魅惑のディズニー音楽を、一流演奏家たちで構成されたオーケストラ・ジャパンと、ブロードウェイなどで活躍する歌手たちのライブ演奏で届ける「ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会2017」が開幕。公演に先駆けてゲネプロが公開された。ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会2017 チケット情報毎秋開催され、絶大な人気を集めているこのコンサートも今年で15周年。これを記念したオープニングは、2002年の第1回公演で演奏された全曲を綴るスペシャルメドレー、“ORIGIN 2002”。「フェアリーガーデン」「アラジン」「リトル・マーメイド」……と名曲が並ぶ。続いて、昨年のゲストによるリクエスト曲のうち、上位3曲を送る“ゲスト・リクエスト・セレクション”。『ヘラクレス』より「ゴー・ザ・ディスタンス」、『ターザン』より「トゥー・ワールズ」。東京ディズニーシー「ストームライダー組曲」を、出演者達がジェスチャーや振付を交えながら熱唱した。前半のハイライトは、編曲・指揮のブラッド・ケリーが観客のカウントダウンに合わせてボタンを押し、その日の演奏曲を決める“サプライズ・ルーレット”だ。この日選ばれたのは、東京ディズニーシーのディズニー・ハロウィーンのショー「ミステリアス・マスカレード」と、『モンスターズ・インク』の「君がいないと」。ミステリアスな仮面舞踏会の空気に酔いしれ、モンスターふたり組がお互いへの信頼をユーモラスに披露する歌に心温まったところで、前半のフィナーレ、“オーケストラと光のコンチェルト”へ。ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートのエプコットより「イルミネーションズ:リフレクションズ・オブ・アース」と「ウィー・ゴー・オン」が演奏され、美しい光の演出がこれを鮮やかに彩った。後半はまるごと、『塔の上のラプンツェル』。映画の情景がスクリーンに映し出される中、ナレーションと共に、躍動感たっぷりの音楽が物語を紡いでいく。ラプンツェル役は澄んだ歌声が、ひたむきで利発なヒロインにぴったりなローソン・ヤング。一方、ラプンツェルを誘拐し、母親のふりをして閉じ込めるゴーテル役は、多彩な歌声のメラ・ジル・ハーマン。ならず者のようで実は純粋な心も持つフリン・ライダー役には、ロマンティックな歌声の持ち主、パットン・チャンドラー。ラプンツェルが城の近くで踊る「王国でダンス」では、客席中が一体となる趣向も。そしてコンサートは、感動のフィナーレへ。15周年からその先へ。今年のテーマ「Brillante ~輝きの未来へ」にふさわしいエンディングが待っている。ショーマンシップに溢れる歌手たちの歌とオーケストラのゴージャスな演奏から改めて感じることができるのは、ディズニー音楽の豊かさ。胸の高まり、わくわく感、不安や悲しみ、そこから再び立ち上がる勇気まで、あらゆる感情がそこには詰まっているのだ。9月から12月にかけて全国を巡演。取材・文:高橋彩子
2017年09月27日6年ぶり7度目の引越し公演のために来日したバイエルン国立歌劇場。オペラ公演は9月21日(木)に初日を迎えるが、それに先立って来日会見が行なわれた。劇場の音楽総監督で、2019年からベルリン・フィル首席指揮者就任が決まっている指揮者キリル・ペトレンコが初来日。取材嫌いで知られる彼も出席するとあって、報道陣が詰めかけた(9月17日・東京文化会館)。バイエルン国立歌劇場 日本公演 チケット情報冒頭、ニコラウス・バッハラー劇場総裁の挨拶に続いて注目のペトレンコが口を開いた。いくぶんシャイな、でも穏やかな話ぶりだ。「劇場の伝統でもある来日公演が自分の任期内に実現できることは本当に名誉。期待を裏切らない上演ができると思っている。初めて日本にやってきて今日で4日目。街も人々も、そして食事も素晴らしい」と、まずは型どおりの挨拶。さらに、質問に答える形で次のように話した。「大切なのはどんな公演にも十分に準備して真摯に向かうこと。その意味で、音楽に向かい合う際の私の一番の信条は『リハーサル』だ。リハーサルでオーケストラと一体になることができれば、本番での指揮者の役割は音楽を伝えることだけ。ステージでやることは、なるべく少ないほうがいい」「録音が少ないのは、ライヴがより重要だから。ライヴでは音楽が生き生きとしている。録音のように確実すぎる状況で音楽をするべきではないと思う」そして、なぜインタビューを受けないのかという質問には、「自分の仕事について語るべきではない。指揮者の仕事は指揮台の上だけにある。秘密はできるだけ多いほうがいい」とニヤリと笑った。会見には21日(木)に初日を迎える《タンホイザー》(ワーグナー)の歌手たちも同席。ペトレンコ観を問われた彼らが一様に語ったのは、その無駄のないリハーサル、それを可能にする正確な楽譜の読みと周到な事前準備。しかもそのすべてが本番につながっていること。そのおかげで歌手もリハーサルの時間を有効に使えるし、エネルギーをより良く配分できること。等々。ペトレンコ自身の言葉を裏付ける内容で、彼の音楽づくりの一端が垣間見えるやりとりだった。今回上演されるのは劇場にとって対照的な2演目。1978年に制作され長く愛されている、アウグスト・エヴァーディング演出の《魔笛》(モーツァルト)と、今年5月に新制作初演されたばかりの、ロメオ・カステルッチ演出の《タンホイザー》。革新と伝統が絶妙にバランスする同劇場の本領発揮という選択だ。特に《タンホイザー》は、舞台写真を見るだけでも、ヴェーヌスの異形などかなり刺激的なのだが、「この演出の中での自分たちの役どころは?」の質問を、総裁が「明日も長いリハーサルが」とやんわり遮って会見は終了。これも音楽総監督同様、十分な準備こそが自分たちの仕事という姿勢のあらわれかもしれない。となればやはり、自分の目で見て確かめるしかない。いざ劇場へ!取材・文:宮本明
2017年09月19日「切れば血が出るような、生々しさ」「いきいきとした人間ドラマ」──。出演歌手たちがそう口を揃えるリアルな愛憎劇。今年生誕450年の作曲家クラウディオ・モンテヴェルディの晩年の代表作、オペラ《ポッペアの戴冠》が上演される。公演の指揮者・鈴木優人と出演歌手らによる記者会見が開かれた。【チケット情報はこちら】指揮者の鈴木が「勧善懲悪ならぬ勧悪懲善」と表現するように、ローマ皇帝ネローネ(ネロ)と美女ポッペアのW不倫愛に端を発して、ネローネは反対する腹心を自殺に追い込むわ、正妻のオッターヴィアはポッペアの暗殺を企むわ、不道徳で不正義な謀略が渦巻く物語。その不条理をモンテヴェルディが官能性豊かな音楽で描いた傑作だ。17世紀初めのオペラ誕生から間もない時期に、人間の暗部までをこんなにリアルにえぐり出す作品が生まれていることに驚く。男役も含め、登場する役の多くが女声の音域で書かれた作品を演じるのは、森麻季(ポッペア)、レイチェル・ニコルズ(ネローネ)を始め、波多野睦美(オッターヴィア)、森谷真理、小林沙羅、藤木大地、櫻田亮ら実力派揃いの豪華オールスター・キャスト。古楽のベテランから、森谷や小林、そしてやや意外なことにカウンターテナーの藤木も、バロック・オペラ初挑戦の新進歌手まで広く起用しているのは、古楽に軸足を置きながら多様なフィールドで活躍する鈴木ならではの、唸らせるキャスティングだ。2009年の新国立劇場での上演に続いて2度目のポッペア役を演じる森麻季は、「悪女といわれるポッペアだが、実は誰かを殺したり陥れたりたりはしない。自分の命も顧みずに選んだ愛は真実だと思う」と語る。なるほど、悪意ではなく、今年流行した「忖度」を自然に促す魔性の女というところかもしれない。まさに現代的。演奏会形式(管弦楽=バッハ・コレギウム・ジャパン)での上演ながら、田尾下哲の演出(舞台構成)がつく。25人を超える登場人物(歌手によってはひとり3役、4役を演じ分ける)の関係をわかりやすく整理してくれるから、休憩含め4時間弱の長丁場でも、バロックだとか古楽だとかの専門知識がなくても、存分に楽しめるはず。モンテヴェルディ・イヤーにふさわしい記念碑的公演になりそうだ。《ポッペアの戴冠》は、作曲家の没年である1643年にヴェネツィアで初演された。自筆スコアは残っておらず、後年の2種類の筆写譜(ヴェネツィア稿とナポリ稿)がおもな源泉資料となる。今回は、チェンバロ奏者・指揮者で音楽学者のアラン・カーティス校訂のスコアに基づくが、「楽譜はあくまでも出発点。通奏低音は即興演奏だし編成も自由。オーケストレーションや、ときにはこのパートを誰が歌うのかまで、多くの部分はわれわれ演奏者の判断に委ねられている」(鈴木)というように、作曲家でもある鈴木の補作によるスペシャル版での上演となる。公演は11月23日(木)に東京オペラシティコンサートホールにて開催。チケットは発売中。取材・文:宮本明
2017年09月15日10月1日(日)に2017/18シーズンの初日を迎える新国立劇場。記念すべき開場20年目のシーズンだ。その幕開けを飾るのはワーグナーの《神々の黄昏》。3年がかりで制作してきた新国立劇場の新しい『ニーベルングの指環』が、いよいよ完結する。【チケット情報はこちら】《神々の黄昏》は4部作中最長の6時間におよぶ超大作。ハーゲンの策略にはまってジークフリートは死に、彼のあとを追った妻ブリュンヒルデが、世界を支配する指環とともに炎に身を投じると、神々の世界は崩落し、すべては無に戻る。「ジークフリートの葬送行進曲」「ブリュンヒルデの自己犠牲」など、単独でも演奏される聴きどころが多数ある、『指環』全作のクライマックスだ。英雄ジークフリートを歌うのはステファン・グールド。今回の「新国リング」で、ローゲ(ラインの黄金)、ジークムント(ワルキューレ)、ジークフリートと演じてきた世界的なヘルデン(英雄)テノールが、4部作を連続制覇することになる、いわばグランドスラム。ブリュンヒルデ役には現在最も注目されるワーグナー歌手であるペトラ・ラング。新国立劇場には昨年の《ローエングリン》に続いての登場。ジークフリートの裏切りに復讐の鬼と化し、最後は神々しい自己犠牲で、悪意に満ちた『指環』の壮大な物語に終止符を打つドラマティックなヒロインを、世界最高水準で聴かせてくれる。オペラ史上屈指の悪役バス、ハーゲンには、昨年の《ワルキューレ》でフンディングを歌ったアルベルト・ペーゼンドルファーが再登場。ブリュンヒルデの異母姉妹のヴァルトラウテにも大物が起用される。現代を代表するメゾ・ソプラノ、ヴァルトラウト・マイヤー。38年間歌い続けているという同役は、彼女の輝かしいキャリアのなかでも重要なレパートリーだ。舞台は故ゲッツ・フリードリヒが1996~99年にフィンランド国立歌劇場で演出したプロダクションで、これまでの3作でもそうだったように、ワーグナーのドラマと音楽を真正面から堪能させてくれる。指揮は新国立劇場芸術監督でワーグナー演奏の第一人者・飯守泰次郎。読売日本交響楽団が初めて新国立劇場のオーケストラ・ピットに入る。4部作中で唯一登場する合唱は、もちろん新国立劇場合唱団。指環を巡る争いの悲劇に幕を降ろし、「愛の救済の動機」が未来への希望を高らかに予感させるフィナーレに向かって、役者が揃った。公演は10月1日(日)4日(水)、7日(土)、11日(水)、14日(土)、17日(火)の全6回。最終日はチケットぴあが1階席前方の中央ブロックを確保。世界有数のワーグナー歌手たちの圧倒的な歌唱と荘厳な分厚いオーケストレーションを、間近で、全身に浴びるように体感するチャンスだ!取材・文:宮本明
