出会った女性がネタの源という横澤夏子さんが、街で見つけたいい女を実演。今回は、車中を豊かな時間に変えてくれる女性、「移動を充実させてくれる女」になりきり。相手の事情を考えて楽しませてくれる人は素敵。今回紹介するいい女は、私のマネージャーさんです。前の現場と次の現場のあいだに移動時間しかないケースがあるのですが、そうなるとお昼を買ったり、食べたりする時間が取れず、困ることも。先日も、いつお昼が食べられるんだろうと落ち込んでいたら、マネージャーさんが「これ、移動の車で食べてください」とおにぎりを渡してくれました。私より早い時間に現場入りしているはずなのに…と嬉しい気持ちに。しかも、私が好きなお菓子まで用意されていて、彼女のおかげで最強の移動時間になりました。さらにすごいのが、移動している時に、面白い話をしてくれるところ。「催眠術の講座に通ったことがある」とか、「恋人と結婚するかしないかの瀬戸際なんです」など、ゾクゾクするような話を小出しにしてくれるんです。しかも、話の尺がすごく絶妙で、いつもいいところで話が終わるから、「さっきの話はどうだったの?」とその後も盛り上がれる。「昨日あった怖い話なんですけど…」と続きが気になるフレーズから話し始めるのもうまい。結局、その話は「目の前にいた知らないおじさんが突然、袋をくれたんですよ。私がお弁当を手に持っていたからそれを入れなよということなんですけど」と、期待に応える内容を提供できるのもすごいと思いました。まずは、ちょうどいい時間のエピソードを選べるよう、自分の話の長さを普段から計算しておくとよさそうです。また、「これ、どう思います?」と問題提起するなど、相手が自分の意見を言いたいと思うようなトーク選びをすることも、楽しい会話につながるはず。マネージャーさんと別々に移動する時はすごく寂しい気持ちになるのですが、私もそんなふうに思われる人になれるよう頑張りたいです!よこさわ・なつこ芸人。“ちょっとイラッとくる女”のモノマネで大ブレイク。婚活で培ったテクニックをまとめた著書『追い込み婚のすべて』(光文社)が発売中。昨年2月に第一子を出産。※『anan』2021年5月19日号より。写真・中島慶子イラスト・別府麻衣文・重信 綾(by anan編集部)
2021年05月16日人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。今月のゲストは、ドラマ『その女、ジルバ』に出演されていた歌手、俳優の中尾ミエさん。第1回は「小さい頃から早く大人になりたい子供でした」。私は6人きょうだいの4番目で、主張をしないと埋もれる立ち位置だったんですが、自己表現の方法がちょっと屈折してまして…。人と違うことをしたいという気持ちが強いがために、小学校で授業をボイコットして、給食室でおばさんたちのお手伝いをしたり(笑)。それから私は戦後の生まれですが、10歳で東京に出てきた頃もまだ米軍キャンプがあって、たまたま知り合った人に誘われて、そこで歌を歌ったりもしてたんです。“未成年立入禁止”って書いてあるのに、小学生が(笑)。小さい頃からずっと、大人として扱われたいという気持ちが強かった。なんでか?…そうね、たぶん当時から自分の言いたいことが言いたかったのよね。大人は言えるし、しかも耳を傾けてもらえる。だから大人になりたかった。とはいえ10代のうちから言いたいこと、言ってましたけどね。性格は今とまったく同じ。だからずーっと「生意気だ!」「可愛げがない!」って言われてました(笑)。万人に好かれようと思わず、生きてきました。縁があって芸能プロに入ることになり、1年間の下積みを経て16歳で『可愛いベイビー』というアメリカンポップスのカバーソングでデビューしました。当時の芸能界には、今でいう若い“アイドル”みたいな存在はほぼおらず、10代の私からすると右も左も年上だらけ。最初は“大人の世界”にお邪魔させてもらっている立場だと思っていましたから、早く私も一人前として扱ってもらえるようになりたくて。先輩たちにいろんなことを教えていただいたこと、今でもよく覚えています。デビュー当時から変わらず思っているのは、仕事もプライベートも、自分に正直に生きよう、ということ。自分がそうしたいなら、そうする。人にどう思われても構わない。万人に好かれるというのは無理なんですよ、半分くらいの人が好感を持ってくれたら万々歳。だってみんな、それぞれ好みがあるわけだからね。そこを割り切ったときから、怖いものがなくなり、生きるのが楽になりました。なかお・みえ歌手、俳優。1946年生まれ。’62年、デビュー曲『可愛いベイビー』が大ヒットし一躍スターに。6月には米倉涼子と城田優プロデュースのエンターテインメントショー『SHOWTIME』に出演。※『anan』2021年5月19日号より。写真・中島慶子(by anan編集部)
2021年05月16日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「データ安全保障」です。大事な国民の情報。外資の民間企業に預けて大丈夫?3月、LINEがシステム開発を中国の関連会社に委託しており、現地スタッフが個人情報にアクセスできる状態だったことが判明し、問題になりました。総務省内ではLINEの使用は禁止され、自治体や行政機関は一時サービスを停止する事態に陥りました。個人情報が漏洩したのではなく、スタッフがアクセス可能だったというだけで大騒ぎになったのは、相手が中国だったからです。自由と民主の価値観を共有できる、法のもとに平等な国ではないため、危機感を抱いたのです。しかし、私たちは普段、AmazonやGoogleにも個人情報を差し出しています。相手がアメリカならば安全と言い切れるのでしょうか?いま、公的機関が私たちのデータを、民間のデータセンターのサーバーに預けるということが加速しています。Amazonは公共部門のグローバル展開に力を入れており、日本政府は昨年、政府共通プラットフォームをAmazonのクラウド・コンピューターサービス「Amazon Web Service(AWS)」に移すことに決めました。Amazonの公共部門のパートナープログラムに参加している企業は2020年で前年比45%増。FBIもAWSで情報管理しているとAmazonは安全性をアピールしています。日本では、テレビ局もコスト削減のため、取材映像をGoogleのデータサーバーに保管しています。取材源の秘匿の問題がありますし、そもそも日本の放送資源を外資系企業のサーバーに預けてよいものか?データの安全保障に関して、日本はとても認識が甘いと言わざるを得ません。現在、日米関係は良好ですが、永続的なものとは限りません。有事にはデータが削除されたり、日本国内でアクセスできなくなる、あるいは政治交渉の切り札に使われる可能性もあります。EUはその点、強い危機意識を持っており、データをEU圏外に持ち出すことを法律で規制しています。便利で低コストで管理できることは大きな魅力ですが、国家100年を考えたとき、データ主権を持ち、データ安全保障を考えた上で、自分たちの情報は自国で守ることが必要なのではないかと思います。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。新しい朝の報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~8:00)が放送中。※『anan』2021年5月19日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2021年05月15日亡き祖母から受け継いだ大切な着物を着てお出かけするのを休日の楽しみにしている、野々村もも。『恋せよキモノ乙女』は、ももが着る着物のコーディネートが毎回可愛いと話題のコミックだ。その著者が、普段から着物に親しんでいるという山崎零さん。描く着物はどんなふうに決めているのだろう。「読者から『こんなコーディネートをしてみたい』と思ってもらえるようなものを目指して、物語や春夏秋冬、出かける場所のことも意識して選んでいます。自分でも好きで着ていたとはいえ、実際に着物のマンガを描かないかと編集さんから提案されたときは、うれしさ半分、緊張もしていました。袖部分の形状やシワの寄り方、着たときの柄の合わせなど、いわゆる玄人の人が読んでも違和感がないようにと、いまでも調べたり勉強したりしながらです。ただ、もともと日本画からマンガの世界に入ったので、着物の柄の花鳥風月などを描くのはとても楽しいです」ももがお出かけする先にも、わくわくさせられる。京都の老舗喫茶店や大阪の歴史ある図書館など関西エリアから、7巻より舞台は東京へ。「物語の出発点は、男性が普段のぞけない女の子のお支度を描く、でした。なので、どこへ行くかなどを考えるようになったのは連載が決まってからです。関西編では、他府県の方が見てもすぐわかるような有名な観光名所ではなく、関西の人が見ても『あそこいいよね』『よくわかってるね』と盛り上がってくれそうな絶妙なセンを狙いました。東京編でも踏襲していきます」本書はまた、恋にも仕事にも一生懸命なももの成長マンガでもある。「会社の受付嬢から転職し、現在は着物屋『猫の目』のスタッフとして、さらに着物の魅力にのめりこんでいるところです。着物業界は格式張っている印象もありますが、『私もこんなところで働いてみたい』と憧れてもらえるような、ときめき要素を大切にしていきたいです。店長で先輩のリンコちゃんとも、お互いがお互いを知って高め合えるような関係性として描いていきたいですね」恋愛は、ももの想い人である椎名さんとの関係が、紆余曲折がありつつ進行中。7巻からは「ももが大阪、椎名さんが東京」と遠距離状態に。「ロマンスに関しては私自身がドライでちょっとズレている部分もあるので(笑)、周囲に取材しまくってエピソードに活かしています」7巻のラストでは、控えめだった椎名さんも意外な一面を発揮。恋の行方はますます楽しみだ。やまざき・ぜろマンガ家、日本画家。京都精華大学芸術学部日本画コース卒。