【音楽通信】第156回目に登場するのは「黒夢」「sads」でも人気を博し、ソロとしても大活躍中で今年デビュー30周年を迎えた、ロック界のカリスマ、清春さん!テレビの歌番組で沢田研二さんら歌手に見入る【音楽通信】vol.1561994年にロックバンド「黒夢」のボーカリストとしてメジャーデビューし、そのオリジナリティあふれるパフォーマンスとメッセージ性の強い楽曲で人気を獲得した、清春さん。1999年には「sads」を結成。翌年にはドラマ『池袋ウエストゲートパーク』の主題歌「忘却の空」が大ヒットし、同曲を収録したアルバム『BABYLON』はオリコン1位を記録するなど大いに話題を呼びました。2003年には、DVDシングル「オーロラ」で清春としてソロデビュー。多くのアーティストからリスペクトを受け続けるなか、デビュー30周年を迎えた清春さんが、2024年3月20日にニューアルバム『ETERNAL』をリリースされたということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――1994年にメジャーデビューしてから、今年デビュー30周年というアニバーサリーイヤーを迎えられましたね。30周年になりました。先日、アパレルブランドを独立してずっとやっている同世代の友人たちとご飯を食べていたら、「すごいっすよ!」と言われましたね。音楽的なことではなく、僕の美学的なスタンスをほめてくれて。大きい事務所に所属せず、ずっと個人オフィスを設けて活動している体制のなかで、30年間、音楽を続けてこられていることが本当にすごいと言われ、気分がよくなって帰ってきました(笑)。――確かにすごいことですよね。そんな清春さんが、まだ小さい頃や学生時代などに音楽にふれた思い出やきっかけはなんだったのですか?テレビの歌番組をよく観ていましたね。『ザ・ベストテン』(TBS系 1978年~1989年)や『ザ・トップテン』(日本テレビ系 1981年~1986年)というチャート式の歌番組があったんです。さらにいろいろな人が登場する『夜のヒットスタジオ』(フジテレビ系 1968年~1990年)も観ていて、僕の世代でいうと、沢田研二さん、西城秀樹さんに見入っていました。もう少し後の時代になるとバンドも出てくるんですが、その当時はまだ歌手の方が主流でしたね。男性歌手もメイクをしていましたし、髪が長くて、衣装も派手という姿を当たり前に受け入れていて。そういった姿も、僕らの世代からしたら違和感はありませんでした。沢田さんや西城さんは、自分が好きな洋楽アーティストをオマージュしてそういったメイクや衣装でやっていたのかもしれませんが、子どもの頃の僕らからすると、スターだからなんだと思っていて。以降は、少しずつ音楽シーンにバンドが出てきて、僕もバンドサウンドを聴くようになっていきました。――では、ご自身で音楽をやろうと思われたのはいつぐらいからに?僕は実家が岐阜県で田舎すぎたので、自分で音楽をやろうだなんてまず思わなくて。でも、高校生のときに社会見学や修学旅行などに行くバスのなかでカラオケをすることになって偶然歌うことになって、まわりからも「歌うまいじゃん!」と。友人から「バンドをやりたいからボーカルやってよ」と言われて、そのときはまだ興味がなかったんですが引き受けて、そこからロックとはなんだろうと勉強していきました。火がついたのは遅かったんです。新作は「ちょっと海外旅行をしているイメージ」――2024年3月20日に4年ぶりのニューアルバム『ETERNAL』をリリースされました。今作は清春さんの新しい姿を見せて聴かせてくださっている印象です。前作のアルバムを出したときは、ツアーでライブを2、3本やったらコロナ禍になって全公演が中止になったので、以降ずっとストリーミングライブを続けていて、そのなかで歌った新曲を集めたアルバムでもあります。そのストリーミングライブでは、まわりがライブハウスを使って配信していたように、僕らもそうしていました。だけど通常のお店も使うようになってくると、ドラムがそぐわなかったり、楽器が制限される場所があったりすることも。あと10年前ぐらいから、ロック的なものに惹かれなくなっていたところもありました。練習スタジオに行くと、バンドはギターアンプとベースアンプとドラムセットが置いてあるのが普通ですが、さんざんバンド活動をやってきたこともあって、いまのソロとしての僕はとっくにバンドではないし、必ずしもその形でやっていく必要はないんじゃないかなと思い始めてきて。そんなことを考えているうちに、今回のアルバムで使っているパーカッションやサックス、チェロといった、よりテクニックを要する楽器を演奏する人たちと知り合いました。その人たちと一緒に歌ってみたら、自分の歌が違ったように聴こえたんです。たとえるなら、ちょっと海外旅行をしているイメージ。現実にはずっと日本にいたんですが、ロックバンドとして音楽を始めた僕が違うテイストを味わうように、今回は海外に行って何年か暮らしていいよ、と言われているイメージの作品になりました。前作はわりとバンドらしい編成だったので、今作では変化を感じられるはずです。――アルバムタイトルの「ETERNAL」には、どのような思いが込められているのでしょうか。簡単に、僕らは永遠だよ、ということではなく。肉体が滅びたら、精神も滅びて、いずれ面影になって風化されるけれど、「この瞬間だけは永遠です」と言いたくて。この歌を聴いている瞬間、ライブをしている瞬間、みなさんが生きている瞬間。明日もあさっても1か月後も1年後も、本当に必ず来るかはわからない、だからこそ、いま意識のあるこの瞬間は永遠なんだよというアルバムです。いま55歳で、30年、音楽活動をやっているけど、あと何年ぐらいできるのかな?と終わり方を考えることも。歌の部分やステージでの振る舞いが、自分でイメージしているものと微妙にずれてきていると感じるときもあるんですよね。ステージに立っている自分と、あとで映像で観たときのイメージが一致していた時期もあったんですが、最近はたまにずれるときもあるなと。ただ、いまはまだ「ここいいじゃん!」と思える瞬間がたまにあって、映像で観てもそれを「永遠だな」と感じます。――その瞬間ごとの積み重ねが、生きるということでもありますよね。そうですね。知人にALSという難病と闘っている武藤将胤くんがいたり、前のアルバムではやまなみ工房という施設の知的障がい者のアーティストの方たちが描いたアートをジャケットにしたり、最近は震災のあった能登半島に支援に行ったり。音楽を作るにあたって、元気な人や健康な人、自由な人たちだけに刺さるのって、よくないと思ったんです。僕は元気なほうですが、明日がないかもしれない人もいるし、家がなくなってしまった人もいるから、いまこの瞬間を大事にしたい。それでいいんじゃないかと思うんですよね。約束もないし、期待もない。いろいろな人が僕のファンでいてくれて曲を聴いてくれているなかで、若い頃は恋愛の歌を書くだけでもよかったのかもしれませんが、いまはそう思う自分もいて。とくに落ち着いたとか、大人になったわけでもなくて、ただ状況が変わってきたという感じですね。自分の生きている状況やスペックに合わせて曲や歌詞を書くようになって、音もより肉感的といいますか、“生きている感じ”が出ればいいなと。アルバムでも、パーカッションがあることで躍動感が出せたりするのはよかったなと思っています。――収録曲の「霧」は、ダウンタウンさんのバラエティ番組『水曜日のダウンタウン』(TBS系 毎週水曜日午後10時)で2週にわたってクローズアップされました。ロックリスナーの方以外の一般層の方からも、反響が大きかったのではないですか。番組で取り上げられるのは3度目なんですよね。これまで取り上げていただいたときは、あっさりとした内容だったんです。それが3回目では長くなっていて。普段はたまに僕がテレビに出ることがあっても、まわりからとくに連絡が来ることはないんですが、今回はしばらく連絡がなかった人も連絡をくれたり、親からも連絡がありました(笑)。「なんで2週もやるのか?」と聞かれて、「知らないけど」って(笑)。――わが家でも家族で『水曜日のダウンタウン』を観ていましたし、家族でカラオケに行ったときに娘と一緒に「霧」を歌いました(笑)。そうやって思いがけないところで、子どもたち世代にも清春さんの歌が届くこともあるなと。そうですね。僕のことを知り得ない世代の人も、番組のおかげで当たり前のように「清春」と言ってくれている方がいるのはよかったです。まぁ番組で今回のような取り上げられ方をしても、何をされても、もうそんなに揺るがないというか。ツアーもそうですが、土台がきちんとしていないと、周年もないですし、その出来事のなかのひとつですね。長くやってきてよかったです。僕に興味を持ってくれた方も、ライブに来てくれたら、また違う印象を持たれることもあると思います。―今年の3月から2025年9月まで、1年間を通して60本もの「清春 debut 30th anniversary year TOUR 天使ノ詩 NEVER END EXTRA」を開催されています。オーストラリアでもツアーをまわられて、さらにはsads、黒夢としてのライブも行うそうですね。今年は30周年なので、僕が今までやってきたことを網羅できるようなツアーになっています。sadsと黒夢としてのライブもわずかにやるんですが、それ以外の部分でも、ファンと僕の間での思い出の場所となっている「この会場でライブをした」というデビューライブの場所だったり、長い時間のなかで思い入れのある場所へ再度行ったり。30年だからできるツアーになっていますね。「長年崇めてくれてありがとう」という気持ち――最後に、今後の抱負をお聞かせください。あまり抱負というものはないのですが、毎年、僕らがやることは一緒なんです。アルバムの話のときに、「ETERNAL」が何をさしているかを話しましたが、なんとなく自分のなかで決めたゴールから逆算して活動しているところがあると思います。それはファンの人たちとも共有していて。つまり僕と一緒に年を重ねていて、それがご自身の人生になっている。その人たちと、これからまたどういう旅をしていこうかなと。もちろんみなさんと一緒に住んでいるわけでもなく、ライブ会場で会うだけなんですが、いまはインターネットもあってつながりやすい時代。昔はライブしか接点がなかったのがよかったものの、いまはアーティスト側のことがわかりすぎる時代ですよね。昔はファンの気持ちを知るには、手紙しかなかったですから。ライブではアンケート用紙があって。音楽雑誌でも、おたよりコーナーとかあったじゃないですか?――ありましたね。私も音楽雑誌の編集者をしていたことがあるので、よくわかります。“清春さんが好きな人と文通をしたいです”みたいなね。そういった超アナログの時代にデビューして、30年経って、なんでも便利な時代になって。だけどファンの人たちと一緒に旅をするうえで、時代は変わっても、メインのところは何も変わらずに終われるんじゃないかなと思っています。僕らの世代のミュージシャンだと、同世代はたとえばHYDEくんとかもそうだと思いますが、ファンの人たちと絶対的にいい距離感がありますからね。崇めてくれるといいますか。最終的には、「長年そんなに崇めてくれてありがとうね」というような終わり方に向かえる気がしていて。だから、今後さらに何をするという明確な展望はないですが、またライブをやったり、アルバムを出したり、やれることをより素敵な方法で残していけたらいいなと思っています。取材後記デビュー30周年を迎えた清春さんがananwebに登場。「黒夢」「sads」、ソロ活動とその時代ごとに異彩を放つ清春さんは、今作でさらにエモーショナルに進化を遂げた音楽を聴かせてくれています。ツアー中のお忙しいなか、柔らかい物腰で、ひとつずつ丁寧にインタビューに応えてくださいました。そんな清春さんのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね!取材、文・かわむらあみり写真・森好弘、石井麻木清春PROFILE1968年10月30日、岐阜県生まれ。A型。1994年、「黒夢」としてメジャーデビュー。独創性あふれるパフォーマンスとメッセージ性の強い楽曲で人気を博すなか、4年間で突然の無期限活動休止を発表。1999年、「sads」を結成。2000年、ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)の主題歌となった「忘却の空」が大ヒットし、同曲を収録したアルバム『BABYLON』はオリコン1位を記録した。2003年、DVDシングル「オーロラ」で清春としてデビュー。2004年、「DAVID BOWIE A REALITY TOUR」大阪公演にオープニングアクトとして出演。2020年、自叙伝『清春』発売。2024年3月20日、ニューアルバム『ETERNAL』をリリース。InformationNew Release『ETERNAL』(収録曲)Disc-1(CD)01. Carnival of spirits02. SAINT03. RUTH04. ETERNAL05. 霧06. SWORD07. ロープ08. Interlude by DURAN09. 砂ノ河10. Interlude by タブゾンビ(SOIL&“PIMP”SESSIONS)&栗原健11. DESERT12. FRAGILE13. Interlude by 栗原健14. 狂おしい時を越えて15. sis16. 鼓動17. ETERNAL (reprise)2024年3月20日発売※収録曲は全形態共通。(通常盤)YCCW-10424(CD)¥3,300(税込)(初回生産限定盤)YCCW-10423/B(CD+Blu-ray)¥8,250(税込)*スリーブケース仕様。Disc-2(Blu-ray)「SAINT」Music Video、「ETERNAL」Music Video、「SAINT」Music Video Making Movie、『The Birthday』@恵比寿ガーデンホール (2022.10.30) 赤の永遠/アモーレ/グレージュ/悲歌/アロン/美学『下劣』@Zepp Shinjuku (2023.04.26) 少年/アモーレ/ガイア/妖艶/MARIA取材、文・かわむらあみり 写真・森好弘、石井麻木
2024年04月23日【音楽通信】第155回目に登場するのは、音楽活動でも俳優活動でも、デビューから約30年の間ずっと第一線で活躍し続けている、及川光博さん!子どもの頃から振り付けしてステージに立っていた【音楽通信】vol.155ミュージシャンとしても、俳優としても、第一線で活躍し続けている、及川光博さん。1996年にアーティストとしてデビューして以降、そのキラキラとした存在感と王子様のような佇まいから、「ミッチー」という愛称とともに人気を博してきました。毎年のアルバムリリースや全国ツアー、さらに1998年には俳優活動をスタート。ドラマや映画などでもその姿を見ない日はないほど、ひっぱりだこなのは周知の通りです。そんな及川さんが、2024年4月24日に20作目となるアルバム『DON’T THINK,POP!!』をリリースされるということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――幼少時は、どのような音楽環境でいらっしゃいましたか。子どもの頃は、アニメや戦隊ヒーローの主題歌を夢中で歌っていましたね。原体験としては、商店街の夏祭りのステージを覚えています。のど自慢大会のような催しがあって、そのステージで子どもながらに、バックダンサーを従えて歌っていました。5、6歳のときから、近所の子どもたちに振り付けをレクチャーしていたんです。――すでにエンターテイナーとしての才能が垣間見えていたんですね。ほめられるのがうれしくて。学芸会でも主役を演じましたね。小学校も高学年になると、『ザ・ベストテン』(TBS系 1978〜1989年)に代表される歌番組を当時はよく観ていて、沢田研二さん、郷ひろみさん、田原俊彦さんといった歌手の方が歌って踊る姿に夢中になりましたから。そして中学からは洋楽が大好きになって、マイケル・ジャクソンやプリンス、ロックバンドの洋楽を聴くようになって、いよいよ自分でもバンド活動を始めました。さらに、中学のときは演劇部だったこともあって、毎年学園祭のステージに立つようになりました。演劇部は高校でも入っていて、大学時代は俳優養成所に通いつつ、バンドざんまいの日々。ライブハウスで歌い小さな舞台にも出演していました。いま54歳なんですが、ほぼ40年間、音楽とお芝居をやっています。――どちらかのジャンルに偏ることなく、当初から表現すること、エンターテインメントがお好きだったのですね。そうです。音楽もお芝居もひっくるめたエンターテインメントをずっと愛し続けています。――1996年5月にシングル「モラリティー」でアーティストとしてデビューされ、1998年4月にはドラマ『WITH LOVE』で俳優活動も開始されました。デビューのきっかけは、アーティストでも役者でも、どちらでもよかったんですよね、いま思えば。チャンスをいただけて、本当にありがたかったです。駆け出しの頃は、よくも悪くも目立つことを意識していましたし、ナルシスティックな、キャラクター性を前面に打ち出すプロデュースをしていました。それで「王子様」のイメージで認知されて、ステージではバラの花を投げたりくわえたり、少女マンガ的な演出をしていましたね。――ではご自身で曲を作りたい、歌いたいと思われて、音楽制作を始めたのはいつ頃に?高校時代から、曲は自分でギターを弾きながら作っていました。80年代後半はバンドブームだったし、ミュージシャンに憧れました。ですが、高校生の頃は洋楽のダンスミュージックを演奏できるほどの技術はなかったんです。大学に入ってからは、ファンクやソウルといった演奏技術を必要とする音楽に目覚めていって。ちょっと自慢になっちゃうんですが、アマチュアバンドコンテストで優勝したこともあって。そんな成功経験も含めて、どんどんプロデビューを意識するようになりました。――アーティストとしても毎年リリースとツアーを欠かさず、俳優としても毎年連続ドラマにご出演されて、歌もお芝居も第一線で続けていらっしゃるのはすごいことですね。本当ですか?まあ、福山雅治さんか僕ぐらいじゃないかな……冗談ですよ(笑)!? どちらも自分の中で当たり前のことになっていますね。肩書きはどうであれ、二足のわらじこそ、私の職業という意識で続けています。――俳優業では、とくに『相棒 Season8』の2代目相棒・神戸尊役や、近年は『半沢直樹』の渡真利忍役といった大ヒットドラマが強く印象に残っている方も多そうです。ありがとうございます。ただ、たとえば『半沢直樹』にしても、最初から大ヒットドラマになるなんて想像もせず参加した作品。その都度、チャンスをいただいたら、欲張らずにコツコツと続けて、信頼と実績を重ねていくだけなんです。どんな仕事でも真摯に向き合っていれば、おのずと結果は出ますし、それが未来につながっていくのだと思っています。――俳優業でいえば、ヴィム・ヴェンダース製作総指揮による及川さんの初主演映画『クローンは故郷をめざす』(2009年公開)も印象深いです。文学的な作品ですよね。監督に熱烈にオファーされて出演したのですが、SFでありながら哲学的な物語でもあり。大変な撮影でしたけども、初主演作で初めて国際映画祭にお呼ばれもして(2006年度のサンダンス・NHK国際映像作家賞も受賞)、僕も印象深いです。新作は「何も考えずに楽しめるポップな作品」――2024年4月24日にアルバム『DON’T THINK,POP!!』をリリースされます。ご多忙のなか、いつごろから制作されていたのですか。アルバムは、昨年の9月頃から約半年の制作期間で作りました。とはいえ制作中も、ドラマ出演や映画の撮影をしていましたから、相当働いていると自負しています(笑)。昨年はアルバムをリリースしなかったので、そろそろ作らねばと。今回は、何も考えずに楽しめるポップな作品にしたいと思いました。やっぱりビート自体が楽しいものですし、ファンクや歌謡曲などいろいろなサウンドがありますが、音楽って本当に楽しい。20枚目のアルバムですが、まだまだ飽きないんですよね。あらためて、デビューできてよかったです。――とてもバイタリティにあふれていらっしゃって、ご多忙でも疲れることはないですか?疲れますよ(笑)。精魂込めて楽曲を作るために長時間集中しますし、レコーディングで歌い続ける体力も気力も限界はある。当然疲れるんですが、創作の高揚感と達成感のほうが大事。生きててよかったと思えるんです。完成した喜びは、かけがえのないもの。たとえば、中学や高校だったら3年で卒業という区切りがありますが、アルバム制作だとそれを作品ごとに味わえるといいますか。このアルバムを主軸としたツアーもあるので、毎年、毎作品ごとに思い出を心に刻んでいけるのが、僕の人生のいいところです。本当にファンの方やまわりのスタッフがいてこそ成立することなのですが、アルバムを出してツアーができるという、生きた証しを毎年発表できることがすごくうれしいですね。――このアルバムのタイトル『DON’T THINK,POP!!』は、一番表現したいことになりますか。そうです。なんか考え込んで内省的になったとて、未来はあまりいい方向に変わらないなと。僕はパリピじゃないので「DON’T THINK」といっても、感覚を研ぎ澄ませようよ、というニュアンスが大きいんです。そしてポップス主体のアルバムなので、弾けようという、ダブルミーニングですね。――アルバムのリード曲「Amazing Love」は、キャッチーでファンクで軽快な楽曲で、大人の恋心を歌っています。どのようなことを意識して歌詞を書かれましたか。これはネガティブからの逆ギレですね。Aメロの歌詞に書いている「もう人間やめたい」という心境から、いかに人生を謳歌するかという歌。恋愛に引っかけて書いていますけれども、自分で何か崇拝の対象、救いとなるものを見つけることが大切だというメッセージも込めていたり、込めていなかったり(笑)。世の中に“推し活”という言葉がありますが、推しの存在が生きる原動力になったり、辛いときの支えになったりしますよね。自分にとっての救いとなることを見つけようと、歌詞にも「救世主 Baby」と書いたのですが、それは世界を救う主ではなく、一人ひとりの毎日の救いのことを歌っています。救いがないと頑張れないじゃないですか。生きづらい世の中で、希望の光を見失わないようにという思いを込めて作りました。――「Amazing Love」では、ご自身初のアニメーションを駆使したミュージックビデオも制作されていますね。そう。“ミッチー”という概念でイラストを描いてもらいまして。3次元の2次元化が初めてなので、すべてお任せで作っていただきました。ツアーグッズにも展開しようと思っているので、ベイベーたち(ファンのみなさんたち)の反響も楽しみですね。――作詞と作曲を手がけていらっしゃる3曲目「敏感・センシビリティー」は小気味いいサウンドで若い世代への応援歌の側面も感じられます。ビートに言葉を乗せるため、英語に聴こえる日本語をちりばめた歌詞になっています。サウンドは、ブラスセクションとリズムセクションが主役。ストレートなファンクですね。サビの歌詞にある「悔やむよりも先に飛べ!」ということをもっとも伝えたい。限られた時間の中で、どう生きたって後悔は残るけど、それでも後悔しないようにいまを生きるべしというメッセージです。――続く4曲目「デジャヴと紫陽花」は、爽やかさとムーディさも感じます。シティポップの要素も入れて、叙情的でポエトリーな1曲になりました。――5曲目「恋の嵐」は恋が始まりそうなワクワク感と勢いのある、ポップで明るい楽曲です。これはアニソンを意識して作った楽曲で、たとえば女子アイドルグループとコラボできないかなとぼんやり考えながら作りました。さらに昭和の歌謡曲に対するリスペクトの思いもところどころに込めつつ。――メロディがどことなく懐かしい感じがしました。そうでしょう?どことなく松田聖子ちゃんぽい感じも入れていて。――6曲目「みず色ワンピース」は、歌詞に「ミッチーのワンマンショーに行くんでしょう?」と、パートナーがミッチーファンで、ジェラシーがありつつも包容力がある男として送り出すという視点の歌詞が面白いです。自分でも歌詞を書いていてニヤニヤしていたと思います(笑)。僕、歌詞を書くときはだいたい手書きで情景をイメージしながら書くので、この曲もニヤけていたかなと。僕のショーに参加するベイベーたちの彼氏の気持ちを初めて書いてみました。なぜかその気持ちを“ミッチー”が歌っているというパラドックス(笑)。僕の歌詞って、1曲まるまる聴かないと、ストーリー展開が読めないものが多いですね。――すべての楽曲において及川さんが作詞されていますし、楽曲作りもされることもありますが、そもそもどのように曲を仕上げているのですか。まずサビのメロディと歌詞を思いつくことが多いですね。お風呂でシャンプーしているときに思いついたりして(笑)、そこからストーリーを展開していく。そんな書き方ですね。ボイスレコーダーに歌って吹き込むとか、そんなハイテクなことはせず、浮かんだメロディや歌詞はギターを弾きながら、ノートやルーズリーフなどに手書きしていくんですよ。――インスピレーションがふっと降りてくるんですね。うん。でも、締め切りがなかったらいつまでもできないかな(笑)。あとは毎日を生きていて感じたことや見た景色、それからよくも悪くもメディアで気になったニュースがミックスされていく。歌詞はなるべくポジティブなワードに変換して、アウトプットするという感覚です。――7曲目「Dream Maker」はアッパーなロックサウンドです。ハードロックに乗せて、男のバカバカしいほどの情熱を歌っています。主人公がダイエットしたり、髪型を変えたり……なんとか女子のハートを射止めようとする恋心ですね。説明するほどの曲じゃないです(笑)。――ははは(笑)。8曲目「神サマお願い」はストレートに平和を歌っていらっしゃいますね。1曲ぐらいはしっかりと伝えようと。いつも人を笑顔にしたくて、歌って踊っているんですけども、この曲は珍しく怒りや嘆きを表現していますね。これはミッチーというよりも、及川光博個人の戦争やいじめに対する思い。ひねりをきかせず、まっすぐに思いを綴りました。――一変して、9曲目「フライドポテト<未来編>」はコミカルで元気になれる歌詞と楽曲です。おまけの曲ですね。気になった方は、前作『気まぐれサーカス』を聴いてみてください。その続編となっています(前作に「フライドポテト」という曲が収録)。基本はとにかく楽しんでいただきたいので、聴いて笑顔になってくれたらいいなと思って作っています。またそれをステージで表現するときは、心の充足感や開放感を感じていただけたらと全力を尽くしています。――収録曲の「Amazing Love」「Dream Maker」は、初回限定盤盤に付属するDVDとして、ダンスの振りを教える「流星光一郎」先生(及川さんが演じるダンサーキャラ)のミュージックビデオもありますね。流星先生は、1997年くらいからいるんですよ(笑)。だから、僕と同じくらいのキャリアで、ベイベーのみなさんも一緒に踊れるよう、振り付けのレクチャーをしています。流星先生は性別を超えたキャラクターで、もともとは確か『パパパパPUFFY』(テレビ朝日系 1997〜2002年)で、PUFFYのふたりに振り付けを教えるコントから生まれました。僕はソロで活動しているので、みなさんを飽きさせないように、いろいろなキャラクターを生み出しているんですよ(笑)。――ずっとアイデアがあふれて、工夫をされてきているのですね。それは俳優業においても感じることがあります。どこかで作り手側の視点を持っているので、演じている被写体ではあるんだけれども、台本を読んでどうしたらもっとこのシーンが面白くなるか、監督の要求に的確に答えられるかを考えて、工夫する。面白いですよ。逆にアーティストとしては、自分が何をやりたいか、どう表現したいかが最優先です。――表現することにおいて、音楽とお芝居の切り替えもさほど意識することはなく?音楽の表現ではわがままですし、主義主張ありきです。ドラマや映画の現場に行ったら、監督やプロデューサーの言うことをよく聞きますね。意識して切り替えるというよりも、役割。おそらく僕は、作品作り自体が好きなんです。ときどき本当に趣味なんだか仕事なんだかわからなくなる瞬間がありますね。――2024年5月3日からは「及川光博 ワンマンショーツアー2024『DON’T THINK, POP!!』」が開催されます。ツアーは毎年欠かしたことがないんです。勤勉でしょう(笑)?楽しいから続けられます。これから演出を考えていきますが、華やかな衣装を着て、よく踊りよくしゃべるステージになると思います。2024年という1年を忘れられないものにすべく、全力を尽くすのみですね。毎年ツアーをして、それがライブ映像作品にもなりますし、デビューして以来、ちゃんと生きている実感が常にあります。うれしいですね。ちなみに毎回、ワンマンショーでのテーマカラーを決めているのですが、2024年はスカイブルーです。ベイベーたちも、毎年のテーマカラーに沿ったコーディネートでおしゃれしてコンサートに来てくれるんです。みなさんもぜひ、水色コーデで遊びにきてください!アーティストとして長く続けることが目標――お話は変わりますが、お休みのときはどんなふうに過ごしていますか。友人と飲んだり食べたりするぐらいです。休みといっても、洗濯したりアニメ鑑賞したりしていると1日はあっという間に終わるので、仕事のために疲れを取るのがメインですね。もしも長期で休みが取れたら、もっと別のこともできるんでしょうけど。結局は、休みの日でもマネージャーから連絡が来ますし、休みではないと(笑)。――そのお忙しいなかでクオリティの高い作品をいつも届けていらっしゃるというのは、やはり基本的にお仕事がお好きなのですね?お好きです(笑)。生みの苦しみや撮影のハードスケジュールなどがあっても、やりきって完成してしまうと、喜びに変わるんです。――及川さんのように生き生きとエネルギッシュに毎日を過ごすために、何かアドバイスをいただけますか。とにかく笑顔を意識することですね。楽しくなくても、口角を上げる。とはいえ、作り笑顔で生きるわけではないですよ。笑顔で人と対することによって風向きは変わりますから。空気が穏やかになり、交渉もしやすくなるんです。不愉快な思いをする確率が減るので、笑顔を心がけることは大事。あとは自分の欠点を意識すると、大きなミスを生まないです。自分の欠点を意識して行動することによって、周囲に迷惑をかけないことが大事。そうすると、必然的に信頼されて、人脈も広がる。結果、生き生きと過ごせるのではないかと思います。――いつもスマートな印象の及川さんですが、健康で過ごすためにライフスタイルで気をつけていることはありますか。糖質の摂りすぎ、ですね。年を重ねるごとに健康を意識しますが、ジムに通ったりもしないので、食事に気をつけるくらいですよ。あとは本当にステージでは2時間から3時間踊っているので、そこである程度鍛えられているんだと思います。――音楽活動は2024年で29年目となり、30周年も間近です。アーティストとして、そして個人的な今後の抱負を最後に教えてください。アーティストとしては、とにかく長く続けることが目標です。これが一番の野望ですね。ずっと音楽には関わっていきたい。そして個人的には、ゆとりを持ちたいです。いつまでたっても中学生みたいなことを考えてバタバタ働いているので、年相応の大人のゆとりを身につけたいな。――どのあたりが大人じゃないんですか?それは……いつまでたっても清濁の濁を呑みこめないところでしょうか。大人なら清濁併せて呑めないといけないのに、50代になっても未熟だな、青臭いなと思います。――そこも魅力なのかもしれないですよね?そう言っていただけるとありがたいんですけども、もうちょっと大人の色気や円熟味を出したい。「渋い」って言われたいですね(笑)。取材後記涼しげな瞳でスタイリッシュな印象のある、及川光博さんがananwebに登場。取材の日はよいお天気だったものの東京に強風が吹いていた日で、ご挨拶してすぐに「風が強かったけど、大丈夫でしたか?」とお気遣いをしてくださる及川さん。なんと紳士的で素敵なミッチー!ジャンルレスにご活躍されているのは、そのお人柄も関係あるのだろうなと思いました。そんな及川さんのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね!取材、文・かわむらあみり及川光博PROFILE1969年10月24日、東京都生まれ。蠍座。B型。1996年にシングル「モラリティー」でアーティストとしてデビュー。独自の音楽性とその個性が注目を集め、1998年にドラマ『WITH LOVE』で俳優活動をスタート。以後、多くのアルバムリリースや毎年全国ツアーを行うとともに、ドラマ、映画、CMなどで活躍し、現在に至る。主な出演作に、ドラマ『白い巨塔』(2004年)、『相棒』シリーズ(2009〜2012年)、『半沢直樹』(2013年・2020年)、『グランメゾン東京』(2019年)、『ドラゴン桜』(2021年)、『最愛』(2021年)、『霊媒探偵・城塚翡翠』(2022年)、『女神の教室 〜リーガル青春白書〜』(2022年)、『御手洗家、炎上する』(2023年)。映画『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』(2015年)、『七つの会議』(2019年)、『引っ越し大名!』(2019年)、『桜のような僕の恋人』(2022年)ほか。2024年4月24日、ニューアルバム『DON’T THINK, POP!!』をリリース。5月3日より全国を巡るワンマンショーツアー2024「DON’T THINK, POP!!」スタート。InformationNew Release『DON’T THINK,POP!!』(収録曲)01. DON’T THINK,POP!!02. Amazing Love03. 敏感・センシビリティー04. デジャヴと紫陽花05. 恋の嵐06. みず色ワンピース07. Dream Maker08. 神サマお願い09. フライドポテト<未来編>2024年4月24日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)VICL-65958(CD)¥3,300(税込)(初回生産限定盤)VIZL-2309(CD+DVD+Photobook)¥5,720(税込)(セブンネットショッピング限定セット)00THN-42213¥9,900(税込)※初回限定盤+特製お弁当箱「DON’T THINK, EAT!!」(セブンネット限定特典:アクリルキーホルダー)【Blu-ray収録内容】※初回限定盤のみAmazing Love[Music Video]/ Let’s DanceAmazing Love / Let’s DanceDream Maker取材、文・かわむらあみり
2024年04月18日【音楽通信】第154回目に登場するのは、平成から令和へと時代を駆け抜け続けている、日本を代表するアイドルグループ「AKB48」から、グループを代表して、柏木由紀さんが登場!楽しくやってきたからこんなに長くいられた柏木由紀(かしわぎゆき)。ニックネームは「ゆきりん」。1991年7月15日、鹿児島県生まれ。AKB48チームBのメンバー。3期生。【音楽通信】vol.154秋元康さんが総合プロデューサーを務め、東京の秋葉原を拠点に2005年から活躍している、AKB48。2006年にメジャー・デビューし、同年末には「NHK紅白歌合戦」に初出場。以降、シングルのミリオンセールスを記録するなど、名実ともに日本を代表するアイドルグループとなったことは周知の通りです。2023年10月の日本武道館公演では、AKB48を初期の頃から支え続け、後進メンバーのみなさんにとっても憧れの存在であるレジェンドアイドルの柏木由紀さんが、グループからの卒業を発表しました。そんなAKB48が2024年3月13日に63枚目のシングル「カラコンウインク」をリリースされるということで、AKB48を代表して、柏木由紀さんにお話をうかがいました。――柏木さんは2007年にAKB48の3期生として加入し、2009年にチームBの初代キャプテンを務め、2010年には派生ユニット「フレンチ・キス」を結成。さらに2013年にソロ歌手デビューも果たされました。AKB48そしてアイドルシーンを牽引されてきましたが、アイドル人生17年間を振り返ってみていかがですか。あっという間でしたね。17年と聞いても長かった感じがしなくて、本当に「え? そんなに経ってたんだ」という感覚です。体感でいうと7年ぐらいですね(笑)。ただ、みんなを引っ張っていったり、先陣を切るようになったのは、ここ2、3年ぐらいのことかなと。加入したときはまだ後輩の立場で先輩もいましたし、それこそ自分がセンターになったこともなかったので、AKBを背負っているとまでは思えていないところもありました。私がいてもいなくてもAKB48は成立するだろうけど、ずっと「いなきゃ困る存在になりたい」と思いながら活動してきて。振り返っても、めちゃくちゃ楽しくやってきたからこそ、こんなに長くいられたのかなと実感しています。――柏木さんは2007年に15歳でAKB48に加入され、現在32歳になられましたね。そもそも音楽と出合ったきっかけやアイドルになろうと思った理由はなんでしょうか。音楽との出合いは、幼稚園の頃でした。通園バスに描かれていたキャラクターが気に入り、自分も乗りたくて、その通園バスを出している音楽幼稚園に通わせてもらうようになりました。そこではピアノなどの楽器や歌を習っていたので、いつも音楽が身近にありましたね。小学校でも部活動で吹奏楽部に入りましたし、音楽がすごく好きだったんです。そして小学生の頃、母にモーニング娘。さんのコンサートに連れていってもらって、そこからハロプロの虜になりました。中学生になると、ハロプロが好きすぎるがゆえに「そっち側(アイドル側)にちょっと行ってみたいな」と思うようになり、さらに当時、同年代の女の子がアイドルとしてテレビに出ているのを観て、ちょっとチャレンジしてみたい気持ちがわいてきて。中学3年生のときにAKB48のオーディションに合格して、アイドルになりました。――あらためてご卒業を決めたのは、いつ頃だったのでしょうか。1年前ぐらいです。AKB48でいろいろなことをやることができた達成感と、思いがけないことにもう一度青春ができたことに十分満足して。いまのAKB48のメンバーとすごく仲良くなれて日々楽しいので、このメンバーたちに卒業を見送ってほしいと思ったんです。もうやり残したことはないですし、みんなに任せられると思ったので、卒業するならいまだと思って、決めました。――今後はAKB48を見守りながら、ご自身はソロ活動をするお考えも?やはり歌うことやステージに立つことはすごく好きなので、AKB48を卒業してからも、ソロとして歌手活動はやっていけたらなと。でも、アーティストになります、というよりも、いまの延長線がいいです。何歳になっても、なるべくアイドルっぽさを残してやっていけたらいいなと、いまの段階では思いますね。最後に単独センター曲で思い残すことなく卒業――2024年3月13日に、柏木さんの卒業シングルとなる63枚目の「カラコンウインク」がリリースされます。表題曲でセンターを飾るのは、小嶋陽菜さんとのWセンターだった2015年発売のシングル以来2度目で、単独のセンターは初とのことですね。そうなんです。センターに関しては、唯一この17年間かなっていなかった夢でした。これまでセンターをやりたいとはハードルが高くてなかなか言えなかったですし、いつかやれたらなあとは思いながらも、無理だろうなとあきらめながら17年間やってきていたので、最後のシングルでまさか単独のセンターをやらせていただけるなんて。しかも、私が加入した当時のAKB48をちょっと思い出させながらも、現代にアップデートしたような楽曲になっているので、最後にこの曲でセンターを務めることができて、本当に思い残すことなく卒業できると思いました。――秋元康さんの歌詞も印象的な片想いの気持ちを綴ったラブソングですが、歌われる際にはどのようなことを意識していますか。まず歌詞について、AKB48の楽曲では一人称が男性目線の「僕」となることが多いんですが、「カラコンウインク」は女の子目線の楽曲という点で珍しいです。また、私がデビューした当時は音楽番組がたくさんありました。そんななかでAKB48の存在を視聴者のかたに覚えてもらいたい、印象を残したい、と自分でいろいろと考えて編み出したのが、番組出演で歌うほんの数秒の中でウインクをすること。秋元先生も、“AKB48の中でウインクといえば柏木”と思ってくださっているようで、そういったことをイメージして歌詞を作っていってくださったのだと思います。そしてカラコンも、いまは男女問わずつけるかたも多くて、身近なものになっていますよね。私も音楽番組やコンサートなど、ここぞというときにカラコンをつけるとテンションが上がるので、そういういまの時代にあった単語も入っています。歌詞の世界観としては、女性が片思いの男性にアピールしたい気持ちが綴られています。恋愛もそうですが、これは私自身AKB48にいて、みなさんに対して思っていたことでもあるんですよ。相手に気づいてほしい、アピールしたいという気持ちは、この歌詞の女の子ともすごく重なる感じがするので、私はそういう気持ちで歌っています。――ミュージックビデオでは、色彩豊かなお花に囲まれながら、花吹雪が舞うなかパフォーマンスをされていますが、振り付けのポイントはありますか。フォーメーションが目まぐるしく変わるので、私を中心に後輩たちがいっぱい動いてくれています。タイトルにもあるウインクがたくさんちりばめられているので、やはりメンバーのウインクがポイントですね。さらに曲の最後に一瞬、手で「yuki」とローマ字で作っていたり、私のYouTubeチャンネル『ゆきりんワールド』でも言っている「寝ても覚めてもゆきりんワールド、夢中にさせちゃうぞ」というキャッチフレーズが振り付けでも入っていたり。これらがポイントですね。――今作には、小栗有以さんや向井地美音さんほか、初の選抜入りを果たした16期生の長友彩海さん、17期研究生の水島美結さん、18期研究生の秋山由奈さん、八木愛月さんらも歌唱メンバーに抜擢されました。後輩メンバーのみなさんはやはり柏木さんの卒業ソングなのでより身が引き締まっているのでは?自分自身を振り返っても、みんな選抜に入りたい気持ちが強いのはすごくわかるんです。入ったメンバーが、私の最後の曲で選抜に初めて入れてうれしい、というようなことを言ってくれるんですが、そういう声をもらえると私も本当にうれしい。でも、みんな気をつかわずに、自分が一番だという気持ちでやってほしいですね。――今作のミュージックビデオでは、お花がたくさん出てきて奇麗ですが、植物園のような場所なのでしょうか。いえ、実はまったく何もない場所にお花を持ち込んでやってくださったセットなんですよ。1月初旬の寒い中、栃木県に行って、2日間に分けて撮影しました。夜中の3時ぐらいに栃木に着いて、5時からメイクして。コンディション的にはあまりよくなかったんですが、最後の撮影だし、センターだしと、むくまないように塩分を抜いたり、朝もう1回シャワーを浴びてシャキッとしていったり。なるべくベストのコンディションで臨めるようにして、あとは寒さとの戦いでした。衣装では足が出ますし、薄着なので中にも着込めなくて本当に寒い中、みんなが私の最後のシングルだからとすごく盛り上げてくれる雰囲気があって。それがとてもありがたかったですね。ミュージックビデオの撮影は、もう何百回もしてきたのに、「ああ、最後なんだな」と感慨深いものになりました。いろいろなかたが良い作品にしようと思ってくれている気持ちが伝わって、本当に幸せでしたね。――シングルの初回限定盤[TYPE-A]には、柏木さんのソロ曲「最後の最後まで」が収録されています。「まさかこんな長くここにいさせてくれて最後の最後までありがとう」など、秋元さんの歌詞は、柏木さんの心情を表しているように感じました。秋元先生にはとくに気持ちを話したわけではないのですが、まさに私が思っている、言葉ではなかなか伝えられないことを歌詞に入れてくれました。いままで先輩が卒業するときに、ソロで卒業ソングをもらって歌っているメンバーをいっぱい見てきて、自分が卒業するときはどうなるんだろう?と思っていたらこの曲をいただいて。この歌詞はほかのメンバーでは歌えないといいますか、長くいたからこその曲をもらえて、すごくうれしいです。ここにいさせてもらったという気持ちが大きいですし、本当にみんなのことが好きで。ファンのかたのことはもちろん、いまのAKB48のメンバーのことも大好きなので、そういう気持ちもちりばめられているんです。最後のコンサートなどで歌うと、きっとジーンとくるんだろうなあと思いますね。――2024年3月16日と3月17日の2日間、「AKB48春コンサート2024 inぴあアリーナMM」が開催されます。1日目は柏木さんの卒業コンサートですし、その後、4月には劇場でも卒業公演が予定されていますね。1日目の卒業コンサートは、ほとんど全部自分でプロデュースしたような内容になります。みんなが好きなAKB48、みんなが好きな柏木由紀みたいなものがテーマ。私がやりたい曲やチャレンジしたい曲ではなく、もうこれは外せないなとか、これは最後に絶対歌っておかないとみたいな曲を選んでいったんですが、もう収まりきれなくて(笑)。やはり17年間のいろんな思い出が楽曲にはあるので、そこから迷いに迷って厳選しました。私が辿ってきたAKB48の歴史が伝わるような内容になっています。2日目は、私は1曲しか出ないんです。卒業コンサートは1日目でも2日目でもどちらでもよかったんですが、10年ぐらい前のAKB48にいたメンバーは私が卒業したら誰もいなくなるので、先に私の卒業コンサートをして、次の日にいまのAKB48を見てもらいたくて、この順番にしました。4月の卒業公演の内容はまだ決まっていませんが、まずは3月のコンサートを頑張りたいですね。みんなが楽しいAKB48を作っていってほしい――お話はかわりますが、普段、おやすみのときはどのようにお過ごしですか。ほとんど寝ていますね(笑)。目覚ましをかけないで寝られるのがすごく幸せなので、午後まで寝ることも。あとは美容室に行ったり、まつげパーマをかけたり、皮膚科に行ったり。1日中外出するようなことは、年に何回かしかないです。休日でも、どうしても仕事につながる動き方をしてしまうので、卒業したらそれを変えたいなと思っています。――ananの美容・ヘルス&ECOサイト「ananBeauty+」では、『ぞっこんビューティライフ』という連載をされていましたね。もともと美容にお詳しいのですか。いえ、20代後半頃から興味を持ち始めました。AKB48は人数が多く、自分でメイクをするので、仕事の延長線でいろいろと調べているうち、いいものがだんだんわかってきて。美容情報を調べることは、けっこう趣味になるレベルで好きだなと感じて、20代後半ぐらいからいろいろと試すようになりました。――最近、お気に入りのコスメはありますか?うーん、ありすぎますね(笑)。いわゆるデパコス、韓国コスメ、ドラッグストアのプチプラなど、全部試して使うんです。だから、お気に入りのものもすぐ変わっちゃいます。いつもSNSをチェックしたり、雑誌を見たり、気になるものをどんどん試していて。普段は一軍のポーチを持ち歩いていて、二軍のコスメは引き出しにいっぱい入っています。毎日、その日の服装とかに合わせてコスメを入れ替えるのもめちゃくちゃ楽しい時間で、すごく好きなんですよね。――ファッションでは、取り入れているコーディネイトなどはあるのでしょうか。いま32歳で、何を着ると一番いいのか、服装が難しくなってきている気がするんです。ただ、コンサバのような奇麗めファッションがずっと好きで着ていたんですが、私服で握手会もするので、もしかしたらファンのかたが求めているような服装に、無意識に自分で寄っていっているのかも…と感じたことがあって。だから最近は、表に出るときはワンピースなどの奇麗で可愛いものをチョイスしますが、普段はデニムにトレーナーやパーカを合わせたりします。両極端のファッションかもしれないですが、どっちも好き。買うときも、心がときめいた服を買うので、ジャンルを決めずにいろいろなテイストの服を着ますね。――ずっとスレンダーな印象の柏木さんですが、ダイエットには無縁ですよね。10年ぐらい前に糖質オフダイエットをしたんですが、その後いっぱい食べてリバウンドした経験があるので、なるべく極端なダイエットはしないようにしています。でも、いまはAKB48の最後で注目してもらえる機会が増えたことで、ボディメイクも頑張りたいなと。それで、いまは小麦を抜いています。とにかく麺類とパンがこの世で一番好きなんですが、体を絞るためにも、好きなものを我慢したら頑張ってる感があるなと思って(笑)。12月からやっていて、卒業までは頑張ろうと。いままでは偏った食生活だったんですが、そうやって意識するようになってからは、お肉も野菜もおいしくなって、バランスのいい食事がとれています。――いろいろなお話をありがとうございました。最後に、柏木さんご自身のこれからの抱負と、AKB48の今後についてもメッセージをお願いします。17年間、人生の半分以上を「AKB48の柏木由紀」として過ごしてきたので、そうではなくなる自分が、実はまだ明確に想像できていないんです。でも、卒業後が楽しみな気持ちも大きいですね。音楽も続けたいですし、いただけるお仕事があったら頑張りたいです。あまり目標は立てず、目の前のことを楽しくやっていったら、気づくと長くやっていたというのが自分に向いてる気がしています。今後も大きい目標を立てずに、仕事もプライベートも毎日楽しくゴキゲンでできたらいいなというのが、個人的な抱負ですね。AKB48については、たとえばどうなるかわからなくてもとりあえずやってみる、何事も元気に一生懸命やるといった昔から続いている精神は、私からも十分みんなに伝えきったかなと。私が卒業した後は、いままでのAKB48はこうだから…などではなく、みんなが楽しいと思えるAKB48をどんどん作っていってほしいですね。取材後記国民的アイドルグループ「AKB48」として第一線で活躍し、“ゆきりん”と呼ばれ年齢や性別問わず幅広く親しまれている柏木由紀さんが、ananwebに登場。取材現場に現れたときから、華やかなオーラをまとい、その場を明るくしてくださる柏木さん。インタビューでもキュートな笑顔を見せ、撮影でカメラマンからウインクをリクエストされると、「楽曲に合わせて動いてないとウインクできなくて」と心苦しそうにされていた姿も印象的でした。そんな柏木さんの卒業ソングでもあるAKB48のニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね!写真・園山友基取材、文・かわむらあみりAKB48PROFILE秋元康さんが総合プロデューサーを務め、「会いに行けるアイドル」をコンセプトに、秋葉原にあるAKB48劇場を拠点として2005年より始動した、AKB48。2006年2月、シングル「桜の花びらたち」でインディーズデビュー。同年10月、シングル「会いたかった」でメジャー・デビュー。「AKB48選抜総選挙」「リクエストアワー」といったファン参加型イベントや、シングルのミリオンセールスを通して、日本を代表するアイドルグループへと成長した。現在、6つのチーム(A・K・B・4・8・研究生)で構成。歌とダンスやトークから構成される劇場公演をはじめ、テレビやラジオ番組、雑誌、イベントに出演するなど多方面で活躍。2023年10月発売のシングル「久しぶりのリップグロス」は、オリコン週間シングルランキングにて47作連続で1位を獲得。「女性アーティストによるシングル連続1位獲得作品数」「女性アーティストによるシングル通算1位獲得作品数」を更新した。AKB48の姉妹グループは、国内に5グループ(SKE48・NMB48・HKT48・NGT48・STU48)、さらに海外に6グループ(JKT48・BNK48・MNL48・AKB48 TeamSH・AKB48 TeamTP・CGM48)と、世界各国で活動している。2024年3月13日、63枚目のシングル「カラコンウインク」をリリース。InformationNew Release「カラコンウインク」(収録曲)01. カラコンウインク/All Stars02. 星が消えないうちに/AKB48 U-20選抜03. ライオンを狙え!/Universe Girls04. カラコンウインク(Instrumental)05. 星が消えないうちに(Instrumental)06. ライオンを狙え!(Instrumental)2024年3月13日発売※全5形態での発売。1曲目と2曲目のみ共通楽曲。※全形態ジャケットビジュアルが異なります。※封入特典:応募抽選シリアルナンバー券封入。(初回限定盤[TYPE-A])UPCH-89562(CD+Blu-ray)¥1,900(税込)※3曲目は「最後の最後まで」柏木由紀、6曲目は同曲のInstrumentalを収録。【Blu-ray】MXまつり AKB48「アイドルなんかじゃなかったら」発売記念コンサート/~古参も新規も大集合!なんでもありのAKBでっせスペシャル~/AKB参上!/初日/どうしても君が好きだ/アイドルなんかじゃなかったら(初回限定盤[TYPE-B])UPCH-89563(CD+Blu-ray)¥1,900(税込)※3曲目は「パパに言えない夜」AKB48 17期研究生、6曲目は同曲のInstrumentalを収録。【Blu-ray】MXまつり AKB48「アイドルなんかじゃなかったら」発売記念コンサート/〜劇場公演曲リクエストアワーセットリストベスト30~/In any way/君は僕を覚えてるかな?/知ったかぶりのその下に/アイドルなんかじゃなかったら(初回限定盤[TYPE-C])UPCH-89564(CD+Blu-ray)¥1,900(税込)※3曲目は「マチビト」AKB48 18期研究生、6曲目は同曲のInstrumentalを収録。【Blu-ray】MXまつり AKB48「アイドルなんかじゃなかったら」発売記念コンサート/〜アイドルになってよかった〜/アイドルなんかじゃなかったら/ラベンダーフィールド/全力反抗期/Do the dance!(通常盤)UPCH-80607(CD)¥1,100(税込)封入特典:オリジナルトレカ1種をランダム封入。(Official Shop盤)PRON-5111(CD)¥1,100(税込)※収録曲は「通常盤」と同じ。AKB48 Official Shop限定商品。※特典:「個別握手会」「オンラインお話し会」参加権利。外付け特典:生写真1種をランダム同梱。写真・園山友基 取材、文・かわむらあみり
