夢二の多彩な活動を紐解く出版・印刷業が集積した全国有数の街として発展してきた東京・千代田区。その中でも千代田区九段南にある出版社「龍星閣」は、高村光太郎による『智恵子抄』の版元以外にも、戦後には夢二の画集を次々と出版し、第二次夢二ブームを牽引した存在でもあります。本展覧会では竹久夢二の著作や画集の出版に際して、「龍星閣」創業者である澤田伊四郎により収集された、1200点を超える膨大なコレクションが寄贈されたことを記念し、その精華を紹介しているものです。会場内では、20歳の若き夢二が制作した外国文学の翻案や創作、さらに数点の手書きを含む画文集『揺籃(ようらん)』、そんな夢二の半生を綴った自伝小説『出帆』の挿絵原画が初公開されます。その他にも数多く出版された自身の画集をはじめ、装幀本、楽譜集、子どものための絵本、絵葉書や千代紙、半襟のデザイン、そして肉筆画に至るまで、竹久夢二の多彩な活動を紐解くことができます。 夢二はアーティストであり、プロデューサーだった?! 過去最大級となる500点以上の展示作品から、多彩な活動を様々な角度から紹介している本展覧会。夢二が手掛けた数多くの展示作品を目にすると…アーティストの側面を持ち合わせているだけでなく、プロデューサーとしての才覚も確認することができます。例えば、夢二が正式に結婚した唯一の女性・たまきが主人を務めた「港屋絵草紙店」では、夢二がデザインした千代紙、便箋や封筒、着物の半襟などの夢二グッズを販売していますが、時折若い芸術家たちが集わせて作品発表ができるギャラリーでもありました。そんな「港屋絵草紙店」を開店させた背景には、世間一般に自身を知ってもらうための拠点としてだけではなく、作品と鑑賞者や読者を手に届ける距離で提供していく商業的な目的のほか、自身の妻子を養うための経済的な理由も兼ね備えていたそうです。また、竹久夢二は女性遍歴が激しいことでも知られており、自身の女性関係を赤裸々に綴った書籍化を目指すなど、自分という1人のアーティストをプロデュースせずにはいられなかったのだと思いました。 竹久夢二に思いを馳せる 会場内の夢二作品を一望してみると、仕事として“他者”のことを考えながらも、自身の表現を探求していく様子が感じられます。一重には、夢二が装幀を手掛けた灰色の地に白抜きで表した柳、江戸情緒溢れる着物女性の半身像が描かれた『春の鳥』では、見返しの意匠がそれぞれ異なっており、同作品でも装幀の違いが楽しむことができます。二重には、夢二によるデザインが施された数多くの楽譜表紙は、日本や世界各国の楽曲をイメージを反映させ、様々なジャンルの要素を取り入れている様子が分かります…宗教絵画のようなマリア様や観音様が描かれている表紙や、ジョルジュ・ブラックによるキュビスム絵画のような『ベニスの夜』。その他にもスキャンダラスな内容の自伝小説『出帆』では、イタリア未来派の影響を受けた画風から、20世紀初期の美術運動を取り入れていることが分かります。そんな夢二作品は時代を越えても色褪せることなく、現在に生きる私たちの目を楽しませてくれます。それは先述に申し上げたことを踏まえ、商業品・消費品でありながらも、後世に自分の作品を残していけるよう、将来を見通していたのかは神のみぞ知るところですが…そんな想像を膨らませてくれるのもアートの楽しみ方の一つ。そんな手に届くアートを提供してくれる竹久夢二の作品が楽しめる本展覧会に足を運んでみてはいかがでしょうか。 【情報】『夢二繚乱』会期:2018年5月19日(土)〜 7月1日(日)会場:東京ステーションギャラリー休館:6月25日をのぞく月曜日時間:10:00 - 18:00※金曜日は20:00まで開館※入館は閉館の30分前まで
2018年06月02日「魔法の美術館 光と遊ぶ、真夏のワンダーランド」展が、山梨県立美術館にて開催される。期間は2018年6月30日(土)から8月26日(日)まで。山梨県立美術館開館40周年記念「魔法の美術館 光と遊ぶ、真夏のワンダーランド」は、まるで魔法にかけられたように光ったり、動いたりと、映像や音が変化する体験型アートを集めた展覧会。体を動かすことで音や光を操ることができる作品や、絵本の世界に迷い込んだような幻想的な作品など、大人も子どもも直感的に楽しめる体験型アートの数々が展示される。また、場内の作品は全て撮影可能で、SNSにシェアすることもできる。坪倉輝明の《七色小道》は、人が通ると色や光が地面にあふれ、まるで七色に輝く小道を散歩しているかのような体験ができるアート作品。自分が歩くことによって生まれる色と、他の人が出す色が混ざり合うことで、"歩く"という行為が無意識のうちに互いに影響を与え合う様子を体感することができる。的場やすし、山野真吾、徳井太郎による《SplashDisplay》には、動き回る的にボールを命中させると、色鮮やかな光の粒が噴水のように舞い上がる。重田佑介+Zennyanの《よるにおもう》は、白い本を手にとって空間を歩き回ることにより、夜空を舞台に様々な星座のキャラクターが姿を現すアニメーションを楽しむことができ、まるで星空を旅しているような不思議な感覚を味わうことができる。【詳細】「魔法の美術館 光と遊ぶ、真夏のワンダーランド」会場:山梨県立美術館 特別展示室住所:山梨県甲府市貢川1-4-27会期:2018年6月30日(土)〜8月26日(日)休館日:7月2日(月)・9日(月)・17日(火)・23日(月)・30日(月)・8月6日(月)・20日(月)開館時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)観覧料:一般1,000円(840円)、大学生500円(420円)※( )内は20名以上の団体料金、前売料金、県内宿泊者割引料金。高校生以下の児童・生徒は無料(高校生は生徒手帳等持参)。県内65歳以上の人は無料(健康保険証等持参)。障害者手帳持参者、およびその介護者は無料。前売券は山梨県立美術館にて 5月30日(水)〜6月29日(金)まで販売。【問合せ先】山梨県立美術館TEL:055-228-3322
2018年06月01日ジョルジュ・ブラック 晩年の境地 キュビスムの創始者であるジョルジュ・ブラック。20世紀初頭、パブロ・ピカソとともに対象物の立体的な全容を平面上に表現するために、分割と再構成という手法で革新をもたらした重要な画家として知られています。本展覧会は、これまで日本ではほとんど紹介されてこなかった、ブラックが最晩年に取り組んだ「メタモルフォーシス」シリーズの一連の作品群が、絵画を含めてまとまった形で約90点も来日し、日本で初めて本格的に展示する大変貴重な機会です。メタモルフォーシスという言葉は…「変身」「変容」という意味。ブラックの絵画作品から発展させ、陶磁器、ジュエリー、彫刻などの装飾芸術に至る様々な形態への移り変わりが感じられるとともに、彼の絵画から立体への昇華や、最終的な目的である“すべての造形物への美化への挑戦”を汲み取ることができます。 美麗な立体への飽くなき探求 右)ジョルジュ・ブラックトリプトレモス(部分)ブローチ(金とルビー)サン=ディエ=デ=ヴォージュ市立ジョルジュ・ブラック‐メタモルフォーシス美術館蔵Archives Armand Israël 絵画である二次元作品から三次元に変容させるブラックの情熱は、ジュエリー作品に加えて、ガラス彫刻、陶磁器、タピスリー、ステンド・グラス他、装飾芸術に至る様々な形態へと変化させていきます。モチーフは一緒でも様々な表情を見せてくれるプロダクトから、素材と形態の組み合わせを変えながら永遠の命を与えようとする試みが感じ取れることでしょう。ブラックの絵画が貴石と貴金属によって立体に変容した様子を目にした、フランス文化大臣のアンドレ・マルローが「ブラック芸術の最高峰」と絶賛したジュエリーの数々においては、崇高な彫刻とも言えるほどに、貴石や金属の美しさに魅了された画家の美への飽くなき探求が結実しています。 絵画作品や平面作品にも注目 本展覧会では、ジュエリーをはじめとする三次元に変容した作品紹介していますが、その原点となるジョルジュ・ブラックの画業の重要な遍歴を辿れるような構成になっています。最初の作品といわれている18歳の頃に描かれた《モンソー公園》をはじめ、貴重なキュビスム絵画《静物》が出品される他、「メタモルフォーシス」の制作活動の根幹である平面作品も紹介されています。第1章に展示されている一連のグワッシュ画は、その後の立体作品が作り出される下絵となり、晩年のブラックによるエネルギーを込められた躍動的な作品群です。 ブラックの人生もメタモルフォーシス 右)ジョルジュ・ブラックペルセポネ陶器サン=ディエ=デ=ヴォージュ市立ジョルジュ・ブラック‐メタモルフォーシス美術館蔵Archives Armand Israël 81歳で亡くなるまでの3年間に取り組んだ「メタモルフォーシス」シリーズ。そこに至るまでの彼の人生を思うと、まさに「変容」の一言に尽きます。少年時代は家業をついで装飾画家としての修行を積み、18歳でパリ・モンマルトルに住みながら夜間講座で油彩画やデッサンを学びながら最初の淡い色彩の作品を手掛けたり、フォーヴィスムの影響を受けて色彩豊かな作品を描いたり…そして、セザンヌとピカソから影響を受けてキュビスムを創始するとモノトーンの作品を制作するなど、その画風を一つずつ紐解いていくと彼の変化をたどることができます。そして、そのキュビスム絵画を探求していくにつれ、鑑賞品を超えて装飾品として生まれ変わっていく様子も変容と言えるでしょう。本展覧会は、ブラックの集大成ともいえる晩年の境地にフォーカスしていますが、そこへの道のりに想いを馳せながら鑑賞してみてください。 【情報】ジョルジュ・ブラック展絵画から立体への変容 ―メタモルフォーシス会期:2018年4月28日~6月24日会場:パナソニック 汐留ミュージアム住所:東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階時間:10:00~18:00休館日:水曜日観覧料:一般1000円、65歳以上900円、大学生700円、中高生500円、小学生以下は無料※5月18日(金)国際博物館の日は入館無料会場
2018年05月22日「タグチ・アートコレクション」とは? 「タグチ・アートコレクション」とは、実業家・田口弘氏により収集された国内有数の現代美術のコレクションのこと。400点を超える芸術作品を所有するコレクションから、世界で活躍する作家たちの作品を通して、現在の美術の動向が一望できます。本展覧会ではそのコレクションの中から、2000年代に制作された作品を中心に、約70点にも及ぶ作品を紹介しています。性別、出身地、宗教や文化が異なる作家たちは、私たちと同一の現代社会の暮らしの中で生きています。しかし、その作品からは社会の側面をユーモアに映し出す鏡であり、知らない価値観を教えてくれる大切なツールでもあります。会場を構成している分類にならいながら、美術的背景とともに作品をご紹介します。 モダンとポップ ー 美術とは何か?ー 左)ジュリアン・オピー街中で見るサインや標識のように簡略化された人物ですが、黒の輪郭線や小さく描かれた目によって表情を的確に捉えられています。17〜18世紀の肖像画家による古典的な作品が重ねられています。右)ヴィック・ムニーズマウリッツハイス美術館に所属されているヨハネス・フェルメール《デルフトの眺望》の裏面を忠実に再現した作品。19世紀後期から20世紀初期にかけて “写真” が登場すると、報道や記録の目的以外に芸術的表現も探求されるようになります。写真は美術の在り方を変えていきました。現実を再現するという写実主義が重要視されなくなり、20世紀前半は抽象表現が開拓されます。そして、20世紀後半には大衆文化を取り入れながらも大衆文化を批判する、大量生産・消費社会をテーマを軸とした写真を活用する「ポップアート」が誕生。その中でも、広告やアニメーションのイメージを取り込んだアンディー・ウォーホルは、日常的な人工物を作品に取り入れて非日常的なものと示し、美術の概念を問い直すような作品を手掛けました。このような「ポップアート」の系譜は、ジュリアン・オピーやロブ・プルイットの作品に見られます。その後、既存の美術作品や一般に流布しているイメージをそのまま流用する作品も登場しました。ヴィック・ムニーズやジョナサン・モンクは、古典的な作品を引き写して、美術にとって重要と考えられる「オリジナル」とは何かを問うような作品を制作しています。20世紀は「芸術とは何か?」という問いから、様々な表現方法が試みられ、各作家が考える作品が誕生しました。続く、21世紀もその概念は拡張し続けています。身体・アイデンティティ・物語 ー何故、私は私であるのか?ー 左)ガーナ系イギリス人のリネット・ヤドム=ボアキエは、黒人のモデルにして描く画家として知られています。描かれる人物には実在のモデルがいるわけではなく、自身の記憶をもとに思考のおもむくままに制作しているそうです。右)セバスチャン・ディアズ・モラレスの映像は、主人公が扉を通り抜けて別の空間へと移るシーンをループさせ、迷宮にいるかのような幻想的なストーリーを感じさせます。 「美術とは何か?」という問いが続けられている一方で、作品から意味を切り離すことができないと考え、作家の内発的なものを強調する場合もあります。このことは、人間の身体そのものや個人のアイデンティティーをテーマにした作品に特徴的にあらわれています。身体は個人にとって逃れようのないものですが、同時に鑑賞者が個人の意志に関わりなく、社会的に価値づけてしまうものです。作家たちは、自身をたらしめている要点となる身体そのものや、民族やジェンダーといったアイデンティティーの構成要素を、人間の存在に関わる問題として捉えています。また、ストーリーの要素を含んだ物語の手法による作品は、自身を取り巻く社会や人間関係が問いかけています。アイデンティティーに関わるものや物語を要素を感じさせる作品は、作家の個人的な体験や内発的な動機に依ながら、鑑賞者のイメージを喚起しているのです。作品の声に耳を傾けて会期中には担当学芸員によるギャラリートークが開催されなど、現代美術に馴染みがない人でも楽しめる取り組みが行われます。会場に展示されている様々な作品は、作家の独創的アイデアより、ユーモアと機知に富んでいます。一点、一点、作品の声に耳を傾けながら鑑賞することで、自分の知り得なかった概念や社会を教えてくれる重要なものとなるでしょう。作品を鑑賞しながら、おかしくて笑ってしまったり、ハッと気づかされたり、深く考えさせたりしながら、美術館でアート体験を楽しんでみてください。 【情報】『21世紀の美術 タグチ・アートコレクション展 アンディ・ウォーホルから奈良美智まで』会期:4月21日(土)〜6月17日(日)会場:平塚市美術館開館時間9:30 ~ 17:00( 入場は16:30 まで)休館日 月曜日(ただし、4/30 は開館)観覧料金一般800(640) 円/高大生500(400) 円※( ) 内は20 名以上の団体料金※中学生以下、毎週土曜日の高校生は無料※各種障がい者手帳をお持ちの方と付添1 名は無料※65 歳以上で平塚市民の方は無料、市外在住の方は団体料金(年齢・住所を確認できるものをご提示ください)
