今回は、新生児メレナ、新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症の解説と、赤ちゃんに不足しやすいビタミンKを補う方法や新生児期の出血症予防についてお話しします。 新生児期に不足しやすいビタミンKビタミンKは、出血を止める蛋白質(凝固因子)を作るのに必要なものです。このため、ビタミンKが不足すると、出血が止まりにくくなります。通常は、腸の中の細菌が作ったビタミンKを利用して出血を止めるのに役立てますが、母親のおなかの中にいる間、胎児の腸には細菌がなくてビタミンKを作り出すことができないので、胎盤を通して母親から受け取ります。しかしながら、ビタミンKは胎盤を通りにくいため、生まれたばかりの赤ちゃんの体内に十分な量が蓄えられていません。生まれてすぐ腸内に十分な量の細菌が増えるわけではないため、ビタミンKを補わないと不足します。赤ちゃんはビタミンKが不足すると、消化管出血や脳出血を起こすことがあります。日本国内の産科施設では、赤ちゃんにビタミンK2シロップを予防的に投与して、出血を予防します。 新生児メレナ、新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症とは?ビタミンKが不足して起こる病気をビタミンK欠乏性出血症と呼びます。赤ちゃんに起こるビタミンK欠乏症は発症する時期によって、新生児ビタミンK欠乏性出血症と乳児ビタミンK欠乏性出血症に区別します。新生児ビタミンK欠乏性出血症は、生まれてから生後7日目までに起こります。生後2~4日目に起こりやすく、血を吐いたり、便に血が混じったりします。しかしながら、生まれて間もないこの時期は、母体内で飲み込んだ血液や羊水を吐いたり、授乳を始めておっぱい(乳頭)の傷から出た血液を飲んで吐くなど、母親由来の血液を吐血や血便として排泄することがあります。赤ちゃんの排便時に直腸や肛門に傷ができて、血液が便に混ざることもあります。母親由来の血液なのか、赤ちゃんの出血なのか判断が難しいので、入院中であれば医師や助産師、看護師へ相談しましょう。退院後このような症状があれば、出産した病院や小児科を受診しましょう。受診の際に、吐いたものや便が付着した衣類やおむつをビニール袋に入れて持参する、あるいは写真に撮って見せると診断に役立ちます。乳児ビタミンK欠乏性出血症は、生後8日目以降~生後3カ月の間に起こります。この時期の出血は、脳内出血が多いため、不機嫌・嘔吐・けいれんなどの症状が起こります。赤ちゃんのお世話をしているときに、このような症状があれば、直ちに小児科を受診します。元気がなくグッタリとしている場合は、救急車を呼びましょう。新生児期に起こる消化管出血を総称して新生児メレナと呼びますが、新生児メレナが起こる原因は、ビタミンK不足だけでなく、胃腸や血液の病気によって起こることがあります。 ビタミンK2シロップの投与方法は?ビタミンK2シロップは、赤ちゃんの出血を防ぐためのお薬です。正期産で合併症のない新生児の場合、出生後に母乳やミルクを飲めるようになったらすぐに1回、出生後1週間あるいは退院時のどちらか早い時期に1回、生後1カ月健診時に1回の合計3回、1回につき1ml(ビタミンK2:2mg)内服する方法が一般的です。生後すぐに治療が必要な赤ちゃんは、内服ではなく静脈注射で投与することもあります。この量で、赤ちゃんのビタミンK欠乏性出血症を防ぐことができますが、まれになんらかの合併症があった場合や内服時に吐いてきちんと飲めていなかった場合に、3回投与してもビタミンK欠乏症を起こす赤ちゃんがいます。まれなケースにも対応するために、赤ちゃんの状態に合わせて、医師の判断で、生後3カ月まで毎週1回K2シロップを投与する方法もあります。ビタミンK2シロップの投与については、母子健康手帳に記録欄があります。出産直後から退院までの親の記憶が曖昧な場合は母子健康手帳を確認しましょう。 【赤ちゃんへのビタミンK2シロップの与え方】赤ちゃんが満腹のときに与えても飲まなかったり、飲んでも吐き戻すことがあるので、授乳と授乳の間のタイミングや授乳の途中で満腹になる前のタイミングを見計らって与えるとじょうずに飲んでくれます。ビタミンK2シロップを内服した後、15分程度経過したら授乳をしてもかまいません。赤ちゃんにシロップを飲ませるときは、哺乳瓶の乳首部分だけ取り外して、乳首だけをくわえさせて、吸い始めたらシロップを入れて飲ませましょう。哺乳瓶がない場合は、スプーンで飲ませてもよいです。母乳や育児用ミルクに混ぜて哺乳瓶で飲ませてもいいですが、赤ちゃんが飲み切れる量(目安:10ml以下)に調整しましょう。ビタミンK2シロップは1回分を個別包装してあります。飲ませるときは、赤ちゃんの口唇を傷つけたり、包装の欠片を誤嚥することを防ぐため、スティック状の包装のままで絶対に与えないでください。ビタミンK2シロップが内服時に半分以上こぼれてしまった場合、あるいは内服直後に半分以上吐いてしまったら、次回の分(予備の分)を飲ませましょう。半分以上飲めていない状況でもう1回分飲ませても過剰投与にはなりません。ビタミンK2シロップを内服した後15分以上経過して吐いた場合は、追加して飲ませる必要はありません。次回の分(予備の分)がない場合や吐いて心配な場合は、処方してもらった病院へ電話相談あるいは受診して相談しましょう。ビタミンK2シロップを飲ませ忘れた場合は、親が気づいた時点で飲ませてください。生後3カ月まで毎週1回飲ませる方法の途中で飲み忘れた場合は、2回分を1度に飲ませてはいけません。飲ませ忘れたことに気づいて1回分飲ませた後、次回からは指示されている日時に飲ませて大丈夫です。もしすでに2回分を1度に飲ませた場合は、処方してもらった病院へ電話相談あるいは受診して相談しましょう。 赤ちゃんの体内のビタミンKを補うためにできること生まれたての赤ちゃんはビタミンKが不足しやすいので、ビタミンK2シロップを医師の指示どおりに飲ませましょう。親の判断で飲ませることをやめないでください。育児用ミルクにはビタミンKが添加されているので、主に育児用ミルクだけで育つ赤ちゃんや授乳の半分以上を育児用ミルクで補っている赤ちゃんはビタミンK不足の心配ありませんが、母乳だけで育つ赤ちゃんは、母乳に含まれるビタミンKが少ないため、出血性疾患を予防するためにビタミンKを補う必要があります。母親がビタミンKを多く含む食品を食べることで、母乳中のビタミンKの濃度が高くなることがわかっています。母乳だけで育てている場合は、母親がビタミンKを多く含む食品を食べるように心がけましょう。ただし、母親が血液を固まりにくくするお薬(例:ワーファリン)で治療中の場合は、お薬の効果を弱めてしまうため、ビタミンKを多く含む食品を食べることは避けましょう。【ビタミンKを多く含む食品】卵(特に卵黄) 緑黄色野菜(ほうれん草ブロッコリーパセリ三つ葉春菊など)乳製品(バターマーガリンチーズヨーグルト)肉類(鶏肉牛肉豚肉の順に多い)納豆これらの食品を食べることで赤ちゃんの出血を予防できるとはいえませんが、産後の食事は栄養バランスが偏りやすいため、母親の食事を見直すときのヒントにしてください。 まとめビタミンK2シロップの予防で、赤ちゃんの消化管出血や脳出血を防ぐことができます。ビタミンKは、赤ちゃんの健康を保つためには必要不可欠ですので、医師から指示されたとおりに内服させましょう。心配なことや不安なことがあれば、出産した施設あるいは小児科へ相談しましょう。 ■参考・日本小児科学会HP・新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症に対するビタミンK製剤投与の改訂ガイドライン(修正版)2011・一般社団法人くすりの適正使用協議会HP子どもにくすりをのませるコツ 監修者:医師 神奈川県立こども医療センター総合診療科部長 松井 潔 先生愛媛大学医学部卒業。神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神奈川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等を経て現在、同総合診療科部長。小児科専門医、小児神経専門医、新生児専門医著者:助産師 古谷真紀一般社団法人産前産後ケア推進協会プロジェクトリーダー大学病院勤務を経て、2015年より現職。妊娠中や産後の女性のココロとカラダの相談、ママパパ&赤ちゃんのちょっと気になるコトに日々応えています。
2019年10月26日「気軽に専門家に質問ができて、さらに返信も早い」とママから日々感謝の声が寄せられているベビーカレンダーの人気コンテンツ【助産師に相談】の掲示板。その中から特に注目をあつめた質問の内容を一部抜粋してご紹介します。今回は赤ちゃんの鼻水に関するご相談です。 Q.鼻水以外の症状がなければ経過観察でも大丈夫でしょうか?昨日から息子が鼻水を出し始めました。くしゃみと鼻水が出ていますが、熱もなく寝るときも苦しくはなさそうです。しばらく様子を見ていても大丈夫でしょうか? 榎本美樹助産師からの回答他の症状がなく、おっぱいや育児用ミルクが飲めていて、夜も眠れているようでしたらご自宅で少し様子をみていただいても大丈夫です。鼻水が増えて、咳き込みが多くなってきたり、飲みが悪くなるようでしたら熱がなくても受診されたほうが安心かと思います。ご自宅で可能であれば、吸引器などで鼻水をこまめにとっていただくと治りが早くなります。※参考:ベビーカレンダー「助産師に相談」コーナー※診断や具体的な治療については医師の指示にしたがってください 家庭でできる鼻水へのケア鼻詰まりや鼻水の症状を和らげるために、赤ちゃんは自分で鼻水をかめないので大人が取り除いてあげることが大切です。 ・部屋を加湿して、綿棒やティッシュ、ガーゼなどでやさしく拭き取りましょう。空気の乾燥を防ぐことで鼻の通りがよくなり、呼吸をしやすくなります。鼻の粘膜を傷つけないように、やさしく拭き取りましょう。自力で鼻がかめない月齢や年齢の間は、大人が鼻の下にティッシュを押し当てて下方向へ引っ張るだけでも、鼻水を取り除くことができます。沐浴やお風呂のときにでてくる鼻水をこまめにふき取るだけでも効果的です。鼻水がネバネバしている場合は、沐浴やお風呂のときに鼻に蒸しタオルを当てた後のほうが取りやすくなります。 ・家庭内での感染を防ぎましょう。家庭内での感染を完全に防ぐことはなかなか難しいですが、以下のことに気を付けるとよいでしょう。 鼻水にはウイルスや細菌などが含まれているので、上のお子さんなど同居する家族への感染を防ぐために鼻水の付着した綿棒やティッシュ、ガーゼをそのまま放置しないように気を付けましょう。ゴミ箱に捨てる、外出先であればビニール袋に入れるなど、取り除いた鼻水に再度触れることがないように工夫しましょう。逆に、上のお子さんや同居する家族が鼻をかんだ後のティッシュなどに赤ちゃんが触れないようにも気をつけましょう。親は鼻水を取り除いたらせっけんと流水で手を洗いましょう。 鼻水専用の吸引器を使用するときのポイント必ず購入しなければならないものではありませんが、鼻詰まりや鼻水の症状を繰り返す場合には、鼻水専用の吸引器を購入して使用してもよいでしょう。 赤ちゃんの鼻水を取り除く吸引器には、スポイト式、ストロー式、電動式など多くの種類があります。どのタイプが優れているというものではないので使いやすいものを使いましょう。 ・吸引の圧は弱めに、吸引器の先端は顔の面に垂直方向に挿入する。赤ちゃんの鼻の中は狭くて、デコボコの入り組んだ構造です。ネバネバした鼻水は鼻の穴とほぼ水平方向の一番奥にたまっています。吸引器の先端は、鼻の穴に対して下から上へ突っ込むのではなく顔の面の垂直に挿入しましょう。挿入しながら少しずつ角度を変えると、鼻水を吸引しやすいポイントが見つかるので、ゆっくり少しずつ吸引しましょう。吸引するときの圧は弱めに設定して、鼻の粘膜を傷つけたり、強く圧迫しないように気をつけましょう。強い圧で一気に吸い取らないでください。もし、鼻血が出た場合は、その日は吸引を控えて、翌日以降におこないましょう。・吸引するときは赤ちゃんの頭を固定して、安心と安全を心がけましょう。吸引するときに、赤ちゃんの頭を固定しないと、吸引器の先端の動きが安定せず、鼻の粘膜を傷つけてしまう可能性があります。寝かせたままでも、抱っこしたままでも、頭が固定できればどのような姿勢でもかまいません。赤ちゃんが鼻水の吸引に苦痛を感じさせないように、「鼻水取るとスッキリするよ」などやさしく声をかけながらおこないましょう。 ※参考:基礎知識(ベビー)「【医師監修】赤ちゃんの鼻水が出る原因と吸引するときの対処のポイント」【監修:医師 松井 潔 先生 小児科 | 神奈川県立こども医療センター総合診療科部長】
2019年10月25日妊婦さんにとって心配なのは、妊娠中の体調不良です。妊娠中は体の変化が大きく、吐き気や熱っぽさなどを感じやすいもの。しかし、妊娠の経過が順調であれば、39度を超えるような高熱にはなりません。もし、妊娠中に高熱を出してしまったら、どのように対応するのが正解なのでしょうか。誤った対処は妊婦のみならず、胎児にも良くない影響を及ぼします。今回は高熱が出る原因、妊婦や胎児に及ぼす影響、高熱が出た場合の対処法などを紹介します。 高熱とは何度から? 発熱の仕組みを理解しよう発熱とは、体温が37.5度以上になることです。微熱だと頭がボーッとしたりフワフワした感覚を抱いたりしますが、38度を超えてくると「熱がある」と自覚しやすくなります。高熱といわれるのは39度以上です。通常、人間の体温は36度台に保たれています。体に熱があるのは、体内で盛んに代謝が起こっているためです。そして、一定の温度を保っています。体温調整の役割を担っているのは、脳の視床下部にある体温中枢。風邪を引いてウイルスが体内に入り込んだ場合などは、体が外部からやってきた敵を高熱でやっつけようとします。 血管の収縮や筋肉のふるえによって熱産生が起こり、体温が上昇します。体温が上昇しているときに悪寒がするのは、脳が体内の設定温度を上昇させるためです。例えば、平熱が36度の場合、ウイルスをやっつけるために36度だった設定温度を39度まで引き上げます。体温設定が上がったことで、逆に外気温は下がったように感じます。これが悪寒の正体です。発熱によって体温が設定温度である39度まで上がりきれば、悪寒は止まります。妊娠中に高熱が出ると不安になりますが、従来、発熱は疾病や感染症から体を守るために必要な機能の1つです。 発熱する原因とは? 妊娠中の微熱と高熱の違い妊娠初期は胎児を育むためにホルモンバランスが大きく変わります。その関係で微熱が出たりほてったりしますが、妊娠初期の正常な反応です。妊娠中の正常な体の変化であれば、39度以上の高熱にはまずなりません。体温が38度を超えるようなら、何らかの疾病や感染症を疑ったほうが良いでしょう。高熱が生じる代表的な感染症や疾病は、インフルエンザをはじめとする呼吸器感染症、腎盂腎炎をはじめとする尿路感染症、胆嚢炎、骨髄炎、自己免疫疾患、甲状腺機能異常などです。何らかの薬を服用している場合は、副作用でも発熱するケースがあります。高熱ではないものの、微熱や38度程度の熱が出る感染症もあります。代表的なのは、風疹や水ぼうそう、ノロウイルスなどです。サルモネラ菌や病原性大腸菌などの細菌性食中毒でも発熱します。 感染症や疾病のなかには、健康な状態なら軽症や無症状で済むタイプもあります。しかし、妊娠中は免疫力低下のため重症化するケースがあり、胎児にも悪影響を及ぼします。妊娠中はもちろん、妊活中から感染症予防を徹底しておきましょう。不活化ワクチン(ウイルスや細菌の感染能力をなくして免疫に必要な成分をワクチン化したもの)であるインフルエンザなどは妊娠中でも接種できますが、多くの感染症予防のワクチンは生ワクチン(ウイルスや細菌の毒性を弱めて病原性をなくしたものを原材料として作られたワクチン)であるため接種はできませんので、妊娠前に予防接種を受けておくことが重要です。 家庭内感染を防ぐために、家族にも予防接種をお願いしておきましょう。ウイルス性、細菌性食中毒による高熱を防ぐには、手洗いとうがいを徹底して、調理器具もしっかり消毒します。ほとんどの細菌やウイルスは熱に弱いです。生食はおこなわず、加熱調理を徹底しましょう。購入した食材も、なるべく短い期間で食べきるようにします。感染症予防は普段の生活の中で気を付けていかなければなりません。妊娠中にいきなり実践するより、妊活中から心がけて習慣化しておくと良いでしょう。 高熱が母体と胎児に及ぼす影響とは? 実は熱より心配なことがある!妊婦以外の健康な人の場合、一般的には41度未満の高熱なら、熱による体への影響はないとされています。