吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。たったひとつの思い出を持っていけるとしたら……「もしも無人島にたったひとつだけ持っていけるとしたら、何を持っていく?」このような質問をよく見かけます。ある人は無人島にサバイバルナイフを持っていくと言います。ある人は夢の辞書を持っていくと。どんな状況に陥っても、夢のメッセージは自分にとって最善のアドバイスを送ってくる。夢に対する深い信頼があるからこその選択です。「家が火事になったときに、何を持ち出すか」こんな質問もあります。貯金通帳と印鑑、現金、携帯……。究極の状況に陥ったときに自分がどういう行動に出るかわからないのですが、いざというときのために時々考えることは必要かもしれません。東日本大震災の年、石巻で若いお母さんと出会いました。地震が起こったとき、生まれて数ヶ月の赤ちゃんと実家にいたそうです。津波が押し寄せ、両親と共に流され、しっかり抱いていた赤ちゃんも波にのまれてしまいました。最後にお父さんが「笑って生きなさい」と言って、見えなくなってしまった。なんという愛でしょうか。赤ちゃんは数日後に見つかったそうです。その人は、携帯の中に保存している赤ちゃんの写真を見せてくれました。「これが、たった一枚残った写真です」友人に送ったその写真だけが残ったのでした。年をずいぶんと重ねたからか、自分にいつ何が起きても不思議はないと思うことが多くなりました。あたりまえのように日常を送っていますが、あたりまえのことなど一つもないことに気づきます。強い地震が起こればライフラインが止まり、食料の供給も滞る。異常気象で作物に被害が出ることもある。スーパーマーケットの棚に物が溢れているのは、決してあたりまえではないのです。すべて与えられたもの。恵みです。心からそう思えると、何もかもがありがたい。感謝しかありません。私たちの身に起こることも、恵みだと捉えることができるかもしれません。つらい体験をその後の生き方の強さにできたとき、その体験も恵みになる。人生には厳しいことがありますが、その向こうには光がある……と信じています。私が問いたい究極の質問です。「大切な思い出、大切な光景をひとつだけ持って旅立てるとしたら、何を持って行きますか?」この『ひとつの大切な思い出』は、人生の宝物、まさに胸を震わす恵み、幸せ感に満たされます。どの思い出を持って行こうか、慌ただしい季節、あたたかい部屋でゆっくり思いを巡らす時間を作ってみてはいかがでしょうか。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年12月19日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。私のこの両手で何ができる?〜クリスマスに思うこと〜12月、クリスマスが近くなると思い出すことがあります。娘が小学校2年生の頃、16年前のある日、学校から帰ってくるなり娘が言いました。「パパの古い靴下ある?」話を聞いてみると、学校の帰り、駅にホームレスのおじさんがベンチで寝ていたそうです。そのおじさんはいつもそこにいて、寒いのに裸足だった。パパの靴下をあげてもいい?と。寒そうにしているのに、誰も何もしない。どうして助けないの?娘なりの憤りを感じているようでした。靴下を集めるためのチラシを作って、駅で配ろうかな。自分にできることは何か、考えをめぐらせていました。日々の生活の中に、考えるきっかけになることがたくさんあります。大人は面倒なことであればスルーすることができ、なかったことにしてしまうこともできます。でも、その寒そうなホームレスのおじさんを見てしまったことを、子どもはスルーすることはできません。社会の中での正義感が芽生えた出来事だったのだと思います。その正義感をつぶさないように、いい方向へ持っていくにはどうしたらいいのか。助けたい!という気持ちを尊重しつつ、「何かをあげることはその時は助かるけれど、根本的な解決にはならないのではないか」ということを話しました。その上で、できることを考えよう、と。子育てにおいて、子どもに与えられたテーマは、同時に親の力量が試されるテーマです。受容する力、忍耐力、クリエイティビティを同時に発揮しなければならない。生きる力を与え、培っていくための、時には水先案内人になる……まさに親の成長ポイントです。当時、ここはとても大事なところだなと思ったことを、よく覚えています。我が家では、その年のクリスマスにはケーキを買うのをやめました。そして、ケーキを買うささやかなお金を教会に献金することにしたのです。我が家の近くの教会では、毎年クリスマスにホームレスの人たちの炊き出しをするのです。今、私たちにできることは何?娘とふたりで考えた『できること』でした。そのクリスマスから16年、今年も無洗米とお餅を教会に届けます。靴下をあげるだけでは解決しないのと同じように、一回の炊き出しの少しの足しになるくらいのお米が役に立つのか。自己満足、罪滅ぼし……そんな言葉が胸をよぎります。自分のこの両手で何ができるのか。クリスマスは、そんなことを考えるときでもあるのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年12月12日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。『よくあること』という危うさ15歳になる我が家のトイプードル、1ヶ月ほど前に血便が出ました。かかりつけの病院で診察してもらったところ、血便が続くことがなければ、『老犬ではよくあること』だという診断でした。その場で結果が出る血液検査では、もともと数値が高くなっていた腎臓の機能をチェックし、その時の診察は終わりました。それから少しずつ元気がなくなって、何かいつもとは違う感じに。このままだと危ないのではないか。妙な直感が働き、少し遠方なのですが自然療法なども取り入れた治療をする友人のドクターに診てもらうことにしました。詳しい血液検査をし、レントゲン、エコー検査で、いくつもの病気を抱えていたことがわかったのです。中でも膵炎の数値が異常に高く、1週間遅かったら危なかったと言われました。なぜ膵炎になったのか。遡って考えてみると、1ヶ月の血便が原因となった可能性があったのです。『老犬ではよくあること』という言葉が、何度となく頭に浮かびます。よくあるからそのままにしていていいのか。よくあることだから、気にしなくてもいいということなのか。『よくあること』が逆転すれば、『よくないこと』になる。もしかしたら今回のように、日常的に意識することなく受け流している言葉が多いのではないか。例えば「このくらいなら……」という言い方があります。「このくらい」にはどのくらいの許容範囲があるのでしょうか。「このくらい」を超えるのは「どのくらい」なのか。曖昧な表現でも通じ合えるのは、日本語、日本人の感性の特徴です。曖昧だからこそ味わいがある。はっきりしなくても通じ合うものです。あうんの呼吸、言わずもがなという言葉と心の文化を廃らせたくはありません。『よくあること』を、本当の『よくないこと』にしないためには、意識のフォーカスを定めることが大切です。やり過ごしていいのか、はっきりさせた方がいいのか。野性の勘を発揮すること!『よくあること』をぼんやりとやり過ごしたために、我が家のトイプードルは命の危険を招いてしまいました。直感は、野性の勘。ドクターを変えなくては!という野性の勘で『よくないこと』を避けることができたのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年12月05日株式会社リイド社(所在地:東京都杉並区、代表取締役社長:齊藤哲人)は2021年11月30日(火曜日)に、『賭博師たち』(バロン吉元)を刊行いたします。『賭博師たち』書影丁半、麻雀、競輪、競馬、花札、ポーカー、パチンコ、競艇……勝って、負けて、引き分けて。逃げて、まくって、また逃げて……みんなそうして生きている。昭和40年代、ギャンブルに泣きギャンブルに生かされた市井の人々を描く、〝画俠〟バロン吉元の傑作シリーズ。収録作品賭博師たちかあちゃんと馬まくり屋勝負師金ちゃんパチンコ先生ポーカーフェイスギャンブル村麻雀バカパチンコ先生こんにちはくりからもんもんしん坊副将あるストリッパーのギャンブル人生(全13編)『賭博師たち』『賭博師たち』試し読み:トーチweb『賭博師たち』トーチweb バロン吉元 画俠伝 : 著者バロン吉元(ばろん・よしもと)旧満州生まれ、鹿児島県指宿市育ち。1959年、漫画家デビュー。その後劇画ブームの全盛期を築いた一人となり、代表作である『柔俠伝』シリーズ、『賭博師たち』、『どん亀野郎』他、多数の作品を発表。しかし1980年、全ての連載を終わらせ単身渡米。翌年にはマーベル・コミックで執筆。帰国後は漫画家としてのキャリアと並行し、以降30年にわたりバロン吉元の名を伏せ絵画制作に没頭。2015年、雅号を「バロン吉元」に統一。漫画作品をまとめた初の画集『バロン吉元 画俠伝』(リイド社)をリリース。画業60年を迎えた2019年には日本漫画家協会賞文部科学大臣賞を受賞し、弥生美術館での「バロン吉元☆元年」他、多数の企画展を開催。2020年にはアメリカのGR2ギャラリーにおける個展 や、フランス・アングレーム国際漫画際でのライプペインティング、イタリアでは翻訳本『十七歳』が発売され、現在に至るまで国内外で精力的に活動中。概要作品名:賭博師たち著者名:バロン吉元装丁:中山望ISBN:978-4-8458-5815-6ページ数:432p判型:A5発行日:2021年11月30日定価:800円(税込)社名: 株式会社リイド社所在地: 〒166-8560 東京都杉並区高円寺北2-3-2代表: 代表取締役社長齊藤哲人創業: 1960年4月設立: 1974年11月事業内容: 出版事業URL : 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2021年12月01日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。