2018年05月17日東京の国立新美術館では、5月30日から9月3日まで「ルーヴル美術館展 肖像芸術―人は人をどう表現してきたか」を開催する。アントワーヌ=ジャン・グロ 《アルコレ橋のボナパルト(1796年11月17日)》1796年Photo © RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Hervé Lewandowski /distributed by AMF-DNPartcom人の似姿を描く肖像は、スマートフォンの高性能カメラで意のままに自分を撮ることが当たり前となった現代社会において、いまや最も身近な芸術と言えるかもしれない。しかし一方で、肖像は最も長い歴史を持つ芸術ジャンルでもある。本展では、3000年以上も前の古代メソポタミアの彫像や古代エジプトのマスクから、19世紀ヨーロッパの絵画・彫刻まで、極めて広範にわたる時代や地域の作品を対象にしながら、肖像が担ってきた社会的役割や表現上の特質を浮き彫りにする。ルーヴル美術館の古代オリエント美術、古代エジプト美術、古代ギリシャ・エトルリア・ローマ美術、イスラム美術、絵画、彫刻、美術工芸品、素描・版画の全8部門による全面協力のもと、各部門を代表する肖像の傑作およそ110点を一挙に堪能出来る、きわめて貴重な機会となる。ヴェロネーゼ(本名パオロ・カリアーリ)《女性の肖像》、通称《美しきナーニ》1560年頃Photo © RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Michel Urtado /distributed by AMF-DNPartcom今回のみどころの一つ、16世紀ヴェネツィア派の巨匠ヴェロネーゼによる『美しきナーニ』は、ルーヴル美術館が所蔵する数々のルネサンスの肖像画のなかでも、最高傑作の一つとして名高い作品。この至宝の肖像画が、27年ぶりに来日を果たす。さらに、古代エジプトのアメンヘテプ3世、マケドニアのアレクサンドロス大王、アウグストゥス帝やカラカラ帝らのローマ皇帝、ルイ14世を始めとする歴代のフランス国王、そしてフランス王妃マリー=アントワネットなど、歴史を彩った時の権力者たちの肖像が一堂に会す。中でも大きなみどころとなるのが、フランス皇帝として名を馳せたナポレオンのコーナー。将軍時代を経て、皇帝として最高権力を手にしながらも、追放先の孤島で孤独な最期を迎えることになったナポレオンの激動の人生を、アントワーヌ=ジャン・グロの傑作『アルコレ橋のボナパルト(1796年11月17日)』を始めとする5点の作品でたどる。ジュゼッペ・アルチンボルド《春》1573年Photo © RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Jean-Gilles Berizzi /distributed by AMF-DNPartcom本展では、俳優の高橋一生がオフィシャルサポーターに就任し「音声ガイド」のナビゲーターにも挑戦。この他、パリのフランス流紅茶専門店「マリアージュ フレール」や、「とらや」とコラボレーションしたスペシャルグッズの販売、ホテル「コンラッド東京」や「ザ・リッツ・カールトン東京」でのコラボレーションメニューの提供、六本木の東京ミッドタウン内のショップ・レストラン&バーでも関連メニューが展開されるなど様々なイベントが目白押し。早割チケットや特典付きのお得なチケットも販売。詳細は展覧会ホームページ()にて。身近でありながら、奥深い肖像芸術の魅力に迫る、史上空前の本格的な展覧会をお見逃しなく。【展覧会情報】ルーヴル美術館展 肖像芸術―人は人をどう表現してきたか会期:5月30日~9月3日会場:国立新美術館 企画展示室1E住所:東京都港区六本木7-22-2時間:10:00〜18:00(6月の金・土曜は20:00まで、7〜9月の金・土曜は21:00まで)※入場は閉館時間の30分前まで料金:一般1,600円(1,400円) 大学生1,200円(1,000円) 高校生800円(600円) 中学生以下無料※( )内は前売り及び20名以上の団体料金休館日:毎週火曜日(8月14日は開館)
2018年05月17日“光の画家”と称されるターナー(美術館にて写真撮影の許可をいただきました) イギリスを代表する風景画の巨匠、ジョゼフ・ウィリアム・ターナー(1775~1851年)。ロンドンの下町であるコヴェント・ガーデンの理髪店に生まれた彼は幼い頃から絵を愛し、14歳でロイヤルアカデミー付属学校に入学。20代で画家としての地位を確立しました。穏やかな田園風景、荒れる海や険しい山岳など、そこで描く自然の様々な表情を優れた技法で表現した風景画は、今尚人々の心を捉えて離しません。独特の光や空気に包まれたターナーの画風は、フランスの印象派をはじめ、後世の芸術家に影響を与えました。本展覧会では、ターナーによる、油彩、水彩、版画約120点を英国各地と日本国内の美術館から集め、出展作品の多くが日本初公開となる大変貴重な機会です。 風景画から旅行を追体験 左)東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館内展示室作品(美術館にて写真撮影の許可をいただきました)右)筆者がオルセー美術館で撮影したセザンヌによるサント・ヴィクトワール山を描いた作品 本展覧会では、「地誌的風景画」「海景‐海洋国家に生きて」「イタリア‐古代への憧れ」「山岳‐あらたな景観美をさがして」のターナーの風景画に見いだすことのできる主要テーマに分けて紹介されています。当時、貴族の修学旅行ともいえるグランド・ツアーが流行り、国外への旅行者が増えたことが大きく関係しているといわれています。毎年、ターナーはイギリス国内はもとより、フランス、イタリア、スイス、ドイツなど、ヨーロッパ各地にも足を運び、膨大な風景をスケッチしました。ターナーが手掛ける絵画作品は、その土地の様子を精巧に描くことで、現代でいうところの『地球の歩き方』のような、旅行のガイドブック的役割を担っていました。是非、会場内を歩みながらヨーロッパ各国を旅する気分を味わってみてください。写真(右)は近代絵画の父と称されるセザンヌが、モチーフとしてよく描いてたサント・ヴィクトワール山。ターナーとの山の表現を見比べてみると表現の違いが明確で面白いですね!ビジネスマンの視点《風下側の海辺にいる漁師たち、時化模様》 1802年展示油彩・カンヴァス91.5×122cm サウサンプトン・シティ・アート・ギャラリーOn loan from Southampton City Art Gallery ©Bridgeman Images / DNPartcom 海が持つパワーを表現しようと果敢に挑戦した《風下側の海辺にいる漁師たち、時化模様》は、ターナーが晩年に買い戻そうとして叶わなかったというエピソードもある名作。荒れ狂う波に流されまいと帆を高く掲げる船や抗おうとする漁師たちの姿だけでなく、優れた技量によって自然の多様性さ、美しさ、ドラマを伝えています。日本と同じ島国であるイギリスでは、海景画は主要な芸術のジャンルだったそう。ターナーが生きた時代は、ナポレオンが率いるフランス軍の脅威にさらされていたため、イギリス国民全体が海に対する関心を共有していました。自然に対する理解と趣味が変化するなかで、より広範囲にわたる流行を認識して、ターナーは作品制作していたのだそう。そういった背景を読み取っていくと彼はビジネスマンの視点を持ち合わせていたことが分かります。作品の美しさだけに触れるのもアートの楽しみ方の一つですが、そういった発見から歴史や着眼点も学べると、もっとアートの楽しみ方が広がっていきますね! 是非、会場に足を運んでみてください。 【情報】 「ターナー風景の詩(うた)」展 会期:2018年4月24日(火)〜7月1日(日)会場:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館住所:東京都新宿区西新宿1-26-1損保ジャパン日本興亜本社ビル42階休館:月曜日(ただし4月30日は開館、翌5月1日も開館)時間:午前10:00〜18:00※5月9日(水)、16日(水)、6月26日(火)〜30日(土)は19:00まで※入館は閉館の30分前まで観覧料:一 般 1,300円 大・高校生:900円 65歳以上:1,100円 中学生以下:無料
2018年05月13日横山大観とは?横山大観ポートレート(昭和8年頃) 写真提供:横山大観記念館明治から昭和にかけて近代日本画の巨匠として知られている、横山大観(1868〜1958年)。1868年(明治元年)に茨城県水戸市に生まれ。17歳の頃より鉛筆画を学びます。1889年東京美術学校(現・東京藝術大学)創設にあたり、親の反対を押し切って第1期生として入学。その後、東京美術学校に学び、師・岡倉天心とともに同校を去り、日本美術院創設に参加。横山大観は新たな時代における新たな絵画の創出を目指しました。1958年89歳で亡くなるまで存在を発揮しつづけ、皇室からの制作依頼を積極的に受けるほか、画壇での評価も高まり人気作家として地位を確立していきました。 本展覧会の見どころ 本展覧会では、40メートルを超える日本一長い画巻《生々流転》(重要文化財)が一挙公開されてるだけでなく、夢幻の世界へと誘ってくれる《夜桜》や、鮮明な色にプラチナが輝く《紅葉》など、絢爛豪華な横山大観の代表作が展示されます。さらに注目して欲しいのは…観音の描写が精密な《白衣観音》やハレー彗星を水墨画で描いた《彗星》などの、100年ぶりに発見された新出作品や習作などの資料をあわせて紹介しており、制作の過程から大観が追い求めた芸術の本質を探ることができます。 変容していく画風 現在では高評価を得ている横山大観ですが、輪郭をぼかした画風は「朦朧体」と呼ばれ、当時の画壇からは批判されました。その後、仲間たちと研究を続けますが、画壇からは全く評価されず、困窮の日々が続いてしまい、日本美術院は崩壊。そんな中、親友・春草や師・天心が亡くなると、大観は在野における日本画のリーダーと目されるようになります。その頃の作品である「群青富士」は、琳派の影響を受けた装飾的な画風です。 筆運びが読み取れる情熱と遊び心 横山大観が活躍した時代は、明治維新から近代国家へと移り、西洋文化の煽りを受けていくなか、西洋諸国に恥じない芸術の体裁を整えようと洋画が成立し、その一方でそれまでの日本画が衰退していくなど…日本の美術史は大きく動きました。西洋から様々なものや情報が押し寄せるなか、日本の絵画の伝統的な技法を継承しつつ、時に改変を試み、また主題についても従来の定型を脱してみせました。こちらの写真は大観の作品に出てくる動物たち…日本画特有の艶やかな美しさだけではなく、不思議なポーズを取っており、愛いらしさも兼ね備えている表現にも注目してみてください!こうした遊び心も忘れない手法はさらなる広がりを見せ、自在な画風と深い精神性をそなえた数々の大作を展開していきました。是非、大観の柔らかな筆跡や繊細な画風をこの目でお確かめください。 【情報】 『生誕150年 横山大観展』 《東京展》会期:2018年4月13日〜5月27日会場:東京国立近代美術館住所:東京都千代田区北の丸公園3-1電話番号:03-5777-8600開館時間:10:00〜17:00(金土〜20:00) ※入館は閉館の30分前まで休館日:月(ただし4月30日は開館)料金:一般 1500円 / 大学生 1100円 / 高校生 600円 / 中学生以下無料 【プレゼント応募】本展覧会の無料鑑賞券をプレゼント致します。件名に【『生誕150年 横山大観展』チケットプレゼント】に加え、下記の情報を記入の上、info@pelulu.jp宛にメールにてご応募下さいませ。名前(漢字/カナ)郵便番号住所電話番号Q1:pelulu.jp内で今までで面白かった記事3つをあげるとしたら?Q2:今後pelulu.jpで取り上げて欲しい記事を3つあげるとしたら?応募締切日:5月13日プレゼント当選者は発送をもって代えさせていただきます。
2018年05月10日魅了されるモノクローム ©Tomoo Gokita / courtesy of Taka Ishii Gallery キャンバスに描かれたモノクロームの作品郡は、その大きなサイズに圧倒されるだけでなく、濃淡のグラデーションに引き寄せられます。モノクロームだけの表現にも関わらず、まるで豊かな色彩で描かれているかのように、肉体の弾力などの質感が伝わってくる、妖艶なポーズを取っている絵画の中の女性達。そんな彼女達の髪型やクラシカルなファッションから、古き良きアメリカを彷彿とさせます。また、描かれている人物に注目してみると、特に旧作は顔がハッキリと描かれていないものが多く、瞳が描かれていないのに視線を感じたり、現代の風刺画のようにも読み取れたり、想像が掻き立てられるのも魅力の一つです。 本展覧会の見どころ ©Tomoo Gokita / courtesy of Taka Ishii Gallery 本展覧会では新作の絵画をはじめ、ドローイングを中心とし、2000年以降の作品を36点を展示しています。両手を挙げて微笑みかける艶かしい女性を描いた「Come Play with Me」は、本展覧会のためのメインビジュアルに使用されている新作。また、アクリルグワッシュと墨を使ったチャレンジ精神溢れるドローイングも必見です!800点以上の大小さまざまなドローイングからなる大規模なインスタレーション「Untitle」は、一点、一点、作品を鑑賞しながら贅沢な時間に浸ってみてほしいです。その他にも、五木田さんのプロレス好きがわかりすぎる、愛するプロレスラーの似顔絵をレコードジャケットのフォーマットで描いた、225点にも及ぶ「Gokita Records」が展示されています。 多彩な表現の可能性に触れる©Tomoo Gokita / courtesy of Taka Ishii Galleryイラストレーションから出発した五木田さんは、60〜70年代のアメリカやサブカルチャーに影響を受け、雑誌や写真にインスピレーションを得た作品を発表してきました。計算されたグラデーションや陰影が生み出すエレガントでファッショナブルな魅力、シンプルな描線とデフォルメされた歪な造形のコントラストが醸し出すユーモアやノスタルジー、具象と抽象の間を自由に行き来するイメージの両義性など、多彩な表現の可能性を発散しています。是非、五木田智央の魅力を存分に味わえる本展覧会に足を運んでみてください。 【情報】 五木田智央『PEEKABOO』 期間:2018年4月14日(土) – 6月24日(日)会場:東京オペラシティ アートギャラリー開館時間:11:00-19:00 (金・土は11:00-20:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで)休館日:月曜日(但し4月30日は開館)
2018年04月30日旅するような展示構成 珠玉のコレクションを所蔵していることで知られているモスクワのプーシキン美術館。古代エジプトから近代までの絵画、版画、彫刻を収蔵し、印象派を中心とするフランス近代絵画コレクションは世界屈指と言われています。本展覧会は、プーシキン美術館より“風景画”をテーマにし、初来日となるモネの《草上の朝食》をはじめ、ルソーの《馬を襲うジャガー》のほか、ロラン、ブーシェ、コロー、ルノワール、セザンヌ、ゴーギャンのフランス近代絵画65点が来日します。初夏の爽やかな風が吹き抜ける上野で、巨匠たちが愛した光と色彩が躍る、美しい風景を楽しめる「旅」をどうぞお楽しみください。 風景画の展開 風景画…現在では美術のジャンルとして確立しており、まるで絵画と同時期に誕生したかのように思えますが、クレタ島の宮殿壁画やポンペイの中のフレスコ画を除けば、17世紀まで確立していませんでした。本展覧会の第一部では、17世紀末の神話や聖書の物語を題材にした風景画にまでさかのぼり、19世紀からヨーロッパでは自然主義が主流となった、自然への賛美が感じられる情景を切り取った風景画に触れています。写真(右)のクロード・ロラン《エウロペの掠奪》は、フェニキアの王女エウロペに一目惚れしたゼウスが白い牡牛に姿を変身し、侍女たちと花を摘んでいたエウロペに近づいて、一瞬にして彼女を連れ去ってしまうシーンを描いた作品。暴力的な場面とは対照的に美しい自然が広がっている背景には、風が波を立てる様子や大きな木々、洋上の船などが丁寧に描かれ、理想的な風景が生み出されていますね。 印象派以降の風景画 クロード・モネ《草上の昼食》 1866年 130×181cm 油彩・カンヴァス本展覧会の第二部では、風景画に描かれている場所に着目した構成になっています。19世紀中頃から「パリ大改造」が行われた忙しない大都市パリの街並みや、鉄道網が発達したことからレジャーを楽しみ郊外に目を向けた作品。さらには南フランスや海辺、そして海を渡ってタヒチまで、果ては想像の世界へと、自然豊かな風景を表現しています。こちらはポスターにも使用されているモネの《草上の朝食》。本作品は、当時26歳のモネがみずみずしい感性で描いたもので、銀杏の木から溢れる木漏れ日の表現方、モネの才能溢れるタッチを感じ取れることでしょう。 風景画から読み解く 数々の風景画が教えてくれるのは、神話や聖書の物語をはじめとし、その時代を生きる人々の暮らしだけではなく、情景を切り取った筆跡から、画家自身の個性が読み取れます。また、それぞれの画家が捉えた世界の見方は、私たちに光と影が織りなす世界の美しさを教えてくれることでしょう。是非、多様なスタイルで表現した風景画の旅に出かけてみてはいかがでしょうか。 【情報】 『プーシキン美術館展――旅するフランス風景画』 会期:2018年4月14日(土)~7月8日(日)会場:東京都美術館 企画展示室(東京・上野公園)時間:9:30~17:30※金曜は20:00まで ※入室は閉室の30分前まで休館:月曜日(ただし、4月30日は開室) 【プレゼント応募】本展覧会の無料鑑賞券をプレゼント致します。件名に【『プーシキン美術館展――旅するフランス風景画』『チケットプレゼント】に加え、下記の情報を記入の上、info@pelulu.jp宛にメールにてご応募下さいませ。名前(漢字/カナ)郵便番号住所電話番号Q1:pelulu.jp内で今までで面白かった記事3つをあげるとしたら?Q2:今後pelulu.jpで取り上げて欲しい記事を3つあげるとしたら?応募締切日:6月24日プレゼント当選者は発送をもって代えさせていただきます。