2017年09月15日ニューアルバム『天空のバンドネオン~タンゴでスタジオジブリ~』を9月27日(水)にリリースする、バンドネオン奏者の小松亮太。アルバム発のツアー『小松亮太コンサート~天空のバンドネオン~』の開催を10・11月に控える中、ジブリの映画音楽をタンゴというジャンルで紐解いた小松が、アルバムやコンサートの聴きどころを語った。【チケット情報はこちら】小松は2015年12月、東京・三鷹の森ジブリ美術館で行われたサプライズライブに登場。「天空の城ラピュタ」などジブリ作品の楽曲を自らアレンジし、披露した。当日はタンゴの本場・アルゼンチンをはじめ、台湾、中国、フランスなどから訪れた観客の反応を目の当たりに。ジブリの存在が世界各国に浸透していることを実感すると、「海外の人たちに向けて、日本人が描いたメロディーをタンゴにして聴いてもらう。新しいファンが開拓できるのでは」と考え、アルバム制作のきっかけとなった出来事であると紹介する。さらに、小松はタンゴをよく知らない日本人にもその魅力をアピールできると分析。「ジブリ音楽をジャズやポップス、クラシックでカバーしたアルバムは過去に出ていますが、タンゴでのカバーは世界初。もともと予備知識のある音楽をタンゴで聴いてもらうことで、良さに気づいてもらえたら」と期待を寄せた。イチ押しの楽曲を尋ねると、迷いながらも『さんぽ』(となりのトトロ)を挙げた小松。マーチのリズムがタンゴになるって? という問いかけには、実際の演奏で応えてくれた。傍らに置いてあったバンドネオンを奏でると、おなじみのメロディーの中にそこはかとない哀愁が。演奏に対して感謝の気持ちを伝えたところ、「うまくアレンジできるかな? って思いながら書き始めたけど、意外にハマって」とはにかんでみせる。今回のコンサートには、ボーカルとして本アルバムの制作に参加した坂本美雨と宮沢和史が登場。ラジオ共演を通じて話し声に魅力を感じたという坂本とは『風の谷のナウシカ』を、昔から親交のある宮沢とは『時には昔の話を』(紅の豚)を披露する。『さよならの夏』(コクリコ坂から)で共演したクミコはコンサートへの参加が叶わなかったが、小松は「インスピレーションで依頼して、打ち合わせもなくレコーディング。2~3回歌ってもらっただけなのに完璧で、圧倒されました!」とその歌声を称賛した。『小松亮太コンサート~天空のバンドネオン~』は、10月に新潟・愛知・大阪を周ったあと、11月20日(月)に東京・東京文化会館 小ホールで行われる。チケット発売中。取材・文:岡山朋代
2017年09月15日日本全国のプロ・オーケストラ36団体が加盟する日本オーケストラ連盟が旗振り役となり、アジア太平洋地域のオーケストラを招いて行なわれる、文化庁芸術祭主催の「アジア オーケストラ ウィーク」。2002年にスタートして今年で16回目。これまでに15か国から47のオーケストラが参加しているオーケストラの祭典が、いよいよ開幕する(10月5日(木)~7日(土)・東京オペラシティコンサートホール)。アジア オーケストラ ウィーク 2017 チケット情報来日するのは、上海フィルハーモニック管弦楽団(10月5日(木))とマレーシア・フィルハーモニー管弦楽団(10月6日(金))。日本からは関西フィルハーモニー管弦楽団(10月7日(土))が出演する。上海フィルは、上海映画管弦楽団(1954年創立)と上海放送管弦楽団(1950年創立)が1996年に統合された楽団で、上海市の放送メディアグループが運営し、2004年から現称となっている。今回は首席指揮者リャン・ツァン(1979年生まれ)が率いての来日。芥川也寸志の《トリプティーク》とショパンのピアノ協奏曲第2番、ドヴォルザークの交響曲第8番を演奏する。今シーズン創立20年目を迎えているマレーシア・フィルは、世界有数の企業である国営石油会社ペトロナスが運営する楽団。豊富な資金力に物を言わせて、クアラ・ルンプールのペトロナス・ツインタワー内にある豪華ホール、ペトロナス・フィルハーモニック・ホール(920席)を本拠に、世界20数か国のトップ・プレーヤーたちからなる多国籍軍を構成している。指揮者の古澤直久は1973年生まれ。桐朋学園でコントラバスを学び、ザルツブルク留学を経て、2003年にコントラバス奏者として同楽団に加入、昨年から専任指揮者(レジデント・コンダクター)に就任した。プログラムは武満徹《弦楽のためのレクイエム》と、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番《皇帝》、同楽団の委嘱作品で8月に初演されたヴィヴィアン・チュア《栄光の頂点》。チュアは1974年生まれのマレーシア人作曲家。ホスト・オーケストラ役の関西フィルは音楽監督の名ヴァイオリニスト、オーギュスタン・デュメイの弾き振りで、ショーソン《詩曲》、ラヴェル《ツィガーヌ》、マスネ《タイスの瞑想曲》、ビゼーの交響曲第1番を。西洋のクラシック音楽という同じフィルターを介してなお、アジア各国の多様な文化を感じ取れるのは実に面白い体験だ。文:宮本明
2017年09月12日クラシックのコンサートやイベントなどの情報を初心者にも解りやすく紹介するフリーペーパー『ぴあクラシック』。9月9日(土)発行の最新号では、9月24日(日)より東京・サンシャイン劇場で上演される舞台『アマデウス』に出演する松本幸四郎と桐山照史の対談が掲載されている。『アマデウス』は1979年にロンドンで初演、1981年にトニー賞で5部門受賞。1984年には映画化され、アカデミー賞8部門を受賞した。1982年には松本幸四郎主演で日本初演を果たし、これまで438回上演。今回、6年ぶりの再演で上演450回を迎える。幸四郎は音楽家サリエーリ役、桐山はモーツァルト役を務める。対談では、幸四郎が来年1月に襲名を控えているため、松本幸四郎としては最後となるサリエーリ役、そして今回同作に初めて出演する桐山がモーツァルト役についてそれぞれ語る。そのほか、同作を彩るモーツァルトの楽曲や、好きなクラシック音楽について、幸四郎が思い入れたっぷりにトークを展開。演劇ファンもクラシックファンも楽しめる対談となっている。フリーペーパー『ぴあクラシック』(2017 秋 Vol.44)は、今回紹介した対談のほかにも、クラシック公演のハイ・シーズンと言われる秋、何のコンサートに行こうか迷っている人のために、オーケストラ/オペラ/器楽/室内楽/ピアノ別におすすめコンサートを紹介。さらに100回を迎えるN響オーチャード定期など情報盛りだくさん。全国のチケットぴあ店舗(一部を除く)、全国のコンサートホールやレコード店にて配布(主な配布場所は目次ページに掲載)。また、チケットぴあのWEBサイトでWEB版(ebook)も公開予定。
2017年09月08日日本音楽コンクール優勝(2004年)の栄冠とデビューCD『CHOPIN:HEROIC』を引っ提げて2007年に華々しくプロ活動を開始。今年デビュー10周年を迎えているピアニストの外山啓介。現在、全国約20か所のリサイタル・ツアー真っ最中だ。9月30日(土)にはサントリーホールで東京公演がある。節目のプログラムに彼が選んだのはオール・ショパン。実は10年前のデビュー・ツアーとほぼ同じ曲目構成になっている。【チケット情報はこちら】「10年前と何が変わったのか、何が変わっていないのか、あえて確かめてみたかった。自分への大きな挑戦です。ただ、『変えなければならない』という意識はありません。10年前の自分を頼らず、どう感じるのか、何を伝えたいのか。足りないものは何か、足りているものは何か。客観的に判断して弾きたいと思っています」プログラムの中心となるのはピアノ・ソナタ第3番。大学時代に恩師の植田克己から聞いた「3番に合わせるなら舟歌」というアイディアを実践する。「当時、たしかにその通り!と思ったのをやってみたくて(笑)。ショパンはこのソナタで、すごく死を意識していると思います。だからとても厳しい。非常に清潔で、人を寄せ付けない品格があリます。今回改めて向き合ってみて、その品格を表現するために、少しテンポを落としました。また最近特に、《舟歌》にどうにもならない深い悲しみを感じていて。その意味では重たいプログラムになりました」「聴きやすいポピュラーな作曲家」と受け取られがちなショパンだが、決してそうではない。「すごく冷静にコントロールして弾かないと、自分の感じた良さを伝えにくい作曲家です。キラキラと美しいかけらがあちこちにあるので、それを全部拾ってしまうと、ただの自己満足になってしまう。だから常に客観的でいることが大事。もちろんどの作曲家もそうですが、特にショパンの場合は、美しさについ溺れてしまって、そこを見失いがちだと思います」10年間変わっていない信念は「奇をてらわないこと」。「奇をてらうのは好きじゃないんです。シンプルに弾きたい。必要以上にドロドロ歌わせたくないし、絶対に力技にしてはいけない。まっすぐ勝負したいというのは変わっていないかな」女性に大人気のイケメン・ピアニストというイメージが強いので、男性陣はつい色眼鏡で見てしまうかもしれないが、実に誠実に語ってくれる気持ちのいい好青年。そして高い技術に裏打ちされたスケールの大きい端正な音楽性。その名前が今後さらに大きくなっていくのは間違いない。その新しい10年の始まりを、新しくなったサントリーホールで!取材・文:宮本明
