子どもが産まれると、一年を通して何かとイベントごとが増える。家族にとって、その子が第一子ともなれば「待ってました!」とばかりにおじいちゃん、おばあちゃんは初孫をこれでもかというくらいにかわいがる。イベント事ともなれば、盛り上がりはすごいもの。お宮参りに始まり、生後100日目には「お食い初め」がある。お食い初めとは、子どもが一生食べ物に困らないよう家族が願い、産まれて初めて食べ物を口にする行事のこと。まだ食べれないので“フリ”をするのだ。わが家の息子がこの世に誕生して、100日目を迎える日、西荻窪にある料亭で両家が集い「お食い初め」をすることになった。良い機会だ! これは息子にオシャレをさせたい。わたしは産前から、息子のために買い揃えておいたベビー服の中でも一番お気に入りのものを選んで息子に着せた。お祝いの席に両家が集い、あいさつを済ませるとさっそく食事が運ばれてきた。「この度はお子さまの生後100日、おめでとうございます」。お店の方からお祝いの言葉をかけてもらい嬉しい気持ちになる。うぅ、母になったわたしも100日記念だ。息子用の食事はというと、鯛の焼き魚、すまし汁、野菜の煮物、香のもの、赤飯、梅干しが用意された。う~ん、なんて美味しそうなんだ!見た目だけでも大満足。美しい盛りつけ。事前に調べておいた順番通り、ごはん、汁物、ごはん、魚、ごはんを三回食べさせるフリをする。息子は口元に運ばれてくるものがとっても美味しい高級魚とは知らず、終始口をあけたままぼーっとしている。赤子とは純粋無垢な生き物よ。良いことも悪いことも判別ができないなんて、ある意味すごいことだ。そんな無表情な息子に怯まず、おじいちゃんとおばあちゃんは、お酒も入ってやいのやいの楽しそう。そんな中、突然父がポケットからあるものを取り出した。「いや~この石ね、竜飛岬で見つけてきたんですよ」。それは、丈夫な歯が生えるように、孫の歯固めを願う小石だった。わざわざ700キロメートル以上離れた場所から拾ってきたというのだ。たかが石だとしても、これは嬉しい贈り物。初孫が産まれ、念願だったおじいちゃんになれた我が父。「この石はきっと縁起がいいぞ!」と、小石を息子の目の前にそおっと置いて、にこにこと目を細めていた。その日は、みんな良い笑顔でたくさん、たくさん笑った。何度も何度も息子の名前を呼んで、父も、母もとても嬉しそうな顔をしていた。3世代でこうして集うことができた今日を忘れないでいたい。息子が産まれたことで、こんなにも家族に笑顔が増えるなんて思っても見なかった。こどもの存在とは、ここまで人を幸せにするものだったのか。これから先、5年、10年、20年と時が過ぎて、息子もそのうち大人になるんだろう。息子が立派な成人を迎えたころ、私たちの両親はまだ元気でいてくれているだろうか?息子の成長とともに、母も、父も歳を重ねていく。思い出が増えるたびに、残された時間は短くなっていってしまう。親孝行をこれからたくさんできるといいなぁ、と切に思った。そんなことを感じながら店を後にし、父からもらった小さな石を握りしめ、わたしは少しだけ寂しくなった。つづく次回は「夫が脱サラ!? ~仕事と育児~」をお送りします。
2016年01月21日東京都・表参道の根津美術館は、王朝文学から平家物語、曾我物語、西行物語、お伽草子まで、さまざまな物語を描いた絵画作品のコレクション展「物語をえがく -王朝文学からお伽草子まで-」を開催している。会期は12月23日まで(月曜休館、ただし11月23日は開館し、翌24日休館)。開館時間は10:00~17:00。入館料は一般1,000円、学生800円、中学生以下無料。同展は、伊勢や源氏の王朝文学から平家物語、曾我物語、西行物語、そして酒吞童子をはじめとするお伽草子まで、さまざまな物語を描いた多彩な形式の絵画作品を集め、展示するもの。古くから絵に描かれ、楽しまれてきた物語だが、たとえば、最古の歌物語である伊勢物語の存在が文献上に知られるのは、源氏物語のなかに絵巻のかたちで登場するのがはじめてとなる。ほかにも、源氏物語の作中で行われた「絵合」というイベントでは、ほかにもさまざまな物語絵が競いあわされているという。また、源氏物語には、物語を音読させながら絵を眺めるといった鑑賞方法も記されており、やはり物語の楽しみが絵とともにあったことがうかがえる。源氏物語も、成立後まもなく絵に描かれ始めたと考えられているということだ。物語絵は、中世まではもっぱら絵巻や冊子、色紙といった小画面に描かれており、絵巻ではストーリー展開や情景の移り変わりが横長の画面に巧みにあらわされ、色紙でも複数の画面をアルバムに仕立てる画帖が人気を集めていた。やがて、近世になると屏風にも描かれるようになり、物語のダイジェストを大画面に散りばめるタイプがある一方、一場面のみを大きく印象的に描く作例もあったということだ。なお、関連プログラムとして、学芸員がスライドを用いて説明するスライドレクチャー「物語をえがく」(11月25日・12月11日)、「扇面絵意画巻」(12月4日)が開催される。開催時間は各日13:30~約45分間。予約不要、聴講は無料だが入館料が必要となる。また、会期中同館庭園の紅葉が見ごろを迎えるため「南青山で紅葉狩り」キャンペーンが開催される。開催期間は11月25日~11月29日。キャンペーン期間中は茶庭開放が行われ、11月26日15:00~16:00には茶室「一樹庵・披錦斎」に入ることができる(入室のみ、お茶の用意はなし)。