2018年04月28日『プーシキン美術館展―旅するフランス風景画』とは?【女子的アートナビ】vol. 108この展覧会では、ロシアを代表する美術館のひとつ、プーシキン美術館のコレクションから選び抜かれたフランスの風景画65点を紹介。モネやセザンヌ、ルソー、さらに美術史に名を遺すクロード・ロランなど17世紀から20世紀までの傑作が勢ぞろい。神話の物語や美しいパリの街並みなどの名画を見ながらフランスを旅するように楽しむことができます。スペシャルサポーターは水谷豊さん!同展のスペシャルサポーターは、俳優の水谷豊さん。音声ガイドのナビゲーターも担当された水谷さんがプレス内覧会に出席され、展覧会の見どころなどを語りました。まず、展覧会を見ての感想を問われると、「今回はテーマがフランス風景画ということで、どの絵も本当にすばらしく絵の中に引き込まれていくようで、旅しているような気分を味わえました」と回答。続いて、2つの作品についてコメントされました。クロード・モネの初来日作品《草上の昼食》、実物はいかがでしたか?水谷さん写真で見るのとは全然違いましたね。学芸員の方から知識を教えていただき絵の見方も変わったのですが、これがモネの青春時代の作品ということで、若い時から才能が花開いていたことがわかります。すばらしいです。《草上の昼食》は画家が26歳のときに描いた作品。学芸員の大橋さんのお話では、当時モネはまだたくさんのモデルを雇うことができなかったので、恋人のカミーユにいろいろな服を着せてポーズをとってもらい、いくつかスケッチを描いてから組み合わせて作品を制作したとのこと。この絵に登場する女性はすべてカミーユではないかと考えられているそうです。特にお気に入りの作品は?水谷さんいろいろありましたが、おもしろかったのはアンリ・ルソーの《馬を襲うジャガー》です。ルソーはパリにいて、植物園で熱帯植物を観察しながらジャングルに思いをはせてこの絵を描いたのですが、想像でここまで描けるのかというほどすばらしい作品です。われわれも(俳優というのは)妄想するのが仕事ですが(笑)、不思議なオーラがある作品です。ルソーは税関職員として働きながら絵を描いていた日曜画家。専門的な美術教育を受けていない彼の作品は批判されることもありましたが、ピカソやアポリネールなどからは高く評価されていました。特に南国のジャングルを描いた絵を多く残しています。最後に、水谷さんからメッセージ水谷さん名作と呼ぶのにふさわしい、たくさんの作品が東京都美術館にそろいました。訪れた人を世界の旅に連れて行ってくれる作品が集まっていると思います。僕は旅の案内人として関わらせていただき光栄です。たくさんの人にこの感動を味わっていただきたいです。ちなみに、水谷さんがナビゲーターとして出演されている音声ガイドも聞いてみたのですが、作品の背景や画家についての説明などもわかりやすく、展覧会の感動がより深くなる内容でした。そして、『相棒』ファンが喜ぶあの名セリフも入っています。ガイドは最後の最後までぜひ聞いてみてください。また、会場には作品と一緒にパリの地図なども掛けられ、どのあたりを描いた絵なのかがわかるようになっています。パリを訪れたことがある人はもちろん、行ったことがなくてもイメージすることができ、作品鑑賞がより楽しくなりますよ。フランスを旅する気分を味わえる展覧会は7月8日まで。Information会期:~7月8日(日)休室日:月曜日時間:9:30~17:30※金曜日は20時まで※入室は閉室の30分前まで会場:東京都美術館料金:一般 1600円/大学生・専門学校生1300円/高校生800円/中学生以下無料公式サイト:上野の東京都美術館で開催中の『プーシキン美術館展』に行ってきました。フランス風景画の名作が集まるこの展覧会では、俳優の水谷豊さんが音声ガイドを担当。プレス内覧会にも出席され、見どころを語ってくれました。
2018年04月28日フランスの風景画のコレクションが一堂に来日17世紀から20世紀の風景画が来日します。神話の物語や古代への憧憬、あるいは身近な自然や大都市パリの喧騒、果ては想像の世界に至るまで、描かれた時代と場所を軸にフランス近代風景画の流れをご紹介します。様々な情景を舞台にした風景画は、その土地のにおいや太陽の煌めき、風にそよぐ木々や街のさざめきをも感じさせてくれます。クロード・モネ《草上の昼食》1866年© The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.なかでも、注目は初来日となるモネの『草上の昼食』。同時代の人物たちとみずみずしい自然の風景が見事に調和しています。印象派の誕生前夜、26歳となる若きモネの魅力溢れる作品です。ほかにもロラン、ブーシェ、コロー、ルノワール、セザンヌ、ゴーガン、ルソーらの作品が集います。初夏の上野で、巨匠たちが愛した光と色彩が躍る美しい風景を巡る「旅」を体感できます。展示構成第1部「風景画の展開クロード・ロランからバルビゾン派まで」1章近代風景画の源流/2章自然への賛美第2部「印象は以後の風景画」3章大都市パリの風景/4章パリ近郊--身近な自然へのまなざし5章南へ—新たな光と風景/6章海を渡って/想像の世界宗教画の背景として描かれていた風景でしたが、17世紀のオランダにおいて「風景画」として独立したカテゴリーになります。フランスの画家たちも次第に関心をしめし、イタリアで目にした古代の移籍や旅先の風景を描くようになります。19世紀に入ると、身近な自然を愛したバルビゾン派の画家たちが人気になります。そして19世紀半ばからは「パリ大改造」が行われ、街並みが大きく変わりました。印象派の画家たちは生まれ語ったパリを歩き、都市の情景を数多く描きます。さらに鉄道網の発達にともない、郊外や南仏の風景を描き、さらには海を渡って、想像の世界へと広がりました。『庭にて、ムーラン・ド・ラ・ギャレットの木陰』ムーラン・ド・ラ・ギャレットはパリのモンマルトルにあったダンスホール。喧騒から少し離れた木陰で楽し気に語らう男女5人が描かれています。後ろ姿の女性はルノワールのお気に入りのモデル・ニ二。その後ろから顔をのぞかせているのは画家のモネです。ピエール=オーギュスト・ルノワール《庭にて、ムーラン・ド・ラ・ギャレットの木陰》1876年© The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.『サント・ヴィクトワール山、レ・ローヴからの眺め』エクス・アン・プロヴァンスの近くにあったセザンヌの家の近くから見ることができた。この山はセザンヌが主題にしたモチーフのひとつで、30点以上の油絵と多数の水彩画にしています。ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山、レ・ローヴからの眺め》1905-06年© The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.『マタモエ、孔雀のいる風景』1891年、ゴーガンはタヒチ島へ赴きます。タヒチ語のマタモエの意味は議論されてきましたが、ゴーガンはフランス語では「死」というタイトルをつけました。文明化されたヨーロッパ人としての自身の死を示していたと考えられています。ポール・ゴーガン《マタモエ、孔雀のいる風景》1892年© The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.『馬を襲うジャガー』アンリ・ルソーの作品は熱帯のジャングルを舞台にしたものが多数あるが、実際に南国に行ったことはなく、パリの植物園でスケッチしたさまざまな植物を組み合わせて、幻想的な風景を作りあげました。アンリ・ルソー《馬を襲うジャガー》1910年© The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.展覧会概要会期:2018年4月14日(土)~7月8日(日)会場:東京都美術館企画展示室(東京・上野公園)休室日:月曜日※ただし、4月30(月)は開室開室時間:9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)夜間開室:金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)主催:東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)、朝日新聞社、テレビ朝日、BS朝日、プーシキン美術館、ロシア連邦文化省お問い合わせ先:TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)大阪会場会場:国立国際美術館(大阪・中之島)会期:2018年7月21日(土)~10月14日(日)主催:国立国際美術館、朝日新聞社、BS朝日、プーシキン美術館、ロシア連邦文化省
2018年04月12日子どものための絵本のはじまり 子どもは“小さな、不完全な大人”とされてきたヨーロッパにおいて、“小さな大人”たちは本が読めるようになると、神話や騎士伝説などを表した冊子や版画を楽しむしかありませんでした。18世紀に“子ども”の概念が誕生すると、教訓的な童話がメインとなってくる、子どもを意識した本が作られるようになり、18世紀半にはジャン・ジャック・ルソーに触発され、児童文学者たちは娯楽と道徳を融合させた教育論を主張するようになります。そして、1782年には児童文学雑誌の先駆とされる雑誌『ラミ・デ・ザンファン(子どもの友)』が創刊されました。19世紀に入ると教育が社会資本の一つとして重視され、1936年には公の初等教育がはじまり、次第に読書する子どもの数も増えていきます。そして、多様に発達する複製技術が拍車をかけ、挿絵が欠かせない教育書などが増えたことから、次第に子ども向け雑誌や連続小説が生まれました。 現代に息づいている痕跡 挿絵本文化では他国をリードしていたはずのフランスですが、絵本・児童書文化においてはイギリスやドイツに比べるとスタートが遅れていたのだそう。里子に出すのが普通だったフランスにおいて、里親のほとんどは非識字階級だったため、絵本や児童書を親しむ手ほどきを受けておらず、それ故フランスに根付く下地がなかったことが、大きな理由として挙げられています。しかし、19世紀後半に子どものための本作りがはじまり、他国と比べてスタートが遅かったのにも関わらず、開花したのちの発達が非常に早く、フランスの絵本文化はたいへん豊饒です。遠近法表現にとらわれず二次元空間のフラットを生かす、浮世絵の影響を受けたかのようなイラストは、現在の漫画やバンド・シネマに通じるかのような省略と単純化がされています。 同時開催中の『旧朝香宮邸物語』も見逃さないで! 庭園美術館を訪れたなら…本展覧会『 鹿島茂コレクション フランス絵本の世界』と併せて、同時開催されている『旧朝香宮邸物語』も忘れないでください。1952年のアール・デコ博覧会への訪問がキッカケなり、誕生した旧朝香宮邸(現・庭園美術館本館、重要文化財)。『旧朝香宮邸物語』では、アール・デコにまつわる庭園美術館所蔵のコレクションとともに、旧朝香宮邸に関連する記録や衣装、展示品から歴史を巡りながら、世界的にも貴重な建築としての魅力を存分に味わうことができます。その背景について理解を深めながらじっくり鑑賞してみてください。翼を広げる女性像が浮かび上がる正面玄関ガラスのレリーフ扉や、美しいシャンデリアなどの照明器具を手掛けたのは、ジュエリー作家でもありガラス工芸家としても名を馳せたルネ・ラリック。とても繊細に施された装飾から、ラリックの美学が息づいています。 新しくオープンした「レストラン デュ パルク」も立ち寄ってみて! この度、アート鑑賞前でも、アート鑑賞後でも、そうじゃなくても、気軽に利用できる「レストラン デュ パルク」がオープンしました!庭園を臨む側を全面ガラス張りとし、客席の柱をなくすことで、開放的な眺望を楽しめるだけでなく、優しい自然光に満ちている店内は、木のぬくもりが感じられる心地よい空間になっています。是非、四季折々で表情を変えていく庭園を臨みながら、季節の食材に舌鼓を打つりながら、素敵なひと時を堪能してみてください。 見どころならぬ、楽しみどころが満載! 上記で紹介した『 鹿島茂コレクション フランス絵本の世界』をはじめとし、同時開催中の建築の魅力を堪能できる『旧朝香宮邸物語』だけでなく、新しくオープンした「レストラン デュ パルク」など、見どころならぬ、楽しみどころが満載!また、3月末〜4月上旬の週末は夜間開館で20時まで開館。日中とは一味違う雰囲気が楽しめますよ。そして、この時期一番嬉しいのが…何と言っても美しい庭園に咲き乱れる桜。美術館でお花見をする贅沢を味わってみてはいかがでしょうか。 【情報】『 鹿島茂コレクション フランス絵本の世界』会期:2018年3月21日(水)-6月12日(火)会場:東京庭園美術館時間:10:00–18:00 (入館は17:30まで)*3/23, 3/24, 3/30, 3/31, 4/6, 4/7は20:00まで開館休館日:第2・4水曜日(3/28, 4/11, 4/25, 5/9, 5/23)
