こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。山茶花(さざんか)から梅の季節へ1月2月の冬枯れの季節に、街中に明るく彩(いろどり)を与えてくれたのは 山茶花でした。山茶花は 椿によく似ていますが、花は 椿よりも少し小振りです。拙宅の山茶花も、花枯れの庭に赤 白が花をつけ、数ヶ月間、元気と潤(うるお)いを与えてくれました。その山茶花には、まだ残花がありますが、季節は早春の花、梅へと移り始めています。山茶花梅を見るのを観梅(かんばい)と言いますが、今の時季は、観梅の前の『探梅(たんばい)』の頃でしょうか…。厳しい寒さに堪え、仄(ほの)かな匂いとともに凛と咲く梅の花…。拙宅にも紅梅 白梅とありますが、開花は白梅の方が早いようですね。梅は 桜と違って大むね大木は少く、顔を上げる程度で咲く木が多いためか、主に庭木に使われているようです。勿論、水戸の偕楽園や熱海の梅の名所などには、立派な大木もありますが…。梅のあの馥郁(ふくいく)とした香りは、花枯れの野や町やご家庭の庭に、春の訪れをほんのりと伝えてくれます。白梅東風(こち)吹かば にほひおこせよ梅の花、主(あるじ)なしとて春な忘れそ。時の右大臣であった菅原道真が九州の大宰府へ左遷されていた折、都(みやこ)の梅のことを思い詠んだ歌として 余りにも有名です。『東風吹かば』は、学問の神様 菅原道真ですが、『梅一輪、一輪ほどのあたたかさ』 は、著名な俳諧師の服部嵐雪です。梅の匂いで春を待つ気持ち… 今はコロナ禍で殺伐とした世の中ですが、仄(ほのか)に ほころび咲き匂う『梅が香(か)』を待ち望み愛(め)でる気持ちは、人として決して失いたくないと思っております。<2021年2月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年02月22日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。言葉は心〜新しい価値を生み出すやまとことば『兆し』という言葉が好きです。兆し:物事が起ころうとしている気配どんな物事なのか。吉凶合わせた『物事』とは思いますが、どこか希望を感じるのです。見えてはいないけれど、勘がする。冬の寒さの中にほんの少しだけ明るさを感じる。風の片隅にふっと温かみを感じるような。あ、春に向かっている。葉を落とした木々も、寒さの中で芽吹くための準備をしている。そんなことに思いが至ると少しうれしくなる。そんなささやかな変化を捉える感性を大切にすると、日常の中に少し彩りが生まれます。『きざし』には、『萌し』という言葉もあります。『萌し』は、植物の芽生えのこと。季節を感じるやさしい言葉です。このような言葉も季節の変化を楽しみ、心を豊かにするものです。白か黒か。善か悪か。成功か失敗か。合理的な思考、合理的な解決法は確かに経済や工業に発展をもたらしたかもしれませんが、二元論だけでは解決しないことがあります。いまの世界、日本の状況を考えても、このような二元論は限界にきていると思います。限界とは、人が寛容さを失うこと。失敗を許さない世界は、人と人とを分断していく流れになるのではないかと危惧しています。言葉は心です。人の思考、心を和らげる助けになるのがやまとことばです。漢語や外来語に対する、日本の固有語です。言霊といって、言葉にはその心が宿っていると言われています。白か黒だけではない。灰色があってもいい。玉虫色もあるのではないか。曖昧と言われる空間にある人間らしさであったり、余裕、余白、味わい、心の機微がやまとことばにはこめられています。『きざし』もそんなやまとことばの一つです。『前兆』『兆候』というよりも『きざし』と言ったほうが、まろやかさがあります。または目に見えない危うさも。白か黒、善か悪だけを見るのではない、他の価値。やまとことばで考えると、新しい価値を見いだしていけると思います。たとえば『感動』という言葉。『感動』ではどのような感動だったのかは伝わりません。しかし、「心を打った」「心がふるえた」「胸を打った」「胸がふるえた」と表現すると、それがどんな感動だったのか伝わります。言葉から世界を変えられるでしょうか。言葉は心の表れ。少なくとも丁寧な言葉を心がけることによって自分の周りはまろやかになり、それは波紋のように広がっていくのではないでしょうか。その『きざし』を表すのは、いま、私たちが口にする言葉にあるのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年02月21日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。『この瞬間』の思いを大切にすることある日の夕方、ふと窓を見るとレースのカーテン越しに雲がピンク色に染まっていました。写真を撮ろうとスマホを取りに行き、外に出てみると、すでにピンク色は褪せ、雲はほとんどグレイになっていました。縁にうっすらとピンク色の名残り。それも瞬く間にグレイになっていきました。その瞬間でないと掴めないものがあります。ピンク色の雲を見た瞬間の感動やときめくものを、その瞬間に味わいきる。それが、心に、そして記憶に刻まれる感動やときめきなのだと思います。写真に残すよりもそのほうが『人生の一部』になるように思います。振り返ってみると、その瞬間に選ばなかった大切なものがいくつもありました。心は掴もうと思っていても、ためらいや欲や世間体のようなものが頭をよぎっていきます。こんなとき、心に従えば良いものを、頭で判断してしまう。そして悔やむことがあっても、いろいろな理由をつけて頭で納得しようとする。でも、心にはずっと残念な思いが残っていたりするのです。もうすぐ母が亡くなって五年目を迎えます。最後に会ったあの日から丸四年の月日が経ったのですが、いまもまだ最後に私を見ていた母の顔を忘れることができません。大きな手術をしてすっかり弱ってしまった母は、療養病院から介護ホームに移り、そしてクリスマスイブの朝に脳梗塞を起こし、右半身が動かなくなり、言葉も出なくなりました。急性期の病院での治療が終わり、リハビリの病院へ移りました。しばらく落ち着いていたのですが急速に弱くなり、また病院を移ったその日。病室を整え、帰ろうとしていたときでした。「ママ、じゃあ明日も来るからね」と言うと、母は置いてきぼりにされてしまう子どものような顔をして私を見ました。「明日ね、ゆっくり休んでね」そう言って病室を出るときも、母はそんな顔をしていました。もう少しいようかな、と思ったのですが、仕事が残っていたので帰ることを選びました。それが、生きている母を見た最後でした。その瞬間の心を選ぶ。そして味わいきる。多くの情報があり、多くの知識があり、そこに欲や世間体が割って入り、頭の中はとても忙しい。合理的な方法を選択することが、より快適で、より生活を高めると信じている……そんなことはないでしょうか。『いま、ここ』の自分の声を聴くこと。思いを置き去りにすることなく、『いま、ここ』を味わいながら過ごす。それは、自分を大切にすることでもあるのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年02月14日自分が生きる上で必要なだけの額を稼ぎ、部屋に置く家具は最低限のものにとどめた生活…。そう聞いて、あなたはどんな生活を想像しますか。共感を示す人がいる一方で、もしかしたら「おもしろみがない」「もっと上を目指せばいいのに」という人も、いるかもしれません。しかし、ミヨシ(@mstkmys)さんが描いた漫画を見れば、その考えは少しだけ変わるのではないでしょうか。漫画『すべては逃げ出すための準備なのさ』をご紹介します。すべては逃げ出すための準備なのさ 2/2 #コルクラボマンガ専科 pic.twitter.com/7wmFKmnuy7 — ミヨシ (@mstkmys) February 6, 2021 生活を必要最低限のレベルにとどめるのは、ミヨシさんにとって逃げ出すための準備。逃げ出すといっても、決して世間一般的なネガティブな意味合いではありません。きっとこの場合の『逃げ出す』とは、新たなことに挑戦するのと同じ意味なのではないでしょうか。何か新たなことに挑戦するわけではないとしても、自分の中で「大丈夫」と思えるための軸は必要です。ミヨシさんの漫画は反響を呼び「自分の中で言語化できていなかった思いを表現してくれている」「退路がしっかり確保できていれば、次の道に安心して向かえる」といったコメントも寄せられました。本当に自分に必要なものは何かを見つめなおし、また、『逃げ出す』ということへのとらえ方をも変えてくれるミヨシさんの漫画。反響の大きさは、それほど同じ思いを抱いている人が多いことの証明なのでしょう。[文・構成/grape編集部]
