アイドルグループ・A.B.C-Zの戸塚祥太が23日、都内で行われた『六本木歌舞伎2022』制作発表会見に、歌舞伎俳優の市川海老蔵とともに出席。歌舞伎初挑戦の意気込みを語った。第4回となる今回の『六本木歌舞伎』は、十三代目市川團十郎白猿襲名を控えている市川海老蔵、そして、アクロバットやダンスなど華麗なパフォーマンスを得意とするA.B.C-Zの戸塚祥太らが出演。戸塚は歌舞伎に初挑戦となる。戸塚は、冒頭の挨拶でマイクのスイッチを入れ忘れ、「すみません、緊張していてマイクがオフになっていました」と照れ笑い。「自分がまさか市川海老蔵さんのお隣に立てる日が来ると思ってなかったので、すごく気持ちが昂っていて、高揚していて、いろんな感情が入り混じっているのですが、これまでやったことがない歌舞伎への挑戦、しっかりと体に叩き込ませて、自分に与えられた役割を全うしていきたいと思います」と決意を語った。また、歌舞伎に対するイメージについて、「日本の宝、伝統芸能、代々受け継がれてきたものという印象です」と述べ、「ここから知らないこともさらに勉強していって、いただいた役をしっかりできるように歌舞伎の世界に染まっていきたいと思っています」と気を引き締めた。『六本木歌舞伎』への出演が発表されてからA.B.C-Zのメンバーから何かリアクションはあったか聞かれると、「メンバーからは今のところまだ何もいただいておりません。今後たぶんどしどし来てくれると思う。メンバー、コメント募集してますよ!」とメッセージを送り、笑いを誘った。『六本木歌舞伎2022』東京公演は2022年2月18日~3月6日にEXシアター六本木にて、福岡公演は3月11日~13日にサンパレスホテル&ホールにて、大阪公演は3月18日~3月21日にフェスティバルホールにて上演する。題材として取り上げるのは、『青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)』。この作品をベースに、歌舞伎音楽とロック音楽を用いながら、弁天小僧菊之助が歌舞伎世話物狂言の醍醐味を見せる場面をはじめ、時空を超えて、現在社会を騒がせる窃盗団と幕末の江戸市中において人々の耳目を集めた盗賊一味が織りなす物語となる。
2021年12月23日歌舞伎役者の市川海老蔵が主演する『六本木歌舞伎2022』が、2022年2月18日から東京・EXシアター六本木で上演されることが決定し、アイドルグループ・A.B.C-Zの戸塚祥太が出演することがわかった。2015年に海老蔵と中村獅童の共演、宮藤官九郎脚本、三池崇史演出により上演された『地球投五郎宇宙荒事』から始まった同公演。2017年には、リリー・フランキーが新解釈で描き出した第2弾『座頭市』を上演し、寺島しのぶと海老蔵の22年ぶりの共演で話題となった。第3弾は、歌舞伎初挑戦の三宅健が出演し、芥川龍之介『羅生門』を上演。今回はその第4弾となる。三宅からバトンを受け継ぐ形で、事務所の後輩である戸塚が歌舞伎に初めて挑む。また、演出は、日本舞踊の宗家・藤間流八世宗家で舞踊、振付、演出と幅広く活躍する藤間勘十郎が担当し、第1弾から演出を手掛けてきた三池氏は監修として参加。東京公演はEXシアター六本木にて2022年2月18日~3月6日、福岡公演はサンパレスホテル&ホールにて3月11日~13日、大阪公演はフェスティバルホールにて3月18日~21日に上演する。本人コメントは以下の通り。■市川海老蔵2015年にスタートさせた『六本木歌舞伎』も今回で第4回を迎えることができました。毎回、歌舞伎界のみならず様々な分野にて第一線でご活躍される方々のエネルギーをお借りしながら、作品づくりに向き合ってきました。この度は、ジャニーズグループ・A.B.C-Zより戸塚祥太さんをお迎えし、斬新で痛快な作品を生み出します。閉塞感漂う現代に風穴を開けるような「六本木歌舞伎」ならではの科学変化に是非ご期待ください。■戸塚祥太(A.B.C-Z)偉大な先輩方と同じ舞台に立てることに今から気持ちが昂っています。私にとって未知数である歌舞伎の世界に飛び込むことは、子供のように目に映るすべてに心のときめきを感じることと思います。市川海老蔵さんの背中を見ながら、楽しみ学び、そして演じていきたいです。ぜひとも劇場にお越しください。
2021年11月10日2022年1月に東京・新橋演舞場にて上演されることが発表された新作歌舞伎『プペル~天明の護美人間~』。大ヒットした映画の歌舞伎化とあって大きな話題を呼ぶなか、一部の歌舞伎ファンからは批判を浴びているのだ。各メディアによると、原作は、お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣(41)が製作総指揮などを手掛けたアニメーション『映画 えんとつ町のプペル』。主人公のプペルは歌舞伎俳優の市川海老蔵(43)が演じ、玄(げん・絵本ではルビッチ)は市川ぼたんと堀越勸玄が交互に演じると報じられている。また海老蔵は意気込みについて次のようにコメントしたという。「西野さんとはご縁があり、『現代の世では難しくなりつつある、信念と共に諦めない想いを歌舞伎として描きたい』と熱望させて頂きました。この作品によって、皆さまに少しでも前向きな思いや勇気づけられましたらうれしく思います」展開するオンラインサロンの会員数が5万人を超えるなど、一部で絶大な人気を誇る西野。それだけに彼の代表作の歌舞伎化には多くのファンが快哉を叫んだ。《確かにこれはヤバい。やっと発表されて嬉しい。》《西野さんの惜しみないエンタメ魂にワクワク堪らん》しかし、いっぽうで歌舞伎文化を愛する人からは批判の声も……。「公開された公演ポスターには海老蔵さん、ぼたんさん、勸玄さんの3人の名前が同じ大きさで並んでいます。しかし、歌舞伎界の常識では、まだキャリアも実績もないぼたんさんと勸玄さんが海老蔵さんと同じ大きさで同列に名前が並ぶのは異例なんです。いくらお子さんとはいえ、“さすがにちょっと……”と困惑するファンは少なくありません」(芸能関係者)歌舞伎ファンが困惑する最たる例はチケットの値段だ。SS席から7段階にランク分けされている座席だが、SS席は3万円。2階最前列のS席も2万円という設定だ。しかし、3万円ほどのチケットはなかなかお目にかかれないという。たとえば、東京・歌舞伎座で2021年10月現在上演中の「十月大歌舞伎」で、最も高額な一等席で1万5千円。大阪・松竹座で上演中の「十月花形歌舞伎GOEMON」の一等席は1万4千円と、プペルの半額だ。こうした業界の“常識”を覆すプペルに違和感を表明する歌舞伎ファンが続出している。《プペル歌舞伎のチケット、普段の歌舞伎の倍額くらいでビビる》《なぜこの値段設計なんだろ?肌感覚的に違和感が拭えない》《プペル歌舞伎で歌舞伎クラスタの方たちが「(自分の)贔屓が関わりませんように」って言ってるのが全てを物語っている》話題作の歌舞伎化。意気込みで語った「前向きな思い」は届けられるだろうか。
2021年10月06日大看板から花形、若手まで賑やかな顔ぶれが揃い妍を競う10月の歌舞伎座。演目も、洒落た歌舞伎舞踊に時代狂言、抱腹絶倒の世話狂言と、バランスよく贅沢な狂言建てとなっている。第一部一、天竺徳兵衛新噺小平次外伝御家追放となった小平次は女房のおとわと故郷の小幡で暮らしていた。ところが小平次が留守の間におとわは馬士の多九郎と不義密通を。ある日、多九郎は邪魔になった小平次を殺そうと毒薬を手に入れる。三代猿之助四十八撰の内の一つで、実在の人物天竺徳兵衛を描いた物語に四世鶴屋南北『彩入御伽草子』の小平次の怪談を取り入れた歌舞伎らしい荒唐無稽さ溢れる一本だ。今回は小平次の物語に焦点をあて、早替り、幽霊の仕掛けを盛り込んでスピーディーに展開していく。二、俄獅子多くの人々で賑わう江戸の吉原の様子を描いた長唄舞踊だ。洒落た歌詞に合わせ、粋でいなせな鳶頭に華やかな芸者が登場。芸者や太鼓持ちが仮装をし踊りながら練り歩いた、吉原の三大行事のひとつ「吉原俄」を思わせる。江戸の廓の風情と獅子物の面白さを味わいたい。第二部一、時平の七笑平安時代。左大臣の藤原時平は謀反の疑いをかけられた右大臣の菅原道真をかばうが、ついに道真謀反の証拠が。道真は時平に天皇の守護を頼み去っていくが、ひとりになった途端時平は、こらえきれずに笑い出し……。『菅原伝授手習鑑』でも敵役として描かれる藤原時平が、ここでは前半いかにも善人といった様子で登場する。ひとり肩をふるわせてさまざまな笑いを見せる場面がみどころのひとつとなる。二、太刀盗人田舎者の万兵衛から、黄金造りの太刀を盗むすっぱの九郎兵衛。万兵衛が騒ぎ立てるが、太刀は自分のものだと言い合う。本当の持ち主を見極めるため問答に。九郎兵衛は先に問に答える万兵衛の様子をこっそり盗み聞きするのだが……。「松羽目物」のひとつで、田舎者の万兵衛とスリの九郎兵衛のふたりが一拍ずつ遅れて踊る趣向にワクワクさせられる。第三部一、松竹梅湯島掛額本郷駒込の吉祥院へ、「紅長(べんちょう)」の名で知られる紅屋長兵衛たちが木曽の軍勢から逃れてくる。一方八百屋お七は小姓吉三郎との叶わぬ恋を嘆いている。紅長はお七をつけ狙う源範頼の家来からお七を匿うため欄間へ隠してやる。だが雪の夜、吉三郎に会いたい一心で、お七は火の見櫓へ上り木戸を開けさせるために鐘を叩く。紅長は、かけると身体がぐにゃぐにゃになる“お土砂”を使ってお七の恋を助ける。この「吉祥院お土砂の場」に抱腹絶倒だ。「火の見櫓の場」ではお七が「人形振り」で吉三郎への思いの丈を表現する。二、喜撰桜満開の京都へ現れた喜撰法師。法師は茶汲み女お梶に見とれ二人のクドキに。ほろ酔い気分の喜撰は迎えにやってきた大勢の所化たちと賑やかに踊り庵に帰っていく。『六歌仙容彩』は天保2(1831)年初演の変化舞踊。なかでも「喜撰」は、桜の枝を錫杖に見立ててのチョボクレや住吉踊りなど、洒脱で軽やかさが人気の舞踊だ。文:五十川晶子『十月大歌舞伎』2021年10月2日(土)~2021年10月27日(水)会場:東京・歌舞伎座
2021年10月02日歌舞伎俳優市川九團次プロデュースブランド【Re;sonate(リゾネイト)】わずかな動きを振動エネルギーに変えて宝石が揺れ続ける【ダンシングストーン】が世界中で大ヒットしている株式会社クロスフォー(本社:山梨県甲府市、代表取締役社長:土橋秀位、東証ジャスダック上場<証券コード7810>、以下「クロスフォー」)が、歌舞伎俳優・市川九團次さんプロデュースによる日本の伝統文化をテーマにしたジュエリーブランド【Re;sonate(リゾネイト)】が本格デビュー。11月からは全国催事での導入スタートを予定。歌舞伎俳優市川九團次プロデュースブランド【Re;sonate(リゾネイト)】プロデューサーである市川九團次さんインタビュー動画ブランドコンセプト伝統と革新の融合。本物を知る大人の女性に贈る、上質さの中に“華やかさ”と“粋な遊び心”を感じさせるジュエリー。ブランド名であるRe;sonateに込めた想いReは繰り返しを表し、sonateは器楽を使った音楽(奏鳴曲:ソナタ)のこと。音楽と同じように、長きに渡って人々を魅了する優れた物語は、見るたびにそして、見る人の状況や心境によって異なる輝きを放ち続ける。Re;sonateは歌舞伎などの日本の伝統文化をテーマに、身に着ける方の心に直接語り掛けるストーリー性のあるデザインを展開するジュエリーブランドです。全国の催事での導入も決定!”身を焦がすほどの愛に生きた女性”がテーマの【恋蛍】など新シリーズも続々。京鹿野娘道成寺の清姫をテーマにした【情念】妹背山婦女庭訓の雛鳥をテーマにした【覚悟】6月のプレローンチに発表した、Re;sonate第一弾シリーズ【花ひらく】のみクロスフォーオンラインショップでも取り扱っておりますが、Re;sonateブランドの商品は現時点で、全国のジュエリー催事のみでの取り扱いとなっております。