女優の二階堂ふみが8月6日(木)、都内で行われた主演作『この国の空』公開記念トークイベントに出席。戦時下を生きる19歳の主人公を演じ、「再び戦争を起こさないために、映画を通して、平和な日本と向き合い、考えてもらえれば」と思いを語った。芥川賞作家・高井有一による「谷崎潤一郎賞」受賞の同名小説を脚本家の荒井晴彦が映画化。二階堂さん演じる主人公・里子が「私は愛も知らずに、空襲で死ぬのでしょうか…」と空襲におびえながら、それでも懸命に生き抜き、ある男性との出会いを機に、少女から女へと開花する姿を描いた。イベントには里子の母親を演じる女優の工藤夕貴、そして70年前、原爆が広島に投下された8月6日に東京大空襲でご家族6名を亡くし、孤児となった戦争体験者の海老名香葉子さんが出席した。工藤さんは、いまの二階堂さんと同じ歳のとき、東京大空襲を描いた『戦争と青春』(今井正監督)に出演しており、「時がめぐって、20歳くらいの子どもを抱える母親を演じるのは感慨深い」としみじみ。「戦争経験はないが、撮影当時に今井先生から教わったことが、今回の土台になった」と語った。一方、海老名さんは「戦争映画ではあるが、文芸作品のような印象を持った。戦時下の人の情や気持ち、生き方を描いている」と本作を評し、二階堂さんの“東京弁”を「きれいな言葉づかいで良かったですよ」と絶賛。「私が味わった悲しみや苦しみを、いまを生きる人々に経験させたくない。二度と戦争を起こさないように」と戦争体験を語り継ぐ強い思いを示していた。『この国の空』は8月8日(土)よりテアトル新宿、丸の内TOEI、シネ・リーブル池袋ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:この国の空 2015年8月8日よりテアトル新宿、丸の内TOEI、シネ・リーブル池袋ほか全国にて公開(C) 2015「この国の空」製作委員会
2015年08月06日終戦70年を迎えるこの夏、「あの戦争」を見つめ直す大小さまざまな日本映画が公開されている。女優・二階堂ふみが主演する『この国の空』(荒井晴彦監督)もそのひとつ。沖縄生まれの二階堂さんが「こういう作品に出演したかった」と語る本作にこめた思いとは?二階堂さんが演じるのは、空襲におびえながら「結婚もできないまま、死んでいくのだろうか」という不安を抱える19歳のヒロイン・里子。妻子を疎開させた隣家の銀行支店長・市毛(長谷川博己)との心揺れる関係性を通して、はかなげな少女の憂いと葛藤、青春を奪われた悲壮感、そして「それでも生き抜いてやる」という力強さを演じきった。役作りを支えたのは、「すべての答えがそこにあった」という荒井監督によるシナリオだった。「美しい言葉がたくさんあったので、それを映像の中で生かしたいなと思って。成瀬(巳喜男)監督、小津(安二郎)監督の作品を参考に、日本語が美しく聞き取れるセリフまわしを意識しました。具体的には鼻濁音を入れたり、声質を変えたり…。現代的なしゃべり方ではセリフひとつも印象が変わってしまうので、そのあたりは徹底して役作りしましたね。当時の女性が歯を食いしばって生きている、重みや説得力を表現したかったですし」戦争に翻ろうされた男女が織りなすラブストーリー。『この国の空』を端的に説明すれば、こんなフレーズになるだろう。しかし、二階堂さんは「これは恋ではない」と断言する。「相手には妻子がいるし、頭ではダメだと理解しても、心と体の歯止めが利かない。ただ、市毛という男性に惹かれたというよりは、戦争の恐怖に押しつぶされそうな里子のなかで、本能的なものが動き出して…。実はふたりは全然違った方向を向いている男女なんです」。10代前半でも20代後半でもなく、19歳の少女がひとりの女へと開花する瞬間をとらえた本作。二階堂さん自身も本作の撮影中に、20歳の誕生日を迎えており、戦時下を生きるヒロインでありながら「役作りはしつつも、最後は等身大であることが一番大事だと思った」とふり返る。「里子と同じで、現場ではひとりで戦わないといけないという孤独感がありましたし、ひとりで戦った結果がスクリーンに焼き付いた。戦って良かった。そう思います」沖縄出身の二階堂さんは、「以前から戦争を題材にした映画に出演したかった」といい、「歴史をふり返ったとき、なぜあの時代に日本が戦争に向かってしまったのか。そして人々が何を感じ、考えていたのかを広い視野で考える必要があるなと思っていたので。祖父母が戦争を経験したという事実も、私にとっては大きなこと。受け継がなければいけない言葉や物語があり、それを見た人に実感してほしい」と凛としたまなざしで語った。ここ数年、年3作品のペースで出演作が公開される「映画に愛された女優」二階堂さん。同時に熱心な映画ファンとしても知られている。「映画の魅力は、いろんな形の感動があることですね。涙の感動、笑う感動、『なんだこれは』という感動…。私自身、それを求めて映画館に足を運んでいます。いい映画の条件ですか?私にとっては子どものような純粋な気持ちになれる作品、かな。すごい映画の作り手は、まるで魔法使いに思えますね」いつ見ても感動するという『アダムズ・ファミリー』。戦争映画では『戦場のピアニスト』をお気に入りに挙げて「敵同士であっても、やはり同じ人間なんだと思わせるラストシーンが忘れられない」。ちなみに昨年のベストワンは『グランド・ブダペスト・ホテル』なのだとか。「女優になったことで、映画のいろいろな見方ができるようになりました。要はいかに心が動いたか。たとえ荒削りであっても、力強さがあれば、映画として魅力的ですよね」(photo / text:Ryo Uchida)■関連作品:この国の空 2015年8月8日よりテアトル新宿、丸の内TOEI、シネ・リーブル池袋ほか全国にて公開(C) 2015「この国の空」製作委員会
2015年08月05日かつて夏の甲子園に旋風を巻き起こした台湾代表の高校球児たちがいた。日本統治下の1931年に甲子園の土を踏んだ嘉義農林学校の実話を描いた感動作『KANO ~1931海の向こうの甲子園~』。日本人、台湾人(漢人)、台湾原住民からなる嘉農野球部を率いた近藤兵太郎監督役で主演を務めた永瀬正敏が、日本人として初めて、台湾版アカデミー賞こと金馬奨の主演男優賞にノミネートされるなど、高い評価を得た本作のブルーレイ&DVDリリースを前にマー・ジーシアン監督が来日した。その他の画像俳優として活躍してきたマー監督にとって、本作は長編監督デビュー作となった。「13年ほど前に台湾原住民の学生の役をやったことが、私自身の原住民としてのアイデンティティを芽生えさせるきっかけになりました。俳優としていろいろな役を演じてきたことを嬉しく思っていますが、自分で物語を語りたいという思いが強くなり、メガホンを執りました」そしてこの物語を選んだ理由を次のように語った。「この映画で見せたかったのは、日本人、台湾人、台湾原住民が同じ目的に向かって、とても強い繋がりと絆を持って頑張ったというプラスの事実があったこと。これは私が作り出した物語ではなく、実際にあった出来事なのです」本作の製作を通じて、自らも人種を超えた繋がりを感じたマー監督。主演の永瀬とも「親友になれた」と笑顔を見せる。「もし近藤監督役が永瀬さんでなければ、この映画はこんなにも素晴らしいものにはならなかったと思います。甲子園での最後の試合のときに、ピッチャーにアクシデントが起こります。そのとき、監督のところにみんなが集まり、監督がみんなに話をする。あのシーンを観る度に、涙が止まりません。私たちの間には、映画の中だけでなく現実に強固なチームワーク、心の繋がりが出来ていました。永瀬さんのあの演技には、本当に感動しました」『KANO ~1931海の向こうの甲子園~』8月5日(水)ブルーレイ&DVD発売取材・文・写真:望月ふみ
2015年07月29日女優の二階堂ふみが16日、都内で行われた映画『この国の空』の完成披露試写会の舞台挨拶に、共演者の長谷川博己、工藤夕貴、富田靖子、メガホンを取った荒井晴彦監督とともに登壇した。映画『この国の空』は、芥川賞作家の高井有一氏による同名小説を、脚本家の荒井氏が18年ぶりに監督に挑んだ一作で、戦時下の激しい空襲と飢餓が迫る恐怖のなかで懸命に生きる人々を丹念に描いた人間ドラマ。主演の里子を演じた二階堂は「戦後70年という節目でこの映画を作ることができて、皆さんにお披露目できるということで、今とても胸にくるものがあります。この映画を見て色々なことを感じていただければうれしいです」とあいさつした。さらに、脚本を読んだ感想を聞かれると「中学生のときに『わたしが一番きれいだったとき』という茨木のり子先生の詩を国語の教科書で読んで、ものすごく肌で実感した作品だったので、自分が戦争を題材に扱った映画に出る際は、こういう肌で感じるものをやりたいなと思っていました」と胸の内を語り、「今回の本を読ませていただいたときに、茨木先生の詩がすぐに頭に浮かんで、ぜひやりたいと思って、監督に初めてお会いしたときに、監督も茨木先生の詩のことをおっしゃっていて、そこでつながった気がしました」と運命を感じたことを明かした。また、今回の役を演じて、一番心に残った点について二階堂は「(戦争について)改めて考えたり感じたりすることが多かったんですけど、やはり忘れないということであったり、作り続けることであったり、私は戦争を知らない世代ですけど、体験をした方から話を聞いて感じて、伝えていくということをやっていかなければなと、すごく感じました」としみじみ語った。そんな二階堂と3年ぶりに共演した長谷川は、「初めて共演したときもすごい女優だなと思って、自分が10代のときってこんなことできなかったと落ち込んだんですけど、すっかり大人っぽくなって、その成長の過程が見られて、何か不思議な感じです(笑)」と照れ笑いを浮かべ、工藤は「ふみちゃんはすごく前向きな女優さんで、今どきに珍しくいい意味でガツガツしている女優さんなので、初日から英語で話すことになって、もんぺ姿で英語でしゃべっていました。でもそこですごく親しくなれたので、やりやすくて楽しい現場になりました」と印象を語った。映画「この国の空」は8月8日(土)よりテアトル新宿、丸の内TOEI、シネ・リーブル池袋ほかで全国公開。