2021年02月11日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。コロナ流行2年目2月の中旬、1番寒い時季ですね。コロナ禍が一向に収まりません。菅首相は1月7日、『緊急事態宣言』を東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県に出しましたが、期待通りに感染者は減らず、2月2日栃木県を除く10都府県に3月7日までその延長を宣言しました。企業活動はテレワーク中心へ、夜の外出も自粛という方向です。東京都の小池都知事は昼間の外出も控え目にと言及しています。今は、かつての戦時下を思わせる『非常時』であります。感染は食事時(どき)が多いと言われていますので、拙宅でも食卓での対面は避け、料理も 一人一人小皿に取り分けて頂いております。好きな鍋料理は、箸が行き来するのでこの冬、鍋の出番はありません。2人の女性から伺ったお話です。マスクマスクの毎日で、赤ちゃんを抱っ子して 頬っぺにチュッをする気持ちにもなれない…。耳の遠い高齢者のご両親がいらっしゃる方は、そのご両親の耳の傍に 顔を寄せて声を出さないと 話が通じないので、かなり気を使い、ストレスも溜る…という事でした。例年ですとこの寒期は、インフルエンザが猛威をふるうのですが、今年は鳴りを潜めてくれているので、その分は助かっています。それにしても、このコロナ禍の現状で、果たして東京でオリンピックが開催できるのか、段々と不安になって来ました。暖くなる3月あたりから、終息に向ってくれることを、只管(ひたすら)願う毎日であります。<2021年2月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年02月08日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。自分を大切にする『紙』と『ペン』のある時間旅に出ると、なぜか手紙を書きたくなります。あるときはひとり、部屋で。あるときはカフェの小さなテーブルで。今ならメールやLINEなどが手軽なのかもしれませんが、ペンで字を書くという行為が、自分の中にある伝えたいことを引き出すスイッチを入れるのです。それも、仕事などで考えていることとは違う次元のことを。自分でも気付いていなかった本音や、少々センチメンタルなことであったり。ときどき、そんな自分に出会ってみたくなるのです。今、海外はもちろんのこと、国内でも気軽に旅に出ることがむずかしいときなので、気に入ったカフェの、気に入った席で書き物をしています。たとえばご近所の並木道に面したファミリーレストラン。窓際のボックス席は落ち着きます。なぜかこの席だと、仕事もはかどるのです。紙とペンの相性はとても大切です。たとえば、歌詞を考えているとき。いつも鉛筆を使うのですが、柔らかい芯の、2Bから4Bの鉛筆でないと思考がスムーズに動いていかないのです。柔らかい心の書き心地が、なんとも気持ちがいい。そして下書きの紙はA4のコピー用紙を横にして。これは『儀式』のように、デビューしたときからの慣わしです。若い頃によく一人旅をしていた頃、必ず持って行ったがシェーファーのカリクラフィー用の万年筆でした。1500円くらいのリーズナブルな万年筆です。文字に少し表情が出て、なぐり書きでも『味』が出ます。インクはBlue-black。この色も、イマジネーションをそそるのです。今、愛用しているのはuni ball SigNonoの太字、インクはdeep blue。滑るような書き心地、そしてこのペンのインクは紙にほどよく滲みます。紙も柔らかいものを。インクを吸い取るような紙が好きです。ペン先からこぼれた思考や思いを受け止めるノートも、吟味して吟味して選びます。文筆を生業としている私にとって、自分のために文章を書くモチベーションはとても大切なものです。誰にとっても「自分のために書く」のは、「自分と一緒にいる」ことでもあるのです。思考も思いも記憶も、そのままにしておくといつか薄らいでいく。そのとき、その瞬間の自分を記録する。日記でも雑記帳でも、手帳の片隅にでも、『自分』を残しておく。それは、自分を大切にすることにもつながると思います。そして、せっかくですから思いを記していく水路となる紙とペンは、自分の手に、気持ちに馴染んだものを選びたいものです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年02月07日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。落ちこみの際で止まる先日ちょっとショックなことがあり、久しぶりに落ち込みました。これまで何度も落ち込みを経験しているので、(あー、こうしていると落ち込むなあ)と、モヤモヤした心の片隅で思っています。モヤモヤとしている自分と、それを眺めている自分。二人の自分が心の中でせめぎあっています。精神状態としては混沌としているのですが、眺めている自分がいることで落ち込みのどん底に落ちずに済んでいる……という感がしています。ショックなことがある。それは人からの批判かもしれないし、仕事や人間関係のことかもしれません。自分自身のことが嫌になることもあるし、大切なものを失うこともあります。何かそんなきっかけは……爆弾を落とされたような、心の中で何かが粉々に割れてしまったような、そんな混乱があります。それから心はぐるぐると廻り始めます。(どうしてこうなってしまったのか)という思いに始まり、相手を責めたり、自分を責めたり、自分を落ち込ませた原因を何処かに探そうとします。そして次に、自分をかわいそうに思い始めます。つまり、自分を被害者のように思うようになるのです。たとえば(一生懸命にやったのに認めてもらえない)(自分のことを全否定されてしまった)(誰もわかってくれない)といった気持ちから、(私ってかわいそう)となります。これがself-pity、自己憐憫です。落ち込んだときに嵌ってはならないのが、この自己憐憫です。自分を憐れだと思うことで、一時的に楽になります。誰かのせい、社会のせいにしてしまえば、落ち込んでいることを正当化できます。落ち込むこと自体は悪いことではありません。愚痴を言いたくなることもある。人生、うまくいくことばかりではない。ですから、落ち込んだら、まず落ち込んだことを肯定する。(ああ、私いま、落ち込んでいるんだ)と認める。そして混沌とした感情をどこかで眺めている自分を獲得する。そして、ネガティブのスパイラルに入り込まないようにチェックする。さまざまな感情が入り交じり、堂々巡りをするのです。その堂々巡りをしっかりと見る。特に自己憐憫と相手なり社会への強い批判に気をつける。なぜ落ち込んでいる自分を眺める視点が大切かというと、落ち込みが強まると鬱状態になる可能性があるからです。これだけは避けたい。自分の力ではどうにもならないことがあります。落ち込んでも仕方がない。でも大切なことは、落ち込んだところで、さらに底に落ちないようにすること。落ち込みの際で止まることです。止まっているイメージをしてみましょう。ここで踏ん張る力が、落ち込みから脱する力の源になるのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年01月31日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。手をつなぐ 〜見えない絆を育てる時間街で手をつなぎながら歩いている親子連れを見かけると、ふっと懐かしいような、淋しいような気持ちが胸をかすめます。娘が15歳でアメリカに留学してから8年。ずいぶん時間が過ぎました。まさか15歳で手放すとは思っていませんでしたが、考えてみると親子で一緒に暮らす年月というのはそんなに長いものではないのです。留学するのは、なかなか勇気のいる決断だったと思います。生半可な気持ちや、憧れではなく、人生を賭ける覚悟だったことは確かです。ですから親が淋しいとか淋しくないとか、つまらないことを言ってはいけないと思いました。娘がこれから自分のステージをゼロから作ろうとしているのを応援するだけです。親から離れる解放感もあったでしょうし、同じくらい不安もあったでしょう。でも、娘が覚悟を決めて巣立って行けたのは、小さいとき、どんなときも手をつないでいたからではないかなと思うのです。娘が手をつなぎたいだけ、手をつないで、そして自分から手を離していった……そんな感じがします。いつも手をつないでいること。そしていつも会話をすること。会話が成立しなくてもいいのです。空がきれいだね。風が気持ちいいね。そんなことでいいのです。そして子どもの話を聞くのです。それでどう思ったの?そんなことがあったんだ……。ジャッジを求められない限りジャッジすることなく、子どもが話すそのままをそっと手にとって愛でるように、話を聞くのです。そんな時間が確かに私の人生の一時期に流れていたのです。遠い日のことですが、それらは何ものにも替えがたい美しい時間でした。ですから若いお母さんと子どもが歩いているのを見かけると、そんな時間を大切にしてほしい!と思ってしまうのです。子育ての悩みはあったし、仕事と両立させることがきつかったこともありました。それでも、過ぎてしまうと何もかもが夢物語のような気がしてくるのです。娘と遠く離れていると、ときどき本当にゆめまぼろしだったのかしら、とふと思います。妙な感覚なのですが、これまでの人生すべてがゆめまぼろしだったような。振り返る年月が多くなるにつれ、何か確かだったものが指の間をすり抜けていくような感があります。「いま、ここ」の自分の中から、母としての自分が薄らいでいくことの淋しさがあるのかもしれません。それもまた人生の1ページであり、流れなのでしょう。もう少ししたら、私の方から手をつないでほしくなるのかもしれません。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年01月24日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。丑年(うしどし)に願いを今年は牛年ですね。