2017年09月08日とんでもなくスペシャルな一夜になりそうだ。11月27日(月)に行なわれるラン・ランと真鍋大度のコラボレーションが大きな注目を集めている(東京国際フォーラムホールA)。ラン・ラン(p)/真鍋大度 チケット情報天与の才能はもとより、その柔軟な音楽性で、共演する巨匠たちの美質をもばりばりと吸収し続けるピアニストのラン・ラン。すでに現代を代表する名演奏家の風格を十分に感じさせる一方で、今年のNHK大河ドラマ「おんな城主直虎」のテーマ曲ではヤルヴィ&NHK交響楽団とともにスケールの大きい華麗なピアノ・ソロを披露して、お茶の間での人気もうなぎのぼりだ。11月、ラトル&ベルリン・フィル来日公演のソリストとして同行する彼が、一日だけ開くソロ・コンサート。それが過去に例のない世界初の企画なのだ。真鍋大度は世界が注目するメディアアーティスト、プログラマー。「メディアアーティストって?プログラマー?」と、即座には理解できなかった方もいるかもしれない。ある意味それが正解。彼の活動を既存の肩書きに収めるのは難しい。コンピュータでプログラミングした映像や照明など最新のテクノロジーを駆使して、摩訶不思議な空間演出を手がけるアーティスト。デジタル時代の申し子だ。昨年のリオ五輪閉会式での、2020年東京大会のプレゼンテーションは記憶に新しい。小池百合子都知事が五輪旗を受け取り、「安倍晋三マリオ」が登場したあの「トーキョーショー」で、競技場のフィールドいっぱいにさまざまなヴィジュアルを浮かび上がらせていたのが真鍋の仕事だ。どうやっているのか全然わからない未来の視覚。今まで誰も見たことがないチャレンジングな演出を次々と繰り出す彼のもとには、世界中からコラボレーションのオファーが殺到している。真鍋の創り出すコンテンツはインタラクティブ(双方向型)だ。あらかじめプログラミングされた映像を演者の動きに寄り添って投影するのでもなければ、まして演者の側が、時間軸に沿って配置された映像のタイミングに合わせて演じるのでもない。プログラム自体が演者の動きを読み取って、まるで感情を持ったかのように振る舞う光の明滅は、人間同士のアンサンブルにも似ている。もちろん今回は、動きだけはなく、ラン・ランの「音」とのリンクも重視されるんじゃないだろうか。ラン・ランの自在な呼吸が紡ぐ音楽の奔流が、真鍋の映像と呼応して生み出す一期一会のアート空間。クラシック音楽史の新たなページが開く瞬間かもしれない。われわれは、その貴重な目撃者になる。取材・文:宮本明
2017年09月01日今年2月から閉館して改修工事を行なっていたサントリーホール。9月1日(金)のリニューアル・オープンに先立って内覧会が開かれ、リフレッシュした姿をひと足早くお披露目した。
2017年08月30日元吹奏楽っ子(担当:Euphonium)の音楽好きharakoが、大人になってから、改めて音楽の楽しみ方を見つける連載です。第4回目は、クラシックからジャズへ方向転換した、サックス奏者・指導者の横原由梨子さんに、ジャズの楽しさについて教えていただきました。クラシックからジャズに転向【大人の音楽LOVER♪】vol. 4harakoもともと、ジャズをやりたいと思っていたのですか? それとも、全くの予想外でしょうか?横原さん中学の吹奏楽でサックスに出会ってから、13年くらいクラシックサックスでした。大学に入っても、クラシックを続けていたんだけど、大学卒業間近で、たまたま聴きにいったジャズライブをきっかけに魅了されていったんです。クラシックしかやったことがない私からすると、ジャズへの印象は “わけがわからない” の一点。聴いて楽しむポイントもわからないし、どこで拍手をするのかもわからない。どんなルールがあるのか疑問ばかりだったので、初めは自分がジャズを始めるなんて思っていなかったですね。でも、だんだん聴く音楽が徐々に変化し、楽器もビンテージのものにして、奏法が混乱するからクラシックの依頼は全て断るまでになっていました。本場のジャズを肌で感じるために、ニューヨークにも行き、今では、クラシックから180度違う、ジャズの世界に浸っている毎日ですね。理論より、感覚から入る大切さharakoジャズを始める時に、どこから手をつけたら良いか謎です……。オススメの切り口はありますか?横原さんクラシックは、楽譜に細かいアーティキレーションが書かれているけど、ジャズは基本的にキーとコード進行以外は、個々の表現の自由なんです。アクセントひとつとっても、正解がないのが難しいところだと思います。それもあって、“ジャズの演奏=聴いた量” と言われるくらい、耳でニュアンスを感じることが大切。日本でもCDやライブで聴いていましたが、本場ニューヨークでは、無料の音楽イベントがたくさんあるんですよ。しかも、ジャズクラブでは、夜中の3時〜4時まで素晴らしい演奏を聴くことができて、とても充実していましたね。一日中、音楽があふれている感覚。英語でもそうですが、文法から入るより、まずは好きなフレーズを話してみる、とか言いますよね。同じ要領で、全くジャズをやったことがない人の場合は、自分の好きなフレーズを、まずは真似てみて感覚を掴んで欲しいですね。理論は本当に後からついてくるもので、私も演奏経験を重ねていくうちに、ジャズ理論への理解が深まっていきました。いきなり理論から入っていたら、難しくて挫折してたかもしれません……(笑)。人と積極的に合わせることharakoニューヨークに突然行かれた時は、どんな感じで演奏を学ばれたんですか?横原さんニューヨークに行った目的は、とにかく演奏を聴きに行こうと思って、学校に入学はしなかったんです。事前にレッスンを受けたい人にアポイントだけとって、あとは自分のインスピレーションを大事に行動したのが、現場を肌で感じるために功を奏したと思っています。そこで、体感したことのひとつですが、“一緒に演奏しない?” と誰かから誘われるのを待っていたら、一生演奏できないと言うことを学びましたね(笑)。日本人に多い傾向で、大丈夫です! 私なんて……。とモジモジしてしまうと、ただ見てるだけで本当に終わってしまう。初めはすごく勇気がいることですが、ニューヨークでセッションしている場面をみたら、自ら楽器を持ってステージに上がらないといけないんです。見知らぬ人たちに混じって、いきなりステージに上がるって、けっこう勇気がいると思いませんか? 私は、この感覚に慣れるまで2週間かかりました(笑)。でもそれを乗り越えて、だんだんなじんでいった時は、とっても嬉しかったですよ。もちろん、急にそんなことができなくても良いと思いますが、まず楽器で音を出したら、一緒に合わせてみることが大切ですね。失敗したり恥をかいたりしても、他の楽器の方と演奏し、自分の演奏を感じることで、ジャズの楽しさをより早く見つけ出せると思います。ジャズは個性のぶつかり合いharakoクラシックと比べて、ジャズは個人戦のイメージがすごくあります。その場で楽しもう、という傾向が強そうですね!横原さんそうですね。ジャズは、けっこう孤独かも。クラシックと大きく違うのは、毎回メンバーが初対面のケースが多いと言うことです。メンバーで活動しているなら別ですが、基本的にはその場その場で、どんな演奏や曲を行うかもわからないスタイル。だから、この人の演奏スタイルと、この人が合わさったら、化学反応が起きて良さそう!と、個性をぶつけていく感覚でおもしろみはすごくありますよ。今日は、どんな演奏になるんだろう?と、感性を磨きにいくのが、とても楽しいですね。あとは、リーダーライブと言って、自分が演奏したい場所、選曲、人選まですべてセレクトするライブは、お気に入りの空間を作れる楽しさがあります。毎回変わる内容って、とにかく刺激的。新しいものが生まれる感じを経験できるんです。普段は練習に励み、感性を磨くことが大切。そして、定期的なセッションでまた新しい自分に出会って行く。終わりのない、ジャズ人生を歩みたいとのことでした……♡今回の音楽LOVERは……♪横原由梨子さんサックス奏者・指導者♪音楽を、ひと言で表すと?「長い階段」静岡県浜松市出身。 中学校の吹奏楽部をきっかけにサックスをはじめる。 第15〜17回浜松国際管楽器アカデミー受講生。 全日本ジュニアクラシック音楽コンクール審査員賞受賞。 中部読売新人演奏会出演。平成22年度、日演連推薦/新人演奏会オーディションに合格し、名古屋フィルハーモニー交響楽団とJ.イベールの室内小協奏曲を共演する。 そして、大学卒業後に訪れたジャズクラブで初めてジャズに出会い、2015年、16年と単身ニューヨークに渡り研鑽を積む。現在は、中部、関東地区などのジャズクラブを中心に活動中!(C) piola666/Gettyimages(C) erlucho/Gettyimages(C) guigaamartins/Gettyimages
2017年08月24日人気急上昇中の新人女優・唐田えりかが、10月14日(土)に神奈川・横浜みなとみらいホール大ホールで行われる、武満徹《系図―若い人たちのための音楽詩―》の朗読者を務める(神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会みなとみらいシリーズ)。来年公開予定の映画『寝ても覚めても』(原作=柴崎友香)では主演の東出昌大の相手役ヒロインに抜擢されるなど、さらなるブレイクも必至の清純派。神奈川フィル常任指揮者・川瀬賢太郎の熱烈オファーで、オーケストラとの初共演となった。7月、川瀬との初ミーティングを終えた直後の彼女に話を聞いた。【チケット情報はこちら】「楽譜を見ながら、朗読のタイミングなど細かく教えていただきました。詩が難しくて不安もあったんですけど、川瀬さんから、ありのまま、素直にストレートにやってくださいと言ってもらえたので安心しました。“わからなくていい。わかろうとすることが大事なんです”って」武満徹《系図》(1992)は、谷川俊太郎の詩集『はだか』(1988)からの6篇の詩による、朗読とオーケストラのための作品。詩に描かれているのは、どこにでもありそうな家族の、でも少し苦い日常であり、親から子へ、太古から脈々と連鎖してきた生命への大らかな讃歌でもある。その主役が唐田の朗読だ。オーケストラは彼女の言葉に呼応するように音楽を紡いでゆく。実は彼女、この《系図》を、昨年4月のNHK交響楽団の定期演奏会で聴いているのだそう。もちろん、まだ今回のオファーが届く前の話だ。「同じ事務所の山口まゆちゃんが朗読したので聴きに行きました。余分なものがないというか、いろんな音が混ざってひとつになっていて、鳥肌が立ちました。詩と音楽の一体感もすごくて、まっすぐに伝わってくるものがあって。今度は自分があれをやると聞いて、音感に自信がないし、最初は率直に“マジか”と思っちゃいました(笑)」その心配は杞憂だろう。なぜなら、「わたしもコンサートやフェスに行くと、必ず何かを持ち帰ってくるので、今回も誰かに何かを届けられたらいいなと思っています。たとえばこの詩を通して自分の家族を見つめ直してもらえたりとか、これからのことや過去のことを感じたり考えてもらったりとか」という彼女の作品との向き合い方は、武満が日本初演時のプログラムに寄せた、「人間社会の核になるべき家族の中から外の世界と自由に対話することが可能な、真の自己というものの存在について少しでも考えてもらえたら」というメッセージと、本質的なところで共鳴している。そして武満は言う。「それを可能にするものは愛でしかない」と。オーケストラを通じて、詩人の谷川俊太郎から彼女へのアドヴァイスも届いた。「芝居にならないように淡々と。言葉を大切に美しい日本語で」彼女の名前が広く知られるきっかけになったキーワードのひとつが「TMK(透明感)」。まさにその透明なキャラクターと声とは、詩人の助言にもぴったりだ。わくわく。取材・文:宮本明