2015年07月17日「ドラマとしてはコンゲームです。でも大阪独特のニュアンスというか、たとえば東京が舞台だったらもっと空気が張りつめると思うんですけど、そこがちょっとルーズで、起きていることはシリアスなのに“はんなり”とした空気感が出ている作品になっていると思いますね」と語る森山未來。主演を務めた連続ドラマW『煙霞 (えんか)-Gold Rush-』は、文化庁の文化交流使としてイスラエルでのダンス活動後、初となる映像作品だ。その他の画像「(イスラエルに行っていた期間中)芝居を一切やっていなかったんです。だから自分がそうしたフィクションに突入する自信がなかった」と明かす森山。しかし監督を務めた小林聖太郎(『マエストロ!』)との出会いが、背中を押した。「変な緊張感がなくて、いろいろ会話しながらやっていける方だなと信頼できたんです。僕はもともと相互的な関係から作品を構築していくのが好きなタイプなので、帰国して初のドラマで小林監督とやれてよかったと思っています」。原作は直木賞作家である黒川博行の小説。森山が扮したのは、正社員の三割引きの給料しかない、私立高校の美術講師・熊谷だ。ある日、音楽教師の菜穂子(高畑充希)とともに、理事長の不正を暴くごたごたに巻き込まれ、あれよあれよという間に金塊争奪戦の真っただ中に置かれることになる。「熊谷は正社員じゃないし、事業に失敗して借金もある人物。でも自分のシチュエーションに対してあまりシリアスではない飄々としたヤツなんです。充希ちゃん演じる奈穂ちゃんと一緒に、無意識のうちにユルい感じのまま事件に巻き込まれていく」。そのユルさは冒頭の言葉通り、作品全体に通じる空気だ。本作は主要スタッフとキャストをオール関西で組み、撮影場所にもこだわった。「全員が作品のニュアンスを感じられていたのは大切なことだったと思うし、それを大阪で撮れたのも大きかったと思います。同じ色の壁でもそこに流れる空気って絶対に違うので。それを感じて、すごく肩の力を抜いてやれたと思いますね」。そしていまやブランドになっているドラマWにあって、いい意味で本作は少々異質な作品だとアピールした。「今回の作品は、ちょっとテイストがズレてるんです。話の筋だけ見ると、パキっとしてるんですけど、空気感は若干ズレてる。そこが魅力になっていると思います」。連続ドラマW『煙霞 -Gold Rush-』7月18日(土)スタートWOWOWプライムにて毎週土曜夜10:00(全4話)※WOWOW・第1話無料放送取材・文・写真:望月ふみ
2015年07月17日演技派女優・二階堂ふみと長谷川博己を主演に迎え、芥川賞作家・高井有一の同名小説を基に映画化した『この国の空』。いままで戦地に赴く男たちを描いた作品が数多く公開されてきたが、本作では戦時中の日常を生き抜く女たちが登場する。愛を知らない少女、娘を見守る母、家族を亡くした叔母…シネマカフェではそれぞれの生き様に注目した。昭和20年、終戦間近の東京。19歳の里子は母親と杉並区の住宅地に暮らしている。度重なる空襲に怯え、雨が降ると雨水が流れ込んでくる防空壕、日に日に物価は高くなり、まともな食べ物も口には出来ないが、健気に生活している。日に日に戦況が悪化していくなか、里子は男性と結ばれることなく、戦争で死んでいくのだろうか。その不安を抱えながら、市毛の身の回りの世話をすることがだんだん喜びとなり、そしていつしか里子の中の「女」が目覚めていくのだが――。本作は市川由衣&池松壮亮主演の『海を感じる時』で脚本を手掛けた荒井晴彦が18年ぶりに監督を務める渾身作。主演の二階堂さんが演じるのは、19歳の少女・里子。戦況が悪化する中、愛も男も知らぬまま、時代に飲まれてしまうのではないかと不安な日々を過ごしていくが、隣家に住む妻子持ちの市毛(長谷川博己)に心を傾けてゆく。「私は愛も知らずに、空襲で死ぬのでしょうか…」この不安も市毛といる時間は忘れることができるのだ。そんな里子を見守る母親・蔦枝(工藤夕貴)は、結核で主人を亡くし、娘とふたり身を寄せ合って暮らしている。愛も知らずに死んでいくよりは、それがたとえ許されぬ恋だと分かっていても目をつぶるしかないと、“女”の顔をみせていく娘を見守る。娘への複雑な感情を吐露するシーンでは、「市毛さんに気を許しては駄目よ。普段のときだったら、許しはしない。でもいまはこんな時代で、あなたの近くには、市毛さんしかいないんですものね…」と感情で動く里子を想ったセリフも。そして横浜で空襲に遭い、命からがら杉並に逃げて来る叔母・瑞枝(富田靖子)。家族を戦争で亡くした彼女は、母娘のもとに身を寄せる。戦争へ恐れを抱き、絶望しても、生きて行こうとする生命力が強く感じられる女性だ。それぞれ3人の女性について荒井監督は「もちろん満足のいく形ではないけれど、戦争中だって衣食住があり、そして、男女がいればセックスだってしたんです。いままでの戦争映画では、そういう人間の姿が描かれてこなかった。男は死ななくてよかったと歓び、妻子が帰ってくる、と唇を噛むこの映画の主人公・里子のうれしくない戦後に重ねて、私たちの戦後が問えるのではと思った」とコメントを寄せている。また、本作のエンドロールで流れるのは、二階堂さんが朗読する茨木のり子の詩「わたしが一番きれいだったとき」。二階堂さん自身、本作の脚本を初めて読んだときに、この詩が思い浮かんだとのこと。あの時代を生きた少女たちが何を考えていたのか。二階堂さんの声からあふれる想いを劇場で感じてみて。『この国の空』は8月8日(土)よりテアトル新宿、丸の内TOEI、シネ・リーブル池袋ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年07月14日大人の女性たちから熱い支持を集める西炯子の同名コミックスを『軽蔑』『さよなら歌舞伎町』の廣木隆一監督が映画化した『娚の一生』のBD&DVDが7月15日(水) 発売となる。榮倉奈々と豊川悦司による“足舐め”シーンも話題を集めた大人の恋愛映画を撮った廣木監督の口からは、憧れを抱いているという世界的名匠の名前も飛び出した。その他の画像都会生活に疲れ果て、祖母が暮らしていた田舎の一軒家に移り住んだつぐみ(榮倉)と、突然現れ、同居を始めた50代の大学教授、海江田(豊川)。互いに惹かれながらも大人だからこそかえって素直になれない恋愛模様を、風や匂いまで感じさせる映像と、大人ならではのエロティシズムで描き出した本作。「僕はジャンルにこだわらないんです。こだわっているのは、映画だということ。アクションだろうがホラーだろうが、映画を作りたい。その中で、人と人との関係性を見つめて、それぞれの映画にあったテーマを感じてもらいたいんです」と話す廣木監督が、今回選んだのが“大人の恋愛”だった。「日頃から、小説もコミックも人間観察も、常に映画のネタにならないかとアンテナを張っています。西さんの原作も企画の前から読んでいて、大人の恋愛映画が撮りたい!と感じました。原作もの、特にコミックだとキャスティングが問題になったりするけど、榮倉さんと豊川さんに任せて本当によかった。榮倉さんは途中からつぐみが動いているようにしか見えなかったし、豊川さんは海江田のファンタジーでもリアルでもない微妙なバランスを本当に上手く出してくれた」。ファンの間でも特に人気の高い海江田は少々浮世離れしたキャラクターだが、後半、つぐみの元カレが登場してから見せる表情が、それまでとガラリと違ってまた魅力的だ。「女の人たちは、ああいうときに男の人がどんな顔をするのか、どんな気持ちになるのか知らないんじゃないかな。僕と豊川さんは知ってます(笑)。あのときの豊川さんの表情はサイコーですね(笑)」。つぐみと海江田、彼らを取り巻く人々との関係を温かく包み込むような映像も印象的な本作。監督からは次の告白が聞かれた。「僕は成瀬巳喜男監督のような、昔の恋愛映画を撮っていた監督さんたちの作品に強い憧れがあるんです。ああした作品をカラーで観たい。本作には、そういう思いも込められています」。『娚の一生』7月15日(水) 発売ブルーレイスペシャル・エディション5700円+税DVDスペシャル・エディション4700円+税DVDスタンダード・エディション3500円+税発売元:ポニーキャニオン取材・文・写真:望月ふみ