毎朝頂く牛乳やバターやチーズ、そしてハムなど『牛さん』には大変お世話なっています。そして年に1~2回、美味しいステーキで舌鼓を打っております。それから忘れていました…『スキ焼』もありました。忘れるぐらいですから 最近は頂いていないということの『証(あかし)』であります。ところで或る雑誌に『「牛」のつく名字ベストテン』なるものが載っていましたが、それによりますと、①牛島 ②牛田 ③牛山 ④牛尾 ⑤牛丸 ⑥牛嶋 ⑦牛込 ⑧牛木 ⑨牛久保 ⑩牛久(うしく)でした。この中で、私が知人として存じ上げているご苗字は、①牛島 ④牛尾 ⑨牛久保さんです。最多の『牛島』が九州、2位の『牛田』が愛知県、3位の『牛山』が長野県、4位の『牛尾』が関西、5位の『牛丸』は、長野県に集中しているそうです。さて、皆さんは、どの『牛さん』とお友達でしょうか?牛の字のつくご名字の方は、今年は何かいい事があるような気がしますね…。牛は働き者です。牛歩と言ったりして、その歩みは遅いですが、柔和でおとなしく着実に前へ進みます。疾走する馬のようには行きませんが、どっしりと力強い仕事をしてくれます。牛は世界の食糧品の主役であり、革製品として、衣服やカバンや靴などの日用品としても、私達は恩恵をこうむっています。正に『お牛さま』です。その『お牛さま』に願い事です。牛に引かれて善光寺詣りのように、今年は、牛に引かれてコロナ退治となってくれることを、切に願いたいと思います。<2021年1月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年01月21日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。癒しのスープ風邪をひきました。毎年、冬になると一度はかかる喉風邪です。いま、このご時世に風邪を引くのは不安です。だるさはあるものの熱はないのでとりあえず様子を見ることにしました。まず、喉元を暖かく。タートルネックのセーターにさらに薄手のスカーフを首に巻きました。そしてヒートテックシャツの背中、ちょうど肩甲骨の間あたりにホカロンを2枚。お腹にも1枚。足元も暖かく。そして、オレンジジュースをたくさん飲む。ビタミンC摂取です。白湯も飲みます。食事は消化のいいものを。風邪引き1日目は鳥の骨つきもも肉とキャベツのお鍋。薬味は生姜と葱。たっぷり入れます。2日目は鍋焼きうどんに。ただただ体を温めます。仕事をしながらの養生ですが、3日目に少し気力が湧いてきました。何かを作りたくなる……これが私の回復のバロメーターです。そこで朝から作ったスープ2種。とろとろ白菜鍋とオニオングランスープです。とろとろ白菜鍋は、白菜半分をざく切りにし、大きなお鍋に。そこに塩をぱらりぱらり。オリーブオイルを2回し。4003くらいの水を入れ、蓋をして火にかけます。ことこと沸騰してきたそのまま数分、白菜がしんなりとして、白菜の水分も少しずつ出てきます。この『蒸し炒め』によって白菜の甘みが引き出されるのです。それから白菜がひたひたになるくらいだし汁をはり、白菜がくったりとするまで煮込みます。このとろとろ白菜、土鍋に移して鳥のつみれを入れながらポン酢でいただきます。生姜、葱をたっぷり。柚子の皮を薄く千切りにし、薬味にしても。果汁も使いましょう。そしてオニオングラタンスープ。玉ねぎ3個の薄切りを根気よく炒める。かなり色づいたところで、4003の野菜出汁、またはチキンスープを入れ、スープを乳化するようによく炒める。それから玉ねぎがひたひたプラスαほどのスープを入れ、味を整える。スープを耐熱の容器に入れ、焼いたフランスパン、そしてグリエールチーズをたっぷりとのせてオーブンで焼く。体調によって、チーズはなくても美味しくいただけます。スープには、何とも言えない優しさがこもっています。作る人の祈りがこめられているような。そして口にしたときに、優しさが体に染み渡っていく。何よりの滋養です。体調が優れないときはもちろんのこと、心が疲れたときにも、癒しのスープで自分に優しく。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年01月17日多くの女性たちの悩みを受け止め、的確なアドバイスを繰り出してきたジェーン・スーさん。あるとき、動物の生態や特徴などについて書かれたものを読んでいたら、「こういう女の子、いるな」「あれ?私とも重なる部分がある…」などいろいろ見えてきたのだそう。女性たちを動物になぞらえるエッセイを書き、その連載の延長で始めたお悩み相談を合わせてできあがったのが、この『女のお悩み動物園』だ。自分に似た動物を見つけて納得!モヤモヤを振り払ってくれる名回答。「オオカミやサルにはボスがいて、上意下達の命令系統がはっきりしています。一方、『イルカにはボスはいないがリーダーはいる』というのをどこかで聞いて、そっちが私たちの理想とする働き方だなと思った。そんなこともヒントになりました」行動や心理パターンから、〈悪あがきするアヒルさん〉〈攻撃的なヤマアラシさん〉など16の動物に、女性を分類。そうした女性だからこそ陥りがちな悩みを、スーさんが分析。ポジティブな解決策も探ってくれる。「自分も若いころは、アヒル的なところがあったなと反省しているんです。それは自信のなさの裏返しでしたし、いまは『人には人のペースがあるのだから、自分でやってしまった方が早い』と何でも背負ってしまうトラかな。おかげで四苦八苦しています(笑)。よかれと思って変わっていったところの先に、また違う悩みも生まれるし、新しい武器を手に入れたからこそ、足りないところにも気づく。ただ、誰もがそんなことの繰り返しだと思うので、卑下しすぎず、悲観しすぎず、自分の目指すところへ少しずつ近づいていけばいいんじゃないかなと思うんです」バサッと斬ってくださいと頼まれるのは好きじゃない、とスーさん。「スカッとするのははたで見ている人だけで、斬られる相談者ではない。万人に刺さる答えや、間違いのない安全パイの答えをひねり出すより、あくまで相談者さんと向き合って、大人の知恵で助けてあげられたらなと思っていました」シスターフッド(女性同士の連帯)の潮流を、本書からも感じる。「だからこそ、過去の常識や『これがふつう』という言葉で、相談者さんや読者に自分の価値観を押しつけないようにしました。どこからでも読めるし、心が軽くなったと言われると嬉しいですね」作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティ。1973年、東京都生まれ。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』で講談社エッセイ賞を受賞。TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』放送中。『女のお悩み動物園』見習いたい理想の動物あり、我々の同胞的な愛すべきダメ動物ありで、どれも首肯してしまう。20代から40代の働く女性が抱く悩みを網羅。小学館1500円※『anan』2021年1月20日号より。写真・土佐麻理子(スーさん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年01月15日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。東京オリンピックイヤー開幕grape愛読者の皆さん、令和3年、東京オリンピックイヤー、明けましておめでとうございます。今年も この拙欄をどうぞよろしくお願い致します。さてさて待ちに待った東京オリンピック、パラリンピックイヤーが開幕いたしました。世界各国が ウィズコロナをふまえて、世紀の祭典を成功させるという意気込みで、盛夏の開催を迎えます。改めてその日程ですが、東京オリンピック2021は、本年7月23日(金)、オリンピックスタジアムで開会式が、閉会式は8月8日(日)です。パラリンピックの開会式は、8月24日(火)、閉会式は9月5日(日)です。真夏のド真中、『新型コロナウイルス』感染の心配だけではなく、『熱中症』という厄介な病気が これに加わります。湿度の高い日本の夏の暑さは、外国の選手の最も苦手とする所です。国際オリンピック委員会の発表によりますと、世界からの東京五輪参加選手は、28競技、399種目で、10,100人という厖大(ぼうだい)な人数です。これに役員、コーチなどが加わります。選手村でクラスターが発生、競技中に選手が熱中症で倒れる…などというニュースが出ないことを、今から心配症の当方は祈っていますが…。真夏の炎天下、選手や観客からは、コロナ感染者が必ず出ると思いますが、『おもてなしオリンピック』の成功の為には、政府、都庁、関係者あげての対策と、細やかな心配りが必要と考えます。先ずは年初に当り、選手、観客に安心感を与える医療施設の充実と医療関係者の確保を、政府、都庁にお願いしたいと考えております。皆で力を合わせて、東京オリンピックを成功させましょう!!<2021年1月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年01月09日・心に深く沁み渡る。・抑揚のある声の表現が相まって、感動。・聞き入ってしまった…。なんて素敵なの。今、ある動画で朗読されたエピソードが、人々の心を動かしています。駄菓子が買えない女の子に、店主のおばあさんが…?今からご紹介するのは、ある女性が30年以上前に体験したエピソードです。