歌舞伎ファンからも、それ以外からも大きな注目を浴びた『新作歌舞伎 風の谷のナウシカ』や、デジタル技術を駆使して新たな可能性を広げた『超歌舞伎』など、意欲的な挑戦を続ける歌舞伎界。3月に上演される『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーⅩ』も、“ナウシカ”を手掛けた尾上菊之助が企画・演出し、“超歌舞伎”を成功させた中村獅童らと共に送る話題作だ。今回、菊之助や獅童の他にも、尾上松也や坂東彦三郎、中村錦之助、坂東彌十郎、中村歌六、そして中村梅枝、中村米吉、中村橋之助といった歌舞伎界をけん引する重鎮から20~40代の人気歌舞伎俳優たちまで、豪華な顔ぶれが揃った。中でも米吉と橋之助は、近年、大役を任されることや外部出演も増え、ますます注目される存在だ。京都・南座では、女方(米吉)と立役(橋之助)として2年続けてコンビを組み、その“美男美女”ぶりが話題となった。ひとたび舞台から降りると絶妙なやりとりを繰り広げるふたりに、本作への意気込みを聞いた。『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーⅩ』扮装メインビジュアル物語の舞台は、巨大な脅威「シン」に人々が怯えて暮らす世界。少年ティーダ(菊之助)は召喚士の少女ユウナ(米吉)に出会い、彼女を援護する仲間たちと旅に出る。水球競技ブリッツボールでの熱戦や、父の盟友アーロン(獅童)との再会により、ティーダたちは「真実」に近づいてゆくが、グアド族の族長シーモア(松也)に追い詰められて……というストーリー。『新作歌舞伎 風の谷のナウシカ』のナウシカ役に続き、今回もヒロインを演じる米吉は、「ストーリーの軸となるのは、やっぱりヒロインのユウナ。女の子らしい可愛らしさはもちろんですが、世界を救いたいという意思の強さや、自分を犠牲にすることもいとわない高潔さなど、さまざまな内面も表現しないといけない。ユウナのキャラクターが魅力的であればあるほど物語の切なさや哀しさが増してくると思うので、そこはしっかり演じたいです」と話す。一方の橋之助は、ブリッツボールの選手兼コーチで、のちにユウナの旅に同行し、「ガード」を務めることになるワッカを演じる。「ワッカは本当にまっすぐな性格で、いつもキラキラ、元気! というキャラクター。でもユウナに対する想いというのが底にはあるので、その対比みたいなところが大切になってくるのかなと思います。あとはあまり『歌舞伎だから』とか考えずに、ワッカらしく舞台に存在できれば……」と言いかける橋之助に、横から「ほとんど(橋之助)本人のキャラじゃない?」と米吉からのツッコミが。橋之助も笑いながら「そうですね、僕、割とワッカぽいところがあるので。似ているところを照らし合わせながら、のびのびと楽しく演じたいですね」と話した。そこで、ふと橋之助が「ユウナのように自分を犠牲にして、仲間には内緒にしたまま敵方へ向かうっていう。確かに正しいのだけど、そこまでしなくてもいいんじゃない? という行動をするヒロインって、歌舞伎の演目ではいましたっけ」と米吉に質問を投げかける。「歌舞伎の女方(の役)っていうのは、愛する男性のためとか、我が子のため、ご主人様のため、という立ち位置で物語が進むことが多いので、ゲームのヒロインのような形はあまり多くないよね。ただ、好きな人のために、あえて何も言わずに行動する、っていうことはあるでしょう。『御所五郎蔵(ごしょのごろぞう)』の皐月(さつき)だって、『伊勢音頭』のお紺だって、その人のためになるならと見せかけの“縁切り”をするわけだし」と話す米吉。続けて、「ユウナの場合はその相手が“人”ではなく、“世界”なんじゃないかな。自分がシーモアと結婚さえすれば、“世界”を救えるのではと考えて」と言う米吉に、「なるほど……」と、すっかり聞き入っている様子の橋之助。「あの、しゃべって、もっと!」と再びツッコミを入れる米吉に、「いや本当にそうだなと思って」と、感心しつつ笑って答える橋之助。期待の若手同士、気安く何でも言い合える間柄というのが伝わってくる。原作ファンの想いを意識しつつ、どれだけ歌舞伎の技法でやっていくか米吉は『ナウシカ』、橋之助は『ポーの一族』など、映画やコミックを舞台化した作品に出演した経験がある。今回のように、いわゆる2次元のキャラクターを生身の人間として演じる際、意識していることはなんだろうか。「普段僕らが立っている歌舞伎の舞台とは、違う怖ろしさがあると感じていますね。歌舞伎の古典であれば、まず先輩に教わるわけじゃないですか。そこには教わった通りにやれるかなという怖さがあるし、お客様は、先輩方や僕と同世代の役者が同じ役を演じたのを観ている方もいるわけだから、比べられることもありますよね。それはやっぱり気にしてしまうし、ある意味怖いことですよ。でも今回のような新作の場合は、原作を好きな方も観に来られるわけで、今度はお客様との対峙なんですよね。皆さんの心の中で、『このキャラクターはこうだ』というのがあるし、ユウナ像にしても『こういう子のはず』っていうイメージがある。そういうファンの方の想いはちゃんと意識して挑まなければいけないな、って思っています」と米吉は語る。中村米吉「でもね」と、米吉は少し考え込むような表情になった。「そこにとらわれすぎてもいけないと思うんです。だって原作の本物のたたずまいにはどうやったって太刀打ちできないでしょう。それなら唯一、私たちが太刀打ちできるのはなんだろうというと、いかに歌舞伎にしていくかということ。いかに歌舞伎の女方として、また立役として、ユウナやワッカという人物を形づくるかということだと思うんです。原作を尊重して、どれだけ原作に近づけるかを意識すると同時に、どれだけ歌舞伎の技法でやっていくのかということも考えないと、“新作歌舞伎”として上演する意味がなくなってしまう。歌舞伎の見得をすればいいとかそんな表面的な部分ではなくて、もっと深いところ。歌舞伎のやり方でファイナルファンタジーをどう表現していくのか、ということが大切なんだと思います。」と米吉は言う。橋之助も「本当にそこですよね」とうなずきながら、「たとえばワッカだったら、ワッカらしい扮装やメイクをして、それらしいセリフ回しや言葉遣いをすれば、まぁワッカに見えるとは思うんですよ。確かに大枠はワッカだなって。でもそれだけだったら、きっと原作を愛するお客様に『見た目はそうなんだけど……なんだか違うんだよなぁ」と思われてしまうと思います。それだけは避けたいし、そうならないようにするにはどうすればいいかって考えると、やっぱり『原作にあるものはなんだろう?』と考えるっていうことですよね。特に今回のような、何十年も愛されているコミックやゲームっていうのは、今ほどいろいろなエンタメがなかった時代に発売されたもの。ファンの方はひとつの本やゲームを大切にして、深く愛して、楽しんでいたわけで。そういう原作ファンの方たちの想いっていうのを絶対に意識しながら役づくりをしないといけないなって思います」と真摯な表情で語った。中村橋之助歌舞伎の古典に新作に、さらにはTVドラマやバラエティ番組にと、さまざまな“舞台”に挑んで、まさに注目度急上昇中のふたり。最後はひとりずつに、「『ファイナルファンタジー』で初めて歌舞伎を観る方に、米吉さん/橋之助さんの舞台での魅力をプレゼンしてください」とお願いしてみた。米吉は、「彼は非常にね、今どき珍しい、男らしい役者さんだなと思うんですよ」と橋之助について語る。「そういう“骨太さ”というか、武張っている(強く勇ましいさま)ところとか、今どきなかなかない魅力なんじゃないかな。男らしいという言葉が使いにくい今の時代ではあるんでしょうが、その男らしさが非常に武器になると思います。え? 最近カッコよくなったって? この方が? いや、それはどうか分かんないけども!」と、褒めながらも最後は辛口で締めるのが米吉らしい。対して橋之助からのプレゼンは、「米吉さんはまず、めっちゃ可愛い」となんともストレート。続けて「普段の頭の良さだったり、歌舞伎への想いとか演者への想い、愛情、優しさ、そういうのが舞台ににじみ出ているんです。すごく魅力的な、大好きな女方さんです」と笑顔で話してくれた。インタビュー後の撮影中も、「ぜひ劇場で、生で観てください! 米吉さんのユウナ、絶対に可愛いと思うので!」と橋之助のプレゼンが続き、うるさそうな表情の米吉に、取材班から笑いが漏れるひと幕も。その言葉通り、魅力的なユウナとワッカの姿を舞台で観られる日が、今から楽しみだ。取材・文:藤野さくら撮影:源賀津己木下グループpresents 『新作歌舞伎ファイナルファンタジーⅩ』2023年3月4日(土)〜4月12日(水)休演日:3月8日(水)、15日(水)、22日(水)、29日(水)、4月5日(水)会場:IHIステージアラウンド東京【開場・開演時間】前編11:30開場/12:00開演後編17:00開場/17:30開演チケット情報はこちら:
2023年03月01日毎年2月20日は『歌舞伎の日』。1607年2月20日に、出雲の阿国という女性が、初めて江戸城で歌舞伎踊りを披露したことに由来しています。歌舞伎の日である2023年2月20日に、Twitter に投稿された、こんな画像が話題です。これは、文房具メーカーのキングジム(@kingjim)が投稿した作品です。江戸時代に活躍した浮世絵師、東洲斎写楽の代表作『三世大谷鬼次の奴江戸兵衛』を再現。浮世絵のモデルになった、歌舞伎役者の三代目大谷鬼次の表情まで、本物そっくりに仕上げていました。非常に再現度の高い、投稿された作品には、驚きの事実が、もう1つ隠されています。作品を、アップで見てみると…。きょうは「歌舞伎の日」。1607年、江戸城で初めて歌舞伎踊りを披露した日。写真は「テプラ」で作った写楽です。 pic.twitter.com/8xMgO4MhiG — キングジム (@kingjim) February 20, 2023 なにやら黒い文字がズラリ!実は、キングジムが販売するラベルライター『「テプラ」PRO』(以下、テプラ)を使って再現しています。テプラでは、入力した文字を専用のテープに印刷し、オリジナルのラベルの作成が可能。キングジムのスタッフは、漢字やカタカナ、記号などを組み合わせ、色の濃淡を生み出しました。その後、出力したラベルを厚紙やボードなどに貼って、浮世絵を完成させています。予想外の方法で、写楽の浮世絵を再現していることに、Twitterには驚く人が続出しました。ちなみに、キングジムのスタッフによると、「写楽の再現は3人がかりで制作し、5時間程度で完成した」とのこと。貼り付けが一番大変で、ラベルが斜めにならないように、気を抜かず集中して作業したそうです。次回作についてうかがうと、「リクエストがあれば、挑戦してみたい」と、いっていました。とても根気のいる作業ですが、今後も『テプラアート』の創作を続けてほしいですね。[文・構成/grape編集部]
2023年02月20日2023年2月8日、歌舞伎役者の片岡愛之助さんが、トーク番組『徹子の部屋』(テレビ朝日系)に出演。19歳の時に襲名した『愛之助』という名前について、当時抱いた素直な思いを語りました。役者を辞めようと思ったタイミングで…もともと、子役としてテレビドラマなどに出演していた愛之助さんですが、当時は役者を続けるつもりはなかったとのこと。8歳の時には、所属事務所の松竹芸能と相談し、役者業の廃業を決めました。しかし、最後の仕事となる予定だった公演で共演していた、人間国宝の二代目片岡秀太郎さんに声をかけられ、歌舞伎役者として生きていくことを決意。一度は辞める予定だった役者の仕事を、続けることにした理由について、次のように話しています。歌舞伎が一番、子供ながらに面白かったですね。役者さんが白塗りをしたりとか、男性が女形の役を務めたりとか、立ち回りでとんぼを返ったりとか、宙吊りで飛んで行ったりすることが、子供にとってテーマパークに来たみたいな感じで、ワクワクして見てますね。それから今までずっと、歌舞伎が一番好きですね。徹子の部屋ーより引用子供の頃に感じた歌舞伎の面白さが、役者を続ける気持ちにつながったとのことです。片岡愛之助「女の子みたいだな」周囲の反応は…?歌舞伎役者として本格的に活動を始めた愛之助さんは、19歳の時に秀太郎さんの養子になります。それまで片岡千代丸という名で活動していましたが、養子になったタイミングで六代目『愛之助』を襲名することになりました。しかし、「初めは『愛之助』という名前が恥ずかしかった」と愛之助さんは語ります。『愛』という漢字から、「女の子みたいだな」という印象を受けたそうです。ところが、『愛之助』という名前に対する、周囲の先輩たちの反応は、愛之助さんが抱いていたイメージと違うものでした。先輩の話によると、先代の五代目片岡愛之助は、高齢者の役をする老け役を主に担当。そのため、先輩の中では、「片岡愛之助=老け役」というイメージがあったとのこと。愛之助さんは、先代について何も知らなかったため、イメージの違いに驚いたそうです。愛之助さんのエピソードに対し、MCを務める黒柳徹子さんは「あなたのところから、若くきれいな人っていうのが」とコメント。黒柳さんが話しているように、これからは「片岡愛之助=若くてきれい」というイメージが、根付くかもしれませんね。[文・構成/grape編集部]
