映画『青夏 きみに恋した30日』。漫画から飛び出したかのような、爽やかさ満点の葵わかなさんと佐野勇斗さん。久々の共演で感じた、お互いの魅力を語りました。葵:私たち、4年前の映画『くちびるに歌を』以来の共演だった。佐野:久々に会ってどうだった?葵:佐野くんは、あまり変わらないよね。当時は大人っぽい男の子だなって思ってたけど。佐野:本当に?葵:うん。今回会ってみても、全然変わってなくて(笑)。佐野:あの頃のままってことか!わかなちゃんは逆に、この4年で大人っぽくなった。前はちょっと落ち着きなかったもんね(笑)。葵:うん(笑)。当時は、そういう役っていうのもあったしね。佐野:今回はすごく落ち着いてたし、現場もリードしてくれてた。葵:そう?自分より年下の人が多い現場って初めてだったから、お姉さんとして引っ張らなきゃって。でも、相方がいたからできた。佐野:相方って!(笑)葵:信頼し合えてるからこその距離感でやれた気がするな。佐野:お互いに気を遣いすぎることもなかったしね。葵:古澤監督も、シーンごとに話し合ってくださって。一度自分たちの持ってきたものを出して、そこから監督がカット割りを考えてくれたり。やりがいがあったよね。佐野:一緒に話したりね。二人きりのラストシーンとか。葵:焦らないでね、って(笑)。佐野くんって、恋愛系にめっぽう弱いって知ってるから。佐野:それは言うなって!(照)葵:すごく照れ屋だから、平気な顔をしてても、恥ずかしいだろうから。焦っちゃダメだよって。佐野:現場では「わかった」って冷静に言ってたけど、心の中では「ありがとう!ゆっくり、ゆっくり」ってずっと考えてた(笑)。ピュアでまっすぐ。あの頃を思い出してほしい。葵:プレッシャーって、あった?佐野:もちろん!原作を読んだら、吟蔵ってめちゃくちゃかっこよくて。不安が10割だった。葵:そうだったんだ。でも、見た目は吟蔵に似てるって思ったよ。佐野:本当に?よかった〜。吟蔵と僕とは、真逆の性格だから、本当に難しかったんだよね。葵:確かに、それはわかる。吟蔵って集団でいるときも、寡黙なことが多くて。素の佐野くんは、みんなを引っ掻き回す感じ。佐野:それ、褒めてる?(笑)葵:うん!率先して盛り上げてくれていたり。でも、役柄は違うから大変そうだなって思ってた。佐野:理緒役はぴったりだったよね。原作を読んだときから、わかなちゃんだ!って思った。葵:確かに、性格が似てる部分はあるかな。思い込んだら突っ走っちゃうところとか。佐野:あと、理緒になるための努力もすごいなって思ってたよ。葵:本当?佐野:絶対に表には見せないけど、すごく考えてるなって思うし、引き出しがたくさんある。役に対する姿勢が真面目で、すげぇなって。葵:佐野くんは受け入れるのが早いよね。だからみんなが世話を焼きたくなるというか、愛されてる。佐野:嬉しいな~。撮影していて、本当に胸キュンしたよね。こんな夏が過ごしたかったって。葵:恥ずかしいくらい、どこまでもまっすぐだもんね。恋愛だけじゃなくて、あの頃のまっすぐさって大事だな、取り戻したいなって思ってもらえたら嬉しいよね。『青夏 きみに恋した30日』都会育ちの女子高生・理緒(葵わかな)は、夏休みを祖母の家で過ごすことに。田舎に到着した日、初対面の吟蔵(佐野勇斗)に恋をする。期間限定の恋愛の行方とは?原作は南波あつこの漫画。8/1(水)全国公開。©2018映画「青夏」製作委員会あおい・わかな1998年6月30日生まれ、神奈川県出身。連続テレビ小説『わろてんか』のヒロインの好演も記憶に新しく、今後が期待される女優のひとり。ブラウス¥9,800(ADIEU TRISTESSETEL:03・6861・7658)スカート¥33,000(PLAIN PEOPLE/PLAINPEOPLE 青山TEL:03・6419・0978)さの・はやと1998年3月23日生まれ、愛知県出身。9月公開の映画『3D 彼女リアルガール』にも出演。ボーカルダンスユニット「M!LK」としても活躍。Tシャツ¥6,400(セヴシグ/スタジオ ファブワークTEL:03・6438・9575)パンツ¥45,000(カズキナガヤマ)※『anan』2018年7月18日号より。写真・女鹿成二スタイリスト・伊藤省吾(sitor/佐野さん)岡本純子(アフェリア/葵さん)ヘア&メイク・中島愛貴(ラフテル/佐野さん)竹下あゆみ(葵さん)取材、文・野村紀沙枝(by anan編集部)
2018年07月14日伊坂幸太郎の小説が原作の舞台『死神の精度 ~7 Days Judgement』が8月から9月にかけて上演される。出演者の植田圭輔とラサール石井に話を聞いた。【チケット情報はこちら】本作は、2009年に伊坂作品が初めて舞台化された『7Days Judgement ─死神の精度─』の再演。ターゲットの死を7日間で見定めて「可」か「見送り」かジャッジする死神と、任侠の男・藤田、藤田を慕うヤクザ阿久津が出会い、運命が転がるさまを描いたストーリーで、死神・千葉を萩原聖人、ターゲット・藤田をラサール石井、阿久津を植田圭輔、藤田と敵対するヤクザ栗田など複数役を細見大輔が演じる。脚本・演出は初演に続き和田憲明が務める。唯一、初演から続けての出演となる石井は「もう1回やりたいと思っていたので嬉しいです。今まで散々芝居をしましたが、初めて“カッコいい”と言われた役だったので(笑)。男4人でやる楽しさもあり、演じていて気持ちがいい作品でした」と9年ぶりの再演を喜ぶ。先輩揃いの中に若手として参加する植田は「ラサールさんや萩原さんとずっと掛け合いをしている役どころですし、作品としても役としても自分の新しい一面を出せることになりそう。自分がどこまでやれるか。しっかり食らいついていきたいです!」。ラサール曰く和田の演出は厳しいといい「緊張します」と明かす植田に、ラサールは「初演は僕が1番怒られたんじゃないかな。どのみち褒められないから(笑)、支え合いましょう!」と笑う。作品については「ハードボイルドで、洋画や韓国映画の匂いのする作品。ストーリーもシンプルで、あまり多くを語らず、だからこそ想像できる部分がある」と石井。その中での自身の役柄・藤田は「昔気質で、話せばわかってもらえるようなことも言葉にしない、だけどウェットな部分も内側には持っている人。でもこういう人がいないと物事はまっとうにはいかないですよ。ばかだなとは思いますけど、あまり小利口に生きる人ばかりだと世の中は間違った方向にいくから」。植田は阿久津を「あほというか真っ直ぐというか…影響されやすいので、出てくるたびに言うことが変わってて、だから結局何がしたいの!っていう(笑)。だけど一生懸命だし、ずっとあがいていて、その揺れを演じるのは楽しみです。死神が“人間とは”と語るシーンが何度か出てきますが、“人間らしさ”の象徴だと思います」。植田の出演舞台に石井が訪れ、初めて会ったというふたり。対談で石井に「いいお芝居でした」と言われた植田は「ほっとしました」と笑顔。これから始まる『死神の精度 ~7 Days Judgement』に期待したい。公演は8月30日(木)から9月9日(日)まで東京・あうるすぽっとにて上演後、岡山、愛知、兵庫、山形、宮城、岩手を巡演。
2018年06月19日キャンディストリッパー(Candy Stripper)のデザイナーと、パフィー(PUFFY)大貫亜美によるユニット「ロンパース(ROMPUS)」より、結成15周年を記念したスペシャルコレクションが登場。2018年6月15日(金)より、キャンディストリッパー直営店全店にて発売される。なお、オフィシャルオンラインストアでは、6月1日(金)より先行予約開始となる。2002年に結成以来、大貫亜美のセンスを散りばめたジェンダーレスなアイテムを不定期でリリースしてきた「ロンパース」。今回のスペシャルコレクションでは、グラフィックデザイナーのDaisuke Hongolianによるイラストが施されたTシャツ、ロンT、トートバッグなど全7種類のアイテムがラインナップする。「ROMPUSのOCTOPUS TEE」は、「ウサギとネコの他にタコも好き」という大貫亜美の意見のもと、デザインされたTシャツ。タコの足で“ROMPUS”の文字を模ったイラストは、左胸とバックに大きく配されている。その他にも、大貫亜美の好きなウサギがデザインされたロンTや、フリーハンドのタッチで描かれたトートバッグなど、遊び心の詰まったアイテムが揃う。【詳細】ロンパース 15周年記念スペシャルコレクション発売日:2018年6月15日(金)販売店舗:キャンディストリッパー直営店全店(原宿本店、新宿ミロード店、池袋P’パルコ店、横浜ジョイナス店、名古屋パルコ店、仙台パルコ店、梅田エスト店、福岡ソラリアプラザ店)先行予約開始日:2018年6月1日(金) 12:00販売店舗:キャンディストリッパーオフィシャルオンラインストア、ゾゾタウン
2018年06月02日ディズニーと、『レ・ミゼラブル』『オペラ座の怪人』などを手掛けたプロデューサー、キャメロン・マッキントッシュが作った大型ミュージカル『メリー・ポピンズ』の待望の日本公演が、プレビュー公演を経て3月25日、東京・東急シアターオーブで開幕した。長期オーディションを経て決まったキャストは、主人公のメリー役に濱田めぐみ・平原綾香、煙突掃除屋のバート役に大貫勇輔・柿澤勇人ら。3月23日には報道陣に作中の3シーンが公開されるとともに、キャスト、スタッフが意気込みを語った。ミュージカル「メリー・ポピンズ」チケット情報物語は1910年のロンドン、なかなか子守が居つかないバンクス家が舞台。忙しい銀行家の父を中心に、少しずつ心がすれ違っているこの一家に家庭教師メリー・ポピンズが舞い降りてくる。魔法で部屋を片付けたりと不思議な力を持つメリーに子どもたちも大喜び。やがてメリーが教える大切なことを素直に受け入れるようになった一家は、家族としての幸せを取り戻していく……。まず披露されたのはメリーが子どもたちに「何を言うかじゃなく、どう言うかが大切」と教えるナンバー『スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス』。ダンサブルで軽快な、劇中を代表するビッグナンバーだ。続けて名曲『チム・チム・チェリー』をメリーとバートがロマンチックに歌い、『ステップ・イン・タイム(リプライズ)』では幸せの象徴である煙突掃除夫たちがバンクス家になだれ込み、陽気にタップダンスを踏んだ。本編ではフライングなど様々なマジックが仕掛けられている本作だが、披露された3シーンだけでも、観る者を笑顔にする魔法がかけられているような幸福感があった。会見では、オリジナル演出家リチャード・エアが「メリーは魔法を使えるけれど、魔法で皆を幸せにするわけではない。お互いに優しくできるということを教えてくれる、そこが大切なところ」と作品の魅力を語り、さらに「日本版はファンタスティックに素晴らしいものになっている。キャストも魅力のある方ばかりで、皆さんが愛情を持って作ってくださっている」と賛辞を贈った。また平原は「世界的な名作で、誰の心にもメリーがいるからこそ難しいのですが、信頼するスタッフとともに、細かく、大事にこの世界を創った。とにかく、どこもが見どころ」とアピール。また目玉であるメリーのフライングは日本公演が最長飛行距離とのことで、濱田は「かなり長く魔法で飛んでいます(笑)。通常は舞台と客席に(見えない)境があるのが、舞台上で動いているキャラクターが客席の方にやってくる。立体的だし、客席の方に飛んでくる躍動感、ワクワク感は実際に見るとすごい衝撃。どの席からも楽しんで欲しい」と話した。東京公演は5月7日(月)まで。その後5月19日(土)から6月5日(火)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールでも上演される。
2018年03月26日ミュージカル『メリー・ポピンズ』の公開舞台稽古が23日、東京・東急シアターオーブで行われ、濱田めぐみ、平原綾香、大貫勇輔、柿澤勇人が登場、オリジナル演出のサー・リチャード・エア、日本プロダクション演出のジェームズ・パウエル、振付のジェフリー・ガラットとともに取材に応じた。同作は、パメラ・トラバースの小説をもとに1964年、ジュリー・アンドリュース主演で世界的大ヒットを記録したディズニー映画『メリー・ポピンズ』を、『オペラ座の怪人』『レ・ミゼラブル』などのサー・キャメロンマッキントッシュがプロデュースし2004年にミュージカル化。今回が日本初演となる。ロンドンのバンクス家にやってきたナニーのメリー・ポピンズと家族の物語を描く。出演者陣は「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」「チム・チム・チェリー(リプライズ)」「ステップ・イン・タイム(リプライズ)〜ハウス」の3曲を披露。サー・リチャード・エアは「素晴らしいと思います。ステージ上で日本語で見ることでとても感動しています」と熱く語り、パウエルは「オーディションで見たところから、役者さんたちの成長が信じられない位素晴らしい」と、日本キャストを讃えた。多くの歌・ダンスパフォーマンスとともに、傘で空を飛ぶメリーの姿も見所となっているが、世界各国で上演されている中でも今回の日本版はフライング距離、対空時間で「世界最長」だという。現在プレビュー公演を行っているが、メリー役の平原は「空を飛ぶ時にお客さんがすごく幸せそうな顔で。一番楽しみで、一番幸せな瞬間ですね」と語った。濱田も「通常、舞台と客席は分かれているじゃないですか。その中の登場人物が客席の方に入ってくるというのは、立体的に思えて。舞台上で動いているキャラクターが、実際にこっちに来るワクワク感はすごかったですね」と自身が観た時の感想も交えてアピール。さらに平原は「バート(大貫、柿澤)の逆さ吊りタップは本当にかっこいいので、本当に会場で、この機会を観ていただけたらと思います」と語りかけた。和気藹々とした雰囲気のキャスト陣だが、平原は最初、プレビュー公演のパートナーである柿澤に「あなたとはうまくやれない気がする」と話していたという。平原は「彼がとっても人見知り。最初の出会いが微妙な雰囲気で、私のこと嫌いなんだなと思った」というが、柿澤は「嬉しかったのが、プレビュー公演に入って『まさかカッキーに救われるとは思わなかったわ』と言ってくれた」と明かす。平原は「まさかあの出会いから一変、落ち込んでる時に『大丈夫?』と話しかけてくれるのがカッキーだと思わなかった」としみじみと感謝していた。一方の濱田は大貫について「非常に楽というか、ストレスが全くない。似てるんですかね、さっぱりした感じが。普通に仲良くやれている感じです」と語り、大貫も頷く。平原が「こっちがギクシャクしてるみたい!」とつっこみ、柿澤も「本番が始まったら(組み合わせを)シャッフルしますし、いろんな化学反応があると思う」と今後に期待を寄せた。東京公演は東急シアターオーブにて25日〜5月7日(プレビュー公演:3月18日〜24日)、大阪公演は梅田芸術劇場メインホールにて5月19日〜6月5日。
