精神科医・山科先生におすすめの本を聞きました!精神科医で中央大学教授の山科満先生。クリニックでの診察・カウンセリングも精力的に行い、臨床現場と心理学教育をつなぐ臨床研究に取り組んでいらっしゃいます。発達ナビのコラムの監修者としてもご活躍いただいています。そんな山科先生に、精神医学についての理解を深められる2冊を伺いました。いずれも豊富なエピソードと筆者の深い洞察力で、一般の読者でも興味を持って読める、おすすめの本です!『「こころ」の本質とは何か統合失調症・自閉症・不登校のふしぎ』「この挑戦的なタイトルに惹かれて発刊間もない頃に偶然手に取り、以来私にとってバイブルとなった本です。発達障害に向き合うにあたっての「考え方」を教えてもらいました。発達障害に関する臨床経験も知識も、今よりもずっと乏しかった頃は(今でも多いとは言えませんが)、私はほとんどこの本を頼りに臨床を行っていました。学部の1年生の授業でもテキストとして使っています。」(山科満先生)学習院大学教授の滝川一廣さんは『子どものための精神医学』(医学書院)や『家庭のなかの子ども 学校のなかの子ども』(岩波書店)などの著作でも知られる児童精神科医です。2004年に刊行された本書では、統合失調症、自閉症、不登校の3つを取り上げ、「こころ」の本質とは何かを考えます。「こころの病は決して異常ではなく、人間のこころの本質のある現れである」という考えに立つ滝川一廣さん。自身が臨床の現場で感じたことやエピソードなどを交えながらわかりやすい筆致で語られ、精神医学の入門書としても読みやすい本です。『火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者』「著名な脳神経外科医(にして著述家)による患者のインタビューを元に構成された本ですが、タイトルになっている「火星の人類学者」とは、『我自閉症に生まれて』で有名なテンプル・グランディンの話です。彼女は自分を「火星からやってきた人類学者」に喩え、周囲の出来事を徹底的に観察分析し、頭の中にデータベースを構築することで適応力を向上させていったのだと説明しています。大学生まで生き延びたアスペルガーとおぼしき人にこの本を読んでもらうと、「自分のことだ」と言われることがしばしばあります。(山科満先生)『レナードの朝』でも知られる脳神経科医サックス博士が出会った7人の患者についてのエッセイで、全米で大ベストセラーとなった本です。自閉症のある動物学者テンプル・グランディンをはじめ、トゥレット症候群の外科医、色彩感覚を失った画家など、障害が才能となって開花した人が登場します。サックス博士は7人と診察という形で交流を重ね、そのエピソードと彼らそれぞれへの理解を深い洞察力を持って描いています。障害とその人の個性や才能との境目はどこにあるのか、そもそも境目はあるのだろうか…様々なことを考えさせてくれるエッセイです。山科満先生プロフィールUpload By 発達ナビ編集部山科満(やましなみつる)中央大学文学部教授。精神科医,臨床心理士。専門は青年期精神医学、精神分析的精神療法。大学教員となって,発達障害傾向ゆえに不適応に陥っている若者の多さに驚き,発達障害と本腰を入れて向き合うようになった。山科満さんのページ|LITALICO発達ナビ
2017年11月07日アナログゲーム療育アドバイザー・松本太一さんに発達ナビユーザーへのおすすめ本を聞きました!松本太一さんは、アナログゲーム療育アドバイザー。ボードゲームやカードゲームなどを使って発達障害のある人のコミュニケーション能力を楽しく高めるという「アナログゲーム療育」の開発者です。全国で研修や講演を行う傍ら、発達ナビでもコラムを発表しています。今回は、松本さんに子育てをしている発達ナビユーザーに読んでほしい本を教えてもらいました!『子どもへのまなざし』「子育てのバイブルとして多くの親御さんに読まれています。「子どもの発達」と親の役割について、これほど平易に書かれた本は他にありません。」(松本太一さん)著者は児童精神科の医師として40年以上活躍された故・佐々木正美さん。自閉症のある方への支援プログラム「TEACCH(ティーチ)」を日本に紹介、普及に尽力されたことでも知られています。乳幼児期は子どもの人間としての基礎となると考える佐々木さんが、あたたかな視点で語る育児書です。佐々木さんには多くの著書がありますが、語りかけるようなわかりやすい言葉で書かれたこの本は特にパパママに長く愛されています。「これでいいのかな?」「がんばっているのにうまくいかない」と子育てに悩んだときに開いてみてはいかがでしょうか?『赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア: 自分を愛する力を取り戻す〔心理教育〕の本』「トラウマやフラッシュバックに悩まれている思春期以降のお子さんとその親御さんに読んでほしい。思い出したくない記憶とどう向き合うか、わかりやすく具体的に解説されています。」(松本太一さん)みんなが知っている『赤ずきんちゃん』に登場するオオカミと赤ずきんちゃんの物語仕立てでトラウマについてわかりやすく説明しています。トラウマに苦しむ人や家族が理解しやすいように工夫されていますが、その内容は、トラウマの仕組みからフラッシュバックへの具体的な対処法、家族や支援者の具体的な支援法まで、具体的かつ網羅的に紹介されています。『勇気づけて躾ける―子どもを自立させる子育ての原理と方法』「別名「対人関係の心理学」とも言われるアドラー心理学に基づいた子育てを、豊富な事例とともに解説。子どもの自主性を尊重した親の関わり方や、兄妹の間に働く心理の解説は、子育てに新しい視点を与えてくれるはず。」(松本太一さん)子育てに悩むパパ・ママにおすすめの本として挙げてくれたのがこの本。アドラー心理学はオーストリアの精神科医アルフレッド・アドラーが築いた心理学です。アドラー心理学では「人間は、分割できない個人という全体として、目的に向かって行動する」と考えます。「子どもが言うことを聞いてくれない」「自主性を身につけてほしい」と悩むパパ・ママも多いのではないでしょうか?この本ではアドラー心理学をもとに、子どもへの理解や自由をどう教えるかなどを紹介しています。『教育心理学講義』「「心理学のモーツァルト」と呼ばれた天才ヴィゴツキーの30歳の著作。「教師が100で生徒が0」という前提の一方的な知識教授に偏った教育は時代遅れであり、教師は子どもが自ら学ぶ環境を整える調整者であるべきだという彼の主張は、この本の出版から90年後を経て今なお先進的。」(松本太一さん)松本さんが愛読する座右の書として教えてくれたのが旧ソ連の天才心理学者ヴィゴツキーの名著。ヴィゴツキーは唯物弁証法の立場から現代心理学を方法論から問い直し、批判しました。この『教育心理学講義』は師範学校で行われた教育心理学の講座をまとめたもので、1926年に刊行されました。37歳という若さで亡くなったヴィゴツキーですが、今もなお世界中の心理学者に影響を与えています。松本太一さんプロフィールUpload By 発達ナビ編集部松本太一(まつもとたいち)フリーランスの療育アドバイザー。カードゲームやボードゲームを用いて、発達障害のある子のコミュニケーション力を伸ばす「アナログゲーム療育」を開発。各地の療育機関や支援団体で、実践・研修を行っている。東京学芸大学大学院障害児教育専攻卒業。教育学修士。NPO法人グッド・トイ委員会認定おもちゃインストラクター
2017年11月06日スクールカウンセラーの池田先生に聞いた、発達ナビユーザーへのおすすめ本!発達ナビでコラムを連載している池田行伸先生。スクールカウンセラーとしての豊富なご経験の中から、印象的だった保護者や子どもへの支援を紹介しています。コラムの具体的な事例やさまざまな立場への支援を参考にしている発達ナビユーザーもお多いのではないでしょうか?今回は池田先生に、保護者や支援者など、子どもとかかわる大人に読んでほしい本と、愛読している本を教えていただきました!『子どもに障害をどう説明するか―すべての先生・お母さん・お父さんのために』「障害を理解していない人に話す話し方がよくわかる。子どもを傷つけない言い方で子どもに説明する方法のヒントが得られる本。」(池田行伸先生)「障害について子どもにどう説明したらよいのか」「障害って何?と子どもに聞かれたらどう答えたらよいのか」そんな悩みを抱える保護者や学校の先生も少なくないのではないでしょうか?本書では、障害をどのように説明するか、特別支援学級の教師である相川さんと東北大学教授の仁平義明さんがわかりやすく具体的に答えます。『夜と霧』「ユダヤ人強制収容所の体験が書かれている。希望の持つ意味を教えてくれ、困難に向き合うときの知恵と勇気を与えてくれる。」(池田行伸先生)池田行伸先生が愛読書として挙げてくださったのは、フランクルの『夜と霧』。ユダヤ人精神分析学者が自身のナチス強制収容所での体験を綴った世界的名著です。原著の初版は1947年。日本では1956年に霜山徳爾が訳し、2002年に新版として池田佳代子訳が発行されています。池田行伸先生プロフィールUpload By 発達ナビ編集部池田行伸(いけだゆきのぶ)國學院大學人間開発学部子ども支援学科教授特別支援教育士スーパーバイザー上智大学文学部卒業上智大学大学院修了博士(心理学)専門は神経心理学。現在は國學院大學人間開発学部子ども支援学科教授、佐賀大学名誉教授。特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)の資格を持ち、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校のスクールカウンセラーを歴任している。人が生まれて発達していく過程の概略、性格・人格・人格の偏りの概略が学べる本です。
2017年11月04日井上雅彦先生に聞いた、発達障害のある子を育てるパパママにおすすめしたい本!鳥取大学の井上雅彦教授は「応用行動分析学(ABA)」の専門家。発達ナビでは「親子のヒント」や「発達障害のキホン」コラムの監修などを担当しています。発達障害のある子どもや保護者への支援経験も豊富な井上先生に、子どもへの接し方や障害への理解が深まる本を紹介していただきました!『つながろ!―にがてをかえる?まほうのくふう』「自分の苦手なことに工夫をしたり、得意に変えていくことが絵本で学べる本です。発達障害があるないに限らず、多くの親子にぜひ読んでほしい本。」(井上雅彦先生)友達のまいちゃんには発達障害がある。どんなふうにしたらまいちゃんや、先生やクラスのみんながわかりやすくなるのか、どうしたら苦手なことがなくなるのか、「まほうのくふう」を考えよう…子どもへの説明にも使えるわかりやすい絵本です。発達障害とはどんなもの?苦手なことはどんなこと?という障害への理解はもちろん、当事者だけでなく、先生やまわりの友達も一緒に困りごとを解決するヒントがつまったインクルーシブ絵本です。『家庭で無理なく対応できる 困った行動Q&A: 自閉症の子どものためのABA基本プログラム4』「親御さんが一番気になり、またストレスを感じるのが困った行動ではないでしょうか?自傷やこだわりなどがある時、おうちで無理なく解決できるヒントをわかりやすく紹介しています。」(井上雅彦先生)「応用行動分析学(ABA)」とは発達障害児療育のベースになっている理論のひとつです。行動の背後にある原因を分析することで、その子の困りごとを解決していこうとする考え方です。本書は家庭でもできるABAについて、具体的に書かれたシリーズの4冊目。保護者が特に困る癇癪や感覚過敏、自傷などへの対処法がわかりやすく紹介されています。『発達障害の子とハッピーに暮らすヒント―4人のわが子が教えてくれたこと』「堀内さんは、発達障害のあるお子さん4人を育てたお母さん。子育てのコツや工夫が満載です。堀内さんが子育ての中で経験則から発見し、得られた知見は研究や教育原理で得られる示唆とも一致すると思います。」(井上雅彦先生)アスペルガー症候群、ADHD、LDという発達障害の診断を受けている4人のお子さんを育てる堀内さん。本書では、それぞれ特性やタイプの違うお子さんとの毎日の奮闘から編み出した「こんなふうにしたらいいんだ」という工夫を紹介しています。こだわり、パニック、不登校…小学校入学以来、堀内家はさまざまな“問題”に直面しますが、タイトル通り、ハッピーに暮らそうと前向きな堀内さん。勇気と子育てへのヒントがもらえる本です。井上雅彦先生プロフィールUpload By 発達ナビ編集部井上雅彦(いのうえまさひこ)鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授応用行動分析学自閉症支援士エキスパート井上研究室ホームページ井上先生が監修したコラムはコチラ!|発達ナビ
2017年10月27日心理アナリスト、カウンセラーの亜門虹彦さんによる心理テスト。恋愛にまつわるあなたの深層心理が明らかに?Q. イラストの男性は、あなたの恋人です。ある日、彼が鏡を見て「ニキビができちゃった」と嘆いていました。彼の顔の、どの部分にニキビができたと思いますか?以下のA~Dのなかから1か所選んで、イラストにペンで点を打つか、指さしてみてください。A. おでこB. 目の周りC. 鼻と口の周りD. 頬とあご、首のあたりここでわかるのは「言いたくても言えない、彼氏に対する不満」。恋人の顔にできてしまったニキビは、あなたが彼氏に対して抱いている「不満」や「物足りない部分」を象徴しています。どこにニキビができたと思ったかによって、あなたが言いたくても言えずにいる、恋人への不満がわかります。さっそく結果を見てみましょう!Aを選んだあなたは?【発言も行動も幼稚すぎ!もっと人間的に成長して。】おでこにニキビができたと思ったあなたは、恋人の知性に不満を持っているタイプ。何の努力もしていないのに「将来はミュージシャンになって一発当てる」と無謀な夢を語っていたり、一緒に映画を観ても子どもっぽい感想しか言えなかったり。そんな彼に、「こんなにバカだったとは…」と内心あきれている可能性も。Bを選んだあなたは?【私のことに関心薄め。もっと優しくして!】目は、恋人の愛情表現に物足りなさを感じていることを表します。愚痴を聞いてほしい時に生返事しか返ってこなかったり、普段からスキンシップも少なめの彼に「本当に愛してくれているのかな?」と不安を感じている状態かも。かといってこちらが情熱的になっても引かれるかもしれないし、難しいところです。Cを選んだあなたは?【私に頼るな甘えるな。お母さんじゃない!】鼻や口のあたりは、恋人が自分に甘えすぎていることへの不満を表します。何かあったらすぐに「どうしよう」と相談してきたり、面倒なことをあなたにさせようとしてきたりする彼に、ちょっとウンザリしているのかも。「もしかして彼ってマザコン?」なんて疑惑も、あなたの心の中に浮かんでいるのでは?Dを選んだあなたは?【浮気心が透けて見える。私だけを見てほしい!】頬やあご、首のニキビは、あなたが恋人の「一途さ」に疑いを抱いていることを表します。発言や行動にどこか浮気っぽい部分が見えて、不安を感じている状態。職場の特定の女性のことがしばしば話題に上るようになっていたり、休日の行動に不審なところがあったり。共通の知り合いから、情報収集をしてみては?あもん・にじひこ心理アナリスト、カウンセラー。心理テストの専門家として雑誌やテレビなどで活躍する傍ら、企業や自治体の採用計画や社員教育にも携わる。著書に『眠れないほどおもしろい心理テスト』(三笠書房)など。※『anan』2017年10月18日号より。イラスト・ナカオ テッペイ(by anan編集部)
2017年10月15日先月、NHK総合テレビで 「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」 をはじめ、Eテレ「ハートネットTV」では 「自閉症アバターの世界1・2」 、NHK「あさイチ」では 「シリーズ発達障害/どう乗り越える? コミュニケーションの困りごと」 など、続々と発達障害特集が放送された。どれも見ごたえのある内容だったが、4歳の自閉症スペクトラムの息子を持つわが身としては、やはりリアル世代である「深夜の保護者会」が一番興味深かった。話し合いにのぼったテーマは、「周囲へカミングアウトはするべきか?」「カミングアウトするとしたら、どう説明したらよいのか?」「夫や子どもの本音は?」「ありのままのわが子を受け入れるには?」など。どれも、まさに発達障害の子育てをしている親の悩み、ど真ん中の内容だったと思う。現役ママの葛藤は、私には痛いほど伝わってきて、ちょっとホロッとしてしまうほどだったし、すでにさまざまなことを乗り越えてきた先輩ママたちが、試行錯誤の上生み出した、わが子との向き合い方はとても参考になった。■わが子を嫌いになる、自分が辛いそして、現役ママの苦しい胸の内を聞いて、改めて発達障害を持つわが子の「ありのままを受け入れる」ことの難しさを思い知った。「彼らを大好きなのに、大嫌いになる時がある自分が辛い」(番組に寄せられたファックスのコメント)「比べるものではないと重々わかっているけど、どうしても下の子と比べてしまう。下の子はできが良くて、かわいくてギュッって抱きしめられるけど、上の子にはできない…。できない上の子を受け入れられない」(番組に参加した現役ママのコメント) NHK総合テレビ「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」より そんなママたちの悲痛な叫びに、胸が締め付けられた。■本当に、子どものこと受け入れてる?ありのままのわが子を受け入れる――それは発達障害の子育てのスタート地点のように思えるのだが、実は、親にとっては、それが一番難しいことのような気がする。私自身も、「私は周囲にもカミングアウトしてるし、もう受け入れているから大丈夫!」と、すっかり達観したつもりでいたのに、自分でもビックリするほど些細な事で傷ついてしまうことがある。そんな時は、「実は、心のどっかでは息子のことを受け入れられてないのかも…?」と心が揺れる。ブレない自分でいたい。…なのに、なかなかなりきれない! それが自分でも、すごく歯がゆくて悔しいのだ。■子どもが笑ってくれる、そのために何ができるか?これに対して、先輩ママたちや尾木ママの意見は…「試行錯誤する、という作業がすごく大事。私たちも最初はどうしたらいいのかわからない状態で、いろいろ試して、今がある。のちのちつながっていくことだから、あきらめないで少しずつでも進んでいってほしい」「高望みせずに、『一個できたらすごい!』を積み重ねていけばいい。とにかく今できることを褒めて。『褒めるは認めること』って言葉に置き換えてもいい。良いところを褒めるのではなく、できていることを認めればいい。それが丸ごとの発達障害と付き合っていく姿勢につながっていくはず」「発達障害は、息子の世界と私たち世界の交わるところにある、『壁』みたいなもの。でも、その壁は環境や周囲の考え方、関わり方で低くもなる。息子の世界も尊重しつつ、私たち側もお互い気持ちよく過ごせるエリアが広がるように、私たち側が変わっていかなければならない」 NHK総合テレビ「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」より 様々なアドバイスが飛び交ったが、なかでも印象に残ったのは、先輩ママの次の言葉だった。「よっちゃん(息子さんの名前)に笑ってほしい。そのために自分がどうしたらいいか? それを考えれば自ずと変わってくる。それを変えただけ」私は、障害(発達障害に限らず)を持つ子どもの親というのは、何か高尚な考え方ができるような、立派なママにならなければならないような気がしていた。でも、そうではなくて、この先輩ママが言うような、子どもの毎日の笑顔の積み重ねの先に、いつの間にか生まれてくるような、もっと自然な感情なのかもしれない。そう思うと、私はまだまだ肩の力が入ってしまっているようで、まだまだだなぁ~と苦笑してしまった。■障害は敵ではないまた、当事者である子どもの発言にも考えさせられた。「悪いのはこの子ではなく、障害のせい」と、子どもと障害を別々に考えるということで気持ちが楽になったというお母さんに対してお子さんの考えは違った。「僕は、そういう考え方はやめてほしい。障害は敵ではない。生まれてしまった以上しょうがない。しょうがないから向き合う。うまく付き合っていけたら気持ちは楽になる」 NHK総合テレビ「深夜の保護者会/発達障害 子育ての悩みSP」より この2人のやり取りを見て、発達障害の子育てを描いたコミックエッセイ『母親やめてもいいですか』に書かれていた、自閉症当事者によって書かれた「私たちのことを嘆かないで」という詩の一節のことを思い出した。自閉症は人を閉じ込める殻ではありません中に普通の子どもが隠れているわけではないのです自閉症は私が私であること、そのもの私という人格から切り離すことはできません「うちの子が自閉症でなければよかった」「この子の自閉症がよくなりますように」その嘆き、その祈りは、私にはこう聞こえます。「自閉症ではない別の子がよかった」両親が語りかける夢や希望に、私たち自閉症者は思い知るのです彼らの一番の願いは、私の人格が消えてなくなり、もっと愛せる別の子が私の顔だけ引き継いでくれることなのだと… 『母親やめてもいいですか』(山口かこ・文/文春文庫)より引用 ■何を持って「息子」なのだろう?障害を持つ子どもの親であれば、誰しも、わが子の障害がなおることを願ったことが、一度はあると思う。私自身も、息子が自閉症スペクトラムと診断された当初は何度となく、この障害を息子から取り除きたいと願った。一生治らないものだと知った時は、夜中パソコンの前で号泣した。でも、1年経った今は、こう思うのだ。例えば、息子がいきなりおしゃべりで明るい社交的な子になったとしたら…? それはそれでうれしい面もあるのかもしれないけど、果たしてそれは息子なんだろうか? と。改めて、「何を持って息子なのだろう?」と考えると、思い浮かぶのは、なぜか、やっかいで面倒なエピソードばかり(笑)。むしろ、そのやっかいなところこそが、息子が息子であるための大切な要素なのかもしれない、と。最近ではそう思うのだ。最後に、先輩ママたち全員が、声をそろえていたことがある。それは、「まずは、お母さんが元気なことが基本。自分を犠牲にしちゃダメ。お母さん自身の人生も大事にしてほしい」ということ。子どもに笑顔でいてほしいなら、そのためには、まずはお母さん自身が笑顔でいることこそが大切なのだ。まちとこ出版社N NHK 発達障害プロジェクト 【発達障害についての記事一覧】▼大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)▼「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年10月12日川崎市では発達障害児の生活支援ツールのひとつとして「サポートカード」を発行しています。川崎市健康福祉局から発行されているこのカードは、発達障害により日常生活のさまざまなシーン(学校、医療機関、美容院など)でうまくコミュニケーションがとれずに困っているお子さんが、特性に応じた配慮を受けられるよう提示するものです。このカードを作ったのは、川崎市通級親の会・前会長の今村優子さん。普通の主婦であり母である今村さんがどのように行政を動かしたのか、話しを聞きました。発達障害児への無理解や偏見が誕生のきっかけに今村さんは、サポートカード誕生のきっかけとなった辛い体験を次のように話してくれました。当時小3だった息子さん(DAMP症候群=外的刺激に対して健常児よりも過敏または鈍感。感情のコントロールが困難。口頭でのルール説明などの理解が困難)が、学校の耳鼻科健診の結果を持参して受診したときの体験です。