当時小学生だった女性がよく利用していたのは、学校から少し坂を下った場所にある、一軒の駄菓子店。無口なおばあさんが1人で切り盛りしている店でした。女性「おばちゃん、これちょうだい」おばあさん「…20円」そのおばあさんは小学生相手にも愛想が悪く、いつも店の奥に鎮座して、駄菓子の値段だけボソッとつぶやくのです。※写真はイメージ後日、友達と4人でその駄菓子店を訪れた女性。すると友達の1人が「お揃いでこのガムを買おう」といい出しました。価格は50円。30円しか持っていなかった女性は勇気を出してそのことを打ち明けるも、「足りない分を家に戻って取ってくる?」といわれて、会話が終了…。女手一つで働く母親を思うと、追加でお金をもらう気になれなかった女性は、その場に立ち尽くしました。友達が店の外に出ておしゃべりを始めた頃、店主であるおばあさんが次のように話しかけてきたといいます。「裏にあるラムネ瓶の箱、持ってきて」※写真はイメージ駄菓子の値段以外の日本語を発したことに驚きつつも、女性はうなずき、店の裏にあったラムネ瓶の箱を運びました。運び終えた後、おばあさんは「これで手をお拭き」と、20円が乗ったタオルを渡してきたのです。女性がためらっていると、おばあさんはそっとポケットに20円を入れてくれたといいます。帰り際、女性がふと店を振り返ると、そこには先程運んだラムネ瓶の箱を元の場所に戻す、おばあさんの姿がありました。※写真はイメージ申し訳なさとありがたさが心の中で交差する中、女性は坂を下り、その場を後にしたのです。ー30年の時が経って大人になった女性は、こんな言葉を耳にします。「『優しい』という字はニンベンに『憂う』と書く。人の憂いに気付く人を優しい人というのではないか」女性は、30年前、小学生の『憂い』に気付いてくれたおばあさんのことを、「本当の優しさを教えてくれた、最初の大人かもしれない」と思ったのでした。実はこの作品…?心をグッと掴まれるこの素敵なエピソード、実は…ウェブメディア『grape』が開催したエッセイコンテスト『grape Award 2020』に寄せられた1つである、『優しき山バア』という作品なのです。さらに、888本もの応募作品の中から選出された4本の受賞エッセイ作品を、声優である福山潤さん、石川由依さん、安齋由香里さん、寺田晴名さんがそれぞれ『grape Award 2020 受賞作品発表特番』で朗読してくれています!安齋さんが『優しき山バア』を朗読し終えた後、出演者が『駄菓子』にまつわるトークを繰り広げてくれました。福山さん:ちなみに、好きな駄菓子とかってあります?必ず食べてたとか。安齋さん:名前が思い出せないんですけど、えっと、なんか餅飴…?っていうんですかね。福山さん:あ!なんかあの、いっぱい入ってて爪楊枝で食べる!安齋さん:そうですそうです!あれがすっごい好きで。買いだめをしてました。寺田さん:私、なんか『ヤッターめん』っていうお菓子があって。当たり外れがあって。『50円引き』とか『100円引き』とかあったので、100円が出るとめちゃくちゃ嬉しくて!もうすごい買った憶えがあります。福山さん:駄菓子で100円分なんていったら結構な数買えますからね。石川さんはありますか?石川さん:私『きなこ棒』?なんか商品っていうかもう、そのままいっぱい置いてあって、食べて。そしたら爪楊枝の先に赤いのがついてると当たり!みたいな。あれを3回くらい連続で当てた記憶があります。福山さん:結構渋いのいきますね!石川さん:おいしいんですよねー!福山さん:僕は、駄菓子屋さんのアイスクリームで売っている、ゴム風船みたいなちょっと厚めのゴムにバニラアイスが入ってるやつ。当初何十円かなんかで買えたのを、先っぽをちょっと切って飲むんですけど。途中で破れたりして。手がもうバニラだらけみたいな。石川さん:大惨事!福山さん:その大惨事をみんなで楽しむっていう。で、最後のほうになると手で溶けてるので、最後キュッと(アイスが入り込んで)口の中がいっぱいになって。子供の口ってちっちゃいじゃないですか。大体何人かが鼻からバニラが出てる。それを近所の悪ガキたちと楽しむっていうのが僕の定番でしたね。…なんておちゃめなの!!!それぞれが持つ駄菓子エピソードに花を咲かせていました!このように、ここでしか聞けない4人の談笑が見れるのはもちろん、プロの声優による抑揚のある朗読や、作品自体には書かれていない裏話・作品を書いたきっかけなどを堪能できる豪華な動画になっています。音声だけでも楽しめる内容なので、作業や家事をしながら聞くのもおすすめです。興味がある人は、ぜひ下記のリンクから確認してみてくださいね。grape Award 2020 『心に響く』エッセイコンテスト[文・構成/grape編集部]
2021年01月04日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。言葉は時代で生まれ変わる文化庁が毎年秋に発表する『国語に関する世論調査』が出ました。それによりますと、SNSなどの普及で、誰もが文章を発信する機会が増えて来て、間違っている表現を受け入れる傾向が顕著になっているようです。でもでも、それを唯唯諾諾(いいだくだく)と認めてしまうのは、言葉を使う職業人としては、如何なものかと思っております。当方が気になった部分は、慣用句です。「手をこまねく」は、本来の意味の「何もせず傍観している」が、「準備して待ち構える」が圧倒的に多く、「敷居が高い」は、「相手に不義理などして行きにくい」ではなく、「高級すぎたり上品過ぎたりして入りにくい」が大半でした。「浮き足立つ」は、「恐れや不安を感じ、落着かずそわそわしている」が、「喜びや期待を感じ、落着かずそわそわしている」、「新規巻(ま)き直し」は「新規巻(ま)き返し」、「雪辱を果たす」は「雪辱を晴らす」が多かったようです。「◯活や◯◯ハラ」は広く浸透し、私どもの年代も使いますが、「ガン寝」、「ガン見」などはとても使えませんし、耳にするのも余り好きではありません。でもそのうちに、耳慣れて来ると、サラッと使うようになるのでしょうね。言葉はその時代に生まれ、使われ、伝えられて行くものですから…。さて来年はどんな言葉が生まれ、育ち、市民に広く伝えられてゆくのでしょうか?その新しいことばの誕生、成長、浸透、変化などを楽しみに致しております。さて、この1年この拙欄をお目通し頂きまして誠にありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。それでは皆様、どうぞ希望に満ちた新年 令和3年をお迎えくださいませ。<2020年12月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2020年現在、アナウンサー生活62年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2020年12月28日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。祈りは神様との約束新しい年へ。慌ただしい大晦日が暮れ、街は静かになる。そして日付が変わると、なぜかそれまでの空気が清まった感じがする。一年の始まりと終わりには、何か不思議な流れがあります。カウントダウンで賑わう街でも、誰もが新しい年へと気持ちもリセットすることを期待しているのでしょう。年をまたいでお参りをする二年参り。日付が変わる少し前に家を出て、家族で二年参りをしたものでした。ずいぶん昔のことですが、二十代の初め、作詞家になろうと決心して毎晩遅くまで勉強をしていた頃です。神様との向き合い方が変わりました。いわゆる『願掛け』『願う』という気持ちではなく、気づくとただただ必死に手を合わせ神様に誓っていたのです。少し大袈裟に聞こえるかもしれませんが、作詞の勉強は私にとってまさに人生の受験勉強でした。自分の特性を生かして生きていく大きなチャレンジをするために、自分で自分にプレッシャーをかけました。例えるなら、向こう岸に橋を渡せるかどうか……そんな気持ちです。「神様、頑張りますからどうか見ていてください」手を合わせながら、心の中でただこれだけを神様に伝えました。何度もその言葉を繰り返しながら、胸が熱くなっていきました。このとき神様に参拝するとは、感謝をして、覚悟を伝えることだと思ったのです。お願い事を並べるのではなく、所信を表明するのだと。すると、より気持ちが強くなる。あきらめない心に薪をくべるような感じです。神社の境内では火が焚かれていました。パチパチと音を立てながら、火の粉が空に昇っていく。人々の祈りを天に届けているようです。あの頃の真夜中のシンとした深い寒さ。そしてずいぶん昔のことになりましたが、あのときの静かな高揚感をいまでもよく憶えています。祈り、覚悟を伝えながら胸が熱くなり、時に涙がこぼれる。生かされていることへの感謝を伝えながら泣きそうになる。そのときに、祈りは自分の中に力となって宿るのです。新しい年に誓いを立てる。そして神様と約束をする。お願いは、「頑張りますから見ていてください」と。2020年は厳しい年でしたが、この厳しい体験を礎に、2021年を力強くまいりましょう。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2020年12月27日耳が聞こえない両親、元ヤクザでけんかっ早い祖父、カルト宗教にハマる祖母ーー。登場人物を並べると小説のようだが、『しくじり家族』はフリーライターの五十嵐大さんが「普通じゃない家族」との関係を綴ったエッセイ。