2024年03月12日【音楽通信】第153回目に登場するのは、10歳の頃からライブ活動を展開し、SNSでも話題を呼んだシンガー、三阪咲(みさかさき)さん!コンテストで優勝したことで歌手を目指す【音楽通信】vol.153幼少の頃から音楽に親しみ、11歳の頃に歌手を目指すようになって以降、路上ライブやライブハウスなどでも積極的に音楽活動を行なってきた、シンガーの三阪咲さん。路上ライブなどの音楽活動の様子がYouTubeやSNSなどを通じて徐々に広がり、TikTokでは「三阪咲」関連の動画再生数が約6億回と爆発的に視聴され、YouTubeの歌唱動画も関連動画は合計約6000万再生を超えるほど注目を集め、2021年にデビューしました。そんな三阪さんが、2024年2月16日にデジタルシングル「tamerai」を配信リリースされたということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――幼い頃はどのような音楽環境でしたか。父は高校生の頃からバンドをしていましたし、母も音大を卒業していてピアノをやっていたので、音楽が身近な家庭に育ちました。父が車の中でSuperflyさんやコブクロさん、宇多田ヒカルさんなどの曲をよくかけていたため、4歳ぐらいの頃にはそういった曲を覚えて全部フルで歌っていたらしく、自然と音楽が好きになりました。――お母さまの影響で、三阪さんも習い事としてピアノを始めたんですよね。そうです。小学生の頃から、姉と一緒にピアノを習っていました。小学校ではアフタースクールでダンスもやり始めました。そこでは外部からダンスの先生が来て、週に一度何かを習う場になっていて。その後、その先生が別で行なっているダンススクールに誘ってくださって、友達と一緒に通うようになり、ヒップホップやタップダンスを習っていたら、いつの間にかダンスが好きになっていました。――習い事が増えていったのですね。はい。小学校4年生ぐらいで、納戸に眠っていた父のギターを引っ張り出して弾いてみたり。最初は独学で練習していましたが、父から「習いに行ってみたら?」とすすめられてギターを習うようになって。その後、小学校6年生の頃にはドラムにも興味を持ったので、習うようになりました。――音楽的なことにご興味があるというのは、もともと環境が整っていたのも大きかったのでしょうか。私が「やりたい」と言ったことに関して、とても協力的な両親だったので、いろいろなことができましたね。小学生の頃は、親から誕生日プレゼントに毎回違うアーティストのアルバムをもらったりと、音楽に触れる機会がたくさんありました。――歌に興味をお持ちになったのはいつ頃でしょうか。通っていたダンススクールの先生に、ダンスだけではなくボーカルも習うスクールを紹介されて。ボーカルとダンスを一緒にやると半額になると言われ、歌もやるようになりました。そのボーカル&ダンススクールでは、全国の生徒たちが受けるコンテストがあったのですが、出場したら優勝したんです。習い始めてから3か月ぐらいのことだったので、「もしかして才能があるんじゃないかな」と、そこから真剣に歌をやるようになりました。最初は歌の練習ばかりしていたんですが、小学校5年生の頃には「もっとたくさんの人に歌を聴いてもらいたい」と、ライブハウスでのライブにカバー曲を歌って出るようになって。でも、ライブはチケットを買った人じゃないと来られないので、もっと拡散力のあるものをやりたいなと思い、路上ライブを始めて、オリジナル曲も作るようになりました。――そういったご活動の末、2021年11月にデジタルEP「I am ME」でデビューされました。デビュー以前と以降で心境の変化はありましたか。ちょうどコロナ禍でデビューが延期になってしまった経緯がありまして。そうしたこともあり、当時からいまに至るまでメジャーやインディーズというスタイルにはこだわっていません。でも、時期としてはそれが高校生から20歳になったあたりだったので、自分自身の考え方や、ライフスタイルの中で大事にしているもの、聴く音楽などに変化はあったと思います。昭和歌謡のいなたさを大事にした新曲――2024年2月16日にニューシングル「tamerai」を配信リリースされました。昨年の10月ぐらいにはできていた曲なのですが、これまで連続で楽曲をリリースしていたなかで、この曲は連続リリースの最後に持ってこようとあたためていたものです。歌詞については、1週間で仕上げました。――歌詞を書かれる際、どのように形作っていきますか。夏の終わりぐらいに私が昭和の歌謡曲にハマり、そんなテイストの曲を歌おうとなって。デモを聴いた瞬間に「この曲だ」と即決しました。曲が先にあるので、歌詞はどうやって書いていくか決めていなかったんですが、昔の曲はストレートでどこかいなたさ(素朴な印象)があると感じたので、そのいなたさを大事にしたいと思って書き上げていきました。――いつも曲を選んでから、歌詞をご自身で書かれるそうですが、すぐに言葉は浮かんでくるものでしょうか。いや、全然浮かんでこないです(笑)。歌詞を先に書いているわけではないので、曲が先にあると、メロディに合わせて文字数も決められてくるんですよね。いままで書き溜めたものがハマるわけではないので難しいのですが、そのぶん歌詞が完成したときの達成感や愛着はすごいです。――昭和世代だと、この曲のシンセサイザーの響きなども懐かしい感じがすると思いますが、いまの10代や20代の方には新鮮で耳に残るサウンドと歌詞ですよね。ありがとうございます。もともとこの曲のデモのタイトルが「ためらい」でした。その言葉を入れるつもりはなかったんですが、歌詞を書いていると、いろいろと試行錯誤することがけっこうあって。あらためて「ためらい」という言葉を見るとすごくいいなと思い、歌詞の頭に持ってきたら、ストーリーが自然と広がっていきました。恋愛において相手の言葉や仕草ひとつで、ためらうことや躊躇することは多いので、そんな世界観を歌詞にして、昭和っぽいサウンド感で表現しています。――歌唱面について、意識して歌われているところは?いままでは力強く歌うことが多かったんです。でも今回は、歌う前に松田聖子さんをはじめとした昭和歌謡を聴き込んでいたら、柔らかさの中に力強さや意志みたいなものがある歌声をしている方が多いなと気付いて。なので、私もそういったことを意識して歌いました。――いつもそうやって曲には研究してから入っていくのでしょうか。そうですね。歌声も楽器だと思っている部分があるので、曲によって歌声を変えたり、ちょっと癖をつけてみたり。いつもある程度、歌い方の方向性を決めています。今回はとくに現代っぽくないけど現代の曲という、難しい感じもありました。昔の曲は、歌もいまほど修正していませんし、しかもテンポもけっこう個性があって。たとえば松田聖子さんの「赤いスイートピー」は、頭の「春色の汽車に~」のところはオンテンポではなかったりするんですよ。いま聴くとちょっと遅いように思うところもあるんですが、それが逆に、私たちに余白を与えてくれているように思えて。いまはすごくはやいサウンド感で、楽器もぎゅうぎゅうに入っていたりと、完璧さのある曲が主流であるように思いますが、あえてそうではなく、昭和歌謡のようにちょっとルーズな曲のほうが逆に切なく感じるんじゃないかなと。いろいろと意識してレコーディングしました。――2024年3月31日に東京のEX THEATER ROPPONGIでワンマンライブ「SAKI MISAKA ONE MAN LIVE 2024 “一心同体メモリーズ”」を開催されます。どのようなステージに?セットリストも決め終わって、やりたいことはチーム内で話しました。会場となるEX THEATER ROPPONGIは、もともと新型コロナウイルス感染拡大の影響で全公演中止になった、高校2年生のときにまわるはずだったツアーのファイナル予定の場所で。また、その後、無観客ライブと言う形で、初めて立ったステージでもあるんです。だからこそ、いつものライブ会場とはまた違う、悔しい思い出がたくさんある場所。今回“一心同体メモリーズ”というタイトルにしたのは、これまでライブができなかったり、無観客だったりしましたが、ここでようやくファンのみなさんと一心同体となって、良い思い出を共有したいという思いからなんです。音楽が好きというパッションで取り組んでいく――お話は変わりますが、音楽活動以外のときは、どんなふうに過ごしていますか?以前、趣味と特技はお菓子作りとおっしゃっていましたが、最近は何を作りましたか。バレンタインにチョコを作りました。お世話になっているスタッフの方に渡そうと思っていたのですが、結局、持ってくるのを忘れてしまい、そのままになりましたが(笑)。最近引っ越して、家にいることが大好きになって、料理も毎日していますね。あとは、こねるところからパン作りもしていて。小学校の頃に料理教室とパン教室に通っていたぐらいパン作りが好きなんです。――小学生のときは、楽器もダンスも習って、さらに料理教室とパン教室にも通ってと、アクティブですね!振り返ってみれば、アクティブな小学生ですね(笑)。――得意料理はなんでしょうか?私は基本、和食しか作らないんです。肉じゃがが得意ですね。――和食はヘルシーな印象ですが、健康面も意識しているのでしょうか。ダイエットなど気をつけていることはありますか。ダイエットといえば、昨年の夏、5キロぐらい体重を落としました。その頃は食事や運動にすごく気をつけていて、毎日、朝昼晩の食事内容をアプリに記録して1日の摂取カロリーを計算していたこともあります。さらになわとびなどの運動もして、トレーニングの先生にも見てもらって。一度5キロ落とすと、以降はそこまで増えなくなったので、いまはあまり気にしていませんが、「いつまでに何キロ落とす」など、目標を掲げるのは大事だと思います。でも私の場合、食事を減らしすぎると筋力が落ちるようで、そうならないためにトレーナーさんと一緒にダイエットしていました。――ではファッションでは何か普段意識して取り入れているものはあるのでしょうか。ファッションのメインになるのは、だいたい靴ですね。あとは帽子。上と下の色合いをそろえたりはしています。サッカーのプレミアリーグが好きで、イングランドの好きなチームのニットをかぶったり、マフラーをしたり。そういう感じでコーディネートを組んで楽しんでいます。――いろいろなお話をありがとうございました。最後に、アーティストとしての今後の抱負を教えてください。ひとまず3月31日のワンマンライブを成功させたいです。このライブは私の中でのひとつの区切りでもあり、大事なステージになるので、そこをめがけて頑張りたい。さらに、今年は音楽に対して、ポジティブな気持ちを大事にしたいですね。10歳の頃からライブをしているので、知らない間に、音楽が好きということよりも「やらなきゃいけない」という思いが上回る瞬間があって。そうではなく、純粋に音楽が好きというパッションで取り組んでいきたいですね。取材後記幅広い楽曲を歌いこなしパワフルな歌声を聴かせてくれる、シンガーの三阪咲さんがananwebに登場。小さな頃から音楽に触れる環境で育ち、さらに現在はお菓子作りもお料理も得意だという、魅力にあふれた三阪さんは快活にインタビューに応えてくださいました。そんな三阪さんのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみり三阪咲PROFILE2003年4月23日、大阪府生まれ。SNSをきっかけに注目を集め、高校サッカーのテーマソングや、恋愛リアリティーショーのテーマソングを担当するなど、Z世代や若年層を中心に注目を集める女性シンガー。2021年11月、デビューEP「I am ME」を配信リリース。2022年3月、高校生最後のライブ「Saki Misaka LJK GRADUATION LIVE ~夢のZeppで卒業式するってよ~」を神奈川・KT Zepp YOKOHAMAにて開催。2024年2月16日、デジタルシングル「tamerai」配信リリース。3月31日、東京・EX THEATER ROPPONGIにてワンマンライブ「SAKI MISAKA ONE MAN LIVE 2024 “一心同体メモリーズ”」を開催。InformationNew Release「tamerai」2024年2月16日配信リリース取材、文・かわむらあみり
2024年02月28日【音楽通信】第151回目に登場するのは、TikTokに投稿した楽曲が大バズりし、音楽シーンに彗星の如く現れた20歳のシンガーソングライター、なとりさん!高校卒業間際から音楽活動をスタート【音楽通信】vol.1512021年5月から音楽活動をスタートした、現在20歳のシンガーソングライター、なとりさん。エレクトロミュージックから和楽器、バンドサウンドまで取り入れた楽曲を、独自の艶やかなウィスパーボイスで歌っています。2022年5月に投稿した楽曲「Overdose」はTikTokでの関連動画が約500,000個、総再生回数は20億回を超える大反響。Billboardのストリーミングソングチャートでは、歴代6位タイの速さで1億回突破を達成し、国外まで知名度を広げました。さらに今年、Adoさんが「Overdose」をカバーしたYouTubeも話題に。素顔を明かしていないため、なとりさんの音世界を表現するイラストがキービジュアルとなっているミステリアスなところも、惹きつけられる要素のひとつです。そんななとりさんが、2023年12月20日に、1stアルバム『劇場』をリリースされたということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――小さい頃に音楽に出会ったきっかけや、よく聴いていた音楽から教えてください。物心が付く前から、ひとまわり上の姉がORANGE RANGEが大好きで、家でずっと曲をかけていたことを覚えています。母も音楽が好きで、アカペラグループに入って歌っていたこともあって、ゴスペラーズをよく聴いていました。姉や母の好きな音楽が、僕の音楽的なルーツとなっているといえそうです。音楽を始める前、いまのネット発の音楽の入り口は、米津玄師さんでした。米津さんから影響を受け、いろいろな音楽を聴いていくようになりました。その後、高校2年生の時に、キタニタツヤさんの音楽を聴くようになって。きっと僕の曲の中にも無意識のうちにそのエッセンスが入っているだろうなと思うほど、キタニさんの曲を聴き込みました。そしてキタニさんの音楽に出会ったことで、音楽を始めました。――キタニさんの影響で、現在のようにご自身で作詞作曲されるようになったのですか。もともと「音楽がしたい」と思うようになったときに、キタニさんのYouTubeを観ていたんです。パソコンの画面を映しながら、打ち込み、DTMで作曲をするというライブ配信があり、スマホでも作曲ができることを知って。それが高校卒業間際ぐらいの時期だったので、そこから自分でも曲を作るようになりました。――とくに楽器に触れる機会はなく、最初から打ち込みでの曲作りとなったのですね?そうです。中学2年生ぐらいのときに、母親がギターを始めたこともあり、僕も褒められたいがために始めたことがあって。そのタイミングで米津さんの音楽を聴いていたので「この曲を弾いてみたい」と思って弾いたこともありましたね。――活動開始から1年後にTikTokに投稿された「Overdose」が大反響を呼び、大きな手応えを感じたのではないかと思うのですが、いつ頃から将来は音楽の道でやっていく、と決意されましたか。実は活動開始のときに、僕は就職していました。働きながら好きな音楽をやって、「ちょっと売れればいいな」ぐらいに思っていて。そのぐらいのテンションで投稿した曲がバズり、急にいろいろなところから反響がきたため、自信を持つよりも、むしろ自信をなくしてしまったんです。「僕は音楽的な下積みがないのに、こんなにすごいところにいていいのか」と。音楽を作るモチベーションが下がるきっかけにもなって、これだけ反響のある曲をこれから作り続けないといけないのか、とものすごく怖くなって悩むようになりました。ただ、活動を始めて1か月ぐらいで、運良く反響をもらった曲があって。そのときにいくつかのメジャーレーベルの方からお声をかけてもらったことがきっかけとなって、今年の3月に「フライデーナイト」という曲をソニーから配信しました。この曲は、SpotifyブランドCMソングにも起用していただいたのですが、初めてのCM曲だったので「めっちゃ仕事してる~!」という感覚にもなりました(笑)。――「フライデー・ナイト」のミュージックビデオは、現在700万再生となっていますし、なとりさんの勢いを感じます。とはいえ、音楽活動でやっていくとなると大変なことも。当時、ご家族やまわりの方から何か反応はありましたか。最初はとても心配されましたね。家族に「『Overdose』がバズってる」という言い方をしても、「なんかちょっと聴いてもらえたんだね」というぐらいの反応でした(苦笑)。その後、本当に「Overdose」を配信することになって、家族からようやく認めてもらえましたが、ずっと音楽を仕事として続けていけるかはわからないからいろいろ考えてね、とも言われて。理解されるまではしんどかったですが、音楽活動一本でいきたいと押し切りました。1stアルバムは「つくづく良い作品になった」――2023年12月20日に1stアルバム『劇場』をリリースされましたが、仕上がってみていかがでしょうか。自分を褒めるようで気恥ずかしいのですが、よく頑張ったなあって(笑)。つくづく良い作品になったな、と心の底から感じていますね。ほかに今年の思い出がないぐらい、ずっとアルバムの作品作りに没頭していました。僕のこの1年の音楽がたくさん詰まっている作品なので、たくさん聴いていただきたいですし、ヒットしてほしいと思っています。――タイトル曲の1曲目「劇場」に込めた想いから教えてください。この曲は「Overdose」がバズる前に作ったので、まだ僕の曲がほとんど聴かれていない時期だったんです。ちょうど仕事でも上司に腹が立っていて、私生活もうまくいかなくてものすごく悩んでいた時期に、デモとして作った曲。本当に僕のもっともパーソナルな闇の部分を凝縮して作った曲なんですよ。“闇を書く”というのは、「なとり」という音楽の中で、すごく大事にしている部分でもあって。その一番濃いものをたくさん聴いてほしいと思ったんです。さらにアルバムを作るとなったときに、「劇場」というタイトルはひとつの作品としてまとまりがいい。なので、これを1曲目に選ぶことで、これから「なとり」の劇場が始まるよ、という意味合いも込めています。――先ほどもお話を聞いた3曲目「Overdose」は、ご自身にとってどんな存在でしょうか。まったく僕の曲を聴いてもらえていない時期に、自分のやりたい曲はいったん置いておいて、まずは入り口になる曲がないといつまでも聴いてもらえないと考えました。そこで、自分のやりたいことを無視して、当時一番TikTokで受けている層に対してアプローチした楽曲が「Overdose」です。自分の中でトレンドを分析し、出てきた4つのキーワードを全部踏襲しようと意識して作っていったところ、想定以上の反響があって。人生を変えた曲になりました。――作られたときは19歳ぐらいですか?19歳です。ふっとメロディが降りてきた感覚があって、新鮮なうちに届けたいと、一気に作っていったことがすごく印象に残っている曲でもありますね。――ということは、曲を作られる際に冷静に分析する視点と、ぱっと湧いたイマジネーションとのかけ合わせのような感じで、曲作りをすることが多いんですか。この曲は特殊です。僕の曲の中では新しいジャンルといいますか、作り方も、楽曲の雰囲気も、いつもとは違いますね。通常は、日頃から映画やドラマや漫画などの作品から着想を得ることが多くて。または影響を受けた楽曲からエッセンスを取り入れることがスタンダードな作り方なので、「Overdose」はとにかくバズを狙って作るという新しい作り方をしました。――リードトラックの6曲目「Sleepwalk」は耳馴染みがいい曲ながら、ときどき鳴る違和感のある音にハッとするユニークさもあります。ときどきミュージックビデオを作るときに、この曲のイメージがどうやったら伝わるかな、と考えると「ホラーゲームの世界観は伝わりやすい」と思ったことがありました。さらに自分のルーツはホラーゲームだと気づいて。そんなホラーゲームをコンセプトにした曲が、この「Sleepwalk」です。キャッチーなメロディの中に、ちょっと不穏な音をところどころに配置して、ホラーゲームのような違和感があるものをポップスとして消化させながらまとめました。――7曲目「金木犀」についても教えてください。この曲は人生で初めて作った曲です。曲作りをしながら「なんかめちゃくちゃいい曲だな」と自分でも手応えがあって、みんなに聴いてもらいたいという気持になりました。そこで「音楽を作りたい」という思いが鮮明になっていって。曲が完成してからは、信頼できる友達や母親に聴かせてみるとみんな良い曲だと言ってくれて、さらに音楽を作りたい気持ちが強くなりました。この1ヵ月後に、初めてネットに曲を投稿して公開に踏み切った思い出深い曲です。――8曲目「夜の歯車」は、シンプルでいて胸に染み入るバラードですね。兄の結婚式に向けて作った曲です。家族で夜ご飯を食べているときに、父親が冗談半分に「兄夫婦のために曲を作ったら」と言ってきたのですが、そういう形で曲を作ったことがなかったので、作ってみようかなと。アコースティックな曲で胸があたたかくなるような歌詞になりました。――もちろん、お兄さんは曲を聴いて感動されましたよね?いや、結局、聴かせてないですね(苦笑)。あまり兄に向けた曲だと言うのも、恥ずかしくなってしまって……。――なんと!もったいないので、お兄さまにはぜひアルバムを聴いてほしいです。では続いて、9曲目「エウレカ」は、ほかとは毛色が違う、アグレッシヴなロックサウンドです。受ける層に向けて作った曲のあとに、この「エウレカ」以降、いまも自分がやりたい曲を作らせていただいていて。僕はボカロを通ってきた人間ですが、ロックサウンドが大好きなので、なとりはこういう曲もできる、ということを聴いてほしいと思って作ったんですよね。曲作りの際お話ししましたが、たぶん好きな映画や漫画から着想を得てできた曲。僕の厨二病のような部分をそのまま表現していて、音作りにもこだわって作りました。――ちなみに歌唱面では、何か意識されていることはあるのでしょうか?僕のボーカルで一番の武器は、たぶん音域だと思っていて。かなり低いところにあるので、ほかのアーティストとどう差をつけるか、違いを見せるかを意識しています。そして息の成分がたっぷりの歌声なので、このふたつの特徴を持つアーティストは、いまのポップス界には僕しかいないのかなと。この点を重点的に出せるように楽曲を作ったり、レコーディングでもより良くなるようディレクションをしてもらったりしています。――2024年2月にはシクレットショー、3月には東京のZepp Haneda、4月には大阪のZepp Osaka Baysideで『“なとり”1st ONE-MAN LIVE「劇場」』と題した初ワンマン公演がありますが、どんなステージになりますか。まだどれも構成中なのですが、シークレットショーは3月からのワンマン公演の前に、アルバム『劇場』を少し披露するような短い時間でのショーになる予定です。3月と4月のワンマン公演は、バンドメンバーと一緒に『劇場』の世界を濃縮した演奏と演出をしたステージになるかなと。いまは音楽以外の余計な情報を出したくないので、顔を出していないのですが、そこはライブでもやはり軸に置くかもしれないですね。あとはアルバムと同じく、ステージでも『劇場』というコンセプトは壊さないようにしたいと思っています。もっとたくさんの人にいろんな曲を聴いてほしい――お話は変わりますが、おやすみの日はどんなふうに過ごしていますか。漫画が好きなので、いま漫画アプリ「マガポケ」(少年マガジン公式無料漫画アプリ)をすごく推しています。この漫画アプリの作品は、だいたい読んでいますね。あとは古着も見に行くことがあります。音楽活動に通じているんですが、新しく買った服を着て曲を作る、というのが日課になっていますね。――では、アルバムだと収録曲数ぶんの新しい服があるという?どうだろうなあ(笑)。着こなし方にもよるんですが、曲ごとに服を変えると、わりと気持ちが入るといいますか。ある種、それが仕事着のような感覚で着ているかもしれないです。――気分によって服を選ぶのか、クールな曲を作ろうと思ったらクールな服など、そのテイストのファッションに身を包み…ということでしょうか。「この曲のミュージックビデオはこういう服で出たい」というイメージが浮かびやすいんですよね、イラストなので実写では作っていないんですけど(笑)。たとえば「Overdose」のときは、もしも実写を撮るなら、僕は黒のセットアップを着て出たいというイメージがあって。わざわざ黒のセットアップを着て、わざわざネクタイを付けて、「Overdose」を作っていました。だから、実家のクローゼットの中には、服がたくさんあります。――曲作り以外では、どんなテイストのファッションが本来お好きなんですか。きれいめ系ですね。スラックスをよくはきますし、レイヤードの服もすごく好きです。お気に入りの水色のシャツがあるので、その水色のシャツに合わせていろいろな組み合わせをしています。――18歳から音楽活動されて19歳で転機が訪れ、現在20歳になったということで、10代を振り返ってみて、そして20代でやってみたいことは?10代であまり音楽理論などを知らないまま活動を始めましたが、自分の音楽が形になってきたいま、改めて音楽の勉強をするようになりました。これからもさまざまな音楽をたくさん吸収していきたいです……って、ちょっとかたいかな(笑)。10代は、無駄なところで生意気な部分がすごくあって、変な自信を持っていました。これからは変な自信ではなく、ちゃんと中身を濃くして、本当の自信を身につけたいですね。――では最後に、シンガーソングライターとしての今後の抱負を教えてください。もっとたくさんの人にいろんな曲を聴いてもらいたいので、これからもずっと音楽を届けていきたいと思っています。取材後記TikTokへの投稿から一躍脚光を浴びたシンガーソングライターなとりさんがananwebに初登場してくださいました。SNSから誕生したニューカマーとして、多くのリスナーを魅了するなとりさん。初めてのアルバムに込めた思いをたっぷりと聞かせてくれました。時に冷静にシーンを分析し、時に音楽的な欲求のままに曲作りをし、20代もたくさんの楽曲を聴かせてくれることでしょう。そんななとりさんの1stアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみりなとりPROFILE2021年5月より活動開始。2022年5月、投稿した「Overdose」はTikTok上の関連動画が約500,000個、総再生回数は20億回を超え、“歌ってみた”などのカバーで若年層からの支持を集めている。Billboardのストリーミングソングチャートでは、歴代6位タイの速さでの1億回突破を達成し、国外まで知名度を広げた。2023年3月、SpotifyブランドCMソングに「フライデー・ナイト」が起用され、ミュージックビデオは700万再生を突破。12月20日、1stアルバム『劇場』をリリース。InformationNew Release『劇場』(収録曲)01.劇場02.食卓03.猿芝居04.Overdose05.フライデー・ナイト06.Sleepwalk07.金木犀08.夜の歯車09.エウレカ10.Cult.11.ラブソング12.ターミナル13.カーテンコール2023年12月20日発売(完全生産限定盤)SRCL-12665¥5,500 (税込)*ジャケットアートボード仕様+ブックレット+オリジナルトランプ+CDほか。取材、文・かわむらあみり
2023年12月20日【音楽通信】第150回目に登場するのは、数々のヒット作を世に送り出し、12月8日にデビュー25周年イヤーを迎えるシンガーの倉木麻衣さん!マイケル・ジャクソンがきっかけで歌手を目指す【音楽通信】vol.150今年デビュー25周年というアニバーサリーイヤーを迎える、倉木麻衣さん。1999年、16歳の時に「Mai-K」名義にてシングル「Baby I Like」で全米デビューを果たし、続いて「倉木麻衣」としてシングル「Love, Day After Tomorrow」で日本デビューしました。同曲はミリオンセラーを記録し、1stアルバム『delicious way』は400万枚を超えるメガヒット。続く作品も続々と大ヒットを記録するなど、これまでに数々の大ヒット作を世に送り出してきました。さらに近年では、音楽活動のほか、社会貢献活動なども行っているという倉木さん。そんな倉木さんが、2023年10月28日にシングル「Unraveling Love 〜少しの勇気〜」を配信リリースされたということで、音楽的なルーツなども含めて、お話をうかがいました。――あらためまして、子どもの頃の音楽との出会いや、影響を受けたアーティストから教えてください。家族が音楽好きということもあり、4歳の頃から母の勧めでピアノを習っていましたが、歌うことも大好きで。テレビやラジオから流れてくる演歌から歌謡曲、ポップス、アニメソングなどのいろいろなジャンルの歌を口ずさんでいましたね。中学校では、合唱部に入部したり、よくカラオケに行ったりもしていました。当時は、洋楽を聴いている人が少なかったのですが、家族が洋楽好きだったこともあって、マイケル・ジャクソン、マライヤ・キャリーをはじめR&Bなどもよく聴いていて、その歌い方をまねて歌っているような子どもでしたね。初めて買ったアルバムは、ホイットニー・ヒューストンの『そよ風の贈り物』(1985年発売)でした。――とくに洋楽がお好きだった倉木さんが、実際にシンガーになろうと思ったきっかけはなんでしたか?中学生の頃に、マイケル・ジャクソンのミュージック・ビデオ集やムーンウォークを見て衝撃を受け、「音楽で人を感動させる歌手になりたい」と思ったのがきっかけとなり、本格的に歌手を目指そうと思いました。それからカセットテープに自分の歌を録音してデモテープを作りはじめて、音楽事務所に送ったり、オーディションを受けたりしたことで、デビューへとつながりました。――1999年10月「Mai-K」名義にてシングル「Baby I Like」で16歳で全米デビュー、同年12月に「倉木麻衣」としてシングル「Love, Day After Tomorrow」で日本デビューされ、以降の作品も大ヒット作となりましたね。デビュー当時はまだ高校生でしたが、デビューの実感や手応えは感じていましたか。あまり実感はなかったですね(笑)。デビュー前も、学校が終わるとレコーディングスタジオに行って、学校の宿題やテスト勉強をしながら海外デビューアルバムなどのレコーディング制作をしたり、高校生の夏休みに初海外のボストンでレコーディングしたり。デビュー後も、音楽活動と学生生活の両立で無我夢中な日々を送っていました。ただ、デビュー後は、自分よりも先生や友達やクラスのみんなが、デビューしたことに驚いていましたね(笑)。とはいえ、デビュー前と後も生活スタイルは変わらず、学校生活を中心とした日々を送らせていただいていました。デビュー前にお世話になった先生方や友達は、時を経たいまも、ライブに来てくれるなど、ずっと応援してくれています。当時は、テレビやメディアにほとんど出ていなかったので、デビューしてもあまり実感がなく、ラジオでデビュー曲「Love, Day After Tomorrow」が流れてきたり、CDショップでCDが並んでいたりするのを見て、そこでデビューしたことをなんとなく実感するような日々でした。ライブをするようになってから、たくさんの方に楽曲を聴いていただけて愛していただけているんだと、やっと「歌手になったんだ!」という実感が湧いた感じです。――2023年12月8日にデビュー25周年イヤーに入りますが、これまでを振り返って、率直なお気持ちは?諦めないでいてよかった、と思いますね。大好きな音楽を通して、夢や希望、愛と感謝で、みなさんとつながっている25年という奇跡のような月日を過ごさせていただいて、「愛がとうございます(倉木さんの「ありがとうございます」の最大級の言葉)」という気持ちでいっぱいです。またわくわく、どきどきしながら、新しい歌を作って、少しでもみなさんのお役に立ちたいですね。『名探偵コナン』の世界に寄り添い自由に作った新曲――2023年10月28日にはシングル「Unraveling Love ~少しの勇気~」を配信リリースされました。アニメ『名探偵コナン』(読売テレビ・日本テレビ系 毎週土曜 午後6:00)の主題歌でもあり、倉木麻衣さんが作詞を手がけていますが、どのようにイメージされて形作っていかれましたか。今回、『名探偵コナン』の恋愛観に寄り添えるように、イメージを膨らませて制作していきました。どの主人公の恋愛を歌っているかは、聴いていただいたみなさんがそれぞれ自由に感じてくださったらうれしいですね。感情があふれだすようなたたみかけるメロディで、シティポップとプチロックを融合させたちょっと懐かしさも感じられるサウンドに、ドキドキ感を表現する鼓動音も入れて、面白い感じに仕上がっています。タイトルをつけるときに「Unraveling Love」か「少しの勇気」か、どちらのタイトルがいいか、みなさんに質問を投げかけたんです。結果として、両方とも人気があったため「Unraveling Love ~少しの勇気~」とつけました(笑)。――倉木さんと『名探偵コナン』のコラボレーションは26作目となり、2017年には当時記録していた21作品で、同一アーティストが歌唱するアニメシリーズのテーマソング最多数を記録したとして、ギネス世界記録にも認定されましたね。『名探偵コナン』が誕生してからずっと、コナンくんは永遠の憧れであり、家族でもあり、この作品を通してみなさんと長年一緒につながってこられていることは幸せです。大人から子どもまで、世界中のみなさんに愛されている『名探偵コナン』の楽曲を長年にわたり担当させていただき、とても光栄に思っていますし、感謝の気持ちでいっぱいです。そしてまた光栄なことに、ギネス認定をいただきましたが、大好きなアニメ『名探偵コナン』を通してつながっているみなさんとの認定でもあると思っています。これからも新たな歌を届けられることを私自身、楽しみにしていますし、パワーアップしていくアニメの世界観に寄り添って、楽しんで聴いていただけるように作っていきたいと思います。――『名探偵コナン』の2019年放送のSP版『名探偵コナン 紅の修学旅行編』では、ご本人役でアニメに登場されたこともある倉木さんですが、印象深かった放送回やお好きなキャラクターはありますか。印象深い放送回はたくさんあってひとつに絞れませんが、初めて『名探偵コナン』の楽曲を担当した「Secret of my heart」がオンエアされたときや“倉木麻衣”役として声優にチャレンジさせていただいた放送回は、特別な宝物となった思い出深い回となっています。どのキャラクターもそれぞれ愛らしくてかわいくて好きですが……やっぱり、コナンくんが一番好きですね。――主題歌ということで、作者の青山剛昌先生や制作の方から曲について何かリクエストはあったのでしょうか。いつもどのように曲作りをされていますか。リクエストがあるときもありますが、テレビ放送の場合は、『名探偵コナン』の世界観を自分なりにイメージしながら、制作をさせていただいています。今回はリクエストというより、いまの『名探偵コナン』の世界観に寄り添いながら、自由に制作させていただきました。そういった作り方もある一方、自分のアルバムを制作するときは、発信したいテーマを決めてから制作していきますね。歌詞を先に作る詞先で作成する曲もありますが、メロディを何度も聴いて、そのメロディからインスパイアされて言葉選びをして作成することも多いです。――今作は大人っぽいダンスナンバーですが、サウンドの第一印象や、歌唱する際に意識していることはありますか。クールかつ、スリリングで、たたみかけるサビのメロディがクセになる感じで面白くて。日本語以外のほかの言語で歌ってもハマるようなメロディなので、いつかトライしてみたいなという印象です。感情があふれだすようなサビは、メロディのグルーヴ感に気をつけながら歌っていきました。――2023年11月15日にライブ映像作品「Mai Kuraki Premium Symphonic Concert 2022」を発売されますね。そして現在、全国4都市をめぐる「billboard classics Mai Kuraki Premium Symphonic Concert 2023」と題したツアーを開催中ですが、どのようなステージになりますか。今回は、みなさんからリクエストをいただきながら選曲した、会場ごとに違う歌唱曲もあるんです。そのときどきに生み出される、一夜限りのスペシャルサウンドを体感していただけると思います。楽曲によっては一緒に大合唱したり、グッズでご用意しているペンライトを使って会場を照らしたり、みなさんと一体となって生み出す参加型のコンサートになっていて。また、フルオーケストラサウンドでもあるので、美しく温かな音色に癒やされながら、コンサートをぜひお楽しみいただけたらと思っています。新たな試みを通して楽しめる空間をシェアしたい――お話は変わりますが、おやすみのときはどのようにお過ごしですか。自然がある場所や動物が大好きなので、愛犬と散歩したり、音楽を聴いたり、素敵な公園やカフェでゆっくり歌詞を考えたり。ゆったりと過ごしていると、いろいろなインスピレーションが湧いてくるので、一人時間を大切にしています。――デビューから変わらぬ美しさの倉木さんですが、美容法やダイエットなどは意識されますか。10代や20代の頃は思春期だったこともあり、周りと比較したり、周りからも言われたりして、痩せていないといけない、きれいじゃないといけないと気にしていました。そこで無理なダイエットをして我慢を続けていたら、美しさとはかけはなれ、体調も崩してしまい……。自分を愛さずに痛めつけていたことに気づきました。その辛い経験があったからこそ、いまは栄養バランス、睡眠、運動と、ストレスフリーな生活を心がけるようになりましたね。それぞれ思う美しさは違うから「比較するのはやめよう」と気づいたことで、自分を愛するよう心がけることができるようになりました。笑顔でいられないときも、そんな自分を認めてあげて、「心を愛する」という美しさで満たすことから始めてみる大切さに気づいて。いいときも、そうでないときも、そのときどきの自分をまるごと受け入れて愛する。年齢を重ねても、心身ともに「ラブ&ピース」を心がけて、何より自分の気持ちに正直でいられることが、自分にとっての美しさだと。そんな自分と愛してくれる人を大切にして、心の美しさを失わないように生きていけたらいいなと思ってはいますね。最近は、大好きなことに夢中になったりときめいたり、どんなときもユーモアを忘れず思いっきり笑うという、楽観的な生き方をすることでいきいきと美しくいられると、来年90歳になる祖母を見て思うようになりましたね(笑)。――音楽活動と並行して、カンボジアに寺子屋を建設するなどの社会貢献活動や、母校の立命館大学で客員教授として講義もされたそうですが、違うフィールドでの活動をされてみていかがですか。それぞれ違うフィールドですが、すべて愛でつながっている活動でもあるかなと思っています。音楽を通して私にできる社会貢献であったり、立命館大学でも自分の経験を元に学生のみなさんとディスカッションを行うこともあったり。学生のみなさんは一人ひとり、素晴らしいアイデアや意見を持っていて、私が勉強になることもあります。どんな場所でも、誰かのためにお役に立てたらという“アンコンディショナルラブ(無条件の愛)”の精神を持って、みなさんと笑顔でつながっていけるよう引き続き取り組んでいきたいですね。――12月からはデビュー25周年イヤーとなりますが、今後の抱負を教えてください。25周年、ありがとうございます。応援してくださるみなさん、愛がとうございます。私自身、まだ叶えられていない夢を叶えていけるように、新たな試みを通して、みなさんと楽しめる空間をシェアしていきたいですね。これからもライブや新曲を楽しんでいただけるよう、みなさんの健康と幸せをいつも心から願っています。おたがいに、心身ともに元気でいましょう!取材後記いまもなおデビュー時の鮮烈な印象がある、シンガーの倉木麻衣さん。耳にすっと馴染んでいく柔らかくて艶やかな歌声は、時にやさしく、時に力強く響きます。20年ほど前に取材させていただいて以来、今回はananwebにご登場くださいました。12月からは『名探偵コナン』の新エンディングテーマも担当することが発表された倉木さん。我が家でも『名探偵コナン』は家族で大好きなアニメなので、倉木さんの新曲もすっかり定番に。そんな倉木さんのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみり倉木麻衣PROFILE1982年10月28日生まれ。1999年10月「Mai-K」名義でシングル「Baby I Like」で全米デビュー、同年12月「倉木麻衣」としてシングル「Love, Day After Tomorrow」で日本デビュー。以降も精力的に音楽活動を続けるなか、近年は被災地支援やカンボジアの子どもたちに教育の場を提供する寺子屋を設立するなど、社会活動も行っている。2023年10月28日にシングル「Unraveling Love 〜少しの勇気〜」を配信リリース。InformationNew Release「Unraveling Love ~少しの勇気~」2023年10月28日配信リリースNew ReleaseDVD & Blu-ray『Mai Kuraki Premium Symphonic Concert 2022』~1部~【PRELUDE】01. Secret of my heart02. 風のららら~Sea wind03. 儚さ04. Time after time ~花舞う街で~05. 渡月橋 ~君 想ふ~06. Be Proud ~we make new history~07. Reach for the sky08. Smile~2部~【ベートーヴェン:ピアノソナタ第14番「月光」】09. 冷たい海10. Proof of being alive11. Can you feel my heart ~Ballad ver.~12. ひとりじゃない13. 明日へ架ける橋14. Wake me upEC1.always2023年11月15日(DVD)VNBM-7038¥8,800(税込)(Blu-ray)VNXM-7038¥9,900(税込)パッケージ内容:3方背ケース、フォトブックレット、4つ折りミニポスター、ピクチャーレーベル/[CD] ライブ音源 from Mai Kuraki Premium Symphonic Concert 2022 selected by Mai-K : 01.明日へ架ける橋 02.風のららら〜Sea wind 03.ひとりじゃない 04.渡月橋 ~君 想ふ~ 05.Proof of being alive取材、文・かわむらあみり
2023年11月21日【音楽通信】第149回目に登場するのは、新しい時代のディープファンクバンド「在日ファンク」のボーカルでリーダーの、浜野謙太さん!ジェームス・ブラウンのすごさに気づいた浜野謙太。1981年8月5日、神奈川県生まれ。在日ファンクのフロントマンで、俳優としても活躍中。【音楽通信】vol.1492007年に結成された7人組のファンクバンド、在日ファンクのボーカル兼リーダーであり、放送中の大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合毎週日曜午後8時)や映画など俳優活動でも知られる、浜野謙太さん。そんな浜野さんが中心となる在日ファンクが、2023年11月1日に6枚目のアルバム『在ライフ』をリリースされるということで、音楽的なルーツや俳優活動についてなど、お話をうかがいました。――浜野さんが音楽に出会ったきっかけから教えてください。小さい頃から、自宅には父のジャズのレコードが置いてあったのでそれを聴いて、僕もジャズのビッグバンドを好きになりました。でも、好きになったのはマイケル・ジャクソンのプロデューサーをしていたクインシー・ジョーンズが、初心者向けに出したビッグバンドのレコード。めちゃくちゃカッコよくてずっと聴いてました。中学校では吹奏楽部に入って管楽器を始めて、高校では「絶対観たほうがいい」と勧められた映画『ブルースブラザーズ』(1981年公開/劇中にブルースの巨匠レイ・チャールズやジェームス・ブラウンらも登場するミュージカルコメディ映画)に出会いました。映画では、白人の主人公ふたりがブラックミュージックを聴いて「神のお告げ」だとなるのですが、すごいんですよね。黒人以外、白人だとしてもブラックミュージックをやっていいんだということが、素敵に表現されています。――最初にされた楽器は、トロンボーンですよね?そうです。大学ではジャズ研究会に入りました。バンドは「SAKEROCK」(2015年に解散したインストゥルメンタルバンド)もやっていましたが、もう少しちゃんとブラックミュージックをやりたい気持ちもあって、ジェームス・ブラウンのコピーバンドもやっていたんです。バンドをやるうちにさらにジェームス・ブラウンのすごさに気づいて、彼が亡くなったときに、日本でもファンクを打ち立てようとバンド「在日ファンク」をやろうと決めました。――音楽活動は20年以上になりますが、振り返ってみていかがですか。また、バンド活動と並行して、2006年の映画『ハチミツとクローバー』で初めて俳優業へと進出されましたね。うかうかしていたら40歳を越えていて、20年なんて、本当にアッという間でした。俳優業は、最初はハマっていなかったんですよね。『ハチミツとクローバー』では櫻井翔くんとはお話しできたので、その出会いだけ唯一よかったです。実際にちゃんとお芝居に向き合えたと思ったのは、2011年の映画『婚前特急』からです。――『婚前特急』では、第33回ヨコハマ映画祭で最優秀新人賞も受賞されましたよね。はい、そのぐらいお芝居することがすごく楽しかったんです。2時間通して、ちゃんとキャラクターを作るからこそ、一瞬の呟きが面白かったりするわけで。音楽でも、1曲の中で緩急があって、ちょっとしたことがとても響いたり。「楽譜と台本は似ているな」と気づいて、それからは、お芝居も全部楽しくなりました。ーー浜野さんが織田信長の息子・織田信雄を演じている大河ドラマ『どうする家康』も話題です。大河ドラマは特殊なんですよね。1話から40話まであるとして、キャラを作ろうにも、自分の出演するところだけしか台本をもらわないんです。ただ、実在するその時代の人物がいるわけで、調べていくとめちゃくちゃ面白い。もともと戦国時代も好きなので、歴史を調べて役とのつながりを見つけたときはうれしいものです。――いまは映画『アナログ』も公開されていますね。僕が『アナログ』でよかったと感じることは、ニノ(二宮和也さん)と桐谷健太くんに挟まれて、お芝居できたことですね。やっぱり手練れの彼らと共演できるのは、すごく楽しいんです。カメラがまわった瞬間に世界が広がるといいますか。ニノは寸前まで全然違う話をしていても、カメラがまわるとパッと役に切り替わるんですよね。そういえば、『婚前特急』の主演だった吉高由里子ちゃんもそんな感じでした。撮影の時期に亡くなったマイケル・ジャクソンのまねを休憩中にずっとやっていたのに、撮影がスタートした後に、スッと役に入っていて。「すごい」と思いましたし、どのような状況にいても関係ないんだなと思いましたね。5年で成長したメンバーとうまく作れた最新作――2023年11月1日にニューアルバム『在ライフ』をリリースされます。前作から5年ぶりとなった新作ですね。この5年の間に、自分なりに濃密な時間を過ごしていました。僕は3年前に椎骨動脈乖離という症状が出て、生まれて初めての入院を経験して。歌うことについて制限もあったので、バンドや音楽はやり方によっては有限なんだ、表現自体が無限じゃないと気づきました。その後はコロナ禍で、リモートで演奏することもありましたし、自分の家族にもちゃんと向き合うことができました。――そういった経験などもすべて、今作につながっていったのですね。すべて地続きです。メンバーもそれぞれ家族と向き合ったり、ギターの仰木亮彦はSTUTS、トランペットの村上基はレキシやsumikaといったほかのミュージシャンのサポートをしたり、それぞれの成長があったと思うんですよね。それで、また会えたのが、よかった。もしかすると全然考え方が違うと解散するバンドもいると思うんですが、僕らはまた一緒にできる糸口を見つけたというぐらい、ソロ活動のような期間を経ての新作です。――ファンのみなさんも待っていたはずです。もしかしたら寝ているかもしれないので、「始めるよ!」と叩き起こさないといけない(笑)。メンバーみんなのライフを経て、ここに来たんですよね。マイライフと共にこのアルバムに集結していて、成長したメンバーとうまく作れた1枚です。……初めて『在ライフ』の説明がきちんとできたかもしれないです(微笑)。――アルバムの4曲目「平和 feat.七尾旅人」、5曲目の「滞ってる feat.高岩遼」はそれぞれゲストボーカルを迎えていますね。「平和」は、曲ができてから、構想は大きいけれど僕らだと言い切れないかもしれないとなって、七尾旅人さんに頼みました。旅人さんとは現場的なつながりはなかったんですが、SNSなどで考え方は拝見していて、「この人とできればこの曲は化けるのでは」とピンときたんです。「滞ってる」は、昨年出演させてもらった舞台『室温~夜の音楽~』の演出・河原雅彦さんからの依頼で、在日ファンクが舞台用に作った曲のうちのひとつですが、今回、もっとブラッシュアップできないかと考えて。そこで、(ヒップホップチームSANABAGUN.ほかで活動する)高岩くんとデュエットというアイデアになりました。――8曲目「クーポン」は浜野さん作詞作曲の斬新でユニークな曲ですね。最初に作った曲なんです。ドラムの永田真毅から、「とりあえず1曲を作れ」と言われて、1曲仕上げよう!と勢いで、パッションのまま作りました。そこで生まれたのは、クーポンに対しての怒りです。この曲、ちょっとふざけているなあって思いますか?――いえ、ファンクにカッコよく怒っているなあと思いました(笑)。ははは(笑)。僕はクーポンって、いまはそんなにお得じゃないものもあって、もうゼロ円に近くなるクーポンはないから、もっと大盤振舞してほしいと思って作ったんですよね。――10曲目「おすし」は、トロンボーンのジェントル久保田さんが作詞、在日ファンクのみなさんでの作曲です。最近、s**t kingzや鈴木雅之さんに曲を提供したんですが、それぞれ歌詞は僕とジェントル久保田の共作でもあって。今回のアルバムでも、ジェントル久保田に1曲歌詞を作ってもらうことにしました。いままでの作品では僕が曲を作っていたんですが、今回は曲によって、メンバー何人かで作っていて、「おすし」はスタジオセッションで30分でできた曲です。――浜野さんご自身は、いつもどのように曲作りをしているのですか。やっぱり、テーマが先にきますね。それこそ「クーポン」を思いついたときには、僕が怒っている事柄に対しての曲を作るなんてどうなのか、と考えてしまったりもしましたが、作り上げていくうちに言いたいことが通底するといいますか。最初に思ったテーマをかっこよく聴かせれば、結果ちゃんと自分の考え方が伝わる曲になるという実感です。MIDI鍵盤で曲を作っています。――11月には、東名阪で「アルバム『在ライフ』リリース記念ワンマンツアー」があります。歌や演奏はもちろん、浜野さんのキレのあるダンスも見どころですが、どのようなステージに?アルバムの曲を中心に、過去曲も披露する予定なので、ライブに来ていただいたらみなさんが楽しめると思いますよ。今回のツアーでは、「いかにメンバーがプレジャーな状態になるか」という流れを意識して、いまいろいろと組み立てている最中です。「来年はたくさんライブをしたいです」――お話は変わりますが、おやすみのときはどんなふうにお過ごしですか。在日ファンクの動画を作ったりしています。――ご自身で動画編集もしているんですね。それはお仕事ではなく、オフに入るという?けっこう楽しいんですよ(笑)。おじさんしか映っていないんで、動画をご覧になる方々にどうやって「かわいい」と思ってもらえるかなと試行錯誤していて。お菓子を食べているところを撮ったり、焼き鳥を食べているところを撮ったり。焼き鳥を食べるときはビールじゃなくて、ノンアルコールビールを飲んでいるからいいかと思ったら、けっこうおじさんの居酒屋感が出ちゃってとか(笑)。そういうことを考えていると、すごく楽しくて。――在日ファンクのYouTubeを観ても、楽しさが伝わります。ありがとうございます。あとは、たまに子どもふたりと一緒にご飯を作ることもありますね、チャーハンとか唐揚げとかぐらいですが。お弁当を持って、代々木公園にピクニックに行くこともあって、子どもたちは公園で自転車を借りることもあります。この間は、レジャーシートをひいてご飯を食べていたら、子どもが「おすし、おすし」と踊り始めて、「その振り付けいいね!」と、完全に公私混同しています(笑)。――浜野さんのインスタグラムにも「おすし」を息子さんと踊っている動画などもアップされていますね。とても楽しそうです。息子は小4なんですが、ダンスを習っていて、踊るのが好きなんです。「おすし」の振り付けをしてもらいました。――いいですね。そういえば、今日はお気に入りのコーデュロイのシャツを着てきていただいたということで、おしゃれです。ピンクのシャツが珍しくて、前から大事に着ています。妻(モデルのAGATHAさん)はファッションが好きなので、昔はコーディネートを見てもらっていました。最近は「好きな服を着たらいいよ」と言われるので、セオリーみたいなものを壊し始めているといいますか、そういう時代なのかなという感じもしています。――いろいろなお話をありがとうございました。最後に、今後の抱負を教えてください。来年はたくさんライブをしたいです。僕はサブカル方面のバンドとして出てきた人間なので、ある意味、ゆるさも特徴だと思っていたんです。でも、そんなに高くなくていいから、近い目標へ向けて誠実にやっていこうかなと。まずは在日ファンクのツーマンイベントを考えているので、楽しみにしていただきたいですね。取材後記ジェイムス・ブラウンからの流れを汲むファンクを日本にいながら、再認識しようというディープファンクバンドの、在日ファンク。今回、ananwebにはボーカルでリーダーの浜野謙太さんが登場してくださいました。マガジンハウスで撮影とインタビューを行うこととなり、取材時間に颯爽とスタジオへ。終始おだやかにご対応くださり、撮影時に披露してくださったステップも素敵でした。そんな浜野さんのいる在日ファンクのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・園山友基取材、文・かわむらあみり在日ファンクPROFILE浜野謙太(Vo)、村上啓太(B)、仰木亮彦(G)、永田真毅(Dr)、橋本剛秀(A.Sax)、ジェントル久保田(Trb)、村上基(Trp)の7人からなるディープファンクバンド、在日ファンク。2007年にバンド結成。インディーズで活動後、2014年にメジャーデビュー。2017年にカクバリズムに移籍し、コンスタントに作品を発表し、ライブ活動を展開。2023年11月1日、ニューアルバム『在ライフ』をリリース。「アルバム『在ライフ』リリース記念ワンマンツアー」を11月19日に東京・渋谷 WWW X、11月25日大阪・大阪 十三246 LIVEHOUSE GABU、11月26日愛知・名古屋 新栄Shangri-Laで開催。InformationNew Release『在ライフ』(収録曲)01. 今から本気02. 在来外来03. ハラワラナイト04. 平和 feat.七尾旅人05. 滞ってる feat.高岩遼06. いけしゃあしゃあ07. 身に起こる08. クーポン09. いつもどおり10. おすし2023年11月1日発売(通常盤)DDCK-1078¥3,300(税込)写真・園山友基 取材、文・かわむらあみり
2023年11月13日【音楽通信】第148回目に登場するのは、菅野美穂さんの主演ドラマに新曲を書き下ろして話題を呼んでいる、シンガーソングライターの矢井田 瞳さん!19歳でのアコースティックギターとの出会いが転機【音楽通信】vol.148大学生のときにメジャーデビューを果たし、2ndシングル「My Sweet Darlin’」が大ヒット。サビで「Darlin’,Darlin’」と歌うフレーズから“ダリダリ旋風”を巻き起こし、1stアルバム『daiya-monde』はアルバムランキング初登場1位を獲得、ミリオンセラーとなった矢井田 瞳さん。以降もコンスタントに楽曲リリースや国内外でのツアーを行い、現在デビュー24年目を迎えた矢井田さんが、2023年10月19日、ニューシングル「アイノロイ」を配信リリースされたということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――幼少期は、どんなふうに音楽とふれあっていましたか。幼い頃、私自身は主に水泳を習っていて、スポーツばっかりしていました。そんななかでも父が音楽好きだったので、家ではリビングにいると常に音楽が流れていましたね。父がスナックで歌う曲の練習をするために音楽をかけていた、という環境で育ちました。音楽自体は、大学に入ったときに、アコースティックギターに出会ったことが大きな出来事で、その後の人生の道が決まったところがあります。それまではスポーツや勉強ばかりの日々だったのですが、大学に入って解放感を得て、これまでと全然違うことをやりたくなったときに、音楽そして楽器をやってみたいと思ったんですよね。友人が休憩時間にエレキギターを弾いている姿を見ると、いつもよりカッコよく見えて、「これはギターのマジックだ」と(笑)。いろんな魅力がある楽器なんだろうなと感じたんです。さっそくアコースティックギターを買ってきて、コードブックを見て、ゆっくりと簡単なコードを初めて弾いたときに「ビビビッ!」と衝撃がきたんです。「私、これを一生できるかも」と直感で思ったんですよ、まだ何も弾けないのに(笑)。でも、本当にそう思ったことがきっかけで、それまでは歌うことや音楽を聴くことが好きなだけでしたが、本格的に曲を作ってみたい、楽器を弾いてみたいとのめり込んでいきました。――ギターで曲作りもされるようになって、そのまま音楽活動もスタートされて?はい。アコースティックギターを練習しはじめて、ギターコードを3、4個ぐらい弾けるようになったときに、覚えたてのストロークとスリーコードでずっと弾いていたら、聴いたことのないメロディを歌っていることに気づいて。それがとっても楽しくて、どんどん曲作りにハマっていきました。私は学生時代、表向きには「明るくて元気な子」と友達には思われていたようなのですが、実は本当はそうじゃないと思う自分もいて。思春期だったからかもしれないですが、まわりが思う自分像と一致しないことにモヤモヤしていました。そんなとき、ギターを持ち、吐き出せていない感情を新しいメロディにのせて歌うとすごくすっきりして。醜い感情や汚い感情も作品にしてしまえば、落としどころとして気分がよかったところもあったのだと思います。――2000年にインディーズデビュー後、メジャーデビューもされました。10月には2ndシングル「My Sweet Darlin’」が大ヒット。19歳でギターを手にされてから3年後にはデビューして大ブレイクと、順調なスタートを切られましたね。いまから思うと、相当なスーパーラッキーガールでした。デビューしたときは大学4年生で、「My Sweet Darlin’」のサビを覚えてくださった方が私を見かけると、「ダリダリの人だ」と言ってくださってうれしかったです。ただ、ちょうど卒論の時期で毎日図書館に行って引きこもっていたので、あまり外の世界のことがわからないまま、ときどき東京に行ってお仕事をしていた状況だったので、デビューの実感はそんなにありませんでした。矛盾も前向きなパワーに変えられるような新曲――2023年10月19日に、ニューシングル「アイノロイ」を配信リリースされました。同日からスタートした、菅野美穂さん主演ドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』(テレビ朝日系 毎週木曜午後9時)の主題歌として書き下ろされたそうですね。ドラマ主題歌が決まるかもしれないという時期と、新しいサウンドでこれからまたチャレンジしていきたいと私たち音楽チームで話していた時期が、偶然一致したんです。オファーをいただき、まずは原作の漫画「ゆりあ先生の赤い糸」(入江喜和)を読むところから入りました。――歌詞の世界にイメージを凝縮していくのは難しそうですが、どんなふうに作っていかれたのでしょうか。主人公となる、ゆりあ先生の繊細さと大胆さ、優しさと強さが共存している感じや、憎しみさえも前向きなパワーに変えるという、いろいろなことの表裏が合体している強さを楽曲で表現できたらいいなと考えて。前向きに生きるという一面だけではなく、後ろ向きな日々もあるなか、その矛盾や心の憂鬱さえも、前向きなパワーに変えられるような曲にしたいと作っていきました。――タイトルからして、相反するような「アイ」と「ノロイ」がくっつくという……。そうなんです。愛情の愛も、呪いも、ぽつんと単体では存在しえないといいますか、つながっているもの。だからそういう意味では、「アイ」と「ノロイ」は背中合わせの言葉なのではないかなと思ったんです。たとえば、すごく愛する人からかけられた呪いだったら、とても苦しくても、ちょっとうれしいかもしれないですし(笑)。背中合わせのこのタイトルにしました。――サウンドプロデューサーにYaffle(ヤッフル)さんを迎えられましたね。Yaffleさんは、爽やかなんだけど芯が太いような、ふたつのことが共存しているサウンドを作る人だなと、ずっと注目していたんです。いつかご一緒できたらと思っていたので、今回、ご一緒できてうれしいです。――「アイノロイ」が主題歌となるドラマにおいて、主演の菅野美穂さんは、「矢井田さんの歌声と、素晴らしい楽曲に胸が震えました」と絶賛のコメントを寄せていますが、以前トーク番組でご一緒されたことがあるそうですね?もう2006年のことで、17年経っていますが、昔『グータンヌーボ』(フジテレビ系)という女性出演者が集まってトークをする番組で、菅野さんとご一緒したことがありました。集合場所のお店に行ったら、本当にマネージャーもスタッフも誰もいなくて。あまりバラエティ番組に出たことがなかったので、どうしようと不安になっていたら、菅野さんはいろいろな現場でご活躍されて慣れていらっしゃったのでリードしてくださって。そのときは、菅野さんと優香さんと私の3人でトークをさせていただきました。――懐かしいですね。ところで、新曲はドラマ主題歌としてお茶の間でも流れていますが、聴き手の方の心にどう響いてほしいでしょうか。たくましく人生を生き抜いてほしいという思いがあったので、くよくよしているというよりかは、「よし、やるぞ!」と決めた人たちを思い浮かべながら書きました。なので、そういう人たちの背中をちょっとでも押せるような曲になってくれたら、うれしいですね。――今回はドラマ主題歌ということでの書き下ろし楽曲ですが、そもそもどのように曲作りをされているのですか。基本的には今回同様、ギターの弾き語りから曲を作っていくことが一番多いです。ギターで曲を何曲か作っている時期が2、3か月続くと、似たような発想が増えてくるので、それを切り替えるためにも、あまり弾けないピアノを触ってみたり、リズムから曲を書いてみたりしています。――あとからメロディの世界観に合わせて歌詞をつけていくのですか?最初に曲だけ作って、あとから歌詞をはめていく作業が苦しすぎるので、なるべくメロディだけ先行にならないように、「この曲で伝えたいテーマは何か」「このメロディが呼んでいる言葉は何か」を同時に考えながら、歌詞も作り上げています。――11月には東京と神戸でプラネタリウムツアー「LIVE in the DARK tour w/矢井田 瞳」を開催されるそうですね。プラネタリウムと合わせたライブはどのようなステージになるのでしょうか。私自身、初めてのライブ体験なんですが、すごいことになりそうです(笑)。プラネタリウムで星空が映る球体に、たとえば曲に合わせた映像を一緒に作り上げて、映し出してくださるようです。普段のライブ会場は少し暗いとはいえ、ステージからは見えてはいるんですが、このプラネタリウムツアーでは、暗闇と音楽というものが大事。暗闇では耳の神経も研ぎ澄まされるので、その感覚も楽しんでいただくようなライブになりそうです。――スペシャルな空間になりそうですね。私もこれまで意識していなかった歌詞の聴こえ方ができそうです。でも、歌詞を間違えないように気をつけようと(笑)。普段と環境が違うので、一番を歌いながら星空を見上げて「うわぁ」と圧倒されて、二番を歌うはずがもう一回一番を歌ってしまったり(笑)。そういうことも含めて、新しいライブ体験になるので、楽しみにしています。これからの音楽人生も少しずつ歩んでいきたい――お話は変わりますが、おやすみの日はどんなふうにお過ごしですか。お仕事をしているとき以外は、ほとんど家族と一緒に過ごしていますね。唯一、平日のお昼だけ自由に動ける時間があるので、お気に入りのお店にひとりでランチを食べに行くこともあります。とはいえ、毎日外でランチなんて贅沢もできないので、週に1回は「あそこのランチを食べに行こう」と、息抜きしていますね。――ご家族ということで、お子様もいらっしゃいますが、普段はお仕事と育児や家事をどのように両立されていますか。母親になってからは、自分の時間はこういうふうに使おうと思った通りに、24時間1秒もいかない(苦笑)。なので、仕事と家庭と趣味をこういうバランスで両立させようみたいなことを決めるのもやめましたし、全部が一緒で、時にぐちゃぐちゃです(笑)。あとは予定をたくさん入れないで、常に6、7割ぐらいにしていて、何かあったときに親としてすぐ動けるように、スケジュールを少しあけておくようになりました。――わかります(笑)。子どもがいると、こちらがいくら予定を立てても、全部ひっくり返ることなんてざらですよね(笑)。どっちでもいいよ、というふうにしておくと安心。なので、「私は今から曲を書くので集中したいです」と、部屋に入って楽曲制作をするということもなく。娘がリビングで遊んでいて、私は横でギターを弾きながら曲を書いていて、すごく集中力が高まってきたときに、「晩ごはん何?」と言ってきたり(笑)。急に友達を連れてきて家がカオスになったり(笑)。とはいえ、気にせず曲を書き続けて、家族の歌もあったりします。――お子さんもアーティストになりたい、というようなことは?いまのところその感じはないですね。でも、私がゼロからものを作っている姿を幼い頃から見ているので、娘も何かを作るということはすごく好きです。工作なり、フィギュアなり、売っているものを買うんじゃなくて、「あ、これ作りたい」と粘土など買ってきて、一から作っていますね。――素敵ですね。では、矢井田さんご自身が美容面で気をつけていることはりますか。気をつけなきゃと思いながらもなかなかできないんですが、一番自分に合っているのは、化粧水を洗面所だけじゃなく、もう1箇所ぐらいに置いておいて、気がついたときにちょっとスキンケアをすることぐらいですね。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負を教えてください。「アイノロイ」で、これまでにはない、新しい矢井田 瞳の一面をYaffleさんやみなさんに引き出していただけた感じがあります。そんなふうにこれからの音楽人生でも、また新たな側面をお見せできるように、少しずつ歩んでいけたらいいですね。取材後記デビュー24年目を迎えたシンガーソングライターの矢井田 瞳さん。晴れた日の昼下がり、ananwebの取材をさせていただき、心地よいお天気に負けない明るいエネルギーで撮影もインタビューも応えてくださいました。ママになっても変わらずご活躍の矢井田さんのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・園山友基取材、文・かわむらあみりヘアメイク・太田瑛絵矢井田 瞳PROFILE1978年、大阪生まれ。シンガー・ソングライター。通称“ヤイコ”。19歳でギターと出会い曲作りを始める。2000年5月、関西限定シングル「Howling」でインディーズデビュー。7月、1stシングル「B’coz I Love You」でメジャーデビュー。2ndシングル「My Sweet Darlin’」が大ヒット。10月にリリースした1stアルバム『daiya-monde』は初登場1位を獲得、ミリオンセラーとなる。その後も数々のヒット曲を世に送りだし、全国ツアーの開催やイベント出演等、精力的なライブ活動を行う。また国内の活動に並行して、UKレーベルからもリリース、UKツアーを成功に収めた。2023年7月から全国8ヶ所でアコースティックツアー『ギターとハーモニカと』を開催、「8月15日=ヤイコの日」に千秋楽を迎える。10月19日、ニューシングル「アイノロイ」を配信リリース。InformationNew Release「アイノロイ」2023年10月19日配信リリース写真・園山友基 取材、文・かわむらあみり ヘアメイク・太田瑛絵