ごはんを一緒に食べるという幸せ西島秀俊、内野聖陽主演のドラマ『きのう何食べた?』が好きすぎて、ネットフリックスで繰り返し観てしまいます。年々、ハラハラする映画が苦手になり、悪い人の出てこない、誰も死なない、何も面倒なことが起こらない映画ばかりを。中でも『きのう何食べた?』は、時にBGMのように、掃除しているときにもつけていたりします。シロさんとケンジというゲイのカップルのほろ苦く、あたたかい日常の中で、愛するということ、人を大切にするということ、家族というものについて改めて考えさせられることがある。そしてもう一つ、シロさんが毎日おいしいごはんを作り、それをケンジが「おいしい!」「幸せ!」とうれしそうに食べる。その料理を作るシーン、食事のシーンが見所です。大切な人を、大切にする。あたりまえのことのように思えるかもしれませんが、本当にできているかどうか、ふと考えます。シロさんのごはんを、ケンジはただ「おいしい」だけではなくどんなふうにおいしいか、ということを言葉にする。例えば、「人参とジャガイモにしっかり味がしみていておいしい」と、具体的に表現します。「どんなふうに」ということを伝えるここが大事なポイントです。褒めるとき、感謝を伝えるときにひとこと添えることで、より心が伝わります。「今日は会えてうれしかった」「その色、とてもお似合いで素敵です」というふうに。「そのワンピース、素敵」と言うだけだと、ワンピースだけを褒めていることになる。「とてもお似合いで素敵」というと、ワンピースと着ている人両方を褒めていることになるのです。日々、いろいろなことがあります。人間関係、仕事、ふと考えてしまうこと。気持ちが揺れることもあるし、イライラしてしまうこともある。そんなときは、大切な人を大切にするのです。身近な人に八つ当たりをするのではなく、大切にするのです。または何事も丁寧に、大切に取り組む。すると、心は落ち着き、清らかな流れができます。その清らかな流れが自分の中に流れるのを感じてみましょう。幸せは日常の中に。一緒にごはんを食べるという何でもない日常のありがたさ。ごはんを作るのは愛なのです。食べる人のことを思いながらおいしいものを作る幸せ。ごはんを一緒に食べることの幸せ。シロさんとケンジは、日々の中にあるささやかだけれど大切な、愛することの幸せを私たちにお裾分けしてくれているようです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年11月28日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。波打ち際のビニール袋自分の家の庭に、ゴミを捨てるか。家の中のゴミを、そのままにしておくか。ゴミ屋敷という特別な状況は別にして、さて多くの人はどうするでしょうか?先日、千葉の鴨川に姪の子どもたちを連れて一泊。海の前のホテルだったので、朝、散歩しようと砂浜に降りていくと……引き潮の波打ち際に大きなビニール袋が。そして砂浜をよく見てみると、さまざまなゴミが散在していました。ホテルのバイキングで使うビニール手袋、山葵、醤油の小さな袋、ペットボトル、プラスチックのカップ、お菓子の袋……拾っていくと、15分もかからないうちにビニール袋はいっぱいになりました。バイキング用の手袋や山葵、醤油がなぜ砂浜に落ちているか謎です。食べ物を持ち出して、砂浜で食べようとしたのでしょうか。漂着ゴミの状況も惨憺たるものです。以前、沖縄の久米島へ行ったとき、白砂のビーチにはなぜこんなものが?と思うようなゴミが打ち上げられていました。ペットボトル、醤油の瓶、お酒の瓶、洗剤の容器、注射器、蛍光灯、カップラーメン、お菓子の袋、漁網、ブイ、浮き……。そのほとんどが中国、韓国からのものでした。海洋プラスティック問題が大きく取り上げられてはいますが、『人間たち』はどのくらいの危機感を持っているのでしょうか。国連の持続可能な開発目標SDGsでは、2025年までにあらゆる種類の海洋汚染を防止、大幅に削減する、と謳っています。国や市町村、市民団体で取り組むことももちろんですが、「ゴミを平気で捨てる」というのは、個人の意識の問題です。美しい海にゴミを捨てることは平気なのか。胸は痛まないのか。自分の目の前からゴミがなくなればいいと思っているのでしょうか。犬の散歩をしながら、ゴミを拾っているおじいさん。家の前を掃きながら、両隣の家の前の掃き掃除をしているおばあさん。そんな人生の先輩の姿を見ていると、このような美しい気遣いをつなげていかなくては、と思います。失われた精神性を取り戻すのは、とても難しい。例えば「はしたない」という言葉が聞かれなくなるとその精神性まで失われ、はしたないことへの箍(たが)が外れるのです。姪の子どもたちと一緒に、砂浜のゴミ拾いをしました。遊びたかっただろうに、一生懸命に拾ってくれました。環境に対する意識を高めるには、理論や単なる道徳心ではなく、こうした日頃からの実践的な積み重ねが大切なのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年11月21日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。若さを保つ「かきくけこ」若さを保つために「かきくけこ」を大切にして毎日を過ごす。これが健康と幸せの秘訣。今年90歳になった大村崑さんから伺った言葉です。大村崑さんと言えば、「元気ハツラツ!オロナミンC」「うれしいと、メガネが落ちるんですよ」というCMでおなじみです。昭和のCM、若い人もどこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか。自分が携わったCMに負けないように、ずっと元気でいたい。4年前、86歳からジムでトレーニングを始め、今の健康年齢は60代半ばだそうです。若さを保つための「かきくけこ」。「か」は感謝、感動。「き」は興味。「く」は工夫をする。「け」は健康に。そして「こ」は恋をする。感謝できると、心がありがたさで満たされます。感動は心が震えます。工夫をするには頭を使うし、アイディアを考えるとまた楽しいことが増えるでしょう。健康であることは、もちろんのこと。そして恋をする。心がときめくと、何だか細胞が活性化するような気がします。そして、毎日に喜びやどきどきをもたらします。恋といっても、若い頃のような恋でなくてもいいのです。アイドルでも俳優でも、アスリートでも、大好きな人がいるだけで楽しくなります。それなら、いろいろな場所にお気に入りの人がいるのもいいですね。恋とは言えませんが、私にもアスリートや俳優に特別なお気に入りが何人かいます。そんなお気に入りが結婚したときには、軽い喪失感を味わってしまう。これはある意味疑似恋愛のようで、年齢とともに鈍くなってしまいそうな感受性を保つための苦肉の策と言えなくもありません。それに作詞家ですから、心が柔らかく動くことは必須なのです。恋する気持ちを大切にしていると、きれいでいたい、かっこよくいたいと思うものです。外見だけでなく、心も魅力的でありたい。そんなふうにポジティブな欲も出てくるのです。アメリカの海洋学者であるレイチェル・カーソンは、子どもたちが持っているような『Sense of wonder』(神秘さや不思議さに目を見張る感性)を大切にすることを提唱しました。子どもたちの世界は生き生きとして、新鮮で、毎日が驚きであふれています。しかし、大人になるにつれ多くのものを失っていく中で、世界に向けて窓が大きく開いている。そして小さなことも喜び、感動を覚える。理想のベクトルをほんの少し上げるだけでいいのです。するといつも喜んでいる自分でいられる。「かきくけこ」心して!※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年11月14日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。自分を愛するということ自分を愛するように、誰かを愛する。まだ作詞家になって3、4年目の頃だったか、ラブソングを書いているときに胸に落ちてきた言葉です。結ばれない恋であったけれど、最上級の愛し方はどういうことだろうと考えていたときに、ああそうか、自分を愛するように愛していくことなのだと気づいたのでした。自分を愛するように?ここに疑問符をつける人は多いかもしれません。このとき私が考えた最上級の愛し方は、まず自分を愛することが前提なのですから。「自分を愛する」ということは「自己愛」「自己中心」「自分大事」とは異なります。ここを同じことと考えると、自分を愛するように誰かを愛するというのは、とても傲慢な感じがしてしまいます。私たちはこの世界において唯一無二の存在です。誰かになりたくてもなれない。私たちは『自分』しか生きることはできません。それを否定したり、卑下したり嫌っていては、いったいどう生きたらいいのか。自分に自信があれば、自分を愛することができるのか。自分に自信を持つことと愛することは異なります。ダメダメな自分であっても、自分を愛することです。唯一無二、かけがえのない命としての存在であること。それを否定するのは、私たちをお創りになった創造主を否定することと同じです。まず自分を愛すること。大切にすること。世界にたった一人きりになっても、誰にも理解されなくても、愛することです。ですから、その自分と同じように誰かを愛するということは、最高の愛し方なのではないか。若かりし日の私はそう考えました。自分を愛するとはどういうことでしょうか。自分と対話し続けること。本当に自分が望むように生きること。