2015年7月15日 19:00
「男らしさ」に縛られていないと男は弱くて無責任なのか? - 『フレンチアルプスで起きたこと』
自己保身から一転して自己反省の深みにはまり、ダメな自分を受け入れられずに壊れていくトマスの姿を見ていると、そんな男性の本質的な脆弱性を突きつけられているようで、実に居心地が悪い。
しかし、「男(父親)たるもの」「女(母親)たるもの」という性役割規範の暴走は、どちらかがやめれば済むというものではなく、社会の構造や制度が変わらない限り、表裏一体で切り離せない。
本作は、ラストで観客の解釈を試すような「ある事件」が起きて、モヤモヤした不穏な印象を与えたまま幕を閉じる。それは、「トマスが反省して夫婦と家族の絆が修復できれば、それでめでたしなのか?」という疑念を暗示しているように、私には思えた。
ちなみにこの映画、ヒューマントラストシネマ有楽町では、男女ペアなら2,000円で見られる「カップルチャレンジ割引」が実施されているので、勇気ある猛者カップルはぜひ一緒に見てみてほしい。『フレンチアルプスで起きたこと』(7月4日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー)
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(C)Fredrik Wenzel
<著者プロフィール<
福田フクスケ
編集者・フリーライター。