劇的に効いた、発達障害向けの薬私が発達障害の診断を受けたのは32歳のとき。これよりも2年前に発達障害を自覚し、ほかの精神科医(発達障害は専門外)にも発達障害の可能性を指摘されていたため、診断には驚かなかった、つもりでしたが…エビリファイという、脳の覚醒度を調整してくれる薬(もともとは統合失調症用の抗精神病薬です)を処方され、半信半疑で飲んでみた初日、なんと頑固な昼夜逆転が劇的に改善されたのです。昼夜逆転には10年来悩まされていました。朝は昼下がりになるまでボーッとして目が冴えず、夜は空が明るくなるまで脳みそが高速回転している感じで眠れない。生活に気をつけてみたり精神安定剤を処方してもらったりいろいろやったのですが、どうにもならずに本当に困っていたのでした。なのに、エビリファイの最も用量の小さな錠剤を1錠飲んだ初日、私は夜9時に眠くなってパタッと眠り、気持ちよく熟睡して、翌朝6時にパッチリ目が覚めたのです。※エビリファイの副作用などを調整した、レキサルティという新薬が発売されました。現在はエビリファイから変更し、レキサルティを服用しています。生活が変わっていく服薬するようになって変わったことはまだあります。ケアレスミスが減り、生活の段取りもよくなって、まるで1日の時間がそれまでの2倍に、あるいは自分が発揮できる能力が2倍になったように感じたのです。日中は寝てばかり、夜はネットサーフィンしてばかりだった私は、夜に寝て朝に起き、3食決まった時間に食べるように。最低限の家事もこなせるようになっていきました。私は診断に対してどこか半信半疑でしたが、精神安定剤の服用ではどうにもならなかった症状が、発達障害があることを踏まえた薬の処方で、これほど劇的に軽減するとなると、私はやっぱり発達障害があるのだと認めざるをえませんでした。この時期は希望と絶望が入り混じった不思議な時期でした。自分の感じてきた不全感が自分の「努力不足」のせいだけではなかったという安堵、薬の力を借りればここまでパフォーマンスが出せるのだという自信が感じられるいっぽうで、そう感じるほどに「やっぱり私には間違いなく障害があるんだ」「30年間ムダな努力と傷つきを背負ってきたのでは」という無力感に襲われるのです。症状に応じた薬の追加その後私には、ときどき過覚醒状態に陥り、焦りから無理を重ねてドドッと体調を崩す、という癖があることが分かりました。それで主治医が、デパケン(バルプロ酸ナトリウム)を飲むように指示しました。この薬は、脳の異常興奮を抑えるもので、もともとはてんかんや双極性障害の薬。片頭痛の予防薬としての効果もあるので、片頭痛が持病の私には合っていました。最近になって自ら主治医に追加を希望してごく少量飲むようになった薬がセレネース(ハロペリドール)です。これは古くからある抗精神病薬。「不安・抑うつ発作」という、トラウマが関わる、フラッシュバックに近い症状によく効くという論文を見つけて希望しました。セレネースを飲み始めた頃はもともと自分自身の調子がかなり安定してきていたので、薬の影響がどれだけあるかは分からないのですが、少しトラウマを刺激されて動揺することがあっても、動揺が以前より小さく、落ち着くまでの時間も短くなったように感じています。服薬前との違い、副作用トラウマ治療を続けながら服薬をしてきた結果、今は仕事(障害のない人ほどの長時間は無理ですが)をこなしながら、最低限の家事プラスアルファをこなせるまでに生活が改善しています。SNSに没頭してトラブルを起こしたり、夫との関係性が緊張するようなこともなくなりました。服薬は面倒ですし、薬はなるべくなら飲まずに済ませたいのが本心ではあります。どの薬のせいか、そもそも薬のせいなのか分かりませんが、服薬するようになって以降、日光アレルギーのような傾向が出たり、やや太りやすかったりする傾向が出てもいます。しかし、せっかく安定している心身の調子を崩してまで薬から解放されたいとは思いません。精神科医は薬の調整のプロですし、主治医は10年近くにわたって私の調子の上下や性格傾向を見てくれているので、基本的に主治医の方針には従って服薬を続けていこうと思っています。メリットとデメリットを天秤にかけて薬には必ず副作用があり、お金も手間もかかります。薬に頼って生きていると、その薬が手に入らなくなったときにどうしようという不安もつきまといます。しかし、生活の質を大きく左右するような心身の調整の中で、向精神薬にしかできない範囲のこともたくさんあります。私はこうした薬のメリットを重視しています。ご自身の特性で生きにくさを感じている方は、メリットとデメリットを天秤にかけながら、賢く薬を使っていくのもよいのではないかと思っています。文/宇樹義子(監修・鈴木先生より)発達障害は「障害」というよりは「特性」と考えた方がいいです。最近は誤解のないように神経発達症という「障害」を削除した言葉が使われています。小児期に診断がつかず、成人期になって初めて神経発達症(発達障害)と診断される方が増えています。小児科はもちろん、精神科でも診断できる医師が増えてきたからだと考えています。特にADHDがあったにもかかわらず適応障害などと違う病名で悩んでいた人も、別の病院を受診することで実はADHDだったと診断されるケースが多くなっています。薬は多く飲めばいいというわけではなくて、エビリファイのようにごく少量を内服することで不眠が改善することもあります。小児においては自閉スペクトラム症の易刺激性を抑える目的で使用する事が多いです。また、最近はここでも紹介されているレキサルティが体重増加などの副作用が少ない理由で用いられるようになってきました。エビリファイがドーパミンのバランスを安定させるのに対して、レキサルティはドーパミン&セロトニンのバランスを安定させる作用があります。外からの刺激に対しての興奮を抑えるにはエビリファイが、内からのそわそわ感を抑えるにはレキサルティが用いられますが、レキサルティには自閉スペクトラム症の易刺激性に対する適応がまだありません。主治医とよく話し合ったうえでの使用となります。
2022年06月08日幼稚園探しのポイント(わが家の場合)公立の小学校や中学校は学区で決まることが多いですが、幼稚園は親が選ぶことができるぶん、悩むことも多いと思います。園の方針や雰囲気が自分の子どもに合っているということが一番大切なことですが、わが家ではほかにも1.園までの距離(通園バスが利用できる場合もありますが、バスに乗り遅れたときや急なお迎えのことを考えて)2.行事の多さ(親の負担の有無)3.保育料4.課外活動や延長保育の有無なども考慮しました。幼稚園見学へ私はママ友の口コミや療育センターで情報を集め、いくつかの幼稚園の見学をしました。A幼稚園は一番近い場所にありましたが、規律やしつけを重んじる方針の幼稚園でした。ママ友の中には“家から近い”という理由でこの幼稚園を選んだ人もいましたが、園の外から普段の保育の様子を見て厳しいように感じたので私は見学しませんでした。1学年1クラスの小規模幼稚園。少し離れた場所にあり、送迎バスや駐車場はなく、通園は徒歩か自転車のみ。「のびのび」「自主性を重んじる」がモットーで、娘に合うかも?と思い見学の申し込みをしました。保育時間中に見学に行くと園内の植え込みで一人の男の子がうずくまっていました。周りの大人は誰も気にとめる様子がなかったので、私はその子がかくれんぼでもしているのかと思いました。施設の案内や保育の様子の見学、幼稚園の方針などの説明を受け帰ろうとすると、先ほどの男の子がまだ同じ場所にうずくまっていました。私が案内担当の先生に「あの子はずっとあそこにいるみたいですけど…」と聞きくと、先生は「あの子は虫が好きなので」と答えました。確かに自主性を重んじている幼稚園なのだなと思いました。娘も大人数で一斉に何かをすることは苦手です。でも娘は療育センターで保護者参加のグループセッションに通うちに、みんなと一緒に歌ったり踊ったりすることを楽しむようになってきていました。順番待ちが苦手だったり、ときには癇癪をおこしたりもしていましたが、適切な声掛けや指示があれば娘は気持ちの切り替えができること、また、娘の興味が少しずつ“モノ”から“人”へと広がっていることを薄っすらとではありましたがこのころ私は感じていたのです。それらのことから私はこの幼稚園は娘には合わないだろうと感じたのでした。C幼稚園は療育センターで教えてもらった『知的障害のある子ども向けの幼稚園』で、子どもと一緒の見学会を実施していました。とても遠い場所にあり、通園バスに同乗しての参加となりました。通園バスは観光バスほどの大きさがありました。娘は大人しく座席に座っていましたが、園につくまでバスの上部のアミ棚にずっとぶら下がっているお子さんがいました。保育の内容はトランポリンやハンモック、ロープぶら下がりなど体を動かすことがメインで、娘はそれらの大きな遊具を楽しんでいました。自然豊かな立地を活かし近隣の森林公園散策もよく行っているとのことで、園児30人に対し職員の人数が27人と多く、手厚い支援が受けられそうでした。一方で子ども同士のコミュニケーションはほどんどありませんでした。おかえりの会のとき、知らないお子さんが私の膝の上に乗ってきました。そのことについて職員の方が特に声掛けする気配はなく、娘も見知らぬ子が母親の膝の上に乗っていても何も言いませんでした。私もどうしたら良いのか分からず結局おかえりの会が終わるまでそのお子さんはずっと私の膝の上に座っていました。Upload By 荒木まち子私たち親子は上記の3つの幼稚園を見学する前に、知り合いのママ友に誘われてD幼稚園のプレ幼稚園(親子で参加できる2歳児クラス)に月2回通っていました。娘は毎回自分のペースで楽しく遊び、私は先生に子育ての相談などをしていました。わが家の選択いろいろな幼稚園を検討した結果、私は過去に参加したプレ幼稚園を主催していたD幼稚園に娘を通わせることにしました。この幼稚園は少し遠い所にあり、通園バスもありませんでしたが、プレ幼稚園に参加しているときから娘やわが家の事情などを理解し、親身になってお話を聞いてくださっていました。娘は療育センターのグループセッション終了後に大学の研究室で療育を受けていたのですが、偶然にもD幼稚園にはその大学出身の先生が多く、園としても大学研究室との連携や情報共有に前向きだったこともこの幼稚園を選ぶ決め手になりました。希望の幼稚園が決まったら次は入園に向けた手続き&準備です。願書配布や願書受付方法は園によってさまざまです。当時(娘が未就園児だったのは20年も前のことですが)私たちが住んでいた地域では、願書配布は“先着順”が一般的で、人気の幼稚園は願書配布日に早朝から行列ができたりしていました(この“人気の幼稚園”は毎年変わるので自分が希望する幼稚園に行列ができるかどうかは配布日になってみないと分からない)。一方で願書配布枚数に制限がない幼稚園もあり、ママ友に頼んで“ついでに貰ってきてもらう”というケースもありました。わが家は主人に朝並んでもらい、D幼稚園の願書をゲットしました。幼稚園には入園選考の面接があるところが多いです。D幼稚園では園長先生が面接をしていました。どんな質問をされるのか?娘は初対面の相手の質問に上手く答えられるのか?…少し心配でしたがプレ幼稚園に通っていたことで娘も「ここは楽しい場所。これからもここに通いたい。」と思っていたようです。「お名前は?」「好きなものは?」などの質問にも普段と変わらぬリラックスした様子で答えていました。そして最後に園長先生が「じゃあ入園式で待ってるね」とおっしゃり面接は無事終了しました。初めての進路選択いろいろ悩んで、そのときのわが子にとって“ベスト”と思って選んだ幼稚園。娘にとっても私にとってもすべてが初めてのことばかりです。わが家の場合、翌年の主人の単身赴任も決まっていました。これからどんなことが起きるのか想像すらでない新米ママと娘の幼稚園生活がこうして始まったのです。執筆/荒木まち子(監修:初川先生より)幼稚園選びのエピソードのシェアをありがとうございます。幼稚園や保育園はどこを選んだらよいのか、また療育機関はどこを選んだらよいのか。選択肢があるのはよいことですが、子育ては選択の連続ですね。荒木さんは4つの園を見学されたのですね。それぞれの園で、ふと目についたことや、肌で感じたこと。そうしたことが結局のところ決め手になりますね。宣伝文句やふれこみ、口コミなどでは分からない、「わが子に合うかどうか」は、最終的にはそうした感覚、肌に合うかどうかということになります。そして、「話を聞いてくれた」というところは大きなポイントですね。見学するのは、園からすると日常の一場面でしかなく、一人で行動する園児をそっとしておくのはそれまでの歴史から何か意図があるのかもしれないなど、短時間の見学ではうかがい知れないこともたくさんあります。ただ、そこで働く先生方の見学検討されている方へのスタンスとして、そこで話を聞いてくださったり、説明してくださったりすると、信頼できそうな気配は感じますね。すべてにおいて完全に満点な選択はないと思いますが、その中でも、ここにする、と決めること。選択は疲れるものですが、決めたらひとまずはそこで進んでみる、先生方との関係はじめ人間関係は柔軟に変化しうる可能性があります。どうなるかは分からずとも進んでみること、大切です。
2022年06月07日異常な記憶力と、マシンガントーク…!きっとこれは「壁打ち練習」なんだわが家の長男タケルは、子どものころから話し始めたら止まらない子。喋り始めたのは生後10ヶ月ぐらいで特に気になることもなかったのですが、3歳を過ぎたあたりから特徴的な喋り方をするようになっていました。Upload By 寺島ヒロこのころ、もうかなり長い台詞を喋るようになってきていました。もちろん、これはほんの序章に過ぎなかったのです…。ゲーム漬けの日々5歳のころ、スーパーファミコンのアクションゲームにはまったタケル。朝から晩までゲーム漬けになりました。ゲームをする時間の長さはそれほどでもないのですが、まず起きたらそのゲームのキャラクターの絵本を読み、幼稚園ではゲームのごっこ遊びをして、家に帰ってくると折り紙でゲームのキャラクターをつくり…。それだけでは終わらずに、ごはんのあとにちょっとゲームをやると、ゲームの音楽を歌いながら眠りにつきます。わたし自身、結構なオタクなので「ハマってるなあ、すごく好きなんだねえ」と思うだけでしたが、ともかく朝から晩まで、口を開けばゲームの話ばかりで閉口してしまいました。YouTubeにハマる!そして...小学生になるとYouTubeなどで動画を見るようになりました。これも見ている番組や時間は限られているのですが、見ていないときは動画の内容を繰り返して喋っています。こちらから別の話を振ると会話しますが、その話が終わるとまた動画の話を再開するのです。Upload By 寺島ヒロすごい記憶力だ…!だが...見たYouTube番組の話をしてくるのは、今も変わりません。最近は数学チャンネルをよく見ているらしく、「問題を出して良いかい?」とニヤニヤしながらやってきます。大体私では問題は解けませんが、解説まで完璧に教えてくれます。タケルは覚えたことを、親にアウトプットしてみせることで、記憶を強化しているのでしょう。壁打ち練習みたいなものなのかもしれません。問題は、その「壁打ち」がいつでもどこでも始まるということです。問題点はお喋りをやめられないこととにかく、タケルの話はワンセンテンスが長い!そして一度遮られても続きをしゃべる仕様です。忙しいときは本当にうっとうしい!親の私でもそう思うのですから、ほかの周りの人たちも同じように思っているはず…。実際、友達数人とボイスチャットをしていたとき、会話の流れに構わず、YouTubeで仕入れた知識をべらべらと長尺で喋ってしまい、友達に「ご講義はいいから!」と突っ込まれていたのを聞いたこともあります。Upload By 寺島ヒロしかし、そんな息子のおしゃべりを聞いて、黙って離れていくのではなく、ちゃんと叱ってくれるお友達がいるのはありがたいことです。次第に友達への「講義」の頻度が下がることを期待しつつ(笑)家での「壁打ち」にはなるべく付き合ってあげようと思っています。執筆/寺島ヒロ(監修:井上先生より)とてもユニークで頭の良いお子さんだと思います。寺島さんが書かれているように、お友達の注意の仕方もユーモアがあって本人も受け入れやすいのではないでしょうか。自分の知識をしゃべりすぎてしまうことは、同じ趣味のお友達ができると欠点から長所に変わるかもしれません。お子さまにはぜひ研究者の道を歩んでいただければと思います。
2022年06月07日【アンケート】2つの商品化候補グッズについてさらに詳しく教えてください!【みんなのアンケート】日常の困りごとをぜひ教えてください!にご協力いただき、ありがとうございました。さまざまなお困りごとのご回答をいただきました。幅広い困りごとや、コメントへのイイネ!を、「なるほど~!」と思わず共感しながらうれしく拝見しました。ありがとうございました。今回はこれまでにいただいたお声などからも検討を繰り返し、次の2つに商品化アイテム候補を絞りました。1.お出かけ編:For 忘れんぼうさんお財布はもちろん、かぎやハンカチなど外に出るための持ち物をすっきりまとめてスタンバイできる「バッグインウォレット」2.おうち編:For お片づけ苦手さん収納すると隠れてしまい、存在を忘れやすい人に向けて、中を確認しやすい「透ける収納ボックス」2つのアイディアを具体的な商品化に向けて、さらに詳しくみなさまのご意見を教えていただくために、追加アンケートと、試作サンプルを試して直接ご意見をいただくモニター募集を実施いたします。アンケートとモニターを通して、発達ナビユーザーのみなさんと一緒にグッズをつくっていきたいと考えています。ぜひご回答とご応募をお願いいたします!(所要時間:約10~15分)※2022年6月19日(日)まで※ボタンをクリックすると発達ナビのサイトから株式会社フェリシモのサイトに遷移します※ボタンをクリックすると発達ナビのサイトから株式会社フェリシモのサイトに遷移します