私たちは本音で生きているような感覚でいますが、本当の本音は意識の奥の奥にあるような気がします。以前、質問を重ねながら本当に望んでいることを引き出すセッションをしたことがありました。「仕事頑張りたい」「きっとできる」「でも不安もある」……などと、思っていることを掘り下げていったとき、最終的に私が行き着いた答えは、何と「楽したい」でした。楽したい、と言葉にできて、とても気が楽になりました。不本意なことはしない。そう思えたことも、自分を大切にすることだったと思います。自分を愛するように、誰かを愛する。自分を愛するように、世界を愛する。愛についての考察はまだまだ深くなりますが、まず自分の心の声に耳を傾けることから始めたいと思います。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年11月07日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。人生の『雨の夜』もマイペースで雨の夜の、高速道路を走るのが苦手です。苦手と言うより、「怖い」と言った方がいいでしょうか。車は好きですし、運転することは大好きです。大学生の時に免許をとってから40年以上、車はなくてはならない相棒のようです。20代の頃は少々無茶もしたし、思い立って真夜中に首都高速を走って気分を変えたりしたこともありました。怖いものがなかったとはあの時代のこと。スピードを出すことが心地よかった。あれこれと悩んでいたことがちぎれていくような感覚があって、万能感に満たされるような感覚もありました。怖さを感じることがなかった、怖さ。若いということは、そんな怖さがあることすら知らない時代なのかもしれません。だから、冒険という名の無茶もできた。海外の知らない街を歩くことは怖くなかったし、森の中に一人で入っていくことも怖くなかった。それが、子どもが生まれてから、夜道を歩くことが怖くなり、車でスピードを出すことが怖くなった。ひとりで海外にいったときも、夜は早々にホテルに戻ったり。臆病なくらい、慎重に動くようになっていました。そんな自分を自覚したとき、自分のためだけに生きてきた時代が終わったことに気づいたのです。人生の歩き方にも、それぞれのスピードがあり、それぞれのタイミングがあります。アクセルを踏む時期、緩める時期。無意識のうちにそのように動いているのですが、時にアクセルを踏む時期ではないのに踏み続けてしまうことがあります。自分の中の焦りや欲が先走ってしまう。すると、物事がボタンを掛け違えたように空回りしてしまうものなのです。若い頃にはできませんでしたが、自分がいまどんな流れの中にいるのかを客観的に知ることは大切です。そして、しなくてもいい無理を課さないこと。そんなことを思ってか、最近の私はゆるゆるとしたペースで歩んでいて、こんなのんびりとしていていいのかしらと思いつつ、アクセルを踏み込むタイミングが来たら逃さないように。この感覚は運転しているときにも通じます。法定速度で走る快感、高速道路ではどんどん抜かされますが、我が道を淡々と進んでいる感覚を覚えます。早いスピードの『怖さ』を避けるためには、それがいちばんなのです。感覚を研ぎ澄まし、自分自身に寄り添いながら進んでいく。人生の『雨の夜』も、無理せず、自分のペースを守りながら。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年10月31日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。『足跡』を残すということ先日、急逝した画家の友人のアトリエを訪ねました。ご家族のご好意で、絵を譲っていただけることになったのです。亡くなった後に、何箇所かに保管してあった作品をまとめたのか、アトリエは膨大な作品で埋め尽くされていました。天井に届きそうな大作も数多くあり、その仕事量に圧倒されました。どれだけのエネルギーと情熱で制作に取り組んでいたのか。いつも穏やかな友人の中にあったであろう表現への思いを垣間見た気がしました。もちろん、それは私の想像など及ばないものだと思います。引き出しの中には、描きかけのスケッチやモチーフを描き出したものなどがぎっしり入っていました。それは、友人の『息吹き』でした。完成させるまでの思考、彼の中から出てきたモチーフたち。想像、創造をめぐらしていた時間が、満杯になった引き出しからこぼれ出たよう。額に納められた作品はもちろんですが、未完成のものたちも、彼が生きた証そのもの。静かに、だけど生き生きとそこにあったのです。ものを創ることをしていれば、『何か』を残すことができます。生きた証を残すことにこだわる必要などありませんが、人はどこかにその足跡を残していくものです。その人の本棚を見れば、何を好み、また何を考え、悩んでいたかが見えてくるかもしれません。それも証になるでしょう。その人の言葉も、証になるかもしれません。ひとことかけた言葉が誰かの心の支えになったのなら証になるのでしょう。そのように考えていくと、私たちは日々足跡を残しながら生きているのかもしれません。誰かに向けたものでも、意図しているものでもなく、ただ残っていくもの。それを後に人が足跡、証として受けとるもの。いつか時が経ち、それは波が砂浜の足跡をさらうように消えていきますが、残ったものが優しいものであればいいなと思うのです。一期一会の出会いも、もしかしたら足跡になるかもしれない。ときどき、そんなことに思いをめぐらせます。友人のアトリエから連れ帰った深い蒼の森の絵を仕事部屋の机の前に掛けました。言葉を紡ぐということ、それは表現の森の中を探求することでもあります。友人の静かな情熱は、その尊さを教えてくれました。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年10月24日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。『物語』が心を守る「恐れや悲しみを受け入れるために、物語が必要になってくる」臨床心理学者の河合隼雄さんと作家の小川洋子さんの対談本『生きるとは、自分の物語を作ること』(新潮文庫)の中で、お二人はこう話されています。作家の柳田邦夫さんの息子さんが脳死状態となり、亡くなります。臓器提供を希望していたことから息子さんの臓器は必要としている人へ移植されることになります。そのとき柳田さんは、息子の命がどこかで引き継がれたのだと思う。こう思うことによって、受け入れがたい現実と折り合いをつけようとする。これが、私たちが作り出す『物語』です。SNSで多くの面識のない人たちとつながります。友人たちともつながります。Facebookを始めて7、8年経ちますが、何人もの友人たちが旅立って行きました。若くして重篤な病気を患い逝ってしまった人、ある日突然逝ってしまった人、ありし日のままSNSに足跡を残して。ある友人は、メッセージを投稿した翌日に逝ってしまいました。1か月経った今もとても不思議です。信じられない……と簡単に言えません。まだ、『物語』を作れずにいます。なぜこんなことを思い出したかというと、ときどき風が胸の奥に吹き込んでくるように、そんな人たちのことをふっと思い出すのです。そのたびに、ああ、もういないのだなあ、と改めて思います。それは、楽しい夢から覚めたときのように、軽い落胆を伴います。でも、(もしかしたらどこかで生きているかもしれない)と、ふと思う。そんなパラレルワールドがあるかもしれない、と思ったりするのです。パラレルワールドとは、『ある世界から分岐し、それに並行して存在する別の世界』。そんな世界が存在するとは証明できないけれど、存在しないと証明することもできない……と、科学の立場では言われているそうです。小さい頃、もしかしたら1年先の自分、1年前の自分がどこかにいるかもしれない、と真剣に思ったものでした。1分先の自分も、1分前の自分も。宇宙はミルフィーユのように時空を超えた世界が重なっているのではないか。そんな空想にふけったものでした。考えてみると、SNSの空間も別次元のような気がしてきます。そこに旅立っていった人たちは存在していて、亡くなったことを知らない人たちが毎年「お誕生日おめでとう。素敵な一年になりますように」とメッセージを入れる。ある意味、この空間もパラレルワールドなのかもしれません。忘れられない人が心の中に生き続けているとしたら、それもパラレルワールドなのかもしれません。私たちの心には、物語が必要である。恐れや悲しみを受け入れるために、心の奥にパラレルワールドを描いているといいかもしれません。それが私たちの心を守ることになるように。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年10月17日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。言葉が自分を守るということ「はずかしいという心は自分を守る」数学者の岡潔氏のこの言葉に出会ったとき、思わず膝を叩きたくなるようなインパクトを覚えました。消えてしまいたくなるほどの『はずかしさ』。はずかしくて、一歩踏み出せないことも、踏み止まることもあります。この場合の『はずかしいという心』とは、発表会ではずかしくて舞台に上がれない、というのとは少し違います。生き方、行動、態度、言葉、身嗜みなどにおいて、自分のはずかしい点に気づくことが大切であると、岡潔氏は主張します。はずかしいことをしてしまっても、はずかしいと自覚できたなら改善できる。はずかしいと思ったら、やらない。はずかしいという心は、ストッパーになる。このような意味で、「身を守る」ということになります。はずかしいという自覚がないと、自分自身を卑しめていくことになる、というわけです。自分にとって何がはずかしいことなのか。自分自身の基準をしっかりと持つことが大切なのです。この感性は、美意識とよく似ています。