【『VIVANT』感想 最終話】堺雅人と二宮和也、二人の息子たちの鮮やかな交錯
単純なアクションドラマに収まらないそのテイストは、テレビドラマ『半沢直樹』(2013年・2020年)、『下町ロケット』(2015年・2018年)、『ノーサイド・ゲーム』(2019年)といった、日曜劇場で数多の大勝負と金勘定を描いてきた福澤克雄作品らしいダイナミックな味わいだった。
最終話でとりわけ記憶に残るシーンがある。
日本に移送された後ノゴーン・ベキ(役所広司)が脱走し、動揺して問い詰める乃木にノコル(二宮和也)が呟くように言った言葉である。
「憎しみは喜びで消えるほど簡単なことではなかった」と、愛する父が抱えたままの憎悪をノコルは「寂しいことだよ」と評して言う。
彼にとって、それは悲しいことではなくて寂しいことなのである。
失った本当の家族の写真を横目に、自分が義父の憎しみを消せるだけの喜びになりたいと願い続け、それが最後まで叶わなかった青年の孤独な長い年月が透けてみえる言葉である。
血の繋がった実の息子は父の愛を確かめたのち、再びその存在すら認められない闇の組織で生きる道に戻っていく。
日焼けすらかなわぬほどに大切に育てられたもう一人の息子は父と別れ、国を背負う大企業のトップとして陽のあたる道で生きていく。