2023年10月26日【音楽通信】第147回目に登場するのは、音楽映画『キリエのうた』で主人公のキリエ役に大抜擢され、この度「Kyrie(キリエ)」名義の1stアルバム『DEBUT』をリリースする、アイナ・ジ・エンドさん!小さい頃からまわりには音楽があふれていた【音楽通信】vol.1472023年10月13日から公開される監督:岩井俊二×音楽:小林武史による音楽映画『キリエのうた』の主役に大抜擢され、銀幕デビューを果たしたアイナ・ジ・エンドさん。今年6月に2015年から所属していたBiSHが解散し、現在はソロ活動を本格化させているなか、初主演作『キリエのうた』では歌うことでしか“声”が出せない路上ミュージシャン「Kyrie(キリエ)」を演じることに。その「Kyrie(キリエ)」として歌う1stアルバム『DEBUT』が10月18日にリリースされるということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――まずは、あらためて幼い頃の音楽環境から教えてください。母はアイドル歌手をしていたことがあって家でもよく歌っていましたし、父はギタリストをしていたこともあったので、小さい頃からいつもまわりには音楽があふれていました。歌だけではなく、4歳からダンスを習っていたので、生まれたときからそういう環境だったのはありがたいですね。歌もダンスも身近にあったので、ここまでくることができました。――芸能界に入る前に、影響を受けたアーティストはいらっしゃるんですか?たくさんいます。なかでもBUMP OF CHICKEN、YUIさんや加藤ミリヤさん、ジェシー・ジェイというイギリスの女性シンガーやビョークを深く聴いていました。もしもこのなかの誰かの楽曲をイントロクイズにしてもすぐ答えられるぐらい(笑)、好きです。――2015年3月にBiSHを結成され、2016年5月にメジャーデビューし、2023年6月29日に東京ドーム公演で解散されました。8年間のグループ活動は、アイナさんにとって糧となりましたか。もちろん糧になりました。グループ活動は、年頃の女の子が集まって過ごすのでモヤモヤしてしまう時期もあったり、逆に女同士でなんでもぶつかり合えたり、楽しい空間もあったり。いろいろな時期を8年間過ごしてきたので、人としてかなり強くなったという自負はありますね。この8年間はなんの後悔もない日々だったと思います。――グループ活動中の2021年から、全作詞作曲の1stソロアルバム『THE END』を発売するなどソロ活動をされてきました。いまはソロアーティストとしてはもちろん、俳優業も。グループに在籍しながらのソロとまったくのおひとりとしての活動の違いを実感することはありますか。私はBiSHにいる時期に、椎名林檎さんや尾崎豊さんのカバーソングをテレビの歌番組で歌う機会をいただけることがありました。その出演時に歌う私の姿を見て、「BiSHのあの子、歌がヘタだったな」とか「2度とテレビに出るな」というようなことをネットで書かれたりすることもあって、ただ単に私がひとりで出ているだけでもBiSHの顔に泥を塗るような気持ちになっていたんですよね。逆に、「BiSHのあの子の歌いいよね、聴いてみよう」と、褒められたときはすごく嬉しいです。だから、よくも悪くもずっとBiSHがつきまとっていたところ、解散してからはBiSHという看板がないので、何をしでかしても全部自分の責任。自由になった感覚です。こうしてインタビューを受けさせていただくときもそうで、BiSHの曲だと自分の着眼点はここだけどほかのメンバーだとこうだろうな、と考えて発言することも。それは勉強になりましたが、いまはいい意味でも悪い意味でも、自分だけのこと。すごく話しやすいです。もちろんね、さびしさはそれと同じぶんありますけども。――アイナさんの心に羽が生えたんですね。そうかも! 心境の変化は、自由になったことが一番大きいですね。岩井俊二×小林武史×アイナ・ジ・エンドによる名作――10月18日に「Kyrie」としてのアルバム『DEBUT』をリリースされます。すべての楽曲を小林武史さんがサウンドプロデュースし、劇中で流れる音楽とは異なるアレンジでアルバムに収録された作品ですが、アイナさんも作詞作曲に携われていますね。映画主演だけではなく、Kyrieとしての音楽制作もあるとお話を聞かれたときは、まずどう思われましたか?実は映画の主演を務めさせていただく段階で「曲を作っていつかアルバムにできたらいいよね」という話も出ていたんです。でも、ここまで完成された作品を作ることができるとは考えていなかったですし、小林さんもプロデュースなどに加わってくださるなんて夢のようで、本当にうれしかったです。――以前、別の機会に『キリエのうた』のお話を聞かせていただくことがありましたが、岩井俊二監督は「アイナはすごいんです」と小林さんに紹介されたとおっしゃっていました。2曲目「ひとりが好き」は岩井監督のリリックの「るるる」「ららら」というワードも印象的ですし、心地良いメロディの作曲はアイナさん、かわいいアレンジは小林さんですが、どのように作っていかれたのですか。「ひとりが好き」は初めて台本をいただいたときに、すでに5番ぐらいまで岩井監督が歌詞を書いていたんです。大事なシーンで歌う曲なので、大事な曲だと思って、まず自分のなかで歌詞を咀嚼することから始めました。そしてメロディを考えて、パズルを組み立てるように言葉を並べていってできた曲です。岩井監督の言葉が、メロディを呼んでくれた感じでした。――この「ひとりが好き」や「幻影」「ヒカリに」の3曲は、岩井監督との共作ですが、監督との作品作りはいかがでしたか。“Kyrieとして歌う”ということで、岩井監督からアドバイスをいただいたり、逆にアイナさんから提案したりすることもあったのでしょうか?ありました。歌詞ができてからまず岩井監督に預けて、修正があったら教えてくださいとお伝えしていたので、そのお返事をいただいて修正してというふうに仕上げていったこともありました。撮影の合間も、岩井監督はギターやピアノも弾けるのでコードを教えてくださったりと、私よりも圧倒的に音楽的知識をお持ちです。――アイナさんご自身の曲作りは、主にギターで作っていかれるのですか。そうです。コードはわからないので、ポロンとギターを鳴らして好きな音を並べたうえで、ボイスメモにとってDTMに落としていくというスタイルです。自分の曲の作り方もさまざまなんですが、ギターで作った曲は「キリエのうた」が初めてでした。――それまではどのように作曲していんでしょう?DTMで打ち込んでみたり、口で全部歌ってあとでコードをつけたり、いろいろなやり方で作っていました。ギターで曲を作ることはやったことがなかったので、今回、きっかけをくださったなと思います。――音楽制作において、一番ご苦労されたところはあるんでしょうか。撮影時期が、ちょうどBiSHの解散までのラストスパートの時期だったので、とにかく忙しくて。2本同時にツアーをまわったり、夏は個人でジャニス・ジョプリンを努めた主演舞台があったり。ひと息つく間もなく1年が過ぎ去っていくなかでの曲作りだったので、毎日1、2時間しか寝ていなくて、精神的にも追いつめられたことはありました。――大変でしたね。でも倒れることなく作品が完成しました。人間うまくできてるんだな、と思ったんですが、限界に近づいてくると勝手に病気になるんですよね。「休みなさい」というカラダからのサインがちゃんとくるので、サインに気づいて、そのときどきでできることをやっていけば、どんなに忙しくても自分の逃げ場所を作ることができるんです。そう気づいてからは、曲作りが少し楽になりました。――アイナさんが作詞作曲された5曲目「ずるいよな」は、劇中でも歌うシーンが印象的でしたが、どのように作っていかれましたか。実は「ずるいよな」だけ、すでに2020年にできていた曲です。すごく大切な曲すぎて、いままで世に出していなかったんですよ、生半可な気持ちでは出せないと。でも今回、岩井監督の作品に出演させていただくと決まり、「ここで絶対に出したい、ここで輝くためにできた曲だったんだな」と思って発表しました。――ということは、発表された「ずるいよな」は当時のお気持ちが曲に込められていると?そうですね。大切なお姉ちゃんのような存在だった方が亡くなった時にできた曲です。映画『キリエのうた』も松村北斗さん演じる夏彦にとって大切な人をずっと追い求めている、勝手にいなくなってずるいよな、という心情ととても合うと感じて。むしろいまから夏彦の気持ちになって曲を書くより、この「ずるいよな」という曲がこの時を待っていてくれたんじゃないかというぐらいぴったりだったので、はめこみました。――導かれて完成した曲なんですね。本当に……人の死というものは、自分が思っているよりも、とても重い。実際にその立場になっているときにしか書いてはいけないんだと思いました。だから「ずるいよな」は自分にとっては、思い出の深い曲です。――11曲目「燃え尽きる月」はストリングスとピアノに彩られた楽曲で、サビに向かい静寂からとてもパワフルに聴こえてきます。ベーシストとして参加している、なかむらしょーこちゃんという人がいるんですが、ピアノもギターも弾ける人で。あるとき、美しいピアノを弾いてくれて「アイナちゃん、これにメロディつけたら?」と送ってくれて。1週間ぐらい毎日パソコンに向き合って、そのピアノにメロディをのせて、歌詞も書いては消してを繰り返して生まれたのが「燃え尽きる月」です。Kyrieは普段声が出せないので、本当に声を出して歌った瞬間、きっとシャウトのようになってしまうのではないかな、声がしゃがれるんじゃないかなと思って、終わりとサビは叫ぶように歌っています。――Kyrieとして歌っているけれど、アイナさんでもあるわけですが、歌唱法もやっぱり違ったんですね。全然違っていたかもしれないですね。Kyrieとして歌うことがなかったら「燃え尽きる月」の歌い方は生まれなかったかも。Kyrieとアイナ・ジ・エンドの差別化ということは、自分でもまだわからなくて。歌っているときの心情は私の心ひとつしかないので、いまもまだモヤモヤしています(苦笑)。――そう思うと、より一層かつてない作品に仕上がっているんですね。アイナさんが作詞作曲された曲、岩井監督との共作、小林さんが作られた曲などバリエーションがありますが、ご自身で全部作った曲のほうが気持ちが入るというようなことはあるんですか。私は歌が好きだから、誰のどの歌でも楽しくて、心も声もざわめき出すんですよね。楽しい、というのも面白おかしいという意味ではなく、生きている感覚を得られるという意味での楽しさ。だから、小林さんが作ってくれた歌なんて、生きていて歌えると思っていなかったので、本当にうれしくて。「もらったもの」という小林さんが手がけた女性キーの曲が収録されているんですが、どう考えても小林さんの心情のような歌詞で……まあ、違うと思いますけれども(笑)。ただ、歌う際には小林さんが歌っているように、とぼとぼ男性のように歌いたいと思ったのがきっかけで4つぐらいキーを下げたんですよ。私は小林さんが歌っていると思って歌っているんですが、そういうことも本当に楽しくて。だから、小林さんが作った曲でも、自分が作った曲でも何も変わらず、全身全霊で歌っています。――劇中ではKyrieの青いワンピースも印象的でしたが、アルバムのジャケ写も青いドレスですね。“Kyrieブルー”といいますか。劇中で広瀬すずさん演じるイッコさんが、初めて服を買いにKyrieを連れ出していった際、「これなんてどう?」と青いワンピースをかざしてくれるんです。初めて買ってもらった衣装がブルーで、Kyrieも大切にする色として、ジャケ写でもブルーの衣装を着ています。――『キリエのうた』に続いて、岩井監督自らリメイクした1992年制作の深夜ドラマ『夏至物語』の【完全版】で主演されたそうですね。再度のお芝居はいかがでしたか。まず『夏至物語』自体は、1992年と同じような雰囲気のところもありますし、不思議なお話でした。演じるのも、すごくやりやすかったです。多分、岩井監督と感性が似ているからそう思えたのだと感じますが、岩井監督の現場しか経験したことがないので、ほかの方とご一緒したら本当は女優に向いていないとなるかも。――いえいえ、天性のものがあるからこその抜擢です。さらに初めて組むのが岩井監督の現場というのは、とてもスペシャルなことですね?スペシャルですね。自分でも、そう思います。一瞬たりとも腐らないように生きていきたい――お話は変わりますが、最近、オフの日はどのように過ごされましたか。ダンスと歌を習いにアメリカに行きました。行って本当によかったですし、やっぱり「自由に生きよう」と思いました。――それは好きな先生がいらっしゃる?妹の好きな先生がアメリカにいるので、私はついていきました。L.A.とN.Y.に行ったんですが、L.A.では人と目が合うと笑ってくれたりと、なんかいいなあ、日本でもやろうって思って。最近、人と目が合うと自然に微笑むことができる自分がいて、自分の中での変化がありましたね。――充実されている感じがします。学びに行かれながらも、リフレッシュもできたんですね。リフレッシュできました。でも『キリエのうた』の公開前だったからか、心はずっとKyrieでしたね。映画が公開されて、落ち着いたら、ひとりでまたどこかに旅に行きたいなと思っています。――お洋服などもアメリカで買ってきたりしたのでしょうか。普段はどんなファッションがお好きなのですか。古着屋さんをたくさんまわって、服も買ってきました。ファッションは、シンプルなものが好きなんですが、少し気の利いたものが好きで。――気の利いたというのはどんなものに?たとえばですが、白いTシャツと黒いズボンだったら、ネックレスは世界にひとつだけの友達が作ってくれたビーズのネックレスをするだとか。そこでありふれたものをつけないんです。シンプルな服に合わせるんであれば、靴に色を入れるとか、スカーフを巻くとか。誰にも気づかれない程度の気遣いというのが、自分のなかでのファッションの好きなところです。古着にしても、まわりは誰もわからなくても、こだわりの昔のミリタリーのものを着るとテンションが上がります(笑)。――素敵ですね。美容面では、気をつけていることはありますか。気をつけたい時期はがんばれるんですが、どうでもいいとなったら、何もしないです(笑)。食事でも、納豆とご飯と味噌汁をめっちゃ食べる時期があるのに、朝から晩までファーストフードばっかりというときも。美容情報は冗談抜きで、美容室に行っても「anan」をガチ読みしています。ただ、昔は断食してダイエットしたこともあったんですが、容姿や体型を追求するのは難しいですよね。心がすさんでいったら元も子もないので、まずは心の安定が一番だと思っていて、無理をしないようにしています。――今後も役者のお話があったら、また取り組まれますか?してみたいですね。でも今回、広瀬すずちゃんと松村北斗さんがいてくれたから演技ができたので……。ふたりがお芝居の教科書なので、私ひとりでも戦っていけるぜ! というような誇らしげなマインドはまったくないので、お仕事をいただけたらがんばってみたいです。今回はお芝居でありながらも、少し歌を歌わせていただいているので、やっぱり歌が自分の主軸ではありますね。――いろいろなお話をありがとうございました! 最後に、アーティストとしての抱負をお聞かせください。腐らないようにしたいです。自分のまわりにいる人は全然腐っていないし、最高の人がいっぱいいるんですが、せわしない東京で生きていて、なんだか毎日何かに追われていて。大きく深呼吸できずに眠ることがあると、「このまますぐ死ぬかもな」と思うんですよ。でも「それではもったいない」と思ったときに、一瞬たりとも「腐ってはいけない」と。忙しさにまみれてありふれたことを言って、そつなくこなして、自分の本心を隠して生きていくのって、すごくもったいないし不健全。なので、なるべく心を丸出しにして、人さまに迷惑をかけない程度に生きていけば、腐らないでいけるかな、いい歌詞も書けるんじゃないかな、と。腐らないように生きていこうと思います。取材後記アーティストとしての実力はもちろんのこと、初主演映画『キリエのうた』ではひときわ光彩を放つ、アイナ・ジ・エンドさん。以前、岩井俊二監督にお話をうかがった際、偶然あるバンドのオンラインライブにゲスト参加していたアイナさんに衝撃を受けて主役に抜擢したと話されていたのですが、それも納得の存在感です。小林武史さんも音楽に携わり、傑作が誕生しました。そんなアイナさんの「Kyrie」としての1stアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみりアイナ・ジ・エンドPROFILE2015年“楽器を持たないパンクバンド”「BiSH」のメンバーとして始動、翌年メジャーデビュー。ほぼ全曲の振付も担当。2021年、全作詞作曲の1stソロアルバム『THE END』を発売、ソロ活動を本格化。2022年、ブロードウェイミュージカル「ジャニス」で主演のジャニス・ジョプリン役を務める。2023年6月、BiSH解散。現在はソロとして活動中。2023年10月13日より音楽映画『キリエのうた』公開。10月18日、「Kyrie」名義での1stアルバム『DEBUT』をリリース。InformationNew Release『DEBUT』(収録曲)01.キリエ〜序曲02.ひとりが好き03.幻影04.宙彩(ソライロ)になって05.ずるいよな06.名前のない街07.ヒカリに08.前髪上げたくない09.虹色クジラ10.もらったもの11.燃え尽きる月12.キリエ・憐れみの讃歌2023年10月18日発売*収録曲は全形態共通。(CDのみ)AVCD-63505¥3,850(税込)(CD+DVD)AVCD-63503¥6,050 (税込)【DVD収録内容】01.キリエ・憐れみの讃歌-Music Video-02.Kyrie『DEBUT』 Making Movie -Special Contents(CD+Blu-ray)AVCD-63504¥6,050 (税込)【Blu-ray収録内容】01.キリエ・憐れみの讃歌-Music Video-02.Kyrie『DEBUT』 Making Movie -Special ContentsNew Release「『キリエのうた』オリジナル・サウンドトラック 〜路花〜』2023年10月18日発売(収録曲)[DISC1] Music by 小林武史01 .BLUE & GREEN LIGHT02. PREMONITION03. Christ ist erstanden (ユーデンケーニッヒ)I (Gut Guitar)04. REVELATION05. PREMONITION Ⅱ06. 時のかけら07. Christ ist erstanden (ユーデンケーニッヒ) II (Piano)08. BAD DEVELOPMENT09. いくつかの出会い (Piano)10. Christ ist erstanden (ユーデンケーニッヒ) Ⅲ (Cello & Piano)11. DEEP CONFUSION12. JAZZY LIGHT CITY13. いくつかの出会い (Gut Guitar)14. Christ ist erstanden (ユーデンケーニッヒ) Ⅳ (Lute & Viol)15. Christ ist erstanden (ユーデンケーニッヒ) Ⅴ (Psaltery & Voice) ※Vocal: Hana Hope16. 憐れみの讃歌・海17. ホワイト ラスト シーン[DISC2] V.A.01. Christ ist erstanden:ヴェリタス城星学園中学校・高等学校02. Midnight Zoo(天王寺動物園 2011):御手洗礼(七尾旅人)03. 名前のない街/邂逅:Kyrie(アイナ・ジ・エンド)04. 帰れない二人:安藤裕子05. FUN:大塚 愛06. Attachment:花澤香菜07. 名前のない街/雨模様:Kyrie(アイナ・ジ・エンド)08. 燃え尽きる月:Kyrie(アイナ・ジ・エンド)09. 憐れみの讃歌/風琴:Kyrie(アイナ・ジ・エンド)10. 前髪上げたくない:Kyrie(アイナ・ジ・エンド)11. 幻影:Kyrie(アイナ・ジ・エンド)12. Lazy:仲村宗悟13. ずるいよな:Kyrie(アイナ・ジ・エンド)14. ひとりが好き:Kyrie(アイナ・ジ・エンド)15. AM11:00:acane and 松坂珈琲(笠原秀幸)16. あなたとのキス:集団パラリラ17. 春の音:橋本桃子18. 憐れみの讃歌/路上主義:Kyrie(アイナ・ジ・エンド)19. 虹色クジラ:Kyrie(アイナ・ジ・エンド)20. 音痴の聖歌:御手洗礼(七尾旅人) & 小塚路花(矢山花)(2CD)AVCD-63527/8¥4,400(税込)『キリエのうた』Information原作・脚本・監督 岩井俊二企画・プロデュース 紀伊宗之(『孤狼の血』シリーズ『シン・仮面ライダー』『リボルバー・リリー』ほか)出演者:アイナ・ジ・エンド松村北斗黑木華/広瀬すず2023年10月13日(金)全国公開制作:ロックウェルアイズ配給:東映©︎2023 Kyrie Film Band取材、文・かわむらあみり
2023年10月12日【音楽通信】第146回目に登場するのは、バラエティ番組でも大活躍中の渋谷凪咲さんが卒業を発表した、大阪を拠点とするアイドルグループ、NMB48!卒業を決めたのは、ドラマ出演がきっかけ【音楽通信】vol.146秋元康さんが総合プロデューサーを務め、大阪の難波を拠点に活躍しているアイドルグループ、NMB48。2011年7月、シングル「絶滅黒髪少女」でメジャーデビューして以降、じわじわと全国へ人気が拡大し続けています。そんなNMB48の中心的メンバーであり、近年は個人での活動でバラエティ番組などでのウィットに富むコメントでも知られる渋谷凪咲(しぶやなぎさ)さんが、2023年8月の劇場公演でグループの卒業を発表。2023年10月4日には、渋谷さんの卒業を記念した28枚目のニューシングル「渚サイコー!」をリリースされたということで、今回は渋谷さん、山本望叶(やまもとみかな)さん、上西怜(じょうにしれい)さん、青原和花(あおばらわか)さんにお話をうかがいました。――おひとりずつ自己紹介からお願いします。渋谷NMB48に加入して11年目の渋谷凪咲です。上西8年目になりました上西怜です。山本6年目の山本望叶です。青原まだ加入して9ヵ月の青原和花です。――みなさまよろしくお願いします。まずは渋谷さんが卒業発表をされたということで、あらためて卒業を決めたきっかけや現在の心境からお聞かせください。渋谷卒業を決めたきっかけは、今年、ドラマ『だが、情熱はある』(日本テレビ系)に出演させていただいたことです。お芝居が難しくて全然できなかったんですが、できないということでさえ、すごく楽しくて毎日ワクワクして。「ここでもっと勉強して成長したい」と思ったときに、それはNMB48に加入したときと同じような感情だと気づいたんです。加入したばかりのときは歌もダンスも全然できなくて、怒られてばかりだったんですが、できないことさえも楽しめてこれまで11年間やってこられました。そうやって本気でやってきたアイドルのように、今度は熱くなれるお芝居というお仕事に新たに出会えたので、ぜひ向き合ってみたいと感じて。また、たくさんの共演者の方々とご一緒させていただくなかで、年齢に関係なく、みなさんとてもキラキラされていて、会うたびにパワーをいただけるんですよね。それは好きなこと、やりたいことに全力で、心からお仕事を楽しんでいらっしゃるからで。私もそういうふうに心がときめいたときに、ときめいた場所に行ってみたいなと。ずっと輝き続けられる人になりたくて、卒業を決めました。――渋谷さんが卒業すると聞いたとき、上西さん、山本さん、青原さんはどのように感じましたか?上西ステージで卒業発表していらっしゃる凪咲さんを見て、そこで初めてしっかりと実感しました。私の中で凪咲さんの存在がすごく大きかったんだと、あらためて気づいたら、さみしくなって……。でも、小嶋花梨ちゃんがみんなを代表して「ありがとう」という感謝の言葉を凪咲さんに伝えている様子を見て、私も悲しむのではなく、感謝の気持ちで見送らないとダメだなと。卒業までの期間、いっぱい思い出を作りたいです。山本卒業発表されたときの劇場公演に一緒に出演させていただいていたのですが、卒業の言葉を聞いた瞬間、やっぱりさびしい気持ちが一番大きかったです。でも、「次の夢に向かってがんばりたい」という凪咲さんの言葉を聞いて、背中を押すことが私たちの役目だと思い直しました。青原私は凪咲さんの卒業発表を知ったときは、もう驚きすぎてしばらく何も考えられないくらい落ち込みました。いまもライブでご一緒させていただきながら、日に日にさみしくなっています。渋谷凪咲らしさにあふれたニューシングル渋谷凪咲。1996年8月25日、大阪府生まれ。A型。164cm。将来の夢は女優さん。――2023年10月4日に28枚目のシングル「渚サイコー!」をリリースされました。渋谷凪咲さんのお名前から「渚」というワードが入っている卒業ソングですが、このタイトルや歌詞の第一印象はいかがでしたか。渋谷まず、めっちゃ笑っちゃいましたね(笑)。本当にシンプルでまっすぐなタイトルが面白くて、でもこれだけうれしいタイトルはないですよね。名前の漢字は違っていても「渚サイコー!」と秋元先生からいただけたこともうれしいですし、歌詞も本当に私のことが表されていて。いままでNMB48で11年間、自分らしく生きてきたなかで、いろんな方にイメージしていただいている渋谷凪咲がしっかり表れています。一般的に卒業ソングというと、しんみりしたり、切なくも美しい感じになったりするのかなと思っていたんですが、それよりもみんなが笑顔いっぱいで歌える曲になっていてすごいなって。自分の人生のテーマ曲をいただけたような喜びがあります。――上西さん、山本さんはいかがですか。上西ライブでも披露させていただいたんですが、凪咲さんのことを思いながら歌える楽曲で、まだ卒業していないのに泣きそうになる瞬間もあって、歌詞の切なさが心に響いています。卒業コンサートで歌ったら、私自身はもちろん、ファンの方もちょっと泣いちゃうかも。でも悲しい泣きではなくて、笑い泣きできるといいますか、凪咲さんにぴったりな楽曲ですよね。山本ライブで歌っている最中は、振り付けやフォーメーションなどいろいろと気にしないといけないのに、歌詞が素敵すぎて気を取られてしまうぐらいです。ライブでもファンの方が一緒に踊ってくださって、それが本当にうれしくて。今後凪咲さんが卒業された後も、ライブで毎回歌う定番曲になったらいいなと思います。――青原さんは、加入して9ヵ月で今回のシングルに初選抜されましたね。青原まさか自分を選抜メンバーに選んでいただけるとは!聞いたときはとてもびっくりしましたけど、初選抜の曲が凪咲さんの卒業シングルで一緒に歌えることが本当にうれしいです。卒業されるまでにたくさんのことを学びたいです。――「渚サイコー!」の振り付けはSEKAI NO OWARIの「Habit」などを手掛けたボーイズダンスチームのパワーパフボーイズが担当したそうですね。渋谷そうなんです。いまTikTokでメンバー全員が「渚サイコー!」のルンルンダンスというものを披露していて、1日1回投稿するようにしています。可愛くてまねしやすい振り付けなので、みなさんにも踊っていただけたらいいなあと。――ミュージックビデオの撮影で印象的だったことはありましたか。渋谷卒業後一歩踏み出すことや葛藤といった心境を表現するため、ひとりのシーンを撮影させていただいたのですが、その際、赤いドレスを着て海辺に行ったんです。そこでは撮影前日から、ずっと大雨が続いていたのですが、その撮影の時間だけ太陽が出て晴れて、また次の日から雨になって。しかも、撮影が終わったとたんに雨がまた降ってきたので、天気も味方してくれたようで、すごくうれしかったですね。上西怜。2001年5月28日、滋賀県生まれ。A型。154.5cm。将来の夢は芯の強い女性になること。上西全員で協力して作る、すごく体力を使うダンスのシーンがあって、撮影の前にダンスの先生も含めたメンバーみんなで円陣を組んだんです。いままでたくさんのシングルに参加させていただいてきましたが、初めて円陣を組んだところ、そのパワーなのかどうかわからないんですが、まったく疲れなくて。凪咲さんが真ん中にいてくださるからこそ、みんな笑顔で踊れて心がひとつになれました。山本全員の撮影シーンが終わった後に、空に虹がかかったので、この曲は絶対大ヒットする!と。天候にも恵まれて、凪咲さんの力だと思いました。青原凪咲さんをみんなで見送るシーンがあるんですが、全員が笑顔で、いつもの仲良しのNMB48の雰囲気がそのままそのシーンに表れていました。また、先ほど怜さんもおっしゃられていたんですが、凪咲さんが真ん中にいてくださることで全体の雰囲気もより明るくなっているように感じました。――カップリングの「人生は長いんだ/渋谷凪咲 with かまいたち,ダイアン,見取り図」は、渋谷さんの親交のあるお笑い芸人さんが参加されたフォーク調の軽やかな楽曲ですね。渋谷かまいたちさん、ダイアンさん、見取り図さんには、この11年間本当にお世話になって感謝しています。みなさんがいなかったらいまの自分はないぐらい引き上げていただいた11年間ですし、アイドル人生最後で最大のわがままだと思って、ご一緒に…と楽曲をお願いさせていただいたところ、本当に快く「凪咲のためになるんやったら」とOKしていただいて。大人気のみなさんが集まることなんて奇跡ですし、本当にありがたくて、幸せです。――ミュージックビデオでは、かまいたちの濱家隆一さんがギターを弾いていて驚きました。渋谷本当に濱家さんがギターを弾かれていて。「やるならコードもちゃんと覚えるわ」と、ずっとギターの練習をしてくださいました。みなさんのスケジュールが合うのが、とある日の午後10時から深夜2時までの4時間だけだったのですが、その前もみなさんずっとお仕事が詰まっているなか、急いで来てくださって。撮影中はすごく楽しくて、「青春やなあ」というような、あったかくて優しい笑顔があふれていて、本当にありがたいことだなと。11年間がんばってよかったと幸せに浸っていました。こうしてみなさんとご一緒させていただけたのも、NMB48に入ったからなので、あらためてNMB48に入ってよかったと思いました。さらにミュージックビデオでは、ずっとやりたかった横揺れする夢も叶いました(笑)。みんなチェックの衣装でそろえたりと、まるでチェッカーズのようで、私の大好きな昭和レトロな感じも入っているんですよ(笑)。また歌詞が上京がテーマになっているので、これまで私が大阪から東京に来るときに利用するなど思い出が詰まっている品川駅で撮影したり、新幹線ごしに歌ったりするシーンも。ダイアンさんたちも大阪から上京されていますし、聴いてくださるみなさんにとっても、どこか心に響くところがあって、優しく背中を押すことができる曲になったらいいなと思っています。――カップリングといえば、「Type-A」にはチームNの新曲「ジンクスとゲンカツギ」が収録されています。渋谷この曲はミステリアスで、イントロから不思議な世界観に引き込まれます。「ジンクス」をこれから「ゲンカツギ」という言葉に変えようというような歌詞なんですが、秋元先生からこの言葉を教えていただけてよかったなあと。――Type-BにはチームMの新曲「職員室に行くべきか?」が収録されています。上西大人になりたくないと思いながらも、主人公が成長していくような歌詞で。その歌詞に合わせて、どんどん大人の階段を登っていくようなイメージの振り付けになっています。私自身も、たまに反抗的な態度を取ってしまったり、まわりから「子どもと大人の間だね」と言われることがたまにあるので、自分に重ねて聴けるところも。同じように悩んでいる方にとっても、背中をそっと押してもらえるような歌詞になっているんじゃないかなと思います。――渋谷さんの卒業コンサートが12月にあるんですよね?渋谷はい、2日間あります。「NMB48 渋谷凪咲卒業コンサート day1」が12月16日に、「NMB48 渋谷凪咲卒業コンサート day2」が12月17日に、両日ともAsueアリーナ大阪で開催されます。まだセットリストなどは詳しく決まっていないんですが、2日間あるので1日目はお祭りのよう感じで、2日目は自分らしく、みなさんと笑い合えるような卒業コンサートにできたらと考えています。上西きっと凪咲さんらしい笑いあり、涙ありのライブになりそうだなと。すごくさびしいんですが、楽しみな気持ちもいっぱいです。山本卒業コンサートは、そのメンバーのアイドル人生の集大成ですし、全部が詰まったその人らしいにセットリストになっているので、凪咲さんの卒業コンサートがどんなライブになるのか、いまから楽しみにしています。青原凪咲さんは本当に面白くて笑顔がすごく素敵なので、ちょっとしんみりしてしまったり、いろんな感情になりそうですが、がんばりたいですね。NMB48はきれいなだけではない“魂のアイドル”山本望叶。2002年3月11日、山口県生まれ。B型。162.1cm。将来の夢はスターになること。――お話は変わりますが、最近、おやすみのときはどんなふうに過ごしていますか。渋谷私はずっとやりたかった乗馬に行きました。もともと戦国時代や時代劇などが好きで、武将が本気で命を賭けて戦うところがめっちゃかっこいいなあと憧れていて。武将がさっそうと馬に乗っている姿を見て「乗馬がしてみたい」と、乗馬体験をしに行きました。――実際に、乗馬されてみてどうでしたか?渋谷難しかったですね。私は恐怖心がほとんどなくて、スカイダイビングやバンジージャンプもすぐ飛べるぐらいなんです。馬に乗って走るときに、足で馬のおなかをぽんっと蹴って進んだりするんですが、蹴るのを躊躇してしまって……。するとインストラクターの方から「乗る人は王様という気持ちでいないと人にとっても馬にとってもよくないです」と学ばせていただいて、それからはしっかり自分も女武将として、覚悟を持ちました。馬に乗っているときは「自分は武将なんだ」という気持ちを持ちつつ、馬が進んだら「よしよし」とちゃんと褒めてあげるんですよね。乗馬体験は、私が芸能生活において、これからもいろいろな場所で覚悟を決めていくときの心構えにも通じていると感じました。今後、申し訳ないな、と思うこともたくさんあると思うんです。でも、その場所に行ったからには「自分は選ばれた人なんだ」と自覚を持って挑ませてもらおうと。そして、すべてのことに対して「ありがとうございます」という、感謝の気持ちを伝えていきたいです。上西おやすみといえば、そのたびに家の掃除をしています。ライブの期間は掃除ができなくて、どんどん部屋が散らかってしまうんですが、部屋の汚れは心の乱れだと思うので。掃除するだけで心もすごくスッキリします。あとはもう秋になるので、部屋の模様替えもして、どんどん自分の好きな部屋になっていくのが楽しいですね。山本私はうさぎカフェに行くのが好きで、よく行くところがあるんですが、お気に入りのウサちゃんがいるんです。そのウサちゃんに会いに行くことが、私の癒やしの時間なんですよね。一人暮らしで、うさぎが飼いたくても飼えないので、カフェに行ってその欲を満たしています(笑)。渋谷通ってるんだね?山本通って癒やされています。青原和花。2004年1月6日、大阪府生まれ。A型。155.5cm。将来の夢は世界中の人に笑顔や希望を与えられる人になること。青原私はライブのリハーサル期間があって、なかなかゆっくりできる時間が少なかったので、1日やすみがあると寝ています。母に、本当に心配されるくらいで、この前なんて1回も起きることなく18時間ずっと寝ていました。渋谷NMB48に入りたてのときは、私もそうやったなあ。生活リズムや体力の使い方などもう全然変わるから。出会う人の数もライブで聴く音も浴びる光も、すべて日常生活では味わえない感動をもらっているぶん、慣れていくまではけっこうしんどかったなって。最初の頃は、カラダにまだ免疫がついていなくて、私もめっちゃ寝ていましたね。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、渋谷さんから今後の抱負をお願いします。渋谷ananwebをご覧の皆さんのなかには、NMB48の名前は聞いたことがあるけれど、それほど知らないという方もたくさんいらっしゃると思うので、今回を機会に少しでも私たちにご興味を持っていただけたらうれしいです。NMB48は大阪のアイドルということで、面白いこともしたり、泥臭くさいライブをしたり。みんな汗だくになりながらも、笑顔いっぱいに楽しく踊っている姿はとても魅力的。そんなきれいなだけではない“魂のアイドル”というところも見ていただきたいですね。実際に現場に行きたいとなったら、私の卒業コンサートやクリスマスライブもあるので、お友達を誘って来ていただけたら、絶対に後悔させないと誓います。そして私のことを知ってくださっている方がいるとしたらうれしいですが、NMB48のYouTubeでは「渚サイコー!」のミュージックビデオも観ることができるので、大喜利だけじゃなく、11年間アイドルをやってきた姿もぜひ観ていただければと。これからもNMB48を応援よろしくお願いします。取材後記大阪の難波から全国へと人気が広がっているNMB48。今回ananwebでは渋谷凪咲さん、上西怜さん、山本望叶さん、青原和花さんの4人にインタビューさせていただきました。渋谷さんが乗馬で「女武将として覚悟を持ちました」と話され、その心構えはこの先の芸能生活での覚悟にも繋がるのだというマインドをうかがい、感銘。魂のアイドルグループ、NMB48はこれからも多くの方を笑顔にするに違いありません。そんなNMB48のニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみり写真すべて©UNIVERSAL MUSIC LLC.NMB48PROFILE秋元康さんが総合プロデューサーを務めるアイドルグループ、NMB48(エヌエムビーフォーティーエイト)。東京・秋葉原のAKB48、名古屋・栄のSKE48に続いて、大阪・難波に誕生し、拠点としている。“会いに行けるアイドル”をコンセプトに、2010年10月に活動開始。2011年7月、シングル「絶滅黒髪少女」でメジャーデビュー。2023年3月にニューアルバム『NMB13』、10月4日にニューシングル「渚サイコー!」をリリース。12月16日(13:30より)「NMB48 渋谷凪咲卒業コンサート day1」、17日(16:00より)「NMB48 渋谷凪咲卒業コンサート day2」を両日とも大阪・Asueアリーナ大阪で開催。12月16日(18:00より)「NMB48 クリスマスパーティー 2023」も実施。InformationNew Release『渚サイコー!』(収録曲)01. 渚サイコー!02. 人生は長いんだ / 渋谷凪咲 with ダイアン、かまいたち、見取り図03. ジンクスとゲンカツギ / Team N04. 渚サイコー! (off vocal ver.)05. 人生は長いんだ (off vocal ver.)06. ジンクスとゲンカツギ / Team N (off vocal ver.)2022年10月4日発売※通常盤は3曲目・6曲目以外は全形態共通。※通常盤は初回プレス限定封入特典として、オリジナル生写真(全メンバー57種のうち1枚をランダム封入)あり。(通常盤 Type-A)UMCK-5735(CD+DVD)¥1,676(税込)【DVD収録内容】「渚サイコー!」 (ミュージックビデオ)、「渚サイコー! 」(ミュージックビデオのメイキング)、「渚サイコー!」 (ジャケット撮影のメイキング)(通常盤 Type-B)UMCK-5736(CD+DVD)¥1,676(税込)※3曲目は「職員室に行くべきか? / Team M」、6曲目は「職員室に行くべきか? / Team M (off vocal ver.)」を収録。【DVD収録内容】「渚サイコー!」 (ミュージックビデオ)、「人生は長いんだ」 (ミュージックビデオ)(通常盤 Type-C)UMCK-5737(CD+DVD)¥1,676(税込)※3曲目は「恋のヘタレ / Team BII」、6曲目は「恋のヘタレ / Team BII (off vocal ver.)」を収録。【DVD収録内容】「渚サイコー!」 (ミュージックビデオ)、NMB48 Summer Fes. 2023 〜アッチッチーム祭り〜:「命のへそ / Team N」、「なぜ、僕は立ち上がるのか? / Team M」、「スワンボート / Team BⅡ」、「蕾たち / 9期研究生」(劇場版)PDCS-5005(CD)¥1,047(税込)(収録曲)01.渚サイコー!02.人生は長いんだ / 渋谷凪咲 with ダイアン, かまいたち, 見取り図)03.人生は長いんだ / 渋谷凪咲04.渚サイコー!(off vocal ver.)05.人生は長いんだ(off vocal ver.)取材、文・かわむらあみり
2023年10月05日【音楽通信】第145回目に登場するのは、ダンサー史上初めて日本武道館単独ダンスライブ公演を即日完売させた、結成15周年の世界的ダンスパフォーマンスグループ、s**t kingz(シットキングス)!ダンスに出会った4人が「s**t kingz」になる写真左から、NOPPO、shoji、kazuki、Oguri。【音楽通信】vol.145アメリカ最大のダンスコンテスト「BODY ROCK」で、2010年と2011年に連続優勝した、世界が注目するダンスパフォーマンスグループ、通称「シッキン」ことs**t kingzのみなさん。世界各国からオファーが殺到し、これまで20か国以上を訪問したほか、三浦大知さん、BLACKPINK、BE:FIRSTなど国内外のアーティストの振付楽曲はなんと400曲以上という引っ張りだこのコレオグラファーとしても知られるなど、国内外から絶大な支持を得ています。日本ダンス界のパイオニアとして、常に表現者として挑み続けるs**t kingzが、2023年9月8日に“見るダンス映像アルバム”の2作目となる『踊救急箱(オドキュウキュウバコ)』をリリースされるということで、みなさんにお話をうかがいました。――まずおひとりずつ、ダンスを始めたきっかけとともに自己紹介からお願いします。OguriOguriです。小学校の頃、安室奈美恵さんやSPEED、DA PUMPといった歌って踊るアーティストの人気が高く、僕も好きになって振り付けのまねをしていました。ただ、そこからダンスに踏み出すには、身近にダンスをやっている人もいない時代だったこともあり、そのままになっていたんです。高校1年生の時に、小学校のときにはなかったインターネットが出てきて、そこでダンスを習いたくて検索してみたら、近くにスタジオがあることがわかり、行ったらどハマり。ダンスには、出会うべくして出会いました。影響を受けたダンサーはいっぱいいますが、しいて言うならs**t kingz結成のきっかけにもなったショーン・エバリストというアメリカのダンサーのダンスは当時、ものすごく新鮮で「こういうダンスしたい」という目標でしたね。shoji僕は大学からダンスを始めて、誰かに憧れるというよりは、踊れることそのものに憧れていました。さまざまなクラブなどにダンサーを見に行ったり、少しずつネットでいろいろなダンサーを検索したり、発見するとワクワクして。当初はとにかく僕も「踊れるようになりたいな」という気持ちだけで、ダンスを始めました。shoji/s**t kingzのリーダー。類まれなる発想力と実行力はダンス界だけでなく、多くの業界関係者に影響大。俳優「持田将史」として2020年にTBS日曜劇場『半沢直樹』、NHK連続テレビ小説『エール』に出演。――なぜそんなに踊れるようになりたいと思われたのでしょうか。shojiそもそも音楽が好きなんですが、当時はまわりもそんなにダンスをやってきたことがない世代で、みんなで手探りで練習すること自体が、すごく楽しかったんですよね。お互いに刺激しあって、練習して、みんなで頑張ってできるようになろうという環境そのものがすごくワクワクしたんです。NOPPOダンスも、入りやすいヒップホップやジャズでもなく、レゲエから始めたんでしょう?振り切り方がすごい(笑)。shojiそうだね(笑)。当時少しずつレゲエがクラブでもかかり始めていて、レゲエだけのイベントも開かれるようになって、その盛り上がり始める流れに入って開拓している感じも楽しかったというか。日本の中でまだ完成しきっていない世界に入っていく感じがあったかもしれないね。kazuki僕は兄もダンサーなんですが、兄が小学生の頃にダンスをやりたいと言い出したことが、ダンスをするようになったきっかけです。地元が神奈川県にある湘南の田舎町で、近くにダンススタジオがなく、両親が隣町ぐらいまで踊れる人を探して、公民館でダンスのクラスのようなものを兄のために開いたんですよね。みんな踊れないんですが、最低5人はいないとクラスを開けないので、親と兄と兄の友達といった具合に人を集めて、身内だけでレッスンしているのを見ていました。僕も踊りたかったんですが、年齢制限があったので入れなくて。その間、ダンスしたい気持ちがどんどん大きくなって、その後参加できるようになってからは、兄のまねをしてダンスを始めました。みんなで踊ることが楽しくて、毎週レッスンの日は楽しかったです。kazuki/幼少の時期から才能を発揮、ジャンルの垣根を超えたダンススタイルに定評あり。群を抜く振付力・演出力でK-POPアーティストや木村拓哉、Nissyなどの大規模ライブの演出を数々担当。――お兄さん以外にkazukiさんが影響を受けたダンサーの方はいるのでしょうか。kazuki小中学生の頃はまだYouTubeもなかった時代なので、テレビで芸能人が踊っている姿ぐらいしか見る機会はなくて、東京のダンス状況も知りませんでしたね。ただ、ダンスをするようになってNOPPOと出会った頃ぐらいからは、ダンサーっていっぱいいるんだなとわかったときがあって。僕は湘南の中でも田舎町に住んでいるというお話をしましたが、NOPPOは湘南の中でも都会のほうに住んでいて(笑)。その都会のダンススタジオ主催のコンテストに僕は仲間と出て、NOPPOはそのスタジオのレッスン生としてコンテストにも出ていて、いろんな世界があるんだなと子どもながらに思って、それからはNOPPOと同じスタジオに通うようになりました。NOPPO僕は妹が先に家の近くのダンススクールでダンスを始めて、僕もやってみようかなと、小学校からダンスを始めました。当時はスタジオというものがなく、公民館を借りてレッスンをしていたんですが、習うというよりも遊ぶ感覚でしたね。ダンス以外の時間も友達と一緒にいると楽しくて、ずっと続けていました。その公民館で教えてくれていたダンスの先生はパワフルかつ社交的で、どんどんそのスクールは大きくなっていって、先ほどお話していたようにあとからkazukiが入ってきたり、いろいろなジャンルの先生に出会えたり、ダンスの大会でアメリカへ行ったりとさまざまな経験をさせてもらいました。その先生はいまもダンスをやっていて、湘南では有名なダンススタジオの設立者になって、BE:FIRSTのSOTAもそのダンススタジオ出身です。その設立者の先生のパワーのおかげで、僕も何も考えることなくダンスに夢中になれましたね。NOPPO/恵まれた長身、静と動を兼ね備えた緩急のあるダンススタイルで国内外のファンも多い。俳優「増田昇太」として、Eテレ『天才てれびくん Hello,』に得意のパントマイムで敵役として出演。――みなさんそれぞれの志のもと、kazukiさんがショーン・エバリストのような作品を作るユニットをやろうと2007年に「s**t kingz」を結成されて、今年結成15周年を迎えられました。この15年でとくに印象に残っている出来事はありますか。shojiなんだろうな、いっぱいあるよね?kazukiそうだね、難しいね。Oguriやっぱり海外での活動は、一番印象的ですね。まさか自分たちが海外でも活動するようになるとは結成当初は思っていなかったんですが、アメリカや憧れていたダンススタジオでワークショップをしたり、しかも憧れていた先生がそれを受けに来たり。シッキンのみんなで見ていたYouTube動画のダンスレッスンを受けに行ったら、そこでショーに誘われて一緒にショーに出演したこともあって、これまで信じられないことばかりの海外活動でした。shoji本当、海外は行ってみないとわからないことだらけだったね。Oguri/ロック、ジャズ、バレエ、タップなど幅広いジャンルをカバー。スキルだけでなく、見るものを惹きつけるグルーヴが魅力のダンサー。表現力を活かした演劇の舞台でも俳優「小栗基裕」として活躍中。Oguriあとは10年前に自分たちの舞台を初めて公演したことが、すごくシッキンとしての在り方を大きく変えた、印象に残った出来事です。ダンサーがダンスイベントにただ出演するだけではなく、自分たちで公演を企画して、舞台で自分たちだけの作品をやるということが、すごく大きな活動となりました。――では、15周年を迎えた率直なお気持ちは?shoji実は15年経ったという感覚はまったくないんです。気づいたら15年経っていて、いろいろなことを毎日やっていると、たとえば最初の5周年なんていっさい気づいていなくて(笑)。かろうじて10周年は写真を撮ってイベントもやったんですが、そのぐらいの感じです。ただ、節目があると、あらためて自分たちの活動を振り返ることができるのはうれしいこと。今年は15周年の終わりに武道館公演も決まって、きっと思い出に残るものになって、あとでこの公演があったからこそとまた思える日が来るんだろうなと思うと、いまからもう楽しみです。アニバーサリーだからさらに応援したいと思ってくださる方もいらっしゃるので、そういう意味でもすごく15周年はうれしいですね。ただ、メンバーで「もう15年やってるよね」という話をすることは一度もないです(笑)。NOPPOそう、今度の休みはいつかな? ぐらいしか話していないかも(笑)。ライブがもっと華やかになるための最新作――2023年9月8日にリリースされる『踊救急箱』を作ろうと思った理由はなんでしょうか。kazuki昨年は舞台をやっていたんですが、舞台で披露するための新曲をたくさん用意して挑んでいて。その都度、ライブではやりたいパフォーマンスが変わってくるので、ライブがもっと華やかになるように多彩なパフォーマスができる曲たちを作ろうという話から“見るダンス映像アルバム”の2作目を作ろうということになりました。shojiライブに向けての作品ですね。――収録曲の「No End feat.三浦大知」は、10月に開催されるs**t kingz 日本武道館単独ライブ「THE s**t」のテーマ曲で、3年ぶりの三浦大知さんとのコラボ曲ですね。Oguri大知とはずっと一緒に曲を作りたいと思っていたんです。大知とシッキンの付き合いは10年以上で、まわりの方は「盟友」と言ってくださるんですが、一緒に走り抜けてきて、年齢も近くて。今回、シッキンにとって特別なタイミングでコラボできたのは、僕たちにとっても非常に大きなことです。「これからまだまだ行くぞ!」というようにさらに先を見た攻めた楽曲ができて、それもシッキンや三浦大知らしい。どこでも満足できない、「もっと」と刺激を求める姿勢がそのまま曲に表れているので、すごく好きな曲。毎回、パフォーマンスをするときも気合が入ります。――映像では、闘志が燃えているようなマグマの間から、シッキンのみなさんが降臨するカッコいい作品ですね。Oguriこれまでの世界をぶち壊して、さらに新しい世界を作ってやる、という壊す力と生み出す力が共存した世界を表現しています。少し退廃的ながらエネルギーにあふれている熱量をダンスに、映像に落とし込みました。――アルバムに収録された新曲は、メンバー4人それぞれがプロデュースされている楽曲です。まずOguriさんがプロデュースされた「Bright feat.渡辺大知」は、バラードで、おひとりずつ衣装も設定も違って踊るというよりもお芝居されているような印象の新鮮な映像ですね。Oguriそうなんです。いままでやっていないような楽曲を映像にしたいと思って作りました。小さい頃からバンドサウンドやフォーキーなサウンドにグッとくることがあって、たとえばウルフルズのような世界観も好きで、ボーカルは強いよりはいい意味で弱さや情けなさや愛らしさがあるボーカルがいいなと思ったときに、渡辺大知さんがすごくいいなと。以前、渡辺さんが出演された舞台を拝見したとき、歌声に聴き惚れて、自分の楽曲を作る機会があれば歌ってほしいと声をかけさせていただきました。負けをテーマにしている楽曲なんですが、負けている人はすごく魅力的。負けたことを全面で受け止められる人がすごくかっこいいから、そういうキャラクターのある映像にしたいと考えて、曲や映像のテーマを渡辺さんとたくさん話し合って、完成しました。――kazukさんがプロデュースされた「KID feat. LEO(ALI)」はどのようなことを意識して作りましたか。kazukiこの曲は「ライブで一番輝く曲にしたい」と思って作りました。そもそもライブで映えるためには、どうしても僕らを照明で照らさなくてはいけないですよね。暗がりの中で歌っていても響くけれど、ダンスは視覚的なものなので、暗がりの中で踊っても見えなかったら意味がないシーンが多いから、どうしても照明のパターンが似たり寄ったりになることが腑に落ちない部分も。そのバリエーションの少なさを払拭するためにも、そしてお客さんとダンス以外でシンプルに盛り上がれる楽しい曲を作りたいと“タオルをまわす楽曲”として、作っていって。LEOさんとは面識がなかったんですが、魂で歌っているような歌声やパフォーマンスがかっこいいとSNSで知っていて、今回オファーをするとすぐOKの返事をいただきました。1度目に仕上げてくれた楽曲があったのですが、説明が足りなくてもう1度となって、僕の抽象的な説明にもすごく理解をしてくれて、この楽曲ができました。それからさらにブラッシュアップして、最終的にはイメージしていた通りの楽曲になっています。大事なサビのパフォーマンスでは、いっさい踊らずにタオルをまわしているだけで、それ以外のパートもタオルを使ってうまくダンスできないかと思って作ったので、ライブで披露することが楽しみですね。――shojiさんがプロデュースされた「Get on the floor feat.MaL, ACHARU & Dread MC」はどのような点を意識して作られましたか。shoji今回、ライブを見据えて作ったアルバムでありながら、一番ライブを見据えていない楽曲を作ったのが僕なんですけど(笑)。昔、クラブでシッキンが踊るときは、出番が5分といった短い時間だったので、その5分で体力を使い切るような作品をずっと踊っていた時期がありました。でも、最近そこまで激しい曲はなかったかもとふと思い、あらためて「5分で体力を使い切るような踊りを作ろう」と思って作ったのが「Get on the floor」なので、みんながライブで踊りたくないと言っています(笑)。Oguri・kazuki・noppo笑。shoji約2時間あるライブのどこにこの曲を入れれば、みんなが最後までステージに立っていられるんだろうと心配になるぐらい、激しい曲ができました。もともとアフリカの音楽が好きなので、大好きなリズムに乗って、こうして体力を使い切る曲ができて、僕は大満足です(笑)。――ではライブでどこにこの曲が入るのか楽しみにしています(笑)。shojiはい、最後まで全員が立っていられたら奇跡だと思って、みなさん見届けていただけたらうれしいです。――NOPPOさんがプロデュースされた「Live like you’re dancing feat.ZIN」はいかがでしょうか。NOPPOこれもライブを見据えて作った楽曲で、この曲を聴いてきてくださるみなさんもカラダが揺れてしまうような楽曲にしました。当初、実はZINくんともうひとりボーカルを依頼する方を悩んでいて、最終的にOguriにも相談して「ZINくんのほうが低音とファルセットの高音の感じがすごく色気があって、高低差も素敵でいいのでは」と言ってくれたことが決め手になりました。ZINくんにお願いさせていただくと、こころよく受けていただいて。ZINくんはシッキンのことも知ってくれていて、この曲のミーティングをしたその3時間後には、もう歌入りの曲を仮ですぐ出してくれました。――はやいですね!NOPPOそう(笑)、そのスピード感もかっこよくて、ほぼ仮と変わらないぐらいの楽曲が完成しました。ZINくんは天才肌で、思いを音楽に作り上げる精度の高さを感じています。映像は、ソロで全部プロデュースできる曲であれば、普段は僕らができないようなチャレンジをひとつ入れたくて、鏡を使うような手のかかるものを入れてみたり。もともと物を使いながら踊るのも好きだったので、パントマイムみたいなものも入れてみたりと、チャレンジした楽曲でもあります。ダンスの新しい楽しさを発見し続けたい――9月8日からは、全国7都市をまわる『s**t kingz Dance Live Tour 2023「踊ピポ」」ツアーを行い、10月25日には『s**t kingz Dance Live in 日本武道館「THE s**t」』公演が開催されます。Oguri「踊ピポ」は“とにかく楽しい”を掲げてやり通したいです。日本武道館公演では、15年間僕らが積み上げたものを一度、全部吐き出す場所。未来はいろいろなことが待ち受けているけれど、次に進むためにもこの武道館という特別な場所で、s**t kingzと僕らを応援してくれているみんなと全部を出し切って、次に進めたらいいなと思っています。shoji最近s**t kingzを知ってくださった方も多いなか、まだ僕らのライブへ来たことがない方もたくさんいらっしゃるんですよ。この間『音楽の日』というイベントのテレビ出演をさせていただいたことをきっかけに、s**t kingzを知って「踊ピポ」のライブチケットを買ったという方とかもいらっしゃるようで、すごくうれしくて。そういう初めてライブに来る方々にとっても最高の入り口になる、ダンスのいろんな楽しみ方が味わえる場所が「踊ピポ」なので、気楽に遊びに来てほしいですね。日本武道館は“祭り”。最高の“打ち上げ花火”をぶちかましていきたいです!kazuki「踊ピポ」は久しぶりの生バンドを引き連れての全国ツアーで、アルバム『踊救急箱』が出るタイミングなので、この曲たちを中心にいろいろな演出を広げていきたいなと。そして多くの方が知っているような曲はやるつもりですし、期待を裏切らない内容なので、楽しみに来てほしいですね。武道館公演は……(しばらく悩んでから)打ち上げ花火です(笑)!Oguri・shoji・noppo笑。NOPPO「踊ピポ」は3人と同じ気持ちですし(笑)、僕らのダンスをみんなに知ってもらえるツアーになりますし、みんなでカラダを動かして踊って楽しむライブになります。武道館は……打ち上げ花火(笑)!――では最後に、リーダーのshojiさんから「s**t kingz」の今後の抱負を教えてください。shojiきっと今度は20周年を迎えたときには、まったく違うことをしていたら楽しいだろうなと思っていて。もちろんダンスを軸に活動をすることは変わりませんが、いままでも舞台をやったり、10周年で初めて生バンドを引き連れてビルボードでライブをやったり、15周年は日本武道館の単独公演だったり。節目ごとにいろいろな挑戦をしてきましたが、次に20周年となったときには「s**t kingzはこんなこともやってるんだな」と感じてもらえるように、常に形を変えながら、ダンスの新しい楽しさを発見し続けていけるグループでいたいと思っています。取材後記日本のダンス界を牽引してきた、世界が注目するダンスパフォーマンスグループのs**t kingzのみなさん。撮影する際、少し動きのある写真も撮りたいんですと相談すると、「いいですよ!」と快く引き受けてくださり、いろいろなポーズをとってくださったカットも。笑顔でインタビューに応えてくださるときは穏やかに、ひとたびポーズをとればビシッとカッコよくキメてくださる瞬発力と大人の魅力に脱帽です。そんなs**t kingzのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・園山友基 取材、文・かわむらあみりs**t kingzPROFILEshoji、kazuki、NOPPO、Oguriの4人からなる、世界が注目するダンスパフォーマンスグループ、s**t kingz。オリジナルの舞台公演は毎回大好評で、2018年秋の第4作目となる「The Library」では、全国7都市、全30公演を実施。2020年6月には初のオンラインライブを成功させ、世界12の国と地域からの視聴で話題となる。2021年1月には、ダンサー発としては異例の全曲オリジナル楽曲で作り上げる「見るダンス映像アルバム」となる『FLYING FIRST PENGUIN』(Blu-ray)を発売、歌唱しないダンスアーティストとしてテレビ朝日「MUSIC STATION」に出演した。2023年9月8日に“見るダンス映像アルバム”の2作目となる『踊救急箱』をリリース。9月8日から全国7都市をまわる『s**t kingz Dance Live Tour 2023「踊ピポ」」ツアー、10月25日は『s**t kingz Dance Live in 日本武道館「THE s**t」』公演を開催。InformationNew Release『踊救急箱』(収録曲)1.「えがお! feat.PES」2.「TRASH TALK feat.Novel Core」3.「衝動DO feat.在日ファンク」4.「Get on the floor feat. MaL,ACHARU & DREAD MC」shojiプロデュース5.「KID feat.LEO(ALI)」kazukiプロデュース6.「Bright feat.渡辺大知」Oguriプロデュース7.「Live like you’re dancing feat.ZIN」NOPPOプロデュース8.「心躍らせて feat.上野大樹」9.「No End feat.三浦大知」2023年9月8日発売(通常盤)GTCG-0787(Blu-ray)¥6,050(税込)発売・販売元:アミューズ【内容】Blu-ray収録曲(本編9曲+特典映像)、歌詞カード【特典映像】120分を超える豪華内容を収録1/1.5年分のシッキン密着映像2/ディレクターズカット版ダンス映像(完全数量限定盤)GTCG-0786(Blu-ray)¥16,500(税込)発売・販売元:アミューズ*豪華BOX仕様。【内容】1.Blu-ray(本編9曲+特典映像)※通常盤と同じ2.歌詞カード3.フォトブック(36P)4.オリジナルカセットプレイヤー5.カセットテープ(A面:踊救急箱メガリミックス/B面:シッキンベストメガリミックス)6.オリジナルアイマスク7.ポストカード(5枚)8.オリジナルカレンダー(2024年1月〜12月)9.オリジナルBOX【特典映像】120分を超える豪華内容を収録1/1.5年分のシッキン密着映像2/ディレクターズカット版ダンス映像写真・園山友基 取材、文・かわむらあみり