2015年11月25日英国バレエを代表する振付家、ピーター・ダレルによる『ホフマン物語』。日本での上演機会が少ないこの作品を、新国立劇場バレエ団が今シーズンのオープニング作品に選んだ。昨年から新国立劇場の舞踊芸術監督に就任した大原永子は、ダレルが設立したスコティッシュ・バレエで長くプリンシパルを務め、「ダレルのミューズ」とも呼ばれたダンサー。今作に登場する3人の女性すべてを踊った経験もある。ダレルの薫陶を受けた彼女が、新国立劇場バレエ団にその踊りを直伝する。【チケット情報はこちら】『ホフマン物語』はバレエでは珍しい、男性が主役の物語。タイトルロールのホフマンを演じる男性ダンサーは、ひとりで20代から初老までの年代を演じることとなる。また、1幕では人形オリンピア、2幕では病弱なアントニア、3幕では魔性の女ジュリエッタと、それぞれの幕でホフマンがまったく違うタイプの女性に恋をするため、観客は幕ごとに変わる3人の女性ダンサーによる多彩な踊りを楽しむことができる。「3作のまったく違う演目を観ているような気分になるのが『ホフマン物語』の魅力。悲劇でありながらファンタジックな部分もあり、ビジュアル的な要素にも優れている作品です。今回は衣裳も装置も新制作で、すばらしい世界をお届けできると思います」と自信をのぞかせる大原。今回は大原はもちろん、ダレルの振付を世界中で教えているコレオロジストのジュリー・ヘイドンも参加する。ホフマンを踊る福岡雄大は「一幕ごとに違う女性に恋をしては振られる役。幕ごとに異なった表現ができれば」と意気込む。アントニア役のプリンシパル小野絢子は「先日、ジュリーさんがひとりひとりの役に関して時代背景や性格などを話してくださいました。アントニアはどんな性格か、理解して踊りたい。そして今この時期に、このバレエ団に『ホフマン物語』を持ってきてくださったことに感謝したい」と感慨深げ。同じくアントニアとジュリエッタの二役を踊るプリンシパルの米沢唯は一転、「ジュリエッタは自分の髪で演じることになるのですが、人生初のパーマをかけるのが楽しみです」と会場を笑わせた。「私はバレエに行き詰っていたときにダレルに出会い、“私が踊りたいバレエがここにあった!”と感じました。彼がいなければ今の私はありません。かつての私のように、今回のダンサーたちにも今作を通じて何かを見つけてほしいと思います」と語る大原。新しい「ホフマン物語」の歴史がいまはじまろうとしている。公演は10月30日(金)から11月3日(火・祝)まで東京・新国立劇場 オペラパレスにて上演。チケットは発売中。取材・文:釣木文恵
2015年09月11日カンヌ映画祭グランプリ受賞作「夏をゆく人々」がいよいよ日本でも公開となりました。監督は、1981年イタリア生まれの女性監督、アリーチェ・ロルヴァケル。「夏をゆく人々」は、心の奥底に分け入る繊細なみずみずしさと、ダイナミックに場面を切り取る斬新なセンスで、私たちをまったく違ったイメージのイタリア体験に連れ出してくれる話題作です。イタリア映画なのですが、ミラノのお洒落なモンテナポレアーネ通りも、ローマの美味しいピッツェリアも、フィレンツェの有名美術館も登場しません。トスカーナの田舎の村に暮らす、昔ながらの製法で蜂蜜を作る養蜂一家の物語。ひと夏の日常が描かれただけなのに、どこかノスタルジックで人間味あふれる展開にグイグイ惹きこまれていきます。「自然養蜂」にこだわる頑固な父、ひと夏の家族の物語寝る時はどんなに寒くても裸で寝る、という主義らしく、パンツ一丁で寝る父ウルフガング(サム・ルーウィック)は、自然農法ならぬ自然養蜂にこだわるドイツ人。なかなかの頑固親父で、優しいイタリア人のお母さん・アンジェリカ(アルバ・ロルヴァケル)は、たまに腹に据えかねて言い争うことも。4人姉妹と居候の女性ココを含む一家で、光と緑あふれる大地のもと、蜂蜜作りを営む日々。長女ジェルソミーナ(マリア・アレクサンドラ・ルング)は13歳にしてその製法に精通し、父親の片腕的存在です。映画の中で登場する、養蜂のプロセスに思わず目がクギ付けに。リアルなミツバチの大群の映像を、最初は「ひえ~っ」と思いながら観ていたのですが、ジェルソミーナの慣れた反応、家族のように接する愛情深い姿勢に、だんだん愛らしく大事な存在に思えてきたから、あら、不思議! 監督自身、ジェルソミーナと同様に、同郷で養蜂家の家に育ち、父親はドイツ人で母親はイタリア人、幼少時からミツバチが最も慣れ親しんだ生きものだったとか。「ジェルソミーナ役のマリア・アレクサンドラ・ルングには、ハチに慣れてもらうため、多くの時間を費やしたわ。役柄になりきってもらうために、養蜂の仕事をマスターしてほしかった。何度かハチに刺されても、マリアはくじけずにがんばってくれたの」と監督。ハチを手づかみはおろか、口の中から出して顔面を歩かせたりするシーンが! 撮影当時は11歳で、それまでは演じた経験が全くなかったという、彼女のプロ根性に脱帽です。 テレビ番組出演と非行少年の同居が、家族の変化の始まりある日、この村に、お国自慢を紹介するテレビ番組「ふしぎの国」の撮影隊が訪れます。司会を務めるミリー(モニカ・ベルッチ)は妖精のように美しい女性。彼女に憧れたジェルソミーナは、番組に出演したくてたまりません。でも、仕事熱心だけれど頭の固い父親は猛反対。考えあぐねた末、彼女はこっそり応募してしまいます。この一家にもうひとつ、14歳の非行少年・マルティンを、少年更生プランのプログラムで預かる、という事件が起こります。身体に触れられることを極端に恐れ、言葉を話さず、言葉の代わりに巧みな口笛を吹く彼は、カラヴァッジオ描く天使のようなお顔立ち。「ふしぎの国」に出演中、マルティンの美しい口笛に合わせて、ジェルソミーナが顔の上でミツバチを操る芸を見せるシーンが、とても印象的でした。淡い胸騒ぎも、父親との軋轢も、ジェルソミーナのひと夏の体験として鮮烈に過ぎ去っていきます。家族の生活臭いっぱいにあふれた家も、家族の在りようも、ずっと同じでは決してない。そんなせつなさが胸を締めつけるラストシーンが見事です。心に鮮やかな刻印を残す。夏の思い出に、この映画をシャイで不器用でカッコ悪い、大人が勝手に思うほどにはキラキラしていない微妙な思春期を、ユニークな関係でありながらも、二人が絶妙なぎこちなさで演じ、胸が熱くなりました。下の双子の妹二人が、実際の姉妹というキャスティングだったり、母親のアンジェリカは、監督の実姉であったりと、要所要所が家族の実感を伴わせるリアリティで下支えされ、この映画の等身大な魅力に結実させています。