同人活動を経て2013年商業誌デビュー。本作を「くらげバンチ」で連載中。『恋せよキモノ乙女』7各話の最後に、着物スタイリスト・コバヤシクミさんによる柄やコーディネート、歴史などの解説がついていて、着物初心者でも楽しめる。8巻は今秋刊行予定。新潮社704円©山崎零/新潮社※『anan』2021年5月19日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年05月15日16年にわたる連載がついに完結した、よしながふみさんの『大奥』。江戸城に男女逆転の大奥が生まれた3代将軍・徳川家光の時代から、江戸幕府の終焉まで、史実をモチーフにしながらまったく見たことのない物語が全19巻で繰り広げられた。ついに完結!大奥という場所が私たちに見せてくれたこと。「マンガは難しいメディアで、買っていただかないと続きを描くことができないのですが、3~4巻の時点でここから10年はかかるとわかり、読者の方々に申し訳ないなと思っていました。将軍を女の人がやっても、男の人がやってもうまくいくわけではないというのを長々と描き、苦しんできたことに対するひとつの答えがラストでようやく出るので、辿り着けて本当によかったです」男女が逆転する構想自体を思いついたのは、マンガ家になる以前。壮大すぎて実現には至っていなかったが、もともと’83年のドラマ『大奥』が好きだったのに加え、’03年にもドラマがヒットしたことで「男女逆転」と「大奥」が結びついたそう。「だけど歴史ものだし、絶対に大変になることはわかっていたので、ほかの先生に描いてもらったらどうでしょう、と担当編集さんに提案したんです。私は1円もいらないのでって(笑)。自分が読みたいものと描くのが楽なものは違うんですよね」完結して改めて気になるのは、200年を優に超える時間の流れを物語にするにあたり、最初にどの程度の青写真があったのかということ。「大まかな流れや、赤面疱瘡(あかづらほうそう)が蔓延して解明されていく時代背景も決めていましたが、人間模様の細かいところはライブ感でした。たとえば5代・綱吉は生類憐みの令を出す人だから、あまりいい将軍ではなかったんだろうなっていう程度のイメージしかなくて。さらっと終わらせるつもりだったのですが、描き始めたら面白くなって長くなりました。史実をガイドに、どうしてこんなことをしたんだろうと遡って人物像を考えていくのは、楽しい作業でした」多くの将軍にとって重責となるのが、世継ぎを作ること。愛する人とは子宝に恵まれない家光や、子どもを亡くして人生が狂う綱吉、反対に子だくさんゆえに幕府の財政を逼迫させ、人を信じられなくなる家斉。「血を繋いでいくシステムは、性別関係なく悲しさがつきまとうものなのだと思います。一方で、家茂と和宮のように女の子同士で心を通わせる名前のつかないような関係や、赤面疱瘡を解明しようとするチーム男子も予想以上にブロマンスっぽくていい感じに。描く前は大奥の話だから男の人がたくさん出てくるのかなと漠然と思っていましたが、将軍と老中の女性同士の関係が意外と熱くなりました」連載中に映画化・ドラマ化され、キャラクターについて俳優と議論をしたり、演技のアプローチを目の当たりしたことで、登場人物それぞれの人生をより深く考えるようになったという、よしながさん。読者としては、全編通した映像作品を見てみたいという欲も……。「1年くらいのドラマでは、尺が足りなそう(笑)。ひとりのキャラクターが20~30年タームで年齢を重ねていく感じも、マンガ表現ならではの楽しさだと思って、自覚的に描きました。製作コストもかけた時間も、マンガだからこそ実現できた物語なのかなと思います」至極ごもっとも。未読の人は今こそ通読するチャンス。ため息の漏れるフィナーレを堪能してください!『大奥』19ついに江戸城を明け渡す最終巻。大奥では何が起こる?雑誌掲載時のイラスト集のほか、対談などを収録した「公式ビジュアルファンブック」がセットになった特装版も。白泉社748円(通常版)/1980円(特装版)©よしながふみ/白泉社よしなが ふみマンガ家。代表作は『西洋骨董洋菓子店』『愛すべき娘たち』など。『きのう何食べた?』は『モーニング』で連載14年目!劇場版が今年公開予定。※『anan』2021年5月5日-12日合併号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2021年05月11日出会った女性がネタの源という横澤夏子さんが、街で見つけたいい女を実演。今回は、白米に対して自由な発想を持っている女性、「ご飯のお供に強い女」になりきり。おにぎりには無限の可能性があります!私も含め新潟の人は、日頃から美味しいお米を食べていることもあり、「白米の味を邪魔されたくない」「結局、塩がいちばん」など、ご飯のお供に対するハードルがすごく高いんです。以前、『バナナマンのせっかくグルメ!!』に出演した時に、バナナマンのお二人から「新潟のご飯のお供って何があるの?」と聞かれたのですが、たくさんあるけどせっかくなら唸るようなものを言いたくて、“うわ~!どうしよう!”と焦りました。そんななか、このあいだの『王様のブランチ』で、とあるおにぎり屋さんが紹介されたのですが、そのお店では40~50種ものメニューを扱っていました。梅干し、明太子、昆布、おかかなど、王道のものしか思いつかない私からすると、それだけたくさんの種類があることに驚いたんです。しかも、人気ベスト3具材の中にウインナーがあったりして、“これもおにぎりに入れちゃうんだ!”というような、あまりにも意外なラインナップを見て、おにぎりには無限の可能性があったことに気付かされたんです。そんな自由な発想ができる人が羨ましい!そして、もちろんご飯のお供にも詳しいはずですよね。自炊をする時の献立の組み立て方も上手に違いありません。私自身も、白米には意外と何でも合うんだなとわかり、ご飯のお供に対するハードルも下がりました。ご飯に合うものを知るためには、新潟をはじめ米どころのアンテナショップなどに行くのがよさそうです。必ず、お米と相性のいい食材に出合えるはず。おにぎり屋さんのショーケースを見て、インスピレーションをもらったり、定食屋さんで白米にぴったりのおかずを知ることもためになりそう。いろいろ試して、人におすすめできるお供を見つけましょう!よこさわ・なつこ芸人。“ちょっとイラッとくる女”のモノマネで大ブレイク。婚活で培ったテクニックをまとめた著書『追い込み婚のすべて』(光文社)が発売中。昨年2月に第一子を出産。※『anan』2021年5月5日-12日合併号より。写真・中島慶子文・重信 綾(by anan編集部)
2021年05月10日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「Quad(クアッド)」です。インド太平洋地域の平和のため連携し中国に対抗。「Quad」とは、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4か国が軍事的、経済的に連携をしていこうという枠組みです。インド太平洋地域で強引な海洋進出を繰り返している中国に対して、包囲網を作りたいという思惑があります。それぞれ中国との間には難しい課題を抱えているのです。日本は尖閣諸島問題。中国は「海警法」を施行し、日本の海上保安庁にあたる中国海警局が武器を持てることになりました。そして、しばしば日本の領海に侵入し、プレッシャーをかけています。アメリカは中国との経済対立が鮮明。厳しい貿易折衝を続けています。また、自由主義と中国共産党のイデオロギーの対立も激しさを増してきました。オーストラリアも中国との貿易摩擦が激しく、中国の買い手市場になっており、対等な関係を築くことを望んでいます。中国と国境を接しているインドは常に緊張関係にあり、国境付近では小さな衝突が続いています。Quadのもとになったのは、2006年に当時の安倍首相が提唱した、「日米豪印による戦略対話」でした。日本もアメリカも後任の政権がその意思を引き継ぎ、バイデン大統領の呼びかけで、3月12日にQuad初の首脳会合が開かれました。自由や民主、法の支配を共通の価値として共有することを大きな目的にしています。Quadの規模を数字で見てみると、人口は中国の14億人に対して、Quad4か国の合計は18億人。GDPは中国が14兆ドルなのに対して、Quadは30兆ドル。軍事費は年間2600億ドルの中国に対して、Quadは8700億ドルになります。対抗といっても、戦争をして領土を奪うという話ではありません。あくまで経済的な覇権争いです。中国の経済パワーは強大ですから、完全に敵に回すことなく、うまく商売をしたいという思いもあるため、複雑なんです。しかし、いかなる理由であれ、人権や人道を逸脱する行為は認められませんし、ルールに基づいた貿易をするということは大前提であるべきです。自由主義国がまとまって、中国やそれに追随する諸国に対して、自由と民主の価値を見せ続けることが大事だと思います。堀潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。新しい朝の報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~8:00)が放送中。※『anan』2021年5月5日-12日合併号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2021年05月10日人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。今月のゲストは八代亜紀さん。第5回は「社会に感謝を返す。それが私の生きる道。」です。生きる上で私が大事にしていることは、えこひいきせず、すべての人に優しくすること。みんなで美味しいものを食べて、みんなで幸せになりたいじゃないですか。正直言えば、心を開きすぎて、痛い目にあったこともあります。でも、初めてレコードが100万枚売れたときに父が、「アキ、嬉しいな。