2023年09月02日【音楽通信】第144回目に登場するのは、俳優としても歌手としても活躍し続け、デビュー10 周年というアニバーサリーイヤーを迎えた、大原櫻子さん!母の誕生日に歌を贈ったことで歌が好きになる【音楽通信】vol.1442013年に映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の全国ヒロインオーディションで5,000人の中から抜擢され、スクリーンデビューと同時に、劇中バンドとしてCDデビューを果たした大原櫻子さん。2014年にはシングル「サンキュー」で、本格的にシンガーとしてデビュー以降、歌手活動とともに役者としても数々のテレビドラマや舞台へ出演。2013年の俳優&歌手デビュー、2014年のソロデビューからそれぞれ10周年となります。そんな大原櫻子さんが、2023年8月30日にミニアルバム『スポットライト』をリリースされるということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――あらためて、音楽に出会ったきっかけから教えてください。子どもの頃、家族は松田聖子さんを聴いていて私も好きになったり、家族でカラオケに行って初めて私が歌ったのは「青い珊瑚礁」だったり。なかでも、いまもよく覚えているのは、小学生のときに初めて「歌で人は感動してくれるんだ」と実感したときのことです。母の誕生日に、「今日は誕生日プレゼントに歌を歌います」とBoAさんの曲「Every Heart -ミンナノキモチ-」(2002年)を歌ったら、「いいねえ」と母が言ってくれたことがきっかけで、歌を歌うことが好きになりました。――大原さんが芸能の道を志したのは、小学校の頃に観た海外版のミュージカル『アニー』に影響を受けたそうですが、親しみやすい日本の作品ではなく外国のミュージカルに惹かれたのはなぜなのでしょうか。不思議なんですが、小さい頃からアメリカの映画が大好きだったんです。当時、たまたまテレビをつけたら、海外版のミュージカル『アニー』が放送されていて。すぐに録画をして、その後もビデオを何度も観るようになりました。アニーが歌っていたテーマソング「トゥモロー」を歌いたい! と思ってまだ英語がよくわからないなりに、歌詞を聴きながら全部カタカナに直して、歌えるように練習していました。――まだ子どもの頃に、英語の歌を聴いて歌詞をカタカナにして書いて、自分で歌ってみるとは賢いお子さんだったんですね。いえいえ、わからないなりにまとめていただけなんですよ。でもそれ以降、ミュージカルの英語の歌は全部自分なりに訳して歌っていましたね。あとはBoAさんの曲もそのときよく聴かせていただいていたので、韓国の曲も聴いてカタカナに直して、韓国語の歌にも頑張って挑戦していました。――すごいですね。その後、2013年には映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』で俳優とCDの同時デビューをされました。劇中バンド「MUSH&Co.」として、ボーカルを大原櫻子さん、ギターを吉沢亮さん、ドラムを森永悠希さんというメンバーでしたね。そうです。このときのこともすごく覚えていて、まだ人前であまり歌うことがなかったんですが、映画の撮影で野外のステージで歌うシーンがあって。初めて1500人ぐらいのお客さんの前で歌ったんです。しかも、雨もちょっと降っていて、寒くて手がかじかんでいたので、カットがかかる度に吉沢さんと森永さんと一緒に、お湯に手をつけたりしてほぐしていました。――印象深い出来事だったんですね。もともと歌でもデビューするとは聞いていなかったから、より印象深くて(笑)。映画のオーディションに受かって、さらに3人で本当にデビューするとは思っていなかったんです。CDのジャケット撮影をしたときも自分の顔が前面に出たデザインで、吉沢さんと森友さんは私の頭の後ろからちょこっとのぞいているというデザインで驚きました(笑)。発売されたときに、タワーレコードで1日店長をさせていただいたんですが、ショップにCDとして自分の顔が並んでいて…。――「MUSH&Co.」のCDのジャケット写真は、大原さんのお顔のアップなのでインパクトがあったのですね。そして、2014年11月にシングル「サンキュー」で本格的にシンガーとしてデビューされました。俳優と歌手デビューから、10周年となりますね。はい、あっという間の10年でした。ただ、17歳から20歳までは記憶がないぐらい、駆け抜けていたように思います。唯一初めてのレコーディングは全部覚えていますが、初めての映画、初めてのドラマ、初めてのラジオ…と初めての経験がいっぱいで、力の抜き方もわからない。だから、毎日全力でやっていましたね。――最初の3年間は覚えていないぐらい忙しかったということは、4年目ぐらいからオンとオフのメリハリがついてきたんですか?そうですね、映画、歌、ドラマと携わらせていただくなかで、20歳でやっと舞台にも出演させていただくようになって。岸谷五朗さんと寺脇康文さんの演劇ユニット、地球ゴージャスさんの演劇が初舞台となり、公演期間に20歳を迎えたので、この頃からは初めてのことが少なくなって落ち着いてきました。「シンプルな大原櫻子になった感覚」の新作――2023年8月30日に、ミニアルバム『スポットライト』をリリースされます。まず1曲目「寂しいの色」は、7月に先行配信されたピアノから始まるしっとりとしたナンバーですね。「寂しいの色」は、これまであまり歌ったことのないメロディで、ミニアルバムのためにさまざまな曲を聴かせていただいた中でも突出して「この曲を歌ったら新しい自分が見えそうだな」と感じた楽曲です。仮歌を歌った段階で、自分のカラダへの染み込み方がいままでとちょっと違う感覚もありましたし、新しい私を発信できる曲なので、収録しました。――2曲目「Hello My Fave」は、一転してアップテンポなナンバーです。すごく元気な曲ですし、最初に曲を聴いた段階で、私が歌ったらのびやかな曲になるなあと思いました。ライブでみんなと一緒に踊る曲もたくさんあるんですが、コロナ禍を経て、いまどんどん声出しが解禁していて、またみんなで歌う喜びをすごく感じているんです。そこで、またライブで盛り上がるような曲が欲しくて、この曲を選びました。――3曲目「どうして」は、片想いの心情が伝わる楽曲です。これも最初に仮の曲が来たときにほかの候補曲をいろいろと聴くなかで、この曲のサビの「どうしてこんなにも」というフレーズがずっと頭の中でまわっていて、気がついたら口ずさんでいるような楽曲でした。歌詞はその「どうして」というフレーズが頭に残っていたのもあり、片想いの歌詞をもっと広げて作っていって。切なさがありながら、でもメロディラインはネガティブな感じじゃないところも、この曲の好きなところです。――4曲目「JUMP」は、今年6月に配信リリースされたデジタルシングルのポップな曲です。「JUMP」はライブでも解禁をしまして、今回も歌詞を(元チャットモンチーのメンバーで作家の)高橋久美子さんに書いていただいています。10周年となると、これまで楽しいことも苦しいこともさまざまなことがあるなかで、いつもライブに行けばファンのみんなが笑顔をくれて、ファンのみんなが私を照らしてくれる太陽のような存在だと伝えたい気持ちを高橋さんにも伝えて、歌詞を書いていただきました。――5曲目「星の日」は、昔の出来事に思いを馳せる曲ですね。最初に曲を聴いたときに、大切な人との思い出を振り返る曲だと感じて、聴く方にとっても友達や大切な人との思い出をあらめて振り返るような曲になればと。(元ねごとのメンバーでシンガー、作詞家の)蒼山幸子さんに歌詞を書いていただいたんですが、うまく言葉にできないけれど思っていたことをちゃんと歌詞で言ってくださる方。この曲の歌詞だと「あの頃のばかな季節」とあって、それだけで友達とわいわい過ごしていた日々をすごく思い出すように感じています。――6曲目「bitter sweet cinéma」はミニアルバムのリード曲ですね。ミュージックビデオもストーリー性のあるものでした。タイトルにもシネマとありますが、ミュージックビデオでも映画館で撮影するなど、少し映画っぽく撮影しているシーンもあります。私がデビューしたのが、それこそ映画のオーディションで、映画という存在がまず大きくて。この曲を最初に聴いたときに、すごくキラッと明るいメロディに、切なさや悲しさも含まれている歌詞を見て、なんだか人間の人生を描いているなと感じました。私のお仕事も、キラキラして見えるかもしれないけれども、裏では毎日の努力があって、それこそ悲しい日も苦しみもあるという人間くささこそが、人生。まさに映画は、ひとつの物語があって、そういった人間模様を歌でもミュージックビデオでも表現できたんじゃないかなと思います。この曲は、映画の主人公になったような気持ちで歌いました。10年後の私だからこそ、歌える曲になりました。――聴き手にはどのように今作を聴いてほしいでしょうか。今回は、J-POPの最前線で活躍する制作陣が参加してくださっていて、新しい方との曲という部分で、歌の表現もこの1枚ですごく変わった感覚がありました。だからこそ、難しかった部分もあるんですが、出来上がりを1曲ずつ聴いてみると、私らしさが引き出されたと思いました。いままでずっと聴いてくださっている方には、「こんなふうにも表現するんだ!?」という驚きももしかしたら感じられるんじゃないかなと。10年間にやってきたいろいろな技術や考え方があったうえで、いままでもしかすると必要のないことも歌に入ってしまっていたところが、今回は、そういった余計なものが削ぎ落とされて、シンプルな大原櫻子になった感覚ですね。――2023年10月からは、Zeppツアー2023「大原櫻子10(点)灯式」を全国で開催されます。前回のツアーではシングル曲を多く演奏していたのですが、今回はミニアルバムの曲も絶対やりたいですし、新しい楽曲を歌うことになりそうという部分では、お客さんは新鮮だと思います。このミニアルバムが10周年イヤーのスタートになる作品なので、前回とはガラッと構成を変えていきたいですね。10周年以降も感謝を伝えながら楽曲を届けたい――8月3日から、松田元太(Travis Japan)さんとW主演されているドラマ『結婚予定日』(MBSほか毎週木曜深夜0時59分ほか)が放送されていますが、撮影は順調ですか?とても順調に進んでいます。ただ、松田さんとは、息が合わないようにするための息の合わせ方をすごく勉強しています(笑)。というのも、同じ会社に務める関係性の役なのですが、松田さんはエースだけどミステリアスな役どころで、私は恋に不器用なOLという役。なので、同じテンションの関係性ではない役というところがすごく難しくて。監督いわく「会話のリズムが成り立たないほうが正しい」というふたりなので、あえて息が合わないように意識しています。――ドラマでしっかり拝見しますね。撮影や歌手活動などご多忙だと思いますが、おやすみの日はどんなふうにお過ごしなのでしょうか。やすみの日でもだいたい8時か9時ぐらいには起きていますね。朝ご飯を作って、食べて、運動して、お昼ぐらいから「何しようかな?」という感じになります(笑)。それからは友達と会ったり、マッサージなどカラダのメンテナンスに行ったり、映画を観たり。あとはコロナ禍以降、家でできることをしようと料理が好きになったので、何かしらの料理を作っていますね。――最近作った料理はなんでしょうか?タモリさんの生姜焼きです。――あ! 『タモリ倶楽部』(1982年〜2023年放送)の最終回で披露されていた料理ですね?そうです(笑)。作ってみたら、おいしかったですよ。最近だとあとは麻婆カレーを作りましたね。――お料理もされていて、健康管理もしっかりされているんですね。健康オタクです。――最近美容面で気をつけていることは?毎朝、たくさんアボカドを食べています。ビタミンが摂れて、むくみも取れるんですよね。とはいえ、いまはアボカドですが、自分の体調によって食べるものを変えています。体重が増えたときは、エノキ茸をひたすら食べたりして。栄養素を調べることが好きで、エノキ茸の場合だとエノキタケリノール酸というものがあって、脂肪を燃焼するといわれていることなどを調べて、食べていますね。でも…忙しくなると、なんにもできないです(笑)。あとは運動していますね。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負を教えてください。10周年イヤーということで、“大原櫻子の物語”をファンの人と一緒に作っていきたいです。みなさんに楽曲を届けながら、ライブも一緒に作っていきたいなと。そして10周年にとどまらず、その先もみなさんに感謝を伝えながら、寂しさに寄り添えたり人生を楽しめたりするようなイベントや楽曲を届けていきたいですね。取材後記歌手活動に、俳優活動に、ジャンルレスに大活躍されている、大原櫻子さん。今年は10周年というアニバーサリーイヤーに突入されたということで、今後さらに歌でもドラマでも舞台でも、さまざまな姿を披露してくれるに違いありません。そんな大原さんのミニアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみり ライブ写真・タマイシンゴ大原櫻子PROFILE1996年1月10日、東京都生まれ。日本大学藝術学部映画学科卒業。2013年、映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』全国ヒロインオーディションで5,000 人の中から抜擢され、スクリーン&CD 同時デビューを果たす。2014年、女優として『日本映画批評家大賞 “新人賞”』、歌手として『第56 回輝く!日本レコード大賞” 新人賞”』を受賞。2015年には第93回全国高校サッカー選手権大会応援歌「瞳」で『第66回NHK紅白歌合戦』に出演。以降、歌手活動と並行して、数々のテレビドラマや舞台へ出演中。2023年 第30回読売演劇大賞 杉村春子賞、受賞。8月30日、ミニアルバム『スポットライト』をリリース。InformationNew Release『スポットライト』(収録曲)01.寂しいの色02.Hello My Fave03.どうして04.JUMP05.星の日06.bitter sweet cinema2023年8月30日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)VICL-65871(CD)¥2,420(税込)(初回限定盤A)VIZL-2223(CD+Blu-ray)¥8,250 (税込)【Blu-ray収録内容】・「bitter sweet cinéma」Music Video・「bitter sweet cinéma」メイキング映像・「10( 天) まで届け!!」2023.05.11@EX THEATER ROPPONGI収録曲:明日も / Jet Set Music! / 真夏の太陽 / 無敵のガールフレンド / 泣きたいくらい / 初恋 / 瞳 / STARTLINE / Door / Fanfare / JUMP / Joy&Joy / Ready Go!! / 青い季節 / 踊ろう / 遠くまで(初回限定盤B)VIZL-2224(CD+フォトブック)¥4,620(税込)取材、文・かわむらあみり ライブ写真・タマイシンゴ
2023年08月16日ネイチャーラボのプレミアムホームケアブランド『ランドリン』は8月5日、ティーフレグランス「GOOD TEA TIME(グッドティータイム)」の新CMである「香れ、人生。」篇の放映を開始しました。■CMのナレーションも藤井風が担当その上質な香りと、柔らかくなめらかな仕上がりから、ブランド開始以来、多くの人々に親しまれてきたランドリン。「GOOD TEA TIME(グッドティータイム)」は、ランドリンから2年ぶりに誕生した新しい香り。いつもの時間がもっと楽しくなるティーフレグランスシリーズで、ふわっと心地よく香ります。新CMには、ミュージシャン・藤井風さんの楽曲「ガーデン」を採用。曲に合わせて、ひとりの女の子の人生を歩む様子を描いています。その人生のひとこまひとこまに、バラの香り、お茶の香りなどさまざまな香りが連れ添い、女の子の人生を豊かで心落ち着くものにしている様子を表現しました。キャッチコピーは、「香れ、人生。」。そのイメージのように広がる世界観が、まるで女の子の人生をより花咲かせてくれるようにも感じさせてくれます。いつもと変わらない毎日がドラマチックに輝く、そんなふうにランドリンで生活に華を添えてほしい、そんな想いを込めたCMです。60秒動画をはじめ、すべてのバージョンで、藤井風さんがナレーションを担当しました。「香れ、人生。」のストーリーとともに注目です。■TV CM概要タイトル:「香れ、人生。」篇15秒 / 30秒 / 60秒 (WEB限定)放送エリア:2023年8月5日(土)より全国で順次OA60秒動画:ギャラリー:(フォルサ)
2023年08月08日【音楽通信】第143回目に登場するのは、魅力にあふれる個性がきらめくハロー!プロジェクトの新世代アイドルグループ、OCHA NORMA(オチャ ノーマ)!OCHA NORMAが「この10人でよかった」写真左から、斉藤円香、田代すみれ、北原もも。【音楽通信】vol.1432022年7月に1stシングル「恋のクラウチングスタート/お祭りデビューだぜ!」でデビューした、OCHA NORMA。同年12月に「第64回 輝く!日本レコード大賞」新人賞を受賞、2023年に「第37回 日本ゴールドディスク大賞」の「ニュー・アーティスト・オブ・ザ・イヤー」と「ベスト5ニュー・アーティスト」の2部門を受賞するなど、注目を集めるハロー!プロジェクトのアイドルグループです。そんなOCHA NORMAが、2023年7月26日に3rdシングル「ちょっと情緒不安定?…夏/オチャノマ マホロバ イコイノバ ~昭和も令和もワッチャワチャ~/シェケナーレ/ヨリドリME DREAM(ミドリ)」をリリース。メンバーを代表して、斉藤円香(まどか)さん、田代すみれさん、北原ももさんにお話をうかがいました。リーダー 斉藤円香。2002年10月28日、埼玉県生まれ。O型。趣味はディズニーの映画鑑賞やグッズを集めること、テレビゲーム。――おひとりずつ自己紹介からお願いします。斉藤OCHA NORMAのリーダーをやらせていただいています、斉藤円香です。座右の銘は「和顔愛語」といって、穏やかな心で接するという意味の言葉で、物心ついたときから、父に「穏やかな心の女の子になってほしい」と言われていました。それからはずっと、この言葉を自分の胸に刻んでいます。田代田代すみれです。座右の銘は「失敗は成功のもと」です。何かを経験することで最初は失敗してしまうこともあるけれど、絶対にそれは自分にとってプラスになるので失敗を恐れずにやっていこう、失敗があってこその成功という思いを持っています。北原北原ももです。座右の銘は「いつも太陽のほうを向いて」というヘレン・ケラーさんの言葉。もともと私が下を向いてしまう性格なので、この言葉を聞いたときに「太陽のほうを向いて、前を向いて私も頑張っていきたいな」と思って、ハロプロ研修生の頃からずっとこの言葉を掲げて活動しています。――では続いて、メンバーのみなさんがどんなキャラクターなのか、本人以外のメンバーから他のメンバーのことを教えていただけますか?斉藤私、斉藤が思う田代すみれちゃんは、顔がまず美人すぎるということ(微笑)。すみれちゃんはハロプロ研修生からではなく、一般オーディションからOCHA NORMAに加入したので、当初活動で不安なことなどいろいろな相談を聞いていたんですが、デビューして1年経って、変わったなと。パフォーマンスもトーク部分も表情も堂々としていて、キラキラしているアイドルになったと思います。一方、ギャップがあるのは、楽屋でもすごく面白いですし、ワードチョイスにセンスがあります(笑)。田代ふふふ(笑)。斉藤円香ちゃんは私が加入したばかりの頃から助けてくれる存在で、うれしい言葉です。そして、私が見てきた北原ももちゃんを紹介しますね。すごくパフォーマンスがうまくて、ダンスにおいても自分の見せ方をよくわかっているから、見ていて気持ちいいですし、歌も本当に上手で、大好き。OCHA NORMAの中でも、パッションが効いているタイプです。田代すみれ。2005年6月16日、神奈川県生まれ。趣味は音楽を聴くこと、写真を撮ること。斉藤そう、ももちゃんは、OCHA NORMAに新しい味を加えてくれています。田代魅力的な存在ですし、楽屋でもよくお話しするんですが、ももちゃんは一見、美しくておっとりしている女性という感じがするのですが、話すと親しみやすくてすごく面白い。お笑い芸人さんが好きなので、そういうところから、日頃の面白さが出てくるのかも(笑)!?北原わぁ、うれしいですね(微笑)。すみれちゃんのことも面白くて尊敬しています。そして、私が思う斉藤円香ちゃんは、リーダーとしてとてもメンバーを支えてくれていて、本当にOCHA NORMAのリーダーが円香ちゃんでよかったなと思うんですよ。メンバー一人ひとりを思ってくれる優しさがあるから、連絡も頻繁にくれて、悩んでいるときも優しい言葉をかけてくれるんです。円香ちゃんは20歳で、メンバーの中では一番年上になるんですが、実は一番年下の15歳の筒井澪心(つついろこ)ちゃんよりも、精神年齢が若い(笑)!斉藤はははは(笑)。北原以前、円香ちゃんと澪心ちゃんと私の3人でディズニーランドに遊びに行ったんですが、一番円香ちゃんがワチャワチャしていて(笑)。一番場を盛り上げてくれる存在で、大好きです。――OCHA NORMAの前身は2019年7月に編成されたハロプロ研修生ユニットで、斉藤さんは最初からメンバーに選抜されていますね。その後、このハロプロ研修生ユニットを新グループとして、2021年6月には北原さん、12月には田代さんが加入されましたが、そもそもみなさんがハロプロに入ったきっかけは?斉藤もともと小さい頃からアニメが好きで、幼少期はテレビアニメ『イナズマイレブン』(テレビ東京系 2008〜2011年)にハマっていて、そのエンディングテーマを歌っていたのがBerryz工房さんだったんですね。それから歌が気になって、ハロー!プロジェクトを知って、さらにモーニング娘。さんにたどり着きました。当時、モーニング娘。さんに所属していた工藤遥さんをすごく好きになって、高校生の時にハロプロのオーディションを受けて落ちてしまったのですが、研修生へのお誘いをいただいて、加入しました。北原もも。2006年8月30日、東京都生まれ。A型。趣味は、もものグッズ集め、イラストを描くこと。田代小さい頃から、テレビ番組でスマイレージさんやモーニング娘。さんがパフォーマンスしているのをリアルタイムで観ていて、ハロー!プロジェクトの存在を知っていました。自分が成長していくにつれて、ハロプロからどんどん新しいグループが出てきて、すごく興味がわいて「私も入りたい」と思って、オーディションを受けたんです。ちょうどハロプロが新メンバーを応募していて、新グループの一期生というところにも憧れて加入しました。北原小学生の頃から『おはスタ』(テレビ東京系 毎週月〜金 午前7:05)という朝の子ども向け番組をずっと観ていて、そこに「おはガール」として出演していた当時アンジュルムの船木結(ふなきむすぶ)さんに朝から元気をもらっていました。番組では「ふなっき歌謡祭」という船木さんが歌うコーナーがあって、「アイドルっていいな」と、ハロプロでアイドル活動をしてみたいと憧れるようになって。母に話すと、モーニング娘。さんのオーディションがあることを教えてくれて、「絶対やってみたい」と挑戦しました。――みなさんいろいろなきっかけから志を抱いて、OCHA NORMAになったのですね。そして2022年7月にメジャーデビューされて、1年経ちましたが、デビュー以前と以降でグループの変化はいかがですか。斉藤メンバーは年齢も出身地も違って、私は結成時からの最初のメンバーで、加入時期が違うメンバーもいるOCHA NORMAですが「この10人でよかったな」と思いますし、この1年を通してグループとしての団結感がすごく増したと実感しています。やっぱりグループとして、たとえば「今回のシングルはこうしていきたいよね」などと話し合う機会も多いですし、話し合いやリリースやライブといったさまざまな活動を重ねるごとに、パフォーマンスでもOCHA NORMAらしさというものを確立してきているので、いまとても楽しいです。3rdシングルは広瀬香美らによる多彩な楽曲――2023年7月26日に、クアトロA面シングル(4曲A面扱いのシングル)「ちょっと情緒不安定?…夏/オチャノマ マホロバ イコイノバ~昭和も令和もワッチャワチャ~/シェケナーレ/ヨリドリ ME DREAM」をリリースしますが、まず「ちょっと情緒不安定?…夏」は、広瀬香美さん作詞作曲のアップテンポなナンバーですね。斉藤はい、広瀬さんに作っていただいただけあって、いままでのハロー!プロジェクトらしさとはちょっと違う感じもありながら、一度曲を聴いたらずっと耳に残るようなフレーズが印象的な曲になっています。最初に澪心ちゃんと西﨑美空(にしざきみく)ちゃんがアカペラふうに歌って、ギターがジャジャジャーン!と入る歌詞の部分があるんですが、そのとき「この曲が始まる!」というライブ感が味わえるところが好きで。私もパフォーマンスしながら、最初からボルテージマックスで聴けるところが、おすすめのポイントかもしれないですね。――同曲のミュージックビデオでは、プールや海辺で夏を楽しむ様子が映し出されていますが、撮影エピソードを教えてください。斉藤ミュージックビデオの撮影時、とても面白かったエピソードがあるんですが、本編では使われていないんですよ(笑)。それはみんなでアイスを食べるシーンで……。北原私と美空ちゃんと窪田七海(くぼたななみ)ちゃんの3人でプールサイドでワチャワチャするシーンがあって、本編ではビーチボールを持っているシーンになっていますが、もともとはアイスを食べるシーンだったんです。撮影は4月でまだ寒かったんですが、みんなでアイスを食べようとしたら、トンビが来て私のアイスを思いきりバクッと食べて、驚きを隠せませんでした!北原あっという間の出来事で、手元を見たらアイスが無くなっていて。その直後にビーチボールを持ってプールサイドの撮影をしているので、実はトンビにアイスを取られた直後だった、という事実をなんとなく感じ取ってもらえたら(笑)。――海辺にいるとトンビが食べ物をねらってきますよね! でもその動画、観たいです。斉藤たまたま米村姫良々(よねむらきらら)ちゃんが動画を撮っていたので、トンビにアイスをさらわれた瞬間が携帯に残っていて、私たちはみんなで共有しました(笑)。――続いて、昭和と令和の違いをダンスミュージックに乗せて歌う「オチャノマ マホロバ イコイノバ~昭和も令和もワッチャワチャ~」の、聴きどころは?田代この歌は全体的にカッコよくて面白い曲になっているんですが、歌以外にも、間奏部分が印象的な曲です。間奏では(バリの民族舞踊にルーツのある)ケチャを取り入れていて、ダンスの振り付けでは、ももちゃんを崇拝するようなところもあって。斉藤そう、「もも様〜!」というような感じで、祀っています(笑)。田代そんななか、みんなで「チャ、チャ、チャ、チャ」と言っていて、まさにワチャワチャしているところが好きなところです。――そして「シェケナーレ」は、7月から放送開始したTVアニメ『シャドウバースF(フレイム)』(テレビ東京系 毎週土曜 午前9時30分)のエンディングテーマとしても流れていますね。北原そうなんです。明るくて、曲中に「シェケ!」と言うところがあるんですが、思わず一緒に言いたくなるくらい、元気な曲になっています。「心躍るまま やってみようじゃん」というように勇気をくれる歌詞が多くて、私自身も歌っているときに、自分に向けても歌っている感じがしていて。なので、聴いていただく方々にも、自信を持ってもらえる曲になっていると思います。みなさんの前で披露する日が楽しみです。――歌詞に果物がいろいろと出てくる「ヨリドリ ME DREAM」は、応援歌のような印象です。斉藤この曲は、昨年11月の1stライブツアーで初披露して以来、ずっとライブ楽曲として歌ってきた曲なんです。果物の名前がたくさん歌詞に入っていて、私のパートでセリフのあるところがあって「お茶の間」と言うと、ファンのみなさんもライブで「お茶の間!」と返してくれて、すごく楽しい楽曲。この曲を歌うときは、衣装もカラフルな果物をイメージしたものを着ていて、鮮やかなOCHA NORMAになっています。――2023年8月5日からは、全国ツアー「OCHA NORMA CONCERT 2023 SUMMER 〜もっとグローイング・アップ!〜」を開催されますね。斉藤そうなんです。ツアー名が「もっとグローイング・アップ!」ということで、私たちが今春行ったツアーは「もっと」が無い「グローイング・アップ」ツアーだったので、まだ詳細は決まっていないんですが、今回はアンコール公演のようなものになるのではと。斉藤春からもっと進化したところを見せたいですね。とはいえ、現時点ではセットリストもまだなので、予想ですが前回は披露できなかった曲などもやるかもしれません。メジャーデビューしてから1年でのツアーでもあるので、成長した姿をお見せできればと思っています。――楽しみですね。ちなみに、徐々に現在コンサート会場での声出しが解禁になっていますが、春のツアーはどのような状況でしたか。斉藤大阪公演だけ、声出しOKでした。NHK大阪ホールで公演させていただいたんですが、めちゃくちゃ盛り上がりました!田代その前までは、声援無しのルールでライブをしていたんですが、大阪公演のときはハロー!プロジェクトの公式としても声出しが解禁になったときだったので、すごい迫力で。来てくださったみなさんが、頑張って声援してくださっていました。北原OCHA NORMAはコロナ禍でデビューしたので、ライブでも声援を聴いたことがなくて、ライブでみなさんからのコールはどうやって歌に入るんだろう? と思っていたんですが、大阪公演では統一感のあるコールを聴かせてくださって。やっぱりみなさん、さすがだな! と思いましたね。――では夏のツアーでは全国で声援が解禁となると、より手応えがありそうです。斉藤楽しみです!「みなさんに知っていただける存在になりたい」――お話は変わりますが、お休みのときはどんなふうに過ごしていますか。田代けっこう家で寝ることも好きなので(笑)、寝ていることもありますが、あとはお友達と遊ぶことが多いですね。カフェ巡りが大好きなので、よくお友達とカフェに行きます。甘党なので、最近はクリームメロンソーダがお気に入り。北原私は基本的に、母とふたりでいろいろな場所にお出かけに行きます。気分転換にイチゴ狩りに行ったり、高尾山に行ったり。あとは、お笑いが好きで、とくにランジャタイさんが好きなので、お笑いライブにもよく行きます。お笑いには、元気をもらっていますね。斉藤インドア派だったんですが、最近のお休みはずっと出かけています。もともとアニメやゲームが好きなので、映画館で好きなアニメの映画を観たり、アニメのコラボカフェに足を運んだり。――最近、どんな映画をご覧になったんですか?斉藤『劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』というアニメ作品があるんですが、映画館でアニメのライブ映像を上映しているんです。「DAY1」と「DAY2」というふたつのバージョンがあって、それぞれセットリストも変わるので、ペンライトを持って、映画館で推しの名前を叫んで応援することを楽しんでいますね。――楽しそうです。現実にアイドルの斉藤さんが、映画館でアニメのアイドルを応援する姿は、まわりにバレていないのでしょうか。斉藤バレていないですね。でも、この前初めてアニメショップの前で、「ハロー!プロジェクトのOCHA NORMAの斉藤円香ちゃんですか?」と声をかけられて、ビックリして。初めて声をかけられたので、逆に感動しました(笑)!――きっとOCHA NORMAのみなさんの知名度が上がっているんですね?斉藤うれしいですね。――みなさん、こだわりのコスメやお気に入りのファッションはありますか。斉藤私が好きなコスメは、マスカラです。「Milk Touch」という韓国発のコスメなんですが、まつげが長く見えるのでけっこう使っています。これまではマスカラをコロコロ変えていたんですが、いまはずっとこれだけで本当にお気に入り。お洋服は、スナイデルさん、リリーブラウンさん、ノエラさんといった20代のきれいな女性が着るような服を着るようにしていて。私は精神年齢が低いほうなので(笑)、服装は大人っぽいものを選んでいます。田代スキンケアにこだわっていて、メイクをする前のスキンケアを頑張っていますね。TWICEのメイクさんが監修されている『ウォンジョンヨ』というコスメブランドのシートパックがあって、そのシートをして肌を冷やしてから下地を塗り始めると、とても肌の調子やメイクのりがよくなるんです。だから、欠かさずシートをストックしていますね。お洋服は、最近古着が好きで、服や雑貨を裏原宿にあるお気に入りのお店で見ています。古着以外に、ジュエティさんというブランドのお洋服が好きで、ちょっと個性的で可愛いらしさもあるファッションにハマっていますね。北原私が愛用しているコスメは、韓国コスメ「CLIO(クリオ)」のアイシャドウでピンクの01番です。いろいろなコスメを転々としても、結局これに戻ってきて、アイシャドウが入っている容器の底が見えるくらい、使っているんです(笑)。斉藤なかなかアイシャドウでひとつのものを使い続けるって、ないよねぇ?田代うん、似たような色を買うことも。北原ずっとこのアイシャドウがお気に入りで、リピートし続けています。あとファッションは、個性的な人になりたいです。新曲の「ちょっと情緒不安定?…夏」の歌詞は、メンバーに合った内容になっているらしいんですが、Aメロに「お洒落したつもりでも独特だねと」という私が歌っているパートがあって。いまその歌詞をいただいて、歌詞に似合う人になりたいなと思うようになりました。そういえば、ハロプロ研修生の頃は、服から靴、リュックまで全身紫色でコーディネイトしていた時代があって(笑)、それも個性的かなと着こなしていたつもりでしたね。斉藤面白すぎる(笑)。ももちゃんはスタイルと顔がいいから、どんな服を着ても似合っちゃうんです。北原「あの歌詞が合っているね」と言われたくて、いまはけっこう頑張っているんですけど(笑)。あの頃に戻って「独特だね」と言われたいから、ファッションセンターしまむらさんで服を買ってコーディネイトしてみたりと、工夫をしています。ときどき母のおさがりを着てみたり、あまりほかの人がしないようなこともしていますね。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、おひとりずつの抱負と、リーダーの斉藤さんからは代表してグループの目標を教えてください。斉藤今年は10月に21歳になるので、今年こそ大人っぽくなりたいですね。とはいえ、はやく大人になりたいということではなく、落ち着きのある人間になりたい。話すときにけっこう早口になってしまったり、時間がなくてバタバタしてしまったりすることも多いので、落ち着きがありつつ無邪気な最年長になれたらなと思います。田代OCHA NORMAが結成から2年目になるということで、私たちの存在をもっと広めていきたい、大きくなりたいと考えていて。グループのひとりとして、パフォーマンスを含めたさまざまな活動で、たくさんの方に知っていただけるように努力していきたいですね。北原憧れの先輩、船木結さんが歌もダンスもトーク力も完璧で、オールラウンダーの船木さんのようになりたくて。私は歌もダンスもトーク力も飛び抜けてうまいわけではないので、それぞれをしっかりとできるように頑張りたいですね。そして先日、新メンバーオーディションが発表されて、2024年に新グループが結成されてデビューするんです。いままではOCHA NORMAが「フレッシュで元気なグループだね」と言われてきましたが、今後はよりフレッシュな新グループができるので、私たちは何かの個性を持てるように10人で頑張りたいです。斉藤OCHA NORMAとしての抱負は、今年の7月でデビュー2年目になるので、すみれちゃんも言ってくれましたがみなさんに知っていただける存在になるよう、頑張りたいです。メンバーの中山夏月姫(なかやまなつめ)ちゃんがいま、出身地の石川県加賀温泉郷の観光大使をやっているのですが、メンバーそれぞれ地元のお仕事にも力を入れ始めているので、OCHA NORMAは出身地が全員違うところも生かして、各個人でも地元での活動もしていけたらいいなと。たとえばSNSを活用していくような小さな活動からも、努力していきます!取材後記ハロー!プロフェクトの新星アイドルグループ、OCHA NORMAから、ananwebには斉藤円香さん、田代すみれさん、北原ももさんが登場。デビュー前からライブを観たり、デビュー当時も取材をしたり、この1年を通して活動を拝見して、みなさんアイドルとしての輝きが増しているように感じました。今回お話をうかがったみなさんも三者三様に魅力があり、グループとしてもこれからさらに羽ばたいていくでしょう。OCHA NORMAのニューシングルをぜひチェックしてみてくださいね。写真・園山友基取材、文・かわむらあみりOCHA NORMAPROFILE「OCHA NORMA」とは、みんなが集うほっとする場所(お茶の間)と、ラテン語で「規準/ 基準」という意味の(NORMA/ノルマ)をかけあわせた造語。お茶の間を楽しませる、新世代のスタンダードとなるような存在になってほしい、という願いが込められている。2019年7月、ハロプロ研修生から、デビューに向けてより実践的な活動を通してスキルアップを目指すハロプロ研修生ユニットが編成。米村姫良々、石栗奏美、窪田七海、斉藤円香が選抜される。2021年3月 ハロプロ研修生ユニットの4名が新グループのメンバーに選ばれ、メンバーを増員して年内結成を目指すことが発表される。6月、新グループのメンバーに中山夏月姫、広本瑠璃、西﨑美空、北原ももが選ばれる。12月、オーディションにより田代すみれ、筒井澪心が選ばれ、メンバー構成が決定。同時にグループ名も発表。2022年7月、1stシングル「恋のクラウチングスタート/お祭りデビューだぜ!」でメジャーデビューを果たす。11月、2ndシングル運命「CHACHACHACHA~N/ウチらの地元は地球じゃん!」をリリース。2023年7月26日、3rdシングル「ちょっと情緒不安定?…夏/オチャノマ マホロバ イコイノバ 〜昭和も令和もワッチャワチャ〜/シェケナーレ/ヨリドリME DREAM」をリリース。8月15日より全国ツアー「Hello! Project 2023 Summer CITY CIRCUIT」を開催。InformationNew Release「ちょっと情緒不安定?…夏/オチャノマ マホロバ イコイノバ 〜昭和も令和もワッチャワチャ〜/シェケナーレ/ヨリドリME DREAM」(収録曲)01.ちょっと情緒不安定?…夏02.オチャノマ マホロバ イコイノバ 〜昭和も令和もワッチャワチャ~03.シェケナーレ04.ヨリドリ ME DREAM05.ちょっと情緒不安定?…夏(Instrumental)06.オチャノマ マホロバ イコイノバ 〜昭和も令和もワッチャワチャ~(Instrumental)07.シェケナーレ(Instrumental)08.ヨリドリ ME DREAM(Instrumental)2023年7月26日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤A)EPCE-7765(CD)¥1,400(税込)[特典]トレーディングカードソロ10種+集合1種よりランダムにて1枚封入(ちょっと情緒不安定?…夏 Ver.)。(通常盤B)EPCE-7766(CD)¥1,400(税込)[特典]トレーディングカードソロ10種+集合1種よりランダムにて1枚封入(オチャノマ マホロバ イコイノバ~昭和も令和もワッチャワチャ~ Ver.)。(通常盤C)EPCE-7767(CD)¥1,400 (税込)[特典]トレーディングカードソロ10種+集合1種よりランダムにて1枚封入(シェケナーレ Ver.)。(通常盤D)EPCE-7768(CD)¥1,400 (税込)[特典]トレーディングカードソロ10種+集合1種よりランダムにて1枚封入(ヨリドリ ME DREAM Ver.)。(初回生産限定盤A)EPCE-7757(CD+BD)¥2,310 (税込)[特典]BD付。(内容)ちょっと情緒不安定?…夏(Music Video)、ちょっと情緒不安定?…夏(Dance Shot Ver.)、ちょっと情緒不安定?…夏(メイキング映像)。(初回生産限定盤B)EPCE-7759(CD+BD)¥2,310(税込)[特典]BD付。(内容)オチャノマ マホロバ イコイノバ 〜昭和も令和もワッチャワチャ~(Music Video)、オチャノマ マホロバ イコイノバ 〜昭和も令和もワッチャワチャ~(Dance Shot Ver.)、オチャノマ マホロバ イコイノバ 〜昭和も令和もワッチャワチャ~(メイキング映像)。(初回生産限定盤C)EPCE-7761(CD+BD)¥2,310 (税込)[特典]BD付。(内容)シェケナーレ(Music Video)、シェケナーレ(Dance Shot Ver.)、シェケナーレ(メイキング映像)。(初回生産限定盤D)EPCE-7763(CD+BD)¥2,310 (税抜価格 ¥2,100)[特典]BD付。(内容)ヨリドリ ME DREAM(Music Video)、ヨリドリ ME DREAM(Dance Shot Ver.)、ヨリドリ ME DREAM(メイキング映像)。写真・園山友基 取材、文・かわむらあみり
2023年07月25日【音楽通信】第142回目に登場するのは、グループとして主要音楽チャートで1位を獲得し続け、メンバー個人でもドラマや映画で活躍し、飛躍を続けるグローバルボーイズグループ、JO1!一番影響を受けたのはK-POPアーティスト木全翔也(きまたしょうや)。2000年4月5日、愛知県生まれ。A型。身長172cm。【音楽通信】vol.142サバイバルオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』発のグローバルボーイズグループ、JO1。2020年3月に発売したデビューシングル『PROTOSTAR』以降、これまでに発売した7作のシングルすべてが主要音楽チャートで1位を獲得し、昨年末には「第73回 NHK紅白歌合戦」に初出場を果たすなど、その人気は加速するばかり。グループとしての音楽活動はもちろんのこと、メンバー個人でのドラマや映画の出演など、ジャンルレスで活躍の幅を広げるJO1が、2023年7月24日にニューシングル「NEWSmile」をリリース。今回、メンバーを代表して、木全翔也(きまたしょうや)さんに、お話をうかがいました。――11人のメンバーからなるJO1ですが、そもそも木全さんご自身が影響を受けたアーティストから教えてください。いろいろなアーティストの方の音楽を聴いてきましたが、一番影響を受けたのは、K-POPのアーティストさんたちです。オーディションを受けようと思ったのも、韓国発のサバイバルオーディション番組「PRODUCE 101」の日本版ですし、もともとWanna One(ワナワン)さんなど韓国のボーイズグループのダンスミュージックに魅了されていたことがきっかけでした。――音楽の道を志して、すぐにオーディションを受けたのですか。はい、僕は初めて受けたのがこのオーディションなので、運が良かったです。――JO1が結成され、2020年3月にデビューされて今年は全国アリーナツアーやアジアツアーの開催もするなど、快進撃を遂げていますね。コロナ禍で大変な時期もあったのですが、もうずっと駆け抜けてきている感じがあります。ただ、個人的なところで言うと、4月に23歳になったので、今後は貯金を頑張りたいと思っているんですよね。――貯金するのは堅実で良いことですが、欲しいものを買いたくなることはないんですか?もう欲しいものはだいたい買いました(笑)。だから、今後は貯金がしたいな。新曲は「爽やかなポップナンバーで聴き飽きない」――2023年7月3日から先行配信されていますが、7月24日にシングル「NEWSmile」がリリースされますね。「NEWSmile」は、ハッピーな曲に仕上がっています。まずメンバーで曲選びをするところからは初めて、セルフプロデュースをさせていただきました。――どのような点を意識して、曲を完成させていったのでしょうか。今年の4月から、『めざまし8』さん(フジテレビ系 毎週月〜金曜 午前8時)のテーマ曲として起用していただいているので、朝の番組だということを意識しました。曲を選ぶ段階でどの曲が一番いいかな、合うのかなと、話し合いましたね。曲を決めてから、メンバー5人で詞を作っていって。明るい朝感のある、ハッピーになるイメージで作詞していきました。――番組とマッチしている爽やかな楽曲だと感じました。具体的にどのように作詞されたのですか?書けるだけ書いてきて、と伝えられていました。フルで書いたのは、僕と(河野)純喜くん。他のメンバーもやりたいところを書いてきて、それぞれが歌詞を持ち寄っていい感じに分けてって感じですね。――では、作詞をご担当されたのは、木全さん、河野さん、あとは?あと與那城奨、金城碧海、大平祥生の5人です。――持ち寄ったものをひとつの作品にするのは、難しくなかったですか?みんなの曲のイメージが合っていたので、そんなに大変ではなかったです。ここにあった歌詞を別に移動させる、というようなちょっとした入れ替えだけありました。――木全さんは作詞をされる際、どのように形作っていかれたのですか。僕は、テーマをもとに考えていきました。この曲は3時間ぐらいで歌詞を書いて、その日に終わらせました。でも、本当に歌詞が思い浮かばないときもあって、そんなときは何時間やってもできないです。そういった意味においては、今回タイミングがちょうど良くて、「こんなワードが出てきた!」というように、すぐにフレーズが浮かんできました。――コンディションもばっちりだったんですね。では、完成した楽曲にどんな印象をお持ちになっていますか。先日ミュージックビデオも撮影されたそうですね。すごく爽やかなポップナンバーになっています。何回聴いても、聴き飽きないですね。ミュージックビデオは、大きな施設を貸し切って撮影しました。全体的にポップな世界観に仕上げていて、色合いも爽やかで曲に合っています。――今回、楽曲の新しい楽しみ方の提案ということで、“音楽が聴けるグッズ”が発売される期間限定ショップの展開がありますね?そうなんです。日本では、新曲を発売するというと、CDとして発売することが多いですよね。でももしかしたらいろいろなアーティストさんも、CD以外の形で、曲を出したいと思っている方もいると思うんですが、現状ではあまりそういった発売方法はメジャーではないんですね。それを僕らがこうしてショップを展開させてもらえるのは、すごく貴重だしうれしいことだなと。今回はこのグッズが音楽のCD代わりになります。――グッズから音楽が聴けるというのは具体的にどのように?グッズにQRを付けているので、それを読み取ると、新曲が聴けます。韓国ではけっこうスタンダードな音楽の発売方法なんですよ。いまはサブスクで聴く方も増えていますよね。なので今回は、CDを買うのではなく、音楽も聴けて日常使いができるグッズも手に入るという、サステナブルなものを展開しようとなりました。――日本では面白い試みですね。グッズは、メンバーそれぞれのキャラクターに合ったドアノブカードや、マグカップ、メモ帳、トイレットペーパー、ジャムといった趣向を凝らしたラインナップになっています。どれもおうちに飾るだけでもけっこう映そうなグッズなので、インテリアグッズを買いに来るような感覚で来てもらってもいいのかなと思いますね。――画期的です。そういえば最近、2023年5月に韓国で開催された「第29回 DREAM CONCERT」に、ITZYら19組のK-POPアーティストが一同に会すなか、JO1は唯一の海外アーティストとして出演されましたし、同イベントの日本版が6月にさいたまスーパーアリーナで開催されましたね。釜山は会場が野外で天気も良かったので、遠くのお客さんまで全部見えました。僕らの名前を書いたボードを持ってきてくれている方もいて、うれしかったですね。韓国では、ライブ中のカメラ撮影がOKだったので、みなさんが撮影している様子も全部見えて、レンズに向かってちょっとアクションしたりも楽しかったです。――日本の会場には、MCとしてユク・ソンジェさんや、豪華な参加アーティストが集結しました。僕、ソンジェさんがボーカルのグループBTOB(ビートゥービー)が好きなので、MCでいらしてびっくりしました!日本ではやっとライブで声出しがOKになったので、集まってくださったお客さんも曲に合わせて掛け声をしてくださって、うれしかったです。JO1として「ずっと走り続けていきたい」――お話は変わりますが、木全さんは、多趣味でいらっしゃるんですよね?はい、音楽を聴いたり、作曲をしたり、バイクに乗ったり。いろいろなことに興味がありますね。――では、最近新たにハマったことはありますか?料理ですね。わざわざレシピを見なくても、一度食べたことがある料理だったら「あ、これが入ってるんだな」と、ある程度は感覚的に調味料もわかると言いますか(笑)。――食べただけで、レシピを見ずに自分でも同じ料理が作れるなんて、すごいですね。普段から食べることが好きで、好き嫌いもないから、味を覚えてしまうのかもしれません。――最近作った料理はなんですか?たこ焼きを作りました!高校時代、たこ焼き屋さんでアルバイトをしていたので、作るのは得意なんです。――たこ焼き、いいですね! お友達と一緒に食べたんですか?ひとりです(笑)。自分のたこ焼き器があるので、食べたくなって、作りました(笑)。――いいですね〜。ちなみに今日はお衣装ですが、普段こだわりのファッションなどありますか。こだわりといえば、靴ですね。その日のファッションは、服からではなく、靴から考えてコーディネイトします。今日はこの靴を履きたいから、こんな服を着ようかなって。プライベートでは、今日の衣装ほど派手ではないですが(笑)、こういう感じも好きですね。ひじまであるオレンジ色の長い手袋を持っているんですが、気に入っていて冬には普段、つけるときもありますね。――ステージではダンスパフォーマンスも披露されますが、カラダ作りやコンディションをキープするために心がけていることはありますか。太らないように夜ご飯をちょっと少なくしたりはしますね。あとはプールによく行きます。最近、筋力アップできる負荷のついた水泳グローブを買いました。このグローブをつけて泳ぐと、ものすごく良い筋トレになるので、効率良く水の抵抗を重くして、筋力を上げていますね。――そのグローブをつけて、どのぐらいの距離を泳ぐんですか?25メートルはふつうに泳ぎますね。でも、疲れたな、と感じるぐらいまでいつも泳ぐようにしていて。水の抵抗が強いので、全身運動になっています。――いろいろなお話をありがとうございました。では、今後の抱負といえば?JO1としては、小さくてもいいので、いろいろなところでライブをたくさんやりたいですね。僕個人としては貯金を……(笑)。――最後に、J-POPとK-POPの良さを両方持ちあわせているJO1ですが、木全さんにとってグループはどんな存在でしょうか。これまでもこれからも、JO1は良い意味で突っ走っている存在です。ずっと走り続けていきたいですね。取材後記国内外で活躍の幅を広げている、グローバルボーイズグループのJO1。今回、新曲の作詞をメインで手がけたメンバーの木全翔也さんがananwebにご登場くださいました。ビタミンカラーのお衣装に負けない快活さで、元気に撮影やインタビューにトライ。23歳になり、貯金にご興味があるというお話も印象的でした。木全さんをはじめとして、今後もますます飛躍される姿を見せてくれそうなJO1のニューシングルを、みなさんもぜひチェックしてみてくださいね。写真・園山友基取材、文・かわむらあみりJO1PROFILE©LAPONE Entertainmentサバイバルオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』で、約3か月にわたる熾烈な競争を繰り広げ、番組視聴者となる“国⺠プロデューサー”累計約6,500万票の投票により選ばれた11人による、グローバルボーイズグループ。2020年3月に発売したデビューシングル『PROTOSTAR』以降、これまでに発売した7作のシングルすべてが主要音楽チャートで1位を獲得。海外では、アジア最大級の音楽授賞式「2022 MAMA AWARDS」にて“Favorite Asian Artist”を日本人アーティストで唯一受賞。さらに「WEIBO Account Festival 2022」にて“優秀男性グループ賞”を受賞。2022年の年末には「第73回 NHK紅白歌合戦」に初出場を果たす。2023年7月24日、ニューシングル『NEWSmile』をリリース。メンバー個人でのドラマや映画の出演など、多方面での活躍を広げるなか、8月からは全国6都市13公演 のアリーナツアー、さらにはアジアツアーの開催が決定している。Information©LAPONE EntertainmentNew Release「NEWSmile」2023年7月24日発売写真・園山友基 取材、文・かわむらあみり
