*画像はイメージです:新規開設したキュレーションサイトや、個人ブログ、クラウドソーシングでクライアントに提出する原稿――数をこなして、てっとり早くアクセスや賃金を稼ぐのに用いられているのが、他人の書いたWEB記事の無断コピペ流用です。ネットの記事はもちろん、ライターが撮影した写真までマルパクするのに、ほんの10秒もかかりません。デジタルの世界ではこのコピペが簡単なので、ふだん企業が開設している商業サイトに記事を提供しているプロライターが、ある日、自分の記事が丸ごとコピーされているのを知って仰天することが多々あります。提携先に転載されることはあっても、記名と出典元は明らかにされていますが、出典元はなく、記名も替えられていた時はどうすればいいでしょうか?著作権問題に詳しい、パロス法律事務所の櫻町直樹弁護士に対応方法をお訊きしました。 ■明確な著作権の侵害!記事の差し止めを請求「無断でブログに記事を転載(盗用)してネットユーザーに閲覧させることは、記事という「言語の著作物」(著作権法10条1項1号)の著作権(より具体的には送信可能化権・公衆送信権。著作権法23条1項)を侵害する行為ですから、元の記事の著作権を有する者が差止め(削除)請求することができます」(櫻町弁護士)元の記事が商業サイトの中で掲載されており、記事執筆者が著作権をサイト運営者に譲渡している場合は、サイト運営者が著作権者として差し止め請求の主体となるそうです。プロライターが記事執筆の対価を得ている場合、こうした契約になっている場合がほとんどでしょう。では個人の記事がマルっとコピペされていた場合はというと、個人が著作権者となります。こういった場合、請求先はどこになるのでしょうか?「請求先は、個人ブログなら盗用したブログ主個人と、ブログサービスを提供している会社の双方が考えられます。連絡先が記載されていない個人ブログもありますので、そのような場合にはブログサービスを提供している会社に請求することになるでしょう。」(櫻町弁護士) ■相手が個人なら個人とブログサービス提供会社へ通告!ブログサービスを提供している会社への通告には、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会が策定、公表している『著作物等の送信を防止する措置の申出について』を用いると手続きがスムーズになる場合があるということなので、活用をお薦めします(会社によって書式への記載例を掲載している場合もあります)。「その際、自分が著作権者であることを示すための資料として、元の記事が掲載されている画面のキャプチャ(URLや掲載日なども分かる形)を印刷したものと、著作権侵害がされていることを示すための資料として、盗用された記事が掲載されている画面のキャプチャ(こちらもURL等が分かる形)を印刷したものも、あわせて送付するのがよいでしょう」(櫻町弁護士) ■著作権侵害の罰則は意外に重いところで、この丸ごと盗用ですが、どんな罪に問われるのでしょうか?「著作権の侵害には罰則が規定されており、今回のケースのような著作権侵害の場合は“10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科”(著作権法119条1項)と、かなり重い刑罰が科せられる可能性があります。また、実際に逮捕されている例もあり、軽い気持ちで著作物を盗用すると、想像以上に重い罪になる可能性があると考えたほうがいいでしょう」(櫻町弁護士)コピペの作業自体があまりにも簡単なので、刑も軽いと思ったら大間違いなのです。 ■慰謝料を請求することはできるか?最近ではInstagramやブログなどからプロ・アマを問わず写真を盗用しているケースも増えており、中には商業サイトがこれを大々的に行っていて、問題視されています。これに関しても記事盗用と同じくただちに掲載差し止めを求めると共に、有料フォトサービスなどに登録している場合は、そのサイトに交渉を任せたほうがいいでしょう。なお、著作物盗用は実に不快なので「慰謝料」をふんだくりたくもなりますが、損害が財産的損害にとどまる場合、一般に、慰謝料が認められる可能性は低く、著作権侵害の場合も、認められにくいのが現状です。「ただし、『著作者人格権』(公表権、氏名表示権、同一性保持権)については、相続・譲渡できない一身専属的な権利であり、著作者の人格的な利益を保護するためのものという性質から、それが侵害された場合には精神的苦痛が生じたということが言いやすく、慰謝料が認められることが多いといえます」(櫻町弁護士)著作者の名前をまったく別の人間の名前にしていたりすれば、この「著作者人格権」を侵していることになり、これに対して慰謝料を請求することも可能と言うことです。個別のケースにもよりますので、弁護士に相談のうえ、自作の著作権を守りましょう。 *取材協力弁護士:櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。ブログ「ネットイージス.com」)*取材・文:梅田勝司(千葉県出身。10年以上に渡った業界新聞、男性誌の編集を経て独立。以後、フリーのライター・編集者として活躍中。コンテンツ全般、IT系、社会情勢など、興味の赴く対象ならなんでも本の作成、ライティングを行う。)【画像】イメージです*Sielan/ Shutterstock
2017年02月17日*画像はイメージです:福岡県の小倉北警察署に勤務する警察官が、結婚していることを隠して、交際をしていた女性との披露宴を開こうとして、減給の懲戒処分を受けたことが明らかになりました。披露宴当日になっても、新郎である警察官側の出席者側が1人も現れず、新婦側の親族が問いただしたところ、嘘が発覚したということです。それでは、新婦側は、男性に対して法的にどのような請求ができるのでしょうか。また、今回は、披露宴だけで婚姻届は提出していなかったようですが、仮に、婚姻届まで提出していた場合の法的問題点について説明したいと思います。 ■新婦の男性に対する法的な請求について男性とは披露宴まであげていますので、新婦と男性との間には、婚約(婚姻予約)が成立しています。そして、婚約を不当に破棄した場合、破棄した当事者は、相手に対して、損害賠償義務を負います(民法709条)。婚約を破棄された当事者が請求できる損害としては、慰謝料、披露宴の費用、婚約指輪代、新居の準備費用などが挙げられます。慰謝料の相場としては、100万円から200万円です。 ■婚姻届まで提出していた場合の法的問題点についてまず、民事上、配偶者のいる人は、重ねて婚姻することはできないと定められています(民法732条)。そのため、婚姻届を提出して女性との間に婚姻が成立した場合には、そのような婚姻は不適法なものであり、取り消すことが可能です(民法744条1項)。この場合、当事者に限らず、男性の本来の配偶者も、取消しを請求することができます(民法744条2項)。次に、刑事上は、重婚罪が成立します(刑法184条前段)。法定刑は、2年以下の懲役です。もっとも、すでに結婚している人が婚姻届を提出した場合、戸籍事務担当者は、当然、その人の戸籍を確認するので、その人が結婚しているかどうかは一目瞭然であり、そのような婚姻届は受理されません。そのため、現在の戸籍実務上、重婚状態が生じるのは、戸籍事務担当者が戸籍の記載を見落としたなどのかなり例外的な場合に限られるでしょう。 *著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)【画像】イメージです*KAORU / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月15日こんにちは。アディーレ法律事務所弁護士の篠田恵里香です。もしも自分の息子が、お友達が他の子にもらったチョコを勝手に食べてしまったら、罪になると思いますか?もちろん、これが20歳以上の大人であれば、他人のもらった物を勝手に食べてしまった場合、『窃盗罪 』が成立します。「ちょっと預かっておいて」と預かったものを勝手に食べてしまった場合は、『横領罪 』となります。ただ、子どもの場合は、14歳未満であれば『刑事未成年 』といって、刑事上の責任を負わない ことになっているので、窃盗罪や横領罪で処罰されることはありません。民事上の責任としても、通常12歳程度の判断能力がない限り、賠償責任も負わないことになっていますので、子どものしつけや監督をしっかりしていなかった両親が、原則としてこれに代わって責任を負うことになります。ただ、賠償額としては、チョコの代金と、再度買いに行った場合の手間賃・交通費は認められる可能性が高いですが、慰謝料まで認められるかは微妙なところです。●チョコ禁止のルールを破ったら?最近は、チョコの持ち込み禁止などのルールがある保育園や学校もあるようですね。例えば、私立の保育園や学校の場合、入園や入学後の学校のルールは、いわば園や学校側と、子ども・親御さんとの間の契約のようなものとなっています。ルールを破った場合は、その契約に基づいて、これを理由に園や学校側が何らかの処分を下す可能性はあり得ます 。ただ、チョコレートを持ち込んだことを理由に退園や退学となると、ちょっとやり過ぎのように思いますので、退園・退学処分とまではならない可能性が高いでしょう。しかし、注意したにもかかわらず何度もチョコを持ち込んで、園や学校の保育・教育環境を著しく乱したような場合は、場合によっては退園・退学もあり得るかもしれません。いずれにせよ、ルールは皆のために作られたものですから、理不尽なルールではない限り、しっかり守りましょう。●アレルギーを知らずにチョコをあげてしまったら?子どものお友達が“チョコレート(カカオ)アレルギー”だったことを知らずにバレンタインにチョコを配ってしまい、これによってお友達がアレルギー症状を発症してしまった場合も、刑事上・民事上の責任がそれぞれ問題となってきます。例えば、アレルギーであることを知り得たのにチョコをあげたということになると、『過失致傷罪 』が成立する可能性があります。また、民事上の責任としても、『不法行為』として賠償責任(治療費や慰謝料等)を負う可能性が出てきます。ただし、先ほどお伝えした通り、責任能力がないということになれば、刑事上・民事上ともに、「両親は責任を負うか」の問題となってきます。いずれにせよ、大量にチョコレートを配る場合は、アレルギーの有無を確認 した方がよいですね。●まとめバレンタインは、「愛の告白のチャンス」でもあり、小さな子どもでもワクワクするものですね。ただ、トラブルのもとになる可能性も皆無ではありませんので、ルールやマナーを守って、バレンタインを楽しく過ごせるようにしましょうね。●ライター/篠田恵里香(アディーレ法律事務所:東京弁護士会所属)
2017年02月12日滋賀県長浜署の警察官が、宴席の余興としてプロレス技をかけようということになり、スカート姿の女性警官にロメロ・スペシャル(つり天井固め)をかけたことが問題になっています。経緯は不明ですが、やはり男性が女性にプロレス技をかけ、その様を大勢で楽しむという行為は異常と言わざるを得ません。警察官ということをもう少し自覚してほしいものです。このようなケースは稀であると思われますが、宴会で何らかの宴会芸を強要されることは多々あるかと思います。なかには苦痛を感じ、いっその事強要する人間を「訴えてやりたい」と考えている人も多いのではないでしょうか?宴会芸をしつこく強要する人間に対し法的請求を行うことはできるのか?弁護士法人プラム綜合法律事務所の梅澤康二弁護士に見解をお伺いしました。 Q.宴会芸の強要に法的請求を行うことはできる?*画像はイメージです:ケース・バイ・ケースですが、請求ができることもあります。「本ケースでは場合を分けて考える必要があります。まず「宴会芸」の強要が上司の個人的行為として行われた場合。同宴会が会社の行事としてではなく、単に有志懇親会で任意参加あるような場合がこれに該当します。この場合は、当該強要行為が社会通念上相当な範囲を超えた態様で行われた場合には、不法行為(民法709条)に基づき損害賠償請求を行うことは理論的には可能です。ただ、いかなる場合に“社会通念上相当な範囲を超えた”と言えるかは明確な基準はなく、あくまでケース・バイ・ケースの判断となると考えます。例えば、上司が暴行又は脅迫行為によって当該強要行為を行ったような場合(行為態様が重大)や当該強要行為が危険行為の強要でこれにより負傷したという場合(結果が重大)は、損害賠償請求は可能でしょう。そうでない場合は特段の事情がない限り基本的には難しいと思います(“特段の事情”としては、過去長期間にわたり同様の行為が反復継続されるなど著しい執拗性があり、これにより被害者が相当の精神的苦痛を被っていると評価される場合が考えられます)。なお、この場合は、上司の行為はあくまで個人的行為ですので、会社に対する請求はできません。次に“宴会芸”の強要が業務として行われた場合です。同宴会が会社の行事として行われ、参加も事実上強制である場合がこれに該当します。この場合、上司の強要が任意での実施を勧奨するものではなく、指示・命令として行われた場合は会合の性質上、業務命令と評価することが可能であり、この場合は(ⅰ)業務との関連性、(ⅱ)業務上の必要性、(ⅲ)態様の相当性という観点から、業務命令として適正な範囲を超える場合は、不法行為(所謂パワーハラスメント行為)として違法性を帯びることになります。そして、このような違法性を帯びる範囲は、上記個人的行為の場合よりも広く捉えられるのが通常と考えます(業務命令として適正か否かという観点での判断となるため)。また、当該強要行為が業務的に行われているという観点からすると、これが不法行為(パワーハラスメント)に該当する場合は、会社に対しても職場環境配慮義務違反(労働契約法4条)又は使用者責任(民法715条)に基づき、法的請求は可能です。