとして楽しめます。 陶器市では「G+OO」での取り扱いがメイン。常設もされているので、陶器市以外の機会にも出会うことができます。 端正で凛々しい、洗練された佇まいに心酔/田代倫章さん いわゆる“益子焼らしい”、素朴な雰囲気のうつわばかりを所有していた筆者にとって、田代さんの作品との出会いは一目惚れでした。例えるなら、それまで好みのタイプが一貫していたはずなのに、全然違ったタイプの人に出会って恋に落ちてしまった、といったところ。 2002年に大学の陶芸専攻科を卒業後、益子にて今成誠一氏に師事。2007年に独立された田代さん。これまで毎年のように都内と益子を中心に展示を開催している人気作家の一人です。 作品から漂うオーラには品があり、無駄を削ぎ落とした洗練された佇まいは「凛々しい」という言葉がしっくりきます。一見シャープながらも、曲線の一つひとつが優美で、質感にもそれぞれ繊細な技法が駆使されているのがわかり、柔らかな表情も持ち合わせています。マットと艶のコンビネーションも絶妙で、すべての作品にどこか色気を感じます。基本は白と黒のモノトーン展開というのも潔くてかっこいい。 食器として使うのを躊躇ってしまうほど美しいのですが、料理を盛り付けるとまるで高級料亭の一皿かと思えてしまうほど、見栄えがランクアップします。 陶器市では「組合広場」の道を挟んで向かい側(共販センター近く)に出店しています。 木のぬくもりと丁寧な手仕事が、日常を豊かにしてくれる/木工房玄 益子の陶器市では多数の木工作家が出店しています。その中でも、ここ何年も隅々まで陶器市を巡ってきた筆者のお気に入りが「木工房 玄」の作品です。 代表の高塚和則さん率いる「木工房 玄」は、栃木県塩谷郡塩屋町に工房を構え、手作業で家具や食器、小物などを製作しています。原木を仕入れ、製材、自然乾燥させ、プロダクトごとに適した木を選び、一つひとつ丁寧に作っています。使用している木材は主にクルミ、栗、桜、ナラ、トチ、タモなど国産の広葉樹。仕上げには木の風合いを生かすよう、天然のオイルを使っています。時が経つほどになじみ、風合いの良さが出てくるのも無垢材ならではの良さです。 筆者も愛用している、表面に手彫りで細かい凹凸の表情をつけたクルミのカッティングボードは見た目も素敵で、使い勝手も抜群です。凹凸のない裏面で食材をカットでき、パン皿としてや、ワンプレート皿として、おもてなしにチーズや前菜を少しずつ盛りつけたりと、大活躍。ほかに花形のコースターやパン皿、オーバル皿も人気のようです。 また製品の取り扱い方やお手入れ法についても親切に教えてくださるので、気軽に相談できます。 陶器市では「遺跡広場」に出店しています。 ナチュラルな色と気泡がノスタルジックな再生ガラス/伊藤亜木さん 陶器にハマると自然とガラスにも惹かれるもので、その第一歩として初めて購入した作家ものが伊藤亜木さんのガラスでした。東京生まれの伊藤さんは、某ファクトリーにて吹きガラスを始めた後、硝子会社に入社。その後2006年に栃木県茂木町にガラスの窯を構え現在に至ります。 再生ガラスを用いた作品の特長のひとつは、優しく自然な色合い。水色のものは窓ガラスから、透明のものは蛍光管から作られているそうです。もうひとつの特長は、気泡。ガラスの中にキラキラと現れる大小のつぶつぶがなんとも涼しげで、ソーダ水を思わせます。 また、ぽてっとした厚みと丸みも可愛らしく、再生ガラスならではのナチュラルな雰囲気と相まって味わいが増します。 ラインナップはグラスをはじめ、お皿、フラワーベース、箸置き、ポット、アクセサリーなど、バラエティ豊か。特にこれからの暑いシーズンには、ガラスのうつわと箸置きを食卓に並べれば、たちまち夏らしく涼しい雰囲気に。こんな風に季節に応じて食卓も衣替えすると、日々の暮らしがより楽しく、豊かに感じられます。 陶器市では「KENMOKUテント村」に出店しています。 以上、益子春の陶器市レポート【作家編】パート2でした。すてきな作家さんが多すぎてここで紹介しきれないのが心苦しいですが、いつかまた別の機会に紹介できればと思っています。春の陶器市は閉幕しましたが、次は秋の陶器市(11月2日〜11月5日)が待っています!このレポートを参考に、ぜひ益子へ訪れてみてください。 text : Yu Konisho