障がいのある母が大嫌いだったという思春期の葛藤を吐露したウェブの記事が編集者の目に留まり、本作につながった。大人になったからわかる、いびつで不器用な家族の愛。「無名の自分の個人的な話が本になりうるのか、最初は戸惑いがありました。でも、うちほどややこしい家族はそうそうない(笑)。僕の体験が、家族に悩む人の力になれるかもしれないと思いました」両親や祖父母が普通じゃないと気づいた小学生の頃から、家族が重荷だったと、五十嵐さん。近所の人や友だちから好奇と偏見の目で見られ、時には心ない言葉を浴びせられ傷つき、その“原因”である家族と衝突を繰り返して。そんな幼少期からのやり場のない怒りや悲しみ、そして家族への複雑な思いが、最後までわかり合えずに逝った祖父の葬儀を通して描かれる。それは家族を遠ざけ、ずっと目を背けてきた過去と正面から向き合う作業だった。「自分の幼さや汚い部分も含めて、イヤな思い出をひとつひとつ確認して描写するのが本当にしんどくて。でも、ただ恨みつらみを詰め込んでも意味がない。一番辛かった子どもの頃の自分を励ます感覚で、重苦しくならない文章と読んだ後に考える余地が残る内容を心がけました」その言葉通りの淡々とした語りが、自身の心の揺れや不器用ながらお互いを思う家族の姿を鮮明に浮かび上がらせる。そして終盤に明かされる五十嵐さんの誕生までの経緯と両親の愛情が胸に迫り、温かい気持ちに。「書き終えた時、本当にスッキリしました。書くことで心の整理ができたのと、幸せな瞬間もたくさんあったのだと再認識できたから。家族を憎んで悩んでばかりいた昔の自分も救われた気がしています」五十嵐さんは現在、手話や視覚を中心とした「ろう文化」や社会的マイノリティの取材を精力的に重ね、今後も続けていくという。「当事者に近いから聞ける話もあるし、祖父母の話題はフックになる。物書きとしての武器をくれた家族に感謝したいですね。…なんて言えるくらい、大人になりました(笑)」『しくじり家族』ややこしい家族から離れ、東京で“普通”を擬態して暮らすぼくのもとにある日、祖父が危篤という連絡が入り…。CCCメディアハウス1400円いがらし・だい1983年、宮城県生まれ。2015年からフリーライターとして活動し、アンアンでも執筆。本作がデビュー作となり、母との関係を描いた次作も近々発売予定。こちらも要注目!※『anan』2020年12月30日-2021年1月6日合併号より。写真・土佐麻理子(五十嵐さん)中島慶子(本)インタビュー、文・熊坂麻美(by anan編集部)
2020年12月25日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。アウトプット=表現のすすめ表現し続けること。これは、人間にとってとても大切なことではないかと、最近とみに感じています。表現というと難しく聞こえるかもしれませんが、自分の思い、意見、今の自分を世の中に表していくことです。そこには素直な吐露があり、率直な意見があり、クリエイションがあります。SNSの広がりで公の場での発言、発表しやすくなってきましたが、だからこそ、その質を高めていくことが大切です。音楽大学で作詞研究という授業を受け持っています。学生たちはクラシック、ポップス、邦楽など、さまざまなジャンルの音楽を専攻しています。テクニックだけでは芸術とは言えない。そこには、さまざまな体験や学んだことの熟成と、内面を見つめる目が重要です。作詞のクラスで何を伝えていくのか。作詞における約束事はもちろんのこと、感性を磨いていく数々のワーク、そしてこれまでの歌の歴史、変遷についても伝えます。作品の質を高めていくためには、ただひたすら書く。そしてできたら添削。歌詞を書くことについてさまざまな角度から伝えていきますが、最終的には、「どう生きていくか」ということになるのです。その「どう」が、内面を磨き上げ、深い作品を書く動機に繋がります。そのためには体験することが大切なのです。その体験を通して自分の中で熟成させていったものが、作品やパフォーマンスという『真実』になりうるのです。音楽大学の学生たちはインプット、アウトプットを重ね、表現を進化させていく。常にその二つがそれぞれの中で対流し、エネルギーになり、日々新しい自分と出会っているのだと思います。そう、アウトプットしていくことは自身に進化をもたらし、エネルギーを生み出します。インプットしたものを熟成し、自分の感性を通してアウトプット=表現する。ささやかでも形にしていく。それはSNSで言いたいことを言いたいままに書く、ということではありません。『形』『作品』にすることで、それまで答えの出ていなかった思いに『答え』が出るのです。気づきがある、と言ったほうがいいでしょうか。表現することは、内なる声に耳を傾け、掬い取っていくことなのです。学び、体験し、そして表現する。そこに、人生を豊かにする流れがあるのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2020年12月20日ウェブメディア『grape』では、エッセイコンテスト『grape Award 2020』を開催。今回のコンテストには、888本もの応募作品が寄せられました。その中から、最優秀賞が1作品、タカラレーベン賞が1作品、優秀賞が2作品、佳作が3作品選ばれています。grape Award 2020 入選作品一覧最優秀賞『リンツァートルテの想い出』/作者:一期一会ツアーコンダクターとして働いている女性。海外で出会った旅行客から、あることを頼まれて…。旅先のホテルで、固い表情のままたたずむ高齢女性添乗員が声をかけると?タカラレーベン賞『心を拾ってくれたタクシー』/作者:飯沼 綾激務に疲れて、泣きながら都会の街を歩いていた若い女性。そこへ、1台のタクシーがやってきます。泣いている女性の前に停まった、タクシー運転手の行動に心打たれる優秀賞『子育て応援バス』/作者:鵠 更紗慣れない育児に不安でいっぱいだった母親。2歳の息子を連れて、バスに乗った際のエピソードです。2歳息子とバスに乗ったら…運転手の『行動』に、母親が涙こらえた理由優秀賞『優しき山バア』/作者:安部 飯駄友達と駄菓子店を訪れた女の子。お金が足りなくて、友達とおそろいのお菓子を買えずに困っていたら…。駄菓子店でお菓子を買えず、落ち込む子供店主の『行動』に、目頭が熱くなる佳作『母ちゃんと作業着』/作者:よもぎ焼き鳥の店を営む母親。常連客との触れ合いに、じんわりと胸が熱くなります。作業服の男性客が「こんな格好でごめん」というと…店員の『返答』に、胸が熱くなる佳作『『生まれてはじめて』』/作者:村上 敬亮小学生の頃に、初めて猫を飼った男性。一緒に過ごした10年間を振り返って感じたことは…。愛猫が旅立って飼い主が『知ったこと』に涙10年間を振り返ると…佳作『特別授業』/作者:奥村 敏生東日本大震災の影響で、避難していた時に出会った、見知らぬ女の子。意外なお願いをされた男性の行動に、グッときます。3.11の日、恐怖で固まっていた少女男性に告げた『まさかのお願い』は…『grape Award』に関する詳細はこちらからご確認ください。『grape Award 2020』詳細はこちら[文・構成/grape編集部]
2020年12月18日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。新米を味わう喜び以前、マツタケの話題を書かせていただきましたが、意外や意外、大勢の方から「同感・納得、疎遠で寂しい限り」などという声を頂きました。縁遠くなったおいしい秋の味覚は「食べた~い!」という欲求が誰にでもあるのですねぇ…。当然、当方にもありますが、今年もご縁は無さそうです。「松と竹」は、拙宅に植えてはありますが…。さて、今回は、『松茸』のような副食ではなく、主食である新米、お米についてです。お米をおいしく食べるのには、先ずはその炊き方ですよね…。「初めちょろちょろ、中ぱっぱ、赤子(あかご)泣いても蓋取るな」、私たち世代の方でしたら、もう馴染みの言葉です。これはかつて、釜で炊くお米の炊き方の段取り、火加減を面白可笑しく教えた言わば教訓なんですね。釜で炊いたご飯はホントにおいしいのですが、一時、土鍋でお米を炊くことがブームになりましたね。でもすぐまたすたれ、やはり主流の炊飯器に戻りました。今は誰でも『炊飯器』と言いますが、火を使う釜から電気に変わった昭和の頃は、『電気釜』という呼称で売り出されました。やはりお米を炊くごはんには、従来の『釜』というイメージを残して置きたかったのでしょうね。ところで、現在の炊飯器の中には、何と、お米の銘柄を、例えば『新潟のコシヒカリ』と指定すると、そのお米に合った炊き方をする炊飯器も出ているようで、「初めちょろちょろ」の昭和人間はホントに驚いております。釜に入れたお米の水加減を手首で計った釜での炊き方が懐かしいですねぇ。新米の味…、サンマの塩焼きなどで、ふっくらと炊き上ったおいしい新米を頬張る…『瑞穂の国』に生まれた幸せを感じるひとときであります。<2020年12月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2020年現在、アナウンサー生活62年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2020年12月15日2020年5~8月にかけて、ウェブメディア『grape』では、エッセイコンテスト『grape Award 2020』を開催。