2014年のカンヌ映画祭審査員には、ソフィア・コッポラとジェーン・カンピオンという、それぞれ強烈な個性を持つ二人の女性監督が参加。異なるジャンルの作品を手がける二人ともがこの作品を評価したのは、「“人間であること”に対する関心が共通していたからではないでしょうか」と、ロルヴァケル監督は語ります。一人の少女の成長記であり、一つの家族の物語でもある「夏をゆく人々」。ジェルソミーナという名前がフェリーニの名画「道」のヒロインを思い出させたり、ミツバチの飼育、父と娘の葛藤というモチーフがビクトル・エリゼの傑作「ミツバチのささやき」を思い起こさせたりするものの、若い監督のアグレッシブなバワーに満ちたこの作品は、新たな名画の扉を開きました。夏の思い出になるであろう名作、ぜひご覧になってみませんか?『夏をゆく人々』2015年8月22日(土)から岩波ホール等 全国ロードショー監督・脚本:アリーチェ・ロルヴァケル出演:マリア・アレクサンドラ・ルング、モニカ・ベルッチ 他 アリーチェ・ロルヴァケル1981年12月29日 イタリア・フィレンツェ生まれ。ドイツ人の父とイタリア人の母を持つ。母親役として本作に出演のアルバ・ロルヴァケルは実姉。ドキュメンタリー作品等から映画製作をスタートし、2011年『天空のからだ』(イタリア映画祭 上映題)で長編映画デビュー。長編2作めの『夏をゆく人々』で2014年カンヌ国際映画祭グランプリを受賞という快挙を成し遂げた。映画写真 © 2014 tempesta srl / AMKA Films Pro ductions / Pola Pandora GmbH / ZDF/ RSI Radiotelevisione svizzera SRG SSR idee Suiss
2015年08月31日故・森光子さんの代表作として、計2017回という前人未到の記録を誇る『放浪記』。誕生から半世紀の時を超え、今秋、仲間由紀恵主演の“新生『放浪記』”として生まれ変わる。その「出発の会」に、豪華キャスト9人が顔を合わせ、並々ならぬ熱意を明らかにした。舞台『放浪記』チケット情報全員が口を揃えたのは、歴史的名作と、それを演じてきた先達への敬意、それに参加できたことへの重責と光栄の念だった。仲間自身、主演のオファーに対し、「光栄と同時に、緊張、不安、様々な思いでいっぱいになりました」と吐露しつつ、「今日共演者の皆さんとお会いして、ワクワクした気持ちが湧いてまいりました」と前向きな笑顔に。そんな仲間に応え、共演者からは「しっかり仲間さんをサポートしていきたい」(日夏京子役・若村麻由美)、「プレッシャーはありますが、仲間さんを支え、清らかな気持ちで舞台に立ちたい」(藤山武士役・永井大)といった力強い言葉が続き、早くも新生キャスト陣のチームワークを感じさせる。森さんによって熟成された『放浪記』は、新キャストによって、どう変わっていくのだろうか?1200回頃から関わる演出家の北村文典は、「新しいメンバーと新しい工夫をして、2~3代目でも“初代”の心意気で取り組みたい」と自信をのぞかせる。さらに、「『放浪記』=でんぐり返しといイメージを払拭したい。やるなら、4回転半とか?(笑)」とおどけると、仲間は苦笑しつつ、「皆さんの期待を裏切らないシーンにしたいです」と応じた。林芙美子という女性の生涯を通し、様々な人間模様が描かれる重厚な舞台について、仲間は「貧しいながらも怒り、悲しみ、様々な想いを抱えて一生懸命前に進んだ林芙美子さんに負けないよう、私も強い想いで挑戦したい」と熱を込める。ライバル・日夏京子との“女同士の対決”については、「初演を務めた浜木綿子さんから、『凛として、情熱を持って』というお言葉をいただきました。火花散るライバルになれば」と若村がやる気をみなぎらせた。そして若手俳優陣も、「国道で言えば1号線のような日本の戯曲の王道ですが、先輩方の足跡を踏襲しつつ、新しいものを作れたら」(福地貢役・窪塚俊介)、「まっすぐ、でも大胆に演じられたら」(悠起役・福田沙紀)と背筋を伸ばす。取材日は8月16日ということで、森光子さんが遺した「五山大文字・送り火」についての手記を仲間が朗読。最後は祝い酒が取材陣に振る舞われ、出発にふさわしい晴れやかな門出となった。公演は10月14日(水)~11月10日(火)東京・シアタークリエ、11月21日(土)~12月9日(水)大阪・新歌舞伎座、12月18日(金)~25日(金)名古屋・中日劇場、2016年1月7日(木)~31日(日)福岡・博多座にて。取材・文:荒川陽子
2015年08月21日峰倉かずやの人気コミック『最遊記』シリーズを原作にした舞台『最遊記歌劇伝-Burial-』が1月8日東京・シアターGロッソより開幕した。【チケット情報はこちら】同作は2008年に初上演。その後2009年にも上演され、昨年約5年ぶりに復活。玄奘三蔵役の鈴木拡樹、孫悟空役の椎名鯛造、ニィ健一の唐橋充は2008年から引き続き出演し、沙悟浄役の鮎川太陽、猪八戒役の藤原祐規は昨年の復活作より新たにキャストとして加わった。今作では原作でも人気の高い、三蔵一行の過去を描く「埋葬編」を舞台化。三蔵の過去を描いた「三蔵の章」、三蔵と悟空の出会いを描いた「孫悟空の章」、沙悟浄と猪八戒の出会いを描いた「悟浄・八戒の章」の3章で構成されている。鈴木拡樹は同作への意気込みについて「1か月以上かけてみんなで作り上げて、その過程で前回同様、たくさんの事を感じました。最遊記歌劇伝の方向性も今作で見えたんじゃないかと思っています。更により突っ走って、皆さんにより良いものを届けるために、最遊記歌劇伝という作品に対する愛は忘れずに、カラーは残しつつ前に進んでいければいいなと思います。見た方に次回も期待してもらえるような作品にしますので、ぜひともご来場ください」と語った。舞台『最遊記歌劇伝-Burial-』は1月12日(月・祝)まで東京・シアターGロッソ、1月23日(金)から25日(日)まで大阪・シアターBRAVA!で上演。