2018年03月23日藤ヶ谷太輔、痩せたなあ~! まず思ったのはそれだ。舞台『そして僕は途方に暮れる』に主演するにあたり、稽古で3キロほど痩せたそうだ。気鋭の作家・三浦大輔の演出は、緻密で、リアリティーを求めるものなので、精神的なものかと思ったが、藤ヶ谷の役は、その三浦自身を投影している。三浦はかなり痩せて、影のある風貌をしているので、そこに近づいてしまったのかもしれない。○BUSAIKU判定でもおかしくない主人公作家を投影した菅原裕一という役は、自堕落な日々を送っていて、恋人(前田敦子)、親友(中尾明慶)、バイト先の先輩(米村亮太朗)、学生時代の後輩(三村和敬)、姉(江口のりこ)……と次々と頼り、その都度、関わった人たちを怒らせ、怒られたくなくて、問題から向き合うことなく逃げてしまう。ついには故郷の母(筒井真理子)の元へと逃避するが、そこでもうまくいくわけはなく……逃げ場がなくなったとき、出会ったのは、家を出ていって何年も経つ父親(板尾創路)。この親にしてこの子ありという感じで、父こそ、あらゆることから逃げていた。つまり、逃げまくった末路の見本を目の前にして、裕一はどうするのか……というのがだいたいの流れだ。この舞台を紹介する記事で、「バラエティ番組『キスマイ超BUSAIKU!?』(フジテレビ系)での、彼女への対応がカッコイイかブサイクか判定するコーナーで低評価をとることがあまりない藤ヶ谷が、対人関係がうまくいかない人物を演じることが興味深い。」(『週刊SPA!』2018年3月6日号)と書いたように、藤ヶ谷は人に対してきちんと接するイメージがあった。姉役の江口のりこに取材をしたとき「稽古初日から稽古場に対して心を開いているところが凄い。なかなかそんなことできないから」(『プラス アクト』2018年4月号)と言われていた藤ヶ谷が、裕一を演じると、とことん人と目を合わせず、だらだらしていて、他人の家にお邪魔したときも、ついつい実家にいるかのように全力で甘えて、まったく気が利かない。『キスマイ超BUSAIKU!?』で言ったら、「超BUSAIKU」判定を受けるに違いないその態度に笑ったり、いらっとしたり、自分にもそういうとこあるかも……とギクリとしたりしながら観た。それに、部屋でだらだら過ごす藤ヶ谷の姿の無防備な感じも、覗き見気分で楽しめるのではないかと思う。○ハードルの高い仕事に挑む藤ヶ谷『そして僕は途方に暮れる』は2幕構成。1幕目は裕一と恋人や友人知人、家族の一対一のやりとりで、2幕目は実家で向き合う人数が増えていく。裕一の関係者も、いなくなった彼を心配して連絡をとりあうなどして関わりをもっていくが、基本的に、裕一と相手による2人芝居の総当たり戦。にもかかわらず、誰に対しても"ちゃんと向き合わない"という、ある意味苦行に、藤ヶ谷はみごとに耐えて、やりきっているところが見事だ。ものすごく悪いことを言ったりやったりする人物のほうが、動きのバリエーションもつけやすいが、悪い人ではなく、ただなんとなく逃げ腰っていうほうが難しいと思う。しかも、人と向き合って会話するよりも、LINEで済ますような現代人で、LINEを打つ演技ってあまりやりようがない。そういうところがあるのが、この作品の面白さで、裕一に対する人たちは熱をもって彼に当たるが、それをスルーしたり、ネットで済ましたりする希薄なコミュニケーションのリアリティーを3時間近くも演じ続けるのは、やはり苦行と思うが、公演をやり遂げたら、俳優として飛躍できるだろう。ずいぶんとハードルの高い仕事に挑んだ、その姿勢に感動を覚える。○★ここからややネタバレありただ、じょじょに変化もあって。救いようのない人ではないのだなと思うし、逃げて、逃げて……、その結果、ある瞬間、裕一が他者に対していままでにないリアクションを見せることがあって、そのときの藤ヶ谷の見せる、明らかな違いには目を見張るものがある。とにかく、思いがけない展開が待っている。長い時間、はっきり言葉にしない登場人物の気持ちを観察し続けた結果のサプライズを、どう捉えるかは、人それぞれ……。最後に。藤ヶ谷太輔、ダッフルコート、似合うなあ!ダッフルコートは、青春の苦さの象徴だなあと思う。■著者プロフィール木俣冬文筆業。『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。ドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書『挑戦者たちトップアクターズ・ルポルタージュ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』、構成した書籍に『庵野秀明のフタリシバイ』『堤っ』『蜷川幸雄の稽古場から』などがある。最近のテーマは朝ドラと京都のエンタメ。
2018年03月15日ジュリー・アンドリュース主演で1964年、世界的大ヒットを記録したディズニー映画として知られる『メリー・ポピンズ』。2004年には、パメラ・トラバースの原作小説をもとに、ディズニーと『オペラ座の怪人』『レ・ミゼラブル』などのサー・キャメロン・マッキントッシュがプロデュース、ディズニー映画版の楽曲も使用し、マシュー・ボーンが振付けを担当しミュージカル化された。このミュージカル『メリー・ポピンズ』が2018年3月に、日本初演を迎える。「チム・チム・チェリー」「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」など、誰もが口ずさめる名曲に彩られ、バンクス家にやってくるナニー(子守)の"メリー・ポピンズ"が一家に影響を与えていく物語は、濱田めぐみ、平原綾香、大貫勇輔、柿澤勇人といった現在のミュージカル界を引っ張る俳優陣によって届けられる。この作品の魅力はどこにあるのか、ホリプロ・堀義貴社長に話を聞いた。○ホリプロではなかなかないハッピーな作品――堀社長がロンドンで『メリー・ポピンズ』を観たときにどのような魅力を感じたんですか?観た後に、つい歌を口ずさんでしまうんですよね。僕は子供の頃に映画を観ていましたし、観たことがない人でも、曲はどこかで聞いたことがあると思うんです。劇場を出た後に、軽くステップを踏みながら鼻歌を歌いたくたくなって、魔法にかかってしまう作品なんです。ホリプロでこんなハッピーハッピーな作品、なかなかないですからね! 『デスノート THE MUSICAL』のように大体死ぬか、周りから総攻撃されるかですから(笑)。『ピーター・パン』以来のハッピー感ですよ。ウォルト・ディズニーの「人はみんな始めは子供だった」という言葉がありますけど、ディズニーランドに行くといい年齢でもあの"耳"をつけたくなるのは、あの世界にガラッと自分を変えられるからですよね。劇場って、どこか頑なでスノッブな雰囲気もあると思うのですが、この作品は大人が見て「自分が子供だった」ということを再認識すると思います。自分が会社と家の往復だったことに気がつかされるでしょうし、世界の色彩が見えてくると思いますよ。子供目線でも、大人目線で観ることができて、誰が観ても面白いものになっているはずです。――映画を見直して、改めて「こんな話だったのか」と思わせられました。深い話なんですよね。ファミリーで観に来たら、子供が楽しくてきゃあきゃあ言ってる横で、親の方が感動して泣いている、ということは起きると思いますよ。○キャストがなかなか決まらない苦労――今回の公演にたどり着くのに大変だったのはどのような点だったのですか?……キャストオーディションの結論が出ない(笑)。劇場はおさえてしまっているし、今更「やれない」と言えないですし、発表も遅くなりました。いざ稽古に進めばプロばかりですから心配していないんですけど、大変だったのはキャメロン・マッキントッシュの求めるキャストがなかなか決まらない。それに尽きます。――バート役の柿澤勇人さんも不安になりながらオーディションに臨んでいたとおっしゃってました。逆に言うと、「"もう中学生"さんをミュージカルに」なんて発想は、僕らにはありませんでしたから(笑)。異分子ですよね。また日本の感覚ですと、だいたいWキャストは似た雰囲気の人を選ぶものですが、そういう発想がなく、全く違う2人を選ぶんです。――でも、そこまでの時間をかけて選ばれたキャストには、大満足ということですよね。それは間違いないはずです。歌と踊りに関して、特にタップダンスに関しての要求はものすごく高いものでした。ダンサーとして活躍する大貫(勇輔)も今までタップをそんなにやっていたわけじゃないので、ずいぶん前から練習をしていました。――演出面よりも、キャストオーディションの方が大変でしたか?フライングは『ピーターパン』で30年以上やっていますので、自信があります。でもキャストがいないとどうしようもないので、そこが大変でしたね。――ぜひこのシーンに注目して欲しいというところを教えてください。やはり、群舞です。泣けるバラードや、歌いあげる曲も魅力かもしれないけど、ミュージカルの醍醐味といえば、全員が一糸乱れずバチっと決まるところ。群舞のシーンは、観終わった後に本当に幸せな気分になります。普通のミュージカルでもすごいのに、ディズニーの作品はフィニッシュが決まった時の心地良さが格別なんです。ディズニーランドのパレードの最後も気持ちいいじゃないですか。――ディズニーランドに行くような気持ちで観に行けるんですね。あまりミュージカルになじみのないという方にもわかりやすいし、大人が観ると深いし、子供は楽しめるし、どっぷり世界に浸かっていただけると思います。『レ・ミゼラブル』のキャメロン・マッキントッシュが何十年もミュージカルにしたがっていた作品で、天才振付師のマシュー・ボーンが振り付けを行っていて、大変な作品なんです。ディズニー、マッキントッシュ、マシュー・ボーンと、作り手のアベンジャーズのようなこの作品を楽しんでいただければと思います。○ミュージカル『メリー・ポピンズ』出演:濱田めぐみ・平原綾香/大貫勇輔・柿澤勇人/駒田一・山路和弘/木村花代・三森千愛/島田歌穂・鈴木ほのか ほか東京公演:東急シアターオーブ3月25日〜5月7日 ※プレビュー公演:3月18日〜24日大阪公演:梅田芸術劇場メインホール5月19日〜6月5日(C)Disney/CML
2018年03月13日俳優の佐野勇斗が11日、東京・新宿の福家書店 新宿サブナード店で「佐野勇斗 カレンダー 2018.04-2019.03」(発売中 2,500円税抜き 発売元:東京ニュース通信社)の発売記念イベントを行った。「佐野勇斗 カレンダー 2018.04-2019.03」の発売記念イベントを行った佐野勇斗初めての連続ドラマ出演となった『砂の塔~知りすぎた隣人』(TBS系)でミステリアスな青年役を演じて話題を集め、若手ネクストブレイク株の筆頭とも言われている佐野勇斗。そんな彼の初めてとなるソロカレンダーは、32ページにもわたるブックスタイルの壁掛けカレンダーで、10代最後の様々な表情を切り取っている。ソロとしては初めてのカレンダーをリリースしたことに佐野は「今までM!LK(佐野が所属しているダンスユニット)のカレンダーはありましたが、僕1人のカレンダーは初めてで、買ってくれる人がいるのかな? と不安もありました」と話しつつ、「撮っている時は楽しかったので、毎月違う表情をしていると思います。今回はマザー牧場で撮影したんですが、アルパカが可愛くて、そこで撮った写真はいい表情をしていると思います」と千葉・富津のマザー牧場で行われたロケに満足げ。事務所の先輩に山崎賢人などがいるが、「賢人くんには笑われると思いますよ。『何かっこつけているの?』って。でも賢人くんにはあげようと思います(笑)」と笑顔を見せながら「10代最後の色んな表情が見られるカレンダーになっています。毎月毎月たくさん色んな表情の佐野と過ごして下さい」とファンにアピールした。3月23日で20歳となる佐野。「20歳になったら海外に行きたいです。昔から海外の文化に憧れていたので、色んな国に行ってみたい。まずはイタリアに行ってピザを食べたいですね」と茶目っ気たっぷりで「俳優業一本に絞るというのはなく、俳優業や音楽活動をしたりバラエティーだったりと自分の引き出しをどんどん増やしていきたいですね」と20歳の抱負を。8月には葵わかなとダブル主演を務める初主演映画『青夏 Ao-Natsu』も控えているが、「色んな事務所の先輩に憧れて僕はこの業界に入りました。その先輩方に少しでも近づけてうれしい気持ちもあるんですが、主演ということは大きなものを背負わなくてはいけないと思います。そういった意味での不安は大きいですね」と表情を引き締めていた。
