お金持ちや身分の高い男性とのロマンティックな恋物語…と思われがちな、海外ロマンス小説。しかし翻訳家の山口真果さんによると、実は恋に加え、女性の背中を押す力も持つ物語なのだとか。イメージで表紙を開かないのはもったいない!めくるめくロマンス小説の世界を覗いてみましょう。アメリカではZ世代に人気が再燃。「ロマンス小説」って、いったい何?一般的にロマンス小説とは、欧米の翻訳恋愛小説の一ジャンルのこと。翻訳家の山口真果さんによると、「ロマンス小説は、【1】ヒロイン(主人公)とヒーロー(恋の相手)が、何かしらの障害を乗り越える恋愛物語で、【2】ヒロインは主体性があり、【3】紆余曲折がありながら最後は絶対にハッピーエンドになる、という構造の物語。ある意味、誰でも安心して読める恋愛小説だと思います」オースティンの『高慢と偏見』など、18~19世紀のイギリスから始まったロマンス小説の歴史。恋愛がテーマであることは変わらないものの、二人の前に立ちはだかる障害の種類や主人公と恋の相手の性別、そして結婚がゴールという結末など、定番のディテールは時代に合わせて変化。「かつては億万長者のマッチョな男性と経済的に恵まれないヒロインの間にある身分の差、のような設定が多かったのですが、最近は、例えば幼い頃に受けたDVによるトラウマを二人で乗り越えるなど、内面の葛藤を克服するプロセスが登場したりしています。またLGBTQを取り扱った作品も増え、白人女性だけでなく黒人やアジア系が主人公の作品が登場したりも。実はロマンス小説は昔から、恋愛だけでなく今を生きる女性の抱える葛藤や問題にもフォーカスしている側面があります。恋のハラハラドキドキを味わわせてくれながら、女性読者に対して“自由に生きていいんだよ”というメッセージも送ってくれている。書き手も読み手も圧倒的に女性が多い世界なので、シスターフッド的な繋がりを感じられることもあります」主人公と恋の相手を待つのは、幸せな結末であるというのも、ロマンス小説の良いところ。そこだけは絶対に変わらない。「幸せの絶頂で本を閉じることができる。それが確約されているので、どんな山あり谷ありでも安心して読むことができる。社会が不安定な今だからこそロマンス小説が支持されるのかもしれません」本は、何度も読み返せるところが最大の長所だと、山口さん。「自分に響いたセリフを読み返すことは、自分自身をエンパワーすることにも繋がります。力になる作品はロマンス小説の中にもたくさんありますので、ぜひお気に入りを見つけてみてください」王道あり、新感覚あり。山口さんおすすめ、珠玉の4 冊舞台は18世紀の英国、ヒロインの腹黒さが痛快!『没落令嬢のためのレディ入門』著・ソフィー・アーウィン訳・兒嶋みなこミラブックス1250円妹を守るため裕福な名士との結婚を狙う没落令嬢のキティは、母の旧友に手ほどきを受け可憐なレディに変身し、社交界の花に。しかし伯爵家の若き当主ラドクリフの反応は…。「お金も地位もないキティは、したたかに男を狙うのですが、ラドクリフは彼女に容赦ない。どうやったらこの二人がうまくいくのか、全然わからないのですが(笑)、驚きのストーリー展開です。ロマンス小説の定形が詰まっているので、初心者におすすめです」仕事に打ち込む看護師と、記憶喪失の男の恋物語。『凍った愛がとけるとき』著・アメリア・アドラー訳・鮎川由美扶桑社1540円仕事に邁進する女性看護師のカリは、悲しい過去を背負っていた。彼女が働く救急病棟に運ばれてきたのは記憶喪失のクレイグ。極寒の町をさまようクレイグとカリは同居生活を送ることに。その後クレイグの正体が判明、さらなる驚きの展開が。「元看護師の作家さんが書いているだけあって、仕事の描写がものすごくリアル。ロマンス小説にありがちな設定ですが、性描写を含まないクリーンな作風が新鮮で人気を集めています」NYの地下鉄で恋をした彼女は手の届かない相手?!『明日のあなたも愛してる』著・ケイシー・マクイストン訳・林 啓恵二見書房1540円NYの大学に編入し、大都会での新生活に四苦八苦する主人公のオーガスト。でもある日、地下鉄でゴージャスな美人を見かけて一目惚れ。次第に仲を深めていくのだが、彼女にはどこか不思議なところがあり…!?「主人公も恋をする相手も女の子。しかも好きになる相手はアジア系。これまでのロマンス小説にはなかった要素が詰まっている作品なのですが、全員が地に足のついたキャラクターなので、スッと物語に入れます」ロマンス小説の新しい扉を開けた、現代の名作。『イット・エンズ・ウィズ・アス ふたりで終わらせる』著・コリーン・フーヴァー訳・相山夏奏二見書房2530円開業したばかりのフラワーショップで働くリリーは、脳神経外科医のライルと恋に落ち、結婚。しかしライルの心にはトラウマがあった。「ヒロインが物語の冒頭に結婚をすることが、ロマンス小説的にはまず斬新。乗り越えるべき障壁が彼の抱えるトラウマというところも、現代の女性たちに響いたポイントだと思います。この作品の登場で、ロマンス小説が新しい時代に入ったと言っても過言ではない、まさに現代を代表する作品です」こちらは原書。「かわいい装丁が増加していて、Z世代には電子書籍よりもSNSにアップできる紙の書籍が人気です」山口真果さん翻訳家、海外文学ブログ「トーキョーブックガール」主宰。英語とスペイン語で、文学から実用書まで、幅広く翻訳を手掛ける。※『anan』2024年2月21日号より。写真・内山めぐみ(by anan編集部)
2024年02月17日今回は、人気のマンガをクイズ形式で紹介します!マンガのストーリーがどんな結末になるか考えてみてくださいね。イラスト:まのもなお小説家を目指している彼出典:愛カツ彼からのお願い出典:愛カツここでクイズ主人公が彼にクレジットカードを渡した理由は?ヒント!主人公は彼が働かなくても気にしていませんでした。[nextpage title="N;NQl0nq0^0D0_SN0o"]前向きな主人公出典:愛カツ正解は…正解は「彼の夢を応援したいから」でした。主人公は、彼が執筆に必要なものを購入できるようクレジットカードを渡していました。「彼が小説家になる夢を応援したい」と思っている主人公なのでした。※こちらは実際に募集したエピソードをもとに記事化しています。(愛カツ編集部)
2024年01月12日皆さんは、恋人の夢を聞いたことはありますか?今回は、無職の彼氏と付き合っていた女性のエピソードとその感想を紹介します。イラスト:まのもなお彼の夢は小説家小説家を目指している彼と交際中の主人公。作品作りのために必要な備品は、無職の彼の代わりに主人公が購入していました。ある日、友人と彼との結婚の話になると…。もうすぐ28歳だから…出典:愛カツ主人公は、両親に彼が無職だということを伝えていませんでした。彼が大きな賞を受賞したら結婚をしようと考える主人公。その反面、彼は「小説の参考になるんだ!」と主人公のクレジットカードでゲームを購入していました。小説を書かずに、ゲームに明け暮れる彼…。我慢の限界に達した主人公は「ヒモを飼うつもりはない」と彼を追い出しお別れします。その後、別の男性と出会い結婚し、幸せをつかんだ主人公なのでした。読者の感想結婚相手が無職だと、両親の反応が怖いと思ってしまいます。夢を追いかけているにしろ、バイトくらいしてほしいと思いました。(30代/女性)夢を追っているのであれば、努力する姿くらい見せてほしいですね。主人公に甘えて、ゲームばかりになってしまった彼にはがっかりしました。(20代/女性)※本文中の画像は投稿主様より掲載許諾をいただいています。※作者名含む記事内の情報は、記事作成時点でのものになります。※実際に募集した感想をもとに記事化しています。(愛カツ編集部)
2024年01月06日乃木坂46一期生・高山一実の小説家デビュー作『トラペジウム』が、2024年5月10日(金) にアニメーション映画化され劇場公開されることが決定した。原作は高山が2016年から雑誌『ダ・ヴィンチ』で連載を開始し、2018年に単行本化された青春小説。自分の力で仲間を集め、アイドルを目指す高校生・東ゆうの10年間を描く。原作者である高山がシナリオなど映画制作に深く関わり、彼女でなければ描けないテーマ「アイドルが放つ輝き」とは何なのか?「アイドル」とは何なのか?という“想い”を追い求めた本作。制作は『ぼっち・ざ・ろっく!』『SPY×FAMILY』のCloverWorksが担当する。本作の主人公・東ゆうを演じるのは、新人ながら『逃げ上手の若君』の主人公・北条時行役に抜擢された結川あさき。そして主題歌は、「どこかにある六畳半アパートの、各部屋の住人の歌」をコンセプトに、楽曲ごとに「歌い手」「作り手」を替えて発表する音楽プロジェクトMAISONdesが担当することが決定した。結川あさき併せて、ティザービジュアルと特報も公開。ビジュアルには、「わたし一人では、アイドルになれないんだって。」という絶望すら感じさせるキャッチコピーと泣き顔が印象的な主人公・東ゆうが描かれ、特報にはMAISONdesの楽曲と共にアイドルを夢見る少女の苦悩が映し出されている。■原作:高山一実 コメント自分の頭の中にあったものがこうして映画化にまで発展し、嬉しい気持ち・気恥ずかしい気持ち・不安な気持ちと色々な気持ちが溢れています。小説とアニメ制作、全く別の難しさはありましたが、スタッフの皆さんにお力添えいただきながら長い期間にわたり制作に携わらせていただきました。やっと皆さんに観ていただけるということがすごく楽しみです。2024年5月10日(金)、ぜひ劇場にいらしてください。映画『トラペジウム』特報映画『トラペジウム』原作:高山一実 コメント動画<作品情報>『トラペジウム』2024年5月10日(金) 公開公式HP:「トラペジウム」製作委員会
2023年12月12日ホン・サンス監督最新作『小説家の映画』より本編映像が解禁された。『逃げた女』キム・ミニと『あなたの顔の前に』イ・ヘヨンの韓国二大女優が共演し、女性たちの友愛と連帯の物語を描く本作。この度解禁された本編映像は、イ・ヘヨン演じる小説家ジュニとキム・ミニ演じるギルスが、心を通わせるきっかけとなるシーン。映像では、映画界で成功を収めたにもかかわらず、このところ出演作が途絶えていた女優ギルスに、クォン・ヘヒョ演じる映画監督ヒョジンが「もったいない。なぜ映画に出ないのか」としつこく問いつめたのを受け、「何がもったいないの?自分のしたいことを楽しんで生きている人を尊重すべきよ!」と怒りにも似た強い口調でヒョジンに反発するジュニの姿が映し出される。ジュニはスランプに陥り、長らく執筆から遠ざかっている小説家だ。女優ギルスが投げかけられる言葉は、パク・チャヌク監督の『お嬢さん』(16)で一躍注目を集めながらも、以後はホン・サンス監督作品のみに出演を続けるキム・ミニ自身の境遇も彷彿とさせる。そして、ジュニがギルスに代わって映画監督を堂々と一喝するこの出来事をきっかけに、2人はたちまち打ち解け、ジュニはギルスを主演に短編映画を撮りたい、と予想外の提案を持ち掛けることになる。また、本作の公開を記念して、6月30日(金)より「フィルムメーカーズ 24 ホン・サンス」(発行:オムロ)が好評発売中。ホン・サンス監督作品の大ファンとして知られ、6月20日に開催された本作のトークイベント付き試写会にも登壇した筒井真理子が責任編集を務め、筒井さんが加瀬亮、深田晃司、町山広美と対談、菊地成孔のエッセイから荒井晴彦へのインタビュー、佐々木敦による論考のほか30本の作品論と、「作家論」と「作品論」を網羅した、ホン・サンス監督初の特集本となる待望の一冊となっている。「フィルムメーカーズ 24 ホン・サンス」は『小説家の映画』の上映劇場をはじめ、書店やAmazonでも7月より発売される予定だ。『小説家の映画』はヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか全国にて順次公開中。(シネマカフェ編集部)
2023年07月01日6月30日(金)より公開するホン・サンス監督最新作『小説家の映画』の日本公開を記念して、ユーロライブ(東京渋谷区)にて、6月20日(火)特別試写会を実施。上映後に、俳優の筒井真理子をゲストに迎え、聞き手に元東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの矢田部吉彦によるトークイベントが行われ、作品の見どころについて語った。主演映画『波紋』(荻上直子監督)でも注目を集める筒井さんは韓国の名匠ホン・サンス監督作品の大ファンとして知られ、6月28日(水)に発売が決定した「フィルムメーカーズ24ホン・サンス」(発行:オムロ)でも責任編集を務めている。迷いを抱えながら、人生の新たな可能性に向かって共に歩み出す女性たちの友愛と連帯を描く本作。筒井さんはすでに「3回鑑賞した」と言い、ホン・サンス監督の公私のパートナーであり、主演の「キム・ミニの笑顔が堪らない!」とコメント。矢田部さんも「あの笑顔を引き出せるのはホン・サンス監督だからですよね」と10作目となるキム・ミニとホン・サンス監督のコラボレーションを絶賛。さらに物語終盤にキム・ミニがみせる、多様な解釈が可能な複雑な表情について、筒井さんは「役者のリアル!キム・ミニに対するホン・サンス監督の信頼感がある」と、俳優としての視点から共感のコメントを寄せた。また、ホン・サンス作品への魅力を聞かれると、監督お馴染みの酩酊シーンが特に好きだという筒井さん。俳優たちは実際に撮影中に飲酒しているらしいという裏話を明かし、会場が笑いに包まれるひと幕も。そして「ホン・サンス監督は俳優に何をやってもいいという空間を創り出す。だから俳優たちは自分をさらけ出すことができるのではないか」と語り、「ホン・サンス監督作品は中毒みたいに観に行きたくなる」「常連のキャストが演じているので、自分の中で作品をつなげて物語を作ってしまう楽しみがある」とホン・サンス監督作品の魅力を語った。矢田部さんも約27年間の作家人生で30本もの映画を作り出す、ハイペースの製作スタイルを「こんな映画監督はホン・サンスの他に世界でひとりもいない!」とコメントした。そんなホン・サンス監督への並々ならぬ思いを抱える筒井さんが責任編集を務めた「フィルムメーカーズ24ホン・サンス」はその「作家論」と「作品論」を網羅した、ホン・サンス監督初の特集本となる1冊となっている。『小説家の映画』は6月30日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか全国にて順次公開。(シネマカフェ編集部)