2018年06月14日芥川賞作家の小山田浩子さんが、待望の新作を上梓。「自分の好きなものが詰まった一冊になったので、嬉しいです」と語るのは、2014年に「穴」で芥川賞を受賞した小山田浩子さん。待望の新作『庭』は、ユーモラスで奇妙、鮮やかでちょっぴり不穏な15篇が詰まった短篇集。「どれも結婚や子ども、出産といったテーマを意識していたのは間違いないです。それ以外に、読み返すと自分の実家や田舎に行く、という話が多くて。それはもうフェティッシュ的に好きなのかも(笑)」たとえば巻頭の「うらぎゅう」は、実家に戻り、祖父に不思議な儀式に連れていかれる女性の話。「これは砂灸という、砂に足形をつけてそこにお灸をするという風習を聞いて“何それ”と思ったことがきっかけでした。ここに出てくる話はどれも、そんなふうに見聞きしたり経験したりしたことが元になっていることが多いですね」祖母が彼岸花を薬草として育てていた記憶、住んでいるアパートに出るヤモリ、山の旅館に行ったら愛想のいい猟犬がいた思い出、女子校時代に校舎によく出現した小さな蟹、ショッピングモールのフードコーナーにいるさまざまな家族……。そんな現実の光景から、とんでもない非日常的展開を導き出すのが小山田作品の魅力だが、「普通のことを書いていたらこうなった、という感覚です。自分に何かを空想して物語を広げる能力があるとは思わないんです。ただ、見聞きしたことの前後を、見たことがあるかもしれない気持ちで、思い出すように書いています」動物や植物が多数出てくるのは、「じっと考えているより、虫や植物をずっと見ていた時のほうが、面白いことがたくさん出てくるんですよね。それも、実際に眺めるのでなく、どんな感じだったか思い出しながら書いている感じです」ちょっぴり不条理な世界で生きる人々が描かれる本作。夫婦や親子の気持ちの齟齬も淡々と描かれるが、「家族でも分かり合えないことや、しっくりこないことはありますよね。でもそれは悪いことじゃない。それでやってきたし、やっていくんだ、というのが気持ちとしてあります」暮らしと不可思議な世界のあわいに潜む、人生の真実を垣間見せてくれる。そんな作品集なのである。『庭』庭の彼岸花、窓のヤモリ、井戸にいるどじょう……。草花や生き物に囲まれた、ちょっぴり不条理な世界の人々の日常をとらえた短篇集。新潮社1700円おやまだ・ひろこ作家。1983年、広島県生まれ。2010年、中篇「工場」で新潮新人賞を受賞して作家デビュー。’13年、作品集『工場』で織田作之助賞、’14年「穴」で芥川賞を受賞した。※『anan』2018年4月25日号より。写真・土佐麻理子インタビュー、文・瀧井朝世
2018年04月24日伝統九谷の技をネイルに5月3日から5日の3日間に行われる「第110回九谷茶碗まつり」に合わせ、石川県能美市の能美市九谷焼資料館で、女性作家が爪に九谷焼の技法を施す「九谷ネイル」が開催される。3日と4日が予約制で費用は5,000円(税込)。5日のみ予約不要となっており、費用は2,000円(税込)となっている。女性九谷作家が日替わりで17世紀半ばに始まり360年余りの歴史がある九谷焼は、絢爛豪華で繊細な技法が特徴の日本を代表する陶芸である。九谷ネイルは九谷焼の色絵のさまざまな技巧をネイルに施すもので、このイベントでは3日が河田里美さん、4日は河端理恵子さん、5日は有生礼子さんが担当する。また、3日と4日は別料金でデザインとパーツの追加が可能。所要時間は45分から1時間程度となっており、ジェルネイルが使用される3日と4日は一般的なネイルよりも長持ちするものとなっている。【5月3日(木・祝)】河田里美さん(花詰)ジェルネイル10本・花詰絵付け2本5,000円(税込)【5月4日(金・祝)】河端理恵子さん(赤絵)ジェルネイル10本・赤絵絵付け2本5,000円(税込)【5月5日(土・祝)】有生礼子さん(赤絵)マニキュア10本・赤絵絵付け2本2,000円(税込)場所: 能美市九谷焼資料館石川県能美市泉台町南56番地申込締切: 5月1日(火)(能美市のサイトより引用)申し込み方法やそれぞれの時間など、詳しい情報は以下URLの能美市のサイトで確認を。(画像は能美市のサイトより)【参考】※九谷ネイル 「九谷茶碗まつり」にて開催!