2018年04月07日話題の展覧会が日本上陸! これまで名だたる西洋芸術家たちが常に向き合ってきた裸体表現。西洋美術では、絵画、彫刻、写真など、あらゆるジャンルでヌードを扱った作品が発表されており、私たちの一番身近なものであるにもかかわらず、論争や批判が起こることもしばしばありました。2016年のオーストラリアを皮切りに、各国に巡回して話題となった展覧会が、いよいよ日本に上陸します!会場には、西洋近現代美術の殿堂である英国・テートの珠玉のコレクションから、19世紀後半のヴィクトリア朝の神話画や歴史画から現代の身体表現まで、およそ200年にわたる裸体表現作品が登場。ピカソ、ルノワール、マティス、ロダン、ジャコメッティ、ジョルジュ・デ・キリコ、マン・レイ、フランシス・ベーコンほか、絵画、彫刻、版画、写真など約134点が登場します。 傑作「接吻」が日本初公開! 19世紀を代表する彫刻家であり、“近代彫刻の父”と称される、オーギュスト・ロダンは、テーマを深く考察して、モデルを徹底的に観察することで、人間の本質を追求しました。今回、日本初公開となる等身大を超える大理石像「接吻」は、制作当初は「地獄の門」の一部として構想されていたんだそう。そんな愛しく抱き合うふたりの姿は、白く磨きあげられた艶やかな肌合いで、大理石の滑らかな光沢とともに、高まる男女の感情による愛の悦びが表現されています。そして、このふたりのモデルとなっているのは、ダンテの『神曲』「地獄篇」に登場する、フランチェスカと義弟・パオロです。悲恋がテーマの本作品…不貞行為をはたらいてしまったふたりは、そこに突然立ち現れた夫・ジョヴァンニに殺されてしまいます。つまりこの「接吻」は、最期の “接吻” となってしまったのです…いつの時代も不貞行為は、何かしらの制裁を受けるのだと学びました。 変化が面白いヌード 私が特に面白いと感じたのは、第7章の『身体と政治性』。1970年代、フェミニズムの意識が高まり、性や人種に対する概念が問われ、ヌードに対する政治的な寛容が明確なりはじめました。また、この時代ではヌード表現に使われるメディアが変化し、フェミニズムの芸術家たちが写真を取り上げる機会が増え、性差による力関係はもとより、芸術とポルノグラフィーの曖昧な境界線に注意を向けようとしています。そして1990年代では、伝統的な女性の役割やアイデンティティーに対して、ユーモアを交えながら真剣な主張を展開する様子が見受けられ、性に対する固定概念を浮かび上がらせると同時に、女性を対象化することの重要な問題にも光を当てています。男性芸術家が女性のヌードを描くというかつての伝統に対して、女性画家たちが男女の身体を描くことで、男性の視点という枠組みを問い直す作品や、ヌードモデル=白人という人種差別や既存の概念を打ち崩してくれる作品など。社会背景が流れていく様子も然ることながら、私たちが思い描いているヌードの解釈が、如何に凝り固まっているものなのか、丁寧に作品と向き合うたびに思い知らされました。 私たちの一番身近なものである “ヌード=裸体” ある時は芸術家として認められるためのツールであり、ある時は現実や自身を写すためのツールであり、ある時は政治や社会に訴えかけるためのツールであり、私たちの一番身近なものである“ヌード=裸体”は、様々な可能性に満ちていることが分かりました。会期中には、学芸員による講演会やギャラリートークだけでなく、ロダンの「接吻」をデッサンするワークショップショップなどが開催されます。是非、お一人様でも、カップルでも、夫婦でも、子供づれでも…会場を巡りながら作品を通じて、その可能性を模索してみてください。 【情報】『ヌード NUDE ―英国テート・コレクションより』会期:2018年3月24日(土)~6月24日(日)会場:横浜美術館(横浜市西区みなとみらい3-4-1みなとみらい線「みなとみらい駅」徒歩3分)時間:10:00~18:00(5月11日、6月8日は20:30まで)休館:木曜日、5月7日(月)(5月3日は開館)お問合せ:(ハローダイヤル) 03-5777-8600
2018年04月06日無類の猫好きである猪熊弦一郎 猪熊弦一郎さんは、昭和の百花繚乱の画壇において試行錯誤を繰り返すも、常に独自の境地を維持しながら、個性的な作品群を残した画家です。戦前に留学先のフランスでアンリ・マティスに学び、戦後はニューヨークやハワイを拠点とし、90歳で亡くなるまでの約70年という画業の中で、おびただしい数の作品を生み出しました。そんな彼による芸術は猫だけにとどまるものではありませんが、「いちどに1ダースの猫を飼っていた」ほどの無類の愛猫家であり、私生活としても作品モチーフとしても猫は重要な存在でした。 猫たちとの素敵な生活 猪熊弦一郎さんが ”猫愛” に目覚めたのは、1926年一目惚れした女性・文子さんとの結婚がキッカケでした。猫好きだった妻の影響で、猫との共同生活がスタート。1946年、夫婦で田園調布に移ってからは、拾い猫や生まれた猫を育てるうちに、自然と多頭飼いとなったそうです。それほど愛した猫たちは芸術にも大きなインスピレーションを与えてくれました。素早い筆致で正確に捉えているにもかかわらず、その表情や仕草は世の猫好きをとろけさせるような愛しいもので、画家特有のこだわりというよりかは、猫そのものへの愛情が手を伝って表現されています。 “猫愛” 故の美への探求 猪熊弦一郎さんは、猫たちの姿を画家の目で捉え、写実的なスケッチ、シンプルな線描、デフォルメした油彩と、様々な猫の魅力を存分に享受し、創作に挑戦していきました。モチーフとしての猫に対する客観的な視点と、友としての猫に対する敬愛の念が呼応し、1950年代前半は幾何学形を使ったり、一筆書きのように単純な線で囲んだりし、猫の絵を一要素とすべくあれこれ工夫した作品を精力的に描いてます。どんなモチーフを描こうとも、形と色のバランスに注視し、構成されている絵画作品は、具象も抽象も関係なく、一貫性が感じられました。 猫が好きな人も、そうでない人も、猪熊弦一郎の芸術に触れられる ユーモラスな猫たちの姿から、面白い猫の生態はもちろん、それを慈しみながら観察していた愛猫家兼画家の視点が見て取れる本展覧会は、猪熊弦一郎さんの地元・香川県の丸亀市猪熊弦一郎現代美術館所蔵の猫を描いた油彩、水彩、素描、猫以外の主題の作品も若干加えた約160点によって構成されています。会期中には撮影可能エリアが設けられるだけでなく、本展覧会に登場する猪熊弦一郎の描いた猫たちをモチーフにした展覧会オリジナルグッズが多数展開中!是非、猫が好きな人も、そうでない人も、彼が愛した猫たちを描いた作品を介し、猪熊弦一郎の奥深い世界に触れてみてはいかがでしょうか? 【情報】猪熊弦一郎展猫たち会期:2018年3月20日(火)〜2018年4月18日(水)会場:Bunkamura ザ・ミュージアム開館時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)夜間開館:毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)休館日:会期中無休 【プレゼント応募】本展覧会の無料鑑賞券をプレゼント致します。件名に【『猪熊弦一郎展猫たち』チケットプレゼント】に加え、下記の情報を記入の上、info@pelulu.jp宛にメールにてご応募下さいませ。名前(漢字/カナ)郵便番号住所電話番号Q1:pelulu.jp内で今までで面白かった記事3つをあげるとしたら?Q2:今後pelulu.jpで取り上げて欲しい記事を3つあげるとしたら?応募締切日:4月4日プレゼント当選者は発送をもって代えさせていただきます。
2018年04月05日心踊るポスターの世界大企業が売り出す食品、嗜好品、生活必需品、また運送業やメディア、その他キャンペーンなど幅広いジャンルを手掛けているサヴィニャックのポスターは、フランス本国だけでなく、日本にも数多くのファンを持ち、ハッキリとしたインパクトある色彩と、ユーモアなデッサンが魅力的である。そんな人気が高いサヴィニャックのポスターが楽しめる、練馬区独立70周年記念展「サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法」では、日本初公開の作品を含む数々のポスター、制作過程が垣間見えるスケッチや原画、街中に貼られた様子が分かる写真など約200点を展示している。サヴィニャックの作品制作を年代順ではなく、モチーフやテーマごとに分類し、サヴィニャックの作品世界はもちろん、デザイン・広告の使命についても深く考える機会になることだろう。 遅咲きのサヴィニャックフランスを代表するポスター作家である、レイモン・サヴィニャック(1907-2002)。幼少期は両親の経営するレストランで労働者たちの会話に耳を傾け、少年時代は熱狂した自転車レーサーになるという夢を抱き、3度の兵役で自分自身を見つめる機会を設けるなど、ポスター制作には直結しない経験が、サヴィニャックの人物像を形成していった。若いころからポスター作家を目指していなかったサヴィニャックは、17歳で広告アニメーション映画工房に就職し、ポスターを複製する仕事を担うことで初めて広告の世界に触れた。その後、26歳でアドルフ・ジャン=マリー・ムーロン・カッサンドル(1901-68)と出会い、彼のアシスタントとして仕事を手伝い、彼の作品から影響を受けながら、多くのことを学んでいったそう。彼の考えに賛同しながらも、ユーモアとエスプリ、手書きの特性を生かしたあたたかさ、明快で凝縮されたデッサンの中に一つのアイディアを表現するという独自の方向性を見出していく。そして42歳の頃に、同業者兼友人でもあるベルナール・ヴィルモと開催した二人展により、自身のポスター作家としてのキャリアが一気に花開いた。写真はサヴィニャックが使用していたスケッチブックや絵具などの仕事道具。 10項目によるモチーフ本展覧会では、サヴィニャックによるポスターの作品世界を深く理解をするため、時系列ではなくモチーフごとに紹介している。彼は動物や人間など生命のあるモチーフを好んで採用し、建築物やボールペンなど生命のない物にまで命や動きを与えている。例えば、両手を大きく広げていたり、指で商品などをさすポーズ、左を向いて何かを食べるなど、様々な動作を取り入れることにより、見る者に親近感を持たせているた。サヴィニャックのモチーフから、宣伝意図をアピールするという重要な役割を課され、選び方や扱い方に一種のパターンが感じられることだろう。10項目にも及ぶモチーフは、ポスターに頻繁に登場し、大切なテーマである。そして、サヴィニャックはカッサンドルの影響下から脱し、それまではポスターの主役になることはなかった、“ユーモア”を表現の主力に捉えた画風を確立していった。この方法こそが、最も広告主の要望を伝えるに相応しいと熟知していたのだ。 心を捉えてきた数々のポスター写真(左)は、ファッションブランド『COMME des GARÇONS(コム・デ・ギャルソン)』の目付きのハートマークに似ていていて親近感を覚える、本展覧会のメインビジュアルに選ばれている『ひとりで編める ウット毛糸』。サヴィニャックは、宣伝したい商品や伝えたい情報の本質を捉えたモチーフを選び、そこに“ユーモア”というエッセンスを加えて大胆に単純化するというプロセスを踏んだ上で、瞬時に人々の脳裏に焼き付くイメージを作り上げているのが分かる。それはシリアスなメッセージを伝える場合でも、ネガティブに寄り過ぎることなく、印象的にメッセージを伝達する場合に上手く機能してると言えるだろう。彼のポスターは計算されたシンプルさと、明快な表現によって、世界中の道行く人々の心を捉えてきた。会期中には展覧会に合わせて、講演会、ギャラリートーク、ワークショップが開催されるだけでなく、練馬区立石神井公園ふるさと文化館で開催されている練馬区独立70周年記念展特別展「生誕90年記念藤沢周平展」との相互割引もある。是非世界中の道行く人々の心を捉え、サヴィニャックの心踊るポスターから、その魅力を感じてみてはいかがだろうか。 ※館内は写真撮影禁止 【情報】 練馬区独立70周年記念展「サヴィニャックパリにかけたポスターの魔法」 会期:2018年2月22日(木)~4月15日(日)会場:練馬区立美術館休館日:月曜日開館時間:10:00~18:00 (入館は17:30まで)
2018年03月26日150年以上の歴史を誇る、画家一族 16世紀のフランドル地方(現在のベルギーに相当する地域)を代表する画家、ピーテル・ブリューゲル1世にはじまり、150年以上にわたって画家を生み出してきたブリューゲル一族。東京都美術館で開催中の『ブリューゲル展画家一家 150年の系譜』は、2人の息子や孫、さらにひ孫の世代まで、一族に連なる9人の画家の作品を見比べられることはもちろん、個性的な一族の全体像を見ることができる貴重な展覧会だ。その系譜を巡りながら、風景画、風俗画、花の静物画、通常見ることはできない個人コレクションの絵画など、約100点を鑑賞することができる。 一族の祖、ピーテル・ブリューゲル1世画像:ピーテル・ブリューゲル1 世 [下絵] ピーテル・ファン・デル・ヘイデン [彫版]《最後の審判》 1558年 Private Collection 150年以上の歴史を誇るブリューゲル一族は、ピーテル・ブリューゲル1世からはじまった。彼は雄大な風景や、悪魔や怪物が略動する作品で知られるヒエロニムス・ボス風の幻想世界を描き、「第2のボス」との名声を確立した画家である。ピーテル1世が下絵を手掛けた作品のひとつ「最後の審判」(画像上)は、ボスと同じように悪魔や怪物たちが描かれている。しかしボスとは違って、道徳的なメッセージ性が薄く、現実の世界を忠実に描こうとする姿勢が映し出されている。宗教画が中心だった時代にも関わらず、人生の最後の6年間には同時期の農民たちを描き、“農民画”とでも呼ぶべき風景画を描いた革新的な人物だった。 子、ピーテル・ブリューゲル2世とヤン・ブリューゲル1世 ピーテル・ブリューゲル1世の2人の息子、ピーテル・ブリューゲル2世とヤン・ブリューゲル1世もまた画家になった。長男のピーテル・ブリューゲル2世は、生涯にわたり父の作品の模倣作を作り続け、父の作風を世に広めた画家である。現在の感覚では“コピー”は否定的な印象が持たれがちだが、当時では優れた画家によるコピーにそれなりの評価が与えられていた。ただ、ブリューゲル2世の作品は人気が高かったものの、高値で売れることはなく、家賃の支払いが滞ってしまうこともあったそうだ。一方、次男のヤン・ブリューゲル1世は独自の作風を確立させていった。父譲りの風景画をはじめとし様々な作品を描いたが、花の静物画で有名になり、“花のブリューゲル”とも呼ばれた。自身の息子であるヤン・ブリューゲル2世とともに描いた「机の上の花瓶に入ったチューリップと薔薇」(写真上)は、チューリップの縞模様が描かれており、実はモザイク病というウイルス性の病気にかかったためだったが、当時はそれが分からず希少なものとして珍重されたそうだ。そんなヤン・ブリューゲル1世は貴族や聖職者を顧客に持ち、6軒もの家を所有するなど経済的に大きな成功を収めた。 孫、ひ孫と続いていく才能 ヤン・ブリューゲル2世は父と似た作風で、風景画や花の静物画を描いたほか、父ヤン1世の作品のコピーはもちろんだが、父ヤン1世が急に亡くなった後にその工房を引き継ぎ、派生作品なども描いていった。人間の五感を表した「聴覚の寓意」も、父であるヤン1世とその友人パーテル・バウル・ルーベンスの共作をもとにしている。ヤン1世の孫にあたるヤン・ファン・ケッセル1世は、昆虫や小さな生き物を写実的に描いた習作が有名。本展覧会でも「蝶、カブトムシ、コウモリの習作」、「蝶、コウモリ、カマキリの習作」が展示されている。この作品は、大理石に描かれた非常に珍しい作品で、大理石が蝶の羽の透明感を際立たせている。 代々受け継がれていく描写 上記で紹介した画家以外にも、ピーテル1世のひ孫世代で、故郷を離れたアブラハム・ブリューゲルや、ダーフィット・テニールス2世など、ブリューゲル一族の個性的な画家たちの作品が多数展示されている。現実世界を冷静に見つめ、人間の日常生活を何の偏見もなく、ありのままに表現した観察眼は、子から孫、ひ孫へと受け継がれ、一族の絵画様式と伝統を築き上げていく。代々受け継がれた細密な描写は必見!そして、展示作品の多くが普段公開されることのない個人コレクションなので、ほとんどが日本初出展という貴重な機会である。また、会場ではデジタルコンテンツとともに観る、ピーテル2世の「野外での婚礼の踊り」がスクリーンに映し出され、当時の農民が生き生きと踊る様子がとても感動的。父親の世界観を受け継いだ息子の心意気に、親子の絆を感じに足を運んでみてはいかがだろうか。 【情報】 『ブリューゲル展画家一家 150年の系譜』 会期:2018年1月23日(火)~4月1日(日)会場:東京都美術館台東区上野公園8-36休室日:月曜日時間:9:30~17:30金曜日は9:30~20:00※入室は各閉室30分前まで 【プレゼント応募】本展覧会の無料鑑賞券をプレゼント致します。件名に【『ブリューゲル展画家一家 150年の系譜』チケットプレゼント】に加え、下記の情報を記入の上、info@pelulu.jp宛にメールにてご応募下さいませ。●名前(漢字/カナ)●郵便番号●住所●電話番号●Q1:pelulu.jp内で今までで面白かった記事3つをあげるとしたら?●Q2:今後pelulu.jpで取り上げて欲しい記事を3つあげるとしたら?応募締切日:3月10日プレゼント当選者は発送をもって代えさせていただきます。