2023年06月21日『小説家の映画』の公開を間近に控えるホン・サンス監督の4作品のポスターを集めたポスター展の開催が決定した。『逃げた女』のキム・ミニと『あなたの顔の前に』のイ・ヘヨンが共演する『小説家の映画』の公開を間近に控える名匠ホン・サンス監督。6月20日(火)からは「ホン・サンス特集」(~7月6日)の開催が決定しているほか、現在開催中の「韓流映画祭 2023」でも7月21日(金)よりホン・サンスのデビュー作『豚が井戸に落ちた日』の上映が控えるなど、ますます注目が高まっている。この度、開催が決定したポスター展では、日米デザイナーによるホン・サンス監督4作品(『小説家の映画』(22)、『あなたの顔の前に』(21)、『イントロダクション』(21)、『逃げた女』(20))のポスターが展示される。『逃げた女』ポスター『逃げた女』以来、ホン・サンス監督の日本版ポスターを手掛けてきたのは、ウォン・カーウァイ監督『花様年華』(00)や『大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院』(05)、フレデリック・ワイズマン監督『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』(17)をはじめ、ヴィスコンティ、ソクーロフ、ダルデンヌ兄弟、アルモドバル、侯孝賢、大島渚、鈴木清順など、錚々たる巨匠監督たちの宣伝デザインを手掛けてきたグラフィックデザイナー、若林伸重(Akane design)。【アメリカ版ポスター】『あなたの顔の前に』そしてアメリカ版ポスターを手掛けるのは、独立系配給会社Cinema Guildのポスターデザイナーで、ホン・サンス監督作品やジャ・ジャンクー監督『海が青くなるまで泳ぐ』(20)、ワン・シャオシュアイ監督『Chinese Portrait』(18)など、アジアの映画監督たちとの一連のコラボレーションで知られるブライアン・ホン(Brian Hung)。ブライアン・ホンが手掛けた『逃げた女』のポスターは、定額配信サービス「MUBI」が選ぶ「2021年のベスト・ムービー・ポスター」に、『LAMB/ラム』や『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』、『スペンサー ダイアナの決意』といった話題作の海外版ポスターと並び選出され、注目を集めた。本ポスター展は、6月16日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺をはじめ、特集上映が決定したStrangerや代官山 蔦屋書店、全国の一部劇場にて順次掲出を予定している。それぞれ異なるアプローチでデザインされたポスターから、想像力を刺激する深甚なホン・サンスワールドを堪能してほしい。ホン・サンス監督の最新作『小説家の映画』は各界の著名人からも、「外に出よう。会っただれかと、できるだけ率直に言葉を交わして、流れに身をゆだねよう。今スランプのただなかにいる小説家の私は、この映画を見て、すなおにそう思いました」(角田光代・作家)、「自分の陣地から離れてみること、会話を重ねることの可能性を示す映画」(酒井順子・エッセイスト)、「当たり前のように享受する『映画』たちがいかに多くの作為で武装しているかを如実に突きつけてくる」(深田晃司監督)、「『創り続ける』ということの、嘘や怖さを、静かに詰められる感覚だ」(西川美和監督)とアーティストの創作を巡る物語に共感と絶賛の声が届いている。『小説家の映画』は6月30日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2023年06月09日韓国の名匠ホン・サンス監督の日本公開最新作『小説家の映画』。この度、監督の公私にわたるパートナーとして知られるキム・ミニの魅力にフォーカスした新場面写真と、キム・ミニからの新たなコメントが到着した。第76回(2023年)カンヌ国際映画祭監督週間のクロージング作品に最新作『IN OUR DAY』の出品が発表され、ますます注目が高まる名匠ホン・サンス監督。そんな監督の長編27作目となる本作は、女性アーティスト同士の幸福なめぐり合いを描いた友愛と連帯の物語。キム・ミニが一線から退いた女優を演じ、韓国の大ベテラン女優イ・ヘヨンとW主演を飾った。解禁となった場面写真では、キム・ミニが花束を手にカメラに向かって穏やかな表情を覗かせる姿やひとりで映画館の暗闇に身を潜める場面写真など計7点。ホン・サンス監督の作品は日常に生きる人々のありのままの姿を活写する点がしばしば指摘されるが、キム・ミニは俳優としてカメラの前に立つことについて心境を語った。「もちろん、カメラの前に立つと緊張するものです。それを克服するのが私の仕事です。すぐに克服できる場合もありますが、これはもう台無しだと感じることもあります」と言うキム・ミニ。「普段の私は緊張していますが、演技のためにカメラの前に立つと、もうそんな私ではなくなり、もちろん場合にもよりますが、演技をしている時には解放されていると感じています。なぜならその時、人々に向き合っているのは私自身ではないからです。普段は人前に出ると緊張する私ですが、カメラの前ではより自然に振舞えます」と、カメラの前だからこそ自然になれると明かした。“キム・ミニは映画館がよく似合う”映画館をキーワードにひも解く、キム・ミニとホン・サンス監督の軌跡韓国を代表する女優のひとりとして活躍するキム・ミニは、1982年韓国生まれ。モデルとして活躍したのち、ドラマ「学校2」(99)で俳優デビュー。2012年に出演した、宮部みゆきのミステリー小説「火車」を映画化した『火車 HELPLESS』(ピョン・ヨンジュ監督)での演技が称賛され、パク・チャヌク監督の目に留まったことが『お嬢さん』の出演につながったという。『お嬢さん』は、日本で今年2月に公開された『別れる決心』でも話題を呼んだパク・チャヌク監督による、イギリスの小説家サラ・ウォーターズの「荊の城」を原作にしたミステリー。第69回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品されるなど世界中から高い評価を得、韓国国内だけではなく日本でも大ヒットを記録。キム・ミニの名が国際的に知られるきっかけとなった記念碑的作品。そして近年は、ホン・サンス監督作品を中心に出演を重ねているキム・ミニが主演の作品には、彼女が映画館でスクリーンを見つめるシーンが度々登場する。『正しい日 間違えた日』初めて登場するのは、ホン・サンス監督とキム・ミニが初めてタッグを組んだ記念作『正しい日 間違えた日』(15)。運命的な出会いをした男女がタイミングの違いによって異なる結末を迎える物語を、2通りの展開で描く異色のラブストーリーで、第68回ロカルノ国際映画祭では金豹賞(グランプリ)&主演男優賞のダブル受賞の快挙を果たした。次に登場するのは、ドイツのハンブルクと韓国のカンヌンを舞台に、不倫スキャンダルで異国に逃れてきた女優ヨンヒ(キム・ミニ)の不安や葛藤を繊細な筆致で綴った『夜の浜辺でひとり』(17)。『夜の浜辺でひとり』ホン・サンス監督との2作目のタッグ作となる本作で、儚くも荒々しい美しさを体現したキム・ミニは、その確かな演技力を絶賛され、第63回ベルリン国際映画祭で韓国人俳優初となる銀熊賞(主演女優賞)に輝いた。『夜の浜辺でひとり』以降、ホン・サンス監督作品は男性キャラクターが物語の背景にとどまり、女性中心の物語へとシフトするような作品が増えていくが、そのなかでもとりわけ評価の高い『逃げた女』(20)でも、バッサリと髪を切った“逃げた女”であるキム・ミニは映画館へと赴く。彼女の趣ある表情や女友だちとの再会や会話を通じて、女たちの迷いと優しさ、隠された本心を詩情豊かに描き出し、第70回ベルリン国際映画祭ではホン・サンス監督初の銀熊賞(監督賞)を受賞。そして日本公開最新作『小説家の映画』でも、解禁された場面写真である映画館のシーンが用意されている。ちなみに本作に登場する映画館は、ソウルの人気スポット西大門区にある2021年にオープンしたばかりの注目の映画館、ライカシネマだ。キム・ミニは、そのほかにもイザベル・ユペールとの共演作『クレアのカメラ』(17)をはじめ、『それから』(17)、『草の葉』(18)、『川沿いのホテル』(18)、『イントロダクション』(21)、そして本作『小説家の映画』に続き、新作『IN WATER』(23)と、ホン・サンス監督作に出演を重ね、作品ごとに独特の魅力を発揮。さらに『あなたの顔の前に』(21)と本作『小説家の映画』ではプロダクション・マネージャーも務めている。そして今年、第76回カンヌ国際映画祭監督週間のクロージング作品に選出された最新作『IN OUR DAY』にも出演が発表されている。『小説家の映画』は6月30日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2023年04月24日ディストピア小説やアンソロジー作品、詩人の書く小説について、ライターの三浦天紗子さんと吉田大助さんに語っていただきました。本読みライターの対談で見えてくる、小説界の新潮流とは?ディストピアの世界から新しい価値観や勇気を得る。吉田大助(以下、吉田):世界的には9.11、日本では3.11以降とくに、終末的な世界や監視社会を描くディストピア小説が盛り上がってきました。そのなかで、今すぐ海外出版されてほしいと思わずにいられない衝撃作が夕木春央さんの『方舟』です。簡単に言うと「誰か一人を犠牲にすれば全員が助かるけどどうする?」という、いわゆるトロッコ問題の話ですが、『方舟』は「それは…アリなの!?」と頭を抱えたくなるくらい究極の結論を出したんです。三浦天紗子(以下、三浦):読みました。面白かったけどモヤモヤしたところも多かったかな(笑)。吉田:この作品は人間の醜さや暗黒的な心理描写が特徴の「イヤミス」的な話でもある。つまり、人として越えちゃいけない一線を踏み越えることをOKとすることで可能となった物語。現実では体験しえない感情に小説を通して触れるという意味では、小説らしい小説ともいえる。三浦:それはたしかにそうですね。登場人物と同じ状況に陥ったときに自分ならどうするかと考えたり、思いがけない価値観と出合うのも小説を読む醍醐味のひとつですからね。吉田:ディストピア小説って、いま三浦さんがおっしゃったように「自分ならどうする?」ということや倫理観を突き付けられる思考実験の要素が強いですよね。その意味で、安野貴博さんの『サーキット・スイッチャー』もおすすめです。誰かの犠牲が避けられない状況で、自動運転を担うAIは命の重さをどう判断するかという、これまたトロッコ問題がテーマですが、ハリウッドばりのアクション・スリラーで、何より素晴らしいのは最後に希望を見出していること。ディストピア的想像力をキックする、「ホープパンク」「ソーラーパンク」といった海外SFの潮流とのリンクを感じました。三浦:私はディストピアでは、川野芽生(めぐみ)さんの『無垢なる花たちのためのユートピア』を推したいです。気鋭の歌人である川野さんの初の小説集ということで話題になっていますが、歌人というフックなしに単純にすごい才能の作家が現れたなと。とくに印象的だった一編「卒業の終わり」は、ある秘密を抱えた女学園を舞台に、主人公がどう生きていくかや女性性を問う物語。ハッピーエンドではないけれど、過酷な現実のなかで思いを巡らせて立ち向かうこと自体が美しいのだと気づかせてくれました。若い世代も勇気をもらえる一作だと思います。テーマ切りのアンソロジーは読書の幅を広げるツール。三浦:複数の作家の短編を集めたアンソロジーはこの5年くらいブームです。読書の入り口としても、いろんな作家を知る入り口としても価値があると思います。吉田:アンソロジーでは、昨年末に日韓同時発売された『絶縁』があらゆる意味で感動的でした。村田沙耶香さんを含むアジア9都市9人の作家による“絶縁”をテーマにした作品を編んだもので、冒頭に置かれた村田さんの短編「無」から大傑作。これだけで十分元をとれる素晴らしさです。三浦:韓国実力派作家、チョン・セランさんの発案らしいですね。日韓中、タイやシンガポールなどの気鋭作家が集まり、すべて書き下ろし。「奇跡のアンソロジー」といわれているのも納得です。吉田:出版文化遺産になってもいいくらい前代未聞の本だと思います。制作に約3年かけたみたいですし、本当によくぞやってくれましたと編集者に大拍手です。それぞれの国の今の息吹が反映されていてどれも良作。『絶縁』がアジアの作家を知る入り口になってくれるはずです。三浦:アンソロジーってなかなか売り上げにつながりにくいなかで、想像以上に売れたのが百合小説の『彼女。』です。相沢沙呼さん、織守きょうやさん、斜線堂有紀さんら豪華なラインナップも魅力ですし、ガールズラブという側面だけでなく、女性同士の関係性からジェンダーの問題にまで肉薄し、読みごたえ十分。吉田:百合というポップな看板を入り口にして、女性性の議論にまでたどり着くのは、すごくいい届け方ですね。三浦:最近、詩や短歌の世界から小説への流入が目立っています。それも詩や短歌界のスターが満を持して小説デビューしたというより、小説の完成度でまず注目されて実は詩や短歌の有望株だったというケースが多い印象です。吉田:川野芽生さんも歌人でしたよね。僕はあまりこのジャンルは詳しくないんです。ほかにはどんな方がいますか?三浦:すごいと思ったのは、山﨑修平さん。彼は詩人と文芸評論家の二足のわらじを履きながら小説の世界に来た人。初小説の『テーゲベックのきれいな香り』は、詩人である主人公が「書くとは何か」という問いに向き合う連作集で、わかりやすいストーリーがあるわけじゃないけど、読み進めた先に私自身が見知ったような懐かしい風景や感情がふと現れたりする。そういう面白さが魅力です。吉田:ある意味、新しい小説と位置づけられそうな作品ですね。気になるな~。三浦:中原中也賞を獲った期待の詩人・水沢なおさんも最近、初小説『うみみたい』を出しました。彼女の書く詩は、生と性を連想させるSF散文詩というか、もともと小説っぽかった。そこに物語の仕組みを加えた感じですね。きっと編集者は彼女に小説を書かせるだろうと思っていたから、やっぱりそうだよねと。吉田:この間『この世の喜びよ』で芥川賞を受賞した井戸川射子さんも、出発点は詩でした。詩や短歌と小説の垣根が、薄くなりつつあるのかもしれません。三浦:それはあるかも。若い世代は文学を自由に捉えて表現していますね。トロッコ問題に通じる!?ディストピア小説。最悪の状況のなかで、死んでもいいのは“誰”?