なお、いずれのケースも特段の事情がない限り、精神的苦痛のみの訴え提起であれば最終的に認容されても慰謝料額は10万円がせいぜいではないかと思いますので、訴えるメリットはあまりないかもしれません」(梅澤弁護士) ケース・バイ・ケースですが、慰謝料など法的請求することは可能であるようです。とくに会社が指示・命令として強制している場合は、パワーハラスメントに該当する可能性が極めて高いのとのこと。ただし受け取ることのできる金額は少額のようなので、問題提起や悪事の告発などを目的する場合のみに訴えたほうがいいかもしれません。 *取材協力弁護士:梅澤康二(弁護士法人プラム綜合法律事務所。東京都出身。2008年に弁護士登録。労働事件、労使トラブル、組合対応、規定作成・整備などのほか各種セミナー、労務問題のリスク分析と検討など労務全般に対応。紛争等の対応では、訴訟・労働審判・民事調停などの法的手続きおよびクレーム、協議、交渉などの非法的手続きも手がける。M&A取引、各種契約書の作成・レビュー、企業法務全般の相談など幅広く活躍。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*プラナ / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月08日配偶者の不倫が発覚すると、慰謝料はどれくらいになるのかと気になる方も多いのではないでしょうか?「慰謝料の金額の算定要素に不倫の回数や期間の長さがあるのでは?」と思いながらも、実際はどういった基準で慰謝料が決定されているのか詳しくは分からない、という方が大半なのではないでしょうか。そこで、今回は不倫の期間や回数が慰謝料の金額にどう影響を与えるのか解説していきたいと思います。*画像はイメージです:■不倫期間の長さはどう慰謝料にどう影響する?結論からいえば、不倫期間が長ければ慰謝料の金額は高くなり、不倫期間が短ければ慰謝料の金額は低くなります。では、どのくらいの期間であれば、「長い」あるいは「短い」と判断されるのでしょうか。まず、不倫期間が数年に及んでいれば、「長い」といえることに異論はないでしょう。また、1年程度のケースでも「比較的長期間」として考慮されている判例があります。さらに、東京地判平成22年3月25日は「被告とAの不貞の期間は、被告が渡米するまで約5カ月に及んでいた」と増額要素として評価しているように思われます。ここからすると、不倫期間が5、6か月を超えてくれば「長い」と判断される可能性が高いと考えられます。 他方で、不倫期間が1、2カ月程度である場合には「短い」と判断されています。東京地判平成19年9月28日では「被告がAと交際していた時期は、2か月ないし3か月程度の短期間」、東京地判平成23年1月25日では「交際期間は1か月余りにとどまる」といった評価がされています。したがって、不倫期間が1~3か月程度であれば、「短い」と判断されると考えられます。 ■不倫行為の頻度や回数はどう影響する?これは、上記の不倫期間の長短と同様ですが、不倫行為の回数・頻度が多ければ慰謝料が高くなり、不倫行為の回数・頻度が少なければ慰謝料が低くなります。たとえば、東京地判平成25年12月4日は「本件の不貞期間は少なくとも8か月程度であり、原告宅におけるものを含めて、継続的に少なくとも20回程度の性交渉」と評価されています。また、岐阜地判平成26年1月20日は「被告とAは、平成24年1月10日から同年6月末ころまで本件不貞関係を継続し、本件不貞関係における性交渉は、1か月に少ないときで2、3回、多いときで4、5回くらいであり、本件不貞関係は同年6月末ころまで続いた」(性交渉は20回程度))と認定し、その回数を「多い」と評価して、慰謝料の増額要素としております。ここからすると、不倫行為の回数が10~20回を超えるようであれば「多い」と評価される可能性が高いと考えられます。もっとも、実際の性交渉の回数を、客観的な証拠で立証することは難しいですから、不倫期間が長いことや、性交渉に関するメール等のやりとり、その他の状況から推認することになるでしょう。その意味で、不倫行為の回数は、不倫期間の長短の問題と密接に関連することになります。他方で、不倫行為の回数が1~3回程度であれば「少ない」と判断されているようです(東京地判平成25年3月21日「不貞行為は1回にすぎない」、東京地判平成20年10月3日「肉体関係を持った回数は、合計3回にとどまる」等)。 ■不倫相手との間に子どもが出来ていた場合は?たとえば、不倫行為の結果、配偶者と不倫相手との間に子どもが生まれた、あるいは中絶したなどの事情は慰謝料の増額要素となるのでしょうか。結論から言いますと、不倫行為の結果、妊娠したという事情は(出産する場合でも中絶する場合でも)、慰謝料の増額要素となります。これは当然といえるでしょう。裁判例もこの点を厳しく非難し、慰謝料の増額要素として考慮しています。たとえば、東京地判平成16年2月19日は「被告は、Aとの肉体関係を継続して子を懐胎、出産し、以後も同人に生計を依存しているのであり、このように解消困難で恒久的な不貞関係の形成、継続に加担した点で被告の責任は軽視し難いものがある。」としています。また、東京地判平成21年4月16日では「被告は、Aに自身の子を妊娠させており(被告は、その妊娠自体、Aが望んだことであるかのように主張するが、仮にそれが事実だったとしても、不貞の関係にある男女の間柄で、あえて婚姻外の子の妊娠を望んだり、少なくとも避妊に十分な気を遣わないということ自体、非常識極まりないことというべきであるし、原告の心情を極めて害する行為というべきである。)、これら一連の行為が、夫としての原告の気持ちを著しく傷つけ苦しめ、また当然ながらその体面やプライドをも傷つけたことは明らかである。」としています。そして、この不倫相手との間に子どもができたという事情は、行為の悪質性、受ける精神的苦痛の甚大さから、一般的に慰謝料が高額になることが多いようです(東京地判平成15年9月8日(500万円)、東京地判平成21年1月26日(550万円)、東京地判平成22年4月5日(300万円)、東京地判平成24年4月12日(260万円)等)。 以上からも分かるとおり、不倫期間の長短や回数・頻度、不倫相手との間に子ができたかどうかという点は、慰謝料の金額の増減の考慮要素になり、その考慮の際には、各事案における個々の事情を総合的に考慮することになります。ですので、その点は、専門の弁護士に質問、相談された方がよいでしょう。 *著者:弁護士 伊倉吉宣(伊倉綜合法律事務所。離婚・男女問題をはじめ、労働トラブルや交通事故問題など幅広く取り扱う。)【画像】イメージです*Jacob Lund / Shutterstock
2017年02月05日不倫する男性の決まり文句(?)として「妻とは離婚するから」「夫婦関係うまくいってなくて」といった言葉を聞いたことがある(もしくは言ったことがある)方も、もしかしたらいるのではないでしょうか。不倫が発覚した際に中々無視できないのが「慰謝料」の問題かと思います。事案によって額は変わりますが、それでも決して安い金額ではないでしょう。そこで、今回は夫婦が不仲だった場合に、慰謝料は発生しないのか、もしくは安くなるのかといった点について解説していきたいと思います。*画像はイメージです:■夫婦関係が悪化・破綻している場合不倫(不貞)が行われた当時、一緒に暮らしているものの、ほとんど口を聞かないなど、婚姻関係が既に悪化していた場合には、不貞相手に請求できる慰謝料の金額は少なくなるのでしょうか。まず、婚姻関係が完全に「破綻」している場合には、そもそも不法行為が成立しないことになります。なぜなら、不倫(不貞)の場合の保護法益は「婚姻共同生活の維持という権利又は法的保護に値する権利」と考えられているところ、「破綻」の場合には、その保護すべき権利が存在しないといえるからです。そのため、不倫(不貞)の慰謝料請求の実際事案でも、不貞行為当時に、婚姻関係は既に破綻していたとの反論(弁解)がされることがよくあります。しかし、裁判所はその「破綻」の認定は慎重であり、まず「破綻」という認定はされません。よく考えてみれば、それはそうですよね。不倫をする場合、不倫相手には通常、嘘でも「うちの夫婦はうまくいっていない」などと説明するでしょうから、不倫相手からの反論としては「破綻していると思っていた」というのが多くなるでしょう。もっとも、そのような反論が簡単に通ってしまっては、不倫の事案の慰謝料請求が極めて困難になってしまうため、「破綻」の認定は慎重にならざるをえないでしょう。ですので、一般的に、夫婦関係の悪化、破綻寸前といったような状況は、不法行為責任を認めた上で、慰謝料の減額要素として考慮されることが多いです。なお、これに関連して、たとえば、夫に慰謝料を請求している妻にも不倫相手がいるような場合には、婚姻関係が円満ではなかったとして、慰謝料の減額要素として考慮されることになり、裁判例においても、そのように判断されています。 ■子どもの有無により慰謝料の金額は変わる?夫婦間に子どもがいるかいないかで不貞に基づく慰謝料の金額は変わるのか。不倫(不貞)相手に夢中になってしまい、家庭を顧みず、子どもを蔑ろにしているようなケースもありますが、そういった事情は慰謝料を増額する要素になるのでしょうか。結論からすると一般的に、夫婦間に幼い子どもがいることは慰謝料の増額要素となることが多いです。たとえば、東京地判平成15年9月8日は「原告とAとの間にも長女が誕生していて、夫及び父親としてのAの存在を必要としているのに、被告がこれを妨害している」としており、同種の裁判例は数多くあります。また、一般的に、夫婦が離婚した場合、子どもの親権者は母親と決まることが多いですが、夫側が子どもと一緒に暮らせなくなったことを踏まえ、「原告はA(妻)を失うとともに、同人との間にできた未成年の2人の子とともに家庭生活を営むことができなくなった。これにより、原告の受けた精神的苦痛は大きい。」と判示した裁判例もあります(岐阜地判平成26年1月20日)。他方で、子の存在を増額要素としている裁判例とは逆に、夫婦間に子どもがいないことや子どもが既に成人していることなどを慰謝料の減額要素としている裁判例も散見されます。これらからすると、夫婦間に未成年の子がいるかどうかという点は、慰謝料算定における極めて重要な要素といえるでしょう。 ■不倫している夫が妻に生活費を支払わなくなった場合たとえば、夫が会社員、妻が専業主婦(あるいはパート)という夫婦において、夫が不倫をし、不倫相手に夢中になってそちらにお金を使うあまり、家庭に全然お金を入れなくなったという場合、そうした事情は慰謝料の増額要素となるのでしょうか。これについては、その失われた生活費を返せ、ということはできないでしょうが、不倫が原因で生活費が入れられなくなったため、精神的苦痛が増大したとはいえるのではないかと思われます。すなわち、不倫が原因で生活費が渡されなくなったことは慰謝料の増額要素となりうると考えられます。上記と同様の事案で、夫及び不倫相手を訴えたケースにおいて、「被告1(夫)は、被告2(不倫相手)との不貞関係が深まるにつれて、原告や原告との間でもうけた2人の子ののもとへ帰宅することが少なくなり、しかも、その間、原告に対して十分な生活費等を渡さなかったというのであって、原告が長年にわたって精神的に極めて辛い日々を送り、また、その間の経済的困窮も著しいものであったことは、想像に難くない。」として慰謝料の増額要素としている裁判例があります(東京地判平成21年4月8日)。 上記のような各要素は、それが一つあるから例えば慰謝料が20万円上がるというわけではなく、そうした事情を総合考慮して判断されることにはなりますが、一般的には増額要素が多くある方が高額の慰謝料にはなると思われますので、事情を細かく整理することは重要かと思われます。ケースによって様々な事情があるでしょうから、どういった事情が慰謝料算定に影響するかについては一度弁護士に相談してみることをおすすめします。 *著者:弁護士 伊倉吉宣(伊倉綜合法律事務所。離婚・男女問題をはじめ、労働トラブルや交通事故問題など幅広く取り扱う。)【画像】イメージです*【Tig.】Tokyo image groups / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月02日Photo by 伊藤あきら京都大学法学部・京都大学法科大学院卒業後、4大法律事務所でM&Aや巨額な税務訴訟案件を始めとして有名企業や大企業などの案件にも携わってきた坂尾弁護士。事務所を構えている場所が銀座ということもあり、不倫や愛人関係に関するトラブルの相談にも多く関わっているそうです。そこで今回は坂尾弁護士に、愛人、不倫トラブルが起きてしまった場合の弁護士としてのアドバイスについてお伺いしました。坂尾 陽(さかお あきら) (アイシア法律事務所代表弁護士。京都大学法学部・京都大学法科大学院卒業後、四大法律事務所の1つ「森・濱田松本法律事務所」において、M&A、相続・事業承継、税務訴訟案件を主に担当。東京・銀座において独立してアイシア法律事務所を設立) ■愛人からの慰謝料請求を短期間で1,800万円も減額!?__銀座に事務所があるということもあり、不倫や愛人関係のトラブルに関する相談は多いと伺いましたが、具体的にはどのようなトラブルが多いのでしょうか。まずは一般的な不倫相手・浮気相手に対する慰謝料請求をしたい、又は慰謝料請求を受けたので減額をしたいという案件が多いですね。さらに当事務所で意外と多いのが愛人・不倫相手から慰謝料を請求されるケースですね。例えば、愛人から手切れ金として2,000万円という高額な慰謝料を請求された方から依頼を受けたことがあります。依頼者は結婚しており、愛人である女性とは不倫関係にありました。愛人である女性は依頼者との結婚を期待していたそうなのですが、最終的に別れることとなり、結婚に対する期待を裏切られたことから、依頼者に2,000万円を超える手切れ金を慰謝料として請求したのです。依頼者は慰謝料のことも含め、できれば奥様に知られることなく、この問題を解決したいという気持ちもあり、相談に来られました。