2023年07月11日【音楽通信】第141回目に登場するのは、心の奥深くに刺さるメッセージ性の強い歌詞と情感豊かなギターで熱烈な支持を獲得している、結成15周年を迎えた2人組、MOROHA(モロハ)!高校の同級生同士で上京後に結成写真左から、アフロ(MC)、UK(G)。2008年に結成。【音楽通信】vol.1412008年に結成された、ラッパーのアフロさんとアコースティックギターのUKさんからなる、MOROHA。おたがいの持ち味を最大限に生かすため、楽曲制作やライブともにギター×MCという最小の編成で臨み、グッと心の奥深くに刺さる歌詞と、変幻自在で情感豊かなギターに心奪われます。2016年に自身のレーベル「YAVAY YAYVA RECORDS」からアルバム『MOROHA III』をリリースし、2019年にメジャー初となるオリジナルアルバム『MOROHA IV』を発表。2022年には日本武道館単独公演が大成功と、活動を続けるうちに一般の方はもちろんのこと、芸能界でもMOROHAファンを公言する方が続出するなど、そのスタンスや楽曲が熱い支持を得ています。そんなMOROHAが、2023年6月7日に5枚目となるオリジナルアルバム『MOROHA V』をリリースされるということで、音楽的ルーツも含めてお話をうかがいました。――そもそもおふたりが音楽にふれたきっかけや、影響を受けたアーティストから教えてください。アフロもともとはテレビで流れる曲や流行りの歌を聴いていて、人並みに音楽好きでしたね。小学校5年生ぐらいのときからJ-POPのチャートにラップが入り始めて、Dragon AshやRIP SLYME、KICK THE CAN CREWなどを聴くようになって「この音楽カッコいいな」って。そういったグループの音楽はもちろん、ファッションや振る舞いにも憧れて、そういう感じになりたいな、と思ったことが音楽の道を意識する一歩目だったような気がしますね。アフロ(MC)。1988年1月7日、長野県生まれ。ナレーターや文筆家としても活動中。UKもともとピアノをやっていたのでクラシックをよく聴いていて、ポップスはテレビから流れてくる音楽ぐらいしか知らなかったんです。でも、僕には兄がいて、兄が聴いている音楽の影響を受けていました。小学校の低学年の頃にX JAPANを好きになって、初めてバンドサウンドに触れて、衝撃を受けて。ギターのhideさんに憧れたこともあって、音楽の道を目指すようになりましたね。――ギターはいつから弾くようになったのですか。UKギターは15歳ぐらいのときからですね、高校1年生の頃です。X JAPANの曲をコピーしたり、あとは流行っている曲をカバーしたりしていました。――その後、アフロさんとUKさんでMOROHAを2008年に結成されたきっかけは?UKもともと高校の同級生だったんですよ。僕は音楽をやっていて、地元の長野から上京していて。一方、アフロもラップをやるようになって上京して。そのうち僕はバンド活動がうまくいかなくなって、アフロはラップクルーがなくなったときに、一緒に遊んだタイミングがあったんです。それで「ノリで1曲やろうか」と、遊び半分にふたりで曲を作ってやってみたら、意外と良くて。それがきっかけで、「真剣にやろうぜ」とふたりで音楽を作りだしたのがきっかけです。UK(G)。1987年5月14日、長野県生まれ。ゆず、MY FIRST STORYなどの楽曲にも参加。――2010年には、曽我部恵一さんが主宰するROSE RECORDSからインディーズデビューアルバム『MOROHA』をリリースされましたが、曽我部さんとの出会いは、音楽活動に弾みがつく契機だったのでしょうか。アフロそうですね。まずミュージシャンにとってCDを出すことは、すごく特別なことでしたから、うれしい出会いでした。――2023年の今年、結成15周年になりました。15年という道のりは重みがありますが、意外とアッという間だったようなところもあるのでしょうか。UKいやぁ、長かったですよ(笑)。まだ音楽をやっているか、とも思いますね。とはいえ、15年間濃密にやってきて、果たして最短距離で来ていたのかな、と15年の長さを感じます。どのぐらいの期間が何をもって最短なのかはさておき、いま自分のいる現状が15年経った最速の位置にいるのかどうかは、考えることはあって。たとえば、同じ道のりを2、3年でやってのける人もいるかもしれない。だから、そういう意味では、いま5枚目のアルバムを出すというのは、長い道のりだったかなと。でも、いままでの活動において後悔はないので、すごく充実した15年だと感じています。――ドラマ『宮本から君へ』(2018年)のエンディングテーマとなった楽曲「革命」などは、岡本圭人さんやSixTONESの髙地優吾さん、JO1の川尻蓮さんほか、芸能人の方からも数多く支持されていますね。多くの方にMOROHAの楽曲が届いている率直なお気持ちは?アフロめっちゃうれしいですね。たとえば15年前からではなくても、最近僕らのことを知ってくれた方もいて、それはやっぱり続けてきたからこそ、出会えたわけであって。本当は多くの方にMOROHAを知ってもらうには、UKがさっき言ったような、もっと最短の距離での出会いがあったんじゃないかという思いもあります。でも、いつも遅すぎることはないから。どのタイミングでみなさんとMOROHAが出会っても、その先があると思うと、新しい出会いがあることも続けてきた結果だなと思いますね。「音楽を聴くぞ」という姿勢で聴いてほしい――2023年6月7日に、5枚目のオリジナルアルバム『MOROHA V』をリリースされます。前作から4年ぶりのアルバムということで、いまこのタイミングで出そうと思っていらっしゃったのですか。アフロいや、もう曲作りするのが遅くて、いまになりました! 出せるんだったら、毎月出したいぐらいなんですが、シンプルにアルバムが完成するまでに4年かかったんです。偶然15周年に当たったので、あわせて盛り上げようという感じですね。――収録曲の3曲目「俺が俺で俺だ」は、自分から自分へ宛てた手紙のような印象ですが、ミュージックビデオには幼少時のアフロさんが本名で新聞に掲載された映像が出ています。アフロ小学5年生のときに、地元長野の「信濃毎日新聞」に載って、10年後の僕へと書いたんだったかな。UK20年後じゃない?アフロそうか、20年後の僕へ、というテーマだったんですよね。大人になったら、プロ野球選手になっていると書いてあったんです。実際に大人になって、ちょうどその記事を見つけたタイミングが、ちょうど20年後頃で。すごく新鮮で生々しくメッセージが届いたので、「うわ、ごめん! 野球選手にはなれなかったよ」と、それに対してちゃんとアンサーを書こうかなという気持ちで書いた曲ですね。たぶん多くの人が小学5年生のときに描いた未来とは違うものになっているだろうから、共感してもらえるような内容なんじゃないかなと思います。――6曲目「花向」は、穏やかなメロディの叶わない想いを綴るラブソングです。アフロこの曲は不倫の曲なんですが、身近にそういう境遇の友達ができて、結婚自体の良し悪しではなく制度自体に、人間の本能に反する側面もあるのかなと。それと、相手とぶつかったときに、しんどい思いもするし、心も動くはず。だから、その瞬間の思いはやっぱり曲になるよね、というところから書き始めたものです。仮に既婚者ではなく、彼がいる女の子を好きになってしまったときの気持ちにもつながりますが、今回は「あの指輪 引ったくり空へと奪い去れ」というフレーズもあって、既婚者にあてはまる。叶えちゃいけない恋というのは、状況はさておき、みんな何かしらにあてはまるし、僕もありますね。――そもそもMOROHAは、いつもどのように曲を作っていかれるのですか。UK一緒に作っています。僕は曲を作っているので、曲のフレーズや展開を考えて構築している間に、アフロは歌詞を考えていて。ある程度仕上がった段階で、「せーの!」で一緒に曲を作り上げていくという感じです。せーのでやってみて、良かったらそのままいきますし、ダメだったら1回作り直したり、そういうことの繰り返しですね。――MOROHAさんの曲は、たとえばドラマの劇伴を作るような感じで、アフロさんのしっかりとした世界観が確立された歌詞を軸に、UKさんが曲を作っていらっしゃるのかな、と思ったのですが、「せーの」で作っているんですね。UKそうです。基本的にいつも考えているのは「良いメロディを作ろう」ということ、一心です。その前に、歌詞にハマるハマらない問題もありますが。「花向」だったら、不倫や失恋の歌に対して、あまりにもはねてポップな曲はニュアンスとして違う。優しい曲調とはいえ、その優しさにもいろんな種類があると思うので、そういう繊細なところを歌詞と組み合わせたうえで、せーので合わせています。そこで、ふたりの実感としてちょっと肌感が違うとなった場合、メロディを変えたり、ギターフレーズをまるごと違うものに変えてみたりしていますね。――8曲目「ネクター」は、アフロさんご自身の家庭環境について描かれているそうですね。アフロいままでの曲は、家族に対して良い部分を歌ってきたんです。優しいじいちゃんと、あったかい家族という感覚での曲で。どの家族もそうだと思うんですが、キツいときもあれば、良い時もあって、一色ではない。いままで良いところばっかり書いてきたけれど、おじいちゃんが亡くなったタイミングもあって、自分が体験したけれどイヤだったことをなかったことにはできないなと。音楽活動は、自分の生きざまを晒す職業だと思っているので、良いことばかりではなく、キツかったことにも「いよいよ手をつけるぞ」という気持ちで作り始めましたね。――9曲目「主題歌」は、コロナ禍で音楽活動の制限においての葛藤が込められていますね。アフロそうですね。「主題歌」はアルバムには再録したものが入っているんですけど、ミュージックビデオはリモートで録ったものが使われているんです。いつもレコーディングもふたり一緒にせーので録るんですが、ミュージックビデオに関しては、UKくんが録ってくれた音に対して俺がラップをのせるという方法でそれぞれ自宅で録りました。おたがいが離れたところにいながら、それもコロナ禍でのドキュメントぽいなあと感じましたね。――10曲目「六文銭」は初音源化された曲ですが、過去に「一文銭」「二文銭」……とあるシリーズの最新という位置付けに?アフロそうです。基本的に「文銭」シリーズは、そのときの自分たちの思いを書いているので、昨年行った日本武道館単独公演のことが書いてあったり。UK僕はギタリストなので、いまでき得る最高のスキルやメロディを落とし込んでいるのが、「文銭」シリーズの醍醐味なんです。それは辛いところでもあるんですが、いまの自分での集大成にもなっていて。どの曲もそうなんですが、人間的な成長や、スキル的な部分でも、毎回自分でテーマを決めてやっていて。「六文銭」も然り。ギタリスト目線でのフレーズの楽しさや、難しさみたいなものが曲には詰まっていますね。――作品を出されるときに、どんなふうに聴き手に届いてほしいと思われますか。アフロ指定できるものではないから、好きに聴いてもらえたらと思います。ただ一曲を通して伝わるように歌詞を書いているので、TikTokのような切り抜きのコンテンツで向き合ってもらうのは難しいだろうなとは思います。そう考えたときに「音楽を聴くぞ」という姿勢でMOROHAと真っ向むき合ってほしい、という願いがあるんだと気づきました。この間、公園でベンチに座ってCDウォークマンで音楽を聴いている OLさんがいたんです。ふつうは弁当を食べがながらとか、小説を読みながらとか、何かをしながら音楽を聴いているイメージだったんですが、その方はずっと一点を見つめてただ音楽を聴いていたんですよね。それが、すごく潔く美しくて。もしやCDウォークマンに入っているCDが僕らの音楽だったら、こんなうれしいことはないなって思いましたね。――MOROHAさんの曲は流して聴けない印象があります。UKうれしいんですが、それは弱みでもありますよね。アフロそうだね。UKでも、TikTokで流行ることが悪ということではなく、タイプが違う音楽という意味なんです。TikTokを見ていると、まさか大御所の和田アキ子さんが「踊らにゃ損」とTikTokをしているなんて思わなかったですし、でも挑戦したことが本当にすごいですし、ちゃんと結果も残しているところもすごい。やっぱり、そのあたりは僕らの甘い部分だとも思います。アフロそう、だから自分たちが力を付けて、別の方向性の音楽を作れるようになったら、ぜひTikTokに挑戦したいですね!――もしも始められたら見ます(笑)。今後は、全国ツアー「MOROHA『日程確定、開催確定TOUR』×『MOROHA V RELEASE TOUR』」がありますね。UK今回はコンセプトがある全国ツアーになっています。3年前、コロナ禍の影響でイベントの延期や中止が続出して困窮を極めるライブハウスに、ツアーの会場費を先払いして、現状を打破してもらうために会場だけ押さえていて。3年経ったいま、ようやく開催できるようになったんです。だから、すでに予約は受け付けていたので、実際にどのくらいの方が来ていただけるのか。アフロそう、わからないんですよね。ツアーの前半は小さい会場が多いので、ソールドアウトしているところもあるんですが。UKチケット状況が読めないんですよね。――先に会場を押さえて支払うという、志もすばらしいです。アフロでも、これが話題になると思ってやったところもあるので、そういう妙案を見つけていくというのは、多分ビジネスで食っていくんだっていう貪欲さと、あと誰かを思う愛情との両方がないとできないことなので、ちゃんと両方を育てていきたいですね。――ツアーの後半戦も発表されて、ツアーファイナルでは、来年のLINE CUBE SHIBUYAでのワンマン公演が発表されました。アフロそうなんです。7月にあるZepp Shinjukuのリリースライブがソールドアウトしているので、もしほかの東京公演が気になった人は、ツアーのファイナルになるLINE CUBE SHIBUYAに来てほしいですね。ニューアルバム『MOROHA V』の曲もやりますし。UK楽しみにしていてください。ananwebを読んでいるみなさんに愛されたい――ところで、お話は変わりますが、おふたりが最近ハマっているものはありますか。UK趣味はゲームなんですが、最近ハマっているものとなると、メンズコスメです。もう無視できないぐらい市民権を得ているので、いろいろと手に取ってみたところ、これは男性もケアしたほうがいいですね(笑)。僕、もともとスキンケアに興味があって、美意識がめっちゃ高いほうなんですよ。でも、化粧品までは手を出していなかったんですが、最近は若い世代の男性でも普通にファンデーションをぬったりしているのを見て、わりとメンズコスメがスタンダードになっているんだなと。時代に遅れないように、僕も最近、メンズコスメを試すようになりました。アフロこの間、テレビ出演する際、UKはテレビ局のメイクさんにメイクをしてもらわなかったんですよ。UKテレビ局のメイクさんとは、その日限りの一期一会で終わるんですよね。なので、自分の肌のこと、色とかトーンを知らないので、あまり自分の肌に合うことがなくて。たとえば女性の出演者の方でも局のメイクさんではなく、自分でお化粧する方もいると聞いたので、それならば自分の肌のことを一番よくわかっている自分でメイクするということで、この間はお断りしたんです。アフロもともと僕たちはルックスで売っていないから、メイクなんてと断るというストロングスタイルがカッコいいと思ってやっているのかと思いきや、そういうことではなく!UKけっして尖っているわけではなく(笑)。より肌を知っている自分でやりたいということでの、ネクストレベルの局メイクしません、という選択なんです。アフロそういえば、局のメイクもやっている人と友達になったときに硬派なバンドマンはメイクしないよねという話になって「いるよねえ。それをかっこいいと思ってる人。こちらからすると、何の意地だよ!きれいなほうが良いだろ!」と言っていて。さらに「ライブの写真でも、写りが良い写真を選ぶんでしょう?選んでいる時点で同じだよ」というようなことを言われて、それもそうだと納得して。だから、それからは「きれいにしてください」ってお願いして、僕もヒゲの青いところ消していただいてます。UKあとは、全身脱毛をしました。――ええ!? すごいですね。UK美意識高いので(笑)。アフロ僕は髭の脱毛がどのぐらい痛くて、何回行けばいいのかリサーチ中です。男性の場合、夕方にちょっとだけ鼻の下が青くなってくるこの感じって、無いほうがいいのか?それともココに意識がいっていること自体、女性からするとあまりよろしくない印象なのか?この前、良い靴を履いて実家に帰ったんですよね。すると姉ちゃんが、「カッコいい靴履いてるね」って言ったから、褒められたと思って喜ぼうと思ったそのタイミングで、「あんた、いつまで自分にお金かけてんの?」と言われて! こわくないですか?UKこっわ〜(苦笑)。アフロつまり、姉ちゃんは家族がいて、子どももいて、いろんなところにお金がかかると。それで反射的に、独身のいい歳をした大人の男が自分にお金をかけていることに、ひとこと言ってしまったという。もしかしたら脱毛も、そういう視点で見られることってあるのかな、とちょっと思ったり。でも、髭の脱毛は気になっています!――ファッションでは、おふたりで意識している点はあるんでしょうか。アフロ服を選ぶときは、相手をイヤな気持ちにさせなければ何でもいいかなと思います。清潔感さえあれば。ライブのときは言葉の情報量が多いので、視覚的にもほかの余計な情報を入れたくない、ステージで白いTシャツをずっと着ています。UK僕はカッコいいと思ったものをそのときどきで選んで着ています。あまりファッション雑誌などを参考にしないので、たまに服装がバグっているときもありますが(笑)。 たとえダサくなっても、好きなものを好きなときに着るのが一番いいんじゃないかなと思いますね。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。アフロananwebを読んでいるみなさんに愛されたいですね。UK同じく、そう思うね。アフロやっぱり音楽的な部分で言うと、MOROHAはけっこうかたくて重いものをやっているところがあるんですが、幸いに最近テレビなどにも出させてもらうようになり、音楽活動をしている姿以外の自分たちを受け入れてもらえる機会が多くなってきました。そうすると、たぶんそういう状況においての気持ちを表したような曲がちょっとずつ作れるようになると信じているんです。みんなの評価や、「ここが良いよ」と言ってもらえる部分が増えれば増えるほど、曲も増えていくと思うんですね。だから、きっといまananwebを読んでくださった方々が僕らのことを愛してくれれば、そういう曲ができてくるはず。曲をたくさん作るためにも、心を開いて、いろんな人に受け入れてもらえるようになりたいなと思っています。UKそういう意味では、MOROHAを知るきっかけが、曲じゃないパターンも全然ありだなと最近実感するんですよね。たとえば、それがメンズコスメでもいいですし(笑)。アフロそうだね、脱毛体験でもいいよ!UKゲームでもなんでも、何かでMOROHAに興味を持ってくださった方が、最終的に落ち着くところが、自分たちの曲であることを願っています。取材後記舞台上で鎮座しながら演奏するUKさんと、心の叫びを赤裸々に表現するアフロさんからなる、MOROHA。アコースティックギターとラップという最小編成なのに、CDからでさえ熱気や狂気、ズドンと耳や心に印を残していく音楽には、聴き入るばかりです。ananwebの取材では、ニコニコ笑顔のアフロさんとキリッと涼やかなUKさんともに、真摯に音楽や活動への思いを語ってくださいました。そんなMOROHAのおふたりのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね!写真・園山友基取材、文・かわむらあみりMOROHAPROFILEラッパーのアフロとアコースティックギターのUKにより、2008年に結成。2010年、「SUMMER SONIC」出場権を賭けたコンテスト「出れんの!?サマソニ!?」にエントリーし、「曽我部恵一賞」を受賞。10月には曽我部主宰のROSE RECORDSから1stアルバム『MOROHA』を発売。2016年10月、自身のレーベルであるYAVAY YAYVA RECORDSからアルバム『MOROHA III』をリリース。2019年5月、メジャー初となるオリジナルアルバム『MOROHA IV』を発表。2023年6月7日、5枚目となるオリジナルアルバム『MOROHA V』をリリース。InformationNew Release『MOROHA Ⅳ』(収録曲)01.チャンプロード02.スコールアンドレスポンス03.俺が俺で俺だ04.エリザベス05.0G06.花向07.命の不始末08.ネクター09.主題歌10.六文銭2023年6月7日発売UMCK-1750¥3,300(税込)写真・園山友基 取材、文・かわむらあみり
2023年06月05日【音楽通信】第139回目に登場するのは、音楽を始めて1年でデビューし、飛ぶ鳥を落とす勢いでいまや国内外でティーンを中心に大人気の新世代アーティスト、imase(イマセ)さん!趣味で始めた音楽がいまや韓国でも大人気に【音楽通信】vol.1392020年11月、20歳のときから音楽活動をスタートした、新世代アーティストのimaseさん。2021年5月にはTikTokに初めてオリジナル曲を投稿してバイラルヒットし、約半年後の12月にはデジタルシングル「Have a nice day」でメジャーデビューを果たしました。2022年には「ポカリスエット」や「JT」などのCM曲やドラマタイアップにも抜擢され、現在、TikTokでの総再生回数は20億回超えに。さらに、2022年8月に配信リリースした「NIGHT DANCER」は韓国のボーイズグループ「Stray Kids」などのアーティストがダンスチャレンジしたことからより浸透。最近ではBTSのジョングクさんも、公式ファンコミュニティサービスで歌を披露するなど、韓国をはじめとした世界各国へとバイラル中です。そんなimaseさんが、2023年5月26日に、ニューシングル「Nagisa」を配信リリースされるということで、お話をうかがいました。――20歳から音楽を始めたimaseさんですが、そもそもどのような音楽環境に育ったのでしょうか。小さい頃は、歌うことが好きな子どもでしたね。とくに音楽に興味を持ったり、楽器をやったりしたこともなかったです。聴いていた音楽も、そのときに流行っているJ-POPだったと思いますね。岐阜県の田舎に住んでいたので、近くにカラオケ店もなかったですし、音楽に触れるといえば親が運転する車の中で聴くことがあったぐらいでした。小学校、中学校、高校とずっとサッカーをやっていたので、スポーツ少年でしたね。――サッカーに打ち込まれてきて、その後、高校を卒業後は、一度就職されていたんですよね。音楽の道を志したのはいつぐらいだったんですか?趣味で音楽をやり始めたのが20歳のときです。友達がギターを購入しているのを見て、もともと歌うことは好きだったので、「僕も弾き語りしてみたいな」と思ってギターを買って。それからTikTokを観ていると、ショート尺で投稿されている方がたくさんいらっしゃって、ショート尺の楽曲を投稿し始めました。ーー友達の影響でギターを購入されて、弾き語りもお好きで、最初からオリジナル曲を投稿していたんですか。まだフル尺は難しいけどショート尺だったら「僕もオリジナル曲が作れるかな」と、曲を作って投稿するようになりましたね。最初は簡単なコードで弾ける楽曲をネットで探して、弾き語りカバーをしてみたり。そのうち、自分の声に合った曲でやってみたいと考えて、オリジナル曲を作り始めました。――それからデビューまであっという間の印象がありますが、レコード会社の方からお声がけがあったのはいつ頃だったのでしょうか。TikTokに2曲めの動画を投稿し始めたぐらいのときに、お話をいただきましたね。――2021年12月にはテレビ東京系オーディション番組『Dreamer Z』に参加されて話題となりました。テレビ出演は、さらにimaseさんの認知度を高める契機のひとつにもなりましたね。そうですね。いままでやったことがないことにチャレンジするきっかけにもなるかなと思って参加しました。でも、番組は、弾き語りのオーディション企画だったので、当初どう表現していいのか悩んで。僕はもともと楽器をやっていたわけではないですし、ギターも経験年数が浅くてまだ上手に弾けないので、そこでドラムパッドを使おうと。ドラムパッドは、ドラムを打ち込む機器ですが、好きな音をサンプリング(録音)して、パッドを叩くことでいろいろな音が出せるので、それで弾き語りをして歌って出演していました。――いまやTikTokの総再生回数が20億回数など、急速にブレイクしている実感はありますか?先月、上京してきたのですが、地元に戻ると友達から「imaseの曲をいろんなところで聴くよ」と言ってもらったり、最近は海外の方にも聴いていただけていたり。この間も韓国に行っていて、道を歩いていると「imaseさんですか?」と声をかけられて、本当に海外の方にも僕の音楽が届いてるんだな、ということを実感しました。――代表曲の「NIGHT DANCER」は、日本だけでなく韓国でも「Stray Kids」などのボーイズグループや、「Kep1er」らガールズグループなどの数々の人気アーティストが踊ってみた動画を投稿していますね。さらに韓国の配信サイト“Melon”で J-POP初のTOP100(最高位17位)入りをしていて、とくに韓国の盛り上がりを感じます。「NIGHT DANCER」は、勝負曲だと思って作った楽曲だったので、日本だけでなく韓国をはじめとした海外にも広がっていったのはうれしいですね。韓国のアーティストさんでは最初にStray Kidsさんが踊ってくださって、なかなか言語だけでは超えられない壁があっても、ダンスと音楽がSNSによって言語の壁を超えて楽曲が届くんだなと実感しましたし、日本語でも海外に挑戦できる可能性があるんだなと。――韓国のバラエティ番組や歌番組に出演されたYouTubeを拝見しました。一般の方もそうですが、韓国のメディアの取材もあるなど、注目されている現状を率直にどう感じますか。本当に言語の壁を越えて知っていただけたことは、率直にうれしいですし、僕自身も韓国のいろいろなアーティストの楽曲をよく聴くので、同じように僕の楽曲が韓国の方に受け入れていただけて、すごくうれしいです。――韓国で印象的だったことはありましたか。やっぱり、韓国で声をかけてもらったことが一番印象的ですね。曲を聴いていただけていることはチャートやSNSなどを見てもわかりますが、顔まで覚えていただけているんだな、とそのときに実感できて、うれしかったです。韓国では、ショーケースイベントも実施して。会場に集まってくださった韓国のみなさんが、日本語の楽曲なのに歌ってくださっていて、さらに、みなさんがすごく上手な発音で感動しました。――「NIGHT DANCER」は、3月にTeddyLoid Remixを配信され、5月15日には韓国のヒップホップアーティスト、BIG Naughtyさんとのコラボレーション作も配信されていますね。はい、曲への反響が大きくて、それぞれ新しい「NIGHT DANCER」が生まれてよかったです。BIG Naughtyさんとのコラボ作のほうには、「NIGHT DANCER」の“Korean Ver.”として、僕が韓国語で歌っている楽曲も入っています。ありがたいことにコメントでも、「歌ってくださってうれしいです」と韓国の方にも言っていただけて、やってよかったなと思いますね。80sのリバイバル的なものをテーマにした新曲――5月26日に爽やかなポップチューンのデジタルシングル「Nagisa」を配信リリースされます。作詞作曲はimaseさんが手掛けられていますが、どのようなことをテーマにして作ったのですか。この楽曲は80sのリバイバル的なものをテーマにして、作りました。タイトルの「Nagisa」という言葉も、この楽曲を作るうえで80sのシティポップの曲を聴きあさっていたときに、80年代の曲の歌詞によく出てくる単語だなと思って、歌詞にも入れてタイトルにもしていて。あと「Nagisa」とローマ字表記にしたのは、海外でも“渚”は“Nagisa”と言われているようで、海外の方にも「Nagisa」というフレーズを覚えていただきたいなという思いを込めています。――今回は80sを意識されたということですが、いつも曲作り自体はどのようにされているのですか。そのときどきに作りたい系統の楽曲をたくさん聴いて、テイストをインプットしてから作っています。もともとこの楽曲のメロディは昨年の10月ぐらいにはできていて。そのときはパッと思いついたメロディだったので、そこに80sっぽいトラックにメロディをつけて、楽曲を作っていって、あとはインスピレーションで仕上げていきました。――歌詞は女性目線のものになっていますね。女性アーティストが歌詞の一人称を「僕」にして歌う曲はありますが、男性アーティストが「私」として歌う曲はそれほど多くない印象です。「Nagisa」は、男女ふたりの物語で、強気な女性をイメージしていまして。ただ、最後のサビの部分では、少し弱さが見える面も描いています。歌詞の中では「ネオンをまとい」ですとか、僕が思う80年代と、当時の強い女性をイメージして作りました。――曲ごとにいろいろなチャレンジをされているんですね。自分のなかにある、いろいろなバリエーションを出したいと思っていますし、そのなかでも今回はいままでやっていなかった女性目線の歌詞というところが挑戦した部分です。サウンドでは、シンセブラスの音もあって、いなたい雰囲気も持っていて。80年代に曲を聴いていた世代の方には、この曲を聴くと懐かしい気持ちにもなってもらえると思いますし、逆に僕ら世代の10代や20代の方には、真新しく聴こえるんじゃないかなと思います。――タイトルからなのか、どこか夏をイメージさせるようなところもありますね。とくに夏を意識して作ったわけではないんですが、僕も夏を感じます(笑)。歌詞の最後に、「うつりぎな花の香り」と入れたんですが、それは紫陽花をイメージしていて。紫陽花って、土壌がアルカリ性か酸性かで色が変わる花なので、それを「生ぬるい肌も火照り 涼しげな青も赤に変わるの」という比喩にした歌詞にしたんです。――紫陽花というと、夏の季語ですね。そうですよね、夏の曲です(笑)。――では、歌唱されるときに意識されているポイントはありますか。この楽曲に限らず、リズムを立てるための歌い方を意識しています。あとは母音を柔らかく歌うことはすごく意識していますね。母音を柔らかくすることによって、個人的にはちょっと他言語に聴こえるのかなとすごく思っていて。歌っていて自分でそう気づいたり、日本のR&Bのアーティストの方の楽曲を聴いていても、けっこう母音が柔らかいイメージがあるんです。日本語で歌うときも、基本的に英語の曲でも韓国語でも、みなさん母音が柔らかい印象。なので、日本語で歌っている部分も、母音を柔らかくして歌ったほうが、海外の方も聴き馴染みがあるのかな、と思い意識しています。――驚くべきスピードで音楽の才能を開花していますが、ご自身ではどのように感じていますか。音楽をやり始めた頃は、実はこういった楽曲の聴き方や作り方を全然していませんでした。最初から自分のできることを探っていって、いまに行き着いているところがあります。もともとは自分の歌声が好きではなくて、SNSに投稿していた楽曲も、いまのように裏声1本で作らず、裏声と地声を混ぜて自分の声がわからないようにしたりして。テレビ番組のオーディション企画のときもそうなんですが、どうやったら聴いてもらえるか、聴き心地がよくなるのかをひたすら探って、できることを探していまに至ります。そういった意味では、けっこう絞り出してきました(笑)。――きっと音楽の探求の旅みたいなところもあるんですね。音楽をやり始めて2年半というところで、imaseさんが音楽で大事にしているところはどこでしょうか。どの楽曲も、メロディとキャッチーさをすごく大事にしています。自分でもそういうキャッチーな楽曲、耳に残るものが好きなんですよ。楽曲を作るときはキャッチーさを意識していますし、覚えやすいメロディで、クセなるリズム、口ずさんでしまうフレーズを念頭に置いて制作しています。――この間はワンマンライブがソールドアウトしましたね。ライブパフォーマンスにおいても、研究しているんでしょうか。どうしたら自分のパフォーマンスが映えるのかな、と探っています。パフォーマンスも、MCも、まだまだ拙いところがありますし、歌唱で見せるタイプのアーティストでもないなと思っていて。どういったパフォーマンスをするのが、自分のキャラクターにも合うのかな、ということはずっと探していますね。――実際に、ライブでお客さんを目の前にして、どう感じましたか?これまでSNS上でしか活動していなかったので、聴いてくださっている方と直接対面する機会がなくて、ライブで本当に直接会えて、まず率直にすごくうれしいなって。自分の楽曲を聴いてくださっている方が、さらにチケットまで購入してライブに来ていただけて、すごく幸せです。――10月からは、初のツアー『imase 1st Live Tour』で東名阪をまわりますが、どのようなステージになりそうでしょうか。いま考えている途中です。これまでのワンマンライブでは、そこでしかできない特別なことをしようと、これまでSNS上で発表したショート尺の楽曲をメドレーにして披露したり、弾き語りをやったり。今回のツアーでも、そういったライブならではの何かができたらなと思います。国内外問わずたくさんの方に楽曲を届けたい――お話は変わりますが、最近ハマっていることや趣味はありますか。コロナ禍も落ち着いてきて、外出できるようになってきたので、ご飯を食べに行ったり、遊びに行ったりすることがあります。あとは、フットサルをやっていますね。――好きなサッカーのチームはありますか?(イングランド・プレミアリーグの)ブライトンというチームが好きです。日本代表の三笘薫選手が所属されているチームです。全試合観ることができないときもあるので、時間がないときは、よくハイライトを観たりしていますね。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。日本の方はもちろん、いま海外の方にも曲を聴いていただいているので、これからも言語の壁を越えて聴いていただける曲を作っていきたいです。国内外問わず、これからもたくさんの方に楽曲を届けていきたいですね。取材後記瞬く間にJ-POPシーンを揺るがすニューカマーとして注目を浴びている、imaseさん。華奢でしなやかなスタイルと、表情豊かなルックスで、その場を明るくさせる存在です。朝の取材だったこともあり、すぐに腹ペコになるようで、インタビューの合間もおやつを美味しそうに食べていた無邪気な姿が印象的でした。そんな急成長中のimaseさんのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・園山友基取材、文・かわむらあみりimasePROFILE岐阜出身、22歳の新世代アーティスト。音楽活動を開始してわずか1年でTikTokで楽曲をバイラルさせ2021年12月にデジタルシングル「Have a nice day」でメジャーデビュー。2022年にはCM主題歌やドラマタイアップにも大抜擢されるなど、ティーンから圧倒的な人気を獲得。2022年8月に配信リリースした「NIGHT DANCER」は、韓国配信サイト“Melon”でJ-POP初のTOP100(最高位17位)入りを果たし、SpotiifyバイラルチャートTOP50に31カ国ランクインするなど、世界各国でもバイラル中。2023年3月、初の有観客ライブを行い、追加公演もすべてチケットが即完売した。5月26日、デジタルシングル「Nagisa」をリリース。10月、自身初の東名阪ツアー「imase 1st Live Tour」を開催予定。InformationNew Release「Nagisa」2023年5月26日 配信リリース写真・園山友基 取材、文・かわむらあみり
2023年05月25日【音楽通信】第138回目に登場するのは、シンガーソングライターとしての活動が7年目を迎え、20代最後となるニューアルバムをリリースする、山本彩さん!いろんなシチュエーションに合う楽曲が揃うアルバム【音楽通信】vol.138コンスタントに作品を発表し、ライブ活動も展開してきたシンガーソングライターの山本彩さん。最近では、バラエティ番組などでも元気な姿を届けています。そんな山本さんが、2023年5月17日に4thアルバム『&(アンド)』をリリースされるということで、お話をうかがいました。――前回、2020年10月にこのananwebで取材させていただきましたが、シンガーソングライターとして活動されてから今年で7年目となりますね。昨今は少し休養されたり、個人事務所を設立されたり、いろいろと整えられて。最近はバラエティ番組でもご活躍で、リフレッシュされてパワーアップされたように感じます。休養させていただいた際は歌っていなかった期間も長かったので、そのブランクを取り戻すのと、休む前よりは良い状態で今後も続けていきたいので、また一から歌のトレーニングや勉強をしました。まだ進化した感じはしないのですが、少しずつ自分のベストがわかってきて。あとは、もともとすぐ考え込んでしまうタイプだったのですが、いまはだいぶん気楽に物事をとらえられるようになりました。――2023年5月17日には、4枚目となるアルバム『&』をリリースされます。いつ頃からアルバム制作を始めていたのですか。一昨年から、アルバムを作ろうという話をしていました。新曲「劣等感」と「Bring it on」の2曲を収録しているのですが、まず「劣等感」を途中まで作り始めながらも完成はせず。休養のタイミングで一度制作を中断して、復帰してから「劣等感」を仕上げて、復帰後に「Bring it on」を書き終えました。――新曲は2曲とも山本さんが作詞と作曲を手掛けられていますね。そうです。「劣等感」は、もともと書きたい歌詞のテーマとしてあったんです。自分の中にある劣等感と戦っている葛藤みたいなものを描いていて、劣等感を抱きながらも自分が作られていく、戦っていく思いを込めた楽曲です。アレンジは(ボカロPやアレンジャーとして活動中の)100回嘔吐さんにお願いしたので、ギターロックとは違うテイストでのロックを表現できました。――もうひとつの新曲「Bring it on」はどのようなイメージで作っていかれたのですか。「劣等感」が“陰”の部分が強かったぶん、その反動もあってか、真逆の曲が書きたくなって。ツアーも決まっていたので、ツアーに向けて「やってやるぞ!」という気持ちも活かして“陽”なイメージで作りました。自分ならライブだったり、聴いてくださる方にとってはこれから挑んでいく何かだったり、そういったものに対して無敵にさせてくれるような強い曲になっています。――「Bring it on」のミュージックビデオもカッコいいですが、ライブでのパフォーマンスのことも考えながら作ったんですか。比較的、普段の自分のライブスタイルに近い形でミュージックビデオの撮影をさせていただきました。あとは、自分が楽屋で準備している状態から、ステージに上がっていくようなストーリーや背景をそのまま映像として出させていただきましたね。――あらためてアルバムタイトルの意味も教えてください。別人格ぐらいの楽曲ができたなと思うくらい、この新曲2曲だけでもすごく対照的なんです。ほかの収録曲に関しても、そのときどきで歌いたいことや考えも全然違う自分がいて、でもどれも全部あわせて自分ができているな、と。矛盾しているけれど両立してつながっているという意味を込めて、『&』というタイトルになりました。――1曲目「ドラマチックに乾杯」は、東海テレビ・フジテレビ系ドラマ『その女、ジルバ』(2021年)主題歌の軽快でラテンな楽曲ですね。ドラマ主題歌のお話をいただいて、台本を読ませていただいてから、曲を書かせていただきました。主人公が自分とも重なるところがあって、うまくいかないときも、ちょっとした人との出会いや自分が輝けるような場所との出会いによって、そういう小さなきっかけの連続で人生が変わっていくということが、すごくわかる気がして。そこを書きたいなと思ったので書かせてもらいながら、台本の中で印象的だった場面をイメージしながら歌詞にさせていただきました。――主題歌などのタイアップ曲とそうではない曲では作り方も違いますが、意識するところも違う点はあるのでしょうか。タイアップ曲は、たとえばドラマなら観ていると感情移入はするので、まったく自分の思いではないわけでもないんです。なので、自分の思いと誰かの思いを背負って曲作りをしているという、特別感があります。ある意味、自分の思いをそのまま歌にするのは自分勝手でもいいんですが、タイアップ曲だとそうじゃない側面もありますね。歌うときも、自分の思いだけを込めてというよりも、そのドラマを観てくださっている方に思いを馳せながら歌っています。――4曲目「ぼくはおもちゃ」は、NHK『みんなのうた』のために、山本さんが作詞作曲された曲ですね。『みんなのうた』ということで、番組を観てくださる方も、親御さんから小さなお子さんまで年齢層が幅広いなと。お子さんの耳にも残るようなサウンドにしたいなと思って、おもちゃの音を入れたり、身近な音を入れたりしているんですが、歌詞は少し大人も考えさせられるような内容にしたくて。歌をリアルタイムで聴いてくれていた子が大人になったときに、「こういう歌詞だったんだ」とあらためて考えてくれるような曲になったらいいなと思って、子どもらしさと大人っぽさを混ぜ合わせた楽曲にしました。――7曲目「あいまって。」は、大人っぽくアンニュイな印象です。どちらかというと山本さんはロックな楽曲のイメージがありますが、この曲でまた違った表情を見せています。この曲は、作詞作曲ともに(プロデューサーでシンガーの)yonkeyさんと共作させていただいて、アレンジもしていただいて。歌詞は、本当に会話の延長という感じなんです。「こういう歌詞にしたい」「こんな単語を使いたい」というように、その場でラリーをして、そのままプロットを立てて、自然と楽曲ができていきました。歌についても、この曲自体がyonkeyさんの成分がけっこう強めの楽曲なので、言っていただいたような自分のロックな成分をほぼ消すぐらいの感覚で、レコーディングもやらせていただいて。ビブラートは全部なしでとか、こぶしもなしでとか、そういうふうにディレクションをしていただいたので、この曲に合わせた歌唱をしています。――多彩な楽曲が収録されていますが、とくに7曲目以降、曲調やニュアンスなど、山本さんの多様な表情がうかがえる曲順になっているように感じました。9曲目「ラメント」もまったく雰囲気の違う楽曲です。とくに「ラメント」はアルバムの中でもちょっとジャンルが違うような楽曲なので、アルバムを通して、この曲はキーになるなとは思っていて。それを考えたうえで、この位置になった感じですね。――聴き手にはどんな風にアルバムを聴いてほしいでしょうか。喜怒哀楽が詰まっているアルバムなので、いろいろなシチュエーションに寄り添える曲が集まっています。たとえば、やる気になりたいときは「Bring it on」を聴いてほしいですし、ちょっとまだ進むほどの気力はないけどもう少ししたら頑張りたいなというときは「愛なんていらない」とか「あいまって。」を、ゆっくり始めようかというときは「ゼロ ユニバース」をおすすめしたいですし。そういうタイミングごとにきっと力になれる曲があるんじゃないかなと思うので、いろんなシチュエーションで聴いていただきたいです。――アルバムのジャケ写は、山本さんが合わせ鏡のようになっていますね。アルバムのコンセプトとしてもあったんですが、どれも違うけれど自分という意味を込めての多様性や二面性を、衣装の違いや目線の有り無しで違いを出して、このジャケ写でもそれを表現しています。――6月からは「SAYAKA YAMAMOTO LIVE TOUR 2023 -&-」と題した全国ツアーを開催されますね。はい、1年半ぶりの全国ツアーでライブハウスをまわります。よりみなさんと距離が近いうえに、いま声出しも解禁されてきているので、ようやく本来のライブの形ができるかなと。さらに、今回はバンドでのライブ構成にしているので、バンドのライブに来た感じで楽しみにしていただきたいなと思っています。――アルバムはコロナ禍やお休みの期間を挟んで制作をされましたが、これまでの変化の心境が楽曲に反映されたところはありましたか。10曲目の「oasis」は、コロナ禍に差し掛かって、どうなるかわからない葛藤を書いた曲だったんです。でも、どんどん環境が良くなっていたからこその「Bring it on」みたいな楽曲が生まれたのかなと。状況が前進していないと、なかなかライブもどうしていいかわからない期間が続いていたので、いまやっと声が出せるようになって。それだけでも全然違いますし、少し前進したからこその心境が詰まっています。「山本彩といえば、この曲」という曲を作りたい――お話は変わりますが、2023年の現在、ハマっていることはありますか?最近はもっぱら仕事以外はオンラインゲームをしています。よくやっているのはFPS(ファーストパーソン・シューティングの略)という、一人称視点のシューティングゲーム『APEX LEGENDS』を友達と会話しながらやったり、謎解きのゲームをしたりしていますね。ストレス発散にもなりますし、楽しいです。――地元のお友達とゲームしているんですか。いえ、グループ時代の友達ですね。ゲームをしながら、電話をするような感じで、普段の話もしながらやっています。――おうちでゲームをしているとき以外は、お出かけされることも?わりと外出していますね。犬を飼っているので、そのおかげでけっこうフットワークが軽くなりました。毎月のようにどこかしらでワンちゃんのイベントをやっているので、そこへ出かけて、そこでしか出店されてないお店でグッズを見たり、散歩に行ったり、ドッグランに行ったりしていますね。――ワンちゃんの種類はなんですか。ヨークシャテリアです。実家ではトイプードルを飼っています。いてくれるだけですごく癒やされるので、仕事から疲れて帰っても、ワンちゃんがいると思ったら、もうどうでもいいみたいな気になります(笑)。――ワンちゃんのお散歩に行かれるのも健康的ですね。ツアーではけっこう体力を使うことがあると思いますが、何かコンディションを維持するためにやっていることはありますか。最近は、最低限の衣食住の生活基準みたいなものを上げようと、規則正しい生活をするようにしています。当たり前の話ではありますが、遅くなっても12時までにはベッドに入って、朝8時までには起きて、1日3食ちゃんと食べて、しっかり寝る。そのうえで、毎日犬の散歩をしているので、すごく良いリズムが自分の中でできています。そのおかげもあって、夜はちゃんと眠くなりますし、良い生活リズムに整いました。――生活リズムは大事ですよね。そういえば、阪神タイガースがお好きでしたね。以前、始球式をされたこともありました。そうなんです。過去に始球式は5回ぐらい、やらせていただきました。阪神が好きなので、この間は久しぶりにお仕事で甲子園に、プライベートでは神宮球場に野球観戦に行っていました。――いろいろなお話をありがとうございました! 最後に、今後の抱負を教えてください。いまは音楽を軸にさまざまなことやらせていただいます。これからもやりたいことを積極的にやっていて、音楽やほかのお仕事にもつなげていけるように頑張りたいですね。今年の7月で30歳になるので、より濃い音楽を作っていって、「山本彩といえば、この曲だよね」と言っていただけるような曲が1曲でも多く作れたらいいなと思っています。取材後記約2年半ぶりにananwebにご登場くださった、山本彩さん。以前は爽やかなショートカットだったのが、今回は艶やかなロングヘアになって、大人の女性の魅力がさらにアップ。「昔から髪型はロングとショートを繰り返していて、いまはロングの周期なんです」と笑顔で取材に応えてくださいました。そんな山本さんのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・園山友基取材、文・かわむらあみり山本彩PROFILE1993年7月14日、大阪府生まれ。2010年に発足したNMB48に1期生として8年間キャプテンを務め、中心メンバーとして活動。2016年、自身の目標であったシンガーソングライターとしての活動を始動させ、10月にデビューアルバム『Rainbow』をリリース。2018年10月27日、万博記念公園東の広場で卒業コンサート『SAYAKA SONIC ~さやか、ささやか、さよなら、さやか~』を開催。NMB48史上最大規模、約3万人を動員した初の野外コンサートとなった。11月4日、この日の卒業公演をもってNMB48を卒業。2019年2月、ユニバーサルミュージックへ移籍、ライブハウスツアー「I’m ready」を24会場27公演開催。4月17日に移籍第1弾シングル「イチリンソウ」をリリース。以降もコンスタントに作品を発表し、ライブ活動を展開。2023年5月17日、4thアルバム『&』をリリース。6月から全国14都市14公演をまわるツアー「SAYAKA YAMAMOTO LIVE TOUR 2023 -&-」を開催。InformationNew Release『&』(収録曲)01.ドラマチックに乾杯02.against03.愛なんていらない04.ぼくはおもちゃ05.ゼロ ユニバース06.yonder07あいまって。08.劣等感09.ラメント10.oasis11.Don’t hold me back12.Bring it on2022年5月17日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)UMCK-1743(CD)¥3,300(税込)(初回限定盤)UMCK-7210(CD+DVD)¥4,950(税込)※三方背ケース仕様【初回限定盤の特典】・Music Video Clips(ゼロ ユニバース / against / ドラマチックに乾杯 / yonder – Lyric Video – / Don’t hold me back / Don’t hold me back – Dance Performance Video – / あいまって。- Lyric Video – / Bring it on)・Behind the Scenes of “&”(新曲レコーディング風景 / ジャケット写真撮影 / Music Video撮影などのメイキング映像)(FC限定盤)PROS-1927 (CD + DVD + Photo Book)¥9,900 (税込)※豪華BOX仕様【FC限定盤の特典】・SAYAKA YAMAMOTO LIVE 2022 “now” at EX THEATER ROPPONGI 2022.12.27(SAYAKA YAMAMOTO LIVE 2022 “now” at EX THEATER ROPPONGIのライブ映像を収録)・Documentary of SAYAKA YAMAMOTO 2022-2023(昨年8月に活動復帰として行われた SAYAKA YAMAMOTO SPECIAL LIVE STREAMINGから、昨年末のSAYAKA YAMAMOTO LIVE 2022 “now” に密着したオフィシャルドキュメンタリー&独占インタビュー収録)・Exclusive Photo Book -Album “&” and SAYAKA YAMAMOTO LIVE 2022 “now”-(アルバム『&』フォトセッション / SAYAKA YAMAMOTO LIVE 2022 “now” ライブフォト)写真・園山友基 取材、文・かわむらあみり
2023年05月15日【音楽通信】第137回目に登場するのは、素顔を見せず謎のベールに包まれながら、SNSをきっかけに大ブレイク中の新世代シンガー、yama!歌うことで自分の存在意義を確かめていた【音楽通信】vol.1372018年よりYoutubeをベースにカバー曲を公開し、音楽活動をスタートした、yamaさん。2020年4月に発表した、自身初のオリジナル楽曲「春を告げる」が大ヒットし、ストリーミング再生で3億回を突破。さらに2020年の10月にはシングル「真っ白」でメジャーデビュー以降も、数々のドラマや映画の主題歌に抜擢されるなど、脚光を浴び続けています。芸術的なアイマスクとブルーのヘアスタイルという、ミステリアスなルックスも印象深いyamaさんが、2023年5月10日にニューシングル「slash(スラッシュ)」をリリースされるということで、音楽的ルーツを含めて、お話をうかがいました。――そもそもyamaさんが音楽にふれたきっかけや、影響を受けたアーティストから教えてください。幼少期は、歌うことで、自分の存在意義を確かめていました。なんの取り柄もないけれど、歌を歌っている瞬間は周囲の人たちが褒めてくれて、自分のことを見てくれていると気づいて、歌を歌うようになって。だんだんと歌うことが好きになって、歌っているときは、「自分が存在していてもいいんだ」と思える瞬間だったんですよ。よく聴いていた曲と言うと、もちろん音楽はずっと好きですが、特定のアーティストを応援するよりも、楽曲ごとに「いいな」と思うものをずっと聴いてきていて。その裏には、音楽に救いを求めているけれど、「自分も表現したい」という思いも常にありました。そんななかで、次第にいろいろな方の音楽も聴くようになって、メジャーアーティストで言えば東京事変さんなど、そのときに流行っているものからちょっとコアな楽曲まで聴いていましたね。でも、一番強く影響を受けているのは、ボーカロイドの楽曲たちです。中学生の頃、ボカロ曲を聴くようになってから、「カバーする文化もあるんだ」と知って、親に買ってもらったパソコンで宅録を始めました。――もともと、将来は音楽の道に行こうと思っていましたか?小学校低学年の頃、将来は音楽で食べていけたらいいな、歌手になれたらいいなと言っていたんですが、まだ幼いので現実の厳しさを知らず。でも、家族から、現実はそんなに甘くない、ということを心配と優しさから言われて。自分の力では難しいから、諦めたことも。だから、本当に「音楽で生きていけるかもしれない」と意識するようになったのは、普通に社会に出て、働き始めてからです。働きながら音楽活動も続けられたらとYouTubeには変わらずカバー曲を公開していたら、いまのレコード会社の方に声をかけてもらって。それから、音楽で食べていけるかもと思いました。――2020年10月には、シングル「真っ白」を配信リリースして、メジャーデビューされました。その後は歌番組の出演やライブなど、さまざまな音楽活動をされるようになりましたが、デビュー以前と以降で、心境の変化はありましたか。ありすぎてもう(笑)。日々、気持ちが変わっていっている感じがします。以前は田舎に住んでいて、メジャーデビューで上京するまでは保守的な性格だったので、何も変わりたくないし、変えたくないし、という確固たる自分の意見がありました。でも、メジャーデビューしてから、自分ひとりで成り立っているわけじゃないなと強く感じることが多々あって、もっと心を柔らかくしたいと。素直に、柔軟に、いい方向に進化していける自分でありたいと感じるようになったので、その心境の変化は大きいかもしれないです。色が違う3曲を楽しんで聴いてほしい――2023年5月10日、ニューシングル「slash」をリリースされます。まずこの曲を聴いた第一印象はいかがでしたか。これまでリリースしてきた楽曲とはまた違った、自分の新しい表現ができそうと言いますか。聴く人によっては、新しいと感じるような楽曲ではないかなと感じました。――「slash」は、4月9日から放送中のTVアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』Season2(MBS/TBS系 毎週日曜午後5時)のオープニングテーマで好評のようですね。人気あるガンダムシリーズにご自身の歌声が乗るお気持ちは?すごく歴史のある「ガンダム」シリーズで愛されていますし、ファンの方もたくさんいらっしゃる作品なので、最初はプレッシャーもありました。でも、この楽曲を聴いて作品に寄り添いながら取り組んだので、もしも歌を気に入っていただけたのであれば、本当によかったというホッとしたような気持ちです。――楽曲自体もそうですが、アニメともあいまってとてもドラマチックに歌が届く印象を受けますが、歌うときに意識されていることはなんでしょうか。歌を聴いた人が、ドキドキするかどうかと言いますか。そのドキドキ感は、楽しさでもいいんですが、喜怒哀楽があるなかで、何かしらの衝撃を受けてほしいなと常々感じています。最近は、歌を表現するときに、どれだけ感情を込められるかを意識して歌っていますね。――「slash」は、直訳すると「斬りつける、一撃」という意味もあります。歌詞のサビで「slash your tears away(あなたの涙を切り捨てて) もう 逃げることはしない」と歌う部分に強さを感じますが、歌詞の世界観に入って、歌うこともありますか。そうですね。けっこう感情移入しています。もちろん「ガンダム」という作品があるうえでできた楽曲ですが、自分でも歌の言葉に共感することも多くて。自分自身に向けて、自分と対話をしているようなイメージで歌っています。この歌詞に「お前が嫌いだ」と歌う部分があるんですが、その“お前”は“自分”であり、自分に向かって言っている言葉。すべて自分との葛藤が言葉に表れているなぁと思って、すごく感情移入して歌っていますね。「slash」という言葉だけだと、斬りつけるような残虐な言葉に聞こえるかもしれないですが、それは必ずしも人に対しての意味ではなく、自分の中にある弱さや逃げている部分に対してだと思っていて。前へ進むために、そういった部分を斬っていくというイメージです。いろいろな感情を表現できるように、そしてこれまで見せていなかった本来の自分が持っている感情も込めようと挑戦した楽曲なので、その新鮮さも楽しんで聴いていただきたいですね。――2曲目の「いぶき」は、1曲目とガラリと変わって、軽やかでポップなナンバーですね。はい、カンロ「ピュレグミ」のCMソングとして使用していただいていて、テーマが“ときめき”なんです。いま季節的にも春ですし、ときめき、と聞いて連想するキラキラした風景や、ちょっと輝いている場面を意識しながら歌っていますね。曲によって、声のトーンや歌い方も、それぞれの曲に合った表現ができるようにしています。――3曲目「ストロボ」は、yamaさんの作詞作曲によるエモーショナルなオリジナル楽曲ですね。いつ頃作られた楽曲なのでしょうか。もう、納品ぎりぎりですね(笑)。今年に入って作りました。シングルを出すと決定していた段階で、自分で作詞作曲した楽曲を収録する、ということは決めていたんです。でも、なかなか降ってこないと言いますか、形にできなくて……。楽曲を作っては壊し、作っては壊しとやっていて、ぎりぎりでできたのがこの曲です。――どんな思いを込めて作られたんでしょうか?「ストロボ」というタイトルや歌詞にもありますが、閃きについて歌っています。パッと瞬間的に光る光=日常生活をしているうえで、心が動く瞬間だととらえていて。たとえばそれは自分にとってはライブをしているたった一瞬のその景色のことだったり。ライブ以外でも、生活していて頭に残って焼きついているもの、記憶だったり。どんなに暗闇にいても、それが瞬くことによって少しずつ足もとを照らしてくれて、ちょっとずつ進めるから、というイメージで作りました。――作曲される際は、ひとつのテーマを決めて作っていくような感じなのでしょうか。いろいろですね。毎回作り方は変わるんですが、多くの場合は「こういうメッセージを曲にしたい、音楽にしたい」と閃いて決まったら、すごくはやく作れます。決まったあとは、歌詞はすでにいくつか使いたいワードがあるから、メロディとコード進行をギターの弾き語りをしながら作っていって。ある程度、形になったら、全体の構成を考えながら、整えていく感じですね。逆に、テーマ性ではなく、「こういう音楽、こういう曲が欲しいな」というときに、ドラムから作るときもあります。でも、多くの場合は、メッセージが先にありますね。――それはやっぱりyamaさんが歌い手だからですか。そうですね、自分で作詞作曲する意味は、やっぱり偽りのない言葉かつ何かの条件にとらわれていないこと。ちゃんと自分軸で表現したいことを形にしたいと思っているので、メッセージに嘘はないようにと気をつけていますね。「ストロボ」の歌詞は、ずっと作りたかったテーマだったので、できてよかったです。――多彩な楽曲が収録された「slash」をどんなふうに聴いてほしいでしょうか。「slash」も「いぶき」も「ストロボ」も、それぞれに思いを込めている、色が違う3曲なので、楽しんで聴いてほしいですね。ずっと残り続けるものを届けたい――メジャーデビュー以前と以降で心境の変化があったお話もうかがいましたが、いまはほかのアーティストの方との交流やコラボレーションも増えていますね。2021年にyamaさんも「Hello/Hello feat. yama, 泣き虫」で参加された「MAISONdes(メゾンデ)」に、今年このananweb音楽取材でご登場いただいたのですが、asmiさんがyamaさんと交流したことがあるとお話されていました。asmiさん、そうですね。交流があります。ただ、自分に自信がないので、以前は本当にほかのアーティストさんと仲良くするなんて「自分なんぞが!」と思ってできなかったんですが、最近はできるようになりましたね。オープンにその人の考えを聞くことで刺激を受けることもありますし、こちらにも興味を持ってもらえることもあるので、人見知りですが、なるべくお話できるときはするようにしています。――最近は、ジェニーハイさんともコラボされていらっしゃいますが、どうでしたか?めちゃよかったですね(笑)。コラボさせていただいて、楽曲制作やミュージックビデオの撮影までご一緒させていただいて、すごく楽しかったです。やっぱり、自分以外のアーティストさんやグループ、バンドの方と関わると、すごく刺激を受けますね。いい経験になりました。――ほかの方とコラボして交流されることも気持ちの変化の表れでもあるのでしょうか。そうかもしれないですね。以前なら、もっと臆病になっていたと思います、自分でいいんだろうか、と。自信なさげに参加していたような気もします。でもいまは、声をかけていただいたからには全力でお応えしよう! という、前向きな気持ちになりましたね。――ソロでもコラボでも、歌うときは、受け手にどんなふうに届くといいなと思って歌っていますか?心配性で不器用でちょっと立ち止まることも多いという、自分自身の等身大の気持ちを歌で表現したときに、歌う自分のことは関係なく、音楽自体から何かを受け取ってもらえたらいいですよね。音楽を通して、少しでも癒やされたり、その人の人生や日常が豊かになればいいな、とずっと思っています。いまは簡単にいろいろな音楽を次から次へと聴ける時代ですが、そのなかでも自分の歌を聴くことで、何かしらの衝撃を感じてもらえればなと。ずっと残り続けるものを届けられたらと考えています。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後にyamaさんの今後の抱負をお聞かせください。これまで同様、ライブや音楽制作以外のことにも、熱量を注いでいるところです。常に、より大きなステージでワンマンライブをすることが目標。そして、もっと自分に正直に、自信を持って、ちゃんと自分の言葉を発言できるようになりたいですね。取材後記新世代シンガーのトップランナーであるyamaさんがananwebに登場。インタビューではしっかりとご自身のお気持ちを素直に聞かせてくださり、謎めいた存在でありながらも、音楽に向き合う強い意志を感じさせていただきました。そんなyamaさんのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・園山友基取材、文・かわむらあみりyamaPROFILESNSを中心にネット上で注目を集める新世代シンガー。2018年よりYoutubeをベースにカバー曲を公開し、音楽活動をスタート。2020年4月に自身初のオリジナル楽曲としてリリースされた「春を告げる」はSNSをきっかけに急速にリスナーの心をつかみ、ストリーミング再生で3億回を突破。2023年5月10日、ニューシングル「slash」をリリース。InformationNew Release「slash」【Disc1 / CD 収録曲】01.Slash02.いぶき03.ストロボ2023年5月10日発売※収録曲は「Disc1」3曲目まで全形態共通。(通常盤)SRCL-12539(Disc1 / CD)¥1,320(税込)(完全生産限定盤)SRCL-12536-38(CD+BD+アクリルスタンド)¥4,400 (税込)※Disc1は通常盤と同じ。※Disc2 は「BD」Studio Live映像、「付属品」yamaアクリルスタンド。(期間生産限定盤)SRCL-12540-41(CD+BD)¥2,200 (税込)※Disc1は通常盤と同じ収録曲に加えて、期間生産限定盤のみの04.「slash anime ver.」も収録。※Disc2は「BD」TVアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』オープニングノンクレジット映像。写真・園山友基 取材、文・かわむらあみり