2023年02月15日名作ゲーム『ファイナルファンタジーX』が歌舞伎化。『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』として2023年3月4日(土)から4月12日(水)まで東京・豊洲のIHIステージアラウンド東京で上演される。『ファイナルファンタジーX』が歌舞伎化『ファイナルファンタジーX』は、2001年7月19日に「ファイナルファンタジー」シリーズの第10弾として発売された名作ゲーム。続編を含め全世界2,110万本以上(2022年3月時点)を売り上げる、「ファイナルファンタジー」シリーズ屈指の人気作だ。ゲームの中では、大いなる脅威「シン」に立ち向かう少年と少女の切ない物語が、シリーズで初めて採用されたキャラクターボイスやシーンに応じて表情が変化するフェイシャルアニメーションによって描かれている。尾上菊之助、中村獅童、尾上松也、坂東彌十郎らが出演そんな不朽の名作『ファイナルファンタジーX』が、「NINAGAWA十二夜」「マハーバーラタ戦記」「風の谷のナウシカ」など新しい歌舞伎の舞台を創り出してきた尾上菊之助による企画・演出によって初めて歌舞伎化されることに。出演者には、尾上菊之助をはじめ、中村獅童、尾上松也、中村錦之助、坂東彌十郎、中村歌六といった豪華なキャストが名を連ねる。また、『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』では、<ティーダとユウナの物語><白熱のブリッツボール><異界送り><ラストバトル>など見どころ満載かつ、物語のはじまりから終わりまでを描くため、上演時間は前編・後編通しで、休憩を含め、およそ6~7時間となる予定だ。『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』あらすじ<前編>舞台となるのは、1000年前、突如として姿を現し、破壊を繰り返す災厄ともいえる魔物「シン」に恐怖を抱きながら人々が暮らす世界「スピラ」。そんな「スピラ」に少年・ティーダが迷い込み、そこで可憐で気丈な召喚士・ユウナと出会う。ユウナの目的はただ一つ、「シン」を倒すこと。そのための“究極召喚を手に入れること”であった。ユウナの決意に胸をうたれたティーダは、時を同じくして出会った仲間たちと共に旅にでる。弟の命を「シン」に奪われた兄貴肌の「ワッカ」、その弟の恋人であった黒魔道士「ルールー」、謎に包まれたロンゾ族の少年「キマリ」、ティーダの父の盟友「アーロン」。数々の戦いや出会いの中で、一行は「シン」の“真実”に近づくことに。だがそこにグアド族の族長・シーモアが立ちはだかる。ユウナが手に入れようとしている“究極の力”を利用し、「死」こそ世界を救う、というゆがんだ考えから、スピラを死の螺旋へと導こうとする。ティーダたちの闘いの行方は果たして……。<後編>シーモアの策略はティーダたちをますます追い込んでいく。狡猾なシーモアは、ユウナを誘拐し、彼女を利用するために政略結婚を企てる。それに抗った一同は反逆者の汚名を着せられ、旅の中断を余儀なくされる。絶望し泣き崩れるユウナを見て、ティーダはなんとしても彼女を守りぬこうと決心し、出会った頃から互いに惹かれあっていた二人は秘めた恋心に身を委ねるのであった。一同は決意を新たに、再び「シン」を倒す究極召喚を手に入れるために立ち上がる。だがそこに待ち受けていたのは衝撃の出来事。「シンの正体」「ユウナの運命」そして「ティーダを待ち受けている真実」とは……。登場人物・配役尾上菊之助/ティーダ中村獅童/アーロン尾上松也/シーモア中村梅枝/ルールー中村萬太郎/ルッツ、23代目オオアカ屋中村米吉/ユウナ中村橋之助/ワッカ尾上丑之助/ティーダ(幼少期)、祈り子上村吉太朗/リュック中村芝のぶ/ユウナレスカ坂東彦三郎/キマリ中村錦之助/ブラスカ坂東彌十郎/ジェクト中村歌六/シド脚本に『おちょやん』の八津弘幸、共同演出に金谷かほりなお、『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』の脚本を務めるのは、NHKの連続テレビ小説『おちょやん』や、舞台化も果たした人気ドラマ『家政夫のミタゾノ』など多くのヒットドラマを手掛ける八津弘幸。尾上菊之助との共同演出には、『ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー』やB’zのドームツアーなどを手掛けてきた金谷かほりが名を連ねる。IHI ステージアラウンド東京のラストシーズン企画として上演なお、本作品の会場となる客席が360度回転する劇場・IHI ステージアラウンド東京は、2017年のオープンから7年の歴史に終止符を打つことが決定。ラストシーズンを飾る超大型企画としてIHI ステージアラウンド東京で初の歌舞伎『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーⅩ』を上演する。公演概要『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』上演期間:2023年3月4日(土)~4月12日(水)休演日:3月8日(水)、15日(水)、22日(水)、29日(水)、4月5日(水)前編:11:30開場、12:00開演後編:17:00開場、17:30開演会場:IHIステージアラウンド東京住所:東京都江東区豊洲6-4-25主な出演者:尾上菊之助、中村獅童、尾上松也、中村梅枝、中村萬太郎、中村米吉、中村橋之助、尾上丑之助、上村吉太朗、中村芝のぶ、坂東彦三郎、中村錦之助、坂東彌十郎、中村歌六、尾上菊五郎(声の出演)※中村歌六、中村錦之助、尾上丑之助は後編のみの出演となる。<チケット情報>■前編・後編通し(全席指定)チケット料金:SS席 32,000円(非売品オリジナルCGビジュアルアクリルスタンド付)、S席 28,000円(非売品オリジナルCGビジュアル公演ポスター付)、A席 24,000円、B席 19,800円■前編/後編(全席指定)SS席 18,000円、S席 16,000円、A席 14,000円、B席 11,000円※非売品特典グッズは付かない。<備考>※SS席、S席の非売品特典グッズは観劇日当日、劇場内で引き渡す。※未就学児童は入場不可。※やむを得ない事情により出演者等が変更になる場合がある。※車椅子での来場予定者はチケット(SS席)を購入後、観劇日の2営業日前までにステージアラウンド専用ダイヤルまで要連絡。付き添い人が観劇する場合もSS席チケットが必要になる。車椅子スペースには限りがあるため、購入した座席で観劇する場合もある。※劇場の構造上、場面によっては入退場できない場合がある。※営利目的によるチケットの転売は禁止。※公演内容・開演時間等が変更となる可能性がある。※申込み完了後、申込み内容の変更はできない。購入したチケットは、公演中止・延期等の場合を除き、払戻の対応はできない。公演が中止になった場合には、公式HPにて払戻方法を告知する。
2023年02月06日2月2日(木)から25日(土) にかけて歌舞伎座で上演される「二月大歌舞伎」より、『船弁慶』の特別ポスターが公開された。『船弁慶』は新歌舞伎十八番のひとつで、能の「船弁慶」を題材とした松羽目物の舞踊劇。ひとりの俳優が前半では静御前の愁嘆の舞、後半では平知盛の霊の迫力を見せる、という女方と立役の踊り分けがみどころとなっている。今回の公演では、父・五世中村富十郎の十三回忌追善狂言として中村鷹之資が『船弁慶』に挑む。公開された特別ポスターには、愛しい源義経との別れを決意する静御前と一族を滅ぼした義経への恨みを晴らそうとする知盛の霊の対照的な姿が写し出されている。また、右上には舞台を見守るかのように富十郎の写真が配され、静と知盛を通して富十郎の姿も舞台上に浮かび上がってくるかのような追善公演に相応しい1枚となった。本ポスターは初日より歌舞伎座ほかにて掲出される。<公演情報>歌舞伎座「二月大歌舞伎」第二部『船弁慶』2023年2月2日(木)~25日(土)公演公式サイト:
2023年01月31日歌舞伎夜話特別編『歌舞伎家話』の第22回が、2月1日(水) 20時より配信されることが決定した。2020年5月よりスタートした『歌舞伎家話』は、歌舞伎俳優が出演する、歌舞伎史上初のオンライントークショー。歌舞伎を中心に様々な芸能やエンターテイメントにまつわるトークが展開されている。今回は片岡仁左衛門が約1年ぶりに出演し、昨年を振り返ってのエピソードと、今年の公演に向けた意気込みなどを語る。なお聞き手は前回と同じくアナウンサーの中井美穂が務める。視聴チケットは現在発売中。なお配信終了後、2月7日(火) までアーカイブ配信される予定だ。<配信情報>歌舞伎夜話特別編『歌舞伎家話』第22回2月1日(水) 20:00~配信開始※2月7日(火) 23:59までアーカイブ配信あり。出演:片岡仁左衛門聞き手:中井美穂(アナウンサー)詳細はこちら:
2023年01月25日毎月シネマ歌舞伎を映画館で上映する《月イチ歌舞伎》の2023年ラインナップが決定。今回は新作として、宮藤官九郎作・演出の新作歌舞伎『唐茄子屋 不思議国之若旦那(とうなすや ふしぎのくにのわかだんな)』が加わった。今年10月、11月と約4年年ぶりに浅草の地に復活した平成中村座にて上演された、 宮藤官九郎作・演出の『唐茄子屋 不思議国之若旦那』は、古典落語に不思議の国のアリスを織り交ぜた奇想天外な新作歌舞伎だ。10月に公演された舞台を撮影し、シネマ歌舞伎にて上映する。宮藤官九郎はこれまでにも、シネマ歌舞伎にもなった『大江戸りびんぐでっど』(作・演出/平成21年歌舞伎座)をはじめ、渋谷・コクーン歌舞伎『天日坊』(脚本/平成24年、令和4年)、六本木歌舞伎『地球投五郎宇宙荒事(ちきゅうなげごろううちゅうのあらごと)』(脚本/平成27年)などの歌舞伎作品を手がけてきた。今回4作目として誕生したのが本作 『唐茄子屋 不思議国之若旦那』。NHK大河ドラマ『いだてん』でもタッグを組んだ中村勘九郎とともに、平成中村座では初めてとなる新作歌舞伎の上演に挑戦した話題の舞台が、シネマ歌舞伎として2024年1月5日に全国公開される。『唐茄子屋 不思議国之若旦那』(C)松竹2023年で現在の歌舞伎座が新開場10周年を迎えることにちなみ、前の歌舞伎座の閉場までを追ったドキュメンタリー『わが心の歌舞伎座』を上映 。さらに2023年11月に生誕150年を迎える文豪・泉鏡花の世界を玉三郎が描く4作品『天守物語』『海神別荘』『高野聖』『日本橋』を一挙上映。その他、勘三郎、玉三郎、仁左衛門ら豪華共演の『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』、世界で絶賛された玉三郎の代表作『鷺娘/日高川入相花王(さぎむすめ/ひだかがわいりあいざくら)』、三島由紀夫作の恋物語『鰯賣戀曳網(いわしうりこいのひきあみ)』他 、 バラエティに富んだラインナップで、2023年4月から2024年2月まで計13作が上映される。『籠釣瓶花街酔醒』(c)松竹月イチ歌舞伎2023のチラシ・ポスターの掲出と、特別鑑賞券「ムビチケカード」3枚券の販売は、上映映画館他にて1月6日(金)より開始。歌舞伎座、新橋演舞場、南座、大阪松竹座では、各1月公演初日より掲出・ 販売される。なお、着物の通販サイト「いち利モール」とコラボし、毎月の上映作品に合わせた着物コーディネートを募るコンテス トの開催や、歌舞伎座名物「めでたいやき」が当たるキャンペーンも実施。応募方法等の詳細は、後日シネマ歌舞伎公式HPにて発表される予定なので、ぜひチェックしてみてはいかがだろうか。《月イチ歌舞伎》2023上映ラインナップ『わが心の歌舞伎座』(C)岡本隆史■4月7日(金)~13日(木)『 わが心の歌舞伎座 』出演:十二世市川團十郎、尾上菊五郎、片岡仁左衛門、坂田藤十郎、中村勘三郎、中村吉右衛門、七世中村芝翫、中村富十郎、中村梅玉、坂東玉三郎、松本白鸚 ほか歌舞伎俳優総出演■5月5日(金・祝)~11日(木)『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』出演:中村勘三郎、坂東玉三郎、片岡仁左衛門 ほか■6月9日(金)~15日(木)『鷺娘/日高川入相花王(さぎむすめ/ひだかがわいりあいざくら)』出演:「鷺娘」坂東玉三郎/「日高川入相花王」坂東玉三郎、尾上菊之助 ほか■7月28日(金)~8月3日(木)『鰯賣戀曳網(いわしうりこいのひきあみ)』作:三島由紀夫出演:中村勘三郎、坂東玉三郎 ほか■8月18日(金)~24日(木)『スーパー歌舞伎 ヤマトタケル 』作:梅原猛脚本・ 演出:市川猿翁出演:市川猿之助、市川中車 ほか■9月29日(金)~10月5日(木)『野田版 桜の森の満開の下』作・演出:野田秀樹出演:中村勘九郎、松本幸四郎 、中村七之助 ほか■10月20日(金)~11月2日(木)泉鏡花生誕150年記念『海神別荘(かいじんべっそう)』作:泉鏡花出演:坂東玉三郎、市川團十郎 ほか『高野聖(こうやひじり)』作:泉鏡花出演:坂東玉三郎、中村獅童、中村歌六■11月3日(金・祝)~16日(木)泉鏡花生誕150年記念『天守物語(てんしゅものがたり)』作:泉鏡花出演:坂東玉三郎、市川團十郎、中村勘九郎、 中村獅童、 片岡我當 ほかグランドシネマ『日本橋』作:泉鏡花出演: 坂東玉三郎、高橋惠子、松田悟志、永島敏行 ほか■12月1日(金)~7日(木)『法界坊(ほうかいぼう)』演出:串田和美出演:中村勘三郎、中村芝翫、中村勘九郎、中村七之助、坂東彌十郎、中村扇雀 ほか■2024年1月5日(金)~25日(木)新作『唐茄子屋 不思議国之若旦那(とうなすやふしぎのくにのわかだんな)』作・演出:宮藤官九郎出演: 中村勘九郎、中村獅童、中村七之助、荒川良々、片岡亀蔵、坂東彌十郎、中村扇雀 ほか■2024年2月9日(金)~15日(木)『歌舞伎 NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉』作:中島かずき演出:いのうえひでのり(劇団☆新感線)出演:松本幸四郎、中村勘九郎、中村七之助 ほか【鑑賞料金】・各作品 一般 2,200円、学生・小児1,500円・特別鑑賞券「ムビチケカード」3枚セット 5,700円(上映映画館、メイジャーで1月6日(金)より発売。歌舞伎座、新橋演舞場、南座、大阪松竹座では各1月公演初日より販売)シネマ歌舞伎公式サイト:
2022年12月21日独立行政法人日本芸術文化振興会主催、「初代国立劇場さよなら公演」令和5年初春歌舞伎公演『通し狂言 遠山桜天保日記-歌舞伎の恩人・遠山の金さん-』が2023年1月3日 (火) ~2023年1月27日 (金)に国立劇場 大劇場(東京都千代田区隼町4-1)にて上演されます。チケットはカンフェティ(運営:ロングランプランニング株式会社、東京都新宿区、代表取締役:榑松 大剛)にて発売中です。カンフェティにて12月5日(月)19:00よりチケット発売開始 公式ホームページ 未来へつなぐ国立劇場プロジェクト「初代国立劇場さよなら公演」竹柴其水=作尾上菊五郎=監修国立劇場文芸研究会=補綴令和5年初春歌舞伎公演『通し狂言 遠山桜天保日記-歌舞伎の恩人・遠山の金さん-』(とおやまざくらてんぽうにっき)国立劇場美術係=美術<序幕>第一場 河原崎座楽屋の場第二場 隅田川三囲堤の場<二幕目>成田山内護摩木山の場<三幕目>第一場 花川戸須之崎政五郎内の場第二場 山の宿尾花屋の場第三場 大川橋六地蔵河岸の場<四幕目>第一場 新潟行形亭座敷の場第二場 同庭先の場<五幕目>北町奉行所白洲の場<大詰>河原崎座初芝居の場遠山金四郎尾上菊五郎生田角太夫尾上松緑尾花屋小三郎 後ニ 祐天小僧小吉尾上菊之助角太夫女房おもと中村時蔵ほか主催=独立行政法人日本芸術文化振興会「日本博」参画プロジェクト公演概要「初代国立劇場さよなら公演」令和5年初春歌舞伎公演『通し狂言 遠山桜天保日記-歌舞伎の恩人・遠山の金さん-』公演期間:2023年1月3日 (火) ~2023年1月27日 (金)会場:国立劇場 大劇場(東京都千代田区隼町4-1)■公演スケジュール※カンフェティ取扱対象公演1月04日(水) 12:001月05日(木) 12:001月09日(月・祝) 12:001月12日(木) 12:001月17日(火) 12:001月20日(金) 12:001月23日(月) 12:001月24日(火) 12:001月27日(金) 12:0012時開演 (午後4時終演予定)※開場時間は開演45分前の予定です。※この公演には休憩がございます。■チケット料金1等席12,000円 (学生 8,400円)2等席8,000円 (学生 5,600円)3等席3,500円 (学生 2,500円)(全席指定・税込)※3等席に限り、予約開始初日は、お一人様1ステージ2枚までの購入に限らせていただきます。※出演者などの変更の場合はご了承ください。<カンフェティ取扱チケット>先着限定!1等席:12,000円(税込)→10,800円(税込) 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年12月06日歌舞伎界の次代を担う若手が大役に挑む“登竜門”として愛され続けてきた「新春浅草歌舞伎」が3年ぶりに開催されることになり、記者会見が行われた。尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村隼人、中村橋之助、中村莟玉の8名が出席し、それぞれに意気込みや思いを語った。コロナ禍でここ2年、開催が見送られていたが、来年は1月2日より浅草公会堂にて3年ぶりに再始動。「双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき) 引窓」で幕を開け、巳之助、新悟の「男女道成寺(めおとどうじょうじ)」、第2部では「傾城反魂香(けいせいはんごんこう)」、松也(親獅子)と莟玉(仔獅子)による「連獅子(れんじし)」が上演される。松也は3年ぶりの開催について「(コロナ禍を受けて)『浅草での公演を見送りたい』というお話があった時はショックでした。僕が筆頭となって任せていただくようになって、最初にみんなで話し合ったのが『僕らにこうやってつないできていただいた先輩方のためにも、僕らの代で「新春浅草歌舞伎」がなくなってしまうことがないように、後輩にバトンを渡せるようにやっていこう』ということでした。尾上松也(中央)(2度の開催見送りで)このままなくなっちゃうんじゃないかという不安が頭をよぎったこともありました」と心情を吐露し「ようやく今回、できるのが嬉しいですし、出来なかった2年間も歌舞伎座の序幕で“浅草”の冠を背負ってできたことが大きな経験になっています。この2年間に『意味があった』と感じながら、思いを舞台に乗せて務めていきたい」と意気込みを口にする。中村歌昇歌昇は7回目の「浅草歌舞伎」となるが「ずっと播磨屋のおじに教えをいただいてきました」と昨年亡くなった中村吉右衛門の存在に言及。特に吉右衛門との思い出深いエピソードとして2020年の「絵本太功記~尼ケ崎閑居」での思い出として「舞台稽古に来ていただいた時、化粧が全然よくなかったようで『筆を持ってこい』と言われ、客席で顔を直していただいたのを覚えています」と明かし「(教えは)財産です。お芝居に対しての取り組み、お役だけにあらず、役者としてどう生きていくべきか、たくさん教わりました。『よく見て、よく遊び、学びなさい』という教えを守りながら、播磨屋を汚さないように覚悟を持ってやっていきたい」と吉右衛門の逝去後、初めての浅草歌舞伎への強い思いを語った。中村橋之助橋之助は「引窓」で濡髪長五郎を演じるが「父(芝翫)も務めてきたお役で、父に『教えてほしい』と言ったら『ちゃんと教えてあげるからな』と喜んでいたので楽しみです」と笑顔を見せていた。「新春浅草歌舞伎」は2023年1月2日より24日まで、東京・浅草公会堂にて上演。取材・撮影・文:黒豆直樹<公演情報>『新春浅草歌舞伎』2023年1月2日(月・祝)~2023年1月24日(火)『新春浅草歌舞伎』チラシビジュアル(表)第1部午前11時~第2部午後3時~【休演】9日(月・祝)、19日(木)劇場:浅草公会堂
2022年12月02日今も不朽の名作と語り継がれているゲーム『ファイナルファンタジーX』(以下、『FFX』)。その世界に惹かれ、歌舞伎にしようと考えた男がいる。歌舞伎役者・尾上菊之助である。このゲームの大きな魅力である映像美を活かしながら、どう歌舞伎にしていくのか。新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』も成功させた役者は、自信を持ってこの挑戦に臨んでいる。きっかけはコロナ禍、攻略本を読んで気づいた歌舞伎との相性の良さ──『FFX』を新作歌舞伎にしようと思われた経緯から、まずお聞かせください。きっかけはコロナ禍でのステイホームでした。私の場合、2020年3月の国立劇場の公演が無観客での配信になり、そこから7月まで歌舞伎の公演がなくなってしまいました。先行きが見えず気持ちが落ち込んでいたときにステイホームでゲーム需要が高まっていることを知り、小学生の頃によくやっていたゲームをもう一度プレイしようと思いました。そして、ロールプレイングゲームで最も心に残っていた『FFX』をもう一度やり始め、攻略本を読んだときに思ったんですね。これはもしかしたら新作歌舞伎になるのではないかなと。──そう思われたポイントは?『FFX』はとにかく脚本が素晴らしいんです。まず、巨大な脅威「シン」を倒すべく、ヒロインのユウナ(中村米吉)と仲間たちが力を合わせて戦っていくという物語に、いつの時代にも通じる人間の普遍的なテーマがあります。さらに、ヒロインだけでなく、彼女を支える主な6人の人物も、葛藤を抱えて生きていることが細かく描かれている。それぞれのキャラクターがその葛藤をどう乗り越えて成長していくか。感情のターニングポイントがキャラクターごとにあるので、歌舞伎にしたときに各場に見どころができると思いました。なおかつ、ストーリー展開も、途中で逆転劇が起きるという衝撃がある。物語の中に多くの感情ドラマがあり、『FFX』を知らない方がご覧になっても感動できて、楽しんでいただけるのではないかと思いました。『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』オリジナルCGキービジュアル──新作歌舞伎にするにあたっては、連続テレビ小説『おちょやん』(NHK)、『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日)などヒットドラマを手がけておられる八津弘幸さんが脚本を担当されることになりましたが、そのもともと見事だったゲームのシナリオに、さらにどんな工夫がなされているのでしょうか。例えば、巨悪であるシーモア(尾上松也)というキャラクターが抱えている父親との葛藤も、ゲームでは回想シーンでしか描かれていませんが、今回はそこを八津さんが深く掘り下げてくださっているので、よくわかっていただけるのではないかと思います。──そして、菊之助さんと一緒に演出を担当されるのが、『ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー』(2016年)やB’zのドームツアーなどを手がけられた金谷かほりさんです。客席が360度回転するIHIステージアラウンド東京で上演にするにあたって、どんな演出にしようとされていますか。今は、美術の堀尾幸男先生が作ってくださった模型を前に、東西南北4つのステージを脚本のどの場面に使うのか、落とし込んでいく作業をしているところです。高さ8メートルのスクリーンに何を映すかということも、金谷さんが一場一場、絵コンテを描いてくださっていて。ゲームやイベントで使われた映像を投影しつつ、観ているお客様も、あたかも自分が『FFX』の世界に入っているかのような感覚になるのではないかと思っています。そこに、もちろん歌舞伎的な手法も取り入れていきます。──その映像などのゲームの世界と歌舞伎との融合は、どのようにやっていこうと考えておられますか。長編歌舞伎なので、これまで培ってきた歌舞伎の演技体が生きる脚本であり演出でありたいと思っています。舞踊や立廻り、歌舞伎独特の台詞回しなどを活かしながら、映像や4面ある舞台をどう効果的に使っていくかが見どころになります。その融合のバランスは場面によって少しずつ変わっていくことになると思うのですが、歌舞伎役者の身体を活かしつつゲームの世界観が堪能できる作品を作り上げたいと思っています。今の人の心に届く新作歌舞伎が未来の古典になる──ビジュアルは、ゲームのキャラクターに近いものになるのでしょうか。先日、メイクとカツラと衣装のフィッティングをしたんですけれども、かなりゲームのキャラクターを想起させる素晴らしいものが出来上がっております。ただ、ゲームそのままというわけではなく、歌舞伎テイストを加えておりまして。松竹衣裳の松本勇さんが歌舞伎で使っている和の素材を入れてより美しく見えるようにしてくださっています。歌舞伎は豪華な衣装も見どころのひとつなので、歌舞伎の古典の知恵とゲームのキャラクターの融合も楽しみのひとつとしてぜひ観ていただきたいなと思います。──新作歌舞伎では、菊之助さんは最近では、『風の谷のナウシカ』(2019年)を手がけられました。その経験も活きていますか。それはありますね。「ナウシカ」を作っていたときに、歌舞伎に寄せてしまうと「ナウシカ」の味が消えてしまい、でも「ナウシカ」に寄せてしまうと歌舞伎の良さが消えてしまうという試行錯誤があったので。バランスを探るにあたっては、「ナウシカ」の経験がとても力になっています。──その『ナウシカ』の他にもこれまでに、『NINAGAWA 十二夜』(2007年)、『マハーバーラタ戦記』(2017年)など、ご自身の企画・構想で新しい歌舞伎の舞台をつくってこられました。その原動力はどこにあるのでしょう。そもそも歌舞伎の古典も、それができた当時は、その時代を生きているお客様に届くものをと歌舞伎役者たちが考えて生まれた新作です。先人たちがしてきたように、今を生きている私たちも今の人に届く新作歌舞伎を作り、それが未来に残って古典になることが、先人へのご恩返しだと思っていますので。その思いが私の大きな原動力になっています。──古典として残っていく作品にするには、何が大切だと思われていますか。名作と言われているものには、やはり普遍的なテーマがあります。登場人物が様々に葛藤を抱えていて──今回も、シーモアがなぜ巨悪になってしまったのかというところを丁寧に描こうと思っているのですが──、そして、人が大事にしなければいけない心情がきちんと描かれている。「里見八犬伝」に“仁義礼智忠信孝悌”という12個の玉がありますが、その中でも私は、仁義礼信は特に普遍的なテーマであると思っています。──この『新作歌舞伎FFX』は、まさしくその要素を持っていると。そう思っています。心に刺さる名台詞が多いので、役者が演じるたびに深みを増していくと思います。何より、お互いに協力し合って困難に立ち向かっていき、どんな壁が立ちはだかってもあきらめずに前へ進んでいく主人公たちの姿勢は、コロナ禍の今にはなおさら響き、これから先も力となる、まさに普遍的なものだと思います。ユウナを演じる中村米吉にシーモア尾上松也ら魅力的なキャスティング──企画・演出のみならず、もちろん出演もされます。ヒロインのユウナを支えるティーダを演じられますが、演じ手としての意気込みも聞かせていただけますか。ティーダは、最初何も知らずにユウナを元気づけているのですが、この可憐な少女が自分が犠牲になる覚悟で戦いの旅に出ていることに途中で気づき、自分の力で世界を変えたいと思うその純粋な心に惹かれていきます。彼もまた、彼女の暮らす世界を変えたいと思うようになります。そんなふたりの人を思いやる素晴らしさを、深く丁寧に演じていきたいですね。──ユウナを演じられる米吉さんは、2019年の『風の谷のナウシカ』でご一緒されていて、その前半部分をもとに皇女クシャナに焦点を当てて今年7月に上演された「上の巻 ―白き魔女の戦記―」では、菊之助さんがクシャナを、米吉さんがナウシカを演じられました。どんな印象をお持ちですか。以前から古典でも素晴らしい役者さんだなと思っていたのですが、最初の『ナウシカ』でケチャ役に向き合われるクリエイティブで真摯な姿勢を拝見して、再演するときのナウシカは米吉さんしかいないと思いました。そして再演のときも新作に対する心構えが素晴らしく、同時進行でこの『FFX』の話も進んでいたので、ユウナは米吉さんにと心から思いお願いしました。他の皆さんも、金谷さんからキャスティングがみんなハマってますねと嬉しいお言葉をいただいたので、久しぶりにご一緒する(中村)獅童さんや、迫力あるシーモアになりそうな(尾上)松也さんなど、歌舞伎役者がゲームのキャラクターになり、演じるのを楽しみにしていただきたいですね。──ちなみに、お話を伺って、『FFX』を知らない人も楽しめる工夫をされていることがよくわかりましたが、何か予習をしてから劇場に行ったほうがいいでしょうか。歌舞伎の古典も、歌舞伎を初めてご覧になる方でも、物語のあらすじをある程度わかっていればお芝居を楽しんでいただけると思いますが、同じくこの『FFX』も、ざっくりとあらすじがわかったうえで観ていただけると、より楽しんでいただけるとは思っています。公式ホームページにあるあらすじを読んで来ていただけければ、必ず楽しめるしつらえになっておりますので。ぜひ劇場にお運びください。取材・文=大内弓子<公演情報>『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』2023年3月4日(土)~4月12日(水) 東京・IHIステージアラウンド東京※休演日:3月8日(水)、15日(水)、22日(水)、29日(水)、4月5日(水)開演時間:前編 12:00 / 後編 17:00(予定)『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』キービジュアル企画:尾上菊之助脚本:八津弘幸演出:金谷かほり尾上菊之助【出演】ティーダ役:尾上菊之助アーロン役:中村獅童シーモア役:尾上松也ルールー役:中村梅枝ルッツ役、23代目オオアカ屋役:中村萬太郎ユウナ役:中村米吉ワッカ役:中村橋之助リュック役:上村吉太朗ユウナレスカ役:中村芝のぶキマリ役:坂東彦三郎ブラスカ役:中村錦之助ジェクト役:坂東彌十郎シド役:中村歌六公式HP:
2022年11月09日歌舞伎の公式有料動画配信サービス「歌舞伎オンデマンド」の海外に向けての配信が、11月1日よりスタートした。本サービスは、歌舞伎や日本文化に興味関心があるものの新型コロナウイルス感染症拡大により来日が叶わない海外在住の方々に向けたもので、将来における歌舞伎の普及を世界へ広げていくことを目的としている。サービス開始時の配信地域は、オーストラリア/カナダ/フランス/ドイツ/イタリア/スペイン/台湾/イギリス/アメリカの世界9カ国。なお専用ページは松竹運営の英語による歌舞伎の情報サイト「KABUKI official website」に設置されている。配信ラインナップは、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場の100周年記念のガラコンサートなど、数々の海外公演でも大喝采を浴びた、坂東玉三郎の代表作を撮影したシネマ歌舞伎『鷺娘』(2005年5月 歌舞伎座上演)、歌舞伎の様式美に溢れ、荒事の演技が堪能できる『菅原伝授手習鑑 車引』(2010年1月 歌舞伎座上演)、河竹黙阿弥の七五調の名ぜりふが心地よい世話物の人気作『弁天娘女男白浪』(2010年3月 歌舞伎座上演)の3作品。各演目は英語字幕または英語副音声つきで楽しむことができる。<配信情報>「歌舞伎オンデマンド」海外配信ラインナップ①シネマ歌舞伎『鷺娘』2005年5月 歌舞伎座価格:1,091円 ※英語字幕あり出演:坂東玉三郎②『菅原伝授手習鑑 車引』2010年1月 歌舞伎座価格:800円 ※英語副音声あり出演:七世中村芝翫、二世中村吉右衛門、松本幸四郎(現・松本白鸚)、五世中村富十郎③『弁天娘女男白浪』2010年3月 歌舞伎座価格:1,000円 ※英語副音声あり出演:尾上菊五郎、二世中村吉右衛門、市川左團次、中村梅玉、松本幸四郎(現・松本白鸚)※配信演目は順次追加予定※販売価格に対して各クレジットカード会社にてマークアップフィーが4.7%追加で発生いたします。配信期間:11月1日(火) 12:00~2023年10月31日(火)(JST)※『鷺娘』のみ配信終了日未定視聴期間:ご購入後7日間視聴可能 ※期間中は何度でも視聴可能配信地域:オーストラリア/カナダ/フランス/ドイツ/イタリア/スペイン/台湾/イギリス/アメリカ※上記の9カ国以外(日本含む)からはご購入・ご視聴いただけません。※ご購入の際には、本ページの各コンテンツのリンクから動画視聴サイト(「MIRAIL(ミレール)」)へ移動後、会員登録(メールアドレスの登録等) / ログインが必要です。※PCのみ視聴・購入可能。ご視聴環境・決済方法をお確かめの上、ご購入ください。※決済には3Dセキュアに対応した海外発行(日本国外)のクレジットカードが必要となります。詳細はこちら:
2022年11月03日令和4年11月歌舞伎公演『歌舞伎&落語 コラボ忠臣蔵』が、11月2日から25日にかけて東京・国立劇場 大劇場で上演されることが決定した。多彩な伝統芸能の上演により、芸能の振興と技芸の伝承に取り組んできた国立劇場。令和4(2022)年9月から令和5(2023)年10月まで、「初代国立劇場さよなら公演」と題して、開場以来の集大成となる、未来へつなぐ記念公演が上演される。記念公演の第二弾となる今回は、 “歌舞伎&落語 コラボ忠臣蔵”と銘打ち、国立劇場ならではのジャンルを超えた特別企画をお届け。中村芝翫が約30年ぶりに早野勘平(はやのかんぺい)を演じる、義太夫狂言三大名作の一つ『仮名手本忠臣蔵』の五段目「山崎街道鉄砲渡しの場」「山崎街道二つ玉の場」と六段目「与市兵衛内勘平腹切の場」、また落語家・春風亭小朝による「忠臣蔵」にちなむ落語二席「殿中でござる」「中村仲蔵」を楽しむことができる。さらに、11月10日・18日・24日の18時30分からは、夜公演として『コラボ忠臣蔵☆エッセンス☆』が行われる。こちらは『仮名手本忠臣蔵』の五段目「山崎街道二つ玉の場」と六段目「与市兵衛内勘平腹切の場」、落語パートは「中村仲蔵」が披露される。<公演情報>令和4年11月歌舞伎公演『歌舞伎&落語 コラボ忠臣蔵』11月2日(水)~25日(金) 東京・国立劇場 大劇場※11月7日(月)・16日(水)・23日(水・祝) は休演※11月17日(木) は貸切【演目】■落語一、『殿中でござる』ー太神楽ー二、『中村仲蔵』■歌舞伎『仮名手本忠臣蔵』二幕三場五段目「山崎街道鉄砲渡しの場」「山崎街道二つ玉の場」六段目「与市兵衛内勘平腹切の場」夜公演:コラボ忠臣蔵☆エッセンス☆■落語『中村仲蔵』■歌舞伎『仮名手本忠臣蔵』二幕五段目「山崎街道二つ玉の場」六段目「与市兵衛内勘平腹切の場」【出演】落語:春風亭小朝歌舞伎:中村芝翫、中村松江、中村歌昇、中村梅花、市川笑也、市村萬次郎、中村歌六 ほか【料金】(各部・税込)1等席:10,000円(学生7,000円)2等席:8,000円(学生5,600円)3等席:3,500円(学生2,500円)※障害者の方は2割引です(他の割引との併用不可)■コラボ忠臣蔵☆エッセンス☆1等席:9,000円(学生6,300円)2等席:7,000円(学生4,900円)3等席:3,000円(学生2,100円)詳細はこちら:
2022年10月20日『芸術祭十月大歌舞伎』が10月4日に東京・歌舞伎座で開幕。その初日レポートが到着した。芸術祭と冠しての3年ぶりの開催となる10月公演。中村梅玉らが出演し、芸術の秋に相応しい多彩な演目が届けられた。第一部は、能「紅葉狩」をもとに萩原雪夫が創作した歌舞伎舞踊『鬼揃紅葉狩(おにぞろいもみじがり)』。平成6(1994)年12月に三代目市川猿之助(現・猿翁)が新たな工夫を加え上演し、「三代猿之助四十八撰」の一つに数えられる作品だ。幕が開くと、舞台は紅葉が美しい秋真っ盛りの信濃国戸隠山。従者を連れて紅葉狩にやってきた平維茂(松本幸四郎)が、美しい姫君更科の前(市川猿之助)に出会い、維茂たちは誘われるままに盃を重ねていく。更科の前が艶やかな舞を披露すると維茂とともに観客もうっとりと心を奪われる。やがて維茂がまどろんでしまうと、様子をうかがっていた姫たちは鬼女に豹変し…。舞台に神女八百媛(中村雀右衛門)が登場するとスッと空気が引き締まりどこか神聖な雰囲気が漂った。第一部『鬼揃紅葉狩』左より、更科の前実は戸隠山の鬼女=市川猿之助、平維茂=松本幸四郎後半は維茂たちと鬼女とのダイナミックな立廻りが展開。更科の前に付き従う侍女たちも全員が鬼女となり後半の激しい戦いに参加するこの演出は本作ならでは。大量の紅葉の葉が舞い散る中、猿之助演じる迫力満点の鬼女と、幸四郎演じる凛々しい維茂との立廻りに目が釘付けとなった。能の高雅さと歌舞伎舞踊の華麗さを融合した、澤瀉屋の家の芸に相応しい変化に富み勢い溢れる一幕に劇場は大いに盛り上がった。第一部『鬼揃紅葉狩』左より、鬼女=尾上左近、中村鷹之資、従者碓氷三郎=市川青虎、従者小諸次郎=市川猿弥、鬼女=中村種之助、更科の前実は戸隠山の鬼女=市川猿之助、鬼女=市川門之助、平維茂=松本幸四郎、鬼女=市川男寅、中村玉太郎続いては、『荒川十太夫(あらかわじゅうだゆう)』。「赤穂義士外伝」の一つで、講談師で人間国宝の神田松鯉が得意とする講談の名作を新作歌舞伎として上演。松鯉や神田伯山とも親交のある尾上松緑が荒川十太夫を勤める。舞台は十太夫が介錯をつとめた、赤穂義士堀部安兵衛(市川猿之助)の切腹の回想場面から始まり、物語の展開に深くかかわる印象的な場面から一転、舞台は赤穂浪士の七回忌の墓参に多くの人が行きかう泉岳寺に。十太夫は下級武士に似合わしくない身形で登場し、偶然居合わせた松平家目付役の杉田五左衛門に咎められ…。松平隠岐守邸奥庭の場面では、松緑演じる十太夫の苦悩を滲ませつつも武士としての覚悟を感じる姿、絞り出すような熱のこもったセリフ一言一言が人々の心を揺さぶる。そして舞台上の緊迫感が劇場空間を埋めると、観客は固唾をのんで十太夫の物語を見守った。第一部『荒川十太夫』左より、荒川十太夫=尾上松緑、泉岳寺和尚長恩=市川猿弥講談の『荒川十太夫』について「初めて聴いたとき、目の裏に映像がぼんやり浮かんできて、聴き終わる前にこの作品を歌舞伎にしたいと思った」と取材会で語るほど本作への熱い思いを秘めた松緑。「それぞれの登場人物が意味をもち、全員の心のうねりで一つの物語をつくれるようにしたい」という言葉の通り、講談では一人の人間が演じていた様々な役をそれぞれの俳優が演じることで想いが重なり合い、物語が新たな形をもって立体的に舞台上に立ち上がった。新作ではありつつ、まるで古典作品のような味わいを感じさせる充実の舞台に大きな拍手が送られた。客席に笑顔があふれた第二部第二部は、『祇園恋づくし(ぎおんこいづくし)』で幕を開けた。日本の三大祭の一つ「祇園祭」を背景にした本作。今年7月に大阪松竹座で中村鴈治郎の大津屋次郎八/大津屋女房おつぎ、松本幸四郎の指物師留五郎/芸妓染香の配役で一人二役の早替りにて上演された本作が、早くも同じ配役で歌舞伎座に登場する。第二部『祇園恋づくし』左より、大津屋女房おつぎ=中村鴈治郎、指物師留五郎=松本幸四郎幕が開くと舞台は京都の茶道具屋。主人の次郎八(鴈治郎)から祭見物に誘われ逗留している江戸の指物師留五郎(幸四郎)は持ち前の江戸っ子気質に加え、言葉も違う京都は居心地が悪いと江戸に帰ろうとしてしまう。次郎八が出かけたかと思うと、女房おつぎの姿に早替りした鴈治郎がすぐに登場し場内には拍手が巻き起こった。続く岩本楼のお座敷の場面では、男前な留五郎から一変、芸妓染香の姿で登場した幸四郎に拍手が。染香にぞっこんの次郎八が情熱的に口説く様子と、何とかその場を乗り切ろうと逃げ回る染香の様子が客席の笑いを誘う。最大の見どころでもある次郎八と留五郎のお国自慢の場面では、風情ある京都の川床を舞台に流れるようなセリフの応酬が次々と繰り出された。第二部『祇園恋づくし』左より、指物師留五郎=松本幸四郎、大津屋次郎八=中村鴈治郎鴈治郎が取材会で「京都の祇園祭の風情などが東京の方々にも伝われば」と語った通り、京の香り漂う芝居を披露し、「その芸術的な笑いに感激した」と語った幸四郎は「“言葉”で皆様の気持ちを(京都と江戸で)あちこち揺さぶることを目標に」という言葉の通り、巧みに人々の心をつかんだ。舞台全編を通してどこからともなく聞こえてくる祇園祭の音色も心地よく、明るく賑やかな空気の中、穏やかな笑いに包まれた一幕となった。続いては、松羽目物の舞踊『釣女(つりおんな)』。ユーモラスな内容の中に松羽目物らしい味わいが求められる演目だ。常磐津のゆったりと重厚な音が心地よく響く中、舞台に登場したのは太郎冠者(尾上松緑)と大名某(中村歌昇)。二人は妻を持とうと縁結びの神と名高い西宮の戎神社に参拝する。大名は釣竿をさげると、早速世にも美しい上臈(市川笑也)を吊り上げる。これを見た太郎冠者は、自分も美しい妻を娶りたいと釣竿をさげるが…。第二部『釣女』左より、醜女=松本幸四郎、太郎冠者=尾上松緑太郎冠者と大名二人の可笑しみ溢れるやりとりに客席からは絶えず笑いがこぼれ、太郎冠者の釣り上げた醜女(松本幸四郎)はそのこしらえが笑いを誘うが、愛嬌のある純真な心をもった様子が愛おしく、どこか品格も感じられた。松緑演じる太郎冠者が醜女から逃げ回る様子は面白み満載の場面。終始客席に笑顔があふれる第二部となった。第二部『釣女』左より、醜女=松本幸四郎、太郎冠者=尾上松緑、大名某=中村歌昇、上臈=市川笑也中村梅玉が27年ぶりに光源氏を勤める『源氏物語 夕顔の巻』第三部は、『源氏物語 夕顔の巻(げんじものがたり ゆうがおのまき)』で幕を開けた。紫式部が著した「源氏物語」は日本最古のラブストーリーとも言われ、小説や漫画、映像化など現在でも人気を誇る。今回上演するのは平成7(1995)年9月に初演された光源氏、夕顔、そして六條御息所、三人の思いが交錯し展開する舞踊劇「夕顔の巻」。正妻の葵上と馴染めず、心の安らぎを他の女性に求める日々を送る光源氏は六條に住む御息所のもとへ通っていたある日、夕顔が咲く家にひっそりと住む女に心惹かれていく。舞台は仲秋の名月の夜。光源氏(中村梅玉)は惟光(片岡市蔵)を供に連れ、意中の夕顔の屋敷にやってくる。ただそこに存在するだけで気品あふれる源氏の姿に、客席からはため息が。月の光に幻想的に照らされる中、出迎えた夕顔(片岡孝太郎)が光源氏から与えられた装束を身にまとい舞を披露すると観客はさらに物語の世界へいざなわれる。二人が連舞を舞う中、舞台は清涼殿に。怪しげな気配と共に六條御息所(中村魁春)が現れ、嫉妬の念に支配されながらも品格を損なわない六條御息所の洗練された姿が強烈な印象を残した。やがて六條御息所は姿を消すが…。第三部『源氏物語』左より、夕顔=片岡孝太郎、光源氏=中村梅玉、六條御息所=中村魁春27年ぶりに二度目となる光源氏を勤める梅玉は「今また貴公子を演じられることに喜びを感じる」と久々の光源氏役への思いを明かした。「生霊が出て来る話を舞踊劇で華やかに見せるのが、歌舞伎の良さ。風情を楽しんでほしい」と語る通り、華やかさと気品を損なわずに展開される幻想的な一幕に拍手が送られた。続いては、世話物の傑作『盲長屋梅加賀鳶』。河竹黙阿弥が五代目尾上菊五郎のために書き下ろした作品で、今回は悪事を重ねる按摩の道玄を軸とした物語。中村芝翫が初役で竹垣道玄を勤める。按摩の道玄は人殺しもいとわない悪党で、平然と人を手にかけ立ち去るが、途中で煙草入れを落としてしまう。それを拾ったのが加賀鳶の頭・松蔵(中村梅玉)。様式美で魅せるこの場面が後の物語に大きく影響していく。第三部『盲長屋梅加賀鳶』左より、女按摩お兼=中村雀右衛門、竹垣道玄=中村芝翫場面は盲長屋へと移り、舞台にはどこか薄暗いじっとりとした空気が流れる。按摩たちの可笑しみあるやり取りや、道玄のふてぶてしさが際立つ。しばらくして、姪のお朝の奉公先への強請を思いついた道玄は、言いがかりをつけて金を出させようとするが…。第三部『盲長屋梅加賀鳶』左より、女按摩お兼=中村雀右衛門、竹垣道玄=中村芝翫、伊勢屋与兵衛=市川左團次、日蔭町松蔵=中村梅玉「長屋でどうにかその日を生きる江戸の人々の世界に、現代のお客様をお誘いしたい」と意欲を見せる芝翫は、ずっと憧れていた作品だと話す本作で悪の魅力を存分に発揮し、人々を惹きつける。道玄が次第に図太い本性を現していく様子や、心地よいせりふ、闇のなかで探り合うユーモラスなだんまりなど、目にも耳にも楽しく、江戸の市井に生きる人々の息吹を感じる舞台に、芸術の秋を堪能できる『芸術祭十月大歌舞伎』の初日となった。『芸術祭十月大歌舞伎』は10月27日まで上演中。『芸術祭十月大歌舞伎』の詳細はこちら:チケット購入リンク:写真提供:松竹(株)※無断転載禁止
2022年10月05日歌舞伎のステージだけでなく、高い演技力や存在感で映画やドラマでも活躍する歌舞伎界のスターたち。しかし、女性問題などのスキャンダルで注目を集めることも少なくない。そんな彼らへの世間の印象はどのようなものなのか。本誌はクロス・マーケティングのQiQUMOなどを使い、282人にアンケート調査を実施。好きな歌舞伎役者、嫌いな歌舞伎役者をランキング化した。果たして好きな歌舞伎役者ランキングで1位の栄冠に輝いたのは一体――。まず、第5位は六代目 片岡愛之助(50)。“ラブリン”の愛称で親しまれる愛之助。NHK大河『真田丸』での冷静沈着な大谷吉継から、ドラマ『半沢直樹』(TBS系)ではオネエ口調で強烈な印象を残した黒崎駿一を演じるなど幅広い演技力を評価する声が。「ドラマなどでもインパクトのある役柄を見事に演じている姿がいい」「よくテレビで拝見するので」「歌舞伎役者としてというよりテレビで見るイメージになってしまうのですが親しみやすさが好きです」また、「紀香さんが幸せそう」「奥様の藤原紀香さんともども、好感が持てる」のように16年に結婚した藤原紀香(51)との夫婦関係に好感を抱く人もいた。第4位は十一代目 市川海老蔵(44)。コロナ禍で約2年の延期という憂き目にあったものの、ついに今年11月から市川團十郎の襲名披露興行を行うことに。歌舞伎界屈指の大名跡を継ぐ者として、注目を集め続けてきた海老蔵だけに、「男前。ガタイも大きいし、見栄えがよい」「新しい事にもどんどん挑戦していく姿勢が憧れます」と評価する声が。また、妻の小林麻央さんをがんで喪って以後、役者業に邁進するかたわら長女・麗香ちゃん(11)と長男・勸玄くん(9)の子育てに奮闘する姿に感動する声も少なくなかった。「過去は色々ありましたが、麻央さんと結婚されて勸玄くんや麗香ちゃんの子育てをしっかりしていらっしゃるのをSNSで日々拝見し、見方が変わりました」「ゴシップもあるが2人の子どもへの接し方や歌舞伎への姿勢や努力を知って応援しているから」「子育てをしながら歌舞伎の普及に尽力している」第3位は十代目 松本幸四郎(49)。松本白鸚(80)を父に持ち、立役から女方までこなすことから「品がある」「演技力、表現力にたけている」と歌舞伎役者としての能力を絶賛する声が相次いだ。また、劇団☆新感線の舞台やドラマ『プライド』(フジテレビ系)といった話題作にも数多く出演したことや、歌舞伎界への取り組みを評価する人も。「声が素敵で、ドラマなどでの演技も大好きだから」「人として信頼できる」「信頼できるその人柄。 コロナ禍で歌舞伎界をはじめ世の中が真っ暗であった時に、真っ先に立ち上がり、『歌舞伎家話』『図夢歌舞伎』のオンライン配信を立ち上げ(2020年5月確か)、また7月には工夫を凝らして歌舞伎座の興行再開に尽力するなど、歌舞伎界を鼓舞し牽引した、熱いハートと行動力」第2位に選ばれたのは、六代目 中村勘九郎(40)だ。