2018年03月11日独演会には老若男女が訪れ、チケットは入手困難。そんな大人気の実力派落語家・春風亭一之輔さんが、初のエッセイ集、『いちのすけのまくら』を上梓。落語が一級品なら、文章を書かせても一級品でした。子どもが僕に、「このまま伸びていってもらいたい」と言うんです。――2男、1女のお父さんでもいらっしゃいますよね。お子さんたちもエッセイを読みますか。一之輔 :いま、小学6年、3年、1年です。上の子なんか「へえ」とか言いながら読んでますね。たまに「ここウソじゃん」とかツッコむんですよ。いいだろ、そのまま書いたら面白くないんだ、脚色はあっていいんだって言い張ってます。――お子さんたちに、高座を見せたりもするんですか。一之輔:たまに連れていきます。感想を聞くと、「いいんじゃないですかねぇ、まっすぐ伸びていってもらいたいです」って言う(笑)。――お子さんが、飄々としていて頼もしいですよね。一之輔さんがうっかり準備し忘れていた年賀状の文面を、しらっと息子さんに書かせた「年賀状」の回は、読んで噴き出してしまいました。一之輔:息子が〈ことしもいちのすけをよろしくおねがいします〉って書き添えた話ね。あれは楽でした。でも、早く大きくなってもらいたい。「可愛さ」と「手が掛かる」を天秤にかけると、まだまだ大変ですからね。――一之輔さんの「初天神」を見たことがあるんです。何も買わないよと出かけたお祭りで、息子の金坊がお父っつぁんに、あの手この手でおねだりする話ですね。あの噺の中で、一之輔さんがやる金坊の表情がすごくイキイキしていたというか。お子さんたちの表情を参考にしたりするんですか。一之輔:こういう顔をするのか、と観察はしますね。子どもっていつもテンション高いかといえば、そうでもない。意外と冷めていたり。子どもの表情は間口が広いです。実際、表情とかを鏡を見て練習したりは僕はしないですからね。セリフの調子に、自然と表情もついていけばいいかなと思ってます。――落語は声の芸でもあります。一之輔:声の良さ、抑揚、ハリ、艶、リズム感とか、稽古でプラスアルファも出せるけれど、やっぱりアスリートみたいに、持って生まれたものは大きいです。――単純計算で休みなしに1日2.5回高座に上がっている計算なんですが、ご自身でも、最近ノッてるなあ、なんかスランプだなあとかあるんですか。一之輔:調子がいい悪いはありますよ、多少は。サイコーって日はないけど、お客さんに乗せられるときもあるし、30分なら30分、やりながら調整していく感じです。――そういうところもスポーツみたいですね。一之輔:僕は最初はテンション低いんです。だらーっと入っていくんです。いつも通りの感じで高座にも上がって、そのまましゃべり始めますね。落語って、おしゃべりですから。芝居の発表会みたいに、稽古してきたものをどーんと観客にぶつけるというより、「どうだい?」ってふつうの会話みたいに話しかける。で、自然に古典のネタに入っていくというのがいちばんいいのかなと。しゅんぷうてい・いちのすけ1978年1月28日生まれ、千葉県野田市出身。2001年、日本大学藝術学部卒業後、春風亭一朝に入門。NHK新人演芸大賞、文化庁芸術祭新人賞、国立演芸場花形演芸大賞など数々の受賞歴あり。年間900席を超える高座に出ている。『週刊朝日』で連載中のコラムが書籍化。執筆ツールは、現在、ガラケーから自慢のガラホに移行。連載から選りすぐった100本のコラムを、テーマ別にカテゴライズ。最終章には、落語好きで知られる俳優・東出昌大さんとの対談も収録されている。読むマクラともいえる味わい深さを体験して。『いちのすけのまくら』朝日新聞出版1500円※『anan』2018年3月14日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年03月11日34歳のとき、兄弟子21人を抜いて真打に昇進。さらには、200を超える落語の持ちネタがあるだの、年間に上がった高座が940を超えただの、春風亭一之輔さんは、とかく記録に事欠かない落語家だ。落語のバラエティ番組や雑誌の落語特集には、必ずと言っていいほど引っ張り出される人気者。先ごろ、週刊誌で連載中のコラムが『いちのすけのまくら』と題され、書籍としてまとまった。喫茶店、よく行きます。ガラホで原稿書くためにね。――連載開始が4年前で、いまも続いていますが、ずっとガラケーで書いていたそうですね。一之輔 :いまは、ガラケーじゃなくガラホです(どや顔)。――ガラホ?一之輔:ガラケーは、使いすぎて壊れちゃったんですよ。操作ボタンが次々と取れちゃった。使えるものを捨てるのがイヤで、取れた箇所に油性ペンで数字を描いたりしてずいぶん使ってたんですけど、買い替えたほうがいいんじゃない、とカミさんに説得されてしぶしぶですよ。歯を食いしばって店に行ったら、もうガラケーはうちでは扱ってないと。店先に並んでいるのを指さして「あるじゃねえか」と言ったら、…いえ、実際には「えー、あれってガラケーじゃないんですか」と丁寧に聞いてみたら、あれはガラホです、見た目はガラケーですけど、中身はスマートフォンと同じ機能です、って。LINEもできるらしいけど。やりませんけど。――『いちのすけのまくら』に収録されている100本のコラムは、「45度」「地平線」なんていう、どんな展開になるか予想もつかないものから、「マイナンバー」や「○活」といった時事ネタ、「思い込み」のように下ネタで落とすものまで、いろいろですね。一之輔:下ネタ?そんなのありましたっけ。――落語のクスグリの話が出てきて、茶せんを喩えて〈アナル・ザ・バンブー〉と言ったとか。一之輔:アナルくらい、いいでしょ、医学用語ですよ(笑)。本当は下ネタ、もっと書きたいくらいです。――これだけお忙しいのに、いつ書いているんですか。一之輔:僕、移動の合間にちょこちょこ書くんです。1回、喫茶店で書き終わったのを、うとうとしてたらクリアボタンを長押ししてたらしくて消えちゃって。くやしいから「30分で書いてやる!」と要らぬ奮起。しかも同じ話題だとクオリティは変わってしまうから、違う下げ(オチ)に変えました。――より面白く、という落語家の矜恃ですか。一之輔:そんなの誰にも伝わらないんですけどね。――高座はお客さんを「笑わせたい」という気持ちで臨むと思うのですが、コラムは読者に対してどんな気持ちで書いていますか。一之輔:ものを書く仕事はこれが初めてなんですね。もともと作文は好きでした。小学生のころはもう少しマジメに書いていましたけれど、中学高校くらいになればね、「適当でいいんだ、好きなように書けばいいんだ」とわかってきて、そうしたら面白くなりました。かえって、型にはまっていなくて自由でいいって、先生に褒められたりしましたね。――お題は、一之輔さんが決めているんですか。一之輔:僕はあらかじめお題があったほうが書きやすいので、毎回、編集者さんに送ってもらっています。連載のタイトルが「ああ、それ私よく知ってます。」なんです。全然知らないことを、知ったかぶりして書くのが最初のコンセプト。――知ったかぶりを笑う古典落語みたいな感じですか。「転失気(てんしき)」や「千早振(ちはやふ)る」のような。一之輔:最初のころは読んでくれる人に気を遣って、投げられたお題からちゃんとつなげて、最後はオチをつけなきゃ、面白くしなきゃ、と考えていたんですが、最近はどうでもよくなりました。キーワードがどっかひとこと出てくりゃいいだろ、くらいですね。落語もそうなんですよね。マクラも噺も、自分がしゃべって楽しいのがいちばんなので、あまり人に合わせたりしなくなりました。しゅんぷうてい・いちのすけ1978年1月28日生まれ、千葉県野田市出身。2001年、日本大学藝術学部卒業後、春風亭一朝に入門。NHK新人演芸大賞、文化庁芸術祭新人賞、国立演芸場花形演芸大賞など数々の受賞歴あり。年間900席を超える高座に出ている。『週刊朝日』で連載中のコラムが書籍化。執筆ツールは、現在、ガラケーから自慢のガラホに移行。連載から選りすぐった100本のコラムを、テーマ別にカテゴライズ。最終章には、落語好きで知られる俳優・東出昌大さんとの対談も収録されている。読むマクラともいえる味わい深さを体験して。『いちのすけのまくら』朝日新聞出版1500円※『anan』2018年3月14日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年03月08日●『メリー・ポピンズ』は新たな挑戦にパメラ・トラバースの小説をもとに1964年、ジュリー・アンドリュース主演で世界的大ヒットを記録したディズニー映画『メリー・ポピンズ』。世界的に知られる名作を、ディズニーと、『オペラ座の怪人』『レ・ミゼラブル』などのサー・キャメロン・マッキントッシュがプロデュースし2004年にミュージカル化した『メリー・ポピンズ』が2018年、日本初演を迎える。多くの問題を抱えた一家・バンクス家にやってくる子守、メリー・ポピンズが傘で飛ぶ姿は多くの子供たちの憧れとなった。そのメリーのそばにいる親友・バートは煙突掃除夫や大道芸人、絵描き、凧売りなどいつも違う仕事をしており、バンクス家の子供達と関わっていく。「チム・チム・チェリー」「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」など、誰もが口ずさめる名曲を盛り上げる陽気なバートをWキャストで演じるのは、俳優の柿澤勇人。劇団四季での経験を経て、『スリル・ミー』『デスノート The Musical』『フランケンシュタイン』など話題作へ出演し続ける柿澤に、同作への意気込みや、これまでの経験について話を聞いた。○どんなにきつくても、求める一瞬がある――柿澤さんは、以前ニューヨークに行った際に、着いた当日に『メリー・ポピンズ』を観劇されたそうですね。7~8年前にニューヨークに旅行したのですが、作品をリストアップしてくれた現地の友達には、「入国した日は疲れているだろうから、何も観ない方がいいよ」と言われていたんです。でもサブウェイで上がったらマンハッタンの42丁目に出て、「せっかくだから何か観たい」という気分になり、『メリー・ポピンズ』を観ました。まさか数年後に自分がやるとはまったく思ってなかったので、何か縁があったのかな、なんて思いました。――ご覧になったときってどういう感想を持たれました?華やかなエンターテインメントでしたし、改めて楽曲の素晴らしさも感じました。どの曲を切り取っても、1回は聴いたことがありますし、あたたかい気持ちになって帰れます。あとは、フライングがあるんですよね。壁をつたって一周するなんて、他にないと思いました。ただ今回、ワイヤーで吊られるのは僕ですから、本当に命がけです(笑)。いや本当に、怖いんですよ。――高いところは苦手なんですか?そこまで苦手ではないんですが、逆さになるし、命がけの気分ですよ!『ライオンキング』でフライングを1回やっているので経験はありますが、網元の方々と信頼関係を持って任せるしかないです。さらにダンスもタップもありますから、盛り沢山ですね。――今までに出演されたなかで、そこまでハードな作品はありましたか?20歳の時に出演した『人間になりたがった猫』というファミリーミュージカルは、タップこそありませんでしたが、すごく踊っていました。その時も死ぬほど稽古したんですけど、それ以降はもう踊らないと思っていたので、ここへきて……と思いました(笑)。――踊りもあり、高いところでのタップもあり、ワイヤーアクションもありで、今まで史上最高難易度に近い大変さ、でしょうか?そうかもしれないですね。――そういった大変な思いをしても、舞台に立ち続ける、原動力はどのようなところにあるんでしょうか?うーん、難しいですね。しんどい割合の方が、全然多いです。「楽しい」と思うのは、たぶん本当に、一瞬なんです。結局、芝居って虚構じゃないですか。そこにいるのは僕ではなく、役なわけで、全部嘘。でも嘘をやり続けて、ふとした時に、本当に本心で会話ができる瞬間がある。楽しいのは、その時です。よく「大きな声が出て、歌えて、気持ちいいでしょう」と言われますが、舞台上ではまったく思ったことがありません。カラオケは大好きですが、舞台上ではお金をもらっている責任もあるし、歌は芝居だと思っています。きつい曲を歌っている時はきついし、楽しい曲を歌っているときも、大概きついです(笑)。――それだけきつくても、楽しい一瞬を求めてしまうんですか?そうなんです。完璧な楽しさを目指すとしたら、果てしないですよ。「完璧だ」と思ったら、たぶんもう、役者をやっていないかもしれないです。――今回の作品の中では、そういう瞬間を掴めそうだなという予感はありますか?今回は、挑戦だと思います。芝居としてとらえるか、エンターテインメントだととらえるのか。後者だと思っていますが、エンターテインメントだとしたら、自分はどうやって役者として向き合わなきゃいけないのか、挑戦になると思います。――会見でもおっしゃっていましたが、柿澤さんが出演される作品は結構心情をさらしたりとか、人を殺したりすることが多い印象があるので、そういう意味では新しい作品なのかなとも思いました。陰に陰に行く方が、僕の性格的には楽なんです。出すところまで出すというのは、技術的にはたぶん簡単で。でも、人を楽しませたり、あたたかい気持ちになってもらったりするのは、すごく難しいと思います。「それっぽく」という気持ちでやったら、とんでもなく嘘っぽくなるし……そこはやはり、芝居が大事なのかな。すごく苦しむと思います。子役の子たちも本当にピュアなので、彼らと対峙するのも勉強の日々になりそうです。