2022年06月06日中学校の担任の先生と面談をしましたUpload By 丸山さとこコウが中学校に入学して1ヶ月が経ちました。早速物を忘れる・なくす・壊す…のオンパレードですが、毎日楽しく通っているようです。今のところ目立ったトラブルはありませんが、卒業した小学校の先生からのすすめもあり、先日担任の先生と二者面談をしてきました。面談にあたり、私は診断書とWISCの検査報告書をコピーして持っていきました。小学校入学時の面談の際はサポートブックを作成し持参しましたが、5年生でWISCを実施したときにいただいた検査報告書に・全体的な知的発達水準・指標得点の特徴・支援方法などの項目がA4一枚に分かりやすくまとめられていたため、今回はそちらをサポートブックの替わりとしました。いよいよ担任の先生との面談!今回の面談では、『神経発達症(発達障害)の話』ではなく『神経発達症(発達障害)がある息子コウの話』をするように心がけました。現段階で先生が神経発達症についてどのようにご理解されているのかも分かりませんし、今後の理解や対応のためには「息子は今までこうでした。最近はこのような感じです」と伝えることが必要だろうと考えたからです。Upload By 丸山さとこまた、神経発達症についての知識が深まることでコウに対する理解が深まる場合もあれば、先入観が育ってしまうこともあるだろうと考えました。WISCの結果や支援方法を見ると、コウは『今後予想される出来事のパターンとその対処法』がとても分かりやすいように見えます。「伝えるときは短く端的に」「行う作業は一つずつ」「予告をする」「環境や体調・気分の影響を受けやすい」などの項目やそれぞれの具体的な解説を読むと、『なるほど!そういうときはそうすればいいのか!』とスッキリ納得できそうです。Upload By 丸山さとこですが、『伝えるときは短く端的に』『抽象的なことよりも具体的なことのほうが分かりやすいです』とあるので「じゃあ、短く端的に、具体的に伝えよう!」とすれば上手くいくかというと、「説明が簡潔過ぎて分からない」「具体的に伝えられたけど、なぜそうするのか理解できない」と混乱することがあるのがコウなのです。Upload By 丸山さとこそのため、先生には『基本的な傾向や対処法』があることを伝えるのと同時に、『コンディションによって左右される要素も大きく、例外のパターンもあるということをお話しました。新しい学校生活の最初に面談をすることの意義このようにきっぱりと言い切れることが少ないため、先生に「結局この保護者は何を言いに来たんだろう…?」思われないだろうかと不安な気持ちがありました。ですが、先生は「あぁ、分かります」「あー、そういうことか…、ありますね」と相槌を打ちながら聞いてくださり、学校内でのコウの様子についてもいろいろと教えてくださいました。また、コウは集団生活において「掃除など役割分担のある作業を忘れる」「人の気持ちを考えずに話す」「自分のことだけに熱中して人を手助けしない」など、『道徳心が低い』とみなされる行動をとることがあります。そのため、小学校では周囲の子どもと揉めたり、大人から「道徳心を身につけましょう」と指導を受けたりすることがありました。コウとしては悪気がないため、悪意や道徳心のなさを理由として指摘され続けると、次第に自信をなくしたり周囲の人間に不信感を持ったりしていきます。小学校でも一時期周囲との軋轢や不信が目立ちましたが、先生方が「性格や悪意の有無を絡めず、ただ事実のみを指摘する」と意識してくださったおかげで、反発心や不信感を強めることなく注意や指摘を受け入れられるようになっていきました。このような、やる気や道徳心の問題と思われがちなコウの言動に関しても「今は部活動などでも、やる気や根性でどうにかしようとすることはないです」「いやー、それは…道徳の問題じゃないですね」と言っていただき、今回面談の機会をいただいて本当によかったなとホッとしました。Upload By 丸山さとこ私は、話をすることが苦手です。その中でも『意見を伝えたり、お互いの認識を理解し調整したりする会話』はかなり不得意で、今回のような面談の場ではいつも冷や汗をかきながら話をしています。ですが、卒業した小学校の担任の先生に中学校に入学したばかりの段階での面談をすすめられ、今回の二者面談をお願いすることにしました。小学1年生のときの担任の先生は「最初に(まだトラブルが起きていないときから)コウ君について教えていただいたおかげで、その後の対応をする際にとても助かりました。中学でも中学校生活の最初にお話いただいた方が、その後の対応がスムーズになりやすいと思います」と言ってくださいました。それが本当なのであれば、つたない曖昧な話であっても、学校生活の初期に面談を行うことには意義があるのだろうと思います。Upload By 丸山さとこ「6年の間に彼がとても成長した事実をお伝えください」と話してくださった小学校の先生や、具体的な事例を出しつつ丁寧にまとめた検査報告書をくださったカウンセラーの先生など、”家庭外の関り”の中でいただいた多くのものに支えられて今があることを改めて感じた、中学校初めての面談でした。執筆/丸山さとこ(監修:井上先生より)学年や学校が変わるたびに担任の先生にお子さんのことを説明するのは、大変なご苦労だと思います。丸山さんのように分かりやすい資料をつくって、見せながら説明していただくのはとてもよいと思います。支援方法はあくまで原則なので例外もあるということを伝えるのは難しいですが、お子さんのいろいろな姿を共通理解していくには大切な機会かと思います。
2022年06月06日発達性協調運動症(発達性協調運動障害)について相談できる機関Upload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホン子どもの不器用さが気になったら子どもの運動や動作の不器用さが気になったら、地域に設置されている下記のような施設に相談に行きましょう。保健センターは市区町村ごとに設置された、地域の健康づくりの場です。保健師さんが常駐しており、子どもの発達に関する悩みの相談を受けてくれます。場合によっては医療機関や療育施設の紹介をしてくれます。子育て支援センターは子育て家庭の支援に特化している機関です。自治体運営や医療機関に委託運営されており、保健師さんまたは看護師さんが相談に乗ってくれます。中には、療育指導を実施している子育て支援センターもあるので、お近くのセンターに問い合わせてみてください。発達障害者支援センターは発達障害者支援全般を行っている機関であり、都道府県・政令指定都市やその他法人によって運営されており全国に設置されています。お近くの発達障害者支援センターは以下のリンクより検索できます。参考:発達障害者支援センター・一覧|国立障害者リハビリテーションセンターここでは、相談支援と発達支援などを行っています。相談支援では子どもの相談はもちろん、その様子に応じて医療機関、療育機関の紹介、行政サービスの利用方法を紹介してくれます。発達支援では、医療機関、療育機関との連携を図りながら、家庭での療育方法のアドバイス、発達検査、発達状態に応じた療育計画の作成や具体的な助言をしてくれます。発達性協調運動症(発達性協調運動障害)への支援を受けられる機関上記の相談先で医療機関紹介してもらえることもあります。小児専門や発達障害専門の医療機関では療育も行っているところがあります。上記の相談先で、療育機関を紹介してもらえることも多くあります。療育機関では子どもの成長や自立支援のための、医療、治療、育成、保育、教育を総合的に行っています。民間の療育機関は保険が適用されないため、各施設により費用はさまざまです。内容や療育に当たる方との相性もあるので、あらかじめ見学に行くことをおすすめします。発達性協調運動症(発達性協調運動障害)の支援・治療方法作業療法は、作業(子どもの場合、主に遊び)などをして、複合的な動作をできるようにしていくものです。運動、日常生活、学習などの動作をスムーズに行えるようにするために、基本的な動作に加え、動きと動きの統合が必要な協調運動への支援を行います。発達性協調運動症のある子どもは、一つひとつの行動の統合が苦手であることが分かっているので、作業療法は障害の改善に効果があるといわれています。広義には高齢、障害などによって運動機能が低下した状態にある人々に対し、運動機能の維持・改善を目的に運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いて行われる治療法です。特に運動による理学療法が発達性協調運動症の改善に役立つとされています。別名運動療法ともいわれますが、理学療法に含まれない場合もあり、定義はあいまいです。理学療法士が行う運動を使った療育では、日常生活で必要な運動、行動を訓練し改善していきます。家庭でもできること家庭でもできることは多くあります。家庭でさまざまなサポートを行う場合は、まず、「こうするべき、こうあるべき」という先入観を捨て、子どもと一緒に楽しみながらやることが長続きの秘訣です。あくまで遊びの中で取り入れ、訓練、という位置づけにしないことも大切です。家庭で見られる困りごとの例としては、以下のような例が挙げられます。・手先がうまく使えていない・正しくお箸の使い方を何度も教えたけれど、なかなかお箸をうまく使いこなせない・服のボタンをうまくはずしたり、かけたりすることができない・文字を書くときに極端に筆圧が弱い、強い上記のような困りごとに対して、考えられる不器用さの原因としては、・手の筋肉の動きをうまく制御できない・手元に注意が向いてない・手の動きと視覚の情報の連携が取れていないなどが挙げられます。これらを踏まえた上で、遊びの中で手で何かを握る経験や、握ったあとの状態を把握する機会を増やすことにより、手の筋肉に入れる力の制御を学ぶことができ、つまむ機能や握る機能が育っていきます。具体的に家庭でできることとしては、以下のような取り組みが一例として考えられます。・ブランコやアスレチックで遊び、どのくらいの力で自分の体重を支えられるようになるのかを学ぶ。・コイン遊びを通して、コインを握る、つまむ、入れるという動作を経験する。いろいろな指でコインをつかむことで指の力の入れ加減を学ぶ。・粘土で遊び、粘土の形を変形させたり、細かい作業を行うことで、感覚の加減を学ぶここで紹介した方法はあくまで一例であり、ほかにもさまざまな方法がありますまた、家庭でできるこうした取り組みも、すぐに効果が表れるとは限りません。ゆっくり時間をかけて、楽しみながらやっていきましょう。ICD-10では「発達性協調運動障害」となっておりましたがICD-11からは「発達性協調運動症」と名称が変更になるため一部表記を併記しております。参考:ICD-11における神経発達症候群の診断について
2022年06月05日幼いころのゆいの様子を思い返してUpload By 吉田いらこ幼いころのゆいは素直で大人しく、いわゆる育てやすい子でした。就学前までは子育てで特に大きな苦労を感じたことはありません。ただ、ゆいは勉強の苦手な子ではありました。年中のころから幼児向けのコースもある学習塾に通わせていたのですが、小学校1年生のころに本人がどうしても辞めたいというので退会させたことがあります。続けていけなくなったのは、ちょうどそのころから塾の勉強の内容が幼児向けの簡単なものからお勉強系に切り替わったからだと思います。この塾のシステムは、できない問題があればずっと同じところを繰り返し、理解し、解けるまで次に進むことはできません。ゆいは算数のある一ヶ所でつまずき、ずっとその問題を繰り返し解くことがつらかったようです。このときは辞めさせることをとても悩みました。勉強を嫌がるのは甘えではないのか、それを許していいのか…と。結局、ゆいがとてもつらそうにしているのがかわいそうになって辞めさせてしまいました。それに、まだ低学年だし勉強は無理にさせなくてもいいやとも思っていたのです。今思えば、このころに軽度知的障害の予兆に気づいていればできたこともあっただろうなと感じます。小学校三年生、テストの点数はいつも低く…Upload By 吉田いらこ小学3年生あたりから「この子は勉強が本当に苦手だなあ」と感じることが増えました。小学校で実施される小テストやカラープリントの点数がとても低かったのです。ゆいはいつも点数の低いテストを申し訳なさそうに私に見せてくるので、私は「次頑張ったらいいよ」「ほら、ここは○が多いじゃない」と数少ない、できていたところに目を向けてほめるようにしていました。内心では「この内容だったら、ほかの子は高得点を取っているのでは…?」と思いましたが、成績が悪いことをわが子に注意するのはかなり抵抗がありました。さらに勉強を嫌いになってしまうかもしれないと思い怖かったのです。きっといつか、勉強の大切さがわかったときには自主的に始めるだろう…と楽観視していました。かといって、ゆいに勉強に興味を持たせられるような効果のある声かけもしていなかったので申し訳なく思っています。小学校4年生のある日のことUpload By 吉田いらこそして何も解決しないまま小学四年生になったある日、担任の先生から呼び出しがありました。教室に入ると担任の先生と支援担当の先生がいて、ゆいの学校での状況を教えてくれました。ゆいは勉強についていくのがとても難しそうだということ。必死で板書を書き写そうとしているが間に合わず、授業を理解する以前の状態だということ。そして最後に、一度専門機関で発達の検査をしてみてはと言われました。そのときは「ああ、とうとうか…」と感じました。なんとなくそのままにしてきたことをはっきり指摘されたような気がしました。現在のゆいは…その後小学校5年生で新版K式発達検査を受けた結果、療育手帳(B2)が申請できると伝えられました。つまり、軽度知的障害があるということです。ゆいの場合は、学年が上がって勉強につまずき始めたことがきっかけで障害があることが発覚しました。ただ、こうやって第三者に指摘されない限り、家族だけではなんとなくそのままにしていただろうと考えています。学校の先生方に指摘された当時はショックを受けましたが、そのおかげでいろいろな対応を進めることができたので今では感謝しています。執筆/吉田いらこ(監修:三木先生より)「子どもに知的障害があるかもしれない」という発想は、普通に子育てをしていてはなかなか浮かんでこないものです。ただ一方で、気づかずに一般的な勉強方法を繰り返していては、本人にとってつらいだけのこともあります。特性に気づいて最適な方法に出会えると、少しずつ前に進めて良いですね。
2022年06月03日けだまさんの息子さんは、2歳の時に発達障害の診断を受けました。そのことを受け入れているつもりでも、ゆっくりなペースに挫けそうになることもあります。幼稚園への入園申し込みの結果はどうなったでしょうか?家に届いたのは幼稚園の入園願書。けだまさんは今、願書を出そうか悩んでいます。 ゆっくりすぎる息子の成長に心が挫けそうになるときも…… 息子さんの負担を第一に考えたけだまさんは、幼稚園入園の願書を出さないことに決めました。 発達障害のあるお子さんの場合、成長はゆっくりだったり凸凹があったりしますよね。 みんなと同じ時期に同じことができなくて、焦ってしまう気持ちがきっとあると思います。 そんなとき、自分を落ち着かせるために、皆さんはどんなことを考えたり、やってみたりしていますか? 著者:マンガ家・イラストレーター 海乃けだま発達ゆっくりな息子と活発すぎる娘を育てる2児のママ。クスッと笑える育児漫画を描いています。
