吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。言葉と行動は『心の現れ』先日、ロサンゼルス・エンジェルズの大谷翔平選手が会見後に席を立ち、椅子をきちんと元に戻している動画をツイッターで見ました。大谷選手のこの行動について、アメリカ人が感心した、とのツイートが多く寄せられているそうです。何ということのない、ただ椅子を元の向きに戻したということ。でもここには『精神』『心』があります。それは相手(椅子を片付ける人)への心遣いであり、立つ鳥跡を濁さず、の精神です。ゴルフの松山英樹選手がマスターズで優勝した時、キャディの早藤さんがグリーンに向かって一礼した写真も話題になりました。サッカー選手も選手交代などのとき、ピッチに一礼します。誰に教えられることもなく、多くの日本人はこのようなことを無意識のうちにします。日本らしさ、日本人らしさとは?日本のいいところは?こんな質問を時々受けます。食べ物がおいしいとか、インフラが整っている、電車の時間が正確、女性が夜にひとり歩きしても比較的安全、落とし物は返ってくる……とよく言われます。でもそれだけでは表現しきれない何か……それは、『精神』『心』なのだと思います。目に見えない何ものかに対する敬意、それが私たちの中に無意識のうちにあるのだと思います。友人がゴルフ場の化粧室で石川遼選手と一緒になったときのこと。石川選手は手を洗った後、洗面台をペーパータオルで丁寧に拭いて出たそうです。これは、なかなかできることではないですね。次に使う人への心遣いが、自然にこのような行動になるのです。教えられなくても、強制されなくても、自然に行う、そこに美しさがあります。目に見えないものを大切にする。日本語にある敬語、謙譲語、丁寧語は、相手に対する敬意の表れです。相手を大切に思うからこそ、自然に出る言葉です。過剰な敬語や謙譲語は聞き苦しいですが、日常の会話の中に自然と溶け込んでいると素敵です。言葉だけでなく、その心が身についている、ということですから。例えば、「誰々さんが来た」を「誰々さんがいらした」と言うだけで、そこに小さな美しさが現れます。「何々をもらった」と「何々をいただいた」と言うと、感謝の気持ちが現れます。言葉も行動も『現れ』です。日頃の何気ない言葉や行動の中に精神、心が現れる。大谷選手の椅子を丁寧に直す姿は、失ってはならない日本の精神を改めて教えてくれました。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年07月04日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。街のざわめきが消えた?コロナ感染予防のため、外出や移動の自粛の『御触れ』が浸透しているので、街中の人出は、コロナがいなかった頃に比べると、かなり少なくなりましたね。当然のことではありますが、街の活気や賑わいが、今ひとつ元気がありません。先日 繁華街の横断歩道を、友人と肩を並べて歩きながら話をしましたが、お互いにマスク、マスクでよく聴きとれません。街中でハッキリ大きく聴こえるのは、パトカーと救急車のサイレンぐらいでしょうか。何か今まで感じていた生き生きとした街の息遣いが、騒音の魅力が、かなり少なくなったように思えます。拙宅の近くの児童公園には、いつも子供達が遊びに集って来ます。当然お母さん方も一緒ですが、勿論全員マスク姿です。その子供達の遊ぶ姿を見ていると、いつもの大声でハシャギ廻るという子供達の動きではないように思われます。「お子さんの動きが、大きいマスクでオトナシメですねぇ…」と顔見知りのお母さんに声を掛けましたら「幼稚園でも、余り大きな声は出さないように言われているようですよ…」という答えが返って来ました。※写真はイメージ私の友人にコーラスの指導者がいますが、練習の人達は『フェイスシールド』で声を出しているので、やはり発声に歯止めが懸かり透明感も失われ、篭り勝ちになるので、まとまりにくいと こぼしていました。放歌放吟とまでは申しませんが、マスクなしで思い切って大声で歌ったり、笑ったり、話したりできる普段の日常生活に 早く戻って欲しいと一日千秋の思いで願っています。<2021年6月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年06月24日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。ひとり旅のすすめ3〜警戒心という鎧〜仕事に一区切りをつけて、飛行機に乗り、シートベルトを締めた瞬間に、あー、解放された!と全身から力が抜けます。自由だー!大袈裟に聞こえるかもしれませんが、これが目の前に人参をぶら下げて仕事をしている自分の情けなさもあるのですが。目的地へ着くまでの自由。ところが目的の空港に着き、タクシーに乗るときから『警戒心』という鎧を纏います。いまでは改善されたかもしれませんが、早朝にロンドンやパリに到着すると、白タクの運転手がまとわりついてきたものでした。ローマではスカーフから生々しい首の傷痕が見える運転手に遭遇したり。乗って行け、という言葉にガンとして打ち合わず、無視するに限ります。地下鉄はスリの仕事場です。バッグをしっかりと前に抱える。そして怖い顔で。全身、セキュリティー万全に。それでも相手の方が百戦錬磨ですから、一瞬の隙を狙ってきます。大好きなアンティーク市も油断なりません。冬の旅であれば、バッグの上にコートを羽織る。人混みを歩くときも要注意です。あるとき、マドリッドの銀座通りのような道を歩いていたとき、ショルダーバッグをツンツンと突いているような感じがあって、見てみると若い女の子がスカーフで手元を隠してバッグのファスナーを開けようとしていました。思いきり肘鉄と睨みです。常に警戒心、緊張感を拭うことはできないのです。パリではいつも小さなホテルに泊まります。外出から戻り、部屋でくつろいでいると、コンコン、コンコンとノックの音が。レセプションの男性でした。「何?」と聞くと「開けてくれ、花を持ってきた」というのです。かなりしつこくて、怖くなりました。相手は合鍵を使えます。夜中に襲われたらどうしよう。途端にいろいろなことを想像してしまい、怖くなりました。すぐに違うホテルを予約し、その日のうちにホテルを移りました。もしかしたら過剰な反応だったかもしれませんが、自分が感じた怖さに正直に行動することが大切なのです。見知らぬ場所、ひとりで行動するときは特に、動物的な直感を澄ましておくことです。警戒心が強すぎて、恥ずかしい思いをしたこともありました。ニューヨークでタクシーに乗ったときのこと。遠回りをしている感じがしたので、「道、違っていませんか?」と聞きました。すると白人の初老の運転手さん、「君は何年ニューヨークに住んでるの?」と。「3日」と答えると、「僕は30年以上この街に住んでる」と言いました。一方通行の多いニューヨークでは、回って回って、反対方向から目的地に向かうこともあるのです。忘れられない、運転手さんの言葉でした。警戒心という鎧、纏うべきところで纏う。命と財産を守り、旅を楽しむのは、訪問先の国に対するマナーでもあるのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年06月20日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。ひとり旅のすすめ2〜旅日記で本音と出会う〜家庭内仕事部屋の引っ越しをしました。本、CD、資料、原稿、写真……紙類の山の中に、30年近く前に書いた旅日記が出てきました。A5ほどの大きさで、表紙には天使たちがバイオリンを弾いている絵。確か、パリの書店で見つけたノートです。旅日記を書くノート、日頃の雑記帳でも、紙とペンの相性が大切です。書きやすさはもちろんなのですが、書き手を超えたところでペンと紙のコラボレーションが文章に現れるのです。もうひとつ大切なことは、「自分を制限しない」ということ。うまく書こうとか、こんなことは書けない、などと思わないこと。思うまま、自分の中から思いが淀みなく流れ出るように。旅という非日常の時間と空間の中で自由になることが、ひとり旅の大きなギフトです。自分を制限しないで書き始める。それをさらに滑らかにするのが相性のいいペンと紙なのです。私の好みは、インクを瞬間で吸い取り、そして吸い取った余韻のある紙。ほんのりざらつき感がある紙が好きです。そして当時愛用していたのはシェーファーのカリグラフィー用の万年筆。1000円か2000円くらいだったか。インクはblue-black。ペン先から、思ってもみなかった言葉や思いが流れるように綴られるのでした。ひとり旅は、『自分自身』というバディと一緒に旅をすることです。それがひとり旅の醍醐味です。旅の間に感じる淋しささえも味わうことで、どんなにか自分の感性を育み、自分を成長させることか。気づかなかった自分の思いを知るのは、少々勇気がいることもありますが、それも必要な出会いだったのだと思うのです。好きな場所に好きなだけいる、というのも、自分の無意識が求めていること。