11月からは全国催事での導入も決定し、すでに発表している【花ひらく】シリーズの他に、恋い焦がれる女心を蛍の火に例えた【恋蛍】シリーズ、歌舞伎演目の中でもその益荒男ぶり画際立つ男性をテーマにした【千両役者】シリーズ、日本における神話の中から代表的な神様をモチーフにした【天地開闢】シリーズ、歌舞伎の中でも大役とされる3人の姫をモチーフにした【歌舞伎三姫】シリーズなどが店頭に登場いたします。公式インスタグラムでは今後の催事情報を発信するほか、隈取タイニーピンのプレゼント企画も実施中!Re;sonate公式インスタグラムでは、今後の新商品や全国の催事情報を発信。なお、ブランドの本格デビューを記念して、9月27日(月)~10月11日(月)まで、Re;sonate公式インスタグラムでは歌舞伎の隈取タイニーピン(非売品)プレゼントキャンペーンを実施中。歌舞伎と言えば、見得。そして目ヂカラ。その目にダンシングストーンをあしらい、わずかな動きで目がキラキラと輝くユーモアあふれるタイニーピン。動画内でも九團次さんが着用されているものと同じデザインで、歌舞伎ファンにはたまらない逸品です。目がダンシングストーンに!プレゼントの隈取タイニーピン(非売品)動画動画内で九團次さんも着用している隈取タイニーピンプレゼントキャンペーン応募方法①Re;sonate公式インスタグラムをフォロー( )②キャンペーンの投稿をリポストするだけで応募完了!※10月中旬を目途に当選者様へは発送致します。instagram投稿 : プロデューサーを務める市川九團次市川九團次プロフィール1972年4月4日千葉県野田市生まれ。1998年坂東竹志郎を名乗り初舞台。2005年四代目坂東薪車襲名。2014年市川海老蔵門下となり、市川道行を名乗る。2015年市川九團次を襲名。市川海老蔵一門として全国並びに世界各国で公演を行うほか、2016年には九團次として初めての自主公演「九團次の会」を開催し、3年目となる2018年には全国11か所にて13公演を勤め上げた。テレビCMやバラエティ番組にも多数出演するほか、歌舞伎をより多くの人に知ってもらいたいと、学生や一般の方へのワークショップを行うなど、歌舞伎以外でも幅広く活躍中。≪出演・受賞歴など≫・・・ライザップ(CM)/日本テレビ「News Every」特集ナレーション担当/雑誌「GINGER」WEBサイトにてレシピ連載/市川海老蔵「古典への誘い」/ドラマ「あの子が生まれる」(フジテレビオンデマンドFOD)/十三夜会賞奨励賞受賞(2005年)/咲くやこの花賞受賞(2006年)/十三夜会賞奨励賞受賞(2011年)■株式会社クロスフォー会社概要会社名:株式会社クロスフォー代表取締役社長:土橋秀位東証JQS上場:<証券コード7810>所在地:〒400-0043山梨県甲府市国母7-11-4設立: 1987年8月事業内容:ジュエリー・アクセサリーの輸入・製造・販売URL: オンラインショップ: 1980年に宝石輸入販売会社として山梨県甲府市に誕生。宝石の中に十字の輝きを持たせるクロスフォーカットを開発(特許取得)。2007年には香港子会社を設立し海外進出を果たし、2010年にさらなる研究を重ね、特殊な構造で石が揺れ続ける独自技術のダンシングストーンを開発(特許取得)。その技術と品質は様々なブランドから高い評価を得て、今ではダンシングストーンは世界中で愛されるまで成長しております。 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2021年09月27日『眠狂四郎』シリーズを始めとする大映時代劇の花形スター、市川雷蔵。その歌舞伎役者時代にスポットをあてた『歌舞伎役者 市川雷蔵』が、このほど、中央公論新社から出版された。著者は演劇ジャーナリスト、大島幸久さん。1969年に逝去してから50年以上過ぎても”雷様”と慕うファンは多い。大映映画は毎年のように、大規模な回顧上映が行われていて、雷蔵出演作品は人気プログラムだ。そこで観てファンになった若い人も相当数いるという。映画俳優としての雷蔵については、多くの著作や写真集が出版されているが、歌舞伎役者の雷蔵は著作が見当たらない。関西歌舞伎の名門、市川寿海の芸養子となり、八代目市川雷蔵を襲名してまもなくの映画界への転身、その理由など、まだ知られていない謎を探ろうという企画だ。著者の大島さん自身は、歌舞伎時代の生の舞台は観ていない世代だが、文献資料だけでなく、当時を知る先輩ジャーナリストや演劇評論家、関係者に取材し、まとめた。映画俳優時代も、オープンしたばかりの日生劇場で歌舞伎公演を行うなど、舞台に立って活躍していたが、その頃の写真も多く収録されている。これが実に二枚目。歌舞伎役者時代はほんの8年間だが、さぞかし雰囲気のある役者だったと想像される。同じように、歌舞伎界から転身し、映画スターになった萬屋錦之介は、雷蔵とも親しく、交流があった。「きれいでしたからね。何ともいえぬ色気があって……ことに歌舞伎の白塗りなんかのとき……」と後年コメントを残している。その錦之介を始め、歌舞伎時代の仲間でもあった坂田藤十郎ら、名優たちとのエピソードは、とても興味深い。『歌舞伎役者市川雷蔵 のらりくらりと生きて』大島幸久著 / 中央公論新社 / 2,200円(税込)ぴあアプリ「水先案内人」大島幸久さんのおすすめ演劇公演はコチラ
2021年09月14日八月花形歌舞伎は、古典の通し上演や、歌舞伎の様式美に溢れる狂言、そして盛夏にふさわしく怪談など、賑やかな演目が出そろう。第一部は『加賀見山再岩藤』。「三代猿之助四十八撰」屈指の人気作で「骨寄せの岩藤」の通称で知られる。御家騒動が起きた多賀家当主の大領は愛妾・お柳の方に心奪われており、御家は様々な陰謀に巻き込まれている。これらすべて側室・お柳の方と、その兄・弾正が仕組んだことだった。一方、二代目尾上となった召使いのお初の前に、突如岩藤の亡霊が現れ……。岩藤のエピソードに焦点を当てた「岩藤怪異篇」として上演する。第二部一幕目は怪談噺『真景累ヶ淵』。富本節の師匠豊志賀は、20歳ほど年の離れた弟子の新吉と恋仲になるが、顔に腫れ物ができる病にかかってしまう。新吉と若い娘お久の仲を勘ぐっては嫉妬に狂って……。三遊亭円朝の人情噺を脚色した作品。怖ろしい豊志賀の執着や、男と女の複雑な心情を描くゾッとするような怪談噺だ。二幕目は『仇ゆめ』。川のほとりにすむ狸が島原の深雪太夫に恋をする。ある日太夫が憧れている舞の師匠の姿に化け、秘めてきた恋心を伝えて大喜びする太夫と連れ舞をするのだが……。恋に落ちた狸の気持ちをユーモラスな踊りで見せる前半から、後半では一途な狸の思いと姿、それに応える太夫のやさしさがしっとりと描かれる。第三部一幕目は『義賢最期』。勇将木曽義仲の父・義賢の壮絶な最期が描かれる本作。組んだ戸板の上で立ったまま倒れる「戸板倒し」や「蝙蝠の見得」、直立のまま倒れ込む「仏倒し」などの激しい立廻りは歌舞伎ならでは。源氏再興を願い、一人で平家に抗う義賢の覚悟が胸に迫る。迫力に満ちた義太夫狂言の名作だ。二幕目は舞踊が二本。『伊達競曲輪鞘當』と『三社祭』。華やかな吉原仲之町で不破伴左衛門と名古屋山三という因縁のふたりが、吉原で再会を果たす。荒事味あふれる伴左衛門と、和事味漂う山三による「渡りぜりふ」は聴きどころ。また、ふたりの個性が際立つ衣裳や、当時のかぶき者達の風俗を題材としたといわれる両手両足を優雅に大きく動かす「丹前六方」など、歌舞伎の様式美に富んだ『鞘當』。もう一本は躍動感と洒落っ気に富んだ清元の舞踊。浅草の三社祭を素材とした『弥生の花浅草祭』の一場面だ。浅草近くを流れる宮戸川(隅田川)のほとりではふたりの漁師が網を打っている。悪玉と善玉がふたりに乗り移り……。それぞれ「悪」と「善」の面をつけたふたりが、悪尽くし、善尽くしの振りを踊る展開が最大のみどころだ。今月も三部制、座席は一部を除いて前後左右を開けた千鳥方式になっている。なお、第一部『加賀見山再岩藤』「岩藤怪異篇」に出演を予定していた市川猿之助が新型コロナウイルス感染のため当面の間休演、坂東巳之助が代役を勤めることが発表されている。取材・文:五十川晶子『八月花形歌舞伎』演目【演目】第一部三代猿之助四十八撰の内「『加賀見山再岩藤』岩藤怪異篇」第二部一、『真景累ヶ淵』豊志賀の死二、「仇ゆめ」第三部一、 源平布引滝『義賢最期』二、『伊達競曲輪鞘當』『三社祭』2021年8月3日(火)~2021年8月28日(土)会場:東京・歌舞伎座
2021年08月03日昨年の南座「吉例顔見世興行」以来、関西で今年初となる大歌舞伎の幕が開いた。大阪松竹座の「七月大歌舞伎」。コロナ禍で「待ってました!」の大向うの掛け声はなくとも、俳優も観客も熱い思いでこの日を迎えた。昼の部は、妖刀をめぐる物語で歌舞伎の様式美にあふれた夏芝居『伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)』。そして片岡仁左衛門、片岡孝太郎、片岡千之助の松嶋屋三世代がそろう粋で華やかな舞踊『お祭り』。夜の部は、明り取りの天窓の演出が印象に残る、血のつながりを越えた家族の情愛を描く『双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)』「引窓(ひきまど)」。そして男女の悲恋と親子の情愛を描いた上方和事の代表作『恋飛脚大和往来(こいびきゃくやまとおうらい)』「新口村(にのくちむら)」。この『伊勢音頭』と『引窓』に、「大阪が好き」と公言する松本幸四郎が東京から出演、意気込みを語った。「七月大歌舞伎」チケット情報「上方のお芝居は僕の好きな人間味あふれるお芝居が多いように思います。客席の反応もストレートで、楽しませてほしいという積極的な気持ちを感じて、とても刺激になります」と、大阪への愛を口にする幸四郎。今回の役を演じるのはどちらも2度目だ。『伊勢音頭』は主人公の侍・福岡貢役で「絵的にとても素敵な芝居で、憧れの役でした。怒りや悲しみ、喜びなどの感情をどれだけドラマチックに動かせるかがテーマです」。『引窓』では追われる身の濡髪長五郎。「大好きなお芝居です。長五郎は強い思いを持ちながらもそれを言わない。自分の気持ちを言うまでの思いを、お客様にどうやって伝えきるかを大切に演じたいです」。ただ、観ていただきたいのは自分の演技以上に、何よりも「歌舞伎です」と強く言う。「上方色のとても強い、歌舞伎を観た実感がある演目です。やっとこの日が来たので、しっかりと歌舞伎をしたい」。現在、他劇場では定員100%で販売する劇場もある中、客席をあえて50%のままに、さらに通常なら昼夜それぞれ三幕構成が多いが、今回は二幕構成にして上演する。また「共演者同士舞台の上でしか会えないんです」。それらはすべて、お客様に安心して劇場に来てもらうため、そして歌舞伎を守っていくための対応と、苦しい中でも劇場は姿勢を崩さない。「お客様も強い思いがあって劇場に足を運んでくださっている。そういう皆さんのお目があったからこそ、初日の幕が開きました。まったく世界が変わった中で、久しぶりに大阪松竹座での歌舞伎。ここから関西でも歌舞伎が開き続けていくと思います。その瞬間を見届けに来ていただきたいです」。公演は7月18日(日)まで、大阪松竹座にて上演中。取材・文:高橋晴代