熱自体が体に悪影響を及ぼすのは41.5度以上です。ただ、妊娠中はつわりや胎児の成長による腰痛などがあり、体に疲れが出やすくなります。高熱によってエネルギーを消耗すると、体力も奪われます。大量に汗をかいて脱水症状になる可能性もあり、注意が必要です。感染症や疾病の種類によって、症状の現れ方はさまざまです。高熱による影響よりも、病気の症状そのものの方が体に及ぼす影響は大きいでしょう。 妊娠中、特に注意したい感染症について、母体と胎児に与える影響をそれぞれ紹介します。 妊婦がインフルエンザにかかると、合併症を起こしやすいといわれています。その確率は、妊娠14~20週で通常の1.4倍、妊娠37~42週で通常の4.7倍です。妊娠週数が進むほど合併症のリスクが高くなり、自然流産や早産につながってしまうことがあります。低出生体重児や不当軽量児、胎児死亡など、胎児に深刻な影響を及ぼすため、予防は徹底したいところです。また、妊娠週数にかかわらず、発症した場合にはただちに治療を開始することが大切で、同居家族が発症した場合にも抗インフルエンザ薬の予防的な服薬がすすめられています。 風疹は発熱のほか、発疹やリンパ節腫脹などが起こるウイルス性感染症です。妊娠4~20週で初めて風疹にかかると、赤ちゃんが難聴や白内障、心臓疾患などの先天性風疹症候群になる恐れがあります。風しんの予防はワクチン接種です。妊活中には必ず受けておきましょう。 妊娠中に薬を服用しても良い? 高熱のときの対処法妊娠中に高熱が出た場合、自己判断で市販の薬を飲んではいけません。薬の成分が胎児に与える影響は、医療知識のない人には判断しにくいものです。妊娠中は服用を避けたい薬もありますので、まずは医療機関を受診して、服用しても胎児や妊婦に悪影響を及ぼさない薬を処方してもらいましょう。 避けたほうが良いとされている薬を服用してしまった場合、妊娠週数によって胎児への影響が変わってきます。妊娠4週未満では、まだ胎児の器官形成は始まっておらず母体薬剤投与の影響を受けた受精卵は着床しなかったり、流産してしまったり、あるいは完全に修復されるかのいずれかです。ただし、残留性のある薬剤の場合は要注意とされています。胎児の器官が形成される妊娠4~7週が最も薬による影響を受けやすい時期で、胎児の体に奇形が現れる可能性があります。妊娠16週以降になると、奇形の危険性は少なくなるでしょう。しかし、胎盤から胎児へ薬の成分は伝わるため、悪影響を及ぼす可能性は捨てきれません。発育抑制や機能的発育への悪影響、子宮内胎児死亡などに注意が必要です。ただし、胎児に何らかの異常が見られたとしても、必ずしも薬のせいだとも限りません。自己判断で薬を飲んでしまった場合でもひとりで悩まず、病院で相談してみましょう。 妊娠中は自己判断をせず、適切な治療が必要です。自宅では安静を保ち、体力の消耗を防ぎましょう。悪寒があるときは、体を温かくします。汗をたくさんかくので、こまめな水分補給も大切です。悪寒がなくなったら、わきの下や鼠径部など太い血管が通っている部分を冷やしましょう。また、解熱効果はありませんが、頭を氷枕や冷却シートで冷やすのも、高熱による体の苦痛を和らげてくれます。高熱の状態で無理は禁物です。適切な対処法で高熱を乗り切りましょう。 まとめ高熱のときは赤ちゃんへの影響が心配です。妊娠中はホルモンバランスの変化で、心も体も変化します。一番良くないのは、ひとりで抱え込んでしまうこと。産婦人科やかかりつけ医に相談をして、対処法を仰ぎましょう。現代女性は仕事や家事で忙しく、無理をしてしまいがちです。しかし、赤ちゃんを守るためにも、自分の体は大切に扱わなくてはなりません。妊娠中は感染症や疾病にかからないように、予防を徹底することが大切です。 ■参考・「食中毒について」公益社団法人全日本病院協会・「妊婦の薬物服用」公益社団法人日本産婦人科医会 監修者:医師 産科婦人科福岡医院院長 福岡 正恒 先生京都大学医学部卒。同大学院修了後、京都大学助手、講師を経て、平成11年より産科婦人科福岡医院院長。京都大学在職中は、婦人科病棟や産科病棟などを担当。またこの間、英国エジンバラ大学・生殖生物学研究所に留学。日本産科婦人科学会・産婦人科専門医,京都大学医学博士
2019年10月24日ウーマンエキサイトの読者のみなさんこんにちは! 8歳と4歳のやんちゃ兄弟を育児中のなーみんです。やんちゃな子どもを育てていると、いつもケガと隣りあわせ。転んで擦り傷、ぶつけてアザができるなど日常茶飯事。親がどんなに気を張っていても、子どもがケガをしてしまうときってありますよね…!でも、時にそれが”大ケガ”につながることも…。うちの長男は頭を2回、次男は鼻を1回縫っています。どれも「まさか」の出来事でした。今回は、長男が3歳の頃、初めて頭を縫ったときのエピソードです。■長男が初めて頭を縫ったときのエピソードアトピーで入院していた長男の退院の日の出来事でした。ちょうど院内には、看護師研修中の学生さんがたくさんいました。どの学生さんも小さい長男にやさしくて、長男は学生さんが大好き。学生さんが来るたびにテンションが上がっていました(笑)退院の前にシャワーを浴びるため、病室で待っていると、ひとりの学生さんが長男の様子を見に来てくれました。この時、長男は病院の服を着ていたんですが、少しサイズが大きくて、ズボンの裾が床についていました。(危ないのでズボンの裾は折っていましたが、折った部分が元に戻ってしまっていたと思います)■学生さんと話しているうちに、長男のテンションが上がり…学生さんと話しているうちに、だんだんと長男のテンションが上がり…変なダンスを踊り始めた瞬間。ズボンの裾を踏み、運悪くテーブルに頭を強打!長男は大泣き!!頭を打っただけかと思いきや…よく見ると頭に「穴」が開いていたんです!どうやらテーブルの角にブツけてしまったらしく、3ミリくらいの穴のような傷が。例えていうなら、リンゴを机の角にブツけたときに、凹んだような状態でした。すぐに学生さんが医師を呼んできてくれました。医師に診せると「院内の出来事だから、このまま帰すわけにはいかない」と、すぐに院内の外科へ。外科の診断の結果「縫ったほうがいいね~」と言われ、血の気がサーッと引きました。ちょっと待って…心の準備が…!しかし「大した傷じゃないけど、縫ったほうが治りが早いから」とのことで、処置をお願いしました。 ■麻酔から長男は大泣き何をされるのかわかっていない長男は、ベッドに寝かされると「フフッ」と笑っていましたが、つぎの瞬間、麻酔をされて…ぎゃあああああと大泣き。その後も「痛いぃぃやめてぇぇぇぇ」と泣いている長男。カーテンの向こうで処置されている長男を想像すると、私もつらくなりました。縫ったのは1針でしたが、それでも痛々しい傷跡でした。退院でやっと家に帰れると思った日のまさかの出来事。このケガは、ズボンの裾をちゃんとチェックしていれば、防げたかもしれません。でも、子どもは大人が予期せぬときに、ケガをしてしまうこともあります。裾を折っても、すぐ戻ってしまうようなズボンを子どもに履かせる際は、お気をつけくださいね!
2019年10月24日赤ちゃんが高熱を出して受診すると、最初に疑われることが多いのが突発性発疹。突然の高熱にびっくりするママさんも多いと思いますが、本当に怖いのは熱が下がった後でした。娘も生後10カ月のときに発症したのですが、初めてのできごとに私のほうが参ってしまったほど。その後、突発性発疹は別名“不機嫌病”とも言われることを知り、納得しました。 初めての高熱にびっくり! 慌てて病院へ娘は生後10カ月になるまで病気知らずの健康児でした。この日もいつも通り遊んでいたのですが、少し熱っぽい気がして測ってみると38度。初めての風邪かな? と思っていたら、30分後には40度に!! 慌てて近くのかかりつけ医のところに駆け込みました。 不安な気持ちで診察を受けると、「まだ確定はできないけど、解熱と共に発疹が出てくるようなら突発性発疹でしょう」とのこと。つらそうなときに使うようにと解熱剤をもらって帰宅しました。 慌てる私とは対照的に冷静な娘初めて経験する娘の高熱に、私は大慌てでした。夫も仕事を早めに切り上げてゼリーなどを買って帰宅してくれました。 肝心の娘はというと、いつもよりお昼寝の時間が長かったこと以外は普段通り。あまりつらそうではありませんでしたが、38~39度の熱をキープしていたので、寝る前だけ解熱剤を使用。医師から「子どもは高熱でもいつも通り遊んじゃうから、無理は禁物」と言われていたので、解熱後も自宅でできるだけ安静に過ごしました。 解熱して一安心! しかし恐怖はここから…発熱してから3日後、ようやく37度まで熱が下がり、一安心しました。それと同時に娘の首辺りに発疹を見つけました。念のため受診すると、「突発性発疹で確定でしょう」とのこと。 病院から帰宅して一息ついたところで、娘の不機嫌が始まりました。とにかく、1日中泣く! 怒る! ぐずる! まるで人が変わってしまったかのようで、私も夫もお手上げ状態です。ちょっと早めのイヤイヤ期? とも思いましたが、嫌がっているというよりも本当にただの不機嫌でした。 知って納得、別名 不機嫌病!あまりにも機嫌が悪いので、どこか痛いんじゃないかと心配になり、病院に電話しました。すると先生が、「それも突発性発疹の特徴だ」と教えてくれました。別名“不機嫌病”とも言われていることも教わり、インターネットで体験談を調べてみると、娘の症状とまったく同じ!! 病気の症状にそんなものがあるなんて知らなかったので、びっくりしました。それと同時に気持ちがラクになり、娘の不機嫌にもやさしく応じる事ができました。 初めての育児は知らないことばかりです。私も、原因がわからない娘の不機嫌に、気がおかしくなってしまいそうでした。しかし理由がわかるだけで気がラクになり、娘と向き合うことができました。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 著者:及川 ひまり1歳半の娘の母。出産を機に仕事を退職し、現在は専業主婦。わんぱくな娘と4匹のわんちゃんに囲まれて賑やかに暮らしながら、妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆中。
2019年10月21日男の子ママのみなさま、男の子って…本当にケガが絶えませんよね。わが家の男の子も、しょっちゅうケガをします。今回は男の子育児3年目の私が、息子のケガから学んだお話です。■男の子あるある? ケガが絶えない息子第1子が女の子(現在8歳)、第2子が男の子(現在3歳)のわが家。男の子が活発であることは知っていましたが、娘は小さいころからケガがほとんどなかったため、息子が生まれてから、その活発さに驚きました。走っていて転び、豪快にひざをすりむいたり…激しく踊ってバランスを崩し、ベッドに歯茎をぶつけたり…高いところに登って、落ちたり…歩けるようになってから、とにかく息子はケガが絶えませんでした。私は息子がケガをしないように、危ないことをやめさせたり、上がるテンションを落ち着かせたり、走り回る息子に、黒子のようについて回ったりしていました。しかし、息子は何度もケガを繰り返します。そのたびに、私はヒヤヒヤしていました。■大量の血にパニック! しかし…1歳のころ、息子は玄関の段差に顔面からつっこみ、唇を切り、流血してしまったことがありました。思った以上の血の量に、私はパニックになりました。しかし旦那は、冷静に血をふき始めました。血をぬぐうと、傷はそこまで大きくなく、涙とよだれで血が多く見えることがわかりました。そのとき、男の子のケガはある程度は仕方ない…、落ち着いて軽傷か重症かを判断しなければならない…と学びました。しかし、大ケガになるような行為は黙認できない!今日も私は、息子を追いかけています(笑)
2019年10月17日妊娠を希望しているけれど、生理不順で妊娠のタイミングをとるのが難しいと感じている人は、もしかすると多嚢胞性卵巣症候群かもしれません。あまり聞きなれない病名かもしれませんが、妊娠をすることと深い関わりがある疾患です。今回は、多嚢胞性卵巣症候群による妊娠への影響や治療法などについてお話ししていきたいと思います。 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、20〜30人に1人の女性に見られ、排卵障害を起こす疾患です。排卵が起こらないのは、排卵に関連のある2つの女性ホルモンのアンバランスや卵巣内の男性ホルモンが多いことが原因とされています。 通常、排卵には脳から出される黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)という2つのホルモンが関わっています。しかし、PCOSでは、この2つのホルモンのバランスが崩れて、黄体化ホルモンばかりが過剰に分泌されるため、排卵がうまくおこなわれません。また、血糖値を下げる作用のあるインスリンも多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に関連しており、血液の中にインスリンが多く含まれている状態ですと男性ホルモンが増加します。男性ホルモンが過剰に作られると、卵胞の成長を妨げたり、卵巣の外の膜を厚くして、排卵の起こりにくい状態にします。身体的には体毛が濃い、ニキビがよくできるといった症状が特徴です。その他に、順調だった生理が不順になった場合や生理周期が35日以上と長い人、肥満などの症状がある人は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を疑います。 こうした症状はいくつか複合的に見られる人もいれば、排卵障害以外の症状があきらかでない人もいます。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の確定診断をするときには、血液検査と卵巣の超音波検査が必要です。超音波で卵巣を見ると、卵巣の外側に10mm程度の卵胞がぐるりと一周並んでネックレスのようになっています。卵子が十分に成長できないので、排卵されずに卵巣の中で卵胞が連なっているのです。血液検査では、血液中の男性ホルモンが基準値よりも高く、黄体化ホルモンの値が卵胞刺激ホルモンよりも高いことで診断することができます。 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の妊娠への影響は?多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、排卵の起こりにくい状態なので、妊娠には大きな影響があります。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は早ければ10代のうちから発症している可能性あります。発症して間もないうちは排卵障害もそれほど進んでいないので、自然妊娠も可能ですが、年数重ねるごとに排卵障害が進んでいくので自然妊娠は難しくなります。症状に気づいて早めに治療を受けることができれば、妊娠の可能性は高くなります。 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)では、排卵に問題があることが多いため、排卵を誘発させていく治療をしていきます。その他には、体外受精が行われます。 1)排卵誘発剤を使うクロミフェンという排卵誘発剤を内服することで、約50%に排卵の効果が現れます。排卵誘発剤の内服による効果がない場合は、注射によるゴナドトロピン療法という排卵誘発剤を使います。 卵巣には成長できずにいる卵胞がたくさん待機しているので、排卵誘発剤の注射によってたくさんの卵胞が1度に成長することがあります。そのため、1度に複数の卵子が排卵される可能性があり、多胎妊娠のリスクが高くなります。 また、たくさんの卵胞が大きくなると、卵巣が大きく腫れておなかに水が溜まる卵巣過剰刺激症候群を引き起こしてしまう恐れがあります。そのため、内服や注射による治療で排卵がうまくいかないときには、手術や体外受精をすすめられることがあります。 2)卵巣に小さな穴をいくつか開ける手術をする卵巣に穴を開けることで、自然な排卵を促すことになり、排卵誘発剤の効果も得られやすくなります。手術となると恐怖感がありますが、腹腔鏡を使った手術なので、傷は小さいです。さらに手術がうまくいけば自然な排卵が復活するので、排卵誘発剤のデメリットである卵巣過剰刺激症候群や多胎妊娠のリスクもありません。ただし効果は、半年~1年程度で、手術前の状態に戻ってしまうデメリットがあります。 3)糖尿病の薬を使うインスリン分泌に異常がある人には、糖尿病の治療薬のメトフォルミン(メルビン、グリコラン)が排卵しにくい状態を改善することが期待できます。インスリンの分泌量を抑えることで、卵巣内の男性ホルモンの分泌も減少し、排卵しやすくなるのです。 4)体外受精をおこなう排卵誘発剤や手術の効果があまりない場合には、医師から体外受精の話があるかもしれません。体外受精であれば、排卵誘発剤を使っても、多胎妊娠などのリスクを減らすことができます。 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は予防できる?多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は初潮からずっと生理不順である人が多く、体質や環境などが原因であると指摘されていますが、はっきりとした原因は不明です。一般的な遺伝性のある疾患とも異なるため、予防策はありません。しかし、肥満である場合は、減量することにより月経不順の改善が認められているので、適度な運動やバランスの良い食事などに気をつけていくと良いでしょう。 まとめ生理不順など多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の症状が当てはまるのであれば、早めに産婦人科で検査をしてもらいましょう。妊娠を希望している場合はもちろん治療が必要ですが、治療せずに長期間放置すると、まれに子宮内膜にがん化のような異常が起こることがあります。生理不順を軽く見ずに、しっかりと治療しましょう。 監修者:医師 産科婦人科福岡医院院長 福岡 正恒 先生京都大学医学部卒。同大学院修了後、京都大学助手、講師を経て、平成11年より産科婦人科福岡医院院長。京都大学在職中は、婦人科病棟や産科病棟などを担当。またこの間、英国エジンバラ大学・生殖生物学研究所に留学。日本産科婦人科学会・産婦人科専門医,京都大学医学博士
