療育って何?みんなどんな療育をしてきたの?療育とは障害のある子どもの発達を促し、自立して生活できるように援助する取り組みです。療育という言葉はもともと、東京大学名誉教授の高木憲次氏(1888-1963)が提唱した概念です。肢体不自由児の社会的な自立を目標に、医療と教育を並行してすすめることを指しました。療育という言葉や概念は時代の変遷とともに意味合いを変えており、現在定まった明確な定義は示されていません。また必ずしも医療行為を含むものではない場合もあります。定義や実践内容の移り変わりはあるものの、概ねの理解としては、療育とは障害のある子どもの発達を促し、自立して生活できるように援助する取り組みを指すと考えると分かりやすいでしょう。1歳半健診や3歳児健診で、また周りの子どもたちと比べて…わが子の発達の遅れに気づいて専門機関に相談し言われた「療育を受けてみませんか?」の言葉。でも実際に療育ってどんなことをやるの?そんな療育についてのエピソードを発達ナビ連載ライターさんたちに描いていただきました!療育の種類や療育先選び、早期療育問題や家庭内でできることなど…気になるコラムはぜひリンクをクリックして読んでみてください。「療育に通って」と言われてから9年。当時の私が感じたことや、知らず知らずに行っていたこととは。丸山さとこさんが、療育を初めて知ったのは3歳児健診のときでした。本を読み療育園に通うことで療育について少しずつ知っていったさとこさんは『あれ?ごく当たり前のことが書いてあるな…?』と首をかしげてしまいます。2歳で始めた療育、全力拒否!「療育に来る意味あるのかな…」と疑問が出てきて…3歳ごろに自閉スペクトラム症の診断が出たまるさんの息子・リュウくん。療育には2歳9ヶ月のときに通いだしましたが、教室から出たい、座っていられない、早くお弁当を食べたいで泣いたり逃げたり…一筋縄ではいかなくて…。理科と社会のプリントをやりたがらない息子のやる気を引き出したアイデアとは?ADHDとLDのあるかなしろにゃんこ。さんの息子リュウ太くん。”気がのらないことは意地でもやりたくない”というところがあり、小3になると「理科」「社会」の教科には興味ナシ!そんなリュウ太くんにかなしろさんが作ったあるものとは…?「療育」とは?3タイプの発達支援施設があるの?1歳半健診で指摘を受けて、長男けんとくん発達の遅れを知ったゆきみさん。市の親子教室で初めて聞いた「療育」という言葉に「これだ!」と衝撃を受け…。タイプ別発達支援施設の紹介も!「子どものため」だけでは続かない?「療育を受けさせたい」と考えている親御さんに伝えたいこと。知的障害を伴う自閉スペクトラム症があるべっこうあめアマミさんの長男くんは、2歳から療育に通いはじめました。引越しなどもあり、息子と3つの地域で6ヶ所の児童発達支援(療育)に通ってきたべっこうあめアマミさんの感じた療育先選びのポイントとは?療育は一筋の希望?ダウン症の「早期療育問題」って?ダウン症のある小学1年生のきいちゃんを育てている星きのこさん。出産後すぐにダウン症の告知と同時に医師から言われた「子どもに療育をしてください」のアドバイス。その言葉を聞いた星さんは…。次男のふーくん、初めての発達検査!ASDの特性がある長男ミミくん。次男のふーくんは定型発達だと思っていたけれど、通っている保育園からの勧めもあって、発達検査を受けることにしました。発達検査の結果を聞いてtaekoさんの感じたこととは。そのほか人気コラムはこちらから!
2022年07月11日自分の気持ちを言葉にするのが苦手な娘、お友達はできる?わが家の娘は現在21歳。12歳のころに自閉スペクトラム症の診断を受けています。まだ診断前の幼稚園のころから気持ちを言葉に出すことがとても苦手だったので、幼稚園でお友達ができるかどうか私はとても心配をしていました。そんな娘でしたが入園してすぐに1人の女の子(Aちゃん)と仲良くなりました。2人でごっこ遊びなどをする様子を私とAちゃんママは微笑ましく見ていました。娘にはお友達、私にはママ友ができ、そのうちほかのママ友たちともお迎え後にいろいろな公園へ遊びに行くようになりました。Upload By 発達ナビ編集部当時、娘は感情のコントロールが難しく、私の悩みの種でした。Aちゃんママにそのことを相談すると、柔道教室をすすめられました。そこはAちゃんママの旦那さんが教えていて、Aちゃんも通っている柔道教室。知り合いが教えている安心感と、「武道の精神を教えてもらえたら落ち着いてくるかも?」という思いもあり早速柔道教室に入会をしました。このようにAちゃんママは私にとってさまざまな相談に乗ってもらえるありがたい存在でした。これで娘も私も安心して園生活を送ることができる、そう思っていたのですが、そんな状況も長くは続かず…。娘がお友達をかんでしまい…!娘と違い、Aちゃんはとても口が達者なお子さんでした。会話の中での「違うよ」「そうだよ」のやり取りの中で、言葉をうまく伝えられない娘は結局口では勝てなくなり、なんとAちゃんの腕をかんでしまったのです!Upload By 発達ナビ編集部そのことを幼稚園の先生から聞いた私はただただ驚きました。そして、それがきっかけになり、娘はAちゃんと遊ぶたびにやはり口喧嘩に勝てなくなると毎日のようにAちゃんをかむように…。その当時は診断も出ておらず、私もそれが発達障害による特性などとは思わなかったので、幼稚園側も問題行動として、娘に対してかなり強い口調で、毎回かんでしまうことについて注意をしていたようでした。そして私は…Aちゃんママに毎日のように謝って下さいと謝罪を要求されるようになりました。ただひたすら毎日「ごめんね」と謝るしかなかったですし、幼稚園の先生にも「ご迷惑おかけしてすみません」と毎日謝っていました。Upload By 発達ナビ編集部あまりにも頻繁にかむので、わが子ながら正直イライラ…特に理由も聞かずに「どうしてかむの?」「なんで?」と責めてしまっていたと思います。今思えば、娘にはかなり酷い対応をしていたように思います…。通わせていた柔道教室でもトラブルがさらには通わせていた柔道教室でも、Aちゃんとトラブルになってはかんでしまうということがありました。かんでしまった事実はもちろんこちらに非があるのですが、そのことでAちゃんパパから私と娘はかなり怒鳴られてしまい、このようなことが続くくらいなら…と柔道教室は退会しました。そんなことが続き、Aちゃんママからは明らかに距離を置かれ、ほかの仲良かったママ友達も急に態度がよそよそしく変わっていきました。Aちゃんママが私のいないところで私や娘のことを悪く言っているんだな、ということも雰囲気的に分かり、私はAちゃんママやほかのママ友たちと距離を置くようになりました。居場所がない…四面楚歌の日々以前はお迎え後にはお友達みんなで公園に行っていましたが、娘を連れてすぐ帰宅することが増えていきました。「ごめんね。私がもっとうまく対応できていたらお友達とも遊べるのにね…」と考えてしまい全てが悪循環、誰に相談したらいいの?私たちにはどこにも居場所がないの?と当時は本当に四面楚歌のようでした。Upload By 発達ナビ編集部結局この幼稚園は1年で退園することにしました。幼稚園最後の日、Aちゃんママは私が見ているところでわざと私以外の仲良くしてきたママ友にプレゼントを渡し、私に見せつけているようでした。転園後、別のママ友からAちゃんママが私と娘の悪口を、かなり誇張して周りに話していたと聞き「やっぱりな…」という気持ちになりました。怒りももちろんありましたが、なによりも、とても悲しかった。ですが、私も逆の立場だったら…毎回毎回わが子に手を出すお友達がいたら…と考えると同じことをしてしまったかもしれません。そう考えるととても怖いです。その後、転園先では…当時を振りかえり娘はこだわりが強く、前の園にも愛着があった上、転園という環境変化にうまく適応できない中、写真を見ては落ち込むということが頻繁にありました。新しい園は9人しかいない小さいクラスでしたが、そのほとんどが上に兄姉がいて、すでに仲良しグループもできていたので、新しい環境に慣れるまでまた大変でした(行き渋り、駐車場に着いても降りない、園から脱走するなど…)。ですが、転園先で1年半担任をして頂いた先生がとても熱心な先生で、娘の特性としっかり向き合って下さり、娘も安心して過ごすことができたのが救いでした。当時を振りかえると、疑惑がありながらも「わが子は大丈夫。少し難しい性格なだけ…」と悩みつつも逃げてきていたように思います。今思えば、もっと早期に病院の受診などできていたら、もう少し違ったのかも?感じることも多くあります。誰にも相談できず一人で苦しんでいる方がいるなら、どんな形でもいいのでまずは誰かに相談をし、少しでもその苦しみを減らせるように一歩を踏み出してほしいと思います。エピソード参考/るみちゃんイラスト/taeko(監修:三木先生より)母子ともにご苦労されたようですが、新しい環境に慣れることができたようで、良かったです。お友達、保健所、医療など、どんなジャンルでも良いので相談することができると、楽になるかもしれませんね。あなたのエピソードもコラムになるかも?体験談募集中!保護者の方が日々子育てをする中で「こんなトラブルがあった」「こんなハプニングがあった」など悩みはつきないと思います。そんな発達ナビユーザーのみなさんの「困った」エピソードを募集しています。テーマは「反抗期・思春期」「自傷」「学習」「不登校」「ゲーム」「不器用」「ママ友・保護者」「ご近所トラブル」などに加え、今回より「パートナーや両親(義両親)、親族間トラブル」「冠婚葬祭」のお悩みも追加募集!パートナーなどとの意見の相違、冠婚葬祭でのルールが分からない、反抗期による親との言い争い、癇癪を起こして自分の頭を叩く、地団太を踏むなどの自傷行為…読み書きや計算の困りはもちろん、授業を落ち着いて受けられないなどの学習の悩み…行き渋りや不登校などの悩み…いろいろなお悩みエピソード、お待ちしております。お寄せいただいたエピソードの中から数作品、発達ナビの連載ライターさんにコラムとしてコミックマンガエッセイ化していただき、発達ナビで公開いたします!あるあるのエピソードからヒヤリとしたエピソード、SNSなどではなかなか言えないような家族やママ友とのトラブルまで。いろいろな「困った」エピソードをぜひ教えてください。
2022年07月10日Q:「特別支援学校」「特別支援学級」に通うわが子。地域とどのように交流していったらよいでしょうか。A:「豊かな連携」づくりの一環として「居住地校交流」という方法もあります。Upload By 発達障害のキホン居住地校交流とは「同じ地域の学校・学級の仲間」との交流です。一般的に居住地域との結びつきが弱いとされている特別支援学校。学校内では問題なくても、居住地に帰れば独りぼっちという状況は容易に解消されません。これに対して「同じ地域の学校・学級の仲間」であると位置づけた「居住地校交流」は特別支援学校とおのおのの居住他校との日常的な連携を生み出すものとなっています。例えば、鳥取県でこの方式を最初に実現したある子どもの取り組みとして(『改訂新版障がいのある子の就学・進学ガイドブック』pp.91-93の「クミちゃん」参照)・特別支援学校に通う児童との交流のために、児童が通っていた保育所、同じ町内の障害児の保護者たち、障害児の親の会などの応援により特別支援学校、地域の小学校両方の入学式に出席することができた・普段は特別支援学校に通っているが、地域の小学校にも教室にその生徒の机が用意され、毎日出席の確認もとっている(特別支援学校に行っている場合はクラスメイトが「特別支援学校です」と返事をする)・月1~2回の交流学習などの実績があります。このような取り組みにより、小学部時代だけでなく中学部・高等部時代を経ても地域とのつながりは保たれていきます。そして、卒業後の地域での生活づくりや福祉・就労サービスの利用にも活きていきます。※「居住地校交流」を含めて「障害のある児童及び生徒と障害のない児童及び生徒との交流及び共同学習を積極的に進めること」は2004年の障害者基本法の一部改正でも定められています(『改訂新版障がいのある子の就学・進学ガイドブック』p.102の「障害者基本法」参照)。
2022年07月09日きっかけは保育園の先生からの発達に関する指摘しのくんは2歳4ヶ月のとき、保育園の先生から発達に関する指摘をされました(しゃべらない、絵本に興味がない、集中力がないなど)。2歳まで喃語しか話さず、2歳を過ぎても言葉が増えないしのくんを私も心配していた矢先の出来事だったので、これを機に、一度専門の人に診てもらおうと思いました。そして、まず私がとった行動は、市役所に電話することでした。選択を迫られるどうしたらいいのかさっぱり分からなかった私は、まず市役所の子育て支援課(※)に電話しました。※子育て支援課…子育てに関する手続きや相談の窓口。地域によって名称や業務範囲などが異なります。Upload By keikoすると、市役所の方から「『子育て相談センター』か『発達相談センター』のどちらの紹介がいいですか?」と聞かれました。どちらも発達に関する相談と発達検査をしてくれるとのこと。違いは臨床心理士が発達検査をしてくれるのか、ドクターが発達検査をしてくれるかということでした。どちらがいいか選択を迫られましたが、私は障害があるという診断がつくのが怖くて、発達検査のみの「子育て相談センター」を選びました。※子育て相談センターや発達相談センターなどの名称や、発達検査を受けられるかどうかは地域によって異なります。ネットで調べまくる日々その日をきっかけに私は検索魔になり、「言葉」「遅延」「遅い」などをインターネットでひたすら調べました。Upload By keiko療育って何?、言葉の教室って何?、しゃべれないとどうなるの??と、不安が私を襲います…。しのくんがどういう状態か、知りたいけど知りたくない。検索したサイトに、“発達障害があるかどうかは、3歳まで分からない”などと書いてあるのをみて、ますます(診断名はまだつけたくない…)と思った私。発達の遅れを相談するために小児科には行きたくないというさらに気持ちがふくらみました。(今になってみれば“発達障害があるかどうかは、3歳まで分からない”とは、必ずしも正しい情報ではない分かるのですが、このとき不安を感じていた私は信じてしまいました。あとから障害の種類によって診断される年齢が違うことや、3歳以前の早期診断も可能だということを知りました)わが子の発達の遅れを目の当たりにし、気持ちに変化がそんな私の小児科には行きたくないという気持ちが変わった理由は、二つ。「子育て相談センター」で発達検査を受けて、言葉が一歳遅れていると言われたことと、保育園のクラスメートと比べても明らかに発達に遅れがあるしのくんをみて、このままではいけないと強く思ったことです。Upload By keikoこの二つから、私はしのくんを療育に行かせる決心をしました。調べてみると、私たちの住む地域では、療育にしろ、言葉の教室にしろ、通うためにはドクターの診察や意見書が必要不可欠でした。※地域や施設によって医師の診断が必要かどうか異なります。詳しくはお近くの役所や施設に直接お問合せください。もうこのころには、診断名がつくのが怖いという気持ちは薄れ、「何処がしのくんにとって一番いい療育先なのか?」という風に考えるようになっていました。そして、気がつけば小児科を受診していました。現在(4歳3ヶ月)あれから発達の遅れを何人かの先生に診てもらいましたが、しのくんに診断名はついておりません。定期的に先生に診てもらってますので、その成長過程の中でドクターが必要だと判断すれば診断名がつくと言われています。なお、診断名はなくとも、ドクターの意見書をもとにしのくんにとって必要な療育を受けることができています。あれだけ先生に診てもらうのを怖がっていた私ですが、この先、診断名がつくのか?つかないのか?なんてことはもう気にしていません。診断がついてもつかなくても、しのくんはしのくん。日々のやることが変わるわけではないので、このまま、しのくんに寄り添って、自分にできることをしていこうと思います。執筆/keiko(監修:井上先生より)幼児期は発達の変化も激しい時期です。いくつかの領域で発達の遅れや発達障害の特性が見られたとしても、それが顕著でなければ経過観察として診断が出ないこともあります。気づきから受診までの期間、親御さんは不安と葛藤の中で悩まれると思いますが、keikoさんのようにいきなり医療機関でなく、まず地域のセンターなどで相談されるとよいと思います。診断がなくても、アセスメントに基づいて療育が必要であるという医師の判断があれば、受給証によって療育による支援が得られます。一人で悩まないで、ぜひどこかの相談につながってもらえればと思います。
2022年07月07日思春期・反抗期は、成長のプロセス。広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)のある娘は、現在小学6年生。思春期・反抗期の真っただ中です。発達外来の受診で、発達障害児の思春期・反抗期についてや、娘の状態に合わせた療育方法を先生からアドバイスしてもらい、少しずつよくなってきました。しかし、そもそも思春期・反抗期は、正常な発達。娘の自立力を伸ばすことが目的であり、反抗的な態度をゼロにしようとは思っていません。日常生活では、反抗は引き続きあるのが現状です。Upload By SAKURA自分の発達に関して、興味津々。わが家では娘に「発達障害」の告知をしています。そのことも関係しているのか、娘は自分の発達状態にとても興味津々です。自分は何歳で歩いたか、何歳のときにしゃべったか、オムツが外れたのはいつか、小さいときはどんな子だったか…。決して後ろめたいという聞き方ではなく、「私のことを知りたい!」「教えて!」と楽しそうに、何度も聞いてきます。Upload By SAKURA正しい知識を教える。そんな娘には、思春期・反抗期というものを発達のちゃんとした知識として、教えた方がいいと思った私たちは、思春期・反抗期についてよく説明しています。Upload By SAKURA元々、理論的な説明が大好きな娘。自分のイライラや、親に反抗してしまう言動が、発育として説明がつく状態が面白いようです。私ともめたときも…Upload By SAKURA自らの態度の理由を「思春期・反抗期」と言う娘。それを言うことで、娘の反抗が急に可愛く見え、私は笑いをこらえるのに必死になってしまいます。自分の経験も話して聞かせる。元々、あまり他人に興味を示さない娘ですが、思春期・反抗期に関しては自分だけではなく、ほかの人がどうだったかを知りたいようで…Upload By SAKURAUpload By SAKURAこんな会話をしていると、まだまだ娘は、反抗期じゃないような気さえしてきます。話して、向き合って、乗り越える!私たちの場合、思春期・反抗期というものを会話なくただ過ぎるのを待つより、「あなたは今、思春期・反抗期に入っていますね」と、状態を説明してからの方がお互いどこか冷静になれます。この方法が全員に通用するとは思いませんが(たぶん私の場合、そういう言い方されると余計イライラしていたかも…)、思春期・反抗期についてあえて話すというのも、乗り越えるための一つの方法かもしれません。執筆/SAKURA(監修:初川先生より)思春期・反抗期について、説明されたのですね!すてきなエピソードのシェアをありがとうございます。思春期・反抗期は、体感としては、「なぜだかはっきりしないけれど、なんだかイライラする」「今まではイライラしなかった『宿題やったの?』の声掛けになんだか無性に腹が立つ」、そんなイライラ先行かと思いきや、ときには、親に甘えたくなったり、友達と比較して悲しい気持ちになったりと、今までとはなんだか違う…といった感覚にとらわれることが多いです。そうした内発的な変化について、学校の保健で習ったり、言葉として「思春期」「反抗期」と知っていたりはあるにしても、そこと結びつけて「あー、これが噂の思春期か…」と認識できる子は少ないと思います。多くの場合、「なんでそんなに反抗的なのよ!」と親に言われるなどして、気づくことが多いです。自閉スペクトラム症のある方のように、自分の体感をモニタリングしづらかったり、未知のことに出合うことの衝撃を大きく受けたりする場合には、早めに説明するということが安心安全につながることがあります。SAKURAさんのされたように、それは正常な発達なのだということを伝えることがとても大切です。これまでとの違いに違和感やしっくりこない感じ、終わりの見えない感じ、そして、大人になるということへの不安がないまぜになって感じられる場合もありますが、それは正常な発達で、いずれ落ち着くということ、その見通しを伝えることが大切です。SAKURAさんの娘さんの場合には、そのあたり理解され、自分のことを「思春期・反抗期」とカテゴライズして語ることができるようになりました。自分の状態が何であるか知っていること、自分の状態の手綱を握れていること。とても素晴らしいですし、大人への第一歩だなと感じます。