2017年08月22日普段なかなかできない体験をしたい小学生の夏休み。6年生と3年生の娘2人と、初めてのオーケストラコンサートに行ってきました!生でクラシック音楽を聴くのは、学校の体験授業くらい…という音楽初心者の親子でも気軽に楽しめた、ファミリーコンサート。「やっぱり音楽は生だと全然違う」とフルオーケストラの音のすごさを実感し、親子ともに貴重な体験となりました。筆者が初めて体験した子連れクラシックコンサートをレポートします!■いざ、初めての子連れクラシックコンサートへ行ってきたのは今年で32年目を迎え、全国で300回以上開催されているという、ヤマトホールディングスが主催する 音楽宅急便「クロネコファミリーコンサート」 。本格的なクラシックコンサートながらも、「赤ちゃんから大人まで、誰でも楽しめる」がキャッチフレーズで、観客も一緒に楽しめるプログラムで構成されています。クラシックコンサートとは無縁の我が家が、コンサートデビューするにはピッタリでした。当日まで何度も「どこに行くの?」「クラシック音楽って何?」と繰り返し質問する次女。コンサートといえば自分たちのピアノの発表会くらいの経験しかないので、どんなものか全く想像がつかないよう。親である筆者も、最後に行ったクラシックコンサートがいつか思い出せないくらいの状況なので、聞かれるたびに「行けばわかるから」と答えて当日を迎えました。クラシックといえばおしゃれをしなくては、というイメージがあるけれど、ファッションにこだわりのない長女はいつものショートパンツ、おしゃれ好きな次女はお気に入りのワンピースでちょっとおでかけモード。気軽なコンサートだからと、当日はおのおの好きな服装で向かいました。開場時刻の17時45分くらいに、東京の開催会場である「かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール」に到着。うたい文句通り、赤ちゃん連れからシニア世代まで老若男女が気軽な装いで集まり、リラックスした雰囲気のロビー。小さな子どもを連れた親子もたくさんいて賑わっている様子に、娘たちもひと安心。着ぐるみの “クロネコ・シロネコ” のお出迎えに、早速一緒に記念撮影。「ネコちゃんかわいいねー」と言いながらポンポンとネコちゃんをなでていました。■プロのオーケストラと、舞台で一緒に演奏できる!いよいよ開演。たくさんの弦楽器や管楽器がズラリと並ぶ舞台は大迫力。ハープなど滅多に見れない楽器が並んでいるのを娘たちはじっと見つめていました。次女は演奏前の音合わせを聞いて「これが曲?」と聞いてくる始末。やっぱり何事も経験をさせておくことって大切だな、と実感しました。チャイコフスキーの「眠れる森の美女」のふわっと心地よい曲からスタート。その後、会場のある葛飾区を拠点とする「シンフォニーヒルズ少年少女合唱団」との協演と続きました。自分たちと同じくらいの子どももいる合唱団が舞台に上がっていることに、娘たちも興味しんしん。この「クロネコファミリーコンサート」のために作られたオリジナル曲『あめつちのうた』(作詩:林望/作曲:上田真樹)のやさしい調べにも聴き入りました。「空、木、風、水」という自然をテーマにした雄大なこの曲。澄んだ歌声にのった美しい歌詩を聴いていると、自然の情景が目に浮かんできそう。次女は「風と水のうたがきれいで好き」と、何か感じるものがあったよう。続けて木琴のような楽器、マリンバ奏者のゲスト出演。珍しいアフリカの木琴バラフォンやわざわざメキシコから持参したマリンバを見せてくれた後で、目にもとまらない速さで正確に音を打つその姿に、耳はもちろん、目でも楽しめました。「すごいねー」と思わず、隣の長女と感心しきり。その後は、子どもたちが舞台でオーケストラとの合奏を楽しめる「ぼくもわたしもクロネコ音楽隊!」。カスタネット、ピアニカ、リコーダー、バイオリンなど思い思いの楽器を家から持参した子どもたちが舞台に上がり、プロのオーケストラと一緒に曲を奏でる、という貴重な機会。「楽器のない子は歌でもいいですよー」とのアナウンスに、楽器なしで舞台に上がる子どもたちもいました。楽器を持参しなかったわが家も「せっかくだから行ったら」と行かせようと試みたものの、ちょっと恥ずかしかったようで席から動きませんでした。「ドレミファソラシド」と音を合わせてオーケストラと楽しそうに演奏する子どもたちを眺めていると、やっぱり舞台に上がってみたくなったようで、「次はリコーダーを持っていく」「私はトライアングル」と話していました。プロのオーケストラと舞台で一緒に演奏する、という経験は一生ものの体験になりそうです。 ■観客も一緒に歌を歌う 会場には一体感が休憩をはさんだ後半は、朗読と生演奏のコラボレーション。コンサートの司会者でもあるアナウンサー朝岡聡さんが朗読した「おおきな木」(篠崎書林刊)は、身勝手な1人の人間を大きな愛と献身で包む1本のりんごの木の物語。娘たち2人ともよく知っている話だったけれど、音楽と一緒だとなんだか印象も変わるから不思議。そして最後は、あの有名なラヴェルのボレロ。ひとつの楽器から始まり、繰り返し繰り返し同じメロディーを奏でながらどんどん楽器が増えて盛り上がっていくこの曲は、オーケストラでこそ醍醐味が味わえる曲。「この曲が一番好きだった」という長女は「あの一番最初に1人で演奏する人は絶対ドキドキだよねー」と演奏者の気持ちになって聴いていたよう。アンコールは「故郷」と「ラデッキー行進曲」。「ずっと座っていたから疲れたでしょう」とうれしいアナウンスで観客みんな立ちあがり、観客も一緒に歌を歌ったり、手拍子をとったりして再び演奏に参加している気分。手拍子もなんだかピッタリとみんな合い、会場中で不思議な一体感が生まれていました。■赤ちゃんが泣いても、子どもが騒いじゃっても大丈夫歌、お話、珍しい楽器、参加型の演奏……と飽きのこないプログラムのお陰で「子どもたちは集中して聴けるかな」という心配は杞憂に終わりました。うれしかったのは、赤ちゃんが泣いても、子どもが騒いじゃっても大丈夫(もちろん、一度会場を出て落ち着いたら戻ってきてくださいね、と最初にアナウンスされていた)という温かい雰囲気に会場が包まれていたこと。ちょっとぐずりそうになったら、会場の端で抱っこしてあやしながら演奏を聴いているパパやママ、子どもの体を使って拍子をとりながら音楽を全身で楽しんでいる親子、子どもにいろいろ説明してあげているママなど、みなそれぞれの方法で楽しんでいました。娘たちもそれぞれ感じることがあったよう。帰り道は今日の曲を口ずさんでいました。やっぱり子どもの頃からどんどん本物にふれるのは大切、と改めて生で本物の音楽を聴くよさを実感。筆者も久しぶりに生演奏を聴けて日常を忘れてリフレッシュできました。本格的な音楽を気軽に楽しめる 音楽宅急便「クロネコファミリーコンサート」 は、この後も日本全国6か所で開催予定。佐賀県での開催には応募がまだ間に合うようだから、お近くに住んでいる方は応募してみては? あなたの街にオーケストラがやってくる♪音楽宅急便「クロネコファミリーコンサート」 主催:ヤマトホールディングス 本物のいい音楽を年齢や地域を越えてすべての人にお届けしたい。そんな願いを込めたファミリーコンサート。2017年度は全国9カ所で開催予定です。 佐賀県会場は現在も応募受付中!詳しくはこちら >> ※応募受付は終了しました[PR]ヤマトホールディングス 取材・文:まちとこ出版社撮影:まちとこ出版社 壬生マリコ(コンサート上演写真を除く)
2017年08月16日得意とするスペインものを究めてゆく活動に加え、日本の民謡に基づくピアノ曲を広める活動、手紙の朗読とともに音楽を届ける「作曲家のラブレター」公演など、多彩に活躍する熊本マリ。彼女が毎年秋に開催する「熊本マリの夜会」は、トークを交え、趣向を凝らしたプログラムを披露する演奏会で、幅広い音楽ファンの人気を集めている。【チケット情報はこちら】「堅苦しくない気分で楽しんでほしいという思いから、コンサートではなく“夜会”と呼んでいます。テーマ性のある選曲とあわせて、自分の言葉で作品への想いを語ることにより、みなさんに楽しみながら何かを知り、世界観を共有していただけたら」今年取り上げるのは、J.S.バッハ、リスト、サティ、モンポウという、国も作風も異なる4人の小品の数々。「ピアノが語る4人の哲学者」と題し、天才たちが音楽を通して表現した哲学を届ける。熊本は、この作曲家たちをそれぞれどんな“哲学者”と捉えているのだろうか。「まずサティは、一言で言うなら“変人”(笑)。それを人からどう思われようと気にしないところに、彼の魅力があります。また、私にとって常に傍にいるモンポウは、“陽の中の孤独”。リストは“生命力”。人間、音楽家として、周囲に多くの光を与えた人です。彼が自らのルーツをたどったハンガリー狂詩曲には、音楽的な濃さと生命力を特に感じます」そして、ライフワークとして取り組んでいるというバッハ。「作曲家たちにとっての原点であり、聖書といえる存在です。聖書にはメッセージが込められ、何かを気づかせてくれますが、その意味で、バッハはとても“新しい”存在だと思うのです。今年5月に初めてゴルドベルク変奏曲をステージで演奏し、作品の深さを改めて実感しました。今回は、プログラム中、間奏曲風にいくつかの変奏を弾きます。これによって、バッハのすばらしさ、モダンさをより感じていただけるのではないでしょうか」曲順にもかなりのこだわりがある。特に後半のバッハ以降は、「ト長調とト短調の作品を集め、異なる作曲家の作品でありながら一つの組曲のように」感じられる構成とした。「自分でも、実際にこの流れで演奏することでどんな発見があるのか楽しみ。新しい挑戦です」昨年デビュー30周年という節目を迎え、今、「音づくりには永遠にゴールがないことが歓び」だと語る。「年を重ねることによる技術の衰えは避けられないという方もいますが、私はそうは思いません。私自身、どんどん弾けるようになっているという実感がありますから。経験を重ね、時間をかけて練習しているうち、手も身体も変わり、音楽も磨かれてゆきます。これからも演奏によって音楽のメッセージを伝え、人の気持ちを一瞬でも癒すことができれば嬉しいですね」公演は10月20日(金)東京・東京文化会館小ホールにて。チケット発売中。取材・文:高坂はる香