__奥様に知られずに、というのはなかなか難しそうな話ですが……。実際にそのような相談は多いのでしょうか?相談に来られる、ほとんどの方がそうですね。奥様や会社、近所に住んでいる方に知られないよう、内密に解決してほしいという形で相談に来られます。もちろん相手の方の行動によるところが大きいため、絶対に知られないという確約はできませんが、できるだけ依頼者の意向に沿うよう対応しています。先に挙げたケースに関しては、奥様が関与することなく、200万円を慰謝料として払うことで話がまとまり、約1ヶ月という短期間の交渉で解決することができました。もちろん、淡々と交渉というわけではなく、相手の女性との粘り強い話し合いが必要ではありましたが、最終的には相手の女性にも納得していただくことができました。 ■不倫や愛人トラブルは当事者間での解決は難しい?__このようなトラブルの場合、やはり間に弁護士を入れることのメリットは大きいのでしょうか?メリットは大きいと思います。愛人、不倫関係のトラブルは当事者間で話し合っても、感情的なやり取りが多く、なかなか合理的な話し合いをすることが難しいです。また、請求する側は被害者意識が強いため、家族や職場にばらすと脅迫する又は暴力行為や自傷行為に及ぶ等のケースが少なくありません。第三者である弁護士を間に入れることで、話はまとまりやすく、解決するスピードは確実に早くなります。暴力や脅迫を受けた場合でも弁護士が間に入ることで冷静に話を聞いて貰うことができます。もちろん、簡単に話がまとまるわけではないですが、お互いの話をしっかりと聞いて、冷静に落とし所を探すことができる弁護士が間に入ることが重要ですね。__愛人、不倫トラブルを解決する際に、重視しているポイントなどはありますか?愛人、不倫関係のトラブルは、法律的にというよりも感情的に理解していくことがポイントだと私は思います。もちろん、依頼を受けている以上、私は依頼者の立場に立って考える必要はあるのですが、一方で相手方である女性の話や要望もしっかりと聞くようにしています。依頼者だけでなく、相手の女性の気持ちという部分も大事にしなければ解決が難しくなるからです。いきなり関係のない弁護士が話に入ってきて、ビジネスライクに対応されてしまっては、女性側としても素直に話を聞く気にはなれないと思います。__依頼者だけでなく、やはり相手の信頼も得る必要があるということですか?そうですね。相手からの信頼がなければ、私が話している内容の全てが依頼者にとって都合の良い話と捉えられかねません。例えば、「奥さんにバラしてしまったら、奥さんから慰謝料を請求されることになるかもしれません」と相手の女性に伝えたとして、信頼関係があれば、それを忠告として受け止めて頂けるかもしれませんが、信頼関係がなければ「奥さんにバレたら都合が悪いから、この弁護士はそんなことを言っているのだ」と受け止められます。私が正確な情報を提供したとしても、それがうまく生きるかどうかはやはり信頼関係が成立していなければ難しいと感じますね。__愛人、不倫関係のトラブルは解決するまで平均的にどのくらいの期間がかかるのでしょうか?ケースバイケースではありますが、一般的な不倫・浮気の慰謝料請求事案では3ヶ月程度が目安です。愛人・不倫相手からの慰謝料請求事案では、元々はお互いに愛情があるということもあり、だいたい1ヶ月程度でスピーディに解決することが多いです。もちろん話がこじれにこじれてしまったら、長くなってしまうこともありますが、早い段階で相談をしていただければ、解決も早くなります。先にお話しした通り、当事者間で解決しようとすると、かえって問題が大きくなってしまうケースがありますので、早めのご相談をお勧めします。 *取材協力弁護士:坂尾 陽(アイシア法律事務所代表弁護士。京都大学法学部・京都大学法科大学院卒業後、四大法律事務所の1つ「森・濱田松本法律事務所」において、M&A、相続・事業承継、税務訴訟案件を主に担当。独立しアイシア法律事務所を設立。現在はテレビ東京WBSワールドビジネスサテライトやFMうらやす「ときめきウィンド」の準レギュラーなど、メディアへの出演も積極的に行っている)*取材・文:伊藤 あきら(AFP、クラシックカメラアンドアンティークカンパニー株式会社代表取締役。同志社大学卒業後、日本生命相互会社、HIPHOPダンサー、税理士法人を経て、現職。会社経営の傍ら、フリーライターとしても活動している。オフィシャルサイト「いとうノート」)【画像】*伊藤 あきら妻に内緒で不倫相手とのこじれを決着したい…男女問題を弁護士に相談するメリットとは?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。妻に内緒で不倫相手とのこじれを決着したい…男女問題を弁護士に相談するメリットとは?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
2017年01月28日テレビをつければ連日のように、有名人の不倫が取りざたされている昨今。「ゲス不倫」なんて言葉も流行したように、不倫はもはやブームであるともいえるでしょう。もちろん、不倫は有名人だけのものではありません。私たち一般人の中にも、不倫の経験者は数多くひそんでいます。今回取り上げるのは不倫された妻たち、“サレ妻”が語るエピソードです。どこにでもいる平凡な妻だったはずの彼女たち。夫に裏切られ、傷ついた果てに、一体どんな行動を取ったのでしょうか。サレ妻たちが繰り広げた、世にも恐ろしい復讐劇の数々をご覧ください。●復讐レベル1:小遣い減額女遊びも、資金がなければ嗜むことができません。妻が家計の実権を握っている家庭では、夫への復讐と懲罰の意味を込め“小遣いの減額”をすることが多いようでした。『毎日必死で節約して夫の小遣いを捻出しているのに、そのカネを不倫に使ってたなんて絶対に許せませんでした。不倫が発覚したその場で、夫の財布からすべての現金とカードを没収 。小遣いは毎朝1,000円だけ、手渡しで与えることに。残金があればもちろん返してもらいました。貧乏な日々は惨めで情けなく、かなり堪えたようです』(40代女性/主婦/結婚16年)●復讐レベル2:慰謝料がわりに好きなものを買ってもらう小遣いの減額では飽き足らず、“慰謝料”を請求した妻たちもいます。『共感力が弱い、わが家の夫。私がどれだけ傷ついたか、必死で訴えてもあまり響いてないようでした。そこで、受けたダメージをお金に換算して請求することにしたんです。慰謝料がわりとして、ブランドものの服やアクセを数点要求。豪華ディナー、海外旅行も全額夫の持ち金から支払わせました 。金額という数字が出て、やっと私の受けたダメージの大きさが分かったみたいです』(30代女性/会社員/結婚7年)●復讐レベル3:ママ友と結束して不倫相手を失墜させた続いてはこちら。ママ友をうまく利用して復讐にのぞんだ、恐ろしい妻のエピソードです。『あろうことか、娘のお稽古の講師と不倫してたんです。相手は20代の未婚女性でした。でも夫が既婚者だって知っていた上で関係を持っていたんですから、若かろうが許されませんよね。夫はシメて反省させたのですが、女の方にも復讐してやらなきゃ気がすまなかった当時の私。同じお稽古に通っているママ友グループを味方につけることにしました。あるランチ会で、集まったママ友たちにすべてを打ち明けたんです。もちろん、お涙たっぷりに。元来、ゲスな話題が大好きなママ友たちのこと。誰もが私の話に食いつき、興味津々で聞いてくれました。講師が教え子の父と関係を持っていたという話は、地域のママたちにあっという間に拡散。そして数か月後そのお稽古スクールは閉鎖になりました 。後悔はしていません。というか、子持ち主婦のネットワークなめんなよ、という感じですね』(40代女性/主婦/結婚15年)●復讐レベル4:どんなことがあっても絶対に離婚しない絶望のどん底に突き落とされたサレ妻たち。苦悩のはてに、こんな結論にたどりつくこともあるようです。『どんなに望まれたって、絶対に離婚なんてしてやりません。正妻は私ただひとり。お相手は生涯“日陰の女”として生きていくことを余儀なくされるんです。何があっても妻の座はゆずらない 。これが私の復讐です』(20代女性/結婚3年)『発覚直後はハラワタが煮えくり返り、あらゆる復讐方法を考えたものです。でもね、分かったんですよ。最も強烈な復讐は、この夫と幸せな家族を再建し、夫婦円満に仲良く歩み続けていくこと だって。苦しく、心折れそうなときもありましたが、あれからもう15年。今は平和に家族の時を過ごしています』(40代女性/結婚22年)----------不倫された妻たちは被害者の立場ではありますが、いきすぎた復讐はNG。逆に訴えられてしまうケースもあるのだとか。めぐりめぐって自分自身が不幸にならないためにも、復讐心はほどほどにしておいたほうがよさそうです。そして世の夫たち、甘い罠にはくれぐれもご注意くださいね!●文/パピマミ編集部●モデル/福永桃子、藤沢リキヤ
2017年01月25日いつの時代も、恋愛に浮気や不倫はつきもの。いつも二番目になってしまう女性もいれば、いつも浮気してしまう女性もいます。もし、好きになった男性が奥さんや彼女を捨てて自分を選んでくれたらそれはすごく嬉しいことですが、本当に幸せになれるのでしょうか。略奪愛のメリットは?デメリットは?略奪愛で得られるもの略奪愛で得られるものにはどんなものがあるでしょうか?まず、 “好きな人” 、そして “達成感” や “自信” が考えられます。我慢していた期間が長ければ長いほど、"本命の座"と"束縛できる権利"を奪ったその達成感は計り知れません。何度も経験している人は、その度に女としての自信が増しているかもしれません。略奪愛で失うものでは反対に、失ってしまうものを考えてみましょう。・信頼関係まず大きなものに “友達” や “信頼” があります。今はSNSもありますので、きっと「乗り換えた男と奪った女」として知人友人の間で有名になるまでにそう時間はかかりません。噂されたり嫌がらせをされたりすることもあるかもしれません。結果として友達が離れていくこともあります。略奪の事実を知っている職場の人たちやご近所さんからは、確実に信頼を失うでしょう。・お金そして “お金” を失う可能性もあります。略奪された側から慰謝料を請求されてしまうケースです。結婚や婚約をしていなくても、夫婦のような同棲生活をしている場合にも、慰謝料を請求することはできます。ケースバイケースですが、慰謝料は50~200万円が相場だと言われていますので、借金を抱える可能性もあるでしょう。・目的や情熱さらに、“目標” や “ときめき”も失います。"奪う"という目標を達成してしまえば、もうその相手に魅力を感じなくなってしまうということは珍しくありません。「隣の芝生は青い」という言葉もあるように、人のものだから良く見えただけで手に入れてしまえば別に普通だった、ということもあります。いけないことをしているという背徳感からの高揚もなくなり、“何故こんな人が好きだったんだろう?”とフッと冷めて思うこともあるでしょう。今度は自分が“略奪される側”になってしまったとも考えられる略奪愛は、逆に“本当の幸せ”から遠ざかってしまうのではないでしょうか。
2017年01月23日立て続けにあった忘年会もようやく落ち着いてきた頃でしょうか。12月は「忘年会で帰りが遅くなる」というようなウソが成立しやすいため、浮気・不倫相手との時間が作りやすい時期で、興信所や探偵事務所でも「浮気調査」が増える時期だそうです。浮気や不倫だけでなく、色々な離婚の原因がありますが、今回は「浮気をした側」が離婚をしたいと申し出た場合、離婚理由として認められるのでしょうか?解説していきたいと思います。*画像はイメージです:■離婚ができる場合とその方法「まず、夫婦の合意があれば、いつでも離婚をすることができます。これを協議離婚といいます。夫婦の話合いでは離婚が合意できない場合には、裁判所に対して離婚を請求します。ただし、訴訟を起こす前に、まずは家事調停を経る必要があります。調停の場合にも、最終的には夫婦の合意によって離婚が成立することになります(調停離婚)。調停でも合意ができない場合には、訴訟を提起して一方的に離婚を求めることになります(裁判離婚)。裁判離婚が認められるためには、民法で規定する離婚事由のいずれかに該当することが必要となります。」割合としては、協議離婚の割合がかなり高く、離婚すること自体は話し合いで決まる人が多いようです。 ■浮気された側からの離婚浮気した側が、離婚したくないと言って話し合いで解決できないとき、浮気された側は裁判で離婚を請求できるのでしょうか。「浮気とは、一般的には、配偶者以外の異性との性行為を意味し、そのような行為は、離婚事由の一つである不貞行為に該当しますので、浮気された側の配偶者が裁判上訴えれば、離婚は認められることになります。」 ■浮気した側からの離婚では、浮気された側が離婚したくないと考えているとき、浮気した側から離婚を請求できるのでしょうか。「最高裁は、婚姻関係の破綻について責任のある者(有責配偶者)からの離婚請求は、原則として認めないとしています。そのため、浮気をした配偶者が離婚を請求したとしても、原則として、離婚は認められません。もっとも、最高裁は、(1)夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいること、(2)当事者の間に未成熟子がいないこと、(3)相手方配偶者が離婚により精神的、社会的、経済的に極めて過酷な状況におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえないような特段の事情が認められないこと、という3つの要件を満たせば、浮気をした配偶者からの離婚請求であっても認められるとしています。」(1)の相当の長期間とは、8年で認められた例や、9年8か月で認められた例がある一方、8年余の別居でも認められなかった例があります。浮気してすぐに別居して離婚を求めても認められないでしょう。 ■浮気した配偶者からの離婚、せめてお金を払ってほしいけど…離婚すると、配偶者ではなくなるので、法定相続人としての地位も失うことになります。したがって、遺産がもらえなくなりますが、相手に対して何か請求できないのでしょうか。「浮気(不貞行為)をされた側の配偶者は、浮気した配偶者及びその浮気相手に対して、慰謝料を請求することができます。慰謝料の額は、不貞期間、不貞回数、婚姻期間等によって決まります。不貞期間が長ければ長いほど、不貞回数が多ければ多いほど、婚姻期間が長ければ長いほど、慰謝料の額は高くなります。これまでの裁判例では、200万円から400万円の範囲で慰謝料の額が決定されています。」財産分与でも離婚後の生活維持が考慮される等、離婚によって生活が苦しくならないように制度が作られています。離婚割合自体は増えてきているものの、離婚が裁判で認められない可能性や、その後の金銭負担を考えると、浮気したからといって簡単に離婚できるとは限らないようです。 *この記事は2014年12月の記事を再編集したものです。*著者: 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)【画像】*よっしー / PIXTA(ピクスタ)