それに素直に寄り添えるのが、ひとり旅なのです。さて、1995年、ハワイに滞在したときの日記から一節を。「Pali Hwyで車の事故を見てしまう。結構、暗い気持ちになる。KQMQ(オアフのFM局)からジャネット・ジャクソンの『Any Time, Any Place』が流れてくる。いろいろなエピソード、気づき、そういうものがどっと溢れてくる。ちょっと待って。覚えきれない。マイクロカセットテープの準備をしておけばよかった。でもこの瞬間が作家にとっては快感であり、これが待ち望む一瞬なのである」ひとり旅に、出なくては。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年06月13日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。ひとり旅のすすめ1〜憧れに出会う〜20代、30代、ひとりでヨーロッパを旅したものでした。それは私にとって『馬ニンジン』。旅を目標にすると、仕事も充実させることができたのです。ひとり旅をすると言うと、多くの人が「淋しくない?」と聞きます。それが少しも淋しくない。食事をするときには誰かとお喋りしたいと思いますが、慣れてしまうと何でもなくなります。それよりも、好きな場所で、好きなだけ時間を過ごしたい。わがままが許される、それがひとり旅の醍醐味です。ミラノからパリへ発つ朝。ホテルでチェックアウトするときに日本人の素敵なご夫婦と一緒になりました。「おはようございます」と、ご挨拶を。お二人とも洗練されていて、奥様は可愛らしさとゴージャス感をお持ちでした。そんなお二人と空港の搭乗口で、また出会います。「一緒の飛行機だったのですね」と、そんな言葉を交わしました。パリに到着し、バゲージクレームで荷物が出てくるのを待っているとき、「空港に車を置いてあるので、一緒に市内まで行きませんか?」とお二人から声をかけていただき、ご一緒することになりました。ご主人はヨーロッパのブランドと日本を繋ぐ仕事をされているとのこと。旅に出ると、ホテルでは別々の部屋に泊まり、それぞれの時間を独立して過ごすのだそうです。ご主人は昼間は仕事、奥様は買い物をしたり美術館へ行ったり。そして夕食のときに、その日あったことをお互いにシェアする。そして、素敵なところがあれば、後日一緒に訪れる。この旅のスタイルはいい距離感を保つことができ、それぞれの過ごし方を楽しめるのだそうです。まさに大人の旅です。ふたり旅の中で、それぞれが思うように過ごす。そしてその時間で感じたことを分かち合う。この頃、私はまだ20代の後半でしたが、こんなパートナーシップに憧れ、素敵な大人になりたいと思ったことをよく覚えています。旅で出会うもの。それは見たこともない自然、文化、もの、人々、ライフスタイル、そして憧れにも出会います。憧れは、成長するエネルギー。生活を豊かに彩り、審美眼を高めます。今でもときどき、無性にひとり旅をしたくなります。それも海外へ。解放感と孤独感は、創造の源になり、憧れは日常の生活の中に息づくのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年06月06日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。6月は傘の月6月11日は暦の上では『入梅』、そして『傘の日』でもあります。日本人が雨傘を持つ平均日数は、1年に90日だそうです。平均4日に一度の勘定になりますが、梅雨時はほぼ毎日ですね。ところであなたはその雨傘を、何本お持ちでしょうか? アンケート調査では1人当たり1~3本が52%、4~6本が40%、7~10本が8%だったそうです。当方は4本、自宅に2本、車に1本、会社に1本の4本でしたが、また増えて5本になりました。当方が若かりしは、傘は当然1本でした。1人1本の時代がウソのようですね。昔は、傘といえば、蝙蝠(こうもり)傘(がさ)と言っていました。開いた形が鳥のコウモリに似ているから…。その語源もご存知の方はもう少ないかもと…。その頃の洋傘は、みんな黒色でしたから、雨の歩道を歩く人の傘の列は黒一色でした。それが今は、色とりどりの傘の列です。透明なビニール傘が男性には多いものの、女性の傘は華やかな赤や黄色、緑やクリーム色など、それにカラフルなデザインものもあり、暗めの雨の街が、パッと明るくなったような感じがします。雨の日は、お気に入りのカラフルな傘を差されるレディにとって、むしろ弾む1日なのかも知れませんね。日本伝統の和傘「あめあめ ふれふれ かあさんが じゃのめで おむかえ うれしいな」という有名な童謡がありますが、蛇の目というのは和傘のことです。もしご存知でない方は、和食の料理店か旅館に行けば置いてあると思いますので、一度は差してみて下さい。蛇の目の魅力、和傘の感触が日本人なら忘れられなくなるかも知れませんよ。<2021年6月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年06月04日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。『整えること』から未来が見える家の中で、仕事部屋の引越しをしました。これが、とてもとても大変。これまでの作品たち、CD、本、掲載誌、そして資料……そこに娘の作文や連絡ノートなどが混在し、まさにカオス。なぜこんなものをとっておいたのだろう……というものから、なんでこんな大切なものをこんなところに!というものまで。なんだ、ここにあったのか……と安堵したこと、若い頃の書き物を読み返して速攻で破棄したものまで、それは自分が歩んできた道を辿るような片付けでした。カオスの中から、デビューした頃のアーティスト写真を見つけました。今と同じボブスタイルの髪、少し上目遣いで写っているモノクロの写真。何枚かあったと記憶していたのですが1枚、本の間から出てきました。25歳の自分の未来は、すっかり私の過去になりました。実は、しばらく前からこの写真を探していたのです。なぜだかわからないのですが、未来を知らない自分に会ってみたくなった……というのでしょうか。たくさんの歌詞を書き、小説やエッセイを書き、よくひとりで旅をしたもの。時に悩んで、落ち込んで、でも立ち上がることを諦めずに。いいとか悪いではなく、今の自分にとって何が最善なのだろうかと模索しながら生きた未来が、そのモノクロの写真の中にあるのです。これからの自分への勇気づけでしょうか。いま、この瞬間の自分の中にも、これからの未来があることを確認するために。25歳、作詞家デビューした頃。素敵な未来しか思い描けなかった頃です。ものを整理する。自分のいる場所を整えるというのは、心を整えていくことでもあります。本当に必要なもの、心が湧き立つものはなんなのか。執着していたモノと共に、心の執着を手放す。ものを減らしていくことは、本当に必要なもの、大切なものを知ることでもあります。自分が亡き後を考えると、ミニマリストであることが望ましいかもしれません。自分自身にとっても、残された人たちにとっても。今回仕事部屋を整え、ごっそりと不要な書類や本などを処分して思ったのは、自分が心地いいと思う空間に身を置くことの大切さ、そして自分が好きなものと共にあることの楽しさです。心地よく、楽しんで、自分を生かしながらこれからの未来を創っていく。本の間から出てきた『25歳の私』は、示してくれました。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年05月30日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。喜ばせ上手、喜び上手もしもこの世界にたったひとりきりだとしたら。その世界には必要とするもの以上の豊かさがあり、誰にも束縛されない自由があるとしたら……。ありえない仮定ですが、極端に考えることで改めて気づくことがあります。どんなに豊かで自由であっても、人はひとりでは生きていけません。決して豊かでなくても、わかちあえる人がいて、ささやかなことも喜び合える人と共にいられること、プレゼントをする人がいるというのは、本当に幸せなことです。その人を喜ばせたい。誕生日やクリスマス、記念日だけでなく、ちょっとしたお礼のものを選ぶときも、どんなものが喜んでもらえるか考えます。喜んでもらいたい……これは『愛』だと思うのです。喜ばせたいという思い。相手のことを思い、何かを差し出す。プレゼントもうれしいですが、その思いがさらにうれしいものです。サプライズも、喜びと驚きが倍増します。2年前、夫が還暦にお祝いに何を贈ろうかといろいろ考えました。記念になるもの……それは形のあるものでなくてもいいのではないか。二人で食事に行くという設定で、実はレストランには夫の親しい友人たちに内緒で集まってもらいました。山口県の徳山から、神戸から、名古屋、福井から、東京の忙しく仕事をしている友人たちも集まってくれました。当日出席できなかった友人たちのメッセージのスライドショー。夫のこれまでの歩みをまとめたスライドショー。その夜鍋仕事は、とても楽しかった。