2018年03月04日世界各地の美術館から作品を集結企画展「ルドン―秘密の花園」を開催中の「三菱一号館美術館」(東京都千代田区)内にあるミュージアムショップ「Store 1894」では、会期中ヨーロッパで見つけたこだわりのチョコレートを販売しています。2018年2月8日(木曜日)にスタートした「ルドン―秘密の花園」は、幻想的な内面世界に目を向けた特異な画業で現在も世界中の人の心を魅了するオディロン・ルドンの作品およそ90点を展示する企画展。ルドンが描いた花や植物に焦点を当てた前例のない展覧会となっており、オルセー美術館やニューヨーク近代美術館といった世界各地の美術館に収蔵されている作品を鑑賞できます。ショップのみの利用も可能「Store 1894」で販売されているチョコレートはダイアナ妃も愛したチョコレートの名店「PRESTAT(プレスタ)」のトリュフチョコ(3402円)、美しい自然に囲まれたフランス中部の小さな農家で手作りされている「CHOC’FLEUR(ショックフルール)」(756円から2592円)など。チョコレート以外にも展覧会グッズや三菱一号館美術館のオリジナルグッズを中心に、世界中から集めた上質な商品をとりそろえています。営業時間は10時から18時。美術館の鑑賞券がなくても利用可能です。企画展「ルドン―秘密の花園」ならびにチョコレートの販売は2018年5月20日(日曜日)まで。毎月第2水曜日の17時以降「アフター5女子割」で当日入館料が一律1000円となります(女性限定)。(画像はプレスリリースより)【参考】※三菱地所株式会社のプレスリリース/PR TIMES※三菱一号館美術館
2018年02月16日子どもができると、足が遠のく場所のひとつが美術館。シーンとした館内で騒ぎ出したらどうしよう?子どもが飽きたときに遊ばせる場所はあるかしら……なんてアレコレ考えだすと、「もうすこし大きくなってから」となるのは当然です。でもアート施設のなかには、「ぜひ親子で来てほしい!」と子育て世代を待っている場所がたくさんあるんです。そんなミュージアムのひとつ〔ちひろ美術館・東京〕に行ってきました。練馬の住宅街にたたずむ〔ちひろ美術館・東京〕〔ちひろ美術館・東京〕があるのは、東京都練馬区下石神井。西武新宿線の上井草駅を降りて、7分ほど静かな住宅街を歩くと、あかがね色の建物が見えてきます。駐車場(乗用車3台・身障者用1台)があるので、車で行きたい人にも好都合。バリアフリー設計で、ベビーカーで館内に入ることができます。入口の右手には、絵本やちひろグッズが大充実のミュージアムショップがあり、明るく親しみやすい雰囲気です。なぜこんな住宅街のなかにあるのかというと、画家のいわさきちひろ(1918~1974)の自宅兼アトリエ跡だから。いわさきちひろの作品だけでなく、世界の絵本作家の作品展や、大人も子どもも楽しめるさまざまなジャンルのアートを紹介する企画展を開催しています。ちひろのアトリエや庭を再現55歳の若さで亡くなるまで、子どもを生涯のテーマとして描き続けたいわさきちひろ。母親として子育てをしながら、子どものスケッチを積み重ねるなかで、10か月と1歳の赤ちゃんを描き分けられるほどの観察眼と描写力を養いました。現在の美術館の建物は、建築家の内藤廣さんの設計。アメリカ・オハイオ州のバーボン工場で100年使われていたというアンティークオークを使った床や、杉板を当てて木目をつけたコンクリートの壁、柱の構造など、建築科の学生が見学に来ることも多いとか。館内には、ちひろのアトリエや庭を再現したスペースが。アトリエの画机やイスなどは、実際にちひろの愛用品がそのまま置かれています。自分の手を映しながら描くための鏡や、ひとり遊び用のトランプ、集めていた民芸品コレクションなど、ちひろが好きだったものがいっぱい。国会議員をしていた夫の両親や実母を引き取り、大家族を切り盛りしながら、時間を見つけて絵を描いていたそうです。遺された写真などから、ちひろが育てていた植物や木々を再現した「ちひろの庭」。真っ赤なサルビアとシュウメイギクがとてもきれいでした。春にはしだれ桜、パーゴラにはバラが咲くとのこと。おしゃれだったちひろのオーダーメイドのワンピース。いわさきちひろは、生きていたなら来年100歳。当時としては珍しく、両親とも共働きの家に生まれました。母親が自らフルコースの洋食を作ってくれるような、ちょっとハイカラな家だったそうです。ピアノ、書、絵が得意だったいわさきちひろは、意外なことにスポーツも万能。息子が木登りをしていると、心配するどころか「お手本を見せるわ」といって自分も登ってしまうような、アクティブなお母さんでした。芯の強い女性で、遺族は「鉄の棒を真綿でくるんだような人」と表現していたといいます。カフェや「こどものへや」でひと休みアート鑑賞につかれたら、緑の庭を眺めながら〔絵本カフェ〕でひと休み。子どもにも安心して食べさせられる、五目炊き込みごはんや野菜と塩こうじのスープ、ポタージュなど、体に優しいメニューが並びます。昔なつかしい「いちごのババロア」は、ちひろが愛した店のレシピを再現したもの。ひとさじ食べると、口いっぱいにフレッシュなイチゴの味が広がります。「ババロアってこんなにおいしかったっけ!」と感激する逸品です。「こどものへや」は、靴を脱いで入る赤ちゃんや子どものための部屋。赤ちゃんを寝かせられるブランケットや、小さい子が喜ぶ木や布のおもちゃがあります。授乳室もあり、ミルク用にお湯が出る流し台と授乳用のソファ、授乳クッション、ベビーシート、おむつ用のゴミ箱を完備。毎月第2・4土曜日の11時から、絵本の読み聞かせも行われています。絵本がいっぱいの居心地のいい図書室。訪れた日は残念ながら雨でしたが、そんな日にのんびり絵本を読むのもいいものでした。ファーストミュージアムにぴったりの美術館〔ちひろ美術館・東京〕は「練馬におけるキッズフレンドリー・ミュージアム事業」を区立美術館や区内の子育て支援NPOとともに実施していて、親子がそれぞれ自分のペースでアートを楽しむ環境づくりに力を入れています。0歳児からアートに親しめる赤ちゃん鑑賞会や、わらべうたあそびのワークショップといったイベント企画にも熱心です。スタッフの方も、「子どもや赤ちゃんがしあわせでいられるようにという、ちひろの想いを引き継いで活動しています。たとえ絵がわからなくても、『小さいとき、あの美術館で遊んだな』という思い出があるだけで、なんとなく美術館が身近になるはず。ぜひお子さんと遊びにきてください」と話してくれました。美術館のご近所には、手作りグラノーラ店と古本屋さんが一緒になった〔井草ワニ園〕や、素朴なサンドイッチが美味しい〔カリーナ〕もあります。すこし足を伸ばして、石神井公園までお散歩するのもいいかも。ファーストミュージアムにぴったりの〔ちひろ美術館・東京〕では、2018年1月31日(水)まで「【開館40周年記念Ⅳ】ちひろの歩み/日本の絵本100年の歩み」を開催しています。ぜひ訪れてみてください。【ちひろ美術館・東京】●住所:東京都練馬区下石神井4-7-2●電話:03-3995-0612(テレフォンガイド:03-3995-3001)●開館時間:10:00~17:00(最終入館16:30)●休館日:月曜日(祝休日は開館、翌平日休館)※年末年始2017年12月28日~2018年1月1日(1月2日から開館)※冬期休館2017年は2月1日~2月末日、展示替のための臨時休館あり※ショップ・カフェはご入館された方のみ利用できます。【開催中の展覧会「【開館40周年記念Ⅳ】ちひろの歩み/日本の絵本100年の歩み」●会期:2017年11月8日(水)~2018年1月31日(水)●ライター田邉愛理●カメラ菅井淳子ちひろ美術館・東京
2017年11月26日先日8歳の息子と、とある展覧会に行きました。「作品にさわらないでください」という注意事項を十分言い聞かせたつもりでしたが、展示物がどうなっているのか気になって思わず手がでてしまうわが子。「ダメだよ」といいながらもその気持ち、わからなくもなかったり…。子どもの「さわりたい」という欲求を満たしてやりたい! ということで今回は「さわってもいい」おでかけ先をリサーチ。家族みんなが楽しめる3スポットをご紹介しましょう!■大迫力! ホンモノと同じ感動を「大塚国際美術館」「大塚国際美術館」は徳島県鳴門市にある、展示品がすべてレプリカの美術館です。レプリカだと、本物の迫力はないんじゃ…なんて感じる人もいるかもしれませんが、この美術館のすごいのは「陶板」によって本物の価値を忠実に再現しているところにあります。陶板は、陶器の大きな板に絵を転写する技術のこと。大塚美術館の展示作品はさらにオリジナルに忠実な色彩・大きさで再現されているので、通常、年月とともに劣化してしまう作品もこの手法で複製することで、本来の姿を永久に残すことができるといいます。有名な西洋名画1,000点あまりが展示され、手でふれながら鑑賞でき、本物と同じ迫力、臨場感を間近で感じられるのはここならでは! 通常のガイドツアーのほか、ゴッホの「ヒマワリ」や「フランダースの犬」にでてくるルーベンスの作品などアニメや漫画に登場する名画を案内するキッズツアーも。作品のサイズ感、描かれている表情、しぐさなどいつもと違った角度から名画を存分に堪能できそうです。1階のレストランでは阿波黒毛和牛、レンコン、金時芋など徳島の食材を使った「最後の晩餐」(1800円/税込)、地下2階にある軽食が楽しめるカフェでは10月より季節限定メニューとなっている「ムンクのどら焼きセット」(600円/税込)など名画にちなんだメニューもあり、食と芸術のコラボを楽しむこともできるようです。 ・大塚国際美術館 ■小さな手にキュン! カワウソと手つなぎ体験「伊勢シーパラダイス」三重県伊勢市にある「伊勢シーパラダイス」は距離感ゼロをテーマにした水族館。ここではさまざまな海の生き物たちが芸を披露してくれ、ぺたっと手にふれられたり、頭や体をなでなでさせてくれたり、エサをあげることができたりといった体験ができるそう。なかでも上手に二本足で立つ姿にキュンとくるカワウソのブースでは、ガラス越しに短いパイプが通されて外とつながるようになっており、そこからカワウソと握手ができるんです!「意外と握力が強い」なんて口コミもあり生き物と直にふれあう驚きや発見がありそう。遠くから見るだけの水族館とは違う体験が得られるはずです。「全長3mの大きなトドはよく見るとかわいい顔をしている」「牙とひげが特徴的なセイウチは、好奇心旺盛でスタッフと遊ぶのが大好き」「臆病とされるゴマフアザラシも、ここの子たちは人を気にしないで館内をうろうろ…」など公式サイトには愛嬌たっぷりの動物たちの様子が紹介されていて「スタッフみんな、ここの子たちが大好きなんだろうなぁ…」と家族愛のようなものを感じてしまいました。見てまわるのに疲れたときは「海底ごろりんホール」へ。ここではソファに座りながら、ごろごろ転がることができ、小さなお子さんもホッとひと息つける空間になっています。目の前には園でいちばん大きな回遊水槽やテーブル型水槽があるので、まるで海底にいるような気分でくつろげます。うとうとして、うっかり寝てしまわないようにご注意を!(笑) ・伊勢シーパラダイス ■想像を超える、未知の世界へ「深海の不思議展」「変な形の生き物が好き」という友人の子どもに、今すぐ教えてあげたい! と思ったのが「深海の不思議展」。この展覧会は栃木県宇都宮市にある大谷資料館で11月23日(木)~26日(日)までの4日間という期間限定で開催されます。大谷資料館はもとは石の採掘場だった場所で、今は地下博物館として利用しているそう。コンサートや結婚式、映画やドラマの撮影地としてもよく使われているそうですが、今回はその地下空間が深海のテーマパークに様変わり!公式ツイッターによれば、ダンゴムシやフナムシの仲間で深海生物のなかでもファンの多いオオグソクムシや、水深90~200mの岩礁に生息するナヌカザメなどの参加を予定しているそうです。深海って自分の目で見たことのある人ってほとんどいないのではないでしょうか。大きな水圧のかかった静かで暗い世界に住む生き物たちの形態は、奇妙でグロテスク。でも、とってもユニークで不思議なものが多いですよね。そんな生き物たちを間近で見ることができて、さらにこの手でさわれるなんて、好きな人にとってはこのうえない貴重な体験…。深海生物に詳しくないママやパパも「なんだかすごいのが見られそうだ」とドキドキしてきますね! ・深海の不思議展 いかがでしたか? 子どもの「さわりたい!」という素直な気持ちを叶えてくれるスポットをご紹介しました。なかには「私(オレ)もさわりたい!」と好奇心を刺激されるママやパパもいるはず! 家族のおでかけ先候補として、ぜひ参考にしてみてください。
2017年11月11日絵や工作など、子どもの作品管理に困っていませんか? 親にとって子どもの作品は宝物。なかなか処分できず、ずっと取っておきたくなりますが、出来上がる作品全てを保管するのは不可能ですね。しかも、ただしまって取っておくだけでは、子どもの作品を生かしてあげられません。ちょっとしたひと工夫で子どもの作品のアート度がアップ。さらに、素敵なインテリアにもなる、親も子どもも大満足の、子どもの作品の管理方法をご紹介します。■子どもの作品を飾る専用スペース「おうち美術館」を作ろう作った本人にも忘れ去られてしまい、ホコリまみれの作品が家の片すみに山積み…なんてことになっていませんか?そんな悩みを解決するのにおすすめなのが、子どもの作品を飾る「おうち美術館」。あらかじめ展示スペースを作っておき、子どもと一緒に飾る作品を選んだり、飾る作業をしたりして楽しく飾りましょう。飾り方もちょっとしたひと手間を加えるだけで、子どもの作品の見栄えがぐーんとアップし、アートに大変身します。美術館の展覧会やショップのディスプレイのように、一定期間で変えていくようにすれば、たくさんの作品を生かせます。一度しっかり飾れば意外と子どもも満足して、「次の作品を飾るから」の一言で、本当にお気に入りの作品以外は手放すことに納得してくれそうです。最後、素敵に飾った作品と写真を撮れば、いい記念にもなりますね。■作品サイズに合わせ、「背景」を作りこんでアート度アップ!それでは、子どもの作品をどのように飾ればいいのでしょうか。一番のポイントは、背景を作ること。台紙や厚紙で背景を作り、その前に作品を置くだけで、ぐんと引き立ちます。背景に使う紙は、自立する厚めの紙を選びましょう。何種類かの紙をあらかじめ用意しておいて、子どもと一緒に作品に合った背景を選ぶのも楽しいですね。また、ずっと使い回せる背景を作って作品だけを入れ替えていく、というのも手間が少なくおすすめです。大きな厚紙に、子どもの作品より一回り大きいサイズの色紙をあらかじめ貼っておきます。あとは、その上に作品をピンなど、繰り返し貼ったりはがせるもので固定します。作品を変えたくなったら、背景はそのままで作品だけ入れ替え。色紙が一枚、作品の背景にあるだけで、なんだか作品が引き立つから不思議です。壁に直接貼りたくない場合も、厚めの台紙がクッションとなるのでおすすめです。 ■作品の立体感・存在感が際立つイーゼルは100均でも入手可能もっと手軽に済ませたい時は、100円ショップでも手に入るイーゼルを常備しておけば簡単。その上にのせるだけで、なんだか作品がちょっと立派に見えます。厚みのあまりない作品なら立体的にも飾れます。■飾れないほどの大作は、写真に撮ってハンギング飾るスペースがない、飾るには作品が大きすぎる場合は、写真に撮って保存しましょう。クリップでハンギングすれば、省スペースにたくさんの作品を飾れるだけでなく、製作順に配置すればわが子の上達具合もわかります。■たまった作品は親目線、子ども目線の両方で上限を決めて保管一定期間、大切に飾ることが肝心です。親も子どもも「作品を大切にした、生かした」という気持ちになれるので、作品を処分しやすくなるのかもしれません。それでも、子どもたちは日々作品を作り、家に持って帰ってきます。「1年にファイル1冊分」、「園時代に箱1個分」など保管する量をあらかじめ決めておくと、一定期間ごとに取っておく作品・処分する作品を選びやすくなりますね。時には、親が取っておきたい作品と子どものそれとが違うこともあるでしょう。親子それぞれのベスト10を、お互いに選んでおくのもいいでしょう。子どもたちが小さい頃は、とても手放せないと思いこんでいた作品や思い出の品も、子どもが大きくなるにつれ「なんでこんなに大量にとっておいたんだろう?」という心境になることも。子どもと一緒に、小さい頃の思い出を語りながら一緒に保管するもモノを選ぶのも楽しそうですね。参考図書: 「子どもがどんどん整理整頓したくなるお片づけ帖」 (永岡書店)子どもが散らかしてばかりで部屋が全然片づかない…。そんな悩みをお持ちの方に向けて、子どもが自分から楽しく片づけをしてくれるようなノウハウを写真やイラストを多用してご紹介。子どもが無理なく自然にお片づけができる “しかけ” を多数掲載しています。カール友波(となみ) プロフィール大阪芸術大学デザイン学科インテリア専攻卒業。整理収納アドバイザー1級。整理収納アドバイザー2級認定講師。9歳以下の子どもの保育者向け「整理収納教育士」認定講師。子育てが一段落した後、大手家事代行会社のお片づけ部門を立ち上げ、様々なお客様のニーズに応えながら整理収納サービスに邁進。独立後、埼玉県内、都内、首都圏を中心に整理収納アドバイザー2級認定講座、「親子で学ぶおかたづけ」などのセミナーを開催。日本ではじめて生涯教育としてのお片づけ=「かたいく」を提唱し、普及に努めている。