診察室に入り、今村さんは、息子さんが発達障害児で、耳の中の刺激に過敏で耳かきをさせてくれないこと、ピンセットで耳垢をはがす処置にも過剰反応を示すこと、そのため点耳薬でふやかして洗浄する処置を望むことを医師に伝えました。しかし、医師は聴覚過敏と早合点したのか、途中で話をさえぎり「聴覚過敏と耳垢は話が別だ!甘やかすな!」と一喝。看護師を呼び、4人ががりで息子さんの両手・両足・頭を押さえるように指示し、ピンセットを用意。突然のことに息子さんが驚き頭を動かそうとすると「ばかたれ!」と言って息子さんの頭をげんこつで殴りつけました。耳垢をはがすだけだったため、息子さんが恐怖で固まっている数秒で処置は終わり。医師に「終わり。大騒ぎするな」と言われて診察室をあとにしたそうです。待合室に戻っても息子さんは興奮状態。「あんなに大きい子が大騒ぎして…」と言いたげな周囲の視線も辛かったといいます。「私は息子に『あなたは何も悪いことはしていないけれど、これからもきっと同じ思いをする。だから世の中の無理解にもっと慣れていく必要がある』と話しました。ですが、私自身も納得がいかず、悔しくて涙が止まりませんでした」と今村さん。親の会で知り合った友人に相談したところ、同じような経験をしているお母さんたちがたくさんいることに驚いたそうです。「友人と話しているうちに『発達障害は目に見えにくい障害だけど、医療の現場ですらその特徴が受け入れられずにいるのはおかしい』と思うようになりました」。ある出会いで活動が大きく前進今村さんは、在籍校の校長、区役所福祉課、通級指導教室、川崎市発達相談支援センター、総合教育センターにアポを取って経緯を説明。「学校健診後のしばらくの間だけでも、特別なニーズのある児童も受診の機会が増えることを医師会に通達してほしい」と相談しましたが、いずれも「医師会には直接的な繋がりがないから難しい」という回答。医師会とのコンタクトを試みて相談窓口を探し始めてから1年が経過。話を聞いてもらえる場所すら見つからない状況が続いていました。そこで“窓口探し”や“医師会とコンタクトを取る方法探し”を中断。別の方向から改善に向けて声を上げてみようと考えました。「発達障害を社会に広く認知してもらうきっかけになり、無理解者が支援者に変わるような、または、支援者と要支援者をつなぐようなツールを発信できないか。イメージは妊婦さんのマタニティバッジでした」。ここで誕生したのが「サポートカード」というアイデア。今村さんが自身の高校時代の恩師にこの話をしたところ、市議会議員の田村伸一郎議員を紹介されました。田村議員は自身も難病を抱える子どもを持ち、障害者支援に力を入れていました。今村さんの辛い経験から2年。この出会いが活動を大きく前進させます。田村議員の力添えで、市民・こども局こども福祉課長と今村さんの面談が叶いました。田村議員同席のもと、今村さんは発達障害児の医療機関受診時の現状を訴え、カードの必要性・実現化・医師会へのアプローチを切望。田村議員も行政に働きかけてくれました。今村さんはさらに、自身が会長を務める川崎市通級親の会本部に協力と応援を要請。さらに2年後、ついに現在のサポートカードが完成し、川崎区役所保険福祉センター、発達相談支援センター、療育センターなどでだれもが無料でこのカードを受け取れるようになりました。サポートカードの認知と普及はまだまだこれから!発達障害児を抱える家庭の悩みのひとつが“病院探し”。今村さんは、無理解から来る不適切な対応により、子どもたちの病院嫌いが強化される悪循環を断ち切り、発達障害についての社会認知が広まってほしいという一心で、4年に渡ってこのカードの必要性を訴え続けました。川崎市通級指導教室親の会本部では今後もカードの普及・浸透に向けた活動を展開していく予定とのこと。「現在はまだ、サポートカードの存在を知らない人がほとんど。カードが認知され、実用性・有効性が本当の意味で決まってくるのは、ユーザーである私たちがどのように利用するか、その姿勢に関わってくると考えています。カード発行の際は、川崎市の医師会・歯科医師会・理容協議会・美容連絡協議会にも健康福祉局を通じて連絡をしました。相手側にすべてを期待するのではなく、無理解者を理解者に変えるきっかけとして、積極的に活用していきたいと思っています」取材協力:川崎市通級指導教室親の会前会長・今村優子さん<文・写真:フリーランス記者森藤理絵>
2017年10月07日子どもと接していると、どうしてもイライラしたり怒ることが増えて疲れたりしてしまうと思います。そんな状況を解消するために、心理学者アドラーの本が人気となっています。「嫌われる勇気」などはベストセラーとなり、ドラマ化もされましたよね。心理学というと難しいイメージがありますが、実は子育てにも応用できるということで注目を浴びています。どんな内容で、どのように活用すればよいのか見てみましょう。アドラー心理学とはアドラーとは1900年代に生存した精神科医で、同時期に心理学者として活躍したフロイト、ユングと並び“心理学の三巨匠”と呼ばれています。人は変われないのではなく、ただ「変わらない」という決心を下しているに過ぎなく、いま幸せを実感できない人に足りないのは、能力でもお金でも恵まれた環境でもなく、変わること(幸せになること)に伴う「勇気」が足りないという主張を唱え、「勇気の心理学」と呼ばれました。「叱らない」「褒めない」「叱らない子育て」「褒める子育て」が浸透していますが、アドラーの心理学ではどちらも推奨していません。「叱る」と「褒める」には共通点があります。どちらも「親の判断基準で子どもを評価している」という点です。確かに、叱ってばかりいるよりも、褒めていいところを注目すれば、自信がついてやる気にもなります。しかし親の基準で褒め続けると、「親の評価を気にする子」「評価されないと頑張らない子」になってしまうのです。子どもが自らやる気を感じて行動するためには「内発的動機づけ」が必要であり、「勇気づける子育て」をすることで子どもが自分で判断基準を持ち、自発的に行動するように育つのです。どうしても叱ってしまう、という親も多いと思います。叱る前にちょっと考える時間を作り、子どもの行動を理解することに努めてみましょう。例えば子どもが石を投げていたら、「危ないからやめなさい!」と注意することがほとんどだと思います。しかし子どもは、なぜ石を投げたらいけないのかが分からないので、自分の行動を否定されたと感じます。叱る人のいないところでこっそり投げるようになるかもしれません。まずは石を投げる気持ちを考え、本人にも聞いてみましょう。その上で「もし人に当たったらどうなるかな?」と考えさせたり、「もし誰かの石が〇〇ちゃんに当たったらママは嫌だな。ケガしたら心配だもの」と自分の気持ちを伝えてみましょう。叱らずに、子どもに行動を考えさせることができます。「褒めない」というのが難しいと感じるかもしれませんが、子どもを上から見るのではなく対等に見てみると分かりやすいです。例えばお皿を洗ってもらった時、パパに対して「お皿を洗って偉いわね」と言ったら、バカにされている?と相手は不快に感じるかもしれませんよね。対等な相手に言うのであれば「お皿を洗ってくれてありがとう、助かったわ」などと言うことができるでしょう。子どもを対等に見るという考えが根本にあると、言い方を工夫することができます。「勇気づける子育て」に変えるためのポイントとは勇気づけは、「子どもが自らの力で課題を乗り越え解決できるように応援すること」です。そのために有効なのは「Iメッセージ、プラス質問」です。主語を自分にして「〇〇してくれてママは嬉しい」などと伝えることで、子どもと同じ目線で会話をすることができます。お手伝いをしてくれた、テストでいい点を取ったなどいいことがあれば、「褒める」のではなく一緒に喜びます。自分の感情として表現すれば、相手に強制や決めつけをすることがありません。おすすめの言葉は「ありがとう」「うれしい」「助かるわ」「だいすき」です。そこに、「お母さんはいいと思うけど〇〇ちゃんはどう思う?」と質問を付け足すことで、子どもが自分の頭で考えるようになります。最近、私自身が子どもに叱ることが増えてしまい、イライラした後で後悔する日々を送っていたので、「叱らない子育て」に注目しました。「子どもを対等に見る」ということが一番大事であり、一番難しいことだと思います。しかし、自立を促し正しい判断ができるようになるために必要だと感じました。「こういう時はどう言えばいいかな?」と思った時は、対等に見るという根本を思い出して言葉かけしていこうと思いました。「1ヶ月続けたら子どもの行動が変わってきてママのイライラも減った」という声もあります。叱ってばかりになっているママは、実践してみてはいかがでしょうか。Written by Carinofilo
2017年09月21日公認心理士法が施行されました!出典 : 年9月15日 公認心理師法が施行され、心理職初の国家資格「公認心理師」が誕生しました!これまで日本国内の心理職は「臨床心理士」という民間資格が信用度の高い心理職の資格とされてきました。新たに生まれた公認心理師は、広い領域で働くことのできる汎用性の高い資格となることが予想されます。公認心理師 |厚生労働省大学で公認心理師となるために必要な科目や、国家試験の方法について記された「公認心理師法施行規則」も公開されています。公認心理師法施行規則公認心理師についての詳細は、下記のコラムを参考にしてください。現在、自ら命を絶ってしまう人が年間約2万人もいる社会において、医療・保健の分野だけでなく職場や学校教育の現場でも、カウンセリングをはじめとする心のケアの重要性が高まっています。そのような中で、国家資格である「公認心理師」の誕生は多くの人が待望していた資格といえるでしょう。今後の動向に、注目してゆきたいと思います。
2017年09月15日個性豊かな作品たち!夏休み作品展出典 : 一か月以上におよぶ夏休みももう終わり。夏休み中に子どもたちがつくった作品のシェアを募集したところ、たくさんの投稿がありました!この記事で紹介する作品はほんの一部ですが、リンク先ではすべての作品を見ることができます。発達ナビに関わる3人の審査員の講評も併せてお楽しみください!編集長賞Upload By 金裕珍(発達ナビ編集部)まず初めに、発達ナビ編集長である鈴木悠平からの表彰です!出典 : 編集長賞に輝いたのは、wajimakiさんのお子さんが作った「埴輪」です!「埋蔵文化センター見学に行ったあとに作った自前の…笑」とのことです。さん埴輪とは渋いチョイスですねぇ。見た目のインパクトもさることながら、お母さんのwajimakiさんが書かれているように、埋蔵文化センター見学に行ったあとに自分で作ったというエピソードが素敵です。よっぽど印象に残ったんでしょうね。「何かを作って表現したい!」という気持ちが高まるのは、やっぱりこういう、本人にとって強い印象に残った経験をしたときが一番だと思います。きっと文化センターにはお土産に出来合いのミニ埴輪とか、キーホルダーやクリアファイルとかも売っていたんじゃないかと想像します。でもやっぱり、自分で作りたかったんですよねぇ。埴輪って、土から作るものですもん。これからもそのDIY精神を大切に、自分が作りたいものをどんどん作ってほしいですね!岸田CTO賞Upload By 金裕珍(発達ナビ編集部)続いては、岸田CTO賞の発表です。LITALICOの執行役員CTOとして、お子さん向けのアプリやサービス開発を手がける岸田崇志のお気に入り作品は…出典 : プルメリアさんのお子さんが作った「ダイオウイカ」です!プルメリアさんは、作品制作の詳しいエピソードと共に投稿してくださいました。「深海生物が好きな小1の息子と取り組んだ工作、ダイオウイカです。それぞれの足には、空気を入れて膨らませたり、ゴムや針金やペーパー芯が入っていたりと、動く仕掛けあり。うちの子は不器用なので、作品を巨大にして作業しやすくする作戦でいきました。これまでの私の人生で、ダイオウイカや深海生物なんて、全くの無縁だったけど、息子が目をキラキラさせて色々教えてくれるので、私自身の世界も広がります。夏の楽しい思い出をありがとう。」プルメリアさんまるで本物かと見間違うかのようなダイオウイカでとても驚きました。素材の選定と場所によって素材を変える工夫が表現力として素晴らしく、まさに深海生物だ!という雰囲気が出ています。中が青いペットボトルのフタを使うセンスもなかなかです。きっとクリエイティブな視点で日常生活でアンテナを張っているのでしょうね。ダイオウイカの特徴の2本の触腕も先まで特徴を捉えていて素晴らしいなと思います。海で泳いでいる姿を想像して水族館にいった気分になれました。素晴らしい作品をありがとうございます!井上先生賞Upload By 金裕珍(発達ナビ編集部)最後に、発達ナビの監修も務める、鳥取大学大学院教授の井上雅彦先生からの表彰です!出典 : 井上先生賞は、おかみさんのお子さんが作った「ダンボールフェラーリ」が受賞!段ボールでつくったとは思えないリアリティで、ひときわ存在感を放っていました。おかみさんルマン仕様でしょうか?曲線的なボディラインやライトのバランス、ホイールや車内のディテールの細やかさ、色合いもあえてフェラーリレッドでなく白を選択するなど、随所にお子さんの「入れ込み」が感じられます。好きなものを作る時は、きっと時間を忘れ、すごく集中できる至福の時間なのでは、と思いました。製作中の様子や車について熱く語ってくれる様子が目に浮かぶようです。リアウイングがなぜないのかをいつか教えてください。おめでとうございます!これからも熱い作品を作ってください。まとめ出典 : いかがでしたか?想像力に富んだ子どもたちらしい、個性豊かな作品たちですよね。どの作品を見ても、細部にまで宿っているこだわりから、子どもたちの頑張りがひしひし伝わってきます!また、作品を紹介する親御さんたちの文章にも、子どもに対する愛情が感じられ、とても温かい企画になりました。皆さん、ご協力ありがとうございました!
2017年08月31日発達支援施設とは?発達が気になるお子さんや、障害のあるお子さんを、ご家庭の中だけでサポートすることは容易なことではありません。そういった子どもたちのためにあるのが「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」などの発達支援施設です!児童福祉法では、障害児通所支援と呼ばれ、全国各地にある施設に直接通うことで、必要なサポートを受けることができます。原則的に、小学生未満の未就学の子どもが通うことができるのが児童発達支援、小学生~高校生の就学児童が通うことができるのが放課後デイサービスです。児童発達支援では、小学校就学前の子どもを主に対象とし、支援を受けることができる施設です。日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場を提供したりといった、多様な支援を目的としています。サービス・利用方法・費用・手続きの流れについては、以下の記事に詳しくまとめられています。放課後等デイサービスとは、障害のある就学児童(小学生・中学生・高校生)が学校の授業終了後や長期休暇中に通うことのできる施設です。放課後等デイサービスでは、生活力向上のためのさまざまなプログラムが行われています。トランポリン、楽器の演奏、パソコン教室、社会科見学、造形など習い事に近い活動を行っている施設もあれば、専門的な療育を受けることができる施設もあります。サービス・利用方法・費用・手続きの流れについては、以下の記事に詳しくまとめられています。どんな支援が受けられるの?児童発達支援や放課後等デイサービスにはさまざまなタイプがありますが、一部の施設では療育的なアプローチによる支援を受けられることもあります。ソーシャルスキルトレーニングをはじめ、さまざまな独自の療育プログラムが組まれている場合もあり、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など専門資格を保有しているスタッフがいる施設もあります。また、障害のある子どもにとって、児童発達支援や放課後等デイサービスは、家庭・学校(園)につぐ3つ目の居場所となります。子どもにあった施設を選ぶことができれば、親子ともども充実した時間を過ごすことができるはずです。発達支援施設を選ぶときのポイントは?お住まいの地域にどんな施設があるかは、保健センター、子育て支援センター、児童発達支援事業所、発達障害者支援センターや、市町村の窓口で確認することができることもあります。これらの窓口で、子どもの特性にあった施設について相談してみることも有効です。公共の相談窓口以外に、インターネット上で施設を探すこともできます。LITALICO発達ナビの「施設情報」では、全国の児童発達支援施設や放課後等デイサービスを、合わせて約15,000施設掲載しています。それぞれの施設の受け入れ状況や、サポートの内容も詳しくまとめられています。また、各施設のスタッフが自分たちで更新している写真付きのブログや、実際の利用者さんからの口コミ情報も合わせて見ることができます。さらに、発達ナビ上から24時間いつでも、空き状況の確認や教室見学などの問い合わせをすることが可能です。利用にかかる費用は?児童発達支援と放課後等デイサービスは障害児給付費の対象となるサービスです。通所受給者証を取得することで国と自治体から利用料の9割が給付され、1割の自己負担でサービスを受けることができます。生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯: 0円市町村民税課税世帯(年間所得がおおむね890万円以下の世帯): 4,600円上記以外(年間所得がおおむね890万円以上の世帯): 37,200円このほかにおやつ代などの食費や教材費などの実費が必要になる場合もあります。また、自治体により独自の助成制度があります。児童発達支援の利用にかかる費用について、詳しくはこちらのコラムの「児童発達支援施設の利用方法」の章にまとめられています。生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯: 0円市町村民税課税世帯(前年度の年間所得がおおむね890万円以下の世帯): 4,600円上記以外(前年度の年間所得がおおむね890万円以上の世帯): 37,200円原則一割負担ですが、前年度の年間所得によっては負担額が0円であったり、1割以上である場合もあります。施設によってはおやつ代や制作物の材料代などがかかるところがあります。これらに加え、自治体により独自の助成制度がある場合もあるので、行政の窓口に問い合わせてみましょう。放課後等デイサービスの利用にかかる費用について、詳しくはこちらのコラムの「放課後等デイサービスの利用方法」の章にまとめられています。施設の利用方法は?発達支援施設に通うためには「通所受給者証」が必要になります。通所受給者証はお住まいの市区町村の福祉担当窓口・障害児相談支援事業所などに申請を行うとで取得することができます。この通所受給者証があることで、自己負担1割でサービスを受けることができるのです。障害者手帳がなくても、通所受給者証があれば、「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」を利用できます。詳しい取得法や、申請の方法はこちらを参考にしてください。その他にも受けられるサービスはあるの?また、児童発達支援や放課後等デイサービス以外にも、受けられる支援があります。受けられる支援の詳細や申請方法はこちらにまとめられています。療育手帳・障害者手帳とは?障害者手帳とは、障害のある人が取得することができる手帳です。障害者手帳を取得することで、障害の種類や程度に応じてさまざまな福祉サービスを受けることができます。身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳などの種類があります。まとめサービス・支援は多岐にわたるため、すべてを把握できず戸惑うこともあるかと思います。そんなときは、早めに相談することで、一歩ずつ疑問を解決してゆきましょう。保健センター、子育て支援センター、児童発達支援事業所、発達障害者支援センターや、市町村の窓口に相談することで、次のステップが見えてくるかもしれません。また、児童発達支援事業所や放課後等デイサービスなどのスタッフも相談に乗ってくれるはずです。一人で抱え込まず、相談できる相手を見つけ、適切な支援につなげていくことが大切です。