2019年10月10日こんにちは、東京衛生病院小児科の保田典子です。私生活では7歳、5歳、3歳の子育て中です。今年はインフルエンザが早めに流行の兆しを見せています。 厚生労働省が早めに統計を取りはじめました。まだ、流行と言えるほどの地域は少ないですが、これからすぐ流行になる可能性もあるので、今回は予防についてお伝えします。 インフルエンザ、「予防」がとても大切!インフルエンザは冬を中心に日本全国で流行する感染症です。毎年、本当にたくさんの人がかかりますし、まわりを見てみても「インフルエンザになっちゃった」と話つつ、今は元気で過ごしている人ばかりだとは思います。 ですが、インフルエンザには怖い合併症があります。一番怖いのは「インフルエンザ脳症」です。オーストラリアの研究(Pediatric Active Enhanced Surveillanceネットワーク) では、インフルエンザ脳症になるのはまれではあるが、かかってしまうと半数に障害が残るというデータがあります。また、脳症にかかった子でワクチンを接種していた子はいませんでした。 他にも、肺炎、中耳炎などの合併症があり、「他の人もかかっているから、かかってもきちんと治る」というワケではなく、予防がとても大事です。 インフルエンザワクチンは効くの?インフルエンザワクチンは「接種してもインフルエンザになってしまう」と、あえて接種しない人も見かけます。確かに、インフルエンザワクチンは毎年有効性に差があり、かつ接種しても絶対にかからないことを保障してくれるものではありません。ですが、脳症の例にもあるように、重症の合併症の予防としてとても重要です。 また、毎年インフルエンザの診療で、何十人何百人とインフルエンザにかかった人を診察していると、接種した人の方が明らかに重症度が低い人が多い印象です。 権威ある医学史『NEJM(ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン)』という雑誌でも、「昔日本で行われていたインフルエンザワクチン集団接種は、インフルエンザの死亡を明らかに減らしていた」と報告されていて、「ひとりでも多くの人が接種することで、周りにまでインフルエンザに対して予防ができる」ということもわかっています。 接種のしかた(1)生後6カ月以上3歳未満の方 1回0.25mL 2回接種(2)3歳以上13歳未満の方 1回0.5mL 2回接種(3)13歳以上の方 1回0.5mL 1回接種生後6カ月から8歳までは2回接種、12歳までは2回接種推奨です。生後6カ月から3歳未満は、1回につき大人の半分量を接種します。10月ごろに1回目を接種し、4週間以上あけて2回目を接種しましょう。 日本では、集団保育(保育園など)に行っている子は、生後6カ月から推奨。行っていない子は1歳から推奨、そして、0歳の赤ちゃんがいるご家庭は、家族がしっかり予防しましょう、と推奨されています。 「ハイリスクの人」って?インフルエンザがハイリスクになる人は、「生後6カ月から5歳未満」、「50歳以上の人」(意外に若いですね)、「インフルエンザシーズンに妊娠している人」そのほか、「慢性疾患にかかっている人」です。生後6カ月から18歳までの人は、インフルエンザにかかってアスピリンやサリチル酸を服用していると、急性脳症などを引き起こす「ライ症候群」にかかるリスクも高くなります。ハイリスクに該当する人は、特にインフルエンザワクチンを接種するのが望ましいですね。 家族で予防が大事です集団接種の例でもわかるように、たくさんの人が接種すると流行も抑えられ、さらにインフルエンザの死亡も減少します。「今までなったことがないから」「今まで打たなくても大丈夫だったから」と言っても、今年大丈夫かはわかりません。特に小さなお子さんがいる家庭はハイリスクです。ぜひご家族で予防をしてくださると嬉しいです。 著者:医師 医療法人アドベンチスト会東京衛生病院 小児科医師 保田典子 先生医療法人アドベンチスト会東京衛生病院小児科医師。株式会社メドイース代表取締役。2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。
2019年10月09日今回は、妊娠中や出産時に起こりやすい痔についてお話しします。 妊娠中に痔になりやすい理由子宮が大きくなると、足から心臓へ戻る静脈が圧迫されるため、肛門周囲の静脈がうっ血しやすいこと、肛門が子宮に圧迫されやすい位置にあること、硬い便の排泄を繰り返すことから、妊娠中は痔になりやすいです。 妊娠すると、妊娠を維持する作用をもつプロゲステロン(黄体ホルモン)というホルモンが母体の中で増加しますが、このプロゲステロンは、腸の動き(蠕動運動)を抑える作用があります。妊娠前から慢性的に便秘があると、プロゲステロンの作用がさらに腸の動きを鈍くさせることになります。腸の動きが鈍くなることで便が腸内にたまりやすく、便が硬くなり、ようやく体外へ硬い便が排泄されたことをきっかけに、溜まっていた便が次々と排泄され、軟便~下痢便を排泄することもあります。便秘と下痢を繰り返すことで痔になる妊婦さんもいます。痔は痛み・出血・かゆみなどの症状が起こりますが、出血した場合、切迫早産などに伴う性器出血ではないか、おしるしではないかと驚かされることも少なくありません。妊娠中は特に症状がなくても、経腟分娩のときに強くいきんだことで、痔が発生することもあります。肛門からの出血であれば、妊娠や胎児への影響はありません。痔の症状は塗り薬だけで治るケースが多く、必ず手術しないといけないわけではありません。 妊娠中や出産時に起こりやすいおしりの症状・いぼ痔いぼ痔には、内痔核(ないじかく)と外痔核(がいじかく)があります。直腸(粘膜)と肛門(皮膚)の境目にできるものを内痔核、境目の外側にできるものを外痔核と呼びます。 内痔核の場合、最初はあまり症状がありませんが、次第に大きくなって出血したり、排便や出産のときに肛門の外側へ脱出してきたりします。軽度であれば、脱出しても指で押し戻すことが可能ですが、出血や痛みが続く場合は早めに受診したほうが良いでしょう。 外痔核の場合、小さいうちは軽い痛みですが、大きくなると肛門部分にしこりができて座るのも辛かったり、破裂して出血することもあります。外痔核はしこりが大きく痛みが非常に強い場合は手術が必要なこともあります。 ・きれ痔きれ痔は裂肛(れっこう)といいます。肛門部分は、通常の粘膜よりも血行が悪いですが、硬い便を無理やり押し出したり、緩い便を何回も繰り返すことで、直接便と接する部位が傷つき切れてしまうことがあります。 ・肛門周囲皮膚炎痔があることで、肛門周囲の皮膚にかぶれ・ただれ・かゆみが起こることがあります。妊娠中は便秘や下痢を繰り返すことで肛門が過敏になっていて炎症が起きることもあります。入浴やウォシュレットで清潔を保つことは大切ですが、せっけんでゴシゴシ洗いすぎると、かえってかゆくなることもあります。 いずれの場合も、妊娠中や産後に使用可能な塗り薬を使うことでほとんどは治りますので、症状に悩む場合は担当医に相談しましょう。 日常生活で気をつけること・肛門周囲の清潔を保ちましょう。肛門周囲が汚れていると細菌が繁殖して、かゆみや炎症を起こします。排便後にウォシュレットで洗浄したり、おしり拭きで軽く拭き取るなど、肛門部分の清潔を保つことは予防にもつながります。 ・おしりを冷やさないように気をつけましょう。おしりを冷やすと肛門周囲の筋肉の緊張が強くなります。正常な肛門は排便時に肛門括約筋の緊張を自然に緩めますが、緩みにくい状態で排便するときれ痔になりやすいです。また、血行が悪いときれ痔の治りも悪くなります。毎日湯船に浸かることは、肛門部分だけでなく体全体の血行を促し、症状を和らげるのに役立ちます。 ・便秘や下痢に注意しましょう。妊娠中は便秘や下痢を起こしやすいので、食事や運動、睡眠などの生活習慣を見直しましょう。必要があれば下剤や整腸剤を産婦人科で処方してもらい、肛門部分に負担のかからない排便を心がけましょう。特に便が硬いことで肛門部分に傷ができたり、出るときの痛みがつらいようなときは、酸化マグネシウム製剤という緩下剤で便を柔らかくすることで、症状が改善されることがあります。 ・同じ姿勢を続けないように過ごしましょう。座ったままや立ちっぱなしなど同じ姿勢で長時間過ごすと、肛門のうっ血をきたすことがあります。肛門への圧迫を避けるため、姿勢を変えたり、軽いストレッチをするなど、肛門周囲の血行を促しましょう。 妊娠中の痔に使う薬は?痔の薬は、飲み薬に比べると薬の成分が体に吸収される量が少ないので、比較的安全に使える薬といえます。しかし、長期間は使わないほうが良いと考えられるもの(ステロイド入り)や、妊娠中には使わないほうが良い抗生物質の含まれている軟膏などもあります。いずれにしても使用にあたっては、産婦人科医とよく相談すると良いでしょう。 出産すると、痔は自然に治る?妊娠や出産をきっかけにできた一時的な痔は自然に治ることもありますが、症状を我慢したり、悪化した状態で出産や子育てをすることはつらいことです。 妊娠中は、産婦人科に相談しましょう。症状がつらい場合は、肛門科などの専門医を紹介してもらいましょう。出産直後は入院中や退院時の診察で、自然に治ることが期待できるのか、治療が必要かについて担当医に相談しましょう。 産後は1カ月健診を終えると、産婦人科へ通うことがなくなり、改めて医療機関を受診するきっかけをつかめないまま子育てをする人は多いです。症状がつらい場合は、早めに肛門科を受診して相談しましょう。 まとめ妊娠中に痔になったら塗り薬で治るケースも多いので、悩むよりもまずは産婦人科に相談しましょう。 参考:・産婦人科診療ガイドライン産科編2017・肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)診療ガイドライン2014年版日本大腸肛門病学会・Pigot F et al:Risk factors associated with hemorrhoidal symptoms in specialized consultationGastroenterol Clin Biol 2005;29:1270-1274・高野正博 妊娠・分娩と痔疾患日本大腸肛門病学会雑誌43(6)19901077-1082 監修者:医師 産科婦人科福岡医院院長 福岡 正恒 先生京都大学医学部卒。同大学院修了後、京都大学助手、講師を経て、平成11年より産科婦人科福岡医院院長。京都大学在職中は、婦人科病棟や産科病棟などを担当。またこの間、英国エジンバラ大学・生殖生物学研究所に留学。日本産科婦人科学会・産婦人科専門医,京都大学医学博士著者:助産師 古谷真紀一般社団法人産前産後ケア推進協会プロジェクトリーダー大学病院勤務を経て、2015年より現職。妊娠中や産後の女性のココロとカラダの相談、ママパパ&赤ちゃんのちょっと気になるコトに日々応えています。
2019年09月24日「乳幼児突然死症候群」という病名を聞いたことがありますか? 私も母子健康手帳でなんとなくその名前を見たことがある程度でしたが、まさか自分の子どもに現実となって降りかかってくるとは思ってもいませんでした。 乳幼児突然死症候群は死亡原因の第4位「乳幼児突然死症候群」とは、Sudden Infant Death Syndromeの頭文字をとって「SIDS」と表記されることもあります。それまで何の予兆もなく、病気をしていたわけでもない赤ちゃんが、原因不明で死亡してしまうというものだそうです。 寝たままの状態で死んでしまうため窒息と間違われることもありますが、窒息とはまったく別なもののよう。予防法はまだ確立されておらず、平成29年の厚生労働省のデータによると、乳幼児突然死症候群は乳幼児期の赤ちゃんの死亡原因の第4位になっています。 乳幼児突然死症候群は突然降りかかる子どもが生後3カ月のときのことです。おっぱいを飲まずにベビーラックで仰向けに寝た子どもをふと覗いた瞬間、目の前でまるでアニメのように、子どもの顔色がサッと変わっていったのです。明らかに様子がおかしい子どもを抱っこすると、すでに反応はまったくありませんでした。呼吸をしている様子もありません。 とにかく呼吸をさせなければいけないと思い、抱っこしながら口をこじ開け、のどに人差し指を突っ込みました。まったく反応はありません。そればかりか、のどが締め付けられ、指がつぶされそうになるのが感触として伝わってきます。「このままでは死んでしまう」⋯⋯頭にはそれしかありませんでした。 小さな泣き声、張り詰めた空気が安堵へ指に強烈な圧力を感じながらも、指を抜いたら子どもが死んでしまう気がして、そのままさらに指をぐいと押し当て、声かけを続けました。隣では母が119番へ電話をしています。私にはとても長い時間に感じましたが、実際には数分もあったのかどうか分かりません。 少しだけ、指にかかっていた圧が緩んだと感じた瞬間、本当にかすかな声で「うぇ」と子どもが泣きました。するとみるみる指にかかる圧が緩み、子どもが口を開けました。相変わらず無反応でぐったりしている子どもでしたが、「助かった⋯⋯!!」本能的にそう感じずにはいられませんでした。 救急車が到着、告げられる病名気が動転している母と電話を代わり、子どもを抱きながら事情を説明。10分ほどで救急車が到着しました。酸素マスクが付けられ、病院へ到着するころには子どもはきょろきょろと目を動かし、「何ごと?」と言わんばかり。病院の先生の口から出た言葉は、「ニアミスの乳幼児突然死症候群」。 まさか⋯⋯という思い以外にありませんでした。とっさに口に指を入れたのは、医学的判断では良しとはされないおこないだそうですが、わが家の場合は奇跡的にも一命と取りとめることができました。その後、3日間大学病院で検査入院をし、SIDSの特別チームの先生方に検査をしていただきましたが、異常は見られないとのこと。現在も元気に育ってくれています。 「乳幼児突然死症候群」⋯⋯その瞬間になぜか冷静でいられたのは、現実に起こっていることだと受け止め切れていなかったからかもしれません。奇跡的に助かった子どもの生命力に感謝して、目の前にある笑顔を守り続けたいと思います。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 著者:坂本ひろ子1児の母。自身の体験をもとに、妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆している。
2019年09月20日どうもこんにちは、のばらです! 前回 の続きです。おでこにケガをし、病院で処置をしてもらった息子。すっかり元気になりましたが、改めて家を見まわしてみると…。いかんですね。毎日必死に見守っているけれど、3人目という経験からくる余裕からか、1人目のときの緊張感が、3人目のときにはすっかり薄れておりました。家の中でも何があるかわからない、と今回改めて痛感…!軽いケガなら経験してどんどん強くなってほしいけど、大きな事故に繋がらないよう、しっかり見守っていきたいです…!!