早逝した中村勘三郎さん(享年57)の長男として幼少期から密着番組で成長を見守られるなど、日本中から愛されてきた。最近ではNHK大河『いだてん』で主役の金栗四三を演じ、昨年の東京オリンピックの聖火ランナーでは最終ランナーも務めるなど、まさに日本を代表する役者に。好意的な声が多かった。「芝居も上手く存在感がある。またご家族を大切にされていて、とても誠実なお人柄がうかがえるから」「誠実そうな人柄で誰にでも優しく接してくれそうなイメージだからです」「バラエティー番組に出演されていた時爽やかな印象で面白かったので」「まだ勘三郎さんの芸には至らずだと思いますが、見得や、顔の動き、表情には独特の魅力があり、元々の素顔も凛々しくて、男らしく、うちは両親も娘も息子も弟も、家族全員、勘九郎さんが大好きです」そんな“国民的俳優”の勘九郎を1票差で抑えて1位に輝いたのは、なんと香川照之(56)。先日、19年7月に銀座の高級クラブで働く女性ホステスの服の中に手を入れて、精神的ショックを与えていたことが報じられたばかり。一連の性加害報道によって、金曜MCを務めていた『THE TIME,』(TBS系)を降板し、CM契約も次々と失うことに。45歳で市川中車を襲名するなど、歌舞伎役者としては異例の遅いデビューだったが、それまで映画やドラマで培ってきた圧倒的な出演実績と知名度が大きく影響したようだ。「多才でおもしろい」「嫌なイメージは特にない。今回の報道も、当人同士で決着がついているのに外野がほじくるのが理解できない」「半沢直樹の大和田常務が好き」また、「カマキリおじさんすき」「存在感があり頭がよい」といったように、性加害報道によって過去回が放送中止となった『香川照之の昆虫すごいぜ!』(NHK)での“カマキリ先生”としての活躍など、知的な面を推す声もあった。歌舞伎役者にいちばん求められるのは知名度ということなのかも?【好きな歌舞伎役者ランキング】(回答:2022年9月6日~9月11日)1位:香川照之(31票)2位:六代目 中村勘九郎(30票)3位:十代目 松本幸四郎(29票)4位:十一代目 市川海老蔵(28票)5位:六代目 片岡愛之助(22票)6位:二代目 中村獅童(16票)7位:八代目 市川染五郎(13票)8位:五代目 坂東玉三郎(12票)9位:四代目 市川猿之助(11票)9位:二代目 中村七之助(11票)
2022年09月24日歌舞伎俳優によるオンライントークショー『歌舞伎家話』第17回に、市川染五郎と市川團子が出演することが決定した。今回の配信は、「弥次喜多」シリーズの最新作として歌舞伎座で上演された新作歌舞伎『東海道中膝栗毛 弥次喜多流離ー譚(やじきたりたーんず)』が歌舞伎オンデマンドで配信されることを記念した特別編。主役の弥次郎兵衛・喜多八を演じた松本幸四郎、市川猿之助の活躍はさることながら、「陰の主役」である伊月梵太郎と五代政之助をそれぞれ12才(染五郎)・13才(團子)から足掛け7年をかけて演じた染五郎、團子の活躍・成長ぶりは目覚ましく、同シリーズは彼ら二人の役者としての成長絵巻とも言える。今回の『弥次喜多流離譚』では、御家が没落して不良になってしまった伊月梵太郎を染五郎が、梵太郎の幼馴染であり家臣の五代政之助を團子が演じた。また、今回は二人とも女方にも挑戦し、見事な早替りと劇中で繰り広げられた「ダンスバトル」で観客を魅了。今回のトークでは、舞台の感想はもちろん、7年間同役を演じ続けてきた二人だからこその舞台への想いが語られる。■市川染五郎 コメント弥次喜多シリーズ初演から伊月梵太郎を勤めさせていただいています。純真無垢な若殿様が、暴走族の総長になるとは6年前を思うと想像もしていませんでしたが、次回はどうなるのか、はたまた次回があるのかどうかさえ想像できない所もこのシリーズの好きなところです。その弥次喜多シリーズのお話を中心にお話しできればと思いますので、限られたお時間ですが、ぜひお楽しみください。■市川團子 コメント皆さま、こんにちは。市川團子でございます。今回、戸部さんと染五郎さんと歌舞伎家話にてお話できる機会をいただけたこと、本当に嬉しく思っています。今回は久しぶりの舞台での弥次喜多の公演ということや、初の本格的な女形への挑戦ということもあり、色々な思い出のある一カ月となりました。舞台でのお話はもちろん、舞台裏のことについても楽しくお話させていただければなと思っておりますので、ご覧いただけたら嬉しいです。<配信情報>『歌舞伎家話』出演者:市川染五郎 / 市川團子聞き手:戸部和久(松竹演劇部 /『東海道中膝栗毛 弥次喜多離流譚』脚本)配信日時:2022年9月8日(木) 20:00~(約70分)※生配信詳細はこちら:『歌舞伎オンデマンド』2022年9月9日(金) 12:00~9月29日(木)※3週間限定配信(購入時より7日間視聴可能)■視聴料金『東海道中膝栗毛 弥次喜多流離譚』本編:3,300円(税込)※『東海道中膝栗毛 弥次喜多流離譚』本編&イヤホンガイド『Web講座』セット販売も同時配信詳細はこちら:※ご購入・ご視聴には歌舞伎オンデマンド連携の配信プラットフォーム「MIRAIL(ミレール)」の会員登録(無料)/ ログインが必要です。
2022年09月05日福岡・博多座、愛知・御園座を巡演した『超歌舞伎2022 Powered by NTT』が、8月21日に東京・新橋演舞場で開幕。これを受けて行われた会見に、出演者の中村獅童、小川陽喜、澤村國矢が登壇した。2016年の「ニコニコ超会議」で誕生した『超歌舞伎』は、獅童ら歌舞伎俳優とボーカロイド(バーチャルシンガー)の初音ミクが最新技術のもとで競演する新趣向の歌舞伎公演。これまで千葉・幕張メッセといったイベント会場を中心に有観客上演がなされてきたが、今年は歌舞伎を上演する劇場進出と同時に4都市ツアーも果たす。博多・名古屋公演を「一公演一公演、僕らにとって戦いでした」と振り返った獅童。「これまでイベント(ニコニコ超会議)の一部だった演目が、歌舞伎の劇場に進出する。サブカル好きの若者に喜んでもらうだけでなく、歌舞伎を昔からご覧になっている古典好きのファンに納得していただけるクオリティを目指しました」「演技法・化粧・衣装はすべて伝統的な古典にこだわり、バーチャルとのコントラストがくっきり出るように工夫して」と胸を張る。その結果、客席には初音ミク推しの観客に加えて古典歌舞伎ファンの姿も。獅童は「法被をお召しになっている熱狂的なミクさんファンの存在を心強く感じて『この方に倣ってペンライトを振ってください!』とお手本になってもらう場面もありました」と笑う。ただ終演後に土産としてペンライトを購入する歌舞伎ファンがいたらしく、獅童は「上演中に振って一緒に盛り上がるからこそ楽しい」「ペンライトのご購入はぜひ開演前に」と目配せすることも忘れない。1月の『壽 初春大歌舞伎』にて初お目見得となった陽喜は、芝居のどんな点が楽しいか問われると「立ち回りです!」と元気に回答。獅童はその様子を温かく見守りつつ「衣裳は仁王襷(におうだすき)にお化粧も“むきみ隈”という隈取りで、劇中には見得を切る動作もあって。陽喜の大好きなものが詰まっているから毎日楽しく取り組んでいます」と日常を明かすだけでなく、「失敗したら楽屋で自主稽古していると聞いて成長を感じました」と目を細めた。また「永遠花誉功(とわのはなほまれのいさおし)」のみ上演の「リミテッドバージョン」で主演を務める國矢は「博多・名古屋での盛り上がりを受け自信をもってこの新橋演舞場でも務めさせていただきます」「獅童さんのパワーに喰らいついていく所存です」と意気込む。獅童は國矢を「新しい『超歌舞伎』の世界で生まれたスター」と紹介し、「がんばれば道が拓けることを体現し、後進のお手本になってくれたら嬉しいですね」と期待を込め、エールを送っていた。東京公演は9月3日(土)まで。その後、9月8日(木)~25日(日)に京都・南座へ巡演する。チケット販売中。取材・文:岡山朋代
2022年08月24日漫画家・みなもと太郎一周忌、伝説的漫画の歌舞伎化作品株式会社リイド社(所在地:東京都杉並区、代表取締役社長:齊藤哲人)刊行『風雲児たち』(みなもと太郎)を歌舞伎化した『三谷かぶき 月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと) 風雲児たち』(作・演出:三谷幸喜)のシネマ歌舞伎が、2022年8月12日より全国の映画館で再上映されます。『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』2020年シネマ歌舞伎で歌舞伎化、そして2022年8月全国の映画館で再上映決定!2019年、『風雲児たち』の愛読者である三谷幸喜作・演出のもと、歌舞伎化された舞台『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』が歌舞伎座で上映。鎖国中の江戸時代、ロシアに漂流し10年以上の時をかけ日本への帰国を果たした実在の人物・大黒屋光太夫にスポットを当て、松本幸四郎、市川猿之助、片岡愛之助、松本白鸚らが出演。2020年にシネマ歌舞伎が公開、今年2022年8月には全国の映画館で再上映が決定!シネマ歌舞伎冒頭には、みなもと太郎が本作のためだけに書き下ろした、貴重なイラストを基にしたオリジナルアニメーションを収録!『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』みなもと太郎書き下ろしアニメーション『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』みなもと太郎書き下ろしアニメーション『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』上映情報2022年8月12日〜18日(木)東劇ほか全国にて上映※東劇(東京都中央区)のみ9月1日(木)まで三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち | 作品一覧 | シネマ歌舞伎 | 松竹 : 漫画『風雲児たち』『風雲児たち』①書影連載開始から約40年を経て、今なお熱狂的なファンを増やし続ける伝説の歴史大河ギャグ漫画「風雲児たち」。教科書で習ったあの人物たちが“ありのままの人間”として泣き、笑い、怒り、混迷の時代を生き抜く姿が描かれる。著者みなもと太郎マンガ家、マンガ研究家。本名、浦源太郎。1947年3月2日、京都市生まれ。1979年 「月刊少年ワールド」で『風雲児たち』連載開始。同シリーズは翌1980年より「コミックトム」に、2001年より「月刊コミック乱」に掲載誌を移し40年以上に渡り連載。コミックスワイド版は全国の書店にて好評販売中。手塚治虫文化賞、文化庁メディア芸術祭、文化庁芸術選奨などの選考委員・主査を歴任。2004年 第8回手塚治虫文化賞特別賞(歴史マンガの新境地開拓とマンガ文化への貢献に対して)。2010年 第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞(風雲児たち)。2020年 第49回日本漫画家協会賞コミック部門大賞(風雲児たち)。2021年8月7日、逝去。漫画概要作品名:風雲児たち1(ワイド版)著者名:みなもと太郎ISBN:9784845801657ページ数:320p判型:四六発行日:2002年3月22日定価:713円(税込)社名: 株式会社リイド社所在地: 〒166-8560 東京都杉並区高円寺北2-3-2代表: 代表取締役社長齊藤哲人創業: 1960年4月設立: 1974年11月事業内容: 出版事業URL : 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年08月07日中村獅童と初音ミクが共演する『超歌舞伎2022 Powered by NTT』の全国4都市での上演が決定した。2016年の「ニコニコ超会議」で誕生し、古典歌舞伎とNTTが開発した最新テクノロジーが融合した、まったく新しい歌舞伎公演として人気を博した「超歌舞伎」。取材に応じた獅童は「本来、歌舞伎こそ最先端」と断言し、「若い世代の皆さんに、歌舞伎を知っていただくことが僕の使命だと思っているし、歌舞伎界をもっともっと変えていきたい」と闘志を燃やす。そんな思いが結実した“転機”が2019年、歌舞伎発祥の地・京都に立つ南座での初お目見得。「(幕張メッセを飛び出し)いつか歌舞伎の劇場に進出したいと思っていたし、南座が決まったときは『時代が動いたのかな』とも感じました。もちろん、京都には目が肥えていらっしゃる、古くからの歌舞伎ファンが多いですから、受け入れてもらえるのか不安とプレッシャーもありました」と明かす。(C) 超歌舞伎 Supported by NTTいざ、幕が上がると「最高でしたよ!あんなに盛り上がってくださるとは。ペンライトを振るのが楽しいという声もいただきましたし、何より『こんなに面白いなら、次は孫を連れてきたい』という言葉がうれしかったですね」と強い手応えを振り返る。「とにかくそういったきっかけを通して、若い方々に観てもらわないと、“今を生きる演劇”としての歌舞伎が死んでしまう。それが正直な思いですよね。コロナ禍で今日、明日のことも大変ですけど、もっと先の未来を見据え、子どもたちに歌舞伎って面白いねって思ってもらいたいし、そのためにどんなことをしたら喜んでもらえるのか常に考えています。時代に取り残されるのが、一番良くない」超歌舞伎『永遠花誉功』より、中村獅童 (C) 超歌舞伎 Supported by NTT歌舞伎の未来を見据えることは、歌舞伎俳優・中村獅童の在り方を模索する姿勢にもつながっている。「僕は父親が歌舞伎役者じゃないということもあり、“獅童ならでは”と言える自分独自の生き方を見つけないと生き残っていけないんですよ。新しいことに挑戦するのも、そんな思いのひとつ。いろんな役者がいていいし、みんな同じじゃつまらない。同時に動きやせりふ回し、衣裳や化粧など、あくまで古典の枠組みの中で、新作を生み出すことにこだわっています。勘三郎兄さん(十八代目中村勘三郎)の影響も大きいですね。多感な時期を一緒に過ごさせていただき、たくさんの財産を吸収させてもらいました」ここまで育ててくれたのはミクさんファンの皆さん忘れてはならないのは、幕張メッセでの初演時から「超歌舞伎」を熱く盛り上げ続けるファンの存在だ。「当時、会場のお客さんのほとんどは歌舞伎を初めて観るという、初音ミクさんのファンだったと思います。言葉で伝統文化とバーチャルの融合って言っても、始まる前は正直『はっ?』って感じで、色眼鏡で見られる部分もあるかもしれないと思っていました。でも、いざ舞台に立つと、すごい盛り上がりでね。みんな、純粋に笑ったり、泣いたりしてくれて、それに僕らも泣かされて。毎回、ファンの皆さんが熱い思いにさせてくれるんですよ。『超歌舞伎』をここまで大きく育ててくださったのは、間違いなくミクさんファンの皆さん。本当に感謝の気持ちでいっぱいですし、ここで芽生えた友情は大切にしたいですね」超歌舞伎『永遠花誉功』左より、初音ミク、中村獅童(C) 超歌舞伎 Supported by NTTそう語る獅童には、こんな忘れられないエピソードも。2019年の南座公演で、最前列で号泣しながら観劇する青年と出会ったそうだ。「口上の途中でしたが、僕のほうから『どうしたの?