夫に喜んでもらいたくてやっていたのですが、実は私も大いに楽しみました。サプライズやプレゼントが愛だとしたら、与えている私も愛を受け取っていたのでした。つまり、「与える」ということは、「与えられる」こと。また「与えられている」から、「与える」ことができるのです。「自分が蒔いた種は自分が刈り取る」という言葉があります。ネガティブな意味で語られることが多い言葉ですが、逆もまた真なり、良い種を蒔けば良いものが実るのです。相手を褒めることも、ユーモアで人を和ませるのも愛です。ささやかな心遣いも、ちょっとした親切も愛です。そう考えていくと、愛は私たちの日常の中に散りばめられている。気づかないうちに、言葉にしないうちに、やっていることなんですね。喜ばせ上手、喜び上手になりましょう。喜ばせることも、喜ぶことも愛です。それは私たちの中でくるくるとめぐり、社会全体をふわりと優しくするでしょう。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年05月23日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。ライラックの香り当方がまだ若い頃、5月の後半、札幌に、講演会で出掛けたことがありました。仕事が終った帰り道、札幌の町を歩いている時に、何ともいえない良い香りが漂って来ました。係の人に尋ねますと『ライラック・リラ』ですと教えて下さいました。『ライラック』はこんなにいい匂いがするものかと、垣根越しに咲いているその花をしっかり見ました。花は小花で掌(たなごころ)の大きさで赤紫と白とが群れて咲いていました。ホントにいい香りでした。札幌大通公園のライラックそれで、その花よりも、その匂いの方が忘れられなくて、東京に戻ってからそのライラックの白を1本、拙宅に植えました。もうそれからウン十年、今、いい香りで咲いています。ところで、フランスでは、ライラックは『リラ』と呼ばれ、シャンソンのタイトルにもなっています。宝塚歌劇団でお馴染の『すみれの花咲く頃』、あの元歌はシャンソンの『白いリラの咲く頃』と言って、この曲が流行っていた当時、パリを訪れた宝塚の演出家が、日本に持ち帰り、公演の劇中歌として用いました。でもその際、リラは日本人には馴染がない、ということで『スミレ』に差し替えたそうです。兎に角、このライラックは素敵な香りが人気で世界中で香水やヘアケア商品に重宝されています。ライラックの花この花は、日本でも北海道や東北でもよく見られますが、札幌では、毎年この5月、『ライラックまつり』が開かれ、約400本のライラックを楽しめるそうです。札幌の友人は「その時季は、結構冷える日がある、そんな日を『リラ冷え』と言う」と教えてくれました。香り1番、ライラックの小話でした。<2021年5月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年05月18日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。そこは坂道だった〜小さな発見の大きな気づき駅前の銀行に行こうと、信号待ちをしている時のことでした。その小さな交差点は5叉路になっていて、横断歩道から続く道は狭い道です。郵便局がその先にあるので、これまで何度となく歩いた道でした。信号が変わるのを待っているとき、ハッと気づいたのです。目の前の狭い道は、緩やかな坂道でした。緩やかなので気づかなかったとは言え、この交差点で何度も信号待ちをしています。この街に住んで30年、そこが坂道だったことにも驚きましたが、今になって気づいたことに驚きました。「人間ならば誰にでも、現実の全てが見えるわけではない。多くの人たちは、見たいと欲する現実しか見ていない」ユリウス・カエサルの言葉です。人間の脳は、いま興味のあるもの、意識していることしか見えないようにできている。つまり、見たくないものは視界に入らないようにできているそうです。例えば、お腹が空いていたら食べ物屋さんの看板ばかりが目についてしまうということはないでしょうか。これは実際に目に見えることだけではなく、無意識のうちに避けている問題もあると思います。さて、30年目にして初めて郵便局への狭い道が坂道だと気づいたわけですが、改めて「物事を見る、感じる」ということについて考えさせられました。見ているようで、見落としていることがたくさんある、ということです。カエサルの言葉を気づきのきっかけとするならば、見たくないものの中に大切なことがあるかもしれません。先延ばしにしてしまうことも、必要なことであったりします。これは、『ものの見方』にも通じます。小学校受験の勉強の一つに『四方見』というものがあります。ものを正面から見る。上から見る。斜めから見る。下から見る。それぞれに違う形をしています。日々、私たちが体験することも同じように、自分の立場からだとこう思う。でも相手の立場に立てばどうなのか。自分の人生においての意味はどうなのか。などと様々な角度から眺めてみると、その体験したことの意義が見えてくるのです。自分の可能性を広げる意味でも、見識を広める意味でも、目を転じてみよう。5月の朝の、駅前の交差点での発見は、大きな気づきになりました。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年05月16日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。相撲と柔道私は 相撲や柔道が好きです。その柔道で『平成の三四郎』と呼ばれた背負い投げの古賀稔彦(としひこ)さんが亡くなられました。惚れ惚れする一本背負いで、バルセロナ五輪では、直前に左ひざに大ケガを負いながらも金メダリストに輝いた古賀さん。何度も何度も古賀さんの試合は見ましたが、あの切れ味鋭い背負い投げがいつ出るかと、ワクワクしながら応援したものです。古賀選手のあと、次なる期待の選手は、と言えば、私は『内股』の大野将平選手を挙げます。リオの金メダリスト、世界選手権、優勝3回。井上康生監督のかつての内股と同じように、大野選手の内股も、実に鋭く鮮やかです。170センチ、73キロ。普通の男性と変わらない身体つきなのに、柔道着をつけた時の表情は、ガラリと変った勝負師となります。東京五輪で、その内股を是非見たい!とワクワクして待っております。今度は相撲の話です。横綱鶴竜が引退しました。ご存知モンゴル出身、優勝6回の相撲巧者でした。もう一度、横綱としての土俵入りも含めて、その相撲巧者ぶりを見たかったのですが、残念です。横綱白鵬、日馬(ハルマ)富士、鶴竜、稀勢の里、四横綱時代が懐かしいですね…。ところで、相撲は『国技』と言われますので、角界ファンは、日本人横綱の誕生を待ち望んでいるのですが、あなたの期待する新横綱は誰でしょうか?大関貴景勝か、正代か、朝乃山か、はたまた先場所優勝し勢いに乗る新大関照ノ富士か…。新横綱が誕生するかも知れない五月場所が 大変楽しみであります。<2021年5月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年05月06日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。無理せず、自分に優しく「好きなこと」を気づくと、多くのことを求めていない自分がいます。「気づくと……」というと唐突ですが、あるときふっと思ったのです。こんなことも、あんなことも……とアイディアをめぐらせていた自分はどこへ行ったのか。制限が多くなっているこの状況の影響なのか。今はできるだけ心地のいい環境に身を置こうと努めている自分がいました。つまりそれは、心のざわつきから自分を守ることでもあるのです。自分のいる場所を『楽園』にする。家だけでなく、自分がその都度いる場所を『楽園』にする。一年以上続いているコロナ禍は私たちの生活を一変させました。この不自由さの中で自由にできることは何か。それは、まず自分が変わり、自分で環境を変えていくこと。自分のいる場所……仕事場、人間関係、気持ちの持ち方を心地のいい『楽園』にすることです。自分にかかっている負荷を取り除き、ささやかでも楽しめることの中に身を置いてみる。困難なことを抱えている中で『楽しめる環境』を作る。それにはまず家、部屋を整えることから始めます。無理はしない。とても簡単にできることから始めます。たとえば、掃除をして、花を一輪でも飾る。花は美しいだけでなく、生きているエネルギーがあります。花を見て、嫌な気持ちになることはありません。ふっと疲れたときに花に目をやることで、気持ちも目も安らぎます。花を選び、自分で生けるとき、雑念が取り払われます。花と向き合い、花がさらに美しくなるように試行錯誤する。花に寄り添う感覚が生活を活性化させるのです。おいしいものを食べる。これも生活を楽しくする一つです。おいしいものをおいしく。美食をするということではないのです。ささやかな料理でも、好きなお皿にのせて。一手間をかけて。テイクアウトの料理でも、お皿に移し替えるだけで、ご馳走に見えてきます。音楽を聴く、アロマを焚く。きれいな花が咲いている道を選んで散歩する。