2023年05月05日【音楽通信】第136回目に登場するのは、俳優として映画や舞台でも大活躍するなか、音楽活動でもソロアーティスト「MORISAKI WIN」としてニューアルバムをリリースする、森崎ウィンさん!ミャンマーで祖母が聴いていた洋楽に触れる【音楽通信】vol.136中学2年生でスカウトされ、芸能界へ入った森崎ウィンさん。2008年から12年間、ダンスボーカルユニットでメインボーカルとして活動後、2020年にアジアから世界に発信するエンターテイナー「MORISAKI WIN」名義にてソロアーティストとしてメジャーデビューし、音楽配信チャート1位を獲得するなど話題を呼びました。さらには、俳優としても2018年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の映画『レディ・プレイヤー1』でハリウッドデビューを果たし、2020年には映画『蜜蜂と遠雷』で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。現在上演中のミュージカル『SPY×FAMILY』では主演のロイド役を務めるなど、多方面で大活躍されています。そんな森崎さんが、2023年4月19日に2枚目のフルアルバム『BAGGAGE』をリリースされるということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――そもそも幼いときに音楽に触れたきっかけから教えてください。僕は小学校4年生で来日するまで、生まれ故郷のミャンマーでおばあちゃんと一緒に住んでいたんです。おばちゃんは音楽が好きでよく聴いていましたし、英語の先生だったので英語の授業で音楽を使って生徒に英語を教えていたので、小さいときから音楽にはよく触れていましたね。とくにマドンナやマイケル・ジャクソン、カーペンターズといった洋楽を聴いていました。日本に来てからは歌手になりたいと思っていたわけではなかったのですが、いまの事務所にスカウトされて「歌を歌ってみて」と言われ、歌えることがわかってダンスボーカルユニットに加入して、人前で歌うようになって。グループが解散後、お声がけいただいて、ソロとしてデビューすることになりました。――グループ活動とソロ活動はまた違いますよね。グループでの活動があるから、いまがあると思っています。それこそグループにいた当時から応援してくれているファンのみなさんがいらっしゃいますし、これまでの経験を経たことがいまのミュージカルなどのソロ活動にすごく影響を与えているので、グループ活動で培ったものはかなりためになっていますね。――その後、2020年7月に「MORISAKI WIN」として配信シングル「パレード‐PARADE」でソロアーティストとしてメジャーデビューされました。その間も俳優として数々の作品に出演され、2018年の映画『レディ・プレイヤー1』で注目を集めたことは飛躍の大きな転換期でもあったと思いますが、俳優活動と音楽活動の相互の影響はあるのでしょうか?まず歌もお芝居も好きなので、両方ともやれる環境がありがたいです。どの活動がどう影響しているのかは説明しづらいですが、結局のところ、表現するということ自体は変わらないのかなと。俳優をやっているからこそ学んだ表現が音楽に生かされていたり、音楽をやっているからこそ俳優に生かされていたりするものもあって。たとえば音楽活動でのリズム感や音の出し方も、俳優としても必要になってくる場合もあります。――そもそもスカウトされて芸能界に入られたときは受け身だったわけですが、どの活動にも抵抗はなかったんですね。実際にやってみると、どれも「楽しいじゃん!」って(笑)。それ以前はサッカー以外に興味がなかったんですが、やってみて「好きだな」「どんどん極めたい」と思うようになっていきました。どの活動も作り上げるまでは苦しい瞬間もあるんですが、どのジャンルにおいても、純粋に全部やりたいと思っているからこそ、やれる環境にいることがうれしいですね。聴いていると出かけたくなるようなアルバム――2023年4月19日、2枚目のフルアルバム『BAGGAGE』をリリースされます。まずはアルバムタイトルの意味からお聞かせください。いろいろなものを詰め込んだアルバムにしたくて、「BAGGAGE」というタイトルをつけました。その名の通り、旅のお供になるような、夏服もあれば冬服も持っていったよね、とさまざまなテイストの楽曲が詰め込まれたアルバムになったらいいなという願いを込めています。――まず1曲目「Move out」はウィンさんが歌詞を手がけられた軽快なバンドサウンドですが、どのようなことをイメージして作られましたか。楽曲が先行だったので、曲を聴いたときに、出かけたくなる曲だと感じました。僕はキャンプをやることがあるのですが、仕事というルーティンから抜け出して、キャンプのような全然違う旅に出かける瞬間をイメージして歌詞を書いていって。普段いる場所から抜け出して新しい世界の扉を開けるように、旅先でのハプニングさえもプラスにとらえたり、最終的にはいま世界で戦い合っているところからも抜け出してほしい思いも込めたり。歌詞を仕上げていくにつれて、世界観が壮大になっていった楽曲です。――続いて2曲目「Perfect Weekend」は、大人っぽいキャッチーな楽曲ですね。これはタイトルのように“最高の休日”を思い浮かべるような楽曲です。リズムが気持ちいいはやさで、どこか一歩ずつ踏みだしていくことを思わせる四つ打ちのサウンドに合うようなボーカルを意識して歌っていますね。――クールなサウンドの5曲目「No Limited」も作詞を手がけています。はい、これは「人生は無限大だよ」と、人生は一度きりだけれどできないことはないと歌っている楽曲です。誰かのためになればいいなと思って歌詞を書いていたのですが、聴き直してみると最終的には、自分自身を鼓舞するような楽曲になっていて。聴いていると「大丈夫だな、頑張ろう」と思える曲になったので、不思議な感覚の曲になりましたね。――6曲目「Love won’t die」は英語詞で歌う壮大なバラードで、続く7曲目「anymore」も全英語詞ですね。世界に向けて勝負していきたいのと、英語と日本語の歌を両方ともきれいに歌えるのは、僕にしかできないことでもあるから、その武器はちゃんと使っていきたいなと英語詞にしました。そして自分の故郷や家族をテーマにした6曲目「Love won’t die」は、日本語で綴るよりも英語で全世界の同じような状況の人たちの楽曲にもなればと、幅広く受け取ってもらえるように意識しています。7曲目「anymore」は既発曲で、シンガーソングライターのTHE CHARM PARKさんが書いてくださった曲です。純粋にギターのリフがカッコよくて、初めて曲を聴いたときに「これやりたい」となりました。――サウンドから入っていくこともあるのですね。それはけっこう大事です。自分がまずカッコいいと思えないと、自分がリリースする音楽を人に勧められないので、最初に曲を聴いたときの直感を大事にしていますね。――8曲目「BeFree」は、デビュー前にウィンさんが作詞と作曲をされた楽曲です。もともとはグループ活動をしていた2019年に作った曲です。グループでの自分のバースデーイベントのリード曲にもなればいいなと思って作った曲でしたが、今回のアルバムに収録する前に、一足早く昨年末から日本グッドイヤー「オールシーズンタイヤ」CMソングとしてオンエアされて。まさかタイヤのCMのタイアップがとれるほどの楽曲になるとは思わず、本当に有り難いですね。――グループにいらっしゃったときは曲を作ることもあったと。当時は、自分で曲を作って歌いたいという意欲が強くて、作っていました。ただ、やっぱり作家さんとは違って幅広く音楽理論を知らないので限界はありましたが、まだ意欲が消えたわけではないので、またタイミングを見て曲を作りたいです。――どのように曲作りをしているのですか。メロディから作っていきます。家でピアノを弾いてメロディを決めて、そこに歌詞をあてて自分で仮歌をとっていく感じですね。ピアノは、音楽活動をするときに以前から少し弾いていましたが、映画『蜜蜂と遠雷』で天才ピアニストの役を演じる際に本格的に習ったこともあって。歌詞を書くときは、フィクションもあればノンフィクションもあって、そのときどきで違います。この8曲目「BeFree」の場合は、純粋にライブに来てくれたみなさんが日常のいろいろなことから解放されたらいいな、と思って作りました。――9曲目のラブソング「My Place, Your Place」はどんな思いで歌っていますか。堂々と言葉にして伝えるには少し恥ずかしくなるような歌詞なんですが、音楽に乗せることによって、恥ずかしくならずに素直な気持ちを音楽の力を借りて伝えています。ずっと僕を応援してくれていてるファンのみなさんの思いに応えられる楽曲にもなればいいなという思いと、この楽曲を聴いて誰かへの自分の思いを馳せてみるようなときに聴いていただきたい楽曲ですね。――聴き手には、アルバムをどんなふうに聴いてほしいでしょうか。今回、聴いていると出かけたくなるようなアルバムになりました。遠出できないときや仕事の移動中でも聴いてくれたら、前に進むのがラクになるような楽曲になっていると思うので、ぜひ移動中に聴いていただきたいです。――4月から6月まではソロとして初の全国ツアー「MORISAKI WIN JAPAN FLIGHT TOUR」を開催されます。ようやく全国ツアーができるようになりました。ずっとやりたかったんですが、スケジュールの都合やコロナ禍という状況もあって、今回ようやく行けます。まずは、これまでに培ったものを全国各地に生で届けに行くことをメインにやっていきたいなと。アルバムの楽曲ももちろん披露しますが、アルバムだけにフォーカスを当てたライブというより、いままでに発表してきた楽曲も歌って、いままでの僕の成長も伝わる構成のステージにできたらなと思っています。「森崎ウィンにしかできない世界観を作る」――現在は、5月までミュージカル『SPY×FAMILY』を上演中ですね。森崎さんは主演のロイド・フォージャー役ですが、手応えはいかがですか。楽しくやれていますし、すごく好評をいただいていまして、本当に有り難いです。――舞台に音楽活動にとご多忙ですが、お休みの日はありますか?休みはあるんですが、いつも何かしらのスケジュールが入っているので、連休がないんですよね。1日だけ休みがあっても、意外と何もできないので、疲れを癒すだけで1日が終わってしまいます。――そんななかでも趣味をされるようなことも?趣味といえば、キャンプですね。できれば一泊したいので、次の日が昼以降の仕事なら、キャンプに行くこともあります。でも、いまのように舞台をやっている時期は、家でやらなきゃいけないこともあって、なかなか行けませんね。休みの日は、外出中にできない洗濯や掃除といった家事をまとめてやっているので、時間に追われています。――ご多忙の様子が伝わります。お話は変わりますが、ファッションではどんなものを好んで選びますか。黒い服を選ぶことが多いです。“森崎ウィン”として人前に出ているときは派手な服も着るんですが、普段は派手な格好は選ばずに、なるべく地味でいたいかな。スタイリッシュで、落ち着いていてる感じのファッションがいいですね。――ウィンさんはジャンルレスにご活躍で、音楽ではラブソングを歌ったり、お芝居では恋愛をしたりすることがあるなか、魅力的な女性というとどんな人だと思いますか。しっかりと自分の芯を持っている女性は、魅力的ですね。バリバリ働いている女性は嫌いじゃないんです、カッコいいなって思います。最近は女性が主役の作品も増えましたし、女性がトップに立つような場面も多くて、応援したくなりますね。――今回は音楽取材をさせていただきましたが、ウィンさんにとっての“音楽”とは、どんな存在でしょうか。僕をいろいろな感情にさせてくれて、気持ちをさまざまな場所に連れていってくれるものです。音楽を聴いていると、癒されるだけでもないですし、時に怒りも覚えることもあるし、時に驚きもあるし。ひとつのジャンルにくくって言い表せない存在ですね。――いろいろなお話をありがとうございました! 最後に、今後の抱負をお聞かせください。森崎ウィンにしかできない世界観を作ることが目標です。ミュージカルをやって、映画をやって、ドラマをやって、CDを出してと、こんなに多岐にわたって活躍できている人はあまりいないと思うんですよね。日本の俳優が歌を歌ったとしても、これだけ洋楽をしっかりと歌えて、これだけ俳優もやって。僕にとってのエンターテイナー像を作り上げたいです。そのためには各方面に自分の代表作を作らなくてはいけないので、もちろん時間はかかると思うんですが、世界で活動している人たちはもっとスゴイ人たちがいっぱいいるので、成し遂げたいですね。取材後記さまざまなジャンルの壁を軽やかに飛び超えて、グローバルに活躍される、森崎ウィンさん。ミュージカルをされている合間のスケジュールで音楽取材を行いながらも疲れを見せず、ananwebの取材が始まる前には「やる気スイーッチ!」とご自身でスイッチを入れていただいていたのが印象的でした。不思議なキャラクターのウィンさんが、エンターテイナー「MORISAKI WIN」として放つニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・幸喜ひかり取材、文・かわむらあみりスタイリスト・森田晃嘉ジャケット¥106,700(サイ TEL:03-6407-0117)ネックレス¥19,800(マリハ TEL:03-6459-2572)その他スタイリスト私物森崎ウィンPROFILE1990年8月20日、ミャンマー生まれ。小学校4年生で来日。中学2年生でスカウトされ、芸能活動を開始。2018年より母国ミャンマーで観光大使を務め、現地でもドラマの主演やCMに数多く出演し圧倒的な知名度を誇る。俳優としても活躍するなか、2018年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の映画『レディ・プレイヤー1』で主要キャストに抜擢され、ハリウッドデビュー。2020年、映画『蜜蜂と遠雷』で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。主演を務めた連続ドラマ『本気のしるし』(メ〜テレ)では釜山国際映画祭 2021のASIA CONTENTS AWARDSにてBest Newcomer-Actor賞を受賞。その劇場版は第73回カンヌ国際映画祭「Official Selection2020」作品に選出された。ミュージカルでは、2020年の『ウエスト・サイド・ストーリー』Season2で主演トニー役、2021年の『ジェイミー』で主演ジェイミー役、2022年の『ピピン』日本公演の単独主演、2023年3月から5月までミュージカル 『SPY×FAMILY』で主演のロイド役を務める。歌手としては、2008年にダンスボーカルユニット「PRIZMAX」に加入し、メインボーカルを担当。2020年7月、「MORISAKI WIN」として1st EP『パレード – PARADE』でメジャーデビューし、音楽配信チャート1位を獲得するなど話題に。5月には1stアルバム『Flight』をリリースし、5つの音楽配信サービスで1位を獲得。2022年は『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(テレビ朝日系)の主題歌を担当した。2023年4月19日、2枚目のフルアルバム『BAGGAGE』をリリース。4月から6月は初の全国ツアー「MORISAKI WIN JAPAN FLIGHT TOUR」を開催。InformationNew Release『BAGGAGE』【DISC1】(収録曲)01. Move out02. Perfect Weekend03. Live in the Moment04. Me, Myself and I05. No Limited06. Love won’t die07. anymore08. BeFree09. My Place, Your Place2023年4月19日発売*【DISC1】収録曲は全形態共通。<ECONOMY(DISC1 Only)>COCB-54356¥3,000(税込)<class W(2CD+Blu-ray+豪華フォトブック)>COZB-2006〜8¥12,000(税込)*三方背スリーブケース仕様。【DISC2】*<class W>のみ付帯。ACOUSTIC LIVE「CHRIS’s CHRISTMAS TIME IS HERE」2022 (at CottonClub Liveより)01.Take A Look At Me Now(フィルコリンズ/映画『カリブの熱い夜』より)02.SINGIN‘IN THE RAIN(映画、ミュージカル「雨に唄えば」より)03.Waving Through A Window(映画、ミュージカル「ディア・エヴァン・ハンセン」より)04.Fly Me to the Moon (ジャズのスタンダード・ナンバー)【Blu-ray】*<class W>のみ付帯。『MORISAKI WIN LIVE FIRST FLIGHT』(恵比寿ザ・ガーデンホール 2021/9/20)『MORISAKI WIN -Dancing Charter Night Flight- TYO』(人見記念講堂 2022/5/5)写真・幸喜ひかり 取材、文・かわむらあみり スタイリスト・森田晃嘉
2023年04月16日【音楽通信】第135回目に登場するのは“世界中の毎日をおどらせる”をテーマに、心地よい音楽を放ち続ける6人組バンド「Lucky Kilimanjaro(ラッキーキリマンジャロ)」のボーカル、熊木幸丸(くまきゆきまる)さん!大学のサークルで出会った6人で結成Lucky Kilimanjaroのフロントマン・熊木幸丸(Vo.)。【音楽通信】vol.1352014年に結成された6人組バンド、通称「ラッキリ」こと「Lucky Kilimanjaro」。2018年にEP『HUG』でメジャーデビューし、コンスタントにリリースやライブ活動を繰り広げて、2022年にはバンド史上最大動員の全国ツアーのファイナルをパシフィコ横浜にて開催し、大成功を収めました。バンドの要となっているのは、プロデューサーとしての目線でもメンバーを導いている、ボーカルの熊木幸丸さん。そんなラッキリが2023年4月5日に4thアルバム『Kimochy Season(キモチイシーズン)』をリリースされるということで、バンドを代表して、熊木さんにお話をうかがいました。――熊木さんが音楽に出会ったきっかけから教えてください。もともと両親ともに音楽が好きな家庭に育ちました。父は趣味でドラムやギターをやっていましたし、家族でキャンプに行くときも常に音楽が流れていて。僕自身は中学1年生ぐらいから「音楽を聴く趣味ってカッコいいな」という漠然とした思いから、CDショップでCDを借りるようになりました。ちょうどポルノグラフィティさんが発売されたベスト盤を聴いて「僕が好きな音楽ってこれかも」とビビッときて(笑)。そこからは自ら音楽を選んで、どんどん聴くようになったことが音楽人生のスタートですね。――日本のアーティストから聴き始めたと?そうですね。中学生では、ポルノグラフィティさん、Mr.Childrenさん、スピッツさん、BUMP OF CHICKENさんをよく聴いていました。自然とバンド形態の音楽に惹かれていって、ひたすらCDショップでレンタルしていました。――男性グループの曲をよく聴いていたんですね。確かに。中学生のときにカラオケによく行くようになって、自分で歌うことも好きになったので、カラオケで歌える曲を探して男性ボーカルの曲を聴くことが多かったのかもしれません。女性ボーカルだと、YUKIさんを聴くこともありましたね。――歌うことが好きで音楽の道を目指し始めたのでしょうか。当時は、ただ歌うことが好きなだけでした。中学3年でギターを始めてからは「ボーカルじゃなくてギターだ」と、自分の中のアイデンティティみたいなものが芽生えてきて。大学に入ってからはシンセサイザーも始めて、いろいろな音楽の広がりはあったんですが、就職活動をする頃になって「オリジナルのバンドをやりたいな」と思って始めたのが、Lucky Kilimanjaroなんです。だから、半ば趣味で始めたバンドといいますか。メジャーデビューするぞ、このバンドでやってやるぞという感じではまったくなくて。ちゃんと生活を考えたのはメジャーデビューしてからですね。――中学生のときにギターを始めたのは、何か曲を作ろうと?中学3年生は高校受験がありますよね。でも、僕は推薦で進学することが決まっていて、ほかの人より早く受験が終わって時間があったんです。友達はまだ受験勉強中だから遊んでくれないので、家にある父のギターを弾いたらモテるんじゃないかな、と思うようになって(笑)。熱中できるものが欲しいという気持ちもあって、ギターを始めてみました。――その後、大学のサークルで出会われた6人でラッキリを結成しています。いつから「世界中の毎日をおどらせる」というテーマを持つようになったんですか。もともとシンセを使って気持ちいいバンドをやりたいというのが、ラッキリのスタート時のテーマでしたが、「世界中の毎日をおどらせる」というコンセプトに至ったのは、メジャーデビューの時ですね。自分たちがどういうふうに楽曲を聴いてくれる人たちと向き合うのかを考えると「やっぱり踊らせたいよね」という意見が最初に合致して。バンドを通じてみんなが踊ってくれる、そういう社会を目指そうというところで、このコンセプトを立ち上げました。――熊木さんは、バンド活動と並行されてHey! Say! JUMPやDISH//などにも楽曲提供されています。そのソングライティング力の高さが周知されていてのオファーということですよね。オファーをみなさんからいただくときは、「ラッキリが好き」「聴いていて一緒にやってみたいと思った」と言ってくださることが多いです。そのなかで一緒にお話しさせていただいて、「この人のどういう面をブラッシュアップしたら面白いかな?」と僕なりに考えながら、制作をまとめていく感じですね。新作で「気持ちよく変化を伝えていく」――2023年4月5日、4枚目のアルバム『Kimochy Season』をリリースされます。これまで1年ごとにコンスタントにアルバムをリリースされていますが、今作に込められた思いをお聞かせください。たとえば、昨年はロシアとウクライナの戦争が始まったり、自分自身は結婚したり、非常に変化を感じることが多い時期を過ごしていました。それこそコロナ禍の状況もいろいろと変わっていくなかで、心がざわざわする年を過ごしながら、「こういう変化というものが実は人生には当たり前にあって、むしろ同じところに居続ける状態がもしかしたら普通ではないんだろうな」と思うようになって。そうなると、この変化をいかに乗りこなすかが、自分にとっても、僕らの音楽を聴いてくれる人にとっても、心を豊かにするひとつの方法になるんじゃないかと思って、「変化について歌おう」と思ったのが今回のアルバムにつながる思いの最初ですね。それを昨夏にシングル「ファジーサマー」として発表して。今作にも収録されているんですが、そこで思いを表現して、気持ちよく変化を伝えていこうというのが、今作のコンセプトになりました。――「ファジーサマー」がアルバムの発端、軸になっていたんですね。2曲目に「Kimochy」というアルバムタイトルにもかかるワードの楽曲があるので、この曲もアルバムの軸になったのかなと思いきや。むしろ「Kimochy」は補完的といいますか。変化を味わってねと言うと、かたい表現になってしまう気がして脱出方法を探していたときに、この「気持ちいい」という単語を英単語で書くことを思いついて。「やっぱり大事なのは結局、気持ちよさだよな」と。変化を楽しんで、気持ちよく思えるようにと、「Kimochy」という曲を書きました。アルバムは、季節の変化を聴いてくれる方にも感じやすいように、季節にまつわるサウンドや歌詞も書いています。――3曲目「Heat」は、どんなふうに生まれた曲ですか。僕、冬がすごく苦手なんです。寒さもあって100パーセントは能動的に動けなくなって、それはまるで人生を変化させてはいけないような感覚になるので(笑)、そこに熱を入れることで自分の人生を能動的にして、変化を生み出していこうという楽曲です。クールなサウンドがありつつ、ダイナミックに動くことは大切に組み上げていきました。アルバム全体でいうと、冬から始まって、最後は秋の曲で終わるという構成です。ワンシーズンがきれいに一周するようなイメージでまとめました。――6曲目「またね」は春の歌ですね。はい。春といえば、一番辛い変化は喪失だと思っていて。たとえば学校を卒業したり、仕事で転職したり、そういう瞬間は不安になることもありますよね。でも別れやさよならが未来への期待に変わるように、ダンスミュージックとして描いた曲ですね。喪失から何かが始まるといつも思っているから。自分の中で新しい道が見えているからこそ、何か前に進み出せるような力が持てるんだと思っていて、そういう気持ちを肯定して、より動かせるようにしたい気持ちを込めています。――どの曲も言葉選びにセンスや遊び心を感じさせます。熊木さんはバンドのフロントマンでもあり、全曲の作詞作曲を手がけていますが、いつもどのように歌詞が浮かび、曲を作っていかれるのでしょうか。僕が全部の曲のプロデュース、サウンドデザインをしていますが、曲によってスタートは違いますね。ギターを弾き語って言葉を思い浮かべながら歌っていって作ることもあれば、「これいいな」と直感で楽曲が生まれてきたり。でもどんな曲も、「こういうことを歌いたいな」というものが最初にありますね。あとは、あまり作品にする気はなくて、自分の練習として家の中でセッションをやっていて、「これいいかも」となったものをふくらませていくことも。けっこうランダムですね。――それはどういうときにひらめくんですか?いつでもありますね。たとえばこうやってインタビューさせていただくなかで、答えている僕の言葉って、ほぼ反射的に出ているもので。話しながら、「こういうことだと思うなあ」というようなところから、アイデアが出たりするんですよね。お風呂に入っているときも、本を読んでいるときも、Twitterを見ていて「これ面白いかもな」というところからも。――では日常的にいろいろなものに刺激を受けるといいますか。そうですね、やっぱり自分のビビッとくるところって、事前に準備ができないんですよね。それゆえにそこは系統立てないようにしようと思っています。だから、無駄なこともいっぱいやりますし、なんか面白くなさそうだけどとりあえずやってみるか、ということもいっぱいあります。――そういったこともおひとりで全部できてしまうわけですが、バンドで表現していく、ということが重要なところなんですよね?そうです。制作においてメンバーはむしろ、僕にアドバイスをくれる人たち。僕がワガママで出しているものに対して、「こっちのほうががいいんじゃない?」と提案してくれるアドバイザーのような存在です。ライブは、僕が作ったものを最終的にパッケージとして、どうやってお客さんとのコミュニケーションに落とし込むかという作業だと思っていて、そこはメンバーの力をふんだんに借りています。アレンジを組み替え直したりするような面でも、バンドの面白さが、Lucky Kilimanjaroらしく表現できているのかなと思っています。――Lucky Kilimanjaroらしい、というのはどういうことだと思われますか?それはメンバーに関わらずスタッフも含めて、Lucky Kilimanjaroという概念が成すお客さんとのコミュニケーションにおいて、チームで「世界中の毎日をおどらせる」ことに対して、それぞれが持つ引き出しの中からどういうアプローチができるかを考え続けられるのが、Lucky Kilimanjaroらしさなのかなと。――では一番聴き手の反応が見えるのがライブかと思いますが、5月から7月まで「Lucky Kilimanjaro presents. TOUR “Kimochy Season”」と題した全国ツアーを開催されますね。2022年は自分たちのワンマンだけではなく、フェスにもたくさん出させていただきました。そのなかで、お客さんが自由に、自分の気持ちを整理せずにそのままアウトプットできる場として、ライブをもっと続けたい気持ちが強くなって、より自由に踊ってもらうためにはどうしたらいいかを研究し続けた1年だったんです。そこから2023年になって、今回のアルバムは僕が好きなダンスミュージックをふんだんに取り込んでいて、よりみんなが心で踊れるライブができるんじゃないかなと思っていて。昨年の経験とこのアルバムがあれば、みんなが自由にとても楽しく気持ちよく踊れる空間を作れるはずだと、気合が入っています。ひたすら「いま面白いことをやりたい!」――お話は変わりますが、おやすみの日はどうお過ごしですか。音楽以外の時間だと、ご飯を食べたり、お酒を飲んだりすることが好きです。アルバムにも、お酒の曲がありますが、お酒を飲む時間がたまらなく好きで(笑)。本を読むのも好きですし、そうやって違う世界に連れて行ってくれる時間が大事ですね。あとはゲームがすごい好きなんですよ。小さいときはゲームデザイナーになりたいときもありましたね。――デザインをする側にご興味を持たれていたんですよね。ずっと物作りが好きなんです。両親が広告のデザインの仕事をやっていこともあって、当たり前に物作りの環境が家の中にありました。――クリエイティブな環境でずっと育っていらっしゃるんですね。小さい時からパソコンに触らせてもらって、描いたイラストを額縁に飾るような家庭だったので、クリエイティブに対して非常に伸ばしてくれるといいますか、認めてくれる家でしたね。そこから物作りが楽しくて、刺激的なことなんだと、自分の中の土台になっている感じがあります。――スタイリッシュな印象がありますが、ファッションで意識されていることは?楽な服装が一番好きです。外出着よりも、部屋着をいろいろと持っていますね。音楽を制作するなかでの楽さを重視して、サイズ感とかデザイン感で服を選んで、着て気持ちよくなる服が自分のなかのモードです。――今回のアルバムは変化がテーマというお話をされていましたが、生活の変化という面では、ご結婚されたというお話もされていましたね。メンバーでシンセサイザーを担当している大瀧真央と結婚しました。もともと一緒に暮らしていて、猫も飼っていた生活のままなので、あまり変わった実感はないんです。でも、やっぱり心持ちは、ちょっと違いますね。入籍してから1年ぐらいになりますが、心持ちのちょっとした変化は、作品にも入っているのかなとは思っています。ただ、より変化を感じるのは、これからなのかも。ふたりの生活が深まっていく時に、また新しい変化が生まれて、それを楽しめるといいなと。――ご両親がクリエイティブな環境を用意してくれたというお話もされていましたが、熊木さんのご家庭も未来の環境を整えようと考えることも?少なくとも自分の家族や自分がいる空間は、何かに挑戦できたり、ちょっと面白くなれたり、そういう気持ちよさがあるといいなと。この間も、リビングにDJミキサーを置こうかと考えて話すと、「邪魔だろ」と言われたり、でも「面白いかも」と言われたり(笑)。そういうふうに、自分のスタイルを決めこまず、心持ちも家庭の環境もどんどん変化を楽しんでいきたいです。――いろいろなお話をありがとうございました! では最後に、今後の抱負をお聞かせください。個人的には、まだダンスミュージックや音楽で能動的に気持ちよく踊る体験に対して、すごくマイノリティだと考えていて。もっとみんなが自分の気持ちを自然に発露できるものとして、ダンスミュージックをちゃんと広めたいと思っています。まずはそこを突き詰めるのが当面の目標ですね。自分自身のことでいえば、音楽以外のことには飽きっぽいので、飽きないように楽しく何かをやり続けたいかな。あまり大きな目標もなく、ひたすら「いま面白いことをやりたい!」という感覚でいます(笑)。その積み重ねでいつの間にか知らないところにいると思うので、楽しみながら、活動していこうと思います。取材後記心地いい音楽でわたしたちを踊らせてくれる6人組バンド、Lucky Kilimanjaro。ananwebでは今回、バンドのフロントマンの熊木幸丸さんにご登場いただきました。インタビュー中に、メモを取る熊木さん。取材を受ける側の方がメモする姿が「珍しい」とお話しすると、「よく言われます」と笑顔。あふれでる発想力で、今後も素敵なダンスミュージックを届けてくれるはずです。そんな熊木さんのいるラッキリのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・幸喜ひかり取材、文・かわむらあみりLucky KilimanjaroPROFILE2014年、同じ大学の軽音サークルで出会った6人でバンド結成。2018年、EP『HUG』でメジャーデビュー。以降、コンスタントに配信リリースやライブ活動を展開。2020年にはメジャー初のアルバム『!magination』、2021年には2ndアルバム『DAILY BOP』、2022年には3thアルバム『TOUGH PLAY』をリリース。アルバムを携えたバンド史上最大動員の全国ツアーのファイナルをパシフィコ横浜で開催した。2023年4月5日には4thアルバム『Kimochy SEASON』をリリース。5月から7月は全国ツアー「Lucky Kilimanjaro presents. TOUR “Kimochy Season」を行う。InformationNew Release『Kimochy SEASON』(収録曲)01. 一筋差す02. Kimochy03. Heat04. 越冬05. 掃除の機運06. またね07. 咲まう08. 千鳥足でゆけ09. ファジーサマー10. 地獄の踊り場11. 闇明かし12. 辻13. 山粧う14. Kimochy(outro)2023年4月5日発売(通常盤)MUCD-1513(CD)¥2,970(税込)写真・幸喜ひかり 取材、文・かわむらあみり
2023年04月02日【音楽通信】第134回目に登場するのは、心地よいグルーヴ&ハーモニーを響かせ、新メンバーを迎えて第二章を迎えたボーカルグループ、Little Glee Monster(リトルグリーモンスター)!歌が好きな音楽を愛する6人が集まった写真左から、かれん、MAYU、ミカ、アサヒ、結海、miyou。【音楽通信】vol.134力強い歌声と高度なアカペラをも歌いこなせる透き通ったハーモニーで、数々の楽曲を世に送り出してきた女性ボーカルグループ、通称“リトグリ”こと「Little Glee Monster」。2014年にシングル「放課後ハイファイブ」でメジャーデビュー以降もコンスタントに作品を発表し、2018年には初のアジアツアーを成功させるなど日本国内にとどまらない活躍ぶりで、脚光を浴び続けています。2022年に新メンバーを募集し、オーディションで7002人の応募者の中からミカさん、結海(ゆみ)さん、miyou(みゆ)さんの3人が加入。先輩メンバーとなったかれんさん、MAYUさん、アサヒさんの6人で、第二章をスタートしました。そんなリトグリが2023年3月22日に新体制となって初めてのEP『Fanfare』をリリースされるということで、先輩メンバーからMAYUさんとアサヒさんに、新メンバーから結海さんとmiyouさんにご登場いただき、お話をうかがいました。――今回はメンバー4人に集まっていただきました。おひとりずつ、お名前とご自身のチャームポイントから、教えてください。MAYUMAYUです。「手が細長いね」と褒めていただくことが多いので、手がチャームポイントです。アサヒアサヒです。チャームポイントといえば、えくぼでしょうか。結海新メンバーの結海です。チャームポイントは……きれいな眉毛です。miyou新メンバーのmiyouです。チャームポイントは、きれいな歯にします(笑)。――自己紹介ありがとうございます。Little Glee Monsterは2014年10月にシングル「放課後ハイファイブ」でメジャーデビューされて約10年経ちますが、先輩メンバーのMAYUさん、アサヒさんは振り返るといかがですか。MAYU 10代から20代という一番変化のある年齢をリトグリとして過ごしてきました。上京してきたメンバーもいたので、家族よりも近くでアーティストとして、人間として成長する姿を見てきていて。メンバーは同級生や地元のお友達とは違い、本当に「歌が好き」という理由だけでオーディションに応募してきた仲間です。アサヒは北海道出身ですし、私は大阪出身なので、この機会がなかったら出会うはずのなかった存在と出会えました。アサヒ本当にあっという間でした。最初はデビューできてうれしい気持ちと、デビューしてもやっぱり下積みが大事なので、一歩ずつ乗り越えてこうして10年目を迎えられるのは、これまでの積み重ねがあったからこそだなと。いま新メンバーと一緒に、素晴らしい10年目を迎えられたのは本当にうれしいですね。MAYU 昨年の夏にまたオーディションをして、わたしたちと同じく「歌が好き」というひとつの理由で集まった新しい仲間3人と出会うことができました。いろいろな変化を経験してきた濃い10年になりましたね。――2022年は5名体制から2人が卒業し、新メンバーを募集して、7002名の応募者からオーディションで勝ち進んだミカさん、結海さん、miyouさんの3人が加入しましたよね。昨年11月から6人の新体制になりましたが、新メンバーの結海さん、miyouさんの現在の心境は?miyou本当にびっくりすることがたくさんあります(笑)。これまで一視聴者としてリトグリの音楽を聴いていたときは、ただ「楽しい」という大きな感情しか抱かなかったんですが、加入してからは「すごいな」という尊敬の気持ちと、ひとつの曲に対していろいろな角度から練習したり、「こんなことを考えて歌っているんだ」と学ぶことがあったり。以前とは考え方や感じ方がすごく変わりましたね。結海先ほどアサヒさんも言っていたんですが、お姉さんメンバーのこれまでの長い積み重ねがあったからこそ、私たち新メンバー3人はまだ実績がなくてもすぐテレビに出られたり、すぐ大勢のお客さんの前で歌を披露する場が設けられていると思うんです。だから、日々感謝の気持ちを持ちながら、リトグリとして活動しています。新体制で初めてのEPをリリースMAYU。1999年9月12日、大阪府生まれ。メンバーカラーはエメラルドグリーン。――2023年3月22日に新体制で初めてのEP『Fanfare』をリリースされます。まずはアルバムタイトルの意味と、今作にも収録の昨年配信された新体制の初シングル「Join Us!」への思いなどからお聞かせください。MAYUアルバムタイトルは、「Join Us!」の歌詞に「ファンファーレ」という言葉が出てくることから付けました。「Join Us!」には、6人体制になって新たな出発をするお祝い、みんなで次のステップに行こうという意味があったので、そんな気持ちで歌っています。アサヒEPのジャケ写は明るくて華やかなイメージになっていますが、収録曲はどちらかというと、カッコいい曲や今までにないような感じのものもあって、多彩な曲が入っています。MAYU色とりどりに鮮やかでかわいいジャケ写と、中身のギャップも楽しんでもらえる要素かなと思います。――2曲目「WONDER LOVER」は、ダンサブルで大人っぽい楽曲ですね。miyou個人的には今まで歌ったことのないジャンルの曲でした。リトグリとしても、すごく新しい角度の楽曲で、新しい一面をお見せできた曲ではないかと思います。アサヒ。1999年5月13日、北海道生まれ。メンバーカラーはサンフラワー。――小粋でファンキーな3曲目「Rolling Rolling Rolling」についても教えてください。MAYU言葉遊びや歌い回し、メロディが独特で耳に残るんですが、歌うのはとても難しい曲ですね。「どこで息をしたらいいの!?」というくらい息をするタイミングがなくて。ひとりで歌うと大変な曲なので、ファンのみなさんがもしカラオケで歌うときは、2人以上がいいと思います(笑)。でも、みんなで盛り上がる曲でもあるので、どんどん歌っていただきたいですね。展開が変わったり、言葉のあてはめ方や区切る位置など、いろいろなパターンがある曲なので、私は歌うより、聴いてるほうが楽しいかも(笑)。アサヒ確かに、けっこう文字数が多い歌詞だから、口がまわらないことも(笑)。MAYUちょっとラップを歌っているような感じもあるんです。ここまで全部がすごくはやいラップっぽさのある曲は「Rolling Rolling Rolling」が初めてで。面白い曲ですし、カッコよさもある曲。「これリトグリ?」と思ってくれる意外性のある曲になるのではないかなと思います。アサヒ耳には残るから、わりとすぐに覚えられる曲なんですが、実際に歌い回しや歌い続けられるコツを習得するのは、意外と時間のかかった印象がありましたね。結海(ゆみ)。2004年5月29日、東京都生まれ。メンバーカラーはガーネット。――4曲目「HELLO NEW DAY」は、明るくて元気になれるような楽曲ですね。どのようなことを意識して歌いましたか。結海この曲は、「1日の始まりがみんなにとってハッピーでいい日になったらいいな」と思いながら、歌わせていただきました。miyou始まりといえば、新生活を迎える学生の方が聴いても、楽しい曲になっているのではないかと。結海毎朝、登校中に聴いていただいたり。miyouそう、楽しい気分で学校に行けるんじゃないかな。結海新生活にぴったりな曲となっております。――5曲目「Million Miles」は「2022富士山女子駅伝」テーマソングだった爽やかな楽曲ですね。結海ライブではすでに歌わせていただいてますね。MAYU実はこの曲は「Join Us!」の次に、6人体制でレコーディングした曲なんです。だからこの曲を聴くと、まだ6人になって間もなかった時期の声を思い出しますし、6人になってまた頑張っていこうという気持ちも重なる部分もあって。駅伝のテーマソングとして歌わせていただき“バトンをつなぐ”思いを込めて歌っているのですが、私たちもグループとしてあとにつないでいくという意味が重なる部分もあって、すごく好きな曲になりました。歌いつないでいく構成にもなっている素敵な曲です。miyou。2003年2月12日、大阪府生まれ。メンバーカラーはターコイズ。――今回、レコーディングの際は、先輩メンバーはどんなふうに新メンバーの方にアドバイスをされたんでしょうか。アサヒ……とくに何も先輩らしいことしてない(笑)。MAYUかもしれない(笑)。レコーディングでは、新メンバーの3人は基本的にみんなワンコーラスずつ歌って、歌割りを決めて、ひとりずつ録っていくスタイルでした。私たちも昔からひとりずつ録るんですが、新メンバー3人が「勉強しよう」と言って、一番器用に歌うオールラウンダーのかれんのレコーディング風景を見学しに行っていましたね。でも、私とアサヒは「恥ずかしいから来ないで〜」って(笑)。まだレコーディングにも慣れないなか、3人が自分たちで熱心に学んでいる姿はとても素敵でしたね。私たちが何かをするときは、6人もいるので、待ち時間もすごく長いんです。でも、そこでたわいもない話をしたりして、だんだん打ち解けていきました。空き時間も大事な時間になったと思います。――今年の4月と5月には「Little Glee Monster Live Tour 2023 “Fanfare”」と題した東名阪のホールツアーが行われます。どのようなステージになりますか。miyou新体制を華やかに祝う“Fanfare”になるように、私たちの新しい声や新しいリトグリをたっぷりと披露させていただこうと思っています。6人でさらにリトグリの音楽を盛り上げていきたい――お話は変わりますが、みなさんは普段、美容面で気をつけていることはありますか。結海リトグリに加入させていただいてから、メイクさんにメイクをしていただく機会がすごく増えて、「肌をきれいにしないとな」と思い始めていたので、毎日パックをするようになりました。お風呂上がりにパックをして、外したあとには卵のように肌がツルツルになっているので、毎晩楽しみなんです。miyou私は水をいっぱい飲みますね。冬は寒いので、寝る前と朝起きたときに、白湯を飲むんですが…。MAYUえ! 意識高い!!miyouいえいえ〜(笑)! ただ、朝に白湯を飲むと、すぐ目も覚めるんです。味がないので、寝起きでも飲みやすくて。寝る前は、カラダもあったまって、ゆっくり寝れるのでオススメですよ。アサヒ私はあまり汗をかきにくいタイプなので、長くお風呂に入って、じんわりと汗をかくまで湯船に浸かるようにしていますね。MAYU私は高校生のときから美白成分が入っている同じ化粧水をずっと使っているんですが、久々にお会いした人に「肌、白いね」と言われることもあって。結海、miyouすごい〜!!MAYUもともと夏でも日焼けを気にしないようなタイプなんですが、きっと美白化粧水のおかげだなと思いましたね(笑)。即効性はないけれど、地道に積み重ねてきた結果は出るという。今後も続けていくと思います。――オフの日はどんなふうに過ごしていますか。結海ドラマや映画を観るのが好きなので、よく観ていますね。最近は、映画館で映画『タイタニック(タイタニック:ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター)』を観ました。miyou休みは家でなんにもしない日もありますし、ちょっと外出してリフレッシュしたいときは古着屋に行っていますね。かわいい服を見て、テンションを上げています。MAYU私も極端なんですが、1日ベッドで天井を見て終わる日もありますね。あとは友達が運転する車でドライブに行ったり、カラオケが好きなのでお酒を飲みながらカラオケをしたり。仕事で毎日のように歌っていますが、自分の中でカラオケはまったく別物なので、リフレッシュするためにカラオケによく行きます。アサヒ私は家から少し遠い場所にある回転寿司屋まで歩いて食べに行っていますね。miyou歩くの好きですよね?アサヒうん、人のマイブームをよく覚えてるね(笑)。遠い場所にお店があることによって、行くことで、少し運動を兼ねてるの。歩いて、食べて、歩いて…。結海プラマイゼロ!アサヒそう、プラマイゼロ(笑)!――ではみなさん、プライベートで今年やってみたいことはありますか?アサヒ今年は、免許を取りたいです。miyou私は最近引っ越しして、まだ何もないので、部屋を落ち着く場所に作り上げてみたいです。結海私はまだ髪の毛を染めたことないので、ちょっとでもいいので、染めてみたいな。MAYU今年、高校卒業でね。結海はい、卒業したらやってみたいですね。MAYU私も髪かな。いま髪を伸ばしているんですが、一度ショートカットにして、そこからまたのばしています。短くてもいいんですが、結海ちゃんぐらい髪の長さがあるほうが、ステージ映えして迫力も出るかなと。さらに長いエクステもつけたら、けっこういい長さになると思って、髪を伸ばしてからのことも楽しみにしています。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の「Little Glee Monster」としての抱負を代表してMAYUさんから教えてください。MAYU Little Glee Monsterは新しい3人の仲間に出会いました。6人ではすべてが初めての場所になっていきますし、ここからまた10年、そしてその先も長く活動していきたいと思っています。「いままで以上にキラキラして活動してるね」と言っていただけるように、6人でここからさらにリトグリの音楽を盛り上げていきたいですね。取材後記新たに6人体制となったLittle Glee Monsterから、ananwebではMAYUさん、アサヒさん、結海さん、miyouさんにインタビューさせていただきました。和気あいあいと楽しい雰囲気のなか、先輩メンバーのおふたりに導かれながら、新メンバーのおふたりもフレッシュに応えてくださいました。そんなリトグリのEPをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・オイケカオリ(ライブ写真)取材、文・かわむらあみりLittle Glee MonsterPROFILE“研ぎ澄ました歌声で人々の心に爪痕を残す”ことをテーマに結成されたボーカルグループ。現在のメンバーは、かれん、MAYU、ミカ、アサヒ、結海、miyouの6人。2014年、シングル「放課後ハイファイブ」でメジャーデビュー。2017年には初の武道館単独公演のほか、Earth, Wind & FireやAriana Grandeのツアーサポートアクトを務め、2018年には初のアジアツアーを成功させるなど日本国内にとどまらない活躍を続け、4年連続でNHK『紅白歌合戦』に出場。2022年7月より、新メンバー募集オーディション「M∞NSTER AUDITION」を開催。7002人の応募の中からミカ、結海、miyouの3人が新メンバーに決定し、第二章をスタート。新体制での新曲「Join Us!」を同年12月に配信リリース。2023年3月22日に、新体制となって初めてのEP『Fanfare』をリリース。4月と5月に「Little Glee Monster Live Tour 2023 Join Us!」を東京と大阪にて開催。InformationNew Release『Fanfare』(収録曲)01. Join Us!02. WONDER LOVER03. Rolling Rolling Rolling04. HELLO NEW DAY05. Million Miles2023年3月22日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)SRCL-12449(CD)¥1,980(税込)(初回生産限定盤A)SRCL-12445〜46(CD+BD)¥4,180(税込)*BD:「Little Glee Monster Live Tour 2023 Join Us!」1月7日昼公演ライブ映像全曲収録。(初回生産限定盤B)SRCL-12447〜48(CD+Photo Book)¥2,860(税込)*Photo Book:「Little Glee Monster Live Tour 2023 Join Us!」東京公演のライブ写真で構成。写真・オイケカオリ(ライブ写真) 取材、文・かわむらあみり