2018年04月20日今日から「アンジェのあきいろ作家市」第2弾がスタートします。実りの秋の食卓に似合う、人気作家さんのうつわを集めた「アンジェのあきいろ作家市」。第2弾は下記の4名の作家さんたちのうつわをご紹介します。・阿部春弥(あべはるや)さん・石田裕哉(いしだひろや)さん・葛西国太郎(かさいくにたろう)さん・安福由美子(やすふくゆみこ)さん一度売り切れてしまうとなかなか手に入らないものが多いので、気になるものは早めにチェックしてみてくださいね。■ 阿部春弥さんの柔らかなうつわにはいつもの和食をのせて和食が映える、阿部さんのうつわたち。繊細で冷たい感じさえする磁器も多い中で、阿部さんが生み出す磁器のうつわは潔さを持ちつつもどこか優しげなうつわです。「温かみのある、柔らかなものを作っていきたいんです。僕が作っているものは、日常使いのものですから。」いつものおうちごはんを大らかに受け止めてくれる阿部春弥さんのうつわたちは数が少なめ。気になる方はお早めにどうぞ。■ 静かに花咲く石田裕哉さんの花のうつわたち引き算が難しく装飾のやめ時が見つからないこともあると苦笑いをしていた石田さんに今回作っていただいたのは、静かに咲く花のうつわたち。作ったうつわを自宅で使いながら、料理を盛った時の柄ゆきからそのサイズ感までをご自身の目で確認する作業を大切にする、石田さんの丁寧な手仕事です。■ 葛西国太郎さんの色絵豆皿で、食卓に華やぎをアンジェでも人気のHANI(ハニ)の葛西国太郎さんのうつわも再入荷。「使うと陽気に、そして楽しくなるような、気さくなうつわを作りたいと思っています。そして、それをどんどん使って沢山ごはんを食べてほしいです。」テーブルに並べるだけでダイニングが明るくなるような葛西さんの色絵豆皿は、いくつも揃えたくなる愛らしさです。■ まるで時を重ねたような、安福由美子さんのうつわ何年もの歳月を重ねてようやく生まれるような、そんな質感を纏っているのは安福由美子さんのうつわたち。存在感がある力強いそのうつわたちは、不思議とどんな料理も受け入れる懐の深さも持ち合わせます。「ここぞ」という時に出したい、ひとさらです。「アンジェのあきいろ作家市」には、作り手の「今」を閉じ込めた作家もののうつわたちが集まっています。お気に入りのうつわを見つけて、いつもとちょっぴり異なる食卓での時間を楽しんでみてくださいね。=文:宮城= 食のはなし 作り手さんのはなし 器のはなし 【あきいろ作家市はこちらからどうぞ】
2017年09月29日自分が子供の頃、好きだった絵本。お母さんが読んでくれて楽しかった絵本。我が子のお気に入りの絵本。ママたちの実際のエピソードと合わせてご紹介していきます。第3位五味 太郎さんまず第3位にランクインしたのは、五味太郎さん。「子どものころ、絵が好きで読んでいました。日本語が好きになったのはこういった知育絵本からかもしれません。特に『ことわざ絵本』はユーモアのある絵でわかりやすく説明してあり、何度も読み返した覚えがあります」(31歳女性/妊娠7ヶ月)「『正しい暮らし方読本』。ちょっとひねっている内容がおもしろい。自分が子どものころにとても興味を惹かれた」(32歳女性/お子さん2歳)「『あかのほん』。分かりやすいし、テンポよく読めて、絵のインパクトも抜群なので。(33歳女性/妊娠中/お子さん2歳)」など、個性ある絵のテイストや、お話の面白さに魅かれる方が多いようです。target="_blank" rel="noopener">target="_blank" rel="noopener">きんぎょが にげた (幼児絵本シリーズ)第2位かがくい ひろしさん第2位には、2007年発売の「だるまさんが」をはじめとする「だるまさん」シリーズの作者、かがくいひろしさんがランクイン!「『だるまさんシリーズ』は、繰り返しで分かりやすい。絵が柔らかい」(28歳女性/お子さん5ヶ月)「『だるまさんが』は、絵本を読みながらからだを揺らしたり、子どもと一緒に楽しめる」(33歳女性/お子さん11ヶ月)など、絵のテイストや、小さな子どもにも楽しめる「ストーリーの良さ」「面白さ」が人気のようです。