公園でぼーっとする時間を持つ。美術館に足を運ぶ。好きな音楽を聴く。自分がリラックスできること、楽しめることに集中する。中でも、五感を働かせることは、感性を高める刺激になります。いまの状況を嘆くばかりでなく、新しい楽しみ方を見つける機会に変えていきましょう。とにかく元気でいること。おいしいものをおいしく楽しくいただけること。家族が仲良く、元気でいること。細々でも自分を生かせる仕事をし、いまだからこそ感じることを作品にしていくことに心を向けています。料理やインテリアなどの動画を見て生活に取り入れてみたり。多くのものを求めずとも、人生が少しでも素敵になるアイディアを取り入れていくことで、私のいる場所は『楽園』になりました。無理をせず、自分に優しく。そうすることで、人との関係も優しくなっていくのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年05月02日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。思い出をつくる時間3ヶ月に一度、父の病院の検査、診察に付添います。待ち時間の長い二つの科を受診するので、その日はほぼ1日仕事になることは覚悟です。そんな病院通いの日のお楽しみは、帰りにおいしいものを食べること。外食しづらいこの状況の中、一人暮らしの父の気分転換にもなるようです。これまで何度か病院に付き添い、食事をして帰りました。あるとき、ふと思ったのです。もしかしたら、これは父と過ごせるいい時間なのかもしれない。もしかしたら、かけがえのない時間なのかもしれないと思いました。時間は限られています。お互いに、いつ何があるかわからない。私たちはそんな不確実な時間を生きているということを忘れてしまいます。90歳の父は、おそらく自分に残された時間について切実に考えているでしょう。「ママの七回忌の法要は自分の手でやりたい。十三回忌はできないだろうから」あるときふと漏らした父の言葉に淋しさを感じたと同時に、人生を生ききる矜恃を感じたのです。その矜恃に寄り添うこと。それが90歳の父が安心していられることだと思いました。思い出してみると、母が元気だった頃、母と出かけるたびに『限りある時間』を感じていました。もう30年前ですが、母と上高地へ行き、梓川沿いを歩いたことがあります。その頃母はまだ50代だったか。うれしそうな笑顔の写真を見返してみると、あの時間がかけがえのないものだったことを思います。人生、楽なことばかりでない。次々と困難を乗り越えていくこの人生という流れの中で、ささやかなことにも感動し、うれしく思い、大切にできる時間を過ごせること。そんな思い出たちは、生きていく力の一つなのかもしれません。今月の父の付き添いの帰り、父の大好きなうなぎを食べ、サントリー美術館で開催されている『日本絵画の名品』展を観ました。日頃芸術に触れることのない父は、ゆっくりと、一枚一枚の絵をじっくりと鑑賞していました。その後ろ姿を眺めながら、私と父の時間を思い出が刻んでいくのを感じました。思い出をつくっていく。私も振り返る時間がずいぶん多くなりました。人生という物語、たくさんの思い出で豊かであるように。いま、この一瞬を大切に過ごしていくことです。それが病院の待合室であっても、一枚の絵の前であっても。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年04月25日飾らない自分の言葉で、なんと豊かに表現できる人なのだろう。松井玲奈さんの食にまつわる初のエッセイ集『ひみつのたべもの』は、世代・性別を問わず、多くの人に彼女の魅力を届けるに違いない。本誌で連載した25回分に加え、25本を書き下ろした贅沢な一冊だ。「エッセイを書くことが好きで、連載を持つことは夢のひとつだったので、お話をいただいた時は“あ、実現する”と嬉しかったです。食べ物にまつわる話が大好きなので、私から食に関するエッセイにしたいとお願いしました」幼い頃から現在までの様々な食の思い出。小さい頃の食の思い出から一人暮らしでの自炊、友人との食事、旅先の食べ物、さらに……語る内容のバリエーションの豊かさと、話の広げ方の上手さに驚く。「生きていく上で食は切り離せないものだから、いろんな切り口がある。公開日記みたいな感じで届けることができたら、と思っていました」松井さんは小説執筆ではあえて自分とは異なる人たちを描いている。だがエッセイとなると、まさに自分自身を書くことになる。「小説は自分とは切り離して楽しんでもらいたいと思いますが、それとは別に、長いことブログを書いていて、それも好きだったんです。何かを伝えたい気持ちもあったし、私自身が記憶力がよくないので書き留めておきたいという気持ちもありました。今回はエッセイという形で、自分という人間にもいろんな面があって、こういうことを感じているんだなって、受け取ってもらえたら嬉しいです」というように、松井玲奈という多面体が見えてくる本作。もちろん、料理をする話も多い。白菜餃子やホイル焼きなど、作り方にも簡潔に触れられていて、これなら読者もすぐ真似できる。そのなかで意外なメニューが、「ランチパック」の深煎りピーナッツ味で作ったフレンチトースト。「家にあるもので何が作れるのか考えるのが好きで、これはある日ひらめいたんです。すごく美味しいですよ(笑)。ランチパックは優秀で、中のピーナッツクリームがとろっと溢れ出て、お店の味みたいになる。後で知ったのですが、前にSNSで話題になったらしくて、知っている人は知っていたみたいです」高級食材ではなくランチパックというところに親しみをおぼえるが、コンビニの話題も結構出てくる。「愛知の実家から東京に通ってホテル生活をしている頃、忙しくてコンビニの新商品を見ることしか楽しみがないという、闇が深い時がありました(笑)。これは新しいなとか、これは愛知では売っていないなと確認していました。今でもコンビニに新商品が入る火曜日は楽しみです」『ひみつのたべもの』目玉焼きの食べ方、家族との食事、苦手な食べ物、好きなお店……。幼少期から現在に至るまでの食にまつわるエピソードを素直な言葉で綴り、飾らない人柄と文才がにじみ出るエッセイ集。マガジンハウス1540円まつい・れな芸能界で幅広く活動するなか、2019年に短編集『カモフラージュ』で小説家デビュー。第2作となる連作集『累々』(共に集英社)が今年刊行されたばかり。主演映画『幕が下りたら会いましょう』がこの秋公開予定。ワンピース¥34,100(フィーニー TEL:03・6407・8503)※『anan』2021年4月28日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・山口香穂ヘア&メイク・白石久美子インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2021年04月22日モデルでタレントの井手上漠が21日、東京・護国寺の講談社でフォトエッセイ『井手上漠フォトエッセイ normal?』(発売中 1,430円税込 講談社刊)の刊行記者会見を行った。"可愛すぎるジュノンボーイ"として話題沸騰中の井手上漠が、初めてのフォトエッセイを発売。彼のルーツでもある島根県隠岐諸島にある海士町での撮り下ろし写真はもちろん、エッセイパートでは生い立ちから家族、SNSや性など多岐にわたり自身の言葉で綴っている。初めてのフォトエッセイについて井手上は「オファーを受けた時はうれしかったです。作っている時は不安が大きかったんですが、自分の思っていることや生い立ちを本という形で誰かに伝えることができるというのは楽しみでした。最後の1カ月は中々納得が行かず間に合うのか心配でしたが、皆さんに読んでいただくには完璧に完成したものを読んでいただきたかったので、何度も書き直しました」と4カ月掛けて作り上げたエッセイパートは苦労した様子。続けて、「ジェンターを救える本になって欲しいという思いもありますし、当事者ではない人にも届くエッセイになっています。メディアで喋ったことがないことや深いことまで語っています」と紹介。3割を占める写真のパートは「隠岐の島で撮ったので普段の表情やラフな感じが伝われば。中々出せない表情が奇跡的に撮れたと思います」とアピールし、「(自己採点は)120点です。自分でも何でこんなに素晴らしい物ができたんだろうと思いますし、そのぐらい私の思いが詰まった作品になっています」と自信を見せた。この春から故郷の隠岐諸島を離れ、東京で一人暮らしを始めたという井手上。「楽しいですね。何でも自分でやるというのは楽しいですよ。お洗濯や家事全般も面倒とは思ってないですし、何でも自分でできるのがすごく楽しいです」と笑顔を見せ、「最近は帰ったらソファーでくつろぐのが一番幸せだと思っています。一人になれる時間が家しかないので、ソファーで落ち着くと抜けていく感じがするし、毎日家に帰ったらソファーでくつろぐのがルーティンになっています」と東京生活を楽しんでいるという。また、今後の芸能活動については「これからはお芝居にも挑戦していきたいですね。役は与えられてやるモノだと思っているので、やってみたい役はあまりないですが、自分と真逆の役を演じられたらすごいと思います。与えられた役を精一杯やりたいです」と目を輝かせていた。