2015年07月13日「小さな頃、ヘレン・ケラーの映画を観ました。まさか私がそのフランスバージョンといえるマリーを演じられるなんて思ってもみませんでした。本当に素晴らしい経験です」。19世紀末のフランスを舞台に、生まれながらに聴覚と視力に障がいを持った少女マリーと、彼女の教育に身を捧げた修道女マルグリットの実話を描いた『奇跡のひと マリーとマルグリット』のマリー役で主演デビューを飾り、来日したアリアーナ・リヴォアールに話を聞いた。その他の写真アリアーナは自身も聴覚にハンディキャップを抱える二十歳の女性。女優志望だったわけではなく、オーディションにも参加していなかった。「学校にオーディションについての張り紙がしてあったのですが、あまり理解できなくて、興味ないわと放っておいたんです(笑)。でもそんな私をジャン=ピエール・アメリス監督が見出してくれました」。アリアーナが強く惹かれたのは「マリーの変化」と「マルグリットとの関係」だった。「マリーは本当に動物のような子でした。まさに野生児。両親との関係もうまく築けていないし、医者からは頭がおかしいと思われている。人生に見放されかけた女の子だったんです。でもラルネイ聖母学院でマルグリットに出会ったことで、彼女はそこから抜けだしていく」。重要だったのは、マルグリットが諦めずにマリーを理解したことだとアリアーナは力説する。「最初、修道院長はマリーを拒否します。でもマルグリットは、マリーには希望があると気づくんです。この子も人生や夢が開かれている子なんだと。そのことを、マリーの手のぬくもりなどから、マルグリットは感じ取ったんですね。そして諦めずにマリーに会いに行き、学校へ連れ帰り、やがてコミュニケーションをとっていく。監督から説明を受けて『マリーをやりたい!』と思いました。そのとき、やはりヘレン・ケラーが頭をよぎりました」。もうひとりのヘレン・ケラー、マリーを見事に体現したアリアーナ。初めて取り組むには肉体的にも精神的にも難しい役柄だったはずだが、アリアーナは次のように言い切った。「大変な役柄ではありませんでしたよ。とてもシンプルなことです。マリーはどんどん進化して、一人前の人間になっていくわけですが、私にとって彼女を演じることはまったく難しいことではありませんでした」。この自信も、本作を観れば納得できることだろう。『奇跡のひと マリーとマルグリット』6月6日(土)シネスイッチ銀座ほかにて全国順次ロードショー取材・文・写真:望月ふみ
2015年06月04日和久井健による同名人気コミックを実写映画化した園子温監督作『新宿スワン』が公開。新宿歌舞伎町を舞台に風俗業界のスカウトマンとしてゼロからのし上がっていく白鳥龍彦役で主演を務める綾野剛と、周囲から尊敬される存在で、龍彦をスカウトして目をかける真虎(まこ)を演じる伊勢谷友介が劇中の役柄と重なる関係性を覗かせた。その他の写真「19歳の役ですよ。僕、撮影当時32歳ですからね。壮大なファンタジーですよ」と自虐的に話してみせる綾野。「龍彦は非常に愛おしい人、みんなに愛される人です」とキャラクターを分析し、あくまでも「自分は役に身体を貸しているに過ぎない。箱と同じです」と断言するが、これが初共演となった伊勢谷が語る綾野には龍彦と共通点があった。「(綾野は)人たらしなんですよ。今の俳優って、いい子ちゃんが多いんです。でも綾野くんはそうでもない。とにかく元気。あれしたいです、これしたいですと言って、年下でも年上でも関係なく、わ~っと巻き込んでくれる。とっぽいように見えるかもしれませんが、実際はそうじゃなくて、みんなに可愛がられるんです」。「可愛がってもらいました」と笑顔で受けた綾野は、「伊勢谷さんは僕たちの世代にとって、ある種のアイコンのような人」と明かしながら次のように触れた。「何をやっても許してくれるんです。分かったよ、剛だからって。たとえば飲んでいて帰るぞってなっても、僕がまだヤダとかってだだをこねると、分かったよって言ってくれる。それも面倒くさがりながら、結局は折れてくれるところが優しいんです」。鬼才と称される園監督の印象も聞いた。「監督が新しいステージに行こうとしている作品なのかなと。監督自身もメジャー映画を撮りたかったとお話ししていますし、この規模だから表現できる方法を諦めていない姿勢を感じて、素晴らしいと思いました」(綾野)、「僕はパフォーマンスアートをやっていたことがあるので、(路上パフォーマンス集団)『東京ガガガ』をやっていた監督とご一緒できることも嬉しく誇りでした。現場で感じたのは、気楽に撮っていると言ったら語弊がありますけど、電車に乗るように映画を撮っているというか。自由なんですよ。そこら辺を歩いていた女の子を監督がスカウトして、数時間後には僕の相手役として映っているなんて不思議な状況もあって、おもしろかったですよ(笑)」(伊勢谷)。『新宿スワン』公開中取材・文:望月ふみ
2015年06月03日四十九日の前日、目の前に死んだはずのヨメが現れた!?実在の闘病ブログから生まれた書籍『がんフーフー日記』(小学館刊)を基に、新たに大胆な設定を加えて映画化した『夫婦フーフー日記』。17年の友だち期間を経て結婚し、子どもに恵まれるも、ほどなくヨメを亡くしたダンナに扮した佐々木蔵之介と、ダンナの前に現れる、闘病の末に死んだはずのヨメに扮した永作博美が共演作を語った。その他の写真闘病ブログの書籍化の話が持ち上がったダンナの前に、ダンナにだけ見えるヨメの幽霊(?)が姿を現し、ともに過ごした日々を振り返りながら、現実を受け止めていく。四十九日に本人が現れると聞くと、突拍子もない設定にも思えるが、佐々木も永作も「違和感はなかった」という。死んだヨメを演じた永作は、「不思議なことが起こっているけれど、出てくるのはフラットでナチュラルな人たちばかり。特別な感じはない。そこも魅力のひとつだと思いました。そうした世界観があったうえで、あ、ヨメが幽霊になって出てくるのか。私、幽霊役なんだと(笑)」と脚本の感想を語り、生きている間も、死に際して残した言葉も、死んでからも、ステキな女性でとても惹かれたとヨメ役を受けた理由を明かす。そのヨメの“存在感”を佐々木は次のように感じた。「幽霊なのにイキイキしてる。撮影のときにも、しっかりと質量のある永作さんのヨメが、(大好きだった)ハンバーガーを頬張っているわけです。こんな力強い、パワフルな幽霊はいないだろうっていう(笑)。やっぱりダンナがヨメを求めていたんだろうと思うんです。そしてヨメのほうも何とかしてやらなあかんという思いがあったから、ぼや~っとした感じではなく、しっかりと存在する幽霊としているんだろうなと。そのしっかりした幽霊だということ自体が、この映画を成立させているのだろうと思いました」。ダンナについては「弱そうに見えるけれど、実は強いんじゃないかなコイツと思いながら、(役を)生きていましたね」と語るそして「自分の出ている映画ってなかなか客観的に観られないんですけど、今回は、劇中で自分たちの過去を見ているのと同じ感じで、割と客観的に完成した作品を観られました」(佐々木)、「あっという間に観てしまいましたね。怒涛のように流れていく時間をはっきりと感じながら、毎日を大切にしようという気持ちになりました。それくらい私も客観的に観られたんですよね」(永作)と振り返り、「いい映画だなって思いました(笑)」と声を揃えた。『夫婦フーフー日記』5月30日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー取材・文・写真:望月ふみ
2015年05月28日80年代後半を舞台にしたラブストーリーにまさかの大どんでん返しが待つ、乾くるみの同名ベストセラー小説を映画化した『イニシエーション・ラブ』。映像化は不可能と言われていたが、メガホンを堤幸彦が執ると聞き、「これはひょっとしたらイケるかも」と感じた人も多いだろう。かつてないラブストーリーに挑んだ松田翔太と前田敦子が、初共演となった互いの印象や現場の様子を語った。ふたりが演じているのは、合コンで出会った静岡に住む大学生の鈴木と、歯科助手のマユ。幸せな愛を育んでいた鈴木とマユだったが、鈴木が就職し、東京に転勤になったことで、関係に変化が生じていく。『エイトレンジャー2』で堤組を体験済みの前田に対し、松田は堤監督と初のタッグとなった。「すごく新鮮でしたね。ロケ地でも監督用のブースがあって、撮ったものをすぐに編集して音もつけて、次の日には前日撮ったものを見ながら、次はこんなニュアンスでとか、とても細かくロジカルに指示してくださる。同時に芝居、感情を重視した撮り方をされるので、本当にバランスがいいんです。監督がボスになってみんなを引っ張ってくれるので、俳優部もスタッフも、みんなが自分のやるべきことがわかる。不安がないし、本当に楽しかったです」と信頼を寄せる。その他の画像前田も「堤監督は、基本的に楽しまなきゃ意味がないというスタンスなので、盛り上げ上手なんです。それで引っ張っていってくれるんです」と頷く。また、本作ならではの撮影法として「顔のアップが多かった。マユは特に多くて、僕がカメラマンの後ろに立って喋ったりしてました」(松田)、「そうそう。ここまでカメラ目線がいっぱいある映画も珍しいよね」(前田)と述懐した。取材中も相性の良さが現れていた松田と前田。「すごく明るいし、本人は人見知りだというけど、まったくそんな感じはしませんでした。スタッフもメロメロでしたね」と前田の素顔を明かした松田は、さらに女優としての印象を「お芝居を跳ねかえしてきてくれて、キャッチボールが上手な人だと感じました。おもしろかったですよ」と称え、前田も「松田さんはすごくスマートな方。お芝居に対しても。だからすごく助かりましたし、受け止めてもらっている感じがありました」とほほ笑んだ。さて、小説版もさることながら、映画版もラスト5分がすごい。必ず2度観たくなるとの宣伝文句も間違いではない、映画ならではの作りに興奮させられる。ふたりも完成作に満足の様子で、最後に前田が身を乗り出すようにメッセージを送った。「全体的に素晴らしいんですけど、とにかくラスト!ラストの松田さんの表情ですべてがわかります!」『イニシエーション・ラブ』5月23日(土)全国東宝系ロードショー取材・文:望月ふみ