『方舟』夕木春央大学時代の6人の友人と従兄と共に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った3人家族と共に一夜を過ごすことになった。ところが、明け方に地震が起き、扉が塞がれ、さらに浸水してきていることがわかる。そんな状況下で殺人が起こり…。1760円(講談社)AIのトロッコ問題解決法とは!?『サーキット・スイッチャー』安野貴博完全自動運転車が普及した2029年の東京。自動運転のアルゴリズムを開発する企業の社長が車内で襲われ拘束された。襲撃犯は車に爆弾を仕掛けて首都高の封鎖を要求するが…。現役SEが専門知識を駆使して描く疾走感あふれるサスペンス。1870円(早川書房)美しく残酷な幻想世界を凝縮。『無垢なる花たちのためのユートピア』川野芽生第一歌集『Lilith』で現代歌人協会賞を受賞した著者の初の小説集。花の名前を持つ77人の少年たちと7人の指導者を乗せて伝説の楽園を目指す船で起きた悲劇を描く表題作ほか5編を収録。1870円(東京創元社)トロッコ問題とは、「ある人を助けるために誰かを犠牲にするのは許されるか」という倫理的葛藤を問うもの。世界中で議論が交わされている。「リスクとリスクを天秤にかける、選択と決断の問題でもある。極端に言えばすべての物語がトロッコ問題をテーマとして孕んでいるんです」(吉田さん)ホープパンクの台頭について吉田さんは、「とてつもない絶望のなかに一縷の希望を描くうまさは、伊坂幸太郎さんが天才的。伊坂さんの作品が今続々と新装版で刊行し直されているのは、“絶望だけでなく希望も読みたい”というトレンドに合致している気がします」。編集のセンスが光る!アンソロジー。発想の違いにも注目したいスカート発のとりどりの世界。『朝倉かすみリクエスト!スカートのアンソロジー』朝倉かすみ北大路公子佐藤亜紀佐原ひかり高山羽根子津原泰水中島京子藤野可織吉川トリコひとりの作家が好きな作家たちにお題に沿った短編をリクエストするシリーズ作。元事務員の友人が遺した9号から15号の制服スカート、痴漢の手をかみちぎるスカートの歯、制服の自由化でスカートをはく彼氏…。スカートにまつわる9編を。748円(光文社文庫)コアファンにもビギナーにも。百合の多様性を味わう短編集。『彼女。百合小説アンソロジー』相沢沙呼青崎有吾乾くるみ織守きょうや斜線堂有紀武田綾乃円居 挽新作の百合小説7編と7人のイラストレーターによる扉絵がコラボレーション。女性同士の切実な関係性とルッキズムを描いた斜線堂有紀「百合である値打ちもない」、ミステリー要素を含んだ乾くるみ「九百十七円は高すぎる」などを収録。1925円(実業之日本社)どんなお題で誰に書いてもらうか、テーマ選定と作家のラインナップがアンソロジーのキモと、三浦さんは話す。「ふつうの小説以上に企画力や編集者の腕がものをいう本だと思います。『彼女。』がヒットしたのは、キャッチーな装丁込みで“読みたい”と思わせるバランスが素晴らしかったから。それぞれの作品の扉イラストも小説の世界観を際立ててグッときます。また、作家の朝倉かすみさんが選んだ9人の好きな作家たちに“スカート”というお題で書いてもらった『スカートのアンソロジー』もおすすめ。これも裏テーマとしてフェミニズムがあり、スカートから広がる多彩な物語は示唆に富んでいます」詩人の書く小説に注目。“超小説”で未知の読書体験を。『テーゲベックのきれいな香り』山﨑修平物語は2028年の東京を舞台にスタート。詩人の「わたし」が住む街が災厄に見舞われ、暮らしが混乱をきたすなか、「書くとは何か」「詩とは何か」という問いを追いかける記憶の旅が始まる。装画を手がけたのは浅野忠信さん。1980円(河出書房新社)「生まれる」「産む」生殖行為を考える物語。『うみみたい』水沢なお卵生生物を孵化させるアルバイトをしながら、性行為に対して後ろ向きなうみ。そして、「生まれたくなかった」と思い続けているみみ。美大の同級生だったふたりは同居しながら制作を続けているが…。表題作ほか、3編収録。1760円(河出書房新社)「東直子さんや加藤千恵さん、雪舟えまさん、最近だと、小佐野彈さん、くどうれいんさんなど、歌人で小説を書く人はわりと多いのですが、ここのところ若手詩人の小説デビューが増えていて面白い」と三浦さん。山﨑修平さんと水沢なおさんはその注目株。歌人や詩人の書く小説は、言葉の美しさやリズム感、独特な物語構成や連想的な場面転換など、歌や詩のフィールドで培った巧みな表現力が魅力と三浦さんは言う。「ストーリーや文章の意味をなかなかつかめなくても、磨かれた言葉の美しさや遊びを味わい、書き手の思考の片鱗に触れるのも小説体験として意義が。構えずに手に取ってほしいです」三浦天紗子さんライター、ブックカウンセラー。女性誌や文芸誌、Webメディアで書評やインタビュー、メディカル記事を担当。著書に『そろそろ産まなきゃ』(CCCメディアハウス)など。吉田大助さんライター。雑誌を中心に、書評や作家インタビューなどを手がける。編者を務めたアンソロジー『僕たちの月曜日』(角川文庫)が発売中。ツイッターは@readabookreview※『anan』2023年4月19日号より。写真・中島慶子取材、文・熊坂麻美(by anan編集部)
2023年04月15日2023年4月6日、『ムツゴロウさん』の愛称で知られる動物研究科で小説家の畑正憲さんが亡くなったことが分かりました。87歳でした。産経新聞によると、畑さんが亡くなったのは同月5日。心筋梗塞により、病院で息を引き取ったといいます。動物に関して豊富な知識を持ち、バラエティ番組などでも活躍していた、畑さん。また、小説家としての顔も持ち、1977年には、さまざまな文化分野において活躍した人を表彰する『菊池寛賞』を授賞しています。今なお多くの人の印象に残る畑さんの訃報に、悲しみの声が数多く寄せられました。・もう87歳になられていたのですね…。年齢を考えれば当然だけれども、つらい。・アラフィフ世代の人は、一度は『ムツゴロウ王国』を訪れたいと思っていたはず。・小さい頃から大好きな人で本も買っていました。さびしすぎる。畑さんのご冥福をお祈りいたします。[文・構成/grape編集部]
2023年04月06日ホン・サンスの映画『小説家の映画』が、2023年6月30日(金)より公開される。ホン・サンスが女性たちの友愛と連帯を描く『小説家の映画』映画『小説家の映画』は、韓国・ソウルから少し離れた閑静な町、河南(ハナム)市を舞台に、女性アーティスト同士の幸福なめぐり合いを描いた、友愛と連帯の物語。主人公であるジュニとギルスの2人をはじめ、創作活動に行き詰まったり、何かに挫折した女性たちを映し出し、偶然の出会いから人生の新たな可能性に向かって共に歩み出していく姿をほのかな幸福感とともに描写した。映画作家のホン・サンスが監督・脚本などを務める。尚、『小説家の映画』は2022年ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員大賞)を受賞しており、ホン・サンスが監督を務めた作品としては、『夜の浜辺でひとり』の主演女優賞、『逃げた女』の監督賞、『イントロダクション』の脚本賞に続く、3年連続4度目の受賞となった。キム・ミニ×イ・ヘヨンがダブル主演『小説家の映画』でダブル主演を務めるのは、キム・ミニとイ・ヘヨン。一線から退いた女優ギルスと、執筆から遠ざかった小説家ジュニをそれぞれ演じる。加えて、ソ・ヨンファ、クォン・ヘヒョ、チョ・ユニ、キ・ジュボンといったキャストも名を連ねている。主人公ジュニ…イ・ヘヨンかつて名声を得ながらも内に葛藤を抱えた小説家。執筆から遠ざかっていたが、ギルスと偶然出会ったことでギルスに惹かれ、ギルスを主役に映画を撮りたいと持ち掛ける。ジュニを演じるイ・ヘヨンは、巨匠イ・マンヒの娘として生まれ、イム・グォンテクをはじめ多くの巨匠の映画に出演してきた他、『あなたの顔の前に』では2022年国際シネフィル協会賞主演女優賞を受賞した。主人公ギルス…キム・ミニ第一線から退いた女優。偶然出会ったジュニから、ギルスを主役にした映画を撮りたいと告げられる。ギルスは小説家が映画を作ることを「斬新でいい」と考え、ジュニと意気投合する。ギルスを演じるのは、パク・チャヌクの『お嬢さん』や、ホン・サンスの『逃げた女』などに出演した他、『あなたの顔の前に』ではプロダクション・マネージャーを務めたホン・サンスの公私にわたるパートナー、キム・ミニ。映画『小説家の映画』あらすじ長らく執筆から遠ざかっている著名作家のジュニが、音信不通になっていた後輩を訪ね、ソウルから離れた旅先で偶然出会ったのは、第一線を退いた人気女優のギルス。初対面ながらギルスに興味を持ったジュニは、彼女を主役に短編映画を撮りたい、と予想外の提案を持ち掛ける。かつて名声を得ながらも内に葛藤を抱えたふたりの思いがけないコラボレーションの行方は……。【詳細】映画『小説家の映画』監督・脚本:ホン・サンス出演:イ・へヨン、キム・ミニ、ソ・ヨンファ、パク・ミソ、クォン・ヘヒョ、チョ・ユニ、ハ・ソングク、キ・ジュボン、イ・ユンミ、キム・シハ製作・撮影・編集・音楽:ホン・サンス2022年/韓国/韓国語/92分/モノクロ・カラー/1.78:1/モノラル/原題:소설가의 영화/英題:The Novelist’s Film/字幕:根本理恵
2023年03月31日小説家の大江健三郎さんが、2023年3月3日に亡くなっていたことが分かりました。享年88歳でした。株式会社講談社が同月13日に発表した内容によると、死因は老衰だとのこと。作家でノーベル文学賞受賞者の大江健三郎さんが3月3日未明、老衰のため逝去されました。享年88。葬儀は家族葬にて執り行われました。ここに、謹んで哀悼の意を表し、お知らせ申し上げます。講談社ウェブサイトーより引用東京大学に在学していた1957年に、大江さんが発表したデビュー作『奇妙な仕事』は、同大学で行われた文芸・評論コンクールで注目を集めました。1958年、23歳の時には、『飼育』が芥川龍之介賞に。以後も多数の作品で功績を残し、1994年には川端康成以来、日本人では2人目となるノーベル文学賞を受賞しました。そのほかの代表作として、『芽むしり仔撃ち』『個人的な体験』『万延元年のフットボール』などがあります。日本の小説界をけん引し、数々の名作を残してきた大江さんの訃報に、ネット上では「とてもショック」「よく作品を読んでいただけに悲しい」といったコメントが上がりました。大江さんのご冥福をお祈りいたします。[文・構成/grape編集部]
2023年03月13日YOASOBI(ヨアソビ)が新曲「セブンティーン」を発表。直木賞作家・宮部みゆきの書き下ろし小説が原作。宮部みゆきの書き下ろし小説を音楽に“小説を音楽にするユニット”YOASOBIの「セブンティーン」は、直木賞作家とのコラボレーションプロジェクト第4弾となる楽曲。宮部みゆきが“はじめて〇〇したときに読む物語”をテーマに書き下ろした小説「『色違いのトランプ』――はじめて容疑者になったときに読む物語」を楽曲化した。物語のあらすじは、「並行世界で起きたテロへの関与を疑われて捕らわれた愛娘の夏穂を救うため、父親の宗一が単身、もう一つの〝鏡界〞へと向かう」というものだ。スリーブから新曲が聴ける!?ローソンとのコラボラテなお全国のローソン店舗では、2023年1月17日(火)より、YOASOBIとコラボレーションした新作ドリンク「YOASOBI ハニーカフェラテ」を発売。ラテのスリーブに記載されている二次元コードを読み込むことで、新曲「セブンティーン」をいち早く試聴することができる。「YOASOBI ハニーカフェラテ」は、ミルクのコクとエスプレッソの苦みに、ハチミツの甘い香りがマッチした、冬にぴったりの1杯。ラテには、YOASOBIのアートワークを数多く手掛ける藍にいなによるイラストを配したスリーブ&シロップが付属する。【詳細】YOASOBI 新曲「セブンティーン」※配信日・CD発売日等リリース情報未定。作詞・作曲・編曲:Ayase歌唱:ikura原作:「『色違いのトランプ』――はじめて容疑者になったときに読む物語」 (宮部みゆき 著 / [『はじめての』(水鈴社 刊)より])<あらすじ>並行世界で起きたテロへの関与を疑われ、捕らわれた愛娘の夏穂。宗一は夏穂を救いに、単身、もう一つの〝鏡界〞へと向かう。■ローソン×YOASOBI新作ドリンク「YOASOBI ハニーカフェラテ」発売日:2023年1月17日(火)取扱店舗:全国のローソン店舗価格:280円キャンペーン内容:スリーブに記載の二次元コードを読み込むことで、未発表の新曲「セブンティーン」を試聴可能。