2021年04月22日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。爽風の五月日本人に生まれて良かったと思うのは、春夏秋冬の四季があるということです。それぞれの季節ならではの味わいや生活がある訳ですが、私はこの五月が一番好きな季節です。日本人はやはり、桜の四月が一番です! と仰る方が多いのか、それとも、ゆっくり家族で過ごせる夏休み、それとも新年を迎えるお正月休みか… やはりそれなりの楽しみがありますから意見は分かれるでしょうね…。私は花の終ったあと、新芽や新緑が爽風を受けて、色鮮やかに自己表現を始めるこの季節が一番好きなのです。そんな五月の爽やかさが大好きで、当方の結婚式も五月五日に決めました(もうなんと58年も前のことです)。そして40年ほど前、拙宅を新築した際も、完成が五月五日、端午の節句になるようにセッティング致しました。結婚記念日というよりは、完成時に五月の空に泳ぐ『鯉幟』が見たかったのです。ご近所は当時は地主さんが多い町でしたので、広いお宅の庭には、五月に入ると鯉幟の鯉が威勢よく泳いでおりました。やねよりたかい こいのぼりおおきいまごいは おとうさんちいさいひごいは こどもたちおもしろそうに およいでる子供の頃に、唄い覚えた鯉幟の歌を口ずさみながら、自宅完成の喜びを味わいました。今はマンション生活が日常で、町中に竿を立てた鯉幟は見受けられませんが、『鯉幟の唄』も消えてしまっているのでしょうか?竿を立てる鯉幟でなくても、室内用の鯉幟で『端午の節句』を祝っていただけないものか…と こだわりの昭和の男児は願っております。<2021年4月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年04月22日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。苦手なことが夢につながる好きなことを、思う存分楽しめたら……。きっと一人ひとりの人生はもっと輝く。先日、参加している合唱団の発表会で、ソロでイタリア歌曲を歌う体験をしました。この体験は、私にとって40年の年月を超えた夢の実現でした。夢は叶う、叶えようと思って行動すれば叶うということを実感したのです。私は、40年間、歌うことを封印してきました。中学の音楽の試験で失敗し、とんでもない成績を取りました。私は音楽が苦手。絶対に人前で歌わない。15歳の時に、こう決めたのです。作詞という音楽制作の世界にいながら、本当にもどかしい思いをしました。もっとも、その思いも、自分の『思いこみ』に過ぎないのです。恥をかくことから自分を守る『封印』は、心と行動を萎縮させたのでした。何の本で読んだのか、出典は忘れたのですが、「自分の本当の声は、体全体を使う声楽の発声による声である」という文言に出会いまいました。……ということは、私はまだ自分の声に出会っていない。このとき、自分の声に出会いたいと思ったのです。それが6年前。ちょうどそのタイミングで友人がコーラスを始めるということで、合唱団にお誘いいただいたのでした。最初は、それはもう……惨憺たるものです。声は出ない、音域は狭い。声はかすれる。音程は取れない。それでも、声を出すことの楽しさに惹かれました。グループレッスンの前に個人のレッスンを受け6年、やっとやっとお客様の前でひとりで歌うことができたのです。苦手なことほど、実は心からやりたいと思っていること。苦手だと思い込んでいるということは、それができたらどんなに素敵だろう、と思っているのです。私は絵も下手です。絵心がないのか、空間認知がうまくできないのか。でも、絵を描けたら素敵だろうなあと思います。憧れているにもかかわらず、ネガティブに思いこんでしまうことで自分の世界を狭めているのですね。やりたいと思うことをする。楽しいと思うことをする。やったことのないことにチャレンジしてみる。やってみなければわからないことがたくさんある。苦手だと遠ざけていたことが、夢の入口なのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年04月18日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。寄り添うという距離感人はみんな孤独。こんな言葉をよく聞きます。孤独という言葉には、抗うことのできない深い闇がありそうで、受け入れられないと思う人もいるでしょう。孤独とはどういうことか。例えば、自分の肉体的な痛みを、誰とも分かち合うことはできません。どんなに痛くても、わかってもらえないし、わかってあげられない。悲しみも、寂しさも、その人のものです。ひとりで引き受けなければならない。そこに孤独を感じます。私は昨年の夏に右手首を骨折し、プレートを入れる手術をしました。右手を使えるようになりましたが、10ヶ月近く経った今も痛みがあります。それも、ちょっとした手首の角度とか衝撃で、叫びをあげたいくらい、痛いのです。誰にもわかってもらえない痛みを通して、人の痛みに寄り添うことの大切さを学びます。その痛みも悲しみも丸ごとわかることはできないけれど、痛みや悲しみがあることをわかって心を寄せることはできるのです。これが命に関わること、また深い悲しみであれば、その孤独感は想像を超えるでしょう。ひとり息子を病気で亡くした友人がいます。友人を慰める言葉は見つかりません。何を言っても、それは友人の心には届かないからです。ただただ、彼女の涙を受けとめるだけです。悲しみを語る言葉に耳を傾けるだけ。その語る言葉さえ、悲しみの欠片でしかないのです。「神様と約束した時間だったんだね」最愛のパートナーを亡くした友人にそう声をかけたことがあります。彼女は、その言葉に慰められ、そう思えるようになったと後に話してくれました。『神様と約束した時間』……数年前に親友が亡くなったとき、こう思うことで、喪失感を受け入れることができたのです。これは、私が、私の中で作った『物語』です。このように解釈することで、悲しみを癒すことができる。心は、悲しみから守るように、このような『物語』を作るそうです。生きていくために私たちに備わった心の機能なのですね。自分と同じように、誰もが誰とも分かちあえない思いを抱いている。従兄弟が亡くなったときのこと。自分が気づいてあげていればよかったと自分を責めて泣いていた従兄弟のお嫁さんを思わず抱きしめていました。二回しか会ったことがないのですが。抱きしめながら、彼女の悲しみではなく、悲しんでいる彼女をしっかりと感じたのです。寄り添うという距離感。分かちあえないからこそ、その距離感に愛をこめる。そこに優しいつながりができていくのではないかと思うのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年04月11日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。川柳の機知とユーモア毎年春先になると、或る生命保険会社が主催する『サラリーマン川柳コンクール』の優秀作品が紙上で発表され クスリ、ニンマリ とする笑いを提供してくれます。コロナ禍で眉を潜(ひそ)めるニュースや話題が多い中で『健康な笑い』を提供してくれる川柳句作の名手の方々には、本当に敬意を表したいと思っています。さて、今年の世相は、コロナ一辺倒ですから、当然コロナ禍の社会生活や日常生活がテーマとなっています。優秀作の100句は、甲乙つけがたい秀作ばかりですが、その中で当方が思わず笑い、膝を叩いた作品をご紹介したいと思います。①咳き込んで 視線が痛い 電車内(愛飲酒多飲)②会社へは 来るなと上司 行けと妻(なかじ)③「やばいです」それはいいのか 悪いのか(カクト)④何曜日? 在宅勤務で わからなく(小平主計将校)⑤抱き上げた 孫が一言 密ですよ(白いカラス)5月の下旬にベスト10が発表されるそうですが、私好みで選んだ上記の5作品から1句でも入賞してくれると 嬉しいですね。難しい漢字や諺などを使うのではなく、日常用語でサラリと世相を表現する川柳の魅力。並みの言葉の使い手ではありません。年寄りの冷や水と笑われそうですが、少し勉強してみようかな…と思っております。ところで、最近当方が 毎日実感していることですが、それは以前 優秀作品の1つでありました。何だっけ 聞こうとしてたの 何だっけ(老人力)年はとりたくないものですねぇ…。※掲載句は第一生命株式会社様より許諾を頂いています。<2021年4月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年04月08日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。高齢の父を支える言葉「役に立っていたい」90歳でひとり暮らしをしている父の言葉です。朝、5時には目が覚めてしまう父は、6時には私の家に来てカーテンを開け、新聞を取り込み、ゴミの日にはゴミを出してくれます。