100万人の人がレコードを買ってくれたこと、忘れちゃいけないぞ」と言ったことが、ずっと心に残っていて。感謝を社会に返していくことが、私のライフワークかもしれません。少年院や女子刑務所への慰問は50年近く続けていますし、最近では老人ホームでリモートコンサートをしたり。それから故郷の熊本・八代市で、若い世代に地元を好きになってもらいたいから、1年に1回、町の絵を描くコンクールを開催しています。絵を描くためには対象をしっかり見なければいけなくて、見ると愛情が湧くものなんです。八代市を愛する人が1人でも増えてくれたら嬉しいです。ビリー・アイリッシュを熊本弁で歌いました。昨年の誕生日、ビリー・アイリッシュの大ヒット曲『bad guy』をカバーして、YouTubeに上げたんです。カバー自体はスタッフからの提案だったんですが、私は、「ならば2番を熊本弁で歌うのはどう?」と。なぜか?どうせやるなら、面白おかしくしたいと思って。どんなことでも楽しくやらなきゃ意味がないじゃない?それにそのころ、熊本では水害があり、少しでも熊本の人に元気になってほしくて応援の気持ちも込めたんです。そうしたらあっという間に50万回くらい再生されて、椿鬼奴さんが真似をしてくれたり、「熊本弁のほうが英語に聞こえる」なんて言われたりして、とても楽しかった。ビリー・アイリッシュの曲もそうなんですが、今はドライな音楽が多いですよね。そういう音楽ももちろん素敵。でも私はあえて、たっぷり情感を乗せた歌を歌いたい。若い人も、私の音楽を聴いてね。情念の世界に、しっかりついてきてね!(笑)やしろ・あき歌手。1950年生まれ、熊本県出身。‘71年にデビューし、‘73年『なみだ恋』で大ブレイク。以来トップスターとして活躍。趣味の絵画も評価が高く、ボランティア活動にも熱心。※『anan』2021年5月5日-12日合併号より。写真・中島慶子(by anan編集部)
2021年05月08日出会った女性がネタの源という横澤夏子さんが、街で見つけたいい女を実演。今回は、人の失敗に対して優しい女性、「“安心する”と言う女」になりきり。共感力の高い人はフォロー上手になれる!新潟で放送されているテレビ番組にリモート出演をした時のことです。家の白い壁の前に座っていたのですが、共演者の方に「横澤さん、いいおうちに住んでいるんですね」と言われたので、「写っているところだけですから、きれいなのは!」と、ノリで散らかっている部屋を見せたんです。すると、明らかにみんなドン引きしていて、やめておけばよかったと後悔しました。さらに、「ちなみに下ははいていますか?」と聞かれたのですが、その時、私はももひきみたいなものだけを身につけていたので、それがバレたと思い、「はいているわけないじゃないですか!いつから気づいていたんですか?」と聞き返したんです。すると、「いやいや冗談で聞いたんですよ」との答えが。さらに落ち込まんとしていた瞬間に、アナウンサーの方が、「でも、なんだか安心しました。子育てもお仕事もやっていたらそうなりますよね」とフォローして、場をなんとか丸くおさめようとしてくれたのです。失敗したと思い焦っていた私はその言葉を聞き、「安心できたのならよかった」と救われました。散らかった部屋も人間らしくていいかと思えたし、その言葉には、“完璧そうに見えているのに”という褒め言葉の意味合いが含まれているところも、見事だなと。そのサポート力に感動したんです。そんな言葉が咄嗟に出るようになるためには、日頃から失敗した人に向けた優しい言葉を用意しておくことが大切。残念な状況をプラスに言い換える力は、日々のトレーニングがあってこそ身に付くものではないでしょうか。また、共感力が高く、落ち込んでいる人に寄り添えるようになることも大事。完璧な人に対しても、“みんな、同じ人類ですよね~”という思いで向き合いたいものです!よこさわ・なつこ芸人。“ちょっとイラッとくる女”のモノマネで大ブレイク。婚活で培ったテクニックをまとめた著書『追い込み婚のすべて』(光文社)が発売中。昨年2月に第一子を出産。※『anan』2021年4月28日号より。写真・中島慶子イラスト・別府麻衣文・重信 綾(by anan編集部)
2021年04月25日人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。今月のゲストは歌手の八代亜紀さん。第4回は、趣味と女同士の友情のお話です。深夜のテレビショッピング、大好きです。デビュー以来50年間、毎日朝から晩までコンサートやレコーディングに時間を費やしてきた私。お店が開いている時間にお買い物に行けるなんてめったにないことなので、テレビショッピングにハマっちゃいました。思い起こせば、’70年代に健康器具を買ったのが最初だったかしら…。あとは高枝切り鋏!「それ、自分で使うの?!使う暇あるの?!」とびっくりされました(笑)。最近は、夜中の通販番組を見て注文することが多いです。覚えているのだと、災害用リュックにミシン、フライパン、それからふかふかのベッドマット…。マネージャーに「家がドン・キホーテみたいになってますよ!」とたまに怒られます(笑)。ほとんど、スタッフとかお友達とかにあげたいな、と思って買うことが多いんです。私は買い物が好きで、きっとみんなはプレゼントされたら嬉しい。深夜のショッピングはその2つの幸せをもたらしてくれる、私の夢の時間です。女友達は、恋人よりも大切にしたほうがいい。今の若い女性たちには、同性の友達を大事にしてと伝えたい。恋人ができると、同性同士の付き合いって変わっちゃうでしょ?先に友達と約束してたのに、「彼氏が会いたいって言ってるから…」って断るって、みなさんもしたり、されたりしたこと、あると思います。女友達と一緒にいるときは、ラフで、ざっくばらんで、気取らない自分でいられる。一方で、そんな必要ないんだけど、異性の前だと女の人は、つい自分を良く見せようとしがち。だから、同性の友達と過ごす時間って、自分らしくいるために絶対必要だし、貴重なんです。それからいざとなったとき、助けてくれるのは、女友達。だから、いい友達だと思う相手のことは、恋人以上に大切にして。女同士の友情を長続きさせるコツは、ただ1つ。信頼し、イラッとしてもその人の悪口を言わず、相手の相談に乗ってあげること。そういう友達がいない?大丈夫。いい友達は、大人になってからも作れますから。やしろ・あき歌手。1950年生まれ、熊本県出身。’71年にデビューし、’73年『なみだ恋』で大ブレイク。以来トップスターとして活躍。趣味の絵画も評価が高く、ボランティア活動にも熱心。※『anan』2021年4月28日号より。写真・中島慶子(by anan編集部)
2021年04月25日『日々是(ひびこれ)ファブ郎(ろう)』というヒット作は持っているが恋愛には縁がなく、胸キュンな少女漫画を描きたいという夢は遠のくばかり…。いくえみ綾さんの『ローズ ローズィ ローズフル バッド』の主人公は、そんな40歳の女性漫画家・神原薔子(しょうこ)こと神原正子。これといった不満はないけれど、「ときめきが足りない」「毎日が燃焼不足」と感じている女性たちに、ずーんと刺さるストーリーだ。「なんとなくノリで40という年齢にしてしまったんですが、もう少し上でもよかったかなと思っています。ただ、アラフォーで漫画家を生業にしているようなキャラであれば、生活や生き方についてのちょっとぼんやりした甘い考えもまだ許されるかなという気持ちもありましたね。そのあたりは彼女の個性なので見逃してください」変化のファーストステップは、正子と19歳の鷹野廉(れん)との出会いだ。エンガディナーというお菓子をきっかけに交わした会話で、一瞬だけときめきを思い出した正子だったが、すぐ忘れてしまうあっさり感もリアルで、共感ポイントかも。「自分も食べることや飲むことが好きなので、それに鈍感だったり正直だったりの愛すべき面…愛されるといいのですけれど…をプラスしてちょっと変な人にしてみました」また本作では、〈ファブ郎〉という作中作のキャラクターがナレーター兼ツッコミを入れる係として存在している。それによって読者は、正子の恋や悩みをある種の第三者的な視線からも知ることになる。「モノローグや描写にないところも説明できて便利な上に、読者さんにもわかりやすく伝わると思うので、やってみたかった手法でした。ファブ郎の造形は、『こんな小さいキャラだし、いちいち服描くのめんどいな、裸でいんじゃね?なら相撲じゃね?』みたいな思考だったかと。ひどいですね!(笑)」1巻では、これから正子の恋路を複雑にしそうな人物が続々登場。ドラマ制作会社で働く廉の父・鷹野怜は正子に興味津々。正子の初の女性担当・堂垣や、廉と仲のいい女友達の存在も、ひと波乱起きそうな予感がある。さらにそれは正子の仕事の展開とも関わっていきそうで、ハラハラどきどきしっぱなしだ。「正子は人より遅れているところがあるけれどゆっくり成長すればいいなと思っています。が、正直、成長しなくてもいいのかもなとも思っています。正子は何やっても割と勝手に動いてくれるので、描いていてとても楽しいです」『ローズ ローズィローズフル バッド』1本作で描かれる魅力的ないくえみ男子は、オトナな鷹野怜と爽やか大学生の廉という父子対決。正子のみならず、読者も翻弄されそう。『クッキー』で連載中。集英社660円©いくえみ綾/集英社いくえみ・りょう北海道出身。著書多数。集英社『ココハナ』で「1日2回」、小学館『月刊!スピリッツ』で「おやすみカラスまた来てね。」を連載中。※『anan』2021年4月28日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年04月22日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「大きな政府 小さな政府」です。日本はさらなる小さな政府になろうとしている。「大きな政府」とは、税金を多く集め、その分、社会保障を手厚くするという国のあり方。イメージでいうと北欧の国々です。国に対する国民の信頼は厚く、必然的に民主主義指数が高くなります。