2023年01月16日彼の気持ちや自分のこと、恋愛そのものがわからない…。そんな、anan読者から寄せられたリアルな恋の悩みに、凪良ゆうさん、早見和真さん、人生経験豊富な小説家のお二人に答えていただきました。生き方の指針にも!必読です。お悩み1:彼の本心を確認すべき…?幼いころから仲良しな男友だちと、最近毎日のように電話で話していて、「お互い35歳になっても相手がいなかったら結婚しよう!」みたいな話になりました(いまは二人ともフリーです)。でもこれって、ノリなのか本気なのか?この友だちは、どういう気持ちでこの話をしたのかよくわからないのですが、それから少し彼を意識するようになってしまいました。気持ちを確認したらいまのいい関係も終わってしまいそうで、聞かない方がいいのでしょうか?男の気持ちってよくわからないです。(29歳・保険)Nagira’s advice「あなたが結婚したいなら、いまから恋愛の道筋を整えて」相談者さんのことを、彼は友人としてとても信用してはいるし、憎からず思っているのは確かだと思います。ただ、おそらく彼にとってはそのときのノリでしかなく、真面目に悩むほどの言葉ではないというか。もし彼が本気なら35歳などという猶予を持たせないはずで、いまプロポーズするでしょうね。それが一般的な男性心理です。それを踏まえて、私が気になるのは、彼の気持ちより相談者さん自身の気持ちなんですね。「自分は彼と結婚したいのか」について、相談者さんが真剣に考えるのが先だと思うんです。もし本気で彼と結婚したいのだとしたら、35歳に向けて、いまから友達というポジションから異性として見てもらうようポジションチェンジをしていく努力が必要なのかな、と思います。Hayami’s advice「いちばん大切なのは、後悔しない決断をすること」僕の周りにもこの手の話は結構ありましたね。基本的に男側から持ちかけていると思うのだけれど、実際にそれが成就したカップルを僕は見たことがないです。正直、男が覚悟を持って言ったわけでもないであろう言葉を、ここまで真剣に捉えて悩む必要はないと思います。独身のまま35歳になって「あのとき責任取るって言ってくれたじゃない」と確認しても、たぶん男は忘れていますよ。これは恋愛の悩みすべてに通じる話だと思うのですが、いちばん大事なのは「あのときあなたがこう言った」と、誰かのせいにしないことじゃないかと。後悔しないためにね。振り回されずに、「自分の幸せを第一に、自分の人生を自分の足で生きるのが正しいよ」と、そう背中を押したいですね。お悩み2:好きだけど、家族とは…。彼のことは好きでも、家族ぐるみのつきあいは、めんどくさそうと感じてしまいます。でも、彼は家族思いで私にも家族ぐるみのつきあいをしてほしいと思っています。そんな彼に、本心は言えません。価値観が違うと言ってしまえばそうなんでしょうが、自分の中で、好きという気持ちとうまく折り合いをつけられません。(30歳・マスコミ)Nagira’s advice「女性だけが我慢する必要なし。価値観のすり合わせが大事です」家族をめぐる気持ちの温度差は、おつきあいしているだけならそう問題になりませんが、もし結婚を視野に入れているのであれば、十分に話し合わないと、のちのち絶対にケンカの種になります。個人的に気になったのは〈好きという気持ちと折り合いをつける〉という表現です。女性が譲歩するのが前提になっている気がして、「なぜいつも女性側が我慢するのだろう、彼にも譲歩してもらえばいいのに」と思ってしまったからです。いずれにしても、大人同士ですから、率直に話し合いをして、価値観をすり合わせていくしかないでしょう。もしかすると彼が相談者さんの気持ちを理解して、寄り添ってくれるかもしれませんよね。Hayami’s advice「もし価値観のズレがあるなら、曖昧なままではダメな重要課題」結婚における家族ぐるみのつきあいって、セックスレス問題と近いと思う。片方が望むのにもう片方が乗り気でないのが不幸なわけで、どっちも同じ気持ちならそもそも問題になりません。結婚とは相手の家族とするものとはよくいわれるし、ある意味本当です。だからこそ、「夫婦優先」という価値観を二人で共有しておく必要があるというか、結婚しようという相手との間では、絶対に譲ってはいけないラインを決めておくことが重要です。でも、軽い気持ちで相談しても、案外男は「気にしなくていいよ」と答えることが多いと思う。だけど、相手の家族を本気で大事にするのって思っているよりも大変なことだぞと、ちゃんと認識させておくことが大事です。お悩み3:失恋して心が空っぽです…。最近彼氏にフラれてから、心が空っぽになって人の幸せを心から祝福できません。大好きだったカップルYouTuberの動画も見るのが辛くなりました。どうしたらまた人のことを好きになったり、人の幸せを祝福できるようになれるでしょうか?(23歳・事務)Nagira’s advice「誰でも失恋直後は虚無を味わう。いちばん効くのは、“ときぐすり”」相談者さんの「フラれて虚無感に囚われていて、人の幸せを喜べない。また恋愛できる気がしない」という気持ちに、とても共感します。私も、離婚した後5年くらい立ち直れなかった時期がありました。それでもいまは好きな人もいるし、とても幸せです。相談者さんはそれだけ一生懸命その彼のことを愛してたのですよね。そういう恋愛をした人なら、またすばらしい恋ができると思います。昔から言われているけれど、失恋を癒すには“ときぐすり(時薬)”しかありません。いつかはその恋愛も相談者さんの血肉になり、いい思い出に変わるはず。いまは自分の傷を癒すため、自分が心地いいと思うことを最優先に、時間もエネルギーも使ってください。Hayami’s advice「いまは人を祝福できなくても自分を責めないで。自然な反応です」大学生のころ、本当に貧乏で住む家がなくて、失恋した友だちの家を転々と渡り歩いていたことがありました。「そんなに落ち込むほど好きになれてよかったね」と友だちを慰めていたけれど、実は、手の中にあったものが突然なくなって心がぼうっとしてるだけで、そう傷は深くないケースが多かったです。その経験を踏まえて言うと、ボロボロに思えても、早晩立ち直って、また誰かを好きになれます。これはもう絶対に。他の人の幸せを祝福できないと言うけれど、それならそれでいいですよ。いまはただ、自分の心が求めてるものに対して素直になればいい。小説家として言わせてもらうなら、そういうときこそ物語の力を信じて、本に救いを求めてほしいなと思います。お悩み4:夫のことは失いたくない…。でも、まだモテたい。10歳年上の男性と結婚して3年経ちます。夫のことは世界でいちばん愛しているし、彼もまた私に対して同じ気持ちという信頼関係は確かなのですが、正直まだモテたいという気持ちが拭えず、夫に内緒で男性と二人で会ったり、関係を持ったりしてしまうこともあります。最近では、10代のころに好きだったけれど音信不通になってしまった人が週1で夢に出てきたり、出会ったばかりの20歳の男性が気になって連絡を取ってしまったり…。いままで好きになるのは、かなり年上ばかりで、初めて年下に対して、可愛いとか好きという感情を覚えて、それも自分の中では新鮮で楽しいのかもと思っています。でも、夫のことは失いたくないので、このままでいいとは思えないのですが、自分の好奇心や欲求に逆らえません。どうしたらよいでしょうか。(27歳・広告)Nagira’s advice「夫を死ぬほど傷つけてまで、よそ見を続ける覚悟はあるか」結婚していても心が動くことも人間にはあると思うんです。だから、夫以外の人に惹かれて揺れたりすること自体は、まったく不思議なことでもダメなことでもないと思っています。しかも相談者さんは、「まだモテたい」とか「好奇心を抑えられない」とか、これまで登場した相談者さんよりずっと自分をわかっていて正直です。それはすごいと思いました。この悩みで真正面から考えなくてはいけないのは、自分の欲望と、大好きな旦那さんとの暮らしを天秤にかけて、どちらが重いのかを決めることなのです。旦那さんにバレたときには、世界でいちばん大事な旦那さんを死ぬほど傷つけることになりますし、離婚されるかもしれない。その覚悟はあるのでしょうか。それを踏まえてなお、うまくゆらゆらとバランスをとったままでいられるのであれば、旦那さんにバレないようにがんばってください。Hayami’s advice「許してもらえるかもという期待はしないでください」いつかすべてが露呈すると思っていてください。そのときに、話せばわかってもらえるとか、いまだけの火遊びだからといった言い訳は受け入れてもらえないと思っておきましょう。これがもし結婚前に「私はあなたのことは大好きだけれど、違う男の人と関係を持つことで自分を満たしてしまうときが来るかもしれない」と、夫さんにちゃんと話していたのならフェアかもしれないですが、まさかそんな話はしていませんよね?その上で、なお浮気を続けるなら、これはもう答えは明白。夫さんがすべてを知ったら、間違いなく愛想を尽かされると思うけれど、その覚悟を持った上でご自由に、です。ただ、自分の心が簡単に満たされる年下の彼と会っているときも、これは忘れてほしくないです。「いま世界でいちばん愛してる夫さんのことを世界でいちばん傷つけてるのは、ほかならぬ自分なんだ」ということを。お悩み5:恋愛って何のためにするの。恋愛はしていますが、結婚に対しては意欲的になれません。もともと結婚願望もそれほどないのですが、将来、結婚できる気もしません。周りは恋愛の先に結婚を意識している人が多いですが、自分はそうじゃないし、でも、じゃあ何のために恋愛しているの?って友人に聞かれて答えに困ってしまいました。恋愛って、何のためにするのでしょう?教えてください。(26歳・広告)Nagira’s advice「結婚や恋愛の前に、まず自立を目指しては」いくつか気になったことがあるんです。〈何のために恋愛しているの?〉とありますが、何のためにもなにも、好きになってしまったら終わり。何のためにもならなくてもしてしまうのが恋愛です。『anan』の読者アンケートで、若い世代、20代とかに「結婚を意識してつきあっている」人の割合がすごく多いことは知りましたが、恋愛の先に結婚があるかないかは、また別の話だと思うんです。同様に、結婚するために恋愛をするというのは本末転倒というか。それでいて、相談者さん自身は結婚願望もないんですよね。答えになっていないかもしれませんが、まず自分の足で立つ、つまり仕事をして自分で自分を食べさせていける人間になることが大事です。小説でも私はそういう女性を書きます。周囲から結婚の圧力を受けているのかもしれませんが、自立できれば、焦って結婚しなくちゃとか考えない気がするんですよね。Hayami’s advice「結婚より独身が幸せだった人生もあったかも」恋愛や結婚をしなければいけないと考えること自体、社会通念に翻弄されてるだけではないのかな、と僕は感じます。恋愛の先に結婚を意識するのも固定観念だし、そんな世間のものさしに縛られる必要なんてないですよね。僕はまったく相談者さんと同じで、ずっと結婚願望ゼロで、周りからもずっと独身だろうと思われていました。なのに、結果的には周りよりちょっと早いぐらいに結婚したんです。家庭を持っている自分の人生を想像したことがなかったからこそ、逆に「ひょっとしたら楽しいかもしれない」と思えて踏み出した。とはいえ、じゃあ、結婚したいまが最高に幸せかといえば、独り身でいた自分の方がひょっとしたら幸せだったかもな、とイフ(if)の人生を想像する気持ちは消えないです。だって正解はわからないから。心から結婚したいという願望や意思がある人のみ、結婚に対して意欲的になればいいのであって、結婚も面白そうと思うようになるまではそのままでいいですよ。なぎら・ゆう京都府在住。2006年にBL作品でデビュー。’19年刊行の『流浪の月』で’20年の本屋大賞を受賞。同作は映画化もされた。2年ぶりの長編となる『汝、星のごとく』は、孤独を抱えた人々が描かれ、感涙必至。はやみ・かずまさ1977年、神奈川県生まれ。2008年『ひゃくはち』でデビュー。’20年『ザ・ロイヤルファミリー』で山本周五郎賞、JRA賞馬事文化賞を受賞。最新刊『新! 店長がバカすぎて』は、前作に続き抱腹絶倒。※『anan』2022年11月2日号より。写真提供・講談社(凪良さん)新潮社(早見さん)イラスト・吉田トキオ取材、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2022年10月27日Dos Monos(ドスモノス)と小説家・筒井康隆がコラボレーションした新曲「DOG EATS GOD feat. 筒井康隆」が配信リリース。Dos Monos×筒井康隆の新曲「DOG EATS GOD」Dos Monosは、荘子it、TaiTan、没からなる日本のヒップホップユニット。2022年7月には、「時をかける少女」「パプリカ」「残像に口紅を」といった作品で知られる日本文学界の巨匠・筒井康隆と異例のコラボレーションを発表。20分を超える組曲編成のアルバム『だんでぃどん feat. 筒井康隆』をCD発売し、大きな話題を集めた。今回リリースされる新曲「DOG EATS GOD feat. 筒井康隆」は、最新アルバム『だんでぃどん feat. 筒井康隆』の核であり、唯一配信リリースされる楽曲。めくるめく一大音絵巻の如く展開される組曲形式のアルバムの中でも一際骨太なビートの上に、筒井康隆本人による朗読と演劇団体「マームとジプシー」の青柳いづみによる台詞、そしてDos Monosの3人によるラップが絡みつく、ミュータント・ブーンバップ・ソングとなっている。また今回、メンバーの没が描いた3人の似顔絵アーティストビジュアルも公開された。【詳細】Dos Monos 新曲「DOG EATS GOD feat. 筒井康隆」配信日:2022年9月2日(金)※最新アルバム『だんでぃどん feat. 筒井康隆』収録曲。
2022年09月09日小説家・浅田次郎の時代小説『大名倒産』が映画化されることが29日、明らかになった。2023年に全国公開される。同作はベストセラー作家・浅田次郎による傑作時代小説の映画化作。江戸時代、ある若者が、ひょんなことから一国の大名になるが、藩には莫大な借金があった。次々と無理難題に巻き込まれていく若殿を中心に巻き起こる、笑いと涙の傑作エンターテインメントとなる。原作は2019年に上下巻で単行本が発売されると、「面白い!」「こんな浅田作品が読みたかった!」と話題に。9月1日より文庫も発売される。メガホンをとるのは『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(18年)、『老後の資金がありません!』(21年)、『そして、バトンは渡された』(21年)など、立て続けにヒット作を世に放つ前田哲監督で、本作で時代劇に初挑戦する。脚本は、映画『七つの会議』(19年)、ドラマ『半沢直樹』(20年) 、『ノーサイド・ゲーム』(19年)、『ブラックペアン』(18年)の丑尾健太郎と、 『特捜9 season2~4』(19年〜21年)、『下町ロケット』(15年)などを手掛ける稲葉一広が共同で務める。