『心に響く』と『心に響いた接客』という2つのテーマから作品を募集しました。『grape Award 2020』心に響くエッセイを募集!今年は2つのテーマから選べる今回は、応募作品の中から『リンツァートルテの想い出』をご紹介します。ツアーコンダクターの職について30年。あっという間に時が流れた。溢れんばかりの想い出が心に刻まれているが、中でも特に忘れられない出来事がある。オーストリアを巡るツアーで私はひとりの女性と出会った。彼女は80歳を過ぎていて、同行者はいなかった。その旅はすこぶる順調に進んでいたが、後半に差し掛かった5日目の午後、高速道路の事故渋滞で大幅に予定が狂ってしまった。オーストリア第3の都市・リンツでの観光は断念せざるを得なくなり、まっすぐホテルに入った。チェックインを済ませたあともロビーに佇んだままの女性の姿に気がついた私は、彼女のもとに近づき「どうかされましたか?」と声をかけた。彼女は固い表情のまま「無理を承知でお願いしたいことがあります…。リンツのお菓子であるリンツァートルテをどうしても買いたいのです…。私の長年の夢でした。どうかお願いします…」と言った。すぐさまフロントに行くと、「近くにパティスリーがあってそこで買えるけど、間もなく閉店時間だから間に合わないかもしれない…」と言われた。外はすでに真っ暗で小雪が舞い始めていた。あと、3分…、彼女の足では到底間に合わない。ヨーロッパではこういう場合、時間オーバーして対応してくれることは、まず無い。残念だけど諦めてもらうしかないか…。振り返った瞬間、まっすぐに向けられた彼女の瞳が私の心を別の方向に突き動かした。「約束は出来ませんが…いってきます」と告げると私は一目散に駆け出した。店に着いたのは、正に店員が鍵をかけようとしていた時だった。「リンツァートルテをください。お願いします」大声で叫ぶ私に、店員は無情にも首を横にふると「また明日」と言った。「明日はないんです。今しか…今しかチャンスはないんです。お願い、リンツァートルテを!お願いです…」すると店の奥から店主らしき年配の女性が顔を覗かせ「こんなことは初めてよ」と肩をすくめて笑いながら私を店に招き入れた。ホテルの外で私の帰りを待っていた彼女は、両手にかかえた大きな箱を見つけると満面の笑みで私を抱き寄せ「ありがとう。本当にありがとう」と何度も繰り返した。言うまでもなくリンツは彼女にとって特別な場所だった。不慮の事故により、30歳という若さでこの世を去った夫とリンツでリンツァートルテを食べる旅を計画していたことを、あとで聞いた。「50年かかったけど漸く叶ったわ」とガラスが割れたままの遺品の腕時計をいとおしそうに見つめていた。バスドライバーに頼み込み、翌朝30分早くホテルを出てリンツの街並みを車窓から眺めた。前日の雪がウソのようにスッキリと晴れた青い空がどこまでも広がっていた。帰国して数日後、私は思いがけず彼女から配達物を受け取った。「旅のお礼に、プロのパティシエとして心を込めて焼きました。プロの添乗員さんへ」というメッセージが添えられたリンツァートルテは、本当に美しく、そして、美味しかった。現在私の仕事は新型コロナの影響で100%止まってしまい、先も読めない状況下にある。世の中のシステムも大きく変化した。アフターコロナでは、ツアーの形態も大きく様変わりするかもしれない。それでも私は旅の仕事を続けていきたい。人が人を思う気持ちの尊さは決して色褪せないと信じている。時間がある今こそ、リンツァートルテを焼いてみようと思う。20年前の記憶を呼び起こしながら…。grape Award 2020 応募作品テーマ:『心に響いた接客エッセイ』タイトル:『リンツァートルテの想い出』作者名:一期一会受賞作品の発表の場として、初の動画配信を実施!2017年から続く、一般公募による記事コンテスト『grape Award』。第4回目となる2020年の受賞作品が決定しました。今年は、授賞式の代わりに初となるYouTubeを利用した、特番『grape Award 2020 受賞作品発表特番~心に響くエッセイコンテスト~』を配信します!特番『grape Award 2020』の配信が決定!福山潤や石川由依らの朗読も心に響く作品として選ばれるのは、どのエピソードでしょうか。結果発表をお楽しみに!『grape Award 2020』詳細はこちら[文・構成/grape編集部]
2020年12月14日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。今年を表す私の一文字その年の世相を表す『今年の漢字』。毎年清水寺で発表される恒例の行事です。昨年の漢字は『令』。令和という新しい時代の始まりに、多くの日本人が希望を見出したものでした。令、美しく麗しい時代への期待感がありました。ところが一年経たない間に、世界は大きく変わりました。一年後の今年、どのような漢字が選ばれるのでしょうか。今年ほど、その漢字の意味を噛み締める年はないでしょう。日常が一変し、私たちの心のどこかにいつも『怖れ』が住みついてしまいました。マスクをしている息苦しさは、心の息苦しさでもあります。私たちは世界共通の同じ問題を抱えていますが、同時にそれぞれの人生にもさまざまなことを抱えています。12月、「今年のうちに」となぜか心が忙しくなる。大晦日から元旦へ、いつもと同じ朝を迎えるにもかかわらず、午前0時は私たちには大きなリセットの瞬間、何かが変わるような、一年の澱が浄化される感覚があります。そんな浄化の意味をこめて、自分のこの一年を表す漢字一文字を考えてみてはどうでしょうか。私のエッセイ・クラスの最終回で、このワークをやってみました。今年、イラストの作品集の制作に取りかかった人は『挑』という漢字を。まさに勇気を出した挑戦の年だったそうです。『踊』という漢字を選んだ人は、『情報に踊らされた年』と。『命』を選んだ人は、体調を崩し自分の命について深く考えたそうです。このように自分の一年を表す漢字、言葉を考えてみると、ざわついている心が不思議と落ち着きます。自分の感情や思いに言葉を与える……それが表現です。そうして心の内を表現することで、けじめがつくというのです。今年はこうだった。さあ、次に進もうと、意識的にリセットすることが、前に進むきっかけになります。さて、私の今年を漢字一文字で表すと……『痛』。なんとも情けない一文字ですが、7月に手首を骨折し、5ヶ月経ったいまも痛みに悩まされています。自分の身体を傷つけてしまったことを後悔した年でもありました。こうして世界が分断されているのも心痛いことです。さて、今年の漢字、そして皆さんの一文字はどうなるでしょうか。新しい年、希望にあふれる漢字が選ばれるような年になりますように。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2020年12月13日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。晩秋の広場にて晩秋の休日。わんこの散歩で近所のケヤキ並木広場へ向かいました。そこは車の通らない広々とした並木道で、近隣の人々の憩いの場です。ところどころに落ち葉がこんもりと山になっていて、幼い子どもたちが落ち葉に埋もれるようにして遊んでいます。雪をかけ合うように落ち葉をかけ合い、そのふわふわ、かさかさとした感触を楽しむように踏んで歩いて。そんな子どもたちを見守る若いお父さん、お母さんのまなざしは優しく、そんな親子の姿をベンチに座っている老夫婦が微笑ましく見つめている。少し離れたベンチからその光景を見ていたら、なんだか泣きたくなりました。なんて平和な日常の光景。そして抱きしめたくなるほど懐かしい思い出に。娘が赤ちゃんだった頃から、よくこの広場まで散歩したものです。よちよち歩きを始めた頃、歩けるようになったうれしさを体いっぱい表すように私に向かって歩いてきました。ちょうど今頃の季節。小さな手で落ち葉を拾ってくしゅくしゅと握ってつぶしたり、落ち葉の中に座り込んで遊んだり。23年、時は瞬く間に過ぎていました。その間には当然のことながらいろいろなことがあり、子育てと仕事と家族のこと、親のこと……。さまざまなことを小脇に抱えながら駆け抜けたような23年という時間は、私の人生のまさに中核といえる時間でした。もう巻き戻すことも手にすることもできないそんな年月に、自分の限られた時間を思うのです。悲しいわけでも、淋しいわけでもなく、ただ自分に『与えられた時間』が不思議です。何年なのかわかりませんが、晩秋のベンチに座りながら過ぎ去った年月に思いを馳せているように、生きてきた時間を振り返るときがいつか来るのでしょう。そのときの気持ちをほんの少し味わっているような感じです。出会いがあり、別れがある。家族として出会い、そして別れがある。友人たち、大切な人とも何かの縁があり出会い、そしていつか別れがある。その中には決してひと色ではない出来事や思いがあるでしょう。でも最後には「愛しかなかった」という境地になれたらいいなと思うのです。卒業試験の最後の問題が解けたように。落ち葉で遊ぶ幼い子どもたちを見ながら、今、遠く遠く離れて暮らしている娘を思います。夢のように思える子育ての頃、確かに私もこうして遊ばせていたのだ、と14歳のわんこを抱っこしながら思い出します。わんこも、ここで走り回ったことを思い出しているのかもしれません。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2020年11月29日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。