target="_blank" rel="noopener">target="_blank" rel="noopener">だるまさんが第1位エリック・カールさんアメリカの絵本作家、エリック・カールさんが第1位!!「『はらぺこあおむし』が好き。自分も小さいころに好きだった絵本を、今自分の子どもに読んであげられることって、とっても素敵なことだと思うからです」(37歳女性/お子さん4ヶ月)「『はらぺこあおむし』は、デザイン、ビジュアル、表現力、感性が刺激される」(34歳女性/妊娠7ヶ月)など、「はらぺこあおむし」の人気が高く、特に独特の「絵のテイスト」に魅力を感じている方が多いようです。target="_blank" rel="noopener">target="_blank" rel="noopener">はらぺこあおむし エリック=カール作読み継がれる名作、新しい名作あなたのお気に入りの絵本作家はランクインしていましたか?♪他にもたくさんのママの声が届いているのでご紹介します。target="_blank" rel="noopener">【やさいさん】(tupera tupera:学研)「tupera tuperaさんは妊娠前からも好きな作家さんでしたが、他にも好きな作家さんがいたのですぐに手に取って買う絵本ではありませんでした。ですが「やさいさん」を息子に読み聞かせると大喜び!その様子を見てから家にはtupera tuperaさんの絵本やグッズがたくさん揃うようになりました♪」(24歳女性/お子さん6ヶ月)target="_blank" rel="noopener">【うさこちゃんのだいすきなおばあちゃん】(ディック・ブルーナ:福音館書店)「私自身が祖母を好きだったのもあり感情移入できる作品なのですが、ブルーナさんのシンプルなイラストやストーリーの中に、深い意味を感じられます」(42歳女性/お子さん0歳、1歳)target="_blank" rel="noopener">【もうぬげない】(ヨシタケシンスケ:ブロンズ新社)「子ども目線で話が進んでいき、思いもよらない展開になるのが面白くて大好きです」(29歳女性/お子さん4ヶ月/2歳)target="_blank" rel="noopener">【ぐりとぐらシリーズ】(中川李枝子:福音館書店)「毎晩寝る前に読んで楽しんでいます。ぐりとぐらシリーズは、お話の中に歌が入っているので、読み手によって拍子が変わるのが子どもには楽しいようです。読んであげているうちに息子が話を覚え、オリジナルのリズムで歌ってくれたのが楽しかったです」(30歳女性/お子さん1ヶ月/4歳)ママが子どものころに読んだ絵本から、近年デビューした作者の作品まで、バラエティに富んだ絵本タイトルと、エピソードが挙げられました。【調査概要】・調査方法:妊娠・出産・育児サイト「ベビカム」で調査(インターネットのフォームより回答)・調査対象:妊活中、妊娠中、育児中の方・実施期間:2017年5月31日~6月6日実施・有効回答数:289件【調査内容】・選択肢: 自由回答・調査項目: 絵のテイスト、ストーリーの良さ、面白さ、テーマ性・ランキングの集計方法: 選択肢の中で回答者が「もっともよく利用する」と答えたものを、多かった順にランク付けしています。また、選んだブランドについて、「よく利用する」理由を、各「調査項目」の中から1つ回答してもらい、そのパーセンテージをグラフで示しています。情報提供元:ベビカム
2017年07月19日原美術館にて、ニューヨーク在住の女性作家、エリザベス ペイトンの日本の美術館では初となる個展「エリザベス ペイトン:Still life静/生」が、1月21日(土)~5月7日(日)の期間で開催となる。エリザベス ペイトンは、90年代半ば、親しい友人からミュージシャンやカルチャー・アイコン、歴史的な人物などを、特有の繊細なタッチの油絵で表現した肖像画が、時代に新風をもたらす“新しい具象画”と称され、近年では風景や静物、オペラからもインスピレーションを得るなどその表現を一層深め、各国で高く評価されている現代アーティストのひとり。本展は、日本では紹介される機会の少なかったペイトンの25年の画業を、作家自身が 選んだ約40点で一望する貴重な機会となる。