2023年03月21日【音楽通信】第133回目に登場するのは、NHK連続テレビ小説『おちょやん』の主題歌「泣き笑いのエピソード」や『六本木クラス』挿入歌「残影」も収録されたアルバムを発表する、秦 基博さん!2021年に迎えたデビュー15周年を超えて【音楽通信】vol.1332006年のデビュー以降、コンスタントに作品を発表し、多彩なライブ活動を展開しているシンガーソングライターの秦 基博さん。心に響く歌声で、わたしたちを魅了し続けてくれています。2021年にはデビュー15周年というアニバーサリーイヤーを迎えて、横浜アリーナと大阪城ホール、さらには日本武道館でコンサートを開催。2022年はドラマ『六本木クラス』挿入歌「残影」をリリースするなど、これまでに数々の映像作品やCMソングを手掛けています。そんな秦さんが、2023年3月22日に7枚目のオリジナルアルバム『Paint Like a Child』をリリースされるということで、お話をうかがいました。――以前ananwebでは、今回のアルバムにも収録されたNHK連続テレビ小説『おちょやん』の主題歌「泣き笑いのエピソード」のリリース時(2021年1月)に取材させていただきました。あれから2年、本格的にコロナ禍となって、現在は対策などにも慣れてきた時期ですね。いわゆるステイホーム期間はいろいろなことが止まって、音楽制作もライブも中止になりましたが、次第にその状況をみんなが受け入れっていっていたような時期でもありました。そんななかでも少しずつレコーディングも進んでいましたし、無観客の配信ライブを行うなどのできることを模索しましたね。2021年は、大きな会場でライブも開催させていただきました。――15周年を迎えられてのライブは、いつもと違った感慨深さはありましたか。そうですね。横浜アリーナと大阪城ホールの公演では、1日ずつ内容を変えて、初日に弾き語り、2日目にバンドスタイルと2daysで内容を変えました。15年間やってきた音楽スタイルがひとつではなく、弾き語りやバンドアンサンブルといろいろとやってきたので、両方を楽しんでもらえる2日間にしたくて、内容を変えて公演しました。15年のキャリアを経て、みなさんと一緒に大きい会場でライブを共有できる幸せを実感できましたね。3年3か月ぶりのニューアルバムが完成――2023年3月22日に、7枚目のニューアルバム『Paint Like a Child』をリリースされます。3年3か月ぶりとなるアルバムですが、いつ頃から制作されていましたか。2021年の秋ぐらいから、本格的にアルバムに向けた曲作りを始めました。――タイトルは、ピカソの残した言葉からつけたそうですね。以前から、すごく好きな言葉だったんです。いろいろなことを成し遂げてきたピカソほどの人が、晩年に「ようやく子どものような絵が描けるようになった」という言葉を残していて。子どものように無垢で無邪気で自由な表現が、さまざまなことを経験した先にあるんだとすれば、それは音楽を作るうえでも、ひとつの指針になるといいますか。自分でも、そんなふうに自由に音楽をより表現できたら楽しいな、という思いをずっと持っていました。だから、そのピカソの言葉が心の中にずっとあって、今回のアルバムを作るうえでのコンセプトにもふさわしいと思ったんです。いまの自分の思うままに、やりたいことを1曲ずつ突き詰めた結果、思い描いたアルバムが出来たと思います。――既発曲としては、2022年のテレビ朝日系木曜ドラマ『六本木クラス』挿入歌「残影」や『映画ざんねんないきもの事典』主題歌「サイダー」も収録されていますね。「残影」は、主人公のテーマということでしたので、彼がどんな人物でどうやって人生を過ごして、どんな思いでいるのかというところが、曲のもとになっています。圧倒的な絶望感があっても、心折れずに進む鉄の心を持つ主人公とまったく同じではないにしても、自分の中にもある絶望感やそれに抗うように前に進んでいこうとする気持ちを照らし合わせながら、曲を作っていきました。「サイダー」は、『ざんねんないきもの事典』で描かれる動物たちが“ざんねん”と言われてしまうけれど、生命が生きていることの喜びがそこにあると思ったんです。それぞれの個性は、もしかすると人から見たら残念に思われることだとしても、そもそも存在している、生きていること自体の素晴らしさや歓びを歌いたいと「サイダー」という曲が完成しました。――アルバムのタイトル曲でもある新曲「Paint Like a child」は、未来や希望を感じさせるナンバーですね。僕はだいたいメロディやサウンドから曲を作っていくんですが、この曲は、アルバムを象徴する1曲目になるような曲を作りたくて書きました。制作過程で、アルバムのタイトルを先に決めたのですが、そのタイミングでこの曲の歌詞を書いていたこともあり、タイトルトラックになりました。――新曲「Life is Art!」は明るくてどこか懐かしいナンバーですが、この曲はどのようなことをイメージして作られたのですか。ライブでもみんなで一緒に楽しめるレパートリーを、アルバムの中でも作りたい、と思って書き始めた楽曲です。歌詞では、カラフルな世界が描けたらいいな、というイメージがあったので、具体的に青や黄色、マゼンタなどの色を入れています。――新曲「イカロス」は、ピアノの調べに乗せて切ない心情を歌うバラードですが、どのように生まれた曲でしょうか。アルバムに向けて曲作りを始めたときに生まれた曲で、純粋にこういうメロディやサウンド感を作りたくて。ピアノが中心になりながら、コーラスの広がりや、シンセベースの重低音が彩どるサウンドのイメージがあって、サウンドが固まったときに、自然と“喪失”をテーマに歌おうと思ったんです。とはいえ、喪失に関する特別な理由があったわけではありませんが、できた曲の世界観に導かれながら、歌詞をじっくりと書いていきました。――この「イカロス」を主題歌にした映画『イカロス 片羽の街』が2023年2月からU-NEXTで配信されています。今回、「イカロス」にインスピレーションを受けた児山隆監督、枝優花監督、中川龍太郎監督の3人による、3本の映画が制作されました。「イカロス」のサウンドが出来たときに、その時点ではまだ歌詞はなかったんですが、メロディにすごく映像が合う、シーンや情景がすごく広がる曲だというイメージがありました。通常は、そこからミュージックビデオを作る流れになるんですが、今回は「映像との新しいアプローチはないか」という話になって。たとえば、タイアップがあればその作品に合わせた楽曲を書き下ろすことが多いんですが、逆に「曲をもとに映画を撮り下ろしてもらうことができないかな?」という話になり、3人の監督さんにオファーしたところ快諾してくださって、今回「イカロス」をもとにした映画化が実現しました。――すごいお話ですね、しかも一編ではなく三遍の物語があるという。本当に。「イカロス」という曲を物語にすると、どういう解釈を生むのか、どんな状況が広がるのか、とても興味深かったです。おひとりの監督さんに映画化していただくのももちろんうれしいのですが、何人かの監督さんがいると、曲からの解釈の違いや広がりがより感じられるので、お三方にお願いすることになりました。曲では“喪失”を歌っていて、映画では“喪失と再生”がテーマで、喪失した先の物語までを描いています。あとは僕の生まれた“横浜”が舞台というものがしばりとしてありましたが、それ以外は「自由に作ってください」とご依頼して、生まれてきた3つの物語でして。それぞれまったく違う物語が生まれました。内容はお任せだったので、出来上がるまでは監督のみなさんともお会いせずにいたんですが、完成してから取材で監督たちにお会いしたときに、それぞれの方のパーソナルな部分と結びついて、物語や映画が生まれるんだなと感じました。――秦さんの原曲から、監督がどのようにインスピレーションを受けたかということですものね。はい、曲をどう受け取ったかもそうですし、ご自身のどういう経験や思いと結びついたのか。いざ情景になったときに、どうやって映画になるのかなど、面白かったですね。映画監督は、そうした思いを映画で表現すると思うんですが、僕の音楽を受け取ったみなさんも、いろいろな景色や物語が広がって、それぞれに描いているものがあるのかなと。そういう広がりのある曲が書きたいと思っていますし、自分の音楽からみなさんの世界が広がっているといいなと思います。――ジャケ写はカラフルな色で絵が描かれていますね。実際に子どもたちが集まって、いろいろな絵を描いてくれました。クリエイティブディレクターの方のチームのアイデアで、アート教室に通う幼稚園生から中学生までの総勢46人の子どもたちが集まってくれたんです。「真っ白い紙に自由に絵を描いてください」とだけ言って、こんなに素敵なものができあがりました。――では、このアルバムがどんなふうに聴き手に届いてほしいでしょうか。僕自身は、音楽を作ることの楽しさと喜びを表現していけたらいいなと思うんですよね。もちろん生みの苦しみはついてまわるんですが、それも含めて、僕はこのアルバムで自分の描きたい音楽を思いっきり表現しました。だから、聴く方も楽しい気持ちやいろいろな気持ちになったりと、みなさんそれぞれの響き方や広がり方をしてくれたらいいですね。――4月から7月まで「HATA MOTOHIRO CONCERT TOUR 2023 ―Paint Like a Child―」と題した全国ホールツアーを開催されます。どのようなステージになりそうでしょうか。今回はバンドアンサンブルでまわる久々のワンマンツアー、アルバムの世界をライブで再構築することになります。もちろんいままでの楽曲たちも織りまぜながら、アルバムの世界を中心に、楽しんでもらえるライブを作れたらと思っています。ツアーで音楽を共有できる瞬間が楽しみ――アルバムは“子どもの落書き”のように、はみ出していく自由さや遊び心がテーマとなっていますが、秦さんご自身が子どもの頃、一番熱中した遊びはなんでしたか?熱中していたことでいうと、野球とバスケです。わりとスポーツに熱中していたんですが、どれも小学生ぐらいから始めたんです。それまでは絵を描くのが好きでしたね。――今回のアルバムをきっかけに、また絵を描いてみようとは?いや、この子どもたちが描いてくれた絵を見たら、なおさら描けなくなる(笑)。みんな思い思いに線を描いたり、好きな色を選んで好きなものを描いていて、それがなんでこんな素敵になるの? と。全部子どもたちが自由にやった結果こうなっていて、大人の僕が描こうとすると、うまく描こうとして邪念が入るので、いまは難しそうです(笑)。――子どもたちは最強ですね(笑)。では普段、ライフスタイルにおいて気をつけていることはありますか。普段は激しい運動などはしていないですが、歌を歌いますしカラダが楽器なので、ストレッチを中心にやるよう、ジムに行くときもあります。すごく鍛えるわけではないんですが、柔軟性は保っておかないとカラダが固まるとあまりよくないので、そのあたりは気をつけていますね。――喉は何かケアをされているのですか?すごく特別なことは全然していません。しいて言えば、乾燥に気をつけるぐらい。少し乾燥しやすいときは、喉に良いハーブティーを飲んで、喉を潤したりするぐらいですね。基本的には、あまりナーバスになりすぎると、逆に疲れてしまうから。昔は、あれをしなきゃ、これをしなきゃという意識も強かったんですが、気にしすぎるほうがマインド的に良くないなと思ってやめたら、気が楽になりました。アマチュアの頃なんて、たいしたケアもせず、水さえ飲めば歌えていたので(笑)。マインド的には、それぐらいでちょうどいいなと思っています。――いろいろなお話をありがとうございました! では最後に、今後の抱負をお聞かせください。この3年ぶりの新しいアルバムをみなさんにたくさん聴いていただきたいですし、ツアーでもみなさんにお会いしたいですね。音源を作って終わりではなく、ライブでみなさんと共有することで、その曲の本質を知るといいますか。「こういう曲の表情があったんだな」「この曲ってこんなふうに響いていくんだな」と、ライブをしてみないとわからないことがたくさんあります。そういったことを通して、やっと作品が完成していくから。ライブも楽しみですし、何よりも一緒に音楽を共有できる瞬間が待っているのが待ち遠しくて。またツアーが終わったら、自分の中で何かがまた芽生えてくるんじゃないかな、ということも自分自身、楽しみにしています。取材後記新作に込めた想いはもちろんのこと、新曲をもとにして映画が生まれたというお話も印象深かった、秦 基博さん。「絵を描こうとすると邪念が入る」というお話もありましたが、秦さんはどこか少年のような清らかさも思わせる、物腰の柔らかいお人柄。歌だけでなく、その人間力でも多くの方々を惹きつけているのではないかと感じました。そんな秦さんのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・園山友基取材、文・かわむらあみりヘアメイク・鷲塚明寿美、スタイリスト・高橋 毅(Decoration)Tシャツ¥15,400(is-ness)、シャツ¥46,200、パンツ¥44,000(ともにRAKINES)、靴¥35,200(ORPHIC / alpha PR : 03-5413-3546)秦 基博PROFILE1980年10月11日、宮崎県生まれ、横浜育ち。A型。2006年11月、シングル『シンクロ』でデビュー。“鋼と硝子でできた声”と称される歌声と叙情性豊かなソングライティングで注目を集める一方、多彩なライブ活動を展開。2014年、 映画『STAND BY ME ドラえもん』主題歌「ひまわりの約束」が大ヒット、その後も数々の映画、CM、TV番組のテーマ曲を担当。デビュー10周年には横浜スタジアムでワンマンライブを開催。初のオールタイム・ベストアルバム『All Time Best ハタモトヒロ』は自身初のアルバムウィークリーチャート1位を獲得、以降もロングセールス中。2023年3月22日、7枚目のオリジナルアルバム『Paint Like a Child』をリリース。4月から7月に全19公演をめぐる全国ツアー「HATA MOTOHIRO CONCERT TOUR 2023 -Paint Like a Child -」を開催する。InformationNew Release『Paint Like a Child』(収録曲)01. Paint Like a Child02.Trick me03.サイダー04. Life is Art !05. 残影06. Dolce07. 202208. 太陽のロザリオ09. 泣き笑いのエピソード10.イカロス2023年3月22日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)UMCA-10093(CD)¥3,300(税込)(初回限定盤)UMCA-19068(CD+BD)¥5,280(税込)*スリーブケース付。(Home Ground 限定盤)PROS-1924(CD+BD+インタビューブック+グッズ)¥10,450 (税込)*本体スケッチブック仕様。(Home Ground 限定盤)PROS-1925(CD+DVD+インタビューブック+グッズ)¥10,450 (税込)*本体スケッチブック仕様。写真・園山友基 取材、文・かわむらあみり ヘアメイク・鷲塚明寿美、スタイリスト・高橋 毅(Decoration)
2023年03月20日【音楽通信】第132回は、多彩なアーティストがコラボレーションして“六畳半ポップス”を発表し続けている音楽プロジェクト「MAISONdes(メゾン・デ)」。今回、MAISONdesの管理人さんと、「ヨワネハキ」や「PAKU」が大ヒットしてTikTokでバズを巻き起こしたasmi(アスミ)さんが登場!“六畳半ポップス”を生み出す音楽プロジェクト写真左から、asmi、管理人。【音楽通信】vol.132「架空の六畳半アパートの各部屋で生まれる、あなたの歌」をコンセプトにした、音楽プロジェクト『MAISONdes』。アパートの一室にアーティストが入居し(参加し)部屋番号を携えながら、毎回異なる歌い手と楽曲提供者がコラボレーションして、自由に楽曲を発表するという斬新なスタイルが話題を呼んでいます。なかでも、シンガーソングライターのasmiさんが2021年5月にMAISONdesに入居して発表した「ヨワネハキ feat. 和ぬか, asmi」は、「TikTok流行語大賞2021 ミュージック部門賞」を受賞してTikTok再生回数30億回を超えるバズヒット曲として脚光を浴びました。そんなMAISONdesが、2023年3月15日に、初めてのミニアルバム『ノイジールーム』をリリース。今回、各部屋の入居者となるアーティストを迎え入れる立場の管理人さんと、今作の収録曲にも参加しているasmiさんに、お話をうかがいました。――架空の六畳半アパートを軸に、アパートの一室にアーティストが入居して楽曲を発表していくという「MAISONdes」のコンセプトは、いつ頃から考えていたのですか?管理人2020年頃からです。実際に2021年2月にMAISONdesが始動して、現在で約2年が経ちました。――asmiさんは2019年から関西を拠点に音楽活動するなか、MAISONdesに入居されて発表された「ヨワネハキ feat. 和ぬか, asmi」が大ヒットされ、ご自身の歌が多くの聴き手に届いたという手応えはいかがですか?asmiたくさんの方々に歌を聴いてもらえるようになっても、大ヒットするという経験が初めてだったので、最初はなかなか実感がわかなかったんです。でも、配信リリースして半年ぐらい経ってから、ある日コンビニに買い物に行ったとき「ヨワネハキ」が流れてきて。思いがけず自分の声を聴いて、そこでやっと「自分の歌がさまざまな場所でたくさんの方に聴かれているんだな」と実感しました。あとは全然しゃべったことのない顔見知りぐらいの人や、地元の中学が同じだったけれどそんなに知らない人からもメッセージが来るようになって、私の同世代の人たちが歌を聴いてくれているんだなと、そういったことからも多くの人たちに歌が届いていることを感じましたね。管理人親戚も増えたんですよね?asmiなんか全然知らん人やけど、父から「サインしてほしい」と言われたとかで、書いたりしたことがありました(笑)。――asmiさんはMAISONdesとしても活動をすることで、ご自身の音楽活動にも刺激を与えることや変化があったのでしょうか。asmiMAISONdesで「ヨワネハキ」を歌ったことが、私の音楽の歴史において、すごく大きな転機になりました。自分ひとりの活動では、曲作りも歌も全部自分でやっていますが、「楽しそうだな」と思って参加したMAISONdesでは他の方に楽曲提供いただいて歌うのも初めてでしたし、本当にたくさんの方に歌を聴いてもらえるようになったのも初めての経験だったのでいま思い返しても、さまざまな可能性が広がったと思います。――MAISONdesの最初の配信リリースは、2021年2月の「Hello/Hello feat. yama, 泣き虫」でしたが、入居者の方は、どのように選んでいますか。管理人「このアーティストのこういう一面が見せられたら面白いだろうからちょっと一緒に制作してもらおうかな?」と考えて、こちらからお声をかけるケースもありますが、一方で、「MAISONdesに興味ある人はご連絡ください」というようにSNSで募集もしています。とはいえ、MAISONdesを始めた当初は興味を持ってくださる方がいませんでしたね。最近やっと「入居したいです」と連絡をくださる方が現れ始めました。その中には、正直なところ、どこのどなただか存じ上げていない方もいますが、「なんか面白いな」と感じてやり取りを重ね、入居していただいたケースもあります。asmiさんの「ヨワネハキ」のときは、和ぬかさんに楽曲を提供してもらってasmiさんに歌ってもらうよう組み合わせていくと、なんか面白いことが起きるんじゃないかな?と思い、また、おふたりにとっても、普段活動されて見せている姿とは少し違う魅力がMAISONdesとして出せるんじゃないかなと考えて、お二方にオファーさせていただきました。ミニアルバムは『うる星やつら』の記念作アパートの各部屋に入居者を受け入れる「MAISONdes」の管理人。素顔は謎に包まれている。――2023年3月15日にMAISONdes初のミニアルバム『ノイジールーム』をリリースされます。今回、ミニアルバムとして発表される理由はなんでしょうか。管理人約36年ぶりにテレビアニメ化された『うる星やつら』(フジテレビ系 毎週木曜24:55)のオープニング曲とエンディング曲を2クール連続でMAISONdesが担当させていただきまして、その記念としての作品になります。通常、アニメはワンクール3か月のところ、今回は2クールあり、さらにそのオープニングとエンディングのテーマを全部やらせていただくなんて、普通では考えられない大抜擢でして。しかも、MAISONdesという中身が何だかわからないものに対して(笑)。国民的アニメとがっつりとコラボレーションさせていただけたので、その楽曲をまとめた今回の活動の記念品という気持ちと、MAISONdesはこれまで配信曲のリリースが多かったのですが、CDとして世の中に形にして出したいと思って作りました。――asmiさんが歌う、現在『うる星やつら』のオープニング曲として放送されている「アイワナムチュー feat. asmi, すりぃ」も収録されています。ボカロPとしても活動されるすりぃさんが楽曲提供された今作を最初に聴いた印象や、歌ってみての感触はいかがですか。asmi最初に曲を聴いたときは、めっちゃ可愛いのにめっちゃカッコいい! と感じました。カッコいい部分はすりぃさんが独自に持たれている雰囲気でもあると思いますし、可愛さは『うる星やつら』の世界観からすりぃさんが引っ張ってこられたんかなと、めっちゃ素敵やん! と。私があまり歌ったことのない曲調というのもありますし、歌ってみると、楽しいんですよね。歌詞もめっちゃ好きで、ラムちゃんの恋心みたいなものをすりぃさんが書かれたのかなと思いました。――実際にasmiさんの歌が、MAISONdesとして『うる星やつら』のオープニングテーマとしてテレビから聴こえてくるお気持ちはいかがですか。asmiすごく感動しました。私が歌った曲に乗って『うる星やつら』のキャラクターが動いていて、特にオープニングムービーの最後あたりに、ラムちゃんの唇が歌詞に合わせて動くところも、シンプルに「すごーっ!」って(笑)。――もともと『うる星やつら』自体はご存知でしたか?asmi知っていました。母がめっちゃ好きでアニメを観ていたということもありますし、昔の『うる星やつら』の「あんまりソワソワしないで〜」と歌う主題歌「ラムのラブソング」もめっちゃ聴いていました。――「アイワナムチュー」はすりぃさんとコラボされましたが、普段MAISONdesの他の参加アーティストの方とは交流はあるのでしょうか。asmiすりぃさんは一度お会いしたことはありますが、交流となると、2回以上会ったことがあるのはyamaさんかな。あとmeiyoさんも。2022年にリリースした私の曲「PAKU」を楽曲提供していただいたので、交流していますね。大阪在住のシンガーソングライター、asmi。「十代白書2020」グランプリ獲得。「CDショップ大賞」2021年関西ブロック受賞。MAISONdesとしては2曲発表している。――「PAKU」は「TikTok2022上半期トレンドチャレンジ部門賞」も受賞された可愛い曲ですよね。asmiありがとうございます。管理人そういえば、「ヨワネハキ」を作った和ぬかさんとは会ったことないですよね?asmiはい、一度もお会いしたことがないですね。管理人本当は存在しないのかもしれないですよ(笑)?asmiまさか〜(笑)! 今度会わせてください。――管理人さんは、歌い手と作り手をつなげるけれども、それぞれはそんなに接点はないんですね?管理人そうですね。「絶対に会って一緒に制作したい」という人もいるのでそれぞれでもありますが、基本的にはあえて会わないでいただくことが多いです。――あえて会わないという意図はなんでしょうか?管理人だいたい楽曲を作る人は、歌う人のことを想像しながら書く場合があると思いますが、作り手と歌い手の顔が見えたり、コミュニケーションを取ったりすると、ちょっとした遠慮が入るといいますか。本当に微々たるものかもしれませんが、「この人、これで嫌じゃないかな」と気を遣い合うと思うんですよね。歌う方も、「この歌い方、作った人的には大丈夫かな……」とか。それが良いように作用するときもありますが、せっかくMAISONdesという看板を背負ってやっていただくとなったら、極端に振り切ったことをやってほしいので、とくに希望がない場合は両者が会わないことが多いです。――今作には『うる星やつら』のタイアップ曲以外に新曲「トラエノヒメ feat. むト, Sohbana」「もういいもん feat. 缶缶, ハイノミ」の2曲が収録されています。管理人むトさんもSohbanaさんもけっこうお若くて。自分でSNSなどを駆使して活躍されている方で、面白い活動を行っている方ですし、缶缶さんとハイノミさんもそうです。今回CDを出すにあたって、みんなが知っている4曲をまとめるだけでなく、これらの曲に合う新曲を入れたくて、『うる星やつら』の世界観から遠くない楽曲を作っていただきました。――どんなふうに聴き手にMAISONdesの楽曲が届いてほしいですか?asmi MAISONdesは「六畳半アパートで生まれる、あなたの歌」というコンセプトがあるので、ひとりでイヤホンで聴いていただくことをイメージしています。ひとりで聴いたときに、みなさんが心の中で思っているのに言えない心の叫びを、私が歌で代弁できたらと思って歌っていますし、その気持ちが届くといいなと。――asmiさんは今後もまたMAISONdesに参加されることも?asmiお部屋の空きがあればぜひ(笑)。管理人参加いただけるのであればもちろん入居してください。お部屋の空きが多くて、家賃ばっかりかさんじゃって大変かもしれませんが(笑)。――MAISONdesに入居しているアーティストは、顔出しされていない方もいらっしゃいますが、今後ライブのご予定はありますか。管理人ライブといえば、それぞれに活動されている方が多いので、ご自身のライブでMAISONdesの曲を歌ってくださる方もいてすごくうれしいですし、どんどんいろいろな場所で歌ってほしいですね。asmiさんもライブで「ヨワネハキ」を歌ってくれていますし。asmiそうですね、歌わせていただいています。管理人 将来的にはMAISONdesへ入居してくださった方が集まってのイベントのようなものができるといいなあとは思っていますね。MAISONdesの歌は“誰かひとりのためのもの”――お話は変わりますが、asmiさんはメイクやファッションでお好きなものはありますか。asmi私はピンク色が好きなんです。衣装を着せてもらうときも、必ずどこかにピンク色を取り入れてもらっていて。今日は私服ですが、ワンポイントで胸元にピンク色の文字が入っています。メイクをするときは、チークをめっちゃ濃い目に入れるのが好きですね。――asmiさんは、以前ananwebのこの音楽取材にご登場いただいた新世代ラッパーのRin音さんと同じ事務所ですが、交流はありますか?asmiRin音くんは福岡在住で私は大阪在住なので、連絡を取ることはありますが、しょちゅう顔を合わせることはないですね。でも、お互いに東京に行く期間が同じときは「ごはん食べに行こうぜ!」とか言って(笑)、遊ぶことがあります。――asmiさんは今後、個人的にやりたいこと、音楽活動でやりたいことを教えてください。asmi音楽活動は、いままで同世代の子たちを意識して曲を作っていたところがあったんですが、「ヨワネハキ」を機にお子さんにも歌を聴いてもらえるようになって。お母さん世代の方からも「asmiちゃんの曲を流したら子どもが泣きやみました」というメッセージをいただくこともあって、すごく嬉しかったんです。だから、私より上の年代の人にも可愛い曲やなと思って聴いてほしいですし、同世代の子たちには共感して聴いてほしいですし、下の年代の子たちも楽しんで聴いてくれたら嬉しいなと。多くの人に歌を聴いてもらって、いつか京セラドームでライブができるようになりたいですね。個人的には、富士山に登りたいです。去年の元旦に東海道新幹線に乗っていて、きれいな富士山を見た瞬間、「登りたい」と。日本で一番高いところに行って、大きなパワーをもらってみたいと思いました。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、管理人さん、MAISONdesの今後の抱負をお聞かせください。管理人 MAISONdesは、すごく抽象的なものではありますが、だからこそできることがいっぱいあると思っていて。「架空のアパートって何?」という、世間ではよくわからないもの、というところからスタートしているからこそ、柔軟にいろいろなことにトライしていきたいですね。これからも楽曲を作って歌ってくださるアーティストが入居してくださる形はずっと変わりません。そもそもMAISONdesは「みんなの歌じゃなくていいから、誰かひとりのための歌であればいい」と思って始めました。漠然と多くの人に音楽を届けることもあるなかで、“誰のための歌なのか”を明確にして、音楽を作っていきたいという思いがあります。これからも、MAISONdesの歌が“誰かひとりのためのものである”ことだけは忘れないようにして、楽曲を届けていきたいですね。取材後記個人で活動するアーティストの方やSNSを中心に活動するネットクリエイターの方などがコラボして、色とりどりの歌を聴かせてくれる、架空のアパート「MAISONdes」。ananwebでは、管理人さんとasmiさんにお話をうかがいましたが、このプロジェクトから生み出される音楽の力を強く感じました。きっとあなたの心を満たしてくれる楽曲がこれからも届くはず。そんなMAISONdesのミニアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみりMAISONdes PROFILEMAISONdes(メゾン・デ)は、「今最もSNSで使われる音楽」を生み出している架空のアパート。楽曲毎に部屋が割り振られ、部屋毎に歌い手と作り手を変えて、「六畳半ポップス」というポップミュージックを生み出している。地球かもしれないし、宇宙かもしれない。未来かもしれないし、過去かもしれない。決まっているのは、部屋のサイズが六畳半なことだけ。この場所、今の時代でしか生まれない歌い手と作り手のコラボレーションによって、それぞれの部屋の歌を発表している。それぞれの部屋に、それぞれの物語と歌があり、きっと、あなたが「自分の物語」だと感じる部屋が、ひとつはある。このアパートは、「あなたの歌」が見つかる場所。InformationNew Release『ノイジールーム』(収録曲)01. アイワナムチュー feat. asmi, すりぃ02. トウキョウ・シャンディ・ランデヴ feat. 花譜, ツミキ03. トラエノヒメ feat. むト, Sohbana04. もういいもん feat. 缶缶, ハイノミ05. アイタリナイ feat. yama, ニト。06. アイウエ feat. 美波, SAKURAmoti2023年3月15日発売*収録曲は全形態共通。(完全生産限定盤)SRCL-12440(CD+アクリルスタンド)¥7,700(税込)(期間生産限定盤)SRCL-12442(CD+BD)¥3,350(税込)※BD(ノンクレジットOP/ED2クール分収録)取材、文・かわむらあみり
2023年03月12日【音楽通信】第130回目に登場するのは、バンドからソロアーティストへと音楽人生を駆け抜けながら、現在ソロ活動10周年というアニバーサリーイヤーを迎えた、藤巻亮太さん!大学生のときに曲を作るようになったことが転機【音楽通信】vol.130ロックバンドのレミオロメンのボーカル&ギターとしても活躍し、「3月9日」「粉雪」など数々のヒット曲を世に送り出してきた藤巻亮太さん。2012年からはソロ活動をスタートし、昨年、10周年を迎えました。そんな藤巻さんが、2023年1月25日に、4枚目となるオリジナルアルバム『Sunshine』をリリースされたということで、お話をうかがいました。――あらためて学生時代よく聴いていた音楽から教えてください。僕が中学生の頃はバンドブームでしたので、ユニコーンをよく聴いていました。高校生の頃からは洋楽も聴くようになって、オアシスやブラーといったイギリスのロックも好きになって聴き始めて。とくにレディオヘッドというロックバンドが好きで、レミロメンの頭文字はレディオヘッドの頭文字から取ったのですが、名前の由来になるぐらい聴き込んで、高校生ぐらいまでは日々UKロックばかり聴いていましたね。――2000年にレミオロメンを結成されて、2003年8月にシングル「電話」でメジャーデビューされましたが、学生時代から将来、音楽の道に行こうと考えていたんですか?そんなこともなかったんです。中学生のときにエレキギターを買って、いわゆる学園祭バンドを組んだぐらいです。高校生のときはバンドでギターを担当していましたが、(アメリカのインストゥルメンタルロックバンドの)ザ・ベンチャーズといった、ボーカルがいないようなバンドのカバーをしていました。途中からは、日本のロックバンドのTHE YELLOW MONKEYや、(アメリカのミュージシャンの)レニー・クラヴィッツのカバーをしながら、学園祭で歌ったりして、楽しく過ごしていました。大学生になってから、自分で曲を作るようになったことが、転機になりました。それまでは誰かの曲のカバーをして音楽を楽しんでいたんですが、曲を作る喜びに出会いまして。そこからレミオロメンを組んで、自分たちの音楽でどこまで行けるのか挑戦したくなったのが、19歳の頃ですね。――歌うことは、もともと得意だったのですか。中学生や高校生の頃は、みんなと同じでカラオケが好きというぐらいで、得意だとは思っていなかったです。だから、まさか将来、歌手になるとは思わなかったですね。――2012年2月にシングル「光をあつめて」でソロアーティストとしても活動をスタートされました。現在、ソロ活動10周年という節目でもありますが、振り返ってみていかがでしょうか。20代ではバンドで音楽を作って届けていく活動をさせてもらって、30代からは自分の名前で活動してきましたが、最初ひとりでは大変なことのほうが多くて。バンドのときよりも、うまくいかないことがたくさんあったのですが、そのぶんひとつずつの学びがあって、それが音楽に活かされている気がするんですよ。すごく大事な10年を積み重ねてきたと感じています。20代は音楽だけに集中する深く掘り下げる時期があって、30代でソロになってからは音楽以外のいろいろな出会いとともに、横に根をのばしていったような時期でもあって。たとえば登山家の野口健さんと出会って、一緒に世界中の山に登るようになって、山が好きで旅とともに写真も撮るようになりました。さらに体力作りの一貫として始めたフットサルも10年続いていて。そんな音楽以外のいろいろな出会いの中から、曲作りへのインスピレーションも得られるようになって、良いかたちで活動できています。前向きなエネルギーが伝わるニューアルバム――2023年1月25日に、前作から約5年ぶりとなるニューアルバム『Sunshine』をリリースされます。明るく、とても前向きさを感じさせるアルバムですね。ありがとうございます。この5年の間に、僕は野外フェス「Mt.FUJIMAKI」を主催するようになるなど、いろいろなチャレンジが増えていました。その中で自分自身と向き合ってきたものが、曲として蓄積されていって、いま自分の中にあるものを表現するためにまとめたものが、今回のアルバムに収録した12曲になります。――爽やかなメロディの2曲目「Sunshine」は、アルバムの表題曲でもありますね。この曲は、初期衝動とか最初にあったピュアなものが、自分の中に変わらずに今もあることを信じられたときにできた曲なんです。そもそも曲を作り始めた19歳の頃も、10代なりに悩むことがあって、気持ちの整理がうまくできないときもありました。僕の場合は、自分を取り巻く社会や世界がわからないときに曲を作ることで気持ちの整理ができて、いろいろなことを把握できるようになって、それが曇り空の中でも太陽を見つけるような作業だと感じています。これまでの道のりを光を頼りに歩いてきたという感覚。それは自分が音楽を作ることの原点のようにも思うんです。それから20年以上経っていますが、年齢を重ねるほど、さまざまなものがクリアになっていく反面、経験を重ねるほどわからなくなることも。でも、曲作りを始めたときもいまも、雲の中から光を見つける、曲を作ることは変わらない。曲を作っていくうちに「これはこういうことだったんだ」と発見する。世界は混沌としていても、自分で道筋を見つけて、照らされたものを信じて、それが指標になっているところがあります。だから、本当に1曲ずつ向き合うごとに光があって、それを信じて音楽を作っていこうと。いろいろな葛藤を超えて、光が見つかったときの喜びを伝えていきたいですね。先にこの「Sunshine」という曲ができていて、最後にアルバムのタイトルを決めようと思ったときに、 前向きさが伝わるタイトルであり、光を象徴している言葉だと思ってアルバムのタイトルにつけました。――そのお話をうかがうと、アルバムのジャケット写真は、光を見つけてつかんだイメージなんでしょうか。そうなんです。これは三角形のプリズムを持っていまして、プリズムは理科の実験などで光をあてると反対側から虹のように光の分散が見えることもありますよね。光にもいろいろなグラデーションがあって、このアルバムにも12曲分の光があるので、プリズムを持ったこのジャケットにしました。――軽快な6曲目「ゆけ」は、親子、夫婦、友達とさまざまな人間関係を後押ししてくれる印象がありますが、どのようなメッセージを込めて歌っていますか。30代で始めたサッカー友達がみんな独身だったのに、40代になるとどんどん結婚していって家庭ができて、大事なものが増えていくことを実感してきました。年齢を重ねながら、みんな自分の人生を大事に生きていることにあらためて気づかされたんです。コロナ禍や海外の戦争があるこの時代に翻弄されながらも、それぞれの人生を生きていて、実はシンプルに平穏に暮らしたいというところで、「何が一番大事なんだろう」と。そんなみんなの人生の未来が輝くようにと歌っています。――7曲目「オウエン歌」も力強く後押ししてくれる楽曲です。実はこの曲は、僕の後輩に向けて、送った曲なんです。母校が10数年前に統合されて新しい高校になったんですが、光栄なことにその校歌を作らせていただいたんです。それから、10周年のタイミングでその高校に行って、ライブと講演をさせていただいたときに、初めて高校生たちと交流させてもらって。彼ら彼女らが頑張りながら、一生懸命この時代を生きている姿を見たときに、自分にできることは音楽なので、応援したいと思って、後輩たちに送った曲なんです。それが聴いてくださる方一人ひとりの応援歌になったらうれしいですし、さまざまな方々のシチュエーションや背景の中で、感じ取ってくださればうれしいです。――昨年11月に配信されたTBS駅伝のテーマ曲にもなった1曲目「この道どんな道」は、「大丈夫」という歌詞が力強い曲ですが、オファーされてから書き下ろされたのですか。よくそう言われることもあるのですが、タイアップのお話の前にできていた曲なんです。この曲が書けたときに、自分のいまの立ち位置や、これからどんな気持ちで進んでいこうかということが明確になって、わりと素直に書けた曲でもありまして、この曲を気に入ってくださって使っていただきました。Aメロで「大丈夫」という言葉を4回繰り返すんですが、不安を抱えながら、それでも自分を信じて進んでいこうと思ったときに、まあ大丈夫だよって自分に諭すようにかけた言葉でもあります。“いまの時代は厳しい”と訴えかけるような言葉はたくさんあふれているんですが、「大丈夫だよ」とはなかなか言ってくれない。でも、実はみんなが求めているのはこういう言葉なのかなって。どんなことがあっても近くにいるよ、味方だよという思いが届いたらと思っています。――アルバムのラストを飾る12曲目「大地の歌」は、どのように生まれた曲ですか。この曲はでき方が特別なんです。J-WAVEの震災復興をテーマとした番組「HEART TO HEART」のナビゲーターを2019年度に務めさせていただいていたのですが、被災地にインタビューに赴いて、その現状を伝えていました。そもそも僕たちはまず“大地”から、衣食住すべて恵みをいただいていて、普段は感謝の気持ちを忘れるぐらい、自然に生活している。でも、大地というのは時として猛威をふるって、人の命を奪ってしまう災いにもなるということを1年間取材させていただいて感じました。人間は大地に生かされて翻弄されているけれど、被災地の福島県浪江町の方に「我々は過酷な状況にいることは間違いないんですが、不幸だとは思わないでいてほしい」と言われたことが印象に残っていて。確かに、周りの人が他人の幸不幸なんて決めることはできない。人はどう振る舞って、どういうふうに生きるか。人間の尊厳に触れた気がして、そのときにこの曲を作りました。――強いメッセージが込められた曲なんですね。そんなアルバムを引っ提げて、2月から3月は『藤巻亮太 Live Tour 2023「Sunshine」』と題したバンドツアーがありますが、どのようなステージになりそうでしょうか。このアルバムはかなりロックなアルバムで、バンドアレンジがすごく効いていて、ドラム、ベース、そして自分もエレキギターを弾いています。先ほど、前向きなアルバムとおっしゃってくださいましたが、アグレッシブなサウンドからもそういう部分は伝わるのかなと。このアルバムを引っ提げた全国7か所9公演のツアーになります。弾き語りやアコースティックでのライブも増えたんですが、久しぶりにドラム、ベース、ギター、藤巻という4ピースバンドで全国をまわってお届けします。季節が冬から春にかけてのツアーなので、ニューアルバムの曲だけではなく、季節を彩る曲やレミオロメン時代の曲も歌って、楽しんでいただけるツアーにしたいです。「しっかりと音楽を届けて活動していきたい」――お話はかわりますが、登山やフットサルのお話もされていましたね。最近は、おやすみの日はどのようにお過ごしですか。散歩に出かけて、普段とは違う景色の中を歩いています。散歩しながら頭が空っぽになる時間がすごく大事だと思っていて。いまの時期だとツアーの準備やこうしてプロモーションさせていただく時間も多いんですが、散歩することでまたリフレッシュして、違う角度からこのアルバムのことを見つめたり、新しい解釈でお話できたりするといいなと思っているんです。また次に向かう楽曲へのアイデアも、散歩の時間に浮かぶこともあるので、できる限りゆったりと過ごす時間を大事にして、休日は自分をフラットに戻していますね。――ライフスタイルにおいて普段気をつけていらっしゃることはありますか。健康面でいえば、ひとつはフットサル。週に1回か2回は何も考えずにカラダを動かしたいなと。ルーティーンになっているので、これが体力づくりの基礎になっています。あとはやっぱり柔軟が大事なので、ストレッチをよくするようになりました。しっかりケアすることで、この体力づくりがライブに活かされています。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。今年の2月からソロ活動が11年目に入ります。毎年ファンクラブの方に向けて“今年の漢字”というものを一字書いていて、「こういう年にしたいです」と、所信表明させてもらっているんです。今年は、さまざまなものを届けたいという意味で「届」を掲げさせてもらいました。ニューアルバム『Sunshine』が発売されることもそうですし、ツアーに出ることもそうですし。僕の音楽を手に取ってくださる方やライブに来てくださる方、こうして今日のインタビューもやらせていただいてananwebの記事を読んでくださる方にも、しっかりと音楽を届けていけたらという気持ちです。11年目も変わらずに音楽を届けていけるように活動していきたいですね。取材後記バンド時代からソロアーティストとしての現在まで、そしてこれからもわたしたちに光にあふれた色とりどりの音楽を届けてくれるであろう、藤巻亮太さん。ananwebのインタビューで“曲作りは曇り空でも太陽を見つけるような作業”というお話をされていたことが印象的でした。今年ソロ活動11年目に突入される藤巻さんのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみり藤巻亮太PROFILE1980年生まれ。山梨県笛吹市出身。2003年にレミオロメンの一員としてメジャーデビューし、「3月9日」「粉雪」など数々のヒット曲を世に送り出す。2012年、バンド活動休止を発表し、ソロ活動を開始。ソロアーティスとして1stアルバム『オオカミ青年』を発表以降も、2ndアルバム『日日是好日』、3rdアルバム『北極星』、レミオロメン時代の曲をセルフカバーしたアルバム『RYOTA FUJIMAKI Acoustic Recordings 2000-2010』をリリース。2018年からは自身が主催する野外音楽フェス「Mt.FUJIMAKI」を地元・山梨で開催するなど、精力的に活動を続けている。2023年1月25日、4thアルバム『Sunshine』をリリース。2月25日から『藤巻亮太 Live Tour 2023「Sunshine」』を開催。InformationNew Release『Sunshine』(収録曲)01.この道どんな道02.Sunshine03.裸のOh Summer04.僕らの街05.まほろば06.ゆけ07.オウエン歌08.千変万化09.Heroes(Album ver.)10.サヨナラ花束11.花びらのメロディー12.大地の歌2022年2月9日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)VICL-65771(CD)¥3,300(税込)(初回限定盤)VIZL-2145(2CD)¥4,400(税込)*初回限定盤のみ、10周年を記念し、藤巻本人がセレクトしたベストアルバムが付属。【ベストアルバム収録曲】01.オオカミ青年02.ハロー流星群 03.月食 04.光をあつめて 05.名もなき道 06.指先 07.花になれたら 08.8分前の僕ら 09.日日是好日 10.Blue Jet 11.マスターキー 12.北極星 13.3月9日 14.粉雪 15.ウイスキーが、お好きでしょ 16.Summer Swing取材、文・かわむらあみり
2023年02月08日【音楽通信】第129回目に登場するのは、一度聴いたら忘れられない艶やかなハスキーボイスでわたしたちを魅了する、デビュー25周年を迎えたシンガーソングライターのスガ シカオさん!「いまでもデビューの頃と同じ新鮮な気持ち」【音楽通信】vol.1291997年のメジャーデビュー以降、一度聴いたら忘れられないハスキーで艶やかな歌声と、ポップだけれどファンキーなサウンド、幅広い世代の心をとらえるソングライティングで、数多くのヒット曲を世に送り出してきたシンガーソングライターのスガ シカオさん。スガさんご自身の楽曲はもとより、スガさんと武部聡志さんらトップミュージシャンで結成されたバンド「kokua」によるNHK総合テレビ『プロフェッショナル 仕事の流儀』主題歌「Progress」や、SMAPへの「夜空ノムコウ」、KAT-TUNへの「Real Face」や嵐への「アオゾラペダル」などの楽曲提供者としても、その優れたセンスを世に知らしめています。そんなスガさんは、2022年2月にデビュー25周年を迎えました。2023年2月1日には、3年の歳月をかけて完成した25周年を締めくくるニューアルバム『イノセント』をリリースされるということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――あらためてスガさんが学生時代によく聴いていた音楽や、影響を受けたアーティストから教えてください。学生時代からデビューまでは、ほとんどブラックミュージックしか聴いてこなかったです。70年代から2000年代までのソウル全般、ファンク、ニュージャックスイング、ディスコ、ブラックコンテンポラリー、R&B、ネオソウル、ジャズフュージョン、ヒップホップ……と寝ても覚めても、そういった音楽ばかりを聴きあさっていました。当時はレンタルCDが全盛の時代だったんですが、いろいろな音楽が聴きたくて、レンタルショップにあるCDとレコードを全部借りて聴き終えてしまったほど。日本のポップスも、あげたらキリがないくらいたくさん聴いていました。当時聴いていたレジェンドアーティストたちに、いまはかわいがってもらっています。――学生時代はたくさんの音楽に触れていたのですね。その後、スガさんは社会人生活を経て、1997年2月26日にシングル「ヒットチャートをかけぬけろ」でメジャーデビューされましたが、音楽の道を選んだきっかけはなんだったのですか。大学を卒業してからは会社員をしていたのですが、4年半勤めてアラサーに差し掛かる頃、アーティストになる夢を諦めきれず、27歳のときに退社を決意しました。当時メジャーデビューの限界は“30歳”だと言われていたので、「30歳までがんばってダメだったら潔く諦めよう」と思って、勝負をかけました。――昨年、デビュー25周年を迎え、今年は26年目に入りますね。当時と現在での内外での変化や、振り返ってみてのお気持ちはいかがでしょうか。いまでもデビューの頃と同じ新鮮な気持ちで音楽に向かえています。音楽業界は大きく変わってしまいましたが、パソコンの前でギターを持って集中してイメージを広げて曲を作る、自分の内面に潜って歌詞を削り出してくるといったスタイルは、当時とまったく一緒です。ただ、25年を経て、自分の武器になる声や歌詞やリズムなどには、あの頃より自覚的になったと思います。「これ以上はもうできないと思える」新作が完成――2023年2月1日に、ニューアルバム『イノセント』をリリースされますが、スガさんの楽曲は揺れ動く心情や強い言葉もスガさんの歌声を通すとすんなりと耳に馴染んで生々しくリアルに響きますね。まずは今作が完成した手応えからお聞かせください。デビューして25年も経って、こんなにも新鮮で初々しいアルバムを作れたことを素直に喜びたいです。出来上がっていくときのドキドキ感、思い通りにいかないときの焦燥感も含め、完成したときのやり切った感はすごかったですね。手応えというか、これ以上はもうできないと思える作品になりました。――昨年開催された全国10公演のツアー「大感謝祭 2022」でも披露された、セクシーな歌詞の新曲「バニラ」が1曲目に収録されています。1月18日に先行配信もされましたが、どのようなイメージから、この曲が生まれたのでしょうか。昔から性的なテーマの曲が大好物で、ほかの誰も触らないテーマなので、ぼくが一人でその歴史をどんどん開拓していこうと勝手に思っています(笑)。「バニラ」はSM的な内面感情を、自分なりに深く掘り下げた曲。メロディやアレンジを作っていく段階で、頭の中のそういった性的なイメージに火がついた感じです。ーー9曲目「灯火(ともしび)」は、関東電気保安協会「安全のプロ編」CMソングとしても流れていたあたたかいナンバーです。どのようなメッセージを込めて歌っていますか。関東電気保安協会のCM曲なので、なにか「光」をテーマにした曲を作りたかったんです。まだプロにもなれていなかったデビュー前の時代、はるか遠くのほうにある成功を光に例えて、届かないけれどがんばる景色を描きました。若い友人のアーティストたちも、いままさにそういう状況にいるので、彼らや彼女らに向けて作った曲でもあります。――切ないラブソングがストリングスとも相まって届く11曲目「国道4号線」は、どのように生まれた曲ですか。自分でも抑えられないくらいイメージや映像、言葉がどんどん頭の中にあふれてきてしまった曲です。本当はもっと長く歌詞やメロディを足して、壮大な映画のようなストーリーにしたかったんですが、さすがにそうもいかないので、このサイズで打ち切りました(笑)。渋谷で待ち合わせをしているシーンから始まる、映画みたいな切なくも苦しい曲です。――ヒャダインさんと組まれた13曲目「モンスターディスコ」は、フジテレビ系TVアニメ『デジモンゴーストゲーム』エンディング主題歌としても親しまれたキャッチーなダンスナンバーで、お子さんたちにも響いた曲ですね。アニメを観ているお子さんに向けて作ったホラーソングなんです。ヒャダインに、「スガ シカオのイメージをぶち壊してくれ」って頼んだら、やれラップやれだの、ここにメロディを作ってだの、無茶振りの応酬を受けて、この曲が出来上がりました(笑)。その結果、歌詞もメロディもいままでやったことのない感じになっていて、ヒャダインに感謝です。――そうだったのですね(笑)。今作には、25周年を機に立ち上げたファンク集団「ファンクザウルス」の楽曲も4曲収録されています。ファンクザウルスでは、インパクトのある歌詞を陽気に聴かせてくださいますが、ソロと違う点として、ファンクザウルスで意識されている点はどこですか。ファンクザウルスは、とにかく大真面目にアホなことをやり尽くすバンドなんです。お客さんも一緒になって“ファンクバカ”になってもらって、泣くまで笑ってもらうというコンセプトで始めました。このタイプのバカバカしい歌詞を書かせたら、ぼくの右に出るものは日本にはいません、天才としか言いようがないかも(笑)。ちなみに次のファンクザウルスの新曲のタイトルは『スガ シカオで領収書ください』というバラードです!――わー、早く聴きたいです! デビュー記念日となる2023年2月26日には、中野サンプラザ公演を開催され、ファンクザウルスの初お披露目もあるようですね。そしてアルバム『イノセント』のツアーも行うご予定は?ファンクザウルスのステージは参加型ステージなので、お客さんもコーラスやペンライトでガンガンにステージを盛り上げてもらいます。いままでのような聴くライブではなく、騒ぐライブと位置付けているんですよ。そして『イノセント』のツアーもやりたいですが、まだ予定はないですね。「海外や踏み込んだことのないジャンルに進出したい」――少し普段のご様子もお聞かせください。音楽活動以外では、おやすみの日はどんなふうにお過ごしですか。趣味や現在ハマっているものもあれば教えてください。最近、休日に船釣りに行きました。朝5時集合で、東京湾のアジを大量に釣ってきたんです。自分で捌いて、刺身やなめろう、アジフライにして食べたんですが、最高でしたね。あと習い事が好きで、いまも英会話、ギター、たまにボイストレーニングと、いろいろやっています。できなかった何かができるようになると、すごく得した気になるんですよね。食べ歩きも好きで、70人くらいいる食べ歩き同好会みたいなものに入っているので、日本全国の美味しいものを探して、食べ歩いています。――多趣味で多彩でいらっしゃるんですね。ではライフスタイルにおいて、普段気をつけていることはありますか。体型がだらしなくならないように気をつけていますね。トレーニングはもとより、週に2回、10kmは歩いていますし、食べ物もかなり気をつけています。――いろいろなお話をありがとうございました。最後に、今後の抱負を教えてください。今年は、活動の幅を少し広げていきたいと思っています。たとえば、海外とか踏み込んだことのないジャンルとかに、どんどん進出していきたいですね。取材後記ファンクな要素をポップミュージックにちりばめて、多くの人たちを惹きつけ、何度も聴きたくなる楽曲にして届けてくださる、スガ シカオさん。デビュー25周年というアニバーサリーイヤーを迎えてもなお新鮮さを持ち続けて、また新しい楽曲を聴かせてくれるのはうれしい限りですよね。そんなスガさんのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみりスガ シカオPROFILE1997年2月、シングル「ヒットチャートをかけぬけろ」でメジャーデビュー。同年9月発売の1stアルバム『Clover』以降、これまですべてのオリジナルアルバムがオリコンTOP10 入りを記録している。2011年、所属事務所から独立。メジャーとインディーズの枠組みに捉われない独自の活動を行ったのち、2014年に両A面シングル「アストライド/LIFE」でメジャーシーンに完全復帰。2017 年にはデビュー20 周年を迎え、自身が主催する「スガフェス!」をさいたまスーパーアリーナと大阪城ホールで開催した。2021年12 月、デビュー25周年のキックオフ作品としてアルバム『SugarlessIII』をリリース。同年6月には、オリンピックや世界選手権で活躍する一流スケーターたちが繰り広げる「Fantasy on Ice 2022」にて、フィギュアスケーターの羽生結弦とコラボレーションしたことが大きな話題に。2022年2月、デビュー25周年を迎え、全国10公演をまわったホールツアー「大感謝祭 2022」は大盛況のうちに幕を閉じた。2023年2月1日、25周年を締めくくるニューアルバム『イノセント』をリリース。InformationNew Release『イノセント』(収録曲)01.バニラ02.さよならサンセット03.叩けばホコリばっかし(Short Mix)by ファンクザウルス04.痛いよ05.獣ノニオイ06.バカがFUNKでやってくる(Short Mix)by ファンクザウルス07.覚醒08.東京ゼロメートル地帯09.灯火10.メルカリFUNK(Short Mix)by ファンクザウルス11.国道4号線12.おれのせい by ファンクザウルス13.モンスターディスコ2023年2月1日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)VICL-65749(CD)¥3,300(税込)(初回限定版A)VIZL-2132(2CD)¥4,950(税込)*内容:『イノセント』+CD「ファンクザウルス」デビューEP(初回限定版B)VIZL-2133(CD+DVD)¥5,500(税込)*内容:『イノセント』+DVD「25周年ツアー 大感謝祭2022 東京国際フォーラム ホールA(2022.10.14)」/「バニラ」ミュージックビデオ完全版取材、文・かわむらあみり