2017年08月29日私はアスペルガー症候群、ADHDと診断された、26歳男性です。以前、正社員の登用見込みで採用された企業で、発達障害であることをカミングアウトし、退職せざるを得ない状況に追い込まれる経験をしました。今回このコラムを書いたのは、その企業を批判するためではありません。発達障害のある人自らが、現在の社会の現状や、自分たちを守る法律や制度について知ってほしいと思ったことが執筆の動機です。自分の経験がすこしでも役に立てば幸いです。問題なく過ごしてきた学生時代、仕事を始めて問題が表面化出典 : 私は大学までの学生生活で、表面上のコミュニケーションや、日常生活、勉強という面では、これといった支障はなく、毎日を過ごしてきました。自分が発達障害であることにも気づいていませんでした。しかし、社会人になってから対人関係の困り事などが表出したのです。例えば、空気が読めない発言によって商談の雰囲気が悪くなってしまったことや、声の大きさやトーンをTPOに応じて変更することが難しいために、ちょっとしたぼやきが部署内の全員に聞こえてしまうことがありました。学校生活では、対人関係に多少問題があっても、テストで問題のない点数をとっていれば、目をつむってもらえます。ですが、社会人となるとそうもいきません。行く先々で、「常識がない」「もう少し場をわきまえろ」と言われてしまったのです。そうするうちに私は、就職後半年足らずで転職することをくり返してきました。コミュニケーションスキルの低さから「正社員としての基本的なスキルに欠ける」ということを言われ、辞めざるを得なくなってしまうのです。表面的なコミュニケーションスキルという点では問題がないので、面接は突破出来ても、継続的に働くということが難しいと感じていました。確定診断はまだ。そんな状況で向かった採用面接出典 : 人間関係のつまずきや解雇の原因が、自身の発達障害にあるのではないかと考えていた私は精神科を受診し、発達障害の疑いがあるということを主治医から告げられます。しかしこのときは「疑いがある」と告げられたレベル。確実な診断に必要な検査は数ヶ月先まで予約で埋まっており確定診断は下っていない状態でした。そんな状況で私はある小売店の採用面接に応募します。任される仕事は主に接客。採用面接では聞かれない限り、不利になることは話す必要が無いと考え、発達障害の可能性があるということには触れませんでした。そして面接の結果は採用。まずは6ヶ月の試用期間となり、社会保険付きのフリーターのような形で働くことになったのです。職場で生じた困りごとと気づき出典 : 職場での仕事は多岐に渡りましたが、耳から聞いたことを忘れやすい特性や、聴覚過敏から引き起こされる困り事が特に辛く私にのしかかりました。たとえば、こんなことがありました。1. 業務の指示、シフトの交代、口頭で交わされた指示や約束等を忘れやすい。そのため、シフトを変更して、来なくていい日に会社に行き、「あれ?今日は休みだったよね?」という会話になってしまうことがありました。2. 業務の指示が長かったり、一度にされたりすると理解が追いつかなくなってしまう。その会社には、面倒見の良い先輩が多く、丁寧に説明してくださることが多かったのですが、耳から聞いたことを理解すること、長い話を要約することが苦手だったので、理解が追い付かなくなってしまう場面が多くありました。3. BGMなどの雑音がある場所で、電話などの声が正しく聞き取れない。また、私は切り替えやマルチタスクが苦手です。電話がかかってきたときには、電話に出るモードに切り替えなければいけないのですが、人よりも切り替えに時間がかかります。加えて、聴覚過敏があるため、BGMやマイクやスピーカーを使ったイベントなどが近くであると、部署名や社名を聞き取りづらい感じることが多々ありました。4. 一つの仕事に没頭しやすく、周りを見ることが苦手。アスペルガー症候群である私は、細部に注視しやすく、全体が見ることが難しくなる特徴があります。上司から進捗状況を尋ねられるまで、報告をしなかったこともありましたし、他人の迷惑を顧みず勝手に仕事を進めることもありました。譲れない自分のこだわりのために、他人と摩擦が起きてしまうことも少なくはありませんでした。仕事は仕事という考え方ができなかったのです。5. 突然のスケジュール変更などに弱く、探し物がいつもの場所にないと、イライラしやすい。いつもと変わったこと、配置が換わったりするだけで頭の中がパニックになります。こうした予想外のハプニングに対してどうしていいかわからずパニックになり、それが怒りとして感じられるというステップを踏んでいるのです。逆に、できるとわかったこともあります。一般的にアスペルガー症候群を抱える人には、接客業は向かないと言われることもあります。しかし、私の場合、質疑応答のパターンがある程度定まっており、マニュアルがしっかりしていれさえすれば、さほど不自由なく対応できました。その点、今回の職につく前の事務職では、上司の考えていることを察しながら働くことが多く、困難さを感じていました。そういった働き方が苦手だと感じたため、あえて接客業を選んだ経緯があります。また私にとって、見知らぬ人と短時間雑談をするのは、そんなに難しいことではありません。むしろ、何時間も何週間も誰かと一緒にいる方が難しいのです。社会性の弱さが露呈する瞬間が必ずあり、障害を隠し通すことができなくなるからです。上司に障害があることを、上司に伝えることになった理由ときっかけ出典 : 発達障害の心理検査が近づいてきた日、自分が大きなミスをしてしまった事に気付きます。それは、確定診断のために必要な心理検査の日に休みの希望を入れることを忘れてしまったことでした。そのため、上司に「大事な検査があって、この日はどうしても出社する事ができません」と伝える必要性ができてしまったのです。どうするか悩みましたが、「私は自分が発達障害だと思っていて、半年前から心理検査の予約をしていた」ということを正直に話しました。そして結果として診断日にお休みをもらうことができたのです。適当な言い訳をせず、あえて正直に伝えた理由は、シフトの休み希望などの締め切り自体を忘れることが、1回や2回ではなかったことが関係しています。障害特性による困り事が、そのときから既に仕事にも支障を与えていました。このことから、どうせなら正直に伝えてしまおうと思い、事実をありのままに話したのです。判明した診断名は......?出典 : こうして、発達検査を受けた私には、確定診断が下ることなりました。診断名はアスペルガー症候群と、ADHD。言語性IQは平均以上であるが、処理能力、場面の推察力、ワーキングメモリーのいずれも平均より大きく劣るという結果でした。主治医は比喩として、メモリーが極端に少なく処理速度も速くはないパソコンに例えて説明してくれました。25年間、自分が普通だと思って生きてきた私にとって、自身が発達障害であると突然突きつけられた事実は想像以上に重いものでした。「どうして、もっと早く教えてくれなかったんだ」と両親に対して憤りをぶつけてしまうほど、信じたくない気持ちでいっぱいだったのです。「まさか自分が障害者だなんて...」出典 : 診断を受け止めることができなかった当時の私は、思わず母親に詰めよります。「どうしてくれんだ!?アンタが出来損ないに産んでくれたせいで、俺の人生は台無しだッ!!」家の外にまで聞こえるような怒声で母親を罵った事を今でも覚えています。「出来損ない」を突き付けられたような感覚。健常者と比べて能力が欠けているという感覚は自分を苦しめました。他人と比べては、自分に足りないものを見つけネガティブの思考に陥る。そういうループを繰り返していたのです。この頃を振り返ると、仕事が上手く行かない、余暇を楽しむ余裕がない事から生じた怒りだったと思います。また日頃から見ていたSNSも原因のひとつだったのではないかと考えています。仕事で自分なりの居場所を見つけていたり、結婚という次のライフステージを選ぶ人が、同じ大学を卒業した同期から早くも出ていたりする中で、自分だけが社会の中で居場所を見つけることが出来ず、置いていかれている気がしていたからです。そのような言葉にすることが難しい孤独感や焦燥感が私を追い詰めました。また診断が下ってから主治医の勧めでストラテラを服用し始めたのですが、私の実感ではこれといった効き目の実感がなく、喉の渇き、食欲減退、イライラ感、中途覚醒などの副作用に悩まされます。このときは思うように治療が上手く行かない苛立ちを両親にぶつけることも少なくありませんでした。また、後から知ったことですが、ストラテラには、気分変化や不安、攻撃性を引き出すなどの副作用が出る場合があるそうです。その副作用が苛立ちや、すぐに怒鳴ってしまうことに影響していたかもしれません。結局、私の場合、副作用が強く出てしまったため、続ける事が困難だと判断され、現在は服用を中断することになりました。周囲にカミングアウトするか否か。悩んだ末に出した結論は?出典 : 確定診断を受けたものの、発達障害を職場に本格的にカミングアウトするかどうかは非常に悩みました。休み希望を出す段階で、上司に発達障害かもしれないと告げていたとはいえ、同僚や部内に対してカミングアウトすることはわけが違います。しかし一方で、障害特性による困りごとのため、仕事そのものや職場の人間関係に支障があり「もう隠し通すのは限界だな」という自覚もありました。悩みぬいた私は、試用期間にカミングアウトすることが人事面でのリスクであると知りつつも、「結局は受け入れてくれるだろう」という思いで、カミングアウトをすることを決意したのです。カミングアウトをすると決めた、私が取った行動とは?出典 : 発達障害をカミングアウトすると決めた私は、発達障害のことを全く知らない人でも分かるような説明を考え抜きました。その際に発達ナビのカミングアウトの記事を参考にし、自身の特性と、その障害に対して具体的にどうして欲しいかを簡潔に書いたナビゲーション・ブックを用意しました。ナビゲーションブックには、下記の3点を記入しました。1.アスペルガー症候群まとめアスペルガー症候群とはどのような症状なのか、障害を知らない人にもわかるようにまとめました。2.アスペルガー症候群具体例身体的な特徴や、作業面での特徴などをまとめ、どのようなことが自分の中で起こっているかを説明しました。3.自分が抱えている症状と、その対策そして、自分の困りごとに対する対処法と、その配慮を場面ごとにまとめました。ADD女性の指南書とも言われる『片付けられない女たち』サリ・ソルデン著もカミングアウトする際、参考にしました。片づけられない女たちこの本は、障害の当事者の方に、ぜひ読んでほしいと考えているのですが、障害を抱えたまま、どう自分を受け入れ前向きに生きて行くのかが書かれています。特に参考になったのは、騒がしい場所での仕事は苦手なことを明らかにし、落ち着いた環境で効率化を図ることや業務量を減らす代わりに、丁寧な仕事をすることなどです。さらに、障害があるから配慮してもらって当然という姿勢ではなく、自分で工夫できることは自分でする。自分に出来ないことだけ配慮してもらうというトレードオフを本書では提案しており、カミングアウトをどう行うかの道しるべとなりました。また、ナビゲーションブック作成の際には、下記の発達ナビのコラムを参考にして、私の障害特性を分かりやすく説明することを意識しました。職場でのカミングアウト、そして......出典 : カミングアウトをする順番は、影響する範囲などを考え、上司→人事→部署内の同僚のように進めていきました。Upload By ツーちゃんこうして事前にナビゲーションブックを用意して、自分がどのような障害があり、それに対してどうような配慮を望んでいるかをハッキリさせたことで働きやすくなった一面もありました。引き継ぎの際に、同僚が紙を使って視覚的に説明してくれるようになったり、イレギュラーが生じたときには、それをきちんと説明してくれるようになったのです。しかし、中には良く思わない人もいました。障害があり能力が劣る人と同じ給与で働くことに抵抗があり、良く思わない人も少なくなかったのでしょう。障害があることを、噂話のネタに使われてしまい、公開する予定の範囲が当初の想定以上に広がってしまったということがありました。どんな情報をどこまでに公開するかは、カミングアウトを考えるときに、最も慎重に考えなければならない問題の一つだと思います。発達障害は、脳の特性でもあります。この職場で健常者と共に働くということは、自身の特性を言わば矯正して生活をすることに他ならないものでした。カミングアウト1ヶ月後の、実質的な退職勧奨出典 : カミングアウトからちょうど1ヶ月後のことです。その会社では、直属の上司と定期的に仕事での悩みや日々の業務の改善点などについて、1対1で話し合う定期的なミーティングがありました。その日は半年間の試用期間を振り返る日の予定の日でした。いつもは温和な雰囲気のミーティングが、そのときばかりは暗い雰囲気だった事を覚えています。空気を読むことが苦手ではありますが、重苦しい人事考査を何回か経験していたため、その空気感には覚えがありました。人事が慎重を期して、書記として議事録を取っており、直属の上司が社内規定を読み上げ始めたので、不安は確信に変わりました。そして案の定上司から言われたのは、5ヶ月の間、君を見てきたけれども、正社員としてのスキルに欠けるといった趣旨の言葉でした。仕事を続けるために、突きつけられた条件とは?出典 : そして私には雇用継続に新たな条件を突き付けられます。試用期間を1ヶ月間延長しさらに人事部が示した条件を飲む。その条件とは、ナビゲーションブックに書いた、障害特性上難しいと書いたことをできるようにすること。それが達成できない場合は、引き続き雇用する事は出来ないというものでした。さらに、今の部署の仕事を完璧にこなし、他の部署のサポートにも回れるようにする。そして、その仕事ぶりが直属の上司と人事部の代表者から見て、条件を達成したと判断されたときにに改めて正社員としての採用を決定するという内容だったのです。「それが出来ない場合は、今月末で退職することに同意をしてください」いうなれば、特性を克服するか、辞めるか、どちらかを選ぶことを迫られたのです。このとき、つまりは辞めろと言われているのだと悟り、退職書類ににサインをしました。ナビゲーションブックが、このような形で使われるなんて...本当に悔しくてたまりませんでした。こんなことがあっていいのか。これは、障害者差別ではないのか?そう思った私は、法律相談なども赴き、専門家から知見を集めることにしたのです。退職してから知った、発達障害者を取り巻く現状と法律出典 : このような出来事は、法律用語で退職勧奨と呼ばれ、強制的に退職を迫った場合には法律に違反するそうです。これは、訴訟も視野に入れて法律を調べていたときにわかりました。私が知る限りで発達障害者を守る法律は3つあります。1.障害者雇用促進法2.障害者差別解消法3.発達障害者支援法障害者雇用促進法では、36条に障害者差別の禁止が規定されています。障害者の雇用の促進等に関する法律それに拠れば、「事業主は障害者である労働者に対して、配慮することが必要」という旨が書かれています。しかし、合理的配慮の提供は義務付けられているものの、障害者雇用促進法に違反していても罰則は無いという法律の抜け道が用意されています。現在、発達障害のある人は、手帳を持っていなくても医師の診断書などで障害があることが分かっていれば、上記の法律の対象者にはなります。しかし現状、発達障害者は、障害者であると定義されていながら、手帳を持っていない場合、法定雇用率にカウントされません。つまり、手帳を持っていない発達障害者は、単に法定雇用率をクリアしようとする企業によっては、雇用するメリットがない人材と言えてしまうのです。この退職勧奨があった当時、私は、精神障害者手帳を取得していませんでした。訴訟も視野に入れたが、証拠が無かった......出典 : 私は法律にはついては、何も知らなかったので法テラスという場所の無料法律相談を利用しました。法テラスとは経済的な困難を抱えている人が不利益を被ることがないように設けられており、通常弁護士に相談すると1時間4000円程度かかるところを、無料で相談することが出来ます。そこで相談をすることで、法的な自分の状況がのみ込めてきました。退職のきっかけとなった面談時、会社側は人事部の社員を書記につけていましたが、私にはそこでどのような会話があったかを証明する証拠がありませんでした。訴えを起こそうにも、強制的に退職を迫られたという証拠が自分の側になく、会社側に都合の良い解釈が出来る証拠がたくさん残っていたのです。また、退職届けを自ら書いてしまったことが痛手となりました。一度、退職することに同意をしてしまうと、会社側としては、労働者から退職したいとの申し出があり、会社としては、それを受理したまでという主張が通ってしまいます。また私は、今回、会社の所在地を管轄する労働基準監督署にも行きましたが、労働基準監督署は、労働基準法に違反するかどうかをチェックする公的機関のため、相手にしてもらえませんでした。やきもきしている私に弁護士が勧めてくれたのが、労働局の個別労働紛争解決の制度を利用することでした。労働局の調停(個別労働紛争解決制度)とは?出典 : 労働局の個別労働紛争解決の手段として、あっせんと、調停の2つがあります。どちらも無料で活用できる紛争解決の手段です。今回、利用したのは後者の調停です。調停は障害者差別により不利益が生じたと主張する労働者と、会社間の紛争を解決するために行われます。労働相談における紛争調整委員会によるあっせん | 福岡労働局調停は、民事裁判とは性格が異なります。労働者と会社の双方から言い分を訊き、1日で審理が終わります。所要時間は申し出から平均で3ヶ月と、一般的な裁判と比べると短期間で済ませることが出来ます。そして労働者自らが無料で申請することが出来る制度です。また障害者自身が申請書を1人で書きあげることが難しい場合は、代理人が当事者の承諾を得て申請することも出来ます。調停が成立した場合、そこでの決定は民事裁判と同等の効力を持ちます。しかし、裁判のように参加の法的な拘束力がありません。自由参加だということです。また調停は、非公開で行われます。つまり調停の過程や結果については公表してはならないのです。私も調停の申し出を行いましたが、その結果をここに書くことはできません。退職してからというものの......出典 : 僕にとって、辛かったのは「自分が発達障害であるという事実」と会社が自主退職をするように暗に示してきたことの2つがほぼ同時期に起こったことでした。まさに泣きっ面に蜂のような状況。そのため退職してからは、気分が落ち込み、やり場のない怒りや苦しみを両親にぶつける日々が続きました。うつ病とまではいかないものの、抑うつ状態にもなり、心身ともに辛い日々となったのです。また、私はアスペルガー症候群の症状がADHDよりも強く出ており、視覚優位なタイプでもあります。そのため、目で見て、モノを考えるタイプであると同時に、目で見てモノを思い出すタイプでもあります。その企業のコーポレートカラーや、上司の名前、その企業の商品など、色々な刺激を見たり、聞いたりすることで頻繁にフラッシュバックが起こりました。フラッシュバックの辛さを言葉で説明することは難しいのですが、まるで、その場にいるときと同じように、その当時の感情を思い出してしまうのです。また、切り替えが苦手で、マルチタスクが苦手なため、怒りを感じたときはそのことしか考えられなくなり、感情に長く翻弄されてしまうのです。悔しくて堪らなかった。見かねた父が私に掛けてくれた言葉出典 : 上述したように私は、退職してからずっとその企業の行ったことが許せませんでした。やがて、証拠がなく裁判をして白黒をつけたいと考えるようになった私に、父がかけてくれた一言があります。「過去に囚われて、苦しむお前を見たくない。俺が見たいのは、お前の笑顔だ。嬉しそうに笑うお前を取り戻して欲しい。ただ、笑ってくれていれば、それでいいんだ。仮に裁判をしても、思うような結果は得られない。お前も分かっているはずだ、証拠が無いと。つらいことは忘れられなくても仕方がない。それでも視点を変えれば、見えてくるモノも自ずと変わってくる。早くお前に笑顔が戻ればいいなと思っている」この言葉を聞いたとき、感動して涙が出たことを今もちゃんと覚えています。そしてこの父の言葉が一つのきっかけとなり、前を向いて歩きだす機会になりました。自分を責め続けていた私を救った言葉とは?出典 : 父の言葉だけでなく、カウンセラーの方がかけてくれた言葉にも救われることになります。辛い過去を忘れることができずにいるとき、カウンセラーの方が、こう声をかけてくれました。「許さなくてもいい、許せない自分がいてもいい。」このたった一言が怒りに苛まれる心を楽にしてくれました。日々感じていた怒りの感情の認知を、カウンセリングなどで丁寧に取り除くことに時間をかけ、今現在は怒りの感情に支配されることもなく落ち着いて過ごすことができるようになりました。自分の生い立ちを振り返って出典 : 今振り返ってみると、私は、障害のことを10年くらい前に分かっていたら良かったなぁと考えています。今現在26歳なので、中学生とか高校生くらいのときにあたるでしょうか?たとえ、自分に障害があることを知らなくても、人と上手くなじめない感覚や、ほかの人と自分は何かが違うという違和感を幼い頃から感じながら生きています。だから、自分自身に発達障害があるともっと早く知っていれば、その違和感にも納得することができたし、障害特性を理解して、自分に合った道を選ぶこともできたはずです。また、障害の受容に関しては、信頼できる第三者の大人の存在がとても重要だと考えています。障害を受け入れることが出来なかった頃、両親の声はなかなか届かなかったからです。私の場合は、カウンセラーの方だったのですが、小学生や中学生のお子さんであれば、小学校の先生などが信頼できる大人にあたるでしょうか。そうした関係づくりが後々役に立つのではないかと思いました。私の経験から皆さんに伝えたいこと出典 : これまでのことを振り返ると、職場にはカミングアウトしないことも選択肢の一つだと思います。また個人的な見解ですが、私のように途中でカミングアウトをした場合、周囲からは後出しジャンケンをしたような目で見られます。また入社前に障害の有無を伝えていない場合、障害により生じた人間関係の不和はカミングアウトをしたからといって埋まらないような気がするのです。私は、今現在、この反省を活かし障害者雇用で配慮を得られる企業を探しています。私が使用しているナビゲーションブックを公開します。企業へのカミングアウトを考えている方は、参考にしてみてください。この記事が一人でも読者の皆さんの参考になれば、これほど嬉しいことはありません。Upload By ツーちゃん
2017年08月28日公認心理師とは?出典 : 公認心理師とは、心理職の国家資格です。これまで心理職の資格は、臨床心理士を始めとする各種民間資格のみでした。そのため近年、心理学系の国家資格をつくろうとする動きがありました。その結果、公認心理師法という法律が2015年9月9日に成立して、9月16日に公布されました。公認心理師法は、公認心理師という国家資格を定めるとともに、国民の心の健康を増進させていくことを目的にした法律です。厚生労働省によれば、2017年9月15日までに施行される予定になっています。また、第1回国家試験は、2018年に実施する予定と発表されています。<厚生労働省引用>公認心理師とは、公認心理師登録簿への登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいいます。(1)心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析(2)心理に関する支援を要する者に対する、その心理に関する相談及び助言、指導その他の援助(3)心理に関する支援を要する者の関係者に対する相談及び助言、指導その他の援助(4)心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供国家資格としての「公認心理師」誕生の背景出典 : 国家資格は民間資格とは違って、国が認めた資格であるという信用度があること、法律や制度に組み込むことができるという利点があります。現在、自ら命を絶ってしまう人が年間約2万人もいる社会において、医療・保健の分野だけでなく職場や学校教育の現場においても、鬱状態等に悩む方や発達障害の子どもに対するカウンセリングが必要とされ、司法の分野でも被害者や犯罪者に対し、あるいは自然災害の被災者などに対して心のケアの重要性が高まっています。そのような中で、「数多くある民間資格のどの資格者に依頼すべきかわからない」といった声にこたえるためにも、幅広い年代や状況に対応でき、国家資格である「公認心理師」の誕生は多くの人が待望していた資格といえます。また、公認心理師は、名称独占資格(その資格保持者でなければ、その名称を名乗ったり、紛らわしい名称を用いてはいけない)です。例えば「特定公認心理師」といった一般の資格を作ったり、肩書きを名乗ったりすることで、公認心理師資格を持っているかのような、間違った認識をさせてしまうことを防ぎ、禁止しています。しかし、医師や弁護士のような業務独占資格ではないため、公認心理師の資格所有者でなくても心理職の行うアセスメント、カウンセリングなどを行うことは許されています。公認心理師の「師」が「士」でないのは、名称独占によって既存にある臨床心理士などの民間資格が廃止せざるを得なくなってしまうのを避けるためです。参考:浅井伸彦「あたらしいこころの国家資格「公認心理師」になるには’16~’17年版出典:厚生労働省「平成28年中における自殺の内訳」公認心理師の仕事と活躍の場出典 : 公認心理師の仕事は、公認心理師法では以下の4つが挙げられています。1.心理査定(アセスメント)2.心理面接(カウンセリング)3.関係者への面接4.心の健康に関する教育・情報提供活動1.2に関しては、公認心理師も民間資格である臨床心理士も同じですが、2つの資格についての違いはこの記事の後半「公認心理師と臨床心理士の違いは?」の章でご説明いたします。では、公認心理師が具体的にどのような仕事をするのかをみていきましょう。1.心理査定(アセスメント)心理査定とは、カウンセリングを行う際の、もしくは医師による診察が行われる際のアセスメントです。初対面の際の印象から面接時の表情、態度、話し方、初回面接の内容などから読み取れる情報、心理査定など、広く含めたクライエント(=カウンセリングや福祉での相談者)/患者に対する見立てのすべてを指します。その中でも心理検査がアセスメントの補助として使われることがよくあります。代表的な心理検査は、ロールシャッハ・テスト、バウムテスト、HTPテスト、風景構成法、YG性格検査、MMPI、東大式エゴグラムなどがあります。2.心理面接(カウンセリング)心理面接とは、一般的にいわれる「カウンセリング」の意味です。自分のことや家族のこと、職場や学校での悩みなどを聞き取っていきます。これは医師と公認心理師が連携して数回にわけて行う場合もあります。3.