2022年06月02日30分に及ぶ発達検査、果たしてふーは乗り越えられるでしょうか?Upload By taekoわが家の長男ミミは、ASDの特性があります。次男のふーは定型発達だと思っていたけれど、通っている保育園からの勧めもあって、発達検査を受けることにしました。福祉保健センターへ電話で療育を受けたいと伝え、2ヶ月後に発達検査の予約ができました。ふーにとって初めて行く場所でしたが、すんなり行くことができて、ひとまずほっとひと安心。面接では、初めて会う専門員の先生から、発達の検査を受けていきます。上手くコミュニケーションできるでしょうか…?Upload By taeko発達検査では、先生からの質問に答えたり、道具を操作したりしながら、回答するものがありました。初めての空間で初めての先生との検査だったのでどうなることやらと不安でしたが、30分以上の間ふーはとっても頑張っていました!発達検査の結果を聞きながら思いました、「あれ、どこかで聞いたことあるような…」検査のあとは、専門員さんと私の面談の時間がありました。その間、ふーは好きなおもちゃを選んで遊んで待っていてもらいます。先生から発達検査のメモ用紙を受け取り、口頭で伝えてくれる検査結果を、私が一つずつ記入していきます。その結果は、総合的に平均の範囲内ではありますが、ふーは月齢と比較して8ヶ月ほど遅れているそうでした。検査を通して、道具の操作や言葉での応答などに、苦手さがあることがわかりました。検査の結果からのアドバイスとして、人に求められていることよりも、自分の興味が優先されて指示されたことが頭に入りにくく、また見えない部分を推測することが苦手なため、周囲の人たちが個別の声がけや見本を見せることが必要だということでした。そんな話を聞きながら私の中に浮かび上がってきたものは、不安などのネガティブなものが少しも無かったと言ったら嘘になってしまいますが、それよりも「ふーも私も一緒なんだ!」という共感の気持ちでした。Upload By taeko先生から告げられる傾向の一つひとつが、「これ、私のことだ!」と思えてしかたなかったんです。本筋とは別のことばかりが気になって頭に入ってこなかったり、デジタル社会の情報の洪水の中で「結局なにもわからない…」という状況になってしまったり。私もそんなことが日常茶飯事なんです。あぁ、やっぱり、親子なんだなと感じました。でも、こんな私でもなんとかなっているんだから、ふーもきっと大丈夫!とポジティブに思うようにすることにしたんです。全ての結果を聞き終わり、先生からあらためて療育を受けるかどうかの意思確認をされました。そして、次男の療育を受けることを希望しました。Upload By taekoそして始まった、次男ふーの療育最後は必要書類に記入し、翌日区役所へ郵送。その後は、3月末ごろに通所する施設から連絡が来て、4月から月に1回・通所できることになりました。兄のミミが現在通っている民間の放課後等デイサービスの未就学児(個別クラス)も、自治体の療育とは別の日に、4月から週1回通うことが決まりました。自治体の療育はミミの療育で2年半通った懐かしい場所ですが、ふーが実際に通うのはさらに1駅離れた場所になるようでした。少し大変だな…と思いつつも、ふーは電車が好きだから通うことが楽しくなるかも、とプラスになることを考えるようにしました。療育にはどうしても不安はつきものですが、その中でもいつでもポジティブな要素を見つけて、前向きにがんばっていこう!それが、私たち親子の療育の形です。執筆/taekoUpload By taeko(監修:井上先生より)療育開始前に発達検査や知能検査などのアセスメントを受けることがあります。これは、本人の学習に関しての強みや弱みを把握し、適切な対処方法や学習の仕方を見つけるのに役立ちます。初めての場所で初めての支援者と発達検査を行うことは、お子さんもお母さんもとても不安だったと思います。子どもの検査の解説を聞きながら、ご自分のことにも当てはめて考えた、という方は意外に多いようです。taekoさんがされてきた工夫とかコツがあれば、お子さんに伝えてあげられると良いですね。
2022年06月02日小学校から高校まで活用できるーー『改訂新版 障がいのある子の就学・進学ガイドブック: 複数の目で子どもを育み共に育ちあう教育へ』「わが子に合う学びの環境をどう選んだらいいのだろう」と迷ったり、「学校には通い始めたけれど、このままでいいのだろうか」と悩んでいる保護者の方もいるのではないでしょうか。この本の著者は、特別ニーズ教育・教育行政学を専門とする渡部昭男先生。学校・学級選びをするときに必要な「行政」「法制度」や、それらを活用した実践法を専門家の視点で分かりやすく解説しています。就学を考える場合は順を追って読むと理解が深まり、すでに就学している場合でも、今の学校・学級について見直し、活用することができます。お子さんに合った教育の環境を整え、のびのびと地域の中で暮らしていくために活用できるあらゆる制度が存在しています。「行政」「法制度」は子ども自身の「学校で学ぶ権利」を守ってくれる大切な事柄です。この本では、その制度について、行政のホームページではどこを読んだらよいのか、QRコードでも紹介しています。お子さんの就学先を決める際に迷ったとき、学校や学級に相談する際にもぜひこの本を手にとってみてください。早期療法で、新しい一歩を踏み出す!ーー『発達障害の早期療育とペアレント・トレーニング ー親も保育士も、いつでもはじめられる・すぐに使える』発達が気になるお子さんを育てる中で、人との関わり方や変化に適応する力をどのように育めばいいのでしょうか。家庭での接し方でできることはないかと考えている方もいるかもしれません。この本では、子どものさまざまな行動特性への早期療育の具体的な方法、ペアレント・トレーニングを取り入れた関わり方など、すぐに実践できる方法を紹介しています。著者は、小児科医であり金沢こども医療福祉センター・金沢療育園施設長でもある上野良樹先生と金沢こども医療福祉センターの作業療法チーム。実際に療育園で行われている子どもとの接し方や作業療法の視点での具体的なトレーニングがイラストと共に紹介されています。保護者の方や、発達が気になるお子さんと接する支援者の方におすすめの一冊です。親子でいきものになりきってリラックスーー『ヨガセラピーえほん はいポーズ どうぶつ』『ヨガセラピーえほん はいポーズ うみのいきもの』インド発祥のヨガ(yoga)。健康や美容のために取り入れている方もいるのではないでしょうか。ヨガには自然や動物をモチーフにしたポーズがたくさんあります。お子さんと絵本のページをめくりながら、動物や海の生き物の形や動きを真似してみましょう。赤ちゃんや未就園のお子さんも、真似するだけで簡単にヨガのポーズをすることができます。「どうぶつ」「うみのいきもの」それぞれ楽しいポーズがいっぱい!親子で楽しみながら心も身体もリフレッシュできる絵本です。チーム支援に役立つーー『自閉症・知的障害者支援に役立つ氷山モデル・ABC分析シートの書き方・活かし方』近年、自閉スペクトラム症・知的障害者支援の現場では、知識を学び、技術を身につけたスタッフが複数で支援する「チーム支援」が重要視されています。この本のタイトルにある氷山モデル、ABC分析は、チーム支援が円滑にできるようにするために多くの施設で取り入れられています。「氷山モデル」とは、本人の行動の背景には、特性や環境によるものがあり、それらを解決することで課題となっている行動を減らそうという考え方。「ABC分析」とは、行動が起こるきっかけには先行事象があり、そのあとの結果によって行動が増えたり減ったりするため、先行事象や結果を調整することで行動を変えるという考え方。これらを言語化し、チームが共通認識を持ちつつ、支援の内容をアップデートさせていくことで、よりよい支援につながると考えられています。この本では、氷山モデル・ABC分析シートの書き方や活かし方を、具体的な事例と共にマンガで分かりやすく紹介しています。支援者向けの内容ですが、家庭でも考え方を取り入れられそうです。
2022年06月01日発達性協調運動症(発達性協調運動障害・DCD)の診断と発達障害の関係は?Upload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホン発達性協調運動症(発達性協調運動障害・DCD)のはっきりとした原因は、まだわかっていませんが、いくつかの原因が検討されています。また、発達性協調運動症は、限局性学習症(学習障害)、自閉スペクトラム症、ADHDと併存することがまれではないと言われています。上記との併存が多くみられるため、なんらかの共通する遺伝的要因があるのではないかと言われています。また、上記のような障害のある子どもは定型発達の子どもより、発達性協調運動症を発症する可能性が高いと言われています。参考:自閉スペクトラム症に併存しやすい疾患・障害|こころの健康情報局「すまいるナビゲーター」参考:ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について|厚生労働省e-ヘルスネットDSM-Ⅴでは発達性協調運動症は、5歳から11歳の子どもでは、5~6%が発症する、また、女児より男児のほうが発症率が高いといわれています。発達性協調運動症とADHD(注意欠如・多動性障害)との関係ADHDのある子どもがよくころんだり、物にぶつかったりしてしまうのは、ADHDによる注意散漫や衝動性に原因があるのか、それとも発達性協調運動症によってなのかを注意深く観察する必要があります。ADHDと発達性協調運動症との境界についてはDSM-5には特に記載がありませんが、ICD-11では衝動性や不注意のために物や人などにぶつかりやすい子どもを発達性協調運動症と診断しないようにとの記載があります。子どもの運動に対する困難さ、不器用さは必ずしも、ADHDだけが原因、発達性協調運動症だけが原因というわけではなく、両方が原因となっていることもあります。海外からは、ADHDがある男児の場合、発達性協調運動症との併存確率は30~50%ほどの可能性がある言う報告もあります。発達性協調運動症とADHDの、二つを併発している場合は、DAMP症候群(deficits in attention, motor control and preception/注意・運動制御認知における複合的障害)と呼ばれることもあります。参考:ICD-11における神経発達症候群の診断について|公益社団法人日本精神神経学会参考:注意欠如多動症児の協調運動機能が行為選択に及ぼす影響|J-STAGE発達性協調運動症と限局性学習症・学習障害(SLD・LD)との関係限局性学習症・学習障害(SLD・LD)は、読み書き能力や計算力などの算数機能に関する、発達障害の一つになります。限局性学習症には、読字の障害を伴うタイプ(ディスレクシア)、書字表出の障害を伴うタイプ(ディスグラフィア)、算数の障害を伴うタイプ(ディスカリキュリア)の三つがあります。日本語の読み書きに関しては発達性ディスレクシアの診断やアセスメント方法が確立され、音韻処理に基づく介入が行われている場合が多いですが、発達性協調運動症がある子どもの場合は音韻処理だけでは説明できず、診断、アセスメント、介入方法が異なるといわれています。参考:学習障害(限局性学習症)|厚生労働省 e-ヘルスネット発達性協調運動症と自閉スペクトラム症(ASD)との関係自閉スペクトラム症(ASD)がある子どもは、コミュニケーションが苦手だったり、感覚の過敏をともなったり、苦手なことでパニックになってしまう、見通しが立たないことに不安を感じてしまうなどがあります。さらに発達性協調運動症があると、うまくできないことが多くなり、遊びなども楽しむことができない可能性もあります。自閉スペクトラム症の併存症はさまざまありますが、約70%以上の人が1つ以上の精神疾患を持っているといわれています。特に知的発達症が多いですが、その他ADHDや発達性協調運動症、学習障害、不安症、抑うつ障害などがしばしば併存します。参考:発達障害の特性(代表例)|厚生労働省参考:ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について|厚生労働省 e-ヘルスネット発達性協調運動症と知的発達症(知的障害)との関係知的発達症(知的障害)のある子どもは知的能力のみならず、体力や運動能力においてもさまざまな課題を抱えている場合があります。知的発達症のある子どもは、体力・運動能力が、年齢とともに向上しないケースもあります。これは、知的発達症によくみられる自閉傾向、あるいは身体動作の障害のために運動への拒否を示す子どもでは、成長期であるにもかかわらず、本来動かすべき運動や身体を働かす機会が少ないがゆえの身体能力の低下現象とも推察されています。参考:知的障害児の発育期における運動能力について|J-stage診断基準ごとの違い現在使われている精神疾患の診断基準は、アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』5版テキスト改訂版)と世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(※)による診断基準があります。現在、最新の診断基準である『DSM-5』が主流になりつつありますが、医師や医療機関によってどちらの診断基準に準拠しているかは異なります。発達性協調運動症における診断基準の違いは、『ICD-10』と『DSM-5』で異なる点があります。『ICD-10』では発達性協調運動症は心理発達の障害に分類されるため、精神遅滞と知能指数が重要になります。現在DSM-5、ICD-10では診断名は「発達性協調障害」となっていますが、ICD-11では「発達性協調運動症」と名称が変更されており、神経発達症群に入っています。ですので診断基準も『ICD-10』『DSM-5』から変わってくる可能性もあります。※2019年5月、世界保健機関(WHO)の総会で、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)が承認されました。日本国内ではこれから、日本語訳や審議、周知などを経て数年以内に施行される見込みです。WHOでの公表・承認を受けて、各国では翻訳やICD-10/11 変換表の作成、疾病分類表、死因分類表の作成などの作業が進められ、審議、周知などを経て施行されていきます。ICD-11への改訂によって分類コードが変化すると、書類上で要求されるICDコードが変わったり、疾病概念やカテゴリー、名称や診断基準も変更になる可能性もあります。参考:ICD-11における神経発達症候群の診断について|公益社団法人日本精神神経学会参考:ICD-11 | 世界保健機関(WHO)まとめ子どもに発達性協調運動症があるのかどうか心配な場合は、早めに相談機関に相談し、必要に応じて専門家の支援を受けながら、家庭でできる工夫を行っていきましょう。また、発達障害のある子どもの場合は発達性協調運動症を伴うことも多いです。発達性協調運動症からの特性なのか、そのほかの発達障害による特性なのかを見極めることが重要です。
2022年05月31日穏やかで友達トラブルとは無縁だったUpload By ゆきみ自閉スペクトラム症のある長男けんとは、赤ちゃんのころから、とにかくマイペースで穏やかな性格。好きなものに対するこだわりは強かったものの、遊んでいたおもちゃを誰かに取られてしまっても、お友達が遊んでいるおもちゃで遊びたいときも、ほとんど泣くことはせず、サラリとおもちゃを奪ったり、無理だなと思うとその場を離れて違う遊びをする…などの行動をとっていました。なので、赤ちゃんのとき、発達支援施設に通っていたとき、こども園の年少に至るまで、お友達トラブルとはほぼ無縁の生活。一人遊びが大好きで、集団行動にも参加していなかったのでトラブルは起きなそうだなーとママは呑気に考えていました。年長の夏。園のあとに通っていた発達支援施設の先生に「けんとくん、最近、自我が出てきたように感じます」と言われました。家で遊んでいる様子はそこまでの変化を感じていなかったので、さすが先生!よく見てくださってるなと感心し、感謝したのを覚えています。自我の出現と共に友達トラブル急増!?Upload By ゆきみ「自我が出てきたように感じる」と言われたころ、こども園の先生から「お友達を引っ張ってしまった」と報告を受けたのです。初めての友達トラブルにビックリ。表出言語が苦手でほぼ単語。さらに構音障害で発音が悪く、何を言っているのかわからない、けんと。自我が出てきたことで、やりたいこと、やってほしくないことを上手く伝えられなかったり、伝わらないことに苛立ったりしてお友達に手を出してしまうのではないか、と発達支援施設の先生から言われました。最初はお友達を引っ張ることが「ダメなこと」だというのが分かっていないような様子でした。それでも毎回、「お友達は引っ張りません」と伝えたり「引っ張っていいんだっけ?」と質問して答えてもらうようにしたら、少しずつダメなことなのだと理解し始めていきました。引っ張ってしまう園行事の練習期間中、「引っ張らない」を目標に定めた「できたカード」を毎日持たせていただきました。手を出しそうになったとき先生が「今日のできたカードは何だったっけ?」と声をかけてくださり引っ張らずにすんだ日もありました。そんな日は、嬉しそうに「できたよ☆」と自ら報告してくれて、頑張ったんだなーと私にも伝わってきました。抑えられない!?ションボリな様子の息子Upload By ゆきみ年長の3学期になると、行事のときに引っ張るだけではなく、好きなおもちゃを独り占めにしたくてお友達に手を出すようになってしまいました。先生からお話しを聞くと、3学期にクラスに導入されたおもちゃがけんとのとっても大好きなおもちゃだったため、「お友達と一緒に遊ぶ」と自分の思い通りに遊べないことが多く、ストレスになったり苛立ったりしている様子とのことでした。園のあとに通っていた発達支援施設でも、つくりたいものがあったのに壊されてしまい、お友達とケンカしてしまった。と、先生から報告を受けました。帰り道、けんと自身の口から「お友達を引っ張っちゃった」とションボリ報告をしてきてくれました。悪いことだと分かってはいるけど、自分の気持ちをコントロールできないんだ…ということが私にも伝わってきました。トラブルはいつまで?毎日心配が止まらないUpload By ゆきみ4月、小学校に入学しました。生活をしていく中でまだ通常学級で過ごす時間が短く、特別支援学級のクラスは年上のお兄ちゃんとお姉ちゃんしかいないため(1年生はけんとだけ)、大きなトラブルは今のところ起きていません。しかし、新しく通いはじめた放課後等デイサービスで、おもちゃの取りあいをしたり、1人で遊びたいのに邪魔をされたといって押してしまったり…と、トラブルが出てきています。まだまだ始まったばかりの小学校生活。これからお友達との関わりが増えていくにつれ、さらにトラブルも増えていってしまうかと心配です。小学校、放課後等デイサービスの先生方と連携して情報交換し、けんと自身が自分の心をコントロールできるようになったらいいなと願っています。執筆/ゆきみ(監修:初川先生より)「自我が出てきた」ことで、お友達に手を出してしまうことなどトラブルが急増すると、とても心配ですし、親としてやきもきすることも多くなりますね。ただ、「自我が出てきた」ことは大切な成長です。自分のやりたいことがある、こうしたいという強い思いがある。それ自体はとても大事なことです。何事にもやる気が持てず、あるいは常に受け身でいて、自分のやりたいことよりも友達を優先して譲るのみ…ということはトラブルが起きなかったとしても私はそれはそれで心配だなと感じてしまいます。お友達のことを引っ張ってはいけない、お友達に手を出してはいけない。それはその通りなのですが、その前の、けんとくんの気持ちをどう扱っているかは気になりました。理想としては遊びたいときに「(ぼくが)遊びたい」「これ(おもちゃ)使いたい」など言葉で気持ちを言えるといいなと思います。うまく言えないときは「せんせい!」と大人を呼ぶのもいいと思います。ともあれ、○○したいと強く思うこと自体は悪いことではないので、それはそれとして表出できたら(あるいは、大人がその部分を「けんとくんは、これで遊びたいんだよね」と代弁したりフォローしたりして尊重できたら)いいなと思います。その次にようやく、「でも手を出すのはいけないね」というところ。「○○したい」と強く思うと同時に、「手を出してはいけない」をやり抜くという2つの課題が課されている状態なのは、まだまだ難しいだろうな…と感じました。そんな中でも、けんとくんは、落ち着いているときにお母さんと一緒に「今日手を出しちゃった」と振り返ることができていましたね。ある意味とても気にしているということでもありますが、それほど何とかしようと考えているということでもあり、目標としては共有されている、そこまで発達してきているのだと感じました。どうしたら気持ちが伝わるか、どうしたらもめずに遊べるか、どうしたら先生に注意されずにスムーズに遊べるか。そうしたことをきっとトラブルの中で学んでいる面もあると思います。保護者の立場からすると、ひやひやする思いが続きますが、しかし、どんな塩梅で自分の気持ちを出したり、譲ったり、そのときにどんな手段を使うかということは実際にその場面を経験することで磨かれていきます。もうしばらくひやひやは続くと思いますが、先生方との連携の中で、一進一退しながらも成長してゆくことを信じて見守りましょう。