2015年01月09日2月のアカデミー賞発表に向けて各映画賞レースが始まったが、7日(現地時間)にロサンゼルス映画批評家協会(LAFCA)賞が発表になり、高畑勲監督の『かぐや姫の物語』が長編アニメーション賞に輝いた。作品賞はリチャード・リンクレイター監督の『6才のボクが、大人になるまで。』。1人の少年の成長を12年間かけて撮影した作品で、監督賞、主演女優賞(パトリシア・アークエット)、編集賞も合わせて受賞した。主演男優賞は、全編車の中でたった1人というシチュエーションを演じきった『Locke』(原題)のトム・ハーディという意外な結果。次点は、本命視されていた『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のマイケル・キートン。主演女優賞の次点は『Still Alice』(原題)のジュリアン・ムーア。助演男優賞は『ウィプラッシュ』(原題)のJ・K・シモンズ(次点は『バードマンあるいは(無知のもたらす予期せぬ奇跡)』のエドワード・ノートン)、助演女優賞はポーランド映画『イーダ』のアガタ・クレシャ(次点は『Nightcrawler(原題)』のレネ・ルッソ)。『イーダ』は外国語映画賞も受賞した。作品賞、監督賞で次点だった『グランド・ブダペスト・ホテル』のウェス・アンダーソンは脚本賞を受賞した。同作は美術賞も受賞。脚本賞の次点は『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ、ニコラス・ヒアコボーネ、アレクサンダー・ディネラリス・Jr.、アルマンド・ボー。同作はエマニュエル・ルベツキが撮影賞を受賞した。『かぐや姫の物語』が受賞した長編アニメーション賞の次点は『LEGO(R)ムービー』。ロサンゼルス批評家協会賞はアカデミー賞の前哨戦の1つとして知られ、2002年に長編アニメーション賞を受賞した宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』はその後アカデミー賞長編アニメーション賞も受賞。『かぐや姫の物語』も今回の受賞で、今後の映画賞レースでの健闘が期待される。(text:Yuki Tominaga)■関連作品:かぐや姫の物語 2013年11月23日より全国にて公開(C) 2013 畑事務所・GNDHDDTKグランド・ブダペスト・ホテル 2014年6月6日よりTOHOシネマズ シャンテ、シネマカリテほか全国にて公開(C) 2013 Twentieth Century Fox
2014年12月09日アラバキ・ロックフェスやホテルCLASKAなど、場所や規模をさまざまに変えながら上演を重ねてきた『物語の生まれる場所』。作家、脚本家、映画監督など多彩な肩書きをもつ大宮エリーが作と演出を担当し、気心の知れた仲間たちと「音楽とことばの即興で一回きりの一夜かぎりのものがたり」(公演チラシより)を繰り広げるステージだ。そんな本作が、いよいよ客席数700余の中劇場・天王洲 銀河劇場に登場する。今度はどんな夜になるのか、大宮に聞いた。物語の生まれる場所 at 銀河劇場 チケット情報出演は大宮自身(朗読)と本作でこれまでもコンビを組んできたおおはた雄一(ギター・歌)に加え、芳垣安洋(ドラム)、伊賀航(ベース)、栗コーダーカルテット3/4(リコーダーなど)が決定。大宮は「一度は劇場でやりたくなった…というものの、相変わらず地味なメンツでお送りします」と笑うが、有名アーティストや映画作品に楽曲提供してきたおおはたと芳垣、細野晴臣や星野源のサポートベーシストとしても知られる伊賀、NHK教育テレビの「ピタゴラスイッチ」のBGMほか各方面にひっぱりたこの栗コーダーカルテット3/4と、それぞれの経歴を見れば音楽性の確かさは一目瞭然だ。気になる内容はというと、「朗読と楽曲のネタは用意しているんですが、当日幕が開いてお客さんの顔を見てから決める部分も多いです」と大宮。「せっかくのライブという場だし“刺すか刺されるか”ぐらいの緊張感をもってやりたい。ホテルCLASKAでの時も、おおはたくんが急に『北の果て』という言葉を放ってくるから、こっちもパッと『北の果てからやってきた女がいた。その女が向かったのは、ホテルCLASKA…』なんて真顔で応えて、おおはたくんが即興で演奏を始めるなんてこともありました。お客さんは大笑いしてましたけど、本当にどこに転がるか分からないので大変」と、それでも楽しげな表情で大宮は話す。もちろんファンが毎回心待ちにしている定番のネタや、今回のために書きおろした新作の朗読もあり。“耳で聴くプラネタリウム”や恋愛にまつわる小品などでは、泣いている観客の様子がステージから見えるそうだ。大宮は「そんな方を見ていると、こちらも泣いてしまうんですよね。私自身が悩んだ時に書いた作品も多いから、きっと“(苦しいのは)私だけじゃなかった”って共感していただけたのかなって」と語る。笑いと涙と、その両方が丸ごと“大宮エリー”の世界。最後に少し考えた後、「例えるならコロッケカレーみたいな舞台かも。カレーはインドでコロッケは日本だけど、カレーで染みたコロッケが意外に美味しかった、というような」と自らその味わいの一端を伝えてくれた。公演は12月13日(土)、東京・天王洲 銀河劇場にて。取材・文佐藤さくら