関係者への面接公認心理師などのセラピストは、常に症状を持つ人やなにか問題を抱えている人と直接会えるわけではなく、時には不登校や引きこもりの子どもの両親、発達障害の子どもの保育士、問題行動を起こす生徒の担任など関係者としか会えないことがあります。そのようなときに役立つ代表的な心理療法として「家族療法」があります。家族療法は、人間関係の相互作用に着目し、相互作用の悪循環を切断して良い環境を作っていくなどをすることで”問題”とされていたことが再び起こらないように、変化することを進めていく心理療法です。必ずしも家族全員が来る必要はなく、また対象が家族でなくても2名以上の対人コミュニケーションが少しでも関わるところ(職場、地域、学校など)であれば使うことができます。4.心の健康に関する教育・情報提供活動心の健康に関する教育のことを、「心理教育」と呼びます。友達を作ったり、仲直りするスキルや、怒りの表現やストレス発散に関する知識など、普段学校では学べないようなスキルを教育という形で学ばせることで、社会的に適応できるよう導いていきます。また、地震や台風などの天災による緊急事態が発生した際にも、被害者の心理ケア等で公認心理師は求められていくでしょう。公認心理師は、医師ではないために「診断」することはできません。心理職はクライエント(=カウンセリングや福祉での相談者)から自身の成育歴や環境、生活、人格、症状などをよく聴き取り、どのような人なのか査定してから具体的な助言をしていきます。つまり、診断するのは医師の役割で、じっくり時間をかけてクライエントを全人的に看て理解するのが公認心理師の役割です。公認心理師の働く場は、ほとんどがこれまで臨床心理士が働いてきた領域と重なると考えられます。主に臨床心理士が活躍してきた領域は以下の6つがあります。・医療領域:病院、クリニックなど・教育領域:スクールカウンセラー、教育相談所など・産業領域:EAP(従業員支援プログラム)など・福祉領域:児童相談所、発達支援センター、療育施設など・司法領域:家庭裁判所、少年鑑別所など・私設相談領域:資格をもとにしたカウンセリングルームを独自に開業する公認心理師になるには?出典 : 公認心理師になるには、受験資格を満たし国家試験に合格する必要があります。実際の細かいカリキュラムなどについては、まだ決定してはいませんが、文部科学省・厚生労働省が取りまとめた「公認心理師カリキュラム等検討会」の平成29年5月31日に報告書をもとに、今後省令などによって定められていくと考えられます。そこで今回はこの報告書にもとづいてご紹介します。1.「公認心理師になるために必要な科目」を心理学関係の大学と大学院を出て修了する。2.大学で公認心理師になるために必要な科目を修めて卒業し、文部科学省令・厚生労働省令で定める施設で、規定の期間以上心理関係の仕事に従事する。3.1.2の条件と同等以上の知識・技能を有すると認められる。「公認心理師になるために必要な科目」は・大学での必要な科目合計25科目、実習80時間以上を実施・大学院での必要な科目合計10科目、実習450時間以上を実施となっています。科目などの詳細は以下の2ページ目をご参照ください。参考:厚生労働省「公認心理師のカリキュラム等検討会報告書の概要について」p2参考:厚生労働省「公認心理師のカリキュラム等検討会報告書」1.出題範囲・出題範囲として詳細な科目は定めずに、「公認心理師として具有すべき知識及び技能」について出題されます。2.試験の実施方法・全問マークシート方式・問題数は150~200 問程度・ケース問題を可能な限り多く出題・試験の実施時間は1問あたり1分(ケース問題は3分)を目安・公認心理師としての基本的姿勢を含めた基本的能力を主題とする問題と、それ以外の問題3.合格基準正答率60%程度以上4.試験実施時期・第1回は2018年12月までに実施・第2回以降の試験実施時期は今後検討・試験は年に1回の実施とする経過措置はいつの時点で、誰があてはまるの?出典 : これまで臨床心理士などの心理職を目指し、すでに大学や大学院に入学した人や、心理職の仕事をしている人は、新たに公認心理師資格を取得することはできるのでしょうか?「公認心理師法」は施行(2017年9月)までの間、受験資格の特例があります。これは、大学や大学院において、公認心理師の課程を設置して修了者を出すまでに年月を要することや、現任者として心理職についている者が資格を取得しやすくすることを考慮しています。学生や心理職に勤めている人のための3つの特例についてご紹介します。◇受験資格の特例1:施行前に、大学院を修了した場合施行日の時点で、臨床心理士の指定大学院を修了していることを指します。また、心理学関係以外の4年制大学を卒業している場合でも、2017年9月までに臨床心理士指定大学院に入学していれば、心理学関係の大学に新たに入学する必要はありません。臨床心理士の指定大学院は以下をご参照ください。参考:日本臨床心理士認定協会「指定大学院・専門職大学院一覧」◇受験資格特例2:施行前に、心理系の大学に入学した場合施行日の時点で大学の心理学部・心理学科に所属していて、「公認心理師になるために必要な科目」を大学で修め、その後公認心理師の大学院に入学・修了することを指します。◇受験資格特例3:施行前から、心理系の仕事に従事している場合施行日の時点において、大学を心理学部などで卒業し、一定期間の心理職に従事したことを指します。更に、以下の2つにあてはまる場合公認心理師試験を一部科目免除で受験することができます。・保健医療、福祉、教育関係で心理の仕事を5年以上していた場合・保健医療、福祉、教育関係で心理の仕事についていて、文部科学大臣及び厚生労働大臣が指定した講習会の課程を修了した場合参考:厚生労働省「公認心理師のカリキュラム等検討会報告書の概要について」p5.6公認心理師と臨床心理士は何が違うの?出典 : 簡単に2つの資格の違いを整理すると、・臨床心理士は民間資格で、公認心理師は国家資格・心理学系の大学への進学が必須か否か・アセスメントとカウンセリングの他の場面で、研究を行うか否か3つがあげられます。臨床心理士とは、臨床心理学を基礎とする臨床心理学の専門家としての民間資格です。そこで本章では、公認心理師資格との違いを受験資格と仕事内容の違いについて説明していきます。臨床心理士の受験資格は1.日本臨床心理士資格認定協会によって指定された大学院を修了している者(ただし、大学院によっては1年以上の心理臨床経験も必要になる場合があります)2.諸外国で上記と同等かそれ以上の教育をうけて、日本で2年以上の心理臨床経験がある者3.医師免許取得者で、取得後2年以上の心理臨床経験を有する者現状では、臨床心理士を目指す人が4年制大学を卒業したあとのルートはこのようになっています。Upload By 発達障害のキホンしかし特例として施行日までに、臨床心理士指定大学院を入学・修了した人は「公認心理師」の受験資格を取得できます。公認心理師法の施行後(9月15日までに施行)は、以下のように大学の進学先によって得られる受験資格がわかれていきます。公認心理師の受験資格を取得するには、以下の図の赤の矢印をたどっていく必要があります。Upload By 発達障害のキホンつまり、臨床心理士になるには指定大学院を修了する必要がありましたが、公認心理師はさらにその前段階の大学の学部にも指定があります。そのため、施行日の時点で心理系以外の学部に所属している場合、新たに心理学部・学科に再入学・編入または、通信課程のある大学で必要な必要な単位を修得する必要があります。臨床心理士の仕事内容は1.心理査定や、面接での査定(アセスメント)2.臨床心理学的な面接による援助(カウンセリング)3.地域のこころの健康を守るための地域援助4.査定や面接などを含めた心理臨床実践に関する研究や調査対して公認心理師の仕事内容は1.心理査定や、面接での査定(アセスメント)2.臨床心理学的な面接による援助(カウンセリング)3.関係者への面接4.心の健康に関する教育・情報提供活動とされています。一見すると、3.4に違いがありますが、公認心理師の仕事にある「関係者への面接」も心理面接に含まれることから、実質的にはほとんど仕事内容は同じと考えられます。唯一大きく異なるところとしては、臨床心理士の仕事の一領域としてあった、「研究」が公認心理師の仕事には含まれていないところです。これまでお伝えしたように、試験の内容や認定機関は異なりますが、国家資格を持っていると給与が上がったり、手当てがもらえたりする環境が整わない限り、実質的な違いはないと考えられます。また、元々臨床心理士等の業務を基準に、公認心理師の業務内容が作られてもいるので、業務範囲や活動の場に大きな違いはないといえるでしょう。現在、既に心理職に勤めている人や、臨床心理士を目指していた人の中には、新たに公認心理師資格をとるべきか悩んでいる人も多いと思います。仕事内容には大きな違いはなく、どちらの資格を持っていても活躍できる場はもちろん幅広くあります。ですが、中には公認心理師資格が必要とされるケースもでてくることが予想されます。まず、公認心理師が施行されてからは、以下の4つに分類されていくと考えられます。1.公認心理師資格のみを持つ人2.臨床心理士資格のみを持つ人3.公認心理師資格と臨床心理士資格の両方を持つ人4.いずれも持たない人もちろん、4つのどのパターンでも心理職を勤めることは可能ですが、この中で医療機関で働いている人、公的機関で働いている人、そのどちらかで働きたいと考えている人は気をつけなければならないことがあります。・医療機関で働く場合保険診療を行う医療機関では「保険診療の手引き」に従って保険点数のつく心理検査などを行います。これまでは国家資格がないために「臨床心理技術者」となっていますが、国家資格が施行された後は「公認心理師」と表記される可能性が高くなると考えられます。そうなると、臨床心理士では保険診療にて保険点数を得ることができず、医療機関は公認心理師資格を持つ人を雇わなければ、心理検査などの保険点数を算定できないことになります。・公的機関で働く場合決定事項ではありませんが、公的機関においても、国家資格という明確な基準ができることによって、公認心理師を持っていることが雇入れの要件となる可能性が高いのではないかと考えられます。スクールカウンセラーなど地方で心理職の人手が足りていない現状もあり、臨床心理士資格のみでも活躍できる場はたくさんあります。ですが、様々な可能性を考え、心理職として困っている人へよりよい支援を行うためにも、両方の資格を持っていて損するようなことはないといえるでしょう。公認心理師法の施行日時点で、すでに臨床心理士資格を持っている人の中には、特例措置に当てはまり、一部科目免除で公認心理師試験を受験できる人がいます。施行日の時点で、すでに仕事で公認心理師の専門業務とされる業務をしていて、かつ以下の2つに当てはまる人1.文部科学大臣、厚生労働大臣が指定した講習会を修了した人2.文部科学省令・厚生労働省令で定める施設において、公認心理師業務とされることを5年以上行った人大学や大学院に通い直すことなく、これまでの自分のキャリアを活かして国家資格を取得できるため、臨床心理士でご活躍されている方は、是非公認心理師の取得を目指してみてはいかがでしょうか。まとめ出典 : 公認心理師は、新設された心理職の国家資格です。2017年9月15日までに施行される予定になっていて、第1回国家試験は、2018年までに実施する予定と発表されています。国家資格としての公認心理師は、広い領域で働くことのできる汎用性の高い資格です。しかし仕事の独占部分は持たない名称独占資格であるために、その仕事は一つひとつがどんな時にどんな所で、どのような役割において役に立てるのかを的確に認識して取り組むことがより一層必要になっていくと思われます。資格取得を目指している人にとっては、特別経過措置があったり、他の心理職と似ていたりと複雑に感じるところもあると思います。未確定な要素も多いですが、現段階での決定事項の情報収集に参考にしていただればと思います。施行が2017年の9月ということもあり、随時最新情報が更新されていくことが予想されます。今後も最新情報を追って資格取得を目指していきましょう。参考:厚生労働省「公認心理師」参考:浅井伸彦「あたらしいこころの国家資格「公認心理師」になるには’16~’17年版
2017年08月09日NHK「あさイチ」シリーズ発達障害“ほかの子と違う?”子育ての悩みNHKが1年を通してさまざまな番組で、発達障害の多様な姿を伝えていく「発達障害プロジェクト」7/24(月)にも「あさイチ」で特集が放送されました。今回のテーマは、「“ほかの子と違う?”子育ての悩み」朝の番組で、発達障害のある子どもの子育てを取り扱ったことから、特に保護者の方々の視聴・感想が多かった様子です。発達ナビ編集部でもTwitterで番組の内容を実況し、視聴していた方々の感想もまとめました。以下の、Twitter「モーメント」機能によるまとめをご覧ください。「あさイチ」シリーズ発達障害“ほかの子と違う?”子育ての悩みワガママと発達障害の境界線は…?番組で投げかけられた問いと、視聴者の声今回の番組では、発達障害のある小学生の子どもが二人いるご家庭が取材されました。小学6年生の女の子が、学校から帰って来た場面。直前までお友達とおしゃべりしていた内容が心に残って、なかなか気持ちや行動の切り替えをすることができない、結果、宿題を始めるまでに50分もかかったという様子が映されます。お子さんの発達に違和感を感じたのは3歳児の頃。癇癪が激しく周囲に相談したが、その時は周囲から「大丈夫だよ」と言われるだけで、お母さんはギャップに苦しんだそうです。その後4歳児になったとき病院を受診、発達障害と診断されました。お子さんが「宿題をなかなかやろうとしない」「学校に行きたがらない」といった状況や悩み自体は、子育てしているご家庭なら大抵、一度は直面することかもしれません。ですが、発達障害のあるお子さんの場合、気持ちや行動の切り替えの難しさ、困りごとが起こる頻度や程度には大きな差があり、なかなか簡単には困りごとは解消されません。番組で映されるお子さんとお母さんのやり取りから、診断されてから今に至るまでの日々、積み重ねて来た工夫や理解、お子さんの成長の足跡も感じられます。それでもやはり、思うようにいかなくて、パニックや癇癪を起こしてしまうこともある。同じく発達障害のあるお子さんを育てる保護者の方や、ご自身も幼少期に似たような状態になっていたと語る、成人の発達障害当事者の方など、視聴者の方々から共感の声が寄せられていました。一方、スタジオゲストの方からは、「これが単なるワガママなのか、発達障害によるものなのか、わからない」という意見も出てきました。ワガママと障害はどう違うのか。そんな疑問に対して、Twitter上でも視聴者のさまざまな声が寄せられます。番組中でも、一見して誰にでも起こるような困りごとでも、発達障害の場合は、生活に支障がでるぐらい、程度や頻度が大きいという説明がなされていました。ですが、程度や頻度は違えど、起こっている症状や困りごと自体は、どんな子どもにも見られうるものであるゆえに、周囲の人からすると一見してその違いはわかりにくいのでしょう。どこまでがワガママで、どこからが障害なのか…発達障害が身近でない人からそのような疑問が呈されること自体は、無理もないことかもしれません。また、性質や程度の違うさまざまな凸凹のある人々が、連続体(スペクトラム)のように存在していると言われる発達障害それ自体の特性からも、明確な線引きをすることは非常に難しいと言えます。目に見えにくい、わかりにくい障害としての発達障害の性質を示すようなエピソードだったように思います。こうしたジレンマに対して、具体的にはどのように対処すれば良いのか。番組のゲストコメンテーターとして出演された、鳥取大学大学院の井上雅彦教授のコメントがヒントとなります。わがままと障害の線引きはどこかと線引きすることは、厳密には難しい。それよりも大切なのは、周りがどういう風に対応して工夫すれば本人が頑張れるようになるのか、という観点だと井上先生は語ります。線引きをすること自体を目的としても、議論にキリをつけることは難しいですが、その子が何に困っていて、周囲の人たちには何ができるのかと、個別具体的な対応・行動をベースに考えることができれば、発達障害かどうかに関わらず、どんな子どもにとっても有効な困りごと解決のアプローチが見つけられるはずです。番組の後半には、下のような声も寄せられました。どんな状況であれ、お子さんも、親御さんも、それぞれのありのままを受け止めて認めて合うことを願う声です。あさイチ出演、古山さんより保護者の方々へのメッセージ最後に、今回の番組のVTRに出演された古山さんからのメッセージをご紹介します。番組終了後、発達ナビ編集部宛にご連絡をいただき、いま、子育てに頑張っている保護者の方々へ伝えたい思いを語ってくださいました。Upload By 発達ナビ編集部「7月24日のあさイチで取り上げて受けていただいた、古山です観ていただいた皆様、本当に本当にありがとうございます井上先生はじめ、スタジオの皆様が沢山協力して下さり、短い時間でしたが、濃い内容になっていたと思います放送後も沢山の反響をいただき驚いています発達障害の子育てをしているママの沢山の方が涙を流しながら共感してくださったメッセージをいただき、勇気を出して良かったと思っています我が子の姿をさらけ出すことに抵抗がなかったわけではありませんその中で取材を受けた理由は、育児に悩んでいるママに伝えたい想いがあったからです毎日毎日、育児に行き詰まり悩んでいるかもしれません発達障害の子育ては育児上級者コースを受講しちゃったと私は捉えていますだから、もう、毎日100点は目指さないでください今日が20点だった日も落ち込んだり自分を責めたりしないで20点だったなら次の日60点以上を目指せばいい一週間で平均60点取れたら、花マルだから、40点が続いたらお休みの日に80点目指せばいいんですそれだって、1人で頑張らないで家族総出でかき集めたっていいんですあ、失敗した、言いすぎたって時は、素直に謝っちゃえばいいんですママが悪かったです、言い直すからさっきの言葉、消しゴムで消して欲しいっていま、悩んでいるママたち毎日、育児に奮闘していると一人で闘っている気持ちになるかもしれません誰にもカミングアウト出来ず誰にも共感してもらえず苦しくて寂しくて辛い毎日を過ごしているかもしれません私もそんな風な光の見えないトンネルの中にいた経験がありますでも少し勇気を出して周りを見てみてくださいあなたには必ず味方がいるはずですあなたは毎日毎日、子供に向き合い悩みながら色々なことを選択していることでしょうもしかしたら世間一般的には間違いかもしれない選択をしていることもあるかもしれません私自身が、子供達に学校以外の場所に行かせることを決めたように…でもあなたが真剣に子供達の幸せを想いながら出した選択ならたとえ、間違いかもしれない選択だとしてもあなたの決めたことなら応援してくれる人がいるはずです私にとっての実母のように味方がいればたとえ一緒に生活していなくても頑張れるチカラになります勇気を出してみてくださいまたもしも味方がみつからなくても覚えていてくださいあなたが真剣に子供達と向き合い孤独と闘いながら子育てしているとき同じ空の下で私も同じように過ごしていますあなたが今日も上手く対応してやれなかったと子供達の寝顔を見ながら涙しているとき同じ空の下で私も同じように涙していますあなたが真剣に子供達の幸せを想いながら頑張っているなら私はあなたの味方ですあなたは一人ではありませんつらいときくるしいとき良かったら私を思い出してくださいあなたとお子様達の幸せを心から願っています」
2017年08月07日長瀬智也さんの20年ぶりのラブストーリーとして注目を集めたドラマ『ごめん、愛してる』(TBS系)。幼い頃、母親に捨てられ裏社会で生きてきた律(長瀬さん)はある日、事件に巻き込まれ、命がいつ尽きるともわからないケガを負います。最期に親孝行をしたいと実の母を探すのですが、なんと母親は息子のサトル(坂口健太郎さん)と幸せに暮らしていて…。自分と2人との落差に愕然とした律は、復讐することを心に誓います。■愛情の逆は憎しみ?サトルの幼なじみ・凜華(吉岡里帆さん)は彼に想いを寄せていましたが、サトルは別の女性に恋していました。ひょんなことから凜華と知り合った律は、彼女を通して母とサトルに近づきます。最初は利用するだけだったはずの凜華の存在が、律の中でだんだん大きくなっていき、凜華もまた律に惹かれていきます。律は捨てられたとはいえ、母親に対して深い思慕の念を抱いていました。だからこそ、自分ではなくサトルを愛する様子に深く傷つき、復讐心を宿すことになったのです。何もこれは、親子の間柄にとどまる話ではありません。手ひどくフラれたり、裏切られたり、そういった出来事を通して心が傷つき、黒い感情を抱くのは男女の恋愛にも起こり得ることです。愛情の反対は憎しみなのでしょうか?それとも…。そのあたりを、今回、心理学に基づいて解説していきます。■「愛情がある」ってどういうこと?そもそも「愛情がある」とは、どのような状態でしょうか。それは関心や興味といった気持ちのベクトルが、相手に向いている状態を指します。お互いに気持ちのベクトルが向き合っていて、2人の間に「障害」がなければ、そのカップルは恋愛感情で結ばれることになるのです。ちなみに「障害」とは、「他に伴侶がいる」とか「友達の恋人である」というような、関係の発展をセーブする要素のこと。「障害」があると、その男女は友情でつながり合うことになります。■愛情と憎しみの関係では、相手に対して「憎しみを抱いている」とは、どのような状態なのでしょうか。好意と憎しみは一見すると真逆に思えますが、憎んでも、気持ちの矢印は相手に向いたままなんですね。プラスかマイナスかといった感情の質に違いはあるものの、結局のところ、相手に関心や興味が注がれていることに変わりはありません。人の感情にはアンビバレンスな要素があり、相反する感情を同時に持ったり示したりできます。これを「両価感情」と呼びます。つまり人は、鏡の両面のように愛情と憎しみをひとつの感情として同時に抱くことができるのです。愛情に起因した憎しみを抱くというのは、要は感情が裏返しになっているだけで、強い愛情があることに変わりはないということになります。■愛情の反対は?では「愛情がある」の反対とは、どのような状態なのでしょうか。それは、気持ちのベクトルがまったく相手に向いてない状態です。つまり「無関心」ですね。相手がいようがいまいが、自分にとって関係ない。その存在によって、心が大きく動かされることもない。そういった状態こそ、「愛情が枯渇した状態」といえるでしょう。■まとめ愛情の反対は何か、ご理解いただけましたでしょうか。まれに、思い出すこともなかった元恋人にたまたま出会って気持ちが盛り上がるなど、無関心から愛情が生まれるケースもありますよね。でもこれは、本当に無関心から愛情が生まれているか…判断が難しいところです。思い出に感応して一時的に昔の感情がよみがえり、今も好きなんだと錯覚してしまっているだけ、なんてことも。自分の思いの矢印が、どこを向いているのか。そこを見極めると、自分の本当の気持ちに気づくことができますよ。ライタープロフィール黒木蜜一般企業に勤めながら執筆した作品が日本文学館のオムニバス本に掲載され作家デビュー。古事記への造詣が深く、全国300ヶ所以上の神社紹介記事を執筆。現在、古事記の観点から紹介する神社コラム/恋愛コラムなども手がけている。