2022年05月31日発達性協調運動症(発達性協調運動障害・DCD)とは?Upload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンそもそも協調運動とは?協調運動とは、手と手、手と目、手と足などの個別の動きを一緒に行う運動です。例えば、私たちがキャッチボールをするとき、ボールを目で追いながら、ボールをキャッチするという動作を同時にしていますよね。他にも、縄跳びをするとき、ジャンプする動作と、縄を回す動作を同時にしなくてはなりません。このような運動を協調運動と言います。発達性協調運動症(発達性協調運動障害)について発達性協調運動症とは、日常生活における協調運動が、本人の年齢や知能に応じて期待されるものよりも不正確であったり、困難であるという障害です。本人の運動能力が期待されるよりどのくらい離れているかは、通常「MABC-2」(Movement Assessment Battery for Children,2nd Edition version)や、「JPAN」(日本版感覚統合検査)と呼ばれる感覚処理行為機能テストなどのアセスメントによって評価されます。これらのテスト結果を参考に、医師が発達性協調運動症かどうかを判断します。人間の運動の発達をみるとき、大きく分けて、粗大運動と微細運動に分類できます。人間は、さまざまな感覚器官から得られた情報をもとに、初めは姿勢を保つことや寝返りといった粗大運動を習得し、次第に段階を踏みながらより細かい微細運動ができるようになります。粗大運動とは、感覚器官からの情報をもとに行う、姿勢と移動に関する運動です。粗大運動には、先天的に人間に備わっている運動と、後天的に学ぶ運動があります。寝返り、這う、歩く、走るといった基本的な運動は人間が先天的に持っている粗大運動能力です。一方、泳ぐ、自転車に乗るなどの運動は、環境的な影響や学習によって身につけると言われています。微細運動とは、感覚器官や粗大運動で得られた情報をもとに、小さい筋肉(特に指先など)の調整が必要な運動です。モノをつまんだり、ひっぱったり、指先を使って細かな作業、例えば、絵を書く、ボタンをかける、字を書くなどの運動があります。成長とともに、粗大運動から、より細かい微細運動ができるようになります。発達性協調運動症のある人は、粗大運動や微細運動、またはその両方における協調運動が同年代に比べぎこちなく、遅かったり、不正確になります。子どもによって、乳幼児期の粗大運動には全く遅れや苦手はなかったが、幼稚園や、小学校に行くようになり微細運動を必要とする場面が増え、微細運動が顕著に困難である場合もあります。発達性協調運動症のある子どもの年齢別の困りごと発達性協調運動症があるかどうかの判断は、協調運動が本人の年齢や知能に応じて期待されるよりも著しく不正確であったり、困難であるかどうかが重要なポイントとなります。以下で年齢別によく見られる傾向を紹介します。とはいえ、年齢が低ければ低いほど、得意な運動と困難な運動は子どもによって大きく差があり、人それぞれです。ですので、以下の例に当てはまるからといって、必ずしも発達性協調運動症であるということではありません。子どもの様子を見つつ、気になるときは専門家に相談してみましょう。乳児期は、そもそも基本的な粗大運動を学び、獲得していく段階です。また子ども一人ひとりの運動機能獲得のスピードは違いますし、できること、できないことも個人差が大きい時期です。ですので、苦手なことがあっても心配する必要がない場合も多いと言えます。ですが、発達性協調運動症があると診断される子どもは、乳児期に以下の様な特徴が共通して見られる傾向があります。例:寝返りがうまくできない、はいはいがうまくできない、不器用さから母乳やミルクがうまく飲めない(むせる)、離乳食を食べるとむせる幼児期は、特に5歳を過ぎると、運動能力の個人差が縮まってきます。そのためこの時期に発達性協調運動症と診断される場合が比較的多いと言えます。発達性協調運動症のある幼児は以下のことが不正確であったり、習得が遅れていたり、困難な場合があります。例:はいはい、歩行、お座り、靴ひもを結ぶ、ボタンをはめる、ファスナーを上げる、転んだときに手が出る、平坦な場所で転ばない、トイレで上手にお尻をふく小学校に上がると日常生活、学習生活でより複雑で細かい動作を求められる場面が増えます。そのため微細運動での協調運動の障害が顕著に表れます。発達性協調運動症がある子どもは以下のように不正確であったり、習得が遅れていたり、困難なことが見られる場合があります。例:模型を組み立てたりするのが苦手、ボール遊びが苦手、文字をマスの中に入れて書けない、階段の上り降りがぎこちない、靴ひもを結べない、お箸をうまく使えない、文房具を使った作業が苦手(消しゴムで消すと紙が破れる、定規を押さえられずにずれるなど)まとめ発達性協調運動症は、一つひとつの運動を関連づけたり、統合することが困難な障害ですが、運動の得意不得意はどんな子どもにも見られるため、単に不器用だから、で済まされる場合も少なくありません。しかし、発達性協調運動症のある子どもが見過ごされ、必要な支援を受けられないままでいると、その子どもが集団に適応することが困難になることもあります。保護者が「あれ?」と思うようなことがあれば、専門家に相談することが重要です。※ICD-10では「発達性協調運動障害」となっておりましたがICD-11からは「発達性協調運動症」と名称が変更になるため一部表記を併記しております。における神経発達症候群の診断について|公益社団法人日本精神神経学会
2022年05月30日昔から物を分解するのが大好きだった兄Upload By スガカズ重度の自閉スペクトラム症と知的障害のある7歳上の兄は、私と一緒に住んでいたころから、目の前にあるものを手にとって匂いや感触や構造を確かめるという特性がありました。そういった行動を経て、自分の中で好みのものを選別しています。「カセットレコーダー」や「ビデオテープ」は特にお気に入りで、見つけた瞬間にねらいを定めて、周りの目をぬすんで分解したりいたずらしてしまいます。Upload By スガカズカセットレコーダーは小さなネジを取り外し、綺麗に分解して中のカセットテープを取り出して遊びます。ビデオテープも分解して中の部品を取り出そうとします。しかし、難しいようで途中で中の部品が割れてしまったりしてあきらめることがほとんどでした。ビデオテープのツメ(折るとテープが上書きできなく箇所)を折ったり、シールをはがすなどしてその場に放置。それを見た姉と私が兄に怒るのがお決まりのパターンでした。Upload By スガカズ当時は何度注意しても改善しませんでした。姉や私がお気に入りの音楽を集めてカセットテープに入れても、気がつけば兄が使えなくしてしまうことが多かったので困っていました。ですが、30年経った現在は「あのときの経験は、現在の兄の生活にいい影響があったのかも知れない」と感じます。障害の重さに関係なく、得意分野が仕事につながることもUpload By スガカズ現在の兄の仕事は、給湯器の解体仕分け業務です。解体とひとことで言っても、作業はかなり細かいようで、何人かでチームを組み、一人ひとりの担当業務をしっかり分けているようです。兄の仕事(給湯器の解体)について、姉と話をしたことがあります。姉は、施設の方から「作業をする人たちの中で、一番障害が重いのに、一番綺麗に解体している」と聞いていたようでした。もしかすると家族の手前、施設の方は大げさに言ってくださった部分もあるのかもしれませんが、生まれたときから一緒に生活していた兄の行動を思い返してみると、手先を動かすことが得意な方だった気がします。姉と二人で「昔から分解は得意だったもんね」と妙に納得しました。また、施設の兄のケース担当の方からは仕事に取り組む兄の様子について「率先して仕事に取り組んでいるので助かっています」「ニコニコ楽しそうに取り組んでいます」「この前作業着から普段着に着替えるときに、ポケットに部品をこっそり入れて施設に持ち帰っていたこともありました」と、話してくれました。私は真面目に仕事をがんばる兄のことを誇らしく、また時折見せる子どものときのような無邪気さを微笑ましく感じました。障害のある方が社会の一部となって働いている。私も負けていられない!兄の通っている共同作業所ではほかにも、「クリーニング、農作業、資源リサイクル、林業の下請け」などの地域に密着したさまざまな仕事があります。私は学生のころから、兄がお世話になっている作業所の雰囲気を知っています。学生のころ、施設を通る際に、クリーニング後のシーツやタオルを支援員さんの見守りのもと笑顔でたたむ利用者の姿をよく見かけていました。私は当時は子どもの目線で「みんな笑顔で楽しそうだなぁ」と思っていたのですが、現在、私が子育てする立場なので、違う視点を持つようになりました。作業所での仕事や関わってくださる周囲の方に対して目を向けられるようになったため、「本人の特性」や「利用者自身のやる気」「達成感」を大事にして、作業所は利用者に仕事を分けているのだろうなと思いました。作業所とのパイプとなってくださっている障害者支援施設の兄のケース担当の方からも、実際に「利用者に寄り添う」心がまえを感じました。兄が楽しく仕事をできていること、障害のある方が社会の一部となって働いていることを直接知ることができました。私も社会の一部となって企業に雇用されたり、子育てをしています。日々めまぐるしく過ぎていく中で、モチベーションがあがらないときもあります。兄の様子を知ることで、「兄に負けないように私も頑張ろう!」と元気をもらえたような気がします。執筆/スガカズ(監修:三木先生より)お兄さんの興味や特性と仕事内容がマッチしているとのこと、素敵ですね。また、そういった業務を通じてお兄さんがやりがいや役割を感じられているとしたら、これもまた社会で暮らすためにはとても大事なことを実現できていると思います。
2022年05月30日山形県放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報放課後等デイサービスミライスクール深町校は8月にオープン予定の施設です。6月からプレオープンを予定しており、小学生のお子さんの受け入れをスタートします。個別療育では、お子さんの発達段階や特性などに応じたオーダーメイド式の支援をしています。小集団療育では活動する前に、コミュニケーションのポイントや望ましい行動・望ましくない行動を活動の流れに沿ってお子さんに説明します。どう動くか、何を話すのかを事前にお子さんと打ち合わせをした上で、実際の活動でもその場でのアドバイスを行っています。またこちらの施設では、実際の場面でお子さんが学んだ行動を後押しできるような支援を大切にしています。山形県の放課後等デイサービスをもっとみる神奈川県放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報放課後等デイサービスこどもサポート広場 minatos 綱島店は2022年1月5日にオープンした施設です。保育士や言語聴覚士、児童指導員、介護福祉士などのスタッフが在籍しています。こちらでは感覚統合療法の支援を中心にした完全個別療育を提供しています。お子さんそれぞれの特性・状況・困難をアセスメントし、「うまくいった」「楽しかった」という成功体験が積めるような支援をしています。またこちらの施設では、支援の終わりにある振り返りの時間を大切にしています。保護者の方に良かった点や課題、家庭での対応方法などを伝えるだけでなく、保護者からの質問や相談に答える時間として重視しています。Upload By 発達ナビ施設情報One step smile宮前教室では『保護者の方に寄り添い、共にお子さんの成長を見守っていきます』『お子さんの「できた!」を大切にし、自信へとつなげます』『一人ひとりの優れた部分を発揮できるように支援していきます』という思いを持ったスタッフが支援をしています。児童発達支援では小学校入学に向けた準備、放課後等デイサービスでは勉強が楽しくなる学習サポート、カードゲームや外遊びなどを通し自立に向けて集団でのソーシャルスキルトレーニングをしています。お子さんの『できるようになった/やりたいこと』を把握しながら、安らぐ居場所となるようなあたたかい支援をしています。神奈川県の放課後等デイサービスをもっとみる神奈川県児童発達支援事業所Upload By 発達ナビ施設情報ステラファミリアは放課後等デイサービスと児童発達支援の多機能型事業所の強みを活かして、お互いを理解、尊重し合える関係性を育む支援をしている施設です。こちらでは、小さな「できた!」が大きな光に変わるよう、お子さん一人ひとりの個性に合わせた個別療育、集団療育を提供しています。教員免許取得者、理学療法士、保育士などさまざまな分野の専門スタッフがお子さんの成長をサポートします。将来に対する保護者の不安も解消できるよう寄り添い、卒業後も就職先にスタッフが定期訪問するなど、大事な一生を共に過ごせるような関わりを大切にしている施設です。神奈川県の児童発達支援事業所をもっとみる栃木県放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報2022年4月1日オープンしたカノアスFC平松本町は『サッカー療育で子どもの可能性を広げる』という思いで支援をする施設です。晴れの日は芝生の運動場、雨の日は体育館で、サッカーを通した運動療育を提供しています。脳や感覚の発達、言語だけでなく手や目、体全体を使った非言語コミュニケーション、「チームプレー」を学びながら社会性を身に着けられるよう支援しています。子どもが夢や希望を持ち、「笑顔」のあふれる世の中になり、同時に子どもの保護者の不安を安心に変えていくことを大切にしながら、サッカー療育を提供している施設です。栃木県の放課後等デイサービスをもっとみる大阪府放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報2021年9月にオープンしたおおきな木都島は一人ひとりに寄り添った居場所づくりを大切にしている施設です。ソーシャルスキルトレーニング(SST)・アート・さをり織り・サイエンス・運動療育・ムーブメント療育・音楽療育・キッズヨガ・農業体験など、さまざまなプログラムを提供しています。また、集団での関わりや、勉強面でのサポートのほかに、転んでも自分で立ち上がるチカラ、思いやる心、他者との関わりなど、「生きるチカラ」を育てる支援を行っています。またこちらの施設では外でのルールを身につけられる外出支援やホテル・チョコレート工場、食品サンプル工場など、さまざまな就労体験を行っています。Upload By 発達ナビ施設情報2022年7月開所予定のまんまるは敷地内に広い園庭がある古民家を改装した施設です。野菜を育てたり、里山の自然に触れ、でこぼこした大地の上でさまざまな動きを通して、五感を刺激することで、コーディネーショントレーニング、感覚統合療法の要素を取り入れ、運動能力の向上を目指した支援を行っています。味噌づくりやそうめん流し、お餅つきなど、四季折々のイベントが充実しており、自然の巡りに寄り添い、恵みに感謝しながら、豊かな心と体を育むことができる施設です。大阪府の放課後等デイサービスをもっとみる大阪府児童発達支援事業所Upload By 発達ナビ施設情報IQLino都島校では自ら考えて取り組む能動的な活動を重視し、発達科学に基づくカリキュラムで、ブロックや絵画などのクリエイティブ教育を中心に、発想力やコミュニケーション力を育てる支援を行っている施設です。ストレスを弾き返す機能や気持ちを落ち着かせ、切り替えるなど、心の回復力を育てる環境づくりも大切にしています。小学校に向けて必要な生活日常動作を学ぶことができます。またこちらでは、STEAM教育を取り入れ、理数系の4科目と芸術を学ぶ中で「考察や分析」「課題の発見と解決」「芸術や教養」を身につけられるような支援をしています。大阪府の児童発達支援事業所をもっとみる「もっと施設の情報を詳しく知りたい!」「見学をしてみたい!」と思ったら、WEBからもお問い合わせが可能です。施設情報ページでは、掲載されている施設の情報を地域ごとに検索して見ることができますよ。
