【『初恋の悪魔』感想7話】ひとさじの想い出を抱いて・ネタバレあり
を持ちかけられても、愛想笑いしながら承諾した物わかりの良すぎる男らしからぬ言動である。
そして鈴之介は「この人に触るな、触るな。触らないでくれ」と毅然とした言葉で悠日を拒み、傷つくもう1人の星砂をひたすらに守ろうとする。
それもまた、他人との関わりを諦めて、常に孤独を良しとして、恋愛は自分の人生にはいらないと割り切っていた男らしからぬ言動である。
それぞれに友情と恋を得て、扉を開いて一歩を踏み出したからこそ、悠日と鈴之介は正面からぶつかりあってしまう。
誰かが何かを失わねば決着のつかない3人の関係に胸がひりひりする。そして今回のラストで見つかる星砂の手紙は、その痛みに呼応するかのようだ。
自身の存在が失われる覚悟とともに、星砂は手紙で悠日に語りかける。
思い出は必要なものだ。でも慎ましくスプーン一杯くらいあればいい。
それはホットドッグからはみ出すキャベツであり、シャツがまくれて見えるヘソであり、キスの直前に鳴るアラームであり、起き抜けに分けあう一杯の水であり、普段の暮らしの中のものだ。
そんな特別でない、等身大の自分を覚えていてほしい。
これは、愛おしい恋人への言葉であり、同時にすべての人の喪失の痛みに寄り添うものだ。