●藤原竜也さんは血管切れそう○稽古場に入ったら「負けない」――柿澤さんは今、日本のミュージカルシーンでとても大きな役割を果たしていらっしゃると思うんですが、自分がミュージカルをやるときに心掛けているようなことはありますか?蜷川(幸雄)組だろうとミュージカルの現場だろうと、とにかく自分が考えたことを100%出す、ということです。稽古場に入ったら「負けない」という気持ちを持ちます。それは蜷川さんに教わったことですし、ミュージカルの稽古もそうあるべきだと思います。蜷川組の稽古場ではみんな、自分が出ていないシーンを本気で観ているんです。それで内心、「俺だったらこうする」とか、「あ、こいつの役食えるな」とか考えている。本当に残酷ですけど、そうなんですよ。いざ蜷川さんが「それじゃだめだ。おい、誰か他にいないのか」と他の役者に語りかけると、「はい、俺にやらせてください」と演じてみせた人が、「お前の方がいいな」と言われて、役が変わるような現場です。だから、ミュージカルもそうあっていいんじゃないかな、ということも思います。稽古場は、それくらい勝負するところなんじゃないかと思うので、僕はどこの作品でも台本読みでも、100%出すことを心掛けています。――自分を100%出すのってなかなか難しいですよね。めちゃくちゃ難しいです。でも、現場で100%出してる人はやっぱり生き残っているんですよね。『アテネのタイモン』でご一緒した藤原竜也さんも、横田栄司さんも、吉田鋼太郎さんも、150%で来ます。竜也さんなんて、台本読みの段階から血管切れそうですから。でも、やっぱり圧倒されるし、魅力的なんです。ただ「やっぱり竜也さんはすごいよね」で終わってしまったら、自分が出る意味がない。同じ舞台に立つのだったら、先輩だろうがなんだろうが「勝たなきゃいけない」という気持ちでやってきたので、ミュージカルでも、僕はそういう気持ちで臨んでいこうと思っています。かといって、ギスギスしたいというわけではありません。芝居はコミュニケーションの場でもあるわけですから、勝負した分、良いコミュニケーションができる稽古場だったら、面白いですよね。稽古場を出たら、和気あいあいとすればいいですし。○アキレス腱を切った経験で思ったこと――2016年の7月に、ミュージカル『ラディアント・ベイビー〜キース・ヘリングの生涯』でアキレス腱を切って入院されていたとき、「柿澤勇人くん、君は世界で一番タフな俳優になるんだ」というメッセージをもらったとTwitterに投稿されていましたが、あれも蜷川さんの舞台が関係されていたんですか?あれは蜷川さん演出の『海辺のカフカ』に出てくる台詞に関係したメッセージです。僕が演じていたカラスという役が、カフカ少年に「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年にならなくちゃいけないんだ」と言って、送り出すんですよ。僕がちょうどアキレス腱を切って入院した時に、藤木直人さんが蜷川さんの遺作に出演されていて、『海辺のカフカ』のスタッフもキャストも沢山出ていたので、寄せ書きを病院に送ってくれました。その真ん中に、藤木さんがカラスの台詞をなぞって「君は世界一タフな俳優になるんだ」と書いてくれたんです。――蜷川さんの現場にいた人たちが、皆さんで支え合っているんですね。みんなやっぱり地獄を見ているから、愛があります。僕が蜷川組の先輩に「ここがわからない」と色々聞くと、すごく親身になって丁寧にアドバイスをくださって。蜷川さんにボコボコにされてきているので、優しいですよね(笑)。――ボコボコになっても凹まないですか?凹みますよ、毎晩一人で泣いていました。でもあの経験があってから、やっぱり変わりましたね。すごく大きな出会いでした。――いろいろな作品を経て、30歳をむかえられたと思いますが、30代の抱負を教えてください。19歳からの役者人生、10年経ちました。本当に突っ走ってきて、いい経験もあったし、嫌な経験もあったし、とにかく150%アクセルべた踏み、くらいで生きてきた感覚があります。それはそれで間違ってなかったと思うのですが、2016年の『ラディアント・ベイビー』でアキレス腱を切るケガをしてしまって、そこからは「無理しすぎなくてもいいんじゃないかな」と思うようになりました。もちろん一生懸命頑張るけど、メリハリをつけないと、本当に倒れてしまう。20代は猪突猛進に走っていたので、今後はもう少し視野を広げて、芝居を楽しめるようになれば、と思っています。■柿澤勇人1987年10月12日生まれ、神奈川県出身。2007年に劇団四季の養成所に入所し、同年デビュー。『ライオンキング』(08)、『春のめざめ』(09)など立て続けに主役を務める。退団後は『スリル・ミー』(11〜14)、『デスノート The Musical』(15、17)、『ラディアント・ベイビー〜キース・ヘリングの生涯』(16)、『フランケンシュタイン』(17)など話題のミュージカルで主演。『海辺のカフカ』(15)、『アテネのタイモン』(17)など、ストレートプレイでも活躍する。○ミュージカル『メリー・ポピンズ』出演:濱田めぐみ・平原綾香/大貫勇輔・柿澤勇人/駒田一・山路和弘/木村花代・三森千愛/島田歌穂・鈴木ほのか ほか東京公演:東急シアターオーブ3月25日〜5月7日 ※プレビュー公演:3月18日〜24日大阪公演:梅田芸術劇場メインホール5月19日〜6月5日●【プレゼント】柿澤勇人さんサイン入りチェキ<応募〆:2月7日>柿澤勇人のサイン入りチェキを1名様にプレゼントします。■応募期間:2018年2月3日から2018年2月7日23:59まで■内容:柿澤勇人サイン入りチェキプレゼント■当選人数:1名様■応募方法1.マイナビニュースエンタメch公式Twitterをフォロー2.応募ツイートをリツイート。当選者には応募締め切り後、マイナビニュースエンタメch公式Twitterからダイレクトメッセージにて、送付先情報(送付先住所、受取人氏名、電話番号)を伺います。※ダイレクトメッセージ送信後48時間以内にご連絡のない場合や、フォローを外された場合(その場合ダイレクトメッセージを送付できません)は当選を無効とさせていただきます。当選条件日本国内にお住まいの方 <個人情報取扱いについてのご注意> 応募にあたって以下を必ずお読みください。応募には以下の「個人情報取扱いについて」に同意いただく必要があります。「個人情報取扱いについて」に同意いただけない場合はプレゼント抽選の対象となりません。(1)個人情報取扱いについて:マイナビでは個人情報保護マネジメントシステムを構築し、正しい個人情報の取扱および安全管理につきましてできるだけの体制を整え、日々改善に努めています。当社が運営するマイナビニュースにおいて、読者の皆様からお預かりする個人情報は、プレゼントの発送などに利用いたします。(2)開示等、個人情報の取り扱いについてのお問い合わせ:株式会社 マイナビ ニュースメディア事業部 編集部 〒100-0003 東京都千代田区一ツ橋1-1-1パレスサイドビル 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2018年02月03日ボーカルダンスユニット「M!LK」のメンバーであり、俳優としての活躍も目覚ましい佐野勇斗が、4月はじまりのカレンダー「佐野勇斗カレンダー2018.04-2019.03」を、2月14日(水)に発売することが分かった。1998年3月23日生まれ、愛知県出身の佐野さんは、ダンスボーカルユニット「M!LK」のメンバーとして活躍し、連続ドラマ初レギュラー出演した菅野美穂主演ドラマ「砂の塔~知りすぎた隣人」では、菅野さんと田中直樹演じる夫婦の長男役を熱演し話題に。そして、「カンナさーん!」や『高台家の人々』『ミックス。』と話題作にも出演。今後も1月スタートの「トドメの接吻」や、『ちはやふる -結び-』『羊と鋼の森』など続々と出演作の放送・公開が控えており、現在若手ネクストブレイク株の筆頭といえる。そんな佐野さん初めての単独ソロカレンダーとなる今回は、32ページにわたる「ブックスタイル」の壁掛けカレンダー仕様。現在19歳、10代最後の貴重ないまの魅力を凝縮し、「M!LK」のときとはひと味もふた味も違う、“俳優・佐野勇斗”にフィーチャーし、ナチュラルで等身大、繊細さと大胆さ、根っからの明るさと、ふとしたときに見せる憂いの表情などが収められている。今回のカレンダーに関して佐野さんは、「個人としては初めてのカレンダーなのでとても嬉しく思います!」と喜び、「M!LKでは可愛い、若々しい僕の表情が多かったりするんですけど、今回のカレンダーは、僕自身今年ハタチになるということで、少し大人な一面も見せられるカレンダーにしたいなと思い、マネージャーさんやカメラマンさんとも話し合いながら撮影に臨みました!少しでも、いつもと違うちょっと大人な佐野勇斗をみていただけたらなあと思っています」とコメント。なお、3月には都内にてカレンダー発売イベントの開催も決定。佐野さんは、「ちょっとでもいいので会いに来てくれると嬉しいです」とメッセージを寄せている。「佐野勇斗カレンダー2018.04-2019.03」は2月14日(水)発売(※一部、発売日が異なる地域有)。(cinemacafe.net)
2018年01月08日俳優・高岡奏輔(35)が27日、自身のインスタグラムに「人がみる印象なんて何でもいい、皆さんは自由に思う権利がある」の書き出しでメッセージを投稿。ファンからは感動の声も寄せられている。高岡奏輔メッセージはハッシュタグとの組み合わせで構成され、「人がみる印象なんて何でもいい、皆さんは自由に思う権利がある」「#自分は変わらず俳優として自分と向き合いたい」「#これからもただそれだけ」「#誰とも戦わない」「結果自分とだけ最後まで戦い続けますそれしかありませんので皆さんと同じです」との訴えからはじまる。「#もう相手にしない」「#街中の喧嘩や」「#チューチュー言われる作文も」「#悪く書こうと追っかける人や」と周囲の状況に惑わされないことを宣言し、「けど本当に。好きなように書いてください」「皆さんもご心配かけてごめんなさいね自分はスーパー元気なので、なんも心配しないでくださいねせっかく日常がふんわりしてたのに、ご心配おかけしましたこんなんも本意じゃないけど、通らなきゃいけない道だったですからね過去だから変えようもなく、どうしようもできないこんな機会だから少しお伝えしときました皆さんに救われております、ありがとうこれからも宜しくです」と支えてくれるファンに感謝しながら、投稿の意図を説明。宛名は記さず、「皆さん寒いので体調崩さず」「#新幹線の中からは雪が見えた」「#頑張れな」「#俺も頑張る」「#必ず幸せになれ」「#守るべき家族」「#共に歩く道」「#困難は乗り越えられる」「#ありがとう」「俺も今が一番幸せだよ」と正直な思いをつづっている。高岡は2007年に女優・宮崎あおい(32)と結婚し、2011年に離婚。今月24日、宮崎はV6・岡田准一(37)との結婚を発表した。高岡の言葉を受けとめたファンからは、「男気に涙がでました」「文章を読んで涙が出ました」「高岡さんも幸せになってください」「人の幸せを願えるのは簡単なことじゃない」「すごく男気あるれる文章で感動」「自分の言葉で伝えてくれるので嬉しい」「活躍期待しています」などの温かいメッセージが寄せられている。
2017年12月28日ディズニーの不朽の名作映画『メリー・ポピンズ』がミュージカル化。その日本初演が、2018年3月、東京・東急シアターオーブで幕を開ける。そこでオーディエンス200名が見守るなか、ほぼ全キャストが登壇する大規模な記者会見が行われた。【チケット情報はこちら】冒頭を飾ったのは、誰もが知る『メリー・ポピンズ』の名曲の数々。バート役の柿澤勇人が『チム・チム・チェリー』を歌い始めた途端、会場は早くも『メリー・ポピンズ』の魔法の世界へ。そこにバート役Wキャストの大貫勇輔、メリー・ポピンズそのものといったいで立ちの濱田めぐみ、メリー・ポピンズ役Wキャストの平原綾香も登場。メリー・ポピンズを象徴する『プラクティカリー パーフェクト』から名曲中の名曲『フィード ザ バーズ』、全キャストが登場しての華やかな『ジョリー ホリデイ』までが一気に披露されると、会場のテンションは最高潮に。心地よい高揚感に包まれつつ、キャストによる挨拶が始まった。濱田にとってディズニー作品への出演は、劇団四季時代から数えて4作目。「想像を具現化し、舞台上にかたちとして見せるのはディズニーミュージカルが一番」とその魅力を語り、「ひとつひとつを明確に、はっきりとした夢のかたちをお届け出来るよう精進したい」と意気込む。3作目のミュージカル出演となる平原は、自らの前世について「平原さんはまだ地球に慣れていないから頑張って」と言われたことがある過去を告白。演出家から「メリー・ポピンズは宇宙人のようなもの」とアドバイスされたことを受け、「宇宙人だったころを思い出して頑張りたい」と、会場の笑いを誘った。大貫は「正直プレッシャーの方がかなり大きい」と切り出しつつも、「日本初演のオリジナルキャストに選ばれたことは本当に嬉しい。全力で、楽しみつつ稽古に取り組んでいけたら」と目を輝かせる。柿澤はこれまで人を殺める役が多かったことから、「やっと大人から子供まで楽しめる役に挑戦出来る。たまには僕も愛されたい!」と、平原に続く笑いを会場に呼び起こした。他にもジョージ・バンクス役の駒田一、山路和弘、ウィニフレッド・バンクス役の木村花代、三森千愛、バードウーマンとミス・アンドリュー2役の島田歌穂、鈴木ほのからが登壇。それぞれ本作にかける思いを熱く語った。最後には「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」を全員で熱唱。その美しく力強い歌声は、本番への期待をさらに高めてくれた。公演は2018年3月18日(日)より。なお、チケットの一般発売に先駆けて、チケットぴあでは抽選先行を実施中。いち早プレリザーブの受付は11月27日(月)午前11時、プレリザーブの受付は11月30日(木)11時まで。取材・文:野上瑠美子