2022年07月06日子どもの滑舌が悪い原因は?声を出すことやその声の出し方自体のことを「発声」と呼び、ことばを発音することを「構音」と呼びます。例えば、一つの話しことばについて、喉頭音源(こえ)の性質を指すものを「発声」、言語音(ことば)としての性質を指すものが「構音」となります。この構音がうまくできないことを、私たちは一般的に「滑舌が悪い」と言います。たとえば、「さかな」を「しゃかな」、「おかあさん」を「おかあしゃん」、「りんご」を「ご」とだけ言うことなどがあります。こうした滑舌がうまくいかないという状態は、どうして起こるのでしょうか。物事の名前を覚えて、それを正確に発音することによって、自分が思っている物事を相手に伝え、相手が伝えようとしている物事を理解する、これが「しゃべる」ということです。そこには、物事には名前があると理解して名前の知識を蓄えるインプットと、相手に伝わるような構音ができることによって声にするアウトプットがあります。この両方がうまくいったときに「上手にしゃべる」ことができた、となります。このアウトプットがスムーズにできるという意味で構音が正しくできていることが「滑舌が良い」という状態です。では、私たちがふだん何気なくしている構音は、どのようにできるようになったのでしょうか。赤ちゃんが最初に出す声は、泣き声で、ほぼ母音だけで構成されています。母音とは、のどから出るそのままの音で、舌や歯・あごなど口腔内の器官の動きに妨げられずに出る音です。赤ちゃんは、成長と共に周りの音を聞き分けられるようになり、自分へ話しかけてくれる人の声の様子を聞きながらまねをして、だんだんに発音できる音を増やします。日本語の五十音の子音、カ・サ・タ・ナ・ハ・マ・ヤ・ラ・ワの各行の一音一音は、それぞれ、唇を閉じたり開いたり、舌の奥や舌先上あごの奥の柔らかい部分(軟口蓋)をコントロールしたり、といった複雑な動きによって構音が可能となります。大人でも、初めて外国語を習ったときに、日本語にはない「th」や「f」のような音に関しては、たくさん練習をした記憶があるのではないでしょうか。それと同じことを、ことばを話し始めた子どもは日々トレーニングしています。一生懸命発音して、通じたという経験や、通じなくて困ったり、大人に直されたりという経験を経て、発音する力は成長し、滑舌(構音)はよくなっていくといわれています。構音には、口の中の動きが大きく関係し、食べるときの口の中の動きの成長と連動しています。生まれてすぐの赤ちゃんは、反射的に口の中であごと舌の動きを組み合わせて、乳首を吸うことにより栄養源である母乳やミルクを摂取しています。大脳の発達と共に、生後5~6カ月ごろから離乳が始まります。離乳とは文字通り乳離れのことです。ミルクを飲んでいる時の乳児型嚥下から固形の食べ物を飲み込む(成熟型嚥下・せいじゅくがたえんげ)動きが獲得され、その後、舌による押しつぶし、さらに歯茎でのすりつぶしができるようになり、奥歯が生えるとかんで(咀嚼・そしゃく)食べる動きの練習が始まります。この過程で、舌の位置や動き方が変わっていきます。最初は軟らかいペースト状のものから始めますが、硬いものを咀嚼するようになると、顎の動き方も上下だけでなく左右も含めて複雑な動きをするようになります。この口の中の動きが複雑にできるようになることが、構音と連動します。たとえば、横から見た時の舌先が下の歯と同じ位置にある状態ではタ行の音を出すことができません。また、口が閉じない状態では、マ行・パ行などの音を出すことができません。鼻呼吸ができるようにならないと、ナ行の音は出ません。離乳が始まり固形物を食べるようになると、口を閉じて食べ物を飲みこむ(嚥下する)という動きをするようになります。このときに、鼻呼吸がうまくできていることが大事だと言われています。唇を閉じていられるということは、鼻呼吸ができている証拠でもあります。赤ちゃんはいろいろな音が口から出る、ということを実験していきます。唇を閉じたまま息を吐き、「ぶぶぶ~」と唇を震わせると音が出る、という発見をするでしょう。この「ぶぶぶ」という音は、やがて唇のコントロールがうまくできるようになると、パ行、バ行、マ行などのさまざまな音へと進化します。正しい発音のお手本を何回繰り返し聞かせてみても、なかなかうまくできない、何を言いたいのかはわかるけれども、特定の音がうまく出せなかったり、違う音を発音してしまう子どももいます。はじめは個性だと思っていた話し方も、4~5歳ごろになると、構音がうまくできないのかもしれないと保護者が気づく、ということがあります。特に小学校に上がるまえ、幼稚園・保育園の年長クラスのころや、「就学相談」が開始されるころになると、この「滑舌」が気になって相談されるケースが増えます。滑舌が悪くなってしまう原因は?それでは、なぜ滑舌が悪くなってしまうのでしょうか。いくつかのケースが考えられます。構音できるようになるために大事なことは、まねをすること。そのためには、音が聞こえていることが大切です。もし、音がよく聞こえていなければ、まねをすることもできないでしょう。音が聞こえない、聴力に問題があるケースには、耳そのものの器官としての働きがよくないケースの「伝音性(でんおんせい)難聴」と、耳は聞こえているけれども、内耳の奥にある音を脳に伝える「神経系」の働きがよくないケースの「感音性(かんおんせい)難聴」があります。伝音性難聴の場合には、中耳炎などの病気が原因となる場合や、音を感知する部分の奇形などの場合があります。感音性難聴の場合には、特定の音域がうまく感受できない、複数の音の聞き分けが難しいなどのケースもあります。いずれにしても、音がよく聞こえなければ、声をまねすることもうまくできないことが多いと言われています。構音は、唇や舌、あごといったパーツの複雑な動きによって形成されます。舌の位置が下がったまま(低位舌)だと、正しい発音ができないです。唇を閉じることができず、舌が低緊張で常に舌で歯を押している場合は出っ歯(前突)、上下の歯がかみ合わない(開咬)、すきっ歯(歯間離開、空隙歯列)などといった歯並びが悪くなる原因にもなります。舌の大きさ、歯列の形(歯並び)、上あごやのどの形などが、構音には大きく影響します。体のパーツの形や大きさに関しては、成長に伴って解決されることもありますが、生まれつきの特性による場合もあります。その中には、舌小帯(ぜっしょうたい)が極端に短いというケースもあります。舌の裏側と口の底と下あごの歯ぐきの内側をつないでいるヒダが舌小帯で、この部分が短いと、口を開けたときに舌先を上あごに触れさせることができず、サ行・タ行・ラ行が正しく構音できない場合があります。また、前歯がないと、サ行の発音がしにくくなります。歯と歯茎も構音に欠かせないところです。発音するためには口の中のさまざまな筋肉をコントロールしますが、この筋肉をコントロールする力、つまり筋力そのものが弱いとうまく構音できないことがあります。先天性の疾患などにより全身の筋力が弱いことが、滑舌が悪くなる原因となることもあります。滑舌の問題以前に、ことばを発しようとしない場合や、ことばの意味をよく理解できていない場合などは、知的な発達の遅れや偏りが原因の場合もあります。難聴もなく、口の中の機能や形態の問題がなくても、滑舌がよくないということもあります。耳の聞こえや、口の中の形態や機能、筋力や知的な発達の遅れなどは、子ども自身にある先天的な疾患などが原因ということは少なくありません。ですが、生まれつきだからとそのままにしておくのではなく、療育やトレーニングによって、ある程度改善することが可能だといわれています。滑舌が気になったときには、どこに相談したらいい?滑舌は、訓練することである程度の改善ができます。その指導をしてくれるのが言語聴覚士(speech therapist:ST)です。言語聴覚士は、耳の聞こえ、発声、呼吸、認知、咀嚼・嚥下にかかわる機能に関しての専門家です。言語聴覚士とつながるためには、子どものかかりつけの小児科、耳鼻咽喉科などから紹介してもらうことができます。また、ほかの病気でかかっている場合であれば、脳神経外科、神経内科、形成外科、リハビリテーション科、歯科からの紹介ということもあります。「言語外来」「ことばの外来」を設置している病院もあります。滑舌をよくするために、家庭でできることは?滑舌をよくすることは、言語聴覚士の指導が大切ですが、それだけでよくなるということでもありません。家庭での子どもとの「関わり」、「やりとり」が話せるようになる基礎をつくります。子どもが何かに興味を示しているときに、興味の対象について、言葉掛けをしてみましょう。たとえば、りんごを見ていたら、「これはりんごだよ」と教えて「おいしそうなりんごだね」「このりんごは甘いかな?」などと、さまざまなことばで声をかけます。このとき、子どもがまねをして「ご」とだけでも言えたなら、「そうだね、りんごだね」と答えて「やりとり」を続けましょう。ここで「『ご』じゃなくて、『りんご』だよ」などと否定したり、正しく言い直させたりしなくて大丈夫です。単語の一部しか発音できない場合、何がその原因となっているのか、専門家と相談してみることも大切です。構音に苦手があり、歯並びや上あごの形状や筋力の問題、聴力の問題などがある場合は、専門家による診断・治療が必要であったり、指導によってサポートしていくことがあります。そのほかにも、吃音や場面緘黙症など、心の発達の面からのアプローチが必要な場合もあります。発音の練習や構音に関わる筋肉のトレーニングについて筋力が足りなくて滑舌がうまくいかない場合には、ある程度トレーニングすることが必要です。たとえば、口の周りの筋(口輪筋)を強化する口の締まりをよくする運動や、舌の位置を確認しながら動かし方を学習するトレーニングなどがあります。ただ、こうしたトレーニングや口の中の運動を子どもにさせようとしても、なかなかやりたがらない、習慣化することが難しいということもあります。その場合には、「この動き、できるかな?」とクイズやゲームのようにしてみたり、ことば遊びをしてみたり、好きなキャラクターや絵本を使って誘ってみたりなど、遊びの延長でトライしていきましょう。子どもが楽しみながら、遊びの中でトレーニングを積み重ねていくことが重要です。舌先を前歯の後ろの上あごに当てます。これが唇を閉じた時の正しい舌の位置であることを覚えましょう。もし、鼻が詰まっているなど鼻呼吸がうまくできていない場合は、舌先がここにあるのは苦しいはずです。嫌がったりできなかったりしたら、耳鼻科を受診してください。そのほか、舌を押し上げる、左右に動かすなどがしっかりできるように筋力をアップすることが大切ですが、自ら舌(あるいは唇・頬)の筋肉を動かせない、または動きが弱い方に対して、舌(あるいは唇・頬)の動きを身につける「バンゲード法(筋刺激訓練法)」といった訓練があります。舌運動機能の発達に遅れがみられるお子さんでは食べ物を噛む、送り込み、飲み込めむといった摂食嚥下機能に問題がみられることが多いです。摂食嚥下機能向上のためにも、舌の筋力を強化することが大切で、そのための器具などもあります。これらの訓練方法については、病院歯科や大学病院などある摂食嚥下外来などにご相談ください。日常的に口が「ぽかん」と開いているお子さんには、口唇閉鎖力を鍛えるトレーニングがあります。大きめのボタンを用意し、ボタン穴に糸や紐を通します。ボタンの部分を口にくわえさせ、上下の唇を閉じます。ひもを引っ張ったときに、ボタンが口から出ないようにします。また、同様のトレーニングができるような器具もあります。このような方法で、唇と頬の筋肉を鍛えることができます。こうしたトレーニングも、言語聴覚士や歯科での指導を受けることで、その子に合った方法を見つけることができるでしょう。ただ、月に数回の指導だけでは、口の中の状態を鍛えていくのは難しいものです。日々の積み重ねが必要なので、親子共に楽しく続けられる方法を探しましょう。そして、おしゃべりするときは、滑舌ばかりを気にしないで、楽しいコミュニケーションを大切にしてください。伝えたいことがある、聞いてほしいことがある、おしゃべりが楽しいと感じることが、何よりも大切です。まとめ子どもの滑舌が悪い、構音がうまくできていないと感じたときには、小児科や耳鼻科、歯科を通じて、言語聴覚士の指導を受けられるようにしましょう。とはいえ、専門家におまかせではなく、日々の積み重ねが必要です。構音は、心の成長と共に体の機能の成長やトレーニングによって発達していきます。親子で楽しく続けられる工夫をしていきましょう。
2022年07月06日視覚支援との出合い私が初めて視覚支援を学んだのは、発達障害の勉強会でした。目で見て分かるよう、イラストなどを利用して視覚情報を使い子どもに伝えたいことを伝える。今考えてみれば成長途中の子どもは文字の理解や言語のレパートリーが少ないため、視覚情報の方が理解しやすいのは当たり前です。大人だって「百聞は一見に如かず」ということわざがあるくらいなので、情報は視覚で補助すると理解しやすいというのは当然なのですが、当時の私はそういう視点が全くなかったので、なるほど!と感動したことを覚えています。おうちでの視覚支援小さいころ、むっくんはマークが大好きでした。車のエンブレムやお店のロゴ、交通標識などにも興味を示し、記号の本が好きで色んなマークをよく覚えていました。視覚支援を知った私は、むっくんのこの特技を利用すればいいのだと思いいたり、3歳のころから外出の際はお店のロゴを使って行先を伝える工夫をするようになりました。これは診断のない弟にも有効で、子どもたちのどこへ行くのか分からない不安を和らげる効果がありました。また、むっくんはおもちゃなどについている注意書きマークにも興味を示したことから、ルールを伝えるのに使える!と導入したのが「さわっちゃダメマーク」です。家の中の危ない場所にはこの「さわっちゃダメマーク」を貼って理由を伝えておくと。ルールを守りたいタイプのむっくんは触らないように頑張ってくれていました。当時は子どもの行動に困ったな~と感じると、視覚化することで何か伝えられないかな?と考えていたように思います。Upload By ウチノコ成長と共に、家庭内の視覚支援はどんどん増えていき「朝の準備」「カレンダーでの予定表」「おもちゃ箱に写真」なかなか進まないトイトレでは「トイレにトイレマーク」も貼りました(笑)さらに、一日の出来事を思い出すことが苦手だったむっくんに、保育園での「活動メニュー表」を作って会話のきっかけにしたり。お風呂あがりの「体の拭き方」や運動会での「ダンスのふりつけ」など動作を伝えるイラストを描いて貼ったこともあります。また、私の伝えたいことはイラストを描きながら説明すると集中して話をきいてくれることもありました。わが家では診断の有無にかかわらず兄弟ともにこういったツールをたくさん使って暮らしています。Upload By ウチノコUpload By ウチノコ視覚支援に囲まれた子どもたちの今現在8歳のむっくんは文字や聴覚情報でも十分ものごとが伝わるようになりました。それでも複雑なことや、忘れやすいことは視覚情報で消えないように伝えることが鉄則です。最近では将来を見据えて、デジタル端末を使う視覚支援も増やしています。例えばスマートスピーカーの残量が表示されるタイマーは時間管理に便利ですし、忘れやすい予定はタブレットのリマインダーで通知、家族共有カレンダーを使い、自分や家族の予定を確認できるようにもしてあります。また、むっくん自身もタブレットのデジタルふせんやメモ帳を使い、忘れたくないことを自分でメモすることも増えてきました。さらに弟まで忘れないように目印を付けるなど自分から視覚支援を使おうとすることもあり、この子たちは困ったときは工夫で補えることを知っているのだなぁと感心させられています。二人とも小さいころよりも言葉で伝わりやすくなったため、つい視覚的な提示を忘れがちなのですが。何度か声かけが必要なケースは視覚支援を考えた方がいいことを忘れないように私も気を付けています。Upload By ウチノコ方法ではなく本質を伝える最近のむっくんは、自分の伝えたいことを図やイラストを描きながら説明してくれることがあります。これはまさに私がむっくんに対してやってきたことなので「この子は視覚情報と聴覚情報合わせて使う方が自分も伝えやすく、相手にも正しく伝わりやすいということを知っているのだな」と驚かされます。発達障害と診断されたことをきっかけに学んだ視覚支援。私は暮らしやすさをもとめて取り組んだに過ぎないのですが、それらが子どもたちの中に芽を出し育っているのだなぁと感じています。視覚支援の根っこにある「自分にも相手にも伝わりやすい方法を模索する」という考え方は、私の手を離れた後もきっと彼らを支え続けることになるでしょう。工夫しようとする子どもたちを見ていると、試行錯誤してきた過去の自分のことを私はちょっとだけ誇りに思えるのです。執筆/ウチノコ(監修:初川先生より)むっくんとの視覚支援の歴史のシェアをありがとうございます。視覚的な刺激を得意とするお子さんは多いですし、言葉が苦手なお子さんでもイラストや写真などを用いたものや目印やマークを用いて判断しやすくするものなど、とても有効ですね。聴覚的な支援は、その瞬間の注意を引くには良いのですが、その記憶の保持が難しいですね(別のことに気が向いたらすぐに忘れてしまうため、声をかけ続けなければならないことも…)。消えてしまわずに残っているという意味でもとても便利です。不注意なお子さん(大人もですが)にもとても有用です。今日園(や学校)で何があったかを話してもらうきっかけとしての絵や写真もとてもいいですね。話したくないわけではないけれど、呼び水がないと思い出しにくいこともあります。時系列で思い出すのも得意な子と苦手な子といるのではないでしょうか。ちょっとの間、覚えておくべきことを、忘れないように忘れないようにと思いながら過ごすことは、本来がんばりたいことへ注意集中が削がれている面もあります。学習場面における、机上の整理であったり、毎日の支度における物の管理であったり、そこにいちいちエネルギーをかけるのはややもったいないです。思い出す・判断するという行為は、なかなかに負担なので、そのあたりをメモやマークなどを用いて負担をショートカットすることはとても理に適っています。視覚支援のありがたみに気づいてきたお子さんは自らメモを取ったり、写真で残したりと工夫をすることも多いです。保護者の方がされてきたことは、お子さんにも受け継がれてゆく面があります。
2022年07月05日4歳までは気にならなかったゆいは1歳から保育園に通っていました。大人しめではあるけれど、発達面で遅れを感じることはありませんでした。保育園の発表会では大勢の前で歌や踊り、劇のセリフを言ったりすることもできていて、他人と話せないということもなく、ゆいが4歳になるころまで私は特に悩みのない子育てをしていました。5歳ころから気になりはじめるUpload By 吉田いらこ5歳になるころ、実家に帰省していた時に体調が悪くなり、小児科に行くことになりました。初めて行く病院で、初対面の男性のお医者さんがゆいに「今日はどうしたの?」「どこが痛いの?」と尋ねたのですが、ゆいは一言も話すことができませんでした。知らない男性を怖がるというのはままあることかなと思い、代わりに私が症状を説明しました。その先生には「こんなに大きいのに自分で自分のことの説明もできないなんて」と呆れられました。Upload By 吉田いらこまた、小学校の低学年のとき、個人面談で必ず言われたのが「まだ私(先生)とお話ししてくれないんですよ」ということでした。でも、まだ低学年なので恥ずかしがっているのかもしれないですね、ということでその場で話が終わっていました。クラスの友達とは話せていたので、大人相手だと緊張するだけなのかなと軽く考えていました。でも、小学校の中学年になってもなかなか大人と話すことができないままでした。ゆいが会話できるのは、私たち両親と、物心つく前からほぼ毎日接していた祖父母のみ。たまにしか合わない私の両親とはなかなか会話ができませんでした。母親である私がしゃべりすぎ?小学校の中学年になって、やっとゆいがなかなか大人と会話しないのが気になり始めた私。もしかしたら、母親である私がペラペラと話してしまうから、あえてゆいは話さないのかなと考えました。こう思ったのには理由があって、夫と義母のことがあったからです。義母は社交的なタイプで、夫が幼いころは、本人が口を開く前に母である義母がどんどん話してしまい、夫はがほとんど話さなかったそうです。…ということは、無意識に私が先に何でも話してしまっているのでは?だからゆいは大人と話さないのでは?と考えて、病院や習い事など大人と接する場所では意識してしゃべるのをやめてみましたが…。Upload By 吉田いらこ…沈黙が続くだけで特に効果はありませんでした。具体的な診断名を聞いてこのように、年齢が上がるにつれて人見知りが強くなってきたなと感じていました。この子はちょっと度を越した恥ずかしがり屋さんだな…今はこんな感じでも大人になれば何とか改善するのかなと心配しつつも何もしていなかったのですが、小学5年生のときに受診した児童精神科で場面緘黙の診断を受けたことで考えを改めました。具体的な診断名を告げられたことで、今後どうしていけばよいか具体的な道筋が見えたように感じたので、これからはこの子の特性に合ったコミュニケーションの取り方を考えていこうと思います。執筆/吉田いらこ(監修:三木先生より)すごく問題がある訳ではないけど少し気になることって、どこまで見守って良いのか悩みますよね。「なんだか気になるな」だと、具体的な対策を取りにくいですが、診断がついたことで次の取り組みに繋がるのであれば、それも診断の一つの役割ですね。