2017年01月02日こんにちは。アディーレ法律事務所の弁護士、篠田恵里香です。年末年始に車での帰省を計画している方も多いのではないでしょうか?車の運転と切っても切り離せないのは交通事故ですね。今回は、もしも事故に巻き込まれてしまったときに、 どのように対処すべきなのかということを詳しく解説させていただきます。●交通事故に遭った場合、まずしなければならないことは?交通事故に遭った場合、焦ってパニックになる方は少なくありません。まずは、相手の名前等を確認し、必ず警察に届け出る ようにしましょう。「事故直後は混乱していて大した痛みは感じなかったけれど、数時間たったら首の痛みが治らない」ということで病院通いになってしまう可能性もあります。少しでも体に異変を感じた場合は、“人損”扱い として報告し、すぐ病院に行くようにしましょう。●事故に遭ったときのNG行動急いでいるからと、その場を立ち去ったり、「このお金で許して」と言われその場で示談してしまうのはもってのほかです。たとえば、現場で10万円を渡された場合、「結構な金額」と感じて示談してしまいそうになるかもしれませんが、“むち打ち症で3か月通院した場合の慰謝料”は、法的には50万円超となりますし、これ以外に治療費もかかりますので全く足りません 。しかも、警察への報告を怠ると、交通事故証明書が発行されません。後から相手の保険会社に「治療費払え」と請求しても、事故はなかったとして応じてもらえない可能性があります。また、体に異変を感じながら「今日は仕事で忙しい」などと病院に行くのを先送りしてしまうのもご法度です。事故日から数日たってから病院に行った場合、“本当に事故によるケガなのか”があやふやになってしまい、これもまた保険会社から補償が下りない原因となります。なお、最終的に保険会社から提示される示談額は相当低額であることが通常 なので、示談をする前に一度は弁護士に相談してほしいですね。保険会社の提案をそのまま受け入れることもご法度です。●会社員の夫が休むことになったら収入を補償してもらえるの?会社勤めの方はもちろん、自営業・アルバイト等の仕事をしている方は、「仕事を休んで収入が減った分を補償してください」として、休業損害を請求できます。よく、「専業主婦は休業損害が認められない」などと言われますが、専業主婦であっても、掃除・洗濯・炊事等の家事に支障が生じた場合、“家事に○%の支障が出た”という割合に応じて休業損害を請求できる可能性があります 。その場合、“女性労働者の平均賃金”を基礎にして、割合と日数をこれにかけあわせる方法によって計算します。これも小さな金額ではないので諦めてはいけません。仮に後遺障害が残ったような場合は、慰謝料や休業損害に加えて“将来の仕事に影響が出るだろう”という『逸失利益』 を損害賠償請求することができます。●まとめ年末年始はせわしない時期ですし、路面凍結等による事故も発生しがちです。また、どんなに気をつけていても、もらい事故は避けられない側面があります。事故について“必ず知っておくべき知識”は少なくありません。事故に遭う前にしっかり知識をつけておくことはもちろん、万が一事故に遭ってしまった場合には、弁護士に相談し必要な知識を備えていただければと思います。●ライター/篠田恵里香(アディーレ法律事務所:東京弁護士会所属)●モデル/REIKO(SORAくん、UTAくん)
2016年12月29日*画像はイメージです:月14日、俳優の香川照之さんが離婚していたことが発覚しました。約2年間、代理人を立てて話し合いを続け、21年に渡る結婚生活を終えられたそうです。2年も話し合いを続けたとのことで離婚が難航したような印象がありますが、そもそも法的には離婚とはどのように進められるものなのでしょうか?三宅坂法律事務所の伊東亜矢子弁護士にお聞きしました。*取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。) ■約9割は当事者同士の話し合いによる協議離婚まず、離婚には以下の4種類があります。(1)協議離婚(2)調停離婚(3)審判離婚(4)裁判離婚「協議離婚は当事者双方の話し合いによって成立させるものです。厚生労働省の平成20年統計によると、離婚全体の87.8%が協議離婚です。」(伊東弁護士)約9割の離婚は夫婦の話し合いだけで成立しているということです。しかし、一方に離婚の意志がない場合や条件の折り合いがつかない場合など、当事者同士の話し合いでは解決が難しい場合もあります。「その場合、家庭裁判所に調停を申し立て、調停委員の意見を得ながら話し合いを行います。合意が成立すれば調停離婚となります。調停離婚の割合は9.7%となっています。調停では合意できない場合、裁判所が調停にかわる審判をするか(審判離婚)、離婚を求める当事者が裁判を提起することとなります。これが裁判離婚です(なお、前述の厚生労働省の統計では、協議離婚以外のものを併せて『裁判離婚』としています)。裁判の中で解決ができれば和解離婚となり、解決が難しい場合は裁判所が判決を下すこととなります。」(伊東弁護士)審判離婚の件数はごくわずか、裁判による離婚の割合は和解、判決合わせて2.4%だそうです。離婚のほとんどは協議離婚と調停離婚で成立していることがわかります。 ■もめそうな場合は弁護士によるサポートを香川照之さんは代理人を通して話し合いを続けたそうですが、弁護士に依頼したほうがいいのはどのような状況にある時なのでしょう?「一方当事者が離婚したくないと述べている場合や、条件面で争いがあるような場合は裁判所の手続きを利用した解決をはかる必要があります。調停、裁判は時間がかかり、特に裁判になると解決まで年の単位を覚悟する必要があります。弁護士に委任をする場合はその費用も要することとはなりますが、慰謝料、財産分与や親権などの条件については弁護士が関与した上で主張をしっかりと伝え、納得のいく解決を求めることが望ましいと思われます。」(伊東弁護士)離婚はしたものの慰謝料や養育費などの不払いトラブルに見舞われるケースも少なくありません。後々のトラブルを避け、すっきり離婚するためには、専門家によるサポートを検討するべきでしょう。 *取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。)*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。【画像】*TAROKICHI / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月24日12月に入り、イルミネーションが輝き、クリスマスが近づいてきたことを感じさせてくれます。今年の12月25日は3連休の最終日ということもあり、クリスマス絡みのイベント予定を入れているカップルやご家族も多いのではないでしょうか。クリスマス当日にはトナカイを先頭に、ソリに乗ったサンタクロースが街中の子ども達にプレゼントを配ってまわります。雪の降るに夜に鈴の音を響かせながら…とロマンチックなお話ですが、弁護士としては見過ごす訳にはいきません。なぜなら、サンタクロースの行為は様々な違法行為をしている気がするからです。そこで今回は、夢も希望もありませんが、一般的に言われている「サンタクロース」の5つの行動パターンとそれによって引き起こされる2つの事象について、犯しているかもしれない犯罪行為とは何か?また、それはどのような罪に該当するのかを紹介します。*画像はイメージです:①ソリで空を飛ぶ航空法により原則として飛行計画の承認が必要です。航空法97条は、航空交通管制圏、航空交通情報圏の空港等から出発し、または航空管制圏等を飛行しようとするときは、国土交通大臣から飛行計画の承認を受けなければならないことを定めています。自家用・事業用は問いません。なお、そもそもトナカイは航空法の規制対象である「航空機」に当たらないのではないかという疑問もあります。航空法では、「航空機」を、人が乗って航空の用に供することができる飛行機、……飛行船その他政令で定める航空の用に供することができる機器、としていますので、航空機に含まれる可能性はあるでしょう。 ②煙突からの侵入定番の侵入方法ですが、皆様の予想どおり、無断で入る場合は住居侵入罪となるおそれがあります。しかし、世間や少なくともその地域で、サンタクロース(あるいはサンタクロース役の人)が煙突から入ってプレゼントを置いていくことが一般的な慣習となっていたり、むしろ歓迎され、その家の管理者(通常は居住者である親)の黙示の承諾や招待があれば、住居侵入罪とはなりません。 ③外国から勝手に飛んできて入国入管法違反です。場合によっては、領空侵犯とされて自衛隊機がスクランブル発進することもあるかもしれません。サンタクロースは見つかり次第、入管法違反の刑事手続と、行政手続である強制退去措置を採られる憂き目に遭います。 ④トナカイで道路を走行自転車と同じようにルールを守れば、通行することは可能です。馬や牛、トナカイ、像といった動物に乗って通行する場合、トナカイ等の動物は道交法上の軽車両となり、自転車と同じ扱いとなります。トナカイによって引かれるそり(リヤカー)も自転車と同じ軽車両扱いです。自転車と同じということは、基本的に通行させることは適法です。ただし、各都道府県によって規制内容が若干異なりますが、例えば、京都府道路交通規則では、「牛、馬、めん羊等の家畜を道路に放し、または交通の妨害となるような方法でつないでおくこと」などは禁止されています。ちなみにトナカイから下りて引いている場合は歩行者として扱われます。 ⑤勝手にプレゼントを置いていく行為欲しいプレゼントならいいですが、欲しくもないものを置いていかれ、しかも、後日代金を請求されるような場合は、特定商取引法での送り付け商法(ネガティブオプション)に該当する可能性があります。この場合は、承諾しない限り、売買契約は成立せず、送付されてから2週間経過してもサンタが引き取りに来ない場合は、処分できます。サンタが無償でプレゼントを置いていく分には問題ありません。 ⑥朝起きたら欲しかったプレゼントと違っていたもちろん文句はいえません。心遣いに感謝しましょう。 ⑦小学生くらいになってサンタは演出だったと親に告白されたサンタの夢は壊されましたが、大人になってもっと大きな夢を自分で追いかけましょう。慰謝料等は請求できません。 *この記事は2014年5月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)【画像】イメージです*vvvita / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月23日お笑いコンビ・アンタッチャブルの柴田英嗣が、15日に放送された読売テレビ・日本テレビ系バラエティ番組『ダウンタウンDX』(22:40~23:40)に出演。自身の元妻と歌手のファンキー加藤のW不倫について語った。柴田は、元妻と加藤のW不倫の末に生まれた子供には「会います」と告白。スタジオから「えー!」と驚きの声が上がると、「自分の子供がいて、自分の子供と兄弟になっちゃってるから、自分の子供に会いたくて会いに行くと、ついてくるわけね!」と淡々と説明した。また、加藤から慰謝料1億円が支払われたという報道について「ウソですって!」と否定。「週刊誌読んで、事務所から連絡きて、『1億円支払われました』って。通帳確認したら、全然入ってない!」と報じられたときの状況を明かした。さらに、芸能リポーターの井上公造氏から「今年の騒動の中で、男性でダントツ、騒動でもうかったのは柴田さん」と言われ、ダウンタウンの浜田雅功が「ふざけんなよ!」とツッコむと、柴田は「それだけはちょうだい! でも実力もあるよ、絶対!」と主張した。