2014年12月05日私はもともと風邪をひきやすい。ひと冬の間に5、6回引くこともあり、長引くと1カ月くらいはゲホゲホ言っている。11月に入り、この秋冬最初の風邪をひいたのは娘だ。滝のように出てくる鼻水。やっと寝たと思ったら激しい咳で起きて、「びえぇぇぇぇぇぇぇぇ~!! 」と泣き出し、再度寝かしつけスタート。添い寝をしていると、ぐずぐずぐだぐだと寝ぐずりモードに入ってきて、私の顔や胸、腹部に頭突きをしつつ、ありとあらゆるところに鼻水をなすり付けていく。そして、私の目をじっと見つめてきて、「うふふ、やっぱりかわいいな」とにっこり微笑むと、いきなり私の顔めがけて「ゲホゲホゲホッ!! 」と咳をしてくる。こんな濃密な接触を重ねていて、この私が風邪をひかないわけがない。娘の風邪発症の2日後には私も喉が痛くなってきた。○病気で1日寝ていた頃が懐かしい……子を産んで「一番辛い」と思ったのが病気になった時だ。これまでなら、体調不良のときはとにかく1日中寝まくった。それでずいぶんと身体が楽になる。でも出産後は、どんなに自分の体調が悪くても子どもに授乳をし、お風呂に入れ、寝かしつけをしなければいけない。私も夫も実家が遠方のため、こんな時でも親に頼ることはできない。しんどい。何もせず寝たい…。実家が近い人がうらやましい。ってか、あれ? 私何のために仕事してるんだっけ……。そんなことばかり考えていた。そうこうしている間に、朝、娘の検温をすると、娘発熱! 38.5度です。はい、保育園行けません。私、仕事に行けません。「今日の会議、どうする? ってか、来客あったし!! 今日納期の仕事もあった!!! 」一瞬のうちに頭の中を駆け巡る。「もしかして夫が休めるかも? 」と思って聞いてみると、「あ、俺、ムリ。休めない」と一言。私だって休めないんですけどー! 私だって重要な案件がいっぱいたまってるんですけどー!! でもこういうときに言い合いをしても仕方ない。結局私が会社を休むことにした。娘を病院に連れて行く道中、会社や関係者に電話をかけ、いろんな人に謝って、何度も何度もお願いをして、休む準備をした。どうして子育てって母親が最後の砦なんだろ。夫の「あ、俺、ムリ。休めない」発言を思い出しながらそう思った。私だって働いてるのに。無理をするのはいつも母親のほう。理不尽だな~と思いながら病院の中に入ると、待合室から溢れるほどの患者さん。「これは3時間コースだな……」。もうとにかく、いろんなことにゲッソリだ。
2014年12月05日復帰月の10月は2時間の勤務時間短縮。家事や育児といったプライベート面は、思っていたより順調だった。子供はまだ離乳食が始まっていなくて、子供の食事の準備が不要だったのが結構助かった。しかし、仕事面はというと、2時間の時短は想像以上に影響大で、あっという間に退社の時間がやってくる。毎日仕事のやり残しが出てしまう。チームプレイな業務内容ではないのが救いだったが、もっとパフォーマンスを上げないと、迷惑をかけてしまうと感じた。時短勤務の自分を同僚や上司はどう思っているのか。時短のワーキングママたちは、そんな他人の目が気になる人も多いかと思うが、私の場合は正直、そんな他人の目を気にする余裕は一切なかった。○新米ママ、育児の悩みは尽きずプライベートが意外に順調とはいえ、子供が生後4カ月ということは、ママ歴も4カ月ということ。完全に新米なのだ。「そろそろずり這いしないのかな? 」「離乳食はいつ始めようか。どんなものを食べさせたらいいんだろう……」と育児に関する悩みは尽きない。夫との関係も、いったん修復されたとはいえ、まだまだ不安定な状態だ。油断すると、「給料が私より多ければ、家事も育児も免除されるのか」なんていうどす黒い気持ちが心の中で渦巻いてくる。それを表に出さないようにするのに一生懸命(いや、顔に出ていたかもしれないけれど……)。そして11月。出勤時間は定時となり、退社時間を1時間だけ短縮した。保育園の送りは原則夫の役割となった。お迎えは私。私としては保育園送りがなくなった分負担は軽減され、1時間の勤務時間延長はかなり助かった。やり残していた仕事が少しずつ少なくなっていった。まぁまぁ順調。そんな風に思っていた復帰2カ月目だったが、あのシーズンが着実に近づいてきていたのだ。そう、「風邪」である。
2014年10月10日このところ「おむつなし育児」という育児法が話題になっています。多くのママは、「おむつなし」と聞くと、まった全くおむつをしないの? 床や部屋が汚れはしないのかな? などと疑問に思うかもしれません。そこで今回は話題の育児法、「おむつなし育児」について解説、検証してみます。■「おむつなし育児」は、かつては日本でもやっていた「おむつなし育児」は、決して目新しいものではなく、布おむつも紙おむつもなかった時代、当たり前にやっていた方法です。いつのまにか日本では途切れてしまいましたが、今再び注目されています。簡単に言えば、「おむつの中でおしっこやうんちをすることを当たり前にせず、なるべくおむつの外でさせることで、赤ちゃんのうちに排せつの気持ちよさを伝えてあげる方法」です。言い換えれば、「おむつでうんちやおしっこをすると気持ち悪い」という感覚を当たり前にすることだといえます。■おむつをまったくしないわけではありません「おむつなし」とは言っても、普段はおむつをしています。赤ちゃんをよく観察して、おしっこやうんちが出そうかな? というタイミングでおむつを外し、なるべくおまる・トイレなどでさせてあげるのが、おむつなし育児の基本です。とはいえ、何がなんでもおむつなしで! と気合いを入れ過ぎる必要はありません。家ではおまるでしていても、外出時は紙おむつでしてOK! くらいの緩やかな気持ちで取り組むことがポイントです。「おむつを外す」ことが目的ではなく、赤ちゃんの頃から排せつの仕組みや楽しさを親子で共有することが最も大切な目的。そこが、いわゆるトイレトレーニングとは違うところでもあります。歌を歌ったり、掛け声をかけたり、時には遊んでみたりと、コミュニケーションしながら行うのもおすすめです。■ママにとって子育ての自信につながります! 出産してすぐは、赤ちゃんがどうして泣いているのか、何を求めているのかがわからなくて戸惑うママがほとんどです。でも、時間を重ねて赤ちゃんに向き合っていくうちに、だんだんと赤ちゃんの欲求に気付きやすくなっていきます。これと同じように、おむつなし育児を続けていくと、徐々に子ども自身のサインやタイミングが、自然にわかってくるようになるそうです。