植木に水をやり、玄関先を掃除して。1日5000歩歩くことを決めているので、散歩がてら私の家、妹の家をまわるのです。6時には起きられないので、滅多に朝いちばんで父に会うことはないのですが、父のルーティンは生存確認。カーテンが空いていないと胸騒ぎがして、すぐに電話をするのです。これも、父の「役に立っていたい」という思いの現れ。冬の寒さが厳しい時期に、無理して朝早く来なくても大丈夫と伝えても、まだ暗いうちにやって来ます。「暖かくして出るから大丈夫」と言って、こちらの心配を受け取ってくれません。「決めたことをやらないと、一気に弱っていく気がする」役に立っていたい。決めたことをする。これが、高齢の父を支えるルールなのです。マンションの小さな庭に畑を作り、夏にはプチトマト、なす、ピーマン、ゴーヤ、オクラなど、秋から冬にかけては水菜、小松菜、ほうれん草など。自分が食べる分だけではなく、私の家、妹二人の家にたくさん分けてもらいます。小さな畑作りも父の楽しみ、生きがい、そして私たちに食べてもらいたいという思いがエネルギーになっているのだと思います。生きているということ。ここにいるということ。これが私、ということ。若い頃に『存在証明としての何か』を求めていたように、年齢を重ねるほどまた『生きている証』を求める。若い頃は外に向けての思いだったのが、高齢になると自分に向けての思いになる。私も、作詞をしたり文章を書いたり外に向けて発信していますが、と同時に自分自身に向けての言葉を綴りたい衝動を覚えることがあります。いつか、肉体的に人の支えなしでは生きられない時が来る。その時であっても、生き方を見せていくことはできるのではないか。どんなふうに老いていくのかわかりません。昔の自己愛の強い、時に無茶苦茶なことをした父の姿が幻のような、優しく穏やかな父を見ながら、一生懸命に自分を支えながら生きることを学ぶのです。あ、父のことをこうして書いていたら、父が来ました。植木の手入れをしてくれるそうです。こんな小さな時間が宝物になり、私のことも支えてくれるのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年04月04日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。旅と料理と日常と〜ぼーっと観る動画なら海外に行くことが、すっかり夢のようになってしまいました。昨年、成田空港に迎えに行くことがあったのですが、ゴーストタウンのようでした。今もその状況はあまり変わらないのではないかと思います。ボードに『欠航』という文字が続いているのを見ると胸が痛みます。そんな中、YouTubeでいろいろな旅をしている人の動画を見つけました。鉄道マニアの男性が寝台列車を紹介する動画。設備やサービスのレポートも何ということはないのですが、ついついぼーっと観てしまいます。船旅愛好家の動画も同じように、ただ目的地へ着くまでの淡々としたレポートを。そこに特別な何かがあるわけではないのですが、寝台列車でどこか行きたくなり、フェリーの旅をしたくなる。なぜか旅心を誘われます。飛行機に乗っているだけの動画もあります。ビジネスクラス、ファーストクラスのレポートだけで、観光案内などはありません。海外のガイド的な動画よりもそこへ向かうまでの動画を観てしまう。自由に動けないこの状況の中、目的地はあまりにも遠く感じます。そこへたどり着くまでの列車、船、飛行機に、旅の『ロマン』を感じるからでしょうか。空港に着いたとき、新幹線に乗ったときのちょっとした高揚感。そんな旅の始まりをわくわく感が、いまの私には心地いいのです。また、淡々と朝のルーティンをこなしている動画や、きちんとした毎日の暮らしを紹介している動画もついつい観てしまいます。登場する女性たちの暮らしぶりは実にシンプルで、流れるように家事をこなし、仕事に出かけていく。自分の暮らしぶりの何と雑なことか!反省しつつ、大いに暮らし方、時間の使い方の参考になります。また料理研究家やレストランシェフの料理動画もよく観ました。面白いことに、このような暮らし方や料理の動画を観た後、家事の手際がよくなるのです。私なりに流れるように動いている。使ったそばから調理道具を洗い、段取りも無駄がなくなっている。やはりイメージが意識の中に取り込まれているからなのでしょう。ぼーっと観ている動画、ポジティブになるのも時間の無駄にしてしまうのも……自分次第です……。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年03月28日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。サクラ、さくら、桜の季節です桜花爛漫の季節です。桜の美しさ、華やかさについては、古今東西、多くの文人墨客(ぼっかく)が表現していますが、この桜の季節になると、当方はいつも、歌聖といわれた西行法師と、明治の小説家、梶井基次郎を思い出します。西行法師は、こよなく桜を愛し有名な和歌「ねがわくは、花の下にて春死なん、そのきさらぎのもち月の頃」と詠んでいます。そして釈迦入滅のその日、「2月16日」、望み通りに亡くなったと言われています。桜花の美しさを死と結びつける西行の和歌、桜には 生と死が共有されるのかもしれませんね。花が散り青葉が出て、晩秋11月には その葉も全て枯れ落ち、茶褐色の木肌のまま越冬し、春の蕾を待つ桜の木、古色蒼然とした老木にさえ見える茶褐色の枝木が、春になると突然の如く、絢爛(けんらん)豪華な花木に変るのです。何故、桜はこんなに美しく人の心をとらえるのか…。明治の小説家、梶井基次郎は、その短編小説で、「桜の木の下には死体が埋っている」。そんな表現さえしています。当方、暗闇で、夜桜の妖艶な美しさを見ると、その表現を思い出すことがあります。桜は咲く時よりも「散り際が美しい」とよく言います。かつての武士は、好んでその表現を使ったようですね。当方は伊豆の山中で、咲き競った満開の山桜が一陣の風に 右から左へハラハラと舞い散って行く光景を、暫く見つめていた事を思い出しますが、それは、何とも例えようがない究極の美しさでありました。桜は国花、国の花です。この季節、まだコロナ禍ではありますが、1人1人が感染に注意しつつ、大いに桜花を愛(め)でて、日本人の喜びや楽しみを共有したいと願っております。<2021年3月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年03月22日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。伊勢丹に香水を「伊勢丹に香水を買いに行きたい」母が脳梗塞で倒れる前、何度もこんなことを言っていました。その頃すでに一人で歩くのが難しく、介護老人ホームでお世話になっていました。耳下腺あたりに悪性リンパ腫ができ、骨を1センチほど切除しました。そのために顔が少し歪んでしまいました。整形手術をしたい。入れ歯を作り直したい。高齢の母が再度手術をするのは負担が大きすぎます。顔のバランスが左右で違ってしまったので、入れ歯を作り直しても合わないのです。本当にかわいそうだったのですが、母の希望を叶えることはできませんでした。一つ一つの願いをあきらめていったのだと思います。そんな母が倒れる前に言い始めたのが「伊勢丹に香水を買いに行きたい」でした。介護老人ホームから伊勢丹まで車で1時間少しかかります。妹も私も忙しく、なかなか時間が取れずにいました。また、母が我がままを言っている感もあり、ああ、またか……と思ってしまったのも正直なところです。伊勢丹で香水を買いたい……そんな本当にささやかな願いを叶えてあげることもできないまま母は脳梗塞で倒れ、2ヶ月後に旅立ってしまいました。なぜ香水だったのか。老いと、不本意であっただろう術後の外見のこと。美しい香りを纏いたかったのかもしれません。小さな個室に残っていたエルメスの香水瓶は、ほとんど空になっていました。この母の願いを思い出すたびに、胸が痛みます。老いていく自分をどう支えるか。老いてみなければわからない心情であり、それぞれに見いだしていくことなのでしょう。それは、一生懸命に生きようとしている姿勢でもあるのです。自分を支えようとしている親の気持ちを尊重すること。香水を買いに行きたがった母が教えてくれました。90歳で一人暮らしをしている父は、毎日5千歩歩くこと、週に2回体操に行くこと、本を読むことを日課にしています。少し前までは1万歩だったのですが、さすがにそれは多すぎます。父は頑ななまでに、このルールを守るのです。冬の極寒の朝6時からでも、暗い中を歩くのです。父は、決めたことをできなくなるのが怖い、と。この思いを尊重することが、高齢の父の人生に寄り添うことだと今は思っています。老いていく自分を支えるために……。それは、「生ききる」ための覚悟なのかもしれません。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年03月21日世の中にあるさまざまな“まっとう”を、ちょっとクスッとしてしまう視点で観察し、レトロでチャーミングな絵と言葉で表現するのが得意な、五月女ケイ子さん。