2019年09月20日子どもが元気で生まれてくることは当たり前ではない。そうわかっていながらも、どこかで他人事に思っていました。これは第二子を出産したときの話ですが、私たち家族が息子に障害があるかもしれないと言われ、前に向いて歩き始めるまでのエピソードです。 妊娠から出産まで妊娠中は、つわりがあったものの、妊婦健診でも特に異常と言われることなく出産当日を迎えました。出産予定日より1週間遅れ、陣痛促進剤を使って出産する予定になっていたその夜に陣痛が来ました。10時間ほどかかって自然分娩で3,536gの元気な男の子を出産。 生まれてきた赤ちゃんはしっかりと泣き声をあげていたので、ほっとしていると、先生が「この子は体の左右の色が違うね」と気になることを言いました。でもこのときは、ただのあざだと思ってそこまで気にしていませんでした。 新生児健診で不安がつのる生後3日目に、小児科医による新生児健診がおこなわれ、息子は最後でした。周りの赤ちゃんが特に問題もなく終わっていくなか、息子の番に。すごく深刻な顔をした先生は、「体の色が違うということは、血管に異常がある可能性があるということ。そうなると脳や神経にも何かしら異常があるかもしれないので、検査が必要です」と。 自分の心拍数が上がるのがわかりました。その後、先生がいなくなった後もその場から動けず、あふれ出る涙。なんで元気な体で産んであげられなかったのか自分を責め、どうしてわが子なのか、受け止めきれませんでした。 事実を受け止め、前に進めるようになるまで緊急を要する病気ではないこと、また里帰り出産だったこともあり、検査は1カ月後に現在住んでいる家の近くの病院を受診することになりました。それまでの1カ月間、病名もわからずただただ不安な毎日。自分を責めたり、息子の将来を悲観したり、とにかく毎日息子を見ては泣いていました。そんな私を変えてくれたのは夫の一言。「どんなに健康な人だって、いつ病気になるかわからない。〇〇くんは、たまたま生まれたときからそれが目に見えているだけだ。他の人と何もかわらない。彼は元気なのが当たり前じゃないのを教えてくれているんだよ」そう言われて、元気なことが正しいことのように思っていた自分に気付きました。 検査の結果、幸い心臓や内臓に何も異常がなく、経過観察となりました。病名もこの段階では、はっきりとした診断をもらえませんでしたが、その後、「大理石紋様先天性毛細血管拡張(だいりせきもようせんてんせいもうさいけっかんかくちょう)」と診断。検査までの1カ間、息子に申し訳なく将来が不安で泣いて過ごしていた私ですが、気持ちを切り替えどんなことがあっても息子を守り、一生支えていくと心に誓い、泣くことをやめたのです。そして、目の前に生きていてくれることがどんなに尊くありがたいことかということを感じるようになりました。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 著者:天川みほし5歳女児と2歳男児の母。前職は公務員として子育て支援の仕事をしていたが、夫の転勤に伴い退職。故郷を離れ、初めての土地で子育てに奮闘中。
2019年09月18日妊娠中に、なんだか胃の調子が良くない、胃がムカムカする、胃が痛いなどの症状が起きたことのある妊婦さんも多いのではないでしょうか。妊娠中は、胃の調子が悪くなりやすいです。そのため、今回は妊娠中に起こりやすい胃の不調の原因や胃薬の服用、注意したい胃の不調についてお話しします。 妊娠中に胃の調子が悪くなるのはなぜ?妊娠中の生理的な変化によって胃の調子が悪くなりやすい理由は、以下の5点が挙げられます。 ①妊娠を維持するホルモンの作用妊娠すると、妊娠を維持する作用をもつプロゲステロン(黄体ホルモン)とリラキシンいうホルモンがお母さんの体の中で増加します。このホルモンは、消化器系の筋肉の運動を緩めさせて、腸の動き(蠕動運動)を抑制する作用があります。これは、食べ物を胃や腸内をゆっくりと時間をかけて移動させることで、効率よく栄養の吸収をするためですが、時に消化不良を招くこともあります。食道と胃の境界にある筋肉が緩むと、食べ物が胃液と共に胃から食道へ逆流して胸やけが起こることもあります。妊娠週数が進むと大きくなる子宮が胃を押し上げるため、なんだか胃の調子が悪い、胃がムカムカする、胃が痛いなどの症状が起こりやすいです。 ②食生活の変化妊娠初期はつわりがあるときに、水分を多く含む食品や冷たい飲み物を大量に摂取することで、胃腸が刺激され消化不良になり調子が悪くなることがあります。妊娠中期以降は、食べる量の変化や、胎児の成長と共に子宮が胃腸を圧迫することで、消化不良を起こしやすく、なんだか胃の調子が悪い、胃がムカムカする、胃が痛いなどの症状が起こることがあります。胃の調子が悪いときは、できるだけ脂肪の少ない食品をやわらかく調理した食事を摂るように心がけましょう。酸味や辛味の強い料理、水分の多い食品、乳製品、炭酸飲料は、胃腸に対する刺激が強いので控えめが良いでしょう。 ③つわりで何度も嘔吐を繰り返す、嘔吐物に血液が混じるつわりで何度も吐くことで、胃の調子が安定しないことがあります。何度も繰り返し吐くことで、食道と胃の境界付近の粘膜が傷つき、血を吐くことがあります。この状態をマロリーワイス症候群といいます。妊婦さんが繰り返し吐いてマロリーワイス症候群となった場合、血を吐くといっても実際に交じっている血液は少量で、直ちに赤ちゃんの生命や母親の健康に危険が及ぶというわけではありません。しかし、胃の不調があって血液混じりの嘔吐をする場合は、つわりが重症で最低限の体の中のバランスが崩れていることが多いので、早めに産婦人科を受診しましょう。 ④鉄剤の内服による副作用妊娠中は貧血になりやすいですが、病院で処方された鉄剤を内服し始めたばかりの時期に、なんだか胃の調子が悪い、胃がムカムカする、胃が痛いなどの副作用が起こることがあります。共に処方された鉄分の吸収を促すビタミンCを含むビタミン剤を内服することで、消化不良が助長されるケースもあります。鉄剤は胃酸の影響を受けるため、胃薬(胃粘膜保護剤)と共に内服する、あるいは内服のタイミングを工夫する(例:食後ではなく、食間や睡眠前に内服する)ことで、副作用である胃のムカつきや胃痛などの消化器症状を抑えることもできます。鉄剤を内服し始めてから胃の調子が悪いと感じる場合には、次回の妊婦健診を待たずに医師や助産師へ相談しましょう。 ⑤精神的なストレス妊娠に伴う緊張感や生活環境から受けるストレスによって自律神経が乱れ、胃の調節機能が働かなくなることがあります。本来食物を消化するときに分泌される胃酸が、食物がないときにたくさん分泌されることで、自分の胃粘膜を攻撃して胃痛が起きたり、胃もたれや胸やけなどが起きる原因となります。 妊娠中に胃の不調…胃薬を飲んでも大丈夫?妊娠中は生理的な変化によって胃の調子が悪くなりやすいですが、自己判断で市販の胃薬を内服したり、自然治癒を期待して受診せず症状を長引かせたりすることはやめましょう。 なぜ胃の不調が起きているか原因は診察しないとわかりません。胃薬には、胃酸の分泌を抑えるタイプ、胃酸を中和するタイプ、胃粘膜を保護するタイプなど数種類あります。医師が診察をして原因に合わせた処方をしますので、市販の胃薬や過去に処方された胃薬を自分の判断で内服しないようにしましょう。 妊娠中に一般的に処方される胃薬の主成分の一般名と代表的な商品名は以下の通りです。 ・制酸剤一般名:乾燥水酸化アルミニウムゲル水酸化マグネシウム(商品名:マーロックス)・防御因子増強剤一般名:スクラルファート(商品名:アルサルミン)一般名:テプレノン(商品名:セルベックス)一般名:アズレン L- グルタミン(マーズレン S)一般名:レバミピド(ムコスタ) 以下のH2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬は、胃酸分泌を抑える効果が高く、胃酸過多の状態にはとても有効な薬剤です。妊娠中でも、必要性があれば使用しても良い薬剤(一般的に有益性投与と呼ばれています)に分類されていますし、FDA(米国食品薬品局)の安全性カテゴリー分類でもほぼ安全とされていますが、担当の医師と相談し慎重に使用するのが良いでしょう。 ・H2受容体拮抗薬一般名:ファモチジン(商品名:ガスター)一般名:シメチジン(商品名:タガメット)・プロトンポンプ阻害薬一般名:ランソプラゾール(商品名:タケプロン) つわりや胃部の不快感などに、漢方薬も広く使用されています。小半夏加茯苓湯、五苓散、六君子湯などが用いられていますが、漫然と使い続けるのは避けましょう。 妊娠中の禁忌薬についてプロスタグランデイン製剤(商品名:サイトテック)や制吐剤(商品名・ナウゼリン)などのように妊娠中には、使用禁忌の薬剤もありますから、いずれのお薬を使用するにしても、勝手に使うのではなく、担当の先生ときちんと相談してから使うようにしましょう。※参考:薬物治療コンサルテーション妊娠と授乳第2版南山堂 有益性投与について胃薬を含めて多くの薬剤は、製薬メーカーの説明書では、妊娠または妊娠の可能性のある婦人は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとあります。このような表示ではそれら薬剤の使用はほとんど問題ないのですが、医師や薬剤師に相談しましょう。 胃痛以外に症状があったら要注意!妊娠中に胃が不調となることは珍しいことではありませんが、妊娠経過に影響することもあるため見過ごしてはいけない症状でもあります。下記のようなケースは早期発見と治療が大切です。 ・細菌やウィルスなどの感染の可能性がある。妊娠中は抵抗力が弱まり、妊娠していない状態よりも細菌やウィルスなどに感染しやすいため、食中毒や胃腸炎を起こすことがあります。胃やおなかが痛いだけでなく、嘔吐や発熱を伴う場合は、早めに産婦人科へ受診しましょう。やむを得ず、内科や消化器内科など他の診療科や医療機関を受診する場合は、妊娠していることを伝えて診察を受けましょう。・HELLP(ヘルプ)症候群の可能性がある。HELLP(ヘルプ)症候群とは、赤血球が壊されること、肝機能の悪化、血小板の減少を特徴とした母子の生命が急激に危険な状態になる疾患です。HELLPは、Hemolysis(溶血:血液中にある赤血球が破壊されること)Elevated Liver enzyme(肝酵素上昇:肝臓の機能が悪くなること)Low Platelet(血小板減少)の頭文字に由来しています。 多くは妊娠高血圧症候群に合併して起こりますが、合併がなく突如発症することもあります。明らかな原因は不明ですが、症状を放っておくと臓器にダメージを与え母親の命にも関わる病気なので、妊娠を終了させること=出産することが唯一の治療方法です。 HELLP症候群は、主に妊娠後期(妊娠28週以降)~出産後48時間以内に起こることが多く、突然胃痛(心窩部痛)に襲われ、疲労感や吐き気・嘔吐、下痢の症状を伴います。妊娠中に起こりやすい症状と似ているため、単なる体調不良や風邪と思ってしまう妊婦さんもいますが、母子の生命を守るためには早期発見と治療が大切です。突然胃痛が起きて身動きがとれない、吐き気や嘔吐など症状がある場合は、直ちに産婦人科へ受診しましょう。 まとめ妊娠中は、胃の不調が起きやすいですが、自己判断で市販の胃薬を飲んだりせずに調子が悪いときは医師の診察を受けて適切な治療を受けましょう。対策を取ることで、症状は軽減できますので、無理をしないようにしましょう。 参考:・産婦人科診療ガイドライン産科編2017・薬物治療コンサルテーション妊娠と授乳第2版南山堂・医薬品情報データベース 監修者:医師 医療法人至誠会 梅田病院院長 北川 博之 先生昭和56年愛媛大学医学部卒業。その後愛媛大学付属病院にて産婦人科講師、助教授として勤務。愛媛県立医療技術大学教授を経て、平成20年より現職の梅田病院に院長として就任。現在も愛媛大学、広島大学などで非常勤講師として教育にも従事。著者:助産師 古谷真紀一般社団法人産前産後ケア推進協会プロジェクトリーダー大学病院勤務を経て、2015年より現職。妊娠中や産後の女性のココロとカラダの相談、ママパパ&赤ちゃんのちょっと気になるコトに日々応えています。
2019年09月18日長男は生後3カ月ころから、陰嚢がペチャンコのことが多い気がしていました。受診しましたが、この時期は問題ないとのこと。その後、10カ月健診のときに専門医から「移動性精巣」と診断されました。治療するなら全身麻酔の手術が必要ですが、必ず手術を要する疾患ではないとのこと。長男に手術は必要かどうか悩みましたが、手術を決断してから手術後までの様子をご紹介します。 移動性精巣の診断から手術を決意長男は生後10カ月で専門医にて「移動性精巣」と診断後されましたが、経過観察のための通院のみでした。医師によると、成長とともに改善することも多く、無治療で経過観察だけの場合もあるとのこと。しかし長男の場合は、精巣が陰嚢より上に上がっている時間が長かったので手術が必要でした。精巣が上がっている時間が長いほど停留精巣と同じ状態になり、将来の癌や不妊のリスクが上がるそうです。全身麻酔のリスクもあるので、1歳半まで待って手術となりました。 手術前日から当日朝の様子2泊3日の予定で、手術前日の午後に入院しました。前日まで保育園に行き、いつも通りの生活でしたが、風邪をひくと手術は延期になるので体調には非常に気をつかいました。親の付き添いは自由でしたが、心配だったので私も付き添い入院することに。病棟という慣れない場所で私が離れると泣いていましたが、機嫌が悪くなることはなく寝かし付けて就寝。食事は手術前日の夕飯を食べて、当日朝から絶食となりました。 1時間半で無事に手術終了朝から眠くなる薬でトロンとしている長男。ベッドに横になったまま手術室へ移動し、入口のところで長男を見送りました。約1時間で手術は終了し、医師から説明がありました。精巣を上から支える筋肉の引き上げる力が強くて精巣が上に上がってしまうため、支える筋肉をそいで減らす手術をしたそうです。 その後、すぐに眠ったままの長男が出てきて、30分ほどで目を覚ましました。午前10時に手術は終わり、夕食から普通に食べることができました。 退院翌日に保育園に復帰!手術翌日に退院し、さらにその翌日には保育園に復帰できました。傷跡は接着剤のようなもので固めてあり、1週間後の通院日まで清潔を心掛ける程度のケアで済みました。そして1年経過観察に通い、問題なく終了。本人はまだ理解していませんが、精巣も陰嚢内におりてきている時間が長くなりました。ちなみに多少の行き来は健康な人でもあるそうです。私はホッとしてうれしくて、おむつ替えのたびに陰嚢を触りニヤニヤしていました。傷跡は陰嚢を裏返すと多少切開の痕がわかりますが、しわでうまくごまかせています。 「移動性精巣」は、停留精巣に比べて情報も少ないので当初は不安になりました。経過観察も手術も心配でしたが、2泊3日で退院できましたし、その後心配がなくなったのでよかったと思っています。※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 著者:佐々木めい7歳、5歳、2歳の3児の母。実家は遠方で夫は単身赴任中。看護師と養護教諭の資格を持ち、元小児科ナース。育児と仕事の両立を図っている。自身の体験談などを中心に執筆しています。