2022年08月29日「ステージド」「ドクター・フー」シリーズで知られるイギリスの人気俳優デヴィッド・テナント主演で、フランスの小説家ジュール・ヴェルヌが1872年に発表した空想冒険小説「八十日間世界一周」をドラマ化した「80日間世界一周」が、「スターチャンネルEX」にて9月16日(金)より独占配信されることになった。1956年に映画化されアカデミー賞で作品賞を含む5冠に輝いた「八十日間世界一周」。今回は製作費約66億円を投じ、各国でのロケ撮影、最新VFXを駆使して壮大な旅を描いた。音楽は『DUNE/デューン 砂の惑星』のハンス・ジマーが担当。個性豊かな3人組が世界を股にかけて繰り広げる大冒険は、BBCほか世界中で大ヒットとなった。今回解禁されたティザー映像では、ロンドンの資産家で世間知らずのフィリアス・フォッグ(デヴィッド・テナント)が、80日間で世界を一周するという賭けをし、従者パスパルトゥー(イブラヒム・コーマ)と、女性ジャーナリストのフィックス(レオニー・ベネシュ)という3人が体験する波乱万丈の旅の一端を見ることができる。アラビアの砂漠をラクダで進み、当時の最新技術であった熱気球や蒸気機関車が登場。そしてフォッグが見せるアクションも満載!ワクワクが止まらない冒険への期待が高まる映像となっている。ジュール・ヴェルヌ作の名作冒険小説を、150年の時を経て最新VFXと新たな脚色で映像化産業革命で様々な交通手段が飛躍的な発達を遂げ、“地球が小さくなった”といわれた19世紀。原作小説が世に出た1872年、たった80日間で世界を1周する大冒険の旅は、当時の感覚でも無謀な挑戦であると同時に、ひょっとしたら実現可能かもしれない、そんな半信半疑でワクワクする物語設定だったはず。そんな時代を超えた物語を、最新のVFX映像でスケール豊かに、臨場感たっぷりに蘇らせたのが本作の見どころ。また、キャラクター設定を一新し、幅広い視聴者の共感を誘う現代的な趣向が凝らされているところにも注目。デヴィッド・テナントが演じる新たな主人公像と、アップデートされたキャラクター設定主人公フィリアス・フォッグに扮するのは、人気俳優デヴィッド・テナント。本作ではフォッグのバックストーリーや内面的な部分を深掘りし、旅を通して変わっていくさまをユーモラスに好演する。また、実の息子タイ・テナントとの初共演も話題となった。フォッグに連れ添う従者ジャン・パスパルトゥーを『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』の新進フランス人俳優イブラヒム・コマ。原作では男性だったフィックス刑事は女性ジャーナリストへとアレンジされ、「THE SWARM」『白いリボン』のレオニー・ベネシュが男性社会で奮闘するアビゲイル・フィックスを熱演する。製作費66億円で再現された19世紀の世界と壮大なアドベンチャーコロナ禍のさなか、ロックダウンによる約8か月の中断を経て、南アフリカとルーマニアでのロケ撮影と最新VFXを駆使して製作された本作は、約4000万ポンド(約66億円)の製作費と、総勢約3,000人のスタッフの手によって完成された。同原作を映画化した『80デイズ』(2004)で美術監督を務めたプロダクション・デザイナーが、3人が旅する世界の国々を見事なセットで再現。ルーマニアに再現されたN.Y.のセットには建設に2か月を費やし、また、出演者たちが臨場感を感じられるよう、訪れる国々の香りまで用意したというこだわりぶり。また、ストーリーを盛り上げるのは映画音楽の巨匠ハンス・ジマーによるドラマティックな楽曲。原作小説を幼少期に読んで以来、大ファンだという彼は、本作の脚本を気に入り、プロデューサー陣と作品のテーマを話し合い、撮影が始まる前からテーマ曲の作曲を始めたという。「80日間世界一周」(全8話)は9月16日(金)よりスターチャンネルEXにて配信開始。10月6日(木)より毎週木曜23時~ほかBS10スターチャンネルにて放送。(text:cinemacafe.net)
2022年08月16日“悲しみをたべて育つバンド”あたらよが、小説紹介クリエイターのけんごとコラボレーションすることが発表された。あたらよは東京を中心に活動する4ピースバンドで、ひとみ(Vo / G)を中心に作詞作曲を行い、アートワークや映像もセルフプロデュース。グループ名の「あたらよ」は“明けるのが惜しいほど美しい夜”という意味の可惜夜(あたらよ)から由来している。けんごは自身の動画の総再生数1.1億回超えるインフルエンサーで、TikTokで薦めた作品が続々重版決定。4月28日には小説『ワカレ花』(双葉社)を発売し小説家デビューする。けんご今回のコラボは、けんごがあたらよの楽曲がお気に入りだったということ、そしてあたらよボーカルのひとみが小説が好きでけんごのTikTokをフォローしよく観ていたことがきっかけとなり生まれたもので、『ワカレ花』の作中にはあたらよの記述が登場するとのこと。また、けんごのTikTokアカウントでは、あたらよ初のオリジナル曲「10月無口な君を忘れる」を使用した動画がアップされる予定となっている。■あたらよ ひとみ コメント皆さんこんにちは。あたらよのVo&Gのひとみです。この度、けんごさんのデビュー作となる『ワカレ花』にあたらよを登場させて頂いたということで、本当に嬉しいです。私自身、普段から本を読むことが大好きなので、いつも目にしていた本の中の世界に自分のバンドが存在していることがとても不思議な気持ちになりました。読み終えた後に心の奥がじんわりと温くなるような、こんな素敵な作品に名前を使って頂けたことを嬉しく思います。本当にありがとうございます。■けんご コメント小説紹介クリエイター・小説家のけんごです。「小説の魅力を多くの人に届けたい」僕は、この一心で活動を続けてきました。今回、小説を執筆したのも、この想いがあってのことです。正直なところ、小説は他のエンタメに比べて、作品と出会う"きっかけ"が少ないように思えます。だからこそ、あたらよさんとのコラボは大変光栄です!素敵な音楽と掛け合わさることで、小説の可能性を大きく広げることができると思いました。『ワカレ花』をきっかけに、小説にしかない魅力と、人の心を動かすほどの力がある、あたらよさんの音楽が、たくさんの方に届くことを願っています。<リリース情報>あたらよ1stアルバム『極夜において月は語らず』発売中※初回盤は「あたらよ Acoustic Session」CDを加えた2ディスク仕様配信リンク:【収録曲】01. 交差点02. 夏霞03. 極夜04. 祥月05. 「知りたくなかった、失うのなら」06. 悲しいラブソング07. 嘘つき08. outcry09. 5210. 10月無口な君を忘れる11. 差異【初回限定盤付属Disc2】■「あたらよ Acoustic Session」01. 10月無口な君を忘れる(Piano ver.)02. 夏霞03. 晴るる04. 8.805. ピアス06. 祥月07. 嘘つき08. 優しいエイプリルフール(demo)<ライブ情報>『あたらよ 1st TOUR「極夜において月は語らず」』5月5日(木・祝) 東京・WWWX5月21日(土) 大阪・シャングリラ5月22日(日) 名古屋・SPADE BOX関連リンクオフィシャルサイト
2022年04月12日『TikTok』フォロワー28万人、総再生数1.1億回超!薦めた作品は続々重版!話題の小説紹介クリエイター・けんごが手がけた初の小説は、花をモチーフにした恋愛小説。知念実希人さんを始め、推薦コメントも多数いただいております。出会い、失恋、両思い、別れ――わたしのそばには、いつも花があった。四季折々の恋模様を鮮烈に描いたあまりに切ない物語〈内容紹介〉高校生の遥は通学の電車で、気の立った白猫に遭遇した。戸惑う彼女を助けたのは男子高校生。毎朝、同じ電車で見かける彼を振り向かせようと、遥が取った行動とは。(「始業式」)同じく高校生の冬紗は、入学前から長い入院生活を送っている。ある日、主治医に告げられた過酷な現実。泣いていた彼女に、かつての入院仲間だった春人は声をかける。(「散り桜」)ほか、「夕立ち」「花火」「落ち葉」「コスモス」「雪景色」「ユキヤナギ」の全8編を収録した、2つのストーリーで紡がれる恋愛小説。●早くも大絶賛!推薦コメント多数!知念実希人さん(小説家)「初めての小説と聞いて、なめていました!ごめんなさい。柔らかい筆致から生み出される瑞々しく透明感あふれる空気が、全身の細胞を満たしていく。どこまでもピュアな優しさで彩られる物語に、ぜひ心癒やされて下さい」汐見夏衛さん(小説家)「大切な人のために何かをしたいという思いが、彼らを成長させていく。恋には人を変える力があるのだと改めて感じました」カツセマサヒコさん(小説家)「好きだったから、悲しいし、怒るんだ。ページをめくるたび、やさしさと寂しさがが雪のように降りてきました」●作品特設ページ 〈書籍概要〉【タイトル】ワカレ花【著者名】けんご【発売日】2022年4月28日(木)【予価】1320円(税込)【判型】四六判並製〈著者プロフィール〉けんご小説紹介クリエイター。ショートムービープラットフォーム「TikTok」などのSNSで、わずか30秒ほどで小説の読みどころを紹介する動画を次々に投稿。作品の的確な説明と魅力的なアピールに、SNS世代の10〜20代から絶大な支持を得ている。2021年7月、30年以上前に発表された筒井康隆著『残像に口紅を』(中公文庫)を取り上げたところ、話題となり、年末までに11万部を超える大重版。他にも、小坂流加著『余命10年』(文芸社文庫)、楪一志著『レゾンデートルの祈り』(KADOKAWA)も、紹介をきっかけにヒットにつながり、出版関係者や書店員からは「日本でいちばん本を売るTikTokクリエイター」とも呼ばれている。 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年03月15日Twitterのフォロワー数は14.6万人。人気webライターとしての地位を築いた後、2020年に長編小説『明け方の若者たち』で小説家デビューを果たしたカツセマサヒコさん。同作は実写映画化もされ、大きな話題を集めました。小説家デビュー3年目となる今年は、カツセさん曰く「勝負の年」。さまざまなチャレンジを予定されていますが、そのひとつが雑誌『anan』での連載です。一体どんな連載になるのか、『anan』にまつわる思い出とともにお話をうかがいます。『anan』との出合いは、高校生時代!――いよいよ『anan』で連載がスタートします。1年以上前から「なにか書きませんか」とオファーをいただいていて、何度も打ち合わせをしてきたんです。そのなかで、「雑誌連載をした後に、それをまとめて一冊の書籍にしたい」という話が出てきて。これまでは書き下ろしの作品ばかりでしたし、ここでチャレンジしたいと思いました。そうしたら、担当者から「『anan』での連載に決まりました!」と報告を受けて、これはすごいことになってしまったぞ、と。高校生の頃の自分が知ったら、驚くと思います。――高校生時代、『anan』を読んでいたんですか?ぼくが高校1年生の頃、Mr.Childrenの桜井和寿さんが『anan』の表紙を飾ったことがあったんです。『IT’S A WONDERFUL WORLD』というアルバムのプロモーションで、誌面にはインタビューも載っていて。それがとにかく読みたくて、恥ずかしかったんですが、『anan』を手に取ってレジに向かいました。それがぼくと『anan』の出合いですね。でも振り返ってみれば、日常生活の至るところで『anan』を見かけることは多かった気がします。セックス特集号が出るたびにみんなが話題にしていたし、サラリーマン時代の同僚がそれを読みながら盛り上がっていたこともありましたね。――第一話で描かれる物語はまさに「この人生、マシかも」と思えるような読後感でした。なによりも些細な日常の描写がとてもリアルで、カツセさんならではの作風だなと感じます。そもそも、ぼくの人生って派手なことが起きないんですよ。たとえば「家に鷹が飛び込んできて、ルンバと戦っていた」みたいな事件があれば面白いんですけど、身の回りで起きるのは、せいぜい「2日連続でスマホの充電を忘れた」レベルのことばかり。だからそういった些細な出来事を記憶するしかなくて、創作でもそういった日常の出来事を描いてしまうんだと思います。その分、「自分に近しい物語」と思ってもらえるのではないかな、と。でも、日常を描くとすぐに「エモい」と評価されてしまうので、そんな便利な言葉ではすまないようなものを書きたいという気持ちもあります。胸にあるのは「小説家」として生きる覚悟――小説家デビューして、今年で3年目です。長編小説や連作短編を出し、今回は雑誌連載にチャレンジしますが、「小説家」という肩書はなじんできましたか?なじむというか、覚悟した、に近いかもしれません。一度、「小説家」という肩書だけでどこまでやれるか試してみたいんです。そういう意味でも、今年はチャレンジの年だと思っています。もともとweb出身でしたが、いまは雑誌や文芸誌の仕事をメインにしたくて。それでは食えないかもしれない。でも、創作の仕事でどこまで行けるのか、怖いけど、本気で向き合ってみたいと思っています。――カツセさんにとって挑戦でもあるこの連載が、読者にとってどんな存在であってほしいと思いますか?高校時代、とにかくモテたくてファッション誌を読んでいたんです。だけど、特集が組まれているカラーページよりも、後ろの方にある白黒のコラムコーナーが好きでした。ぼくの連載も、そうあってほしい。『anan』を買ったら、まずは特集をしっかり読んでもらって、最後に「そういえば、カツセの連載があったな」と思い出してもらって、読む。そんな感じが理想ですね。『anan』のメインディッシュはあくまでも巻頭特集であって、ぼくの連載はそれを支えるようなもの。読み心地がよくて胃もたれせず、メインを楽しむために存在するような立ち位置を目指したいと思います。ーー自分の心の声に耳を傾けるよう、一つひとつの質問に真摯に答えてくれたカツセさん。かと思えば、ときに冗談を口にし、その場を和ませることも忘れない。そんな真剣さとやさしさを持ち合わせているからこそ、カツセさんが紡ぐ物語は、読み手の心にじんわり沁み入るのかもしれません。いよいよスタートする新連載『傷と雨傘』もきっと、疲れた心をそっと解してくれるような作品になるはずです。カツセマサヒコ1986年生まれ。Webライターを経て、2020年に小説家デビュー。『明け方の若者たち』(幻冬舎)がベストセラーとなり映画化。ファッション誌での連載やラジオなど幅広く活躍中。Information新連載『傷と雨傘』カツセマサヒコ3月9日発売(anan2290号)よりスタートする、小説家・カツセマサヒコの月1連載。「人生って捨てたもんじゃないな」と思えるような言葉をフックに、ふつうの“ワタシ”に起こる、半径5メートル以内の小さな奇跡を描く。SNSからスタートし、人気webライター、そして小説家と、言葉とともに常にキャリアアップしてきたカツセさんによる、“言葉のギフト”をお楽しみに!文・五十嵐 大
2022年03月09日漫画家の中村明日美子さん、小説家の榎田ユウリさん共著による『先生のおとりよせ』が、2022年4月からテレビ東京系で実写ドラマ化することが発表されました。『先生のおとりよせ』キャストは向井理と北村有起哉『おとりよせグルメ』を軸に、漫画と小説のリレー形式でつむがれる同作品。コメディとグルメを組み合わせたエンタメ性はもちろん、作品に登場する『おとりよせグルメ』は、実際に購入できるものとあり、人気を博してきました。ドラマでは、ドSで不愛想な官能小説家・榎村遥華を向井理さんが、ドMで明るくフェミニンな漫画家を北村有起哉さんが演じます。向井理さんコメントおとりよせ愛に溢れたキャラクターなので、役自身の思いに負けないよう情熱を持って演じたいと思います。ただ、実際に素晴らしいおとりよせ品をいただけるとのことなので、台本を読んでいるだけでニヤけています。北村有起哉さんコメントフェミニン男子という設定なんですが…、そこのさじ加減が難しそうです。漫画原作をドラマでそのまんまマンガのように安易に演じないように、実写でできることを模索してます。相手役の向井くんや監督と相談しながら自然と役が浮き上がってくれたらなと。家にいながら全国各地のグルメを楽しめる『おとりよせグルメ』。新型コロナウイルス感染症で、『おうち需要』が高まっている現在だからこそ、ドラマもより注目を集めるかもしれません![文・構成/grape編集部]