2017年11月24日演劇界で多くの名作に携わってきた謝珠栄が、構成・演出・振付を担当する『Pukul(プクル)』。ダンスと歌で綴られるストーリー仕立てのオリジナルショーで、宝塚歌劇団を除いては、今の日本では珍しいとされるショー作品だ。湖月わたるや水夏希、蘭乃はな、舞羽美海ら宝塚OGに加え、坂元健児、大貫勇輔、岡幸二郎、島地保武ら豪華キャストが勢ぞろいした本作。その公開稽古が、11月17日、都内のスタジオで行われた。舞台『Pukul~プクル~』チケット情報謝が「インドネシア語で“鼓動”“時間”、それからマレー語でも“時”を表す『pukul(プクル)』という言葉をタイトルにしました」と話すように、ACT1は「アジアの音色」、ACT2では「西洋の音色」をモチーフにして展開。過去、現在、未来をつかさどる神々が見守るなか、“地球”と“人類”のストーリーが描かれる。公開稽古では4場面から一部を抜粋。『宇宙の鼓動』では“現在”の神である姿月あさと(スペシャルゲストとして出演)、“過去”の神の岡、“未来”の神・坂元が登場。宇宙の創世を壮大なスケールで歌い上げる。傍らで何かの始まりを暗示するかのように、激しく踊り続ける大貫の姿が印象的だ。続く『星たちの鼓動』は、湖月、水、蘭乃、舞羽らが腰を低く落とし、指先をつまむようにして踊るインド舞踊の型を取り入れたダンスで、星々の誕生を表現。ガムランの音が高まってゆくなか、『星の一生』の場面へとなだれ込む。男性キャスト陣も合流し、最高潮に達したところで突然音楽がやみ、春野寿美礼(スペシャルゲスト)が現れた。星々に語りかけるような春野の歌声が静寂の中に響く。公開稽古の最後は、『銀河の回転』の場面だ。彩吹真央(スペシャルゲスト)が、銀河の頂点に君臨する太陽について語ると、岡の歌、大貫のダンス、湖月ら他のキャストも次々に加わり、太陽と、その周りを公転する惑星をダンスで表してゆく。いずれも主演級のキャストだけに、その迫力は圧巻のひと言だ。ゲネプロ後の囲み会見では、謝と姿月、湖月、水が登壇。「人々が忘れてはいけないことを、私たちなりに伝えられる作品」(姿月)、「宝塚OGの踊りに、男性キャストの力強さが加わったショー」(湖月)、「謝先生らしい生命賛歌の物語」(水)といった言葉が聞かれた。一方、謝が「バリ、韓国、中国、インド……それからグルジア、ロシア、中近東など、6~7種類のダンスを取り入れてますね」と語る場面では、水が取材陣に「ほんと大変!」と漏らして笑いを誘うひと幕も。「稽古場の“戦い”が出演者一人ひとりのエネルギーとなってお客様に伝われば」との水の言葉に、思わず納得した公開稽古となった。公演は12月9日(土)から14日(木)まで東京・日本青年館ホール、12月21日(木)から25日(月)まで大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて。取材・文佐藤さくら
2017年11月22日ミュージカル『メリー・ポピンズ』の製作発表が21日、都内で行われ、濱田めぐみ、平原綾香、大貫勇輔、柿澤勇人、駒田一、山路和弘、木村花代、三森千愛、島田歌穂、鈴木ほのか、コング桑田、パパイヤ鈴木、浦嶋りんこ、久保田磨希、小野田龍之介、もう中学生が登場した。同作は、パメラ・トラバースの小説をもとに1964年、ジュリー・アンドリュース主演で世界的大ヒットを記録したディズニー映画『メリー・ポピンズ』を、『オペラ座の怪人』『レ・ミゼラブル』などのサー・キャメロンマッキントッシュがプロデュースし2004年にミュージカル化。今回が日本初演となる。ロンドンのバンクス家にやってきたナニーのメリー・ポピンズと家族の物語を描く。会見では、キャストによる「Chim Chim Cher-ee」「Practically Perfect」「Feed the Birds」「Jolly Holiday」「SUPERCALIFRAGILISTICEXPIALIDOCIOUS」の歌唱が披露された。メリー役の濱田は「小さい頃からの思い出とか懐かしい感じ、ノスタルジックな感じ、そういうのが全て詰め込まれてるのがディズニーミュージカル」と表し、「皆様にはっきりとした夢の形を見せられるように」と意気込む。また、濱田とWキャストでメリーを演じる平原は、同役を「完璧で宇宙人的なイメージ」と表現し、「演じるのがすごく難しい」と語った。平原は「『アウトデラックス』で前世を見てもらった時に、『平原さんは地球に慣れてないから頑張って』って言われたんです」と明かし、「ショックだったんですけど、プロデューサーに『メリー・ポピンズは宇宙人だから、まばたきもしないくらいの勢いなんだよ』と言われて。宇宙人だった頃を思い出してできるかなって」と自信を見せた。ダンサーとして活躍する大貫は「ここまでしっかりとしたタップが中心となった舞台は初めてだし、歌もものすごく僕にとっては課題。歌の稽古、タップの稽古はずっと準備しています」と明かした。柿澤も同じくタップダンスのレッスンを積んでいるが、実は「ダンスは本当に苦手」だという。柿澤が「劇団四季にいた時に、当時の演出家に『お前にはダンスの才能がない』と言われて。それまでダンスがすごい好きだったのに、才能がないって言われたから『じゃあやらないよ』と思って」と告白すると、平原は「上手だったよ!」とフォロー。柿澤はその言葉に「ダンス好き~!」と宣言していた。また、傘で飛ぶシーンが有名な同作だが、子供の頃に魔法を練習したことがあるか? という質問に、濱田は「物を念力で動かそうとしていました」と回答する。平原は「傘を持って、なりきって遊んでた時期もあった」とまさにメリー・ポピンズになりきっていことを明かし、大貫は「僕は(ドラゴンボールの)かめはめ波を本気で練習してました。友達に出せるようになったって嘘つきました」とそれぞれの魔法体験が明らかに。さらに柿澤が「僕も空を飛びたいと思って。鳥ってなんで飛べるかといったら、大胸筋がハンパないらしいんですよ。中学生の時に、本当に大胸筋ばかり鍛えて、飛べるんじゃないかと思ってました」と振り返ると、大貫は「科学的に5m胸筋があったら飛べるらしいですよ」と豆知識を披露。柿澤は「足りなかったか!」と悔しがっていた。
2017年11月21日グラビアアイドルの大貫彩香が3日、東京・秋葉原のソフマップAKIBA4号店アミューズメント館で最新イメージDVD『さや恋』(発売中 4,104円税込 発売元:ラインコミュニケーションズ)の発売記念イベントを行った。同作の撮影は4月に沖縄で行ったそうで「綺麗に晴れてビーチでもはしゃげましたし、オフショットを自分で撮ったんですけど、ビーチで自撮りをしたり、沖縄をゆるりと楽しんだ思い出があります」と回顧し、「(彼と)一緒に沖縄ではしゃぐようなイメージになっているので、9月になっちゃいましたけど、これを見てまた夏を追いかける気持ちで一緒に楽しんでもらえたら嬉しいなと思います」とアピール。さらに、彼と1番イチャイチャしているシーンを尋ねられると「初っ端のパイナップルのタンクトップを着ているシーンで、(彼を)朝、起こしに行くんですけど、すぐ起きてくれないみたいな…。でも、まだこの時間を一緒に過ごしたいという感じでイチャイチャしていて、けっこう理想ですね」と声を弾ませ、「寝起きが悪い人は好きかもしれないですね(笑)」と打ち明けた。衣装について聞かれると、「(イメージ作品が)13枚目になるんですけど、今まで着たことがないボンテージや、チャイナ服など新しい挑戦もさせていただきました」と明かし、「お気に入りは紫のレースの水着なんですけど、形もすごくセクシーで、素材もシースルーになっていて、大人の色気を出させてくれる衣装でした」と紹介した。また、タイトルにちなみ、大貫にとっての"理想の恋"を尋ねられると「これ(DVD)が、同じ目線でイチャイチャするような内容なんですけど、そういうのが理想ですね」と目を輝かせ、「少年心を忘れていない人がいいです」とニッコリ。さらに"いま恋をしている『もの』や『こと』"を聞かれると「お芝居の世界がすごく楽しくて、年明けに出たい舞台もあって、それに向けて頑張っているところで、お仕事とか主にお芝居に恋しています」と語った。
2017年09月09日ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』の製作発表記者会見が18日に都内で行われ、ビリー役の加藤航世、木村咲哉、前田晴翔、未来和樹、ビリーの父親役の吉田鋼太郎&益岡徹、バレエ教師・ウィルキンソン役の柚希礼音&島田歌穂、ビリーの祖母役の久野綾希子&根岸季衣、オールダー・ビリー(大人になったビリー)役の栗山廉(Kバレエ カンパニー)&大貫勇輔が登場した。同作は、日本では『リトル・ダンサー』として知られる映画『BILLY ELLIOT』を2006年にイギリスでミュージカル化し、数々の賞を受賞した。映画で同作の監督を務めたスティーヴン・ダルドリーが演出を務め、エルトン・ジョンが音楽を担当した。イギリス北部の町の少年・ビリーは、炭鉱労働者の父に反対されながらも、バレエダンサーとしての才能を開花させていく。ホリプロの堀義貴社長が数年にわたってプロジェクトを進め、一度はあきらめかけたもののやっと日本での舞台化に至ったという同作。応募総数1,346名から選ばれた4名のビリーが、物語でキーとなる楽曲「エレクトリシティ」を披露した。歌、バレエ、アクロバットと様々な要素を取り入れながら、ダンスに対する思いをパフォーマンスに託した。バレエを得意とする中1の加藤は、踊っている時は「何も考えてないです。舞台に出る前は、ここを気をつけなきゃとか意識しているんですけど、踊り始めると全て忘れちゃう」と苦笑。将来は「バレエとかで、とにかく活躍できるようになりたいです」と語った。最年少で、現在小学4年生の木村は、「毎日練習してみんなに追いつけるようにしたいです」と本番までの抱負を語る。周りのベテラン陣について「すごい人たちと共演できて光栄です」と、大人顔負けに頭を下げた。もうすぐ小学校を卒業するという、6年生の前田は4月からの稽古も「勉強とビリーのレッスンを両立していきたいです」と意気込んだ。将来の目標を聞かれると「テレビに出て、美味しいものを食べる」と回答し、周囲を笑わせた前田。グルメレポーターではなく「ダンスとかもできるし、テレビでも話せるような人になりたい」と、マルチな活躍への希望を語った。最年長で中学2年生の未来は語彙が豊富で、しゃべりが達者。「ビリーがミュージカルの中で歌ってる歌詞と同じ気持ちだったのが、オーディションを受けようと思ったきっかけにもなった」と明かした。熊本出身の未来は「今までのオーディションの時は熊本の人に明るいニュースを届けたいと思って頑張ってきた」と振り返り、「これからは、見に来てくださるお客様の期待を裏切らないように精一杯頑張りたいと思います」と抱負を述べた。東京公演はTBS赤坂ACTシアターにて、プレビュー公演が7月19日~23日、本公演が7月25日~10月1日。大阪公演は梅田芸術劇場 メインホールにて10月15日~11月4日。
2017年02月18日昨年、歌とダンスで展開するコンサート『REON JACK』を大好評のうちに終え、そのショーマンぶりが改めて評価された柚希礼音。日本では数少ないショー要素の強いステージをまた観たいという熱い声に応え、早くも『REON JACK2』の上演が決定! 今回は上野水香や大貫勇輔ら国内外で活躍するトップダンサーが集結し、柚希と競演を繰り広げる。『REON JACK2』チケット情報星組トップスター時代に催された武道館コンサート(2014年)、そして退団後、女優に転身してからの『REON JACK』(2016年)。3度目となる『REON JACK2』では「よりアーティスティックな舞台を目指したい」と柚希は話す。「宝塚を退団したことで自分の心情も変わってきていますし、だからこそ難しいことにも挑戦していければ」と柚希。中でも、モーリス・ベジャールら世界的な振付家のもとで踊ってきた上野水香とは「ずっと一緒に踊ってみたいと思っていた」という。「実は(宝塚入団前に)私がバレエのコンクールに出ていた頃、いつも1位が上野さんだったんです(笑)。ただ、そんなスゴい上野さんでもショーのダンスはほとんど初めてのようなので、お互いにとっての挑戦になればいいなと思っています」と意気込みは充分だ。その分、今回の振付と出演も兼ねる大村俊介(宝塚では柚希の代表作『オーシャンズ11』や『ロミオとジュリエット』も担当)らスタッフたちと、ダンスナンバーについても細かく打ち合わせを重ねていると明かしてくれた。一方、楽曲の面でも大きな変化が。「今までは宝塚や海外アーティストの曲を歌っていたんですが、在団中にリリースした『夜空に眠るまで』や、今度出す5曲入りCDの分も合わせて、ほとんど私の曲で構成出来るようになりました。新曲のうち2曲を森雪之丞さんに作詞していただいたり、『夜空に~』でご好評いただいた本間昭光さんに音楽プロデューサーをお願いしたりしているので、これまでとはまた違った柚希礼音を見てもらえるんじゃないかな」と、柚希は笑顔で話した。さて、ダンスと歌の実力に加えて、主役に圧倒的な華がなければ成り立たないといわれるのが“ショー”(ここではコンサートと表記)。柚希は女優になった今も、その希有な道を気負うことなく進んでいる。「歌とダンスのレッスン、それから構成や演出も打ち合わせするから時間はいつも足りないです。『あぁ、ここは(スタッフに)任せてしまいたい』と思うこともあるんですが、結局は『いやいや!やるぞ!』となるんですよね(笑)。ダンスと歌で表現するコンサートは、“今の私”を表現する大切な場所。これからもずっと続けていきたいです」公演は3月23日(木)から26日(日)まで梅田芸術劇場メインホール、30日(木)・31日(金)パシフィコ横浜国立大ホール、4月19日(水)・20日(木)福岡市民会館大ホールにて。取材・文佐藤さくら