コロナ禍での結婚式爽秋のこの季節は、例年、結婚式、文化祭、運動会、発表会、旅行会、同窓会など、多くの催事が開かれます。しかもこの秋は、この春、コロナウイルス感染で中止となった催事が集中しているので、受注先のホテルやイベント会場は、今尚コロナ禍だけに、その対応や気配りで大童(おおわらわ)のようです。実は当方もこの秋、知人の結婚式で或るホテルにご招待されているものですから、懇意にしているそのホテルのブライダルマネージャーに、コロナ禍での結婚式や披露宴について、軽く話を聴いてみました。先ず、ご招待客の入場時には、体温チェックやアルコール消毒をお願いしている。挙式の教会や神殿でも、ソーシャルディスタンスを考え、牧師さんや神官と新郎新婦との距離、賛美歌を唄う時は、口ずさむ程度で、放歌放吟(ほうかほうぎん)にならないようにお願いしている。ご披露宴の会場も、今までの8人掛けのテーブルは6人に…。ご招待客の中には、主賓の祝詞が終わり、次の乾杯まで、マスクをはずさない方もいらっしゃるとか…。マスクと言えば、宴会場のホテルマンは、ご招待客の入場からお開きまで マスクははずさず、祝宴に入ってのお料理、飲物のサービスも、マスク、手袋をつけたままだそうです。新郎新婦心づくしの祝宴のお料理を、マスク、手袋をつけたままのホテルマンから、その都度受けるというのは、コロナ禍とはいえ、どうも絵にならない感じがしますぇ…。さて、当方がご招待を受けているこの晩秋の結婚式とご披露宴。どんな形で、どんな雰囲気になるのか、一生に一度の体験として、しっかりマスクをして出席させていただきます。<2020年11月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2020年現在、アナウンサー生活62年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2020年11月27日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。クリスマス・リースの祈り街にクリスマス・ツリーを見かける時期になりました。東京、恵比寿のガーデンプレイスでは、毎年高さ8.4メートルの『バカラ・シャンデリア』がホリデー・シーズンを彩ります。先日、前を通りましたらその優麗な輝きを放っていました。コロナ禍という時世、日常のルーティンを守ることが大切なのかもしれません。クリスマスという、優しい気持ちになる時期、私たちの心に灯りを灯すこと。それが、大切なことだと思うのです。毎年、11月のお花のレッスンではリースを作ります。今年は泰山木の葉と、ブルーバードというシルバーグリーンの針葉樹を使った、シック、でもゴージャスな大人のリースです。リースの輪には『永遠』という意味があります。始まりも終わりもなく、永遠に回り続ける。幸福がいつまでも続きますように、という願いがこめられています。リースに常緑樹が使用されるのには、豊作を願うという意味があるそうです。また赤い柊の実には太陽の光、リボンには魔除けという意味がこめられています。松ぼっくりや姫リンゴは、神へ捧げ物の象徴だそうです。殺菌作用、抗菌作用がある常緑樹の葉を玄関に飾ることで魔を除けることを願いました。これは、お正月のしめ縄飾りと同じ意味合いです。また端午の節句では菖蒲や蓬などを使って薬玉飾りを飾ります。菊の節句とも呼ばれる重陽の節句に、薬玉と同じように芳香を放つ茱萸袋(しゅゆふくろ)に取り替えたそうです。無病息災、魔を除ける、農作物の豊かな実りを願い、古の人たちは西洋でも日本でもこのような飾り物を祈るように作っていたのでしょう。おそらく、体験的に知っていたのではないかと思います。この地球上の遠く離れた地で、人間は共通の感性、知識を持っていた……。これはすごいことですね。一年前は飛行機に乗ればどこへでも飛んでいけたのに、今は簡単に行くことはできません。そして、コロナ禍は人と人との距離を離しただけでなく、心をも分断しているように思えます。小さなブルーバードの葉をリースに刺しながら、かつて無意識の奥で人々がつながっていたことに思いを馳せます。平和であるように、人々の心が穏やかであるように祈りながら。リースや薬玉飾りには、作っている人々の祈りもこめられているのですね。リース作りは、静かで心躍る時間。もうひとつ、プレゼント用に作ろうかと。慌ただしくなる時期、こんな静かな時間がうれしいものです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2020年11月22日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。『丁寧』という魔法心がざわざわする。感情が渦を巻いている。人間関係がぎくしゃくする。不安に押し潰されそうになる。時として、こんな状態に陥ることがあります。頭ではわかっていても、感情が言うことを聞かない。それはどこかドミノに似ていて、ひとつが崩れると次から次にうまくいかなくなる。自分の日常のことだけでなく、これが社会に対する不安や不満、怒りとなると、ますますやり場がなくなります。そんなときは、ついつい言葉も荒くなるものです。言葉はエネルギーですから、たとえ良い言葉遣いをしていたとしても、そのエネルギーは言葉にこもります。例えば「ありがとう」と言われても、全然伝わってこない心の伴わない「ありがとう」がありますよね。言葉で繕ってみても、その心がなければ伝わらないのです。心がざわざわするときには、物事を丁寧に行い、丁寧な言葉遣いを心がけます。すると、気持ちが落ち着きます。ゆっくりと、ひとつひとつの言葉を意識する。言葉は丁寧に、贈り物を手渡すように伝える。心のこもった言葉をかけられて気分が悪くなる人はいないでしょう。自分自身が落ち着くだけでなく、相手もまた気持ちが落ち着き、うれしく思うでしょう。こうしてお互いに『丁寧』を与え合うことで、そのエネルギーはまわりに波及していくのです。いつもよりも丁寧に料理をするのもいいでしょう。丁寧に野菜を切り、丁寧に調理し、丁寧に盛り付けをする。あれこれ考えず、おいしい料理を丁寧に作ることに意識を向ける。これを私は『お料理瞑想』と呼んでいます。料理をしていることに意識を集中させることで、落ち着いてくるのです。ゆっくりと呼吸をすることも、ざわざわを鎮める効果があります。丁寧に呼吸をするのです。空気を胸いっぱいに空気を吸って、肺胞の隅々まで行き渡り、酸素がどんどん血液に流れ込むイメージをします。酸素は身体中に運ばれます。呼吸、息を吸うということは、生きているということ。息、生き、同じ音です。ここにも言葉のエネルギーが宿っているのですね。「丁寧にする」というリズムで心を整える。忙しいときほど丁寧に。イライラするときほど丁寧に。『丁寧』という魔法、ぜひ試してみてください。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2020年11月15日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。え?そんな時代!?新型コロナウイルス感染で、社会経済活動も日常生活もガラリと様(さま)変わりを致しました。コロナウイルスの文言が無かった頃の元の生活へ、早く戻りたいと、日々願っているのですが…。ウィズコロナの日常生活に入ってから、思わぬ悲劇も生じているのですねぇ…。その話を聴いた時、一瞬耳を疑ったことでしたが…。当方の友人の知人で、結婚2年目のご夫妻が 最近『コロナ離婚』をしたというのです。「え?」という質問をその友人に返しましたら、そのご夫妻は、勤める会社は別々の共働きですが、それまでは帰宅すれば 夫婦の対話を楽しんでいた『仲良し夫婦』だったそうです。それが『コロナ禍』で 2人とも在宅勤務のテレワークとなり、毎日同じ部屋で、それぞれのPCに向うというスタイルに変りました。そして3カ月、子供もなく、常時1つの部屋に居るものですから、それぞれに落着ける場所がなく、お互いに息が詰って離婚に踏み切った…というのです。そういう『コロナ離婚』は、この時代、珍しいことではない…と、その友人は言っていました。確かに、家庭が職場に変り 共に机を並べてPCに向い、朝昼晩、肩を並べて勤務をするとなると、夫婦の対話も味けないものとなり、自分のくつろげる居場所が無くなった…、と言えるかも知れませんね。そしてそれが数カ月 半年も続くと…「さもありなん」と思いました。順調であった社会経済生活、幸せであった日常生活を無慚(むざん)にも破壊する『新型コロナウイルス』。1日も早い終息を願う毎日であります。<2020年11月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2020年現在、アナウンサー生活62年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2020年11月10日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。『夢』のメッセージが教えてくれること「夢は超意識からのメッセージである」『眠れる預言者』『ホリスティック医学の父』と呼ばれたエドガー・ケイシーは夢についてこのように述べています。