2017年10月29日ファッションや映画など多様な文化を滋養にして、美しくしなやかに生き方を主張するパリジェンヌたち。世田谷美術館で開催する『ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち』のキャッチコピーも「『パリジェンヌ』は流行じゃなくて、生き方です!」とある。アメリカ・ボストン美術館所蔵のマネやドガ、ルノワールなど印象派の絵画のほか、写真やイラスト、服飾資料なども展示し、多角的に“パリジェンヌ”の源泉をたどる本展。その記者発表会が9月5日、三軒茶屋の世田谷文化生活情報センターで行われた。【チケット情報はこちら】会見では世田谷美術館・学芸部主査の塚田美紀氏が登壇し、5つのチャプターに分けられた本展について解説。チャプター1では、ルイ14世の死去により、文化の中心がヴェルサイユから、裕福な市民のサロンがあるパリへと移行する様子を紹介。技巧を凝らしたドレスや、日本の有田焼まで取り入れたティーセットも展示される。チャプター2では、フランス革命後、19世紀に見られた女性への視線が示される。小説家として活躍するような進歩的な女性も当時は登場していたが、フラゴナールの『良き母親』に見られるように「パリジェンヌの実態というよりは、社会的に期待されたイメージ」(塚田氏)が数多く描かれた。チャプター3では、19世紀半ばにパリの街の大改造が行われたことで、市民の消費も拡大。パリジェンヌのモードが発展を遂げ、ついには世界中で注目を浴びるに至った様子が示される。サージェントの『チャールズ・E.インチズ夫人』は、パリジェンヌ風のドレスに身を包んだアメリカの女主人を描いた名作だ。続くチャプター4では、いよいよ19世紀後半にルノワールやドガら印象派の巨匠たちの作品が登場する。中でも注目は、マネの大作『街の歌い手』。今回は約70年ぶりの修復後、初の公開となる。その後も画家たちのミューズとなった多くの女性たちや、カサットやモリゾなどの女性画家、またサラ・ベルナールら女優の台頭によって、パリジェンヌの名声は高まってゆく。チャプター5では、20世紀に入ってのカルダンやバレンシアガのドレスや、踊り子のイラスト、モデルや女優の写真までを紹介。5つのチャプターをたどることで、パリジェンヌが後世の文化にいかに影響を与えたかを改めて感じられる内容になっている。本展は2018年1月13日(土)から4月1日(日)まで東京・世田谷美術館で開催。その後は4月11日(水)から6月10日(日)まで広島・広島県立美術館にも巡回予定。取材・文佐藤さくらPhotographs(C)Museum of Fine Arts, Boston
2017年09月19日1200個の風鈴が奏でる地球への警鐘フェリックス・バコロール《荒れそうな空模様》2009/2017年東南アジアで頻繁に見られる、天気雨を意味するタイトルがつけられた本展には、空間全体を使用した大型インスタレーション作品が、豊富に展示されています。その中でもひときわ目を引くのが、森美術館に展示されている、天井から1200個もの色鮮やかな風鈴をつるして作られたこちらの作品。膨大な数の風鈴が風によって揺れ動く姿は、東南アジアの祝祭性や、大量生産を支えるグローバル経済の現状を映しており、鋭さと儚さを同時に奏でる美しい音色は、我々の聴覚と視覚を通じて地球温暖化に対する警告を意味しているのかもしれません。環境問題に着目した壮麗なインスタレーションを、ぜひご自身の目と耳で体感してください。SNS映えバツグン! 5トンの糸に酔いしれながら宝探しスラシー・クソンウォン《黄金の亡霊(どうして私はあなたがいるところにいないのか)》2017年本展の作品は、そのほとんどが写真撮影可能となっており、連日多くの人が自身のアート体験をSNSに投稿しています。続いてご紹介するのは、国立新美術館に展示中のこちらの作品。床全体を覆う、色とりどりの糸が創り出すアート空間は、SNS映えバツグンです!5トンもの糸に隠されているのは、黄金の亡霊をあしらった、最初は全部で9本あった金のネックレス。それを見つけた来場者は、なんと持ち帰りが可能!大人から子供まで楽しめる体験型の作品となっています。ネックレス探しに熱中するもよし、糸の感触を楽しむもよし。思い思いの過ごし方ができる魅力的な空間に、時間が経つのを忘れてしまいそう。指文字が織り成す民主主義への叫びFX ハルソノ《声なき声》1993-94年飾り気のない、どこか寂し気でシンプルな空間にたたずむ9つの手。国立新美術館に展示されている9枚のパネル作品は、指文字で「DEMOKRASI」、インドネシア語で「民主主義」を表現しています。巨大なパネルの手前に置かれている、それぞれの指文字に対応するアルファベットが刻まれたスタンプは、自由に押印が可能。左から順番に押していくと、紙の上に民主主義の文字が完成する仕組みです。一番右のパネルが表現しているのは、言論や思想の自由に対する抑圧に縛られる民衆の声なき声。無骨で力強い9枚の白黒写真から聞こえてくる静かな脅威に、耳を傾けてみてください。訪れた誰もが作品制作の一部を担える、参加型作品が満載の本展。アジア各国から集結したアーティストによる現代アートの競演を、とくとご覧あれ♪文/千祈(Kazuki)イベント情報イベント名:サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで(2館同時開催/国立新美術館)催行期間:2017年07月05日 〜 2017年10月23日住所:東京都港区六本木7-22-2電話番号:03-5777-8600(ハローダイヤル)イベント情報イベント名:サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで(2館同時開催/森美術館)催行期間:2017年07月05日 〜 2017年10月23日住所:森美術館東京都港区六本木6-10-1六本木ヒルズ森タワー53階電話番号:03-5777-8600(ハローダイヤル)
2017年09月15日女子的アートナビ番外編、今回はパリで超有名な美術館のひとつ、オルセー美術館の取材レポをお届けします!もとは〇〇だった!【女子的アートナビ】番外編オルセー美術館は、パリ左岸、セーヌ川沿いにあります。もとは駅だった場所を使っているので、建物や内部もちょっと独特。あとで館内の写真もお見せしますが、駅の風情も感じられるステキな空間になっています。こちらは入り口の写真。時刻は開館30分前の9時ですが、すでに人が並び始めています。現在、パリではテロ防止のため、美術館や教会等の施設に入る際、手荷物検査やボディーチェックが行われています。特に人気の美術館では、入場までに30分以上待つこともあるので、朝一番や閉館前など比較的空いている時間帯に行くと入りやすいです。空間がとってもおしゃれ♡それでは、館内に入ります!オルセー美術館はルーヴル美術館、ポンピドゥー・センター(国立近代美術館)と並ぶパリ三大美術館のひとつ。主に1848年から1914年までの西洋美術作品が展示されています。1900年のパリ万博にあわせて建設された駅舎を再利用しているので、丸天井の空間がそのまま残されていて開放感たっぷり。装飾などもおしゃれです!大人気の印象派ギャラリーへ館内は3つのフロアにわかれているので、まずは最上階の5階にある印象派ギャラリーから鑑賞スタート。モネ、マネ、ルノワールやシスレー、セザンヌなどなどの超有名な作品かズラリと並んでいます!オルセー美術館の展覧会は日本でもたびたび開かれているので、何度か目にしたこともある絵画も展示されていますが、やはり現地で見るのは格別。上の写真はエドゥアール・マネの傑作《草上の昼食》です。こんな名画、なかなか日本では見ることができません!この作品は4人の男女が森の中でピクニックをしている場面を描いたものですが、男性たちはスーツにネクタイまでつけているのに、手前にいる女性はヌード。しかも現実世界にいる女性のようです。当時、ヌードは神話世界に出てくる女神を描くのが一般的だったので、この絵は「下品だ!」とかなり批判を浴びたようです。2階にはゴッホの人気作も!2階にあるゴッホとゴーガンの展示室にきました。やはりゴッホの人気は絶大!人が集まり、熱気ムンムンです。こちらはゴッホの《星月夜》。ローヌ川の左岸からガス灯がきらめくアルルの街の夜景を描いたもので、青と黄色のコントラストがとてもきれいです。画家自身も愛着を持っていた作品で、オルセーのなかでも人気作のひとつです。このほか、2階ではスーラやシニャックなど新印象派の絵画やロダンなどの彫刻、アールヌーヴォーの家具なども見ることができます。熊もヌードも見られる地上階へ!地上階に降りてきました。ここには、ロダンの弟子、フランソワ・ポンポンの彫刻《白熊》があります。シンプルな造形なのに、すごい熊っぽくて愛らしさ満点!来館者にも大人気の作品です。こちらはマネの《オランピア》。古典的な絵画の構図をまねていますが、横たわる女性は現実世界の娼婦として描かれています。先ほどご紹介した《草上の昼食》と同じく、この絵も当時は大ブーイングを受けたそう。これらの問題作品も、今では近代絵画の傑作といわれています。私はマネが好きなので、ご紹介作品が偏ってしまいましたが、オルセー美術館にはほかにもクールベやナビ派、ロートレックの絵画などまだまだ多くのすばらしい作品があります。館内にはおしゃれなカフェやレストランもあるので、休憩しながら丸一日滞在するのがおすすめです。ミュージアムショップもすごい!ミュージアムショップは美術館を出たところにあります。オルセー美術館の所蔵作品をモチーフにしたステーショナリーや食器、スカーフなどがいっぱい!思わず買ってしまったのが、ポンポンの《白熊》ミニチュア版。小さくてもかわいい!ゴッホの《星月夜》がプリントされたマイクロファイバーも入手。発色がきれいです。夕刻、美術館を出ると、入り口にはまだ人が並んでいました。ふだんは18時閉館ですが、木曜日だけは21時45分までOK。なので、木曜夜に訪れると入りやすいかもしれません。オルセー美術館は作品だけでなく、駅舎を利用した建物も、レストランのランチもショップのグッズも何もかもがステキでした。パリに行く機会があったら、ぜひぜひ足を運んでみてくださいね!※本記事の写真はオルセー美術館の許可を得て撮影・掲載しています。
2017年09月12日熊谷守一没後40年の大回顧展が、2017年12月1日(金)~2018年3月21日(水・祝)の期間、東京国立近代美術館で開催されます。スケッチや日記まで含めて200点を超える展示品が集められ、97年の人生をひたすらに生き、描き続けた熊谷の人生と、その創作の秘密に迫ります。97年の人生をひたすらに生き、描いた画家、クマガイモリカズ花や鳥や虫、何気ない庭の一角。明快な線と色で身近なものを描く作品で広く知られる熊谷守一。一見おだやかに見える作品の背後には、科学者のような観察眼と、考え抜かれた制作手法が隠れています。97年の人生をひたすらに生き、描いた画家の軌跡を存分に紹介する――それがこの、没後40年の大回顧展です。●熊谷守一とは1800(明治13)年、岐阜県恵那郡付知村に生まれた熊谷は、1897(明治30)年に上京。1900(明治33)年、東京美術学校西洋画科撰科に入学し、黒田清輝、藤島武二らに師事しました。一時帰郷して材木運搬などの仕事に就くも、再上京。二科会を中心に発表を続け、二科技塾の講師も務めます。戦争を挟んで次々と家族の死に見舞われた熊谷。戦後、明るい色彩と単純化されたかたちを特徴とする画風を確立し、97歳で没するまで制作をおこないました。熊谷は、こんな言葉を残しています。「みんなはわたしのことをすぐ仙人、仙人と呼びますが、わたしは仙人なんかじゃない、当たり前の人間です……」熊谷守一の実直な人柄が偲ばれる言葉ですね。●展覧会の構成※章のタイトルは全て仮題です●1章 画業の始まり(1910-1920年代)1900年、熊谷は東京美術学校(現・東京藝術大学)に入学し、黒田清輝らの指導を受けました。授業で人体のデッサンを学び、1920年代以降の裸婦像の基礎を作ります。また、闇の中でのものの見え方を追究するなど、早くから独自のテーマにも取り組みました。1910年、故郷岐阜に戻り、材木を扱う仕事に就いたのち、再上京。山仕事の経験は生涯、作品や生活態度に影響を与えました。●2章 さまざまな模索(1930-1940年代)この時期の熊谷は、絵の具を厚く塗り重ねる技法を用いて多くの裸婦像を描きました。また、山や海に出かけて風景画を制作してもいます。こうした裸婦像や風景画の中から、くっきりした輪郭線と色に特徴付けられる戦後の作風が、次第にかたち作られていきました。この頃に描かれた膨大な数のスケッチは、戦後の作品にも繰り返し使用され、熊谷作品の土台を成すものとなりました。油彩以外に書や水墨画を手がけるようになったのも、この頃です。●3章 線と色の完成(1940-1970年代)戦中から戦後にかけ、くっきりした輪郭線と色を特徴とする、もっともよく知られた画風が完成しました。熊谷は76歳の時に体を壊し、それ以後は自宅から滅多に出ず、庭の花や虫、鳥といった身近なものを描くようになります。しかしながら実は、こうしたモチーフのいくつかは、1940年代に描かれたスケッチに登場しています。そのことからも、長期にわたってねばり強く関心を持ち続ける熊谷の制作の特徴がうかがえます。【展覧会概要】名称:「没後40年熊谷守一生きるよろこび」会期:2017年12月1日(金)~2018年3月21日(水・祝)会場:東京国立近代美術館所在地:千代田区北の丸公園3-1URL:
2017年09月01日ツタンカーメンから村上隆まで…ボストン美術館の至宝が登場(写真左)フィンセント・ファン・ゴッホ《郵便配達人ジョゼフ・ルーラン》1888年、(右)フィンセント・ファン・ゴッホ《子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人》1889年何世代もの偉大なコレクターたちに支えられ、卓越した美術作品を収蔵するボストン美術館。北米で一番歴史のある美術館から、古代エジプトや中国美術、日本美術、はたまたフランス絵画やアメリカ絵画、版画・写真、現代美術といった珠玉の美術作品80点が堂々来日しました。<ボストン美術館の至宝展-東西の名品、珠玉のコレクション>は、上野の東京都美術館で開催中。東京会場での会期は2017年7月20日(木)〜10月9日(月・祝)となっています。巡回展となる本展は、東京会場の後、神戸、名古屋へと場所を移し開催予定です。まるで美術の百科事典、ボストン美術館のエッセンスをぎゅっと凝縮した貴重な機会を見逃すことなかれ。初里帰りの涅槃図やゴッホの傑作も大注目まず注目したいのが、本展で初めての里帰りを果たした、英一蝶(日本 1652-1724)の《涅槃図》(1713)です。横たわる釈迦の周りで生きとし生けるものすべてが感情豊かに嘆き悲しむ様子を描いた本作は、1911年にボストン美術館コレクションに収蔵されました。そして2016年8月から2017年5月まで大規模な修理が施され、その彩りを今に伝えます。古来の伝統を今の技術者が後世に残してゆく、大きな営みを細部までじっくりとご覧あれ。そしておなじみフィンセント・ファン・ゴッホ(オランダ 1853-1890)の描いたルーラン夫妻の肖像もそろって来日。ゴッホの親しい友人であったジョゼフ・ルーランをはじめ、ゴッホはその家族をモデルに20点以上もの肖像を描いたといいます。その中から《郵便配達人ジョゼフ・ルーラン》(1888)と《子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人》(1889)の傑作2点が満を持してやってきました。(写真左)クロード・モネ《ルーアン大聖堂、正面》1894年、(右)クロード・モネ《アンティーブ、午後の効果》1888年他にもお馴染みのモネの睡蓮といった印象派の絵画や、近代的な手法を用いた写真コレクション、今日も根強い人気を誇るアンディ・ウォーホルなど、見どころを挙げれば尽きることはない本展。美術ファンは垂涎間違いなし!取材・文/おゝしろ実結イベント情報イベント名:ボストン美術館の至宝展-東西の名品、珠玉のコレクション催行期間:2017年07月20日 〜 2017年10月09日住所:東京都台東区上野公園8−36東京都美術館企画展示室電話番号:03-5777-8600
2017年08月25日光で遊べるのが魅力! 超体感型ミュージアム大阪・天保山で開催される「魔法の美術館」は、子どもはもちろん大人までも直観的に楽しめ、日本を代表する気鋭のアーティストたちが創り出したものばかりです。未来のアート作品として表現しており、アートがわからない、アートが苦手と感じている方でも大丈夫です。まずは自身が作品の中で体感する事、それが1番楽しめる方法になります。光・影・映像・音の演出には驚きと笑顔が溢れる特に関西初登場の作品には注目が集まります。ピカソになったような気分になれる「.hito」。この作品は、椅子に腰かけた瞬間に自分がキュビズム的な姿に変身します。「ensemblesilhouette」は、新しい合奏がテーマ。流れる五線譜、そこへ星のシルエットを置くと様々なメロディーが流れます。「TRANSFORM」は親子で楽しむのにおすすめです。部屋がそれぞれ1人では完結できないようになっているのがポイント。物語性が大切にされていて、次の人が楽しむのを助けなければスタート出来ない仕組みになっています。どの作品も新しい発見があり、興味深いものばかりです。ゲーム感覚で遊びながら楽しめるのが魅力!前回大人気だった作品「SplashDisplay」が登場。作品の中には、白くて小さなビーズが敷き詰められています。その中で動いている的に向かって玉を投げ、的中すると光の粒が爆発したように見える瞬間が驚きです!この作品を綺麗に撮影するポイントは、まず露出補正はマイナスに設定。人と一緒に撮る場合は、顔を近づけて貰います。是非挑戦してみてください。その一瞬を楽しんで! 同じ絵は二度と見られない「七色小道」も前回大好評の作品です。一見ただの通路のように見えますが、人がその上を歩く事によって色んな仕掛けが動き出します。人の周りから様々な色や光が溢れ出し、他の人が動き出す色と混ざり合っていくのが人気の理由。魔法のような世界観を意識して作られたこの作品は、上から下に向けて撮影するのがポイントです。数々のアーティストが創った作品は全て撮影可能!全ての作品が撮影可能なので、SNSにもどんどん投稿できます。その瞬間を楽しみつつ、後で撮影した写真や映像を見た時には更に驚きが倍増するでしょう。ほとんどの作品は、参加型。人の動きに合わせて、様々な色の光・影のモチーフ・映像・音楽が変化していく様子をお楽しみください。まるで作品と会話しているかの様な感覚が味わえます。「魔法の美術館」を開催している、大阪文化館・天保山。地下鉄中央線の大阪港駅で下車し1番・2番出口から徒歩5分のところにあります。目印は海遊館で、ちょうど隣に位置しますのでわかりやすいです。この夏の思い出作りに、ぜひおでかけしてみてはいかがでしょうか?イベント情報イベント名:魔法の美術館見て、ふれて、遊べる体感型アート催行期間:2017年07月15日 〜 2017年09月03日住所:大阪府大阪市港区海岸通1-5-10大阪文化館・天保山電話番号:03-5777-8600(ハローダイヤル)
2017年08月10日「印象派の殿堂」として世界的にも名高いフランス国立オルセー美術館が公式認定したリマスターアート®展が、大丸京都店にて開催されます。オルセー美術館の名品中の名品ともいわれる傑作60点が、絵の具の盛り上がりや絵筆のタッチまでも忠実に再現されたリマスターアートは、一見の価値ありです!本家が認めたリマスターアートフランス国立オルセー美術館といえば、世界に知られた印象派の殿堂。モネやピサロ、シスレー、ゴッホなどの名品をひとめ見ようと、世界中の人が訪れる美術館ですね。そのオルセー美術館が公式認定したリマスターアートの展示会が、大丸ミュージアム〈京都〉で開催さます。●リマスターアートとはそれでは、リマスターアートとはなんでしょうか?それは、単なる複製を越えた復元画。最先端の3D画像解析技術と高精細画像で、絵の具の盛り上がりや絵筆のタッチまでもが忠実に再現されているんです。オルセー美術館も公式に認定している、まさに世界最高峰の技術なんです!今回のリマスターアート展では、多くのファンを持つ印象派の傑作中の傑作60点の復元画を、鑑賞することができます。会場で<ルーペ&ライト>を別途税込200円でレンタルできますので、絵の具の盛り上がりや絵筆のタッチを間近でじっくり観察するのもおもしろいですよ。ちなみに、名画の写真は全て撮ることができます!名画の前でスマホで自撮りも可能ですよ。SNSへのアップももちろん可能なので、思う存分カメラに収めてください。●展覧会詳細名称:オルセー美術館 至宝のリマスターアート®展会期:2017年8月2日(水)~21日(月)時間:午前10時~午後7時30分(午後8時閉場)最終日は午後4時30分まで(午後5時閉場)会場:大丸ミュージアム<京都>【大丸京都店6階】入場料 (税込):一般・大学生1,000円【800円】 、中高生800円【600円】、小学生以下は無料※【】内は前売り料金および大丸・松坂屋のクレジットカード、大丸松坂屋友の会カード、ブライダルサークル会員証をお持ちの方の優待料金です。※<ルーペ&ライト>レンタル付き前売券一般・大学生900円、中高生700円
2017年07月24日東京・上野にある東京都美術館で「ボストン美術館の至宝展ー東西の名品、珠玉のコレクション」が、2017年7月20日(木)~10月9日(月・祝)まで開催されています。ゴッホの傑作であるルーラン夫妻の肖像画や、日本を代表する浮世絵師・喜多川歌麿の作品など世界を代表する名作80点がこぞって来日。古代エジプト、日本美術、中国美術、フランス絵画、現代美術など、盛りだくさんの展覧会の見どころを、アソビュー編集部員が取材してきました。ボストン美術館とはアメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストン市にある美術館・ボストン美術館。地元市民をはじめとした多くの美術コレクターの作品寄贈によって、1870年に設立されました。アメリカ独立100周年の1876年に開館し、2020年には設立150年を迎えます。国や州の財政的援助を受けることなくコレクションの拡充、施設の拡張を続けており、世界屈指の規模を誇ります。選りすぐりの傑作80点を展示!約40年ぶりに来日する至宝たちは必見ボストン美術館のコレクションを対象とした展覧会は、過去に何度か開催されてきました。しかし、古代エジプト・日本美術・中国美術・フランス絵画・現代美術から現代アートまで幅広いジャンルの傑作が展示され、総合的に楽しめる展覧会が開催されるのは、日本で約40年ぶり。またとないこの機会を逃したら、次に開催されるのはまた40年後かもしれません。世界の至宝が年代、ジャンル問わず一堂に会する「ボストン美術館の至宝展」の気になる内容を見ていきましょう!沢山ある作品の中から編集部員が厳選した「これだけは見てほしい!」至宝をご紹介します。1章古代エジプト美術1876年の開館当初から、館内で重要な位置を占めていた古代エジプト美術。地元の収集家よって貴重なコレクションからの寄贈を受け、確かな出土品の獲得に努めてきました。1905年からはアメリカのハーバード大学と共同で発掘調査も開始。その発掘成果は、今日で40,000点を超えボストン美術館の古代エジプト美術コレクションの中核となっています。今回の展覧会では、エジプトの都市・ギザで発掘された古王国時代の出土品を中心に、11点がボストンから来日しています。●「墓のレリーフの断片供物の行列をみる墓主ケネブ」今から4,000年以上前のギザに居住していた建築家の大家族のひとりだった、ケネブの墓から発掘されたこの断片。断片の上部に描かれているのは、神々への最高の捧げものである雄牛を引いた二人の男です。一体どこへ向かっているの?と問いかけたくなる彼らは、この断片とは別の区画に描かれているケネブのもとへと向かっているそう。ちなみに、左下に頭部だけのぞかせている人物は、ケネブの兄弟にあたるペピィメルアンクプタハが描かれたものです。●「ツタンカーメン王頭部」額に長方形の布を当て、耳を出す形で頭を覆うネメス頭巾を被った姿が印象的な、「ツタンカーメン王東部」。若くして亡くなった謎の少年王・ツタンカーメン王を象ったこの石像頭部は、彼の墓ではなくツタンカーメン王が信仰を復活させた古代エジプトの太陽神・アメン神を主祭神とするカルナック神殿から出土した作品の可能性が高い、と伝えられています。凛とした顔だち、彼を象徴するネメス頭巾が特徴的な至宝です!2章 中国美術古代エジプト美術に続き、中国美術作品も多く保有されています。作品の余白などに描かれた絵と、関連した文書や詩が添えられている中国美術特有の作品が、多数展示されています。●徽宗、「五色鸚鵡図巻」1110年代頃中国の王朝・北栄の第8代皇帝の徽宗(きそう)によって描かれた作品です。徽宗が花鳥画を専門分野としていたことは、歴史的にも文献的にも知られること。1000年以上も前に書かれた作品にも関わらず、真筆であると広く受け入れられてきました。題詩によると、中国南部の地である嶺表から、“ズグロゴシキインコ“という珍しい鶏が宮廷へと献上された出来事を記念して描いた絵と言われています。杏の花が咲きほこる庭園を鶏が飛ぶ姿を記録するために皇帝が描き上げた、淡く優しい色使いの作品は必見です。●陳容、「五龍図巻」1244年約10メートルに及ぶ長大な絵巻。沸き立つに描かれるのは9匹の龍が、沸き立つ雲と荒れ狂う波の中を飛翔する姿が筆墨によって描かれている存在感抜群の作品です。作者である陳容(ちんよう)は、画家をはじめ、地方官吏・書家・詩人でもあり多才な人物だったと言われています。画家としては、水墨画を得意とし竜画の名手としても名高かったそうです。実物の他に、見やすいように拡大展示もされています。じっくりと細部まで鑑賞し、墨に墨を重ねる「破墨」や墨をはね散らす「溌墨」と呼ばれる巧みな技法が使われている箇所を見つけてみてください。3章 日本美術今回の展覧会でも大きな注目を集めている、日本美術コレクション。日本国外で最も日本美術作品を所蔵しているボストン美術館には、なんと約10万点に及ぶ日本作家の作品があるのだとか!19世紀後期に日本を愛し、日本中を旅した偉大なコレクター達が収集した美術品たちは、ボストン美術館のあるアメリカにおいて、日本文化の敷衍や正当な評価の生み出しにも貢献しました。日本から渡米し、初めての日本へ里帰りする作品にも要注目です。●司馬江漢、「秋景芦雁図」1700後~1800初年哀愁ただよう雁(カリ)が目を引く、司馬絵江漢の絵画作品。司馬江漢は、江戸時代の蘭学者(オランダ語を通じて輸入された西洋学問の研究者)であり、画家でもありました。確かによく見ると、作品右上の落款には、横書きのオランダ語のサインも添えらえています。彼は、狩野派、浮世絵など様々な画流を学びましたが、特に洋風画の開拓者として知られています。この作品も西洋画にヒントを得て、水平線を低く描き、遠近法を用いた景色を後景に描くことで、画面上に奥行きと広がりある世界が演出されているのです。ちなみに、作品名にもあるように、この作品が描かれている季節は“秋”ですが、「冬景芦雁図」という“冬”バージョンの作品も。雪景色が広がり、その中にうずくまる雁が描かれた作品「冬景芦雁図」は、この機会にぜひ合わせてみてほしい作品です。●英一蝶、「涅槃図」1713年とにかく大きい!至宝がずらりと並ぶ館内でもひと際目立つ「涅槃図」。それもそのはず、画面だけでも高さ約2.9m、幅約1.7m、表具を含めれば高さ約4.8m、幅約2.3mにも及びます。涅槃(ねはん)に入る釈迦と悲しみにくれる人々、動物、羅漢たちがぎっしりと描かれています。鮮やかな色彩も美しいです。作品の大きさと劣化がが目立ち、収蔵されているボストン美術館でも25年以上公開ができていなかったこの作品。なんと、今回の展覧会開催を機に画面の亀裂や汚れ、糊離れなどの改善を主におよそ170年ぶりに本格的な解体修理が実施されました。現地のコレクターにより渡米した「涅槃図」は、今回約130年ぶりに初めて日本に里帰りを果たします。作品解説もしっかりとされているので、ぜひ立ち止まってチェックしてみてください!●鳥居派、「絵看板鈴木栄小町」1758年現代の街中広告や電車内のつり革広告のような役割を果たしていた、絵看板。人々を歌舞伎の芝居へと引き込むポスターとして芝居小屋の軒下に飾られ、画面には主役の演者たちが演じる選りすぐりの場面が描かれています。美術品というよりは、飾られる期間が限られる宣伝物だった絵看板は、ほとんどが破棄されており現存しているものはほんのわずか。そんな貴重なこの作品は、現存される看板絵の中でもっとも古いものなのだそうです。●喜多川歌麿「三味線を弾く美人図」1805年頃近年、国内外問わず巻き起こっている“浮世絵ブーム”!北斎、広重、写楽と並び世界的に知られる浮世絵師、喜多川歌麿が晩年に手がけた「三味線を弾く美人図」も展示されています。浮世絵黄金期に美人画絵師として活躍した歌麿の集大成と言われるこの作品は、“横長の軸” “上半身のみの構図”といった珍しい構図が特徴!三味線の調律をしているこの美人は手の込んだ髪飾りを身に着けていることから、芸者または娘浄瑠璃師が描かれているのではないか、と示唆されています。4章 フランス美術数多くのヨーロッパ美術コレクションの中から、世界的に特に名高い19世紀フランス絵画のコレクションが厳選されて来日しています。特に、モネ、ルノワール、ピサロ、ミレー、そしてヴァン・ゴッホの作品は見逃せません!まさにフランス美術における至宝がずらっと並ぶこの章は、見どころ満載です。●カミーユ・ピサロ、「ポントワーズ、道を照らす陽光」1874年019世紀のパリ郊外にある小さな町が優しく描かれたこの作品。