2021年07月09日今月の歌舞伎座は、親しみやすい対話劇や華やかな舞踊劇、世話物の傑作から歌舞伎十八番まで、見逃せない狂言が揃った。第一部の一幕目は『あんまと泥棒』。あんま秀の市が高利貸をして金を稼いでいるとの噂を聞き、秀の市の家へ押し入った泥棒の権太郎。しかし、秀の市はのらりくらりととぼけるばかり。やがてふたりで酒を飲み始めると秀の市が権太郎に説教を始め。登場人物は秀の市と権太郎だけ。一癖も二癖もあるあんま秀の市と、気のいい泥棒権太郎の人間性が巧みに描かれたユーモラスな一幕だ。二幕目は『蜘蛛の絲宿直噺(くものいとおよづめばなし)』。源頼光主従の土蜘蛛退治を題材にした変化舞踊作品。6役早替りが目にも鮮やかだ。本性を顕した女郎蜘蛛の精が頼光や家臣たちと繰り広げる立廻り、千筋の糸を繰り出すクライマックスまで、見どころたっぷり、変化舞踊の醍醐味を堪能できる華やかな一幕。第二部の一幕目は、『新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん)』。大名の山蔭右京は恐妻家なのに大変な浮気者。愛人の花子と逢引したいけれど奥方玉の井が外出を許さない。そこで右京は邸内の持仏堂で一晩座禅をすると嘘をつき、家来の太郎冠者を身替りに立てて花子のもとへ向かう。しかし奥方玉の井にこのことがばれてしまい……。夫婦のやり取りが可笑しみを誘う松羽目物の人気作だ。二幕目は『御存 鈴ヶ森(ごぞんじすずがもり)』。東海道、品川宿付近の鈴ヶ森は刑場に近く、夜になると無頼の雲助たちの溜まり場となる。そこへお尋ね者の美少年・白井権八が通りかかるが、襲い掛かる雲助たちを見事な刀さばきで斬り払っていく。その様子を駕籠の中からじっと見つめていたのが江戸随一の侠客・幡随院長兵衛だった……。権八と雲助たちのユーモラスな立廻りや、長兵衛と権八の再開を約束するやりとり、底知れない闇に包まれた江戸の情景など、鶴屋南北らしさあふれる名作。第三部は『雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)』。歌舞伎十八番の魅力が凝縮された壮大な物語だ。二世市川團十郎により初演され、歌舞伎十八番の『毛抜』、『鳴神』、『不動』の3作品が織り込まれた成田屋ゆかりの通し狂言。天下を揺るがす大悪人を懲らしめようとヒーローたちが大活躍する勧善懲悪の物語に、豪快な荒事芸、早替りや空中浮遊と、歌舞伎ならではのスペクタクルあふれる一幕だ。座席は今月も一部を除いて千鳥型。また第三部は公演期間が異なるため注意が必要だ。取材・文:五十川晶子『七月大歌舞伎』演目【第一部】11:00開演一、『あんまと泥棒』二、『蜘蛛の絲宿直噺』【第二部】14:30開演一、『新古演劇十種の内 身替座禅』二、『御存 鈴ヶ森』※『御存 鈴ヶ森』について、中村吉右衛門が出演を予定していた偶数日を含め、中村錦之助が全日程を勤めます。【第三部】17:40開演通し狂言『雷神不動北山櫻』第一部・第二部:2021年7月4日(日)~2021年7月29日(木)第三部:2021年7月4日(日)~2021年7月16日(金)会場:東京・歌舞伎座
2021年07月04日抜け目のないあんまと、どこか憎めない泥棒の丁々発止のやりとりがユーモラスな『あんまと泥棒』が、歌舞伎座『七月大歌舞伎』に登場する。1951年にNHKラジオドラマで放送された村上元三の脚本をベースにした登場人物ふたりだけの対話劇だ。尾上松緑が泥棒権太郎、あんま秀の市を市川中車が勤める。中車が秀の市を勤めるのは今回が4度目。初めて勤めたのは平成27年の明治座、泥棒の権太郎は市川猿之助だった。「45分間目をつぶりっぱなしというのは、どういう世界観なのだろうと思っていました。映像ならシーンを切り貼りしてつなげていけますが、舞台では実際に声を耳で聞くしか手段がないので、相手の言葉にとても敏感になりましたね。初役では権太郎が四代目(市川猿之助)でした。呼吸や間の感覚が近くて血縁というものを感じました。逆に2度目はこんぴらで愛之助さんと、3度目が歌舞伎座で(尾上)松緑さんと、音羽屋さんとの色の違い、松緑さんと僕との差異が面白かったですね」この差異こそがこの作品の本質なのではないかと、気づいたと語る。市川中車「松緑さんの素の姿というのは、まじめで後輩やお弟子さんたちの面倒見のよい、実に好い人。そういう印象が僕の中にあるんです。権太郎の持っている人品の好さが松緑さんに内蔵されているように感じました。僕ら小中高では暁星(学園)の先輩後輩でもありますし。今回もまた松緑さんの息遣いを感じながら勤めたいと思います」中車が最初に映像で観た秀の市は中村嘉葎雄のそれだった。「嘉葎雄さんのひょうひょうとした感じ、動き、これをお手本にしたいと思っていたのに、頭のどこかで“歌舞伎らしくしなきゃ”と力が入っていたのでしょう。もう一度勉強しなおして、リアルな芝居の面白味を素直に出していきたいと思っています」また昨年11月に市川猿之助の五役早替りで話題となった華やかな舞踊劇『蜘蛛の絲宿直噺』もこの七月大歌舞伎で再演される。中車は初役で渡辺綱を勤める。『七月大歌舞伎』チラシ「昨年8月に再開して以来、歌舞伎座では三部制を敷いていますが、一部のうち二演目両方に出演するのは久しぶり。一演目だけに出演というペースに慣れて来たところなので、大丈夫かな、まずそこからですね(笑)」この4月には猿翁十種の内『小鍛冶』で猿之助と出演したことも大きな転機となったという。能から取った所作事だ。「終始四代目にひっぱってもらいながら共に鍛冶の相槌を打つ、これはもう僕にとってはかけがえのない時間でした。ところがどれほど稽古しても、それでも舞台本番で何かしら間違えてしまうんです。ふたりでトンテンカンテンとやっていると三味線や鳴物の音がずれて聴こえることがあって、僕が間違ってしまって。四代目とクルリと位置を入れ替わるとき、”すみません!”と小声で謝ると、四代目が”え~~~~!”と(笑)。それでも何も間違えていないかのようにフォローし合う。これに痺れて痺れて。父(市川猿翁)と(市川)段四郎の叔父とが踊ったときもこういう瞬間があったのかなと想像しましたね。ふたりで相槌をトンテンカンテンと打ち合う、行のような不思議な時間でした」僕の中に間違いなく歌舞伎の血が流れている歌舞伎の世界に入り、丸9年。時代物、世話物、古典に新歌舞伎、様々な演目に出演してきた。「時代物の修業を経ていない役者が世話物を演るわけですから、問題点が噴出してしまいました。よりどころとなる型がない状態では、どんなに稽古しても大海原で迷っている船のようなもの。稽古する膨大な時間を絞り出せるのなら、時代物の方が世話物よりは安定したものになるとは思います。でも今は両方とも難しいと感じている段階で、何ひとつ会心の出来と思えるものがない。この苦しみは僕だけに特有のもので、これはずっとついて回るものだと覚悟しています。そしてとにかく舞台に立ち続けていくしかない。そう思っています」その苦しみの中にあっても、歌舞伎の舞台の上にこそ生きている実感があるという。「歌舞伎の初舞台の演目が『小栗栖の長兵衛』でした。百姓長兵衛の僕が簀巻きにされて舞台に寝そべっている場面があります。ふと上を見上げると、曾祖父(初代市川猿之助)と祖父(三世市川段四郎)の二人の大きな写真がバトンに吊るされているのが見える。次の幕の『口上』で披露するためのものです。それを真下で横たわって眺めているとき、“ああ、俺は生きている”と感じました。市川中車それに『小鍛冶』でも従弟である四代目と相槌を打っているときも、先の猿翁さん、中車さん、段四郎さんが“舞台に居るなあ”と感じるんですよ。彼らが聴いてくださっているとね。もしも子供のころから歌舞伎俳優として育っていたら、そこまで思わなかったかもしれない。でも今の僕にとっては形に残る映像作品よりも、日々消えていくこの歌舞伎の舞台の方が生きているという実感がある。これはやはり僕の中に間違いなく歌舞伎の血が流れているからだと思いましたね」コロナ禍で以前のような歌舞伎座の雰囲気はまだまだ戻ってきていない。「去年のコロナ自粛期間中は、その前から始めていた日舞の稽古をずっとやっていました。体ができていないと動けませんのでね。今思うのは、大向こうさんだけでも戻ってきてくださったらなあと。声がかからないのは僕だって寂しいのですから、大先輩方はさぞかし寂しい思いだろうと思います。義太夫さんが黒い前垂れで口を覆っていますが、あれも苦しいだろうと思いますね。早く何とかしてあげたい」コロナ禍でなければ今年の夏、歌舞伎座の舞台にも、舞台から見える客席にも、違う景色があったかもしれないとも。「良くも悪くもこの夏はザワザワした雰囲気になるでしょう。でも僕らは毎日歌舞伎座で粛々と歌舞伎をやるだけです。毎日寸分違わず同じ時間に楽屋へ入り、ミリ単位の違いに神経をとがらせて正しい位置を狙い、一人ひとりがそれぞれの家や歴史を背負って毎日舞台に立つ。それをその日いらしたお客様がご覧になって帰っていく。その一日限りの交差がなんとも面白いですよね。歌舞伎の醍醐味だと思いますね。コロナ禍の前の状態に一日も早く戻すためにも、いつも通り、ぶれずにしっかりと勤めなければと思っています」中車の出演する『あんまと泥棒』『蜘蛛の絲宿直噺』は七月大歌舞伎第一部で上演される。上演期間は、一部と二部は7月4日(日)~29日(木)、第三部は7月4日(日)~16日(金)までと異なっているのでご注意を。取材・文:五十川晶子『七月大歌舞伎』演目【第一部】11:00開演一、『あんまと泥棒』二、『蜘蛛の絲宿直噺』【第二部】14:30開演一、『新古演劇十種の内 身替座禅』二、『御存 鈴ヶ森』※『御存 鈴ヶ森』について、中村吉右衛門が出演を予定していた偶数日を含め、中村錦之助が全日程を勤めます。【第三部】17:40開演通し狂言『雷神不動北山櫻』第一部・第二部:2021年7月4日(日)~2021年7月29日(木)第三部:2021年7月4日(日)~2021年7月16日(金)会場:東京・歌舞伎座
2021年06月20日歌舞伎界の若きプリンス中村壱太郎と尾上右近がコロナ禍において制作し、好評を博したオンライン公演「ART歌舞伎」を、映画化した『中村壱太郎×尾上右近 ART歌舞伎 花のこゝろ』がポレポレ東中野での上映の反響を受け、6月4日(金)よりシネ・リーブル池袋にて上映されることが決定した。その後、全国順次公開予定となっている。これまでロシアやスペインなどでイベント上映され海外でも評価を受けてきた本作。この度、ファンタジア国際映画祭への参加も決定し、各界著名人からのコメントおよびコメント付き予告映像が公開された。ファンタジア国際映画祭は、カナダ・モントリオールで1996年から開催されているジャンル映画を対象とした映画祭。今年は8月の開催を予定しており、今回で25回目の開催となる。「北米最大のジャンル映画祭」を謳っており、クエンティン・タランティーノやギレルモ・デル・トロ、ジェームズ・ガンなど、多くの映画監督から支持されている。■『中村壱太郎×尾上右近 ART歌舞伎 花のこゝろ』コメント付き予告<コメント>■紺野美沙子(女優)アート歌舞伎は小宇宙のよう。静けさの中に浮かびあがる濃密で甘美な世界。今だから、誘われたい。■阿部純子(女優)これこそART歌舞伎!お二人の攻めの姿勢に魅了され続けました。壱太郎監督、右近さん、贅沢な時間をありがとうございます!■九龍ジョー(ライター/編集者)繰り返しもたらされる高揚感に、芸能の未来と原初の光景を幻視した。闇夜に注ぐ雨音まで美しい。■上妻宏光(三味線奏者)懐かしさと最先端が融合された芸術世界。各分野のエキスパートだからこそ表現できた世界を堪能して欲しい。■松崎健夫(映画評論家)雨音が伴う陰影の中で舞う姿は、行雲流水な悠久の歴史と人の営みとを対比させる。奇しくもそれは、コロナ禍の不条理とも重なるのだ。■マーク・シリング(映画評論家)「ART歌舞伎」と聞き、単に歌舞伎の舞台を撮影した映像を想像している方々は、驚くべき新しい発見に出会える作品だ。若き歌舞伎俳優、中村壱太郎とコラボレーター達が創造したのは、伝統的な歌舞伎の技と美を素晴らしく斬新な装いで見せるエンターテイメント。実験的でありながら理解し易く、折衷的でありながら一貫性があり、日本の伝統舞台芸術家たちの集合体でありながらその意外な組み合わせは心に残る。「ART歌舞伎」が放つエネルギーとイマジネーションが、古いものと見慣れたものを新鮮な視点で楽しませてくれる。■ニコラ・アーシャンボウ(ファンタジア国際映画祭ディレクター)『心の癒しに「ART歌舞伎」を一服』コロナ禍で劇場が閉館している間に、若き歌舞伎俳優、中村壱太郎は俳優仲間とユニークなアーチストを集めて「ART歌舞伎」の制作を決めた。”舞と美と命”を題にしたパフォーマンスの映像は、見るものの心を捉える。美しい映像、エネルギッシュな音楽、目を見張るコスチュームで、中村壱太郎はこの困難な状況に希望と楽しみを与えてくれた。「ART歌舞伎」は何百年も続く伝統芸術を新たな視点で捉え、まるで日本庭園でロックコンサートを見ている気分にしてくれる。『中村壱太郎×尾上右近 ART歌舞伎 花のこゝろ』6月4日(金)よりシネ・リーブル池袋にて公開