2017年08月05日先日、NHK 「あさイチ」 で「発達障害の子育て」についての特集が放送された。番組に出演した古山さん一家は、小6の長女と小3の長男が共に発達障害と診断されている。元気にあいさつしてリポーターを出迎える2人の姿は、障害があるとは思えないほどだが、3日間生活に密着しているうちに、「あれ?」と思うことが見えてくる。古山家のお母さんは、子どもとのコミュニケーションに、言葉ではなく筆談でそっと気持ちを伝えたり、タイマーを使って時間をわかりやすく提示するなど、随所に工夫を凝らしていた。また、お母さんは「長女の子育てに悩んだ末、4歳の時に1人で決めて1人で病院に行った」「旦那は診断を受け入れられず、障害者のレッテルを張ったのは私なのか? と悩んだ」とのこと。それから6年、今も整理できない気持ちを抱えながら、夫婦で手探りの子育てが続いているという。じつは筆者にも、8歳になる娘(定型発達)と4歳の息子(自閉症スペクトラム)がいる。決して感情的にならず、子どもの気持ちを受け止めて待つという古山家のお母さんの姿は、とても学ぶところが多かった。■子どもが発達障害と診断。その時、夫は……?しかし、今回の番組を見ていて私が一番気になったのは、子どもでもお母さんでもない。それは、お父さんの存在だ。当事者として出てくるのはほとんどがお母さんで、お母さんの話を通してからも、お父さんの存在があまり見えてこなかったのが気にかかった。個人的には「夫婦や家庭内の葛藤をもっと掘り下げて聞きたい!」と感じた。今回は放送時間の都合上、残念ながら「お父さんの存在」にはあまりフォーカスされていなかったようだ。次回以降のNHK「あさイチ」特集を含む、 NHK「発達障害」プロジェクト で、このテーマが深堀りされることを期待したい。「お父さんの存在」という問題。じつはこれ、療育ママの間では、よく聞く話である。「夫が子どもの障害を認めてくれない」「旦那が『就学先は絶対普通級』と言っている」「旦那が、幼稚園での発表会の様子を見てショックを受けちゃった…」などなど。他に、義理両親や自分の両親から理解してもらえないという話も時々聞く。「義理母に、あなたがちゃんと躾ければなおると言われた」「母親に、『あなたは甘やかしすぎ。このままじゃわがままな子になる』と注意された」などなど。こういう発言にはイラッとくるけれど、百歩譲って、祖父母世代に発達障害の理解は難しいのかもしれない。自分たちが子育てしていた頃には、きっと聞いたことのない話だろう。でも、同居していたらちょっとキツイ問題だけど、別々に住んでいるならうまくわかすこともできるし、子育てにそれほど強い影響もないはずだ。だが、夫の場合はそうはいかない。夫がきちんと向き合ってくれなければ、お母さんのストレスは2倍、いや数倍にも膨れ上がる。日々の小さなことまでフォローする必要はないと思うが、「ここぞ!」という時には、真剣に向き合ってほしい。意見が衝突することもあるかもしれないが、いざという時に一緒に本気で問題に取り組んでくれる同士(夫)がいると感じられれば、それは、お母さんにとって何よりも大きな心の支えになるはずだ。 ■他の子と比べすぎるお母さんと、比べすぎないお父さんまた、一般的に、子育てはお母さんが主役になることが多いので、同世代の友達と関わることも増えるが、お父さんは集団でのわが子の姿を見る機会がほとんどない。なので、年相応の発達状態を把握しにくく、「男の子なんてこんなもんじゃない?」とか「俺も子どもの頃そうだったよ」などと問題を見逃しがちな面がある。でも、これって悪い面もある反面、意外と良い面もあると思うのだ。わが家の場合は、私が他の子と比べてばかりいて、「普通」であることに縛られ、ふさぎ込んでしまっていた時期があった。だが、夫は、他の子と比べることは一切しなかった。「他の子と同じである必要はまったくない」、「比べることには何の意味もない。もし比べるなら、『他の子と』じゃなく『過去の息子と』」「『普通』の定義って何?」と、落ち込んでいる私を容赦なく詰めて(励まして?)くれたものだ。そんな夫に、「あなたは他の子のことを全然知らないからそんなに呑気なの!」と噛みついたこともあった。だが、文句を言いつつも、わが子のことだけをしっかり考えるという夫のブレない姿勢は、どこかで、とても心強い支えになっていたのだ。また、夫と私では子どもについての見方も全然違ったので、多面的に話し合えることもありがたいことだった。お父さんというポジションは、お母さんより、子育てを冷静かつ客観的に見られる位置にいると思う。お父さんには、ぜひそういう強みも活かしてほしいのだ。■「わがまま」と障害の線引きは?最後に、番組を見ていて、もう一つ気になったことがある。「わがまま」と障害の線引きは? ということだ。番組に出演した古山家のお父さんも、「どこまでが発達障害の特性なのか個性なのか切り分けが難しい」と葛藤していたし、スタジオの出演者たちもそのことについては判断つかないようだった。このことは、私も、よく健常児のママから聞かれるのだが、私も答えがわからずに困っている。専門家の井上雅彦さんも、「(線引きは)厳密には難しい」と言っていたので、かなり悩ましいテーマなのだろう。ただ、重要なのは、障害との線引きにこだわることではなく、「どう工夫すれば(生きにくさを感じている)子どもたちの努力が報われるか?周りがどう対応するか?ということの方に目を向けるべき」(井上雅彦さんコメント)とのこと。そう、私たちの目的は、子どもをカテゴリ分けしたり、レッテルを張ることではない。困っている子どもたちが、いかに生きやすくなるかを考えぬくことなのだ。まちとこ出版社N【発達障害についての記事一覧】▼大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)▼「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年08月01日7月24日(月)、NHK 「あさイチ」 では、子どもの発達障害についての特集が放送される。「あさイチ」からの事前情報によると、「これまで番組に寄せられたメールやファックスの中でも特に多かった、発達障害の子どもを持つ親の悩みに徹底的に向き合う」とのこと。じつは筆者にも、8歳になる娘(定型発達)と4歳の息子(自閉症スペクトラム)がいる。5月の NHKスペシャルの放送 から、ぜひ次回は、発達障害の子どもや子育て中の親にフォーカスした企画を! と思っていたので放送が楽しみだ。■当事者が語る、発達障害の子育てのリアル今回の放送では、3人(うち2人が発達障害)の子育て真っ最中の家庭を訪問し、発達障害の子育ての大変さや、それに対してどう向き合い、対応しているのかを伺っていくのだそう。子どもが診断された時の気持ちや、夫や祖父母、周囲の反応、子どもの将来への不安など、様々な角度から、当事者たちに発達障害の子育てをリアルに語ってもらうそうだ。さらに、番組では、ペアレントメンターなどの親を支援する仕組みなど、当事者の親に役立つ情報も紹介する予定だという。■娘とは桁違いの大変さだった、息子の子育て筆者のケースをお話しよう。定型発達児(娘)と発達障害児(息子)の両者を育ててみて思ったが、その子育ての大変さは、まさに桁違いだった。もちろん娘だって、成長の過程では、当然大変なこともあった。イライラして頭が沸騰しそうになったことだって、多々ある。でも、娘の怒りや泣きのツボはだいたい理解できたし、コミュニケーションもしっかり通じたので、私の理解の範囲内で対処することができた。ところが、息子の場合はまったく違った。指示が通らない。言葉の説明を理解してくれない。急に走り出したと思ったら、今度はテコでも動かないなど、動きが読めない。保育園ではイベント事が大の苦手で、隙あらば逃走。歯磨きやお医者さんの診察では毎回大暴れ…。何より困ったのは、コミュニケーションが通じないこと。変な言い方だが、言語も思考も違う異星人を相手にしているようで、本当にお手上げ状態であった(4歳過ぎた今では、ずいぶんマシになってくれたが)。■3歳で確定。「だから大変って言ったじゃん!」周囲に相談しても、「男の子なんてそんなもの」「上が女の子で楽だったんだよ~」などと言われ、なかなか理解してもらえなかった。だから、3歳で息子が自閉症スペクトラムと診断された時は、もちろんショックではあったが、同時に、「だから大変って言ったじゃん!」と、周囲にちょっと毒づきたいような気持ちも生まれた。今思うと、周囲は私が思い詰めないように、気を使ってくれていただけだろうに…。不健康な考え方に陥っていた当時は、ひねくれたとらえ方しかできなかった。 ■周囲にガードを張っていのは、私の方?息子は1歳半検診から疑いをかけられていたので、宙ぶらりんの期間が長かった分、私にとって診断は、腹をくくる良いきっかけになった。その頃には、この障害についてしっかり勉強して、一生向き合っていこう! という覚悟もできた。また、さまざまな専門書を読んで勉強するうちに、息子の特徴や対処法が少しずつわかるようになり、突飛な行動にも笑えるような余裕も出てきた。周囲にも、息子のことを説明しやすくなった。仲の良い園ママにはすでに話していたが、診断がおりるまでは、息子のことをクラス全体にどう説明したらいいのかわからなかった。保護者会で息子のことを説明した時はちょっと緊張したが、幸い、クラスのママたちからの理解も得られ、温かい言葉もかけてもらった。私の方も、長年抱えた秘密(?)をやっと言えたような気がしてとてもスッキリした。それまでは、保育園のイベントで息子が突飛な行動をするたびに、「他のお母さんにどう思われてるんだろう…」とビクビクしたり。お迎え時、他の子がお母さんと楽しそうにおしゃべりする姿を見るのが辛くて、園から逃げるように帰ったり。そんな日々の連続だった。だが、今にして思うと、周囲に対して変にガードを張っていたのは私の方で、私は、勝手に傷ついていただけだったのかもしれない。■自分の物差しだけに縛られない。意識して視野を広げることこうして振り返ってみると、一番辛かったのは、息子のことを周囲に話せず、ひとりで抱え込んでいた時期だった。そんな状況を変えてくれたのは、オープンにしたことと、やはり人との関わりであった。家族や両祖父母、療育の先生、取材で会った方々、そして、同じ悩みを持つお母さん仲間と繋がれたことはとても大きかった。発達障害の子育ては、子どもに手がかかる分、心も生活も余裕をなくし、周囲が見えにくくなってしまう。自分の偏った考えだけに浸食されて、それがすべてのように感じてしまいがちだ。でも、自分の物差しだけがすべて、なんてことは決してない。物事は、捉えようによって、どうにでも変わるし、世の中には変わった人(?)がいっぱいいて、いろんな考え方がある。発達障害の子育て中は、特に、自分とは違った考えを持つ人に会ったり、新しい考え方を学んだり、自分の視野を広げるという気持ちを、常に意識してもち続けた方が良いと思うのだ。今回の特集に関して、担当ディレクターからは「外からは『見えにくい障害』と言われる発達障害の子育ての苦労や、当事者のリアルな姿や声を伝えることで、少しでも誤解を解いていきたい」という、力強いメッセージをいただいた。また何か新しい発見があるかもしれないと、私も放送を心待ちにしている。・NHK「あさイチ」 シリーズ発達障害 「“ほかの子と違う?”子育ての悩み」 2017年7月24日(月)放送予定 ※内容は変更になる場合があります文:まちとこ出版社N【発達障害についての連載一覧】大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年07月21日臨床発達心理士とは?出典 : 臨床発達心理士とは、人の発達・成長・加齢に寄り添い、発達心理学等の専門的な知識を生かして健やかな育ちを支援する専門家です。また、赤ちゃんからお年寄り、子育て中の保護者や障害のある人など、幅広い世代、状況の人たちを支援対象としていて、人の生涯発達に関する臨床に携わる幅広い専門家に開かれた民間資格です。人は年齢を重ねていくなかで、自分自身や家族関係、友人関係、学校生活や就職などさまざまな悩みや問題に直面します。それらの問題は環境や時間の経過、またその時々の支援の在り方によっても変化していきます。したがって、生涯発達の中で出会うさまざまな問題の解決にあたっては、まず問題を正しく理解し、それに基づいて適切な支援を行う専門家が求められます。そこで誕生したのが「臨床発達心理士」の資格です。現在、「~心理士」「~カウンセラー」などの名がついた心理士の関連資格は70以上にものぼると言われています。そのうち「臨床」という名称を持つ資格はいくつかありますが、「発達」という名前が付いているのは臨床発達心理士だけです。つまり、さまざまな心理職のうち発達を専門とする資格ともいえるでしょう。参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編] 臨床発達心理士わかりやすい資格案内[第3版](金子書房.2017)参考:本郷一夫「臨床発達心理士の専門性と果たすべき役割」臨床発達心理士になるには?出典 : 「臨床発達心理士」資格は、学会連合資格「臨床発達心理士」認定運営機構が認定している民間資格です。臨床発達心理士の資格を取得するには、受験資格を満たしたうえで年に1度、9~12月にかけて行われる資格審査に合格しなければいけません。資格取得までの流れとしては、申請書類の購入、申請手続き、一次審査(書類/筆記/業績等)、二次審査(口述審査)、資格認定といったステップがあります。1. 発達心理学を中心とした心理学諸分野の科学的・理論的な知識2. 人間が実際に発達する場に関する社会的・実践的な知識3. 人間の発達をアセスメントし支援する臨床的な知識・技能これらを習得するための基礎となる学問領域は「発達心理学」または「発達心理学隣接諸科学」です。具体的には発達心理学、その他心理学、教育学、保育学、福祉学、小児科学、医学、看護学、リハビリテーション学、発達障害学、保健体育学、体育心理学、スポーツ健康科学、人間社会学、人間学、児童学、応用人間科学、コミュニケーション学、児童教育学社会学などです。2017年度から資格申請制度が新しくなり、申請タイプが5つにまとめられました。1. 発達心理学隣接諸科学の大学院修士課程在学中または終了後3年未満2. 臨床経験が3年以上あり、かつ発達心理学隣接諸科学の大学院を修了している3. 臨床経験が3年以上あり、かつ発達心理学隣接諸科学の学部を卒業している4. 大学や研究機関で研究職をしている5. 公認心理師を取得している変更点としては以下の2つがあげられます。・国家資格である「公認心理師」資格取得者が申請できること。・「公認心理師」資格が心理学系大学卒業以上を前提としていることから、発達心理学諸科学の大学や、短期大学や専門学校を卒業した人が申請できるタイプを廃したこと。ただし、公認心理師資格は2018年度以降習得可能であるため、経過措置として2019年度までは旧制度での申請も受け付けています。資格申請をするにあたって、自分の受けた教育歴と臨床発達支援に関する実践の経験年数に合わせて、以下に示す申請タイプの中から最も自分にあったタイプを適切に選びましょう。また、資格を取得すると、「日本臨床発達心理士会」に入会するとともに全国に20ある支部のどこかに所属することが義務づけられます。さらに、資格の有効期間は5年で資格更新をすることも義務付けられています。資格更新は、試験ではなく資格取得後に十分な研修を積んだか、高い専門性を保持することに努めたかがポイントに換算され審査されます。出典:資格取得までの流れ|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構出典:資格申請新制度のご案内|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構出典:資格更新ガイドライン|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編]わかりやすい資格案内(金子書房.2017)p18~41臨床発達心理士スーパーバイザーとは、臨床発達心理士になろうとしている人や臨床発達心理士になった人(スーパーバイジー)に対して、スーパービジョン(指導者から教育を受ける過程)を通して支援し、育成する役割を担う人のことです。申請要件は以下の3つになります。1. 臨床発達心理士の有資格者2. 臨床発達心理士資格取得後、5年以上関連する業務・活動を継続3. 臨床発達心理士資格を1回以上更新している出典:臨床発達心理士スーパーバイザーとは|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構臨床発達心理士はどのような人を支援するの?出典 : 臨床発達心理士は赤ちゃんから高齢者までの年代の人を対象として発達を支援する人の資格です。そのため、支援の対象はとても幅広いです。具体的に以下のようなケースが支援の対象となることが多いです。・新生児、乳幼児と保護者・自閉症スペクトラム、知的障害、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥・多動性障害)などの発達障害・知的障害の診断を受けた人・育児不安、虐待、不登校、引きこもりなどの現代的問題を抱える人・「気になる子」、障害の有無/グレーゾーンかの判断に対して悩みを持つ人・社会適応や成人期・老年期の悩みを持つ人臨床発達心理士の活躍の場と具体的な支援出典 : 「臨床発達心理士」資格のある人が特定の職場にいるわけではありません。赤ちゃんから高齢者を対象として発達を支援する人のための資格であることから、資格を持つ人の活躍する場は多岐にわたります。以下では、支援対象の年代別に具体的な職場やどのような仕事をしているのかを紹介していきます。・新生児医療の場:育児不安の解消、愛着形成への援助など・保育所/幼稚園:保育者、保育カウンセラー、特別支援教育コーディネーターとしての業務など・家庭支援センター:親子広場スタッフ、子育て講座の講師、家庭相談スタッフなど・保育巡回相談:主に行政からの委託で保育所、幼稚園を巡回・乳児院/児童養護施設:カウンセリング、セラピーの実施など・保健所/保健センター:妊娠中に両親学級の講師やグループワークのスタッフ、乳幼児健診および発達が気になる子どものフォローなど・小中学校/高校/大学:教師として特別支援教育コーディネーターの業務など・スクールカウンセラー:校内相談業務、保護者支援、校内研修会講師など・教育委員会:教育相談、就職相談等の相談業務、心理検査の実施など・発達支援センター:障害児童やグレーゾーンの子どものアセスメント、相談、療育など・放課後デイサービス:指導員へのコンサルテーション、保護者支援など・学童保育所:指導員へのコンサルテーション、保護者支援など・学童相談室:大学等での学生相談室でのアセスメント・児童相談所:心理判定、相談、指導業務など・特別支援学校:教育のアセスメント、指導評価の実施、保護者支援、教育機関への巡回相談など・特別支援学級/通級指導教室/言葉の教室:教育のアセスメント、教育支援計画作成、校内特別支援コーディネーター業務など・障害者施設/作業所:セラピー、カウンセリング、家族支援など・高齢者施設:カウンセリング、セラピー、心理検査の実施など・企業:企業内相談業務、心理調査など・病院・クリニック(小児科・精神科・診療内科等):患者・保護者へのカウンセリング、患者へのセラピー、心理検査の実施など上記の職種以外に、臨床発達心理士以外の資格を保持しているひとは、職種の幅にも広がりがあります。臨床発達心理士の中には、他の資格や免許も有しながら職務に就いている場合も多いので、純粋に心理職として働いているケースばかりではありません。例えば、家庭裁判所で調査官として仕事をする人、震災時に現場に赴いて支援をする人、研究者として働く人の中にも、臨床発達心理士の資格を生かして仕事をしている人が多くいます。臨床発達心理士の視点を持って、両者の領域で培われた専門性を活かして活動しているのです。しかし、医師免許を有している場合でない限り、臨床発達心理士は医療行為全般(薬を用いた治療や障害かどうかの確定診断をすること)はできません。また医師にかかる場合は、健康保険が適用されますが、臨床心理士に相談する場合は基本的には健康保険が適用されません。参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編]わかりやすい資格案内[第3版](金子書房.2017)p89.90臨床発達心理士による発達障害に対するアセスメント出典 : 有効な支援を行うためには、その問題を解決するために情報を集め、それをもとにその人にあった支援の方法を計画していく必要があります。これをアセスメントと言います。ここでは、一つの例として発達障害の支援計画を立てるための代表的なアセスメントについて具体的に説明していきます。◇対象の支援ニーズに関する情報収集聞き取りや観察によって生育歴や育児についての情報や、発達の経過、現在の行動や状況など日常生活に関する情報を集め、支援ニーズを知ることから始まります。これは、保護者や保育者、家族などと共同で行うことが望ましいです。◇対象を取り巻く環境に関する情報収集園や施設に通っている場合は、それらの環境に関する情報を収集する必要があります。また、家庭環境や地域環境についての情報の収集も、支援を考える際に重要になっていきます。これらの情報をもとに問題の暫定的な把握をしたうえで、発達状態の情報を収集します。◇知能検査知能検査ではおもにIQ(知能指数)の値を指標とすることが多いです。従来は、精神年齢と生活年齢をもとにもとめる比例IQを用いることが多かったですが、最近では、同年代の平均との隔たりをもとにもとめる偏差IQが中心になってきています。知能検査を行う目的は認知発達の水準を科学的・客観的に評価することで、その人の得意分野、不得意分野を分析することです。知能検査の結果からわかるその人の得意、不得意分野から療法の方向性を決定するために使われます。代表的な知能検査に以下のようなものがあります。・ウェクスラー式知能検査・田中ビネー知能検査◇発達検査発達検査では日常生活や対人関係などにおける子どもの発達基準を数値で表したDQ(発達指数)を算出します。子どもが成長していくには、発達段階に適したアプローチが必要になります。そのため、発達段階を客観的に知るための手段として発達検査は使われます。ただし、発達指数の値だけで子どもの発達状態を判断をすることはありません。あくまでものさしの一つであり、発達検査から分かる能力のバランスや日常生活の様子などを総合して子どもの発達状態を把握します。代表的な発達検査には以下のようなものがあります。・新版K式発達検査・乳幼児精神発達診断法◇スクリーニング検査発達障害に関するスクリーニング検査は、どの精密検査を行うべきかの判断や潜在的な発達遅れや発達障害の可能性を検査するために行われます。スクリーニング検査は、たくさんある発達障害のうち、その子どもに当てはまる可能性がある障害を絞り込むためのものです。スクリーニング検査には網羅性が重要視されるため、正確性はそれほど高くはありません。仮に検査で陽性が出たとしても精密検査するかどうかの判断基準になるだけで、発達障害であることが確定するわけではないということに注意が必要です。スクリーニング検査は乳児健康診査、1歳6ヶ月健康診査、3歳児健康診査などの場でも活用されています。代表的なスクリーニング検査には以下のようなものがあります。・STRAW・M-チャート・ADHD-RS・LDI-R・PARS◇行動観察臨床発達心理士は言葉をかけた時の子どもの反応や、話し方、質問を正しく理解しているのかなどのさまざまな反応をできるだけ詳細に観察して、子どもの特徴やくせを見つけようとします。日常場面における観察だけでなく、臨床発達心理士が状況設定した場面における観察も行うこともあります。上記の生活情報と発達状態の情報をふまえて、それぞれの特徴にあった支援計画を立てていきます。本人に対する支援や保護者への支援だけでなく、施設との連携体制を確立させたり、担当保育者などへの支援計画を立てたりすることもあります。