しかも赤ちゃんは自分の欲求がすぐに満たされるとご機嫌な時間が長くなります。それは、ママにとって育てやすさを感じることにも繋がります。また、排せつ以外の欲求も気付きやすくなることが多く、結果的に子育ての自信に繋がることにもなります。とある国では、生後数ヵ月間は、家の床に赤ちゃんを置いてはいけないという風習があり、赤ちゃんはずっと、スリングのような布の中でママに抱っこされて過ごすそうです。すると、赤ちゃんとママがずっと密着しているため、五感で感じ合うようになり、排せつのタイミングがわかるようになる、という話を聞いたことがあります。おむつなし育児とは、まさにこうした感覚なのでしょうね。■おむつなし育児を実践しているママに聞いてみました!「いつの間にか子どもの排せつのタイミングがわかるようになって、親として自信が持てたような気がします!」(6ヵ月の子のママ)「ずっと便秘がちでしたが、おむつの外に出すほうがたくさん出るようで、便秘も自然に解消できました!」(7ヵ月の子のママ)「以前は布おむつを使っていましたが、だんだんおしっこの量が増え、洗濯が大変になってきたので、おむつなし育児に切り替えました。今では助かっています」(5ヵ月の子のママ)「オムツ代が節約できます! しかもエコですよね」(8ヵ月の子のママ)「トイレでうんちやおしっこをすることに抵抗を感じることがなかったので、トイレトレーニングに苦労せずに済みました」(1歳6ヵ月の子のママ)おむつオムツなし育児とはつまり、赤ちゃんとじっくり丁寧に向き合うこと、そして、親子のコミュニケーションを豊かにするためのひとつの方法だと感じました。軽い気持ちで構わないので、興味がある人はぜひ実践してみてはいかがでしょうか。
2014年09月19日マットは、同社が運営するアートギャラリー「GoFa」(東京都・青山)において、漫画家・イラストレーター山田章博が挿絵を担当した「十二国記」から100点以上の生原画を展示する「山田章博展 Exhibition&Cafe」を開催している。開催期間は8月31日まで(毎週月曜日定休(祝日除く)、8月10日、8月19日は休館)。営業時間は12:00~18:00。入場料は500円(コーヒーチケット付き)。同イベントは、イラストレーターとして多数の挿絵を手掛ける山田章博の『「十二国記」画集<第一集>久遠の庭』の刊行を記念して開催されるもの。今までのカバーイラストや挿絵など20年以上におよぶ「十二国記」の集大成となる展示内容が展開されており、100枚以上の生原画が公開されている。コラボレーションカフェでは、「十二国記」の世界観やキャラクターをイメージしたメニューが用意されるということだ。また、会場では、山田章博サイン入り画集やポストカード、タンブラー、ポスターなどの販売に加え、最終日となる8月31日には「じゃんけん大会」が開催される予定。なお、来場者特典として、山田章博が同イベントのために書き下ろしたウェルカムペーパーがプレゼントされるほか、会場にて同画集を購入すると会場限定のしおりが進呈されるという。
2014年08月05日大ヒットアドベンチャーシリーズ『ジュラシック・パーク』の最新作にして第4作目となる『Jurassic Park IV』(原題)の脚本家がこのほど決まった。『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』の脚本家コンビであるリック・ジャファとアマンダ・シルヴァーが、ユニバーサル・ピクチャーズにより同作の脚本家に起用されたようだ。同シリーズの第1作と第2作を監督したスティーヴン・スピルバーグは今回もメガホンを取ることはないと明言しており、一方、スティーヴンの製作パートナーであり本作にも関わっているキャスリン・ケネディは昨年末、最新作では脚本が最も重要な要素であると強調していた。「『Jurassic Park IV』(原題)をやるためには、素晴らしい脚本が必要なのよ。私たちは観客の立場になって、自分たちに高い目標を掲げているの。映画を作る理由なしに、最新作を手がけたくないわ。『ジュラシック・パーク』をシリーズ化するつもりは本来無かったから、ある意味ジレンマなのよ。だって必ず『なんで『Jurassic Park IV』(原題)を作るんだい?』っていう議論がなされるんだもの。そういうわけだから、『Jurassic Park IV』(原題)を製作するための良い理由を探さないといけないのよ。いま、その作業に取り掛かっているわ」。同作の公開予定日はまだ未定となっている。
2012年06月25日作家・井上靖の自伝的小説を、役所広司主演で映画化した『わが母の記』の予告編がこのほど公開され、関係者の間で“泣ける予告編”と称されている映像がお披露目された。『わが母の記』予告編『わが母の記』は、幼少期より実母と共に暮らしてこなかった小説家・伊上洪作を主人公に、年齢を重ねて少しずつ記憶を失いながらも息子への愛を確かめようとする母と、幼少期の記憶と向き合いながら母に寄り添う息子・洪作、そしてふたりを囲む家族の物語を10年に渡って綴る人間ドラマ。役所が井上の分身ともいうべき伊上洪作を演じるほか、樹木希林、宮崎あおいらが出演する。自伝的小説を原作としながら、普遍的な親子の問題や葛藤、そして誰にも分かつことのできない絆を描く本作は、日本での一般公開を前に、第35回モントリオール世界映画祭で審査員特別グランプリを受賞するなど、海外で高評価を獲得。すでに行われた関係者向け試写会でも上映後に涙を流して会場を出てくる観客が見られるなど、早くも好評を集めている。このほど公開された予告編は、日本の美しい四季折々の自然を背景に、主人公・洪作と母、そして伊上家の家族の姿が映し出され、洪作が長年に渡って抱き続けた「なぜ、母は幼少期に自分を捨てて別の家に預けたのか?」という疑問を口にする。時を重ねていく中で変化する母と息子の関係はどう変化するのか? 息子を捨てた母の真意はどこにあったのか? ラストに登場する“主人公・洪作が声をあげて涙を流すシーン”は何を意味するのかも気になる内容に仕上がっている。『わが母の記』4月28日(土)全国ロードショー(C)2012「わが母の記」製作委員会