どこから来たの?』ってインタビューしたんですよ。そうしたら『台湾から来た』って。その後、いろんな情報を集めたら、彼は超会議の超歌舞伎をネット配信で観て以来、超歌舞伎にハマって、日本語を勉強し来日し、なんと日本の会社に就職したそうなんです。初めて南座で生の超歌舞伎を観てくれて、『いつかは台湾で上演してもらうのが夢』だと言ってくれている。こんなうれしいことはないですよね」今回決定した『超歌舞伎2022 Powered by NTT』は、8月4日(木)開幕の福岡・博多座を皮切りに、名古屋・御園座、東京・新橋演舞場、京都・南座をめぐる約2カ月に渡る全国ツアー。「超歌舞伎」の楽しみ方とその魅力を案内する『超歌舞伎のみかた』、舞踊『萬代春歌舞伎踊(つきせぬはるかぶきおどり)』に続いて、披露される『永遠花誉功(とわのはなほまれのいさおし)』は、大化の改新のきっかけとなった乙巳の変(いっしのへん)における蘇我入鹿討伐を題材とした歌舞伎の作品と、初音ミクの代表曲のひとつ「初音ミクの消失」の世界観をもとに書き下ろされた、「超歌舞伎」の最新作となる。「歌舞伎は常に新しいものを生み出しながら、長い歴史の中で残った演目が古典として今も親しまれている。本来、歌舞伎こそ最先端だと思うんですよ。だから『これは歌舞伎』『これは違う』って決めつけてしまうのは良くないと思っています。それこそ『超歌舞伎』が100年後、古典として残っているかもしれない。そんな未来へ思いを馳せるのも、歌舞伎の楽しいところですからね。(感染対策の)ルールを守りながら、お祭り感覚で楽しんでもらえればうれしいです。僕自身も全身全霊で思いをぶつけたいと思っています」取材・文:内田涼<公演情報>『超歌舞伎2022 Powered by NTT』2022年8月4日(木)~8月7日(日)福岡・博多座2022年8月13日(土)~8月16日(火)名古屋・御園座2022年8月21日(日)~9月3日(土)東京・新橋演舞場2022年9月8日(木)~9月25日(日)京都・南座【本公演】一、超歌舞伎のみかた二、萬代春歌舞伎踊(つきせぬはるかぶきおどり)松岡 亮 作真柴秀康:中村獅童出雲のお国:初音ミク奴國平:澤村國矢女奴お蝶:中村蝶紫三、永遠花誉功(とわのはなほまれのいさおし)松岡 亮 脚本藤間勘十郎 演出・振付金輪五郎今国:中村獅童苧環姫:初音ミク金輪小五郎陽国:小川陽喜蘇我入鹿:澤村國矢定高:中村蝶紫※本公演午前の部 / 午後の部同一演目にて上演【リミテッドバージョン】一、永遠花誉功(とわのはなほまれのいさおし)松岡 亮 脚本藤間勘十郎 演出・振付金輪五郎今国:澤村國矢苧環姫:初音ミク蘇我入鹿:中村獅一定高:中村蝶紫口上:中村獅童※リミテッドバージョンは『永遠花誉功』を上演チケット情報はこちら:
2022年07月30日映画館で毎月、シネマ歌舞伎を上映する《月イチ歌舞伎》。8月は、令和元年(2019)6月に歌舞伎座で上演され、連日大入り満員となった『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』が登場する。みなもと太郎の“歴史大河ギャグ漫画”『風雲児たち』を原作に、三谷幸喜が歌舞伎化した話題作。三谷が歌舞伎を手掛けるのは『決闘!高田馬場』以来13年ぶり2度目で、歌舞伎座では初となった。舞台は鎖国を敷いていた江戸時代後期。商船の船頭、大黒屋光太夫は伊勢を出帆後、嵐に遭い漂流。17人の乗組員を乗せた船は8ヵ月の漂流を経てロシア領の島へたどり着く。厳しい暮らしや病で次々と仲間を失いながらも帰国の道を探る光太夫たちだが、その協力と許可を得る旅は、意に反してロシアの奥へ奥へと向かってしまう。ついにはサンクトペテルブルグにて、女帝エカテリーナに謁見することに……。日本に帰れるのか、それ以前に生き延びることができるのか――。絶望的な状況に置かれた一行だが、個性的な登場人物たちのテンポの良い掛け合いに三谷らしいコメディセンスが光り、笑いもたっぷり。しかしその中でも「生きて日本に帰る」という切実な思いが執念のように色濃く描かれ、濃厚な人間ドラマになっている。そして三谷の秀逸な脚本に呼応するように、俳優陣も豪華だ。中でも平成時代の歌舞伎ブームを人気花形役者として第一線で牽引し、令和の現在、歌舞伎界のど真ん中を担う世代となった松本幸四郎、片岡愛之助、市川猿之助がどっしりと、かつ生き生きとしていて頼もしい。一行のリーダー光太夫が幸四郎、個人主義的なようで全体のバランスを取っている新蔵役に愛之助、不平不満ばかり口にするがなぜか求心力のある庄蔵役に猿之助という布陣。丁々発止の掛け合いはもちろん、クライマックス、『俊寛』を彷彿とさせる帰国目前のやりとりは、見ていて鳥肌が立つほど。表情をアップで見られるシネマ歌舞伎ではいっそうその迫力に圧倒される。ほか、現在『鎌倉殿の13人』で大注目の坂東彌十郎の愛らしさ、市川染五郎や中村鶴松といった若手注目株の爽やかなひたむきさも印象深い。三谷の出世作『王様のレストラン』で主演した松本白鸚も、作品を締める重みを出す一方で、お茶目な顔もチラリ。これが初めての歌舞伎出演となった八嶋智人も、彼らしく“立板に水”でしゃべり倒したと思ったら見得も切る大活躍なのでご注目を。女帝エカテリーナ(猿之助/二役)と謁見するロシア宮廷の場面では、歌舞伎俳優たちの宝塚ばりの“輪っかのドレス”姿も堪能できる楽しみも。だがそんな様々な楽しい仕掛けを味わってもなお、思い半ばで道を絶たれる人の無念さ、悩みながら何かを選択する決意、そして何としても故郷に帰るという不屈の精神……登場人物たちのそれぞれの“思い”に、一番胸を打たれるのである。文:平野祥恵<作品情報>シネマ歌舞伎第36弾『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』上映期間:2022年8月12日(金)~2022年8月18日(木) 全国の映画館にて上映公式サイト:ぴあアプリ限定!アプリで応募プレゼントシネマ歌舞伎第36弾『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』の東劇(東京・築地)招待券を10名様にプレゼント!【応募方法】1. 「ぴあアプリ」をダウンロードする。こちら() からもダウンロードできます2. 「ぴあアプリ」をインストールしたら早速応募!
2022年07月23日2001年7月19日に発売され、ゲーム業界に新たな金字塔を打ち建てたシリーズ第10弾「ファイナルファンタジーX」を“大長編 歌舞伎”で描き出す『新作歌舞伎ファイナルファンタジーX』が2023年春に上演決定。「ファイナルファンタジー」シリーズ35周年記念として、豪華歌舞伎俳優が集結する。企画・演出・出演は尾上菊之助。これまでも「NINAGAWA十二夜」「マハーバーラタ戦記」「風の谷のナウシカ」など自身の企画、構想などから新しい歌舞伎の舞台を創り出してきた。この作品は菊之助さんがさらなる高みに挑戦すべく歌舞伎化を熱望した渾身の新作歌舞伎。不朽の名作ゲーム「ファイナルファンタジーX」の世界観を、アジア初の没入型エンタテインメント劇場、IHIステージアラウンド東京にて世界初上演する。IHIステージアラウンド東京は、周囲を取り囲む360度全てに展開されるステージと、その中心に巨大な円形の観客席を配置し、巨大なお盆に乗った観客席自体が回転しながら、舞台、映像、音楽などと画期的な方法で融合することで、これまでにない感覚や“没入感”を楽しむことができるのも大きな魅力。「ファイナルファンタジーX」の圧倒的な映像世界に没入し、世界観はそのままに、IHIステージアラウンド東京ならではの臨場感と迫力で、ゲームの世界・ザナルカンドへの旅を舞台に昇華させる。初上演の出演者は、歌舞伎の舞台のみならず、ドラマ「グランメゾン東京」「下町ロケット」などで活躍する菊之助さんをはじめ、映画やドラマなど出演は多岐にわたり、近年ではバーチャル×歌舞伎という両者の世界観が見事に融合する「超歌舞伎」など新しい形の歌舞伎にも挑戦し続けている中村獅童、歌舞伎界期待の若手俳優で、ドラマ・ミュージカル・バラエティーなど、様々な場でマルチな活躍をみせる尾上松也、そして、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で小栗旬演じる北条義時の父・北条時政を熱演中の坂東彌十郎と魅力溢れる豪華な顔ぶれが集結。そして、脚本はNHK連続テレビ小説「おちょやん」、「家政夫のミタゾノ」など心温まる人情ドラマから重厚な人間ドラマまで多くの大ヒットドラマを手掛けている八津弘幸。共同演出は、「ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー」や「B'z」のドームツアーなどを成功させ、ダイナミックかつ繊細に魅せる演出が業界内で注目されている金谷かほりという強力タッグが実現した。■企画・演出尾上菊之助コメント名作ゲーム『ファイナルファンタジーX』と日本が誇る伝統芸能の歌舞伎が融合し、相互の文化をつなぐ新しい架け橋にしていきたいと思い『新作歌舞伎ファイナルファンタジーX』を企画いたしました。IHIステージアラウンド東京での歌舞伎公演は初めての挑戦になりますが、発売当時にゲームをした時の衝撃的で感動した気持ちを大切に、ゲームを大好きな人にも、歌舞伎を見たことがない方にもぜひ見てもらいたいと思っております。高さ8メートルの巨大スクリーンに映し出される映像が舞台を彩り、あたかも「ファイナルファンタジー」の世界にいるかのような没入感をご堪能いただけると思います!このような時代だからこそ、見て頂きたい心に響くストーリーです。ぜひ劇場にお越しください。■ゲーム『ファイナルファンタジーX』プロデューサー北瀬佳範コメント最初にこの話を頂いた時は“まさか”という半信半疑の気持ちでいっぱいでしたが、尾上菊之助様から直接、熱のこもった思いを伝えていただき大変感動したのを覚えています。大衆娯楽としては最後発のビデオゲームと日本の伝統芸能である歌舞伎とのコラボがどのような感動を生みだすのか。今からワクワクが止まりません。『新作歌舞伎ファイナルファンタジーX』は2023年春、IHIステージアラウンド東京(豊洲)にて上演予定。(text:cinemacafe.net)
2022年07月19日シネマ歌舞伎『連獅子』をこども向け解説とともに楽しむことができる生配信イベントが、7月30日(土) に開催されることが決定した。今回の生配信は松竹と朝日小学生新聞の共催によるもので、配信されるシネマ歌舞伎『連獅子』は「男はつらいよ」シリーズで知られる山田洋次監督が手掛けた歌舞伎舞踊の代表作。本イベントでは中村勘三郎、中村勘九郎、中村七之助が出演した本作を、イヤホンガイド解説者・奥山久美子氏によるこども向けの解説を聞きながら観劇することできる。本編視聴中は舞台映像の進行に合わせて、出演俳優や舞台、衣装、歌舞伎独特の決まり事などを分かりやすく解説。また、チャット欄にてリアルタイムで他の視聴者と盛り上がることができ、本編終了後には解説者によるアフタートークで参加者からの質問にも回答する。チケットは本日7月11日(月) 10時より発売がスタートしており、販売期間は8月7日(日) 18時まで。購入者には、特典として特製のワークシートがプレゼントされる。<イベント情報>シネマ歌舞伎『連獅子』生配信シネマ歌舞伎『連獅子』メインビジュアル配信日時:2022年7月30日(土) 11:00~ ※配信時間は90分程度を予定配信場所:歌舞伎オンデマンド内「ミレール」※視聴には「ミレール」の会員登録(無料)が必要です。■チケット料金価格:2,200円(税込)購入特典:特製ワークシート販売期間:7月11日(月)10:00~8月7日(日) 18:00※配信開始後・終了後に購入の方も8月7日(日) 23:59まで視聴ができます。※アーカイブ配信は7月30日(土) 19:00~(予定)。対象年齢:小学1年生~小学6年生※朝日小学生新聞をご購読以外の方もご参加いただけます。※『らくだ』の同時上映はありません。購入方法:シネマ歌舞伎ホームページより、視聴ページにてご購入ください。
2022年07月11日7月3日(日)に初日を迎える関西・歌舞伎を愛する会 第三十回『七月大歌舞伎』。6月29日には、開催に先駆けて3年ぶりに「船乗り込み」が行われ、中村鴈治郎、中村扇雀、片岡孝太郎、松本幸四郎、中村勘九郎、中村七之助をはじめ、東西の人気俳優が船上より笑顔で手を振り、『七月大歌舞伎』の開催をPRした。「七月大歌舞伎」チケット情報「船乗り込み」は、江戸時代より続く歌舞伎行事で、1979(昭和54)年に55年ぶりに復活。以来、夏の大歌舞伎の始まりを告げる行事として毎年、賑々しく行われていたが、近年はコロナ禍の影響で開催が叶わずにいた。今年は感染予防対策の徹底のため、一部形式を変更し「乗船時~戎橋口上まで」と「舞台での式典」がオンラインでも生配信された。真っ青な空の下、俳優たちを乗せた二艘の船が戎橋に到着すると、居合わせたギャラリーから温かな拍手が送られた。口上で配役と出演者が発表されると船上の俳優たちが立ち上がって会釈をしたり、手を振ったりしてご挨拶を。そのたびに大きな拍手が沸き起った。最後には真っ白の紙吹雪が勢いよく空に舞い、華々しく『七月大歌舞伎』と夏の始まりを告げた。大阪松竹座では式典も行われ、「船乗り込み」を行った13人の俳優が開幕前の心境を語った。そのトップを飾った中村鴈治郎は「「関西・歌舞伎を愛する会」の公演は今年で30回でございます。朝日座で「関西・歌舞伎を育てる会」が始まり、私は会場が中座になってから出させていただきました。「育てる会」「愛する会」は私の役者人生の上で切っても切れないご縁がある公演です。『七月大歌舞伎』では『浮かれ心中』(昼の部)、『祇園恋づくし』(夜の部)に出させていただきますが、それぞれ、一緒に出させていただいた中村勘三郎のお兄さん、坂東三津五郎のお兄さんらとの思い出にあふれる公演です。その作品を持って記念すべき公演に出演できて大変嬉しく思います。その思いを一緒に皆様に伝えていきたいと思います。外は暑いですが、舞台の中、劇場の中も熱い熱い公演にしていきたいと思います」。先日、体調不良のため休演が発表された片岡仁左衛門。鴈治郎は「本来でしたらここに片岡仁左衛門のお兄さんがいらっしゃって、初めにご挨拶されるのですが、今日はいらっしゃいませんけれども、必ず公演中に復帰してくださると信じております」と思いを語った。なお、休演中の仁左衛門に代わって『堀川波の鼓』の小倉彦九郎役を中村勘九郎が勤め、勘九郎が演じる予定だった宮地源右衛門役を中村隼人が勤める。関西・歌舞伎を愛する会 第三十回『七月大歌舞伎』は7月3日(日)から24日(日)まで、大阪松竹座にて開催。チケット発売中。取材・文:岩本
2022年06月30日2022年6月25日、歌舞伎俳優の沢村田之助(さわむら・たのすけ)さんが、同月23日に亡くなっていたことが分かりました。89歳でした。産経ニュースによると、沢村さんは肺炎のため東京都内の病院で亡くなったとのこと。葬儀は家族葬で行うといいます。沢村さんは、芸域が広く、女形から立ち役、老け役まで幅広い役柄を手がけ、2002年には歌舞伎脇役として人間国宝に認定されています。そのほかにも、紫綬褒章(しじゅほうしょう)、日本芸術院賞、旭日小綬章を受賞しました。沢村さんは国立劇場の俳優研修の講師として若手の育成に尽力するほか、相撲の知識を活かして横綱審議委員会の委員を務めるなど、歌舞伎だけでなく、幅広い分野で活躍。沢村さんの訃報に対し、ネットからは「舞台に出てこられると安心感があった」「本当に残念です」など、惜しむ声が上がりました。沢村さんのご冥福をお祈りいたします。[文・構成/grape編集部]