2017年08月14日アクションゲーム「メタルギア」シリーズの楽曲をフルオーケストラで楽しめるコンサート『メタルギア in コンサート』が、7月30日大阪・オリックス劇場で開催された。客席は老若男女で埋め尽されほぼ満員状態。これは世界的に活躍する編曲・指揮のニコラス・バックと大阪交響楽団による音世界、さらに『METAL GEAR SOLID PEACE WALKER』のテーマ『Heavens Divide』の歌唱でおなじみのシンガー、ドナ・バーグの歌声に大きな期待が集まった結果だろう。コンサートはACT1とACT2の2幕構成で、まず『METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER』など3シリーズの楽曲を展開するACT1が始まった。【チケット情報はこちら】ACT1の幕開けは、名曲と名高い『“METAL GEAR SOLID”Main Theme』から。会場のテンションもいっきに上昇する。会場のスクリーンにはゲーム映像が映し出され、演奏とのシンクロにも息を飲む。例えば緊張感漂う戦闘シーンならストリングスの小刻みにかつ歪むように響く音色が恐怖までも感じさせ、爆発が起きればオーケストラも一緒に大音量の迫力。また、スクリーンに少女、パス・オルテガ・アンドラーデが姿を見せる『恋の抑止力』ではピアノなどで清らかさを表現し、メロディアスなポップステイストで観客の心を躍らせる。そしてラストにはドナ・バーグが登場。『Sins of the Father』を情感たっぷりに歌い上げ、ダイナミックな演奏とひとつになってオオアマナの白い花が赤く染まる映像をさらに強く記憶に刻んでいった。そして休憩後、ACT2がスタート。『METAL GEAR SOLID』『METAL GEAR SOLID2』『METAL GEAR SOLID4』のナンバーが繰り広げられる。初期シリーズだけに、映し出される懐かしい映像も少し粗さがあり、それが逆にゲームファンのハートをくすぐる。揺れるような映像に合わせて楽曲も彩り豊か。オーボエのゆったりとした感触や、トランペットのミュートがもたらす西部劇のようなワイルドな空気、さらに高音のハープと低音のベースの好対照で綴る荒れた街の様子や、空中戦を沸き立たせるスタイリッシュなメロディ。次々に変わるシーンと、その物語を何倍にも広げる演奏に集中しているとアッと言う間に終わり時が。すると最後は『Father and Son』と『Metal Gear Saga』という人気曲を立て続けて感動的にフィナーレを飾った。当然客席からは大きな拍手と歓声が起こりアンコールへ。となれば、再び歌姫・ドナがステージに登場!『Snake Eater』と彼女の代名詞『Heavens Divide』の2曲を艶やかかつ伸びやかなボーカルで披露し、大きな感情の渦を巻き起こして『メタルギア in コンサート』大阪公演は幕を下ろした。東京公演は8月2日(水)東京・東京国際フォーラムホールAにて。チケットは発売中。取材・文:服田昌子
2017年08月01日2015年に改称して今年3年目を迎える「セイジ・オザワ松本フェスティバル」(総監督=小澤征爾)が、8月13日(日)から9月10日(日)まで長野県松本市で開催される。セイジ・オザワ松本フェスティバル チケット情報注目が集まるのはA、B、Cの3プログラムが用意されたオーケストラ・コンサート。Aプロ(8月18日(金)・20日(日))は4年連続出演のファビオ・ルイージ指揮のマーラー:交響曲第9番。そして小澤征爾が指揮台に立つのがBプロ(8月25日(金)・27日(日))のベートーヴェン:レオノーレ序曲第3番と、同音楽祭への11年ぶりの登場となる内田光子を独奏者に迎えるCプロ(9月8日(金)・10日(日))のベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番だ。Bプロはナタリー・シュトゥッツマンが指揮するマーラー:少年の魔法の角笛とドヴォルザーク:交響曲第7番との組み合わせ。近年は指揮者としての活動も活発になっているシュトゥッツマンの棒はもはや歌手の余技のレベルではないが、一方で、彼女にとって歌うことと指揮をすることは同じ営みなのだろうなと感じさせる自然な息づかいは歌手ならではでもあり、音楽に圧倒的な説得力を与えている。いまぜひ聴きたい指揮者のひとり。オーケストラはもちろんサイトウ・キネン・オーケストラ。9月3日(日)には小澤征爾音楽塾オーケストラによるオペラ「子どもと魔法」も上演される(デリック・イノウエ指揮)。そして、小澤ファンには格別にうれしい映像リリースの情報が飛び込んできた。DVDとBlu-rayで発売されるのは、「セイジ・オザワ松本フェスティバル」2015年のベートーヴェン:交響曲第2番と2016年のベートーヴェン:交響曲第7番、そして2016年の期間中に行なわれた「マエストロ・オザワ80歳バースデー・コンサート」で指揮したベートーヴェン:合唱幻想曲のライヴ映像。つまり、この2年間に小澤が松本で指揮したすべての記録であると同時に、オール・ベートーヴェン・プログラムとなり、今年指揮する2曲とあわせて、円熟の小澤のベートーヴェンをさらにたっぷり楽しめるというわけだ。合唱幻想曲の独奏者はマルタ・アルゲリッチ。彼女にとっては新たなレパートリーで、これが同曲を弾いた唯一の映像なのでとても貴重。出演者全員の「ハッピー・バースデー」の合唱や、ひいきのボストン・レッドソックスのスタジアム・ジャンパーを羽織った小澤がバースデー・ケーキのキャンドルを吹き消すなごやかな一幕も。9月15日(金)の世界発売に先立ち、日本では小澤征爾82歳の誕生日9月1日(金)に先行発売。さらに、オーケストラコンサートが始まる8月18日(金)から会場で特別先行発売されるから、松本に出かける楽しみがひとつ増える。前身の「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」から数えると、この地に根をおろしてすでに26年。四半世紀を超えてこの音楽祭を応援し続ける、街をあげての親密な歓迎ムードに浸れるのもこの音楽祭の心地よい魅力だ。今年も、もうすぐそれが味わえる。取材・文:宮本明
2017年07月26日日本人の若手テノール歌手の中でも際立ったスター性に恵まれ、実力・人気ともに鰻登りの西村悟。得意とする『椿姫』や『ラ・ボエーム』などのイタリアオペラのみならず、日本語オペラ『夜叉ケ池』や、先日大成功を収めた日本フィルの演奏会形式『ラインの黄金』のローゲ役など、レパートリーの拡大もめざましい。その西村が、自らのプロデュース公演としてオーケストラとのリサイタルを行う。歌手自身が指揮者とオーケストラに出資して行う大規模な公演で、日本ではこうしたソリスト発信の試みはまだ珍しい。【チケット情報はこちら】「今までイタリアのボローニャとヴェローナで勉強をしてきたのですが、その成果を聴いて頂くという目的もあるリサイタルです。忙しい山田和樹さんが共演してくださることになって、オーケストラも山田さんが正指揮者を務める日本フィルハーモニー交響楽団に決まり、この素晴らしいチャンスに感謝しています。山田さんや日フィルと築いてきた信頼関係がようやく実になった。一世一代の試みではありますが、満員のお客さんの前で歌えることを願っています」身長183センチの長身とステージ映えするルックスは、デビュー当時から注目の的だったが、元々はバスケットボールに打ち込んでいて、声楽を始めたのは高3のときだった。「音楽教師になるつもりで音大に進んだのですが、先生のアドバイスもあって芸大の大学院の試験に挑戦し、芸大在学時代にイタリア留学のチャンスもいただきました。歌はスポーツにとても似ているんです。バスケットでダンクしたり、柔道で一本背負いをする感覚と、テノールで高音を出す感覚というのは共通したものがある。歌手も筋肉を使い、使った後はケアしますしね」声量の豊かさとピッチの良さ、そして真に迫った演技力は、アスリート的な鍛錬とも関係があるようだ。リサイタルではこれまで歌いこんできたヴェルディやプッチーニ、ドニゼッティのイタリア・オペラのハイライトをメインに歌う。「悲劇的なオペラからのアリアが多いですが、僕自身悲劇が大好きだし、最も自分の音楽性が表現できると思っています。字幕なしでも歌詞の内容が分かる歌を歌うのが目標ですね。表情や音色、音量、手の仕草や目線などで文字なしでも伝えられるものがあると思います」何よりお客さんの前で歌うことが喜びだと語る。謙虚で誠実でユーモアセンスもある、未来の国際派テノールだ。公演は10月11日(水)午後7時より、東京オペラシティコンサートホールで開催。チケットは発売中。取材・文:小田島久恵
2017年07月19日12月31日(日)に東京・東京国際フォーラム・ホールCで「ドラゴンクエスト」ウインドオーケストラコンサート大晦日公演の開催が決定した。【チケット情報はこちら】大晦日公演では、昼公演にロトシリーズ「ドラゴンクエスト I、II、III」の楽曲、夜公演に天空シリーズ「ドラゴンクエスト IV、V、VI」の楽曲を演奏。両公演とも楽しみたい人のために、昼夜同じ席で鑑賞できる通し券が発売される。ドラゴンクエスト誕生30周年を記念して、現在各地で開催中の「ドラゴンクエスト」ウインドオーケストラコンサート。7月9日(日)には東京・かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホールで「ドラゴンクエストIX」(吹奏楽版世界初演)が開催される。7月9日(日)公演のチケットは発売中。■「ドラゴンクエスト」ウインドオーケストラコンサート【吹奏楽による『ドラゴンクエストⅨ』】指揮:永峰大輔/吹奏楽:東京佼成ウインドオーケストラ7月9日(日)開演14:00かつしかシンフォニーヒルズモーツァルトホール(東京都)料金: 全席指定 4,500円■「ドラゴンクエスト」ウインドオーケストラコンサート【吹奏楽によるドラゴンクエストⅠ,Ⅱ,Ⅲ】指揮:大井剛史/吹奏楽:東京佼成ウインドオーケストラ12月31日(日)開演14:00東京国際フォーラム ホールC(東京都)■「ドラゴンクエスト」ウインドオーケストラコンサート【吹奏楽によるドラゴンクエストⅣ,Ⅴ,Ⅵ】指揮:大井剛史/吹奏楽:東京佼成ウインドオーケストラ12月31日(日)開演18:00東京国際フォーラム ホールC(東京都)料金:全席指定S席4,800円、A席3,800円、2公演通し券9,000円