2019年09月16日子どもがケガをするのは一瞬ですね。あれは幼稚園のお迎えのあと、ママ友さんに挨拶をしていたときのこと…え?泣き声?なにごと~~?と見てみると次女が階段でこけてました!そもそも帰り道で階段に上る必要はないのに~!なんで?どうした?と私も多少パニックに。階段のふちにおでこが当たったようです。頭のケガはたいしたことなくても、結構な血が出るから…たいしたことないといいけど…!と祈るような気持ちで病院へ。結局2針ぬうことになりました。小学生になった今でもその時の傷がうっすら残っています。次女本人はそのときのことを武勇伝のように語っていますが…
2019年09月14日どうもこんにちは、のばらです!前回の続きです。家の中でおでこパックリのケガをした息子。夜間診療で応急処置をしていただき、後日改めて病院へ行くことに。もうね、ドア越しにママを呼ぶ息子の絶叫ったらもう…!全て終えて出てきた息子と涙の抱擁を交わしましたよ!ちなみに、縫合の直前に看護師さんに「モモくんの着替えは持ってきてますか?」と聞かれたのですが…、なるほど。縫合を終えて出てきた息子は、全力で抵抗したのが容易に想像できるほど、大量の汗で全身ぐっしょりになっていたのでした。よく頑張った! 息子よ!!
2019年09月13日妊娠をきっかけに、くしゃみ、鼻水、鼻づまりが起きた妊婦さんのために、今回は妊娠中に起こりやすい鼻炎についてお話しします。 妊娠中に鼻炎が起こりやすい理由妊娠すると、妊娠を維持するためのホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)の濃度が高くなり、妊娠16週以降は母体の循環血液量が増加するため、鼻の粘膜への血流が増えます。その結果、粘膜自体がうっ血して、くしゃみや鼻水、鼻づまりの症状が出やすい状態になります。鼻の粘膜がやわらかく腫れるため鼻血が出やすくなったり、鼻をかむ回数が増えることで中耳炎にかかったりする妊婦さんもいます。 妊娠をきっかけに起こる鼻炎を、妊娠性鼻炎といいます。妊娠性鼻炎は、出産後数週間で治ります。妊娠性鼻炎の主な症状は鼻づまりで、風邪などの感染症やアレルギー性鼻炎とは区別して治療します。しかし、妊娠性鼻炎が起きる妊婦さんには、妊娠前からアレルギー性鼻炎があることも多く、その場合は鼻づまりだけでなく、くしゃみや鼻水の症状も伴います。 妊娠してから、くしゃみや鼻水が止まらない、鼻づまりで息苦しいと感じたら、次回の妊婦健診を待たずに早めに産婦人科を受診しましょう。アレルギー性鼻炎がある妊婦さんは、かかりつけの耳鼻科へ受診する際に、必ず妊娠中であることを伝えましょう。また、妊娠前に処方された内服薬や点鼻薬を、自己判断では使用せずに受診しましょう。そして妊娠中は、胎児に与える影響を考えた治療が必要です。医師の診断を受けずに、自己判断で市販薬を使用することや、民間療法だけに頼ることはやめましょう。 妊娠中の鼻炎 治療方法は?妊娠週数や鼻炎の症状に合わせた治療をします。 妊娠12週未満は、赤ちゃんが人間のかたちに発育していく重要な時期のため、医師の判断で点鼻薬や内服薬の使用は控えることがあります。胎盤が完成する妊娠16週以降から出産までの間に鼻炎の症状が日常生活に影響する場合は、胎児に影響の少ない鼻噴霧用ケミカルメディエーター遊離抑制薬や鼻噴霧用ステロイド薬などが処方されます。鼻噴霧用の薬の使用量はごく少なく、全身への影響は少ないため、妊娠中でも安心して使用できます。処方される薬について心配なことがあれば担当医へ質問しましょう。 妊娠中の鼻炎 症状を和らげるためのセルフケアくしゃみは、外界から侵入した異物を排出するために起こります。妊娠中にくしゃみを繰り返すと、おなかが張りやすくなったり、尿漏れが起きたりすることがあります。また、空気が乾燥していると、鼻の粘膜から水分が奪われやすいため、鼻づまりが起こりやすくなります。蒸しタオルを鼻部分に当てると蒸気で鼻づまりを和らげるので、妊婦さんにはおすすめです。アレルギー性鼻炎であれば、アレルギーを引き起こす物質が鼻の中に入る量を減らしましょう。 鼻炎の症状を和らげるために、自分でできることは以下の通りです。・室内の温度20~25℃、湿度50~60%に保つ・鼻炎の症状があるときは、なるべく人混みを避ける・外出するときは、マスクやメガネを着用する・室内を掃除するときやホコリが舞う場所では、マスクを着用する・ハウスダストやダニを避けるために、布張りのソファー、カーペット、畳の使用をやめる・花粉情報や気象情報を活用しながら、部屋の換気や掃除をして、室内や寝具の清潔を保つ・花粉の飛散が多い時期は、窓や戸を開ける回数を減らす・ペットを飼っている場合は、ペットとペットの飼育環境を清潔に保つ・寝室にペットは入れない まとめ妊娠中は、鼻炎を起こしやすい状態になります。くしゃみや鼻水、鼻づまりに悩むときは、早めに産婦人科もしくは耳鼻科に受診しましょう。 参考:・産婦人科診療ガイドライン産科編2017・耳鼻咽喉科学会診療ガイドライン/手引き・マニュアル・妊娠とアレルギー性鼻炎(XV. 妊娠とアレルギー疾患,専門医のためのアレルギー学講座)米倉 修二, 岡本 美孝・鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会編『鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症―2016年版』 ◆関連動画出産ドキュメンタリー 監修者:医師 おおたレディースクリニック院長 太田 篤之 先生順天堂大学卒後、派遣病院勤務を経て、平成22年より順天堂静岡病院周産期センター准教授就任。退職後、平成24年8月より祖父の代から続いている「おおたレディースクリニック」院長に就任し現在に至る。著者:助産師 古谷真紀一般社団法人産前産後ケア推進協会プロジェクトリーダー大学病院勤務を経て、2015年より現職。妊娠中や産後の女性のココロとカラダの相談、ママパパ&赤ちゃんのちょっと気になるコトに日々応えています。
2019年09月12日「気軽に専門家に質問ができて、さらに返信も早い」とママから日々感謝の声が寄せられているベビーカレンダーの人気コンテンツ【助産師に相談】の掲示板。その中から特に注目をあつめた質問の内容を一部抜粋してご紹介します。今回はヘルパンギーナに罹った娘さんを持つママからのご相談です。 Q.ヘルパンギーナに罹り、夜泣きがひどくなりました生後8カ月の娘がいます。日曜日に39度の熱があり、翌日には平熱まで下がったのですが病院に行ったらヘルパンギーナと診断されました。 熱が下がってからは離乳食をほとんど食べない以外は日中機嫌よく過ごしていました。ただこの2日間、夜泣きが大変ひどくなりました。普段は夜中目が覚めても授乳したらすぐに寝てくれていたのが、授乳しても寝ずに20〜30分間ずっと泣いています(授乳→寝ずに泣く→トントンしたり抱っこしてユラユラする→泣き止まずまた授乳→ようやく寝る)。本人が一番つらいのはわかりますが、流石にこれが連日続くと眠いです。 これはヘルパンギーナで喉が痛いせいなのか、たまたまタイミングが重なっただけなのか疑問です。また、ヘルパンギーナで潰瘍がひどいみたいですが何日くらいでおさまり、通常通りの離乳食に戻れるものなのでしょうか? また、今朝、娘のおむつを見たらおしっこがまったく出ていませんでした(12時間くらい替えていません)。授乳や麦茶はこまめにあげていたつもりでしたが、水分が足りていなかったのでしょうか? 宮川めぐみ助産師からの回答娘さんが高熱を出してヘルパンギーナと診断をされていたのですね。その後おしっこは出ましたか? おしっこの量が少なかったり、色が濃いようでしたら、飲めている量が少ないのだと思います。夜中に泣いていることが続いて、飲んでいる間は落ち着くということを繰り返していたのですね。お熱が出ていたのと体のつらさもあってのことかと思いますよ。喉の潰瘍の痛みが強いようでしたら、なかなか思うように飲めなかったりもすると思います。飲めていなくて、思うように水分を摂ることができない(先ほどのおしっこも出ないなどあるようでしたら)、受診をしていただくといいと思います。 ヘルパンギーナは、だいたい5日ほど経つと喉の痛みも軽減して食べられるようになると言われていますよ。今は冷めたおじや、いろいろと混ぜ込んだスープをミキサーにかけて冷ましたものもいいと思います。喉越しのいいものをあげてみてくださいね。※参考:ベビーカレンダー「助産師に相談」コーナー※診断や具体的な治療については医師の指示にしたがってください ヘルパンギーナとはプール熱(咽頭結膜熱)、手足口病と並ぶ、夏風邪の代表となる感染症で、毎年5月ごろから増加し始め、7月ごろにかけてピークとなり、9~10月にかけてほとんど見られなくなるという流行時期の特徴があります。 5歳以下の乳幼児が患者数の9割を占めているため、保育所や幼稚園で流行しやすい病気と言えます。特に1歳代が多く、年齢が上がるとともに患者数は減っていきます。0歳でかかる割合は5歳代とほぼ同じくらいとされています。 ヘルパンギーナの治療法と予防方法ヘルパンギーナのウイルスに直接効く薬はないため、対症療法となりますが、基本的には自然によくなります。 対症方法のポイントとしては口の中の痛みによって水分摂取が難しい場合があるので、脱水を起こさせないことです。そのため、医師の指示のもと、乳幼児用の経口補水液など、飲みやすく、吸収の早い飲み物をこまめに与えるようにしましょう。水分を嫌がる場合は、氷にしたり、水分を多く含むゼリーなどを与えても良いです。また、部屋の温度が高いと、発汗によって脱水が促進されてしまうため、室温にも注意しましょう。ヘルパンギーナの予防方法としては、手洗い・うがいをしっかりすることと、免疫力を落とさないことです。ヘルパンギーナの感染経路は、飛沫感染・経口感染・接触感染と、集団生活をおこなう場所で感染してしまいます。そのため、帰宅後の手洗い・うがいをしっかりおこない、栄養のある食事を摂り、早寝早起きの生活習慣を続けることが、ヘルパンギーナに限らず感染症の予防に繋がります。 また、ヘルパンギーナは症状が治まった後も長期にわたって便にウイルスが排泄されることがあるため、おむつ替えやトイレの後には手洗いをしっかりおこないましょう。※参考:基礎知識(ベビー)「赤ちゃんや子どもがかかるヘルパンギーナとは?症状や原因、治療法について」【監修:医師 松井 潔 先生 小児科 | 神奈川県立こども医療センター総合診療科部長】
2019年09月09日待ちに待ったわが子が誕生し、喜びも束の間、子どもの顔に“あざ”があると気付いたのは、生まれた翌日のことでした。子どもの顔にあざがあるなんて、妊娠時には想像もしておらず、当時の私はとてもショックを受けました。ここでは、その後にあざを除去するために受けた、レーザー治療の体験をお伝えしていきます。 あざだと気付いたのは……出産して数時間後から母子同室だったため、娘の顔を「かわいいなぁ」と見ていたのですが、そのときまぶたの上の一部分が赤くなっていることに気付きました。生まれたばかりの赤ちゃんの肌は薄く、赤っぽく見えるのでそのせいだと思っていました。しかし翌日、医師から「まぶたが赤っぽくなっているのは生まれつきのあざ。1カ月健診のときにまた相談してみてください」と告げられたのです。 1カ月健診後、皮膚科を受診娘のまぶたのあざは1カ月健診を迎えるころになっても薄くなったり消えたりせず、むしろ少し赤みが増していました。1カ月健診では、医師から「お母さんが気になるようだったら早めにレーザー治療をしている皮膚科に相談してみてください」と言われ、母子健康手帳に「瞼(まぶた)に血管腫あり」と記入されました。 その後、子どものあざのレーザー治療を扱っているクリニックを受診したところ、「このあざは時間が経っても消えないあざなのでレーザー治療をおすすめします」との診断でした。そのため、娘は生後3カ月でレーザー治療を始めることになりました。 レーザー治療を受ける受診する医療機関によりますが、娘が受診したクリニックでは、0歳からレーザー治療が可能でした。「生まれて数カ月の赤ちゃんの顔にレーザーを当てるなんて大丈夫なのだろうか」と心配しましたが、先生も看護師さんも幼い子どもの治療に慣れており、丁寧に説明してもらえたので安心して任せることができました。レーザー治療自体はゴムではじかれたくらいの痛みがある、と説明され、塗り薬の麻酔薬を使用してもらいました。娘はレーザーを当てられたときは泣いていましたが、治療終了後はケロリとしており、帰宅後も機嫌が悪くなるということはなくてよかったです。 レーザー治療、その後 その後、経過を見ながら計3度のレーザー治療をおこないました。一度の治療で劇的に変化することはありませんでしたが、徐々に赤みが引いていきました。3度目のレーザーが終わった時点でかなり薄くなっていたので、「この先は少し時間を置いてから、また考えましょう」ということになり、現在2年が経過。あざはほとんどわからないほど、薄くなっています。 あざに気付いたときはとても不安な気持ちになりました。しかし過剰に心配せず早めに医師に相談し、適切な処置を施してもらえてよかったです。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 著者:幸村あゆ5歳と2歳の兄妹の母。販売職、事務職を経て現在は子育てをはじめとする様々なジャンルの記事を執筆。子ども服やママファッション、インテリア、整理収納を研究するのが趣味。