2022年06月25日2022年8月、実に3年ぶりに歌舞伎座に帰ってくる「八 月納涼歌舞伎」にて、世界中で愛される“漫画の神様”、手塚治虫の漫画『新選組』が上演される。誰もが親しみをもって楽しむことができるエンタテインメント性に溢れる作品を生み出し、奇想天外なアイディアとファンタジー性で読者を虜にし続けた唯一無二の漫画家、手塚治虫の作品が歌舞伎として上演されるのは今回が初。手塚治虫漫画の表現を追求し、極限までその可能性を押し広げ、世界中の多くのクリエイターに影響を与えるだけでなく、その作品世界には、命の尊さ、生きることの意味を問う壮大なテーマ性が内包され、時を超え、国の垣根を飛び越えて、今なお世界中で幅広い世代に読み継がれている。多くの代表作のなかでも、歴史を題材にした作品では、実在した歴史上の偉人たちと架空のキャラクターが絶妙に絡み合い、ドラマティックな物語を創出。壮大なファンタジーのなかに、人が生きている実感、真実の光を照らし出す。歴史上の人物や事件を題材にして数多くの作品を生み出してきた歌舞伎との親和性も高く、手塚治虫の生み出した歴史漫画がどのように歌舞伎として上演されるのか、今から期待が高まる。深草丘十郎(手前)と鎌切大作(奥)(c)Tezuka Productions今回、手塚治虫の描いた数多くの漫画から初めて歌舞伎としての上演に選ばれた『新選組』は、1963(昭和38)年1月号から10月号まで、集英社の月刊誌「少年ブック」で連載され、その独自の視点と解釈で描き出された作品世界は多くのクリエイターに影響を与え、手塚治虫の隠れた名作として評価の高い作品だ。父の仇を討つため、「新選組」に入隊し剣の腕を磨く少年・深草丘十郎(ふかくさ きゅうじゅうろう)の成長と、どこか謎を秘めた親友・鎌切大作(かまぎり だいさく)との友情を描き、幕末の京都を舞台に、近藤勇、土方歳三、沖田総司や芹沢鴨らおなじみの新選組隊士たち、さらに坂本龍馬との出会いを通じて、深草丘十郎の姿を生き生きと描き出す。近年、『ワンピース』や『NARUTO -ナルト-』、『風の谷のナウシカ』といった漫画を原作とした歌舞伎作品が注目を集めるなか、遂に“漫画の神様”手塚治虫の作品が「八月納涼歌舞伎」で上演される。歌舞伎座の「八月納涼歌舞伎」は、1990(平成2)年から始まり、十八世中村勘三郎(当時、勘九郎)と十世坂東三津五郎(当時、八十助)を中心に、花形が活躍する公演として人気を博してきた。この「納涼歌舞伎」によって、歌舞伎座では1年12ヶ月を通じて歌舞伎興行が開かれるようになり、平成の歌舞伎の一大ブームを巻き起こすことに。2022(令和4)年8月、コロナ禍以降、実に3年ぶりの公演となる。歌之助が深草丘十郎、福之助が鎌切大作。勘九郎・七之助と競演左から)中村福之助、中村歌之助(c)松竹気になる配役は、父の仇を討つため「新選組」に入隊する深草丘十郎に中村歌之助、どこか謎を秘めた丘十郎の親友・鎌切大作に中村福之助が決定。勘三郎、三津五郎と共に「納涼歌舞伎」を盛り上げてきた中村芝翫の三男である歌之助と次男の福之助が、手塚治虫が生み出した魅力的なキャラクターである深草丘十郎と鎌切大作という若いふたりの剣士を躍動的に勤めることに注目だ。そして、中村勘九郎と中村七之助の出演も決定し、中村屋兄弟といとこにあたる福之助・歌之助兄弟との競演も話題必至。夏の暑さを吹き飛ばし、熱気溢れる舞台が展開される予感の歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」、チケットは7月14日10時より一般発売。中村勘九郎(c)松竹中村七之助(c)松竹出演者コメント【中村歌之助:深草丘十郎(ふかくさ きゅうじゅうろう)役】まさか歌舞伎座で主役をさせていただけるなんて…プレッシャーもありますが、すごく嬉しいです!勘九郎の兄から手塚治虫先生の「新選組」が面白いと伺って兄たちと読みました。幕末の話でありながらも、現代に通ずるテーマ性があり、若い人にも観ていただきたいです。手塚治虫先生の作品は、母方の祖父が「鉄腕アトム」を見せてくれたり、小さい頃から作品に触れていたのでご縁を感じています。初めて歌舞伎になるときに、主人公の丘十郎として舞台に立たせていただけることは有難く、光栄です。「八月納涼歌舞伎」は若手が一致団結してやる公演でもあるので、今回「新選組」を8月の歌舞伎座でさせていただけることも、すごく嬉しいです。勘九郎の兄や七之助の兄はじめ錚々たるみなさんが出てくださると思うので、周りにも支えていただいて、ひと月がんばりたいです。出演が決まったときは、家族みんなで喜びました。父(芝翫)は「チャンスだからがんばりなさい。本当によかったね」と言ってくれました。母(三田寛子)はひたすら「がんばりなさい。もらったチャンスをものにするのよ」と。兄弟の反応は…一番上の兄(橋之助)からは「ずるいなぁ…」と。僕ら二人にすごい嫉妬が…。丘十郎と大作の関係は、僕たち兄弟の関係とどこか似ているようで、二人に合っているのかもしれません。兄と芝居をするのはすごく楽しみですし、二人が成長していく過程を日に日に観ていただけたら嬉しいです。左から)中村福之助、中村歌之助(c)松竹【中村福之助:鎌切大作(かまぎり だいさく)役】とにかく楽しみでしょうがないです! がんばります!!!数年前に勘九郎の兄から、手塚治虫先生の「新選組」が面白いからと勧めていただいてすぐに読みました。兄弟で回し読みしながら、新選組をそう描くんだ!と、とても面白くて、これが歌舞伎になったら…と想像したり、ワクワクしながら読みました。今回、鎌切大作を勤める上では、手塚治虫先生のファンや「新選組」を愛していらっしゃる方々に舞台を観ていただいたときに、「あ、鎌切大作だ!」と自然に馴染んでいただけるように演じられたら、それがベストだと思っています。まだ誰もやっていないお役に臨めることも、楽しみでしようがないですね。「八月納涼歌舞伎」は、小さい頃から勘三郎の伯父や父が出ていた公演なので、そこに出させていただけることは身の引き締まる思いです。さらに今回、「新選組」というお芝居ができるのは、「新選組」を勧めていただいた勘九郎の兄に感謝ですし、今、自分たちができる最高のパフォーマンスを出し切れるようにがんばりたいと思います!公演概要歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」2022年8月会場:歌舞伎座(東京都中央区銀座4-12-15)原作:手塚治虫企画協力:手塚プロダクションチケット一般前売:7月14日(木)10:00より
2022年05月30日四月大歌舞伎の第二部で上演中の『荒川の佐吉』は同じ歌舞伎の演目の中でも新歌舞伎というジャンル。『元禄忠臣蔵』などで知られる真山青果の作品だ。主人公の佐吉は一介の大工からやくざになったばかり。だが親分の鍾馗の仁兵衛は浪人成川郷右衛門に片腕を斬られ落ちぶれてしまっている。その親分の娘のお新は、日本橋の大店・丸総の旦那の妾になっていたが、産まれた卯之吉が生まれつきの盲目のため、親子で離縁されそうになっていた。佐吉は仁兵衛から、次女の八重と夫婦になってこの子を育ててくれと頼まれる。だが仁兵衛が金目当てに卯之吉を預かってきたことを知った八重は、その情けなさに出て行ってしまった。佐吉は大工仲間の辰五郎の手も借りて卯之吉を育てることを決意する。その後仁兵衛は賭博で身を持ち崩し命を落とし、辰五郎の助けを借り卯之吉を必死になって育てる佐吉。ついに佐吉は仁兵衛の敵を討つため成川に挑む。その際に後見人として佐吉を見守ったのは相模屋政五郎だった。これも後につながる一つの因果だったのかもしれない。みごと成川を斬った佐吉は、仁兵衛の縄張りを継ぎ、立派な家を構え、卯之吉もすくすく成長していた。その佐吉の下へ、お新が卯之吉を返してほしいとやって来る。付き添ってきたのは政五郎だった。政五郎には丸総にかつて恩義があり、その政五郎に恩義のある佐吉。卯之吉の将来のためになると政五郎に説得され、泣く泣く別れを決意する。払暁、佐吉は隅田堤の満開の桜を眺めながら、八重や政五郎、辰五郎、そして卯之吉が見守る中、一人旅立って行く。松本幸四郎が佐吉を勤めるのは2度目だ。初役の際には片岡仁左衛門から教わったという。一人の気のいい若者だった佐吉が、やくざの世界に身を賭したばかりに、人として否応なく変わっていく様が伝わってくる。ひょろっとした着の身着のままの力のない新米やくざから、月代も伸びてちょっと疲れた感じに。そして親分の敵を討った後は羽振りもよくなり、どこから見ても立派な親分姿。拵えだけではなく、声や所作、目線に至るまで、成長し変貌していく様をち密に作り上げていることが伝わってくる。幸四郎は仁左衛門が佐吉を勤める舞台で辰五郎も勤めたことがある。佐吉が卯之吉を育てるその苦労と心情を切々を訴えるくだりで、「役として陰で聞きながら毎日本当に泣いていた」と取材会で語っていた。筆者が観たその日にも、客席のあちこちからすすり泣きが聴こえてきたし、幕間では目を赤くした観客をそこかしこに見かけた。梅玉の成川郷右衛門は茶屋に座っているその背中だけで凄みを感じさせるし、尾上右近の辰五郎も情に厚く意気のいい江戸っ子らしさがある。孝太郎のお八重の「なぜ私がそんなことしなきゃいけないのか」と言わんばかりのプライドの高さにはゾクゾクした。白鸚の政五郎には義理も情も知り尽くした大人の貫禄を感じ、うちひしがれてやってくる魁春のお新には「この人にはこの人なりにここまでの苦労があったのだろう」と思わされてグッときた。絶世の美男と謳われた二枚目役者の十五代目市村羽左衛門はめったに作者に注文を出さなかったそうだが、ある時青果宅を訪れ、珍しく「最初はみすぼらしく哀れで最後に桜の花のぱっと咲くような男の芝居を書いて欲しい」と言った。まさにその通り、まだ薄暗い明け方から次第に陽が上り、満開の桜が朱に染まっていく景色を背に、花道を引っ込む幸四郎の佐吉にボーッと見とれてしまった。人らしく誠実に生きているからこその強さと、筋を曲げることができないからこその不条理とも思える別れ。最後の「やけに散りやがる桜だな」の台詞に、佐吉の寂しさ、切なさ、そしてどこか爽快感を感じる幕切れだった。江戸の情趣あふれる舞台の背景がまた格別だ。両国広小路を歩く人々、稲荷ずし売りや辻占の風俗、三味線の聴こえてくる向島、待乳山や浅草寺を望む長命寺の堤。この界隈ならではの風情も、この作品にしっとりと艶を与えている。もう一幕の『義経千本桜』の所作事「時鳥花有里」は、いくつかの古い台本を再構成して2016年に初演されたもの。6年ぶりの再演だ。夢のような桜満開の舞台。源義経は家臣の鷲尾三郎とともに大和へ向かている。父の義朝を長田に討たれ、さらに今も頼朝から追われている身を嘆く。背景が転換され目の前に現れるのはさらに鮮やかな龍田の里。そこに悠然と白拍子や傀儡子が現れる。義経とともに別世界に迷い込んだかのような感覚に陥ってしまう。梅玉がこの義経を勤めるのは2016年の初演に続き2度目。凛々しくも憂いを帯びた源氏の御曹司ぶりにほれぼれする。前の幕の『荒川の佐吉』で憎々しい敵役の成川を演じた同一人物とは思えないほどだ。優雅な白拍子たちの舞に続き、傀儡子輝吉の踊りが始まる。『義経千本桜』の義経、静御前、弁慶、知盛の面を使い分け、「鳥居前」や「大物浦」の物語をユーモラスに軽快に踊る。この踊りは『義経千本桜』本編のいわばパロディ。ちなみに輝吉というのは又五郎の本名(光輝)をもじったものだ。上演されるたびに踊り手の名前をあしらった役名になっているのも楽しい。鷲尾三郎に中村鴈治郎、三芳野に中村扇雀、そして白拍子たちに若手俳優たちが顔をそろえた華やかな一幕。この後義経と三郎は、川連法眼の館へと落ちていく。狐忠信との出会いが待っているとも知らずに。取材・文:五十川晶子四月大歌舞伎チケット情報
2022年04月13日三月大歌舞伎が本日3月3日(木)、初日を迎える。時代物の名作、痛快な世話物、スペクタクル感あふれる演目などなど、光まぶしい早春の候にふさわしい演目が並び、人気俳優たちが顔を揃える。第一部は『新・三国志(しんさんごくし)』。平成11(1999)年、三代目市川猿之助(現・猿翁)により創出された、スーパー歌舞伎『新・三国志』。新たな演出・構想で歌舞伎座に初登場する。乱世を生きる関羽は、張飛、劉備と運命的な出会いをし、“夢見る力”を信じて、3人は桃園で義兄弟の契りを結ぶ。理想の世を作るために関羽たちは軍略に長けた孔明を軍師に迎え、いよいよ群雄割拠の時代を迎えることに。宿敵、曹操を打ち倒すため赤壁の戦いが始まる。勇士たちの姿を壮大なスケールで描き、スペクタクルに富む演出で人気を集めたスーパー歌舞伎シリーズ屈指の名作。今月は「関羽篇」として上演する。猿之助の関羽、中車の張飛、笑也が劉備を勤める。第二部一幕目は『河内山(こうちやま)』。質屋の上州屋の娘が、奉公する松江出雲守の屋敷に幽閉されていると聞きつけ、金目当てにその奪還を請け負ったお数寄屋坊主の河内山宗俊。河内山は上野寛永寺の僧になりすまして松江邸に赴く。大胆不敵な態度で煙にまくが……。河竹黙阿弥の七五調の名台詞とともに、弱きを助け強きをくじく河内山の粋で痛快な悪党の魅力をたっぷりと。仁左衛門の河内山、鴈治郎の松江出雲守、歌六の高木小左衛門で。二幕目は『芝浜革財布(しばはまのかわざいふ)』。三遊亭円朝が生んだ人情噺の傑作だ。ある朝、大酒飲みで怠け癖のある魚屋の政五郎は芝浜海岸で大金の入った革財布を拾う。政五郎は早速酒盛りを始めるが酔いつぶれ寝入ってしまう。目を覚ますと女房おたつに夢を見ていたのだと諭される。政五郎は禁酒を誓い一念発起して仕事に励んでいたら……。宵越しの金は持たない。そんな江戸っ子気質の政五郎としっかり者の女房おたつ。江戸の町に息づく庶民の暮らし、夫婦の情愛を描いた人気狂言。菊五郎の政五郎、時蔵が女房おたつを勤める。第三部一幕目は『信州川中島合戦(しんしゅうかわなかじまかっせん)』。名高い上杉謙信と武田信玄の合戦を、近松門左衛門がドラマチックに描く。越後の大名長尾輝虎(後の上杉謙信)は、敵対する武田信玄の名軍師山本勘助を味方につけようと画策。勘助の妹である直江山城守の妻唐衣を利用し、勘助の母越路と妻お勝を館に呼び寄せて……。絢爛かつ緊迫感あふれる時代狂言を。芝翫の長尾輝虎、雀右衛門のお勝、幸四郎の直江山城守、孝太郎の唐衣、魁春の越路。二幕目は『石川五右衛門(いしかわごえもん)』。大盗賊石川五右衛門は勅使に化けて足利邸に乗り込み、饗応役として現れた此下久吉と対峙する。実はふたりは幼なじみ。かつて同じ盗賊仲間だったのだ。意外なところから本性を見顕されるが、まんまと幕府の重宝である御正印を盗み妖術を使って逃げていく。先行作からの名場面や人気のせりふを再構成した五右衛門ものの集大成だ。久吉と旧交を温める場面や「つづら抜け」の宙乗りなど意外性に富んだ展開が楽しい。幸四郎の石川五右衛門、錦之助の此下久吉。文:五十川晶子歌舞伎座三月大歌舞伎2022年3月3日(木)~2022年3月28日(月)会場:東京・歌舞伎座★『石川五右衛門』の“つづら抜け”の宙乗りについては、新連載「ゆけ!ゆけ!歌舞伎“深ボリ”隊!!」にて松本幸四郎さんに詳しくお話を聞いています。こちらも要チェック!記事は こちら()