自分たちのお金が適切に使われているかを国民が監視しますし、投票率も高く、民意は強く反映されます。一方、「小さな政府」は、税率を抑える分、自分たちの力で自分たちの暮らしを維持するのが基本。外交や防衛は国が担いますが、国民の老後の面倒は自分たちで見るというスタンス。国がサポートするのは必要最低限です。小さな政府の代表はアメリカですね。日本には国民皆保険制度があるので、大きな政府のイメージがあるかもしれませんが、数字で見ると、先進諸国のなかでも小さな政府なんです。国の支出を公的社会保障に充てる割合は、2010年の対GDPで見ると、フランスが32%、アメリカが20%なのに対して、日本は22%とアメリカとあまり変わりません。公務員の数は、人口1000人に対してフランスは90人、イギリスは69人、アメリカは64人。これに対し、日本はわずか37人ととても少ないんです。足りない分は、非正規や契約の公務員がまかないます。先日もハローワークで働く職員の皆さんが雇い止めにあい、非正規の公務員が切られていることが問題になりました。私たちは普段から、自助を求められる国であるという認識を持つべきです。日本の場合、超高齢化や少子化により、十分な税収確保ができないという事情もあります。国の財政が厳しいので、民間事業者に公的分野の問題解決を担ってもらおうとしていますが、COCOA(新型コロナウイルス接触確認アプリ)が活用できていなかったり、原発廃炉作業問題、国立病院の不足による医療現場の疲弊など、弊害が出てきています。日本は1人当たりのGDPが下がって、稼ぐ力が弱くなってきています。政府はさらなる小さな政府を目指そうとしていますが、民間の競争を促すにしても、一部に有利な競争の仕組みを作るのは問題です。予算の支出先はどこなのか?私たちはきちんと見ておく必要がありますし、信頼関係をもって初めて税金を支払えます。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。新しい朝の報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~8:00)が放送中。※『anan』2021年4月28日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2021年04月21日10軒の一軒家が並ぶ袋小路。普段は平穏なこの住宅地だが、女性横領犯が刑務所を脱走、この地域に向かっているというニュースが流れ、住民たちはそれぞれの思いを抱く。津村記久子さんの新作『つまらない住宅地のすべての家』は、そこから始まる人間模様を巧みな筆さばきで描き出す長編小説だ。静かな住宅地に起きたさざなみ。隣人の顔が見えてくる群像劇。「テレビで容疑者の逃亡事件がニュース速報で流れるたびに、犯人が逃げている方面に住んでいる人たちってどんな気持ちだろうって必ず想像するんです」もうひとつのきっかけは大好きな作家、マーガレット・ミラーのミステリー『まるで天使のような』。「私立探偵が人捜しを依頼される話ですが、銀行の金を横領して捕まったアルバータという女性が出てくるんです。重要ですが登場シーンは少ない人物で、もっとこの人のことを読みたいと思っていました」本作の脱獄犯・日置はこの地域出身で、住民の中には元同級生もいる。住民たちは彼女が逃げ込んでくるに違いないと判断、交代で見張りを立てることに。10世帯それぞれの人物造形が秀逸。登場人物は多いが、ステレオタイプが一人もいない。不穏な人間もいて、幼い少女を誘拐しようと企む男や、言うことを聞かない息子を閉じ込めようとしている両親もいる。「誘拐を企む望という男は、自分は世間から奪われてきたから奪い返さないといけない、と図式的に考えている。そういう人が近所の人たちの中に放り込まれた時、違う窓が開くんです。望が隣のおばあさんに萌えポスターを見られて意外な反応をされる場面は、力を入れて書きました」見張りを置くことを提案したのは自治会長の丸川だが、彼はシステマティックに物事を考えるタイプ。「礼儀正しいけれどビジネスライクな人ですが、そのほうが接しやすいこともある。感情のこもった交流のほうがいいと言われがちだけど、それは言いすぎやと感じています」一方、笠原家の老夫婦と松山という壮年の一人暮らし男性は、普段から一緒に七並べをする仲。「以前、『探偵!ナイトスクープ』で、母親が夜出かけるのが怪しいという調査依頼があって、調べたら近所の人たちと七並べしていたんです。それがすごく楽しそうで、いつか小説にしてみたかった(笑)」ただ、多くの住民は日頃は交流はなく、隣人のこともよく知らずにいた。それが逃亡犯のニュースによって変わり、人生に影響を与えていく。「日置は目的があって逃亡していて、住民たちのことは考えてもいない。私は“あなたの人生を変えてあげます”といって現れるものは信用していません。おこがましいわーって思う。人生が変わる瞬間は、小さな偶然の結果であってほしいし、全然違う方向から吹いてきた風が変化を与えることもある。だから失望するなって言いたかったのかもしれない」終盤はそれぞれの行動が絡み合って意外な結果を生み、伏線が回収される爽快感が。ちなみに3世代が暮らす長谷川家の祖母にラスボスのような風格があるが、「ロス・マクドナルドの『さむけ』のある怖い登場人物をモデルにしています。今回は大好きな夫婦作家(※ミラーとマクドナルドは夫婦)の影響を受けて書きました!そこにナイトスクープも入れました!という感じですね(笑)」その結果、津村さんならではの極上の群像劇が生まれたわけだ。『つまらない住宅地のすべての家』コンビニもない静かな住宅地。横領犯の女性が脱獄、この地域に向かっていると知った住民たちは交代で見張り番を立てることに。それぞれの反応と事情とは。20人以上の日常が絶妙に交錯する群像劇。双葉社1760円つむら・きくこ1978年、大阪府生まれ。’09年「ポトスライムの舟」で芥川賞、’16年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、’17年『浮遊霊ブラジル』で紫式部文学賞など受賞多数。※『anan』2021年4月21日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2021年04月20日熊倉献さんの『春と盆暗』は、日常と不思議な現象の境界が薄れていくような世界観で、初コミックながら多くのマンガ好きを唸らせた。待望の新作『ブランクスペース』は、空白(ブランク)をめぐる物語だ。青春の波に乗れない少女たちが、空白から生み出すもの。「女の子ふたりの話は、以前から短編としていくつかアイデアがあって、それをまとめて長編にできないかなと思っていました」身も蓋もない言い方だが、熊倉さんのマンガの特徴は言葉で表現しにくい部分というか、説明しても理解しづらいところに宿っている。本人もそのことを自覚しているようで、「説明が難しいから」と本作の構想を8ページほどの予告編としてまとめて、担当編集者と共有したそう。「映画の予告編みたいな感じで、クライマックスも一応わかるものです。担当さんと打ち合わせた内容とは全然違ってしまったのですが(笑)」狛江ショーコは帰り道で偶然会った同級生の片桐スイが、不思議な力を持っていることを知る。左のコマがそのシーンで、スイは念じたモノを現実に生み出すことができる。ただしその物体は、目に見えない。「かわいい女の子を描くのが好きなんです。ショーコは明るいけれどトンチンカンなところがあって、『あの子ちょっと変だよね』みたいに見られている子。スイは優等生だけど学校があまり好きではなく、屈折した子というイメージです」そもそも本作を描くにあたってオーダーされたのは、青春モノ。皮肉なことに熊倉さんは、青春モノを読むのも描くのも苦手で避けてきた。「爽やかな青春っていうのがピンとこなくて…。自分の学生時代も楽しいことがあるにはあったけど、つらいことのほうが多かった気がするので。似たような人は一定数いるはずなので、そういう人でも楽しめる青春モノを描こうと思いました」ふたりの距離が縮まっていく前半に対して、後半は少々不穏な空気が漂ってくる。陰湿ないじめに遭うスイは次第に破壊衝動を抱くようになり、マイペースなショーコはクラスが分かれてしまったこともあり、彼女の変化にすぐに気づくことができない。そして読者も、独特な雰囲気をふわふわと楽しんでいたはずが、1巻を読み終える頃には、予想していなかった場所にいることに。「面白い絵が自分でも見たいんです。描きやすいけど退屈なものより、絶対に大変だとわかっていても、描いていて楽しい印象的な絵にしたい」想像力を掻き立てられる“空白”は、この先、何を生み出すのか。1巻にして早くも、名作の予感が!『ブランクスペース』 スイの不思議な能力を偶然知ったショーコ。空白からの無邪気なモノづくりは、いじめを機に暴力的な方向へ。「コミプレ・ふらっとヒーローズ」にて配信。ヒーローズ715円©熊倉献/ヒーローズくまくら・こんマンガ家。アフタヌーン四季賞「2012年夏のコンテスト」で佳作受賞。’14年デビュー。『春と盆暗』『生花甘いかしょっぱいか』など。※『anan』2021年4月21日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2021年04月19日出会った女性がネタの源。そんな横澤夏子さんが、街で見つけたいい女を実演。今回は、言葉のチョイスが素敵な女性「言葉に深みがある女」になりきり。本をたくさん読むことで語彙力と表現力を高めよう。家事代行のプロの方にお話を伺うという内容の番組があったのですが、そのディレクターさんに、「今日、お話ししていただく先生は、声が鈴の音のような方です」と言われて驚きました。実際にお会いしてみると、とても上品で優しそうな方で、ディレクターさんの表現がぴったりだと思ったのですが、その言葉のチョイスが面白いと思ったんです。ほかにも、あまり聞いたことのないような敬語をさらりと会話に交ぜてきたり、「くったくのない」などの言葉を使っていて、思わず、“どういう意味だっけ”と調べた場面もありました。ただきれいなだけではない、普段使わないような言葉たちをどうやって知り、ボキャブラリーとして身につけたのか、気になって仕方がありません。その人自身は、明るいけれど声のトーンが低くて品があり、忙しかったり大変そうなイメージの強いテレビ業界の雰囲気には、いい意味であまり染まってなさそう。どちらかというと図書館とかにいそうなタイプで、余裕を感じました。彼女のようになるためには、まず、いろいろな言葉をインプットするために、本をたくさん読むことがいいのではないでしょうか。勝手なイメージですが、東野圭吾さんの作品が好きそうなので、ミステリーとかを中心に手に取ってみるといいかもしれません。純文学のようなものもよさそうです。あとは、日頃から一つのことについてさまざまな言葉で表現してみたり、同義語を調べてみるなど、トレーニングをすることで、自然とボキャブラリーは増えていきそうです。ほかにも、いろいろと気になる言葉を使っていたのですが覚えていないものもあり、メモをとっておけばよかったと後悔中。また彼女と仕事でご一緒できる日を楽しみにしています!よこさわ・なつこ芸人。“ちょっとイラッとくる女”のモノマネで大ブレイク。婚活で培ったテクニックをまとめた著書『追い込み婚のすべて』(光文社)が発売中。昨年2月に第一子を出産。※『anan』2021年4月21日号より。写真・中島慶子文・重信 綾(by anan編集部)