ペイトンは、同時代の人物も歴史的人物と同じような距離感で描いている。例えば、「ニルヴァーナ」のヴォーカル、カート・コバーン(1967-1994)の肖像は、人物画という面とカートの生死を廻る聖人画という面を併せもっていたり、「Prince Eagle(Foutainebleau)」[プリンス イーグル(フォンテーヌブロー)、1999年]では、歴史あるフランスの城の水路脇を歩く友人を、壮麗な景観を背景にしながら内省的に描くなど、歴史的な文脈を含めたり、背景にすることで、作品世界に奥行きをもたらしている。彼女特有の色彩や繊細な線による美しい肖像画の数々を、ぜひこの機会に鑑賞したい。(text:cinemacafe.net)
2016年12月31日東京都・新宿の東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館は、新進作家の登竜門として知られる公募コンクール「FACE」受賞作家12名の近作・新作約90点を展示する「絵画のゆくえ2016FACE受賞作家展」を開催する。会期は2016年1月9日~2月14日(月曜休館、ただし1月11日は開館)。開館時間は10:00~18:00(入館は17:00まで)。観覧料は一般600円、大・高校生400円、中学生以下無料。同展は、2012年度に創設された公募コンクール「FACE」の3年間の、「グランプリ」および「優秀賞」受賞作家たち12名の、近作・新作約90点を一堂に会し、あわせて過去のグランプリ受賞作3点も展示することで、時代の感覚を捉えた作品の真価を問い、「絵画のゆくえ」を探るもの。「FACE」は、年齢・所属を問わない新進作家の登竜門として毎回数多くの応募があり、出品作品は美術評論家を中心とした審査員による厳正な審査のもと、将来国際的にも通用する可能性を秘めた作品を入選とし、さらに優れた作品には「グランプリ」、「優秀賞」等の各賞を授与しているという。また、同展では、各作家30分のアーティスト・トークが開催される。1月9日は堤康将、永原トミヒロ、近藤オリガ、田中千智、1月16日は川島優、二川和之、眞田勇、西村有、1月23日は宮里紘規、大橋麻里子、和田和子、村上早によるアーティスト・トークが開催される。各日とも開始時間は14:00~。また、休館日に貸切の美術館で、ボランティアガイドと対話をして楽しむ参加型の作品鑑賞会「ギャラリー★で★トーク・アート」が開催される。開催日時は2016年2月8日14:00~約2時間(対話鑑賞と自由鑑賞各1時間程度)。参加費は500円(観覧料不要、中学生以下無料)、参加する際の詳細に関しては同館Webページで確認できる。
2015年12月25日湊かなえ、三浦しをん、角田光代という現代を代表する女性作家の短編小説を映像化するオムニバスドラマ「女性作家ミステリーズ 美しき三つの嘘」が2016年1月4日(月)にフジテレビにて放送されることが決定。それぞれのドラマの主人公に永作博美、土屋太鳳、鈴木京香、そして全話に三浦友和が登場することが明らかになった。「女性作家ミステリーズ 美しき三つの嘘」は、これまで多くの作品が映像化されてきた湊氏、三浦氏、角田氏のいまだ未映像化の短編小説を題材に、“短編”ならではの長さをそのまま活かして映像化。“大人の鑑賞に堪えうるミステリー”をテーマに、現代を生きる様々な世代の女性たちが抱える“秘密”と“ウソ”にまつわる珠玉のミステリードラマが全3作品で紡がれる。第1話は、湊氏原作の「ムーンストーン」(ハルキ文庫刊「サファイア」所収)。主人公の私は、市議会議員の夫が県会議員選挙で落選したことをきっかけに彼からDV被害を受け、抵抗したはずみで夫を殺してしまう。逮捕され警察の取り調べを受ける私のもとに、ある女性が現れて…。主人公の私には永作博美、私を訪ねる女性に檀れい、私を取り調べる刑事役に村上淳、私の夫に滝藤賢一、夫側の弁護士に柄本明という豪華キャスト陣が集結。また、監督は『神様のカルテ』シリーズ『トワイライト ささらさや』などで知られる深川栄洋が務める。永作さんは本作が深川監督とは初タッグとなるが「ある意味、挑戦的な、とても新しいアプローチで描く作品です。