2022年03月03日歌舞伎俳優の市川海老蔵が、「六本木歌舞伎2022 『ハナゾチル』(『青砥稿花紅彩画』より)」の上演を前に取材に応じ、「古典を尊重しながら、新しい角度で楽しんでいただけるものになれば」とアピール。共演する戸塚祥太(A.B.C-Z)に対しては、「身体能力が高いですし、パルクールみたいなものにも挑戦してほしい。まだ伝えていませんけど(笑)」と期待を寄せた。今回「六本木歌舞伎」の題材は『青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)』。石川五右衛門、鼠小僧次郎吉と並び、古くから人々に親しまれている盗賊5人との活躍を描く名作をベースに、現代を生きる青年(戸塚/浜松屋跡取りの宗之助の二役)が“タイムリープ”し、幕末の盗賊一味と新たなストーリーを織りなす。白波が打ち寄せては消える潔さ、儚さを想起させる“白浪五人男”になぞらえ、散ることを知りながら、咲くことを恐れない桜をイメージし『ハナゾチル』と名付けられた今回。「戸塚さん演じる現代の青年が、その時代の人々とコミュニケーションを取りながら、当時の若者たちのポテンシャルや生きざま、心構えを現代に持ち帰るといったお話しになる予定です。戸塚さんが戸塚さんご本人として登場するので、ファンの皆さんも見やすいはずですし、古典も面白いんだぞと提示できれば。特にEXシアターは、若いお客様が多いので、盛り上がりがダイレクト。花道も感染対策はしっかりしながらも、想像以上に客席と近いので臨場感にあふれると思います」(海老蔵)過去には中山優馬(2017年6月『ABKAI』出演)、三宅健(2019年2,3月『六本木歌舞伎』出演)、Snow Manの宮舘涼太・阿部亮平(2019年11月『ABKAI』出演)との共演経験もあり「ジャニーズ事務所の皆さんは、本当に情熱があり『あきらめないな』といつも思います。歌舞伎は独特な演出方法もあって、それを何十回も稽古する姿には、胸を打たれる」と賛辞を惜しまなかった。三池崇史が監修として参加。日本舞踊の宗家藤間流八世宗家で舞踊・振付・演出と幅広く活躍する藤間勘十郎が演出を担当し、歌舞伎音楽とロック音楽を融合させ、弁天小僧菊之助がたっぷりと歌舞伎世話物狂言の醍醐味を見せる。「勘十郎さんとはもう10年以上のお付き合い。音楽的センス、特にバランス感覚が良くて、脚本を読む力もある。彼なりの世界観に任せ、今回、私は台本も演出もノータッチ」と全幅の信頼を寄せていた。取材・文・写真=内田涼【公演概要】『六本木歌舞伎2022『ハナゾチル』(『青砥稿花紅彩画』より)』脚本:今井豊茂 / 演出:藤間勘十郎監修:三池崇史出演:市川海老蔵戸塚祥太(A.B.C-Z)中村児太郎市川右團次他チケット料金:一等席 14,000円、二等席 10,000円(全席指定・税込)前売開始:12月19日(日)協力:全栄企画株式会社 / 株式会社ちあふる製作:松竹株式会社■東京公演日程:2022年2月18日(金)~3月6日(日)会場:EXシアター六本木お問合せ:Zen-A(ゼンエイ)03-3538-2300(平日11:00〜19:00)主催:株式会社3Top / テレビ朝日/読売新聞社/六本木歌舞伎実行委員会東京公演チケット情報■福岡公演日程:2022年3月11日(金)~3月13日(日)会場:福岡サンパレスホテル&ホールお問合せ:西日本新聞イベントサービス 092-711-5491(平日9:30〜17:30)主催:六本木歌舞伎実行委員会/(西日本新聞社他)■大阪公演日程:2022年3月18日(金)~3月21日(月・祝)会場:フェスティバルホールお問合せ:キョードーインフォメーション 0570-200-888(11:00〜16:00※日祝休業)主催:読売テレビ/サンライズプロモーション大阪
2022年02月08日歌舞伎の世界を近くの映画館で手軽に楽しめるシネマ歌舞伎を、毎月上映する《月イチ歌舞伎》が2022年度も開催されることが決定した。この度、2022年4月から2023年1月まで上映される幅広いラインナップが発表された。この《月イチ歌舞伎》では、毎月1週間ずつ(新作は3週間)シネマ歌舞伎が上映される。ラインナップは古典の名作から漫画原作の話題作、華やかな舞踊まで、多岐にわたっており、自分の興味などに合わせて、好きな作品を近くの映画館で気軽に、低価格で歌舞伎の世界を楽しむことができる。《月イチ歌舞伎》開催にあわせて2月4日(金)よりお得な特別鑑賞ムビチケカード3枚も発売される。『桜姫東文章』今回の幕開けは、片岡仁左衛門・坂東玉三郎が出演した奇跡の舞台、最新作シネマ歌舞伎『桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)』に決定。上の巻は4月8日(金)、下の巻は4月29日(金)に全国で公開される。続いて、現代に通じる若者の孤独と狂気を描いた仁左衛門出演の『女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)』、幸福感あふれる上方歌舞伎の名作に仁左衛門・玉三郎が出演した『廓文章吉田屋(くるわぶんしょうよしだや)』と、仁左衛門&玉三郎の魅力をたっぷり堪能できる作品が並ぶ。仁左衛門はぞっとするほど残酷な悪役から品のいい色男まで、玉三郎は道ならぬ恋に身を落とす姫君から健気な傾城まで、多彩な役柄をそれぞれ華麗に演じ分けるふたりに注目だ。また、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で話題の三谷幸喜による作・演出で、同作に出演の市川猿之助・片岡愛之助・坂東彌十郎・市川染五郎も出演する人気歴史漫画原作の『三谷かぶき月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと)風雲児たち』や、11月1日のジブリパーク開園にちなんで、スタジオジブリ関連作品初の歌舞伎化で評判となった宮崎駿原作の 『新作歌舞伎風の谷のナウシカ』をラインナップ。人気少年漫画「ONE PIECE」を歌舞伎化した話題作『スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース』とあわせて人気漫画原作の新作歌舞伎が3作上映される。さらに、奇才・野田秀樹の作・演出、中村勘三郎出演の『野田版鼠小僧』、勘三郎渾身の舞台を収録した古典の名作『春興鏡獅子(しゅんきょうかがみしし)』、玉三郎が中村勘九郎、中村七之助とともに出演した美しさと迫力あふれる『二人藤娘(ににんふじむすめ) /日本振袖始(にほんふりそではじめ)』と、バラエティに富んだシネマ歌舞伎が盛りだくさんとなっている。《月イチ歌舞伎》上映作品一覧4月8日(金)~4月28日(木) 『桜姫東文章 上の巻』※新作4月29日(金)~5月19日(木) 『桜姫東文章下の巻』※新作5月20日(金)~5月26日(木) 『女殺油地獄』(仁左衛門)6月24日(金)~6月30日(木) 『廓文章 吉田屋』7月22日(金)~7月28日(木) 『野田版 鼠小僧』8月12日(金)~8月18日(木) 『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』9月30日(金)~10月6日(木) 『スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース』10月21日(金)~10月27日(木) 『新作歌舞伎風の谷のナウシカ 前編』11月11日(金)~11月17日(木) 『新作歌舞伎風の谷のナウシカ 後編』12月2日(金)~12月8日(木) 『春興鏡獅子』2023年1月6日(金)~1月12日(木) 『二人藤娘/日本振袖始』《月イチ歌舞伎》(2022)公式サイト※上映館等の詳細はこちらをご確認ください。
2022年02月02日「一世一代と銘打たせていただきました」。歌舞伎俳優の片岡仁左衛門が「義経千本桜渡海屋・大物浦」で渡海屋銀平実は新中納言知盛を勤めるのは、この『二月大歌舞伎』が最後となる。「役者には完成というものはないですし、まだまだ勉強したい、まだまだやりたいんですけれど、いかんせん体力がきつい。20kg近い衣裳を身に着けますのでね。この次やらせていただくチャンスがあっても、果たして1ヶ月間自分の納得いくやり方ができるかどうか、お客様に対して恥ずかしくない芝居ができるかどうか。(最後だと)謳っておかないと役者はどうしてもまたやりかねないので自分でブレーキをかけました。今回が最後と言えば、”次でええか”と思っていたお客様にも来ていただける。それを狙ってます(笑)」と語る。『義経千本桜 渡海屋・大物浦』(H29.3歌舞伎座)銀平実は知盛=片岡仁左衛門(C)松竹源氏への復讐を遂げようと凄まじい執念で源義経に迫る知盛。初演は平成16年4月の歌舞伎座だった。「知盛を勤めた先輩方は既にいらっしゃらない。紀尾井町のおじさん(二世尾上松緑)と河内屋のおじさん(三世實川延若)を参考に、私なりにアレンジさせていただいて、私の型を作り上げました。ですからこの狂言には愛着を感じております」と語る。物語を重視する大阪と、役者の見せ方を大事にする東京と、双方のやり方をミックスして知盛を描いてきたという。大物浦の瀕死の知盛が、自身に刺さった矢を抜き、その血で喉を潤す場面も凄まじい。『義経千本桜 渡海屋・大物浦』(H29.3歌舞伎座)銀平実は知盛=片岡仁左衛門(C)松竹「これは東京の先輩方はなさらない、河内屋のおじさんはなさっています。薙刀を舐める型もあり、どちらかにしようと思っています。壮絶な雰囲気を何とか出したいですね」。東西をミックスした、いわば「仁左衛門型」の知盛だ。「今回で消えるかもしれませんから、せいぜいよく見といてください(笑)。こればっかりはなさる人が(どの型で勤めるか)選ぶことなので、こちらの方から売り込むものではないんです。(仁左衛門型で)勤めたいと言ってくれる方が現れればもちろん伝えようと思います」。『三月大歌舞伎』で勤める『河内山』の河内山宗俊についても触れた。「これも好きな狂言です。私が勤めるときは必ず『質見世』の場から上演することにしているんですね。そうでないと初めてご覧になるお客様には、台詞だけでは何が起きているのかわからないと思いますので」。河内山宗俊は幕府お抱えのお数寄屋坊主。上野寛永寺から使わされた北谷道海という高僧に化け、単身松江候の屋敷へと乗り込む。『河内山』(H27.1大阪松竹座)河内山宗俊=片岡仁左衛門撮影:福田尚武「どんな悪人であっても、河内山がご直参であることを頭に置いておかなくてはなりません。下品にならないように。人間の大きさが出るように。かといってことさらに大きく見せるのではなく、今までの積み重ねを自然に出せればと思いますね」。悪に強きは善にもと、という河竹黙阿弥らしい七五調の台詞で知られる。「七五調で気をつけないといけないのは、言葉のリアルさを失いやすいことなんです。下座に乗って同じリズムで言うと、お客様が言葉の中から受け取れる意味が少なくなりがちなんですよ。リズムの運びを変える、緩急をつけることで頭に入ってくる言葉の意味が増えると思っていますので、そこは気をつけたい」。『河内山』(平成24年2月新橋演舞場)河内山宗俊=片岡仁左衛門(C)松竹勤めるたびに台本を読み込み、どういう人物か、何が起きているのかが分かりやすく伝わるよう腐心する。「役が決まるとまずは映像を見てみる。そうすると自分でも分かりにくいところが出てくるので、そこから台本にチェックを入れていきます。自分で分からなかったらお客様も分かりにくいはず。お客様に分かっていただかないと値打ちがないですから。イヤホンガイドもありますが、できれば私の言葉でストレートにお客様の気持ちに訴えられればと思います」。片岡仁左衛門(C)松竹『二月大歌舞伎』は2月1日(火)から25日(金)まで、『三月大歌舞伎』は3月3日(木)から28日(月)まで、東京・東銀座の歌舞伎座にて。取材・文:五十川晶子
2022年02月01日冬景色の中に時折春の兆しを目にする如月。歌舞伎座では義太夫狂言の傑作から世話物、新歌舞伎、歌舞伎舞踊など芝居好きにはこたえられない狂言が揃った。第一部一幕目は新作歌舞伎の人気狂言『御浜御殿綱豊卿(おはまごてんつなとよきょう)』。次期将軍と目される徳川綱豊卿の別邸ではお浜遊びが行われている。そこへ見物したいと願い出たのが元赤穂浪士の富森助右衛門。そのわけとは。ふたりの台詞のやりとりに緊迫感がみなぎって……。真山青果の代表作『元禄忠臣蔵(げんろくちゅうしんぐら)』の一幕だ。中村梅玉の綱豊、尾上松緑の助右衛門、中村東蔵の新井勘解由、中村魁春の江島。二幕目は獅子物と呼ばれる歌舞伎の舞踊の一つ『石橋(しゃっきょう)』。唐の国の清涼山にある聖なる石橋に、獅子の精達が顕れる。牡丹の花と戯れて、やがて力強い獅子の踊りを見せる。能の「石橋」から材を得た舞踊。獅子の毛ぶりなど躍動感たっぷりの踊りが見どころだ。中村錦之助ほかの出演。第二部一幕目は『春調娘七種(はるのしらべむすめななくさ)』。早春の候、工藤祐経の館に現れた曽我十郎と曽我五郎の兄弟。父の敵を前にいきり立つふたりを静御前が諫める。やがて三人は春の七種の行事を織り込んだ、美しく春らしい踊りを踊る。二幕目は歌舞伎三大名作の一つ『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)』の二段目『渡海屋・大物浦』。渡海屋銀平の船問屋で、九州へと落ちのびる源義経の一行が船出を待っている。この銀平、実は平知盛。平家再興をもくろみ、亡霊の姿を借り海上で義経たちを討とうとする。悪鬼のような凄まじい闘いの末、壮絶な最期を遂げる。片岡仁左衛門が渡海屋銀平実は平新中納言知盛を一世一代として勤める。第三部一幕目は『鬼次拍子舞(おにじひょうしまい)』。京の外れの山中で山樵(やまがつ)に身をやつした男がひとりの白拍子と出会い、ともに踊り始めるが、白拍子は色仕掛けで男から笛を奪おうとする。男は実は主の源義朝を殺害した長田太郎で、その功により平家の大名となっていた。白拍子と長田の問答は虫づくしの歌詞となっており、手踊りから立廻りへと展開していく古風さにあふれた洒落た舞踊劇だ。中村芝翫の山樵実は長田太郎、中村雀右衛門の白拍子。二幕目は『鼠小僧次郎吉(ねずみこぞうじろきち)』。刀屋新吉と芸者のお元は恋仲だが、横恋慕する侍から大金百両と大事の刀を奪われてしまう。心中を決意したふたりを止めに入った稲葉幸蔵。この男が義賊と名高い鼠小僧だった。河竹黙阿弥が五代目尾上菊五郎に書き下ろした人気作。六代目、そして当代の菊五郎も演じてきた音羽屋ゆかりの狂言だ。尾上菊之助の稲葉幸蔵、中村雀右衛門の大黒屋抱え松山、中村歌六の辻番与惣兵衛。今月もひきつづき客席は間隔を開けた2席並びの配置となっている。チケット入手の際には確認を。※第三部『鬼次拍子舞』に出演を予定していた中村芝翫は新型コロナウイルス感染症 「陽性」であることをうけ、当面の間休演。「山樵実は長田太郎」役は坂東彦三郎が務める。(最新情報は歌舞伎美人ホームページ にてご確認ください 。文:五十川晶子『二月大歌舞伎』2022年2月1日(火)~2022年2月25日(金)会場:東京・歌舞伎座
2022年02月01日