2022年05月30日10人の作家が織りなす「線」の無限の可能性。多様な表現に触れられる展覧会が開催中!2022年6月26日(日)まで、展覧会「線のしぐさ」が東京都渋谷公園通りギャラリーにて開催中です!1974年の設立以来、アメリカの障害のある方々の創作活動を牽引してきたクリエイティブ・グロウス・アート・センターの作家と、日本の作家の作品が一つの空間に集結。ローザンヌのアール・ブリュット・コレクションへの収蔵だけでなく、ニューヨーク近代美術館やパリのポンピドゥー・センターなどに作品が収蔵される作家を含む10名の作品が、「線」をテーマに一堂に会する貴重な機会です。Upload By 発達ナビニュースなぜ、「線」がテーマとなったのでしょうか。その理由について、本展を企画した担当学芸員は、こう話します。一本の線は、あるときはひとつの範囲を分け、またあるときは離れたものどうしをつなげます。相反する機能をもつ線は、空間の中で自らをさまざまに変化させ、かたちをつくり、ときには、かたちにならない何ものかを表します。「アール・ブリュット」の作品における線は、しばしば意図や計画とはかけ離れた、即興や偶然の結果とみなされます。反面、それは、作家の抑えがたい衝動や愛着、それに応じた身体の心地よい動きと離れがたく強く結びついています。そのため、作家のからだと心のしぐさは線にのりうつり、線はしぐさを生むのです。本展では、10人の作家がつむぎ出す線のしぐさをなぞります。同じ「線」というテーマのもと、日米それぞれの作家の特徴を際立たせた展示に向き合い、そしてそのしぐさをなぞることで作家一人ひとりの内面性まで紐解いていきます。Upload By 発達ナビニュースペンや色鉛筆、水彩によるドローイングや木彫、針金を用いた立体作品、糸や毛糸、布を用いたファイバー・アートなど、それぞれの方法で生み出すさまざまな「線」とその表情、しぐさは、多様性の尊さや個性の大切さまでを感じさせてくれます。アートに興味がある方も、普段アートに触れる機会の少ない方も、この機会に展覧会に行ってみてはいかがでしょうか。齋藤 裕一(SAITO Yuichi)埼玉県生まれ。2002年より川口市の「工房集」で活動。文字を書くことがきっかけとなり、好きなテレビ番組名などを連ねるドローイングへと展開。特定の文字が抽出されることが多く、それらの線が絶えず余白とせめぎ合い緊張関係を保ちながら、濃淡のある層と塊をなしていく。近年、作品がパリのポンピドゥー・センターに収蔵された。Upload By 発達ナビニュース松浦 繁(MATSUURA Shigeru)宮城県生まれ。1994年から仙台市の「アトリエ創」で木彫を本格的に始める。仕上げに指や手の平で塗り込む絵具のやわらかな色彩と、ノコギリなどを用いて残す鋭い線との対比が、木肌に豊かな表情を生む。主な展示に「木々の生命」(もうひとつの美術館、栃木、2017年)などがある。平成29年度宮城県芸術選奨新人賞受賞。Upload By 発達ナビニューススーザン・ジャノウ(Susan JANOW)カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。2003年よりCGACに参加。グリッドを描き、細い線のクロスハッチングで念入りに埋めるドローイングを多く制作。近年は、格子のサイズや配置、枠内の色づけに新たな変化をみせる。また、映像作品でも注目を集めている。作品は、ニューヨークのブルックリン美術館、パリのポンピドゥー・センターなどに収蔵。Upload By 発達ナビニュースダン・ミラー(Dan MILLER)カリフォルニア州カストロバレー生まれ。1992年よりCGACに参加。関心を持つものに伴うかたちやアルファベット、数字を重ねる。ペンの細い線、絵具のダイナミックな線が層をなし、時折、単語を浮かび上がらせつつも、意味から解き放たれた線の集合体を生んでいる。作品は、ニューヨーク近代美術館、パリのポンピドゥー・センターなどに収蔵。Upload By 発達ナビニュース・展覧会名 / 線のしぐさ・会期 / 2022年4月23日(土)~6月26日(日)・開館時間 / 11:00~19:00(月曜休館)・会場 / 東京都渋谷公園通りギャラリー展示室1、2・入場料 / 無料出展作家 / 齋藤 裕一、坂上 チユキ、西村 一成、東恩納 侑、松浦 繁、スーザン・ジャノウ、ドワイト・マッキントッシュ、ダン・ミラー、トニー・ペデモンテ、ジュディス・スコット主催 / (公財)東京都歴史文化財団 東京都現代美術館 東京都渋谷公園通りギャラリー特別協力 / クリエイティブ・グロウス・アート・センター後援 / アメリカ大使館*開催内容は、都合により変更になる場合がございます。予めご了承ください。
2022年05月29日友達と繁華街に出かけて遊びたい!Upload By かなしろにゃんこ。中学生くらいになると買いたい物が今までよりも高額になり、「欲しい物を買うには、今あるお小遣いだけでは足りない!」というお子さんも多いのではないでしょうか。そんなときに親の財布から「ごめんなさい、少しだけ…」と言ってお金を持ち出してしまった…なんてことは誰でも一度はあるかもしれません。しかし、わが家のリュウ太は一度では済まず、中1から中3までたびたび繰り返していました。部活がない日によく、リュウ太はよく友達に繁華街のゲームセンターなどに遊びに行こうと誘われていました。しかし、毎月お小遣いをもらってはすぐに散財するタイプのリュウ太。友だちに遊びに誘われても万年お金がない状態です。Upload By かなしろにゃんこ。でもリュウ太は誘いに弱く、誘われると絶対に行きたくなってしまい我慢ができません。私にお小遣いの前借交渉をしつこくしてくることもありました。はじめのうちは前借交渉にも応じていたものの、月3千円のお小遣いだったリュウ太にとって、2千円以上の前借りは、次の月のお小遣いで返済できる額ではなくなるため応じませんでした。「今月は、もう前借りはさせられません」と私が言うと、リュウ太はすごく不機嫌になり怒り出します。Upload By かなしろにゃんこ。「友だちと約束したから断れない。お母さんが貧乏なせいだ」とか「あとでお手伝いするから貸してくれよ。ケチだなー!」など、お願いしているはずなのに、暴言も挟んできます。今までの経験からこういうときに「あとでお手伝いする」と言っても口だけで、実際はお手伝いをしないというのは百も承知でした。私が交渉に応じないでいると「じゃぁ、もういいよ…」と言うリュウ太。諦めたという態度を示しながら居間で大人しくゲームをはじめるのですが、私がトイレや庭仕事などで居間から離れたあとに「オレ、ちょっと出かけてくる〜」と出ていきます。そうです!私が見ていない隙に財布や小銭貯金からチョロッとお金を取って出かけてしまうのです。小学校高学年〜中学の「お金使いたい期!」親の財布からこっそりと…そんなことが何度かあったので、私は用心して財布を肌身離さず持ち歩くことにしました。トイレにもお風呂にも、寝るときにも枕元に置いて寝ました。必死です(笑)!Upload By かなしろにゃんこ。小銭貯金もやめて、家の中に小銭を置かないことにしました。対策をしたおかげで息子にお金を勝手に持ち出されることはなくなってきました。ところが、私がウッカリ財布を風呂場に持って入るのを忘れてしまったとき、風呂場から出て居間に向かうと…Upload By かなしろにゃんこ。息子が私の財布からお金を勝手に持ち出そうとしていました。犯行現場をバッチリ見られた息子は、慌てましたが、手にはしっかりお札が握られており、言い訳できない状況です。私は「お金を財布から盗っているのバレてますからね。リュウ太が今までも勝手にお金を持ち出していたこと知ってたよ」と言いました。すると「だってさーお小遣いが月3千円って少なくない?友だちの家はみんな5千円とかもらえてるのにオレの小遣いが少なすぎるんだから仕方ないだろ」と言うリュウ太。開き直って謝りませんでした。Upload By かなしろにゃんこ。さらに、「あのさー、財布持ち歩かれると困るんだけど」とさらっと言いました。私は一瞬「……は???何が困るって???」と思いましたが、“お金が持ち出せなくて困る”という意味だと理解しました。盗人猛々しいとはこのことか!なんと情けないトホホ…(泣)。勝手にお金を持ち出す行為への注意と共に、悪いことを正当化するような発言をしてはいけないと教えることが必要だと思いました。私が「リュウ太の今の発言は泥棒が『盗みに入れないので玄関のカギを開けておくように!』と言うのと同じなんだよ」と伝えると「へーそうなんだ、でも友達との交際費は必要なんだよ」とお金の交渉を続けるのでした。息子も必死です。明日友達とどうしても出かけたいみたいです。(一緒に行けなかったらどうしよう…)という不安があるんだろうな…と伝わってきました。Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。友達と出かけて、ある程度お金を使いたい年頃なんだよね…。自分も10代のときはそうだったのでよく分かります。確かにリュウ太にとって月に3千円のお小遣いは周りの友達に比べて少ないのかもしれません。夫が息子のお小遣いの金額を決めていたので私は口が出せずにいました。本や文具など欲しい物があれば交渉次第で息子に買っていたので、困ることはないだろうと思っていたのです。息子の気持ちも考えて、仕方なく夫には内緒でお小遣いを月5千円にアップすることにしました。そして、前借交渉も毎月2千円までOKにしました。次の月に返済できないものは、16歳からはアルバイトをして返してもらうことにしました。それからはお財布からお金を盗む行為はなくなりました。でも正直この時期の子どもの対応ではどうするべきだったのか、今でも正解が分かりません。甘やかすことになっていないだろうか?お小遣いは値上げせず月3千円で我慢させるほうがよかったのか?……子どものお小遣いの話はママ同士でもあまり話題には上らないので、ほかの家の子は決められたお小遣いできちんと我慢ができるいい子なのかしら?と不思議でなりません。執筆/かなしろにゃんこ。(監修:井上先生より)家庭の中でのお金のトラブルは相談の中にもよくあがってきます。お小遣いの金額というのはわが家ルールで決められていると思いますが、交際費は付き合う友達にもよるでしょう。親に内緒で財布から持ち出す行為は、絶対によくないことを本人に分かってもらうことが必要ですが、本人も親も感情的になってしまうと納得のいく結果が得られなくなってしまいますね。お金の価値を理解してもらうためには、「前借」ではなくお手伝い(労働)をしたあとに決められた報酬を受け取るという約束(労働契約)がよいと思います。場合によっては、仕事の出来栄えによる評価を併用してもよいかもしれません。お金の使い方やルールは将来的にも大切なので、本人が納得できるよう丁寧にお話していけるとよいと思います。
2022年05月29日病院での出来事わが家の息子は現在中学生。7歳のときに自閉スペクトラム症の診断を受けています。今回は息子が5歳のころに起きたゲームに関するトラブルのお話です。息子と病院に行った日のことです。基本的に一人で静かにブロックをしたり、ゲームをしたり、お人形での戦いごっこ遊びなどをして過ごすことが好きな息子ですが、その日は病院の待ち時間が長くなり珍しくうろうろと動き回り…。そんな息子の気を反らせたく、急遽スマホのアプリゲームをダウンロードしました。最初はすぐに飽きてしまうかな?と思ったのですが意外と夢中でゲームをする息子。5分くらい遊んだころでしょうか、診察の順番が来たので急いでゲームを止めて診察室へ。バタバタと診察室へ入り、私はそのままゲームアプリの存在を忘れていました。Upload By 発達ナビ編集部後日…なんと請求が!?ゲームアプリのことをすっかり忘れていたある日の事。携帯電話使用料の請求書を見てびっくり!なんと身に覚えのない4000円の請求が!4000円なんて使った覚えないし…不正利用?一体どこで…と頭を悩ませていたときでした。「あっ!病院のときのゲームアプリ!」そうです、息子がこのときに課金していたのです。どうりでゲームをする息子が楽しそうだったはず!と納得…。Upload By 発達ナビ編集部5分の間に4000円…理由が分かった私は笑うしかありませんでした…。笑っている私をみて息子はきょとん…。そんな息子に「携帯電話のアプリで遊ぶときはママと一緒のときだけにしようね」と言うと「はい!」といい返事をしましたが、ASDがあり発達のゆっくりな息子。いいお返事はしたものの、「課金」の意味もよく分かっていない様子でした。私はすぐにワンクリックで決済できないように設定を変更し、アプリは削除しました。4000円は…私の落ち度なので支払いました(泣)Upload By 発達ナビ編集部ゲームを使うにあたってのルールを決めたこれをきっかけにわが家ではゲームのルールを決めました。5歳の時点ではまだ「課金」の仕組みもよく分かっていなかったので、課金時に出てくる「パスワード入力画面=ここから先はすすめない」程度の認識でした。(まだ文字が読めなかったので、画面を画像として覚えていたようです)ダメと言われたことは基本やらないのでパスワード入力画面が出たら諦める、ということは理解できているようでした。小学生になり、理解力が増えていくと、課金の画面についても、その意味が理解できるようになり、ここからは「お金がかかる」と認識できるようになりました。そして小学校5~6年になると、課金の画面がでたら私に確認をするようになり、より安心してゲームをしている姿を見守ることができるようになりました。Upload By 発達ナビ編集部最初は驚いたけれど…最初は息子も訳の分からぬまま課金をしてしまいましたが、ちゃんとルールを決めて伝えることで、息子にとっても「やっていいこと」「いけないこと」が明確になり、母子ともに安心してゲームを楽しめるようになったと思います。ゲームのやりすぎには注意しつつ、これからも息子の成長を見守りたいと思います。エピソード参考/ななぱんちイラスト/taeko(監修:井上先生より)課金の話はよく親御さんから相談を受けます。基本的に親御さんのスマホの設定が課金できるような設定になっていることが多いです。ななぱんちさんのやられたように子どもと一緒にルールをつくりながらゲームを楽しめると良いと思います。病院受診の際の待ち時間は多くの親御さんにとって大きな悩みになっています。最近では診察の順番前になったら知らせてくれるサービスがある病院などもあるので、病院の中にある本屋さんやレストランなどで時間をつぶすこともできます。こういった病院が増えていくと良いですね。あなたのエピソードもコラムになるかも?体験談募集中!保護者の方が日々子育てをする中で「こんなトラブルがあった」「こんなハプニングがあった」など悩みはつきないと思います。そんな発達ナビユーザーのみなさんの「困った」エピソードを募集しています。テーマは「自傷」「学習」「不登校」「ゲーム」「不器用」「ママ友・保護者」「祖父母や親戚関係」「ご近所トラブル」などに加え、今回より「反抗期・思春期」のお悩みも追加募集!反抗期による親との言い争い、癇癪を起こして自分の頭を叩く、地団太を踏むなどの自傷行為…読み書きや計算の困りはもちろん、授業を落ち着いて受けられないなどの学習の悩み…行き渋りや不登校などの悩み…いろいろなお悩みエピソード、お待ちしております。お寄せいただいたエピソードの中から数作品、発達ナビの連載ライターさんにコラムとしてコミックマンガエッセイ化していただき、発達ナビで公開いたします!あるあるのエピソードからヒヤリとしたエピソード、SNSなどではなかなか言えないような家族やママ友とのトラブルまで。いろいろな「困った」エピソードをぜひ教えてください。