2022年07月04日友達0人からの、療育のはじまりUpload By taeko4歳になったふーは、2ヶ所の療育に通所しています。ひとつは自治体の療育(個別)に月1回。もうひとつは、長男のミミと同じ民間の放課後等デイサービスの未就学児クラス(個別)に週1回通っています。ふーは少し言葉のキャッチボールが苦手なところもあって、友達0人からの療育スタートです。今日は、そんな療育が始まったときのお話をしたいと思います。医師の質問を受けているときに、ある違和感が…。自治体の療育の初回に、まず精神科医の診察をしてもらうことになりました。それは、5ヶ月後に大きな病院内の小児精神科を予約していて、そこへの紹介状を書いてもらうためでした。少し緊張気味に、初めての環境で、初めての医師に質問を受けるふー。医師:保育園でよく遊ぶのは何くん?何ちゃん?ふー:えっと、誰にしようかな…医師:保育園では何をして遊ぶのが楽しい?ふー:……楽しいことしてるとき…などなど。20分くらいの間に先生から投げかけられる質問に、ふーは頑張って答えていました。でも途中のある質問のときに、医師の質問と答えがかみ合わなくなってしまいました…!Upload By taeko「家で誰と住んでいるか」という質問に対して、「あのね、ボク誰かと有楽町行ったんだよ」と答えていたんです。先生も「そうなんだねー」と受け止めてくれましたが、これは一体どういう意味だろう?診察室に何とも言えない空気が流れました。それでも私もよく頭の中で連想ゲームをしてしまうのでわかったのですが…。質問の「お家」と「誰か」という部分から「祖母」のことを連想して、それとは別で前の質問の「楽しい?」からイメージを膨らませて、電車で行った楽しかった場所を答えていたようです。先生の質問に対してすぐに答えるのではなく、連想してふーが好きなことを言ってしまい、会話が成立しませんでした。身近な人だったら汲み取ることはできますが、初対面の先生は「答えてもらえない」「話を変えられてしまった」と思ってしまったはずです。Upload By taeko自分の伝えたいことを、ちゃんと伝えていくために質問の時間が終わると、ふーは好きなおもちゃを選んで補助していただいた方と遊んで待ってもらい、私は精神科医の先生と話をすることになりました。さっきの噛み合わない会話のこともありドキドキしながらも、まずはズバリ診断名を聞いてみました。でも、ひとまず今は、診断名がつく感じでは無いようでした。ただ、ふーが言葉のキャッチボールが少し苦手なことに変わりはないわけで…。コミュニケーションの中で、同年代の子と初めて話すときなど、相手の言葉を受け止めずに自分の好きなことだけを話しても相手に伝わりません。このままでは、意図を汲み取ってくれる人がいない場面では、伝えたいことが伝わらなくなってしまいます。今は良いかもしれないけれど、特にいつか社会に出たときに、きっと困ってしまうから。療育を続け、保育園とも連携しながら1年後の就学相談に向けて、ふーには今何が必要なのかということを見守っていくことになりました。Upload By taekoそして、療育の開始とともに、私も少し変わろうと思ったんです。今まで保育園でお迎えをするときは、先生に「元気です」と言われるだけでしたが、もっと園でのふーの様子を教えてほしいとお願いすることにしました。これからふーが、自分の力で伝えたいことをちゃんと伝えていくことができるように。そして、ふーのことを理解してくれる、友達が増えていってくれるように。そのために必要な成長を、親である私が見逃さないように。だから、私も先生に積極的に話しかけていくように、決めました。そんな、療育のはじまりのときのお話です。執筆/taeko(監修:井上先生より)コミュニケーションに困難さがある子どもにとって、園で体験した出来事を思い出しながらおうちの方に説明したりお話しすることはとても難しいことだと思います。お母さんがされているように、保育園のお迎えのときに、ふーくんがその日に遊んでいたことや、ふーくんの身の回りに起きた出来事をちょっとでも聞いておくと、ふーくんのおうちでのコミュニケーションがしやすくなるのではないかなと思います。話をしてくれることがまず大事なので、最初はたとえそれが正確な表現や事実でなくても、共感的に聞いてあげたり褒めてあげたりすること、そして少しヒントをあげてお話しできたらさらにほめること、そんなやり取り自体を親御さんが楽しめることが大切ですね。
2022年07月04日5年ぶりに再会した兄が、痩せて小さくなったことが少し切なくて…Upload By スガカズ重度の自閉スペクトラム症と知的障害がある私の兄は、現在40代後半です。昨年、オンラインの面会で久しぶりに兄の顔を見ることができたのですが、以前会ったとき(5年前)よりも痩せて小さくなっていました。私が子どものときは、7歳上の兄をとても大きく感じていたのですが…改めて年月の経過と老化を感じ、なんとも言えず切ない気もちになりました。ですが、面会した日に兄のケース担当の方から現在の生活について、詳しくうかがえたので、私の感情が変化しました。なぜなら「入居する前よりも、兄は健康的な人生を送ることができている」と改めて感じたからです。昔から偏食傾向がある兄。妹としては心配だけど私の母の考えは…?Upload By スガカズというのも、兄は昔から偏食傾向があり、口にする料理の種類は限られていましたし、例えばフライドチキンは衣しか食べないなど、食べ方も独特でした。当時そんな兄の食事事情を「仕方ない」とは感じつつも、(母はこれでよいと思っているのだろうか)(このままで大丈夫なのだろうか)と、妹として少し不安に思っていました。Upload By スガカズしかし現在、私自身が親という立場になったので、偏食のある子どもの食事がどれだけ大変か、痛いほど分かります。偏食のある子を見ていると、「食べない理由は味なのか食感なのか匂いなのか?」「年を重ねるうちに食べない理由が変化しているのでは?」「共に過ごす親に対して多少の甘えがあるのでは?」と、いろいろと考え込んでしまいます。施設での生活が、健康に年を重ねていくことにつながっている。痩せたことは悲しむことではない!Upload By スガカズ現在、兄が入居している障害者支援施設では、障害のある利用者が快適な日常生活を送るためにさまざまな工夫がなされています。そのうちの一つに、利用者の栄養管理があります。利用者は栄養士の管理のもと、個々の状態に合った食事の管理がされています。昔は偏食があった兄。施設で暮らすようになり、施設での食事に変わると、偏食はかなり改善されたようで、食べられるものの幅が変わったと聞いています。もしかすると決まった時間に、施設のみんなで食事をするという生活への変化が影響しているのかもしれません。あのときの偏食は何だったのか?と拍子抜けします。そんな生活の中でも楽しみはたまにあったほうが良いのではと思い、ときどき家族から施設に予め連絡をして、差し入れ(お菓子)を送るのですが、受け取ったときに満面の笑みで、周りに気づかれないように自分の部屋に持って行ったりするのだそうです(大袋よりも小分けのお菓子の方が、健康に影響もなさそうだし、職員から少しずつ本人に渡せるので良いのではと施設の方から助言があるため、そのようにしています)。施設での生活についてケース担当の方から話を聞いているうちに、「施設にお世話になる前よりも食生活が改善し、健康に年を重ねていくことにつながっている。痩せたことは悲しむことではないのだ」と思いました。医療機関との連携や、食事の管理など福祉を受けられているお陰で、兄はここ最近大きな病気もなく、元気に過ごせています。Upload By スガカズほかにも、日常生活や、ときどき行われるイベントについても聞けました。兄は毎日規則正しい生活を送ることができているようです。=====================7時半に起床、はみがき、朝ごはん9時に身支度(作業着に着替える)10時から15時まで共同作業所で仕事15時半に施設へ帰り、お風呂、普段着に着替えて自由時間18時に夕食19時半から20時に集まってティータイム22時に就寝(支援員さんが見回りをしているが、25時には必ず寝ているそうです)=====================施設の方に、日常生活以外で行われるイベントについても聞くことができました。茶話会を開くために利用者みんなでお菓子をつくったり、料理を楽しむ機会もときどきあるそうです。また、月に1回は必ずハイキングに出かけるなど、外の世界とのふれあいも大事にしていると教えてくださいました。親なきあとの現在。「人が人らしく生きていけるありがたみ」を感じて私の父と母は、想定していたよりも早くに亡くなりました。母の持病が悪化してしまい、重度の知的障害のある兄を育てることが難しくなったときーーーー兄のこれからの人生を心配し、障害者支援施設に入所するための準備をしたわけですが、当時はまだ私は学生で、きょうだいとして「私も兄も、この先どんな生活が待っているんだ?」といった漠然とした不安は少なからずありました。そんな時期を乗り越えて、兄が今の障害者支援施設に入所してから18年ほど経ちました。現在、それぞれ別の人生を歩んでいますが、お互いに合った環境で健康に過ごすことができ、久しぶりに会った際にはニコニコ笑って顔を合わせています。母をはじめとする親戚が、ありのままの兄を受け入れて、陰でサポートし続けてきたお陰だと思います。「人が人らしく生きていけるありがたみ」を感じ、自分の残りの人生を、「兄を支えてくれている方たちのお陰だ」と感じ、がんばって生きていこうと思えました。執筆/スガカズ(監修:井上先生より)親と同様きょうだいも同じ家族としての支援ニーズを持っています。きょうだいのニーズは、障害種や程度によっても異なりますが、年齢によっても変化していきます。きょうだいの立場からは、親なきあとに親と全く同じことをしてあげられるわけではないので、さまざまな悩みや葛藤も生じると思います。介護をされておられる方もいらっしゃいますが、互いに年齢を重ねる中で利用可能な支援サービスを活用し、無理のない距離感や生活のスタイルを考えていくことも大切かと思います。
2022年07月03日気圧や湿度の変化で体調悪化私は、天気の変化で気圧や湿度などが変わると心身に大きな影響が出ます。片頭痛、抗えない眠気や怠さ、無気力、関節痛など。幼いころのことは覚えていませんが、第二次性徴期に入って生理が来るようになるころにはすでに、天候によって調子が悪くなる感覚はありました。天気の変化によって起こる不調のことを「気象病」と言うそうです。気象病はどちらかというと女性に多いとも言われています。気象病には内分泌系や自律神経系の調節不全が関わっているため、これらの系統に困難を抱えている発達障害のある人には気象病が多いと聞いたこともあります。気象病を抱える人のうち、多くが気圧の低下に伴って症状を感じますが、気圧が下がるときには症状が出ず、上がるときに出るタイプもいます。私の眠気や怠さ、無気力は気圧が下がる雨の日によく出ますが、片頭痛はどうも気圧が上がるときに出るタイプのよう。台風や前線が過ぎかかって気圧が上がってくるととたんに発作が始まることが多くあります。症状があるときは生産性ゼロ気象病の症状が出ているときには普通の生産的な生活が送れなくなります。身体が泥袋のように重くなって昼寝するしかなくなったり、頑張って作業しようとしてもまったく頭が動かなかったり。天候という不可抗力によってその日の生産性を大きく左右されてしまうので、普通の会社勤めなどは私には無理だなと感じることがあります。気象病に対する私なりの対抗策気象病の多くは内耳にある気圧センサーのような機能の不全から来るらしいと聞いてから、気圧が変化しそうなとき、症状が出始めたときには耳を引っ張ったり揉んだり、上半身を中心にストレッチしたりして、耳周りの血行をよくするように心がけています。気のせいかもしれませんが、気象病の不調がマシになってきたように感じています。気圧の変化を知るためにアプリを参照することも。無料プランではできることが限られますが、指定した地点の気圧の変化をわかりやすい折れ線グラフで見ることができるので、とても参考になります。気象病は天気と同じで完全な予測はできず、ランダムに発生するものなので、気象病による生産性の低下は起こるものと前提したうえで、常に余裕のあるスケジュール設定をするようにも心がけています。薬もときどき服用しています。体内の水分を調整し、雨の日の頭痛に効くと言われている、五苓散(ごれいさん)という漢方薬はよく飲んでいます。天気によってめまいを感じる人が、気圧が変わりそうなときにめまい止めや酔い止めを飲む、という例を耳にしたこともあります。できる対策から試してみてITを活用して症状の出現を予測する、耳まわりの血行をよくする、薬をうまく使う、症状が出る前提でスケジュールを組むなど、気象病対策としてできることはいろいろあります。できることから無理なく対策を始めてみてはいかがでしょう。薬については、精神科の主治医やかかりつけの内科の医師に相談してみることをおすすめします。文/宇樹義子(監修者・鈴木先生より)小児科では気象病という言い方はせず、起立性調節障害(自律神経失調症)と診断されることが主流です。これは、神経発達症(発達障害)の20%に併存すると言われています。車酔い・朝起き不良・頭痛・腹痛・立ち眩みが主な症状です。小学校の高学年ごろから症状が出現し、不登校の原因の一つとして考えられています。午前中調子が悪く午後になると元気になるので傍から見るとさぼっているのではないかと誤解されやすい病気です。遺伝性もあり、どちらかの親も朝起き不良・立ち眩みや車酔いなどの症状があることが多いです。車酔いは自分で運転すればなくなるので大人になるとさほど目立たなくなります。春や秋など季節の変わり目に具合が悪くなるケースが目立ちます。クリニックでは15分くらい立たせて脈拍・血圧・心電図を測定して判定する起立テストを行います。心臓のポンプが弱く馬力がないので、ミドドリンという起立性低血圧を治すお薬で調整を行います。気象による影響のある病気で有名なのは喘息や骨折です。喘息は雨が降る直前に発作がよくおこり、骨折は雨が降ると痛くなるようです。
2022年07月02日無料の参加登録受付中!発達が気になるお子さんの成長を応援するオンラインセミナーが7/24(日)に開催決定Upload By 発達ナビアライアンス プログラムもうすぐ夏休み!どこか浮足立つ気持ちがある一方で、お子さんと家で一緒に過ごす時間が増えることに不安もある方もいらっしゃるのではないでしょうか。今年の夏は子どもたちと何をして過ごそう?学校の宿題はやってくれるかな?きょうだいゲンカが増えたらどうしよう?そこで発達ナビは、発達が気になるお子さんとそのご家族が、ご自宅で気軽に夏休みや日々の暮らしに役立つ情報を得られる機会をお届けしよう、と考えました。それが、「オンラインサマーフェスタ2022」です。発達が気になるお子さんを応援する専門家・企業によるセミナーやQ&Aをご用意し、少しでも毎日の生活のお役に立てたらと思っています。当日は豪華14セミナーの中から、お子さんやご家族のお悩み・知りたいことに合わせてご視聴いただけます。「LITALICO発達ナビオンラインまなびフェスタ2022」開催概要・日時:7/24(日)9:30~17:30(予定)・参加費:無料・形式:Youtube Live配信・参加方法:事前申込必須。下記ボタンよりお申し込みください。・内容:専門家講演、発達が気になるお子さんを応援する企業によるセミナー、当日参加者限定のプレゼント抽選会※企画調整中のため、今後変更となる場合もございます専門家セミナー:発達が気になるお子さんを支える、商品・サービスのご紹介Upload By 発達ナビアライアンス プログラム宿題や生活リズム、お家で何する?お出かけはどうする?など、夏休みが始まるこの時期は気になることがいっぱい。有意義な夏休みにするためにできることについて、事前アンケートで寄せられた内容を中心に井上先生にお話しいただきます。セミナー後半には、保護者のみなさんにいただいたお悩みや質問にも回答するQ&Aタイムもご用意しています。井上雅彦 先生鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員 応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。Upload By 発達ナビアライアンス プログラム友人関係や宿題のお悩みから、おうちで過ごす時間が増えるこの時期に気になる親子の関わりまで、保護者のみなさまにいただいた事前質問を中心に、児童精神科医の三木崇弘先生にお話しいただきます。三木崇弘 先生フリーランス児童精神科医/スクールカウンセラー 兵庫県姫路市出身。愛媛大学医学部卒・東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科博士課程修了。早稲田大学大学院経営管理研究科修士課程修了。 愛媛県内の病院で小児科後期研修を終え、国立成育医療研究センターこころの診療部で児童精神科医として6年間勤務。子どもの暮らしを医療以外の側面からも見つめる重要性を実感し、病院を退職。 2019年4月よりフリーランス。“問題のある子”に関わる各機関(クリニック、公立小中学校スクールカウンセラー、児童相談所、児童養護施設、保健所など)での現場体験を重視し、医療・教育・福祉・行政の各分野で臨床活動をしている。Upload By 発達ナビアライアンス プログラムお子さんの成長に伴い、社会性が求められ、コミュニケーションが必要とされる機会はどんどん増えていきます。では、早くからやりとりのスキルやマナーを教えるべきでしょうか?お子さんが、自分らしく自信をもって人とやりとりをし、社会参加ができるようになるためには、幼少期の「土台づくり」がとても重要です。土台づくりのために保護者はどのようなサポートができるか、さらに、保護者からのサポートはお子さんが何歳になるまで続けるべきか、青年期以降の「親ばなれ・子ばなれ」のタイミングについてもお話しします。日戸由刈 先生相模女子大学人間社会学部教授、博士(教育学) 横浜市総合リハビリテーションセンター 発達精神科外来にて20年間心理士として勤務後、同センター児童発達支援事業所「ぴーす新横浜」園長を務める。2018年より現職。公認心理師、臨床心理士、臨床発達心理士。専門家特別講演は、日本生命保険相互会社の提供でお送りします。未来をつくるのは、いつだって子どもたち。けれど、この国では多くの人が、子どもを育てることの難しさに直面しています。みんながもっと自分らしく生きられる明日を叶えるために。子どもたちが未来に向かって伸びやかに、自分の可能性をひろげることができるように。群れ全体が協力しあって子どもを育てるペンギンのように、子育ての壁や不安のない社会を、みんなで手を取り合ってつくっていきたいとの想いから、「NISSAYペンギンプロジェクト」を始動しています。子育てに頑張るすべての人を、そして子どもたちの未来を、日本生命は全力でサポートします。日本生命相互会社企業コラボセミナー:発達が気になるお子さんを支える、商品・サービスのご紹介発達が気になるお子さんの成長を応援する企業のみなさまにも協賛をいただき、多様なセミナーをお届けいたします。育児や療育、学習、普段の暮らしをより豊かにする商品・サービスをご紹介いただきますので、ぜひご期待ください!今回ご参加いただく企業のみなさまをご紹介いたします。Upload By 発達ナビアライアンス プログラムトマティス®️聴覚トレーニングは60年以上の歴史を持ち、70ケ国400以上のセンターで使用されている、音楽と自身の声を使用する安全で手軽な聴覚ケアです。みみいくトマティス®️聴覚トレーニングでも、未就学児から大人まで、毎年多くの人が聴覚と心理のケアを受け、「過敏の緩和」や「聴く力の向上」につながっています。本セミナーでは、聴く力の弱さやストレス反応としての聴覚過敏、どちらもケアできるトレーニングをご紹介します。特性、目的、状態に合わせてさまざまなトレーニング方法と機材があります(一部購入も可能)。お子さんと保護者であるあなたの耳と声を育てて、学校や家庭内でのコミュニケーションを円滑にしましょう!Upload By 発達ナビアライアンス プログラム株式会社フミUpload By 発達ナビアライアンス プログラム学習教材「すらら」は、無学年方式のe-ラーニング教材。学校や塾で採用され、学習者数は、2021年10月時点で約44万人となりました。お子さん1人ひとりに合った学習が求められる時代、「無学年方式」はこれからの教材トレンドです。小学校1年生から高校3年生までが対象で、国語・算数・理科・社会・英語の5教科に対応しています。家庭学習の利用者の半数以上が不登校や発達障害のあるお子さんで、勉強に困難があるお子さんも自分のペースで楽しく学びを継続しています。2022年も是非、注目してください。Upload By 発達ナビアライアンス プログラム株式会社すららネットUpload By 発達ナビアライアンス プログラムラフ&ピースマザーは、「遊びと学び」をテーマにお笑い芸人やタレント、教育分野の有識者、スポーツ選手などがさまざまなコンテンツを発信しています。動画サイトでは、ここでしか観られない限定ムービーやタッチして遊ぶとストーリーが変化する新感覚「タッチムービー」を公開中!オンライン教室は、月々たったの1,950円で授業が「受け放題」になるサービスをスタート!学校や塾とは違う、新しい学びの体験ができる教室に思う存分参加してみませんか?夏休みの困りごとを解消する企画もご用意しています!Upload By 発達ナビアライアンス プログラム株式会社ラフ&ピースマザーUpload By 発達ナビアライアンス プログラム「リップルキッズパーク」は、2009年にスタートした子ども専門オンライン英会話サービスです。オンライン完結だから、送り迎えなくおうちでレッスンを受講することが可能です。