2021年06月04日5月からスタートした「月イチ歌舞伎」は、歌舞伎の舞台公演を撮影し、臨場感たっぷりにスクリーンで鑑賞する「シネマ歌舞伎」を、月に一度全国の映画館で上映する人気企画となっている。人気落語家・春風亭一之輔は連日多数の高座を勤める超多忙なスケジュールの中でも、毎月時間を作っては歌舞伎を観に行くという大の歌舞伎好きだ。その彼に歌舞伎ファンから見たシネマ歌舞伎とはどういうものなのか、その魅力を聞いてみたい。――歌舞伎をお好きになられたきっかけを教えていただけますか。歌舞伎を始めて観たのは、高校生の時に授業の一環で連れて行ってもらった国立劇場です。「野崎村(新版歌祭文・しんぱんうたざいもん)」を最前列の花道のつけ際で観ました。いい席だったなぁ。でも、定期的に観に行くようになったのは大学進学で上京してからです。かみさんは大学の同窓生なのですが、歌舞伎・舞踊研究会に所属していて、よく歌舞伎座へ連れて行ってもらいました。お金がありませんから、一幕見席でね。代わりにぼくが彼女を寄席に連れて行ったり。――素敵なデートですね。今もよく通われています?月に1度くらいですけれど、観に行かせていただいています。落語の参考になるかどうかは関係なく、純粋に好きだから、楽しみに行っているという感じですね。うちの師匠(春風亭一朝)は歌舞伎好きなので、弟子入りしたときは芝居を観るやつが入って来たと喜んでました。師匠のおかみさんのご兄弟は歌舞伎役者の片岡亀さんで、お正月には師匠へご挨拶に見えるのでお話したりします。――片岡亀蔵さんは、シネマ歌舞伎にもたくさん出演なさっています。歌舞伎ファンの一之輔師匠からご覧になって、シネマ歌舞伎はいかがですか。『野田版 研辰の討たれ』の亀蔵さんのからくり役は、10歳の娘が一緒に観ていたのですが腹を抱えて笑っていました。シネマ歌舞伎は、手の込んだ大道具や表情など細かいところまでアップで観られて、面白いですね。セリフも入ってきやすいし、カメラワークがストーリーを追いやすくしてくれます。生の舞台で観るよりもわかりやすいので、歌舞伎を観たことがない方にもおすすめしたいです。もちろんライブにはライブの良さがあって、幕が上がって、他のお客さんと一緒に拍手して、舞台全体が目に入るのも味わっていただきたいですが、どちらが先でもいいと思います。――他に気になるシネマ歌舞伎は?今年の上映作品の中だと7月の『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』は凄いキャスティングですね。8月の『大江戸りびんぐでっど』も舞台を観ていないから観たいなぁ。今年の上映ラインナップには無いですが、落語家としてはやっぱり『らくだ』が気になります。特にシネマ歌舞伎になった、中村勘三郎さん、坂東三津五郎さんの『らくだ』は贅沢です。あとは『文七元結』のおかみさん役は落語でもとても難しい役なので、先代の中村芝翫さんが演じられているのは観てみたいですね。――落語と歌舞伎は全く異なる芸能ですが、それぞれの得意分野はどういうところだと思われますか。見た目の華やかさですとか、現れたときのあっと言わせるインパクトは、歌舞伎にはかなわないなと思います。6月に公開する『鰯賣戀曳網(いわしうりこいのひきあみ)』にご出演の勘三郎さんや坂東玉三郎さんは、現れただけでお客さんがウキウキしたのが、シネマ歌舞伎の画面越しにもわかりました。反対に、怪談などの描写は、見えない、想像するしかない落語の方が怖いと思います。それから、歌舞伎は大勢でつくりあげるものですが、落語はひとりです。いろんな人をひとりで演じられるのは面白いですが、協力し合って進めていくのも楽しそうだなと思います。鹿芝居(“はなしか(噺家=落語家)”が演じる芝居)に出るとしたら、ぼくは出番が少なくておいしい役がいいですねぇ(笑)。シネマ歌舞伎・第37弾『鰯賣戀曳網(いわしうりこいのひきあみ)』6月4日(金)より公開詳細:
2021年06月02日映画のように気軽に歌舞伎を楽しめるシネマ歌舞伎。4月29日より松竹公式動画配信サービス〈歌舞伎オンデマンド〉にて月に1本の定期配信がスタートした。定期配信第1作目は、歌舞伎の古典演目を新たに現代的な感覚で描くことをテーマに上演されている2014年のコクーン歌舞伎を撮影したNEWシネマ歌舞伎『三人吉三』。中村勘三郎亡き後、中村勘九郎、中村七之助、尾上松也ら次世代の俳優が中心となって上演された初めてのコクーン歌舞伎で、勢いと情熱溢れる熱い舞台を見せ観客を熱狂させた。そんな舞台を、舞台で演出・美術を担当した串田和美自身が映像監督を務め、舞台を観た人にも、観ていない人にも常識を覆す体験をしてほしいとの想いで舞台収録映像のほかに新たな撮影を敢行し、 編集に編集を重ねてブラッシュアップ。ライブの舞台の躍動感、スピード感、エネルギー、壮絶なるドラマを凝縮させたかつてないシアトリカルムービーとなっている。配信作品は、毎月映画館で上映されるシネマ歌舞伎作品とも合わせて楽しめるよう、テーマを決めて選定。5月の映画館上映作『研辰の討たれ』は野田秀樹による野田版歌舞伎の1作目。『三人吉三』はコクーン歌舞伎の新たな幕開け、と「新たな時代を感じさせる作品」がテーマとなっている。各月のテーマについては月イチ歌舞伎のHPにて紹介されるので、そちらをチェックして欲しい。【シネマ歌舞伎定期配信 詳細】●期間・作品4月29日(木・祝)~5月31日(月) NEWシネマ歌舞伎『三人吉三』6月1日(火)~ 6月30日(水)『天守物語』(主演:坂東玉三郎)7月1日(木)~ 7月31日(土)『連獅子/らくだ』(主演:中村勘三郎)8月1日(日)~ 8月31日(火)『野田版 鼠小僧』(主演:中村勘三郎)9月1日(水)~ 9月30日(木)『女殺油地獄』(主演:松本幸四郎)2022年2月まで配信予定。10月以降の配信ラインナップは後日発表致します料金(税込):1900円(レンタル配信・購入時から7日間何度でも視聴可能)配信サイト:歌舞伎オンデマンド(松竹公式動画配信サービス。MIRAIL内)URL: 『三人吉三』視聴ページ(4/29公開) : >付随サービス(有料):「シネマ歌舞伎イヤホンガイドアプリ」でスマホを使って同時音声解説もご利用いただけます
2021年05月11日新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2021年4月25日に三度目となる緊急事態宣言が東京都、京都府、大阪府、兵庫県の4都府県で発令されました。大型連休であるゴールデンウイーク終了後の5月11日までを対象としており、政府は飲食店や娯楽施設を中心に休業要請。また、劇場や遊園地、競技場などで行われるイベントに対しては、事実上の休業要請といえる無観客での営業を要請しました。市川猿之助、劇場への休業要請に苦言歌舞伎役者の市川猿之助さんが、同月23日にInstagramのストーリーズ機能で投稿。今回の緊急事態宣言について、劇場で働く1人の役者として疑問を投げかけました。日々、感染症や、亡くなった方の人数が発表されても、生活が行き詰って自ら命を経つ人の数は発表されない。このままでは、わが国では、感染で亡くなる人の数を上回るのではないか。それがいちばん危惧されます。ennosuke_ichikawa4ーより引用(原文ママ)どうしたら東京五輪が開催できるか、という視点から対策を講じるから、おかしなことになるわけで。どうしたら日本という国がこの難局を乗り切れるか、という視点から対策を講じるべきではないのか?と、思うのですが、、、ennosuke_ichikawa4ーより引用歌舞伎座は、座席制限が解除されても、収入度外視、安全安心第一で、座席数50%以下でやってきました。オリンピックも大切です。しかし、オリンピックありきの対策には疑問しか感じません。休業要請は、死の宣告と同じです。皆が救われる道はないものですか?ennosuke_ichikawa4ーより引用猿之助さんのメッセージはネットで拡散され、多くの人から「気持ちを代弁してくれてありがとう」「悔しさや怒りが伝わってくる」といった声が上がっています。東京都中央区にある歌舞伎座で『四月大歌舞伎』に出演していた猿之助さん。緊急事態宣言の発令によって公演は中止となり、急きょ同月24日に千秋楽を迎えることになってしまいました。猿之助さんは「これまでの役者人生の中で、一番めでたくない千秋楽となりました」とつづり、悔しい気持ちをあらわにしています。 この投稿をInstagramで見る 市川猿之助 ENNOSUKE ICHIKAWA Ⅳ(@ennosuke_ichikawa4)がシェアした投稿 政府は無観客の要請について「社会生活の維持に必要なものを除く」と線引きをしていますが、娯楽は多くの人の心を支えているといえるでしょう。また、出演者や劇場のスタッフなど、多くの人が娯楽によって生計を立てています。「文化を軽視しているのではないか」「なぜ五輪は許されて、演劇は許されないのか」といった疑問の声が相次いでいる、今回の休業要請。長年守り続けてきた文化の灯が消えないよう、多くの人が強く願っています。[文・構成/grape編集部]
2021年04月25日2月放送開始の大河ドラマ『青天を衝け』への出演をはじめ、歌舞伎界の枠を超えて活躍する尾上右近が京都・南座公演『三月花形歌舞伎』に登場する。中村壱太郎、中村米吉、中村橋之助ら注目の若手と挑むのは、三大名作のひとつ『義経千本桜』より『吉野山』と『川連法眼館』をAプロ・Bプロの役替わりで上演。加えて彼ら4人が日替わりで『歌舞伎の魅力』を解説する。「三月花形歌舞伎」チケット情報『吉野山』は義経を追って形見の鼓を携えて旅をする静御前が、お供の佐藤四郎兵衛忠信とはぐれ、後に再会するまでの道行きを艶やかな舞踊で表現する。『川連法眼館』は忠信が義経の元を訪ねたところへ、静御前が実は子狐が化けた忠信を伴い現れる。子狐ははぐれた忠信に代わり、母狐の皮が張られた鼓と静御前を守って来たのだ。両作品で忠信役を勤める右近は、自主公演「研の會」第一回公演で同役を選ぶほど、思入れの強い「憧れのお役」と明かす。「スチール撮りでは、衣裳を着ただけで感動して涙が止まらなかったことを思い出しました。まさか本興行で実現するとは。信じていれば願いは叶うと、23歳だった当時の自分に教えられた気がする」と感慨もひとしお。Bプロで同役を勤める橋之助は後輩でもあり「負けられない」と一 層の気合が入る。通常ダブルキャストでは踏襲する型や指導者が異なるが、今回は共に(七代目 尾上)菊五郎に指導を仰ぐ。「『川連法眼館』の狐忠信は中性的な役ですが、立役の橋之助さんと、本興行では圧倒的に女方が多い私がやる中性的なお役とでは、型は同じでもおのずと違いが出る」と見る。ペアを組む壱太郎は互いに自主企画の公演や作品に出演し合うなど苦楽を共にし、夢を語り合う間柄。「尊敬する先輩という関係を超えた精神的な恋人」と絶大な信頼を寄せる。また同級生の米吉は、「醸し出す華やかな雰囲気や舞台度胸が圧倒的。何よりお喋りが上手なので、お芝居もそうですが彼が案内役をつとめる『歌舞伎の魅力』はとても楽しくなると思います」と期待する。歌舞伎俳優を父に持たない右近。様々な分野で経験を積み、いつか後輩が憧れる「稀有な存在」 となり得るその日まで、信じた道を邁進する。「今回、音羽屋ゆかりの演目『川連法眼館』の狐忠信は、本興行のお役としては初めて菊五郎のおじさんに教えていただきます。また『吉野山』の忠信の引っ込みの演出では僕がまだ本名だった頃にご縁をいただいた(四代目市川)猿之助のお兄さんから許しを得て、澤瀉屋(※)の型『ぶっ返り』に挑戦させていただく。いろいろミックスしながらも自分の形を模索している姿をこの重要な公演で提示できるのは嬉しいです。テレビ、映画など、どのジャンルも本気ですが、歌舞伎ほど分かりやすい本気は見逃してほしくないですね」。(※)「澤瀉屋」の「瀉」のつくりは、正しくは“わかんむり”です。公演は3月6日(土)から21日(日)まで(12日(金)は休演日)、京都・南座にて上演。チケット発売中。取材・文:石橋法子