2016年12月16日前回記事「全ての不倫が慰謝料請求の対象? 不法行為成立の要件とは」では、不法行為の成立要件についてお話させていただきました。少々、抽象的なお話しだったと思いますので、もっと具体的なケースについて知りたいと思った方も多いかと思います。ですので今回は、4つの不倫のケースに関して裁判例上ではどのような判断が下されたのかをご紹介していきたいと思います。*画像はイメージです:■どのような行為が侵害行為と判断されるのか以下、不倫(不貞)相手をX、夫婦のうち、不倫をされた側(慰謝料を請求する側)をA不倫をした側をBとしてお話します。 1.ホテルにおいて裸で抱き合うこと〇これはかなり特殊な事例ではありますが、持病の糖尿病のために性的不能であったXが、Bとホテルにおいて裸で抱き合うなどしたケースです。このケースにおいて、裁判所は、性行為には至らなかったとしても、そのような行為は、原告の婚姻共同生活の平和維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害するものとしています(東京地判平成25年5月14日)。これは当然といえるでしょう。 2.手を繋いで歩くこと△これについては、肯定している裁判例、否定している裁判例、いずれもあります。まず、肯定例ですが、「狭い一室に男女が数日間にわたり同宿し、戸外に出た際には体を密着させて手をつないで歩いていたこと等からして、XとBとの間には肉体関係があったと認めるのが相当」とされています(東京地判平成17年11月15日)。他方、否定例は「Aは、関係者の目撃情報をいうが、仮に、関係者の目撃したBと一緒にいた女性がすべてXであり、Aの主張するようにBがその女性と手をつないでいたとしても、そのことから当然に不貞関係の存在が推認されるものではない」とされています(東京地判平成20年10月2日)。これらの裁判例を見ると、いずれも結局は肉体関係(後者は「不貞関係」としていますが、これは肉体関係を指しています)の有無を問題としており、それがあったかどうかの推認の要素として「手を繋ぐ」という要素を考慮しているに過ぎないようです。自分の夫や妻が他の異性と外で手をつないでデートをしていたら、かなりショックでしょうし、婚姻共同生活の維持を妨げるような行為、といっても良いと思われますが、裁判例上は、その手を繋ぐ行為やその他の事情から肉体関係があると推認できないと「侵害」とは認められないようです。つまり、単に手をつないでいるだけでは、肉体関係(やそれに類するもの)があるとまでは認められないため、その他の事情を組み合わせて肉体関係がある、と推認できるかがポイントになります。 3.内緒で密会する行為×配偶者に内緒でご飯に行ったり、デートしたりする行為については、不法行為を構成しないとされています(東京地判平成21年7月16日)。上記のように、手を繋いで歩くことが侵害行為といえない以上、これが該当しないのは当然でしょう。 4.「あいしてる」「大好きだよ」などの愛情表現を含むメールの送信△これについても肯定、否定いずれもあります。まず、肯定例は「このようなメールは、性交渉の存在自体を直接推認するものではないものの、XがBに好意を抱いており、Aが知らないままBと会っていることを示唆するばかりか、XとBが身体的な接触を持っているような印象を与えるものであり、これをAが読んだ場合、Aらの婚姻生活の平穏を害するようなものというべきである。」としています(東京地判平成24年11月28日)。他方で、否定例もありますので、「手を繋ぐ」という事情と同様で、メールそれ自体をもって「侵害行為」とすることはできず、メールの内容から、肉体関係(あるいは身体的な接触)があったといえるような場合に不法行為となるものと考えられます。そして、実際、メールの内容から肉体行為があったことが推認されたケースとして、「あの旅は本当に素敵なものでした」とのメール(東京地判平成22年1月28日)等があります。一般的には、宿泊を伴う旅行や性的交渉の存在を前提とした内容のものが記載されていれば肉体関係の存在が推認されるといえるでしょう。 以上からすると、肉体関係(性行為)以外は「侵害行為」と認定されづらい傾向にありますが、それに類似するような行為であっても、「侵害行為」とされていることがあり、また、手を繋ぐ行為や親密なメールの内容等から肉体関係があったものと推認できる場合には「侵害行為」とされていることが分かります。 *著者:弁護士 伊倉吉宣(伊倉綜合法律事務所。離婚・男女問題をはじめ、労働トラブルや交通事故問題など幅広く取り扱う。)【画像】イメージです*MonoLiza / Shutterstock
2016年12月08日今年も12月に入り、2016年も終わりを迎えようとしていますね。平穏無事に年を越すことができれば良いですが、12月は探偵事務所や興信所での調査が増加するという傾向にあるそうです。というのも、12月は「忘年会で遅くなる」といったウソが成立しやすく、浮気・不倫相手との時間が作りやすい時期であるからだそうです。パートナーが不倫した場合、不法行為になり、損害賠償請求(慰謝料請求)ができることが多いですが、全ての不倫が不法行為となるわけではありません。そこで、今回はどういったことが不法行為成立の要件として挙げられているのでしょうか、解説していきたいと思います。*画像はイメージです:■不法行為成立の要件とは不法行為とは、「故意または過失によって他人の権利・利益などを侵害した者は、この侵害行為(不法行為)によって生じた損害を賠償する責任を負う」というものですが、この不法行為が成立するための法律上の要件は次のとおりです。①:権利・利益の侵害②:損害の発生③:①と②の間の因果関係④:故意・過失(⑤:責任能力があること)不法行為が成立するためには、これらを満たす必要があるわけですが、不倫(不貞)の場合には、どのような事実がこれにあたるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。 不倫事案における「権利・利益」については、考え方がいくつかありますが今回は、「婚姻共同生活の維持という権利又は法的保護に値する権利」という考え方を念頭に置くことにします。次に「侵害(行為)」ですが、前回ご説明したように、法律上、「不貞行為」の典型的な行為は、性行為・肉体関係であり、これが侵害行為になることは明らかです。では、性行為・肉体関係がないと、「侵害行為」とはいえないのでしょうか。何が侵害行為であるかは、“何が侵害されるのか”、すなわち、先ほどお話した「権利・利益」から考えることになります。そうすると、婚姻共同生活の維持という権利又は法的保護に値する権利が「権利・利益」であるならば、「侵害行為」は婚姻共同生活の維持を妨げるような行為と考えるべきでしょう。少しわかりづらいですが、言い変えると、夫婦として(平穏に)生活を共にしていくことを妨げる行為のことです。実際、裁判例も「第三者が相手配偶者と肉体関係を結んだことが違法性を認めるための絶対的要件とはいえない」と述べておりますし、一方で、肉体関係がなくても「侵害行為がある」と判断している裁判例もあります。 *著者:弁護士 伊倉吉宣(伊倉綜合法律事務所。離婚・男女問題をはじめ、労働トラブルや交通事故問題など幅広く取り扱う。)【画像】イメージです*bedya / Shutterstock
2016年12月08日日本では約3組に1組の夫婦が離婚をすると言われています。離婚の際、子どもの親権や養育費、慰謝料など多くのことで揉めているケースが多いです。離婚するだけでも苦労するものですが、離婚後、実際に子どもと面会できるのか、養育費が払われるのか、といった離婚後の問題も多くあるのが現状です。離婚後の問題は多くあると思いますが、今回は「慰謝料が払われなかった場合」どういった対処すればいいのか、解説していきたいと思います。慰謝料について当事者同士で合意したに過ぎない場合には、まずは、調停や裁判を経て「債務名義」を取得したうえで、相手の財産(不動産、預貯金等)に対して強制執行する必要があります。すでに調停や裁判を経て、調停調書や判決等の「債務名義」を取得している場合には、当該債務名義に基づき、相手の財産に対して強制執行することにより、慰謝料を回収することができます。なお、慰謝料等についての合意について公正証書を作成し、「強制執行認諾文言」(慰謝料を支払わない場合には、直ちに強制執行に服することを承諾するもの)を入れておけば、判決と同様に「債務名義」となりますので、調停や裁判といった手続を経ずに、相手の財産に対して強制執行することができます。以下では、各財産ごとに強制執行の方法を説明します。 ■不動産から回収する方法相手が不動産を所有している場合には、「不動産強制競売」の申立てを検討することになります。もっとも、当該不動産に住宅ローン等の抵当権が設定されている場合、住宅ローンが不動産価格よりも高い場合(いわゆるオーバーローン状態)には、不動産の売却代金は、すべて住宅ローンの弁済に充てられてしまいますので、慰謝料の回収を図ることはできません。そのため、競売を申し立てるにあたっては、当該不動産に抵当権等の担保権がついているのか、ついているとすれば住宅ローンはいくら残っているのかを確認することが重要です。 ■預貯金から回収する方法相手が預貯金口座を保有している場合には、当該預貯金に対する「債権執行」の申立てを検討することになります。金融機関名と支店名さえ特定すれば、預金種目や口座番号等の情報が分からなくても、預貯金口座に対して債権執行をすることができます。もし、相手が有する預貯金口座が分からない場合というには、相手の住所地や勤務地周辺の金融機関の支店に的を絞って、債権執行の申立てをかけるという方法もあります。もっとも、離婚時においては、相手の預貯金の情報も明らかにになっている場合も多いでしょうから、相手がどの金融機関に預貯金口座を持っているのか全く分からないといった事態はあまり生じないでしょう。 ■給与から回収する方法相手が会社に勤めている場合、相手の会社に対する「給与債権の差押え」を検討することになります。ただし、差押えをすることができるのは、給与の4分の1に相当する部分だけです。給与債権の差押えをするためには、相手の勤務先の名称や所在地を把握しておく必要があります。 以上のとおり、相手が慰謝料を任意に支払わない場合、相手の財産から強制的に慰謝料を回収する方法はいくつかあります。しかしながら、相手が、上記のような財産を何も持っていないという場合には、残念ながら、請求する側としては、泣き寝入りするほかはないということになります。そうならないためには、慰謝料の支払いについて資力のある人に保証人になってもらうなどの措置を講じておく必要があります。 *この記事は2014年9月に公開されたものを再編集した記事です*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)【画像】イメージです*AH86 / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月07日photo by 編集部企業が個人情報を流出するという不祥事を起こすと、大きく報道されることの多い昨今ですが、つい先日も佐川急便が近畿大学に在籍する学生約100名の「名簿」を紛失したとして各種メディアで報じられました。現在のところ直接の被害は発生していないようなのですが、紛失した名簿には学生の氏名や住所、電話番号などが記載されていたため、悪用される危険性は非常に高く、紛失した佐川急便側の責任は重大であると考えられます。ただ、自分の個人情報は流出してしまったものの、実際に被害がない場合、流出させた側に損害賠償は請求できるものなのでしょうか。また、もし実際に被害があった場合にもどの程度の損害賠償を請求できるのでしょうか。今回の記事ではこれらの疑問点について民事法務に詳しいピープルズ法律事務所の森川文人弁護士にお話を伺いました。*取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。) ■名簿紛失した学生は佐川急便に損害賠償請求は可能?まず、今回の事案について、学生は佐川急便に損害賠償を請求することは可能なのでしょうか?「個人情報漏洩のケースでは、これまでの判例からみますと、実際に実害が生じない場合でも流出自体の慰謝料として一人当たり3万円程度が最高額で認められる場合はあります。実際に「個人情報を悪用された」場合については、その悪用によってどの程度損害が生じたかによって責任を追及できる限度は異なってくるでしょう。」(森川弁護士)実際の被害がない場合、請求できる金額はそこまで大きくないのですね。また、仮に損害があったとしても、どの位の損害賠償が行われるかは被害の大小によってケースバイケースになるようです。 ■個人情報が悪用された場合、責任は重くなる?現在のところ被害は確認されていないようなのですが、もし今回の紛失が原因で個人情報が悪用されてしまった場合、佐川急便が負うべき責任はより重くなるのでしょうか?「個人情報の紛失→その個人情報が悪用される→実際に損害が発生する、という因果関係が証明されることが前提となりますが、その紛失した情報が“悪用”されたことが原因で直接損害が発生した場合は、その額を請求できると思います。よって佐川急便が負うべき責任はより重くなると言えます」(森川弁護士)現状、まだ被害は確認されていないため仮定の話にはなりますが、もしも紛失した個人情報が悪用されてしまう結果となった場合、佐川急便の責任は重大化する事になりそうですね。 ■誰に対して損害賠償が可能になるのか?最後に、仮に今回のような個人情報流出の被害者になってしまった場合、誰に損害賠償を請求できるのでしょうか?「誰に請求できるかですが、まずは、その個人情報を悪用した人に対して損害賠償を行う事になります。ただ、それが誰なのか判明しないときに、今回の事件であれば流出元である佐川急便に対して損害賠償請求をできるかどうかということですが、上記で解説したように情報流出によって損害が発生したという因果関係を証明することができれば可能になると思います。」(森川弁護士)まず損害賠償請求をすべきなのは悪用した人物が先になる、というのは意外に感じる方も多いのではないでしょうか。ただ、個人情報流出被害の場合、悪用者を特定するのは難しいため、やはり森川弁護士の解説通り因果関係を証明した上で流出元に損害賠償請求を行うことが確実な方法だと言えるのではないでしょうか。 *取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)*取材・文:ライター松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。【画像】編集部