2022年05月28日うちの娘は発達障害グレーゾーン。言葉の発達から運動面まで平均で1年以上の遅れがあり、就学前の発達評価では“軽度知的障害”とも言われるほどでした。■発達グレーゾーンの娘の入学は不安だらけ保育園でも一緒に遊ぶのは、発達具合が同程度の下のクラスの子どもたち。慣れない場面ではパニックを起こしやすく、運動会や発表会は毎年、一生懸命、練習を重ねた娘が取り乱して大泣きする姿を見るしかできないのがお決まりのことでした。そんな娘は就学前健診でもパニックを起こして泣き出し、ほかのみんながひとりで健診を受ける中で、うちの娘だけは母親である私同伴。「あの子、なんだろう?」「どうしたんだろう?」というクラスメイトになる子どもたちの視線は、母親である私でも痛いくらいでした。そんなわけなので…。娘の入学はとってもとっても心配なものでした。中でも心配だったのが、“友だちつきあい”。今まで年下の子たちとばかり遊んでいた娘が、同じ年のクラスメイトの中で、やっていけるのか…。周りの子たちから、孤立したりしないだろうか…。特に娘が入学したその年は、新型コロナウイルスで学校生活が大きく変化した年でした。そんな中で娘が楽しく学校に通えているかどうかは、入学から1年たっても、私の心配の種になっていました。 ■息子とともに、お姉ちゃんを迎えにいくことに!そんなある日…。その日は息子の幼稚園の都合で、息子の帰りと娘の下校時間が珍しく重なった日でした。「一緒に帰る子がいるから来なくていいよ」なんて言われて、しばらくお迎えもしていないし…。たまにはいいかと、私は息子を連れて、小学校の正門まで娘をお迎えにいくことにしました。息子は大好きなお姉ちゃんに会えると、覚えたばかりの言葉でお姉ちゃんを呼び続けます。そして、しばらく待っていると…。きたーーーー!!し、しかも…。集団で…!?娘は私たちの姿に気付くと、恥ずかしそうに笑って友だちの陰に隠れます。え…。え…!?一緒に帰る友だちって、ひとりくらいだと思っていたのに…!?勇気を出して挨拶すると、そのお友だちたちは笑顔で私たちを迎えてくれました。そして娘は、「えー…じゃあ、帰るね」そう言って、私たちのもとへ歩みを進めると…。「えーー!! やだーー!!」「一緒に帰る!!」そんな娘に抱きついて引き留めるお友だち。学校とわが家は目と鼻の先。どうやら、娘たちはちょっと遠回りしておしゃべりしながら帰るのが定番らしく、お友だちは娘をそちらに誘っています。えっ…。え…。ママ…もしかして邪魔だったーーー…!?ショックでした。でも、それは決して悲しいショックではありませんでした。むしろ、うれしかった。娘に、こんなお友だちができていたんだ…。 ■不安だらけの入学でも、娘はステキなお友だちに出会えた普通級のグレーゾーン児として先生が配慮してくださって、この子たちも、もしかしたら娘のフォローをしてくれている子たちなのかもしれない。でも、それでも、帰り際にこうして引き留めてくれるんだ。もっと一緒に話したいって、そばにいてくれるんだ…。私は、胸にこみ上げるものを抑えることができませんでした。泣くのは、我慢しました。ギリギリでした。そして、少しだけお友だちと会話を交わした後、この場は譲ることにして、息子とともに、一足先に帰路につくことにしました。確かに、親がいると話しづらいこと、あるよな…!なんて、ほほえましく思いながら…。不安だらけの娘の入学でしたが、こうして娘のお友だち付き合いを目の当たりにすることができて、私の心配性も、少しだけ軽くなったような気がします。まだまだ不安なことはたくさんありますし、学年が上がるにつれて逆に難しくなることもあるかもしれない。でも、娘もたくさん頑張って、学校を楽しんでいるんだ。そう実感することが、ものすごーくできた、出来事でした。ちなみに息子は、小さくなっていくお姉ちゃんの背中に向かい、壊れたおもちゃのように、ずっと名前を呼び続けていましたとさ…。
2022年05月27日わたしの話に耳を傾けてくれたのはUpload By かさはらあやこまさかこの子は自閉スペクトラム症があるのではないだろうか?そう疑い始めたのは、息子を産んで5ヶ月がたったころでした。早く気づいたというよりは、妊娠する前からたまたま〝自閉スペクトラム症〟という言葉を知っていたことで、特性を簡単に検索でき、あてはまる項目が多かったという感じでした。どんなに調べて夫に報告しても聞く耳は持たず、母には「自分の子どもに障害があると疑うなんて…」と言われたり。そのほか身内にも「また言ってる…そんなこと言ってたら本当にそうなるよ」と言われたりしていました。わたしの話に耳を傾けてくれたのは、息子が1歳4ヶ月のころ第二子を妊娠し母子手帳を取りに行った先で、話を聞いてくれた担当の保健師さんだけでした。(後に聞いた話ですが、保健師さんは私から話を聞いてはじめて息子の様子を見たとき、自閉スペクトラム症があるようには感じられなかったそうです。ですが親身に話を聞いてくださいました)「どうしてこうなっちゃったんだろうね」Upload By かさはらあやこ保健師さんがすぐに自治体の発達相談を勧めてくれたおかげで、心理士さんから児童発達支援に繋がり、〝社会性が低い〟ということで1歳6ヶ月から療育に通うことができました。そのころはまだ、社会性が低いと言われたことの意味を理解しておらず、確かに公園とか児童館とかに連れていったことがないなぁ…社会性を身につけないといけないのかと思ったくらいでした。自分の子どもに発達障害があるとは思ってもおらず、仮に発達障害があるとしても、『ADHD?アスペルガー?それらは個性のようなものだし、生きづらいけど療育に通えば大丈夫(治る)(※当事者の方、ご家族の方本当に申し訳ありません)』と本気で思っていたので、家族にもそう説明していました。2歳から特性が増え、2歳半で発達検査を受け療育手帳を取得したころ、母に「どうしてこうなっちゃったんだろうね」と何度も嘆かれました。何と言えばいいのか分からず「なんでだろうね…」と答えると、「あんたが前世で悪いことでもしたんでしょう」と言われ。親戚には「乗り越えられるから与えられた試練」だとか、「あなたを選んで産まれてきた」とか、お決まりの悪意のない慰めの言葉をかけられ。息子がご近所さんの敷地に入ってしまった際に障害があることを説明すると、「あら?そうなの!かわいそうにねぇ~下の子は大丈夫なの?普通なの?よかったわねぇ~」と言われました。いまざっとまとめてみても、とてもつらい時期でした。「かわいそう」と言われてUpload By かさはらあやこ「かわいそう」と言われることが多々あります。喋れなくてかわいそう。癇癪起こしてかわいそう。食べられるものが少なくてかわいそう。みんなと楽しめなくてかわいそう。障害がある子どもを産んでかわいそう。障害者はかわいそう、障害児育児は不幸、そう思う人たちを責める気持ちはありません。一緒に暮らしている夫や身近にいる家族でさえ、正確に理解をし、気持ちを慮ることなど無理なのだろうと感じることが多いからです。ただ、息子は私が産んだ大切な大切なひとりの人間です。息子にだって、楽しいことや嬉しいことや苦しいことがあって、笑ったり怒ったり泣いたり、今を懸命に生きています。その命に決して間違いはありません。親にこんなに愛され、たくさんの人たちに支えられて、季節のフルーツを1日3食 4種類も食べている息子のどこがかわいそうなのか?本人の幸せや不幸は、ほかの人が決めることではありません。理解がないということは、本当に恐ろしいことだと思います。息子を正しく知ってほしいUpload By かさはらあやこ私のコラムは、ただただ、つらいこと苦しいことをつらつらと書き連ね、解決策もなく、悩んでいるみなさまに申し訳ないなぁと思いつつ…自閉症育児の大変な部分を知ってもらいたい。一人でも多くの人に理解してもらいたい。大変であっても、わが子は愛おしく大切なかけがえのない存在であるということもまた知ってもらいたい。そんな思いで書いています。今回も過去のことを思い出しながら書いていて、涙があふれて止まらなくなる つらい内容でした。大切に大切に育てきた息子が、自らを傷つけるような行為をすると、つらく悲しく、ときに怒りすら感じてしまいます。見ているのもつらくて目を逸らしたり、激しいパニック状態に耐えられず、距離を置くことだってあります。親であってもそうなのだから、他人が息子を認め、理解をするのはとても難しいことだと思います。それでも私は息子を正しく知ってほしい。迷惑をかけてしまう部分だけを見るのではなく、面白いことをしたら笑ってほしいし、可愛いと思ってもらいたい。このコラムを、身内が自閉症育児をしている方や、支援者のみなさまに読んでもらえたらいいなと思います。そして、同じような思いをする方が一人でも減りますように。そう願っています。執筆/かさはらあやこ(監修:初川先生より)これまでの子育ての中でのつらい記憶をたどって、お気持ちをシェアしていただきありがとうございます。発達障害にまつわる誤解や偏見は残念ながら未だに多くありますね。「かわいそう」という言葉の持つ残酷さをかさはらさんは強く感じるようなご経験をされてきたのですね。発達障害(そのほかの障害や疾病もそうかもしれませんが)への偏見・誤解の多くは、「よく知らないから」「自分が知っているものとは違うから」生じるものなのだと理解しています。自分の知らないものに対して(多数派と違うからといって)、知らない・よく分からないと感じることは自然だと思いますが、そこからさらに想像の世界に入って「かわいそう」と言うのは、ちょっとご自身の見方が強すぎるな…と個人的には感じます。ただ、お近くに障害のある方がいなかったり、難しい局面だけを切り取った話が広がっていたりする面があるのも事実で、障害があろうとなかろうと、子育てには楽しいとき・悲しいとき・うまくいかなくて困るときなどいろいろあるものですが、そうしたさまざまなときを知るときが少ないですね。だからこそ、発達障害のあるお子さんを育てている保護者の方からのご発信はとても大切です。これからも子育ての中で感じたことを広くみなさま向けにご発信ください。
2022年05月27日しのくんは一人ぼっち!?しのくんは発達障害グレーゾーンの男の子。2歳まで発語がなく、集団行動が苦手なこともあって、2歳から療育に通っています。ちょうど3歳になったばかりのころ、こっそり保育園での様子を見る機会がありました。そのときのしのくんは、一人ぼっちで砂場で遊んでいたのです。Upload By keiko先生からは「しのくんは一人遊びが好きで、いつも砂場で遊んでいる」と教えてもらいました。お友達と遊ぶのが楽しくなってくる年頃なので、いつも一人で遊ぶしのくんのことを先生も心配していました。その話を聞いたあと、私は同じクラスの子たちがお友達同士で遊んでいるところを見て「どうしてしのくんだけ一人で遊んでいるんだろう」と、とても悲しくなりました。あれから9ヶ月…しのくんはまだ一人ぼっちで砂場で遊んでいるんだろうか?お友達はいるの?いないの?このころしのくんは、以前より発語が出てきたものの会話はあまりできませんでした。保育園での出来事をしのくんから聞くことはできなかったので、保育園の先生から聞くしか手段がありません。お友達の名前もしのくんから聞いたことはありませんでした。私は、“しのくんにはお友達がいるのか、いないのか…!?”ということがとても気になっていました。ですが、先生に聞くのもなんだか怖いと思ってしまって、なかなか聞けずにモヤモヤしていました。そんなある日…Upload By keiko保育園にお迎えに行くと、「しのくーん」と、同じクラスの女の子が声をかけてくれました。Upload By keikoUpload By keikoその子が「しのくん大好きー」「バイバーイ」と言い、しのくんも「バイバーイ」と言ってました。その様子から、私は二人の仲良しな感じが伝わってきてとてもとてもうれしかったです!しのくんは一人ぼっちなのかな?とずっと悩んでいましたが、この出来事で悩みは吹っ飛びました!現在しのくんは4歳になった現在も、保育園の様子や今日の出来事を話すのは難しいですが、「〇〇くん好き?」「〇〇ちゃん好き?」と聞くと「好きー!」と返事が返ってきます。それだけで私はうれしくなり、しのくん成長してるなー!と思います。これからもそんなしのくんを見守っていきたいです。執筆/keiko(監修:初川先生より)わが子が一人遊びをしている姿を見ると、心配になったり、切なくなったりする方もいらっしゃいますね。そういう姿を見ると、「遊びたいと思っているのに、仲間外れにされているのではないか」などさまざまな憶測が頭の中を駆け巡ることもあるでしょう。ですが、それはあくまでも、見ている保護者の方の「見方・視点」です。遊びには、発達的に見れば、ひとり遊び → 遊びを見ている行動 → 平行遊び(横で似たような遊びをする)→ 一緒に遊ぶ(まだそれぞれで遊ぶ)→ 一緒に同じルールで遊ぶ という育ちがあります。その個人差は大きいですし、また、一人遊びが好きな子、特定の遊びが好きな子など個性もあります。一人で遊んでいるからといって、「かわいそう」とは限らないものなのです。また、保育園では生活を共にする中で、クラスの子に興味を持ったり(持たれたり)、自然と関わりあいが生まれたりしますね。「同じクラス」というだけで仲間意識を持つ子もいますし、そうした働きかけが先生方からもされている場合もあります。そうして日々刻々と変化があり、子どもたちが相互作用の中で成長する中で、関係性も変化してゆくものです。同じクラスのお子さんからの言葉、うれしいですね。直球で素直な言葉、ポジティブな言葉の持つ力を大人としても改めて認識する思いがします。
2022年05月26日先生から「そろそろ発達検査を受けてみましょうか」の言葉Upload By まる2歳8ヶ月ごろから通い始めた発達外来は、3ヶ月ごとに受診をしている。通い始めてから数ヶ月後、いつものようにこんなことができるようになりました!などの近況報告をしていると、先生から「そろそろ一度発達検査を受けてみましょうか?」と打診があった。発達外来に通ってはいるが、いまだにはっきりと「この子は自閉スペクトラム症があります」と言われていなかったため、私も気になっていたころだった。「ぜひお願いします」と即答。不安な気持ちも大きかったが、それ以上に早く息子の診断を出してもらってスッキリしたいという気持ちも強くなっていた。その日にそのまま検査をするわけではなく、検査日、検査結果を聞く先生との面談日、それぞれを予約した。発達検査の始まりUpload By まる発達検査を行う人は発達外来のいつもの先生とは違う先生で、診察室とは違う個室に案内された。息子はまだ「これから◯◯へ行くよ」などの声かけに対しての理解がないため事前に伝えることはしていなかったし、病院に連れて来られてもよく分かっておらずいつも通りウロウロと動き回っているだけだった。部屋に入るタイミングでは、ちょうど息子の機嫌が良くニコニコしていたのを覚えている。検査の内容は詳しく書けないが、身体を動かす検査や、椅子に座って行う検査があった。前半ではちょうど息子の得意な課題があり、なかなかご機嫌にやってくれて少し安心した。「いや~これはまだできないんじゃないかなぁ」という課題も、母の心配をよそになんと息子はクリア。「すごいじゃん!?まぐれ!?すごいすごい!」と、息子より母がはしゃいでしまうほどだった。検査の中では「こういうことも1つずつ教えていかないとダメだったのか…」と私も勉強になることもあった。やっぱり飽きるよねUpload By まる「ここまで順調に発達検査を受けられている!」と思っていたが、やはり集中力に限界が来たようで、ちょこちょこ席を立つようになっていった。ちょっと動き回っては先生の近くまで行ったり、検査で使う物が入っているバッグを開けようとしたり…。どうにか座らせて次の課題をやってもらおうとするも拒否することが多くなってきたし、出される問題も中盤あたりから息子には難しくなってきた。多分今の息子でもまだできないような課題も出てきた。そんなこんなで息子はいつの間にか全く椅子に座らずに動き回るようになってしまったのと、時間になったので検査は終了した。当日はそれでおしまい。特に先生から何を言われるでもなく帰宅した。ついに診断グレーから自閉スペクトラム症(ASD)へUpload By まるそれから数日後。検査結果を聞くだけだから息子は一緒じゃなくて大丈夫とのことだったので、保育園にお願いして私だけ発達外来に向かった。発達外来のいつもの先生と話をし、検査結果から運動や社会性など「今大体このくらいの年齢ですね」と説明を受けるだけで終わってしまった。「自閉スペクトラム症があります!」と言われることはなかった。別に診断されたから何かが変わるわけではないのだけど、気になっていたくせにはっきり言われるのが怖くて、私から「それで診断名は?」の一言が出せなかったのだ。後から知ったのだが、発達検査は発達障害の確定診断を行うための検査ではないらしい。その後、診断書を市役所に提出する機会があり、発達外来の先生に書いてもらった。用意してもらった診断書を見ていると、そこに「自閉スペクトラム症」の記載を発見。やっぱりかぁーという気持ちになったが、落ち込むことなくなんだかスッキリしたのを覚えている。※発達障害の確定診断は、生育歴や行動観察などの臨床診断と、発達検査・知能検査などの専門診断の結果を経て、総合的に診断されます。執筆/まる(監修:井上先生より)発達検査や知能検査は、お子さんが同年齢の子どもたちと比較して、発達や知能水準がどれくらいの位置にあるのかを把握したり、本人の中の凸凹を評価するために行われます。多くの実施式の発達検査や知能検査は、簡単な課題から開始され、お子さんの正答が得られなくなるまで続けられます。失敗が続くとやる気を失ってしまうお子さんの場合、休憩や気分転換を挟みながら、励ましながら行うことになります。見守っている親御さんもお子さんもよく頑張られたと思います。