2017年07月05日ディズニー音楽を、一流オーケストラとブロードウェイなどで活躍する歌手たちのライブ演奏で届ける「ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 2017」。大人気のこのコンサートが、今年も秋に開催される。【チケット情報はこちら】指揮者のブラッド・ケリーは、2002年の第1回からこのコンサートの編曲と指揮を務める名匠。かつては東京ディズニーシーの音楽面でも活躍しており、来日して20年の日本通でもある。「日本にはこれまで40回くらい来ているんじゃないかな。人々の雰囲気も良いし、毎回、何かしらの発見があります。ディズニー・オン・クラシックのお客さんに関して言えば、初めから素晴らしかったけれど、回を重ねる毎に反応が益々良くなっていって。お客さんも自分がそこに参加していいのだということをわかってくれたのだと思う。今では皆さん、温かい歓迎ムードで迎えてくれます」と微笑みながら語る。一方、初参加の歌手メラ・ジル・ハーマンは、今回が日本どころかアジアに来るのも初めてだという。「ディズニーの映画や音楽には小さいころから馴染んでいて、昔、学校でミュージカル『ピーター・パン』を上演した際には主役を演じたの。フライングはなかったけど、自分でジャンプして客席を駆け回って(笑)。だから今回、ディズニー・オン・クラシックに出演が叶い、とても嬉しいです。シンフォニックオーケストラとの共演も初めてなんです」と、目を輝かせる。そんなハーマンの魅力をケリーは「彼女は私の娘と同じくらいの年齢なんですよ。曲覚えも早いし、オーケストラ越しに指揮者とコミュニケーションを取る能力も高い。声域がアルトで、アルトヴォイスとしての美しさが際立っているのも特長です。とても才能がある歌い手ですよ」と教えてくれた。さて、毎回、コンサートの第二部でディズニー作品のひとつをフィーチャーするこのコンサート。今回は『塔の上のラプンツェル』の物語と音楽が、スクリーンの映像と共に楽しめる。ハーマンが演じるのは、ヒロインのラプンツェルを閉じ込める育ての母親ゴーテル役。「ゴーテルはマニピュレーター(操る人)のような役どころで、チャーミングだったり、悪役っぽかったり、コミカルだったりする。それを表現するには、アルトだけでなくソプラノ的な声から醜い声まで幅広く表現しなければなりません」とハーマン。さらに、ディズニー・オン・クラシック15周年の今年ならではの趣向も。ケリーは言う。「オープニングにはこのコンサートを初めて開いた2002年に演奏した楽曲をメドレーにした組曲をお届けします。と同時に、『Brillante ~輝きの未来へ』をテーマに、『塔の上のラプンツェル』のような新たな曲も送る。つまり、過去と未来の両方を表現します。皆さんには大いに楽しんでいただきたいですね」。「ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 2017」は9月21日(木)より開幕。取材・文:高橋彩子
2017年07月04日山田和樹指揮、宮城聰演出というタッグも話題のNISSAY OPERA『ルサルカ』。11月の公演を前に、関連企画「オペラ・オードブル・コンサートvol.5 月に寄せる歌」が、日生劇場のピロティにて開催され、『ルサルカ』に出演する田崎尚美、新海康仁、清水那由太、秋本悠希が、ピアニスト湯浅加奈子の伴奏で、オペラの名曲を披露した。オペラ『ルサルカ』チケット情報1曲目は、ルサルカが第1幕で歌う「月に寄せる歌」。森に住む水の精ルサルカが人間の王子への恋を歌う有名なアリアだ。本番でも同役を演じる田崎が、ルサルカの思慕と憧憬をしっとりと歌い上げた。2曲目は、人間の姿で現れたルサルカに魅せられた王子が歌う「私には分かっている」。本番には狩人役で出演する新海が、運命の恋を確信した王子の歌を情熱的に歌った。晴れて王子と婚約するルサルカだが、彼女は人間の体を得る代わりに声が出せなくなっている。第2幕、口のきけないルサルカの前で、外国の公女が王子を連れて行ってしまう。その様子を見た水の精ヴォドニクが歌うのが、この日の3曲目、「哀れ、蒼白のルサルカ」だ。本番でもヴォドニクに扮する清水が、ルサルカへの哀れみと人間の世界への怒りを表した。続く4曲目は、外国の公女と王子の「あなたの瞳には」。本番でも公女を歌う秋本が深海と共に、新たに燃え上がる恋の二重唱を情熱的に歌った。この王子の裏切りを受けて水の底に引きずり込まれたルサルカが3幕で歌うアリアが、5曲目の「生から切り離され」。田崎がその歌にルサルカの深い嘆きを込めた。さらに、同じドヴォルザーク作曲の「わが母の教え給いし歌」も歌われ、その美しい旋律に来場者一同は聴き惚れたのだった。この日、進行も務めるなど大活躍だった田崎は、今回がルサルカ初挑戦。「私は声種的に、重い声の役が多く、ルサルカのような、人間ではない美しい声の役は、あまり経験してきませんでした。ただ、ドヴォルザークというと民族的な旋律が特長的で、そのオーケストラにはワーグナーに近い重厚さもある。実際にルサルカを歌ってみて、ある程度の重みがあってもいいのかな、と感じています。妖精らしさはハープなどの楽器や森の精、合唱などに表れており、人間に憧れるルサルカの歌にはむしろ泥臭いところもある気がするので、私の場合はそこから作っていけたらと思っています」。ドヴォルザークの歌について回るチェコ語の難しさについては「補助記号が、特にルサルカのアリアには多いんです。日本人がやらない発音なので、11月までにどこまできちんとできるかが課題ですね」と意気込む。宮城演出の稽古はまだこれから。「2幕でのルサルカは声を出さないので、表情や動きで表現することになります。どのような演出をつけてくださるのか楽しみですね。ルサルカは、相手のために自分を犠牲にする。現実にはなかなかできない行為ですが、その無償の愛がお客様に伝わるよう、リアルに演じたいです」。オペラ『ルサルカ』は11月9日(木)より東京・日生劇場にて。取材・文:高橋彩子
2017年06月30日7月30日(日)大阪オリックス劇場、8月2日(水)東京国際フォーラム ホールAにて行われる、『メタルギア in コンサート』のセットリストの一部が公開された。「メタルギア in コンサート」チケット情報全世界累計販売本数が5130万本(2017年3月末時点)を超える、KONAMIのアクションゲーム『メタルギア』シリーズの楽曲が披露される同コンサートでは、80名以上のフルオーケストラの生演奏と、舞台上に設置された大スクリーンに映し出される『メタルギア』シリーズの映像が、完全にシンクロ。『メタルギア』シリーズの歴史を思う存分堪能できるプログラムとなっている。なお、当日の指揮は編曲も手掛けるニコラス・バック、オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団(東京公演)と大阪交響楽団(大阪公演)が務め、『メタルギア』ファンにはお馴染みのシンガーソングライター、ドナ・バークは『Snake Eater』などをオーケストラをバックに歌唱するとのこと。チケット一般発売は、7月1日(土)10:00より。【SET LIST(一部)】・Snake Eater (MGS3)・METAL GEAR SOLID PEACE WALKER Main Theme (MGS PW)・恋の抑止力 (MGS PW)・Father and Son (MGS4)・Metal Gear Saga (MGS4)・Sins of the Father (MGSV)・Ground Zeroes (MGSV)・The Best Is Yet To Come (MGS)・Escape (MGS)・Battle (MGS2)・Freedom to Decide (MGS2)※曲目は6月29日現在の予定です。変更になる可能性もございます。詳細は公式サイト(まで。
2017年06月29日日本最大のオペラ団体である東京二期会は近年、ヨーロッパの歌劇場との提携公演や共同制作を積極的に行なって、世界のオペラ・シーンを見据えた活動を展開しているが、来シーズンはフランス国立ラン歌劇場と共同で、黛敏郎(1929-1997)のオペラ《金閣寺》(三島由紀夫原作)を新制作上演する。6月19日、都内で制作発表会見が行なわれた。【チケット情報はこちら】黛敏郎の《金閣寺》はベルリン・ドイツ・オペラの委嘱により作曲、1976年6月にベルリンで世界初演された。だから歌詞はドイツ語。日本では1991年にようやく初演され、その後1997年、1999年、2015年にも国内上演されている。けっして上演回数が多いとは言えないかもしれないが、20世紀オペラ屈指の名作だ。今回の演出を委ねられたのは宮本亜門。ミュージカルからスタートした彼だが、2002年の《フィガロの結婚》以来、二期会とも多くの名オペラ演出を生んできた。「(黛の《金閣寺》は)いつかもし演出できれば、とずっと待ち望んでいた。音楽がなんと力強いことか。ストラヴィンスキーやラヴェルのようにエネルギーが生々しく迫ってくる」(宮本)この原作を舞台化する際、金閣寺という存在をどう扱うかがポイントになるだろうが、黛と宮本は、その方向性において共鳴し合っているようだ。2011年、神奈川芸術劇場(KAAT)こけら落とし公演で宮本亜門が手がけた演劇版《金閣寺》は、現時点での彼の代表作筆頭。そこでは金閣を象徴する「鳳凰」役を創出して演じさせたのが注目された。「(鳳凰は)主人公・溝口の深層心理を対比する役だった。(黛オペラでは)それを合唱が代弁して、溝口の心情を合唱がどんどん深く広げてゆく。合唱を中心に、闇の中で、光や色で常に脈打つ舞台が彼を追い詰めたり広げたりすることを考えている」(宮本)ラン歌劇場は、かつてはもっぱらストラスブール歌劇場と呼ばれていたが、そのストラスブールとミュルーズ、コルマールの3都市に劇場を持つ。演出家の人選がハイセンスで、「面白そうな演出家ばっかり」(宮本)。たとえば今シーズンならロバート・カーセン、ペーター・コンヴィチュニーが名を連ね、来シーズンの《金閣寺》の前後にはタチヤナ・ギュルバカやデイヴィッド・パウントニーが並ぶ。ヨーロッパを代表する演出家が揃う劇場だ。その列に加わる宮本も、「負けていられない。唸らせるぐらいの演出を」と力強く抱負を語った。また今回、海外の上演に二期会の所属歌手を派遣するのが、共同制作としては新たな試みで、フランス公演での「女」役に嘉目真木子(ソプラノ)、道詮和尚役に志村文彦(バス)の出演が決まっている。《金閣寺》は、2018年3~4月にストラスブールとミュルーズで計7公演が行なわれ、日本への凱旋公演は2019年2月予定。まずはフランス・プレミアのニュースを待とう!取材・文:宮本 明
2017年06月23日越路吹雪の『愛の讃歌』やミュージカル『レ・ミゼラブル』などの訳詞、さらに加山雄三や郷ひろみら名だたる歌手たちへの作詞提供で知られる故・岩谷時子。その遺志を汲み、音楽・演劇関係の功労者と、新たな人材に向けて授与されるのが「岩谷時子賞」だ。第8回となる今年、受賞者の加山雄三や斉藤由貴らが顔を揃えるなかで「岩谷時子賞奨励賞」を受賞したのが、発達障害のあるピアニストとしてメディアでも注目の野田あすかだ。その受賞式が6月12日、都内ホテルで行われた。野田あすか チケット情報「発達障害」は生まれつきの脳機能障害だが、知的障害が伴わない場合は家族も気づかないことがあり、単に“人とコミュニケーションが出来ない人”“空気を読めず衝動的な行動をする人”として集団生活になじめないことが多い。その苦悩から、鬱病やパニック障害などの二次障害を引き起こすこともしばしばだ。野田も4歳からピアノを習い、宮崎大学に進学したが、それまでにいじめや転校、自傷などを経験。大学を中退し、ようやく「広汎性発達障害」の診断を受けたのが22歳の頃。その後は宮崎学園短期大学で本格的に音楽に取り組んだことで、見事に才能が開花した。24歳で受賞した第12回宮日音楽コンクールのグランプリを筆頭に、35歳になる今日まで受賞歴は多数。2015年と2016年にはCDブックを上梓し、今春、東京で行われた2日間のリサイタルは満員を記録し、大阪に続き、7月1日(土)には野田の地元・宮崎でもリサイタルを予定している。車椅子に乗って登壇した野田は、プレゼンターの市村正親から記念のクリスタルを受け取ると、さっそく光にかざして大喜び。「綺麗です、ありがとうございます」と挨拶すると、ピアノの前に移動。そこで再びマイクをとると、「私はプロのピアニストとしてスタートしたばかり。こんな立派な賞をいただけたのは、もしかしたら岩谷先生が『あなたは周りに幸せをもらったから、今度はたくさんの人が“生きていて幸せだな”って思える音楽を伝えていってね』とおっしゃっているのかなと思いました」と素直な胸中を語った。続いて演奏は、「どんな人でも毎日が楽しいという人はいない。哀しみを乗り越えるのも大切かもしれないけれど、どっぷり浸ることでいつか希望が見えてくるという気持ちを込めました」という自作曲『哀しみの向こう』。薄明かりの中を進むような、繊細で切ない旋律から、後半は次第に明るさを増していく曲調が印象的だ。最後に登壇した審査委員で作曲家の都倉俊一からは、「僕もいろんな音楽を聴いてきたけれど、野田さんのは心にジーンとくるピアノ。よく“その人の経験が音色に表れる”というが、このことだなと思った」との言葉が聞かれた。野田だからこそ出せる音色の数々。今後のさらなる活躍に期待したい。取材・文佐藤さくら