2017年01月20日●田代万里生×大貫勇輔×桑山哲也、互いの"プロ"な姿に驚き!? 異色ステージへの思い音楽、演劇、ダンス……様々な分野のトップが集まり、異色のステージを作り上げる公演『Clementia クレメンティア:~相受け入れること、寛容~』(以下、『クレメンティア』)。田代万里生(テノール・ピアノ)、大貫勇輔(ダンサー)、ホリ・ヒロシ(人形舞)、桑山哲也(アコーディオン奏者)、浅野祥(三味線プレーヤー)、クリヤ・マコト(ジャズピアニスト)の6人が出演するこのステージで一体何が生まれようとしているのか? 今回は田代、大貫、桑山の3名に話を聞いた。○"寛容"をテーマに集まった6人――『クレメンティア』は3回目ということですが、もともとどういうきっかけで始まったものなのでしょうか?大貫:3年前に、僕とプロデューサーによって「何か挑戦的なことやりたいよね」というざっくりしたところから始まりました。その頃たまたま本を読んだ時に、「クレメンティア」という文字が飛び込んできて。これはラテン語で「相受け入れること、寛容」という意味だったんです。この言葉をテーマにして、異業種の人とステージを作ろうと思いつきました。最初は2014年にマリンバ奏者のSINSKEさんと公演を行い、次の機会につながって2015年は5人の公演に。そして今回は6人にまでなりました。――どういった基準でこの6人になったのか、理由はあるんですか?桑山:選ばれし者達ですね(笑)。普段のそれぞれの現場ではおそらく交わらないであろう職種の人たちを、あえて選んで一緒にさせてみようという考えはあったと思います。田代:メンバー6人の中で、桑山さんとは唯一共演の経験はあるんですが、大貫君とはすれ違いで、やっとできるというところですね。他の方も濃いので、話には聞いていたけど、会ってみたらもっとびっくりです(笑)。桑山:出演者はみんなそうだと思うんですけど、こういう職業ですから、新しいことに挑戦することが好きなんですよね。話を聞いた時にも「へえ~、試されてるの?」みたいな高揚はあります。新しくプラスになるような出会いへの期待で、呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーンと(笑)。――稽古中とのことですが、感触はいかがですか?大貫:最初は万里生さんと2人で稽古していて、次に桑山さんが入ってくださったんですけど、1人入るだけで大きく変わるんですよね。歌手、ダンサー、アコーディオン奏者が集まって芝居もしているので、異様な感じがすごく心地よいというか。面白いです。桑山:今まではある程度台本・構成・演出が決まった上で演奏することが多かったのですが、今回はみんなで作り上げていくので。本当に初めての経験で戸惑いはあるんですけど、良い化学反応が起こせると思います。田代:桑山さんが稽古に来て、アコーディオンを置いて体一つで芝居の稽古しているのを見て、新鮮で感動しましたね。「楽器を置いた!」って(笑)。桑山:大変だったんですよ! うちの嫁が女優(藤田朋子)なんですけど、稽古へ挨拶に来て、僕の演奏じゃない部分を見て、「芝居のところ、皆さんに迷惑かけないように本当に頑張ってね」と言われて。僕は枕を涙で濡らしましたから。大貫:嘘だ!(笑)桑山:「2人は台本を持ってなかったのにあなたは……」と、ぶたれるくらいの勢いで(笑)。田代:すごく嬉しそうにご覧になってましたよ(笑)。2人の時はリハの音源を鳴らしたりしていたんですけど、桑山さんが入ると生の音量も全然違います。お互いが高め合っていく感じは、ただ再生した音に合わせているのではなく一緒になっている感覚で、パワーが全然違うと思いました。●プロがプロを見るときに注目するポイントは?○稽古で目撃した"プロ"の姿――みなさんは、それぞれ別の分野のプロだと思いますが、一緒にステージを作り上げていく中で、お互いに「プロだな」と思ったできごとを教えてください。大貫:僕は楽譜が読めないので、楽譜を広げて音楽が出来上がっていくスピードの速さにびっくりしました。万里生さんに関しては、ピアノもめっちゃ弾けて。「そんなに歌うのに、そんなに弾けるの!?」という点にもびっくりして、感動しました。桑山:僕はこれまで、ダンサーの方とご一緒する機会はほとんどなかったので、初めて稽古場に入った時に、大貫さんが稽古前にアップしている姿を見て驚きました。平気な顔して、マサイの戦士くらい跳ぶんですよ。そして、着地するときに音がしないんですよ。「ヒタッ」くらい。さらに、平気な顔して呼吸も乱れない。身体も大きいし、筋肉もしっかりしているのに「ピョン!」って。しかもその「ピョン」が長いんです。「ピョーン、ヒタッ、ピョーン」ですね。一同:笑桑山:ダンサーというのは跳んだだけで全然違うというのに驚きました。万里生さんとは、舞台でご一緒したことはあったんですけど、その時は音楽家バンドの中のアコーディオン奏者という立場だったので、袖からお芝居を見ている状態だったんですね。今回は僕もお芝居にちょっとだけ参加させていただいて、万里生さんが僕の顔を見てお芝居する場面があるんですけど、あがりました。大貫:あがるって、テンションですか? 緊張ですか?桑山:緊張ですね! 僕の奥さんも役者だけど、セリフを読むのに付き合ったりしたことは一度もなかったんですよ。だから稽古でセリフを言われただけで「えっ!?」って緊張しました。「お芝居ってこんなに自然なんだ!」と。田代:僕は、お二人のクオリティにやっぱり驚きましたね。二人とも本当にトップのダンサー、アコーディオニストだと思うんですよ。だから打ち合わせをしていても、試しに弾いてくださったものが1回目からすごいし、軽く流して振り付けをやってみたダンスがもう、すごい。僕が今からやっても、絶対にその景色を見られないだろうなというところにいると思います。こんな6人が集まるなら、僕も客席から普通に見に行きたいなと思いました(笑)。○アコーディオン、どこに注目?――トップのアコーディオン奏者とは、どのようなところが優れているのだと思いますか? 例えば桑山さんが他のアコーディオン奏者を見るとしたら、どこに注目されるのでしょうか。桑山:一般的には指が良く動けば良い、音が大きければ良いといったイメージがあると思うんですけど、アコーディオンは蛇腹で空気を使って演奏するのが最大の特徴。いかに音をなめらかに出すか、歯切れよく出すかが、全て蛇腹の操作にかかっているので、優れたアコーディオン奏者は蛇腹の使い方が上手な方なんです。自分が表現したいものに臨機応変に対応した蛇腹の操作ができる方は、いいアコーディオン奏者だと思います。――じゃあ桑山さんが他の方を見るときは「あの人の蛇腹使いはすごい!」といった目線が。桑山:一番大きいですね。指のミスタッチは練習すればすぐに治るんですよ。でも呼吸感、空気感はなかなか身につかないので、長年その人が経験してきたことや、どう感じているかが現れます。田代:シャンソンだと、コードで譜面が来るんですか?桑山:そうですね、メロディ譜にコードが乗っかっているだけです。田代:じゃあ、リズムとコードの中で、どういうフレージングを打ち込んでいくかはもうセンスの問題なんですね。人によって変わってくるので、大きいですよね。――大貫さん、田代さんもそういった、同業の方を見るときに注目するポイントはありますか?大貫:僕は足先・手先・軸と、首の使い方をついつい見てしまいます。音の感じ方と、その時に表現したいであろう心情がどれだけ身体に乗るのか。良いなと思うのは、音と心情がマッチしているときが多いですね。踊りってすごく原始的なものだから、言葉よりも嘘がつけない。もちろん好みはありますけど、「この人は良いダンサーだな」とすぐにわかります。ダイレクトに伝わってくるので、誰が見ても「この人素敵だよね」と伝わるダンスがしたいし、そういうダンサーを見ていると、心地良いなと思います。田代:僕もダンスと似ているかもしれません。音色や技術は当たり前と考えたら、音楽性を見ちゃいますね。音楽性って、絶対ストーリーになっているじゃないですか。ストーリーが伴った音楽性がちゃんと出て、自然な発声がされているといいなと思います。歌に限らず楽器でもピアノでもバイオリンでもそうですね。○公演の見どころ――それでは、最後に公演の見どころを教えてください。田代:いろいろなジャンルからお客さんが集まってくると思うんですが、初めて見る光景が絶対あると思います。他の作品では絶対ないことがステージで起きますし、選曲に関しても、ここ以外では歌うことのないだろう曲も入ってきます。みんなでお芝居をする場面にしても、ただ挑戦するだけでなく、プラスアルファで何を乗せてくるか、見ていただければと思います。桑山:稽古もまだ途中で、我々自身も完成形を完全には把握してないんですけど、本番4回の中で、回を重ねるごとにいろいろな変更点が出てくると思うんです。もしかすると、4回目のステージを見たら、随分変わっているかもしれないので、できれば全公演観ていただきたいなと(笑)。田代:何が起きるかわからないですからね(笑)。桑山:4回ワンセットで(笑)。クレメンティアのテーマ曲も作りました。うちの嫁が自分のコンサートでたくさん詞を作っているので、台本を見せて音楽を聴かせて、作ってもらって、みんなで歌う場面もあります。夫婦であることを置いておいても、今回の舞台によくあった詩ができたなと思っていまして、実際に歌っていただいた時に、「これはいいじゃないか」とハッとするような良いものができました。大貫:オリジナルソングができたことは、やっぱりすごく嬉しかったですね。見所、いっぱいありすぎるんですが、例えば浅野祥さんが三味線でリベルタンゴを弾いて、そこにホリ・ヒロシさんの人形が舞って、その中で僕が一緒に踊るなんて、もうないでしょ!? みたいな(笑)。アコーディオンで踊るのも人生で初めてですし、万里生さんも、歌い慣れていない曲を歌うと言ってましたよね。田代:ポップス、それも今風ではない感じの曲を歌います。大貫:そういった曲を歌う万里生さんだったりとか、それを良い意味でかき乱す、クリヤさんのジャズ演奏だったりとか、本当にここでしか見られないですよね。田代:2度と同じ演奏はしないですからね!(笑)大貫:奇跡が起きる瞬間がたくさんあるだろう舞台なので、一瞬一瞬見逃さないようにしていただければと思います。■公演情報『Clementia クレメンティア:~相受け入れること、寛容~』2016年12月9日(金) 19:00開演10日(土) 14:00開演/18:00開演11日(日) 13:00開演会場:天王洲銀河劇場
2016年12月07日多彩なアーティストが集う音楽とダンスの舞台、『クレメンティア~相受け入れること、寛容~』の稽古が進行中だ。2014年の初回から数えて3回目となる本公演。出演者のアコーディオン奏者、桑山哲也とダンサーの大貫勇輔が、公演への思いを語った。Clementia(クレメンティア)Vol.3 チケット情報僕だけ『クレメンティア』経験者なんです」と話すのは、初回から出演を続ける大貫。「今回はダンサーが僕ひとりと、人形舞のホリ・ヒロシさん、そしてミュージシャンが4人ですが、まずは音楽チームの皆さんがいろいろと意見を出されていて、これはどういうふうになるんだろう、と楽しみにしているんです」と話す。音楽チームのメンバーは桑山のほか、ジャズ・ピアニストのクリヤ・マコト、歌手の田代万里生、三味線の浅野祥と異色の組み合わせだ。「僕は田代さんを除いて初めて共演する方ばかり。どうコラボしていくか──、面白くなると思います」と桑山も期待する。「(構成・演出・振付を手がける)川崎悦子さんとは前回に続いて2回目。その大きな器をお借りして、新しいことを生み出させてもらいました」と大貫は語るが、この舞台でもっとも特徴的なのは、前半の第一部がストーリー仕立てであること。台詞のあるお芝居は初挑戦の桑山は、「“ついに来たか!”と(笑)。僕の役はテツヤという、犬好きのアコーディオン奏者。ペットと一緒に住める部屋を探して、とあるアパートに辿り着いたという設定なんです。半分は現実と被るので、演じるといっても安心です(笑)」。同じアパートに住む指揮者の役を演じるという大貫も、「演奏家の方々が台詞って、なかなかないですよね」と笑うが、「大人たちが本気で遊んでいる感じでやれるのではないかと思います」と自信をのぞかせる。皆が強く希望したというタンゴの名曲「リベルタンゴ」、映画『道』の主題歌「ジェルソミーナ」ほか、既存の名曲も次々登場するほか、「嬉しかったのは、桑山さんが『クレメンティア』のテーマ曲を書いてくださったこと」(大貫)。その歌詞を手がけたのは、桑山の妻で女優の藤田朋子だ。「この舞台によく合った詩ができたのではないか」と、桑山も笑顔を見せる。「予め作られたものをやるのではなく、皆で一緒に作っていく経験は初めて。将来、これに出ていたと胸をはって言えるような舞台にしたい」と抱負を語る桑山。「1回1回の舞台におこるであろう奇跡を、ぜひ観ていただきたいと思います」と、大貫も意欲的だ。公演は12月9日(金)から11日(日)まで、東京・天王洲 銀河劇場にて。チケット発売中。取材・文:加藤智子