2021年04月18日人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。今月のゲストは八代亜紀さん。第3回は「舞い上がる雪の中からトラック野郎が登場!」です。デビュー2年目、再起をかけて勝ち抜き音楽番組に挑戦し、7週くらい勝ち抜いた頃、急にトラックの運転手さんたち、いわゆる“トラック野郎”からの応援が始まったんです。私が頑張っている姿をテレビで見てくれたのかしらね、「八代亜紀は俺たちが守る!」って言ってくれて。私の歌声が、母親、女房、子供からのメッセージに聞こえる、って。そりゃあ驚きましたよ。だって、北海道のレコード屋さんの店頭で、「八代亜紀です」って挨拶してたら、トラックが勢いよく止まり、雪がブワ~ッと舞い上がって、トラッカーのお兄さんがジャンパー姿で現れてね、「八代亜紀、いいね!サインしてくれ!」とか言うんだもの。もうみんなびっくり(笑)。でもね、運送業を営む父が、いつも長距離トラックドライバーのことを気にかけていたことを知っていたから、そういう皆さんを励ますことができているのかと思うと、とても嬉しかったし、幸せな運命を感じました。イントロを聞くだけで、曲の世界に入れます。デビュー当時の日本は本当にいろんな音楽が流行っていて、流行りの曲を歌う歌手を“流行歌手”といっていたのね。私もその一人でした。でもデビューから4年くらい経った頃から、演歌を歌うことが多くなってきた。ただ私の中では、どんなジャンルでも関係ない。“八代亜紀の歌”を歌いたいんです。自分でもおもしろいな、と思うんですが、イントロを聞くと、スッとその曲の主人公になれちゃう。演歌には男の気持ちを歌い上げる“男歌”といわれる曲があるんですが、カメラマンさんいわく、さっきまで女心を歌っていたのに、男歌のイントロが流れると、顔つきがガラッと変わるんですって。確かに言われてみれば、“俺についてこい!”みたいな気持ちになってるの、私(笑)。昔から感受性が強かったみたいで、言葉がしゃべれない頃から、子別れの浪曲を聞いては泣いてたらしいんです。歌手として、その感受性の強さが役立っているのかしらね。やしろ・あき歌手。1950年生まれ、熊本県出身。‘71年にデビューし、‘73年『なみだ恋』で大ブレイク。以来トップスターとして活躍。趣味の絵画も評価が高く、ボランティア活動にも熱心。※『anan』2021年4月21日号より。写真・中島慶子(by anan編集部)
2021年04月17日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「米中外交」です。体制の違いにより対立が顕著に。注視が必要です。アメリカの外交政策を、国際協調から「アメリカ第一主義」に大きく方向転換したトランプ前大統領。バイデン大統領は2月の演説で、「アメリカは戻ってきた」と世界に向けてメッセージを発し、再び協調体制に戻すこと、失われた同盟関係を修復することを宣言しました。問題は対中国です。就任前には「弱腰になるのでは?」と推測する声がありましたが、それを覆すかのようにバイデン政権は中国に強い姿勢を示しています。人種や宗教によって差別することは許さないと、新疆ウイグル自治区や香港、東南アジアに対する中国の挑発的な支配姿勢を批判。「中国の経済的虐待に立ち向かう」「人権や知的財産、グローバルガバナンスに対する中国の攻撃を押し返す」などと表現しました。中国への強硬姿勢は、トランプ時代と変わりませんが、バイデン大統領は「アメリカの国益となる場合は、中国政府と協力する用意がある」と付け加えることも忘れませんでした。しかし、米中関係は日に日に緊張感を増しています。3月に行われた米中外交トップ会談では、人権に反する中国の行為を非難したアメリカに対し、「内政に干渉する行為には断固として反対」と、中国側は強く反発しました。中国は自らを民主国家と謳いますが、民主主義の定義が私たち自由主義国とは異なり、最終決定権はすべて中国共産党にあります。バイデン大統領は、中国が民主国家に変わることを期待していたのですが、体制の違いは露わになるばかり。3月末の記者会見でバイデン大統領は「21世紀における民主主義と専制主義のどちらが機能するかの闘い」と発言し、対立を極めました。習近平国家主席は、オバマ政権のころには「G2」として、中国とアメリカで世界の秩序を作ることを呼びかけていました。ところがトランプ政権になり対立関係に。本音ではビジネス上で繋がっておきたい両国ですが、不当逮捕や弾圧が日常的に行われる国相手では安心して投資はできません。今後、たとえば台湾をめぐり、米中関係がさらに悪化した場合には、日本の米軍基地から中国にプレッシャーをかける可能性も。他人事ではいられないのです。堀潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。新しい朝の報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~8:00)が放送中。※『anan』2021年4月21日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2021年04月16日最近、健康志向の人のSNSなどでよく目にするおしゃれな朝食“オーバーナイトオーツ”。欧米のウェルネスフード事情に詳しいWOONINさんに、注目の理由や利点を聞いてみた。「日本では“えん麦”として知られるオーツは、人間に不足しがちなマグネシウムやカルシウム、鉄分などのミネラルや食物繊維を豊富に含み、栄養バランスが手軽にとれる食材。粒状、潰したロールド、粉末の3タイプが一般的に流通していて、料理によって使い分けられています。欧米では昔から、オーツをおかゆのようにクツクツと煮込んだものが朝食として食べられてきました。ロールドのオーツを一晩、プラントベースのミルクに漬けた“オーバーナイトオーツ”が日本で注目されはじめたのは、昨年の外出自粛中。自炊が増える中で栄養バランスをとりつつ朝食の時短にもなる。そしてトッピングで華やかに盛り付けるとSNS映えもして楽しいというのが主な理由でしょう。私は多めに作り小腹がすいた時のおやつ代わりにもしています」自分の生活スタイルに合わせて取り入れられるオーバーナイトオーツ。基本の作り方やトッピングのバリエをWOONINさんがレクチャー!Step1:基本はロールドオーツとプラントベースミルク。オーツ1カップとアーモンドミルクやライスミルクなどお好きなミルク300mlをジャーに入れて蓋をしてシェイク。そのまま冷蔵庫の中で一晩寝かせて出来上がり。鮮度を保つため塩をひとつまみ入れると安心。Step2:決まりはナシ!自由にトッピングを楽しんで。一晩漬けたオーバーナイトオーツは、器にあけてそのまま食べてもOKだが、さらに栄養や彩りをプラスすると美味しさも倍増!どんな食材とも相性がいいので、自分の感覚やセンスで楽しんでみて。+スーパーフードダイエットにも効果的だといわれるチアシードをスプーン1杯、オーツと一緒に漬けてもいいし、抗酸化成分“ポリフェノール”などが豊富なカカオニブを後がけするのもおすすめ!+フルーツアサイーボウルのように、お好きなフルーツをトッピングするのもよし。ブルーベリーやリンゴ、バナナ、キウイなどをのせると食べやすくなるうえ、インスタ映えする華やかさ!Step3:さらに甘みやパウダーを足してスイーツ感覚で!作り慣れてきたり、栄養の知識や余裕があれば、今足りないと思う栄養素や味変できるトッピングをその日の気分に合わせて楽しむのも自由。ナッツやパウダー類、シロップなどを取り入れると、かさ増しせずに栄養補給に。高抗酸化作用でアンチエイジング効果が期待できるターメリック、血糖値の上昇が穏やかな低GIのメープルシロップ、冷え症改善にもなるシナモンがおすすめ。WOONINさんスーパーフード&ライフスタイルクリエーター。スーパーフードを日本に広めた第一人者で雑誌や企業のレシピ開発なども手がける。※『anan』2021年4月14日号より。写真・中島慶子イラスト・菜々子取材、文・若山あや(by anan編集部)