2021年02月17日2021年2月現在、新型コロナウイルス感染症の流行はとどまることを知りません。少しでも多くの命を救うため、医療従事者たちは最前線で、日々患者と向き合っています。同月15日、歌舞伎役者の市川海老蔵さんがブログを更新。内容が反響を呼んでいます。市川海老蔵、医療従事者への支援策を発案同年1月に新橋演舞場で行われた『初春海老蔵歌舞伎』で座頭を務めた海老蔵さん。同月10日に更新されたブログで、海老蔵さんはこうつづっていました。出来れば医療従事者の方々になんとか無料で見ていただけるように色々調べて頑張ってます。日頃から大変な思いをしていらっしゃる方々に少しでもなにか癒しか、元気の元になりたいその一心です。がなかなか壁が高いです。頑張ります。市川海老蔵オフィシャルブログーより引用医療従事者を支援するため、「自分に何ができるのか、試行錯誤している」と明かした海老蔵さん。それから約1か月後、ブログでこのような報告をしたのです。医療従事者の方々に私にできる事は何か?と松竹と話し合い微力ながら出た答えは正月の海老蔵歌舞伎を!!本日から1ヶ月医療従事者の方々に無料で!!(中略)私達に出来ること、微力ですがよろしくお願い申し上げまする。市川海老蔵オフィシャルブログーより引用なんと、松竹が『初春海老蔵歌舞伎』の舞台収録映像を、医療従事者へ無料配信することを発表したそうです!内容は、千秋楽にオンライン上で有料生配信したもので、今回の無料配信は海老蔵さんの発案で実現したといいます。映像提供先は、日本病院会倶楽部、学校法人東京女子医科大学、公益社団法人日本看護協会。各ウェブサイトに記載された指定のURLから、視聴することができます。【ネットの声】・医療従事者のみなさん、いつも本当にありがとうございます。海老蔵さんの想いが届くといいですね!・さすが海老蔵さん。素晴らしい取り組み。・看護師をしています。歌舞伎が好きなので、本当に嬉しいです…。自宅でつかの間の癒しとして視聴させていただきます!エンターテインメント業界も、決して楽な状況ではない中「医療従事者へ癒しを届けたい」という想いから、取り組みを始動させた松竹と海老蔵さん。少しでも多くの医療従事者の心を、癒すきっかけになるといいですね。期間:2月15日10時~3月15日23時59分まで映像内容:『初春海老蔵歌舞伎』(2021年1月17日千穐楽公演)映像提供先:日本病院会倶楽部、学校法人東京女子医科大学、公益社団法人日本看護協会[文・構成/grape編集部]
2021年02月15日義太夫狂言に新歌舞伎、鶴屋南北作品に舞踊と、2月の歌舞伎座も見どころの多い演目が揃った。第一部は時代物の名作『本朝廿四孝』の『十種香」。戦国時代、長尾謙信の娘・八重垣姫は許嫁で切腹した武田勝頼の姿絵を仏間にかけて香を焚き菩提を弔う。その絵にそっくりな男・花づくりの簑作が現れ、姫は一目で恋に落ち、腰元の濡衣に仲立ちを頼む。その簑作こそ本物の勝頼だった……。八重垣姫は歌舞伎の立女方がつとめる大役「三姫」のひとつで、品格の中に濃い情愛を表現するのが難しいとされる。配役は以下の通り。八重垣姫中村魁春武田勝頼市川門之助白須賀六郎中村松江原小文治市川男女蔵腰元濡衣片岡孝太郎長尾謙信中村錦之助もう一本は『泥棒と若殿』。荒れ果てた屋敷へ泥棒に入った伝九郎は侍に出刃を向けて金を要求するが、金はないと突っぱねられる。この侍が実は松平成信、領主の次男だった。御家騒動に巻き込まれ幽閉されて飢え死にしそうになっているのだった。伝九郎は不憫に思い、成信の世話をしはじめ、ふたりの奇妙な同居生活が始まる。立場の異なるふたりに芽生える絆……山本周五郎の原作。伝九郎尾上松緑松平成信坂東巳之助梶田重右衛門中村亀鶴鮫島平馬坂東亀蔵第二部は片岡仁左衛門と坂東玉三郎の麗しさとふたりの至芸を堪能する二幕。『於染久松色読販』は『桜姫東文章』や『東海道四谷怪談』を生み出した鶴屋南北の原作。土手のお六と鬼門の喜兵衛は悪事を働く夫婦者。お六のもとへ、かつて使えていた奥女中の竹川から手紙が届くところからドラマが動き始める。惚れた男のために悪事を働く「悪婆」と呼ばれる婀娜なお六と、強悪な喜兵衛の夫婦による、アンチヒーロー・ヒロインの魅力をたっぷりと。土手のお六坂東玉三郎山家屋清兵衛河原崎権十郎油屋太郎七坂東彦三郎鬼門の喜兵衛片岡仁左衛門もう一本は『神田祭』。江戸前のすっきりした踊りを見せる粋な鳶頭にあでやかな芸者。祭囃子に浮き立つ江戸の情緒を堪能したい。清元舞踊の一幕。鳶頭片岡仁左衛門芸者坂東玉三郎第三部は十七世中村勘三郎三十三回忌追善狂言二本が上演される。『奥州安達原』「袖萩祭文」。雪の降る中盲目の袖萩が幼い娘お君に手を引かれて父・平傔仗直方のもとへとやってくる。親の反対を押し切って駆け落ちした袖萩は対面を許されないため、三味線を手に祭文になぞらえて身の上を語り、娘の姿を一目見せようとする。そこへ夫の安倍貞任が姿を現し……。袖萩中村七之助安倍貞任中村勘九郎娘お君中村長三郎安倍宗任中村芝翫平傔仗直方中村歌六浜夕中村東蔵八萬太郎義家中村梅玉もう一本は『連獅子』。文殊菩薩が住むといわれる清涼山のふもとの石橋に狂言師の右近と左近が手獅子を持って現れ、石橋の由来や、獅子の親が仔を谷底へ落とすという故事を踊って見せる。能の「石橋」を題材とした長唄の舞踊。ユーモラスな間狂言「宗論」をはさんで、後半は親獅子と仔獅子の勇壮な舞を楽しみたい。狂言師右近後に親獅子の精中村勘九郎狂言師左近後に仔獅子の精中村勘太郎法華の僧蓮念中村鶴松浄土の僧遍念中村萬太郎新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言を受け、開演時間が早まった。第一部は10:30、第二部が14:15、第三部が17:30となっているのでご注意を。文:五十川晶子歌舞伎座『二月大歌舞伎』2021年2月2日(火)~2021年2月27日(土)会場:東京・歌舞伎座
2021年02月02日2021年1月25日、歌舞伎役者の中村勘九郎さんと、息子である長男の勘太郎さん、次男の長三郎さんがトーク番組『徹子の部屋』(テレビ朝日系)に出演しました。中村さん親子は、4年前にも同番組に3人で出演。2021年1月現在、9歳になった勘太郎さんと、7歳になった長三郎さんの成長ぶりに、MCを務めるタレントの黒柳徹子さんは頬を緩ませていました。歴史好きは隔世遺伝?中村勘太郎と亡き勘三郎の共通点2人の成長ぶりに触れながら、それぞれの好きなことについて黒柳さんが質問。すると、勘太郎さんは、「歴史が好きで、歴史博士になりたい」と回答しました。その後、勘太郎さんは黒柳さんに、オリジナルの武将クイズを出題。黒柳さんも答えが分からないほど難題なクイズを出題し、博識ぶりを見せつけたのです。父親の勘九郎さんによると、亡き十八代目中村勘三郎さんも歴史が大好きだったのだとか。(勘太郎さんは)本当に好きなんですよ、歴史が。これ、隔世遺伝で。うちの父が史学科出身で、歴史が大好きだったので。もし生きていたら彼と、とてもマニアックな話で盛り上がってるんだろうなと思いまして。徹子の部屋ーより引用中村勘太郎と長三郎、『BTS』にドハマり中また、勘太郎さんと長三郎さんは「歌とダンスも大好き」と話し、現在、韓国のアイドルグループ『BTS』に夢中になっていることを明かしました。勘太郎さんと長三郎さんは黒柳さんの前で、『BTS』の楽曲『Dynamite』の歌と踊りを披露。母親が歌うのを聞いて、英語の歌詞も完ぺきに覚えてしまったのだそうです。2人のなめらかな英語の発音と、勘太郎さんの完ぺきなダンスは視聴者を驚かせています。・何気なく見ていた『徹子の部屋』で勘太郎くんと長三郎くんの、英語の発音のよさにびっくり。・突然の『BTS』がかわいすぎて癒されましたー!さすが、歌もダンスも上手ですね。・勘九郎くん、長三郎くん、かわいすぎてもう胸がいっぱい!話し方から、所作から、本当に素敵だなあ。『BTS』の歌と踊りも、もっと見ていたかった。・勘太郎さんと長三郎さんの『BTS』が、インパクト強すぎて思わず目がくぎ付けになった!とっても上手!番組の最後に黒柳さんは、「今度は、勘太郎さんと長三郎さんの2人でいらしてね」とひと言。父親の勘九郎さんが「もう僕はいらないですか!?」と反応すると、「もうその頃には2人でお話しできるでしょうから」とスタジオを笑わせていました。これからの勘太郎さんと長三郎さんの成長ぶりが楽しみですね。[文・構成/grape編集部]
2021年01月25日歌舞伎俳優の松本幸四郎と市川猿之助がお騒がせコンビ“弥次喜多”を演じる人気歌舞伎シリーズの最新作となる図夢歌舞伎「弥次喜多」が、Amazon Prime Videoで26日より独占レンタル配信。幸四郎と猿之助がこのほど取材に応じ、本作の魅力や制作の裏話を語った。本作は、コロナ禍で誕生したオンライン歌舞伎・図夢歌舞伎(ずぅむかぶき)の第2弾。客席では観ることができない視点から、より近くで歌舞伎に“ズーム”するという意味でこの名前が付けられている。幸四郎と猿之助による“弥次喜多”は2016年に歌舞伎座で誕生し、毎年新作を発表してきた人気作品。今回、2009年にPARCO劇場で上演された猿之助が初めて現代劇に出演した『狭き門より入れ』を原作に新作を制作した。同舞台は謎の疫病の流行にまつわる物語。“現代に通ずる作品”として猿之助が原作に選び、新作歌舞伎へと生まれ変わらせた。幸四郎と猿之助は、図夢歌舞伎第1弾「忠臣蔵」にも出演。劇場が長期休館となった中で生まれた「図夢歌舞伎」について、幸四郎は「やっと見つけたお芝居する唯一の場所でした。これが始まりとなって、舞台が再開した後も、図夢歌舞伎は見ていただく場としても、演じる側の場としても、選択肢として続いていってほしいと思いました」と語った。猿之助も「これからの歌舞伎は舞台と配信と両方進んでいくべきだと思う」と意見。「平和な時代はあんまり発展的なモノは生まれない。そういう意味で、コロナは二度とあってほしくないけど、こういう新しいものが生まれたので、不幸中の幸いだと思います」と前向きに捉えた。そして、2人とも図夢歌舞伎で「弥次喜多」ができたことを喜び、猿之助は「『弥次喜多』は毎年新作を生み出していて、今年は8月に歌舞伎座が再開しましたが『弥次喜多』は上演できませんでした。なんとか続けられる方法を考えている中で、図夢歌舞伎とうまく合わさって、新作が誕生しました」と説明。「非常に苦労しました。今までの新作で一番大変だったんじゃないでしょうか」と苦笑した。猿之助は、監督・脚本・演出も担当。「撮影の1カ月くらい前は何もできていなかった。台本ができたのが1週間くらい前。限られた中でしたが間に合わせは嫌ですから精一杯作りました」と現場のバタバタぶりを明かし、「冒頭はハリウッド映画みたいにしたいなと。そこで予算を使い果たしそうになるくらい幕開けに凝りました。本編の中身は出演者同士の信頼関係が出ている。本当はアドリブなんか言っている余裕なんかないのにアドリブになるとみんな生き生きしてくるんですよね」と魅力を伝えた。本作には、猿之助のいとこである市川中車(香川照之)が参戦するほか、“弥次喜多”シリーズ常連である、幸四郎の長男・市川染五郎、中車の長男・市川團子も出演。猿之助は「中車さんは映像作品ならではの演じ方をしっかり息子に教えていて、親子の会話がありました。『カメラがここだったらこちらを向いて演技をする』とか。歌舞伎の現場で教えているのを初めて見て、それはお父さんじゃないとできないアドバイスだなと思って、微笑ましかったです」と中車・團子親子のエピソードを明かした。そして、幸四郎は「ルールも不可能もない、配信と歌舞伎の無限の可能性を詰め込んだ作品になっています。根拠はありませんが、歌舞伎の配信は今後100年続いていくと信じています! 好きな時に、好きな場所で『弥次喜多』をお楽しみください」とメッセージ。猿之助も「10年前は絵空事だった物語が、私たちの日常とシンクロしている今だからこそ、この作品を歌舞伎にして届けようと思いました。この時代を生きるひとり、ひとりに深く響く作品だと思いますので、これまでの『弥次喜多』を知らない方も、新作映画を観るような気持ちでぜひ、ご覧ください!」と力強くアピールした。本作は国内のみの配信となっているが、世界配信されることも期待している2人。幸四郎は「全世界に共通する物語の歌舞伎というのは初めてだと思います」と話し、猿之助はすでに提案していることを明かし、「世界配信したら絶対ウケると思う。エンドロールのところに世界にも共通する仕掛けをしている」と自信を口にした。(C)松竹
