【『恋せぬふたり』感想 第1話】寂しくない人生と我慢はそもそも天秤か・ネタバレあり
それは性的マイノリティではなくても、職場に恋愛感情を一切介入させたくないと思っている人には近似の痛みだからだ。
羽が周囲の無神経な対応に苛立つ言葉もまたリアルだ。
それもまた性的マイノリティならずとも、皆同じ価値観で生きていると無邪気に信じている人相手に言葉が通じない絶望に近似の苛立ちだからだ。
互いの閉塞感と諦めの中で、羽の「どんなセクシュアリティであれ、誰かと一緒にいたい、独りは寂しいという思いはわがままじゃないと思います」という言葉が小さな灯火のように薄暮を照らす。
※写真はイメージ
脚本、演出、演技、全てが丁寧に作られた初回だったが、そのセリフひとつだけでも、今作を最後まで見届ける価値があると思わせる美しい言葉だったと思う。
このドラマの初回を見てから、これまでの人生で「ちょっと面倒くさがりでも自分は普通」だと信じて疑いもしなかったけれども、じゃあ普通って何だろう、その普通の基準点はどこにあるのか、そして、もしもその基準点が存在するとして、自分の位置はどこなんだろうと考え込んだ挙句に、立っている足元がおぼつかなくなった。
見るものの価値観を揺さぶる。きっと、いい作品になると思う。