2016年12月04日「今夜は忘年会だから帰りは遅くなるね」…12月の週末ともなると、夫とのこんなやりとりが増えるかと思います。実は12月は探偵事務所や興信所で「浮気調査」が増える傾向にあるそうです。理由としては「忘年会で遅くなる」といったウソが成立しやすく、浮気相手との時間が作りやすい時期だからだそうです。というわけで、今回は配偶者が浮気(不貞行為)をしていた場合に、それを立証するために必要な証拠の集め方について、3つの代表的な方法を解説したいと思います。*画像はイメージです:■配偶者の不貞行為が発覚した場合の基本的な流れまず、配偶者に不貞行為があった場合には、離婚事由(民法770条1項1号)となるほか、配偶者及び不貞相手に対して、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)をすることができます。もっとも、不貞行為をした配偶者に対して離婚を申し立てたり、あるいは慰謝料を請求したりする場合、配偶者が自分の不貞行為を認めている場合でない限り、離婚を申し立てたり、慰謝料を請求する側が、相手に不貞行為があったことを証明する必要があります。そして、当該証明をするためには客観的な証拠が必要となります。相手に不貞行為があるといくら主張したとしても、それを裏付ける証拠がなければ裁判には勝つことができません。以下、私のこれまでの裁判の経験を踏まえ、裁判において不貞行為を立証するためには、どのような証拠が必要となるのかについて説明をしたいと思います。 ①配偶者と不貞相手との性交渉の様子を撮影、録画した写真、ビデオ配偶者が不貞相手との性交渉の様子を自分の携帯電話等で写真を撮影したり、ビデオを録画したりしている場合、当該写真やビデオ映像は、不貞行為を立証する直接的な証拠となります。そのような写真やビデオ映像があり、そこに映っている人物が配偶者であると特定さえできれば、それだけで不貞行為を立証することができるでしょう。 ②配偶者と不貞相手とがホテルに入っていくときの様子を撮影した写真配偶者と不貞相手が二人でホテルに入っていくときの様子を撮影した写真も、配偶者の不貞行為を立証するための重要な証拠となります。なぜならば、大人の男女二人が、単にそこで休憩するためだけにホテルに行くことは通常考えられないためです。すなわち、男女二人がホテルに入った、という事実から、ホテル内で性交渉が行われたということが合理的に推認されるわけです。問題は、そのような写真を入手する方法ですが、配偶者に気づかれずに、1日中配偶者のことを尾行し、不貞相手とホテルに入る瞬間を写真におさめることは、よほど時間と体力がある人でない限り、難しいでしょう。そこで、探偵を雇って、配偶者を尾行してもらい、配偶者と不貞相手がホテルに入る瞬間の写真を撮ってもらう、という方法が考えられます。もっとも、探偵を雇うためには相当な費用がかかりますので、たとえば、恋人同士がホテルに行きそうな時間帯(例:毎週金曜日の午後8時~午後10時まで)に絞って探偵に尾行してもらえば、通常よりも料金を低く抑えることができます。 ③配偶者と不貞相手との間のメール配偶者と不貞相手との間で、恋人同士がするような内容のメール「愛してるよ。」「今夜はどこで会う?」「次はいつ会える?」等のやり取りをしている場合には、当該メールも、不貞行為を推認する証拠となり得ます。 以上、不貞行為を立証するための代表的な証拠を3つあげました。もし、配偶者に対して離婚や慰謝料の請求をすることを検討している方は、上記のような証拠をそろえることが重要となってくるでしょう。 *この記事は2014年4月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)【画像】イメージです*astarot / Shutterstock
2016年12月02日家事の分担やお金の使い方など、一緒に生活するにあたり何かしらのルールを夫婦間で設けている家庭がほとんどかと思います。ルールが破られることなく円満に生活を送ることができれば何の問題もないのでしょうが、長年一緒に過ごしている以上、うっかりしていたり忘れてしまってルールを破ってしまうこともあるでしょう。ルールを破らないように、抑止力を持たせるために「浮気をしたら100万円を払ってね」といったルールを設けているご家庭もあるようです。この「浮気をしたら100万円」というルールですが、もしも一方が浮気をした場合は支払う必要があるのでしょうか?解説していきたいと思います。*画像はイメージです:■「婚姻契約」の効力について民法は、夫婦間の契約は、婚姻中、いつでも取り消すことができる、と定めています。他人間で交わした通常の契約には、このような定めはありません。つまり、夫婦間の契約の拘束力は、他の契約に比べて弱いものということができます。しかし、だからといって、契約に効力がないというわけではありません。原則として、契約を交わせば、どちらかが取り消さない限りは、夫婦間の契約は原則として有効です。また、法律上は「婚姻中」いつでも取り消すことができる、とされていますが、判例には、離婚に至らなくても夫婦関係が破たんしてしまった後は、取消が認められないとしているものがあります。破綻してしまえば、たとえ戸籍上は夫婦となっていても、実質的には他人同士と考えて、契約に対する拘束力も同様に考える趣旨といえます。 ■「浮気したら100万円」ルールは有効か?「浮気したら100万円支払う」というルールは、社会道徳に反しているような内容ではありません。ペナルティの「100万円」も特に法外な金額とはいえないでしょう。このように「浮気をしたら」という条件が成就することによって契約の効力が発生する契約は、「停止条件付契約」といわれるもので、一応は、有効と考えられます。ただ、「浮気」という言葉は抽象的なもので、どこまでの意味を含むのかについては、いざというときに夫婦間で争いとなる可能性もあります。例えば「性交渉をしたら」「キスをしたら」など、ある程度具体的に内容を詰めておく必要があるでしょう(但し、内容を詰める段階で夫婦間に軋轢が生じる可能性も否定できません)。 ■ルールを定めることの懸念浮気・不貞の中には、いわゆる火遊び程度の軽いものから、「家族を捨てた」ともいえる悪質なもの(長期間に及ぶ、生活費を入れない、婚外子が生まれる)まであります。不貞による離婚については、その内容によって、高額の慰謝料を請求できる場合も少なくありません。しかし、このような契約を結んでしまうと、どんなに悪質な事案でも、100万円しか受け取ることができない可能性も否定できません。個人的には、このようなルールを定めるのであれば、(1)婚姻契約で定める「100万円」が慰謝料とは異なるペナルティの意味を有するもので、浮気された方は別途慰謝料を請求できる、あるいは、(2)最低100万円を支払う、などと、場合によっては、もっと高額の請求をしうる余地を残しておくべきだろうと考えます。ただ、結婚しようという時点で、このような約束を求めると、かえって相手からの信頼を損なう場合もあり得ます。いずれにせよ、安易なルール作りは、かえって将来的な責任追及の機会を失う可能性もあることに、ご注意いただきたいと思います。 *この記事は2015年2月に公開されたものを再編集したものです。*著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)【画像】*わたなべ りょう / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月01日【ママからのご相談】数か月前から夫がスマホを肌身離さず持ち歩くようになり、帰宅時間も遅くなり始め、怪しいと感じていたところ、友人から「偶然見つけてしまった」と夫と若い女性がビジネスホテルから二人で出てくる場面の写真が送られてきました。そこで夫を問い詰めましたが、夫は「浮気なんかしていない。ホテルへは打ち合わせのために入っただけだ」と言い張るのです。スマホを確認したところ、「今日楽しかった♡ありがとう♡♡」「また2人でご飯に行こうね♡」などと仲が良さげな内容は残っていたのですが、決定的な内容はありませんでした。私は不倫だと思うので夫とは離婚して慰謝料をもらいたいと思っていますが、証拠がこれだけでは難しいのでしょうか?●A. 裁判で証拠として使えますが、それだけでは弱いかもしれませんご相談ありがとうございます。アディーレ法律事務所弁護士の正木裕美です。夫に女性の影が見え隠れしても、決定的な証拠がないと言い逃れされてしまうので、難しいですよね。今回は、離婚して慰謝料をもらいたいとのことで心が固まっておられるようですが、同じような悩みで対応を迷っている方も、今後のためにどうしておくべきか知っておくのはプラスかもしれませんね。まず、そもそも法律での不倫は『不貞行為 』といい、簡単にいうと、配偶者以外の異性と自分の意思で性的関係を持つことを意味しています。ですので、裁判で不貞行為と認めてもらうには、食事やデート、キスだけでは足りず、性的関係があったとズバリ分かる証拠か、その可能性が極めて高いと思われる証拠が必要です。今回は、不貞行為を証明する証拠についてご説明します。なお、不貞行為は離婚原因の1つとはされているのですが、裁判では不貞行為があった=必ず離婚が認められる、というわけではありません。それぞれの夫婦や家族の状況に照らし、夫婦関係修復の可能性があれば離婚が認められなかったり、逆に、ハッキリ不貞が原因とはいえなくとも、いろいろな婚姻を継続しがたい重大な事由があり、夫婦関係が冷め切って修復できない と判断されたりすると離婚が認められることもありますので、詳しくは個別のご相談をオススメします。●裁判で証拠として使えるものってどんなもの?さて、裁判ではこれを出せば不貞行為を認めます、と法律で定めているわけではありません。今回送られてきた写真や女性とのやりとりのメール、手紙、レシート等の物証のほか、人の証言も証拠になり、あらゆるものに証拠になる可能性があります。ズバリ性的関係を写した写真があったり、現場を押さえることができたりするのはあまり多くはありませんから、通常は、一般的に「関係を持っているよね 」と考えることができるいくつもの証拠を提出して、不貞行為を証明することになります。●ホテルから出てくる写真は有力な証拠になる!?たとえば、ラブホテルは関係を持つために行くことが多い場所で、仕事をしに行く場所ではないのが通常です。ラブホテルへの出入りの写真やレシートなどに日時が記録されていると、滞在時間が関係を持つに十分な時間だったとすれば、通常は不貞行為があったと認められる可能性が高い証拠の一つといえます。今回のようにビジネスホテルから出てくる写真があったからといって、滞在時間が不明ですし、客室には入らずに喫茶店や打合せスペースで打合せをすることは考えられますから、ラブホテルより性的関係を持ったとは言いにくく、それだけで有力な証拠とは言いにくいでしょう。ですので、夫はその日休みで仕事がなかった、会社が近くわざわざホテルに行く必要性がなかったのに何度もホテルに行っている、女性が仕事関係者ではない、2人で宿泊や旅行をしたレシート等がある、同じ女性と他の場所で通常の仕事以外の時間に何度も会っている写真やメールがある、などさまざまな証拠が必要になるでしょう。●怪しいメールのやり取りは?女性とのデートをうかがわせるメールのやりとりは、これだけでは友人かもしれない女性と食事をしたことしかわかりません。夫婦間で”他の異性と二人きりで食事も浮気”と決まりがあったとしても、法律上は異性の友人と食事をしていても不貞行為ではない 以上、これだけでは証拠としては有力とはいえません。他の疑わしいと思われるメールのやりとりや写真、手紙等があり、何度も仕事ではない時間にこの女性とホテルに行っている、何度も自宅に出入りしている等と証明できるのであれば、不貞行為と認められる可能性は高くなりますので、他の証拠も集めることが大切ですね。●まとめ着信履歴やメール、SNS等のやりとりがあると不倫の証拠になると思われがちなのですが、必ずしもそうだとは限りません。しかし、一つひとつの証拠としては強くない証拠だとしても、いくつもの証拠を合わせる ことで、関係を持っていたと証明できる可能性は十分にあります。不貞行為に限らず、大切だと思っていた証拠が裁判では大きな意味を持たず、一方意外な証拠が重要だったということもあります。その時点では証拠が足りなくても、どういう証拠を集めるかという観点でのお話もできると思いますので、証拠になるかならないかの自己判断はせず、関係するものをまとめて持って、まずは弁護士に相談されるといいと思います。●ライター/正木裕美(アディーレ法律事務所:愛知県弁護士会所属)●モデル/藤沢リキヤ、福永桃子