マンツーマンだから、お子さま一人ひとりのレベルや性格、習熟度に合わせた最適なレッスンが受けられます。専任講師による楽しいレッスンだから、お子さまが英語を好きになり、継続して受講ができ、結果的に英語力を上げることが期待できます。アカウントは1つでOK!きょうだい・親子でレッスンを分け合い、一緒に英会話を学ぶことができます。Upload By 発達ナビアライアンス プログラム株式会社エンビジョンUpload By 発達ナビアライアンス プログラム凸凹がある子に学習の個別最適化を実現する「天神」は、インターネット不要で使えるデジタル学習教材です。幼児タブレット版、小学生版、中学生版が人気で、以下の点で評価されています。・一問一答で集中しやすい・一問ごとに誉められて楽しく学べる・類題豊富で正解するまで何度でも学べる・問題・ヒント・解説が親切丁寧小学生版では、以下の点も人気です。・音声読み上げで勉強へのハードルが下がる・動画講義を何度も繰り返せるご自宅にタブレットやパソコンを貸出する無料体験も行っています。Upload By 発達ナビアライアンス プログラム株式会社タオUpload By 発達ナビアライアンス プログラムアネビーは、発達障害を「感覚の障害」ととらえています。遊びは感覚にはたらきかけるものなので、遊びで発達障害児の支援が可能になります。アネビーは、遊具メーカーとして、子どもたちが一日をいちばん長く過ごす場所の環境を、遊び=遊具の力で変えていきます。セミナーでは、公園にある遊具一つひとつに秘められた、お子さまの生活や学習の土台となる力を育む工夫をお伝えします。ぜひご注目ください。Upload By 発達ナビアライアンス プログラム株式会社アネビーUpload By 発達ナビアライアンス プログラム「PAKU MOGU(パクモグ)」は、好き嫌いが多い子どもたちの完食を目指したミールキットです。15分の簡単調理で主菜と副菜の2品が完成し、付属のレシピは子どもたちが調理に参加するポイント付き!親御さんの時短調理に役立てるだけでなく、調理に不慣れな子どもたちに食に触れるきっかけを提供します。自宅での自立支援もサポートできるよう、今後もかんたん調理ができる商品設計に努めてまいります。週1日からご注文可能で、お子さまの好みに合わせて毎日2種類の献立からお好きなものをお選びいただけます。ぜひ一度お試しください!Upload By 発達ナビアライアンス プログラム株式会社ワタミ昨年から今年にかけて3度開催してきた、多様な選択肢と出合える、発達ナビの「オンラインフェスタ」。「家庭学習」「STEAM教育」「進路選び」「学用品」など、幅広い切り口で多くの専門家の方々や累計25社の協賛企業にお集まりいただき、のべ1万名を超える保護者のみなさまにご参加いただいて大きな反響を頂きました。【ご参加いただいたみなさんのコメント】・ためになるお話ばかりで、とても参考になりました。自分が具体的にどう関わっていったらいいのか、何ができるのかがハッキリし、子供と向き合うのが楽しみになりました。・すごく講演もわかりやすくて、同じような境遇の人がいて、悩んでるのは自分だけではないと少し気持ちが楽になりました。・発達障害や不登校のお子さんとの関わり方の導入として分かりやすくできており、より理解を深めたいと感じた。一つのサポートの形として、知識を得て利用していくことで母子共に窮屈のない育児になっていくのではと感じた。登壇者の方への質問や保護者のみなさん同士の交流のコメントで盛り上がったこのイベントには、事後アンケートで多くの次回開催を望む声が届きました。今夏も、保護者のみなさんの疑問や不安に寄り添ったオンラインセミナーをお届けします!ご自宅からお気軽にご参加ください。たくさんの方のご参加を、心よりお待ちしております。Upload By 発達ナビアライアンス プログラム
2022年07月01日孫の気持ちを考えない父私の父は昭和9年生まれの、頑固な人でした。今考えると、父も発達特性があったのかもしれません。周りがどんな状況であっても、昼の12時になったら「飯!」と叫び、夕飯はキッチリカッキリ18時半に開始…そんなことを母に要求する父でした。息子を出産した日は、両親ともに病院に来てくれていました。息子の出産時刻は18時だったのですが、だんだんと18時半に時刻が迫ってきたときに出た言葉は「飯の時間だから帰るぞ!」でした。Upload By 立石美津子これは、食物アレルギーのある息子の目の前で、父が自分の食べたいソフトクリームを食べている写真です。うしろから私が何とも言えない顔で見ています。食物アレルギーのある子を育てる親御さんの中には卵や乳製品が入っていないクッキーやケーキなどのお菓子を準備する人もいます。けれども、私は誤食事故を防ぐため、「自分の食べられない物を知る」という教育をしたかったので、目の前で食べることは悪いことだとは考えず、父に対して止めることはありませんでした。ただ、父はそんな教育方針を理解したうえで、目の前で食べたのではなく、「自分が今、食べたいから食べる」、そんな状態だったと思います。孫の障害に対しても全く理解を示さず、私に対して「墓守なのに難儀な子を産んだ」とよく口にしていました。たまに実家に遊びにいったときも、孫である息子が見たいテレビを要求しても、頑としてチャンネルを譲らない父でした。また、パニックを起こす息子を見て「静かにさせろ」と私に要求し、それでも収まらないときはいそいそとスポーツクラブに出かけてしまうのでした。「怖いおじいちゃま」7年前に父が癌で亡くなったとき、看護師が息子に「どういうお祖父様でしたか?」と尋ねました。すると息子は、「怖いおじいちゃま」と答えていました。またお通夜の場で、実家の玄関に付いている祖父のフルネームが書かれた表札をいつ変更するということばかり気にしていました。悲しい気持ちはもちろんあったのだと思いますし、自閉スペクトラム症の特性ゆえの面もあったでしょうが、自分を理解してくれなかった祖父に対して、息子なりにいろいろな思いがあったのだと思います。Upload By 立石美津子両親への想いUpload By 立石美津子母ももう80代となりました。母が子育てしていた時代は発達障害という言葉もありませんでしたので、知識も祖父のようにはありません。でも、障害があろうとなかろうと可愛い唯一の孫。そんな愛情をかけてくれる母です。怖い父ではありましたが、シングルでも困らないようにと経済的な面でもいろいろ支えてくれました。生前は折り合いが悪いこともありましたが、亡くなった父の墓前にまいるたび、「本当にありがとう。感謝しています」と伝えています。執筆/立石美津子(監修者・鈴木先生より)昔から「雷おやじ」「頑固おやじ」などと称される父親の多くには、ASD特性があったと思われます。お父様には、食物アレルギーの孫の前でもソフトクリームを食べてしまう自己中心的な面や、パニックになった孫と遊ばずスポーツクラブへ出かけてしまう聴覚の過敏さやマイペースさ、また時間へのこだわりなどがうかがえます。しかし、経済的な面での支えがあったことは救いです。自己中心的な面があっても、娘のことを思いやる優しさがベースにある、一見怖いけれど実は優しいお爺さんだったのだと、お子さんに伝えてあげてください。
2022年07月01日「療育って何?」からスタートした9年前Upload By 丸山さとこ今思えば、息子コウの発達の凸凹は2歳ごろから現れていたのだろうと思います。たまに「あれ?」とひっかかることもありました。ですが、「男の子は言葉が遅いから大丈夫」「気にしすぎないで。お母さんはおおらかでないと!」などと人から言われていたこともあり、「ちょっと変わった子だな」程度に思って過ごしていました。そんな私が療育というものを知ったのは、3歳児健診で療育園をすすめられたときでした。本を読み療育園に通うことで療育について少しずつ知っていった私は、『あれ?ごく当たり前のことが書いてあるな…?』と首をかしげました。家庭内で意識せずに行われていた『療育的な関わり』のこと当時読んだ本が「これから発達障害や療育について知っていきたい親」のための入門書だったのもあるかもしれませんが、「子どもの反応を見る → 予測を立てて関わる → 子どもの反応をフィードバックする」という関わり方は、私にとって拍子抜けするほど普通のことに思えました。Upload By 丸山さとここれは、私自身にASDとADHDがあり普段の生活の中である程度工夫をしていため、療育の入門本に書いてあった関わり方を感覚的に理解しやすかったのもあるかもしれません。また、それに加えて『産まれたばかりの乳児の世話を手探りで行った経験』も関係あったのではないかと思います。まだ首も座らないフニャフニャのコウを世話しながら、泣く・寝ない・上手く飲めない・何をしたいのか何を考えているのか全く分からない乳児という存在を前におののいた覚えがあります。Upload By 丸山さとこ「赤ちゃん(コウ)自身も何をしたら自分が快適になるのか、まだ分からないんだろうな」と考え、「一緒に頑張ろうな~」と声をかけながら関わっていきました。そうするにつれて、コウが『今どんな感じか・何を要求しているか・何に興味を持っているか』が少しずつ分かるようになってきました。そのような観察や試行錯誤の繰り返しが、結果的に”療育的な関わり”となっていたかもしれません。今振り返ると、コウとの付き合いが始まった乳幼児期に「意識的に行った療育的な関わり」として一番にあげられるものは、ハイタッチだったのではないかと思います。乳幼児のころから目線が合いにくいコウでしたが、彼の視線に割り込むと(多分、邪魔だという理由で)機嫌が悪くなり怒っているような様子になるので、彼が見ているものの近くや後ろでさりげなく存在をアピールしたり、ハイタッチして目線を合わせたりしました。Upload By 丸山さとこ手を挙げることやハイタッチはコミュニケーションにも有効でした。子どもの絵本や手遊びには手をあげるポーズが多く、コウが「手を挙げる」行動を模倣するようになったことで、それらの遊びが行いやすくなりました。たまたまバンザイしたときに手のひらへのタッチをすることで「親の手の動きに反応して手のひらにタッチする」を覚えてハイタッチができるようになったコウは、「タッチする度に位置が変わる手のひらにタッチする」という単純な手遊びも喜んで行うようになりました。Upload By 丸山さとこ最初は「動く手のひら」を目で追うのが難しかったり、手のひらの向きが変わると混乱したり、タッチすることばかりに夢中になりよろけそうになったりしていました。そのときどきのコウに合わせて難易度を調節することで、楽しく遊びながら、『今日の調子はちょっと不安定だな』『こんなこともできるようになったんだな』『判断が早くなったな』『難しいことを面白がるようになったな』などとコウのコンディションや変化を感じることができました。コウだけでなく私自身も遊びを通して気持ちの切り替えができ、親子ともども楽しめる良い遊びになりました。また、当時のコウは物への興味が強くあまり人間には興味を示していませんでしたが、ハイタッチは「手のひらという遊び道具」を通して少しずつ「手のひらの持ち主」にも目を向けるきっかけになったのではないかな?と感じます。今でも続く「療育的な関わり」の、変わることと変わらないことその後も、「いくつ?」と聞かれたら「3歳」と答えるような、質問に対して答えるというやりとりを『セリフを言う人の肩に触れる』ことで教えたり、遊具で遊ぶ練習など、いろいろ療育的な関わりをしていきましたが、そんなコウももう中学生。これからは直接サポートすることは段々と減っていくだろう…と思っていました。そんな矢先、先日行われたスクールカウンセリングにて「コウ君のようなお子さんは、中学生や高校生になってからもほかの多くのお子さんよりサポートは必要であり続けることが多く、今のところコウ君もそうである可能性は高いです」とハッキリ告げられ、心の中で泡を吹きました。とはいえ、次第に「療育的な関わり」というよりも、成人の神経発達症(発達障害)がある人に対するような配慮をしていく形になっていくのかなと思っています。Upload By 丸山さとこコウに対する療育的な関わりが当たり前のこととなった今振り返ると、具体的な手法やノウハウや例など、書籍やWebから得られる情報は10年前より各段に増えたなと感じます。それらの情報を取り入れて何とか回している日々の中、「今日はもう何をやってもダメだ…!」となることもあります。そんなとき、生まれたての赤ちゃんだったコウに振り回されたあの疲労困憊の日々を思い出すと、少しだけ初心に戻れそうな気がするこのごろです。コウが中学生になったことで、乳幼児期が遠い思い出になったのかもしれません。執筆/丸山さとこ(監修:井上先生より)丸山さんもおっしゃっているように小さいころの支援と思春期になった今必要とされる支援とは質的にもかなり違ってきていると思います。本人なりに考えて行っていることに対して、すぐに否定しないでいったん受け入れてから一緒に考えていくことなど、本人が自分で問題解決し自立していくのに必要なステップが親御さんとの関わりの中に含まれていると思います。苦手なことに出合ったときにこうやればうまくいくというような方法や環境を、一緒に探していくことで、「困ったときは人に聞いてみてもいいかな」という援助希求や「まあなんとかなるさ」という自信につながっていくとよいですね。
2022年06月30日北海道放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報放課後等デイサービスこぱんはうすさくら札幌太平教室は2022年4月1日に開所しました。友達や仲間と一つ屋根の下で楽しく活動し、入学や就職や結婚など生きる力を身につけることを大切にしている施設です。同じ施設内には児童発達支援事業所があるため、スタッフが長期的な視点で関わり、お子さんにとって「居心地のよい場所」「自分らしくいられる場所」になれるよう、お子さんが興味を引くような工夫を凝らしながら、年齢や成長に合わせて、情緒や社会性の発達に関するプログラムや集団療育を提供しています。北海道の放課後等デイサービスをもっとみる北海道児童発達支援事業所Upload By 発達ナビ施設情報2022年4月に開所した、こぱんはうすさくら札幌太平教室は児童発達支援と放課後等デイサービスを施設内で完全分離した状態で支援を行っている多機能型事業所です。保育士やカウンセラー、音楽療法士など、専門性の高いスタッフを配置し、行動療育や運動機能や知的機能の発達だけではなく、情緒や社会性を育む支援を行っています。土日・祝日や長期休暇など1日を通じて支援を行う日には、外出イベントを多く取り入れ、公園などで思いっきりのびのびと体を動かしたり、施設見学などを通じて社会性を育む支援を行っています。北海道の児童発達支援事業所をもっとみる神奈川県放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報2022年8月1日に開所予定の放課後等デイサービス心音~つむぎ~は、庭のある古民家ののびのびとした空間で、五感を刺激しながら、子どもたちの可能性を引き出し、豊かな個性を育む療育を提供することを大切にしている施設です。お子さんが人と関わりながら、自分らしく安心した毎日を過ごし、将来の生きる力につなげるために、保育士・教員・心理士・精神保健福祉士、スポーツトレーナーの各分野のスタッフが日々検討会議をしながら、支援のあり方を考え情報共有し、お子さんと関わっています。神奈川県の放課後等デイサービスをもっとみる大阪府放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報デイサービスここっと片町は2022年8月に開所予定の児童発達支援事業所と放課後等デイサービスの多機能型事業所です。言語聴覚士、作業療法士、臨床心理士が在籍しているため、お子さん一人ひとりの発達段階に合わせたプログラムや、運動療育・創作活動・クッキング・外出支援などの活動を通して楽しく集団生活や社会性を学ぶプログラム、宿題補助などの学習面のサポートも行われています。さまざまな個性を持った子どもたちが集団生活を送れるよう、馴染めるようさまざまな角度からのサポートが行われています。大阪府の放課後等デイサービスをもっとみる大阪府児童発達支援事業所Upload By 発達ナビ施設情報2022年8月に開所予定のここっと片町では、就学就園前のお子さんの発達段階に合わせて、専門職員がプログラムを提供している、児童発達支援と放課後等デイサービスの多機能型事業所です。さまざまな分野の専門療育の他、読み書きなどの学習面のサポートも行われています。楽しくトレーニングに取り組める環境が整えられており、ゴミをゴミ箱に捨てる、おもちゃを片付ける、着替えなど日々の生活に必要なスキルを身につける支援が行われています。集団生活や社会性を学べるよう、お子さんの成長をサポートしています。こちらの事業所は現在、見学の予約を受付中です。大阪府の児童発達支援事業所をもっとみる「もっと施設の情報を詳しく知りたい!」「見学をしてみたい!」と思ったら、WEBからもお問い合わせが可能です。施設情報ページでは、掲載されている施設の情報を地域ごとに検索して見ることができますよ。
2022年06月30日2歳9ヶ月で通い始めた療育Upload By まる3歳ごろに自閉スペクトラム症の診断が出た息子リュウ。2歳9ヶ月のときに療育に通い出した。そこは集団療育、親子通園(年齢や日数に応じて)を行っている施設で、先生の人数も多くいろいろと相談しやすそうな雰囲気があり通うことに決めた。昨年度は週に2回通っていたが、現在息子は4歳になり保育園もあるので週に1回通うことにしている。療育に通い出したころは教室から出たい、座っていられない、早くお弁当を食べたいで泣いたり逃げたり…。リトミックや親子体操などをやるのだが息子は一切参加しない状態で、「療育に来る意味あるのかな…」と疑問が出てくるほどだった。親子体操とリトミックUpload By まる療育に通い出してもうすぐ1年半になる。療育に行くのが楽しいようで「今日はバスに乗って療育に行くよ」と声かけをすると「バスーバスー」と嬉しそうに自らリュックを背負ってバス停まで向かう。教室に到着するとわが物顔でおもちゃを取り出しのびのびと遊んでいるが、いまだに親子体操は逃げるしリトミックは参加したがらない。しかし変化はある。以前は泣いて嫌がることも多かった親子体操だったが、今は笑いながら逃げ回っている。先生いわく「どんなことをするのか分かっていてやりたくない」のではないかな、とのこと。先生もそんな息子を無理に参加させようとすることはなく、「いいよ~じゃあそこで見ててね!」などの声かけをしてくれたりと、息子の気持ちを優先してくれている。たまに様子を見て誘ってくれたり、息子の手を取って私の代わりに参加させてくれたりしてくれる。捕まえて参加させると楽しそうにニコニコはしているので嫌ではなさそうだがすぐにまた逃げてしまう。リトミックはというと、音楽が流れ出すと耳を塞ぐようになってしまった。耳を塞いでママの足の間にうずくまったり、別の部屋に逃げたりするのだ。ただこれも嫌な表情はせずにニコニコしている。まだ言葉で伝えることができない息子なのでこれの真意はまだ分からないが、無理に参加させることはせずに見守っている。椅子に座ることも長時間はできないが、興味のある絵本の読み聞かせなどにはきちんと座って聴くことができるようになった。家ではというとUpload By まる家に帰ってから療育でのことを生かして何かに取り組んだりなどは特にしていない。たまに気が向いたときにだけ療育でやっていた親子体操をやってみたりするが、息子は興味なくやめてほしそうなそぶりを見せる。療育に通い出したころは、親子体操やリトミックは大体同じ内容を繰り返すから家でもやると早く慣れていいかも!と思ったのだが、家でも嫌がって逃げたので諦めたのだ。1番嬉しい成長Upload By まる1番私が嬉しかったのはお返事ができるようになったことだ。療育で椅子に座った際に名前を呼ばれてお返事をするのだが、通い出したころは「この子はこの先、椅子に座って返事ができるようになるのかな…」と不安になるほどだった。座らせてもすぐに立ち歩き静止すると泣いて怒ったり、呼びかけに対して無反応だったり、目線が別の方に向いていたりなどとにかく反応が返ってこなかった。先生は反応がなくても毎回呼びかけてくれ、たまにハイタッチのみでの返事ができるようになっていった。今は機嫌が良ければ「ここに座って」の指示がきちんと伝わり椅子に座り、名前を呼ばれると手を挙げながら「はーい」とお返事してくれる。これは、療育のほかにも保育園でも毎日の習慣として実践してくれていたからだろうと思う。このように少しずつだけど確実にできることが増えているし、親子登園を通してそれらの成長を確認することができる。実際に息子の成長を見て、こんなことができるようになったんだ!と育てていくことのモチベーションにも繋がっている。執筆/まる(監修:鈴木先生より)やらなくても無理やりやらせず、まず参加できるようにすることが大事です。返事ができるなど何か一つ成果があれば参加したメリットがあったと考えましょう。コミュニケーションの基本は挨拶です。返事ができるようになったら、次は視線は合わなくても相手の方を向いて「こんにちは」「おはようございます」などが言えればいいですね。私のクリニックでやっている音楽療法でも、無理やり参加させず、お子さんがやりたくなったら参加してもらっています。さらに始まりと終わりの挨拶を毎回ルーティーンでやるので、いつの間にか家でも習慣になっているようです。