深川監督と一緒に、“新しい表現”をお見せできるよう頑張りたい」と撮影を楽しみにしている様子。第2話は、三浦氏原作の「炎」(新潮文庫刊「天国旅行」所収)。毎朝、通学バスで登校する高校生の香川亜利沙の日課は、憧れの先輩・立木尚吾の横顔を眺めること。図書委員の亜利沙は、図書室で仕事をしながらも、テニス部で練習に励む立木の姿を追ってしまう。そんな憧れの立木がある日突然、学校のテニスコートで…。主人公・亜利沙に土屋太鳳、立木の元彼女・初音に門脇麦、立木に村上虹郎、亜利沙の担任で社会科教諭・木下に柄本佑と最旬若手俳優がずらり。土屋さんは「誰の心の中にも“炎”のような何かが必ずあると思いますが、この作品で亜利沙という役としての“心の炎”と一緒に、いまの私自身がこの作品と出会って生まれた“心の炎”を監督や、共演の麦ちゃんをはじめとした素晴らしいキャストの方々に引き出していただいたので、是非この“熱”を感じていただけたら」と熱いコメントを寄せた。そして第3話は、角田氏原作の「平凡」(新潮社刊「平凡」所収)。宮本紀美子は、結婚生活も20年を越えた主婦。紀美子の中高校の同級生・榎本春花は人気料理研究家で、テレビに出ない日はないほどの有名人。彼女の活躍を見るにつけ自分が地味で不幸に思えてしまう紀美子は、春花に会えば、退屈な毎日から脱却できるのではと考え20年以上ぶりに再会を果たす。しかし突然、春花が「わたし、人を殺したかも」とつぶやき…。「平凡」には、主人公・紀美子に鈴木京香、榎本春花に寺島しのぶ、紀美子と春花の高校時代の教育実習生・宮本に染谷将太、紀美子の夫に寺脇康文と、豪華実力派キャスト陣を迎え、『64-ロクヨン-』前編&後編の公開を控える瀬々敬久がメガホンを取る。本作で初共演となる鈴木さんと寺島さんだが、それぞれの印象について「“春ちゃん”のイメージ通りで、台本で描かれているように快活で活発、そして才能あふれる女性ですので、ご一緒していてとても楽しいです」(鈴木さん)、「鈴木京香さんは、いつまでも本当にきれいな方だなと思って、現場でも見とれていました。日傘を差している姿がとても似合う方です」(寺島さん)と明かした。さらに、3作それぞれに、三浦友和が刑事として出演。三浦さん演じる刑事が全く異なる3作品を連結させる役割を担い、各作家の独立した短編作品が、まるでリレー小説のように一連のドラマとして連なりを見せることもこのドラマの見どころの一つといえるだろう現代を代表する女性作家たちの短編を、それぞれの世代のトップランナーと言っても過言ではない女優陣を主演に迎え紡ぎ出す、新春にふさわしい豪華絢爛な本格ミステリードラマの本作に期待が高まる。「女性作家ミステリーズ美しき三つの嘘」は2016年1月4日(月)21時よりフジテレビ系にて放送。(text:cinemacafe.net)
2015年11月25日優れた若手映画作家の発掘と育成を行うプロジェクト「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」が今年も募集を開始した。本プロジェクトは数々の映画監督を輩出しており、今月末公開の『グッド・ストライプス』の岨手由貴子監督、6月公開の『トイレのピエタ』の松永大司監督も本プロジェクトの出身だ。その他の写真「ndjc…」は文化庁の委託事業で、NPO法人 映像産業振興機構が2006年から行っているもの。団体から推薦を受けた作家の中からワークショップ参加者を決め、同一の課題・条件下で5分間の短編を制作。その中から製作実地研修に参加する作家を決定する。参加者はプロのスタッフやプロデューサーの指導・助言を受けながら2か月かけてオリジナルの脚本を執筆し、約30分のオリジナル劇映画を製作する。ポイントは撮影が35ミリフィルムで行われることで、自主映画では予算の関係からなかなか導入することが困難な35ミリフィルム撮影で新作映画を製作することができる。完成した作品は発表会・講評会が行われた後に一般公開され、国内外の映画祭への出品や劇場での上映の働きかけも行われる。本年度の募集はすでに始まっており、今月21日(木)には募集説明会も開始。今年も映画祭や学校などから推薦された才能あふれる若手映画作家が数多く集まる予定だ。
2015年05月19日