2021年04月13日不調や風邪とおさらば。今こそ“鼻うがい”にチャレンジ!“鼻うがい”とは文字通り、鼻のうがい。普段は洗うことのない鼻の中に専用洗浄水や塩水を流すことで、花粉やハウスダスト、アレルギー物質などを排出することができる。また、鼻の粘膜を湿らせるとウイルスの侵入を防ぐことにもなるため、手洗い&うがいとともに再び注目を浴びているのだ。鼻うがい後の爽快感、ぜひ味わってみて。菜々子さんが試したのは…ハナノアb シャワータイプ鼻うがいが苦手な人や初心者向けのシャワータイプ。鼻から洗浄液を流し入れたら、反対側の鼻から出すだけのテクいらず。体液に近く鼻がツーンと痛くならない専用液だから、鼻の奥の花粉や雑菌をしっかり除去できる。洗浄器具+専用洗浄液 300ml¥1,100(小林製薬お客様相談室 TEL:0120・5884・06)サイナス・リンス スターターキット専用ボトルに36°C程度のお湯と、付属の生理食塩水のもとを入れるだけ。どんな鼻の形状にもフィットするキャップから、240mlのたっぷりの洗浄液が噴射され、鼻腔や副鼻腔までやさしく丸洗い。防腐剤・香料無配合。洗浄ボトル+生理食塩水のもと 10包¥1,100(ニールメッド)ネティポットインドの伝統医療アーユルヴェーダでは“鼻ヨガ”といわれている鼻うがい。ネットでも買える専用のネティポットはプラスチックや陶器、ステンレスなどさまざまな素材があり価格は1000円以下から3000円ほど。あとは水と食塩があれば、いつでも鼻うがいができるため、慣れてきたら切り替えるのもよし。※『anan』2021年4月14日号より。写真・中島慶子イラスト・菜々子取材、文・若山あや(by anan編集部)
2021年04月13日ジェンダーギャップや結婚、高齢化など今日的な問題を題材に、問題提起していく作品を多く手がけている垣谷美雨さん。最新刊『代理母、はじめました』では、自然災害によりスラム化した2040年の東京を舞台に、少子化や不妊治療、代理出産などに焦点を当てて物語が進む。「もしも」の世界から見つめる、子を抱くことの願いと痛みと希望。「私はよく『if(イフ)の物語を書く』と言われます。この作品でも舞台としたのは地震や台風など災害が多い日本です。その上、原発の問題もすでに『もしも』とは言えないところまで来ています。今後も災害によって格差が広がり、自己責任の名のもとに人々の心が荒廃していくこともありえます。そうならないために今どうすればいいかを考えてみたかったのです。極端な設定で描くと、頭の中にある想像力を思う存分使えるので挑戦しがいがありました」24の章からなり、ふたつの視点で描かれる。奇数章の語り手は、義父の奸計で16歳で代理母をさせられ、その経験から代理母ビジネスに切り込んでいくユキ。偶数章は、社会の矛盾を許さないと奮起する役割でもあり、女性が抱えるいろいろな悩みを聞く役割も持つ倉持芽衣子医師。「世間知らずの少女と、人生経験豊富で教養のある大人の女性を対比させ、女性同士で互いに助け合う思いやりや優しさ、年齢差に関係ない友情などを表現したかったんですよね。『女の敵は女』などという家父長制的価値観にどっぷり浸かった昔ながらの男たちの戦略を、撃退したかったという気持ちもあります」本作では子どもを欲しがる人々の思惑が絡んでいるため、ジェンダー問題や経済格差など、社会の課題がリアリティをもって迫ってくる。「若いころから産婦人科医療が置き去りにされていると痛切に感じてきました。がんなどに比べ、妊娠出産、中絶、更年期に伴う様々な体調不良などの研究は進まず、欧米では100年も前から取り入れている処方や薬さえ日本の医療現場では使っていません。後々の世代まで引きずらないよう、すぐにでも解決してほしいという切なる願いを込めています」作中に〈この国は、考えると虚しくなる「もしも」がいっぱいだ〉とあるが、登場する女性たちのように、女性がいつか政治や組織の決定の場で力を持ち、社会を変えるかもしれない。そんな希望を感じる小説だ。『代理母、はじめました』家父長制社会の価値観から呪いのように投げかけられてきた言葉への違和感。それに気づき、抵抗するユキや芽衣子の存在が頼もしい。中央公論新社1760円かきや・みう作家。兵庫県生まれ。会社勤務を経て2005年「竜巻ガール」で小説推理新人賞を受賞しデビュー。今秋、熟年離婚小説『もう別れてもいいですか』を中央公論新社より刊行予定。※『anan』2021年4月14日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年04月13日出会った女性がネタの源。そんな横澤夏子さんが、街で見つけたいい女を実演。今回は、相手のことを思って勇気を出せる女になりきり。ハンカチから始めてハードルを上げていこう!もう何年も前になるのですが、『オオカミくんには騙されない』という番組でMCを始めたばかりの頃。収録用の2回分の衣装を、自分で用意する必要があったのに手違いでそれを知らずに現場に行ったことがありました。その日、私が着ていたのは毛玉だらけのどす黒い色のトレーナー。でも、どうしようもないので1本目はそれで出たのですが、問題は2本目です。困っていたら、番組のアシスタントプロデューサーの方が、「これでよかったら…」と自分が着ていたニットを脱いで貸してくれたんです。この間、たまたまその時の話になったのですが、なかなかできないことだよな、よく貸せたなと思いました。家に泊まりに来た友だちにパジャマを貸す時だって、「変な匂いとかしないかな?」と気を使うのに、着ているものをその場で渡せるというのは、すごいスキルです。なかなか貸すほうの立場になることってないし、相手にどう思われるんだろうと考えたら、私にはできないなと。しかも、最悪の場合、相手が汚したとしても何も言えません。「大丈夫ですよ~!」と許すしかないと思うと、実践できる人は広い心を持っているに違いありません。また、貸せる人と同様にすごいと感じるのが、自分が着ていた服を後輩とかにあげる人です。ハリセンボンの(近藤)春菜さんがまさにそうで、センスがいいからもらうほうも嬉しそうにしています。私の服なんて基本毛玉だらけなので、欲しい人いるのかな?と思っちゃうし、勇気のいる行動ですよね。まずはハンカチを2枚用意しておいて、一枚は人に貸すためだけに持っておく。そこからスタートして、マフラーやストール、カーディガンとどんどんハードルを上げていくと、貸すことへの抵抗も少なくなりそうです!よこさわ・なつこ芸人。“ちょっとイラッとくる女”のモノマネで大ブレイク。婚活で培ったテクニックをまとめた著書『追い込み婚のすべて』(光文社)が発売中。昨年2月に第一子を出産。※『anan』2021年4月14日号より。写真・中島慶子イラスト・別府麻衣文・重信 綾(by anan編集部)
2021年04月11日人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。今月のゲストは八代亜紀さん。第2回は「人生の大事な節目を、見逃しちゃ駄目よ」です。実はデビュー当時は苦労が多かったそうで、そんな時代のお話を伺います。「不良はいらない!」と勘当されてしまい…。私が12歳の頃、父が独立して会社を起こしたんですが、あまり上手くいかなくて。優しくてなんでもできる父が苦悩する姿を見るのが辛く、「私が歌手になって、父を助けよう」と思い、中学卒業後、こっそりキャバレーで歌い始めたんです。15歳だったんですが、18歳と偽って。が、たった3日でバレまして、「そんな不良はうちにはいらん!」と、私を勘当!傷心のまま私は上京し、働いて学費を稼ぎながら、音楽学校に通いました。当時の私の中では、歌手といえばクラブ歌手。いわゆるお酒を飲むお店で、リクエストに応えて歌う歌手のことね。紆余曲折を経て銀座のクラブで歌えるようになったときは、「夢が叶った!」と本当に嬉しかった。「アキちゃんの歌を聴きたい」ってお客さんがたくさん来てくれたし。レコード会社からたくさんスカウトの人も来てくれたんだけれど、「クラブ歌手のほうが素敵だから、興味ありません」ってずーっと袖にしてたんです。あるときお店のお姉さんが、「お店に来られない人にもアキちゃんの歌の魅力が伝わるから、レコード出してよ」と応援してくれたので、挑戦することに。故郷の八代市から文字をいただき、“八代亜紀”としてデビューしたわけ。それが21歳。だがしかし、売れない。銀座ではあんなに大人気だったのに、さっぱりレコードが売れない。そのときは辛い気持ちよりも、「どうして?」という思いのほうが強かったかな。そこからとりあえず2年頑張ったんだけど、いよいよもう後がないとなったとき、再起をかけて『全日本歌謡選手権』という勝ち抜き音楽番組に出場し、10週勝ち抜くことができ、八代亜紀は生まれ変われた。人生の中で、どう生きるかを決断する瞬間って絶対来る。それがいつなのかは人それぞれだけど、私は23歳のときだったのね。そこで勇気を出して、舵を切ることができて、やり直す決断ができてよかった。みなさんもそういう節目を、見逃さないでね。やしろ・あき歌手。1950年生まれ、熊本県出身。’71年にデビューし、’73年『なみだ恋』で大ブレイク。以来トップスターとして活躍。趣味の絵画も評価が高く、ボランティア活動にも熱心。※『anan』2021年4月14日号より。写真・中島慶子(by anan編集部)