何を美しいと思い、何を美しくないと思うか。例えば、ある人にとっては『人と比べるのは美しくないこと』であっても、人によっては無自覚のまま人と比べて優越感や劣等感を思えているかもしれません。それを美しいと思わなければ、はずかしさを感じることなく優越感や劣等感に自分を明け渡してしまうのです。電車の中でお化粧をするのも、自慢話ばかりをするのも根は同じ。そのような行動が美しいか美しくないか。自分の中の基準、価値観によって、行動も言動も変わるのです。私は小さい頃、両親から「はしたないことはしない」という言葉をよく聞きました。お行儀悪くしていると、「はしたない格好はやめなさい」と注意されたものです。ところが、最近「はしたない」という言葉を聞きません。若い人たちに「はしたない」という言葉を知っているか尋ねてみると、ひとりも知らなかったのです。美しい日本語が失われていきます。すると、言葉に宿っていたその精神も失われ、はしたないことが増えるのです。これは由々しきことではないでしょうか。「はずかしいという心は自分を守る」そして、岡潔氏は次のように続けます。「思いやりは慈悲の心を育てる」わかっていたつもりでも、できていないことがたくさんありますね。言葉で自分を守る。この機会に、自分の言葉を改めて振り返ってみようと思います。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年10月10日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。梅干しひとつ〜26歳の小さな船出「嫁入り前の娘が一人暮らしなんて許さん」作詞の仕事を始めて2年、26歳のときのこと。何でも『反対』する父に、一人暮らしをしたいと話すと、予想通りすごい剣幕で否定されました。これまでも自転車を買ってほしい、と頼んでも否。免許を取りたいと言っても否。最終的には自転車も免許も許してもらえたのですが、とにかく一度は否定するのです。生活のリズムが家族とずれること。集中する環境に身を置きたいこと。一人暮らしをする必要性を訴えて、ようやく許しが出たのです。考えてみれば、自由に……というか、勝手に出ていけばいい話なのですが、その頃の私は親の反対を押し切る勇気がありませんでした。1980年代の半ば、時代はバブル経済で湧いていました。不動産の価格はどんどん上がり、都心のマンションの家賃もずいぶん高いという印象がありました。まだ駆け出しの作詞家で、果たしてその先やっていけるのかどうか。2年間の広告代理店勤めで蓄えた少しばかりの貯金で小さなワンルームの部屋を借り、夢とやる気だけを抱えた船出となったのでした。今頃、なぜ30数年前のことを思い出したのかと言うと、ちょうどその頃に撮った、なくしたと思っていたアーティスト写真が書類の中から出てきたのです。少し上目遣いでカメラを見据えている26歳。ひとり暮らしを始めた頃の自信のなさと、怖さを知らない強さのようなものが同時に感じられて、ずいぶん遠くまで来てしまったなあと思ったのでした。怖さを知らない強さを過ぎ、怖さを知らない怖さを味わい、そして少々の怖さを何とも思わなくなり……今は、本当の怖さをまだ味わっていないのではないかと思うこともあるのです。年を重ねるというのは、会ったことのない自分に出会っていくこと。体の変化も心の変化も、どんなことにチャレンジするのかもまだわかりません。確実に言えるのは、これまで体験してきたこととは違うフェーズに入っていくということ。それも嘆くのではなく、面白がるしかありません。本当に、ずいぶん遠いところまで来てしまいました。1枚の写真はタイムマシンのように、時空を超えていきます。一人暮らしを反対していた父は、引っ越しを率先して仕切り、手伝ってくれました。そしてみんなが帰り、夕方、ひとりになった時のこと。そうだ、ごはんを炊こう。冷蔵庫の中に、実家から持ってきた南高梅がありました。炊きたてのごはんに梅干しひとつ。淋しさとわくわくと、やっていけるのかなあという不安も味わいながらの夕餉。26歳の船出でした。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年10月03日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。『言葉』の心を生きる言葉にはそれを現実にする霊力、『言霊』が宿っていると言われます。日本はいにしえの時代から、『言霊』によって幸せになる国であると考えられてきました。万葉集に収められた柿本人麿呂の歌があります。「しきしまの大和の国は言霊の幸(さき)わう国ぞま幸(さき)くありこそ」また山上憶良は、「神代より 言ひ伝て来らく そらみつ 倭の国は 皇神の 厳しき国 言霊の 幸はふ国と 語り継ぎ 言ひ継がひけり」と詠んでいます。言葉の霊力とは何でしょうか。ポジティブな言葉にはポジティブなエネルギー。ネガティブな言葉にはネガティブなエネルギーがあります。「お前はダメだ」と言われてうれしくなる人はいないでしょう。「あなたは大丈夫」と言われたら、また頑張れるような気持ちが湧いてくるものです。言葉は単なるコミュニケーションのツールではない。そこには『心』があり、言葉を交わすというのは心を通わせていることでもあるのです。言葉に言霊があるということは、その言葉が使われなくなったらその『心』も失われるということです。新しい言葉、造語ばかりを追っていると、長い歴史の中で日本人が大切に貫いてきた精神性を失いかねません。例えば「はしたない」という言葉を、若い世代の人たちはどれだけ知っているでしょうか。私は子供の頃、親からよく「そんなはしたないことはやめなさい」と言われました。「はしたない」とは、慎みがなく、見苦しいという意味です。決して古典の言葉ではありません。「はしたない」という言葉が聞かれなくなったと共に、はしたないことが多くなった気がしています。見苦しさ、みっともないこと。何事も『個人の自由』、見苦しさを選択するのも自由です。でも、それは大きくいうと日本、日本人を劣化させていることにもつながるのではないか……大袈裟ですが、そんな風にも考えてしまいます。女性は女性らしく……などと、まったく考えていませんが、「たおやか」「しなやか」という言葉が、実はこれからの時代をサバイバルするキーワードではないかと思います。声を荒げて女性の権利を守る時代は終わりました。どんなに雪が降っても、風が吹いても、柳の枝は折れることはありません。柳に雪折れ無し。それが「しなやか」ということと、私は考えます。どんな逆風が吹こうとも、たおやかでしなやかである。そう在るためには、自分の中心に凛として立っていること。それが、本当の強さだと思います。女性の時代と言われています。たおやかに、しなやかに。その言霊がもたらすエネルギーこそ、これからの時代を「まろやかに」していくと思います。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年09月19日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。最後に何を……母は最後に何を食べたのだろう。お線香をあげながら、ふと思う。5年前のクリスマスイブの朝、介護ホームの部屋で脳梗塞を起こして倒れ、病院へ。翌日に意識が戻ったとき、母は言葉と右半身の自由を失っていました。話しかけてもきょとんとした顔をして、(この子はいったい誰だろう)と探るように私を見る。そんな母の姿を目の前にし、母の人生はまったく違う次元へ行ってしまったのだと思いました。倒れる前日、母はどんな夕食を取ったのだろう。それを妹は確認していました。ホームで出されたのは鯖の味噌煮だったそうです。母は鯖の味噌煮が好きでした。でも、ふと何だかかわいそうな気がしました。おそらく、そんなに話し相手もいなく、ひとりで食べていたのではないか。おいしく食べられたのだろうか。亡くなって5年も経ってからそんなことを思い出してもどうにもならないことはわかっていますが、それが人生最後のちゃんとした食事だったのかと思うと、胸の奥からやりきれなさが湧き起こるのです。きょとんとした顔をして私を見ているとき、何を思っていたのか。何も、ものを言わない母に責められているような気になり、後悔ばかりが次々と波のように心に打ち寄せたのでした。最後に……誰もが、いつかはこの言葉に出会います。そして、いつが最後になるのか誰もわからない。だからこそ、「いま、ここ」にしっかりと立ち、味わう。母も、その人生のシナリオを味わって生ききったのだと。若くして逝った友人たちも、神様と約束してきた時間を味わい尽くしていたのだと。そう思うことで、私は大好きな人たちの死を受け入れることができたのです。やれることを、やる。精一杯、やる。ただこれだけです。そして、命をつなぐ食事を、美味しくいただく。白いご飯とお味噌汁と梅干しだけでも、おいしく、ありがたく。そんなささやかなことも、人生という物語のひとつの支えになるような気がしてなりません。脳梗塞の治療を終え、母は療養型の病院に転院しました。しかし2ヶ月後、その病院でもできることはなくなり、老人病院へ移りました。そのときは、もう何も受け付けない状態になっていました。「でも……最後の最後に口にしたのは、千疋屋のマスクメロンのジュースだった」母は、妹が持っていったメロンのジュースを少し飲んだのでした。このことを聞き、ほっとしたのです。母はメロンが好きでした。おいしく、少しだけでも味わっていたのではないかと。最後に何を……思いをめぐらせながら、母に会いたくてたまらなくなりました。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年09月12日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。人生を変えたい…そんなときには八ヶ岳へ、軽井沢へ、友人たちが相次いで移住しました。