2016年12月05日様々なジャンルのアーティストが集い、踊りと音楽のコラボレーションを繰り広げる舞台『クレメンティア~相受け入れること、寛容~』が上演される。ここで初共演を果たすふたり、ミュージカル俳優の田代万里生、津軽三味線の浅野祥が、意気込みを語った。Clementia(クレメンティア)Vol.3 チケット情報初対面の際には、「三味線の方、と構えていたら、いきなり『ポケモンGO』やっていますかとゲームの話題に(笑)。癒されました」と話す田代。当の浅野も、「三味線という楽器で皆さんの中に入っていけるのがとても嬉しく、ワクワクしています」と、この出会いを楽しんでいるようだ。2014年にダンサーの大貫勇輔、マリンバ奏者SINSKEのコラボ公演としてスタートした『クレメンティア』。翌2015年にはバレエ、日舞、尺八というさらに多彩な分野から才能が集結、第3弾となる今回も、大貫に加え人形舞のホリ・ヒロシ、アコーディオン奏者の桑山哲也、ジャズピアニストのクリヤ・マコトらが集う。ジャンルを超えての共演は「三味線、民謡の世界でだけやっていたら思いつかないようなことが、どんどん出てくる」と、最年少の浅野も意欲的だ。しかもこの舞台、単純なコラボレーション・コンサートとはひと味もふた味も違う。前半の第一部は、お芝居の要素を取り入れたストーリー仕立てなのだ。舞台は彼らアーティストたちが住まうアパート。田代の役柄は、「ヒット曲が出せず葛藤する作曲家、マリオ。半分は役を演じながら、半分はアーティストとしてそのまま存在し、本来の性格も少し反映させる。音楽的なコラボレーションであることに変わりはないけれど、そこにちょっとした味付け、色付けをしてお届けします。いい意味で、型にはまっていないものになると思います」。いっぽうの浅野が演じるのは、「ゆとり世代の象徴のような役(笑)。他に行きたいところがなかったからというだけでそのアパートに住むことにしたロック好き」なのだそう。構成・演出・振付の川崎悦子のもと、皆がアイデアを出し合い、作品づくりを担う。「皆それぞれのアプローチがありますから、いろいろと出し合っています。実は、僕が最初に歌う楽曲を選んだのは祥君なんです。まさか、三味線プレイヤーからイタリア語の曲が出てくるなんて!」と田代。浅野も「こうして舞台を創り上げていくのは初めての経験。衣裳も決して自分では選ばないような服装で(笑)、すごく楽しんでいます。きっと、誰も見たことのないような景色が生まれると思います」と、笑顔で充実の舞台を予感させた。公演は12月9日(金)から11日(日)まで、東京・天王洲 銀河劇場にて。チケット発売中。取材・文:加藤智子
2016年11月04日梅棒 6th OPUS『GLOVER -グラバー-』が、10月15日に東京グローブ座で開幕した。今作では、大貫勇輔、梅田彩佳、松浦司(Shya7)らをゲストに迎え、シェイクスピア「ロミオとジュリエット」をベースに “ダンス×J-POP×演劇”という独自のスタイルで上演する。梅棒 6th OPUS『GLOVER』チケット情報劇場に入り、まず圧倒されたのは美術。むき出しの鉄骨とそこに植物のように這う管、そして植物が天井を覆い、これから始まる『GLOVER -グラバー-』のスケールの大きさを予感させる。この美術、劇中では照明によってもさまざまに印象が変わっていた。梅棒の舞台は基本的に台詞がない。出演者のダンス、芝居、曲(J-POP)の歌詞で物語を表現するのが独特のスタイルだ。台詞がなくても、物語の軸となる大貫演じるロメオと梅田演じるジュリエッタの恋模様はもちろん、その周囲の登場人物たちの心の機微までしっかり伝わってくる。今作ではやや複雑な設定もあったが、そこのわかりにくさもなかった。それは衣裳などの視覚的な要素もあるし、キャスト達のダンスや演技、そして演出によるものだろう。「台詞がない」ということが逆に、舞台を豊かにしているように感じた。加えて面白かったのは、今まで何度も聴いてきたであろうJ-POPが梅棒の舞台で聴くと「こんなにいい曲だったのか」と感じることだ。それはストーリーに乗って心情にピタリとリンクしていることや、魅力的なダンスと合わさっていることもあるだろうが、この独特な表現方法の舞台を受け止めているうちに観客の感受性も全開になっているからではないかと思う。バラバラなミュージシャンの曲を使いながら観客の集中力を途切れさせないのも、細部まで世界観を作り込んでいるから。もちろんダンスは一番の見どころだ。物語に沿って、アニメーションダンスやブレイクダンスなどさまざまなジャンルのダンス、さらにダンサーならではの美しい殺陣などが次々と観られる贅沢さは、梅棒ならでは。中でもやはり世界を舞台に活躍する大貫の技術には圧倒された。その高い身体能力を敢えて無駄遣いする、梅棒の舞台だからこそ見られるシーンなども楽しく、のびのびとした大貫の姿が印象的だった。そして梅田はこの舞台の華。少しずつ恋を学んでいくジュリエッタの愛らしさや透明感は、梅田でなければ成り立たないと感じるほど。梅田がダンスすると自然と目が引き付けられる、そんな魅力がある。その個性的なゲストたちをひとつの作品の上でつないでいく梅棒メンバーの存在も強く感じられる舞台だった。公演は、10月23日(日)まで東京グローブ座、10月25日(火)から27日(木)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて。取材・文:中川實穗
2016年10月19日10月15日(土)に、東京グローブ座で開幕する、梅棒 6th OPUS『GLOVER』。大貫勇輔、梅田彩佳、松浦司(Shya7)らをゲストに迎え、シェイクスピアの名作「ロミオとジュリエット」をベースに “ダンス×J-POP×演劇”の梅棒スタイルで上演する。梅棒 6th OPUS『GLOVER』チケット情報今回、その稽古場にお邪魔した。稽古場には、数日前に組みあがったばかりという大きなセットが。東京グローブ座、森ノ宮ピロティホール(大阪)と、梅棒史上で最も大きな劇場となる今回は、セットもこれまでにないサイズ。キャスト達は、それを決まった時間内で転換できるように、スムーズさや見た目にもこだわりながら少しずつ調整していた。その確認作業中、他のメンバーは稽古場のあちこちでジャンルもさまざまなダンスを踊っている。その楽しそうな姿はまさに「梅棒の現場」と感じさせられる光景。この人たちがひとつの作品で一緒に踊ると考えるだけでも楽しみだ。梅棒の総合演出・伊藤今人の号令で、ダンスシーンの稽古がスタート。この日見られたのは3シーンほどだが、これまでより広くなった舞台にも関わらず、ところ狭しといった印象だった。シーン全体から受ける楽しさも、一つひとつの動きの面白さも、両方がパワーアップしており本番への期待が高まる。夜に初の通し稽古を控えていたこの日は、それぞれのシーンを通す中で伊藤からのブラッシュアップや細かな調整が入り、誰もが真剣な表情に。しかしそんな中でも、梅棒メンバーの遠藤誠がクドい芝居をいつまでも続けて伊藤に突っ込まれるなど、梅棒らしい空気が稽古場を盛り上げていた。また、稽古場で圧倒的な存在感を放っていたのが、この物語のヒーロー&ヒロインを担う大貫と梅田。群舞のシーンではふたりが一緒に踊っている姿に目が引き付けられ、「もっとふたりの踊っているところが見たい」と感じさせられた。梅棒は台詞がほとんどなく、J-POPの歌詞で物語を伝える独特のスタイルだが、梅田はダンスで表情豊かに感情を伝えていた。さらに大貫は、あまりイメージにない、世の女性をときめかせるような動きも!普段舞台を観ない人でも楽しませるのが梅棒の舞台。今作はさらに、心動かされるものになりそうだと感じた。ダンスに詳しくなくても、さらにはシェイクスピアに興味がなくても、ぜひ一度体験してほしい。梅棒 6th OPUS『GLOVER』は、10 月15 日(土)から23 日(日)まで東京グローブ座、10月25日(火)から27日(木)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて。また、10月16日(日)18:00公演終了後大貫勇輔、梅田彩佳、伊藤今人(梅棒)によるアフタートークも開催決定!詳細は公式HPにて。取材・文:中川實穗
2016年10月13日日本のポップミュージック・シーンにおける女性シンガー&ソングライターの草分け的な存在のひとり、大貫妙子がソロデビュー40周年記念プロジェクトをスタートさせている。その独自の美意識に根差した繊細な音楽世界と飾らない透明な歌声で多くの人を魅了する一方で、CMや映画音楽関連も多く、あの映画『Shall we ダンス?』メインテーマや、竹中直人監督の『東京日和』の音楽プロデュースなど数多くのオリジナルサウンドトラックも手がけ、その活動は日本の音楽シーンで多岐に渡っている。今回、ソロデビュー40周年プロジェクトの第1弾としてアニバーサリーボックスを発売、第2弾として初のシンフォニックコンサートを12月に開催するなど、精力的に活動を展開する大貫妙子に単独インタビュー。これまでのソロデビュー40年について、そして今後の展望について、本人に聞いた。――「パラレルワールド」の制作にあたっては、どういう想いで取り組まれたのでしょうか?「ピュア・アコースティック」というアルバムを80年代に出しまして、当時アナログでレコーディングをしましたが、CDでしか発売されていませんでした。LPがまた復活している今の時期にLPで復刻盤を出しませんか、というお話をいただきまして。そのお話を進めているうちにアイディアが膨らみ、こういうボックスになりました。40周年ということもあって、過去に4回やらせていただいた、メトロポリタン美術館を含む「みんなのうた」シリーズ。それに連なる絵本「金のまきば」、また「ピュア・アコースティック」を制作した当時、NHKで1時間の音楽番組をやらせていただいた、その80年代の映像も入れましょうと。現在の心境を語ったインタビューや、私が選ぶ私のBESTなど、いろいろなものが膨らんで、こういうアニバーサリーBOXになりました。――ソロ活動の集大成という意味合いもありますね?集大成と言うには、もっと入れないと全然足りないですが(笑)、わたしの場合は、ポップスというカテゴリーがあって、その中でアコースティックな音楽、物を書くこと、旅の話、そういったいろいろな要素がそれぞれひとつの世界として存在しつつ、トータルで自分の世界になっています。今回のボックスは、その中でも大人も読むようなファンタジー・ノベルみたいな意味合いも含めて収めてみました。現実の世の中で、そんな意味合いを持つものがあってもよいかな、と思いましたし、このような企画だからできたこと、だと思います。――それで「パラレルワールド」というタイトルになっているのでしょうか?BOXに入っている「金のまきば」という絵本は復刻ですが、「みんなのうた」の映像を制作している時に、絵本として膨らませることができるのではないかと思い作ったものです。その時期たまたま「ナルニア国物語」を読んでいて。衣装ダンスの中に入っていくと、そこに別世界が!という物語。パラレルワールドは、わたしたちが生きている世界と平行してまったく同じ世界が存在しているということですが。まったく同じに見えて、もうひとつの世界では、なくしたものが存在している。実際にその扉を見つけることができるかどうかわかりませんが、わたしたちは進むべき方向を失っても、チャンスはあるということです。音楽を聴く時に、過去の自分に戻る時がありますが、音楽はファンタジーであると同時にパラレルワールドへ誘ってくれるツールでもあると思う。という希望を込めて「パラレルワールド」というタイトルにしたんです。――ソロデビュー40年周年ですが、ふりかえってみて長かったですか、短かったですか?あっという間ですよね。あっという間の40年間で、あっという間にお墓に入ってしまうかも(笑)。単純に後40年はできないので、100歳を越えてしまいますから。人生ってけっこう短いなって思いました。バンドを始めた20代の頃は、海のものとも山のものともよべないようなものでしたが(笑)。その後ソロになって、たくさんアルバムを出させていただきました。たいしたヒットもない私が続けられたのは、ひとえに支えてくださったファンのみなさまのおかげだと、心から感謝しています。――音楽シーンも劇的に変化を遂げて来ましたが、一番印象的な出来事は何でしたか?LPからCDの時代になり、現在は配信の時代になって、またLPに戻ってみたりしていますが。テクノロジーの変化とともに、音楽も変わってきたと思います。それはとても音楽に影響を与えるものですが、時代とともに受け入れなくてはいけなかったので、当然取り入れてはきました。今の時代は良いか悪いかは別として、譜面が読めなくても楽器が弾けなくても、コンピューターで音楽が作れるようになった。そのおかげで、家で録音が可能になったりと便利にはなりましたが、多くの歴史あるレコーディングスタジオがなくなりました。それは、ほんとにかなしいことだと思います。音楽には、国境がありませんし、言葉が通じなくても音楽は一緒に作り上げることができます。部屋にこもるのではなく、いろいろな世界のミュージシャンともっともっとジャンルを超えて、楽しく世界を広げてほしいですね。――初のシンフォニックコンサートが今年12月22日(木)に開催されるそうですが、どういうコンセプトでしょうか?千住明さんとは30年来のお友だちで、今までも何度かステージでご一緒していますが、今回は初めてふたりでやるんです。もちろんオーケストラと、バンドにも参加していただきますので、とても楽しみにしています。千住さんはポップスからクラシックまで幅広く活動されていて、オーケストラの指揮もなさいますから、今回はそれもお願いしています。今までは呼んでいただいて2~3曲だけの共演だったのが、今回はじっくりご一緒できるので、ふたりでどういう世界を作ることができるかを考えています。コンサートの前に千住さんとCDも作るので、その収録曲もお披露目したいですし、是非、楽しみにしていただければと思います。――この先の40年は?ですから、生きていないですよ(笑)。40周年も区切りではなくて、わたしには通過点だと思っています。これから先は、いつまで続けるかわかりませんけれど、いままでどおり。できるところまで(笑)。(text/photo:Takashi Tokita)