2021年04月10日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「孤独・孤立対策担当室」です。孤独は社会問題。官民協力体制で根本的解決を。長引くコロナ禍で、大学では休講やオンライン授業が続き、アルバイト先の休業や閉店で経済的に困窮。休学・退学する学生が多く出ているというニュースがありますが、実は前年同期比でいえば、中途退学者は2割減。休学者は1割減です。学校側が授業料の納付期限を猶予したり、困っている生徒の授業料の減額や免除を行ったため、この1年は持ちこたえました。ところが今後はどうなるかわかりません。注視しなければいけないのは、学生たちのメンタルヘルスです。日本では新型コロナウイルスによる死者数よりも自殺者数の増加率が高く、とくに若い世代や女性の自殺が増えています。2020年1月~11月の統計では、増減率では20代が最も高く17%増、19歳以下の未成年は14%増。小中高生は479人と1980年以降で最多となりました。人に会えないこと、将来の不安、経済的困窮などが要因になっていると考えられます。コロナ禍で、世代を超え孤立している人が増えている現実を踏まえ、政府は内閣官房に「孤独・孤立対策担当室」を新設。省庁横断で本格的な対策に動きだすことにしました。参考にしたのはイギリスです。イギリスでは、孤独が身体に及ぼす影響を科学的に証明。死亡リスクは26%、脳卒中を発症する率は32%アップ、認知症発症率にも影響があるという数字が。これを機に2018年、孤独担当大臣を設置。約28億円規模の予算を組み、どういう人が孤独を感じ、支援の対象になるかの指標を算出し、相談体制の強化、職の支援や低所得対策を行いました。以前より孤独担当相の創設を訴えていた国民民主党の昨年11月の資料によると、東京23区の単身高齢者の孤独死は10年間で1.7倍に。全国の単身世帯数は34.5%、生涯未婚率は男性23.37%、女性14.09%でどちらも増加中。高齢者の親と無職の子供の“8050”世帯は2013年時点で推計約60万世帯、引きこもりは推計約61万人、シングルマザーは約123万世帯、うち半数が相対的貧困というように、日本には孤独があふれています。これらに対処することが、経済、医療福祉、少子化対策の一助になると思います。堀潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~8:00)が4/1スタート。※『anan』2021年4月14日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2021年04月10日思いがけない人間関係やエピソードが交錯していくリーダビリティの高さが、村木美涼さんの小説の魅力だ。『商店街のジャンクション』もまた、着ぐるみが媒介となって物語は意外な方向へ転がっていく。商店街で、着ぐるみでチラシ配りのアルバイトをする、男女3人の物語。主な登場人物は、IT系会社員の滝田徹、インフォメーションセンターで働く水谷佳菜、追われる身の兵頭健太という3人の男女。「『着ぐるみの中にいる時間を何よりも大事にしている男』『すべての物事を右からしか始められなくなった女』『ただひたすら面倒から逃げている男』。この先もこのままでいいのかとうっすらとした不安を抱いている彼らがどう変わっていくかが読みどころかなと。着ぐるみの名前を〈チョッキー〉にしたのは、着ぐるみの中でVサインをしているからという単純な発想からです(笑)」村木さんの作品では、「この人物には何か人に言えない秘密や悩みがあるんだな」と思わせる場面が早い段階から明示されるのだが、その具体的な中身はなかなか明かされない。だが、作中に出てきた〈偶然こそが生きている証しだ〉という意味深な言葉が、テーマをよく表している。「10年くらい前から“偶然”というものについて考えるようになりました。よく“単なる偶然”などと言いますが、思いつきでしたこと、あるいはしなかったこと。それらが巡り巡って誰かのもとに偶然として届いたときに、もしかしたら、その人の人生を大きく変えるかもしれない。そんな考えはいまもずっと続いています。それを私なりにいろいろ考えた結果が、バラバラに見える4人の男女のエピソードがつながる『窓から見える最初のもの』で、あれは言ってみれば、偶然が主人公の作品だと思うんですね。本作ではラストに置いた『00』部分で、そんな思いをよりはっきりとした言葉にすることができたかなと思っています」過去作がいずれもミステリーの文学賞を受賞していることからもわかるように、作中に謎は入っているものの着地は奇妙。だがそこが痛快だ。「作品を出すたびに『これってミステリー?』と言われます。本人はあまり気にしていなくて、どうしてもこうなってしまうからしかたがないと、最近は開き直っている部分も。これからもそうした作品をマイペースで書いていきたいです」村木美涼『商店街のジャンクション』「登場人物を自分で理解するために表には出さない短編を書くということをよくします」。「00」という章も、そんな気持ちで加えたそう。早川書房1870円むらき・みすず作家。宮城県生まれ。2017年『窓から見える最初のもの』でアガサ・クリスティー賞大賞を受賞しデビュー。‘19年『箱とキツネと、パイナップル』で新潮ミステリー大賞優秀賞。※『anan』2021年4月7日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年04月05日人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。今月のゲストは歌手の八代亜紀さん。天真爛漫でキュートな魅力が炸裂します!第1回は「スタートはハスキーボイスの歌姫との出会い」。もともと、歌やお芝居ごっこをするのは好きでした。ただ小さいころの私はシャイで人前に出るのがダメ。いつも障子を閉めて、一人で歌ったりお芝居したりしてたんです。あるとき障子が少し開いていて、そこに歌う私をこっそり見る父の目が…(笑)。たぶん私が歌好きなことは知っていたと思います。中学に上がるころ、父親がジュリー・ロンドンという歌手のレコードをくれまして。父は浪曲しか聴かないから、ジュリー・ロンドンが誰かは当然知らなかったんですけれど、小さいころ私が、ドレスを着てワイヤレスマイクを持って歌う女性の絵をよく描いていて、その絵とジャケットが似てるからって。そう、今でいうジャケ買い。でもそのレコードを聴いたら、私と同じハスキーボイスでジャズやボサノバを歌っていてカッコいいのなんの!すぐ虜になっちゃって、私もこういう歌手になりたいと、心を決めた。今思うと、そこが運命の第一歩だったかもね。近所の人が座布団を持ち、歌を聴きに来た?!小学校低学年のときだったかな、地元でのど自慢大会みたいなものが開催され、いろんな偶然が重なり、私が出ることになっちゃって。しかもなんと、優勝しちゃったの。それ以降、週に1回近所のおばちゃんたちが座布団を持ってうちに来て、「アキちゃんの歌を聴きに来た」って言うんです。自分では正直意味がわからないですよ。人前で歌うのは全然得意じゃないのに…。それで、困ってもじもじしていると、それを見ている父の顔が、だんだん怖くなってくるわけ。「何をグズグズしてるんだ…」と言わんばかりに、片方の眉毛が上がってくる(笑)。怖いし、怒られそうだし、もう泣きたい、という瞬間に、だいたい母が、そっと10円をくれる。そうしたら、歌うしかないわよね。当時の流行歌だった、美空ひばりさんの曲を歌ったりしてました。そういえば父が、「アキはギャラをもらわないと歌わないのか」って、冗談で言ってたのもいい思い出です。やしろ・あき歌手。1950年生まれ、熊本県出身。‘71年にデビューし、‘73年『なみだ恋』で大ブレイク。以来トップスターとして活躍。趣味の絵画も評価が高く、ボランティア活動にも熱心。※『anan』2021年4月7日号より。写真・中島慶子(by anan編集部)
2021年04月04日名画『グランド・ホテル』といえば、ホテル内で複数の人間のドラマが同時進行で進む名作映画。下村敦史さんの新作『ヴィクトリアン・ホテル』はまさにこの“グランド・ホテル方式”に則った作品だ。高級ホテルに来た訳ありな人たち。巧妙な伏線に驚愕必至のミステリー。「最初は爆弾テロ計画などの犯罪事件も考えましたが、今回は人間模様を重視することにしました」と言いつつ、巧妙な伏線が仕掛けられる本作。老舗ホテルにやってくるのは悩みを抱えた女優、人生を諦めた老夫婦、宣伝マン、パーティ会場で新人賞の授賞式に臨む若手作家、借金まみれのスリら。彼らの運命が思わぬところで交錯していく。「もちろん、ミステリーとして面白いこと、驚かせることを考えました。と同時に、新しい視点を提示したかった。もとの映画がお金と愛情がテーマになっているようにひとつのテーマで登場人物を結びつけるのも方法だと思って。自分は“優しさ”でいくことにしました。前作『同姓同名』で悪意を徹底的に書いて毒素が全部出されたのか、今回は善意がメインになりました(笑)」だが、ほのぼのした内容なわけではない。たとえば女優は駅で困っていた人を助けた行為がSNSで「騙されたのでは」「犯罪を助長する」と非難されてしまった。「当事者同士は喜んでいるのに関係ない人が批判してくる。そうすると、もう人に親切にするのはやめておこう、となってしまう」作家も、作品内の人物造形について理不尽な批判を受けて悩んでいる。「たとえ多くの人からいい反応を得た小説でも、必ず怒ったり批判してくる人がいる。作中で作家同士が語る場面は、自分なりに答えを導きたいという気持ちで書きました」悩める人たちが交錯する本作。ホテル内で誰がいつどこにいて、どんな影響を誰に与えるのか、タイムテーブルを作るのは至難の業だったという。そのなかで、状況によって同一人物の印象が変わることも。「何か失敗した人を、その一部分だけ取り上げていつまで裁き続けるのかということはよく疑問に思うので、それが小説の中に表れていますね」そんな人間ドラマを堪能しているうちに、終盤、読者は実に巧妙な仕掛けに気づいて唖然とすることに。帯の「一気読み&二度読み必至!」の惹句、これ、本当です!高級ホテルにやってきた訳ありの人々。ロビーや廊下、レストランやパーティ会場で彼らが出会う時、運命の番狂わせが起きることに。実業之日本社1600円しもむら・あつし1981年、京都府生まれ。2014年『闇に香る嘘』で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。以降、社会派ミステリーで人気を博す。著書に『生還者』『コープス・ハント』『同姓同名』など。※『anan』2021年3月31日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2021年03月30日出会った女性がネタの源という横澤夏子さんが、街で見つけたいい女を実演。今回は、積極的に最新曲をインプットする女性、「ぴったりの曲を選べる女」になりきり。選曲スキルが高い人はムードメーカーとして活躍。以前、出演番組のためのアンケートで、「ドライブソングはなんですか?」と聞かれたことがあったのですが、私は何もなかったんです。