参考:藤崎 真知代「育児・保育現場での発達とその支援 (シリーズ臨床発達心理学) 」(ミネルヴァ書房.2002)p66-70臨床発達心理士と臨床心理士との違いは?出典 : これまでの説明にあるとおり、「臨床発達心理士」とは、赤ちゃんからお年寄り、子育て中の保護者や障害のある人など、幅広い世代、状況の人たちの発達・成長・加齢に寄り添い、人の健やかな育ちを支援する専門家です。それに対して、「臨床心理士」とは、同じ心理系の民間資格ですが、不登校や二次障害、精神障害などのこころの問題をかかえた人に対する心理療法や、こころの問題を予防するための研究にもとづいて、人のこころにアプローチする専門家です。つまり、得意とする支援対象やケースに違いがあります。しかし、どちらの資格も、医療・教育・保健・福祉分野においては活躍の場が同じこともあり、両方の資格を取得することでより広い視点でより広い職域において活躍することができます。支援を受ける人は、一人ひとりの発達の特徴に寄り添った支援をしてくれる専門家を見つけることが大切になってきます。出典:臨床心理士とは|日本臨床心理士資格認定協会臨床発達心理士と公認心理師出典 : いままでは、心理学系の国家資格はありませんでした。そのため近年、心理学系の国家資格をつくろうとする動きがありました。その結果、公認心理師法という法律が平成27年9月9日に成立して、9月16日に公布されました。公認心理師法は、公認心理師という国家資格を定めるとともに、国民の心の健康を増進させていくことを目的にした法律です。公認心理師法の大部分は公布の日から2年以内に施行されることになっています。厚生労働省によれば、平成29年9月15日までに施行される予定になっています。また、第1回国家試験は、平成30年までに実施する予定と発表されています。公認心理師はさまざまな分野にまたがる領域横断的な汎用性のある資格です。それに対して、臨床発達心理士は、臨床発達心理学・発達臨床支援の専門性を有する資格です。公認心理師の資格取得には以下のいずれかに該当する必要があります。1. 「公認心理師になるために必要な科目」を心理学関係の大学と大学院を出て修了する2. 大学で公認心理師になるために必要な科目を修めて卒業し、文部科学省令・厚生労働省令で定める施設で、規定の期間以上心理関係の仕事に従事するまた、公認心理師の職域としては、保健医療、福祉、教育、司法・法務・警察、産業・労働の5領域があげられています。この資格は、医師免許や法曹資格同様に、国家試験に合格し一度取得してしまえば終身その身分が保障されるという考えも多く、臨床発達心理士をはじめとした心理系の取得と併せて資格を取得する人が多くなることが予想されています。参考:公認心理師について|厚生労働省参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編]わかりやすい資格案内[第3版](金子書房.2017)p10-15まとめ出典 : 臨床発達心理士とは、人の発達・成長・加齢に寄り添い、発達心理学などの専門的な知識を生かして幅広い年代、状況の人たちの健やかな育ちを支援する専門家です。発達支援を必要としている方の困りごとにあった相談先や、サポートを受けられる場の選択肢のひとつとして、臨床発達心理士があるということを知っていただき、よりよい支援を受けられるきっかけになれば幸いです。また、資格制度の変更があったり、新しく公認心理師という国家資格が認定されたりと、手続きや選択が複雑に感じられますが、だからこそ今後より一層発達領域の専門資格として、臨床発達心理士の技能がとても重要な役割を担います。発達支援の仕事をしたいと考えている方が、その専門性の高さを活かしてご活躍されることを願います。
2017年07月12日「正しい発達障害理解」を追求しつづける当事者たちの戦いUpload By 宇樹義子ここ数年、世間での発達障害についての認知は高まりつづけているように感じる。今年に入るとついにNHKが1年がかりの発達障害特集を開始し、当事者界隈はたいそうざわついた。NHKは「とにかく当事者の声を届けたい」という熱意を前面に出していたので、私も本気になった。特に第1弾のNHKスペシャル生放送時には、ブログで事前の情報記事を用意し、当日はTwitterで実況。後日、感想をやはりブログでまとめた。そもそもテレビが苦手な私が、仕事そっちのけでかじりつくようにテレビを見つめ、仲間といっしょに、放送される内容の正誤やニュアンスについてTwitterで意見する。「えっ? 正しくは『自閉症スペクトラム』だよねえ?」「これは誤解を招くからやめてほしいなあ…」「取り上げられた人たちばかりが当事者なわけではない。もっとこういうケースにもフォーカスを!」タイムライン上をいつ終わるともしれず流れ続ける、「もっと完璧な、正しい発達障害理解を!」という叫び。よく考えたらあたりまえだけど、発達障害者についてであろうがなかろうが、私が100%満足できる番組なんて世の中に存在するわけないんだし、仲間たちにとってもそれはそうだったと思う。私自身も皆も、どこか「どこでやめたらいいのか」「こうする代わりにどうしたらいいのか」をつかめずに困っているようにも思えた。「敵」と戦った日々と、「敵」と手をつなぐまでの日々Upload By 宇樹義子そこからの私は、いま振り返ってもずいぶん必死だったと思う。テレビやネットの発達障害特集の内容に誤りがあれば指摘し、親や当事者の不安につけ込むニセ医学を批判し、成人発達障害当事者の生きづらさを理解してくれない社会にブログで警鐘を鳴らし…そうやって毎日、戦っていた。「自分と同じような思いをする人たちを一人でも減らしたい」。先に述べた思いの通り、これまで発信してきたこと自体は後悔していない。だけど、そうして戦いつづけている間、いつもどこか虚しさのようなものを感じていた。…いまここで告白すると、この記事を書かせてもらっているLITALICO(りたりこ)も大嫌いだった。過去に、LITALICOが運営する就労移行支援「LITALICOワークス」を利用したことがある。結論としては、当時の私が納得できる支援は受けられず、私の心には大きな傷が残った。ここ「LITALICO発達ナビ」でも、サイト立ち上げ当初にライターに立候補したものの断られたことがある。保護者向けのコンテンツが多く、私たち成人発達障害当事者が無視されているような気がして、悔しかった。それで私はますます、LITALICOに負けるものかと、たったひとりでの「戦い」に必死になった。「絶対に発達ナビよりもいいコンテンツを作ってやる。彼らが見捨てた成人当事者の益となるコンテンツを」… そんな気持ちを原動力に猛然と仕事した。だけどそのうち、そんなやりかたも限界だと思った。きっかけは、NHKの発達障害特集だ。Upload By 宇樹義子私が必死にNHKの番組を実況しているとき、当然発達ナビも大きなリソースを注いで実況していた。今や発達ナビは、世間の発達障害者へのイメージを左右するような影響力と、それを実現できる経済的人的資源を持ったメディアに成長していた。発信するコンテンツも、大人の発達障害者をもカバーするようになってきており、質も日々上がってきている。私がずっと望んできた、発達障害者が一般の人たちに広く理解される大きなチャンス。私がこの期に及んで発達ナビに対してそっぽを向き続けるなんて、バカバカしいし不自然じゃないか。もうこんなことはやめよう…ある夜突然、発達ナビの編集長の鈴木さんに連絡をとった。そしていま、こうしてここで書いている。たったひとりで「発達障害者代表」の看板を背負う必要なんてない以上は、「いち成人発達障害当事者としての宇樹義子」のごくごく個人的な物語だ。けれど、私と同じように、自分が「マイノリティ」であることへの意識が大きくなりすぎて、かえって自分を追い詰めたり、苦しめたりしている発達障害当事者は少なくないんじゃないかと思う。だからこそ伝えたい。仮にあなたが発達障害当事者であったとしても、たったひとりで当事者全体を「代表」して戦う必要なんてないんだ、と。社会の発達障害への関心が高まったことはいいことなんだと思う。誰もが生きやすい社会のために当事者として声を上げること、誤った情報に対して批判を加えていくことにも、ある程度の範囲内であれば大きな意味がある。けれど、最近までの私がそうだったように、自分自身がその狂乱に飲み込まれ、もしかすると手をつなぐことができるかもしれなかった人たちを「敵」として、24時間戦闘状態に陥ってしまっては本末転倒だ。Upload By 宇樹義子誰かが何かの属性の看板を背負い、「お前はここが違うから仲間じゃない」「お前にわかってもらえるはずがない」などと声を枯らして叫びつづけることは、皮肉にもコミュニティをバラバラにしていってしまうことがある。なぜって私たちは、何かの属性を持つ者たちである前に、バラバラな違った個人の集まりだから。戦闘的になって違った属性を指摘しつづけていったら、最後には誰も残らなくなってしまう。たまねぎの「皮」を剥き続けたら最後には消えてしまうのと同じだ。言葉づかいの丁寧さの問題じゃない。発信に向かうときの心の態度の問題だ。私はこの点で、長いこと間違ったことをしていた、と思う。言葉は丁寧なものの、私は間違いなく「看板を背負って戦っていた」からだ。私がこよなく尊敬する精神科医・臨床心理士であり、日本におけるPTSD治療の第一人者である白川美也子先生の本がある。この本ではまず、トラウマを抱えた人は「3つのF」と呼ばれる症状を示すようになると説明される。・Fight(戦う)・Flight(逃げる)・Freeze(固まる)Fight(戦う)の項ではこんな説明がされている。私は上のくだりを読んだとき、ああ、これは私と仲間たちにそっくりだと思い、ひとしきり涙が止められなかった。そして、そのあとに出てくるこんなメッセージに、とても楽になった。やがて自分の苦しさをそっちのけにして、同じような被害に遭う人をなくすため、果敢に立ち上がり、戦い始めます。その戦いによって自分の身近にいる人を暴力や虐待から守ることができたとしても、世界にはたくさんの傷ついた女性や子どもたちがいて苦しんでいることに気づきます。戦いには終わりがありません。大切なことは、被害者にも加害者にも、そしてそれを傍観する人にもならない、三角形の3つの角の真ん中にしっかりと立つことなんだよ回復の過程において、あなたが誰かに過去のトラウマ体験を語ることだけが、誰かを救うメッセージになるのではありません。それを生き延びたあなたの身体の動きや声や、あなたの創る詩や奏でる音楽や描く絵が、人に何かを伝えます。あなたが生きているだけで本当に十分なのです。私たち発達障害者は、生きてきた中でたぶん、人よりも少し多くの傷を抱えてきた。だから、つい戦いに身を投じてしまうこともある。もちろん、それは本当に切実な情熱と願いのこもった行動だ。だけど、もしそれがつらいとか、虚しいとか、疲れたとか思う瞬間があるのなら… ときどき、ゴールがあまりに遠く感じられたり、ますますゴールから遠ざかっていくような気がするのなら…私は、あなたは、重たい戦士の鎧を脱いでもいいはずだ。Upload By 宇樹義子そして、どこかに傷を抱え、それをなんとか乗りこなしている「ひとりの人間」として、もっと自由に、軽やかに生きたとき、きっといつか、私やあなたが、そして仲間たちが願った「ゴール」が近づいてくるんだと思う。
2017年07月10日こんにちは、ママライターの馬場じむこです。発達障害と診断された子どもがいる場合、小児精神医や臨床心理士といった心理の専門家に相談していくことも多いでしょう。しかし、専門家だけではなく、発達障害児の親という、同じような立場の方の話を聞いて参考にしたい場合、『ペアレントメンター』と呼ばれる存在に相談するという方法があります。今回は、東京都足立区から委託されてペアレントメンターの相談事業をしている、『一般社団法人ねっとワーキング』理事の町田彰秀さんにお話を伺いました。●“ペアレントメンター”とは同じような立場の経験者『ペアレントメンターとは、発達障害の子どもの養育に、迷いや不安を感じながら携わってきた経験者です。これまでの経験を活かして発達障害の子どもを持つ親の相談にのっています。カウンセラーとの違いは、専門家としての助言やアドバイスはしない、当事者の親の立ち位置で地域的に寄り添っていける ところです。また、足立区の事業のペアレントメンターは日本ペアレントメンター研究会の養成講座を受講している人という前提があります』(町田さん)子どもと接する上で親としての不安や迷いに沿ってほしいとき、また専門家や公的機関の相談先がわからない、相談してもしっくりいかないときにどうすればよいかという場合も意見をいただけるようです。私は子育てで悩んだとき、一番頼りになったのは自分の子どもよりも年齢が高いお子さんをもつ人からのアドバイスです。少し先を進んでいるので、道の案内人のように、学校の先生とはどう話していったらよいか、どのような専門機関に相談したらよいかと意見をもらい、とても頼りになりました。●ペアレントメンターに相談するにはどこに行けばいい?『自治体の事業でやっているところが増えていますので、まずは、お住まい近くの発達障害者支援センターに問い合わせてみる のがよいでしょう。もし、お住いの自治体に制度がなければ、足立区の例を出して、区議などに働きかけてこういった制度を作ってもらうのもおすすめです』(町田さん)厚生労働省で、発達障害支援の重要な政策と位置づけられて以来、全国の自治体で養成講座なども開かれ、ネットで“ペアレントメンター”と検索してみると、全国的にさまざまな場所で展開されている様子が見られます。ペアレントメンターに相談したいかたは、ぜひネットで検索、もしくは発達障害者支援センターなどに問い合わせをして調べてみてください。----------親だからこそ自分のこと以上に、子どものことに対して迷い、受け入れることに時間がかかる気持ちもあるでしょう。そんなとき、同じ立場だからこそ、よく理解し、気持ちに沿ってくれる人がいると孤独な子育てにならずにすみますよね。【取材協力/町田彰秀氏】障害特性のある子どもを持つ家族や養育者が地域でネットワークを築き、同じく障害特性のある子どもを持つ家族や養育者の相談などを行っている、一般社団法人ねっとワーキング理事。・一般社団法人ねっとワーキング●ライター/馬場じむこ(書評ブロガー)●モデル/藤本順子(風悟くん)
2017年05月31日神経発達症とは?出典 : 神経発達症(neurodevelopmental disorder)は、情動・学習能力・自己コントロール・記憶といった様々な知的活動に影響する、脳機能の障害です。この言葉は、米国精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)に採用されたことで、広く知られるようになりました。『DSM-5』の日本語版では、正式には「神経発達症群/神経発達障害群(neurodevelopmental disorders)」という形で使われています。「神経発達症」と「神経発達障害」が併記されている歴史的経緯については、「DSM-5」の記事をご覧ください。以下、この記事では「神経発達症」で統一します。神経発達症には、いくつかの障害が含まれます。『DSM-5』では、以下のような障害がまとめて神経発達症と呼ばれています。・知的能力障害群(知的障害)・コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群(吃音など)・自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害・注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害・限局性学習症/限局性学習障害(ディスレクシアなど、いわゆる「学習障害」)・運動症群/運動障害群(発達性協調運動障害、チックなど)・他の神経発達症群/他の神経発達障害群どうして、これらの障害がすべて「神経発達症」という一つの障害にまとめられるのでしょうか。それは、これらの障害は別々のものではなく、神経の発達阻害という共通の原因を持つ連続的な障害なのだという考え方に基づいています。「神経発達症」という言葉は、そうした連続的な障害の全体を指すための言葉です。近年、この考え方が広まりつつあります。神経発達症と発達障害は、どう違うの?出典 : これまで、自閉症スペクトラム障害・学習障害・ADHDをはじめとするいくつかの障害の総称として「発達障害」という言葉が使われてきました。発達障害という言葉も、神経発達症と同じように、いくつかの障害を統一的に理解するための言葉です。それでは、神経発達症はこれまでの発達障害と何が違うのでしょうか。結論から言えば、「神経発達症」は「発達障害」よりも広い範囲を指す言葉だと言ってよいでしょう。日本での「発達障害」の定義として、「発達障害者支援法」の中で使われている定義がよく知られています。それによると、発達障害とは「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」です。発達障害者支援法(2004年)|文部科学省「政令で定めるもの」とは、ここでリストアップされたもの以外の「心理的発達の障害並びに行動及び情緒の障害」です。発達障害者支援法施行規則(2007年) |厚生労働省「発達障害」という言葉の範囲は、それほどはっきりと決まっているわけではありません。実際には、リストアップされなかった障害も、必要に応じて「発達障害」に含められてきました。こうした多くの障害を、発生原因に注目してグループ化しなおすために持ち出されたのが「神経発達症」という言葉です。神経発達症の原因は?出典 : 障害と神経発達を関連付ける見方そのものは、『DSM-5』(2013年)で初めて現れたわけではありません。精神医学の中では、一部の障害が中枢神経系の発達阻害に関連しているという仮説が以前から持たれており、研究が進められてきました。近年とりわけ注目されているのは、神経発達症と染色体との関連です。たとえば、“Handbook of Neurodevelopmental and Genetic Disorders in Children”(編集部訳題『児童期の神経発達症・遺伝子疾患ハンドブック』)(初版1999年)では、個々の障害(自閉症やターナー症候群など、約20件)について、それぞれ神経の発達阻害をもたらす遺伝学的性質に関する研究がまとめられています。 Goldstein and Cecil R. Reynolds, eds., Handbook of Neurodevelopmental and Genetic Disorders in Children (New York: Guilford, 1999).こうした研究に関連して、昨年、大阪大学が発表したプレスリリースが話題になりました。この研究では、ある染色体の重複が多動に関連するということを、マウスを用いた実験で示すことに成功しました。もちろんこの研究は、神経発達症全体の原因を完全に明らかにするものではありません。しかし、原因の一部を明らかにする研究を積み重ねることによって、原因全体の解明に一歩ずつ近づいているということは確かです。 Fujitani, S. Zhang, R. Fujiki, Y. Fujihara, and T. Yamashita, ’A chromosome 16p13.11 microduplication causes hyperactivity through dysregulation of miR-484/protocadherin-19 signaling’, Molecular Psychiatry 22 (2017): 364–74.神経発達障害群の染色体重複による発症の機序を解明|RESOU Research at Osaka Universityところで、障害の原因を遺伝学的なものに求める立場は、歴史的にずっと中心的だったわけではありません。過去には、「子どもの発達障害は、親の育て方が悪いせいだ」という立場が主流だった時期もありました。自閉症研究のパイオニアであるレオ・カナーも、はじめは自閉症の原因が母親の育て方にあると考えていました。すなわち、母親が子どもに愛情を十分に注げなかったとき、子どもの情緒的発達に悪影響が出て自閉症になる、という見方でした。この考え方は「冷蔵庫マザー」と言う象徴的な言葉とともに広まりました。 Kanner, ‘Autistic Disturbances of Affective Contact’, Nervous Child 2 (1943): 217–50.「冷蔵庫マザー」論は、およそ1970年代までは一世を風靡していました。このことにより、自閉症の親たちは長く批判され責められてきました。しかし、その後はこの見方は多くの専門家によって否定され、またカナー自身もこの見方を自ら放棄しました。そして、自閉症をはじめとする障害の原因は、親子の情緒的関係にあるのではなく、子どもの神経発達のありかた(さらには、その発達を方向づける遺伝学的性質)にあるのではないかという考えが広まり、現在の研究につながっています。DSM-5でも、おおむねこの考え方が採用されています。実際の診断・臨床の場面における神経発達症出典 : 実際の診断では、「自閉症スペクトラム障害」や「限局性学習障害」といった言葉が使われていて、「神経発達症」よりも細かい診断がなされます。これは、「神経発達症」という言葉でいくつかの障害をまとめるという考え方がまだ新しく、今まで使われてきた言葉が浸透しているためであると思われます。しかし、2013年に『DSM-5』が発表されてから数年が経ち、「神経発達症」という言葉も徐々に広まりつつあります。これから先は、診断の中で「神経発達症」が使われていくかもしれません。古荘純一、磯崎祐介『神経発達症(発達障害)と思春期・青年期――「受容と共感」から「傾聴と共有」へ』明石書店、2014年。もともと、『DSM-5』は精神科医の診断マニュアルとして使われています。また、精神科医が実際に使うことを通して問題点を発見し、改訂することによって、精神医学の発展が目指されています。「神経発達症」のような言葉を使って障害をグループ分けすることには、精神医学を単なる精神科医の「カン」ではない体系的なものにする上で大きな意味があります。いくつかの障害に共通点があることがわかれば、それに対するアプローチを考えるにあたって大きなヒントになります。たとえば、自閉症スペクトラム障害は本人のやる気の問題なのか、それとも親の育て方の問題なのか、はたまた染色体の状態に関係しているのか――これがわかれば、障害のある子どもに対して周囲が何をできるのか、あるいは何をできないのかを知ることができます。神経発達症は治るの?出典 : 神経発達症には、根本的な治療法はありません。近年の研究によって、神経の発達阻害を引き起こす因子がいくつか特定されつつあります。しかし、これは神経発達症の原因の一部がわかるにすぎません。また、研究のレベルでわかったことが臨床の現場に応用されるまでには、さらに多くの研究が必要になります。「治す」ことは難しいですが、症状や困難を軽くすることはできます。その具体例として、ここでは3つの例を挙げます。1.環境調整本人の能力や特性に合わせて、接し方・環境・ルール・課題を変えることができれば、障害のある子どもが感じる困難は軽くなります。これまでも行われてきた「合理的配慮」は、神経発達症のある子どもにももちろん有効でしょう。「神経発達症」には様々な障害が含まれていますので、合理的配慮を考える上では、一人ひとりの特性に合わせるということが一層重要になります。2.療育とトレーニング本人の特性に合わせてトレーニングを行い、子どもが認知や行動についての能力を習得できれば、社会生活において感じる困難が軽減されます。この療育についても、今まで行なわれてきたものが同じく有効でしょう。3.薬物療法神経発達症に関連するいくつかの症状は、投薬によって症状を抑えることができます。重要なことは、投薬によって神経発達症そのものを治療できるわけではなく、症状を緩和することと、症状によって生じる不利益を避けることを狙っているということです。投薬による症状緩和についても、これまでと同じように、主治医の先生によく相談することをおすすめします。ここまで見てわかるように、神経発達症に対する向き合い方は、基本的にこれまでの発達障害と大きく変わりません。変わったのは、精神科医が使う診断マニュアル(DSM-5)で使われる名称にすぎません。神経発達症という名前がつくことそれ自体で、障害のある子どもたちの症状が変わったり、困りごとが軽くなったり重くなったりするわけではありません。このことは、神経発達症について考える上で、非常に重要な点です。おわりに出典 : 「神経発達症」という耳慣れない言葉に戸惑っている方は、少なくないでしょう。たとえば、お子さんに自閉症スペクトラム障害があって、そのお子さんの障害を説明するとき、「自閉症スペクトラム障害」「発達障害」「神経発達症」をどのように使い分ければ良いのでしょうか?重要なことは、障害の名前が変わっても、子どもたちの症状や困りごとまで変わるわけではないということです。とりわけ、発達障害は一人ひとり症状が少しずつ違うということが、これまで知られてきました。神経発達症という言葉が登場しても、そのことは同じです。一人ひとりの特性と能力に合わせたサポートが求められます。精神医学はまさに発展の途上にあり、今後も多くの言葉が新たに広まることが予想されます。その新しい専門用語は、実際のサポートにあまり関係ない場合もあれば、サポートのあり方を大きく変える場合もあるでしょう。簡単ではありませんが、こうした見極めが大切です。