また海の近くに部屋を借り、週の半分はそちらで過ごすことにした友人もいます。今の社会状況の中で、東京にいることが息苦しくなったこと。リモートでも仕事ができ、東京への日帰りも楽なこと。自然の中でゆったり暮らすこと。その理由はさまざまですが、都会でのライフスタイルと、自分の年齢と『思い』の間に溝が出来たのだと思います。その溝を解消するために迷いなく行動できたのは、素晴らしいです。人生を変えたい。もっと違う人生があるのではないかと可能性を考えること。30代の初めの頃、仕事も順調で人から見えれば何の不足もないように見えたであろう頃、私の中では(このままの生き方でいいのだろうか)という思いがつのりました。今のこの生き方、やり方が、果たして自分の心の成長につながるのか。そこにどうしても確証を持てなくなっていたのです。何かが違う。そんな違和感の『何か』がわからなかった。その『何か』がわからない限り、先に進めない気がしたのです。本を読み、講演会を聴きに行き、セミナーを受け、アートセラピー、ドリームセラピーを学びました。その答えは自分の外にあるのではなく、自分の中にある。すでに自分はその答えを知っている、と信じていたので、ひたすら自分を掘り下げる日々。そして、あるきっかけではっと気づいたのは、「自分に必要な学びは誰かに委ねられるようになること」ということでした。それは、誰にも頼ってはいけない、すべて自分でしなければならない、という無意識で決めて生きてきた私にとっては、大きなチャレンジです。そしてそんな人生を変え、人として成長するために結婚しようと決めたのでした。誰かに頼る、委ねるためには、結婚することだと思ったのです。結婚して25年が過ぎました。二人とも60歳を過ぎ、それぞれの仕事を忙しくこなしています。そろそろ、変化を求めたい気が湧き始めました。元気なうちに……というのも正直なところです。暮らし方を変えたときに、自分の中にどんな変化があり、世界をどんなふうに感じるのか。どんな作品を書くのか。見たことのないものを見たい、という好奇心がある限り、人生を変えるチャンスはいくらでもあるはずです。移住だけでない、意識を変える、ものの見方を変えるだけでも、新しい扉を開けることができると信じて。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年09月05日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。90歳、父の覚悟90歳でひとり暮らしをしている父の部屋の大掃除をしました。水回りはプロの業者にお任せし、いるもの、いらないもの、父がシンプルに暮らしやすくするための大掃除です。これまでできていたことが、できなくなってくる。それが年を重ねることだと、私も時折実感します。もうヒールの高い靴は履けないとか、もう絶叫マシンには乗れないとか、そんなことも加齢を感じたことでした。それが90歳ともなると、さらに実感することでしょう。怖さを感じながら、その怖さを諦めていくのだと思います。2年前は1日1万歩歩くことを課していたのが、7000歩になり、今では5000歩になりました。ところが先日、散歩のときに後ろから車に追突されるという交通事故に遭ってしまいました。幸い右膝の打撲(かなりのものですが)と、左肘の擦過傷ですんだのですが、数週間のリハビリをすることになり、しばらく5000歩の散歩はできず。父は焦ります。毎日歩かなければ、歩けなくなってしまうのではないか。杖をつきたくない、自分の足でしっかりと歩きたい。今の自分をキープする。その強い気持ちが、まさに父の生きる力につながっているのだと思います。片付けをし、もう使わないだろうと思われる台所用品をどんどん捨てました。すると、「それは使う」「捨てないでそこに置いてくれ」「ここにあった〇〇はどうした?」と、古くなっている上に、もう使わないだろうと思うピーラーや泡立て器などをとっておけと言うのです。特別に思い入れがあるものではないでしょう。(使うかもしれない)ということでもなさそうです。何か、自分が積み重ねてきたこと、母が倒れてから8年近く一人で暮らしてきた自負のようなものを無下にされているような……そんな気持ちからなのかもしれません。そんな父の姿に、自分を重ねてみます。まだ高齢という年齢でないから、思いきりものを捨てることができるのかもしれない。また、好きなものを買い、ものを増やすことができるのかもしれない。毎日歩かなくては……と思ってはいても、それを切実なものにできない。体の所々に不調が出てくる。生え際に白髪が出てくる。代謝が悪くなってくる。加齢によるさまざまな変化を「新しい自分と出会う」と捉えているのですが、まだまだ悠長なものです。父がデイサービスを受けるにあたり、何かあった場合の延命について質問がありました。きっぱりと、晴れやかに、こう答えたそうです。「延命の必要はありません。そうなったら1週間くらいで死にますから」※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年08月29日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。『自然(じねん)』を生きるということ日本は、実に災害の多い国です。地震、台風、火山の噴火。それに加え近年ではゲリラ豪雨、線状降雨帯がもたらす災害に見舞われるようになりました。地球温暖化、気候変動が原因なのでしょうか。自然が激しくなっている……のでしょうか。大雨による河川の氾濫や土砂崩れなどは、治水や植林なども原因の一つになっているのではないかと推測します。自然が本来あるべき姿を、人間の都合の良いように作り替える。もちろん、それが功を成していることもあるのですが、必ずしもそれだけではないように思えます。自然とどのように共に生きていけばよいのか。日本人は、環境問題以前に自然と共に、自然と調和をはかりながら生きてきました。自然に生かされている。森羅万象の中に神を見出し、感謝と祈りを捧げました。四季の移ろいの中の美しさも儚さも味わい、花鳥風月を愛で、それを伝統文化として昇華させてきました。西洋の絵画には宗教画が多いのに比べて、日本の絵画には自然を描いた作品が多いことにも現れています。日本にはもともと自然(じねん)という考え方がありました。これは「あるがままの状態」「自ずから然(しか)らむ」という仏教的な思想から来ています。私たちは森羅万象の一部であると考えられてきました。『自然(しぜん)』という言葉は、19世紀末に入ってきた英語『Nature』の訳語です。西洋では、キリスト教的な世界観の中での『自然(しぜん)』は、人間がコントロールするべき野生であると考えられています。天地創造したのは唯一神であるからです。ここが日本の自然に対する捉え方と西洋の捉え方の違いです。現代の日本人はどうでしょうか。本来持ち続けてきた『じねん』の感性を意識する時ではないかと思えてなりません。森羅万象とどうつながっていくか。すべては『与えられたもの』。私たちはその恵みによって生かされている。こう考えると、思わず頭を垂れたくなります。日本は、天災による破壊と復興を繰り返してきました。それが日本人の忍耐強さにつながっているとも言われています。その根底には、自然(じねん)という意識が深く根差していたからなのかもしれません。それは、私たちの遠い記憶や遺伝子に受け継がれてきた優しさであり、謙虚さであり、愛なのだと思います。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年08月22日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。大好きなことを選ぶということ私は、何が好きなのだろう。これまでの人生に彩りを与えてくれたもの、こと。そしてこれからの人生に楽しみを与えてくれるもの、こと。好きなものは生活の中に溶け込んでいます。気づかないほど自然に。改めて思いをめぐらせてみると、「花と料理と歌と詩と」という言葉が浮かびました。花と料理と歌と詩と。大好きなものであるとともに、それらは生活に溶け込んだ、人生の創造物でもありました。26歳、都心の小さな部屋で一人暮らしを始めたとき、一輪でも、いつも花を飾ろうと決めました。黒のお膳の上に花器を置き、花を飾るコーナーを作りました。カサブランカ、カラー、バラ、チューリップ、芍薬……そんな花たちをワッと投げ入れに。花を飾っただけで、小さな部屋は特別な空間になりました。この10年近く、花の教室に通いながら花と対話することを学びました。仕上がりのイメージをしながら、花と対話する。どんなふうに生けてほしい?一輪一輪の花の個性と向き合っていると、(こっちを向けて)、(この向きはどう?)と、そんな花たちの声が聞こえるようです。花と対話。落ち込んでいるときには、花たちが寄り添ってくれているような……。妄想かもしれませんが、花と向き合っているときは、心の中の静けさに身を投じることができるのです。食は、命を支える柱です。凝ったものは作れませんが、料理をするのは十代の頃から好きでした。一人暮らしをしているときも、自分のためにせっせと作り、ときどき友人たちを招いては食事会をしたものです。コロナ禍となり、自己免疫力を高めることがより大切になりました。家から出ることも少なくなり、毎日、食事を作っているうちに、器、しつらえに凝りはじめ、料理は日々のクリエイションになっていきました。この一年で購入した器は20枚近く。ものを減らす流れに逆行です。野菜を刻みながら、煮込みながら、盛り付けをしながら、『よりよくすること』に集中して。また、それは瞑想をしているような時間でもあるのです。歌を書くこと。これは私にとって人生の柱です。歌を書くことは、その歌の主人公たちの人生に出会うことでもありました。そして詩を書くこと。自分は最終的にどうありたいか。