2016年11月27日*画像はイメージです:今や3組に1組が離婚するといわれるほど離婚は身近なものですが、離婚後にトラブルが起こるケースが少なくありません。中でも多いのが養育費や慰謝料などの金銭問題です。特に子の養育費や面会交流に関しては、離婚時に取り決めを行っているケースが6割ほどに留まり、後にトラブルとなることがあります。離婚時にはどのような項目について取り決める必要があるのでしょうか?和田金法律事務所の渡邉寛弁護士にうかがいました。*取材協力弁護士:渡邊寛(和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。個人事案は子どもいじめ事件から相続争いまで、企業事案は少額の債権回収から渉外買収案件まで、あらゆる案件に携わる。) ■離婚時に特に決めておくべきこと4選(1)子の親権者(2)子の養育費(3)財産分与(4)慰謝料「夫婦間の話合いで離婚する協議離婚の際、子がいる場合は、親権者を決めて離婚届に記載しないと届けが受理されません。そのため、離婚するために法的に必須な合意事項は、離婚することと未成年の子の親権者ということになります。他に、子の養育費、財産分与、慰謝料になります。やはりお金が絡むことはトラブルになりやすいです。」(渡邉寛弁護士)これらを決めるにあたっては、どのように話し合いを進めるべきでしょう?「トラブルになったり不満を感じたりしやすいのは、一方が優位に話を進めて本音を言えない場合や、離婚を急いだり知識がなかったりすることで不利な条件を受け入れてしまう場合などです。疑問や不安があれば、弁護士に相談されることをお勧めします。養育費、財産分与、慰謝料などは、標準的な算定方法や相場がありますし、疑問や不安が解消されれば必ずしも弁護士を代理人に立てないでもご本人で話し合いを進められることもあります。話し合いが難航している時に、親族や知人・友人等の第三者を話合いに立ち会わせることは、かえってこじらせることも多く、あまりお勧めしません。」(渡邉寛弁護士)専門的な見地からアドバイスや交渉をしてくれる弁護士に相談してみるのは、後々のトラブルを防ぐために有効でしょう。 ■取り決めを確かなものにするために取り決めをしても、相手に反故にされてしまうこともあります。これを防ぐためにしておくべきことは何でしょうか?「他の契約と同じで、離婚条件は、書面(離婚協議書)で明らかにしておくことが望ましいです。また、離婚後、義務者の側が財産分与や慰謝料の支払いを渋ることはよくあります。これらは離婚と同時に支払いを受けてしまうのが1番です。」(渡邉寛弁護士)なるほど、離婚時にすっきり支払いが終われば後腐れはありませんね。「養育費や財産分与・慰謝料の分割払いなど将来の支払いがある時は、離婚協議書は公証役場で公正証書にしておくのが効果的です。公正証書の大きなメリットとして、強制執行認諾文言の条項を入れておくと、不払い時に、裁判をせずに強制執行(銀行預金や給与債権の差押えなど)をすることができます。面会交流など非金銭的な条件は対象になりませんが、これももちろん、公正証書でも離婚協議書の内容として記載すべきです。」(渡邉寛弁護士)お互い冷静に話し合い支払い等を済ませた上で円満に離婚できればそれに越したことはありませんが、離婚という局面ではそうもいかない場合もあります。そんな時こそ、後々トラブルにならないよう知識と法的な備えが必要なのです。 *取材協力弁護士: 渡邊寛 (和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。東京築地を拠点に、M&A等の企業法務のほか、個人一般民事事件、刑事事件も扱う。)*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。【画像】*sasaki106 / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月27日彼氏や彼女が浮気をした場合、怒りを覚えたり悲しんだりする方が多いと思います。実際に結婚をしていて、婚姻関係にある場合は、配偶者に慰謝料を請求できることは一般的に知られているかと思いますが、果たして、婚姻関係にない、ただの恋人が浮気をしていた場合は、慰謝料を請求できるのでしょうか?浮気した恋人から慰謝料がもらえるのか、和田金法律事務所の渡邊寛弁護士に伺いました。*取材協力弁護士:渡邊寛(和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。個人事案は子どもいじめ事件から相続争いまで、企業事案は少額の債権回収から渉外買収案件まで、あらゆる案件に携わる。) Q.恋人が浮気していた場合、慰謝料請求はできる?(1)できる(2)できない*画像はイメージです:(2)できないまず、夫婦における不貞行為が慰謝料請求の対象となるのは、夫婦間に法律上の貞操義務があるからです。配偶者の不貞という不法行為に対して、慰謝料を請求することができるのです。しかしながら、「交際」は法律上の契約ではないため、自由恋愛には貞操義務が生じません。つまり浮気は不法行為に当たらないのです。だからいくら恋人に肉体関係を含む浮気をされても、慰謝料を請求することはできません。ただし、婚約していたり長く同棲していて実質的に夫婦同然の内縁関係であったりした場合は、法律上貞操義務が認められます。その場合は恋人への慰謝料請求が認められる可能性があります。 *取材協力弁護士: 渡邊寛 (和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。東京築地を拠点に、M&A等の企業法務のほか、個人一般民事事件、刑事事件も扱う。)*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)【画像】*ankomando / Shutterstcok
2016年11月25日DVの相談件数も年々増えてきており、内閣府男女共同参画局が平成28年9月16日に公開した、「配偶者暴力相談支援センター」への相談件数は年間で10万件を超えています。DVと言えば、男性から女性に対して振るわれる暴力を思い浮かべる人が多いかと思いますが、女性から男性に対して行われる暴力も決して少なくありません。この、女性から男性に対して行われるDVを逆DVとでも呼ぶのでしょうか。今回は、その逆DVの被害にあった際にするべきことについてご紹介したいと思います。*画像はイメージです:■夫のDV被害特有の問題点夫がDV被害者の場合、妻のDV被害に比べて、被害が明らかになりにくいという問題があります。もちろん、妻が被害を受けている場合も、他人に相談できずひとりで問題を抱え込むケースは少なくありません。しかし、近年は女性に関しては公的な支援が浸透してきたこともあり、そのような機関や周囲の人たちに相談をする女性も増えてきたようです。これに対して夫の側は、おそらく、そもそも女性である妻から暴力を受けているという事態を、男性として恥ととらえる傾向が強いといえるでしょう。また、「家庭も満足に仕切れない男がろくに仕事などできるわけがない」などと見られる可能性もあり、勤務先での立場が悪くなると考える傾向も強いようです。そのため、周囲に相談できず、被害に耐え忍ぶケースが非常に多いといえます。写真や録音などの証拠が残っているケースも極めて少ないため、夫のDV被害は明らかになりにくいといえます。また、これらの問題をクリアして調停や訴訟で離婚の手続をとることが可能な場合でも、夫と妻の間の経済格差から慰謝料を妻からとることが難しいといった問題があります。養育費や財産分与をするとなると、被害者は夫であるにもかかわらず、離婚によって妻の側が経済的に得をするケースも少なくありません。離婚に至っても、夫の側には不公平感が残る結果になってしまうのです。 ■DVを受けたらすべき対策やはり、一般的には、夫の場合、「女である妻から一方的に暴力を受けている」という主張について、疑いを持たれやすいことは否定できません。ですから、暴力を受けて怪我をした場合には、必ずその状況を写真にとっておく、キレ始めた妻の状況などを明らかにするために、途中からでもいいので可能な限り録音する、暴力を受けたら、そのことを日記やメモにしてリアルタイムで残しておく、病院にいて診断書をとっておく、など、マメに客観的な証拠を残しておくことが重要ではないかと思います。そして、離婚の手続については弁護士に、身辺の安全を確保するためには警察や公的な相談機関などに相談することが必要です。慰謝料をもらえなくても、実質的に慰謝料相当分を考慮した条件で離婚する(例えば財産分与を調整する)ことも、状況次第で可能になることもあります。 ■恥ずかしがらずに相談することが第一歩男性のDV被害を幅広く救済するためには、被害を受けている男性ひとりひとりがその被害を申告・相談することが第一歩となります。被害男性の声がもっと広がれば、男性のDV被害は恥ずかしいことではなく、被害を受けたことを前提とした条件で離婚することも徐々に可能になっていくのではないかと思います。 *この記事は2015年9月に公開されたものを再編集したものです。*著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)【画像】*けいぞう / PIXTA(ピクスタ)【参考】内閣府男女共同参画局-配偶者からの暴力に関するデータ
2016年11月24日「あなたのご主人、他にも不倫相手いるわよ」不倫が発覚しただけでもショックなのに、他にも不倫相手がいると知ったらどれほどの衝撃なのでしょうか。不倫の際は慰謝料が争点になることが多いですが、今回は、他にも不倫相手がいた場合は慰謝料の減額要素になるかについてご説明したいと思います。 ■他にも不倫相手がいるとの反論不倫相手に対して慰謝料請求をした場合、「A(配偶者)には、自分の他にも不貞相手がいる。自分はそのうちの一人にすぎない。」などと弁解をしてくることがあります。では、こうした事実は、慰謝料の減額要素となるのでしょうか。この点、自分以外にも婚姻共同生活を破壊するような行為を行っている人物がいるので、婚姻関係が悪化した原因は、その不倫相手だけではないとも考えられます。そうすると、慰謝料の減額要素と考えてもよさそうです。こうした事実を減額要素として考慮したと思われる裁判例もあります(東京地判平成25年4月17日「A(配偶者)は、数年の間に、被告との関係を含め、複数回、女性と不貞関係になっていた。」)。他方で、慰謝料の減額要素とはならないと判断する裁判例もあります(東京地判平成15年11月6日「▲(もう一人の不貞相手)の行為は、本件婚姻関係の破綻をもたらしたA(配偶者)の行為を、原告に対する一連の不法行為と見るとき(被告とAと▲との間には当然ながら意思の連絡はないし、原告の主観面にも明白となったのは、Aと被告との不倫行為発覚後であるが)、客観的にはその一部といえるから、Aを介して、被告の行為とも共同不法行為の関係にあるものということができる。」、ここで出てくる“共同不法行為”とは、要するに、複数の不倫相手が一緒に(協力して)婚姻関係を破壊するような行為を行ったということです。そして、通常、この“共同不法行為”が成立するためには、意思の連絡(2人の間で、一緒にこういうことをしようと意思疎通を図ること)が必要と考えられておりますので、それがない、こうしたケース(不倫相手同士では通常意思連絡などないでしょう。)で“共同不法行為”を認めるのは相当特殊です。これはおそらく、“そのような弁解を認め、慰謝料を減額させるべきではない”、という価値判断に基づいたものだと思いますが、その法律構成には疑問がないとはいえません。裁判所においても、この点は見解が定まっていないようですので、減額要素となるのか、ならないのかは判然としないのが正直なところです。 *著者:弁護士 伊倉吉宣(伊倉綜合法律事務所。離婚・男女問題をはじめ、労働トラブルや交通事故問題など幅広く取り扱う。運営メディアに、「弁護士監修による不倫・浮気の専門サイト」、「未払い残業代無料請求ガイド」がある。)【画像】イメージです*Anchiy / Shutterstock
2016年11月23日11月22日は「いい夫婦の日」ですが、世間では離婚のニュースの方が関心を集めているようです。11月20日、フジテレビの秋元優里アナウンサーが、同局系列の番組『ワイドナショー』に出演。夫である同局の生田竜聖アナウンサーとの関係について、別居状態であること、および離婚協議中であることを明かし話題となっています。好きな人と一緒になる、つまり結婚して夫婦になるのは簡単ですが、このニュースの例のように、結婚生活において相手が嫌になったからといって簡単に離婚できるわけではありません。*画像はイメージです:まず、結婚しようとする男女に結婚の意思があって、役所に婚姻届(証人2人の署名捺印が必要)を提出しさえすれば、法律上有効に結婚することができます。離婚しようとする場合も、離婚について双方合意のうえであれば、役所に離婚届(証人2人の署名捺印が必要)を提出すれば、有効に離婚することができます。これだけで済めばよいのですが、なかなかスムーズに離婚できないことも多々あります。 ■離婚がスムーズにできない法的な理由とは?夫婦の一方が離婚を求めても、他方がそれを拒否した場合には、法律上の離婚事由(不貞行為やDV等)が認められない限り、離婚をすることはできません。そして、法律上の離婚事由があるかどうかは、客観的証拠によって立証されなければなりません。法律上の離婚事由が認められる場合であっても、離婚にあたっては、財産分与や養育費について決めなければなりません。もし、当事者間で合意できない場合には、最終的には、審判や判決によって決定されることなります。また、夫婦の間に未成年の子どもがいる場合、どちらが親権者となるのかについて揉める可能性があり、当事者間で合意できない場合には、やはり、最終的には、審判によって一方が親権者と指定されることになります。さらに、不貞行為やDVがある場合には、慰謝料支払いの有無についても揉める可能性があります。 以上のように、相手が離婚を拒否した場合には、法律上の離婚事由がない限り離婚することはできず、離婚事由がある場合であっても、財産分与や養育費、未成年の子どもの親権、慰謝料等で揉める可能性があるのです。 *この記事は2015年2月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)【画像】イメージです*Yoshi / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月21日*画像はイメージです:不倫が発覚した際に争点になることが多いのが「慰謝料」。今回は、不倫をしている夫が不倫相手に対して多額のプレゼントをしたり、多額の食事をおごったりしていた場合、妻が請求できる慰謝料の金額は上がるのかどうかご説明したいと思います。 ■不倫相手が得た経済的利益は慰謝料の増額要素になると考えられる「愛人関係」とか「妾関係」という言葉からイメージされる典型例は、自分が女性、配偶者が男性、不倫相手が女性という場合だと思いますが、このように不倫相手が女性のケースでは、男性からお金をもらったり、プレゼントをもらったり、家を買って(借りて)もらったりと何かしらの経済的利益を得ていることが少なくありません。では、こうした事情は、慰謝料の増額要素となるのでしょうか。