2022年01月31日『ハウ』プロジェクトが発表となった。映画版は犬童一心が監督を務めて2022年夏に上映、脚本家・斉藤ひろしによる小説版は2月7日(月)に発売となる。またティザービジュアル、超特報映像も公開された。本プロジェクトでは、私たちの最良のパートナーである犬と人との関係をひとつの物語として、小説・映画として展開していく。小説版を担当する斉藤ひろしは『キセキ-あの日のソビト-』や『ナミヤ雑貨店の奇蹟』、『余命1ヶ月の花嫁』とこれまで人と人との温かい繋がりや大切な人への想いを、丁寧に描き続けてきた。今回は自身が生涯、温存してきた愛犬と過ごした大切な思い出をエッセンスに執筆に挑む。映画版の監督を務めるのは『ジョゼと虎と魚たち』や『最高の人生の見つけ方』など数々の作品で数々のヒューマンドラマを描いてきた犬童一心。原作の斉藤ひろしが描きたかった、神秘的で不思議と癒やされる犬の存在が表現された『ハウ』のメッセージ性が、小池賢太郎プロデューサーの心に連鎖し映画化に至った。自身でも愛猫の記事を書くなど動物愛に溢れる犬童監督が原作者・斉藤ひろしと共同脚本としてもタッグ。小説とは少し違った魅力的な世界感で描かれる「犬と人との絆」に期待したい。解禁されたティザービジュアル中央に描かれている温かく存在感のある仔犬がこの物語の主人公・ハウ。ハウは、私たちに大きな愛を与えてくれるすべての犬の象徴として天使のように表現されている。コピーは飼い主を匂わせる人物から、声を失ったハウへの問いかけが描かれ、これから始まる「ハウと私」の物語へ想像を膨らませるものだ。なお映画『ハウ』の公式Twitter、Instagramも開設。ハウの可愛い姿を更新する予定となっている。<原作 / 脚本:斉藤ひろし・コメント>子供のころ、我が家に一匹の野良犬が迷い込み、そのまま家族の一員となりました。 犬は友であり、私の庇護者でもありました。締め切りに追われ、筆も進まぬまま、愛犬と過ごした日々を思い出していたある夜、 この物語が降りてきました。 犬が私たちに示してくれる愛と友情の深さは理解不能なまでに無限大です。きみ、いったい、何者なの?わたしはずっとこの不思議な存在を小説にしたいと思っていました。 人間の都合で声を失った犬が、傷ついた人々に生きる勇気を与えてくれるお話。そんな物語に小池賢太郎プロデューサーが共感してくださり、犬童一心監督の手で映像化されることとなりました。犬童監督は作家として無闇に妥協迎合しない厳しさで創作にのぞみ、 なおかつそれが自然と良質なエンタテインメントを生み出してしまうという、 映画に愛された人です。みなさんに、この作品を観て陽だまりのような温かさを感じていただけたら幸いです。<監督 / 脚本:犬童一心・コメント>『ハウ』は神さまからの贈り物。その旅の中でいくつもの傷ついた心を見つけ寄り添っていく。どんな時も人を信じきる在り方、そのイノセントな魂に心揺さぶられます。毎日撮影をしながら、その瞳の輝きに何度もグッときてしまいました。「ハウ」は、今こそ必要な、他人を思いやる想像力が姿を現したかのようです。きっと、今一番望まれているものがそこに見えて来ます。<プロデュース:小池賢太郎・コメント>2016年春、脚本家、斉藤ひろしさんと、ある映画の脚本の打ち合わせをしている最中に、偶然にもこのハウの物語をお聞きして、深く感銘を受けたことを今でも覚えております。あれから、月日が経ちましたが、今の時代に、映画化が決定して、皆様に、この物語をスクリーンで見て頂けることを本当に嬉しく思っております。犬童一心監督の思いや、斉藤ひろしさんの思いを一身に受け、躍動するハウの勇姿を是非、楽しみにして頂けたらと思います。ハウという一匹の白い犬の存在感。その大きすぎる魅力に、皆様の驚く顔を想像すると、今からわくわくします。『ハウ』2022年夏公開■リリース情報小説『ハウ』2月7日(月)発売
2022年01月14日私立恵比寿中学、アンジュルムなどのアイドルソング、アニメソングの作詞家として活躍している児玉雨子さん。初小説集『誰にも奪われたくない/凸撃』が早くも話題だ。「誰にも奪われたくない」は、銀行勤めをしながら作曲家としてもがんばっている園田レイカと、レイカが楽曲提供したアイドルグループ「シグナルΣ(シグマ)」のメンバー佐久村真子(まこ)の関係性の変化を軸に、彼女たちの生きづらさの正体に迫る一編。「凸撃」は、YouTubeで喧嘩凸待ちを配信している〈せまみち〉こと宏通が、顔も生年月日もプロフィールで晒している未成年の〈金キング〉とのやりとりから始まる短編。どちらも、いわゆるシスターフッドやブラザーフッドとは少し違う“連帯の形”が描かれ、はっとする。「人間関係がヒリヒリしている現代において、ネットは悪しきイメージを持たれている部分もあるけれど、匿名やハンドルネームの存在だからこそ、本音が言い合えるとか、つながり癒される瞬間があるのではないかと。実名と同じ名前で活動していたとしても、仕事や社会における名前の意味は、プライベートのそれと違うはず。現実とオンラインの世界が地続きでフラットにつながっている“イマドキの人と人との距離感”のリアリティは、書いてみたいなと思っていました」「誰にも~」で、思わず首肯してしまうのは、レイカ視点で描かれるふたりの距離感の捉え方や、社会や世相を斬る鋭い観察眼。たとえば、レイカと真子との関係は、ある盗撮動画がネットにアップされることによって変わっていく。「アイドルが不祥事を起こすと『男の影響』、整形する女の子に対しては『モテたいから』というように、紋切り型で決めつけてくる。社会の文脈へのアンチテーゼというか、そこにノーを言いたかったんです」「凸撃」でも、せまみちと金キングが次第に心を寄せほっこりしていたかと思いきや…。展開もお見事。「現実は、こんな距離感に落ち着くことも多いのかなと。ただ、どういう顛末であれ手を取り合った瞬間があるのはすばらしいなと」随所にちりばめられている作詞家ならではの刺さるフレーズといい、2編をつなぐ人物を登場させるアイデアといい、鮮烈なデビュー作だ。『誰にも奪われたくない/凸撃』「編集さんとのやりとりはセッションみたいでした」と振り返る。作中曲「ジルコニアの制服」を自身で作詞作曲、YouTubeで公開中。河出書房新社1694円こだま・あめこ1993年、神奈川県生まれ。作詞家、作家。2011年、高校在学中に作詞家デビュー。アイドル曲やアニメ曲を中心に、幅広く歌詞提供。『BRUTUS』で食コラムを連載中。©Miyoko Tamai※『anan』2021年9月29日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年09月27日●「笑いではない作業は新鮮でした」お笑いコンビ・インパルスの板倉俊之が、芸人としてバラエティ番組などで活躍する一方、小説家としても活躍。2009年に『トリガー』で小説家デビューし、今年1月には5作目となる『鬼の御伽』を上梓した。また、2012年に発表した『蟻地獄』の舞台化で、脚本・演出に初挑戦。マルチな才能を発揮している。板倉にインタビューし、小説家としてのもう一つの顔について、そして、原作・脚本・演出を務める舞台『蟻地獄』について話を聞いた。小説家デビューは、約10年前。自分で志願したわけではなく、もともとはオファーがきっかけだった。「まさか文章を自分で書くとは思っていなかったですが、当時芸人本が流行っていたんですよ。いわゆる自伝本ブームみたいなころで。僕にもオファーが来たんですけど、僕にはそんなパンチの効いた話はないわけです。ダンボールを食べて生活したことはないし、品川さんみたいに荒くれ者だったこともないので」。自伝本でまとめるほどのエピソードはなかった板倉は、あるアイデアで返答したが、それが功を奏した。「そこでフィクションなら興味あります、みたいなことを言ったんです。その時ちょうど『トリガー』みたいなことを考えてはいたのですが、その時はコントでしか表現できないと勝手に思っていたんですよ。でも、笑いにはならないけれど、面白そうな設定で小説を書いていいなら面白そうだなと。それでやってみようと。フィクションであればと」。こうして最初の作品、『トリガー』が誕生することに。笑いのない物語を作る作業は、お笑いを構築する作業と似ているという。初期の頃から小説を書く作業は面白かったと板倉は話す。「笑いではない作業は新鮮でした。笑いを起こすためではない装置を作ることが。『トリガー』は短編のように区切ってあり、オチが感動するものであったり、ゾッとするものであったり、びっくりするものだったり、いろいろなんです。目標地点が違うものを作る作業は面白かったですね」。初小説から10年以上の月日が流れた。「もうそんなに経っちゃっているんですよね」と時の流れをしみじみと実感する。小説家としての肩書きについては、「いやあまだまだですよ」と謙遜を込めてまだ名乗れないと言い、「『トリガー』と『蟻地獄』は漫画が当たったので知る人ぞ知るという感じなのですが、『あれ、板倉が書いていたのか?』といまだに言われますからね。まだまだ認められていないんです」と語る。そして、自身2作目の小説『蟻地獄』が舞台化され、脚本・演出に初挑戦。当初は昨年7月に上演予定で、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になったものの、今年、1年越しに上演される(6月4日~10日、東京・よみうり大手町ホール)。板倉が創り上げる圧倒的ノンストップサスペンスは約1年の充電期間を経て、さらなる強大な罠と絶望にスケールアップしているという。板倉本人は出演せず、Zero PLANETリーダーの高橋祐理、天野浩成、乃木坂46の向井葉月らが出演する同舞台。晴れて公演できることについて板倉は、「脚本まで書いたものがポシャッて落胆していましたが、いざやることになり、無駄にならなくてよかったなと思いました。ホッとした感じですね」と胸をなでおろす。「ただ、またちょっと雲行きが怪しくなってきましたよね。お客さんが邪念を抱かず、100パーセント笑っていられる状況になってほしいですよね」とコロナ収束を切に願う。●「鬼演出家に憧れます」裏カジノで一攫千金を狙う主人公の物語は、心理戦と息をもつかせぬ怒涛の展開で、観客をも「蟻地獄」という名の謎と罠に迷い込ませる、スリル満点のアウトロー・サバイバルだ。「もともと小説で書いたものが漫画になって、今度は舞台版。小説でしかできないことがあったのですが、逆に言うと舞台でしかできないことも出てくるはずなので、そっちの魅力が出せればいい」と語る板倉は、舞台版は“耳”からの情報が強みになると説明する。「単純に声や音楽は小説には入れられないけれど、小説では情報を限定して見せられていた。それぞれやれる範囲が違うので、小説でしかできないことは削られる分、舞台でしかできないことで補填して、さらにプラスが生まれれば」。コント師としては経験豊富だが、脚本・演出は初挑戦。「コントも自分でネタを書いて自分で演出してきたので、そこまで心配はしていなかったのですが、長編を一発で見せるということは確かに初めてのことですね。あとは自分が出ないこともそう。自分で書いたものを自分で演じることがほとんどだったので、そこは違うかもですね」と語る。もともと演出を含めてのオファーだったと板倉は補足する。「『「蟻地獄」を舞台化したいのでこっちでやらせてもらえませんか?』じゃなかった。自分で演出をすることが前提で、なので脚本を今から知らない人に頼むよりは、自分でやったほうがいいかなと」。しかし、そこで脚本化の難しさを知ることに。「元があるものなのでね。ゼロから舞台用にストーリーを考えるのと、そこにあるものをはめ込んでいくことは、また別の大変さがあるなと思いましたね」と述懐。「時間内に収める、舞台の上で終わらすなど、課題は多かったです」と打ち明ける。演出家としての意気込みを聞くと、「鬼演出家には憧れますね」と笑う。「それをやると嫌われることもわかっていますが、かといって何もやらないのもなと。なので基本は下手にいって、天津の向君にだけは鬼演出家で行くという。そういうスタイルでいこうかなと思っています」と笑いで照れ隠し。ちなみに向だけ鬼演出ということについて、「大丈夫でしょう、彼は。特殊な訓練を受けているので」と話した。数々のステージを笑いで染めてきた板倉の新たな挑戦、そして、小説家としての今後の活躍にも注目だ。■板倉俊之1978年1月30日生まれ。埼玉県富士見市出身。NSC東京校4期生。1998年12月、堤下敦とお笑いコンビ・インパルスを結成。バラエティ番組で活躍する一方で、執筆活動も積極的に行っている。主な執筆作品として、デビュー小説の『トリガー』(2009年7月)をはじめ、『蟻地獄』(2012年4月)、『月の炎』(2018年2月)など。2021年1月25日には、最新作『鬼の御伽』を発表した。