2020年12月26日コロナ禍に新たな歌舞伎の楽しみ方を提供すべく誕生した歌舞伎史上初のオンライン歌舞伎・図夢歌舞伎の第2弾となる『弥次喜多』が12月26日(土)からAmazon Prime Videoで独占レンタル配信される。400年を超える歌舞伎の歴史において、新作歌舞伎がAmazonでお披露目されるのは史上初めての快挙。平成28(2016)年8月以来、弥次喜多の新たな“迷コンビ”として、夏の歌舞伎座を盛り上げてきた松本幸四郎と市川猿之助がオンラインで珍道中を繰り広げる。幸四郎の構成・演出により、6月から生配信された図夢歌舞伎『忠臣蔵』に続く、ファン待望の第2弾『弥次喜多』。その原作に選ばれたのが、2009年当時に亀治郎を名乗っていた猿之助が、初めて現代劇に出演した前川知大作『狭き門より入れ』だ。とある街のコンビニエンスストアを舞台に“世界の更新”をテーマに据えたSF劇で、背景として疫病の流行が描かれた内容は、「今の状況にピッタリだと思ったし、最後には背筋が凍るような作りにしたかった」(猿之助)。こうして全編事前収録の映像作品として、都内のスタジオでセットを建てた撮影が急ピッチで進められ、猿之助は脚本・演出に加えて、今回初の監督業にも挑むことになった。図夢歌舞伎「弥次喜多」 市川猿之助編集風景「台本ができあがったのが、(撮影の)1週間前。限られた時間の中で、でも間に合わせは嫌ですから、精いっぱいやりました。ただ、映像制作に関しては素人集団。助監督がいない現場だったので、自分がその役目をやるのは目に見えていました。台本を直したり、カット割りを考えたり……(笑)。『なんで、こんなことやってるの?』って思いましたが、逆に考えると、それができる幸せがね。現場に立てない日々が続いたので……。今回みたいな危機は二度とあってほしくないですけど、歴史を振り返ってみても、こんなときこそ、人間は新しいものを生み出し、進歩するものですから」(猿之助)今年は『弥次喜多』の8月歌舞伎座公演が実現しなかっただけに、幸四郎も「こうした形で、弥次喜多ができてうれしい」と喜びもひとしお。「前回の図夢歌舞伎『忠臣蔵』は、いつ歌舞伎座が開くかわからない状態で、やっと芝居ができる唯一の場でした。配信はご覧いただく皆さんにも、演じる側にとってもひとつの選択肢として存在してほしいという気持ちもあったので。100年続く、その第一歩だと思っていますし」とネット配信の可能性に期待を寄せる。シリーズには欠かせない染五郎&團子はあどけない少年像から一転、“グレた”青年を図夢歌舞伎『弥次喜多』には、猿之助との“いとこ共演”が話題の市川中車が参戦。さらに幸四郎&猿之助コンビによる『弥次喜多』シリーズには欠かせない幸四郎の長男・市川染五郎、中車の長男・市川團子のふたりも2016年から続く連続出演を果たした。過去シリーズで見せていた、あどけない少年像から一転し、今回ではお家没落で“グレた”青年を演じている。「こういった過程で作られた歌舞伎なので、これに関わっている時間はむらなく(笑)戸惑っているように見えましたね。衣装も自分たちで考えてきたり、指輪やマニキュアも。マニキュアを塗ったのはいいんですけど、除光液を買い忘れて、(撮影の)次の日、学校だったから、大慌てで買いに行ったりしていました」(幸四郎)舞台となるコンビニエンスストアは、万屋「家族商店」として物語に登場。店名に加えて、緑と青を基調にした看板のカラーリングは「ファミリーマート」にそっくりだが、この仕掛けは同社と猿之助の“縁”が実現させたもの。「ただ、困ったことに幸四郎さんも中車さんも食品のCMをやっているので、『映っちゃダメ』『手にしちゃダメ』『食べちゃダメ』な商品もあって(笑)。でもコンビニだから、所狭しと商品は並べないといけないし」(猿之助)と苦労もあったのだとか。もちろん、『弥次喜多』の神髄は、弥次さん喜多さんが披露する丁々発止のやりとり。2016年から磨き上げた幸四郎&猿之助の“コンビ力”には、期待せずにはいられない。「アドリブなんてやってる余裕はないはずなのに(笑)、アドリブでこそ生き生きとしている。これは本当にお互いの信頼関係があってこそ。内容はシリアスな面もありますが、僕らが演じたら、弥次喜多が本来もつ面白みが自然と出てくるので」(猿之助)。「弥次喜多といえば、どこかに旅するというイメージですけど、旅は場所に限ったことじゃなく、何か新しいことに挑戦することも旅ですから。まあ、あのふたりは行ってどうなるか、何を得られるか、成功も失敗も考えていないですけど(笑)、だからこそ、どんな場所でも、いつの時代にだって存在できてしまうんです。それに今回は、ストーリーそのものが今の世界を映していて、そういう歌舞伎はめずらしいと思いますね」(幸四郎)。市川猿之助(左)、松本幸四郎(右)取材・文・写真(松本幸四郎・市川猿之助会見写真):内田涼図夢歌舞伎『弥次喜多』監督・脚本・演出:市川猿之助原作:前川知大『狭き門より入れ』構成:杉原邦生脚本:戸部和久監督:藤森圭太郎2020年12月26日(土)よりAmazon Prime Videoで国内独占レンタル配信www.amazon.co.jp/kabuki()さらに関連作品続々配信決定!《配信ラインナップ》▼2020年12月26日(土)~配信・シネマ歌舞伎『東海道中膝栗毛』(2017年)出演:松本幸四郎、市川猿之助、市川染五郎、市川團子 ほか レンタル料:1,900円(税込)・シネマ歌舞伎『東海道中膝栗毛 歌舞伎座捕物帖」(2018年)出演:松本幸四郎、市川猿之助、市川中車、市川染五郎、市川團子 ほか レンタル料:1,900 円(税込)・シネマ歌舞伎『女殺油地獄』(2019年)出演:松本幸四郎、市川猿之助、市川中車 ほか レンタル料:1,900円(税込)・図夢歌舞伎『忠臣蔵』第一回【大序から三段目】(2020年)出演:松本幸四郎、中村壱太郎、市川猿弥 レンタル料:600円(税込)・図夢歌舞伎『忠臣蔵』第二回【四段目】(2020年)出演:松本幸四郎、市川染五郎、市川猿弥 レンタル料:600円(税込)・図夢歌舞伎『忠臣蔵』第三回【五段目・六段目】(2020年)出演:市川猿之助、松本幸四郎、中村壱太郎、上村吉弥、松本高麗五郎、市川猿弥 レンタル料:600円(税込)・図夢歌舞伎『忠臣蔵』第四回【七段目】(2020年)出演:松本幸四郎、中村雀右衛門、市川猿弥、初世松本白鸚(映像出演) レンタル料:600円(税込)・図夢歌舞伎『忠臣蔵』第五回【九段目・十一段目】(2020年)出演:松本幸四郎、市川猿之助、市川染五郎、市川猿弥 レンタル料:600円(税込)・歌舞伎座ギャラリー特別映像『歌舞伎座の秘密~忍入舞台裏染色~』(2015年)出演:松本幸四郎 レンタル料:300 円(税込)・歌舞伎座ギャラリー特別映像『宙乗りができるまで~新臺猿初翔~』(2016年)出演:市川猿之助 レンタル料:300円(税込)▼2021年1月4日(月)~配信・シネマ歌舞伎『スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース』(2016年)出演:市川猿之助、市川猿弥、市川笑三郎 ほか レンタル料:1,900円(税込)※配信ラインナップ・スケジュールは予告なく変更になる場合がございます。※料金やレンタル期間等については Amazon.co.jp()上の各商品詳細ページをご確認ください。最新情報はこちらでチェック!どこでも歌舞伎Twitter()どこでも歌舞伎Instagram(www.instagram.com/zoom_yjkt/)
2020年12月21日東京・歌舞伎座にて『壽 初春大歌舞伎』が、来年1月2日(土)から27日(日)まで上演されることになり、本公演に出演する歌舞伎俳優の松本幸四郎と市川猿之助が取材に応じた。8月の再開以降、1演目4部制で公演が行われた歌舞伎座の舞台。そこで試行錯誤を繰り返しながら、躍動を続けた両名が、2演目3部制に切り替わる初春のめでたい舞台に立ち、新たな年の幕開けを彩る。幸四郎は第3部『菅原伝授手習鑑 車引』に梅王丸役として出演し、父・松本白鸚(松王丸役)、息子・市川染五郎(桜丸役)と共演。親子孫三代そろい踏みが実現するのは、平成30(2018)年1、2月歌舞伎座、12月南座での三代同時襲名披露、令和元(2019)年6月歌舞伎の三谷かぶき『月光露針路日本 風雲児たち』以来となる。「芝居に出られること、さらにそれが父と染五郎と一緒なのは、ありがたいことですし、幸せですね」と喜びをかみしめる幸四郎。共演が決まった染五郎の様子については「あまり感情を表に出すタイプじゃないので(笑)、ビックリな気持ちもあったみたいですけど、稽古ではうれしそうな顔をしているので……、純粋にうれしいんじゃないですかね」と目を細めた。松本幸四郎自身が演じる梅王丸の魅力は「力強さ」だといい、「演じる側も、ご覧になる皆さんも『これぞ歌舞伎だよね』ってど真ん中の魅力がありますからね。その分、セリフ、ボリューム、大きさを、身1つで表現しなければならない」と分析。その上で「先代の(中村)又五郎のおじさまからは、『花道を引っ込むときは“くくり猿”のように』と教えていただいた。ただ力を入れれば、力強く見えるのではない。そういうところが、歌舞伎の色合いであり、大らかさだと思います」と先人の教えをヒントに、令和の梅王丸をダイナミックに体現する決意を示した。新型コロナウイルスの感染拡大による公演中断を経て、再び歩みを始めた歌舞伎興行だが、幸四郎自身は「全員で再開したわけではないので、本当の再開とは思っていない」と神妙な面持ち。「例えば、幕間がどうなるのか。次の演目を劇場で待ちながら、売店で記念や情報を手にしてもらうのも、歌舞伎ですから。歌舞伎ならではの一体感が味わえる“大向こう”も今のこの状況では……。終息後の展望ですか?それはないですね。(環境が)元に戻ることはないと思いますが、時代が変わっても、歌舞伎を今なくすわけにはいかないという思いだけです」と静かに闘志をたぎらせる。「悪太郎」でいまこそ笑えるお芝居を届けたい坂田藤十郎を偲んで『夕霧名残の正月』も上演市川猿之助(左)と松本幸四郎(右)一方、猿之助は第1部『悪太郎』に出演。現在の四代目猿之助の曽祖父・二代目猿之助(初代猿翁)が初演し、澤瀉屋のお家芸『猿翁十種』のひとつとなるユーモアあふれる舞踏で、猿之助は悪太郎を演じる。本公演での上演は、平成22(2010)年1月の浅草公会堂以来となる。「こんな世の中だからこそ、笑いたいじゃないですか。稽古が十分にできない状況で、お見せできる演目となると、『悪太郎』はうち(澤瀉屋)しかできないので、めずらしいものをお目にかけようかなと」と演目を選んだ理由を明かす猿之助。初代猿翁の“当たり役”でもある悪太郎について「曽祖父が出演していた映像を見ると、当て書きされた作品だから、もう(初代猿翁が)立っているだけでおかしくって(笑)。それを演じるのは難しいですけど、もうある意味、吹っ切れて、三谷(幸喜)さんに見いだされた自分の面白みで行くしかないですね」と幸四郎同様に、こちらも新たなキャラクター像の創出に意欲を燃やす。市川猿之助本公演を皮切りに、2演目3部制に踏み出す歌舞伎座の“今後”には「吉と出るか凶と出るか。やってみないと分からないですね」と改めて気を引き締める。「世間は第3波って言われているし、8月の『歌舞伎が戻ってきた』というお祭り的な雰囲気は、今続いていないですから。もちろん、命にかかわることですし『今はまだ歌舞伎座に行けない』というお手紙もたくさんいただきます。そんななか、幸いにも11月の五変化(『蜘蛛の絲宿直噺』)では早替りをして、蜘蛛の糸を投げて……。それができたってのは小さな進歩だけど、自分としては大きな進歩で。まあ、元に戻っただけなんですけど(笑)。これからは歌舞伎にとっても転換期。もちろん、途絶えてしまってはいけないと思うので、僕らの世代がちゃんと荷物を運んであげないと。そうしないと、若い世代が荷物を片付けるとき、時代に合った取捨選択ができないですからね」『悪太郎』には猿之助に加えて、中村福之助(修行者智蓮坊役)、中村鷹之資(太郎冠者役)、市川猿弥(伯父安木松之丞役)が出演。また、『菅原伝授手習鑑 車引』には大谷廣太郎(杉王丸役)、松本錦吾(金棒引藤内役)、坂東彌十郎(藤原時平役)が顔をそろえる。なお、第1部では尾上松也らが登場する『壽浅草柱建』、第2部では亡くなった坂田藤十郎を偲んで、中村鴈治郎らが上演する『夕霧名残の正月 由縁の月』、中村吉右衛門と中村梅玉が共演する『仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場』を上演。第3部には作・岡鬼太郎の『らくだ』が名を連ねている。チケットは12月14日(月)より発売。取材・文・撮影:内田涼歌舞伎座『十時月大歌舞伎』2021年1月2日(土)~2021年1月27日(土)第一部午前11時~第二部午後2時45分~第三部午後6時45分~会場:歌舞伎座(東京)