2022年05月25日買い物練習を始める次女は特に学校での緘黙症状が強いのですが、日常生活上でも困っている場面がいくつかありました。そのひとつが買い物で、一人で買い物がどうしてもできませんでした。というより、買い物の前段階で、「一人で店員さんの前に立つ」というのがまず緊張してしまって「買い物のやりとりをする」という状況までたどり着くことができない…。なので、次女と話しあって、買い物練習をしていくことにしたのでした!徐々に買い物の練習をしていった結果…買い物へ行くといつも私のうしろに隠れていた次女。まずは買い物のときに、次女に前に出てきてもらい、商品を次女から店員さんに渡してもらうようにしました。そのあとも次女から店員さんへとお金を渡してもらって…という感じで、レジでの買い物の場に慣れてもらうことにしました。(店員さんとの言葉でのやり取りは私が担当しました)それができるようになってきたら、今度は次女に支払いをしてもらうことに。次女の場合は、現金でのやり取りより緊張や負担が少ないと考えて、カード式の電子マネーでの支払いを選択。まずは家で、「電子マネーで!」と言う練習をしてみて、そのあと、一緒にレジまで行って次女に実際言ってもらう。そして私と一緒に、一人で買い物のやり取りをしてもらって、私が徐々に次女から距離を取っていって…。Upload By まりまりという感じで段階を踏み、できたりできなかったりを繰り返しながら、何とか一人で買い物ができるようになったのでした!(ここまで10ヶ月くらい…)4年生の夏、初めて自分から…小学校4年生の夏、お店でアイスを買うときのこと。Upload By まりまり次女が「自分でアイスの種類言ってみる!」と、初めて自分から挑戦の意志を提示してきたのでした!何でこのタイミングだったかは分かりませんが、そのころの次女は周りから見ていても、「最初のころに比べて、気負いなく一人での買い物ができるようになっている」と感じるようになっていました。そびえたつハードル、繰り返す練習ただ、選んだアイスが「スペシャルナッツげきうまチョコレート」という感じの長い名前…。自分で選んだものの「やっぱり無理」「長すぎて言えない」と自信を失う次女…。こういうときに、「完璧に名前を言わないといけない」と考えがちな次女なので、「大丈夫!指差しとチョコレートで伝わるよ!」と話して、長女と一緒に練習してから挑むことにしました。Upload By まりまりUpload By まりまりUpload By まりまりこんな感じで、いろいろと教えたりするのが好きな長女なので、文句言わずに手伝ってくれて、5~6回くらい練習してから本番に挑むことにしました。練習の結果…Upload By まりまり無事に言うことができたのでした…!初めて自分から挑戦した次女。挑戦の結果、良い成功体験となりました。そのあと、毎回自分で言えるようになった…と言うわけではなく、次女の調子によってできたりできなかったり、行きつ戻りつ。そんな感じを繰り返しながら、もはや年単位での買い物練習でしたが、小5の今では大きな緊張なく店員さんの前に立てるようになり、自分で簡単な買い物のやり取りができるようになっています。時間はかかりましたが、こうした成長を嬉しく思う母なのでした。執筆/まりまり(監修:井上先生より)まりまりさんが今回テーマとして挙げていらっしゃるように、場面緘黙のあるお子さんの場合、学校場面だけでなく地域生活のコミュニケーションの中でも困難を感じてしまうことがあると思います。基本的にはシミュレーション(事前練習)をして、自信をつけてあげてから本番に臨むのが良いのですが、シミュレ―ションでできたことが本番でも全てできるとは限りません。まりまりさんがお子さんにレジで練習させておられた「初めは手渡すだけの役」のように最初は発話を入れずに行うなど、スモールステップをより細かくして、成功体験を感じてもらうことが大事だと思います。
2022年05月25日発達障害のある娘と環境変化Upload By 古都 コト子(koto)娘はどちらかというと新しい環境が好きです。新しいお友達や先生たちに出会えると思うとワクワクするようで、環境が変わる前はむしろ楽しみにしている様子があります。本人も「楽しみだなぁ」と、ときどき口にしたり、張り切って準備をしたり、実際に新しい環境で楽しく過ごせたと、先生や本人からも報告があります。それとは裏腹に、いつもは気にしないようなことにこだわり始めたり、うまく切り替えることができず怒りっぽくなったり…。内心は新しい環境や変化にたいして見通しが立たないことでうまく口に出せないような不安があるのだなと思います。今まで通りと違うということは、娘にとって、ルーティーンが狂うということであり見通しが立たないということでもあります。今まで守られていたその一連の流れが変わってしまうのですから、大人でも不安になることでしょう。特に春は、もともと新しい環境や変化が苦手な子どもにとっては本当に大変な時期ですよね。娘のように口では楽しみだと言っていたり、実際に楽しく過ごせているような場合でも、やはりいろいろなことに気を使ったり、変化に対応しようと本人なりに頑張っているので、想像以上に負担がかかっているようです。発達外来で医師に相談してみるとUpload By 古都 コト子(koto)当初は、このように環境の変化によって家の中で落ち着きがなくなったり荒れやすくなったりするのは、ADHDの特性からきているものだと思っていました。ですが、発達外来の先生に相談してみたところ、「自閉スペクトラム症からくる見通しの立たなさ故の不安からきているものではないか」と言われ、なるほどと思いました。なので、部屋を片づけたり、おもちゃを減らしたりなど本人がイライラする要素を減らすよりも、明日の予定や新しい環境での過ごし方をシミュレーションしてみるなど、見通しを立たせて本人の不安を取り除くことを優先することに。結果、少しずつまた落ち着いてきました。娘は幼児期から、このような傾向がありました。例えば3歳くらいまで、行ったことのない建物には入るのが難しいほど場所見知りがありました。当時はすでに療育に通っていて、療育園そのものや安心できる人たちと行く場所はどこも楽しいものだと徐々に学習していき、入り口で泣き叫んで中に入れないといった場所見知りはしなくなりました。病院や歯医者は未だに少し警戒しますが、以前のように中に入ることもできない、ということはなくなりました。事前にどういったことをするのか説明しておくと、スムーズに通えるようになってきています。声がけのポイントはUpload By 古都 コト子(koto)季節の変わり目や環境の変化以外に、園で発表会や運動会などの大きな行事があると、その練習と本番でのプレッシャーによって荒れやすい時期がやってきます。やる気はとてもあるのですが、それゆえに完璧にやらなければならない、失敗してはいけないという重圧が娘の中にかかるようです。「失敗してもいいよ」「大丈夫だよ」と伝えても、娘が納得しなければ自分で勝手にプレッシャーを抱えてしまうのです。そこで、そういう時期は家ではあれこれ急かさないようにしたり注意を減らしたりするなど、安心して過ごせる場にしてあげるよう気をつけています。進級や新しい環境でも、「分からないことがあっても大丈夫だよ」「先生やクラスの子に聞いてもいいんだよ」と、毎日本人が安心できるような声かけをしています。また、行事のときと同じように、家では伸び伸びと過ごして気力を充電することで、少しでも内心感じているプレッシャーを減らしてあげられれば良いなと思っています。大人でも緊張する「新しい環境」というものは、きっと特性のある子どもたちにとってとんでもない出来事!外で頑張っているのに、家でもあれこれ怒られたり感情を出せなくなるのは負担が大きすぎるので、家庭でしっかりリラックスできる環境をつくったり、不安な気持ちを理解して受け止めたりしてあげたいです。執筆/古都コト子(監修:井上先生より)進級や進学は環境の変化が起こることによる楽しみと同時に、変化に対する不安が加わりとても言葉で言い表せないような不安定さが現れるのかもしれませんね。さらに「うまくやらなければいけない」という完璧主義の傾向が強まると不安はさらに高まってしまいます。こういった不安に対して逃げ出さないで向き合っている娘さんは、すごいと思います。つらくなったときは、ハードルを周囲の人が少し下げてあげて、「やり過ごし体験」をしていくことで許容範囲を広げ、自信にもつながっていくと思います。
2022年05月24日人への指摘が目立っていた小学校低学年のコウUpload By 丸山さとこ小学校低学年ごろのコウは、クラスメイトへの指摘が多くトラブルになることがしばしばありました。ASDの特性ゆえの「相手の気持ちや空気の読めなさ」によるものなのか、ADHDの特性ゆえの「思ったことを衝動的に口にしてしまう」ことからなのか、コウが何気なく繰り出す言葉の数々は相手の心を傷つけることも多く、その度に周りからひんしゅくを買っていたようです。行き過ぎた指摘を減らせないかな?と試行錯誤していたあのころコウと話をしていると、『人の嫌がることはやめよう』というのは分かっていても、指摘することの何がいけないのかよく分からないようでした。コウが指摘したことで相手の子と口論になり、ヒートアップして喧嘩になってしまった場合、それ自体は「よくなかったな」と思うコウです。けれども、きっかけとなった自分が相手にした“指摘”そのものの問題は見えないようで、「みんなも同じように言っているのに?」と基準点の見えなさに困っているようでした。Upload By 丸山さとこ実際、学校や公園などで子どもたちの様子を見ていると、指摘することそのものは多くの子どもがやっていることのようです。盛んに指摘し合い、ときに行き過ぎて揉めたりする中で徐々に加減を覚えていくのだろうと思います。そんな風に『コミュニケーションの練習』を重ねていく子どもたちの姿を見ながら、「その『加減』の習得が難しいのがコウなんだよな~…!」と私は頭を抱えました。コウが指摘でひんしゅくを買うときは、相手に対する指摘の遠慮なさだけではなく「そういう自分はできてるのか!」という突っ込みも原因の一つになっているようだったので、そこも踏まえてコウに話すことにしました。「人の世話は、自分のことができていて余力のある人がすること。まず自分の世話を終えてからだよ。自分の口元がケチャップでベタベタな人に『口ベタベタだよ』と言われても、『いや、まず自分が拭きなよ』ってなるじゃん?」…と私が言うと、「あ~、『頭の上のハエを追え』ってことだね?」と彼はうなずきました。Upload By 丸山さとこ『頭の上のハエを追え』とは、『人の頭上のハエをとやかく言う前に、自分の頭上を飛んでいるハエを始末しなさい』という言葉を通じて『人のことをとやかく言う前に自分のことを何とかしなさい』と表していることわざです。私はコウに「自分の頭の上にハエがいるかどうか自覚が難しいなら、基本的にはやたらと人に口出ししない方がいいと思うよ」と言いました。するとコウは「それはそうだね。僕そういうの気づかないとこあるからね」とアッサリ納得してくれました。そうして、『頭の上のハエを追え』ということわざを通じて状況を理解したコウのクラスメイトへの指摘は、少しずつ減っていきました。相手への行き過ぎた指摘が始まったときも「頭の上のハエはどうなってる?」とコウに聞くと「ブンブン飛び回ってるね~」と笑って気持ちを切り替えられるようになりました。そして、癇癪を起こすことなく自分のことに専念できるようになっていきました。Upload By 丸山さとこ毒をもって毒を制す!?トラブルの種同士がぶつかって…当時(小学校低学年ごろ)のコウは辞書を読むのにはまっており、故事成語やことわざを気に入って日常の会話でもよく使っていました。『今の状況にピッタリだな』『この話はあの言葉と同じだな』という故事成語やことわざが思い浮かぶと、「これって○○だよね」「それは□□だね」などと言うのがコウのお決まりでした。そのために「またコウが難しいこと言ってる」「自分のこと頭いいって思ってない?」とクラスメイトからひんしゅくを買うこともしばしばでした。Upload By 丸山さとこそんな風にトラブルの種になることもしばしばであった故事成語やことわざが、別のトラブルの種である指摘癖を抑えることになるとは、何がどう作用するのか分からないものです。「これは『毒をもって毒を制す』っていうヤツかな?」と、思わずコウのようなことを考えてしまう私でした。執筆/丸山さとこ(監修:鈴木先生より)自閉スペクトラム症のあるお子さんは、耳よりも目からの情報が多いことが知られています。従ってお子さんに物事を伝えるには口頭だけでなく、視覚的にも訴えると伝わりやすくなります。絵を描いたり、写真を見せたりして説明すれば理解が早く進むことが多いです。今回コウくんはことわざを通して理解をしましたが、同じように理解するのは難しいというお子さんには絵カードを用いたり、図示して説明したりするとよいでしょう。
2022年05月24日単に発達がゆっくりなだけ…?1歳のころの息子の発達息子は、重度知的障害を伴う自閉スペクトラム症があります。「重度」というと、幼いころからはっきり障害の特徴が出ていたのだろうと思われるかもしれませんが、知的障害や発達障害は、子どもが幼いうちは分かりづらいことも多いです。Upload By べっこうあめアマミ1歳のころの息子は、よく寝ますし、よく食べますし、癇癪もそれほど起こしませんし、それほど泣きませんし、目立った問題行動もありませんでした。ですから私は、息子の育児に困っている訳ではなく、発達の遅れに悩んでいる、という状態だったのです。当時の息子は、むしろ育てやすいくらいだったので、よくテレビや本などで見る「発達障害がある子の育児」とは少し違うようにも感じていたのです。あるとき、息子のかかりつけの病院の先生に、発達障害と知的障害の違いについて聞いてみたことがありました。今思い返すと、息子はまさにそのとき聞いた「知的障害」の発達の仕方に近いような気がします。先生から聞いた話をかみ砕くと、できることとできないことの差が大きくて発達に凸凹があるのが「発達障害」、全体的に発達がゆっくりなのが「知的障害」、ということでした。1歳くらいだと、何も障害がなくてもまだできないことが多いですし、発達の個人差も大きいです。ですから私は、漠然とした不安を感じながらも、「単に息子は発達がゆっくりなだけ」とも思っていました。息子の発達の遅れを意識した3つのポイントそんなモヤモヤを抱えつつも子育てをしていた中で、私が決定的に「息子の違和感」に気づいた3つのポイントがありました。Upload By べっこうあめアマミ息子は、1人で立ったり歩いたりすることができるようになるまでに、とても時間がかかりました。ハイハイやお座りまでは順調だったことで完全に油断していた私は、息子が1歳のころ、児童館で息子より年下の子どもが歩いているのを見て、はじめて息子が「未だに歩かない」ことに違和感を感じました。息子は私にとって第一子だったので、通常子どもがどのくらいから喋り出すのか、あまりピンときていませんでした。ところが、そんな私にとって印象的なできごとがありました。Upload By べっこうあめアマミ児童館でよく一緒になった、息子と同じ歳の女の子が、電話のおもちゃを耳にあてて「もしもーし」と言ってみせたのです。その女の子のお母さんが、「教えたら言うようになりますよ」と言っていたので家で息子にも教えましたが、息子は全く言う気配もなく…。このとき、息子がほかの子どものように言葉を覚えていないことを知り、同時に息子が「未だに1つも発語が無い」ことに違和感を覚えました。Upload By べっこうあめアマミ1歳半健診が近づき、問診票が届くと、問診票のチェック項目にほとんど〇がつかないことに衝撃を受けました。慌てて、チェック項目にあった「指さし」を息子に教えてみましたが、全くやる気配がありません。「歩く」「しゃべる」に比べたらずっとハードルが低いと思っていた「指さし」ですら息子ができないことに、「問診表にあることもできないの?」と、息子の発達への不安は決定的になりました。ほかの子どもと比べないと違和感には気づけないUpload By べっこうあめアマミ少し前に、テレビで発達障害の専門家が、「どうしたらわが子に障害があると気づけるのか」という問いに対して、「ほかの子どもと比べること」と答えていたことがありました。「他人と比べる」という所だけを切り取ると、誤解を生みそうな言葉かもしれません。ですが、実際に子どもの発達に違和感を感じたきっかけは、多くの方がそれじゃないかと思うのです。発達障害は、子どもが小さいうちはなかなかはっきり診断されることも難しいですし、血液検査などの医学的な検査でぱっと分かるものでもありません。私のように第一子に発達障害があった場合、一般的な子育てを知らないので、自分の経験則的にも判断できません。「比べる」といっても、それは「優劣をつける」こととは違います。ほかの子どもと比べて、自分の子どもとの違いを認識し、現実を受け止めること。それは親として、子どもが生きやすい環境をつくっていくためにできる、大事な最初の一歩かもしれないと思います。執筆/べっこうあめアマミ(監修:鈴木先生より)前頭前野になんらかの障害のある赤ちゃんは手の指を握ったままハイハイすることが多く、自閉スペクトラム症のあるお子さんは重力不安のため歩行時につま先歩きをすることが多いです。違和感に気づいた時点で自治体の保健師やかかりつけ医に気軽に相談してみてください。気づいたときが早期発見です。知的に遅れているお子さんは筋の緊張が弱く、抱っこがしづらい傾向があります。誰も初めから自分の子どもに障害があるとは思っていません。1歳半や3歳児健診は5歳児健診同様、年齢相当かどうか・発達につまずきがあるかどうかを親に気づいてもらうための健診です。専門の医療機関を受診すればすぐに診断がつく場合もありますが、親の受容がまだないと思われる場合は保健師さんの配慮で、あえて受診を控えて療育という手段でフォローすることも珍しくありません。しかし、早期発見・早期療育も必要なので、まずは専門ではなくてもかかりつけ医に気軽に相談するのも一つの手段です。ほかの子と比べられるのは保育園や幼稚園のような集団に入ったときです。自分の子どもが発達障害かもしれないと受容するのはなかなか難しいかもしれません。ですが、担任からの後押しなどでようやく医療機関受診の心構えができるケースも少なくありません。わが子に障害はないと言って欲しい、そんな気持ちで受診されることも多いと思います。そんな中、医師の診断が自分の思ったこととギャップがあればあるほどショック・否定・攻撃が強く出てしまいがちです。ですが生活の場で少しずつ違和感が出てくるのが「スペクトラム」たる所以です。個人個人その特性には幅があるので、子どもの成長に合わせて見守ってあげることが重要です。