2017年06月16日初来日中の、両腕のないホルン奏者フェリックス・クリーザーが日本ホルン協会の主催で開いたトークライブを聞いた(6月13日・ヤマノミュージックサロン新宿)。【チケット情報はこちら】生まれつき両腕のないクリーザーは、ホルンを足で操作する。しかし配布されたプログラムに「そのことにフォーカスするのではなく、同じホルンを、音楽を愛するものとして、それらを通した喜びについて語り合う会にしたい」(日本ホルン協会会長・樋口哲生氏)とあったように、音楽に注目してほしいというのは本人の望みでもあるだろう。とはいえ、どのように演奏しているのかは気になるところ。楽器はごく一部をカスタマイズしている以外は通常のモデルのままだ。足を使うため、当然ながら座って吹く。マウスピースが口もとに来るように、特製のスタンドに楽器を固定する。そして通常は左手の人差し指、中指、薬指で押さえる3本のレバーを、左足の第1~3趾で操作する。足首の筋がとても発達しているように見える。動画投稿サイトには彼の映像もアップされているので、百聞は一見にしかず。ぜひ一度ご覧になることをお勧めしたい。この日披露したベートーヴェンのホルン・ソナタからも芳醇な音色と起伏に富んだ歌い口が聴こえてきて、ホルン奏者としての彼の卓越した美点が、けっしてその奇跡のような足技によるフィンガリングだけにあるのでないことがすぐにわかる。「ホルンの魅力をたくさんの人に伝えたい」というクリーザー。そのためにドイツでもこうしたトークライブやテレビ出演の機会を積極的に活用しているとのこと。その意味では、ハンディを乗り越えるどころか、それをプラスの要素に転じているとさえ言える。言葉を慎重に選ぶ必要があるが、好奇の目に晒されることも厭わないぐらい、ホルンを愛する気持ちは強い。1991年ドイツのゲッティンゲン生まれ。4歳の時に「ホルンが吹きたい」と宣言したというが、その理由やきっかけは自分でもわからないのだそう。「僕も不思議なんだ。両親は法律家で、もしかしたらホルンという楽器の存在さえ知らないぐらいだから。ひょっとしたらテレビで見て気に入ったのかもしれない。でもまったく記憶にないんだ」。音楽教室では木琴を勧められたが、頑なに「ホルン!」と言い張るので、教室の先生がついに根負けしたそう。ドイツではすでにベルリン・クラシックス・レーベルから、ソロと協奏曲の2枚のCDをリリース。昨年夏のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭では、名誉あるレナード・バーンスタイン賞を受賞している。また、今回の来日に合わせて自伝『僕はホルンを足で吹く』も邦訳出版された(ヤマハ・ミュージック・メディア刊)。6月24日(土)には東京交響楽団の定期演奏会でハイドンとモーツァルトの協奏曲を吹く(秋山和慶指揮)。間違いなく現在最もホットな若手演奏家の一人だ。公演のチケットは発売中。取材・文:宮本明
2017年06月15日「ダニエル・ウェリントン(Daniel Wellington)」より、初のホワイトレザーを採用したウォッチ「クラシック ペティット ボンダイ」が登場。2017年6月9日(金)より直営店及び全国のダニエル・ウェリント取扱店にて発売中。「クラシック ペティット ボンダイ」は、小ぶりな文字盤が特徴の「クラシックペティット」シリーズにブランド初のホワイトベルトを採用したもの。少し華奢なフォルムや、文字盤からベルトまで統一されたホワイトカラーが、繊細で上品なシリーズだ。文字盤にはのエッグシェルホワイトを使用。滑らかで透き通るようなホワイトが、より繊細で洗練された気品を際立たせている。文字盤をローズゴールドで縁取ったものと、シルバーで縁取ったもの2種類で展開。ローズゴールドは、その華やかで上品な輝きがよりエレガントな印象を強める。そしてシルバーは、大人なスマートさを感じさせるデザインに仕上がっている。【詳細】ダニエル・ウェリントン「クラシック ペティット ボンダイ」発売時期:2017年6月9日(金)販売場所:ダニエル・ウェリントン直営店、全国の取扱店価格: DW00100189 (ローズゴールド) 18,000円+税 DW00100190 (シルバー) 18,000円+税 【問い合わせ先】 株式会社ビヨンクール 東京営業所 TEL:03-6804-5258 大阪営業所 TEL:06-6271-2301
2017年06月13日2002年にスタートした、大人のための音楽会「ディズニー・オン・クラシック」が今年記念すべき15周年を迎える。この度、15周年ツアーのテーマを「Brillante ~輝きの未来へ」とし、『塔の上のラプンツェル』をメイン演目に、「ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会」と題し9月から12月に全国39都市、56公演を開催することが決定した。ディズニー・アニメーションや映画、テーマパークの名曲の数々を、スクリーンに映し出される映像やスペクタクルな舞台演出と共に、フルオーケストラとニューヨークで活躍する8人のミュージカル歌手によるライブ演奏で贈る大人のための音楽会「ディズニー・オン・クラシック」。今年の「ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会」は、全編ゲストのリクエスト曲で構成。オープニングはブラッド・ケリーが新たに編曲した「15周年記念 ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 組曲:“ORIGIN 2002”」。2002年の第1回目公演で演奏された全曲を、スペシャル・メドレーで演奏。また、“ゲスト・リクエスト・セレクション”では、リクエストが多かった『ヘラクレス』より 「ゴー・ ザ・ディスタンス」、『ターザン』より「トゥー・ワールズ」、東京ディズニーシー(R)「ストームライダー組曲」の3曲を。“ルーレット・セレクション”では、12曲のノミネート曲の中から、その日演奏する2曲を、観客と一緒にルーレットで選ぶコーナーを企画。第1部の最後は、フロリダのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートのエプコットで人気のショー「イルミネーションズ」より、「リフレクション・オブ・アース」と「ウィー・ゴー・オン」の2曲でフルオーケストラの醍醐味が味わえるようになっている。そしてコンサートの第2部では、勇気を胸に夢をかなえようとする主人公を描く『塔の上のラプンツェル』の物語と音楽を“まるごと”フィーチャー。毎年、「ディズニー・オン・クラシックで聴きたい曲」の上位にランクインし続けていた人気作品が、ついに初めてのメイン演目として登場。「自由への扉」「誰にでも夢はある」「お母様はあなたの味方」「輝く未来」など物語全編の楽曲を、ステージ上のスクリーンに映し出される物語の名場面と共に、フルオーケストラで演奏する。なお、出演者は「ディズニー・オン・クラシック~まほうの夜の音楽会」の第1回(2002年)より指揮・編曲を務め、14年間で通算500回ものコンサートを大成功へと導いてきたブラッド・ケリーが今回も指揮&編曲。ヴォーカリストには、ミュージカルの本場ブロードウェイで行われたオーディションで約800名の応募者の中から選ばれた、8人の男女たちがニューヨークから来日。オーケストラは、2015年春の創立と共に「ディズニー・オン・クラシック~春の音楽祭 2015」にてデビュー、その後「ディズニー・オン・クラシック」を始め「ピクサー・イン・コンサート 2016」「オリンピックコンサート」など、ジャンルや既存のオーケストラの在り方にとらわれることなく、音楽への情熱をひたむきに表現する姿勢と演奏で大反響を呼ぶ「オーケストラ・ジャパン」が務める。「ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 2017」は9月21日(木)~12月24日(日)、文京シビックホールを皮切りに全国39都市56公演を開催。(cinemacafe.net)
2017年06月09日新国立劇場の2016-17シーズンを締めくくるのは、新制作《ニーベルングの指環》の第3作《ジークフリート》。ワーグナー演出の名匠ゲッツ・フリードリヒ(1930~2000)が晩年にフィンランド国立歌劇場で制作したプロダクションだ。初日を目前に控えた5月29日に行なわれたゲネプロ(ゲネラルプローベ=舞台上で行なわれる最終総稽古)を観た。新国立劇場オペラ「ジークフリート」チケット情報英雄ジークフリートがいよいよ登場するこの演目。傍若無人な悪ガキのジークフリートが、愛と怖れを知る青年へと成長してゆくという一直線のストーリーが軸にあるため、《指環》全4演目のなかで格段に理解しやすい作品となっている。登場人物が7人と簡潔なのも、わかりやすさを助けてくれる(7人以外に、森の小鳥も登場。今回この役がちょっとトリッキーなので、そこは観てのお楽しみ)。もはや懐かしい《ラインの黄金》の地下世界ニーベルハイムや、《ワルキューレ》の最後でブリュンヒルデを炎に包んだ岩山、その前2作の(特に《ラインの黄金》の)登場人物らも現れて、《指環》4部作全体の連関を鮮明に際立たせてゆく。それらに伴って聴こえてくるライトモティーフも、作曲者の自己満足的な隠しアイテムとしてではなく、物語と有機的なつながりをもって、観る側の理解を助けてくれる。その一番の成功例がこの《ジークフリート》だろう。聴きどころは何といっても主役ジークフリートを歌うステファン・グールドだ。ワーグナー作品の花形である「ヘルデン(英雄)テノール」の中でも屈指のハードな難役を、第1幕から全開でカッコよく歌う姿には惚れ惚れとする。リハーサルといえども声をセーブしようという気配など微塵もない。そんなことを言っている歌手にはこの役は歌えないのかもしれない。4時間近くも主役で歌い続けた挙句に、休養十分のブリュンヒルデ(なにせ十数年間の眠りから醒めたばかりだ)を相手に延々と愛の二重唱を歌わなければならないのだから。それを苦もなく聴かせるグールドの、まさに無尽蔵のスタミナ。そのブリュンヒルデのリカルダ・メルベートは、「かつて神の戦士だったが、現在は神性を剥奪された女性」という役柄にふさわしく、硬質ガラスを思わせる、繊細な、しかし強い表現を聴かせる。ドラマティックな面だけがブリュンヒルデではないのだ。さえない悪役であるミーメは、《ジークフリート》では前半の主役級だ。性格俳優的な役柄だが、《ラインの黄金》でも同じ役を歌ったアンドレアス・コンラッドは、キャラクターに振りすぎない立派な美声で、意外と多いミーメ・ファンも納得の、十分な存在感を示していた。公演は6月1日(木)・4日(日)・7日(水)・10日(土)・14日(水)・17日(土)の全6回。上演時間は2回の休憩を含めて約5時間40分。長丁場だけれど、万全の体調で臨もう!取材・文:宮本明