2021年06月03日“小説を音楽にするユニット”YOASOBIの楽曲「たぶん」の原作小説が実写映画化。2020年11月13日(金)より公開される。YOASOBIとは?若者を中心に高い人気を集めるYOASOBIは、コンポーザーのAyase、ボーカルのikuraからなる、二人組の音楽ユニット。“小説を音楽にする”という新感覚のアプローチが最大の特徴で、2019年に公開したデビュー曲「夜に駆ける」では、ストリーミング再生回数2億回を突破するヒットを記録。また2曲目「あの夢をなぞって」は原作小説がコミカライズ、3曲目「ハルジオン」は飲料や映像作品とコラボレーションを果たすなど、活躍の場を広げている。YOASOBIの原作小説が、初の実写化!そして今回映画化される「たぶん」は、2020年7月にリリースされた4作目の楽曲のベースとなった原作小説。YOASOBIの原作小説を実写映画化するのは、同ユニットにとって初となる出来事だ。映画は、3組の男女が繰り広げる3つのショートストーリーで構成。同棲をしていたが、お互いの気持ちのズレを感じ別れを選んだ大学生カップルのササノとカノン。夏の大会が自粛で中止となってしまった高校生サッカー部員・川野とマネージャーの江口。恋人同士だがお互いの気持ちに応えられなくなっている社会人のクロとナリ。それぞれの“最も切ない別れ”と“新しい一歩”を、YOASOBIの楽曲「たぶん」にのせて描き出す。物語を彩る個性派キャスト陣物語を彩る3組の男女役には、個性豊かなキャスト勢が集結。<大学生カップル>ササノ役を演じるのは、俳優だけでなくアーティストとしても活躍する木原瑠生、カノンにはドラマ「中学聖日記」に出演した小野莉奈が務める。<高校生カップル>川野役は、映画『滑走路』に出演した寄川歌太、その彼女となる江口は吉田美月が担当。<社会人カップル>インテリアデザイナーのナリをユーチューバーのめがねが、彼氏のクロをミュージカル「刀剣乱舞」に出演する糸川耀士郎が演じる。詳細映画『たぶん』公開日:2020年11月13日(金)監督:Yuki Saito脚本:岸本鮎佳原案:しなのキャスト:木原瑠生、小野莉奈、寄川歌太、吉田美月喜、黒澤はるか・めがね、糸川耀士郎主題歌:YOASOBI「たぶん」配給:イオンエンターテイメントあらすじ【ササノとカノン】大きな物音で目覚めるカノン。別れたササノが部屋を整理しに帰ってきていた。同棲を始めた時、「私たちは変わらない」そう思っていたのに些細なことで少しずつ“ズレ”を感じ、別れを選んだ二人。大学はオンライン授業になり、就職活動を控える中、将来を真剣に考えるカノンと楽観的なササノ。どうしてこうなったの?悪いのは彼なのか、私なのか。たぶん…。【川野と江口】サッカー部の川野とマネージャーの江口はビデオ通話をしていた。今頃、最後の大会を迎えているはずだったが、今年は自粛により中止に。努力が報われないまま、憂鬱な受験の話をしていた。通話を切ると川野のラインにチームメイトから江口が東京へ引っ越すと知らされる。3年間チームと自分を支えてくれていた江口のことを思い、気づくと川野は自転車で走り出していたー。【クロとナリ】インテリアデザイナーのナリは彼氏のクロとなかなか連絡が取れず、直接家を訪ねる。インターホンを押すとクロが出迎えるも、玄関にはヒールの靴が。アリサと名乗る女性は編集の仕事をするクロの元同僚。クロが貸していた DVD を返しにきていたという。クロのことが大好きなナリは動揺を隠せずその場で言い合いになってしまう。こんなにも好きなのに…。
2020年10月12日相沢沙呼による人気小説を映画化した『小説の神様 君としか描けない物語』が10月2日より全国で公開される。EXILE / FANTASTICS from EXILE TRIBEの佐藤大樹と女優の橋本環奈がW主演を務める同作は、中学生で作家デビューしたものの、発表した作品は酷評され売り上げも振るわないという高校生小説家・千谷一也(佐藤)と、同じクラスの人気者でドSな性格でヒット作を連発する高校生小説家・小余綾詩凪(橋本)が、2人で共作をすることになる。多くのアーティストのMVを手がけ、『HiGH&LOW』シリーズでおなじみの久保茂昭監督がメガホンをとった同作は、映像美も追求された新たな作品に。今回は、主演の佐藤大樹にインタビューし、役作りで考えたことや、共演者の印象などについて話を聞いた。○■『HiGH&LOW』久保監督の持ち味も発揮――今回はMV撮影や、『HiGH&LOW』シリーズでおなじみの久保監督と改めてタッグを組むことになりましたが、印象はいかがでしたか?久保監督は身近な方ですし、1番大好きで尊敬している監督です。元々の信頼関係はあったのですが、久保さんだからこその座組みで、色々な方が力を貸してくださったのだと思いました。改めて惚れ直しました。芝居を作るための空気感や雰囲気作りがすごく丁寧な方で、僕らにも必ず「こう撮ろうと思うんだけど、どうかな?」と確認してくださいますし、逆に僕らから提案したことも受け入れて尊重してくださるので、本当に演じやすい現場を作って下さいました。――『HiGH&LOW』では、キャラクターについて役者の皆さんの解釈を入れていくというお話をよく聞いていたのですが、今回はどういう役作りだったんですか?『HiGH&LOW』の場合は、一人ひとりが役でやりたいことを髪型や口癖や衣装などに反映させていったのですが、今回は久保監督に明確なキャラクターのビジョンがありました。なので、キャラクターの基本的な部分には監督にお任せしていたのですが、例えば歩き方や立ち方などへの提案はさせていただいたりしました。丘に行くシーンで、わざと転んだのも、自分が提案してやらせていただいたアイディアでした。――完成した作品を見て、改めて「久保監督の持ち味が出てる」と思ったのはどのような場面でしたか?感情移入させる方法が上手だと思いました。特に回想シーンなど「そんなことがあったんだ」と提示するシーンは、短い描写だけど情報が多くて。――夜道などを歩いてるところは、車に轢かれないかちょっと心配に……。そこは全然大丈夫です。ノボル(町田啓太)じゃないので(笑)。○■橋本環奈の思いっきりビンタ「逆に気持ちいい」――文芸部メンバーとのシーンも多かったですが、橋本さんからビンタを受けるシーンは迫力がありましたね。台本上では1回しかなかったのですが、テストを重ねていくうちに、監督が「見ている方も、もっと叩いた方がスカッとするんじゃないか」と仰って、急遽足されました。環奈ちゃん自身は本当に優しいし、色々な方に気を遣える女優さんなので遠慮していたのですが、いざ本番が始まったら、さっきまでの心配はどこへ行ったんだというくらい、思いっきり叩いてくれたので、逆に気持ちよかったです。けっこう、久保監督の作品でビンタされがちなんです。実は監督が一番どSなんじゃないかと、僕は思っているのですが (笑)。――色々な撮影現場で、橋本さんの明るさが評判にもなっていますが、今回も感じましたか?僕も噂には聞いていたのですが、こんなに裏表なく、壁を作らない女優さんなんだと驚きましたし、すぐに仲良くなりました。クランクインした夜に文芸部の4人でごはんに行って、そこからはほぼ毎日ごはんを食べに行っていました。――文芸部部長・九ノ里正樹役の佐藤流司さんとも、初共演ですが、印象は?流司くんは、元々2.5次元ミュージカルで活躍されてて、僕も個人的に『ミュージカル 刀剣乱舞』や『NARUTO』を観ていたので、「いつか共演してみたいけど、なかなか機会がないだろうな」と思っていました。だから今回のキャスティングで、「こんなに早く夢が叶うんだ」というくらい嬉しかったです。同い年だったので、現場でもずっと、流司くんがボケて自分がつっこむみたいな感じで、たわいもないことを話していました。逆にお酒の席では互いの仕事についてたくさん真面目な話もして、大切な友達が一人できました。――『ミュージカル 刀剣乱舞』も観られていたんですね。僕も『錆色のアーマ』という逆2.5次元というプロジェクトを行っているので、「2.5次元ってなんだろう」という勉強をしたときに、流司くんのことを見ていたので、参考にさせていただいてました。――文芸部の後輩・成瀬秋乃役の柴田杏花さんは?杏花ちゃんは若いのにしっかりしていて、文芸部の人間の中で一番大人だったかもしれません。僕らがふざけているのを仏のような顔で見ていました(笑)。作品では、1番役にハマってるなと思うくらい、芝居が好きでした。メガネも自分で衣装合わせのときに持ってきていたみたいですし、カメラが回ってないときには劇中で持っている成瀬のノートに自分で色々書き足しているなど、役に対して愛があって、勉強家だなと感じました。年下ではありますが、尊敬できる女優さんです。○■FANTASTICSのメンバーを書くなら?――先ほども2.5次元の勉強をしたというお話が出てきましたが、今回は何か役作りにあたって勉強したことはあったんですか?知り合いに漫画家の先生が2人いるので、会いに行き話を聞かせていただきました。身近で共作をしている方がいるのか、担当編集者の方とはどれくらいの頻度で連絡をとっているのか、締め切りが迫ったときにどれくらいの徹夜をするのかなど、根掘り葉掘りインタビューをしました。もともと本を読むタイプではなかったので、実際に現場に近い環境にいる人に会って、話を聞くのがいいかなと思いました。――取材までされてたんですね。ちなみに、学生時代国語などは得意だったんですか?全然得意じゃないです! 僕理数系だったので、国語、社会は本当に苦手で。数学が一番好きでした。――MCも担当されているし、得意そうなイメージがあったので意外でした。全然でした(笑)。この世界に入ってから、しゃべりも出来ないとと勉強し始めました。――高校の頃からEXPGに通って、学校でもダンス部に所属していたということで、一也と境遇が似ている部分もあったのでしょうか?学校が終わると部活かバイトかレッスンか……当時芝居もやっていたので、一也が高校生と小説家の二足の草鞋を履いていたように、僕も何足もの草鞋を履いていました。高校生時代はいろいろ抱え込むタイプで、常に不安を持っていたので、一也みたいに生活に焦っている感じはあったと思います。そういった点では、共感できる部分もありましたし、逆に勉強にもなりました。「確かに、学生時代って、こんなに焦ってたな」と、今になって思うことはたくさんあります。――今回は小説家という役でしたが、FANTASTICSのメンバーを書くなら、どういう物語にしたいですか?FANTASTICSで書くなら……『花ざかりの君たちへ』のような、個性溢れる色々な男たちと、男たちを翻弄する腐女子のヒロインの話を書きたいです(笑)。1番手のイケメンは、ボーカルの中島颯太にします! 可能性がたくさんありそうだから。普段ボーカルはお芝居する機会がないのですが、いい色が出そうです。――ちなみに、ヒロインはなんで腐女子という設定なんですか?腐女子の方の可能性は、ハンパないからです! 『HiGH&LOW』をやったときにも、まさかその層に刺さるとは思っていなかったですし……『PRINCE OF LEGEND』もですが、いろいろ勉強になるので、今後の参考にしたいです!――それでは、最後にメッセージをいただけたら。ナイーブで売れない小説家と高校生人気小説家が2人でタッグを組んでベストセラーを生み出すという課題に挑む、ファンタスティック青春ムービーです。老若男女問わずいろんな方々に共感していただける、背中を押せるような青春ムービーになっていますので、ぜひ劇場でご覧ください。■佐藤大樹1995年1月25日生まれ、埼玉県出身。11年、FUNKY MONKEY BABYSの「ラブレター」MVに出演し俳優デビュー。14年EXILEに加入、18年にはFANTASTICS from EXILE TRIBE としてもメジャーデビュー。俳優としても活躍の場を広げており、出演作にTVドラマ『シュガーレス』(12年)、『俺たちの明日』(14年)、『ワイルド・ヒーローズ』(15)、舞台『錆色のアーマ』シリーズ(17年~)など。また、映画も『HiGH&LOW』シリーズ(16年~)、『ママレード・ボーイ』『センセイ君主』(18年)、『4月の君、スピカ。』(19年)と出演作が立て続けに公開されている。
2020年09月30日しなのによる小説「たぶん」を原案とする映画が公開されることが決定した。小説「たぶん」は、若い世代を中心に爆発的な人気を誇っている、小説を音楽にするユニット「YOASOBI」が楽曲化し話題に。当たり前が当たり前じゃなくなったいま、誰もが経験する新しい時代の、新しい選択。映画では、曖昧な言葉の中にある確かな気持ちを描く。昨年11月に公開した「YOASOBI」第1弾楽曲「夜に駆ける」が、Billboard Japan Hot 100やオリコン週間合算シングルランキングで複数週にわたって1位を獲得し、ストリーミング再生回数は今年夏に1億回を突破。続く第2弾楽曲「あの夢をなぞって」は原作小説がコミカライズ、第3弾楽曲「ハルジオン」は飲料や映像作品とのコラボを果たし、さらには初の紙書籍となる「夜に駆けるYOASOBI小説集」が発売と、活躍の幅を広げている「YOASOBI」。そんな「YOASOBI」の原作小説が今回、初映像化。「YOASOBI」Ayaseは「小説、音楽、MV、そして実写映画というまた新しい作品の広がりに今からとてもワクワクしています。『たぶん』の世界観がどんな風に膨らんでいくのか、とても楽しみです」と完成に期待を寄せ、ikuraも「どんな広がりを見せてくれるのかとても楽しみです!完成が待ちきれないです!」とコメントしている。なお、主題歌は「YOASOBI」の「たぶん」に決定している。『たぶん』は2020年晩秋公開予定。(cinemacafe.net)