2022年05月23日親は子どものことが、いつまでも心配ですが…Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子執筆後記『居場所』と『仲間』は漫画カラフルレンジャーの大きなテーマです。『制度』や『支援』、『ツール』や『スキル』などは“そこにたどり着くために必要なもの”なのだと私は思っています。執筆/荒木まち子
2022年05月22日発達ナビユーザーの体験をコミックエッセイ化!発達ナビにて行っている「みんなどんなトラブルで悩んでる?アンケート&エピソード大募集!」。今回は「保育園トラブル」についてのエピソードをコミックエッセイ化してご紹介します。発達の遅れが気になりながらも通わせていた保育園娘は2歳半。診断などは特におりていませんが、目が合わず、意味ある言葉や意思の疎通などはまだまだ…周りの子に比べて遅れを感じていました。今回はそんな娘が通っていた保育園でのトラブルのお話です。当時の私は加配制度なども知らず、保育園の先生からも娘に関して何も言われていなかったので、保育園から泣いて帰ってくることが多かったのは気がかりでしたが、特に特別なこともせず保育園に通わせていました。ですが、やはり発達の遅れが気になるので療育施設に通わせようと親子で準備をしていました。療育に通うことも決まり、保育園にもそのことを連絡帳で伝えて…これで娘の発達についての相談場所もできたと一安心していたときに事件は起こったのでした。保育園からの突然の呼び出し3月になり今年度もあと20日、もうすぐ娘も進級か~と思っていたある日のこと。突然、保育園の園長から呼び出しの電話が。一体何があったのかと思い向かうとそこには園長と主任先生たちが…。要件を聞くと、園長から開口一番「療育施設に行くなんて聞いていません」と言われました。いや、連絡帳に書いたし、保健師さんからも連絡が行っていると思いますし、それに担任の先生にも口頭でお伝えしましたが…答えると、園長から驚きの言葉が。Upload By 発達ナビ編集部「知能も10ヶ月程度しかないって聞きましたし、療育に通うようなほかの子どもと比べて劣っているような子の保育は難しいんですよ。専門の先生がいるわけじゃないのでね。お子さんに在籍いただけるのは今年度一杯が限界だと思います」私は耳を疑いました。怒りや悲しみをこらえて「退園してほしいと言うことですか?」と聞くと「そういうわけじゃないんですよ(笑)でも、言っても聞かないし、理解できていないですし。夕方になるとずっと泣いてるんですよね、お昼寝終わってから。それから給食もほとんど嫌がって食べないですし。家ではどうですか?」とまるでクレームのように言われました。Upload By 発達ナビ編集部同席していた主任先生からは「家での様子とか全然教えてくださらないのでこちらも対処が分からなくて本当に困ってるんです」と言われました。ですが、こちらとしては先生に家での様子を聞かれたことなどありません。そのことを伝えると「担任の先生から、以前家での様子聞いたらムッとされちゃって、聞けなかったと聞いてます」と…。そもそも担任の先生とほとんど話をしたことがなく、話をしても「こんにちは」「お願いします」くらいなので本当に質問された記憶もなければ、娘の様子に困っているといった相談も過去ありませんでした。すぐに退園を決意。その後はーー私は自宅に帰り、母に話をしました。保育に携わる責任者が子どもの能力を劣っていると表現したこと、「困っている」などの相談が今まで一度もなく退園勧告と同時にクレームのような形で一方的に言われ、歩み寄りの姿勢や相談がまったくなかったこと、私の気持ちは悔しさと怒りで「このような園にはわが子は預けられない、すぐに退園しよう」と決まっていました。その日のうちに私は保育園にある娘の荷物をまとめて引き上げました。突然の保育園退園、園長は最後の挨拶にすら顔を出しませんでした。そして一連の出来事を娘の療育施設の紹介などをしてくれた保健師さんに電話をしました。保健師さんと市の子ども課の方と面談し、新しい保育園をいくつか紹介いただき、見学に行きました。とても親身になっていただけ、手続きも柔軟に対応してくださったのですぐ保育園は見つかりました。そして今、娘は新しい保育園で現在娘は転園し、違う保育園に通っています。今の娘は泣いて帰ってくることがまったくありません。保育園の先生が「本当に楽しそうですね!」言ってくれるくらい毎日楽しそうに通っています。新しい保育園の園長先生は「子どもの発達は人それぞれスピードが違うし、発達がゆっくりな子どもから学ぶことも多く、いろいろな子どもがいる環境を大切にしたい」と話してくださいました。この園では、5歳児クラスに療育に行ってるお子さんがいるとのことでした。Upload By 発達ナビ編集部転園して今、思うこと娘が楽しそうなのが一番なので、転園して本当に良かったです。一方で、以前の園で泣きながら帰ってくるのも先生とのコミュニケーションがちゃんと取れていなかったのも「こんなもんだろう」と思ってしまっていたので、違いに驚いています。もっと早く娘にとって以前の園が笑顔になれる環境じゃないことに気づいていたら…と思い、本当に娘に申し訳ない気持ちになりました。今回の件で調べた際に、自治体によって加配の制度も異なることが分かり、もっと早く知っていればという思いもありました。以前の保育園では、加配制度などの知識がなかったように思います。娘の退園後に、自治体から指導があったようですが、ちゃんと保育園側もそのような制度があることを知り、保護者側に対しても周知する機会が必要だと感じました。ですが、確かに年齢相応の成長曲線ではなく成長がゆっくりな子どもたちの保育をするのは想像以上に大変だと思うし、1年娘を見ていただいていた以前の園の先生たちに感謝をしている気持ちは本当です。新型コロナウイルス感染予防の観点から、送迎の際のコミュニケーションがあまり推奨されない中でも、「こんなことできるようになりましたよ!」と笑顔で教えてくれる先生もいて、娘の成長を一緒に喜んでくれる様はとてもうれしかったです。だからこそ、発達の遅れなどがある子どもが適切なサポートが受けられるように、先生方が研修などで指導や情報のアップグレードができる機会が得られる仕組みを整えてほしい、そしてわが家のような思いをするご家庭がこれ以上でないことを願うばかりです。Upload By 発達ナビ編集部イラスト/taeko※エピソード参考者のお名前はご希望により非公開とさせて頂きます。(監修:三木先生より)対応に関しては園側のご事情もあるかと思いますのでコメントは差し控えますが、ただ園が「発達がばらついたり遅れたりしている子どもの面倒を見るつもりがあるか、ないか」は保護者にとってはとても大事な情報です。今回は残念な形での発覚になってしまいましたが、入園前であっても思いきって聞いてみることで、相手の反応から分かることはたくさんあります。よく保育園選びのときに「断られたらどうしようと思って子どもの障害の話をしていいものか迷う」というご相談を受けますが、正直に話してみて渋い反応が返ってくるようだったら、入園できたとしてもいつかトラブルが起きる可能性もあります。お互いに気持ちよく通園・保育できる環境を整えるためにも、丁寧なコミュニケーションができると良いですね。あなたのエピソードもコラムになるかも?体験談募集中!保護者の方が日々子育てをする中で「こんなトラブルがあった」「こんなハプニングがあった」など悩みはつきないと思います。そんな発達ナビユーザーのみなさんの「困った」エピソードを募集しています。テーマは「自傷」「学習」「不登校」「ゲーム」「不器用」「ママ友・保護者」「祖父母や親戚関係」「ご近所トラブル」などに加え、今回より「反抗期・思春期」のお悩みも追加募集!反抗期による親との言い争い、癇癪を起こして自分の頭を叩く、地団太を踏むなどの自傷行為…読み書きや計算の困りはもちろん、授業を落ち着いて受けられないなどの学習の悩み…行き渋りや不登校などの悩み…いろいろなお悩みエピソード、お待ちしております。お寄せいただいたエピソードの中から数作品、発達ナビの連載ライターさんにコラムとしてコミックマンガエッセイ化していただき、発達ナビで公開いたします!あるあるのエピソードからヒヤリとしたエピソード、SNSなどではなかなか言えないような家族やママ友とのトラブルまで。いろいろな「困った」エピソードをぜひ教えてください。
2022年05月21日エビリファイってどんな薬?「エビリファイ(一般名:アリピプラゾール)」(以下エビリファイ)は、統合失調症、双極性障害における躁状態の改善、うつ病・うつ状態に効果が期待できる飲み薬です。2016年に「小児期の自閉スペクトラム症(ASD)における易刺激性」もエビリファイの適応症となることが承認されました。易刺激性とは、ささいなことをきっかけに不機嫌になったり、怒ったり、大泣きしたりしてしまう状態のこと。ASDがある子どもは、急に癇癪を起こしたり、攻撃的になったり、あるいは自傷行動をしたりといった症状が見られることがあります。こうした症状は本人も保護者にもコントロールが難しく、日常生活にも支障をきたしてしまうこともあります。エビリファイは、こうした易刺激性をやわらげてくれる抗精神病薬です。エビリファイには、脳内でドパミンホルモン(※)が過剰に放出されているときは、ドパミンをおさえる働きをし、反対にドパミンが少量しか分泌されていないときは刺激する方向に働きます。この働きによってドパミン神経を安定化させ、気持ちを穏やかにしてくれる効果があるのです。(※)ドパミン:神経伝達物質の一つで、快く感じる原因となる脳内報酬系の活性化において中心的な役割を果たしている。参考:ドパミン|e-ヘルスネット 厚生労働省エビリファイは何歳から使える? 用量はどれくらい?小児期のASDに対してエビリファイを用いる場合、対象となる年齢は原則として6歳以上18歳未満とされています。エビリファイは錠剤のお薬ですが、錠剤を飲み込むのが苦手なお子さんには小袋に入った液剤もあります。飲む回数は1日1回。投薬開始時は、1日1mgから始めます。薬を増量する場合は、1日あたりの増量幅は最大3mgまでにとどめます。また、1日あたりの最大量は15mgを超えないようにすることが推奨されています。医師の指示に従い、用法用量を守って正しく服用することが大切です。すぐに効果が出ない場合も、自己判断で中止したり、勝手に薬を増量したりすることにないように、気をつけましょう。副作用の心配や、服用するときに気をつけることは?エビリファイは副作用が少なく、子どもにも安心して使える薬として活用されています。ただ、副作用がまったくない薬というのは存在しません。エビリファイを使用すると、次のような副作用が出ることがあります。日中の眠気体重増加、食欲増加のどの渇き起立性低血圧めまい高血糖注意力や反射運動能力の低下また、別の薬といっしょに飲むと、作用が強くなりすぎたり、お互いの作用が弱まってしまったりすることがあります。ほかに服用している薬がある場合は、必ず医師に伝えましょう。リスパダールとエビリファイの違いは?エビリファイと並んでよく使われる薬に「リスパダール」があります。リスパダールも、エビリファイ同様、ASDが原因による癇癪、衝動性を穏やかにするための治療薬です。2つの薬には、どんな違いがあるのでしょうか。まず、エビリファイとリスパダールでは、働きかける脳内の伝達物質が異なります。エビリファイがドパミンに作用するのに対して、リスパダールはドパミンとセロトニンの両方に働きかけることで、不安や緊張、精神の不安定な状態を抑えます。リスパダールは、原則として5歳から使うことができ、子どもの体重に合わせて用法用量が定められています。エビリファイとリスパダールには錠剤、液剤のほか、注射薬もあります。ただ、注射は統合失調症および双極Ⅰ型障害の方専用で、ASDのある子どもへの適応は今のところ認められていません。エビリファイとリスパダール、どちらの薬剤を使用するかは医師の判断によります。リスパダールの副作用が強かったり、薬が合わなかったりするときに、エビリファイを処方されることもあります。また、リスパダールには、リスペリドンという名前のジェネリック医薬品(後発医薬品)があり、5歳から17歳までのASDのある子どもへの易刺激性に対して投与が認められています。エビリファイにもジェネリックはありますが、まだ小児期のASDがある子どもへの投与は認められていません。医師と相談しながら適切な治療を癇癪やイライラ、気分の落ち込みは、ASDがある本人にとっても、また子どもを見守る保護者にとってもつらいものです。小児期は、薬物療法よりもまず行動療法に取り組んでいくのが一般的ですが、それは決して小児期には薬物療法ができない、という意味ではありません。子どものASDにも使える薬の正しい知識を得ることは、困りごとを解決するための選択肢の幅が広がるステップにもなります。医師と相談しながら、必要な場合には薬を上手に活用していくことも一つの手。心穏やかに、笑顔で過ごせる時間が増えるよう、専門家のアドバイスを受けながら工夫していきましょう。参考文献:お薬を正しくご使用いただくために エビリファイ |大塚製薬株式会社 HPより抗精神病薬 「エビリファイ」 小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性の適応追加承認|大塚製薬株式会社 HPより
2022年05月20日自閉スペクトラム症がある息子の自傷行動自閉スペクトラム症のある6歳のPは、自分の要求が通らないときや叱られたときなどに 自傷行動が見られた時期がありました。振り返ってみると、Pがまだ自分の気持ちを思うように相手に伝えられなかったときに、自傷行動は多く見られたように思います。自分の中のもどかしさやイライラを物や人にぶつけられないときは、自分自身にぶつけてしまっているような様子でした。またPは感覚が鈍麻なところもあったので、怒りで興奮したときなどには痛みでも何でも良いから興奮を抑えるための刺激を求めたかった?のかもしれません。だからどうしても抑えられないパニックや癇癪の状態になったときは、自分を制御することができず、衝動的に自傷という行動をとっていたような気がします。そして自傷行為をすることにより、親の私がそれを止めに入り結果的に自分の要求を叶えてくれる可能性が高くなるという誤学習による悪循環もあったのかも…と感じることもありました。なぜ自傷をしてしまうのか?自傷は見ているだけでもつらかったUpload By みん自傷行動は見ているだけでもつらく、本人の痛みや身体の傷も心配になるので、できれば止めさせたい…でもどうすれば良いのだろう?と思っていました。そのころはまだPが小さかったので、結局は私が力ずくで手や身体を抑えて自傷を止めることが多かったのですが、この先大きくなるにつれてこの方法は有効的ではなくなるだろうと悩んでいました。そんなある日、Pがおもちゃでごっこ遊びをしていたときに、悪者役として使っていたおもちゃを水道の水で流すという行動をし始めたことがありました。Upload By みん子どもの不思議な行動からその理由を想像する私はそれを見て不思議に思っていたのですが、Pの行動を見てこのような想像をしました。――手を洗うときや歯を磨くときに「バイ菌をバイバイしようね!」と言いながら水で流していたので、きっとPの中で悪いものは水で流すと消えてなくなるというようなイメージがあったのかも?Upload By みんそれまでは私に叱られたときや癇癪が起こったときなどは自傷につながっていましたが、これをきっかけにいつの間にか自傷から自分の手を水道水で流すという行動に置き換わっていきました。私は、衝動的な自傷から手を水で流すというあまり痛みを伴わない表現の仕方に変わってホッとしたのを覚えています。そしてこのような表現のしかたを自分で見つけることかできたPにも驚かされました。Upload By みん自傷という表現をほかの表現へと置き換えるそんなPも今では言葉で「ごめんなさい」と言えることも増えてきたので、もう自分の手を水で流すようなこともしなくなりました。言葉で自分の気持ちを伝えるのがまだ難しいうちは、自傷という行動が見られることもありました。今回のように本人が自分の気持ちを伝えるために自傷に替わるほかの手段を獲得したり、言葉で伝えるなど好ましい表現へ置き換えられるよう、これからもサポートできればと思っています。Upload By みん執筆/みん(監修:井上先生より)自傷行動を目の前でされると、親も気持ち的に動揺してしまい、感情的に叱ることでさらに悪化させてしまうと言う悪循環になってしまいがちです。自傷行動を力ずくで止めるのではなく違う行動に置き換えるというみんさんの考えはベストな考え方です。知的障害と自閉スペクトラム症のあるお子さんの自傷行動の多くはコミュニケーションのとしての機能の役割があります(例えば「●●してほしい」「注目してほしい」「これはやりたくない」などです)。この場合、Pくんのように言葉の発達によって次第に自傷行動がなくなることも多いので、自傷行動に困った場合の次のステップとしては、自傷行動のあとではなく、その前に気持ちを言葉で表現できるようになっていくと良いと思います。
2022年05月20日