この点、法律上、夫が稼いできた給料でも夫婦の財産となりますので、そのお金が不倫相手に使われる、というのは本来夫婦で使えるはずのお金が減っているため、妻にとってマイナスなことであるのは間違いないでしょう。とはいえ、その不倫相手のために使ったお金がそのまま損害となるわけではありません。しかし、損害に直接繋がるものではないにしても、こうした事実(不倫相手が経済的利益を得ていたこと)は、原告の精神的苦痛を増大させるものであるとして、慰謝料の増額要素となると考えられております。 ■実際にはどのような判例があるのか裁判所もそのような事実がある場合には、慰謝料の増額要素として考慮しているようです(東京地判平成21年6月10日「本件では、Aが、被告との交際中に総額1,000万円程度の支出をしていることが認められるが、仮にこれが夫婦財産を減少させる行為であり、原告の財産分与額に影響を与えることがあるとしても、その経済的不利益自体が、ただちに本件不貞行為に基づく損害といえるものではない。ただし、被告は、Aが自己と交際する中で多額の金員を支出していることを十分認識しながら交際を続けており、そのことにより、原告がさらなる精神的苦痛を被ったことも否定し得ない。その意味においては、上記事情についても、原告の慰謝料額を算定する際の一事情として考慮されるべきである。」)。 結論としては、不倫をしている夫が不倫相手に対して多額のプレゼントをしたり、多額の食事をおごったりしていた場合、妻からの請求できる慰謝料の金額は、基本的に上がると考えて良いでしょう。ただし、個々の事情で判断される部分ですので、詳細は専門の弁護士のご相談いただければ幸いです。 *著者:弁護士 伊倉吉宣(伊倉綜合法律事務所。離婚・男女問題をはじめ、労働トラブルや交通事故問題など幅広く取り扱う。運営メディアに、「弁護士監修による不倫・浮気の専門サイト」、「未払い残業代無料請求ガイド」がある。)【画像】イメージです*w/b / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月20日*画像はイメージです:不倫トラブルの際に争点となることが多いのが、“慰謝料について”です。慰謝料の額を決める際には様々な要素を考慮して決定するのですが、どのような要素があると不貞行為による慰謝料が高くなったり、低くなったりするのでしょうか。今回は“婚姻期間の長短”は慰謝料にどのような影響を与えるのか説明していきたいと思います。 ■婚姻期間の長さによって慰謝料は増減するの?婚姻期間の長さは慰謝料の算定・考慮要素になるのでしょうか。一般的に、婚姻期間が短いと慰謝料の減額要素になり、婚姻期間が長いと慰謝料の増額要素になると言われています。すなわち、結婚後すぐに不倫(不貞)されるケースよりも、長年連れ添った妻・夫に裏切られるケースの方が、慰謝料は大きくなるということです。この点、結婚してすぐ、というのは愛情も一番大きいでしょうし、その幸せな時期に裏切られるというのは、それはそれで相当な精神的ショックを受けるものであることは間違いありません。ですが、不倫(不貞)の場合の保護法益は「婚姻共同生活の維持という権利又は法的保護に値する権利」であると考えられているようですので、それを前提とすると、婚姻期間が長い場合にはその長年平穏に過ごしてきた家庭を壊されるわけで、権利侵害の度合いが大きい(精神的苦痛が大きい=慰謝料の増額要素)、という理解になるのだと思われます。 ■婚姻期間が短い・長いって具体的にどれくらいの期間?そして、具体的には、婚姻期間が3年以下の場合には「短い」と判断され、慰謝料の減額要素とされることが多いようです(東京地判平成20年10月3日「本件不貞行為が開始された当時、原告とAの婚姻関係が約2年半程度にすぎなかった」、東京地方裁判所平成21年3月27日(3年)、東京地判平成23年2月24日(1年9カ月))。他方で、婚姻期間が15年を超える様な場合には、「長い」と判断され、慰謝料の増額要素とされることが多いようです(東京地判平成16年2月19日「Aとの約19年に及ぶ婚姻関係の破綻を余儀なくされた原告の精神的苦痛は想像に難くない」、東京地判平成24年3月29日(15年)、東京地判平成19年10月17日(20年))。 以上、いくつかのケースをご紹介しましたが、婚姻期間の長短という点については、婚姻期間が長い場合の方がその権利侵害の度合いが大きいとして、慰謝料の増額要素となる点にも注目です。また、婚姻期間が短いほど愛情も大きいために、慰謝料が高くなると考えている方もいらっしゃいますが、こちらは誤解されがちですので、注意が必要です。他にも慰謝料の算定の基礎とすべき項目が多々ありますので、気になることがございましたら、専門の弁護士に相談されることをおすすめ致します。 *著者:弁護士 伊倉吉宣(伊倉綜合法律事務所。離婚・男女問題をはじめ、労働トラブルや交通事故問題など幅広く取り扱う。運営メディアに、「弁護士監修による不倫・浮気の専門サイト」、「未払い残業代無料請求ガイド」がある。)【画像】イメージです* aslysun / Shutterstock
2016年11月18日*画像はイメージです:どのような要素があると不貞行為による慰謝料が高くなったり、低くなったりするのか、と疑問に思ったことがある方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、誤解されている方が多い、“有名人やお金持ちが不倫をした場合、払わなければならない慰謝料も高額になるのか?”こちらに関して解説していきたいと思います。 ■慰謝料請求の金額算定における大前提不貞行為について不法行為が成立し、損害賠償請求(慰謝料請求)が認められるとして、その金額をどのように算定するのでしょうか。また、裁判などにおいては、どのような点が考慮されるのでしょうか。なお、ここで取り上げるのは、あくまで裁判となった場合(あるいは、それを見越して交渉をする場合)に考慮される要素ですので、当事者間で合意すれば、そうした要素に関係ない慰謝料額(例えば、有名人等であれば何も増額要素がないケースで数千万円、数億円等の慰謝料など)になることもあります。 ■当事者の社会的地位・収入・職業は慰謝料額に影響する?まず、不倫(不貞)を行った人が、社会的に地位がある人であったり、お金持ちである場合には慰謝料額が高額になったりするのでしょうか。この点は、よく誤解している人がいますが、結論から言えば、原則として、社会的地位や収入状況などは慰謝料の算定要素にはなりません。つまり、社会的地位があろうと収入が多かろうと、それだけで慰謝料が上がるということはまずありません。これは、よく芸能人などが高額の慰謝料(数億円、数千万円など)を払っていることから誤解されているのだと思いますが、それは当事者が大ごとにするのを避けるために任意で支払っているに過ぎず、仮に裁判になればそのような金額は認められません。実際、裁判所も、慰謝料の算定にあたって、こうした事情はまず考慮しておりません(東京地判平成23年12月28日「原告は、慰謝料額の算定において被告の現在の役職(社会的地位の高さ)や財力を考慮すべきであると主張するが、これらの被告の属性に関する一般的事情は、上記不法行為により原告に生じた精神的損害とは無関係であるから、慰謝料額の算定において考慮することはできない」)。 ■職業が慰謝料増額要素になる場合も…しかし、ごく稀に当事者の職業が慰謝料の増額要素とされることもあります。例えば、弁護士とその元依頼者との不倫(不貞)のケースにおいて判例では、「被告は、平成6年の離婚交渉後もA子に好意をもち、個人的にサポートするなど、その不満の相談にも乗っていたところ、A子の心が原告から離れていく過程で、親密な関係になっていったものと認められる。婚姻関係の破綻については原告自身の問題点もあるにせよ、被告は、ひとたびは原告の紹介で民事保全事件、訴訟事件を受任するなどしており、その信頼を裏切る行為といわざるを得ない。」などと考慮されています(東京地判平成19年2月27日)。これは、不倫(不貞)によって、原告の信頼を害する程度が、弁護士という職業であるがゆえに大きいということなのでしょう。このケース以外には、精神科医とその患者との不倫(不貞)のケース(東京地判平成13年8月30日)、弁護士とその元依頼者との不倫(不貞)のケース(東京地判平成19年2月27日)、プロ騎手・タレントのケース(東京地判平成21年10月21日)などがありますが、いずれにしても、不貞行為を行った側の職業や社会的地位が慰謝料算定の基礎とされることは極めて希であるといえます。 以上、いくつかのケースを交えてご紹介しましたが、当事者の社会的地位・収入・職業は一部の特殊なケースを除き、基本的には慰謝料の算定・考慮事情にはなりません。この点は、よく誤解されている方がいるので注意が必要です。他にも慰謝料の算定の基礎とすべき項目が多々ありますので、気になることがございましたら、専門の弁護士に相談されることをおすすめ致します。 *著者:弁護士 伊倉吉宣(伊倉綜合法律事務所。離婚・男女問題をはじめ、労働トラブルや交通事故問題など幅広く取り扱う。運営メディアに、「弁護士監修による不倫・浮気の専門サイト」、「未払い残業代無料請求ガイド」がある。)【画像】イメージです*bee / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月13日【ママからのご相談】先日テレビを見ていたら、“パパ活”というものがはやっているという特集をやっていました。女性がパトロンを探し、いわゆる愛人契約のようなものを結んで男性から毎月お金をもらうことをパパ活といい、 特徴は肉体関係がないことだそうです。そんなことをテレビで特集しているのにも驚いたのですが、もっと驚いたのは「肉体関係がないから不倫ではない」と言っていたことです。そんなことをする人ではありませんが、もしも私の夫がパパ活と称して他の女性に毎月お金を渡していたとしたら、私としては絶対に許せないのですが、不倫でないのであれば離婚はできないのでしょうか?●A. 肉体関係がなくても離婚できる可能性はありますご相談ありがとうございます。アディーレ法律事務所弁護士の篠田恵里香です。今回ご相談のケース、肉体関係がなく不倫とは認められないケースでも、離婚原因になる可能性はあります。●肉体関係がないと不倫ではない?法律上の離婚原因とされる“不倫”は、法的には「不貞行為」と言います。法律上の離婚原因は、民法770条1項に列挙されていますが、1項1号にはズバリ「不貞行為があったこと」が離婚原因として規定されています。不貞行為は、「既婚者が配偶者以外の異性と肉体関係を持つこと」 とされています。このような不貞行為があれば、法律上の離婚原因がありますので裁判上も離婚が認められる可能性が高くなります。肉体関係がない場合には不貞行為には当たりませんので、民法770条1項1号を理由に離婚を請求することは難しいことになります。また、“不貞行為”があった場合、仮に夫婦が離婚しなくとも夫や不倫相手に慰謝料請求ができるとされています。これは「円満な夫婦関係に亀裂を生じさせた」ことが不法行為(民法709条)と評価され、これに基づく損害賠償が可能と考えられるからです。逆に、肉体関係がない男女の交際関係については、これによっていかに妻が嫌な思いをしようとも、夫婦が離婚するに至らない以上は、基本的に慰謝料請求は難しい と言えます。過去に大阪地裁で、“肉体関係のない男女の関係”があり、“夫婦も離婚に至らなかったケース”で慰謝料40万円を認めた判決がありましたが、これは極めて異例な判決であり一般化するとはあまり考えられないでしょう。●“パパ活”を理由に離婚ができる可能性“パパ活”は相手女性と肉体関係がないことが前提ですので、法律上の離婚原因となる“不貞行為”には当たりません。しかし、パパ活について「婚姻を継続しがたい重大な事由」と評価される場合には、民法770条1項5号を根拠に離婚が認められる可能性があります。婚姻を継続しがたい重大な事由についてはさまざまな事由が考えられますが、「さすがにそんな状況では夫婦関係継続は無理だよね」と言えるような事由 が必要です。たとえば、DVやモラハラ(精神的虐待)、性交渉拒否などは典型例ですが、別居期間が長期に渡るような場合もこの事由の判断要素となります。女性に夢中で家庭をかえりみない、家計が苦しくなるほどお金を渡している、やめてほしいと何度言っても聞いてくれない、といった事情があれば、「肉体関係はなくとも、そんな女性との交際関係は夫婦関係に大きな亀裂を生じさるものとして許されない」と判断される可能性は高いです。その場合、「婚姻を継続しがたい事由がある」として離婚が認められ、かつ“離婚の原因を作った男女ふたり”に対して 慰謝料請求も認められる可能性が高いです。●パパ活の法的問題は?パパ活は、基本的には肉体関係をお金で買う“売春”には当たりません。未成年と性的関係を持つと青少年保護育成条例違反となりますが、性的関係等がなければ同条例違反にも当たりません。したがって、パパ活自体が法的に規制されているということにはなりません 。ただし、女性にお金をつぎ込んで遊んでいること自体、夫婦間に亀裂を生じさせる行為として不法行為となり得ますし、夜間に未成年を連れ出すような行為は条例違反に発展する可能性もありえます。こちらが罪を犯していなくても、逆に相手の女性に騙されたというトラブルに巻き込まれる可能性も少なくありません。●まとめこのように、パパ活については法的にズバリ犯罪となるわけではありません。しかし、奥さんが嫌な思いをするのは当然ですし、場合によっては大きな法的問題に発展する可能性もあります。ご主人はそんなことをする人ではないということなので一安心ですが、肉体関係がないからといってイコール離婚できないということではありません。万が一の場合は離婚できる可能性は十分にありますので、我慢せずきちんと話し合い、解決の糸口を探しましょう。●ライター/篠田恵里香(アディーレ法律事務所:東京弁護士会所属)
2016年10月16日