でも、答えていた人の選曲を聞くと、とても勉強になりました。それは、曲をたくさん知ってないとできないこと。ラジオのDJじゃないですが、雨の日にはしっとりした雰囲気のもの、寝ちゃいけない時には爆上げな音楽などと、その時どきの場面に合う楽曲を流せる人はムードメーカーとしても活躍できますよね。その人がいるおかげで、きっと空気がまるくなっているはずです。実際、雑誌の撮影の時に私の大好きなモーニング娘。の曲を流してくれた人がいて、すごく気分があがりました。私を笑顔にするために気遣ってくれたと思うとすごく嬉しかったです。カメラマンさんの中にはオシャレで、でもみんなが知っているようなちょうどいい曲をかけている人が多い気がしますが、これってすごいことですよね。私が聴いている曲は万人にウケるものというより、自分にとってのヒット曲なので、なかなか人に披露するにはハードルが高いもの。ちなみに今は、大好きなドラマ『愛の不時着』のサウンドトラックをよく聴いているのですが、あまりよく知らない人がいる場所では、なんとなく流しづらいですよね。まずは、いろいろな曲をインプットするところから始めてみましょう。おすすめはラジオを流しておくこと。FMを聴いていれば、だいたいのヒットがわかります。ヒット曲から最先端なものまで、聴いたことのある曲を増やしておきましょう。それから、ドライブ、ホームパーティ、読書、土曜の昼下がりなどと、シーンごとにぴったりのイメージソングを選んでみると、選曲するスキルがだんだんと身についていくはずです!よこさわ・なつこ芸人。“ちょっとイラッとくる女”のモノマネで大ブレイク。婚活で培ったテクニックをまとめた著書『追い込み婚のすべて』(光文社)が発売中。昨年2月に第一子を出産。※『anan』2021年3月31日号より。写真・中島慶子イラスト・別府麻衣文・重信 綾(by anan編集部)
2021年03月27日自分には卑屈なところなど一切ないと断言できる人なんて、はたしているだろうか。主人公の斎藤恭平は、ネガティブで存在感が薄いことを自覚している、いわゆる“陰キャ”の大学生。三浦風さんの初連載となる『スポットライト』は、デビュー作「ないものねだり」がプロトタイプとなっている。自分がかわいいのはみんな一緒!?まぶしくて辛辣な大学生群像劇。「その主人公も陰キャっぽかったのですが、もっと盛ってみようということになり、結果、かわいそうな感じになってしまいました(笑)」自分と他人との間の防護壁のように、首からいつも一眼カメラをぶら下げている斎藤は、大学に入学して早々、同じクラスのさばさばした美女・小川あやめに一目惚れする。といっても話しかける勇気はなく、彼女のことを密かに撮影……つまり盗撮して、笑顔を愛でる日々なのだが、あるときリア充グループから花見の記録係をしてほしいと頼まれる。しかし花見というのは口実で、真の目的は“一軍男子”があやめに告白をする決定的シーンの撮影だった。「陰キャの側から見ると陽キャって敵なんですけど、勝手に敵対心を抱いているだけで、実際はそれほど嫌な人でもなかったりしますよね。反対に陽キャといわれる人も、実は陰キャっぽいところがあると思うので、その辺りを意識して描いてます」斎藤を無邪気に振り回すのが、あやめと予備校が一緒だった逸崎元貴。ミスコン開催の夢を以前から持っていた元貴は、学園祭の実行委員として奔走。弱みを握ったのをいいことに、斎藤をミスコンのカメラマンに任命する。戦略的で自己評価の高いミスコン候補者の圧に斎藤は疲弊するものの、自分好きという根っこの部分は同じだったりして、陰キャ、陽キャでは単純に線引きできない人物像が浮かび上がってくる。さらに斎藤が表面的にしか評価していなかったあやめの素顔が、距離が近づくにつれて見えてくるのも生々しい。「どのキャラクターも自分が想像できる範囲内だと面白くはならなくて。考えすぎず、想像を超えていく塩梅を探りながら描いています。それってどうやるんだよ!?って感じですけど(笑)。とりあえず今の斎藤くんは友だちになりたくないタイプなので、なってもいいかなと思えるくらいにはちゃんとしてあげたいです」友だちになれるかどうかはさておき、自分のなかにもいる“ヘタレ斎藤”をなんとかしてやりたい!と前のめりになってしまう作品だ。『スポットライト』陰キャの大学生・斎藤恭平が恋をしたのは、周りも一目置く美女・小川あやめ。ミスコンをモチーフにもつれ合う人間模様を描く。第2巻が4月23日に発売予定。講談社660円みうら・かぜマンガ家。2019年「ないものねだり」(『コミックDAYS』に無料掲載中)で「アフタヌーン四季賞2019 春のコンテスト」四季大賞受賞。※『anan』2021年3月31日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2021年03月25日青春の甘酸っぱさを演出する、必須アイテムといえる交換日記。本作『交換漫画日記』はタイトルが示すように、同じ交換日記でもマンガを日々交換するのだが、著者・町田とし子さんの実体験に基づいた思いが込められている。あのときの友情はきっと永遠。ノートに綴った2人だけの世界。「女の子の日常マンガを描こうと思い、自分が高校生だった頃を振り返ってみたのですが、当時楽しみにしていたことといえば、マンガを好きな人たちが集まって交換マンガを描いていたことなんですよね」町田さんは4人でやっていたのに対して、本作で交換マンガをするのはアイコとユーカの2人。マンガを描くのが趣味という点では共通しているものの、やや閉鎖的な性格のアイコは少年マンガのようなバトルものが好き。一方、面白いことにはすぐに飛びつくユーカは少女マンガ的なラブストーリーがお好み。ゆえに共作マンガも、ラブシーンが始まるかと思いきや血がほとばしったりして、かなりちぐはぐな印象。「私たちの交換マンガもそうでしたが、描きたいものも、絵のうまさもそれぞれ違って個性が溢れていたんですよね。ここでは日々起こったことが2人の描くマンガに反映されて、現実と作品の世界がリンクしていく感じも意識しました」そんな日記を大切にひっそりと育んでいたのだが、さまざまな出来事に翻弄されて、マンガに対する熱量や関係性も少しずつ変化していく。「交換マンガをするくらいなので、一緒にマンガ家になろうっていう意識も出てきちゃうんですけど、楽しいことはほかにもいっぱいあるし、やりたいことはどんどん変わっていくものですよね。それが原因でケンカをしたり、疎遠になったりするかもしれないけれど、交換マンガをできた時代は永遠の瞬間であり友情なんだろうなって。ずっと一緒にいたい気持ちも大事だし、離れていってしまう友だちの気持ちも尊重してあげたいと思いながら描きました」記憶を掘り起こしながら、対照的な2人のキャラクターに寄り添い、感情を乗せていった町田さん。親友に置き去りにされるような焦りを感じたり、なぜか不機嫌になっている相手に戸惑ったり、器用に振る舞えず自己嫌悪に陥ったり……。友だちと過ごす時間が愛おしいからこそ、感じていた切なさが鮮やかに蘇る。「閉ざされた世界でキャッキャウフフするだけのきれいごとにはしたくなかったんです。だけど大人になるとなかなか築けない、あの時期特有の仲のよさだったとは思います。私もこの作品を描けたことで、いろんな思いが消化できた気がします」『交換漫画日記』1放課後、人知れずノートを交換していたアイコとユーカ。クラスの大人っぽい大沢さんが、秘密のやり取りに気がついて……。第2巻(完結)が4月8日に発売予定。講談社680円(C)町田とし子/講談社まちだ・としこマンガ家。長崎県出身。2008年「兄は珍獣」でデビュー。代表作は『おくることば』(全3巻)、『エンゼルゲーム』(シリーズ全4巻)※『anan』2021年3月24日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2021年03月22日出会った女性がネタの源。そんな横澤夏子さんが、街で見つけたいい女を実演。今回は、親といい関係が築けている女になりきり。相手に気を使わせず家に招くスキルに感動!少し前の話になるのですが、番組でも共演していて、仲良くしているお友だちと遊ぶ約束をしていたんです。すると彼女が、「もしよかったらうちに来ない?」と誘ってくれて、“え、実家に!?”と驚きました。だって、実家に呼ぶためには、まず、家がきれいなことが大前提。さらに、親と仲がいい、親の前で自分を見せられるなどの条件が揃っていないと難しいですよね。私は、親とすぐに喧嘩をするし、見苦しいものを見せることになるのがわかっているので無理だなと。まだ、中学生とかなら考えられるけど、こんなに大人になってまでというのは、本当にすごいと思いました。しかも、“実家に呼べるくらいの仲だと思っているよ”という気持ちが伝わってきて、嬉しかったです。実際に行ってみると、お母さんも、彼女と同様にものすごく感じのいい、気さくの塊のような人で。“どうりでこんな子どもになるよな…”と納得しました。「娘がいなくても来てね」とまで言ってくださったんです。いちごのショートケーキを出してくれたり、その子が写った写真などがたくさん飾られていたりと、まるで漫画に出てくるような素敵なおうちで、そんなところに感動もしたり…。こちらが感謝をしたいのに、その子からは“うちの母を喜ばせてくれてありがとう!”という雰囲気が感じられて、そんな気遣いまでできるのかと、ますます、その子のことが好きになりました。友だちを実家に呼ぶには、まず自分が親と仲良くすること。あと、普段から、友だちのことを親にいろいろ話しておくことが大事だと思いました。彼女のお母さんは私の娘の月齢まで知ってくれていたおかげでとても話がしやすかったです。私も、親との関係性を大事にしたいと思います!よこさわ・なつこ芸人。“ちょっとイラッとくる女”のモノマネで大ブレイク。婚活で培ったテクニックをまとめた著書『追い込み婚のすべて』(光文社)が発売中。昨年2月に第一子を出産。※『anan』2021年3月24日号より。写真・中島慶子イラスト・別府麻衣文・重信 綾(by anan編集部)
2021年03月21日