2017年06月01日「人を泣かせて感動させるのは簡単。喜劇は難しいです!」オペラ創作をライフワークに掲げる作曲家・三枝成彰の初めてのオペラ・ブッファ(喜劇オペラ)《狂おしき真夏の一日》が10月に上演される。オペラ「狂おしき真夏の一日」チケット情報タイトルでぴんと来た人もいるだろう。作品はモーツァルトの《フィガロの結婚~あるいは狂おしき一日》へのオマージュであり、物語の設定も《フィガロ》を下敷きにしている。舞台は現代の鎌倉。浮気症の医師・大石は看護師エミコと長い愛人関係にあり、長男・太郎のフランス人の嫁フランシーヌにまでちょっかいを出そうとしている。一方の太郎もかつてエミコと関係があったらしい。ゲイの二男・次郎は新しい恋人の男性ユウキに夢中だが、そのユウキは、大石の妻・陽子の美しさにも惹かれてゆく。親子関係の3組のカップルの、邪心と純真、愛欲と金欲が招くドタバタの恋愛模様。大石夫妻が《フィガロ》の伯爵夫妻、太郎とフランシーヌがフィガロとスザンナ、ユウキはケルビーノに当たる役どころだ。今回の作品の発想の原点となったのが大石とフランシーヌの関係だった。「実話なんですよ。ある知人が、息子の美人嫁の写真を持ち歩いていた。親子だから、もともと好きな女性のタイプが同じなのかもしれませんよね。その父親の気持ちを膨らませていたら、使用人の婚約者を狙う《フィガロ》の伯爵と結びつきました」そのフランシーヌが太郎とともに登場するシーンは、《フィガロの結婚》冒頭と同じく、ふたりで部屋の寸法を測る場面。そこでは音楽もモーツァルトをそのまま引用しているのだそう。オペラ・ファンなら思わずニヤリとしてしまいそうな仕掛けだ。一方で、「難しい」と語る喜劇オペラにあえて挑む理由は、モーツァルトならぬヴェルディにもルーツがあるのだという。「ヴェルディが最後に完成したオペラが、オペラ・ブッファである《ファルスタッフ》。最後に喜劇を書きたいという気持ちは同じだと思います。最初から《ファルスタッフ》を意識していたので、フィナーレは出演者全員による九重唱のフーガで締めくくります」なるほど。《ファルスタッフ》の最後を飾る出演者全員のフーガが〈世の中すべて冗談〉なら、三枝の九重唱は〈世の中はいいようにまわっている〉だ。書き下ろしの台本は30年来の付き合いの作家・林真理子。そして、AKB48などで芸能界を牽引する大物プロデューサーの秋元康に、オペラ演出初挑戦を投げかけた。「オペラや演劇の演出家より、オペラのパターンをまったく知らない人がやるほうがいい。もちろんオペラ側の常識とぶつかることもあるだろうと思いますよ。でも秋元さんなら押し切ってしまうはず。力ですよ。歌手にとっては怖い存在かもしれない(笑)」「泣かせの三枝と言われて来ましたから」と笑う三枝が、エンタメ界の重鎮たちをスタッフに迎えて挑む初の喜劇。娯楽としてのオペラが、日本で初めて登場するのかもしれない。公演は10月27日(金)から31日(火)まで東京文化会館 大ホールにて。取材・文:宮本明
2017年05月31日ハーゲンダッツジャパン株式会社が、人気商品のクリスピーサンド『キャラメルクラシック』を、さらに美味しくリニューアルして、2017年6月6日(火)より発売。さらに同日より、新フレーバー『エスプレッソマキアート~マスカルポーネ仕立て~』『抹茶クリームあずき』を期間限定で発売開始。クリスピーサンド『キャラメルクラシック』「キャラメルクラシック」の魅力である、キャラメルの濃厚な味わいのアイスクリームと、パリッとしたキャラメルコーティング、サクッとしたウエハースの3つのバランスを追求し、さらに美味しくなって登場。ポイント① 濃厚でコクのある味わいのキャラメルアイスクリームキャラメルの濃厚な味わいをより感じられるように、従来のものよりキャラメルの量を増量。また、発酵バターを使用することで、全体のコクがより感じられるようになった。ポイント② ビターでキレのある後味のキャラメルコーティングココアバターの配合量を増やすことで、くちどけをよりよくし、パリッとした食感を実現。コーティングの後味がすっと切れるようになったことで、食べたときのバランスが格段にアップ。クリスピーサンド『抹茶クリームあずき』クリスピーサンド“初”となる、あずき(こしあんソース)を使用した新フレーバー。抹茶の苦みにこしあんのやさしい味わいで、絶妙な和モダンスイーツに仕上がっている。こだわり①こしあんソースの隠し味に黒糖蜜こしあんソースの隠し味に黒糖蜜を入れることで、こしあんの甘さと抹茶のほどよい苦味をまとめあげている。こだわり②濃厚で香り高い抹茶コーティングより抹茶の香りを感じてもらえるように、甘み、香り、口どけがよく、甘さがすっきり出る抹茶を使用。クリスピーサンド『エスプレッソマキアート~マスカルポーネ仕立て~』コーヒーと相性が良い濃厚な味わいのマスカルポーネチーズを使用したアイスクリームに、すっきりとした苦味のエスプレッソソースを加え、濃厚なのにすっきりとした夏にぴったりなクリスピーサンド。こだわり①ほろ苦さがアクセントのエスプレッソソースエスプレッソソースには、風味豊かでほろ苦さが特長のモカビーンズを使用し、鼻抜けする香りが楽しめる。こだわり②芳醇な香りを追求したコーティング&ウエハースコーティングにはコーヒーパウダーを加え、食べる時にふわっとコーヒーの芳醇な香りが楽しめる。ウエハースにココアを加えることで、芳醇な香りとビターな味わいのサクサクした食感に仕上がっている。『キャラメルクラシック』サンプリングイベント開催クリスピーサンド『キャラメルクラシック』のリニューアルを記念して、2017年6月1日(木)、2日(金)の2日間に、渋谷モディにてサンプリングイベントを実施。当日は、イケメン外国人が扮する「キャラメル男子」が、顎クイや壁ドンなど女性がキュンとする男性の仕草をしながら『キャラメルクラシック』をサンプリングする。開催概要【日時】2017年6月1日(木)15:00~20:002017年6月2日(金)11:00~19:00※無くなり次第、終了となります。【場所】東京都渋谷区神南1-21-3 渋谷MODI 店頭スペース【配布個数】ハーゲンダッツ クリスピーサンド キャラメルクラシック 10,000個配布予定(2日間合計)製品概要ハーゲンダッツ クリスピーサンド 抹茶クリームあずき(左)【種類別】 アイスクリーム【内容量】 60ml【価格】 希望小売価格:272円(税抜)【発売日】 2017年6月6日(火)より期間限定ハーゲンダッツ クリスピーサンド キャラメルクラシック(中央)【種類別】 アイスクリーム【内容量】 60ml【価格】 希望小売価格:272円(税抜)【発売日】 2017年6月6日(火)ハーゲンダッツ クリスピーサンド エスプレッソマキアート~マスカルポーネ仕立て~(右)【種類別】 アイスクリーム【内容量】 60ml【価格】 希望小売価格:272円(税抜)【発売日】 2017年6月6日(火)より期間限定
2017年05月30日オリンピック・ムーブメントの推進を目的に、オリンピック映像とフルオーケストラの競演で贈る「オリンピックコンサート」が今年も開催される。例年、極上の音楽と、試合のみならず、選手の練習風景や、家族や仲間、ライバルとの絆を映し出す映像のコラボレーションで、大きな感動を呼ぶステージだ。メダリストをはじめとするオリンピアンや、今後のオリンピック出場が期待される注目選手も参加するほか、ゲストアーティストの歌唱も話題のひとつだが、今年は新妻聖子と中川晃教の出演が発表されている。5月10日、新妻と、6年連続でナビゲーターを務める俳優・藤本隆宏が取材会でコンサートについて、そしてオリンピックの魅力について語った。チケット情報はこちら自身、競泳選手としてソウル、バルセロナの2大会に出場している藤本は「当時は本当にオリンピックがすべてでした。もちろん勝ち負けは大事でしたが、それだけでなく、応援してくださる方に恩返しがしたい、喜んでもらいたいという思いでスポーツをやってきた」と現役時代を振り返る。オリンピックコンサートは、「そんな自分の過去のオリンピック経験も思い出しながら、毎回、感動の嵐。結果ではなくその過程が一番大事なんです。お客さまも涙を流されている方が多い、本当に素敵なコンサート」とのこと。一方で、現在その類まれな歌唱力を武器にミュージカルを中心に活躍している新妻は「自分は歌のオリンピックを目指して今に至るので、スポーツは応援する側」だそうだが、「でも“ミュージカルはスポーツだ”と言われたことがある。それは目標に向かってコツコツと努力し、体調管理をし、練習がそのまま結果として表れるという点がスポーツと共通しているということだと思います。アスリートの皆さんの闘う姿勢や真摯な思いにいつも勇気を頂き、自分も頑張らなきゃと思っています」と、オリンピズムと自身のアーティスト活動との共通点を語る。ちなみに新妻は今回の出演オファーを受け「ついに来た!」と思ったとのことで、「おそらく今日本で活動しているボーカリストはみんな、2020年の東京オリンピックが決まったときに、何らかの形でそこに携われたらという夢を抱いたと思う」と話し、「もし開会式に出させていただけるのなら、前日でもいいのでご連絡をいただければ(笑)」とアピールも。新妻が「世界中に紛争はあり、政治的には対立している国でも、スポーツというフィルターを通してフェアなステージに立つ。そのメッセージはとても大事であり、それをスポーツは一番パワフルに打ち出せる」とその意義を語れば、藤本も「オリンピックは勝ち負けじゃない。唯一、世界中の人が集まり、手と手を取り合う平和の祭典。オリンピックの素晴らしさをひとりでも多くの方にわかってもらえるよう、私も発信していきたい」と話した。2018年平昌、そして2020年東京へと盛り上がっていくオリンピック・ムーブメント。この機会にその意義や価値にも目をむけてみては。「オリンピックコンサート2017」は6月9日(金)に東京国際フォーラム ホールAで開催される。
2017年05月24日