2017年05月30日『恋がヘタでも生きてます』(日テレ系)が、佳境を迎えていますね。主人公の茅ヶ崎美沙は、男勝りでバリバリ仕事をこなすキャリアウーマン。狙っていた社長の座を奪われ、新社長の雄島佳介を憎々しく思っていました。当の佳介は、ちょっと強引なくらい情熱的に美沙にアプローチ。さらに「君一人でそんなに頑張らなくていい」と優しく気遣ってくれます。振り回されながらもだんだんと、美沙は佳介に惹かれていき…。◆人は相反する性質を持っている美沙の同居人・榎田千尋は、美沙と正反対のお嬢様気質。婚約者と自分の後輩が浮気していることを知り、ショックを受けるものの「もう二度と浮気しない」という言葉を信じて許します。でも、自分の性的魅力に自信を失い、自信を取り戻すために浮気をしてしまうのです。相手はなんと、美沙と同じ会社で働くプログラマー橋本司。遊び人気質の司と逢瀬を重ねながら、千尋は司に心惹かれていることに気づきます。もう結婚は無理だと悟り婚約を解消。司の元に行き、「私をセフレにしてください!」と頼み込んで強引にキスします。美沙と千尋はもともとの気質が真逆ですが、恋の仕方も両極端ですね。勝気なはずの美沙は自分の気持ちになかなか素直になれず、押しの強い佳介に逆らえません。一方、穏やかな性格の千尋は、いざとなったら体を張る勢いと度胸があります。人の性質というのは、このように一筋縄ではいかないのです。男性の無意識の中にある女らしさを分析心理学用語で「アニマ」(Anima)、女性の無意識の中にある男らしさを「アニムス」(Animus)といいます。男女ともども「アニマ」と「アニムス」を包含しており、それぞれの強さの割合が「人格の個性」を生んでいます。ではどんな個性を生むのか、具体的に解説しましょう。◆アニムスの強弱が生み出す個性アニムスがそれほど強くない女性は、チャレンジ精神が旺盛ではありません。どちらかというと保守的で、誰かの後に続いて何かをする傾向が強いです。付き合っている男性に甘えたり頼ったりすることに抵抗はないものの、正面からハッキリと意見するのが苦手。そのため状況に流されやすい傾向があります。対して、アニムスが強い女性は強気を見せてくれる男性でないと物足りなさを感じてしまい、出会いがあってもなかなか恋愛に発展しません。自分一人で解決しようとする傾向があり、特に周りの期待にこたえようと意気込むため、知らず知らずのうちに孤独なまま苦労や負担を背負ってしまうところがあります。見方を変えると、より高い自我を手に入れようと果敢に挑戦していくような、そんな向上心があるともいえるでしょう。◆アニマの強弱が生み出す個性アニマの弱い男性は、リーダーシップがあり常に理路整然としています。決断力・判断力に優れているため、一見すると「頼りがいのある大人」に見えるでしょう。ただ、共感能力が低く、感情的な問題を察したり理解したりすることが苦手です。そのため、恋人に「冷たい」「優しくない」と思わせてしまうことがあります。一方、アニマの強い男性は、大変感受性が豊かです。一緒に何かをして共感し合うことを好むので、愛情あふれる一時を過ごせるでしょう。でも、トラブル時にテキパキ対処するのは苦手で、本人はじっくり考えてことに当たろうとしているのに、女性に「頼りない」と思わせてしまうことがあります。◆まとめ内面要素によって生み出される傾向、ご理解いただけましたでしょうか。傾向が強いのと弱いのと、どちらがよいということはありません。あなたと相手の性的元型がぴったりとハマるかどうか、そこが重要です。もしかしたら思っていたのと違う一面があるのかも。改めて、見つめなおしてみてはいかがでしょうか。ライタープロフィール黒木蜜一般企業に勤めながら執筆した作品が日本文学館のオムニバス本に掲載され作家デビュー。古事記への造詣が深く、全国300ヶ所以上の神社紹介記事を執筆。現在、古事記の観点から紹介する神社コラム/恋愛コラムなども手がけている。
2017年05月27日先週末(2017年5月21日)、NHKスペシャルで発達障害の特集が放送された。( NHKスペシャル「発達障害 ~解明される未知の世界~」 )番組内では、最新の脳科学研究や当事者への聞き取りにより、発達障害の人にはどんな風に世界が見えているのかを映像化したり、発達障害の人がどんな悩みを抱えているか、ひとつひとつの事例を丁寧に紹介。発達障害でない人にとっても、とてもわかりやすい形で解説していた。筆者は発達障害の子を持つ親として放送を楽しみにしていたが、期待を裏切ることのない、とても良い内容だったと思う。当事者の親として私なりの感想をまとめてみた。■やっぱり映像の力はすごい!まず、「おぉ!」と思ったのは、発達障害当事者の視点を再現した映像力だ。発達障害は外見からはわかりにくい障害だ。それゆえ、よく「我慢が足りない」「わがまま」などと言われ、なかなか理解してもらえないことも多い。だが、今回の番組の映像化により、一般の人にとっても発達障害の人が見ている世界がどんなものかわかり、ずいぶんと認識が変わったのではないだろうか。■もしかして、あれが息子の見ている世界なの…?私自身も、大きな発見があった。自閉症スペクトラムでADHDの傾向もありと言われている筆者の4歳の息子は、集団に向けた一斉指示が入りにくい傾向がある。確かに同世代と比べると、言葉の理解度は低いところもある。だが、決して言葉の意味が分からないというわけでもない。その証拠に、療育などで先生が目の前で1対1で説明すれば、指示に従うことができる。番組では、教室でいろいろなものが気になってしまい黒板に集中できない女の子の例や、カフェの雑踏の中で相手の話がうまく聞き取れない女性の例などが紹介されていたが、あれが息子が見ている世界なのかもしれない……と考えさせられた。今、保育園のクラスで集まる時、息子はたいてい後ろではじっこの方に配置されている(おそらく、もう一人の先生がフォローに入りやすいという配慮でこの場所になったのだと思う)。もちろん先生方がいろいろ考えた上での場所であり、それもありがたいのだが、先生が遠くなると先生の声はますます聞きとりにくくなってしまうし、注意も向けにくくなってしまう。番組を見て、例えば、集まりの時は思い切って席を先生のど真ん前に配置したら、注意力が変わってくる可能性もあるのでは? などと、息子をとりまく環境について、改めて見直すきっかけをもらった気がした。「この子には無理」「この子はやる気がない」ではなく、子どもの状態に合わせて環境を変えてあげれば、解決できることがもっとあるかもしれない。そして、息子ももっと今より楽しい生活が送れるようになるかもしれない。■みんなが楽になれる配慮は、障害にかかわらず真似したいまた、番組にはモデルの栗原類さんをはじめ、発達障害と診断された当事者たちが出演していた。みな、なんらかコミュニケーションに苦手を抱えており、スタジオのセットをより心地よい環境に変えたり、ずっと相手の目を見ないで話してもOKというルールを作ったり、ぬいぐるみを抱っこして気持ちを落ち着かせるという工夫もされていた。これ、発達障害にかかわらず、もっと広げてもいいのでは?だって、程度の差こそあれ、健常の人だってコミュニケーションで苦手なことを抱えていると思うのだ。健常の人だって、思った以上にコミュニケーションで必死に気をつかって戦っていると思うのだ。■どこからが個性で、どこからが障害?自閉症スペクトラムのスペクトラムとは、連続体のことだ。よく、虹に例えられる。虹は微妙に色が変わっていくが、その境界線ははっきりせず、基本的には連続している。 「今(番組で)見てきたような特徴は、どんな人でも多かれ少なかれありますよね。問題は、それがどのくらい程度が大きいのかということと、一番重要なのは、それによって自分やまわりの人にどれくらい生活に支障があるかということだと思うのです。逆に言うと、本人に特徴が強くても、まわりが全面的に受け入れてくれるような生活環境ならばあまり苦痛にならない場合もあるんです。(中略)本人と環境との関係というのが大きいですよね」出典: (NHKスペシャル「発達障害 ~解明される未知の世界~」番組出演者・本田秀夫医師のコメントより) このことは、以前取材した放課後デイを経営されている(株)アイム代表の佐藤典雅さんの「発達障害の子育ても健常児の子育ても、本質的には何ら変わりはない」や「普通って何だろう?」という話に通じるところがあった。 参考:【連載】大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界 出演者たちも、「発達障害というものでひとくくりにしないでほしいこと。一人一人の特徴は違うということ」を繰り返し伝えていたように思う。発達障害に目を向けるということは、一人一人の特性にきちんと目を向けるということ。それはすべての人へとっての、生きやすい環境作りにつながるのではないだろうか?■「社会の役にたつから認めるっていうのは、ちょっと違う気がする」今回の番組では、自分のことをきちんと話せるような高機能な人たちを中心に、発達障害が紹介されたように思う。後半では、発達障害の人の能力に注目した就労支援の話にまで展開した。もちろん、その取り組み自体はとても素晴らしいことだと思う。だが、今回はあまり紹介されなかったが、発達障害の中にはどんなにがんばっても就労が困難な人たちもいるのに…と、ちょっとモヤッとしたところで、有働由美子アナウンサーのこのひと言。「(発達障害の)能力が注目されると、能力があって社会の役にたつから認めるっていうのがあって、それもまた違うのかな…?と思って」ちょっとめでたしめでたしで終わりそうな流れの中、こういう意見をしっかりはさんでくれる有働さんのコメント、個人的にとてもうれしかった。NHKが1年かけて取り組んでいくという「発達障害プロジェクト」、今後はぜひ、自己表現がまだうまくできない子どもや、知的障害を伴う発達障害、コミュニケーションをとることが難しいような重度の自閉症の世界なども、取り上げてほしいと思っている。そして、司会はぜひ有働由美子アナウンサーとイノッチのコンビに続けてほしいと願っている。文:まちとこ出版社N 【発達障害についての連載一覧】大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年05月26日人口の9割が「定型発達症候群」!?NHKが発達障害プロジェクトをスタート「およそ20年前に、アメリカの研究所が残した報告から、全人口の9割以上がある深刻な症状にあることが判明しました。」Upload By 発達ナビニュースとあるニュース番組で、キャスターが紹介した「衝撃のレポート」以下のチェック項目に一つでも当てはまったら、人間関係に深刻な問題を引き起こしかねない、「定型発達症候群」の可能性があるというのです。・暇な時はなるべく誰かと一緒に過ごしたい・集団の和を乱す人を許せない・社会の慣習にはまず従うべきだ・はっきりと本音を言うことが苦手・必要なら平気でウソをつけるUpload By 発達ナビニュース…実はこれは、NHKが制作した架空のニュース動画なんです。NHKが2017年5月から1年をかけて展開する、「発達障害プロジェクト」のページ上で公開されています。Upload By 発達ナビニュース「発達障害プロジェクト」「定型発達症候群」という言葉にびっくりした人もいるかもしれませんが、これは、医学上の病名でも、公式に定められた障害の名前でもありません。1998年、発達障害のひとつASD(自閉スペクトラム症)と診断された海外の一般女性が、ASDに関するさまざまな報道への皮肉の意味で「創作」した言葉が発端であると言われています(諸説あり)。「定型発達」とは、発達障害と対比して、心身の発達が「定型(平均的)」という意味で、「発達障害ではない人」をさす言葉として用いられます。つまり「定型発達症候群」とは、発達障害の人から、いわゆる「普通の人」を見た視点です。でも、「普通」ってそもそもなんでしょうか?全人口の大半の人が定型的(平均的)に感じているから「フツウ」?それじゃあ、違った感じ方をしている人は「フツウ」ではないの?そんな問題提起の意味も込めて、冒頭の架空のニュース動画はつくられました。NHKの発達障害プロジェクトでは、これまで当たり前に考えられてきた「普通」の概念にとらわれず、発達障害のある人々の感じ方・考え方を様々な角度から紹介していくことで、発達障害のあるなしに関わらず、一人ひとりの多様な感じ方や生き方への理解の促進をめざしていきます。NHKスペシャル、あさイチ、ハートネットTVをはじめ、番組横断で、継続的に発達障害を取り上げていくことが今回のプロジェクトの特徴です。知ってるようで知らない発達障害のこと、みんなの投稿で“トリセツ”をつくろうUpload By 発達ナビニュース生まれつきの脳機能の発達のアンバランスさ・凸凹(でこぼこ)によって、社会生活に困難が発生する発達障害。「なんとなくは知っているけど、結局どういうことかわからない」「漠然としたイメージはあるけど、何に困っているのかわからない」という方も少なくないのではないでしょうか。プロジェクトページでは、「この際、はっきり知っておきませんか?」という呼びかけと共に、発達障害の定義や特徴、困りごとなどが、イラスト付きでわかりやすく紹介されています。コンテンツ監修は、LITALICO発達ナビの監修も務める、鳥取大学大学院の井上雅彦教授です。また、「みんなで作る発達障害の“トリセツ”」と題したコーナーでは、日常生活の様々な場面での困りごとや対応策を、発達障害の当事者やその家族、学校や職場などの周囲の人々の投稿を通して集め、公開していく企画もスタート。「生活・暮らし」「対人関係」「学校・職場」と、大きく3つのカテゴリーの中で、様々なテーマに対するみなさんの投稿を募集しています。サイトオープン時の2017年5月16日現在では、事前に集めた投稿の中から「聴覚過敏」に関するエピソードを18件公開しています。以下のリンクの投稿フォームから、それぞれのテーマに対する体験談を随時投稿することができます。Upload By 発達ナビニュースみんなで作る発達障害の"トリセツ"投稿フォーム5/21(日)21:00から「NHKスペシャル」で生放送特集!Upload By 発達ナビニューススペシャル, 「発達障害 ~解明される未知の世界~ (仮)」ウェブ上のプロジェクトページと連動して、NHKの様々な番組で、継続的・多角的に発達障害について取り上げていくのが、今回のプロジェクトの特徴。テレビ特集の第1弾は、NHKスペシャル「発達障害 ~解明される未知の世界~ (仮)」。初回放送は、2017年5月21日(日) 午後9時00分~9時59分です。これまで、主に社会性やコミュニケーションに問題がある障害として知られてきた発達障害ですが、最新の脳科学研究や当事者への聞き取りにより、生まれつき、独特の「世界の見え方・聞こえ方」をしているケースが多いことがわかってきました。多くの人にとっては何でもない日常空間が、耐えられないほどまぶしく見えたり、小さな物音が大音量に聞こえてパニックになったり…NHKスペシャルでは、こうした発達障害当事者の方々の独特の感覚・認知や、それによって生じる生きづらさを映像を通して再現し、「目に見えにくい」障害の実態を伝えることに挑戦します。番組中では、大阪大学と東京大学が共同研究・開発した「自閉症知覚シミュレータ」も登場。発達ナビでは、当事者やご家族の方をお招きしての体験会兼取材・撮影に協力しました。今回のNHKスペシャルの最大の特徴は、生放送・リアルタイムで視聴者からのコメントを紹介しながら展開していくこと。たとえ同じ診断名でも、一人一人の特性や感じ方は、本当に様々です。十把一絡げに「発達障害」をまとめてしまうのではなく、一人一人の多様な暮らしぶりや思いを紹介していくことこそが、発達障害への理解・関心を広げていく上で大切だという趣旨からの企画だそうです。ご自分の経験について伝えたい思いやご経験、発達障害に対する疑問や悩みがある方は、ぜひ以下のメールフォームからご投稿ください。スペシャル, 発達障害特集メール投稿フォームUpload By 発達ナビニュース 「発達障害プロジェクト」また、NHKスペシャルの生放送終了直後から、「発達障害プロジェクト」ページ上でライブストリーミングが始まり、番組のアフタートークが催されるようです。ここでは、生放送中に紹介し切れなかった視聴者からの投稿を追加で紹介していくとのこと。あなたの投稿も紹介されるかも…!?発達ナビTwitterでNHKスペシャル&アフタートークを実況中継!発達ナビ編集部では、5/21(日)21:00からのNHKスペシャル及びアフタートークを実況中継予定!Twitterをご利用の方は、ハッシュタグ #NHKスペシャル #発達障害 でぜひ感想をご投稿ください。番組前の予習に、発達ナビの関連記事はこちら!プレスルーム: 5月21日(日)放送 NHKスペシャル「発達障害~解明される未知の世界~」の制作にLITALICOが協力しました。
2017年05月17日私って発達障害?気づいたのは42歳の時でした。出典 : 子どもの発達障害の場合、まず親や周りが気づいて、子ども自身は何の検査をされているのかわからないまま、診断を受けることが多いと思います。診断を聞くのも受け入れるのもまず親で、そこからタイミングを図って告知するというのがよく見られる流れではないでしょうか。それに比べて大人の場合は、仕事や日常生活で「なんだか変だな。どうしてうまくいかないのだろう?ひょっとして『私って発達障害?』」と疑ったうえで、自分の意志で検査を受けることが多いと思います。私は娘がアスペルガー症候群と診断されてから2年後、42歳の時にコンビニでのバイト中にパニックを起こしたのがきっかけで、発達診断を受けることになりました。しかし、その結果を受け止め、自身のことを理解するまでの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。9年の付き合いの主治医の診断は・・・出典 : 当時の主治医は、それまで9年にわたって私を診察してきてくれた精神科の先生でした。でも、その主治医は発達検査の結果を見て「うーん、ヨーコさんが発達障害とは思えないんだけどなぁ」と言うだけでした。このままじゃらちが明かないと思った私は、同じ病院内にいる娘の主治医に事情を話して、検査結果を見てもらいました。ざっと目を通した先生は「ああ、アスペルガー症候群ですね」と言いました。その後、私の特性も説明してくれてとても納得したのですが、それを主治医に伝えても「そうかなぁ?」とまだ納得できない様子。私の主治医の先生は発達障害には詳しくない様子で、長い付き合いの間でも先生の口から「発達障害」という言葉を聞いたことがありませんでした。だから、今まで長い間見てきて私の様子から「発達障害とは思えない」と言ったのではないかと思っています。私はあきらめずに先生やカウンセラーに「こんな困りごとがあってずっと苦しかった」、「娘が診断を受けたときの説明がそのまま私に当てはまる」と訴え続けました。そして「精神障害者手帳を取りたい」と先生にお願いしたのです。その時出してもらった診断書を見ると「広汎性発達障害」という診断名が記載されていました。こうして私は診断書を得るところまでこぎ着けることができました。しかし私は、ちゃんとした診断の上で広汎性発達障害と言われたのか疑問を抱くことになりました。それは診断が出たとはいえ、発達障害に詳しくない先生からの診断であることと、半ば無理やり勝ち取った診断のように感じられたからです。私が「ちゃんとした診断」を求めたわけ出典 : ひとまず診断を受けた私は、仕事を辞め、障害者福祉を受けながら暮らしていく道を選ぶことにしました。そんなときに、相談支援員から気になる話を聞きました。ある病院に発達障害に詳しい医師がいて、その病院で発達検査を受けたら、ものすごく詳細な所見をもらえて、説明の時も自分の特性や向いている職業まで教えてくれるらしいというのです。私はその"完璧"とも言える診断にひどく心惹かれました。「広汎性発達障害」の診断は出ていたものの、改めて発達障害に詳しい医師にきちんと診てほしいと思っていたからです。それは、「あなたはこういう人ですよ」という自分に関する説明書が欲しかったからでもあります。それまでの人生は謎だらけでした。どうしてみんなのように友達と打ち解けて遊ぶことができるのか、どうして他の人は分からないことは適当にしておいたまま勉強していい成績をとれるのか。社会に出てからは、なぜ他の人は会社の方針に溶け込んで洗脳されたようにふるまえるのか、なぜ自分はみんなと同じように仕事ができないのか、なぜミスばかり繰り返してしまうのか…。私はなぜ、他の人と同じようにできないのかと何度何度も悩んだのです。ずっと苦しかった。ずっとさみしかった。その診断があれば、今までの謎が解けてこれからの人生が開けるかもしれないと思ったのです。そして、期待に満ちあふれてその病院に転院することしたのです。「こんなことまで聞かれるの!?」驚きながらも、その専門性に感動!出典 : その病院は今までとは違うところばかりでした。事前に渡される問診票では、ハイハイした月齢や喋りだした月齢など乳幼児期の様子も事細かく聞いてきます。「人の臭いや物の臭い、ものの見え方や感触や音に極端な興味を持つことが、これまでにありましたか?」など、0歳から5歳くらいまでの成育歴の質問が多いので、親に見せて聞きながら回答を書きこみました。病院に問診票を持っていくと、それを見ながら「何か好きな素材や逆にこれは受け付けないというものはありましたか?」「学校では得意・苦手な教科は何でしたか?」「忘れ物は多かったですか?」「臭いや光、味に敏感ですか?」「仲の良い友達はいますか」など次々と追加の質問を受けました。その答えを聞いた先生は納得したように頷き「今ついている診断で間違いないでしょう。それに加えて注意欠陥障害もあるでしょうね」と言われました。この診察に私は感銘を受けました。というのは、質問は自閉症の子どもに特有の症状について的確に尋ねられており、追加の質問でも問診の答えを確かめるように進めてゆくことが分かり、先生の専門性の高さに感心したからです。ただ正式な発達検査を受けることはできませんでした。これは発達検査に使われるWAIS-Ⅲは、一度受けたら次は2年間は空けなければいけない決まりがあるためです。療育手帳取得挑戦の際にすでにWAIS-Ⅲを受けたことがあった私は、この2年間のインターバルが経過していなかったのです。それでもなお、憧れの診断にこだわる私に、ソーシャルワーカーはこう言いました。「とことん気になる、知りたがるというのは、生きづらさにつながるアスペルガーの特性からきてると思う。憧れの診断書が手に入らなかったら次に何が欲しいの?」その問いは、私が医療に何を求めているのかを問うものでした。自分の説明書はやっぱり欲しいけれど、2年待たなければならないのはどうしようもない。その現実をこの問いで突きつけられたのです。このとき初めて前を向いて、いま困っていることを何とかしてもらうことが大事だと思うことができました。その上で私の答えは「今の心のしんどさをやわらげてほしい。発達障害であるという視点から二次障害の精神症状やうつの治療もしっかりしてほしい」でした。こうして、先生の専門性を信じてその病院に通い続けることを決めました。自分の特徴を知ることで、今までの謎が解けてゆくように出典 : 今は二次障害である精神症状やうつの治療を受けつつ、自分の困りごとの原因は何なのか、先生の解説で謎が解けていっている感じです。そして生きづらさの解消のため、それまで飲んでいた薬は大幅に見直され、ADHDの治療薬のストラテラを服用することに。新しい主治医を始め、ソーシャルワーカーなど理解ある人に関わってもらっているおかげで、自分の特性が生活や仕事のどんなところに影響を与えているのが理解することができるようになってきたのです。自身の弱点や、疲れ切ってキレてしまう前の予兆なども分かるようになり、意識して自分をコントロールすることできるようになったと感じています。診断を生かしていくために出典 : 発達障害の診断を受けたら、具体的な自分の特性をじっくりと説明してもらうことをお勧めします。そうすることで、今までの生きづらさの理由が氷解し、自分の特徴をしっかりと理解することができるはずです。その上で、医療や福祉の支援を受けて理解者・支援者を増やし、困っているときは助けてもらうことができれば、自分の直面した困難にくじけてしまうことも防げるはずです。繰り返しになりますが大切なのは、診断を受けっぱなしで終りではなく、自分の特徴を知り、より自分をコントロールできるようになることです。診断を受け、なにが自分の生きづらさを作っているのか。自分で工夫できるところはあるのか。どんなサポートを受けたらいいのか。それを知ることが、生きづらさの解消につながるのではないでしょうか。