2022年06月29日大好きな旦那さんのまーくんが突然亡くなってしまい、残された幼い子ども2人を抱えて生きていくことになったせせらぎさん。せせらぎさんの人生は、ここから大きく変わることになりました。どん底にいたせせらぎさんでしたが、幸せになろうと覚悟し、ブログや本を書くなどやりたいことをするようになりました。すると、批判もありましたが、似た境遇の方から、温かい励ましや共感の声が届くようになったのです。ネットでどうしたらいいか答えを探しては見つからず、苦しかったせせらぎさんにとって大きな励みになりました。そこで、せせらぎさんはある行動にでることにしました。旦那が死んだ直後… 死別した方専用のオープンチャットを開設した。 LINEの機能を使ったもので、匿名のIDで参加ができるというチャットルーム。 入るのも出るのも、見るのも見ないのも自由で、気が向いたときに気軽に参加ができるもの。 子どもがいる方いない方、死別後にうつ病を発症した方、彼氏彼女と死別した方、子どもが亡くなった方など、いろいろな方向けにお部屋を作った。 同じような境遇、同じような時期であれば、共感できるものが多いと感じ、開いたルームは現在31個。これは今後も増やしていく予定。 旦那さんのまーくんが突然亡くなってしまい、その直後、ネットで情報集めをしたせせらぎさん。 「幼い子供を残して世帯主が死んだらどうなるのか?」 しかし、答えは見つかりませんでした。 残された子供2人のうち1人は発達障害児でしたが、まったく同じ境遇の人は見つからず途方にくれる日々でした。 しかしブログを開始して、声を大にして自分の状況を発信し始めると、同じような境遇の人がたくさん集まってきたのです。 そこで情報集めに苦悩したせせらぎさんは、同じように旦那さんとの死別後に困っている方向けに、自分が欲しかった情報をまとめて公開することに。さらに目安箱や掲示板を作って情報共有や想いを吐き出せるようにしたのです。また、死別者専用のオープンチャットも開設。 万人を救えるわけではないけれど、「誰かを楽にするものが作れたら」という想いからの行動でした。 頑張ったせせらぎさんは、いつの間にか、必死に生きてきた結果、自由に生きられるようになっていました。旦那さんの死で、人は本当に死ぬと知ったからこそ、いつ終わるか分からない人生の中で、大切にすべきものと、そうでないものを明確にできるようになったと言います。 真に「自分を生きる」ということ、誠に「人を愛する」ということ。 どちらも教えてくれたのは、今はいない旦那さんのまーくんだったのです。 ◇◇◇せせらぎさんのマンガをとおして、大切な人がいる日常が当たり前でないことに気付かされました。そしてせせらぎさんは、諦めないこと、前向きな気持ちや目標をもつこと、毎日を精一杯過ごすことの大切さを私たちに教えてくれたのだと思います。自分の人生は、考え方、過ごし方でこんなにも大きく変わるのですね。毎日を丁寧に精一杯過ごしていきたいですね。著者:マンガ家・イラストレーター せせらぎ
2022年06月28日「グレーを白にしたかった」診断はADHD、LDも大生さんは小さなころから多動や言葉の遅れがみられたが、和枝さんは大生さんの発達の遅れに気付くまでに時間を要した。離婚後、家計を支えようと、看護師の資格を取得するべくパートの仕事の傍ら看護学校にも通っていたため、育児が二の次になってしまったからだ。大生さんは頻繁に忘れ物をし、夏休みの宿題はろくに手がつけられず、外食に行けばじっとしていられず、ときに癇癪を起こしていた。小学校中学年のある日、和枝さんが連絡帳を開くと、中は真っ白だった。授業のノートも見ると、板書のメモは一行だけで終わっており、作文の文字はマス目に収まっていなかった。「どうしてできないのかが分からない」「僕なんてダメなんだ」と、家の柱に頭を打ち付けたり、自分に包丁を向けるなど、自傷行為もするようになっていった。「私もイライラしていたんです。今からでもフツウになれるんじゃないかと思って、とにかくやりなさいって、型にはめようとしていました。グレーを白にしたかったんです。でも、母親として切ないというか、大丈夫かな、ウチの子は楽しいのかなとか。毎日毎日泣いて帰ってくる大生を見て、そんなに嫌な思いして学校に行くならほかの子と一緒じゃなくてもいいかなって思ったんです」(和枝さん)Upload By 桑山 知之ほかの保護者からの指摘を受けて調べたところ、発達障害の特性が当てはまった。発達検査では全検査IQは“普通の中”。スクールカウンセラーのすすめで受診した病院で、ADHDと診断を受けた。学習障害もあった。さらに、医師から「お母さんも“抑肝散”を飲んでみてはどうか」とも提案されたという。抑肝散(ヨクカンサン)とは、精神疾患や神経疾患の補助薬として処方される漢方薬だ。「え、私?って。看護師なのでそれがどういう薬なのかわかるから、驚きました。それと同時に、子どものしんどさの導火線は私が握っているんだなっていうか。この子だけをどうにかしようと思うんじゃなくて、私もこの子のつらさに拍車をかけちゃいけないんだなと思いました」(和枝さん)Upload By 桑山 知之「死んでやる!」どん底で見つけた一筋の光大生さんは地元の公立中学で通常学級に進学したが、遅刻や早退がほとんど。教師の理解は乏しく、よく説教を受けた。クラスでは仲間外れにされ、「遅刻してきたのによく堂々と入ってこれるな」「勉強面で遅れてて終わってんな」などと言われることもあった。登校時間になると嗚咽が止まらなかったりと、休みがちになっていった。大生さんの自傷行為を防ぐため、和枝さんは家中の刃物を隠した。「死んでやる!と言って大生が自分の首を絞めていたこともありました。私も家に帰るのがつらいっていうか…。一緒に死んでもいいのかなって思ったりもしました」(和枝さん)Upload By 桑山 知之中学2年に進学したある日の夜、和枝さんは『坂上どうぶつ王国』(フジテレビ系)でキャリアチェンジ犬のことを知る。キャリアチェンジ犬とは、身体面や性格面など何かしらの理由により介助犬に向かないと判断された犬のこと。かつて犬を飼っている知人の家に行った際、大生さんが柔らかい表情をしていたのを思い出した。「手は尽くした。これしかない」と、日本介助犬協会に問い合わせた。※介助犬…肢体不自由者の日常生活のお手伝いをする犬のこと。盲導犬、聴導犬とともに身体障害者補助犬の1つとして定められている。人懐っこい“魔法使い”がやってきたUpload By 桑山 知之10ヶ月が経ったある日、1頭のキャリアチェンジ犬とマッチングした。名前はオズ。介助犬を目指して訓練していたものの、好奇心が旺盛でほかの犬が好きな性格のため、介助犬には不向きと判断された犬だった。お試し期間として2週間、自宅で一緒に過ごすことになった。和枝さんが「オズにわかりやすいように笑顔で、感情を込めて『よしよし』ってなでるといいよ」と伝えると、大生さんは少しずつ一言添えてなでるようになった。人懐っこくいつも顔をペロペロなめるオズに、思わず大生さんにも笑顔が戻ったのだった。「大生は最初は興味なさそうだったんですけど、だんだん感情を込めてオズに接するようになったんです。大生も笑うんだ…って思ったぐらいでした」(和枝さん)Upload By 桑山 知之さらに、3個下の弟と適切な距離感がつかめずケンカが絶えなかった大生さんだが、オズを介してコミュニケーションが取れるようになった。かつて喫茶店に行くのが趣味だった和枝さんに「俺たち大丈夫だから、喫茶店に行ってきていいよ」と大生さんが言ってくれたり、最近では料理もするという。「(オズを)迎え入れてよかったです。人と違う接し方ができて楽だし、オズと散歩に行ったときに近所の人から空気感が変わったね、って声をかけてもらったり、話したりするようになりました。オズは家族です」(大生さん)Upload By 桑山 知之「最初、見学会でご家族を見たときは空気が張り詰めている感じがありました。でも、犬にはすごいパワーがあって、もたらす効果も大きいんです。その中でもオズはフレンドリーで、マイペースで、明るくて動じない性格だから尾崎さん家族に合うのかなって。オズが来たことがきっかけで変わって、本当に良かったです」(日本介助犬協会・柴原永佳さん)オズが来て半年。これまで集中力が続かず、不登校だった大生さんは自ら勉強に励み、「高校に行きたい」と言うようになった。大生さんは現在、専修学校2年生。専門課程までの5ヶ年一貫教育を経て、就職できるよう力をつけていく。「自分で働いて、自分が暮らせる分ぐらいは稼げるようになってほしい」と和枝さんは願っている。Upload By 桑山 知之Upload By 桑山 知之平成元年愛知県名古屋市生まれ。慶應義塾大学経済学部在学中からフリーライターとして活動。2013年に東海テレビ入社後、東京支社営業部を経て、報道部で記者/ディレクター。2018年から公共キャンペーンのプロデューサーとして「いま、テレビの現場から。」や「見えない障害と生きる。」、「この距離を忘れない。」といったドキュメンタリーCMを制作。主な受賞歴は、日本民間放送連盟賞CM部門最優秀賞、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSゴールド、JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール経済産業大臣賞、ギャラクシー賞CM部門優秀賞、広告電通賞SDGs特別賞など。取材・文:桑山知之取材協力:若者支援ネットワーク研究会in東海(監修・井上先生より)家族関係の中に動物が介在することで、共通の話題やプラスのコミュニケーションが生まれてきます。また、家族同士の関係性や価値観も変わってくるのだと思います。今回のケースでは、オズ自身の性格もさることながら、キャリアチェンジをして頑張っているオズという存在自体が、「チェンジしたい」と願う家族それぞれが自分と重ね合わせることで大きな力になったのではないかと感じました。
2022年06月28日こだわりが強く、心配性な長男長男は現在小学2年生。年長のときに自閉スペクトラム症やDCD(発達性協調運動症)などの診断を受けました。性格は特性も関係しているのか、こだわりが強く融通が利きにくく、また慎重で真面目で過剰なぐらい心配性で、不安感も強く怖がりです。そして、独り言が多く過剰に喋る所があります。もともと優しく世話焼きな性分なので、過剰なぐらい世話を焼いたり、小言なども多い長男。学校や学童では次男の世話を焼き過ぎるぐらい焼いては、次男に「うるさい!」などと言われているようです(苦笑)。私と実母、実父との関係私と実母(子どもたちにとっての祖母)の関係はあまり良いとは言えません。私自身バツイチなのですが、離婚の際には世間体を気にして大反対、今の夫(夫もバツイチです)のことも最初から受け入れてくれず、その後生まれたわが子たちに関しても「孫だとは一切思わないし会いたくもない!」と言い張っていると実父から聞いていました。母は障害への偏見も強く、元々好き嫌いをハッキリ態度に出し、一度相手のことを嫌い!となるとそれ以降は一切受け入れないので、そもそも「会いたくない」と言っているのに、障害のある長男を受け入れてもらえるかは心配の種でした。実家が遠いこともあり、頻繁には会わないのですが、対照的に父は「会ったことがない孫であっても孫には変わらないから」と毎月仕送りをしてくれています。御礼の電話の度に子どもたちと楽しそうに話す様子を見て「父はやっぱり孫に会いたいのだろうな…」と私も夫も申し訳ない気持ちになっていました。家族旅行で実家のある県へ。そこで両親に会い…そんなある日、家族旅行で実家のある県へ行く機会がありました。仕送りしてくれている父への感謝を会って伝えたい。せっかく近くまで行くのだから、両親に孫を会わせたいと考えました。実家で会うよりも外で会う方が良いだろうと、宿泊しているホテル近くの駅で待ち合わせて、喫茶店で話すことにしました。喫茶店で自己紹介をするやいなや、定型発達の次男は当たり前のように私の両親の間に座り、うれしそうに2人と手をつなぎました。甘え上手な次男のニコニコと人懐っこい様子に、二人は「可愛い、可愛い」と目を細めました。一方長男は、様子を伺いオドオドして、私の手を離しません。父が長男に少し質問したら、関係ないことまで話し出したり、独り言を言いはじめたりといつもと違う環境に興奮気味なのか声の大きさの調節もできずにいました。Upload By 発達ナビ編集部長男がパニックを起こしてしまい…次男と夫がトイレで席を立つと、母から責めるような言葉を投げかけられました。長男の様子が気に入らなかったのでしょう。場の空気が張り詰めたキツイ感じになりました。そんな母を父は諫めてくれたのですが、長男は場の雰囲気を感じ取りパニックを起こし大声をあげて号泣してしまいました。私は長男を抱き締めて「大丈夫だよ。喧嘩じゃないからね。ママはここにいるよ」と背中をさすり続けました。Upload By 発達ナビ編集部その間もずっと母から「小さい子じゃあるまいし泣き喚いて恥ずかしい」「何話してるのかさっぱり分からないし、独り言をずっと言ってて気持ち悪い」「甘やかしてるからそうなるんじゃないの?障害だからって周りの人にも迷惑でしょう?」など厳しい言葉を言われ傷つきましたが、ただ長男の背中をさすって母の言葉をやり過ごし続けました。昔からこう言う人だからと、あきらめていたのだと思います。それを聞いていた父は、優しい口調で「ビックリしたんやなぁ。電話で毎月じぃじと話してるけど初めての土地で初めて顔合わすし、そら怖いやろう。でも、じぃじは泣いてもその顔すらもうれしいんやでぇ。それだけ大きい声で泣けるんは元気な証拠やぁ。お前もよう頑張ってるなぁ。2人を見れば分かるよ。大変やと思うけどえぇお母さんやっとる。頑張っとるなぁ」と長男の頭をなでてくれました。父が話してくれたこと夫と次男がトイレから戻ると、父が持病のかかりつけの医師に、長男の発達障害について話したときのことを教えてくれました。なんと父自身、多動傾向があり衝動性が強く、集団生活が苦手で会社を辞め自営業に転職したことや、国語はからっきしなのに、計算だけはものすごくできたというのです。医師に「ご自身も発達障害の傾向があったのかもしれませんね」と言われたと話してくれました。それを初めて聞いた母は「なんでそんなこと言い出すんよ?!そんなわけないやろ?!」と苛立って声を荒げました。父はしれっとした感じで「障害があろうとなかろうと、この子はこの子でただの個性や。それをぐちぐち言える権利が俺らにはないんやで?この子のありのままを受け入れてやらんとやろ?」と泣いている長男の手を取り何度もさすってくれました。その言葉がとてもうれしく、涙がこぼれそうになりました。Upload By 発達ナビ編集部次男も「お兄ちゃんはね、パニックになってるだけなの。優しくてね、僕の自慢のお兄ちゃんなの。だからねチクチク言葉はダメなんだよ?」と母に言うと、母は父と次男に「自分が悪いの?」と非難するような視線を送りました。父は「何も気にすることはないし、この子はこの子。しっかり育てるんやで」と笑ってくれました。母だけが納得のいかない表情をしていました。長男の優しさに触れて別れる時間となり、みんなで両親を駅まで見送りに行きました。母は数ヶ月前に足を骨折してから、骨粗鬆症もあり治りが悪く、足を引きずるようになっていました。父からも母が週5だった仕事を週3にしていることを聞いていたので子どもたちにも「ばぁばはね、足が悪いからゆっくりしか歩けないんだよ。抱っこをねだったり、手を引っ張って急かしたらダメだよ」と言い聞かせていました。父と母と手をつないで歩いていた次男がふざけて手を引っ張り駆け出そうとしたりしていたのを見て、長男が「そんなことをしてはダメ!」と強い口調で言いました。その後、母の元に駆け寄ると「ばぁば、足痛いんでしょ?大丈夫?弟がごめんね。無理しないでね」と顔を見上げ心配そうに声を掛けていました。母は驚いて戸惑うような表情をしていました。先程パニックを起こした長男の様子を見ていたので、そんな気遣いができるなんて想像できなかったのだと思います。その様子を見た父は、目を細めて微笑みながら長男の頭をなでて、母に「この子は優しい子やないか?違うか?」と言い、「ありがとうな。ばぁばを気遣ってくれたんやなぁ」と長男をたくさん褒めてくれました。母は父の言葉に目を伏せて黙って頭を垂れていましたが、「ありがとうね。心配してくれたんやね」とそのときに初めて長男と言葉をかわし、頭をなでてくれました。駅に着き、別れたあとも両親は改札の向こう側から何度も振り返り、手を振ってくれました。Upload By 発達ナビ編集部母に対して思うことすぐさま、母の認識や価値観を変えるのは難しいと思います。ですが、最後に長男の優しさに触れて、長男自身を見てくれた、と少しだけ安心しました。完全に解決したとはまだまだ言えませんが、少しばかりは母との関係も前進したのかなと感じています。エピソード提供/みぃこイラスト/SAKURA(監修:三木先生より)優しいお祖父様ですね。ご自身が苦労をされて、そしてそれを悩みながらを乗り越えられた経験のある方は、同じような困難を持つ人に受容的になれますよね。またお祖母様も長男さんと気持ちのこもったやり取りができることによって、「障害」というフィルターを外したコミュニケーションができたんですね。こういう関係を積み重ねていくことで、またみなさんの関係が良くなっていくのだと思います。あなたのエピソードもコラムになるかも?体験談募集中!保護者の方が日々子育てをする中で「こんなトラブルがあった」「こんなハプニングがあった」など悩みはつきないと思います。そんな発達ナビユーザーのみなさんの「困った」エピソードを募集しています。テーマは「反抗期・思春期」「自傷」「学習」「不登校」「ゲーム」「不器用」「ママ友・保護者」「ご近所トラブル」などに加え、今回より「パートナーや両親(義両親)、親族間トラブル」「冠婚葬祭」のお悩みも追加募集!パートナーなどとの意見の相違、冠婚葬祭でのルールが分からない、反抗期による親との言い争い、癇癪を起こして自分の頭を叩く、地団太を踏むなどの自傷行為…読み書きや計算の困りはもちろん、授業を落ち着いて受けられないなどの学習の悩み…行き渋りや不登校などの悩み…いろいろなお悩みエピソード、お待ちしております。お寄せいただいたエピソードの中から数作品、発達ナビの連載ライターさんにコラムとしてコミックマンガエッセイ化していただき、発達ナビで公開いたします!あるあるのエピソードからヒヤリとしたエピソード、SNSなどではなかなか言えないような家族やママ友とのトラブルまで。いろいろな「困った」エピソードをぜひ教えてください。