こんなことを考えたとき、なぜかふっと、詩を書こうと思いました。湧き上がる思いを言葉にしていこうと。花と料理と歌と詩と。一人ひとりが幸せの価値を見出していく時代。それぞれが大好きなこと、ささやかでも楽しいことを選択し自分らしくあることが、新しい時代を楽しくすることだと思うのです。厳しいときだからこそ、ささやかでも。何よりも、自分が心地よくあるために。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年08月15日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。天然か現実か、それが問題『天然もの』は珍重されます。魚介類であれば、ありがたく。人もまた、『天然』のキャラクターは愛されるものです。しかし、年齢と共に緩んでいくネジ……記憶力……発想力……は、天然だと喜んでいられないものがある。年齢に比例した『天然』かもしれませんが、それまで知らなかった自分との出会いに、戸惑うこともしばしばです。ふとした瞬間に、自分の変化を目の当たりにして唖然。お昼に何食べたっけ……、あれ、あの人なんていう名前だっけ……。このような『ど忘れ』のときは、必ず思い出すこと。途切れた回路を修復するように。あ……い……う……というように、一文字一文字辿るように思い出していきます。天然と言われる人は、思い込みも強いかもしれません。大学の先輩の「高校は“しんがっこう”だったんだよね」という話に、「え!神様の学校だったんですか?」とボケた上に胸で手を組んだ私に、その場にいた友人たちは一瞬固まっていたのを思い出します。数日前、レストランでのこと。一人ひとりにメニューのカードが配られました。前菜からデザートまで書いてあるいちばん下に「珈琲または紅茶」とありました。どんなコースメニューにも書いてあるように。小さな字だったからと言い訳したいのですが、私はこう思ってしまったんですね。(くれない茶ってなんだろう。紅花のお茶かなあ)一通りコースをいただき、ウェイターが飲み物のオーダーをとりにきました。「コーヒーになさいますか?紅茶になさいますか?」(あ、そっか。紅茶か)そのとき気づいたんですね、やっと。それも、その日に紅茶を飲んでいるにもかかわらず。気づいたときに大笑いしてしまったのですが、一緒にいた夫の顔が少し引きつっていたのを見逃しませんでした。そうですよね。ちょっと笑えない。脳の中の連携がどうなっているのだろうと自分が心配になります。ひとつ、言い訳をするなら、最近ある楽曲のプロジェクトで、日本をテーマにした歌詞を手がけたことがあったと思います。日の丸の赤は、正式には何色だろうと調べると、それは『赤色』ではなく『紅色』『くれない色』というそうです。この『紅』という文字に『くれない』という言葉、イメージが頭の中にあったからに強く残っていた……と思っているのですが無理があるでしょうか。ありますね。天然と現実の間で揺れる年頃。その揺れも人生の一部として楽しんで。くれぐれも揺れに酔ってしまわないように。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年08月08日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。「称えあう」と世界は丸くなる「敬愛する」という言葉が好きです。敬愛とは、『尊敬と親しみの気持ちを持つこと』。尊敬というと優れた人に対する気持ちのように思われるかもしれませんが、その人の『素敵さ』に対して心から、心を寄せることができたら、年齢も立場も関係ありません。言葉には、それを現実にする力、言霊があると信じられてきました。「ありがとう」という言葉を大切にしていると、不思議に満たされるような感があります。「おかげさまで」と言葉にしてみると、ありがたい気持ちが湧き上がります。敬愛する……素敵だと思う人、大好きな人がいてくれるだけでうれしい。心からそう思えると、なぜか穏やかな気持ちになります。批判を口にするのは、わざわざ体に悪いものを食べるようなものです。よい点よりも、好ましくない点が目についてしまう。人にはそのような習性があるのかもしれません。しかし、批判を口にしてみると、心にざらっとした感触が残らないでしょうか。時々、TwitterなどSNSで批判の応酬になっていることがあります。読んでいる方にも後味の悪さがあります。反対に、相手の素敵なところを褒める、称える。すると、なんとも爽快です。あたたかい気持ちになります。批判が体に悪い食べ物だとしたら、褒める、称えることは、体に良い食べ物を取り入れることなのですね。「称える」というのはあまり馴染みがないかもしれません。でも、この一言ですべてを語ることができます。「すばらしい!」こう言われた人はうれしいし、言ったこちらもうれしくなる。いい循環が生まれるのです。これは、日常の中でも心がけることができます。不快なことより、よいことに焦点をあてる。例えば、スケジュール帳によかったこと、嬉しかったことをメモすることもお勧めします。メモに残すことによって、心に刻まれる。よかったことに焦点をあてることが身についていくのです。すると、少々のことでは凹まなくなります。気持ちの切り替えがうまくなるのです。お互いのいいところを見いだして、称えあう。ポジティブな思いが循環し広がっていくと、世界は丸くなるのではないか。そんな世界をイメージしながら、まずは今、ここから始めていきましょう。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年08月01日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。心がざわざわするときは……心がざわざわすることが起こります。ニュースを観ても、時には自分の身にも、ざわざわすることがあります。私の場合、作品などの評判や批評もあります。厳しい意見にもきちんと向き合えたらよいのですが、私はできるだけ見ないようにしています。これでよいのかどうか、未だもってわからないのですが、打たれ弱い自分がいるのです。心がざわざわするときは、そのざわざわを一旦自分の外に取り出すようイメージします。そして、自分の中心に入れない、と決めます。つまり、世の中で起こっていること、他人のこと、他人から何か言われたことが、自分の人生に直接影響があるかどうか。そこを冷静に考えてみます。すると大抵の場合、よほどのことがない限り自分の人生を侵食するようなことではないのです。自分の中心にある大切な場所に入れない、というイメージを持ってみましょう。やるべきことを黙々とする。仕事でも家事でも、やるべきことに集中する。言ってみれば、仕事瞑想、家事瞑想でしょうか。雲が流れるように途中でモヤモヤとしてきたら、それを手で払います。またモヤモヤしてきたら、払います。その繰り返しを。何かを作ることに集中することも効果的です。それも自分のためにではなく、誰かのために。私は料理をすることで、モヤモヤとした何ものかを外します。「誰かのために」という気持ちが、気持ちの浄化を助けてくれるのです。「気にしない」「どうでもいい」と、実際に言葉に出して言ってみるのも一つの方法です。モヤモヤ……「気にしない!」ざわざわ……「どうでもいい」、このように。「気にしない」「どうでもいい」という言葉の言霊が働くのです。言ってみれば、これは『言葉の結界』です。結界とは聖なる場所と俗なる場所の境界。悪いものが入ってこないよう、浄不浄の線引きをするのです。見なくてもいいものが目に入り、聞かなくてもいいことが耳に入り、読まなくてもいいものが、ふと目に飛び込んでくる。そんな時代にあって、自分の心を保つこと、ストレスを受けないことは、一つの危機管理になるのかもしれません。自分の中に寛げるような、そんな日常でありたいものです。心がざわざわするときは……誰かのために何かを作り、言葉の結界を張る。今すぐにできる浄化法を試して、自分自身に寛いで、穏やかな毎日を送りましょう。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年07月25日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。永遠の17歳を心に「私は14歳の自分を飼っている」2年前、松任谷由実さんがインタビューで語っていた言葉です。この感じ、とてもよくわかる。私の中には、永遠の17歳と永遠の28歳がいます。こう話すと多くの人が眉をひそめるのですが、決して若者ぶっているわけではありません。17歳のときに価値観を変えるような光景に出会ったこと、その頃の感受性を今も大切にしていること。28歳の私はとても冴えていて、生き生きとしていた。そのエネルギーを今持つことは難しいですが、28歳の自分は私を励まします。松任谷由実さんの「14歳を飼っている」というのも、何かインパクトのある忘れられない年だったのではないかと推測します。私は大学の授業でも、また講座の中でも、心、感受性をオープンにして、素直に感動することの大切さと伝えています。忘れられない光景、感動は単に想い出になるだけではなく、感性の発露になり、励ましになり、何かあればその場面を追体験することもできます。体験を前向きに捉えることで、いつでもフレッシュな気持ちを保つことができるのです。17歳、高校3年生の5月のある日。朝起きたらとても天気がよくて、海を見たいなあと思いました。そして友達と午後からの授業をさぼって、海を見に行ったのです。たったそれだけのこと。でも、思ったことをすぐに行動できたこの体験は、とても大切なことを教えてくれたし、行動できたことがとてもうれしかった。そしてこの5月の海は、これまで見たどんな美しい海よりも輝いているのです。船の上で満天の星空を見たのも17歳でした。自分もこの果てしない宇宙の一部なのだと思ったら、うれしさがこみ上げてきました。