2012年01月26日超大作『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』で、ジェームズ・フランコの相手役をつとめる、美しく才能あるフリーダ・ピント。この圧倒的かつ訓戒に富んだ物語で、フランコが演じるのは、人間的な感情と知性を兼ね備えたチンパンジー“シーザー”と心通わせる聡明な科学者。『スラムドッグ$ミリオネア』で初めて映画に出演し国際的に注目されるようになり、2008年度英国アカデミー賞(BAFTA)助演女優賞にノミネートされた彼女が、以下のインタビューに答えてくれた。キャロラインの役柄をどのように演じられたのですか?『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』は素晴らしい物語なの。私が2010年に読んだ中で一番良くできた物語の一つだった。すぐにこの映画に参加したいと思ったわ。それほど美しい脚本だったから。私が演じるキャロラインは霊長類学者で、美しい動物たちのことを学び、寄り添うことに全人生を捧げている獣医なの。彼女はチンパンジーの生態を学んでいて、動物たちの行動パターンや彼らと人間との相似性を観察している。彼女は人間の助けとなるこの素晴らしい動物たちと一緒にいることが大好きなの。彼女はどんなタイプの女性なのですか?キャロラインはこの物語の理性の声なの。彼女のことを表現するにはそれが一番適格な言い方ね。このキャラクターで私が最も気に入っているのは、彼女が倫理について多くを語っているところね。彼女は反対側のものに対しても耳を傾けたいと思っているタイプなの。それはすごく珍しいことなんだけど。たいていの人はものごとについて思いをめぐらしたとき、その反対側を見たいなんてことは絶対思わないし、揺らいだりしないでしょ。でもそこが、私がキャロラインについて非常に興味深いと思うところなの。彼女は自分が愛する人の視点と自分自身の視点の間で自分をうまく両立させようとしている。アクション満載のワクワクするようなドラマというだけでなく、これはラブストーリーでもあるんですね。これはかつて存在したラブストーリーのたぐいとはまったく別の解釈のものなの。科学者と霊長類学者とのラブストーリーで、自分が愛する男の気持ちを和らげようとする若い女性のラブストーリーなの。彼女は彼にわかってもらおうとするし、彼により理性的になってもらおうとする。それと同時に、キャロラインについて非常に興味深いことは、彼女もまた、彼のものの見方をちゃんとわかっているってことなの。そこには多くの愛情が横たわっている。ふたりは他人に対して、「いいえ、あなたは間違っている。あなたはこのようにこうしなくてはいけない」とただ言うんじゃなくて、基本的に互いを理解しようとしている。それはまさにギブ&テイクのような関係なの。『スラムドッグ$ミリオネア』以来、あなたの生活はどのように変化しましたか?人生というのは素晴らしいもので、驚きが配分されているからこそ、常に素晴らしいものになるの。避けることのできない気の滅入るような瞬間でも、落ち込んだときでも、学べることはたくさんあると私は信じている。生きるってことは偉大なことなの。『スラムドッグ$ミリオネア』は与えられた贈り物として私に素晴らしい機会を提供してくれた。あんな贈り物を得たら、それでしたいことは何でもできるし、自分が持っているものをフルに生かし、利用することができる。さもないと、そのままにしてついには腐らせてしまうことになる。私はそれを十分に利用することになったと思うし、私がこれまでにできたことの中で一番素晴らしいことだったと思う。その素晴らしい映画に伴ってきた称賛や名声がありながら、どのようにあなたは地に足をつけてキャリアを築いてきたのですか?その質問に対しての一つの退屈な答えがあるわ(笑) 家族よ。それはいつも家族なの。人々は私にもっと突拍子もないことを言ってほしいと期待しているかもしれないことは承知しているけど、答えは家族っていう単純なものなの。両親は私が自分の居場所を常に保つように、自分がどこから来たのかということを決して忘れないようにと私を育ててくれた。それで私はいつもずっと地に足をつけていられると思うの。演技以外に熱中していることは何ですか?いろいろあるけど、残念なことに全部をやれているわけではないの。私は旅ばっかりしているから、ほとんどの時間は時差ボケと格闘してるの!でも、私の情熱の多くは学ぶことに費やされている。私の目標はいろんなところに出かけて、自分の職業とはまったく関わりのない、全然違うことを学ぶことなの。最近は、古代インドのマーシャルアーツの型を習うというのが気に入っているわ。カラリパヤットと呼ばれる最古の武術なの。そこに赴いて学べるわけではないけど、実践することはできる。これは徹底的にその世界に没頭することが要求されるから、いったん始めたら後戻りはできないの。でないとマスターすることは決してできないから。もっと学んで、いろんなことを知りたいわ。あなたはとても美しい方です。美しさはあなたの人生とキャリアにおいてどの程度の役割を果たしていますか?ルックスについて考えることはとてもたやすいことだと思う。そのことにあまりにも耽溺して、自己陶酔してしまうと、映画を見るときにいつも、「まあ、どうしましょう。私の目線がうんぬん」などと常に言ってしまうことになるわね。そうなるといろんなことが虚しくなってくるわ。ロンドンの地下鉄の車内に腰かけて、ある場所からある場所に移動しながら、ありとあらゆるタイプの人々やそれぞれまったく違う表情やルックスの人を見るというのは愉しいわね。