2022年06月28日指さしは、「もの」と「ほかの人」とのコミュニケーション手段「指さし」は、自分と対象物との間に、誰かが一緒にいるときにする動作です。自分が見ているものを、「とってほしい」「見てほしい」といった思いを一緒にいる人に伝えたいという気持ちがあるためにとる行動です。自分の興味がわかないものを指さすことはなく、興味をもったものをほかの人と共有したいという欲求がなければ、やはり指さしをするという行為に繋がらないでしょう。では、指さしをするようになるまでには、どのような心と体の成長段階を踏むのでしょうか。赤ちゃんは、周りの人と視線が合ったときに、笑いかけられたり呼びかけられたりすることで、自分がここにいることに気づきます。自分も視線を見ている人に向けて、笑い返したりすること、すなわち「アイコンタクト」をします。ここで、自分と相手(多くは保護者)との関係が生まれます。やがて、赤ちゃんは周りにある物に触れようとします。触れた物を握る力がつけば、手に持ってみて、振ってみたときに音が鳴ることを知ったり、手を離すと物が落ちるといったことも経験します。ここで、自分と物との関係が生まれます。自分と大人/自分と物、それぞれの間にある関係を専門用語で「二項関係」と呼びます。やがて、二項関係があることによって、やがてもう1つ別の関係があらわれます。周りにいる人が自分のほうではなく、少し離れたところにあるぬいぐるみに気づいて視線を動かすとします。するとそこには自分とその人だけとの関係ではなく、もう一つ別の要素が入ってくることになります。自分ではなくぬいぐるみを見ている、ということに気づいたときに、自分と相手とぬいぐるみという3つの「三項関係」ができます。ここが心の発達についてとても大事なポイントとなります。三項関係ができることによって、相手が見ている視線の先を、子どもは追いかけるようになります。これを視線追従といいます。相手が見ているのが自分ではないとき、その視線の先にある物が電車のように動くものであれば、子どもは動くものに興味を引かれて電車を見るといったことがあります。ここで、相手が見ている視線の先にあるものを「指さし」をします。そのとき、子どもは目の前に出された手や指ではなく、指が指し示す方向を見るかどうかが、発達の成長をみる大事なカギとなります。指と対象物の間に視線を導く線のようなものはなくても、その指さした先を目で見ることができれば、自分と物の間にある空間を理解できたということになります。1歳6ヶ月健診では、指さしの確認をすることが多くあります。それは自分と他者とそれ以外の物の三項関係ができるか、指さした先を追うことができるか、といったことを見ています。「指さし」の意味は1つではありません。成長に伴う「指さし」の意味指さしの成長には段階があります。段階を追ってみてみましょう。9~10ヶ月ごろから、「ねこちゃんだよ」と言われて、指さされた方向を見ることができるようになります。それまでは出された指を見ているのですが、指さした先に何かがあるということに気づくことで対象物の方を向く「指向の指さし」ができるようになります。11ヶ月ごろから、自分が興味をもったものをほかの人に伝えるために「あっ! あっ!」と言いながら、まさに自発的に指さします。 指さしたものや手を伸ばした先にあるものを、ほかの人が一緒に見てくれると分かることで、コミュニケーションの楽しさも知るようになります。1歳ごろから、自分が興味をもったというだけでなく、「ほしい」という意思をこめて指さします。ほしいものを取ってもらいたい要求の手段としての指さしになります。1歳~1歳6ヶ月ごろから、何かを見つけたときに、「あっ!」と言ったり、発語があれば「わんわん!」と言ったりしながら指さして、一緒にいる人に伝えようとします。指さしながら相手の表情を見て、興味や感情を分かち合おうとします。このことは社会性の発達が成長していることも意味します。1歳6ヶ月ごろから、たとえば絵本などを見ながら「犬はどこにいるかな?」と聞くと、その対象物を指さすようになります。これを「応答」の指さしといいます。また、「お母さんはどこ?」と聞くと、隣の部屋にいて姿が見えなくても、いる方向を指さします。質問に答えるという、もう一歩進んだ指さしです。身体的成長の指さしところで、ここまでは心の成長によってできるようになる「指さし」を説明してきましたが、身体的な成長によっては指さしがうまくできない場合もあります。人差し指を1本だけ立てて、ほかの指を曲げるという動きが難しい場合、手のひら全体を使って方向を指示することも「手ざし」と呼んで、同じ役割と考えます。コミュニケーションとしての指さしは、必ずしも人差し指を立てなくてもいいわけですが、もし、不器用さで指さしの形がつくれないという場合には、少し練習してみてもいいでしょう。発達障害、知的障害などがある子どもの場合の指さしの特徴は?発達障害や知的障害があると、指さしの発達が遅れる、あるいはしないことがあるといいます。それはなぜなのか、指さしをするまでの成長を振り返ってみると分かるかもしれません。「指さし」をするのは、周りへの興味や欲求があるということ。発達障害や知的障害がある場合、周りへの興味が薄ければ、指さしをすることがないかもしれません。また、自分が欲しい物を示す「要求」の指さしや、聞かれた物事についての返答としての「応答」の指さしはできても、人への関心が薄い場合には、「あれを一緒に見たい」という「共感」の指さしをしない場合もあります。指さしをしても、指と物との間にある空間を理解できなければ、指さしの意味が分からない、気づかないということも。こうした場合、たとえばとってほしい物がある場合など、周囲の人の手をとって対象物のところまで誘導する「クレーン行動」をすることがあります。自閉スペクトラム症のあるお子さんによくみられる、指さしの代わりにする行動で「クレーン現象」とも言われています。クレーン行動は、発達障害のある子どもに多くみられるといわれますが、クレーン行動をするからと言って必ずしも発達障害がある、というわけではありません。発達障害ではなくても、まだ言葉を使って自分がしたいことをうまく伝えられない時期は、ただ泣くという方法も含めて、どうしたら自分の意思を伝えられるかを学んでいる最中。そのときにもクレーン行動があらわれることがあります。心身ともに指さしの力を育むためにクレーン行動がみられるなどの場合には、指さしの意味に気づくための練習が必要なこともあります。指さしができることによって、子どもの意図が周囲に伝わりやすくなるなど、子どもにとってもメリットがあるでしょう。では、どのように練習したらいいでしょうか。まずは大人が指さしのお手本をやってみましょう。ぬいぐるみや絵本などを目の前において、指さししながら「かわいいね」「わんわんだね」と言ってみます。「一緒に見ようね」と注意を引きながら行いましょう。次に子どもが指や手で何かを示したときには「あったね!」「ここにいたね」「大きいね」など、一緒に見ているよ、ということについて反応しましょう。指さしても特に反応しないでいると、指さしの意味がわからなくなってしまいます。手を伸ばしたときに指さしの形になっていない場合には、さりげなく指さしの形に導きましょう。このときは、人差し指以外の手をそっと手で覆ってあげて、自然と指が曲がるように教えてあげます。また、指を順番に1、2、3…と立てていく練習をしたり、親指と人さし指でOKサインの形をつくって人さし指だけ伸ばしたりなど、楽しみながら指を1本ずつ動かす体操を一緒にやってみます。おもちゃと絵本を置いて、どっちで遊ぼうか? と聞いてみます。子どもは自分の興味があるほうに手を伸ばします。指をささなくても、「こっちがいいのね」「選べたね」とほめてあげてください。指さしはできるかもしれないのに、大人が「あなたにはこれがいい」ということを決めてしまう場面が多いと、子どもは自分の意思で選ぶことをしなくなってしまいます。たくさんの種類があるものを並べて、あるいは表示されているところで、どれがいいのかを選ばせてみましょう。指さしの練習には、動画や絵本を活用してみましょう。YouTubeなどで「指さし練習」と検索すると、アニメーションなどを活用したさまざまな動画が上がっています。ただし、動画の音声があったとしても、一人で見させっぱなしにはしないで、大人が近くにいて、「どれかな~?」「できたね!」など、肉声で声をかけるようにしましょう。まとめ「指さし」は、自分がしたいこと・してほしいことを他者に伝えるために大事なコミュニケーション手段です。身体機能の面からも、心の発達の面からも、成長が必要な場合もあります。また、大人が何もかも子どもの行動を決めてしまって、自分で「選ぶ」ことができないと、指さしも成長しないかもしれません。豊かな選択肢の中で自分らしさを選びとるためにも指さしは大事な動作です。指さしができるようになる環境をつくっていくことも重要です。
2022年06月27日理科と社会のプリントをやりたがらない息子Upload By かなしろにゃんこ。ADHDのある息子のリュウ太は、”気がのらないことは意地でもやりたくない”というところがありました。特に小学校の「せいかつ」の科目が苦手で、自分から学ぼうとしませんでした。担任の先生からは、「授業中は絵を描いたり工作をしたりして自由時間のように過ごしていますよ」との報告もありました。小3になり「理科」「社会」の勉強が始まると、ますます興味をなくすリュウ太。プリントをやらなかったりノートを取らなかったりするので、どこまで理解できているのか母には分からず、心配になっていました。リュウ太はもしかしたら1、活字を読むことが面倒くさい?2、問題の意味が分からないこのどちらもあるのではないかと考えました。Upload By かなしろにゃんこ。(ならば、学校のプリントよりも簡単な問題集をつくってみたら学んでくれるかも?)と思った私は、その日から夜なべしてプリント制作をスタートさせました。社会では、小学3年生から地図記号を勉強しますが、地図記号に出てくる港や果樹園、灯台や工場など、リュウ太は実際に見たことがなくて記号と想像が一致しなかったのかもしれません。そこで、「港はなにをするところ?」「果樹園はなにをつくるところ?」というようなイラストと関連性がある文字を線でつなぐオリジナルの問題プリントをつくりました。Upload By かなしろにゃんこ。リュウ太が苦手に思っている理科や社会という科目でしたが、線つなぎのオリジナル問題は、問題文も短く簡単で、「楽しい!」とよろこんでやってくれました。学校から帰ると毎日、母がつくった問題プリントをやる息子。「お母さんのプリントおもしろいからもっとやりたい」とまで言ってくれて感激しました。教科書を見ながら息子のレベルに合わせた問題を考えるのは時間がかかり寝不足になりましたが、息子が楽しんでくれることがうれしくて、調子にのって毎日つくっていました(笑)。線つなぎや図で表してある問題ができるということは、(アレ?リュウ太は理科や社会に興味がないわけじゃないのかも!)と気がつきました。Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。しかし、夜なべの無理が続いたことで疲れがたまり、わずか2ヶ月で母の自作プリント制作は終了となりました。ちゃんちゃん☆(泣)楽しんでできる問題集なら、たくさんやりたいという意欲が息子にあることが分かっただけでもヨシとしました。今から10年くらい前のエピソードです。そのころから発達障害がある子のための知育教材や学習教材はあったと思うのですが、私自身はその存在を知らずにいたためにいらぬ努力をしてしまいました。でも、息子が苦手な科目の全てができないわけではないこと、何ができないのか知ることを考えるきっかけになった気がします。Upload By かなしろにゃんこ。そんな息子でしたが、16歳から20歳まで車の整備士になる学校に通っているときに電気や機械系を学んだので、理科や社会の苦手はある程度克服したのではないかと思います。母の見立てですが、そうであってほしいと願うのでした(笑)。執筆/かなしろにゃんこ。(監修:初川先生より)リュウ太くんの興味関心の持ちにくい科目へ、自作の問題・プリントを作成されたとのこと、すごいですね…! 問いと答えが一対一対応の問題(線つなぎ)であること、読み・書きの負担が少ないことなど、お子さんの好みを把握されているからこそうまく機能したのだと感じました。生活科や理科、社会などは、活動的な内容が多く、多くのお子さんが興味を持ちやすいと思われている面はあります。ただ、発達的な特性を強くお持ちのお子さんの中には、そうした科目を苦手とするお子さんもいます。特に、生活科は、その時間で何をやるのかの予告があまりなされないことが多かったり、何が「正解」なのか分からなかったり(「自由にやってみよう」といった指示が苦手/観察と言われても、見たままを絵や言葉で描写するのはなかなか難しく、取り組む前に心が折れそうになるなど)、苦手なお子さんにとっては、なかなかつき合いづらい科目かもしれません。知識インストール型の方が得意なお子さんや、答えが一つでありそれを選ぶ(当てる)方が取り組みやすいお子さんには、かなしろさんのようなサポートをきっかけに興味関心を持ちやすくなることもあるように感じました。たしかに今はさまざまな教材が市販されていたり、ネットでダウンロード可能であったりもしますね。ともあれ、お子さんの特性・好みを見極めて、教科の学習との橋渡しとすること。素敵なサポートだなと感じます。
2022年06月27日成長がのんびりで悩んだ日々のんびりした子だなと思っていた長男けんと。1歳半健診で指摘を受けて発達の遅れを知りました。どこに行けば、お友達と関わる機会をつくれるのか、どうやったらできることを少しでも増やしていけるのか、方法が分からず悩む日々。誰かに相談しても「男の子は成長がゆっくりだから」と心に寄り添っていただいたもののモヤモヤはおさまらず、市の発達相談へ行くことに。そこで勧められたのは、市の親子教室。すぐに通わせていただくことにしました。Upload By ゆきみ親子教室の懇談会で「リョーイク」という言葉を耳にしました。初めて聞く言葉で意味が分からず、家に帰ってからインターネットで調べてみると『発達に不安を抱える子どもの特性に応じて、困りごとの解決や社会参加に向けて支援すること』というような内容を目にしました。「これだ!」と衝撃を受け、すぐに近くの発達支援施設を調べ、いくつか見学へ。それと同時に、療育を受けるにあたり必要な手続きをとり始めたのです。複数の民間の発達支援施設へ通うことに当時住んでいた地域では、療育を受けるには発達支援センターで面談をすることが必要でした(お住まいの地域によって違うようです)。担当の方が、けんとの様子をみて私からの聞き取りをしたあと、総合的な判断で受給者証を発行していだけることが決定。このころは、まだ病院での診断を受けておらず、療育手帳をもっていない時期でした。どんな施設があるのか調べていくと、・預かり型の小集団タイプ(内容はミニ保育園のようなイメージ)・体を動かすことをメインにしている運動特化型タイプ・苦手なことを集中的に教えてくださる個別療育タイプ・集団と個別を両方行うタイプなど、いろいろな種類の施設がありました(地域によって異なるようです)。Upload By ゆきみ専門家がいらっしゃる施設はキャンセル待ちになっていることも多く、空き状況は施設によって違いました。実際に見学に行き、けんとに合っていそうな預かり型の小集団タイプ、運動特化型タイプ、個別タイプに月に数日ずつ通うことにしました。ひと月に使える日数の上限が受給者証の発行時に決定されるため、範囲内で必要なサービスを組み合わせることができるようです。市立の発達支援施設で親子共に感じた成長年少の年齢のとき、受給者証を利用して通う、市立の児童発達支援センター「A園」に入園。ここは週に5日間通う(単独通園)発達支援施設で、幼稚園や保育園などと併用ができない施設でした。幼稚園に通わせたいと夢を抱いていたため、多少心の葛藤がありましたが、子どもの成長を願い入園を決意。1クラスに子ども10名、先生4名。全部で7クラスほどの、先生が多い保育園というイメージ。月に1度、言語聴覚士さんによる個別訓練、2ヶ月に1度、作業療法士さんによる個別訓練を受けられました。普段から、専門家の先生方もクラスに参加してくださり、課題をみつけ、遊びの中で療育に取り組んでくださいました。Upload By ゆきみほかにも月に1~2回、親に向けての勉強会や、年に2回の臨床心理士さんによる発達検査も行われました。運動会、遠足、お楽しみ会、誕生日会などの幼稚園、保育園でやるような行事もたくさんあり、私もけんとも楽しく通うことができました。年中から地域のこども園に転園したので通ったのは1年間でしたが、子どもの成長をとても感じましたし、発達の悩みを抱えるママ友ができ、私自身も学ぶことが多く、通ってよかったと心の底から思いました。相談できる場所があることで心の安心に年中でこども園に転園してからは、週4日、園のあとに発達支援施設に通いました。引っ越しも経験し、地域によって療育の種類や施設数の違いがとてもあることも分かりました。以前、住んでいた地域は小学生になると個別のプール療育、音楽療育、プログラミングなど、好きなことで楽しく学んでいく施設もありましたが、今の地域にはありません。Upload By ゆきみ民間、市立にかかわらず、施設の先生は子どもの小さなことも逃さず見てくださる方が多く、「できた」が増えたときに一緒に喜んでくださる先生方の存在は私にとっても大きいです。何より、私が不安に感じること、どういう対応をしたらいいのか悩んでいるとき、すぐに相談できる方がそばにいるというだけで心の安心につながっています。親が教えようとすると、ついできないことにイライラしたり、落ちこんでしまったりするけれど、先生方にお任せすることによって、心が楽になる部分もたくさんありました。これからも通っている施設の先生方と情報交換をしながら子どもの成長をサポートしていけたらと思っています。執筆/ゆきみ(監修:初川先生より)「療育」という言葉を知らなかったころから、現在までのさまざまな機関・施設への通所経験のシェアをありがとうございます。療育とは元の意味では「治療しながら教育をする」ということです。苦手なことをトレーニングしたり、発達を促したりしながら、その発達段階に合わせたさまざまな経験をしていくということですね。言語面、運動面、心理発達面など、さまざまな領域から子どもの発達をみる・語ることができますし、それぞれの専門家もいるので、どの施設でどのような療育を受けるのがいいか、悩ましいところです。そして、ゆきみさんも書かれているように、そうした地域のリソースは地域差が大きく、全国どこでも同じようなサービスが提供されているとは言い難いのが実情です。ただ、ゆきみさんも書かれていましたが、「先生方」は発達のゆっくりなお子さんへの対応に慣れていたり、専門的な知見をお持ちであったりして、「小さな目盛り」でお子さんのことを見て、褒めて、それを保護者に伝えてくださることが多いと思います。忙しい中では見過ごしてしまうような小さな、しかし、確実な成長も見つけていただけるのはありがたいですね。そんな先生方の「視点」から、こちらの視野も広がり、お子さんを見る眼差しが温かくなることもこれまで多々あったことと思います。困ったときに相談しやすいことも、週に複数回通うことのメリットだと思います。また、横のつながりができることもありますね。同じく悩みを抱えながら子育てをしているお仲間ができることも心強いですね。
2022年06月27日SSRIはどんな薬?適応となる症状は?SSRIとはSelective Serotonin Reuptake Inhibitor(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の頭文字をとったもので、こだわり行動、うつ、不安障害、場面緘黙、潔癖症などの症状緩和に使われる薬剤です。発達障害のある子どもには、「自分が一番にならないと気が済まない」「方法や手順などに自分の中での確固としたルールがあり、状況に合わせて柔軟に変更することができない」「一つのことに集中しすぎて周囲が見えなくなる」と、いった特性が見られることがあります。これが「こだわり行動」といわれるものです。不安障害は、突然理由もなく激しい不安に襲われ、心臓がドキドキしたり、めまいがしてふらふらしたり、呼吸が苦しくなってしまうといった症状で、パニック障害とも呼ばれます。場面緘黙とは、家族などとは問題なくおしゃべりできるのに、幼稚園や学校など特定の場所になると話せなくなってしまう症状です。ただ、一口に「こだわり行動」と言っても、その程度はさまざまです。環境を整えたり、周囲が発達障害の特性を理解して接することで、生活に支障がない程度に改善できることも多いでしょう。その一方で、こだわり行動や突発的な不安からイライラが募り、自分や他者への暴力的な衝動に駆られたり、外に出られなくなったり、といった問題がある場合には、薬の力を借りて症状を緩和させることも選択肢の一つです。SSRI(フルボキサミン)の投薬の適応となる症状には、ほかにも強迫性障害、潔癖症などが挙げられます。強迫性障害は、「十分に洗ったのに、くり返し手を洗い続ける」「持ち物がなくなっていないか、何度も確認してしまう」「服が少しでも汚れると、全部着替えないと気が済まない」といった行動となってあらわれます。また潔癖症があると、人が使ったものがどうしても触れなかったり、手指が汚れるのが嫌で手づかみで食べることができない、といった困りごとがでてきます。SSRI(フルボキサミン)の効果・効能は?SSRIには、脳内の神経間でセロトニンという神経伝達物質の再取り込みを阻害する効果があります。セロトニンには心のバランスを整えてくれる働きがあることから、「幸せホルモン」の異名でも知られています。セロトニンが不足すると、気分が落ち込んだり、不安を感じたりしやすくなると言われています。SSRIは、セロトニンの再取り込みをしにくくすることで、脳内のセロトニンの量を安定させ、気持ちを穏やかにする働きをします。SSRIにはいくつかの種類がありますが、本記事ではこだわり行動、うつ、不安障害、強迫性障害などに使われる「フルボキサミン」について見ていきましょう。SSRI(フルボキサミン)は、日本では「ルボックス」「デプロメール」の商品名で販売されている錠剤です。また、「トーワ」の商品名で、ジェネリック薬も出ています。いずれも8歳以上の小児の強迫性障害にも使用が認められています。SSRI(フルボキサミン)の用法・用量は?SSRI(フルボキサミン)の錠剤には、25mgのもの、50mgのもの、75mgのものの3種があります。8歳以上の子どもがSSRI(フルボキサミン)を服用する場合は、1日1回、就寝前に25mgの錠剤1錠からスタートします。1週間以上継続したのちに、朝に25mg1錠、就寝前に25mg1錠、合計50mgに増やします。薬の量は、年齢や症状に応じて医師が判断し、1日合計150mgを超えない範囲で増減します。ただ、増量する場合は、1週間以上の間隔を開け、1回ごとの増量は25mgまでに留めるように推奨されています。医師は、必要最小限の服用で効果が出るよう、慎重に経過を観察しながら処方量を調節します。自己判断で勝手に薬の量や回数を増やしたり、減らしたりしないことが大事です。副作用の心配はない?子どもへのSSRI(フルボキサミン)の投与で最も懸念される副作用は、自殺念慮、自殺企図があらわれる可能性です。24歳以下の患者に投与した場合に、リスクが増加することが報告されています。子どもがSSRI(フルボキサミン)を使う場合、保護者は自殺念慮や自殺企図があらわれる可能性についてきちんと知っておくことが重要です。そして、担当医と緊密に連絡を取り合いながら、経過を見守ることが大切です。自殺念慮、自殺企図のほかに、下記のような副作用があらわれることもあります。・眠気・吐き気・悪心・口の渇き・便秘・めまい・ふらつきまた、投薬を急に中止したり、急激に減らしたりすると、頭痛や吐き気、めまい、不安感、不眠、集中力の低下などがあらわれることも報告されています。服用を止めるときにも、徐々に減量していくなど、医師の指導に基づいて慎重に行いましょう。親子で抱え込まずに、医師に相談をASDなどの発達障害による特性は、個人差も大きいものです。また、成長するにつれて、特性が変化していくことも大いにあります。ただ、強いこだわりや不安、過度の潔癖症などによって、日常生活に困難を抱えている場合は、薬によって症状を緩和していくことも検討したい選択肢の1つです。困りごとを抱えたままでは、強いストレスにさらされ続けることになったり、失敗や挫折が続くことで自己肯定感が低下たりすることが考えられます。そうした状態が長く続くことで、身体的不調、うつ症状、不登校やひきこもり、暴力といった二次的な問題に発展してしまうこともあります。笑顔で過ごせる時間を増やしていくためにも、家庭のなかだけで抱え込まずに、医師や専門家に相談することが大切です。 そして、投薬をする場合は、副作用のリスクなどもしっかり理解したうえで、医師と手を取り合いながら適切な服用をしていくことが重要です。参考:日本薬局方 フルボキサミンマレイン酸塩錠|ニプロ株式会社医療用医薬品 フルボキサミンマレイン酸塩|KEGG データベース