また精神科医、心理学者であるカール・グスタフ・ユングは夢について、心の深いところから、その人の生き方そのものについて関わりのある、何か大切なことを告げてくるものである、と考えました。今朝見た夢には意味があるのだろうか。ストーリー、場面をありありと覚えている夢を見ることがあります。夢の中の怖さや悲しみや驚きなどの感覚が妙にリアルで、何度でもリフレインして味わえるような夢もあります。大抵の場合、現実にはありえないような奇妙な展開を見せます。そんな夢について(きっと疲れていたからこんな夢を見たのだ)(こんな夢には意味がない)と流してしまうことが多いのではないでしょうか。また『いい夢』『悪い夢』とジャッジして一喜一憂することもあるでしょう。しかし、夢に「いい」「悪い」はありません。そのように判断していると、夢の真髄に触れることはできません。十代の頃から夢には何か意味があると思っていました。『追いかけられる夢』を繰り返し見ていた頃を思い出してみると、確かに精神的に厳しい時期でした。夢のメッセージとは、夢主の現状を伝えているということ、そして問題解決の方法を示唆しているのです。追いかけられ、袋小路に追い詰められ、「助けてー!」と叫ぼうとしても声が出ない…。この夢のメッセージは、今実際に『追い詰められている状態』であるということ。そして『助けを求めようとしても求められない自分』がいますよ、逆に言うと、「助けを求めれば状況は改善します」ということを伝えていたのです。夢のメッセージを実際に行動に移してみること。ここが最も大切なポイントです。でも十代の私はそこまで解釈することができずにいたのですが、仕事を始めてからまた『追いかけられる夢』を見た時期がありました。実際には1日おきに締め切りがあるような状況でした。「誰かに追いかけられている。急いで家に帰ってテレビをつけ、『誰か』が今どこにいるか映し出し確認する」この夢には、まさに解決方法が示唆されています。つまり、テレビで確認するというのは、「何から始めたらいいか、落ち着いて確認しなさい」ということ。仕事の優先順位を考え、落ち着いて取り組んでみたところスムーズに、ストレスもなく終えることができたのです。夢のメッセージは、誰にアドバイスされたのでもない、自分が自分に与えているアドバイス。夢を人生に取り入れることは、自分自身と一緒にいることなのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2020年11月08日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。「いいね!」という『存在確認』90歳になる父は、毎朝6時過ぎに散歩がてら我が家にやってきます。新聞を取り込み、カーテンを開け、植木の手入れなどをして6時半には帰ります。その時間、私はまだ寝ているので父が来ていることに気づきません。起きて、カーテンが開いているのを見て、今朝も父が来たのだと確認するのです。言ってみればこれは存在確認。父もそのつもりのようです。たまに雨が降った日など来ないこともあり、その時は少し胸がざわざわします。部屋で倒れてやしないか。悪い想像ほどイメージしやすいのですから困ったものです。そんなときは「おはよう、今日はどんな予定なの?」と電話をして、元気なことを確かめます。SNSの「いいね!」もまた、その人が生きている証(なりすましなどもありますがそれは除外して)です。生きている…というと大袈裟かもしれませんが、いつものコンタクトが途切れると、ふっと心配になるときがあるのです。二十代の頃に仕事関係で知り合ったAさんは、私のことを陰ながらずっと応援してくれていました。ときどき電話で近況など報告し合ったり、メールが来たり。Facebookの投稿には必ず「いいね!」を押してくれ、よくコメントも書いてくれました。私も時々Aさんの投稿をタイムラインで読んでいました。新しいプロジェクトについての抱負や、大好きな映画についての思いなどが語られていたのですが、ある頃から投稿する内容が変わっていったのです。世の中に対して悲観的であったり、時には批判的であったり。何か、うまくいっていないのかなあと思っていたところ、事故で亡くなったと知り合いから連絡がありました。SNSは不思議な世界です。連絡が途絶えていた人とつながり、実際に会ったことのない人ともつながる。他人のプライベートが垣間見える。多くのどうということのない情報を共有する仮想の空間。例えばFacebookの中には時の流れがあります。ある日、時が止まった友人たちのタイムライン。誕生日には亡き友人たちの誕生日を祝うメッセージが寄せられます。命日ではなく、生まれた日が記憶されてつながっていく。存在なき存在確認です。「いいね!」はコミュニケーションの一つであり、承認であり、存在確認です。「いいな」と思うことに「いいね!」が返ってくる。「私はここに!」自分の存在確認でもあるのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2020年11月01日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。星空の片隅で1日の長さは、1年に0.000017秒ずつ伸びている。月は1年に3.83ずつ地球から遠ざかっている…ということを、多くの人は知っているのだろうか…。と、冒頭から疑問を投げてしまいましたが、0.000017秒など感じられない時間とは言え、私が(これが1年)と思っている長さが不変のものでなかったのは、結構な衝撃でした。物理学者の全卓樹は著書『銀河の片隅で科学夜話』(朝日出版)の中で、1日の時間が延びるのは、毎日の潮の満ち引きのときに海水と海底の摩擦が起こり、これが地球の自転を遅らせている原因だとつづっています。そして月はその反作用で地球から遠ざかる…そして500億年後、1日は45日ほどの長さになるらしい。月は小さく見えて、潮の満ち引きもなくなるでしょう。もっともその頃には膨張した太陽から宇宙線が降り注ぎ、人間は住んでいられない環境に。とても想像の出来ない未来がそこにあります。先日、車の中でラジオを聞いていたら、国立天文台の教授が超新星爆発について解説していました。超新星爆発とは星の終わり。質量の大きな恒星がその一生を終えるときに大爆発を起こし、数ヶ月から数年にわたり太陽のように大きく明るく見える。今、オリオン座の右肩にあるベテルギウスが暗くなり始めたために、終焉が近いのではないかと考えられているそうです。宇宙は不思議に満ち溢れています。教授の話を聞いていると、その超新星爆発がこの数年のうちに起こりそうなかんがあります。ラジオを聞きながら何だかわくわくしてきました。ナビゲーターの女性もうきうきした声で「何時頃起こるのでしょうか?来年あたりですか?」と質問すると教授は「1、2万年のうちに…だと思います」と。ああ、私は宇宙時間の中にいるのだった…。「近いうち」の桁が違いすぎます。この果てしない宇宙の時空間の中に生きている私たち、なんて小さな存在でしょう。でも、そんな小さな存在である私たちの悲しみや孤独は時にとても深い。生きようとする力は強く、その愛はとてつもなくあたたかい。宇宙の時の流れの一雫にも満たない時間を生きる命の重さを、しみじみと思うのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2020年10月25日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。新大関正代誕生横綱白鵬 鶴竜2横綱が休場した大相撲九月場所は、関脇正代が初優勝し、終盤を大いに盛り上げました。熊本県初の優勝者ということで話題となり、東京都出身の新入幕の軽量翔猿が、何と天皇賜杯をかけた千秋楽結びの一番をつとめるなど、コロナ禍ではありましたが、相撲史上に残る九月場所となりました。ところで、熊本県出身のかつての大関に、闘魂の名大関と言われた栃光がいます。名横綱、栃錦 若ノ花時代の春日野部屋の名大関です。176センチ、120キロという大柄ではありませんでしたが、頭からぶつかってゆく闘魂の名大関でした。当時、当方は学生でしたが 縁あって出羽ノ海親方のご自宅で 居候(いそうろう)をしておりましたので、出羽一門の連合稽古で、横綱千代ノ山、横綱栃錦、大関栃光、栃ノ花、関脇出羽錦、小結成山(なりやま)…といった役力士の稽古を出羽ノ海部屋の道場で、何度も見ています。大関栃光の 相手に突っ込む当りは ホントに凄かったです。ガツンと頭から当るので、額(ひたい)の髪の毛が薄くなっていました。闘魂漲(みなぎ)る相撲でした。本場所で一度も待った、をしなかった力士としても有名でした。新大関正代は、大関昇進の伝達式で『至誠一貫』の精神をその口上に使いましたが、その相撲を貫き通したのが 郷里熊本出身の大関栃光だったのです。新大関正代は 郷土の名大関栃光を範として 更なる精進につとめ その上を狙って貰いたいと願っております。今年の最後を飾る大相撲は 11月の九州場所です。新大関正代は、地元です。横綱白鵬 鶴竜 そして大関貴景勝 朝乃山 加えて新大関正代と、横綱 大関揃い踏みの15日間の熱戦を 相撲ファンは期待しております。<2020年10月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2020年現在、アナウンサー生活62年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2020年10月23日