2020年12月07日歌舞伎役者の中村勘九郎が都内で取材に応じ、歌舞伎座『十二月大歌舞伎』(12月1日開幕)への意気込みを語った。勘九郎が出演するのは、第三部『傾城反魂香(けいせいはんごんこう)』。夫婦の絆と深い情愛が、奇跡を巻き起こす義太夫狂言の名作で、勘九郎は実直な夫で絵師・浮世又平を演じる。――緊急事態宣言が解除されて以降、8月第二部『棒しばり』、10月第二部『双蝶々曲輪日記 角力場』に続く歌舞伎座出演となりますが、現在の心情を教えてください。8月から大規模な公演を毎日行っているにも関わらず、(新型コロナウイルスの)感染者が1人も出ていないですし、歌舞伎役者の意識の高さ、関係者の皆さまの注意力というものは本当に誇らしいです。徹底した感染予防対策は、お客様に安心・安全に観ていただくため。これから寒さも厳しくなりますが、より一層気持ちを引き締めて、この状況を続けていくことが、未来の歌舞伎につながることと信じてやっていきたいです。――又平の女房・おとくを演じるのは市川猿之助さん。そもそも『傾城反魂香』は平成20年1月に浅草公会堂で上演された演目で、おふたりは当時勘太郎、亀治郎として同じ夫婦役を演じていました。浅草時代には本当にいろんな役を演じ、修行させていただきましたし、それが今につながっています。(「傾城反魂香」での共演は)もう12年前になりますが、毎日楽しかったのを思い出しますね。お互いに名前が変わってから、また上演できるのは、とてもうれしいこと。それに『傾城反魂香』はファンタジー要素が強く、子どもの頃から大好きな芝居。非日常と言いますか、摩訶不思議な世界に入り込むのが、古典のもつパワーなんだなと思いますね。――稽古も普段通りとはいかないと思いますが……。猿之助さんとはまだ顔を合わせての稽古が全然できていませんし、感染リスクを下げるため、稽古自体も2回ですからね。スタッフ、役者が一丸となって「これで完成させなければ」という集中力でやっている感じですね。猿之助さんは、やっぱり熱いんですよ!秘めたるパワーと爆発力、それに魅せる力。安心感もありますし、目指す方向性が同じ役者と芝居できるのは、やっぱり楽しいことなんだと。――猿之助さんはドラマ『半沢直樹』でも注目を浴びました。これ言っていいのかわからないけど、(今回の共演が決まって)すぐにLINEが来てですね。「うれしいDEATH」って(笑)。普段でも使っているんだと。すごくかわいい人だなって、改めて。――改めて2020年は歌舞伎をはじめ、エンタテインメントにとって波乱の1年となりました。病気(感染症)で歌舞伎が上演されなかったって、歴史上初めてじゃないですかね。だから悔しいですし、これで負けてたまるかと。病気は治せないですが、皆さんの心を癒すのがエンタテインメントなわけで、やはり「必要なものなんだ」と思っていただける説得力を発信しなければいけないと思っています。諦めたり、怠ったり、くじけてしまったら、終わりですからね。8月はイヤホンガイドもなかったですし、筋書きも売り出せなかった。今は、観劇ならではの楽しみも徐々に戻りつつあるので、情勢を見つめながら、柔軟に進んでいければと思います。その上で“慣れ”が一番怖いものですし、安心・安全にご覧いただくことをモットーですから。――コロナ禍では上演時間にも制限がありますが。ピンチはチャンスじゃないですけど、お客様に楽しんでいただくために、想像し、知恵を絞りだすことこそが、歌舞伎なんじゃないかなと。先輩方が築き上げた、従来の優れた演出があるからこそ、わたしたちが名作を名作として上演できる。そのなかで“工夫”もし続けないといけないなと。『傾城反魂香』についても、今、案を練っているところです。先日亡くなった上方歌舞伎の第一人者で人間国宝、文化勲章受章者の坂田藤十郎氏については「楽屋にご挨拶に伺ったときに感じたオーラと温かさを今も思い出します。とにかくかっこいい方で、本当にスターなんだなと」と振り返り、「あの湧き上がってくる感情や迫力は……、到底かなわないと言えば、それで終わりで(ご本人も)望んでいらっしゃらないと思うので、目指して信じてやっていかなければ」と背筋を伸ばす。「夫婦愛と奇跡。壁にぶつかった者がそれを乗り越えて、先には明るい未来が待っている…。今の日本、そして世界を表しているような作品なので、ぜひ目に止めにご来場いただければ」と力強くアピールしていた。取材・撮影・文:内田涼歌舞伎座『十二月大歌舞伎』第一部(11:00~)『弥生の花浅草祭』出演:片岡愛之助 / 尾上松也第二部(13:30~)『心中月夜星野屋』出演:中村七之助 / 市川中車 / 他第三部(16:00~)『傾城反魂香』出演:市川猿之助 / 中村勘九郎 / 他第四部(19:15~)『日本振袖始』出演:坂東玉三郎 / 尾上菊之助 / 他2020年12月1日(火)~2020年12月26日(土)会場:東京・歌舞伎座
2020年11月17日「記録的大ヒットを受けて、梨園でも『鬼滅の刃』歌舞伎化計画が進行中です。今まで『ONE PIECE』や『風の谷のナウシカ』など漫画の歌舞伎化を成功させてきましたが、実現すればそれら以上のヒットが見込めると思います。キャスティングは若手を中心に考えているそうで、実現は早くても市川團十郎襲名披露公演後の2年後でしょう」(歌舞伎関係者)公開から17日で日本の歴代興行収入10位にランキングした「劇場版鬼滅の刃無限列車編」。梨園でも水面下で歌舞伎化計画が進んでいるというが、気になるのは誰が何役を演じるのかということ。そんななか、主人公・竈門炭治郎の座を巡って“有名二世たちの熾烈なバトル”が勃発していた。「まず名前が挙がっているのが、松本幸四郎さん(47)の息子で梨園きっての美少年として知られる市川染五郎さん(15)。また、中村芝翫さん(55)の息子・中村福之助さん(22)もイケメンと評判なので有力視されています」(前出・歌舞伎関係者)なかでも本命と目されているのがドラマ『半沢直樹』(TBS系)での強烈な演技も記憶に新しい香川照之こと市川中車(54)の息子・市川團子(16)だという。「團子くんは原作漫画を何周も読み込むほど、大の鬼滅好きなので、『絶対に出たい!』と意気込んでいるそうです。また同じ澤瀉屋で中車さんとも仲のいい市川猿之助さん(44)は“ワンピース歌舞伎”で主演を務め成功させた実績がありますから、条件がそろっています」(前出・歌舞伎関係者)中車としても鬼滅歌舞伎で歌舞伎界への“恩返し”を図りたい切実な事情があるようだ。「コロナ禍で約5カ月もの間、歌舞伎界も公演を打てなかったので、ふだんはあまり縁のない若い客層も見込める話題作で歌舞伎界を盛り上げたいという思いが中車さんにはあるそうです。また父の市川猿翁さん(80)との確執から、中車さんは40代でやっと歌舞伎界入りしました。そのため中車さんは團子くんに若いときから歌舞伎役者の経験をたくさん積ませたい。團子くんはまだ舞台で主演を務めたことがないので、中車さんとしては『團子を炭治郎に!』という思いなのでしょう」(前出・歌舞伎関係者)そして、思わぬ“若手”からの立候補も。「市川海老蔵さん(42)の長男の勸玄くん(7)が『ぼくも鬼滅の刃をやりたい!』と言っているようなんです。お姉さんの麗禾ちゃん(9)と自宅でよく鬼滅ごっこをしていて、最近では海老蔵さんもアニメに大ハマり。もし勸玄くんの出演が実現すれば、海老蔵さんも敵役の鬼舞辻無惨役あたりで出演する可能性はあるでしょう」(歌舞伎の制作関係者)2年後、“伝説の舞台”に立っているのは果たして――。「女性自身」2020年11月17日号 掲載
2020年11月03日『THE BOOM』のボーカル・宮沢和史さんの息子で、俳優の宮沢氷魚さんや、俳優でミュージシャンの窪塚洋介さんを父に持つモデルの窪塚愛流さんをはじめ、いわゆる『二世』の活躍が目覚ましい昨今の芸能界。2020年10月7日、写真家の蜷川実花さんが自身のInstagramで公開した、大物歌舞伎俳優を父に持つ二世俳優の写真に驚きの声が上がっています。「15歳でこの色気…」と衝撃広まる蜷川さんが撮影したのは、八代目・市川染五郎さん。十代目・松本幸四郎さんを父親に持ち、叔母は女優の松たか子さん、祖父は二代目・松本白鸚(元:九代目・松本幸四郎)さんという、まさに芸能界のサラブレットです。八代目市川染五郎(左)十代目松本幸四郎(中央)二代目松本白鸚(右)うまれながらに『特別な存在』だった八代目市川染五郎さんですが、多くの人を驚かせたのはその圧倒的なオーラ。15歳(2020年現在)とは思えない独特の色気を放っていると話題になった写真がこちらです。※画像は複数あります。左右にスライドしてご確認ください。 View this post on Instagram A post shared by ninagawamika (@ninagawamika) on Oct 6, 2020 at 6:05pm PDTすでに歌舞伎の舞台だけでなく、活躍の場をテレビや映画へと広げている八代目・市川染五郎さんですが、お茶の間の知名度はこれからというところ。しかし、今回の写真が大きな反響を呼んだことで、その存在にこれまで以上に注目が集まっています。【ネットの声】・お父様の十代目・松本幸四郎さんも美しいですが、息子さんもすごい存在感…!・『女形』として活躍してほしいぐらい。・松本幸四郎の息子がはんぱない…。・美しすぎて、ドキッとした。『二世』の肩書がかすむほどの存在感を放つ八代目・市川染五郎さん。今後、歌舞伎の枠を超えた活躍を期待させます。[文・構成/grape編集部]