2022年06月26日義実家に帰省して言われた言葉わが家の娘は現在小学5年生です。特に診断などはおりていませんが、昔から切り替えが苦手だったり、集団だと指示が入りにくいなどという特性がありました。子どもが4歳のある日、私たち家族は夫の実家に帰省をしました。義実家で子どもとともに楽しく過ごしていました。ですが、このころの娘は食事をあまり食べない時期でした。そんな娘を心配して、どのようにしたら食べるようになるのかと試行錯誤をしましたがなかなかうまくいかず…それに加え共働きということもあり、私自身心の余裕がなく、しつけができていないことが問題なのかと悩んでいました。ですが、無理矢理に食べさせて娘が食事自体を嫌いになってしまったら元も子もないと思い、当時は娘の望むまま、私のひざの上でごはんを食べさせていました。Upload By 発達ナビ編集部義実家での食事の際、慣れない環境もあり今日もいつもと同様にひざの上で食事をとる娘。そんな娘を見て義母は決めつけるような物言いで「この子はいじめられるよ!ちゃんと見てあげて!ADHDかもしれないから病院にいけ!絶対発達障害だ!」と言い放ちました。普段から思い込みで決めつけることがよくある義母。何故そんなことを言われなきゃならないの?私のしつけが悪いから?発達障害はしつけが原因ではないですが、そのときの私はあまりのショックに言葉を失ってしまい、予定を早めて自宅へ帰ることにしました。Upload By 発達ナビ編集部娘が小学校入学前には…その後も娘が小学校入学前に義実家の行事の準備の手伝いで私一人で訪ねたときには、親戚と私の四人くらいでの作業中に「あの子は先生に怒られるタイプだから」などと言うことがありました。Upload By 発達ナビ編集部義母は会うたびに、娘について気になる点を私に必ず指摘してきます。実の息子である、私の夫には一切言いません。夫は仕事がとても忙しいので、元々娘のこと以外のことも、すべて私を通して話してきます。夫は義母に対してなにも言ってくれないものの、娘についての発言は不愉快に感じているようです。大事にしてくれているのは分かるけどとはいえ、義母が、私や娘のことが嫌いなわけではない、ということは伝わってきます。おそらく義母にとって、娘は自分の知らないタイプ、理解しがたいタイプの子どもなので、心配していて、それをいちいち口に出してしまうのだと思います。私の誕生日にはプレゼントをくれたり、夫と二人でしっかり家庭を築いていることに、感謝の気持ちも伝えてくれます。ですがやはり、悪気はなくてもずけずけと娘の発達に対して指摘をされることには心が壊れそうになり、悪気のない人間はたちが悪いと思ってしまう自分がいます。これからの義母との付きあい方義母に対して「こんな風に言われたら嫌だ」と伝えたら分かってくれそうな気もしますが、そもそも悪気がないので、こちらの思いが伝わるのだろうか?とも思ってしまいます。今は諦め半分ですが、娘も4歳のときとは違い、相手の言ったことを理解できる年齢になっています。もし義母が、娘に対して直接酷いことを言ったら、もう会うこともないだろう、というのが正直な気持ちです。これは私の主観ですが、子育てに関する思い込みが激しい人が比較的多い世代なのかもしれません。街中でも子育てが終わった義母と同世代の方から配慮のない言葉をかけられることが多く、悲しい気持ちになることがよくあります。義母は、娘にとって唯一無二の「おばあちゃん」です。そのおばあちゃんには「よくできた孫だから、かわいい」ではなく、特性を理解し、認め、無条件の愛を孫に与えてほしいのです。現在の娘は、特性はうっすらありつつも、いろいろと折り合いをつけながら成長していっています。苦労することもあるとは思いますが、私は今後も娘の良い部分を最大限伸ばしていってあげたいと考えています。Upload By 発達ナビ編集部イラスト/taeko※エピソード参考者のお名前はご希望により非公開とさせていただきます。(監修:三木先生より)教育や子育ては、誰もが一家言もつジャンルですよね。ましてや子育てを一周した祖父母からすると、どうしても自分の意見を言いたくなるものです。しかしそれも孫かわいさゆえであることを相談者さんはしっかり理解されているんですね。一方、世代が違うと価値観や常識も違うこと、子育てに責任を持つのは親であることまで理解して見守ってくれる祖父母はなかなか多くない印象です。上手く距離をはかりながら自分なりの子育てを続けていけると良いですね。あなたのエピソードもコラムになるかも?体験談募集中!保護者の方が日々子育てをする中で「こんなトラブルがあった」「こんなハプニングがあった」など悩みはつきないと思います。そんな発達ナビユーザーのみなさんの「困った」エピソードを募集しています。テーマは「反抗期・思春期」「自傷」「学習」「不登校」「ゲーム」「不器用」「ママ友・保護者」「ご近所トラブル」などに加え、今回より「パートナーや両親(義両親)、親族間トラブル」「冠婚葬祭」のお悩みも追加募集!パートナーなどとの意見の相違、冠婚葬祭でのルールが分からない、反抗期による親との言い争い、癇癪を起こして自分の頭を叩く、地団太を踏むなどの自傷行為…読み書きや計算の困りはもちろん、授業を落ち着いて受けられないなどの学習の悩み…行き渋りや不登校などの悩み…いろいろなお悩みエピソード、お待ちしております。お寄せいただいたエピソードの中から数作品、発達ナビの連載ライターさんにコラムとしてコミックマンガエッセイ化していただき、発達ナビで公開いたします!あるあるのエピソードからヒヤリとしたエピソード、SNSなどではなかなか言えないような家族やママ友とのトラブルまで。いろいろな「困った」エピソードをぜひ教えてください。
2022年06月25日Q:「特別支援学級」の学級編制について保護者が知っておくべきことはありますか?A:法制度上、該当する障害区分に子どもが一人でもいればその種別の特別支援学級は開設することができます。Upload By 発達障害のキホン公立小中学校の学級編制は、「国の定める標準 ≧ 都道府県の定める基準 ≧ 市区町村による実際の編制」、という三重構造で成り立っています。なぜ、国の定めを「標準」と呼ぶかと言えば、都道府県にもっと少人数の「基準」を設ける余地を残し、さらに市区町村の独自努力で標準・基準よりも少人数の学級編制を促すためです。したがって、公立小中学校の通常学級では、2022年度現在で小学校3年生までが「35人標準」、それ以上の学年が「40人標準」になっていますが、都道府県や市区町村では、その標準よりも少人数にしているところが少なくありません。通常学級は同学年による単式編制が原則ですので、「35人標準」ですと、1人超過した36人の学年の場合に「18人」ずつの少人数学級が実現します。発達障害のある子どもを含めて、ゆとりをもって指導する上で、まず通常学級を少人数にすることが大切です。これに対して、特別支援学級の編制(同学年を問わない複式編制)には幾つかの解決すべき課題が考えられます。例えば、特別支援学級には弱視、難聴、知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱、言語障害、自閉症・情緒障害の7種(自閉症タイプと情緒障害タイプを区分することが奨励されており、その意味では8種)が法律で認められています(『改訂新版障がいのある子の就学・進学ガイドブック』pp.40-41の「図4 文部科学省による就学基準等」参照)。しかし、自治体によっては開設する障害種を限定しているところもあります。その場合、障害児がその障害種に応じた学級で学ぶことが難しくなる場合もあります。該当する障害区分に子どもが1人でもいれば、市区町村はその種別の特別支援学級を開設するよう努めることが大切と言えるでしょう。第二に、地域の教育委員会によっては特別支援学級の開設に「最低3人必要」などと設定していることもありますが、もちろん「標準法」には定めのないことです。第三に、上記とも関わりますが、対象児数をある程度確保するために、エリア内の比較的大きな小中学校に限定して特別支援学級を開設し、小さな学校には開いていない自治体もあります。しかし、これまた、地域でともに学び育ち合うインクルーシブ教育を志向する特別支援教育の趣旨とはズレてしまうことだと考えます。障害のある子どもを通常学級入れた場合、教員を加配し、複数担任制にして欲しいという希望もあるでしょう。しかし、現状は基本的に通常学級は一人担任体制です。そこで、特別支援学級を設置し、特別支援学級の担任とともに「交流及び共同学習」と言う形で、可能な範囲において通常学級で授業を受けるという形態(結果として教員が複数存在することになる方式)を工夫している自治体もあります(『改訂新版障がいのある子の就学・進学ガイドブック』p.165-166の「みんなの学校」参照)。特別支援学級を含めた開設学級の総数に応じて、担任や養護教諭・管理職等の教諭が配置されます。教諭等の給与は、国と都道府県が全額負担しますので、市区町村の持ち出し分はありません。自治体によってはそうして学級数を増やして先生の数を一人でも多く確保し、インクルーシブな教育を推進しているのですね。
2022年06月24日小学校2年生での遠足次女は、場面緘黙ではありますが、好奇心旺盛な性格です。校外学習などは、不安はもちろんありつつも、楽しみにして参加していました。この2年生のときの遠足も楽しみにしていて、行きしぶりなどもなく送り出すことができました。帰宅後の次女の話遠足から帰ってきた日の夜。次女に遠足の話を聞くと、誰とも話せなかったことを教えてくれました。さらに、友達とはぐれてしまって不安な時間を過ごしたことも(先生が一人でいる次女を見つけて友達のところに連れて行ってくれました)。「話せない」ことで、つらい思いをしたようです。Upload By まりまり学校で話せないのは小学校1年生のときからだったのですが、改めて次女が自分からこういうことを聞いてくるのは初めてだったので、このときは少し驚きました。Upload By まりまり話せないことで大変な思いをして、そんな自分自身を責めている様子でした。もともと繊細な次女だったので、いつか話せないことで自分を責めてしまうんじゃないかと、なるべくポジティブな声掛けを心がけていたものの…。楽しみにしていた遠足で、自分が思ったようにできなかったことや、周りと自分を比べることで自信を失っているようでした。話せない理由「なんで話せないんだろう」という次女に、私は次女自身が「話せない理由」をどのように考えているのかを聞いてみました。最初は「自分で話さないって決めてるから」と言っていて、そういう風に自分自身の責任として感じていたのかと驚きました。でも、「話そうと思えば話せるの?」と聞くと、「話そうと思っても話せない」「すごく恥ずかしくなっちゃう」との答えが。Upload By まりまりUpload By まりまりさらに、「話そうとすると、喉の奥が詰まった感じがしちゃうんだよ」と話してくれました。本当は話したい、でも自信を失って諦めていたUpload By まりまりUpload By まりまり次女自身には、友達と話したり遊んだりしたいという気持ちがあるものの、学校で話せなくなって、それができない状況が1年以上経過していて、「絶対ムリ」という諦めに繋がっている感じでした。次女の諦めてしまっている気持ちを聞いて…友達とコミュニケーションを取りたい気持ちはあるけど、諦めかけてしまっているという状況が、緘黙症状の固定化を招いてしまうのではないかと私自身少し不安な気持ちになりました。さらに、親としては、「話せない」ことで次女に自信を失わないでほしいという気持ちでいました。このときは、児童精神科受診前。なので、こういう次女の発言も、児童精神科受診する要因となったのでした。執筆/まりまり(監修:井上先生より)娘さんが話せないことに対して親御さんも不安があると思います。ですが、場面緘黙のつらさや話せない原因を娘さんと一緒に話せるということは、娘さんの緘黙への背景理解が進み、とても良い関係が築けていると思います。話せる関係性があることがまりまりさんにとっても娘さんにとっても心強さに繋がるでしょう。場面緘黙は不安症の中にカテゴライズされており、対人不安が症状のベースになります。話すことができないだけではなく、お友達などと一緒に遊ぶことに困難があることも多いです。まずは話さずともお友達と一緒に遊んだり、場面を共有したりすることから始め、だんだんと慣れていくのが良いと思います。
2022年06月24日「だれもが文化でつながる国際会議」6/28~7/7上野エリアで開催Upload By 発達ナビニュース「だれもが文化でつながる国際会議:Creative Well-being Tokyo 2022」が2022年6月28日(火)から7月7日(木)まで東京国立博物館、東京都美術館など東京都・上野エリアで開催されます。会議の主なテーマは「ウェルビーイング」「ダイバーシティ」「インクルーシブ・デザイン」「アクセシビリティ」「つながり・居場所づくり」の5つ。芸術文化による共生社会を目指す国際会議です。世界5ヶ国・地域から、100組以上の専門家、団体、クリエーターが東京・上野に集結します。国際会議、ショーケース(パフォーマンスや展示会)、短期集中キャンプ(DIYによる楽器制作ワークショップ)、ネットワーキング(企業や団体が取組を紹介)の4つのプログラムを実施。国際会議の基調講演には、筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター教授の大杉豊先生や、ヘラルボニー代表取締役社長の松田崇弥さんも登壇します。難しく考えることはありません。国内外の芸術にふれ、楽しむことは、多様な文化が共生する社会へとつながります。ぜひ足を運んでみてください。※クリックすると発達ナビのサイトから「クリエイティブ・ウェルビーイング・トーキョー」のホームページに遷移します〈詳細〉「だれもが文化でつながる国際会議:Creative Well-being Tokyo 2022」会期:2022年6月28日(火)~7月7日(木)※国際会議は7月2日(土)~4日(月)会場:東京国立博物館、東京都美術館、上野恩賜公園竹の台広場、LIFULL Fab主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団協力:独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館、文化庁 地域文化創生本部、独立行政法人国際交流基金、ブリティッシュ・カウンシル、一般財団法人東京都つながり創生財団入場無料 ※国際会議のみ事前予約制(6月1日よりWebサイトにて予約開始)※ 新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況等によって、登壇者やプログラム内容は予告なく変更になる場合があります。「第4回 日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS 公募展」(大阪会場)阪急うめだ本店で開催、7/11までUpload By 発達ナビニュース「第4回 日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS 公募展」が2022年6月15日(水)〜7月11日(月)まで大阪の阪急うめだ本店で開催されています。この公募展は、アートを通じて障害のある人、ない人、全ての人々の交流を促し、感動やよろこびを共有しながら、障害のある人自身が自己の可能性を見いだせるよう、アート活動の機会を提供すること。そして、才能あるアーティストの発掘や、障害のあるアーティストの活動の支援を行い、多様性の意義と価値をより広く社会へ発信することを目的に行われています。第4回の公募展には国内外10ヶ国から2,122作品の応募がありました。その中から、各界で活躍する6名の審査員により選出された作品を「第4回 日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS 公募展」にて紹介しています。作品にこめられた意思の力強さや繊細な想いに触れることで、さまざまな発見をしたり新しい価値観と出合えるかもしれません。ぜひ足を運んでみてください。※クリックすると発達ナビのサイトから日本財団 DIVERSITY IN THE ARTSのウェブサイトに遷移します〈詳細〉開催期間:2022年6月15日(水)~7月11日(月)10:00~20:00(無休) ※7月11日(月)(最終日)は16:00まで*今後の感染拡大状況や行政等の要請により、開催内容の変更や中止となる場合がございます。来場の際には、最新情報のご確認をお願いいたします。会場:阪急うめだ本店 9階祝祭広場(大阪府大阪市北区角田町8-7)入場:無料本展に関する問合せ:日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS 公募展 係 (特定非営利活動法人 CUE-Arts 内)TEL: 06-6940-6767また、第5回公募展の応募受付が2022年6月30日(木)まで行われています。くわしくは、日本財団 DIVERSITY IN THE ARTSのウェブサイトよりご確認ください。※クリックすると発達ナビのサイトから日本財団 DIVERSITY IN THE ARTSのウェブサイトに遷移します知的障害者の役を、実際に障害のある俳優が演じるーー「塔の外のランウェイダンス」8/7上演、チケット発売中Upload By 発達ナビニュース知的障害のある主人公たちの心の葛藤を描いたオリジナルミュージカル「塔の外のランウェイダンス」が日暮里サニーホールにて2022年8月7日(日)(全2公演)で上演されます。演じるのは、実際に知的障害のある俳優たちです。物語は、障害のある人たちが勤める被服作業所からはじまります。そこで働く 22 歳の主人公の未来は、祖父であり作業所の所長でもある俊太郎と二人暮らしをしていました。ある日、従姉妹である明日香がやって来て、しばらく一緒に暮らすことになることで、さまざまなことが…。知的障害と向き合いながら生きる未来と、人生の壁にぶつかって葛藤する明日香、二人の交流を描きます。このミュージカルは、日本で唯一の知的障害者専門の芸能プロダクションアヴニールが企画・製作しました。また、明日香の祖父であり、明日香と従姉妹の主人公未来の祖父でもある俊太郎役には、俳優の西岡德馬さんが出演することが決定しました!唯一無二のミュージカルをぜひ会場でご覧ください。※クリックすると発達ナビのサイトからの「塔の外のランウェイダンス」公式ホームページに遷移します〈詳細〉日時:2022年8月7日(日)上演時間:13:30開場 14:00開演17:30開場 18:00開演(全2回公演)会場:日暮里サニーホール(東京都荒川区東日暮里5-50-5 ホテルラングウッド4階)主催:アヴニール公演実行委員会企画・製作:株式会社 AVENIRチケット発売期間:2022年6月1日(水)〜 7月31日(日)¥4,500 (税込)※小学生以上有料中学生以下 ¥2,500 (税込) ローソンチケットほかチケット専用サイトはこちら※クリックすると発達ナビのサイトからの「塔の外のランウェイダンス」公式ホームページに遷移しますHONESTIES「裏表がない肌着」「裏表や前後がない肌着」、オンラインショップで発売中Upload By 発達ナビニュース「お子さんが肌着の前後を間違えて着てしまう」「家族が裏返しに脱いだ肌着を戻すのがストレス」「肌着の縫い目が肌に触れると気になって仕方がない」など肌着での悩みはありませんか。これらの悩みはHONESTIESの肌着が解決してくれるかもしれません。HONESTIESの肌着には、裏表のない生地が採用されています。HONESTIES(スタンダード)では、肌着を着るとき、脱ぐときに裏表を気にする必要がありません。【表裏前後なし】のHONESTIES∞では、さらに肌着の前後のちがいもありません。前後どちらから着ても違和感のないデザインにすることによって、裏表や前後を判断するのが難しい方もストレスなく着替えをすることができます。生地は、まるで自分の皮膚のような優しい肌触り。また縫製には、ベビー服やウェットスーツなどで用いられる特殊な4本針ミシン「フラットシーマー」を採用しています。縫い合わせる生地と生地が平らな状態で縫製されているので、縫い目が平らになり肌に触れていても気になりません。サイズは110から、大人のXLまで展開。また、肌着だけでなく裏表前後がないパンツや靴下も販売しています。