2023年01月29日【音楽通信】第128回目に登場するのは、バラエティ番組でもひっぱりだこで若い世代を中心にカリスマ的人気を誇り、音楽活動では別名義で活動中のあのちゃんこと、anoさん!家では洋楽のバンドサウンドを聴いて育つ【音楽通信】vol.128現在、音楽活動のほかにもタレントやモデルとしても活躍し、若い世代を中心にカリスマ的人気を誇る、あのちゃん。テレビのバラエティ番組でもひっぱりだこで、かわいらしい話し方から繰り出すキレのある受け答えや、やわらかい雰囲気に見えてライブではシャウトするなど、静と動のギャップも魅力です。そんなあのちゃんは、「ano」名義でソロアーティストとして音楽活動をするなか、2022年10月に「普変」、11月に「ちゅ、多様性。」を配信リリースされたということで、お話をうかがいました。――anoさんが幼少時に音楽にふれたきっかけから教えてください。父がバンドをやっていた時期があったので、家にはいくつもギターがあって、アンプやピアノも置いてありました。家では洋楽がよく流れていましたし、幼稚園の送り迎えも洋楽のロックバンドの曲やヘビーメタルのような激しいサウンドが流れていた環境です。その頃はまだ物心がついていないから、音楽の良さをまだ理解できずに「うるさいなあ」と思っていましたね(笑)。母もザ・ビートルズやクイーンといった洋楽が好きでしたし、兄も音楽をやっていたので、自分は音楽に苦手意識があって。洋楽には詳しくなるけど、逆にみんな知っている童謡や昔話は知らなくて、こんなになっちゃいました。――ではいつ頃から音楽にご興味を持つようになったのでしょうか?中学生ぐらいからです。そのときは部活に入らなくてはいけない学校に通っていて、先生にバスケ部に入りなさいと言われて無理矢理入って、だんだんと真面目にやるようになってスポーツに打ち込んでいました。でも、すぐやる気ないように見られてしまって、みんなの前で怒られたりするのも嫌で。不登校になって、部活も辞めて。学校に行かずに家にずっといながらインターネットをしていたり、YouTubeを観ていたりするなか、音楽の動画も観ていろいろと知っていくと「面白いかも」と。家では音楽がずっと流れている環境だったこともあって、音楽は生活と切っても離せないものだと感じました。――音楽の道を目指すようになった理由はなんでしょうか。バンドの音楽をよく聴いていたから、バンドっていいな、と思いながら引きこもっていました。あるときTwitterに流れてきた「メンバー募集」に、バンドもできますって書かれていたので応募したら、ミュージシャンのメンバー募集ではなく、アイドルグループの募集で。受かると思わず応募したけれどバンドじゃないからと断っていたら、何十回も連絡をもらって、他のメンバーは審査をするなかで自分は「すぐ入ってくれ」と言われたので、そんな経験が初めてだったから、そこから活動を始めることにしました。――その後、2020年9月から「ano」としてソロでの音楽活動をスタートし、2022年4月にデジタルシングル「AIDA」でメジャーデビューされましたね。ソロだと意気込みは違いましたか。一度アイドルグループとしての表舞台を辞めていたので、ソロになったからといって、あまり意気込みはなかったです。ソロ活動は自分から出たものだけで音楽を作る感覚で自己満足だったから、誰かに届けようという気持ちはまったくなくて。一応リリースするものの、そこで多くの人から共感を得ようとは思っていなかったので、みんなからの反響が不思議な気持ちでしたね。これまでも「あのちゃんがボーカルギターで、この大人を集めて」というようなお話は何度もあって。でも、最初から決められていると自分のしたいこととは違うから、「それってバンドじゃないな」って。ちゃんとそこは第三者の声無しで、自分たちで関係性を築いていきたかったから、結成するまでに時間がかかっちゃいました。――バンドメンバーはご自身でお声をかけて?そうです。ひとりに声をかけて、その子の知り合いにまた声をかけて……という感じで。ぼく、全然友達がいなかったから。「じゃあ、この仲間で組もうぜ」というのができないですし、大人の力を借りるのも嫌だし。それですごく時間がかかりましたが、かかったかいがありました。――ギターはいつ頃から弾くようになりましたか。ギターは、当時のグループにいた6年ぐらい前からですね。その頃は全然ギターも好きじゃなかったから、ライブのためにはがんばって練習するけど、普段は触りたくないというスタンス。それが、ようやくバンドを始めてから好きになって「こんなにギターを弾いて歌うのは楽しいんだ!」って、思えるようになりました。――ご自身で作詞作曲をされることもありますし、anoさんは表現することがお好きなんですね。そうですね。自分で曲を作るときは、ギターを弾きながら、同時に歌詞を並べていく作業が多いです。降ってくるといいますか。作曲者が他にいる場合は、そのメロディにぼくが歌詞を乗っけるパターンが多いですね。新曲は「ぼくの曲にはいままでにない印象」――2022年11月23日には、TVアニメ『チェンソーマン』(テレビ東京系 毎週火曜24:00)のエンディングテーマ「ちゅ、多様性。」を配信リリースされました。エンディングテーマは12組のアーティストが週替わりで担当し、anoさんは第7話を担っていますが、作詞は音楽プロジェクト「相対性理論」元メンバーで音楽家の真部脩一さんとの共作ですね。はい、この曲は『チェンソーマン』でエンディングを担当する第7話を考えながら作りました。曲作りのときはまだアニメはできていませんでしたが、既刊されている漫画でアニメの第7話に当たる箇所を教えてもらっていたので何回も読んで、ストーリーとリンクしているようでしていないようなものを書きたくて。そこは真部さんが書いてきてくれた歌詞をぼくがぶち壊したりして(笑)、バランスを見ながら、書いていきました。共作は新鮮でしたね。――軽快な「ちゅ、多様性。」のサウンドがあがってきての印象はいかがでしたか。相対性理論の感じはありつつも、ぼくの曲にはいままでなかったような印象もあって、結果として新しく聴こえるというか。うまく曲ができてよかったな、と思いました。サウンドは、ちょっとポップにかわいく、でもカオスでというイメージが自分のなかにあって。その通りのものを真部さんが作ってくれました。――真部さんとのタッグは、anoさんのご希望だったのですか。前からお願いしてみたいなと思っていました。今回、好きな音楽家の方と組めたらいいなということもあって、他のアーティストの方の名前もあがっていましたが、ぼくは真部さん一択。真部さんからも、実は曲作りを一緒にしてみたかったと言ってくださいました。――レコーディングや歌唱の際、意識した点はありましたか。レコーディング中は、『チェンソーマン』の世界を意識して曲作りした部分もあったので、そのことや漫画を思い出して歌いました。ただ、意識的にというよりは、自然とその世界が浮かんでくる感じでしたね。――前作は、10月に「普変」が配信されていますが、クリープハイプの尾崎世界観さんが手がけた疾走感あふれるナンバーです。これまで尾崎さんの活動を見てきていて、自分も抱えている悩みが少しリンクするところがあると感じていました。ぼくの声やしゃべり方に対するアンチだったり、めんどくさいところにむかついていたり。そんなところも、尾崎さんは言葉選びが面白い人なので、すごくいい歌詞を書いてくれるんじゃないかなって。本来は、あまり人に歌詞をまるまる書いてもらうことはないんです。でも、今回は全部やってほしくて、頼みました。学生時代からの経験や感情みたいな自分のいままでの経験や、昔書いていたブログなども、こんなに資料はいらないよというものも、尾崎さんに渡して曲を作ってもらいました。――仕上がった曲を聴いてみていかがでしたか。本当に自分のことを書いてくれてるなって思いましたし、すごく救われました。この曲を歌える、自分が持てる武器なんだと思うと、すごい贈り物をくださったなと。ぼくと向き合って生まれた歌詞になっています。――11月25日に全国公開された映画『メイヘムガールズ』の主題歌として、anoさんが書き下ろされた曲「ンーィテンブセ」がいまスクリーンを彩っていますね。そうなんです。音楽家のANCHOR(アンカー)さんの作業スタジオに入って、一緒に曲を作っていきました。ANCHORさんがピアノを弾いてくれたり、ぼくが「こういうメロディは入れられないですか?」と提案したり。そうやって作っていきましたが、ソロでは初めての作り方でした。若い方がより共感していただけるような歌詞になっているんですが、毎日同じような生活を繰り返す大人の方にも共感してもらえるところはあるんじゃないかな。世の中は見えないものも多くあって、毎日同じことの繰り返しで、行ったり来たりしている人もいると思うんです。そういうなかで、気づいたら自分の心が限界で、自分を見失って生きてしまっている人たちが聴いてくれたらいいなって。大人になってしまうのはどうしようもないことですが、それでも世間に揉まれて自分を見失わず、あなたはあなたらしく生きてほしい、自分らしくいてと歌っています。――リリースが続きますが、今後はソロのライブツアーのご予定はありますか。やりたいですね。ソロでもツアーはやったことがなくて、コロナ禍でライブができない期間もありましたし、実際まだできていないので実現しないとなって。ファンの方もライブをめちゃめちゃ待ってくれているので、来年は実現できるようにがんばりたいです。「ano」の世界観をたくさんの人に知ってもらいたい――テレビなどでもご活躍を拝見していますが、『水曜日のダウンタウン』(TBS系 毎週水曜 午後10時)と『ラヴィット』(同局 毎週月〜金曜 午前8時)の合体企画で、大喜利芸人さんが遠隔操作する内容の際、あのさんのパフォーマンスに感嘆しました。バラエティ番組やお笑い芸人さんとの相性がとても良いように感じられます。バラエティと合っているのかどうか自覚はないんですが、なんでぼくにオファーが来たのかをまず考えて、そのときどきにできる限りのことをしているだけなんです。音楽活動をするとき、テレビ番組に出演するとき、モデル活動のときなど、意識して分けているわけではなくて。それぞれ求められることが違うので、そのときに対応しようとする自分が自然と出ている感じですね。――期待に応えようとがんばるという?たとえば『水曜日〜』の企画だったら、単純に「面白そうだな」って。でも、オファーがあるからといってなんでもやるわけではありません。いままでは誰にも期待されていないと思っていたので、期待に応えようもなかったんです。あの企画にはそうそうたる芸人さんがいましたし、生放送ですし、ちょっとでも間違ったことを言ってしまったらどうしようというプレッシャーはありましたね。でも、そんな感じで楽しんでいました。――ananwebの取材用に、あのさんご自身でメイクされて、衣装も決めていらっしゃったそうでありがとうございます。こだわりのメイクやお気に入りのファッションはありますか?できる限り、メイクはいつも服装に合わせています。今日は衣装が淡いから、いつもよりはガーリーな感じなので、なるべくリップの色も薄めにしていて。メイクや服は毎日違う系統を着るので、こだわりといえば、その日着たい服を着ることぐらい。逆に、“こういう服しか着ない”と、そこで自己表現をする人も多いと思うんです。でも、ぼくはわりとなんでも着て、それを自己流にすることが好き。ガーリーな服にスポーツブランドを合わせたり、羽織にロリータのブラウスを合わせたり。全部が違うジャンルだけど、毎日着たいものは違いますし、そのなかで遊ぶのが好きなんです。毎回「印象が違う」と言われるんですが、「それでいいや」って。自分を持っていれば、服が違っても、ブレなければいいと思っています。――とても華奢なあのさんですが、普段の食生活のご様子や美容法などはありますか。やっぱり、代謝も上がって健康にいいというところでは、お水をいっぱい飲んでいます。もともと炭酸水やジュースが苦手で、必然的に水をよく飲むから好きなんですよね。食事はすごく偏食家で、白米があまり好きではなく(笑)。前に偶然オートミールを食べたら、白米より好きな味だったんですよ。だから気に入ってオートミールをずっと食べていたら、実は食物繊維も豊富で、ダイエット食品としても使われていると知って、ラッキーって(笑)。肉ではササミが好きなんですが、自然とヘルシーなものなんですよね。でももともと偏食しがちなので、ドーナツを食べたいと思ったら1か月ずっとドーナツを食べ続けたり、一度に3つも4つも食べたりするので、意識していることがわりと少ないかな。好きなものを食べて、これで健康になれるんだったらいいなって思います。あとは、なるべくお化粧しない時間を作っていますね。肌が荒れやすくて、敏感肌なので、極力お仕事以外の時間は、メイクを落としています。――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。ライブがしたいのはもちろんですが、「ano」としての世界観をもっとたくさんの人に知ってもらいたいですね。それこそバラエティをやらせてもらうようないろいろな経験を積みながら、得たものを音楽と融合できたらいいなと。今後、自分のなかに蓄えたものをエンタメとして表現できたら、もっと世界が広がるな、面白そうだなって思います。取材後記儚げな印象もある、あのさんは、エンターテインメントの場にとてもしっくりくる逸材として、存在感を発揮していますよね。テレビウォッチャーでもあり、ダウンタウンが好きな筆者は、バラエティ番組での、あのさんの爆発力に魅了されています。今回はananwebでの「ano」さんの音楽活動についての取材ということで、音楽的なルーツから新曲への想いまでうかがうことができました。“自分”というものをしっかりと持つキュートなanoさんの新曲をみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。写真・北尾渉取材、文・かわむらあみりanoPROFILE2020年9月より「ano」名義でソロアーティストとして音楽活動を開始。2022年4月、アニメ『TIGER & BUNNY 2』(Netflix)のエンディングテーマ「AIDA」でメジャーデビュー。ソロ活動以外にも、4人組バンド「I’s」のボーカル&ギターとしても活動中。10月に「普変」、11月に「ちゅ、多様性。」を配信リリース。音楽活動のほか、タレント、女優、モデルとマルチに活躍中。InformationNew Release「ちゅ、多様性。」2022年11月23日配信写真・北尾渉 取材、文・かわむらあみり
2022年12月05日【音楽通信】第127回目に登場するのは、数々の傑作を世に送り出し、結成34年のいまもなおライブや楽曲制作にと活躍しているバイタリティあふれるロックバンド、真心ブラザーズ!大学の音楽サークルで出会って結成【音楽通信】vol.1271989年に結成された、YO-KINGさんと桜井秀俊さんからなるロックバンド、真心ブラザーズ。高校野球の応援歌としても知られる「どか〜ん」や夏の名曲「サマー・ヌード」、インパクトのある「拝啓、ジョン・レノン」といった数々の傑作を世に送り出しています。デビュー34年目となるいまもなお、ライブや楽曲制作など、精力的な活動を展開している真心ブラザーズが、2022年10月26日にニューアルバム『TODAY』をリリース。音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――おふたりが小さい頃や学生時代は、どんな音楽を聴いていましたか。YO-KING小さい頃は、フォークソングを聴いていました。ニューミュージックやフォークソングと言われる音楽が、当時はまだテレビの歌番組『ザ・ベストテン』などから耳に入ってきたんですよね。歌番組から音楽を好きになっていって、その後、自分でも吉田拓郎さんやボブ・ディラン、ザ・ビートルズ、ザ・ローリング・ストーンズといった洋楽も聴くようになりました。桜井僕もやっぱり『ザ・ベストテン』をよく観ていて、日本のヒット曲を聴いていて。実家が神奈川県にあるんですが、テレビ神奈川がアメリカのビルボードチャートの音楽を紹介する番組をやっていて、その頃はまだ珍しかったミュージックビデオを流し始めて、洋楽のヒット曲を知るようになりました。――1989年には、大学の音楽サークルで真心ブラザーズを結成されましたね。桜井そうです。YO-KING先輩は一歳年上の先輩でした。音楽サークルに入ったときは、すでにYO-KINGさんは同じ学年の人たちとロックンロールバンドをやっていて、僕も同い年同士でニューウェーブサウンドを主体としたバンドをやっていて。全然毛色の違う音楽をやっていたんですが、ある番組に出演するためにYO-KING先輩を誘いました。――大学生のときに、おふたりでフジテレビ系バラエティ番組『パラダイスGoGo!!』(1989〜1990年放送)のコーナー「勝ち抜きフォーク合戦」で10週連続勝ち抜き、同年9月にシングル「うみ」でメジャーデビューされました。桜井当時はフォークをやっているのは古い人という印象で、いまどきフォークをやっている人たち同士を対戦させるなんて、と思われるぐらいちょっと珍しい企画でしたね。でも、勝ち抜けばデビューできるというこの番組の企画はおもしろい。僕は音楽サークルの幹事長をやっていて、ある日、自宅にこの番組の担当者から電話がかかってきて、企画出演のオファーを受けたんです。サークルではYO-KING先輩がフォークに詳しかったので誘って。実際、10周勝ち抜けるぐらい強かったんですよ。審査員の先生方がフォーク界の大御所の方々だったので、ビシビシと心に刺さるものがあったんでしょうね。YO-KING 確かに。かまやつひろしさんも審査員でしたが、かまやつさんはロックもフォークもお好きな方で、最高の方です。あの番組でかまやつさんにお会いできたのは大きかったです。全然偉そうにしない方。いまも尊敬しています。――番組出演をした学生時代からデビュー34年となった現在まで、マインドは変わっていらっしゃらないように見受けられますが、変わったこと、変わらないことはありますか。YO-KINGシロウトっぽいところは変わっていないかもしれない。自分なりにあるにはあるんですが、プロ意識はそんなにないというか。けっこう、自分が変人なんだな、ということを最近ようやく認めるようになってきました(笑)。変、というか個性が強いほうが、芸術の世界は楽ですよね。変な人って、自分で普通だと思わないから、まさに俺のことかも。桜井僕もアマチュア感覚を失わないところは、変わっていないですね。要するに、「バンドをやるのが楽しい!」というような気持ち。いろいろな遊びがありますが、ギターにアンプをつなげて「おお!」と燃える気持ちはびっくりするぐらい昔もいまも変わらないです。年月を経ても、音楽をやっている楽しみやモチベーションはそのままですから。変わったことといえば、昔は、バンドメンバーやその仲間だけにウケる音楽を届けようと思っていたところがありました。でもいまは、もうちょっと向こう側に、世の中と自分の間にある窓のようなものに音楽が鳴っているようなイメージがあって。「これだともっとみんなとコミュニケーションがとれるかな?」という気持ちで音楽を届けているので、それをプロ意識と呼ぶとしたら、やっとプロになりました。ただ、そこに音楽作りにマーケティングが必要だとか数字がどうこうとか言われてしまうと、「それはできません、無理です」となります(笑)。「明るく、楽しく生きようね」という新作YO-KING(ヨーキング/Vocal, Guitar)。1967年7月14日生まれ。――2022年10月26日、18枚目のアルバム『TODAY』をリリースされました。YO-KING 『TODAY』は、「明るく、楽しく生きようね」というアルバム。コロナ禍になって、いろいろと大変な2、3年でしたが、「これからはどんどんよくなるぞ!」という思いを込めた作品です。桜井前作は2年前にリリースした『Cheer』というアルバムで、そのときはコロナ禍が始まってどうなるんだ? という空気の中で、意識して気分を上げていこうという気持ちで作ったもので、満足いく作品ができました。そこから2年を経て、ごく当たり前に「愛」や「自由」を言いたくなって。自分が自由でいたいほど、人の自由も思いやらないと嘘になります。それこそ、愛がすべてじゃないかなと。バブルの頃にはまったく思わなかったような世界の動きだと、こういった心情に気づくこともあるから。そういったことを音楽に込めて、みんながちょっとでも、楽しくなるきっかけになればと作りました。――アルバムのリード曲でもある1曲目はロックサウンドの「一触即発」ですが、YO-KINGさんはどのようなイメージで作られましたか。YO-KING これは最後に作った曲で、アルバムのリード曲になるようなポップでキャッチーなロックンロールです。自分の中からひねり出した曲。できてよかったです。――桜井さんが作った3曲目「群衆」はジャズのようで大人っぽい曲です。桜井この曲は、梅雨時にやっていられない気持ちと、どこに着地していいかわからない気持ちを表しています。歌詞には天気のことを書いていますが、天気に限らず、世の中も下げ止まりはあるのか。正しいか正しくないかはわからないけれど、そこに抗うのではなく、流れるか逃げるかという、弱音を吐いている曲ですね。――ピースフルな4曲目「LOVE IS FREE」は、YO-KINGさんが高らかに愛を歌っていますね。YO-KING愛って、やっぱりあるとお得なんです。得というのは、愛を感じて生きると楽ですから、それを歌いたいと思ったんですよね。愛の量と、幸福の量は、比例するんじゃないかと歌った実験作です。――この曲はシンガーソングライターの江沼郁弥さんが、トラックメイクからミキシングまでを担っていますね。YO-KING江沼くんは音楽先行でなく、同じサウナ好きという、プライベートでのつながりから、この曲を一緒にやることにしました(笑)。桜井これだけ長くやっていると、プライベートで出会う人も、仕事にもつながりやすいというか。大人になってから、先入観なしに相手をリスペクトできるようになりましたね。20代の頃は、世代もあるかもしれないですが、僕らの頃はバンド同士があまり仲が良くなかったんですよね。「音を憎んで人を憎まず」という言葉をレピッシュというバンドも言っていましたが、他のバンドの音楽は嫌いだけど、居酒屋とかで遭遇したらワイワイ飲むというような時代だったんです。2000年頃からはフェスというものが行われるようになって、リハもできないですし裸の状態でさらけだしていくような感じで。だからこそバックヤードでは、いろいろなバンドと交流するようになって「おもしろいな」と仲良くなって。それ以前と以降では、意識も少し違ってきました。――いまは近い距離の方々との制作が心地いいのですね。桜井勝手知ったる仲間たちもそうですし、何十年も前から知っているけれど、じっくり話したのは初めてでいまになって意気投合した人もいて。大人になると、そういったことも楽しいです。――しっとりと染みる7曲目「雨」は、WONK、millennium paradeのキーボーディストであり、King Gnuのサポートなどでも活躍中の江﨑文武さんによるピアノ伴奏一発録りだそうですね。YO-KINGそう。江崎くんも、一緒にご飯を食べていたときに「いつかなんか一緒に作ろうよ」という話をしていて、今回こういう形になりました。「雨」が仕上がって聴いてみると、素敵な曲だと思いましたね。歌も一緒に録ったんですが、歌っていて、気持ちよかった。いままでずっと音楽をやってきて、これまで組んだいろいろな鍵盤弾きの方も素晴らしかったですが、また素晴らしい人と出会えたなって。一人ひとり、弾き方も違って、みんな個性があります。桜井ピアノは、ギター以上に「同じ楽器なのに弾く人でこんなに違うんだな」と感じますね。桜井秀俊。(サクライヒデトシ/Vocal, Guitar)。1968年6月6日生まれ。――桜井さんが作った6曲目「Boy」は、おふたりのツインボーカルに惹きつけられますが、最初からふたりで歌う曲として作ったのでしょうか。桜井いえいえ、まったく。YO-KINGさん単独の歌でお願いしようと思っていたんですが、入り口のメロディが複雑だから、僕が仮歌を録音して聴いてもらっていて。すると、ボーカル録りの日に「この曲は桜井の歌から始めたほうがおもしろいんじゃないか?」という提案をされて、考えてもいなかったのでびっくりしましたが(笑)、こうなりました。――ラストを飾る10曲目は、『種から植えるTV』(テレビ東京系 毎週日曜 11:55)のテーマソングにもなっている「白い紙飛行機」です。桜井アルバムを作る前にオファーをいただいて、書き下ろしました。番組は、アンジャッシュの児嶋一哉さんがパーソナリティで、毎週農家さんから種をもらって、自分の畑を作っていこうという内容の企画なので、そういう曲にしようと思って。だから、この曲だけ、けっこう明るい。でも、アルバムのラストを飾ったことで、それまであった憂いを踏まえながら、ちょっと遠くまで連れていってくれるような明るさが出せました。こういうことがあるから、バンドを長くやっているとおもしろいです。YO-KINGこの曲が最後にきて、アルバムが明るく終わっているのが、すごくよかったですね。――おふたりでいつもどのように選曲されているのですか。桜井おたがいに曲を持ち寄っています。今回の場合、2月ぐらいから曲を出し合って。たとえば「Boy」は初期の段階でできていて、「これいい曲だから本番もレコーディングしようか」という話になったり。完成したアルバムは少し憂いのある感じで、この2年の影や移り変わる感じもあって、全体のテーマが浮かび上がってくると、録音予定だったけれどその要素がないものはテーマが濁るからよけたり、他の合う曲を入れたり。最終的に、1曲目「一触即発」のような曲ができて、「だるまに目が入ったぜ!」とうれしくて(笑)。完成できるかというスリルもあったんですが、ぎりぎりで目玉が入るというような流れがいつにも増してありました。今回は、さらに江﨑さんなど人との出会いやタイミングも合致して、人智を超えた流れができた、いいものができました。そこが、共同作業でやる芸術、創作物の楽しいところですね。YO-KINGこうして完成したアルバムを聴いてくれた人の心が、少しでも軽くなればいいなって思っています。――2022年11月から2023年1月まで『真心ブラザーズ ライブ・ツアー「FRONTIER」』と題した全国ツアーを開催されます。どのようなステージになりますか。桜井バンドメンバーが、サンコンJr(ウルフルズ)ら旧知の仲の、何も言わずともいいサウンドを出してくれる仲間です。昨年は「ORDINARY」というツアーをやって、世の中“ORDINARY=通常”じゃないところをあえてそう題して、自分たちのギアを上げました。そして今回の「FRONTIER」は、より昨年にも増して、ライブで味わう音楽時間は楽しいよね、という気持ちを取り戻そうという意味があって。トリッキーなことをやるというよりは、久しぶりに友達と会ってお酒を飲んで盛り上がるような、「やっぱりこうだよね!」という楽しさを取り戻す時間になったらいいなと思っています。これからも元気に音楽をやっていきたい――普段のご様子もうかがいます。最近ハマっていることや趣味はありますか。YO-KING公園に行ったり、自転車に乗ったりしていますね。電動付きの自転車、最高ですよ。自転車で東京の街を走っていると、いろいろと気づくこともあって。ある建物の前を通ったら、自転車のレーンがあって、車の駐車スペースがあって、車道があってと道路が整備されていて、ついに日本もここまで来たんだと。桜井ああ、自転車に配慮されていない場所だと、自転車レーンに車を駐車されることもあるから、ほんと怖いもんね?YO-KINGうん。そうやって今後も東京が自転車乗りにやさしい街になったらうれしいですね。――自転車で一番遠いところはどこまで行かれましたか?YO-KING家から10キロまでの距離を目安にしています。今日はこの取材のあと移動があるから自転車には乗ってきませんでしたが、10キロ以内なら、いつも自転車ですね。自転車とランニングは、有酸素運動でもあるから脳にいいです。桜井僕は以前から料理をするのが好きなんですが、コロナ禍のこの2年でさらに好きになりました。僕は左利きなので、和包丁だと使えないんですよ、片刃だから。でも2年半前ぐらいに京都へ行ったときに、「有次(ありつぐ)」という京都錦市場商店街にある刃物屋さんに、左利き用の三寸ぐらいの出刃包丁があって。さっそく買って、名前も入れてもらいました。そして魚が充実している「ビッグヨーサン」という素晴らしいスーパーで魚を買ってきて、その包丁で魚をさばくのが、趣味になってきました。僕が料理したものは家族に出しています。魚があまったら、刺身はヅケにして、酒飲みなのでつまみにしていますね。――おふたりともに健康面において、普段から意識されていることはありますか。YO-KINGたとえば「早寝早起き」と言いますが、あれはウソで、「早起き早寝」なんですよ。早起きするから、早く深く寝られる(笑)。次の日何をするのかによって変わりますが、一度明け方に起きてしまうと、僕は寝ませんね(笑)。今日も朝の5時15分に起きました。朝、いいですよ〜、気持ちいい。暗いうちから起きて、日の出の時間を過ごすこともすごく好きです。早起きすると、午前中は自分の能力が高くなるのもいいところ。午後に30分かかる作業が、午前中だと15分でできるというデータもあるらしくて。となると、午後で何かをやる2時間は、午前中の1時間なわけで、人生でいうと時間の価値がすごく高くなりますよね。朝活って、理にかなっている。ただ、仕事柄、いつも早く起きられないときもあるんですが、そんないろいろな毎日があるほうが、僕は好きです。今日の集合場所はここです、明日はここです、というような変化があって。性格的にひとつのことに決められているよりも、そういった臨機応変な毎日が心地いい。桜井僕はよく歩くようにしています。毎日歩いていて、以前は1日平均7キロ歩いていたんですが、そうすると1日の中で歩く割合がかなり高くなってきて(笑)、それはちょっと多いかなあと。早歩きして歩く時間を狭めるべきなのか、といまはいろいろと考えながら歩いています。――いろいろなお話をありがとうございました! では最後に、今後の抱負をお聞かせください。YO-KINGオシャレになりたいですね(笑)。あと、スターになりたい。もっと、モテたいですね。――真心ブラザーズとしてですか?YO-KINGいや、個人的に(笑)。まあ、真心でもモテるに越したことはないですけど。モテたほうが楽しいじゃないですか、人生。嫌われるよりね。桜井ananwebに出たといえば、モテ要素になるんじゃないですか!?YO-KINGそうだね。『anan』といえば、「抱かれたい男」だ(笑)!桜井これからも元気に音楽をやっていければ、それだけでいいですね(笑)。ライブなどの音楽の現場もコロナ禍前の状態に戻りつつありますが、まだ制約は続いているので、今年はなんとか乗り切って、来年はもうちょっとのびのびとやらせてよという願いはあります。自分たちよりも、お客さんに楽しんでもらえたらいいなと。YO-KING最後に、真心としての抱負は……モテたほうがいいですよね(笑)? モテて、人気者になって、「楽しそうだな」って思われる人になりたいですね。取材後記日本のロックシーンになくてはならない存在のYO-KINGさん、桜井秀俊さんからなる、真心ブラザーズ。ananwebの取材では、和やかな雰囲気のなか、おふたりとも真摯にインタビューに応えてくださいました。これからのご活躍も楽しみです。そんな真心ブラザーズのニューアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみり真心ブラザーズPROFILE1989年、大学在学中に音楽サークルの先輩YO-KINGと後輩桜井秀俊で結成。バラエティ番組内のフォークソング合戦企画にて見事10週連続を勝ち抜き、同年9月にメジャー・デビュー。2014年、真心ブラザーズのレーベル「Do Thing Recordings」を設立。また、自身のバンドのほか、YO-KINGはメンバー全員フロントマンのドリームバンド「カーリングシトーンズ」のメンバーとして、 桜井はアーティストへの楽曲提供やサウンドプロデュース、サポートギタリストとして、それぞれのフィールドでも活躍中。2022年10月26日、ニューアルバム『TODAY』をリリース。11月から2023年1月までは、『真心ブラザーズ ライブ・ツアー「FRONTIER」』で全国をまわる。InformationNew Release『TODAY』(収録曲)01. 一触即発02. 君がすべてだったよ03. 群衆04. LOVE IS FREE05. 破壊06. Boy07. 雨08. ブレブレ09. うたたね10. 白い紙飛行機2022年10月26日発売COCP-41887(CD)¥3,300(税込)取材、文・かわむらあみり
2022年11月04日【音楽通信】第126回目に登場するのは、唯一無二の存在として、デビュー31年目を迎えてもなお輝き続ける、ミュージシャンのCharaさん!音楽との出会いは、幼稚園での伴奏体験【音楽通信】vol.1261991年のデビュー以降、オリジナリティあふれる楽曲や一度聴いたら忘れられないスウィートなウィスパーボイスで、圧倒的な存在感を放ち続けている、Charaさん。1996年には、女優として出演した岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』が公開され、日本アカデミー賞の主演女優優秀賞を受賞。劇中のバンドYEN TOWN BANDのボーカルとして参加した主題歌「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」、翌年に発表したアルバム『Junior Sweet』は連続してオリコン1位のミリオンセラーを記録し大ヒットしました。この頃からファッション、ライフスタイルを含めた新しい女性像としての人気も獲得し、音楽活動においてはデビューより一貫した音楽的探求を続け、各時代を担う気鋭のアーティスト、クリエーターとのコラボレーション作品や活動が数多いことでも知られています。ずっと“愛”をテーマに曲を作り、わたしたちに素敵な歌声を届けてくれるCharaさん。2021年にデビュー30周年を迎え、2022年11月1日にシングル「A・O・U」をリリースされるということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。――Charaさんが音楽に出会ったきっかけから教えてください。わたしが「これは音楽に出会った」と明確に記憶している出来事があって、それは幼稚園のときのことでした。その頃はまだ音楽を習っていなかったですし、家にも楽器が無かったんですが、幼稚園のうさぎ組さんの教室に足踏みオルガンがあって。担任の先生が演奏してくださって、みんなでお歌を歌うんです。毎日歌う曲があって、帰る前に行う、さよならの会のときに「今日はこ〜れ〜でおわかれし〜ま〜しょ さよなら〜さよなら〜」(と実際に歌ってくださるCharaさん)という少しバロック調の歌があるんですが、毎日聴いているから耳で覚えていました。あるとき、休み時間にふと先生に「これ弾いていいですか?」と聞いた記憶があって。その後「先生の代わりに伴奏してくれる?」と言われたんです。いきなり先生に言われてドキドキしましたが、やってみました。毎日歌っている曲だから、いつも通りに大きなお口を開けてみんなで歌ってくれて。その伴奏をしたのが、わたしの音楽との出会いですね。そのときから、楽器ができると人の役にも立つし、コミュニケーションツールとして役に立ってくれたと感じて、いまでも楽しかったなあと思い出します。――幼稚園でみんなの伴奏をしたのは、楽器を習う前ですものね?全然前です。それまでは家にも紙の鍵盤しかなかったぐらいですから、要はイメージトレーニングですよ(笑)。それが役に立って、楽器を習っていないのに、耳で聴いた感覚だけでピアノが弾けたのかな。小さいときは音楽的に恵まれた環境じゃなかったからこそ、自分なりに独特な発想で何かを作り出そうとするようになったのかもしれませんね。――その後、実際に楽器を習うようになったのですね。幼稚園に付いているヤマハの音楽教室があったんです。仲良しのかすみちゃんが習っていて、一緒にいたいから、初めてお母さんに「わたしも行きたい」と頼んで音楽教室に通うようになって。そこは「先生が最初のフレーズを出すから続きを作っておいで」と、作曲の宿題が出る専門的な教室でした。――では、いつ頃から音楽の道を目指されましたか。最初に目指したのは、作家なんです。もともと作曲することが好きだから。高校生の頃からバンドをやっていましたが、歌ではなく、キーボードを担当していました。19歳ぐらいのときに、ソニーで新人を発掘する部署の方から、「ソロでやらない?」と歌うことを勧められてやってみたんです。――もともと歌の才能もあったからこそのデビューですね。この話を聞くとそう思いますよね?でも、そのときにできることを一生懸命やっていたら、未来につながるよと言いたい。まず才能は、自分を信じる力だと思うんですよね。わたしのデビューが決まったのは、レコード会社の偉い人が来て、その人のOKが出るとデビューできるらしいという「プレゼンライブ」でした。歌が下手で、うまく歌うことはもう諦めて、ライブではすごく踊っていたんです。「歌はだめだけど、全身でがんばる!」みたいな(笑)。ステージに立ったら、頭からつま先まで、全身で見せられるから。客席には白髪頭のおじさまが一番前にいらっしゃって、すごく踊っていて、その方の前に行ってグイグイわたしも踊って。あとでわかったのは、そのおじさまがレコード会社の一番偉い方で、言われた言葉が「歌はまだまだだけど、踊りがいいから」って。そのときは歌ではなく踊りをがんばったわけなんですが、それでデビューが決まったから、なんでもできることを最大限やるといいかなと。わかる人は、原石の状態でも見抜くんだと思うんですよね。――すごいお話です。そうして1991年9月にシングル「Heaven」でメジャーデビューされてから30周年を超え、現在31年目となりました。小さいときから何事もがんばりたいタイプなので、31年目にしてそういう積み重ねてきた「あきらめないでやってみる」という筋肉がしっかりとついているんです。その部分はずっと変わらず、そしてイメージすることも大事にしてきていて。たとえば子どものお誕生日会でも「おいしいって言ってくれるかな?」と、お母さんたちが子どもが喜んでくれるメニューを考えることにも似ているというか。「どうやっておもてなししようかな」という、サプライズを考える繰り返しが生活だから。わたしたちの音楽の仕事も、ステージでおもてなしをする要素がとても多いです。いまはコロナ禍でライブをすること自体が貴重なこともあって、より一層、毎回ライブでそういうことを考えるのが好きになりました。でもそれは日常生活でも好きなことなので、普段から、おもてなし筋肉がついてきているから、それがどんなことか知りたい方がいたらぜひ一度、ライブに来てください(笑)。ニューシングルも恋と愛にまつわるお話――2022年11月1日に、レコード会社を日本コロムビアに移籍しての第1弾シングル「A・O・U(エーオーユー)」をリリースされますね。そうなんです。これまで恋の歌や愛の歌しか歌っていないですが、わたしの中にないものは歌えないので、今回も恋と愛にまつわるお話。わたしが日常的に植物からパワーをもらっていることもあって、永久凍土の中に眠っていた約3万年前の植物の種から花が咲いたというニュースに興味を持って、「その花、うちでも咲かないかな?」って。それにインスパイアされて、わたしも不思議と突然お花が蘇って咲いたような気持ちにリンクして、勝手に涙が出た日があったんです。わたしの個人的な愛にまつわるお話と、そのインスパイアされたお花に合わせて、歌詞も書きました。タイトル「A・O・U」は、歌詞にもある“all of you”の訳です。あなた方すべてに、というような意味ですが、デモ曲ができたときすでに「all of you」と口ずさんでいて、いいなあって仮でタイトルをつけていたぐらい。最終的に「A・O・U」にしました。――今作は以前から制作でご一緒されることもある、ドラマーでもありシンガーでもあるmabanua(マバヌア)さんがサウンドプロデュースされていますね。mabanuaさんとは付き合いが長くて。彼がいまのように名プロデューサーになる以前のインディーズの頃からで、自分のアルバムを持ってスタジオに挨拶に来てくれたこともあって。彼のアルバムを聴いたら素晴らしくて、すぐ連絡をとりました。2010年ぐらいからの知り合いで、2011年にはわたしのアルバム『Dark Candy』を一緒に作っています。もうわたしの独特の曲作りの仕方にも慣れてきたんじゃないかな。Charaの作ったデモ曲の良いところをサウンドプロデューサーとして遠慮せずに出してくれるミュージシャンなので、やりやすいですね。――信頼されている感じが音からも伝わります。mabanuaさんは良き理解者なんです。知り合ったときから、素晴らしく成長していますね。――「A・O・U」は現在放送中のドラマ『最果てから、徒歩5分』(BSテレ東 毎週土曜 午後9時)の主題歌にもなっていますが、書き下ろしではなかったそうですね。曲ができたあとから、選んでいただきました。もしも主題歌にと意識していたら、また違った曲になったはず。でも、それで使ってもらえるのが美しいかたちかなって。実際、ドラマにも合っていたので良かったです。――カップリング曲「面影」は、しっとりと心地よいミディアムナンバーですね。Charaさんのライブでコーラスも担当されることのあるシンガーの竹本健一さんとの共作で、大橋トリオさんが演奏とサウンドプロデュースを担当されています。最近のライブステージでは、ほぼ竹本さんがコーラスとして、わたしの声に寄り添ってくださることが多いです。良き理解者になると、一緒に曲を作りたいんですよ。曲を作ってこそ、ミュージシャン同士の親友になれるというタイプなので、わたし。この曲は、最初から「面影」というタイトルをつけたくて、ピアノで作りました。そこでピアノに関して、アコースティックさにもエレクトリックピアノにもソウルにも理解があって、高度なアレンジが得意な人って誰だといったら、大橋さんしかいない。大橋さんも、mabanuaさんも、楽器を演奏されるので、ご自身のグルーヴもあって。もともと「A・O・U」も「面影」も春ぐらいに出したいと思っていたんです。でも、コロナ禍の制限もありますし、おふたりとも忙しいからスケジュール待ちもあって、いまのタイミングに。どちらも、昨年、レーベル移籍用に作ったデモの中に入っていた曲です。――「面影」で、Charaさんが「積み積み積みあげて」と歌われるところも好きです。とぅみ、とぅみ〜と聴こえるところでしょ(笑)? そういう、詞をリズムに乗せるやり方が、わたしらしさ。オノマトペもすごく好きですし、同じ言葉を繰り返したり、印象的になったりする歌詞が好き。フラットだけど、メロディに抑揚をつけていくのがけっこう好きで、ああなっちゃうんですよね。――いつも曲作りはどのようにされているのですか。どんな状況でも作ります。ただ、オンオフがあって、作るモードに入るかどうか、何を意識するかどうか。お題が出たらそれを意識したりもします。音楽に嫌われないよう何歳になっても勉強したい――最近は、阿部寛さん主演のディズニープラス「スター」日本初オリジナルドラマシリーズ『すべて忘れてしまうから』に、映像作品としては映画『スワロウテイル』以来26年ぶりにご出演されていますね。以前そのドラマインタビューもさせていただきましたが、配信後の反響はありましたか。ドラマのプロモーションでイベントを開催したときは、インスタやCharaのモバイルファンサイトに、ファンの方が書き込みや生チャットで感想を言ってくれましたね。基本的には、SNSでもエゴサーチとかしないからわからないんですが、気にしていたら生きていけないかもしれないから気にしない(笑)。ドラマでは、毎話別のアーティストがそれぞれ異なる曲をライブで披露しますが、わたしも5話では役の「カオル」として歌って、今後Charaとしても歌います。――ドラマも楽しみです! では普段のご様子もお聞かせください。おうちではどのようにお過ごしですか。家にいるとすごく忙しいです。主婦って、掃除とか、やろうと思えば限りなくやることがありますよね。この時期、寒くなったから、衣替えも大変。昨日は秋の風をベッドルームにいても感じられるようにと、風の流れを考えてベッドの位置をずらすうちに、部屋の模様替えになって(笑)。わりと内側から整理しようとするタイプなんです。家の掃除に限らず、なんでも表面的なところよりも、内側から整える。最近はキッチンに新しい調理道具をそろえて、包丁も錆びないようにと磨いたり。昔は全然そんなこと気にしませんでしたが(笑)、錆びを拭くのは自分の成長ですね。毎日、花もいけています。――Instagramにときどきワンちゃんが登場しますね。「モジョ」という犬とふたり暮らしをしています。2014年に我が家にやってきまして、もう9歳。おじさん犬です。――とても小さいので、見るとまだ赤ちゃんのような愛くるしさですよね!?だから、ちっちゃいおじさんをいつも抱っこしているんですよ(笑)。――ちっちゃいおじさん、可愛いですね(笑)。以前は娘さん(女優のSUMIREさん)と息子さん(俳優の佐藤緋美さん)も一緒に暮らしていたときは、育児や家事、仕事との両立で大変ではなかったですか。子どもが小さいときは、まだ体力あったから、なんとかやっていました。アーティストって、ひらめいたときに曲作りをやりたいんですが、時間的にはそうもいかない時期もあって。子どもが泣いていると子ども優先になるから、何時から何時はChara、帰ってきたらメインは子どものママって、仕事の時間の使い方を分けましたね。でも、音楽が好きだし楽器が好きだから、子どもと遊ぶのに楽器を使うこともあって。一緒に音楽を聴くときはお母さんのCharaの選曲で、本を読むテンポやリズム感もCharaっぽいかも。まあ、普通のお母さんですよ。――ファッションアイコンとしても輝くCharaさんですが、ファッションのこだわりはありますか。チクチクする素材が苦手なんですよね、かゆくなっちゃうから。買いに行くときは触って確かめますし、仕事でスタイリストさんがいるときは、一緒に洋服を見て最新のものを買います。アップデートするのはきらいじゃないので、ストリートカジュアルも取り入れて。若い人が着るブランドだからおばちゃんは着ちゃいけないとかは、わたしの中にまったくなくて。それは着たら恥ずかしいという、似合わないわたしになる前に、好きな洋服を着られる自分でいるように、多少は体型にも気をつけますけどね。洋服が好きだから。ヴィンテージクローズがけっこう好きです。60年代や70年代のデザインはやっぱり好きですね。新しいものにも、古いものにインスパイアされて作っているデザイナーさんもいますしね。――いろいろなお話をありがとうございました! では最後に、今後の抱負をお聞かせください。好きでたまらない音楽から嫌われないように、何歳になっても、勉強したいです。もっと知りたいという気持ちがあるのは、ありがたいこと。だから抱負もたくさんあるんですが、あまりいろいろな街へコンサートに行けていないので、小編成やひとりでやるといったさまざまなスタイルでやってみたいですね。人生でやっていないこともまだあるので、着実にできることに向かって、いまリサーチ中です。あとは、みんなが「Chara、良かったねー!」って言ってもらえるような恋とか、結婚とかがあるのかも(笑)!? 『anan』にもときどき載っている占い師のルーシー・グリーンさんに、この間、友達と一緒にタロットで占ってもらう機会がありました。みんな「11月以降に出会いがある」って。「3月以降もまたいい感じです」って言われたから、今後が楽しみです(笑)。取材後記ひとりのミュージシャンとしても、女性としても、母としても、多くの女性が憧れる存在のCharaさん。ananwebの取材では、今回リモートインタビューをさせていただきましたが、画面に映るCharaさんがユラユラ揺れるときがあって「ごめんね、椅子がすごい揺れて(笑)。体幹を鍛える揺れる椅子で、テーブルは卓球台なんだよね(笑)」と、おしゃれな椅子と家具を画面で見せてくれるCharaさんがとっても可愛くて、楽しい時間を過ごさせていただきました。そんなCharaさんのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね!取材、文・かわむらあみりChara PROFILE1991年9月、シングル「Heaven」でデビュー。1992年の2nd アルバム『SOUL KISS』では、日本レコード大賞ポップ、ロック部門のアルバム・ニューアーティスト賞を受賞。1996年には、女優として出演した岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』が公開され、「第20回日本アカデミー賞」主演女優優秀賞を受賞。劇中のバンドYEN TOWN BANDのボーカルとして参加した主題歌「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」、1997年のアルバム『Junior Sweet』と連続してオリコン1位のミリオンセラーを記録し大ヒットする。2019年、THE MILLENNIUM PARADEのシングル「Stay!!!」ではボーカルを担当。2018年12月、オリジナルアルバム『Baby Bump』をリリース。2020年2月にはYUKIとのユニット「Chara +YUKI(チャラユキ)」名義でミニアルバム『echo』をリリース。2021年9月にはデビュー30周年を迎えた。2022年11月、シングル「A・O・U」をリリース。InformationNew Release「A・O・U」(収録曲)01. A・O・U02. 面影03. A・O・U(Instrumental)04. 面影(Instrumental)2022年11月1日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)COCA-18047(CD)¥1,650(税込)(初回限定盤)COZA-1954-5(CD+Blu-ray Disc)¥4,950 (税込)【Blu-ray Disc収録予定曲】Chara’s Time Machine:30th Anniversary Liveせつないもの/初恋/FANTASY/才能の杖/Tiny Dancer/悲しみと美/タイムマシーン/ミルク/大切をきずくもの/hug/恋をした/しましまのバンビ/70%-夕暮れのうた/Swallowtail Butterfly ~あいのうた~/Time After Time/月と甘い涙/Duca/スカート/世界(JEWEL ver.)/Break These Chain/あたしなんで抱きしめたいんだろう? /やさしい気持ち/Happy Toy(7inchアナログ)※2022年12月3日発売COKA-92¥2,200(税込)(7inchアナログ収録曲)Side-A. A・O・USide-B. 面影取材、文・かわむらあみり
2022年11月01日【音楽通信】第125回目に登場するのは、数々のドラマやアニメの主題歌を担当し、あらゆるパフォーマンススタイルで日本だけでなく海外でもライブ活動を行っている伊江島出身のシンガーソングライター、Anly(アンリィ)さん!ロックが好きな父の隣で歌やギターに親しむ【音楽通信】vol.125沖縄本島からフェリーで約30分、北西に浮かぶ人口約4,000人という、風光明媚な伊江島出身のシンガーソングライター、Anlyさん。英語と日本語で綴られる歌詞や、さまざまなジャンルの音を楽曲の随所に感じさせるミックスサウンドが特徴。ループペダルを駆使したライブ、バンド編成ライブ、アコースティックギターでの弾き語りなど、イベントや会場にあわせてパフォーマンススタイルを変え、日本国内だけでなく、香港、台湾、ドイツなど海外でもライブを行っています。2017年リリースのテレビ東京系アニメ『NARUTO-ナルト- 疾風伝』の主題歌「カラノココロ」は現在、ストリーミングで4,000万再生を超える異例のヒットを記録。以降も数々のタイアップ作品があるなかで、人気アニメの主題歌もリリースされ、アニメファンからも高い支持を得ています。そんなAnlyさんが、2022年10月12日にニューアルバム『QUARTER(クォーター)』をリリースされたということで、お話をうかがいました。――幼少時に音楽にふれたきっかけから教えてください。わたしは沖縄県の離島の伊江島出身で、小さい頃から、父が夕暮れになると家の縁側に座って、夕ご飯になるまでギターを弾く時間がありました。その時間に父の隣に座って、歌を歌ったり、ギターを弾いたり。音楽の一番古い記憶はそこですね。その4、5歳ぐらいのときから、ギターをおもちゃがわりに遊んで弾いていました。――お父さまは音楽がお好きだったんですね?そうですね、父は60年代や70年代のロックが好きで、母は民謡が好きで。いろいろな音楽が家で流れている環境でした。父はプロではありませんが、趣味でときどき友人たちとバンドをやって、ライブ活動もしていましたね。――ギターもお父さまから教わったのでしょうか。ギターに関しては、いくつかコードを教わったあとに、父と一緒に弾くよりは自分で好きな曲をひたすら聴いて「コードは何を弾いているのかな?」と耳コピしていました。――では、音楽の道を志したのはいつ頃になりますか。小さい頃から歌うことは好きでしたね。職業として歌手やシンガーソングライターを意識し始めたのは、中学校2年生のときです。歌手になるにはどうしたらいいのかと、それであれば自分で曲も作れたほうがいいということで、まず歌詞を書き溜めて。ノートの端々に思いついたことを書いて、そのノートがいっぱいになるまでやっていました。伊江島にいるときは、カバー曲を歌って、知り合いのライブに参加することも。自分のオリジナル曲を歌い出したのは、高校2年生のときです。最初に書いた曲は「虹」という曲で、「EMERGENCY」(2016年発売)というシングルのカップリングに入っています。この曲が、中学時代からノートに書き溜めていた歌詞をあわせて完成させた曲ですね。――2015年にメジャーデビューされてからは、日本以外にも香港、台湾、ドイツなど海外でもライブを行っていますね。ずっと海外でライブをしてみたいと思っていました。最近は、ループペダルというエフェクトを使いながら演奏するスタイルが多いので、その場で音楽を作っていく工程が海外の方も楽しんでくれている様子が、とくに台湾に行ったときに感じられて。2018年には、アジア各国を代表して選出された新人アーティストが競って、パフォーマンスをする大会「香港アジア・ポップミュージックフェスティバル」に出演し、優勝させていただきました。よりいっそう、また海外にもライブへ行きたいと思いましたね。――海外のライブは日本とは違う感じもありますか。盛り上がり方が、日本より一段階高めといいますか。歌を聴いても言葉はわからないことも多いと思うんです。でも、グルーヴやリズム感、メロディで楽しんでくださっているというシンプルなところを体感できますね。――そういった海外活動を経て、デビューから変わった点、変わらなかった点はありますか。変わった点で言うと、沖縄から上京してきて、東京を拠点に活動しているので、制作している楽曲が作り方も生まれ方も変わってきましたね。東京に来てからはスピード感のある楽曲も作れるようになりましたし、言葉がたくさん詰まったような、メロラップのような楽曲も増えました。変わらない点は、最近、伊江島のなまりが戻ってきました(笑)。ちょこちょこ自分のなかで、伊江島のなまりは好きなところで、「伊江島の人ということは変わってないな」って。コロナ禍で、前よりも両親と電話をすることが多くなったからだと思いますが、それは自分自身でもうれしかったです。あたためていた曲も収録した4thアルバム――2022年10月12日に、4枚目のアルバム『QUARTER』をリリースされました。いつ頃からか制作していたのですか。今年、4月から7月にかけて47都道府県をまわるツアーをやっていたので、それが終わってから追い込みで仕上げていきました。でもけっこう、数年前からできていた曲もあって、あたためていた曲を仕上げていったという感じですね。――タイトルの意味はなんでしょうか。『QUARTER』というタイトルは、わたしが日本とアメリカのクォーターというところ、25歳というところ、100歳まで生きるとして4分の1を過ごしたというところという複数の意味があって。さらにアルファベットでクォーターの「Q」は、最近キーアイテムにしているふうせんの形に似ていて、そういったいろいろな理由から、このタイトルをつけました。――ハードな印象の曲からゆったりと聴かせる曲まで、多彩な楽曲が収録されていますが、5曲目「Angel voice」はAnlyさんのシルキーボイスが堪能できるバラードですね。わたしの楽曲をよくアレンジしてくれているアリーザというアレンジャーさんが、ロサンゼルスにいて。コロナ禍が始まるよりだいぶ前に、L.A.に行ったときに、わたしが元ネタを持っていってアレンジしてもらうのではなく、一緒にアリーザと「曲を作ろう」となってできた楽曲です。その後、NHK『見たことのない文化財』(BS8K)のテーマ曲を書き下ろすことになって、歌詞を書き上げました。――9曲目「VOLTAGE」は、テレビ東京系アニメ『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』(テレビ東京系 毎週日曜 午後5:30)の1月クールのエンディングテーマでしたし、10曲目「カラノココロ – Matt Cab & MATZ Remix」は、2017年発売の『NARUTO-ナルト-疾風伝』オープニングテーマのリミックスと、NARUTOシリーズとご縁がありますね。今回収録している「カラノココロ」は、5年前にリリースした楽曲をリミックスしています。『NARUTO-ナルト-疾風伝』のオープニング曲として書き下ろした後、主人公ナルトの息子ボルトが主人公になった『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』のために、「ボルトとVOLTAGEって言葉が似てる」ところから始まって、ボルトたちのキャラクターたちに向けての応援歌として、アニメの世界観にあわせて書き下ろしました。それまでは自分の生活にあるものを曲に組み込みたい、という気持ちが強かったのですが、「VOLTAGE」は真正面からアニメのためだけに書き下ろして、作っていくうちに自分にもどんどん曲がなじんできました。自然に「わかるな、この気持ち」「この言葉、元気出るな」って。良い作り方だったんじゃないかなと思っています。――アニメといえば、アルバムのラストを飾る13曲目「星瞬〜Star Wink〜」は、歌もストリングスも優しく染みる楽曲で、2021年公開のアニメ映画『夏目友人帳 石起こしと怪しき来訪者』の主題歌でしたね。夏目友人帳の世界観に向けて書いたところもあるのですが、2021年にシングルとしてもリリースしていた曲で、でも「星瞬〜Star Wink〜」はもともとあった楽曲なんです。沖縄で楽曲制作をしているすきまに散歩に行ったら、飛行機雲が空にあって、そこから歌詞が降りてきて。「あ、歌詞できそう。歌ができそう」と思い、「空には君の足跡」というワードが頭に浮かんで、そのまま歌詞を書きました。――6曲目「Homesick」は切ない恋心を歌った曲ですし、7曲目「KAKKOII」はリアルな心情のような歌詞が面白く、それぞれ曲調も異なり聴き手を楽しませてくれる印象です。いつも曲作りはどのようにしているのですか。先ほどお話ししたように降りてくるときもあれば、自分でトラックメイキングをして、「これすごく良いな、メロディつけておこう」とつけて置いておくこともあります。でも結果的には、自然に作ったものから曲を組み立てていくことが多いですね。――2022年10月から12月まで全国をまわるアルバムツアー「Anly “Loop Around the World”〜Track4/QUARTER TOUR〜」を開催されます。どのようなステージになりそうでしょうか。今回、ループペダルを使って、全国をまわっていくスタイルになります。ステージ上でギターを叩いた音とか、コーラスを録音してリピート再生させながら、それにあわせて曲を演奏する“ループペダルセット”として披露しています。だから、アルバムに収録している音源とは、またちょっと違ったアレンジでお届けすることになるかなあと。初めてライブに来る方は、「あの曲がこんなふうになるんだ」と、最初はもしかしたらびっくりするかもしれないですが(笑)。逆にそれは楽しみにもなってくると思うので、わたしもそういう気持ちでループペダルセットをやって“純度100パーセントAnly”というライブになっています。一緒に音楽を作っていく空間を楽しんでもらえたらうれしいですね。目標は故郷の伊江島で音楽フェスを開催すること――普段、日課になっていることやハマっているものがあれば教えてください。最近は、チョコレートプラネットさんとか、レインボーさんとか、お笑い芸人さんのYouTubeをよく観ます。発想豊かな人たちのものを観るのが好きで、日常で見過ごしているこういう人いるねとか、普通の言葉をゲームにできるんだという発明ぽいものを観ることができるので、よく観ていますね。――お気に入りのコスメやメイクがあれば教えてください。わたしの肌に合うんだろうなと、気づいたら『ケイト』のコスメばかり使っています。血色が良く見えるので、アイシャドウやチークは、オレンジ系にすることが多いですね。スキンケアは『イソップ(Aesop)』のスクラブ洗顔やクレンジングがお気に入りです。――食事やダイエットなど、美容面で気をつけていることはありますか。実は数年前まで、自分の体型を気にしすぎて、あまりご飯が食べられなくなったことがありました。その後、拒食からの過食になって。ご飯を食べること自体の意識をちょっと変えたんです。太るから食べないんじゃなくて、逆にいっぱい食べてみて感じたんですが、人間はそんなにすぐには太らないと知りました。それはわたしのなかで画期的な発見。ご飯を食べる量が、そこからは普通になったんですよ。おいしくご飯を食べたら、生活するうえでポジティブにもなるし、食べたいものを食べたいぶん食べることを肯定すると、いきすぎた量にならないんです。だから、いま体型を気にしすぎている女の子がいたら、心が苦しい気持ちがすごくよくわかるから、一緒にご飯を食べてあげたいって思います。好きなものを食べてほしいですし、体質にもよるかもしれませんが、「そんなすぐ太らないから大丈夫だよ」と女の子たちに言いたいですね。――では最後に、今後の抱負をお聞かせください。いままで通り、ジャンルにとらわれずに、自分の中で生まれた音楽をしっかりみなさんに届けられたらいいなと思っています。あとは、故郷の伊江島で、音楽フェスができたらいいなという目標があるので、これからも頑張ります。取材後記ドラマウォッチャーとして釘付けになって観ていたドラマの主題歌が、力強いボーカルとサウンドが印象的なAnlyさんのデビュー曲「太陽に笑え」でした。ananwebの取材では、音楽との出会いから今後の目標まで、いろいろなお気持ちを聞かせてくださいました。そんなAnlyさんの4枚目のアルバムをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。取材、文・かわむらあみりAnly PROFILE1997年1月、沖縄県伊江島生まれ。2015年11月、シングル「太陽に笑え」でメジャーデビュー。以降、コンスタントに作品を発表し、国内だけではなく海外でもライブ活動を行う。2022年、初の47都道府県ツアー「Anly“いめんしょり”-Imensholy Tour 47- 」を完遂。10月12日、ニューアルバム『QUARTER』をリリース。10月から12月まで全国をまわるアルバムツアー「Anly“Loop Around the World”〜Track4/QUARTER TOUR〜」を開催。InformationNew Release『QUARTER』(収録曲)01.Alive02.Welcome to my island03.Do Do Do04.IDENTITY05.Angel voice06.Homesick07.KAKKOII08.CRAZY WORLD09.VOLTAGE10.カラノココロ – Matt Cab & MATZ Remix11.KOMOREBI12.Saturday Kiss13.星瞬〜Star Wink〜2022年10月12日発売*収録曲は全形態共通。(通常盤)SRCL-12265(CD)¥3,300(税込)(初回生産限定盤)SRCL-12263~4(CD+DVD)¥6,500(税込)【DVD収録内容】Anly “いめんしょり”〜Imensholy〜Tour 47 SECRET FINAL LIVE at 伊江島 (2022/7/10)Anly “いめんしょり”〜Imensholy〜Tour 47 -Behind the scenes-“Loop Around the World ~Track3~”東京公演 @渋谷 duo MUSIC EXCHANGE(2021/11/28)取材、文・かわむらあみり
2022年10月19日