私たちが生きる時間は、宇宙の時間の中で塵にも満たないような時間です。でも、その人生の中で味わう悲しみは深く、喜びは胸を震わせる。ずいぶんと大人になってから、あの満天の星空は、生きることの尊さを教えてくれました。私の歌詞の中には星空が多く登場しますが、胸の奥のスクリーンにこの時の星空を再現しながら書いています。いつでも、どこでも、『大好きなあの頃』に戻ることができる。過ぎていった時間を行ったり来たりできるように。そう考えていくと、これから私たちが刻んでいく時間を豊かに過ごしたいものです。振り返ったとき、忘れられない時間にできるように。心をオープンに、楽しい!素敵!と思える素直さを。ささやかなことに感動できる感受性は、幸せな気持ちの源なのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年07月18日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。夢のメッセージに背中を押されて「夢は超意識からのメッセージである」これは、眠れる預言者と呼ばれたエドガー・ケイシーの言葉です。奇妙キテレツなストーリー、何の意味もないような夢が、私たちの意識、無意識、さらにその奥にある超意識と言われている領域からのメッセージである……。にわかに信じがたいことですが、どんな夢も登場したシンボルとストーリーを紐解いていくと、自分の現状を示し、適切なアドバイスを見いだすことができます。時にはトラウマの夢もありますし、ごくまれに予知的な夢もあります。大学一年の時です。高校の同級生の男子から電話があり、映画に誘われるという夢を見ました。そして映画の後、彼女とうまくいっていない、と相談を受ける……という夢です。とても具体的な夢でした。なんでこんな夢を見たのかなあ、と不思議な気持ちだったのを今でも覚えています。翌日、その彼から電話がありました。そして『宇宙戦艦ヤマト』を観に行かないか誘われたのです。彼は模型作りが趣味だったので、そういう映画の選択だったのでしょう。そして映画を見た後、飲茶を食べに行きました。私は次にどんな展開になるかもうわかっていました。彼女とうまくいっていないことを、相談されたのです。このように夢と現実がリアルに合致することはまれです。なぜ、私の超意識はこれほどリアルな夢を見せたのかわかりませんが、ただひとつ思うのは『夢』への信任を促すためではないかということです。実際、夢によって決断できたこと、気持ちの切替えができたことが何度もありました。夢は、私たちの意識、無意識にも働きかけているのです。さて、数日前に見た夢です。「建て売り住宅に引っ越しをする。玄関を入るととても狭い。(これではお客様を呼べない)と思っている。そして部屋に入ると、間取りが奇妙である。お風呂を見ると、ビジネルホテルにあるようなユニットバス。(こんなお風呂嫌だ)と思っている。もっと頑張って、新しい家を買おう、と思っている」さて、引っ越しというのは、環境を変えたい気持ちがあることを表します。ところが、玄関は狭い。さて、どういう意味でしょうか。お客様を呼べないと思っていますから、人との接触、つきあいを表すのではないかと推測します。コロナ禍にあり、外出すること、社交とは少し縁遠くなってしまいました。家にいることが心地よく……という日々。これは、もっと多くの人と会いなさい、というメッセージです。そしてユニットバスは、既製品ではだめ、オリジナルのものを選びなさい、創っていきなさい、というメッセージと捉えました。とてもポジティブな示唆に富んだメッセージです。解釈をしたら、内側からやる気が出てきました。このように、夢が背中を押してくれることもあるのです。私たちは自分の内に、夢という宝を持っています。どんな夢でも、反芻して味わうだけでも意識、無意識に働きかけると言われています。ぜひ、朝、目覚めたときの5分間だけでも、夢を味わって、受け取ってみてください。何か、感じることがあると思います。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年07月11日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。言葉と行動は『心の現れ』先日、ロサンゼルス・エンジェルズの大谷翔平選手が会見後に席を立ち、椅子をきちんと元に戻している動画をツイッターで見ました。大谷選手のこの行動について、アメリカ人が感心した、とのツイートが多く寄せられているそうです。何ということのない、ただ椅子を元の向きに戻したということ。でもここには『精神』『心』があります。それは相手(椅子を片付ける人)への心遣いであり、立つ鳥跡を濁さず、の精神です。ゴルフの松山英樹選手がマスターズで優勝した時、キャディの早藤さんがグリーンに向かって一礼した写真も話題になりました。サッカー選手も選手交代などのとき、ピッチに一礼します。誰に教えられることもなく、多くの日本人はこのようなことを無意識のうちにします。日本らしさ、日本人らしさとは?日本のいいところは?こんな質問を時々受けます。食べ物がおいしいとか、インフラが整っている、電車の時間が正確、女性が夜にひとり歩きしても比較的安全、落とし物は返ってくる……とよく言われます。でもそれだけでは表現しきれない何か……それは、『精神』『心』なのだと思います。目に見えない何ものかに対する敬意、それが私たちの中に無意識のうちにあるのだと思います。友人がゴルフ場の化粧室で石川遼選手と一緒になったときのこと。石川選手は手を洗った後、洗面台をペーパータオルで丁寧に拭いて出たそうです。これは、なかなかできることではないですね。次に使う人への心遣いが、自然にこのような行動になるのです。教えられなくても、強制されなくても、自然に行う、そこに美しさがあります。目に見えないものを大切にする。日本語にある敬語、謙譲語、丁寧語は、相手に対する敬意の表れです。相手を大切に思うからこそ、自然に出る言葉です。過剰な敬語や謙譲語は聞き苦しいですが、日常の会話の中に自然と溶け込んでいると素敵です。言葉だけでなく、その心が身についている、ということですから。例えば、「誰々さんが来た」を「誰々さんがいらした」と言うだけで、そこに小さな美しさが現れます。「何々をもらった」と「何々をいただいた」と言うと、感謝の気持ちが現れます。言葉も行動も『現れ』です。日頃の何気ない言葉や行動の中に精神、心が現れる。大谷選手の椅子を丁寧に直す姿は、失ってはならない日本の精神を改めて教えてくれました。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年07月04日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。ひとり旅のすすめ3〜警戒心という鎧〜仕事に一区切りをつけて、飛行機に乗り、シートベルトを締めた瞬間に、あー、解放された!と全身から力が抜けます。自由だー!大袈裟に聞こえるかもしれませんが、これが目の前に人参をぶら下げて仕事をしている自分の情けなさもあるのですが。目的地へ着くまでの自由。ところが目的の空港に着き、タクシーに乗るときから『警戒心』という鎧を纏います。いまでは改善されたかもしれませんが、早朝にロンドンやパリに到着すると、白タクの運転手がまとわりついてきたものでした。ローマではスカーフから生々しい首の傷痕が見える運転手に遭遇したり。乗って行け、という言葉にガンとして打ち合わず、無視するに限ります。地下鉄はスリの仕事場です。バッグをしっかりと前に抱える。そして怖い顔で。全身、セキュリティー万全に。それでも相手の方が百戦錬磨ですから、一瞬の隙を狙ってきます。大好きなアンティーク市も油断なりません。冬の旅であれば、バッグの上にコートを羽織る。人混みを歩くときも要注意です。あるとき、マドリッドの銀座通りのような道を歩いていたとき、ショルダーバッグをツンツンと突いているような感じがあって、見てみると若い女の子がスカーフで手元を隠してバッグのファスナーを開けようとしていました。思いきり肘鉄と睨みです。常に警戒心、緊張感を拭うことはできないのです。パリではいつも小さなホテルに泊まります。外出から戻り、部屋でくつろいでいると、コンコン、コンコンとノックの音が。レセプションの男性でした。「何?」と聞くと「開けてくれ、花を持ってきた」というのです。かなりしつこくて、怖くなりました。相手は合鍵を使えます。夜中に襲われたらどうしよう。途端にいろいろなことを想像してしまい、怖くなりました。すぐに違うホテルを予約し、その日のうちにホテルを移りました。もしかしたら過剰な反応だったかもしれませんが、自分が感じた怖さに正直に行動することが大切なのです。見知らぬ場所、ひとりで行動するときは特に、動物的な直感を澄ましておくことです。警戒心が強すぎて、恥ずかしい思いをしたこともありました。ニューヨークでタクシーに乗ったときのこと。遠回りをしている感じがしたので、「道、違っていませんか?」と聞きました。すると白人の初老の運転手さん、「君は何年ニューヨークに住んでるの?」と。「3日」と答えると、「僕は30年以上この街に住んでる」と言いました。一方通行の多いニューヨークでは、回って回って、反対方向から目的地に向かうこともあるのです。忘れられない、運転手さんの言葉でした。警戒心という鎧、纏うべきところで纏う。命と財産を守り、旅を楽しむのは、訪問先の国に対するマナーでもあるのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年06月20日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。ひとり旅のすすめ2〜旅日記で本音と出会う〜家庭内仕事部屋の引っ越しをしました。