2015年05月22日「出来上がりを観て、原田監督は本当に天才だなと思いました」と手放しの感想を漏らす大泉洋。原田眞人監督の『駆込み女と駆出し男』で、大泉は“駆込み女”たちと出会う主人公の“駆出し男”中村信次郎に扮し、圧倒的なスピードのセリフ回しやコミカルさだけでなく、人を包み込むような穏やかな魅力をいかんなく発揮している。本作を「何かを迷っている人にとっては背中をひと押しされる感覚があるんじゃないですかね」という大泉に話を聞いた。その他の写真原案は井上ひさしの時代小説。江戸時代、離縁(離婚)したい妻は、幕府公認の寺・東慶寺に駆込んだ。まず行われるのは離縁調停人による聞き取り調査。御用宿の源兵衛(樹木希林)のもとに居候することになった、見習い医者かつ駆出し戯作者の信次郎は、そこでさまざまな事情を抱えた女たち(戸田恵梨香、満島ひかり)と出会う。原田監督と初めて組んだ大泉は現場を次のように振り返る。「監督はワンシーンを止めずに撮るスタイルなんです。とにかくお芝居の勢いを大事にする。ルールは、どれだけ間違っても芝居を止めないでという点だけ。気持ちが繋がりやすいので、やっていて楽しいですよ。ただ長いシーンの頭から最後までを何回もやる必要があるので、体力的にはキツイですけど(笑)」。かなりの尺を回した感覚があったが、完成した作品を観てビックリしたという。「とにかく展開が速い。セリフ回しも速いし、編集のテンポもすごく速い。まるでジェットコースターに乗っているような感覚。時代劇にそういうイメージがなく、撮影の感覚では、この映画、4時間になるんじゃないかと思うくらいだったんですけど、監督は最初から、2時間ちょっとだと話されていました。編集の妙というんでしょうか。本当に素晴らしくて。美しい景色はゆっくり見せてくれるし、テンポが速いところは畳みかけてくる。その緩急がとっても気持ちよかったですね」と笑みを見せた。自らを、「(舞台挨拶などで)人前に立つからには笑わせたいんですよね。面白いから人前に立っているんだという人でありたいんです。そこはちょっと純粋な役者の方とは考え方が違うかもしれません」と語る大泉洋だが、今や“しゃべり”だけでなく、皆が認める一級の俳優なのは説明不要。むしろ役者・大泉からは笑いというより、人の温かみや“可笑しみ”、さらにはペーソスまでが感じられる。観る者を笑わせ、泣かせ、引き込み、感動させる。その快進撃は留まるところを知らない。『駆込み女と駆出し男』公開中スタイリスト:九(Yolken)、ヘアメイク:西岡達也(vitamins)取材・文・写真:望月ふみ
2015年05月18日KADOKAWA メディアファクトリーは3月27日、『愛の哲学』(柴門ふみ 著/税別1,400円)を発売した。著者は、漫画家・エッセイストの柴門ふみさん。柴門さんは、若者たちの恋愛をテーマにして『東京ラブストーリー』『あすなろ白書』『同窓生―人は、三度、恋をする―』など多くの作品を発表している。それらの作品作りを支えていたのは、柴門さんがお茶の水女子大学の哲学科で学んだ哲学の知識なんだとか。「理性では解決できない人を動かす圧倒的な力、それは愛という不可思議な感情。そしてそれを解き明かすのは『愛の哲学』だった。複雑に絡まりあう人間関係のトラブルは愛の哲学で解決できる」(同書紹介文より)。内容は、「なぜ今、哲学なのか」「年齢別 出会う言葉」「私が出会った哲学の言葉」「特別対談 羽入佐和子×柴門ふみ『なぜ哲学を学ぼうと思ったのですか?』」。愛の正体を読み解くことで、「なぜ、大好きな人に大好きな気持ちが伝わらないのか」「なぜ、あの人といると不愉快な気持ちになるのか」など、気になる人の気持ちが見えてくるという。
2015年04月02日さだまさしの同名曲からスタートした三池崇史監督作『風に立つライオン』が公開となる。これまでにも、さだの小説の映画化『解夏(げげ)』『眉山-びざん-』に出演してきた大沢たかおが、自らさだに交渉し、小説化、映画化へとこぎつけたヒューマンドラマだ。企画と、アフリカのケニアで医療活動に従事する主人公の医師・航一郎役を兼任した大沢と、看護師・和歌子に扮した石原さとみに話を聞いた。その他の画像実在のモデルがいるさだの楽曲とは、また違った物語が展開する映画版。しかし大沢は「曲のエネルギーがここまで育ててくれた」と断言する。そして「映画もお客さんが何かを受け取ってくれる作品になったと思います」と充足した表情を見せる。当初は出演までは考えていなかったそうだが、「航一郎が自分じゃなかったら、すごく嫉妬していたと思います。ほかの人が演じていたら、この仕事を続けられなかったかも。本当にこの役には感謝しています」と並々ならぬ想いを語る。看護師の和歌子を演じた石原は「和歌子は自立した女性。異国の地で、風は強いけれど、それでも航一郎と同じように風に立つライオンでありたかったんだと思います。その生き方が尊くて、愛おしくて。ロケの帰りの飛行機では、無力感のようなものに襲われていたんですが、日本に着いたときには背筋が伸びて、へこたれずに生きて行こうと思いました。和歌子を演じて、そう感じられました」と振り返った。ケニアの地を踏んで初めてわかったことも多かった。「なぜ航一郎がケニアに来たのか。そして終盤の彼の行動…。台本上ではわからないこともありました。でも現地で芝居をしていくうちに、彼の気持ちに気づいていきました(大沢)」「企画もされている大沢さんとの共演ということでプレッシャーもあり、監督に質問したんですが『アフリカに行ったら大丈夫。大沢さんに会ったら大丈夫』の一点張りで(笑)。でも実際にそうでした(石原)」。「一緒にいて楽だった」とほほ笑み合うふたりが、国境も時代も超えたメッセージを届ける。『風に立つライオン』3月14日(土)より全国公開取材・文・写真:望月ふみ
2015年03月13日文化大革命が終結し、20年ぶりに解放された夫(チェン・ダオミン)が自宅へ戻ると、記憶障害に陥った妻(コン・リー)は夫を認識できなくなっていた。巨匠チャン・イーモウ監督が文革期を背景に、ある夫婦の切ない愛の姿を映す『妻への家路』が公開されている。来日した監督に本作の意義や裏話を聞いた。その他の写真“静”の映像によって観る者の心を最後の最後まで激しく揺さぶり続ける『妻への家路』は、『HERO』『LOVERS』といった大作を経た監督が、原点回帰した作品と言われている。「今の中国映画は、どんどん娯楽映画よりになっています。そうした時代に、このような昔のスタイルの映画を撮るのはとても意味のあることでした。それに私たちにとっては忘れられない歴史的事実を、今の中国の若い人は知らない。だからこそ、この映画を今撮る意義はあったと思います。私個人の創作に対する心境という意味でも、再び文芸映画、ドラマ、歴史を撮ったこと、加えて(初期作品の多くを共にしてきた)コン・リーと一緒に撮れたということで、非常に意味深い作品になりました」。本編にはある印象的な画が登場する。夫がすぐそばにいることに気づかず、待ち続ける妻が、夫の名を記したプレートを持って駅へ出迎えに通う場面だ。実は、監督は俳優たちと意見を出し合うことが好きなタイプ。本作でもチェン・ダオミン、コン・リーの意見を積極的に取り入れた。そのうちのひとつが、“プレート”だ。「あれはもともとの脚本にはなかったんです。コン・リーが持っていったらいいんじゃないかと提案しました。それによって、妻が初めに駅でプレートを持つ人々を見つめるシーンや、汚れたプレートを書き直そうとして、妻の病気が進行していると分からせる場面を挿入していったんです」。「この役者たちでなければ考えられなかった」と断言する監督。チェン・ダオミン、コン・リーはもちろん、半年をかけて選び抜き、本作でデビューを飾った娘役のチャン・ホエウェンも大器を感じさせる。胸に刺さるドラマだ。『妻への家路』公開中取材・文・写真:望月ふみ