比較的幅の広い筆遣い特徴的な表現は、ピサロの初期作品にみられる特有の技法です。都会を離れ、田園地帯に実際に身を置いて制作されたこの作品は、身の回りにあるごく普通の情景が率直に描かれた作品となっています。●クロード・モネ、「睡蓮」1905年1日本でもファンが多い、フランスの印象派を代表する画家・モネの作品です。画面に描かれる睡蓮の花はもちろん、この絵の見どころはなんと言っても“水面”。画面上には“水辺に浮かぶ睡蓮”しか描かれていないものの、水面に映る光や空、岸辺の樹々から水辺を囲む周囲の世界を垣間見られます。水平線などこれといった区別や線引きを表すものはないにも関わらず、画面の下から上へと遠ざかるように奥行きを感じさせるこの作品は、1909年にパリで発表された彼の名作の一つです。●アンリ・ファンタン=ラトゥール、「卓上の花と果物」1865年2まるで写真みたい!と絵の繊細さに思わず驚いてしまうファンタン=ラトゥールの静物画。彼は、独特かつ保守的な様式での制作を好み、とにかく細部まで実物をそのまま描写する静物画、その中でも特に花の絵画を専門とする画家でした。●フィンセント・ヴァン・ゴッホ、「郵便配達人ジョセフ・ルーラン」1888年、「子守唄ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人」1889年3ゴッホは、1888年にパリを発って南フランスを発って南フランスにある小さな町・アルルに移住しました。その時に、町内で最も親しい友人となり、彼のお気に入りのモデルとなったのが地元で郵便の仕事をしていたジョセフ・ルーランでした。ちなみに、夫・ジョセフをモデルにした油彩画はこの作品を合わせて、全部で6作品あり、本作は一番最初に描かれたものです。また、ほぼ全身を描いた唯一の作品としても有名です。ゴッホは、のちにジョセフの妻・オーギュスティーヌと3人の子供たちの肖像画も手がけました。夫妻の肖像画が来日するのは、今回が初めて!展覧会の目玉作品として注目を集めています。●エドガー・ドガ、「腕を組んだバレエの踊り子」1872年4フランスの印象派画家のドガは、踊り子をモデルとした作品を多数残している「踊り子の画家」として有名です。ここでいう“踊り子”とは、パリのオペラ座のバレリーナを指します。裕福な銀行家の息子だったドガはオペラ座の定期会員となり、会員しか許されない舞台裏に出入りすることも許されていました。よって彼は生涯にわたり、その時にみた踊り子の自然なしぐさや表情が描写された作品を生涯多数残しています。ちなみに、この作品はドガがなくなったとき、彼のアトリエに未完成のまま残されていたものなのだそうです。5章 アメリカ絵画5絵画の最終章を飾るのは、もちろんボストン美術館のあるアメリカ美術です。18世紀から20世紀半ばまで、様々な年代の作品を楽しめるアメリカ絵画コレクションは見ごたえ抜群です!●ジョン・シングルトン・コプリー、「ジョン・エイモリー」1768年6縦横それぞれ1メートル以上ある、大きなキャンパスに描かれたダイナミックな当時の貿易商の肖像画です。手には自分宛ての手紙、背後には帆船が描かれ、海運業で利益を得ていた彼の功績がそれらのアイテムによって表現されています。●ジョン・シンガー・サージェント、「ロベール・ド・セヴリュー」1879年7子犬と少年のどこかぎこちない表情が愛らしい、この作品。野心的なアメリカ人画家・サージェントは主にイギリスを拠点として活躍しましたが、イタリアに生まれフランスで美術教育を受けた生い立ちから、欧州各国の影響を受けた独特な画風が特徴的です。伝統的な古典技法を用いて多数の肖像画を手掛けた「最後の肖像画家」とも呼ばれています。●ジョン・シンガー・サージェント 、「フィスク・ウォレン夫人(グレッチェン・オズグッド)と娘レイチェル」1903年8これもまたサージェントの縦1.52メートル・横1.03メートルほどある大きな肖像画です。モデルとなった夫人は、音楽と美術を愛した教養のある国際人で二児の母親でもあり、作品からもどこか知性や母性を感じられる温かみがあります。ブロンズの髪やシルクドレスの質感、うっすら赤らんだ頬の巧みな描写と優しい色合いに、思わずうっとりしてしまいます。6章版画・写真919世紀半ばから20世紀にかけてのアメリカを描写した収集作品の中から、アメリカを代表する芸術家のホーマー、ホッパー、シーラー、アダムの4人の作品が展示されています。モノクロの世界に映しだされた、当時の人々の暮らしや自然の美しさにはどこか懐かしさすら感じます。7章現代美術19世紀~20世紀以前の作品が多く収蔵されていることで知られるボストン美術館ですが、現代アートをけん引するアーティストの作品も多数展示されています。今回は、ウォーホル、村上隆をはじめ、色鮮やかな風景画が有名なホックニーや写真から映画まで幅広い制作領域をもっているテイラー=ジョンソンの作品が大集結!ケヒンデ・ワイリーの「ジョン、初代バイロン男爵」など、現代アートらしいポップで鮮やかな作品たちが、見る人を元気にしてくれます。展覧会限定のオリジナルグッズも要チェック!ミュージアムショップには、ボストン美術展限定のオリジナルグッズも多数販売されています!気になった作品がモチーフとなったグッズは、つい欲しくなってしまうはず。注目作品はの多くは、どれもグッズになっています。オリジナル巾着にあめが入ったオフィシャルグッズは、お土産にも喜ばれそう。巾着には、ゴッホの“ルーラン夫妻”や、歌麿の“三味線を弾いた弾く美人”など展覧会の注目作品の数々でモデルになった人物がランダムにプリントされています。まさに、これぞ夢のコラボ!といった限定グッズはここでしか手に入らないので要チェックです!退館するときも必見!「会場限定記念号外」とフォトスポット展覧会を見終えて最後の最後に置いてあるのが、この「会場限定記念号外」。訪れた人しか手に入らないこの号外は、「涅槃図」や“ルーラン夫妻”、「睡蓮」などの主要作品がすべてもれなく掲載されています。もちろん、号外なので無料です。来館記念に一部持ち帰ってみてはいかがでしょうか。今回の展覧会の大注目作品であるゴッホの「ルーラン夫妻」と記念撮影ができるフォトスポットもあります。ボストン美術館の至宝展では、今しか見られない至宝たちが勢ぞろい。期間中には、タイアップイベントやスペシャルコンテンツも続々と登場予定です。これを逃したらしばらく見られないかも!?普段あまりアートに触れない人でも気軽に楽しめる、この夏イチ押しの展覧会です。イベント詳細名称:ボストン美術館の至宝展ー東西の名品、珠玉のコレクション会場:東京都美術館 企画展示室住所:東京都台東区上野公園8−36会期:2017年7月20日(木)~10月9日(月・祝)開催時間:9:30~17:30 ※金曜は20:00まで、7月21日、28日、8月4日、11日、18日、25日は21:00まで ※入室は閉室の30分前まで 休室日:月曜日、9月19日(火) ※ただし、8月14日(月)、9月18日(月・祝)、10月9日(月・祝)は開室料金:一般 1,600円(1,400円)、大学生・専門学校生 1,300円(1,100円)、高校生 800円(600円)、65歳以上 1,000円(800円)公式サイト:
2017年07月21日2017年8月11日(金)から8月20日(日)の夏休み期間中、ポーラ美術館でピカソにフォーカスしたイベント、「情熱のピカソ・ウィーク」が開催されます。美術鑑賞会、ギャラリートークやデコパージュ体験のほか、箱根ならではの自然観察も楽しめる盛りだくさんなイベントです。「情熱のピカソ・ウィーク」期間中、小中学生の入館が無料に!「情熱のピカソ・ウィーク」は、8月11日(金)〜20日(日)までの開催です。期間中は、小中学生の入館が無料になります。対照的な画家ピカソとシャガールに光を当てる世界初の美術展、この機会に訪れてみてはいかがでしょうか。さまざまなイベントが用意されています。●夏休み子ども美術鑑賞会学芸員と子どもたちが同じ目線で対話をしながら作品を鑑賞し、自由な発想を引き出す「対話型ギャラリートーク」です。「ピカソとシャガール 愛と平和の讃歌」展の会場をめぐります。実物の作品に楽しく触れる絶好の機会ですね。日時:8月11日(金)10:00〜12:00会場:ポーラ美術館講堂および展示室対象:小学校3年生から6年生定員:児童30名( 定員になり次第締切。)参加費:無料 参加する児童は入館料無料、保護者は1名まで無料、追加1名につき1,500円。※駐車料金は別途500円)参加方法:電話またはHP(問い合わせフォーム)より事前申込。参加者氏名(ふりがな)・学年・保護者氏名(ふりがな)・住所・電話番号(またはメールアドレス)を明記してください。締切:8月7日(月)●開館15周年記念特別講演会 「30年代のピカソ ― 愛と怒りの造形とルーツ」ファシズムの台頭とスペイン内戦の勃発。ヨーロッパが迫りくる第二次世界大戦の不安に覆われた1930年代、パブロ・ピカソはいかにして、その波に立ち向かったのでしょうか。《ゲルニカ》制作の経緯やシャガールとの知られざる交流について、ピカソ研究の第一人者である大髙先生を招いての講演会が開かれます。日時:8月12日(土)14:00〜15:30(開場13:50)講師:大髙保二郎(早稲田大学名誉教授)会場:ポーラ美術館講堂定員:先着100名参 加 費:無料 ※要当日入館券●箱根彫刻の森美術館×ポーラ美術館学芸員によるクロストーク「ここがすごいぞ!ピカソトーク!」日本最大のピカソ・コレクションを有する2つの美術館、彫刻の森美術館とポーラ美術館の学芸員が、ピカソ作品の魅力について語り合うクロストーク。彫刻の森美術館とポーラ美術館の両館にて計2回開催されます。日時:8月13日(日)14:00〜15:00(受付13:50~)ポーラ美術館 講堂および展示室8月20日(日)13:30〜14:30(受付13:20~)彫刻の森美術館ピカソ館講師:黒河内卓郎(彫刻の森美術館 学芸員)東海林洋(ポーラ美術館 学芸員)定員:各回先着30名参 加 費:無料 ※要当日入館券●夏休み子ども自然観察会夏の木漏れ日につつまれた遊歩道を、植物や動物などの豊富な知識をもつネイチャーガイドスタッフと散策します。日時:8月15日(火)・16日(水)11:00〜12:0014:00〜15:00会場:遊歩道(荒天中止)定員:各回先着20名様大人の方も参加可参 加 費:無料 ※要当日入館券協力:箱根ビジターセンター●夏休みクラフト体験「デコパージュで作るオリジナルフレーム」ピカソの絵画をイメージしながら、フレームを好きな模様に装飾するワークショップ。出来上がったフレームに、好きなピカソのポストカードを飾って持ち帰ることができます。日時:8月17日(木)・18日(金)11:00〜15:00 随時受付会場:1階 ミュージアムショップ参 加 費:600円(材料費・ポストカード代含む)●スパニッシュ・コネクション・コンサートフラメンコ・ギター、ヴァイオリン、タブラといった楽器と共に、音楽で旅をするというコンセプトのもと、2000年に結成されたスパニッシュ・コネクション。スペイン/フラメンコ音楽を中心に、情熱的なライブを開催します。日時:8月19日(土)17:00〜18:00出演:スパニッシュ・コネクション伊藤芳輝(Yoshiteru Ito) - Guitar/ 平松加奈(Kana Hiramatsu) - Violin /吉見征樹(Masaki Yoshimi) - tabla会場:地下1階カフェ チューン定員:100名参 加 費:無料※要当日入館券参加方法:事前申込制HPより申し込み●香水作りワークショップ「香りの教室」香りの専門家を講師に招き、香りのメカニズムや香料について学びながら、オリジナル香水作りを体験できます。日時:2017年8月20日(日)14:00〜15:30講師:山本めぐみ(ポーラ化成工業株式会社横浜研究所研究員)会場:ポーラ美術館講堂定員:先着20名参 加 費:1,500円 (アトマイザー付)参加方法:事前申込制HP(お問い合わせフォーム )より申し込み●特別クイズシート「ピカソとシャガールからの挑戦状」期間中、ピカソとシャガールにまつわるクイズシートを受け付けカウンターで配布されます(小中学生対象)。イラスト化された絵の一部をヒントに、展覧会場で本物の作品を探し、楽しみながらじっくりと鑑賞しましょう。●「ピカソとシャガール愛と平和の讃歌」について絵画の革新に挑み続け、力強い線描により対象を激しくデフォルメする「破壊と創造の画家」として知られるパブロ・ピカソ。そして、あざやかな色彩により絵画を光で満たし、生涯にわたって自身の人生の物語や故郷の風景を主題に取り組んだ、「物語と色彩の画家」シャガール。ポーラ美術館開館15周年記念展「ピカソとシャガール愛と平和の讃歌」では、20世紀の芸術を牽引した対照的な二人による約80点の作品を展覧し、二人の芸術の本質に迫ります。会期:2017年3月18日(土)~9月24日(日)※会期中無休開館時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)会場:ポーラ美術館所在地:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285電話:0460-84-2111公式サイト:
2017年07月12日ふたりの“天才”、今夏 遂に共演!「万能人」として画家でありながらも建築、科学、解剖学の分野で活躍したレオナルド・ダ・ヴィンチ。一方、若くから圧倒的な造形技術と観察眼で頭角を表した「神のごとき」天才彫刻家ミケランジェロ・ブオナローティ。ルネサンス期を代表する二人の巨匠が、今夏夢の共演を果たします。東京丸の内にある三菱一号館美術館で2017年6月17日(土)〜9月24日(日)まで開催されている「レオナルド☓ミケランジェロ展」は、そんな世紀の大天才らの素描をはじめ、油彩画や彫刻、手稿、書簡などおよそ65点が会する一大特別展。最高峰の芸術作品をその目で確かめて。すべての創作の源「素描」 それぞれの巨匠の違いとは「絵画や彫刻、建築といった芸術の根源には自然と素描がある」ルネサンス期では自然に則ってデッサンをすることこそが各芸術の基礎である、と素描がとても重要視されていました。レオナルド・ダ・ヴィンチも「毎日デッサンしなさい」と弟子に言っていたのだとか。そんな中で描かれたレオナルドの“世界で最も美しい”と表される素描《少女の頭部/<岩窟の聖母>の天使のための習作》と、ミケランジェロの代表的な素描作品《<レダと白鳥>の頭部のための習作》が堂々登場。この機会にじっくりと間近で観察してみてください。レオナルドの素描は左上から右下へと描かれた斜線が同一方向に重なり合い影を表現しているのに対して、ミケランジェロの素描では赤チョークを用いて斜線を交差させつつ同時に色の濃淡で立体感を表現しています。描き方が素描作品全体にどのような印象をあたえているのか、そしてそれぞれの他作品との共通点は何か、想像しながら見てみれば興味深さもひとしおです。二大巨匠を生み出したルネサンス期がここに14世紀から16世紀にかけてイタリア・フィレンツェを中心に起こったルネサンス。「文芸復興」とも訳されるルネサンス期では、古代の自然主義を見直すことであるがままの自然を再現しようと、芸術分野でも科学分野でも先進的な研究がなされました。そんな時代が産み落とした二人の天才がレオナルドとミケランジェロのふたりです。本展では素描以外にも油彩画(追随者による作品)や彫刻、さらには軍事工学や自然哲学が示された手稿まで幅広く展示。二人の作品を通じて多角的な視点でルネサンス期の文化に触れることができます。一見遥か昔の異国の出来事でも、今の私たちへのつながりを感じる、素敵な時間がここにありました。取材・文/おゝしろ実結イベント情報イベント名:レオナルド☓ミケランジェロ展催行期間:2017年06月17日 〜 2017年09月24日住所:東京都千代田区丸の内2-6-2三菱一号館美術館電話番号:03-5777-8600(ハローダイアル)
2017年07月03日