本、CD、資料、原稿、写真……紙類の山の中に、30年近く前に書いた旅日記が出てきました。A5ほどの大きさで、表紙には天使たちがバイオリンを弾いている絵。確か、パリの書店で見つけたノートです。旅日記を書くノート、日頃の雑記帳でも、紙とペンの相性が大切です。書きやすさはもちろんなのですが、書き手を超えたところでペンと紙のコラボレーションが文章に現れるのです。もうひとつ大切なことは、「自分を制限しない」ということ。うまく書こうとか、こんなことは書けない、などと思わないこと。思うまま、自分の中から思いが淀みなく流れ出るように。旅という非日常の時間と空間の中で自由になることが、ひとり旅の大きなギフトです。自分を制限しないで書き始める。それをさらに滑らかにするのが相性のいいペンと紙なのです。私の好みは、インクを瞬間で吸い取り、そして吸い取った余韻のある紙。ほんのりざらつき感がある紙が好きです。そして当時愛用していたのはシェーファーのカリグラフィー用の万年筆。1000円か2000円くらいだったか。インクはblue-black。ペン先から、思ってもみなかった言葉や思いが流れるように綴られるのでした。ひとり旅は、『自分自身』というバディと一緒に旅をすることです。それがひとり旅の醍醐味です。旅の間に感じる淋しささえも味わうことで、どんなにか自分の感性を育み、自分を成長させることか。気づかなかった自分の思いを知るのは、少々勇気がいることもありますが、それも必要な出会いだったのだと思うのです。好きな場所に好きなだけいる、というのも、自分の無意識が求めていること。それに素直に寄り添えるのが、ひとり旅なのです。さて、1995年、ハワイに滞在したときの日記から一節を。「Pali Hwyで車の事故を見てしまう。結構、暗い気持ちになる。KQMQ(オアフのFM局)からジャネット・ジャクソンの『Any Time, Any Place』が流れてくる。いろいろなエピソード、気づき、そういうものがどっと溢れてくる。ちょっと待って。覚えきれない。マイクロカセットテープの準備をしておけばよかった。でもこの瞬間が作家にとっては快感であり、これが待ち望む一瞬なのである」ひとり旅に、出なくては。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年06月13日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。ひとり旅のすすめ1〜憧れに出会う〜20代、30代、ひとりでヨーロッパを旅したものでした。それは私にとって『馬ニンジン』。旅を目標にすると、仕事も充実させることができたのです。ひとり旅をすると言うと、多くの人が「淋しくない?」と聞きます。それが少しも淋しくない。食事をするときには誰かとお喋りしたいと思いますが、慣れてしまうと何でもなくなります。それよりも、好きな場所で、好きなだけ時間を過ごしたい。わがままが許される、それがひとり旅の醍醐味です。ミラノからパリへ発つ朝。ホテルでチェックアウトするときに日本人の素敵なご夫婦と一緒になりました。「おはようございます」と、ご挨拶を。お二人とも洗練されていて、奥様は可愛らしさとゴージャス感をお持ちでした。そんなお二人と空港の搭乗口で、また出会います。「一緒の飛行機だったのですね」と、そんな言葉を交わしました。パリに到着し、バゲージクレームで荷物が出てくるのを待っているとき、「空港に車を置いてあるので、一緒に市内まで行きませんか?」とお二人から声をかけていただき、ご一緒することになりました。ご主人はヨーロッパのブランドと日本を繋ぐ仕事をされているとのこと。旅に出ると、ホテルでは別々の部屋に泊まり、それぞれの時間を独立して過ごすのだそうです。ご主人は昼間は仕事、奥様は買い物をしたり美術館へ行ったり。そして夕食のときに、その日あったことをお互いにシェアする。そして、素敵なところがあれば、後日一緒に訪れる。この旅のスタイルはいい距離感を保つことができ、それぞれの過ごし方を楽しめるのだそうです。まさに大人の旅です。ふたり旅の中で、それぞれが思うように過ごす。そしてその時間で感じたことを分かち合う。この頃、私はまだ20代の後半でしたが、こんなパートナーシップに憧れ、素敵な大人になりたいと思ったことをよく覚えています。旅で出会うもの。それは見たこともない自然、文化、もの、人々、ライフスタイル、そして憧れにも出会います。憧れは、成長するエネルギー。生活を豊かに彩り、審美眼を高めます。今でもときどき、無性にひとり旅をしたくなります。それも海外へ。解放感と孤独感は、創造の源になり、憧れは日常の生活の中に息づくのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年06月06日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。『整えること』から未来が見える家の中で、仕事部屋の引越しをしました。これが、とてもとても大変。これまでの作品たち、CD、本、掲載誌、そして資料……そこに娘の作文や連絡ノートなどが混在し、まさにカオス。なぜこんなものをとっておいたのだろう……というものから、なんでこんな大切なものをこんなところに!というものまで。なんだ、ここにあったのか……と安堵したこと、若い頃の書き物を読み返して速攻で破棄したものまで、それは自分が歩んできた道を辿るような片付けでした。カオスの中から、デビューした頃のアーティスト写真を見つけました。今と同じボブスタイルの髪、少し上目遣いで写っているモノクロの写真。何枚かあったと記憶していたのですが1枚、本の間から出てきました。25歳の自分の未来は、すっかり私の過去になりました。実は、しばらく前からこの写真を探していたのです。なぜだかわからないのですが、未来を知らない自分に会ってみたくなった……というのでしょうか。たくさんの歌詞を書き、小説やエッセイを書き、よくひとりで旅をしたもの。時に悩んで、落ち込んで、でも立ち上がることを諦めずに。いいとか悪いではなく、今の自分にとって何が最善なのだろうかと模索しながら生きた未来が、そのモノクロの写真の中にあるのです。これからの自分への勇気づけでしょうか。いま、この瞬間の自分の中にも、これからの未来があることを確認するために。25歳、作詞家デビューした頃。素敵な未来しか思い描けなかった頃です。ものを整理する。自分のいる場所を整えるというのは、心を整えていくことでもあります。本当に必要なもの、心が湧き立つものはなんなのか。執着していたモノと共に、心の執着を手放す。ものを減らしていくことは、本当に必要なもの、大切なものを知ることでもあります。自分が亡き後を考えると、ミニマリストであることが望ましいかもしれません。自分自身にとっても、残された人たちにとっても。今回仕事部屋を整え、ごっそりと不要な書類や本などを処分して思ったのは、自分が心地いいと思う空間に身を置くことの大切さ、そして自分が好きなものと共にあることの楽しさです。心地よく、楽しんで、自分を生かしながらこれからの未来を創っていく。本の間から出てきた『25歳の私』は、示してくれました。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年05月30日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。喜ばせ上手、喜び上手もしもこの世界にたったひとりきりだとしたら。その世界には必要とするもの以上の豊かさがあり、誰にも束縛されない自由があるとしたら……。ありえない仮定ですが、極端に考えることで改めて気づくことがあります。どんなに豊かで自由であっても、人はひとりでは生きていけません。決して豊かでなくても、わかちあえる人がいて、ささやかなことも喜び合える人と共にいられること、プレゼントをする人がいるというのは、本当に幸せなことです。その人を喜ばせたい。誕生日やクリスマス、記念日だけでなく、ちょっとしたお礼のものを選ぶときも、どんなものが喜んでもらえるか考えます。喜んでもらいたい……これは『愛』だと思うのです。喜ばせたいという思い。相手のことを思い、何かを差し出す。プレゼントもうれしいですが、その思いがさらにうれしいものです。サプライズも、喜びと驚きが倍増します。2年前、夫が還暦にお祝いに何を贈ろうかといろいろ考えました。記念になるもの……それは形のあるものでなくてもいいのではないか。二人で食事に行くという設定で、実はレストランには夫の親しい友人たちに内緒で集まってもらいました。山口県の徳山から、神戸から、名古屋、福井から、東京の忙しく仕事をしている友人たちも集まってくれました。当日出席できなかった友人たちのメッセージのスライドショー。夫のこれまでの歩みをまとめたスライドショー。その夜鍋仕事は、とても楽しかった。夫に喜んでもらいたくてやっていたのですが、実は私も大いに楽しみました。サプライズやプレゼントが愛だとしたら、与えている私も愛を受け取っていたのでした。つまり、「与える」ということは、「与えられる」こと。また「与えられている」から、「与える」ことができるのです。「自分が蒔いた種は自分が刈り取る」という言葉があります。ネガティブな意味で語られることが多い言葉ですが、逆もまた真なり、良い種を蒔けば良いものが実るのです。相手を褒めることも、ユーモアで人を和ませるのも愛です。ささやかな心遣いも、ちょっとした親切も愛です。そう考えていくと、愛は私たちの日常の中に散りばめられている。気づかないうちに、言葉にしないうちに、やっていることなんですね。喜ばせ上手、喜び上手になりましょう。喜ばせることも、喜ぶことも愛です。それは私たちの中でくるくるとめぐり、社会全体をふわりと優しくするでしょう。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年05月23日