2015年03月11日蒼井優と鈴木杏主演で、岩井俊二が2004年に発表した『花とアリス』。10代の少女の恋と友情を岩井らしい美しい映像で綴った同作は、いまだ根強い人気を誇る。10年の時を超え、中学時代の花(鈴木)とアリス(蒼井)の出会いを描く前日譚『花とアリス殺人事件』が公開。新たにアニメーションという形で姿を見せる主人公たちに、ふたたび命を吹き込んだ、実生活でも親友同士の蒼井と鈴木に話を聞いた。その他の画像「大好きなふたりの出会いを見られて嬉しかった」という蒼井。続けて「なんだろ、でも前から知っていたといえば知っていたような気もするんですよね。私にとってアリスは親友のようでもあるし、私自身でもあるような不思議な存在なんです」と打ち明ける。鈴木も花は自分にとても近いそうで、「自分の中の花ちゃんに居ますか?ってノックする感じでした。あとは岩井さんがOKというなら大丈夫なんだろうなって」と空白の時間も問題はなかったよう。とはいえ蒼井も鈴木も20代後半。10年も前に自分が実写で演じた役の声を出すことに、通常のアニメ作品とは違う難しさはあった。だが同時に「10代から二十歳前後にやった役って、すっごくおもしろかった。それって役もだけど、あの年代そのものに、特有のまぶしさがあったんだと思うんです。実写では戻れないけれど、声優という形でだったら、まだそうした役ができる」と蒼井は顔をほころばす。そして鈴木は「この10年間いろんなことがあったけど、花とアリスという少女に再会できて、なんだかご褒美みたい。有難いです。優ちゃんとの出会いも含めて」としみじみ語り、「おばあちゃんになって、もう1回やりたいね(蒼井)」「そうだね、おばあちゃんになってね(鈴木)」「花婆とアリス婆で(蒼井)」と笑い合った。『花とアリス殺人事件』2月20日(金)新宿バルト9ほか全国ロードショー取材・文・写真:望月ふみ
2015年02月20日●デビュー当時から変わらない職業観同世代の女優の中でも、ひときわ異彩を放っているのが今年成人を迎えたばかりの二階堂ふみ。2009年に『ガマの油』でスクリーンデビューを飾って以降、毎年数本の映画に出演しているが、特に昨年は『ほとりの朔子』『私の男』『渇き。』『日々ロック』とそれまででは最多となる4作に出演するなど、周囲からの期待と注目は年々高まっている。そんな彼女にとって今年初めて公開される出演作が、大阪・味園を舞台に描かれる『味園ユニバース』(2月14日公開)。二階堂演じるバンドマネージャー・カスミは、記憶を失った男(関ジャニ∞・渋谷すばる)との出会いを通じて、ある変化を感じはじめる。果たして、二階堂自身にとっての「変化」とは? 本人取材でその一面を垣間見ることができた。その証言者の一人となるのが、同作でメガホンを取った山下敦弘監督。同作の舞台あいさつで「沖縄からわざわざ会いに来てくれて」と今から6年前の出会いをうれしそうに振り返っていた山下監督。昨年、共通の知人の結婚式で2人は再会を果たした。その二次会で、二階堂は「ずっと山下さんの隣で営業していました(笑)」と猛烈アプローチ。同作の出演が決まったのは、そんなきっかけだった。このことについて、二階堂は「一緒にやりたい方は全力で行きます。園(子温)さんがおっしゃっていたんですけど、当たり前のことだと。『その人の現場に行きたい』という監督に対してのアプローチは、誰かを通してやるんじゃなくて、自分でやるのが当たり前のことだと思います」と話す。「私にとっては普通でした」とデビュー当時から変わらないことだそうだが、山下監督の目にも6年前の二階堂は「すごく一生懸命」と映っていた。女優としての変化は予想を上回り、「すごい女優。いろんな引き出しを持っている」「がんばっている姿に感動した」と心技両面の成長を肌で感じたという山下監督。二階堂演じるカスミは、大阪生まれの関西弁であることから、山下監督は「すごく苦労したと思う」と想像していたが、本人にとっては演じること自体が「全部、難しい」と受け止めている。そして、「もちろん、関西弁は難しかったですし、でもそれは標準語が簡単とかそういうことではありません。キャラクターへのアプローチの1つのもの」と冷静に捉える一方、「大阪の人が聞いた時に違和感があったら説得力に欠けてしまうので、そうならないように取り組まなければいけないなとは思いました」という覚悟も。全編大阪ロケで、関西弁が飛び交う現場の雰囲気も”役の説得力”の手助けとなったという。●人生で最も大切なものは?今回の取材は、完成披露舞台あいさつ後に行われた。その日の二階堂は昼のイベントに出席し、夕方からの舞台あいさつ前後には同作の取材。現在放送中のドラマ『問題のあるレストラン』(フジテレビ系)も撮影中のため、相当多忙な日々を送っていると思われるが、「そこは大丈夫です」と語る。「忙しいことはいいことだと思いますし。特別自分が忙しいとは…」と本人にとっては大きな問題ではないようで、「作品に入ってバタバタしたりすることはありますけど、終わったらゆっくりする時間もあります」とリラックスした表情を見せる。映画やドラマの撮影に追われていたことから現役での受験は断念。一浪してまで大学にこだわる芸能人は珍しいが、「入ってみないと分からない場所だったので、それで挑戦してみようかと」という思いによる決断だった。大学に進学してよかったことを聞いたところ、「今はまだ在学中なので、それを客観的に考えられるようになるのは、卒業してからだと思います。しばらく時が過ぎ去ってから」。「その時、その時で全力で取り組まないといけないことばかりなので、そういうふうに見つめ直す時間もあまりありません。それはどの作品に入る時にも言えることなんですが、目の前にあることをただ自分の出せる限りの力で取り組むしかないと思っています」と力強い言葉を残した。2011年の第68回ヴェネツィア国際映画祭で、新人賞にあたるマルチェロ・マストロヤンニ賞を染谷将太と共に受賞(『ヒミズ』)した二階堂。その後も、数々の映画賞でその名が上がり、昨年の功績が認められて第39回エランドール賞新人賞、そして、第38回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞(『私の男』)するなど、今では映画界に欠かせない存在となっている。このことについて「うれしいことなのでそれはありがたくいただいて、そういう時はこれからも頑張っていこうという気持ちになります」と素直に喜びながら、「でもそこを意識して作品を取り組んでいるということはありません」と付け加える。「年々、楽しいことが増えていっています。2014年も楽しかったですけど、今年ももっと楽しい良い年にしたいなと思っています。去年は目の前にあることをひたすらやっていました。今年もそういう年になるんじゃないかなと思います」と仕事の向き合い方に変化はないようだが、その言葉からは充実ぶりがにじみ出ている。『味園ユニバース』には、カスミが大切なものを指の本数で表すシーンがある。今の二階堂は、果たして何本の指を立てるのか。「私はカスミとは違って、数え切れないくらいいっぱいあるなと思います(笑)」と数を明かすことはなかったが、その中での一番大切なものを聞いたところ、真っ先にこう答えた。「今も、これまでも、そしてこれからもずっと。一番大切なのは支えてくれている人たちです」。(C)2015「味園ユニバース」製作委員会■プロフィール二階堂ふみ1994年9月21日生まれ。沖縄県出身。12歳の時「沖縄美少女図鑑」に掲載された写真がきっかけとなりスカウトされる。役所広司の初監督作品『ガマの油』(09)でスクリーンデビュー。2011年『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』で映画初主演。そのほかの出演作に『ヒミズ』(11)、『指輪をはめたい』(11)、『悪の教典』(12)、『脳男』(13)、『地獄でなぜ悪い』(13)、『四十九日のレシピ』(13)、『ほとりの朔子』(13)、『私の男』(14)、『渇き。』(14)、『日々ロック』(14)など。今年は『味園ユニバース』のほか、『ジヌよさらば~かむろば村へ~』(4月4日)、『この国の空』(夏)の公開を控えている。