2020年09月18日社会学者で、情報番組のコメンテーターとしても活躍する古市憲寿さんは、小説家でもある。芥川賞に2期連続ノミネートされ一躍注目を集めた。第4作『アスク・ミー・ホワイ』はオランダのアムステルダムを舞台にした長編だ。マガジンハウスから刊行される。「これまで書いた3冊の小説とは、明らかに違うものができたと思ったんです。だったら、純文学からは一番遠い出版社に出してもらうのがいいかな、と(笑)」主人公のヤマトは、恋人のサクラに誘われてアムステルダムへ移住してきた青年だ。サクラに捨てられた今、とどまる理由も飛び出す理由も持てないまま、日本料理店で働き続けている。鬱屈した日々の中で出会ったのが、日本で国民的知名度を誇っていた芸能人の港くんだった。アムステルダムやオランダ郊外の街デルフト、ヨーロッパの様々な風景の中で、ふたりは共に時間を過ごし――。「オランダはエスケープルーム(脱出ゲーム)の聖地で、3年前に初めて足を運んで以来何度も旅行しています」作中の港くんという存在は、実際に海外へ移住した噂もある元有名俳優を想起させる。「『港くん』というキャラクターを書くにあたって、性格や佇まいなど特定のモデルがいたわけではないんです。ただ、表舞台から姿を消した人がどうか幸せであってほしいと思って書いた部分はありますね。そんなことを考えているうちに、アムステルダムで“彼”と出会い、“彼”との関係を通じて成長していく主人公のイメージができあがっていきました」相手は芸能人で、自分は一般人。相手は男で、自分も男だから、抱いている感情は恋愛と違う。主人公は港くんとの関係に常識に囚われた線引きをするが、境界線はグラグラ揺さぶられる。凝り固まった思考がほどけて、溶けていく。「人って何事も二項対立にしがちだけど、そんなにはっきり分けられるものではないよなって昔から疑問なんです。友情と愛情、とか。異性愛者にとって、性別って絶対に超えられない壁でもないんじゃないのかな、とか。今“溶けていく”と言っていただけたのは嬉しくて、もともとの僕の出自である社会学の本でも、基本的には社会の常識を溶かしたいというか、“こうも見られるんじゃないの?”ってことを書いてきたつもりなんですよ。テレビでコメンテーターをする時も、そこは意識しています」だが、小説だからできることがある。「例えばこの小説の書き出しの〈ニュースにはいつも続きがない〉という一文は、何年も前からメモしていたものなんですが、論文っぽいものやエッセイではうまくハマらなかった。そういうものが溜まってアウトプットできていないことが、小説を書く前まではちょっとストレスでした。日常の中で芽生えたふとした感情とかふとした気付きって、小説ならば自由に盛り込める。小説だから、フィクションだからこそ“本当のこと”が書けるって感覚があるんです」ちょっとだけの勇気でこれだけ人生が動く。「コロナが流行しはじめた頃、外に出られず家にいるしかない時間を使って一気に書き上げました。旅行した時のことを思い出しながら書いていったからこそ、想像も加味されて、実際よりも素敵なオランダとかドイツになったんじゃないかなと思います」物語の舞台が、東京から海外へと変わっただけじゃない。安楽死をテーマにした『平成くん、さようなら』に象徴されるように、過去3作には死の匂いが充満していた。しかし本作は、外国で暮らす主人公の孤独感や、過去のスキャンダルが一生つきまとう芸能人の理不尽なども活写されてはいるが、生の、希望の方向へと物語が展開していく。何よりその一点が、これまでと「明らかに違う」。「辛い話や暗い話は僕自身も読みたくなくなっていたし、書きたくもなかったんです。社会が暗くて不安な時代ほど、明るい話だったり、現実には叶わないことをフィクションで読者に届けることが、クリエイターに求められるものなんじゃないかなと思う。そうすると、死の匂いが消えて、あんまり純文学っぽくもなくなる(笑)」デビュー以来書き継いできた“記憶”というテーマも、ポジティブな感触で読者の胸に刺さる。「辛い時に何が今日の自分を助けてくれるかっていうと、楽しい思い出や記憶。それは誰にとっても絶対大事なもので、誰も奪うことはできないものじゃないですか。思い出したい記憶をどれだけ作れるかが重要で、逆に記憶さえあれば、大切な人とたとえ離れ離れになっても大丈夫だと僕は思うんです。だからインスタグラムは、あと100年ぐらいサービスが続いてほしいですね。老後にちゃんとインスタの写真を見返せるように。逆にツイッターはなくなったほうが、無駄な争いが減っていいかもしれないけど(笑)」作中で、幾度か現れるフレーズが印象的だった。「勇気」だ。「“人生つまんないな”とか“何も起こんないな”と言う人ほど、受動的な気がするんですね。ただ待つんじゃなくて、自分から動きだすことでしか、自分の人生って動いていかないなと思うんです。ヤマトはうじうじした面倒くさい奴ですけど(笑)、港くんに対してはちょっと勇気を出して近づいていった。ちょっとの勇気でいいんですよ。人から誘われたら断らないようにするとか、提案されたことをすぐ拒絶せずいったん考えてみるとか。僕自身が人生の中で感じてきた“ちょっとの勇気でこれだけ人生が動く”ってことを、物語にしたのが今回の小説なんです」主人公のヤマトは港くんとの交流を通じて、自由になった。幸せになった。そして、優しくなった。いや、彼本来の優しさが表に出せるようになった、と言うべきか。人間は、本当は優しい――。古市さんの小説は、身も蓋もない酷悪な現実を突きつけながらも、必ずそのことを描いている。「合理的に突き詰めて考えていくと、人って優しくなれるはずだと昔から思っているんです。世界中の人々がいがみ合うよりも一斉に仲よくしたほうが、警察もいらなくなるし、軍隊もいらなくなるし、経済もうまく回るじゃないですか。利他的であることが利己的である、誰かに優しくすることが巡り巡って自分のためになる。そういった僕自身の考え方が、一番色濃く出るのが小説なのかもしれません」コロナ禍で疑心暗鬼と隣人恐怖が渦巻く今だからこそ、優しさがより強く響く。ラブストーリーというジャンルでは括れない、深い読後感を持つ一冊が届けられた。ふるいち・のりとし1985年生まれ。社会学者。連続して芥川賞候補となった『平成くん、さようなら』『百の夜は跳ねて』ほか、著書多数。8月27日、最新作『アスク・ミー・ホワイ』が発売される。※『anan』2020年9月2日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)ヘア&メイク・大野彰宏(ENISHI)取材、文・吉田大助(by anan編集部)
2020年08月26日『持続可能な魂の利用』は、フェミニズム小説の旗手・松田青子さんの初長編だ。痛烈な「おじさん」批判小説であり、女性たちの連帯を描くシスターフッド小説でもある。「おじさん」は、見た目や年齢のことではない。カギカッコ付きなのは、それが家父長的な価値観で女性について勝手に語ったり評価したり貶めたりして消費し、女性の絶望を作り出す総体としての存在だからだ。「いまの女性たちが置かれている日本社会の理不尽な状況を、一度しっかり書いておきたいと思ったんですね。同時に、そうした『おじさん』の視線や悪意がなくなったら、女性たちはどれほどの自由を享受するだろうかとも想像しました」物語は2つの時空を行き来する。現代のパートでは、陰湿なハラスメントで負った傷を、射すくめるような視線の媚びないアイドル〈××〉に癒される敬子、ハラスメントの真相を知って、敵を討とうと誓う歩、二次創作にハマっている元アイドルの真奈、新生児の育児に右往左往する由紀などが活躍。未来のパートは「おじさん」から少女が見えなくなった世界だ。少女たちは伸び伸びと、現代社会の性差のゆがみを研究発表という形で考察していく。「未来の少女たちの目から見れば、なんてバカバカしいことがまかり通っていたのかと呆れることだらけ」作中で、アイドルは複雑かつ重要なモチーフとして描かれる。「敬子は女性アイドルに純粋に惹かれながら、その消費構造を手放しでは喜べないことにはっとします。人間は矛盾した生き物なので、女性が見られることで傷ついた心を、今度は自分が見る側に立つことで癒されるというのもあると思うんですね。私自身も実在のアイドルをモデル化して小説に登場させている時点で、やはりそこは綺麗事にならないように、自覚と自戒が伝わるような、ブーメランが自分にも返ってくる文章構造と書き方を心がけました」それでも本書に描かれた世界に、希望を見つける人は多いだろう。「SNSなどで女性を取り巻く問題が可視化されたことは気が重くなる部分もあるんですが、敬子の妹が言った〈鬱陶しい霧のようなままの気持ち〉のころよりは、多少は対策も立てられる。繋がれる人もいる。変化は生まれていると感じています」まつだ・あおこ作家。兵庫県生まれ。2013年、デビュー作『スタッキング可能』が三島由紀夫賞および野間文芸新人賞候補に。『彼女の体とその他の断片』(共訳)など、翻訳家としても活躍。『持続可能な魂の利用』見られることから少女たちが解放された世界と、そこへ至る前史ともいえる女性が生きにくい社会。描かれる事象のリアリティに驚く。中央公論新社1500円※『anan』2020年8月26日号より。写真・土佐麻理子(松田さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年08月23日お笑い芸人のBKBことバイク川崎バイクが、『BKBショートショート小説集 電話をしてるふり』(ヨシモトブックス)でいきなり作家デビュー。この短編集は、彼がコロナ禍で自粛中、作品投稿サイトnoteに毎日寄稿した短編小説50本を収録したものだが、連載中にSNSで話題を呼び、急遽出版される運びとなった。特筆すべき点は、恋愛小説からミステリー、SF、ブラックコメディまで、ひねりの利いたストーリーテリングぶりだ。自由自在に球種を使いわける名ピッチャーのごとく、処女作とは思えない“技”を惜しみもなく披露しており、人気作家の吉本ばななが、帯にコメントを寄せたのも大いに納得。そんな“作家”BKBに単独インタビューを敢行した。――まずは、書籍化が決まった時の感想から聞かせてください。こんなにも早く本になった! という驚きと喜びがありました。最初に50日間、毎日書こうとは決めたのですが、ショートショートというジャンルだから、100個ぐらい書いて、誰かの目に留まってくれたらいいなと思っていたんです。そのうち、芸人仲間から「いつか本になるんとちゃう?」と冗談交じりに言われたんですが、まさか書き始めて30日くらいで、書籍化の話をいただけるなんて、夢のようでした。――noteに投稿するのを勧めてくれたのは、同じ芸人であるオズワルドの伊藤俊介さんだったそうですね。書き始めて手応えを感じたのはいつ頃ですか?たくさんの人に読んでほしかったので、無料で公開していたんです。10日を超えた頃から、フォロワーが毎日増えていきましたが、バズったりはしていません。毎日8時19分、“バイク(819)”の時間に更新していたら「すぐに読みたいから朝早く起きてます」とか「自粛中ですが、規則正しい生活を送ってます」といった声をいただくようになりました。それでエゴサーチをしてみたら「BKBの小説が面白い」とあって、マジか! とびっくりしました。――以前から書き溜めた作品もあったそうですが、いつ頃から小説を書いていたんですか?おぼろげですが、10年ぐらい前から趣味で書いていました。僕自身が、オチを軽く引っくり返す話や、2回読みたくなる話が好きなので、僕もそういうひとひねりあるものを書きたいと思ったんです。――オチが最後まで読めない巧みなストーリーばかりですが、小説は独学で書かれたんですか?独学です。星新一さんの小説が好きなんですが、ほかにもこれまでに読んだ小説から、無意識にインスパイアされているんだと思います。ミステリーも好きなので、叙述トリックなども使っています。また、できるだけ人の名前は、ありきたりな名字を避けたりもしました。たとえば、「山口」などよくある苗字にしちゃうと、山口さんが読みにくくなるかなと。とはいえ、女の子の名前は「真由美」とか普通の名前だったりもするので、一概には言えませんが。――コロナ禍での自粛期間があったからこそ、毎日小説が書けたのでしょうか?それは間違いないです。さすがに仕事をしながら毎日書くのは難しいので。「B、K、B!」とかやっていたら疲れますし、ネタもハーハー言いながら書いてます。でも、自粛中はずっと家にいて、体力も有り余っていたし、寝る時間もありましたから。――芸人仲間の方から、タイトルだけを振られ、そこから物語を作った回もありましたが、与えられたお題から作るほうが書きやすいのでしょうか?僕はそうです。0から1にするよりも、お題があって、そこから連想して作るほうが書きやすいです。――すごくリアルなストーリーからファンタジーまで、作品の発想はどこから来ますか? 例えばご自身の実体験を生かしたものなどもありますか?あります。単独ライブは毎年真面目にやってきたので、コントのネタのストックがありますし、知り合いから聞いた話を書いたりもします。また、ボケになってないようなネタの切れ端を日々、スマホにメモっています。あとは、他の方の短編集のタイトルだけを見て、そこから想像して書いたり、コントの話を広げたり、本当に困った時は、ファンタジーに逃げたりしていました。――ファンの方からは、どんな反応があったのでしょうか?僕の単独ライブなどに来てくれている人は、めちゃくちゃ驚いてはないと思います。コントでもオチだけ怖いネタはやっていたので。後輩だと、ジャングルポケットの太田とかは「俺は知ってましたよ。BKBさんのこういう一面」と言ってくれましたが、おそらくほとんどの人たちは知らなかったと思うし、先輩からも「ええ!」と驚かれたりしました。なかでも品川(祐)さんが反応してくれたのはうれしかったです。――小説家としての自己評価はいかがですか?こればっかりはね(苦笑)。やっぱりこの世界は、他人の評価が自己評価につながるわけで、自分でいくらいいものを書けたと思っていても、読まれて評価されなきゃ意味がないので。ただ、自分で読んで面白いと思うものは書けたんじゃないかという自負はあります。僕の芸風だと、「BKBの書いた本!? マジで!」と良いふうに捉えられることもあれば、「あのBKBの本やったら読まなくていいや」と悪いふうにいくこともあると思うんです。読まず嫌いの方をいかにして振り向かせるかが問題かなと。――小説と、普段、書いているお笑いのネタを書く作業の共通点とは?全然違うんですけど、隣り合わせにいるもんやなと僕は思いました。お笑いはネタを書いて終わりじゃなくて、そこから練習して、お客さんの前で笑ってもらってなんぼのものでしょ。今回の小説はショートショートだったこともあり、脳内で「おお!」と思ったらそこで終わるから楽でした。お笑いで面白いネタを簡単に書けるのなら、とっくに『R-1』で決勝に行けていると思います。――同じ芸人で作家でもある又吉直樹さんは、芥川賞を受賞しましたが、今後、小説家としてそういった賞を獲りたいという目標はありますか?本当のところ、賞は欲しいです。本来なら、そういう賞を獲ってから本を出すのが普通なんだと思いますし。もちろん表題作の「電話をしてるふり」が、(作家の岸田奈美さんがnoteで開催したコンテスト)「キナリ杯」をいただいたことはうれしかったです。調べてみたら、いろいろな短編の賞もありましたが、すでに書いたものはもう応募できないそうで、厳しいなと思いました。そこはもうちょっと緩くしてほしいです(笑)。――芸人としてのBKBさんの今後についても聞かせてください。できるかできないは別として、この本を出版できたことで、BKBに興味を持ってもらいたいです。目先の目標としては、単独ライブが即完するような芸人になりたい。そして、BKBの芸風は基盤として残しつつ、1人コントなどで『R-1』の決勝に行きたいです。――小説を書く作業は、あくまでも芸人としての活動の一環なのでしょうか?もちろんです。「BKBってこんな話が書けるんやったら、コントも面白いんとちゃう?」っていう説得力が欲しかった。書き物とお笑いは別の話かもしれないけど、「BKB!」とだけを言っていても裾野が広がらないので、もっと間口が広がってくれたらいいなと思っています。■プロフィールバイク川崎バイク1979年12月17日生まれ、兵庫県出身のお笑い芸人。愛称はBKBで、略したら「BKB」になるネタで人気を博す。『R-1ぐらんぷり』では 2014年にBKB漫談で決勝進出、近年では1人コントで準決勝進出を果たしている。
2020年08月15日