2019年09月08日「気軽に専門家に質問ができて、さらに返信も早い」とママから日々感謝の声が寄せられているベビーカレンダーの人気コンテンツ【助産師に相談】の掲示板。今回は妊娠中の湿布に関するご質問です。 Q.妊娠中に湿布を使用しても大丈夫でしょうか?昨日の夜に玄関の段差から落ちて右足首を捻ってしまいました。おなかをかばってしまったためなのか足首が腫れ歩くのもやっとでつらい状態です。痛すぎるので湿布を貼っていいのか産婦人科に聞いたところダメとのことで、朝まで冷やしていましたが、痛みがおさまらないので整形外科に行って診てもらいました。骨には異常なく捻挫でしたが、腫れが酷いのでフェルビナクテープを処方されました。薬剤師さんは妊娠中でも大丈夫とのことでしたが、使っても大丈夫なんでしょうか? 在本祐子助産師からの回答該当薬に関しては、医師が処方し、薬剤師が調剤してお渡しした薬であれば、心配はないと思いますよ。特に妊娠中は薬に関してご不安があると思います。妊娠中や授乳中の薬剤については、国立成育医療センターが相談窓口を持っています。そこのホームページ上においても、局所外用薬は心配が少ないと記載されます。また具体的に個別相談もできます。よかったらご利用くださいね。妊娠と薬情報センター※参考:ベビーカレンダー「助産師に相談」コーナー※診断や具体的な治療については医師の指示にしたがってください 妊娠中の湿布の使用について妊娠中に湿布を使う場合は注意が必要です。湿布には、痛みをおさえる効果をもつ鎮痛剤の成分が含まれています。鎮痛剤の成分は、湿布を貼った患部の皮膚から吸収され、痛みを和らげる効果があります。妊娠中にお母さんが湿布を使った場合、湿布を貼った皮膚からお薬の成分が吸収されて、その成分の一部がお母さんの血液に混ざって全身を巡り、胎盤を通過して、赤ちゃんの体へたどり着きます。湿布に含まれる代表的な成分は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)という成分ですが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、赤ちゃんの心臓に影響を及ぼすことがわかっているため、妊娠中は下記の成分が含まれる湿布は使ってはいけません。 【非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) の成分名】・ロキソプロフェンナトリウム水和物・ケトプロフェン・インドメタシン・フェルビナク・ジクロフェナクナトリウムなど 妊娠中に耐えがたいほどの肩こりや腰痛に悩む場合は、自己判断で市販の湿布は使わず、医師や助産師へ相談しましょう。妊娠前から関節リウマチなどで、日常的に湿布を使っている場合は、痛みを和らげる方法を主治医と相談しましょう。 上記の鎮痛剤の成分が含まれていない湿布、冷却機能のみの湿布は妊娠中に使っても大丈夫です。おすすめはしませんが、応急処置としてやむを得ず市販の湿布を購入する場合は、必ず薬剤師へ妊娠中であることを伝え、相談してから購入しましょう。また、自宅に常備している湿布を使う場合は、上記の成分が含まれていないことを必ず確認してから使いましょう。 妊娠中に湿布を使った場合の影響は?妊娠中期(妊娠16~27週)に、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が含まれている湿布を使った妊婦さんに、羊水過少(通常よりも羊水の量が少ない状態)が起きたケースが報告されています。また、妊娠後期(妊娠28週以降)に、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が含まれている湿布を使ったことで、おなかの中の赤ちゃんに胎児動脈管収縮(赤ちゃんの心臓にある動脈管という大切な血管が収縮して、心不全や全身にむくみが生じやすい状態)が起きたケースが報告されています。(※1)この報告をふまえて、産婦人科では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を含まない湿布を処方するように対応しています。産婦人科以外の診療科を受診して、もし湿布を処方された場合には、成分について必ず医師や薬剤師に確認しましょう。 妊娠に気づく前から日常的に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の含む市販の湿布を使っていた、あるいは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の含まれる湿布だと知らずに使い続けていた場合には、医師へ相談しましょう。※参考:基礎知識(妊娠中)「【医師監修】妊婦さんは湿布を使っても大丈夫? 妊娠中に湿布を使う場合の注意点」【監修:医師 太田 篤之 先生 産婦人科 | おおたレディースクリニック院長】
2019年09月07日息子も1歳になり、ひとり歩きも少し安定してきたころ、家の前で息子を遊ばせていたときに起こった事故でした。ほんの少し目を離した瞬間に息子が側溝に落ちてケガをしてしまい、私は息子の手当てをしながら自分の対応に後悔したのを思い出します。それ以来、たぶん大丈夫! と思わず、よりいっそう注意するようになりました。ほんの一瞬のことで思わぬケガにつながってしまうんだと実感した、私の体験談をお伝えしたいと思います。 きっと大丈夫だろうという気持ちよちよち歩きの息子と一緒に、家の前のお花にお水をあげていました。私の家の周りには25cmくらいの深さがある側溝があり、カバーされていません。息子は側溝から離れた場所で、しゃがんで石を拾って遊んでいました。集中して遊んでいるように見えたので、ホースを片付けるために壁で遮られた庭へ一瞬だけ入りました。 ほんの5秒くらい目を離しただけでしたが、急いで出てきて息子に目をやるとまさに側溝へ向かって歩き、落ちる瞬間でした。「危ない!」 と叫び駆け寄るも届かず、息子は側溝に転落してしまったのです。 側溝に落ちてしまった息子側溝にうつぶせになる形で倒れ、息子は大泣き。慌てて抱き上げると、息子の口元が血で真っ赤になっていました。出血が多く、ぱっと見てどこをケガしているのかわからない程でした。 急いで家の中に入り流水で洗って改めて見てみると、上唇が5mmほど切れて、上唇の裏の筋が切れて出血している状態でした。タオルを押し当てて止血しながら、泣き叫ぶ息子を抱きしめて「手当してるから大丈夫だよ」と言うしかなく、ごめんねという気持ちでいっぱいになりました。 ほんのちょっと目を離しただけなのに傷が小さく、出血もすぐに止まったため、家で様子を見ることにしました。唇のケガ以外には打撲などはなく、少しほっとしました。ただ唇の腫れが引いて傷がふさがるまでの4~5日くらいの間、いつもはしっかり食べる大好きなごはんも一口づつ食べては痛そうに顔をしかめて少ししか食べられず、見ているのがつらかったです。 ケガから半年以上経ったころ、話せるようになった息子は、その溝を見て「ここドーンって落ちた、痛い痛いよ」と言います。小さかったのに鮮明に記憶に残っているようで、本当に怖い思いをさせてしまったんだと胸が痛いです。ほんのちょっとだからと自分の用事を優先せずに、どうしたら息子にとって安全でベストかを考えて行動すべきでした。 ちょっとだからと済ませてしまいたい用事があったとき、私はそれを優先させてしまったために息子にケガをさせてしまいました。大事には至らなかったけれど、息子は怖い経験としていまだにしっかりと覚えています。1歳という活動範囲が増えていくけれどまだまだ理解が不十分な時期。自分で思っている以上に注意して見守らないといけないんだなと実感した私の体験談でした。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 著者:山下 ひいこ一児の母。看護師・鍼灸師の資格を持ち、逆子治療やマタニティケアなどを行っている。自身の経験を生かし、不妊や妊娠・育児に関する体験談を中心に執筆活動を行う。
2019年09月04日ほとんどの妊婦さんは、妊娠中になるべく薬を飲まないほうがいい、薬に頼りたくないと考えていることでしょう。今回は、妊娠中に使用する咳止めの薬についてお話します。 妊婦さんの咳の原因人は妊娠すると、抵抗力が落ちてしまいます。季節の変わり目や風邪の流行期、職場や同居する家族から妊婦へ感染しやすくなり、その一つとして咳症状が起こることがあります。妊娠中に咳が出る原因として、下記が挙げられます。 ■乾いた咳:乾性咳嗽(空咳)、痰がからまない・上気道炎(いわゆる風邪):気道の充血や浮腫がきっかけとなり咳がでる。・温度の刺激によるもの:室内と室外の温度差をきっかけに咳がでる。・匂いの刺激によるもの:タバコや香水、食べ物などの匂いをきっかけに咳がでる。・胃酸の逆流によるもの:胃液が食道まで逆流して咳がでる。胸やけなどの症状を伴う。・緊張による意識的な咳:緊張などの精神的興奮が咳を起こす。 ■湿った咳:湿性咳嗽、痰がからむ・急性気管支炎(いわゆる風邪が悪化した状態):ウィルスの感染によるもの。・インフルエンザ:流行期に感染して起こる。 その他、気管支喘息、咳喘息、鼻炎や副鼻腔炎、花粉症などによって、咳の症状が長引くケースがあります。 妊娠中に咳が出る場合はどうしたらいい?妊娠中に咳が続くことで、肋骨の痛みや全身筋肉痛が出現したり、腹圧がかかることで尿漏れやお腹の張りを引き起こしたりすることがあります。咳が出始めて2~3日間経過しても症状が治らない時、咳の症状が日常生活や睡眠を妨げる時は、次の妊婦健診を待たずに、早めにかかりつけの産婦人科へ相談・受診しましょう。もともと喘息があり、症状が出た場合は、早めにかかりつけの医療機関へ受診する必要があります。周囲でインフルエンザなど感染症が流行っている場合は、他の妊婦さんへの感染を防ぐために、受診前に産婦人科へ電話してから受診するようにしましょう。やむを得ず、他の医療機関を受診する時には、必ず妊娠中であることを伝えてから診察を受けましょう。診断や治療方法を決めるために、必要に応じて微量の放射線を照射する胸部のエックス線検査(レントゲン検査)が行われることもありますが、母親の胸部に限定して撮影するため、赤ちゃんの健康状態への影響はほとんどありません。 妊娠中は咳止めの薬を飲んでもいいの?医療機関で診察を受けて、妊娠中に使用可能な咳止め薬を処方してもらったのであれば、内服していいです。妊娠経過を把握している産婦人科へ受診して、咳の症状に合わせた薬を処方してもらいましょう。 妊娠中に使用する薬が妊娠経過やお腹の中の赤ちゃんに影響するかどうかは、使用する妊娠週数によって異なります。妊娠中に使用した薬が、母親と赤ちゃんに対してどの程度影響するのか、障害を与えるのかについては、薬の成分の大きさ(分子量)や血液への混ざりやすさ、体内の移動方法、化学的あるいは物理的な特徴、胎盤を通過して赤ちゃんまで届くのかなど多くの細かい条件が関係しています。妊娠経過は個々によって異なるため、自己判断で対処すると、母体や胎児の成長発達に影響を与えてしまう可能性があります。薬局やドラッグストアなどで市販されている咳止め薬を自己判断で使用するのはやめましょう。 一般的に咳止めのために処方される薬は、鎮咳薬といいます。鎮咳薬には、咳の起きる反射そのものを抑える中枢性鎮咳薬と、痰を抑えたり、のどの炎症を鎮めたりと、咳の起こるきっかけを和らげるための末梢性鎮咳薬があります。咳の症状に合わせて処方されますので、薬の効果や副作用について心配なことがあれば医師と相談しながら使用しましょう。妊娠中に使用可能な薬は下記のとおりです。※下記の薬の名前は一般名といわれるものですので、処方された薬の製品名と異なる場合があります。 【妊娠中に使用可能な薬】鎮咳薬:デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物ジメモルファンリン酸塩去痰薬:ブロムヘキシン塩酸塩アンブロキソール塩酸塩漢方薬:麦門冬湯小青竜湯(麻黄含有※長期不可) また、日頃から風邪対策のために、あるいは咳予防のために、うがい薬を使用する妊婦さんがいますが、実際は水で十分です。うがい薬には、ポピドンヨードというヨウ素を含むものがあり、普段の食事で摂取できる量よりも多いヨウ素を母体が吸収するきっかけとなってしまいます。ヨウ素の大量摂取は、胎児の甲状腺機能の低下を招くことがあるため、うがい薬の使用は避けましょう。 薬に頼らない咳止めの方法はあるの?咳の症状に悩まされている状況で、薬に頼らない方法を模索する妊婦さんは多いかもしれません。しかし、咳が出ている原因を特定しない限り、咳そのものを止めるのに時間がかかることがあります。咳を止める方法とはいえませんが、咳の症状を和らげるために、気道の粘膜を刺激する物質や匂いはさける、室内の温度や湿度を調整する、飴をなめたり、こまめに水分補給したりは効果的です。 また、咳を抑えるために、意識的に咳をこらえることはやめましょう。体外に出せなかった痰などの分泌物が気道内に溜まることで、呼吸しづらくなったり、呼吸するためのエネルギーが必要になったりするため、更なる体力の消耗を招きます。妊娠中に起こる病気は、母体のみならず胎児にも影響します。薬の使用を避けるために受診を拒んだり、なにも対処せず時間の経過と共に自然に治ることを期待したり、医療機関を受診しないでも症状が治るかのように説明する民間療法だけに頼ることは避けましょう。 まとめ妊娠中は抵抗力が弱るため、風邪などを引きやすい状況にあります。その中でも妊娠中の咳症状に対してお話してきました。妊娠中に使用できる薬はあります。咳の症状が2~3日間様子をみても治まらない場合は、次の妊婦健診を待たずに、早めにかかりつけの産婦人科へ相談しましょう。何事も、早めの対応が必要です。 参考:・日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン産科編2017」・日本呼吸器学会「咳嗽に関するガイドライン第2版」 監修者:医師 三鷹レディースクリニック院長 天神尚子 先生日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、平成7年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。