2015年02月13日「観客として、おもしろいものが観たいんですよね。なんか、ドキっとしたいんですよ」。サラリと、しかし確かな意思を感じさせる瞳で語るオダギリジョー。常に野心的な姿勢を貫いてきたオダギリが出演を即決したのが、俳優と(ストップモーション撮影による)人形の“Wキャスト”で話題の3D映画『Present For You』だ。ひとりの登場人物を役者と人形が演じ、ワンシーンの中に人間と人形とが入り混じる摩訶不思議な世界を楽しんだオダギリから伝わってきたのは“モノづくり”へのこだわりだった。その他の写真「パイロット版の映像を見せていただいたとき、『The World of GOLDEN EGGS』の臺(だい)佳彦監督らしい挑戦的でクリエイティブな世界観がすでに出来上がっていたんです。その主演に僕を考えてくれたことがとても嬉しかった。すぐに、やりますと答えてましたね」と笑うオダギリ。扮したのは、新橋にある怪しい健康食品販売会社で、ボス(夏八木勲)から送られてくる袋詰めの人間=プレゼントを処分する裏稼業を任された梶原役。「真面目に考えると、人形を使う意味もわからないし、ある種の馬鹿らしさもある(笑)。でもその馬鹿らしさが好きなんです。『時効警察』を一緒にやった三木聡監督の台本も馬鹿らしいんですよ、すごく。それを大人が一生懸命に作るっていうのが、すごく楽しいんですね。臺監督の世界には、エッジの効いた危険な感じのユーモアがあるし」。制作にあたり、オダギリもかなりの意見を出した。「モノづくりに興味があるので、どうしても関わろうとしてしまうタイプ」だというオダギリにとって、それは本作に限ったことではない。「どんな作品であっても、監督たちと話す中で生まれるものが大事だと考えているし、そこでアイデアを出して表現することが自分の価値だと思っているんです」。あくまでも、モノづくりに携わる手段が役者という道に繋がっているというオダギリだが、そうした姿勢が、彼を特別な俳優にしている。オダギリのモノづくりへのアンテナの冴えは、本作でも健在だ。『Present For You』2月7日(土)新宿バルト9ほか全国3D公開※取材・文・写真:望月ふみ
2015年02月05日三島有紀子監督(『しあわせのパン』)の新作は、仕立て屋のヒロイン・市江と、彼女を取り巻く人々を見つめた『繕い裁つ人』。先代の祖母が作った服の仕立て直しとサイズ直し、祖母のデザインを流用したオーダーメイドを、足踏みミシンで作り続けることに、頑なにこだわる市江に扮した中谷美紀が裏話を明かした。その他の写真原作は池辺葵による同名コミック。映画化にあたり、最初から中谷を主演に考えていた監督は、作品のイメージとしてデンマークの画家、ヴィルヘルム・ハンマースホイのポストカードを中谷に渡した。「実は『スイートリトルライズ』に出演させていただいた折に、矢崎(仁司)監督からもハンマースホイの画集をお預かりしたんです。ふたりの監督が、同じ世界観、空気感を私に求められたというのは、とても不思議な感じがしました」と振り返る中谷。同時にストンと納得できたとも。「この世界観を作ろうとされているのだとの保証書をいただいた感じでした。あとはもう監督を信じれば大丈夫という気持ちになりましたね」。洋服も重要なパートを担う本作。どれも美しい衣装の中で、鎧のようにも映る市江の青い作業服がとりわけ存在感を放つ。中谷はそれを身にまとい、凛としていて芯があり、それゆえ時に頑固ジジイと呼ばれるが、チャーミングな面も持ち合わせる市江そのものとして生きる。さらに本作は変化の物語でもある。特に影響を与えるのが、三浦貴大扮する大手デバートの服飾担当・藤井。「監督はすべてを見せることはしないんです」とほほ笑む中谷が秘話を語った。「藤井の登場はあるシーンで終わっています。でも実際の撮影ではもっと登場シーンがあって踏み込んだ表現になっていました。それを監督は編集でカットなさった。さすがだと思いましたね。観る方に想像の余地を残す。私はとても好きな終わり方です」。カットしたからこそ、より思いが伝わることもある。爽やかなラストに、ふと心が軽く、そして温かくなる。『繕い裁つ人』1月31日(土) 新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー取材・文:望月ふみ
2015年01月30日「撮影の始まる1年前に、ヴァイオリンを受け取って練習を始めていました」と明かす松坂桃李主演の『マエストロ!』。寄せ集めのオーケストラが謎の指揮者と再起にかける本作で、ヴァイオリニストかつ若きコンサートマスターの香坂に扮した松坂と、演技初挑戦にして、松坂や、指揮者役の西田敏行らに囲まれて天真爛漫なフルート奏者あまねを演じた、シンガーソングライターmiwaが「1800円でぜひコンサートに」とPRする同作で互いを称えた。その他の画像さそうあきらの同名コミックを映画化した本作。人間ドラマも深く描かれるが、やはり見どころは演奏シーン。キャスト陣はみな、吹き替えナシで楽器演奏に挑んだ。だからこそ撮れた映像があると松坂は胸を張る。「カメラのついたラジコンヘリを飛ばして引きの画から始めて、そこからクレーン撮影に繋げて、ひとりひとりの演奏が指元までわかる寄りの画を順に撮って、滑らかにまた全体の画に戻る。まるでジェットコースターに乗っているかのような、音楽に合わせてのあの疾走感は、本作だから可能になった画だと思います」。miwaにとってもフルートは初めての楽器。天真爛漫なあまねは「自分に近かった」というが、あまねには阪神淡路大震災で両親を亡くした過去があり、そのことを思い出し涙しながら独奏するシーンも。「小林(聖太郎)監督から阪神淡路大震災の本をたくさんいただいたり、子役の子が演じた5歳のあまねのリハーサルを見せていただいたりして臨みました」と話すmiwaに「とても初めての演技とは思えなかった」と絶賛の松坂。加えて「音楽を奏でることによって発揮される求心力があって、ミュージシャンならではなのかなと思いましたね」と感想を伝えた。照れていたmiwaも「松坂さんが病院でヴァイオリンを弾くシーンがあるんですが、指使いがすごく難しい場面なんです。集中力の高さと、そこにプラスして表情だけで感情を表現されている姿に『すっご~い!』と感動しちゃって、完全に観客になってました(笑)」と告白して松坂を笑わせた。『マエストロ!』1月31日(土)全国公開※取材・文・写真:望月ふみ
2015年01月29日染谷将太主演、前田敦子共演の『さよなら歌舞伎町』が公開中だ。新宿歌舞伎町を舞台に、不器用に生きる人々の1日を映し出す群像劇だ。染谷と前田が演じるのは倦怠期のカップル。『ヴァイブレータ』『やわらかい生活』の廣木隆一監督、脚本の荒井晴彦コンビによるオリジナルの新作とあって、映画ファンからの期待も高い本作に、初共演の染谷と前田も「(出演を)断る理由がなかった」と声を揃えた。その他の画像染谷はラブホテルの店長・徹、前田はプロミュージシャンを目指す徹の彼女・沙耶に扮する。染谷は「絶対におもしろいはずだと思いました。廣木監督と荒井さんの作品ですからね。歌舞伎町が題材だというのも魅力的に思えました。お話しをいただいたときはまだ脚本ができていなかったんですけど、やりたいとすぐにお返事しましたね。出来上がった脚本は愛に溢れていました」と振り返る。前田も「呼んでいただいた時点で、出たいとしか思わなかったです」と同様の答え。さらに「廣木監督の作品にはいろんなタイプがありますが、ピンク映画出身だということは知らなかったんです。それを知ったとき、監督の出発点に近い作品に出られるなんてとさらに嬉しかったです」と続けた。共演の情報が公になった際、「あっちゃんの恋人役!?なんでお前なんだ!と言われました(染谷)」、「現役・元を問わず、AKBのメンバーが羨ましがっていました(前田)」と、周囲にとても羨ましがられたというふたり。共演を経て、「すごくフラットな方で、リラックスしてやらせていただきました」と染谷。前田も「染谷さんがそういうスタンスで、すごく嬉しかった。きっちり話し合いをしなくちゃいけなかったらどうしようと思っていたので(笑)」とここでも意見を一致させた。そして完成した作品に「同世代の女の子にも勧めていきたい(前田)」、「どこか愛おしいと感じさせる人々のお話し。最後には心が温まって清々しい気持ちで家路に着ける映画だと思います(染谷)」と胸を張った。『さよなら歌舞伎町』公開中※取材・文・写真:望月ふみ
2015年01月27日元高校球児が再び甲子園を目指す実在の大会“マスターズ甲子園”を基に人間ドラマを綴った、直木賞作家・重松清による原作の映画化『アゲイン 28年目の甲子園』で、主人公の坂町に扮する中井貴一。実は当初、オファーを断っていたという。そこには俳優、中井貴一のこだわりがあった。その他の画像「野球はやったことがないのでお断りしたんですけど、何度もお声掛けいただきまして。大森(寿美男)監督は見せたいのは人間描写だと。だからお願いしたいと。とても光栄でした。でもたとえば僕はテニスをやっていましたが、ラケットを持った瞬間に、本当にやっているか否か分かるんです」と中井。「僕は映画というフィクションの中で、大きなウソはついても、小さなウソはついちゃいけないと思っているんです。野球の分量がいくら小さくてもそこに現実性がないと全部がウソになってしまう」。中井を動かしたのは、本作の野球監修を務めた元巨人の大石慈昭だった。「中井さんのような人にこそやってもらいたいと。そして『野球に関しては、僕が一切恥をかかせません』と言ってくださったんです」。出演を決意した中井だったが、「恥をかかせないということは、つまり待っていたのは特訓だったわけです」と苦笑い。「炎天下の中で猛特訓しました」。そのかいあって、本編は吹き替えなし。見事なライナーキャッチも披露している。また、中井はタイトルの“アゲイン”の別の意味に触れた。「この作品では子どもとの関係性を見つめ直しています。そこにもアゲインがある。人には、日常の中で常にやり直せるきっかけがある。本作ではそのひとつとして親子関係を描いているのだと思います」。そして現在、53歳となり、俳優生活も30年を超えた中井は「人生の下り坂が見えてくるのが50という年です。これから先の人生、50を過ぎたからこそ、逆に攻撃的でありたいと思っています」と語る。本作での挑戦のみならず、これからも名作を生み出し続けるだろう確信を持った。『アゲイン 28年目の甲子園』1月17日(土)公開※取材・文・写真:望月ふみ