2016年10月01日2017年1月8日(日)にグループ初となる武道館ライブも決定し、今最も勢いのある女子高生6人組のスーパーヴォーカルグループ、Little Glee Monster。彼女たちの力強い歌声と高度なアカペラをも歌いこなす透き通ったハーモニーは世代を問わず多くのファンを魅了する。そんな彼女たちが「梅棒 6th OPUS『GLOVER -グラバー-』」の上演を控えるジャズタンスチーム「梅棒」のメンバーにエールを贈った。梅棒 6th OPUS『GLOVER -グラバー-』チケット情報梅棒とリトグリは、梅棒がダンスの振付を担当しメンバー6名が出演もした「KREVAの新しい音楽劇『最高はひとつじゃない2016 SAKURA』」大阪公演で今年4月に初共演。その時、初の音楽劇出演に緊張していたリトグリメンバーに優しく、楽しく声をかけた梅棒への感謝の気持ちから、今回の応援メッセージへと繋がった。彼女たちがエールを贈った梅棒、彼らの公演はダンス×演劇×J-POPで織り成す“新しい劇場型のダンスエンタテインメント”。馴染みのあるヒット曲を20曲以上用いて演劇的ストーリーをダンスで表現し、大きな笑いと感動を生み出す。そんな梅棒の第6回単独公演『GLOVER -グラバー-』は、日本が世界に誇る若手トップダンサーの大貫勇輔や48グループを卒業したばかりの梅田彩佳をはじめ、実力派、個性派のゲスト陣を迎えシェイクスピアを題材にした作品に挑む。公演は10 月15 日(土)から23 日(日)まで東京グローブ座、10月25日(火)から27日(木)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて開催。また、Little Glee Monsterは11月9日(水)に1万枚限定でのニューシングルとデビュー前に僅か約1000枚限定でリリースされたインディーズ盤プレデビューミニアルバム「Little Glee Monster」の復刻版を発売。今後の彼女たちの活躍にも注目したい。
2016年09月29日梅棒 6th OPUS『GLOVER -グラバー-』が10月に上演される。今作のモチーフは、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」。不朽の名作を“ダンス×J-POP×演劇”の梅棒スタイルで上演する。本作にゲストとして出演するのが、舞台で幅広く活躍する大貫勇輔と、この4月に48グループを卒業したばかりの梅田彩佳。今回、梅棒の総合演出・伊藤今人、大貫、梅田に聞いた。梅棒 チケット情報「これ以上はない100点のキャスティングができました。これでつまんなかったら俺の責任です」と話す伊藤。大貫の印象は既出の対談で語ってもらったが、梅田に関しては「梅ちゃんがセンターをやっていた『抱きしめちゃいけない』(アンダーガールズ/’11)のMVが焼き付いてて。透明感があってダンスが上手いので、いつかヒロインを外部から呼ぶってことになったときは梅ちゃんがいいねって話をずっと梅棒ではしていて」と熱烈オファーだったことを語る。「ヒップホップとハウスダンスを2年間やっていましたが、それ以降はAKB48だけなのでダンスがちゃんと踊れるか心配」と話した梅田だが、伊藤は「ダンスの上手い下手じゃないんですよ、梅棒。もちろん、技術があるに越したことはないですが、そこを超越した表現力だったりとか、気持ちの表れを僕らは大事にしていて。ダンスがうまいだけの人には出せないようなところを出していきたいっていうのが梅棒のひとつの挑戦ではあるので。ていうかそもそも(梅田は)うまいんで丈夫です!」。伊藤が「スーパースキルダンサー」と評す実力派・大貫も「僕はもう120%生かしてくれるのを期待してついていきます!」と梅棒色に染まる準備は万全だ。ふたりがどんな役柄になるか聞いてみると「大貫くんは、今回はちょっと荒々しくなってもらおうかなって。泥だらけになって上裸でウオー!みたいな感じ。梅ちゃんはロボットで、イチから感情を学んでいくんです。その後ふたりがどうなっていくのかは、劇場でのお楽しみです!」(伊藤)大貫「創っていく作業の時間がすごく楽しみですね。それを考えると一番ワクワクするかも。僕も全力を尽くすので、たくさんの人に観てもらえればなと思っています」梅田「ガツガツ踊るのがすごく楽しみになりました。アイドルっぽいダンスはいっぱいやってきたんですけど、ガツガツってあんまりないですし。それをファンの方に観てもらうことも楽しみですね」公演は、10 月15 日(土)から23 日(日)まで東京グローブ座、10月25日(火)から27日(木)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて。取材・文:中川實穗
2016年09月16日ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』の製作発表記者会見が5日、都内で行われ、ロミオ役の古川雄大&大野拓朗、ジュリエット役の生田絵梨花(乃木坂46)&木下晴香、ベンヴォーリオ役の馬場徹&矢崎広、マーキューシオ役の平間壮一&小野賢章、ティボルト役の渡辺大輔&広瀬友祐、死のダンサー役の大貫勇輔&宮尾俊太郎、演出家の小池修一郎が登壇した。同作はシェイクスピアによる名作を2001年にパリでミュージカル化。全世界でのCD・DVD売上が700万枚にわたるヒットを記録し、日本では2010年に宝塚歌劇団星組が初演を行った。その後、2011年に日本オリジナルバージョンを上演、2013年に再演を行い、今回が4年ぶりの公演となる。会見では「世界の王」「本当の俺じゃない」「バルコニー」「僕は怖い」「エメ」の5曲を披露。男性陣の華やかなダンス、ロミオとジュリエットのロマンチックなナンバーが続いた。また、トークでは潤色・演出を務める小池による「小池修一郎の部屋」状態に。演者たちへの叱咤激励が降り注いだ。小池は古川に「今日ちゃんと歌ってるな、と思いました。前、稽古の途中で喉痛めちゃったから心配して」と安心した様子を見せると、古川も「そうですね、喉鍛えました」と苦笑。また、前回の公演での役作りについて語る古川に、小池は「ずいぶんちゃんとしゃべれるようになったね」としみじみした様子で頷いていた。古川は、ジュリエットとの年齢差について聞かれ「29歳の俺がどう純粋さを出すのか。目の前に起こってくることに真正面から新鮮な反応をして、結果的にピュアに見えたら」と意気込みを語った。2012年に『エリザベート』にルドルフ役で出演したのち、映像でも活躍、NHK Eテレ『Let’s天才てれびくん』の出演も話題となった大野に対して、小池は「ユニークなキャラクターで、あっち(バラエティ)いったかと思い、一緒にやることはないかなと思ってた」と心境を語った。しかし大野がオーディションで歌う姿は、小池が「吹き替えじゃないの? 本当にこれ大野?」と驚くほどに上達していたという。ミュージカルに出ていない間も歌の勉強をしていた大野は、『ロミオ&ジュリエット』も「お金を払って3回観に行った」と語り、作品への思いの強さを表した。また小池は、日本オリジナルバージョン初演時に「近未来的、崩壊した世界での『ロミオ&ジュリエット』」という演出プランを用意していたことを明かした。東日本大震災の発生によりプランを変更したが、今回は当初の計画に立ち返る。小池は「時代とは移るもので、テロの時代になってしまいました。シェイクスピアのすごいところは、どの時代でも人々が感動したり共感したりすることを描いているということだと思います」と語り、「時事ネタを入れるということではなく、どこか現代と共通することを感じていただけるようにと思っています」とメッセージを送った。東京公演は赤坂ACTシアターで2017年1月15日~2月14日、大阪公演は梅田芸術劇場で2017年2月22日~3月5日。
2016年09月06日植田圭輔と平野良がW主演を務める舞台『インフェルノ』が9月に開幕する。同作は、講談社「ARIA」にて連載中の同名漫画(原作:高殿円、漫画:RURU)が原作。孤児だった男ノエル(平野)とマフィアの御曹司リッカ(植田)の、血より濃い“親子”の絆を描くサスペンスアクション。脚本は原作者である高殿円が手がける。その稽古場にお邪魔した。【そのほかの画像はこちら】皇歴235年、かつての東京は今では“ラージ・プリズン”と呼ばれ、巨大な暗黒街と化していた。その場所にシマを持つマフィアの三大勢力のひとつ、コーザ・ファミリー。その御曹司として育ったリッカの傍には、10年前に“血の誓い”を交わし“息子”となったノエルがいる。スラムでの生活から救い出されて以来、リッカの唯一の家族となったノエル。ある日、コーザの次期ドンであるリッカの兄・サーシャが、新しい幹部を決めるゲームをすると言い出す――。この日、稽古が行われていたのは、リッカ、ノエル、サーシャ(藤田玲※この日の稽古は欠席)、クラウド(山内圭輔)、スネーク(桑野晃輔)、オリーブ(藤原祐規)、ブラック・サンタ(中村龍介)が集結するシーン。まず一度通した後、演出の西森英行から、芝居の動きに加え、客席から見えやすい動線や立ち位置など、かなり細かい部分まで調整が入っていく。台詞の中で特にハッキリ伝えたいワードを説明するなど、みせたい部分、そのみせ方をクリアにする、わかりやすい指示。登場人物の奥に潜んだ感情を、キャラクターの背景なども話しながら丁寧につめていた。キャストも気になる点は積極的に西森と話し、その結果、台詞の順番が変更することなどもあった。その後、再び同じシーンを始めると、一気に空気に飲み込まれた。サーシャの右腕・クラウドがノエルの怪しい過去を暴露し、リッカがノエルの潔白を懸けてルーレットを回すという、ふたりの一挙手一投足に火花が散るシーン。挑発と計算を伴い次々と揺さぶりをかけるクラウド。しかし、リッカが揺らいでないのは観ていて伝わる。リッカを演じる植田が醸し出す気高さや強さがその空間全体を飲み込んでいた。その後、物語はサーシャの鶴の一声で、執行役員の椅子を懸けたロシアンルーレットへとうつっていく。引き金を引けば死ぬかもしれない状況下での振舞いが、各キャラクターを表しており、印象的。銃をこめかみにつけ、ふっと表情を変えたノエルにヒヤッとさせられるものがあった。舞台『インフェルノ』は、9月3日(土)から11日(日)まで東京・東京ドームシティ シアターGロッソにて上演。取材・文:中川實穗
2016年08月31日ミュージカル『しゃばけ』の制作発表会見が、8月27日に東京・サンシャイン劇場で開かれ、主演の植田圭輔、滝川英治、中村誠治郎、藤原祐規、逢沢優、大平峻也、福井将太、川下大洋が登壇した。『しゃばけ』は、畠中恵のファンタジー時代小説シリーズ。シリーズ累計580万部を超える人気作で、2001年には第一弾は日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞した。江戸の大店長崎屋のひとり息子・一太郎坊ちゃま(通称:若だんな/植田)が、町で起きた数々の難事件を解決する、という物語。頭の回転はすこぶるいいが体の弱い若だんなは、幼い頃から甘やかされ、今は長崎屋の手代・仁吉(中村)と佐助(滝川)に守られている。しかしこのふたり、日頃は人間の形をしているが白沢、犬神という妖(あやかし)。祖母が大妖の若だんなは妖が見えるため、他にもさまざまな妖に囲まれ、賑やかに暮らしている。和やかに始まった会見では、それぞれが自らの役の印象や演じるうえで考えていることを披露。主演の植田は、病弱な若だんなを演じることについて「僕はどちらかというと“健康系チビ”なのですが、昔からか弱い役をやらせていただくことが多かった。私ごとですけど今年(活動)10年目ということで、原点に戻ったような気持ちで作品づくり、役作りをやらせていただけたら」と想いを語った。さらに植田は、若だんなを甘やかす仁吉と佐助を演じるふたり(滝川・中村)について「僕はデビューのころからお世話になってて」と言いつつも、「年下ではあるんですけど、まあ、僕が面倒を見ることになるのかなと思ってますので。プライベートでは(役とは逆の)お世話係を頑張りたいと思います!」と宣言。それに対して滝川は「一太郎に仕えるということで、あまり役づくりはいらないんじゃないかなと正直思っておりまして。常に植田圭輔に愛を注いでおるものですから。今までもごちそうとかしてるんですけれども…」と反論(?)。植田の「全然おごられてない!」という抗議にも「今回は毎日毎朝ATMでお金をおろしてから、稽古場に行こうかなと思っています」。さらに中村も「圭輔がお世話しているように言っていましたけど、僕が遊んであげてるんですからね?10年前にこのサンシャイン劇場で初めて共演したときには今よりもっと可愛いかった圭輔が立派に成長した姿も、役とリンクするところがあると思いますので、支えていきたいなと思ってます。頑張れよ!」と話すなど、既に役柄同様の関係性を感じさせた。ミュージカル『しゃばけ』は2017年1月19(木)から29日(日)まで、東京・紀伊國屋サザンシアターにて。
2016年08月30日