2020年10月09日TVアニメ「鬼滅の刃」と歌舞伎のコラボレーション企画展「TVアニメ『鬼滅の刃』×『京都南座 歌舞伎ノ舘』」が、京都・南座にて2020年11月6日(金)から11月23日(月・祝)まで開催される。京都南座で『鬼滅の刃』と歌舞伎のコラボが実現「TVアニメ『鬼滅の刃』×『京都南座 歌舞伎ノ舘』」は、2020年春に東京銀座・歌舞伎座ギャラリーにて予定していた「鬼滅の刃×歌舞伎座芝居茶屋」の内容を一部変更し、装い新たに開催するもの。歌舞伎座ギャラリーでの開催は中止になってしまったが、場所を新たに今回は、歌舞伎発祥の地・京都の四条河原のたもとに建ち、日本最古の歴史をもつ劇場「南座」で炭治郎や禰豆子ら人気キャラクターが集結する。炭治郎や禰豆子らメインキャラの歌舞伎衣装イラスト展示、“柱”も登場展示内容には、歌舞伎衣裳を身にまとった炭治郎や禰豆子たち5人と、人気キャラクターの“柱”が登場。松竹が歌舞伎の意匠を監修した、アニメ本編を制作したufotableによる炭治郎たちメインキャラクター5人の描き下ろしオリジナル歌舞伎衣裳イラストが初展示となる。また、京都南座の舞台空間・ロビーなどを「歌舞伎ノ舘」として使用し、『鬼滅の刃』の世界観に通じる、歌舞伎の世界の鬼退治「源頼光と四天王」の演目、柱たち各キャラクターそれぞれの個性に合わせた演目の衣裳展示も実施。さらにオリジナルグッズや入場者特典なども用意する。【詳細】「TVアニメ『鬼滅の刃』×『京都南座 歌舞伎ノ舘』」開催期間:2020年11月6日(金)~11月23日(月・祝)開催時間(企画展及び物販会場):・火曜日~木曜日:15:00~20:00(最終入場は19:00まで)・金曜日~日曜日、祝日:10:00~20:00(最終入場は19:00まで)※全日程数量限定の「全日日時指定制」。開催場所:京都・南座住所:京都市東山区四条大橋東詰■チケット情報・プランA 入場券 4,500円:ロビー企画展+舞台入場券+歌舞伎コラボ解説図録+コラボ特製八ッ橋・プランB 入場券 3,000円:ロビー企画展+舞台入場券+歌舞伎コラボ解説図録・プランC 入場券 2,000円:(当日券 2,200円)ロビー企画展+舞台入場券※応募状況により別途「プランD 入場券 ロビー企画展のみ(舞台入場なし)プラン」を設ける可能性有り。<チケット抽選先行>・プラン A・B・C 入場券 第一次抽選先行:10月1日(木)10:00~10月4日(日)23:59・プラン A・B・C 入場券 第二次抽選先行:10月9日(金) 10:00~10月11日(日)23:59以降のチケット発売については後日、公式HPにて案内。※3歳未満の入場は無料。※未就学児童の単独入場不可。必ず保護者同伴(18歳以上)で申し込みが必要。※歌舞伎座ギャラリーでの実施は未定※11/9(月)、11/16(月)は休館
2020年09月21日昨年、「滝沢歌舞伎ZERO」として滝沢秀明演出、「Snow Man」主演で新たなステップを登った舞台が、今年は映画『滝沢歌舞伎 ZERO 2020 The Movie』として登場。この度、舞台でも映画でもない、新たな幕開けとなる本作の特報映像が到着した。今回到着した映像は、本舞台の人気演目でもある腹筋太鼓、アクション、ダンスなど、単独映画初主演の「Snow Man」の身体性を存分に示した場面が映し出されていき、30秒という短いながらも迫力満点の映像となっている。また今回、通常の舞台で見る観客の目線だけではなく、舞台後方からカメラを設置し、演者の目線を感じさせる撮影も明らかに。かつて見たことのない景色が展開される。なお本映像は、上映映画館ほかにて9月18日(金)より上映予定だ。『滝沢歌舞伎 ZERO 2020 The Movie』は12月4日(金)より全国にて公開、10月・11月新橋演舞場、南座、御園座にて特別上映。(cinemacafe.net)■関連作品:滝沢歌舞伎 ZERO 2020 The Movie 2020年12月4日より全国にて公開、10月・11月新橋演舞場・南座・御園座にて特別上映©2020「滝沢歌舞伎 ZERO 2020 The Movie」製作委員会
2020年09月14日ジャニー喜多川が企画・構成・総合演出を務め、2006年より上演され続けてきた『滝沢歌舞伎』。昨年『滝沢歌舞伎ZERO』として演出・滝沢秀明、主演・Snow Manで新たなステップを登った舞台が、『滝沢歌舞伎 ZERO 2020 The Movie』として、全国映画館で12月4日(金)公開、東京・新橋演舞場、京都・南座、名古屋・御園座で10月、11月特別上映される。この度、本作の特報映像が公開された。ただ「滝沢歌舞伎ZERO」の舞台を撮影しデジタル映像化するだけではなく、映画用に今回全て新撮、「腹筋太鼓」やアクション、ダンスなど圧倒的な肉体の迫力と「鼠小僧」のコミカルな舞台の楽しさはそのままに、いままでの舞台ではなかったシーンも新たに描かれる。公開されたのは、映画の完成に先駆けた30秒の特報映像。「滝沢歌舞伎ZERO」の人気演目でもある腹筋太鼓、アクション、ダンスなど、本作で単独映画初主演を務めるSnow Manの身体性を存分に示した場面をテンポよく繋ぎながらSnow Man個々人の魅力あふれるショット、大迫力のパフォーマンスなどが映し出された。また今回の特筆すべき点として、通常舞台を見るお客様の目線だけではなく、舞台後方からカメラを設置し、演者の目線を感じさせる撮影も明らかにされたこと。Snow Manが舞台に立ちながら、どんな風景をみているのか、まさに、本作が単純に舞台を映像化しただけではない、観客がかつて見たことのない景色が展開されることにも注目が集まる。『滝沢歌舞伎 ZERO 2020 The Movie』全国映画館で12月4日(金)公開新橋演舞場ほか 劇場で10月、11月特別上映
2020年09月14日九月大歌舞伎が初日を迎える。8月にひきつづき四部制で、各部とも完全入れ替え制をとる。ほかにも安全対策のため様々な制限はあるが、まさに初秋の候の大歌舞伎にふさわしく、華やかで見どころたっぷりの演目と豪華な顔ぶれがそろった。第一部は『寿曽我対面』。源頼朝の信任厚い工藤祐経の館へ、曽我の十郎と五郎の兄弟が父の敵である工藤への対面を願ってやってくる。中村梅玉の工藤、尾上松緑の曽我五郎に中村錦之助の十郎、中村又五郎の小林朝比奈、中村歌六の鬼王新左衛門、中村魁春が大磯の虎をつとめる。祝祭劇らしい華やかな一本だ。第二部は『色彩間苅豆』。「かさね」の通称で知られる清元の舞踊劇だ。武家につかえる与右衛門は腰元かさねと心中を約束したが、かさねを残して一人逃げてきてしまう。追ってきたかさねと木下川で再会するが、美しいかさねの形相がたちまち醜く変わり……。与右衛門を松本幸四郎、かさねを市川猿之助がつとめる。艶っぽさとゾッとするような恐ろしさを味わいたい。第三部は『引窓』。人形浄瑠璃として初演された『双蝶々曲輪日記』の八段目にあたる人気の義太夫狂言だ。大坂で人気の相撲取り・濡髪長五郎は人を殺めてしまい、義理の弟・南与兵衛の家に母お幸を訪ねてやってくる。一方与兵衛は、まさにその日、代官に取り立てられて意気揚々と帰宅。しかし二階に潜むお尋ね者の長五郎に気づいて……。引窓という明り取りの構造を巧みに使いながら、親子、兄弟、夫婦の情愛を描いた世話物の傑作だ。中村吉右衛門の濡髪、尾上菊之助の南与兵衛、中村雀右衛門のお早、中村東蔵のお幸。第四部は坂東玉三郎による『口上』、そして女方舞踊の名作『鷺娘』。一面の銀世界の中、池のほとりにたたずむ若い娘、実は鷺の精だった。人間との道ならぬ恋の咎により責め苦を受け、雪の降りしきる中、懸命に翼をはためかせる。今回は映像を織り交ぜた上演となる。幻想的な鷺の精の世界を堪能できるだろう。文:五十川晶子
2020年09月01日映画『滝沢歌舞伎 ZERO 2020 The Movie』の公開日が12月4日(金)に決定。ポスタービジュアルとプロジェクトの全容が明らかになった。昨年、「滝沢歌舞伎ZERO」として演出・滝沢秀明、主演「Snow Man」で新たなステップを登った舞台が、本年は『滝沢歌舞伎 ZERO 2020 The Movie』として誕生。舞台と映画を融合させた全く新しいエンタテインメントとなっており、7月中旬より撮影開始、新橋演舞場での無観客舞台収録のほか、都内近郊でもロケを遂行し、8月2日に無事クランクアップ。現在、公開に向けて編集やCG制作、レコーディングなどポストプロダクション中だという。映画では、単に舞台を撮影しデジタル映像化するだけではなく、映画用に今回全て新撮し、<腹筋太鼓>やアクション、ダンスなど圧倒的な肉体の迫力と<鼠小僧>のコミカルな舞台の楽しさはそのままに、これまでの舞台ではなかったシーンも新たに追加。特に<鼠小僧>の芝居では、舞台を飛び出してロケ撮影を実行。主演「Snow Man」の新曲も初披露され、ダイナミックなパフォーマンスが楽しめる。今回公開されたポスタービジュアルには、近未来都市を背景に、「Snow Man」9人が勢揃い。クールでスタイリッシュな世界観を表したこのビジュアルは、滝沢秀明監督自らがディレクションし制作した。なお本作は、「滝沢歌舞伎」の聖地ともいえる、東京・新橋演舞場、京都・南座、名古屋・御園座の3劇場で特別上映を実施、続いて全国の都道府県で100館以上での上映を予定と、2段階の興行形態を採用。劇場での特別上映では、舞台公開時に客席で行う演出効果の一部を盛り込むなど、迫力ある映像の魅力と共に、映画ならではの空間が楽しめるという。特別上映は、新橋演舞場が10月4日(日)から、南座が10月23日(金)から、御園座が11月2日(月)から上映。チケット一斉発売は、9月19日(土)より行われる。「Snow Man」のほかにも、佐藤新、影山拓也、鈴木大河、基俊介、椿泰我、横原悠毅、松井奏、小田将聖らジャニーズJr.が出演する。『滝沢歌舞伎 ZERO 2020 The Movie』は12月4日(金)より全国にて公開、10月・11月新橋演舞場、南座、御園座にて特別上映。(cinemacafe.net)
2020年08月29日『中村勘九郎 中村七之助 歌舞伎生配信特別公演』が、ライブ動画配信サービスのPIA LIVE STREAMにて配信される。歌舞伎界にとって初の取り組みとなる、実際の劇場を用いた無観客生配信に挑む勘九郎・七之助の兄弟に話を聞いた。【チケット情報はこちら】9月に全国17ヵ所で開催予定だった『中村勘九郎 中村七之助 錦秋特別公演2020』の中止を受けて企画された本公演。東京・浅草公会堂から世界に向けてリアルタイムで歌舞伎が届けられる試みは、勘九郎いわく「制約があって大劇場に足を運びづらいお客様の声を受け、中村屋自ら全国各地へ出向く」という“錦秋”15年来の構想と重なる。出演者には勘九郎と七之助のほか、勘九郎の長男・中村勘太郎、次男・中村長三郎、そして中村鶴松らが名を連ねた。演目には、舞踊「お祭り」を再構成した新作の舞踊「猿若揃江戸賑(さるわかそろうえどのにぎわい)厄祓浅草祭(やくはらいあさくさまつり)」がラインアップされた。見せ場で大向こうから「待ってましたっ!」と掛け声がかかり、役者が「待っていたとはありがてぇ!」と応じる活気に満ちたやり取りが特徴だが、オンライン視聴している観客とどうやって双方向のコミュニケーションを図るのか──。七之助は「合図にあわせて配信のチャット機能に、テキストで“待ってました!”と書き込んでもらえたら」とコメント。なおチャット機能に寄せられたメッセージは、舞踊後に行われる勘九郎・七之助による芸談(トーク)に即時反映される。「錦秋で設けている質問コーナーを配信でも」と企むのは勘九郎。「相互的なやり取りでライブ感を味わっていただけたら」と続く。カメラは手持ち・固定合わせて4台が稼働し、「シネマ歌舞伎」のようなズームアップや多様なアングルにも対応する予定だ。カメラクルーは稽古に密着し、スイッチのタイミングを検討して本番に臨むという。七之助は「劇場で捕らえることが難しい役者の表情や細やかな所作、小道具に着目してご覧になるのがポイントでしょうか」と映像における歌舞伎の楽しみ方を紹介した。「僕たちの仕事は生活に必要じゃない」「ノアの方舟に絶対乗れない職業」──。勘九郎はコロナ禍における役者の“業”を痛感する一方で、「医療従事者の皆さんをはじめ、方舟の乗客を笑顔にして見送るのが僕らの役割」と自負する。七之助も「兄と甥、4人揃って初めて舞い踊る姿をリラックスして楽しんでもらえたら」と続き、インタビューを結んだ。配信は7月18日(土)13時、19日(日)11時の2回。チケットはそれぞれ当日22時まで販売され、24時まで見逃し配信が視聴できる。ぴあでは16日(木)23:59まで、海外在住者に向けた英語の販売ページも設けられる。取材・文:岡山朋代カメラマン:源賀津己
2020年07月10日