2015年01月16日「コメディができると思ってワクワクしました。この作品はお祭り気分で観ていただけたらいいなって思ってます」とほほ笑む能年玲奈。彼女がクラゲを何より愛するオタク女子・月海 を演じる『海月姫』には、これでもかと漫画的なキャラクターが登場。本作は東村アキコの大ヒットコミックの映画化だ。月海を筆頭に、オタク女子の集まり、その名も“尼~ず”の面々や、女装男子など、原作キャラクターの再現忠実度がハンパないレベルなのである。その他の画像「もちろん漫画と映画では表現が違いますが、原作ものをやる以上、尊重しないと意味がないと思っている」という能年。そして月海の内面に触れる。「月海はすごくナイーブ。自分のことをダメな子だと思い込んでるんです。でも集中し始めると、いろんなことをそっちのけにして好きなことに没頭する。その切り替えがおもしろいと感じましたし、私自身、ひとつのことに集中すると周りがお構いなしになるので…。そういうところは共感できました」。また能年本人にも月海に負けず劣らずのコンプレックスがあるそうで「普段は運動とかもやりたくないし体も張りたくない。でも走ったり泳いだりしているような映像が好きだし、仕事だと頑張れる。そうやって頑張れると気付いたとき、よかったって思いました」と語る。さらに能年は「月海は映画に描かれる出来事を通して、すごく自信がついたと思う。その自信っていうのは、自分ってスゴイという感じより、自分みたいなダメなやつでもすごいことができるんだっていう自信なんじゃないかなって…。そこがすごくいいなって。だから私も頑張ればいいんじゃないかって思うんです」と言い、「“尼~ず”に演技オタクだって言えるくらいになれたらいいな」と、はにかみながらも未来を見据えて宣言した。『海月姫』12月27日(土) 全国ロードショー取材・文・写真:望月ふみ
2014年12月26日『最強のふたり』のオリヴィエ・ナカシュ監督と主演のオマール・シーが、ヒロインにシャルロット・ゲンズブールを迎えた最新作『サンバ』を引っ提げて来日。オリヴィエ監督&エリック・トレダノ監督作へ、短編を含めこれが5本目の出演となるオマールは、本作の企画段階から参加。オリヴィエ監督とオマールが『サンバ』に込めた想いを語った。その他の写真本作でのオマールは印象的な“笑顔”だけでなく、“怒り”や“後悔”など、さまざまな顔を見せる。演じたのはフランスへ来て10年の移民サンバ。ビザを失ったサンバは、シャルロット扮する燃え尽き症候群の女性アリスと出会う。監督は言う。「背景には移民問題がありますが、これはヒューマンドラマ。『最強のふたり』と同様、他人同士が出会って歩み寄れば、希望が生まれることを描きたかった。さらに今回は男女のストーリーでもあります」。そしてオマールとシャルロットを起用してよかったと特に感じたシーンを挙げた。「ガソリンスタンドの中でサンバとアリスが会話をしている5分間ほどの場面があります。ふたりがただぽつぽつと話している何も起こらないシーンにこそ、オマールとシャルロットでよかったと強く感じましたね」。オマールは「サンバは生き延びるためだけに仕事を続けるなかで、アリスは仕事をしすぎて、自分が分らなくなった。理由は違うけれど、共に仕事によって自分を見失ったふたりが出会うことによって自分のポジションが照らされて見えてくる」と解説。そして「アイデンティティは変わっていくものですが、こうした出会いによって取り戻せることもあるのは感動的です。それに、出会いが人生を変える力を持つことについては、僕自身がオリヴィエ監督とエリック監督との出会いで経験しているので、心から信じられるんです」と微笑んだ。本編ラスト手前、サンバがアリスにある思いを打ち明ける。これを受けてのアリスの言葉が、自分を想う人が隣にいることの強さを伝え、心を打つ。『サンバ』12月26日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー取材・文・写真:望月ふみ
2014年12月25日咲坂伊緒のベストセラーコミックを映画化した『アオハライド』が公開。本田翼と共にダブル主演を務めるのは『桐島、部活やめるってよ』での俳優デビューから、2年あまりとは思えぬ活躍を続ける東出昌大。そんな東出が、これまでにない繊細な表情で引きつける本作を振り返った。その他の写真監督は『ソラニン』『陽だまりの彼女』の三木孝浩。東出たちは監督から最初にこういわれた。「(少女漫画が基だからといって)キャラクターっぽさを意識するんじゃなくて、もっと普通の若者らしく行こう」と。結果、東出演じる洸と本田演じるヒロイン双葉の物語を軸に、ただの胸キュンものには終わらない若者たちの“ドラマ”が生まれた。「お前、俺のこと好きなの?」という話題のセリフも、東出は「あれは鎌をかけているわけじゃないんです。洸が生真面目で不器用だからこそ出てきた言葉」と分析。「そういう性格が自然と伝わるから、洸の周りには人が寄ってくるんだと思います」。本作の舞台は富山。だがクライマックスは長崎へと場を変える。撮影期間中、監督はキャストが実際に仲良くなるように敬語禁止令を出した。「その空気感は出ていると思います」と東出もキャストの結束力に自信を見せるが、同時に「富山編を撮っているときは自分自身がすごく辛かった」とも。「洸って嬉しいことがあってもつまらなそうにしたり、気持ちを素直に出さないんです。長崎に行ってからは気持ちが解放されて本当に楽でした」。この苦しさこそ、東出が洸とともにあった何よりの証だ。そしてさらに、自分だからこそ深く共鳴できた気持ちを吐露した。「洸は母親を亡くし、心に傷を抱えています。僕も父を亡くしているので、洸の気持ちは理解できる。もっと何かしてあげられたんじゃないかって。洸の場合は、すべて自分が悪いと抱え込んでしまいますが…。そんな洸の気持ちも想像ではなくて実感として分かった。他の役者さんでも演じられる方は大勢いると思います。でも僕は洸をやれてよかったと思っています」。『アオハライド』12月13日(土)全国東宝系にてロードショー※取材・文・写真:望月ふみ
2014年12月12日1999年から週刊少年ジャンプに掲載され、世界中に熱狂的なファンを生んできた『NARUTO -ナルト-』が、先月、全700話で完結した。2002年からTVアニメシリーズが開始。通算10作目となった劇場版も最終章となる。その名も『THE LAST -NARUTO THE MOVIE-』。アニメ放送スタート時から主人公のうずまきナルト役を務めてきた竹内順子に話を聞いた。その他の画像ストーリー総監修を原作者の岸本斉史が務め、原作コミックの699話と700話を繋ぐ本作。「本当に“ラスト”という言葉にウソ、偽りなしという内容に仕上がっています」とまずは本編の感想を語った竹内。続けて「感動もあれば、卒業式のような嬉しい気持ちと哀しい気持ち、複雑な感情がありますね。でもその複雑さも結論としては嬉しいと思える作品です」と胸の内を明かす。2002年から命を吹き込んできたナルト役。つかんだオーディションには秘話があった。「実は最初は受けていなかったんです。というのも、もともとはナルトの声には男性が想定されていて。でも“だってばよ”のフレーズやあの元気いっぱいな感じは女性のほうが合っているということで、女性にも声がかかった。その最後のほうにお呼びかけしていただきまして」。オーディションには「何がなんでも取る!というか、絶対に決める!」という意識を持って臨んだ。数多くのキャラクターを演じている竹内。しかしここまで強い気持ちを持ったのは、NARUTOの世界観、ナルトの性格に心ひかれたからだと彼女は言う。それほど愛着を持ち、共に成長してきたナルトも劇場版ラスト。「卒業式」と表現した竹内だが初めて恋愛模様が描かれる本作で、「失恋したような感覚」にもなったと告白した。「ナルトも一気に大人の階段を駆け上がっちゃって。完成作を観る前は、親戚のお姉ちゃんみたいな感じで寂しくなるだろうと思っていたんです。でも実際に作品を観たら気持ちが“ず~ん”って下がっちゃって。声を出しているのは私自身なのに(笑)。これって、純粋にナルトに恋していたんじゃないか、普通に失恋したのかもって思いましたね」。『THE LAST -NARUTO THE MOVIE-』12月6日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー取材・文・写真:望月ふみ