今回久しぶりに、その得意技をふんだんに使った“ネタ本”『乙女のサバイバル手帖』を上梓。この不安定な世の中を明るく楽しく乗り切るための、女性たちの心強いバイブルになる一冊です。全部冗談に見えるかもしれませんが、実は結構“本当”が詰まっています。「実は、16年前…自分で言ってて怖いですが(笑)、に出した、女性が世の中を渡るためのエチケットをまとめた“ネタ本”『淑女のエチケット』があり、それを小学生時代に読んでいたという20代の編集者さんからご連絡をいただき、今回の本を作りました。日常に潜むいろんな問題を、華麗におもしろく乗り越えるエチケットを、真実と冗談を交えて書いた内容だったんですが、今の世の中の感覚で、またそういう本を作りたいとおっしゃっていただいて…」五月女さんがおっしゃるネタ本とは、世の中のさまざまなことを冗談で斬っていく、虚実ないまぜの笑える本のこと。読むとニヤニヤやクスクスが止まらないのが特徴で、’90年代後半から’00年代中頃くらいまで、多数出版されていたのだそう。「そういう本を読んで育った世代なので、個人的に今でもそういう感覚は大好きなのですが、でも社会の雰囲気も時間とともに変わってきて、昔は通じた冗談が、今は通じなくなっているということも、理解しています。なので、最初にお話をもらったときは、『え、今!?大丈夫?』と思ったのは事実です(笑)。でも、そもそも私の絵自体が冗談みたいな作風だし、個展に来てくださった方などの反応を見ていると、温かく受け止めてくださる印象があるので、あえて今、やってみようかと。ただ、出す以上は、内容にも責任を持たなければならない自覚はあるので、冗談のような視点は昔のままで、表現方法はちゃんとアップデートさせたいと思いながら、描き上げました」悩む乙女からの質問に、人生の酸いも甘いも味わい尽くした乙女の先輩であるミロ子さんが答えてくれる、お悩み相談スタイルで展開されるこの本。恋、仕事、暮らし、そして自分に対して、愛と冗談が溢れる回答が満載です。「昔は、同世代の女性に向けて描いていたところがありますが、私自身、娘を育てる母親でもあるので、今は20~30代の女の子たちを応援したい気持ちがどんどん強くなっています。なので今回は、自分より若い女の子を中心に、男性も含め、乙女心を持つ全人類の人生に役立ててもらいたい、と思って描きました。と言いつつ、内容はかなりくだらないんですけどね(笑)。サバイバル手帖と言ってますが、本当にサバイバルに使えるかどうかは…。ただ、悩んだりつらい思いをしたとき、冗談で考えてみると、バカバカしいと思いながらも結構軽やかに乗り越えられたりするんです。40代も半ばを過ぎた今、改めてそう思います」つまらない合コンから逃げ出すための、壁や赤ちょうちんに擬態をする方法や、ゆとりっぽく見られるのを避けるために、首を太くする筋トレを、などなど…。どこまでが本当でどこまでが冗談なのか、玉虫色の世界をニヤニヤ楽しむのが乙な一冊。「全部まやかしだと思うかもしれませんが、例えば首を太くする筋トレの方法は本当ですし、花言葉なんかも実際にあるものなんです。おそらく6割くらいは本当のことが書いてあると思うので(笑)、いざとなっても、結構本当に使えると思います(笑)。コロナが終息し外に出られる日まで、おうちでこれを読み、胆力をつけてください(笑)」『乙女のサバイバル手帖』「部屋が片付けられないときは…」というお悩みへのミロ子先輩からの回答は、“浮袋にできるか”と“再利用できるか”の2つを軸に、断捨離せよというもの。「乙女の豆知識」に記されているズボンを浮袋にする方法は、実際に使えるそう。豆知識のコーナーは、リアルに役立つ内容多し。平凡社1300円そおとめ・けいこイラストレーター、エッセイスト、漫画家。広告や雑誌をはじめ、さまざまなジャンルで活躍中。小誌では、ジャーナリストの堀潤さんと共に、コラム「社会のじかん」を連載中。※『anan』2021年3月17日号より。写真・小笠原真紀(五月女さん)中島慶子(本)インタビュー、文・河野友紀(by anan編集部)
2021年03月16日こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。橋本聖子、五輪パラ組織委員会 会長東京五輪、パラリンピック大会組織委員会、会長に 橋本聖子前五輪、女性活躍担当大臣が就任しました。女性蔑視発言で辞任した森喜朗前会長の後任としてです。橋本新会長は、五輪相も辞職し、所属する自民党も離党しました。そして、しがらみのない透明性を重視し、五輪憲章にもうたわれている男女平等の精神を、スピード感をもって推進すると、その熱意を表明しました。五輪、パラ開催はあと3ヶ月です。減速しているとはいえ、コロナ禍での開催です。それに熱中症も加わります。国民、都民の開催へのモチベーションが下がっていただけに、橋本新会長就任は、改めて、出場選手へも「ヨシ!」という戦う決意をもたらしたのではないでしょうか…。橋本聖子新会長の聖子の名前は、父親が聖火に由来してつけた名前だと聞いています。過去7回、スピードスケートと自転車競技で オリンピックに出場し、スケートでは 銅メダルに輝いている日本で只一人のトップアスリートだけに、これ以上の新鮮味のある人選はないように思われます。菅総理も小池東京都知事も、国と都、一丸となって五輪、パラを成功させたいと、その決意を改めて表明しました。ところで テニスの全豪オープン女子シングルスで 大坂なおみ選手が、4大大会通算4度目の優勝を果たし、その後のインタビューで 次の目標は東京五輪だと話し、大リーグから8年振りにプロ野球の楽天に戻った田中将大選手も、金メダルを取りたいと ハッキリその抱負を述べています。こういった選手の活躍を 間近で見たいものですねぇ…。開幕まであと3ヶ月です。<2021年3月>フリーアナウンサー押阪 忍1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。
2021年03月10日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。旅の始まりに〜豊かさは心の中に羽田から2時間の南の島。レンタカーを借り、さらに南へ走ること2時間。ほぼ一本道の国道を海沿いに走り、さとうきび畑が広がる中を走り、ただただ長閑な風景の中を走っていきます。国道沿いにぽつぽつとカフェがあったり、お土産屋さんがあったり。どのお店も閉まっていたのは、このご時世だけの理由ではないかもしれません。平日だったからか、大型のスーパーマーケットの駐車場も閑散としていました。友人に会うために初めて訪れた島。到着し、荷物が出てくるのを待っているとき、観光案内のビデオの中で青年が歌う島唄に、なぜか懐かしさで胸がいっぱいになりました。遠い郷愁のような。三線の音色に、胸の奥の弦が弾かれるような。不思議な気持ちになりました。3、40分走るとその島の中心地近くに差しかかりました。建物は風雨にさらされ、コンクリートは黒ずみ、壁のタイルも剥げ落ち、人もあまり歩いていない。寂れた感が漂っています。時の流れから置き去りにされてしまったような町。でもそのときふと、(この島に住めるかもしれない)と思ったのです。なぜか、そんな思いが湧き上がりました。そして、住める可能性を考えてみました。何を不足と思うか。究極、そういうことなのではないか。都会で生まれ育ち、何もかもが手に入る、何もかもが便利で、刺激的で、友達もいて、仕事もしやすい。そんな日常を送っている私が、この寂れたような町を中心に抱く島に住めるとは思えない。でも、「何を不足と思うか」と問いかけてみると、この島には豊かに暮らすことに必要なものが十分にあるように思えたのです。ものに溢れ、便利さの中で生活をしている中で、「何を不足に思うか」と考えてみる。携帯を忘れた。Wi-Fiが繋がらない。それだけで気持ちはざわざわします。ただそれだけのことで。私たちは多くの便利さを享受している一方で、許容する心の幅を狭めているのではないか。持っているものに頼り過ぎているのではないか。そんな気がしてなりません。もちろん、それが悪いというのではないのです。豊かであることは素敵なことです。でも、たとえ望んでいるような豊かさでなくても、そこにあるものの中に豊かさを見いだしていく。かたちのあるものにも。かたちのないものにも。そのような感性の柔軟性が、幸せ感につながるのではないでしょうか。町を過ぎ、山道へ。いくつもの長いトンネルと抜け、いくつもの原生林の山道の急なカーブを回りながらたどり着いたのは、初めて会ったのに「お帰り」と言ってくれる人たちの住む小さな町でした。不足どころか、胸からあふれんばかりのぬくもりに包まれた場所でした。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年03月07日2~3か月下痢が続き、ある日便に血が混じるようになる。少し節制すると血便は止まるが1週間もするとまた同じ状態に。今度は節制しても治まらず、そのうち血だけが止まらないように―。