2019年09月04日わが家には3人の子どもがおり、それぞれ異なるタイミングで手足口病にかかりました。同じ手足口病でもその症状はさまざまで、見分けるのが難しかったです。今回は3人の子どもに出たそれぞれの症状をお伝えします。 長女は2歳のときに発症2歳から保育園に通い始めた長女は、そのころからさまざまな病気をもらってくるようになりました。 長女の場合、夏の夜に何の前触れもなく38度以上の発熱。第一子だったこともあり、翌朝焦って病院に連れて行きました。しかし他に症状もなく、現段階では判断できないと言われ、解熱剤だけもらって帰宅。 すると、その翌日に熱が下がり始め、同時に口の中と手足に発疹が⋯⋯。再度小児科を受診し、「手足口病」と診断されました。 発疹が出てからは口の中が痛くて食欲も落ち、機嫌も悪かった記憶があります。 次女は発疹が口の中だけ次女は3歳で発症。しかし発熱はなく、ある日突然食事の際に「口の中が痛い」と泣いたことで判明しました。 口の中を見てみると白いプツプツとした発疹が無数にできており、塩気や酸味がしみて痛いようでした。念のため小児科を受診すると、手足口病と診断が。口の中だけ発疹が出ることもあるのだと、そのとき初めて知りました。 その後も発熱や風邪症状はなく、口の中の発疹は自然治癒しました。 長男は手足の発疹がひどかった長男は1歳で発症。土曜の夕方に急に39度程度の熱が出たのですが、ぐったりすることもなく元気そうだったため、焦らず自宅で様子を見ました。 すると、翌日の日中には平熱に。「何だったんだろう……?」と思っていると、手足に赤いブツブツを発見。第三子だったので、手足口病かな〜とピンときました。 そして口の中も口内炎のような発疹がたくさんできていました。 月曜の朝に受診して様子を伝えると、手足口病で確定との診断。長男の場合、手足の発疹が他の2人よりひどく、痛痒いようで掻いてしまい、とびひのようになってしまいました。そのため、塗り薬を処方してもらって塗っていました。 同じ手足口病でもその症状の出方はさまざまで、小児科の先生でも「う〜ん、たぶん手足口病でしょうね」と断定しきれない様子でした。ただし手足口病だとわかったとしても、特効薬はないようです。刺激の少ない食べ物をできるだけ食べさせながら、自然に回復するのを待ちました。3人とも普通の食事ができるようになるまでに、5〜7日程度かかりました。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします 著者:ライター 岩崎未来三児(女・女・男)の母。出版社・編集プロダクションの勤務を経たのち、第一子出産を機にフリーランスに。現在は会社役員という肩書きを持ちながらも、ライター・編集者としても活動中。
2019年09月01日「気軽に専門家に質問ができて、さらに返信も早い」とママから日々感謝の声が寄せられているベビーカレンダーの人気コンテンツ【助産師に相談】の掲示板。今回は喘息をもっている妊婦さんからのご相談です。 Q.喘息持ちだと帝王切開でしか出産できませんか?私は喘息をもっている初産婦です。10月に出産予定ですが、ちょうどその時期だと喘息の症状が出やすい時期です。シムビコートを吸引していますが、喘息持ちの妊婦は何か出産のときに対処してもらえないのでしょうか? 帝王切開でしか産めませんか? 高塚あきこ助産師からの回答喘息の症状が出やすい時期でのご出産がご心配なのですね。喘息の症状や程度にもよりますが、喘息がある方でも、経腟分娩は可能ですよ。確かに、喘息の方には使えないお薬もありますが、違うお薬で対応することも可能ですし、喘息があるからということでの大きな制限はあまりないように思います。病院の方針によっても、多少異なることがあると思いますので、詳しくはおかかりつけの産婦人科でご相談なさってくださいね。※参考:ベビーカレンダー「助産師に相談」コーナー※診断や具体的な治療については医師の指示にしたがってください 喘息合併妊娠 妊娠中はどうなる?・妊娠中の喘息治療は、基本的に妊娠前と同じようにおこないます。通常、妊娠して子宮が大きくなるとともに肺が圧迫され、呼吸機能は低下するため、特に喘息の女性は妊娠中に発作が起こらないように適切な薬物治療を続けることが重要です。 ・妊娠中に喘息の状態が不安定になると、母親の低酸素状態が胎児への酸素供給だけでなく、子宮や胎盤への血流を阻害して、胎児の発育や母体血圧などに悪影響を及ぼします。それにより、周産期死亡・妊娠高血圧症候群・流産・早産・胎児発育不全(FGR)・出生時低体重を起こすリスクが高くなることがわかっています。出血や下腹部痛、胎動の減少(胎動が自覚できるようになった以降)などの症状があれば、次の妊婦健診を待たずに早めに産婦人科を受診しましょう。 ・喘息を診る呼吸器やアレルギーの専門医、妊娠中から産後の経過を診る産婦人科医、生まれる赤ちゃんを診る新生児科医や小児科医の連携は必要不可欠です。各々の病院や地域の連携体制によって多少異なりますが、かかりつけの診療科が小規模のクリニックの場合、母体や赤ちゃんが早急に高度な医療を受けられように、規模の大きい病院へ転院をすすめられることもあります。 ・妊娠中は、喘息の治療を継続して、一般的な妊婦さんと同じような妊娠生活を送ること、発作が起こらないように対策することが重要です。アレルゲンとなる物質を最小限にするための環境整備、禁煙・分煙、心身の安静など、薬物治療と同じように取り組みましょう。 ・喘息のある人がインフルエンザにかかると、喘息を悪化あるいは重症化させることがあります。妊娠期間がインフルエンザの流行期と重なる場合は、妊婦さんおよび妊婦さんと同居する家族はインフルエンザワクチンの予防接種を受けましょう。妊婦さん用のワクチン接種については、かかりつけの産婦人科へ相談してください。 ・妊娠中に薬を使うことへ抵抗感をもつ妊婦さんがいますが、喘息の治療に使用する吸入ステロイド薬やβ2刺激薬などは、妊娠中も継続して使用可能な治療薬です。特にステロイドに対する偏見や誤解をもつ妊婦さんとそのパートナー、家族もいますが、胎児への影響の少ないステロイドを使用することで発作を予防すること、重症化を招かないことが母子の生命を守ります。喘息の治療や産婦人科の診療を専門としない者による情報やウワサに惑わされないように気をつけましょう。 ・妊娠初期に薬を使ってはいけないと思い治療を自己中断した妊婦さんや、妊娠中期以降に発作が起こらないことを理由に自己判断で減薬した妊婦さんに、発作が起きることがあります。使用する治療薬について心配なことや不安なことがあれば、自己中断はしないで担当医へ相談しましょう。 【妊娠中の喘息患者さんに使用できると考えられている薬剤と注意点】(引用改変:日本アレルギー学会喘息ガイドライン専門部会監修:喘息予防・管理ガイドライン2018)吸入薬1.吸入ステロイド薬(パルミコート®キュバール®オルベスコ®)注12.吸入β2刺激薬SABA(メプチンエアー®)LABA(セレベント®)注23.吸入抗コリン薬(アトロベント®)注34.クロモグリク酸ナトリウム(インタール®)経口薬1.経口ステロイド薬(プレドニン®)注42.ロイコトリエン受容体拮抗薬(シングレア®キプレス®)注53.テオフィリン除放製剤(テオドール®)注64.経口β2刺激薬(ベネトリン®スピロペント®)5.抗ヒスタミン薬注5注射薬1.ステロイド薬(水溶性プレドニン®ソル・メドロール®)2.アミノフィリン(ネオフィリン®)3.アドレナリン(ボスミン®)注7その他貼付β2刺激薬ツロブテロール(ホクナリン®)注8 注1:ヒトに対する安全性のエビデンスはブデソニドが最も高い。注2:短時間作用性吸入β2刺激薬(SABA)に比べると長時間作用性吸入β2刺激薬(LABA)の安全性に関するエビデンスはまだ少ないが、妊娠中の投与の安全性はほぼ同等と考えられている。注3:長期管理薬として用いた場合の妊娠に対する安全性のエビデンスはなく、発作治療薬としてのみ安全性が認められている。注4:プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンは胎盤通過性が小さいことが知られている。注5:妊娠中の投与は有益性が上回る場合のみに限定するべきであるが、妊娠を知らずに服用していたとしても危険性は少ないと考えられている。ロラタジン、セチリジン、レボセチリジンの使用は比較的安全とされている。注6:中毒域の血清レベルのモニターが必要。血中濃度を5~12μg/mLを目標にする。注7:子宮動脈の収縮を惹起するためアナフィラキシーなどの場合のみ使用する。注8:吸入薬、経口薬に準じて安全と考えられているが、今後のエビデンスの集積が必要である。 喘息合併妊娠 出産はどうなる?基本的に、経腟分娩で出産することが可能です。妊娠中の喘息のコントールが良ければ、陣痛が来てから出産までの間に発作が起こることは稀です。一般的な妊婦さんと同じように、逆子や前置胎盤などの合併症を理由に帝王切開で出産することはあります。※参考:基礎知識(妊娠中)「【医師監修】気管支喘息のある女性の妊娠・出産について気をつけること」【監修:医師 太田 篤之 先生 産婦人科 | おおたレディースクリニック院長】
2019年08月30日赤ちゃんが生後7カ月のときでした。いつもは少しグズついても、あやせばすぐに立ち直るのに、その日は昼からずっと泣きっぱなし。「これはおかしい」とよく観察してみたところ、驚きの原因が判明しました。初めて夜間救急に駆け込んだときの体験談をお伝えします。 めずらしく泣き止まない赤ちゃん夫も休みの休日の午後でした。ずりばいを覚えた赤ちゃんは動きが活発になってきていて、おむつ替えもじっとしてくれず寝返りをして抜け出そうとします。そのときたまたま近くにバウンサーがあり、危ないと咄嗟に腕を掴みましたがおでこをぶつけて泣き出してしまいました。 いつもはすぐに泣き止むのに、落ち着いてはまた火がついたように泣き出すの繰り返し。少し違和感を覚えながらも、今日はご機嫌ななめなんだろうと思っていました。 腕が上がらない!? 初めての夜間救急へ赤ちゃんは泣き疲れてお昼寝をしていましたが、夕方に起きるとまた大粒の涙を流し始めました。さすがにおかしいと感じ、赤ちゃんをよく見てみたら左腕が力なく下がっていたのです。 時間は午後7時。慌てて夜間救急の対応をしている病院を調べ、タクシーの手配をしました。病院への道中は不安でいっぱいになり、このまま赤ちゃんの腕が動かなかったらどうしようと悪いことばかりが頭を駆け巡りました。 診断は「肘内障(ちゅうないしょう)」救急へ駆け込むと、小児外科の先生から「肘内障」と診断されました。左ひじの関節が亜脱臼を起こしてしまっているのだと言います。処置をしてもらうと、しばらくしていつもどおり腕を上げることができました。この肘内障は、6歳までの赤ちゃんがなりやすく、腕などが強く引っ張られることなどで亜脱臼を起こしてしまった状態なのだそうです。もしかしたら、バウンサーにぶつかりそうになった赤ちゃんの腕をつかんで引き止めようとしたことが、原因だったかもしれません。 肘内障について知識がなかったのでとても焦りました。また、こんなに些細なことでおこってしまうものだということにも驚きました。これを機に赤ちゃんの体についてもっと知り、気をつけていこうと思います。著者:しまのさくら一女の母で夫と3人暮らし。出産を機に勤めていた会社を退職。現在は育児のかたわら、データ入力の仕事や妊娠・出産・育児に関する記事を執筆している。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
2019年08月26日もうすぐ1歳の誕生日というある日、私の不注意で息子が手のひらに全治3カ月の大やけどを負ってしまいました。子どもの大やけどに直面したときの行動や対処法、その後の治療や経過とともに周りの反応や私自身の心境の変化をお伝えします。 今でも忘れられない、あのときの光景いつものように使用済みヘアアイロンをタオル掛けに吊るして収納し、お化粧をしていると、火のついたように大泣きしだした息子。振り返るとヘアアイロンのすぐそばで明らかにいつもと様子が違う息子の姿がありました。 「まさか」と思い急いで手のひらを見ると人差指、中指、一部手のひらが真っ赤になっていたのです。ヘアアイロンの電源を消したのはついさっき、設定していた温度は190度。血の気が引いた私でしたが、震える手で息子を抱えすぐに流水で冷やす処置を始めました。 ▲実際の写真 通院と看病の日々⋯流水で冷やしながら皮膚科に電話。すぐに来てくださいとのことで病院に向かい、緊急性が高かったため3時間待ちのところを優先して診察していただきました。診察の結果、熱傷の程度は中等度の深達性Ⅱ度でした。引きつれなどが生じるおそれもあると告げられ、頭が真っ白に……。ガーゼと包帯を換え、薬を塗る毎日が始まりました。傷口を見るたびに後悔が襲いましたが、私にできることをするしかないと黙々と看病をしました。最初のころは心配で毎日通院し、落ち着いてからも週2〜3回診察に行く日々が2カ月続きました。 周りの反応、何を言われてもつらかった日々息子に痛い思いをさせてしまったこともつらかったですが、周りの反応に対してもナイーブになっていきました。夫をはじめ親族は「痛そう⋯⋯」と顔は歪めるものの、私に気をつかってあまり触れずにいてくれました。児童館では「うちの子なんて私の不注意であごの骨折ったのよ!」と励ましてくれるママさんもいましたが、そのやさしささえとてもつらかったです。あるときはすれ違いざま高齢者の方に、「あらやけど? やけどは親の不注意だよ」と言われることもありました。とても深く傷つきましたが、言われて当然のことをしたと思っています。 もう絶対に繰り返さないための危険対策!事故が起こってしまった原因は、私の心にありました。それは危ないと思ったものの放置したことです。向こうで遊んでいるし⋯…という甘い考えが招いた事態でした。事故後すぐに「日常で危ないと思っていること」をその対策と一緒に書き出し、夫と共有しました。想像できる最悪の事態は必ず起こると危惧すること、その不安材料を取り除くこと。意識の徹底により、そのやけどの事故から現在までは怪我なく過ごせています。 事故から半年、怪我はすっかり治り、手も不自由なく使えているようです。私の不注意で痛い思いをさせてしまったことは後悔してもしきれませんが、母として成長できたとプラスに考えるようにしています。子どもが小さいうちは「想像できたら、それは起こるできごと」を合言葉に息子の安全を守っていきたいと思います。 著者:高橋さちこ1歳男児の母。新卒で営業職に就き、妊娠を機に退職。その後就活・保活に成功し、現在は働きつつ妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆している。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