2017年04月28日よく聞く、「小学校は別世界」という言葉出典 : 発達障害のある子どもを育てている親にとって、小学校入学というステージはとても不安なものだと思います。それまで楽しく遊んでいれば良かった幼稚園・保育園の頃と違い、学習という活動がメインとなるのが大きな理由でしょう。また、幼稚園や保育園では手厚い支援をしてもらい、とにかく褒めて育ててもらえていた状態だったお子さんにとって、集団のルールを守ることに重きが置かれている小学校では、息苦しさを感じることが多いのです。幼稚園・保育園ではのびのび楽しくやっていたのに、小学校に入ってから急に自信を失うようになって…というようなお話を、私は幾度となく発達障害児の保護者から聞いてきました。ですから、発達障害のある息子の小学校入学は私にとって緊張感が漂うものでもあったのです。今のところ、息子は小学校の先生たちに手厚く支援していただいているおかげで、毎日楽しく通っています。けれどもやはり、小学校生活のさまざまなことで混乱をしている様子。それは、幼稚園時代にはなかったことでした。トイレに行ってはいけない!?息子の混乱例えば、小学校から帰ってきた息子が、こんな相談をしてきたことがあります。「今日ね、授業中におしっこもらしそうになって。先生にトイレ行きたいです!って言ったんだ。そしたらね…」Upload By モビゾウ「『小学校ではトイレは休み時間に済ませましょう』って先生に言われたの。それなのにね…」Upload By モビゾウ「先生は休み時間に済ませましょうって言ったのに、『はい、じゃあ行ってらっしゃい』って言われたんだよ。意味が分からないでしょう?」なるほど、先生は「本当は休み時間に済ませるのがルールだけど、今日は特別に行ってもいいよ」ということを言いたかったのでしょう。けれども息子は、この「今日は特別に」という部分が先生の言葉から読み取れないのです。先生の言葉をそのまま理解するため、「行ってはいけない」「はい、行ってらっしゃい」という言葉を同時に言われたことに混乱してしまったのでした。Upload By モビゾウさらに息子は、「小学校ではトイレは休憩時間に済ませるってことは、授業中にお腹痛くなったり気持ち悪くなったりしてもトイレに行っちゃいけないのかあ。どうしようどうしよう。お腹痛くなったらどうしよう」と悩み始めたのです。息子の発達障害の特性の一つなのですが、言外の意味を読み取るのが苦手なだけではなく、思考が0か100の両極端に偏りやすいのです。息子は「トイレは休み時間に済ませましょう」という先生の一言を、「具合が悪くても、何があっても、授業中のトイレは我慢しなければならない」という風に、極端な形で解釈してしまうのでした。無数にある集団生活のルール。それを把握することの困難さ出典 : このように、小学校には集団生活を円滑に送るための無数のルールが散らばっています。さらに、そのルールには例外や変更が沢山あるのですが、発達障害児にはそれを把握することがなかなか難しいのですのびのび遊ぶこと、褒められることがメインだった幼稚園時代に比べて、小学校に入ると「こういうルールがあるからダメ」ということが増えていきます。発達障害児は、なんとなく周りとうまくやれる程度にルールを把握するということが苦手です。小学校が別世界というのはこういうことだったんだな、と毎日混乱する息子を見ながら、私もなんとなく理解できたのでした。
2017年04月20日高梨臨さん主演のドラマ『恋がヘタでも生きてます』(日テレ系)がスタートしました。総合商社で恋愛ゲームのプロデューサーを務める茅ヶ崎美沙は、奥手で恋愛下手な女性。社長になることを目標に仕事を頑張ってきたのですが、突然現れた経営のプロ雄島佳介にその座を奪われてしまいます。そんな最悪な出会いから始まった二人が、やがてお互いに惹かれあっていく。キャリアウーマンの実情を等身大の視点で描いたラブコメディです。■体面重視の男性は却下そもそも美沙が奥手になったきっかけは、大学時代に男子が「自分より稼いでいる女はいやだ」と言っているのを聞いたこと。その記憶にとらわれ、仕事やその評価に対して貪欲な自分に引け目を感じてしまうのです。確かに世の中には、彼女や伴侶に自分より稼いでほしくない、と考える男性がいます。そう考える理由はさまざまですが、よく耳にするのは「女性のほうが稼いだら、男として面目が立たない」というもの。例えば、自分より評価されている同期に対して、嫉妬を抱くことは誰にでもあるでしょう。しかしそれで奮起して頑張る人はいても、あからさまに嫌悪感を出したりはしないはず。ではなぜ、恋人や伴侶に対しては嫌悪感を出せるのでしょうか。それは、愛情があれば自分の体面に対して気遣ってくれるはず、という都合のいい甘えがあるからです。女性に立ててもらわなきゃ保てない面目など、たいしたものではありません。それに「自分より稼いでいる女性」をそれだけで拒絶するような男性は、ほんの一部。よっぽど好みのタイプならともかく、そのような幼稚な男性はこちらから「願い下げ」したほうがいいでしょう。自分本位な甘えを押し付けてくる時点で、長く付き合えるような相手ではないと思います。■仲良しになることの落とし穴きちんと人間性を見てくれる男性とお付き合いできたとしても、必ずしも長期的な関係が築けるとは限りません。どうしたら長く続くのでしょう?関係が深くなると必然的に心理的距離感が近くなるわけですが、同時にあるリスクが高くなります。それは、「同一化」です。カップルになるとペアで人付き合いをする機会が増えるため、だんだん共同化していく傾向にあります。しかし共通の知り合いが増えたとしても、恋人の人付き合いは恋人固有のものであって、彼女であっても伴侶であっても口出しする権利はありません。にも関わらず、あたかも「自分の人付き合い」かのように錯覚して口出しをしてしまう。これが「同一化」です。このような「同一化」が進むことによって干渉が多くなり、息苦しい関係になって、破綻を招くことにつながります。■長期的な関係構築に必要なものとはいえ、相手と自分を切り離しすぎるのも問題です。つらいことがあって落ち込んでいる時、その気持ちを受け留めてもらいたいのに「自分のことなんだから自分で処理して」と突き放されたら、さらにつらくなりますよね。人生において必要な選択、対応すべき感情の問題。自分と相手のものと、それぞれ切り分けるべきです。同時に、カップルとしての人生や感情も保つ必要があります。自分一人の目線だけでなく、相手の目線を考慮しつつ、カップルとしての対応を考えていく。必要に応じた「視点の切り替え」ができれば、居心地のよい関係が築けます。結果的に、長期的な関係を築きやすくなるのです。■まとめ短い付き合いで終わってしまう人の特徴、ご理解いただけましたでしょうか。相手の視点を把握しようと努めれば、深い相互理解が生まれます。さらにカップル視点を保つことで、相手への敬意と思いやりが育ちます。ぜひ、視点の切り替えができる女性になってください。そうすればきっと、深い絆で結ばれた最強カップルになれますよ。ライタープロフィール黒木蜜一般企業に勤めながら執筆した作品が日本文学館のオムニバス本に掲載され作家デビュー。古事記への造詣が深く、全国300ヶ所以上の神社紹介記事を執筆。現在、古事記の観点から紹介する神社コラム/恋愛コラムなども手がけている。
2017年04月08日いつも彼氏にケンカの主導権を握られている女性の皆さん。今回こそは彼氏のペースを崩して自分が主導権を握ってみたいとは思いませんか?そこで今回は、ケンカで優位に立つために使える心理学を見て行きましょう。1.目線の心理を使って相手の気持ちを動揺させるケンカをしている時って、相手の目をじっと見たりしますよね。でも、相手のペースを乱したいのなら、視線を外すテクニックも重要です。例えば、大切な話をしている最中に相手がふと視線を外したらあなたはどんな気持ちになりますか?「話を聞いてくれていないのかも」「私の話がつまらないの?」「何かいいたいのかよ」と不安に思ったりしますよね。両者互角の戦いの時、相手と視線がぶつかったらふと目線を外してみましょう。相手は急に肩透かしをくらったような気持ちになり、「あれ?俺だけが怒ってんの?」と心理的なバランスが崩れ動揺してしまうんです。目線を外すだけの行動なので、簡単に出来るのに効果は絶大。おすすめです。2.習慣指摘の心理効果で相手の心をガタガガに自分のクセって知っていますか?自分のクセは気が付かなくても、相手のクセって以外に気が付いているもの。そのクセをあえてケンカ中に指摘してみてください。相手は、自分のクセをいきなり指摘された事で「治さなくちゃ」と必死に思い始め、ケンカどころではなくなってしまうんです。「○○君ってさ、ケンカするといつも鼻の穴が膨らむよね」というような感じで、軽く言うだけ。それなのに相手は、その指摘されたクセが気になり会話どころではありません。簡単に相手の心を戸惑わせ、ガタガタにさせる事がデキる技なので、使える時は大いに使ってみましょう。3.コントラストの原理で自分の要求を飲ませるケンカをしている時は、相手の話に聞く耳を持っていない事が多いので、強引に話を押し通そうとしても絶対に通りません。そんな時は、コントラストの原理で相手に自分の要求を飲ませてみましょう。相手が「今回の話はお前が悪かったんだから認めろよ」と言ったとします。そこであなたはこう言ってください。「わかった・・・ただ1つだけね」と前の意見に何か1つだけ自分の要求を付け加えて話をしてみましょう。大きな要求を飲んでもらえた後に、相手にお願い事をされるとそれが小さなお願い事のように聞こえることがあります。それがコントラストの原理です。あなたの言いたい事はしっかり言え、相手もその条件を飲みやすい状態を作る事ができるので、ケンカは負けたように見えますが、実は自分の要求を通してしまえるテクニックです。いつも、彼氏に言葉で言いくるめられてケンカに勝てない…という女性もたまには形勢逆転!上手なケンカの方法で、相手の心を揺さぶり自分の気持ちをぶつけてみましょう。
2017年04月07日「発達障害啓発週間」(4月2日~8日)にあわせ、発達ナビでアンケートを実施厚生労働省が定める「発達障害啓発週間」(4月2日~8日)にあわせ、LITALICO発達ナビでは発達障害に関する意識調査を実施しました。ご協力してくださった皆様どうもありがとうございました。この記事では、調査結果の一部を抜粋しお伝えします。<調査対象について>「LITALICO発達ナビ」会員へのメールから、アンケートフォームにて回答いただいた発達障害当事者:101名、発達障害の子どもをもつ保護者:788名の回答を集計しました。(調査期間:2017年3月7日~3月15日)※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100 にならない場合があります。発達障害児の子育てで困り感を感じている保護者は約8割お子様の発達障害の特性と思われることによって、保護者であるあなたご自身は、どの程度日常生活で困っていますか?という質問に対して、「とても困っている/やや困っている」と答えた保護者は80.7%、「全く困っていない/あまり困っていない」と答えた保護者は19.3%と、日常生活に困りを感じている保護者は8割を超えました。Upload By 発達ナビニュースどういったことに困りを感じているかに関しては、「障害の特性ゆえの言動が周囲から理解されず、しつけをしていないといつも白い目を向けられ精神的に追い詰められる場面が多い(ASD・6~12歳の親)」「他人について行く、母子分離が難しい、訓練会やセンターでも体操や手遊びを嫌がる(ASD・3~5歳の親)」「本人の生きづらさを変える手助けをしてやりたいが、その方法がわからない。気持ちが不安定になり荒れているのを見ても、寄り添って落ち着くのを待つしかできなくて苦しい。(ASD・13歳以上の親)」「将来が心配。毎日息子が朝ブツブツ文句を言って大変。何でも決めつける。こだわりが強すぎて疲れる。(ADHD・6~12歳の親)」「指示が入りにくいため、同じ事を何度も伝えなくてはいけないが、上手く伝わらない。思い立つと行動してしまうため迷子になることが多い。(ASD・6~12歳の親)」などといった意見があげられました。発達障害の診断を受けると楽になる?苦しくなる?お子様が発達障害と診断・告知された後の心境に、どのような変化がありましたか?という質問に対しては、「とても楽な気持ちになった」が12.1%、「やや楽な気持ちになった」が32.9%、「特に変化はなかった」が11.5%、「やや苦しい気持ちになった」が21.1%、「とても苦しい気持ちになった」が22.5%と、楽な気持ちになった親御さんは計44.9%、苦しい気持ちになった親御さんが43.5%とほぼ同数になりました。Upload By 発達ナビニュース楽な気持ちになった理由としては、「子どもの行動の理由がわかったから(ASD・13歳以上の親)」「今後の子育てをどのように進めていけばよいかがわかったから(ASD・3~5歳の親)」「自身の育て方に問題があったのではないことがわかったから(ASD・6~12歳の親)」などが挙げられました。苦しい気持ちになった理由としては、「もっと早く診断されていればよかったと思ったから(ADHD・13歳以上)」「子どもの将来が心配になったから(ASD・3~5歳)」などが挙げられました。周囲の無理解を感じる理由は…お子様の発達障害の特性について、周囲の人たちから理解されていると思いますか?という質問に対しては、「理解されている」が50.7%、「理解されていない」が49.3%と、ほぼ同数となりました。Upload By 発達ナビニュースどういうときに理解されていないと感じるかに対しては、「見た目がふつうに見られるから(ADHD・6~12歳の親)」「厳しく躾ければやれるようになると思われている(ASD・6~12歳の親)」「本人の困り感が見た目には分かりにくく、助けてもらえない。(ASD・6~12歳の親)」「勉強もでき、多動もないため一見なんともなく見えるため、親が気にしすぎだと考えられがち。(ADHD・6~12歳の親)」「見た目は普通なので、親が甘やかしているからワガママなだけなんじゃないかと思われる。(ASD・3~5歳の親)」などといった意見が挙げられました。発達障害のある子どもの保護者は、世間の発達障害に対するイメージをどう思ってる?発達障害に対する世間のイメージと実態にギャップを感じることはありますか?という質問に対しては、「ギャップを感じる」は80.8%、「ギャップを感じない」は19.2%と、約8割の保護者がギャップを感じているという結果になりました。Upload By 発達ナビニュースどのようなことにギャップを感じるかに関しては、「発達障害と診断されたらお先真っ暗と思っている方が多いけど、そんなことない!わかることでできるフォローがある!(ASD・3~5歳)」「考えるプロセスや、行動というアウトプットが異なるのでなく、そもそも感じ方というインプットの段階が異なっており、しつけや訓練でどうなるものでもないこと(ASD・6~12歳の親)」「1つの診断名でもいろんなタイプの人がいることを知らない人が多いなぁと思うし、自分も息子のことだけをみて発達障害を理解してはいけないなぁと自戒の念も含め思う。(ASD・6~12歳の親)」「発達障害そのものを知らない人が多いと思う。もっと重くてコミュニケーションがとれないような障害と思われているように思う。(ASD・6~12歳の親)」「発達障害は天才だと思われているせいで、親の育て方で変わると思われているところ(ASD・13歳以上)」などといった意見が挙げられました。さらなる調査結果はプレスリリースにてその他の回答に関してはLITALICOのプレスリリースに記載しています。発達障害の当事者・発達障害児の保護者へ意識調査を実施 過半数の当事者・保護者が「発達障害」に対する社会の理解は「進んでいない」と回答LITALICO発達ナビでは今後も発達の気になるお子さんや親御さん、当事者のさまざまなご意見やご経験を参考にしながら、よりよいサービスづくりと世の中に対する情報発信を続けていきます。今後ともLITALICO発達ナビをよろしくお願いします。
2017年04月07日「できること」を増やしたい!発達障害のある子どもを持つ親心出典 : 自分の子どもが発達障害だと診断を受けたならば…。「発達障害児でもできること」「発達障害児の発達を促すこと」を血眼になって探すのが、親心なのかもしれません。私もその1人でした。発達障害児を育てていると、どうしても出来ない部分ばかりが目についてしまいます。「協調運動ができない」「手先が不器用」「跳び箱やマット運動ができない」「字をマスの中におさまるように書けない」「きちんとした姿勢を維持できない」…他の子どもと並べては、「うちの子だけこんなこともできない…」と落ち込む日々が続いていました。「出来ることを褒めてあげて」と育児本には当たり前のように書いてあります。けれども、保育参観やちょっとした行事で「できない息子」を目の当たりにするたびに、「一体どこを褒めればいいんだろう…」という気持ちにすらなります。そんなとき、インターネットには心ひかれる文言が出典 : そんなどん底の気分になりながらも、「なんとか息子のできることを増やしたい」と思いネットを検索してみます。すると、キラキラときらめく言葉たちが並んでいるのです。「発達障害児向け○○!」「○○は発達障害児の発達を促してくれます!」「○○をすれば、発達障害は治る!!」こんな煌めくような魅力的な言葉たちが、私の親心をがっちり掴んでしまいました。「発達障害向け」の文言をみると居ても立っても居られなくなり、私はすぐに申し込みのメールを書き始めていました。それがどんな内容の習い事や塾であっても、息子に意思を確認することはありませんでした。これが原因で、私がしてしまった失敗を2つ、ご紹介します。出典 : ネットでの検索に取りつかれていたころ…私が一番に心惹かれてしまったのは、「発達障害を治す能力開発塾」でした。この「発達障害を治す」という触れ込みに惹かれてしまうのは私だけではなかったようで、中には新幹線や飛行機に乗って相談に訪れる人も後を絶たないそうです。ところが相談に伺ってみると、その塾の目標は「子どもを支援級に入れないこと」でした。私は当時、まだ小学校就学後のことまで考えてはいませんでした。その目標が果たして本当に適切かどうか、まだ分かっていなかったのです。その塾が何を目指しているのか、発達障害児がどう育っていくことを望んでいるのかという点について意見が合致しない場合は、私は入塾はやめたほうがいいと思いました。結果的に、入塾はお断りしました。「発達障害児向け」「発達障害が治る」という文言だけに飛びついてしまい、実態をきちんと把握していなかった失敗例です。出典 : 他にも、「これは発達障害児の発達に良い」「前頭前野の発達を促す」という言葉に、私は飛びついてしまいました。そんな私を突き動かしたのが、「乗馬は発達障害の発達に良い」「カヌーは発達障害児の発達に良い」という情報でした。私は息子を連れて、発達障害児を対象とした乗馬教室とカヌー教室に出かけました。その教室では他に参加する子どもたちもみんな同じように特性がある子どもたちだったため、息子だけが浮いてしまうこともないだろう…という期待もありました。ところが…。感覚が過敏な息子は、馬の臭いと大きさと肌触りにパニックです。泣いて泣いて暴れて暴れて、止まらなくなってしまいました。そんな息子を横目に、他のお子さんたちは悠々と馬に乗っています。カヌーはカヌーで、救命胴衣の感触にパニックになり大泣き。さらに、前日雨が降って川岸がぬかるんでいたのが嫌だったようで、足に泥がつくたびに大泣き。ここまで来て、こんなに息子を泣かせて、自分はいったい何がやりたかったんだろう…。私は帰りの車でため息しか出ませんでした。この教室以後、息子は馬が怖くなってしまい、今でも馬に近づけません。大切なのは、「発達障害児向け」ではなく「息子向け」だった出典 : 数え切れないほどの失敗を繰り返して、私が学んだのは、大切なのは「発達障害児向け」ではなく「息子向け」のものを選ぶことだということでした。いくら「発達障害児向け」と銘打ってあっても、息子に合った環境整備がされているとは限りません。いくらそのアクティビティ自体が発達障害児の発達に良いとしても、息子は盛大なパニックを起こし、それが失敗体験になってしまいました。逆に、発達障害児対象のアクティビティでなかったとしても、息子に合った環境整備がきちんとできていれば、息子は楽しくこなすことができます。成功体験につながることもあるでしょう。「発達障害児向け」「発達障害児の発達に良い」というのは、あくまでも理論的な話です。脳回路の話などが出てくると、どうしても飛びついてしまうのが親心。でも、理論と実践は違うのです。適切な環境整備と子どもに「やりたい」という気持ちが少しでもあれば、それが一番「その子の発達に良い」ことなのだということを忘れてはいけないのだと思います。
2017年03月30日