『絶望名人カフカの人生論』ほかの著作で知られる頭木弘樹さんの近刊『食べることと出すこと』は、大学時代にかかった難病・潰瘍性大腸炎との日々を記した体験記だ。知らず見過ごしてきた違和感をあぶりだす、病の日々の記録。原因もわからないまま発症したことでの苦悶、点滴をしながら駆け込んだトイレで一歩間に合わず漏らしてしまったときの呆然、ひきこもり生活を強いたコントロールできない便意への恐怖……。完治しないといわれる難病が引き起こすエピソードを並べると読むのをためらう方もいるかもしれないが、淡々とした文体には悲惨なにおいはなく、どこかユーモアさえ感じられるほど。「病気の話は面白く書け、というセオリーがあると聞いたことがありますが、実際の病気は本当に大変で面白くなんか書けません。ただ、心がけたのはできるだけ俯瞰な視点で書こうということです。チャップリンの言葉に『アップだと悲劇、ロングだと喜劇』というのがあるんですが、まさにそれです」たとえば、たった数メートルが間に合わず自宅のキッチンで漏らしてしまったことを書いた文章の見出しは「便の海に立つ」――。ご本人の目線で便の様子やにおいをクローズアップで描くと生々しくて悲惨さが際立つが、引いた視点で、足元にできた便たまりの中で呆然と立ち尽くす男の姿は、どこかおかしみのあるイメージになる。そんな表現の工夫が本書を一種のエンターテインメントに仕上げている。闘病することで初めて体験した身体の知覚(絶食後の味覚、ひさしぶりのシャワーの触感、激やせ後の風圧…)、どんな行為よりも激しく忌避されがちな「便を漏らす」ことに対する考察など読みどころはたくさんあるが、特に印象的なのは「食とコミュニケーション」について。病気で厳しい食事制限を余儀なくされた頭木さんだが、会合などの場で「食べられない」と断っても「ひとくちだけでも」と皿を勧めてくる人々は多く、世間の「共食=良いこと」という固定観念の強さに戸惑ったという。「普通なら、勧められたものはちょっと食べたりはするじゃないですか。だからなかなか気づかないと思いますが、病気だとずっと断らざる得ない。それでもまだ勧めてくる人がいて、初めて、ここまで共食圧力は強いのか、ということがくっきり浮かび上がりました。共食圧力については、健康な読者からも『食べたくないものを勧められるのが嫌だった』とか、『自覚していなかったけれど他人と食べることが苦手だと気付いた』という感想は多かったです」病気を心の問題と決めつける声、不治の病という「解決策がないこと」の存在を認めたがらない態度…。他にも、病を経て頭木さんが感じた違和感はいろいろ。が、他者の“常識”を押し付けられることの息苦しさは決して他人事とは思えない。「たとえば足が悪くなれば地面の凹凸に気付くじゃないですか。でも、その凹凸は足が悪くなる前からそこにあったわけで。それと同じように世の中にあるいろんな生きづらさに病気になったせいで気付いた。実は健康な人にとっても関係ある、そんなことを書きたかったんです」病気を通じて、社会とコミュニケーションについて考えさせられる、刺激的な一冊、ぜひご一読を。『食べることと出すこと』難病で「食べることと出すこと」が普通にできなくなった著者の病気体験エッセイ。病むことで初めて気付いた事柄を、古今の文学の引用文を交えながら綴る。紀伊國屋書店の「キノベス!2021」7位。医学書院2000円かしらぎ・ひろき最近刊は自身も体験した「ひきこもり」を扱った作品のアンソロジー『ひきこもり図書館』(毎日新聞出版)。「本書で反応が大きかった『漏らすこと』のアンソロジーも出したいです」※『anan』2021年3月10日号より。(by anan編集部)
2021年03月03日愛くるしいルックスと抜群のトークセンスで「好きな女性アナウンサー」1位に選ばれた弘中綾香さんの初著書『弘中綾香の純度100%』が発売された。話す職業である弘中さんが「書く」という形を選んだ理由は「自分の言いたいことを100%言い切りたいから」。「SNSじゃ足りないです。精査熟考した長文でないと言い切れた感は感じられなくて。でも最初は公表するつもりもなく湧き上がる思いを自分のためにただ書いていました」エッセイには青春時代のことから働く女性としての現在地まで、飾らない“弘中イズム”が綴られる。「本音すぎて読み返してみると気恥ずかしいです…。だから30年くらい寝かせて『あの頃こうだったな』って懐かしく読み返せたらな」発売日の2月12日は、30歳の誕生日。同書には“人生の先輩”3人との30代をテーマにした対談も。「30代になることには気後れや恐れもあったんです。でも30代、どう生きるべきかを先輩方に伺ってみたら、歳を重ねることは熟す喜びでもあると気づきました。あと30歳は“若い女の子”枠から抜けるタイミング。それもどうなるか楽しみです」「会社員として駆け抜けた」という20代。30代もスピード感をもって変わり続けていくつもりだ。「新しいことに挑戦したいし、同じところにとどまっていたくない。職業や住む国も変えてもいいし、まだこれから何にでもなれる。結婚も、出産も、離婚もあるかも?(笑)」その無限の可能性を感じさせる「なりたかった職業疑似体験」企画(写真は「銀座のママ」体験をする姿)も見応えあり。そして30代の野望はと尋ねると「金髪!」と即答。「ちっちゃくてすみません(笑)。でも落ち着きたくないし、もっと楽しみたいなって思って」好感度は気になりませんか?「全く。当たり障りないことをするなら存在する意味ないです。私は自分が望むことを100%、半端なくやりたいから。…って私、意外と反骨心の塊ですね(笑)」『弘中綾香の純度100%』2019年5月からHanako.tokyoに連載中のコラムを中心に、素顔が垣間見える写真や林真理子さんら「会いたいひと」との対談など、弘中さんのありのままが詰まったフォトエッセイ。マガジンハウス1800円ひろなか・あやか1991年生まれ。テレビ朝日アナウンサー。『激レアさんを連れてきた。』など、同局のバラエティ番組のレギュラー多数。最近はラジオや他局にも活躍の幅を広げている。夢は革命家。※『anan』2021年3月3日号より。インタビュー、文・大澤千穂(by anan編集部)
2021年03月02日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。VS食洗機〜自分を笑うと楽になる食洗機にお皿を並べるとき、なぜか挑戦的になっている自分がいます。「この油汚れは落とせるか?落とせるものなら落としてみよ」もちろん、汚れはさっと水に流してから食洗機に入れます。ご飯茶碗はスポンジで洗ってから。あともう少し頑張れば、普通に洗い終えるくらいでしょうか。でも、少し、食洗機のために汚れを残します。一方夫はほとんど汚れを洗い落としてから食洗機に。食洗機の一つのメリットは、手で洗うよりも少ない水の量で洗えること。それを考えると、夫の洗い方は水の量、労力ともに無駄が多いと思いつつ……甘えてお願いしています(笑)。まったく、意味不明な挑戦です。なぜそんなテンションになるのか自分でも理解不能なのですが、そんな自分の滑稽さを自覚しつつ、毎回挑んでしまいます。ここで大切なのは、自分の滑稽さがわかっている客観性です。日々の中で、私たちの中でさまざまな感情が湧き起こります。胸の奥を風が吹き渡るような寂しさもあれば、弾むような喜びや、あたたかい気持ちがあふれそうになることもあります。そんなとき、しっかりと感情を味わうことが大切だと思うのです。湧き起こる感情をコントロールすることはなかなかできません。コントロールするのなら、しっかりとその感情を味わった後でしょう。そのとき大切なことが客観性です。自分のことを眺めているもうひとりの自分。感情のみならず、自分の行動も眺めてみることです。(なんでこんなことしているのだろう)と自分と距離を取ってみることで、自分を知ることができ、必要があれば軌道修正することもできるのです。食洗機への意味不明な挑戦。本当に滑稽です。そして、自分の滑稽さを笑います。自分のしていることを笑えるのは、困難に陥ったときに大きな助けになります。感情や混乱した状況の渦に巻き込まれずに済むのです。食洗機の例から大きなテーマになりましたが、自分を眺めるという習慣を日常の中に根付かせると、ちょっと生きることが楽になります。さて、食洗機への挑戦。油汚れがピカピカになると「さすが!」と食洗機の勝利を讃えます。そして汚れが残っていたときは敗北感があり……この挑戦によって私が勝利するということはないのであります。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2021年02月28日いつもgrapeをご覧いただき、誠にありがとうございます。この度、grapeではユーザー満足度向上のため、読者アンケートを実施いたします。ぜひ皆様のご意見・ご要望をお聞かせください。アンケートの所要時間は5分程度です。ご協力よろしくお願いいたします。ご回答いただいた方の中から抽選で10名様に、Amazonギフト券3,000円分をプレゼント!当選者の発表は発送をもってかえさせていただきます。アンケートはこちらたくさんのご応募、お待ちしております![文・構成/grape編集部]
2021年02月22日