2019年08月24日わが子を奪った「大血管転位症」「新生児肺高血圧症」という病気。妊婦健診では何も指摘されずに過ごしたマタニティ生活。楽しみにしていた未来から一転、過酷な現実と向き合うことになりました。今回は、実際にわが子が受けた治療や、その後のできごとをお話ししたいと思います。 出産直後に知ったわが子の病気私たちにとって初めての子どもでもあり、両親にとっては初孫。最初に通院していたクリニック・総合病院・里帰り先のクリニックと3つの病院に通院し、それぞれ妊婦健診では「元気に育っている」と言われていました。さらに総合病院で実施していただいたスクリーニング検査では「異常なし」という結果だったのです。「赤ちゃんは元気に育っています。心臓も丈夫」という言葉に安心しきっていたのに、出産直後に知ったわが子の病気。2,000人に1人といわれる「大血管転位症」という大変な疾患でした。 「大血管転位症」とは、肺動脈と大動脈が入れ替わることで弊害が起きてしまう心疾患。生後2週間以内に、早期の手術が必要とすることが多いそうですが、わが子は「新生児肺高血圧症」を合併していて、手術が困難だったため、第一に肺高血圧症の治療に取り組むことになりました。 心の準備をしていなかった私には、なかなか受けとめることができませんでした……。 「生存率は5%」NICUに行くと、口に呼吸器・胸にモニター・両腕には点滴がつながれ、薬で眠らされているわが子がいました。想像よりも残酷でした。でもやっぱりわが子はかわいい。たくさん声をかけてあげました。 「新生児肺高血圧症」を合併している。このままだと生存率5%……。 主治医との面談で、別の病気の告知があり、次から次へ残酷な言葉を浴びました。それでもその5%を信じて治療を続け、私は毎日わが子に母乳を届け、付き添っていました。 最後まで頑張ったわが子生後8日目。「呼吸状態が安定している。このまま行けば心臓の手術に踏み込める」と主治医から言われました。心臓に負担をかけている薬の量を少しずつ減らし、状態を維持できているように思えていました。 しかし生後13日目の昼、急変したのです。小さな心臓はもう限界でした。先生方が懸命に心肺蘇生をしてくれましたが、心拍がどんどん落ちて……。私は少しでも心臓が動いているうちに、「できなかった抱っこをしてあげたい」と先生に伝え、再度蘇生をお願いしました。生後13日目にやっとできた、初めての抱っこ。「ありがとう」「ごめんね」の気持ちを全部伝えました。 そして赤ちゃんは待っていてくれたかのように、家族が集まったあと、見守られながら永眠したのです。 わが子の死わが子を看取ったあと、病院で沐浴をしました。悲しいはずなのに自然とほほ笑んでいました。点滴・呼吸器を外したわが子と一緒に自宅へ帰宅し、1日一緒に過ごしました。 写真をたくさん撮り、手足の型をとったり……わが子が存在した証を作ったのです。息をしていないはずなのに、生きているかのようなこの時間が一番幸せだったかもしれません。 泣いてばかりでしたが、葬儀の日、最後は笑顔で見送りました。しかし帰宅後、遺骨となったわが子を前にして、「もう会えないんだ」と思うと、葛藤が急に襲ってきました。そんなつらい時期を助けてくれたのが家族でした。家族はいつも通り明るくふるまってくれてましたが、きっと私のために我慢してくれていたのでしょう。次第に「ずっと泣いていたら、赤ちゃんだって悲しいはず……」と思えるようになり、私も自然と笑顔が増え、少しずつわが子の死を受けとめることできました。 今回なぜわが子に心臓病があったのか、原因はわかりません。手術を生後2週間以内にしないといけないタイムリミットが迫り、すごく過酷な日々でした。しかし、わが子と一緒に過ごせた時間は、かけがえのない大切な時間となりました。 NICUに数日通い続けるなかで見た、周りの赤ちゃんの死や、一方で回復に向かって頑張っている姿を見て、この世に生まれることがどれだけすごいことなのか思い知らされました。出産は本当に奇跡です。 著者:大島れい第1子は先天性心疾患により天国へ。現在第2子妊娠中。看護師として4年勤務。自身の経験を中心に執筆している。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
2019年08月24日妊娠4カ月、心の準備ができていないまま、私は緊急入院することになりました。ここでは、私が切迫流産になった原因と治療の様子についてお伝えします。 妊娠4カ月ごろに切迫流産で入院妊娠4カ月ごろ、突然おなかに張りと痛みを感じました。我慢できてしまう痛みだったので、安静にして落ち着かせようと横になって過ごしました。ところが、痛みは強くなり、次第に陣痛のような定期的な痛みになってしまいました。 急いで病院に向かい、担当医に診察してもらうと「切迫流産」と診断されました。その場ですぐに入院となり、私はショックと痛みで唖然とするばかりでした。 切迫流産の原因は「子宮筋腫」だった切迫流産の原因となったのは「子宮筋腫」でした。妊娠前からあった子宮筋腫が、妊娠前よりも大きく育ち、さらに細菌に感染して変性を起こしていたようです。 入院中は、抗生物質の入った点滴をして治療してもらい、痛みは数日でおさまりました。しかし、おなかは依然として張りやすく、動くとすぐに固くなりました。「なるべく歩かないように」と指導を受け、車椅子で移動するといった入院生活でした。 切迫流産について知っておくこと、緊急時の確認をしておくこと感染の原因は不明、子宮筋腫には菌がたまりやすく、感染しやすくはあると担当医から説明がありました。私は幸いなことに受診と治療が早かったので、その後も妊娠を継続することができました。 「子宮筋腫の有無やその状態」「妊娠したときのリスク」「切迫流産の症状」などをよく知っておくこと、さらに、何かあったときの病院の連絡先や移動手段を確認しておくことが大事だと感じました。 切迫流産と診断されたときは、非常にショックを受け、恐怖を感じたことを覚えています。妊娠中は、何かあっても対処できるよう、家族と緊急時の確認をしておくと安心ですね。著者:富士ちあき一児の母。子宮筋腫や切迫流産を経験しながらも無事に男の子を出産。自身の体験をもとに妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆中。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 ※2019年8月23日 内容の誤りを訂正
2019年08月23日3歳を過ぎたころ、急に娘の身に起こった「熱性けいれん」。私は娘の症状を初めて目の当たりにし、顔が青ざめ言葉が出ませんでした。けいれんを発症し、感じたことやすべきこと、やってはいけなかったこと……実際に身をもって経験したことをお伝えしたいと思います。 いつもの風邪の症状と思っていると突然に出掛けた日の夕方に、鼻水と咳が出始めた3歳の娘。週末ということもあり、病院は休診。熱もなく軽い風邪の症状だろうと思い、翌日に病院へ行く予定でした。 夜になると37.4度の微熱も出ましたが機嫌は悪くなく、子どもは夜に熱を出しやすいと把握していたので、気にせずそのまま21時には就寝しました。 1時間ほどした後、私はふと目覚め、娘の様子を伺い驚愕しました。娘は手足をビクビクとけいれんさせ、唇は紫色になり泡を吹いて失神していたのです。 指示を仰ぐため小児科救急へ電話娘の身に何が起きているの? 目の前にある光景は現実? 起きたての私には娘の状態がまったく理解できず、頭が真っ白になってしまいました。そして我に返り、失神している娘の意識をまずはしっかりさせなくてはと思い、私は震える手で娘の体を軽く揺すったり声を掛けたりしました。 私の声に目を覚ました夫は娘を見て驚き、焦っていたと思います。夫が目を覚ましたことで少し冷静さを取り戻した私は、携帯を手に取り小児科救急相談窓口に電話を掛けました。 救急病院へ。何が必要なのかわからない小児科救急相談窓口で娘に起きている症状を看護師さんに伝えると、むやみに動かしてはいけないと指示され、そのまま救急に繋いでくれました。救急車が到着するのを待って、けいれん時の症状と時間を伝え、病院に向かうことになりました。付き添いが必要なので、私は慌てて保険証、医療証に財布を準備し救急車を待ちました。 そこで、焦っていると忘れがちな持ち物があるとわかったので紹介したいと思います。 必要なものは貴重品以外にもあった!救急隊の方が寝室から娘を運び、私は娘の付き添いのため、慌てて準備した貴重品等を持って救急車に乗り込もうとしました。そこで救急隊の人に呼び止められ「持ち物は貴重品以外にも必要なものがありますよ。言いますので準備してください」と言われたのです。 子どもの靴に靴下、院内での診察待ちや会計時、帰宅時に羽織る私と娘の防寒具などでした。軽装で過ごしていた自宅から救急車で病院に、しかも娘は抱えられて車に乗り込んだので靴や靴下を履いていないということにも頭が回っていなかったと気がつきました。 病院に到着後、娘はダイアップという座薬を投与されました。また解熱剤も時間をおいて投与可能とのことで、投与後に経過観察をし、入院はせず帰宅できました。お医者様いわく、発症時は子どもを横に向け呼吸しやすくし、けいれんの時間を計り、どのような状態だったのかメモをしておくことが大切なのだそうです。いざけいれんしているわが子を目の前にするとパニックになってしまいますが、しっかりしなくては……と感じた体験でした。著者:佐藤ひより5歳と3歳の姉妹のママ、第3子妊娠中。毎日やんちゃな姉妹に振り回されている。時短家事や育児の体験談などを中心に執筆中。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 ◆関連動画赤ちゃんの熱性けいれんの実例とあわてない対処法(監修/葛飾赤十字産院 院長 三石千左子)
2019年08月21日妊娠すると、今までと違う皮膚トラブルが起こることがあります。それは蕁麻疹かもしれません。しかし、素人ではかゆみや発疹を、蕁麻疹かどうか判断することは難しいものです。今回は、妊娠中に起こる蕁麻疹と他の皮膚トラブルとの見分け方や原因、それぞれの治療法ついて解説します。 妊娠中に蕁麻疹が出る原因と症状とは?妊娠中は免疫系、内分泌系、代謝、血管系などに大きな変化が起こり、妊娠前に比べると肌も敏感になっている状態です。このように皮膚が敏感な妊娠中は、皮膚を掻くことや、食べ物や運動、薬や感染などの「刺激」によって蕁麻疹が起こりやすくなります。蕁麻疹は、ヒスタミンというかゆみの原因になる化学伝達物質が肥満細胞から放出されることで発症します。ヒスタミンが神経を刺激するとかゆみが起き、血管に作用すると発疹となって現れます。蕁麻疹の特徴は次のようなものです。・発疹と強いかゆみを伴う・皮膚を掻くとみみず腫れが出る・2~3mmの発疹や地図状の発疹が出る・発疹は24時間以内に、体のあちこちで出たり引いたりする すべての蕁麻疹の原因がはっきりと分かっているわけではありませんが、特定の原因ができれば、それを除去することで症状を改善することができます。治療はステロイドなどの薬を使用することがありますが、妊娠継続中は積極的な治療が難しいので、蕁麻疹とじょうずに付き合うことが主な対処法となります。 蕁麻疹が出る原因には直接的なものだけではなく、温度や睡眠不足、疲労、ストレスなどもあります。特に妊娠中は体調の変化に加えて精神的にも不安定な状態なので、蕁麻疹の症状が出やすく、悪化することもあります。 妊娠中の蕁麻疹の対処法や治療法は?妊娠初期は、ただでさえ体調が優れない時期です。かゆみが長期にわたって続くと、睡眠が十分にとれないので疲れやすく、ストレスがたまるようにもなります。非妊娠時の通常は、蕁麻疹の治療は抗ヒスタミン剤を内服して、蕁麻疹の原因物質であるヒスタミンの量を抑えるようにしますが、妊娠中は胎児への影響を考え、使用できる内服薬が限られます。基本的に妊娠初期(妊娠4カ月ごろ)は抗ヒスタミン剤は積極的には推奨されません。皮膚の保湿などで経過を見ることが多いですが、よほどひどい状態であれば、胎児や妊婦への影響がないと考えられている種類の薬を使用します。 他にはステロイド外用剤で皮膚の発疹を抑える治療があります。蕁麻疹に限らず、掻き続けて湿疹になってしまった部分や引っ掻き傷についても、ステロイド外用剤を使うことがあります。ステロイドと聞くと胎児への影響を考えて、薬を使うことに抵抗がある妊婦さんも多いかもしれません。しかし、蕁麻疹が長期的になると症状も悪化してしまい、治療自体も長期に及ぶことになります。ステロイド外用剤がどうしても気になるという場合は、抗ヒスタミン外用剤も選択肢のひとつです。医師としっかり相談して、納得した上で治療を受けましょう。すでに使用している内服薬や塗り薬があれば、お薬手帳などを持参して受診してください。 蕁麻疹は強いかゆみを伴うので、寝ている間もかゆくて目が覚めたり、無意識に体のあちこちを掻いていたりしてしまいます。掻く状況が長期間続くと皮膚が炎症を起こし、色素沈着(しきそちんちゃく)といって皮膚が茶色く変色してしまい、跡を治すのに時間がかかってしまいます。跡を残さないためにも早めに対処をして、しっかり治しきることが大切です。 妊娠が原因の蕁麻疹は、出産すると蕁麻疹は出なくなり、症状が改善することが多いのが特徴です。なかなか症状が良くならなければ、授乳中でも使える内服薬はあります。産後は治療薬の選択肢が広がって、蕁麻疹を治しやすくなるので安心してください。 その他の妊娠中の皮膚のトラブルとは蕁麻疹と間違えやすいものとして、「妊娠性痒疹(にんしんせいようしん)」があります。 蕁麻疹と似て、強いかゆみがあるので区別がつきにくく、妊娠によって発症する皮膚疾患のひとつです。妊娠性痒疹は、出産後には症状が自然に改善されます。妊娠性痒疹は、妊娠初期から中期に発症することが多く、地図状に広がる蕁麻疹とは異なり、体や腕、足などにポツポツとかゆみを伴う発疹が出てきます。痒疹は赤くなっていたり、水ぶくれになっていたりと見た目にもさまざまですが、引っ掻くことによってしばしば表面が傷ついている状態になります。 この妊娠性痒疹は、約20%の人が家族や妊婦自身にアトピーの体質があるという報告(※1)もあります。痒疹になってしまうと、治すのもかなり時間がかかってしまいます。まずは掻かないことが大切です。必要があればかゆみ止めの内服薬を使うことがありますが、主にはステロイド外用剤で治療することになります。 参考※1 日本アレルギー学会「3.妊娠とアトピー性皮膚炎(和文誌『アレルギー 63巻 2号』より)」 まとめ妊娠による免疫力の変化やストレスなどによって、蕁麻疹などの皮膚疾患が出やすくなります。胎児への影響を心配するあまり治療せず我慢していると、症状が悪化して治すにも時間がかかってしまいます。早めに対処して、少しでも快適なマタニティライフを送りましょう。 参考※ 日本皮膚科学会「慢性痒疹診療ガイドライン(『日本皮膚科学会雑誌 2012年 122巻 1号』より)」 監修者:医師 三鷹レディースクリニック院長 天神尚子 先生日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、平成7年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。
2019年08月21日