これらの商品は、オンラインショップで購入することができます。ぜひチェックしてみてください。※クリックすると発達ナビのサイトからのHONESTIESのホームページに遷移しますLITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2022年06月23日息子2歳、初めて足を踏み入れた療育の世界私の息子には、知的障害を伴う自閉スペクトラム症があります。息子に障害の診断がついたのは4歳のときでしたが、1歳半で発達の遅れに気づいたことをきっかけに、2歳から療育に通いはじめました。息子が最初に通った療育は、地域の児童発達支援センターに月に1回程度の頻度で通う、親子通園の集団療育でした。Upload By べっこうあめアマミ児童発達支援センターは、発達に不安がある子どもと家族のための総合的な支援をしている、地域の中核的な発達支援施設です。そこで受ける初めての療育は、親子ともに学びが多い内容でした。療育では、大きな遊具で身体をいっぱい動かしたり、名前呼びをしたり、手遊びや体操をしたり、紙芝居をしたりと、遊びながら発達を促していきました。息子はあまり活動に興味を示さなかったり、身体を動かすのを嫌がったりもしましたが、そういったときの先生からの声掛けの仕方なども、参考になりました。Upload By べっこうあめアマミただ、親子通園なので、私は療育の時間中ずっと息子にぴったりくっついていなければなりません。息子のあとを追い、怒ったらなだめ、精神的にも体力的にもすごく疲れました。そして、児童発達支援センターが家から非常に遠かったことも大変でした。息子を連れて15分歩いて駅まで行き、電車に乗り、電車を乗り換えて、センターの最寄駅からまた15分くらい歩くという道のり……。バスで行くこともできましたが、時間がかかり、通うだけでへとへとでした。きょうだいがいると療育に通えない⁈まさかのルールに愕然Upload By べっこうあめアマミ息子が3歳のとき、週3日で通える高頻度で時間も長い療育のクラスに、次年度からの空きが出たという連絡をもらいました。しかし、そのクラスに通うためにはいくつかの条件があることを知らされたのです。・幼稚園と並行して通うことはできない・ひき続き親子通園・子どもの給食はあるが、親は療育中は飲食できない・きょうだいを連れてきてはいけない当時、私は2人目の妊娠が分かったばかりでした。そのため、週3日の頻度で親子通園ということも大変でしたが、幼稚園に通えないということや、きょうだいを連れてきてはいけないという条件に愕然としました。交渉したところ、抱っこは不可だけれどおんぶなら許可すると言われましたが、両実家ともに県外だった私にとっては、それも難しい条件でした。まだ首が座らない赤ちゃんをどこかに預けて息子と療育に通い、おんぶができる月齢になったら赤ちゃんをおんぶしながら長い道のりを通って3人で一緒に療育を受ける…。息子の発達のために頑張ろうと思いましたが、自信がありませんでした。そして、そのことを夫に相談すると、こんな答えが返ってきました。Upload By べっこうあめアマミ私は、2人目が生まれてから通うことはかなり不安でした。でも妊娠中はギリギリまで通おうと思っていたのです。しかし…Upload By べっこうあめアマミUpload By べっこうあめアマミいつも温厚な夫から諭されて、私は改めて、妊娠中の自分の身体についてすごく甘い認識でいたことに気がつきました。そして、「息子の発達の遅れへの心配で頭がいっぱいで、お腹の子や自分の体調、家族の生活についてまるで考えていなかった」ということを反省しました。こうして、空きは出たとはいえ、あまりに家族にかかる負担が大きかったことから、この療育は辞めることになったのです。代わりに、息子は親子分離で通える別の療育に、週5日で通うことになりました。子どもの療育先を選ぶとき、無視できない「大切なこと」とは療育は確かに、子どものために行うことです。ですが、1人で通園できない子どもの場合、親の負担から目を背けることはできません。子どもを思うからこそ、多少無理をしてでも頑張って療育に通わせたいというのが親心。特に、未就学や未就園の小さいお子さんの親御さんほど、「子どものためにできる限りのことを」という思いから無理してしまいがちな気がします。ですが、療育の内容だけでなく、ぜひ次のような条件にも目を向けてみてください。Upload By べっこうあめアマミこれらの条件は、通う前は「なんとかなる」と思っても、実際に通ってみると予想以上の負担だった、ということにもなりかねません。見過ごされてしまいがちだけど、実は無視できない、非常に重要なポイントだと感じています。親子で無理なく療育に通い続けるために親も人間です。親にとっての負担があまりに大きいと、せっかく療育で良いことを教わっても、それを実践する体力が残っていない、という状況に陥ってしまうかもしれません。ストレスからイライラが募り、子どもに笑顔を向けられなくなってしまうかもしれません。最悪の場合、親が体調を崩して療育どころではなくなってしまうかもしれません。そうなってしまったら、せっかく良いと思って選んだ療育に、通い続けられなくなってしまいます。療育の結果は劇的に現れるとは限りませんし、継続して通うことで、少しずつ積み上げていくものだと思います。だからこそ、親子で無理なく続けていけるように、療育の内容だけでなく、「通わせやすさ」にも目を向けて選んでいくことをおすすめします。「子どものため」に自分や他の家族の生活全てを犠牲にする必要はないと思います。あなたはすでに、十分頑張っています。自分の都合を理由にすることに罪悪感を感じず、無理せず歩んでいきましょう。執筆/べっこうあめアマミ(監修:井上先生より)地域によって 、主に公的な機関によって療育がなされているところと、多くの民間の事業所が療育を提供しているところなどかなりの違いがあると思います。特に公的な機関の場合、制約が多いところがまだあるようですね。地元の情報を探し、民間も含めて親に負担のない通いやすいところ、お子さんに合った療育施設を探すのが良いと思います。情報源としては発達障害者支援センターなど以外に、地域の親の会などに聞いてみると親視点からのいろいろな情報を得ることができると思います。
2022年06月23日発達障害に携わることは、自分の価値観を問われること中央大学では、2007年から一部の教員が「軽度発達障害の縦断的研究」を開始。これを引き継ぐ形で2016年から「発達障害者傾向を有する大学についての縦断的研究」を行い、このたび『キャンパスにおける発達障害学生支援の新たな展開(中央大学人文科研究所研究叢書)』に活動の記録をまとめました。今回は、同研究チームの主査を務めた山科満教授に、学生支援の根底にある想いや具体的な支援事例、支援者の方へのメッセージを伺いました。発達ナビ編集部(以下、――):山科先生の「支援における思想」について教えてください。山科先生:「発達障害」とは何であるのかということに尽きます。これは、私が大学生や社会人になって初めて発達障害と診断されるような人たちと関わってきたことから出てきた問いであって、発達障害という言葉が関与する全ての事象に当てはまるものではないと思うのですが。――特に精神科医時代のご経験が大きいのでしょうか。山科先生:そのように思います。統合失調症の治療をやっている中で、1990年代後半頃から、統合失調症に見えるが実は高機能自閉症、という事例に出合うことが何度かあり、学会報告をしていました。しかし当時はあくまで統合失調症の治療という視点から、「似て非なるもの」を鑑別する、という発想に止まり、発達障害に関心をシフトすることはありませんでした。よりインパクトがあったのは、精神科医の衣笠隆幸生が2004年に「重ね着症候群」として、パーソナリティ障害のベースに軽度の発達障害がある1群の報告をしたことです。精神療法に関心を寄せ実践もしていた身として、思い当たる事例がたくさんあったのです。さらに、2008年以降、精神科医の中安信夫先生が初期統合失調症と誤診していた発達障害の事例について報告するようになりました。これにも私は衝撃を受けました。――インパクトがあったとは、具体的にどういうことでしょうか。山科先生:自分がこれまで出会った患者さんを思い返してみると、発達障害的な特徴を有する人について、それなりに思い当たったのです。しかし、当時は発達障害の診断はなされていませんでした。それらの人たちの診断は正しかったのだろうか、患者さん達のことを私はちゃんと理解できていたのだろうか、と不安になりました。考えを進めていくにつれ、発達障害をほかの診断基準と同じ水準の診断概念として扱って良いのか、徐々に疑問に思い始めました。これが、2010年ごろまでに私が経験したこと、考えていたことです。発達障害の診断は、医学的な手続きだけに拠ってできるものではありません。常に、その人とその人を取り巻く環境との関係性を見ることになります。とりわけ、日本社会は発達の特性を有する人にとっては生きづらい社会です。「障害は社会の側にある」ことを忘れず、「障害」という言葉に押しつぶされることなく、自己と社会との関係性を多角的に捉えていくことが、発達の特性を有しながら生きていく人には必要なのではないかと私は思います。またその思想は、精神科医も含めて支援する側にも必要なことだと思っています。――発達障害との出合いが、山科先生ご自身の大きな転機となったのですね。山科先生:私は発達障害というものに出合ったことで、精神医学の診断基準も、世の中の常識も、絶対的なものではなく相対化して見るようになりました。それまで信奉していた価値観を捨てる作業は、けっして簡単なことではなく、今も何かの折に自分の中で矛盾を抱えていることに気づかされることがあります。もちろん、私は自分の考え方を声高に主張するつもりは全くなく、最終的に辿り着くところは一人ひとり違っていて良いと思います。ただ、発達障害と関わるということは、さまざまな側面で自分の価値観を問われることになるのではないかと、思っています。活動をまとめた新刊『キャンパスにおける発達障害学生支援の新たな展開』――出版までの経緯について教えてください。山科先生:中央大学の学内公募に手を挙げて大学生の発達障害に関する共同研究を始めたのが2012年度でした。本書の中で紹介されている障害学生支援を担う専門職=キャンパスソーシャルワーカー(以降、CSW)を、学内の競争的資金によって初めて採用したのが2014年、その後紆余曲折を経て、2022年度には中央大学全体では6名のCSWを配置するまでになりました。来年にはさらに2名の増員が決まり、中央大学の全学部にCSWが配置されることになりました。どうにか仕事にひと区切りが着いたところで、これまでの活動を振り返り、本にまとめようということになりました。Upload By 発達ナビ編集部――紹介されている支援例の中から一つ、挙げていただけますか。山科先生:私が担当した、共同研究を始めて間もない時期でCSWもいなかったころの事例です。入学後に1年次の基礎科目でつまずいて卒業の見通しが全く立たなくなっていた学生さんがいました。親御さんは困り果て、学科の先生方も事務職員もどう支援して良いのか分からず途方に暮れているようでした。ご本人にお会いしてみると、いわゆる二次障害が酷く、深い絶望感を抱えている人でした。最初の1年は、休学した上で面談を継続し、関係性づくりだけに費やしました。絶望感からの回復には、成功体験を実感していただくことも必要です。そのため、翌年からは少しずつ基礎科目の単位取得から勉学に復帰しましたが、この過程では事務職員の力を大いに借りることになりました。同じ領域の科目群の中でどの科目・どの先生なら単位取得をしやすいかとか、基礎科目と応用科目の順番を考慮し無理のない履修計画を立てるといったことを、本人を含めて関係の事務職員が学期ごとにミーティングを開いて確認しました。遮音のためのヘッドホン装着など初めての支援策については、各教員の理解を得られるよう個別の折衝を重ねました。――じっくり時間をかけて支援を続けられたのですね。山科先生:そうですね。最終的に入学から7年半かけて卒業し、障害者枠で一般企業に就職しましたが、この過程で、発達の特性がある大学生の支援のためには、心理的な関与、精神医学的なアセスメント、そして何より関係者の理解を得ていくためのソーシャルワークが必須だということが分かりました。その経験から、アクティビティの高い心理職を学部事務室に配置してソーシャルワーク的な役割を担ってもらう、という支援の方法に辿り着きました。具体的には、「発達障害に関する精神医学の知識を運用できるだけでなく、学生の困りごとを具体的に把握できる面接を行う能力があり、かつフットワークが軽く多職種連携ができる人」というイメージを持ちました。そして、呼称をキャンパスソーシャルワーカーに決めたのです。支援者は「孤立しない」ことが大切出典 : ――学生支援に携わる人たちへの願いは何でしょうか。山科先生:学生本人が支援を求めてくるのを待っていては、効果的な支援体制は作れません。具体的にはその組織に応じたやり方があるのだと思いますが、困っている学生に、少しだけ「おせっかい」する教員と、それに呼応する事務職員、そして大学生の成長に「伴走」することを喜びと感じるような支援員がいてくれることを、私は願っています。ただし、発達の特性は百人百様です。診断名で支援の内容が決まることはありません。全て個別のオーダーメイド支援になります。「この学生さんにはこういう支援が望ましい」ということをその都度考え、当事者を含めて話し合い、関係者でコンセンサスを作り上げていく必要があります。――支援は連携が重要なのですね。山科先生:そうですね。発達の特性を有する学生への支援は、教員であれ専門職であれ、ひとりの努力で完遂することはあり得ません。多くの関係者が、支援に関する全体的な理念も、個別の学生の理解についても、共有することが必要です。孤立せずに、「話の通じる仲間を増やしていくこと」は、支援者にも必須なことだと思います。――この本を、どのように役立ててほしいとお考えでしょうか。山科先生:大学で発達の特性を有する学生の支援に関わっている方を主たる読者として想定していました。支援の方法は、大学によって異なって当然であろうと思いますが、私たちの方法の背後にある思想については、どの大学であっても通底するものではないかと思います。手前味噌にはなりますが、「発達障害とは何か」「診断とはどういうものか」ということについて、私なりに考えてきたことを自分の分担した第6章で記述しました。そこも含めていくつかの章は、当事者の親御さんにもお読みいただける内容になっていると思っています。執筆/LITALICO発達ナビ編集部<目次>・第1部キャンパスソーシャルワーカー導入の経緯第1章:キャンパス内での支援のかたち―キャンパスソーシャルワーカー(CSW)の学内配置に焦点を当てて・第2部理論・研究編第2章:精神医学的観点からみた大学生の発達障害、第3章:発達障害のある大学生の課題と支援のあり方をめぐって―外国語教員の視点から、第4章:発達障害当事者からみた「自己」をめぐる問題、第5章:発達障害特性を有する大学生の“自己治療”としてのインターネット依存―一般大学生のアンケート調査から・第3部臨床実践編第6章:発達障害特性を有する大学生の自己理解に寄与する支援のあり方、第7章:学生の成長に寄与する支援者の関わり―理工学部CSWとして7年間を振り返る、第8章:キャリア支援と自己理解―法学部キャンパスソーシャルワーカーとして5年間を振り返る
2022年06月22日自分が叱られているのに笑うのはなぜ?みん(以下、――):Pは私に対して他害をしてしまったときなどに、私が痛がっていてもアハハと笑うことがあります。私の反応を見て楽しんでいるのかもしれませんが、こちらがそのことに対して怒っていても、叱られている状況を理解するのが難しいのか?それでも笑っていたりします。三木先生:叱られたときに笑うというのはその内容や程度にもよるのですが、お母さんが「やめて」と言っても笑っている場合は、お母さんの反応を見て笑うのがP君にとって一連の遊びになっているんだと思います。普通に怒られているのにヘラヘラしているときは、感情表現のずれの可能性もあるかもしれません。――顔は笑っているけれど、心の中では怒られて嫌だなと思っているかもしれないんですね?三木先生:それはあると思います。怒られて嫌だ、怖い、悲しいと思っているかもしれませんね。ASDのある子は思っていることと表現がずれていることがあるので、 「顔で笑って心で泣いて」みたいな可能性も考えながらP君の様子をよく見てみる必要があります。そういうことは、外(療育園)でもあるのですか?――あるみたいです。日頃怒らない優しい先生が怒ったら、苦笑いをしていると聞きました。Upload By みん少しずつ怒っていった方がいいの?三木先生:楽しそうにしているわけではないのなら、やはり本人の表現の仕方の問題なのかな?とは思います。「今は怒っています」と、相手が怒っていることをP君にラベリングしてあげても良いかもしれませんね。――そうですね、そう考えるとPは「怒られる経験が少ない」のかもしれません。家でも療育園でもあまり怒られることがないので、そろそろ少しずつ怒っていっても良いのでしょうか?三木先生:怒っているという振る舞いと怒られているという出来事の説明を、両方一度にやった方が良いかもしれません。自分が浴びているものと意味が一致していない可能性もあるので、相手が何故怒っているのか?自分は何故怒られているのか?をその都度言ってあげる。言葉のラベリングをちゃんとしておくというのは大事だと思います。こちらの感覚では「怒っているんだから分かるでしょう?」と思ってしまうのですが、P君のような子はその状況の判断がなかなかできないのかもしれないので…Upload By みんなぜ自分が怒られているのか理解できていないのかも…――それはそうかもしれません。なぜ自分は怒られているのか?理解できていないことが多いと思います。三木先生:あと可能であれば、その後どういうリアクションをするべきか?も含めて教えてあげると、ソーシャルスキルトレーニングのような感じになるかもしれません。――でも最近怒られたときに「ごめんなさい」を少しずつ言えるようにはなってきました。私の怒った顔を見たらごめんなさいと言うことも増えて来たので「シーン合ってるよ!」となります。ただ、怒っている顔を見ると何でもかんでも、ごめんなさいと言うようになってしまいそうな気もします。三木先生:最初はそれでも良いです。意味を分かって自分で振る舞いを選択してごめんなさいと言うのは結構レベルの高いことで、とにかく理由が分からなくても、シーンに合った適切な振る舞いができるように動作を仕込むのは大切です。本人がちゃんとできたという手応えや事実が積み重なって、周りも謝ったのなら…と許してくれる経験を重ねると、歪まずに済むというか、特に発達に課題があるような子は「分かる」ことよりも、まずは「できる」ことを優先する方が良いと思います。――相手から促されたから、ごめんなさいを言うべきだと子どもにシーンづけをするのは有効なんでしょうか?三木先生:子ども側が儀式として認識するのは良いのですが、大人側の目的がごめんなさいを言わせたいが為にキーワードを出すみたいになると、こちらの投げかけや振る舞いが、考え方ではなく動作の方に引っ張られてしまう紐付けになってしまいます。怒っていることを伝えるのではなく、ごめんなさいを言わせることが目的になってしまいます。怒っている状態があり、それに対するやりとりがあって、それでも自分からごめんなさいを言わないのなら、ごめんなさいを言わせても良いかもしれません。動作を入れ込むためのプロセスとしては良いのですが、そこだけ取り上げてすると目的がごめんなさいを言う儀式になってしまいます。大人はラベリングを意識してどういうときに自発的にごめんなさいを言えば良いのか?と子どもに気付きを与えると良いと思います「ごめんなさいって言いなさい」と言うだけではシーンとしての学びがなくなるので、前振りをどれくらい浴び、経験するか?ですね。Upload By みんお互いに経験を積んでいくことが重要――話を聞けば聞くほど、そういう場面の経験を積み重ねることが大切だと思いました。やはりPはまだまだ怒られる経験が少ないと感じます。叱っても分からないだろうと思って叱らないことの方が多かったです。三木先生:叱って有効かどうかは子どもにもよりますし、毎回トラウマ化するような子の場合だと叱りにくいですよね。でもパニックになるから怒らないでおこうとすると、少し怒っただけでも逆に子どもがパニックを起こし回避しようとするようになってしまいます。この子はこれ以上怒ったらまずいというのは、親御さんが子どもを観察していく中で得る感覚だと思うので、お互いに経験を積み、試行錯誤し、ギリギリのラインの見極めをしていきながらで良いと思います。そして苦笑いに関しては、しゅんとする表情を練習するようにしないと難しいかもしれませんね。道徳的な絵本を読みながら一緒に練習してみると良いかもしれません。もし興味がなさそうでも数回練習してみて、それでも時期が早そうならまた半年くらい待って試してみても良いかもしれませんね。――私がPに与えていた絵本を考えてみると、まだ難しいだろうと思って、最初から与えていないものが多かったです。図鑑などストーリーのない、絵や写真など分かりやすいものばかり与えていましたが、ストーリー性のある道徳的な絵本もそろそろ活用したいなと思います。Upload By みん執筆/みん
2022年06月22日