2014年12月05日仕事にかこつけて来たハワイで、個性的な人々と出会い大切なものに気づいていくヒロインみのりを榮倉奈々が好演する『わたしのハワイの歩きかた』のDVDとブルーレイが本日より発売。メガホンを執った前田弘二監督(『婚前特急』)に、映画化へのいきさつや監督としてのポリシーを聞いた。その他の画像「ハワイで1本、映画を撮りませんかという何とも大胆なお話しをいただいたんです。それでとにかく元気の出る、ハワイで思いっきり遊び倒す映画を作ろうと思いました」と入り口を振り返った監督。「観光地としてのハワイだけじゃなくて、いろんな面を巡って見せたいなと。それを成り立たせるにはどうしたらと考えたとき、そうだ、観光ガイドの出版社の編集者をヒロインにしてしまえ!と(笑)」と榮倉扮するみのりが生まれた背景を述懐した。女性をメインに描くイメージがある前田監督。さらに結婚式の登場も。「ラブコメに強くこだわっているワケじゃないんですが、男女がぶつかり合って感情があらわになったり、言動の矛盾が生まれたり、駆け引きしたり、嘘と本音、ラブコメというジャンルには人間の可笑しみも含め、様々な機微を描けるから好きです」。そして持論を展開。「映画にはフィクションだからこそ得られる快感がありますよね。たとえば、今回の会社の金を使って遊び倒すなんて普通じゃやっちゃいけないことですよ(笑)。日常には面倒くさいことが多いぶん、せめて映画の中では登場人物は常識に縛られず思いっきり自由でいてほしいなと。映画における登場人物は善良でなければならないという規則はありませんし。人を描くうえで感情のリアリティはとても大事ですが、楽しいウソもつきたいです。感情のリアリティとフィクション、せめぎ合いながらもうまく付き合って、映画としての大きな快感を得たいといつも思っています」。そして次のように結んだ。「本作はおとぎ話的でもあると思うんです。ヒロインは目的なくやけっぱちでハワイへ飛び出すわけですが、そこで様々な人と出会って渡り歩くことで、少しずつ変わっていく。ハワイの空気とともに、その変化を感じ取って日常から抜け出してスカッとしてもらえたら嬉しいです」。『わたしのハワイの歩きかた』Blu-ray&DVD発売中ブルーレイ(1枚組):4800円+税DVD(1枚組)3800円+税発売元・販売元:ポニーキャニオン取材・文・写真:望月ふみ
2014年12月05日本国のみならず世界各国で歴代インド映画興収記録を更新しているアクション・エンターテインメント『チェイス!』がまもなく日本公開されるのを記念し、27日に都内で公開イベントが開催され、インド映画ネタでブレイク中のオラキオ体操クラブの3人と、水沢アリーが登壇した。その他の写真天才トリックスターかつ金庫破りのサーヒル(アーミル・カーン)による警察との攻防を、シカゴを舞台に、ありえないアクロバットと、二転三転のストーリーで見せる『チェイス!』。インド映画ならではの絢爛豪華なダンスシーンも登場する。この超ド級映画の宣伝隊として白羽の矢が立ったのが、『細かすぎて伝わらないモノマネ選手権』で優勝したお笑いユニット、オラキオ体操クラブ。弾丸ジャッキーのオラキオと相方のテキサス、そしてウキウキワクワクのタカギマコトが、得意のインド映画に出てきそうなシーンネタを披露。さらにインド映画にお決まりのエキゾチック美女として、サリー姿の水沢も加わりダンスを決めた。「(噂の彼と)うん、映画も行くよ」と普段通りのあっけらかんトークを繰り広げた水沢は、実はインド映画が嫌いだったとか。「歌の部分とか、多くていらない部分とかあるでしょ」とハラハラ発言。だが「『チェイス!』はすっごいおもしろかった。男の人も筋肉隆々でかっこいいし。インド映画のイメージが変わったね」と絶賛した。また日本でインド映画ブームの火付け役を担った『ムトゥ 踊るマハラジャ』の頃からインド映画に注目して観ていたというオラキオは「僕らは普段、B級インド映画ネタをやってますが、『チェイス!』はハンパないA級、S級っぷりです。『チェイス!』というだけあって、前半はバイクチェイスもすごいですし、後半のドラマタッチも素晴らしいです。ダンスシーンももちろん、ね! 2時間半ありますけど、飽きる瞬間がありません!」と太鼓判を押し、メンバーと「あのバイク欲しい~」と声を合わせていた。『チェイス!』12月5日(金)TOHOシネマズみゆき座ほか全国ロードショー取材・文・写真:望月ふみ
2014年11月27日2015年4月10日(金)より東京・世田谷パブリックシアターで上演される舞台『つながる音楽劇「麦ふみクーツェ~everything is symphony!!~」』の制作発表が11月20日、都内で行なわれ、キャストの渡部豪太、皆本麻帆、脚本・演出のウォーリー木下、音楽監督を務めるミュージシャンのトクマルシューゴが出席した。【チケット情報はこちら】小説家、いしいしんじの作品を舞台化した同作。とある港町を舞台に、先天的な心臓病を抱えている少年「ねこ」の成長と、吹奏楽団を軸に巻き起こる事件を描いている。同公演のチラシには「観客はそれぞれ、一人が一個ずつ、何か音の発するものを持参すること」と書かれており、観客が舞台上の楽団と一体になり、芝居に参加できるというのも見所のひとつだ。主役の「ねこ」を務める渡部は「脚本を読んだときにおもちゃ箱をひっくり返したようなお話だと思いました。また、演出の説明を聞いたときも、同じようなドキドキを感じました。きっとお客様も同じような感覚になってくれるんじゃないでしょうか」と同作の印象を語った。「ねこ」が恋する女の子「みどり色」を演じる皆本は「いしいさんの作品は本当に好きで、この話をいただいた時から毎日いしいさんの作品を枕元に置いて寝ていました。劇中ではピアノを演奏するところがあるのですが、私はまだちょっとしかピアノが弾けないので、これから本番までにしっかり鍛えたいと思います」と決意を述べた。音楽監督を務めるトクマルは「この作品はたくさんの小さなエピソードが段々と繋がっていって、最後に大きな結晶となるのが美しいのですが、それは、それぞれ小さな楽器だけど、それを鳴らすとどんどん繋がって、大きな合奏となる音楽というものと繋がっていると思っています。なので、それを体現できるような音楽を作れればいいなと。また、過酷なんですが、音楽は全編生演奏でやろうと考えてます。舞台の空気が作用して、鳥肌が立つような演奏をお聞かせできるような気がしています」と自信をのぞかせた。ウォーリー木下は「お客様には、ただお芝居を観にいくという感覚ではなく、何を持っていって音を鳴らすか考える、そういう所から楽しんでほしい」とコメント。 また、この日の会見では、クーツェ役に世界的タップダンサーの熊谷和徳が、プロジェクションマッピングを駆使した映像で出演することも発表された。『つながる音楽劇「麦ふみクーツェ~everything is symphony!!~」』は2015年4月10日(金)から19日(日)まで、東京・世田谷パブリックシアター、4月23日(木)から4月26日(日)まで大阪・シアターBRAVA!にて上演。なお、チケットぴあでは一般発売に先がけて最速抽選いち早プレリザーブを実施。受付は11月22日(土)午前11時から28日(金)午前11時まで。
2014年11月21日「女って怖いなって」と口を開いた大島優子。直木賞作家・角田光代のベストセラー小説を、『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督が映画化した『紙の月』の台本を読んでの第一声だ。物語のキーパーソンとなる相川を演じた大島が、監督と作品を振り返った。その他の写真年の離れた大学生と恋に落ち、銀行の渉外係としての立場を利用して巨額の横領事件を引き起こすことになる主婦・梨花。自分が自分でなくなるような、もしくは体の奥底に眠っていた本当の自分を引きずり出す運命の恋。そんな恋愛について「まだ経験はありませんね。恋愛でそれほど左右されるタイプではないので。でもそんな恋に出会えるのなら、落ちてみたいかな」と笑う大島。本作では原作小説には登場しない、ドキリとするような言葉を屈託のない笑顔でぶつけ、梨花を無意識に誘導していく役に扮した。「原作だと銀行の中の描写はそれほど多くないんです。梨花の同級生や昔の恋人が彼女を語ることで梨花という存在を浮き彫りにしていく。一方、映画では梨花が実際に横領に手を染めていくプロセスを画にしたかったので、銀行の場面を増やしました。そのうえで、梨花の葛藤、“揺れ”みたいなものを外側から映し出す存在として、相川と、小林聡美さん演じる隅を登場させたわけです」と監督。「最初は梨花とリンクしているとは思っていなかった」という大島。「現場に入ってから、監督から相川はひょっとしたら梨花自身かもしれない、梨花の中の悪魔としてささやいて欲しいと言われまして。役作りの段階ではそのように考えていなかったので、少し焦りました(笑)。あくどくなく、無邪気、こういう子って現実にいるよなと思ってもらえるように、カラッとしたイメージで演じました」。そして作品は完成。大島が感じ取ったのは当初抱いた“怖さ”だけではなかった。「怖さと同時に美しいんですよね。毒を持てば持つほど。それが毒かどうかも分からなくなってくるし。自由を求める梨花の姿は見ていて気持ちがいいんです。でも男性の場合はどう思うのかな。興味がありますね(笑)」。『紙の月』11月15日(土)全国ロードショー※取材・文・写真:望月ふみ
2014年11月14日