それぞれの人々がみんなとてもユニークだから。これが私の見方なの。自分のことをみじめな風貌をしているなんて思わないわ。自分の両親が私に伝えてくれた遺伝子を持っていることを幸せに思っている。でも、そのことを自分が何者であるかということの主要な要素であると重要視しているわけでもないの。もし、私が写真撮影をするなら、自分が一番よく見えるように最大限の努力をするわね。それが写真撮影の肝心な点だから。でも、映画を撮るときには、演技にだけ集中し、見た目については考えないようにしている。正直言うと、映画に映る自分の姿を見るのはとてもつらいところがあるわ。私はファッションに興味があるし、それがとても好きだし、ある意味、映画業界と切り離せないものだと思っている。そのふたつは密接な関係があるの。『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』 詳細はこちら
2011年10月05日キャサリン・ハイグルとジョシュ・デュアメル共演の『かぞくはじめました』の予告編がどこよりも早くシネマカフェに到着!2人が慣れない子育てに奮闘する姿が…。キャサリン演じるホリーとジョシュ演じるメッサーは、友人を介して知り合うも、最初のデートでの互いの印象は最悪。そのまま二度と会うことはないかに思われたが、2人の共通の友人夫婦が娘を遺して事故で急逝してしまい、遺言に従って名付け親であるホリーとメッサーが遺された娘・ソフィーを育てることに…。今回到着した予告編でも、2人が育児に四苦八苦する様子が次々と映し出される。ソフィーが浴槽でおしっこをしそうになって慌ててメッサーの帽子を代用したり、ソフィーが立ち上がり、歩き出す瞬間を逃すまいと必死になったり。当初は「避妊には気をつけていたのに子持ちになるなんて」と愚痴るメッサーもソフィーのおかげでかけがえのない“家族”の空間を意識し始める。私生活では共に結婚しており、特にキャサリンは養女を迎えていて子育てはバッチリ経験済み。また、2人は初共演ながらも元々、仲の良い友人同士ということで息もピッタリ。全米では昨年10月に公開され、初登場2位を獲得している。ほっぺたにウンチを付けていても、“母”として奮闘するキャサリンがとってもキュート!『かぞくはじめました』は3月26日(土)よりシネマート新宿、シネマート六本木、シネマート心斎橋ほか全国にて公開。※こちらの予告編映像はMOVIE GALLERYにてご覧いただけます。MOVIE GALLERY■関連作品:かぞくはじめました 2011年3月26日よりシネマート新宿、シネマート六本木、シネマート心斎橋ほか全国にて公開© 2010 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED■関連記事:キャサリン&ジョシュ実生活同様家庭で奮闘?『かぞくはじめました』ポスター解禁
2011年01月11日“諦めないこと”。日本地図を完成させるため前人未踏の山・劔岳に挑んだ男たちの物語『劔岳点の記』、劣悪な環境で働く出稼ぎ労働者たちの闘争を描いた『蟹工船』。毛色の違うこの2本の映画に共通するのは、そんなメッセージだ。『劔岳点の記』は、『八甲田山』、『駅 STATION』、『鉄道員(ぽっぽや)』など日本映画史に残る名作・話題作の映像を生み出してきた名カメラマン・木村大作が、50年のキャリア、50本目の映画にして初めてメガホンを取った記念すべき作品。見どころは何と言っても映像の素晴らしさ。大自然の厳しくも美しい姿をフィルムに焼き付けるため、実際に劔岳・立山連峰各所で撮影を敢行。主演の浅野忠信をはじめ香川照之、松田龍平、仲村トオル…という実力派俳優たちも3,000m級の劔岳に登り、本物の映像と共にその場に行くことでしか生み出せない台詞と表情をカメラに向けた。いまから100年前に険しい山中に三角点を設置した明治人の真実の物語を本物の映像で描く──CGが当たり前になったこの時代に敢えて危険な撮影に挑んだ本作には“本当に撮影したのか?”と疑いたくなるほどの驚きの映像が詰まっている。そして、『劔岳点の記』で陸地測量部測夫を演じた松田龍平が『蟹工船』では労働者のリーダーとして登場する。カムチャッカ沖で蟹を獲り、船上で缶詰に加工する蟹工船を舞台に、安い賃金で過酷な労働を強いられていた労働者たちが奮起するこの物語の原作は、いまから80年前に小林多喜二が発表しプロレタリア文学の最高峰と賞賛された同名小説。それを『弾丸ランナー』、『ポストマン・ブルース』など疾走感ある作風で知られるSABU監督が大胆なアレンジを施し映像化。「パンクに!」という監督の要望のもとに作られたSFムード漂う蟹工船のセット、労働者たちのコスチュームも見どころだ。逃げ場のない蟹工船という地獄のなかでただ生きるのか、それとも立ち上がるのか──世界的不況が続くこの時代だからこそ、絶望的な環境から再生していく人間たちの生きざまに共感する。測量という仕事に誇りを持ち、命を賭けて険しい山に挑んだ男たちと、希望を持って生きるために立ち上がろうとした労働者たち。どんな状況でも諦めないこと、挑戦することを熱く伝える『劔岳点の記』と『蟹工船』。いまの自分に必要なのはどっち?(text:Rie Shintani)■関連作品:劔岳点の記 2009年6月20日より全国東映系にて公開© 2009『劔岳点の記』製作委員会蟹工船 2009年7月4日よりシネマライズ、テアトル新宿ほか全国にて公開© 2009「蟹工船」製作委員会■関連記事:SABU、大学生たちに『蟹工船』パワーを指南「借金踏み倒してでも生きろ!」TKO、松田龍平にあやかり俳優の座狙い?『蟹工船』全国キャンペーン中いざ、反撃!男たちの熱き闘いを見よ『蟹工船』試写会に10組20名様をご招待浅野忠信&香川照之を9時間歩かせた鬼監督を宮崎あおいがつぶらな瞳で骨抜きに!男たちの熱き大和魂がここにシネマライブ!『劔岳点の記』試写会に30組60名様ご招待
2009年06月19日